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ワクチン接種で役立つ筋肉注射の手技とコツ【今、知っておきたいワクチンの話】特別編

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が、3月より医療者から始まり、4月からは高齢者、基礎疾患のある方、一般の方へと開始される予定です。現在、承認され接種可能なワクチンはファイザーの「コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)」(商品名:コミナティ筋注)のみであり筋肉注射となっております。今後追加承認が予想されるモデルナ社、アストラゼネカ社のワクチンも筋肉注射による接種となっています。その理由として、「不活化ワクチンによる局所反応は、皮下注射より筋肉注射の方が腫れにくいこと」、「皮下注射よりも筋肉注射の方が痛みが少ないこと」、「皮下注射より血流が豊富な筋肉注射の方が免疫が付きやすいこと」などがあげられています。そこで、本稿では、日本プライマリ・ケア連合学会 予防医療・健康増進委員会ワクチンチームの協力により、同委員会の中山 久仁子氏の解説でこれから実際に臨床現場で接種する際の筋肉注射の手技について、その手順を動画で説明します。また、新型コロナワクチンでは、接種後に懸念されているアナフィラキシーショックでのアドレナリン注射の対応を説明いただきます。筋肉注射は、今回のCOVID-19ワクチンなど特別なものではなく、HPVワクチン、帯状疱疹ワクチン、肺炎球菌ワクチンなどでも行われるものです。この機会に手技に慣れていただき、経験を深めてください。筋肉注射の接種方法のコツ筋肉注射の部位などについて部位:上腕三角筋(1)肩峰から下ろした線(2)前後の腋窩線の頂点を結んだ線(1)と(2)が交わる点または肩峰から3横指下針の長さ:長さ25mmの針を基本的に根元まで刺して注入する痩せ形の体形:ゆっくりと針を進め、確実に筋肉内に注入、または長さ16mmの針に付け替えて根元まで刺して注入高度肥満:長さ38mmの針に付け替えて根元まで刺して注入針の角度:90度、垂直吸引確認:不要筋肉注射の穿刺部位画像を拡大する筋肉注射の手順※接種では、接種者・被接種者ともに座位で行う1)シリンジにワクチンを入れ、溶液に異常がないか目視2)手を下に下ろしていただく(リラックス)3)三角筋の位置を確認する4)三角筋の辺縁を触って確認する注:筋肉をつままない5)アルコールで接種する部位を消毒する6)注射針を皮膚面に対して垂直(直角)に刺入する7)内筒を押しワクチン溶液を全量注入する注:内筒を引かない8)針を抜き、軽く圧迫する。揉まない注:抗凝固薬・抗血小板薬内服中の方は2分間圧迫対象者に痛みを感じさせない接種のために1)筋注は筋肉内に打つ(一般的に不活化ワクチンを皮下に打つと痛い)2)内筒(プランジャー)を引かない(逆血確認不要)3)ワクチンを素早く注入し、刺入中は針の先を動かさない4)接種後に接種部位を圧迫する5)気を紛らわせるように話しかけたり、演技する。接種者は笑顔で!アナフィラキシーショックでの対応:アドレナリン注射(商品名:エピペンなど)の使い方【注射部位】アドレナリンの筋肉注射は患者を横臥位で施行アドレナリンの筋肉注射の部位は大腿中央前外側【エピペン筋肉注射の手順】1)カバーキャップを指で押し開け、注射器を取り出す2)ニードルカバー(オレンジ色)を下に向け、注射器の真ん中を片手で保持、もう片方の手で青色の安全キャップを外し、ロックを解除3)注射器を太ももの前外側に垂直になるようにし、ニードルカバーの先端を「カチッ」と音がするまで強く押し付ける4)太ももに押し付けたまま、5まで数を数える5)注射器を太ももから抜き取る6)注射後、ニードルカバーが伸びているかどうか確認。ニードルカバーが伸びていれば注射は完了アドレナリン注射での注意1)アドレナリンの筋肉注射については、下記の厚生労働省の通知をご参照ください。「予防接種会場での救急対応に用いるアドレナリン製剤の供給等について」「予防接種会場での救急対応に用いるアドレナリン製剤の供給等について(その2)」2)エピペンの処方または使用する医師はマイランEPD合同会社が提供するエピペン登録医講習の受講が必要です。詳しくは「エピペンサイト」をご参照ください。使用に関して動画の解説もあります。参考となるサイト「新型コロナワクチン 今わかっていること まだわからないこと」(日本プライマリ・ケア連合学会 ワクチンチーム制作)同講演 解説資料(PDF)「新型コロナワクチン 筋肉注射の方法とコツ 2021年3月版」(日本プライマリ・ケア連合学会 ワクチンチーム監修)新型コロナワクチン 筋肉注射の方法とコツ 2021年3月版 ダイジェスト版」(日本プライマリ・ケア連合学会 ワクチンチーム監修)講師紹介

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第54回 AZ社COVID-19ワクチン後の普通じゃない血栓症はヘパリン起因性血小板減少症に類似

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質抗原を作るアデノウイルスを下地とするAstraZenecaのワクチンAZD1222を今年2月中頃に欧州で接種した49歳の健康な女性看護師が内臓・大動脈・脳静脈の血栓症や血小板減少を呈し、残念ながら治療の甲斐なく死亡しました。女性の治療にあたった医師らの病院で3月中旬までにさらに8人に同様の症状が認められ、AZD1222接種4~16日後に血栓症を呈し始めたそれらの9人の病態は血小板活性化抗体を原因とするヘパリン起因性血小板減少症(HIT)にはっきり似通っていました1)。HITは血小板第4因子(PF4)とヘパリンの複合体を認識する血小板活性化抗体によって生じる血栓促進性の血小板減少疾患です。9人のうち1人を除く8人は女性で、年齢は比較的若く22~49歳(中央値36歳)でした。7人は脳静脈血栓症、1人は肺塞栓症、最初の検出例である1人は上述の通り内臓や脳などの複数の組織に血栓症を呈し、9人中4人が亡くなりました。9人のうち4人の血清を調べたところどの人の血清もPF4存在下でヘパリンがなくとも血小板を強く活性化しました。誰も発症前にヘパリンを使っておらず、AZD1222接種者の血小板活性化抗体は複合体を形成していない単独のPF4にどうやら結合するようです。欧州医薬品庁(EMA)や世界保健機関(WHO)はAZD1222使用継続を支持していますが2,3)、欧州のいくつかの国やカナダでは血栓症の懸念を受けてその使用を控えています4,5)。9例の検討結果を今回報告した著者は、特に脳や腹部などでの“普通じゃない(unusual)”血栓症や血小板減少がワクチン接種からおよそ5~14日後に稀に生じることを知っておく必要があると言っています。また、その病態をvaccine induced prothrombotic immune thrombocytopenia(VIPIT) と呼ぶことを提案しています。いまのところAstraZenecaワクチンAZD1222でのみ認められているVIPITが生じたならリバーロキサバンやアピキサバンなどのヘパリン以外の抗凝固薬をまずは使ったらよさそうです1)。脳静脈洞血栓症(CVST)などの致死リスクがある血栓症に陥ったワクチン接種者には高用量免疫グロブリン静注が助けになりそうです。インフルエンザワクチンとナルコレプシーワクチンの稀な深刻な有害事象といえば10年以上前のH1N1(ブタ)インフルエンザワクチンPandemrix(AS03アジュバント添加)接種小児の慢性睡眠疾患・ナルコレプシー発現率上昇が思い出されます。発現率は投与1万8,400回あたり約1例と稀ですが、小児の発現がワクチン接種後にとくに増えました6)。AS03アジュバントとナルコレプシー発現率上昇の関連は否定されているものの7)10年以上経た今となってもPandemrixとナルコレプシーの関連性はいまだに結論がでていません8)。しかし疫学やワクチンの研究者などが集まってベルギーで3年前の2018年3月末に開催された検討会ではPandemrix接種後の一貫したナルコレプシーリスク上昇が認められていると結論され9)、同ワクチンとH1N1インフルエンザウイルスの相互作用に帰するナルコレプシーは恐らくあるようだと参加者は考えています8)。参考1)A Prothrombotic Thrombocytopenic Disorder Resembling Heparin-Induced Thrombocytopenia Following Coronavirus-19 Vaccination. Research Square. Posted 28 Mar, 20212)Statement of the WHO Global Advisory Committee on Vaccine Safety (GACVS) COVID-19 subcommittee on safety signals related to the AstraZeneca COVID-19 vaccine / WHO3)AstraZeneca COVID-19 vaccine: review of very rare cases of unusual blood clots continues / EMA4)AstraZeneca COVID Vaccine: Clotting Disorder Mechanism Revealed? / Medscape5)Germany suspends use of AstraZeneca’s Covid shot for the under-60s, dealing another blow to drugmaker / CNBC 6)Sarkanen TO, et al. Sleep Med Rev. 2018 Apr;38:177-186. 7)Weibel D, et al.Vaccine. 2018 Oct 1;36:6202-6211. 8)Why is it so hard to investigate the rare side effects of COVID vaccines? / Nature9)Edwards K, et al. Biologicals. 2019 Jul;60:1-7.

