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マリンスポーツ好きの患者、要注意のアレルゲンは?【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】第6回

マリンスポーツ好きの患者、要注意のアレルゲンは?講師富山大学医学部 小児科 病院特別助教 村上 将啓 氏【今回の症例】38歳の男性。既往歴は特記事項なし。3ヵ月前にアナフィラキシーのため医療機関を受診したが、原因食物は特定されず、対症療法のみで経過観察されていた。以降も夜に呼吸困難感、蕁麻疹を生じる発作を起こすことがあった。何回かの発作を経験するうちに、大豆製品は日常的に摂取しているものの、納豆を朝食に摂取した日の夜に症状が出現していることに気付き、精査目的に受診した。1.次に行う検査として、診断において最も有効なのはどれか?a)尿検査b)皮膚テストc)血液検査d)運動誘発試験2.当症例は、次のどれと関連が深いと考えられるか?a)魚介類アレルギーb)卵アレルギーc)クラゲ刺傷d)花粉症

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コロナ5類移行後の院内感染対策の現状は?/医師1,000人アンケート

 5月8日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染症法上の位置付けが「5類感染症」に移行となったが、医療機関ではその前後の過渡期に、これまで継続してきたさまざまな院内感染対策の緩和について議論されていた。5類に移行して約1ヵ月経過し、新規コロナ感染者は全国的に増加傾向にあり、院内感染対策をどこまで緩和するか、今なお難しい判断が迫られている。 病床の有無やコロナ診療状況など条件の異なる医療機関において、院内感染対策の現状や、抱えている課題を把握するため、病院を20床以上、診療所を20床未満と定義し、病院522人、診療所502人の会員医師1,024人を対象に『病院・診療所別 新型コロナ5類移行後の院内感染対策アンケート』を5月30日に実施した。5類移行後、病院93%、診療所72%がコロナ診療している 「Q1. 勤務先の医療機関における、5類移行前後での新型コロナの診療状況」という設問では、「5類移行の前後で、いずれもコロナ診療を受け付けている」「5類移行前は受け付けていなかったが、移行後は受け付けている」「5類移行前は受け付けていたが、移行後は受け付けていない」「5類移行の前後で、いずれも受け付けていない」の4つの選択肢から最も当てはまるものを聞いた。 病院では、84%がいずれの時期もコロナ診療を受け付けており、9%が5類移行後に新たに受け付けるようになった。診療所では、56%がいずれの時期もコロナ診療を受け付けており、16%が移行後に新たに受け付けるようになった。なお本調査では、コロナ診療の割合の低い眼科、皮膚科、泌尿器科といった診療科も含まれている。コロナ5類移行後、PPE着用は感染症疑い患者の診察時のみが多数 「Q2. 個人防護具(PPE)の着用について」という設問では、「勤務中は常にPPEを着用している」「感染症疑いの患者の診察時のみPPEを着用している」「PPEを着用していない」の3つの選択肢から最も当てはまるものを聞いた。 コロナ診療している病院では、常にPPE着用している割合は12%で、79%が感染症疑いの患者の診察時のみ着用していた。コロナ診療している診療所でも、常にPPE着用している割合は12%で、64%が感染症疑いの患者の診察時のみ着用していた。コロナ診療をしていない医療機関でも、病院の49%、診療所の33%が感染症疑いの患者の診察時のみPPE着用し、診療所の5%が常に着用していると回答した。 「Q3. 診療中の手指消毒のタイミングについて」という設問では、「診療室や病室に入るとき」「1人の診察ごと」「処置や検査を行ったとき」のそれぞれの場合に対して、病院では約60%の医師がいずれの場合も手指消毒を行っているとした。診療所では、45%が「診療室や病室に入るとき」、約55%が「1人の診察ごと」「処置や検査を行ったとき」に手指消毒を行っていると回答した。コロナに罹患した職員の療養期間、病院と診療所で傾向の差 「Q4. 勤務先の医療機関での、コロナに罹患した医療従事者の療養期間は何日か」という設問では、医療機関の規模とコロナ診療の有無で、結果に若干の傾向の差が出た。最も慎重な結果だったのはコロナ診療している病院であり、4日以下が8%、5日が56%、7日が24%、8日以上が10%であった。コロナ診療していない病院では、4日以下が8%、5日が64%、7日が21%、8日以上が5%であった。 診療所はコロナ診療の有無にかかわらずほぼ同等で、コロナ診療している場合は、4日以下が13%、5日が63%、7日が17%、8日以上が2%。コロナ診療していない場合は、4日以下が17%、5日が62%、7日が16%、8日以上が3%であった。病院と比べて診療所のほうが、4日以下の割合が約2倍多くなっている一方で、7日、8日以上の割合は病院のほうが多かった。 「Q5. 入院予定患者に対する事前のコロナスクリーニング検査の実施状況について」という設問では、病院では、PCR検査を実施しているのが31%、抗原検査を実施しているのが27%、検査は行わず、事前に診察でコロナの診断を行っているのが9%、事前スクリーニング検査は実施していないとしたのが29%となり、結果が拮抗していた。コロナ院内感染が広がった際の責任の所在に課題感 「Q6. 院内の感染対策を緩和していくうえで、判断に迷っていること、難しいと感じること」という設問では、以下のような意見が挙げられ、新型コロナに対する人々の危機感の薄れとは裏腹に、医療機関がさまざまな課題を抱えていることが浮き彫りになった。患者がコロナ感染対策せずに来院する・ウイルス感染は依然として続いているのに、あたかも、なくなったかのごとく振る舞う患者が結構みられるようになった。(診療所・内科・60代)・マスクをしない患者さんがよく来るようになった。(診療所・皮膚科・40代)コロナ院内感染・クラスター・感染が広がった際の責任の所在。(病院・呼吸器外科・30代)検査・入院時に陰性でも、後に感染が判明することがある。(病院・糖尿病・代謝・内分泌内科・30代)・明らかにコロナ感染症だと思われる方の中には、検査を希望されない方が一定の割合で存在する。(診療所・内科・60代)・以前は患者負担なく検査できたのでやりやすかったが、今はそうではないので困る。(診療所・消化器内科・40代)動線・ゾーニング・現状は時間分離で診療を行っているが、一般患者さんとの分離が十分できている保証はない。(診療所・内科・70代以上)面会・新型コロナ感染者が1人でも院内に発生した場合に、面会制限をしたほうがいいのか、判断に困っています。(病院・内科・50代)PPE・どこまでPPEを緩めるか。(診療所・内科・50代)職員への対応・職員の同居人に発熱者が出ても新型コロナかどうか不明の場合の出勤調整の判断に迷う。(診療所・内科・60代)・咳嗽が残った従事者の勤務。(診療所・内科・60代)コロナ感染対策の基準がわかりづらい・適正な指針が見当たらない。(病院・消化器内科・50代)・高齢者が多いため緩和しにくい。(診療所・内科・50代)・最近また新型コロナウイルス感染患者が増えてきた。(病院・外科・40代)・コロナ以外にもインフルエンザや麻疹、結核などのルールアウトもしておらず、アウトブレイクに対して一抹の不安はある。(病院・麻酔科・50代)・地域・全国のコロナ患者の状況、ベッドがどれくらい埋まっているかの情報・統計が得られなくなり、院内の感染対策を緩めていい時期が不明瞭。(診療所・内科・50代)アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。5類移行後の院内感染対策はどうしている?/医師1,000人アンケート なお、ケアネットライブでは『アフターコロナの院内感染対策・新ルール』を6月21日(水)20時からライブ配信する。聖路加国際病院 感染管理担当の坂本 史衣氏が、最新の知見を踏まえ、今後のコロナ院内感染対策で徹底すべきこと、緩和してもよいことなど、実践例を交えながら解説する。本講義はCareNet.com会員であれば無料で視聴できる。

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第151回 はしか感染の拡大、ワクチン接種率低下に警鐘/国立感染症研究所

