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発作性上室頻拍、etripamil点鼻スプレーが有用/Lancet

 発作性上室頻拍に対する短時間作用型のL型Caチャネル拮抗薬であるetripamilの点鼻投与は、房室結節依存性の発作性上室頻拍の洞調律への迅速な復帰に関してプラセボより優れており、忍容性および安全性は良好であることが、北米および欧州の160施設で実施された多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照イベントドリブン試験「RAPID試験」の結果、示された。米国・Piedmont Heart InstituteのBruce S. Stambler氏らが報告した。RAPID試験は、NODE-301試験のパート2として実施された試験である。Lancet誌オンライン版2023年6月15日号掲載の報告。投与後30分以内の発作性上室頻拍から洞調律への復帰率をプラセボと比較 研究グループは、心電図で確認された持続性(20分以上)のエピソードを伴う発作性上室頻拍既往の18歳以上の患者を登録した。洞調律中にスプレー型のetripamil 70mgを2回、10分間隔で点鼻投与する試験投与で忍容性が認められた患者を、etripamil群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 患者は、日常生活で発作性上室頻拍の症状が発現した場合、心電図を装着し、事前に訓練された迷走神経刺激手技を行い、症状が消失しない場合は試験薬を患者自身が点鼻し、症状が10分以上持続する場合は再投与した。 主要エンドポイントは、投与後30分以内での発作性上室頻拍から洞調律(30秒以上)への復帰率(独立中央評価)であった。洞調律復帰率はetripamil群64% vs.プラセボ群31%で有意な差 2020年10月13日~2022年7月20日に、計692例が無作為化され、このうち有効性解析集団(房室結節依存性であることが確認され、発作性上室頻拍のエピソードに対して試験薬を自己投与した患者)は184例(etripamil群99例、プラセボ群85例)であった。 発作性上室頻拍から洞調律への復帰率(Kaplan-Meier推定値)は、etripamil群64%(63/99例)、プラセボ群31%(26/85例)であった(ハザード比[HR]:2.62、95%信頼区間[CI]:1.66~4.15、p<0.0001)。洞調律復帰までの時間の中央値は、etripamil群17.2分(95%CI:13.4~26.5)、プラセボ群53.5分(38.7~87.3)であった。 事前に規定された主要エンドポイントの頑健性を検証する感度解析においても同様の結果が得られた。 試験薬投与後24時間以内の有害事象発現率は、etripamil群50%、プラセボ群11%であった。そのほとんどが投与部位に生じた軽度または中等度の事象で、いずれも一過性であり介入なしで消失した。etripamil群で5%以上に発現した有害事象は、鼻不快感(23%)、鼻づまり(13%)、鼻漏(9%)などで、重篤な有害事象および死亡は報告されなかった。

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第141回 令和4年の救急車の出動、過去最高の722万件を記録/消防庁

<先週の動き>1.令和4年の救急車の出動、過去最高の722万件を記録/消防庁2.新型コロナ、基本的な感染対策は自主的に判断を/厚労省3.がん検診率60%以上を目標に、がん対策基本計画/政府4.経鼻インフルエンザワクチンが国内初承認、2024年度シーズンから供給へ/第一三共5.相澤病院、元職員が患者の個人情報を外部に持ち出し/相澤病院6.美容医療「ハイフ」の健康被害防止へ、施術は医師に限定を/消費者庁1.令和4年の救急車の出動、過去最高の722万件を記録/消防庁総務省消防庁は、3月31日に令和4年度の救急出動件数の速報値を発表した。令和4年の救急車の出動件数は前年度に比べて16.7%増の722万9,838件、搬送人数も621万6,909人と過去最高を記録した。同庁によると、高齢者の増加のほか、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、救急要請が増えたのが原因としている。また、同日に救急業務のあり方に関する検討会の報告書を公表し、この中で、マイナンバーカードを活用した救急業務の迅速化・円滑化のため、システム構築の検討を加速することが盛り込まれた。(参考)「令和4年中の救急出動件数等(速報値)」の公表(消防庁)「令和4年度 救急業務のあり方に関する検討会 報告書」(同)救急車の出動最多722万件 22年、コロナで要請急増(日経新聞)2.新型コロナ、基本的な感染対策は自主的に判断を/厚労省3月31日、加藤勝信厚生労働大臣は新型コロナウイルスの感染症法の位置付けが5類に移行する前に、移行後の感染症対策について方針の変更を説明した。手洗いや換気は引き続き有効とするが、入場時の検温などの対策は効果やコストなどを踏まえて、自主的に判断を求めるとする基本的な考えを示した。医療機関や介護施設などに対しては、院内や施設内の感染対策について引き続き国が示すとしている。(参考)【事務連絡】新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付け変更後の基本的な感染対策の考え方について(厚労省)アクリル板設置や検温など事業者判断に 5類移行後の基本的な感染対策で厚生労働省(東京新聞)新型コロナ5類移行後 “入場時検温など自主的に判断” 厚労省(NHK)コロナ対策変更へ、厚労相「マスク着用と同様」主体的な選択を尊重、5類移行で(CB news)3.がん検診率60%以上を目標に、がん対策基本計画/政府政府は、3月28日に2023年度から始まる新たな「第4期がん対策基本計画」を閣議決定した。がんによる死亡率を低下させるため、がん検診の受診率を現行より引き上げ、60%以上に向上させるほか、オンラインによる相談支援や緩和ケアの充実などが盛り込まれた。なお、がん検診の受診率は男性の肺がん検診を除くと、現行の第3期がん対策基本計画でも、50%未満であり、新型コロナウイルス感染症の拡大により頭打ちとなっているがん検診の受診率のさらなる向上を目指す。(参考)第4期がん対策基本計画を閣議決定 政府、デジタル化推進へ(CB news)がん検診率60%に向上目標 政府、4期計画を閣議決定(東京新聞)第4期がん対策推進基本計画案を閣議決定!がん医療の均てん化とともに、希少がんなどでは集約化により「優れたがん医療提供体制」を構築!(Gem Med)がん対策推進基本計画[第4期]<令和5年3月28日閣議決定>(厚労省)4.経鼻インフルエンザワクチンが国内初承認、2024年度シーズンから供給へ/第一三共3月27日、国内初の「経鼻インフルエンザワクチン」が正式に承認されたことを製造メーカーの第一三共が明らかにした。同社によると、2015年にアストラゼネカ社の子会社メディミューン社と提携し、国内での開発・販売契約に基づいて開発を開始。国内における知見の結果、経鼻インフルエンザワクチン「フルミスト点鼻液」としてこの度承認申請を行い、承認された。季節性インフルエンザの予防に新たな選択肢を提供できるとしている。対象は2歳以上19歳未満の人で、0.2mLを1回(各鼻腔内に0.1mLを1噴霧)、鼻腔内に噴霧する。(参考)第一三共、経鼻インフルワクチンが承認 24年度発売(日経新聞)フルミストが製造販売承認を取得(日経メディカル)経鼻弱毒生インフルエンザワクチン「フルミストR点鼻液」の国内における製造販売承認取得のお知らせ(第一三共)5.相澤病院、元職員が患者の個人情報を外部に持ち出し/相澤病院長野県松本市の相澤病院において、患者の個人情報が不正に持ち出されたことが明らかになり、病院を経営する医療法人は内閣府の個人情報保護委員会に2月に報告、また、松本警察署に事件相談を行い、告訴状を提出した。病院によると、2023年1月、同院に通院中の患者の申し出によって、元職員から患者が他の医療機関での治療の勧誘を受けたことが判明。病院側の聞き取り調査によって、2022年5月に元職員が、後輩職員に業務マニュアルの閲覧を申し出て、業務フォルダからデータをコピーして持ち出したことが明らかとなった。漏洩したデータは透析治療患者ならびに高気圧酸素療法患者の個人情報3,137人分(亡くなった患者を含む)の住所・氏名・生年月日など基本的な識別情報のほか、各種医療情報、家族情報が含まれていた。病院側は、研修内容の見直しと再発防止に努めたいとしている。(参考)患者さん個人情報等の漏えい(不正取得)について[お詫び](相澤病院)長野の相沢病院、元職員が患者らの個人情報3137人分を外部に漏えい(読売新聞)松本市の相澤病院 患者ら3100余の個人情報持ち出されたか(NHK)6.美容医療「ハイフ」の健康被害防止へ、施術は医師に限定を/消費者庁痩身などを目的として、エステサロンで超音波を照射する超音波機器「HIFU(ハイフ)」を使った健康被害が増加していることに対し、消費者庁の消費者安全調査委員会は、ハイフを用いた施術について、施術者を医師に限定すべきだと提言した。委員会によると、ハイフによってやけどやシミが生じた事故は、2015年より8年間で135件が報告され、増加傾向にある。医療問題弁護団はこの提言を受け、4月2日に無料で電話相談を行った。(参考)エステの超音波施術「医師に限定を」 消費者事故調が厚労省に提言(朝日新聞)超音波美容施術で事故相次ぐ 消費者事故調 国に法規制求める(NHK)消費者安全法第23条第1項の規定に基づく事故等原因調査報告書)エステサロン等でのHIFU)ハイフ)による事故)を公表しました。(消費者庁)【4月2日(日)10時~16時・HIFUホットライン実施】HIFU(高密度焦点式超音波)被害の電話相談を実施します(医療問題弁護団)

