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喘息の最新治療~気管支サーモプラスティ

 2015年7月から、気管支喘息を外科的に治療するという国内初の医療機器「アレア気管支サーモプラスティシステム」が販売開始となった。これを受けて、2015年7月16日、都内にてメディアセミナー(主催:ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社)が開催された。 これまで、喘息治療は吸入薬や内服薬などによる薬物治療が主体であった。しかし、吸入薬を使用する際の手技の差や、呼気量が低下しすぎて薬を吸うことすらできない患者の存在、薬を定期的に使用していても発作をコントロールできない場合があるなどの課題があった。さらに、発作が起きない状態が続くと薬物の使用を自己中断してしまうこともあるという患者のアドヒアランスの悪さも問題となっていた。これらの課題を解決する方法として、気管支サーモプラスティが注目されている。喘息の外科的治療・気管支サーモプラスティとは 「気管支サーモプラスティ(BT)」は、気管支鏡を用いた治療法である。気管支鏡に電極付きのカテーテルを挿入し、高周波電流にて65℃で10秒間気管支壁を温めることで、喘息の原因となる肥厚した気道平滑筋の量を健常人に近付け、気管支の収縮を抑制し、発作を起きにくくする。 治療は気管支を3つのブロックに分けて行われ、それぞれ約3週間空けて実施される。所要時間は1回あたり約1時間で、1~2泊の短期入院で行われる。BT施行後は、治療前と同じ喘息治療薬を継続するが、症状によっては減量を考慮することもできるという。 なお、本治療の適応は18歳以上の高用量吸入ステロイドおよび長時間作用型β2刺激薬で喘息症状が抑制できない患者である。BTが注目されている理由 BTは気管支をつまんだり焼いたりすることがない、非侵襲的な治療法である。 気管支平滑筋に直接作用するため、吸入薬の手技に問題がある、肺活量が落ちて吸入薬が吸えない、アドヒアランスに問題があるなど喘息患者の抱えるさまざまな問題を解決する可能性がある。 また、気管支鏡を応用した手技であるため、気管支鏡を実施している施設であれば比較的容易に施行できることも魅力の1つである。 さらに、3回という少ない回数の治療で効果が5年間継続することがわかっている。臨床試験において、喘息で救急外来を受診した患者は、BT施行前1年間と比較して、施行後は78%も減少していた(5年間の平均)。BTの注意すべき点 BTは施行直後1日以内に呼吸症状の一時的な悪化がみられることが多いという。しかし、適切な処置で通常1週間以内に症状は消失するため、施行後の慎重な観察が必須である。 なお、術中に発作の可能性がある体調不良の患者には施行できない。演者の太田 健氏(国立病院機構東京病院 院長)は、「術前の問診によるBT施行可否の判断と、あらかじめ患者の症状を安定させる薬を飲ませておくことで、術中の発作を予防しておくことが重要である。当院でBTを行った2症例は、術前3日間と術後2日間の経口副腎皮質ステロイド投与で問題なく施行できた」と語った。 さらに、演者の東田 有智氏(近畿大学医学部 呼吸器・アレルギー内科 教授)は、喘息患者は気管支が敏感になっているため、気管支鏡を入れること自体がリスクであることを指摘した。そのうえで、「BT前後に副腎皮質ステロイドなど喘息症状を抑える薬を投与することで、リスクを抑制できる」と前投薬の重要性を繰り返し強調した。BTに望まれること BTを安全かつ効果的に実施するためには、治療時の前投薬の服用や治療後に今までの喘息治療薬を継続することなど患者に対する各種指導をしっかりと行っていくことが重要となってくる。 さらに、本治療法は欧米で2000年ごろから研究・臨床試験が開始され、2011年から一般的な治療となった新しい選択肢である。日本では本年4月から保険適用となったため、治療経験はまだ少ない。そのため、専門医が治療データを収集し、BT治療後も含めた喘息管理を行っていくことが望まれる。 BTの施行で従来の喘息治療薬を用いてもコントロール不能な患者、あるいはアレルギーや副作用などの理由で薬物を使用できなかった患者の症状を緩和できる可能性がある。BTの普及は、治療に難渋していた喘息患者にとって新たな治療の選択肢となりうると大いに期待されている。

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アトピー乳児、喘息発症リスクが高いのは?

  アトピー性皮膚炎(AD)は喘息や他のアトピー性疾患に先行して発症することが知られる。“アレルギーマーチ”と呼ばれるこれらの発症順序は必ずしも決まっておらず、乳幼児が喘息を発症するリスクについて取り組んだ研究は少ない。フランス・パリ公立アルマン・トゥルソー小児病院のFlore Amat氏らは、生後12ヵ月未満のAD患者を6歳まで追跡したObservatory of Respiratory risks linked with Cutaneous Atopy(ORCA)研究データを解析し、早期発症AD乳児において複数感作あるいは喘息家族歴を認める場合は、幼児期に喘息の発症リスクが高いことを明らかにした。PLoS One誌オンライン版2015年6月24日号の掲載報告。 研究グループは、喘息に発展する恐れのある早期発症ADの表現型を特定することを目的に、ORCA研究に登録された乳児214例についてクラスター分析を行った。  ORCA研究は、皮膚科医によりADと確定診断され、喘鳴の既往がない生後12ヵ月未満の乳児を6歳まで追跡し、AD、アレルギーおよび喘息について毎年調査した研究である。 主な結果は以下のとおり。・次の3つのクラスターが同定された。・クラスター1は「低感作AD群」(94例)。食物または空気アレルゲンへの感作なし~低度(それぞれ27.7%および10.6%)、AD重症度は中等度(SCORAD 25.29±14.6)。・クラスター2は「複数感作AD群」(84例)。AD重症度が高く(SCORAD 32.66±16.6)、食物または空気アレルゲンへの感作も高く(それぞれ98.6%および26.2%)、複数の食物アレルゲンに感作されている(96.4%)。・クラスター3は「喘息家族歴があるAD群」(36例)。親が喘息の既往歴を有し、AD重症度は中等度(SCORAD 24.46±15.7)、食物アレルゲン(1つ)への感作は中等度(38.9%)、空気アレルゲンへの感作はない。・6歳時点で喘息に罹患していた小児の割合は、クラスター1(14.9%)に比べてクラスター2および3で高かった(それぞれ36.1%および33.3%、p<0.01)。

