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20021.

精神療法中のうつ病および不安症状の変化

 精神療法での治療効果の40%は、3回の治療セッションによる症状変化で説明されるものと推定されている。しかし、この変化は、患者群および症状により一様ではないと考えられる。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのRob Saunders氏らは、精神療法中のうつ病および不安症状の変化が異なる患者をサブグループに分類し、これらの違いと関連付けられるベースライン時の患者の特性について調査を行った。Journal of Affective Disorders誌2019年4月15日号の報告。 対象は、2つの精神療法サービスにおいてセッションを完遂し、自己報告のうつ病および不安を測定した患者4,394例。症状変化の推移は、潜在クラス成長分析を用いて調査した。ベースライン時の患者特性と症状推移との関連性は、多項ロジスティック回帰を用いて調査した。 主な結果は以下のとおり。・多くの異なる推移が観察された。・不安症状の推移は、3回目の治療セッションで分類可能であったが、うつ症状は、6回目のセッションまでは限定された変化しか示さず、その後、症状の急速な改善が認められた。・治療反応の認められた患者におけるうつ病および不安の推移は、治療反応のない場合と比較し、ベースライン時の重症度の低さ、社会的機能良好、恐怖症性不安の発生率の低さと関連が認められたが、薬剤処方との関連は認められなかった。・本研究の限界として、データは2つの精神療法サービスからの情報であり、定期的に収集されていない因子が症状の推移に影響を及ぼした可能性がある。 著者らは「ベースライン時の患者特性と治療初期の症状変化は、症状変化の推移を特定するうえで役立つであろう。このことは、臨床での意思決定の助けとなり、治療アウトカムの改善に役立つと考えられる。臨床医は、患者ごとに症状変化の推移が異なることを考慮し、患者に利益をもたらす可能性のある治療法を不用意に変更または終了させないよう、注意しなければならない」としている。

20022.

現実と乖離する「ナトリウム・カリウム摂取量」と、健康長寿(解説:石上友章氏)-1047

 健康日本21の第2次の栄養目標では、平成34年度の食塩摂取量を8g(平成22年 10.6g)に定めている。カリウムについては個別の目標は採用せず、野菜・果物摂取量が設定されている。世界保健機関(WHO)のガイドラインでは、1日の栄養摂取量として、ナトリウムは2.0g未満に制限を、カリウムは3.5g以上摂取を推奨している。いずれの目標も、ナトリウム過剰摂取やカリウム摂取不足が、健康・長寿にマイナス要因に働くという認識については一致している。カナダ・マックマスター大学のMartin O'Donnell氏らが行った調査(PURE研究)の結果は、現実が必ずしも理想どおりではないことを示している。 社会的要因によるバイアスを回避するために、18の高所得~低所得国の、都市部および農村部から、10万名にのぼる住民を対象にした。全死亡・主要心血管イベントをアウトカムにした解析によれば、ナトリウム摂取量についてJ字現象が再確認される一方、カリウム摂取量については、線形性に反比例する関係が認められた。本論文の骨子は、この関係性の再確認ではない。ナトリウム摂取量とカリウム摂取量とで、2次元にマトリックス化した解析では、健康日本21、WHOで、理想とされる「低ナトリウム・高カリウム」群に該当する住民が、全体のわずか0.002%しか認められないことが明らかになった。 本研究は、あるがままの実態を明らかにする観察研究であり、因果関係を明らかにするようなデザインではない。健康日本21、WHOが提唱する目標が、健康長寿をもたらすかどうかを判断することはできなかった。その実行可能性に疑義を呈する結果であった。多くの食品成分の中で、2種類の一価の陽イオン性の食品成分が、人類の健康に重大な寄与をするという事実は、あらためて食生活の重要さを再認識させる重みのある事実である。一方で、目標を達成する手段を提供せずに、理想を求めることの限界を赤裸々に示している点は興味深い。生活習慣という、第2の天性ともいえる行動を変容させる手段を提供することなくては、目標とする効果を見込むことはできない。

20023.

元全米NFL選手におけるタウPET(解説:中川原譲二氏)-1048

 元全米フットボール・リーグ(NFL)選手において報告された慢性外傷性脳症(CTE)は、反復性の頭部衝撃の既往と関連する神経変性疾患である。神経病理学的診断は、アルツハイマー病などの他の疾患とは異なり、タウは蓄積するがアミロイドβはほとんど蓄積しない特異的なパターンに基づいて行われる。CTEのリスクがある生存人の脳内で、タウとアミロイドの蓄積の検出が実現可能かどうかは、これまで十分な研究が行われていない。R.A. Sternらは、元全米NFL選手を対象として、CTEのリスクがある生存人の脳で、タウとアミロイドの蓄積の検出が可能と報告した(Stern RA, et al. N Engl J Med. 2019 Apr 10. [Epub ahead of print])。元全米NFL選手群と対照群に対してタウPET、アミロイドβ PETを施行 認知症状・神経精神症状を有する元NFL選手と、外傷性脳損傷の既往がない無症状の男性(対照)において、脳内のタウとアミロイドβの蓄積を測定するために、それぞれflortaucipir PETとflorbetapir PETを行った。自動画像解析アルゴリズムを用いて、領域ごとのタウの標準取り込み比(SUVR:小脳における放射能を基準とする特定脳領域の放射能比)を2群間で比較し、元選手群のSUVRと症状の重症度および競技年数との関連を探索的に検討した。元選手群では、両側上前頭葉、両側内側側頭葉、左頭頂葉でタウが蓄積 元選手26例と対照31例を解析の対象とした。flortaucipirのSUVRの平均は、元選手群のほうが対照群よりも、両側上前頭葉(1.09対0.98、補正後の差の平均:0.13、95%信頼区間[CI]:0.06~0.20、p<0.001)、両側内側側頭葉(1.23対1.12、補正後の差の平均:0.13、95%CI:0.05~0.21、p<0.001)、左頭頂葉(1.12対1.01、補正後の差の平均:0.12、95%CI:0.05~0.20、p=0.002)の3領域で高かった。探索的解析では、この3領域におけるSUVRと競技年数との相関係数はそれぞれ0.58(95%CI:0.25~0.79)、0.45(95%CI:0.07~0.71)、0.50(95%CI:0.14~0.74)であった。タウの蓄積と認知機能検査および神経精神学的検査のスコアとの間に関連は認められなかった。元選手1例にのみ、アルツハイマー病患者と同程度のアミロイドβの蓄積が認められた。CTEのリスクがある生存人の脳で、タウとアミロイドの蓄積の検出が可能 生存し、認知症状・神経精神症状を有する元NFL選手群では、CTEの影響を受けている脳領域においてPETで測定されるタウの蓄積レベルが対照群よりも高く、アミロイドβの蓄積レベルは高くなかった。CTEに関連するタウの蓄積上昇が個々の人で検出できるかどうかについては、さらなる研究が必要である。神経変性疾患のPETによる神経病理学的診断の時代へ CTEの神経病理学的診断が、タウPET、アミロイドβ PETの施行により、生存人の脳で可能となる時代がやってきた。近年、多くの神経変性疾患が、タウやアミロイドβなどのmisfolded proteinsが脳内に蓄積することによって生じることが明らかにされつつある。また、これらのmisfolded proteinsを標的とするPET診断薬の開発により、多くの神経変性疾患では、PETによる生前の病理診断が可能となりつつある。しかしながら、アルツハイマー型認知症ですら、それぞれのmisfolded proteinsの脳内蓄積のパターンと、疾病の進行度との間には、必ずしも明確な関係が見いだせず、PET画像から有用な臨床指標を見いだす道は、いまだ途上にあることを忘れてはならない。

20024.

