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1.

中リスクの急性肺血栓塞栓症に対する超音波補助カテーテル血栓溶解療法が有効で重篤な出血合併症を増加させなかった(HI-PEITHO試験)(解説:佐田政隆氏)

 急性肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism:PTE)の死亡率は、診断されず未治療の場合は約30%と高いが、適切な治療を実施すれば2~8%まで低下することが知られている。致死的PTE患者の75%は発症から1時間以内に、残りの25%は発症48時間以内に死亡するとされており、遅れることなくPTEを診断して適切な治療を施すことがきわめて重要である。 心停止やショックといった高リスク例では、早急に機械的補助循環を導入し、抗凝固療法に加えて再灌流療法(血栓溶解療法、外科的血栓摘除術、カテーテル治療)の実施を検討することが国内外で推奨されている。 一方、中リスクのPTE患者に対する血栓溶解療法の有効性は確立していなかった。2014年に発表になったPEITHO試験では、血行動態が安定している中リスクのPTE患者約1,000例に対し、抗凝固療法(ヘパリン)に加えて血栓溶解薬としてのtPAを全身投与する治療が、抗凝固療法単独よりも死亡・血行動態悪化の発生率を低下させたものの、重大な出血リスクを高めた(Meyer G, et al. N Engl J Med. 2014;370:1402-1411.)。 日本循環器学会と日本肺高血圧・肺循環学会による2025年改訂版「肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン」においては、重症度別に急性PTEに対する治療戦略をフローチャートで提示している。中リスクのうち、右心機能障害と心臓バイオマーカーの上昇のいずれも認める場合、抗凝固療法を開始するとともに慎重なモニタリングを行い、血行動態が悪化した場合には再灌流療法の実施を考慮することが推奨されている。 Boston Scientific社が開発したEKOSシステムでは、高周波・低出力の超音波エネルギーカテーテルを用いることで、血栓溶解薬の投与量、投与期間を減じても従来と同等の血栓溶解効果が期待できることが示され、欧米では販売されている。本HI-PEITHO試験は市販後非盲検無作為化試験である。中リスクの急性PTEに対するEKOSシステムを使用した血栓溶解と抗凝固の併用療法は、抗凝固療法のみと比較して、7日以内のPTE関連死、症候性のPTE再発、心肺機能の代償不全/虚脱の複合イベントの発生率を低下させたが、重篤な出血リスクは増加させなかった。 今まで、PTEに対するカテーテルを用いた血栓溶解療法については十分なエビデンスは示されておらず、わが国では、海外で使用されているカテーテルが承認されていない。そのため、もっぱらガイディングカテーテルを用いた用手的吸引術が用いられてきており、関連学会から未承認の血栓吸引あるいは血栓除去カテーテルについて早期承認申請が行われている。抗凝固療法としてDOACが主流となった現在、日本でもPTEに対する血栓除去カテーテル治療が本研究のようなRCTの結果に基づき承認されていき、患者の予後改善につながることを期待したい。

2.

静脈インターベンションの世界からの新しいエビデンスの登場―詰まった静脈もやはり広げればよいのか?(解説:山下侑吾氏)

 循環器医や放射線科医を中心とするインターベンション医は、これまで「動脈」を対象とした血管内治療の世界を大きく切り開いてきた。長年にわたる貢献により同領域は高度に発展し、現在では一定の成熟を得た領域となったともいえる。一方で、同じ血管である「静脈」を対象とした血管内治療は、未知な部分も多く、今後の発展が望まれる領域といえる。近年、静脈領域としては、肺塞栓症や深部静脈血栓症に対するさまざまな血栓吸引デバイスが世界中で普及しつつあり、これまで同領域では、ほとんど皆無であったランダム化比較介入試験も報告され、信頼性の高いエビデンスが現在進行形で蓄積しつつある。C-TRACT試験は、このような静脈インターベンションの世界での新しい歴史を切り開く重要なエビデンスと考えられる。筆者自身も、循環器内科のインターベンション医として、普段から冠動脈・末梢動脈・肺動脈などの全身の動脈の血管内治療に携わっているが、時として静脈の血管内治療が必要となることがある。しかしながら、カテーテル室の現場ではその適応や介入方法を含めて悩むことも多く、本試験の結果は、心より待ち望んでいたエビデンスであった。 深部静脈血栓症は、慢性期の後遺症として血栓後症候群(post-thrombotic syndrome:PTS)を呈することがある。大半は、軽度の浮腫や疼痛の残存といった軽症例と考えられるが、時として強い症状を呈することがあり、患者のQOLを著しく下げる可能性もある。これまでの治療法としては圧迫療法などの保存的治療であったが、高度の狭窄および閉塞した静脈がある場合には、当該血管を物理的に再疎通させる治療が有用と考えられ、そのコンセプトは「open vein hypothesis」という形で広く知られている。しかしながら、この意義を、大規模なランダム化比較介入試験で直接的に検証されたことはなかった。C-TRACT試験は、これまで主として保存的治療で対応されていたPTSに対して、病態の根幹である静脈閉塞に直接介入するという「open vein hypothesis」の妥当性を検証した意義深い試験といえる。多くの専門家がおそらく有用であろうと思いつつも意外に立証されていなかった治療介入は、心血管領域ではよくあるが、本試験は静脈インターベンションの世界でのそのような疑問に真正面から取り組んだものともいえる。 本試験の結果自体は、ステントによる血管内治療が、保存的治療と比較してPTS症状やQOLの改善に有用であることが示されたpositiveなものであった。医学的な価値として「open vein hypothesis」を臨床的に支持する結果を、大規模なランダム化比較介入試験にて初めて示した点が挙げられる。一方で、血管内治療は6ヵ月時点での重症度の評価スコアであるVenous Clinical Severity Score(VCSS)を有意に低下させたが、その低減は約2点と比較的控えめであった。この結果は、統計学的には有意であるが、臨床的なインパクトとしては限定的と解釈する余地もある。しかしながら、本病態のQOL指標であるVEINES-QOLおよび包括的健康指標であるSF-36においては、いずれも臨床的に意味のある改善幅であり、患者の日常生活機能や主観的健康状態に対する影響は十分な恩恵があることが示された。すなわち、本治療の本質的価値は単なるスコアの改善ではなく、患者が実際に感じる生活の質の向上にあると考えるべきであろう。この視点は、今後のPTS治療戦略を考えるうえできわめて重要である。 本試験を日常臨床に応用する際にはいくつかの注意点もある。本試験の対象患者は、腸骨静脈に閉塞もしくは高度狭窄を有する中等度から重度のPTS患者に限定されており、比較的選択された集団である。このため、軽症例や腸骨静脈に相応の病変を伴わない症例に対して本結果を一般化することは適切ではない。また、本試験は経験豊富な施設において実施されており、手技の再現性や外的妥当性についても慎重な評価が求められる。また、安全性の観点では、血管内治療群において出血イベントの増加が有意に認められた点は無視できない。多くは非大出血であったものの、抗血栓療法の強化に伴うと予想される出血リスクの増大は、臨床的に無視できないトレードオフである。この点は、適応判断の際には十分に考慮されるべきであり、すべての静脈をもれなくopenさせることが適切であるかは慎重であるべきである。 上記の注意点を有するものの、本試験はPTS患者への静脈インターベンションが有用であることを高いエビデンスとして示し、新しい歴史を切り開く価値あるものと考えられる。まったくの奇遇であるが、筆者自身が本稿を執筆している当日に、下大静脈の完全閉塞により高度の下肢浮腫に大変困っている患者に大静脈ステントを留置する静脈インターベンションを実施した。治療介入直後より下肢静脈圧の著明な改善とともに下肢浮腫の改善も認め、患者はQOLの改善に対して大変なご利益を感じられた。適切な症例への適切な静脈インターベンションによる介入は、患者QOLの視点より重要であることを改めて実感した。本試験は、筆者のそのような主観的な感覚を、ランダム化比較介入試験という客観的な形で示してくれたこの上ない朗報である。今後は、さらなる長期的な予後の検証や最適な抗血栓療法の確立、さらには実臨床でのさまざまな患者への適応を通して、本治療の真の臨床的価値がより明確になることが期待される。

3.