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大豆イソフラボン、喘息コントロール効果なし/JAMA

 コントロール不良の喘息患者に対し、1日100mgの大豆イソフラボンを24週間投与したが、喘息症状の改善には結び付かなかった。米国・ノースウェスタン大学のLewis J. Smith氏らが、386例の患者を対象に行った、無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、示された。複数の慢性疾患治療において、大豆イソフラボンが用いられているが、使用を裏づけるデータは限定的であった。コンロトール不良の喘息患者については、大豆イソフラボンが有望であることを示唆するいくつかのデータが示されていたという。JAMA誌2015年5月26日号掲載の報告。24週後に、FEV1や喘息コントロールテストのスコアなどを比較 研究グループは、2010年5月~2012年8月にかけて、米国の喘息治療に関する研究ネットワーク(American Lung Association Asthma Clinical Research Centers)に属する19ヵ所の医療機関を通じて試験を行った。症状をコントロールする薬を服用しながらも、喘息症状が認められ、大豆摂取量が少ない12歳以上の患者386例を対象に試験を行った。 同グループは被験者を無作為に2群に分け、一方には総イソフラボン量100mgを含む大豆イソフラボン・サプリメントを、もう一方にはプラセボを、それぞれ毎日24週間にわたり投与した。 主要評価項目は、24週時点における1秒間努力呼気容量(FEV1)だった。副次的評価項目は、症状、喘息のコントロール不良イベント、喘息コントロールテストのスコア、全身・気道の炎症バイオマーカー測定値だった。FEV1、喘息コントロール、コントロール不良イベント数など、いずれも両群で同等 結果、24週後の気管支拡張薬使用前FEV1値は、プラセボ群が0.03L(95%信頼区間:-0.01~0.08)に対し、イソフラボン群は0.01L(同:-0.07~0.07)と、両群で有意差はなかった(p=0.36)。 喘息コントロールテストの変化平均値は、プラセボ群が1.98に対しイソフラボン群が2.20(数値が高いほど症状減少を示す)、喘息のコントロール不良イベント数はそれぞれ3.3回と3.0回、呼気中一酸化窒素の変化量はそれぞれ-3.48ppbと1.39ppbであり、いずれも両群で有意差はなかった。 なお、サプリメントを投与された被験者では、平均血漿ゲニステイン値が4.87ng/mLから37.67ng/mLに有意に上昇していた(p<0.001)。

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ヒトとペット類の花粉症、類似点と相違点

 オーストリア・ウィーン大学のErika Jensen-Jarolim氏らは、ヒト、イヌ、ネコおよびウマのアレルギーに関する論文についてレビューし、これらにおけるトランスレーショナル研究が動物のアレルギーの治療に役立つと同時に、ヒトに関連する知識の収集にも役立つことを報告した。著者は、「自然発症アレルギーを有するイヌ、ネコおよびウマはトランスレーショナル研究の魅力的なモデル患者であることが示唆された」とまとめている。Clinical and Translational Allergy誌オンライン版2015年4月7日号の掲載報告。 研究グループは、ヒト、イヌ、ネコ、ウマの花粉症について、相違点と類似点を検討した。 主な概要は以下のとおり。・ヒトおよびヒトの大切なペットや家畜はともに、IgEおよび類似IgE受容体のレパートリーと発現パターンを保有している。・また同じ細胞型がアレルギーの誘発または調節(たとえば肥満細胞、好酸球または制御性T細胞)に関係している。・イヌ、ネコおよびウマは、花粉アレルゲンへの即時型症状を自発的かつ異なる程度で発症する可能性がある。・これらにおける花粉による皮膚、鼻および気管支症状、ならびに慢性皮膚病変は、ヒトとおおむね類似している。・さまざまな種の花粉は、ヒトにおいては多くの場合アレルギー性鼻炎を引き起こすが、イヌにおいては主に湿疹様病変(イヌのアトピー性皮膚炎)を、ウマにおいては再発性気道閉塞、蕁麻疹、そう痒性皮膚炎を、ネコにおいては気管支喘息と皮膚症状(好酸球性肉芽腫症候群、頭頸部そう痒症、対称性の自己誘発性脱毛症)を誘発する。・ヒトにおいて、アレルギー特異的IgE検出、皮膚テストまたは他のアレルゲン誘発試験はすべて行われる。・対照的に動物において、IgE検出と皮膚テストの重要性は同等と考えられており、それぞれが他方にとって代わることがある。しかしながら、実用的および経済的な理由で、皮内テストが最も一般的に行われている。・ヒトと同様、イヌ、ネコおよびウマにおいても、アレルゲン免疫療法は臨床症状を有意に改善する。

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吸入器操作指導が予後を好転させる

 2015年4月17日より3日間、東京都内において第55回日本呼吸器学会学術講演会が開催された。近年のトピックであるCOPD、肺がんをはじめ、30以上の特別講演と1,200題を超える演題発表が行われた。 成人喘息患者の増加が懸念される中、日本アレルギー学会との共同企画として「包括的気管支喘息治療」というセッションが行われた。その中で、治療の要となる吸入療法について堀口 高彦氏(藤田保健衛生大学呼吸器内科学II 教授)より、失敗をさせない吸入指導の方法に関する発表が行われた。高齢者に多い手技ミス、誤操作 はじめに吸入薬の特性として、正確な吸入操作をしないと効果が十分に発揮されないことを指摘。最近、多くの新薬の登場とともにデバイスの数も増えたことから、その操作方法を患者さんのみならず、医療スタッフも把握しきれていないという現状を報告した。 外来で吸入薬を新たに処方した患者さんについて、次回の受診時に吸入操作を確認すると、誤操作をしている例を多く見かける。これは、とくに高齢者に顕著であり、具体的には手技や操作に問題がある場合が多いという。 加齢による筋力低下、吸入流速の低下などで定量噴霧式吸入器が上手く吸入できない場合は、スペーサーなどの補助器具を使用するなどフォローが必要となる。また、吸入で気を付けるポイントとしては、「吸入時の姿勢補正」、「舌を下げること」が挙げられ、「ドライマウスを防ぐための吸入後のうがいや飲水の実施」、「吸入器の衛生管理」も患者指導のうえで重要であると説明を行った。DVDで吸入指導 今後は、吸入方法の統一した啓発が必要となる。堀口氏は、各種デバイスの操作方法を解説し、間違えやすい点についてもやさしく解説したDVDを制作しており、実際に指導で効果を上げていることを紹介した。 外来では、吸入薬の処方前にこのDVDを患者さんに視聴してもらい、処方後はさらに薬剤師による吸入指導を実施。また、家庭用DVDも配布することで、自宅で繰り返し確認が行えるように工夫した。その結果、誤操作が少なくなり、吸入薬の遵守率が上昇したとのことである。堀口氏は「DVD導入により正確な吸入操作を普及させることで、より吸入療法の発展に期待をしたい」と発表を終えた。 なお、DVDおよびポスター(正しい吸入方法を身につけよう)は、独立行政法人 環境再生保全機構で配布、およびこのサイトで視聴できるため参考にされたい。

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水泳は気管支喘息の子供の運動耐容能や呼吸機能を改善【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第41回

水泳は気管支喘息の子供の運動耐容能や呼吸機能を改善 >足成より使用 水泳は気管支喘息のリスクでもあり、一方で気管支喘息の呼吸リハビリテーションにもなりうるという二面性を持っています。といっても運動誘発性気管支攣縮は別に水泳に限ったことではないため、後者の利益を重視する研究者のほうが多いように感じます。 Beggs S, et al. Swimming training for asthma in children and adolescents aged 18 years and under. Cochrane Database Syst Rev. 2013; 4: CD009607. この報告は、18歳以下の気管支喘息患者さんに対する、水泳の訓練の効果と安全性を調べたシステマティックレビューです。水泳の訓練と他のケアを比較した試験を集め、メタアナリシスを行いました。その結果、8試験・262人が組み込まれました。安定した患者さんから重症の患者さんまで気管支喘息の重症度はさまざまでした。水泳の訓練はおおむね30~90分で、週2~3回、期間としては6~12週継続されました。水泳の比較対象としては、通常ケアが7試験、ゴルフが1試験でした。結果として、水泳は通常のケアやゴルフと比較してQOL、喘息発作、副腎皮質ステロイドの使用というアウトカムに対して統計学的に有意な効果をもたらしませんでした。ただし、水泳は通常のケアと比べて最大酸素消費量、すなわち運動耐容能に効果がみられました。また、呼吸機能検査のパラメータにもわずかながら効果があったと報告されています。プールに使用されている塩素の有無によって、これらのアウトカムに変化がみられるのかどうかはわかりませんでしたが、少なくとも水泳が気管支喘息の患者さんにとって悪さをするものではないだろうと結論付けられました。ただし、他の運動療法と比較して水泳がベストかどうかという点は、不明といわざるを得ません。この研究では塩素について触れられていましたが、とくに室内プールにおける塩素は小児の気管支喘息を悪化させるのではないかとする意見もあります(Immunol Allergy Clin North Am. 2013; 33: 395-408.)。水泳に運動耐容能を増加させる可能性があるにもかかわらず、塩素が気管支喘息を悪化させるのであれば本末転倒ですね。インデックスページへ戻る

