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ICUにおける消化管出血のリスクに対するpantoprazoleの有用性は?(解説:上村直実氏)-954

 ICU患者3,298例を対象として、ICUにおけるプロトンポンプ阻害薬(PPI)の有用性を検証する目的で、pantoprazole群(n=1,645)とプラセボ群(n=1,653)に分けた欧州6ヵ国の多施設共同無作為比較試験の結果がNEJM誌に報告された。主要評価項目である90日までの死亡者数はPPI群510例(31%)、プラセボ群499例(30%)で両群に差はなく、また、副次評価である臨床的に重要なイベント(肺炎、クロストリジウム・ディフィシル感染、心筋虚血の複合)の発生率にも差を認めなかった。さらに、臨床的に重篤な消化管出血は、PPI群(2.5%)に比べてプラセボ群(4.2%)が多かったが、症例数が少なく統計学的に有意な差といえなかった。 本論文は注意深い吟味が必要と思われた。論文の考察でも述べられているが、研究開始時にリクルートされた10,000例のうち胃酸分泌抑制薬内服者4,197例と消化性潰瘍患者207例を含む6,650例(66.5%)がエントリーから除外されている点は重要である。明らかな消化性潰瘍がなく胃酸分泌抑制薬の内服がない患者、すなわち出血性消化性潰瘍のリスクが低い集団を対象として、ICU在院中の死亡率低下に対するPPIの有用性を検討した研究として捉える必要がある。 以上の条件内でPPIの持続静注はICUにおける死亡率低下に対する有用性が乏しいことが示唆されたわけである。一方、臨床的に重篤な消化管出血はPPI群(2.5%)がプラセボ群(4.2%)に対して少ないことが示されているが、出血の原因が特定されていないため、本研究からPPIの胃酸分泌抑制作用による出血性潰瘍リスクに対する影響については不明である。さらに、考察で述べられているが、逆に消化性潰瘍患者や胃酸分泌抑制薬の内服者を対象とした試験を行っていれば、異なった結果が得られた可能性もある。 ICU入院に際して、胃酸分泌抑制薬の常用者でなく、明らかな消化性潰瘍を認めない患者において、消化管出血のリスク低下を目的とするPPI投与の有用性は乏しいことが立証された点が非常に重要な研究結果といえる。

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肩腰膝の痛みをとる Dr.究のあなたもできるトリガーポイント注射

第1回 トリガーポイントとは何か? 第2回 トリガーポイントを見つける 診察の基本 第3回 肩痛で触るべき筋肉 第4回 腰痛は、ヘルニアを探すよりも筋肉を触る 第5回 膝痛では大腿から下腿まで触る 第6回 頭痛のトリガーポイント 第7回 胸痛・腹痛のトリガーポイント 慢性的な痛みを訴える患者さんに出会うのは日常茶飯事。根本的な解決にはならないけれど、唯一の選択肢として鎮痛薬や貼付剤を処方していませんか?整形外科領域の疾患やレッドフラッグを除外しても続く痛みの原因の多くは実は筋肉にあります。 トリガーポイント注射は、これにアプローチする、新しい治療方法です。 なぜ筋肉が原因で身体のあちこちに痛みが生じるのか?そのメカニズムは、実にシンプル。筋肉に痛い箇所がひとつあれば、それを代償するように体を使い、さらに痛みが連続していくのです。遭遇頻度の高い肩痛、腰痛、膝痛、そして、ときに筋肉が原因となっている腹痛や頭痛について、それぞれ診察、触診、注射のポイントを伝授します。第1回 トリガーポイントとは何か? 腰や膝の痛みを訴える患者さんに、鎮痛薬や貼付剤を処方するだけ?これからはトリガーポイント注射も選択肢に入れてください!”筋肉”が原因で慢性的な疼痛が生じるのはしばしばあること。トリガーポイント注射は、筋肉が原因の痛みにアプローチする、新しい治療方法です。 普段、筋骨格系の診察をしない先生でも、明日から実践できるよう、筋肉の位置や名称は3DCGでわかりやすく提示。トリガーポイント注射を第一線で実践する斉藤先生が、診察と注射のノウハウを実技で伝授します。第2回 トリガーポイントを見つける 診察の基本 痛みの原因になっている筋肉はどこなのか。注目すべきは、「痛みがある箇所よりも、つっぱりを感じるところ」。筋肉が短縮しているところにトリガーポイントがあります。今回は、視診、動作、触診とトリガーポイントを特定するための診察ノウハウを伝授。もちろん、見つけたトリガーポイントにどうやって安全に注射をしていくか、そのコツをお伝えします。第3回 肩痛で触るべき筋肉 肩痛で見るべきは、筋肉は3つ。どの筋肉にTPがあるかで、痛みの場所が違います。原因になる筋肉を特定する診察の方法、トリガーポイントを探す触診まで実技でわかりやすく解説します。第4回 腰痛は、ヘルニアを探すよりも筋肉を触る 腰痛の原因は椎間板ヘルニア?もちろんそういう場合は多いですが、神経所見をとると痛みやしびれの原因がヘルニアでないことはよくあります。ヘルニアがあってもなくても、一度トリガーポイントを探索してみましょう。今回は、腰痛を訴える場合に触るべき脊柱起立筋群、殿筋群の診察ノウハウを解説します。さらに、意外な部位にある腰痛の原因も紹介します。第5回 膝痛では大腿から下腿まで触る 膝関節だけに注目しても、痛みが取れない原因は、膝痛には大腿から下腿までの筋肉がかかわっているから。大腿から下腿まで、確認すべき筋肉を、CG、触診、超音波を駆使して立体的に解説します。膝の前面か後面か、痛む部位に応じたトリガーポイントを見つけるコツを詰め込みました。第6回 頭痛のトリガーポイント 緊張性頭痛や片頭痛といった頭痛には肩、首、顔、頭の筋肉が関与している可能性があります。レッドフラッグを除外しても、鎮痛薬を処方しても、継続する頭痛に、トリガーポイントを取り入れることで苦痛を和らげられる可能性が大きく広がります。触るべき筋肉の位置とトリガーポイント、触診のコツを押さえましょう。第7回 胸痛・腹痛のトリガーポイント 筋肉があれば、そこにはトリガーポイントが形成される可能性があります。人間は全身筋肉に覆われているので、どの部位であってもトリガーポイントによる痛みが生じるとも言えます。胸部のトリガーポイントでは狭心症と見まがう痛みを生じることがあります。腹部では逆流性食道炎や過敏性腸症候群、胃潰瘍など消化器疾患と似た症状がでることも。いずれも触るべき筋肉の解剖と触診、超音波像で診察のポイントを解説します。

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第4回 DICへのアンスロビンP500の査定/セロクエル錠処方に伴うHbA1c検査の査定/腫瘍マーカー検査の査定/C型慢性肝炎検査の査定【レセプト査定の回避術 】

