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第243回 ED薬・タダラフィルやシルデナフィルと死亡、心血管疾患、認知症の減少が関連

ED薬・タダラフィルやシルデナフィルと死亡、心血管疾患、認知症の減少が関連勃起不全(ED)薬としてよく知られるタダラフィルやシルデナフィル使用と死亡、心血管疾患、認知症の減少との関連がテキサス大学医学部(UTMB)のチームの研究で示されました1,2)。タダラフィルとシルデナフィルはどちらもPDE5阻害薬であり、血流改善・血圧低下・内皮機能向上・抗炎症作用により心血管の調子をよくすると考えられています。それら成分は肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療にも使われ、タダラフィルは前立腺肥大症に伴う下部尿路症状の治療薬としても発売されています。UTMBのDietrich Jehle氏らの今回の研究は世界中の2億7,500万例超の臨床情報を集めるTriNetXに収載の米国男性5千万例の記録を出発点としています。それら5千万例から、ED診断後のタダラフィルかシルデナフィル処方、または下部尿路症状診断後のタダラフィル処方があった40歳以上の男性が同定されました。3年間の経過を比較したところ、タダラフィルかシルデナフィルが処方されたED患者は、非処方患者に比べて死亡、心血管疾患、認知症の発生率が低いことが示されました。具体的には50万例強の解析で以下のような結果が得られており、血中でより長く活性を保つタダラフィルがシルデナフィルに比べて一枚上手でした。全死亡率タダラフィルは34%低下、シルデナフィルは24%低下心臓発作発生率タダラフィルは27%低下、シルデナフィルは17%低下脳卒中発生率タダラフィルは34%低下、シルデナフィルは22%低下静脈血栓塞栓症(VTE)発生率タダラフィルは21%低下、シルデナフィルは20%低下認知症発生率タダラフィルは32%低下、シルデナフィルは25%低下下部尿路症状患者のタダラフィル使用は一層有益でした。40歳以上の下部尿路症状患者100万例超のうち、タダラフィル使用群の死亡、心臓発作、脳卒中、VTE、認知症の発生率はそれぞれ56%、37%、35%、32%、55%低くて済んでいました。やはり米国のED男性を調べた別の観察試験3,4)でもPDE5阻害薬やタダラフィルと死亡や心血管疾患の減少の関連が示されています。今春2月にClinical Cardiology誌に結果が掲載されたその1つ3)ではEDと診断されてタダラフィルが処方された男性8千例強(8,156例)とPDE5阻害薬非処方の2万例強(2万1,012例)が比較され、タダラフィル使用群の心血管転帰(心血管死、心筋梗塞、冠動脈血行再建、不安定狭心症、心不全、脳卒中)の発生率がPDE5阻害薬非使用群に比べて19%低いことが示されました。また、タダラフィル使用患者の死亡率は44%低くて済んでいました。タダラフィルと心血管転帰の発生率低下の関連は用量依存的らしく、同剤の使用量が上位4分の1の患者は心血管転帰の発生率が最小でした。有望ですがあくまでもレトロスペクティブ試験の結果であり、次の課題として男性と女性の両方でのプラセボ対照無作為化試験が必要だと著者は言っています3)。参考1)Jehle DVK, et al. Am J Med. 2024 Nov 10. [Epub ahead of print]2)Study finds erectile dysfunction medications associated with significant reductions in deaths, cardiovascular disease, dementia / The University of Texas Medical Branch 3)Kloner RA, et al. Clin Cardiol. 2024;47:e24234.4)Kloner RA, et al. J Sex Med. 2023;1:38-48.

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冠動脈にワイヤーを入れて行う心筋虚血評価は、もうちょっと簡単にならないのか?(解説:山地杏平氏)

 QFR(Quantitative Flow Ratio、定量的冠血流比)とFFR(Fractional Flow Reserve、冠血流予備量比)の有効性と安全性を比較したFAVOR III Europe試験が、2024年のTCT(Transcatheter Cardiovascular Therapeutics)で発表され、Lancet誌に掲載されました。 FFRは、圧測定ワイヤーを狭窄遠位まで進め、最大充血を得るために薬剤投与が必要な侵襲的な検査です。一方で、QFRは冠動脈造影の画像をもとに冠動脈の3次元モデルを再構築し、数値解析を行うことで心筋虚血の程度を推定します。FAVOR III China試験などで、QFRが一般的な冠動脈造影検査のみの評価よりも優れていることが示され、欧州心臓病学会(ESC)のガイドラインにおいてQFRはクラス1Bとして推奨されています。 本試験では、複合エンドポイントである死亡、心筋梗塞、緊急血行再建の発生率はQFR群で6.7%、FFR群で4.2%と報告され、QFR群でのイベント発生率がFFR群より高く、ハザード比は1.63(95%信頼区間:1.11~2.41)でした。イベント発生率の差は、非劣性マージンである3.4%を超えており、FFRが利用可能な場合にはQFRは推奨されないことが示唆されました。 イベント内訳を見ると、死亡は1.4% vs.1.1%、心筋梗塞は3.7% vs.2.0%、緊急血行再建は3.3% vs.2.5%と、一貫してQFR群での発生率が高い傾向でした。また、本試験の症例の約3分の2が安定狭心症であり、残り3分の1が非ST上昇型急性冠症候群またはST上昇型心筋梗塞の残枝でしたが、サブグループ解析ではいずれの群でもQFR群でイベント発生率が高いという結果でした。 FAME試験やFAME 2試験では、中等度の動脈硬化病変に対してFFRを用いた心筋虚血の評価後にPCIを行うことが有効とされています。しかし、FLOWER-MI試験などで示されたように、心筋梗塞の非責任病変においてFFRによる虚血評価が困難であることが示唆されており、適応疾患によって今回の試験結果が変わる可能性もありましたが、そういうわけではないようです。 また、QFR群では54.5%に治療が行われ、FFR群では45.8%に治療が行われました。治療が施されたことで周術期心筋梗塞のリスクが高まる可能性が懸念されますが、治療の影響を除外した1ヵ月以降のランドマーク解析においても、QFR群でイベントが多い傾向が続いていました。 本研究では残念ながらQFRはFFRより劣性であることが示されましたが、実際のところQFRで治療が行われた症例でイベントが多かったのか、それとも逆にFFRで治療が行われなかった症例でイベントが少なかったのかは興味があるところであり、今後の報告が期待されます。 QFR評価は手動での調整が必要であり、トレーニングを受けた評価者でも観察者間および観察者内の測定誤差が問題となる可能性が指摘されています。まだまだ発展途上の技術と考えられ、ソフトウェアの改善により今後の精度向上が期待されます。さらにはFAST III試験やALL-RISE試験など、同様の試験の結果も待たれます。

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腫瘍循環器学と不易流行【見落とさない!がんの心毒性】第30回(最終回)

