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深部静脈血栓症の除外診断で注意すべきこと/BMJ

 WellsルールとDダイマー検査による深部静脈血栓症(DVT)除外診断は、性別やDダイマー検査の種別、プライマリ・ケアか入院時かなどを問わず、がん患者を除き有効であることが示された。ただしDVT再発が疑われる場合には、Wellsスコアに1ポイント加えるといった注意が必要となる。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのG J Geersing氏らが、13試験についてメタ解析を行った結果、報告した。これまでの試験結果から、患者全般についてWellsルールとDダイマー検査がDVT除外診断に有効であることは知られていたが、がん患者などのサブグループについての有効性については議論が分かれていた。BMJ誌オンライン版2014年3月10日号掲載の報告より。Wellsスコア1以下+Dダイマー検査結果の陰性でDVTリスク1.2% 同研究グループは、連続するDVT疑いの患者を対象に、Wellsルールを適切に用いた13試験、被験者総数1万2例についてメタ解析を行った。WellsルールとDダイマー検査の除外診断における有効性について、性別やプライマリ・ケアか入院時ケアかなど別に、サブグループ分析を行った。 被験者のうち、DVTの確定診断を受けたのは1,864例だった。Wellsスコアの増大は、DVT有病率の増大に関与していた。推定有病率は、がん患者やDVT再発の疑われる患者、また男性でおよそ2倍に増大した。 Wellsスコア1以下とDダイマー検査結果の陰性は、被験者の29%(95%信頼区間:20~40)に認められ、DVTリスク1.2%との関連があった(同:0.7~1.8)。この結果は、Dダイマー検査の種別(定性検査または定量検査)や、被験者の性別、プライマリ・ケアか入院時か、といったサブグループにおいても一貫していた。がん患者ではWellsスコア1以下+Dダイマー検査の陰性は9%のみ 一方でがん患者については、Wellsスコアが1以下とDダイマー検査の陰性が認められた人は9%に留まり、DVT有病率の2.2%と関連があった。 そのため同グループは、がん患者については、Wellsスコア1以下とDダイマー検査の陰性によるDVT除外診断で有病率が2%を超えており安全ではなく、また効果的でもないと結論づけた。 なお、DVTの再発が疑われる人については、Wellsスコアに1ポイントを加えることで、安全性が高まり、有用であるとした。■「深部静脈血栓症」関連記事下肢静脈瘤で深部静脈血栓症のリスク約5倍/JAMA

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「案ずるより産むが易し」とはいうけれど・・・(コメンテーター:後藤 信哉 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(183)より-

女性にとって出産は人生の一大イベントである。母子ともに無事であることは社会全体の一致した願いである。 しかし、「願い」と「事実」の間には解離がある。科学は感情とは無関係に事実を明らかにする。心筋梗塞、脳梗塞、静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症/肺血栓塞栓症)は前触れなしに突然発症する。心筋梗塞、肺塞栓症であれば発症後1時間後に死亡しても不思議はない。脳梗塞になれば発症後速やかに生涯に渡る麻痺という運命が決まってしまう。突然発症し、不可逆的な血栓イベントを避けたい気持ちは医師、患者、社会が共有している。 しかし、今回の論文は、出産後3ヵ月は血栓イベントリスクが高いことを容赦のない事実として示した。初回出産女性168万7,930例で出産後1年6ヵ月までの間に248例の脳卒中、47例の心筋梗塞、720例の静脈血栓塞栓症が発症したことは米国における事実である。イベントの多くは出産後6週以内に起こった。 出産という大事を成し遂げた母体をいたわる気持ちは世界共通であろう。もともと血栓イベントが起こり難い若い女性が脳卒中、心筋梗塞、静脈血栓塞栓症などを発症した場合、近親はどこにも向けられない怒りを感じることも理解できる。これらのイベント発症リスクは絶対値としては大きくない。 しかし、少数例といえども、適切な医療介入の元にあっても不幸なイベントが起こり得ることを事実として、感情とは切り離して取り扱う米国人の姿勢には学ぶことが多い。血栓イベントであるから「抗血栓薬」で予防できると考える人もいるかも知れない。しかし、一般論として重篤な出血イベントを年間数%惹起する「抗血栓薬」を「妊婦」という集団に一律に介入することはよいとは言えない。 滅多に起こらないけれど、起こると破局的となるイベントを「出血」という不可避の副作用を有する薬剤により予防するためには、「血栓イベント」リスクの著しく高い個人を同定する「個別化医療」の構成論的論理が必要である。 現時点では「患者集団の血栓イベントリスクを低減できる」介入手段はある。しかし、その介入素手段には「出血リスクの増加」という副作用がある。 血栓イベントは妊婦には滅多に起こることがなく、血栓イベントを起こす個人を同定する「個別化医療」の論理は確立されていない。自分の近親者が出産後の幸せな時期に血栓イベントにより急変すればどこにも向けようのない怒りと悲しみの感情が生まれることは理解できるが、科学は感情とはかかわりなく低い確率ではあるが不幸が現実として起こっていることを客観的に示している。われわれは、現実を数値として受け入れるしかない。

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腰椎固定術の手術時間の長さは術後合併症のリスク増加と関連

 腰椎固定術は慢性腰痛などの治療に広く用いられている。これまでさまざまな外科分野で手術時間の長さが、術後合併症発生率および死亡率の増加と相関することが示されているが、腰椎手術において検討した大規模研究はなかった。米国・ロザリンド・フランクリン医科大学のBobby D Kim氏らは、データベースを用いた後ろ向き研究により、腰椎手術においても手術時間の増加が多彩な合併症と関連していることを明らかにした。「手術時間は腰椎固定術の質の重要な評価尺度であり、患者の予後改善には手術時間を短縮する戦略と手術時間の長さと関連する危険因子を同定するさらなる研究が必要だ」とまとめている。Spine誌オンライン版2013年12月20日の掲載報告。 研究チームは、単一レベルの腰椎固定術の予後に対する手術時間の影響を調べることを目的に、米国外科学会の手術の質改善プログラム(ACS-NSQIP)データベースを用い、2006~2011年に腰椎固定術を受けた全患者の手術時間、術後30日の合併症発生率および死亡率を解析した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は4,588例で、平均手術時間は197±105分であった。 ・多変量ロジスティック回帰分析の結果、手術時間の増加は全合併症(オッズ比[OR]:2.09~5.73)、内科的合併症(OR:2.18~6.21)、外科的合併症(OR:1.65~2.90)、表層の手術部位感染(SSI)(OR:2.65~3.97)および術後輸血(OR:3.25~12.19)のリスク増加と関連した。・5時間を超える手術時間は再手術(OR:2.17)、臓器/腔SSI(OR:9.72)、敗血症/敗血症性ショック(OR:4.41)、創傷離開(OR:10.98)、および深部静脈血栓症(OR:17.22)のリスク増加と関連した。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」・腰痛診療の変化を考える~腰痛診療ガイドライン発行一年を経て~・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識

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DVT後の弾性加圧ストッキング、PTS予防効果なし/Lancet