事例13 DICへのアンスロビンP500処方の査定アンチトロンビンIII低下を伴うDICで乾燥濃縮人アンチトロンビンIII(商品名:アンスロビンP)500注射用3瓶を点滴静注した。●査定点アンスロビンP500注射用3瓶が査定された。解説を見る●解説アンスロビンP500注射用の添付文書に「アンチトロンビンIII低下を伴う汎発性血管内凝固症候群(DIC)→アンチトロンビンIIIが正常の70%以下に低下した場合は、通常成人に対し、ヘパリンの持続点滴静注のもとに、本剤1日1,500単位(又は30単位/kg)を投与する」と記載があります。アンチトロンビンIII検査が先月末に行われ、アンスロビンP500注射用投与時の月にはアンチトロンビンIII検査が施行されていませんでした。このケースでは、アンスロビンP500注射用投与時の月に症状詳記に「〇月〇日+検査数値」を記載することが必要でした。事例14 セロクエル錠処方に伴うHbA1c検査の査定統合失調症で、クエチアピン(商品名:セロクエル錠)を25mg 2T投与し、HbA1cの検査を請求した。●査定点HbA1c検査が査定された。解説を見る●解説セロクエル錠の添付文書の副作用に「著しい血糖値の上昇から、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等の重大な副作用が発現し、死亡に至る場合があるので、本剤投与中は、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと」と警告されているため、HbA1c検査を施行しました。しかし、その場合でも、「糖尿病の疑い」の病名がないと査定されます。ここでは処方のつど、病名を追記するよりも、症状詳記での記載が求められます。事例15 腫瘍マーカー検査の査定初診月の病名で胃潰瘍、胃がんの疑いでCEA、CA19-9の検査を請求した。●査定点CEA、CA19-9が査定された。解説を見る●解説「点数表の解釈」の腫瘍マーカーに、「診療及び腫瘍マーカー以外の検査の結果から悪性腫瘍の患者であることが強く疑われる者に対して、腫瘍マーカーの検査を行った場合に、1回に限り算定する」となっています。他の検査が施行されていない場合でCEA、CA19-9だけを請求すると査定の対象になります。また、他院からの紹介の場合では、「〇〇医療機関から〇月〇日に紹介された」と記載することが求められています。事例16 C型慢性肝炎検査の査定C型慢性肝炎でHCV核酸検出とHCV核酸定量の検査を請求した。●査定点HCV核酸定量が査定された。解説を見る●解説「点数表の解釈」の微生物核酸同定・定量検査に、「HCV核酸検出とHCV核酸定量を併せて実施した場合には、いずれか一方に限り算定する」と通知があるため、両検査の請求は認められません。

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バナナの皮に気をつけろ【Dr. 中島の 新・徒然草】(242)

二百四十二の段 バナナの皮に気をつけろ中島家に伝わる格言に「謙虚にふるまえないものは、必ずバナナの皮を踏む」というものがあります。つまり「他人様に対して偉そうにモノを言った人間は足元がおろそかになり、ひっくり返って恥をかくから注意せよ」という意味です。先日も、車検を済ませたばかりの女房の自動車のエンジンが掛からなくなったので、ディーラーを呼びつけて散々文句を言ったことがあったのですが、結局はハザードの消し忘れでバッテリーがあがっていたということがありました。完全にこちらの不注意であったにもかかわらず、ディーラーの担当者は爽やかに対応してくれ、あまりにも申し訳ないので菓子折りを持って謝りにいく羽目になりました。私自身の失敗談としては、大昔に出くわした症例を思い出します。内科の先生が失神の患者さんを診て「胃潰瘍だ」とつぶやいたのを「なーにが胃潰瘍や。あの先生、大丈夫か? まずは頭部CTを撮らんとアカンやろ」と、陰で脳外科医たちが馬鹿にしたことがあったのです。失神の有力な原因の1つが消化管出血であり、逆に頭蓋内疾患はほとんどないということを知った今となっては、過去に戻って自分の頭をハリセンで叩いてやりたくなるようなエピソードです。もちろん、最近でも似たような事は時々ありました。他科の先生に偉そうに説教したときなんかに限って、後で自分の間違いが発覚し、大恥をかいてしまうのです。実例を挙げるとすごく分かり易いのですが、そこはちょっとご勘弁願います。この中島家の格言のミソは「謙虚にふるまえ」と言っていることで、決して「謙虚になれ」とは言っていないところです。人間、謙虚になることなんぞ簡単にできるわけありません。ですから「謙虚になれ」などと期待するのは無駄です。でも、いくら心の中で威張っていても、表面的に謙虚にふるまうことは誰にでも可能です。なので、私もバナナの皮を踏まないよう、なるべく謙虚にふるまうよう心掛けています。もし「そういや自分も思い当たるぞ!」という読者がおられましたら、ぜひとも注意しましょう。最後に1句謙虚たれ バナナの皮を 踏まぬようもう1句ちょっと待て その説教で 恥をかく

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第3回 カリメート処方が査定/ヘリコバクター・ピロリ感染症での査定/心筋梗塞でのH-FABP検査の査定/自己免疫疾患の臨床検査での査定【レセプト査定の回避術 】

事例9 カリメート処方が査定高カリウム血症で、ポリスチレンスルホン酸カルシウム(商品名:カリメート散)15gを処方した。●査定点カリメート散15gが査定された。解説を見る●解説添付文書の「効能・効果」で「急性および慢性腎不全に伴う高カリウム血症」と記載されているにもかかわらず、「急性および慢性腎不全」の病名が漏れていました。※とくに、高カリウム血症で他から紹介された患者の場合などで「急性および慢性腎不全」の病名が漏れやすいので注意が必要です。事例10 ヘリコバクター・ピロリ感染症での査定ヘリコバクター・ピロリ感染症で、ランソプラゾール、アモキシシリン水和物、クラリスロマイシン(商品名:ランサップ800)を7シート処方した。●査定点ランサップ800の7シートが査定された。解説を見る●解説ランサップ800は、ランソプラゾール、アモキシシリン水和物、クラリスロマイシンの3種類の経口剤が1つのシートにまとめられています。ランソプラゾールの「効能・効果」では、「胃潰瘍、十二指腸潰瘍」の病名が求められていますので、ヘリコバクター・ピロリ感染症と胃潰瘍または十二指腸潰瘍の病名が必要になります。事例11 心筋梗塞でのH-FABP検査の査定急性心筋梗塞(3ヵ月前の診療開始日)で、心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)定量検査を請求した。●査定点心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)定量検査が査定された。解説を見る●解説心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)定量検査は、「急性心筋梗塞の診断を目的に用いた場合」のみ算定できるとされています。検査結果についても、心筋細胞が障害を受けると、速やかに約1時間から上昇をしはじめ、5~10時間後でピークになります。そのため3ヵ月前の診療開始日では査定の対象になります。事例12 自己免疫疾患の臨床検査での査定全身性エリテマトーデス、急速進行性糸球体腎炎で、抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体(MPO-ANCA)、ループスアンチコアグラント定量検査を請求した。●査定点ループスアンチコアグラント定量検査が査定された。解説を見る●解説抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体(MPO-ANCA)は「急速進行性糸球体腎炎の診断又は経過観察のために測定した場合」のみ算定でき、ループスアンチコアグラント定量検査は「抗リン脂質抗体症候群の診断を目的として行った場合」に限り算定することになっています。両病名が記載されていないと査定の対象となります。

