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アルツハイマー病への抗アミロイドβ抗体薬、日本での導入実態は?/長寿研

 アルツハイマー病(AD)の病態に直接作用する抗アミロイドβ(Aβ)抗体薬であるレカネマブとドナネマブが、日本でも2023~24年にかけて実臨床に導入された。東京都健康長寿医療センター研究所の井原 涼子氏らの研究グループは、日本の国民皆保険制度下におけるこれら薬剤の導入実態と、患者の意思決定要因に関する調査を実施した。その結果、本治療を希望して受診した患者のうち、実際に投与を開始したのは約20%にとどまり、高額療養費制度によって経済的障壁が低い環境下でも、治療適格性や副作用への懸念が大きなハードルとなっている現状が浮き彫りになった。Alzheimer's & Dementia: Diagnosis, Assessment & Disease Monitoring誌オンライン版2026年3月24日号に掲載。 本研究では、2023年12月~2025年5月に東京都健康長寿医療センターを受診した患者のデータを解析した。同センターでは、「もの忘れ外来」「疾患修飾療法(DMT)外来」を設置し、2段階のスクリーニング体制を構築している。(第1段階:「もの忘れ外来」での鑑別・重症度評価[MMSEを含む]、第2段階:「DMT外来」でのインフォームドコンセントとMRIによる禁忌確認、アミロイドPETまたは脳脊髄液検査)。抗Aβ抗体薬による治療を希望して「もの忘れ外来」を受診した456例、および「DMT外来」を受診した312例を対象に、抗Aβ抗体薬治療開始に至った割合と、至らなかった理由を解析した。 主な結果は以下のとおり。・自ら抗Aβ抗体薬治療を希望して受診した人(「もの忘れ外来」受診者456例)のうち、実際に投与を開始したのは87例(19.1%)であった。・「DMT外来」受診者312例のうち、自ら抗Aβ抗体薬治療を希望して受診した人は205例、医師の紹介で受診した人は107例であった。そのうち抗Aβ抗体薬治療を開始したのは131例(42.0%)であった。・「もの忘れ外来」での抗Aβ抗体薬治療の除外理由で最も多かったのは「疾患の進行(中等度以上の認知症)」であった。・「DMT外来」では、93例が説明後の同意段階で除外された。このうち86.0%は「本人・家族の希望による辞退」であり、主な理由は「副作用(ARIA)への懸念」や「通院負担」であった。・精密検査の結果、「アミロイド陰性」(44例)や「MRIでの禁忌所見」(33例)により不適格となるケースも多くみられた。・多変量解析の結果、以下の因子が独立して治療開始率の低さと関連していた。75歳以上(オッズ比:0.25、95%信頼区間:0.15~0.43)、男性(0.56、0.33~0.95)、MMSEスコア27〜30点の軽微な層(0.33、0.18~0.60)。・75歳以上では副作用への懸念やアミロイド陰性率の高さ、男性ではMRIでの多発微小出血などの禁忌事項に該当する割合が高いことが影響していた。 本研究により、日本独自の「高額療養費制度」によって薬剤費の自己負担が抑えられている環境下でも、非経済的な要因が治療導入の大きな障壁となっている実態が確認された。著者らは、最も効果が期待される「超早期」の患者を適切に治療へつなげるためには、より安全で負担の少ない治療法の開発や、Shared Decision Making(共同意思決定)を支援する体制の構築、さらには早期治療の重要性に関する啓発が必要だと指摘している。

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AIスクライブ技術の導入、EHR対応の負担軽減に/JAMA

 臨床医は、電子健康記録(EHR)の記録作成に患者ケア8時間当たり2.3時間を費やし、とくに入力作業が勤務時間外の場合は燃え尽き症候群と関連するとの報告があり、EHRの負担は診療能力や患者の受診機会、医療の質を損なう可能性が指摘されている。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のLisa S. Rotenstein氏らは、拡張性の高い代替手段とされる人工知能(AI)を活用した環境型記録補助ツール(AIスクライブ)の導入により、わずかとはいえEHRの操作時間および文書作成時間が短縮し、週当たりの診察件数が増加することを示した。研究の成果はJAMA誌オンライン版2026年4月1日号に掲載された。米国5施設の外来医を導入の有無で比較 研究グループは、AIスクライブの導入と、EHRへの時間の負担および診察件数の変化との関連を評価する目的で、縦断的コホート研究を実施した(Advancing a Healthier Wisconsin Endowmentの助成を受けた)。 2023年6月~2025年8月に、臨床医向けにAIスクライブを導入した米国の5つの学術的医療機関で外来診療に従事する臨床医を対象とした。 AIスクライブの導入とは、AIスクライブへのアクセス権の取得を意味し、導入の可否は5施設のうち4施設で、対象となる医師による事前承認に基づき決定した。 EHRの操作に費やした時間、文書作成に費やした時間、および勤務時間外または勤務日以外にEHRの操作に費やした時間を、予定された患者の診察時間8時間当たりに標準化し、週当たりの受診件数を評価した。勤務時間外のEHR操作時間には変化がない 8,581人の臨床医を対象とした。AIスクライブ導入者は1,809人、非導入者は6,772人だった。参加者の57.1%が女性であった。専門分野の内訳は、プライマリケアが24.4%、内科系が62.4%、外科系が13.2%であった。また、74.1%が指導医(フェローを含む)、18.1%がAPC(Advanced Practice Clinicians)、7.8%が研修医だった。 差分の差分法による解析の結果、予定された患者の診察時間8時間当たりに標準化すると、AIスクライブ導入により、EHRの操作時間が13.4分(95%信頼区間[CI]:9.1~17.7)短縮し、文書作成時間は16.0分(95%CI:13.7~18.3)短縮しており、週当たりの受診件数は0.49(95%CI:0.17~0.81)増加した。 一方、勤務時間外のEHR操作時間は3.1分(95%CI:-0.50~6.80)短縮したが、この変化は有意ではなかった。また、AIスクライブ導入による変化が最も顕著だったのは、プライマリケア医、上級医、女性臨床医のほか、診察の50%以上でAIスクライブを利用した医師であった。 さらに、AIスクライブの導入は、医師1人当たり月に167.37ドル(95%CI:86.52~248.21)の収益の増加をもたらした。節約時間を他の患者ケア活動に振り向けた可能性 著者は、「診療時間の半分以上をAIスクライブの使用に費やした医師は格段に大きな利益を得たものの、これほど頻繁に利用した導入者は約32%にとどまっており、導入者に対する充実した研修と支援の必要性が明らかとなった」「今後は、本試験の結果の持続性と再現性の評価とともに、この技術の利点を高めることができる具体的な診療の手順と支援策について検討すべきと考えられる」としている。 また、「注目すべきは、AIスクライブの導入による文書作成時間の短縮が、EHRの総所要時間の短縮を上回ったこと、および最終的に勤務時間外の業務に有意な変化をもたらさなかった点である。これは、医師が、節約できた時間を他の患者ケア活動に振り向けた可能性を示唆する。AIスクライブはEHRに費やす時間を大幅には削減しない可能性があるが、この技術が燃え尽き症候群の軽減に有効とのエビデンスを考慮すると、医師は文書作成から解放された時間の再配分を価値あるものと捉え、これが医師の満足度の向上に寄与している可能性がある」と指摘している。

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高齢者のがん薬物療法GLの改訂ポイント【総論・造血器】/日本臨床腫瘍学会