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花粉症患者の5割が医療機関受診の経験なし/アイスタット

 2023年の春は「10年に1度」と言われるくらい花粉の飛散が予測され、連日、天気予報では大量飛散の注意を伝えている。花粉症関連の市販薬や花粉予防グッズの売り上げが伸びている中で、患者はどのように感じ、備えや治療を行っているのであろうか。株式会社アイスタットは2月8日に「花粉症」に関するアンケートを行った。 アンケート調査は、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の首都圏在住の会員20~59歳の300人が対象。■調査概要形式:WEBアンケート方式調査期間:2023年2月8日回答者:セルフ型アンケートツールFreeasyに登録している300人(20~59歳、東京・神奈川・千葉・埼玉居住の会員)■アンケート概要・花粉症の人は5割を超える。そのうち、花粉症歴が「長い」は24%、「中間」は14%、「短い」は14.3%・花粉症の重症度は「重症」が5.7%、「中等症」が47.8%、「軽症」が46.5%・花粉症治療の受診状況は、「医療機関に1度も受診したことがない」が最多で5割近く・医療機関を毎年受診しない理由の第1位は「費用がかかる」、第2位は「面倒」・「花粉症歴が長い」「重症・中等症」の人ほど「花粉が飛び始める1~2ヵ月前」に対策・花粉症の3大症状の「鼻水」「くしゃみ」「目のかゆみ・痛み・涙」は70%以上・花粉症対策として購入しているもの第1位は「市販の飲み薬」、第2位は「市販の目薬」・花粉症の症状は、「遺伝・体質」より「自律神経の乱れ」「生活習慣が不規則」のほうが影響している■花粉症患者が医療機関に行かない理由の第1位は経済的理由 質問1で「花粉症と自覚した時期」(単回答)について聞いたところ、「現在花粉症でない」が47.7%、「長い(20年以上)」が24.0%、「短い(10年未満)」が14.3%、「中間(10年以上~20年未満)」が14.0%の順だった。また、年代別では、「花粉症である」を回答した人は40代で最も多く、「花粉症でない」と回答した人は50代で最も多かった。 質問2で(花粉症未発症、寛解を除いた)花粉症患者157人に「自己診断で花粉症の重症度」(単回答)について聞いたところ、「中等症」が47.8%、「軽症」が46.5%、「重症」が5.7%の順で続いた。また、年代別では「重症」「軽症」と回答した人は「20・30代」で最も多く、「中等症」と回答した人は「50代」で最も多かった。 質問3で質問2で回答した157人に「花粉症の治療のための医療機関受診の有無」(単回答)について聞いたところ、「1度も受診したことがない」が49%、「その年の症状により受診」が35%、「毎年、受診している」が15.9%と続き、約半数の人に受診経験がない結果だった。また、花粉症の重症度別では、「重症・中等症」の人ほど「毎年、受診」「その年の症状により受診」が多く、「軽症」の人ほど「受診したことがない」が多い結果だった。 質問4で質問3で「毎年、受診しない」以外を回答した132人に「花粉症の治療のために医療機関を毎年受診しない理由」(複数回答)について聞いたところ、「費用(診察代)がかかる」が46.2%、「面倒」が34.1%、「市販の薬で十分」が30.3%、「待ち時間が長い、混んでいる」が25.8%の順で回答が多かった。 質問5で「いつ頃から花粉症対策を始めているか」(単回答)について聞いたところ、「特に何も対策していない」が51%、「花粉症が飛び始めてから」が19.7%、「花粉症の症状が出てから」が15%、「花粉症が飛び始める1~2ヵ月前」が10.7%の順で多かった。また、花粉症歴別・重症度別でみると、花粉症歴が長い人および症状が重症・中等症の人ほど「花粉が飛び始める1~2ヵ月前」に花粉症対策を行っていた。 質問6で「花粉症になったことがない」以外を回答した173人に「花粉症対策ですでに試したことのある療法、もしくは花粉症の有無に関わらず今後試してみたい療法」(複数回答)について聞いたところ、「対症療法」が56.6%と1番多かった一方で、「特になし」も34.7%と2番目に多かった。最近、医療機関でなされている「原因療法」は10.4%、「舌下免疫療法」は8.7%だった。 質問7で「花粉症である」と回答した157人に「花粉症の症状」(複数回答)について聞いたところ「鼻水」が80.3%、「くしゃみ」が76.4%、「目のかゆみ・痛み・涙」が72%と多く、いわゆる「花粉症の3大症状」が上位を占めた。また、花粉症の重症度別では、すべての症状で「重症・中等症」の人が多い結果だった。 質問8で「花粉症である」と回答した157人に「花粉症対策として、購入しているもの(処方箋薬は除く)」(複数回答)について聞いたところ、「市販の飲み薬」が45.9%、「市販の目薬」が43.9%、「市販の点鼻薬」が20.4%と多かった。また、上位には「緩和・ケア対策」、下位には「外出対策」の購入品の内容が占めた。 質問9で「花粉症の症状に影響するもの」(複数回答)について聞いたところ、多い順に以下の通りとなった。・1位「家の中・室内の花粉対策をしていない」(24.0%)・2位「親・兄弟が花粉症やアレルギー体質である」(23.7%)・2位「衣類・布団・布製品の花粉症対策をしていない」(23.7%)・4位「外出時の花粉対策をしていない」(19.0%)・5位「花粉症に効果がある食事をしていない」(18.7%) また、症状が「重症・中等症の人(84人)」の中では「過労、ストレスによる自律神経の乱れがある」が29.8%で最も多く、「軽症の人(73人)」の中では「親・兄弟が花粉症やアレルギー体質である」が35.6%で最も多く、「なったことはない人(143人)」の中では「あてはまるものはない」が51%で最も多かった。

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第34回 経鼻インフルワクチン使いますか?

フルミストが承認へ厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は2月27日、第一三共の経鼻弱毒生インフルエンザワクチン「フルミスト点鼻液(以下フルミスト)」の承認を了承しました。3月に承認される見通しです。フルミストは、鼻に噴霧するインフルエンザワクチンです。「これまでにない剤型でナウい!」と思われるかもしれませんが、2003年にアメリカで承認されており、日本は20年遅れの承認となっています。2016年あたりに承認に向けた話し合いが進められたのですが、事務的な手続きやら何やらで、いろいろと後ずれしてしまったそうです。フルミストは、2013/14シーズン以降ワクチン効果の低下を指摘されており、米国疾病予防管理センター(CDC)でも一時推奨リストから取り下げられていました。そのため、現在も「いまいちかも…」と思っている医師は多いかもしれません。A型インフルエンザ(H1N1)の流行時に、小児で有効性が検証されています1)。この研究では、不活化ワクチンに非劣性という結果が得られています。具体的には、調整済みの有効性(VE)が、H1N1に対してフルミスト69%(95%信頼区間[CI]:56~78%)、不活化ワクチン79%(95%CI:70~86%)、H3N2に対してそれぞれ36%(95%CI:14~53%)、43%(95%CI:22~59%)、B型インフルエンザに対してそれぞれ74%(95%CI:62~82%)、56%(95%CI:41~66%)という結果でした。現在CDCはフルミストをインフルエンザワクチンの選択肢の1つとして位置づけています2)。CDCの推奨と接種対象国際的には2~49歳へ接種が可能ですが、日本国内はおそらく2~19歳未満に限定されることになります。ほぼ子供のワクチンと言えるでしょう。2歳未満で喘鳴が増えた経緯があり、接種対象外となっています。上述しましたが、CDCはインフルエンザワクチン全般について、不活化ワクチンとそれ以外のどちらがよいか、断言していません3)。ただ、フルミストについては接種対象が限定されており、それには注意すべきと書いています。生ワクチンなので、喘息発作の既往が1年以内にある人、免疫不全者、妊婦では接種を回避する必要があります。また、自宅に免疫不全者がいる場合も避けるべきとされています。なお、卵アレルギーについてはそこまで懸念しなくてよいとされています2)。CDCの推奨は「卵アレルギーの既往歴があり、蕁麻疹のみを経験したことがある人は、インフルエンザワクチンの接種は可能。蕁麻疹以外の症状(血管浮腫、呼吸困難、ふらつき、再発性嘔吐など)があったり、アドレナリン(エピネフリン)投与を要したりした人についても、年齢や健康状態に応じたワクチン接種を受けることが可能」となっています。インフルエンザワクチンと卵アレルギーの関係については、堀向 健太先生がYahoo!のニュース記事に詳しくまとめられているので、そちらを参考にするとよいでしょう3)。フルミストは弱毒生ワクチンなので、接種後、鼻汁や咳などの症状が出ることがあります。とはいえ、低温馴化された弱毒化されたものを使っていますので、基本的にはそこまで問題にならないでしょう。おそらく国内では、来シーズンから経鼻インフルワクチンが使われることになると予想されます。参考文献・参考サイト1)Buchan SA, et al. Effectiveness of Live Attenuated vs Inactivated Influenza Vaccines in Children During the 2012-2013 Through 2015-2016 Influenza Seasons in Alberta, Canada: A Canadian Immunization Research Network (CIRN) Study. JAMA Pediatr. 2018;172:e181514.2)Grohskopf LA, et al. Prevention and Control of Seasonal Influenza with Vaccines: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices - United States, 2022-23 Influenza Season. MMWR Recomm Rep. 2022;71:1-28.3)インフルエンザワクチン製造時に鶏卵を使用 卵アレルギーの子どもは予防接種できる?