論文をトイレで読んでみた、失敗した!【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】 第11回

第11回 論文をトイレで読んでみた、失敗した!「論文・見聞・いい気分」も11回目を迎えました。幸いにもCareNet.com編集部から連載企画中止の宣告もありません。皆さまありがとうございます。これまでの10回の中で、もっとも多くの方々に読んでいただいたのが「第4回 論文は風呂で読むべし、試してみなはれ!」だそうです。他の9回を大きく引き離す人気のようです。この第4回を読んだ方から、「俺はトイレで本を読む」、「私はトイレでマンガを読むのが至福の時間」、「風呂よりトイレでしょ!」などの声を頂戴しました。自分の感想は、「えっ?トイレ?」でした。自分は、人生でのトイレ滞在時間のすべてを排泄作業のみに集中してきたからです。そこで挑戦です。論文をトイレで読むぞ!論文の選択も大切です。敬意を表してNEJM誌から「PARTNER 3試験」を選んでみました。これは、低手術リスクの大動脈弁狭窄症の治療で、経カテーテル的な大動脈弁置換術が、従来の外科的手術よりも術後1年時の死亡・脳卒中・再入院によって定義されるエンドポイントに優れることを示した研究です。2019年3月に開催された、ACC(米国心臓病学会)2019という大規模な国際学会のLate-breaking Sessionで公表されました。発表直後に大会場が聴衆総立ちの拍手喝采となったものです。すぐに情報やコメントがネット上にあふれ、発表スライドも公開されています。そのため、試験デザインや結果の概要についてはすでに把握しています。しかし、詳細な内容を理解するには論文を読む必要があります。論文のDiscussionの部分で、どのような論点が挙げられているのかに興味がありました。読むべき論文を紙に印刷したものを手にして、トイレに入ります。職場ではなく自宅のトイレです。一般的にトイレに長居すると家族に怒られると思います。皆に緊急の必要性がないことを確認のうえで、籠城に入りました。さあ、読むぞ! えっへん! 手にした英文に目を通していきます。「だめだ!」全く読めません。苦労して文字を追っても頭に入りません。そのうえ、肝心の作業である用足しもできないのです。最悪です。すべてが快調な風呂とは大違いです。下品な話をします。人間の生理的現象である、排便・排尿は快感をともなうものです。不要な老廃物を身体から出してスッキリすれば、論文の情報はサクサクと頭に入ると期待していました。期待は裏切られました。出るモノもなく、入るモノもありません。悪あがきせずに作戦終了です。トイレ本来の目的に集中し、一定の結果を得て撤収しました。運気? を吸った論文はゴミ箱にサヨナラしました。NEJMの神様(紙様?)、お許しください。この失敗の原因を考えてみました。大動脈弁に関する論文を、排便作業をしながら読むという戦略に無理があったのかもしれません。ベンベン!論文を堪能するのは、やっぱり風呂ですね。

20025.

第19回 意識消失発作の症例から学ぶ脈拍の異常1 【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回は脈拍の異常を来した患者さん2例を紹介します。脈の乱れは「不整脈」といわれ、その不整脈が徐脈であっても頻脈であっても、患者さんの状態が「不安定」であるときに急を要します。徐脈や頻脈が認められた時、どのような点に気を付けて患者さんと接することがポイントになるでしょうか?症例を通してシミュレーションしていきましよう。プロローグ本日あなたは施設に内服薬を届けに来ています。「この前、低血糖で入院になったEさんは大丈夫かしら...」そう、今日は前回、低血糖による意識障害のため入院になったEさんの入所している施設に来ています。Eさんは退院後、いつも通り元気にレクリエーションに参加していました。「よかった(笑)」あなたは少しホッとしました。さて、今回は内服薬を届けに来ただけではありません。先日、意識消失発作を来したFさんの件もあり、嘱託の医師・看護師を交えて、施設職員との勉強会が開かれることになり、その時の状況をよく知っているあなたも参加することになったのです。再び、患者さんFの場合勉強会にて(第18回で紹介したFさんです。あの日、あなたが体験し本人から聞いたことをプレゼンテーションしています)72歳、女性。普段から元気な方で特に既往歴はありません。2回ほど、失神したことがありますが病院を受診しておらず、常用薬もありませんでした。心臓突然死の家族歴はありません。あの日、施設に入所している知人に会いに来たところ、面会の最中にフラッとする感じがありました。不安に思い帰宅しようとして歩行中に、意識消失発作を来し転倒しました。意識消失の時間は、(あのときは長く感じましたが)助けを呼んでいる間に回復したので、数十秒から1分程度と考えられます。痙攣はありませんでした。意識が回復した後にFさんから聞いた話では、前兆なく意識をなくしたようです。あなたがそう話し終えると、医師から、その後救急車で病院を受診して、洞機能不全症候群の診断でペースメーカーの治療となりましたと、追加の報告がありました。心臓の刺激伝導系「心電図」という名前がある通り、心臓は電気が流れて動いています〈図1〉。まず、「洞結節」という右心房の上の方にある部分で電気が起こります。そして心房を通って心房筋が収縮し、心房と心室の間にある「房室結節」という中継地点に到達します。さらに「ヒス束」、「右脚と左脚」にわかれ、最終的に「Purkinje(プルキンエと読みます)線維」を通って心室筋へと電気が流れていき心室が収縮します。これらの電気的興奮が伝わる特殊な心筋の経路を刺激伝導系と言います。「洞結節」では1分間に60〜100回の頻度で 規則正しく電気活動が起こりますから、正常な心臓ではこの60〜100回/分 が心拍数ということになります。ちなみに、心拍数というのは心臓の拍動の数ですが、脈拍数は橈骨動脈など末梢血管での脈の回数です。脈拍数が1分間に60回未満である場合を徐脈と言い、100回以上のとき頻脈と言います。徐脈の原因徐脈となる原因は、大きく分けて2つあります。洞結節で発生する電気信号が少なくなった場合と、洞結節からの電気信号が心室筋に伝わらなくなった場合です。前者を洞機能不全症候群といい、後者を房室ブロックと言います。(これらの疾患もそれぞれ原因がありますが、ここでは割愛します)図2は洞機能不全症候群の患者さんの心電図です。*印が心房を流れる電気的興奮の波(P波と言います)ですが、それが一時的になくなっているのがわかります。つまり、洞結節での電気信号が出ていない状態であり、洞機能不全があると判断されます。徐脈に対する診療アルゴリズム今回のFさんは、この洞機能不全症候群だったわけです。さて、徐脈に伴う症状には、めまいや失神といった脳への血流が足りなくなって起こる症状(脳虚血症状)や、倦怠感や息切れといった心臓のポンプ機能の低下による症状(心不全症状)があります。その中でも、バイタルサインに異常を来している状態が最も急を要します。図3は救急診療における徐脈の診療アルゴリズム(手順)です。目の前の患者さんが徐脈を呈しているとき、まずは徐脈による症状があるか否かを確認します。意識状態の悪化、失神、持続する胸痛、呼吸困難などの症状や、血圧低下、ショックの所見などの徴候があるときには、その患者さんは「不安定である」と判断し、直ちに専門医への連絡や治療が必要です。これらの不安定であると判断する症状や徴候は、バイタルサインの異常を来している場合に起こります。ちなみに、急性心筋梗塞の合併症として徐脈性不整脈を来すときがあり、そのため「持続する胸痛」という症状も含まれます(急性心筋梗塞は緊急度の高い疾患です)。Fさんが歩こうとしたとき、救急隊がそれを止めて車いすに乗せたのは、急な容態変化が起こり得ると判断したからです。先日のFさんの出来事をもう1度振り返り、その日の勉強会は終了しました。が、勉強会の後片付けをしていたとき、スタッフの1人が具合悪そうにしています。

20026.

