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准教授 長谷部光泉 先生「すべては病気という敵と闘うために 医師としての強い気持ちを育みたい」

1969年9月14日生まれ。博士(医学)、博士(工学)。1994年3月慶應義塾大学医学部医学科卒業後、同大学病院にて研修94年4月同大学大学院医学研究科博士課程。96年11月ハーバード大学医学部放射線科心臓血管造影およびIVR部門留学(~99年)。98年4月同大学医学部助手。04年4月同大学理工学部機械工学科・鈴木哲也研究室共同研究員および医療班チームリーダー。05年4月国家公務員共済組合連合会立川病院放射線科医長。08年4月東邦大学医療センター佐倉病院放射線科講師。09年8月同病院放射線科准教授。日本血管内治療学会評議員。日本IVR学会代議員、他。10年日本学術振興会 榊奨励賞受賞、第96回北米放射線学会Certificate of Merit受賞、他多数。低侵襲治療としてIVRカテーテル治療に大きな魅力を感じた放射線科領域を大別すると、X線検査、CT、MRI、核医学検査などに代表される放射線診断学とがん治療に代表される放射線治療学があります。CT、MRIなどが登場する前から存在した「血管造影法」は、私が専門とする放射線診断学の根幹です。血管のない臓器は存在しないため、古くから重要な診断法として発展してきました。しかしながら、CT、MRIなどの医療機器の技術革新によって血管造影の役割も変わってきました。皮膚に局所麻酔をしてほんの2㎜だけの傷をつけるだけで血管内に「カテーテル」と呼ばれる管を挿入し、臓器に直接アプローチできるので、たとえば循環器領域であれば心臓にアプローチして狭心症や心筋梗塞を治す。消化器領域では、肝臓がんであれば肝動脈塞栓術のように大腿動脈から患部のすぐそばまで細いカテーテルを挿入して抗がん剤を流して腫瘍を兵糧攻めにする。脳神経領域では、急性期の脳梗塞の血栓溶解療法や動脈瘤を詰めることもできます。また、下肢の動脈硬化の場合、風船付きカテーテルを挿入し直接狭くなった血管を広げ、歩けなかった患者さんが歩いて帰えれるようになる。CTやエコー、MRIなどの画像支援の下に血管内だけでなく臓器を直接穿刺して治療する。画像を使った血管内治療および血管以外の臓器などに対する、画像支援下の低侵襲治療、これが私の専門領域です。医学の世界に入った当初から、IVR(インターベンショナルラジオロジー)に興味があり魅力を感じていました。これからの治療は、身体に大きくメスを入れて手術するだけではなく、患者さんに優しい治療でありながら効果的な治療が求められています。カテーテルの技術にせよ、医療器具にせよ、どんどん進歩してくるであろうと考えました。その進歩と共に、カテーテル治療が今後の医療現場において主流になってくるのではないかとも考えていました。それは現実になってきていると確信しています。IVR治療で劇的に変わる患者さんのQOLIVRでできることは血管を開く、詰める、溶かす、生検のための組織を切除して取り出す、直接腫瘍を穿刺して治療する、簡単にいうとこれらが主な分野です。具体的には、動脈硬化で詰まった血管を開き、血栓で詰まった血管を溶かすことができる。体を大きく切開することなく組織を取り出し診断を確定する、ドレナージといって体内の深い部分の膿をCT・エコー・MRIで見ながら吸い取る。詰めるは塞栓術といって、肝臓がん治療の他、体の中で緊急出血した場合、血圧が低下し、身体を大きく開くことはできないので、救急治療として金属のコイルを詰めて止血し、一命を救うこともできます。今までは大きく開腹、開胸しなくてはならなかった手術が、IVR治療によって足の付け根や腕の部分を局所麻酔で2から3mm切開し、動脈や静脈にカテーテルを挿入して治すことができるようになっています。これにより患者さんの入院日数は劇的に短縮されました。局所麻酔のため危険性も減りますし、入院期間も短くなり、痛みが少ないなど多くのメリットがあります。心臓疾患の場合、以前ならば最低でも1から3ヵ月の入院を余儀なくされましたが、IVR治療では、長くて10日、われわれは3日から1週間入院を目安にしています。ただし、入院期間が短縮されたからといって、簡単な病気だったと勘違いはしないでほしい。血管内で手術は行われていますから、それなりのリスクがあることも十分知っておいてほしいと思います。患者さんにとって簡単そうに思えるIVR治療ですが、医師としては熟練した手技と全身疾患に対して知識や経験がないとできない分野です。実際に治療を行えるようになるまでには、綿密なトレーニングが必要です。東邦大学では後期研修医あるいは大学院生の1年目から血管内治療のトレーニングを本格的に重ねてもらいます。われわれの科では、画像診断もやりながら低侵襲の治療をする、研究にも取り組み積極的に国内外の学会で発表するという3本の柱を忘れることなく、必死で若手の医師が毎日を過ごしています。臨床医としての経験を活かした研究開発私がこの世界に入った時にはすでに、血管内治療のデバイスであるステントやバルーンの8割が輸入品でした。許認可の問題もあって、欧米の製品を平均2年遅れで買わなければいけない現状があります。その上、必ずしも日本人に適しているデバイスではありません。日本人にとって使いにくくて直してもらうにしても、製品ができあがってくるまでに1年、2年、3年かかる場合もあります。目の前の患者さんを治せるツールがあるのに、サイズが合わないだけで使えないという現実にジレンマを感じていました。私が慶應の研修医だった当時、恩師で、放射線医の第一人者であり、日本のIVRの父ともいえる平松京一教授(当時)の計らいで、医師になってから2年半後にハーバード大学で研鑚(けんさん)を積むようにと言われました。そこで約3年半、留学することになってしまいました。研修医が終わったばかりで、何の実力もないし、研究歴もなかった。渡米前には、多くの上司にも心配されました。ハーバード大学で最初の数ヵ月はお客さん扱いでしたし、もう帰国しようかとどまろうかと考えながら細々と実験を始めました。その実験データを基に数ヵ月後に書きあげたプロトコールが運良く認められて潤沢な公的研究費が与えられて、それをきっかけに状況が変わりました。そこのチームのチーフに任命され、血管の中の遺伝子治療研究が始まりました。詰まった心臓血管の中にステント(金属のメッシュ状の筒)を入れると、再狭窄が起こります。ステントは血流を劇的に改善しますが、血管を無理に開くため血管の内皮細胞や血管平滑筋細胞に傷がつきます。血管には破れると修復する作用があって、傷を修復する過程で、金属の周囲に血栓が付き、その刺激が過剰平滑筋細胞の増殖を促し、血管がまた詰まってしまうのです。それを治すために特殊なバルーンカテーテルというのを用いてそこから薬剤を出す。当時は、ステント留置後、20%から40%は半年後には詰まるといわれていました。確かに、血管内の遺伝子治療は実験的に成功し、米国IVR学会やNIHなどで受賞しました。けれども、やはり金属ステントそのものの留置が「諸刃の剣」だということに気づき、帰国後、材料工学の研究を独学で始めました。体になじみにくい金属が、長期的によい成績をだせるわけがないと考えたからです。しかしながら、金属の特性としてしなやかさや耐腐食性などを上回る素材はなかなかありません。それならば、既存のものにコーティングを施したらどうか、と考えました。ただし、コーティングするにしても体に害を及ぼすものでは当然使えません。行き着いたのがダイヤモンド系のコーティングでした。ダイヤモンドは、「物質の王様」といわれるだけあって、非常につるつるしているばかりではなく、耐摩耗性という特性があり、さらに炭素は身体を構成する成分の一つなので、人体に悪影響を及ぼしません。現在、主流となっている薬剤溶出性ステントから出てくる薬剤は薬効が強く正常の血管内皮細胞にダメージを与えるものが主流ですが、ダイヤモンドというのは化学的に安定しているばかりでなく、細胞に毒性を与えない特性を持っています。われわれは、さらにダイヤモンド系コーティングにフッ素を混在させることによって、血液の付着も防げることを初めて発見しました。つまり、フッ素を添加したDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)というコーティングは、血液をはじき付着を防ぐので、血栓ができにくい。さらに、血管内に残るのは炭素を主流とするダイヤモンド系素材なので、身体に悪いものではありません。これらの研究開発には、医学の知識だけではなく工学知識の力が不可欠でした。そこで、臨床医の立場で工学との通訳をしなければいけないと痛感しました。なぜならば、工学の思考と医学の研究者の思考回路はまったく違うからです。ですが、工学者も研究の応用の幅を広げたいと考えているし、医学者もテクノロジーを利用する考えが必要です。互いの歩み寄りを円滑にするために、私は医学部の栗林幸夫教授のご指導の下、医学博士を取得し、その後、工学部の鈴木哲也教授の下で工学博士を取得しました。これからも研究開発において、医工連携のための通訳になれたらと思いますし、私に続く若い医師や研究者を育成することに力を注いでいます。ゼロからのスタートに惹かれ挑戦慶應からこちらへ来たのは、ここはほぼゼロからということに興味を持ちました。現在の教室の寺田一志教授の誘いもあり、今までやってきたことをここで一度リセットして挑戦してみるのもいいだろうと考えました。慶應もいい環境ではありましたが、東邦大学の伝統と自由な気風、研究に対しても「自由にやれ」というムードがありました。特に、東邦佐倉病院では、他の臨床医の方々も、慶應から来た新参者にすごく親切にしてくれて、雰囲気もよかったし、全体的にやる気の気運が高まっている瞬間でした。今では県内でもトップクラスのIVR症例数を誇る施設になりつつありますが、こちらに来た当時はIVR治療もあまり積極的に行われていませんでした。それでも、循環器センターや消化器センターなど各診療科の多くの先生のご協力があって、現在にいたっています。これは、東邦大学の気風とセンター単位で行われるチーム医療にうまく融合した結果だと思います。前病院長の白井教授が臨床・研究に対する基礎を構築し、現在の田上病院長を中心にした執行部の積極的な支援の賜物だと思います。当院循環器センターの専門外来である「血管内治療・IVR外来」は、循環器内科医、心臓血管外科医、臨床検査医、放射線科医、心臓リハビリ医、形成外科医、糖尿病代謝内科医など本当の意味でのチーム医療ができるように構築してきました。カンファレンスの意思が医師同士の間で一貫しているというのは、患者さんにとっても安心できることだと思います。臨床としては主に肝臓がんや救急出血や動脈瘤などの塞栓術と下肢の閉塞性動脈硬化症(ASO: arteriosclerosis obliterans)に伴い、詰まってしまった血管の血管形成術がメインです。糖尿病や動脈硬化で足が壊死してしまうのを治療するのがメインです。私にとって医療器具の研究はライフワークですが、実は臨床が9割。この臨床の経験があるからこそ研究のテーマが明確に打ち出せるのだと思います。これからは教育にも力を注ぐ私がこれから望むものは、若い人の教育です。まだ私も若いですけど……(笑)。若い人を教育するということは、自分が教育されることでもあります。教えるというのは、教えられることでもあります。先入観のない眼で若い人と日本から何かを発信したい。座右の銘は「感謝して今日もニコニコ働きましょう」。決して一人で仕事をしているのではなく、周りのスタッフ、上司、親、自分の周りの人すべてが笑顔でいられる医療をやりたい。そのために臨床はもちろん、研究や医療器具の開発もしたい。若い医師には、どんどん広い世界を見て、自分のアイデンティティ、日本人であるとか医師になるという明確な自覚を持ってほしい。勇気を持って新しいことにもチャレンジしてほしい。それらを一緒にやっていきたい。だからうちの科では工学部との交流や留学なども積極的にプログラミングしています。若いうちから何でも経験させ、国際学会発表も全員が入局2年以内に経験するように指導しています。敵は病気なので、最高の技術、最高の人間性、患者さんを治したいという気持ちを強く身につけてほしいと考えています。是非、そんなピュアな高い志を持った若い先生と学閥や分野を越えて一緒に働きたいという希望を持っています。質問と回答を公開中!