連載終了にあたりある日、医療・医学情報サイトCareNet.comの編集者から腫瘍循環器学に関する連載をしませんかという企画をいただきました。そしてその内容はインターネット情報サイトを活用して、腫瘍循環器専門医のみならず一般の循環器医や腫瘍医の先生、メディカルスタッフの皆さんに腫瘍循環器学をわかりやすく理解していただくため、というものでした。この頃は、大阪府立成人病センター循環器内科において腫瘍循環器外来が開始して以来10年が経過した時点であり、日本腫瘍循環器学会が発足したばかりの時期でもありました。タイムリーな企画だなと考え、腫瘍循環器医として第一線で活躍されておられる大倉 裕二先生、草場 仁志先生、志賀 太郎先生をお誘いして本連載を開始することにいたしました。当初は2年間の予定でしたので、最初の1年は総論(第1回~第11回)、その後は症例中心に連載を行うことにいたしました(第12回~第28回)。途中CareNet.com読者の皆さまにアンケートを行う試みも行いました1,2)。症例報告については、当初の4名に加え多くのエキスパートの先生にご参加いただき、実際に先生方がご経験された症例などを元に原稿を作成していただきました。その結果、3年半、合計30回の連載企画になりました。今回は、最終回としてこれまでの3年間を振り返りながら腫瘍循環器学の現在と将来についてまとめさせていただきます。古くて新しいアントラサイクリン系抗がん剤まず取り上げたのは、最も古くから存在する抗がん剤の一つであるアントラサイクリン系抗がん剤でした。1970年代に報告されたアントラサイクリン心筋症こそが、腫瘍循環器領域で最初に報告された心血管合併症(心血管毒性)であり、大倉先生に第2回『見つかる時代から見つける時代へ』で執筆いただきました。それは「アントラサイクリン心不全は3回予防できる」と名言を残した素晴らしい内容でした。循環器医なら全員が知っているはずのアントラサイクリン心筋症ですが、その病態や管理については意外と知られておりません。第15回 化学療法中に心室期外収縮頻発!対応は?第17回 造血幹細胞移植後に心不全を発症した症例第21回 がん化学療法中に発症した肺塞栓症、がん治療医と循環器医が協力して行うべき適切な管理は?さらにアントラサイクリン系抗がん剤と同様に、以前から投与されている殺細胞性抗がん剤について、以下の回で取り上げられました。第22回 フッ化ピリミジン系薬剤投与による胸痛発作症例第25回 膵がん治療中に造影CTで偶然肺塞栓を発見!適切な対応は第26回 増加する化学療法患者-機転の利いた専攻医の検査オーダー第28回 膵がん患者に合併する静脈血栓塞栓症への対応法この古くて新しい抗がん剤については、第17回で取り上げましたように、がん治療が終了した後もがんサバイバーにおける晩期合併症としても大変注目されています。そして、乳がん領域で最も予後が不良であったトリプルネガティブ症例に対する最も新しい治療の一つとしてその有効性が明らかとなっています3)。腫瘍循環器学の始まりは分子標的薬から腫瘍循環器学は2000年になり登場した分子標的薬とそれに伴い出現する心血管毒性が報告されてから急激な発展を遂げています。第3回『HER2阻害薬の心毒性、そのリスク因子や管理は?』で取り上げたHER2阻害薬は、米国・MDアンダーソンがんセンターにおいて世界最初に開設されたOnco-Cardiology Unitのきっかけになったがん治療薬です。当時は副作用が少なく有効性の高い夢のような薬として登場いたしましたが、アントラサイクリンとの併用により高頻度で心毒性が出現(HERA試験)4)したことで、腫瘍循環器領域に注目が集まりました。HER2阻害薬は第3回で解説があるように、その可逆性には二面性があり腫瘍循環器的にも注意が必要な薬剤です。そして、現在最も多く投与されている分子標的薬である血管新生阻害薬について、以下の回で触れています。第4回 VEGFR-TKIの心毒性、注意すべきは治療開始○ヵ月第14回 深掘りしてみよう!ベバシズマブ併用化学療法このほか、第12回、第19回 と本連載でも多く取り上げられています。血管新生阻害薬は高血圧、心不全、血栓症など多くの心血管毒性に注意が必要な薬剤であり、Onco-Hypertension領域におけるがん治療関連高血圧の原因薬剤としても注目されています5)。古くて新しいがん関連血栓症がんと血栓症は、1800年代にトルーソー(Trousseau)らにより「がんと血栓症」が報告されて以来、トルーソー症候群という概念で古くから存在しています。そして現在は血管新生阻害薬などのがん治療薬の進歩に伴い、がん治療に伴う血栓症の頻度が急速に増加してきたことで、がん関連血栓症(CAT:cancer associated thrombosis)という新しい概念が生まれてきました(図1)6)。(図1)画像を拡大する本企画では第8回 がんと血栓症、好発するがん種とリスク因子は?第20回 静脈血栓塞栓症治療中の肺動脈塞栓を伴う右室内腫瘤の治療方針第21回 がん化学療法中に発症した肺塞栓症、がん治療医と循環器医が協力して行うべき適切な管理は?第23回 静脈血栓塞栓症の治療に難渋した肺がんの一例(前編)第24回 静脈血栓塞栓症の治療に難渋した肺がんの一例(後編)第25回 膵がん治療中に造影CTで偶然肺塞栓を発見!適切な対応は第28回 膵がん患者に合併する静脈血栓塞栓症への対応法で、症例クイズとして数多く取り上げています。また、本疾患概念などについては、第9回『不安に感じる心毒性とは?ー読者アンケートの結果から』や第26回『増加する化学療法患者-機転の利いた専攻医の検査オーダー』でも触れられています。そのほかのがん治療古くて新しいがん治療には、放射線療法そしてホルモン療法が挙げられます。第7回『進化する放射線治療に取り残されてる?new RTの心毒性対策とは』、そして第11回『免疫チェックポイント阻害薬、放射線治療の心毒性、どう回避する?』に放射線関連心機能障害(RACD:Radiation Associated Cardiovascular diseases)が取り上げられました。さらに、ホルモン療法は第16回 がん患者に出現した呼吸困難、見落としがちな疾患は?第27回 アンドロゲン遮断療法後に狭心症を発症した症例にて症例提示がなされています。一方、最も新しいがん治療である免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の登場はがん診療にパラダイムシフトを起こしています。ICIに関連した連載は、第5回 免疫チェックポイント阻害薬:“予後に影響大”の心筋炎を防ぐには?第11回 免疫チェックポイント阻害薬、放射線治療の心毒性、どう回避する?第18回 免疫チェックポイント阻害薬の開始後6日目に出現した全身倦怠感第29回 irAE心筋炎の原因の一つに新たな知見が!!と計4回に登場します。また、第6回『新治療が心臓にやさしいとは限らない~Onco-Cardiologyの一路平安~』には、副作用に関するコメントとして、心毒性と腫瘍循環器医が知っておかねばならない副作用情報の読み方がまとめられており、ぜひとも再読してみてください。今後の腫瘍循環器学ニッチな学際領域であった腫瘍循環器学はいまや世界的に多くの研究がなされるようになり、各学会でステートメントやガイドラインが作成されています。本邦では、本連載が始まった後Onco-Cardiologyガイドラインが作成され、現在もトランスレーショナルリサーチや臨床研究がなされており、多くのエビデンスが明らかとなってきています。このような背景の元で、2025年10月に大阪千里ライフサイエンスセンターにおいて第8回日本腫瘍循環器学会学術集会(大会長 向井 幹夫)が開催されます。テーマを「不易流行* がんと循環器:古くて新しい関係」としており、本連載をお読みになられた方にはぜひ学術集会にご参加いただき、一緒に討論いたしましょう。*精選版 日本国語大辞典 第二版より:蕉風俳諧の理念の一つ。新しみを求めてたえず変化する流行性にこそ永遠に変わることのない不易の本質があり、不易と流行とは根元において一つであるとし、それは風雅の誠に根ざすものだとする。芭蕉自身が説いた例は見られないが向井 去来、服部 土芳らの門人たちの俳論において展開された。今回、連載の編集にご協力いただきました3名の先生、そして連載をお願いした腫瘍循環器医の先生方に御礼申し上げます。そして、本連載を読んでいただきました読者の皆さまと共に更なるご発展を祈念いたします。最後にCareNet.com連載について最初から担当いただき、適切なアドバイスをいただきましたケアネット社ならびに担当された土井様に深謝いたします。監修向井 幹夫(大阪がん循環器病予防センター 副所長)編集大倉 裕二(新潟県立がんセンター腫瘍循環器科 部長)草場 仁志(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 腫瘍内科部長)志賀 太郎(がん研究会有明病院腫瘍循環器・循環器内科 部長)向井 幹夫著者大倉 裕二、加藤 浩、北原 康行、草場 仁志、塩山 渉、志賀 太郎、鈴木 崇仁、竹村 弘司、田尻 和子、田中 善宏、田辺 裕子、津端 由佳里、深田 光敬、藤野 晋、向井 幹夫、森山 祥平、吉野 真樹(50音順、敬称略)1)向井幹夫ほか. がん診療医が不安に感じる心毒性ーCareNet.comのアンケート調査よりー. 第5回日本腫瘍循環器学会学術集会.2)志賀太郎ほか. JOCS創設7年目の今、腫瘍医、循環器医、それぞれの意識は〜インターネットを用いた「余命期間と侵襲的循環器治療」に対するアンケート調査結果〜. 第7回日本腫瘍循環器学会学術集会.3)Schmid P, et al. N Engl J Med. 2022;386:556-567.4)Piccart-Gebhart MJ et al. N Engl J Med. 2005;353:1659-1672.5)Minegishi S et al. Hypertension 2023;80:e123-e124.6)Mukai M et al. J Cardiol. 2018;72:89-93.講師紹介

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事例011 狭心症にアピキサバン(エリキュース)錠で査定【斬らレセプト シーズン4】

解説狭心症などの疾患でフォロー中の患者に投与していたアピキサバン(商品名:エリキュース錠)がC事由(医学的理由による不適当)で査定になりました。査定理由を調べるために添付文書を参照しました。効能・効果には、「非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制」、「静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制」と記載されています。今回の事例をみると、レセプトに記載された病名のみでは、全身性塞栓症や深部静脈血栓塞栓を発症しているもしくは発症抑制が必要な状態にあることが読み取れません。したがって、保険適用が認められていない「予防的投与ではないか」とみなされ、C事由を適用されて査定になったものと推測できます。アピキサバンは経口抗凝固薬です。血液検査などにて発症抑制が必要な状態にあって、アピキサバンの錠剤投与が必要と判断された場合、レセプトに原疾患のみならず経口抗凝固薬を必要とする病名が必須となります。査定対策として、レセプトチェックシステムに傷病名の確認を促すように設定を見直しました。

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RCTで重視、効果検証の鍵となるプラセボ手技【臨床留学通信 from Boston】第4回

