サイト内検索|page:14

検索結果 合計:34354件 表示位置:261 - 280

261.

診療ガイドライン 2025年版 第7版

新たな要素が加わり、ブラッシュアップされた改訂版、出来!本版では「患者会や膵がん教室への参加」「老年医学的評価」に関する2つのCQが、医療者と患者市民団体で構成されるグループで検討された臨床疑問として、初めて掲載された。また「Future Research Question」を新設し、バイオマーカーやがん遺伝子パネルを用いた診断、メタリックステント留置後の偶発症への対応など、膵診療における最新の動向についても解説した。診断から治療まで最新のエビデンスを網羅し、患者・市民の視点も取り入れた、膵診療に携わるすべての医療者にとって必携の1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する膵診療ガイドライン 2025年版 第7版定価4,180円(税込)判型B5判頁数352頁発行2025年7月編集日本膵臓学会膵診療ガイドライン改訂委員会ご購入はこちらご購入はこちら

262.

扇風機、CDC推奨より高温環境でも効果

 米国疾病管理予防センター(CDC)は、体温を上昇させる可能性があるとして、摂氏32度を超える温度での扇風機の使用を推奨していない。一方、モデル化によると、扇風機は湿度に応じて体温を低下させる可能性があるという。カナダ・モントリオール心臓研究所およびオーストラリア・シドニー大学の研究チームは、高齢者58例を対象に、扇風機の使用が高温多湿の環境下で心臓への負担を軽減する一方で、非常に高温で乾燥した環境下では心臓への負担を3倍に増加させることを報告している1)。今回、同チームが、扇風機使用が体温、発汗、暑さの感じ方、快適度にどう影響するかを検証した結果が、JAMA Network Open誌2025年7月29日号Research Letterに掲載された。 参加者は、高温多湿(38度・湿度60%)または非常に高温で乾燥(45度・湿度15%)の環境下に置かれた。高温多湿環境では、全参加者は72時間以上の間隔を空けて、「介入なし」「扇風機使用」「肌を濡らす」「扇風機使用と肌を濡らすの組み合わせ」の環境下にランダムに置かれた。非常に高温で乾燥した環境では、冠動脈疾患(CAD)を有する被験者は「介入なし」「肌を濡らす」のみを受けた。事前に設定された二次アウトカムは直腸温度の変化(自己挿入型サーミスタ)、発汗率(体重変化)、および熱感覚と快適度の変化で、それぞれ7段階と4段階のスケールで測定された。 主な結果は以下のとおり。・58例(CADなし31例、あり27例、男性67%、平均年齢68歳)が解析に含められ、計320回の曝露を受けた。【38度・湿度60%/高温多湿】・扇風機の使用により、直腸温度が低下(-0.1度)した。肌を濡らす単独、扇風機+肌を濡らすは体温との関連は認められなかった。・発汗量は、扇風機の使用で増加(57mL/h)し、肌を濡らす単独で減少(-67mL/h)した。扇風機+肌を濡らすは発汗量に影響しなかった。・熱感覚は、扇風機の使用(-0.6)、肌を濡らす(-0.4)、扇風機+肌を濡らす(-1.1)で改善した。・快適度は、扇風機の使用(-0.6)、肌を濡らす(-0.4)、扇風機+肌を濡らす(-0.7)で改善した。【45度・湿度15%/非常に高温乾燥】・扇風機の使用により直腸温度が上昇(0.3度)した。肌を濡らす単独、扇風機+肌を濡らすは体温との関連は認められなかった。・発汗量は、扇風機の使用(270mL/h)、扇風機+肌を濡らす(205mL/h)でそれぞれ増加したが、肌を濡らす単独では減少(-121mL/h)した。・熱感覚は、扇風機の使用で悪化(0.5)し、肌を濡らすで改善(-0.4)した。扇風機+肌を濡らすは熱感覚に影響しなかった。・快適度は、扇風機の使用で悪化(0.5)し、肌を濡らす、扇風機+肌を濡らすは快適度に影響しなかった。 研究者らは「CDCの助言とは対照的に、38度・湿度60%の湿度下で扇風機を使用しても、CADの有無にかかわらず高齢者の体温は上昇せず、むしろ体温をわずかに低下させ、感覚を改善した。一方、非常に高温で乾燥した熱環境では、扇風機の使用はすべてのアウトカムを悪化させており、これらの条件下では扇風機の使用を控えるべきだろう。一方、肌を濡らすことは両方の環境下で発汗を減少させ、感覚を改善させており、脱水リスク低減策として推奨される可能性がある」とした。

263.

周術期心停止で緊急手術と待機的手術では差異があるか/浜松医科大

 周術期の心停止は緊急手術でより頻度が多く、死亡リスクを伴うが、その発生率、原因、および転帰を調査した大規模な研究は不足している。そこで、このテーマについて浜松医科大学医学部附属病院集中治療部の姉崎 大樹氏らの研究チームは、全国のICUデータを基にわが国の緊急手術と待機的手術における周術期心停止の疫学を調査した。その結果、緊急手術では待機的手術と比較し、周術期心停止の発生率が高いことが判明した。この結果は、British Journal of Anaesthesia誌オンライン版2025年7月24日号に公開された。緊急手術と待機的手術で異なる周術期心停止の発生率、手術手技 研究グループは、日本集中治療患者データベース(JIPAD)という全国的なICU登録データベースを用い、2015年4月~2023年3月までの間に手術室からICU入院前に心停止を経験した患者を対象に調査を行った。患者は、緊急手術と待機的手術に分類され、発生率、手術手技、原因、臨床転帰に関する群間比較を行う多施設共同後ろ向きコホート研究を実施した。 主な結果は以下のとおり。・手術関連ICU入院患者21万4,303例中874例(0.41%)で周術期心停止が発生した。内訳は、緊急手術が3万2,408例中563例(1.74%)、待機的手術が18万1,895例中311例(0.17%)だった。・心停止が最も多く発生した手術手技は、緊急手術群では急性大動脈解離手術で90例(16.0%)、待機的手術群では消化管腫瘍切除術で39例(12.5%)だった。・心停止の主な原因は、緊急手術群では急性大動脈症候群で176例(31.3%)であり、待機的手術群では弁膜症48例(15.4%)と急性冠症候群42例(13.5%)だった。・緊急手術群では、院内死亡率(46.2%vs.15.8%)および他の医療施設への転院率(28.8%vs.14.8%)が有意に高かった。 以上の結果から研究グループは、「全国調査により緊急手術と待機的手術における周術期心停止の発生率、手術手技、病因、臨床転帰に有意な差があることが明らかになった」と結論付けている。

264.