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第123回 ケタミンの依存性はどうやら低い

ケタミンは遡ること60年前の1962年に初めて合成されて長く麻酔薬として使われてきました。ケタミンはいまやすぐに効く抗うつ薬として研究や配慮を払った治療環境で使われることが増えていますが、いつもの治療で常用するとなると依存性が心配です。あいにくケタミンの依存性がどれほどかはその複雑な薬理作用などのせいで定まっていませんでしたが、先週水曜日にNature誌に掲載されたマウスでの新たな実験によると、依存性の恐れがある薬物に分類されているのとは裏腹にケタミンの依存性はどうやら低いようです1,2)。実験の結果、ケタミンは脳の側坐核(NAc)のドーパミンをコカインなどの依存性薬物と同様に一過性に増やすもののそれら依存性薬物でたいてい生じるシナプス可塑性を誘発しませんでした。ケタミンは側坐核と繋がる腹側被蓋野(VTA)のドーパミン放出神経をNMDA受容体遮断作用により脱抑制するものの、2型ドーパミン受容体の作用によってその脱抑制はすぐに打ち消されます。ドーパミンはそうしてすぐに消沈し、VTAやNAcでのシナプス可塑性は生じずに済み、依存を意味する振る舞いをマウスは示しませんでした。2019年に米国で承認されたJohnson & Johnson(J&J)社の治療抵抗性うつ病治療点鼻薬Spravatoの成分はその名前が示す通りケタミンの光学異性体S体・エスケタミン(esketamine)であり、ケタミンと同様にNMDA受容体遮断作用を有します3)。依存性(dependence)は服薬を突然中止したときや服薬量がかなり減ったときに生じる離脱症状/兆候で把握されます。Spravatoはケタミンのマウス実験結果と同様にどうやら依存性の心配は少ないらしく、その治療を止めてから4週間後までの観察で離脱症状は認められていません3)。ケタミンのもう1つの光学異性体R体の抗うつ効果も期待されており、米国のatai Life Sciences社の開発品PCN-101(R-ketamine、アールケタミン)はそのケタミンR体を成分とします。PCN-101は欧州で第II相試験が進行中です4)。大塚製薬はPCN-101の日本での権利をatai Life Sciencesの子会社Perception Neuroscienceから昨春2021年3月に手に入れており、日本での販売を目指して日本での臨床試験を担当します5)。J&Jもエスケタミンの日本での開発をどうやら進めており、臨床研究情報ポータルサイトによると治療抵抗性うつ病患者への同剤の国内での第II相試験が完了しています6)。S体やR体ではないただのケタミンも奮闘しており、たとえば今年初めにBMJ誌に掲載された比較的大規模なプラセボ対照無作為化試験結果では自殺願望の解消効果が認められています7)。その報告の論評者もまた依存性を懸念していますが8)、今回のマウスでの結果がヒトで検証されて依存性の懸念が晴れればエスケタミンがすでに期待の星9)となっているようにケタミンも治療抵抗性うつ病治療でのいつもの薬の地位をやがて手に入れることになるかもしれません。参考1)A short burst of reward curbs the addictiveness of ketamine / Nature2)Simmler LD,et al.Nature. 2022 Jul 27. [Epub ahead of print]3)SPRAVATO PRESCRIBING INFORMATION.4)atai Life Sciences announces FDA Investigational New Drug (IND) Clearance for PCN-101 R-ketamine Program / PRNewswire5)治療抵抗性うつ治療薬「アールケタミン」の日本国内におけるライセンス契約締結について/大塚製薬6)日本人の治療抵抗性うつ病患者を対象に,固定用量のesketamine を鼻腔内投与したときの有効性,安全性及び忍容性を検討するランダム化,二重盲検,多施設共同,プラセボ対照試験(臨床研究情報ポータルサイト)7)Abbar M,et al. BMJ. 2022 Feb 2;376:e067194.8)De Giorgi R, BMJ. 2022 Feb 2;376.9)Swainson J,et al. Expert Rev Neurother. 2019 Oct;19:899-911.

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最新の薬剤情報追加の糖尿病治療ガイド2022-23/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎)は、『糖尿病治療ガイド2022-2023』を発行した。本ガイドは、日本糖尿病学会が総力を挙げて編集・執筆したガイドブックで、コンパクトな1冊ながら、糖尿病診療の基本的な考え方から最新情報までがわかりやすくまとめれている。内科医はもとより、他の診療科の医師、コメディカルスタッフなどにも好評で、現在広く活用されている。 今回の改訂では、イメグリミンや経口GLP-1受容体作動薬の追加など、2022年3月現在の最新の内容がアップデートされた。 制作した「糖尿病治療ガイド」編集委員会は、「本ガイドが、日々進歩している糖尿病治療の理解に役立ち、毎日の診療に一層活用されることを願ってやまない」と期待を寄せている。主な改訂点・イメグリミンや経口GLP-1受容体作動薬の追加など、2022年3月現在の最新の薬剤情報にアップデート・かかりつけ医から糖尿病や腎臓の専門医・専門医療機関への紹介基準を、図を用いて明確に解説・上記だけでなく、低血糖時におけるグルカゴン点鼻粉末剤(バクスミー)の使用、糖尿病医療支援チーム(DiaMAT)設立の動きなど、内容全体をアップデート・「2型糖尿病の血糖降下薬の特徴」など図のアップデート・コラムなどを追加・改訂主な目次1.糖尿病:疾患の考え方2.診断3.治療4.食事療法5.運動療法6.薬物療法7.糖尿病合併症とその対策8.低血糖およびシックデイ9.ライフステージごとの糖尿病10.専門医に依頼すべきポイント11.病態やライフステージに基づいた治療の実例(31症例)付録・索引

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スマトリプタン点鼻薬じゃなきゃダメな理由【処方まる見えゼミナール(大和田ゼミ)】

処方まる見えゼミナール(大和田ゼミ)スマトリプタン点鼻薬じゃなきゃダメな理由講師:大和田 潔氏 / 秋葉原駅クリニック院長動画解説ロメリジンやトリプタンのほかにもいろいろな薬剤が併用されている患者さん。しかし、その併用薬は添付文書と異なる使い方ばかりです。どのような意図があるのでしょうか? 頭痛の名医である大和田先生が治療した患者の疾患名とは?

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第97回 COVID-19後遺症様の症状が稀にワクチン接種後にも生じうる