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~プライマリ・ケアの疑問~  Dr.前野のスペシャリストにQ!【呼吸器編】

第1回 気管支喘息治療のスタンダードは? 第2回 吸入ステロイドを使い分けるポイントは? 第3回 気管支喘息で経口ステロイドはどう使う? 第4回 風邪症状から肺炎を疑うポイントは?第5回 呼吸器感染症の迅速診断は臨床で使える?第6回 肺炎のempiric therapyの考え方とは?第7回 COPDの薬物療法は何から始める?第8回 呼吸リハビリテーション、プライマリ・ケアでできることは?第9回 在宅酸素療法の基本的な考え方は?第10回 慢性咳嗽の原因疾患を鑑別する方法は?第11回 アトピー咳嗽と咳喘息、どう見分ける?第12回 成人の百日咳、鑑別と検査のポイントは?第13回 結核の発見と対応のポイントは?第14回 肺塞栓を疑うポイントは?第15回 肺の聴診のコツは? 日常診療におけるジェネラリストの素朴な疑問に一問一答で回答するQ&A番組!気管支喘息や肺炎、COPDなどの実臨床でよく見る呼吸器疾患の診察、検査、治療に関する15の質問を、番組MCの前野哲博先生が経験豊富なスペシャリスト・長尾大志先生にぶつけます!第1回 気管支喘息治療のスタンダードは? プライマリ・ケアで扱うことも多い気管支喘息。寛解への近道は継続した投薬です。そのため、患者のアドヒアランスを高めることも治療のキーポイント。治療の原則と併せて、最も効果がある処方例をズバリお教えいたします!第2回 吸入ステロイドを使い分けるポイントは? 吸入ステロイドは気管支喘息治療薬のスタンダードですが、その剤形やデバイスは年を追うごとに進歩しています。かつて主流だったMDIと、近年数多く発売されているDPI。それぞれの特徴と使い分けをズバリお教えいたします。また、気管支喘息治療でよく使用されるDPI合剤の使い分けについても伝授。吸入ステロイドの選択はこの番組でばっちりです!第3回 気管支喘息で経口ステロイドはどう使う?気管支喘息治療では発作時の対処も重要なポイント。発作止めとしてよく使用する経口ステロイドですが、怖いものと思って、おそるおそる使っては効果も半減してしまいます。今回は、効果的に使用するために重要な投与量と中止のタイミングをズバリ解説。救急での受診後に処方する場合など発作時以外の使い方も併せてレクチャーします。第4回 風邪症状から肺炎を疑うポイントは?風邪はプライマリ・ケアで最もよく見る症状のひとつ。風邪症状から肺炎を見逃さないために、風邪の定義、そして風邪をこじらせた場合、初めから肺炎だった場合など、様々なシュチエーションに応じた見分け方のコツをズバリお教えします。第5回 呼吸器感染症の迅速診断は臨床で使える?インフルエンザに迅速診断は必要?肺炎を疑う場合に使うのはどの検査?信頼性は?迅速診断に関する疑問にズバリお答えします。マイコプラズマ、尿中肺炎球菌、レジオネラ菌。それぞれの原因微生物ごとの迅速診断の特徴やキットの使い勝手など実臨床に役立つ情報をお届けします。第6回 肺炎のempiric therapyの考え方とは?肺炎だけど起炎菌が同定できない!そんなときに行うのがempiric therapyです。今回はプライマリ・ケアで多い市中肺炎に焦点をあてて、empiric thearpyの進め方を解説します。その際、最も重要なのは肺炎球菌なのかマイコプラズマなのか予想すること。この2つを見分けるポイントと、またそれぞれに適した薬剤をズバリお教えします。第7回 COPDの薬物療法は何から始める?急激に患者数が増加するCOPD。2013年にガイドラインが改訂され、第1選択薬に抗コリン薬とβ2刺激薬が併記されました。でも実際に専門医はファーストチョイスにどちらを使っているのか?抗コリン薬が使えない場合はどうする?喀痰調整薬ってどんな患者に有用?COPDの薬物療法についてズバリお答えします。第8回 呼吸リハビリテーション、プライマリ・ケアでできることは?COPD治療に必要な呼吸リハビリテーション。専門の機械や人員のいないプライマリ・ケアでもできることはあるの?答えはYES!と長尾先生は断言します。専門病院のような細かいプログラムは不要。しかもプライマリ・ケア医の強みを活かせる指導なのです。第9回 在宅酸素療法の基本的な考え方は?専門病院で導入された在宅酸素療法。どういうときならプライマリ・ケア医の判断で酸素量を増やしてもいいの?SpO2の管理目標値はどのくらい?嫌がる患者さんに在宅酸素を継続してもらうコツはある?などの疑問にズバリ答えます!第10回 慢性咳嗽の原因疾患を鑑別する方法は?長引く咳を主訴に来院する患者さん、最も多い感染後咳嗽を除外したあとに残るのは慢性咳嗽です。慢性咳嗽の原因疾患は、副鼻腔炎、後鼻漏、胃食道逆流、咳喘息と多彩。これらをどのように鑑別するのか?ズバリそのキーポイントは喀痰のありなしなのです!今回の講義ではすぐに使える鑑別のノウハウをレクチャーします。第11回 アトピー咳嗽と咳喘息、どう見分ける?慢性咳嗽の代表的な鑑別疾患である、咳喘息とアトピー咳嗽。この2つはどう違うの?アトピー咳嗽という言葉はよく耳にするけれど、実は慢性咳嗽の半数は咳喘息なのだそう。今回は両者の違いを端的に解説。咳喘息の特徴的な症状や診断と治療を兼ねた処方例まで網羅します。第12回 成人の百日咳、鑑別と検査のポイントは?百日咳は近年、成人の罹患率が高まり、受診する患者も増えてきました。成人では特徴的な症状が見られにくく、診断ができるころには治療のタイミングを逸しているのも診療の難しいところ。今回はそんな百日咳の鑑別のコツや検査をすべき対象について、ズバリお教えいたします!第13回 結核の発見と対応のポイントは?再興感染症とも言われる結核。早期の発見治療にはプライマリケアでの対応が重要です。今回は特徴的な感染徴候やリスク因子をレクチャー。検査はクオンティフェロンと喀痰検査どちらがいい?周囲に感染者が出たと心配する患者さんにどう対応したらいい?などの質問にもズバリお答えいたします!第14回 肺塞栓を疑うポイントは?いち早く発見したい肺塞栓症。確定診断までの流れなどのベーシックな知識はもちろん、造影CTやDダイマーなどの検査ができないときでも肺塞栓を除外できる条件をズバリお教えします!第15回 肺の聴診のコツは?肺の聴診は基本的な手技。どうやってカルテに書いたら伝わりやすい?今回は代表的な4つの肺雑音の特徴とカルテの記載方法をレクチャーします。連続性か断続性か、高音か低音かなど、聞き分けるコツと、その機序も併せて解説。仕組みの講義で病態生理の理解も深まること間違いありません!

