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家族性高コレステロール患者は糖尿病になりにくい…?!(解説:吉岡 成人 氏)-341

スタチン薬による糖尿病の発症増加 スタチン薬の投与により、糖尿病の新規発症が約1.1倍(オッズ比[OR]:1.09、95%信頼区間[CI]:1.02~1.17)増加する1)。アトルバスタチンやシンバスタチンなどの疎水性のスタチン薬は、親水性のプラバスタチンと異なり、インスリンの作用を低下させることが報告されている。その機序として、アトルバスタチンが脂肪細胞における糖輸送担体(GLUT4)の発現を抑制することにより、糖の取り込みを減少させ、シンバスタチンでは、Caチャネルを阻害し血糖依存性のインスリン分泌を低下させることで、耐糖能が悪化する。また、スタチン薬のLDL受容体発現を亢進させる作用が、膵β細胞へのコレステロールの取り込みを促進して、インスリン分泌機能の障害に結び付く可能性についても検討されている。一方、LDL-コレステロールが著しく上昇する家族性高コレステロール血症(FH:familial hypercholesterolemia)の患者では、糖尿病の発症が少ないことが知られている。その理由として、LDL受容体の機能低下によりLDLの膜輸送障害を生じていることが、膵β細胞へのLDL輸送の低下と結び付き、アポトーシスを緩和するために糖尿病を引き起こしにくいのではないかと考えられている。家族性高コレステロールでは糖尿病の罹患率が低い オランダ、アムステルダムのAcademic Medical CenterのKastelein氏らは、1994年から2014年にオランダにおける国民検診プログラムに登録し、FHについてのDNA検査を受けた6万3,320例を対象として、FH患者における糖尿病の罹患率をFHに罹患していない親族での糖尿病の罹患率と比較検討している。糖尿病の診断は、患者の申告(self-reported diagnosis)によって行われている。 2型糖尿病の罹患率は、FH患者では440/2万5,137例(1.75%)、対照群(FHではない親族)では1,119/3万8,183例(2.93%)であり、FH患者で有意に少ない(OR:0.62、95%CI:0.55~0.69)ことが確認された。年齢、BMI、HDL-C、トリグリセリド・スタチン使用の有無、心血管疾患、家族歴で調整した後の多変量解析では、FH患者の2型糖尿病罹患率は1.44%、対照群では3.26%(OR:0.49、95%CI:0.42~0.58)であった。FHの遺伝子異常にはいくつもの変異があるが、APOB(アポリポ蛋白)遺伝子の異常とLDL受容体の異常を持つ場合の糖尿病の罹患率は、前者で1.91%(OR:0.65、95%CI:0.48~0.87)、後者で1.33%(OR:0.45、95%CI:0.38~0.54)であり、LDL受容体異常の患者における糖尿病の罹患が少ないことが確認された。また、LDL受容体が減少している場合と欠損している場合では、それぞれの糖尿病の罹患率は1.44%(OR:0.49、95%CI:0.40~0.60)、1.12%(OR:0.38、95%CI:0.29~0.49)と報告されている。今後の展望 今回の検討における糖尿病の診断は患者の申告によるものであり、血糖値やHbA1cを測定しているのではなく、ましてや経口ブドウ糖負荷試験を実施しているわけではない。おそらく、2型糖尿病の頻度は報告されている以上に多いのではないかと考えられる。とはいえ、FH患者、とくにFH受容体欠損患者では糖尿病の発症が少ないことが確認され、細胞内のコレステロール代謝が膵β細胞機能に影響を及ぼしていることが示唆される。今後、2型糖尿病患者においてみられる、アポトーシスによる継時的な膵β細胞機能低下を引き起こすメカニズムに、新たな視点からの検討が加えられる契機となる臨床的な知見かもしれない。

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ニーズいろいろ【Dr. 中島の 新・徒然草】(062)

六十二の段 ニーズいろいろ先日、初診でお見えになった患者さん。やけにいろいろな訴えのある60代の女性です。 患者 「頭が痛いし」 中島 「頭が痛いわけですね」 患者 「心臓も心配だし」 中島 「思いあたるフシが?」 患者 「以前に狭心症やってんですよ」 中島 「なるほど」 患者 「最近目が見えにくくなってきて」 中島 「目が見えない・・・わけですか」 ふと思いついて尋ねてみました。 中島 「お仕事は何をやっているんですか?」 患者 「テレアポですよ、お墓の」 中島 「電話でお墓を売っているってことですか」 患者 「そう。その前は会社経営を25年やってましてね」 中島 「そうなんですか」 患者 「若いときにずっと営業でトップだったもんですから、最後に自分の納得のいくものを売りたいと思って、会社を畳んだんですよ」 わかるようなわからないような理屈です。 中島 「その『納得のいくもの』がお墓というわけですか」 患者 「そうなんです」 ここで何となく、この人のニーズが掴めました。 中島 「つまり、いろいろと体に不調があるので、それらを全部すっきりさせて、『安心してお墓に入りたい』と。そういうことですか?」 患者 「そう! そうなのよ」 中島 「『安心してお墓に入る』って、考えれば考えるほど理解しがたいセリフですね」 患者 「そうね(笑)」 中島 「でも、何となくその気持ちはわかりますよ」 患者 「わかってくれます?」 中島 「納得して死にたいってことでしょ?」 患者 「そう・・・かもしれませんね。それで私、お墓を売っているのかな」 理屈ではわからないことでも、感覚的には「安心してお墓に入りたい」という気持ちは理解できるような気がします。 中島 「わかりました。まず脳に関係したことを調べましょう。その後、必要に応じて循環器内科や眼科にも紹介しますので、不安を1つずつ消していきましょう」 患者 「ぜひお願いします」 ということで、お互いのペースに合わせてゆっくり診療を進めていくことになりました。それにしても世の中には色んなニーズがあるものです。最後に1句目標は お墓に行くぞ 安らかに

