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ファイザー社ワクチン、英国・南ア変異株に対する有効率は?/NEJM

 有効率95%と報告されているファイザー/ビオンテック社製COVID-19ワクチン(BNT162b2)だが、英国で確認された変異株(B.1.1.7)および南アフリカで確認された変異株(B.1.351)に対する実社会での有効率はどの程度なのか? カタール・Weill Cornell MedicineのLaith J. Abu-Raddad氏らが、変異株への感染および重症化に対する同ワクチンの有効性を検証したコホート研究結果を、NEJM誌オンライン版2021年5月5日号のCORRESPONDENCEに報告した。 カタールでは、2月23日~3月18日にゲノム解析された症例の50.0%がB.1.351、44.5%がB.1.1.7により引き起こされていた。また3月7日以降はゲノム解析されたほぼすべての症例が、B.1.351またはB.1.1.7のいずれかへの感染であった。同ワクチンの接種は2020年12月21日に開始され、2021年3月31日時点で計38万5,853人が少なくとも1回のワクチン接種を受け、26万5,410人が2回の接種を完了している(訳注:カタールの総人口は約280万人)。 ワクチン接種状況、PCR検査結果、および臨床的特徴に関するデータは、流行開始以来蓄積されている全国的なCOVID-19データベースより抽出された。 主な結果は以下のとおり。・B.1.1.7への感染に対するワクチンの推定有効率は、2回目接種後14日以上で89.5%(95%信頼区間[CI]:85.9~92.3)であった(ワクチン2回接種群:PCR陽性50例 vs. PCR陰性465例、ワクチン非接種群:16,354例 vs.15,939例)。・B.1.351への感染に対するワクチンの推定有効率は、2回目接種後14日以上で75.0%(95%CI:70.5~78.9)であった(ワクチン2回接種群:179例 vs. 698例、ワクチン非接種群:19,396例 vs.18,877例)。・B.1.1.7およびB.1.351への感染が優勢である中、SARS-CoV-2感染による重症、重篤、および致命的な病態に対する2回目接種後14日以上における有効率は非常に高く、97.4%(95%CI:92.2~99.5)であった(ワクチン2回接種群:3例 vs.109例、ワクチン非接種群:1,692例 vs.1,586例)。・全国コホートの抗体陰性者の感染率と比較したnegative case-control designによる有効率は、B.1.1.7に対して87.0%(95%CI:81.8~90.7)、B.1.351に対して72.1%(95%CI:66.4~76.8)と推定され、上記結果が確認された。 著者らは、B.1.1.7およびB.1.351が国内で優勢の状況の中で、BNT162b2は感染および重症化に対して有効であったとまとめている。ただし、とくにB.1.351への感染に対する有効率は同ワクチンの臨床試験やイスラエル・米国からの実社会での報告(>90%)よりも約20%低かったと指摘。カタールでは、3月31日時点で、ワクチンを1回接種した6,689例と、2回接種した1,616例でブレークスルー感染が確認されている。また、ワクチン接種者におけるCovid-19による死亡も7例報告されている(1回接種後5例、2回接種後2例)。そのうえで、B.1.351感染に対しても、入院または死亡につながる最も深刻な感染に対する有効率は90%を超える強力なものであったとしている。

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鼻咽頭スワブが鼻から抜けなくなった1例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第186回

鼻咽頭スワブが鼻から抜けなくなった1例いらすとやより使用いやがる人に無理やり鼻咽頭スワブを突っ込んで新型コロナウイルスの検査をしたり、あろうことか空港では肛門から長いスワブを突っ込んだり、一体どうなってんだ的な検査を行っている国もあるようですが……。Gaffuri M, et al.An Unusual Retained Choanal Foreign Body: A Possible Complication of COVID-19 Testing With Nasopharyngeal SwabEar Nose Throat J . 2021 Feb 26;145561321993933.この症例報告はイタリアのものです。本文には何度か「非協力的な患者」という用語が出てきますが、認知力に問題があるとはいえ、鼻咽頭を無理やり突っ込むのはさすがに日本では問題になりそうです。鼻咽頭スワブによる新型コロナウイルスの検査が行われたのは、ダウン症の濃厚接触者の37歳男性です。施設でクラスターが発生したため、濃厚接触者として検査を受けに来たのです。処置中、頭を急に動かしたため、スワブが左鼻腔内にズボっと入ってしまい、しかもボキッと折れてしまいました。プラスチック製だと、折れる可能性は確かにありますね。かなり奥に入って折れたためか、肉眼的に見えない状況でした。医師は焦ります。どうにかして抜かないといけませんが、もしも鼻腔後壁を突き破っていたら…と思うとまずは画像検査を行わないといけません。しかし、この医師の肝っ玉の強いところは、画像検査前に逆の右鼻からササっと2回目の鼻咽頭スワブを行ったところです。外科的処置が必要になるにしても、とりあえず彼がコロナかどうかみておこう、というわけです。メンタル強いな……。単純X線写真では、折れたスワブの先は見つかりませんでした。そこで、鼻咽頭スコープを使って、スワブの先端がないか探すことにしました。……あった!!鼻中隔と上鼻甲介の尾の間に挟まれる形で、スワブの先がありました。ディスポの鼻咽頭スコープを使って観察したのですが、どうも容易には摘出できそうにないことがわかりました。その後、男性は新型コロナウイルス陽性であると判明し、手術室に移動して処置が行われました。把持する鉗子が必要だったので、鉗子チャネルがある内視鏡が必要でした。というわけで、気管支鏡を使って摘出処置が行われました。そして、スワブの先が摘出されました。ヤッター!鼻出血やその他合併症はなく、しばらく様子を見てからCOVID-19病棟に入院になったそうです。――こういう症例報告をみると、唾液PCRが広く普及してよかったなぁと思います。イタリアにおける4,876人の鼻咽頭スワブ検査のうち、鼻腔に合併症を起こした症例は8人(0.16%)です1)。きわめてまれな合併症ですが、8人のうち3人が鼻咽頭スワブの断裂です。無理矢理突っ込まないことは当然として、愛護的に検査しないとコワイということがわかります。1)Fabbris C, et al. Am J Otolaryngol. 2021 January-February; 42(1): 102758.