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アナフィラキシーの治療の実際

アナフィラキシーの診断 詳細は別項に譲る。皮膚症状がない、あるいは軽い場合が最大20%ある。 治療(表1)発症初期には、進行の速さや最終的な重症度の予測が困難である。数分で死に至ることもあるので、過小評価は禁物。 ※筆者の私見適応からは、呼吸症状に吸入を先に行う場合があると読めるが、筆者は呼吸症状が軽症でもアナフィラキシーであればアドレナリン筋注が第1選択と考える。また、適応に「心停止」が含まれているが、心停止にはアドレナリン筋注は効果がないとの報告9)から、心停止の場合は静注と考える。表1を拡大する【姿勢】ベッド上安静とし、嘔吐を催さない範囲で頭位を下げ、下肢を挙上して血液還流を促進し、患者の保温に努める。アナフィラキシーショックは、distributive shockなので、下肢の挙上は効果あるはず1)。しかし、下肢拳上を有効とするエビデンスは今のところない。有害ではないので、薬剤投与の前に行ってもよい。【アドレナリン筋肉注射】気管支拡張、粘膜浮腫改善、昇圧作用などの効果があるが、cAMPを増やして肥満細胞から化学物質が出てくるのを抑える作用(脱顆粒抑制作用)が最も大事である。α1、β1、β2作用をもつアドレナリンが速効性かつ理論的第1選択薬である2)。緊急度・重症度に応じて筋注、静注を行う。血流の大きい臀部か大腿外側が薦められる3)。最高血中濃度は、皮下注で34±14分、筋注で8±2分と報告されており、皮下注では遅い4)。16~35%で2回目の投与が必要となる。1mLツベルクリンシリンジを使うと針が短く皮下注になる。1)アドレナリン1回0.3~0.5mg筋注、5~30分間隔 [厚生労働省平成20年(2008)5)]2)アドレナリン1回0.3~0.5mg筋注、5~15分間隔 [UpToDate6)]3)アドレナリン1回0.01mg/kg筋注 [日本アレルギー学会20141)]4)アドレナリン1回0.2~0.5mgを皮下注あるいは筋注 [日本化学療法学会20047)]5)アドレナリン(1mg)を生理食塩水で10倍希釈(0.1mg/mL)、1回0.25mg、5~15分間隔で静注 [日本化学療法学会20047)]6)アドレナリン持続静脈投与5~15µg/分 [AHA心肺蘇生ガイドライン20109)]わが国では、まだガイドラインによってはアドレナリン投与が第1選択薬になっていないものもあり(図1、図2)、今後の改訂が望まれる。 ※必ずしもアドレナリンが第1選択になっていない。 図1を拡大する ※皮膚症状+腹部症状のみでは、アドレナリンが第1選択になっていない。図2を拡大する【酸素】気道開通を評価する。酸素投与を行い、必要な場合は気管挿管を施行し人工呼吸を行う。酸素はリザーバー付マスクで10L/分で開始する。アナフィラキシーショックでは原因物質の使用中止を忘れない。【輸液】hypovolemic shockに対して、生理食塩水か、リンゲル液を開始する。1~2Lの急速輸液が必要である。維持輸液(ソリタ-T3®)は血管に残らないので適さない。【抗ヒスタミン薬、H1ブロッカー】経静脈、筋注で投与するが即効性は望めない。H1受容体に対しヒスタミンと競合的に拮抗する。皮膚の蕁麻疹には効果が大きいが、気管支喘息や消化器症状には効果は少ない。第1世代H1ブロッカーのジフェンヒドラミン(ベナスミン®、レスタミン®)クロルフェニラミンマレイン酸塩(ポララミン®)5mgを静注し、必要に応じて6時間おきに繰り返す。1)マレイン酸クロルフェニラミン(ポララミン®)2.5~5mg静注 [日本化学療法学会20047)]2)ジフェンヒドラミン(ベナスミン®、レスタミン®)25~50mg緩徐静注 [AHA心肺蘇生ガイドライン20109)] 保険適用外3)ジフェンヒドラミン(ベナスミン®、レスタミン®)25~50mg静注 [UpToDate6)]4)経口では第2世代のセチリジン(ジルテック®)10mgが第1世代より鎮静作用が小さく推奨されている [UpToDate6)] 経口の場合、効果発現まで40~60分【H2ブロッカー】心収縮力増強や抗不整脈作用がある。蕁麻疹に対するH1ブロッカーに相乗効果が期待できるがエビデンスはなし。本邦のガイドラインには記載がない。保険適用外に注意。1)シメチジン(タガメット®)300mg経口、静注、筋注 [AHA心肺蘇生ガイドライン9)] シメチジンの急速静注は低血圧を引き起こす [UpToDate6)]2)ラニチジン(ザンタック®)50mgを5%と糖液20mLに溶解して5分以上かけて静注 [UpToDate6)]【βアドレナリン作動薬吸入】気管支攣縮が主症状なら、喘息に用いる吸入薬を使ってもよい。改善が乏しい時は繰り返しての吸入ではなくアドレナリン筋注を優先する。気管支拡張薬は声門浮腫や血圧低下には効果なし。1)サルブタモール吸入0.3mL [日本アレルギー学会20141)、UpToDate6)]【ステロイド】速効性はないとされてきたが、ステロイドのnon-genomic effectには即時作用がある可能性がある。重症例ではアドレナリン投与後に、速やかに投与することが勧められる。ステロイドにはケミカルメディエーター合成・遊離抑制などの作用により症状遷延化と遅発性反応を抑制することができると考えられてきた。残念ながら最近の研究では、遅発性反応抑制効果は認められていない10)。しかしながら、遅発性反応抑制効果が完全に否定されているわけではない。投与量の漸減は不要で1~2日で止めていい。ただし、ステロイド自体が、アナフィラキシーの誘因になることもある(表2)。とくに急速静注はアスピリン喘息の激烈な発作を生じやすい。アスピリン喘息のリスクファクターは、成人発症の気管支喘息、女性(男性:女性=2:3~4)、副鼻腔炎や鼻茸の合併、入院や受診を繰り返す重症喘息、臭覚低下。1)メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム(ソル・メドロール®)1~2mg/kg/日 [UpToDate6)]2)ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム(ソル・コーテフ®)100~200mg、1日4回、点滴静注 [日本化学療法学会20047)]3)ベタメタゾン(リンデロン®)2~4mg、1日1~4回、点滴静注11) 表2を拡大する【グルカゴン】βブロッカーの過量投与や、低血糖緊急時に使われてきた。グルカゴンは交感神経を介さずにcAMPを増やしてアナフィラキシーに対抗する力を持つ。βブロッカーを内服している患者では、アドレナリンの効果が期待できないことがある。まずアドレナリンを使用して、無効の時にグルカゴン1~2mgを併用で静注する12)。β受容体を介さない作用を期待する。グルカゴン単独投与では、低血圧が進行することがあるので注意。アドレナリンと輸液投与を併用する。急速静注で嘔吐するので体位を側臥位にして気道を保つ。保険適用なし。1)グルカゴン1~5mg、5分以上かけて静注 [UpToDate6)]【強力ミノファーゲンC】蕁麻疹単独には保険適用があるがアナフィラキシーには効果なし。観察 いったん症状が改善した後で、1~8時間後に、再燃する遅発性反応患者が4.5~23%存在する。24時間経過するまで観察することが望ましい。治療は急いでも退室は急ぐべきではない13)。 気管挿管 上記の治療の間に、嗄声、舌浮腫、後咽頭腫脹が出現してくる患者では、よく準備して待機的に挿管する。呼吸機能が悪化した場合は、覚醒下あるいは軽い鎮静下で挿管する。気道異物窒息とは違い準備する時間は取れる。 筋弛緩剤の使用は危険である。気管挿管が失敗したときに患者は無呼吸となり、喉頭浮腫と顔面浮腫のためバッグバルブマスク換気さえ不能になる。 気管挿管のタイミングが遅れると、患者は低酸素血症の結果、興奮状態となり酸素マスク投与に非協力的となる。 無声、強度の喉頭浮腫、著明な口唇浮腫、顔面と頸部の腫脹が生じると気管挿管の難易度は高い。喉頭展開し、喉頭を突っつくと出血と浮腫が増強する。輪状甲状靭帯穿刺と輪状甲状靭帯切開を含む、高度な気道確保戦略が必要となる9)。さらに、頸部腫脹で輪状軟骨の解剖学的位置がわからなくなり、喉頭も皮膚から深くなり、充血で出血しやすくなるので輪状甲状靭帯切開も簡単ではない。 絶望的な状況では、筆者は次の気道テクニックのいずれかで切り抜ける。米国麻酔学会の困難気道管理ガイドライン2013でも、ほぼ同様に書かれている(図3)14)。 1)ラリンゲアルマスク2)まず14G針による輪状甲状靭帯穿刺、それから輪状甲状靭帯切開3)ビデオ喉頭鏡による気管挿管 図3を拡大する心肺蘇生アナフィラキシーの心停止に対する合理的な処置についてのデータはない。推奨策は非致死的な症例の経験に基づいたものである。気管挿管、輪状甲状靭帯切開あるいは上記気道テクニックで気道閉塞を改善する。アナフィラキシーによる心停止の一番の原因は窒息だからだ。急速輸液を開始する。一般的には2~4Lのリンゲル液を投与すべきである。大量アドレナリン静注をためらうことなく、すべての心停止に用いる。たとえば1~3mg投与の3分後に3~5mg、その後4~10mg/分。ただしエビデンスはない。バソプレシン投与で蘇生成功例がある。心肺バイパス術で救命成功例が報告されている9)。妊婦対応妊婦へのデキサメタゾン(デカドロン®)投与は胎盤移行性が高いので控える。口蓋裂の報告がある15)。結語アナフィラキシーを早期に認識する。治療はアドレナリンを筋注することが第一歩。急速輸液と酸素投与を開始する。嗄声があれば、呼吸不全になる前に準備して気管挿管を考える。 1) 日本アレルギー学会監修.Anaphylaxis対策特別委員会編.アナフィラキシーガイドライン. 日本アレルギー学会;2014. 2) Pumphrey RS. Clin Exp Allergy. 2000; 30: 1144-1150. 3) Hughes G ,et al. BMJ.1999; 319: 1-2. 4) Sampson HA, et al. J Allergy Clin Immunol. 2006; 117: 391-397. 5) 厚生労働省.重篤副作用疾患別対応マニュアルアナフィラキシー.平成20年3月.厚生労働省(参照2015.2.9) 6) F Estelle R Simons, MD, FRCPC, et al. Anaphylaxis: Rapid recognition and treatment. In:Uptodate. Bruce S Bochner, MD(Ed). UpToDate, Waltham, MA.(Accessed on February 9, 2015) 7) 日本化学療法学会臨床試験委員会皮内反応検討特別部会.抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドライン(2004年版).日本化学療法学会(参照2015.2.9) 8) 日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会.第9章治療.In:食物アレルギー診療ガイドライン2012.日本小児アレルギー学会(参照2015.2.9) 9) アメリカ心臓協会.第12章 第2節 アナフィラキシーに関連した心停止.In:心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン2010(American Heart Association Guidelines for CPR & ECC). AHA; 2010. S849-S851. 10) Choo KJ, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012; 4: CD007596. 11) 陶山恭博ほか. レジデントノート. 2011; 13: 1536-1542. 12) Thomas M, et al. Emerg Med J. 2005; 22: 272-273. 13) Rohacek M, et al. Allergy 2014; 69: 791-797. 14) 駒沢伸康ほか.日臨麻会誌.2013; 33: 846-871. 15) Park-Wyllie L, et al. Teratology. 2000; 62: 385-392.

