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FAME2試験、5年追跡調査の結果は?/NEJM

 安定冠動脈疾患患者において、冠血流予備量比(fractional flow reserve:FFR)ガイドによるPCI戦略は薬物療法単独と比較し、5年間の複合エンドポイント(死亡、心筋梗塞、緊急血行再建術)の発生を有意に低下させた。ベルギー・アールスト心血管センターのPanagiotis Xaplanteris氏らが、無作為化非盲検試験FAME 2試験の5年追跡結果を報告した。血行動態的に著しい狭窄のない患者は、薬物療法のみでも長期転帰は良好であったという。NEJM誌オンライン版2018年5月22日号掲載の報告。FFR≦0.80の安定冠動脈疾患患者約900例を対象に追跡試験 研究グループは、2010年5月15日~2012年1月15日に、欧州および北米の28施設において、冠動脈造影で50%以上の狭窄を認めた安定冠動脈疾患患者1,220例を登録した。すべての狭窄病変についてFFRを測定し、FFR≦0.80の患者888例を、PCI+薬物療法群と薬物療法単独群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、死亡、心筋梗塞および緊急血行再建術の複合エンドポイントであった。複合エンドポイントの発生:PCI+薬物療法群13.9%、薬物療法単独群27.0% 5年時点の複合エンドポイントの発生率は、PCI+薬物療法群が薬物療法単独群より有意に低かった(13.9% vs.27.0%、ハザード比[HR]:0.46、95%信頼区間[CI]:0.34~0.63、p<0.001)。この差は、緊急血行再建術によるものであった(6.3% vs21.1%、HR:0.27、95%CI:0.18~0.41)。死亡率はそれぞれ5.1%および5.2%(HR:0.98、95%CI:0.55~1.75)、心筋梗塞は8.1%、12.0%で(HR:0.66、95%CI:0.43~1.00)、両群間に有意差はなかった。 なお、複合エンドポイントの発生率はPCI+薬物療法群と登録コホート群とで差はなかった(それぞれ13.9%および15.7%、HR:0.88、95%CI:0.55~1.39)。また、CCS分類II~IVの狭心症の患者の割合は、3年時点ではPCI+薬物療法群が薬物療法単独群より有意に低かったが、5年時点ではPCI+薬物療法群が低かったものの有意差はみられなかった。

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ドクターXを探せ?(解説:今中和人氏)-858

 この論文はさまざまな科の20術式について、非待期的(入院後3日以内)に手術が行われた症例の手術死亡率(在院死亡+30日以内の死亡)と術者の年齢・性別との関連を検討している。対象は4年間の全米のMedicare受給者の89万例で、49%が整形外科手術、38%が一般外科手術、12%が心臓血管外科手術、1%がその他の手術だった。 世の中には、脳外科・形成外科などの顕微鏡下手術、泌尿器科の経尿道手術、大動脈ステントグラフトなど、もっぱら術者1人で行う術式もあるが、多くの手術はチームで行われ、術者だけでなく誰が助手かが非常に重要である。思い返せば私も駆け出しの頃、術者を務めれば自分が手術したつもりでいたが、実際には助手に回って下さったメンター頼みだったし、勘所だけは彼らが処置してくれたこともあった。独り立ち早々の時期、心得不足の助手と厳しい症例を手術したことはまれであった。丁寧に縫合しても、助手が糸をたるませればひどい出血に見舞われるのだ。手術は個人力以上にチーム力である。このことはどんなに強調しても、し足りない。だから管理職は組み合わせを考えて担当を指名するし、当番表にも一定の配慮を求める。チーム力を最大にするため、私は夜中に出ていって緊急手術の助手に回ることはザラにあり、結果に対しては自分が責任を負う。さらに各人のモチベーションやとくに欧米では報酬も大きな要因だ。高リスク手術の術者指名は、そんな甘い話や単純な話でないと知れば、本論文の20の術式にもっぱら1人で行う手術は1つもないのに、術者のみのプロファイルで成績を論じるのは見識不足であることは自明であろう(類似論文も同じ)。 さらに再認識すべきなのは、アウトカム=術前状態+手術+術後管理 の公式。術前状態は手術に負けず劣らず重要で、事実、本論文の腹部大動脈瘤手術は、たぶんほとんどが破裂なので死亡率12%、大腸直腸切除も多くは穿孔なので11%と、術者の年齢なんてどこ吹く風の高さだ。そして状態が悪い症例ほど待てないので、夜間や休日は厳しい症例が多くなるが、40歳以下の外科医も60歳以上の外科医も平等にオンコールを割り振られるわけがなく、重症例はオンコールが多い若めの外科医に偏るのだ。また、たとえば冠動脈3枝バイパスは、ICDコードが同じでも非待期手術でも、electrical stormやショック状態の症例と、「明日やりましょうか」という不安定狭心症の症例ではおよそ別もの。そして非待期例ほどバリエーションだらけで、リスク補正と言うは易いが行うは難く、「同じICDコードだから」と死亡率を直接比較するのはかなり無理がある。 なお、一部の例外を除き、外科医も夜間や休日に働きたいわけではなく、嬉々としているように見えるのは前向きに取り組むべく士気を高めているだけなので、是非、麻酔科や内科系の先生の温かいご理解をお願いしたい。 4万5,000人もの執刀医について詳細に検討されたこの論文で興味深かった知見は、平均年齢が50.5歳と意外に高いこと。女性外科医は全体の10%を占めるが、残念ながら心臓血管外科手術の執刀は2%、整形外科は3%とひどく不人気な一方、一般外科は10%超、婦人科(子宮切除)は30%と、専門科選択の格差が国際的であること。さらに、40歳未満の外科医の手術件数のうち女性の執刀は20%だが、60歳以上では3%にまで低下し、年齢が高いと女医の人数が少ないのは時代背景の反映だろうだが、1人あたりの執刀数も6割に減る。一方、男性外科医の手術件数はあまり減っていない。つまり、いくつになっても非待期的な手術も手掛けているのは圧倒的に男性で、後期高齢者もチラホラ。良く言えば、男性外科医は現役への情熱を持ち続けている、リスクと職責を担い続けている、とも言えるが、悪く言えば老害。うがった見方をすれば、高額な養育費や若い夫人との生活費やローンが見え隠れするし、「引退しても家庭に居場所がない」なんて話も、日本では大声でささやかれている。 本論文は多数の手術症例と外科医についてさまざまに解析した労作ではあるが、しばしば執刀医しか見えていない一般人に向けて、現場から乖離した認識で、「若い外科医は成績がイマイチだ」という、芳しからぬ波紋を発信してしまった。失礼ながら予想どおり、主要著者らの所属は内科と公衆衛生で、筆頭著者は(ドクターXのファンかどうかはともかく)日本人のようだ。少数の共著者の外科医は何をどの程度commitしたのか不明だが、「事件は会議室じゃない、現場で起こってるんだ!」という古の名ゼリフを思い出す。繰り返すが、手術はチーム力。机上を離れてしばらく現場に在籍なさるとよろしいように思われる。

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SGLT2阻害薬は死亡率、心血管イベントの低減に最も有用(解説:吉岡成人氏)-856