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抗菌性創傷被覆・保護材「アルジサイト銀」新発売

 スミス・アンド・ネフュー ウンド マネジメント株式会社は、本邦初のアルギン酸カルシウム繊維に銀イオン効果をプラスさせた抗菌性創傷被覆・保護材『アルジサイト銀』を2011年1月1日に発売した。アルジサイト銀は滲出液と細菌の両方をコントロール アルジサイト銀は、創傷の治癒を遅らせる過剰な滲出液と細菌の両方をコントロールできる製品。天然素材由来のアルギン酸繊維が創傷の滲出液を吸収し、ゲル化することにより創傷に適切な湿潤環境を提供し、治癒を促進するという。また、滲出液の吸収と同時に放出された銀イオンには、滲出液と共に被覆材内に流入した細菌や創傷接触面の細菌に対し抗菌効果を発揮することにより、創傷を清浄化し、治癒を促進する効果があるという。また、血液凝固第IV因子であるカルシウムイオンの効果も期待できるとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://wound.smith-nephew.com/jp/node.asp?NodeId=4117

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トラネキサム酸が、出血性外傷患者の死亡リスクを低減:2万例の無作為化試験

出血性外傷患者に対して、トラネキサム酸(商品名:トランサミンなど)短期治療を早期に開始すると、安全性を保持しつつ死亡リスクが有意に改善されることが、イギリスLondon School of Hygiene & Tropical MedicineのHaleema Shakur氏らが実施した「CRASH-2試験」(http://www.crash2.lshtm.ac.uk/)の結果から明らかとなった。外傷による院内死亡の約3分の1は出血が原因であり、多臓器不全による死亡にも出血が関与している。トラネキサム酸は、待機的手術を施行された患者の出血を低減させる可能性が示唆されているという。Lancet誌2010年7月3日号(オンライン版2010年6月15日号)掲載の報告。40ヵ国、2万例の外傷患者のプラセボ対照無作為化試験CRASH-2試験の研究グループは、外傷患者に対する短期的トラネキサム酸治療の早期投与が、死亡、血管閉塞性イベント、輸血の費用に及ぼす効果を評価するためにプラセボ対照無作為化試験を実施した。40ヵ国274施設から重篤な出血あるいはそのリスクを有する2万211例の外傷患者が登録され、8時間以内にトラネキサム酸を投与する群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられた。トラネキサム酸は、10分以上かけて1gを負荷投与したのち、8時間で1gを静注投与することとした。患者および試験関係者(各施設の担当医師、試験運営センターのスタッフ)には、治療割り付け情報は知らされなかった。主要評価項目は受傷後4週以内の院内死亡とし、死亡原因を出血、血管閉塞(心筋梗塞、脳卒中、肺塞栓)、多臓器不全、頭部外傷、その他のカテゴリーに分けて解析した。全死亡が有意に9%低下、出血による死亡リスクも有意に15%改善トラネキサム酸群に1万96例が、プラセボ群には1万115例が割り付けられ、それぞれ1万60例、1万67例が解析の対象となった。全死亡率は、プラセボ群の16.0%(1,613/1万67例)に対し、トラネキサム酸群は14.5%(1,463/1万60例)と有意に抑制された(相対リスク:0.91、95%信頼区間:0.85~0.97、p=0.0035)。出血による死亡リスクも、プラセボ群の5.7%(574/1万67例)に対し、トラネキサム酸群は4.9%(489/1万60例)と有意に低下した(相対リスク:0.85、95%信頼区間:0.76~0.96、p=0.0077)。著者は、「トラネキサム酸は、出血性外傷患者の死亡リスクを安全に低減する。これらの結果に基づき、出血性外傷患者ではトラネキサム酸の使用を考慮すべきである」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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教授 中村正人先生の答え