イスラエルでもワクチンのCOVID-19後遺症予防効果あり去年9月に発表された英国での試験1)と同様に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種済みの人のSARS-CoV-2感染後の長引く症状(COVID-19後遺症)の主なものはどれも非接種の人に比べて少ないことがイスラエルでの試験でも示されました2,3)。もっと言うと、ワクチン接種済みの人のそれらの症状はSARS-CoV-2に感染したことのない人より多くもありませんでした。COVID-19後遺症全般についてはワクチンによる予防効果が認められなかった試験報告4)もありますが、エール大学の岩崎明子(Akiko Iwasaki)氏によれば今回のイスラエルでの試験や英国での試験結果はともあれ吉報です。「COVID-19後遺症は悲惨で、消耗を強いる。そうならないようにする手立ては何であれCOVID-19後遺症がこれ以上増えるのを防ぐのに必要であり、(その手立てを担いうるという)ワクチン接種理由がまた1つ増えた」と同氏は言っています2)。ワクチン接種後にも稀ながら生じうる後遺症ワクチンがCOVID-19後遺症を予防しうるとの期待がある一方で、その後遺症に似た症状がワクチン接種後に生じることが稀ながらあるようです5)。かつて幼稚園の先生をしていたBrianne Dressen氏は2020年11月にSARS-CoV-2ワクチンを接種し、その日の晩までに目がぼやけはじめました。また、貝殻を耳に当てているように音が変になりました。症状は急激に悪化し、やがては心拍異常や筋肉の脱力に見舞われ、電気ショックのような感覚を被るようになりました。Dressen氏はいまやそのほとんどの時間を暗い部屋で過ごし、歯を磨くことや幼い我が子に触れられるのさえ耐えることができません。医師がDressen氏を不安症と診断してからときが過ぎ、今から1年前の2021年1月になると米国国立衛生研究所(NIH)の研究者はDressen氏に降り掛かったような事態を把握し始め、Dressen氏や他の患者をNIH施設に招いて検査し、時には治療も施しました。しかし手がかりは少なく、Dressen氏が被ったような長く続く体調不良をワクチンが引き起こしたのかどうかは分からずじまいでした。NIHと患者のやり取りは昨年2021年の遅くまでに途絶えてしまいました。内々で研究は続いているとDressen氏等の調査を率いたNIHの研究者Avindra Nath氏は言うものの、唯一の頼みの綱であったNIHが手を引いたことに患者は困惑し、がっかりしています。NIHの研究は尻すぼみとなりましたが、ワクチン接種後の後遺症を理解することはそれらで悩む人の助けになるでしょうし、もしワクチンとの関連の仕組みが明らかになれば次世代のワクチン開発の参考になるに違いありません。また、そういう後遺症の恐れがある人を事前に同定可能になるかもしれません。カリフォルニア大学の免疫学者William Murphy氏はSARS-CoV-2スパイクタンパク質が誘発する自己免疫で感染後とワクチン接種後のどちらの長患いも説明できるかもしれないとの論説をNEJM誌に去年11月に発表しました6)。感染後やワクチン接種後の好ましい抗ウイルス効果と生じて欲しくない副作用の両方に免疫反応がどう寄与しているかをもっと基礎から調べる必要があります。Murphy氏はワクチン接種の支持者ですが、ワクチンを皆に安心して接種してもらうにはワクチン接種に安全性の心配はないと言って済ますのではなくワクチンについて隈なく調べ尽くすことが必要だと述べています5)。しかしMurphy氏の期待とは裏腹にNIHのNath氏が率いた患者研究は長続きしませんでした。NIHの研究には患者34人が参加し、そのうち14人がNIHで診られ、残り20人は血液検体、それに何人かは脳脊髄液(CSF)検体を提供しました。しばし治療も受けた患者もおり、たとえばステロイド高用量投与や免疫グロブリン静注(IVIG)が施されました。そのようにNIHは初めこそ患者を助けようとしていたにもかかわらずやがて患者との接触を断つようになりました。去年の9月のDressen氏の神経検査の予定は遠隔面談となり、12月になるとNath氏は患者を来させないようにしました。多くの患者を長期間治療するようにNIHは設えられておらず、患者の地元の担当医が手当てにあたるのが最良だとNath氏は言っています。しかしNath氏の言い分とは裏腹に医師には何もしてもらえないという患者もいますし、気のせいだと決めつけられることもあります。そうして表向きは梯子を外したNIHですが、エール大学の岩崎 明子氏はNIHのNath氏の協力を仰いでワクチン接種後の反応とCOVID-19後遺症がどう関連するかを調べることを計画しています。すでに患者との話が始まっており、血液や唾液などの検体を患者から集めるつもりです。また自己抗体を疑うドイツの研究者Harald Pruss氏はマウスへのSARS-CoV-2ワクチン接種後の自己抗体の特定に取り掛かっています。Pruss氏は感染後やワクチン接種後の患者の治療にもあたっており、患者の血液から抗体のほとんどを取り除く治療を調べる臨床試験を近々開始したいと考えています。自己抗体などの免疫系の関与は患者の体験でも示唆されており、ワクチン接種後に不調に陥った患者の何人かはScienceの取材に応じて免疫抑制剤でいくらか良くなったと言っています。NIHのNath氏も同様の効果を把握しており、免疫抑制/調節作用があるIVIGやステロイドによるCOVID-19後遺症治療を調べているNIH主催臨床試験結果がワクチン関連の合併症にも役立つことを期待しています。岩崎氏がワクチン開発にも着手COVID-19研究で何かと目に耳にすることが多いエール大学の岩崎氏の取り組みは今やワクチン開発にも及んでいます。先週26日にbioRxiv誌に発表された同氏率いるチームのマウス実験の結果、mRNAワクチン筋肉注射に続くSARS-CoV-2スパイクタンパク質やそのmRNAの点鼻投与で呼吸器粘膜の免疫を安全に底上げして感染や発病を防ぎうることが示されました7)。次の段階として、より大きな動物や臨床試験での安全性や有効性の検討が必要です8)。将来的には他の粘膜ウイルス病原体にも今回と似た手段が通用しそうであり、岩崎氏の活躍を見聞きすることは今後ますます多くなりそうです。参考1)Antonelli M,et al.Lancet Infect Dis. 2022 Jan;22:43-55. 2)Long-COVID symptoms less likely in vaccinated people, Israeli data say / Nature3)Association between vaccination status and reported incidence of post-acute COVID-19 symptoms in Israel: a cross-sectional study of patients tested between March 2020 and November 2021. medRxiv. January 17, 20224)Six-month sequelae of post-vaccination SARS-CoV-2 infection: a retrospective cohort study of 10,024 breakthrough infections. medRxiv. November 08, 20215)In rare cases, coronavirus vaccines may cause Long Covid-like symptoms. Science.6)Murphy WJ, et al. N Engl J Med. 2022 Jan 27;386:394-396. 7)Unadjuvanted intranasal spike vaccine booster elicits robust protective mucosal immunity against sarbecoviruses. bioRxiv. January 26, 20228)岩崎 明子氏のTwitter投稿(2022年1月27日)

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治療抵抗性うつ病への薬理学的増強戦略~包括レビュー

 治療抵抗性うつ病(TRD)は、治療転帰不良であることは言うまでもないが、最良の薬理学的増強戦略にどの抗うつ薬を用いるべきかに関するエビデンスは十分ではない。イタリア・Azienda Socio Sanitaria Territoriale MonzaのAlice Caldiroli氏らは、TRDに対する抗うつ薬の薬理学的増強療法に関するエビデンスを包括的にレビューした。International Journal of Molecular Sciences誌2021年12月2日号の報告。 TRDに対する抗うつ薬の薬理学的増強療法に関する利用可能なエビデンスを特定するため、主要な精神医学データベース(PubMed、ISI Web of Knowledge、PsychInfo)より検索を行った。TRDに対する薬理学的増強療法を主なトピックスとし、TRDの明確な定義が記載されている英語論文を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・最も研究されていた薬剤は、アリピプラゾールとリチウムであった。・有効性に関して、最も強力なエビデンスが示された薬剤は、アリピプラゾールであった。・オランザピン、クエチアピン、cariprazine、リスペリドン、ziprasidoneは、良好な結果が認められたが、その程度は低かった。・ブレクスピプラゾール、esketamine点鼻薬については、実臨床でのさらなる研究が求められる。・ケタミン静脈内投与は、短期的な抗うつ効果が認められた。・補助的な治療薬(抗てんかん薬、神経刺激薬、プラミペキソール、ロピニロール、アスピリン、メチラポン、レセルピン、テストステロン、T3/T4、naltrexone、SAM-e、亜鉛)の有効性に関するエビデンスは限られており、その有効性を正確に推定することは困難であった。・ラモトリギン、ピンドロールに関するエビデンスは、否定的なものであった。 著者らは「リチウムに関するデータは多少の議論の余地があるものの、TRD患者に対する効果的な増強療法として、アリピプラゾールとリチウムが有効であることが示唆された。他の薬剤については、信頼できる結論を導き出すことができなかった。これらの結果を明らかにするためには、標準化されたデザイン、用量、治療期間を用いて制御された比較研究が必要であろう」としている。

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咳嗽も侮れない!主訴の傾聴だけでは救命に至らない一例【Dr.山中の攻める!問診3step】第10回