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zoom導入率は?医療機関のオンライン化はこの1年でどのくらい進んだか

 この1年間、新型コロナの影響で院内カンファレンスや学会のオンライン化が一気に進んだとされる。実際のところ、医療機関ではどんなツールが導入され、どんな目的に使われているのか。20床以上の医療機関に勤務する会員医師にオンラインアンケートを行い、1,019人から回答を得た。 「『2020年以降』に、勤務先の医療機関で導入されたオンラインツール」(複数回答可)を聞いた設問では、オンライン会議ツール「zoom」が620人(61%)と最多となり、「LINE」が122人(12%)、「Skype」が66人(6%)と続いた。「2020年以降に導入されたツールはない」との回答は329人(32%)だった。 医療機関の規模別にみると、「(導入時期を問わず)導入されているオンラインツールはない」と回答した人の割合は20~99床では40%、100~199床では34%、200床以上では28%と減少し、医療機関の規模が大きくなるにつれツールの導入が進んでいる状況が見えた。導入ツールの種類に大きな差はないが、複数のツールが一気に導入された医療機関がある一方で、現在に至るまでまったく導入されていない医療機関もあった。 オンラインツールを使う目的(複数回答可)としては「学会・講演会への参加」が最も多く326人、「組織内の会議」が289人、「組織内のカンファレンス・勉強会」が247人などとなった。 導入済みのツールの「優れている点」を自由回答で聞いた設問では、「皆が使っているので使い方を聞ける」、「学会の指定だったため」、「他のツールを使っていないのでわからない」と、半ば強制的に使い始めたものの、大きな不便はなく利用できている旨の回答が目立った。とくに地方で勤務する医師からは「学会に参加しやすくなった」「患者さんとご家族が負担なくコミュニケーションをとれる」(すべてzoomの利用者)と歓迎の声が見られた。 一方で、問題点としては「途中で途切れる」「音声が聞こえなくなることがある」というシステム面のほか、「無料版だと時間が限られる」(いずれもzoom利用者)という点への指摘が多かった。他には、「双方向の議論をしにくい」というコミュニケーションの難しさを挙げる声や、「組織内のIDでしか使えないのが不便」「用途が制限されている」「ツールに不満はないが、院内の回線状況が悪過ぎる」といった、勤務先のルールやシステム面への不満を指摘する声が上がった。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。病院のオンライン化、この1年でどのくらい進みましたか?

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新型コロナワクチン、予診票で確認すべきポイントは?/厚労省

 4月12日以降に予定されている高齢者への新型コロナワクチン接種開始を前に、厚生労働省は3月26日、新型コロナワクチン「予診票の確認のポイント」を公開した。予診票記載の14項目について接種前に確認すべき点がまとめられている。事務職員が確認可能な項目、最終的に医師の確認が必要な項目についても整理されている。既往症、現在の治療内容についての確認ポイント 予診票には、「現在何らかの病気にかかって治療(投薬など)を受けていますか」という問いが設けられ、抗凝固薬(血をサラサラにする薬と表記)の利用状況を問う項目が設けられている。確認ポイントとしては、とくに以下に該当するかに注意して接種の判断をするよう求めている:・基礎疾患の状態が悪化している場合や全身状態が悪い場合 体調が回復してから接種することが大切なため、体調が悪いときの接種は控える。体調がよくなった頃に、改めて次の接種を相談するよう説明する。接種後の軽度の副反応が重篤な転帰に繋がることのないよう、とくに慎重に予防接種の適否を判断する必要がある。・免疫不全、血が止まりにくい病気のある場合や、抗凝固薬を服用している場合 免疫不全のある方は、新型コロナウイルス感染症の重症化のリスクが高いとされている。米国CDCの見解では、現時点で、有効性と安全性に関する確立されたデータはないが、他の接種不適当者の条件に該当しなければ、接種は可能としている。 血が止まりにくい病気のある方や、抗凝固薬を服用している方は、筋肉内出血のリスクがあるため、接種後2分以上、強めに接種部位を圧迫してもらう必要はあるが、接種は可能(なお、抗血小板薬を服用している方は、筋肉内出血のリスクではないとされているので、接種は可能。ただし、止血に時間がかかる可能性があることに留意が必要)※なお厚労省では、「血をサラサラにする薬を飲まれている方へ」と題した情報提供用資料も公開している。・アレルギー疾患のある方 アレルギー歴についての確認ポイントを参照。アレルギー歴についての確認ポイント 予診票には、「薬や食品などで、重いアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を起こしたことがありますか」という問いが設けられ、「薬・食品など原因となったもの」が記載できる。ここでの確認のポイントとしては、下記のようにまとめられている:・接種するワクチンの成分に対し重度の過敏症の既往のある人は、接種不適当者に該当・1回目の接種でアナフィラキシーを起こした人は、2回目の接種はできない・食物アレルギー、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(花粉症含む)、蕁麻疹、アレルギー体質等だけでは、接種不適当者にはならず、接種するワクチンの成分に関係のないものに対するアレルギーを持つ方も接種は可能・ただし、即時型のアレルギー反応の既往歴がある人は、接種要注意者として、接種後30分間の経過観察をする さらに、「接種するワクチンの成分」について、ファイザー社のワクチンに含まれるポリエチレングリコールや、交差反応性が懸念されているポリソルベートが含まれる製品例や、接種判断の考え方が解説されている。 今回発表された「予診票の確認のポイント」では、上記2項目を含め、下記の全14項目について、確認のポイントとその解説がまとめられている。1~4、13は事務職員等が確認可能とされ、その他の項目も、記入の有無などの確認は事務職員等が行うことができるとされている。5~12、14については、最終的に医師が確認した上で接種を判断する必要があるとしたうえで、これらの項目も、記載内容を医師以外の医療従事者があらかじめ確認することで、医師の予診の時間が短縮されると考えられるとしている。[確認のポイントが示された予診票記載の14項目]1.新型コロナワクチンの接種を初めて受けますか。2.現時点で住民票のある市町村と、クーポン券に記載されている市町村は同じですか。3.「新型コロナワクチンの説明書」を読んで、効果や副反応などについて理解しましたか。4.接種順位の上位となる対象グループに該当しますか。5.現在何らかの病気にかかって治療(投薬など)を受けていますか。6.その病気を診てもらっている医師に今日の予防接種を受けてよいと言われましたか。7.最近1か月以内に熱が出たり、病気にかかったりしましたか。8.今日、体に具合が悪いところがありますか。9.けいれん(ひきつけ)を起こしたことがありますか。10.薬や食品などで、重いアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を起こしたことがありますか。11.これまでに予防接種を受けて具合が悪くなったことはありますか。12.現在妊娠している可能性(生理が予定より遅れているなど)はありますか。または、授乳中ですか。13.2週間以内に予防接種を受けましたか。14.今日の予防接種について質問がありますか。