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第56回 コロナ禍で個人情報を晒す困窮者も、今こそ地域密着医療の出番では?

コロナ禍で2度目、しかも一部地域では緊急事態宣言発出中となるゴールデンウイーク(GW)は、多くの国民にとって過ごしにくかったに違いない。コロナ禍でたまりにたまった1年分の鬱憤を晴らしたくとも晴らす機会すらないのだから。かく言う私は、そもそもGWがあってないような立場に従来からおかれている。仕事を引き受けても、その一部を誰かに割り振ることができないフリーの立場にとっては、世間一般の長期休暇で仕事関係先から連絡が激減するGW、お盆休み、年末年始は溜まった仕事を片付けるための好機となる。実際、4月29日のGW入り以降、出かけた範囲は最も遠くても電車で20分以内の場所に限られている。また、GWは前述のように仕事関係先から連絡がこないので仕事をしながらも比較的普段よりはのんびり時間が過ごせる。ということで仕事の合間に仕事場周辺をトボトボ散歩することが増える。そんな散歩の道すがら、電柱に張られたある張り紙が目に留まった。それを見て「ああ、またか」と思った。同じような張り紙はちょうど昨年の第1回目の緊急事態宣言発令中にも目にしている。1回目の張り紙にはこう書いてあった。「お仕事探してます。特別なことはできませんが買い物の同行、散歩の同行お手伝いします。車椅子の方でも同行のお手伝いします。その他の事はそちらの方で決めてくださいよろしければ電話ください。090-○○○○-○○○○ ×(個人名)」正直、メディアで仕事をしているとさまざまな人に会い、さまざまなシーンに出くわすので、一般の人と比べ、何かに驚くことは明らかに少ない。しかし、これを見た時は正直かなり驚いた。私の場合、個人情報は守っても限界があるという認識がある上に、職業柄どうしても個人情報を一定程度さらさなければならないことが多く、自分の個人情報の開示に一定の耐性がある。しかし、一般人にとっては明日の生活がかかっていても個人の携帯電話番号や名字だけとはいえ、名前を不特定多数の人に晒すことはかなり勇気がいることだと思う。ちなみに余談になるが自身の個人情報開示については30代前半の頃、やややり過ぎの行動をし、周囲からたしなめられたことがある。それは取材相手とトラブルになった時のことだ。トラブルとは相手の発言をほぼ忠実にテープ起こしをして掲載したにもかかわらず、相手から電話があり、「そんなことは一言も言っていない」といきなり激怒されたのである。明確な言いがかりで録音音声もあるので、「お会いしてお聞かせしますよ」と言ったのだが先方はそれを無視。そうこうするうちにいきなりブログを開設し、私の名指し批判(というか中傷)投稿をし始めた。投稿の中には「この男の住所などの個人情報を集めております。提供していただいた方には謝礼5万円を差し上げます」との記述が。ちなみに私がこの相手に渡した名刺には住所は記載済み。まあ、放っておけばよかったのだが、若気の至りで自分の免許証の写メを添付し、「この通り情報提供しましたので謝礼をお振込みください」とご丁寧に銀行口座まで記載したメールを相手に送信したのだが返信はなかった。ちなみにこのメール送信の2日後にはブログそのものが消え失せていた。今ならば当然こんなことは決してしない。誠に若気の至りである。余談が長くなってしまったが、今回新たに見かけた張り紙はこう書いてある。「高齢者一人暮らしの方のお手伝い致します。日常生活で困ったこと掃除・洗濯電気等の交換・自転車の修理買い物の代行・買い物のお供その他いろいろお手伝いいたします。お気軽にご連絡して下さい090-○○○○-○○○○ ×(個人名)」電話番号と氏名は前回と同じで完全な同一人物だ。この地域には10年以上暮らしているが、こうした張り紙を見たのはこの2回だけである。やや極端を思うかもしれないが、この2回の張り紙だけでも、コロナ禍が社会全体に深刻なダメージをもたらしている証左の一部になると考えている。その意味で今回のコロナ禍がもっとも直撃した業種は、飲食業、宿泊業、医療・福祉業に代表される。前者2つの業種は、感染拡大阻止に伴う人と人の接触減、移動減の影響をまともにかぶった業種であり、医療・福祉業はまさに感染者発生などの対応でマンパワーが要求され、オーバーキャパシティとなった業種である。そして前述の張り紙を見て改めて調べた中で出てきたのが、厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部企画課が過去に作成した資料である。