サイト内検索|page:14

検索結果 合計:36478件 表示位置:261 - 280

261.

スタチンと乳がん生存率の関連、サブタイプ別に検討

 スタチンは乳がん患者の生存率向上と関連することが報告されているが、サブタイプ別の関連についてのデータはない。今回、フィンランド・Tampere University HospitalのSanteri Palmi氏らが、早期乳がん患者における診断前後のスタチン投与とサブタイプ別の生存率との関連を後ろ向きコホート研究で検討した。その結果、診断前のスタチン投与は生存率に影響を与えなかったものの、診断後のスタチン投与はホルモン受容体陽性(HR+)乳がんにおいて、乳がん死亡および全死亡のリスクを低下させることが示唆された。JAMA Network Open誌2026年6月1日号に掲載。 本研究は、1995〜2013年にフィンランドで早期浸潤性乳がんと診断された女性を対象とした集団ベースのコホート研究で、データはすべてフィンランドの国家レジストリから取得された。主要評価項目は、追跡期間中の全死亡および乳がん死亡で、診断前後のスタチン投与状況、スタチン投与量、血中コレステロール値との関連を解析した(解析期間:2023年9〜11月)。 主な結果は以下のとおり。・最終解析には早期乳がんの女性7,389例(診断時の年齢中央値:60歳、範囲:21〜102歳)が組み入れられた。・診断前のスタチン投与は、乳がん死亡および全死亡とも有意な関連を示さなかった。・診断後のスタチン投与は、年齢調整後の乳がん死亡(ハザード比[HR]:0.68、95%信頼区間[CI]:0.57〜0.82)および全死亡(HR:0.83、95%CI:0.75〜0.92)の低下と有意に関連していた。・多変量解析では、Luminal A、Luminal B(HER2-)、Luminal B(HER2+)のすべてのHR+タイプにおいて、スタチン投与が乳がん生存率の向上と関連していた。・全死亡率については、HR+およびトリプルネガティブのスタチン使用者で低下が認められた。・スタチン投与によるベネフィットは投与量によらずすべての使用者で認められたが、乳がん死亡については用量依存のリスク減少傾向がみられた。 著者らは「これらの結果は、スタチンが早期HR+乳がんの生存率を向上させる可能性を示唆している」と結論している。

262.

遺伝性血管性浮腫の疾患認知はまだ不十分/CSLベーリング

 CSLベーリングは、5月16日の「HAE Day」によせて都内でメディアセミナーを開催した。 遺伝性血管性浮腫(HAE)は、生まれつき血液中にあるタンパク質C1インヒビター(C1-INH)の不足・機能低下が原因で浮腫を生じる疾患。指定難病に認定され、皮膚や腹部(腸)など、全身に浮腫が生じ、とくに咽喉で腫れると呼吸困難に陥り、命に関わるケースもある。わが国には、診断・治療中の患者は430人前後であり、未診療の患者も相当数がいると推定されている。また、海外のデータでは、人口5万人に1人の割合で患者がいるとされる。なお、同社ではHAEの急性発作の発症抑制薬として、ヒト抗活性化第XII因子モノクローナル抗体製剤ガラダシマブ(商品名:アナエブリ)を発売している。 セミナーでは、専門医によるHAEの病態、診療の現状や医療者と患者のコミュニケーションの在り方、患者・患者家族からの声として社会生活上の課題、患者会の活動などが講演された。HAEと診断されても続く患者の苦しみ 「医療者の視点から見た『HAE Dayの意義』と『HAEの現状』」をテーマに秀 道広氏(広島市立病院機構 理事長/広島大学名誉教授)がHAEの病態と診療の概要、患者が抱える課題について講演を行った。 HAEは限局性に浮腫が突然現れ、一定時間(数時間~数日)後に跡形もなく消失する疾患である。似た病態に蕁麻疹があるが、蕁麻疹は皮膚の表層で起こるのに対し、HAEでは血管が拡張することから皮膚の深部で起こる。一見すると鑑別が難しいが、HAEでは蕁麻疹治療薬が無効なケースがほとんどであるために鑑別診断の一助となる。浮腫は、皮膚、粘膜のさまざまな部位に出現し、部位、時間などの規則性はない(ただ夜間、早朝に多いとされている)。皮膚症状のほかには頭痛や倦怠感、悪心・嘔吐、腹痛などの消化器症状、咽喉の浮腫による呼吸困難など生命の危険もある。また、直接的な誘因は不明であり、時間経過とともに自然消失する。 HAEの発症はC1-INH(タンパク分解酵素阻害因子)が欠損することで起こり、確定診断ではC1-INHの活性測定、C4の測定などが行われる。しかし、症状が多様な粘膜症状であり、自然消失する疾患のため医師でも見逃しやすく、誤診しやすい疾患である。また、患者自身も診療を放置しているケースもあり、診療への障壁が高いという。そのためにHAEの診断率は20%(欧米では70%)、医師の認知率は45%であり、確定診断までの期間も平均16年と言われている1)。 HAEの治療では、このC1-INHを補う治療薬での治療が主体となり、発作治療(発作出現後)、短期発作抑制治療(発作リスク前)、長期発作抑制治療(継続的)が行われている。しかし、すべての治療薬が保険適用というわけではない。また、HAE発作ではC1-INH以外の分子によるブラジキニン誘導や修飾もあり、どの治療薬の効果が高いのかは病型・病態により異なる。同時に治療薬への反応性も患者ごとに時期により変化するため、個々の治療計画の立案、調整が必要となる。 秀氏は自験例として33歳・女性の患者を提示。HAE患者では、確定診断後もいつ起こるかわからない発作への不安や頻繁な発作、緊急受診で仕事など社会生活に支障があること、また、専門医療機関以外での診療フォローでも課題があると指摘する。 現在、HAEの治療目標とコンセンサスステートメントがいくつか公表され、そのいずれにも「患者の生活の健全化」や「疾病負荷のない日常生活」と文言が記載されている。診療もこれらを目指し、「医師・医療者も臨床知見の積み上げやデータの蓄積、患者は日常生活での注意点の確認などを双方で情報交換することが重要」と秀氏は提言する。そのために、現在、医師や患者会、製薬企業も加えたコンソーシアムの設立や研究的な組織を立ち上げて活動しているという。 最後に秀氏は「HAEは、診断が始まってからが大切であり、5月16日の全国のライトアップなど大きな取り組みを含めて社会に啓発することで、疾患の理解が進むことを望む」と期待を語り、講演を終えた。医療者と患者がお互いの視点をすり合わせる対話の重要性 「医療社会学者の視点から見た『社会生活における医療者を含めた関係者と患者さんのコミュニケーションの課題とあり方』」をテーマに松繁 卓哉氏(追手門学院大学社会学部 教授)が、医師と患者の対話の重要性や不安の言語化の大切さなどを講演した。松繁氏は、主に医療におけるコミュニケーションを研究し、医療社会学の視点から講演を進めた。 医療社会学における「患者の仕事」は、「病と向き合う仕事」「日常生活の仕事」「自分史の仕事」の3つがあり、これらの仕事は医療者にあまり理解されてこなかったという。 患者は、病により「生きづらさ」や「不安」を抱えているが、これらは容易に言語化することが難しく、医療者や周囲に伝えることができなかった。そこで、「問題解決型」と「対話」でのアプローチが重要となる。 「問題解決型アプローチ」は、患者の問題を特定し、解決へ導く、科学的根拠に基づいた医療の提供によるアプローチである。「対話アプローチ」は、対話そのものが目的であり、一定の結論を導き出すものではない。対話を持続することで多様な声に耳を傾け続けることを目指すものである。患者は対話で語ることで、不安感などの内面の感情などが整理され、医療者と内面の感情を共有することができる。 患者と医療従事者の対話では、着眼点が異なる。医療者は「治癒」「寛解」などに着眼するのに対し、患者は「日々の生活」「仕事」などに着眼する。両者の視点にはずれが生じているため、このずれを融合させるため、対話を行う際に患者は4つのプロセスが必要と松繁氏は提言する。(1)心に余裕のある状態で臨む(2)そのうえで医師の説明を聞く(3)自分が理解したかどうかを確かめる(4)ちゃんと迷って、決断する 最後に松繁氏は、「自己理解とコミュニケーションは、言語化してみることから」と述べ、患者への勧めとして「『わからないこと』『不安なこと』『知りたいこと』『したくないこと』をメモにして、医療者と対話してみることを提案する」とまとめ、講演を終えた。疾患啓発活動で疾患の認知を拡大 「当事者と家族の視点:日々の現状、課題と解決策」をテーマにHAE患者会の代表である松山 真樹子氏(NPO法人HAEJ 理事長)が、自身の経験と患者の状況、患者会の活動を講演した。松山氏自身は、夫をHAEの急性発作による気道閉塞で亡くし、また、子供も同じ疾患だという。 先の講演でもあったようにHAEは確定診断まで時間がかかり、最悪の場合、誤診され不要な手術を受けるケースもあるという。患者会に参加することで、患者や患者家族の孤独感の解消や治療改善への寄与などのメリットがある。患者会の主な活動としては、疾患について社会や医療者への認知拡大に向けた活動、診療率向上に向けた取り組み、国際連携などの活動が行われている。 近年は治療環境が変化し、HAE発作への予防的な治療薬も自宅で投与できるようになり、患者の治療環境が変わる一方で、現在も患者や疾患への偏見などが存在するという。また、疾患への正確な知識の欠如、確定診断までの時間、多面的な疾患情報提供などの課題もあり、今後の対応が急がれている。こうした課題の中で「製薬企業の資材である疾患のハンドブックなどは有用であり、医師とのコミュニケーション不足や診療での地域差解消、正確な疾患知識の啓発に利用できるものとして活用していきたい」と語る。 最後に松山氏は「患者がポジティブな気持ちを持ってしっかりと病気を受け入れ、病気は自分の個性だというふうに思えるように活動していきたい」と抱負を述べ、講演を終えた。 まとめとして同社代表取締役社長の吉田 いづみ氏が「CSLベーリングの取り組み」をテーマに今後の展望を説明した。同社は45年以上HAEに取り組み、ハンドブックなどの作成で疾患啓発と患者の診療利便性向上に貢献してきた。「今後も『HAE Day』などで疾患啓発を社会に行うとともに、患者さんの声や思いを届ける活動を実施することで、孤独な患者さん、ご家族、医療関係者をつなぎ、希少疾患を巡る環境改善に貢献していきたい」と抱負を語った。