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小児の胃酸関連疾患の治療課題とPPIなどの薬物療法

 2018年7月13日アストラゼネカ株式会社は、第一三共株式会社と共同販売するプロトンポンプ阻害薬(PPI)エソメプラゾール(商品名:ネキシウム)が、1歳以上の小児への追加承認を本年1月に受け、4月に同薬の懸濁用顆粒分包が新発売されたことを期し、「進化する酸関連疾患治療~子どもの酸関連疾患の治療課題とPPIがもたらす変革を考える~」をテーマとするメディアセミナーを開催した。セミナーでは、小児の胃食道逆流症など酸関連疾患の診療と今後の展望などが解説された(写真は、左:中山 佳子氏、右上:木下 芳一氏、右下:清水 俊明氏)。小児向け治療薬の臨床試験数が少ない日本の現状 はじめに中山 佳子氏(信州大学医学部小児医学教室 講師)を講師に迎え、「小児酸関連疾患の実情とアンメットニーズ」をテーマに講演が行われた。 冒頭、エソメプラゾールが、ほかの国から10年近く遅れて小児適応が承認されたことに触れ、わが国の小児医薬品の開発状況を概説した。今回の小児適応拡大は、2006年に日本小児栄養消化器肝臓学会から出された要望が、ようやく実ったもの。現在でも成人治療薬の約20%程度しか小児適応がないという。とくに小児領域では、対象年齢層(新生児~思春期)が広いこと、対象患者数・投与量の少なさによる採算性からメーカの躊躇などの理由があると、世界的にみても治験数が少ないわが国の問題点を指摘した。 つぎに小児の酸関連疾患の特徴として胃食道逆流症と胃潰瘍、十二指腸潰瘍について説明を行った。小児の胃潰瘍、十二指腸潰瘍ではPPIが有効 小児の胃食道逆流症は、10歳未満の患児3.2%にあると推測され、14歳まででは約3.7万の患児がいると推計されている。こうした患児の主訴は「嘔吐・嘔気」「腹痛」であり、胸やけや呑酸の訴えがない、またはできないために、見逃されやすいという。そのため、咳嗽や喘鳴、体重減少・成長不良、胸痛など消化管外症状について、医療者が医療面接で気付き、本症を想定できるかが重要だと語る。 小児の胃食道逆流症診療では、診断として上部消化管造影検査、食道pHモニタリング、上部消化管内視鏡検査などが実施される。また、鑑別診断では、好酸球性食道炎、消化性潰瘍、代謝性アシドーシスなどとの鑑別が必要となる。治療では、家族への説明、生活指導から始まり、授乳方法の改善(少量頻回、増粘ミルク、アレルギー疾患用ミルクなど)、そして、PPIなどの薬物療法へと移行する。実際、エソメプラゾールで治療する場合、1日10~20mgを約2週間投与し、症状の改善を確認。有効ならば、4~8週間の治療継続を行うことになるが、無効・再燃例では、小児専門医に紹介が必要となる。 小児の胃潰瘍、十二指腸潰瘍では、十二指腸潰瘍の頻度が高く、主症状は年齢により異なるという。新生児~乳児期では反復性の嘔吐、消化管出血、幼児期では臍周囲痛など非特異的な痛み、学童期では上腹部圧痛を伴う心窩部痛が多くなる。とくに患児が主訴で「お腹がモヤモヤする」と訴えた場合、十二指腸潰瘍を疑い、必要な検査などの施行が望まれる。また、危険兆候として、夜間睡眠中の腹痛による覚醒、嘔吐や貧血、ヘリコバクター・ピロリ感染の家族歴も参考になる。診断では、臨床所見のほか、検査で腹部エコーや上部消化管内視鏡検査で潰瘍の診断を確実にすることが必要とされる。治療では、PPIが著効するため、1歳以上の本症確定例の小児ではエソメプラゾール10~20mgを第1選択薬として、早期の症状消失、潰瘍治癒を促すとしている。 最後に中山氏は、「小児の酸関連疾患では、腹痛や嘔吐などを繰り返すため、患児は活動制約、成長障害などの合併症を来しうるとともに その保護者もケアの負担や成長への不安など日常で苦労が重積する。こうした疾患に早期診断、早期治療介入をすることで、患児と保護者のQOLの改善につなげていく必要がある。また、PPIのアンメットニーズとして、長期投与、1歳未満の乳児への使用、ヘリコバクター・ピロリ除菌への補助などまだ解決されるべきことも多い」と課題を呈し、講演を終了した。小児に使用できない治療薬の保険承認への呼び水に セミナー後半では、木下 芳一氏(島根大学医学部内科学講座第二 教授)を座長に、清水 俊明氏(順天堂大学大学院医学研究科 小児思春期発達・病態学講座 主任教授)と中山氏をパネリストに「幼児・小児の酸関連疾患の早期発見、早期診断・治療につなげるには」をテーマにパネルディスカッションが行われた。 ディスカッションでは、「酸関連疾患、早期発見のコツ」について木下氏が尋ねたところ、清水氏が「不規則な位置や時間に腹痛があれば酸関連疾患を疑う。家族歴の聴取も大事だ」と回答し、中山氏が「患児向けに『胸やけ』などの言葉の言いかえをあらかじめ示しておく。保護者に患児の表情や気になる点を細かく聴取するべき」と回答し、臨床に役立つポイントが語られた。また、今後の展望について、清水氏は「今回のエソメプラゾールの保険適用が、別の小児に使用できない治療薬の保険承認への呼び水になればよいと思う」と述べ、中山氏は「安全に患児に使える治療薬の拡大を望みたい」と語り、ディスカッションを終えた。■参考アストラゼネカ ニュースリリースプロトンポンプ阻害剤「ネキシウム」の小児用法・用量の追加を目指し、新たに臨床試験を開始

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抗血小板療法を受けていない集団の大出血リスクは?/JAMA