不眠症に対する各運動介入の比較〜ネットワークメタ解析

 中国・北京中医薬大学のZhi-Jun Bu氏らは、不眠症における重症度の軽減および睡眠の質の改善に対するさまざまな運動介入の有効性を比較するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。BMJ Evidence-Based Medicine誌オンライン版2025年7月15日号の報告。 2025年4月1日までに公表された研究をPubMed、Cochrane Library、Embase、Web of Science、SPORTDiscus、PsycINFOデータベースより検索した。成人不眠症患者を対象に、介入を評価したランダム化比較試験(RCT)をメタ解析に含めた。バイアスリスクの評価には、Cochrane Risk of Bias 2 Toolを用いた。エビデンスの確実性は、ネットワークメタ解析信頼性(CINeMA)プラットフォームを用いて評価した。各介入の有効性を評価するため、頻度主義ネットワークメタ解析を実施し、平均差(MD)および95%信頼区間(CI)をアウトカムとして算出した。睡眠アウトカムの評価には、ピッツバーグ睡眠品質指数(PSQI)、不眠症重症度指数(ISI)、睡眠日誌などの検証済みのツールおよび睡眠ポリグラフ、アクチグラフィーなどの客観的睡眠指標を複合的に測定した。 主な結果は以下のとおり。・22件のRCT、1,348例をメタ解析に含めた。・13種類の介入のうち、運動介入は7種類で、ヨガ、太極拳、ウォーキング/ジョギング、有酸素運動と筋力トレーニングの併用、筋肉トレーニング単独、有酸素運動と治療の併用、有酸素運動の混合であった。・対象研究のバイアスリスクは、低いが4件(18%)、中程度が15件(68%)、高いが3件(14%)であった。・ヨガは、積極対照群(通常ケア、生活習慣改善など)と比較し、睡眠日誌より収集したデータに基づき総睡眠時間の増加、睡眠効率の改善、入眠後の中途覚醒時間の減少、入眠潜時の短縮が認められた。【総睡眠時間】MD:110.88分、95%CI:58.66〜163.09、エビデンスの確実性:中【睡眠効率】MD:15.59%、95%CI:5.76〜25.42、エビデンスの確実性:低【入眠後の中途覚醒時間】MD:−55.91分、95%CI:−98.14〜−13.68、エビデンスの確実性:低【入眠潜時】MD:−29.27分、95%CI:−50.09〜−8.45、エビデンスの確実性:低・ウォーキング/ジョギングは、ISIスコアの大幅な低下につながる可能性が示唆された(MD:−9.57ポイント、95%CI:−12.12〜−7.02、エビデンスの確実性:低)。・太極拳は、PSQIスコアを低下させる可能性があり、睡眠日誌より収集したデータに基づき総睡眠時間の増加、入眠後の中途覚醒時間の減少、入眠潜時の短縮が認められた。【PSQIスコア】MD:−4.57ポイント、95%CI:−7.50〜−1.63、エビデンスの確実性:低【総睡眠時間】MD:52.07分、95%CI:25.53〜78.61、エビデンスの確実性:低【入眠後の中途覚醒時間】MD:−36.11分、95%CI:−62.81〜−9.42、エビデンスの確実性:低【入眠潜時】MD:−24.76分、95%CI:−41.07〜−8.46、エビデンスの確実性:低・さらに、太極拳では、客観的睡眠指標を複合的に測定した結果、総睡眠時間を増加させる可能性が示唆された(MD:24.09分、95%CI:4.66〜43.52、エビデンスの確実性:低)。 著者らは「運動介入は、不眠症患者の睡眠改善に有効であり、中でもヨガ、太極拳、ウォーキング/ジョギングは、他の運動よりも効果的であることが示唆された。これらの結果をさらに検証し、強化するためにも、大規模かつ高品質の適切に設定されたRCTの実施が望まれる」と結論付けている。

265.

成人期の継続的な身体活動は死亡リスクを低下させる

 成人期を通じて継続的に身体活動を行っている人は、成人期を通じて非活動的だった人に比べて、あらゆる原因による死亡(全死因死亡)リスクが29〜39%低いことが、新たな研究で明らかになった。このようなリスク低下は、成人期の途中で身体活動習慣を身に付けた人でも認められたという。クイーンズランド大学(オーストラリア)のGregore I Mielke氏らによるこの研究結果は、「British Journal of Sports Medicine」に7月10日掲載された。研究グループは、「成人期に身体活動を始めることは、開始時期がいつであれ、健康にベネフィットをもたらす可能性がある」と述べている。 この研究でMielke氏らは、臨床的疾患を持たない一般成人を対象に、身体活動について少なくとも2時点で評価し、全死因死亡・心血管疾患による死亡・がんによる死亡との関連を検討した、2024年4月9日までに英語で発表された前向きコホート研究を85件選出し、メタアナリシスを実施した。対象者の規模は研究ごとに異なり、最小357人から最大657万人であった。全死因死亡を評価していた研究は77件、心血管疾患による死亡を評価していた研究は34件、がんによる死亡を評価していた研究は15件であった。 解析の結果、全体的には身体活動量が多いほど全死因死亡、心血管疾患による死亡、およびがんによる死亡のいずれのリスクも低い傾向が認められた。特に、一貫して非活動的な群と比較して、身体活動が一貫して多い群では全死因死亡リスクが29〜39%、途中から増加した群では22〜26%低く、心血管疾患による死亡リスクは30~40%低かった。一方で、身体活動の減少と死亡リスクの関連は明確ではなかった。また、がんによる死亡と身体活動との関連は弱く、結果の頑健性も低かった。 さらに、身体活動に関するガイドラインの推奨を満たすことで全死因死亡リスクと心血管疾患による死亡リスクが低下するものの、推奨量を満たしていなくても継続的に身体活動を行っている場合や身体活動量が増加している場合でも、健康へのベネフィットは認められた。このことから研究グループは、「これは、ガイドラインの推奨よりも少ない身体活動量でも、健康には大きな利点をもたらす可能性があることを示すエビデンスや、身体活動を全くしないよりは多少でもする方が良いとする主張と一致する結果だ」と述べている。さらに、「推奨される1週間当たりの運動量を超えて運動しても、追加のリスク低下はわずかだった」と付け加えている。 米疾病対策センター(CDC)は、毎週150分以上の中強度の身体活動、または75分以上の高強度の身体活動を推奨している。CDCによれば、中強度の運動の例は、早歩き、低速度の自転車こぎ、ダブルスのテニス、アクティブヨガ、社交ダンスやラインダンス、一般的な庭仕事、水中エアロビクスなど、高強度の運動の例は、ジョギング、水泳、シングルスのテニス、エアロビクスダンス、高速での自転車こぎ、縄跳び、シャベルで土を掘るなどの作業を伴う庭仕事などであるという。

266.

慢性蕁麻疹に最も効果的な治療薬は何?

 皮膚に強いかゆみを伴う隆起した膨疹(みみず腫れ)が生じる蕁麻疹のうち、発症後6週間以上が経過したものを慢性蕁麻疹という。このほど新たな研究で、慢性蕁麻疹のかゆみや腫れの軽減に最も効果的な治療法は、注射用抗体薬のオマリズマブと未承認の錠剤remibrutinib(レミブルチニブ)であることが示された。マクマスター大学(カナダ)医学部のDerek Chu氏らによるこの研究結果は、「The Journal of Allergy and Clinical Immunology(JACI)」に7月15日掲載された。 蕁麻疹は、アレルギー反応の一環として皮膚の肥満(マスト)細胞がヒスタミンを放出することで生じる。ヒスタミンは血管の透過性を高め、毛細血管から血漿成分が皮膚に漏れ出すことで膨疹が現れる。 Chu氏らは今回、論文データベースから抽出した慢性蕁麻疹に対する全身性免疫調整薬による治療に関する93件の研究(対象者の総計1万1,398人、ランダム化比較試験83件、非ランダム化比較試験10件)を対象に、その安全性と有効性を比較検討した。これらの研究に含まれていた慢性蕁麻疹の治療法は42種類に及んだ。評価項目は、蕁麻疹活動スコア(かゆみおよび膨疹)、血管性浮腫の活動性、健康関連の生活の質(QOL)、および有害事象であった。 その結果、評価項目に対する有効性が最も高いとされた治療薬はオマリズマブ(4週おきに標準用量300mg)とremibrutinibであった。ただし、remibrutinibの安全性に関するエビデンスの確実性は低かった。また、注射薬のデュピルマブは、蕁麻疹活動性の抑制効果は認められたがQOLの改善効果は不明であり、血管性浮腫に対する効果は検討されていなかった。シクロスポリンは、蕁麻疹活動性の抑制に有効な可能性がある一方で、腎臓障害や高血圧などの有害事象の発生頻度が最も高まる可能性が示唆された。そのほか、アザチオプリン、ダプソン、ヒドロキシクロロキン、ミコフェノール酸、スルファサラジン、ビタミンDもアウトカム改善に有効な可能性が示唆された。一方、ベンラリズマブ、キリズマブ、テゼペルマブについては、有効性が確認されなかった。 Chu氏は、「慢性蕁麻疹に対する全ての先進的な治療選択肢を対象とした今回の初めての包括的な分析により、患者と臨床医が選択できる、明確でエビデンスに基づいた『治療選択肢のメニュー』を提示することが可能になった」と述べている。 研究グループは、「本研究結果は蕁麻疹の治療に関する新たな国際臨床ガイドラインの作成に役立つだろう」と述べている。

267.