263.

アルツハイマー病に対するアーモンド効果、その結果は?

 アーモンドは、脳の強壮や記憶力向上において、ペルシャ医学でたびたび推奨されている。また、いくつかのエビデンスにおいても、アーモンドの記憶力への効果が裏付けられている。イラン・Iran University of Medical SciencesのMohsen Mohajeri氏らは、アルツハイマー病患者におけるアーモンドの記憶力および認知機能への影響を評価するため、ランダム化比較試験を実施した。Avicenna Journal of Phytomedicine誌2026年3・4月号の報告。 本ランダム化比較試験では、軽〜中等度の認知機能障害を有するアルツハイマー病患者60例を対象に、アーモンド摂取群(1日10gの粉末スイートアーモンドと小さじ1杯の粉末ロックキャンディを既存の処方薬に加えて摂取)または対照群(既存の処方薬を継続)にランダムに割り付け、3ヵ月間フォローアップを行った。研究開始時と終了時にミニメンタルステート検査(MMSE)、モントリオール認知評価(MoCA)、臨床認知症評価尺度(CDR)、認知症機能評価別病期分類(FAST)の各質問票による評価を行った。睡眠の質は、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・各群30例が研究を完了し、分析対象に含めた。・年齢は、アーモンド摂取群で71.86±8.04歳、対照群で71.3±7.18歳(p=0.775)。・記憶障害の持続期間は、アーモンド摂取群で2.8±0.92ヵ月、対照群で3±1.2ヵ月であった(p=0.473)。・アーモンド摂取群では、対照群と比較し、MMSEの見当識尺度(p=0.024)、MoCA(p=0.001)、MoCAの記憶尺度(p=0.005)、FAST(p=0.032)、PSQI(p<0.001)の有意な改善が認められた。 著者らは「アーモンドは、アルツハイマー病患者の記憶力と睡眠の改善に有効な介入となる可能性が示された。より大規模なサンプル、より長期のフォローアップ期間、異なる対照群を用いた研究の実施が、今後推奨される」としている。

264.

完全切除NSCLCへのニボルマブ、DFSを改善せず(EA5142/ALCHEMIST)/JAMA

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)の治療では、抗PD-1抗体ニボルマブによる術前および周術期(術前・術後)の補助療法は無イベント生存期間(EFS)を改善することが知られているが、初回手術後の補助療法におけるニボルマブの役割は明らかにされていない。米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのJamie E. Chaft氏らは「ECOG-ACRIN EA5142試験」において、切除術を受けたNSCLC患者に補助化学療法または放射線療法(あるいは両方)を行った後にニボルマブを投与したところ、無病生存期間(DFS)は改善しなかったと報告した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年6月1日号に掲載された。米国の無作為化第III相試験 ECOG-ACRIN EA5142試験は、全米臨床試験ネットワーク(NCTN)に加盟する378施設で実施した非盲検無作為化第III相試験(米国国立がん研究所の助成を受けた)。2016年5月~2019年9月に参加者を登録した。 対象は、切除腫瘍径4cm以上またはリンパ節転移陽性(N1/N2)、あるいはこれら両方の要件を満たし、予定された標準的な術後補助療法(化学療法または放射線療法、あるいはこれら両方)を完了した腺がん(EGFRおよびALKに感受性変異がない)または扁平上皮がんの患者であった。 被験者を、ニボルマブ(480mg、4週ごと、最長1年間)を静脈内投与する群、または標準治療で経過観察を行う群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要複合評価項目は、ITT集団およびPD-L1を発現した腫瘍の割合が50%以上の患者集団におけるDFS(無作為化から再発、新規肺がん、全死因死亡のいずれかが発生するまでの期間)とした。 本試験は、75%のデータが収集された時点で、中間解析の結果に基づき無効中止となった。全生存期間にも差はない 935例を登録し、ニボルマブ群に466例(年齢中央値66歳、男性241例[52%])、経過観察群に469例(67歳、245例[52%])を割り付けた。 追跡期間中央値72.6ヵ月(範囲:0.03~109)の時点でのITT集団におけるDFS中央値は、ニボルマブ群が71.3ヵ月、経過観察群は68.8ヵ月であり、両群間に有意差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.97[97%信頼区間[CI]:0.79~1.20、95%CI:0.81~1.17]、片側p=0.39)。 また、同時点での腫瘍の50%以上にPD-L1の発現がみられる患者におけるDFS中央値は、ニボルマブ群が89.8ヵ月、経過観察群は78.5ヵ月だった(HR:0.86[98%CI:0.55~1.34、95%CI:0.59~1.25]、片側p=0.22)。 全生存期間中央値は、ITT集団ではニボルマブ群が95.9ヵ月、経過観察群は未到達であり(HR:1.02、95%CI:0.82~1.26)、腫瘍の50%以上にPD-L1の発現がみられる患者ではそれぞれ95.9ヵ月および未到達であった(HR:0.82、95%CI:0.53~1.28)。25%でGrade3~5のニボルマブ関連有害事象、術後補助ICI療法の有益性に疑問 ニボルマブに関連するGrade3~5の有害事象は116例(25%)で報告された。内訳は、Grade3が103例(22%)、Grade4が11例(2%)、Grade5が2例(1%未満)であった。 Grade5の2例は、いずれも呼吸器系のものであった。1例は肺切除術および術後補助化学療法を受けた患者で、もう1例は術後放射線療法から4週間未満で無作為化が行われたため、後に不適格とみなされた患者であった。 著者は、「両群ともDFSの目標値(54ヵ月)を上回ったが、これは術前病期分類の改正、あるいは登録前に再発した高リスク例の除外を含むその他の患者選択基準を反映している可能性がある」としている。 また、「先行研究におけるデュルバルマブ(抗PD-L1抗体)による術後補助療法に関する否定的な結果や、ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体)およびアテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)の術後補助療法で観察された一貫性のない結果を踏まえると、本研究の結果は、NSCLCにおける免疫チェックポイント阻害薬による術後補助療法の有益性について疑問を投げかけるものである」と指摘している。

265.