約10年前のものでやや古いが、今でも一定の傾向は示せていると思う。私が注目したのは、この12ページ目にある業種別非正規雇用労働者の割合である。今回、負の影響が直撃した飲食、宿泊業での非正規雇用の割合が突出しているのである。つまり今回のコロナ禍で前年比5割以上の売上減などはもはや当たり前となっている飲食・宿泊業では、もともと経済・社会基盤がぜい弱な単身者・女性などを中心とする非正規雇用者が多く、これらの人が収入減や雇用調整などの影響を大きく受けていると想像できる。コロナ禍はもともと存在していた弱者を、さらに過酷な環境をもたらすことによって社会全体により強く印象付けているとも言える。こう書くと一見医療とは何も関係ないではないかと言われてしまうかもしれない。しかし、医療の世界でもこうした残酷な可視化はより進行しているはずである。たとえばちょっと考えただけでも次のような問題が浮かび上がってくる。ひとり親家庭での親側、老老介護夫婦家庭でのどちらか一人が新型コロナに感染したら、残された家族を誰がどうケアするのか?独居の認知症高齢者が感染したら、きちんと行動自粛をしてくれるだろうか?軽度認知障害の人が外出自粛を長期間続けたら症状の進行が加速しないだろうか?生活のリズムを整えることが重要な精神疾患患者が突然在宅ワークになったら悪影響はないだろうか?このようなことは挙げればキリがないはずだ。もちろんこれらの問題は現場の医療者だけで解決できることは少ない。ただ、行政や民間などとの連携で解決に導くとしても数多くの局面で医療者はゲートキーパーとならなければならない。まだ早いと言われるかもしれないが、ワクチン接種率が上昇し、今回のパンデミックが一定の収束を見せた時に、どのように行政や民間、あるいはつかみどころのない「地域」との連携を深めていくかは、今から各医療者に考えておいて欲しいことだと思い始めている。街角の張り紙一枚から「大仰な」と言われてしまうかもしれないが、敢えてこのようなことを言ったのはこの件をきっかけに過去数年間、医療の世界でよく耳にするある言葉に対する違和感を改めて思い出してしまったからだ。その言葉とは「地域密着」「地域包括ケア」の2つである。最近では新規のクリニックが開業するとほぼ即日インターネット上のホームページもオープンしていることが少なくない。そこでクリニックの院長の「ご挨拶」ページに行くと、多くは「地域に密着した」というキーワードが使われている。一方、「地域包括ケア」はご存じのように官製用語と言ってもよく、「医療や介護が必要な状態になっても、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した生活を続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される」仕組みを指す。どちらの言葉も聞こえは良く、そのことを誰も否定はできない。その分、気軽すぎるほど多用されている。意味のあいまいなままに、いかにも新しい内容を伝えているかのように思わせる言葉を指す「プラスチック・ワード」に該当するとさえ、個人的には思っている。ただ、ここまで使われてしまったものだからこそ、単なる「プラスチック・ワード」で終わらせず、より価値のある「プラチナ・ワード」とでも言うべきものに徐々に転換させていく必要があるのではないかと考えている。まさにそのため今回の方策の一つが、コロナ禍により医療者の目に映った弱者情報の発信と周囲との連携によるその対策の立案とだと考えている。そしてそれを支えるための情報発信がメディア側に求められているとも思うのだ。繰り返しになるが、このことは本来はポスト・コロナ・パンデミック期に考えるべきこと、さらに問題に対するより明確な対策やアイデアを伴ってすべきことと言われればそうである。ただ、このコロナ禍が近現代まれに見る事態であるがゆえに、ポストコロナ期になってからでは、反動でこれらの問題が一時的に忘れ去られ、そのまま一気に忘れ去られてしまうのではないかとの危惧も持ってしまう。そんなこんなを街角の張り紙から考えながらGWを過ごしている。結局のところ自分の蚊のような微々たる脳ミソもまったく休まらない日々となっている。

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COVID-19のmRNAワクチン、妊婦の安全性に問題認めず/NEJM