 『高齢者のがん薬物療法ガイドライン 改訂第2版』が2026年3月25日に発刊され、第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)のシンポジウムで全17項目のクリニカルクエスチョン(CQ)が解説された。 本ガイドラインは、2019年の初版以降に蓄積されたエビデンスを踏まえ改訂された。「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020」に準拠し、新規CQの追加や対象領域の拡張を行った。今回の改訂では新たに「Evidence to Decision(EtD)フレームワーク」が導入された点が大きな特徴である。これにより、エビデンスの確実性だけでなく、益と害のバランス、患者の価値観、実行可能性など多面的な要素を考慮した推奨決定のプロセスが可視化された。 総論からは「がん薬物療法を考慮している高齢がん患者に対して、高齢者機能評価とそれに基づくマネジメントの実施は推奨されるか?」「がん薬物療法を考慮している高齢がん患者のがん薬物療法の選択に、高齢者機能評価は推奨されるか?」、造血器からは「初発高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療方針の判断に高齢者機能評価は有用か?」「80歳以上の初発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対してドキソルビシンを含む薬物療法は推奨されるか?」が設定された。総論 Geriatric Assessment(GA:高齢者機能評価)により患者の脆弱性を多面的に評価し、その結果に基づく介入により重篤な毒性の軽減やQOLの改善の可能性が示されている。しかし、初版の総論では以下の2つのCQが並立しており、患者アウトカムを目的としたGAは提案される一方、治療方針を判断する目的のGAは過少治療による不利益の可能性から推奨されていなかった。 (旧)CQ1 高齢がん患者において、がん薬物療法の適応を判断する方法として、高齢者機能評価を実施することを提案する。 (旧)CQ2 高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対して、治療方針の判断には高齢者機能評価を使わないことを提案する。 今回の改訂では、QOLや機能に関わるアウトカムと腫瘍関連アウトカムという視点別に、CQ1-1とCQ1-2に分けて包括的なメッセージを示す構成へと再編した。CQ1-1 がん薬物療法を考慮している高齢がん患者に対して、高齢者機能評価とそれに基づくマネジメントの実施は推奨されるか?推奨:高齢がん患者に対して、がん薬物療法を考慮する際には、高齢者機能評価およびその結果に基づくマネジメントを実施することを弱く推奨する。推奨のタイプ:当該介入の条件付きの推奨エビデンスの強さ:C 本CQでは、がん薬物療法の適応が考慮されている高齢者に対し、GAとその結果に基づくマネジメントを受けた群(介入群)と受けなかった群(対照群)の患者中心アウトカムを評価した。8件のランダム化比較試験(RCT)を主なエビデンスとして評価を行った。GAとその結果に基づくマネジメントにより、QOLの維持・改善、医師とのコミュニケーション、患者満足度について有意な改善が報告された。介入群では対照群と比較して、一貫してGrade3以上の有害事象の有意な減少傾向を認め、統合解析でも有意な結果であった。重篤な毒性の有意な低下は臨床的に意味が大きく、QOLや満足度など患者中心アウトカムも良好な一方、有害な影響を示す根拠は乏しいと評価された。CQ1-2 がん薬物療法を考慮している高齢がん患者のがん薬物療法の選択に、高齢者機能評価は推奨されるか?推奨:がん薬物療法を考慮している高齢がん患者のがん薬物療法の選択に、高齢者機能評価を実施することを弱く推奨する。推奨のタイプ:当該介入の条件付きの推奨エビデンスの強さ:C 本CQでは、がん薬物療法の適応が考慮されている高齢者に対し、GAに基づく治療決定を受けた群(介入群)と受けなかった群(対照群)の腫瘍関連アウトカムを評価した。7件のRCTおよび4件の前向き観察研究をもとに評価した。全生存期間(OS)・無増悪生存期間(PFS)・奏効率のいずれも介入群と対照群で有意差を認めなかったものの、介入群では一貫してGrade3以上の有害事象の減少傾向を認め、統合解析でも有意な結果だった。腫瘍関連アウトカムの改善は認めなかったもののOSの明らかな増悪は認めず、毒性低減という臨床的意義を示したと評価された。造血器CQ2 初発高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療方針の判断に高齢者機能評価は有用か?推奨:初発高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療方針の判断に高齢者機能評価を行うことを弱く推奨する。推奨のタイプ:当該介入の条件付きの推奨エビデンスの強さ:C DLBCLは発症年齢中央値が約70歳であり、高齢患者が多数を占めている。R-CHOP療法などの標準化学療法により治癒が期待できるが、高齢者には毒性が高く、暦年齢やパフォーマンスステータス(PS)のみでは個体差を正確に評価することが困難である。個人の予備能をより正確に見極めるためにGAの重要性が認識されている。本CQでは、初発高齢者DLBCLを対象に、GAが良好な群(介入群)と不良な群(対照群)のアウトカムについて、GAの有無による直接比較ではなく、EtDフレームワークを用いてGAによって層別化された群で比較して総合的な評価が行われた。文献検索の結果、RCTは該当しなかったが、前向きおよび後ろ向きの観察研究21件が抽出された。GAが良好な群ではOSが優れており、標準治療の適用によって若年者と同程度の治療アウトカムが期待できることが示された。標準治療による有害事象は一定頻度で生じるが適切な対策で完遂可能である一方、GAが不良な群では毒性が重篤化する懸念がある。観察研究のみのためエビデンスの強さは「C(弱い)」に留まると評価されたが、得られる臨床的利益の大きさから、総合的な効果のバランスはGA実施を強く支持している。CQ3 80歳以上の初発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対してドキソルビシンを含む薬物療法は推奨されるか?推奨:80歳以上の初発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対してドキソルビシンを含む薬物療法を行うことを弱く推奨する。ただし、ドキソルビシンのdose intensityを考慮する必要がある。推奨のタイプ:当該介入の条件付きの推奨エビデンスの強さ:C DLBCLは標準治療であるR-CHOP療法により、半数程度の治癒が見込まれる。しかし、ドキソルビシンは心毒性が問題となり、心疾患の併存が多い高齢者では、血液毒性や粘膜障害のリスクも相まって使用が躊躇されることがある。そこで本CQでは、80歳以上の未治療DLBCL(日本人含む)を対象に、ドキソルビシンを含むレジメン(R-CHOP、R-miniCHOP、R-THP-COPなど[介入群])とドキソルビシンを含まないレジメン(R-CVP、R-benda、ステロイド単剤、支持療法など[対照群])のアウトカムを評価した。文献検索の結果、ドキソルビシンの有無を直接比較したRCTは該当せず、12件の前向き・後ろ向き観察研究などが採用された。介入群の2年OS率は60〜70%、2年PFS率は50〜60%と良好で、対照群と比較して一貫して優れた治療効果が示された。ドキソルビシンを50%程度に減量した介入研究では、心毒性が2〜5%、治療関連死亡が0〜5%と許容範囲に収まっていた。しかし、通常量を投与した観察研究では、治療関連死亡が20%に達するという報告もあり、投与量に配慮が必要と評価された。

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「タリージェ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第86回

第86回 「タリージェ」の名称の由来は?販売名タリージェ®錠2.5mg、5mg、10mg、15mgタリージェ®OD錠2.5mg、5mg、10mg、15mg一般名(和名[命名法])ミロガバリンベシル酸塩(JAN)効能又は効果神経障害性疼痛用法及び用量通常、成人には、ミロガバリンとして初期用量1回5mgを1日2回経口投与し、その後1回用量として5mgずつ1週間以上の間隔をあけて漸増し、1回15mgを1日2回経口投与する。なお、年齢、症状により1回10mgから15mgの範囲で適宜増減し、1日2回投与する。警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者※本内容は2026年4月14日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2025年2月改訂(第14版)医薬品インタビューフォーム「タリージェ®錠2.5mg、5mg、10mg、15mg/タリージェ®OD錠2.5mg、5mg、10mg、15mg」

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脳卒中データバンク2026

ビッグデータからしか得られない興味深い解析結果を満載日本脳卒中データバンク(JSDB)は、コロナ禍の間も順調に登録数を延ばし、2019年以降の5年間に10万例近くが登録され、2024年にはついに30万例を突破した。本書は2023年末までの29.4万例をもとに、計58編の脳卒中に関する話題を、非専門家、非医療者の方にもわかりやすく説明。今後は、急速に発展するAIを利用したビックデータの活用が益々期待される。脳卒中診療の実態とエビデンスを満載した類のないデータブック!画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する脳卒中データバンク2026定価8,250円(税込)判型AB判(並製)頁数304頁発行2026年3月編集一般社団法人日本脳卒中データバンクご購入はこちらご購入はこちら

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第314回 1人の女性の3つの自己免疫疾患が元凶のB細胞を駆除する自己T細胞投与で解消

ドイツの1人の女性を苛む3つの自己免疫疾患が、それらの元凶の悪辣なB細胞を駆除するように仕立てた自己T細胞で雲散霧消し、かつては10あまりの治療を受けたのが嘘のように、さらなる治療なしで1年超を無事で過ごせています1-3)。3つの自己免疫疾患はどれも免疫系の狼藉なB細胞が作る自己抗体に端を発します。その1つの自己免疫性溶血性貧血(AIHA)は、自己抗体が赤血球を破壊することを原因とします。あと2つの自己免疫疾患の症状はまるで正反対で、その1つは血小板への自己抗体を原因とする免疫性血小板減少症(ITP)で、出血を生じやすくします。もう1つの抗リン脂質症候群は、凝固を防ぐタンパク質への自己抗体を原因とし、ITPとは反対に血栓症を生じやすくします。診断の後に女性は抗体薬、ステロイド、免疫抑制薬を含む9種類の治療を試みました。長期の高用量ステロイド投与は唯一のめぼしい治療ですが、免疫系全般を抑制する故に感染症の危険と背中合わせです。そのステロイドでさえ歯が立たず、さらには最先端も免疫抑制薬の手にも負えず、女性は診断から10年超を経た2025年、47歳のときにドイツのエルランゲン大学病院の血液専門医Fabian Muller氏のチームの下へ救急搬送されました。Muller氏のチームは、自己免疫疾患のキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法の先駆けの試験で知られ、2022年には全身性エリテマトーデス(SLE)患者5例がその治療で寛解したことを報告しています4)。貧血の治療に毎日の輸血を要し、血栓症を防ぐための抗凝固薬を続けていた女性にMuller氏らは、同氏いわく最後の砦であったCAR-T細胞療法を施しました。投与したCAR-T細胞は女性から採取したT細胞を加工して作られ、B細胞のタンパク質のCD19を認識します。その働きによりB細胞を見つけ出し、除去することができます。体内で分裂でき、その効果は投与後に数年、なんなら10年も持続しうることが知られます。痛みや疲れで何週間も寝たきりで過ごすこともあった女性へのCAR-T細胞投与の効果は目覚ましく、その投与の1週間後を最後に輸血が不要になりました。2週間も経つと女性はより力がみなぎっていると感じ、日々の所作が可能になりました。3週間後には赤血球のタンパク質のヘモグロビン量が倍増して正常域となり、どうやら免疫系は赤血球を破壊しなくなっているようでした。血栓と関連する抗リン脂質抗体は徐々に減って見当たらなくなり、血小板数も安定に推移するようになりました。一回きりのCAR-T細胞投与から14ヵ月経つ今日、女性は薬を一切使うことなく無症状で過ごせています3)。がんのCAR-T細胞療法の先駆者の1人のCarl June氏によると、今や種々の自己免疫疾患のCAR-T細胞療法の200あまりの臨床試験が進行中です。これまではCAR-T細胞療法といえば主に白血病などの血液がんが相手でしたが、自己免疫疾患を治療するCAR-T細胞療法の承認がSLE、筋炎、強皮症用途を皮切りにして続くだろうとJune氏は予想しています3)。いくつかは向こう2~3年以内に米国で承認に漕ぎ着けそうです。参考1)Korte IK, et al. Med. 2026 Apr 9. [Epub ahead of print]2)CAR-T therapy drives remission in patient with three autoimmune diseases / Eurekalert3)One woman, three autoimmune diseases: CAR-T therapy vanquishes ultra-rare disease trio / Nature4)Mackensen A, et al. Nat Med. 2022;28:2124-2132.