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COVID-19施設内感染対策案を発表/日本感染症学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診療では、医療機関の施設内感染対策は重要な課題である。実際、院内感染によるクラスターの発生により通常の診療ができなくなった医療機関も全国に存在する。 こうした状況を鑑み、日本感染症学会(理事長:東邦大学医学部教授 舘田 一博氏)は、3月29日に「COVID-19施設内感染アンケート調査を踏まえた施設内感染対策案」を同学会のホームぺージで発表、公開した。 本対策案では、263施設(追加288施設)にアンケートを行い、実際に施設内伝播のあった42施設の回答をまとめた。この回答結果から反省点や今後の対策が示唆されている。8割の医療機関が2週間でクラスターを収束・500床以上の施設が40.5%を占め、COVID-19の入院管理を行っている施設が78.6%。COVID-19に対する基本的な院内感染対策のマニュアルの整備や教育などはほぼすべての施設で実施されていた。・院内伝播事例の発端者は、患者、職員の順。院内伝播に関連した罹患者は、看護師、患者、医師の3者が大半を占めた。・発端者の覚知から1日で感染対策を行ったのは19施設(45.2%)、3日以内が32施設(76.2%)。・発端者の確認から最終発症者までの数は、85%の施設で2週間以内に収まっていた。・施設内伝播の推定された要因は、患者-職員間、職員間、患者間が上位を占めた。・濃厚接触者からの発症のみでなく、それ以外からの発症者もみられた。・施設内伝播時の感染対策としては、患者および職員など接触者へのPCR検査が約90%の施設で実施され、職員の感染対策の徹底(マスク、手指衛生、食事など)も80%以上の施設で実施されていた。また、患者の感染対策(マスク、手指衛生)、環境整備の徹底(高頻度接触面の消毒)は半数以上の施設で実施された。新規入院や外来診療の制限は半数程度であった。「感染対策マニュアル」の整備、遵守、見直しが大事 COVID-19施設内感染アンケート結果からの考察として、1)施設内伝播を経験している施設は、COVID-19患者の入院管理を行い、感染対策マニュアルをすでに整備している施設が多いことから、マニュアル内容の見直し(クラスター発生時の対応が含まれているかなど)、マニュアルが形骸化していないか、遵守されているか定期的なチェックが必要2)施設内伝播事例での罹患者は医師、看護師、患者が大半であり、日頃からの症状サーベイランスが重要3)感染経路の大半は職員間、患者間、職員-患者間であり、濃厚接触者でなくとも感染伝播事例があることから、接触者でも濃厚接触者と同等の対応が必要である。また、誰が発症しても濃厚接触者とならないような対策が必要4)発端者を覚知後、即日に感染対策を行えている施設は半数にも満たない。COVID-19の特性から発端者を覚知した段階ですでに感染が広がっている可能性があるため、事前に初動をシミュレーションしておくとともに、施設内で発端者を覚知した時点で迅速な対応が必要5)施設内伝播覚知後の新型コロナウイルス感染症検査は、無症状の接触者(職員・患者とも)に実施している施設が大半であり、無症状感染者がいることや潜伏期間を考慮すると濃厚接触者に限らず広く接触者を対象とし、施設および施設規模に応じて適切なタイミングで新型コロナウイルス感染症検査(PCR検査や抗原定量検査)を行うことが有用の5点を列挙し、注意を喚起している。院内感染対策は「事前準備と発生時」の2本柱で 施設内クラスター発生時の行動として「事前準備」と「クラスター発生時」に分けて説明している。 事前準備としては、「職員・患者ともに手指衛生やサージカルマスク着用の徹底。職員は食事時間の個食を徹底し、食器やリネンなどの共有を避ける」、「施設内のCOVID-19感染対策マニュアルを策定する」、「COVID-19感染対策マニュアルが遵守できているか確認する」などを提案している。 また、クラスター発生時としては、「平日・休日・夜間に関わらず事例覚知後、直ちに疫学調査を行い、対応策を検討」、「施設内対策本部の設置、感染防止策の再確認ならびに強化、院内での情報共有、保健所と密に連携を取りつつ日々の方針を決定する」、「外来診療や入院の制限を検討する」などを提案している。今後の課題は「収束の目安」や「ワクチン接種」 最後に「COVID-19施設内クラスター発時の対応でわかっていないこと、これから解決すべきこと」として未解決の項目として「外来診療、リハビリ外来、外来透析、新規院診療をどの程度停止すべきか。停止した場合はいつまで停止とすべきか」、「クラスター収束の定義」「施設状況やフェーズに応じた職員の定期的なスクリーニング検査を行うべきか」、「ワクチンを接種していれば濃厚接触者とならないのか」などを列挙し、今後の課題と位置付けている。

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第49回 ワクチン接種要員として歯科医師なども検討へ

<先週の動き>1.ワクチン接種要員として歯科医師なども検討へ2.変異型ウイルスの宿泊療養も条件付きで可能に3.研究用検査キットの販売事業者5社へ行政指導/消費者庁4.2020年、超過死亡は認めず年間死亡者数は減少へ5.高齢者向け住宅での過剰介護防止、監視強化に乗り出す/厚労省1.ワクチン接種要員として歯科医師なども検討へ新型コロナウイルスワクチンの接種要員として、政府が注射を打てる職種の拡大を検討していることが明らかとなった。予防接種は医療行為にあたるため、接種は医師と看護師に限定されているが、現行法の規制を緩和し、海外の取り組みなどを参考に接種拡大を目指す。厚生労働省は、対象として歯科医師を筆頭に挙げ、法解釈変更の通知により、歯科医師が筋肉注射を打てる体制を検討している。なお、歯科医師には昨年4月にPCR検体採取を認める通知が出されており、同様の対応と考えられる。海外の事例として、アメリカの一部の州やイギリスでは歯科医師や薬剤師、救急救命士にもワクチン接種を認めている。国内のワクチン接種の進行状況は海外と比較して遅れをとっていることからも、今後、具体的な方針が決められるだろう。(参考)ワクチン注射の職種拡大 政府、歯科医など検討 接種推進に向けて(日経新聞)職種拡大巡り法改正議論を 厚労省の元医系技官、自民・国光氏 有事対応「早く安全に」(同)2.変異型ウイルスの宿泊療養も条件付きで可能に厚労省は、感染拡大が続く新型コロナウイルス変異株について、3月31日付けで、これまで原則入院としてきた対応を、地域の感染状況などに応じて、医師が入院の必要がないと判断した無症状病原体保有者や軽症者については、宿泊療養施設において丁寧な健康観察が行うことができるとした。また、入院中においては、変異株ごとに対応が異なり、イギリス型変異株である場合は従来の感染者と同室でも差し支えないが、南アフリカおよびブラジル型変異株患者においては、原則として個室での時間的・空間的な分離などの対応が求められている。(参考)変異型、宿泊療養も可 厚労省、「原則入院」から転換(日本経済新聞)資料 新型コロナウイルス変異株流行国・地域に滞在歴がある入国者の方々の健康フォローアップ及び SARS-CoV-2陽性と判定された方の情報及び検体送付の徹底について(厚労省 事務連絡最終改訂)3.研究用検査キットの販売事業者5社へ行政指導/消費者庁消費者庁は、3月26日までに新型コロナウイルス検査キットを販売する業者5社に対して、行政指導を行ったことを明らかにした。「研究用」として流通する新型コロナウイルス抗原・抗体検査キットを「厚労省承認済み」「国内唯一」と表記し、検査キットがあたかも公的に承認され、品質、性能が著しく優良であるかのように表示することで、一般消費者が研究用検査キットの効果について誤認し、誤った対応をしてしまうことを防止する観点から。消費者庁はSNSを通じて、研究用の抗原・抗体検査キットは、国が認めた体外診断用医薬品ではないため、自己判断で使用せず、感染が疑われる場合には医療機関などに相談するよう、一般消費者に対しても注意喚起を行っている。(参考)新型コロナウイルスの検査キットの販売事業者5社に対する行政指導について(消費者庁)「厚労省が承認」検査キット虚偽 消費者庁、5社を指導(日本経済新聞)4.2020年、超過死亡は認めず年間死亡者数は減少へ国立感染症研究所によれば、2020年度はインフルエンザの流行もなく、新型コロナウイルス感染拡大による影響としては、むしろ過少死亡が報告されていることが明らかとなった。感染症疫学センターが2012~20年の人口動態統計データを用いて、2020年1月~11月29日における超過および過少死亡数を、週別、都道府県別に算出した結果、全国47都道府県の超過死亡数の積算は77~1,954人、過少死亡数の積算は367~3,035人だった。これに対し、同センターは「すべての死因を含む超過死亡数は、おおよそ同時期の米国およびヨーロッパにおけるそれよりも相対的に小さい可能性がある。一方で、同時点の過少死亡数は例年より大きく、感染症対策や健康管理が行われている状況で正の影響が考えられるが、2020年の過少死亡数が偶然起こりうる範囲のものかどうかも含め、今後死因別の詳細なデータ解析が必要になる」とコメントしている。引き続き徹底した感染予防対策が求められる。(参考)20年死亡者、11年ぶり減 出生数は最少87万人―人口動態統計速報(時事通信)我が国におけるすべての死因を含む超過死亡数および過少死亡数 (2020年11月までのデータ分析)(国立感染症疫学センター)5.高齢者向け住宅での過剰介護防止、監視強化に乗り出す/厚労省厚労省は、2021年度介護報酬改定において、自立支援・重度化防止に資する質の高いサービス提供の推進を目的に立ち上げた科学的介護情報システム(LIFE)を活用して、高齢者向け住宅で過剰介護の防止に向けた監視を開始することを明らかにした。高齢者向け住宅を運営する介護事業者の中には、入居中の要介護者に対し、自社の介護サービスを必要以上に利用させて、介護報酬を多く受けとる「囲い込み」の問題が指摘されており、今回の介護報酬改定でメスが入れられた。厚労省へのデータ提出をしないと、ADL維持等加算や、自立支援促進加算、栄養アセスメント加算の算定を認めないこととなった。(参考)過剰介護の監視強化、高齢者住宅向け 囲い込み対策で(日経新聞)高齢者住宅の「囲い込み」、厚労省が監視強化へ…「過剰」介護防ぐ(読売新聞)「科学的介護情報システム(LIFE)」の活用等について(厚労省 事務連絡)資料 LIFEの活用等が要件として含まれる加算一覧(施設・サービス別)(厚労省)

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COVID-19ワクチン接種の準備状況は?医師アンケート

