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221.

卵アレルギーと弱毒生インフルエンザワクチン(解説:小金丸 博 氏)-475

 インフルエンザワクチンの製造には、インフルエンザウイルスを鶏卵に接種し培養する工程があるため、ワクチンにはオバルブミンなど卵の成分が含まれる。そのため、卵アレルギーのある人にインフルエンザワクチンを接種すると、重大な副反応が起こる可能性があると広く認識されている。近年、オバルブミン含有量の少ない不活化インフルエンザワクチンは、卵アレルギーのある患者に安全に接種できるとの報告があるが、経鼻的に投与される弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)の安全性に関しては、十分なデータがなかった。 本研究は、卵アレルギーのある若年者(2~18歳)に対するLAIVの安全性を評価するために行った多施設前向きコホート研究である。卵アレルギーと診断されたことのある779例に対してLAIVを投与し、ワクチン接種後2時間以内の有害事象の発生率(プライマリアウトカム)や、1ヵ月後の喘息コントロールスコアの変化などを調査した。試験には卵アナフィラキシー歴がある児が270例(34.7%)、喘息または反復性喘鳴と診断されたことがある児が445例(57.1%)含まれていた。卵アナフィラキシーで侵襲的な呼吸器管理が必要となったことがある児や、重症喘息の児は試験から除外された。 結果、ワクチン接種後2時間以内の全身性アレルギー反応は1例も報告されなかった(95%信頼区間上限値は全集団で0.47%、卵アナフィラキシー歴があった児で1.36%)。9例で軽度のアレルギー症状(鼻炎、局所の蕁麻疹、口腔咽頭の掻痒)を認めた。ワクチン接種後2~72時間に221例の副反応が報告され、62例が下気道症状を呈した。入院が必要となった児はいなかった。また、ワクチン接種1ヵ月後の喘息コントロールテストに有意な変化はみられなかった。 本研究では、卵アレルギー歴がある児でも安全にLAIVを接種できる可能性が示された。試験にはアナフィラキシー歴や喘息を持つ児が数多く含まれており、貴重な報告と考える。アレルギー反応(とくにアナフィラキシー)はとても怖い副反応である。医療従事者にとって、卵アレルギーのある人にインフルエンザワクチンを接種することは勇気が必要なことと思われるが、本試験の結果をみる限り、アレルギー反応を怖がり過ぎているのかもしれない。アナフィラキシーが起こるのを予測することは難しいので、ワクチンを接種する医療機関では、アナフィラキシーが起こったときに対応できるように十分準備しておくことが重要である。 本研究で用いられた経鼻弱毒生インフルエンザワクチンは、2~49歳を対象に欧米で使用されている。不活化ワクチンと比較し発病防止効果が期待できること、非侵襲的であることから、本邦での導入が待たれる。

222.

閉塞性肺疾患に気管支鏡下治療を用いる時代は到来するか?(解説:倉原 優 氏)-467

 気管支にバルブを詰める気管支鏡下肺容量減少療法が、重症肺気腫患者の治療法として期待されている。要は、まともな換気ができていない気腫肺には空気を送らない、という治療根幹である。その他の領域の肺換気を効率化する手法だ。 肺容量減少療法は、古典的には外科手術によって行われるのが主流である。ただ、そのコストは内科療法と比較して割に合わないほど高く、外科手術後にエアリークが遷延する例も少なくないことに懸念を示す呼吸器外科医も多いようだ1)。メタアナリシスでは手術を積極的に推奨しているわけではないが、症例を選べば有効であると書かれている2)3)。 気管支鏡下肺容量減少療法がCOPDに対して有効とされた研究が、Sciurba氏らによって2010年に報告されている4)。気管支鏡下肺容量減少療法と標準的内科治療を比較して、安全性と有効性を検証したものである。この試験では、6ヵ月時の1秒量は気管支鏡下肺容量減少療法群で4.3%上昇したのに対して、標準内科治療群では2.5%低下した。気管支バルブを使うことで、呼吸機能の改善が見込めるということだ。 さて、葉間側副換気がある患者より、ない患者のほうが有益性が高いという仮説がある。バルブを詰めたけれど、側副換気があるせいで気腫肺の容量減少効果がなければ、治療の甲斐もないだろう。この研究は、側副換気がない重症COPD患者に対して、その仮説が正しいかどうか調べるために実施された。過去の研究と同じように、この研究も気管支鏡下肺容量減少療法と標準的内科治療を比較して、安全性と有効性を検証した。主要評価項目は、1秒量、努力性肺活量、6分間歩行距離である。 登録された68例を解析した結果、intention-to-treat解析では、気管支鏡下肺容量減少療法群のほうが有意に主要評価項目の改善が大きいという結果だった(p<0.01)。喀血が多いと噂されるこの治療法だが、この研究では気胸が多かった。気管支鏡下肺容量減少療法群の34例中2例は胸腔ドレナージを要した。インターベンションを行うと、やはり何かしらの合併症が多くなるのはやむを得ないことかもしれない。現時点では、合併症の懸念から積極的にこの治療が推奨されるものではない。しかるべき患者に対して、諸刃の剣であることを説明して実施すべきだろう。 近い将来、代表的な閉塞性肺疾患であるCOPDと気管支喘息に、気管支鏡によるインターベンションが普及してくる時代が来るかもしれない。

223.

経鼻インフルエンザワクチン、卵アレルギー児も接種可?/BMJ

 卵アレルギーのある未成年者(2~18歳)を対象に、卵成分を含む弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)の安全性について検討した結果、卵アレルギーのある児でLAIVによる全身性アレルギー反応が起きるリスクは低く、またコントロール良好な喘息児への同接種について忍容性が認められるとの見解が示された。英国インペリアル・カレッジ・ロンドンPaul J Turner氏らが国内30施設778例を対象とした非盲検第IV相介入試験の結果、報告した。英国では小児予防ワクチンスケジュールに経鼻LAIVが導入されたが、卵アレルギーは頻度が高く、就学前児童では2~6%に及ぶとされる。卵アレルギーや喘息を有する未成年者へのLAIV接種に関する安全性データは限定的で、ガイドラインの中には、喘息持ちの5歳未満児でのLAIV接種は避けるよう勧告するものもあった。BMJ誌オンライン版2015年12月8日号掲載の報告。卵アレルギーのある中央値5.3歳779例について検証 試験は2014年9月~2015年2月のインフルエンザシーズンに行われた。英国30施設で卵アレルギーのある2~18歳の779例(年齢中央値5.3歳、65.2%が男子)を集め、LAIVを接種した。被験者のうち270例(34.7%)は卵アナフィラキシー歴があり、157例(20.1%)は呼吸器系/心血管系の症状を経験したことがあった。また、445例(57.1%)が、医師による喘息または反復性喘鳴との診断歴があった。 被験者は、ワクチン接種後少なくとも30分間観察され、72時間後に電話でフォローアップを受けた。喘息/反復性喘鳴歴のある児はさらに4週間後にもフォローアップを受けた。 主要評価項目は、卵アレルギーのある未成年者へのワクチン接種後2時間以内の有害事象の発生率とした。また、副次アウトカムとして、LAIV接種後72時間までの後発症状の発生率(非アレルギー関連含む)、喘息/反復性喘鳴のある児の喘息コントロールスコアの接種前と接種1ヵ月後の変化などを評価した。全身性アレルギー反応は報告なし 結果、全身性アレルギー反応は報告されなかった(95%信頼区間[CI]上限値は全集団で0.47%、卵アナフィラキシーがあった児で1.36%)。9例が軽度の症状を報告したが、局所的なIgE型アレルギー反応であった。 ワクチン接種の後発症状と思われる報告は221例であった。72時間以内の下気道症状の報告は62例(8.1%、全集団の95%CI:6.3~10.3%)であった(29例は両親が喘鳴と報告)。 入院となった被験者はいなかった。また、4週時点までに、喘息コントロールテストの評価に基づく下気道症状の増大はみられなかった。 今回の試験について著者は、「被験者が2次、3次の医療センターからも参加しており、専門的評価を必要とする、より重症のアレルギーを有していた被験者もいたことを考慮すべき」と指摘したうえで、「卵アレルギーを有する未成年者において、LAIVによる全身性アレルギー反応を引き起こすリスクは低い。また喘息/反復性喘鳴のコントロール良好な未成年者において、忍容性は良好のようである」とまとめている。

224.