循環器内科での後期研修について初期研修1年目の者です。循環器内科に興味を持ち始めたのですが、循環器内科といっても幅が広く、心臓血管カテーテル以外にも多くの専門領域があると思います。大橋病院ではどのような体制で診療や研究を行うのでしょうか?入局してくるレジデントは、ある程度専門領域を決めて来るのでしょうか?少し場違いな質問ですが御教授願います。ご指摘のごとく、循環器の診療はカテーテル検査のみでなく、心臓超音波、心臓CT、核医学など画像評価、不整脈、心不全、リハビリテーションなど幅広い知識、経験が必要です。このため我々の診療科では初年度1年間は、画像診断、不整脈、心臓血管カテーテルをローテーションで勉強するシステムを構築しています。その間は、当該領域専門の医師の指導下で関係する検査、関係する疾患の診療を行います。その後に、自分の専門領域を決定します。従って、最初から自分の専門を決めてこられる人は多くありません。ローテーションで回っている間に興味を覚えさらに勉強したいと思った領域を選択する人が多いと言えます。大学では、主として自分の専門領域の診療、研究を行いますが、大学からの出張先ではオールラウンドな診療を行うこととなります。なお、近年自分の専門領域と他科との関わりの中での研究の必要性も高まっています。なお、我々の診療科は循環器として勉強を始める前に消火器科、腎臓内科、呼吸器科を研修するシステムを採用しています。他診療科との連携について先生のコメントの中に「他診療科との連携も重要となります。」とありますが、最近ではどのような科との連携が増えてきたのでしょうか?また、先生が他診療科との連携において最も重視されていること、ご苦労などございましたら教えて下さい。今日、診療はどんどん専門に特化していく方向ですが、複雑化、重症化すればするほど、また長期成績を見据えた治療を考えれば考えるほど他科の先生との連携は避けられなくなってきます。緊急で冠動脈バイパス術をお願いすることはほとんど皆無となりましたが、大動脈弁疾患、大動脈疾患の合併が増加、心臓血管外科の先生との連携は必須です。冠動脈インターベンションの40%以上は糖尿病症例です。糖尿病における冠動脈インターベンションの成績改善には糖尿病の管理は不可欠です。また、数%は透析症例であり、造影剤を用いる検査であるため、造影剤腎症の問題は避けて通ることはできません。今日、アテローム血栓症の概念が提唱されるようになりました。冠動脈と同様な病変は脳血管、頸動脈、腎動脈、下肢動脈と全身に及び、冠動脈の管理のみでは不十分であると考えられています。冠動脈インターベンションの経験はこれら動脈病変の治療において非常に有益です。しかし、頸動脈の治療においては脳外科の先生との連携が重要ですし、下肢閉塞性動脈硬化症の治療において、とくに重症虚血肢の症例では創傷治癒の診療をお願いする形成外科の先生、foot careチームとの連携が必須となります。たとえ、下肢の血流を再開のみでは本病態の改善が得られないからです。TASCにおいても多診療科の連携の重要性が述べられています。しかし、大学病院など大きな病院ではこれら診療科が縦割であり、横の連携が機能しにくい傾向があると指摘されています。専門化の弊害といえます。幸い、当院ではその垣根が低く、多くの先生に協力を得ながら診療を行っています。研修について記事拝見しました。研修で全国を回っていらっしゃることを初めて知りました。研修の内容をもう少し詳しくお聞きしたいです。(研修日程や内容、参加者数、参加者層、講師の先生のことなど。)また、先生の研修に参加することは可能でしょうか?このような機会はあまりないかと思いますので是非教えて頂きたいと思っております。年2回春と秋に土、日曜日の2日間行っています。場所は、郡山、神奈川、神戸、宮崎の4か所を持ち回りで行っています。井上直人先生、村松俊哉先生、横井宏佳先生、私の4名で実施しています。当初4名で実施しましたが、2回目以降は各地域の近隣の経験豊かな先生方に講師として協力していただき実施しています。これまでに7回行われ、次回は神戸で10月に実施予定です。対象は初心者の先生方。これから冠動脈形成術を始める、始めたばかりの先生方であり、基本的、標準的な実技をトレーニングしようとするものです。開催地区近隣の先生の参加が多いのが実情ですが、全国から参加可能です。参加者は20‐30名程度で4つのグループに分かれていただき、ローテーションで動物を用いたカテーテルのトレーニング(ガイドワイヤーの曲げ方、挿入、ステントの留置、バルーンの挿入、抜去、IVUSの操作)。コンピューターによるシィミレーション、モデルを用いたロータブレーターの手技などのトレーニングが行われます。実技を中心とした研修ですが、講義による座学も行われます。また、夜には困った、悩んだ症例をもちよりみなで議論、親交を深めております。アドバンスコースは年2回、土曜日の一日コースで及川先生、矢島先生、小川先生、濱崎先生と東京の先生に協力していただき、動物モデルで実施しています。10名前後の少数の研修で、人数の関係もあり東京限定で実施しています。これら研修は非常に体力を要し疲労しますが、若い先生の情熱を感じ、昔の自分達を思い出し、終了するたびにやめられないと企画者一同実感しております。薬剤溶出ステントの副作用について以前、薬剤溶出ステントの副作用について話題になったかと思いますが、現在はどのようになっているのでしょうか?欧米に比べると日本の副作用発生率は少ないとの発表もあったようですが、最前線にいらっしゃる先生のお考えをお聞きしたいです。宜しくお願いします。本邦でも、この種のステントが登場して5年を経過しました。この間、多くの成績が報告され、薬剤溶出ステントは揺るぎないものとなっています。しかし、現在のステントの問題点も指摘され、さらなる改善が望まれています。このデバイスの最大の利点は再狭窄を著しく軽減させたことにあります。ステントにても克服できなかった再狭窄の問題が解決に向け大きく前進しました。糖尿病、小血管など従来のステントで成績に限界があった病変、病態におけるインパクトが最大です。一方、従来のステントでは経験しないような留置後1年以降に生じるステント血栓症が新たな問題として浮かび上がりました。このため、チエノピリジン系の抗血小板薬、アスピリンの2剤の抗血小板薬を長期に服薬することが推奨されています。一方、これら薬剤による出血性リスクの懸念もあり、長期服薬の是非が問われています。この合併症の原因は依然として不詳ですが、解決すべく新たなデバイス開発がなされています。薬剤溶出ステントはステント、コーティング、薬剤の3者で構成されていますが、コーティング、最終的にはステントが溶けてなくなるようなデバイスもすでに臨床で試みられています。先生が指摘されたように、上記の合併症は幸いなことに諸外国に比し本邦では極めて低率であることが報告されています。この理由も定かではありません。幾つかの要因が指摘されています。人種差による血小板機能の差異、薬剤コンプライアンスの差異、血管内超音波を用いた治療手技の差異などです。実臨床では個々の症例で原因は異なっているものと考えられ、本邦の成績が良いのは複合的な作用の結果であろうと推測されます。いずれにしても、デバイスは有効性、安全性の両面が重要であり、このテーマは永遠に追求されていくものと思われます。カテーテルを極めるには?医大に通っています。心臓を悪くして亡くなった者がいるので、心臓血管カテーテルに大変興味があります。先生のように、カテーテルを極めるには、どのような進路や経験を積めば良いのでしょうか?心臓血管カテーテルは急速な進歩であり、これは我々の予想を大きく上回るものでした。まさに、成熟期を迎えたと言えます。幸いなことにこれら進歩を眼のあたりにしながら今日まで診療をすることができました。これらかの先生は今日の診療が当たりまえの位置からスタートするわけですから大変であろうと思います。まず、実技に入る前に清書を読むことをお勧めします。歴史を知ることは、今日の問題点が何故あるのか、どのような模索がされてきたかを理解することにつながります。広い視野が重要で、今後非常に参考になるでしょう。絶対的なルールはありませんが、次に大切なポイントはカテーテル検査を好きになることです。この領域は経験がものをいうことは否めませんから一歩、一歩、着実に前進するしかありません。手技は感覚的な要素も含まれるため、見て盗むといった古典的な手法が依然として必要になります。助手、または聴講者としてみているときも、つねに何故?その理論的背景は、自分ならどうするといった心構えが重要と思います。漠然と時間が過ぎていくのではなく、一例一例が重要です。その意味で色々なオプション、引きだしをもつことができるか、それを実践できるかが重要です。良い上司、環境は重要でしょうが、入ってみないと現状はわからないものです。