一部のグルテン不耐症は思い込みによる可能性も

 自分はグルテン不耐症だと信じている過敏性腸症候群(IBS)患者の一部で見られる症状は、実際にはグルテンのせいではなく思い込みにより生じている可能性のあることが、小規模な臨床試験で示された。IBS患者を対象としたこの臨床試験では、グルテンや小麦が含まれていないシリアルバーでも、摂取後に消化器症状の悪化を訴える人がいたという。マクマスター大学(カナダ)医学部教授のPremysl Bercik氏らによるこの研究結果は、「The Lancet Gastroenterology and Hepatology」に7月21日掲載された。 グルテンは小麦、大麦、ライ麦などの穀物に含まれるタンパク質の一種である。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院によると、グルテンに対してアレルギーがある人や、グルテンによって免疫反応が引き起こされ腸が損傷される可能性がある人では、グルテンの摂取が消化器系の問題をもたらすことがあるという。  今回報告されたランダム化クロスオーバー試験は、グルテンフリーの食事で症状が改善したとの報告があった28人のIBS患者を対象に実施された。各参加者には、3種類のシリアルバーを3回、間隔を空けて食べてもらった。3本のシリアルバーのうち1本はグルテンを、1本は小麦を含み、もう1本はどちらも含んでいなかった(シャム)。 その結果、IBS症状のスコア(IBS-SSS)が50点以上悪化した参加者の割合は、小麦含有シリアルバー摂取後で11人(39%、シャムのシリアルバーとのリスク差は0.11、95%信頼区間−0.16〜0.35)、グルテン含有シリアルバー摂取後で10人(36%、シャムとのリスク差は0.07、同−0.19〜0.32)、シャムのシリアルバー摂取後は8人(29%)であった。これらの結果は、小麦およびグルテン摂取群とシャム群との間で、IBS症状の悪化率に統計学的な有意差はないことを示している。 Bercik氏は、これはネガティブな予測のみによって実際に身体症状が引き起こされる「ノセボ効果」と呼ばれる現象に起因している可能性があるとの見方を示している。同氏は、「グルテンに反応していると思っている患者の全てが実際にグルテンに反応しているわけではない。本当に食物タンパク質に感受性を持っている人もいるが、多くの場合、グルテンが症状の原因だとする思い込み自体が症状を引き起こし、グルテンが含まれている食品を避けるという選択につながっている」とニュースリリースの中で述べている。 Bercik氏は、特にソーシャルメディアやオンラインコミュニティーが「グルテンは有害である」という考えを助長している可能性があると指摘している。同氏は、「IBS患者の中には、どうして良いのか分からないままでいるのではなく、グルテンを避けることが自分の状況をコントロールする手段の一つになると考える人もいる可能性がある。グルテンフリーの食事を続けることは不必要な食事制限にはなるが、症状を自分でコントロールしようとする患者にとってはすぐに取り組むことができる具体的な方法にもなり得る」と述べている。実際、どのシリアルバーが症状を引き起こしたのかを後で知らされても、多くの参加者は自分の考えや食事内容を変えなかったという。 こうした人がグルテンに対する不安を克服するためには、セラピーやコーチングが必要になるかもしれないとBercik氏は言う。「このような患者に対する臨床的な管理でわれわれが改善すべき点は、単に患者に『グルテンが原因ではない』と伝えて終わるのではなく、さらに寄り添って対応することだ。多くの患者にとって、グルテンや小麦に対する偏見をなくし、安全にこれらを再び食事に取り入れるための心理的サポートや指導が有益かもしれない」と述べている。 Bercik氏らは、今後の研究では、今回の臨床試験の結果をより大規模な集団で検証し、なぜグルテンに関する思い込みがIBSの症状を引き起こすのかを解明する必要があると話している。

268.

犬がにおいでパーキンソン病患者を検知

 犬の鋭い嗅覚は、逃亡犯の追跡や遺体の発見、違法薬物の捜索などに役立っている。過去の研究では、前立腺がん、マラリア、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの疾患を嗅ぎ分けることができたことも示されている。では、犬の嗅覚は、脳や神経系の疾患を検知できるほど鋭敏なのだろうか。 新たな研究で、嗅覚を使ってパーキンソン病を検知できるように訓練された2匹の犬が、皮脂スワブ検体からパーキンソン病患者を最高80%の精度で検出できたことが示された。英ブリストル大学獣医学部のNicola Rooney氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Parkinson’s Disease」に7月14日掲載された。Rooney氏は、「私は、パーキンソン病患者を特定するための迅速で非侵襲的かつ費用対効果の高い方法の開発に犬が役立つと確信している」と同大学のニュースリリースの中で述べている。 パーキンソン病は進行性の運動障害であり、脳の重要な神経伝達物質であるドパミンを産生する脳細胞が変性・減少することで発症する。主な症状は、手足の震え(振戦)、筋肉のこわばり(筋硬直)、バランス維持や協調運動の障害などである。研究グループによると、パーキンソン病の初期症状の一つとして、皮膚の脂腺から皮脂が過剰に分泌され、過度に蝋状または油っぽくなることがあるという。このことからRooney氏らは、犬が皮脂から生じる独特のにおいを頼りにパーキンソン病を検知できるのではないかと考えた。 この仮説を検証するためにRooney氏らは、5頭の犬に皮脂スワブ検体を使ってパーキンソン病のにおいを検知するための訓練を開始した。最終的に3頭が脱落し、ゴールデンレトリバーのバンパー(2歳、雄)とラブラドールレトリバーとゴールデンレトリバーのミックス犬のピーナッツ(3歳、雄)の2頭がパーキンソン病患者とパーキンソン病ではない人(対照)から採取した205点の皮脂スワブ検体を使って38〜53週間に及ぶ訓練を受けた。訓練では、犬がパーキンソン病患者の検体を正しく示すか、対照の検体を正しく無視するたびに報酬が与えられた。訓練の完了後、40点のパーキンソン病患者の検体と60点の対照の検体を用いた二重盲検試験で犬の検知能力を検証した。 その結果、2頭の犬の感度(パーキンソン病患者の検体を正しく識別する能力)は、それぞれ70%と80%、特異度(対照の検体を正しく無視する能力)は、それぞれ90%と98%であることが示された。 論文の上席著者で、英国の慈善団体メディカル・ディテクション・ドッグズのCEO兼最高科学責任者であるClaire Guest氏は、「犬が疾患を極めて正確に検知できることを改めて発表できることを非常に誇りに思う。現状ではパーキンソン病を早期発見するための検査は存在せず、症状が目に見える形で現れるようになり、それが持続して確定診断に至るまでに最大で20年もかかることがある。しかし、パーキンソン病でとりわけ重要なのは早期診断だ。なぜなら、それにより治療で疾患の進行を遅らせ、症状の重症度を軽減できる可能性があるからだ」と述べている。

269.

GLP-1RAで痩せるには生活習慣改善が大切

 オゼンピックやゼップバウンドなどのGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の減量効果が高いため、注射さえしていればあとは何もしなくても体重を減らせると思っている人がいるかもしれない。しかし専門家によると、それは誤りだ。適切に体重を減らしてそれを維持するには、注射に加えて生活習慣の改善も必要だという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJoAnn Manson氏らによる、GLP-1RA治療中の生活習慣改善に関するアドバイス集が「JAMA Internal Medicine」に、患者対象情報として7月14日掲載された。 Manson氏は、「GLP-1RAによる減量治療を開始後に、多くの患者が脂肪量だけでなく筋肉量も減少してしまう。また、胃腸症状が現れて治療を中止せざるを得なくなることも多い」と述べ、GLP-1RA使用時の生活習慣改善の重要性を指摘している。例えば、GLP-1RAのみで体重を減らした場合、減った体重の25~40%は除脂肪体重(多くは筋肉)が占めるとのことだ。 筋肉を減らさないための対策として、専門家らは「毎食、魚、豆、豆腐などの食品から20~30gのタンパク質摂取を」と推奨する。「一般的な運動量の人なら、体重1kg当り1.0~1.5gのタンパク質を毎日摂取し、食欲がないときには1食につき少なくとも20gのタンパク質を含むシェイクを飲むと良い」としている。 またGLP-1RAは食欲抑制作用があるため、適切な栄養素摂取が妨げられる可能性があるという。発表されたアドバイス集では、「適量の食事と軽食(果物、ナッツ類、無糖ヨーグルトなど)を取ることで、エネルギーを維持する」ことを推奨している。さらに、「炭水化物については、血糖値の急激な変動を引き起こす精製穀物や加糖飲料ではなく、サツマイモやオートミールなどの消化の遅いものを選択する。満腹感を長続きさせるには、オリーブオイルやアボカドなどの健康的な脂質食品を食事に加えると良い」とのことだ。 GLP-1RAによる減量中には、バランスの取れた栄養価の高い食事が重要になる。不適切なカロリー制限は、不健康な体重減少、必須栄養素やビタミンの不足による栄養失調のリスクにつながるため避けなければならない。一方、GLP-1RAの副作用として多く見られる胃腸症状に対しては、以下の推奨事項が示されている。・吐き気を和らげるには、脂質の多い揚げ物や加工食品を避け、お腹に優しい少量の全粒粉トーストやシリアル、果物、ジンジャーティーを食べたり飲んだりする。・胸焼けを抑えるには、少量ずつ食べ、食後2~3時間は横にならないようにする。揚げ物よりも焼き物を選び、黒コショウ、唐辛子、ニンニクなどの刺激の強いスパイスは避ける。・便秘には、オートミール、リンゴ、野菜、ナッツなど、食物繊維が豊富な食品の摂取量を増やす。水分を十分に取り、市販の下剤や便軟化剤の使用も検討。 また、GLP-1RAが脱水傾向を招くこともあるため、こまめに水分を取る必要があり、キュウリやスイカといった水分を多く含む果物や野菜の摂取が効果的だとしている。 このほかに、筋肉量を維持するため、週に2〜3回の30分の筋力トレーニングも大切。運動は体重のリバウンドを抑えるためにも重要で、早歩き、サイクリング、軽い庭仕事など、中強度の運動を週に150分程度、筋力トレーニングに加えて行う必要がある。 著者らは、「GLP-1RAの登場は肥満治療の大きな進歩ではあるが、減量効果の長期的な維持には、個別化された食事・運動療法を並行して行わなければならない。そのような包括的なアプローチによって、副作用を軽減し、筋肉量を維持して、栄養失調を回避しつつ、持続的な減量が達成される」と述べている。