予定帝王切開児は喘息や死亡リスクがわずかに高い/JAMA

 予定帝王切開分娩児は、経腟分娩児と比べて、5歳時点における入院またはサルブタモール吸入薬(商品名:サルタノールインヘラーほか)投与を要する喘息の絶対リスク、およびフォローアップ期間中(21歳時点)の全死因死亡の絶対リスクがわずかだが高いことが、英国・アバディーン大学のMairead Black氏らによる検討の結果、明らかにされた。予定帝王切開分娩は世界的に顕著な割合を占めており、予定・予定外を合わせると50%に達する国・地域もあることが報告されている。観察研究で、帝王切開分娩児は小児期の疾病リスクが高いことが示唆されているが、それらはキーとなる交絡因子が考慮されておらず、また予定帝王切開分娩児の、新生児期以降の死亡リスクに関する報告はなかったという。JAMA誌2015年12月1日号掲載の報告。スコットランド32万1,287例、予定帝王切開 vs.予定外帝王切開、経膣分娩で比較 研究グループは、1993~2007年にスコットランドで生まれた第1子単体児32万1,287例を対象に、2015年2月までフォローアップを行い、予定帝王切開分娩と小児期の健康問題や死亡との関連を調べた。初回妊娠の予定帝王切開分娩と、予定外帝王切開分娩および経膣分娩を比較した。 主要アウトカムは、入院を要した喘息とした。副次アウトカムは、5歳時点のサルブタモール吸入薬処方、5歳時点の肥満、フォローアップ中の炎症性腸疾患(IBD)、1型糖尿病、がん、死亡などであった。予定 vs.予定外は同等、vs.経膣の喘息1.13~1.22倍、死亡1.41倍 本解析における対象の内訳は、予定帝王切開分娩児1万2,355例(3.8%)、予定外帝王切開分娩児5万6,015例(17.4%)、経膣分娩児25万2,917例(78.7%)であった。 予定外帝王切開分娩児との比較で、予定帝王切開分娩児に、入院を要した喘息、5歳時点のサルブタモール吸入薬処方、5歳時点の肥満、IBD、がん、死亡のリスクの有意差はみられなかった。しかし、1型糖尿病リスクの増大がみられた(0.66% vs.0.44%、差:0.22%、95%信頼区間[CI]:0.13~0.31%、補正後ハザード比[HR]:1.35、95%CI:1.05~1.75)。 経膣分娩児との比較では、予定帝王切開分娩児に、入院を要した喘息(3.73% vs.3.41%、差:0.32%、95%CI:0.21~0.42%、補正後HR:1.22、95%CI:1.11~1.34)、5歳時点のサルブタモール吸入薬処方(10.34% vs.9.62%、差:0.72%、95%CI:0.36~1.07%、補正後HR:1.13、95%CI:1.01~1.26)、死亡(0.40% vs.0.32%、差:0.08%、95%CI:0.02~1.00%、補正後HR:1.41、95%CI:1.05~1.90)のリスク増大がみられた。5歳時点の肥満、IBD、1型糖尿病、がんのリスクについて有意差はみられなかった。 これらの結果について著者は、「さらなる調査を行い、観察された関連の因果関係を明らかにする必要がある」と述べている。

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アレルギー性鼻炎を改善へ、世界初の舌下錠登場

 シオノギ製薬株式会社は、11月26日都内にて、世界初の舌下錠タイプのダニアレルゲン免疫療法薬「アシテア」の発売を記念し、岡本 美孝氏(千葉大学大学院医学研究院 耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学 教授)を講師に迎え、「患者さんのQOL向上をサポートするアレルギー性鼻炎治療」をテーマにプレス向けの説明会を行った。国民の4割が有病者 アレルギー性鼻炎とは、「鼻粘膜のI型アレルギー疾患で、発作性反復性のくしゃみ、水性鼻漏、鼻閉を主徴とする」疾患である。疫学的実態に関して、アレルギー性鼻炎全体の日本国内での有病率は約4割と考えられている。ダニが原因の代表とされる通年性アレルギー鼻炎はとくに男性に多く、花粉症に代表される季節性アレルギー鼻炎は女性に多い。患者数は季節性アレルギーで近年増加傾向にある。 現在、アレルギー性鼻炎の治療法として、「抗原回避」「薬物療法」「免疫(減感作)療法」「手術療法」「鼻処置」「患者とのコミュニケーション」がある。なかでも広く行われている「薬物療法」と「免疫(減感作)療法」に焦点を当て、解説がされた。 ケミカルメディエーター遊離抑制薬や抗ヒスタミン薬、ステロイド薬などの薬物療法は、現在最も多く行われている治療であるが、これらは対症療法であり、アレルギー症状の治療という根本的な解決になっていない。その一方で、原因アレルゲンを皮下注射することで治療していくアレルゲン免疫療法(減感作療法)は、体質改善が図られ症状が軽快するものの、治療期間が2年以上と長期にわたり、途中離脱する患者の割合も多い。薬物療法か、免疫療法か それでは、薬物療法と免疫療法のどちらの治療法が良いだろうか? アレルギー性鼻炎患者の長期経過を、千葉大学医学部附属病院 耳鼻科アレルギー外来で追跡調査した結果が報告された。 小児通年性アレルギー鼻炎(n=55)において、薬物療法で改善以上が25%だったのに対し、減感作療法2年未満では69%、同療法2年以上は77%と減感作療法のほうが高い数値を示していた。また、成人通年性アレルギー性鼻炎(n=31)では、薬物療法で改善以上が40%だったのに対し、減感作療法2年以上は81%だったという。こうしたことからもアレルゲン免疫療法は、治療終了後も効果が長期間持続することが期待されているという。 このように、アレルゲン免疫療法(減感作療法)のデメリットを払拭する薬剤が待ち望まれる中で、患者の利便性、非侵襲性、重篤な副作用の軽減を目指し、アシテアが開発された。1日1回、2分で終了 アシテアは、世界で初めてのダニアレルゲン舌下錠であり、次のような特徴を持つ。 対象患者は、ダニアレルギー性鼻炎の成人および12歳以上の小児。禁忌は、病因アレルゲンがダニ抗原ではない患者、ダニエキスにショックの既往のある患者、重症の気管支喘息患者、悪性腫瘍などの全身性疾患のある患者である。また、過去にアレルゲンエキスでアレルギー症状を発現した患者、気管支喘息患者、高齢者、妊産婦(授乳中も含む)、非選択的β遮断薬服用中の患者は慎重投与となる。 用法・用量は1日1回、1回投与量100単位から開始し、300単位まで増量できる。服用方法は、薬剤を舌下に入れ、そのまま溶解するまで唾液を飲み込む(約2分間)だけである。ただし、服用後5分間はうがい、飲食は控えなければならない。 国内での第II/III相試験によると、投与1年後のアシテア300単位(n=315)とプラセボ(n=316)との比較で、平均調整鼻症状スコア(くしゃみ発作、鼻汁、鼻閉など)は、アシテア群の最小二乗平均が5.0に対し、プラセボ群が6.11と有意差が認められた。また、「軽度以上の改善」と評価した被験者割合は、アシテア群(244/306例)が79.7%だったのに対し、プラセボ群(200/310例)64.5%と、同じく有意差が認められた。初回投与は医師の監視下で 副作用はアシテア群で66.8%の報告があったのに対し、プラセボ群は18.6%であった。副作用の重症度は、軽度(98.1%)がほとんどを占め、アナフィラキシーショックのような高度なものは報告されなかった。主な副作用は、頻度順に口腔浮腫、咽喉刺激感、耳そう痒症、口腔そう痒症、口内炎などが挙げられた。副作用の発現時期は半数以上が投与開始後2週間以内であり、継続投与により発現頻度、程度は減弱していくという。そのため、副作用への注意として、初回投与時は約30分間、医師の監視下に置き十分な観察を行う。また、免疫療法では患者の離脱率が高いために、事前にメリット(長期の症状改善、自宅で服薬など)とデメリット(長い治療期間、副作用など)を患者によく説明することが、治療のポイントとなる。 最後に「効果持続期間の検証や新たな副作用の出現など、臨床の場でさらに研究を進めるとともに、効果測定や予測バイオマーカーの開発などが待たれる」と今後の課題を述べ、レクチャーを終えた。詳しい商品情報は、こちら(ケアネット 稲川 進)関連コンテンツケアネット・ドットコム 特集「花粉症」はこちら。