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「調剤の概念」が新たに提唱、薬剤師業務はどう変わる?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第168回

2026年3月26~29日に開催された日本薬学会第146年会において、「調剤の概念」が新たに提唱されました。なぜ今、調剤の概念が取りまとめられたのでしょうか?【調剤の概念】調剤の概念とは、薬剤師が医薬品情報と患者情報を用いて薬学的観点から処方の意図を評価し、必要に応じ照会・提案した上で、処方に基づいて患者に対して個別最適化された薬物療法を提供する一連の行為である。このプロセスは継続的に行われるものである。同時にその他の薬剤師の業務についても再定義されており、以下のようになっています。処方内容の監査:処方内容について、患者情報および医薬品情報に照らし、薬学的観点から確認する行為薬剤調製:処方箋の内容およびそれまでに得られている患者情報と最新の医薬品情報に照らし合わせ、薬学的観点から医薬品を患者が使用できる状態にすること薬剤等の監査:薬剤、薬剤情報提供書等、患者に提供される物品および情報について、最終的に患者にとって最適であるかを確認する行為これらの概念の作成については、2025年夏に日本薬剤師会の岩月 進会長が日本薬学会に依頼し、2025年の秋に日本薬学会内にワーキンググループを設置して検討を開始、この春に策定となりました。今回策定されたこれらの概念や定義は、調剤指針の改訂版に掲載予定とのことです。「なぜ今?」「そもそも調剤の概念とか定義ってなんだったっけ?」と思う人も少なくないかもしれません。調剤は薬剤師のみが病院や薬局で行うことができる、ということが決められているのみで、はっきりした概念・定義はありませんでした。そのせいもあってか、患者さんには、「調剤=薬剤師=薬を作っている(だけの)人」と認識されている節はなんとなく感じていて、「薬剤師は病院や薬局でお薬を作る作業をしているけれど、それ以外は何をしているの?」というぼんやりとしたイメージのように思います。昨今の薬剤師の業務は多岐にわたり、調剤や監査、服薬指導、薬歴管理、医師やほかの医療者との連携や情報提供、地域医療、医療安全などには科学的な知識や技術、経験などが欠かせません。それらの業務全体を調剤と思っている薬剤師側と、ただただお薬をつくる作業をしていると思っている患者さん側との間にイメージのギャップがあり、この度、その言葉の定義を構築しなおす必要があったのだと思います。今回の日本薬学会第146年会の会頭講演において、同会会頭である千葉大学医学部附属病院の石井 伊都子氏は「近年の薬剤師に求められる調剤業務を可視化し、薬剤師の行動目標を示すだけでなく、社会に対して説明責任を果たすことを目的としている」と述べています。上記の調剤の概念や薬剤師の役割の再定義には、「医薬品情報と患者情報を用いて薬学的観点から処方の意図を評価」「患者情報と最新の医薬品情報に照らし合わせ」という文言があるように、個人的には、処方箋や医師の指示をそのまま作業に移すというのではなく、薬剤師が薬学的観点を用いてしっかりと考えるという意図を感じます。この定義にあった考えと行動を実践しなければならないと背筋が伸びる思いです。今回の「調剤の概念」の策定については、単純な言葉の再定義という枠を超えて、薬剤師の業務全体を意味づける大きな一歩のような気がします。「薬局のガラスの向こうでお薬を作っている人」というイメージが払拭できないでいた薬剤師の業務について、今後変化がありそうな気がします。

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帯状疱疹、50歳未満でも罹患リスクが高くなる6つの併存疾患

 50歳以上および免疫不全を有する成人では、帯状疱疹の罹患リスクが高いが、18~49歳の併存疾患を有する患者における帯状疱疹罹患リスクについてのエビデンスは不足している。グラクソ・スミスクラインのRachel A. Cohen氏らによる米国の医療保険請求データを用いた大規模後ろ向き研究の結果、特定の併存疾患を有する若年成人(30歳以上)では、50~59歳の併存疾患および免疫不全のない成人と比較して帯状疱疹の罹患リスクが高いことが示された。Clinical Infectious Diseases誌オンライン版2026年3月27日号掲載の報告。 本後ろ向きコホート研究では、2015~22年の米国におけるMerative MarketScan CommercialおよびMedicare Supplementalのデータが用いられた。併存疾患(喘息、慢性腎臓病[CKD]、慢性閉塞性肺疾患[COPD]、うつ病、糖尿病、ストレス、および外傷)を有する免疫不全のない若年成人(18~49歳)における帯状疱疹罹患率(IR)を、併存疾患および免疫不全のない成人(50~59歳)と比較した。 併存疾患および免疫不全のない50~59歳と比較した調整罹患率比(aIRR)について、非劣性マージン(95%信頼区間[CI]の下限:0.62)があらかじめ設定された。aIRRは、同等(aIRRの95%CIの下限>0.62かつ≦1.0)、有意に高い(同>1.0)、または結論不能(それ以外の結果)に分類した。帯状疱疹罹患の定義は、診断コードに加え、±7日以内の経口抗ウイルス薬の処方とした。感度分析として、併存疾患の数(1、2、または3以上)別に帯状疱疹の罹患率を検討した。 主な結果は以下のとおり。・対象集団は、帯状疱疹罹患歴または帯状疱疹ワクチンの接種歴がなく18歳以上の2,067万3,677人。免疫不全症および自己免疫疾患を有する成人を除外後、併存疾患を有する成人は316万45人であった。・全体として、併存疾患を有する成人において3万1,995件の帯状疱疹発症が報告された。・帯状疱疹罹患率は、気管支喘息(aIRR:1.19[95%CI:1.10~1.29])、COPD(1.31[1.22~1.40])、うつ病(1.31[1.22~1.40])、糖尿病(1.18[1.06~1.32])、ストレス(1.28[1.11~1.47])、および外傷(1.25[1.17~1.34])を有する集団では30~39歳において、またCKD(1.50[1.28~1.77])を有する集団では50~59歳において、50~59歳の併存疾患および免疫不全のない成人と比較して有意に高かった(aIRRの95%CIの下限>1.0)。・感度分析の結果、帯状疱疹罹患率は併存疾患数の増加および年齢の上昇に伴って増加する傾向がみられた。

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高齢者機能評価+コミュニケーション支援が高齢がん治療の安全性を改善/日本臨床腫瘍学会

