24807.
1 疾患概要■ 概念・定義1974年にSchulman氏は、強皮症様の皮膚硬化を呈し、組織学的に筋膜炎を主体とした2例をdiffuse fasciitis with eosinophiliaとして報告した。1975年にRodnan氏らは同様の皮膚硬化を呈し、組織学的に好酸球浸潤を伴う筋膜炎がみられた6例を報告し、eosinophilic fasciitisと命名した。その後、同様の症例が数多く報告され、現在は独立した疾患と考えられている。好酸球増多を伴わない例も多くあり、diffuse fasciitis with or without eosinophiliaとも呼ばれる。また、Shulman症候群と呼ばれることもある。主に四肢に対称性に急速な皮膚硬化と関節の運動制限を生じる疾患である。病理組織学的に筋膜の肥厚、リンパ球、好酸球、形質細胞を主体とした炎症細胞浸潤がみられる。激しい運動、労作や外傷によって生じることが多い。末梢血好酸球増加や組織学的に好酸球浸潤がみられない症例もある。■ 疫学わが国での報告例は100例程度と少ないが、実際の症例はもっと多い。好発年齢は20~60歳の青壮年者で、まれに小児や80歳を越える高齢者にもみられることもある。男女比は1.5:1でやや男性に多い。■ 病因病因は不明であるが、過度な運動や労作が発症の誘因になると考えられており、筋膜の障害、急性炎症によって何らかの自己免疫反応が惹起される可能性が示唆されている。高ガンマグロブリン血症や自己免疫性疾患との合併からも、何らかの自己免疫的機序の関与が想定されている。Eosinophilic cationic protein(ECP)などの好酸球の誘導に関与する因子や血清IL-5の増加などが病態に関与していることが報告されている。L-トリプトファンの過剰摂取、有機溶媒との接触、ボレリア感染によっても類似の症状を呈することが報告されている。■ 症状主に、四肢遠位部の対称性の皮膚のつっぱり感、びまん性皮膚腫脹、硬化がみられる(図1)。進行すると四肢関節の可動域制限を伴う。画像を拡大する発症の1~2週間以内に激しい運動や労作、外傷、打撲の既往があることが多いが、何ら誘因がみられない例も少なくない。急性に発症する症例と、徐々に皮膚硬化を生じる症例がある。初期には発赤や疼痛を伴い、発熱や全身倦怠感を伴うこともある。病変が拡大すると四肢近位部、体幹にも皮膚硬化が及ぶこともある。しかし、手指、手背、足趾、足背や顔面は侵されないことが特徴である(図1)。筋膜が肥厚し皮下脂肪織と癒着すると関節可動活域の低下、関節拘縮を呈する(図2)。画像を拡大するしたがって、手指は関節拘縮を呈するが、皮膚の硬化はみられない。正中神経の圧迫による手根管症候群もみられる。浮腫が硬化を始めると、皮膚表面の毛穴がはっきりとみられるようになり、「オレンジの皮様(orange peel appearance)」と呼ばれている(図3)。画像を拡大するまた、真皮深層の硬化は血管周囲を避けて起こるため、板状硬化の中で血管部のみが柔らかく溝のようにみられる。これを“groove sign”と呼ぶ(図4)。腕や足を挙上させると明らかになる。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)1,000/mm3以上の著明な末梢好酸球数増加を呈する症例は、約60%でみられる。好酸球性筋膜炎は、初期に診断することが難しいため、検査を行うまでに時間がかかり、初期の好酸球増加を捉えられないことも多い。そのため、末梢好酸球数増加がみられなかった症例の中には、前述のように初期の好酸球増加を捉えられていない症例も含まれている可能性も考えられる。病勢と末梢好酸球数は一致するといわれており、治療効果の判定、病勢の評価に重要である。また、赤沈の亢進やIgGやIgA値の上昇を伴う高ガンマグロブリン血症を伴うこともある。抗核抗体やリウマトイド因子の陽性率は約10%である。アルドラーゼは上昇し、病勢に一致して変動するため、病勢の評価に有用であるとの報告がある1)。MRIは非侵襲的な検査であり、T2強調脂肪吸収画像で、筋膜の肥厚部位が同定でき、病勢の評価、治療効果判定を行うことができる有用な検査である。また、生検部位の選択にも有用である。本疾患は、組織学的に筋膜の炎症、肥厚を検索する必要があるため、生検する際は、表皮から筋膜まで一塊として採取する必要がある。