再発・難治性多発性骨髄腫、テクリスタマブ単剤でPFS延長(MajesTEC-9)/NEJM

 1~3ラインの治療歴のある再発・難治性多発性骨髄腫患者の治療では、担当医選択のレジメンと比較してテクリスタマブは、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に改善し、その一方でGrade3または4の感染症の頻度が高いことが、フランス・ナント大学病院のCyrille Touzeau氏らが実施した「MajesTEC-9試験」で示された。テクリスタマブは、多発性骨髄腫細胞上に発現するB細胞成熟抗原(BCMA)とT細胞上に発現するCD3を標的とする二重特異性抗体である。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年5月29日号で報告された。24ヵ国の無作為化第III相試験 MajesTEC-9試験は、日本を含む24ヵ国162施設で実施した非盲検無作為化第III相試験(Johnson & Johnsonの助成を受けた)。2023年4月~2025年4月に参加者を登録した。 対象は、抗CD38モノクローナル抗体およびレナリドミドを含む1~3ラインのレジメンによる治療歴があり、病勢が進行または直近のレジメンが奏効しなかった再発・難治性多発性骨髄腫の患者であった。 被験者を、テクリスタマブ(皮下投与)または担当医が選択したレジメン(ポマリドミド+ボルテゾミブ+デキサメタゾン[PVd]、カルフィルゾミブ+デキサメタゾン[Kd]のいずれか)を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。抗菌薬の予防投与と免疫グロブリン補充療法が推奨された。 主要評価項目はPFS(無作為化の日から病勢進行または死亡の日までの期間)とし、独立審査委員会が評価した。CR以上の達成率も有意に優れる 593例を登録し、テクリスタマブ群に296例、PVd/Kd群に297例を割り付けた。574例(テクリスタマブ群291例、PVd/Kd群283例)が実際に試験薬の投与を受け、PVd/Kd群のうち86例(30.4%)がPVd、197例(69.6%)はKdを受けた。 全体の年齢中央値は70歳(範囲:34~86)、173例(29.2%)が75歳以上で、290例(48.9%)が女性であった。前治療ライン数中央値は2(範囲:1~3)であり、128例(21.6%)が1ラインのみを受けていた。治療期間中央値は、テクリスタマブ群が13.1ヵ月、PVd/Kd群は7.0ヵ月だった。 追跡期間中央値17.3ヵ月の時点における推定18ヵ月PFS率は、PVd/Kd群が26.9%(95%信頼区間[CI]:21.1~33.0)であったのに対し、テクリスタマブ群は69.8%(95%CI:63.7~75.1)と有意に優れた(ハザード比[HR]:0.29、95%CI:0.23~0.38、p<0.001)。 完全奏効(CR)以上(65.9%vs.16.8%、リスク比:3.95、95%CI:3.03~5.14、p<0.001)の達成率はテクリスタマブ群で有意に高く、全奏効(部分奏効[PR]以上:84.5%vs.54.2%、リスク比:1.56[95%CI:1.39~1.75])の達成率もテクリスタマブ群で高かった。 また、推定18ヵ月OS率についても、テクリスタマブ群で有意に良好だった(79.2%[95%CI:73.5~83.8]vs.68.6%[95%CI:62.4~74.0]、HR:0.60[95%CI:0.43~0.83]、p=0.002)。Grade3、4の有害事象の頻度が高い、厳密な感染予防策が重要 Grade3または4の有害事象は、テクリスタマブ群の84.9%、PVd/Kd群の76.3%に発生し、Grade5(死亡)の有害事象の発生率はそれぞれ6.5%および3.5%であった。 テクリスタマブ群では、サイトカイン放出症候群が66.0%に発生し、そのほとんどがGrade1(48.8%)または2(16.5%)で、Grade3は2例のみであり、Grade4または5は認めなかった。免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)は4.1%にみられ、Grade1が2.4%、Grade2が1.4%で、Grade3の1例はテクリスタマブの投与中止に至った。 Grade3または4の感染症は、テクリスタマブ群で頻度が高かった(41.6%vs.29.0%)。致死的感染症は、テクリスタマブ群で16例(5.5%)、PVd/Kd群で8例(2.8%)に発生した。 著者は、「PVd/Kd群の3分の2以上が、後治療として二重特異性抗体療法またはCAR-T細胞療法を開始したにもかかわらず、テクリスタマブ群はCRの確率がより高く、OSがより延長した」「重篤な感染症のリスクがあるため、感染症管理では厳密な感染予防策と免疫グロブリン補充療法が不可欠である」としている。 また、「これらの結果は、多発性骨髄腫の2次治療およびそれ以降の治療選択肢として、テクリスタマブを基盤とし、グルココルチコイドの使用を控えるレジメンを支持するものである」と指摘している。

266.

抗菌薬使用とセリアック病発症に因果関係は認められず

 抗菌薬の使用はセリアック病(CD)の発症と関連付けられてきたが、新たな研究で、この因果関係を支持するエビデンスは認められないことが示された。CD患者では、CDではないきょうだいや一般集団と比較して抗菌薬使用のオッズが高かったものの、腸粘膜が正常な人では、そのオッズはさらに高かったという。ヨーテボリ大学(スウェーデン)のMaria Ulnes氏らによるこの研究は、「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に4月27日掲載された。 Ulnes氏は、「CDと抗菌薬使用との間に因果関係は認められなかった。抗菌薬の適正使用が重要であることに変わりはないが、CD発症を恐れて抗菌薬の使用を避ける理由はない」と述べている。 CDは、小麦・大麦・ライ麦に含まれるタンパク質のグルテンに対する自己免疫反応によって腹痛や下痢などの症状が引き起こされる自己免疫疾患である。小腸粘膜に慢性的な炎症が生じ、栄養吸収不良を来すことを特徴とする。 今回の研究では、生検によりCDが確認された患者2万7,789人、非CDの一般集団13万3,451人、CD患者のきょうだい3万3,112人を対象に、抗菌薬使用とCDとの関連を検討した。さらに、二次解析として、生検で組織学的に正常な小腸粘膜と判定された22万5,548人と、その対照となる一般集団108万9,796人との比較も行った。 その結果、抗菌薬の使用歴を有する割合は、CD群で69%、一般集団で63%であり、CD群では抗菌薬使用のオッズが高いことが示された(調整オッズ比〔aOR〕1.24、95%信頼区間〔CI〕1.21~1.28)。この関連は、抗菌薬の使用回数が多いほど強くなり、未使用と比べて1~2回の使用でaORは1.21(95%信頼区間1.17~1.25)、3回以上で1.35(同1.30~1.41)であった。さらに、きょうだい同士の比較でも、この関連が認められた(aOR 1.29、95%信頼区間1.24~1.35)。しかし二次解析では、腸粘膜が組織学的に正常な人でも抗菌薬使用との強い関連が見られ、その関連はCD患者よりも強かった(同1.50、1.48~1.51)。このことから、抗菌薬使用がCDの原因ではない可能性が示唆された。 Ulnes氏は、「CDは抗菌薬使用の結果だと考えられがちだが、その関連は、実際にはもっと複雑だ。感染症への感受性や食習慣などが腸内細菌叢に影響を与え、それがCDの発症に関与している可能性が考えられる。この場合、抗菌薬の適切な使用自体がリスクになるとは考えられないだろう」と述べている。

267.

スーパーシューズはパフォーマンス向上と傷害リスクに関連

 米国のランニング界で「スーパーシューズ」の普及が進み、ランナーの走りにさらなる反発力をもたらし、レースやイベントでのタイム短縮に貢献している。しかし、この先進的なフットウェア技術(advanced footwear technology;AFT)には負の側面もあるようだ。新たな研究で、一般に「スーパーシューズ」と呼ばれているAFTシューズは、骨ストレス障害に関連する微妙なランニング動作の変化を引き起こすことが明らかになった。米マス・ジェネラル・ブリガムのランニング医学部門ディレクターを務めるAdam Tenforde氏らによるこの研究は、「PM&R」に4月23日掲載された。 Tenforde氏は、「今回の研究は、AFTをトレーニングに取り入れる際には慎重に行う必要があることを強調している。また、このフットウェアがもたらすパフォーマンス向上効果を認識しつつ、傷害リスクを軽減する長期的戦略について理解を深めるため、さらなる研究が必要であることも示している」とニュースリリースで述べている。 スーパーシューズは、カーボンファイバー製プレートと軽量厚底フォームを採用したシューズで、両者の連動がランニング時の前方推進力を高めるとされている。米メイヨー・クリニックによると、スーパーシューズは当初、一流ランナーが利用していたが、現在では一般のジョギング愛好家や10kmレース参加者にも普及しつつあるという。 今回の研究では、23人の一流長距離ランナー(平均年齢25.4±2.7歳、女性11人、男性12人)を対象に、通常のランニングシューズ(以下、通常のシューズ)、軽量高反発フォームを使ったシューズ(以下、軽量高反発シューズ)、AFTシューズの3種類を使用して、普段の練習のペース、テンポ走ペース、5kmレースペースの3条件で走ってもらい、それぞれの速度およびシューズ条件下でのランニング動作を評価した。 その結果、AFTシューズは骨ストレス障害に関連するランニング動作の変化をもたらすことが明らかになった。骨ストレス障害は、オーバーユース(使い過ぎ)を原因とする骨の障害であり、骨髄浮腫や疲労骨折につながる可能性がある。例えば、AFTシューズ着用時には、通常のシューズや軽量高反発シューズ着用時と比べて、ケイデンス(1分当たりの歩数)が減少しており、その結果、ストライドが長くなる可能性が示唆された。また、軽量高反発シューズとAFTシューズでは、通常のシューズと比べて後足部外反(かかとが外側へ傾き、結果として足部が内側へ倒れ込むように見える状態)が増加する傾向が認められた。一方で、AFTシューズでは、足関節による蹴り出しの力(足関節の底屈モーメント)が3種類のシューズの中で最も低かった。この点について研究グループは、傷害予防に役立つ可能性があると指摘している。 論文の筆頭著者である米Spaulding Rehabilitation HospitalのMichelle Bruneau氏は、「AFTシューズはパフォーマンスを向上させるが、それと同時に、身体への負荷に微妙な変化をもたらす可能性についても考慮すべきだ」とニュースリリースで述べている。 研究グループは、本研究は小規模であり、AFTシューズとランニング傷害との直接的な因果関係を示したものではないとしている。それでも、さらなる知見が得られるまでは、トレーニング中にAFTシューズと通常のシューズを定期的に履き替えることで、フットウェアによるオーバーユース障害のリスクを低減できる可能性があると提言している。Bruneau氏は、「シューズをローテーションしながらAFTシューズに徐々に順応していくことが、ランニングパフォーマンスを最適化しつつ、潜在的な傷害リスクを低減する助けになる可能性がある」と述べている。

268.