血栓後症候群、血管内治療が症状およびQOLを有意に改善/NEJM

 中等症または重症の血栓後症候群(PTS)および腸骨静脈閉塞を有する患者において、血管内治療は標準治療と比較し、6ヵ月後のPTS重症度を有意に軽減し健康関連QOLを改善した。ただし、出血リスクは高かった。米国・ワシントン大学のSuresh Vedantham氏らC-TRACT Trial Investigatorsが、同国29施設で実施した第III相無作為化非盲検評価者盲検比較試験「Chronic Venous Thrombosis: Relief with Adjunctive Catheter-Directed Therapy trial:C-TRACT試験」の結果を報告した。PTSは深部静脈血栓症(DVT)発症後によくみられ、下肢の重篤な症状により患者の活動性やQOLを著しく低下させることがある。血管内治療は、慢性静脈閉塞を除去でき、PTS重症度を軽減することが期待されていた。NEJM誌オンライン版2026年4月13日号掲載の報告。血栓後症候群に対する血管内治療の有効性を、6ヵ月後のPTS重症度で評価 研究グループは、中等症または重症のPTSを有し、画像診断により腸骨静脈閉塞(閉塞または50%以上の狭窄)が確認された患者を登録した。 PTSは、登録の3ヵ月以上前に発症したDVTの同側下肢における慢性静脈疾患と定義し、静脈症状により日常活動や作業能力に著しい制限が生じ、修正Venous Clinical Severity Score(VCSS)が8以上、Villalta PTSスコアが10以上、または開放性静脈性潰瘍を認める場合を中等症または重症とした。 適格患者を、血管内治療(腸骨静脈ステント留置および強化抗血栓療法)群または非血管内治療(標準治療のみ)群に1対1の割合で無作為に割り付けた。両群とも標準的なPTS治療として、圧迫療法、抗凝固療法、生活指導を行い、開放性静脈性潰瘍を有する患者はエビデンスに基づくケアを行うため創傷/潰瘍ケアクリニックへ紹介された。 主要アウトカムは、無作為化後6ヵ月時のPTS重症度で、VCSS(スコア範囲:0~30、高スコアほど重症)を用いて盲検下で評価した。主要な副次アウトカムは、無作為化後6ヵ月時の患者報告によるQOLで、静脈疾患に特異的なVenous Insufficiency Epidemiological and Economic Study Quality of Life(VEINES-QOL)質問票(範囲:0~100、4~6ポイントの変化を臨床的に重要な変化と定義)、および包括的なMedical Outcomes Study 36-Item Short-Form Health Status Survey(SF-36)を用いて評価した。安全性アウトカムは、出血、静脈血栓塞栓症の再発、および死亡とした。PTS重症度は血管内治療群で有意に低下、生活の質も向上 2018年7月~2025年6月に225例が無作為化された。このうち画像検査で腸骨静脈閉塞がないことが判明した1例を除く224例(血管内治療群112例、非血管内治療群112例)が主要解析の対象集団となった。 無作為化後6ヵ月時のPTS重症度は、血管内治療群が非血管内治療群に比べて有意に低かった(平均[±SD]VCSSスコア:8.1±5.1 vs.10.0±4.9、補正後群間差:-2.0、95%信頼区間[CI]:-3.2~-0.8、p=0.001)。 VEINES-QOLスコア(平均値±標準偏差)は、6ヵ月時点で血管内治療群62.8±24.6、非血管内治療群48.6±26.7であり、血管内治療群が良好であった(補正後群間差:14.5ポイント、95%CI:9.5~19.4、p<0.001)。同様に、SF-36の身体機能スコアも血管内治療群のほうが良好であった(補正後群間差:6.1ポイント、95%CI:2.8~9.3、p<0.001)。 安全性については、出血(大出血+非大出血)は血管内治療群のほうが非血管内治療群より発現割合が有意に高く(11.6%vs.3.6%、p=0.03)、その主な要因は非大出血であった(9.8%vs.2.7%)。

4.

テストステロン補充療法は膝関節全置換術後の合併症リスクを高める?

 米国でテストステロン補充療法(TRT)の利用者が急増する中、膝関節全置換術(TKA)を受ける患者にとっては、このホルモンがより高いリスクをもたらす可能性があるようだ。新たな研究で、手術前の1年以内にTRTを受けていた患者は、術後に感染症、血栓、腎障害、肺炎、膝関節の不安定性などの合併症の発症リスクが高いことが示された。米Hospital for Special Surgeryの整形外科医であるBrian Chalmers氏らによるこの研究結果は、米国整形外科学会(AAOS)年次総会(AAOS 2026、3月2〜6日、米ニューオーリンズ)で発表された。 研究グループによると、テストステロン補充療法の処方件数は2019年の730万件から2024年には1100万件超へと増加している。男女ともに、健康的な老化の促進、筋肉・骨の増強、性欲の改善を目的としてこのホルモンを使用しているという。一方で、テストステロンは、血栓形成や免疫機能、骨代謝にも影響するため、手術後の回復を複雑にする可能性がある。Chalmers氏は、「テストステロンを使用する人がかつてないほど増えており、また、TKAの件数は2030年までに年間100万件を超えると予測されている。そこでわれわれは、TRTが術後の患者に与える影響についてより深く調べることにした」とニュースリリースでコメントした。 今回の研究では、米国の電子カルテ全国データベース(TriNetX)のデータを用いて、2020年2月以前にTKAを受け、術後5年間の追跡データがそろう成人1万3,250人を対象に、TKA前のTRTと術後合併症との関連を検討した。 その結果、術後90日時点において、TRTを受けた群と受けていない群の合併症の発生率は、肺塞栓症で1.6%と1.2%、肺炎で3.3%と1.9%、急性腎障害で4.2%と2.9%、敗血症で1.9%と1.1%であった。また、術後1年時点では、肺塞栓症で2.6%と2.0%、深部静脈血栓症で4.5%と3.3%、心血管関連イベントで3.0%と2.4%、肺炎で6.0%と4.0%、急性腎障害で7.9%と5.2%、敗血症で2.4%と0.9%であり、TRT群での合併症の発生率は高いままだった。さらに、人工関節そのものに関わる合併症のリスクも高まっており、術後5年にわたって関節感染症、骨折、インプラントの緩み、膝の不安定性、再手術の発生率が高いことが示された。 研究グループは、「テストステロンは血栓リスクの上昇と関連することが知られているが、このホルモンがTKAにどのように影響するかを解明するには、さらなる研究が必要だ」と指摘している。研究グループの一員である米ワイル・コーネル・メディスンのArsen Omurzakov氏は、「本研究から、テストステロンは、骨が時間をかけて自然に再構築される過程にも影響を与えることが示唆された」とプレスリリースで述べている。Arsen Omurzakov氏の双子の兄弟で、同じく研究グループの一員である米ケース・ウェスタン・リザーブ大学のArgen Omurzakov氏は、「テストステロン値は免疫系だけでなく、免疫系・治癒・その他の重要な生体機能に関わるマイクロバイオームにも影響する可能性がある」と付け加えている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

5.

急性静脈血栓塞栓症の出血リスク、アピキサバンvs.リバーロキサバン/NEJM

 急性静脈血栓塞栓症の患者において、3ヵ月の治療期間における臨床的に重要な出血リスクは、アピキサバン投与群がリバーロキサバン投与群よりも有意に低下したことが、カナダ・オタワ大学のLana A. Castellucci氏らCOBRRA Trial Investigatorsによる検討で示された。アピキサバンおよびリバーロキサバンは、急性静脈血栓塞栓症の治療でよく用いられる経口抗凝固薬であるが、両薬の出血リスクの差については不明なままであった。NEJM誌2026年3月12日号掲載の報告。3ヵ月の投与中に発生した臨床的に重要な出血を評価 研究グループは、急性静脈血栓塞栓症の患者におけるアピキサバンとリバーロキサバンを比較するプラグマティックな多国間共同(カナダ、オーストラリア、アイルランドが参加)前向き無作為化非盲検エンドポイント盲検化試験を行った。 急性症候性肺塞栓症または近位深部静脈血栓症を有する患者を適格とし、アピキサバン群(10mgを1日2回7日間投与し、その後は5mgを1日2回投与)またはリバーロキサバン群(15mgを1日2回21日間投与し、その後は20mgを1日1回投与)に1対1の割合で無作為に割り付け、3ヵ月間投与した。 主要アウトカムは、3ヵ月の試験期間中に発生した臨床的に重要な出血で、大出血または臨床的に重要な非大出血の複合とした(出血の定義はInternational Society on Thrombosis and Haemostasisによる)。 副次アウトカムは、全死因死亡などであった。アピキサバン群、相対リスク0.46で有意に低下 2017年12月13日~2025年1月23日に3ヵ国の32施設で2,760例が無作為化された(アピキサバン群1,370例、リバーロキサバン群1,390例)。ITT集団はアピキサバン群1,345例、リバーロキサバン群1,355例であった。ベースラインの両群の特性は均衡が取れており、全体の平均年齢は58.3歳、女性が1,175例(43.5%)。多くの患者(2,087例、77.3%)が誘因のない静脈血栓塞栓症であった。 ITT解析において、主要アウトカムのイベント発生は、アピキサバン群44/1,345例(3.3%)、リバーロキサバン群96/1,355例(7.1%)であった(相対リスク[RR]:0.46、95%信頼区間[CI]:0.33~0.65、p<0.001)。 全死因死亡は、アピキサバン群1/1,345例(0.1%)、リバーロキサバン群4/1,355例(0.3%)で報告された(RR:0.25、95%CI:0.03~2.26)。 出血または静脈血栓塞栓症に関連しない重篤な有害事象は、アピキサバン群36/1,345例(2.7%)、リバーロキサバン群30/1,355例(2.2%)で報告された。

6.

静脈血栓塞栓症における抗凝固薬の継続は出血リスクの増加はあるが、再発リスクの低下の効果が大きい(Target Trial Emulation:TTEによる検討)(解説:名郷直樹氏)