270.

週1回投与のinsulin efsitoraはインスリン頻回注射療法中の2型糖尿病患者においても有効である(解説:住谷哲氏)

 BantingとBestによってインスリンが発見されたのは1921年である。翌1922年にイーライリリー社がブタ膵臓の抽出物からインスリンの製剤化に成功し、その翌年には大量生産にも成功して「アイレチン(Iletin)」として販売を開始した。販売当初は力価も安定せず不純物も多かったが、その後の種々の改良により現在のレギュラーインスリンが市場に登場した。その後の100年間はレギュラーインスリン改良の歴史であるが、1つの方向はブタインスリンからヒトインスリンへの変換であり、いまひとつはその作用時間の延長であった。 レギュラーインスリンの作用時間は約6時間と短く、インスリン分泌の枯渇している1型糖尿病患者では1日数回の注射が必要になる。その後の改良により中間型インスリン、持効型インスリンと作用時間が延長し、現在は週1回投与可能なインスリンアナログであるアウィクリ(一般名:インスリン イコデク)が使用可能である。ノボ ノルディスク社のアウィクリに対して、イーライリリー社が開発しているのが本試験で用いられたinsulin efsitora alfa(以下efsitora)である。 QWINT試験はefsitoraの臨床開発プログラムであり、QWINT-1~5の5試験が実施され結果はすべて論文化されている1-4)。ちなみにQWINTはQW(quaque week, once-weekly)insulin therapyの略である。本試験QWINT-4はインスリン頻回注射療法を受けている2型糖尿病患者を対象としている。基礎インスリンをグラルギンU-100とefsitoraとに無作為化し、食事インスリン(prandial insulin)は両群ともリスプロを用いた。主要評価項目は26週後のHbA1c変化量であり、efsitoraのグラルギンU-100に対する非劣性を検証した。結果はefsitoraのグラルギンU-100に対する非劣性が証明された。 筆者も週1回投与のインスリンアナログであるアウィクリを使用しているが、現時点ではインスリンを毎日投与することが不可能な患者に限定されている。やはりシックデイへの対応が困難である点がその理由の1つである。しかし日常臨床では毎日の注射は不可能であり、週1回投与のGLP-1受容体作動薬投与でもコントロールが不良でインスリン投与が必要な患者、フレイルがありGLP-1受容体作動薬ではなくインスリン投与が適切な患者が一定数存在している。これらの患者に対する週1回投与のインスリンアナログの有用性を評価する試験が実施されることが望まれる。

271.

第274回 ケネディ氏のワクチン開発支援打ち切りを深読み

INDEX米国、mRNAワクチン開発を縮小へ契約終了と継続、わかっていること保健福祉省長官の意図悪魔はどっち?米国、mRNAワクチン開発を縮小へ当の本人は大真面目なのだろうが、傍から見ると、もはやガード下の居酒屋にいる酔っ払いオヤジが政治を語っているようだ。何のことかと言えば、米国・保健福祉省(HHS)が8月5日、傘下の生物医学先端研究開発局(BARDA)が行っているmRNAワクチンの研究開発支援を段階的に縮小すると発表した件である。ご存じのように現在のHHS長官はあのロバート・F・ケネディ・ジュニア氏である(第264回参照)。今回、影響を受けるのはBARDAで行われていた総額約5億ドル(約700億円)におよぶ22件のmRNAワクチン開発プロジェクトである。このプロジェクトすべてとその支援金額の詳細は明らかになっていないが、現時点で判明しているのは以下のような感じである。契約終了と継続、わかっていることまず契約が終了したのが、エモリー大学が行っていた吸入できるパウダータイプのmRNAワクチン研究、Tiba Biotech社(本社:マサチューセッツ州ケンブリッジ)が行っていた支援額約75万ドル(約1億2,000万円)のインフルエンザに対するRNA医薬の研究。また、BARDAへの提案そのものが却下されたのが、ファイザー社によるmRNAワクチン開発(詳細不明)、サノフィ・パスツール社によるmRNAインフルエンザワクチン開発、グリットストーン・バイオ社(本社:カリフォルニア州エメリービル)に対する支援額最大4億3,300万ドル(約637億6,300万円)の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対する汎変異株対応の自己増幅型mRNAワクチン開発などである。一方でモデルナ社とテキサス大学医学部が国防総省と協力するフィロウイルス感染症(エボラ出血熱やマールブルグ病)へのmRNAワクチン開発、アークトゥルス・セラピューティクス社(本社:カリフォルニア州サンディエゴ)との支援総額最大6,320万ドル(約9億円)のH5N1鳥インフルエンザ自己増幅型mRNAワクチン開発の一部などは維持されるという。わかっている範囲だけでも、かなり広範な新規mRNAワクチンと既存ワクチンの新規モダリティに影響が及ぶことになるようだ。保健福祉省長官の意図この決定に関するHHSのプレスリリース1)には、「私たちは専門家の意見に耳を傾け、科学を検証し、行動を起こした。BARDAは、これらのワクチンがCOVID-19やインフルエンザなどの上気道感染症を効果的に予防できないことを示すデータに基づき、22件のmRNAワクチン開発への投資を停止する。私たちは、この資金をウイルスが変異しても効果を維持できる、より安全で幅広いワクチンプラットフォームへとシフトさせている」とするケネディ氏のコメントも含まれている。前述のように今回影響を受けるプロジェクトには、ケネディ氏が言うところの「ウイルスが変異しても効果を維持できる」ワクチン開発も含まれているのだが、どうやら本人のmRNAワクチン嫌悪が先に立っている模様だ。そもそも本人のコメントにある「上気道感染症を効果的に予防できないことを示すデータ」とは何を意味するのかは明記されていない始末である。この辺について、より深読みすると、いわゆるワクチンの三大効果と呼ばれる「感染予防」「発症予防」「重症化予防」のうち、ワクチンに懐疑的な人たちがよく示す「感染予防そのものが効果的に得られていないではないか」という主張なのかもしれない。確かに以前の本連載でも取り上げたが、内閣官房の新型インフルエンザ等対策推進会議 新型コロナウイルス感染症対策分科会会長だった尾身 茂氏(現・公益財団法人結核予防会 理事長)がテレビ出演時に言及したように、オミクロン株以降、mRNAワクチンの感染予防としての効果は高くないのが現実である。しかし、最も重大な事象である入院・死亡といった重症化予防効果に関して確たるものがあるのは、もはや異論はないだろう。もし感染予防効果うんぬんだけで測るならば、現在使われているインフルエンザの不活性化ワクチンも同様に無用なものとなってしまうが、そうした認識を持つ医療者はかなり少数派であるはずだ。また、mRNAワクチンは新規ウイルスに対する迅速なワクチン開発という点では、かつてない威力を発揮したことも私たちは実感している。今回のコロナ禍を従来型の不活性化ワクチン開発で乗り切ろうとしていたならば、今のような平常生活に戻るまでに要した時間は相当長いものになっていた可能性が高い。もはやmRNAワクチンについては、これがあることを前提に(1)これまでワクチン開発が難しかった病原体での新規開発、(2)抗体価持続期間の延長、(3)副反応の軽減、という方向性に進むフェーズに来ていると考えたほうがよい。その意味では今回影響を受けたワクチン研究開発プログラムを見ると、(2)については日本発の新型コロナワクチンとなったコスタイベで使われた自己増幅技術が次世代ワクチンとして注目を集めていることもうかがえる。悪魔はどっち?いずれにせよ、ケネディ氏の打ち出した方針はかなりの頓珍漢ぶりである。ちなみに同氏の最近のX(旧Twitter)の投稿を見ると、FDAの中庭のベンチに刻まれたセンテンスという投稿がある。そのセンテンスとは「The devil has got hold of the food supply of this country(悪魔がこの国の食糧供給を掌握している)」というもの。しかし、Xに搭載されている生成AIのGrokが「この写真は改変されている可能性が高い」と指摘している。要はそんなセンテンスなどベンチに刻まれていないということだ。いやはやとんだ人がHHS長官になったものである。「悪魔」はあなたではないのか、と問いたい。 参考 1) U.S. Department of Health and Human Services:HHS Winds Down mRNA Vaccine Development Under BARDA

272.