 抗血小板療法を受けていない集団における、大出血および非致死的大出血の推定年間発生リスクを、ニュージーランド・オークランド大学のVanessa Selak氏らが算出した。同国のプライマリケア受診患者を対象とした前向きコホート研究の結果で、著者は「今回の結果を、心血管疾患(CVD)1次予防のための集団レベルのガイドラインに示すことができるだろう」と述べている。アスピリン治療開始の決定には、同治療によるベネフィットと有害性を考慮する必要がある。最も重大な有害性は大出血であるが、至適な地域集団における出血リスクのデータは不十分であった。JAMA誌2018年6月26日号掲載の報告。プライマリケア受診しCVDリスク評価を受けた30~79歳集団を前向きに評価 研究グループは、CVDを有しておらず抗血小板療法を受けていない集団における大出血リスクを調べるため、2002〜15年にニュージーランドのプラリマリケアを受診しCVDリスク評価を受けた30~79歳35万9,166例(ベースライン集団)を対象に前向きコホート研究を行った。被験者の初回大出血イベント日、死亡日、あらゆるベースライン集団除外基準に達した日、あるいは試験終了到達(2015年12月31日)の状況を調べ、1)ベースライン集団(35万9,166例)、2)非ハイリスク集団(出血リスク増大と関連する病状を有する人を除外した集団:30万5,057例)、3)非薬物療法集団(出血リスク増大と関連する他の薬物療法服用者を除外した集団:24万254例)について、性別および10歳単位年齢群(30~39歳、40~49歳、50~59歳、60~69歳、70~79歳)に分けて、大出血イベント(出血に関連した入院または死亡)、非致死的消化管出血、消化管出血関連の致命率(case fatality)を評価した。ベースライン集団の大出血イベント発生は1.1% 被験者の平均年齢は54歳(SD10)、女性が44%、ヨーロッパ系が57%であった。追跡期間の中央値は2.8年。 ベースライン集団(35万9,166例)において、128万1,896人年のフォローアップ中、大出血イベントの発生は3,976例(集団の1.1%)で、そのうち最も多かったのは消化管出血で2,910例(73%)であった。致死的出血は274例(7%)で、そのうち153例が脳内出血であった。 非致死的消化管出血イベントリスクは、1,000人年当たり、ベースライン集団で2.19(95%信頼区間[CI]:2.11~2.27)、非ハイリスク集団1.77(1.69~1.85)、非薬物療法集団1.61(1.52~1.69)であった。消化管出血イベント関連致命率は、それぞれの集団で3.4%(2.2~4.1)、4.0%(3.2~5.1)、4.6%(3.6~6.0)であった。

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これがMRによる不適切な情報提供の実態【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第2回

医療用医薬品の広告には法的規制や自主規範があり、MRなどから医療者への医薬品の情報提供には制約があります。その医療用医薬品の広告活動が適切に行われているかどうかに関する調査が実施され、報告書が2018年3月に作成、5月11日に公表されました。調査は、厚生労働省により2017年度中に5ヵ月間行われました。全国の医療機関の中からモニター医療機関を選定し、問題がありそうな事例を報告してもらい、それが法令違反に該当するかどうか行政上の判断を行うというものです。今後、行政指導などの必要な対応を図り、また製薬会社や医薬業界の自主的な取り組みを促すことで、医薬品の広告活動の適正化を図るために実施されました。調査対象は、MRなどの情報提供活動や広告資材、講演会だけでなく、専門誌や製薬会社のホームページも含まれており、医療機関における情報収集の実態に沿ったものとなっています。調査の結果、52の医薬品などで適切性に関する疑義報告があり、違反が疑われる項目は67件でした。今回は、健康被害への重大性や悪質性の観点からただちに取り締まりが必要となる事案はなかったため、違反事例に対しての処罰はないものと思われます。クローズドな場で資料配布せず意図的に疑義報告が行われた情報の入手ルートですが、1位が「企業による製品説明会」で34.6%、2位が「MRによる口頭説明」で30.8%でした。疑わしい事例の分類としては、1位が「事実誤認の恐れのある表現を用いた」が41.8%と断トツで多く、次いで「事実誤認のあるデータ加工を行った」が14.9%、「未承認の効能効果や用法用量を示した」が11.9%と続きました。具体的な事例として、以下が挙げられていました。原料の供給が需要に追い付かないため、患者の状態に応じた半量投与など、投与量の適宜増減を依頼する紙面案内があった。根拠となるデータを示すことなく「半量投与でも効果はまったく変わらない」と口頭で説明された。→効能効果について根拠のない情報提供自社のAG(オーソライズド・ジェネリック)と他社の後発医薬品との差異について、「胃炎・胃潰瘍治療剤は胃に直接作用するため、薬剤の溶出性などの動態が重要となる。効果を最大限に得るためには先発医薬品と製剤方法や添加物がすべて同等であるAGが最適である」と説明された。→根拠のない情報提供および他社製品の誹謗中傷発言パンフレットに補助線が引かれるといった加工が行われており、他社製品との差を強調している印象を受けるものであった。→補助線の追加と着色による誇大表現この報告書のまとめには、この調査によって以下の3点が明らかになったとされています。1.企業のMRが行う製品説明会や医療機関を訪問しての情報提供、登録制の企業ホームページといった「クローズドな場」において不適切な情報提供が多く行われている。資料を配布しないなど、意図的に不適切な情報提供を行っている可能性が疑われる事案もあった。2.調査期間の長期化とモニター医療機関の拡大により、不適切事例の把握数が増加した。モニター調査の継続的な実施と拡大は、企業の不適切な情報提供に対して一定の抑止力になる。3.広告監視モニターが広告監視の視点を身につけるうえで、不適切事例の共有が効果的であった。事例の精査には、実際の事例によって、不適切な情報提供のパターンやポイントを学習することが重要。製薬会社側も不適切な情報提供を問題視しているのか、最近では医療機関からの質問をその場でMRが回答することを禁じ、MA(メディカルアフェアーズ)やDI部門から後日回答する会社が複数あると聞きます。今後こうした事例は少なくなっていくのでしょうが、いずれにせよ私たち医療者は、最新の医薬品や医療の勉強を製薬会社に任せっきりにしたり、内容をうのみにしたりせず、客観的に評価する目を持つ必要がありそうです。平成29年度 医療用医薬品の広告活動監視モニター事業報告書

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「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」通知へ:厚労省