2型糖尿病の治療薬の選択 糖尿病の治療薬の選択に対して、日本糖尿病学会では患者の病態に応じて薬剤を選択することを推奨しているが、米国糖尿病学会ではメトホルミンを第一選択薬とし、心血管疾患の既往がある患者では、SGLT2阻害薬ないしはGLP-1受容体阻害薬を併用することを推奨している。その背景には、EMPA-REG OUTCOME試験、CANVASプログラム、LEADER試験、SUSUTAIN-6などの臨床試験によって、これらの薬剤が心血管イベントに対して一定の抑制効果を示したことが挙げられる。 それでは、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体阻害薬との比較ではどうなのか、日本で最も使用されているDPP-4阻害薬と比較した場合はどうなのだろうかという疑問に答える論文が報告された。ネットワークメタ解析での比較 通常のメタ解析では治療介入を行ったランダム化比較試験(RCT)を統合して介入の効果を検証するが、3種類以上の介入の効果を比較検討することはできない。Zheng SLらはネットワークメタ解析の手法を用いて、実際のhead-to-headの試験を行うことなく、多数のRCTの結果を統計学的に併合して直接的、間接的な比較を行った結果を報告している。本論文では各薬剤を使用して12ヵ月間以上観察された236件のRCTを抽出し、各薬剤とコントロール群、DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬とSGLT2阻害、GLP-1受容体阻害薬とSGLT2阻害の各群において、全死亡を主要アウトカム、心血管死、心不全、心筋梗塞と不安定狭心症、脳卒中を二次アウトカムとして薬剤間の有用性を検証している(Zheng SL, et al. JAMA. 2018 Apr 17;319: 1580-1591. )。SGLT2阻害の有用性が明らかに 各群における対象患者の平均年齢は50代前半から後半までと比較的若く、HbA1cも8.2%前後で、罹病期間が長く血糖コントロールが不良な患者は多く含まれてはいない。しかし、全死亡については、GLP-1受容体阻害薬とSGLT2阻害薬はコントロール群、およびDPP-4阻害薬投与群に比較して有意に減少させており、GLP-1受容体作動薬投与群とSGLT2阻害薬投与群との間には有意差はなかった。この傾向は心血管死亡率についても同様であった。一方、心不全イベントについては、SGLT2阻害の有用性が最も高く、コントロール群、DPP-4阻害薬投与群に対してのみならず、GLP-1受容体投与群に対しても有意に心不全イベントの抑制効果を示していた。 欧米では、2型糖尿病の治療に対して、低血糖や体重増加を来しにくい薬剤が推奨されており、メトホルミンが第一選択薬となっている。今回の結果は、心血管イベントによる死亡が多い欧米人にあっては、SGLT2阻害が第二選択薬としてのポジションをより強固なものにした印象を与える。日本でも、虚血性心疾患のハイリスク患者、心不全患者、糖尿病腎症の患者などでは積極的に、SGLT2阻害薬が使用されつつある。しかし日本人の糖尿病患者では欧米に比較して心血管イベントは少なく、65歳以上の高齢者が多く、インスリン分泌も低い。これらの点を考慮すると、現在広く用いられているDPP-4阻害が重用される現状はしばらく続くのかもしれない。

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日本人の学歴・職歴と認知症の関連に糖尿病は関与するか

 欧米では、低い社会経済的地位(SES)と認知症との関連は生活習慣病(糖尿病)を介すると報告されている。しかし、わが国では低SESと認知症の関連は研究されていない。今回、敦賀看護大学(福井県)の中堀 伸枝氏らの研究から、低SESと認知症の間のメディエーターとして、生活習慣病の役割はきわめて小さいことが示唆された。BMC Geriatrics誌2018年4月27日号に掲載。 本研究は、富山県認知症高齢者実態調査のデータを用いた後ろ向き症例対照研究である。富山県在住の65歳以上(入院および非入院)の人をサンプリングレート0.5%で無作為に選択、うち1,303人が参加に同意した(回答率84.8%)。全体として、認知症137人および認知症ではない対照1,039人を同定した。必要に応じて、参加者と家族または代理人との構造化インタビューを実施し、参加者の病歴、生活習慣(喫煙および飲酒)、SES(学歴および職歴)を調査した。Sobel検定を用いて、低SESが生活習慣病を介した認知症の危険因子である可能性を調べた。 主な結果は以下のとおり。・認知症のオッズ比(OR)は、低学歴(6年以下)の参加者で高学歴の参加者より高く(年齢・性別での調整OR:3.27、95%CI:1.84~5.81)、また、事務の職歴より肉体労働の職歴を持つ参加者で高かった(年齢・性別での調整OR:1.26、95%CI:0.80~1.98)。・職歴について調整後、低学歴の参加者における認知症のORは3.23~3.56であった。・以前の習慣的な飲酒歴および糖尿病・パーキンソン病・脳卒中・狭心症/心血管疾患の病歴が、認知症リスクを増加させることが認められた。・学歴は、飲酒、喫煙、糖尿病、パーキンソン病、脳卒中、心血管疾患に関連していなかった。・職歴は、糖尿病および脳卒中に関連していた。・低学歴と認知症の関連における糖尿病の役割は、きわめて限られていることが示された。

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治療前のLDL-コレステロール値でLDL-コレステロール低下治療の効果が変わる?(解説:平山篤志氏)-852

 2010年のCTTによるメタ解析(26試験、17万人)でMore intensiveな治療がLess intensiveな治療よりMACE(全死亡、心血管死、脳梗塞、心筋梗塞、不安定狭心症、および血行再建施行)を減少させたことが報告された。ただ、これらはすべてスタチンを用いた治療でLDL-コレステロール値をターゲットとしたものではないこと、MACEの減少も治療前のLDL-コレステロール値に依存しなかったことから、2013年のACC/AHAのガイドラインに“Fire and Forget”として動脈硬化性血管疾患(ASCVD)にはLDL-コレステロールの値にかかわらず、ストロングスタチン使用が勧められる結果になった。 しかし、CTT解析後にスタチン以外の薬剤、すなわちコレステロール吸収阻害薬であるエゼチミブを用いたIMPROVE-IT、さらにはPCSK9阻害薬を用いたFOURIER試験など、非スタチンによるLDL-コレステロール低下の結果が報告されるようになり、今回新たな34試験27万人の対象でメタ解析の結果が報告された(CTTの解析に用いられた試験がすべて採用されているわけではない)。 その結果、More intensiveな治療がLess intensiveな治療よりアウトカムを改善したことはこれまでの解析と同じであったが、全死亡、心血管死亡において治療前のLDL-コレステロール値が高いほど有意に死亡率低下効果が認められた。心筋梗塞の発症も同様の結果であったが、脳梗塞については治療前の値の差は認められなかった。治療前のLDL-コレステロール値について、CTTによれば値にかかわらず有効であるとされていたが、本メタ解析の結果はLDL-コレステロール値が100mg/dL以上であれば死亡率も低下するということを示している。 近年、IMPROVE-ITもFOURIER試験も心筋梗塞や脳梗塞の発症は有意に低下させるが、死亡率低下効果がないのは、治療前のLDL-コレステロール値が100mg/dLであることが要因であると推論している。 このメタ解析は、LDL-コレステロール値の心血管イベントへ関与を示唆するとともに、“Lower the Better”を示したものである点で納得のいくものである。しかし、4Sが発表された1994年とFOURIERが発表された2017年の20年以上の間に、急性心筋梗塞の死亡率が再灌流療法により減少したこと、心筋梗塞の定義がBiomarkerの導入で死亡には至らない小梗塞まで含まれるようになったことも、LDL-コレステロール減少効果で死亡率に差が出なくなった原因かもしれない。 今後のメタ解析は、アウトカムが同一であるというだけなく、時代による治療の変遷も考慮した解析が必要である。

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ACS症例におけるDAPTの期間は6ヵ月と12ヵ月のいずれが妥当か?(解説:上田恭敬氏)-848