新インフルワクチンで毎年の接種不要に? P1試験開始/NIH

 インフルエンザワクチンは次シーズンの流行予測に基づき、ワクチン株を選定して毎年製造される。そのため、新たな変異株の出現と拡大によるパンデミックの可能性に、世界中がたえず直面している。米国国立衛生研究所(NIH)は4月3日、インフルエンザウイルスの複数サブタイプに長期的に対応する“万能(universal)”ワクチン候補の、ヒトを対象とした初の臨床試験を開始したことを発表した。 この新たなワクチン候補は、菌株ごとにほとんど変化しない領域に免疫系を集中させることで、さまざまなサブタイプに対する防御反応を行うよう設計された。本試験は、米国国立アレルギー感染症研究所のワクチンリサーチセンター(VRC)が主導している。複数サブタイプに長期的に有効となりうる理由は? インフルエンザウイルス表面には、ウイルスがヒト細胞に侵入することを可能にする赤血球凝集素(HA)と呼ばれる糖タンパク質があり、感染防御免疫の標的抗原となっている。新たなプロトタイプワクチンH1ssF_3928では、HAの一部を非ヒトフェリチンからなる微細なナノ粒子の表面に表示する。インフルエンザウイルスにおけるHAの組織を模倣するので、ワクチンプラットフォームとして有用だという。 HAは、頭部領域および茎領域からなる。ヒトの体は両領域に免疫反応を起こすが、反応の多くは頭部領域に向けられている。しかし、頭部領域は抗原連続変異と呼ばれる現象が次々と起こるため、ワクチンは毎年の更新が必要となる。H1ssF_3928は、茎領域のみで構成された。茎領域は頭部領域よりも安定的であるため、季節ごとに更新する必要はなくなるのではないかと期待されている。 VRCの研究者らは、H1N1インフルエンザウイルスの茎領域を使ってこのワクチン候補を作成した。H1はウイルスのHAサブタイプを表し、N1はノイラミニダーゼ(NA、もう1つのインフルエンザウイルス表面糖タンパク質)サブタイプを表す。18のHAサブタイプと、11のNAサブタイプが知られているが、現在は主にH1N1とH3N2が季節的に流行している。しかし、H5N1やH7N9、および他のいくつかの株も、少数ながら致命的な発生を引き起こし、それらがより容易に伝染するようになればパンデミックを引き起こす可能性がある。 H1ssF_3928は、動物実験において異なるサブタイプであるH5N1からも保護効果を示した。これは、このワクチンにより誘導された抗体がH1とH5を含む「グループ1」内の他のインフルエンザサブタイプからも保護可能なことを示す。VRCでは将来的な臨床試験として、H3とH7を含む「グループ2」サブタイプから保護するように設計されたワクチンも評価することを計画している。健康な成人における抗原性、安全性と忍容性を調べる第I相試験 第I相臨床試験には、18~70歳までの健康な成人少なくとも53人が、段階的に組み入れられる。最初の5人の参加者は18~40歳で、H1ssF_3928(20µg)の筋肉内注射を1回受ける。残りの48人は、H1ssF_3928(60 µg)を16週間間隔で2回受ける予定となっている。 参加者は年齢によってそれぞれ12人ずつ4つのグループに層別される予定である(8~ 40歳、41~49歳、50~59歳、60~70歳)。研究者らは、H1ssF_3928に対する免疫反応が、年齢およびさまざまなインフルエンザ変異型への曝露歴に基づいてどのように変化するかを明らかにしたいと考えている。参加者は、接種後1週間、体温およびあらゆる症状を記録するよう求められる。また、12~15ヵ月の間に9~11回フォローアップ受診し、血液サンプルを提供する。研究者らはそのサンプルにより、インフルエンザに対する免疫を示す抗インフルエンザ抗体のレベルを特徴付けて測定する。なお、参加者が試験中にインフルエンザウイルスに曝露されることはない。 VRCでは、この臨床試験を長年の関連研究開発の集大成と位置付けている。2019年末までの登録完了、2020年はじめの結果報告開始を予定している。■参考NIHニュースリリースNCT 03814720(Clinical Trials.gov)

20027.

オバマケア、低出生時体重/早産の転帰を改善/JAMA

 米国の低所得者を対象とする公的医療保険制度であるメディケイドの受給資格の拡大(Medicaid expansion)に関連して、これを導入した州と未導入の州で、新生児の低出生時体重および早産のアウトカムに差はないものの、導入州は未導入州に比べ黒人と白人の新生児の間にみられたアウトカムの相対的な差が改善されたことが、米国・University of Arkansas for Medical SciencesのClare C. Brown氏らの調査で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年4月23日号に掲載された。米国では、低出生時体重および早産は、新生児の死亡や新生児~成人の慢性疾患のリスク増大などの有害な結果をもたらすが、黒人の新生児は白人の新生児よりも早産の可能性が高く、死亡や慢性疾患にも差がみられる。一方、1990年の包括財政調整法(OBRA)下では、メディケイドの適用は妊娠が条件であったため、各州の貧困の基準を満たさない低所得の母親は、産後60日で保険適用を失う場合があったが、医療費負担適正化法(ACA、オバマケア)下では、一部の州でメディケイド拡大が導入され、貧困基準の緩和とともに、妊娠の有無にかかわらず低所得の女性も継続的な医療の利用が可能となり、これによって母親の健康および出産前の早期ケアの受診機会が改善された可能性が示唆されていた。導入州と未導入州で、出生アウトカムを比較 研究グループは、メディケイド受給資格の拡大が、全体および人種/民族別の双方において、低出生時体重と早産のアウトカムに変化をもたらすかを評価する目的で検討を行った(Arkansas Center for Health Disparities[ARCHD]などの助成による)。 2011~16年の米国国立衛生統計センター(National Center for Health Statistics:NCHS)出生データファイルの人口ベースのデータを使用した。メディケイド拡大を導入した州の多くは、2014年1月1日から導入を開始した。 メディケイド拡大の導入州と未導入州の乳児の出生アウトカムを比較し、19歳以上の女性の単胎生児出産における人種/民族的に少数の集団の相対的な差の変化を評価するために、多変量線形確率回帰(multivariable linear probability regression)を用いて、差分の差分(DID)および差分の差分の差分(DDD)モデルを推定した。 主要アウトカムは、早産(在胎期間37週未満)、超早産(同32週未満)、低出生時体重(2,500g未満)、超低出生時体重(1,500g未満)とした。導入州で、4つのアウトカムの人種間の差がいずれも縮小 1,563万1,174件の出産が解析に含まれ、新生児は白人824万4,924例、黒人220万1,658例、ヒスパニック系394万4,665例であった。このうち、メディケイド拡大の導入州(ワシントンD.C.と18州)が853万751例、未導入州(17州)は710万423例だった。 DID解析では、メディケイド拡大導入の前後で、導入州と未導入州の間に早産の発生率の変化に有意な差は認められなかった(導入前から導入後の変化:導入州6.80%から6.67%[差:-0.12]vs.未導入州7.86%から7.78%[-0.08]、補正後DID:0.00ポイント、95%信頼区間[CI]:-0.14~0.15、p=0.98)。 同様に、超早産(導入前から導入後の変化:導入州0.87%から0.83%[差:-0.04]vs.未導入州1.02%から1.03%[0.01]、補正後DID:-0.02ポイント、95%CI:-0.05~0.02、p=0.37)、低出生時体重(5.41%から5.36%[-0.05]vs.6.06%から6.18%[0.11]、-0.08ポイント、-0.20~0.04、p=0.20)、および超低出生時体重(0.76%から0.72%[-0.03]vs.0.88%から0.90%[0.02]、-0.03ポイント、-0.06~0.01、p=0.14)にも有意差はみられなかった。 一方、白人新生児に比べ黒人新生児で不良であった4つのアウトカムはいずれも、メディケイド拡大未導入州よりも導入州において、その差が有意に小さくなった(早産:負の補正後DDD係数:-0.43ポイント、95%CI:-0.84~-0.02、p=0.05、超早産:-0.14、-0.26~-0.02、p=0.03、低出生時体重:-0.53、-0.96~-0.10、p=0.02、超低出生時体重:-0.13、-0.25~-0.01、p=0.04)。ヒスパニック系におけるアウトカムの相対的な差には、有意な変化はみられなかった。 著者は、「導入州における、黒人新生児の低出生時体重および早産の、白人新生児との相対的な差の縮小は、黒人の乳児死亡率の大幅な低下の説明となる可能性がある」としている。

20028.