RCTで重視、効果検証の鍵となるプラセボ手技ボストンは8月下旬よりすでに最低気温が10度を切ることもありましたが、おおむね気候は9月下旬になっても変わらず、最高気温17~25度、最低気温10~13度前後と過ごしやすい季節になっています。10月になるとニューヨークではダウンジャケットも必要な日もあったため、すぐにそういった日が来るのではないかと思います。マサチューセッツ総合病院(MGH)ではランダム化比較試験(RCT)に参加することも多く、今回はそのことについて紹介します。coronary-sinus reducer(CSR)という冠静脈洞の血流を落とすようなステントを置くことで、血行再建もままならない薬物治療抵抗性の狭心症の患者さんに効果が見込めるのかどうかのRCTとなります。英国では「ORBITA-COSMIC試験」という名前でLancet誌に掲載されています1)。このORBITA試験シリーズのRCTは非常にユニークで、PCIが狭心症の症状に効くのかどうかを調べたRCT「ORBITA 2試験」も行われています2)。そもそも狭心症に有効と考えられていたPCIですが、とくに安定狭心症に対しての予後改善効果が乏しいとされ、窮地に立たされているところでした3)。それなら症状はどうか、ということで行われたのがORBITA2試験でした。面白いことに、コントロール群はPCIを受けないのですが、カテーテルは動脈に挿入されて、少し鎮静されて、ヘッドホンを付けて音も聞こえないという状況で、治療したかどうかが患者さんにわからないようになっています。このようなQOLを評価するRCTにおいて、プラセボ手技は循環器領域で重要視されています。今回、ORBITA試験シリーズの米国版RCTを行ううえで、上記のとおり患者さんは眠らされ、ヘッドホンを装着させられ、治療されたかどうかわからないようになっています。そして、手技をする医師と外来でフォローする医師は別になり、外来でフォローする医師は、介入群かコントロール群かまったくどちらかわからない中で症状を評価します。私の患者さんがどちらにあてられたかはさておき、患者さんは「You are making history」と言われてRCTに参加されてきました。日本ではプラセボ手技を念頭に置いてRCTに参加することはなかなかないので、貴重な経験でした。参考1)Foley MJ, et al. Lancet. 2024;403:1543-1553.2)Rajkumar CA, et al. N Engl J Med. 2023;389:2319-2330.3)Maron DJ, et al. N Engl J Med. 2020 Apr ;382:1395-1407.ColumnMGHのような大きな施設にいると、さまざまな研究者が日本から海を渡ってやってきます。なんと驚いたことに、私の大学のテニス部の後輩が2人も同時期にいました。肝移植についての研究をしているそうで、年齢は6つ以上離れているので同時期に大学にいたわけではないのですが、テニスの話はいつになっても盛り上がりました。もう1枚は同僚カテーテル治療フェローとの写真をカテ室で。ニューヨークではレジデントがひと学年に25人、フェローが12人と非常に多くひしめいて、予定もバラバラでした。同僚フェロー達と毎日同じ部屋にいることがなかったのですが、ボストンでのこの1年は同僚たちと毎日同じ部屋にいます。優秀な3人にいろいろと助けられています。

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高齢者NSTEMI治療における標準的治療法確立の難しさを示した研究(解説:野間重孝氏)

 本研究は英国心臓財団の助成によって行われ、結果は本年9月にロンドンで行われた欧州心臓病学会で発表された。その内容はInterventional Cardiology誌9月号に速報のかたちで掲載された。NEJM誌に掲載の論文が同じ9月に掲載されていること、また本文中にSENIOR-RITAという名称が付いても「はじめに」の部分で簡単に触れられているのみで論文の題名からも外されていることから、戸惑われた方も多かったのではないかと推察する。通常、正式発表の論文は学会発表からいくらか遅れるかたちで出版されるのが普通なのであるが、このあたり、研究グループが本研究成果を大きく報じたいと考えた意図がうかがえる。 急性冠症候群はST上昇型心筋梗塞(STEMI)、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)、不安定狭心症に大別される。STEMIの場合は、可能な限り早急なprimary PCIが施行される必要があり、これは超高齢者であっても、大きな禁忌事項がない限り同様の治療方針が取られる。これに対してNSTEMIの治療方針は、年齢に関係なく二通りが考えられ、場合により選択されてきた。早期に造影検査およびインターベンションを行う侵襲的治療戦略と、保存的な治療を優先し急性期の侵襲的治療を回避する初期保存的治療戦略(非侵襲的治療戦略)である。この場合、リスク評価をいかに適切に行うかが重要となるが、近年ではリスク評価うんぬんを論じる以前に、大きな禁忌事項がない限り早期に侵襲的治療を行うべきであるという考え方が一般的となっている。実際、これをお読みの皆さんの関係施設においても、早期の侵襲的対応が可能な施設においては、特別な問題がない限り侵襲的治療が選択されているのではないだろうか。そして、この「特別な問題」として最も頻繁に問題になるのが年齢、それも75歳を超える超高齢の問題なのである。 NSTEMIをどう治療することが適切かについては、多くの研究がなされてきた。しかし、そもそもそういったエビデンスを構築するための研究から高齢者は除外されるのが常だった。このため、高齢者のNSTEMIの治療戦略についてはエビデンスがなく、事実上現場の医師の判断に委ねられてきたのが実態であった。もちろんいくつかの臨床研究はなされたが、どれもサンプル数や患者選択の問題から広く受け入れられる結果を出すには到らなかった。 この問題について初めてまとまった結果を発表したのが、2020年に発表されたSENIOR-NSTEMI試験であった。この研究では超高齢者であったとしても、侵襲的治療戦略のほうが保存的治療戦略よりも優れていると結論された。この論文は2020年8月のLancet誌に掲載され、このジャーナル四天王でも取り上げられたので(「NSTEMI、80歳以上でも侵襲的治療が優位/Lancet」)、ご記憶の向きも多いと思う。ただ、この試験はランダマイズ研究ではなく、日常診療の登録データからプロペンシティ・スコアを用いて解析したものであった。このため、この分野に関心のある医師たちは大規模ランダマイズ研究がなされることを待ち望んでいた。そこに発表されたのが本研究(SENIOR-RITA試験)だったのである。 本研究では患者を完全にランダマイズするとともに、STEMI、不安定狭心症、心原性ショック、余命1年未満の患者、侵襲的冠動脈造影を受けることができないと考えられたもの以外はすべて対象とした。つまり、いわゆる虚弱(フレイル)や認知障害があっても侵襲的検査・治療を受けられないと判断されたもの以外は対象とされた。そして1次複合エンドポイントを心血管死と非致死性心筋梗塞に絞った。これにより、単にランダマイズを行った以上に高齢者NSTEMI治療成績を明確にしようとした。 本試験では1,518例の患者が、侵襲的戦略群753例、非侵襲的治療戦略群765例にランダマイズされたかたちで割り振られた。平均年齢は82歳で、男女比もほぼ等しかった。中央値4.1年の追跡の結果、両群間で1次エンドポイントには差がないことが示された。つまり、NSTEMIの治療は症例の選択を誤ることがなければ、侵襲的、非侵襲的治療戦略で治療成績に差がないことが示された。 本研究はきわめて周到に計画・実行された大規模ランダマイズ試験であり、長年の問題について1つの結論を出したと考えられなくもない。しかし、いくつかの問題点も指摘されなければならないと思う。 上記「症例の選択を誤ることがなければ」と書いたが、この部分が大変に重要で、実際本試験ではスクリーニング対象になった患者の5人に1人だけが登録された。研究の目的から考えてSTEMI、心原性ショックは除外されて当然であるが、この数字からはその他でも多くの患者が高齢者の抱えるさまざまな問題により試験登録が適当ではないと判断されたことが推察される。この中には、高齢による強度の虚弱や認知障害、加えて本人の意向、家族の反対などさまざまな原因が考えられる。実は高齢者のNSTEMI治療において、この患者選択の問題こそが本質的な問題であり、本研究がその点に言及していないのは残念であるとともに、本研究の1つの限界となっていると思う。 また、その後に冠動脈造影や血行再建術を受けた患者数は非侵襲的戦略群で有意に多かった。ただし、この問題は保存的治療を選択した場合、時期を見て侵襲的検査・治療を行うか至適内科治療で経過を見るかという問題で、別途論じられるべき問題だろう。 治療合併症が少なかったことは評価されるべきではあるものの、現在のprimary PCIの技術レベルを考えれば、症例の選択を誤らなければ大きな合併症は起こらないことは当然予想されたと考えるが、合併症の問題は研究の信頼性を高める要因としては評価されなければならないだろう。ただし、ここでも患者選択の問題があることには注意してほしいと思う。 評者の結論を述べるならば、結局今回の研究はNSTEMIをどのように治療すべきかという一般的な問題に、高齢者において個別化医療の重要性を強調したこと、また現在の治療技術レベルにおいては、症例のリスク評価が慎重かつ十分に行われれば、高齢であるというだけの理由で特別な治療方針を考える必要はないことを示したものと考える。一方で、高齢者医療においては極端な虚弱や認知症、合併症のリスク、患者・家族の意向などを十分に考慮する医学的、倫理的視点の重要性が再確認されたといえる。本論文の限界を述べたように思われるかもしれないが、そうではない。さまざまに議論されてきた高齢者NSTEMIの治療を考える場合、保存的治療戦略でも十分な結果が得られることを示したことは十分に価値があると同時に、これだけ周到な準備をしてもこの分野の研究に明解な結論を出すことが困難であることを示したことがむしろ大きな成果であったと思う。

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これでイノカ(INOCA)?これでいいのだ!【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第76回

