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第60回 立法措置のないコロナワクチン「打ち手」拡大に保団連が疑義

政府は新型コロナワクチン接種を加速するため、不足している「打ち手」を救急救命士や臨床検査技師にまで広げようとしている。医師や看護師以外の職種で最初に候補に挙がった歯科医師に対し、厚生労働省が4月26日付で事務連絡を発出、歯科医師による新型コロナワクチン接種について法的な整理を示した。これに対し、全国の医師・歯科医師10万7,000人で構成する全国保険医団体連合会(保団連)は5月21日、宇佐美 宏副会長(歯科代表)名で、「歯科医師による新型コロナワクチン接種は法律により適法性を確保して実施すべき」との声明を発表、問題点を指摘した。行き当たりばったりの職種拡大方針に疑問歯科医師法第1条は歯科医師の任務を「公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保する」と規定している。声明では「新型コロナウイルス感染症が国民の生命と健康を脅かす中で、その対策に参画することは歯科医師の職業的使命である。必要に応じ、安全性を確保してワクチン接種に協力することは、歯科医師としてやぶさかではない」と、打ち手としての役割には前向きな姿勢を示した。一方、打ち手不足問題については「新型コロナワクチン接種のための体制確保は、ワクチンの開発・供給を巡る動向の中で十分に想定しえた課題である」と指摘。「厚労省が、円滑に対応できるようあらかじめ法律による対応に動かず、人材の逼迫が起こってから緊急避難的に解釈による対応をとったことには問題がある」と、行き当たりばったりの職種拡大方針に疑問を呈した。厚労省は事務連絡で、ワクチン接種のための筋肉内注射は医行為に該当し、医師法第17条に違反するとした上で、以下の3点の条件を示している。(1)歯科医師の協力なしにはワクチン接種が実施できない(2)歯科医師に筋肉内注射の経験があるか必要な研修を受けている(3)被接種者の同意がある。この3条件を満たす場合、「公衆衛生上の観点からやむを得ないものとして、医師法第17条との関係では違法性が阻却され得るものと考えられる」とした。そして集団接種会場に限り、医師の監督下で歯科医師によるワクチン接種の筋肉内注射を可能とした。これは、歯科医師によるPCR検査の検体採取についての法的整理と同じ手法だ。声明では「新型コロナワクチンについては、接種後一定頻度でのアナフィラキシーの発生や、死亡事例も報告されている。PCR検査の検体採取以上に深刻なリスクを伴うことは明らかであり、同じ医行為であっても検討には一層の慎重さが求められる。それにもかかわらず、PCR検査の検体採取と同様に、行政解釈により歯科医師の実施を可能とすることは不適切である」と、行政解釈による対応を批判した。国は解釈と条件を示すだけ、責任は現場任せ…その上で、「本来的に、国会審議を通じて必要性と安全性について広く合意し、立法により適法性を確保した上で実施されるべきものである」と提案。「医師法の定めを超えて歯科医師の協力が必要と判断するのであれば、責任を現場任せにして解釈と条件だけを示すのではなく、法律を根拠に実施できる条件を整えることが行政の責任である」と、現場視点からの問題点を示した。様々な職種の協力を得て新型コロナワクチンの接種が進んでも、今後も新たなウイルスの感染拡大が起こる可能性がある。声明では「これからも起こり得る緊急事態への対応も視野に、協力に当たる歯科医師の法律上の位置付けを明確にするよう、厚労省の責任ある対応を求める」と結んでいるが、ほかの職種に関しても同様の措置が必要だろう。医療人の善意に頼るだけでなく、安心して対応できる体制づくりが必要だ。

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ワクチン接種で役立つ地方発の知恵/首相官邸・戸田市

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の一般向けのワクチン接種が、全国的に始まり、軽微な不備はあるものの、現在は順調に進んでいる。 接種に際しては、会場設営、人口構成、医療者の分布など地域の個々の事情に応じた対応がなされている。 こうした状況の中で、首相官邸の「新型コロナウイルス感染症対策」の特設ページでは、一部の自治体だけでなく、他の自治体でも利用できる活動について収集したものを「ワクチン接種これいいね。自治体工夫集」としてまとめ、公開している。地域の状況に合わせて工夫する自治体の接種体制 工夫集は「医療従事者確保」「効率的な接種体制」「予約システム、円滑な予約体制」「大規模接種会場」の4つのパートに分かれ、各自治体の取り組みが紹介されている。【医療従事者確保】(研修医の活用や医師などのチーム編成接種会場の設置、潜在看護師の活用など)・集団接種会場への研修医の派遣(奈良県)・医師・歯科医師・看護師の「別動隊」による接種機会の拡大(神奈川県大和市)・潜在看護師の掘り起こし(滋賀県)【効率的な接種体制】(予約なしで地区ごとに接種、接種センター作り集中化、地域モデルの共有、医師が巡回して接種など)・地区ごとの集団接種(福島県相馬市)・ワクチンの集中管理(岡山県岡山市)・県内市町村のモデル事例の共有(長野県)・会場内医師巡回方式の導入(東京都調布市)【予約システム、円滑な予約体制】(独自のWEB抽選システムで申込受付)・予約抽選申込方式の導入(兵庫県加古川市)【大規模接種会場】(地元大学との連携やワクチン接種センターの設置、期間限定の高齢者接種センターの設置など)・県・市・国立大学の連携によるワクチン接種センターの開設(宮城県・仙台市)・空港・大学における大規模接種会場の設置(愛知県)・県営ワクチン接種センターの設置(群馬県)・大規模接種会場の設置(兵庫県神戸市)・県高齢者ワクチン接種センターの設置(埼玉県)いつあってもおかしくないワクチン接種のアクシデントはこれ! 埼玉県戸田市は、一般報道をもとにまとめたワクチン接種現場でのアクシデント事例集を作成し、市内の医療機関に配布した。この事例集は、ワクチン接種に携わる医療従事者向けにまとめられたもので、今後のワクチン接種活動での注意喚起を込め、同市の危機管理防災課が作成した。 アクシデント事例として「ワクチンの使用期限(6時間)の認識不足」、「保管・解凍・搬送に関する認識不足」「希釈・分注に関す認識不足」「バイアルの取り扱いに関する認識不足」「注射器の取り扱いに関する認識不足」「本人確認ミス」に分かれ、現在36項目の事例と原因が記載されている。 具体的事例として、「ワクチンに生理食塩水を注入する際、量を間違え使えなくなった。原因として調製方法がしっかりと伝わっていなかった」「中身が空である注射器を誤って接種した。原因として使用済みの注射器を廃棄せずにテーブルに置いてしまった」「集団接種会場で男性に1日2回接種した。原因として接種の案内係が男性の予診票を確認しなかった。接種した直後に誤りに気付いた」 などが記載されている。 いずれもどこの現場でも起りうる事例なので、先述の工夫集とともに今後の対策に役立てていただきたい。なお、首相官邸の工夫集、戸田市の事例集は今後も随時更新をしていく予定。

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日本におけるアルツハイマー病と歯数との関連

 日本人高齢者における残存または欠損している歯数とアルツハイマー病との関連について、日本歯科総合研究機構の恒石 美登里氏らは、レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて、横断的な分析を行った。PLOS ONE誌2021年4月30日号の報告。 歯周病(400万9,345例)またはう蝕(虫歯)による抜歯(66万2,182例)の治療を行った60歳以上の患者を対象に、歯科医療レセプトデータを用いて、残存または欠損している歯数に関するデータを収集した。これらの歯数に関するデータとアルツハイマー病の診断を含む医療データを組み合わせて分析を行った。残存する歯数および第3大臼歯(親知らず)を除く欠損している歯数は、歯科医療レセプトの歯科用式を用いて算出し、それぞれ3群に分類した。アルツハイマー病のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)の算出には、年齢、性別で調整した後、ロジスティック回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・歯周病と診断された患者において、アルツハイマー病の治療を受けていた患者の割合は、歯の残存数別に以下のとおりであった。 ●残存歯数20~28本:1.95% ●残存歯数10~19本:3.87% ●残存歯数1~9本:6.86%・う蝕による抜歯を行った患者において、アルツハイマー病の治療を受けていた患者の割合は、歯の欠損数別に以下のとおりであった。 ●欠損歯数1~13本:2.67% ●欠損歯数14~27本:5.51% ●欠損歯数28本:8.70%・歯周病と診断された患者におけるアルツハイマー病のORは、残存歯数20~28本の患者と比較し、以下のとおりであり、残存歯数が少ないとアルツハイマー病のORが有意に高かった(p<0.001)。 ●残存歯数10~19本:OR=1.11(95%CI:1.10~1.13) ●残存歯数1~9本:OR=1.34(95%CI:1.32~1.37)・う蝕による抜歯を行った患者におけるアルツハイマー病のORは、欠損歯数1~13本の患者と比較し、以下のとおりであり、欠損歯数が多いとアルツハイマー病のORが有意に高かった(p<0.001)。 ●欠損歯数14~27本:OR=1.40(95%CI:1.36~1.44) ●欠損歯数28本:OR=1.81(95%CI:1.74~1.89) 著者らは「歯科医院を受診した高齢者において、残存歯数が少なく、欠損歯数が多い患者では、アルツハイマー病リスクが高いことが示唆された」としている。

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ゴーグルを買った【Dr. 中島の 新・徒然草】(373)