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医師と患者の意識差を糖尿病治療にどう反映する

 2015年3月24日、「糖尿病患者と医師の意識の違い~調査から読み解く!糖尿病治療を継続させるために~」と題したプレスセミナー(主催:シオノギ製薬)が、寺内 康夫氏(横浜市立大学大学院医学研究科 分子内分泌・糖尿病内科学 教授)を講師に迎え、東京都内において開催された。 このセミナーは、同社が行ったインターネット調査「糖尿病患者と医師の治療と行動に関する意識調査(T-CARE Survey2※)」の結果発表に合わせて行われたもの。寺内氏は、この結果を基に、糖尿病診療の現状や課題に触れたうえで、トータルケアの実践へ向けたサポート施策の在り方について述べた。※T-CARE Survey2:患者と医師双方に対し同内容の質問項目(発症状況の把握、治療の状況、生活満足度など)を設定し、両者の意識のギャップを明らかにすることで、今後の円滑な治療へ導くことを目的に行われた調査。全国の糖尿病患者3,580人(20~60代男女)ならびに医師298人を調査対象とし、2015年1月に実施された。医師が考えるよりも、患者は合併症リスクを軽く考えている 調査によると、合併症などのリスクについての説明は、医師が思っているほど患者には伝わっていないことが明らかになった。医師の「説明をしている」よりも患者の「説明を受けたことがある」がすべての項目で下回っており、とくに「脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすくなる」説明を「受けたことがある」患者と「説明している」医師の間には、大きな開きがあった(患者49.1%vs.医師93.3%)。 このこととも関係してか、患者の合併症への心配・不安は、それほど高くない。たとえば「脳卒中になりそうで怖い」と思っている患者は、医師が考えているよりも少なく(患者23.2%vs.医師39.6%)、また、血糖値の治療目標値についても、医師が思っているほど患者には認知されていないことも判明した(目標血糖値を知っている:患者48.0%vs.医師62.1%)。生活習慣改善の治療実践はまだ不十分 その反面、医師が思っているよりも、治療継続の必要性を感じている患者は多い。糖尿病治療を「継続しなければならない」と回答した患者が89.4%であったのに対して、「患者自身が治療を継続しなければならないと思っている」と回答した医師は62.1%と、開きがあった。 一方で、患者に生活習慣改善治療に関して聞いたところ、「運動をしっかりやっている」(30.3%)、「食事の管理をしっかりやっている」(32.5%)と、いずれの回答も約3割にとどまった。どちらも医師が考えている割合(運動41.6%、食事管理42.3%)を下回っており、患者は医師が期待するほど生活習慣の改善を実践できていないことが判明した。医師以外の相談相手がいないと感じている患者たち チームサポートの視点から見た場合、医師がメディカルスタッフに与えている役割については、施設間の格差が生じる結果となった。とくに看護師による「糖尿病教室」の開設(開業医7.5%vs. 病院32.2%)や「フットケア」の実施(開業医14.0%vs. 病院46.8%)では、開業医と病院で大きな開きが出た。 また、患者の7割弱が「医師以外に治療に関係している医療関係者がいない」(64.9%)と回答するなど、患者がメディカルスタッフを相談相手として認識できていないことも明らかとなった。半数の患者家族が病気に理解あり、ただし診察への同行まではしてくれない 家族を含む周囲のコミュニティサポートでは、家族が「治療やケアに協力的」な患者は半数にとどまり(患者55.2%vs. 医師46.1%)、また、家族が「診察に一緒に同行してくれる」と回答した患者は10人に1人にとどまった(患者12.7%vs.医師33.6%)。生活習慣の改善や家族の協力をいかに確保するか 最後に、今回の調査のまとめとして、以下の事項があげられた。すなわち、医師の意識よりも患者は「糖尿病の内容や治療の必要性を理解している」こと、その一方で医師が思うよりも患者は「自身の病状・合併症のリスクを理解しておらず、治療(とくに生活習慣改善)が実践できていない」こと、「治療実践に必要なメディカルスタッフや家族のサポートも少なく、医師以外に相談する意識も低い」ことなどである。 したがって、医師側の今後の課題としては、「合併症リスクの説明の充実」や「より一層の生活習慣改善の指導」に加え、「患者家族や周囲を巻き込んだサポート体制の構築」が挙げられる。 将来的には、現在国が推進している「地域包括ケアシステム」を念頭に、患者のトータルケア実践に向け、患者自らが治療方針や治療実践に積極的に関与できるように、医療機関や家族のサポート、地域ケアが円滑に進むことが期待されるとレポートを終えた。 なお、調査の詳細については、同社のサイトから確認することができる。 シオノギ製薬:調査結果一覧(PDF)

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小児への抗精神病薬使用で推奨される血糖検査、その実施率は

 米国糖尿病協会(ADA)は2004年に、小児および青少年について、第2世代抗精神病薬の治療開始前後に代謝スクリーニングを実施することを推奨する治療ガイドラインを発表した。これに関連し、ブリガム&ウィメンズ病院のJohn G. Connolly氏らは、ガイドライン発表時期とその後8年間のスクリーニング実施率の変化を調べ、ガイドライン発表後はわずかに実施率が上昇したが、その後は低下していたことを明らかにした。先行研究で、ガイドライン公表時期に小児および成人の血糖検査がわずかだが増大していることが報告されていたが、その後についての報告は限定的であった。Psychiatr Services誌オンライン版2015年3月1日号の掲載報告。 研究グループは、全米をカバーする大規模民間保険の支払データベースで、2003年1月1日~2011年12月31日の期間中に5万2,407例の試験患者を特定した。試験集団は、第2世代抗精神病薬を使用する5~18歳の非糖尿病集団であった。アメリカ医師会(AMA)独自の診療コーディングCPT(Current Procedural Terminology)-4により、同薬服用開始前後に血糖値検査およびHbA1c検査完了の有無を特定した。また、処方されていた第2世代抗精神病薬、および精神科の診断ごとの代謝スクリーニング実施率についても調べた。 主な結果は以下のとおり。・第2世代抗精神病薬の治療開始前に血糖値検査を受けていた患者の割合は、2003年17.9%から2004年18.9%に増大していた。同時期に、治療開始後の検査は14.7%から16.6%に増大していた。・これら血糖値検査のわずかな増大は、その後は継続していなかった。2008年に再上昇がみられたが、それまでの期間は低下していた。・血糖スクリーニングの頻度は、アリピプラゾール服用患者で最も高かった。一方、多動障害を診断された患者の検査頻度が、最も低いと思われた。・HbA1c検査の実施頻度は、より低かったが、実施パターンについては類似していた。・以上のように、2004年のADAガイドライン発表後、代謝スクリーニング実施率はわずかに改善していたが、継続していなかったことが明らかになった。・全体として、代謝スクリーニング率は調査対象期間中、最適には及ばない基準で推移していた。関連医療ニュース 非定型抗精神病薬、小児への適応外使用の現状 抗精神病薬治療中の若者、3割がADHD 本当にアリピプラゾールは代謝関連有害事象が少ないのか