狭窄や閉塞のない原因不明の胸痛「本当に胸が痛いんです」外来の診察室で患者さんが話します。他病院を受診していたのですが、経過が思わしくなく当方を受診されたようです。「○○病院の循環器内科のお医者さんは、相手にしてくれないんです。本当に痛みがあるのに、心療内科に紹介するというのです。神経質だからとか、不安症だからという訳ではないんです。本当に胸が痛いんです。悔しいやら、情けないやら、先生、助けてください」患者は50歳の女性で、3ヵ月前から始まった胸痛を主訴に来院しました。胸痛は主に運動時に出現し、階段の上り下りや家事中に誘発されるそうです。前胸部に鈍痛として感じられ、締め付けられるような感覚を伴います。痛みは夜間にも現れることがあり、数分から10分程度持続します。全体的に疲れやすく、活動時に息苦しさもあるとの訴えです。○○病院を受診し、初診時の心電図や心エコーでは明らかな異常は認められませんでしたが、狭心症の疑いがあるからとの説明で心臓CT検査を受けました。その結果、冠動脈に狭窄や閉塞はなく大丈夫と言われたそうです。心臓CTを受ける前に、もし冠動脈に詰まりかけている部位があれば、入院してカテーテル治療が必要かもしれないと説明を受けたとのことでした。この時点までの医師の対応は、優しく患者に寄り添い、訴えにも親身に耳を傾けてくれたそうです。ところが、冠動脈に狭窄病変がないと結果が判明したときから、医師の対応が冷たくなり、症状を訴えても相手にしてくれなくなりました。近年注目されるINOCAこの患者さんのように、原因不明とされる胸痛に悩まされている方は、実は多く存在します。注目を集めている病態があります。目視できるサイズの冠動脈に閉塞や狭窄がない狭心症という意味で、虚血性非閉塞性冠疾患(Ischemic Non-obstructive Coronary Artery disease)といい、スペルの頭文字からINOCAと略され、「イノカ」と発音します。高血圧・糖尿病・脂質異常症などの動脈硬化リスクの高い患者では、冠動脈に明らかな閉塞・狭窄がみられます。一方で、動脈硬化リスクが低い患者では冠動脈が正常にみえることから、検査をしても異常なしとされることが多くありました。近年、INOCAを診断するための新しい検査機器が開発され、今まで診断することができなかった原因不明の胸痛に対する確定診断の道筋ができたのです。従来法の冠動脈造影検査が正常であっても、本当は心臓が血流障害のために悲鳴を上げている病態です。詳細は述べませんが、冠攣縮性狭心症や微小血管狭心症の可能性があります。微小血管狭心症とは、肉眼では見えない髪の毛ほどの太さ(100μm以下)の微小な冠動脈の動脈硬化や拡張不全、収縮亢進のために胸痛が生じるのです。この患者さんの場合、専用のカテーテル検査機器と解析ソフトを用いて微小血管の血流や抵抗値を測定し、微小血管狭心症の診断が確定しました。その病態に応じて内服薬を調整し、胸痛から開放されました。難しい症例は共感が薄れる?この例を通じて多くの考えることがありました。診断が難しい、あるいは治療が困難な症例に直面すると、医師は精神的な負担を感じやすくなります。これにより患者に対する対応が冷たくなったり、共感が薄れたりするのです。治療が順調に進み見通しが良い場合に、より共感的に対応することは簡単です。反対に、診断がつかない、治療の見込みがない場合には、距離を置いてしまう傾向があります。紹介した症例で最初に対応した○○病院の循環器内科医を責めている訳ではありません。医師であれば、誰でも思い当たる感情の揺らぎなのです。また「後医は名医」というように、情報が集約された時間的に後から診療する医師のほうが優位な立場にあることは明白です。とはいえ、どのような状況でも心の平静を保ち、フラットに対応できる精神力を維持することの大切さを学んだのでした。自分は、INOCAの症例に出会うたびに自問自答する呪文があります。「これでイノカ?」カンファレンスの場で声に出すと恥ずかしいので、心の中で唱えます。「これでいいのだ!」ご存じのように、バカボンのパパのあまりにも有名な決めセリフです。ザ・昭和のギャグアニメの主人公にして、私も最も敬愛する人物であるバカボンのパパは、バカ田大学を主席で卒業し、定職に就かず「これでいいのだ!」を合い言葉に、日々楽しく自由に生きる男です。美人の妻と、バカボンとはじめちゃんという2人の息子がいます。バカボンのパパの名言を紹介します。「わしはバカボンのパパなのだ。わしはリタイヤしたのだ。すべての心配からリタイヤしたのだ。だからわしは疲れないのだ。どうだ、これでいいのだ。やっぱり、これでいいのだ」バカボンという名前の由来は、サンスクリット語の仏教用語「薄伽梵(ばぎゃぼん)」という言葉という説もあるそうです。「これでいいのだ」は、お釈迦さまの「すべてをありのままに受け容れる」という悟りの境地に到達していることを示す言葉なのです。話が脱線したようですが、患者さんの訴える症状を否定することなく受け容れることが、INOCAの診断の鍵であることは間違いありません。「これでイノカ? やっぱり、これでいいのだ!」

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騒音曝露は心臓の健康に影響を及ぼし心筋梗塞後のMACEリスクを高める

 ドイツとフランスの住民を対象にした2件の研究から、都会の騒音は心臓の健康に悪影響を及ぼす可能性のあることが明らかになった。これらの研究結果は、欧州心臓病学会年次総会(ESC Congress 2024、8月30日~9月2日、英ロンドン)で発表された。 1件目の研究は、ブレーメン心臓血管研究所(ドイツ)のHatim Kerniss氏らが、急性心筋梗塞(MI)によりブレーメン市の心臓センターに入院した50歳以下の患者430人を対象に実施したもの。研究グループが対象者の居住地の騒音レベルを調べたところ、これらの対象者は、同じ地域に居住する一般住民よりも高いレベルの騒音に曝露していることが判明した。また、糖尿病や喫煙などの従来の心血管疾患(CVD)リスク因子に関する評価指標(LIFE-CVD)のスコアから低リスクと判定されるMI患者では、スコアが高い人に比べて騒音レベルが有意に高いことも示された。 Kerniss氏は、「都会の騒音は、CVDのリスク因子として確定している因子が少ない若年層でのMIリスクを有意に増加させる可能性がある」とESCのニュースリリースの中で結論付けている。研究グループは、従来のリスク評価モデルでは、低リスクと考えられる若年層の心血管リスクを過小評価する可能性があると指摘。騒音曝露をモデルに組み込むことで、MIのリスクが高い若年層をより正確に特定でき、予防策や介入をより効果的に行うことができる可能性があるとの見方を示している。 2件目の研究は、ブルゴーニュ大学およびディジョン病院(フランス)のMarianne Zeller氏らが、フランスのMIに関するデータベース(RICO)を用いて、初発のMI後の患者における環境騒音の影響について検討したもの。対象は、急性MIによる入院後28日以上生存していた患者864人で、1年後の追跡調査の結果が分析された。 入院から1年後の時点で、19%の患者に主要心血管イベント(MACE;心臓突然死、心不全による再入院、MIの再発、緊急血行再建、脳卒中、狭心症/不安定狭心症)が生じていた。対象者の自宅の住所を基に騒音レベルを算出すると、平均騒音レベルは24時間を通して56.0dB、夜間で49.0dBと中程度であり、ヨーロッパの大部分の人口を代表する騒音曝露レベルであった。解析の結果、大気汚染や社会経済的レベルなどの他の因子に関わりなく、夜間の騒音レベルが10dB増加するごとにMACEリスクが25%増加することが明らかになった(ハザード比1.25、95%信頼区間1.09〜1.43)。 Zeller氏は、「これらのデータは、騒音曝露がMIの予後に影響を及ぼす可能性に関する初めての洞察となるものだ」と述べている。また同氏は、「より大規模な前向き研究によりこの結果が裏付けられれば、MIから回復した患者に対する治療の一環として、騒音低減に取り組むべきことが支持されるかもしれない」と話している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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心筋梗塞既往の糖尿病患者へのキレーション療法、有効性は?/JAMA

 50歳以上の心筋梗塞既往の糖尿病患者において、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)キレーション療法はプラセボと比較し、血中鉛濃度が有意に低下したが、心血管イベントは減少しなかった。米国・マウントサイナイ医療センターのGervasio A. Lamas氏らが、米国とカナダの88施設で実施した「Trial to Assess Chelation Therapy 2:TACT2試験」の結果を報告した。2013年には、心筋梗塞既往患者1,708例を対象とした「TACT試験」で、EDTAキレーション療法により心血管イベントが18%有意に減少したことが報告されていた。JAMA誌オンライン版2024年8月14日号掲載の報告。主要エンドポイントは全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術、不安定狭心症による入院の複合 研究グループは、登録の少なくとも6週間前に心筋梗塞の既往がある50歳以上の糖尿病患者を、2×2要因デザイン法を用いて、EDTAキレーション療法群とプラセボ点滴静注群(いずれも週1回3時間の点滴静注を計40回)、または高用量マルチビタミン・ミネラル経口投与群とプラセボ経口投与群(1日2回60ヵ月間経口投与)に無作為に割り付けた。本論文ではキレーション療法群とプラセボ点滴静注群の比較について報告されている。 EDTAキレーション溶液は、推定クレアチニンクリアランスに基づきEDTA-二ナトリウム最大3g、ならびにアスコルビン酸、塩化マグネシウム、プロカイン塩酸塩、未分画ヘパリン、塩化カリウム、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)、パントテン酸、チアミン、ピリドキシンおよび注射用水で構成された。 主要エンドポイントは、全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術、不安定狭心症による入院の複合であった。 2016年10月27日~2021年12月31日に、1,000例がキレーション療法群(499例)またはプラセボ群(501例)に無作為に割り付けられた。最終追跡調査日は2023年6月30日であった。追跡期間4年の主要エンドポイント発生、キレーション療法群35.6% vs.プラセボ群35.7% 解析対象は、少なくとも1回試験薬の投与を受けた959例(キレーション療法群483例、プラセボ群476例)で、年齢中央値67歳(四分位範囲:60~72)、女性27%、白人78%、黒人10%、ヒスパニック20%であった。 追跡期間中央値48ヵ月において、主要エンドポイントはキレーション療法群で172例(35.6%)、プラセボ群で170例(35.7%)に発生した(補正後ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.76~1.16、p=0.53)。Kaplan-Meier法による主要エンドポイントの推定5年累積発生率は、キレーション療法群45.8%(95%CI:39.9~51.5)、プラセボ群46.5%(39.7~53.0)であった。 主要エンドポイントの各イベントの発生率も治療群間で差はなかった。心血管死、心筋梗塞または脳卒中のイベントはキレーション療法群で89例(18.4%)、プラセボ群で94例(19.7%)に認められた(補正後HR:0.89、95%CI:0.66~1.19)。全死因死亡は、キレーション療法群で84例(17.4%)、プラセボ群で84例(17.6%)であった(0.96、0.71~1.30)。 血中鉛濃度中央値は、キレーション療法群ではベースラインの9.0μg/Lから、40回が終了した時点で3.5μg/Lに低下し(p<0.001)、プラセボ群ではそれぞれ9.3μg/L、8.7μg/Lであった。 重篤な有害事象は、キレーション療法群で81例(16.8%)、プラセボ群で79例(16.6%)にみられた。