三百七十三の段 ゴーグルを買った大阪の某医療機関では、コロナ陽性の9割が変異型だと耳にしました。従来型に比べて感染しやすく、若者でも重症化しやすいそうです。おまけに感染性も長続きするのだとか。そのせいか、ノーマークの入院患者さんのコロナが後で発覚したとか、3回目のPCRでようやく陽性に出たとか、いろいろと危ない話を見聞きします。もう周囲の人たち全員がコロナを持っていると考えて対処すべきかもしれません。そう思った私は、マスクだけでなく目も保護することにしました。でも、フェイス・シールドの類は手に当たって邪魔。ホームセンターで買ってきた防塵めがねも鬱陶しいし、締め付けられた頭が痛い。なかなかピッタリ合うのにめぐり逢いません。そんな時にふと思いついたわけです。車の運転中に日光対策でしているサングラス。眼鏡の上からかけられて超便利。上も横も防護されているし。こいつの透明レンズ版を使ったらいいんじゃないか。そう思って眼鏡屋さんに買いに行きました。2軒目にしてイメージにピッタリのものを発見!中島「職場で必要なんですよ、医者やってるんで」そう言うと店員さんに妙に納得されました。店員1「先日、向かいの歯科の〇〇先生が買っていきました」店員2「介護施設の職員にもたくさん売れましたよ」店員1「曇り止めがあるからお風呂介助にいいらしいです」皆さん、考えることは一緒なんですね。もともとは、花粉症の人の目の保護用みたいです。眼鏡の上からかけることのできるオーバーグラスだし。これならストレスなくかけられそう。店員1「医療従事者にエールを送ろうってSNSでやってますけど」中島「ええ」店員2「私、自分がコロナにかからないのが一番だと思うんです」中島「その通り。御理解いただけて嬉しいです」店員1「やっぱり!」中島「歓送迎会とか、やめて欲しいです」店員2「偉い人たちも宴会やっていますよね」中島「社会的地位が高いからといって、コロナは見逃してくれませんからね」これ、つい勘違いしてしまうんですよ。人間社会で優遇されていても、自然は特別扱いをしてくれません。なので、偉い人も偉くない人も皆が注意深い行動をとる必要があります。中島「お蔭様でイメージ通りの物を買えました」店員1「お仕事頑張ってくださーい」中島「ありがとうございます」その後、あれこれ調べてみると、ほかにも役に立ちそうなものがありました。まずは度付き花粉対策眼鏡。花粉対策眼鏡の素通しレンズを、度の付いたものに入れ換えるだけです。眼鏡屋さんで作ってもらいました。いつもの眼鏡と同じ感覚なので、手術用顕微鏡を覗くこともできます。次に眼鏡カバー。これは普段かけている眼鏡につけるカバーで、即席の花粉対策眼鏡になるものです。カバーは内側からレンズに装着します。アマゾンで購入しましたが、これも悪くなさそう。使ってみた感想は、あらためて報告させていただきます。最後に1句コロナくん もらわぬためには 目も守れ※最近になって季語の入らない川柳に戻ってしまいました。

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第55回 コロナワクチン接種に駆り出される歯科医師、その心情は

新型コロナウイルスのワクチン接種の打ち手確保が難しくなる状況下、厚生労働省の検討会は4月23日、接種に必要な医師や看護師らを確保できない地域に限り、歯科医師が接種を行うことを特例で認める方針を決めた。厚労省は4月中にも各自治体に周知する。これに対し、各歯科医師会は4月24日現在、正式な声明を公表していない。これに対し、歯科医師からは前向きな声から反発までさまざまな声が上がっている。菅 義偉首相は19日、9月までにすべての対象者にワクチンが供給されるめどが立ったと胸を張った。しかし、ワクチンが確保できても、打ち手がいなければ、接種できないも同然だ。現行法上、ワクチン接種は原則として医師や看護師に限られており、実際すでに打ち手不足が表面化している。厚労省の3月25日時点の調査では、全国1,741市町村のうち、集団接種の予定会場で18.1%は医師が、22.8%は看護師が不足していると回答している。5月中旬以降、高齢者接種が本格化すれば、打ち手不足は一層深刻化するはずだ。そのような中、歯科医師のワクチン接種が認められたのだった。歯科医師は約10万5,000人おり、歯科医師によるワクチン接種が実施されたら、打ち手不足の緩和の助けにはなるだろう。「歯科医師を馬鹿にするな」の声もただ、歯科医師によるワクチン接種には、2時間程度の研修を受ける、接種を受ける人の同意を得る、医師らがいる集団接種会場に限定、などのいくつかの条件が設けられる。そもそも4月12日頃までの情報では、歯科医師の役割はワクチン接種を行う医師や看護師の補助を行うということになっていた。歯科医師会には、こうした状況に対しさまざまな声が寄せられているという。例えば、「医療従事者として可能な補助は行うべきだ」という前向きな声のほか、「手伝ってもいいが、報酬はどのくらいなのか」という現実的な疑問などだ。一方で、「歯科医師を馬鹿にするのもいい加減にしろ。医師のしもべ要請は、世界の笑いものだ」といった強い反発も見られるという。歯科医師のワクチン接種の話は、千葉県が千葉県歯科医師会に対しワクチン接種を依頼したことに端を発しているという。同会の役員はテレビ局の取材に対して、「大学で修業している時に採血とか、入院患者への点滴などは日常的に行っている。(注射そのものは)何も問題なくできると思う」と述べている。海外では薬剤師、医学生、ボランティアも担い手に感染者数が多い海外では、ワクチン接種に当たる職種は幅広い。米国の一部の州や英国では歯科医師や薬剤師も接種を行っている。米国の一部の州では、医学生や救急隊員も接種できる。英国では、医療資格を持たない一般のボランティアでも、条件を満たせば研修を受けて接種の資格が得られる。日本の場合、歯科医師の中から、どれだけの人数がワクチン接種の打ち手に名乗りを上げるか。ワクチン接種の安全性は重要だが、ここへ来て明らかに海外に遅れをとっている日本の現状もまた憂慮すべきである。接種のスピードを上げるには、さらなる医療職種の対象拡大を検討しなくて大丈夫なのだろうかと一市民ながら心配になる。

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第52回 上がらないワクチン接種率、歯科医参入が打開策となるか?

<先週の動き>1.上がらないワクチン接種率、歯科医参入が打開策となるか?2.基礎疾患者のワクチン、高齢者の接種待たずに開始/厚労省3.元三重大の准教授、カルテ捏造で執行猶予4年の有罪判決4.75歳以上の医療費負担引き上げ法案、収入に応じた制度に5.コロナの影響大、けんぽ組合の8割が赤字に転落/健保連6.病室Wi-Fi導入は申請で全額補助、患者団体らの申し入れから1.上がらないワクチン接種率、歯科医参入が打開策となるか?厚労省は、全国1,741市町村のうち、集団接種を予定する会場で18.1%が医師不足、22.8%が看護師不足とする3月25日時点の調査結果をもとに、歯科医の協力なしに集団接種が困難であるとし、歯科医も(1)筋肉注射の経験がある、(2)必要な研修を受けている、(3)接種者の同意を得ている、などの条件を満たせば、新型コロナワクチンの実施を特例的に認める方針を決めた。首相官邸によると、22日時点で1回以上接種した医療従事者等は約162万人、高齢者は約5万人(全例1回接種)で、全人口に対する接種率は先進国と比べると極端に低い水準にある。(参考)新型コロナワクチン注射、歯科医も 厚労省が方針決定(朝日新聞)新型コロナワクチン 歯科医師が接種 特例で認める方針 厚労省(NHK)これまでのワクチン総接種回数(首相官邸)2.基礎疾患者のワクチン、高齢者の接種待たずに開始/厚労省厚労省は、新型コロナウイルスワクチンの接種について、65歳以上の高齢者向けの接種が完了する前でも、がんや慢性心臓病などの基礎疾患を持つ者に対しての接種を認める方針を示し、自治体にも通知を発出した。認知症の高齢者などで、意思確認が難しい場合についても、ほかの季節性インフルエンザなどの定期接種と同じく、状況に応じて、家族やかかりつけ医、高齢者施設の介護者などの協力を得て、本人の意向を丁寧にくみ取って行う。また、意思は確認できても、自署ができない場合には、家族などによる代筆を行うなど適切な運用を求めている。(参考)基礎疾患者の接種、高齢者の完了待たず可能 厚労省(日経新聞)コロナのワクチン優先接種の基礎疾患(NHK)資料 新型コロナウイルスワクチンに係る予防接種の高齢者に次ぐ接種順位の者(基礎疾患を有する者等)への接種の開始等について(事務連絡 令和3年4月21日)資料 新型コロナ予防接種の実施に係る留意事項について(事務連絡 令和3年4月23日)3.元三重大の准教授、カルテ捏造で執行猶予4年の有罪判決22日、津地方裁判所は、三重大学附属病院で行われた手術において、使っていない薬の電子カルテを改ざんし、診療報酬をだまし取ったとして詐欺罪などを問われた元准教授に、懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の判決を言い渡した。判決理由は、「自らの立場を悪用した犯行で、医療現場での重要な記録に対する社会の信用が害された程度は大きい」と非難し、懲戒解雇された点などを考慮し、執行猶予となった。この事件を巡っては、被告の上司にあたる元教授も詐欺罪で起訴されている。(参考)カルテ改ざん有罪判決 津地裁、三重大元准教授に(日経新聞)当院臨床麻酔部における不正事案に対する取り組みについて(三重大学)4.75歳以上の医療費負担引き上げ法案、収入に応じた制度に菅総理大臣は23日に開催された衆議院厚生労働委員会で、75歳以上の医療費の自己負担を年収200万円以上の人を対象に2割に引き上げる医療制度改革関連法案について、「現在の社会保障制度を次の世代に引き継いでいくため、負担能力に応じた制度に改める必要がある」と述べ、理解を求めた。なお、法案は2022年1月1日からの施行を予定しており、単身世帯で年収200万円以上、複数世帯では75歳以上の年収合計が320万円以上の場合に対象となる者は約370万人。引き上げ後3年間は、激変緩和措置を設ける方針が打ち出されている。(参考)菅首相 社会保障制度「負担能力に応じた制度に改める必要」(NHK)全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案概要(衆議院)5.コロナの影響大、けんぽ組合の8割が赤字に転落/健保連22日、健康保険組合連合会(健保連)が、全国の大企業の社員が加入している健康保険組合の財政について、2021年度は77.9%の赤字が見込まれると推計を発表した。実質保険料率が初めて10%を超え、義務的経費に占める拠出金割合が50%超の健保組合が全体の26.2%を上回っている。加入者の所得減に伴う保険料収入の減少など、さらに厳しくなっている財政状況に、今後の展開が危ぶまれる。2022年以降は団塊世代が後期高齢者入りするため、さらに拠出金負担が増大することが見込まれ、想定より早く保健財政に危機が到来したと考えられる。国民皆保険制度の維持、現役世代の負担軽減のため、現在、国会で法改正について審議を行なっているが、後期高齢者2割負担導入による現役世代の負担軽減は必須とし、早期の施行を求めている。(参考)健保組合、8割が赤字の見通し 21年度予算を公表(毎日新聞)コロナ響き、健保組合の8割が赤字 保険料率引き上げも(朝日新聞)資料 令和3年度 健康保険組合の予算早期集計結果(概要)について(健保連)医療保険制度改革関連法案に関する資料(同)6.病室Wi-Fi導入は申請で全額補助、患者団体らの申し入れから23日、新型コロナ感染拡大時に闘病生活を送ったフリーアナウンサーの笠井 信輔氏を始め、神経難病患者らで作る団体や病院に入院中の患者らが、院内で無線LAN(Wi-Fi)を使えるようにしてほしいと厚労省に申し入れをした。これは、笠井氏が悪性リンパ腫を患って入院中、コロナの影響で友人などのお見舞いも受けられず孤立していた時に、スマホのデータ通信で毎月1万円近くの追加料金がかかったことや、オンラインでお見舞いの会を開いてもらったことなどをきっかけとして、難病患者らとともに病院がWi-Fiを設置できるよう国に政策として予算をつけてほしいと訴えた形。今回、補正予算で通信関連設備への補助がつき、上限はあるものの、申請があれば全額補助可能となった。電波環境協議会の2019年のサンプル調査によると、医療機関のうち81.1%がWi-Fiを導入し、電子カルテなどの医療系システムやインターネットサービスを利用しているが、患者にWi-Fiアクセスを提供しているのは27.3%に過ぎない。申請に当たっては、「令和3年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金に関するQ&A」を参照されたい。(参考)病室にWiFi「今やライフライン」 笠井アナら訴え(朝日新聞)#病室WiFi協議会 ホームページ【拡散希望】病室のWi-Fi開設に国の予算が付きました(笠井信輔氏のブログ)