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小児のIgE感作と疾患の関連 4分の1が疾患を有さず

 小児は皮膚炎、喘息および鼻炎に罹患することが多いが、それらの有病率は年齢とともに変化する。また、IgE抗体保有と疾患との関連もよくわかっていない。スウェーデン・カロリンスカ研究所のNatalia Ballardini氏らは、感作と疾患との関連を明らかにする目的で、出生コホート研究にて16歳まで追跡された小児を調査した。その結果、特異的IgE抗体は小児期全体における皮膚炎およびアレルギー性疾患の複数罹患と関連していること、また4歳からの喘息および鼻炎と強く関連していたことを報告した。一方で、IgE感作を認める小児の23%が、小児期にいかなる疾患も呈しないことも判明したという。Allergy誌オンライン版2015年10月27日号の掲載報告。 対象は、スウェーデンの出生コホート研究BAMSEに登録された小児2,607例であった。 1~16歳の間6評価時点で、親の報告に基づき皮膚炎、喘息、鼻炎の罹患を確認した。また、4、8、16歳時の採血結果からIgE感作の有無を調査。一般的な食物または吸入アレルゲンに対するアレルゲン特異的IgE≧0.35kUA/Lの場合を感作ありと定義した。 一般化推定方程式を用い、感作による皮膚炎、喘息、鼻炎および複数罹患のオッズ比を算出した。 主な結果は以下のとおり。・16歳までに少なくとも1回の感作が報告された小児は、51%であった。・感作を受けている小児の約4分の1(23%)が、いかなる疾患も有していなかった。・潜在的な交絡因子を補正後、感作と次の有意な関連が認められた。 (1)小児期全体に及ぶ皮膚炎 (2)1~16歳時の皮膚炎・喘息・鼻炎の複数罹患(オッズ比:5.11、95%信頼区間[CI]:3.99~6.55) (3)4~16歳における喘息および鼻炎

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オマリズマブは日本の重症小児喘息でも有用か?

 オマリズマブ(商品名:ゾレア)は日本の重症な小児喘息に対しても有用であることを国立病院機構 福岡病院 小児科の小田嶋 博氏らが報告した。Allergology international 誌2015年10月号の掲載報告。 オマリズマブは中等症から重症のアレルギー性喘息を有する小児患者に対する臨床的な有用性が論証されている。しかしながら、日本の小児喘息患者を対象とした研究はこれまで行われてこなかった。 本研究は重症の小児喘息患者におけるオマリズマブの有効性(遊離IgE抗体の減少)と安全性の評価を目的としており、第1の目的はオマリズマブが血清遊離IgE抗体を25ng/mL(減少の目標値)まで低下させるかを調べることである。 対象は吸入ステロイド(200μg/日超のフルチカゾンプロピオン酸またはそれと同換算量)、または2剤以上の管理薬を使用しているにもかかわらず、コントロール不良な重症小児喘息患者(6~15歳)38人で、多施設共同のオープンラベル非対照試験において、オマリズマブの24週の追加投与を受けた。 主な結果は以下のとおり。・24週時の幾何学的な血清遊離IgE抗体の平均値は15.6ng/mLであった。・24週時の喘息症状スコア(日常生活スコア、夜間睡眠スコア)はベースライン時と比べ、有意に改善した。・ベースライン時と比べ、喘息の増悪率や喘息による入院率は、それぞれ69.2%、78.2%減少した(p<0.001)。・QOLスコアも有意に改善した(p<0.001)。・11人(28.9%)の患者は喘息管理薬の投与量が減少した。・36人(94.7%)の患者は治療期間中、少なくとも1つの副作用が認められた。・副作用はすべて軽度から中等度であり、問題となる新たな副作用は認められなかった。・試験期間中に脱落した患者はいなかった。

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喘息の最新治療~気管支サーモプラスティ

 2015年7月から、気管支喘息を外科的に治療するという国内初の医療機器「アレア気管支サーモプラスティシステム」が販売開始となった。これを受けて、2015年7月16日、都内にてメディアセミナー(主催:ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社)が開催された。 これまで、喘息治療は吸入薬や内服薬などによる薬物治療が主体であった。しかし、吸入薬を使用する際の手技の差や、呼気量が低下しすぎて薬を吸うことすらできない患者の存在、薬を定期的に使用していても発作をコントロールできない場合があるなどの課題があった。さらに、発作が起きない状態が続くと薬物の使用を自己中断してしまうこともあるという患者のアドヒアランスの悪さも問題となっていた。これらの課題を解決する方法として、気管支サーモプラスティが注目されている。喘息の外科的治療・気管支サーモプラスティとは 「気管支サーモプラスティ(BT)」は、気管支鏡を用いた治療法である。気管支鏡に電極付きのカテーテルを挿入し、高周波電流にて65℃で10秒間気管支壁を温めることで、喘息の原因となる肥厚した気道平滑筋の量を健常人に近付け、気管支の収縮を抑制し、発作を起きにくくする。 治療は気管支を3つのブロックに分けて行われ、それぞれ約3週間空けて実施される。所要時間は1回あたり約1時間で、1~2泊の短期入院で行われる。BT施行後は、治療前と同じ喘息治療薬を継続するが、症状によっては減量を考慮することもできるという。 なお、本治療の適応は18歳以上の高用量吸入ステロイドおよび長時間作用型β2刺激薬で喘息症状が抑制できない患者である。BTが注目されている理由 BTは気管支をつまんだり焼いたりすることがない、非侵襲的な治療法である。 気管支平滑筋に直接作用するため、吸入薬の手技に問題がある、肺活量が落ちて吸入薬が吸えない、アドヒアランスに問題があるなど喘息患者の抱えるさまざまな問題を解決する可能性がある。 また、気管支鏡を応用した手技であるため、気管支鏡を実施している施設であれば比較的容易に施行できることも魅力の1つである。 さらに、3回という少ない回数の治療で効果が5年間継続することがわかっている。臨床試験において、喘息で救急外来を受診した患者は、BT施行前1年間と比較して、施行後は78%も減少していた(5年間の平均)。BTの注意すべき点 BTは施行直後1日以内に呼吸症状の一時的な悪化がみられることが多いという。しかし、適切な処置で通常1週間以内に症状は消失するため、施行後の慎重な観察が必須である。 なお、術中に発作の可能性がある体調不良の患者には施行できない。演者の太田 健氏(国立病院機構東京病院 院長)は、「術前の問診によるBT施行可否の判断と、あらかじめ患者の症状を安定させる薬を飲ませておくことで、術中の発作を予防しておくことが重要である。当院でBTを行った2症例は、術前3日間と術後2日間の経口副腎皮質ステロイド投与で問題なく施行できた」と語った。 さらに、演者の東田 有智氏(近畿大学医学部 呼吸器・アレルギー内科 教授)は、喘息患者は気管支が敏感になっているため、気管支鏡を入れること自体がリスクであることを指摘した。そのうえで、「BT前後に副腎皮質ステロイドなど喘息症状を抑える薬を投与することで、リスクを抑制できる」と前投薬の重要性を繰り返し強調した。BTに望まれること BTを安全かつ効果的に実施するためには、治療時の前投薬の服用や治療後に今までの喘息治療薬を継続することなど患者に対する各種指導をしっかりと行っていくことが重要となってくる。 さらに、本治療法は欧米で2000年ごろから研究・臨床試験が開始され、2011年から一般的な治療となった新しい選択肢である。日本では本年4月から保険適用となったため、治療経験はまだ少ない。そのため、専門医が治療データを収集し、BT治療後も含めた喘息管理を行っていくことが望まれる。 BTの施行で従来の喘息治療薬を用いてもコントロール不能な患者、あるいはアレルギーや副作用などの理由で薬物を使用できなかった患者の症状を緩和できる可能性がある。BTの普及は、治療に難渋していた喘息患者にとって新たな治療の選択肢となりうると大いに期待されている。