ジギタリス配糖体の再評価――復権ではなく再配置として読む(解説:野間重孝氏)

 私が循環器内科医として臨床の現場に入ったのは1980年(昭和55年)である。当時、心不全治療においてまず教えられたのは、利尿薬の使い方とジギタリスの使い方であった。病棟では、浮腫や肺うっ血に対して利尿薬をどう調節するか、また心不全例あるいは心房細動合併例に対してジギタリスをどのように用いるかが、循環器診療の基本手技の1つとして扱われていた。しかし、当時は現在のように、大規模ランダム化比較試験によって薬剤の有効性を検証し、その結果に基づいてガイドライン上の位置付けを定めるという考え方は、まだ一般的ではなかった。利尿薬もジギタリスも、経験的に症状を改善する薬として使用されていたのである。 その後、心不全治療は大きく変化した。ACE阻害薬、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、さらにARNIやSGLT2阻害薬が、次々に生命予後を改善する薬剤として位置付けられた。一方、ジギタリスは、症状や心不全入院を減らす可能性は示されながらも、死亡率を改善しない薬剤として、次第に主役の座から退いていった。これは、必ずしもその臨床的有用性が完全に否定されたからではない。むしろ、心不全治療の評価軸が大きく変化したことが大きかった。 大規模臨床試験の時代に入り、死亡率あるいは心不全入院を減らす薬剤が次々に登場すると、心不全治療は、経験的治療から、臨床試験によって生命予後改善効果を示した薬剤を基軸とする治療へと移行していった。その中で、ジギタリスは不利な立場に置かれた。DIG試験では、ジゴキシンは心不全入院を減らす一方で、全死亡を減らすことは示せなかった。以後、ジギタリスは「症状や入院には効くかもしれないが、生命予後を改善する薬ではない」と理解され、心不全治療の主役から次第に外れていった。またジギタリスは治療域が狭く、腎機能低下、低カリウム血症、薬物相互作用などによって中毒を来しやすいという古典的な問題がある。新しい薬剤が次々に登場する中で、エビデンスが明確で安全域の広い新規治療を導入する方向へ臨床の関心が移ったことは、ある意味で自然であったといえる。 今回のメタ解析は、そのような歴史を持つジギタリス配糖体を、現代の心不全試験で用いられる評価項目に照らして再評価しようとしたものである。本研究の成果は、ジギタリス配糖体を現代心不全治療の中で再評価した点にある。解析の結果、ジギタリス配糖体は、HFrEFまたはHFmrEF患者において、心血管死または初回心不全悪化イベントからなる複合エンドポイントを有意に減少させた。しかし、その効果の主体は心不全悪化イベントの減少であり、心血管死および全死亡については有意な低下を示していない。 したがって、本研究から導かれる臨床的メッセージは、ジギタリス配糖体を生命予後改善薬として復権させることではなく、標準的心不全治療を行ってもなお心不全悪化リスクが残るHFrEF/HFmrEF患者において、低用量のジギタリス配糖体が心不全悪化・入院を減らす補助的治療となりうる、という点にある。この意味で、本研究は「ジギタリスの復権」を示したというより、長い歴史を持つ古典的薬剤を、現代の心不全治療体系の中でどこに置き直すべきかを考えるための研究と位置付けるべきであろう。 ただし、その臨床的射程は明確に限定しておく必要がある。本研究における複合エンドポイントの改善は、主として心不全悪化イベントの減少によるものであり、心血管死および全死亡の低下は示されていない。また、対象はHFrEFまたはHFmrEFに限られており、HFpEFへの外挿はできない。さらに、心不全の原因疾患別の検討は十分ではなく、虚血性心筋症、非虚血性心筋症、弁膜症性心疾患、心房細動関連心不全などにおいて、ジギタリス配糖体の意義が同一であるかどうかは、本研究からは明らかでない。 今回のメタ解析に取り上げられた3つの試験は、それぞれ異なる時代的背景を持っている。DIG試験は、ジギタリスがなお心不全治療の重要な薬剤として用いられていた時代に、その有効性を大規模臨床試験の枠組みで検証しようとした研究であった。当時問われた中心的課題は、ジゴキシンが全死亡を減らすかどうかであった。その結果、ジゴキシンは全死亡を減らさなかったが、心不全入院を減少させることが示された。 これに対して、DIGIT-HF試験とDECISION試験は、ジギタリスをかつてのような中心的治療薬として復活させようとした研究ではない。むしろ、ACE阻害薬/ARB/ARNI、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬などの標準治療が普及した後にもなお残る心不全悪化リスクに対して、低用量のジギタリス配糖体が追加療法として意味を持つかどうかを検討した研究と位置付けるべきである。3者は同じ薬剤群を扱ってはいるが、問われている臨床的意味は同一ではない。 今回統合された3つの試験は、いずれもジギタリス配糖体を扱っているとはいえ、同じ臨床的問いに答えた試験ではない点には、十分な注意が必要である。DIG試験の主要エンドポイントは全死亡であり、DIGIT-HF試験では全死亡と心不全入院、DECISION試験では心血管死と反復性心不全悪化イベントが用いられている。さらに、DIG試験は現代的心不全治療が確立する以前の試験であり、最近の2試験とは背景治療が大きく異なる。すなわち、対象患者、治療背景、評価項目のいずれもそろっていない。 本メタ解析では、これらの試験を「心血管死または初回心不全悪化イベントまでの期間」という現代的複合エンドポイントに組み替えて統合している。これは統計学的には可能であっても、臨床的にはかなり人工的な再構成である。したがって、本研究は「3つの大規模試験が一貫してジギタリス配糖体の有効性を示した」と読むべきではない。むしろ、異なる時代、異なる背景治療、異なる評価項目を持つ試験を、現代的な物差しで読み替えた研究と理解すべきである。 さらに重要なのは、本メタ解析の結果が、量的にはDIG試験に大きく依存している点である。主要複合エンドポイントにおける試験ごとの重みをみると、DIG試験が全体の約8割を占めており、DIGIT-HF試験およびDECISION試験の寄与は相対的に小さい。したがって、本研究の統合結果は、3つの試験が均等に支えた結論というより、DIG試験で示されていた心不全悪化イベント抑制効果を、最近の2試験が大きく否定しなかったために成立している、と読むべきである。 つまり、本研究は古典的なDIG試験の結果を、近年の2試験を加えて現代的評価項目のもとに再解釈した研究と位置付けるのが妥当であろう。したがって、この論文はジギタリスの復権を宣言するものではなく、心不全悪化イベントを減らす補助薬として、現代的文脈で再評価した研究である。ただし、その結論は異質な3試験の再構成に基づくものであり、慎重に読む必要がある。

269.

6月12日 アレックス・レモネード・スタンド・デー(小児がん支援)【今日は何の日?】

【6月12日 アレックス・レモネード・スタンド・デー(小児がん支援)】〔由来〕神経芽細胞腫に罹患し8歳で病没したアメリカのアレックス・スコットさんという少女の「がんと闘うこどもたちのために治療薬の研究が進むように、レモネードを売ってそのお金を病院に寄付したい」という行動と思いが全米に拡大し、小児がんに苦しむ患児をサポートする日として制定された。わが国でも同様の活動が行われ小児がん支援活動が行われている。関連コンテンツ学校がん教育.com「全国がん登録」での初の5年生存率発表、小児/成人・性別・進展度・都道府県ごとに集計/厚労省小児がん、定期的な症状スクリーニングで苦痛な症状が改善/JAMA生殖補助医療で生まれた子供のがんリスクは?小児がんの薬剤開発、何が進んだか、次に何をすべきか/日本小児血液・がん学会

270.