<先週の動き>1.はしか感染の拡大、ワクチン接種率低下に警鐘/国立感染症研究所2.骨太方針の原案、賃上げ継続と少子化対策を強化/経済財政諮問会議3.急性期充実体制加算未届け出の病院、手術実績が主な理由と判明/中医協4.新マイナンバーカード導入と母子健康手帳の統合を決定/内閣府5.ゲノム医療法が成立、ゲノム解析による新薬開発を促進へ/国会6.初の経口人工妊娠中絶薬、オンライン診療では処方不可、入院可能な有床施設で使用を/厚労省1.はしか感染の拡大、ワクチン接種率低下に警鐘/国立感染症研究所新型コロナウイルス感染の沈静化とともに、はしか感染が各地で相次いでいることが報じられている。国立感染症研究所などの報告によると、今年1月から6月1日までの感染者数は計11人に達しており、去年の報告者数を上回り、注意喚起を行っている。国内土着のウイルスの報告ではないため、新型コロナウイルスの水際対策の緩和により、海外から入国してきた渡航者によって持ち込まれたウイルスが広がったとされている。はしかは非常に感染力が強く、免疫がない大人でも重い症状が出ることがある。症状としては、高熱や発疹が現れ、肺炎や中耳炎を合併することもあり注意が必要。特別な治療薬はなく、先進国でも千人に1人が死亡すると言われ、感染は空気感染や飛沫感染、接触感染によって広がる。わが国ではワクチン接種が進んでおり、世界保健機関(WHO)も「排除状態」と認定しているが、入国制限の緩和に伴い、茨城、東京、神奈川、大阪、兵庫などで感染者が報告されている。専門家は接種率の低下と感染者増加の関連性を指摘し、ワクチン接種を呼びかけている。とくに1回目の接種率が93.5%、2回目の接種率が93.8%であり、前年度より減少していることが指摘され、未接種者への対応が急がれる。参考1)【医療機関のみなさまへ】麻しん発生状況に関する注意喚起[2023年5月23日現在](国立感染症研究所)2)はしか感染、各地で相次ぐ 専門家「大人でも重い症状」(日経新聞)3)大阪市で2人のはしか感染確認 2020年以来(毎日新聞)4)はしか急増中!ワクチン2回打ってる?大人世代は特に要注意!23歳~51歳に迫る危機(毎日放送) 2.骨太方針の原案、賃上げ継続と少子化対策を強化/経済財政諮問会議政府の経済財政諮問会議は7日、「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太方針)の原案を示した。新型コロナウイルス感染症の対応から一転して、財政健全化への姿勢を強調する内容となった。また、長年据え置かれてきた賃金の引き上げを持続的なものとし、中間層の復活を促すために、リスキリング支援や税制対応策などの具体策も含まれている。さらに子ども・子育て政策も抜本的に強化され、少子化の傾向を反転させる政策の充実を図るとしている。医療面では、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類に変更されたことに伴い、医療体制、公費支援など段階的に通常体制へ移行を進めるとともに、来年度の診療報酬と介護報酬の同時改定で、物価高騰や賃金の引き上げへの対応、患者負担の抑制を踏まえ、「必要な対応」を取る方向性を盛り込んだ。そのほか、医薬品については、革新的な医薬品の開発強化などイノベーションを推進する一方、長期収載品などの自己負担のあり方の見直し、バイオシミラーの使用促進、後発医薬品などの安定供給確保、後発医薬品の産業構造の見直しを盛り込んでいる。一方、財政の健全性を保つために黒字化目標は維持しつつ、中期的な経済財政の枠組み作りのための検証も行われる。この原案は与党との調整を経て、今月中に閣議決定される予定。参考1)経済財政運営と改革の基本方針2023(仮称)原案(経済財政諮問会議)2)物価高と患者負担抑制への対応を併記、骨太原案 24年度のトリプル改定で(CB news)3)「骨太の方針」原案 “賃上げ持続” “少子化反転へ対策強化”(NHK)4)コロナで緩んだ財政を「平時に」 骨太の原案、社会保障費減に懸念も(朝日新聞)3.急性期充実体制加算未届け出の病院、手術実績が主な理由と判明/中医協厚生労働省は、6月8日に中央社会保険医療協議会の「入院・外来医療等の調査・評価分科会」を開催した。この中で、令和4年度に行われた実態調査の結果報告が行われ、2022年度の診療報酬改定で新設された施設基準の「急性期充実体制加算」を届け出ていない病院が、取得できない理由として「手術実績」が主な理由であることが明らかにされた。届け出をしていない理由について病床規模別に集計したところ、200床以上の病院で手術実績を挙げる割合が最も高かった。また、急性期充実体制加算の未取得の400床以上の病院では「門内薬局、敷地内薬局」が設置されているためと回答する施設もあった。急性期充実体制加算は、手術件数の実績や感染防止対策、早期回復などが要件とされており、加算を届け出ている病院の方が入院期間が短く、病床利用率が高い傾向もみられた。急性期充実体制加算と総合入院体制加算とは、一方の算定しか認められないため、「どちらの加算を取得すべきか」を悩む病院も少なくないが、より点数の高い「急性期充実体制加算」に移行を選択して、「総合入院体制加算」で要件となっていた分娩対応・精神科対応を廃止する病院が一部にあることが問題視されている。参考1)令和5年度 第2回 入院・外来医療等の調査・評価分科会(厚労省)2)急性期充実加算、届け出の課題「手術実績」「200-399床」「400床以上」でトップに(CB news)3)スーパーICU評価の【重症患者対応体制強化加算】、「看護配置に含めない看護師2名以上配置」等が大きなハードル-入院・外来医療分科会(2)(Gem Med)4.新マイナンバーカード導入と母子健康手帳の統合を決定/内閣府6月9日に政府はデジタル施策に関する「重点計画」を閣議決定した。重点計画では、2026年中にプライバシーに配慮した新しいマイナンバーカード(マイナカード)を導入し、今年度中に母子健康手帳とマイナカードの一体化を一部自治体で始めることが盛り込まれているほか、マイナンバー制度におけるトラブルに対応するための安全対策も取り入れられている。また、各種証明書との一体化も計画されており、健康保険証は2024年秋に廃止され、運転免許証の機能もマイナカードに統合される。今後は、マイナカードの利用機会を拡大し、トラブルに対しては万全の対策を実施する。さらに、オンラインでの本人確認にもマイナカードを使用する方針が示された。参考1)令和5年度「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(デジタル庁)2)今回の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の主なポイント(同)3)母子手帳、免許証…マイナとの一体化が続々 「重点計画」閣議決定(朝日新聞)4)マイナカード利用機会拡大 26年に新カード発行、閣議決定(東京新聞)5.ゲノム医療法が成立、ゲノム解析による新薬開発を促進へ/国会6月9日、遺伝情報を活用したゲノム医療の推進と差別防止を目指す「ゲノム医療法」が与野党の賛成多数により参院本会議で可決・成立した。この法律は遺伝情報に基づく治療の推進と差別の防止を目指しており、ゲノム医療の研究と開発を進め、遺伝情報や健康情報の管理・活用の基盤整備を行う。法律には、医師や研究者がゲノム情報の取得や管理に関して守るべき指針も含まれている。ゲノム医療は、個人の遺伝情報を解析し、病気の診断や最適な治療法や薬の選択に役立つ一方、保険や雇用、結婚などでの差別や不利益の懸念があり、とくにがん患者の40%以上が懸念を示しており、3%以上が遺伝情報による差別的な扱いを経験したと回答している。遺伝情報に基づく差別などに対しては、罰則のある法律が必要とする意見もあり、具体的な事例や罰則の必要性について検討が進められることが期待されている。参考1)良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律案(参議院)2)ゲノム医療法成立…難病治療・遺伝差別防止 国費投入(読売新聞)3)ゲノム医療法 参院本会議で可決・成立 差別防止なども掲げる(NHK)6.初の経口人工妊娠中絶薬、オンライン診療では処方不可、入院可能な有床施設で使用を/厚労省厚生労働省は、国内で初めて承認された経口の中絶薬「メフィーゴパック」(一般名:ミフェプリストン/ミソプロストール)について、母体保護法指定医師の確認下での投与が必要であり、病院や有床診療所での使用が必要であると発表した。この薬はオンライン診療では処方できず、緊急対応が可能な施設で使用する必要がある。厚労省は適正な使用体制を確立するまで、「入院可能な有床施設」での使用を求めている。また、医療現場に対しては、適切な管理と医療連携体制の確立を呼びかけている。この経口中絶薬には重大な副作用のリスクがあり、使用者は下腹部痛、嘔吐、重度の子宮出血、感染症などに注意する必要がある。厚労省は使用者向けに留意事項を示し、オンライン診療ではなく医療機関に来院する必要があることを強調している。参考1)いわゆる経口中絶薬「メフィーゴパック」の適正使用等について(厚労省)2)ミフェプリストン及びミソプロストール製剤の使用にあたっての留意事項について(同)3)初の経口人工妊娠中絶薬、厳格運用で慎重スタート(産経新聞)4)経口の中絶薬「メフィーゴパック」、母体保護法指定医師の確認下で、病院・有床診での投与が必要、オンライン診療で処方不可?厚労省(Gem Med)

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第48回 「全ワクチン拒否」の医師は勤務可能?

新型コロナはともかく麻疹などは?Unsplashより使用某組合消防本部で、新型コロナワクチン接種を受けなかった30代の職員に対し、「接種拒否者」として廊下脇で業務をさせていたことが報道されました。接種したくないということで打たなかった人を「ワクチン拒否者」と表現することは字面としては間違ってはいないのですが、日本語としてはトゲのある言葉だなと感じます。さて、私たち医療従事者においてもワクチン接種率は当然ながら100%ではありません。副反応がかなり強く出てしまい、1回目で終了した人もいれば、アレルギー体質で最初から接種を希望しなかった人もいます。3回目接種以降の接種率は段階的に低下しており、私の知り合いもフルで接種を続けている人は全体の半数くらいです。新型コロナワクチンに限らず、患者さんと接触する以上、そのほかの感染症に対する免疫を有しているかどうかは病院の安全を守る上でも重要になります。具体的には、麻疹風疹、水痘、ムンプス、B型肝炎です。私が医学生の頃は、これらの接種歴・罹患歴がなければ臨床実習はできなかったと記憶していますが、現在も法的には解釈が難しいところがあります。ワクチン未接種を理由とした不利益は法的に禁止麻疹風疹など、ありとあらゆるワクチンが未接種の状態で、現場で働きたいという医師がいた場合、法的には可能でも現実的にはちょっと厳しいかもしれません。接種しないと働けないとする法的根拠は明示できず、むしろ雇用者は従業員に対して「ワクチン接種拒否を理由とした不利益がないように」扱われるべきとされています(予防接種法第9条)。―――つまり、話し合いや職場配置転換などで対応するしかないのが現状です。かといって、正当な理由でない「自然派志向」によるワクチン未接種で、それによって患者に感染を広げてしまったような場合、そちらの責任のほうが問われかねません。ただ、その医師から感染したというコンタクトトレースができない場合、そのような責任に至ることもないでしょう。クリニックを経営している医師の中に、新型コロナ以外のワクチンも含めて強固なワクチン反対派もいます。自分が経営者であることから、現状は法的な対応が難しいと思われます。