 Webアプリを活用した高齢者機能評価(GA)に基づくマネジメントとコミュニケーション支援を組み合わせたプログラムが、高齢がん患者の健康アウトカムを改善した。同プログラムの有効性を評価する多施設共同無作為化比較試験について、国立がん研究センターがん対策研究所の松岡 歩氏が第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)で発表した(2025年米国臨床腫瘍学会・発表演題の再報告)。 高齢がん患者では、栄養状態の低下、抑うつ、社会的孤立、身体機能低下といった加齢に伴う問題が、治療の安全性に大きく影響する。この問題は診療現場で十分に把握・共有されないまま治療が開始されることが多い。米国では、GAを用いて加齢に伴う問題を評価し、医師に共有することで副作用が減少すると報告されている。日本においてはGAの臨床アウトカムへの影響を検証した無作為化試験はなかった。・対象:GAで問題を有する70歳以上の進行・再発消化器がん患者215例・介入群:Webアプリ上でGAを実施し、GAサマリーとGAに基づくマネジメントの提案を提示。質問促進リストを用いたコミュニケーション支援を実施した上で、医師に結果をフィードバック・通常診療群:GAは実施するが結果は患者にも主治医にも共有しない・評価項目:[主要評価項目]:診察時の加齢に関する懸念事項の会話数[副次評価項目]:GAに基づくマネジメント(GAM)実施率、Grade3以上の有害事象、医療利用、QOL、身体機能、生存など 主な結果は以下のとおり。・主要評価項目である診察時の加齢に関する懸念事項の会話数は、介入群2.95回、通常診療群1.90回で、介入群で有意に増加した(p<0.001)。・GAMの実施率も、介入群34.7%、通常診療群19.5%と、介入群で有意に増加した(p<0.001)。・治療開始後3ヵ月以内のGrade3以上の有害事象発現率は、介入群50.9%、通常診療群66.4%と、介入群で有意な減少を認めた(p<0.05)。 当研究の結果から松岡氏は「高齢がん患者の“見えにくい脆弱性”を可視化して医療者と共有することで、より安全な治療につながる可能性がある。今後はデジタル技術を活用してこのプログラムを自動化することで、全国の医療機関で利用できる仕組みを目指していく」と述べた。

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既治療EGFR変異NSCLCにおけるsacituzumab tirumotecanのOS最終結果(OptiTROP-Lung03)/ELCC2026

 既治療のEGFR陽性非小細胞肺がん(NSCLC)においてsacituzumab tirumotecan(sac-TMT)が持続した全生存期間(OS)の改善を示した。sac-TMTはTROP2を標的とした抗体薬物複合体(ADC)である。独自のリンカーでトポイソメラーゼI阻害薬belotecanの腫瘍細胞への送達を最大化する。すでに第II相OptiTROP-Lung03試験で、既治療のEGFR陽性NSCLCに対する有意な無増悪生存期間(PFS)およびOSの改善が報告されている1)。欧州肺がん学会(ELCC2026)では、中国・中山大学がんセンターのYunpeng Yang氏がOptiTROP-Lung03試験の最終OS解析を紹介した。・対象:EGFR-TKIとプラチナベース化学療法の併用または逐次療法で進行した非扁平上皮EGFR陽性(19-DelまたはL858R)NSCLC・試験群:sac-TMT 5mg/kg 2週ごと(sac-TMT群)・対照群:ドセタキセル75mg/m2 3週ごと(ドセタキセル群)・評価項目:[主要評価項目]奏効率(ORR)[副次評価項目]PFS、OS、奏効期間(DoR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・追跡23.8ヵ月のPFS中央値は、sac-TMT群7.9ヵ月、ドセタキセル群2.8ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.23、95%信頼区間[CI]:0.15~0.35)。・OS中央値はsac-TMT群20.0ヵ月、ドセタキセル群13.5ヵ月であった(HR:0.63、95%CI:0.40~0.98)。・ドセタキセル群の患者の41%がsac-TMTにクロスオーバーした。・クロスオーバー調整後のOS中央値はsac-TMT群20.0ヵ月に対し、ドセタキセル群は11.2ヵ月で、sac-TMT群の優越性はより強く表れた(HR:0.45、95%CI:0.28~0.73)。・全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)発現割合は両群とも97.8%であった。Grade3以上のTRAEはsac-TMT群60.4%、ドセタキセル群73.9%で発現した。・主たるTRAEは両群とも血液毒性であった。・間質性肺疾患の発現は両群とも2.2%の発現であった。・sac-TMT群では治療中止または死亡に至ったTRAEは認められなかった。 本試験の結果は、「既治療のEGFR変異NSCLCに対する有望かつ新たな治療選択肢として、sac-TMTの重要性を強調するものである」と Yang氏は結んだ。 sac-TMTはOptiTROP-Lung04試験の結果2)に基づき、EGFR-TKI不応後のEGFR変異NSCLCに対して中国で承認された。

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エボロクマブ追加、動脈硬化のない糖尿病患者の1次予防に有効/JAMA

 既知の重度動脈硬化がなく糖尿病を有する患者において、エボロクマブによる早期の強化LDLコレステロール(LDL-C)低下療法は有益であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のNicholas A. Marston氏らVESALIUS-CV Investigatorsによる「VESALIUS-CV試験」の事前に規定されたサブグループ解析で示された。同試験は、心筋梗塞や脳卒中の既往歴がなく心血管イベントのリスクは高いという、比較的リスクが低い集団の1次予防において、PCSK9阻害薬の追加投与が主要心血管イベント(MACE)のリスクを低減することを実証した初めての臨床試験であるが、患者の多くが既知の重度の動脈硬化を有していた。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年3月28日号で報告された。33ヵ国の無作為化プラセボ対照比較試験 本研究は、33ヵ国774施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(Amgenの助成を受けた)。2019年6月に参加者の登録を開始し、2025年7月に最後の患者の追跡を終了した。 対象は、重度の動脈硬化を認めず(以下のいずれにも該当しない:動脈血行再建術の既往、動脈の50%以上の狭窄、冠動脈石灰化スコア≧100Agatston単位)、高リスク糖尿病(以下の少なくとも1つに該当:罹患期間10年以上、インスリンの連日使用、細小血管疾患)を有し、心筋梗塞や脳卒中の既往歴がなく、LDL-C値≧90mg/dL、非HDL-C値≧120mg/dL、アポリポ蛋白B値≧80mg/dLがみられ、至適な脂質低下療法により病態が2週間以上安定している患者であった。 被験者を、忍容可能な至適な用量のスタチン療法に加え、エボロクマブ(140mg、2週ごと)またはプラセボを皮下投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは次の2つとした。(1)3つの主要心血管イベント(冠動脈性心疾患死、心筋梗塞、虚血性脳卒中)の複合(3-P MACE)、(2)4つのMACE(3-P MACEと虚血による動脈の血行再建術)の複合(4-P MACE)。48週でLDL-C値が52mg/dLに低下 試験全体の参加者1万2,257例のうち適格基準を満たしたサブグループ3,655例(年齢中央値65歳[四分位範囲[IQR]:60~70]、女性57%)を解析の対象とした。エボロクマブ群に1,849例、プラセボ群に1,806例を割り付けた。 サブグループのベースラインBMI中央値は31.4(IQR:28.0~35.6)、9割弱が高血圧、ほぼ全例が糖尿病で、LDL-C中央値は132mg/dL(IQR:108~156)、89%が脂質低下療法を、64%は高強度スタチン療法を受けていた。 48週の時点で、LDL-C値中央値はエボロクマブ群が52mg/dL、プラセボ群は111mg/dLであった(p<0.001)。96週時にはそれぞれ44mg/dLおよび105mg/dLまで低下した。3-P・4-P MACEイベントとも有意に優れる 3-P MACEイベントは、プラセボ群で117例(5年Kaplan-Meier推定値7.1%)に発生したのに対し、エボロクマブ群では83例(5.0%)と有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.69[95%信頼区間[CI]:0.52~0.91]、p=0.009、群間差:2.1%[95%CI:0.4~3.8])。 また、4-P MACEイベントは、プラセボ群で178例(5年Kaplan-Meier推定値10.5%)に認めたのに対し、エボロクマブ群では127例(7.6%)と有意に少なかった(HR:0.69[95%CI:0.55~0.86]、p=0.001、群間差:2.9%[95%CI:0.9~4.9])。 さらに、心血管死(エボロクマブ群2.38%vs.プラセボ群3.49%、HR:0.68[95%CI:0.46~0.99])および全死因死亡(7.36%vs.9.52%、HR:0.76[95%CI:0.61~0.95])の発生率も、エボロクマブ群で良好だった。重篤・試験薬中止有害事象は同等 重篤な有害事象(エボロクマブ群24.5%vs.プラセボ群25.7%、p=0.41)、試験薬の投与中止に至った有害事象(同4.1%vs.4.3%、p=0.75)の発生率は両群で同程度だった。死亡は、エボロクマブ群で136例(5年Kaplan-Meier推定値7.8%)、プラセボ群で172例(10.1%)に認めた(HR:0.76、95%CI:0.61~0.95)。 著者は、「既知の重度な動脈硬化がなく糖尿病を有する高リスク患者の1次予防において、至適なスタチン療法にエボロクマブを加えると、プラセボと比較して初回MACEリスクが低減した」とまとめ、「これらのデータは、アテローム動脈硬化性心血管疾患の進行の初期段階にある患者に対して、スタチン療法に上乗せした強化治療を行うこと、および通常はきわめて高リスクの2次予防患者にのみ適用されるLDL-Cの目標値を目指すことを支持するものである」としている。