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第49回 ワクチン接種要員として歯科医師なども検討へ

<先週の動き>1.ワクチン接種要員として歯科医師なども検討へ2.変異型ウイルスの宿泊療養も条件付きで可能に3.研究用検査キットの販売事業者5社へ行政指導/消費者庁4.2020年、超過死亡は認めず年間死亡者数は減少へ5.高齢者向け住宅での過剰介護防止、監視強化に乗り出す/厚労省1.ワクチン接種要員として歯科医師なども検討へ新型コロナウイルスワクチンの接種要員として、政府が注射を打てる職種の拡大を検討していることが明らかとなった。予防接種は医療行為にあたるため、接種は医師と看護師に限定されているが、現行法の規制を緩和し、海外の取り組みなどを参考に接種拡大を目指す。厚生労働省は、対象として歯科医師を筆頭に挙げ、法解釈変更の通知により、歯科医師が筋肉注射を打てる体制を検討している。なお、歯科医師には昨年4月にPCR検体採取を認める通知が出されており、同様の対応と考えられる。海外の事例として、アメリカの一部の州やイギリスでは歯科医師や薬剤師、救急救命士にもワクチン接種を認めている。国内のワクチン接種の進行状況は海外と比較して遅れをとっていることからも、今後、具体的な方針が決められるだろう。(参考)ワクチン注射の職種拡大 政府、歯科医など検討 接種推進に向けて(日経新聞)職種拡大巡り法改正議論を 厚労省の元医系技官、自民・国光氏 有事対応「早く安全に」(同)2.変異型ウイルスの宿泊療養も条件付きで可能に厚労省は、感染拡大が続く新型コロナウイルス変異株について、3月31日付けで、これまで原則入院としてきた対応を、地域の感染状況などに応じて、医師が入院の必要がないと判断した無症状病原体保有者や軽症者については、宿泊療養施設において丁寧な健康観察が行うことができるとした。また、入院中においては、変異株ごとに対応が異なり、イギリス型変異株である場合は従来の感染者と同室でも差し支えないが、南アフリカおよびブラジル型変異株患者においては、原則として個室での時間的・空間的な分離などの対応が求められている。(参考)変異型、宿泊療養も可 厚労省、「原則入院」から転換(日本経済新聞)資料 新型コロナウイルス変異株流行国・地域に滞在歴がある入国者の方々の健康フォローアップ及び SARS-CoV-2陽性と判定された方の情報及び検体送付の徹底について(厚労省 事務連絡最終改訂)3.研究用検査キットの販売事業者5社へ行政指導/消費者庁消費者庁は、3月26日までに新型コロナウイルス検査キットを販売する業者5社に対して、行政指導を行ったことを明らかにした。「研究用」として流通する新型コロナウイルス抗原・抗体検査キットを「厚労省承認済み」「国内唯一」と表記し、検査キットがあたかも公的に承認され、品質、性能が著しく優良であるかのように表示することで、一般消費者が研究用検査キットの効果について誤認し、誤った対応をしてしまうことを防止する観点から。消費者庁はSNSを通じて、研究用の抗原・抗体検査キットは、国が認めた体外診断用医薬品ではないため、自己判断で使用せず、感染が疑われる場合には医療機関などに相談するよう、一般消費者に対しても注意喚起を行っている。(参考)新型コロナウイルスの検査キットの販売事業者5社に対する行政指導について(消費者庁)「厚労省が承認」検査キット虚偽 消費者庁、5社を指導(日本経済新聞)4.2020年、超過死亡は認めず年間死亡者数は減少へ国立感染症研究所によれば、2020年度はインフルエンザの流行もなく、新型コロナウイルス感染拡大による影響としては、むしろ過少死亡が報告されていることが明らかとなった。感染症疫学センターが2012~20年の人口動態統計データを用いて、2020年1月~11月29日における超過および過少死亡数を、週別、都道府県別に算出した結果、全国47都道府県の超過死亡数の積算は77~1,954人、過少死亡数の積算は367~3,035人だった。これに対し、同センターは「すべての死因を含む超過死亡数は、おおよそ同時期の米国およびヨーロッパにおけるそれよりも相対的に小さい可能性がある。一方で、同時点の過少死亡数は例年より大きく、感染症対策や健康管理が行われている状況で正の影響が考えられるが、2020年の過少死亡数が偶然起こりうる範囲のものかどうかも含め、今後死因別の詳細なデータ解析が必要になる」とコメントしている。引き続き徹底した感染予防対策が求められる。(参考)20年死亡者、11年ぶり減 出生数は最少87万人―人口動態統計速報(時事通信)我が国におけるすべての死因を含む超過死亡数および過少死亡数 (2020年11月までのデータ分析)(国立感染症疫学センター)5.高齢者向け住宅での過剰介護防止、監視強化に乗り出す/厚労省厚労省は、2021年度介護報酬改定において、自立支援・重度化防止に資する質の高いサービス提供の推進を目的に立ち上げた科学的介護情報システム(LIFE)を活用して、高齢者向け住宅で過剰介護の防止に向けた監視を開始することを明らかにした。高齢者向け住宅を運営する介護事業者の中には、入居中の要介護者に対し、自社の介護サービスを必要以上に利用させて、介護報酬を多く受けとる「囲い込み」の問題が指摘されており、今回の介護報酬改定でメスが入れられた。厚労省へのデータ提出をしないと、ADL維持等加算や、自立支援促進加算、栄養アセスメント加算の算定を認めないこととなった。(参考)過剰介護の監視強化、高齢者住宅向け 囲い込み対策で(日経新聞)高齢者住宅の「囲い込み」、厚労省が監視強化へ…「過剰」介護防ぐ(読売新聞)「科学的介護情報システム(LIFE)」の活用等について(厚労省 事務連絡)資料 LIFEの活用等が要件として含まれる加算一覧(施設・サービス別)(厚労省)

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日本人高齢者の認知症リスクと近隣歩道環境~日本老年学的評価研究コホート

 日常生活に欠かせない環境資源の1つである歩道は、身体活動を促進するうえで重要なポイントとなる。しかし、先進国においても歩道の設置率は十分とはいえない。東京医科歯科大学の谷 友香子氏らは、日本における近隣の歩道環境と認知症リスクとの関連を調査した。American Journal of Epidemiology誌オンライン版2021年2月19日号の報告。 地域在住の高齢者の人口ベースコホート研究である日本老年学的評価研究の参加者を対象に、3年間のフォローアップ調査(2010~13年)を実施した。公的介護保険制度のデータより高齢者7万6,053人の認知症発症率を調査した。436ヵ所の住宅近隣ユニットの道路面積に対する歩道の割合を、地理情報システムを用いて算出した。認知症発症率のハザード比(HR)は、マルチレベル生存モデルを用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中に認知症を発症した高齢者は5,310人であった。・都市部では、歩道割合が最低四分位の地域と比較し、最高四分位の地域における認知症のHRは0.42(95%CI:0.33~0.54)であった(共変量で調整後)。・土地の傾斜、病院数、食料品店数、公園数、駅数、バス停数、教育レベル、失業率などのその他の近隣要因で連続調整した後でも、HR(0.75、95%CI:0.59~0.94)は統計学的に有意なままであった。 著者らは「都市部においては、歩道の割合が高い地域に住むことと認知症発症率の低さとの関連が認められた」としている。

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法律が示す薬剤師の義務と任務、やるべきことはたくさんある【赤羽根弁護士の「薬剤師的に気になった法律問題」】第23回