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アトピー乳児、喘息発症リスクが高いのは?

  アトピー性皮膚炎(AD)は喘息や他のアトピー性疾患に先行して発症することが知られる。“アレルギーマーチ”と呼ばれるこれらの発症順序は必ずしも決まっておらず、乳幼児が喘息を発症するリスクについて取り組んだ研究は少ない。フランス・パリ公立アルマン・トゥルソー小児病院のFlore Amat氏らは、生後12ヵ月未満のAD患者を6歳まで追跡したObservatory of Respiratory risks linked with Cutaneous Atopy(ORCA)研究データを解析し、早期発症AD乳児において複数感作あるいは喘息家族歴を認める場合は、幼児期に喘息の発症リスクが高いことを明らかにした。PLoS One誌オンライン版2015年6月24日号の掲載報告。 研究グループは、喘息に発展する恐れのある早期発症ADの表現型を特定することを目的に、ORCA研究に登録された乳児214例についてクラスター分析を行った。  ORCA研究は、皮膚科医によりADと確定診断され、喘鳴の既往がない生後12ヵ月未満の乳児を6歳まで追跡し、AD、アレルギーおよび喘息について毎年調査した研究である。 主な結果は以下のとおり。・次の3つのクラスターが同定された。・クラスター1は「低感作AD群」(94例)。食物または空気アレルゲンへの感作なし~低度(それぞれ27.7%および10.6%)、AD重症度は中等度(SCORAD 25.29±14.6)。・クラスター2は「複数感作AD群」(84例)。AD重症度が高く(SCORAD 32.66±16.6)、食物または空気アレルゲンへの感作も高く(それぞれ98.6%および26.2%)、複数の食物アレルゲンに感作されている(96.4%)。・クラスター3は「喘息家族歴があるAD群」(36例)。親が喘息の既往歴を有し、AD重症度は中等度(SCORAD 24.46±15.7)、食物アレルゲン(1つ)への感作は中等度(38.9%)、空気アレルゲンへの感作はない。・6歳時点で喘息に罹患していた小児の割合は、クラスター1(14.9%)に比べてクラスター2および3で高かった(それぞれ36.1%および33.3%、p<0.01)。

232.

大豆イソフラボン、喘息コントロール効果なし/JAMA

 コントロール不良の喘息患者に対し、1日100mgの大豆イソフラボンを24週間投与したが、喘息症状の改善には結び付かなかった。米国・ノースウェスタン大学のLewis J. Smith氏らが、386例の患者を対象に行った、無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、示された。複数の慢性疾患治療において、大豆イソフラボンが用いられているが、使用を裏づけるデータは限定的であった。コンロトール不良の喘息患者については、大豆イソフラボンが有望であることを示唆するいくつかのデータが示されていたという。JAMA誌2015年5月26日号掲載の報告。24週後に、FEV1や喘息コントロールテストのスコアなどを比較 研究グループは、2010年5月~2012年8月にかけて、米国の喘息治療に関する研究ネットワーク(American Lung Association Asthma Clinical Research Centers)に属する19ヵ所の医療機関を通じて試験を行った。症状をコントロールする薬を服用しながらも、喘息症状が認められ、大豆摂取量が少ない12歳以上の患者386例を対象に試験を行った。 同グループは被験者を無作為に2群に分け、一方には総イソフラボン量100mgを含む大豆イソフラボン・サプリメントを、もう一方にはプラセボを、それぞれ毎日24週間にわたり投与した。 主要評価項目は、24週時点における1秒間努力呼気容量(FEV1)だった。副次的評価項目は、症状、喘息のコントロール不良イベント、喘息コントロールテストのスコア、全身・気道の炎症バイオマーカー測定値だった。FEV1、喘息コントロール、コントロール不良イベント数など、いずれも両群で同等 結果、24週後の気管支拡張薬使用前FEV1値は、プラセボ群が0.03L(95%信頼区間:-0.01~0.08)に対し、イソフラボン群は0.01L(同:-0.07~0.07)と、両群で有意差はなかった(p=0.36)。 喘息コントロールテストの変化平均値は、プラセボ群が1.98に対しイソフラボン群が2.20(数値が高いほど症状減少を示す)、喘息のコントロール不良イベント数はそれぞれ3.3回と3.0回、呼気中一酸化窒素の変化量はそれぞれ-3.48ppbと1.39ppbであり、いずれも両群で有意差はなかった。 なお、サプリメントを投与された被験者では、平均血漿ゲニステイン値が4.87ng/mLから37.67ng/mLに有意に上昇していた(p<0.001)。

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ヒトとペット類の花粉症、類似点と相違点

 オーストリア・ウィーン大学のErika Jensen-Jarolim氏らは、ヒト、イヌ、ネコおよびウマのアレルギーに関する論文についてレビューし、これらにおけるトランスレーショナル研究が動物のアレルギーの治療に役立つと同時に、ヒトに関連する知識の収集にも役立つことを報告した。著者は、「自然発症アレルギーを有するイヌ、ネコおよびウマはトランスレーショナル研究の魅力的なモデル患者であることが示唆された」とまとめている。Clinical and Translational Allergy誌オンライン版2015年4月7日号の掲載報告。 研究グループは、ヒト、イヌ、ネコ、ウマの花粉症について、相違点と類似点を検討した。 主な概要は以下のとおり。・ヒトおよびヒトの大切なペットや家畜はともに、IgEおよび類似IgE受容体のレパートリーと発現パターンを保有している。・また同じ細胞型がアレルギーの誘発または調節(たとえば肥満細胞、好酸球または制御性T細胞)に関係している。・イヌ、ネコおよびウマは、花粉アレルゲンへの即時型症状を自発的かつ異なる程度で発症する可能性がある。・これらにおける花粉による皮膚、鼻および気管支症状、ならびに慢性皮膚病変は、ヒトとおおむね類似している。・さまざまな種の花粉は、ヒトにおいては多くの場合アレルギー性鼻炎を引き起こすが、イヌにおいては主に湿疹様病変(イヌのアトピー性皮膚炎)を、ウマにおいては再発性気道閉塞、蕁麻疹、そう痒性皮膚炎を、ネコにおいては気管支喘息と皮膚症状(好酸球性肉芽腫症候群、頭頸部そう痒症、対称性の自己誘発性脱毛症)を誘発する。・ヒトにおいて、アレルギー特異的IgE検出、皮膚テストまたは他のアレルゲン誘発試験はすべて行われる。・対照的に動物において、IgE検出と皮膚テストの重要性は同等と考えられており、それぞれが他方にとって代わることがある。しかしながら、実用的および経済的な理由で、皮内テストが最も一般的に行われている。・ヒトと同様、イヌ、ネコおよびウマにおいても、アレルゲン免疫療法は臨床症状を有意に改善する。