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抗菌薬と小児喘息は本当に関連するのか/BMJ

 スウェーデン・カロリンスカ研究所のAnne K Ortqvist氏らは、従前、指摘されている「胎児期や出生後間もない抗菌薬曝露は小児喘息と関連している」という知見について、交絡因子による補正後も認められるのかを同国住民ベースのコホート研究で調べた。交絡因子として家族因子を用いた兄弟姉妹間比較や、抗菌薬の治療目的別の違いなどを検討した結果、家族因子は同関連を支持するものではなく、また呼吸器感染症の治療目的使用が尿路感染症や皮膚感染症と比べて関連が強いことなどを明らかにした。著者は、「家族因子や呼吸器感染症によって、同関連は示唆されたり否定されたりすることが判明した」とまとめている。BMJ誌オンライン版2014年11月28日号掲載の報告より。スウェーデン、2006~2010年の出生児49万3,785例について分析 検討は、スウェーデンの人口統計および健康レジスターから、2006~2010年の出生児49万3,785例を特定して行われた。そのうち適格条件を満たした18万894例については兄弟姉妹分析も行った。 喘息の診断歴および喘息薬の処方歴で喘息児を特定。抗菌薬曝露と喘息の関連を、Cox比例ハザード回帰法を用いて全コホートにおいて分析した。また兄弟姉妹群の層別化比例ハザードモデルを用いて、家族内共有因子で補正した分析も行った。さらに、特異的抗菌薬投与群と喘息との関連を評価し、呼吸感染症が交絡因子であるかについても調べた。家族因子、治療目的の感染症因子でリスクが増減 全コホート分析の結果、胎児期の抗菌薬投与と小児喘息リスク増大との関連が認められた(ハザード比:1.28、95%信頼区間[CI]:1.25~1.32)。しかし、同関連は兄弟姉妹分析ではみられなかった(同:0.99、0.92~1.07)。 また、全コホート分析で、小児期の呼吸器感染症治療目的での抗菌薬使用が(HR:4.12、95%CI:3.78~4.50)、尿路感染症および皮膚感染症治療目的での抗菌薬使用よりも(同:1.54、1.24~1.92)、小児喘息リスクが顕著に高かった。 しかし兄弟姉妹分析では、呼吸器感染症使用目的曝露後のリスクは全コホート分析時よりも低く(HR:2.36、95%CI:1.78~3.13)、尿路感染症および皮膚感染症使用目的曝露後ではリスクの増大は認められなかった(同:0.85、0.47~1.55)。