 米国疾病予防管理センター(CDC)のTom T. Shimabukuro氏らは、米国の3つのワクチン安全性モニタリングシステムのデータを用いて初期調査を行い、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの接種を受けた妊婦において、明らかな安全性の問題は認められなかったことを報告した。ただし、著者は「母体、妊娠および新生児の転帰について情報提供するためには、妊娠初期にワクチン接種を受けた妊婦を含むより多くの妊婦の長期的な追跡調査が必要である」とまとめている。米国ではすでに多くの妊婦がCOVID-19に対するmRNAワクチンの接種を受けているが、妊娠中のワクチン接種の安全性に関するデータは限定的であった。NEJM誌オンライン版2021年4月21日号掲載の報告。3つのワクチン安全性モニタリングシステムのデータを解析 研究グループは、“v-safe after vaccination health checker”サーベイランスシステム(v-safe)、v-safe pregnancy registry、およびワクチン有害事象報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System:VAERS)の3つのワクチン安全性モニタリングシステムを用い、2020年12月14日~2021年2月28日の期間にワクチンを接種し、かつ妊娠していることが確認された妊婦を対象に解析した。 v-safeは、COVID-19ワクチン接種プログラムのために開発された新しいCDCのスマートフォンによる積極的サーベイランスシステムで、登録は任意となっている。v-safe登録者のうち、妊娠中または受胎前後にワクチン接種を受けた18歳以上の女性を対象に、希望者をv-safe pregnancy registryに登録し、妊娠、出産、乳児について追跡調査を行った。VAERSは、自発的な報告システムで、CDCと米国食品医薬品局(FDA)が運用している。妊婦と非妊婦で有害事象は同程度 v-safeにおいて、16~54歳の3万5,691例が妊婦と確認された。非妊婦と比較して妊婦では、注射部位疼痛の頻度は高かったが、頭痛、筋肉痛、悪寒、発熱の頻度は低かった。 v-safe pregnancy registryに登録された妊婦は3,958例で、このうち妊娠を完了したのは827例であった。827例中、712例(86.1%)が生児出産(このうち98.3%は妊娠第3期にワクチン接種)、104例(12.6%)が自然流産、1例(0.1%)が死産、10例(1.2%)が人工妊娠中絶および子宮外妊娠であった。 新生児の有害アウトカムとしては、早産が9.4%(60/636例)、在胎不当過小児が3.2%(23/724例)、先天異常が2.2%(16/724例)報告されたが、新生児死亡は認められなかった。 また、VAERSに報告された妊娠関連有害事象は221件で、このうち最も多く報告された事象は自然流産(46例)であった。 著者は先行研究の結果等を踏まえて、「直接比較ではないが、COVID-19 mRNAワクチン接種を受け妊娠を完了した妊婦における妊婦/新生児有害事象の発現率は、COVID-19パンデミック前に実施された妊婦を対象とする研究で報告された発現率と同程度であった」と考察している。

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第56回 コロナ変異株巡る国の対応に喝、塩崎元厚労相の忖度なき発言

新型コロナウイルスの感染拡大の要因の1つである変異ウイルス。英国型や南ア型、ブラジル型に共通の変異株N501Yや、南ア型やブラジル型にもある変異株E484Kに加え、最近では東京などで確認されている日本型変異株も現れた。さらにインドでは、感染力や免疫効果に影響を与える恐れのある遺伝子変異を2つ以上併せ持つ変異株も登場し、日本でも確認されている状況だ。およそ2週間ごとに変異するコロナウイルスだけに、変異株に関する状況把握や分析が喫緊の課題になってきた。日本でもようやくワクチン接種がスタートしたものの、こうした変異ウイルスが再感染の可能性を高めたり、ワクチンの効果を低下させたりすることが懸念されている。変異株への警戒が高まる中、N501Yは変異株PCR検査で探し出すことができるが、E484Kを探し出す変異株PCR検査は地方衛生研究所(地衛研)などでは運用されていないという。しかも、ゲノム解析の対象はN501Yで変異株陽性になった場合だけだ。E484KのPCR検査法を導入しない不思議これに対し、新型コロナに関する情報をSNSやブログで積極的に発信している塩崎 恭久・元厚生労働大臣は、歯に衣着せぬ物言いをしている。まず、国立感染症研究所(感染研)と一部の地衛研に集中されているゲノム解析のプロトコルと体制の抜本的見直しが必要だと指摘。第2次緊急事態宣言の解除の際、変異株PCR検査の実施率をPCR陽性者対比で40%とするという目標が決められただけで、ゲノム解析の数値目標が設けられていないことを問題視している。実際、E484Kをスクリーニングする変異株PCR検査は存在する。塩崎氏は、海外のみならず国内でも実用化され、流通していると指摘した上で、なぜスピーディに導入しないのか理解に苦しむと述べている。データベースの構築・公開・活用をまた、変異株の地域性は臨床上、極めて有益な情報だが、感染研が積極的に示していないと批判。大学などの病院ネットワークを通じたゲノム解析を格段に増やし、解析結果を臨床医療に還元すべきだと提言している。さらに、ゲノム解析結果は国際的なウイルスゲノム解析結果公開サイト「GISAID」では、厚労省・感染研の方針で、採取地を「JAPAN」としか登録していないため、国内の分布がわからないと指摘。どの地域に変異株が流行しているのか拡散状況が正確に把握できるようにすれば、国内外の研究者が分析できるようになり、実態解明が加速すると提案している。ウイルスゲノム・サーベイランス体制の強化塩崎氏は具体的な施策として、官民合同のゲノム解析チームによるゲノム解析体制の構築、公衆衛生によるサーベイランス、そして地域臨床医療との有機的一体化を早急に実現することで世界に遅れをとることのない科学を実践すると共に、コロナウイルスの変化のスピードに負けない迅速性をもって対応し、変異株問題でも先端を行く覚悟が必要だ、と提言する。政権が変異株に対する具体的な施策を示せない中、塩崎氏の提言は具体的であり、納得できるものがある。政府には専門家による分科会などが複数あるが、政治に忖度した発言が目に付く一方、政権与党の一議員である塩崎氏が忖度なき発言をしているのがなんとも皮肉だ。