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狭心症疑い、CT冠動脈造影で診断確度アップ/Lancet

 冠動脈性心疾患(CHD)で狭心症が疑われた患者に対し、コンピュータ断層撮影を用いた冠動脈造影(CTCA)を実施することで、診断確度が増大することが示された。CTCAにより介入ターゲットが明確になり、有意差は示されなかったが将来的な心筋梗塞リスクを低下可能であることが示されたという。英国・ボーダーズ総合病院のDavid Newby氏らSCOT-HEART研究グループが、4,146例を対象に行った無作為化試験の結果、報告した。Lancet誌オンライン版2015年3月15日号掲載の報告より。4,146例を無作為に2群に分け、一方には標準ケア+CTCAを実施 試験は、2010年11月~2014年9月にかけて、スコットランドの12ヵ所の心臓・胸痛クリニックから、冠動脈性心疾患(CHD)により狭心症が疑われ紹介された18~75歳の患者4,146例を対象に行われた。 被験者を無作為に2群に分け、一方には標準的ケアに加えCTCAを行い、もう一方の群には標準ケアのみを行った(各群2,073例)。 主要評価項目は、6週間後の狭心症の診断確度だった。狭心症の診断確度はCTCA群で約1.8倍に 被験者のうち、ベースラインで臨床的にCHDの診断を受けていたのは47%、CHDによる狭心症の診断を受けたのは36%だった。 6週間後、CTCA群でCHDの診断に再分類されたのは27%(558例)、CHDによる狭心症の診断に再分類されたのは23%(481例)だった。 CTCA+標準ケアは、標準ケアのみに比べ、6週間時点におけるCHD診断確度を約2.6倍(相対リスク:2.56、95%信頼区間:2.33~2.79、p<0.0001)増大し、診断頻度もわずかだが増大した(同:1.09、同:1.02~1.17、p=0.0172)。また、主要評価項目のCHDによる狭心症については、診断確度は増加し(同:1.79、同:1.62~1.96、p<0.0001)、診断頻度は同等だった(同:0.93、同:0.85~1.02、p=0.1289)。 これら診断確度や頻度の変化は、予定されていた検査法の変更(CTCA群15% vs. 標準ケアのみ群1%、p<0.0001)や、治療の変更(同23% vs. 5%、p<0.0001)と関連していた。しかし、6週時点の症状の重症度やその後の胸痛による入院への影響はみられなかった。 1.7年後、標準ケアのみ群の致死的・非致死的心筋梗塞の発生は42例だったのに対し、CTCA群は26例で、有意差は示されなかったが同リスクの抑制が認められた。(ハザード比:0.62、同:0.38~1.01、p=0.0527)。

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PCI前の血栓除去は有効か?RCTの結果/NEJM

 プライマリPCIを受けるST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者への、ルーチンの用手的血栓除去の実施は、180日間の心血管死や心筋梗塞の再発などの複合アウトカムを改善しなかったことが示された。一方で、30日以内の脳卒中発生率は、用手的血栓除去により約2倍増大した。カナダ・ハミルトン総合病院のS.S. Jolly氏らが、1万732例について行った無作為化試験の結果、報告した。プライマリPCI時の用手的血栓除去は遠位塞栓を抑制し、微小血管の循環を改善するとされる。先行研究の小規模試験では、血栓除去による臨床転帰の改善が示唆されたが、大規模試験では相反する結果が報告されていた。NEJM誌2015年4月9日号(オンライン版2015年3月16日号)掲載の報告より。PCI前にルーチンの用手的血栓除去を実施 Jolly氏らは、プライマリPCIを実施予定のSTEMI患者1万732例を対象に、無作為化比較試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方にはPCI前にルーチンの用手的血栓除去を行い、もう一方にはPCIのみを行った。 主要アウトカムは、180日以内の心血管死、心筋梗塞の再発、心原性ショック、NYHA心機能分類IVの心不全の複合とした。主な安全性に関するアウトカムは、30日以内の脳卒中とした。30日以内の脳卒中発生率、血栓除去群が対照群の2.06倍 その結果、主要アウトカムの発生は、血栓除去群5,033例中347例(6.9%)、対照群5,030例中351例(7.0%)と、両群で同等だった(ハザード比:0.99、95%信頼区間:0.85~1.15、p=0.86)。 心血管死も、血栓除去群3.1%、対照群3.5%と同等だった(同:0.90、0.73~1.12、p=0.34)。主要アウトカムとステント血栓症または標的血管血行再建術の発生率も、それぞれ9.9%と9.8%で、同等だった。 一方、30日以内の脳卒中発生率については、対照群0.3%(16例)に対し血栓除去群は0.7%(33例)と、約2倍増大した(ハザード比:2.06、同:1.13~3.75、p=0.02)。

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歴史的なジギタリスと心房細動:ROCKET-AF試験(解説:後藤 信哉 氏)-338