チゲサイクリン、5つの重要事項【1分間で学べる感染症】第31回

画像を拡大するTake home messageチゲサイクリンは広い抗菌スペクトラムを有する一方で、使用に際しての注意点が多い抗菌薬であることを理解しよう。皆さんは、チゲサイクリンという抗菌薬を知っていますか? チゲサイクリンは日本では2012年に発売が開始されていますが、まだ使用実績は低い薬剤です。多剤耐性菌に対する治療選択肢の1つとして注目されており、特定の状況下での「最後の切り札」的な役割を有する抗菌薬の1つです。適応や使用上の注意点が多いため、正しい理解と慎重な使用が求められます。今回は、使用時に必ず押さえておきたい5つの重要事項について解説します。1.カバー範囲が広いチゲサイクリンは、テトラサイクリン系抗菌薬の構造を改変して開発されたグリシルサイクリン系抗菌薬であり、多剤耐性菌への活性を持つ静注薬です。チゲサイクリンは、グラム陽性菌(MRSA、VREなど)に加えて、グラム陰性菌(ESBL産生腸内細菌、カルバペネム耐性腸内細菌、カルバペネム耐性Acinetobacter属、Stenotrophomonas属など)や嫌気性菌にまで活性を示します。このように広範なカバー範囲を持つことが特徴です。2.消化器症状の頻度が高いチゲサイクリンの主な副作用として嘔気・嘔吐が挙げられ、これらは投与患者の20~30%にみられるとされています。これによってほかの薬剤の内服が困難となる場合や、チゲサイクリンの投与継続自体が難しくなる可能性もあるため、患者への事前の説明が必須です。3.菌血症には推奨されない分布容積が大きく、組織移行性に優れる反面、血中濃度が低いため、菌血症の治療には適していません。したがって、菌血症を伴わない腹腔内感染、肺炎、皮膚軟部組織感染症などへの適応が中心となります。4.3つの代表的な起因菌に推奨されないチゲサイクリンは、Pseudomonas aeruginosa、Proteus属、Providencia属といった一部のグラム陰性菌に対しては効果が乏しいとされています。これらの菌が起因菌として想定される場合は、ほかの抗菌薬を選択する必要があります。5.ほかの抗菌薬との併用を考慮チゲサイクリンは単剤での治療において失敗例が多く報告されていることから、ほかの抗菌薬との併用が望ましいとされています。起因菌や感受性を基に、ほかの選択肢がないかどうかを必ず確認するようにします。チゲサイクリンは感染症コンサルトが必須とされる薬剤の1つです。適切な使用のために最低限の知識を押さえておくことが重要です。1)Prasad P, et al. Clin Infect Dis. 2012;54:1699-1709.2)Tamma PD, et al. Clin Infect Dis. 2021;72:e169-e183.3)Cai Y, et al. Infect Dis (Lond). 2016;48:491-502.4)Hawkey PM. J Antimicrob Chemother. 2008;62 Suppl:i1-9.

273.

副作用編:発熱(抗がん剤治療中の発熱対応)【かかりつけ医のためのがん患者フォローアップ】第3回

今回は化学療法中の「発熱」についてです。抗がん剤治療において発熱は切っても切り離せない合併症の1つです。原因や重症度の判断が難しいため、抗がん剤治療中の患者さんが高熱を主訴に紹介元であるかかりつけ医に来院した場合は、多くが治療施設への相談になると思います。今回は、かかりつけ医を受診した際に有用な発熱の鑑別ポイントや、患者さんへの対応にフォーカスしてお話しします。【症例1】72歳、女性主訴発熱病歴局所進行大腸がん(StageIII)に対する術後補助化学療法を実施中。昨日から38.5度の発熱があったため、手持ちの抗菌薬(LVFX)の内服を開始した。解熱傾向であるが、念のためかかりつけ医(クリニック)を受診。診察所見発熱なし、呼吸器症状、腹部症状なし。食事摂取割合は8割程度。内服抗がん剤カペシタビン 3,000mg/日(Day11)【症例2】56歳、男性主訴発熱、空咳病歴進行胃がんに対して緩和的化学療法を実施中。3日前から38.2度の発熱と空咳が発現。手持ちの抗菌薬(LVFX)内服を開始したが、改善しないためかかりつけ医(クリニック)を受診。診察所見体温38.0度、SpO2:93%、乾性咳嗽あり、労作時呼吸苦軽度あり。腹部圧痛なし。食事摂取は問題なし。抗がん剤10日前に免疫チェックポイント阻害薬を含む治療を実施。ステップ1 鑑別と重症度評価は?抗がん剤治療中の発熱の原因は多岐にわたります。抗がん剤治療中であれば、まず頭に浮かぶのは「発熱性好中球減少症(FN:febrile neutropenia)かも?」だと思いますが、他の要因も含めて押さえておきたいポイントを挙げます。(1)発熱の原因が本当に抗がん剤かどうか確認服用中または直近に投与された抗がん剤の種類と投与日を確認。他の原因(主に感染:インフルエンザや新型コロナウイルス感染症、尿路感染症など)との鑑別。発熱以外の症状やバイタルの変動を確認。画像を拡大するFNは、末梢血の好中球数が500/µL未満、もしくは48時間以内に500/µL未満になると予想される状態で、腋窩温37.5度(口腔内温38度)の発熱を生じた場合と定義されています。FNは基本的には入院での対応が必要ですが、外来治療を考慮する場合には、下記のようなリスク評価が重要です。1)MASCC( Multinational Association for Supportive Care in Cancer)スコアMASCCスコアは、FN患者の重症化リスクを予測するための国際的に認知されたスコアリングシステムであり、低リスク群(21点以上)は外来加療が可能と判断されることがあります。画像を拡大する※該当する項目でスコアを加算し、スコアが高いほど低リスク。21点以上で低リスクとなる。2)CISNE(Clinical Index of Stable Febrile Neutropenia)スコア臨床的に安定している固形腫瘍患者では、CISNEスコアによる評価も推奨されています。画像を拡大する※低リスク群(0点)、中間リスク群(1~2点)、高リスク群(3点以上)。高リスクでは入院治療を考慮する。低リスク群:合併症1.1%、死亡率0%、中間リスク群:合併症6.2%、死亡率0%、高リスク群:合併症36%、死亡率3.1%。ステップ2 対応は?では、冒頭の患者さんの対応を考えてみましょう。【症例1】の場合、すでに抗菌薬を内服開始しており、解熱傾向でした。Vitalも安定しており、胸部X線写真でも異常陰影を認めませんでした。念のためインフルエンザおよび新型コロナウイルス感染症抗原検査を実施しましたが陰性でした。このケースでは抗菌薬の内服継続と解熱薬(アセトアミノフェン)処方、および抗がん剤の内服中止と治療機関への連絡(抗がん剤の再開時期や副作用報告)、経口補水液の摂取を説明して帰宅としました。【症例2】の場合、免疫チェックポイント阻害薬が投与されていて、SpO2:93%と低下しています。インフルエンザおよび新型コロナウイルス感染症抗原検査は陰性。胸部X線検査を実施したところ、両肺野に間質影を認めました。ただちに治療機関への連絡を行い、irAE肺炎の診断で即日入院加療となりました。画像を拡大する抗がん剤治療中の発熱対応フロー抗がん剤治療中の発熱は原因が多岐にわたるため、抗がん剤治療中に発熱で受診した場合は治療機関への受診を促してください。上記のケースはいずれも「低リスク」へ分類されますが、即入院が必要なケースが混在しています。詳細な検査や診察を行った上でのリスク評価が重要です。内服抗がん剤を中止してよいか?診察時に患者さんより「発熱しても抗がん剤を継続したほうがよいか?」と相談を受けた場合、基本的に内服を中止しても問題ありません。当院でも、「38度以上の発熱が発現した場合は、その日はお休みして大丈夫です」と説明しています。抗がん剤の再開については受診翌日に治療機関へ問い合わせるよう、患者さんへ説明いただけますと助かります。<irAEと感染>免疫チェックポイント阻害薬の普及した現代では、irAEはもはや日常的な有害事象となってしまいました。重篤なirAEに対して高用量のステロイド治療を導入することは年間で複数回経験します。その中で、最も注意が必要なのは、ステロイド治療中の感染症は発熱が「マスク」されるということです。採血検査ではCRPもあまり上昇しません。日々の身体診察がいかに重要であるかを痛感します。先日もirAE腎炎を発症した胆道がんの患者さんに対して、入院で高用量のステロイドを導入しました。順調に腎機能も改善し、ステロイド漸減に伴い外来へ切り替えてフォローしていましたが、ある日軽い腹痛で来院されました。発熱もなく、採血検査では炎症反応もさほど上昇していません。しかし、「何かおかしいな…」と思い、しつこく身体診察をすると右季肋部痛をわずかに認めました。胆管ステントを留置していたこともあり、念のためCT検査を実施してみると、以前存在した胆管内ガス(pneumobilia)の消失を認め、胆管ステント閉塞が疑われました。黄疸は来していないものの、ステント交換を依頼してドレナージをしてもらうと胆汁とともに膿汁が排液されました。初歩的なことですが、ステロイドカバー中は発熱もマスクされ、採血検査もアテにならないことが多いです。やっぱり基本は身体診察ですね。1)日本臨床腫瘍学会編. 発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン(改訂第3版). 南江堂;2024.2)Klastersky J, et al. J Clin Oncol. 2000;18:3038-3051. 3)Carmona-Bayonas A, et al. J Clin Oncol. 2015;33:465-471.