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第56回 コロナで“焼け太り”病院続出? 厚労省通知、財務省資料から見えてくるもの(後編)

「まさにコロナ・バブルです」こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。4都府県緊急事態宣言下のゴールデンウイーク、皆さんはどうお過ごしですか。私は仕方がないので、BS放送でのメジャーリーグ観戦とインターネットでの日本選手権競輪(通称:競輪ダービー)観戦で時間を潰しています。競輪ダービーは東京都調布市の京王閣競輪場で無観客で開かれています。オリンピックのケイリン代表候補の脇本 雄太、新田祐大両選手が出場しないのが少々残念ですが、2月の全日本選抜競輪を優勝し好調をキープしている郡司 浩平選手を今回はしっかり応援しようかと思っています。さて、前回記事の執筆後、知人の記者がこんな情報を寄せてくれました。「ある病院長が『首都圏の基幹病院なのに、コロナ患者を受け入れていないところがある』と話していた。補助金でウハウハな病院は結構あるようだ」。また、首都圏のある基幹病院の事務方の人は「積極的に受け入れてきた基幹病院は令和2年度の利益がすごいことになっています。民間なら税金で持っていかれますが、国公立・公的だと相当な内部留保ができるのでは。まさにコロナ・バブルです」と伝えてきました。「支援金が入金されればマイナスを補うことができる」と財務省「とにかくコロナ病床を増やせ!」という司令の下、展開されたさまざまな施策の結果、“焼け太り”とまで言われるまでになった医療機関の状況を、国の財政を司る財務省はどう見ているのでしょうか。“焼け太り”の病院があることや、補助金などで“ジャブジャブ”になっていることを認識しているのでしょうか。それを伺い知ることができる資料が4月、財務省から出ています。財務省主計局は4月15日、社会保障制度の見直しについて議論する財政制度等審議会・財政制度分科会(分科会長=榊原 定征・前経団連会長)において、2022年度診療報酬改定に向けての方針を説明、「医療提供体制の改革なくして診療報酬改定なし」との方向性を資料と共に示しました1)。この中で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大と医療機関経営についても、その見解と今後の対応策を示しています。それによれば、新型コロナの感染拡大の影響で、医療機関経営が厳しさを増すなか、病床確保料や緊急支援事業補助金など補助金を手当てしていることから、「マクロとしては、新型コロナ患者に対応する医療機関の減収を補い得る額が措置されている」との見方です。そして、「支援金が入金されれば医業利益の前年からのマイナスを補うことができる」としています。さらに、新型コロナウイルス感染患者を受け入れた医療機関へのさらなる支援として、「一定の条件を満たせば、前年や前々年の同じ月と同水準の診療報酬を支払う臨時的な措置を検討すべき」としています。一方で、「新型コロナに対応しない医療機関にも講じてきた多額の支援については、新型コロナへの対応に限られた財政資源を集中的に投入するという観点から、これまでの財政支援についてその目的及び効果にさかのぼった見直しが必要」と、コロナ未対応の病院には厳しい見方を示しました。端的に言えば、“ジャブジャブ”お金を投入した結果、マクロ的には医療機関の経営が苦境に陥らないようにしてはあるが、コロナ対応をしていない医療機関への多額の支援については今後見直す、ということです。1年前は「コロナで病院経営が大変」が大半一方、医療機関側はこれまでの巨額な財政支援をどう見ているのでしょうか。さすがに世間の手前、「コロナで儲かってます!」とは言えないので、そこはこそっとデータを示すに留めている印象です。日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会は共同で、定期的に「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査」の結果を公表しています。昨年の緊急事態宣言による医療機関への影響は、8月に公表された同調査の2020年度第1四半期分2)で明らかになっています。それによれば、全病院の外来患者・入院患者共に4月は大幅に減少、5月にはさらに悪化しました。6月には入院・外来患者数は、わずかに回復の兆しは見えたものの、医業損益は大幅な赤字が継続していました。コロナ未受け入れ病院と、コロナ受け入れ病院で比較した結果、2020年4月~6月はどちらの病院も業績は前年に比べ悪化していましたが、特にコロナ受け入れ病院では、医業利益率が-12.5%と悪い結果となっていました。このように、1年前は「コロナで経営が大変」という声が非常に大きかったのです。第3四半期は、支援金加味で業績改善「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査」の最新の調査結果は2021年2月に公表された2020年度第3四半期分3)です。その第3四半期においても前年同期と比較し、外来患者数、入院患者数の減少が継続していることが明らかとなっています。なお、この時は2020年の4月〜12月までの経営指標も公表されています。それによれば、医業収益の前年度との比較では、コロナ患者受け入れありが-5.1%、コロナ患者受け入れなしが-2.1%と、やはりコロナ受け入れ病院のほうが悪い業績でした。ただ、支援金(医療従事者への慰労金除く)を加味した場合の、医業収益の前年度との比較を見ると、コロナ患者受け入れありが-1.0%、コロナ患者受け入れなしが-1.4%と、受け入れた方が若干良好な業績でした。緊急包括支援交付金の入金時期については、都道府県によってばらつきがあり、この数値は改善する可能性があるとのことでした。つまり、病院のほとんどが、医業収益的には補助金等のおかげでほぼ前年並みを達成できているのです。財務省の見立てと同じです。コロナ禍の中、他の多くの産業の事業者が羨む数字と言えるでしょう。コロナ以前よりも厳しい医療機関のリストラへこの調査、まだ2020年度第4四半期分と、1年通した数字が公表されていないのでなんとも言えませんが、ひょっとしたら年間では相当なプラスになっている可能性もあります。医療関係団体は、経営が悪い時は「診療報酬を上げてくれ!」と叫びますが、儲かっている時は静かに目立たないようにしているものです。この1年間に投入されたコロナ関連の補助金が病院経営にどう影響したか、そこは正確なデータを公表してもらいたいものです。大学病院の数字も気になるところです。コロナ対応という大義名分のもと、補助金でほぼ平等に生きながらえることができた日本の病院ですが、この先はコロナ以前よりもはるかに厳しい、医療機関のリストラが待っていると覚悟しておいたほうがいでしょう。先の財政制度等審議会・財政制度分科会で財務省は、新型コロナウイルス感染症をきっかけに、「日本の医療提供体制の脆弱さが浮彫りになった」と指摘、医療機関相互の役割分担や連携体制の構築などにより、人的資源の効率的な配置・活用を行うことが必要だと説いています。そして、病院数の8割、病床数の7割を占める民間病院への対応が重要との観点から、診療報酬の役割が舵取り役として極めて重要になると強調、「2022年診療報酬改定においては『医療提供体制の改革なくしては診療報酬改定なし』と考えるべき」としています。財務省の考え方(いつも少し尖っています)がそのまま医療行政に反映されるとは限りませんが、医療提供体制を集約、効率化するという方向性は厚労省と同じで、その中心となる施策は地域医療構想を確実に進めていくことに他なりません。コロナ以前よりも厳しい医療機関のリストラが始まると覚悟しておいたほうがいいでしょう。病院経営者は、2020年度決算の数字を見て喜んでいる場合ではないと思われます。コロナ対応で明らかになった自院の実力、弱点を分析した上で、ポスト・コロナの時代を見据えた現実的な経営戦略の立案が求められます。参考1)財政制度分科会(令和3年4月15日開催)資料一覧/財務省2)新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査(2020年度第1四半期)3)新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査(2020年度第3四半期)