 誘因のない静脈血栓塞栓症に対する経口抗凝固療法の継続と中止についてのTarget Trial Emulationが、Kueiyu Joshua Linらにより報告された。Target Trial EmulationはTTEと略されるが、経胸壁心エコー(Transthoracic Echocardiography)のことではない。Target Trial Emulationとは、観察データを使って、仮想的なランダム化臨床試験を模倣する方法論である。 まず、『日本循環器学会/日本肺高血圧・肺循環学会合同ガイドライン2025年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン』ではどうなっているか。「誘因のない中枢型DVT(unprovoked 中枢型DVT)に対し,出血リスクが高くない場合には,中枢型DVTの治療および再発予防のための長期の抗凝固療法として,低用量DOACが使用できるなら可及的長期の抗凝固療法を行うことを考慮してもよい」とクラスIIbで推奨されている。しかし、その根拠となる文献の引用は記載されていない。 では、論文のPECO(Patient、Exposure、Comparison、Outcome)と結果を見てみる。誘因不明の静脈血栓塞栓症があり、初回治療後少なくとも90日間経過した患者において、治療継続群と中止群を比較し、主要アウトカムは、入院を要する再発性VTE、入院を要する大出血である。中止群は、初回90日間の治療後、30日以内に処方がないものと定義された。まず、結果である。治療継続群を治療中止群と比較して、再発性VTEの発生率が著しく低く信頼区間も狭い(調整ハザード比:0.19、95%信頼区間:0.13~0.29)。大出血発生率の上昇(ハザード比:1.75、95%信頼区間:1.52~2.02)、死亡率の低下(ハザード比:0.74、95%信頼区間:0.69~0.79)が認められた。転倒などの出血リスクが低ければ、継続が妥当かもしれない。 次に、TTEにおける批判的吟味を進める。TTEの想定されるランダム化比較試験を模倣する手順は次の7つである。対象患者抽出の適格基準、比較対照となる治療戦略、割付手順、追跡期間、アウトカム、解析方法(交絡因子の調整、ITT、PPS)、解析計画である。とくに、比較対照となる治療戦略、割付手順、解析方法が問題になる。それぞれ、Immortal time biasへの対応と交絡因子の調整などを確認する必要がある。TTEでは介入開始と追跡期間が不一致となる可能性があり、イベントが調査されない期間が含まれる。その期間が解析に含まれると、介入の効果を過大評価してしまう。それをImmortal time biasと呼ぶ。 この研究では、Immortal time biasを回避するため、治療戦略が割り当てられる時点と追跡開始時点(Time zero)を一致させるように設計されている。Time zeroを中止群は抗凝固薬中止日とし、対応する継続群は同じ暦日を割り当てたと記載がある。Time zeroが明確で、Immortal time biasを回避する対応がなされている。 交絡の調整であるが、プロペンシティスコア・マッチングを行い、背景をそろえているが、貧血や転倒の既往は調整されているものの、直前のHb低下傾向や転倒リスクなどの調整は行われていない。抗凝固薬導入後貧血の進行があれば、抗凝固薬を中止することもある。転倒リスクが高いなどの理由で抗凝固薬を中止することも多い。継続群のDOACの用量やワーファリン使用時の目標INRも不明である。TTEではデータベースにない因子を調整することができないという大きな問題がある。ただこうした未知の交絡因子のリスクはあるが、再発リスクをハザード比の95%信頼区間の上限でも0.29まで少なくするという大きな効果を覆すほどの大きな影響はないかもしれない。また現実の患者に利用する際には、アウトカムが入院を要する患者のみに絞られ、外来治療可能な肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症や軽症出血が除外されている。外来患者など再発リスクが低い対象には適用しにくい面がある。 またリスクとベネフィット、再発予防効果と出血リスクのバランスも重要である。この問題を検討するためにLHHという指標がある。Likelihood of Harm to the Patientといい、治療の「害が生じる可能性」を示す医療統計の用語である。計算式はLHH=(1/NNT)÷(1/NNH)である。LHH>1で治療が推奨される。NNT 39、NNH 209のため、LHHは5.36になり、1を大きく超える。一般的には治療推奨になる。しかし血栓症の再発と大出血では重みが異なる。その重みを考慮すると、LHH=(1/NNT)×S÷(1/NNH)(Sは有害事象の重み)になる。一般的に出血のほうが致死的になることが2倍と仮定すると、さらにLHHは小さくなるがそれでも1より大きい。上記のような批判的吟味のポイントはあったが、続けられない理由がない限り、基本的には抗凝固薬継続がいいのかもしれない。

7.

年齢調整Dダイマーカットオフ値、下肢DVTの除外診断に有効/JAMA

 年齢調整Dダイマーカットオフ値(50歳以上の患者では年齢×10μg/L)は、肺塞栓症(PE)が疑われる患者ではDダイマーの診断的有用性を安全性を損なわずに高めるが、下肢深部静脈血栓症(DVT)が疑われる患者に外挿可能かは確立されていない。カナダ・Ottawa Health Research InstituteのGregoire Le Gal氏らは「ADJUST-DVT試験」において、年齢調整Dダイマーカットオフ値は、安全性を低下することなくDVTを除外して診断効率を向上し、不必要な画像検査を低減する可能性があることを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年1月5日号に掲載された。4ヵ国の前向き診断管理アウトカム研究 ADJUST-DVT試験は、4ヵ国(ベルギー、カナダ、フランス、スイス)の27の病院で実施された前向き診断管理アウトカム研究(Swiss National Research Foundationなどの助成を受けた)。 2015年1月~2022年10月に患者を登録した。参加施設の救急診療部を受診し、臨床的に下肢のDVTが疑われた患者3,205例(年齢中央値59歳、女性1,737例[54%])を対象とした。 これらの患者を、Wellsスコアを用いた検査前の臨床的確率、高感度Dダイマー検査、下肢圧迫超音波検査に基づく段階的診断戦略により評価した。DVTが除外された患者は、3ヵ月間の追跡調査を受けた。 主要アウトカムは、従来のカットオフ値(500μg/L)と年齢調整カットオフ値の間のDダイマー値に基づきDVTを除外された患者における、追跡期間中に判定された症候性静脈血栓塞栓症(VTE:下肢DVTまたはPE、あるいはこれら両方)イベントの発生率(失敗率)とした。DVTを除外できる患者が7.4%増加 DVTの臨床的確率が高くない(non-high)、または可能性が低い(unlikely)と判定された2,169例のうち、531例(24.5%、95%信頼区間[CI]:22.7~26.4)はDダイマー値が500μg/L未満であり、161例(7.4%、95%CI:6.4~8.6)は500μg/Lと年齢調整カットオフ値の間であった。 したがって、従来のカットオフ値から年齢調整カットオフ値への転換により、Dダイマー陰性の割合は7.4%(95%CI:6.4~8.6)の絶対的増加を示し、23.3%(95%CI:20.3~26.6)の相対的増加がもたらされた。 初回受診時の遠位型または近位型DVTの有病率は21.8%であった。追跡期間中のVTEイベント発現例はない Dダイマー値が従来のカットオフ値(500μg/L)以上で、年齢調整カットオフ値未満の161例では、追跡期間中にVTEイベントが発現した失敗例(主要アウトカム)を認めなかった(0%、95%CI:0~2.3)。 年齢別のサブグループ解析では、Dダイマー値が500μg/L未満の患者の割合は、18~49歳では59.6%であったが、加齢とともに低下し、75歳以上ではわずか8.7%であった。これに対し、年齢調整カットオフ値を使用すると、75歳以上のDダイマー陰性の割合は26.1%(95%CI:22.0~30.8)に上昇した。 著者は、「高齢者のDダイマー検査の診断的有用性が一般人口と同等レベルに達した。これは、臨床現場では重要な意味を持つ。より多くの患者が画像検査なしで退院可能となり、救急診療部の滞在時間が短縮され、不必要な経験的抗凝固療法が回避される。重要な点は、これらの利点が診断の安全性を損なわずに達成されたことである」「留意点として、これらの結果は、他の血栓症の部位やタイプ(例:上皮、脳、内臓、生殖器の血栓症)には外挿できないことが挙げられる」としている。

8.

DVT疑いの患者のDダイマー値はカットオフを年齢によって変えると、余計な下肢エコー検査を減らせるかもしれないという朗報(解説:山下侑吾氏)

オリジナルニュース【JAMA】Age-Adjusted D-Dimer Cutoff Levels to Rule Out Deep Vein Thrombosis 日常臨床でDVT(深部静脈血栓症)を疑った際に、Dダイマー値はよく測定される。しかしながら、Dダイマー値は年齢とともに非特異的に上昇するため、高齢者では多くの人が陽性判定になり、結局下肢エコーを実施することになるという困った問題がある。肺塞栓症では、50歳以上は「年齢×10μg/L」という年齢調整Dダイマーカットオフの有用性がすでに示されていた。一方で、おそらくはDVTでも同じであろうと予想はされつつも、DVTでは前向き臨床試験での検証が不十分という“空白地帯”が残っていた。臨床試験には、エビデンスの大きなピースを埋めるものもあれば、隙間の小さな(しかし重要な)ピースを埋めるものもある。本研究は、治療方針を大きく変化させる新規薬剤や治療法の登場に関するエビデンスではないが、本領域での隙間の空白を埋める意義ある研究と筆者は考える。 本研究により、あまりDVTが疑わしくない患者では、年齢調整Dダイマーカットオフを用いると、年齢を調整せずDダイマー値が500μg/L未満であった症例だけを陰性と判定した場合と比べて、7.4%の患者を新たに陰性と判定することができ、それらの患者では下肢エコー検査にて近位部のDVTが発見されなかった。この結果の意味することは、年齢調整Dダイマーカットオフを用いると、一部の患者では不要な下肢エコー検査をスキップできる可能性があるということである。そして、当然ではあるが、その御利益は75歳以上のより高齢の患者で大きかった。わが国での近年の医療費増大に対する厳しい風向きを考えると、医療経済の観点からも、本研究の結果は意味あることと思われる。 わが国では、素晴らしい国民皆保険制度の下、専門的検査が必要と判断された際には、その実施の敷居は比較的低い医療環境である。これは、患者および医療従事者にとっては専門的検査を念のために行い、検査により当該疾患を否定できれば安心できるというメリットもある。一方で、それは諸刃の剣として、時として不要な検査の増大につながる可能性も否めない。筆者は、所属する病院で、DVTの専門家であるようなふりをしているせいか、DVTと診断された患者に加えて、DVTを疑う患者を外来・病棟に限らず山のようにご相談いただく。これらの患者の中には、あまりDVTが疑わしくない場合も多いが、Dダイマー値を測定すると院内の基準値をちょっとだけ超えて「陽性」と判定されることも多い。陽性と判定されたからには、下肢エコー検査による評価を行わないわけにいかず、エコー検査室に緊急での検査の相談をすることになるが、筆者からの多数の依頼に際してエコー検査部からのひんしゅくを買うことも否めない。本研究は、年齢調整Dダイマーカットオフを用いることにより、下肢エコー検査の必要な依頼数を減らすことができるかもしれないという、筆者にとっては日々の懸念を減らせるこの上ない朗報である。このような既存の検査や治療を最適化させる現場のニーズに応える臨床試験は、高く評価されるべきものと日々思っている。 一方で、本研究は、外来患者に限定したものである。とくに術後を含めた入院患者での最適なDダイマーカットオフは現場でよく問題となる。さらに、本研究は、がん患者は少数しか組み入れられていない。近年はがん患者での血栓症が大きな問題となっているが、がん患者ではDダイマー値が漏れなく高値となるため、がん患者ではどうすべきかという問題もきわめて重要である。筆者を含めて、わが国でも本問題に日々苦悩する臨床医は多く潜んでいると想像するが、われわれに役立つさらなる朗報が聞けることを本当に心から願っている。