がん関連症状:呼吸困難【かかりつけ医のためのがん患者フォローアップ】第9回

今回はがん患者の呼吸困難についてです。呼吸困難は、がん患者の約35%が経験するという頻度の高い症状です。初診から終末期までの経過を通じて、一度も呼吸困難を経験せずに過ごせる患者さんはわずか11%のみとも報告されています。呼吸困難による患者さんの苦痛や不安が非常に強い一方、その原因や重症度はさまざまであり、外来で対応に迷う場面も少なくありません。今回は、呼吸困難を訴える患者さんについて、症例を通して、鑑別のポイントと外来での対応を解説します。【症例1】74歳、男性主訴労作時呼吸困難病歴進行肺腺がん(StageIV)に対して化学療法後、best supportive careの方針となっている。以前より軽度の呼吸困難はあったが、2週前より徐々に歩行時の息苦しさが増悪し、外来を受診した。診察所見呼吸数22回/分、SpO2 97%(室内気)、体温36.7℃。会話は可能。右下肺野で呼吸音の減弱あり。下腿浮腫なし。【症例2】57歳、女性主訴咳嗽、呼吸困難病歴再発乳がんに対して化学療法施行中。2週間前より免疫チェックポイント阻害薬を含む治療を開始していた。数日前から乾性咳嗽が出現し、本日より労作時呼吸困難と発熱を認めたため受診。診察所見呼吸数30回/分、SpO2 82%(室内気)、体温38.1℃。会話は短文のみ可能。両側肺野にfine cracklesを聴取。ステップ1 呼吸困難のアセスメント呼吸困難は、「呼吸の際に生じる不快な感覚という主観的な経験」と定義されており、SpO2や血液ガス所見が正常で、呼吸不全を伴わない場合でも生じることがあります。呼吸困難を訴える患者さんを診た際には、まず症状の経過や随伴症状、診察所見などから原因をアセスメントする必要があります。下記にがん患者における呼吸困難の主な原因を示します(表1)。表1 呼吸困難の原因(参考文献3より一部筆者改変)画像を拡大する症例1では、SpO2は97%と保たれているものの、ここ1週間で労作時呼吸困難が徐々に増悪しています。また、右下肺野で呼吸音の減弱を認めており、胸水貯留による呼吸困難が考えられます。この症例では、発熱や咳嗽はなく、急激な症状悪化ではないことから、感染症や肺塞栓などの急性疾患の可能性は低いと考えられます。一方、症例2では、免疫チェックポイント阻害薬を含む治療歴があり、数日前からの乾性咳嗽に加えて、発熱と急速に進行する呼吸困難を認めています。さらに、SpO2低下、頻呼吸、両側肺野のfine cracklesを認めることから、まず薬剤性肺障害を疑う状況です。化学療法中の患者さんでは、薬剤性肺障害は急速に重症化することがあり注意が必要です。本症例では、会話も短文のみ可能であり、呼吸状態の急速な悪化を認めていることから、重症度の高い呼吸困難と考えられます。なお、肺炎などの感染症も重要な鑑別疾患となります。このように、呼吸困難ではSpO2のみで重症度を判断するのではなく、症状の経過や随伴症状、身体所見をもとに原因と緊急性をアセスメントすることが重要です。呼吸困難では、原因となる病態ごとに治療が異なり、早期介入を要する緊急性の高い病態も存在するため、外来での適切な評価が求められます。ステップ2 外来での対応上述のように、呼吸困難では原因となる病態ごとに治療方針が大きく異なります(表2)。そのため、外来では原因と重症度を踏まえた対応が重要となります。表2 呼吸困難の治療(参考文献4より一部筆者改変)画像を拡大する症例1は、SpO2は保たれており、会話も可能であることから、まずは外来での症状緩和を検討します。呼吸困難に対しては、体位調整や送風に加えて、少量オピオイド投与が症状緩和に有効な場合があります。また、本症例では胸水貯留が疑われることから、胸水ドレナージの適応評価も含めて、X線/CT検査や胸腔穿刺が可能な施設との連携を検討します。一方、症例2では、低酸素血症に加えて頻呼吸を認め、会話も短文のみ可能であることから、重症度の高い呼吸困難と考えられます。薬剤性肺障害では急速に呼吸状態が悪化することがあり、早期のステロイド導入が必要となる場合もあるため、外来での経過観察ではなく、速やかな病院への相談・紹介が必要です。呼吸困難は、がんそのものだけでなく、治療関連有害事象や併存疾患など、さまざまな病態によって生じます。外来では、原因と重症度を適切にアセスメントしたうえで、必要に応じて治療医や専門医療機関と連携しながら対応していくことが求められます。まとめ呼吸困難は、SpO2などの客観的所見だけでは評価しきれない症状です。そのため、日々患者さんを診ているかかりつけの先生方による症状経過や呼吸状態の細やかな観察が非常に重要となります。そうした情報共有は、病院側にとっても病態把握や早期介入の大きな助けとなります。クリニックと病院がそれぞれの立場から情報を共有しながら、一緒に患者さんの呼吸困難を支えていくことが大切だと考えます。 1) Teunissen SCCM, et al. J Pain Symptom Manage. 2007;34:94-104. 2) Currow DC, et al. J Pain Symptom Manage. 2010;39:680-690. 3) 日本緩和医療学会編. 進行性疾患患者の呼吸困難の緩和に関する診療ガイドライン(2023年版). 金原出版;2023. 4) 余宮 きよみ著. ここが知りたかった緩和ケア 改訂第3版. 南江堂;2023. 講師紹介

272.

不眠を訴える高齢者。反射的なベンゾジアゼピン処方をどうデザインし直すか【高齢者処方のデザイン】第2回

以下の症例に対する前医での処方箋には「替えるべきポイント」が2つ隠れています。あなたは見抜けますか?【症例】患者75歳・男性高血圧、糖尿病、軽度アルツハイマー型認知症で通院中。数ヵ月前から入眠困難と夜間頻尿による中途覚醒があり、前医でエチゾラムが追加された。以後、日中のふらつきが出現し、中途覚醒は良くならなかったため、エチゾラムは自己中断した。夜間頻尿について詳しく尋ねると、頻尿は夜間のみで日中はないという。また近頃、頻尿に加えて悪夢で目が覚めることも多いという。診察上、両下肢に軽度の浮腫を認める。【Before:前医の処方箋】A)アムロジピン5mg 1日1回 朝食後B)メトホルミン500mg 1日2回 朝・夕食後C)ドネペジル10mg 1日1回 就寝前D)エチゾラム1mg 1日1回 就寝前(すでに自己中断)A)アムロジピン5mg 1日1回 朝食後B)メトホルミン500mg 1日2回 朝・夕食後C)ドネペジル10mg 1日1回 就寝前D)エチゾラム1mg 1日1回 就寝前(すでに自己中断) 1) Eisai Co., Ltd. Aricept (donepezil hydrochloride) package insert. Tokyo: Eisai Co., Ltd. 2) 2023 American Geriatrics Society Beers Criteria Update Expert Panel. J Am Geriatr Soc. 2023;71:2052-2081. 講師紹介

273.

第317回 埼玉県立小児医療センターの死亡事故、何があったのか(後編)