 有効な対応策が打ち出せない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対し、ワクチンの接種は重症化や死亡の予防に期待がもたれている。わが国でも2月から医療従事者にCOVID-19ワクチンの接種が行われている。 今後、一般向けに接種が拡大する中で、クリニックや病院などの医療機関ではどのような準備をし、どころからワクチンに関する情報を入手しているのか、3月11日にCareNet.comはWEBアンケートで会員医師500名にその現況を調査した。アンケートでは、0~19床と20床以上に分け、4つの質問に対して回答を募集した。76%の医療機関はワクチンを実施するまたはその予定 質問1として「勤務する病・医院ではCOVID19ワクチン接種を実施もしくは予定していまか」たずねたところ「実施するまたは実施予定」と回答した会員医師は76%、「実施予定はない」と回答した会員医師は24%だった。とくに0~19床の医療機関勤務の会員医師で「実施予定はない」が42%に対し、20床以上のそれでは「実施予定はない」が6%と規模の差で大きく分かれた。 質問2として「勤務する病・医院では、COVID19ワクチン接種のためにどのような準備を実施もしくは予定されているか(複数回答)」たずねたところ全体で「自分を含めたスタッフへの教育」(226名)、「接種専用部屋の設置」(213名)、「冷凍庫の用意」(210名)の順で多かった。とくに0~19床の医療機関勤務の会員医師では「接種実施予定がないため何もしていない」(105名)という回答が1位であり、ワクチン接種は比較的規模のある医療機関でなされることがうかがえた。 質問3として「COVID19ワクチンの接種関連情報を主にどこから入手しているか(3つまで選択)」とたずねたところ全体で「保健所などの行政機関」(266名)、「勤務先病院や医師会」(257名)、「CareNet.comなどのWEBサイト」(194名)の順で多かった。上位3つは病床数に関係なく同じであり、こうした社会情勢下では厚生労働省、保健所や行政機関からの連絡が第一義的にあり、速報性のある医療系WEBメディアで補完されている様子がうかがえた。 質問4では「COVID19の診療やワクチンの接種における当院の工夫」を自由記載でたずねたところ「職員がワクチン接種を受けた当日は特別休暇とする」、「患者向けの教育パンフレットの作成」、「アナフィラキシーショック対策として気管内挿管などの訓練、看護師への講義を実施」、「COVID19ワクチンに関するQ&Aを作成」、「職員全員へのワクチン接種訓練を実施」など患者、自院職員への啓発だけでなく、接種のエクササイズも実施している医療機関が見受けられた。

1988.

COVID-19の低酸素血症にヘルメット型マスクは有用か?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で中等度~重度の低酸素血症患者において、ヘルメット型非侵襲的換気法は高流量経鼻酸素療法と比較して、28日間のうち呼吸補助が不要だった日数について有意差はないことが、イタリア・Fondazione Policlinico Universitario Agostino Gemelli IRCCSのDomenico Luca Grieco氏らによる無作為化試験「HENIVOT試験」の結果で示された。急性低酸素呼吸不全の初期治療に推奨されている高流量経鼻酸素療法は、COVID-19患者に広く適用されている。ヘルメット型非侵襲的換気法は最近提唱された急性低酸素呼吸不全の代替管理法だが、有効性に関するエビデンスはなく使用は限定的とされていた。結果を踏まえて著者は、「さらなる研究で、気管挿管の必要性など、その他のアウトカムへの影響も確認する必要がある」と述べている。JAMA誌オンライン版2021年3月25日号掲載の報告。28日間で呼吸補助が不要だった日数を主要アウトカムに評価 研究グループは、ヘルメット型マスクによる非侵襲的換気が高流量経鼻酸素療法単独と比較して、COVID-19患者の呼吸補助のない日数を増やせるか否かを評価するため、2020年10月~12月にイタリアの4つの集中治療室(ICU)で多施設無作為化臨床試験を実施した(フォローアップ終了は2021年2月11日)。対象は、COVID-19で中等度~重度の低酸素呼吸不全(動脈血分圧/吸気酸素濃度比が200以下)の患者109例。 参加者は、ヘルメット型非侵襲的換気(呼気終末陽圧10~12cm H2O、プレッシャーサポート10~12cm H2O)による継続治療を少なくとも48時間受け、その後に高流量経鼻酸素療法を受ける群(ヘルメット群:54例)、または高流量経鼻酸素療法(60L/分)のみを受ける群(高流量経鼻酸素群:55例)に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、登録後28日間で呼吸補助が不要だった日数とした。副次アウトカムは、登録後28日以内で気管挿管を必要とした患者の割合、28日時点の評価で侵襲的人工換気が不要だった日数、60日時点の評価で侵襲的人工換気が不要だった日数、ICU内死亡率、入院中死亡率、28日死亡率、60日死亡率、ICU入室期間、および入院期間などであった。高流量経鼻酸素療法と有意差なし 無作為化を受けた110例のうち、109例(99%)が試験を完了した(年齢中央値:65歳[IQR:55~70]、女性21例[19%])。 無作為化後28日間で呼吸補助が不要だった日数の中央値は、ヘルメット群20日(IQR:0~25)、高流量経鼻酸素群18日(IQR:0~22)であり、統計学的有意差はなかった(平均差:2日[95%信頼区間[CI]:-2~6]、p=0.26)。 事前規定の9つの副次アウトカムのうち7つで有意差はなかったが、気管挿管率は、ヘルメット群が高流量経鼻酸素群よりも有意に低かった(30% vs.51%、群間差:-21%[95%CI:-38~-3]、p=0.03)。また、28日間で侵襲的人工換気を不要とした日数の中央値も、ヘルメット群が高流量経鼻酸素群よりも有意に多かった(28日[IQR:13~28]vs.25日[4~28]、平均群間差:3日[95%CI:0~7]、p=0.04)。有意差はなかったが、院内死亡率はヘルメット群24%、高流量経鼻酸素群25%だった(絶対群間差:-1%[95%CI:-17~15]、p>0.99)。

1990.