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第58回 COVID-19後の脳のもやもやをゲームで治療する

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を切り抜けた人のいったいどれほどが認知機能障害を呈するかははっきりしていませんが、思考・集中・記憶が困難になることは確かにあり、そのような耐え難い尾を引く(long-haul)後遺症は悪くすると何ヵ月も続きます1)。退院に向けてリハビリに取り組むCOVID-19入院患者の神経や精神を検査した報告では調べた57人のほとんど46人(81%)に認知機能障害が認められ、計画や取り仕切ることなどに必要な遂行機能や注意の欠陥がとくに多く生じていました2)。認知機能障害は入院患者に限りません。米国のノースウェスタン大学病院にはCOVID-19神経副作用を専門とするNeuro COVID-19 Clinicと呼ばれる診療所があり、去年5月の開設以来400人以上を手当てしています1)。それらの外来データを調べたところ、神経症状が6週間以上続く100人目までの患者で不特定な認知異常“脳のもやもや(brain fog)”の訴えは最も多く81人(81%)に認められました3)。COVID-19に伴う認知機能障害の原因はわかっておらず、脊髄液やその他の検体を使って炎症やその他の異常の手がかりを探る研究が始まっています。原因の研究の一方で治療法の検討も始まっています。たとえば体を動かしたり頭を使うゲームがその一つで、COVID-19を経た患者48人の試験ではパズルのような頭脳ゲームが有望な成績を収めています1)。研究者は無作為化試験を始めるつもりです。ADHD(注意欠如・多動症)小児の治療に医師が処方するビデオゲームEndeavorRxの米国FDA承認4)を得たAkili Interactive社のデジタル治療の取り組みも進んでおり、COVID-19に伴う認知機能障害患者100人が参加する試験で検討されます1)。去年の6月に承認されたAkili 社のADHDゲーム治療は操作棒(マルチスティック)を使って障害物を避けつつ目標(アイテム)を回収することで注意の改善を目指します。その改善はADHD小児300人以上が参加した無作為化試験で裏付けられています5)。また、親や医師の評価も教育用の別のゲームをした対照群より良好でした。ゲームのようないわゆる脳トレは万能ではありませんが、注意や切り盛りする処理能力の構築に役立つことが裏付けられつつあります。注意や処理能力の障害はCOVID-19後遺症のどうやら核をなしており、インターネットやアプリを介したゲーム訓練は長引くCOVID-19症状でどうにもならないと悲観にくれる人の前途を照らすでしょう1)。参考1)COVID-19 ‘brain fog’ inspires search for causes and treatments / Science 2)Jaywant A,et al. Neuropsychopharmacol. 2021 Feb 15:1-6.[Epub ahead of print]3)Graham EL, et al. Ann Clin Transl Neurol. 2021 Mar 23.[Epub ahead of print]4)FDA Permits Marketing of First Game-Based Digital Therapeutic to Improve Attention Function in Children with ADHD / PRNewswire5)Kollins SH, et al. Lancet Digit Health. 2020 Apr;2:e168-e178.