 筆者の世代の循環器医にとって、ジギタリスはなじみの深い薬物である。学生のころ、ジギタリスは南米の矢毒から分離されたと教わったが、本当であるか否かを確認していない。筆者の世代にとって、心不全治療の唯一の選択ともいえる時代があった。ジギタリスは房室伝導を阻害するので、頻拍性不整脈に対しても広く使用されていた。また心房細動症例に対しても、脈拍コントロールのための主要薬剤であった。 心不全症例にジギタリスを使用しても効果がないとの報告はあった。それでも筆者の世代の循環器医は、若い時代からの慣習によりジギタリスを広く使用している。慢性心房細動の心拍コントロールにも実臨床ではいまだに広く使用されている。 今回発表されたROCKET-AFのデータベースでも、心房細動症例の37%がジギタリスを使用している実態を示した。ランダム化比較試験に登録される症例は、厳密な症例登録基準と除外基準を満たし、いわゆる治験慣れした施設からの特殊な症例サンプルである。また、ROCKET-AF試験の目的はPT-INR 2~3のワルファリン治療と、1日20mgを標準用量とするリバロキサバンの脳卒中・全身塞栓症予防効果の差異の有無の検証であって、死亡は2次エンドポイントにすぎない。そのため、本サブ解析はLancetというインパクトファクターの高い雑誌に発表され、統計解析はそれなりに充実しているが、発表された結果が実臨床に応用可能であるか否かの判断には、慎重になる必要がある。 ROCKET-AFに登録されたCHADS2 score 2点以上の非弁膜症性心房細動症例は、年間100例当たり4例以上が死亡する、死亡リスクの高い集団である。ジゴキシン使用と総死亡、血管死亡、突然死の増加も興味ある課題であるが、死亡に関するサブ解析が可能なほど死亡リスクの高い患者集団において、死亡率よりも低い脳卒中・全身塞栓症が1次エンドポイントであった事実を、臨床家は再認識する必要がある。非弁膜症性心房細動の症例を見たら、とくに抗凝固療法をしている症例では近未来の死亡リスクにこそ、注意を向ける必要があるのだ。

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成人に対する13価肺炎球菌結合型ワクチンの有効性を示したCAPiTA trial(解説:小金丸 博 氏)-339

 肺炎球菌結合型ワクチンは、小児における肺炎球菌性肺炎、侵襲性肺炎球菌感染症、中耳炎、およびHIV感染症患者における肺炎球菌感染症を予防できることが示されてきた。成人においては、13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)は23価肺炎球菌多糖ワクチン(PPSV23)と比較し、免疫原性が優れていることは示されていたが、実際に成人の肺炎球菌感染症を予防できるかどうかはわかっていなかった。 本論文は、成人に対するPCV13の予防効果を検討したランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験である。2005年以前には、小児に対する肺炎球菌結合型ワクチンを導入していなかったオランダにおいて、2008年9月~2013年8月に実施された。65歳以上の成人を、(1)PCV13接種群(4万2,240例)と(2)プラセボ接種群(4万2,256例)に割り付けし、ワクチン血清型の肺炎球菌による市中肺炎、非菌血症性・非侵襲性肺炎球菌性肺炎、侵襲性肺炎球菌感染症の予防効果を調査した。原因菌がワクチンに含まれる血清型の肺炎球菌だったかどうかの確認には、血液などの無菌材料からの培養検体に加えて、ワクチン血清型特異的尿中抗原検査を用いた。  per-protocol解析では、ワクチン血清型による市中肺炎はPCV13接種群で49例、プラセボ群で90例発生し、ワクチン効果は45.6%(95.2%信頼区間:21.8~62.5%)だった。同様に、非菌血症性・非侵襲性肺炎球菌性肺炎の発生数は、それぞれ33例と66例で、効果は45.0%(同:14.2~65.3%)、侵襲性肺炎球菌感染症の発生数は、それぞれ7例と28例で、効果は75.0%(95%信頼区間:41.4~90.8%)だった。ワクチン効果は試験期間中持続した(平均フォローアップ期間3.97年)。肺炎球菌以外も含めた全市中肺炎の発生数は、それぞれ747例と787例で、ワクチン効果は5.1%(95%信頼区間:-5.1~14.2%)だった。全死因死亡者数は両群間で同等だった。肺炎球菌感染症に関連した死亡者数は、ワクチンの有効性を解析する意味を持たないほど両群共に少なかった。 本試験はCAPiTA trialと呼ばれる臨床試験である。PCV13による成人の肺炎球菌感染症の予防効果を示した最初の論文であり、本試験の結果を受けて米国の予防接種諮問委員会(ACIP)の推奨が「PCV13をすべての65歳以上の成人に対して接種すること」と変更になった。  本邦においてPCV13は、2014年6月に65歳以上の成人に対して適応拡大されている。それに加えて、2014年10月からは65歳以上の成人を対象としたPPSV23の定期接種が開始されており、成人に対する肺炎球菌ワクチンの接種が複雑になっている。 米国では、PCV13はPPSV23と連続して使用される。ACIPは、(1)肺炎球菌ワクチン接種歴のない場合は、まずPCV13を接種し、6~12ヵ月後にPPSV23を接種、(2)65歳以降にPPSV23の接種歴がある場合は、PPSV23の接種から1年以上空けてPCV13を接種、(3)65歳未満にPPSV23の接種歴がある場合は、PPSV23の接種から1年以上空けてPCV13を接種し、その6~12ヵ月後にPPSV23を接種するように推奨している。PCV13とPPSV23を連続接種することにより高い免疫原性を得ることが期待できるが、至適接種間隔はわかっていない。また、連続接種による臨床効果を示した研究はなく、今後のさらなる研究が待たれる。