 近位部深部静脈血栓症(DVT)後の弾性加圧ストッキング(ECS)装着について、血栓後症候群(PTS)の予防効果はないことが判明した。カナダ・ジューイッシュ総合病院のSusan R Kahn氏らが、800例超対象の多施設共同無作為化プラセボ対照試験の結果、報告した。ECSによるPTS予防効果は、これまで非プラセボ単施設試験で示唆されていた。Lancet誌オンライン版2013年12月6日号で発表した。弾性ストッキングをDVT後2週間以内から2年間、日中装着 研究グループは、ECSによるPTS予防効果をプラセボ対照にて評価するため、2004~2010年に近位部DVTを初めて発症した806例について、多施設共同無作為化プラセボ対照比較試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方はECS(410例)を、もう一方にはプラセボECS(396例)を使用した。 ECSの使用はDVT後2週間以内から開始した。起床後から就寝時まで装着するよう指示し、6ヵ月ごとに交換しながら2年間にわたって行われた。被験者の平均年齢は55.1歳だった。PTS累積発生率はECS群とプラセボ群で同等 主要アウトカムは、6ヵ月後以降のGinsberg's criteria(1ヵ月以上の下肢の痛みとむくみ)で認められたPTSの発生率だった。 結果、PTS累積発生率はECS群が14.2%に対し、プラセボECS群が12.7%と、両群で有意差はなかった(補正後ハザード比:1.13、95%信頼区間:0.73~1.76、p=0.58)。 また、ECSの使用頻度が高かった人のみについて行ったパー・プロトコル解析の結果も、PTS累積発症率について両群で有意差はなかった(同:0.96、0.53~1.74)。 結果を踏まえて著者は、「われわれの所見は、DVT後のECSを日常的に装着することを支持しないものであった」と結論している。

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ホルモン補充療法、慢性疾患予防として支持されず/JAMA

 閉経後女性に対するホルモン療法は、症状の管理に有効な場合があるものの、慢性疾患の予防法としては適切でないことが、Women’s Health Initiative(WHI)試験の長期的追跡の結果から明らかとなった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のJoAnn E Manson氏らが、JAMA誌2013年10月3日号で報告した。米国では、当初、ホルモン療法は主に血管運動症状の治療法として用いられていたが、次第に冠動脈心疾患(CHD)や認知機能障害など加齢に伴う多くの慢性疾患の予防法とみなされるようになったという。現在も日常臨床で施行されているが、慢性疾患の予防におけるリスクやベネフィットに関する疑問は解消されずに残されたままだった。ホルモン療法に関する2つの研究を統合解析 研究グループは、WHI試験のホルモン療法に関する2つの研究について、介入終了後に長期的な追跡調査を行い、包括的な統合解析を実施した。対象は、1993~1998年までに米国の40施設に登録された50~79歳の閉経後女性2万7,347人。 子宮が切除されていない女性は、結合型ウマエストロゲン(CEE、0.625mg/日)+酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA、2.5mg/日)を投与する群(8,506例)またはプラセボ群(8,102例)に、子宮切除術を受けた女性は、CEE(0.625mg/日)単独群(5,310例)またはプラセボ群(5,429例)に無作為に割り付けられた。 介入期間中央値はCEE+MPA試験が5.6年、CEE単独試験は7.2年で、通算13年のフォローアップが行われた(2010年9月30日まで)。有効性の主要評価項目はCHD、安全性の主要評価項目は浸潤性乳がんの発症とした。リスク、ベネフィットともに複雑なパターン示す CEE+MPA療法の介入期間中のCHDの発症数は、CEE+MPA療法群が196例、プラセボ群は159例であり、むしろプラセボ群で良好な傾向を認めたが有意な差はなかった(ハザード比[HR]:1.18、95%信頼区間[CI]:0.95~1.45、p=0.13)。また、浸潤性乳がんの発症数はそれぞれ206例、155例であり、プラセボ群で有意に良好だった(HR:1.24、95%CI:1.01~1.53、p=0.04)。 介入期間中にCEE+MPA療法群でリスクが増大した疾患として、脳卒中(p=0.01)、肺塞栓症(p<0.001)、深部静脈血栓症(p<0.001)、全心血管イベント(p=0.02)、認知症(65歳以上)(p=0.01)、胆嚢疾患(p<0.001)、尿失禁(p<0.001)、乳房圧痛(p<0.001)が挙げられ、ベネフィットは大腸がん(p=0.009)、大腿骨頸部骨折(p=0.03)、椎骨骨折(p=0.03)、糖尿病(p=0.005)、血管運動症状(p<0.001)、関節痛(p<0.001)などで認められた。 介入期間終了後には、ほとんどのリスクおよびベネフィットは消失したが、浸潤性乳がんの発症リスクは全期間を通じてCEE+MPA療法群で有意に高かった(HR:1.28、95%CI:1.11~1.48、p<0.001)。 一方、CEE単独療法群の介入期間中のCHDの発症数は204例、プラセボ群は222例(HR:0.94、95%CI:0.78~1.14)で、浸潤性乳がんの発症数はそれぞれ104例、135例(HR:0.79、95%CI:0.61~1.02)であり、いずれも両群間に有意な差は認めなかった。また、他の疾患のアウトカムはCEE+MPA療法群と類似していた。 2つのホルモン療法はいずれも全死因死亡には影響を及ぼさなかった(介入期間中:p=0.76、p=0.68、全期間:p=0.87、p=0.92)。CEE単独療法群では、全死因死亡、心筋梗塞、global indexが若い年齢層(50~59歳)で良好であった(傾向検定:p<0.05)。 CEE+MPA療法群における10,000人年当たりの有害事象の絶対リスク(global indexで評価)は、プラセボ群に比べ50~59歳で12件増えており、60~69歳では22件、70~79歳では38件増加していた。CEE単独群では50~59歳で19件低下したが、70~79歳では51件増加した。QOLのアウトカムは両治療群ともに一定の傾向はみられなかった。 著者は、「閉経後ホルモン療法のリスクおよびベネフィットは複雑なパターンを示した」と総括し、「一部の女性では症状の管理に有効であるが、慢性疾患の予防法としては支持されない」と結論づけている。

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新規抗凝固薬、ワルファリンに非劣性-静脈血栓塞栓症の再発-/NEJM

 経口第Xa因子阻害薬エドキサバン(商品名:リクシアナ)は、症候性静脈血栓塞栓症(VTE)の治療において、有効性がワルファリンに非劣性で、安全性は優れていることが、オランダ・アムステルダム大学のHarry R Buller氏らが行ったHokusai-VTE試験で示された。VTEは、心筋梗塞や脳卒中後にみられる心血管疾患として3番目に頻度が高く、北米では年間70万人以上が罹患しているという。従来の標準治療は低分子量ヘパリン+ビタミンK拮抗薬だが、ヘパリンの前投与の有無にかかわらず、新規経口抗凝固薬の有効性が確立されている。本研究は、2013年9月1日、アムステルダム市で開催された欧州心臓病学会(ESC)で報告され、同日付けのNEJM誌オンライン版に掲載された。最大1年投与の有用性を非劣性試験で評価 Hokusai-VTE試験は、ヘパリンを投与された急性VTE患者の治療において、エドキサバンのワルファリンに対する非劣性を評価する二重盲検無作為化試験。対象は、年齢18歳以上で、膝窩静脈、大腿静脈、腸骨静脈の急性症候性深部静脈血栓症(DVT)または急性症候性肺塞栓症(PE)の患者とした。 被験者は、非盲検下にエノキサパリンまたは未分画ヘパリンを5日以上投与された後、二重盲検、ダブルダミー下にエドキサバンまたはワルファリンを投与する群に無作為に割り付けられた。エドキサバンの投与量は60mg/日とし、腎機能障害(Ccr:30~50mL/分)、低体重(≦60kg)、P糖蛋白阻害薬を併用している患者には30mg/日が投与された。投与期間は3~12ヵ月で、治験担当医が患者の臨床的特徴や意向に応じて決定した。 有効性の主要評価項目は症候性VTEの発症率、安全性の主要評価項目は大出血または臨床的に重大な出血の発症率であり、ハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)上限値が1.5未満の場合に非劣性と判定することとした。重症PE患者ではVTE発症が48%低減 2010年1月~2012年10月までに日本を含む37ヵ国439施設から8,292例が登録され、エドキサバン群に4,143例、ワルファリン群には4,149例が割り付けられた。治療を受けなかった患者を除く、それぞれ4,118例(DVT 2,468例、PE 1,650例、平均年齢55.7歳、男性57.3%、体重≦60kg 12.7%、Ccr 30~50mL/分 6.5%)、4,122例(2,453例、1,669例、55.9歳、57.2%、12.6%、6.6%)がmodified intention-to-treat集団として解析の対象となった。 12ヵ月間の治療が施行されたのは40%であった。エドキサバン群の服薬遵守率は80%であり、ワルファリン群の治療域(INR:2.0~3.0)達成時間の割合は63.5%だった。 有効性の主要評価項目は、エドキサバン群が3.2%(130例)、ワルファリン群は3.5%(146例)で、HRは0.89、95%CIは0.70~1.13であり、非劣性マージンが満たされた(非劣性のp<0.001)。安全性の主要評価項目は、エドキサバン群が8.5%(349例)、ワルファリン群は10.3%(423例)で、HRは0.81、95%CIは0.71~0.94と、有意な差が認められた(優越性のp=0.004)。他の有害事象の発症率は両群で同等であった。 PE患者のうち938例が右室機能不全(NT-proBNP≧500pg/mL)と判定された。この重症PEのサブグループにおける主要評価項目の発症率はエドキサバン群が3.3%と、ワルファリン群の6.2%に比べ有意に低値であった(HR:0.52、95%CI:0.28~0.98)。 著者は、「重症PEを含むVTE患者に対し、ヘパリン投与後のエドキサバン1日1回経口投与は、有効性が標準治療に劣らず、出血が有意に少なかった」とまとめ、「本試験では、有効性の評価は治療期間の長さにかかわらず12ヵ月時に行われており、実臨床で予測されるアウトカムをよりよく理解できるデザインとなっている」と指摘している。