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年代ごとの麻疹風疹の予防接種制度

麻疹含有ワクチンの定期予防接種と年齢1972年9月30日以前に生まれた方は定期接種の機会がありません。任意接種としてMR(麻疹風疹混合)ワクチン、麻疹ワクチンの接種が可能です。1回0回 個別接種2回個別接種※※ 1990年(平成2年)4月2日~2000年(平成12年)4月1日生まれは特例措置で中学1年、高校3年生相当年齢に2回目接種(2回目を受けていない人もいる)出生 1歳小学校入学(就学前1年間に接種)幼児期に医療機関で個別接種(1回)1990年(平成2年)4月2日生まれ0回1972年(昭和47年)40歳10月1日生まれ厚生労働省. 第4回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会配付資料(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000015044.html)より作成Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.風疹含有ワクチンの定期予防接種と年齢1979年4月1日以前に生まれた男性と1962年4月1日以前に生まれた女性は定期接種の機会がありません。定期接種対象の年齢の方以外も任意接種としてMR(麻疹風疹混合)ワクチン、風疹ワクチンの接種が可能です。男性1回0回 個別接種2回個別接種※※ 1990年(平成2年)4月2日~2000年(平成12年)4月1日生まれは特例措置で中学1年、高校3年生相当年齢に2回目接種(2回目を受けていない人もいる)女性出生 1歳小学校入学(就学前1年間に接種)幼定期接種対象児2019年~2025年3月期抗体価の低い方が対象に 中学生接個(HI抗体価(1:8以下)種 別 の時に0回率 接 医療機関で低中学生の時に個別接種種い学校で( (1回)集団接種1 接種率低い(1回)回)接種率高い1990年(平成2年)4月2日生まれ1979年(昭和54年)40歳4月2日生まれ1987年(昭和62年)10月2日生まれ1962年(昭和37年)4月2日生まれ国立感染症研究所 感染症疫学センター. 風疹に関する疫学情報:2023年4月26日現在(https://www.niid.go.jp/niid/ja/rubella-m-111/rubella-top/2145-rubella-related/8278-rubella1808.html)より改変Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

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麻疹風疹の違いは?

麻疹風疹の違いは?麻疹(はしか)風疹(3日はしか)原因ウイルス 麻疹ウイルス(Paramyxovirus科Morbillivirus属)風疹ウイルス(Togavirus科Rubivirus属)感染経路空気感染、飛沫感染、接触感染感染力が非常に強い飛沫感染感染力が強い(1人の感染者が12~17人感染させる)(1人の感染者が5~7人感染させる)潜伏期間10~12日間14~21日間症状発熱(38℃前後、発疹期は39.5℃以上)、上気道炎症状(せき、鼻みず、のどの痛み)、結膜炎症状(結膜充血、目やに、まぶしさ)、消化器症状(下痢、腹痛)、発疹、コプリック斑(口腔内の白色の小斑点)など発熱(約半数)、発疹、リンパ節の腫れが3つの特徴的な症状とされる関節炎が出る場合もある(成人の5~30%)麻疹より症状は軽く、無症状が15~30%注意が必要な合併症肺炎、脳炎、亜急性硬化性全脳炎(麻疹の二大死因は肺炎と脳炎)中耳炎、クループ症候群(喉頭炎、喉頭気管支炎など)、心筋炎など先天性風疹症候群(妊娠20週までの妊婦さんが感染すると、生まれた子が発症して、先天異常など、さまざまな症状があらわれる)血小板減少性紫斑病、急性脳炎分類5類感染症国立感染症研究所. 風疹とは(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/430-rubella-intro.html)国立感染症研究所. 麻疹とは(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/518-measles.html)より作成Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.麻疹風疹の発生状況(2023年5月24日現在)麻疹風疹(例)(例)3,0003,0002,5002,5002,0002,0001,5001,5001,000165 18602,2981,0007445002,9415002791066126129102016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023年101121552016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023年国立感染症研究所. 感染症発生動向調査(IDWR):2023年5月24日現在(https://www.niid.go.jp/niid/ja/hassei/575-measles-doko.html)(https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ha/rubella.html)より作成Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第148回 新型コロナ定点感染者数を初公表、緩やかな増加傾向/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナ定点感染者数を初公表、緩やかな増加傾向/厚労省2.国内で麻疹患者を複数確認、国内でも流行を懸念/厚労省3.GLP-1ダイエットの健康被害、日本医師会も問題視4.国立健康危機管理研究機構の設立へ、衆議院を通過/国会5.高度急性期偏重の診療報酬改定で、2次救急医療に悪影響か/中医協6.次世代医療基盤法改正案が成立、医療ビッグデータの利用促進へ/内閣府1.新型コロナ定点感染者数を初公表、緩やかな増加傾向/厚労省厚生労働省は、5月19日に定点把握による新型コロナウイルス感染症の感染状況データを初めて公表した。全国の約5,000の医療機関から報告された1週間の感染者数は1万2,922人で、1医療機関当たりの平均患者数は2.63人だった。東京、神奈川、埼玉、千葉の推移をみると、都道府県ごとの感染者数は増加しており、特に沖縄県が最も多い6.07人だった。厚労省はこれまでの感染者数と比較して、緩やかな増加傾向が続いていると分析している。また、新たに始められた「新規入院者数」の発表では、1週間で2,330人の新規入院があり、前週と比べてほぼ横ばい。厚労省では、今後も定点把握を通じて感染状況を把握し、対策を進める方針。(参考)新型コロナウイルス感染症サーベイランス週報:発生動向の状況把握(国立感染症研究所)新型コロナ「緩やかな増加傾向」 厚労省が定点把握で初発表(東京新聞)コロナ定点把握 5類変更後初めて公表 新規患者数 8-14日の1週間分 厚労省(CB news)新型コロナ「定点把握」全国の感染状況データ 初の発表 厚労省(NHK)2.国内で麻疹患者を複数確認、国内でも流行を懸念/厚労省感染力が強い「麻疹」の感染者が国内で複数確認され、厚生労働省が注意喚起を行っている。今月に入って確認された感染者は、インドから帰国した30代男性と、東京都在住の男女2人で、同じ新幹線の車内にいたことで感染経路が特定されている。海外との往来の増加により、国内での感染例が増加する可能性が懸念されており、厚労省は海外渡航者へ注意喚起とワクチン接種を呼びかけている。麻疹は非常に感染力が強く、免疫力のない人が感染するとほぼ100%発症する。感染経路は空気感染のため、手洗いやマスクでは予防できない。麻疹の治療は対症療法であり、ワクチン接種が有効とされている。しかし、国内でのワクチン接種率は目標の95%を下回っており、国内での流行の懸念が高まっている。加藤厚生労働大臣は、5月16日の記者会見で麻疹の症状を有する場合は麻疹を疑い、医療機関を受診のための移動の際は公共交通機関の利用を控えるよう呼び掛けている。厚労省は、自治体や医療機関に対し、麻疹に対する注意喚起を行い、同省のホームページやSNSなどで国民に向けた情報の提供をしている。(参考)加藤大臣会見概要[令和5年5月16日](厚労省)国内での麻しん流行を懸念、発熱や発疹のある者は麻しんを疑った行動・診療を!医療従事者は2回の予防接種歴確認を-厚労省(Gem Med)「麻しん疑われる時は受診前に医療機関に連絡を」相次ぐ感染者の確認を受け 加藤厚労相(CB news)はしか、国内で複数の感染者確認 同じ新幹線車両に乗り合わせ(朝日新聞)はしか相次ぎ、厚労相「症状あれば交通機関の利用控えて」…感染者が不特定多数と接触か(読売新聞)3.GLP-1ダイエットの健康被害、日本医師会も問題視糖尿病治療薬のセマグルチド(商品名:リベルサス)が「飲むだけで痩せられる薬」として処方され、健康被害が相次いでいることが5月18日に一般報道された。ダイエット目的でのGLP-1受容体作動薬の処方は、美容クリニックやオンラインクリニックで行われている。しかし、吐き気やめまいなどの副作用が出現するほか、急性膵炎で入院する人も報告されている。本来、セマグルチドは糖尿病の治療薬であり、ダイエットの薬としての厚生労働省の承認はなく、適応外使用となる。オンライン診療での医師の診察は短時間で行われ、医師とは対面もなく検査もされないまま処方薬が自宅へ配送されており、TwitterなどのSNSでも副作用の訴えが多く寄せられている。現在、美容クリニックやオンライン診療での糖尿病の薬の処方は自由診療で行われているため、現状では規制が難しい状況であり、日本医師会もこれを問題視し、繰り返しこの行為の問題を表明している。同会では今後、処方を正しく行うための法整備が必要と訴えている。(参考)「飲むだけで痩せられる」糖尿病の薬を“痩せる薬”として処方 副作用で吐き気やめまいなど健康被害相次ぐ…入院する人も(TBS)自由診療における糖尿病治療薬の不適切使用に対する見解示す(日医)自由診療におけるオンライン診療の不適切事例について(医薬品の適応外使用)(同)4.国立健康危機管理研究機構の設立へ、衆議院を通過/国会次の感染症に備えるため、アメリカのCDC(疾病対策センター)をモデルとして、内閣感染症危機管理統括庁や厚生労働省に科学的知見を提供するため、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合して新たな専門家組織「国立健康危機管理研究機構」を設立する法案が国会に提出されていた。この5月18日に衆議院本会議で採決が行われ、自民、公明党などの賛成多数で可決された。今後、参議院に送付されて採決で成立すれば、法案に基づいて設立される。設立は令和7年度以降に予定されている。(参考)国立健康危機管理研究機構について(厚労省)国立健康危機管理研究機構(仮称)と地方衛生研究所等の連携強化(同)国立健康危機管理研究機構法案(衆議院)日本版CDC法、衆院通過 司令塔新設案、参院審議へ(東京新聞)5.高度急性期偏重の診療報酬改定で、2次救急医療に悪影響か/中医協厚生労働省は5月17日に中央社会保険医療協議会(中医協)の総会を開催した。来年度から始まる第8次医療計画のうち新興感染症を除く5事業について、診療報酬の在り方の議論を始めた。診療側が問題提起したのは救急医療。去年の診療報酬の改定では、高度急性期医療を評価する「急性期充実体制加算」の新設によって、「総合入院体制加算」(診療科として精神科、小児科、産婦人科の標榜が施設基準)から急性期充実体制加算の算定に移行するため、医療機関側が精神科や産科を廃止するなど地域の2次救急の維持・運営に支障が生じていると指摘があった。本来は100万人に1つの3次救急施設を整備する方針だったが、すでに国内には300施設存在し、さらに増加傾向が続いており、診療側は医療計画がゆがんでいないか、診療報酬以外の財政措置も考慮すべきだと主張した。また、診療報酬の評価方法を見直し、2次救急の評価を充実させる必要があると訴えた。その他、高齢者の救急患者については、急性期以外の医療機関での対応を促す仕組みを強化すべきだと指摘があった。(参考)総合入院体制加算の届け出1年間で35%減 厚労省、周産期医療への影響を注視(CB news)二次救急医療機関への評価充実要望、中医協で診療側 支払側「高齢の救急患者は急性期以外で」(同)総合入院体制加算⇒急性期充実体制加算シフトで産科医療等に悪影響?僻地での訪問看護+オンライン診療を推進!-中医協総会(Gem Med)中央社会保険医療協議会 総会[第545回](厚労省)6.次世代医療基盤法改正案が成立、医療ビッグデータの利用促進へ/内閣府医療ビッグデータの利用を促進するため、今国会に内閣府が提出していた次世代医療基盤法(医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律)の改正法案が、5月17日に開かれた参議院本会議で可決・成立した。この法律は、病院などから提供された医療情報を加工し、研究開発などに活用するために、個人情報保護法の特例法として平成29年に制定されていた。現行法では個人情報の保護のため制限があり、これまでの利用実績は20数件と少なく、新薬の研究開発などに活用しにくいという課題があった。このため経団連や日本製薬工業協会などからは改正を求める声が上がっていた。新たに成立した改正次世代医療基盤法では、匿名化したままでより精緻な医療データを新薬の開発などに利用に活用することが可能となる。具体的には、血圧や体重などの検査値の提供範囲を拡大し、創薬や副作用の早期把握などに活用することが期待されている。また、個人情報保護のため新たな制度が導入され、元の医療情報から患者本人を直接特定できないように、個人情報の保護と情報漏えいの防止強化にも取り組むことになる。(参考)「次世代医療基盤法」とは(内閣府)精緻な医療データを製薬利用へ 法改正、個人情報は配慮(日経新聞)医療データ活用へ 改正次世代医療基盤法 参院本会議で成立(NHK)世代医療基盤法の見直し(経団連)