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NSAIDsによるVTEリスク上昇は本当?~アセトアミノフェンと比較

 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、静脈血栓塞栓症(VTE)発症リスクを上昇させる可能性が指摘されている。しかし、VTE発症リスクの上昇は、NSAIDsが必要となる患者背景による影響を受けている可能性も考えられている。そこで、松尾 裕一郎氏(東京大学)らの研究グループは、日本のレセプトデータベースを用いた研究において、NSAIDsとアセトアミノフェンのVTE発症リスクを比較した。その結果、新規にNSAIDsを処方された患者は、アセトアミノフェンを処方された患者と比較して、VTE発症リスクが有意に低かった。一方で、NSAIDsを処方された患者は、NSAIDsを処方されていない患者と比較するとVTEリスクが高かった。著者らは、アセトアミノフェンがVTE発症リスクを上昇させないと仮定すると、NSAIDsがVTE発症リスクを上昇させるわけではないことが示唆されたとしている。本研究結果は、Journal of Internal Medicine誌オンライン版2026年1月3日号で報告された。 研究グループは、JMDCのレセプトデータベースを用いて、NSAIDsまたはアセトアミノフェンが2013年4月~2022年2月の期間に新規処方された18~65歳の患者を特定した。処方日前365日以内にいずれかの薬剤の処方歴がある患者、抗凝固薬の処方歴がある患者、VTEの既往がある患者などが除外された。主要評価項目は、処方から60日以内のVTE(肺塞栓症または下肢深部静脈血栓症)の発症とした。傾向スコアオーバーラップ重み付け法により背景因子を調整し、群間比較を行った。また、NSAIDs非処方患者を対照とした解析、COX-2阻害薬と非選択的NSAIDs/COX-1阻害薬の比較も実施した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、NSAIDs処方群428万2,421例、アセトアミノフェン処方群272万8,202例であった。・追跡期間中にVTEを発症したのは全体で1,504例(0.022%)であった。・傾向スコアオーバーラップ重み付け法により背景因子を調整後、NSAIDs処方群はアセトアミノフェン処方群と比較して、VTE発症リスクが有意に低かった(調整ハザード比[aHR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.62~0.80)。・60日以内のVTE発症率の調整群間差は-0.006%(95%CI:-0.010~-0.003、p<0.001)であった。・NSAIDs処方群はNSAIDs非処方群と比較して、VTE発症リスクが有意に高かった(aHR:3.18、95%CI:2.85~3.55)。・COX-2阻害薬と非選択的NSAIDs/COX-1阻害薬の比較では、VTE発症リスクに有意差はみられなかった(aHR:1.01、95%CI:0.85~1.19)。 本研究結果を踏まえて、著者らは「VTE発症リスクへの懸念からNSAIDsを避けてアセトアミノフェンを選択することは、必ずしも合理的ではない可能性がある」と述べている。

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術後VTEの予防、REGN7508Catがエノキサパリンを上回る/Lancet

 カナダ・Thrombosis and Atherosclerosis Research InstituteのJeffrey I. Weitz氏らは、2つの第II相試験(ROXI-VTE-I、ROXI-VTE-II)において、人工膝関節全置換術後の静脈血栓塞栓症(VTE)の予防効果に関して、エノキサパリンと比較してREGN7508Catは優越性を有するが、REGN9933A2は優越性を持たないと報告した。REGN9933A2は、凝固XI因子(FXI)のアップル2ドメインに結合してFXIIaによるFXI活性化のみを阻害し、REGN7508Catは、FXIの触媒ドメインに結合してFXIaの活性を阻害するとともに、FXIIaおよびトロンビンによるFXI活性化をも阻害する完全ヒト型モノクローナル抗体である。研究の成果は、Lancet誌2025年11月29日号で発表された。2つの国際的な無作為化試験 ROXI-VTE-I試験とROXI-VTE-II試験は、それぞれ術後VTEの予防におけるREGN9933A2およびREGN7508Catの有効性と安全性の評価を目的とする非盲検無作為化試験であり、前者は2023年5月~2024年5月に7ヵ国15施設で、後者は2024年6月~2025年1月に5ヵ国12施設で参加者を登録した(Regeneron Pharmaceuticalsの助成を受けた)。 両試験とも、年齢50歳以上で、片側の膝関節に対する初回の待機的人工膝関節全置換術を受けた患者を対象とした。 ROXI-VTE-I試験では、REGN9933A2(300mg、単回、静脈内)、エノキサパリン(40mg、1日1回、皮下)、探索的比較としてアピキサバン(2.5mg、1日2回、経口)の投与を受ける群に1対1対1で、ROXI-VTE-II試験では、REGN7508Cat(250mg、単回、静脈内)またはエノキサパリン(40mg、1日1回、皮下)の投与を受ける群に2対1で、それぞれ参加者を無作為に割り付けた。 両試験の主要エンドポイントは、修正ITT集団における、試験薬の初回投与(術後12~24時間)から12日目までに発現し、客観的に確定されたVTE(術側下肢の無症候性深部静脈血栓症、いずれかの下肢の客観的に確定された症候性深部静脈血栓症、確定された非致死性または致死性肺塞栓症の複合)とした。REGN9933A2とREGN7508Catは、対数オッズ比(log OR)の事後確率が95%を超える場合に、エノキサパリンより優越性があると判定した。 主な安全性アウトカムは、大出血および臨床的に重要な非大出血の複合であった。事後確率、I試験78.5%、II試験99.8% ROXI-VTE-I試験は373例(REGN9933A2群123例[年齢中央値66歳、女性77%]、エノキサパリン群125例[66歳、83%]、アピキサバン群125例[66歳、71%])、ROXI-VTE-II試験は179例(REGN7508Cat群120例[67歳、77%]、エノキサパリン群59例[66歳、75%])を登録した。追跡期間中央値は両試験とも74日(四分位範囲:72~76)であった。 ROXI-VTE-I試験では、12日目までにVTEがREGN9933A2群で116例中20例(17%)、エノキサパリン群で117例中26例(22%)、アピキサバン群で113例中14例(12%)に発生した。平均補正後オッズ比(aOR)は0.78(90%信用区間[CrI]:0.47~1.32)、事後確率は78.5%であり、エノキサパリンに対するREGN9933A2の優越性は示されなかった。 一方、ROXI-VTE-II試験では、12日目までにVTEがREGN7508Cat群で113例中8例(7%)、エノキサパリン群で58例中10例(17%)に発生した。ROXI-VTE-I試験のエノキサパリン群と統合したデータに基づく平均aORは0.37(90%CrI:0.20~0.68)、事後確率は99.8%と、エノキサパリンに対するREGN7508Catの優越性を確認した(名目上のp=0.04)。主な安全性アウトカムのイベントは発生せず 大出血および臨床的に重要な非大出血の発現は認めなかった。最も頻度の高い試験治療下での有害事象は、術後の貧血(ROXI-VTE-I試験:REGN9933A2群123例中9例[7%]、エノキサパリン群125例中11例[9%]、アピキサバン群125例中16例[13%]、ROXI-VTE-II試験:REGN7508Cat群120例中6例[5%]、エノキサパリン群0例)であった。 また、重篤な有害事象は、ROXI-VTE-I試験ではREGN9933A2群で4例(3%)、エノキサパリン群で1例(1%)、アピキサバン群で2例(2%)に発現し、ROXI-VTE-II試験ではREGN7508Cat群で2例(2%)にみられ、エノキサパリン群では認めなかった。両試験ともに試験薬の投与中止の原因となった有害事象の報告はなく、試験薬関連の有害事象や重篤な有害事象も発生せず、試験期間中の死亡例もなかった。 著者は、「これら2つの試験は、FXIの阻害は出血リスクを増加させずに血栓症を軽減するという考え方への支持をより強固なものにする」「今後、REGN9933A2とREGN7508Catの安全性を確定し、これらの異なる作用機序が、FXI活性化の駆動因子に応じた個別化治療を可能にするかを明らかにするための試験が求められる」としている。

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災害避難で車中泊は危険なのか?【実例に基づく、明日はわが身の災害医療】第11回