第51回 コロナ禍は制限あっても対策なし、専門家の在り方とは

このような仕事をしていると、昨今は医療と関係のない友人と電話やオンラインでやり取りする時も、話題の中心は新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)になりがちだ。つい先日も友人と電話でやり取りしていると、その友人が「あの新型コロナの専門家のおじさん、いきなり国会で魚の話始めちゃったよね。大丈夫かね?」と言い出した。こっちは「は?魚?なにそれ」と返すと、「だってさ、コロナの話の最中にマンボウの話なんてさ」ときた。これには久々に大声をあげて笑ってしまった。思わず「大丈夫と心配しなきゃならないのはどっちか?」と言いそうになったが、その言葉はぐっと飲み込んだ。このサイトの読者ならこうした勘違いはほぼないだろうと思う。友人が言っていたのは、国会の委員会審議に出席した政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身 茂会長が、改正新型インフルエンザ等特別措置法で新設された「まん延防止等重点措置」の略称「まん防」に関して言及していたことを指す。この「まん防」を感染者が急増する大阪府、兵庫県、宮城県に4月5日から初めて適用されることが決定した。ここで「緊急事態宣言」と「まん防」がどう違うのかを改めて整理しておきたい。まず、どの時点で発令するかは、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が定義した市中の感染状況を示すステージ1~4が目安といわれる。前者が感染爆発段階とも称されるステージ4、後者が感染急増段階のステージ3である。つまり「まん防」は感染急増の初期でステージ4となるのを食い止める措置。炎症性疾患の制御での経口ステロイド薬の服用開始が「まん防」、それでも制御不能な際の静注ステロイドの投与開始が「緊急事態宣言」と例えても良いかもしれない。その上で「緊急事態宣言」では対象地域は都道府県単位全体となるのに対し、「まん防」は対象都道府県の知事がそのなかで特定地域に指定を限定できる。いわば理論上は局地的対策で、都道府県単位全体に及ぶ甚大な影響を回避できる。また、「緊急事態宣言」では、飲食店などに時短と休業を要請できるのに対し、「まん防」では時短要請のみが可能。ともに要請に従わない場合に命令を出すことができ、従わない事業者への過料は前者が30万円以下、後者が20万円以下。ちなみにまん防では、都道府県が飲食店などに対し、従業員への検査受診の勧奨や発熱などの症状がある人の入場の禁止を要請するなどの措置も可能である。今回のまん防適用のきっかけは大阪府で感染者が急増し、時には東京都を上回る感染者数が報告される事態となり、吉村 洋文知事がその適用を要請したからである。その吉村知事は緊急事態宣言中の2月1日に宣言解除を政府に求める独自基準を知事主導で唐突に発表し、府の行政幹部や大阪府の対策本部会議に参加する専門家などを唖然とさせた。その後、基準を満たしたか否か、政府への解除要請の是非を巡って対策本部と丁々発止を繰り広げ、2月23日には京都府、兵庫県とともに宣言解除を政府に要請。その結果、2月末で大阪府を含む6府県では緊急事態宣言は解除となった。当時は「新しい波をできるだけ回避する。併わせて社会経済活動を維持する。難しい判断だが、それを模索していきたい」と語っていた吉村知事だが、その「理想」は約1ヵ月であっけなく潰えたことになる。とはいえ宣言解除後も大阪市内の飲食店への時短要請は1時間緩和されたに過ぎず、実質的には制限された生活が続いている。そして今回のまん防の適用により、大阪市の飲食店では緩和を解除して再び夜8時まで、その他の府内全域では夜9時まで時短を要請する見込みだ。ただ、実質的には大阪府全体の3分の1の人口(もちろん流入人口が別途あることは承知している)の大阪市で、飲食店の営業時間を1時間短縮させる程度ではどう考えてもその効果はかなり限定的になると考えられる。その意味で既存の対策をさまざまな観点から見直す時期に来ているのではないかと考えている。まず、感染のきっかけになりやすい「会食」の自粛を今以上にどう進めたらよいかだが、私個人は今以上にこれを推し進めるのはかなり難しいと考えている。そもそも人は食事をしなければ生物学的な生存は不可能である。ならば他人との会食に限って減らせばいいだろうという指摘は可能だが、それとて限界はある。そもそもヒトが他の哺乳類と明確に違うのは言語を有してコミュニケーションする生き物であるということ。たとえば、短命の最大のリスクファクターの一つが独身であるとの研究は数多く見かけるし、最近では家族と同居状態であっても「孤食」の人は死亡リスクが5割高いとの報告もある。これらの研究の多くは、この傾向は男性に顕著だと指摘しているが、ここで性差を深く追求するつもりはない。要は他人とのコミュニケーションや会食機会の有無はヒトの寿命にも影響しうる重要なファクターであるということだ。そのような背景を考えれば、そもそも他人との会食制限には倫理的にも問題を含むものであり、加えて今のように会食自粛が叫ばれて約1年が経過して不満が鬱積している人も少なくないと考えられるなかで、これ以上の自粛効果を得られる手法はほとんどないのではなかろうか?先ごろ厚生労働省の職員23人が時短要請を破っている飲食店で夜遅くまで会食していたことが明らかになり批判を浴びている。もちろんこの状況下では言語道断だが、そもそも事態の深刻さを最も認識しているはずの人たちですらこの事態ということは、もはや市中の我慢は限界に達している証左でもある。また、たとえ夜の営業時間を短縮したとしても、昼間に会食すればそれなりにリスクはある。さらにこういう事態になってから、市中で「昼飲みできマス」という看板が散見されるようになっている。今は飲食店も感染対策に気を配り、入口で検温、アルコール消毒、カウンターに着席すると隣との間に飛沫拡散防止用のアクリル板設置、隣席との間隔を空ける、隣席とのビニールカーテン設置、窓や扉を開けた換気などは日常的になってきた。とはいえ、これが穴だらけの対策であることは多くの専門家が同意することだろう。しかし、この穴をどう補完することでリスクを下げられるかを提言する専門家は少ない。そもそも専門家は何らかのリスク回避のための制限を提言することは得意だが、科学的に厳格であればあるほど制限緩和に後ろ向きになってしまうきらいがあるのは確かだ。そして専門家の中には「そうした提言をすることは、対策をやれば会食の機会を減らさなくともよいとの誤ったメッセージを伝えることになる」との懸念の声があるのは承知している。しかし、繰り返しになるが、もはや会食の自粛要請、時短要請の効果は限界が見えてきているといって差し支えない状況ではないだろうか。その意味ではこの飲食問題については、スイスが1994年に開始した重度のヘロイン中毒患者対策、つまり医師らのコントロール下でヘロインを使用させ、注射器の使い回しによる感染症や過剰摂取のリスクを減少させた経験と似たような考え方が必要な段階ではないかと個人的には感じている。

1991.

mRNAワクチン、2回目接種から1週間で新規感染率0.05%/NEJM

 新型コロナワクチンの接種が進む米国において、先行して接種を受けた医療関係者によるワクチンの有効性についてのデータが発表された。NEJM誌オンライン版2021年3月23日号CORRESPONDENCEの報告。 カリフォルニア大学(サンディエゴ校とロサンゼルス校)では、2020年12月16日からPfizerもしくはModernaのmRNAワクチン接種が開始された。両校は12月から有症状者に加え、無症状者に対しても週次の鼻咽頭スワブによるPCR検査を義務付けもしくは選択できるようにしており、これによってワクチン接種後の無症状感染者の検出が増加した。データは両校の従業員健康記録システムから匿名化されて取得された。 主な結果は以下のとおり。・2020年12月16日~2021年2月9日に、計3万6,659例が初回接種を受け、そのうち2万8,184例(77%)が2回目の接種を受けた。・接種から1日以上経過後にPCR検査で陽性となったのは379例で、その大多数(71%)が初回接種から2週間以内だった。・陽性例のうち、初回接種からの経過日数の内訳は、7日以内:145例(38%)、8~14日:125例(33%)、15~21日:57例(15%)、22日以降2回目接種前:15例(4%)だった。・陽性例のうち、2回接種からの経過日数の内訳は、7日以内:22例(6%)、8~14日以内:8例(2%)、15日以降:7例(2%)で、2回目接種から1週以降の陽性率は0.05%、2週以降は0.025%だった。 報告は、2回目接種から2週間後の陽性率の低さはmRNAワクチンの有効性がリアルワールドにおいても実証されたことを示唆している、としている。

1992.

循環器疾患合併COVID-19入院患者の予後規定因子を検討/日本循環器学会

 循環器疾患およびリスク因子を合併している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の臨床的背景や転帰を明らかにすることを目的としたレジストリ研究「CLAVIS-COVID」の結果の一部について、第85回日本循環器学会学術集会(2021年3月26日~28日)で松本 新吾氏(東邦大学医療センター大森病院)が発表した。循環器疾患やリスク因子の合併の有無にかかわらず、年齢の上昇に伴い死亡率が増加していることから、年齢が独立した非常に強い予後規定因子であることが示唆された。 COVID-19患者の予後については、昨年、中国から循環器疾患合併かつトロポニン陽性の患者の予後が悪いとの報告がJAMA Cardiology誌に掲載され、米国からは年齢・性別に加えて冠動脈疾患・心不全・不整脈などの循環器疾患合併患者で予後が悪いという論文がNEJM誌に掲載された。このような中、松本氏らは昨年3月時点で、わが国で進行しているレジストリ研究が見当たらなかったことから、循環器疾患およびリスク因子(CVDRF)合併COVID-19入院患者に関する多施設共同観察研究であるCLAVIS-COVIDを立ち上げ、日本循環器学会の公式なレジストリ研究として実施している。 本研究は後ろ向き観察研究で、2020年1月1日~5月31日にCOVID-19により入院した患者のうち、循環器疾患およびリスク因子(高血圧、糖尿病、高脂血症)を合併した患者を対象とし、主要エンドポイントは院内死亡とした。 最終的に国内49施設の1,518例のデータが解析対象となり、平均年齢は57±19歳、男性が58%、全体の死亡率は9.2%、CVDRF合併症例は693例(45.7%)であった。生存退院群(1,378例)と院内死亡群(140例)で比較すると、患者背景については、年齢、男性比率、ECMO使用、ICU入室、挿管管理で有意に院内死亡群が高かった。カプランマイヤー曲線は、CVDRF合併症例が非合併症例に比べて有意に死亡率が高く、海外と同様の傾向がみられた。 CVDRF合併症例について、生存退院例(585例、84.4%)と院内死亡例(108例、15.6%)で比較すると、患者背景については、院内死亡例でより高齢で、転院・介護/療養型施設からの入院が多かった。入院時に認められた合併症については、院内死亡例では慢性/急性心不全、冠動脈疾患、心筋梗塞、中等度以上の弁膜症、不整脈、COPD、慢性腎臓病、がんの合併割合が有意に高かった。入院時の自覚症状については、全体で一番多かったのは咳嗽(52.0%)で、息切れ/呼吸困難、悪寒、心不全症状(末梢浮腫、肺うっ血)の発現割合が院内死亡例で有意に高い一方、咽頭痛、嗅覚異常、頭痛の発現割合は生存退院例で有意に高かった。バイオマーカーについては、CRP、D-ダイマー、プロカルシトニン、KL-6、トロポニンもしくは高感度トロポニン陽性、BNP、NT-proBNPが院内死亡例で有意に高かった。このバイオマーカーの結果について松本氏は、「日本のように日常臨床で細かく繰り返し数値を取得できる国は珍しいため、貴重なデータである」と述べた。 本研究の最終的な解析結果の論文は現在レビュー中で、まずは年齢に着目して報告をまとめているという。その中でもインパクトのある結果として松本氏は、循環器疾患やリスク因子の合併の有無にかかわらず、年齢の上昇に伴い死亡率が急増しているグラフを示し、年齢が独立した非常に強い予後規定因子であることを指摘した。

1993.