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第45回 麻疹の接種歴も抗体価も知らぬ医師

茨城県と東京都で成人麻疹8年前から日本は麻疹排除状態になり、麻疹はどちらかといえば輸入感染症としての側面を持つようになっています。茨城県でインドから持ち込まれた麻疹ウイルスに感染した事例が報告され、これと疫学的リンクがある2例が東京都でも発生したことが報道されました。新幹線のグリーン車で感染したらしいので、学会などで移動が増えているこの時期、医師の皆さんもご注意ください。接種歴を知らない医療従事者私は感染制御チームに所属しているので、麻疹の接種歴や抗体価のデータをどのように管理すればよいか日々試行錯誤しているのですが、医療従事者の中には、自分が麻疹にかかったことがあるかどうか・ワクチンを接種したことがあるかどうか・抗体価は十分あるかどうか、知らない人が結構います。意識が高い人は、印刷したデータをネームプレートに入れています。病院実習のときにワクチン接種歴を聞かれて、不十分と判断された大学では接種をすすめていたでしょう。しかし、それすらも記憶にない医師が結構多くて、びっくりします。家族が妊娠したときに、風疹については少し興味を持ってくれる人が多いようですが、麻疹はあまり興味を持たれません。混合ワクチンを接種している世代が増えてきましたが、私のように中途半端な世代もまだまだ多いと思います(表)。アフターコロナで流行国へ渡航することが増えると、麻疹ワクチンを1回のみで接種している人たちが感染するパターンが増えてくるかもしれません。画像を拡大する表. 麻疹ワクチン接種歴(筆者作成1))麻疹には特異的な治療法がなく、対症療法が中心になります。そのため、できるだけ感染しないようワクチンによる予防が重要になります。麻疹による死亡のほとんどは肺炎か脳炎です。まずは接種歴と抗体価の把握をワクチン接種歴や、麻疹風疹・水痘・流行性耳下腺炎の抗体価については、ご自身で把握しておくことが望ましいですが、とくに医局人事で病院を転々とする人は、途中でデータが紛失してしまうこともあるため注意してください。参考文献・参考サイト1)一般社団法人日本ワクチン産業協会. 予防接種に関するQ&A集

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新規ワクチンMV-LASV、ラッサ熱の予防に有望/Lancet

 ラッサ熱の予防において、遺伝子組み換え弱毒生麻疹ベクターラッサ熱ワクチン(MV-LASV)は、安全性と忍容性が許容範囲内であり、免疫原性はベクターに対する既存の免疫の影響を受けないと考えられ、さらなる開発の有望な候補であることが、オーストリア・Themis Bioscience(米国・Merckの子会社)のRoland Tschismarov氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年3月16日号で報告された。単一施設でのヒトで初めての第I相試験 研究グループは、年齢18~55歳の健康な成人を対象に、MV-LASVのヒトで初めての第I相試験を実施した(感染症流行対策イノベーション連合[CEPI]の助成を受けた)。本研究は、非盲検用量漸増試験(漸増期)と観察者盲検無作為化プラセボ対照比較試験(治療期)の2段階から成り、2019年9月~2020年1月に単一施設(ベルギー・アントワープ大学)で参加者の登録が行われた。 用量漸増試験では、参加者は低用量群(組織培養細胞感染量中央値×2×104を2回接種)または高用量群(組織培養細胞感染量中央値×1×105を2回接種)に、非無作為に連続的に割り付けられた。無作為化プラセボ対照試験では、参加者は低用量群、高用量群、プラセボ群に、2対2対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、試験開始から56日目までの非自発的または自発的に報告された有害事象とされた。局所有害事象の頻度はプラセボより高い 漸増期には、低用量群と高用量群に4例ずつが、治療期には、低用量群に25例(平均年齢27.3歳、男性56%)、高用量群に23例(33.9歳、30%)、プラセボ群に12例(33.6歳、33%)が割り付けられた。 ほとんどの有害事象は治療期に発現し、非自発的または自発的に報告された有害事象の頻度は3群で同程度であった。非自発的に報告された有害事象の割合は、低用量群が96%、高用量群が100%、プラセボ群が92%であり(p=0.6751)、自発的に報告された有害事象の割合は、それぞれ76%、70%、100%だった(p=0.1047)。 有意差が認められたのは非自発的に報告された局所の有害事象のみで、プラセボ群(12例中6例[50%])に比べ、MV-LASV接種群(低用量群:25例中24例[96%]、高用量群:23例中23例[100%])で高頻度であった(p=0.0001[Fisher-Freeman-Halton検定])。 有害事象のほとんどは軽度または中等度で、56日目までに重篤な有害事象やとくに注意すべき有害事象、死亡の報告はなかった。 全体として、最も頻度の高い非自発的に報告された局所有害事象は、注射部位の痛み(触れるか否かは問わず)、注射部位硬結、注射部位紅斑/発赤であり、全身性有害事象は、頭痛、インフルエンザ様症状、倦怠感、筋肉痛、下痢であった。また、最も頻度の高い自発的に報告された有害事象は、上咽頭炎、前失神、注射部位出血、筋骨格系のこわばりであった。 一方、MV-LASVは、2つの用量群とも高濃度のLASV特異的IgGを誘導し、最高値を示した42日目の幾何平均抗体価は、低用量群が62.9EU/mL(プラセボ群[6.1EU/mL]との比較でp<0.0001)、高用量群は145.9EU/mL(p<0.0001)であった。 著者は、「今後は、組織培養細胞感染量中央値の1×105倍量の高用量MV-LASVに焦点を当てて開発を進める必要がある」としている。

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新型コロナワクチン接種ガイダンスを改訂/WHO

 世界保健機関(WHO)は3月28日付のリリースで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種ガイダンスを改訂したことを発表した。今回の改訂は、同機関の予防接種に関する専門家戦略アドバイザリーグループ(SAGE)が3月20~23日に開催した会議を受け、オミクロン株流行期の現在において、ワクチンや感染、またはハイブリッド免疫によって、世界的にすべての年齢層でSARS-CoV-2の抗体保有率が増加していることが考慮されたものとなる。SARS-CoV-2感染による死亡や重症化のリスクが最も高い集団を守ることを優先し、レジリエンスのある保健システムを維持することに重点を置いた、新たなロードマップが提示された。 今回発表された新型コロナワクチン接種のロードマップでは、健康な小児や青年といった低リスク者に対するワクチン接種の費用対効果について検討されたほか、追加接種の間隔に関する推奨などが含まれている。 改訂の主な内容は以下のとおり。・ワクチン接種の優先度順に、高・中・低の3つグループを設定した。・高優先度群には、高齢者、糖尿病や心臓病などの重大な基礎疾患のある若年者、生後6ヵ月以上のHIV感染者や移植患者などの免疫不全者、妊婦、最前線の医療従事者が含まれる。この群に対して、ワクチンの最終接種から6~12ヵ月後に追加接種することを推奨している。・中優先度群には、健康な成人(50~60歳未満で基礎疾患のない者)と、基礎疾患のある小児と青年が含まれる。この群に対して、1次接種(初回シリーズ)と初回の追加接種を奨励している。・低優先度群には、生後6ヵ月~17歳の健康な小児と青年が含まれる。この群に対する新型コロナワクチンの1次接種と追加接種の安全性と有効性は確認されている。しかし、ロタウイルスや麻疹、肺炎球菌ワクチンなど、以前から小児に必須のワクチンや、中~高優先度群への新型コロナワクチンの確立されたベネフィットと比較すると、健康な小児や青年への新型コロナワクチン接種による公衆衛生上の影響は低く、疾病負荷が低いことを考慮して、SAGEはこの年齢層への新型コロナワクチン接種を検討している国に対し、疾病負荷や費用対効果、その他の保健の優先事項や機会費用などの状況要因に基づいて決定するように促している。・6ヵ月未満の乳児における重症COVID-19の負荷は大きく、妊婦へのワクチン接種は、母親と胎児の両方を保護し、COVID-19による乳児の入院の低減に効果的であるため推奨される。・SAGEは新型コロナの2価ワクチンに関する推奨事項も更新し、1次接種にBA.5対応2価mRNAワクチンの使用を検討することを推奨している。

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第34回 経鼻インフルワクチン使いますか?