INDEX故意の仮説をする場合過失の仮説をする場合小児ALL治療の背景と事件の事実関係について触れた前回を踏まえ、今回は「なぜこうした事故が起こってしまったのか?」を深掘りしてみたい。ちなみに病院側の調査では、調剤記録、投与記録、手順書、ダブルチェック体制などを確認したものの、明確な違反は見つからなかったとしている。事故調査委員会が特定できなかったものを不謹慎と言われるのを承知で、可能性のある原因を私個人として考えてみた。前提として、故意か過失かによって大きく変わってくる。故意の仮説をする場合まず、故意という仮説である。この場合に一般的に考えられる可能性は、(1)髄腔内注射(以下、髄注)薬への意図的混入(2)シリンジすり替え(3)調製工程への介入(4)特定患者やその担当医を標的とした行為、となる。いずれも悪意がある前提となり、そもそも常識的な思考(少なくとも私自身もその範疇の人間である前提)では、もはや理解不能である。このうちまず(4)については、ビンクリスチンが検出された3例は、事案の発生時期が異なる患者であり、特定の患者を標的として行われたとは考えにくい。これら3例の担当医が同一人物かそれとも異なるかは情報がない。もし、同一担当医でその個人に恨みを持っていた人物が意図的に混入したとしても、結果の重大性は予測しえたわけで、「そこまでするのか?」というレベルである。ただ、繰り返しになるが故意でこうした重大な結果を招くようなことをする人物がいたとしたら、およそ常識で測れない思考をしている可能性はあるので、可能性がゼロとは言えない。また、(1)、(2)は(4)と関連するもので、あくまで理論上は可能かもしれないが、率直に言ってこの可能性を考え出したら安全対策は際限のないものになる。(3)も(1)と(2)と同様であり、また通常、注射製剤や髄注の調製を行う無菌室は入退室記録や監査記録が存在するため、1人での実行は容易ではない。実際、同センターでは注射製剤などの調製はセキュリティーカードを3回使って入退室する薬剤部の1室で行われ、「ビンクリスチンなどはこの部屋の鍵付き保管庫で保管されていた」と報じられていることなども考えると、調剤室で悪意を持って行うことはかなり難易度が高いと言わざるを得ない。繰り返しになるが、故意の可能性を前提とした場合、もはやどの段階でも完璧な対策はないと言える。その意味では前述の医療事故調査委員会が「故意の可能性でも対応し得る再発防止対策を立てた」との主張は、個人的にはややピンと来ない。過失の仮説をする場合一方、過失との仮説はどうか? 私個人のない頭で考えた場合、(1)調剤時の取り違え(2)ラベル貼付ミス(3)投与時の取り違え(4)シリンジへの微量混入(5)システム的欠陥、などが思い浮かぶ。(1)はメトトレキサート髄注用シリンジ、ビンクリスチン静注用シリンジが同時に準備され、医師、看護師、薬剤師が誤って入れ替えるケースで最も古典的なビンクリスチン髄注事故の事例である。世界では数多く報告されているビンクリスチン髄注事故の原因と1つ言われている。(2)は静注と髄注のシリンジのラベルを誤って逆に貼り付けたなどのケースであり、(3)は正しく調剤・ラベル貼りが正しくても実際の処置室で静注と髄注が同じトレイ上に存在し、医師がそれを取り違えて投与するケースである。(3)も(1)と同様に過去の事故では多い原因である。もっとも過去に何度も髄注事故が明らかになっているビンクリスチンの場合、現在はミニ点滴バッグに充填するのが一般的と言われる。これまで同センターの記者会見で記者の質問に対し、「髄注用シリンジはいわゆる静注シリンジとは別のもので、コネクターも違い、通常ではコネクトもできない状態になっているので、混入するということは通常ではなかなか考えにくい」と答えている。ただ、髄注、静注ともシリンジを利用していたとしても(1)~(3)のいずれも個人的には今回の原因と考えるのは難しい。というのも、どれも単純な偶発ミスといえ、同一施設で約9ヵ月間に3回も発生するようなものとは考えにくいからである。とくに(3)については、前述の通り、このような事故を防ぐために静注と髄注の実施日を変えることが現在では当たり前に行われているからである。(4)については、同じ作業台や器具を使用した場合、交差汚染が起こる可能性があり、個人的には過失の中でも最も有力視している原因である。同センター側はビンクリスチンとそのほか薬剤の調製は同じ安全キャビネットを使用し、調製時間をずらす形にしており、手順書上の問題はなかったとしている。一方で、同センター側内での関係者の聞き取り調査では「通常の手順と違ったことがあったか?」とダイレクトに聞いているだけであり、調製現場に監視カメラはないため、確実に手順書通りだったかは確認するすべがない。たとえばビンクリスチンを採取したシリンジを本来は廃棄すべきにもかかわらず、そのまま使って髄腔用の薬剤を調製した場合などには発生する可能性がある。ただ、この場合、今回の3例以外にも同センターでは過去にほかの髄注も行っているはずであり、薬剤部として手順書の順守が形骸化していたというよりは、特定の薬剤師個人の中で形骸化していたならばあり得ることだ。(5)は、静注薬と髄注薬を同日に調製、保管場所が近接、ダブルチェックの形骸化など、単一工程ではなく複数工程で問題が常態化していたならば、今回のように短期間で複数回の事故発生の可能性はある。もっとも2025年という特定時期に事故が集中的に発生している現実を考えれば、相当程度の属人性の考慮が必要である。いずれにせよこの件に関しては非常に理解しがたいことを前提に考えねばならない。事故調査委員会が原因と特定しきれないのも、率直に言ってしまえば、当たり前ではないことを前提に調査を進めなければならない点が大きな障害になっていると考えられる。この件については、すでに埼玉県立病院機構は3月段階で大宮警察署に今回の事案を届け出ており、最終的にはこの捜査結果も待たねばならない。それでも原因が特定できないとなると、謎は深まるばかりである。参考1)厚生労働省:埼玉県立小児医療センターの報道に関する対応状況について(報告)令和8年3月26日

274.

精神症状の有無でアルツハイマー病に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾールの効果に違いはあるか?

 アルツハイマー病患者は、アジテーションと精神病症状を併発することが少なくない。米国・Banner Alzheimer's InstituteのPierre N. Tariot氏らは、精神病症状を併発するアルツハイマー病患者と併発しない患者におけるアジテーションに対するブレクスピプラゾールの有効性と安全性を明らかにするため、長期試験の事後解析を実施した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2026年4月21日号の報告。 アルツハイマー病に伴うアジテーションを有する患者を対象に、ブレクスピプラゾールとプラセボを比較した2つの第III相試験(欧州、ロシア、米国で実施された12週間ランダム化二重盲検プラセボ対照固定用量試験)のデータを統合した。対象患者は、ベースライン時に併発する精神症状の有無により、事後的に層別化した。精神症状は、Neuropsychiatric Inventory Questionnaire(NPI)の妄想領域、幻覚領域、またはその両方のスコアが4以上と定義した。有効性は、Cohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)合計スコアにより評価した。安全性は、治療中に発現した有害事象(TEAE)により評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者607例中、ベースライン時に精神症状を併発していた患者は142例(23.4%)。・ブレクスピプラゾール2mgまたは3mg/日投与は、精神症状を併発する患者(12週時点での最小二乗平均差[LSMean]:-9.18、95%信頼区間[CI]:-15.2〜-3.12、p=0.004、Cohen's d=0.52)および併発しない患者(LSMean:-4.22、95%CI:-6.91〜-1.54、p=0.002、Cohen's d=0.29)のいずれにおいても、プラセボと比較し、アジテーションの改善が大きかった。・精神症状を併発する患者におけるTEAEの発現率は、ブレクスピプラゾール群で52.9%、プラセボ群で40.0%であり、TEAEによる投与中止率はそれぞれ3.4%、9.1%であった。・精神症状を併発する患者において、死亡した患者はいなかった。・一方、精神症状を併発しない患者におけるTEAEの発現率は、ブレクスピプラゾール群で49.3%、プラセボ群で38.2%であり、TEAEによる投与中止率はそれぞれ5.5%、2.6%であった。・精神症状を併発しない患者では、2例で死亡が認められた。しかし、いずれの死亡もブレクスピプラゾールとの関連は認められなかった。 著者らは「本事後解析において、ブレクスピプラゾールは、併発する精神症状の有無にかかわらず、アルツハイマー病に伴うアジテーションを改善した。また、忍容性も良好であった。これらの予備的データは、ブレクスピプラゾールが、臨床現場でアジテーションや精神症状を呈するアルツハイマー病患者にとって有用である可能性を示唆している」と結論付けている。

275.

大腸がん、ctDNAによる術後化学療法と投与期間の選択(CIRCULATE・GALAXY後方解析)/ASCO2026

 StageII/III大腸がんにおける術後補助化学療法は複数のレジメンがあり、最適な投与期間も明らかになっていない。米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)では、術後のctDNAを予後マーカーとして、術後補助療法のベネフィットを受ける患者層の特定や最適な投与期間を検討した2つの試験結果が発表された。1)CIRCULATE試験・試験デザイン:多施設共同・前向き観察コホート研究・対象:pMMRのStageII結腸がん、術後にctDNA検査を施行。ctDNA陽性→2:1で ・補助化学療法(adjuvant chemotherapy:ACT)群 ・経過観察(観察群)へ割り付けctDNA陰性→1:4で ・試験内観察  ・試験外観察 へ割り付け・主要評価項目:ctDNA陽性群における3年無病生存期間(DFS)・1,400例がランダム化されたがctDNA陽性率は2.9%にとどまり、41例のctDNA陽性例がACT群26例、観察群15例に割り付けられた。ACT群では81%がカペシタビンを投与され、うち33%がオキサリプラチン併用だった。・主要評価項目であるctDNA陽性群の3年DFSは、ACT群61%、観察群38%(HR:0.55、p=0.12)となり、統計学的有意差は認められなかった。・一方、事前に規定されたper-protocol解析で、ACT群に割り付けられたものの治療未施行だった5例を除外した解析結果では、3年DFSはACT群77%、観察群38%(HR:0.31、p=0.021)となり、3年再発率もACT群19%、観察群62%(HR:0.23、p=0.009)と、ACT群で良好であった。・3年再発率はctDNA陰性群12%、ctDNA陽性ACT群35%、ctDNA陽性未治療群62%だった。 発表したドイツ・ドレスデン工科大学のGunnar Folprecht氏は「ctDNA陽性率が約3%と低く、予定症例数へ到達できず、信頼区間が広くなったことが主要評価項目を達成できなかった一因だ。術後ctDNAは極めて強力な予後マーカーであることは本試験でも裏付けられ、pMMR StageII結腸がんにおいてctDNAに基づく治療エスカレーション戦略を支持する結果である」とした。2)CIRCULATE-Japan GALAXY試験の後方解析・試験デザイン:国内多施設共同研究・対象:術前化学療法なし、切除後StageI~IV大腸がん患者1,028例。ctDNA検査はACT前と長期ACT群(ACT施行期間>90日)は治療中、短期ACT群(ACT施行期間≦90日)は治療後に行い、ctDNAの結果によって4群に分類し、DFSとの関連をみた。1)陰性群(Sustained negativity):開始前陰性→3ヵ月後陰性2)クリアランス群(Clearance):陽性→陰性3)部分奏効群(Partial molecular response):陽性→陽性だが減少4)上昇群(Rising):陽性→陽性かつ増加・治療前ctDNA陽性患者に着目すると、クリアランス群は長期ACT、上昇群は短期ACTが多いことが観察された。・ctDNA動態とDFSは4群で明確に分離した。予後は1)~4)の順番で良好だった。・1)陰性群では、長期ACTによる利益は認められなかった。ACT期間にかかわらず予後はきわめて良好で、むしろ短期ACT群の方がわずかに良好だった。・2)クリアランス群でも、長期ACTによる追加利益は認められなかった。ACT期間にかかわらず良好な予後が得られた。・3)部分奏効群では、長期ACT群によって予後改善傾向が認められた。・4)上昇群では、ACT期間に関係なく予後は不良であり、長期ACTを行っても有意な生存利益は認められなかった。・部分奏効群のうち長期ACTを受けた患者を対象に、治療中の残存ctDNA量で層別化すると、残存ctDNA量が低い患者のほうが良好なDFSを示した。 発表した九州大学の沖 英次氏は「部分奏効群ではACT期間延長による利益があり、このことは奏効例では3ヵ月超のACT継続が有益である可能性を示している。一方で、上昇群はACT期間に関係なく予後不良であり、このことは分子学的進行が認められた時点で、同一の化学療法を継続する意義は限定的であることを示唆している。ACT開始後約3ヵ月時点のctDNA動態はACTへの分子学的反応を反映し、再発リスクを有意に層別化できた。本結果は、大腸がんにおけるACT期間の最適化および個別化周術期治療戦略の構築に寄与する可能性がある」とした。