武漢の新型コロナ抗体陽性率は約7%/Lancet

 中国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)アウトブレイクの発生地である武漢市において、無作為抽出した住民のSARS-CoV-2抗体陽性率は6.92%で、このうち39.8%が中和抗体を保有していた。中国・武漢疾病管理予防センターのZhenyu He氏らによる血清疫学調査の結果、明らかとなった。調査は、ワクチン接種戦略の進展に役立てる目的で実施したものだという。著者は、「今回の結果は、再流行を防ぐためには集団免疫をもたらす集団ワクチン接種が必要であることを示唆している」とまとめている。Lancet誌2021年3月20日号掲載の報告。無作為抽出で約1万人を対象に、2020年4月、6月および10~12月の3回調査 研究グループは、多段階層別クラスター抽出法を用い武漢市13地区から100のコミュニティを選択し、縦断的・横断的研究を実施した。各コミュニティから体系的に選択された対象世帯の家族全員が研究に参加することとし、2019年12月1日以降に14日間以上、武漢市に居住していた人を適格とした。 研究に同意した参加者は、人口統計学的および臨床的な質問からなる標準化された電子調査票に記入し、COVID-19関連症状とCOVID-19診断歴を自己報告した。 2020年4月14日~15日に免疫学的検査のため血液を採取し、SARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質に対する全免疫グロブリン(Ig)、IgM、IgAおよびIgG抗体の有無ならびに中和抗体について評価した。また、同年6月11日~13日および10月9日~12月5日にも血液を採取し、2回連続して追跡調査を実施した。 無作為抽出された4,600世帯のうち、3,599世帯9,702例が初回調査に参加し、十分な検体が得られた3,556世帯9,542例が解析対象となった。2020年4月の抗体陽性率は6.92%、うち中和抗体陽性率は39.8% 9,542例中532例(5.6%)がSARS-CoV-2に対する全Ig陽性で、母集団のベースラインにおける補正後血清抗体陽性率は6.92%(95%信頼区間[CI]:6.41~7.43)であった。全Ig陽性者532例のうち、437例(82.1%)は無症状であった。また、532例中IgM抗体陽性は69例(13.0%)、IgA抗体陽性は84例(15.8%)、IgG抗体陽性は532例(100%)、中和抗体陽性は212例(39.8%)であった。 2020年4月に中和抗体を有していた全Ig陽性者の割合は、2回の追跡調査において安定していた(同年6月:363例中162例44.6%、同年10月~12月:454例中187例41.2%)。 3回の調査すべてに参加した全Ig陽性者335例においても、中和抗体レベルは調査期間中に有意な低下を認めなかった(中央値:ベースライン時1/5.6[IQR:1/2.0~1/14.0]vs.初回追跡調査時1/5.6[IQR:1/4.0~1/11.2]、p=1.0、vs.2回目追跡調査時1/6.3[IQR:1/2.0~1/12.6]、p=0.29)。ただし、無症状者のほうが、感染者および有症状者と比較して中和抗体価が低下した。 IgG抗体価は経時的に減少したが、IgG抗体陽性率はあまり減少しなかった(感染者:ベースライン100%[30/30例]→2回目追跡調査時89.7%[26/29例]、有症状者:同100%[65/65例]→同92.1%[58/63例]、無症状者:同100%[437/437例]→同90.9%[329/362例])。

1994.

新型コロナワクチン、12~15歳に100%の有効性/ファイザー・BioNTech

 米国・Pfizerとドイツ・BioNTechは3月31日、両社の新型コロナウイルスワクチン(BNT162b2、商品名:コミナティ筋注)の12~15歳の青年を対象とした第III相試験で、以前報告された16~25歳を対象とした試験結果を超え、100%の有効性と強力な抗体反応を示したという速報をプレスリリースで発表した。両社は、米国食品医薬品局(FDA)および欧州医薬品庁(EMA)に緊急使用許可を申請する意向を示している。  本試験には、米国で12~15歳の青年2,260例が登録された。結果は、プラセボ群(1,129例)で18例の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が観察されたのに対し、ワクチン接種群(1,131例)では観察されなかった。また、ワクチン接種は、SARS-CoV-2中和抗体の幾何平均抗体価(GMT)1,239.5を誘発し、2回目の投与から1ヵ月後のサブセットで強い免疫原性を示した。これは、以前の分析で16~25歳の参加者に誘発されたGMT(705.1)に劣っていなかった。さらに、副反応は16~25歳の参加者で観察されたものとおおむね一致しており、良好な忍容性が示された。すべての参加者は、2回目の投与後さらに2年間、長期的な予防効果と安全性について引き続き観察される。 なお、両社はさらに、6ヵ月~11歳の子供を対象としたワクチンの安全性、忍容性、免疫原性を評価するために、国際共同シームレス第I/II/III相試験を計画している。この研究では、6ヵ月~2歳、2~5歳、5~11歳と3つの年齢グループに分け、2回投与スケジュール(約21日間隔)で評価する。5~11歳のコホートではすでに先週投与が開始されており、来週にも2~5歳のコホートで投与を開始する予定だ。

1995.

第51回 コロナ感染で懸念される男性特有の症状と影響

コロナ流行下にもかかわらず、海外では、感染対策を無視した野外パーティー(違法レイブ)が報道されている。若者を中心としたパーティだが、若年者であっても感染し、重症化しうることも自明である。また、感染時には無症状や軽症であっても、後遺症が残るケースも相当数報告されている。英国の大規模コホート研究では、男性が症例の60%を占め、性別が危険因子の1つであることが報告されている中、後遺症の1つとして、無精子症など生殖機能への影響が注目されている。「結婚相手として、新型コロナ感染の有無が気になる」と言う女性の声も聞いた。新型コロナ感染後の全身に及ぶ後遺症、精巣への影響もイタリアの研究チームが2020年7月にJAMA誌に発表した報告によると、調査した感染者143例のうち87.4%が、新型コロナから回復した後(発症から平均2ヵ月後)も、何らかの症状を訴えていた。倦怠感や呼吸苦の症状が続いているケースが多かったが、味覚障害や筋肉痛などさまざまな症状が見られた。32%で1〜2つ、55%で3つ以上の症状が見られ、44%がQOLの低下を自覚していた。中国で2020年6月に報告された新型コロナ患者の死亡剖検結果(91例)によると、ウイルスはほぼ全身に広がり、全身の臓器に変化が生じていることがわかったという。この結果を基に、新型コロナ後遺症を12に分類、最初に挙げたのが妊孕性への影響だった。精巣においてさまざまな程度の生殖細胞の減少と障害を起こしていたと報告。精巣は新型コロナウイルスの受容体であるACE2を多量に発現しており、感染により精子生成とアンドロゲン合成に影響を及ぼす可能性が推測されると指摘した。精子生成の障害は男性の生殖機能に影響を与える可能性があり、重度の場合は男性不妊につながる。また、アンドロゲンの欠乏は男性の第2次性徴や性機能に影響を与え、QOLを低下させる。ドイツの研究チームが2021年1月に発表した報告では、新型コロナに感染した男性84例と、同年代の健康な男性105例の精液を60日間わたって10日ごとに分析したところ、感染者は健康人と比較して、精子に悪影響を及ぼす炎症と酸化ストレスを示す数値が著しく高かった。ただし、英国の専門家らは、男性の生殖機能に影響を及ぼす「決定的な証拠」はまだ見つかっていないとし、「男性は過度に警戒すべきではない」との見方を示した。新型コロナウイルスは性行為でも感染する?また、精液から新型コロナウイルスが検出されたという報告がある。エボラ出血熱やジカウイルス感染症が性行為で感染することから、新型コロナも性感染症となる可能性が懸念されている。中国では河南省の市立病院で2020年5月、新型コロナ感染症と診断された男性38人(急性期15例、回復期23例)のうち、PCR検査で6例(15.8%、急性期4例、回復期2例)の精液からウイルスが見つかったという報告があった。現時点では、精液中にウイルスが見つかったにすぎない。専門家によると、性感染症と判断するには(1)性行為によって間違いなく感染したと考えられる事例が存在すること(2)精液から生きたウイルスが分離されることが必要だという。(2)については、ウイルス培養できることがわかれば、性行為によって感染する可能性が出てくるからだという。コロナ禍で「精子に良くない生活習慣」が増加精子に良くないのはウイルスだけではない。スマホでできる精子セルフチェックサービス「Seem」を運営するリクルートライフスタイルが、2020年12月に行った「精子に関する知識の実態把握調査」で明らかになったのは、コロナ禍においては、膝上PC作業や公共交通機関を避けるための自転車の使用など、陰嚢が圧迫されたり温度上昇しやすくなったりする状況が増えた上、精神的なストレスや、不規則な生活に伴う肥満など「精子に良くない生活習慣」が増えていることである。コロナ後遺症に、長期に渡る心身へのストレスと、新型コロナ出現後の日常は、これまでに経験したことのない不安や懸念が少なくない。感染対策は言うまでもなく、生活習慣の改善によって予防できることは自身で心掛け、安全な性行動に留意することが、アフターコロナを生きる男性諸氏にはとくに求められている。

1996.