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経カテーテル大動脈弁置換術の5年転帰/Lancet

 高リスク大動脈弁狭窄症患者に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)は、標準治療である外科的大動脈弁置換術(SAVR)とほぼ同等の臨床転帰をもたらすことが、米国・Baylor Scott & White HealthのMichael J Mack氏らが実施したPARTNER 1試験で示された。本試験では、TAVRの1年死亡率は、非手術例では標準的非手術療法よりも優れ、手術を行った高リスク例ではSAVRに対し非劣性であり、これらの知見は2年、3年時も維持されていた。研究グループは今回、高リスク例における5年時の臨床転帰の解析を行い、Lancet誌オンライン版2015年3月15日号で発表した。5年転帰を外科的置換術と比較 PARTNER 1試験は、欧米の25の病院(カナダ2施設、ドイツ1施設、米国23施設)が参加した無作為化対照比較試験(Edwards Lifesciences社の助成による)。対象は、重度の症状を呈する大動脈弁狭窄症で、専門医チームにより、SAVRでは施術後30日以内の死亡のリスクが15%以上と判定された患者であった。 被験者は、TAVRまたはSAVRを施行する群に無作為に割り付けられた。TAVR群の患者には、バルーン拡張型ウシ心嚢膜弁が経大腿動脈または経心尖アプローチで留置された。主要評価項目は施術後1年時の死亡であり、5年時の転帰の解析を行った。5年全死因死亡率:67.8 vs. 62.4%、弁周囲逆流が問題 699例が登録され、TAVR群に348例、SAVR群には351例が割り付けられた。TAVR群のうち244例に経大腿動脈アプローチ、104例には経心尖アプローチが行われた。TAVR群の4例が実際にはTAVRを受けず、5例がフォローアップ不能となり、4例は施術後に試験から脱落した。 全例の平均年齢は84.1歳、94%がNYHA心機能分類3/4であり、平均Society of Thoracic Surgeons Predicted Risk of Mortality(STS PROM)スコアは11.7%であった。フォローアップ期間中央値は3.14年だった。 5年時の全死因死亡率は、TAVR群が67.8%、SAVR群は62.4%であり、両群間に差を認めなかった(ハザード比[HR]:1.04、95%信頼区間[CI]:0.86~1.24、p=0.76)。 脳卒中/一過性脳虚血発作、脳卒中/一過性脳虚血発作/死亡、心筋梗塞、心内膜炎、腎不全、新規ペースメーカー留置の頻度に差はなかったが、TAVR群では重篤な血管合併症(11.9 vs. 4.7%、p=0.0002)が多く、大出血(26.6 vs. 34.4%、p=0.003)が少なかった。 外科的弁置換を要する構造的弁劣化は両群ともにみられなかった。中等度~重度の大動脈弁逆流が、TAVR群の14%(40/280例)、SAVR群の1%(2/228例)にみられ(p<0.0001)、TAVR群の5年死亡率の上昇に関連していた(軽度以下の逆流による死亡率56.6%に対し中等度~重度の逆流の死亡率は72.4%、p=0.003)。大動脈弁逆流のほとんどの原因が弁周囲逆流であった。 著者は、「5年後の両法の死亡および脳卒中の発症率はほぼ同等であったが、TAVRでは弁周囲逆流の頻度が高く、それが軽度の場合でも死亡率の上昇と関連した」とまとめ、「本研究は第1世代のデバイスに関する最初の試験である。第2、3世代は小型化が進み、弁周囲逆流の予防策も講じられているため、転帰が改善されている可能性がある。また、臨床経験の積み重ねにより、患者選択もより適切に行われている」と考察している。中等度リスクの2,000例を対象とする第2世代デバイスの臨床試験(PARTNER II試験)が進行中だという。

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PPARγアゴニスト、神経障害疼痛の鎮痛作用あり

 米国・ケンタッキー大学のRyan B Griggs氏らは、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)アゴニストの反復投与により脊髄後角におけるグリア活性化が変化し、神経障害性疼痛様反応が減少することを明らかにした。PPARγは核内受容体であることから、遺伝子発現の持続性変化が疼痛減少に関与すると考えられているが、著者らはこれまでに、PPARγアゴニストであるピオグリタゾンの単回髄腔内注入が、ゲノム機構で必要とされる時間よりも短時間の30分以内に痛覚過敏を減少させることを示していた。今回の報告について著者らは、「脊髄性PPARγの活性化が標準的なゲノム活性から独立して神経障害性疼痛を急速に減少させることを示した最初の報告」と述べたうえで、「ピオグリタゾンは、1つにはアストロサイト活性化の減少によって、また、PPARγのゲノム性および非ゲノム性作用の両方を介して、神経障害性疼痛を速やかに阻害する」と結論付けた。Pain誌2015年3月号の掲載報告。 研究グループは、PPARγ活性化の迅速な抗痛覚過敏作用を検討する目的で、坐骨神経部分損傷ラットにピオグリタゾンを投与し痛覚過敏を評価した。 主な結果は以下のとおり。・ピオグリタゾンは、投与5分以内に痛覚過敏を抑制した。・ピオグリタゾンの腹腔内または髄腔内投与による抗痛覚過敏作用は、PPARγアンタゴニストであるGW9662の全身投与または髄腔内投与によって阻害された。・ピオグリタゾンとタンパク質合成阻害剤であるアニソマイシンを同時に髄腔内投与し7.5分間隔で評価した結果、投与初期はピオグリタゾンの抗痛覚過敏作用に変化はなかったが、後に減少した。・坐骨神経部分損傷によって誘発されたGFAP発現の増加を、ピオグリタゾンは投与後60分以内に抑制した。

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認知症への抗精神病薬使用は心臓突然死リスクに影響するか

 死亡診断書や処方箋データを用いた研究によると、認知症患者に対するハロペリドールによる治療は、心臓突然死のリスク増大と関連していることが示唆されている。ルーマニア・トランシルバニア大学のPetru Ifteni氏らは、ハロペリドールで治療した認知症患者の突然死例において心臓突然死率が高いかどうかを、剖検所見を用い調査した。International journal of geriatric psychiatry誌オンライン版2015年3月19日号の報告。 1989年から2013年までに、精神科病院に入院した行動障害を伴う認知症患者1,219例のうち、65例(5.3%)が突然死していた。突然死後、剖検を完了したのは55例(84.6%)であった。剖検例のうち27例(49.1%)が、経口ハロペリドール単剤(2.2㎎±2.1㎎/日)治療を受けていた。多変量比較および多変量回帰分析を用い、心臓突然死および非心臓突然死であった患者群との比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・死亡の主な原因は、心臓突然死(32.7%)、心筋梗塞(25.5%)、肺炎(23.6%)、脳卒中(10.9%)であった。・心臓突然死患者と解剖学的に死亡原因が特定された患者では、ハロペリドールの治療率に差はなかった(p=0.5)。・心臓突然死患者では、アルツハイマー型認知症(p=0.027)、心臓病の既往歴(p=0.0094)の割合が高く、気分安定薬による治療率が低かった(p=0.024)。しかし、これらはいずれも心臓突然死の独立した危険因子ではなかった。・剖検データによる本調査では、精神科入院認知症患者に対する経口ハロペリドールの使用は、心臓突然死リスクと関連しないことが示唆された。関連医療ニュース 日本では認知症への抗精神病薬使用が増加 認知症のBPSDに対する抗精神病薬のメリット、デメリット 統合失調症患者の突然死、その主な原因は  担当者へのご意見箱はこちら