276.

高リスク多発性骨髄腫、MRD陰性維持期間とPFSの関連

 多発性骨髄腫において微小残存病変(MRD)陰性は生存率の向上と関連しているが、高リスク多発性骨髄腫におけるMRD陰性の予後的価値については明らかになっていない。今回、中国・The First Affiliated Hospital of Sun Yat-sen UniversityのHuan Liu氏らは移植適応の初発多発性骨髄腫を対象にした単施設の後ろ向き研究を実施し、個別治療の指針となる最短のMRD陰性維持期間を検討した。その結果、MRD陰性を2年維持した高リスク患者は標準リスク患者と同様の無増悪生存期間(PFS)を示し、さらに4年の維持によりPFSが改善されることが示唆された。Cancers(Basel)誌2026年5月12日号に掲載。 本研究は、同院において初期治療後に連続して2回以上MRD陰性を達成した移植適応の初発多発性骨髄腫223例を対象とし、リスク別にMRD陰性維持の生存への影響を解析した。 主な結果は以下のとおり。・MRD陰性期間が2年以上の高リスク群と標準リスク群の間で、PFSに差は認められなかった(70.77ヵ月vs.67.38ヵ月、p=0.529)。・標準リスク群では、MRD陰性を2~3年維持した患者と3年以上維持した患者との間で、PFSに差は認められなかった(72.25ヵ月vs.107.50ヵ月、p=0.103)。・高リスク群では、4~5年維持した患者と5年以上維持した患者の間に差は認められなかった(未到達vs.84.53ヵ月、p=0.136)。・患者全体で、2年以上の維持期間は全生存期間の延長と関連していた。 著者らは、「長期的なMRD陰性の維持は良好な予後と関連している。2年以上のMRD陰性の維持は高リスク細胞遺伝学的異常の悪影響を軽減し、また、限定的な症例に基づく探索的解析ではあるが、高リスク多発性骨髄腫患者において4年以上の維持がPFS延長と関連する可能性が示された」としている。

277.

ER+/HER2-進行乳がんの1次治療、giredestrant+パルボシクリブvs.レトロゾール+パルボシクリブ(persevERA BC)/ASCO2026

 エストロゲン受容体陽性(ER+)/HER2陰性(HER2-)の局所進行または転移乳がん患者に対する1次治療において、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)giredestrantとパルボシクリブの併用療法は、レトロゾールとパルボシクリブの併用療法と比較して、治験責任医師評価による無増悪生存期間(INV-PFS)について数値上の改善を示したものの、統計学的に有意な差は示さなかった。英国・Royal Marsden Hospital and Institute of Cancer ResearchのNicholas C. Turner氏が、第III相persevERA BC試験の主要解析結果を、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2026)で報告した。・対象:ER+/HER2-の局所進行または転移乳がん患者(進行がんに対する前治療歴・SERD治療歴なし)・試験群(giredestrant+パルボシクリブ群):giredestrant(30mg、1日1回)+プラセボ+パルボシクリブ(125mg、1~21日目に1日1回)を28日サイクルで投与 495例・対照群:レトロゾール(2.5mg、1日1回)+プラセボ+パルボシクリブを28日サイクルで投与 497例・評価項目:[主要評価項目]RECIST v1.1に基づくINV-PFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、臨床的有用率(CBR)、奏効期間(DOR)、安全性など・追跡期間中央値:giredestrant+パルボシクリブ群52.2ヵ月、レトロゾール+パルボシクリブ群52.1ヵ月(データカットオフ:2026年1月30日) 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は両群でバランスが取れており、年齢中央値はともに63.0歳、閉経後が約8割(giredestrant+パルボシクリブ群79.4%vs.対照群80.9%)、内臓転移ありが約6割(60.8%vs.60.0%)、無治療期間が>12ヵ月の症例が約7割(68.9%vs.69.6%)を占めた。・主要評価項目であるINV-PFS中央値は、giredestrant+パルボシクリブ群は33.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:30.2~38.3)で、対照群の28.2ヵ月(95%CI:25.0~33.1)に対し数値上の改善を示したが、事前に設定された統計学的な有意水準は満たさなかった(層別化ハザード比[HR]:0.89、95%CI:0.76~1.05、p=0.1553)。・事前に規定された主要なサブグループ(年齢、内臓転移の有無、閉経状態など)におけるINV-PFS解析結果は、全体集団とおおむね一致していた。・副次評価項目であるOS中央値は、両群とも評価不能であり、差は認められなかった(層別化HR:1.03、95%CI:0.83~1.28、p=0.7767)。・ORRはgiredestrant+パルボシクリブ群60.2%vs.対照群55.8%、CBRは82.6%vs.80.8%と両群で同等であった。一方、DOR中央値は38.5ヵ月vs.30.4ヵ月であり、giredestrant+パルボシクリブ群において数値的に長い傾向がみられた。・Grade3~4の有害事象はgiredestrant+パルボシクリブ群85.6%vs.対照群80.8%で発現し、両群間で同等であった。試験治療下における有害事象(TEAE)のうちとくに多くみられたのは、両群ともに好中球減少症、貧血、白血球減少などであった。 Turner氏は、本レジメンの忍容性は良好であり、1次治療においてgiredestrantからベネフィットを得られる患者を特定するためのさらなる探索が必要とし、術後内分泌療法抵抗性の患者を対象に、医師選択のCDK4/6阻害薬とgiredestrantまたはフルベストラントの併用療法の有効性を評価するpionERA BC試験が進行中とした。

278.