 厚生労働省の高齢者医薬品適正使用検討会は 5月7日の会合で、「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」について大筋で了承した。本指針では65歳以上の高齢者、とくに平均的な服薬薬剤数が増加する75歳以上に重点をおいて、処方見直しの基本的な考え方や評価・減薬までの流れ、よく使われる薬剤の高齢者における留意点などをまとめている。 早ければ5月中旬を目途に、関連団体や都道府県宛に通知が発出される見通し。また、同検討会では引き続き、主に急性期での対応をまとめた本指針の追補として、外来・在宅などの療養環境別の特徴を踏まえた「高齢者の医薬品適正使用の指針(詳細編)」の作成を開始し、2018年度中のとりまとめを目指す。 本指針は多剤服用やポリファーマシーといった言葉の概念から、処方見直し時のポイントや進め方のフローチャート、減薬する際の注意点などをまとめた本文と、薬効群ごとの薬剤処方における留意点、慎重な投与を要する薬物リストなどの別表から構成される。別表1「高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点」では、A~Lの12の薬効群ごと(下記参照)に薬剤選択や投与量・使用法に関する注意点、他の薬剤との相互作用に関する注意点が一覧化されている。A.催眠鎮静薬・抗不安薬B.抗うつ薬(スルピリド含む)C.BPSD 治療薬D.高血圧治療薬E.糖尿病治療薬F.脂質異常症治療薬G.抗凝固薬H.消化性潰瘍治療薬 I.消炎鎮痛剤J.抗微生物薬(抗菌薬・抗ウイルス薬)K.緩下薬L.抗コリン系薬剤 なお、詳細編では認知症や骨粗鬆症、COPDなどについても取り上げることが検討されている。■参考厚生労働省「高齢者医薬品適正使用検討会」

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日本人と胃がん―ピロリ菌と気を付けるべき3つの習慣

 世界的に見れば、罹患率・死亡率共に減少傾向にあるとはいえ、依然、最も診断されているがんであり、死因としては第3位の胃がん。今月、都内で開かれたプレスセミナー(ブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社主催)では、津金 昌一郎氏(国立がん研究センター 社会と健康研究センター長)が、ピロリ菌をはじめとする胃がんのリスク因子と予防について講演した。環境要因?日本で胃がんが多い地域、少ない地域 講演で津金氏が示した日本の統計データによると、全がん種で死亡した人は、2015年に37万人(男性22万人、女性15万人)で、このうち胃がんで死亡した人は4万6,000人(男性3万人、女性1.5万人)となっており、肺、大腸について第3位だった。また罹患率については、新たに診断されたのは、2013年時点のデータで、全がん種で推定86万例(男性50万例、女性36万例)。このうち胃がんと診断されたのは推定13万例(男性9万例、女性4万例)となっており、最も多かった。ただ、年次推移を見ると、罹患率の減少と生存率の向上により、死亡率は確実に減少傾向にある。 また、患者の分布を見ると、東北地方の日本海側地域に多く、九州・沖縄地域で少ない傾向があるという。津金氏は、「食生活を含めた生活習慣などの環境要因が、遺伝要因よりも影響が大きいのでは」と述べた。3つの習慣の見直しで胃がん予防を では、胃がんリスクとして挙げられるのは何か。日本人のエビデンスに基づいた研究によると、「確実」とみられているリスク要因は、ピロリ菌感染と喫煙であり、「ほぼ確実」なのは塩分、確実とまではいかないが可能性が示唆されているのは、野菜や果物の低摂取である。 このうちピロリ菌については、幼児期にピロリ菌を保有する大人から食べ物の口移しなどによる感染経路が知られており、本人以外の第三者の注意や心掛けがなければ防ぎようがない側面がある。一方で、喫煙や塩分や塩蔵食品(漬物や塩辛、干物など)の高摂取、野菜や果物の低摂取については、患者の自助努力において大いに改善の余地がある生活や食事の習慣である。とりわけ喫煙は、非喫煙者に比べ胃がんリスクが約1.6倍増加することも明らかになっており、禁煙を勧めることが何よりのがん防止になると津金氏は強調する。リスクは知るべきだが、ピロリ菌除菌は「成人以降で」 胃がんの確実なリスク因子であるピロリ菌感染の有無は、尿素呼気試験のほか、便や尿、血液の検査などで簡便にわかるようになった。日本では、2000年に「胃潰瘍、十二指腸潰瘍」に対し、ピロリ菌の感染診断および治療が保険適用となり、13年には「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」に対するピロリ菌除菌も保険適用となった。 胃がんのリスク分類は4つの分類(ABC分類)が知られている。これは、ピロリ菌感染の有無と、萎縮性胃炎の有無(血中のペプシノーゲン値で判別)の組み合わせによる分類で、ピロリ菌感染(-)/胃粘膜の萎縮なしは「A」、ピロリ菌感染(+)/胃粘膜の萎縮なしは「B」、ピロリ菌感染(+)/胃粘膜の萎縮進行は「C」、ピロリ菌感染(+)/胃粘膜の萎縮が高度に進行は「D」と評価される。 また、国立がん研究センターが作成した、今後10年の胃がん罹患リスクを予測する診断ツールも有用である。年齢、性別、喫煙習慣、食習慣、胃がんの家族歴、それにピロリ菌感染の有無を入力すれば、上記のABC分類のいずれに該当するかを即座に知ることができる。津金氏は、こうした手軽なツールも活用して、患者自身に胃がん予防に対する意識付けを促すことの必要性を述べる一方、リスクを低減させるピロリ菌除菌については、その有効性を認めつつ、「小児期に抗生剤を使うことが正しいのか不明な点も多い。検査や除菌、自治体や親に強制されるべきものではなく、成人になって自らの判断で行うべきと考える」と私見を述べた。

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O型女性は胃十二指腸潰瘍リスクが高い~日本ナースヘルス研究

 ABO式血液型でO型の日本人女性は、他の血液型の女性よりも胃十二指腸潰瘍の発症リスクが有意に高いことが、群馬大学のLobna Alkebsi氏らの研究により明らかになった。また、1955年以前に出生した群は、それ以降に出生した群よりも高リスクであった。Journal of epidemiology誌オンライン版2017年10月28日号の報告。 血液型Oが消化性潰瘍リスク上昇と関連するという報告があるが、日本人対象の調査はほとんどない。そのため、著者らは、日本人女性の大規模コホート研究である日本ナースヘルス研究※(n=15,019)の前向き/後ろ向きデータ両方を用いて分析を行い、ABO式血液型と胃十二指腸潰瘍発症リスクとの関連性を調査した。胃十二指腸潰瘍発症リスクに対するABO式血液型の影響は、Cox回帰分析を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・血液型Oの女性は、それ以外の血液型(A、B、AB)の女性と比較して、出生時から胃十二指腸潰瘍の発症リスクが有意に高かった(多変量調整ハザード比 1.18、95%CI:1.04~1.34)。・血液型Oで1955年以前に出生した女性は、それ以降に出生した女性よりも、胃十二指腸潰瘍の累積発生率が高かった。 1955年以前群:多変量調整ハザード比 1.22、95%CI 1.00~1.49 1956年以降群:多変量調整ハザード比 1.15、95%CI 0.98~1.35※日本ナースヘルス研究(JNHS:Japan Nurses' Health Study) 女性の健康増進に役立てるため、日本の女性看護職員を対象に、生活習慣や女性ホルモン剤の利用が健康にどのような影響を及ぼすかを研究している。