これまで、「薬剤師的に気になった法律問題」ということで、時事的に気になった話題を主に取り上げてきましたが、今回は最終回ということで、薬剤師の基礎となる薬剤師法についてまとめたいと思います。以前話題にしたこともありますが、薬剤師の業務については薬剤師法の第4章に定められています。第4章 業務第19条(調剤)、第20条(名称の使用制限)、第21条(調剤の求めに応ずる義務)、第22条(調剤の場所)、第23条(処方せんによる調剤)、第24条(処方せん中の疑義)、第25条(調剤された薬剤の表示)、第25条の2(情報の提供及び指導)、第26条(処方せんへの記入等)、第27条(処方せんの保存)、第28条(調剤録)、第28条の2(薬剤師の氏名等の公表)、第28条の3(事務の区分)まず、第19条においては、調剤が薬剤師の独占業務である旨が定められています。(調剤)第十九条 薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない。ただし、医師若しくは歯科医師が次に掲げる場合において自己の処方せんにより自ら調剤するとき、又は獣医師が自己の処方せんにより自ら調剤するときは、この限りでない。一 患者又は現にその看護に当たつている者が特にその医師又は歯科医師から薬剤の交付を受けることを希望する旨を申し出た場合二 医師法(昭和二十三年法律第二百一号)第二十二条各号の場合又は歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)第二十一条各号の場合調剤が何を意味するのかという議論はあるものの、薬剤師の基本的な業務が調剤であるとともに、調剤は原則薬剤師しかできないことが示されており、重要な条文です。ただし、「薬剤師以外の者」は「してはならない」という規定なので、薬剤師以外の者の行動を制限する形になっています。一方、その他の条項は、薬剤師が行わなければならない義務を規定しているものがほとんどです。(処方せん中の疑義)第二十四条 薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによつて調剤してはならない。(情報の提供及び指導)第二十五条の二 薬剤師は、調剤した薬剤の適正な使用のため、販売又は授与の目的で調剤したときは、患者又は現にその看護に当たつている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。2020年9月1日から施行された第二十五条の二 第2項における服用期間中のフォローアップも同様です。第二十五条の二 第2項薬剤師は、前項に定める場合のほか、調剤した薬剤の適正な使用のため必要があると認める場合には、患者の当該薬剤の使用の状況を継続的かつ的確に把握するとともに、患者又は現にその看護に当たつている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。薬剤師が法的にできないことはほとんどない実際の臨床現場では、薬剤師法で規定される以外にもさまざまな業務を行っていると思いますが、薬剤師の義務は、薬剤師法以外にも法令解釈や薬機法、薬担規則、調剤報酬の観点などから導かれるものもあります。薬剤師法では、最低限の義務が課されているにすぎません。だからこそ、薬剤師法における義務の中に服用期間中のフォローアップが追加されたことは、薬剤師にとって大きな意味があります。この改正によって、これまで記録義務がなかった指導などについて、調剤録へ記載する義務が加わりました(なお、調剤録への記載は、これまでと同様に薬歴に記すことで義務を果たすことになると通知で示されています)。対人業務についても、必ず薬剤師に行ってもらわないと困るという期待の表れかもしれません。参考)・医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行に当たっての留意事項について(薬局・薬剤師関係)(薬生総発0831 第6号 令和2年8月31日 厚生労働省医薬・生活衛生局総務課長)・保険薬局の分割調剤及び調剤録の取扱いについて(保医発1110 第1号 令和2年11月10日)以上をまとめると、薬剤師法では、最低限薬剤師が「行わなければならない義務」が規定されていますが、注意を要するのは、「~はしてはならない」という規定にはなっていない点です。もちろん、医師法に定める医業や保健師助産師看護師法に定める療養上の世話・診療の補助は、他職種の独占業務ですので行うことはできませんが、それ以外は基本的に自由であり、調剤以外の健康サポートなど幅広い業務を行うことができます。なお、薬剤師の任務は薬剤師法第1条に以下のとおり定められています。(薬剤師の任務)第一条 薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。「調剤、医薬品の供給、その他薬事衛生」とありますが、最終目的は、「国民の健康な生活を確保する」ことです。この目的のために、最低限定められている以外にも、さまざまな業務を行ってこれを実現していくことが求められています。法律にもさまざまな定めがありますが、今後、薬剤師の活躍の場はどんどん増えていくことが想定されますので、最終的には「国民の健康な生活の確保になるかどうか」という意識を持っておくことは重要でしょう。今回でこのコラムも最後となりました。これまでお付き合いいただきありがとうございました。

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第46回 第4波を見据えてか!? 厚労省が「大学病院に重症患者を受け入れさせよ」と都道府県に事務連絡

大学病院や基幹病院は、重症患者受け入れをこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。まだ2月ですが、すっかり春めいてきました。この土日は暖かさに誘われ、街にも結構な人が出ていたようです。私自身は先週、所用があって宮城と岩手に出かけました。2月13日の地震で東北新幹線が止まっており、どうしたものかと困っていたのですが、知人から「常磐線は去年から通っているよ」と言われ、高速バスは止めて「特急ひたち」で4時間40分かけて仙台入りしました。JR常磐線は東日本大震災と東京電力の福島第一原発事故の影響を受け、昨年まで福島県の富岡駅~浪江駅間で不通になっていました。かつての不通区間を車窓から眺めたのですが、とくに双葉~浪江間は人の気配がほとんどなく、震災で崩壊したと思われる家屋がまだ数多く残っていました。10年経ったとは思えない風景が続き、言葉を失くしました。さて、今回は改めて新型コロナウイルス感染症患者の受け入れ体制について考えてみたいと思います。厚生労働省は2月16日、「新型コロナウイルス感染症の医療提供体制の整備に向けた一層の取組の推進について」と題する事務連絡を各都道府県等に発出しました。コロナ患者の受け入れについて、高度な医療を提供できる大学病院や地域の基幹病院が重症患者を、都道府県から指定を受けた「重点医療機関」は中等症患者を受け入れるなど、病院の役割分担を進めるよう、都道府県等に要請しました。とくに医療の需給が多い大都市圏を抱える都道府県では、公立・公的といった地域の中核病院の役割が重要で、こうした病院には必須の医療機能以外を他院と分担した上で新型コロナ対応を強化する、などの検討を求めました。一方、新型コロナの患者に応じていなかった回復期や療養型の病院も、中等症患者への対応を検討するよう要請しました。「大学病院を名指し」の背景第3波が落ちつき、病床に比較的余裕が出てきた今になっての事務連絡は遅過ぎる気もしますが、おそらく来るであろう「第4波」を想定してのことと考えれば納得できます。今回の事務連絡で注目されるのは、大学病院が重症患者を受け入れるよう都道府県等に要請している点です。その背景には、大学病院によって重症者の受け入れ患者数に大きな差があることなどが、マスコミや政治家などからの指摘があるようです。少し古くなりますが、2月9日の日本経済新聞朝刊は、「国立大の重症病床、コロナ活用半ば」という見出しで、国立大学病院が高度な技術を持つにもかかわらずコロナ重症患者の受け入れに活用されていない、という実態を報じています。同記事によれば、全国の重症者病床(ICU・ER・HCUの合計)は1万7,000床で、うち21%にあたる3,620床がコロナ患者用に確保されていたとのことです。これに対し、同紙の調査に回答した20の国立大学病院の重症者病床は計763床、コロナ患者用は131床と17%に留まっていました。同紙は回答のあった20病院のコロナ重症患者向け病床数も報じていますが、いろいろと話題となった旭川医大はわずか2床。緊急事態宣言下の府県の国立大としては京大が3床、患者数が最多の東京では東大が8床でした(東京医科歯科大は16床)。機敏に動く国立大病院もコロナ以外の高度医療への対応の必要性から、コロナ重症患者向け病床を抑える、という理屈はわかりますが、病床数が数床というのは気になります。国立大学病院は文部科学省管轄です。ただ、文科省から「病床を確保せよ」という命令が下されることはなく、基本的に都道府県の調整本部から依頼・要請があって対応することになります。数床しか確保していない大学病院は、何らかの理由をつけて、重症病床の確保を避けてきたとも考えられます。今回の事務連絡を機に、病床確保がスムーズに進むようになることを期待します。ちなみに、仙台にいる友人から聞いた話では、東北大学病院の場合、コロナ重症病床は5床ですが、東北大学診療所を院外に新設してドライブスルー方式のPCR検査外来に取り組んだり、軽症者等宿泊療養施設となったホテルへの医療支援(24時間オンコール対応)にも取り組んだりしているそうです。さらに東北大の医師が県の調整本部に入り、病床確保や入院調整なども担当しているとのこと。地方の国立大学病院は、各県にとっては最大規模かつ最高レベルの医療インフラと言えます。このコロナ禍の中、「うちは高度医療だから」とお高くとまらず、真に地域に役に立つ医療サービスの提供を行ってもらいたいものです。中身なし、医療関係団体の具体的方策ところで、1月に「第41回 コロナ対応病床増、感染症法改正か医療法改正か…。そこ結構大事では?」で書いた、医療関係団体の対策会議はどうなったのでしょう。日本医師会が中心となり、四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)と全国自治体病院協議会と共に立ち上げた「新型コロナウイルス感染症患者受入病床確保対策会議」は2月3日、「新型コロナウイルス感染症患者の病床確保等に向けた具体的方策」を取りまとめています。それによれば、「都道府県医師会、都道府県病院団体及び支部が連携して協議会を立ち上げ、都道府県行政との間で緊密な連携を取り」、受け入れ病床の確保策として、「協議会もしくは地域医療構想調整会議等にて都道府県調整本部等と連携し、受入病床の確保を行う」とのことです。大々的に対策会議を開いたにも関わらず、具体的方策の中身はあるようでない、というのが私の感想です。地域レベルでは病床確保がどうにもならなかったので中央の皆で検討したはずなのに、結局また各地域に丸投げする格好だからです。都道府県医師会新型コロナウイルス感染症担当理事連絡協議会において、猪口 雄二副会長はこの具体的方策について「日本医師会としても支援していくので、地域の事情に応じた対応をお願いしたい」と述べたとのことです。この「具体的方策」で果たして地域の医療機関が「よし、当院も」と動くでしょうか。西日本のある県では100近い民間病院がある中、コロナの軽中等症者を受け入れているのはわずか数院、という話もあります。感染者数が減少に転じ、民間病院へのバッシングも収まったことで、コロナ病床確保のための議論も中途半端ながらとりあえず終了と考えたのだとしたら、とても残念です。今の状況のまま、もし第4波が到来したら、次のバッシングはさらに厳しいものになるでしょう。

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光免疫療法 抗体薬物複合体アキャルックス、約20施設から順次拡大/楽天メディカルジャパン