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気管支喘息、スピリーバ レスピマットへの期待

 2014年12月3日、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社によるスピリーバ レスピマット喘息適応追加記者発表会が都内にて行われた。当日は足立 満氏(国際医療福祉大学 臨床医学研究センター山王病院アレルギー内科)が「喘息治療の現状とスピリーバ レスピマットへの期待」と題し講演した。■本邦における喘息コントロールの課題 本邦における喘息死は大きく減少し2012年には1,728人と2000人を下回っている。だが、一見コントロールされているようでも、実際は症状が残る患者は少なくない。 2012年の本邦の報告によれば、ICS(吸入ステロイド薬)またはICS/LABA(吸入ステロイド・長時間作用性β刺激薬合剤)を継続使用しても喘息症状が発現・悪化する患者は86.2%、そのうち31.5%は緊急受診や入院などの喘息増悪を起こしている1)。このように患者のコントロールレベルは万全とはいえない状況である。さらにコントロール不十分・不良患者は重症例だけでなく軽症例でも6~7割みられる2)。■喘息治療薬として見直される抗コリン薬 抗コリン薬は喘息治療薬としては本邦では主流の位置付けとはいえない。しかし、海外では中等症から重症例の救急治療において使用が推奨されるなど、その位置付けは本邦以上に確立しているという。抗コリン薬の作用機序はβ刺激薬をはじめとする気管支拡張薬とは異なる。また気管支拡張による肺機能改善以外にも、入院の減少などの効果も認められることから、近年は治療選択肢の1つとして期待されている。 そのようななか、COPD治療薬の定番である長時間作用性抗コリン薬(LAMA)チオトロピウムについても、気管支喘息の臨床エビデンスが続々と報告されている。ICS/LABAでコントロール不能な中等~重症の喘息患者におけるチオトロピウム(スピリーバ レスピマット)の有用性を明らかにした国際大規模試験PrimoTinA3)に続き、本邦の国内長期試験であるCadenTinA試験の結果が紹介された。本試験は、中用量のICSによっても症状が持続する軽~中等症の喘息患者を対象に行われた無作為化並行群間比較試験である。結果、最も薬剤効果の低下するトラフ値の評価において、ICS/チオトロピウム(レスピマット5μg/日)併用群は、ICS単独群に比べ110mL以上の有意なFEV1の上昇を認め、喘息関連QOLも改善している。■重症持続型喘息とはいえ適応は広い スピリーバ レスピマットの本邦での喘息の適応は重症持続型に限られる。ただし、この重症持続型とは、現在の治療ステップに、その治療による現状の症状を加味した評価である。つまり、ステップ2の軽症持続型の治療を行っていても、「症状が毎日ある」など現治療に対する症状が中等症持続型の基準を満たすほど不良な場合、重症持続型の治療適応となる(詳しくは喘息予防・治療ガイドラインを参照)。重症持続型の治療といっても、その適応範囲は広い。「調査データはないものの、現在の治療ステップに治療を加味した“真の重症持続型”はけっして少なくないであろう」と足立氏は述べた。 最後にレスピマット吸入デバイスのデモンストレーションが行われた。レスピマットは噴霧速度が遅く霧の状態が長く保たれることが、記者にも印象的であった。薬剤の効果以外にも薬剤噴霧と吸気を同調しやすいというメリットもありそうだ。【参考文献】1) 秋山一男. アレルギー・免疫. 2012; 19: 1120-1127.2) 大田健ほか. アレルギー. 2010; 59: 2010-2020.3)Kerstjens HA, et al. N Engl J Med. 2012; 367: 1198-1207.

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事例29 ツロブテロール(商品名: ホクナリン テープ)1mgの査定【斬らレセプト】

解説事例では、熱発にて初診を行なった7歳の患者に対して処方したツロブテロール(ホクナリン®)テープ1mgが、A事由(医学的に適応と認められないもの)を理由に査定となった。医師から、コメントで「咳が激しい」と訴えたが査定となった。その理由は何かと問い合わせがあり、調べてみた。レセプトを確認すると、傷病名欄には急性上気道炎のみの記載であった。他には急性上気道炎に対する薬剤が処方されているのみであった。急性上気道炎に対してホクナリン®テープの適応があるかどうか添付文書を精査した。添付文書の効能・効果には、「気管支喘息、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺気腫の気道閉塞性障害に基づく呼吸困難など諸症状の緩解に適応する」とある。したがって、レセプトに記載された急性上気道炎のみでは医学的に適用が認められないとしてA事由にて査定となったものであろう。経験則では、インフルエンザなどの医学的に気管支炎を伴う疾病が記載されていれば、急性気管支炎などの適用病名を記載しなくても査定となっていない。しかし、査定が増えている薬剤であるので、留意して算定をお願いしたい。

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スピリーバ レスピマットが気管支喘息の適応を取得

 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:青野吉晃氏)は、2014年11月18日、スピリーバ レスピマットが新たに気管支喘息の適応を取得したと発表した。 スピリーバは抗コリン作用性の長時間作用性吸入気管支拡張剤で、その効果は24時間以上持続する。慢性閉塞性肺疾患(COPD)では、すでに世界各国で承認されており、日本ではスピリーバ吸入用カプセル18μgとして2004年12月から、スピリーバ レスピマットとして2010年5月から販売されている。 スピリーバ レスピマットが今回新たに取得した適応は、「下記疾患の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解 気管支喘息(重症持続型の患者に限る)」。治療ステップと現在の症状から判定された重症持続型の患者が対象となる。 今回の追加適応取得に際し、日本ベーリンガーインゲルハイム代表取締役社長 青野吉晃氏は、「現在の標準的な治療を受けているにも関わらず、気管支喘息の患者さんの半数以上は週1回以上の喘息症状に悩まされています。スピリーバレスピマットは優れた呼吸機能改善効果で“今の症状”を改善し、喘息増悪の発現リスクの低下から“未来のリスク”を軽減させることが期待できる治療薬です。喘息治療のアンメット・メディカル・ニーズを満たす薬剤として、スピリーバレスピマットが新たな治療の選択肢となることを期待しています」と述べている。日本ベーリンガーインゲルハイムのプレスリリースはこちら

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アコンカグア山に登ると気管支喘息が悪化するかもしれない【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第30回

アコンカグア山に登ると気管支喘息が悪化するかもしれない アコンカグア山(Wikipediaより使用) 私は慢性の呼吸器疾患がある患者さんには、あまり高地には行かないように注意しています。多くの患者さんが悪化して帰ってきますので、とくに何千メートルという山に登山する場合は、重症度に応じてドクターストップを考慮しなければなりません。 さて、実際の論文はどういったものがあるかといいますと、南米大陸最高峰のアコンカグア山に登ったら気管支喘息が悪化するという報告があります。『世界の果てまでイッテQ!』でイモト アヤコが挑んだ山として有名です。その標高は6,960mです。Seys SF, et al.Effects of high altitude and cold air exposure on airway inflammation in patients with asthma.Thorax. 2013; 68: 906-913. Epub 2013 Jul 2.この論文は、18人のアコンカグア山に登頂しようと試みた気管支喘息の患者を対象にした研究です。患者のうち13人は男性でした。それにしても、よく気管支喘息のある身でアコンカグアに登ろうとしましたね。アコンカグア登頂前に、低酸素試験や寒冷曝露試験に臨み、登頂前後には呼吸機能検査だけでなく血液検査も実施しました。おおよその研究シェーマは図の通りです。 画像を拡大する 図. 本研究のシェーマ(Seys SF, et al.Thorax. 2013 Oct; 68(10): 906-913. より改変引用)事前に1秒量が軽度低下することは低酸素試験や寒冷曝露試験によってわかっていたのですが、アコンカグア登山中の1秒量と努力性肺活量の低下はやはり10%以上でした。また、登山中には気管支喘息の症状も悪化しました。アコンカグア山から帰ってきた後の喘息コントロールテスト(ACT)と、1秒量も低下していました。恐るべきことに、登山前の低酸素試験で酸素飽和度が低かった患者さんは、登山によって高山病にかかる危険性が高かったそうです。筆者らによれば、事前に行われた寒冷曝露試験の呼吸機能に対する影響が大きかったことから、アコンカグア登山による気管支喘息の悪化の原因は、高地でも低酸素でもなく寒冷ではないかと考えました。寒冷曝露によって気道の好中球性炎症が惹起され、それが一時的な気管支喘息の悪化をもたらすようです。個人的にはすべての因子が相加相乗的に作用して合わせ技一本だった感じもしますが、少なくともしっかりと気管支喘息のコントロールができていない患者さんは、アコンカグア山のような高地には行かないほうが無難かもしれません。