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STEMIの“非”責任病変の治療はいつやる? 今でなくても? そもそもやるべき?(解説:山地杏平氏)

 ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)または高リスク非ST上昇型急性心筋梗塞(NSTEMI)症例において、非責任病変の治療を検討したFULL REVASC試験が発表されました。この試験では、責任病変に対するPCI施行後、入院中にFFRガイド下で非責任病変へのPCIを行う群と、入院期間中は追加のPCIを行わない群に無作為に割り付けられました。その結果、ハザード比は0.93(95%信頼区間:0.74~1.17)で、p=0.53と有意差は認められませんでした。 この結果は、過去の多くの研究とは異なるもので、最近行われた大規模研究であるCOMPLETE試験やFIRE試験では、いずれも責任病変へのPCI後に非責任病変の治療を行ったほうが、イベントリスクを低減するという結果が示されました(表)。 FULL REVASC試験の特徴は、FFRガイドに基づいて非責任病変の治療適応を決定した点にあります。FFRガイド下でのPCIにおけるカットオフ値である0.80は、FAME試験・FAME2試験などにおいて、安定狭心症の患者に対する検討結果から設定されており、0.80以上では治療によるリスク増加、0.75以下では治療によるベネフィットが示されています。急性心筋梗塞における非責任病変のFFR値が慢性期と同等であるとの報告も少数例ながら存在し、急性期のFFR測定に関して大きな問題はないと考えられます。一方で、STEMIやNSTEMIの過半数は、不安定プラークの破裂による発症とされており、そのような症例では非責任病変にも不安定プラークが存在する可能性が高いと考えられます。PREVENT試験で示されたように、不安定プラークが存在する可能性が高い症例では、心筋虚血の有無ではなく、不安定プラークの有無に基づいて治療適応を検討することが望ましいのかもしれません。 一方で、STEMIやNSTEMIといった高リスク症例において、不安定プラークを伴う非責任病変が認められた場合、その治療をいつ行うべきかという問題があります。この点に関しても、さまざまな臨床試験が実施されています。多くの研究では、時間を分けて治療するよりも、急性期のPCIと同時に非責任病変を治療したほうが良好な結果が得られることが示されています。 しかし、ここで注意が必要なのは、主に差が見られたのは緊急での血行再建に関するものであり、試験の性質上ブラインド化が困難であった点です。非責任病変が存在するにもかかわらず、研究のプロトコルに従って治療を待機することは、患者や医師にとって行いにくかった可能性があります。 急性心筋梗塞の急性期に行うPCIは、安定狭心症に対するPCIと比較して、死亡、血栓症、出血といった合併症のリスクが高くなるため、非責任病変の治療を同時に行う場合は十分な注意が必要です。とくに、CULPRIT-SHOCK試験が示したように、血行動態が不安定な症例では、責任病変の治療のみとし、ショックや心不全の管理を優先したほうがよいかもしれません。

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将来のイベント予防のためにPCIを行う余地はあるのか?(解説:山地杏平氏)

 FAME研究において、部分冠血流予備量比(FFR)が0.80以上で虚血陰性と判断された病変では、経皮的冠動脈形成術(PCI)を行わないほうが、イベントが少ないことが示されました。一方で、FFRが0.80以上であり、侵襲的な治療を行わなかった病変においても、一定の頻度で進行による再血行再建や急性冠症候群の発症が見られることがあります。 PREVENT試験では、PCIの適応とならないFFRが0.80以上の中等度狭窄病変において、血管内イメージングを用いて不安定プラークが存在した場合に、PCIが最適な内科治療(OMT)と比較して予後を改善するかどうかを無作為比較されました。 2年間の追跡時点での心臓死、心筋梗塞、再血行再建術、不安定狭心症による入院が主要エンドポイントとして設定され、PCI群で3例(0.4%)、OMT群で27例(3.4%)と有意に差を認めました。OMT群でのイベントの内訳は、心臓死6例、心筋梗塞13例、再血行再建術29例、不安定狭心症による入院12例であり、一般的な臨床研究におけるイベントと同等のものであり、とくに偏ったものではなかったようです。 不安定プラークの定義は、PROSPECT研究やLRP研究などの過去の研究に基づいて設定されており、血管内超音波(IVUS)、Virtual Histology IVUS(VH-IVUS)、光干渉断層撮影(OCT)、Near infrared spectroscopy IVUS(NIRS-IVUS)のいずれかを用いて、定義された基準のうち2つを満たすものとされました。実際には、97%の症例でminimal lumen areaが4.0mm2未満かつplaque burdenが70%以上を満たしたため、不安定プラークと判定されています。一方で、VH-IVUSは71%、NIRS-IVUSは42%で使用されましたが、それぞれのモダリティで不安定プラークと診断された症例は、わずかに6%および27%程度であったことから、組織学的なプラーク診断はあまりインパクトがなかった可能性があります。さらに、空間分解能に優れるOCTはわずか5%しか使用されていませんでした。 ベアメタルステント時代に、プラークシーリングという概念がありました。将来のイベントを予防するために、ステントでカバーできないかということが検討されましたが、そもそも再狭窄率が1年で20%近かったこともあり、プラークをそのままとしたほうが、イベント発生率がはるかに少なかったため、実現しませんでした。最新のステントやBRSのようなスキャフォールドではイベント発生率が低かったことで、本研究のように“予防的な”PCIが可能になったのかもしれません。 本研究では、FFRが0.80以上であっても、プラークが大きく、内腔径が小さい場合はPCIを行ったほうがよい可能性が示唆されました。しかし、プラークの組織学的な評価が行われたわけではなく、さらなる検討が必要と考えられます。

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スタチンにEPA併用、日本人の心血管イベント再発予防効果は?/Circulation

 スタチン治療を受けている慢性冠動脈疾患の日本人患者で、エイコサペンタエン酸/アラキドン酸(EPA/AA)比の低い患者において、高純度EPAのイコサペント酸エチルによる心血管イベント再発予防の可能性を検討したRESPECT-EPA試験で、心血管イベントリスクは数値的には減少したが統計学的有意差は認められなかった。一方、冠動脈イベントの複合は有意に減少した。順天堂大学の宮内 克己氏らがCirculation誌オンライン版2024年6月14日号で報告。 本試験はわが国の前向き多施設共同無作為化非盲検試験である。スタチン投与中の慢性冠動脈疾患でEPA/AA比が低い(0.4未満)患者を、通常治療による対照群とイコサペント酸エチル(1,800mg/日)を併用するEPA群に割り付けた。主要エンドポイントは、心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳梗塞・不安定狭心症・冠血行再建術の複合とした。冠動脈イベントの副次複合エンドポイントは、心臓突然死・致死性および非致死性心筋梗塞・緊急入院を要し冠血行再建術を必要とした不安定狭心症・臨床所見に基づく冠血行再建術の複合とした。 主な結果は以下のとおり。・国内95施設で3,884例が登録され、うち2,506例がEPA/AA比が低く、1,249例がEPA群、1,257例が対照群に無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値5年で、主要エンドポイントはEPA群では1,225例中112例(9.1%)、対照群では1,235例中155例(12.6%)に発生した(ハザード比[HR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.62~1.00、p=0.055)。・冠動脈イベントの複合は、EPA群で有意に少なかった(6.6% vs.9.7%、HR:0.73、95%CI:0.55~0.97)。・有害事象に差はなかったが、心房細動の新規発症がEPA群で有意に高かった(3.1% vs.1.6%、p=0.017)。 著者らは「これらの結果を総合すると、スタチン治療を受けている慢性冠動脈疾患でEPA/AA比の低い患者において、イコサペント酸エチルが将来のイベントを軽減するという臨床的意義を有する可能性が示唆される」としている。

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脳梗塞患者、血管イベント再発予防に長期コルヒチンは有益か/Lancet