多くの施設を訪問し、多くの先生の意見を聞いてみるのがよいと思います。その中で何か感じるものがあれば、あとは自分の努力で前進は可能です。昔より、勉強する機会、環境は非常に増えたと思います。狭心症患者に「カテーテル治療」と「バイパス手術」の選択について説明する時の注意点私はクリニックに勤めている医師ですが、近隣に住む、狭心症で大学病院にかかっている方から「カテーテル治療」と「バイパス手術」の選択について相談を受けました。患者の状態によって違うとは思いますが、せめて一般的なメリット、デメリット、再発率などを説明してあげたいと思っております。教科書通りの説明は本を読めばできるのですが、先生の御経験に基づいた注意点やポイントなどありましたら教えて頂ければと思います。両治療の差異は侵襲性と再血行再建の必要性にあります。両者に生命予後の点では差がないことが示されています。冠動脈形成術は、侵襲性が低く1-2時間で手技が終了、2-3日で退院可能です。死亡リスクは1%未満で、社会復帰も早期に可能です。最大のアキレス腱は再狭窄がある一定の頻度で生じることです。しかし、この問題も薬剤溶出ステントが登場して著しく軽減、数%となっています。このため、薬剤溶出ステントが汎用されていますが、この種のステントで治療した場合ステント血栓症を防止するためアスピリン、チエノピリジン系抗血小板薬2剤長期服薬が必須です。服薬アドヒアランスが低い患者さんには不向きと言えます。また、冠動脈形成術は局所の治療であるため、治療部位以外のイベントは回避困難であり、厳格なリスク管理が重要です。一方、冠動脈バイパス術は全身麻酔を要し、初期の侵襲性は高く、死亡リスクは1-3%、脳卒中、開胸に伴う合併症、麻酔に伴いトラブルなどのリスクが若干あります。一回で治療を完結できる可能性が高く、グラフトされた末梢での心血管事故防止効果も期待できます。初期に開存が得られ長期的な開存が期待できます(グラフトの種類により差異がある)。他に両治療戦略を選択する重要なポイントに病変形態、合併疾患の有無があります。病変形態が冠動脈インターベンション治療に向いているか否かの判断が極めて重要です。この事実は最近の臨床試験でも示されています。また、腎機能障害があれば複数回のカテーテル治療は腎機能を悪化させるリスクとなります。高齢者では合併症のリスクが高く、最も重要な病変のみ治療を行い薬物で補完することも戦略となります。穿刺部合併症心臓カテーテル検査を始めて3年目なのですが、穿刺部合併症を最近数例件しました。具体的には浅腸骨回旋動脈の穿孔や、血腫、仮性動脈、動静脈瘻を経験しました。 こういった合併症を防ぐために、普段どういったところに注意されていますか? Femoral Punctureでは穿刺部位は透視で大腿骨頭の位置を確認して刺していますが、シースを挿入する前のワイヤー操作はやはりほとんど透視しながらやった方が良いのでしょうか?仮性動脈瘤はlower punctureで合併しやすく、逆にhigher punctureは腹腔穿刺になるため大腿動脈穿刺において穿刺部位は極めて重要です。これは比較的狭い範囲です。先生が実施しているように透視で大腿骨頭の位置を確認することは重要です。当院では全例実施しています。今後も必ず実施してください。大腿骨頭の下縁以下、上縁以上は避けることになります。穿刺はsingle wall punctureが良いとされています。すなわち、血管の後壁を突き抜けないように動脈の前壁のみを穿刺する手法です。当院では外筒のないアルゴンニードルを使用しています。なお、この穿刺針とラジフォーカスは相性が悪く、スプリングワイヤーを用います。その後穿刺針にガイドワイヤーを挿入します。透視を見ながらの挿入は行っておりませんが、ゆっくり挿入し、抵抗を感じた場合必ず透視で確認を行います。この際にラジフィーカスを用いないのは、迷入しても気づきにくいからです。透視で迷入が確認された場合、検査後造影にて確認を行えば確実です。上記の理由でラジフォーカスを用いる場合は透視下で挿入する方が安全でしょう。静脈は動脈の内側に伴走していますが、血管の蛇行などで上下に重なっていることもあります。止血手技も重要です。Learning curveがあり、ある程度の経験が必要です。とくに高度肥満の人、高齢者、大動脈弁閉鎖不全症など脈圧が高い人は要注意です。皮膚の穿刺点と血管の穿刺点は高さが異なること、拍動を感じながら圧迫することなどが重要であり、single wall punctureが望ましく, lower punctureは止血困難な要因となります。どこに問題があったか、自問してみましょう。しかし、実際には動脈穿刺に伴う合併症はある一定の頻度で合併し得るものです。合併症は早期に見つけること、そのためには疑うことが肝要です。PCIにおけるステントの選択に関してPCIにおけるステントの選択ですが、私は、3mm以上の血管に対してはエンデバースプリント、2mm代の小血管に対してはCypher select、AMIに関してはDriver stentという選択をしております。ザイエンスが登場し、遠隔期の成績の良さはよくわかるのですが、メリットである通過性に関してもエンデバースプリントでことたりますし、ザイエンスのデリバリーバルーンのドッグボーン、コンプライアンスが良すぎるバルーン、ウイギング現象を考えるといまいちザイエンスの使い勝手が悪い気がします。中村先生は、ステント選択に関して何かいいポイントはありませんか?ぜひ教えてください。ステントの成績に関する報告は多数ありますが。これらの報告を実臨床にどのように生かすかが個々の医師に託された仕事であろうと思います。比較試験は限られた対象における検討であり、レジストリーデータは実臨床に近い対象になりますが、バイアスのかかった対象であり、近年はやりのマッチングを行っても比較試験と同等の意味をもたせるには限界があります。最近の臨床試験における各デバイスの差異は数%以内のものであり、基本的に大きな差異はないと言えるでしょう。薬剤の臨床試験と極めて類似して来ました。従って、どのステントを選ぶかは、そのステントの何を生かそうとして選択したかという点に尽きます。抗血小板薬長期服薬困難であるか、ステントのプラットフームが重要な病変であるか、通過性が重要な病変であるかなど個々に適したものを選択すればよいと思います。大切な点は、適切な拡張術で良好なステント拡張を得ることです。この点で、使いなれたステントを用いると予想された結果が得られやすいということは言えるでしょう。さてザイエンスです。ご指摘のごとくコンプライアンスが高く、留意が必要です。特に2.5mmはコンプライアンスが高く、サイズを間違えないことが重要です。また、taper vesselでは近位に合わせたサイズを選択すると危険です。この点先生の意見に賛成です。私は高圧をかけず、低圧で長時間拡張後にステント内を高圧拡張行うようにしています。ステントの特徴はむしろマウントされているバルーンの性能とステントの相性によって決定されるといって過言でありません。従って各ステントにあった拡張を行うことが重要です。それは個々の先生の流儀と相性があるかもしれません。以上のごとく、病変、病態にあったステントを選択し、そのステントにあった拡張術(edge損傷なくステント面積を得る)を行うのが良いと考えています。予後50歳男性心筋梗塞発症15時間後に心カテ施行。1枝は凝固が強く、完全閉塞だが微小な側副血行あり。ヘパリン治療にて24時間経過、バイタルは安定、軽度左室肥大あり。今後の予後予測は?外科適応の指標などあればご教示下さい。ポイントは50歳と若年、1枝病変完全閉塞の2点にあります。本例の梗塞部位は不明ですが、初回梗塞の1枝病変で血行動態が安定しており、高齢でない点から予後は良好、機械的合併症発生のリスクは低いものと予想されます。本例は15時間経過した梗塞例で、側副路の発達が不良な完全閉塞であったとのことから、壊死はすでに完成しているものと推測され、このためこの時点で再灌流による心筋救済のメリットは小さいものと推測されます。結果としての梗塞サイズ、残存心機能が予後を規定します。再灌流が得られていないので梗塞後のリモデリング防止が重要となります。さて、慢性期に1枝完全閉塞であった場合の血行再建の適応は残存虚血の有無、病変部位によって決定されます。虚血がない、または小さい場合は薬物で管理。虚血が残存する場合、バイパス術、PCIなどの血行再建が必要になります。両者の別は病変形態、部位によって決定されます。冠動脈バイパス術は本例が主幹部、LADの近位部にあり、病変形態がPCIに不向きな場合に考慮されます。なお、急性期に完全閉塞であっても自然に再疎通し開存していることが少なくありません。従って、退院前に再造影することをおすすめします。教授 中村正人先生「カテーテルの歴史とともに30年、最先端治療の場で」