フルミストが承認へ厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は2月27日、第一三共の経鼻弱毒生インフルエンザワクチン「フルミスト点鼻液(以下フルミスト)」の承認を了承しました。3月に承認される見通しです。フルミストは、鼻に噴霧するインフルエンザワクチンです。「これまでにない剤型でナウい!」と思われるかもしれませんが、2003年にアメリカで承認されており、日本は20年遅れの承認となっています。2016年あたりに承認に向けた話し合いが進められたのですが、事務的な手続きやら何やらで、いろいろと後ずれしてしまったそうです。フルミストは、2013/14シーズン以降ワクチン効果の低下を指摘されており、米国疾病予防管理センター(CDC)でも一時推奨リストから取り下げられていました。そのため、現在も「いまいちかも…」と思っている医師は多いかもしれません。A型インフルエンザ(H1N1)の流行時に、小児で有効性が検証されています1)。この研究では、不活化ワクチンに非劣性という結果が得られています。具体的には、調整済みの有効性(VE)が、H1N1に対してフルミスト69%(95%信頼区間[CI]:56~78%)、不活化ワクチン79%(95%CI:70~86%)、H3N2に対してそれぞれ36%(95%CI:14~53%)、43%(95%CI:22~59%)、B型インフルエンザに対してそれぞれ74%(95%CI:62~82%)、56%(95%CI:41~66%)という結果でした。現在CDCはフルミストをインフルエンザワクチンの選択肢の1つとして位置づけています2)。CDCの推奨と接種対象国際的には2~49歳へ接種が可能ですが、日本国内はおそらく2~19歳未満に限定されることになります。ほぼ子供のワクチンと言えるでしょう。2歳未満で喘鳴が増えた経緯があり、接種対象外となっています。上述しましたが、CDCはインフルエンザワクチン全般について、不活化ワクチンとそれ以外のどちらがよいか、断言していません3)。ただ、フルミストについては接種対象が限定されており、それには注意すべきと書いています。生ワクチンなので、喘息発作の既往が1年以内にある人、免疫不全者、妊婦では接種を回避する必要があります。また、自宅に免疫不全者がいる場合も避けるべきとされています。なお、卵アレルギーについてはそこまで懸念しなくてよいとされています2)。CDCの推奨は「卵アレルギーの既往歴があり、蕁麻疹のみを経験したことがある人は、インフルエンザワクチンの接種は可能。蕁麻疹以外の症状(血管浮腫、呼吸困難、ふらつき、再発性嘔吐など)があったり、アドレナリン(エピネフリン)投与を要したりした人についても、年齢や健康状態に応じたワクチン接種を受けることが可能」となっています。インフルエンザワクチンと卵アレルギーの関係については、堀向 健太先生がYahoo!のニュース記事に詳しくまとめられているので、そちらを参考にするとよいでしょう3)。フルミストは弱毒生ワクチンなので、接種後、鼻汁や咳などの症状が出ることがあります。とはいえ、低温馴化された弱毒化されたものを使っていますので、基本的にはそこまで問題にならないでしょう。おそらく国内では、来シーズンから経鼻インフルワクチンが使われることになると予想されます。参考文献・参考サイト1)Buchan SA, et al. Effectiveness of Live Attenuated vs Inactivated Influenza Vaccines in Children During the 2012-2013 Through 2015-2016 Influenza Seasons in Alberta, Canada: A Canadian Immunization Research Network (CIRN) Study. JAMA Pediatr. 2018;172:e181514.2)Grohskopf LA, et al. Prevention and Control of Seasonal Influenza with Vaccines: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices - United States, 2022-23 Influenza Season. MMWR Recomm Rep. 2022;71:1-28.3)インフルエンザワクチン製造時に鶏卵を使用 卵アレルギーの子どもは予防接種できる?

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自己注射可能な週1回投与のMTX皮下注「メトジェクト皮下注シリンジ」【下平博士のDIノート】第115回

自己注射可能な週1回投与のMTX皮下注「メトジェクト皮下注シリンジ」今回は、抗リウマチ薬「メトトレキサート(MTX)皮下注(商品名:メトジェクト皮下注7.5mgシリンジ0.15mL/同10mgシリンジ0.20mL/同12.5mgシリンジ0.25mL/同15mgシリンジ0.30mL)、製造販売元:日本メダック」を紹介します。本剤は、国内初の自己注射可能なMTX皮下注製剤であり、関節リウマチ患者の服薬アドヒアランスの向上に加え、誤投与・過剰投与リスクの軽減が期待されています。<効能・効果>本剤は、関節リウマチの適応で、2022年9月26日に製造販売承認を取得し、同年11月16日より発売されています。<用法・用量>通常、成人にはMTXとして7.5mgを週に1回皮下注射します。患者の状態や忍容性などに応じて適宜増量できますが、15mgを超えることはできません。4週を目安に患者の状態を十分に確認し、増量は2.5mgずつ行います。<安全性>国内第III相臨床試験(MC-MTX.17/RA試験)において、83.8%(93/111例)に臨床検査値異常を含む有害事象が認められました。5%以上に認められたものは、悪心16.2%、口内炎14.4%、関節リウマチ11.7%、上咽頭炎10.8%、ALT増加9.9%、肝機能異常9.9%、白血球数減少8.1%、上腹部痛5.4%、高血圧5.4%などでした。なお、重大な副作用として、ショック/アナフィラキシー(頻度不明)、骨髄抑制(5%以上)、感染症(0.1~5%未満)、結核、劇症肝炎/肝不全、急性腎障害/尿細管壊死/重症ネフロパチー、間質性肺炎/肺線維症/胸水、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)/皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、出血性腸炎/壊死性腸炎、膵炎、骨粗鬆症、脳症(白質脳症を含む)、進行性多巣性白質脳症(PML)(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、異常な状態となっている免疫反応や炎症反応を抑えることで、関節リウマチによる関節の腫れや痛みを改善します。2.通常、週に1回、特定の曜日に皮下注射してください。3.注射部位は大腿部・腹部・上腕部の毎回異なる部位を選び、短期間に同一部位へ繰り返して投与しないでください。4.この薬を投与している間は、生ワクチン(麻疹風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)の接種ができません。接種の必要がある場合は医師に相談してください。5.発熱、倦怠感が現れた場合や、口内炎、激しい腹痛、嘔吐、下痢などの症状が現れた場合は直ちに医師に連絡してください。6.(妊娠可能年齢の女性やパートナーが妊娠する可能性のある男性に対して)この薬を投与中および投与終了後一定の期間は、適切な方法で避妊を行ってください。7.(授乳中の女性に対して)薬剤が乳汁中へ移行する可能性があるため、本剤の投与中は授乳しないでください。<Shimo's eyes> 関節リウマチ(RA)治療の基本は、疾患活動性を低く抑え、早期の臨床的寛解を達成・維持することです。MTXはRAの病態形成に関与する種々の細胞に対して、複数の分子作用機序を介して免疫および炎症性反応を抑制し、抗RA作用を発揮すると考えられています。日本リウマチ学会、米国リウマチ学会(ACR)、欧州リウマチ学会(EULAR)のガイドラインではMTXが第1選択薬として推奨されています。わが国においては、RAに対するMTXはこれまで経口薬のみが発売されていましたが、本剤は週1回の皮下投与のプレフィルドシリンジです。医師の管理・指導のもと、自己注射も可能です。2022年9月時点で、本剤は欧州を中心に世界49の国または地域で承認されており、2019年には欧州医薬品庁はMTXの誤投与の危険性を回避するため、RAなどの治療に対して週1回投与のMTX皮下注製剤を推奨しています。MTX経口薬から切り替えの際の投与初期量は、1週間当たりの投与量を対比させた添付文書の表などを参考に決定されます。安全性プロファイルは、注射部位反応を除いてMTX経口薬と同様と考えられています。主な副作用は白血球数減少、肝機能障害、悪心、口内炎などであり、重大な副作用である骨髄抑制、感染症、結核、劇症肝炎、肝不全、急性腎障害、尿細管壊死、重症ネフロパチー、間質性肺炎、肺線維症、出血性腸炎などに注意する必要があります。2020年10月の「医療安全情報No.167」では、MTXの過剰投与による骨髄抑制の事故が後を絶たないことを注意喚起しています。本剤の普及によって医療現場での投与過誤、あるいは患者さんの服用過誤が減少することを期待します。

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2月14日 予防接種記念日【今日は何の日?】

【2月14日 予防接種記念日】〔由来〕1790(寛政2)年の今日、秋月藩(福岡県朝倉市)の藩医・緒方春朔が、初めて天然痘の人痘種痘を行い成功させたことから、「予防接種は秋月藩から始まった」キャンペーン推進協議会が制定した。関連コンテンツ今、知っておきたいワクチンの話ワクチン・予防【COVID-19 関連情報まとめ】子宮頸がん撲滅に向けて:HPVワクチン接種の意義とは風疹にいま一度気を付けろっ! その1【新興再興感染症に気を付けろッ!】アナフィラキシー? 迅速に判断、アドレナリンの適切な投与を!【救急診療の基礎知識】