 急性冠症候群症例(不安定狭心症、ST非上昇型急性心筋梗塞、ST上昇型急性心筋梗塞)を対象として、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の期間を6ヵ月とする群と12ヵ月以上とする群に無作為に割り付ける、韓国における多施設無作為化比較試験であるSMART-DATE試験の結果が報告された。 本試験では、韓国の31施設において2,712症例の急性冠症候群症例が、6ヵ月間のDAPT群(1,357症例)または12ヵ月以上のDAPT群(1,355症例)に無作為に割り付けられた。主要エンドポイントは18ヵ月時点での全死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントで、副次エンドポイントは主要エンドポイントの各構成要素、ステント血栓症(definite or probable)、出血性イベント(BARC type 2~5)である。 主要エンドポイントは、6ヵ月DAPT群で4.7%、12ヵ月以上DAPT群で4.2%と差を認めなかった。副次エンドポイントは、全死亡と脳卒中、ステント血栓症については群間に差を認めなかったが、心筋梗塞の発症は6ヵ月DAPT群で有意に高頻度に認められた(1.8% vs.0.8%、p=0.02)。出血性イベントは、6ヵ月DAPT群で2.7%、12ヵ月以上DAPT群で3.9%と有意な差は認めなかった(p=0.09)。 以上より、18ヵ月時点での主要エンドポイントに関しては、12ヵ月以上DAPTに対する6ヵ月DAPTの非劣性が示されたものの、主要エンドポイントの構成要素の1つである心筋梗塞の発症が6ヵ月DAPTで有意に高頻度であったために、6ヵ月DAPTが12ヵ月以上DAPTと同等に安全とは結論できなかったとしている。 通常、主要エンドポイントの結果が重要視され、副次エンドポイントの結果を強く主張することは控えるべきとされるが、本論文の記載は妥当なものと思われる。また、比較的低リスクの症例が登録されたかもしれないというselection biasの可能性などいくつかのlimitationが指摘されているが、それらはむしろ群間差をなくす方向に作用すると思われ、その中でも心筋梗塞の発症が6ヵ月DAPTで有意に高頻度であったことはやはり注目すべきである。著者も指摘しているように、現時点では、12ヵ月以上DAPTが急性冠症候群症例における標準的治療であることは揺らがず、安易にDAPT期間を短縮すべきではないと考える。

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2型DMの死亡率、SGLT2 vs.GLP-1 vs.DPP-4/JAMA

 2型糖尿病患者において、SGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬の使用は、DPP-4阻害薬使用、プラセボ、未治療と比べて、死亡率が有意に低いことが示された。また、DPP-4阻害薬の使用は、プラセボ、未治療よりも、死亡率は低下しないことも示された。英国・Imperial College Healthcare NHS Foundation TrustのSean L. Zheng氏らによるネットワークメタ解析の結果で、JAMA誌2018年4月17日号で発表された。2型糖尿病治療について、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬を比較した臨床的な有効性は明らかになっていなかった。ネットワークメタ解析で、全死因死亡を評価 研究グループは、発刊から2017年10月11日までのMEDLINE、Embase、Cochrane Library Central Register of Controlled Trials、および公表されているメタ解析を検索し、2型糖尿病患者が登録され、追跡期間が12週間以上、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬を相互に比較またはプラセボ、未治療と比較した無作為化試験を選定した。 1人の研究者がデータのスクリーニングを行い、2人の研究者が重複抽出して、ベイジアン階層ネットワークメタ解析を行った。 主要アウトカムは全死因死亡で、副次アウトカムは心血管(CV)死、心不全(HF)死、心筋梗塞(MI)、不安定狭心症、脳卒中であった。安全性のエンドポイントは、有害事象および低血糖症の発現であった。対照群と比較して、SGLT2阻害薬群、GLP-1受容体作動薬群は有意に低下 236試験、無作為化を受けた被験者17万6,310例のデータが解析に組み込まれた。 対照(プラセボまたは未治療)群と比較して、SGLT2阻害薬群(絶対リスク差[ARD]:-1.0%、ハザード比[HR]:0.80[95%確信区間[CrI]:0.71~0.89])、GLP-1受容体作動薬群(ARD:-0.6%、HR:0.88[95%CrI:0.81~0.94])は、全死因死亡率が有意に低かった。DPP-4阻害薬群との比較においても、SGLT2阻害薬群(-0.9%、0.78[0.68~0.90])、GLP-1受容体作動薬群(-0.5%、0.86[0.77~0.96])は死亡率が低かった。 DPP-4阻害薬群は、対照群との比較で全死因死亡率の有意な低下が認められなかった(0.1%、1.02[0.94~1.11])。 SGLT2阻害薬群(−0.8%、0.79[0.69~0.91])、GLP-1受容体作動薬群(−0.5%、0.85[0.77~0.94])は、対照群との比較において、CV死についても有意に減少した。 SGLT2阻害薬群は、HFイベント(−1.1%、0.62[0.54~0.72])、MI(−0.6%、0.86[0.77~0.97])についても、対照群と比べて有意に少なかった。 GLP-1受容体作動薬群は、SGLT2阻害薬群(5.8%、1.80[1.44~2.25])、DPP-4阻害薬群(3.1%、1.93[1.59~2.35])と比べて、試験中止となった有害事象の発現リスクが高かった。

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民谷式 内科系試験対策ウルトラCUE Vol.2

第5回 膠原病/アレルギー 第6回 神経 第7回 循環器1 第8回 循環器2  内科系試験に対応した全3巻の基本講座の第2巻です。試験内容が異なる認定内科医と総合内科専門医試験ですが、学生の頃に学んだことを復習するというスタートラインは同じ。全13領域で出題頻度の高いテーマを、わかりやすいシェーマと明快な講義で総復習しましょう。題名の「CUE」は放送業界用語の「キュー」、『臨床的有用性』(Clinical Utility)、そしてパーキンソン病医療における「CUE」から来ています。つまり、「動こうとしてもはじめの一歩が踏み出せない状態」に対して、このレクチャーが試験勉強を始める一歩を踏み出すきっかけになってほしいという思いです。講師の民谷先生の実臨床経験を組み込んだクリアな解説は、とても役に立ちます。専門外や苦手科目からチェックして、次のステップへ進んでください。第5回 膠原病/アレルギー 膠原病の領域は、類縁疾患を含めると疾患が非常に多く、症状が多彩なのが特徴です。民谷式では疾患を大きく3つに分類し、それぞれの特徴をオリジナルのシェーマと症例問題をもとに解説していきます。第6回 神経 神経の疾患は非常に多岐にわたりますが、どこが障害してどんな症状が出るかを理解するためには、まずは正常な状態を理解するのが得策。わかりやすく簡略化してある民谷式のオリジナルシェーマで重要疾患の病態生理を再整理してください。第7回 循環器1 出題範囲が広い循環器領域で、まず押さえるべき疾患は虚血性心疾患と心不全。狭心症と心筋梗塞の病態の違いや心電図の見方、エコーの基本となる解剖生理など、基礎をしっかりと復習します。第8回 循環器2 出題範囲が広い循環器領域。循環器の後半は弁膜症と心筋症、そして不整脈について復習します。心臓で起こったことが、心電図ではどう見えるのか?民谷式のシェーマを用いてわかりやすく解説しているので、知識の整理に役立ちます。

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心血管疾患併存の痛風、フェブキソスタット vs.アロプリノール/NEJM

 心血管疾患を有する痛風患者に対し、非プリン型キサンチンオキシダーゼ阻害薬フェブキソスタット(商品名:フェブリク)は、プリン塩基類似体キサンチンオキシダーゼ阻害薬アロプリノールに比べ、心血管系有害事象の発生に関して非劣性であることが示された。一方で、全死因死亡や心血管死亡の発生率は、いずれもフェブキソスタット群のほうが高かった。米国・コネティカット大学のWilliam B. White氏らが、6,190例を対象に行った多施設共同無作為化二重盲検非劣性試験の結果で、NEJM誌2018年3月29日号で発表した。フェブキソスタット群とアロプリノール群に無作為に割り付け 研究グループは、心血管疾患を有する痛風患者6,190例を無作為に2群に分け、一方にはフェブキソスタットを、もう一方にはアロプリノールを投与した。被験者について、腎機能による層別化も行った。 主要評価項目は、心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中・緊急血行再建術を要した不安定狭心症の複合エンドポイント。事前に規定した非劣性マージンは、同複合エンドポイントのハザード比1.3とした。フェブキソスタットとアロプリノールともに主要評価項目の発生は約10~11% 追跡期間は最長85ヵ月、中央値は32ヵ月だった。被験者のうち、試験レジメンを中止したのは56.6%、追跡中断となったのは45.0%だった。 修正intention-to-treat(ITT)解析の結果、主要評価項目の発生は、フェブキソスタット群の335例(10.8%)、アロプリノール群の321例(10.4%)で認められた。同発生に関するフェブキソスタット群のアロプリノール群に対するハザード比は1.03(片側98.5%信頼区間[CI]上限値:1.23、非劣性p=0.002)であり、非劣性が認められた。 全死因死亡、心血管死亡の発生率は、いずれもフェブキソスタット群がアロプリノール群より高率で、ハザード比はそれぞれ1.22(95%CI:1.01~1.47)、1.34(同:1.03~1.73)だった。 なお、実際に被験者が治療を受けている期間のイベント発生の解析と、修正ITT解析では、主要評価項目や全死因死亡、心血管死亡に関する結果は同等だった。