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ベーリンガーインゲルハイム、2009年業績発表 ―日本ベーリンガーインゲルハイム、新規医薬品の上市も視野に―

 2010年4月27日、東京アーバンネット大手町ビルにて、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社経営陣による2009年業績発表記者会見が行われた。  ベーリンガーインゲルハイム(本社:ドイツ)の2009年売上高は127億ユーロ(約1兆6,600億円、前年比9.7%増)となり、堅調な成長を示した。全体売上高の約50%を医療用医薬品の主要4製剤(スピリーバ、FLOMAX、ミカルディス、ビ・シフロール)の売上が担っている。 代表取締役会長兼社長のDr.トーマス・ハイル氏は、「今後の成長発展のために、研究開発にはさらなる投資を行い、将来の成功を担保していく」と話した。2010年の展望としては、ブロックバスターの米国における特許切れや研究開発費の増加のため、売上高は2009年と同水準になる見込みを示した。  日本ベーリンガー社としては、売上高は2009年では1,615億円(営業利益51.2億円、経常利益75.3億円、純利益64.8億円)となり、前年比2%の伸びを示した。また、エスエス製薬の完全子会社化が成立しており、日本ベーリンガーとエスエス製薬のシナジーを強化するとの方針を示した。 今後の成長の鍵となる新薬の開発状況については、「日本においては、スピリーバレスピマットが来月に発売を控えているほか、抗凝固・血栓塞栓症予防薬のダビガトラン エテキシラートや、DPP-4阻害薬であるリナグリプチンも順調に開発が進んでいる。特にダビガトランについては、1962年のワルファリン発売以来、約50年ぶりの新世代経口抗凝固薬(直接トロンビン阻害剤)として、抗凝固治療の医療ニーズを満たす薬剤として期待されている。」と医薬開発本部長Dr.トーマス・クーナー氏は語った。 日本ベーリンガー社は2010年4月に新卒の新入社員を150名採用。今後も人材育成に力を入れていく。

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新規経口直接トロンビン阻害剤「ダビガトラン エテキシラート」が脳卒中リスクの程度にかかわらず、心房細動患者の脳卒中予防でワルファリンを上回る有用性を示す

日本ベーリンガーインゲルハイムは、第59回米国心臓病学会において、新規経口直接トロンビン阻害剤「ダビガトラン エテキシラート」が、心房細動患者での脳卒中の発症率を、患者のリスクプロファイルにかかわらず低下させ、現在の標準治療のワルファリンよりも優れた効果を示すとの解析結果が報告されたと発表した。これはRE-LY試験の新たなサブグループ解析で、脳卒中リスクの評価において妥当性が確立しているCHADS2スコアに基づき心房細動患者を低リスク(n=5,775)、中等度リスク(n=6,455)および高リスク(n=5,882)に層別化し、脳卒中および全身性塞栓症の発症率を評価したもの。RE-LY試験のサブグループ解析の結果、ダビガトラン150 mg 1日2回投与は、治療域にコントロールされたワルファリンに比べ、脳卒中リスクの程度にかかわらず、脳卒中および全身性塞栓症の発症率を低下させることが明らかとなった。またダビガトラン 110 mg 1日2回投与も、治療域にコントロールされたワルファリンと同程度に、脳卒中および全身性塞栓症の発症率を低下させた。さらに、両用量とも脳卒中リスクの低い患者群での大出血の発現率を低下させたという。詳細はプレスリリースへhttp://www.boehringer-ingelheim.co.jp/com/Home/Newscentre/pressrelease/news_detail.jsp?paramOid=10528

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dabigatranによる急性静脈血栓塞栓症治療の有効性、安全性はワルファリンと同等