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「エドキサバンは日本の薬なのに…」1~遺伝子型と抗血栓療法下の出血、血栓イベントの関係~:ENGAGE AF-TIMI 48試験(解説:後藤 信哉 氏)-336~

 エドキサバンは、日本企業が開発した薬剤である。日本が国際共同試験をリードして、日本国内に臨床データベースがあれば、日本の研究者は数多くの興味深い臨床的研究を発表できたはずである。今回Mega博士らが発表した遺伝子型とワルファリンの薬効については、高橋 晴美博士をはじめ、日本人研究者による先行研究がある。ENGAGE AF-TIMI 48試験は科学的にきわめて質の高い研究であり、かつ登録された症例の数が多いので、Mega博士らの本研究は今後も世界にインパクトを持つ。 ワルファリンは血漿蛋白に結合する。結合しなかったfreeワルファリンが、肝臓のCYP2C9により活性型ワルファリンに転換される。活性型ワルファリンの産生速度は、CYP2C9の遺伝子型に強く作用される。さらに、活性型ワルファリンはVKORC1による凝固因子の機能的完成を阻害する。その作用もVKORC1の遺伝子型に影響を受ける。薬理学的シミュレーション研究でもCYP2C9の遺伝子型とワルファリンの効果の関係の大きさは示唆されていた。この2つの遺伝子型を事前に知っていれば、ワルファリン治療に過剰に反応するグループ、大量のワルファリンが必要な患者グループの同定が可能との仮説が持たれていた。本研究では遺伝子型とワルファリン使用例の、使用早期の出血リスクの関係を示した。 個人の遺伝子を低廉に取得できる時代には、遺伝子型に基づいた個別化医療が期待できる。ワルファリンは個別化医療の恩恵を最も受ける薬剤と想定される。Mega博士らは、CYP2C9とVKORC1の遺伝子型を知れば、ワルファリン服用早期の出血イベントが低下することを示した。パーソナルゲノム情報を基盤とする、未来の個別化医療へのインパクトの高い研究である。日本企業の薬剤でありながら、日本の研究者は共著者にもいない。とてもインパクトの高い研究だけに、臨床データベースを国内に持てない悔しさを、あらためて感じさせる研究であった。

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「エドキサバンは日本の薬なのに…」2~エドキサバン減量と出血、血栓イベントの関係~:ENGAGE AF-TIMI 48試験(解説:後藤 信哉 氏)-337

 EBM(Evidence Based Medicine)を基本原理とする現在の医療において、臨床データベースの保有には圧倒的な意味がある。エドキサバンは日本企業が開発した薬剤である。日本企業には抗トロンビン薬があるがトロンビンの時代から、選択的凝固因子阻害薬の開発力は外資企業に先行していた。残念ながら、分子としての抗Xa薬を介入したときの個人の反応は予測不可能な程度にしか、現在の医学は成熟していない。結果として、エドキサバン介入時の臨床データベースを持っているものが強い。 第一三共の開発したエドキサバンであるが、非弁膜症性心房細動におけるワルファリンとの比較試験「ENGAGE AF-TIMI 48」は、ハーバード大学のTIMI groupをスポンサーとして施行された。膨大なデータベースからは、多くの科学的事実が公表される。本論文も重要なサブ解析の1つである。日本企業が開発した薬剤を用いた試験の重要なサブ解析であるが、残念ながら日本人は著者として参加していない。 ENGAGE AF-TIMI 48試験のプロトコルは単純ではなかった。ワルファリンと2用量のエドキサバンの有効性、安全性の検証を目指した部分のみでも、十分に複雑であった。さらに、本試験では来院時にクレアチニン・クリアランスが30~50mL/分の人、体重が60kg以下の人、または、P糖タンパク質の相互作用のある併用薬を服用したときには、エドキサバン投与量を半減した。試験の最初のみでなく、中途でも減量する基準を設けることにより、抗Xa効果の標準化を目指した。試験の規模が大きいので、プロトコルに規定された30、60mgの標準投与量から減量した5,356例と、減量しなかった1万5,749例の比較が可能であった。抗Xa活性のトラフ値を6,780例にて把握できたことも、科学的試験として、多くの情報をわれわれに与えることができる試験であったといえる。 ランダム化比較試験では、基本的に1つの臨床的仮説の検証のみが可能である。ENGAGE AF-TIMI 48試験では、二重盲検二重ダミー試験として、実臨床に近い0.5mg刻みのワルファリンのコントロールを行った。PT-INR 2.0~3.0を仮の「標準治療」とすることも徹底していた。TTRもきわめて高い。質の高いワルファリン治療下では、血栓イベントも出血イベントも起こりにくい。仮説検証試験としてはエドキサバンの優越性は示せなかった。 50年使用してきたワルファリンに「PT-INR 2.0~3.0」という枠をはめても、ワルファリンが優れた薬剤であることを示したのがENGAGE AF-TIMI 48試験であった。それでも、臨床的特徴に基づいて減量することにより、エドキサバン群の出血イベントリスクを示すことができたので、減量好きな日本の臨床家にはありがたい研究結果であったといえる。 筆者は本試験のDSMB(Data and Safety Monitoring Board)であったので、筆者には資格がないが、本試験に症例を登録した研究者であれば、ぜひ、本研究のような日本の臨床家に役立つサブ解析を主導したいと思った。主導するのがTIMI groupであることを受け入れるとしても、日本人研究者の1人として共著者になり、論文作成段階から寄与したかった魅力的研究である。

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事例47 ビルダグリプチン(商品名: エクア)錠50mgの査定【斬らレセプト】

解説事例では、「1型糖尿病」の患者に、ビルダグリプチン(エクア®)錠50mg 2Tを処方したところD事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの: 支払基金)にて査定となった。同錠の適応を添付文書で確認してみる。効能又は効果に「2型糖尿病」のみが記載されている。事例の傷病名は「1型糖尿病」であるため適応がない。さらに、同剤の禁忌に「糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡、「1型糖尿病」の患者(インスリンの適用である)」と記載されていた。患者安全の側面からも「1型糖尿病」への投与は避けるべき薬剤であろう。医師の処方後の薬剤監査をすり抜けて患者に投与した原因は、「糖尿病」という病名に適応があると各部署で思い込んでしまったことにあった。レセプトチェックシステムでは、患者投与後に対応となるため、処方入力時に稼働する薬剤監査システムの禁忌表示を大きくして、過誤を防ぐように対応した。