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PCI後のDAPT、6ヵ月 vs.12ヵ月以上/Lancet

 急性冠症候群に対する薬剤溶出ステント(DES)での経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施後、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)において、6ヵ月投与群が12ヵ月以上投与群に対して、18ヵ月時点で評価した全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合エンドポイントの発生について非劣性であることが示された。一方で、心筋梗塞発症リスクは、6ヵ月投与群が約2.4倍高かった。韓国・成均館大学校のJoo-Yong Hahn氏らが、2,712例を対象に行った無作為化非劣性試験の結果で、Lancet誌オンライン版2018年3月9日号で発表した。結果を踏まえて著者は、「DAPT投与は短期間が安全であるとの結論に達するには、厳しい結果が示された。過度の出血リスクがない急性冠症候群患者のPCI後のDAPT期間は、現行ガイドラインにのっとった12ヵ月以上が望ましいだろう」と述べている。18ヵ月時点の心血管イベントリスクを比較 研究グループは2012年9月5日~2015年12月31日に、韓国国内31ヵ所の医療機関を通じて、不安定狭心症、非ST上昇型心筋梗塞、ST上昇型心筋梗塞のいずれかが認められ、DESによるPCIを受けた患者2,712例について、非盲検無作為化非劣性試験を行った。急性冠症候群でPCI実施後のDAPT期間6ヵ月の群が、同じく12ヵ月以上の群に比べて非劣性かを評価した。 主要評価項目は、PCI実施後18ヵ月時点の全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中のいずれかの複合エンドポイントとし、ITT解析で評価した。per protocol解析も行った。 副次評価項目は、PCI実施後18ヵ月時点の、主要評価項目に含まれた各イベントの発生、Academic Research Consortium(ARC)の定義に基づくdefinite/probableステント血栓症、BARC出血基準に基づくタイプ2~5の出血の発生だった。6ヵ月群の心筋梗塞リスクが2.41倍 被検者のうち、DAPTの6ヵ月投与群は1,357例、12ヵ月以上投与群は1,355例だった。P2Y12阻害薬としてクロピドグレルを用いたのは、6ヵ月群の1,082例(79.7%)、12ヵ月以上群の1,109例(81.8%)だった。 主要評価項目の発生は、6ヵ月群63例(累積イベント発生率:4.7%)、12ヵ月以上群56例(同:4.2%)で認められ、6ヵ月群の非劣性が示された(群間絶対リスク差:0.5%、片側上限値95%信頼区間[CI]:1.8%、事前規定の非劣性マージンは2.0%で非劣性のp=0.03)。 全死因死亡率は6ヵ月群が2.6%、12ヵ月以上群が2.9%と両群で同等だった(ハザード比[HR]:0.90、95%CI:0.57~1.42、p=0.90)。脳卒中発症率についても、それぞれ0.8%と0.9%であり、両群で同等だった(同:0.92、0.41~2.08、p=0.84)。 一方で心筋梗塞発症率については、6ヵ月群が1.8%に対し12ヵ月以上群が0.8%だった(HR:2.41、95%CI:1.15~5.05、p=0.02)。 ステント血栓症については、それぞれ1.1%と0.7%で、両群に有意差はなかった(p=0.32)。BARC出血基準2~5の出血発生頻度も、それぞれ2.7%、3.9%と有意差はなかった(p=0.09)。 per protocol解析の結果は、ITT解析の結果と類似していた。 著者は、「6ヵ月投与群の心筋梗塞リスクの増大と幅広い非劣性マージンによって、DAPTの短期間投与が安全であると結論付けることはできない」と述べている。

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降圧治療、自己モニタリングに効果はあるか?/Lancet

 血圧コントロールが不十分な高血圧患者における降圧薬の用量調整法として、血圧の自己モニタリングは、遠隔モニタリング併用の有無にかかわらず、診察室での用量調整に比べ、1年後の収縮期血圧を有意に低下させることが、英国・オックスフォード大学のRichard J. McManus氏らが行ったTASMINH4試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2018年2月27日号に掲載された。自己モニタリングによる降圧薬の用量調整に関しては、相反する試験結果が報告されており、遠隔モニタリングの正確な位置付けは、明らかにされていないという。1年後の収縮期血圧を3群で比較 TASMINH4は、降圧薬の用量調整における、血圧の自己モニタリングおよび自己モニタリング+遠隔モニタリングの効果を、通常治療と比較する非盲検無作為化対照比較試験(英国国立衛生研究所[NIHR]などの助成による)。 年齢35歳以上、3剤以内の降圧薬治療を行っても診察室血圧が140/90mmHg以上の高血圧患者が、血圧の自己モニタリング、自己モニタリング+遠隔モニタリング(遠隔モニタリング群)、通常治療(診察室での医師による用量調整)の3つの群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。参加者と担当医には、割り付け情報が知らされた。 主要アウトカムは、12ヵ月後の受診時の収縮期血圧であった。 英国の142の一般医(GP)施設に1,182例が登録され、1,173例が割り付けの対象となった。ベースラインの平均年齢は66.9歳(SD 9.4)、半数強が男性で、平均収縮期血圧は153.1/85.5(SD 14.0/10.3)mmHg、高血圧診断からの平均経過期間は10.2年(SD 8.4)であった。プライマリケアへの導入が推奨される可能性 解析には、1,003例(85%、自己モニタリング群328例、遠隔モニタリング群327例、通常治療群348例)が含まれた。 12ヵ月時の平均収縮期血圧は、自己モニタリング群が137.0(SD 16.7)mmHg、遠隔モニタリング群は136.0(16.1)mmHgと、通常治療群の140.4(16.5)mmHgに比べいずれも有意に改善し、通常治療との補正平均差(AMD)は、自己モニタリング群が-3.5mmHg(95%信頼区間[CI]:-5.8~-1.2、p=0.0029)、遠隔モニタリング群は-4.7mmHg(-7.0~-2.4、p<0.0001)であった。 自己モニタリング群と遠隔モニタリング群との間には、有意な差を認めなかった(AMD:-1.2mmHg、95%CI:-3.5~1.2、p=0.3219)。多重代入を含む感度分析でも、同様の結果が得られた。 6ヵ月時の平均収縮期血圧は、自己モニタリング群が140.4(SD 15.7)mmHgと、通常治療群の142.5(15.4)mmHgとの間に差はなかった(AMD:-2.1、95%CI:-4.3~0.1、p=0.0584)が、遠隔モニタリング群は139.0(16.8)mmHgであり、通常治療群に比べ有意な改善が認められた(-3.7、-5.9~-1.5、p=0.0012)。 有害事象の発生状況は3群で類似しており、不安感にも差を認めなかった。心血管イベント(初発心房細動、狭心症、心筋梗塞、冠動脈バイパス術/血管形成術、脳卒中、末梢血管疾患、心不全)は、自己モニタリング群が12例、遠隔モニタリング群が11例、通常治療群は9例にみられた。 著者は、「自己モニタリングは、それを望むすべての高血圧患者の血圧管理法として、プライマリケアにおいて推奨可能であり、理想的には、遠隔モニタリングシステムを組み込んだ有用性の高い家庭血圧計の供給が求められる」としている。