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吸入器操作指導が予後を好転させる

 2015年4月17日より3日間、東京都内において第55回日本呼吸器学会学術講演会が開催された。近年のトピックであるCOPD、肺がんをはじめ、30以上の特別講演と1,200題を超える演題発表が行われた。 成人喘息患者の増加が懸念される中、日本アレルギー学会との共同企画として「包括的気管支喘息治療」というセッションが行われた。その中で、治療の要となる吸入療法について堀口 高彦氏(藤田保健衛生大学呼吸器内科学II 教授)より、失敗をさせない吸入指導の方法に関する発表が行われた。高齢者に多い手技ミス、誤操作 はじめに吸入薬の特性として、正確な吸入操作をしないと効果が十分に発揮されないことを指摘。最近、多くの新薬の登場とともにデバイスの数も増えたことから、その操作方法を患者さんのみならず、医療スタッフも把握しきれていないという現状を報告した。 外来で吸入薬を新たに処方した患者さんについて、次回の受診時に吸入操作を確認すると、誤操作をしている例を多く見かける。これは、とくに高齢者に顕著であり、具体的には手技や操作に問題がある場合が多いという。 加齢による筋力低下、吸入流速の低下などで定量噴霧式吸入器が上手く吸入できない場合は、スペーサーなどの補助器具を使用するなどフォローが必要となる。また、吸入で気を付けるポイントとしては、「吸入時の姿勢補正」、「舌を下げること」が挙げられ、「ドライマウスを防ぐための吸入後のうがいや飲水の実施」、「吸入器の衛生管理」も患者指導のうえで重要であると説明を行った。DVDで吸入指導 今後は、吸入方法の統一した啓発が必要となる。堀口氏は、各種デバイスの操作方法を解説し、間違えやすい点についてもやさしく解説したDVDを制作しており、実際に指導で効果を上げていることを紹介した。 外来では、吸入薬の処方前にこのDVDを患者さんに視聴してもらい、処方後はさらに薬剤師による吸入指導を実施。また、家庭用DVDも配布することで、自宅で繰り返し確認が行えるように工夫した。その結果、誤操作が少なくなり、吸入薬の遵守率が上昇したとのことである。堀口氏は「DVD導入により正確な吸入操作を普及させることで、より吸入療法の発展に期待をしたい」と発表を終えた。 なお、DVDおよびポスター(正しい吸入方法を身につけよう)は、独立行政法人 環境再生保全機構で配布、およびこのサイトで視聴できるため参考にされたい。

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水泳は気管支喘息の子供の運動耐容能や呼吸機能を改善【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第41回

水泳は気管支喘息の子供の運動耐容能や呼吸機能を改善 >足成より使用 水泳は気管支喘息のリスクでもあり、一方で気管支喘息の呼吸リハビリテーションにもなりうるという二面性を持っています。といっても運動誘発性気管支攣縮は別に水泳に限ったことではないため、後者の利益を重視する研究者のほうが多いように感じます。 Beggs S, et al. Swimming training for asthma in children and adolescents aged 18 years and under. Cochrane Database Syst Rev. 2013; 4: CD009607. この報告は、18歳以下の気管支喘息患者さんに対する、水泳の訓練の効果と安全性を調べたシステマティックレビューです。水泳の訓練と他のケアを比較した試験を集め、メタアナリシスを行いました。その結果、8試験・262人が組み込まれました。安定した患者さんから重症の患者さんまで気管支喘息の重症度はさまざまでした。水泳の訓練はおおむね30~90分で、週2~3回、期間としては6~12週継続されました。水泳の比較対象としては、通常ケアが7試験、ゴルフが1試験でした。結果として、水泳は通常のケアやゴルフと比較してQOL、喘息発作、副腎皮質ステロイドの使用というアウトカムに対して統計学的に有意な効果をもたらしませんでした。ただし、水泳は通常のケアと比べて最大酸素消費量、すなわち運動耐容能に効果がみられました。また、呼吸機能検査のパラメータにもわずかながら効果があったと報告されています。プールに使用されている塩素の有無によって、これらのアウトカムに変化がみられるのかどうかはわかりませんでしたが、少なくとも水泳が気管支喘息の患者さんにとって悪さをするものではないだろうと結論付けられました。ただし、他の運動療法と比較して水泳がベストかどうかという点は、不明といわざるを得ません。この研究では塩素について触れられていましたが、とくに室内プールにおける塩素は小児の気管支喘息を悪化させるのではないかとする意見もあります(Immunol Allergy Clin North Am. 2013; 33: 395-408.)。水泳に運動耐容能を増加させる可能性があるにもかかわらず、塩素が気管支喘息を悪化させるのであれば本末転倒ですね。インデックスページへ戻る

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~プライマリ・ケアの疑問~  Dr.前野のスペシャリストにQ!【呼吸器編】