第10回 咳嗽も侮れない!主訴の傾聴だけでは救命に至らない一例―Key Point―咳は重大な疾患の一つの症状であることがある詳細な問診、咳の持続時間、胸部レントゲン所見から原因疾患を絞り込むことができる慢性咳に対するアプローチを習得しておくと、患者満足度があがる症例:45歳 男性主訴)発熱、咳、発疹現病歴)3週間前、タイのバンコクに出張した。2週間前から発熱あり。10日前に帰国した。1週間前から姿勢を変えると咳がでる。38℃以上の発熱が続くため紹介受診となった。既往歴)とくになし薬剤歴)なし身体所見)体温:38.9℃ 血圧:132/75mmHg 脈拍:88回/分 呼吸回数:18回/分 SpO2:94%(室内気)上背部/上胸部/顔面/頭部/手に皮疹あり(Gottron徴候、機械工の手、ショールサインあり)検査所見)CK:924 IU/L(基準値62~287)経過)胸部CT検査で両側の間質性肺炎ありCK上昇、筋電図所見、皮膚生検、Gottron徴候、機械工の手、ショールサインから皮膚筋炎1)と診断された筋力低下がほとんど見られなかったので、amyopathic dermatomyositis(筋無症候性皮膚筋炎)と考えられるこのタイプには、急性発症し間質性肺炎が急速に進行し予後が悪いことがある2)本症例ではステロイドと免疫抑制剤による治療を行ったが、呼吸症状が急速に悪化し救命することができなかった◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!急性の咳(<3週間)では致死的疾患を除外することが重要である亜急性期(3~8週間)の咳は気道感染後の気道過敏または後鼻漏が原因であることが多い慢性咳(>8週間)で最も頻度が高い原因は咳喘息である【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】緊急性のある疾患かどうか考えよう咳を伴う緊急性のある疾患心筋梗塞、肺塞栓、肺炎後の心不全悪化重症感染症(重症肺炎、敗血症)気管支喘息の重積肺塞栓症COPD (慢性閉塞性肺疾患)の増悪間質性肺炎咳が急性発症ならば、心血管系のイベントが起こったかをまず考える心筋梗塞や肺塞栓症、肺炎は心不全を悪化させる心筋梗塞や狭心症の既往、糖尿病、高血圧、喫煙、脂質異常症、男性、年齢が虚血性心疾患のリスクとなる3つのグループ(高齢、糖尿病、女性)に属する患者の心筋梗塞は非典型的な症状(息切れ、倦怠感、食欲低下、嘔気/嘔吐、不眠、顎痛)で来院する肺塞栓症のリスクは整形外科や外科手術後、ピル内服、長時間の座位である呼吸器疾患(気管支喘息、COPD、間質性肺炎、結核)の既往に注意するACE阻害薬は20%の患者で内服1~2週間後に咳を起こす【STEP3-1】鑑別診断:胸部レントゲン所見と咳の期間で行う胸部レントゲン写真で肺がん、結核、間質性肺炎を確認する亜急性咳嗽(3~8週間)の原因の多くはウイルスやマイコプラズマによる気道感染である細菌性副鼻腔炎では良くなった症状が再び悪化する(二峰性の経過)。顔面痛、後鼻漏、前かがみでの頭痛増悪を確認する百日咳:咳により誘発される嘔吐とスタッカートレプリーゼが特徴的である2)【STEP3-2】鑑別診断3):慢性咳か否か8週間以上続く慢性咳の原因は咳喘息、上気道咳症候群(後鼻漏症候群)、逆流性食道炎、ACE阻害薬、喫煙が多い上記のいくつかの疾患が合併していることもある咳喘息が慢性咳の原因として最も多い。冷気の吸入、運動、長時間の会話で咳が誘発される。ほかのアレルギー疾患、今までも風邪をひくと咳が長引くことがなかったかどうかを確認する非喘息性好酸球性気管支炎(NAEB:non-asthmatic eosinophilic bronchitis)が慢性咳の原因として注目されている3)上気道咳症候群では鼻汁が刺激になって咳が起こる。鼻咽頭粘膜の敷石状所見や後鼻漏に注意する夜間に増悪する咳なら、上気道咳症候群、逆流性食道炎、心不全を考える【治療】咳に有効な薬は少ないハチミツが有効とのエビデンスがある4)咳喘息:吸入ステロイド+気管支拡張薬上気道咳症候群:アレルギー性鼻炎が原因なら点鼻ステロイド、アレルギー以外の原因なら第一世代抗ヒスタミン薬3)逆流性食道炎:プロトンポンプ阻害薬<参考文献・資料>1)Mukae H, et al. Chest. 2009;136:1341-1347.2)Rutledge RK, et al. N Engl J Med. 2012;366:e39.3)ACP. MKSAP19. General Internal Medicine. 2021. p19-21.4)Abuelgasim H, et al. BMJ Evid Based Med. 2021;26:57-64.

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点鼻薬 使い方と使い分けのポイントは?【ママに聞いてみよう(6)】

ママに聞いてみよう(6)点鼻薬 使い方と使い分けのポイントは?講師:堀 美智子氏 / 医薬情報研究所 (株)エス・アイ・シー取締役、日本女性薬局経営者の会 会長動画解説OTCの点鼻薬はどれがお薦めか、花粉症の患者さんに尋ねられた沙耶華さんは、一定期間使用することから、血管収縮成分を含まないものを提案しました。ほかにどのようなことを確認、説明すべきだったのか、美智子先生が教えます。

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コロナ禍の中で花粉症診療へ行くべきか/アイスタット

 花粉症の季節が到来した。街中ではマスクだけでなく、花粉防止のゴーグルをかけた人を見かけるようになった。新型コロナウイルス感染症が収束をみせない中、慢性疾患や花粉症に代表される季節性疾患の診療に例年とは異なる動きはあるのであろうか。 株式会社アイスタット(代表取締役社長:志賀 保夫)は、2月25日に花粉症の理由で病医院を受診する人の割合、傾向を知る目的として、花粉症に関するアンケート調査を行い、その結果を発表した。 アンケートは、業界最大規模のモニター数を誇るセルフ型アンケートツール“Freeasy”の会員で20~69歳、東京・神奈川・千葉・埼玉に在住の300人を対象に実施した。同社では今後も毎月定期的に定点調査を行い、その結果を報告するとしている。調査概要形式:WEBアンケート方式期日:2021年2月19日対象:セルフ型アンケートツール“Freeasy”の登録者300人(20~69歳)で東京・神奈川・千葉・埼玉在住者アンケート結果の概要・花粉症が「現在ない」と回答した割合は46.3%、花粉症歴が「長い」は26.0%、「中間」は16.0%、「短い」は11.7%・花粉症歴が「長い」と回答した人ほど、医療機関を「毎年、受診している」が多い結果に・花粉症の強さが「軽症」と回答した人は、医療機関を「1度も受診したことがない」が最多に。「中等症」「重症」と回答した人は、医療機関を「毎年、受診している」が最多に・花粉症の三大症状の「鼻水」「目のかゆみ・痛み・涙」「くしゃみ」は70%以上に・花粉症の症状で「鼻水」を回答した人は、医療機関を「1度も受診したことがない」が最多に・コロナ禍により、花粉症の症状で病医院の受診を控えるかは、「そう思う」42.9%が「そう思わない」24.8%を上回ったアンケート結果の概要 「花粉症と自覚した時期」について聞いたところ、「現在、花粉症でない」が46.3%で最多であり、次に「長い」(約15年超)が26.0%、「中間」(約5~15年)が16.0%、「短い」(最近~5年以内)が11.7%だった。※以下は「花粉症歴があると回答した161人」の回答 「花粉症の症状」を聞いたところ、「鼻水」、「目のかゆみ・痛み・涙」がともに77.0%で最も多く、次に「くしゃみ」が73.9%、「鼻づまり」が56.5%、「だるい、ボーっとする」が26.1%と多かった。 「花粉症の強さを自身の判断」で聞いたところ、「軽症」が47.2%で最も多く、次に「中等症」が42.2%、「重症」が8.1%だった。 「花粉症対策として病医院の処方箋・市販薬も含め服用・使用している薬」について聞いたところ、「飲み薬(1種類)」が42.9%と最も多く、次に「点眼薬」が32.9%、点鼻薬が21.1%と上位を占めた。その一方で、「薬を服用、使用していない」が29.2%いた。薬に頼らずに我慢する患者の存在もうかがわれた。 「花粉症の理由で病院に受診したことがあるか」を聞いたところ、「1度も受診したことがない」が45.3%で最も多く、「その年の症状により受診」が32.3%、「毎年、受診している」が22.4%だった。花粉症軽度の割合が多いことから医療機関へ受診につながらないことが推定された。 「今シーズン(2021年春季)、花粉症の治療のために病院を受診するか」を聞いたところ、「受診する予定はない」が70.2%と最多で、「受診する予定」が18.0%、「すでに受診した」が11.8%だった。花粉症診療へ消極的な動きが判明した。 「昨今のコロナ禍により病医院へ受診することを控えようと思うか」を聞いたところ、「非常に」「やや」を足し合わせた「そう思う」が42.9%、「どちらともいえない」が32.3%、「あまり思わない」「まったく思わない」を足し合わせた「そう思わない」の24.8%と診療を控える傾向がうかがわれた。 「花粉症で病医院を受診する決め手」を聞いたところ、「病医院で処方される薬の方がドラッグストアなどの市販薬より、効果があるから」が34.2%で最も多く、次に「病医院で処置・治療してもらうと効き目があるから」が26.7%、「病医院を受診することで安心感を得たいから」が19.9%と上位を占めた。受診の決め手となる動機では、医療機関から処方される治療薬への期待がうかがわれた。