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FFRジャーナルClub 第8回

FFRジャーナルClubでは、FFRをより深く理解するために、最新の論文を読み、その解釈を議論していきます。第8回目の今回は、3枝においてFFRを計測することにより、その患者の総合的なリスクを評価する試みにつき検討した3V FFR-FRIENDS studyの報告を読みたいと思います。本研究は、韓国のKoo先生の声かけにより、日本、中国のPhysiology仲間で集まり多施設研究をしよう、と始まったものであり、この研究をきっかけとして、この領域における韓国と日本の密な連携が始まったkeyとなる研究です。第8回 3V FFR-FRIENDS StudyFFRをガイドにしたPCIは、AngioガイドのPCIやOMT単独よりも予後が良好であることがFAME I、FAME II試験により示され、中等度狭窄をFFR値に基づきdeferする治療選択は安全であると考えられている。しかし、個々の症例においては、FFR陰性にも関わらずdeferした後にイベントを発生する症例も報告されている。このイベント発生に関与する因子は何か? 予測は可能か? 1つの病変のみでなく、患者レベルのリスクを評価することができないか? これらの疑問に対する回答を見つけるべく企画されたのが3V FFR-FRIENDS Study(three-vessel fractional flow reserve for the assessment of total physiologic atherosclerotic burden and its clinical impact in patients with coronary artery disease)である。3V FFR-FRIEMDS studyは、total physiologic atherosclerotic burdenとして、3枝のFFRの値を合計した3V-FFRを求め、その臨床的意義を検討することが目的である。Lee JM, et al. Clinical implications of three-vessel fractional flow reserve measurement in patients with coronary artery disease. European Heart Journal 2017 Aug 19.[Epub ahead of print]3V FFR-FRIENDS studyは、前向き、国際多施設共同研究で、3V-FFR値別の2年間の臨床予後MACE(心臓死、心筋梗塞、虚血による冠血行再建)を検討することが主要評価項目である。日本、韓国、中国の3ヵ国12施設が参加し、2011年11月~2014年3月まで1,136例(3,298枝)が登録された。対象は30%以上の狭窄が3枝に存在し、3枝のFFR計測に成功した症例。RCAあるいはLCXが末梢左室枝を有さない小血管であった場合(100症例が該当した)は、他の2枝で計測したFFRを平均し、その値を3倍することにより3V-FFR値とした。PCI施行の判断は術者に任されたが、FFR 0.80以下をPCI推奨とし、ステント治療を行った症例(572枝、17.3%)では、ステント後のFFRを計測、その値を3V-FFRに使用した。FFR 0.80であったがPCIはdeferされた症例が314枝(11.5%)あり、その理由は、造影上有意狭窄でないから(185枝、58.9%)、びまん性病変(48枝、15.3%)、以前の所見と比べ変化ないから(31枝、9.9%)、非侵襲的検査で陰性(17枝、5.4%)、灌流域が狭いから(15枝、4.8%)、そのほか(17枝、5.4%)であった。全症例1,136例の%DS中央値は36%、FFR中央値は0.91、3枝のFFR合計値(3V-FFR)の中央値は2.72であった。この3V-FFR中央値2.72を基準とし、High 3V-FFR群(555症例)とLow 3V-FFR群(581症例)に分割した。Low 3V-FFR群では、HT、DMの合併、PCIの既往が多く、また造影上も%DSが高く、病変長は長く、各枝FFR値は低値であった(0.86±0.08 vs.0.93±0.06)。下図に3V-FFRと2年MACE予測値の関係を示す。画像を拡大する1枝以上にPCIを行った症例は赤丸、すべての病変に内科治療が選択された症例が青丸で示されている。治療の有無に関わらず3V-FFRとMACEの間にはほぼ同等の相関が存在した。3V-FFR 0.1増加に伴うHazzard Ratioは0.736であった。3V-FFR値にて2群に分割した際のイベント発生曲線を下記に示す。画像を拡大するLow 3V-FFR群では、High 3V-FFR群に比し、有意に2年MACE rateが高かった(7.1% vs.3.8%、HR:2.205、95%CI:1.201~4.048、p=0.011)。この差は、主には虚血由来の冠血行再建であった(6.2% vs.2.7%、HR:2.568、95%CI:1.283~5.140、p=0.008)。*虚血由来の血行再建は、25例(62.5%)がACS、9例が病変の進行を伴う狭心症症状の増悪、残りは非侵襲的検査陽性であった。2年MACEを予測する3V-FFR値のBCV(best cutoff value)は2.59であり、このBCVにて2群に分けた場合のイベント曲線が『supplementary files』に掲載されている。2群間の差はより顕著であり、3枝のFFRが全て0.80以上であった789例の検討においても、同様の結果が得られた(下図右)。画像を拡大する考察・私見本研究は、total physiologic atherosclerotic burdenの指標として3V-FFRを提唱したものであり、この3V-FFRが患者レベルのイベント予測マーカーとして有用であるか検討された。あくまでも解剖学的なplaque burden自体を計測しているわけではないので、‘plaque burden’ではなく‘physiologic atherosclerotic burden’なのである。これはFunctional SYNTAX scoreの概念につながるものであるが、SYNTAX scoreが有意病変ごとのリスク評価値を加算していくのに対し、3V-FFRは狭窄として有意でないものも含め全ての存在する病変の結果得られたFFR値を加算するものである。すなわちその時点では有意でない病変であっても、冠動脈全体への広がりがリスクを表している可能性を示すものである。今回の研究の対象となっているのは、比較的軽度の病変を有する症例である。FFRの中央値が0.91という点を見ても、かなり多くの軽度病変が含まれていることがわかる。そのような対象群であっても、3V-FFRと2年MACEに有意な負の相関が存在し、Low 3V-FFR群ではHigh 3V-FFRと比し2倍のMACEリスクを有し、さらに3V-FFR値はMACEの独立した予測因子であった。FFRを計測することにより、それに基づきPCIが行われるため、さまざまな状況の3V-FFR値が存在しうる。3枝とも非有意病変であり、そのFFR値を合算した場合、また有意病変に対しPCIを行い、改善したpost stent FFR値を含め計算された場合、この両者は同じ値となりうる。この両者のリスクに差はないのか? 本研究では、内科治療が選択された場合もPCIが行われた場合も、3V-FFR値によるその後の2年MACEリスク予測値は同等であった(前掲図)。ステント後にFFRの改善不良例が15%程度存在することが報告されている。そのような症例は3V-FFR値が低値となり、元より有意病変の存在する症例と同様、その後のリスクを有していることがわかる。ステント後のFFR改善不良は、その後の再血行再建のみでなく、患者レベルのイベントリスクと考えられる。LADに多く、CKDの関与などが報告されているが、その予後に関しては現在われわれも多施設前向き研究として検討を進めているところである(Fuji study)。本文考察中には、各枝のFFR値(per-vessel FFR)は0.90±0.08と高値であったがMACEリスクと関連を示した、とある。この結果はJohnson NPらの報告したメタアナリシス(Johnson NP, et al. JACC.2014;64:1641-1654.)のメッセージとつながるもので、FFR値は連続的な値であり、その値がその後の予後を表しうると考えられる。ただし、注意をしなければならないのは、この結果からFFR 0.81~0.90のような症例に対してもPCIを適応する、ということには決してならない、という点である。今回の検討自体でも、per-vessel FFRとイベント発生について解析されたものが『supplementary files』に掲載されている。画像を拡大する本図からわかることは、内科治療を選択したFFR>0.80の症例におけるイベント発生リスクはほぼ一定であり、少なくとも、そのFFR値を有する病変に対してPCIを行なった場合よりもリスクは低い、という点である。これは、DEFER study、FAME studyにおけるメッセージと同様であり、決して今回の結果から、3V-FFR値が低値であるからといって、per vessel FFRが0.80以上の病変にPCIを行う理由にはならない。本研究の最も大きな意義は、FFRは血行再建の適応決定のみに使用する指標ではなく、その値自体に連続的なリスクを表す意義があり、患者のリスクを表す指標としても有用であることを示した点にある。

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ORBITA試験:冷静な判断を求む(解説:野間重孝氏、下地顕一郎氏)-800