第1回 気管支喘息治療のスタンダードは? 第2回 吸入ステロイドを使い分けるポイントは? 第3回 気管支喘息で経口ステロイドはどう使う? 第4回 風邪症状から肺炎を疑うポイントは?第5回 呼吸器感染症の迅速診断は臨床で使える?第6回 肺炎のempiric therapyの考え方とは?第7回 COPDの薬物療法は何から始める?第8回 呼吸リハビリテーション、プライマリ・ケアでできることは?第9回 在宅酸素療法の基本的な考え方は?第10回 慢性咳嗽の原因疾患を鑑別する方法は?第11回 アトピー咳嗽と咳喘息、どう見分ける?第12回 成人の百日咳、鑑別と検査のポイントは?第13回 結核の発見と対応のポイントは?第14回 肺塞栓を疑うポイントは?第15回 肺の聴診のコツは? 日常診療におけるジェネラリストの素朴な疑問に一問一答で回答するQ&A番組!気管支喘息や肺炎、COPDなどの実臨床でよく見る呼吸器疾患の診察、検査、治療に関する15の質問を、番組MCの前野哲博先生が経験豊富なスペシャリスト・長尾大志先生にぶつけます!第1回 気管支喘息治療のスタンダードは? プライマリ・ケアで扱うことも多い気管支喘息。寛解への近道は継続した投薬です。そのため、患者のアドヒアランスを高めることも治療のキーポイント。治療の原則と併せて、最も効果がある処方例をズバリお教えいたします!第2回 吸入ステロイドを使い分けるポイントは? 吸入ステロイドは気管支喘息治療薬のスタンダードですが、その剤形やデバイスは年を追うごとに進歩しています。かつて主流だったMDIと、近年数多く発売されているDPI。それぞれの特徴と使い分けをズバリお教えいたします。また、気管支喘息治療でよく使用されるDPI合剤の使い分けについても伝授。吸入ステロイドの選択はこの番組でばっちりです!第3回 気管支喘息で経口ステロイドはどう使う?気管支喘息治療では発作時の対処も重要なポイント。発作止めとしてよく使用する経口ステロイドですが、怖いものと思って、おそるおそる使っては効果も半減してしまいます。今回は、効果的に使用するために重要な投与量と中止のタイミングをズバリ解説。救急での受診後に処方する場合など発作時以外の使い方も併せてレクチャーします。第4回 風邪症状から肺炎を疑うポイントは?風邪はプライマリ・ケアで最もよく見る症状のひとつ。風邪症状から肺炎を見逃さないために、風邪の定義、そして風邪をこじらせた場合、初めから肺炎だった場合など、様々なシュチエーションに応じた見分け方のコツをズバリお教えします。第5回 呼吸器感染症の迅速診断は臨床で使える?インフルエンザに迅速診断は必要?肺炎を疑う場合に使うのはどの検査?信頼性は?迅速診断に関する疑問にズバリお答えします。マイコプラズマ、尿中肺炎球菌、レジオネラ菌。それぞれの原因微生物ごとの迅速診断の特徴やキットの使い勝手など実臨床に役立つ情報をお届けします。第6回 肺炎のempiric therapyの考え方とは?肺炎だけど起炎菌が同定できない!そんなときに行うのがempiric therapyです。今回はプライマリ・ケアで多い市中肺炎に焦点をあてて、empiric thearpyの進め方を解説します。その際、最も重要なのは肺炎球菌なのかマイコプラズマなのか予想すること。この2つを見分けるポイントと、またそれぞれに適した薬剤をズバリお教えします。第7回 COPDの薬物療法は何から始める?急激に患者数が増加するCOPD。2013年にガイドラインが改訂され、第1選択薬に抗コリン薬とβ2刺激薬が併記されました。でも実際に専門医はファーストチョイスにどちらを使っているのか?抗コリン薬が使えない場合はどうする?喀痰調整薬ってどんな患者に有用?COPDの薬物療法についてズバリお答えします。第8回 呼吸リハビリテーション、プライマリ・ケアでできることは?COPD治療に必要な呼吸リハビリテーション。専門の機械や人員のいないプライマリ・ケアでもできることはあるの?答えはYES!と長尾先生は断言します。専門病院のような細かいプログラムは不要。しかもプライマリ・ケア医の強みを活かせる指導なのです。第9回 在宅酸素療法の基本的な考え方は?専門病院で導入された在宅酸素療法。どういうときならプライマリ・ケア医の判断で酸素量を増やしてもいいの?SpO2の管理目標値はどのくらい?嫌がる患者さんに在宅酸素を継続してもらうコツはある?などの疑問にズバリ答えます!第10回 慢性咳嗽の原因疾患を鑑別する方法は?長引く咳を主訴に来院する患者さん、最も多い感染後咳嗽を除外したあとに残るのは慢性咳嗽です。慢性咳嗽の原因疾患は、副鼻腔炎、後鼻漏、胃食道逆流、咳喘息と多彩。これらをどのように鑑別するのか?ズバリそのキーポイントは喀痰のありなしなのです!今回の講義ではすぐに使える鑑別のノウハウをレクチャーします。第11回 アトピー咳嗽と咳喘息、どう見分ける?慢性咳嗽の代表的な鑑別疾患である、咳喘息とアトピー咳嗽。この2つはどう違うの?アトピー咳嗽という言葉はよく耳にするけれど、実は慢性咳嗽の半数は咳喘息なのだそう。今回は両者の違いを端的に解説。咳喘息の特徴的な症状や診断と治療を兼ねた処方例まで網羅します。第12回 成人の百日咳、鑑別と検査のポイントは?百日咳は近年、成人の罹患率が高まり、受診する患者も増えてきました。成人では特徴的な症状が見られにくく、診断ができるころには治療のタイミングを逸しているのも診療の難しいところ。今回はそんな百日咳の鑑別のコツや検査をすべき対象について、ズバリお教えいたします!第13回 結核の発見と対応のポイントは?再興感染症とも言われる結核。早期の発見治療にはプライマリケアでの対応が重要です。今回は特徴的な感染徴候やリスク因子をレクチャー。検査はクオンティフェロンと喀痰検査どちらがいい?周囲に感染者が出たと心配する患者さんにどう対応したらいい?などの質問にもズバリお答えいたします!第14回 肺塞栓を疑うポイントは?いち早く発見したい肺塞栓症。確定診断までの流れなどのベーシックな知識はもちろん、造影CTやDダイマーなどの検査ができないときでも肺塞栓を除外できる条件をズバリお教えします!第15回 肺の聴診のコツは?肺の聴診は基本的な手技。どうやってカルテに書いたら伝わりやすい?今回は代表的な4つの肺雑音の特徴とカルテの記載方法をレクチャーします。連続性か断続性か、高音か低音かなど、聞き分けるコツと、その機序も併せて解説。仕組みの講義で病態生理の理解も深まること間違いありません!