内容充実!『がん免疫療法ガイドライン』の第2版が発刊

 2019年3月29日、日本臨床腫瘍学会が編集した『がん免疫療法ガイドライン第2版』が発刊。2016年に初版が発行されてから2年。非常にスピーディな改定が行われた。今回の改定では、この間に明らかとなった各疾患での治療エビデンスや副作用管理などが集約化された。解説内が細分化され読みやすく 本ガイドラインの構成についての大幅なリニューアルはないが、各項の解説が「発症の頻度」、「臨床症状と診断」、「治療方針」に細分化されたことで、実臨床に役立てやすくなっている。 免疫チェックポイント療法の副作用については、“心筋炎を含む心血管障害”が追加。また、これまで甲状腺や副腎などの副作用は、 機能障害として大きなくくりで記載されていたが、それぞれ甲状腺機能低下症、副腎皮質機能低下症へと記述が変更されている。これに伴い、「発症の頻度」に市販後調査の報告が追加され、副作用出現時の管理方法などが充実した。同様に記述が変更した下垂体機能低下症の項には、CTCAE Grade評価の追加。これまで投与中止となっていた重症例は、Grade3、4に区分され、投与可否についても“投与休止”へと変更されている。このように、細かい変更点があるため、第2版の副作用管理について熟読されることをお薦めする。 各がん種別エビデンスについては、初版発刊時には推奨される免疫療法がなかった「胃がん」「大腸がん」「小児腫瘍」などへの推奨が加わった。肺がんは、悪性胸膜中皮腫の記載が盛り込まれたことから、「胸部悪性腫瘍」の項に収められた。そのほか、「高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構の欠損(dMMR)を有する切除不能・転移性の固形」の章が追加されている。 ガイドライン作成委員長の中西 洋一氏(九州大学大学院胸部疾患研究施設教授)は、本ガイドラインの冒頭で、「非がん領域の専門家の力も借り、徐々に集積してきた知見も織り込んで、しっかりとした内容に仕上がっている」と述べている。

20029.

アミロイドβの毒性機序解明となるか?

 アルツハイマー病(AD)における病因蛋白アミロイドβの毒性機序の解明について、昭和大学がプレスリリースを発表した。 今回、昭和大学の小野 賢二郎氏(昭和大学 医学部脳神経内科学部門 教授)、辻 まゆみ氏(薬理科学研究センター)らを中心とする研究グループは、アミロイドβの高分子オリゴマーであるプロトフィブリルが神経細胞膜を傷害する機序の一端を解明し、2019年5月13日、米国実験生物学会連合学術誌The FASEB Journal誌オンライン版に掲載された。ターゲットはアミロイドβ高分子オリゴマー アミロイドβは、主に40アミノ酸残基を含むアミロイドβ1-40と42アミノ酸残基を含むアミロイドβ1-42がヒトにおいて産生されるが、とくにアミロイドβ1-42はより凝集性が高く毒性が強いため、AD病態の進行にとって重要であると言われている。 アミロイドβモノマーは凝集して低分子オリゴマー、続いてプロトフィブリルのような高分子オリゴマー、そして最後に成熟線維を形成すると考えられている。これらの凝集体はAD患者の脳において神経機能障害を引き起こすが、最近、早期あるいは中間凝集段階であるオリゴマーがADの病因において重要な役割を果たすことが示唆されている1)。高分子オリゴマーが細胞膜を傷害することで毒性を発揮 今回の研究では、アミロイドβ1-42の高分子オリゴマーが、細胞膜上での活性酸素種(ROS:Reactive Oxygen Species)生成と脂質過酸化によって仲介される膜損傷を介して神経毒性を発揮し、その結果、膜流動性の低下、細胞内カルシウム調節異常、膜の脱分極、およびシナプス可塑性障害をもたらすことを明らかにした。これらの作用は低分子アミロイドβでは弱いことがわかった。 最近、第II相臨床試験で、高分子アミロイドβオリゴマー抗体が、プラセボと比較して早期ADにおける認知低下を有意に遅らせ、アミロイド蓄積を減少させたことが報告されているが、今回の高分子アミロイドβオリゴマーが膜損傷を介して神経毒性を誘発するという研究結果によって、高分子アミロイドβオリゴマーがADの有効な疾患修飾療法の治療標的になる可能性があることが示唆された。 これらの知見は、ADにおいてアミロイド斑を除去または分解するように開発された疾患修飾療法の最近の失敗に照らして重要な知見であり、現在世界中で行われているADの治療薬開発に応用できる可能性があるという。 本研究は、昭和大学医学部脳神経内科学部門、薬理科学研究センター(木内 祐二氏ら)、同学歯学部口腔生理学(井上 富雄氏ら)、富山大学医学薬学研究部システム情動科学(西条 寿夫氏ら)、金沢大学ナノ生命科学研究所(中山 隆宏氏)、京都大学iPS細胞研究所(井上 治久氏ら)、カリフォリニア大学ロサンゼルス校神経学(デービッド・B テプロフ氏)との共同研究にて行われた。■参考大学プレスセンター プレスリリース1)Ono K. Neurochem Int. 2018;119:57-70.

20030.

ベンゾジアゼピン系睡眠薬とアルコールの併用率を日本の精神科外来患者で調査

 ベンゾジアゼピンとアルコールの併用は、一般的に認められる。慶應義塾大学の内田 貴仁氏らは、精神科外来患者におけるベンゾジアゼピン系睡眠薬とアルコールの併用率、併用と関連する臨床的特徴および因子、併用に関する精神科医の意識について調査を行った。International Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2019年4月15日号の報告。ベンゾジアゼピン系睡眠薬とアルコールの併用率は39.8% ベンゾジアゼピン系睡眠薬の投与を受けている統合失調症、うつ病、不眠症の外来患者を対象に、睡眠薬とアルコールの使用も記録可能な睡眠日誌を7日間連続で記入するよう依頼した。臨床的特徴を評価し、併用に関連する因子を調査するため、ロジスティック分析を実施した。さらに、担当精神科医に対し、患者がベンゾジアゼピン系睡眠薬とアルコールを併用したと思ったかどうかを調査した。 主な結果は以下のとおり。・ベンゾジアゼピン系睡眠薬とアルコールの併用率は、39.8%(93例中37例)であった。・CAGE(アルコール依存症スクリーニング尺度)スコアが、併用と有意な正の相関を示した(オッズ比:2.40、95%信頼区間:1.39~4.16、p=0.002)。・精神科医によってベンゾジアゼピン系睡眠薬とアルコールの併用が疑われた患者は、併用患者のうち32.4%のみであった。 著者らは「これらの結果は、ベンゾジアゼピン系睡眠薬とアルコールの併用は一般的であり、これを精神科医は見過ごしている可能性があることを示唆している。このような潜在的な危険性を有する患者をスクリーニングするために、CAGE質問票が役立つであろう」としている。

20031.

ER陽性/HER2 陰性乳がんに対するS-1 アジュバントが有効中止/京都大学

 京都大学大学院医学研究科外科学講座乳腺外科 戸井雅和氏(中井雅和氏)を主任研究者とした研究グループが2012年より実施してきたエストロゲン受容体(ER)陽性/HER2陰性乳がんに対するS-1術後療法ランダム化比較第Ⅲ相試験(POTENT試験)の中間解析結果を同大学のHPで発表。 主要評価項目である無浸潤疾患生存期間が、事前に設定した有効中止の基準に合致したことにより試験を中止することを決定した。POTENT試験は先進医療Bに基づく医師主導の臨床試験。 ER陽性/HER2陰性乳がんに対しては、アントラサイクリンおよびタキサンといった従来の標準的な抗がん剤による治療効果は必ずしも十分ではないと考えられるため、新たな治療戦略が望まれていた。POTENT試験は、同症例を対象とし、標準的な術後内分泌療法とS-1を併用することにより、標準的な術後内分泌療法単独に比べ再発抑制効果が高まることをランダム化比較試験により検証したもの。 本成果は、今後、国際学会、学術誌などにおいて公表される予定とのこと。

20032.