 COURAGE試験において安定狭心症に対するPCIは、薬物療法に比してMIや死亡を減らすことができないことが示され、現在では症状の改善を主目的として施行されている。そこで狭心症状という主観的なアウトカムが、PCIのプラセボ効果による修飾を受けているのではないかとの設問を立て、PCIのプラセボ手術(sham operationといった方が一般的か)を用いてこれを検証したところ、PCIは症状の改善すら薬物療法に対しての優位性を示せなかったというのが本論文の結論であった。倫理的な問題は後述するとして、手法としては完全であった点では評価されなければならないと思われる。 しかし、一方で懸念されるのは、この結果が拡大解釈されることである。Lancet同号のeditorialでは「安定狭心症に対するPCIの息の根をとめるか?」という激しいタイトルで、「薬物療法に対して不応な症例ですらPCIは無益」で「すべてのguidelineでPCIを格下げすべきである」と感情的とさえいえる論評が加えられているが、本試験の筆頭著者であるAl-Lameeさえもこれには異論を唱えている。注意しなければならないのは以下の2点であると考える。 まず挙げられなければならない点は、RCTの常としてリアルワールドを反映していないということである。本論文ではmedical therapyとして週1~3の電話相談、しかも家庭血圧と家庭心拍を密にモニターしているが、実臨床では実現不可能であろう。この点は筆者も十分理解しており、「労作性狭心症に対するPCIを絶対にするなという意味ではない。すべての患者が何剤もの抗狭心症薬を永遠に内服することをよしとするわけではない」、「リスクの低いPCI手技をして薬剤を減らすことを望む」患者にはPCIが治療選択となることを述べている点は看過されてはならないと思う。 もう1点は、重症虚血の症例にまでこの結果を適用してはならないということである。COURAGE試験のサブ解析でも、SPECT上のischemic burdenを5%以上減じればMIや死亡を減らすことができることと、PCI群でischemic burdenの有意な減少が得られたことを報告している。先行研究において、血行再建によってもたらされる利益が薬物療法を上回る閾値は10%以上の重症虚血であったこと、さらにLMT含む重症虚血が除外されているCOURAGE試験での治療前値が8%台であったことを考慮すると、COURAGE試験の結果を重症虚血に安易に拡大解釈することは危険なのは明らかであろう。同様に重症虚血を除外している本試験の結果は、もちろん重症虚血例に対して拡大解釈することはできない。現に本試験では、約1/3の症例でFFR/iFRで虚血が証明されていない。ちなみに本試験でも、FFR/iFRやドブタミン負荷心エコーではPCI群で虚血の改善をみている。すなわち現時点で“軽症の虚血においては”、血行再建は生命予後にも症状の緩和にも明らかな優位性を見いだせないということ以上の解釈はできず、すべての安定狭心症に対して血行再建を行うことが無益だという解釈は誤りである。 さらに、論文評として議論しておかなければならないのが、プラセボ手術の問題であろう。このような研究法(観血的な偽治療)が初めて試されたのは、腎動脈焼灼術による血圧変化を検討したrandomized studyにおいてだった。この時は、シースは挿入するがそれ以降の積極的な操作は何も行わないというものだったのだが、賛否両論が沸き起こったのを記憶している。今回はpressure wireを挿入するなど本格的手技に準ずる手技が行われており、しかも4例で合併症が、3例で大出血がみられたのである。安全性に問題のあるプラセボ治療は、プラセボ治療とはいえない。関係者の再考を促したいとともに、このような対照の取り方が、どのような目的であれ、無制限に拡大していくことを憂慮するものである。 ただし、本試験から虚心に学ぶべきことも多い。当然だが術前の虚血評価と薬物の最適化は重要であること、ましてangiographicにも中等度狭窄に対してのPCIは厳に非難されるべきものであること(実際、業績が欲しくて不必要なPCIが行われているケースが多々みられることは、残念ながら事実)、PCIのリスクがあまりに高い軽症の虚血の患者には厳重な薬物療法の選択肢も十分ありうることなどである。一方で、重症虚血の患者に対してひとたびPCIによる血行再建の選択をした際には、虚血を残すことなく解除することが絶対の前提であることは確認しておきたい。そのためにはCTOを含めた複雑病変に対する治療技術、angioguideのみでは見落としがちな病変をimaging device、FFR/iFRを駆使して完全血行再建を行うstrategyの構築が重要で、これが不可能なのであればCABGを選択して完全血行再建を目指すべきである。

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カナキヌマブ投与によるCRP低下と心血管イベントの関連:CANTOS無作為化比較試験の2次解析(解説:今井 靖 氏)-796

 カナキヌマブは、インターロイキン-1β(IL1β)に対するモノクローナル抗体であるが、CANTOS試験(Canakinumab Anti-Inflammatory Thrombosis Outcomes Study)はこのカナキヌマブ(3用量[50mg、150mg、300mg])およびプラセボを割り付け3ヵ月に1回皮下注射を行う無作為化比較対照試験で、心筋梗塞の既往がある炎症性アテローム性動脈硬化症患者に、標準治療(脂質低下治療を含む)に加えて追加投与がなされた。その結果として、主要心血管イベント(MACE[Major Adverse Cardiovascular Event]:心血管死、非致死性心筋梗塞および非致死性脳卒中からなる複合エンドポイント)の発現リスクがプラセボ群に比べ有意に15%低下することが示され(150mg、300mg投与群で有効性が証明された)、昨年秋に大いに話題となった。またそのような心血管イベント抑制のみならず、事前に規定された盲検化での悪性腫瘍に関する安全性評価において、カナキヌマブ投与患者ではプラセボ群に比較し肺がんによる死亡率を77%、発症率を67%低下させたと報告されており、炎症低下抑制薬が動脈硬化性疾患、がん治療に導入される可能性・将来性を示した画期的な研究といえる。 今回はこのCANTOS試験の2次解析であるが、どのような患者群が治療に最も奏効するのか、また炎症マーカーである高感度CRPの低下が各々の患者の臨床効果と相関するのかを明らかにするために、事前に規定されていた研究を報告するものである。著者らは、カナキヌマブの主要心血管イベント、心血管死亡、全死亡率に対する効果について治療時における高感度CRPに基づいて評価した。また、到達した高感度CRP値に関連する背景因子を補正するために多変量解析モデルを用い、残存する交絡因子の大きさを確認するために多変量感受性解析を行った。追跡期間のメディアンは3.7年であった。患者の基礎背景に大きな相違は認められなかった。しかしながらカナキヌマブに割り付けられ、高感度CRPが2mg/L未満に到達した患者では主要心血管イベントが25%低下した(多変量解析における補正ハザード比=0.75、95%信頼区間:0.66~0.85、p<0.0001)。しかし、高感度CRPが2mg/L以上であった症例では明らかな有効性は示されなかった。同様に高感度CRPが2mg/L未満に到達した患者においては心血管死亡 (補正ハザード比=0.69、95%信頼区間:0.56~0.85、p=0.0004) 、全死亡 (補正ハザード比=0.69、0.58~0.81、p<0.0001)と低下し、両者とも31%のリスク比低下が得られているが、高感度CRPが2mg/L以上であるものでは効果が認められなかった。同様に、用量、交互作用等も考慮に入れた解析において、予定外の冠動脈血行再建を要する不安定狭心症による入院のような事前に規定されていた副次エンドポイント、高感度CRPのメディアン、高感度CRPの50%以上の低下(半減)、高感度CRPのメディアン%の低下においても臨床的有意差が確認された。 この研究から、カナキヌマブの単回投与による高感度CRPの低下度は、繰り返す治療から最大の効果が最も得られる患者を検出する、最もシンプルな方法といえる。また、カナキヌマブにより“炎症が低く抑えられれば抑えられるほどより良い”ということも示された点で意義深い。

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高感度トロポニンIが陰性だったら、胸痛患者を安心して帰宅させることができるのか?(解説:佐田 政隆 氏)-779