コロナ流行下で小児のライノウイルス感染リスクが2倍超

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行が1年以上続き、マスクや手洗いなどのコロナ感染予防はいまや一般常識レベルに浸透している。この対策はCOVID-19のみならず、あらゆる感染症予防に有用と考えられる。東京大学の河岡 義裕氏(医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野教授)は、共同研究グループと共にCOVID-19流行下の呼吸器感染症ウイルス検出状況を調査したところ、全年齢層においてインフルエンザをはじめとする代表的な呼吸器感染症ウイルスの検出率は低下していた一方、10歳未満の小児では、風邪を引き起こすライノウイルスの検出率が著しく上昇していたことを発見した。研究結果は、Influenza and Other Respiratory Viruses誌オンライン版2021年3月15日号に掲載された。ライノウイルス検出率はCOVID-19流行期に著しく上昇 本研究では、COVID-19流行前後における呼吸器感染症ウイルスの検出状況を比較するため、2018年1月~2020年9月の期間、横浜市で2,244例の呼吸器疾患患者(COVID-19患者を除く)から採取された呼吸器検体(鼻腔ぬぐい液、咽頭ぬぐい液、鼻汁、唾液、気管吸引液、喀痰)を解析し、代表的な呼吸器感染症ウイルス(インフルエンザウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルスA/B、エコーウイルス、エンテロウイルス、ヒトコロナウイルス229E/HKU1/NL63/OC43、ヒトメタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルス1/2/3/4、パレコウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、ボカウイルス、パルボウイルスB19、単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス)の検出を行った。 COVID-19流行前後におけるインフルエンザウイルスやライノウイルスなど呼吸器感染症ウイルスの検出状況を比較した主な結果は以下のとおり。・2,244例の内訳は、男性1,197例(53.3%)、女性1,044例(46.5%)、性別不明3例(0.1%)。年齢分布は、10歳未満1,119例(49.9%)、10歳以上1,105例(49.2%)、不明20例(0.9%)。・全検体のうち、最も多く検出されたのはインフルエンザウイルス(592例)で、次いでライノウイルス(155例)だった。475例からは、その他の呼吸器感染症ウイルスが検出された。・インフルエンザウイルスやその他の呼吸器感染症ウイルスの検出率は、全年齢層でCOVID-19流行後に低下していた。対照的に、ライノウイルス検出率はCOVID-19流行期に著しく上昇し、例年の2倍以上だった。 本研究では、インフルエンザ症例数の増加期にはライノウイルス感染数が減少しており、インフルエンザウイルスがライノウイルスに何らかの干渉作用がある可能性が示唆された。著者らは、SARS-CoV-2出現後、感染対策が奏功し市中のインフルエンザ感染者が減少したことが、10歳未満の小児におけるライノウイルス感染増加と関連しているのではないかと指摘している。ライノウイルスは、コロナウイルスやインフルエンザウイルスと異なり、ノンエンベロープウイルスであるため、アルコール消毒よりも石鹸と水を使った手洗いが有効だという。

1997.

ワクチン接種2回目で多い副反応疑い、主な症状と発症時期は?/厚労省

 厚生労働省は3月26日、医療機関や製造販売業者からの副反応疑い報告状況、国内アナフィラキシー発生状況などについての検討会*を開催し、「新型コロナワクチン投与開始初期の重点的調査(コホート調査)」の中間報告などを行った。それによるとファイザー製の新型コロナウイルスワクチンを接種した場合、発熱、倦怠感、頭痛などの副反応が2回目に多くみられた。また、いずれの症状も接種当日~翌日に出現している場合が多かった。 報告によると、発熱の場合“1回目接種後の発熱(37.5℃以上)は3.3%であったのに対し、2回目は35.6%と高率だった。発熱する場合は翌日が多く、接種3日目には解熱した”とあり、また接種部位の疼痛は“1回目、2回目いずれでも90%超で、接種翌日が最も頻度が高く、接種3日後には軽快した”という。調査概要と結果詳細 この調査は伊藤 澄信氏(順天堂大学医学部臨床研究・治験センター)らによるワクチン接種者を対象とした前向き観察研究で、治験と同様の方法で1~2万人の安全性情報を収集し、厚労省の専門家会議を通じて国民に安全性情報を発信することを目的としている。 2月14日に特例承認となったファイザー製の新型コロナワクチン「コミナティ筋注」を2月17日から先行接種対象者に接種開始。2月25日に被接種者登録が終了、1万9,808例が1回目を接種しコホート調査に登録され、2回目接種者は1万7,579例だった。接種者の職種は医師17%、看護師47%、その他医療従事者36%(薬剤師・臨床検査技師・放射線技師は各3%、理学療法士2%ほか)。年代は20代:21%、30代:24%、40代:25%、50代:21%、60代以上:8.7%で、男性34%、女性66%だった。治療中疾患は高血圧が最も多く、次いで脂質異常症、糖尿病、気管支喘息の順に多かった。 症状の出現について、接種後8日目以降に回収した1回目接種1万9,035例(全体の96.1%) および2回目接種3,933例の健康観察日誌から調べた結果、1回目に比べると2回目接種では接種翌日に頭痛(約40%)、全身倦怠感(約60%)を自覚した。また、接種部位の疼痛については1回目、2回目ともに接種翌日時点で約90%の接種者が記録しており、これは2009年のH1N1pdmインフルエンザワクチンNHO 2万人調査での疼痛出現の割合(43.8%)と比較しても、頻度が明らかに高いことが示された。 主な症状と発症率は以下のとおり(1回目/2回目)。発熱(37.5℃以上):3.3%/35.6%発熱(38℃以上):0.9%/19.1%接種部位反応:92.9%/93.0%発赤:13.9%/16.0%疼痛:92.3%/91.9%腫脹:12.5%/16.9%硬結:10.6%/9.9%熱感:12.8%/16.6%かゆみ:7.9%/10.4%倦怠感:23.2%/67.3%頭痛:21.2%/49.0%*:第54回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、第14回薬事食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会合同開催(ケアネット 土井 舞子)患者説明用スライドはこちら『新型コロナワクチン副反応疑い症状』

1998.

ICU入室COVID-19へのエノキサパリン、中等量vs.標準量/JAMA

 集中治療室(ICU)に入室した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対し、予防的抗凝固療法としてエノキサパリンの中等量(1mg/kg/日、クレアチニン・クリアランス値により調整)の投与は同標準量(40mg/日)の投与と比べ、30日以内静脈または動脈血栓症・体外式膜型人工肺(ECMO)の使用・死亡の複合アウトカムについて、有意差は認められなかった。イラン・Iran University of Medical SciencesのParham Sadeghipour氏ら「INSPIRATION無作為化試験」研究グループが約600例の患者を対象に行った試験結果を報告した。COVID-19重症患者において、血栓性イベントの報告頻度は高い。抗血栓予防療法の強度を高めることに関するデータは限定的であり、今回の検討が行われた。研究グループは、「結果は、ICU入室COVID-19患者に対して非選択的に中等量の予防的抗凝固療法をルーチン投与することを支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌オンライン版2021年3月18日号掲載の報告。イラン10ヵ所の医療センターで試験 研究グループはイランの大学医療センター10施設を通じて、ICUに入室したCOVID-19患者を対象に、2×2要因デザインを用いて多施設共同無作為化試験を行った。 本試験で被験者は、エノキサパリン中等量(体重120kg未満でクレアチニン・クリアランス値30mL/分超に対し、1mg/kg/日)または同標準量(40mg/日)による予防的抗凝固療法と、スタチンまたはプラセボ(第2の仮説、本論では結果報告なし)を、それぞれ投与(両群の投与量について、体重とクレアチニン・クリアランス値に応じて調整)。割り付け治療は、30日間のフォローアップ完遂まで行うよう計画された。 被験者の募集期間は2020年7月29日~11月19日で、主要アウトカムの30日間フォローアップの最終日は2020年12月19日だった。 有効性の主要アウトカムは、30日以内の静脈または動脈血栓症・ECMOの使用・死亡の複合だった。試験の適格基準を満たし割り付け試験薬を1回以上投与された被験者を対象に分析を行った。 事前に規定した安全性に関するアウトカムは、BARCによる大出血(タイプ3または5)の非劣性評価(非劣性マージン:オッズ比[OR]1.8)、重症血小板減少症(血小板数:20×103/μL未満)などだった。大出血発生率も非劣性示せず 600例が無作為化を受け、主要解析には562例(93.7%)が含まれた(年齢中央値62歳[範囲:50~71]、女性は237例[42.2%])。 主要有効性アウトカムの発生は、中等量群126例(45.7%)、標準量群126例(44.1%)だった(絶対リスク差:1.5%[95%信頼区間[CI]:-6.6~9.8、OR:1.06[95%CI:0.76~1.48]、p=0.70)。 大出血の発生は、中等量群7例(2.5%)、標準量群4例(1.4%)で、ORは1.83(片側97.5%CI:0.00~5.93)と非劣性は示されなかった(非劣性のp>0.99)。重症血小板減少症の発生は、中等量群でのみ6例(2.2%)で認められた(6 vs.0、リスク差:2.2%[95%CI:0.4~3.8]、p=0.01)。

1999.