274.

小児白血病の最新診療

小児科領域新シリーズ誕生!裏付けされたKnowledge&Skillで日常の小児科診療に自信を持つ「小児診療 Knowledge & Skill」第1巻特色は小児科診療に不可欠な8テーマから構成。各分野のエキスパートが培った臨床眼により小児科診療の本質を展開。エビデンスとエクスペリエンスを融合させた「知(knowledge)」と「技(skill)」により、最適な方針を提供。箇条書きでテーマの要点をまとめ、脚注やコラムで専門用語の解説、二次元コードにより関連サイトへリンク、キーポイントの詳細情報、逸話などを収載。冒頭のQuick Indexで、特異的な切り口でテーマの概略を紹介。となっている。第1巻で取り上げた小児白血病はコモンな疾患ではない。白血病を疑ったときは速やかに専門医に紹介しなければならない。それでも知れば身近な疾患になる。重篤な疾患に特定の遺伝子が胎生期から関わっていることは、ポストゲノム時代を迎えたいま、揺るぎない事実として眼前にあり、小児科学ほど分子生物学に親和性が高い領域はない。小児白血病を通して拓かれたmolecular pathobiologyの扉が小児診療の本質を提供してくれる。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する小児白血病の最新診療定価9,350円(税込)判型B5判(並製)頁数216頁発行2025年7月総編集加藤 元博(東京大学)専門編集富澤 大輔(国立成育医療研究センター)ご購入はこちらご購入はこちら

275.

「風邪のときのスープ」に効果はある?

 風邪症候群や咽頭炎、インフルエンザ様疾患などの急性気道感染症の症状を和らげるために、温かいスープを飲むと良いとされることがある。この伝統的な食事療法の有効性を検討することを目的に、英国・University of the West of ScotlandのSandra Lucas氏らが、システマティックレビューを実施した。その結果、スープの摂取は、急性気道感染症の症状緩和や炎症抑制をもたらす可能性が示唆された。本研究結果は、Nutrients誌2025年7月7日号で報告された。 本研究では、急性気道感染症に対するスープの効果を評価した研究を対象として、システマティックレビューを実施した。2024年2月までに公表された論文を対象に、MEDLINE、Embase、Scopus、CINAHL、CENTRAL、Cochrane Database of Systematic Reviewsなどを用いて文献を検索した。適格基準を満たした4件の無作為化比較試験(対象342例)を抽出し、メタ解析は行わずナラティブ統合を行った。解析対象となった研究で用いられたスープは、鶏肉ベースのスープに野菜やハーブを追加したものが主なものであった。評価項目は、症状重症度、罹病期間、炎症マーカーなどとした。 主な結果は以下のとおり。・3試験において、スープ摂取群は鼻閉、咽頭痛、咳といった急性気道感染症の症状がわずかながら軽減した。・1試験において、スープ摂取群は罹病期間が1~2.5日短縮した。・2試験において、スープ摂取群でC反応性タンパク(CRP)、IL-6、TNF-αといった炎症マーカーが低下する傾向がみられた。・小児を対象とした1試験において、免疫グロブリン(IgA、IgG、IgM)値の上昇など、免疫機能の改善を示唆する結果が得られた。 著者らは、「スープは水分補給、栄養補給、抗炎症作用の相乗効果により、急性気道感染症の症状軽減、全体的な健康の維持に寄与する可能性がある。ただし、研究間の異質性や標準化されたプロトコールの欠如などの限界が存在するため、より厳密かつ多様な研究による検証が求められる」とまとめた。

276.

妄想性障害や急性精神病などの精神疾患と統合失調症や双極症との遺伝的関連性

 妄想性障害、急性精神病、特定不能精神病、統合失調感情障害の4つのまれな精神疾患における病因的な相互関係は、いまだに解明されていない。米国・バージニア・コモンウェルス大学のKenneth S. Kendler氏らは、妄想性障害、急性精神病、特定不能精神病、統合失調感情障害患者における統合失調症、双極症、うつ病の家族遺伝子リスクスコア(FGRS)レベルを評価し、これらの遺伝的関係を明らかにするためコホート研究を実施した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2025年7月9日号の報告。 1950〜2000年にスウェーデン生まれの両親のもとスウェーデンで生まれた人を対象に、2018年までフォローアップを行った。国家レジストリーの診断コードに基づき診断した。統合失調症、双極症、うつ病患者の統合失調感情障害は、同居を考慮したうえ、第1〜5近親者より算出した。主要アウトカムは、妄想性障害、急性精神病、特定不能精神病、統合失調感情障害の診断とした。 主な結果は以下のとおり。・各疾患の患者数は次のとおりであった。【うつ病】66万7,012例(女性:42万142例[63%]、男性:24万6,870例[37%])【双極症】5万8,385例(女性:3万6,344例[62%]、男性:2万2,041例[38%])【統合失調症】1万7,465例(女性:6,330例[36%]、男性:1万1,135例[64%])【統合失調感情障害】7,597例(女性:4,125例[54%]、男性:3,472例[46%])【急性精神病】1万6,315例(女性:7,907例[49%]、男性:8,408例[51%])【特定不能精神病】2万7,127例(女性:1万2,277例[45%]、男性:1万4,850例[55%])【妄想性障害】1万1,560例(女性:5,060例[44%]、男性:6,500例[56%])・統合失調症、双極症、うつ病のFGRSの遺伝子マップでは、妄想性障害は単独で存在し、統合失調症の遺伝子リスクは統合失調症患者の約半数であり、双極症、うつ病リスクと同程度であった。・統合失調感情障害は、統合失調症と双極症の両方で非常に高い遺伝子リスクを有する唯一の疾患として特徴付けられ、精神病性双極症とは明確な差が認められた。・急性精神病と特定不能精神病は、類似した遺伝子プロファイルを有しており、統合失調症FGRSレベルは妄想性障害と同程度であったが、双極症、うつ病の遺伝子リスクはより高かった。・各疾患をアウトカム別に細分化すると、妄想性障害の遺伝子プロファイルは最小限の影響であり、急性精神病と特定不能精神病では中程度、統合失調感情障害では大きな影響が認められた。良好な社会的アウトカムは、統合失調症FGRSの低下および双極症FGRSの増加と関連が認められた。 著者らは「遺伝的観点から、妄想性障害、急性精神病、特定不能精神病、統合失調感情障害は、統合失調症、双極症、うつ病のサブタイプとは考えられない。これら4つのまれな精神疾患に関するさらなる遺伝学的研究は、遺伝的リスクや精神疾患の臨床症状および経過との関連に多くの知見を提供することにつながるであろう」とまとめている。

277.