 1人で当直をしていて、胸痛を主訴に来院した患者に対して、帰宅させて大丈夫かどうかと悩んだことがある医師も多いと思う。何も異常ありませんので、明日、昼間に再来院して精密検査をしましょうと言って帰したところ、急性冠症候群で、家で心肺停止になることなどは絶対に避けなければならない。通常、心電図、胸部レントゲン、心エコーなどが施行されると思うが、非常に些細な変化で、非循環器専門医では、判断に迷うことがたびたびあるのではないだろうか。また、心電図、通常の心エコーではまったく異常を来さない、左回旋枝の急性心筋梗塞や不安定狭心症があるのも事実である。 そういった状況で、血液検査は有用である。白血球、CPK、CPK-MB、AST、LDH、CRPなどが上昇していれば急性冠症候群が強く疑われる。また、全血で迅速診断できる、ヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)とトロポニンT検出キットも臨床で頻用されている。しかし、このような検査は発症から数時間経過しないと上昇しないことがあり、感度、特異度とも十分とはいえない。そういった中、近年注目されているのが、高感度トロポニンI検査である。 本論文においては、9ヵ国からの19試験のシステマティックレビューが行われ、22,457症例に関してメタ解析が行われた。心筋トロポニンI値5ng/L未満は、30日時点の心筋梗塞/心臓死の陰性適中率が99.5%と高く、有用であるとの報告である。しかし逆にいうと、心筋トロポニンI値5ng/L未満であった11,012例中0.5%に当たる60例が、30日以内に、心筋梗塞もしくは心臓死を経験している。 以上を踏まえると、胸痛を訴えて受診した患者で、心筋トロポニンI値が5ng/L未満であるから、急性冠症候群を否定できるので帰宅させることは決してできないと考えられる。受診していながらも、急性冠症候群を見落とされ、命を失う患者が1人でもあってはならない。私は、特異度は低くても、感度を100%にするようにと、学生や医局員にはいつも話している。そのためには、丁寧な問診、各種検査を駆使することが重要である。高感度トロポニンI検査が利用できる現在でも、急性冠症候群をあやしいと思ったら、取りあえず入院させて、心電図や血液検査の、数時間おきのフォローアップが重要である。

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アスピリン+リバーロキサバンで冠動脈疾患の死亡減少/Lancet

 安定冠動脈疾患患者の治療において、アスピリンに低用量リバーロキサバンを併用すると、主要血管イベントが減少し、大出血の頻度は増加するもののベネフィットは消失せず、死亡が有意に低減することが、カナダ・マックマスター大学のStuart J Connolly氏らが行ったCOMPASS試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2017年11月10日号に掲載された。冠動脈疾患は世界的に合併症や死亡の主要な原因で、急性の血栓イベントの結果として発症する。Xa因子阻害薬やアスピリンは血栓イベントを低減させるが、安定冠動脈疾患患者におけるこれらの併用や、個々の薬剤の比較検討は行われていないという。約2万5,000例が参加したプラセボ対照無作為化試験 COMPASS試験は、安定冠動脈疾患および末梢動脈疾患の外来患者において、アスピリンおよびリバーロキサバンのそれぞれ単剤療法と、これらの併用療法の有用性を評価する多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験(Bayer AG社の助成による)。本報告では、冠動脈疾患患者の結果が提示された。 対象は、過去20年の間に心筋梗塞の既往歴があり、冠動脈の多枝病変を有し、安定または不安定狭心症の既往歴があり、多枝病変に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)または冠動脈バイパス移植術を受けた冠動脈疾患患者であった。 被験者は、30日間の導入期の後、低用量リバーロキサバン(2.5mg、1日2回、経口)+アスピリン(100mg、1日1回)、リバーロキサバン(5mg、1日2回、経口)、アスピリン(100mg、1日1回、経口)を投与する群に、1対1対1の割合でダブルダミー下に無作為に割り付けられた。患者、担当医、中央判定の医療スタッフには治療割り付け情報がマスクされた。 有効性の主要アウトカムは、心筋梗塞・脳卒中・心血管死の発現とした。 2013年3月12日~2016年5月10日の期間に、33ヵ国558施設で2万7,395例が登録され、2万4,824例(91%)がランダム化の対象となった。併用群が8,313例、リバーロキサバン単独群が8,250例、アスピリン単独群は8,261例であった。併用により主要アウトカム、死亡率が低減 平均フォローアップ期間は1.95年で、全体の平均年齢は68.3歳、男性が80%(1万9,792例)を占めた。 主要アウトカムの発生率は、併用群が4%(347/8,313例)と、アスピリン単独群の6%(460/8,261例)に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.65~0.86、p<0.0001)。これに対し、リバーロキサバン単独群の主要アウトカムの発生率は5%(411/8,250例)であり、アスピリン単独群の6%(460/8,261例)との間に有意差を認めなかった(HR:0.89、95%CI:0.78~1.02、p=0.094)。 大出血の発生率は併用群が3%(263/8,313例)と、アスピリン単独群の2%(158/8,261例)に比べ有意に高く(HR:1.66、95%CI:1.37~2.03、p<0.0001)、出血の発生率はリバーロキサバン単独群が3%(236/8,250例)であり、アスピリン単独群の2%(158/8,261例)に比し、有意に高かった(HR:1.51:95%CI:1.23~1.84、p<0.0001)。 最も頻度の高い大出血の発生部位は消化器で、併用群が2%(130例)、リバーロキサバン単独群が1%(84例)、アスピリン群は1%(61例)であった。死亡率は、併用群が3%(262/8,313例)であり、アスピリン単独群の4%(339/8,261例)と比較して有意に低かった(HR:0.77、95%CI:0.65~0.90、p=0.0012)。 著者は、「低用量リバーロキサバン+アスピリンの全体的なベネフィットは有意であり、アスピリン単独に比べ死亡が23%減少した。高リスク集団では、合併症や死亡が実質的に減少する可能性がある」と指摘している。

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カナキヌマブの心血管イベント予防効果、CRP低下がカギ?/Lancet

 米国・ブリガム&ウィメンズ病院のPaul M Ridker氏らは、CANTOS試験の2次解析の結果、「カナキヌマブ投与3ヵ月後の高感度C反応性蛋白(hsCRP)値低下の大きさは、治療継続により最も恩恵が得られそうな患者を特定する簡単な臨床的手段(clinical method)といえるかもしれない」との見解を示すとともに、「カナキヌマブ投与後の炎症反応が低いほど予後良好であることが示唆された」ことを報告した。ヒト型抗ヒトIL-1βモノクローナル抗体のカナキヌマブは、心筋梗塞既往患者を対象としたCANTOS試験において、脂質に影響せず炎症と心血管イベントを抑制することが示されている。しかし、どの患者集団で最も有益なのか、またhsCRP値の低下が個々の患者で臨床的有益性と関連するかどうかは不明であった。Lancet誌オンライン版2017年11月13日号掲載の報告。CANTOS試験の2次解析で検討 CANTOS試験は、心筋梗塞の既往歴があるhsCRP値2mg/L以上の患者1万61例を対象に、カナキヌマブ(50mg、150mg、300mg)またはプラセボの4群に割り付け、標準治療に加えそれぞれを3ヵ月に1回皮下投与した時の、心血管イベント抑制効果を検討した無作為化二重盲検比較試験である。 研究グループは、事前に規定されていた2次解析として、心血管イベント減少とhsCRP低下との関連性を検証した。具体的に、治療中のhsCRP値からみた、カナキヌマブの主要有害心血管イベント(MACE)発生率、心血管死亡率および全死因死亡率に対する影響を、hsCRP値達成と関連するベースライン要因を調整した多変量モデルを用いて評価した。また、残余交絡因子に対処するため複数の感度解析も行った。 追跡期間中央値は3.7年であった。hsCRP値2mg/L未満達成で主要有害心血管イベントが25%減少 ベースラインの臨床的特徴からは、カナキヌマブ治療が心血管系のベネフィットをもたらすのか否かがうかがわれる患者集団は特定されなかった。しかしながら、カナキヌマブ投与群において、初回投与後3ヵ月時にhsCRP値が2mg/L未満を達成した患者は、プラセボ群と比較しMACEの発生が25%減少し(多変量補正後ハザード比[HRadj]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.66~0.85、p<0.0001)、一方、hsCRP値が2mg/L以上の患者では有意な減少は確認されなかった(HRadj:0.90、95%CI:0.79~1.02、p=0.11)。 また、hsCRP値2mg/L未満を達成したカナキヌマブ群の患者は、心血管死亡率(HRadj:0.69、95%CI:0.56~0.85、p=0.0004)および全死因死亡率(HRadj:0.69、95%CI:0.58~0.81、p<0.0001)がいずれも31%減少したが、hsCRP値2mg/L以上の患者では有意な減少は認められなかった。 事前に規定された副次心血管エンドポイント(不安定狭心症のための緊急血行再建術による入院を追加)の解析、hsCRP値低下の中央値・hsCRP値50%以上低下・hsCRP値低下率の中央値に基づいた感度解析、投与量別解析、hsCRP目標値に達した患者における治療効果を算出する因果推論法を用いた解析においても、同様の結果が確認された。