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急性冠症候群、経橈骨動脈アクセスの安全性/Lancet

 急性冠症候群(ACS)患者に対する侵襲的処置では、経橈骨動脈アクセスが、経大腿動脈アクセスに比べ臨床的有害事象の抑制効果が優れることが、オランダ・エラスムス医療センターのMarco Valgimigli氏らが行ったMATRIX Access試験で確認された。ACS患者に対する抗血栓療法を併用した早期の侵襲的処置の重要な目標は、出血イベントを抑制しつつ効果を維持することである。侵襲的処置で頻度の高い出血部位は心臓カテーテル検査時の大腿動脈穿刺部であり、経橈骨動脈アクセスは技術的な困難を伴うが止血の予測がしやすいとされる。2つのアクセス法の有害事象を比較した試験では、相反する結果が提示されているという。Lancet誌オンライン版2015年3月13日号掲載の報告。2つのアクセス法の有害事象を無作為化試験で比較 MATRIX Access試験は、経橈骨動脈的インターベンションにおける穿刺部位の出血や血管合併症の抑制効果を検討する多施設共同無作為化試験(Medicines Company社などの助成による)。対象は、冠動脈造影や経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の適応とされるACS患者(ST上昇型心筋梗塞、非ST上昇型心筋梗塞)であった。 被験者は、経橈骨動脈または経大腿動脈的にアクセスする群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、30日時の重度の冠動脈有害事象(死亡、心筋梗塞、脳卒中)と、最終的な臨床的有害事象とした。後者の定義は、重度の冠動脈有害事象または冠動脈バイパス移植術(CABG)とは関連のない大出血(Bleeding Academic Research Consortium[BARC]の出血性合併症重症度分類の3または5型)とした。 2011年10月11日~2014年11月7日までに8,404例が登録され、経橈骨動脈群に4,197例、経大腿動脈群には4,207例が割り付けられた。平均年齢は経橈骨動脈群が65.6歳、経大腿動脈群は65.9歳で、75歳以上はそれぞれ25.4%、26.2%含まれ、男性が74.5%、72.4%を占めた。メタ解析で大出血、冠動脈有害事象、死亡が改善 30日時の重度の冠動脈有害事象の発現率は、経橈骨動脈群が8.8%、経大腿動脈群は10.3%(率比[RR]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.74~0.99、p=0.0307)であり、有意な差は認めなかった[α水準が2.5%(p<0.025)の場合に有意差ありと定義]。 最終的な臨床的有害事象の発現率は、経橈骨動脈群が9.8%、経大腿動脈群は11.7%(RR:0.83、95%CI:0.73~0.96、p=0.0092)と、有意差がみられた。この差には、非CABG関連のBARC 3/5型大出血(1.6 vs. 2.3%、RR:0.67、95%CI:0.49~0.92、p=0.0128)および全死因死亡(1.6 vs. 2.2%、RR:0.72、95%CI:0.53~0.99、p=0.0450)の影響が大きかった。 また、既報の試験(RIVAL試験)に本試験のデータを加えてメタ解析を行ったところ、経橈骨動脈アクセスにより大出血(RR:058、95%CI:0.46~0.72、p<0.0001)、重度の冠動脈有害事象(RR:0.86、95%CI:0.77~0.95、p=0.0051)、全死因死亡(RR:0.72、95%CI:0.60~0.88、p=0.0011)が減少したが、心筋梗塞や脳卒中の発症には影響はなかった。 さらに、本試験に関連してコホート内症例対照研究を行ったところ、BARC 2/3型の出血は出血以外の原因による死亡と強く関連した。 著者は、「経橈骨動脈アクセスは、ACS患者に対する侵襲的処置の標準とすべきことが示唆された」と結論付けている。

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ピメクロリムス、乳幼児アトピーの第1選択に?

 アトピー性皮膚炎(AD)は主に乳幼児に発症する。しばしば局所ステロイド薬が処方されるが、副作用に対する懸念のためコンプライアンス不良となることが多く、非ステロイド薬が必要となる。アイスランド大学のBardur Sigurgeirsson氏らは、5年間の長期大規模非盲検試験を行い、ピメクロリムス1%クリーム(PIM、国内未承認)および局所ステロイド薬はいずれも安全で長期治療による免疫系への影響はなく、局所ステロイド薬の使用量を減少させることを示した。著者らは、「PIMは局所ステロイド薬と同程度に有効で、軽~中等症のAD乳幼児に対する第一選択の治療薬となりうることを支持する結果である」とまとめている。Pediatrics誌オンライン版2015年3月23日号の掲載報告。 軽~中等症のAD乳児2,418例を対象に検討した。PIM+増悪時の局所ステロイド薬短期併用(PIM)群(1,205例)または局所ステロイド薬群(1,213例)に無作為化し、5年間治療した。 主要評価項目は安全性とし、副次的評価項目は長期有効性であった。治療成功は、治験責任医師による皮膚症状の重症度の全般評価(Investigator's Global Assessment:IGA)スコアが0(寛解)または1(ほぼ寛解)と定義した。 主な結果は以下のとおり。・PIM群および局所ステロイド薬(TCS)群は、いずれも速やかに効果が発現し、3週までに治療成功率は50%を超えた。・5年後の治療成功率(IGAで評価)は、全体で85%超(PIM群88.7%、TCS群92.3%)、顔で95%(同:96.6%、97.2%)であった。・PIM群ではTCS群と比較し、局所ステロイド薬の使用日数が非常に少なかった(7 vs. 178日)。・有害事象のプロファイルおよび発現頻度は両群で類似しており、液性あるいは細胞性免疫機能障害の所見は認められなかった。