8月10日「ハートの日」には循環器病の予防に支援を/日本心臓財団ほか

 日本心臓財団、日本循環器協会、日本循環器学会、日本AED財団の諸団体は共催で、8月10日の「健康ハートの日」を前に、都内で循環器病に関するシンポジウムを開催した。日本心臓財団が、循環器病予防と健康を呼びかける「健康ハートの日」の活動を開始し40周年の節目を迎え、「循環器病予防の40年:過去・現在・未来」をテーマに、循環器病予防活動を振り返り、将来の20年に向けた新たな展望を議論した。 シンポジウムでは、名誉総裁の高円宮妃殿下が登壇、40年の取り組みをねぎらうとともに「本日のシンポジウムの内容が今後各地域で十分に活用され、循環器病予防の取り組みがされることを心より願う」と祝辞を寄せた。 第1部では循環器病予防の過去と現在、大阪万博の自動体外式除細動器(AED)と緊急体制などが講演され、第2部のパネルディスカッションでは「次の20年の循環器予防」をテーマに活発な意見交換が行われた。AEDの活用、AIの活用と進化する循環器病予防の今 「健康ハートの日 40年の歩み」をテーマに和泉 徹氏(日本心臓財団 評議員)が、「健康ハートの日」の制定からこれまでの活動を振り返った。 健康ハートの日は、心臓病に対応するために国民の予防意識を向上させることを目的に1985年に制定された。 2003年からはAEDの啓発を開始し、特定健診も行われるようになった。また、この日を前後に全国で循環器専門医による健康相談をターミナル駅などで実施し、予防の啓発に努めている。わが国の心臓病患者の多くが傘寿者(80歳)であることから早期介入できるように循環器病対策推進基本計画の策定などの整備を目指していると説明した。 次に「循環器予防対策の半世紀」をテーマに岡村 智教氏(日本循環器病予防学会 理事長)が、生活習慣病への疾病変遷と特定健診制度の成立と現在の運営などを講演した。 過去に成人病と称していた疾病名を、1次予防として早期介入ができることを目的に生活習慣病に変更されたこと、老人保健法が制定され、全国民の健康診断制度が担保されて個別の健康教育や特定健診が始まったことを説明した。 健康増進法で定められた方針が「健康日本21」で定められ、健康寿命の延伸や健康格差の縮小を目的にさまざまな取り組みが行われている。とくに循環器病分野では、高血圧の改善に減塩への取り組みや全国のコホート研究によるアウトカムの把握などにより、危険因子対策と地域の健康格差解消の取り組みが行われていると説明した。 次に「大阪万博のAEDと緊急体制」をテーマに、石見 拓氏(日本AED財団 専務理事)が、イベントなどでのAEDの設置・使用状況などについて講演した。 わが国には約67万台のAEDが設置され、20年間で8,000人が救命されたという。イベントでのAEDの活用は、2005年に開催された「愛・地球博」からであり、約100台のAEDが設置され、5例の心停止事例が発生、うち4例でAEDが使用され、いずれも救命された。そして、今年(2025年)開催の「大阪万博」では、AEDに最短で行けるためにスマートフォン(スマホ)を用いてAEDの設置位置が把握できる仕組み「AED GO」を構築し、運用している。 課題としては、心停止の発生場所が「自宅」というケースも多く、「将来的にはウェアラブル機器などでの早期の循環器の異常把握とホームAEDの設置・活用などを今後考えなくてはいけない」と述べた。 次に「AIを用いた循環器病予防 現状と未来」をテーマに、笹野 哲郎氏(日本循環器学会 代議員)が、現在進行中、また将来のAIを用いた循環器病の予防について講演した。 とくに隠れ心房細動の患者について、その数は100万例以上と推定され、うち心臓発作時に自覚症状がない人は約40%とされ、治療を受けていないために循環器病だけでなく脳梗塞のリスクが高いと指摘した。 現在活用されているAIでは、心電図の自動診断からの有病予測や再発予測が行われている。12誘導心電図の深層学習のために全国の施設で2,700例のデータが集められ、解析が行われているという。 また、AIおよびリモートテクノロジーによる心房細動発見の地域医療プロジェクトを静岡市清水区で行い、362例の参加者から11例の隠れ心房細動の患者を見つけることができたと報告した。 ただAI予測での注意点としては、AI診断はまだ途上であり、従来からのリスク評価も重要であることを指摘した。 今後の課題としては、健診などを受けない隠れ心房細動患者をいかに発見するかであり、東京都と共同してこうした患者を見つける実証試験を、カプセルホテルなどの協力で行っていることを説明した。 最後に今後の取り組みとして、「AIによる疾病有病予測は、結果の解釈と指導までを考慮し行うことが望ましい」と講演を終えた。女性の循環器疾患を“Go red for women”で予防したい 第2部では「次の20年の循環器病予防」をテーマに、磯部 光章氏(日本心臓財団 常任理事)、木田 圭亮氏(日本循環器協会 幹事)、東條 美奈子氏(日本循環器病予防学会 理事)の3人のパネリストが、今後の循環器病予防への取り組み、「ハートの日」啓発活動の将来、“Go red for women Japan”の活動について説明した。 磯部氏は、東京都で行われている施策を中心に、医療従事者への講演・研修会の実施や調理や運動による循環器病予防事業を説明したほか、患者同士の交流会の取り組みなどを説明した。 木田氏は、「ハートの日」の啓発活動について漫画『キャプテン翼』(作・高橋 陽一氏)に登場する三杉 淳をアンバサダーにさまざまなメディアで啓発活動を展開し、全国の薬局での血圧計測活動の実施やプロサッカーチームとの協業、スポーツ選手のインタビュー動画の公開とともに多くの企業ともコラボレーションを行っていることを紹介した。 東條氏は、アメリカで行われている“Go red for women ”について説明を行った。アメリカでは、循環器病で亡くなる女性が多く、米国心臓協会(AHA)がこの活動を開始し、2月の最初の金曜日を“National Wear Red Day”と定め、女性の心臓病や脳卒中の予防・早期発見の啓発が行われているという。この活動をわが国でも行おうというものであり、日本の女性は更年期以降に循環器病が増加し、重症化しやすい傾向にあることを説明した。 今後は、早期かつ定期的な診療受診の働きかけや企業との連携などを行うと、その展望を語った。 ディスカッションでは、今後、サッカー以外のスポーツ、たとえばバスケットボールなどの競技を通じて広く啓発活動を行うことやハートの日だけでなく、年間を通じ循環器病予防の取り組みを行うこと、小児期から疾患啓発を行うことなどが議論された。 8月10日の「ハートの日」の前後には全国で循環器病予防の啓発や予防のイベントが開催されるほか、全国の名所で赤い色のライトアップが実施される。

278.