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アナフィラキシーの治療の実際

アナフィラキシーの診断 詳細は別項に譲る。皮膚症状がない、あるいは軽い場合が最大20%ある。 治療(表1)発症初期には、進行の速さや最終的な重症度の予測が困難である。数分で死に至ることもあるので、過小評価は禁物。 ※筆者の私見適応からは、呼吸症状に吸入を先に行う場合があると読めるが、筆者は呼吸症状が軽症でもアナフィラキシーであればアドレナリン筋注が第1選択と考える。また、適応に「心停止」が含まれているが、心停止にはアドレナリン筋注は効果がないとの報告9)から、心停止の場合は静注と考える。表1を拡大する【姿勢】ベッド上安静とし、嘔吐を催さない範囲で頭位を下げ、下肢を挙上して血液還流を促進し、患者の保温に努める。アナフィラキシーショックは、distributive shockなので、下肢の挙上は効果あるはず1)。しかし、下肢拳上を有効とするエビデンスは今のところない。有害ではないので、薬剤投与の前に行ってもよい。【アドレナリン筋肉注射】気管支拡張、粘膜浮腫改善、昇圧作用などの効果があるが、cAMPを増やして肥満細胞から化学物質が出てくるのを抑える作用(脱顆粒抑制作用)が最も大事である。α1、β1、β2作用をもつアドレナリンが速効性かつ理論的第1選択薬である2)。緊急度・重症度に応じて筋注、静注を行う。血流の大きい臀部か大腿外側が薦められる3)。最高血中濃度は、皮下注で34±14分、筋注で8±2分と報告されており、皮下注では遅い4)。16~35%で2回目の投与が必要となる。1mLツベルクリンシリンジを使うと針が短く皮下注になる。1)アドレナリン1回0.3~0.5mg筋注、5~30分間隔 [厚生労働省平成20年(2008)5)]2)アドレナリン1回0.3~0.5mg筋注、5~15分間隔 [UpToDate6)]3)アドレナリン1回0.01mg/kg筋注 [日本アレルギー学会20141)]4)アドレナリン1回0.2~0.5mgを皮下注あるいは筋注 [日本化学療法学会20047)]5)アドレナリン(1mg)を生理食塩水で10倍希釈(0.1mg/mL)、1回0.25mg、5~15分間隔で静注 [日本化学療法学会20047)]6)アドレナリン持続静脈投与5~15µg/分 [AHA心肺蘇生ガイドライン20109)]わが国では、まだガイドラインによってはアドレナリン投与が第1選択薬になっていないものもあり(図1、図2)、今後の改訂が望まれる。 ※必ずしもアドレナリンが第1選択になっていない。 図1を拡大する ※皮膚症状+腹部症状のみでは、アドレナリンが第1選択になっていない。図2を拡大する【酸素】気道開通を評価する。酸素投与を行い、必要な場合は気管挿管を施行し人工呼吸を行う。酸素はリザーバー付マスクで10L/分で開始する。アナフィラキシーショックでは原因物質の使用中止を忘れない。【輸液】hypovolemic shockに対して、生理食塩水か、リンゲル液を開始する。1~2Lの急速輸液が必要である。維持輸液(ソリタ-T3®)は血管に残らないので適さない。【抗ヒスタミン薬、H1ブロッカー】経静脈、筋注で投与するが即効性は望めない。H1受容体に対しヒスタミンと競合的に拮抗する。皮膚の蕁麻疹には効果が大きいが、気管支喘息や消化器症状には効果は少ない。第1世代H1ブロッカーのジフェンヒドラミン(ベナスミン®、レスタミン®)クロルフェニラミンマレイン酸塩(ポララミン®)5mgを静注し、必要に応じて6時間おきに繰り返す。1)マレイン酸クロルフェニラミン(ポララミン®)2.5~5mg静注 [日本化学療法学会20047)]2)ジフェンヒドラミン(ベナスミン®、レスタミン®)25~50mg緩徐静注 [AHA心肺蘇生ガイドライン20109)] 保険適用外3)ジフェンヒドラミン(ベナスミン®、レスタミン®)25~50mg静注 [UpToDate6)]4)経口では第2世代のセチリジン(ジルテック®)10mgが第1世代より鎮静作用が小さく推奨されている [UpToDate6)] 経口の場合、効果発現まで40~60分【H2ブロッカー】心収縮力増強や抗不整脈作用がある。蕁麻疹に対するH1ブロッカーに相乗効果が期待できるがエビデンスはなし。本邦のガイドラインには記載がない。保険適用外に注意。1)シメチジン(タガメット®)300mg経口、静注、筋注 [AHA心肺蘇生ガイドライン9)] シメチジンの急速静注は低血圧を引き起こす [UpToDate6)]2)ラニチジン(ザンタック®)50mgを5%と糖液20mLに溶解して5分以上かけて静注 [UpToDate6)]【βアドレナリン作動薬吸入】気管支攣縮が主症状なら、喘息に用いる吸入薬を使ってもよい。改善が乏しい時は繰り返しての吸入ではなくアドレナリン筋注を優先する。気管支拡張薬は声門浮腫や血圧低下には効果なし。1)サルブタモール吸入0.3mL [日本アレルギー学会20141)、UpToDate6)]【ステロイド】速効性はないとされてきたが、ステロイドのnon-genomic effectには即時作用がある可能性がある。重症例ではアドレナリン投与後に、速やかに投与することが勧められる。ステロイドにはケミカルメディエーター合成・遊離抑制などの作用により症状遷延化と遅発性反応を抑制することができると考えられてきた。残念ながら最近の研究では、遅発性反応抑制効果は認められていない10)。しかしながら、遅発性反応抑制効果が完全に否定されているわけではない。投与量の漸減は不要で1~2日で止めていい。ただし、ステロイド自体が、アナフィラキシーの誘因になることもある(表2)。とくに急速静注はアスピリン喘息の激烈な発作を生じやすい。アスピリン喘息のリスクファクターは、成人発症の気管支喘息、女性(男性:女性=2:3~4)、副鼻腔炎や鼻茸の合併、入院や受診を繰り返す重症喘息、臭覚低下。1)メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム(ソル・メドロール®)1~2mg/kg/日 [UpToDate6)]2)ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム(ソル・コーテフ®)100~200mg、1日4回、点滴静注 [日本化学療法学会20047)]3)ベタメタゾン(リンデロン®)2~4mg、1日1~4回、点滴静注11) 表2を拡大する【グルカゴン】βブロッカーの過量投与や、低血糖緊急時に使われてきた。グルカゴンは交感神経を介さずにcAMPを増やしてアナフィラキシーに対抗する力を持つ。βブロッカーを内服している患者では、アドレナリンの効果が期待できないことがある。まずアドレナリンを使用して、無効の時にグルカゴン1~2mgを併用で静注する12)。β受容体を介さない作用を期待する。グルカゴン単独投与では、低血圧が進行することがあるので注意。アドレナリンと輸液投与を併用する。急速静注で嘔吐するので体位を側臥位にして気道を保つ。保険適用なし。1)グルカゴン1~5mg、5分以上かけて静注 [UpToDate6)]【強力ミノファーゲンC】蕁麻疹単独には保険適用があるがアナフィラキシーには効果なし。観察 いったん症状が改善した後で、1~8時間後に、再燃する遅発性反応患者が4.5~23%存在する。24時間経過するまで観察することが望ましい。治療は急いでも退室は急ぐべきではない13)。 気管挿管 上記の治療の間に、嗄声、舌浮腫、後咽頭腫脹が出現してくる患者では、よく準備して待機的に挿管する。呼吸機能が悪化した場合は、覚醒下あるいは軽い鎮静下で挿管する。気道異物窒息とは違い準備する時間は取れる。 筋弛緩剤の使用は危険である。気管挿管が失敗したときに患者は無呼吸となり、喉頭浮腫と顔面浮腫のためバッグバルブマスク換気さえ不能になる。 気管挿管のタイミングが遅れると、患者は低酸素血症の結果、興奮状態となり酸素マスク投与に非協力的となる。 無声、強度の喉頭浮腫、著明な口唇浮腫、顔面と頸部の腫脹が生じると気管挿管の難易度は高い。喉頭展開し、喉頭を突っつくと出血と浮腫が増強する。輪状甲状靭帯穿刺と輪状甲状靭帯切開を含む、高度な気道確保戦略が必要となる9)。さらに、頸部腫脹で輪状軟骨の解剖学的位置がわからなくなり、喉頭も皮膚から深くなり、充血で出血しやすくなるので輪状甲状靭帯切開も簡単ではない。 絶望的な状況では、筆者は次の気道テクニックのいずれかで切り抜ける。米国麻酔学会の困難気道管理ガイドライン2013でも、ほぼ同様に書かれている(図3)14)。 1)ラリンゲアルマスク2)まず14G針による輪状甲状靭帯穿刺、それから輪状甲状靭帯切開3)ビデオ喉頭鏡による気管挿管 図3を拡大する心肺蘇生アナフィラキシーの心停止に対する合理的な処置についてのデータはない。推奨策は非致死的な症例の経験に基づいたものである。気管挿管、輪状甲状靭帯切開あるいは上記気道テクニックで気道閉塞を改善する。アナフィラキシーによる心停止の一番の原因は窒息だからだ。急速輸液を開始する。一般的には2~4Lのリンゲル液を投与すべきである。大量アドレナリン静注をためらうことなく、すべての心停止に用いる。たとえば1~3mg投与の3分後に3~5mg、その後4~10mg/分。ただしエビデンスはない。バソプレシン投与で蘇生成功例がある。心肺バイパス術で救命成功例が報告されている9)。妊婦対応妊婦へのデキサメタゾン(デカドロン®)投与は胎盤移行性が高いので控える。口蓋裂の報告がある15)。結語アナフィラキシーを早期に認識する。治療はアドレナリンを筋注することが第一歩。急速輸液と酸素投与を開始する。嗄声があれば、呼吸不全になる前に準備して気管挿管を考える。 1) 日本アレルギー学会監修.Anaphylaxis対策特別委員会編.アナフィラキシーガイドライン. 日本アレルギー学会;2014. 2) Pumphrey RS. Clin Exp Allergy. 2000; 30: 1144-1150. 3) Hughes G ,et al. BMJ.1999; 319: 1-2. 4) Sampson HA, et al. J Allergy Clin Immunol. 2006; 117: 391-397. 5) 厚生労働省.重篤副作用疾患別対応マニュアルアナフィラキシー.平成20年3月.厚生労働省(参照2015.2.9) 6) F Estelle R Simons, MD, FRCPC, et al. Anaphylaxis: Rapid recognition and treatment. In:Uptodate. Bruce S Bochner, MD(Ed). UpToDate, Waltham, MA.(Accessed on February 9, 2015) 7) 日本化学療法学会臨床試験委員会皮内反応検討特別部会.抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドライン(2004年版).日本化学療法学会(参照2015.2.9) 8) 日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会.第9章治療.In:食物アレルギー診療ガイドライン2012.日本小児アレルギー学会(参照2015.2.9) 9) アメリカ心臓協会.第12章 第2節 アナフィラキシーに関連した心停止.In:心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン2010(American Heart Association Guidelines for CPR & ECC). AHA; 2010. S849-S851. 10) Choo KJ, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012; 4: CD007596. 11) 陶山恭博ほか. レジデントノート. 2011; 13: 1536-1542. 12) Thomas M, et al. Emerg Med J. 2005; 22: 272-273. 13) Rohacek M, et al. Allergy 2014; 69: 791-797. 14) 駒沢伸康ほか.日臨麻会誌.2013; 33: 846-871. 15) Park-Wyllie L, et al. Teratology. 2000; 62: 385-392.