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上部消化管出血リスク、セレコキシブ vs.ナプロキセン/Lancet

 非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)とアスピリンの併用が必要な、心血管および消化管イベントのリスクが共に高い患者に対し、セレコキシブ+プロトンポンプ阻害薬(PPI)の投与は、ナプロキセン+PPI投与に比べて、上部消化管再出血リスクが半分以下に低減することが示された。中国・香港中文大学のFrancis K L Chan氏らが、514例を対象に行った無作為化二重盲検試験による結果で、Lancet誌オンライン版2017年4月11日号で発表した。著者は結果を踏まえて、「上部消化管再出血リスクを低下させるにはセレコキシブが好ましい治療である。ナプロキセンは心血管系の安全性は確認されているが、投与を回避すべきであろう」とまとめている。18ヵ月以内の上部消化管出血リスクを比較 試験は2005年5月~2012年11月にかけて、香港の教育研究病院を通じ、関節炎と心臓血栓性疾患があり、上部消化管出血が認められ、NSAIDとアスピリンの併用が必要な患者を対象に行われた。 研究グループは、潰瘍の治癒後、ヘリコバクター・ピロリ菌感染のない514例の患者を無作為に2群に分け、一方にはセレコキシブ100mg(1日2回)とエソメプラゾール20mg/日を、もう一方にはナプロキセン500mg(1日2回)とエソメプラゾール20mg/日を、いずれも18ヵ月投与した。また、すべての被験者がアスピリン80mg/日の服用を再開した。 主要エンドポイントは、18ヵ月以内の上部消化管出血の再発だった。上部消化管再出血リスク、セレコキシブ群がナプロキセン群の0.44倍 その結果、上部消化管出血の再発が認められたのは、ナプロキセン群31例(胃潰瘍25例、十二指腸潰瘍3例、胃・十二指腸潰瘍1例、びらん性出血2例)に対し、セレコキシブ群は14例(胃潰瘍9例、十二指腸潰瘍5例)だった。18ヵ月以内の上部消化管再出血累積発症率は、ナプロキセン群が12.3%(95%信頼区間:8.8~17.1)に対し、セレコキシブ群は5.6%(同:3.3~9.2)と有意に半減した(p=0.008、補正前ハザード比:0.44、同:0.23~0.82、p=0.010)。 再発が認められた患者を除外した解析において、有害事象によりNSAIDの服用を中止したのは、ナプロキセン群7%(17例)、セレコキシブ群8%(21例)だった。

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上部消化管出血患者のリスク評価スコア5種を比較/BMJ

 上部消化管出血患者のリスク評価は、Glasgow Blatchfordスコアが治療の必要性や死亡に関する予測精度が最も高い。英国・グラスゴー王立診療所のAdrin J Stanley氏らが、複数のシステム(admission Rockall、AIMS65、Glasgow Blatchford、full Rockall、PNED)について予測精度と臨床的有用性を比較する国際多施設前向き研究を行い明らかにした。ただし、Glasgow Blatchfordスコアも、その他のエンドポイントに関しては臨床的有用性には限界があるという。上部消化管出血患者の管理では、リスク評価スコアを用いて外来管理か緊急内視鏡検査、またはより高度な治療を実施するかを決定することが推奨されているが、これまで、予測精度や普遍性、リスクを判断する最適閾値などが不明のままであった。BMJ誌2017年1月4日号掲載の報告。上部消化管出血患者の5つのリスク評価スコアを比較 研究グループは、欧州・北米・アジア・オセアニアの大規模病院6施設において、2014年3月~2015年3月の12ヵ月間にわたり上部消化管出血患者連続3,012例について評価した。 主要評価項目は、複合評価項目(輸血、内視鏡治療、画像下治療[IVR]、外科手術、30日死亡率)、内視鏡的治療、30日死亡率、再出血、在院日数で、内視鏡検査前のリスク評価スコア(admission Rockall、AIMS65、Glasgow Blatchford)と内視鏡検査後のリスク評価スコア(full Rockall、progetto nazionale emorragia digestive[PNED])を比較するとともに、低リスク患者と高リスク患者を特定するための最適スコア閾値を求めた。Glasgow Blatchfordスコアが介入や死亡の予測に最も有用 結果、介入(輸血、内視鏡治療、IVR、手術)の必要性または死亡を予測するうえで最も有用なのは、Glasgow Blatchfordスコア(GBS)であった。ROC曲線下面積(AUROC)は、GBSが0.86であったのに対し、full Rockallは0.70、PNEDは0.69、admission Rockallは0.66、AIMS65は0.68であった(すべてのp<0.001)。また、GBS 1点以下が、介入不要の生存を予測する最適閾値であった(感度98.6%、特異度34.6%)。 内視鏡治療の予測には、AIMS65(AUROC:0.62)やadmission Rockall(0.61)と比較して、GBS(0.75)が適していた(両比較のp<0.001)。GBS 7点以上が、内視鏡治療を予測する最適閾値であった(感度80%、特異度57%)。 死亡の予測には、PNED(0.77)およびAIMS65(0.77)が、admission Rockall(0.72)およびGBS(0.64)より優れており最も予測に有用であった(p<0.001)。死亡を予測する最適閾値はPNED 4点以上、AIMS65は2点以上、admission Rockallは4点以上、full Rockallは5点以上であった(感度65.8~78.6%、特異度65.0~65.3%)。 再出血や在院日数の予測に役立つスコアは、なかった。 著者は、上部消化管出血発症時にすでに入院中の患者は除外されていることや、患者の31%は内視鏡検査が未実施であったことなどを研究の限界として挙げている。そのうえで、「救急部門でのGBS利用が多くの国々で拡がることにより、上部消化管出血患者の最大19%は外来患者として安全に管理できる可能性がある」とまとめている。

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ピロリ感染に対する1次除菌治療におけるビスマス4剤併用療法、非ビスマス4剤併用療法および3剤併用療法の有用性―非盲検無作為化試験(解説:上村 直実 氏)-610