Dr.たけしの本当にスゴい高齢者身体診察

第1回 発熱第2回 急性腹症第3回 心臓の診察第4回 肺の診察第5回 意識障害第6回 神経診察 高齢者は認知機能低下などから、病歴聴取が不正確になりがちです。かといってやみくもに検査を行えば異常値に振り回されます。そこで役立つのが身体診察です。身体診察はいつでも、どこでもでき、侵襲がなく、コストもかかりません。さまざまな併存症を持ち、多くの鑑別疾患を考える必要がある高齢者に対してこそ、身体診察を役立てるべきなのです。Dr.たけしがエビデンスを綿密に分析し、より効果的な身体診察方法を実技を交えてお教えします!第1回 発熱高齢者の発熱は診察の場を問わず、よく見かける症候です。すぐに発熱のワークアップを行うべきか、経過を見るべきかを悩むことも多いのではないでしょうか?緊急性の評価や、高齢者ならではの発熱原因を身体診察でどう行うか、実技を交えて解説します。第2回 急性腹症今回のテーマは急性腹症です。高齢者の急性腹症は重篤な疾患が隠れていることが多くいので、しっかりとルールイン、ルールアウトすることが大切です。そのために役立つ効果的な身体診察の方法をDr.たけしが実技を交えて解説します。第3回 心臓の診察今回のテーマは苦手な人も多い「心臓の診察」。心臓の診察は、心音の聴取や、頸動脈圧の測定などが重要となってきます。今回は、実技だけでなく、実際の患者さん映像や音声(心音)を使用してわかりやすく解説します。また、エビデンスから引き出されたそのほかの必要な身体診察法についても考察します。第4回 肺の診察今回は、COPDを中心に肺の診察方法について解説します。肺の診察と言えば聴診のイメージが強いですが、それだけではありません。さまざまな身体診察法を実技を交えて、しっかりとお教えします。患者が呼吸困難で救急で運ばれてきた場合、COPDと心不全との鑑別が重要です。この鑑別が瞬時に行うことができるよう、各々の身体所見の取り方を理解しておきましょう。第5回 意識障害今回は意識障害について解説します。高齢者の意識障害と言えば脳血管障害と思われがちですが、そのほかにも感染症、代謝性疾患、外傷などさまざまな原因が考えられます。そのため、系統的な鑑別が必要となります。その中でも身体診察は、5つの項目に分けて確認していくことが重要です。5つの項目とは、バイタルサイン、神経所見、脱水所見、皮膚所見、感染症検索。それぞれの項目の診方について詳しくお教えします。第6回 神経診察神経所見には、かなりの種類があります。今回はその中でも重要な部分に絞って解説します。神経所見を見抜くことができれば、頭蓋内病変など、緊急を要する疾患に即座に対応ができます。神経所見が乏しいとき、どこを診て疑う、あるいは除外すべきか、そのポイントをしっかりと解説します。また、効率的な神経所見診察方法や少し変わった診察テクニックなどを実技を交えてご紹介します。

20033.

認知症は運動で予防できない?(解説:岡村毅氏)-1045

 運動不足は認知症発症リスクではないという報告だ。認知症予防について、無垢な時代が終わり、新たな時代の号砲を告げる論文かもしれない。はじめに私の立場をはっきりさせておくと、予防が完成すれば認知症は駆逐されるという楽観主義でも、予防なんて無意味だからすべて受け入れようという悲観主義でもない。私の立場は、真実は中庸にありというものだ。 論文にはこうある。認知症になる前(前駆期)、活動性は低下している。したがって運動もしなくなっている。ある段階で運動をしている人、していない人に分けると、していない人には前駆期の人が含まれる。彼らはしばらくすると認知症を発症する。すると「運動をしなかったから認知症になった」と第1種過誤が起きる。短期間の観察では必ずこうなるが、乗り越えることはできる。前駆期の長さ以上の観察期間をとればよいのだ。 本論文はメタアナリシスであるが、すべてのケースで認知症発症リスクを見ると、確かに運動をしていないとリスクは高い(1.4倍くらい)。ところが、10年以上経過を見たケースに限定すると、あら不思議、リスクは消えてしまう。 個人的見解だが、認知症予防に関しては○○が効いたという報告があり、しばらくしてメタアナリシスで疑問が呈される、ということが繰り返されているように思う。最初の報告はセンセーショナルで、話題になる。そして後の疑問は、もはや話題にならない。 つまり人は見たいものを見る、聞きたいことを聞く、ということだ。この現象は、正常性バイアスみたいなものだろう。命題(1)認知症は予防できるはずだ、命題(2)予防は健康的な生活習慣と関係する、と人は考えるのだ。 私は何もこのネガティブデータを見て、「予防なんて無意味だ」「ほら見たことか」と言いたいわけではない。予防研究は非常に重要だ。私が言いたいことは、予防に重心が置かれ過ぎると、認知症になった場合に「きちんと予防しなかった自分が悪い」「予防させなかった家族が悪い」と、怒りと絶望に苛まれる人がしばしばいるということだ。なるときはなる、と考えたほうがいい場合もある。だって人間だもの。 言うまでもなく(そしてこの論文にも書いてあるが)、糖尿病や冠動脈疾患は、運動で予防できる。それに運動すると気持ちいいではないか。認知症になったとしても運動する習慣があったほうが、運動を続けられるだろう。認知症を予防できるかどうかまだわからないが、楽しく運動しましょう。

20034.

不全心筋への間葉系前駆細胞の注射はLVAD離脱率を改善しない(解説:佐田政隆氏)-1046

 重症心不全に対する唯一の効果的な治療法は心移植であるが、日本では、ドナーが絶対的に不足している。その打開策となるのではと注目されてきたのが成体幹細胞移植である。心筋梗塞や心筋症のモデルで、骨髄細胞を注入すると心機能が著明に改善するという動物実験が2001年頃から報告されるようになった。当初は、骨髄細胞が心筋細胞や血管細胞に分化すると想定されていたが、現在のところは、どうも注入した細胞からのサイトカイン分泌によるパラクライン効果と見なされている。その後、有望な動物実験を基に、世界各地で臨床研究が多数行われてきたが、そのすべてが無効、もしくは効果があってもごくわずかという結果である。 本試験でも、補助人工心臓(LVAD)植え込みを必要とする重症心不全患者を対象にして、同種異系間葉系前駆細胞の心筋内注入は6ヵ月時点でLVADからの一時的離脱成功率を改善しないことが報告されている。北米の19施設でLVADを植え込む患者159例を対象にして、手術時に間葉系前駆細胞もしくは培地を注入する群を2:1に無作為に割り振って1年間追跡した。注入する間葉系前駆細胞は、Mesoblastという会社で健康なドナーの骨髄由来の単核球からSTRO-3+ 細胞を選択し、Good Manufacturing Practice環境下で増殖されたもので、1回あたり1億5千万個が心外膜から注入された。結果として、LVADからの離脱、心移植までの期間、死亡とも差が認められなかった。一方、心筋炎、新生物、心破裂などの有害事象においても差は認められなかった。 著者らは、その理由として、(1)この治療法が有効でない、(2)心外膜側からの注入が適当でなかった(他の論文でのメタ解析では、心内膜側からの注入が最も有効と報告されている)、(3)細胞注入時期がLVADの植え込みと同時であり、炎症反応が強く、移植細胞の残存率やパラクライン効果が減少したのではないかと推測している。しかし、私は、移植した細胞が同種異系、つまり他人由来の物であり、拒絶された影響が大きいと思う。実際、間葉系前駆細胞移植群で1型HLA抗原に対する同種感作が認められている。本来は、患者一人ひとりから骨髄細胞を採取して、間葉系前駆細胞の精製、増殖を行うのが最適と思われるが、膨大な費用と時間が必要と思われ、あらかじめ企業が大量に作成した“製品”を使わざるを得なかったのであろう。 興味深いのは、間葉系前駆細胞注入群で、消化管出血や鼻出血が有意に減少したことである。筆者らは、右心不全が改善して静脈圧が低下したためではなく、間葉系前駆細胞は血管周皮細胞前駆細胞でもありアンジオポエチン1を分泌したため微小血管が安定化したのではないかと推測している。移植した間葉系前駆細胞が何らかの効果をもたらしているのは確かなようであり、今後の展開が期待される。 いずれにせよ、骨髄細胞移植が心不全の一般的な治療になるには、まだまだハードルは高いと感じた。

20035.