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オミクロン株の感染爆発のファクターを解明/日本大学ほか

 わが国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第8波の主な感染原因であるオミクロン株。この変異株について、今井 健一氏(日本大学歯学部感染症免疫学講座 教授)らの研究グループは、オミクロン株感染者の唾液中には、宿主細胞の内外に付随していない裸のウイルス(セルフリーウイルス)が、従来株やデルタ株よりも高比率に含まれていることを世界で初めて発見し、JAMA Network Open誌2023年1月9日号に報告した。 細胞に付随しているウイルスと比較すると、セルフリーウイルスはとても小さく軽いため、唾液に覆われた状態でも室内に長時間漂うことができる。オミクロン株では、このセルフリーウイルスの唾液への排出量がデルタ株の2.7倍、従来株の17.8倍と大幅に増加したことが、エアロゾル感染によるCOVID-19の爆発的拡大につながったものと考えられるという。セルフリーウイルスがオミクロン株では従来株の17.8倍 新型コロナウイルスは、口腔内の上皮や唾液腺の細胞に感染し増殖するため、唾液中には多くのウイルスが含まれている。そのため、会話、せき・くしゃみのたびに放出される飛沫や微細なエアロゾルによって伝播され感染が広がる。オミクロン株は、従来株やデルタ株などと異なり、飛沫感染に加えてエアロゾル・空気感染によって伝播するため、現在の爆発的な感染拡大につながったと考えられているが、その仕組みは良くわかっていなかった。今回の研究はこの仕組みを明らかにすることを目的とした。 研究グループでは、新型コロナウイルスは、従来株→デルタ株→オミクロン株とウイルスが変異するのに伴い、唾液中に排出されるウイルスの量自体が多くなっていると推測。また、エアロゾル感染が成立するためには、ウイルスが飛沫に含まれて拡散する状態よりも遠くに飛散し、かつ飛沫よりも長時間室内に漂うエアロゾルに含まれて拡散する状態が必要とも考慮した。 そこで、従来株、デルタ株、およびオミクロン株の感染者から採取した唾液を、全唾液と遠心分離で細胞成分を除いた上澄み液とに分け、それぞれに含まれるウイルス量を定量した。 主な結果は以下のとおり。・従来株では、全唾液1mL中に約123万個(中央値、以下同じ)のウイルスが存在していることがわかった。そのうち、セルフリーウイルスは1mL中に約18万個で、全唾液中のウイルスに占めるセルフリーウイルスの割合は約5.9%だった。・デルタ株では、全唾液1mL中に約1,860万個と従来株に比べて15倍ものウイルスが存在していた。そのうち、セルフリーウイルスは1mL中に約117万個で、全唾液中に占める割合は約4.8%で従来株と類似した値だった。・オミクロン株では、全唾液1mL中にデルタ株の半分強、約952万個のウイルスが存在していた。一方で、セルフリーウイルスは1mL中に約321万個が存在し、デルタ株の2.7倍、従来株の17.8倍と大幅に増加していた。全唾液中に占める割合は約21.3%で、従来株やデルタ株と比較して約4倍もセルフリーウイルスの割合が増加していた。 以上から、唾液中のセルフリーウイルスの量が多ければ、新たな宿主に到達した際に新型コロナウイルスの受容体であるACE2への結合がしやすく、感染効率も自然と高まる。さらに、セルフリーウイルスは細胞付随ウイルスよりも3倍近い速さで新たな未感染の細胞に感染するため、セルフリーウイルスが唾液中に多く含まれることは感染爆発の主要な原因となり得ると考えられた。 同研究グループは、「今回の研究から大規模クラスターが多発している現状を説明し得るものと考えられ、また、感染予防策として換気の必要性と密閉空間でのマスク着用励行の根拠ともなる」と考察している。さらに本研究は、「『エアロゾル・空気感染におけるセルフリーウイルスの重要性を初めて提唱した』という点で重要であり、今後、インフルエンザや麻疹、水痘などの他のウイルス感染症への適応や未知のウイルス感染症が発生した際、そして、ウイルス変異が生じるたびにそのウイルスの性状を知り、感染対策を立てる基本概念として適用される」と展望を述べている。

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第131回 新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府

<先週の動き>1.新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府2.処方の見返りに奨学寄付金を求めた元教授に有罪判決/三重3.全国の都道府県がん拠点病院、地域がん拠点病院を新たに指定/厚労省4.オンライン資格確認の導入のさらなる促進を/厚労省5.東工大と医科歯科大、統合後の新名称は「東京科学大学」に6.サイバー攻撃の共有・公表ガイダンスをパブリックコメント募集/内閣府1.新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府岸田総理は、感染症法で現在「2類相当」として取り扱っている新型コロナウイルスについて重症化率が2022年夏時点で60歳未満が0.01%、80歳以上でも1.86%と季節性インフルエンザ並みになったとして、麻疹風疹と同じ「5類」扱いとする方針を固めた。今後は、一般の医療機関でも新型コロナウイルスの患者の受け入れは可能としている。厚生労働省では、ワクチンの公費負担での接種対象を高齢者とするほか屋内でのマスク着用のあり方など、今後の方針について検討を開始している。来週には、専門家からなる厚生科学審議会で今後の方針について議論を行う。(参考)新型コロナ 今春「5類」移行検討 公費負担など本格議論へ(NHK)コロナ「5類」移行、5月の連休前後案も…ワクチン公費負担は高齢者ら限定検討 (読売新聞)コロナ、今春にも「5類」に 首相指示、公費負担縮小へ マスク着用「見直す」(日経新聞)2.処方の見返りに奨学寄付金を求めた元教授に有罪判決/三重三重大学附属病院の臨床麻酔部において、薬の処方の見返りに、奨学寄付金を受け取ったことで、第三者供賄罪と詐欺罪に問われた元教授の被告に対して、1月19日津地方裁判所は、懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の判決を言い渡した。判決によれば、2018年3月に、被告に対して小野薬品工業の薬剤「オノアクト」を大量に発注するように依頼された見返りに、被告が代表を務める一般社団法人に現金200万円を振り込ませた疑い。さらに、2019年から2020年には、手術患者60人あまりに対して、この薬剤を使用したように装って、未投薬にもかかわらず、約82万円の診療報酬を詐取した。被告は、この他に元講師と共謀して日本光電工業(東京都)の医療機器納入で便宜供与の見返りに、一般社団法人の口座に寄付金名目で200万円を振り込ませていた。(参考)三重大病院元教授に有罪判決 薬剤納入で供賄と詐欺罪 地裁判決(毎日新聞)病院汚職200万円は「賄賂」 地裁判決 三重大元教授有罪(読売新聞)三重大病院汚職事件 元教授に執行猶予付き有罪判決(NHK)3.全国の都道府県がん拠点病院、地域がん拠点病院を新たに指定/厚労省厚生労働省は1月19日に「がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」を開催し、昨年「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」からの提言を踏まえて定められた、がん診療連携拠点病院等の整備指針に基づき、2023年4月から「がん診療連携病院」を新たに指定することとした。全国の都道府県がん診療連携拠点病院は一般型49施設、特例型2施設、地域がん診療連携拠点病院は一般型325施設などが指定される見込み。検討会の意見を踏ませて、加藤厚労大臣が指定の手続きを行い、本年4月1日から新たながん診療拠点として指定される。なお、一部の病院では指定要件を充足していないため指定を見送ることも検討されたが、充足の見込みがたっておらず「空白医療圏」となってしまうため指定となった病院もみられた。(参考)都道府県がん拠点病院51施設、地域がん拠点病院350施設など、本年(2023年)4月1日から新指定-がん拠点病院指定検討会(Gem Med)第22回がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会(厚労省)がん診療連携拠点病院の指定要件(同)4.オンライン資格確認の導入のさらなる促進を/厚労省厚生労働省は、1月16日に社会保障審議会医療保険部会を開催し、オンライン資格確認などシステムについて討議を行った。今年4月に施行される保険医療機関・薬局のオンライン資格確認導入の義務化について、令和4年度末時点で「現在紙レセプトでの請求が認められている医療機関・薬局」については、やむを得ない事情があるとして、期限付きの経過措置を設けられたが、猶予期間の延長について、保険者らからは延長を懸念する声が上がった。医療機関・薬局でのオンライン資格確認システムの導入は、顔認証付きカードリーダー申込数は、義務化対象施設では97.7%と高いものの、準備完了は義務化対象施設でも52.6%と伸び悩みがみられていることが明らかになった。国としては、来年秋には、現行の健康保険証がマイナンバーカードに1本化されることもあり、令和5年3月末までのさらなる導入の加速化を図りたいとしている。(参考)第162回社会保障審議会医療保険部会(厚労省)マイナカード、進まぬ活用 医療、免許どうなるか(産経新聞)オンライン資格確認、電子処方箋など医療DXの推進には国民の理解が不可欠、十分かつ丁寧な広報に力を入れよ-社保審・医療保険部会(Gem Med)オンライン資格確認の導入猶予、延長をけん制 社保審・部会で複数委員(CB news)5.東工大と医科歯科大、統合後の新名称は「東京科学大学」に東京工業大学と東京医科歯科大学が2024年に統合されるのを受けて、大学側は新たな大学の名称を「東京科学大学(英語表記:Institute of Science Tokyo)」とすることを1月19日に発表した。両大学は新大学の目指す姿として、「両大学の尖った研究をさらに推進」、「部局などを超えて連携協働し『コンバージェンス・サイエンス』を展開」、「総合知に基づき未来を切り拓く高度専門人材の輩出」、「イノベーションを生み出す多様性、包摂性、公平性を持つ文化」を謳っており、できる限り早期の統合を目指して、今月中に大学設置・学校法人審議会へ提出することを決定している。(参考)新大学名称を「東京科学大学(仮称)」として 大学設置・学校法人審議会への提出を決定(東京医科歯科大学)東工大・医科歯科大、統合後の新名称「東京科学大学」に(日経新聞)東京科学大「皆が覚えられる名に」「親しみが大事」…「工業」「医科」使用も見送り(読売新聞)「東京科学大学」正式発表、略称は「科学大」…英語「Institute of Science Tokyo」(同)6.サイバー攻撃の共有・公表ガイダンスをパブリックコメント募集/内閣府内閣官房内閣サイバーセキュリティセンターは、近年、サイバー攻撃の脅威の高まりを受けて、被害を受けた組織が攻撃の内容や被害情報について外部に共有するためのガイダンス案を作成し、現在パブリックコメントを募集している。日本病院会の相澤会長は、1月17日の定例記者会見で、サイバーセキュリティに関する責任の範囲について統一基準を明確化するとともに費用負担について国側に求める方針を明らかにした。今後、日本病院会はサイバー攻撃に対する対応について、厚生労働省に対して提言をまとめたいとしている。なお、パブリックコメントは1月30日が締切となっている。(参考)「サイバー攻撃被害に係る情報の共有・公表ガイダンス(案)」に関する意見募集について(内閣府)サイバー攻撃被害「枠組み超えた情報連携が必要」内閣官房がガイダンス案公表、フローやFAQも(CB news)サイバーセキュリティ対策における医療機関・ベンダー等の間の責任分解、現場に委ねず、国が「統一方針」示すべき?日病・相澤会長(Gem Med)