第51回 「コロナワクチン、選べるようにする!」、ワクチン担当大臣補佐官発言のおそまつ

「会場を選べば打つワクチンを選ぶことができる」こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。週末は所用があって中央道を使って長野県に住む大学の先輩宅に行ってきました。先輩はリタイア後、別荘地で暮らしているのですが、最近ワクチン接種を巡って不穏な動きがあると話していました。不穏な動きとは、知人の女性が属する地域のあるグループが「ワクチンは危険だから接種はやめましょう」という運動をしている、というのです。「とくに新聞も読んでないようだし、NHKニュースもちゃんと観ていない人たちで、インターネットで探した情報だけで理論武装しているんだよね。高齢者が多い地方だからこそ、ワクチン接種は必要なのに…」と、先輩は渋い表情でボヤいていました。さて、そんな話を聞いた翌28日の朝、友人宅でぼんやりテレビを見ていたら、興味深い放送がありました。フジテレビの番組「日曜報道 THE PRIME」に出演した小林 史明ワクチン担当大臣補佐官が、国民がどの種類のワクチンを接種するか自ら選択できるようにする、という考えを示したのです。小林氏は「接種会場ごとに打つワクチン(の種類)を決めていく。それは公表されるので、会場を選べば打つワクチンを選ぶことができる」と説明。接種に関し「自身の理解や判断、事情で打ちたくない、打たないという判断をされる方もいると思う。そういう判断ができるような情報をしっかり提供して、選べる環境を作っていきたい」と語っていました。この発言を聞いて、「おいおい、こいつ大丈夫かよ」と思わず声が出てしまいました。まだまだ不透明なワクチン確保新型コロナウイルスワクチンについて、いよいよ高齢者の接種が4月12日から始まりますが、一般向け接種のスケジュールはまだ示されていません。日本政府は、米ファイザー社と独ビオンテック社が共同開発したmRNAワクチンを年内に1億4,400万回分(7,720万人分)の供給を受ける契約を結んでいるほか、英アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチン 1億2,000万回分(6,000万人分、今年初頭から)、米モデルナ社のmRNAワクチン5,000万回分(2,500万人分、今年上半期と第3四半期の二期に分けて)の供給契約を結んでいます。ただ、これらはあくまで契約上の数字であり、確実に確保できるかどうかはわかりません。たとえば、先行して承認されたファイザーのワクチンは、6月までに約5,000万人分(1億回分)を輸入することが決まっています。しかし、欧州連合(EU)の輸出管理強化が長引いており、必要量の確保には不確定要素が残っています。アストラゼネカのワクチンは2月5日に承認申請。モデルナのワクチンも、日本での供給を請け負う武田薬品工業が3月5日に申請しています。いずれも順調にいけば5月にも承認される見込みですが、これもあくまでも順調にいけば、の話です。河野 太郎ワクチン担当大臣、「完全に勇み足」と撤回そんな中の「ワクチンは選べるようにする」発言。政府は高齢者と先月17日に始まった医療従事者の接種まではファイザー製のみを使うとしているため、小林氏の言う「選べる」のが仮に実現するとしたら、一般接種での運用、ということになるでしょう。……とここまで書いたら、この発言を撤回する旨のニュースが飛び込んできました。小林氏のボスにあたる河野 太郎ワクチン担当大臣が3月30日午前の記者会見で、新型コロナウイルスワクチン接種をめぐり、希望するワクチンを選択できるとした小林氏の28日の発言について「完全に勇み足だ。撤回しておわびする」と述べたのです。産経新聞等の報道によれば、河野大臣は「ワクチンを接種するかどうかを選択できるが、現在ワクチンはファイザー1社しか承認されていない」と説明。今後、英アストラゼネカ社、米モデルナ社の承認が予定されているとしつつも、「それをどのような形で接種していくか戦略を検討しているところで、まだ何も決まっていない」と語ったとのことです。また、河野大臣は加藤 勝信官房長官が3月29日の記者会見で国民が希望するワクチンを選択できるかどうかについて慎重に検討する考えを示したことに対して、「まだ何も決めてない。複数が流通することも決まってない」と述べたとのことです。各市町村に3種類の接種場所は非現実政府は1会場で使用するワクチンは1種類とする方針なので、仮に小林氏の発言を実行するとすれば、各市町村にファイザー製、アストラゼネカ製、モデルナ製の3種類のワクチンを配り、3種類の接種場所を用意させるということになりますが、どう考えてもそんな煩雑なオペレーションが可能とは思えず、小林氏は何を根拠に「選べるようにする」と語ったかは不明です。ちなみに、厚生労働省サイトの「新型コロナワクチンについてのQ&A」1)には「接種するワクチンは選べますか」という「Q」がありますが、その「A」は曖昧で、「接種を受ける時期に供給されているワクチンを接種することになります。また、複数のワクチンが供給されている場合も、2回目の接種では、1回目に接種したワクチンを同じ種類のワクチンを接種する必要があります」と書かれているのみです。「ワクチンを選びたい人」は7割超ただ、「ワクチンを選びたい」というニーズは高いようです。フジテレビの「日曜報道 THE PRIME」でも視聴者投票約2万7,000人の調査結果で74%が「ワクチンの種類を選べるなら選択したい」と回答した、と伝えていました。「日経メディカル」が昨年12月に医師6,830人に調査した結果でも、医師の55%が「選べた方がよい」と回答。この調査では製薬・バイオ業界の関係者50人にも聞いていますが、業界関係者の78%が「選べた方がよい」と回答していました。とは言え、一般の人がさまざまな報道や情報を基に、有効性や副反応のデータを勘案し、自らワクチンを選ぶことができるのでしょうか。また、選択(人気)に大きな偏りが出て、使われないワクチンが大量に出てしまったらどうするのでしょう。国際社会の中で、先進国と途上国との間のワクチン格差が問題になっている現状では、未使用廃棄は許されるものではありません。接種を行う人材さえ確保できていない市町村も仮に選べるようにする場合、最大の懸念は、市町村側の負担です。複数のワクチンが国内で使用できるようになれば、それぞれのワクチンの特性に応じた管理や接種体制が必要になります。そこまでの対応ができる市町村はごく少数に留まるでしょう。厚生労働省が3月19日に公表した調査結果によれば、65歳以上の高齢者対象の新型コロナウイルスワクチン接種について、約2割の市区町村で「接種を担う医師を全く確保できていない」ことがわかっています。接種を行う人材さえ確保できていないのに、その接種をワクチンの種類に合わせ3パターンで運用するというのは、どう考えても現実的ではなかったのです。この「ワクチンを選べるようにする」発言。河野大臣の右腕として抜擢された小林氏(まだ37歳、NTTドコモ出身)の単なるテレビ用リップサービスであった可能性が高そうです。河野大臣からも相当お灸をすえられたことでしょう。それにしても、そんな軽はずみな発言をする人物を大臣補佐官に任命せざるを得ない自民党の人材不足に、「おいおい、この国大丈夫かよ…」と改めてつぶやいた、花見日和の日の午後でした。参考1)新型コロナワクチンについてのQ&A/厚生労働省

2000.

国内の新型コロナ変異株、9割超が英国株/厚労省

 厚生労働省は、3月23日時点で確認された国内の新型コロナウイルスの変異株の累計感染者数は549例で、空港検疫で報告された100例を合わせて649例に上ると発表した。前週から164例の増加となる。緊急事態宣言が全都道府県で解除され、日々の新型コロナ感染者数および重症者数は早くも増加傾向を示している。来月から新年度がスタートし、さらに人の動きが活発化することは必至で、感染動向を注視する必要がある。 厚労省によると、国内で確認された変異株549例は、26都道府県から報告されたもの。このうち最も確認数が多かったのは兵庫県161例(前週比で+67)で、大阪府105例(+33)、埼玉県58例(+1)、新潟県32例(±0)、神奈川県30例(+2)などが続く。 変異株の内訳は、英国株501例(前週比で+127)、南アフリカ株13例(+5)、ブラジル株35例(+18)となっている。26都道府県のうち、23都道府県は英国株のみ、あるいは英国株が多数を占めているが、千葉県(18/20例)および山梨県(2/2例)はブラジル株のみ、あるいはブラジル株が多数を占めている。岐阜県(9/9例)で確認されたのは、すべて南アフリカ株だった。このほか、確定には至っていないものの、新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム(HER-SYS)で把握した変異株PCR陽性者数は、累計で792例(速報値)となっている。

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