 楽天メディカルジャパンは、2021年2月8日、光免疫療法の抗体薬物複合体であるセツキシマブ サロタロカンナトリウム(商品名:アキャルックス)、および同医薬品と組み合わせて用いる医療機器レーザ装置「BioBladeレーザシステム」を日本において2021年1月1日(レーザ機器本体は2020年12月14日)に販売を開始したと発表。また、同医薬品および医療機器による治療を開始または予定している医療機関についても、あわせて明らかにした。治療開始施設・愛知県がんセンター病院・国立がん研究センター東病院・東京医科大学病院治療開始予定施設・大阪国際がんセンター・大阪大学医学部附属病院・岡山大学病院・関西医科大学附属病院・九州大学病院・京都大学医学部附属病院・久留米大学病院・神戸大学医学部附属病院・埼玉医科大学国際医療センター・東京医科歯科大学医学部附属病院・鳥取大学医学部附属病院・広島大学病院・北海道大学病院・宮城県立がんセンター・横浜市立大学附属病院

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薬局への追加支援策 すでに補助を受けた薬局も20万円まで【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第61回

2020年12月15日に第3次補正予算案が閣議決定されました。その中に、「診療・検査医療機関の感染拡大防止等の支援」や「医療機関・薬局等の感染拡大防止等の支援」などの医療機関や薬局などに対する追加支援策が盛り込まれています。「診療・検査医療機関の感染拡大防止等の支援」は、都道府県の指定に基づき発熱患者などを対象とした外来体制をとる医療機関(診療・検査医療機関[仮称])が対象で、100万円が上限となります。上記以外の医療機関に対しては、「医療機関・薬局等の感染拡大防止等の支援」という追加支援がなされます。これらを重複して受けることは不可ですが、いずれも昨年夏に閣議決定・施行された第2次補正予算による「医療機関・薬局等における感染拡大防止等の支援」であれば、すでに一度補助を受けた医療機関や薬局も補助対象となります。今回は、薬局も対象となるこの「医療機関・薬局等の感染拡大防止等の支援」について紹介します。【対象医療機関】院内などでの感染拡大を防ぐための取り組みを行う保険医療機関、保険薬局、指定訪問看護事業者、助産所。【補助基準額(上限)】病院・有床診療所(医科・歯科):25万円+5万円×許可病床数無床診療所(医科・歯科):25万円薬局、訪問看護事業者、助産所:20万円【対象経費】2020年12月15日から2021年3月31日までにかかる感染拡大防止対策や診療体制確保などに要する費用(従前から勤務している者および通常の医療の提供を行う者に係る人件費は除く)。具体的な例としては、手指や物品消毒のアルコール、従業員のマスク、パーテーションの設置、待合室のフィジカルディスタンス対策、オンライン服薬指導に係る費用などが挙げられています。期間は限られていますが、コロナ対策の継続にもかなりの費用がかかっていますので、対象となる範囲が広いのは助かりますね。対象となる「費用」の範囲は意外と広い第2次補正予算による「医療機関・薬局等における感染拡大防止等の支援」において、薬局に対する補助金の上限は70万円もありましたが、意外と申請が少なかったという話を聞きます。補助の対象となる費用が「感染防止対策に関係するもの」に限定され、範囲が狭いと思われたのかもしれませんが、実は例示されていた消毒用アルコールなどの環境整備費などに加えて、日常業務に要する消耗品費や材料費、換気のための軽微な修繕費、水道光熱費、通信費、保険料、外部委託料、賃借料など幅広い費用が対象でした。対前年の売り上げ減少などの要件は入っていませんので、感染防止対策を行っている薬局であればほぼすべてが対象になると思われます。すでに1年以上コロナと闘い続けて「対策は完璧!」という薬局も多いかもしれませんが、せっかくの補助金ですのでぜひ活用し、薬局の感染予防対策や調剤体制を見直してみてはいかがでしょうか。参考1)厚生労働省「令和2年度 厚生労働省第三次補正予算案(参考資料)」2)日 本医師会定例記者会見(2020年11月25日)資料:厚生労働省「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」について

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第21回 高齢者糖尿病の感染症対策、どのタイミングで何をする?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第21回 高齢者糖尿病の感染症対策、どのタイミングで何をする?Q1 COVID-19流行による受診機会減少、運動不足解消への具体的な対応策は?COVID-19流行に不安を感じ、受診を控える患者さんは少なくありません。適切な通院間隔は個々の症例によって異なるため、一概には言えませんが、通院間隔が短いほうが血糖コントロールが良好となる傾向があります。糖尿病診療において血糖測定(およびHbA1c測定)は重要な要素であるため、自己血糖測定を行っていない場合にオンラインや電話診療のみで加療をするのは困難です。したがって、血糖コントロールが良好な状態が維持できていれば通院間隔を延長する(最大3ヵ月)、もともと不良であったり、悪化傾向がみられる場合には通院間隔を短縮するといった柔軟な対応が必要です。患者さんの背景にもよりますが、HbA1c 6%台であれば3ヵ月ごと(インスリン使用者は除く)、7%台であれば2ヵ月ごと、8%台であれば1ヵ月ごとなどの目安を患者さんに提示し、受診の必要性を理解していただくことも効果的です。COVID-19流行に伴い外出機会や活動量が低下した高齢糖尿病患者さんも多く経験します。高齢者は活動量が低下すると容易に筋力が低下しますので、活動量の維持は重要です。1人あるいは同居者とのウォーキングで感染リスクが高まることはまずないと考えますので、可能な方には、人込みを避けたウォーキングを推奨しています。また、室内でできる運動としてラジオ体操や当センター研究所 社会参加と地域保健チームで開発された「本日の8ミッション」などを提示しています。「本日の8ミッション」は、つま先あげや、ももあげ、スクワットなどからなり、チェックシートがホームページよりダウンロードできます。また、座位行動時間に注目した指導も有効です。ADA(米国糖尿病学会)によるStandards of medical care in diabetes 2020では座位行動時間の短縮が推奨されています。30分以上座り続けないことで血糖値が改善するといわれており1)、自宅にいても30分に1回は立ち上がるよう患者さんに指導しています。Q2 誤嚥性肺炎の効果的な予防法について教えてください高齢者肺炎の多くを占めると考えられているのが誤嚥性肺炎です。糖尿病患者は脳梗塞による嚥下障害や高血糖による免疫能低下を介し、誤嚥性肺炎のリスクが高いと考えられます。誤嚥性肺炎は、睡眠中などに口腔内の細菌が唾液とともに下気道に流入する不顕性誤嚥により生じると考えられており、口腔内を清潔に保つことが重要です。コロナ禍の現在でも歯磨き習慣の確認や口腔内のセルフチェックを促すことは重要です。嚥下機能が低下している場合には、嚥下機能の回復を目指したリハビリ(通院が困難な場合は在宅でも可能)や嚥下状態に合わせた適切な食形態への変更が必要です。鎮静薬や睡眠薬、抗コリン薬などの口腔内乾燥をきたす薬剤は嚥下障害をきたしやすいため、適切な使用がなされているか評価する必要があります。また、肺炎一般の予防として肺炎球菌やインフルエンザワクチンの接種も有効です。肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチンとも肺炎による入院減少が示されており、両者の併用により、さらに入院頻度が減少することが示されています2)。なお、経鼻胃管や胃瘻造設による誤嚥性肺炎の予防効果は示されていません。Q3 尿路感染症の効果的な予防法・無症候性細菌尿への対応は?糖尿病は尿路感染症のリスクであることが知られており、そのリスクは血糖コントロール不良(HbA1c 8.5%以上)により高くなります3)。また、糖尿病患者では男女とも無症候性細菌尿の頻度が高いことも知られていますが4)、一部の例外(妊婦、好中球減少、泌尿器処置前)を除き、無症候性細菌尿に対するスクリーニングや治療は推奨されません5)。ただし、SGLT-2阻害薬の使用は尿路感染症のリスクとなる可能性があるため、現時点で明確なエビデンスがあるわけではありませんが、使用開始前に評価し、無症候性細菌尿が認められれば、使用を慎重に検討する必要があると考えます。閉経後女性140名を対象とした無作為比較試験では、1.5L以上の飲水により単純性膀胱炎の発症を50%低下することが示されています6)。膀胱炎を繰り返す場合には神経因性膀胱を念頭とした残尿測定やエコーによる尿路閉塞の有無を確認する必要があります。再発性尿路感染症予防におけるクランベリージュースの有効性を検討した研究では、50歳以上の女性においてその有効性が示されていますが7)、否定的な意見もあり8)注意を要します。Q4 歯周病に対する評価や歯科との連携について高齢糖尿病患者では歯周病の罹患率が高く、血糖コントロールが不良であると歯周病が悪化しやすいことが知られています。歯周病が重症化すると血糖コントロールが悪化します。逆に治療により歯周病による炎症が改善すると血糖コントロールも改善することが報告されています9)。歯周病による歯牙の喪失は嚥下障害のリスクとなるほか、オーラルフレイルを介し、身体的フレイルおよびサルコペニアのリスクとなる可能性があるため、歯周病の評価・治療は重要です。高齢糖尿病患者で歯牙の喪失または歯周病があると健康関連のQOL低下は1.25倍おこりやすく、過去12ヵ月間歯科治療を受けていないと1.34倍QOL低下をきたしやすいという米国の70,363人の調査結果も出ています10)。歯科との連携に際し、日本糖尿病協会が発行している「糖尿病連携手帳」を利用することが多いです。「糖尿病連携手帳」にはHbA1cなどの検査結果を記載するページとともに眼科・歯科の検査結果を記載するページもあり、受診時に患者さんに持参していただくことで情報の共有が可能です。もともとの状態や血糖コントロール状況にもよりますが、一般に3~6ヵ月間隔での評価が推奨されています。1)American Diabetes Association. Diabetes Care. 2020 Jan;43:S48-S65.2)Kuo CS, et al.Medicine (Baltimore). 2016 Jun;95:e4064.3)McGovern AP, et al.Lancet Diabetes Endocrinol. 2016 Apr;4:303-4.4)Renko M, et al.Diabetes Care. 2011 Jan;34:230-55)JAID/JSC 感染症治療ガイドライン2015-尿路感染症・男性性器感染症-,日本化学療法学会雑誌 Vol. 64, p1-3,2016年1月.6)Hooton TM, et al.JAMA Intern Med. 2018 Nov 1;178:1509-1515.7)Takahashi S, et al.J Infect Chemother 2013 Feb;19:112-7.8)Nicolle LE. JAMA. 2016 Nov 8;316:1873-1874.9)Munenaga Y, et al.Diabetes Res Clin Pract. 2013 Apr;100:53-60.10)Huang DL, et al.J Am Geriatr Soc. 2013 Oct;61:1782-8.