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慢性閉塞性肺疾患(COPD)の内科的治療の選択について(解説:小林 英夫 氏)-261

まず、掲載された本論文の概略にお目通しいただきたい。本論文から読み取るべき点は、どのような薬剤が慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療薬として優れているかについてランダム化試験を実施すべきである、という記述に尽きるというのが筆者の印象である。 Gershon氏らが指摘するように、COPDの内科的治療法には複数の選択肢が存在し、いずれも有効性を支持する報告に裏付けられているものの、最適な治療法がどれなのかについては不明なままである。 本報告では長時間作用性β2刺激薬と吸入ステロイド薬(LABA+ICS)併用群とLABA単独群間で、死亡と入院の発生をアウトカムとして検討を行った。約2年半の追跡によりLABA+ICS併用群において軽度良好な結果が示されたが、この記述をそのまま受け入れるには少なからぬ問題点がある。 本論文は約1万2,000例という多数例を基にした解析であり、それなりの意義があることは間違いない。また、本邦で2薬剤の有効性比較試験を多数例で実行することの困難性を想定すれば、本研究から得られる示唆は重要であろう。しかし、本報告を根拠として今後のCOPD治療を変更することは早計に思う。本報告は薬剤効果を比較する試験デザインではないことを意識していただきたい。 以下、本論文の特徴を列記すると、まず、本研究は後ろ向き観察研究であり、2群の優劣を判定するためのランダム化比較試験ではない。次に、症例はadministrative databasesからの抽出であり、COPDの診断の妥当性や精度について検討できていない。その点について、同著者の既報(1 を引用し、診断精度はsensitivity、specificityともに80%以上としている。しかし、1秒量、1秒率、画像所見など検討されていないのである。さらに25%の症例は呼吸機能検査が実施されていない。 同著者は気管支喘息でも同登録データに基づく診断精度を報告し(2、そちらもsensitivity、specificityがそれぞれ約80%としている。この論文でもピークフロー値などの臨床検査は記述されていない。臨床で重要視する項目と疫学的観察における視点には少なからぬ差異が存在するようである。 上記2点に加え、対象COPD群には糖尿病が25%以上、気管支喘息が約30%、高血圧が70%以上に合併していた点は、本邦症例と比すると近似した集団なのであろうか。 4点目として、集計母集団がLABA単独群3,258例、併用群3万4,289例であり、propensity score matchingを導入した後でもLABA+ICS併用群8,712例、LABA単独群3,160例となっており、対等な2群とは評価しがたい大きな開きが存在している。当初から治療選択にバイアスが存在していることが想定される。 5点目として、サブグループとしての気管支喘息+COPD群はLABA+ICS併用により良好なアウトカムが得られたと報告している。そもそも、気管支喘息合併群をLABA単独で治療するという症例が含まれていることが、行政登録データに基づく症例選択の限界であろう。治療法の優劣を判定する目的では、本研究のような後ろ向き解析には限界があることを前提に、本論文を評価していただきたい。 しかし、疾患歴、入院歴、救急受診歴などの医療情報登録システムが構築され、疫学研究に活用できるカナダの体制を知らされると、本邦でも早急にこのような観察研究が可能となる日を願ってやまない。

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ステップ4の気管支喘息患者にできればステロイドを内服させたくない(解説:倉原 優 氏)-258

外来で診ている最重症の気管支喘息患者では、ステロイドの経口投与やIgEをターゲットにしたオマリズマブ(商品名:ゾレア)を使うことがある。それでもコントロールができない患者は多く、さらなる武器に期待している呼吸器内科医は少なくないだろう。その1つが、モノクローナル抗体を用いた抗体医薬品である。メポリズマブは、インターロイキン-5をターゲットとしている。 本試験の登録患者は、少なくとも半年間、ステロイドの全身投与をプレドニゾロン換算で1日当たり5~35mg内服している。すなわち、ステップ4の中でも“やむなく”経口ステロイドを使わざるを得なかった患者が対象となっている。 ご存じの通り、経口ステロイドを長期に続けていると、数々の副作用を起こすだけでなく、日和見感染症によって呼吸器疾患が急性増悪することがしばしばある。そのため、喘息治療においては、できる限り経口ステロイドを減らしたいというのが呼吸器内科医の総意であろう。 今回の結果、メポリズマブによる経口ステロイドの減量効果が認められた。半数以上の患者が50%以上の減量に成功しているが、ただしプラセボにおいても3割の患者が50%以上の減量に成功している。統計学的に有意な差とはいえ、ベースラインとして、本当に経口ステロイドが必要なステップ4の患者だったのかどうか疑問は残る。 ちなみに、ゾレアにもステロイド減量効果があると言われているが、現時点ではまだ結論は出ていない1)。