エーラス・ダンロス症候群〔EDS:Ehlers-Danlos syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義エーラス・ダンロス症候群(Ehlers-Danlos syndrome:EDS)は、皮膚・関節の過伸展性、各種組織の脆弱性を特徴とする遺伝性結合組織疾患の総称である。■ 疫学EDS全体としての頻度は1/5,000人程度と推定されている。古典型EDSでは1/2万人、関節過可動型EDSでは1/5,000~2万人、血管型EDSでは1/5~25万人、後側弯型EDSでは1/10万人とされる。それ以外の病型ではさらに頻度は低くまれとなる。詳しい病型は後述する。■ 病因コラーゲン分子、もしくは修飾酵素の遺伝子変異などにより発症する。古典型EDSはV型コラーゲン遺伝子変異、血管型EDSはIII型コラーゲン遺伝子変異によるdominant negative効果またはハプロ不全に基づき発症する。筋拘縮型EDSでは、デルマタン4-0-硫酸基転移酵素-1またはデルマタン硫酸エピメラ-ゼの欠損に基づき、代表的なデルマタン硫酸(DS)含有プロテオグリカンであるデコリンのグリコサミノグリカン鎖の組成が変化し(DSの消失、コンドロイチン硫酸への置換)、デコリンが媒介するコラーゲン細線維のassembly不全を来すことによって進行性の結合組織脆弱性を生じる。関節過可動型EDSでは、いまだ原因遺伝子は同定されていない。■ 症状EDSの各病型の臨床症状は、後述する表2の診断基準のとおりである。血管型EDSでは、薄く透けて見える皮膚、易出血性、特徴的な顔貌、動脈・腸管・子宮の脆弱性を特徴とする。血管破裂・解離、腸管破裂、臓器破裂は70%の成人例における初発症状となる(平均年齢23歳)。新生児期には、内反足、先天性股関節脱臼を、小児期には鼠径ヘルニア、気胸、反復性関節脱臼・亜脱臼を合併しうる。妊婦では分娩前後の動脈・子宮破裂により、死亡する危険性がある(~12%)。古典型EDSでは、滑らかでベルベット様の皮膚、過伸展性、脆弱性が目立ち、創傷治癒が遅れ瘢痕が薄く伸展する(萎縮性瘢痕:シガレットペーパー様と称される)。また、縫合部位は離開しやすい。肩、膝蓋骨、指、股、橈骨、鎖骨などが容易に脱臼するが、自然整復または自力で整復できることが多い。運動発達遅延を伴う筋緊張低下、易疲労性、筋攣縮、易出血性がみられることがある。妊婦は前期破水・早産(罹患胎児の場合)、会陰裂傷、分娩後の子宮・膀胱脱を生じうる。関節過可動型EDSでは、皮膚の過伸展性は正常もしくは軽度であるが、関節過伸展性が顕著であり、脱臼・亜脱臼の頻度も高い。変形性関節症もよくみられる。関節痛を含めた慢性疼痛が深刻であり、身体的・精神的な障害となりうる。しばしば胃炎、胃食道逆流、過敏性腸症候群といった消化器合併症を呈する。筋拘縮型EDSでは、先天性多発関節拘縮(内転母指、内反足)、顔貌上の特徴、内臓や眼の先天異常など先天異常関連症状、そして、皮膚の脆弱性、関節の易脱臼性、足・脊椎の変形、巨大皮下血腫、大腸憩室など進行性の結合組織疾患脆弱性関連症状を呈する。■ 分類1998年に発表された国際命名法により、6つの主病型に分類されてきたが,近年新たな病型がその生化学的・遺伝学的基盤とともに報告されており、2017年に新たな国際分類が定められ13の病型に分類された(表1)。表1 2017年に発表された新たなEDSの国際分類画像を拡大する■ 予後予後は各病型によりさまざまである。血管型EDSでは生涯を通じて易出血性を呈する。20歳までに25%の症例が、40歳までに80%の症例が深刻な合併症を発症し、死亡年齢の中央値は48歳とされる。とくに誘因もなく突然発症し、突然死、脳卒中、急性腹症、ショックといった形で現れることも多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断では、表2に示したEDSの各病型の診断基準を参照されたい。関節過可動型EDSを除きいずれの病型でも、最終診断には分子遺伝学的検査が必須となってくる。関節過可動性の評価としては、Beightonの基準を用いる。(1)小指の他動的背屈>90°(片側1点)、(2)母指が他動的に前腕につく(片側1点)、(3)肘の過伸展>10°(片側1点)、(4)膝の過伸展>10°(片側1点)、(5)前屈で手掌が床につく(1点)(計9点中5点以上で関節過可動性ありと判断)。表2 EDS各病型の診断基準画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)各病型に共通している診療のポイントは、医療者(関係各科、救急)と患者・家族が疾患についてあらゆる情報を共有し、起こりうる合併症の早期発見・早期治療を行うことである。病型にもよるが皮膚裂傷や関節過伸展性・脆弱性に対しては、激しい運動を控えサポーターなどで保護を行う。関節過可動型EDSでは、関節保護の理学療法、補装具の使用、鎮痛薬投与なども必要であり、重症患者では身体障害や難治性疼痛への負担に配慮した心理カウンセリング、抗うつ薬の投与などの対応が必要な時もある。血管型EDSでは動脈合併症予防のためセリプロロール(商品名:セレクトール)投与を考慮する。急性の動脈病変(瘤、解離)が生じた場合、可能な限り保存的に対処するが、病状が進行する場合は、血管内治療を考慮する。手術を行う場合は、血管および組織脆弱性を考慮し、細心の注意が必要になる。患者の妊娠はハイリスクであり、カップルに対し十分な情報提供を行ったうえで、心臓血管外科のバックアップができる施設において、陣痛開始前のコントロールされた分娩(おそらくは帝王切開のほうが安全)を行う。古典型EDSの裂傷の予防対策として、小児で皮膚裂傷を予防するためには、前頭部、膝、頸部を保護する。縫合に際しては、張力をかけない、できれば2層で縫合するなど十分注意を払う。さらに瘢痕を広げないよう、抜糸までの期間を通常の2倍程度に延ばす、テープで補強するなどの工夫が必要となる。また、遺伝カウンセリングについてふれると、これは「臨床遺伝専門医を中心に認定遺伝カウンセラー、担当医、看護・心理職種が協力して、患者自身または家族の遺伝に関する問題を抱える患者を対象に、臨床情報の収集に基づき正確な診断と発症・再発リスク評価を行い、わかりやすく遺伝に関する状況の整理と疾患に関する情報提供を行うこと、同時に患者が遺伝に関連したさまざまな負担に、その人らしく向き合い、現実的な意思決定を行っていけるような継続的な心理社会的支援を行うことを含んだ診療行為」とされる。EDSの病型は常染色体優性遺伝が多く、この場合、本症と診断されることは、患者自身が難治性疾患であることに加え、次世代が罹患する確率が50%であることを示すものである。また、稀少病型の多くは常染色体劣性遺伝であり、発症者の同胞への再発率は25%とされる。診断の時点、家族計画の相談が出た時点など診療の局面で、遺伝子医療部門への紹介を考慮したい。4 今後の展望次世代シークエンスを活用した、網羅的な遺伝学的検査の運用が始まっている。現在、唯一原因遺伝子が同定されていない関節過可動型EDSの原因遺伝子同定に向けた研究が進行中である。5 主たる診療科小児科、皮膚科、整形外科、循環器内科、心臓血管外科、消化器内科、消化器外科、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、リハビリテーション科、麻酔科(ペインクリニック)、リウマチ科、救急科、遺伝子医療部門など関与する診療科は多岐にわたる。各科との連携が重要である。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター エーラス・ダンロス症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センター エーラス・ダンロス(Ehlers-Danlos)症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)Gene Reviews(医療従事者向けの研究情報:英文のみ)Gene Review Japan(医療従事者向けの研究情報。血管型、古典型、関節可動型について詳細説明あり)患者会情報日本エーラスダンロス症候群協会(友の会)(患者とその家族および支援者の会)公開履歴初回2019年5月14日

20036.