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第38回 新型コロナワクチン接種開始に向けた具体的なスケジュール

<先週の動き>1.新型コロナワクチン接種開始に向けた具体的なスケジュール2.医師免許のマイナンバーカード搭載、2024年度から運用開始3.処方箋も紙から電子へ、2022年夏までにシステムを構築4.特別措置法と感染症法改正、通常国会に向けた尾身分科会長の基本方針5.今季のインフルエンザ141例、過去5年で最小/JMIRI6.コロナウイルスの猛威、老人福祉・介護事業者を直撃1.新型コロナワクチン接種開始に向けた具体的なスケジュール厚生労働省は、各都道府県に対し、通知「医療従事者等への新型コロナウイルス感染症に係る予防接種を行う体制の構築について」を発出した。医療従事者へのワクチンは、一般の接種と同様に市町村が主体となり、契約を締結した医療機関などにおいて実施されることとなった。対象となる「医療従事者等」には、以下が含まれる見込みである。1)病院、診療所において、新型コロナウイルス感染症患者(疑い患者を含む、以下同様)に頻繁に接する機会のある医師、その他の職員。2)薬局において、新型コロナウイルス感染症患者に頻繁に接する機会のある薬剤師その他の職員(登録販売者を含む)。3)新型コロナウイルス感染症患者を搬送する救急隊員など、海上保安庁職員、自衛隊職員。4)自治体などの新型コロナウイルス感染症対策業務において、新型コロナウイルス感染症患者に頻繁に接する業務を行う者。なお、(1)(2)は医療関係団体が、(3)(4)は都道府県が取りまとめを行う。接種場所については、全国で1,500施設に2月末までにディープフリーザーを配置するとされ、その配置先を「基本型接種施設」として接種を実施するほか、近隣に所在し、当該施設から冷蔵でワクチンの移送を受ける「連携型接種施設」において接種を実施することとなる。在庫管理などには、ワクチン接種円滑化システム(V-SYS)が用いられる。接種開始に向けた具体的な作業期限も1月末~2月上旬に定められ、各自治体や医師会、歯科医師会、薬剤師会、病院団体など地域の医療関係団体は体制整備を急ぐ必要がある。(参考)医療従事者等への新型コロナウイルス感染症に係る予防接種を行う体制の構築について(健健発0108第1号 令和3年1月8日)(厚労省)「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に係る手引き(初版)」(同)ワクチン接種、全国1万か所拠点に…氷点下75度の超低温冷凍庫を配備(読売新聞)2.医師免許のマイナンバーカード搭載、2024年度から運用開始厚労省は「社会保障に係る資格におけるマイナンバー制度利活用に関する検討会」の報告書を公表した。社会保障に係る31資格におけるマイナンバー制度の利活用に関して、届出の簡素化およびオンライン化、マイナポータルを活用した資格保有の証明、提示、人材活用などについてこれまでの議論をまとめている。今後、新規資格取得者については、各資格団体や事業者団体の協力を得て、免許証など申請書の提出時にマイナンバーの提供を求める呼び掛けが行われることになる。なお、実際の運用はデジタル・ガバメント実行計画に基づいて、2024年度に開始される見込み。(参考)「社会保障に係る資格におけるマイナンバー制度利活用に関する検討会 報告書」を公表します(厚労省)医師免許もマイナンバーカードに デジタル改革関連6法案の全容判明(産経新聞)3.処方箋も紙から電子へ、2022年夏までにシステム構築1月13日に開催された、第139回社会保障審議会医療保険部会において、電子処方箋の仕組みの構築について討論された。電子処方箋については、現在、導入を進めているオンライン資格確認の基盤を活用して2022年夏頃を目処に構築する。これにより、待ち時間の短縮や直近の処方・調剤情報の参照、重複投薬防止などメリットが期待される。運営主体は社会保険診療報酬支払基金および国民健康保険中央会があたり、すべての機能が稼働する2023年度でおよそ9.8億円の運用費用が見込まれている。一方、医療機関・薬局におけるオンライン資格確認の普及状況は、顔認証付きカードリーダー申し込み数が22万8,321施設中4万8,866施設(21.4%)であり、病院が29.4%に対して、医科診療所は14.5%と、クリニックなどで申請が遅れていることが明らかとなった。なお、公的医療機関などにおける申込率は、国立病院機構97.1%、労働者健康安全機構100%、JCHO98.2%と対照的であった。これに対して、周知が不十分であることや、マイナンバーカードの普及率が伸び悩んでいる現状での様子見、新型コロナウイルス感染症の影響もあるとし、追加的な財政支援策を周知するために、全医療機関などに対してリーフレットを再送付するなど働きかけを実施する予定。(参考)電子処方箋の仕組みの構築について(厚労省)オンライン資格確認導入に向けた準備作業の手引き(医療機関・薬局の方々へ)(同)4.特別措置法と感染症法改正、通常国会に向けた尾身分科会長の基本方針18日に召集される通常国会で、政府は、新型コロナウイルス対策の実効性を高めるための特別措置法や感染症法の改正案を提出する見通しとなっている。これに先立ち、15日の新型コロナウイルス感染症対策分科会で、尾身分科会長から提言について基本方針が示された。コロナウイルス患者の急増に対して、直ちに取り組むべき課題として、基本原則の維持を大前提としつつ、特別措置法は、都道府県知事からの要請にも十分な協力を得られるように早期に結論を出すことなどを求めた。感染症法でも、医療提供体制に関して、病床確保や入院調整については都道府県が総合調整の役割を果たすべきであり、入院の総合調整は都道府県の役割であることを法律上明確にするほか、クラスター発生時の人材派遣のあり方についてもより効率的・効果的な仕組みを検討する必要があるとした。(参考)新型インフルエンザ等対策特別措置法及び感染症法の改正に関しての基本的な考え(案)(尾身分科会長 提出資料)政府 通常国会にコロナ特別措置法改正案など63法案提出へ(NHK)5.今季のインフルエンザ141例、過去5年で最小/JMIRI今シーズンのインフルエンザの患者数は202年12月時点で2019年12月と比較して338分の1の141例と、過去5年で最小であることが明らかとなった。調剤薬局の処方データを元に処方箋データベースを運用、解析している医療情報総合研究所(通称JMIRI)が14日に発表した調査結果によると、とくに10歳未満のインフルエンザ患者数が激減していることからも、手洗いうがいなどの推奨により、保育園や幼稚園などで感染拡大が抑えられていることがわかる。例年インフルエンザは1~2月にかけて感染のピークを迎えるため、引き続き注意が必要であるが、コロナウイルス感染対策によって、この傾向が続くと見られる。(参考)インフルエンザ患者数は前年同月比 338 分の1 未成年、特に10歳未満のインフルエンザ患者数が大幅に減少~JMIRI 処方情報データベースにおける調査より~(医療情報総合研究所)20年12月 インフルエンザの流行みられず 患者数、直近5年間平均の169分の1 JMIRI調べ(ミクスオンライン)6.老人福祉・介護事業者の倒産件数、2000年以降最多2020年の老人福祉・介護事業の倒産件数が118件と、2000年の介護保険法施行以降で過去最多であることが明らかとなった。新型コロナウイルス感染拡大で、サービス利用者が減少し、さらに人手不足などによる経営状況の悪化が引き金となったとみられる。業種別では、「訪問介護事業」が56件と半数近く、負債総額はほとんどが1億円未満であり、経営基盤が脆弱なところが多かった。厚労省は2021年度の介護報酬を0.7%引き上げ、介護サービス事業者の経営を支援する方針だが、今年に入ってもコロナウイルス感染拡大が続き、経営の見通しは決して明るくない。今後、介護サービス提供の現場では、さらなる支援を求める声が上がると思われる。(参考)2020年「老人福祉・介護事業」の倒産状況(東京商工リサーチ)東京商工リサーチ、2020年「老人福祉・介護事業」の倒産状況調査結果を発表(日経新聞)

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6歳未満の乳幼児の調剤報酬上乗せ 要件は「とくに必要な感染予防策」【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第60回

年末から春は処方箋が増える時期ですが、新型コロナウイルス感染症によって昨年の同時期よりも少ないという薬局も多いと思います。実際、私が携わっている薬局は、小児科や外科からの処方箋が明らかに減っているという感覚があります。この状況は暖かくなる春ごろまで続く可能性もあるので、医療が必要な人が適切に治療を受けられているのかという問題だけでなく、薬局の経営や存続にも関わってきます。これに伴い、薬局を対象にした経済的な支援として、6歳未満の乳幼児の調剤報酬が上乗せされることになりました。厚生労働省は2020年12月15日、受診控えで小児科の患者が減って経営が悪化していることを背景に、事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その31)」を発出しました。これにより、新型コロナウイルス感染症が拡大している間は、6歳未満の乳幼児の処方箋受付の場合は12点を算定することができます。なお、保険医療機関の医科の場合は100点、歯科の場合は55点が算定できます。いずれも小児の外来診療などにおいて「とくに必要な感染予防策」を講じたうえで、保護者の同意を得ることが条件です。その「とくに必要な感染予防策」とは、以下のようなものです(同通知より一部改変)。COVID-19に特徴的な症状はなく、小児では出現しても訴えとして現れることが期待できないことから、1人の患者ごとに手指消毒を実施する。流行状況を踏まえ、家庭内・保育所内などに感染徴候のある人がいたか、いなかったのかを確実に把握する。環境消毒については、手指の高頻度接触面といわれるドアノブ・手すり・椅子・スイッチ・タッチパネル・マウス・キーボードなどは定期的に70~95%アルコールか0.05%次亜塩素酸ナトリウムを用いて清拭消毒し、とくに小児が触れる可能性が高い場所は重点的に行う。これらに関しては、オンライン診療・服薬指導では対象となりません。明確な基準による許可などがないため、加算を算定する場合は薬歴に記載するなど記録を残せばよいと思われます。現時点では、この加算は2020年度中(2021年2月診療分)までの措置とされており、それ以降は別途検討されます。これまで小児の感染者数はそれほど多くはありませんでしたが、英国で発見された新型コロナ変異株は子供にも感染しやすい可能性が示唆されています。新型コロナに特徴的とされている味覚・嗅覚異常は、6歳未満の乳幼児が訴えるのは難しいため、より慎重な対応が求められます。地域独自、時期限定の支援もそのほかの経済支援として、東京都では新型コロナウイルスに感染した患者を年末年始に受け入れる体制を強化するため、医療機関などに協力金を支給しました。保険薬局では、患者が年末年始であっても調剤を受けたり薬を購入したりできるように、1日8時間以上営業することを条件に1日3万円が支給されました。なお、医療機関に関しては、軽症・中等症の患者を受け入れた医療機関には1人1日当たり7万円、重症者の場合は30万円が支給され、すでに入院している患者も対象となりました。もしかしたら、こういった支援はゴールデンウイークなどの大型連休でもまた登場するかもしれませんので、通知などをチェックするようにしましょう。もう少し、もう少し、と思いながらコロナ禍でも業務を行ってきましたが、しばらくこの状況は続くと思ったほうがよさそうです。経済的な支援で利用できるものは利用しつつ、スタッフのメンタルケアや薬局の設備の見直しなども必要になってくるかもしれません。