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まだBMSを使う理由があるか?(解説:上田恭敬氏)-769

 本試験では、安定狭心症も急性冠症候群も含めた75歳以上のPCI施行患者を対象として、まずDAPTの期間を1〜6ヵ月の間(short DAPT)で臨床的必要性に応じて決めた後に、PCIに使用するステントをDES(Synergy、Boston Scientific)またはBMS(Omega or Rebel、Boston Scientific)に無作為に割り付けた。患者に対しては、「SENIOR stent」の表記で統一することによって、いずれに割り付けられたかわからないようにした(single-blind)。 その結果、複合主要評価項目である1年間のMACCE(全死亡、心筋梗塞、血行再建術、脳卒中)は、12%対16%(p=0.02)とDES群で有意に低値であった。血行再建術(Ischaemia-driven target lesion revascularisation)の差(2%対6%、p=0.0002)が、複合主要評価項目の差につながったと考えられ、出血性イベントも含めて、他のイベント項目に明らかな群間差を認めなかった。 DAPT期間を短縮するためにBMSを使用するという言い訳がよく聞かれるが、今回の試験の結果では、臨床的必要性に応じて短期間のDAPTを施行する高齢者においても、1年の短期成績で判断する限り、BMSを選択する必要はなく、むしろDESのほうが優れていることが示された。「DESでは新生内膜による被覆が不良なためDAPT期間を短くするとステント血栓症のリスクが高くなる」という固定観念は、そろそろ払拭されてもよいのかもしれない。ただし、10年以上の長期成績においてBMSとDESのいずれが優れているかはまた別の問題であり、別に議論されるべきだろう。

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PCIで運動時間が改善するか?プラセボとのDBT/Lancet

 至適薬物治療を行った重度一枝狭窄の安定狭心症患者に対し、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を実施しても、運動時間の改善は認められないことが、無作為化プラセボ対照二重盲検試験で初めて明らかになった。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのRasha Al-Lamee氏らが、患者200例を対象に行った「ORBITA」試験の結果で、Lancet誌オンライン版2017年11月2日号で発表した。重度一枝狭窄の患者に6週間の至適薬物治療 研究グループは、70%以上の重度一枝狭窄が認められる安定狭心症で、虚血症状のある患者を対象に試験を行った。まず全登録被験者(230例)に対し、6週間の至適薬物治療を行った(2014年1月6日~2017年8月11日)。その後、心肺運動負荷試験、症状に関する質問票による評価、ドブタミン負荷心エコー法を実施し、無作為に被験者200例を2群に分け、一方にはPCIを(105例)、もう一方にはプラセボ手術を行った(95例)。 術後6週間後に、無作為化前に行った方法で再度評価を行った。主要エンドポイントは、運動時間増加量の群間差で、無作為化を受けた全被験者について解析を行った。PCI群で運動時間に改善みられず 被験者200例の、狭窄部位の平均狭窄率は84.4%(SD 10.2)、平均冠血流予備量比(FFR)は0.69(同0.16)、平均瞬時血流予備量比は0.76(同0.22)だった。 術後6週間の運動時間増加量について、両群で有意差は認められなかった(PCI群-プラセボ手術群:16.6秒、95%信頼区間:-8.9~42.0、p=0.200)。 試験期間中に死亡した被験者はいなかった。また、重篤な有害イベントとして、PCIを要したプレッシャワイヤ関連合併症(プラセボ手術群で4件)、大量出血5件(PCI群2件、プラセボ手術群3件)の発生が報告された。 なお今回の試験について著者は、「薬物療法でスタンダードになっているように、侵襲手技の有効性についてもプラセボ対照の評価は可能である」と述べている。

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高齢者のPCI、短期DAPTでのDES vs.BMS/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受ける高齢患者において、薬剤溶出ステント(DES)を用い抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を短期間とする戦略は、ベアメタルステント(BMS)を用いDAPTを短期間とする戦略よりも予後は良好であり、全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中および虚血による標的病変血行再建の発生に関しては同程度であることが示された。フランス・パリ第5大学のOlivier Varenne氏らによる無作為化単盲検試験の結果で、Lancet誌オンライン版2017年10月31日号で発表された。高齢患者は通常、DAPTの継続を短縮するために、DESの代わりにBMSの留置を受ける。研究グループは、高齢患者においてDAPTを短期間とした場合の両ステント間のアウトカムを比較する検討を行った。DAPT投与期間を事前に計画し、DES群またはBMS群に無作為化 試験は9ヵ国、44ヵ所の医療施設から患者を集めて行われた。被験者は、75歳以上で安定狭心症、無症候性心筋虚血、急性冠症候群を有し、70%以上狭窄の冠動脈が1枝以上(左主幹部50%以上)でPCI適応とみなされる患者を適格とした。除外基準は、冠動脈バイパス術による心筋血管再生手術の適応、DAPTに対する忍容性・獲得性・順守性がない、追加手術の必要性、1年以内に生命を脅かす非心臓疾患の併存、出血性脳卒中の既往、アスピリンまたはP2Y12阻害薬に対するアレルギー、P2Y12阻害薬禁忌、左心筋10%未満の無症候性虚血で冠血流予備量比0.80以上であった。 DAPTの計画投与期間が記録された後(安定症状患者は1ヵ月間、不安定症状患者は6ヵ月間)、被験者は中央コンピュータシステムによって、DESまたはBMSを受ける群のいずれかに無作為に割り付けられた(試験施設および抗血小板薬で層別化も実施)。割り付けは単盲検(患者はマスキングなど)で行われたが、アウトカムの評価者はマスキングされた。 主要アウトカムは、intention-to-treat集団における1年時点の重大有害心・脳血管イベント(全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、虚血による標的病変血行再建)の両群間の比較であった。イベント評価は、30日、180日、1年時点のそれぞれで行った。1年時点の主要複合エンドポイントの発生、DES群が有意に低下 2014年5月21日~2016年4月16日に、患者1,200例が無作為化を受けた(DES群596例[50%]、BMS群604例[50%])。被験者の平均年齢は81.4歳(SD 4.3)、男性が747例(62%)であった。全体的にプロファイルは典型的な高齢者ハイリスク患者であることを示し、高血圧(各群72%、81%)、高コレステロール血症(52%、53%)、心房細動(17%、18%)などを有していた。既往歴は、一部を除外すればほぼバランスが取れていた。DAPT投与計画は、1ヵ月投与が全体で57%(各群55%、59%)を占め、同計画群の90%が安定狭心症または無症候性虚血の患者で、DES群とBMS群で差はなかった。6ヵ月投与は、ベースラインで急性冠症候群が認められた患者が大半を占めた(83%)。試験期間中のアスピリン用量中央値は100mg(IQR:75~100)、プラスグレル投与患者の半数は5mg/日量であった。また、88%(1,057例)の患者のP2Y12阻害薬がクロピドグレルであった。 主要複合エンドポイントの発生は、DES群68例(12%)、BMS群98例(16%)で報告された(相対リスク[RR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.52~0.94、p=0.02)。 1年時点の出血合併症の発現頻度は両群ともにまれで、DES群26例(5%)vs.BMS群29例(5%)であった(RR:0.90、95%CI:0.51~1.54、p=0.68)。ステント血栓症の発現頻度も同様であった(3例[1%]vs.8例[1%]、RR:0.38、95%CI:0.00~1.48、p=0.13)。 結果を踏まえて著者は、「出血イベントのリスクを減らすための短期BMS様DAPTレジメンとともに、血行再建術の再発リスクを減らすためのDESとの組み合わせ戦略は、PCIを受ける高齢患者の魅力的な選択肢である」と述べている。

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