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TYK2を選択的に阻害する乾癬治療薬「ソーティクツ錠6mg」【下平博士のDIノート】第113回

TYK2を選択的に阻害する乾癬治療薬「ソーティクツ錠6mg」今回は、チロシンキナーゼ2(TYK2)阻害薬「デュークラバシチニブ錠(商品名:ソーティクツ錠6mg、製造販売元:ブリストル・マイヤーズ スクイブ)」を紹介します。本剤は、TYK2を選択的に阻害する世界初の経口薬で、既存治療で効果が不十分であった患者や、副作用などにより治療継続が困難であった患者の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の適応で、2022年9月26日に製造販売承認を取得し、同年11月16日に発売されました。光線療法を含む既存の全身療法(生物学的製剤を除く)などで十分な効果が得られず皮疹が体表面積の10%以上に及ぶ場合や、難治性の皮疹や膿疱を有する場合に使用します。<用法・用量>通常、成人にはデュークラバシチニブとして1回6mgを1日1回経口投与します。なお、本剤使用前には結核・B型肝炎のスクリーニングを行い、24週以内に本剤による治療反応が得られない場合は、治療計画の継続を慎重に判断します。<安全性>国際共同第III相臨床試験(IM011-046試験)において、本剤投与群の22.0%(117/531例)に臨床検査値異常を含む副作用が発現しました。主なものは、下痢2.6%(14例)、上咽頭炎2.4%(13例)、上気道感染2.3%(12例)、頭痛1.9%(10例)などでした。なお、重大な副作用として、重篤な感染症(0.2%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、乾癬の原因となる酵素の働きを抑えることで、皮膚の炎症などの症状を改善します。2.免疫を抑える作用があるため、発熱、寒気、体がだるい、咳が続くなどの一般的な感染症症状のほか、帯状疱疹や単純ヘルペスなどの症状に注意し、気になる症状が現れた場合は速やかにご相談ください。3.本剤を使用している間は、生ワクチン(BCG、麻疹風疹混合/単独、水痘、おたふく風邪など)の接種ができないので、接種の必要がある場合は医師にご相談ください。4.感染症を防ぐため、日頃からうがいや手洗いを行い、規則正しい生活を心掛けてください。また、衣服は肌がこすれにくくゆったりとしたものを選び、高温や長時間の入浴はできるだけ避けましょう。<Shimo's eyes>本剤は、TYK2阻害作用を有する世界初の経口乾癬治療薬です。TYK2はヤヌスキナーゼ(JAK)ファミリーの分子ですが、本剤のようなTYK2だけを選択的に阻害する薬剤は比較的安全に使用できるのではでないかと期待されています。乾癬の治療としては、副腎皮質ステロイドやビタミンD3誘導体による外用療法、光線療法、シクロスポリンやエトレチナート(商品名:チガソン)などによる内服療法が行われています。近年では、多くの生物学的製剤が開発され、既存治療で効果不十分な場合や難治性の場合、痛みが激しくQOLが低下している場合などで広く使用されるようになりました。現在、乾癬に適応を持つ生物学的製剤は下表のとおりです。また、同じ経口薬としてPDE4阻害薬のアプレミラスト(同:オテズラ)が「局所療法で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬」の適応で承認されています。臨床試験において、本剤投与群ではアプレミラストを上回る有効性を示しており、この点が評価されて薬価算定では40%の加算(有用性加算I)が付きました。安全性では、結核の既往歴を有する患者では結核を活動化させる可能性があるため注意が必要です。また、感染症の発症、帯状疱疹やB型肝炎ウイルスの再活性化の懸念もあるため、症状の発現が認められた場合にはすぐに受診するよう患者さんに説明しましょう。TYK2阻害薬は自己免疫疾患に対する新規作用機序の薬剤であり、今後の期待として潰瘍性大腸炎や全身性エリテマトーデスなどの幅広い疾患に適応が広がる可能性があり、注目されています。

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患者に伝えたいアナフィラキシー症状

患者さん、その症状はアナフィラキシー ですよ!アナフィラキシーとは「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性アレルギー症状が引き起こされ、生命に危険を与え得る過敏反応」のこと。以下のような症状を伴います。□紅潮□そう痒感□蕁麻疹□立毛□結膜の充血□流涙□口腔内腫脹□気道狭窄感□息切れ□嗄声(声がれ)□激しい咳・喘鳴□鼻閉・鼻汁・くしゃみ□腹痛□下痢□血圧低下□拍動性頭痛□浮動性めまい□嘔気・嘔吐□意識障害 □動悸・頻脈□嚥下障害◆こんな場合も要注意!• 蕁麻疹が出なくても、急に息切れや腹痛、血圧低下が起こればアナフィラキシーと診断されます。• 薬剤や食べ物で起こりますが、約半数の患者さんでは原因が特定できないことも。• 薬物投与などの数時間後に症状が起こる場合もあるので、治療によっては院内でしばらく待機する必要があります。出典:日本アレルギー学会. アナフィラキシーガイドライン監修:福島県立医科大学 会津医療センター 総合内科 山中 克郎氏Copyright © 2021 CareNet,Inc. All rights reserved.

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070)皮膚科外来を通して感じる季節感【Dr.デルぽんの診察室観察日記】(ブログより転載)

第70回 皮膚科外来を通して感じる季節感(『デルマな日常』より転載)デルにちは〜☆ 今日も元気なデルぽんでーす!今日も皮膚科勤務医のさり気ない日常風景を漫画にしたよ!本日のデル日は…!『皮膚科外来で感じる四季の移り変わり』です☆どうぞ〜〜〜↓↓えー他科も多少あるかと思いますが、皮膚科はかなーり季節と天候の影響を受けます!!汗とか!乾燥とか!湿気とか!虫とか紫外線の影響を、たぶんに受けまくる皮膚という臓器。耳鼻科・眼科も花粉の季節は忙しいかな?泌尿器は年中変わらないのかな、、、精神科は春かな?ニュースでへんな事件ふえる季節、春…皮膚科はいつが忙しいかっていうとね、がぜん夏!!!!皮膚科の夏ッ!!!夏の環境って皮膚にはあんまり宜しくないんだよね。ムレたりなんだり。あと虫とか活発になるねん。蜂刺され虫刺され等々。プールが始まると水イボが流行り(と言うかこの時期になると幼稚園・保育園に言われて連れてくる親多し。出来たらすぐ取る、これ秘訣)水虫も湿気を味方に水を得た魚のように息を吹き返し。蚊に刺されては掻きむしりとびひになって病院へ来るという(爪は短く・清潔にね☆)。えー。夏場は汗をかいてじっとりするから保湿は要らないかっていうと実はそんなことはない。汗っていうのは乾燥肌には刺激になるのです。ほらしょっぱいでしょ。痒くなるでしょ。夏場こそシャワーの後にはさっぱり保湿してほしいなとデルぽんはおもいます。肌弱い子はね。夏は行水!そして保湿!これに限る。夏は紫外線も強いし夏休みレジャーで日焼けしすぎたとか。蕁麻疹が増えるのも夏。沖縄でシュノーケリング一時間したって言って両足けっこうな潰瘍作ってきたひといたよね…みんな沖縄レジャーはちゃんと日焼け止めしような。そいで気候が落ち着き秋になると少しホッとした時間が持て、冬場になると今度は乾燥で悪化した老人やアトピーが増えるという、そんな仕組みになっております。あとなんか年末年始は帯状疱疹が多い!!一年の疲れが出るのか?!とまあそんな具合に。外来やってると、四季の移り変わりを感じますよというお話でしたーん☆ではでは。まったねー!アデュー!※この記事は、Dr.デルぽんのご厚意により『デルマな日常』から転載させていただきました。(転載元:『デルマな日常』2016年06月30日 皮膚科外来を通して感じる季節感)