 非心原性脳塞栓症患者の血管イベントの再発予防のための長期コルヒチン投与の有効性と安全性を評価した無作為化試験「CONVINCE試験」において、統計学的に有意な有益性は示されなかったことを、アイルランド・ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンのPeter Kelly氏らが報告した。長期コルヒチンによる抗炎症療法は、冠動脈疾患における血管イベントの再発を予防することが示されている。研究グループは今回、一般的に動脈硬化によって引き起こされる冠動脈疾患とは異なり、多様なメカニズムによって引き起こされる虚血性脳卒中後の再発予防についても長期コルヒチンは有効であるとの仮説を立て検証した。試験の結果では再発予防に関する有益性は認められなかったが、ベースラインで同程度であったCRP値が28日時点で投与群において有意に低下したことが認められた。著者は、「抗炎症療法についてさらなる無作為化試験を行うことを支持する新たなエビデンスが論拠として示された」と述べている。Lancet誌オンライン版2024年6月7日号掲載の報告。長期コルヒチン+通常ケアvs.通常ケア単独 CONVINCE試験は無作為化並行群間非盲検エンドポイント盲検化にて、長期コルヒチン(1日1回0.5mgを経口投与)+ガイドラインベースの通常ケアと通常ケア単独を比較した。被験者は、非重症の非心原性虚血性脳卒中またはハイリスク一過性脳虚血発作(TIA)の入院患者を適格とした。 主要エンドポイントは、初回再発の致死的または非致死的虚血性脳卒中、心筋梗塞、心停止または不安定狭心症による入院(入院ユニットへの収容または救急外来受診により少なくとも24時間滞在[入院または退院の時間が不明な場合は暦日の変更]した場合と定義)の複合とした。有意性のp値は0.048であった。データモニタリング委員会が2つの事前に決められた中間解析で調整したものであり、運営委員会と治験担当医師は盲検化されたままであった。統計学的有意差は認められず、一方で抗炎症の新たな知見を確認 2016年12月19日~2022年11月21日に3,154例が無作為化された。最終フォローアップは2024年1月31日。COVID-19パンデミックのため予算が制約を受け、当初予想していたアウトカム数(計画では367件)が得られる前に試験は終了した。 10例がデータ解析への同意を取り下げたため、ITT解析集団は残る3,144例(コルヒチン+通常ケア群1,569例、通常ケア単独群1,575例)で構成された。 主要エンドポイントは338例で発生した。内訳は、コルヒチン+通常ケア群153/1,569例(9.8%)、通常ケア単独群185/1,575例(11.7%)であった(発生率は100人年当たり3.32 vs.3.92、ハザード比[HR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.68~1.05、p=0.12)。 ベースラインではCRP値について両群間に差はみられなかったが(両群とも中央値3mg/L)、28日時点で低下し、コルヒチン+通常ケア群のほうが通常ケア単独群よりも有意に大きく低下した(p=0.0007)。さらに、1年時点(p=0.0005)、2年時点(p=0.0002)、3年時点(p=0.02)でも同様に有意差が認められた。 重篤な有害事象の発現は両群で同程度であった。

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うつ病と心血管疾患発症の関連、女性でより顕著

 日本人400万人以上のデータを用いて、うつ病と心血管疾患(CVD)の関連を男女別に検討する研究が行われた。その結果、男女とも、うつ病の既往はCVD発症と有意に関連し、この関連は女性の方が強いことが明らかとなった。東京大学医学部附属病院循環器内科の金子英弘氏らによる研究であり、「JACC: Asia」2024年4月号に掲載された。 うつ病は、心筋梗塞、狭心症、脳卒中などのCVD発症リスク上昇と関連することが示されている。うつ病がCVD発症に及ぼす影響について、性別による違いを調べる研究はこれまでにも行われているものの、その明確なエビデンスは得られていない。 そこで著者らは、日本の外来・入院医療のレセプト情報データベース(JMDC Claims Database)より、2005年1月~2022年5月における健診データが利用でき、18~75歳の人のうちCVDや腎不全の既往のある人などを除いた412万5,720人(年齢中央値44歳、男性57%)を対象とする後方視的コホート研究を行った。初回健診以前にうつ病と診断されていた人を、うつ病の既往ありと定義した。CVDには心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、心房細動を含め、これらの複合を主要評価項目として男女別に解析した。 対象者のうち、うつ病の既往のあった人は男性が9万9,739人(4.2%)、女性が7万8,358人(4.5%)だった。平均追跡期間1,288±1,001日(最短1日~最長5,534日)において、CVDは男性で11万9,084件(1万人年当たり発症率140.1)、女性で6万1,797件(同111.0)発症した。 うつ病とCVD発症との関連について、年齢、BMI、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、飲酒、運動不足の影響を統計学的に調整して解析した結果、うつ病の既往のCVD発症に対するハザード比は、男性で1.39(95%信頼区間1.35~1.42)、女性では1.64(同1.59~1.70)であり、男女ともに有意な関連が認められた。この関連には性別の影響が認められ、女性の方が男性と比べて関連が強いことが明らかとなった(交互作用P<0.001)。また、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、心房細動のそれぞれとうつ病との関連、および性別の影響を解析した場合も、同様の結果が得られた(全て交互作用P<0.05)。 さらに、サブグループ解析として50歳以上と50歳未満に分けて検討した結果と、肥満の有無で分けて検討した結果のいずれにおいても、うつ病の既往とCVD発症との関連は、女性の方が強いことが明らかとなった。また、複数の感度分析を行った結果も一貫していた。 今回の研究により、うつ病とその後のCVD発症の関連は、女性の方がより顕著であることが示された。著者らは、考えられるメカニズムの一つとして、妊娠や閉経など、ホルモンが変化する重要な時期にうつ病を経験しやすいため、女性では心血管系への影響がより大きくなる可能性があると説明。一方で、男女差が生じるメカニズムの完全な解明には、さらなる研究が必要だとしている。著者らは、「うつ病とCVDの関連についての性差をよりよく理解し、うつ病の男性と女性のそれぞれに最適なケアを提供することで、心血管系の健康につながる可能性がある」と述べている。

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50年代のすでに廃れた治療法に、もう一度光が当たるのか?(解説:野間重孝氏)

 冠状静脈洞減圧術(Coronary Sinus Decompression:CSD)という名称で呼ばれる処置は、奇しくも1950年代のほぼ同時期に、まったく異なった2つの分野で開発された。1つはこの論文の研究対象となっている冠動脈疾患治療目的のCSDであり、もう1つは先天性心疾患の治療目的で開発されたCSDである。混乱を避ける意味でも、まず後者について簡単に解説した後、本題に入りたいと思う。 先天性心疾患治療目的のCSDは冠静脈洞の形態異常や機能障害を有する患者の治療目的で開発されたもので、冠静脈洞型心房中隔欠損症、冠静脈洞閉鎖、冠静脈洞狭窄などを対象としており、そもそもは冠静脈洞型心房中隔欠損症を対象として開発された。もちろん開胸手術であり、当時、施行には高度なテクニックが必要であった。後に、より安全に施行できるデバイスの開発がなされ現在でもまだ行われているが、冠静脈洞型心房中隔欠損症そのものがきわめてまれな疾患のため、一部の専門の方を除いてはおそらくご存じでない方が多いのではないかと推察する。ここでは、とにかく今回の論文の内容とこの先天性心疾患治療手技は、名前は同じでもまったく別のものである点にのみご注意いただければ十分である。 さて、そこで問題の冠動脈疾患治療目的のCSDである。すでにおわかりのとおり、1950年代には経皮的冠動脈形成術はもちろん、バイパス手術も存在しなかった。その代わりに画期的な治療法として注目されていたのが、当時新しく開発されたCSDだった。具体的には開胸の後、冠静脈を露出させ、拡張術や冠静脈洞にバイパス手術が行われた。この治療法のメカニズムについてはいろいろと議論がなされるが、基本的にはわかりやすいもので、血液は高圧領域(つまり動脈領域)から低圧領域(つまり静脈領域)に流れるのだから、両領域の圧格差を大きくし、さらに静脈血をすばやく取り除くことで流れをよくすれば、より多くの血液が流れるであろうというものである。よく心筋灌流再分布であるとか冠微小循環の改善などを挙げる人がいるが、50年代にそのような概念はまだ確立されてはいなかった。 当時の研究法は現在とは違い厳密な統計学を用いた方法ではなかったから、その結果の解釈には一定の限界があるが、胸痛の改善、運動能力の向上、左室機能の改善、死亡率の低下などの利点が数多く報告された一方、当然のことながらプラセボ効果の可能性、研究・評価方法の欠陥、長期的な効果の検証不足などが指摘され、結局決着がつかないまま次の時代に移行していった。つまり、冠動脈バイパスなどの直接的な治療法の時代が訪れたのである。私たち研究者がよくよく反省しなければならない点をあえて挙げると、時代が変わると前の時代に問題になっていたことの究明から驚くほど急速に関心が遠のくことである。これは肺性心のメカニズムが現代に至るまで謎に包まれていることでも理解できるのではないかと思う。CSDの真の効果、メカニズムが解明されないまま次の時代に移行してしまったことが、本論文の解釈にも大きな影響を与えているのである。 今回の研究は冠静脈洞減圧デバイス(CSR)を難治性狭心症患者に経皮的に埋め込み、症状改善効果をRCTにより検証することだった。主要評価項目はアデノシン負荷MRIによる虚血面積減少量、運動耐容量、生活の質であった。重要な点は、CSRというデバイスの開発によって、心臓カテーテル手技に習熟した医師ならば特別なリスクを見込むことなく、経静脈的にデバイスの留置が可能になったという点である。結果は、CSR埋め込み群とプラセボ群で冠動脈血流量に差は見られなかったが、一方CSR群ではプラセボ群に比して日常の狭心症頻度が減少するという、矛盾したとも取れるものとなった。 まず、読者の中にはこの試験デザインに疑問を持った方が多かったのではないだろうか。というのは、研究対象が「従来の治療法である冠動脈バイパスやPCIで十分な症状改善が得られない重症冠動脈疾患患者」となっているからである。しかし、その一方で試験ではトレッドミル負荷なども行われているのである。トレッドミル負荷の対象になる冠動脈疾患患者が、果たして「きわめて重症な冠動脈疾患患者」といえるのかという問題である。しかし、ここは研究者たちの意見に耳を傾ける必要があるようだ。 彼らが今回対象とした患者は、・冠動脈疾患の診断を受けていること。・少なくとも2回の冠動脈バイパス術またはPCIを受けていること。・週に少なくとも1回は狭心症状を経験していること。・運動負荷試験で有意な狭心症を認めること。 とある。 つまり、現在有効といわれている治療法では狭心症状を改善することができない患者を「重症冠動脈患者」と呼んだということである。たとえば左冠動脈主幹部の90%狭窄は重症冠動脈疾患に決まっている。しかし、ほかに狭窄がなければバイパス1本で症状は軽快し、生命予後は確実に延長する。しかしそうした網の目から漏れてしまう難治性の狭心症患者がおり、それを彼らは「重症冠動脈疾患患者」と呼んだのである。これは冠動脈疾患を単に虚血領域の広さや狭窄の重症度とは別の尺度として受け入れられてよいものではないか、と評者は考えるものである。しかし、冠血流の実際の改善が認められない中での症状の軽快のメカニズムが明らかにならないことには、明確な評価を下すことは難しいのではないだろうか。また、長期フォローの結果も示されなければならないだろう。 現段階で評者は本論文を是とも非とも判断しかねるが、冠動脈疾患にはまだわれわれが知らない何かが潜んでいる可能性については考えを巡らせているところである。ただし、このような補助療法の有効性が認められたとしても、現在行われている機械的な血行再建術に取って代わるものではないことは断言しておかざるを得ないだろう。