末梢血幹細胞移植後のGVHD予防、移植後シクロホスファミド+シクロスポリンが有効/NEJM

 骨髄破壊的または強度減弱前処置後にHLA一致血縁ドナーからの末梢血幹細胞移植(SCT)を受けた血液がん患者において、移植片対宿主病(GVHD)のない無再発生存期間は、標準的なGVHD予防法と比較し移植後シクロホスファミド+カルシニューリン阻害薬併用療法により有意に延長したことが示された。オーストラリア・Alfred HealthのDavid J. Curtis氏らAustralasian Leukaemia and Lymphoma Groupがオーストラリアの8施設およびニュージーランドの2施設で実施した第III相無作為化非盲検比較試験「ALLG BM12 CAST試験」の結果を報告した。高リスク血液がん患者に対する根治的治療としては、HLA一致血縁ドナーからの骨髄破壊的前処置後同種末梢血SCTが推奨され、GVHD予防はカルシニューリン阻害薬と代謝拮抗薬の併用が標準治療となっている。移植後シクロホスファミドを代謝拮抗薬に追加または置き換えることで、HLA一致血縁ドナーからのSCT後GVHDリスクを低減できることが示唆されているが、移植後シクロホスファミドの有効性、とくに骨髄破壊的前処置下での有効性は明らかになっていなかった。NEJM誌2025年7月17日号掲載の報告。シクロスポリン+メトトレキサートと比較、GRFSを評価 研究グループは、急性白血病の第1または第2寛解期、ならびに骨髄中芽球<20%の骨髄異形成症候群(MDS)で、骨髄破壊的前処置または強度減弱前処置後にHLA一致血縁ドナーからのSCTを受ける18~70歳の患者を、移植後シクロホスファミド+シクロスポリン(試験予防群)またはシクロスポリン+メトトレキサート(標準予防群)に、年齢(50歳未満、50歳以上)および前処置の強度(骨髄破壊的、強度減弱)で層別化し1対1の割合で無作為に割り付けた。 試験予防群では、シクロホスファミド50mg/kgを移植後3日目および4日目に投与した後、シクロスポリン(各施設のガイドラインに従った用量)を移植後5日目から開始し、90日目以降に漸減した。 標準予防群ではメトトレキサートを移植後1日目に15mg/m2、3日目、6日目および11日目に10mg/m2、シクロスポリン(同上)を移植前1~3日から開始し、90日目以降に漸減した。 主要評価項目は、無GVHD・無再発生存期間(GRFS)で、ITT集団を対象としてtime-to-event解析を行った。移植後シクロホスファミド+シクロスポリンでGRFSが有意に延長 2019年4月4日~2024年1月30日に、134例が登録および無作為化された(試験予防群66例、標準予防群68例)。 GRFSの中央値は、試験予防群26.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:9.1~未到達)、標準予防群6.4ヵ月(5.6~8.3)であり、試験予防群で有意に延長した(log-rank検定のp<0.001)。3年時点でのGRFS率は、試験予防群で49%(95%CI:36~61)、標準予防群で14%(6~25)であった(GVHD・再発・死亡のハザード比[HR]:0.42、95%CI:0.27~0.66)。 Grade III~IVの急性GVHDの3ヵ月累積発生率は、試験予防群で3%(95%CI:1~10)、標準予防群で10%(4~19)であり、2年全生存率はそれぞれ83%および71%(死亡のHR:0.59、95%CI:0.29~1.19)であった。 SCT後100日間における重篤な有害事象の発生率は、両群で同程度であった。

279.

認知機能への多領域ライフスタイル介入、構造化型vs.自己主導型/JAMA

 認知機能低下および認知症のリスクがある高齢者において、構造化された高強度の介入は非構造化自己主導型介入と比較し、全般的認知機能を有意に改善した。米国・Wake Forest University School of MedicineのLaura D. Baker氏らが、同国5施設で実施した2年間の無作為化単盲検比較試験「The US Study to Protect Brain Health Through Lifestyle Intervention to Reduce Risk(US POINTER)研究」の結果を報告した。著者は、「機能的アウトカム、バイオマーカー、長期追跡のさらなる調査により、観察された認知機能改善効果の臨床的意義と持続性が明らかになるだろう」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年7月28日号掲載の報告。60~79歳で認知機能低下リスクの高い高齢者を無作為化し2年間追跡 US POINTER研究の対象は、認知機能低下リスクの高い患者、すなわち60~79歳で、座位時間が長く(中等度強度の運動が週60分未満)、不適切な食生活(MIND食スコアが14点中9点以下)に加え、次のうち2つ以上に該当する患者であった。(1)記憶障害の家族歴(第1度近親)、(2)心血管代謝リスクが高い(収縮期血圧≧125mmHg、LDLコレステロール≧115mg/dL、またはHbA1c≧6.0%)、(3)人種(アメリカまたはアラスカ先住民、黒人、アフリカ系米国人、アフリカ系、中東または北アフリカ系)、(4)民族(ヒスパニック、ラテン系、スペイン系)、(5)高齢(70~79歳)、(6)男性。 研究グループは、適格患者を構造化介入群(1,056例)と自己主導型介入群(1,055例)に1対1の割合で無作為に割り付けた。両群とも、身体活動と認知活動の増加、健康的な食事、社会参加、心血管系の健康管理を奨励していたが、介入の構造、強度および責任の点で異なっていた。 主要アウトカムは、実行機能、エピソード記憶、処理速度の複合的な尺度で評価した全般的認知機能の2年間における年間変化率の群間差であった。構造化介入で自己主導型介入より全般的認知機能が改善 2019年5月~2023年3月に2,111例が無作為化された(最終追跡調査日2025年5月14日)。患者背景は、平均(±標準偏差)年齢68.2±5.2歳、女性1,455例(68.9%)で、2,111例中1,879例(89%)が2年目の評価を完了した。 両群とも、認知機能複合Zスコア平均値はベースラインから経時的に増加し、年間平均増加率は、構造化介入群で0.243 SD(95%信頼区間[CI]:0.227~0.258)、自己主導型介入群で0.213 SD(0.198~0.229)であった。年間平均増加率の群間差は0.029 SD(0.008~0.050、p=0.008)で、構造化介入群が自己主導型介入群より有意に高かった。 事前に規定されたサブグループ解析の結果、構造化介入のベネフィットはAPOEε4保因者と非保因者で一貫していた(交互作用のp=0.95)が、ベースラインで認知機能が低い人のほうが高い人より効果が高かった(交互作用のp=0.02)。 有害事象は、構造化介入群(重篤151件、非重篤1,091件)が自己主導型介入群(190件、1,225件)より少なかった。主な有害事象はCOVID-19の検査陽性で、構造化介入群で高頻度であった。

280.

見落とされがちな高血圧の原因とは?

 ホルモン異常が原因で高血圧が生じる一般的な疾患について、多くの患者が医師に見逃されている可能性があるとして、専門家らが警鐘を鳴らしている。米国内分泌学会(ENDO)の専門家のグループがこのほど発表した臨床ガイドラインによると、循環器専門医の診察を受ける高血圧患者の最大30%、プライマリケア医の診察を受ける高血圧患者の最大14%が、「原発性アルドステロン症」と呼ばれる疾患を抱えている可能性があるにもかかわらず、その多くがこの疾患を見つけるための血液検査を受ける機会を一度も提供されていないという。このガイドラインは、「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism(JCEM)」に7月14日掲載された。 原発性アルドステロン症は、副腎からアルドステロンというホルモンが過剰に分泌される疾患だ。アルドステロンは、血中のナトリウムとカリウムのバランスを調整する働きを担っている。アルドステロンの値が高過ぎると体内のカリウムが失われてナトリウムが保持されやすくなり、それによって血圧が上昇する。 ガイドラインによると、原発性アルドステロン症の検査の機会が全く提供されない高血圧患者が多くを占める一方、高血圧の診断から何年も経ってから初めて検査を受けたときには、すでにこの疾患による重い合併症を発症している患者もいるという。 本ガイドラインの筆頭著者で、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院の内分泌科医であるGail Adler氏は、「原発性アルドステロン症患者は、本態性高血圧の患者と比べて心血管疾患のリスクが高くなる。低価格の血液検査を用いれば、より多くの原発性アルドステロン症の患者を見つけ出し、適切な治療につなげることができる」とニュースリリースの中で述べている。 ガイドラインの情報によると、過去の研究では、原発性アルドステロン症患者は脳卒中を発症するリスクが約2.6倍(オッズ比2.58)、心不全に至るリスクが約2倍(同2.05)、不整脈を発症するリスクが約3.5倍(同3.52)、冠動脈疾患を発症するリスクが約1.8倍(同1.77)上昇することが示されている。 今回新たに発表されたガイドラインでは、高血圧と診断された全ての患者がアルドステロン値をチェックするための検査を受けること、また、原発性アルドステロン症と診断された場合には、この疾患に特化した治療を受けることが推奨されている。 米ジョンズ・ホプキンス・メディスンによると、原発性アルドステロン症の治療にはスピロノラクトンやエプレレノンなどの処方薬が使用できる。これらの薬はいずれも血圧を下げ、カリウムの値を上げる効果がある。また、ガイドラインの著者らによると、アルドステロンを過剰に産生している副腎が片側のみの場合、その副腎を摘出する手術を医師が勧めることもある。このほか、ジョンズ・ホプキンス・メディスンによれば、患者には、バランスの取れた減塩食を心がけ、減量に努めるよう指導も行われるという。

検索結果 合計:34354件 表示位置:261 - 280