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中心静脈カテーテルの末梢静脈挿入は静脈血栓症のリスクとなるか?(コメンテーター:中澤 達 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(109)より-

末梢静脈挿入の中心静脈カテーテルは増加している。理由としては、挿入が容易であること、使用法の多様性、対費用効果が高いことが挙げられる。欧米では看護師により挿入できることがコスト削減になっていると推察される。静脈血栓症は、費用、罹患率・死亡率も増加する重大な合併症で、発症率が1~38.5%と報告されている。しかし末梢静脈挿入とその他との相対危険度は解明されていない。 本研究は、中心静脈カテーテルの静脈血栓症のリスクを、末梢静脈挿入と他の中心静脈カテーテルと比較したメタ解析である。18歳以上の末梢静脈挿入の中心静脈カテーテル症例をデータベースより抽出し、533文献中64研究(2万9,503例)が解析クライテリアに適合し解析に使用した。末梢静脈挿入の中心静脈カテーテルに関連した深部静脈血栓症のリスクは、臨床的重症状態(13.91%)担がん患者(6.67%)であった。末梢静脈挿入の中心静脈カテーテルは他の中心静脈カテーテルより深部静脈血栓症のリスクは上昇したが(OR 2.55)肺梗塞のリスクは上昇させなかった。末梢静脈挿入の中心静脈カテーテルに関連した深部静脈血栓症は2.7%であった。 結果は予想された通りで、末梢静脈挿入に血栓症が多いのはカテーテルが上腕静脈の内腔を占拠し、上肢動作による内皮細胞損傷による影響が原因であろう。肺梗塞のリスクが上昇しなかったのは、臨床家の血栓症リスクの認識により、発症の発見が早く、また不必要になれば早く抜こうと意識することが影響していると考えられる。血栓発症までの期間が明示されているのは4文献のみで、平均8.7日である。本研究は、カテーテル留置期間が解析項目に入っていないので臨床に使える知識とはならない。抗凝固など予防薬投与の有用性も含めたrandomized studyが必要である。

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脳卒中患者の下肢への間欠的空気圧迫法、DVTリスクを低減/Lancet

 脳卒中により自力歩行が困難な患者において、下肢への間欠的空気圧迫法(intermittent pneumatic compression:IPC)は深部静脈血栓症(DVT)のリスクを有意に抑制し、生存率を改善する可能性もあることが、英国・エジンバラ大学のMartin Dennis氏らが行ったCLOTS 3試験で示された(http://www.dcn.ed.ac.uk/clots/)。脳卒中などで入院した患者に高頻度にみられる静脈血栓塞栓症(VTE)は、回避可能な死因、併存症と考えられている。外科手術を受けた患者ではIPCにより下肢を連続的に圧迫することでDVTのリスクが低下することが知られているが、脳卒中患者に対する効果を示す信頼性の高いエビデンスはこれまでなかったという。本研究は2013年5月31日に欧州脳卒中学会(ESC、ロンドン市)で報告され、同日付けLancet誌オンライン版に掲載された。DVTリスク低減効果を無作為化試験で評価 CLOTS(Clots in Legs Or sTockings after Stroke)3試験は、脳卒中患者におけるIPCのDVTリスク低減効果を評価する多施設共同無作為化試験。急性脳卒中で入院後3日以内の、自力では動けない(介助なしではトイレに行けない)患者を対象とした。 これらの患者がIPC(両下肢)を施行する群または非IPC群に無作為に割り付けられ、7~10日および25~30日に圧迫duplex超音波検査(CDU)によるDVTの評価が行われた。6ヵ月間のフォローアップを行い、生存および症候性VTEの発現状況について検討した。 画像診断医やCDU技師には治療割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は30日までにCDUで検出された近位静脈のDVTまたは画像検査で確認された近位静脈の症候性DVTとした。DVTリスクを35%抑制、とくに出血性脳卒中で高い効果 2008年12月8日~2012年9月6日までに英国の94施設から2,876例が登録され、IPC群に1,438例(年齢中央値76歳、男性48%)が、非IPC群にも1,438例(77歳、48%)が割り付けられた。 主要評価項目の発現率はIPC群が8.5%(122/1,438例)、非IPC群は12.1%(174/1,438例)であり、IPCによる絶対リスク減少率(ARR)は3.6%(95%信頼区間[CI]:1.4~5.8)であった。 主要評価項目到達前に死亡した323例およびCDUを受けなかった41例を除外した場合の主要評価項目の発現率は、IPC群9.6%(122/1,267例)、非IPC群14.0%(174/1,245例)であり、調整オッズ比(OR)は0.65(95%CI:0.51~0.84、p=0.001)と有意差が認められた。 30日死亡率はIPC群が10.8%(156例)と、非IPC群の13.1%(189例)に比べ良好な傾向が認められた(OR:0.80、95%CI:0.63~1.01、p=0.057)。 下肢の皮膚損傷がIPC群の3.1%(44例)にみられ、非IPC群の1.4%(20例)に比べ有意に高頻度であった(p=0.002)が、負傷を伴う転倒はそれぞれ2.3%(33例)、1.7%(24例)と両群間に差を認めなかった(p=0.221)。 著者は、「IPCは、運動能が低下した脳卒中患者におけるDVTリスクの低減に有効な方法であり、生存率を改善する可能性も示唆される」と結論し、「とくに出血性脳卒中患者に対する高い効果は注目に値する(OR:0.36、95%CI:0.17~0.75)。また、IPCはDVTリスクの高い他の疾患にも有効な可能性がある」と指摘している。

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末梢挿入型中心静脈カテーテルは他のCVCと比べて深部静脈血栓症リスクが高い/Lancet