災害避難で車中泊は危険なのか?大規模災害の後、体育館が避難所として運営され、多くの避難者が生活していますが、避難所ではなく自家用車の中で生活している避難者も多くいるようです。避難所管理医師として、車中泊をする避難者の健康管理を行政から依頼されました。どのようなケアをすればいいでしょうか?車中泊する人は多い大規模災害時、避難所の収容限界や感染対策、プライバシーの問題から「車中泊」を選ぶ避難者は少なくありません。車中泊であれば、他人の物音に悩まされることもなく、周囲に気を使わずに夜中でもパソコンやスマートフォンを操作できます。実際、2016年の熊本地震では、避難者の6~7割が一時的に車中泊を経験しました1)。一方、震災関連死した被災者の約3割が車中泊経験者でした2)。こうした経緯から、車中泊は「避けるべきリスク」として語られがちです。しかし、指定避難所が満員である場合や、家族・ペットの事情などを考慮すると、多くの被災者にとって「積極的に選ばれる避難手段」となっているのが現実です。車中泊は血栓症のリスクなのか?医療者が注目すべきは、この避難様式が深部静脈血栓症(DVT)や肺血栓塞栓症(PTE)のリスク因子となる点です3~5)。熊本地震後の調査では、車中泊経験者のDVT発症率は約10%に達し、心肺停止に至る重症PTEの症例も報告されています6)。このような事実から、「車中泊は極力避けるべき」と主張する支援者もおられます。しかし近年の研究では、問題の本質は「車中泊」そのものではなく、その過ごし方と環境にあることが示されています。とくに以下の要因がリスクを高めるといわれています。長時間の下肢屈曲保持(座席での就寝など)トイレ不足による水分制限 → 脱水・血液濃縮下肢運動不足 → 筋ポンプ機能の低下高齢、肥満、静脈瘤、悪性腫瘍、妊産婦、血栓症などの家族歴経口避妊薬や睡眠薬などの服薬歴寒冷環境や強いストレスによる交感神経の緊張車中泊中の血栓症の予防はどうするか?これらのリスクを有する避難者に対しては、車内でも可能な非薬物的予防が有効であり、避難所を預かる医師として、以下のような適切なアドバイスが必要です。足を伸ばせる姿勢を確保する弾性ストッキングや保温具を活用し、下肢を冷やさない1~2時間ごとの足関節運動や体位変換を行う簡易トイレを活用してトイレの不安を減らし、水分を十分に摂取するハイリスク群に対しては、薬物療法としてDOAC(直接作用型経口抗凝固薬)の予防的投与も一案です。しかし、腎機能障害時の出血リスクが高まり、とくに災害時は脱水環境になりやすいため、慎重な判断が求められます。現実的には薬物よりも、まずは非薬物的な予防と環境整備を優先すべきでしょう。災害時の車中泊を一律に「危険」と断じるのではなく、適切な介入と支援を行うことで、DVTやPTEは予防することができます。われわれ医療者は、やみくもにリスクばかり強調するのではなく、避難行動の多様性を尊重しながら、あらゆる状況で被災者の健康を守れる体制を事前に整えておく必要があります。 1) 熊本県. 平成28年熊本地震における車中泊の状況について. 2023年10月15日 2) 日本経済新聞. 熊本地震1年 関連死の犠牲者、3割が車中泊を経験. 2017年4月16日 3) 日本循環器学会/日本高血圧学会/日本心臓病学会合同ガイドライン. 2014年版 災害時循環器疾患の予防・管理に関するガイドライン 4) Sato K, et al. Risk Factors and Prevalence of Deep Vein Thrombosis After the 2016 Kumamoto Earthquakes. Circ J. 2019;83:1342-1348. 5) Sueta D, et al. Venous Thromboembolism Caused by Spending a Night in a Vehicle After an Earthquake (Night in a Vehicle After the 2016 Kumamoto Earthquake). Can J Cardiol. 2018;34:813.e9-813.e10. 6) 坂本 憲治ほか. 熊本地震後に発生した静脈血栓塞栓症と対策プロジェクト. 日本血栓止血学会誌. 2022;33:648-654.

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定義変更や心肺合併症患者の分類に注意、肺高血圧症診療ガイドライン改訂/日本心臓病学会

 『2025年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症ガイドライン』が2025年3月に改訂された。本ガイドラインが扱う静脈血栓塞栓症(VTE)と肺高血圧症(PH)の診断・治療は、肺循環障害という点だけではなく、直接経口抗凝固薬(DOAC)の使用や急性期から慢性期疾患へ移行していくことに留意しながら患者評価を行う点で共通の課題をもつ。そのため、今回より「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン」「肺高血圧症治療ガイドライン」「慢性肺動脈血栓塞栓症に対するballoon pulmonary angioplastyの適応と実施法に関するステートメント」の3つが統合され、VTEの慢性期疾患への移行についての注意喚起も、狙いの1つとなっている。 本稿では本ガイドライン第5~13章に記されているPHの改訂点について、本ガイドライン作成委員長を務めた田村 雄一氏(国際医療福祉大学医学部 循環器内科学 教授/国際医療福祉大学三田病院 肺高血圧症センター)が第73回日本心臓病学会学術集会(9月19~21日開催)で講演した内容をお届けする(VTEの改訂点はこちらの記事を参照)。PHの定義が変わった 本ガイドラインは、PHにおける改訂目的の1つを「どの施設でも適切な診断・初期治療が行えること」とし、診断基準の変更と第7回肺高血圧症ワールドシンポジウム(WSPH)で提案された概念を世界で初めてガイドラインに取り入れた点を改訂の目玉として作成された。田村氏は「これまで議論されてきた診断基準は、WSPHならびに日本の研究を踏まえ、PHの定義をRHC検査により測定した安静仰臥位の平均肺動脈圧(mPAP)>20mmHg(推奨クラスI、p.68)とした」と説明。しかし、治療の側面からはこの定義の解釈に注意が必要で、「肺動脈性肺高血圧症(PAH)を対象とした臨床試験はmPAP≧25を対象に行われていることから、21~24mmHgではPH治療薬のエビデンスが乏しい状況にある。そして、PHの第4群に該当する慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の場合、慢性血栓塞栓性疾患(CTED)の概念でこの21~24mmHgというボーダーラインも治療されるケースがあるため、CTEPHとPAHでの解釈の違いにも注意してほしい」とコメントした。 次に「肺血管抵抗(PVR)を2.0以上」としたことも世界と足並みを揃えた点だが、この解釈についても「体格の小さい日本人は心拍出量が欧米人よりも少ないため、PVR 2.0をたまたま超えてしまうケースもある。ボーダーライン患者の場合、背景に病気の有無を確認することが重要」と、同氏は本指標の判断に対して注意喚起した。また、WSPHでも議論された「肺動脈楔入圧(PAWP)の引き下げについては、現状は変更せず15mmHgの基準を維持、13~15mmHgに該当する患者については心疾患合併を考慮してほしい」と説明した。臨床的分類、第3群に変化 臨床的分類はバルセロナ分類2024を引き継ぐかたちになっている。とくに注目すべきは、第3群において機能別(閉塞性、拘束性など)で表記されていたものが、ほかの群と同様に「慢性閉塞性肺疾患(COPD)に伴うPH」「間質性肺疾患(ILD)に伴うPH」のように疾患と紐付けることでそれぞれのエビデンスが変わる点を明確化した。このほか、第1群にCa拮抗薬長期反応例、第2群に特定心筋症(肥大型心筋症または心アミロイドーシス)が追加されたことにも留意したい。初期対応/鑑別アルゴリズムを明確に 日本において、PHの症状発現から診断までに費やされる平均期間は18.0ヵ月と報告されている(PAHは20.2ヵ月、CTEPHは12.2ヵ月)。加えて、就学・就業率は罹病期間が長期化するにつれて経時的に減少することが明らかになっている1)。このような現状において、プライマリ・ケアや地域中核病院、専門医が共に患者をフォローアップしていくためには、PHの初期対応アルゴリズム(図14、p.80)と鑑別アルゴリズム(図15、p.81)の活用が大きなポイントとなる。同氏は「初期対応アルゴリズムでは医療機関や専門医の役割を明確化した。心疾患や肺疾患の評価を行うなかで医師らが相互にコンサルトすることで、CTEPHを見逃さないだけではなく、第2群や第3群の要素の評価を目指す。PHセンターへ早期に紹介すべき患者像も明確化できるようにしている」とし、「鑑別アルゴリズムについては、急性血管反応試験を実施する対象を規定したほか、PAWP 13~15mmHgやHFpEFリスクを有する患者は純粋な1群と判断しかねるため、心肺疾患をもつPAHの特徴を明記し、2群などとの鑑別を念頭に置いてもらえるようなフローを作成した」と改訂の狙いを説明した。新規PH患者も高齢化、治療前の合併症評価を 典型的なPAH患者というと若年者女性を想像するが、近年では新規診断患者の高齢化がみられ、心肺疾患合併例が増加傾向にあるという。この心肺疾患合併の有無は治療選択時の重要なポイントとなることから、まずは心肺疾患合併PAHを示唆する特徴を捉え、単なるPHではなく第3群の要素も併せ持っているか否かを判断し(図17、p.90)、その後、治療アルゴリズム(図18、p.92)に基づいた治療介入を行う。 この流れについて、「心肺疾患合併がある場合に併用療法を行ってしまうと肺水腫のような合併症リスクを伴うため、それらを回避するための手立てとして、まずは単剤での開始を考慮してほしい。決して併用療法を否定するものではない」と説明した。またPAWPが高めのPAHの分類や治療時の注意点として、「PAWPが12~18mmHgの患者は境界域として解釈に注意すべきゾーンであるため、PAWPだけで分類評価をするのではなく、病歴や画像所見、負荷試験結果などを複合的に評価してほしい」ともコメントした。 さらに、診断時/フォローアップ時のリスク層別化については、国内レジストリデータに基づいたJCSリスク層別化指標(表30、p.83)が作成されており、これにのっとり薬物治療を進めていく。低リスク・中リスクの場合にはエンドセリン受容体拮抗薬(アンブリセンタンあるいはマシテンタン)+PDE5阻害薬タダラフィルの2剤併用療法を行い(推奨クラスI)、高リスクの場合は静注/皮下注投与によるプロスタグランジン製剤(エポプロステノール、トレプロスチニル)+エンドセリン受容体拮抗薬+PDE5阻害薬の3剤併用療法を行う(推奨クラスI、エビデンスレベルB)。薬物療法開始後の注意点としては「初回治療開始後は3~4ヵ月以内に評価」「薬剤変更・追加後は6ヵ月以内に再評価」「中リスク以上の場合はカテーテル検査実施」が明記された。 なお、ガイドライン発刊後の2025年8月にアクチビンシグナル阻害薬ソタテルセプトが日本でも発売され、第1群の治療強化という位置付けで本ガイドラインにおいても推奨されている(推奨クラスIIa、エビデンスレベルB)。 このほか、CTEPHの治療について、心臓外科医らとの丁寧な協議を進めた結果、従来は手術適応の有無が最初に評価されていたが、本ガイドラインでは完全血行再建を目指すなかで肺動脈内膜摘除術(PEA)、バルーン肺動脈形成術(BPA)、あるいはハイブリッドという選択肢のなかで最適な方法を多職種チーム(MDT)で選択して治療を進めていくことが重視される。 最後に同氏は「ガイドラインの終盤には専門施設が満たすべき要素や患者指導に役立つ内容も記載しているので、ぜひご覧いただきたい」と締めくくった。