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頬粘膜投与でてんかん重積発作を抑える「ブコラム口腔用液2.5mg/5mg/7.5mg/10mg」【下平博士のDIノート】第68回

頬粘膜投与でてんかん重積発作を抑える「ブコラム口腔用液2.5mg/5mg/7.5mg/10mg」今回は、抗けいれん薬「ミダゾラム(商品名:ブコラム口腔用液2.5mg/5mg/7.5mg/10mg、製造販売元:武田薬品工業)」を紹介します。本剤を使用することで、医療機関外であっても18歳未満のてんかん重積状態患者の発作を速やかに抑えることができます。<効能・効果>本剤は、てんかん重積状態の適応で、2020年9月25日に承認され、2020年12月10日より発売されています。<用法・用量>通常、ミダゾラムとして、修正在胎52週(在胎週数+出生後週数)以上1歳未満の患者には1回2.5mg、1歳以上5歳未満の患者には1回5mg、5歳以上10歳未満の患者には1回7.5mg、10歳以上18歳未満の患者には1回10mgを頬粘膜投与します。シリンジ液剤の全量を片側の頬粘膜に緩徐に投与しますが、体格の小さい患者や用量が多い場合は、必要に応じて両側の頬粘膜に半量ずつ投与することができます。なお、18歳以上の患者に対する有効性および安全性は確立されていません。<安全性>国内第III相試験(SHP615-301試験、SHP615-302試験)において、副作用は25例中5例(20.0%)で報告されており、主なものは、鎮静、傾眠、悪心、嘔吐、下痢各1例(いずれも4.0%)でした。なお、重大な副作用として、呼吸抑制が1例(4.0%)で報告されており、無呼吸、呼吸困難、呼吸停止などが注意喚起されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、歯ぐきと頬の間に投与することで、脳内の神経の過剰な興奮を鎮めて、てんかん重積状態の発作を抑えます。2.発作が開始してすぐに本剤を投与せず、自然に発作がおさまるかどうか観察し、投与判断の目安は医師の指示に従ってください。患者さんに嘔吐やよだれがある場合は、投与前に拭き取ってください。3.投与する際は、片側の頬をつまみ広げ、シリンジの先端を下の歯ぐきと頬の間に入れ、ゆっくりと全量を注入します。体格が小さい場合や使用量が多い場合は、医師の指示によって両側の頬に半量ずつ注入することもできます。4.この薬は頬粘膜から吸収されるため、可能な限り飲み込まないように注意してください。5.投与後は、原則救急搬送の手配を行い、医療者がこの薬の使用状況を確認できるように使用済みのシリンジを提示してください。6.保管時は、プラスチックチューブに封入された状態でふた側を上向きにして立てた状態にしてください。ふた側を下向きまたは水平にして保管すると、含量が低下する恐れがあります。<Shimo's eyes>通常、てんかん発作の多くは1~2分でおさまりますが、30分以上持続すると脳への長期的な後遺障害に至る可能性が高くなります。そのため、発作が5分以上持続する場合はてんかん重積状態と判断して、治療を始めることが国内外のガイドラインで推奨されています。2020年2月時点で、ミダゾラム口腔用液は欧州を中心に世界33ヵ国で承認されていますが、わが国で発売されているのは注射製剤(商品名:ミダフレッサ)のみで、ほかの小児を含む早期てんかん重積状態の第1選択薬として推奨されている薬剤もジアゼパムやロラゼパムの注射製剤でした。注射製剤は医療機関で投与されますが、救急搬送に時間を要して治療開始までに30分以上経過してしまう例が多く、患者団体や関連学会から非静脈経路で利便性および即効性の高い薬剤の開発が要望されていました。本剤は、国内初のてんかん重積状態に対する頬粘膜投与用のプレフィルドシリンジ製剤で、医療機関外でも家族や介護者などによって投与することができます。第III相臨床試験では、5分以内に64%、10分以内に84%で持続性発作が消失するという速やかな効果が認められました。適応があるのは18歳未満の患者さんで、年齢別に4種類の投与量のシリンジがあり、ラベルで色分けされています。主成分であるミダゾラムはCYP3A4の基質であり、本剤はCYP3A4を阻害あるいは誘導する薬剤との併用は禁忌です。副作用として呼吸抑制および徐脈などが現れる恐れがあるため、本剤の投与時は患者さんの呼吸や脈拍数に異常がないかなどを注意深く観察するとともに、救急車の手配も並行して行うなど冷静な対応が求められます。近年、アナフィラキシーに対するアドレナリン注射液(同:エピペン)に加え、糖尿病の低血糖状態に対する点鼻グルカゴン製剤(同:バクスミー点鼻粉末剤)、そして本剤など、患者さんの緊急時に身近な人が対応できる製剤が増えてきました。薬局では、患者さんや家族・介護者がいざというときに正しく安全に使えるよう、使用方法について理解度の確認が重要です。※2022年7月より、学校・保育所等で児童がてんかんを発症した場合、教職員が当該児童生徒等に代わって投与可能となりました。参考1)PMDA 添付文書 ブコラム口腔用液2.5mg/ブコラム口腔用液5mg/ブコラム口腔用液7.5mg/ブコラム口腔用液10mg

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重症低血糖に迅速対応できる初の点鼻グルカゴン製剤「バクスミー点鼻粉末剤3mg」【下平博士のDIノート】第65回

重症低血糖に迅速対応できる初の点鼻グルカゴン製剤「バクスミー点鼻粉末剤3mg」今回は、重症低血糖治療薬「グルカゴン点鼻粉末(商品名:バクスミー点鼻粉末剤3mg、製造販売元:日本イーライリリー)」を紹介します。本剤は、患者の意識がない場合であっても家族などが使いやすい経鼻投与のグルカゴン製剤で、重症低血糖の迅速な救急処置が可能になると期待されています。<効能・効果>本剤は、低血糖時の救急処置の適応で、2020年3月25日に承認され、同年10月2日より発売されています。<用法・用量>通常、グルカゴンとして1回3mgを鼻腔内に投与します。なお、飢餓状態、副腎機能低下症、頻発する低血糖、一部糖原病、肝硬変などの場合は血糖上昇効果がほとんど期待できず、アルコール性低血糖の場合は血糖上昇効果がみられません。<安全性>日本人1型および2型糖尿病患者を対象とした国内第III相臨床試験(IGBJ試験)において、安全性評価対象症例71例中12例(16.9%)に副作用が報告されました。主な副作用は、鼻痛6例(8.5%)、血圧上昇、悪心各4例(5.6%)、嘔吐、耳痛各2例(2.8%)でした(承認時)。なお、重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)が現れる恐れがあります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、低血糖を起こした際の救急処置に用います。肝臓に働きかけてブドウ糖の放出を促すことで、血糖を一時的に上げます。2.「意識がはっきりしない」「口から糖分を摂れない」など、周りの人の助けが必要な低血糖状態になったときに使用する1回使い切りタイプの点鼻粉末薬です。3.包装フィルムは使用する直前まではがさないでください。使用時は、赤い部分を引っ張って、容器から噴霧器を取り出します。噴霧器を支える人差し指また中指が鼻に当たるまで、点鼻容器の先端を片方の鼻の穴にゆっくり差し込んでから、注入ボタンを緑色の線が見えなくなるまで押し切ってください。4.噴霧後は、すぐに主治医に連絡し、医療機関を受診してください。その際、低血糖の発生状況や使用した結果などを主治医に伝えてください。5.本剤の効果は一時的なものなので、意識がある場合は速やかに糖分を摂取してください。追加投与による効果は期待できないため、本剤またはほかのグルカゴン製剤の追加投与は行わないでください。<Shimo's eyes>糖尿病治療による低血糖は、症状が起きたときに速やかかつ適切に対処することができれば回復が見込めますが、進行すると重症低血糖に陥り、昏睡や痙攣、脳障害などの後遺症を起こすほか、死に至ることもあります。従来、医療機関外であっても緊急時に対処できるようにグルカゴン注射薬が用いられていますが、使用時の手順が複雑で、患者およびその看護者(家族など)の負担が大きいという問題があります。本剤は、注射薬以外の低血糖治療薬として初のグルカゴン製剤です。室温で持ち運びができる1回使い切りタイプの点鼻粉末製剤で、看護者などが投与することで重症低血糖の救急処置を行うことができます。本剤は鼻粘膜から吸収されるため吸入や深呼吸の必要がなく、意識がない患者にも使用可能です。患者およびその看護者が、本剤を必要とする場面で迅速に対処できるように、投与方法・保管方法について十分に指導する必要があります。いざという場面で戸惑わないために、デモ機などを活用して理解度に合わせた指導を行いましょう。参考1)PMDA 添付文書 バクスミー点鼻粉末剤3mg