 ピロリ菌に対する除菌治療において、標準的レジメとして使用されている3剤(プロトンポンプ阻害薬:PPI+アモキシシリン:AMPC+クラリスロマイシン:CAM)併用療法(PAC療法)の除菌率が、著明に低下していることが世界的に問題となっている。 今回の台湾からの報告では、ピロリ感染者に対する1次除菌治療として、標準的なPAC療法14日間、ビスマス併用4剤療法(ビスマス+PPI+メトロニダゾール:MNZ+テトラサイクリン:TC)および非ビスマス4剤療法(PPI+AMPC+CAM+MNZ)の3群で無作為化比較試験を行った結果、ビスマス併用4剤療法の除菌率がPAC療法に比べて有意に高いことが示されている。 除菌治療の有効性ないしは除菌率は、地域のCAMおよびMNZに対する耐性菌率により大きな影響を受ける。わが国の保険診療では、ピロリ感染に対する1次除菌治療としてPAC療法が承認されており、この1次治療における除菌失敗例に対する2次除菌治療として、CAMをMNZに置換したPAM療法が承認・使用されている。本邦でもCAM耐性率が30%を超え、PAC療法の除菌率が60%台に低下しているが、2次治療法であるPAM療法の除菌成功率が意外にも90%以上に保たれている。さらに、新たなPPIを用いたレジメの1次除菌率が90%以上であると報告されており、医療保険でカバーされない3次除菌治療を必要とする症例は非常に少ないのが現状である。したがって、CAM耐性による影響が世界中で危惧されているものの、わが国の臨床現場における新たな1次除菌法や2次除菌法の除菌成功率は90%以上と満足すべきものであり、さらにビスマスやTCを除菌治療に使用することは薬事承認されていない日本の医療現場に、今回の台湾からの研究結果が影響を与えることはないと思われる。

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H.pylori除菌、第1選択は3剤療法よりビスマス4剤療法/Lancet

 Helicobacter pylori(ピロリ菌)の除菌療法は、ビスマス4剤療法(クエン酸ビスマス三カリウム+ランソプラゾール+テトラサイクリン+メトロニダゾール)のほうが、従来の3剤療法に比べ、除菌率が約7%有意に高く、第1選択として好ましいことが示された。背景には、クラリスロマイシン耐性のピロリ菌の増加があるという。台湾国立大学病院のJyh-Ming Liou氏らが、成人感染者1,620例を対象に行った非盲検無作為化比較試験の結果、明らかにした。Lancet誌オンライン版2016年10月18日号で発表した。被験者を3群に分け、レジメンを比較 研究グループは、2013年7月~2016年4月にかけて、台湾の9医療機関を通じ、20歳超のピロリ菌感染者1,620例を対象に試験を行った。登録被験者は、迅速ウレアーゼ試験、組織学的、血液培養または血清検査のうち2つ以上の試験で陽性を示したか、胃がんスクリーニングの尿素呼気テストで13C尿素値が陽性の患者だった。 被験者を無作為に3群に分け、第1群には併用療法(ランソプラゾール30mg+アモキシシリン1g、クラリスロマイシン500mg、メトロニダゾール500mgのいずれかを併用、1日2回)を10日間、第2群にはビスマス4剤療法(クエン酸ビスマス三カリウム300mg 1日4回+ランソプラゾール30mg 1日2回+テトラサイクリン500mg 1日4回+メトロニダゾール500mg 1日3回)を10日間、第3群には3剤療法(ランソプラゾール30mg+アモキシシリン1g+クラリスロマイシン500mg、いずれも1日2回)を14日間投与した。 主要評価項目は、intention-to-treat集団で評価した第1選択としてのピロリ菌除菌率だった。除菌率、ビスマス4剤療法群は90%、3剤療法群は84% その結果、ビスマス4剤療法群の除菌率は90.4%(540例中488例、95%信頼区間[CI]:87.6~92.6)、併用療法群は85.9%(540例中464例、同:82.7~88.6)、3剤療法群は83.7%(540例中452例、同:80.4~86.6)だった。 ビスマス4剤療法群の除菌率は、3剤療法群に比べ有意に高率だった(群間差:6.7%、95%CI:2.7~10.7、p=0.001)。一方、併用療法群に対する有意差はなかった。また、併用療法群と3剤療法群の間にも、除菌率に有意差はなかった。 有害事象発生率は、ビスマス4剤療法群が67%、併用療法群が58%、3剤療法群が47%だった。 これらの結果を踏まえて著者は、「クラリスロマイシン耐性ピロリ菌の罹患率が増加している現状では、ビスマス4剤療法群が除菌の第1選択として望ましい。10日間の併用療法は至適とはいえず、より長期の投与期間を考慮すべきであろう」と結論している。