「0402通知」が早くも調剤料引き下げの議論に【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第24回

先日のコラム『「薬剤師以外による調剤可能」通知の衝撃度』において、「非薬剤師による調剤」を可能と明示した通知「調剤業務のあり方について」を紹介しました。この通知は「0402(ぜろよんぜろに)通知」と呼ばれていますが、このような呼び方になじみがないという方もいると聞きます。行政から発出され、業界に大きな影響を及ぼす通知は、その発出された月と日の数字を四桁にして並べ固有名詞化することがあります。たとえば、10月26日に発出された通知だったら「1026(いちぜろにろく)通知」となります。このような呼び方は、これからも採用されると思いますので、法則を覚えておくとよいと思います。それはさておき、そのコラムの最後を「このくらいのサプライズがまだほかにあっても不思議ではない」と締めくくりましたが、すでにその兆候が出てきているように感じています。その兆候の最も顕著なものが、2020年度調剤報酬改定への影響です。次回の改定までまだあと1年もあるじゃん!とお思いの方もいるかもしれませんが、すでに議論は始まっています。むしろ、毎回このくらいの時期に、エビデンスが存在する内容や発出された通知の内容が改定の目玉になることが多いように思います。非薬剤師による調剤や機械化により調剤料は引き下げ?ゴールデンウイーク前の4月23日、各省庁への予算を振り分ける財務省が財政制度等審議会財政制度分科会を開催し、社会保障に関する改革案を提示しました。その中には、調剤報酬に関して、0402通知などを参考に挙げながら、対物業務が調剤業務のあり方や技術進歩などによって効率化できること、薬剤師を対人業務へシフトさせていく中でかかりつけ機能の有無による薬局の報酬水準の適正化が必要であることなどから、調剤基本料、調剤料および薬学管理料などの見直しを行うべきとの意見が、改革の方向性として記載されています。この0402通知に関して、ピッキングなどは非薬剤師が行ってもその後の監査で薬剤師がきっちり監査をしていれば問題ないということが白黒はっきりしただけ、と認識している方もいるかもしれません。私も単純なピッキングを含めてすべて薬剤師が行わなければならないという規制には疑問を感じていたので、はっきりしたのはよかったと思っていますが、このタイミングでの通知発出とそれを基にした財務省での議論、という流れをみると、何か根本的なものが変わるのではないかと推察できます。0402通知にもあるように、軟膏剤、水剤、散剤などの計量、混合や監査、そして薬剤の管理などは薬剤師が行うこととありますので、対物業務の責任は減りません。しかし、極論を言えば、次回の改定で「薬剤師は対人業務のみを評価する」となる可能性もゼロではありません。2020年4月になって急に慌てて対人業務に専念することは無理があると思いますので、薬を渡した後のフォローや医師へのフィードバックなどの新たな取り組みを行いつつ、実際の調剤や薬剤管理の手順の構築などの業務効率化を図る必要もありそうです。

20037.

爪白癬が完治しない最大の原因とは?

 日本人の10人に1人が罹患し、国民病とも言われる爪白癬。近年、外用薬が発売され、本来、経口薬が必要なケースにも外用薬が安易に処方されることで、治癒率の低下が問題視されている。2019年4月19日、「感染拡大・再発を防ぐカギは完全治癒~爪白癬の完全治癒に向けて~」と題し、常深 祐一郎氏(埼玉医科大学皮膚科学教授)が登壇、経口薬による治療メリットについて解説した(佐藤製薬株式会社・エーザイ株式会社共催)。爪白癬の現状 日本人の足白癬、爪白癬の患者数はそれぞれ2,100万人、1,100万人(そのうち両者を併発している症例は860万人)と推測されている1)。これらの感染経路は多岐にわたり、罹患率を年齢別にみると、足白癬は40~50歳代でピークとなり減少するが、爪白癬は年齢とともに増え続けている2)。これに対し、常深氏は「働き盛り世代は革靴を履いている時間が長く足白癬に罹患しやすい。足白癬は市販の塗り薬でも治るので、靴を履く時間が短くなる年代で減少すると推測できる。しかし、爪白癬は内服薬を使ってしっかり治療しないと治癒せず、一度罹患するとそのままとなるため、高齢者ほど多くなってしまっている」と爪白癬治療の問題点を挙げた。爪白癬の原因・白癬菌の生息実態 爪白癬の原因となる白癬菌は、角質に含まれるケラチンというタンパク質が大好物である。生きた皮膚の細胞は防御反応を起こすため、菌も近寄りがたい。一方で、その表面にある角質は死んだ細胞のためそのような反応が起こらず、角質が厚く豊富な足や爪などは白癬菌の生息地として適しているのだという。また、床やバスマット、じゅうたん、畳などは白癬菌が角質とともに落下することで感染源となる。同氏は「角質に付着した白癬菌は長期間生存しているため、他人が落とした白癬菌を踏みつけて白癬菌に感染する。なかには、治療前に自分の落とした白癬菌が治療後に自分に戻るケースすらある。温泉やプールなどの床には多数の白癬菌を含んだ角質が落ちていることがわかっているので、自宅では定期的に洗濯・掃除することで落下した角質を除去し、温泉やプールから帰宅した際には、足を洗い、付着した白癬を除去して感染を予防しなければならない」とコメントした。爪白癬はなぜ治さなければならないのか? 爪白癬は白癬菌の巣のようなもので、これを放置すると何度も足白癬を繰り返す。また、爪白癬や足白癬から白癬菌が広がり顔や身体に白癬菌が増殖し、いわゆる「タムシ」の原因にもなる。そして、厚くなった爪は歩行の際の痛みの原因になるだけではなく、指に食い込んで傷を作り細菌感染症のもとにもなる。そうならないうちに爪白癬は治療しなければならないのである。爪白癬と確定するには? 爪が白いと“爪白癬”と思われがちだが、乾癬や掌蹠膿疱症、扁平苔癬、爪甲異栄養症など爪が白くなる疾患は多数存在する。その違いを外観で判断することは非常に難しいため顕微鏡検査が必須となる。ところが、同氏によると「検査を行わずに臨床所見で白癬と判断する医師は多く、その診断はよく外れる」とコメント。同氏は自身の研究データ3)を踏まえ、「そこそこ経験を積んだ皮膚科医ですら、見た目で爪白癬を診断すると7割弱しか正答できない。ほかの科の先生ではもっと低くなるだろう」と見た目だけの診断に警鐘を鳴らし、顕微鏡による検査が必須であることを強調した。爪白癬の適正な治療とゴール 最近では爪白癬用の外用液の普及により経口薬が用いられない傾向にあり、これが完全治癒に至らない最大の問題だという。外用薬は一部の特殊な病型や軽症例には有効であるが、多くの爪白癬の症例には経口薬が必要であるという。同氏は「外用液の場合、1年間塗り続けても20%の患者しか治らず、途中でやめてしまう人も多いため完治に至るのは数%ほどと推測される。新しい外用薬が登場したことで経口薬が用いられず、きちんとした治療がなされないという本末転倒の状況になっている」と述べ、爪白癬治療の現状を憂慮した。 経口薬は肝・腎機能への影響、薬物相互作用が懸念され、そのリスク因子が高い患者や高齢者には使いにくい印象があるが、「実際は、相互作用の少ない薬剤もあり、肝臓や腎臓についても定期的に検査すれば過剰に心配する必要はない。完治を目指し治癒率の高い経口薬を用いるべきである。最近は、相互作用が少なく、12週間という短期間の服用で治癒率の高い経口薬も登場した」と述べた。同氏は、爪白癬の治療に際し、『足の水虫を何度も繰り返す原因になります』、『家族の方にもうつしてしまうかもしれません』、『足以外の体にまでカビが生えてしまう前に治しましょう』、『しっかりと治療すれば完治も目指せますよ』、『短期間で終わる薬もあります』などのように説明し、治療の動機づけや継続率を高める工夫をしている。薬剤の選択と並んで、患者のやる気を引き出すことが爪白癬治療の重要なポイントだそうだ。 最後に「『完全治癒』とは、“菌を完全に排除”し“臨床的に爪白癬症状なし”とすることであり、これを達成できないと菌の残存により再発する」と述べ、治癒に至る可能性の高い経口薬の使用を強く訴えた。 なお、「皮膚真菌症診断・治療ガイドライン」は、来年までに改訂が行われる予定である。■関連記事患者向けスライド:爪白癬足白癬患者の靴下、洗濯水は何℃が望ましいか第10回 相互作用が少なく高齢者にも使いやすい経口爪白癬治療薬「ネイリンカプセル100mg」【下平博士のDIノート】

20038.