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日本人の妊娠関連VTEの臨床的特徴と転帰が明らかに

 妊娠中の女性は静脈血栓塞栓症(VTE)リスクが高く、これは妊産婦死亡の重要な原因の 1 つである。妊婦ではVTEの発症リスク因子として有名なVirchowの3徴(血流うっ滞、血管内皮障害、血液凝固能の亢進)を来たしやすく、妊婦でのVTE発生率は同年齢の非妊娠女性の6〜7倍に相当するとも報告されている1)。そこで今回、京都大学の馬場 大輔氏らが日本人の妊婦のVTEの実態を調査し、妊娠関連VTEの重要な臨床的特徴と結果を明らかにした。 馬場氏らは、メディカル・データ・ビジョンのデータベースを用いて、2008年4月~2023年9月までにVTEで入院した可能性のある妊婦1万5,470例を特定。さらに、抗凝固療法が実施されていない患者や画像診断検査が施行されていない患者などを除外し、最終的に妊婦でVTEと確定診断され抗凝固療法を含めた介入が行われた410例の臨床転帰(6ヵ月時のVTE再発、6ヵ月時の出血イベント、院内全死因死亡)などを評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は33歳、平均BMIは23.8kg/m2であった。・対象患者の既往歴は、糖尿病19例(4.6%)、出血の既往17例(4.1%)、先天性凝固異常17例(4.1%)、消化性潰瘍13例(3.2%)、高血圧症10例(2.4%)、脂質異常症7例(1.7%)などであった。・410例中110例(26.8%)は、肺塞栓症(PE)であり、300例(73.2%)は深部静脈血栓症(DVT)のみであった。・VTE発症時の妊娠週数の中央値は31週であった。・VTEの発生率は二峰性分布を示し、126例(30.7%)が妊娠初期(0~妊娠13週)にVTEを発症し、236例(57.6%)が妊娠後期(妊娠28週以降)にVTEを発症し、PEは妊娠後期に多くみられた。・抗凝固療法に関しては、374例(91.2%)には未分画ヘパリンが、18例(4.4%)には低分子量ヘパリン(LMWH、ダルテパリン:2例、エノキサパリン:16例)が投与された。・急性期治療について、血栓溶解療法は2例(0.5%)、下大静脈フィルター留置は17例(4.1%)が受けた。人工呼吸器管理は8例(2.0%)、ECMOは5例(1.2%)に使用された。・ 6ヵ月の追跡期間中、17例(4.1%)でVTEの再発が認められ、3例(0.7%)で頭蓋内出血および消化管出血を含む出血が発生した。・入院中に4例(1.0%)が死亡し、そのうち3例には帝王切開などの外科手術の既往があった。 本研究の限界として、データベースが急性期病院のデータに限定されているため、他の医療機関で治療された患者データが含まれていないこと、詳細な臨床データ(バイタルサイン、PE重症度、検査結果など)が不足していること、PEの過小診断の可能性、入院中のVTE再発を除外したことにより急性期の再発が過小評価されている可能性が挙げられている。 最後に、研究者らは「今回の検討にて、循環器系および産科の医師にとって参考となる妊娠関連のVTEの実態が明らかになった。また、その治療において、LMWHが欧米のガイドラインで推奨されているにもかかわらず、国内ではVTEに対するLMWHの使用が保険適用外であるため、未分画ヘパリンが大半に選択されている実情も明らかになった。この問題は今後対処されるべき」と結んでいる。

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静脈血栓塞栓症のリスクが低い経口避妊薬「スリンダ錠28」【最新!DI情報】第41回

静脈血栓塞栓症のリスクが低い経口避妊薬「スリンダ錠28」今回は、経口避妊薬「ドロスピレノン(商品名:スリンダ錠28、製造販売元:あすか製薬)」を紹介します。本剤は単剤型プロゲスチン製剤であり、従来の混合型経口避妊薬よりも静脈血栓塞栓症のリスクが少なく、深部静脈血栓症や肺塞栓症の既往、喫煙者、肥満者、高血圧や弁膜症を有する患者などに対して推奨度が高い避妊薬です。<効能・効果>避妊の適応で、2025年5月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>1日1錠を毎日一定の時刻に白色錠から開始し、指定された順番に従い28日間連続経口投与します。以上28日間を投与1周期とし、29日目から次の周期の錠剤を投与し、以後同様に繰り返します。なお、服用開始日は、経口避妊剤を初めて服用する場合、月経第1日目から開始します。<安全性>副作用として、不正性器出血(月経中間期出血、異常子宮出血)(89.9%)、下腹部痛(13.4%)、月経異常(過少月経、過長過多不規則月経、重度月経出血)(14.9%)、頭痛(16.3%)、腹痛(12.3%)、乳房不快感、悪心、下痢、ざ瘡(いずれも5%以上)、無月経、卵巣嚢胞、子宮頸部上皮異形成、子宮筋腫、カンジダ症、外陰部炎、性器分泌物、乳頭痛、乳腺良性腫瘍、乳腺嚢胞症、傾眠、いらいら感、不安感、めまい、片頭痛、上腹部痛、嘔吐、胃腸障害、発疹、そう痒症、背部痛、倦怠感、浮腫、発熱、体重増加(いずれも1~5%未満)、陰部そう痒症、子宮ポリープ、外陰腟痛、卵巣腫大、乳房痛、抑うつ、便秘、消化不良、腹部膨満、口内炎、紅斑、皮膚乾燥、関節痛、肋軟骨炎、貧血、肝機能検査値異常(いずれも1%未満)、リビドー減退、高カリウム血症、ほてり(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1. この薬は、妊娠を防ぐための経口避妊薬です。2. 毎日1錠、決まった時間に服用することで、排卵を抑えたり、子宮内膜や子宮頸管の状態を変化させたりして、妊娠を防ぎます。3. この薬は、喫煙者や高血圧の人など、従来の避妊薬が使えなかった人にも適しています。4. 毎日一定の時刻に白色錠から服用を開始し、指定された順番に従い28日間服用してください。5. 1日(24時間以内)の飲み忘れがあった場合、気付いた時点で直ちに飲み忘れた錠剤を服用し、その日の錠剤も通常どおりに服用してください。6. 2日連続して飲み忘れた場合は、気付いた時点で直ちに飲み忘れた錠剤を1錠服用し、その日の錠剤も通常どおりに服用してください。7. 2日以上連続して飲み忘れた場合は妊娠する可能性が高くなるので、その周期は他の避妊法を使用し、必要に応じて医師に相談してください。<ここがポイント!>現在、日本で使用されている経口避妊薬の主流は、低用量エストロゲンとプロゲスチンを配合した混合型経口避妊薬(Combined Oral Contraceptives:COC)です。しかし、COCに含まれるエストロゲンには、静脈血栓塞栓症をはじめとする血栓症のリスクがあることが知られています。世界保健機関(WHO)のガイドラインでは、プロゲスチン単剤の経口避妊薬(Progestin-Only Pill:POP)は、COCと比較して静脈血栓塞栓症のリスクが低く、深部静脈血栓症や肺塞栓症の既往、喫煙者、肥満者、高血圧や弁膜症を有する患者などに対して推奨度が高い避妊薬とされています。本剤は、ドロスピレノン(DRSP)4mgを含有する国内初のPOPであり、排卵の抑制、子宮内膜の菲薄化、子宮頸管粘液の高粘稠による精子の侵入障害などにより避妊効果を発揮します。避妊を希望する日本人女性を対象とした国内第III相臨床試験(LF111/3-A試験)において、13周期投与期終了時の暴露周期(3,319周期)の間に1例が妊娠し、主要評価項目とされた全般パール指数※は0.3917(95%信頼区間[CI]:0.0099~2.1823)でした。95%CIの上限が閾値である4下回ったことから、本剤の有効性が検証されました。なお、妊娠例に関して、受胎推定日は未服薬期間内と判断されています。※パール指数(Pearl index):100人の女性がその避妊法を1年間(13周期)用いたときの妊娠数(対100女性年)日本で発売されているCOCは、血栓症に関連する既往歴や現病歴を有する患者は禁忌でしたが、本剤では禁忌に該当しません。本剤では禁忌に該当しない血栓症関連の疾患などは以下のとおりです。血栓性静脈炎、肺塞栓症、脳血管障害、冠動脈疾患またはその既往歴のある患者35歳以上で1日15本以上の喫煙者血栓症素因のある女性抗リン脂質抗体症候群の患者大手術の術前4週以内、術後2週以内、産後4週以内および長期間安静状態の患者脂質代謝異常のある患者高血圧のある患者(軽度の高血圧の患者を除く)

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国内DOAC研究が色濃く反映!肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症ガイドライン改訂/日本循環器学会