 末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)は、他の中心静脈カテーテル(CVC)と比べて、深部静脈血栓症のリスクが高いことが明らかにされた。とくに、重篤患者やがん患者でリスクが高かった。米国・ミシガン大学ヘルスシステムのVineet Chopra氏らによるシステマティックレビューおよびメタ解析による結果で、これまでPICCと静脈血栓塞栓症リスク増大との関連は知られていたが、他のCVCと比べてどれほどのリスクがあるのかは明らかにされていなかった。結果を踏まえて著者は、「PICCを用いるかどうかの判断は、デバイスがもたらすベネフィットと血栓症のリスクを十分に推し量って検討すべきである」と結論している。Lancet誌オンライン版2013年5月20日号掲載の報告より。システマティックレビューおよびメタ解析でPICCとその他CVCのリスクを比較 研究グループは、静脈血栓塞栓症のリスクについて、PICCとその他CVCとの関連を比較するシステマティックレビューおよびメタ解析を行った。 Medline、Embase、Biosis、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Conference Papers IndexおよびScopusなど複数のデータベースにて文献検索を行い、手動による参考文献とインターネット探索も行った。また、未公表データについて論文執筆者と連絡をとり入手した。 適格とした試験は、全文、アブストラクトあるいはポスター形式で発表されたすべてのヒト対象試験で、18歳以上成人がPICCを受けていたすべての試験とした。比較群のない試験に関しては、PICCを受けた患者における静脈血栓塞栓症のプール発生頻度を算出した。PICCとその他のCVCを比較した試験については、ランダムエフェクトメタ解析にてサマリーのオッズ比[OR]を算出した。PICCのオッズ比は2.55、肺塞栓症イベントはみられず 文献533件のうち、64試験(比較群あり12試験、なし52試験)・2万9,503例が適格条件を満たし解析に組み込まれた。 無比較群試験において、PICC関連の深部静脈血栓症の頻度は、重篤な疾患患者で最も高く(13.91%、95%信頼区間[CI]:7.68~20.14)、がん患者でも高かった(6.67%、同:4.69~8.64)。 11試験のメタ解析の結果、PICC関連の深部静脈血栓症リスクは、その他CVC関連と比べて有意に高かった(OR:2.55、95%CI:1.54~4.23、p<0.0001)。しかし、肺塞栓症リスクの増大はみられなかった(イベント発生なし)。 ベースラインでのPICC関連の深部静脈血栓症率2.7%とプールOR 2.55から求めた、CVCと比較した有害事象発生に必要な処置数(NNH)は26(95%CI:13~71)であった。■「深部静脈血栓症」関連記事下肢静脈瘤で深部静脈血栓症のリスク約5倍/JAMA

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Dダイマー検査の年齢調整カットオフ値、静脈血栓塞栓症の診断精度を改善/BMJ

 臨床的に静脈血栓塞栓症(肺塞栓症、深部静脈血栓症)の疑いが高くない50歳以上の患者に対するDダイマー検査のカットオフ値として、従来の基準値に代えて年齢調整値を用いると、高い感度を維持したまま特異度が改善され、高精度に本症の除外診断が可能になることが、オランダ・ユトレヒト大学病院のHenrike J Schouten氏らの検討で示された。Dダイマーは血栓形成に対し高い感度を示すため、臨床的に静脈血栓塞栓症の可能性が高くない患者における本症の除外診断に有用とされるが、可能性が高い患者では本検査の結果にかかわらず画像検査を要する。一方、Dダイマーは加齢にともなって上昇するため、高齢患者の診断に従来のカットオフ値を用いると偽陽性率が上がり、特異度が低下することから、新たなカットオフ値として年齢調整値の導入が進められている。BMJ誌オンライン版2013年5月3日号掲載の報告。Dダイマー検査カットオフ値の診断精度をメタ解析で評価 研究グループは、静脈血栓塞栓症が疑われる50歳以上の患者におけるDダイマー検査カットオフ値の診断精度の評価を目的に、系統的なレビューとメタ解析を行った。 対象は、静脈血栓塞栓症が疑われる高齢患者に対し、従来の基準値(500μg/L)と年齢調整値(年齢×10μg/L)の双方のカットオフ値を用いたDダイマー検査および標準的検査を行った試験とした。データベースを検索して2012年6月21日までに発表された論文を選定し、筆頭著者と連絡を取った。 臨床的に静脈血栓塞栓症の可能性が高くない患者について、2×2分割表を作成し、年齢層、Dダイマー検査カットオフ値別の層別解析を行った。Dダイマー検査に年齢調整カットオフ値を適用することで特異度が実質的に上昇 5つの後ろ向き試験の13のコホート(肺塞栓症7コホート、深部静脈血栓症6コホート)に含まれた1万2,497例がメタ解析の対象となった。 従来のカットオフ値の特異度は、年齢が上がるに従って低下した。すなわち、51~60歳が57.6%、61~70歳が39.4%、71~80歳が24.5%、>80歳は14.7%であった。年齢調整カットオフ値の特異度は全年齢層で従来のカットオフ値よりも高値を示し、それぞれ62.3%、49.5%、44.2%、35.2%だった。 従来のカットオフ値の感度は、51~60歳が100%、61~70歳が99.0%、71~80歳が98.7%、>80歳は99.6%であったのに対し、年齢調整カットオフ値ではそれぞれ99.4%、97.3%、97.3%、97.0%であり、大きな変化はなく良好であった。 著者は、「Dダイマー検査に年齢調整カットオフ値を適用することで、感度にはほとんど影響を及ぼさずに特異度が実質的に上昇し、これによって50歳以上の臨床的に静脈血栓塞栓症の疑いが低い患者に対する本検査の臨床的有用性が改善された」と結論し、「メタ解析の対象はすべて後ろ向き試験であり、日常診療への導入には、今後、費用効果の検討や有効性に関する前向きの試験を行う必要がある」と指摘している。

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ダビガトラン、VTEの延長治療に有効、出血リスクも/NEJM

 直接トロンビン阻害薬ダビガトラン(商品名:プラザキサ)による抗凝固療法は、静脈血栓塞栓症(VTE)の延長治療として有効であり、大出血や臨床的に重要な出血のリスクはワルファリンよりは低いもののプラセボに比べると高いことが、カナダ・マクマスター大学のSam Schulman氏らの検討で示された。VTE治療はビタミンK拮抗薬が標準とされ、複数の血栓エピソードなど再発のリスク因子を有する場合は長期投与が推奨されるが、大出血のリスクとともに頻回のモニタリングや用量調整を要することが問題となる。ダビガトランは固定用量での投与が可能なうえ、頻回のモニタリングや用量調節が不要で、VTEの治療効果についてワルファリンに対する非劣性が確認されており、初期治療終了後の延長治療に適する可能性がある。NEJM誌2013年2月21日号掲載の報告実薬対照非劣性試験とプラセボ対照優位性試験の統合的解析 RE-MEDY試験は、初期治療終了後のVTE延長治療におけるダビガトラン(150mg、1日2回)のワルファリンに対する非劣性を検証する実薬対照試験であり、RE-SONATE試験はダビガトラン(150mg、1日2回)のプラセボに対する優位性を評価するプラセボ対照試験。 両試験ともに、対象は年齢18歳以上、症候性の近位型深部静脈血栓症(DVT)または肺塞栓症(PE)と診断され、標準的抗凝固薬による初期治療を終了した症例とした。 RE-MEDY試験では、有効性のハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)上限値が2.85を超えない場合、および18ヵ月後のVTE再発のリスク差が2.8ポイント以内の場合に非劣性と判定した。ACSのリスクにも留意すべき RE-MEDY試験には、2006年7月~2010年7月までに33ヵ国265施設から2,856例が登録され、ダビガトラン群に1,430例(平均年齢55.4歳、女性39.1%)、ワルファリン群には1,426例(同:53.9歳、38.9%)が割り付けられた。また、RE-SONATE試験には、2007年11月~2010年9月までに21ヵ国147施設から1,343例が登録され、ダビガトラン群に681例(平均年齢56.1歳、女性44.1%)、プラセボ群には662例(同:55.5歳、45.0%)が割り付けられた。 RE-MEDY試験では、VTE再発率はダビガトラン群が1.8%(26例)と、ワルファリン群の1.3%(18例)に対し非劣性であった(HR:1.44、95%CI:0.78~2.64、非劣性検定:p=0.01、リスク差:0.38ポイント、95%CI:-0.50~1.25、非劣性検定:p<0.001)。 大出血の頻度はダビガトラン群が0.9%(13例)と、ワルファリン群の1.8%(25例)に比べほぼ半減したものの有意な差はなかった(HR:0.52、95%CI:0.27~1.02、p=0.06)。一方、大出血または臨床的に重要な出血の頻度はダビガトラン群で有意に減少した(HR:0.54、95%CI:0.41~0.71、p<0.001)。急性冠症候群(ACS)がダビガトラン群の0.9%(13例)にみられ、ワルファリン群の0.2%(3例)に比べ有意に高頻度であった(p=0.02)。 RE-SONATE試験のVTE再発率はダビガトラン群が0.4%(3例)と、プラセボ群の5.6%(37例)に比べ有意に良好であった(HR:0.08、95%CI:0.02~0.25、p<0.001)。大出血の発生率はそれぞれ0.3%(2例)、0%であったが、大出血または臨床的に重大な出血の発生率は5.3%(36例)、1.8%(12例)とダビガトラン群で有意に高値を示した(HR:2.92、95%CI:1.52~5.60、p=0.001)。ACSは両群に1例ずつ認められた。 著者は、2つの試験の結果を踏まえ、「ダビガトランによる抗凝固療法はVTEの延長治療として有効である。大出血や臨床的に重要な出血のリスクはワルファリンよりは低いもののプラセボに比べると高かった」とまとめている。