直接トロンビン阻害作用を持つdabigatranは、血液凝固モニタリングを要せず、急性静脈血栓塞栓症治療において、ワルファリン(商品名:ワーファリンなど)の代替薬としての可能性が期待されている。カナダ・マクマスター大学のSam Schulman氏らが無作為化二重盲検非劣性比較試験「RE-COVER試験」で有効性、安全性を検討した結果、いずれも同等であることが報告された。NEJM誌2009年12月10日号(オンライン版2009年12月6日号)掲載より。定量dabigatranとINRワルファリンを無作為割り付けRE-COVER試験は、発症初期に中央値で9日間(4分位範囲8~11日)にわたり非経口の抗凝固療法を施行された急性静脈血栓塞栓症患者を対象とした。被験者は、dabigatran投与群(150mgを1日2回経口投与)と、ワルファリン投与群(プロトロンビン時間国際標準比〈INR〉2.0~3.0維持を基準に経口投与)に割り付けられ追跡された。 主要評価項目は、投与開始から6ヵ月時点の、客観的に確かめられた静脈血栓塞栓症の再発と関連死の発生とした。安全性エンドポイントは出血イベント、急性冠症候群、その他の有害事象と肝機能検査結果などとした。抗凝固効果は同等、モニタリング不要という点でdabigatranが優位?再発は、dabigatran群1,274例の患者のうち30例(2.4%)で、ワルファリン投与群1,265例のうち27例(2.1%)でそれぞれ発生した。リスク差は0.4パーセンテージ・ポイント(95%信頼区間:-0.8~1.5、事前特定された非劣性マージンP

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抗凝固薬「ダビガトラン」へ期待高まる

2009年12月、急性静脈血栓塞栓症(VTE)に対する新規経口トロンビン阻害薬ダビガトランの有用性を検討した大規模臨床試験RE-COVERがNew England Journal of Medicineオンライン版に発表された。【RE-COVER試験】RE-COVER試験は、二重盲検並行群間無作為化比較試験で、非経口抗凝固剤を用いた初期治療(5~11日間)後、6ヵ月の急性症候性VTE治療期間中に、ダビガトラン群(1回150mg、1日2回投与)(1,274例)の有効性が、治療域に維持されたワルファリン群(1,265例)に非劣性であるかを調べた非劣性試験である。主要評価項目は、症候性VTE再発と全死亡の複合評価項目が設定された。RE-COVER試験の結果、ダビガトラン群のVTE再発率は2.4%、治療域に維持されたワルファリン群は2.1%となり、ダビガトランのワルファリンに対する非劣性が認められた(ハザード比1.10、95%CI 0.65~1.84、p

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新規経口抗血小板PAR-1阻害剤SCH 530348の第III相試験TRA-2゜P-TIMI 50への被験者登録完了

2009年11月13日(米国東部時間)、Merck & Co,Inc, Whitehouse Station, N.J, U.S.Aは、検討が進められている抗血小板プロテアーゼ活性化受容体1(PAR-1)阻害剤SCH 530348の第III相無作為化二重盲検プラセボ対照国際試験であるTRA-2゜P-TIMI 50試験への被験者登録が完了したことを発表した。この試験は、Thrombolysis in Myocardial Infarction(TIMI)研究グループにより実施されていて、目標症例数である26,000名以上に達したとのこと。27日、統合会社のシェリング・プラウ株式会社が報告した。この試験では、心筋梗塞または脳卒中の既往がある患者または現在末梢動脈疾患がある患者に、現行の抗血小板薬(アスピリンまたはアスピリン+ADP 阻害剤)に加えてトロンビン受容体拮抗薬、PAR-1阻害剤であるSCH 530348を投与した場合の主要な心血管イベント発生の予防効果について評価する。SCH 530348は、Duke Clinical Research Instituteにより現在実施している急性冠動脈症候群(ACS)における臨床イベント減少を検討するトロンビン受容体拮抗薬試験(TRA- CER)において、急性冠動脈症候群の患者への投与についても検討が行われているという。詳細はプレスリリースへhttp://www.schering-plough.co.jp/press/index.html

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心房細動患者へのdabigatran vs.ワルファリン:RE-LY試験

脳卒中および死亡リスクを増大する心房細動に対し、ワルファリン(商品名:ワーファリンなど)は、脳卒中リスクを低下する効果がある。しかし出血リスクを増すため、実際に使用されるケースは少なく、中断例も多い。そこで、心房細動患者を対象とした試験で静脈血栓塞栓症予防効果の評価が得られている、新規経口直接トロンビン阻害薬dabigatranと、ワルファリンとを比較する第3相臨床試験(RE-LY試験)が、カナダ・マクマスター大学のStuart J. Connolly氏らによって行われた。試験は2種の用量(110mgまたは150mgを1日2回)について検討され、結果はNEJM誌2009年9月17日号(オンライン版2009年8月30日号)に掲載された。dabigatran 110mg投与群、同150mg投与群、ワルファリン投与群で比較RE-LY(Randomized Evaluation of Long-Term Anticoagulation Therapy)試験は非劣性試験で、心房細動患者(6ヵ月以内に心電図で確定診断)で脳卒中リスクがある(脳卒中かTIA歴あり、LVEF<40%、NYHA分類≧II、6ヵ月以内に心不全、75歳以上など)18,113例を対象に行われた。患者は、日本を含む44ヵ国951医療機関から集められた。被験者は次の3群に無作為化された。盲検下で、dabigatranの1日2回110mg投与する群と、同1日2回150mg投与する群。非盲検下で、INR2~3を目標に用量調整(1~5mg錠)されたワルファリン投与群。主要転帰は、脳卒中または全身性塞栓症とされた。110mg群は、脳卒中リスク低下がワルファリン群と同等、出血リスクは低い追跡期間中央値は2.0年。主要転帰発生は、ワルファリン群1.69%/年だったのに対し、dabigatran 110mg投与群は1.53%/年で、相対リスクは0.91(非劣性P

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新規第Xa因子阻害薬otamixaban、非ST上昇急性冠症候群の虚血イベントを抑制