ivonescimab、進行扁平上皮NSCLCの1次治療でOSも延長(HARMONi-6)/Lancet

 未治療の進行扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、ivonescimab+化学療法はチスレリズマブ+化学療法と比較して全生存期間(OS)を有意に延長したことが、中国・上海交通大学のShun Lu氏らが同国の50施設で実施した第III相無作為化二重盲検比較試験「HARMONi-6試験」の事前規定の中間解析の結果で示された。HARMONi-6試験に関してはこれまでに、ivonescimab+化学療法がチスレリズマブ+化学療法と比較し、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが報告されていた(ジャーナル四天王「進行扁平上皮NSCLCの1次治療、ivonescimab併用がICI併用と比較しPFS改善(HARMONi-6)/Lancet」)。Lancet誌オンライン版2026年5月31日号掲載の報告。ivonescimab vs.チスレリズマブで、OSの中間解析を実施 HARMONi-6試験の対象は、年齢18~75歳、病理学的に確認された切除不能なStageIIIB/IIICまたはStageIVの扁平上皮NSCLCで、全身療法の治療歴がなく、ECOG PSが0または1の患者である。 研究グループは適格患者を、ivonescimab+化学療法群(ivonescimab群)またはチスレリズマブ+化学療法群(チスレリズマブ群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。無作為化の層別因子は、臨床病期(StageIIIB/IIIC期vs.IV期)およびPD-L1発現(TPS≧1%vs.<1%)であった。 ivonescimab群ではivonescimab 20mg/kg、チスレリズマブ群ではチスレリズマブ200mgに加えて、いずれもカルボプラチン(AUC 5mg/mL/分)およびパクリタキセル(175mg/m2)を3週ごとに4サイクル静脈内投与し、その後維持療法として同用量のivonescimabまたはチスレリズマブを3週ごとに投与した。治療期間は最長24ヵ月、または試験責任医師の判断による臨床効果の消失、許容できない毒性の発現のいずれか早い時点までとした。 主要評価項目は、独立画像判定委員会(IRRC)の評価によるRECIST ver.1.1に基づくPFSであり、重要な副次評価項目がOSであった。有効性の解析対象集団は無作為化されたすべての患者、安全性の解析対象集団は無作為化され試験薬を少なくとも1回投与されたすべての患者とした。 重要な副次評価項目であるOSについては、中間解析1回および最終解析を行うこととされ、中間解析はOSイベントが約225件観察された時点で計画されていたが、規制当局の期限に合わせ204件に達した時点で実施された。したがって、中間解析の有意水準は片側0.0049であった。OS中央値はivonescimab群27.9ヵ月、チスレリズマブ群23.7ヵ月 2023年8月17日~2025年1月21日に761例がスクリーニングされ、適格基準を満たした532例が無作為化された(各群266例)。患者背景は、年齢中央値64歳(四分位範囲[IQR]:59~69)、男性494例(93%)、女性38例(7%)であった。 データカットオフ日の2026年2月27日時点(追跡期間中央値21.4ヵ月、95%信頼区間[CI]:20.27~21.91)で、204例の死亡が確認された。ivonescimab群が84例(32%)、チスレリズマブ群が120例(45%)であった。 OS中央値は、ivonescimab群27.9ヵ月(95%CI:27.89~評価不能[NE])、チスレリズマブ群23.7ヵ月(95%CI:20.11~NE)であり、死亡のハザード比は0.66(95%CI:0.50~0.87、片側p=0.0017)で、事前に規定された有意水準を満たした。 ivonescimab群のOS延長効果は、事前に規定されたサブグループ解析でもほぼ一貫していた。 Grade3以上の治療関連有害事象は、ivonescimab群で266例中184例(69%)、チスレリズマブ群で265例中156例(59%)に発現した。Grade3以上の治療関連出血は、それぞれ7例(3%)および2例(1%)に認められた。

279.

抗凝固療法適応の心房細動患者、左心耳閉鎖術の非劣性を確認/NEJM

 抗凝固療法適応の心房細動患者において、Watchman Flx(米国・Boston Scientific製)デバイスを用いた左心耳閉鎖術は非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)療法と比較し、3年時の心血管死、脳卒中または全身性塞栓症の複合エンドポイントに関して非劣性、かつ3年時の手技に関連しない出血に関して優越性が示された。米国・Cedars-Sinai Smidt Heart InstituteのShephal K. Doshi氏らCHAMPION-AF Investigatorsが、16ヵ国の141施設で実施中の無作為化試験「CHAMPION-AF試験」の、3年追跡解析結果を報告した。心房細動患者では、脳卒中予防のための経口抗凝固療法は出血リスクによって制限される。左心耳閉鎖術は、長期抗凝固療法が適さない患者で検討されるが、抗凝固療法適応患者における臨床的意義は確認されていなかった。NEJM誌2026年6月4日号掲載の報告。抗凝固療法適応の脳卒中リスクが高い心房細動患者を無作為化 研究グループは、抗凝固療法の適応となる脳卒中のリスクが高い心房細動患者(CHA2DS2-VAScスコアが男性は≧2、女性は≧3[スコア範囲:0~9、高スコアほど脳卒中リスクが高いことを示す])を、Watchman Flxデバイスを用いた左心耳閉鎖術群(デバイス群)またはNOAC群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 デバイス群では、無作為化14日以内にデバイスを留置し、その後3ヵ月間、NOAC+アスピリン併用療法、NOAC単剤療法、または抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)のいずれかを行った後、アスピリンまたはP2Y12阻害薬の単剤療法を推奨した。NOAC群のレジメンは、標準臨床ガイドラインに準拠した。 有効性の主要エンドポイントは、3年時の心血管死、脳卒中または全身性塞栓症の複合で、非劣性マージンを4.8%とした。安全性の主要エンドポイントは、3年時の手技に関連しない出血(ISTH基準の大出血または臨床的に重要な非大出血)とし、有意水準両側0.05で優越性を評価した。3年時の心血管死・脳卒中・全身性塞栓症の複合、デバイス群5.7%vs.NOAC群4.8% 計3,000例が無作為化された(デバイス群1,499例、NOAC群1,501例)。患者背景は、平均(±SD)年齢71.7±7.5歳、女性が31.9%で、平均CHA2DS2-VAScスコアは3.5±1.3であった。 3年時の有効性の主要エンドポイントのイベントは、デバイス群で81例(Kaplan-Meier推定値5.7%)、NOAC群で65例(4.8%)に発生した。群間差は0.9%(95%信頼区間[CI]:-0.8~2.6)であり、95%CIの上限が事前に設定された非劣性マージンを下回った(非劣性のp<0.001)。 安全性の主要エンドポイントのイベントは、デバイス群で154例(Kaplan-Meier推定値10.9%)、NOAC群で260例(19.0%)に発生した。ハザード比は0.55(95%CI:0.45~0.67)で、優越性が示された(優越性のp<0.001)。 なお、著者らは、非劣性マージンを絶対値で設定したこと、使用した左心耳閉鎖デバイスは1種類のみであったこと、対象患者の大半はCHA2DS2-VAScスコアが4以下であったため最もリスクの高い患者には一般化できない可能性があることなどを研究の限界として挙げている。

280.

食事支援で心不全患者のQOL改善の可能性

 心不全のために入院治療を受けた患者に対して、退院後に心臓に良い食品を提供することで、患者の生活の質(QOL)改善につながる可能性が示された。米テキサス大学(UT)サウスウェスタン医療センターのAmbarish Pandey氏らの研究の結果であり、詳細は「JAMA Cardiology」に4月8日掲載された。 心不全入院後の病状管理の難しさは、退院の瞬間に始まる。退院後にはしばしば、多くの薬を正しく服用することが困難であったり、栄養価の高い食料品の入手に支障を来したりといった問題に直面する。これらの課題のうち後者に対しては、食事や食材を薬のように“処方”することが解決策になる可能性が浮かび上がった。 この研究は、2024年4月~2025年10月に米国テキサス州の病院2施設で、心不全のために入院治療を受けて退院した患者を対象とするランダム化比較試験として実施された。対象者は退院後14日以内に研究参加登録された150人(年齢中央値59.5歳〔四分位範囲52.0~66.0〕、男性60.7%、左室駆出率中央値35%〔同25.0~54.0〕)であり、過半数(52.7%)が食料不安を抱えていた。 対象者は(1)栄養士が立てた献立に基づき、すぐに食べられる状態にした食事を届ける群、(2)心不全治療に適した新鮮な農産物などの食材とレシピの入ったボックスを届ける群、(3)標準的な食事指導のみを行う群――という3群に1対1対1の割合で無作為に分類され、12週間追跡された。食事や食材を配達する2群において、配達完了率は93.6%であり、継続率は96.0%と高かった。追跡期間中に1人が死亡、2人が病状の悪化により脱落、6人が追跡不能となった。解析は、脱落者なども含め当初の割り付け通りに行うITT解析として行われた。 その結果、食事を届ける群と食材ボックスを届ける群を比較したところ、興味深いことに、後者の方が患者に好まれることが明らかになった。具体的には、ネットプロモータースコア(当該サービスを他者に推奨する強さの指標)が、前者は7.3、後者は8.6だった(P=0.02)。この点について研究者らは、食材ボックスとして届くことで家族全員が一緒に同じ料理を食べることができ、また、文化や伝統に沿った食べ方ができるためではないかと考えている。 再入院や救急外来の受診頻度に関しては群間に有意差が認められなかった。しかし患者の気分には顕著な変化が見られた。サポートを受けた群の患者はそうでない患者と比較して、QOLや身体的快適さの改善を示唆する結果も認められた。 Pandey氏は、「われわれは、心不全入院後の不安定な時期に食事や食材の提供を治療として位置付ける介入を実際に実施可能か、また、患者がそれを受け入れるのかという、とても現実的な臨床課題の答えを探るためのパイロット研究として本研究を実施した。得られた結果は、食事や食材を届けるというアプローチが実現可能であるだけでなく、患者からも非常に高く評価されることを示している。特に、QOL向上と体調改善が観察されたことは、心不全患者にとって非常に重要な意味のある成果だ」と話している。

検索結果 合計:36478件 表示位置:261 - 280