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アピキサバン、VTEの抗凝固療法の延長治療として有用/NEJM

 経口第Xa因子阻害薬アピキサバン(商品名:エリキュース)による抗凝固療法の延長治療は、大出血の発生率を上昇することなく静脈血栓塞栓症(VTE)の再発リスクを低減することが、イタリア・ペルージャ大学のGiancarlo Agnelli氏らによるAMPLIFY-EXT試験で示された。深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓症(PE)などのVTEは、心疾患や脳卒中後の血管関連死の原因として3番目に頻度が高いという。欧米のガイドラインは3ヵ月以上の抗凝固療法を推奨しているが、標準治療であるワルファリンは、出血リスクのほかモニタリングや食事制限などの問題で治療の継続が難しくなることが多く、延長治療の決定には困難が伴う。アピキサバンは固定用量レジメンでの投与が可能で、モニタリングも不要なため、VTEの延長治療の選択肢となる可能性があった。NEJM誌2013年2月21日号(オンライン版2012年12月8日号)掲載の報告。2つの用量の有効性と安全性をプラセボ対照試験で評価 AMPLIFY-EXT試験は、VTEに対する抗凝固療法の延長治療としてのアピキサバンの有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験。 対象は、年齢18歳以上、症候性のDVTまたはPEの診断で標準的な6~12ヵ月の抗凝固療法を完遂したが、抗凝固療法の継続・中止の判断が臨床的に困難な症例とした。 これらの患者が、アピキサバンの治療用量(5mg、1日2回)、血栓予防用量(2.5mg、1日2回)またはプラセボを与する群のいずれかに無作為に割り付けられ、12ヵ月の治療が行われた。VTE再発/全死因死亡:プラセボ群11.6%、2.5mg群3.8%、5mg群4.2% 2008年5月~2011年7月までに28ヵ国328施設から2,482例(ITT集団)が登録され、アピキサバン2.5mg群に840例(平均年齢56.6歳、男性58.0%、DVT 64.8%)、5mg群に813例(同:56.4歳、57.7%、64.8%)、プラセボ群には829例(同:57.1歳、56.5%、66.5%)が割り付けられた。 有効性に関する主要評価項目である症候性VTEの再発または全死因死亡の発生率は、プラセボ群の11.6%(96例)に比べ2.5mg群は3.8%[32例、相対リスク(RR):0.33、95%信頼区間(CI):0.22~0.48、差:7.8ポイント、95%CI:5.5~10.3、p<0.001]、5mg群は4.2%(34例、0.36、0.25~0.53、7.4、4.8~10.0、p<0.001)であり、いずれも有意な差が認められた。 有効性の副次的評価項目である症候性VTEの再発またはVTE関連死の発生率は、プラセボ群の8.8%(73例)に対し2.5mg群が1.7%(14例、RR:0.19、95%CI:0.11~0.33、差:7.2ポイント、95%CI:5.0~9.3、p<0.001)、5mg群も1.7%(14例、0.20、0.11~0.34、7.0、4.9~9.1、p<0.001)と、両群とも有意に優れた。 安全性の主要評価項目である大出血の発生率は、プラセボ群の0.5%(4例)、2.5mg群の0.2%(2例)、5mg群の0.1%(1例)に認められ、大量ではないものの臨床的に重要な出血は、それぞれ2.3%(19例)、3.0%(25例)、4.2%(34例)にみられた。全死因死亡は、プラセボ群の1.7%に比べ2.5mg群は0.8%、5mg群は0.5%だった。 著者は、「アピキサバンの治療用量または血栓予防用量を用いた抗凝固療法の延長治療により、VTEの再発リスクが抑制され、大出血の発生率は上昇しなかった」と結論し、「今後、より長期の治療のリスクとベネフィットを評価する臨床試験を行う必要がある。アピキサバン群で動脈血栓イベントの低下が観察されたことから、VTEの持続的な血栓リスクには動脈血栓も関与している可能性がある」と指摘している。

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脊椎手術後の最大有害事象、外科医は死亡に10点、患者は脳卒中に9.2点と評価

 脊椎手術後のさまざまな有害事象の影響について、患者と医師の認識の度合いを調査した結果、双方ともに項目間にはかなりのばらつきがあり、全体的には患者の方が医師よりも有害事象の影響を強く認識していることが明らかになった。脊椎手術後の有害事象はなお多く発生しているが、これまで患者中心のアウトカム評価ツールは開発されていない。米国・オレゴン健康科学大学のRobert Hart氏らは、手術結果とQOLにおいて有害事象の影響を考慮することは重要なファーストステップであるとして、両者の認識について評価する、合併症発生シナリオベースのサーベイ調査を行った。Spine誌オンライン版2012年11月2日号の掲載報告。 サーベイ調査は22の潜在的な周術期の有害事象(心筋梗塞、脳卒中、脊髄損傷、神経根損傷、馬尾損傷、失明、硬膜損傷、輸血、深部静脈血栓症、肺塞栓症、表在性感染症、深在性感染症、呼吸不全、尿路感染症、偽関節、隣接椎間障害、脊柱変形が持続、インプラント治療失敗、死亡、腎機能不全、消化管系の合併症、性機能障害)を、14人の脊椎手術専門外科医と、16例の成人脊柱変形患者に対して示し行われた。 各合併症が起きた場合の影響スコアを、総合的な重症度、手術に対する満足度、QOLへの影響からなる3つのカテゴリーで評価してもらい、Wilcoxon/Kruskal-Wallis検定にて外科医と患者との比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・外科医と患者の各合併症の平均影響スコアは、イベント間でばらつきがみられた。外科医では、最低が0.9点(輸血)、最高が10.0点(死亡)であり、患者では最低が2.3点(尿路感染症)、最高が9.2点(脳卒中)であった。・患者のスコアでは、6つの潜在的な有害事象(脳卒中、呼吸不全、心筋梗塞、肺塞栓症、硬膜損傷、輸血)について、3つのすべてのカテゴリーの評価が、外科医より一貫して高かった(p<0.05)。・さらに3つの合併症(腎機能不全、偽関節、深部静脈血栓症)は、1つあるいは2つのカテゴリーについて、患者の評価の方が高かった。 これらの結果を踏まえて著者は、「患者本位の立場から有害事象を説明することで、より完成度の高い手術結果の提供が可能となるであろう」と結論している。