新規の直接作用型選択的第Xa因子阻害薬otamixabanの静注投与は、従来法に比べ非ST上昇急性冠症候群(ACS)における虚血イベントを抑制することが、アメリカHarvard大学医学部循環器内科TIMI studyグループのMarc S Sabatine氏らが実施した第II相試験(SEPIA-ACS1 TIMI 42試験)で明らかとなった。これまで、非ST上昇ACS患者の抗凝固療法には未分画ヘパリンが使用されてきたが、その作用は非直接的で非選択的であり、血栓結合トロンビンを抑制できない、血小板減少の誘導、PK活性が予測不能などの問題点があった。Lancet誌2009年9月5日号(オンライン版2009年8月30日号)掲載の報告。5つの用量と対照を比較する二重盲検無作為化第II相試験SEPIA-ACS1 TIMI 42試験の研究グループは、非ST上昇ACSにおけるotamixabanの有効性と安全性を評価し、第III相試験でのさらなる検討に向けて最適な用量範囲を同定するための二重盲検第II相試験を実施した。2006年6月~2008年11月までに、36ヵ国196施設から3,241例の非ST上昇ACS患者が登録され、otamixaban 0.08mg/kgを静脈内ボーラス投与後に5種類の用量を静注する群[0.035mg/kg/時(125例)、0.070mg/kg/時(676例)、0.105mg/kg/時(662例)、0.140mg/kg/時(658例)、0.175 mg/kg/時(671例)]あるいは対照として未分画ヘパリンと糖蛋白IIb/IIIa阻害薬eptifibatideを投与する群(449例)に無作為に割り付けられた。治療の割り付けに関する情報は、研究者および患者のいずれにも知らされなかった。データ監視委員会の勧告により最低用量群への登録は早期に中止された。有効性に関する主要評価項目は、7日目までの心筋梗塞、緊急血行再建術、糖蛋白IIb/IIIa阻害薬の救済的投与の複合エンドポイントとした。安全性に関する主要評価項目は、冠動脈バイパス移植術(CABG)とは関連しない大出血あるいは小出血(TIMI出血基準)とした。有効性についてはintention to treat解析を行い、安全性の解析では実際に治療を受けた患者を対象とした。0.100~0.140mg/kg/時で虚血性イベントを抑制、安全性は同等有効性の複合エンドポイントの発現率は、0.035群7.2%、0.070群4.6%、0.105群3.8%、0.140群3.6%、0.175群4.3%であった(傾向性に関するp値=0.34)。対照群の複合エンドポイントの発現率は6.2%であり、実薬群に対する相対リスクはそれぞれ1.16、0.74、0.61、0.58、0.69であった。安全性の1次エンドポイントの発現率は、実薬群がそれぞれ1.6%、1.6%、3.1%、3.4%、5.4%であり(傾向性に関するp値=0.0001)、対照群は2.7%であった。著者は、「非ST上昇ACS患者に対する抗血栓療法としてのotamixaban静注投与では、0.100~0.140mg/kg/時の用量で虚血性イベントが抑制される可能性があり、その安全性は未分画ヘパリン+eptifibatideの併用投与と同等であることが示唆される。第III相試験によるさらなる検討が正当化される」と結論している。また、「prasugrelやticagrelorなどの経口抗血小板薬の臨床適用が進むに従って、otamixabanとこれらの薬剤との併用療法の評価や、糖蛋白IIb/IIIa阻害薬の最適な投与のタイミングの再検討が必要となるだろう」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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新規経口抗凝固剤ダビガトラン エテキシラートは、ワルファリンに比べ脳卒中の発症予防で優れ、出血も少ない

日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社は31日、脳卒中予防でのダビガトラン エテキシラートの有用性を検討した大規模臨床試験RE-LYの結果を発表した。試験結果はダビガトランが、有効性、安全性とも、対照としたワルファリンに対する優越性を示すものであり、ダビガトランは治療域に維持されたワルファリンと比べ、出血性を含む脳卒中または全身性塞栓症の発症リスクと、生命を脅かす出血および頭蓋内出血の発症を有意に低下し、血管死(出血死を含む)を有意に減少することがわかったという。RE-LYは世界44ヵ国で18,113名を登録し、心房細動の予後を史上最大規模で検討した試験。患者はダビガトラン(盲検化した2用量)投与群と、治療域に維持されたワルファリン(非盲検:目標とするプロトロンビン時間の国際標準比、INRは2.0~3.0)投与群に割り付けられた。ダビガトラン1回150mg 1日2回投与群(1日用量300mg)はワルファリン投与群と比べ、大出血のリスクを増加させることなく、心房細動患者での脳卒中または全身性塞栓症の発症リスクを34%低減させた(p

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経口第Xa因子阻害薬apixabanの有効性確認できず

本報告は、コペンハーゲン大学(デンマーク)Horsholm病院整形外科のMichael Rud Lassen氏らによって行われた、関節置換術後の血栓予防薬としての経口第Xa因子阻害薬apixabanの有効性と安全性を検討した第3相試験(ADVANCE-1)からの検討報告。apixabanは出血リスクが低く、経口薬なので使いやすく、効果的な血栓予防薬となるのではと期待され、試験は行われた。同様に第Xa因子を阻害する(ただしトロンビンもある程度阻害)低分子へパリン製剤エノキサパリン(商品名:クレキサン)との比較で行われた検討結果は、有効性の主要転帰を確認することはできなかったと報告された。NEJM誌2009年8月6日号掲載より。術後12~24時間後開始で、apixaban群とエノキサパリン群を比較試験は、人工膝関節全置換術を受けた患者を対象とし、apixaban 2.5gを1日2回服用する群と、エノキサパリン 30mg皮下注を12時間ごとに受ける群とに無作為に割り付けられ行われた。両群とも、術後12~24時間後に投与が開始され、10~14日間続けられた。その後に被験者は、両下肢静脈造影を受け評価が行われた。有効性の主要転帰は、無症候性または症候性の深部静脈血栓症、非致死性の肺動脈塞栓症、全死因死亡の複合とされ、抗凝固療法治療が中止された後、患者は60日間経過観察された。有効性の主要転帰発生、相対リスクは1.02被験者は、計3,195例(apixaban群:1,599例、エノキサパリン群:1,596例)。このうち908例は、有効性解析から除外された。主要イベントの全体発生率は、予想より少なかった。有効性の主要転帰発生率は、apixaban群9.0%、エノキサパリン群8.8%、相対リスクは1.02(95%の信頼区間:0.78~1.32)で、事前に規定した非劣性の統計的基準を満たさなかった。一方、安全性については、重大出血と臨床的に意義があるが重大ではない出血の発生率は、apixaban群2.9%、エノキサパリン群4.3%(P=0.03)で、apixabanの使用には、臨床的意義のある出血の発生率低下との関連が見られた。その有害事象プロファイルは、エノキサパリンと同様だった。(武藤まき:医療ライター)

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PTCAバルーンカテーテル Tazuna(タヅナ)新発売

テルモ株式会社は27日、狭心症などの治療に用いるPTCAバルーンカテーテル「Tazuna」を全国の医療機関向けに発売した。カテーテルの先端をわずか0.41mmと細くするなど、血管内の通過性能を追求したことで、手首の細い血管からカテーテルを入れる治療法にも使いやすくなったという。この方法は、太ももの血管を使った時と比べて、出血が少ない、治療後の止血時間が短いなど、患者の負担が軽減されるため、国内でも普及が進んでいる。また、完全に詰まった血管にも通りやすいという。詳細はプレスリリースへhttp://www.terumo.co.jp/press/2009/018.html

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第22回国際血栓止血学会議にて、ザレルトの費用有効性データが裏付けされる

バイエル薬品株式会社は28日、静脈血栓塞栓症(VTE)の予防のための1日1回投与の抗凝固剤「ザレルト(一般名:リバロキサバン)」が、米国・ボストンで開催された第22回国際血栓止血学会議(ISTH-International Society on Thrombosis and Haemostasis)において、その費用有効性が様々な発表の摘要の中で強調されたと発表した。経済モデルに基づいて行われた分析で、待機的股関節全置換術(THR)または膝関節全置換術(TKR)後のザレルト投与がエノキサパリンとの比較において、よりよい患者転帰をより低いコストで達成できると証明されたという。これは、待機的股関節または膝関節全置換術を受けた成人患者のVTE予防の適応で承認を取得した経口投与可能な直接作用型第Xa因子阻害剤ザレルトの、増え続ける多数の証拠をさらに強固にするものだという。2008年9月の初の承認取得から今日までに、ザレルトは世界の50ヵ国以上の国々で承認を取得している。詳細はプレスリリースへhttp://byl.bayer.co.jp/scripts/pages/jp/press_release/press_detail/?file_path=2009%2Fnews2009-07-28.html