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統合失調症の自殺にプロラクチンは関連するのか

 ホルモンの調節不全は、さまざまな精神障害における自殺の危険因子と関連している。甲状腺ホルモンやプロラクチンは、統合失調症の病態生理に影響を及ぼしている。インド・ジャワハルラール医学教育研究大学院研究所のJancy Jose氏らは、統合失調症患者における甲状腺ホルモンとプロラクチンレベルを分析し、疾患の重症度や自殺リスクとの関連を調査した。Clinica chimica acta; international journal of clinical chemistry誌オンライン版2015年2月10日号の報告。 本研究は、統合失調症群38例とコントロール群38例で実施された。全例で、血清甲状腺ホルモンとプロラクチンを測定した。疾患の重症度はPANSS(陽性・陰性症状評価尺度)を用い、自殺念慮はC-SSRS(コロンビア自殺評価尺度)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症群では、コントロール群と比較して血清プロラクチン(p=0.004)、遊離T4(p=0.029)が有意に高かった。・血清プロラクチンは、PANSS陰性尺度スコアの高さと有意に関連していた(r=0.418、 p=0.008)。PANSS陽性尺度、総合精神病理尺度のスコアとの関連は認められなかった。・甲状腺ホルモンと疾患重症度との関連は認められなかった。・自殺念慮は、遊離T4の高い統合失調症患者でより多くみられたが、プロラクチンレベルとの関連は認められなかった。関連医療ニュース プロラクチン上昇リスクの低い第二世代抗精神病薬はどれか 自殺念慮と自殺の関連が高い精神疾患は何か 日本人統合失調症患者の自殺、そのリスク因子は:札幌医大

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2型糖尿病発症予防とPrecision Medicine(解説:住谷 哲 氏)-334

 日本ではあまり報道されなかったが、本年1月米国のオバマ大統領は一般教書演説においてPrecision Medicineの推進を宣言した1)。Precision Medicineとは、簡単に言えば、個々の患者の遺伝情報、環境因子などの情報に基づいた最適な医療、鍵と鍵穴とがぴったりと符合するような医療である。それに近いものは、わが国で個別化医療、オーダーメイド医療、テーラーメイド医療などとさまざまに呼称されているものが含まれる。本論文においては「有益性に基づいたテーラーメイド治療(benefit based tailored treatment)」と名付けられているが、その意義は2型糖尿病発症予防とPrecision Medicineの文脈において理解する必要がある。 DPP (Diabetes Prevention Program)は、2型糖尿病の発症が生活習慣介入、またはメトホルミン投与により予防可能であることを明らかにした試験である2)。DPPが介入の対象としたのは2型糖尿病発症リスクの高いprediabetesである。約3年の介入期間中に生活習慣介入またはメトホルミン投与により、対照群に比して2型糖尿病の発症相対リスクがそれぞれ58%、31%減少した。著者らはこのデータを用いて、2型糖尿病発症リスク予測モデルを作成した。2型糖尿病発症リスクに関する17の因子から選択してモデルに組み込んだのは、(1)空腹時血糖、(2)HbA1c、(3)中性脂肪、(4)高血糖の家族歴、(5)ウエスト、(6)身長、(7)ウエストヒップ比の7因子である(これらの7因子を使用したノモグラムも原著論文のSupplementに掲載されているので参照されたい)。 このモデルを用いて計算した、個々の患者の2型糖尿病発症の絶対リスク別に患者を低リスク群から高リスク群の4群に分けて、それぞれの群における生活習慣介入、またはメトホルミン投与による2型糖尿病発症の絶対リスク減少を有益性と定義して評価した。その結果、生活習慣介入はすべての群で有益であったが、メトホルミン投与による有益性のほとんどは最高リスク群に限定されていた。リスク予測モデルを用いて個々の患者の絶対リスクを定量化することで、個々の患者の受ける有益性を最大化することが可能であることを明らかにした点で、臨床的意義が大きい。 生活習慣介入がほとんどの患者に対して不利益をもたらさないことは自明であろう。一方、メトホルミンはきわめて有効かつ安全な薬剤であるが、消化器症状などの不利益は皆無ではない。今回のリスク予測モデルを用いることで、メトホルミン投与による2型糖尿病発症予防の現実化に向けて、われわれは一歩前進したといえる。 EBMはランダム化比較試験などで得られたエビデンスを、個々の患者の価値観、病状や周囲の状況を考慮して適用していくプロセスであるが、その際に常に問題になるのがエビデンスの外的妥当性(applicability)である。エビデンスは本質的に“平均的患者”の受ける有益性を示すだけであり、この平均的な有益性を平均的でない眼前の個々の患者に、いかに上手に当てはめていくかが医者の技量(clinical expertise)である。一方で、この“平均的患者”をより眼前の患者に近付ける方向がPrecision Medicineであるといえる。Precision Medicineは患者の遺伝情報に基づく個別化医療を目指しているが、2型糖尿病のようなpolygenic diseaseに対して、遺伝情報がどこまで有効かは現時点で明らかになっていない。さらにDNA解析技術が飛躍的に進歩したとはいえ、日常臨床で簡単に使用できるものでもない。本論文で開発されたリスク予測モデルは、遺伝情報を含まない因子で構成されており、日常臨床において応用可能である。今後は同様の解析がACCORDなどのほかの臨床試験結果にも応用され、さまざまなBenefit Based Tailored Treatmentが可能になるだろう。

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PARTNER臨床試験におけるTAVRと内科治療の5年の治療成績比較(解説:許 俊鋭 氏)-335

 外科的大動脈弁置換手術(AVR)非適応の大動脈狭窄(AS)症例に対する無作為化前向き臨床試験(PARTNER)における、TAVRの5年の成績を検討した。 カナダ、ドイツ、米国の21の経験深い弁膜症治療センターで、大腿動脈TAVRとASに対するvalvuloplastyを含む標準内科治療に1:1に割り付け、比較した。3,015例をスクリーニングし、358例(平均年齢83歳、STS死亡率スコア11.7%、女性54%)を抽出し、TAVRおよび標準治療に各179症例を割り付けた。 5年死亡率はTAVR 71.8%、標準治療93.6%であった(p<0.0001)。5年目の時点でNYHA class 1か2であった症例は、TAVR生存49症例中42例(86%)、標準治療生存5症例中3例であった。心エコー図ではTAVR群で弁破綻は無く、良好な弁機能状態を示した(5年目の大動脈弁口面積1.52cm2、平均弁圧較差10.6mmHg)。 外科的AVR非適応のAS症例において、TAVRは標準治療に対して良好な治療成績を示した。適切な症例選択はTAVRの有効性を最大限にし、合併症を減少せしめることに有効であった。

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