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大腿骨頸部全置換術後、圧迫寒冷療法でアウトカム良好に

 大腿骨頸部の関節形成術後に圧迫寒冷療法を行うことで、術後出血が減り、術後の鎮痛薬使用の減少および入院期間の短縮、創部の浸出液の減少、術後6週時点の疼痛もより小さい傾向がみられたことが報告された。オランダ・Spaarne HospitalのLeegwater氏らが、患者30例を対象とした無作為化試験の結果、報告したものである。圧迫寒冷療法は、急性期の細胞損傷処置で効果的に用いられている。Game Ready Systemは周期的圧縮と寒冷療法を組み合わせたものだが、これまで大腿骨頸部全置換術(THA)における効果について無作為化試験は行われていなかった。Hip international誌オンライン版2102年10月31日号掲載の報告。 待機的大腿骨頸部の関節形成術を受けた30例を2群に無作為化し評価を行った。15例はトリコット編地の包帯で圧迫処置のみを受け、15例は圧迫包帯処置に加えて間欠的寒冷圧迫療法(30分間を15回)を行った。 術後痛、モルヒネ使用、出血、創部の浸出液、患者と医療スタッフの満足度とともに、圧迫寒冷装置の実行可能性、総入院期間、感染率、深部静脈血栓症と、短期的な人工関節関連の問題を観察した。 主な結果は以下のとおり。・被験者30例は、平均年齢68歳(範囲:31~83歳)、変形性関節症の末期で、待機的大腿骨頸部関節形成術を受けた。・術後1日目のヘモグロビン値は、対照群は2.34mmol/L、介入群は1.87mmol/L下落した(p=0.027)。・術後3日目のヘモグロビン値は、それぞれ2.63、2.16ずつ減少した(p=0.646)。・介入群では、モルヒネ使用がより少なく、入院期間がより短く、創部の浸出液量もより少ない傾向がみられた。・術後痛スコアの有意差は認められなかった。・深部静脈血栓症イベントは対照群で1例発生した。

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第4回 期待権:薄氷上の医療従事者

■今回のテーマのポイント1.期待権侵害が不法行為として認められるかは、「当該医療行為が著しく不適切なものである」事案について検討し得るにとどまる2.この法理は、因果関係の証明が不要であるばかりでなく、理論上は、身体への損害結果すら不要であることから問題である3.「当該医療行為が著しく不適切なものである」場合の解釈は不明確であり、不用意に既存の法理論をあてはめた場合、大きな問題が生ずる虞(おそれ)がある事件の概要原告(X)は、昭和63年11月、Y病院にて左脛骨高原骨折に対し、骨接合術および骨移植術を受けました。Xは、退院後、7カ月ほどY病院にリハビリのために通院し、平成元年8月にボルト抜釘した後は、自主的に通院を中止しました。平成9年10月になり、Xは、Y病院を受診し、「本件手術後、左足の腫れが続いている」などと訴えたことから、診察、レントゲン検査が行われたものの、機能障害はなく問題はないものと判断され、格別の措置は講じられませんでした。平成12年には、左膝下から足首にかけて無数の赤黒いあざができるなど皮膚に変色が生じたためY病院を受診したところ、皮膚科受診を勧められました。しかし、皮膚科で投薬治療を受けるものの改善せず、平成13年になって、他院(大学病院)を受診したところ、手術およびその後の臥床、ギプス固定による「左下肢深部静脈血栓症」と診断されました。Xは、Y病院に対し、必要な検査を行なわず、専門医に紹介もしなかった結果、左下肢深部静脈血栓症となり、後遺症が残ったとして損害賠償請求をしました。原審(高裁)では、下肢の手術に伴い深部静脈血栓症を発症する頻度が高いことが我が国の整形外科医において一般に認識されるようになったのは、平成13年以降であること、平成9年10月の受診時点では、すでに適切な治療法がなくなっていたとしながらも、その当時の医療水準にかなった適切かつ真しな医療行為を受ける期待権が侵害されたとして、Y病院に300万円の損害賠償責任を認めました。これに対し、最高裁は、原審を破棄し原告(X)の請求を棄却しました。なぜそうなったのかは、事件の経過からご覧ください。事件の経過原告(X)は、昭和63年11月、Y病院にて左脛骨高原骨折に対し、骨接合術および骨移植術を受けました。Xは、退院後、Y病院にリハビリのため通院していた際、左足の腫れを訴えることがありましたが、特に検査や治療はなされませんでした。そして、平成元年8月にボルト抜釘した後は、自主的に通院を中止しました。Xは、平成4年、7年、8年と計3回Y病院を腰痛等で受診しましたが、その際に左足の腫れを訴えることはありませんでした。Xは、平成9年10月になりY病院を受診し、「本件手術後、左足の腫れが続いている」などと訴えたことから、診察、レントゲン検査を行われましたが、左右の足の周径に3cmほど差があったものの、圧痛もなく、左膝の可動域も十分あり、Xが従前どおり大工の仕事を続けられていることから機能障害はなく、問題はないものと判断され、格別の措置は講じられませんでした。平成12年には、左膝下から足首にかけて無数の赤黒いあざができるなど皮膚の変色が生じたためY病院を受診したところ、皮膚科受診を勧められました。皮膚科ではうっ血と診断され、投薬治療を受けましたが改善しませんでした。Xは、平成13年に他院(大学病院)を複数受診したところ、手術およびその後の臥床、ギプス固定による左下肢深部静脈血栓症と診断されました。事件の判決患者が適切な医療行為を受けることができなかった場合に、医師が、患者に対して、適切な医療行為を受ける期待権の侵害のみを理由とする不法行為責任を負うことがあるか否かは、当該医療行為が著しく不適切なものである事案について検討し得るにとどまるべきものであるところ、本件は、そのような事案とはいえない。したがって、上告人らについて上記不法行為責任の有無を検討する余地はなく、上告人らは、被上告人に対し、不法行為責任を負わないというべきである。(最判平成23年02月25日集民第236号183頁)ポイント解説本判決は、最高裁判所が「期待権」について判示した初めての判決であり、第3回で紹介した「相当程度の可能性」と併せて医療行為、医療訴訟をどのように位置づけるかを考える上で重要な判決といえます。期待権とは、「患者が適時に医療水準にかなった適切な検査、治療等医療行為を受ける利益」のことをいいます。前回同様、不法行為の要件にあてはめると、(1)過失:医療水準に満たない診療等(2)損害:期待権 ≒ 医療水準に満たない診療等(3)因果関係:(1)と(2)の間の因果関係となります。見ていただければ明らかなように、期待権は過失とほぼ同義であることから論理的に因果関係(3)の立証は不要となります。したがって、結果として、「期待権侵害が認められるためには、過失のみが立証されれば足りる」ということになります。前回説明した「相当程度の可能性」が結論としては過失と相当程度の可能性のみで不法行為が成立する(因果関係の立証の緩和)としたものでありましたが、期待権においては、もはや因果関係の立証すら不要となるのです。しかも、期待権侵害の場合、実際に患者の身体に損害が生じていることは問いませんので、理論上は、「ヒヤリハット」といわれるインシデントであったとしても期待権侵害による不法行為が成立しうることになるなど医療安全管理上も大きな問題といえます。本判決では、この期待権侵害が不法行為として認められるためには、「当該医療行為が著しく不適切なものである事案について検討し得るにとどまるべきものである」と限定を付しています。この最高裁の判示は、不法行為の違法性に対する相関関係説に立っているものと考えられます。相関関係説とは、「侵害されたとする利益の種類・性質とそれを侵害した行為の態様(悪質性)の相関関係(掛け算)によって不法行為として認めるべきかを決しよう」とする考え方です。■相関関係説被侵害利益の種類・性質 × 侵害行為の態様(悪質性)つまり、日照権や騒音被害等生活妨害や、営業権等のような要保護性が低い利益については、当該侵害行為が不正な手段によって侵害されたとか、刑罰法規に違反するような行為によって侵害されたなど、悪質な態様によって侵害されている場合にのみ不法行為を認めるべきであると考えるのです。本判決が、「当該医療行為が著しく不適切なものである事案について検討し得るにとどまるべき」と判示しているのは、この相関関係説からきているものと考えられます。期待権のような要保護性の低い利益については、行為態様の悪質性が著しく高い場合においてのみ、不法行為が成立しうるとしたのです※1。この考え方自体は理解できなくはないのですが、相関関係説において、行為態様の悪質性があるとされる典型例として、刑罰法規違反が挙げられていますが、異状死体届出義務、処方箋交付義務やカルテ記載義務等複数の医師法上の義務には、刑事罰が科せられていることが多いので、大きな問題が生ずる危険があるといえます。一方、医療費亡国論に基づく医療費抑制政策をいまだに継続している状況下において、「患者が適時に医療水準にかなった適切な検査、治療等医療行為を受ける利益」を侵害している主体は国であり、国家賠償責任を認めるならまだしも、憲法25条に定める生存権を「プログラム規定」※2とした司法が、このような制度下で寝る間も惜しんで仕事をしている臨床現場の医療従事者個人に対して過酷なまでに不法行為責任を問うことは、欺瞞でしかないともいえます。また、本判決の裏返しとなりますが、医療訴訟において、「なぜ司法が医療者の現場感覚としては問題がないといえるような事例にまで過失を認めてきたか」というと、患者が死亡した場合や重度の障害を負った場合、被侵害利益が非常に重大であるため、侵害態様の悪質性が低い場合においても不法行為が成立すべきという価値判断が働いたからと考えられます。しかし、現在の日本において、人が死亡する場所はほとんどが病院です※3。常態として人が死亡する場所である病院において、この相関関係説を無思慮に持ち込んだ結果、医療行為への過酷に過ぎる司法判断につながっており、萎縮医療や医療崩壊を生みました。「相当程度の可能性」や「期待権」は、医療現場を無視した医療バッシングの極限における産物であり、法理論上も、現実の医療現場に対しても、大きな問題であるばかりでなく、司法関係者自身への利益誘導ともなっていることから、すみやかに社会保障制度等による適切な対処が望まれます。※1最判平成17年12月8日民集218号1075頁においても、補足意見として「医師、医療機関といえどもすべてが万全のものではなく、多種多様な現実的な制約から適切十分な医療の恩恵に浴することが難しいことも事実として認めざるを得ない。ある程度の不適切不十分は、社会生活上許容範囲内として認めるべきであろう。したがって、結果発生との因果関係が証明された場合はともかく、「相当程度の可能性の存在」すら証明されない場合に、なお医師に過失責任を負わせるのは、著しく不適切不十分な場合に限ると言うべきであろう」とされていました。※2社会権をすべて実現することは、国家財政上不可能であり、これを実体権として認めた場合には、国家賠償請求が濫発するなど無用の混乱を生ずる虞(おそれ)があることから、実体権としては認めず、単なる政治的・道徳的義務(法的義務ではない単なる「スローガン」)でしかないとする考え方。※3平成19年の人口動態調査では、死亡総数1,108,334人中、879,692人(79.4%)が病院で、28,505人(2.6%)が診療所で死亡しています。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます(出現順)。最判平成23年02月25日集民第236号183頁