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初発うつ病患者の抑うつ/不安症状と血圧との関係

 抑うつ症状および不安症状は、うつ病患者によくみられる症状である。しかし、未治療うつ病患者におけるこれらの症状と血圧との関連は、これまで十分に解明されていなかった。中国・南京医科大学第二附属医院のQi Qian氏らは、初回発症・未治療のうつ病患者における抑うつ症状および不安症状と血圧との間の潜在的な関連を検討するため、本研究を実施した。Scientific Reports誌2026年2月10日号の報告。 対象は、初回発症・未治療のうつ病患者1,718例。抑うつ症状はハミルトンうつ病評価尺度(HAMD-17)、不安症状はハミルトン不安尺度(HAMA)を用いて評価した。収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)をアウトカム変数とした。多重線形回帰分析を用いて、人口統計学的特性および臨床変数を調整したうえで、HAMD-17スコアおよびHAMAスコアと血圧との関係を評価した。 主な内容は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は34.87±12.43歳、女性の割合は65.77%であった。・HAMD-17平均スコアは30.30±2.94、HAMA平均スコアは20.80±3.47であった。・平均SBPは119.48±10.91mmHg、平均DBPは75.95±6.74mmHgであった。・両変数を同時に含めた完全調整モデルでは、HAMD-17スコアはSBP(β=0.80、95%信頼区間[CI]:0.63~0.98、p<0.001)およびDBP(β=0.36、95%CI:0.24~0.49、p<0.001)との有意な相関を示した。・HAMAスコアはSBPとの有意な関連は認められなかったが(β=0.13、95%CI:-0.02~0.28、p=0.079)、DBPとの有意な関連は認められた(β=0.15、95%CI:0.04~0.26、p=0.006)。 著者らは「初回発症・未治療のうつ病患者において、うつ症状はSBPおよびDBPと独立して相関していたが、不安症状はDBPとのみ有意な関連を示した。これらの研究結果は、うつ病患者において、抑うつ症状および不安症状は心血管系パラメーターとそれぞれ異なる関連性を有する可能性を示唆している」としている。

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IgA腎症、イプタコパンが有効~APPLAUSE-IgAN最終解析/NEJM

 イプタコパンは、補体代替経路の補体B因子を標的とする強力な経口補体阻害薬。「APPLAUSE-IgAN試験」の9ヵ月時点の中間解析で、急速な疾患進行のリスクが高いIgA腎症患者において、本薬はプラセボと比較して24時間尿蛋白/クレアチニン比の有意な減少(38.3%の減少、p<0.001)をもたらし、安全性プロファイルは許容範囲内であることが示されたため、すでに原発性IgA腎症の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)の迅速承認を得ている(本邦ではIgA腎症に対しては未承認)。英国・University of LeicesterのJonathan Barratt氏らは、今回、同試験の24ヵ月時の最終解析を実施。イプタコパンはプラセボと比較して腎機能低下を有意に減速させたことを報告した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年3月29日号で発表された。国際的な無作為化プラセボ対照第III相試験 APPLAUSE-IgAN試験は、日本の施設も参加した国際的な二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2021年1月~2025年9月に患者を登録した(Novartisの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、ACE阻害薬やARBなどによる支持療法にもかかわらずIgA腎症を認め(生検で確定)、推算糸球体濾過量(eGFR)≧30mL/分/1.73m2、24時間尿蛋白/クレアチニン比≧1の患者であった。 被験者を、イプタコパン(200mg、1日2回)またはプラセボを経口投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、24ヵ月間にわたるeGFRの年間総変化量とした。副次エンドポイントとして、複合腎不全エンドポイント(eGFRのベースラインとの比較で30%以上の低下が4週間以上持続、eGFR<15mL/分/1.73m2の状態が4週間以上持続、維持透析[4週間以上]の導入、腎移植の実施、腎不全による死亡)のtime-to-event解析も行った。eGFRの年間総変化量が有意に良好 477例を登録し、イプタコパン群に238例(平均[±SD]年齢39.7[±11.6]歳、男性56.3%)、プラセボ群に239例(39.2[±12.5]歳、50.6%)を割り付けた。それぞれ18.9%および36.8%の患者が、主にeGFRの30%以上の低下が原因で試験薬の投与を中止した。 24ヵ月の時点でのeGFRの年間総変化量(最小二乗平均)は、イプタコパン群が-3.10mL/分/1.73m2/年と、プラセボ群の-6.12mL/分/1.73m2/年に対し、低下の勾配が有意に緩徐であった(群間差:3.02mL/分/1.73m2/年、95%信頼区間[CI]:2.02~4.01、補正後のp<0.001)。 また、複合腎不全エンドポイントの発生率は、イプタコパン群が21.4%と、プラセボ群の33.5%と比べて有意に低かった(ハザード比[HR]:0.57、95%CI:0.40~0.81、p=0.003)。 もう1つの副次エンドポイントである9ヵ月時の24時間尿蛋白/クレアチニン比<1の患者の割合は、イプタコパン群が43.9%とプラセボ群の17.5%に比べて有意に高かった(群間差:26.4%[95%CI:18.7~34.0]、オッズ比[OR]:4.45[2.79~7.09]、p<0.001)。有害事象の8割が軽度~中等度 有害事象の発生率は、イプタコパン群で87.0%、プラセボ群で89.1%であった。イプタコパン群で頻度の高い有害事象は、COVID-19(21.0%)、上気道感染症(16.0%)、上咽頭炎(10.1%)であった。同群の有害事象の重症度別の発生率は、軽度が46.6%、中等度が34.0%、重度が6.3%だった。 重篤な有害事象は、イプタコパン群で12.2%、プラセボ群で11.7%に発現し、重篤な感染症はそれぞれ6.7%および2.1%にみられた。試験薬との関連が疑われた有害事象は20.2%および20.5%、試験薬の投与中止に至った有害事象は4.6%および4.6%に発現した。死亡例は認めなかった。 著者は、「イプタコパン群は慢性的なeGFR低下の発生率がプラセボ群の約半分であり、腎機能の全体的な低下の幅も著明に小さかった」とし、「イプタコパンは、進行リスクの高いIgA腎症患者において、腎機能の低下の速度を有意に減速した」と結論付けている。また、「本試験は、尿蛋白高値に基づき進行リスクが高いと判定されたIgA腎症を対象としており、低リスク例におけるイプタコパンの効果は不明である」と指摘している。

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筋力が高齢女性の死亡リスクと関連

 筋力が寿命に好ましい影響を与える可能性が報告された。高齢女性において、握力などで評価した筋力と8年間の追跡期間中の死亡リスクとの間に、有意な関連が見られたという。米ニューヨーク州立大学バッファロー校のMichael LaMonte氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に2月13日掲載された。 この研究では、高齢者の筋力の評価によく用いられている、握力および椅子から立ち上がる速度(5回立ち上がりテスト:椅子からの立ち上がり動作を5回行った所要時間)という2項目が測定された。その結果、高齢女性では握力が15ポンド(7kg弱)高いごとに死亡率が12%低下し、椅子から立ち上がる所要時間が6秒短いごとに死亡率が4%低下するという関連が示された。 LaMonte氏は、「椅子から立ち上がるための筋力が低下していると、ウォーキングなどの有酸素運動を行うことも難しくなる。ウォーキングは米国の65歳以上の高齢者において、最も一般的な運動だ」と解説。また、「健康的な老化のためにはおそらく、適度な有酸素運動と筋力強化のための運動の双方を行うことが最善の方法ではないか」と語っている。 この研究には、63~99歳の女性5,472人(平均年齢78.7±6.7歳)が参加。平均8.4±2.4年の追跡期間中に1,964人が死亡した。死亡リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、社会人口統計学的因子、生活習慣、臨床因子)を調整後、握力が高いほど、また椅子から立ち上がる速度が速いほど、死亡リスクが低いという有意な関連が示された。具体的には、握力の第1四分位群(握力が最も弱い下位25%)を基準として、第4四分位群(握力が最も強い上位25%)はハザード比(HR)0.67(95%信頼区間0.58~0.78)で、第3四分位群もHR0.85(同0.75~0.97)だった(傾向性P<0.001)。椅子から立ち上がる速度については第4四分位群がHR0.63(0.54~0.73)、第3四分位群はHR0.76(0.67~0.87)で、第2四分位群もHR0.79(0.69~0.88)だった(傾向性P<0.001)。 これらの関連は、加速度計で測定した身体活動量や座位時間、歩行速度、全身性の炎症反応で調整しても有意性が維持されていた。また、筋力が強い高齢女性はガイドラインで推奨される身体活動量を満たしていなくても、死亡リスクが低かった。 重要なこととして、筋力が強いことによるメリットを得るために、ボディビルダーのようなたくましい体格である必要性がないことも示された。LaMonte氏は、「体重や除脂肪体重を考慮に入れて解析しても、筋力の強い高齢女性の死亡率は有意に低く、筋力と死亡率の関係は体格の違いでは説明できなかった」と述べている。 これらの結果に基づき研究者らは、高齢者が筋力を増強するために、必ずしもジムに通う必要はないと強調する。ただし注意点として、高齢者が筋力トレーニングを始める場合、事前に医師に相談することを強く推奨している。LaMonte氏も、高齢者が目標とする筋力トレーニングを安全に進めるために、理学療法士や運動専門家の助言を受けると良いと提案している。