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ゾレドロン酸の顎骨壊死発生率とリスク因子/JAMA Oncol

 ゾレドロン酸は、骨転移のあるがん患者において骨修飾薬(BMA)として用いられている。米国の多施設共同前向き観察コホート試験(SWOG Cancer Research Network S0702)の結果、投与後累積3年の顎骨壊死の発生率は2.8%であることが明らかにされた。JAMA Oncology誌オンライン版2020年12月17日号掲載の報告。 試験は、BMA治療が限定的または治療歴がなく、試験登録から30日以内、ゾレドロン酸の使用などの治療計画があり、骨転移のあるがん患者を対象とした。ベースラインおよび6ヵ月ごとに提出された医学的、歯科学的および患者によるアウトカム報告に基づき、顎骨壊死(確立された基準で定義)の発生を3年間にわたり追跡評価した。 主要評価項目は、確認された顎骨壊死の累積発生率で、頭蓋領域への同時放射線療法が行われていない状態で8週間以上、顎領域に骨の露出領域が認められた場合と定義した。 主な結果は以下のとおり。・SWOG S0702試験には、3,491例が登録された(女性1,806例[51.7%]、年齢中央値63.1歳)。1,120例が乳がん、580例が骨髄腫、702例が前立腺がん、666例が肺がん、423例がその他の悪性腫瘍であった。・ベースラインの歯科学的検査が行われたのは2,263例(64.8%)であった。・全体で、顎骨壊死の確定発生は90例であった。累積発生率は1年時0.8%(95%信頼区間[CI]:0.5~1.1)、2年時2.0%(1.5~2.5)、3年時2.8%(2.3~3.5)であった。・3年累積発生率は、骨髄腫の患者で最も高率だった(4.3%、95%CI:2.8~6.4)。・ゾレドロン酸の投与計画間隔が5週間未満だった患者は、5週間以上だった患者と比べて顎骨壊死の発生が有意に多かった(ハザード比[HR]:4.65、95%CI:1.46~14.81、p=0.009)。・顎骨壊死の発生率の高さは、歯の総数が少ないこと(HR:0.51、95%CI:0.31~0.83、p=0.006)、義歯(入れ歯)があること(1.83、1.10~3.03、p=0.02)、現在喫煙(2.12、1.12~4.02、p=0.02)と関連していた。

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COVID-19の対応には学会の叡智を結集/日本医学会連合

 日本の医学界を代表する学術的な全国組織の連合体である日本医学会連合(会長:門田 守人)は、1月4日に「日本医学会連合 COVID-19 expert opinion 第2版(2021年1月4日版)」を公開した。“expert opinion” は、COVID-19にevidence based medicineのガイドラインを作成できるような確固としたclinical evidenceが不足していることから「expert opinionとして取り纏め、今後新しいevidenceが蓄積するとともにreal timeに改訂していく」「読みやすい簡潔なものとし、詳細は各学会のhomepageの該当箇所などのリンクを案内する」とし、関連学会との協力の下、迅速な作成を目指し作られた。 このexpert opinionの活用に際しては、「各学会が対象とする患者層は同じCOVID-19患者でもそれぞれ異なるので、同じ治療法でも異なる推奨や考え方が提示されていることがある」と前置きした上で、「推奨のばらつきは、COVID-19患者群の中に存在する多様性を反映したもので、expert opinionの使用では、他のガイドラインと同様に各々の推奨を診療にあたる患者さんの状況に応じて柔軟に使用する必要がある」と注意を促している。 具体的に、たとえば一般外来では、「感染防御」、「診断・検査の進め方」、「服用中の薬剤」にわけて記述され、最新の知見が説明されているほか、必要に応じて各所属学会や海外学会へのリンクなども充実している。主な内容・一般外来・救急外来・入院(内科系)・入院(外科系)・入院患者の見舞いの対応・集中治療と呼吸管理・合併症・特殊な状況の対応:移植医療における対応・特殊な状況の対応:小児・特殊な状況の対応:産婦人科・内視鏡対応:・こころのケア(患者および医療従事者)・口腔科(歯科口腔外科)診療と医科歯科連携・復職・復学(通常の職種、医療従事者)

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第39回 三浦瑠麗氏の痛烈発言から見えてくる、日本の医療体制分断の実像

9つの医療団体が開いた異例の合同記者会見こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。年始年末は実家のある愛知に帰り、一人暮らしの父親のために雑煮を作るなどしていました。世間の風潮は「帰省は自粛」でしたが、89歳の父親がモチを喉に詰まらせるリスクや、私がコロナを感染させるリスクなどのさまざまな要因を勘案した結果、万全の対策を取ったうえで帰省することにしました。帰りしなに約50年ぶりに父親からお年玉をもらったので、帰省してよかったとは思います。あとは10日間ほど何事もなければ…。さて、本年も当コラムをよろしくお願いします。政府は首都圏1都3県に今週中にも緊急事態宣言を出す方向で調整に入りました。それだけ新型コロナウイルス感染症の患者数が増え、医療体制が逼迫してきたということですが、年末にこれにまつわる興味深いニュースがありました。12月21日に日本医師会をはじめとする9つの医療団体のトップが異例の合同記者会見を開いた、翌22日のことです。21日の合同記者会見では、日本医師会の中川 俊男会長が「全国の医療提供体制がひっ迫の一途をたどり、日本が世界に誇る医療制度が風前のともし火になっている。過酷な医療の現場にも思いをはせ、今できる対策は全部実行してほしい」と述べ、「医療の緊急事態」を宣言し、一層の感染防止対策に協力を呼び掛けました。また、日本病院会の相澤 孝夫氏会長も「折れそうな心を支えながら、必死に医療を提供してきたわれわれの努力は、これ以上、感染者が増えては、まったく報われない。国が先頭に立って、国民の移動や行動を制限することを、政策として掲げてほしい」と述べました。合同記者会見には、東京都医師会の尾崎 治夫会長、日本歯科医師会の堀 憲郎会長、日本薬剤師会の山本 信夫会長、日本看護協会の福井 トシ子会長、全日本病院協会の猪口 雄二会長、日本精神科病院協会の長瀬 輝龍副会長、日本医療法人協会の伊藤 伸一会長代行も出席していました。「重要なことが隠された会見」翌22日、テレビのワイドショーなどで活躍する国際政治学者(らしいです)の三浦 瑠麗氏がフジテレビの朝の番組「とくダネ!」で、この合同記者会見に噛みつきました。メインキャスターの小倉 智昭氏にコメントを求められた三浦氏は、「重要なことが隠された会見だったと思います」と切り出し、「コロナ患者を診ている公立病院を中心とした一部の志ある病院と、主に会見に出て話されたコロナ患者について受け入れを拒否されている私立病院の大半の方々との間で、全然違う環境にあるにもかかわらず、“我々医療従事者は”と仰る」と、中川会長らの発言を皮肉ったのです。さらに三浦氏は、旭川医科大学の学長が、同じ旭川市でクラスターが発生し、機能停止に陥った吉田病院からの患者受け入れを「経営難に陥るから」という理由で拒否し、吉田病院が「なくなればいい」と暴言を吐いたという週刊文春の記事を紹介。「もっと致死率が高くて感染力の高いウイルス持つ感染症患者が来ても、これまで“聖職者です”と言ってきた医療従事者は拒否するんですか? そういったことを曖昧にしたまま、すべてを国民の責任にしてますよね」と語り、「なぜ医療体制がこんなに簡単に崩壊してしまうのか、という分析は1つもない。ごく少数の病院が医療崩壊すれば医療崩壊と言うが、その他の病院が医療崩壊しているわけではない。ごく少数の病院だけにコロナ患者を集中させたことで、そこが悲鳴を上げている」と現在のコロナ患者受け入れ体制を批判しました。三浦氏の発言はネット上でも話題に三浦氏の認識には一部誤解もあるようですが、ある部分は的を射ており、医療関係者の中には「痛いところを突かれた」と思った方もいるのではないでしょうか。医療団体の代表が集まって国民にお願いをしているが、最初の緊急事態宣言の頃から、医療提供体制の拡充のために何をやってきたかについて詳しい説明がない、というのは確かに三浦氏の言う通りです。大手マスコミは医療者の代表の意見として、中川会長の発言を取り上げますが、その中身を批判することはまずありません。しかしながら、日本医師会自体は主に診療所開業医を中心とする団体です。コロナ患者の急性期医療に携わっている会員医療機関は、三浦氏も指摘したようにごく一部だと思われます。もちろん、地区医師会有志によるPCR検査の実施など、コロナ医療に貢献している医師会員は少なくないと見られますが、それとコロナ診療最前線の医療崩壊とは、少々次元の違う話です。なお、この三浦氏の発言はネット上でも話題となりました。22日付のライブドアニュースは、「『とくダネ!』三浦 瑠麗氏、医師会の会見に「全てを国民の責任にしている」痛烈批判で賛否の声」と報じ、SNS上での「よくぞ言ってくれた。感謝!! 日本医師会の欺瞞を暴いてくれた。この勇気に感服。前線で身体を張って頑張っている医療従事者には感謝しか無いが、その人たちの代表は日本医師会では断じて無い」といった声を紹介しています。医療提供体制の“分断”が顕在化新型コロナ感染症の感染拡大で徐々に明らかになってきたのは、日本の医療提供体制における“分断”ではないでしょうか。日本には国民皆保険制度があり、かつ誰もがどこの医療機関にもかかれるフリーアクセスが確保されているので、平時であれば国民は医療機関探しに困ることはほとんどありません。しかし、今回のような有事になると、平時には見えなかった医療機関間の能力差、キャパシティ、経営方針の違いなどが一気に顕在化し、アクセスが難しくなります。さらには、本当に必要とされている医療を提供しない(できない)医療機関が現れると、局所的に医療崩壊の危険性が高まります。12月29日付の日本経済新聞は「コロナ危機対応 浮かんだ課題」と題する特集記事を掲載、医療体制の問題点を指摘しています。同記事はコロナ患者受け入れについて「厚労省の9月末時点の調査では、全国の病院のうち受け入れ実績があったのは2割だけだった。容体が急変しやすい急性期の治療を担う病院の受入状況は数の少ない公立・公的病院の受け入れ率が過半を超えるのに対し、数の多い民間病院では1割強にとどまった。民間は経営への影響を恐れ、後ろ向きになりがちだ」と書いています。また、こうした公民の差だけでなく、大学病院間でも受け入れ態勢に差があるようです。たとえば、東京都文京区には国立大学病院が2つありますが、コロナ患者に対応する病床数には大きな開きがあると聞いています。もちろん、コロナ対応だけが大学病院の使命ではありません。しかし、国難とも言える緊急事態への対応として、もっと機能的で強制的な病床活用の仕方があってもいいでしょう。そのあたりは、これからの地域医療構想の議論とも関連してくることですが、「将来」ではなく「今」どうするかを早急に考えないと、本当の医療崩壊が始まってしまいます。日本病院会会長だけの記者会見でもよかったのでは「三浦氏はテレビのコメンテーターに過ぎず、その発言を気にすることはない」という声もあるようです。しかし、今回は意外と核心を突いた発言だと言えます。こうした意見が厳然とあることを医療関係者(とくにトップ)は頭に入れておく必要があるでしょう。今後、さらに医療体制が深刻化したとき、彼女は同様の発言を繰り返すに違いありません。ちなみに三浦氏は自民党政権とも近く、政府の成長戦略会議の有識者委員も務めています。最後に、今回の合同記者会見ですが、医療に詳しい人であればあるほど、茶番にしか見えなかったのではないでしょうか。日頃、診療報酬のパイを奪い合っている者同士が神妙な面持ちで座り、ただただ国民にお願いをし、正論を述べていただけなのですから…。私としては、あの会見は日本病院会の相澤会長が単独でやるべきではなかったかと思います。重症例を含め、新型コロナウイルス感染症の患者を最も多く受け入れているのは日本病院会の会員施設だからです。医療者の団体にはいろいろなしがらみがあるでしょうが、国民に心から訴えるには、やはり茶番では無理だと感じた年末年始でした。※本記事の内容は筆者の見解であり、ケアネットの見解を述べるものではございません。