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緑内障は「幸福と感じていない」ことと関連、特に男性で顕著

 国内7県の地域住民を対象とした研究で、自己申告による緑内障の既往歴がある人は、主観的に「幸福と感じていない」割合が高いという結果が示された。この緑内障で幸福と感じていない割合が高い傾向は、特に40~59歳の男性で顕著だったという。これは慶應義塾大学医学部眼科学教室と国立がん研究センターなどとの共同研究による結果であり、「BMJ Open Ophthalmology」に2月19日掲載された。 これまでの研究で、ドライアイや老眼と幸福度の低さとの関連が報告されている。緑内障は、眼圧(目の硬さ)が高い状態が続くことなどにより視神経が障害され、徐々に視野の障害が広がる病気だ。緑内障患者は、テレビの視聴や読書などの楽しみが減少し、転倒リスクが高まるなど、日常生活に悪影響を及ぼし、視覚関連QOLが大きく損なわれる可能性がある。 そこで著者らは、2011~2016年に開始された次世代多目的コホート研究「JPHC-NEXT」のデータを用いて、自己申告による緑内障の既往歴と幸福度との関連を解析した。対象は、国内7県(岩手、秋田、長野、茨城、高知、愛媛、長崎)の計16市町村の地域住民(40〜74歳)のうち、がん、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、糖尿病、うつ病の既往歴のある人などを除外した、計9万2,397人。質問紙により緑内障の既往歴(医師の診断)を調べた。全体的に幸せな状態かどうかの質問に関する4つの選択肢(幸せでない、どちらとも言えない、幸せ、大変幸せ)のうち、「幸せでない」または「どちらとも言えない」と回答した人を「幸福と感じていない」とした。 その結果、緑内障の既往歴のある人は1,733人(1.9%)であり、男性が635人(1.6%)、女性が1,098人(2.1%)だった。緑内障の既往歴がある人は、緑内障の既往歴がない人と比べて年齢が有意に高かった(平均63.0±8.3対57.5±9.6歳)。 年齢のほか、地域、教育レベル、世帯収入、喫煙、飲酒量、身体活動の差を調整した上で、男性における「幸福と感じていない」のオッズを解析した結果、緑内障の既往歴がある人の方が、緑内障の既往歴がない人よりも有意に高かった(オッズ比1.26、95%信頼区間1.05~1.51)。女性でも、「幸福と感じていない」割合と緑内障の既往歴が関連する傾向にあったが、関連は有意ではなかった(同1.05、0.90~1.23)。 さらに、年齢層を分けて解析すると、「幸福と感じていない」割合と緑内障の既往歴との関連が最も強かったのは40〜59歳の男性であることが明らかとなった(同1.40、1.04~1.88)。一方、60〜74歳の男性(同1.20、0.96~1.51)、40〜59歳の女性(同1.21、0.92~1.59)、60〜74歳の女性(同0.99、0.83~1.20)では、有意な関連は認められなかった。 以上から著者らは、「特に男性において、緑内障の既往歴は幸福と感じていない割合と関連する」と結論。性別や年齢層で差があったことの背景として、社会的に求められる役割や雇用状況、視野の障害による仕事への支障などの可能性を挙げている。また、緑内障は日本の中途失明の原因として最も多い病気だが、「診断と治療を早い段階で行えば、進行速度を遅らせ、機能障害を最小限に抑えることができる」と述べている。

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洗脳事件の謎解き【Dr. 中島の 新・徒然草】(527)

五百二十七の段 洗脳事件の謎解き今年はいつもより暑いですね。そろそろ熱中症の患者さんが運ばれてくる時期になりました。何と言っても、自分自身が熱中症にならないよう気を付けなくてはなりません。さて、先日は私が卒業した兵庫県立神戸高等学校の同窓会がありました。われわれの学年は29回生なので、大抵が4月29日の昭和の日にあります。6年前の前回が「まさかの還暦同窓会」というタイトルでしたが、今回は「前期高齢者突入記念同窓会」と名付けられていました。久しぶりに集まった200人だか300人だか。高校時代と変わらぬ顔の人もいれば、言われてもわからないほど変化している人もいます。前期高齢者が揃ったら盛り上がるのは病気談義。心筋梗塞、脳梗塞、労作性狭心症、直腸がん、転移性脳腫瘍と病気のオンパレードです。もはや高血圧や糖尿病などはデフォ扱い。皆にコメントを求められる立場なので、適当に答えておきました。逆に私に対して医学的アドバイスをしてくる人もいましたが、上手に相槌を打つことができたのは日頃の外来修業のおかげかもしれません。さて、面白かったのは小学校、中学校、高等学校と12年間同じ学校に通いながら、初対面としか思えない人がいたことです。普通はどこかに接点がありそうなのですが。本当に知らない顔だったので、仮に彼女の名前を白内 佳織(しらない・かおり)さんとでもしておきましょう。果たして1回もクラスが一緒にならなかったのでしょうか?中島「じゃあちょっと確認してみよう。小学校1年生の時の担任は春山先生」白内「私は夏川先生だから別のクラスね」中島「2年生の時は秋原先生という女の先生だったけど、途中から産休になってピンチヒッターで来たのが誰だったかな」白内「冬谷先生よ。だったら一緒の担任じゃない!」なんと彼女とは私と同じクラスだったことがあるみたいです。それでも思い出せません。中島「3年生は東山先生だけど」白内「私も東山先生よ!」中島「あれえ、同じクラスだったかな?」この調子で12年間を振り返ると、なんと小学校で3回、中学校で1回、同じクラスになっていたことがわかりました。それでも何も思い出さないのです。で、ここからが本番!中島「じゃあ、小学校3年生の時のあの洗脳事件を覚えているか?」白内「もちろんよ、放課後にクラス全員が学級委員長に言われて、教室に残されたやつでしょ!」中島「あれは衝撃やったなあ」白内「人にしゃべってはいけないと思ったから、今まで黙っていたけど……」中島「僕もや。人に言っても信じてもらえなさそうやし」事件といっても、誰かが死んだとか誘拐されたとかいうようなシリアスな話ではありません。席に立たされて学級委員長に言われるがままクラスメートを罵倒したり、それができなくて泣き出したり……今になってみれば「あれは何だったんだ?」としか思えないのですが、当時の小学校3年生にとっては十分に大事件でした。ようやくあの事件を語り合うことのできる相手に出会うことができたわけです。実際に事件の内容を話してみると、彼女と私の記憶はピタリと一致しました。中島「やっぱり同じ時に同じ教室にいたのか。ようやく確信できたぞ!」白内「私は習い事があったから、委員長を突き飛ばして先に帰ったのよ。あの後、どうなったの?」中島「僕はなかなか洗脳が解けなくて、ずっといたけどな」ここに至ってようやく親しみを感じた次第です。もちろん同窓会のことなので、他にも大勢の人と世間話をしました。でも、高校時代の記憶がいろいろとよみがえってきたのは翌日になってから。「あの時あんなことがあったけど覚えているか?」みたいな話をもっとできたら良かったのですが。次の同窓会は、おそらく古希になってから。できれば元気に出席したいものです。ということで最後に1句昭和の日 答え合わせの 同窓会