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高齢者の深部静脈血栓症の診断、Dダイマーは年齢依存性カットオフ値で

 プライマリ・ケアでの深部静脈血栓症診断のためのDダイマー値について、カットオフ値を従来の500μg/Lではなく、50歳超では「年齢×μg/L」、60歳以上では「750μg/L」を用いるのが安全な除外に結びつくことが明らかにされた。オランダ・ユトレヒト大学メディカルセンターのHenrike J Schouten氏らが、後ろ向き断面診断解析の結果、報告した。BMJ誌6月9日号(オンライン版2012年6月6日号)掲載報告より。Dダイマーのカットオフ値を50歳超936例を含む1,374例で検討 研究グループは、オランダの3つの病院群に所属する110人のプライマリ・ケア医の協力で、1,374例の臨床的に深部静脈血栓症が疑われた連続患者[50歳超が936例(68.1%)]を対象に、2つのDダイマーのカットオフ値「50歳超では、年齢×μg/L」と「60歳以上では750μg/L」を当てはめ評価を行った。 主要評価項目は、2つのDダイマーのカットオフ値を当てはめた場合に除外できた患者の割合と、偽陰性だった数とした。Dダイマーの年齢依存性カットオフ値は最も高齢な80歳超群で最も高率に安全に除外 被験者のうち647例は、ウェルズ・スコアで深部静脈血栓症の可能性が低いと判断された。 これらの患者(全年齢)において、通常の500μg/LのDダイマーのカットオフ値を用いた場合に除外された患者は272例(42.0%)であったが、2つのDダイマーの年齢依存性カットオフ値を用いた場合は309例(47.8%)で、5.7%増加することができた(95%信頼区間:4.1~7.8%)。偽陰性事例の除外率はそれぞれ0.3%、0.5%で、0.2%増加した(同:0.004~8.6%)。 Dダイマーの年齢依存性カットオフ値を用いた除外率の増加は、最も高齢な80歳超の患者群で最も高率だった。80歳超の患者で安全に除外できたのは、通常のDダイマーのカットオフ値を用いた場合は13例(21.0%)だったが、Dダイマーの年齢依存性カットオフ値を用いた場合は22例(35.5%)で、14.5%増加した(6.8~25.8%)。 Dダイマーの年齢依存性カットオフ値と比較して、750μg/Lのカットオフ値も、同程度の除外率(307例、47.4%)および偽陰性率(0.3%)だった。

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手術患者に対するトラネキサム酸、輸血リスク低減は確たる証拠あり

 手術における輸血リスクを低減するとされるトラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)の有効性エビデンスについて、英国・London School of Hygiene and Tropical MedicineのKatharine Ker氏らによるシステマティックレビュー・累積メタ解析の結果、過去10年に遡って強いエビデンスがあり、輸血に関してはこれ以上試験を行っても新たな知見はもたらされないだろうと報告した。しかし、「血栓塞栓症イベントと死亡率に対する影響については、いまだ明らかではない」として、手術患者にその情報を提供し選択をさせるべきであると結論。小規模な臨床試験をこれ以上行うのではなく、種々雑多な患者を含む大規模プラグマティックな試験を行うことの必要性について言及した。BMJ誌2012年5月26日号(オンライン版2012年5月17日号)掲載報告より。システマティックレビューで129試験・総患者数1万488例を解析 Ker氏らは、手術患者へのトラネキサム酸投与に関する輸血、血栓塞栓症イベント、死亡に関する効果の評価を目的とした。Cochrane対照設定試験中央レジスター、Medline、Embaseの初刊行~2011年9月の間の発表論文、WHO国際臨床試験登録プラットフォームと関連論文参照リストを検索し、解析論文を特定した。 対象となったのは、手術患者についてトラネキサム酸投与と非投与またはプラセボ投与を比較した無作為化対照試験で、アウトカムとして、輸血を受けた患者数、血栓塞栓症イベント件数(心筋梗塞、脳卒中、深部静脈血栓症、肺塞栓症)、死亡件数を測定していたものとした。論文執筆の言語や刊行の有無などは問わなかった。 結果、1972~2011年の間の129試験・総患者数1万488例のデータが解析に含まれた。血栓塞栓症イベントに対する効果は不明、死亡に対する効果も不確定 トラネキサム酸投与は輸血を受ける確率を3分の1低減することが認められた(リスク比:0.62、95%信頼区間:0.58~0.65、P<0.001)。この効果は、割付隠蔽化を用いて解析に制限をかけた場合も維持された(同:0.68、0.62~0.74、P<0.001)。 一方で、心筋梗塞(同;0.68、0.43~1.09、P=0.11)、脳卒中(同:1.14、0.65~2.00、P=0.65)、深部静脈血栓症(同:0.86、0.53~1.39、P=0.54)、肺塞栓症(同:0.61、0.25~1.47、P=0.27)については効果が明らかではなかった。 死亡の発生は少なかった(同:0.61、0.38~0.98、P=0.04)が、割付隠蔽化を用いて解析に制限をかけた場合は、考慮すべき不確定さが認められた(同:0.67、0.33~1.34、P=0.25)。 累積メタ解析の結果、輸血に対するトラネキサム酸の効果のエビデンスは確たるものであること、過去10年にわたってそのエビデンスは確実に入手できることが示された。