 『2025年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症ガイドライン』が3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会の会期中に発刊され、本学術集会プログラム「ガイドラインに学ぶ2」において田村 雄一氏(国際医療福祉大学医学部 循環器内科学 教授/国際医療福祉大学三田病院 肺高血圧症センター)が改訂点を解説した。本稿では肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症の項について触れる。DOACの国内エビデンスの功績、ガイドラインへ反映 静脈血栓塞栓症(VTE)と肺高血圧症(PH)の治療には、直接経口抗凝固薬(DOAC)の使用や急性期から慢性期疾患へ移行していくことに留意しながら患者評価を行う点が共通している。そのため、今回よりVTEの慢性期疾患への移行についての注意喚起のために、「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン」「肺高血圧症治療ガイドライン」「慢性肺動脈血栓塞栓症に対するballoon pulmonary angioplastyの適応と実施法に関するステートメント」の3つが統合された。 肺血栓塞栓症(PTE)・深部静脈血栓症(DVT)のガイドライン改訂は2018年3月以来の7年ぶりで、当時は抗凝固療法におけるDOACのエビデンスが不足していたが、この7年の歳月を経て、DOACを用いたVTEの治療は飛躍的に進歩。DOAC単独での外来治療、誘因のないVTEや担がん患者の管理、長期治療などの国内の結果が明らかになり、改訂に大きく反映された。田村氏は、「本ガイドラインは、循環器専門医のみならず、呼吸器科、膠原病内科など多彩な診療科の協力の基に作成された。本領域は日本からのエビデンスが多いため、本邦独自の診断・治療アルゴリズムと推奨を検討した」とコメントした。VTE予後予測、PESIスコアや誘因因子評価を推奨 四肢の深筋膜より深部を走行する深部静脈に生じた血栓症を示すDVTと深部静脈血栓が遊離し肺動脈へ流入することで発症するPTEを、一連の疾患群と捉えてVTEと総称する。これらの予後に関しては推奨表2「VTEの予後に関する推奨とエビデンスレベル」(p.20)に示され、とくに急性期PTEでは治療方針の検討のために、近年普及している肺塞栓症重症度指数(PESI)ならびにsPESIを用いた患者層別化が推奨された(推奨クラスIIa、エビデンスレベルB)。また、国内の観察研究JAVA(Japan VTE Treatment Registry)やCOMMAND VTE Registryに基づくVTE再発予後についてもガイドライン内に示されている(p.21-22)。前者の研究によると、ワルファリン治療中のVTE再発率は2.8例/100患者・年であったが、治療終了後には8.1例/100患者・年に増加したという。そして、後者の研究からは、VTE診断後1年時点での再発率は、一過性の誘因のある患者群では4.6%、誘因のない患者群では3.1%、活動性のがんの患者群では11.8%であることが明らかになった。PTE診断と治療、判断に悩む中リスク群を拾えるように 急性PTEの診断については、「低血圧やショックがみられる場合には早期にヘパリン投与を考慮する、検査前臨床的確率を推定する際にWellsスコアあるいはジュネーブスコアを用いる、ルールアウトにはDダイマー測定を行う、最終的な確定診断にゴールドスタンダードの造影CT検査/緊急時の心エコー評価、ECMO導入後診断は肺動脈造影も考慮する(p.32)」と述べた。重症度別治療戦略については、前ガイドラインで曖昧であった2つの指標を挙げ、「右心機能不全では(1)右室/左室比が0.9 or 1.0以上、(2)右室自由壁運動低下、(3)三尖弁逆流血流速上昇を、心臓バイオマーカーについてはトロポニンI/TやBNP/NT-proBNPの評価を明確化したことで、判断が難しい中リスク群における血栓溶解療法と抗凝固療法との切り分けができるフローを作成した(p.36)」と解説。治療開始後の血栓溶解療法に関する推奨においては、「循環動態の悪化徴候がみられた場合には、血栓溶解療法を考慮する」点が追記(p.39)されたことにも触れた。 PTEの治療については、DOAC3剤の大規模臨床試験によるエビデンスが多数そろったことでDOACによるVTE治療は推奨クラスI、エビデンスレベルAが示され(p.40)、「低リスク群で“入院理由がない、家族や社会的サポートがある、医療機関の受診が容易である”といった条件がそろえば、DOACによる外来治療も可能となったことも非常に大きな改訂点」と説明した。DVT治療、中枢型と末梢型でアプローチに違い DVTにおいてもPTE同様に検査前臨床的確率の推定や下肢静脈超音波検査/造影CT検査を実施するが、今回の改訂ポイントは「中枢性・末梢性で治療アプローチが異なる点を明確に定義した」ことだと同氏は説明。「中枢性DVTの場合は初期(0~7日)または維持治療期(8日~3ヵ月)に関しては、PTE同様にワルファリンとDOACの使用とともに、すべての中枢性DVTに対して、抗凝固薬の禁忌や継続困難な出血がない場合には少なくとも3ヵ月の抗凝固療法を行うことが推奨されている(いずれも推奨クラスI、エビデンスレベルA、p.47)。一方で、末梢型DVTにおいては、「画一的な抗凝固療法を推奨するものではなく、症候性で治療を行う場合には3ヵ月までの治療を原則とし、無症候性でも活動性がん合併の患者においてはリスクベネフィットを考慮しながらの抗凝固療法が推奨される(推奨クラスIIb、エビデンスレベルB)」と説明した。カテ治療、血栓溶解薬併用と非併用に大別 急性PTEに対するカテーテル治療は、末梢でのコントロールが難渋する例、国内でのデバイスラグなども考慮したうえで、血栓溶解薬併用と非併用に大別している。非併用について、「全身血栓溶解療法が禁忌、無効あるいは抗凝固療法禁忌の高リスクPTEに対し、熟練した術者、専門施設にて血栓溶解薬非併用カテーテル治療を行うことを考慮する。また、抗凝固療法により病態が悪化し、全身血栓溶解療法が禁忌の中リスク急性PTEに対し、熟練した術者、専門施設にて血栓溶解薬非併用カテーテル治療を行うことを考慮する(いずれも推奨クラスIIa、エビデンスレベルC)」と示されている。 このほか、冒頭で触れた慢性疾患への移行については「慢性期疾患患者が急性期VTEを発症することもあるが、PTEが血栓後症候群(PTS)へ、DVTがPTS(血栓後症候群)へ移行するリスクを念頭に治療を行い、発症3~6ヵ月後の評価の必要性を提示していること(推奨表3、p.22)が示された。またCOVID-19での血栓症として、中等症I以下では画一的な抗凝固療法は推奨しない(推奨表1:推奨クラスIII[No benefit]、エビデンスレベルB)ことについて触れた。 最後に同氏は「誘因のないVTEや持続性の誘因によるVTEに対する抗凝固療法の長期投与の際に、未承認ではあるが長期的なリスクベネフィットを考慮したDOACの減量投与などを、今後の課題として検討していきたい」とコメントした。(ケアネット 土井 舞子)そのほかのJCS2025記事はこちら

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抗凝固薬―長期投与は減量でよい?(解説:後藤信哉氏)

 深部静脈血栓症の症例への予防的抗凝固薬の投与期間は確定されていない。さじ加減を重視する日本の臨床家として「長期投与するなら減量で!」と考える医師は多いと思う。一般に血栓症の再発リスクは時間とともに低減するから、減量して長期投与することは正しそうに思う。 それでもランダム化比較試験にて自分の直感を検証したいと考える欧米人が、本研究を施行した。欧米のDOACはアピキサバンとリバーロキサバンが標準なのでアピキサバン (2.5mg twice daily) と リバーロキサバン(10mg once daily)を比較した。静脈血栓症の発症から1~2年経過すれば血栓イベントリスクは十分に低下している。減量しても静脈血栓症の再発リスクは増えなかった(ハザード比[HR]:1.32、95%信頼区間[CI]:0.67~2.60)。重篤な出血リスクは減少した(HR:0.61、95%CI:0.48~0.79)。仮説検証試験として結論が出たわけではないが、医師の直感的判断を支持する試験結果であった。

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避妊法による脳卒中や心筋梗塞のリスクをどのように回避することができるのか?(解説:三浦伸一郎氏)

 避妊法の条件は、確実であり、方法が簡便で長期間使用できること、経費が少なくて済み、副作用が少ないことなどが挙げられる。経口避妊薬には、ホルモン剤としてプロゲスチンとエストロゲンの混合型とプロゲスチン単独のものがある。ホルモン避妊法による深部静脈血栓症や肺塞栓症の発生率は、エストロゲン投与量が増加すると上昇することが知られている。エストロゲンやプロゲステロンの投与では、フィブリノゲンなどの凝固因子が増加し、凝固抑制因子が減少することにより凝固系が亢進する。 最近、ホルモン避妊法による虚血性脳卒中や心筋梗塞のリスクに関する前向きコホート研究の結果が報告された1)。これまで、ホルモン避妊法が心血管疾患リスクに悪影響を与えるとの報告はあったが、このコホート研究では、避妊法の違いによりリスクが異なっていることが検証され、従来の複合経口避妊薬やプロゲスチン単剤避妊法ではリスクが高かった。一方、レボノルゲストレル放出子宮内避妊具は、リスク増加と関連しておらず、今後の安全な避妊法として期待されるものであった。 現在、日本では、ホルモン避妊法が多く使用されている。しかし避妊教育が少なく、避妊のリスクとベネフィットを理解できる機会を増やし、多くの選択肢を知ってもらう必要がある。このYonisらの研究は、レボノルゲストレル放出子宮内避妊具という新たな選択肢をもたらした。安全な方法をより普及させる必要があるとともに、ホルモン避妊法についての再教育も必要と思われる。

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再発高リスクのVTE患者、DOACは減量可能か?/Lancet