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HOST-EXAM 10年フォローアップの再考―長期抗血小板療法におけるクロピドグレルの位置付け(解説:野間重孝氏)

 PCI後抗血小板療法の基本は、長い間、2剤併用療法(DAPT)の後にアスピリン単剤を継続するというものであった。とくにベアメタルステントから初期の薬剤溶出性ステントの時代においては、ステント血栓症への警戒が強く、アスピリンは事実上「長期継続が前提」の薬剤として扱われていた。このため、DAPT終了後にどの薬剤を残すかという問題自体が臨床上の大きな議論となることは少なく、アスピリン継続は半ば慣習的に受け入れられていた側面もあった。 しかし2010年代後半に入り、新世代薬剤溶出性ステントの普及によりステント血栓症のリスクが低下すると、抗血小板療法における出血リスクが改めて問題となるようになった。この流れの中で、DAPT期間の短縮、さらにはアスピリンを中止しP2Y12阻害薬単剤へ移行する戦略が検討されるようになった。2018年前後から複数のランダム化試験により、P2Y12阻害薬単剤戦略の安全性と有効性が示され、従来の「アスピリン長期継続」という考え方は徐々に見直されるようになった。 このような流れの中で、DAPT終了後にアスピリンとクロピドグレルのいずれを単剤として選択すべきかを直接比較したHOST-EXAM試験は、臨床的に重要な位置を占める研究となった。本試験はクロピドグレル単剤の優位性を示し、長期維持療法における抗血小板薬選択に新たな視点を提示したものである。もっとも、この試験は2年間のランダム化比較の後、治療選択が担当医に委ねられるという設計であり、長期フォローアップ結果の解釈には一定の注意を要する側面もある。今回の10年フォローアップは、このような試験デザインの特徴を踏まえつつ、PCI後慢性期における抗血小板療法の在り方を再考するうえで重要な知見と位置付けられる。それは、本研究では10年間の追跡が行われているものの、無作為化された抗血小板療法は最初の24ヵ月に限定され、その後の治療は担当医の判断に委ねられている。それにもかかわらず、解析はintention-to-treat原則に基づいて行われており、長期フォローにおける実際の抗血小板療法の影響を必ずしも反映していない可能性もありうるからである。 また、intention-to-treat解析は、無作為化によって得られた患者背景の均衡を維持し、治療選択に伴うバイアスを回避する目的で広く用いられる方法である。しかし本研究のように、無作為化治療が2年間に限られ、その後長期にわたり治療内容が変更されうる状況では、実際の治療効果をどこまで反映しているかは慎重に検討される必要がある。 さらに、本研究ではper-protocol解析においてイベント抑制効果がより顕著となり、NNTはITT解析の33から17へと変化している。この差は、長期フォローにおけるアドヒアランスや治療変更の影響が結果に関与している可能性を示唆しており、本研究結果の解釈において重要な点と考えられている。 したがって、本研究の結果は「クロピドグレル単剤治療を10年間継続した場合の効果」を直接示すものというよりも、「初期にクロピドグレルまたはアスピリンに割り付けられた患者群の長期予後の差」を示したものとして解釈するのが適切と考えられる。 また、本試験はopen-label設計であり、盲検化が行われていない点にも留意が必要である。とくにACSによる再入院や再血行再建などのエンドポイントは担当医の判断に依存する要素を含むため、治療内容の認識がイベント判定に影響を与える可能性がある。 さらに、本研究は韓国における単一民族コホートで行われており、東アジア人特有の薬物代謝特性の影響も考慮する必要がある。CYP2C19 loss-of-function alleleは東アジア人において高頻度に認められ、クロピドグレルの薬効に影響を与えることが知られている。このため、本研究の結果を日本人を含む他集団へそのまま外挿できるかについては慎重な検討が必要であると考えられる。 もっとも、本研究は抗血小板薬単剤療法を比較した無作為化試験の長期追跡としては、現時点で最長の10年フォローを報告した点で大きな価値を有する。抗血小板療法はPCI後に生涯にわたり継続されることが多いにもかかわらず、従来のランダム化試験の多くは2〜5年程度の追跡にとどまっていた。本研究は長期抗血小板療法の臨床経過に関する貴重な知見を提供するものであり、イベント曲線が長期間にわたり乖離していく傾向が示された点は注目に値する。 一方で、本研究ではクロピドグレル群において主要複合エンドポイントの有意な減少が認められたものの、全死亡には差が認められなかった点は重要である。抗血小板療法の長期的意義を評価するうえで、最も客観的なエンドポイントである全死亡に差が認められなかったことは、本研究の臨床的意義を解釈する際に慎重な姿勢を求めるものと考えられる。 また、クロピドグレル群では出血イベントの減少が認められているが、抗血小板薬単剤による重篤な出血は臨床的には必ずしも頻繁に経験されるものではない。さらに本研究における出血イベントの絶対差は比較的小さく、その臨床的意義については慎重に解釈する必要があると考えられる。 なお、近年のガイドラインの動向として、2024年ESCガイドラインではクロピドグレル単剤に対してClass I, Level Aの推奨が与えられており、抗血小板薬単剤戦略に対する評価は大きく変化しつつある。このようにガイドライン自体もクロピドグレル単剤の有効性を支持する方向へ進んでいるが、本研究の結果を踏まえても、無作為化期間が限定されている点や長期フォローの解釈上の問題を考慮すると、クロピドグレル単剤を広く第1選択として推奨するには、なお慎重な解釈が必要と考えられる。 本研究はPCI後慢性期における抗血小板療法の選択について重要な長期データを提示した点で価値の高い研究である。しかしながら、本研究は前半は無作為化比較試験として、後半は観察研究的性格を帯びた延長試験として理解すべきものであり、その結果は臨床実践に直ちに適用すべき決定的証拠というよりも、今後の抗血小板療法の在り方を再考するための重要な長期資料と位置付けられるべきであると考えられる。 評者の結論としては、実臨床においては、クロピドグレル単剤を有力な選択肢の1つとして考慮しつつも、患者背景、出血リスク、薬剤反応性などを踏まえた個別化治療の重要性は依然として変わらないと考えるものである。

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その安堵、ちょっと危ないかも? 診察室の外に「心のゆとり」を育てる資産形成のすすめ【医師のためのお金の話】第103回

厚生労働省から発表された2026年度の診療報酬改定の全容を前に、戦々恐々としていた多くの医師はひとまず胸をなでおろしたのではないでしょうか。今回の改定を一言で表現するならば、きわめて厳しかった前回の揺り戻しです。昨今の急激な物価高騰、そして光熱費や人件費の増大に悲鳴を上げていた医療現場に対して、一定の配慮がみられる救済色の強い内容となりました。多くの医療機関にとって、向こう2年間は最悪の事態を回避できた、まずまずの結果と言えるかもしれません。しかし、私はこの安堵の空気に強い危機感を抱いています。 今回の改定は、あくまで現行制度の延命措置、いわば対症療法に過ぎません。私たちは、2つの大きな構造的な問題に直面しています。「少子高齢化による社会保障費の限界」と「テクノロジーによる既存職域の破壊」…。この2つの問題に対して、何ら抜本的な解決策が見当たらないからです。2年ごとの数字に一喜一憂している間に、私たちの足元では、より巨大で不可逆的な変化の波が押し寄せています。バッファーのない病院経営先日、久しぶりに大学同級生の医師たちと集まりました。話題の中心は、職場の環境や診療報酬改定などのテクニカルな話です。開業を控えた仲間もおり、話は自然と医療機関の経営面にも及びました。私が病院長を務める病院はかろうじて黒字を確保していますが、多くの病院は赤字に苦しんでおり、その悩みは切実です。病院長業務の一環で、経営の数字を毎月確認していますが、経営のバッファー(余裕)が小さいことに気付かされます。すべてを完璧に遂行してようやく微々たる利益が残り、少しでも采配を誤れば、たちまち赤字へと転落する…。これが現在の病院経営の構造的な厳しさです。現状では「開業医はまずまず、病院は厳しい」という図式が成り立っています。状況の違いもあり、開業医・勤務医共に自分の周囲のことしか考えていない印象を受けます。もちろん、自身の生活を守ることは理にかなっています。しかし、こうした狭い視点に終始していると、予期せぬ方向から足をすくわれる可能性が高いと危惧しています。AIがもたらす「静かなる破壊」私がそう思う最大の理由は、AIの進歩が予想をはるかに上回るスピードで進行しているからです。すでにAIによって、かつての安定業界がいくつも揺らぎ始めています。 SaaS(クラウドサービス)業界数年前まで最強のビジネスモデルとされましたが、AIによるコード生成の一般化で業界自体の先行きが危ぶまれています。 語学・クリエイティブ業界翻訳や画像生成技術の飛躍的向上により、既存の職域が急激に再編されています。現時点では、医療業界はAIから負の影響を受ける可能性は低いと思われているかもしれません。確かに、高度な手技を伴う分野への影響は小さいでしょう。しかし、診断や処方をメインとする一般内科などは、容易にAIに置換される可能性を秘めています。AIは感情に左右されず、24時間365日、最新のエビデンスと数千万件の症例データを参照して、数秒で回答を導き出します。この圧倒的な効率性を前にしたとき、従来の「知識や経験の切り売り」としての医師の価値は、急激に低下せざるを得ません。資産形成という名の防波堤このAIディストピアが現実味を帯びる中、私たちが取るべき生存戦略は、医療スキルの研鑽だけでは不十分だと思います。ここで重要になるのが、資産形成を通じた多角的な防衛策でしょう。なぜ医師に資産形成が必要なのでしょうか。それは、開業医や勤務医にかかわらず、収入が自分の労働という単一のエンジンに依存しているからです。これは、投資の世界で言えば1点集中投資というきわめてリスクの高い状態です。AIの台頭は、私たちの働いて稼ぐ力の価値を相対的に下げていきます。自分のスキルがコモディティ化する未来を見据えて、労働とは無関係に収益を生む資産を持つことは、現代の医師にとって必須のリスクマネジメントではないでしょうか。また、資産背景というバッファーがあるからこそ、診療報酬の点数に縛られない自由な発想や、患者に真に寄り添う心の余裕が生まれます。皮肉なことに、医療から離れた場所で資産を築くことが、医師としての倫理観を守るための強力な防壁となるのです。凪の時間を準備期間に変えよう!私は医療以外にも、経営している企業の業界や不動産界隈など、多種多様な方々と交流を持っています。そうした外の世界から医療業界を眺めていると、井戸の中にいては見えない歪みや、ディストピアの足音がはっきりと聞こえる気がします。急激に変化する世の中の動向は、同業者の中だけで話していても、なかなか気付けません。医療という1本の足に、ビジネスや投資という2本目の足を加えた生き方を検討すべきでしょう。2026年の改定がもたらした時間は、ただの休息ではありません。5年後、10年後の荒波を生き抜くための仕込みの期間です。今、私たちがすべきことは、今回の改定で得られた余裕を、外の世界への接点と資産の多角化に投資することです。まずは医療の外に出て他業界の人と会い、自分の人的ポートフォリオや資産ポートフォリオを見直してみてください。その一歩が、AIディストピアを回避する一助になると思います。