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J&Jの新型コロナワクチン、重症・重篤化に高い予防効果/NEJM

 Janssen(米国・Johnson & Johnsonグループの医薬品部門)の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「Ad26.COV2.S」は、単回接種によりCOVID-19を予防し、とくに入院や死亡を含む重篤なCOVID-19に対する有効率が高いことが認められた。安全性は、他のCOVID-19ワクチンの第III相試験と同様であった。オランダ・Janssen Vaccines and PreventionのJerald Sadoff氏らが、Ad26.COV2.Sの国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「ENSEMBLE試験」の結果を報告した。Ad26.COV2.Sは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の完全長・安定化スパイク(S)タンパク質をコードする遺伝子組み換え非増殖型アデノウイルス血清型26(Ad26)ベクターである。NEJM誌オンライン版2021年4月21日号掲載の報告。米国、南米、南アフリカにおいて、約4万4,000人にワクチンまたはプラセボを接種 ENSEMBLE試験は、アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、メキシコ、ペルー、南アフリカおよび米国において実施された。研究グループは、18歳以上の成人をAd26.COV2.S(ウイルス粒子量5×1010/mL)群(以下ワクチン群)またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、単回接種した。 主要評価項目は、per-protocol集団における接種後14日以降、および接種後28日以降の中等症~重症・重篤COVID-19発症で、安全性についても評価した。 2020年9月21日に登録を開始し、計4万4,325人が無作為化され、うち4万3,783人が接種を受けた(ワクチン群2万1,895人、プラセボ群2万1,888人)。per-protocol集団は、ワクチンまたはプラセボの接種を受け、接種時SARS-CoV-2血清陰性または不明でプロトコールの逸脱がなかった参加者と定義し、3万9,321人(ワクチン群1万9,630人、プラセボ群1万9,691人)が含まれた(データカットオフ日は2021年1月22日)。重症・重篤COVID-19予防の有効率は接種後14日以降で77%、28日以降で85% 接種後14日以降に発症した中等症~重症・重篤COVID-19症例は、ワクチン群116例、プラセボ群348例であり、有効率は66.9%(補正後95%信頼区間[CI]:59.0~73.4)であった。また、投与後28日以降の同症例はそれぞれ66例および193例で、有効率は66.1%(55.0~74.8)であった。 COVID-19重症度別の有効率は、接種後14日以降発症例で中等症64.8%(補正後95%CI:55.8~72.2)に対し重症・重篤76.7%(54.6~89.1)、接種後28日以降発症例でそれぞれ62.0%(48.7~72.2)および85.4%(54.2~96.9)であり、ワクチンは重症・重篤COVID-19の予防効果がより高いことが示された。 南アフリカでは、20H/501Y.V2変異株が高頻度に検出されたが(91配列中86配列、94.5%)、有効率は、接種後14日以降発症の中等症~重症・重篤COVID-19に対して52.0%(補正後95%CI:30.3~67.4)、重症・重篤COVID-19に対して73.1%(40.0~89.4)、接種後28日以降でそれぞれ64.0%(41.2~78.7)および81.7%(46.2~95.4)であった。 重篤な有害事象の発現率は、両群とも0.4%であった。静脈血栓塞栓症はワクチン群11例、プラセボ群3例に認められたが、多くは基礎疾患や素因に起因している可能性が考えられた。死亡例はワクチン群で3例(COVID-19との関連なし)、プラセボ群で16例(5例がCOVID-19関連死)であった。

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第55回 政府も当事者意識を!新型コロナ感染拡大、収束のカギはテレワーク推進