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セルメ税制の延長・拡大でスイッチOTC化は増える?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第55回

セルフメディケーション税制は、スイッチOTC医薬品を購入した際に、その購入費用が所得控除できる制度で、5年間の特例として2017年に始まりました。あまり盛り上がることもなく若干忘れられつつある気がしますが、このセルフメディケーション税制が延長・拡大しそうです。厚生労働省は21年度税制改正要望をまとめた。(中略)セルフメディケーション税制は、2017年~2021年の5年間に限って適用が認められている。厚労省は「インセンティブ効果の維持・強化が重要で、政策効果の検証を引き続き実施することが必要」とし、「2022年から5年間の延長」(2026年まで)を求める。対象品目については既存制度の対象である「スイッチOTC薬」に加えて、「非スイッチOTC薬のうち、治療・療養に使用されるものも対象とする」ことを要望する。(RISFAX 2020年9月25日)期間の延長だけではなく、対象となる医薬品の拡大や所得税控除額上限の引き上げなども要望しています。昨年の調査では、セルフメディケーション税制の認知度は71.3%と高いものの、利用意向は11.0%と低調でしたが、これが実現するとずいぶん使いやすくなりそうです。また、5月には、内閣府の規制改革推進会議において、「一般用医薬品(スイッチOTC)選択肢の拡大に向けた意見」が示され、スイッチOTC医薬品の開発や普及のための取り組みを求めるなど、セルフメディケーションに関する議論が活発化しています。スイッチOTCについてはもはや説明するまでもありませんが、医療用医薬品として用いられている成分を一般用医薬品へ転用することです。スイッチOTC化する成分については、以前は日本薬学会が候補成分を選定し、日本医学会などの関係医学会に意見を聞いたうえで了承していましたが、2015年6月の閣議決定を受けて、関連学会や団体、消費者などから候補成分の要望を受け付けて、医学・薬学の専門家などで構成される評価検討会議が議論、承認するという新しいスキームができました。この新しいスキームでは消費者の意見も反映されるため脚光を浴びました。しかし、実際に新しいスキームによって発売されたスイッチOTC医薬品は「フルコナゾール点鼻薬」の1成分のみです。この新しいスキームなるものは、スイッチOTC化を推進するどころか、結果的にスイッチOTC化をせき止めてしまったと言っても過言ではないかもしれません。この問題に着目した規制改革推進会議は、スイッチOTC化を推進するだけでなく、評価検討会議の役割の見直しなどセルフメディケーション全体を促進する仕組みを再構築する旨の意見を提出しています。セルフメディケーションの推進はもはや国策ですので、おそらく今後はスイッチOTC化が進むと想像できます。コロナもセルフメディケーションを推進国の政策とは別に、セルフメディケーションが進む要因として新型コロナウイルス感染症の流行も考えられます。医療機関への受診が抑制されたこともあり、軽い症状の場合は自宅での療養を選択する患者さんが多くなってきました。思ってもみなかったセルフメディケーションへの追い風で、受診しなくても購入可能なOTC医薬品の利用がさらに進むのではないかと思っています。これらの変化が実際にセルフメディケーションにどう影響するのか、そして販売する薬剤師の役割がどう変わるのか、引き続きウオッチしていきたいと思います。

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低血糖時の救急処置に初の点鼻薬、バクスミー発売/日本イーライリリー

 2020年10月2日、日本イーライリリーは、「低血糖時の救急処置」を効能・効果として、低血糖時救急治療剤「バクスミー点鼻粉末剤3mg」(一般名:グルカゴン)を発売したと発表した。本剤はグルカゴン点鼻粉末剤で、注射剤以外の低血糖治療剤として初の製剤。室温(1~30℃)で持ち運びができる1回使い切りの製剤で、看護者(家族等)が投与することにより重症低血糖の救急処置を行うことができる。また、鼻粘膜から吸収されるため、重症低血糖に陥り意識を失っている患者に対しても使用可能である。薬剤は噴霧器に充填されており、点鼻容器の先端を鼻に入れ、注入ボタンを押すことで緊急時に迅速かつ簡便に投与できる。 本剤の迅速性および確実性については、糖尿病患者の介護者20例(1型糖尿病患者および2型糖尿病患者の2親等以内の同居家族各10例)を対象とした国内単一施設非盲検部分的クロスオーバー模擬投与試験で検証されている。本剤の経鼻投与およびグルカゴン注射剤1mg筋肉内投与、双方の使用方法の説明を受けた看護者(家族等)がマネキンへの模擬投与を行い、その成功率を確認したところ、本剤を模擬投与した89.5%が全量投与に成功した。模擬投与完了までの平均時間は24秒だった。 製品概要製品名:バクスミー点鼻粉末剤3mg一般名:グルカゴン効能・効果:低血糖時の救急処置用法・用量:通常、グルカゴンとして1回3mgを鼻腔内に投与する製造発売承認日:2020年3月25日発売日:2020年10月2日薬価:8,368.60円(3mg1瓶)

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第18回 待望のプラセボ対照無作為化試験でCOVID-19にインターフェロンが有効

中国武漢での非無作為化試験1)や香港での無作為化試験2)等で示唆されていたインターフェロン1型(1型IFN)の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療効果が小規模ながら待望のプラセボ対照無作為化試験で裏付けられました3,4)。先週月曜日(20日)の速報によると、英国のバイオテクノロジー企業Synairgen社の1型IFN(インターフェロンβ)吸入薬SNG001を使用したCOVID-19入院患者が重体になる割合はプラセボに比べて79%低く、回復した患者の割合はプラセボを2倍以上上回りました。わずか100人ほどの試験は小規模過ぎて決定的な結果とはいい難いと用心する向きもありますが、SNG001は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)食い止めに大いに貢献する吸入薬となりうると試験を率いた英国・サウサンプトン大学の呼吸器科医Tom Wilkinson教授は言っています5)。Synairgen社を率いるCEO・Richard Marsden氏にとっても試験結果は朗報であり、COVID-19入院患者が酸素投与から人工呼吸へと悪化するのをSNG001が大幅に減らしたことを喜びました。投資家も試験結果を歓迎し、Synairgen社の株価は試験発表前には36ポンドだったのが一時は236ポンドへと実に6倍以上上昇しました。この記事を書いている時点でも200ポンド近くを保っています。Synairgen社は入院以外でのSNG001使用も視野に入れており、COVID-19発症から3日までの患者に自宅でSNG001を吸入してもらう初期治療の試験をサウサンプトン大学と協力してすでに英国で始めています6)。米国では1型IFNではなく3型IFN(Peginterferon Lambda-1a)を感染初期の患者に皮下注射する試験がスタンフォード大学によって実施されています7)。インターフェロンは感染の初期治療のみならず予防効果もあるかもしれません。中国・湖北省の病院での試験の結果、インターフェロンを毎日4回点鼻投与した医療従事者2,415人全員がその投与の間(28日間)COVID-19を発症せずに済みました8)。インターフェロンはウイルスの細胞侵入に対してすぐさま強烈な攻撃を仕掛ける引き金の役割を担います。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はどうやらインターフェロンを抑制して複製し、組織を傷める炎症をはびこらせます4,9)。ただしSARS-CoV-2がインターフェロン活性を促すという報告10)や1型IFN反応が重度COVID-19の炎症悪化の首謀因子らしいとする報告11)もあり、インターフェロンは場合によっては逆にCOVID-19に加担する恐れがあります。米国立衛生研究所(NIH)のガイドライン12)では、重度や瀕死のCOVID-19患者へのインターフェロンは臨床試験以外では使うべきでないとされています。2003年に流行したSARS-CoV-2近縁種SARS-CoVや中東で依然として蔓延するMERS-CoVに感染したマウスへのインターフェロン早期投与の効果も確認されており13,14)、どの抗ウイルス薬も感染初期か場合によっては感染前に投与すべきと考えるのが普通だとNIHの研究者Ludmila Prokunina-Olsson氏は言っています15)。参考1)Zhou Q, et al. Front Immunol. 2020 May 15;11:1061.2)Hung IF, et al. Lancet. 2020 May 30;395:1695-1704.3)Synairgen announces positive results from trial of SNG001 in hospitalised COVID-19 patients / GlobeNewswire 4)Can boosting interferons, the body’s frontline virus fighters, beat COVID-19? / Science 5)Inhaled drug prevents COVID-19 patients getting worse in Southampton trial 6)People with early COVID-19 symptoms sought for at home treatment trial 7)OVID-Lambda試験(Clinical Trials.gov)8)An experimental trial of recombinant human interferon alpha nasal drops to prevent coronavirus disease 2019 in medical staff in an epidemic area. medRxiv. May 07, 2020 9)Hadjadj J, et al. Science. 2020 Jul 13:eabc6027.10)Zhuo Zhou, et al. Version 2. Cell Host Microbe. 2020 Jun 10;27(6):883-890.11)Lee JS, et al. Sci Immunol. 2020 Jul 10;5:eabd1554.12)Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Treatment Guidelines,NIH 13)Channappanavar R, et al. Version 2. Cell Host Microbe. 2016 Feb 10;19:181-93. 14)Channappanavar R, et al. J Clin Invest. 2019 Jul 29;129:3625-3639.15)Seeking an Early COVID-19 Drug, Researchers Look to Interferons / TheScientist