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イワケンの「極論で語る感染症内科」講義

第1回 なぜ極論が必要なのか? 第2回 あなたはなぜその抗菌薬を出すのか 第3回 その非劣性試験は何のためか 第4回 急性咽頭炎の診療戦略のシナリオを変えろ! 第5回 肺炎・髄膜炎 その抗菌薬で本当にいいのか? 第6回 CRPは何のために測るのか 第7回 急性細菌性腸炎 菌を殺すことで患者は治るのか第8回 ピロリ菌は除菌すべきか第9回 カテ感染 院内感染を許容するな 第10回 インフルエンザ 検査と薬の必要性を考えろ 第11回 HIV/AIDS 医療者が知っておくべきHIV/AIDS診療の今 きょく ろん 【極論】1.極端な議論。また,そのような議論をすること。極言。2.つきつめたところまで論ずること。           大辞林第3版(三省堂)イワケンこと岩田健太郎氏が感染症内科・抗菌薬について極論で語ります。「この疾患にはこの抗菌薬」とガイドラインどおりに安易に選択していませんか?それぞれ異なった背景を持つ患者にルーチンの抗菌薬というのは存在するはずがありません。抗菌薬が持つ特性や副作用のリスクなどを突き詰めて考え、相対比較をしながら目の前の患者に最適なものを特定することこそが、抗菌薬を選択するということ。イワケン節でその思考法をたたきこんでいきます。※本DVDの内容は、丸善出版で人気の「極論で語る」シリーズの講義版です。 書籍「極論で語る感染症内科」は2016年1月丸善出版より刊行されています。  http://pub.maruzen.co.jp/book_magazine/book_data/search/9784621089781.html第1回 なぜ極論が必要なのか? 抗菌薬選択、感染症治療に関してなぜ“極論”が必要なのかをイワケンが語ります。これまでの感染症の診断・治療の問題点を指摘しながら、どういう方向に向かっていかなければならないのか、何をすればよいのかを示していきます。“感染症とはなにか”が理解できる内容です。第2回 あなたはなぜその抗菌薬を出すのか抗菌薬を処方するとき、何を基準に選択していますか?ほとんどの場合において「スペクトラム」を基準にしていることが多いのではないでしょうか?否。本当にそれでいいのでしょうか。移行性、時間依存性、濃度依存性などの抗菌薬が持つ特性や副作用のリスクなどを突き詰めて考え、、相対比較をしながら最適なものを特定することこそが、抗菌薬を選択するということ。イワケン節でその思考法をたたきこみます。第3回 その非劣性試験は何のためか近年耳にする機会が増えている「非劣性試験」。既存薬よりも新薬の効果のほうが劣っていないことを示す試験で、新薬が主要な治療効果以外に何らかの点で優れているということを前提としてが実施するものである。本来患者の恩恵のために行われるべきこの試験が価値をもたらすことは当然ある。しかしながら、臨床的には意味の小さいいわゆる「me too drug」を増やす道具になりかねないということも、また事実である。この試験のあり方にイワケンが警鐘を鳴らす。第4回 急性咽頭炎の診療戦略のシナリオを変えろ!いよいよ疾患の診療戦略に入っていきます。まずは誰もが診たことのある急性咽頭炎。急性咽頭炎の診療において、溶連菌迅速検査の結果が陽性の場合は、抗菌薬(ペニシリン系)を投与を使用し、陰性の場合は、伝染性単核球症などとして、抗菌薬を使用しないという治療戦略が一般的。しかし、細菌性の急性咽頭炎の原因菌は「溶連菌」だけではなかった!つまり、検査が陰性であっても、抗菌薬が必要な場合もある!ではそれをどのように見つけ、診断し、治療するのか?イワケンが明確にお答えします。第5回 肺炎・髄膜炎 その抗菌薬で本当にいいのか?今回は、肺炎と髄膜炎の診療戦略について見ていきます。風邪と肺炎の見極めはどうするか?グラム染色と尿中抗原検査、その有用性は?また、髄膜炎のセクションでは、抗菌薬の選択についてイワケンが一刀両断。細菌性髄膜炎の治療に推奨されているカルバペネム。この薬が第1選択となったその理由を知っていますか?そこに矛盾はないでしょうか?ガイドライン通りに安易に選択していると、痛い目を見るかもしれません。番組最後には耐性菌についても言及していきます。第6回 CRPは何のために測るのか炎症の指標であるCRPと白血球は感染症診療において多用されている。多くの医療者は感染症を診るときに、白血球とCRPしか見ていない。CRPが高いと感染症と判断し、ある数値を超えると一律入院と決めている医療機関もある。しかし、それで本当に感染症の評価ができていると言えるのだろうか。実例を挙げながらCRP測定の意義を問う。第7回 急性細菌性腸炎 菌を殺すことで患者は治るのか細菌性腸炎の主な原因菌は「カンピロバクター」。カンピロバクターはマクロライドに感受性がある。しかし、臨床医として、安易にマクロライドを処方する判断をすべきではない。抗菌薬で下痢の原因菌を殺し、その抗菌薬で下痢を起こす・・・。その治療法は正しいといえるのか?イワケン自身がカンピロバクター腸炎に罹患したときの経験を含めて解説します。第8回 ピロリ菌は除菌すべきか世の中は「ピロリ菌がいれば、とりあえず除菌」といった圧力が強い。ピロリ菌が胃炎や胃潰瘍、さらには胃がんなど多様な疾患の原因となる菌であるからだ。一方で、ピロリ菌は病気から身を守ってくれている存在でもあるのだ。そのピロリ菌をやみくもに除菌することの是非を、イワケンの深い思考力で論じる。第9回 カテ感染 院内感染を許容するなカテーテルを抜去して解熱、改善すればカテ感染(CRBSI:catheter-related blood stream infection)と定義する日本のガイドライン。また、カテ感染はカテーテルの感染であると勘違いされている。そんな間違いだらけの日本のカテ感染の診療に、イワケンが切り込む。限りなくゼロにできるカテ感染(CRBSI)。感染が起こることを許容すべきではない。第10回 インフルエンザ 検査と薬の必要性を考えろインフルエンザの診療において迅速キットを使って診断、そして、陽性であれば抗インフルエンザ薬。そんなルーチン化した診療にイワケンが待ったをかける。今一度検査と抗インフルエンザ薬の必要性と意義を考えてみるべきではないだろうか。また、イワケンの治療戦略の1つである、「漢方薬」についても解説する。第11回 HIV/AIDS 医療者が知っておくべきHIV/AIDS診療の今HIV/AIDSの診療は劇的に進化し、薬を飲み続けてさえいれば天寿をまっとうすることも可能となった。そのため、HIV/AIDS診療を専門としない医師であっても、そのほかの病気や、妊娠・出産などのライフイベントで、HIV感染者を診療する機会が増えてきているはず。その患者が受診したとき、あなたはどう対応するのか。そう、医療者として、“患者差別”は許されない!普段通りの診療をすればいいのだ。しかしながら、薬の相互作用や患者心理など、気をつけるべきことを知っておく必要はある。その点を中心に解説する。

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呼吸不全死のリスクが高まる病歴とは?:高畠研究

 日本人の一般集団において、「男性」、「脳卒中」や「胃潰瘍」の病歴を持つことなどが呼吸不全死のリスクであることが、山形大学医学部内科学第一(循環・呼吸・腎臓内科学)講座の小林 真紀氏らにより報告された。Scientific reports誌2016年5月16日号掲載の報告。 一般集団の呼吸不全死のリスク因子は、まだ確立されていない。著者らは過去の研究で、1秒量(FEV1)の低下と全死因死亡および心血管疾患死亡との関連を示したが、FEV1は呼吸器疾患死亡に対する独立したリスク因子ではなく、呼吸器疾患死亡には肺機能以外にも別の要因が関わっていることが考えられた。本研究は、日本人の一般集団を対象に、呼吸不全によって死亡した個人の特性を探索することを目的とした。 対象は、2004~06年の間に山形県東置賜郡高畠町で行われた地域の健康診断に参加した40歳以上の3,253人である。アウトカムは2010年末までの死亡とし、Cox比例ハザードモデルを用いて呼吸不全による死亡者の特性を生存者および呼吸不全以外の疾患による死亡者と比較することにより、ハザード比(HR)とその95%信頼区間(CI)を求めた。さらに、同定したリスク因子による呼吸不全死の予測モデルを作成し、C統計量を算出してその予測精度を評価した。臨床検査値は、ROC曲線を用いて最も感度および特異度の高くなるカットオフ値を検討し、モデルに投入した。 主な結果は以下のとおり。・2010年までの死亡者数は127人で、そのうち呼吸不全による死亡は27人であった(肺炎:22人、COPD:1人、肺線維症:3人、気管支喘息:1人)。・男性(HR 8.16 [95%CI:2.81~26.31])、高齢(3.58 [2.00~6.84])、Dダイマー高値(1.27 [1.08~1.38])、フィブリノーゲン高値(HR 1.71 [1.23~2.25])、BMI低値(0.44 [0.27~0.69])、総コレステロール低値(0.57 [0.37~0.87])、脳卒中歴あり(7.74 [1.19~28.78])、胃潰瘍歴あり(3.84 [1.51~9.07])が呼吸器疾患による死亡の独立したリスク因子であった。・年齢、性別、BMIを予測因子として投入したモデルに病歴(脳卒中、胃潰瘍)と臨床検査値(Dダイマー、フィブリノーゲン、総コレステロール)を加えたところ、純再分類改善度(NRI)や統合識別改善度(IDI)の有意な増加がみられた(NRI:HR 0.415 [95%CI:0.181~0.624]、IDI:0.093 [0.052~0.311])。

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