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約90%の心血管疾患患者はナトリウムを摂取し過ぎ

 心血管疾患の治療にはナトリウムの摂取を控えることが重要であるが、ほとんどの心血管疾患患者は摂取量を制限できていないようだ。新たな研究で、心血管疾患患者は概して、推奨されている1日当たりのナトリウム摂取量の2倍以上を摂取していることが明らかになった。ナトリウムは、人間の健康に不可欠ではあるが、過剰摂取は血圧を上昇させ、血管にダメージを与え、心臓の働きを悪くする上に、体液の貯留を引き起こして心不全などの症状を悪化させ得ると研究グループは指摘している。米Piedmont Athens Regional病院のElsie Kodjoe氏らによるこの研究結果は、米国心臓病学会(ACC 24、4月6〜8日、米アトランタ)で発表された。 米国の食事ガイドラインでは、心血管疾患患者ではナトリウムの摂取量を1日1,500mg(食塩相当量3.81g)に、健康な人でもナトリウム摂取量を1日2,300mg(食塩相当量5.84g)未満に制限することを推奨している。 この研究では、2009年から2018年の間に国民健康栄養調査(NHANES)に参加した、心血管疾患(脳卒中、心筋梗塞、心不全、冠動脈疾患、狭心症)患者3,170人の食事データの分析が行われた。対象者は24時間の間に摂取した全てのものを報告していた。 その結果、対象者の89%が1日当たりの推奨量を上回る、1日当たり平均3,096mgのナトリウムを摂取しており、この値は、米疾病対策センター(CDC)が以前に報告した全国の平均摂取量(3,400mg/日)をわずかに下回るに過ぎなかった。収入-貧困比(IPR)の増加は1日当たり46mgのナトリウム摂取量の増加と有意に関連していたが、この関連は年齢、性別、人種、教育レベルで調整すると有意ではなくなった。 これらの結果についてKodjoe氏は、「心血管疾患患者の摂取量と全国平均との間でナトリウム摂取量の差が比較的小さかった。このことは、心血管疾患患者は一般の人と比べて摂取量を積極的に制限しているわけではないこと、また、心血管疾患患者に対して推奨されている摂取量の2倍以上を摂取していることを示唆している」と話している。 Kodjoe氏は、「スーパーマーケットで売られている食品やテイクアウトの食事に含まれるナトリウム量を推定するのは困難だ」と指摘する。さらに同氏は、「ナトリウム量を示す食品ラベルは、その量を推測する助けにはなる。しかし、低ナトリウム食の遵守は、遵守に対する強い動機があるはずの心血管疾患患者にとってさえも極めて困難だ」と話す。そして、「心血管疾患患者が食事療法のガイドラインを守りやすくするためには、一般の人々が食事中のナトリウムの量を推定できるような、より実用的な方法を見つける必要がある」と主張している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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不安定プラーク、至適薬物療法+予防的PCI追加で予後改善/Lancet

 冠動脈に血流を阻害しない不安定プラークを有する患者において、予防的経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の追加は至適薬物療法のみと比較し、高リスクの不安定プラークに起因する主要有害心血管イベントが減少したことを、韓国・蔚山大学のSeung-Jung Park氏らが、韓国、日本、台湾およびニュージーランドの計15施設で実施した医師主導の無作為化非盲検比較試験「PREVENT試験」の結果を報告した。著者は、「PREVENT試験は不安定プラークに対する局所治療の効果を示した最初の大規模臨床試験であり、今回の知見はPCIの適応を、血流を阻害しない高リスクの不安定プラークに拡大することを支持するものである」とまとめている。急性冠症候群や心臓死は不安定プラークの破裂および血栓症によって引き起こされることが多く、その多くは冠血流を阻害しない。不安定プラークに対するPCIによる予防的治療の安全性と心臓有害事象の減少に対する有効性は不明であった。Lancet誌オンライン版2024年4月8日号掲載の報告。狭窄率>50%、FFR>0.80の不安定プラークを有する患者が対象 研究グループは、心臓カテーテル検査を受けた18歳以上の安定冠動脈疾患または急性冠症候群の患者のうち、造影上の狭窄率>50%、冠血流予備量比(FFR)>0.80の病変を有し不安定プラークが確認された患者を対象とした。Webシステム(置換ブロック法、ブロックサイズ4または6)により糖尿病の有無および非標的血管への同時PCIの有無で層別化し、PCI+至適薬物療法群(PCI併用群)または至適薬物療法単独群(薬物療法群)に1対1の割合で無作為に割り付け、最後の登録患者が無作為化後2年に達するまで毎年追跡調査を行った。 不安定プラークは、(1)最小内腔面積<4.0mm2、(2)プラーク負荷>70%(血管内超音波検査)、(3)脂質に富むプラーク(近赤外分光法、4mm以内の最大脂質コア負荷指数が>315)、(4)TCFA(thin-cap fibroatheroma)(高周波血管内超音波検査または光干渉断層法)の4つの特徴のうち2つ以上を満たすプラークと定義された。 主要アウトカムは、2年間の心臓死・標的血管の心筋梗塞・虚血による標的血管血行再建術・不安定狭心症または進行性狭心症による入院の複合とした。ITT集団で評価し、初発までの期間はKaplan-Meier法で算出し、log-rank検定で比較した。PCI併用群で薬物療法群より2年複合イベントが有意に減少 2015年9月23日~2021年9月29日に、5,627例がスクリーニングされ、適格基準を満たした1,606例がPCI併用群(803例)または薬物療法群(803例)に無作為化された。1,177例(73%)が男性、429例(27%)が女性で、1,556例(97%)が2年間の追跡を完了した(PCI併用群780例、薬物療法群776例)。 主要アウトカムの2年複合イベントは、PCI併用群で3例(0.4%)、薬物療法群で27例(3.4%)に発生し、絶対群間差は-3.0%(95%信頼区間[CI]:-4.4~-1.8、p=0.0003)であった。予防的PCIの効果は、主要アウトカムの各要素において一貫していた。 重篤な臨床的有害事象は、PCI併用群と薬物療法群で差はなかった。2年以内の死亡は4例(0.5%)vs.10例(1.3%)であり(絶対群間差:-0.8%、95%CI:-1.7~0.2)、心筋梗塞は9例(1.1%)vs.13例(1.7%)であった(-0.5%、95%CI:-1.7~0.6)。

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難治性狭心症、冠静脈洞へのデバイス留置で症状改善/Lancet

 冠静脈洞狭窄デバイス(coronary-sinus reducer:CSR)は、狭心症患者の心筋血流を改善しなかったが、狭心症エピソード数を減少した。英国・Imperial College Healthcare NHS TrustのMichael J. Foley氏らが、英国の6施設で実施した医師主導の無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ORBITA-COSMIC試験」の結果を報告した。CSRは、心筋血流を改善することにより、安定冠動脈疾患患者の狭心症を軽減することが示唆されていた。著者は、「今回の結果は、CSRが安定冠動脈疾患患者に対するさらなる抗狭心症治療の選択肢となりうるエビデンスを提供するものである」としている。Lancet誌2024年4月20日号掲載の報告。処置後6ヵ月間追跡、心筋血流と狭心症エピソード数を比較 研究グループは、抗狭心症治療(薬物療法、経皮的冠動脈インターベンション、冠動脈バイパス術など)のさらなる選択肢がない、18歳以上の狭心症、心外膜冠動脈疾患、虚血を有する患者を登録し、心臓MRによる定量的な心筋灌流マッピング(アデノシン負荷時および安静時)、症状およびQOLに関する質問(シアトル狭心症質問票、EQ-5D-5Lなど)、トレッドミル運動負荷試験を行った。その後、2週間の症状評価期にスマートフォンの専用アプリ(ORBITA-app)を用いた症状報告を完遂した患者を、CSR群と対照群に1対1の割合に無作為に割り付け追跡評価した。 二重盲検下で、CSR群ではCSR(商品名:Neovasc Reducer、Shockwave Medical)の植込み術を行い、対照群では患者に少なくとも15分間(CSRの植込みに要するおおよその時間)心臓カテーテルの検査台の上で鎮静状態を保持させた。処置後は、6ヵ月間の二重盲検下追跡調査期に、ORBITA-appで患者に日々の症状を報告してもらった。 主要アウトカムは、登録時にアデノシン負荷灌流心臓MRスキャンで虚血と判定されたセグメントにおける心筋血流、症状の主要アウトカムは1日の狭心症エピソード数とし、ITT解析を行った。CSR群で狭心症エピソード数が減少 2021年5月26日~2023年6月28日に447例がスクリーニングされ、61例が登録された。このうち51例(男性44例[86%]、女性7例[14%])がCSR群(25例)およびプラセボ群(26例)に無作為化され、CSR群の1例(無作為化手順の途中でデバイス塞栓事象が発現し適切な管理のため盲検を解除)を除く50例がITT解析に組み入れられた。 登録時の虚血セグメントは、画像化された800セグメント中454セグメント(57%)で、虚血セグメントにおける負荷心筋血流量の中央値は1.08mL/分/g(四分位範囲[IQR]:0.77~1.41)であった。 虚血セグメントにおいて、対照群と比較しCSR群で心筋血流量の改善は示されなかった(群間差:0.06mL/分/g、95%信用区間[CrI]:-0.09~0.20]、有益性の確率:78.8%)。一方、報告された1日の狭心症エピソード数は、対照群と比較してCSR群で減少した(オッズ比:1.40、95%CrI:1.08~1.83、有益性の確率:99.4%)。 安全性については、CSR群でデバイス塞栓イベントが2件発生し、両群とも急性冠症候群イベントおよび死亡の発生は報告されなかった。

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