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扶桑薬品と3DMが外科用止血材TDM-621の国内独占販売を提携

扶桑薬品工業株式会社は22日、株式会社スリー・ディー・マトリックス(3DM)と、同社が開発中の自己組織化ペプチド「PuraMatrix」を原料とした外科用止血材製品(開発コード:TDM-621)の国内における独占販売許諾契約を締結したことを発表した。今回の提携は、3DMが扶桑薬品に対して本製品の国内における独占販売権を許諾し、この製品を3DMより独占的に仕入れし、全国の医療機関への販売を行うもの。外科用止血材TDM-621は、人体の構成成分である3種のアミノ酸から成るペプチドを原料とした透明な液体で、血液に触れると瞬時にハイドロゲルを形成する特性(自己組織化)により、血管を物理的に塞いで止血を行うもので、外科手術全般への使用が対象となる。このペプチドは化学合成により製造し、動物由来の物質を完全に排除できることから、C型肝炎ウイルス等に感染するリスクがないことが特徴。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.fuso-pharm.co.jp/news_topics/pdf/2009_07_22.pdf

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血友病A治療におけるコージネイトFSの大規模市販後調査結果について

米国マサチューセッツ州ボストンで開かれた第22回国際血栓止血学会(ISTH: International Society on Thrombosis and Haemostasis)において、遺伝子組換え型血液凝固第Ⅷ因子製剤コージネイトFSの大規模市販後調査結果が、東京医科大学臨床検査医学講座・福武勝幸氏より発表された。その内容は、日本、台湾、ドイツ、欧州諸国の4箇所で実施された合計967名の血友病A患者に対する日常的なコージネイトFS治療の市販後調査結果を集計し、解析したもので、コージネイトFSが軽症から重症型の幅広い患者に対して、出血時または手術時の止血管理に有効であり、有害事象の発生率も低かったというデータが示されたとのこと。また、治療歴のある患者と治療歴のない患者の両方で、インヒビター(中和抗体)の発生率が比較的低かったことも確認されたという。バイエル薬品株式会社からの報告。主治医判定によるコージネイトFSの有効性は98.9%の患者で著効または有効とされ、治療との因果関係が考えられる有害事象が1%の患者で報告された。また、新規インヒビターの発生率は0.8%であった。成人男性患者での臨床研究データによると、コージネイトFSによる出血時補充療法から定期補充療法に切り替えた患者は著しく関節内出血が減少し(定期補充0件、出血時30.4件)、出血時補充療法と比べて関節機能障害の進行を抑制した(総合ギルバート・スコア:定期補充18、出血時25)。コージネイトFSによる定期補充療法は通常小児に対して行われるが、これらの結果により、第VIII因子製剤を用いた定期補充的使用の利点がすべての年齢の血友病A患者に当てはまることが示唆されたという。詳細はプレスリリースへhttp://byl.bayer.co.jp/scripts/pages/jp/press_release/press_detail/?file_path=2009%2Fnews2009-07-16.html

278.

経口抗Xa剤「エドキサバン」の臨床試験データを発表

 第一三共株式会社は16日、米国ボストンにて開催中の第22回国際血栓止血学会(International Society on Thorombosis and Haemostasis:ISTH)において、現在、血栓塞栓症治療剤として開発中の経口抗Xa剤「エドキサバン」の用法用量と出血事象の発現に関するデータを発表したと報告した。 2008年12月の第50回米国血液学会(American Society of Hematology)において発表した後期第II相臨床試験では、1日の総投与量は同じであるものの、出血頻度は1日1回(60mg×1)投与したグループが1日2回(30mg×2)に分けて投与したグループに比べ低いことを確認したとのこと。今回、本試験結果を詳細に分析したところ、同剤の最低血中濃度が出血事象の主要予測因子であることが明らかになったという。詳細はプレスリリースへhttp://www.daiichisankyo.co.jp/news/yymmdd_nn.html?b_newsrelease_n1.detail

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がん患者のカテーテル関連静脈血栓症にワルファリンは有効か?:WARP試験

中心静脈カテーテルによる化学療法を受けているがん患者に予防的ワルファリン(商品名:ワーファリンなど)投与を行っても、症候性カテーテル関連血栓症は抑制できないことが、イギリスBirmingham大学のAnnie M Young氏らが実施したWARP試験で判明した。静脈血栓塞栓症はがん患者によく見られる合併症として知られる。原因としては、がんそのものや特定の化学療法、ホルモン療法、さらに中心静脈カテーテルの使用によって広範な凝固促進因子が産生されるためと考えられている。Lancet誌2009年2月14日号掲載の報告。非投与群と投与群(固定用量、用量調節)を比較WARP試験の研究グループは、カテーテル関連血栓症に対するワルファリンの効果を評価し、至適投与量を検討するための無作為化試験を実施した。イギリスの68施設から中心静脈カテーテルによる化学療法を受けている16歳以上のがん患者1,590例が登録され、ワルファリン非投与群、ワルファリン固定用量(1mg/日)群、ワルファリン用量調整(プロトロンビン時間の国際標準化比を1.5~2.0に維持するよう調整)群に割り付けられた。医師がワルファリンの効果を確認した患者はワルファリン投与群に割り付けられた。主要評価項目は、X線画像検査で確認された症候性のカテーテル関連血栓症の発現率とした。血栓発現率は、投与群、非投与群とも6%カテーテル関連血栓症発現率は、ワルファリン非投与群(404例)が6%、投与群[408例(固定用量群:324例、用量調整群:84例)]も6%であり、両群間に差を認めなかった(相対リスク:0.99、p=0.98)。投与群間の比較では、固定用量群(471例)のカテーテル関連血栓症発現率が7%であったのに対し、用量調整群(473例)は3%と有意に優れていた(相対リスク:0.38、p=0.002)。大出血はまれであり、ワルファリン非投与群よりも投与群で(1例vs. 7例、p=0.07)、固定用量群よりも用量調整群で(7例vs. 16例、p=0.09)多い傾向が見られた。血栓と大出血の複合エンドポイントは各群間に差はなかった。いずれの群でも生存ベネフィットは認められなかった。著者は、「予防的ワルファリン投与は、がん患者の症候性カテーテル関連血栓症やその他の血栓症の抑制効果はない。したがって、新たな治療法の開発を考慮すべき」と結論している。(菅野守:医学ライター)

280.

6歳未満の血友病A患者を対象としたアドベイトの臨床試験の結果が発表される

バクスター株式会社は、10月29日に米国本社が治療歴のある6歳未満の重症中等症および重症血友病A患者(PTPs)を対象とした、アドベイト(プラズマ/アルブミンフリー製法による遺伝子組換え型抗血友病因子)の臨床試験の結果を発表した。アドベイトは、世界で唯一の血液由来成分を添加しない完全長の遺伝子組換え型血液凝固第VIII因子製剤。この試験は、治療歴のある重症中等症および重症血友病Aの小児患者(PTPs)53人を対象として実施された。アドベイトを1回または2回投与することにより、出血症状の90%以上を管理でき、94%近くの出血エピソードの止血効果は、「著効」または「有効」と判定されたという。 試験結果は、8月号のJournal of Thrombosis and Haemostasis(国際血栓止血学会誌)に掲載されている。詳細はプレスリリースへhttp://www.baxter.co.jp/about_baxter/news_room/news_releases/2008/081029.html

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