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ガイドライン改訂ーアナフィラキシーによる悲劇をなくそう

 アナフィラキシーガイドラインが8年ぶりに改訂され、主に「1.定義と診断基準」が変更になった。そこで、この改訂における背景やアナフィラキシー対応における院内での注意点についてAnaphylaxis対策委員会の委員長である海老澤 元宏氏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター長)に話を聞いた。アナフィラキシーガイドライン2022で診断基準が改訂 改訂となったアナフィラキシーガイドライン2022の診断基準では、世界アレルギー機構(WAO)が提唱する項目として3つから2つへ集約された。アナフィラキシーの定義は『重篤な全身性の過敏反応であり、通常は急速に発現し、死に至ることもある。重症のアナフィラキシーは、致死的になり得る気道・呼吸・循環器症状により特徴づけられるが、典型的な皮膚症状や循環性ショックを伴わない場合もある』としている。海老澤氏は「基準はまず皮膚症状の有無で区分されており皮膚症状がなくても、アナフィラキシーを疑う場面では血圧低下または気管支攣縮または喉頭症状のいずれかを発症していれば診断可能」と説明した。◆診断基準[アナフィラキシーガイドライン2022 p.2]※詳細はガイドライン参照 以下の2つの基準のいずれかを満たす場合、アナフィラキシーである可能性が非常に高い。1.皮膚、粘膜、またはその両方の症状(全身性の蕁麻疹、掻痒または紅潮、口唇・下・口蓋垂の腫脹など)が急速に(数分~数時間で)発症した場合。さらに、A~Cのうち少なくとも1つを伴う。  A. 気道/呼吸:呼吸不全(呼吸困難、呼気性喘鳴・気管支攣縮、吸気性喘鳴、PEF低下、低酸素血症など)  B. 循環器:血圧低下または臓器不全に伴う症状(筋緊張低下[虚脱]、失神、失禁など)  C. その他:重度の消化器症状(重度の痙攣性腹痛、反復性嘔吐など[特に食物以外のアレルゲンへの曝露後])2.典型的な皮膚症状を伴わなくても、当該患者にとって既知のアレルゲンまたはアレルゲンの可能性がきわめて高いものに曝露された後、血圧低下または気管支攣縮または喉頭症状が急速に(数分~数時間で)発症した場合。 また、アナフィラキシーガイドライン2022はさまざまな国内の研究結果やWAOアナフィラキシーガイダンス2020に基づいて作成されているが、これについて「国内でもアナフィラキシーに関する疫学的な調査が進み、ようやくアナフィラキシーガイドライン2022に反映させることができた」と、前回よりも国内でのアナフィラキシーの誘因に関する調査や症例解析が進んだことを強調した。アナフィラキシーガイドライン2022に盛り込まれた変更点 今回の取材にて、同氏は「アナフィラキシーに対し、アドレナリン筋注を第一選択にする」ことを強く訴えた。その理由の一つとして、「2015年10月1日~2017年9月30日の2年間に医療事故調査・支援センターに報告された院内調査結果報告書476件のうち、アナフィラキシーが死因となる事例が12件もあった。これらの誘因はすべて注射剤で、造影剤、抗生物質、筋弛緩剤などだった。アドレナリン筋注による治療を迅速に行っていれば死亡を防げた可能性が高いにもかかわらず、このような事例が未だに存在する」と、アドレナリン筋注が必要な事例へ適切に行われていないことに警鐘を鳴らした。 ではなぜ、アナフィラキシーに対しアドレナリン筋注が適切に行われないのか? これについて「アドレナリンと聞くと心肺蘇生に用いるイメージが固定化されている医師が一定数いる。また、アドレナリン筋注を経験したことがない医師の場合は最初に抗ヒスタミン薬やステロイドを用いて経過を見ようとする」と述べ、「アドレナリン筋注をプレホスピタルケアとして患者本人や学校の教員ですら投与していることを考えれば、診断が明確でさえあれば躊躇する必要はない」と話した。 アナフィラキシーを生じやすい造影剤や静脈注射、輸血の場合、症状出現までの時間はおよそ5~10分で時間的猶予はない。上記に述べたような症状が出現した場合には、原因を速やかに排除(投与の中止)しアドレナリン筋注を行った上で集中治療の専門家に委ねる必要がある。 また、アドレナリン筋注と並行して行う処置として併せて読んでおきたいのが“補液”の項目(p.24)である。「これまでは初期対応に力を入れて作成していたが、今回はアナフィラキシーの治療に関しても委員より盛り込むことの提案があった」と話した。 以下にはWAOガイダンスでも述べられ、アナフィラキシーガイドライン2022に盛り込まれた点を抜粋する。◆治療 2.薬物治療:第一選択薬(アドレナリン)[アナフィラキシーガイドライン2022 p.21]・心疾患、コントロール不良の高血圧、大動脈瘤などの既往を有する患者、合併症の多い高齢患者では、アドレナリン投与によるベネフィットと潜在的有害事象のリスクのバランスをとる必要があるものの、アナフィラキシー治療におけるアドレナリン使用の絶対禁忌疾患は存在しない1)・アドレナリンを使用しない場合でもアナフィラキシーの症状として急性冠症候群(狭心症、心筋梗塞、不整脈)をきたすことがある、アドレナリンの使用は、既知または疑いのある心血管疾患患者のアナフィラキシー治療においてもその使用は禁忌とされない1)・経静脈投与は心停止もしくは心停止に近い状態では必要であるが、それ以外では不整脈、高血圧などの有害作用を起こす可能性があるので、推奨されない2)◆治療 2.薬物治療:第二選択薬(アドレナリン以外)[アナフィラキシーガイドライン2022 p.23]・H1およびH2抗ヒスタミン薬は皮膚症状を緩和するが、その他の症状への効果は確認されていない3) このほか、同氏は「食物アレルギーの集積調査が進み、国内でも落花生やクルミなどのナッツ類や果物がソバや甲殻類よりも誘因として高い割合を示すことが明らかになった」と話した。さらに「病歴の聞き取りが不十分なことで起こるNSAIDs不耐症への鎮痛薬処方なども問題になっている」と指摘した。 なお、アナフィラキシーガイドライン2022は小児から成人までのアナフィラキシー患者に対する診断・治療・管理のレベル向上と、患者の生活の質の改善を目的にすべての医師向けに作成されている。日本アレルギー学会のWebからPDFが無料でダウンロードできるのでさまざまな場面でのアナフィラキシー対策に役立てて欲しい。

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痒みを速やかに改善するアトピー性皮膚炎抗体薬「ミチーガ皮下注用60mgシリンジ」【下平博士のDIノート】第109回

痒みを速やかに改善するアトピー性皮膚炎抗体薬「ミチーガ皮下注用60mgシリンジ」今回は、ヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体「ネモリズマブ(遺伝子組換え)注射剤(商品名:ミチーガ皮下注用60mgシリンジ、製造販売元:マルホ)」を紹介します。本剤は、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒を標的とした抗体医薬品であり、掻破行動による皮膚症状の悪化やそう痒の増強を防ぐことで、患者QOLの向上が期待されています。<効能・効果>アトピー性皮膚炎に伴うそう痒(既存治療で効果不十分な場合に限る)の適応で、2022年3月28日に承認され、8月8日より販売されています。本剤は、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬などの抗炎症外用薬および抗ヒスタミン薬などの抗アレルギー薬による適切な治療を一定期間施行しても、そう痒を十分にコントロールできない患者に投与します。<用法・用量>通常、成人および13歳以上の小児にはネモリズマブ(遺伝子組換え)として1回60mgを4週間の間隔で皮下投与します。本剤はそう痒を治療する薬剤であり、そう痒が改善した場合であっても本剤投与中はアトピー性皮膚炎の必要な治療を継続します。<安全性>国内第III相試験において、本剤投与群210例中122例(58.1%)に副作用が認められました。主な副作用は、アトピー性皮膚炎34例(16.2%)、サイトカイン異常11例(5.2%)、好酸球数増加および上咽頭炎各8例(3.8%)、蜂巣炎および蕁麻疹各7例(3.3%)でした。重大な副作用として、ウイルス、細菌、真菌などによる重篤な感染症(3.4%)、アナフィラキシー(血圧低下、呼吸困難、蕁麻疹)などの重篤な過敏症(0.3%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.本剤は、体内のリンパ球が産生するIL-31の働きを抑えることで、アトピー性皮膚炎のそう痒を改善します。2.血圧低下、息苦しさ、意識の低下、ふらつき、めまい、吐き気、嘔吐、発熱、咳、のどの痛みなどの症状が現れた場合はご連絡ください。3.そう痒が治まっていても、普段と異なる新たな皮疹が生じたり、悪化したりした場合は受診してください。4.刺激の強い食べ物やアルコール、タバコは控え、身体を清潔にして規則正しい生活を心がけましょう。睡眠中に皮膚をかかないように工夫して、皮膚刺激の少ない衣類を選択し、アレルゲン対策などにも留意しましょう。<Shimo's eyes>本剤は、アトピー性皮膚炎の「痒み」を誘発するサイトカインであるIL-31をターゲットとした世界初のヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体製剤です。そう痒に伴う掻破行動は、皮膚症状を悪化させ、さらに痒みが増強するという悪循環(Itch-scratch cycle)を繰り返すとともに、皮膚感染症や眼症状などの合併症を誘引する恐れがあります。また、そう痒はアトピー性皮膚炎患者において、寝られない、仕事や勉強に集中できない、など大きな悩みであり、そう痒が解消されることでQOLの改善が期待できます。アトピー性皮膚炎のそう痒に対する治療法としては、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬の併用のもとで、抗ヒスタミン薬の内服が推奨されています。シクロスポリン内服液も痒みを軽快させることが知られていますが、安全性の観点から対象患者や投与期間が限定されています。抗体医薬品としては、デュピルマブ皮下注(商品名:デュピクセント)が承認されていますが、皮疹の炎症が強い場合はデュピルマブ、そう痒を主訴とする場合はネモリズマブが選択されるなど、投与対象患者は異なると考えられます。本剤はアトピー性皮膚炎に伴うそう痒を治療する薬剤であり、本剤投与中はそう痒が改善した場合であっても、ステロイド外用薬、タクロリムス外用薬、デルゴシチニブ外用薬、保湿外用薬など、アトピー性皮膚炎の他の症状に対する治療は中止せずに継続します。経口ステロイド薬の急な中断にも注意が必要です。既存治療を実施したにも関わらず中等度以上のそう痒を有するアトピー性皮膚炎患者を対象とした国内第III相試験において、本剤投与開始16週後のそう痒変化率は、プラセボ群に比べて有意に改善しました。臨床試験において、投与翌日よりプラセボに対して有意な改善が認められ、多くの患者は治療開始から16週頃までには効果が発現しています。なお、2023年6月1日より、本剤は在宅自己注射指導管理料の対象薬剤となり、在宅自己注射が保険適用となりました。

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