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バクスミー:重症低血糖治療薬に初の点鼻粉末剤が登場

重症低血糖治療の現状日本では、年間約2万件の重症低血糖が発生していると推計されている1)。重症低血糖では、急激に血糖値が低下し自己対処が間に合わないケースや、自覚症状なく意識消失に至るケースがあり、回復には家族など看護者の援助が必要となる。重症低血糖を来した際の緊急処置は、これまでグルカゴン注射が主流だった。しかしグルカゴン注射は、消毒、グルカゴンの溶解、溶解液の注入、と注射に至るまでに煩雑な処置を要することから、より簡便に使用できるグルカゴン製剤が求められていた。迅速な投与が可能なグルカゴン点鼻粉末剤2020年3月、グルカゴンの点鼻粉末剤であるバクスミー(一般名:グルカゴン)が製造販売承認を取得した。注射剤以外の重症低血糖治療薬としては初の選択肢となる。重症低血糖の患者に対し、家族などの看護者が薬剤を鼻腔内に噴射して使用する。薬剤は点鼻容器に充填されており、調整作業が不要なため迅速な投与が可能だ。マネキンを用いた薬剤の摸擬投与試験によると、投与完了までの平均時間はグルカゴン注射剤で約207秒に対し、バクスミーで約24秒との報告もある2)。また、バクスミーは室温(1~30℃)で持ち運びができることも特徴の一つだ。グルカゴン筋注に対する非劣性と忍容性を確認 バクスミーの有効性および安全性は、1型糖尿病患者33例、2型糖尿病患者39例を対象とした国内第III相臨床試験で検討された。主要評価項目はインスリン誘導による低血糖からの回復率であり、バクスミー3mgの鼻腔投与群とグルカゴン注射剤1mgの筋肉内投与群が比較された。その結果、いずれの群においても30分以内の低血糖回復率が100%であり、バクスミーのグルカゴン注射剤に対する非劣性が確認された(非劣性マージン10%)。なお回復までの時間の平均値はそれぞれ12.0分、11.0分だった。 また本試験の副作用発現率は、バクスミー投与、グルカゴン注射剤投与でそれぞれ16.9%、12.9%であり、忍容性も確認された。もしもの場合に備えを重症低血糖に陥った場合、痙攣や脳障害などの重篤な症状、また死亡リスクにもつながる可能性がある。そのため低血糖リスクを減らすことはもとより、低血糖を来した際、適切に処置できるよう備えておくことが重要だ。重症低血糖治療薬にバクスミーが加わったことにより、重症低血糖のリスクやその対処法について、より患者を指導しやすくなる可能性を秘めている。その結果、重症低血糖の軽減、さらには早期のインスリン導入の促進につながることが期待できる。1)日本糖尿病学会-糖尿病治療に関連した重症低血糖の調査委員会-. 糖尿病. 2017;60:826-842.2)Aranishi T, et al. Diabetes Ther. 2020;11:197-211.

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吸入ステロイド使用者、認知症リスクが35%低い

 アルツハイマー病の病理学的カスケードにおいて神経炎症が重要な役割を示すことが報告され、神経炎症が治療標的として認識されてきている。今回、ドイツ・ロストック大学のMichael Nerius氏らが、ドイツにおける縦断的健康保険データを用いて認知症リスクに対するグルココルチコイドの影響を検討したところ、グルココルチコイドの使用が認知症リスクの低下に関連していることが示唆された。Journal of Alzheimer's disease誌オンライン版2019年11月18日号に掲載 本研究では、50歳以上の17万6,485人のベースラインサンプルにおいて、ドイツ最大の健康保険会社の2004~13年の健康保険データを使用し、グルココルチコイド治療と認知症の発症率との関連を調べた。Cox比例ハザードモデルにより、性別、年齢、認知症の主要な危険因子として知られている併存疾患を調整後、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。さらに、グルココルチコイド治療について投与経路および治療期間で層別化して検討した。 主な結果は以下のとおり。・認知症ではない17万6,485人のうち、2013年の終わりまでに1万9,938人が認知症と診断された。・認知症発症リスクは、グルココルチコイド非使用者に比べ、使用者で有意に低かった(HR:0.81、95%CI:0.78~0.84)。・投与経路別にみると、吸入グルココルチコイドの使用者で最もリスクが低く(HR:0.65、95%CI:0.57~0.75)、次いで点鼻(HR:0.76、95%CI:0.66~0.87)、その他(HR:0.84、95%CI:0.80~0.88)と経口(HR:0.83、95%CI:0.78~0.88)の使用者で低かった。・長期使用者と短期使用者でリスク減少に差はなかった。 著者らは「グルココルチコイドが神経炎症にプラスの影響を与え、人々から認知症から守ることができるかどうかを判断するには、前向き臨床試験が必要」としている。

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国内初1日1回経口投与の子宮筋腫症状治療薬「レルミナ錠40mg」【下平博士のDIノート】第25回

国内初1日1回経口投与の子宮筋腫症状治療薬「レルミナ錠40mg」今回は、GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)アンタゴニスト製剤「レルゴリクス錠(商品名:レルミナ錠40mg)」を紹介します。本剤は、フレアアップ現象を生じることなく子宮筋腫に基づく諸症状を改善する国内初の経口薬です。<効能・効果>本剤は、子宮筋腫に基づく諸症状(過多月経、下腹痛、腰痛、貧血)の改善の適応で、2019年1月8日に承認され、2019年3月1日より発売されています。また、2021年12月に「子宮内膜症に基づく疼痛の改善」の適応が追加されました。<用法・用量>通常、成人にはレルゴリクスとして40mgを1日1回食前に経口投与します。なお、初回投与は月経周期1~5日目に行います。本剤の投与によって、エストロゲン低下作用に基づく骨塩量の低下がみられることがあるので、6ヵ月を超える投与は原則として行われません。<副作用>国内第III相試験で認められた主な副作用は、不正子宮出血(46.8%)、ほてり(43.0%)、月経異常(15.5%)、頭痛、多汗、骨吸収試験異常(各5%以上)などでした。なお、重大な副作用としてうつ状態(1%未満)、肝機能障害(頻度不明)、狭心症(1%未満)が認められています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、下垂体に作用して卵巣からの女性ホルモンの分泌を低下させることで、子宮筋腫に基づく過多月経、下腹痛、腰痛、貧血などの症状を改善します。2.初回は、月経が始まった日から5日目までの間に服用を開始してください。3.食後の服用では薬の効き目が低下するため、食事の30分以上前に服用してください。4.この薬を服用している間はホルモン性避妊薬以外の方法で避妊をしてください。5.長期に使用すると骨塩量が低下することがあるため、日ごろから適度な運動を心がけ、カルシウムやビタミンD、ビタミンKを含む食材を積極的に取りましょう。6.気分が憂鬱になる、悲観的になる、思考力が低下する、眠れないなど、うつ様の症状が現れた場合にはご連絡ください。7.女性ホルモンの低下によって、ほてり、頭痛、多汗などの症状が現れることがあります。症状がつらいときはご相談ください。<Shimo's eyes>従来、子宮筋腫の薬物療法としてGnRHアゴニストであるリュープロレリン酢酸塩(商品名:リュープリン注)やブセレリン酢酸塩(同:スプレキュア皮下注/点鼻液)などが用いられています。GnRHアゴニストは、下垂体前葉にあるGnRH受容体を継続的に刺激することで本受容体を減少させ、卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体形成ホルモン(LH)の分泌を抑制させます。投与開始初期にはFSHやLH分泌が一過性に増加するため、不正性器出血や月経症状の増悪などのフレアアップ現象が生じやすいことが知られています。これに対しGnRHアンタゴニスト製剤である本剤は、GnRH受容体を選択的に阻害することでFSHとLHの分泌を抑制します。このため、投与開始初期であってもフレアアップ現象を生じることなく女性ホルモンであるエストラジオールおよびプロゲステロンの産生を低下させます。本剤は1日1回服用の経口薬であり、子宮筋腫に伴う諸症状に悩んでいる患者さんのアドヒアランスとQOLの向上が期待できます。投与に当たっては、妊娠中や授乳中でないかを確認するとともに、服用タイミングなどの指導をしっかり行ってこまめに経過を観察するようにしましょう。※2021年12月の添付文書改訂に伴い、一部内容の修正を行いました。

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