 再発リスクが高く長期の抗凝固療法が必要な静脈血栓塞栓症(VTE)患者において、直接経口抗凝固薬(DOAC)の減量投与は全量投与に対して、非劣性基準を満たさなかった。しかしながら両投与群ともVTEの再発率は低く、減量投与群のほうが臨床的に重要な出血が大幅に減少し、減量投与は治療選択肢として支持可能なことが示されたという。フランス・Centre Hospitalier Universitaire BrestのFrancis Couturaud氏らRENOVE Investigatorsが、多施設共同無作為化非盲検エンドポイント盲検化非劣性試験「RENOVE試験」の結果を報告した。再発リスクが高くDOACの長期投与が適応のVTE患者において、その最適な投与量は明らかになっていなかった。結果を踏まえて著者は、「さらなる試験を行い、抗凝固薬の減量投与をすべきではないサブグループを特定する必要があるだろう」と述べている。Lancet誌2025年3月1日号掲載の報告。減量投与群vs.全量投与群、症候性VTEの再発を評価 RENOVE試験は、フランスの47病院で行われた。急性症候性VTE(肺塞栓症または近位深部静脈血栓症)を呈し、長期の抗凝固薬療法が適応で連続6~24ヵ月の抗凝固薬全量投与を受けた18歳以上の外来患者を適格とした。適格患者は、初発の特発性VTE、再発VTE、持続性リスク因子の存在、その他の再発リスクが高いと考えられる臨床的状態のいずれかに分類された。 被験者は、双方向ウェブ応答システムを用いた中央無作為化法により、減量投与群(アピキサバン2.5mgを1日2回またはリバーロキサバン10mgを1日1回)または全量投与群(アピキサバン5mgを1日2回またはリバーロキサバン20mgを1日1回)に、無作為に1対1の割合で割り付けられた。コンピュータ乱数生成ジェネレーターを用いたシーケンス生成法でブロックサイズの差異のバランスを取り、無作為化では試験施設、DOACの種類、抗血小板薬による層別化を行った。試験担当医師および被験者は治療割り付けを盲検化されなかった。VTEの再発、臨床的に重要な出血、全死因死亡は治療割り付けを盲検化された独立委員会によって判定された。 主要アウトカムは、治療期間中に判定された症候性VTEの再発(致死的または非致死的な肺塞栓症もしくは孤立性の近位深部静脈血栓症などを含む)であった(非劣性マージンは、ハザード比[HR]の95%信頼区間[CI]の上限が1.7、検出力90%に設定)。重要な副次アウトカムは、治療期間中に判定された重大な出血(国際血栓止血学会[ISTH]の基準に従い定義)または臨床的に重要な非重大出血、および治療期間中に判定されたVTEの再発、重大な出血または臨床的に重要な非重大出血の複合とした。主要アウトカムと最初の2つの副次アウトカムは、階層的に評価した。VTEの5年累積発生率は減量投与群2.2%、全量投与群1.8%で非劣性は認められず 2017年11月2日~2022年7月6日に2,768例が登録され、減量投与群(1,383例)または全量投与群(1,385例)に無作為化された。970例(35.0%)が女性、1,797例(65.0%)が男性で、1例(<0.1%)は性別が報告されていなかった。追跡期間中央値は37.1ヵ月(四分位範囲[IQR]:24.0~48.3)。 症候性VTEの再発は、減量投与群で19/1,383例(5年累積発生率2.2%[95%CI:1.1~3.3])、全量投与群で15/1,385例(1.8%[0.8~2.7])に報告された(補正後HR:1.32[95%CI:0.67~2.60]、絶対群間差:0.40%[95%CI:-1.05~1.85]、非劣性のp=0.23)。 重大または臨床的に重要な出血は、減量投与群で96/1,383例(5年累積発生率9.9%[95%CI:7.7~12.1])、全量投与群で154/1,385例(15.2%[12.8~17.6])に報告された(補正後HR:0.61[95%CI:0.48~0.79])。 有害事象の発現は、減量投与群で1,136/1,383例(82.1%)、全量投与群で1,150/1,385例(83.0%)に報告された。Grade3~5の重篤な有害事象の発現はそれぞれ374/1,383例(27.0%)、420/1,385例(30.3%)であった。試験期間中の死亡はそれぞれ35/1,383例(5年累積死亡率4.3%[95%CI:2.6~6.0])、54/1,385例(6.1%[4.3~8.0])であった。

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CKDを伴う関節リウマチにおけるJAK阻害薬の安全性・有効性

 虎の門病院腎センター内科・リウマチ膠原病科の吉村 祐輔氏らが慢性腎臓病(CKD)を伴う関節リウマチ(RA)患者におけるJAK阻害薬の有効性・安全性を評価し、腎機能が低下した患者における薬剤継続率を明らかにした。また、推算糸球体濾過量(eGFR)が30mL/分/1.73m2未満の患者については、帯状疱疹や深部静脈血栓症(DVT)の可能性を考慮する必要があることも示唆した。Rheumatology誌2025年1月25日号掲載の報告。 研究者らは、2013~22年にJAK阻害薬を新規処方されたRA患者216例について、多施設共同観察研究を実施。腎機能に応じたJAK阻害薬の減量ならびに禁忌については添付文書に従い、患者を腎機能とJAK阻害薬の各薬剤で分類した。主要評価項目は24ヵ月間の薬剤継続率で、副次評価項目は関節リウマチの疾患活動性評価の指標の1つであるDAS28-CRPの変化、プレドニゾロン投与量、およびJAK阻害薬の中止理由だった。 主な結果は以下のとおり。・eGFR(mL/分/1.73m2)を60以上、30~60、30未満に分類した。・eGFR分類ごとの24ヵ月薬剤継続率は、全JAK阻害薬では46.0%、44.1%、47.1%で、トファシチニブは55.9%、53.3%、66.7%だった。また、バリシチニブ*は64.2%、42.0%で、ペフィシチニブは36.4%、44.1%、40.0%であった。・腎機能が低下したグループでも、薬剤継続率は維持された(調整ハザード比:1.14、95%信頼区間:0.81~1.62、p=0.45)。・JAK阻害薬開始後6ヵ月で、患者のDAS28-CRPは低下し、プレドニゾロンの投与量も減少した。・帯状疱疹とDVTの発生率はeGFR30未満のグループで高かったものの、統計学的に有意ではなかった。・eGFR30未満は、JAK阻害薬の無効または感染による中止の危険因子ではなかった。*バリシチニブはeGFR30未満への投与は禁忌 同グループは2024年に生物学的製剤についてもCKD合併RA患者に対する安全性・有効性を報告している1)。今回のJAK阻害薬の報告とあわせて、メトトレキサートや非ステロイド性抗炎症薬の使用が制限されるCKD合併RA患者に対して、生物学的製剤、JAK阻害薬いずれもの安全性・有効性を示したことになる。

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非機器的早期運動療法はDVT発生率を低減【論文から学ぶ看護の新常識】第1回

非機器的早期運動療法はDVT発生率を低減非機器的早期運動療法は、入院患者における深部静脈血栓症(DVT)の発生率を低減する効果があることが示された。Julia Raya-Benitez氏らによる研究で、International Journal of Nursing Studies誌の2025年1月号に掲載された。入院患者における深部静脈血栓症発生率低減のための非機器的早期運動療法の有効性:システマティックレビューとメタアナリシス研究グループは、非機器的早期運動療法のDVT発生率低減効果を、システマティックレビューとメタアナリシスで評価した。7つのランダム化比較試験(RCT)が含まれ、対象者は1,774例。主要な評価指標をDVTの発生率とし、全身的、局所的、遠隔的な非機器的早期運動療法の有効性を比較した。研究の結果、非機器的早期運動療法は、通常ケアと比較してDVT発生率を有意に低下させた(リスク比[RR]:0.55、95%信頼区間[CI]:0.41~0.73、p<0.0001)。とくに、全身的運動療法(RR:0.54、95%CI:0.38~0.78、p=0.001)および遠隔運動療法(RR:0.25、95%CI:0.07~0.86、p=0.03)が効果的であることが確認された。一方で、局所運動療法は、通常ケアとの比較で統計的に有意な効果は示されなかった(RR:0.68、95%CI:0.42~1.12、p=0.13)。運動は1日2~3回、各セッション10~30分程度で行われ、実施期間は6日から6週間だった。この方法は患者のDVT予防だけでなく、入院期間の短縮や合併症のリスク低減にも効果があることが期待されている。看護では最高峰の雑誌への投稿です。非機器的早期運動療法とは、特別な機器を使わずに行う運動療法を指し、本研究では患者が入院してから24時間以内に開始されるものと定義されています。これはまさに急性期における看護師の介入時期と方法に合致しているといえます。この療法には3つの種類があります。まず1つ目は、足首の屈伸などリスク部位周辺を動かす局所運動療法です。静脈ポンプ作用を活性化して血流を直接促進する効果が見込まれます。次に、歩行訓練など全身を動かす全身的運動療法があります。これは血液循環を改善し、心拍出量を増やして血流の停滞を防ぐ効果が期待できます。最後に、上肢や体幹のストレッチのようにリスク部位以外を動かす遠隔運動療法があります。こちらは間接的に全身の血流を増加させる可能性があります。本研究では、こうした運動の効果がデータによって裏づけられ、とくに全身的運動療法や遠隔運動療法がDVTの予防に有効であることが示されました。つまり、足首などのリスクの高い部位を十分に動かせない場合でも、全身的あるいは遠隔の運動を取り入れることで同様の効果が得られるため、ベッドサイドでも実用性の高い介入法といえます。一方で、今回解析対象の文献には、疼痛管理など複合的介入を行っているものも含まれており、今後さらに質の高い研究が求められます。ただし少なくとも本研究の結果をみる限り、看護師が日常的に実施している関節可動域訓練などの非機器的早期運動療法の重要性を再確認するものといえます。論文はこちらRaya-Benitez J, et al. Int J Nurs Stud. 2025;161:104917.

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