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すでに一度補助を受けた医療機関も対象、国による追加支援策/日医

 第3次補正予算案が12月15日に閣議決定され、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえ、医療機関に対する更なる支援策が講じられている。この中には、第2次補正予算による補助を受けた医療機関が、改めて対象となる支援策も含まれる。12月23日の日本医師会定例記者会見において、松本 吉郎常任理事が支援策の全体像を整理し、有効活用を呼び掛けた。診療・検査医療機関の感染拡大防止等の支援に100万円 都道府県の指定に基づき発熱患者等を対象とした外来体制をとる医療機関(診療・検査医療機関[仮称])については、100万円を上限とした追加支援が決定した:[診療・検査医療機関の感染拡大防止等の支援]対象医療機関:院内等で感染拡大を防ぐための取組を行う、都道府県の指定を受けた診療・検査医療機関(仮称)※ 「診療・検査医療機関の感染拡大防止等の支援」または「医療機関・薬局等の感染拡大防止等の支援」のどちらかの補助を受けることができる(両方の補助を重複して受けることはできない)。※ 二次補正予算による「医療機関・薬局等における感染拡大防止等の支援」の補助を受けた医療機関も補助対象。※ 令和2年9月15日の予備費による「インフルエンザ流行期における新型コロナウイルス感染症疑い患者を受け入れる救急・周産期・小児医療機関体制確保事業」の感染拡大防止等の補助を受けた医療機関は対象外。補助基準額:100万円を上限として実費を補助対象経費:令和2年12月15日から令和3年3月31日までにかかる感染拡大防止対策や診療体制確保等に要する費用(従前から勤務している者および通常の医療の提供を行う者に係る人件費は除く)※ 感染拡大防止対策に要する費用に限られず、院内等での感染拡大を防ぎながら地域で求められる医療を提供するための診療体制確保等に要する費用について、幅広く対象となる。例:消毒・清掃・リネン交換等の委託、感染性廃棄物処理、個人防護具の購入、寝具リース、CTリース等医療機関・薬局等の感染拡大防止等の支援に25万円 診療・検査医療機関(仮称)以外の医療機関に対しては、病床数等に応じて以下の追加支援が行われる:[医療機関・薬局等の感染拡大防止等の支援]対象医療機関:院内等での感染拡大を防ぐための取組を行う、保険医療機関、保険薬局、指定訪問看護事業者、助産所※ 「診療・検査医療機関の感染拡大防止等の支援」または「医療機関・薬局等の感染拡大防止等の支援」のどちらかの補助を受けることができる(両方の補助を重複して受けることはできない)。※ 二次補正予算による「医療機関・薬局等における感染拡大防止等の支援」の補助を受けた医療機関も補助対象となる。※ 令和2年9月15日の予備費による「インフルエンザ流行期における新型コロナウイルス感染症疑い患者を受け入れる救急・周産期・小児医療機関体制確保事業」の感染拡大防止等の補助を受けた医療機関については、三次補正予算の「医療機関・薬局等の感染拡大防止等の支援」の方が補助上限額が高い場合は、差額分を補助。補助基準額:以下の額を上限として実費を補助・ 病院・有床診療所(医科・歯科) 25万円+5万円×許可病床数・ 無床診療所(医科・歯科) 25万円・ 薬局、訪問看護事業者、助産所 20万円対象経費:令和2年12月15日から令和3年3月31日までにかかる感染拡大防止対策や診療体制確保等に要する費用(従前から勤務している者および通常の医療の提供を行う者に係る人件費は除く)※ 感染拡大防止対策に要する費用に限られず、院内等での感染拡大を防ぎながら地域で求められる医療を提供するための診療体制確保等に要する費用について、幅広く対象となる。例:消毒・清掃・リネン交換等の委託、感染性廃棄物処理、個人防護具の購入、寝具リース、CTリース等※ 看護師等が消毒・清掃・リネン交換等を行っている場合は、看護師等の負担軽減の観点から、本補助金を活用して、民間事業者に消毒・清掃・リネン交換等を委託することが可能。 小児診療や回復患者受け入れ医療機関への支援策を含め、補助内容の全体がまとめられた資料はこちら。申請に当たっての質問・相談等に対応するコールセンターについても案内されている。これまで金額の過少申請があった場合も、都道府県に相談を 12月22日には、厚生労働省から事務連絡が発出され、支援事業の対象となる費用や申請方法等についてQ&Aがまとめられた。医療機関が対象となる経費を誤認して金額を過少に申告した場合の再申請についても、「事業実施主体である都道府県に相談して、都道府県が認める場合、再申請することは差し支えない」と記載されている。

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乳幼児診療に感染予防策加算上乗せ、診療科問わず/日医

 厚生労働省は、小児診療の実態や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の回復後における継続的治療の必要性などの観点から、新型コロナ感染が急速に拡大している間の特例措置として、2020年12月15日付けで事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その31)」を発出した。 「外来における小児診療等に係る評価」と「新型コロナウイルス感染症からの回復患者の転院支援」に関する上乗せ加算が軸となっている。これに対し、16日に実施された日本医師会の記者会見で、松本 吉郎常任理事が補足説明を行った。乳幼児への外来診療などに感染予防策加算上乗せ(1)外来における小児診療等に係る評価 今回、感染予防策実施について、より配慮が求められる6歳未満の乳幼児への外来診療などに対する評価として、通常の乳幼児加算に上乗せで医科100点、歯科55点、調剤12点を特例的に算定できることとなった。これは、『小児の外来診療におけるコロナウイルス感染症2019(COVID-19)診療指針』を参考に、感染予防策を講じた上で外来診療などを実施した場合、初診・再診に関わらず算定可能。(2)新型コロナウイルス感染症からの回復患者の転院支援 COVID-19から回復した後、引き続き入院管理が必要な患者を受け入れた医療機関において、必要な感染予防策を講じた上で入院診療を行った場合の評価を3倍に引き上げ、これまでの250点から750点となった(臨時特例二類感染症患者入院診療加算)。 なお、算定に当たっては、患者またはその家族に対して、院内感染予防に留意した対応をしっかり行っている旨を十分に説明し、同意を得る必要がある。松本氏は、「医療現場の皆さまには一定の負担をかけることになるが、口頭で構わないので説明と同意への対応をお願いしたい」と理解を求めた。乳幼児診療への感染予防策加算は小児科に限定されない 記者会見では、補足説明として「両加算は発出時点(12月15日)から算定可能」「乳幼児診療への加算は小児科に限定されず、病院・診療所も問わない」「あらゆる現行の算定に対して上乗せで算定できる」などが示された。松本氏は、「まずは今回の措置をきっかけに、医療機関が継続的に感染予防策に取り組むことで、受診をためらっていた患者・家族に安心を与え、疾病の悪化や健康への悪影響が少しでも軽減されることを期待している」と述べた。 日本医師会は、今回の措置も不可欠だが決して十分ではなく、COVID-19に対応する全国すべての医療機関・医療従事者に対して、精神的ケアと人的・物的サポートが提供され、崩壊が進む医療提供体制の立て直しの一助となるよう、さらなる対応を引き続き要望していくとした。

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