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抗菌薬と小児喘息は本当に関連するのか/BMJ

 スウェーデン・カロリンスカ研究所のAnne K Ortqvist氏らは、従前、指摘されている「胎児期や出生後間もない抗菌薬曝露は小児喘息と関連している」という知見について、交絡因子による補正後も認められるのかを同国住民ベースのコホート研究で調べた。交絡因子として家族因子を用いた兄弟姉妹間比較や、抗菌薬の治療目的別の違いなどを検討した結果、家族因子は同関連を支持するものではなく、また呼吸器感染症の治療目的使用が尿路感染症や皮膚感染症と比べて関連が強いことなどを明らかにした。著者は、「家族因子や呼吸器感染症によって、同関連は示唆されたり否定されたりすることが判明した」とまとめている。BMJ誌オンライン版2014年11月28日号掲載の報告より。スウェーデン、2006~2010年の出生児49万3,785例について分析 検討は、スウェーデンの人口統計および健康レジスターから、2006~2010年の出生児49万3,785例を特定して行われた。そのうち適格条件を満たした18万894例については兄弟姉妹分析も行った。 喘息の診断歴および喘息薬の処方歴で喘息児を特定。抗菌薬曝露と喘息の関連を、Cox比例ハザード回帰法を用いて全コホートにおいて分析した。また兄弟姉妹群の層別化比例ハザードモデルを用いて、家族内共有因子で補正した分析も行った。さらに、特異的抗菌薬投与群と喘息との関連を評価し、呼吸感染症が交絡因子であるかについても調べた。家族因子、治療目的の感染症因子でリスクが増減 全コホート分析の結果、胎児期の抗菌薬投与と小児喘息リスク増大との関連が認められた(ハザード比:1.28、95%信頼区間[CI]:1.25~1.32)。しかし、同関連は兄弟姉妹分析ではみられなかった(同:0.99、0.92~1.07)。 また、全コホート分析で、小児期の呼吸器感染症治療目的での抗菌薬使用が(HR:4.12、95%CI:3.78~4.50)、尿路感染症および皮膚感染症治療目的での抗菌薬使用よりも(同:1.54、1.24~1.92)、小児喘息リスクが顕著に高かった。 しかし兄弟姉妹分析では、呼吸器感染症使用目的曝露後のリスクは全コホート分析時よりも低く(HR:2.36、95%CI:1.78~3.13)、尿路感染症および皮膚感染症使用目的曝露後ではリスクの増大は認められなかった(同:0.85、0.47~1.55)。

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気管支喘息、スピリーバ レスピマットへの期待

 2014年12月3日、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社によるスピリーバ レスピマット喘息適応追加記者発表会が都内にて行われた。当日は足立 満氏(国際医療福祉大学 臨床医学研究センター山王病院アレルギー内科)が「喘息治療の現状とスピリーバ レスピマットへの期待」と題し講演した。■本邦における喘息コントロールの課題 本邦における喘息死は大きく減少し2012年には1,728人と2000人を下回っている。だが、一見コントロールされているようでも、実際は症状が残る患者は少なくない。 2012年の本邦の報告によれば、ICS(吸入ステロイド薬)またはICS/LABA(吸入ステロイド・長時間作用性β刺激薬合剤)を継続使用しても喘息症状が発現・悪化する患者は86.2%、そのうち31.5%は緊急受診や入院などの喘息増悪を起こしている1)。このように患者のコントロールレベルは万全とはいえない状況である。さらにコントロール不十分・不良患者は重症例だけでなく軽症例でも6~7割みられる2)。■喘息治療薬として見直される抗コリン薬 抗コリン薬は喘息治療薬としては本邦では主流の位置付けとはいえない。しかし、海外では中等症から重症例の救急治療において使用が推奨されるなど、その位置付けは本邦以上に確立しているという。抗コリン薬の作用機序はβ刺激薬をはじめとする気管支拡張薬とは異なる。また気管支拡張による肺機能改善以外にも、入院の減少などの効果も認められることから、近年は治療選択肢の1つとして期待されている。 そのようななか、COPD治療薬の定番である長時間作用性抗コリン薬(LAMA)チオトロピウムについても、気管支喘息の臨床エビデンスが続々と報告されている。ICS/LABAでコントロール不能な中等~重症の喘息患者におけるチオトロピウム(スピリーバ レスピマット)の有用性を明らかにした国際大規模試験PrimoTinA3)に続き、本邦の国内長期試験であるCadenTinA試験の結果が紹介された。本試験は、中用量のICSによっても症状が持続する軽~中等症の喘息患者を対象に行われた無作為化並行群間比較試験である。結果、最も薬剤効果の低下するトラフ値の評価において、ICS/チオトロピウム(レスピマット5μg/日)併用群は、ICS単独群に比べ110mL以上の有意なFEV1の上昇を認め、喘息関連QOLも改善している。■重症持続型喘息とはいえ適応は広い スピリーバ レスピマットの本邦での喘息の適応は重症持続型に限られる。ただし、この重症持続型とは、現在の治療ステップに、その治療による現状の症状を加味した評価である。つまり、ステップ2の軽症持続型の治療を行っていても、「症状が毎日ある」など現治療に対する症状が中等症持続型の基準を満たすほど不良な場合、重症持続型の治療適応となる(詳しくは喘息予防・治療ガイドラインを参照)。重症持続型の治療といっても、その適応範囲は広い。「調査データはないものの、現在の治療ステップに治療を加味した“真の重症持続型”はけっして少なくないであろう」と足立氏は述べた。 最後にレスピマット吸入デバイスのデモンストレーションが行われた。レスピマットは噴霧速度が遅く霧の状態が長く保たれることが、記者にも印象的であった。薬剤の効果以外にも薬剤噴霧と吸気を同調しやすいというメリットもありそうだ。【参考文献】1) 秋山一男. アレルギー・免疫. 2012; 19: 1120-1127.2) 大田健ほか. アレルギー. 2010; 59: 2010-2020.3)Kerstjens HA, et al. N Engl J Med. 2012; 367: 1198-1207.

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