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第290回 はしか急増、3月末で全国に197人 接種歴確認と2回接種が急務/厚労省

<先週の動き> 1.はしか急増、3月末で全国に197人 接種歴確認と2回接種が急務/厚労省 2.中東情勢悪化で医療現場に不安 EMIS活用して在庫把握へ/厚労省 3.医師偏在に現場が危機感、4割が開業規制支持 地域格差是正へ/日経新聞 4.オンライン診療を医療法に明記 96項目の遵守事項で安全確保/厚労省 5.OTC類似薬に25%負担 医療保険改革が審議入り、応能負担強化へ/政府 6.看護専門学校の定員割れ深刻化 2040年見据えた人材確保策を議論/厚労省 1.はしか急増、3月末で全国に197人 接種歴確認と2回接種が急務/厚労省麻疹(はしか)の感染拡大が続いている。国立健康危機管理研究機構(JIHS)によると、2026年第13週までの全国累計患者数は197人に達し、前年同時期の3倍超と、2020年以降で最も速いペースで増加している。東京都48人、鹿児島県24人、愛知県23人が多く、海外流行地からの持ち込みを起点に国内感染が広がった可能性が高い。麻疹は空気感染し、免疫のない人は同じ空間にいるだけで感染し得るうえ、肺炎や脳炎など重い合併症を招くこともあるが、特効薬はない。唯一有効な予防策はワクチン接種で、MRワクチン2回接種が基本となる。日本感染症学会も、流行防止には2回接種率95%以上が必要だと注意喚起をしている。東京都では4月10日時点の患者数が速報値で97人に達し、昨年同時期の10倍超となった。10~30代が約9割を占め、接種歴が1回のみ、あるいは不明な若年成人の脆弱性が浮き彫りになっている。千葉県では今年22例目が確認され、昨年通年に並んだほか、川崎市でも4月だけで複数例が報告された。厚生労働省は、発熱や発疹がある場合は事前に医療機関へ連絡し、公共交通機関を避けて受診するよう求めている。接種歴の確認と未完了者への追加接種が急務となる。 参考 1) 感染症発生動向調査(IDWR)2026年第13週(国立健康危機管理機構) 2) 麻しん(はしか)が世界・国内で増加しています(日本感染症学会) 3) 空気感染するはしか、増加続く 厚労省が接種徹底と注意呼びかけ(Science Portal) 4) はしか患者3月までに197人、コロナ禍後最多だった前年同時期の3倍以上…子どものワクチン接種呼びかけ(読売新聞) 5) はしかの全国感染者数 1週間の新たな感染者30人 感染者数高止まり(日テレNEWS) 2.中東情勢悪化で医療現場に不安 EMIS活用して在庫把握へ/厚労省中東情勢の悪化を受け、石油由来原料を使う医薬品、医療機器、医療物資の供給不安が医療現場で強まっている。厚生労働省と経済産業省の対策本部によると、4月8日時点で医療機関やメーカー・卸業者からの相談は計543件に上り、このうち16件が安定供給に影響ありと判断された。透析回路や医療用手袋など10件はなお対応検討中であり、政府は流通段階の「目詰まり」解消を急ぐとしている。政府は現時点で「直ちに供給が滞る状況ではない」と説明する一方で、医療7団体は買い占めや過剰発注が連鎖すれば、供給不足や価格上昇を招きかねないと懸念を表明した。上野 賢一郎厚生労働大臣との意見交換では、需給見通しの正確な情報発信や、必要量に見合った発注の徹底、医療機関同士で物資を融通できる体制整備を求める声が相次いだ。とくに医療用手袋など日常的に消費する物資への警戒感が強い。厚労省は10日から、災害時に使う広域災害救急医療情報システム(EMIS)を活用し、全国約1万3,000の病院などから在庫や受け入れ状況をオンラインで把握する体制を開始した。今後は定点観測や相談窓口、EMISによる情報収集を通じて需給逼迫の兆候を早期に捉え、厚労・経産両省と医療団体が連携して、安定供給を維持する構え。焦点は、実際の不足が起きる前に冷静な発注行動と情報共有で市場不安を抑え込めるかにある。 参考 1) EMISポータルサイト(厚労省) 2) 医師会ら “医療用物資の需給情報発信し安定的な確保”要請(NHK) 3) 厚労省 医療用物資の調達 災害時にシステム活用で経産省と連携(同) 4) 医療機関1.3万ヵ所から物資の供給状況把握へ 厚労省 災害時システムで10日から情報収集(CB news) 5) 医療物資の供給把握 厚労省、システム運用 全国1.3万の病院(日経新聞) 3.医師偏在に現場が危機感、4割が開業規制支持 地域格差是正へ/日経新聞医師の地域偏在・診療科偏在が深刻化する中、医師自身の間でも自由開業の規制を求める声が強まっている。日本経済新聞と日経メディカルの共同調査では、「開業規制が必要」との回答は42%で、「必要ない」の21%を大きく上回った。地域偏在を深刻とみる回答は46%、診療科偏在も47%に達し、現場の危機感が明確となった。偏在の認識は地域で差が大きく、東京23区では29%にとどまる一方、町村では65%に達する。人口10万人当たり医師数などを基にした偏在指標でも、東京都と岩手県で約2倍の格差があり、西日本に多く東日本に少ない「西高東低」の傾向も続く。勤務医ほど規制支持が強く、病院勤務医では46%が必要と回答したのに対し、開業医では賛否が拮抗した。こうした背景には、現行の自由開業制の下で都市部・人気診療科への集中が進み、地域医療の持続性が揺らいでいる現状がある。厚生労働省の医師確保計画見直しでは、医師偏在は「地域」と「診療科」の二重構造で進行し、とくに外来中心の診療所医師が都市部に偏在している点が課題とされている。政府は改正医療法に基づき、2026年4月から「外来医師過多区域」を設定し、新規開業者に対し在宅医療や夜間対応、医師不足地域での診療などを要請できる制度を開始した。応じない場合には保険医療機関の指定期間短縮というディスインセンティブも設けたが、あくまで要請ベースにとどまる。その一方で、厚労省の資料では、医師確保は単なる配置の問題にとどまらず、勤務環境やキャリアパス、地域医療構想との整合的な政策が不可欠とされる。そのため、単純な規制だけではなく、地域勤務へのインセンティブやタスクシフト、医療提供体制の再編といった総合的な対策が求められている。先述のアンケートの自由回答でも「自由開業制を続ける限り偏在は解消しない」との声がある一方で、「過疎地への誘導策が重要」との指摘も多い。規制と誘導の最適な組み合わせが、今後の医師偏在対策の焦点となる。 参考 1) 野放図な開業を医師も危惧、4割「規制を」 大都市・診療科の偏り加速(日経新聞) 2) 医師の42%が「開業規制が必要」と回答、「不必要」にダブルスコア(日経メディカル) 3) 外来医師過多区域に係る候補区域の公表について(厚労省) 4) 医師確保計画の見直し等に向けたとりまとめ(同) 5) 医師偏在解消に向け、2026年4月から外来医師過多区域・重点医師偏在対策支援区域を設定し対応を強化-地域医療構想・医療計画検討会(Gem Med) 4.オンライン診療を医療法に明記 96項目の遵守事項で安全確保/厚労省2026年4月1日、改正医療法に基づくオンライン診療の関連規定が施行され、これまで通知や指針を中心に運用されてきたオンライン診療が、医療法上明確に位置付けられた。厚生労働省は施行に先立ち、医療機関向けチェックリストを通知し、計96項目の遵守事項と14項目の推奨事項を整理。オンライン診療の提供面では34項目、提供体制では62項目を求め、安全性と適正実施の徹底を図る。新ルールでは、オンライン診療は対面診療の代替ではなく補完とされ、医師は診療の都度、医学的観点から実施の可否を判断し、不適切な場合は速やかに対面診療へ切り替える必要がある。患者への事前説明と同意取得も必須で、触診ができず得られる情報が限られること、対面診療を組み合わせる必要があること、診療計画や急変時対応などを説明しなければならない。初診からのオンライン診療は原則として「かかりつけ医」が行うが、休日夜間やかかりつけ医不在時など例外的に他医師が行う場合は、診療前相談を経た上で、対面診療へ確実につなぐ体制整備が求められる。処方では初診時の麻薬・向精神薬投与や長期処方を制限し、メールやチャットのみで完結する診療も認めない。