生検時に筋膜をメスで切るが、その際には筋膜の肥厚を感じることができる。病理組織学的に、リンパ球、形質細胞を主体とした炎症細胞浸潤、筋膜の肥厚がみられる。好酸球の浸潤は病期によってみられないことも多い。また、膠原線維の増加(線維化)は、筋膜から脂肪組織、真皮上層にわたって生じるが、真皮の浅層は侵されない。したがって、筋膜・筋肉表層まで含めたen bloc生検で十分な深さまで採取することが重要である。好酸球性筋膜炎に合併する疾患として、自己免疫性甲状腺炎、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、関節リウマチなどの自己免疫性疾患の報告が散見される。欧米では、固形がんや血液腫瘍との合併例が散見され、悪性腫瘍のparaneoplastic syndromeと提唱している報告もある。ステロイド治療に難渋する症例では悪性腫瘍の検索を積極的に行うべきとの意見もある2)。鑑別診断としては、同じく皮膚硬化を呈する全身性強皮症が挙げられる。好酸球性筋膜炎では、前腕部において手指の筋膜が肥厚し、皮下脂肪織と癒着すると手指の関節可動活域の低下、関節拘縮を呈する(図2)。全身性強皮症においても同じく手指の関節拘縮がみられるため鑑別に注意を要する。強皮症に伴う手指関節拘縮は、皮膚硬化によるものであり原因が異なる。好酸球性筋膜炎では、全身性強皮症でみられるレイノー現象、爪上皮延長、後爪郭部毛細血管拡張、指尖部潰瘍、手指の皮膚硬化といった手指の病変(皮膚硬化、末梢循環障害)がみられないことが鑑別のポイントである。また、全身性強皮症では、間質性肺炎や肺高血圧症などの内蔵病変の合併がみられるが、好酸球性筋膜炎ではみられない。また、限局性強皮症も鑑別すべき疾患の1つに挙げられる。限局性強皮症は境界明瞭な皮膚硬化が斑状ないし線状にみられ、全身どこにでも出現する。限局性強皮症が本症の20~30%に合併するとの報告もある3)。また、全身性強皮症や限局性強皮症の皮膚硬化に比べて、好酸球性筋膜炎の皮膚硬化はより深部に生じることも鑑別のポイントである。以上より、鑑別のポイントとしては、皮膚硬化が左右対称性か、手指、足趾に皮膚硬化がみられるか、皮膚硬化の深さはどうかといった点が挙げられる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)副腎皮質ホルモンの内服が第1選択である。通常、プレドニゾロン0.5~0.7mg/kg/日から開始し、症状の推移に合わせて増減する。急速な減量によって症状の再燃がみられることがあり、皮膚硬化、関節拘縮を観察し、アルドラーゼなどを参考にして減量を行うことが望ましい。生命予後は良好であるが、進行した皮膚硬化、関節拘縮は難治性で非可逆的のこともあり、早期に治療を開始することが重要である。Lebeaux氏らはステロイドパルス療法を早期に行うことによって、皮膚硬化がより改善したと報告しており、皮膚硬化が高度な場合は、早期からのステロイドパルス療法を考慮すべきである4)。免疫抑制剤(シクロスポリンやメソトレキセート)の有効性も報告されており、ステロイド治療にて難治な症例には考慮すべきである4、 5)。光線療法(PUVA療法やUVA1療法)によって皮膚硬化が改善した報告があり、治療の選択肢の1つとして考慮する。4 今後の展望好酸球性筋膜炎の原因、病態はいまだ不明であり、今後の症例の蓄積、基礎研究の発展が望まれる。5 主たる診療科皮膚科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 好酸球性筋膜炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Fujimoto M, et al. J Rheumatol.1995;22:563-565.2)Naschitz JE, et al. Cancer.1994;73:231-235.3)Nindl M, et al. 皮膚臨床.1996;38:2013-2017.4)Lebeaux D, et al. Rheumatology.2012;51:557-561.5)Endo Y, et al. Clin Rheumatol.2007;26:1445-1451.公開履歴初回2015年03月26日更新2016年08月16日