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第34回 日本血栓止血学会学術集会のご案内 会長の内山氏より

2012年6月7~9日に新宿のハイアットリージェンシー東京で第34回日本血栓止血学会学術集会が行われます。会長の内山真一郎氏より寄稿文をいただきました。是非ご覧ください。2012年6月7~9日に新宿のハイアットリージェンシー東京で第34回日本血栓止血学会学術集会を会長として主催致します。本学会のテーマは「血栓症への挑戦」です。血栓症は世界の死因の3割を占める人類最大の疾患です。私は日本人に最も多い血栓症である脳卒中を専門としていることから、このようなテーマを選びました。脳卒中、心筋梗塞、末梢動脈疾患といった動脈血栓症や、深部静脈血栓症や肺塞栓症といった静脈血栓症は、死亡や身体障害の主要な原因となっていることから社会的な関心も高く、このようなテーマを本学会で取り上げることは国民のニーズに答える意味でも意義が大きいと考えます。血栓症はあらゆる臓器の障害を生じることから、極めて多岐にわたる診療科が関与しており、学際的な疾患病態であるといえます。平成23年3月11日、我が国は未曽有の大震災に見舞われ、多くの人命が失われました。この東日本大震災では、震災後に血栓症による心血管死も多く発生したことが報じられています。そこで、本学術集会では、特別企画として「震災関連死と血栓症」について取り上げました。抗血栓薬は長い間、アスピリン、ワルファリン、へパリンの時代が続きましたが、近年、分子標的薬が次々と開発され、新規抗血栓薬が臨床現場でも使用されるようになり、抗血栓療法は新時代を迎えています。また、血管内治療も新たなデバイスが次々と開発され、著しい進歩がみられます。本学術集会では、基礎と臨床のクロストークによる活発な議論が展開され、日本発の多くのトランスレーショナルリサーチが芽生えるような契機となればと願っています。特別講演として、ミシガン大学のHassouna先生には抗リン脂質抗体症候群について、ボストン大学のHylek先生には新規抗凝固薬について、京都大学の江藤浩之先生にはiPS細胞研究の血栓止血領域への応用について講演をしていただきます。また、会長要望シンポジウムとして「脳動脈再開通療法の進歩」と題して、脳梗塞急性期治療に大変革をもたらそうとしている血管内治療を取り上げました。さらに、多くの教育講演、関連学会との合同シンポジウム、SPCシンポジウム、共催シンポジウムが予定されています。会場となるハイアットリージェンシー東京は、東京のどこからもアクセスが便利な新宿駅に近く、新宿駅周辺には無数のショップやレストランがあり、歓楽街の歌舞伎町も至近距離であり、学会と同時に国際都市東京のエンターテインメントも存分にお楽しみいただければと存じます。皆様の御来場を心よりお待ちしております。 第34回日本血栓止血学会学術集会会長 内山 真一郎東京女子医科大学医学部神経内科学講座主任教授

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妊娠中と産後の女性、DVTスクリーニングに単回の圧迫超音波検査が有効

深部静脈血栓症(DVT)が疑われる妊娠中および出産後の女性に対し、単回の圧迫超音波検査は、安全で合理的なスクリーニング法であることが示された。同スクリーニングで陰性でありながら、後にDVTの診断を受けた人の割合は1.1%と低かったという。フランス・Cavale Blanche大学のGregoire Le Gal氏らが、妊娠中・出産後の女性200人超について行った前向き試験で明らかにしたもので、BMJ誌2012年5月5日号(オンライン版2012年4月24日号)で発表した。妊娠はDVTのリスク因子であることが知られているが、一方で妊婦はDVTでなくても、それと似た症状を発症することが少なくないことも知られている。フランスとスイスの18ヵ所で210人を検査し追跡同研究グループは、フランスとスイスの18カ所の血管治療専門医療機関で、DVTが疑われた妊娠中または産後の女性226人について、単回の圧迫超音波検査によるDVTスクリーニングを行い、その後のDVT発症の有無について追跡した。被験者のうち16人は、主に肺血栓塞栓症の疑いにより、除外された。残った210人の、年齢中央値は33歳(四分位範囲:28~37)、妊娠中の女性は167人、出産後の女性は43人だった。当初DVT診断を受けなかった177人のうち、2人がDVT発症被験者のうち、圧迫超音波検査などでDVTの診断を受けたのは22人(10.5%)だった。また、同検査結果が陰性だった人のうち10人は、標準用量の抗凝固療法を行った。DVTの診断を受けず、また十分な抗凝固療法を行わなかった177人について、3ヵ月間追跡調査を行った。追跡期間中にDVTの診断を受けたのは、2人(1.1%、95%信頼区間:0.3~4.0)だった。同割合は、これまでに妊娠していない患者について行った静脈造影法によるDVTスクリーニングで、陰性でありながら後にDVTの診断を受けた割合と同等だった。研究グループは、「妊娠中または出産後の女性に対し、単回の圧迫超音波検査は安全で有効なDVTスクリーニングである」と結論付けた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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肺塞栓症に対するリバーロキサバン、標準療法に非劣性

肺塞栓症の初期治療および長期治療に対する、経口第Xa因子阻害薬リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)の固定用量レジメンは、標準的な抗凝固療法との比較で非劣性であり、ベネフィット対リスク特性が改善されていることが報告された。EINSTEIN–Pulmonary Embolism(PE)Study研究グループの検討報告で、NEJM誌2012年4月5日号(オンライン版2012年3月26日号)で発表された。リバーロキサバンの固定用量レジメンは、検査室監視が不要で、効果は深部静脈血栓症治療の標準的な抗凝固療法と同程度であることが示されていた。そこで、肺塞栓症の治療をシンプルにする可能性があることから検討が行われた。4,832例をリバーロキサバン対標準療法に無作為化研究グループによる無作為化薬剤名表示イベント主導型非劣性試験は、深部静脈血栓症の有無にかかわらず、急性症候性肺塞栓症を呈した4,832例を、リバーロキサバン投与群(1日2回15mgを3週間、その後は1日1回20mg)と、標準療法群(エノキサパリン投与後、用量調整ビタミンK拮抗薬を投与)に無作為に割り付け、3、6、12ヵ月時点で比較した。主要有効性アウトカムは、症候性静脈血栓塞栓症の再発とし、主要安全性アウトカムは、重大出血または重大ではないが臨床的に意義のある出血とした。イベント発生率、有害事象とも標準療法を上回る結果結果、リバーロキサバン群は、主要な有効性アウトカムにおいて標準療法群に対し非劣性(非劣性マージン2.0、P=0.003)で、イベント発生率はリバーロキサバン群の50件(2.1%)に対し、標準療法群は44件(1.8%)だった(ハザード比:1.12、95%信頼区間:0.75~1.68)。主要安全性アウトカムは、リバーロキサバン群10.3%に対し標準療法群11.4%の患者に認められた(同:0.90、0.76~1.07、P=0.23)。重大出血は、リバーロキサバン群26例(1.1%)、標準療法群52例(2.2%)で観察された(同:0.49、0.31~0.79、P=0.003)。他の有害事象の発生率は両群で同程度だった。(朝田哲明:医療ライター)

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