加えて、通信環境やセキュリティ対策も厳格化され、システムの安全性確認やアクセス管理、情報漏洩対策などが医療機関の責務として明確化された。今回の法改正では、患者がオンライン診療を受ける場所として「オンライン診療受診施設」も制度化された。公共施設などを活用した受診環境整備が可能となる一方で、広告規制も拡大され、受診施設に関する表示も新たな規制対象となる。こうした制度整備の背景には、医療アクセス改善への期待がある。日経新聞・日経メディカルの調査では、医師の51%が「オンライン診療は地域偏在の緩和に寄与する」と回答した。ただ、届け出医療機関はなお限定的で、導入コストや対面より低い診療報酬が普及の壁として残っている。今後は安全確保と普及促進をどう両立させるかが焦点となる。 参考 1) (医療機関向け)基準等遵守の確認をするためのチェックリスト(厚労省) 2) オンライン診療の実施に際し患者に対して説明すべき内容のチェックリスト(同) 3) オンライン診療の基準、厚労省がチェックリスト 順守事項に計96項目挙げる(CB news) 4) 医師の51%が遠隔診療に期待 地域偏在対策、普及へ報酬増求める声(日経新聞) 5) 改正医療法によるオンライン診療規制に伴う医療広告規制の変容~その1 医療広告規制と「オンライン診療受診施設に関する広告」規制~(のぞみ総合法律事務所) 5.OTC類似薬に25%負担 医療保険改革が審議入り、応能負担強化へ/政府4月9日、政府が国会に提出した健康保険法等改正案が衆議院本会議で審議入りした。今回の改革は、増大する社会保障費と現役世代の保険料負担の抑制を背景に、「給付と負担の見直し」と「制度の持続可能性確保」を柱とするものである。最大の焦点は、市販薬と同等の効能を持つ「OTC類似薬」に対する新たな患者負担の導入だ。対象は解熱鎮痛薬や抗アレルギー薬など約77成分・1,100品目に及び、薬剤費の4分の1を保険給付から外し、追加負担として患者に求める仕組みを創設する。これは「一部保険外療養」として制度化され、現役世代の保険料負担を年間2,600億円程度軽減する効果が見込まれている。その一方で、がんや難病患者、小児、長期使用が必要な患者などには負担を課さない方向で検討が進められている。また、後期高齢者医療制度では、株式配当などの金融所得を保険料や窓口負担に反映させる仕組みを強化する。現行制度では申告方法により負担に差が生じる問題があり、金融機関からのデータ提出を義務化することで「応能負担」の徹底を図る。さらに、出産費用については、全国一律の基本単価を設定し、保険で全額給付する仕組みへの転換を進める。従来の出産育児一時金では費用上昇に追いつかず自己負担が残る課題があり、現物給付化と情報の見える化により負担軽減と選択の透明性向上を目指す。このほか、高額療養費制度では長期療養者への影響配慮を明文化し、医療機関の業務効率化や勤務環境改善を支援する新たな基金事業も創設される。DXや生成AI活用などによる効率化も政策的に後押しされる点が特徴となっている。政府は「世代間・世代内の公平性確保」と「限られた財源の効率的活用」を強調する一方で、野党からは「患者負担増による受診控え」や「治療遅延のリスク」が指摘されており、制度設計の妥当性が今後の審議の焦点となる。 参考 1) 健康保険法等の一部を改正する法律案について(厚労省) 2) 健保法等改正案が衆院で審議入り 高市首相「不断の改革に取り組む」 上野厚労相「負担の公平性確保」(ミクスオンライン) 3) OTC類似薬の追加負担「がんや入院中の患者には求めず」 上野厚労相(日経新聞) 6.看護専門学校の定員割れ深刻化 2040年見据えた人材確保策を議論/厚労省厚生労働省は4月10日、「2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」の初会合を開き、2040年ごろの看護職員の需給を都道府県別に推計する方針を示した。新たな地域医療構想の実現に向け、看護人材の確保と資質向上は不可欠であり、秋ごろまでに養成・確保策と推計方法を議論し、冬ごろに取りまとめる見通し。背景には、看護人材確保を巡る状況の悪化がある。厚労省の調査では、3年制看護専門学校の2025年度入学者は2万868人で、定員充足率は79.5%と初めて8割を下回った。2017年度をピークに減少傾向が続いており、大学入学者は増えているものの、専門学校と大学を合わせた入学者総数も5年連続で減少している。専門学校卒業生は地元就職率が高いとされ、地方の看護師確保への影響が懸念されている。実際、地域では養成基盤の縮小が進む。埼玉県では看護専門学校44校のうち少なくとも7校が募集停止を表明し、少子化や志願者減、4年制大学志向の強まりが経営難に拍車をかけている。人口10万人当たり看護師数が全国最下位の同県では、地域医療への影響に強い危機感が広がる。秩父地域では唯一の看護師養成校の存続も不透明となっている。厚労省の検討会では、若年人口減少に加え、現在の就業者の多くを占める45歳以上が2040年には高齢化することを踏まえ、退職増や高年齢者就業も見込んだ推計を行う。加えて、訪問看護の深刻な人手不足や領域偏在、ICT活用による業務効率化、育児・介護との両立支援、ハラスメント対策など勤務環境の改善も主要な論点となる。看護師不足は、単なる人数の問題ではなく、地域偏在、領域偏在、養成基盤の弱体化が重なった構造的な問題として対策が求められている。 参考 1) 第1回 2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会:資料(厚労省) 2) 看護専門学校の入学者、定員比で初めて8割下回る…学生離れ進み地方で不足との指摘も(読売新聞) 3) 看護職員の40年ごろの需給を地域別に推計へ 厚労省、養成・確保対策の検討会が初会合(CB news) 4) 埼玉県内の看護専門学校 本年度以降、7校が学生募集停止 志願者減少で経営難(東京新聞)

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事例45 デノタスチュアブル配合錠の査定と復活【斬らレセプト シーズン4】

解説事例の沈降炭酸カルシウム・コレカルシフェロール・炭酸マグネシウム(商品名:デノタスチュアブル)配合錠(以下「同錠」)が、B事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)にて査定となりました。査定の原因を探るため、まずは、同錠の添付文書を見てみました。効能または効果には「RANKL阻害剤(デノスマブ(遺伝子組換え)等)投与に伴う低カルシウム血症の治療及び予防」と記載があります。事例を見返すと、病名に「低カルシウム血症」は付与されていますが、レセプト内に「RANKL阻害剤」の投与が見当たりません。カルテを参照したところ、紹介の患者であって、当院に紹介される3ヵ月前に前医にて「RANKL阻害剤」の投与があったことを診療情報提供書にみつけました。担当医師は、この情報をもとに同錠を適切に投与されていました。レセプトにこの情報が反映されていなかったために、過剰な投与と判定されたものと推測ができます。算定要件に反していないため、「2025年6月、他院にてプラリア皮下注(RANKL阻害剤)施注済み」を理由にカルテの写しを添えて再審査請求を行ったところ復活しました。査定対策として、検査結果から同錠を処方する際には、処方画面にて「RANKL阻害剤」の有無をチェックする警告が表示されるようにマスター変更しています。

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英語で「感染性胃腸炎」、患者に説明するには?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第57回

医学用語紹介:感染性胃腸炎 infectious gastroenteritis「感染性胃腸炎」を表す医学用語はinfectious gastroenteritisですが、患者さんに説明するときは、どのように伝えたらよいでしょうか?講師紹介

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