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『鼻炎合併喘息』 その実態と対策とは

 2014年9月18日(木)、MSD株式会社により、「喘息シーズンに向けた鼻炎合併喘息の実態と対策」をテーマに、都内で予防医療プレスセミナーが開催され、3つの講演が行われた。●患者と医師、アレルギー性鼻炎合併の認識に乖離 はじめに、瀬野 恵修氏(MSD株式会社 マーケティング本部プライマリーケアグループ 呼吸器・アレルギー疾患ブランドリーダー)が「喘息と鼻炎に関する意識調査結果」について報告した。 昨今、アレルギー性鼻炎と喘息の関係について取りざたされ、アレルギー性鼻炎によって、喘息が悪化することが報告されている1)。そこで同社は、喘息の発作原因が増える秋口に先駆けて、喘息患者と医師に対して意識調査を行った。その結果、喘息患者のうち62.5%が、花粉症もしくはアレルギー性鼻炎を合併していることがわかった。 本調査ではさらに、喘息患者の63.7%、医師の72.6%は、アレルギー性鼻炎が喘息の悪化原因であると認識していることから、双方の高い意識が確認できた。しかし、喘息患者の62.5%がアレルギー性鼻炎を合併しているにもかかわらず、主治医がそれを認識している割合は26.2%と乖離がみられた。このことについて、瀬野氏は、今後診療の中で改善していく余地があるのではないか、との見解を示した。●鼻炎の合併により、喘息コントロール不良に 次に、大田 健氏(独立行政法人国立病院機構東京病院 院長)により「わが国における鼻炎合併喘息の実態について」の講演が行われた。 喘息とアレルギー性鼻炎は、下気道と上気道とのつながったパイプの中で起きる。両者は危険因子(アレルゲン)や炎症過程などが共通しており、気道粘膜構造も類似しているなど関連性が強い。大田氏によると、アレルギー性鼻炎の合併により、喘息発症リスクが約3倍高くなるだけでなく2)、喘息発作の発現率も高くなるという3)。さらに、喘息とアレルギー性鼻炎の重症度には相関がみられることも特徴である4)。 このたび、大田氏により、ガイドラインに基づいた質問票を活用した、「喘息における鼻炎の実態」について、初の全国規模調査が行われた。その結果、日本の喘息患者におけるアレルギー性鼻炎合併率は67.3%にも上り、さらに喘息患者がアレルギー性鼻炎を合併すると、喘息コントロール不良となることでQOLが低下することも明らかとなった5)。以上の結果からも、喘息とアレルギー性鼻炎は密接に関係していることがあらためて証明された。したがって、喘息患者では、アレルギー性鼻炎を視野に入れた診察・診断を行い、必要に応じて積極的に治療を行うことが大切であるといえるだろう。●長引く咳はアレルギー性鼻炎の可能性 続いて、田中 裕士氏(NPO法人 札幌せき・ぜんそく・アレルギーセンター 理事長)により「鼻炎合併喘息患者さんのQOL向上を目指した治療」と題した講演が行われた。 これから秋口にかけては、花粉症がみられるとともに、喘息やアレルギー性鼻炎が悪化しやすい時期だと言われている。花粉症のシーズン中、アレルギー性鼻炎の患者では気道過敏性の亢進がみられ6)、6.4%の患者に高度の、21.6%に軽度の気道過敏性が亢進しているとの報告もある7)。 また、罹病期間が長いほど気道過敏性も亢進することが報告されている7)。田中氏によると、アレルギー性鼻炎を治療せず放置すると、好酸球性副鼻腔炎と呼ばれる複雑な病態となり、味覚障害や鼻閉といった症状を発現し、気管支喘息、好酸球性中耳炎と経過をたどり、難聴や耳閉感を患うケースもあるという。つまり、アレルギー性鼻炎を放置することは喘息発症の危険因子といえる。 さらに、「咳喘息による咳なのか、アレルギー性鼻炎による咳なのかの鑑別が重要である」と田中氏は言う。咳喘息であれば、ICS/LABAを使用すると、よほどの重症でない限り1週間程度で咳は治まるが、アレルギー性鼻炎による慢性咳嗽の場合は2~3週間かかることがあるためである。 喘息の診断では、発作性の呼吸困難や、喘鳴、スパイロメトリー、他の心肺疾患の除外を行う。一方、アレルギー性鼻炎の診断では、発作性反復性のくしゃみ、鼻閉、皮内テスト、鼻汁中好酸球の存在を確認する。さらに、大田氏監修のSACRA質問票などの補助診断を用いることは、喘息症状とアレルギー性鼻炎症状の状態を把握するうえで有用である。 鑑別後の治療の基本的な考え方は、(1)気管支喘息のみの悪化でアレルギー性鼻炎が安定している場合は、気管支喘息の治療をする、(2)アレルギー性鼻炎のみの悪化で気管支喘息は安定している場合は、アレルギー性鼻炎の治療をする、(3)気管支喘息とアレルギー性鼻炎ともに悪化している場合は、双方を同時に治療する、ということであると田中氏は訴えた。そのうえで、このような治療方針をとることで、過剰な薬剤服用を防止し、早期の症状改善を図ることにつながる、と述べた。 これまでは、アレルギーは各疾患別に複数の科で診察されてきた。しかし、近年、アレルギー全般を診る総合アレルギー科医(Total Allergist)という概念が広がりつつある。これにより、今後さまざまなアレルギーを一人の医師が診断する時代がくるのかもしれない。(ケアネット 佐藤 駿介)【参考文献はこちら】1)Ohta K, et al. Allergy. 2011; 66: 1287-1295.2)Settipane RJ, et al. Allergy Proc. 1994; 15: 21-25.3)Bousquet J, et al. Clin Exp Allergy. 2005; 35: 723-727.4)Togias A. J Allergy Clin Immunol. 2003; 111: 1171-1183.5)Ohta K, et al. Allergy. 2011; 66: 1287-1295.6)Madonini E, et al. J Allergy Clin Immunol. 1987; 79: 358-363.7)Cirillo I, et al. Allergy. 2009; 64: 439-444.

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新規抗IL-5抗体薬が重症喘息のステロイド低減/NEJM

 喘息コントロールについて経口ステロイド薬を必要とする重症患者に対して、新たな抗IL-5抗体薬メポリズマブは、有意に経口ステロイド薬の服用を節減し、急性増悪の低下および喘息症状を改善したことが、オランダ・アムステルダム大学のElisabeth H. Bel氏らによる無作為化二重盲検試験の結果、報告された。メポリズマブについてはこれまでに、重症の好酸球性喘息患者において、急性増悪を低下したことは示されていた。NEJM誌オンライン版2014年9月8日号掲載の報告より。重症の好酸球性喘息患者135例を対象に経口ステロイド薬併用の低減効果を検討 研究グループが行ったのは、多施設共同無作為化プラセボ対照の二重盲検並行比較にデザインした第IV相試験であった。 重症の好酸球性喘息患者135例を無作為に、メポリズマブ(100mg用量)またはプラセボを投与群に割り付け、4週ごとに20週間皮下注にて投与し、ステロイドの節減効果について比較検討した。 主要アウトカムは、ステロイド用量低下の程度で、90~100%減少、75~90%未満減少、50~75%未満減少、0~50%未満減少、または減少せず、喘息コントロール不良で評価した。評価は、20~24週間または治療中止時に行った。 そのほかに、急性増悪、喘息コントロール、安全性の割合についても評価した。ステロイド用量低下の可能性はプラセボの2.39倍 結果、ステロイド用量低下の可能性は、メポリズマブ群がプラセボ群よりも、有意に2.39倍(95%信頼区間[CI]:1.25~4.56、p=0.008)高かった。 ベースライン時からの割合の減少中央値は、プラセボ群は減少なしであったのに対し、メポリズマブ群は50%(95%CI:20.0~75.0%)であった(p=0.007)。 ステロイド用量が減少したメポリズマブ群の患者について、プラセボ群と比較して、急性増悪の年間発生率は32%減少(1.44対2.12、p=0.04)、喘息症状(喘息コントロール質問票5[ACQ 5]で評価、臨床的に意味のある差は最小で0.5ポイント)に関しては0.52ポイントの減少(p=0.004)であった。 安全性プロファイルは、メポリズマブとプラセボで同等だった。

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次世代の気管支喘息治療、重症喘息患者に希望の光となりうるか(解説:倉原 優 氏)-248

気管支喘息の治療においてヒト化モノクローナル抗体といえば、IgEをターゲットにしたオマリズマブ(商品名:ゾレア)が知られており、とくにステップ4の気管支喘息患者においては私も使用することがある。決して切れ味がよいとは思っていないが、いくばくかの効果が出る患者もいる。 インターロイキンをターゲットとした喘息治療は数多く報告されているが、その中でもインターロイキン-4に対するヒト化モノクローナル抗体であるデュピルマブ1)、インターロイキン-5に対するヒト化モノクローナル抗体であるメポリズマブ2)の治療効果がとくに期待されている。 今回は、そのうちのメポリズマブのプラセボ対照比較試験である。適格基準は、持続的な好酸球炎症による繰り返す喘息発作を有する患者で、高用量の吸入ステロイド薬でもコントロールが困難なケースである。すなわち、実臨床において「コントロールしにくい」と感じる、われわれが最も治療に難渋するケースを想定している。 この試験の結果で特筆すべきは、増悪の頻度がほとんど半減している点である。また、同号に掲載されたもう1つのメポリズマブの研究においても経口ステロイドの減量効果が認められており3)、今後の重症気管支喘息患者の治療選択肢が広がるだけでなく、経口ステロイドを使いにくい患者群での喘息コントロールに有効な選択肢になりえよう。 治療選択肢の限られた重症患者において、細胞内シグナル伝達系や転写因子に対する分子標的治療薬のさらなる報告を個人的に期待している。ただ、実現したとしても、抗体医薬品の高い薬価が患者にとって大きなハードルになることは否めない。

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