NSCLC患者ががん治療に対し望むこと

 自分が受けているがん治療に対し、患者は何を望み、どのように考え、どんな情報を求めているのだろうか。 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社は、「非小細胞肺がん(NSCLC)患者さんにおける治療選択に関する意識調査」を実施し、その結果を2019年5月9日に発表した。 本調査は、2018年12月13~16日に、NSCLC治療経験のある患者(現在薬物治療中または薬物治療終了から1年未満)139例を対象に、がん情報サイト「オンコロ」にてアンケート形式で実施された。 主な結果は以下のとおり。・がん治療を行ううえで望むことは「生存期間が延びること(28.8%)」が最も多く、次いで「進行/再発しない期間が延びること(23.7%)」「これまでと変わらない生活ができること(23.7%)」だった。・薬剤を選ぶに当たり参考にした情報は「主治医の説明(85.6%)」が最も多く、次いで「患者さんが書いているブログ(36.0%)」「学会からの情報(ガイドライン等)(32.4%)」だった。・患者の41.7%は「薬剤による効果の差」について説明を受け、そのうち「生存期間」について説明を受けた患者は22%に留まった。・「二次治療で使う薬剤について」説明を受けた患者は30.2%だった。・初回の薬物治療開始時に先生から受けた説明の満足度を聞いたところ、37.5%の患者が、「どちらとも言えない」「あまり満足していない」「満足していない」と回答した。選択した理由として、「説明不足だと感じた」「選択肢が無いように思えた」「知識がなく質問などができなかった」などの回答が得られた。・薬剤を投与できる可能性が何%であっても再生検(遺伝子検査)を受けたいと回答した患者が70.5%にのぼり、陰性であった場合でも繰り返し検査を受けたいという意向を持つ患者は73.4%だった。・87.6%がリアルワールドデータを参考にしたいと回答し、96.4%の患者が自分のデータを進んで活用してもらいたいと回答した。「活用してもらいたいと思わない」と回答した患者はいなかった。 本調査結果を受けて、小林 国彦氏(埼玉医科大学リサーチアドミニストレーションセンター 教授)は「この調査からQOLを保ちつつ長期生存を望む患者さんの姿が明らかになった。また、初回治療だけではなく、二次治療も含めた治療の全体像を説明してもらいたいという様子が伺える。とくに重要な情報源は医師からの情報だが、十分な説明がされていないと感じている患者さんも少なくなく、医師と患者さんのコミュニケーションギャップが見てとれるため、一人ひとりの希望を聞きながら患者さんと一緒に治療選択を進めていく重要性が確認された」とコメントしている。■参考日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 プレスリリースがん情報サイト「オンコロ」

20039.

抗うつ薬ミルタザピンの速効性と費用対効果との関連

 これまでの研究で、ミルタザピンは他の抗うつ薬と比較し、効果発現が速い特徴を有するといわれている。いくつかの研究において、費用対効果が評価されているが、その際、早期寛解については考慮されていなかった。慶應義塾大学の佐渡 充洋氏らは、この研究ギャップに対処するため、正確な臨床データを用いることで、日本におけるミルタザピンの費用対効果について評価を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2019年4月11日号の報告。 週ごとの推移確率を反映するためのマルコフモデルを開発した。マルコフ周期は、1週間に設定した。臨床パラメータは、主にメタ解析から抽出し、費用関連データは、行政報告から抽出した。費用対効果は、確率感度分析に基づいて推定された質調整生存年の増分費用対効果比(incremental cost effectiveness ratios:ICER)により評価した。ICERは、2、8、26、52週で推定した。 主な結果は以下のとおり。・重症うつ病のICERは、87万2,153円~177万2,723円であった。ICERの閾値を500万円とした場合、費用対効果でミルタザピンが効果的な割合は、0.75~0.99の範囲であった。・中等度うつ病のICERは、235万6,499円~477万145円であった。ICERの閾値を500万円とした場合、費用対効果でミルタザピンが効果的な割合は、0.55~0.83の範囲であった。 著者らは「ミルタザピンの効果発現の速さを考慮すると、日本国内においてとくに重度のうつ病や早期治療では、SSRIと比較し費用対効果が高いと考えられる。しかし、本研究の限界として、ミルタザピンと各SSRIを比較していない点、併用療法を考慮していない点が挙げられる」としている。■「抗うつ薬比較」関連記事抗うつ薬21種の有効性と忍容性を検討~522試験のメタ解析/Lancet

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米国成人の座位時間、1日1時間増加/JAMA

 長時間の座位は、多くの疾患や死亡のリスクを増大させる。カナダ・Alberta Health ServicesのLin Yang氏らが、米国における2001~16年の座位行動の傾向を調査した結果、1日に2時間以上のテレビ/ビデオ視聴の割合は高いまま安定しており、余暇におけるコンピュータ使用は全年齢層で増加し、1日の総座位時間は青少年および成人で有意に延長したことが明らかとなった。2018年に発表された「米国人のための身体活動ガイドライン(Physical Activity Guidelines for Americans)第2版」により、座位に伴う健康上のリスクが知られただけでなく、中~高強度の身体活動の増加と座位時間の短縮の双方によって、多くの人々が健康上の利益を得ていることが初めて示されたが、座位時間の定量的な主要ガイドラインは記載されていないという。JAMA誌2019年4月23日号掲載の報告。経時的な傾向を調査する連続的な横断研究 研究グループは、米国における座位行動のパターンおよびその経時的な傾向を調査し、社会人口統計学的特性や生活様式上の特性との関連を検討する目的で、連続的な横断研究を行った(米国国立がん研究所などの助成による)。 米国の全国健康栄養調査(NHANES)のデータを用い、小児(5~11歳、2001~16年)、青少年(12~19歳、2003~16年)、成人(20歳以上、2003~16年)に分けて解析を行った。 主要アウトカムは、1日2時間以上の座位でのテレビ/ビデオ視聴、1日1時間以上の学校または職場以外でのコンピュータの使用、および総座位時間(12歳以上における1日の座位時間)であった。 2001~16年のNHANESから得た5万1,896人(平均年齢37.2[SE 0.19]歳、2万5,968人[50%]が女性)のデータを解析した。小児が1万359人、青少年が9,639人、成人は3万1,898人だった。2007~16年に、1日の総座位時間が青少年と成人で約1時間延長 2015~16年度における1日2時間以上の座位テレビ/ビデオ視聴の割合は全年齢層で高く、小児が62%(95%信頼区間[CI]:57~67)、青少年が59%(54~65)、成人が65%(61~69)であり、成人のうち20~64歳が62%(58~66)、65歳以上では84%(81~88)に達した。 2001年から2016年までに、1日2時間以上の座位テレビ/ビデオ視聴の割合は、小児(差:-3.4%、95%CI:-11~4.5、傾向性のp=0.004)では非ヒスパニック系白人を中心に経時的に有意に低下し、青少年(-4.8%、-12~2.3、p=0.60)および20~64歳の成人(-0.7%、-5.6~4.1、p=0.82)では安定していたが、65歳以上の成人(3.5%、-1.2~8.1、p=0.03)では有意に増加した。 1日1時間以上の学校/職場以外でのコンピュータ使用の割合は、全年齢層で経時的に増加した。小児では2001年の43%(95%CI:40~46)から2016年には56%(49~63)へ(差:13%、95%CI:5.6~21、傾向性のp<0.001)、青少年では2003年の53%(47~58)から2016年には57%(53~62)へ(4.8%、-1.8~11、p=0.002)、成人では2003年の29%(27~32)から2016年には50%(48~53)へ(21%、18~25、p<0.001)と、それぞれ有意に増加した。 1日当たりの総座位時間は、青少年では2007年の7.0時間(95%CI:6.7~7.4)から2016年には8.2時間(7.9~8.4)へ(差:1.1、95%CI:0.7~1.5、傾向性のp<0.001)、成人でも5.5時間(5.2~5.7)から6.4時間(6.2~6.6)へ(1.0、0.7~1.3、p<0.001)と、いずれも有意に増加した。 著者は、「注目すべきは、青少年と成人の総座位時間の増加は、テレビ/ビデオ視聴以外の座位行動に起因すると考えられ、これはコンピュータ使用時間の増加によってある程度促進された可能性があることだ」としている。

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