ついに4月25日から新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)に基づく緊急事態宣言が東京都、京都府、大阪府、兵庫県に対して発出された。特措法に基づく緊急事態宣言発出はこれで3度目。もっとも今回は昨年4月に発出された緊急事態宣言時に次ぐ厳しい休業要請などが発表されている。そして従来から特措法に基づく、まん延防止等重点措置(まん防)や緊急事態宣言、あるいは自治体独自の自粛措置などで最も「標的」とされてきた飲食店に関しては休業もしくはアルコール提供なしの営業時間短縮(時短)が求められている。今回は宣言発出決定が23日、適用開始が25日と周知期間が極めて短かったこともあり、24日土曜日の都内の主要地域は、休業要請対象となるデパートや大型量販店などで買い物を済ませておこうとする人たちでごった返した。かく言う私も家族から1週間ほど前に「都心に行くときに買ってきて欲しい」と頼まれていたものがあり、それが休業要請対象施設で販売されているものだったため、「何とか土曜日中に買って」と哀願され、仕方なく外出した。そこで遭遇したのは、家族からの頼まれものを買うために入ったデパートのエレベーター待ち、ついでに立ち寄った大型書店のレジ待ち、のいずれも長蛇の列。とりわけ書店ではレジ待ちに並んでから終了までに約30分という人生初の経験をした。そして宣言初日の25日午前、最寄り駅周辺の飲食店街周辺を歩くと、あちらこちらに「臨時休業」「アルコールは提供しません」の張り紙。ざっと見て「臨時休業」と「アルコール提供なしで営業」は7:3くらいだ。見回っている最中に顔見知りの飲食店の経営者2人と顔を会わせた。いずれもアルコール提供なしで店を開くとのこと。それぞれの第一声は以下のような感じだった。「休業も考えたが、いろいろ計算すると、とりあえずは『お食事処』として営業するしかない」「時短はやむを得ないと思っていたが、まさかアルコールを提供しないように言われるとは思わなかった」後者の経営者はその後に言葉を継ぐように「いやー、本当につらい」と絞り出すように語った。そりゃそうだろう。アルコール類の提供を柱の一つとする飲食店にとって、「アルコールを提供するな、そのうえで時短もしろ」と言われるのは、やや品のない言い方かもしれないが「服を全部脱げ、そのうえで髪の毛も含めて全部体毛を剃れ」と言われる拷問のようなものだ。では、今回の広範な休業要請も含む緊急事態宣言は間違いだろうか? そう問われると、私はそうは思えない。このウイルスのメインの感染経路が飛沫感染であることを考えれば、やはり飲食の場での感染をいかに防ぐかが感染対策の大きなカギだ。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身 茂会長が何度も「急所」という言葉を使って表現するのはそのためだ(この「急所」という言葉に傷つく飲食店関係者がいるのも承知している)。そのうえで考えると、1回目と2回目の緊急事態宣言やまん防、それ以外の各自治体独自の飲食店時短営業要請の後の感染者報告数を見れば、飲食店の時短営業に一定の感染者減少効果があるのは確かだ。まん防については効果を疑問視する声はあるものの、まん防だけで感染者報告がすでにピークアウトしている宮城県の事例を考えると、効果はあると言える。ただ、感染が拡大すればするほど、飲食店の時短営業だけでは効果に限界があるのもまた現実だ。ほぼ飲食店の時短営業のみに対策が集中した2回目の緊急事態宣言下では、首都圏で2回の宣言期間延長を経て感染者報告数がほぼ下げ止まってしまったことがその限界を端的に示している。そこで改めて振り返ると、過去の対応で最も効果があったのは、ほぼロックダウンに近い第1回目の緊急事態宣言である。この時の東京都心では日中の山手線で1両に10人に満たない乗客しかいないという状況が起こるほど人の流れが減少した。人口密集地帯である首都圏の中でも最も多くの人の流れを作り出す「通勤」「通学」がかなり減少したからで、そこまで含めてあれだけの効果があったのだ。それから考えれば、2回目、そして今回の緊急事態宣言に基づき国や都道府県が求める感染対策の中でもっとも実現できていないであろうと想像されるのが、「出勤者の7割減に向けたテレワークの活用」ではないだろうか。もちろん1回目の緊急事態宣言下でテレワークに取り組んだ企業の中には、そのメリット、デメリットを改めて認識し、その結果として一旦導入したテレワークの一部が元に戻ってしまったところもあるだろう。だが、言っちゃ悪いが上層部の感覚的な問題で元通りになってしまったケースも多々あるはずだ。そしてこの通勤という人の流れがまさに「急所」への流れも作ってしまう。それは会議室でのビジネスランチ、勤務先周辺での飲食店での昼食に代表される「会食の場」である。それが一歩進むと、勤務先周辺での時短営業破りの店舗での飲食に進んでしまう。都内でも住宅街中心の駅周辺などはいわゆる「自粛警察」の目も厳しいため、時短営業破りはそれなりに勇気がいる。しかし、都心部のオフィス街になるとそこまで厳しい目は少ない。通勤でそうしたところを通りがかれば、誘惑になびく人も少なくないはずだ。私は緊急事態宣言発出が決まった23日夜、オンラインイベントの運営を担当するため、久しぶりに都心、それも霞が関周辺まで出かけた。イベント終了は9時過ぎ。それを終えて新橋駅周辺にたどり着いた時に目に入った光景にため息が出てしまった。もちろん多くのお店はすでに消灯している。ところが、まん防での時短要請を破っている一部の飲食店(もちろん飲酒を伴う)の前では、ビジネススーツにネクタイ姿の会社員と思しき人たちを中心に入店待ちの行列を作っているのだ。もちろんここまで長期にわたって辛抱を求められる生活をしているのだから、飲食店で酒を口にしながら知人・友人とあれこれ喋ったりしたい気持ちはわかる。そして緊急事態宣言中でも感染がほぼピークアウトしていてあとは解除を待つばかりという時期ならば、前述のような光景も「仕方がないか」とも思える。しかし、この時は緊急事態宣言の発出が決定した日だ。かなり暗澹たる気持ちになった。変異株の登場による感染拡大の形態や既存の市中の蔓延状態に違いがあるとはいえ1回目と2回目の緊急事態宣言の間は約8ヵ月の「猶予期間」があった。その意味では感染拡大を防ぎ、さらに経済への影響も軽微に納めたいならば、むしろ感染急拡大期には限りなくロックダウンに近い対応で一時社会の動きを止めるのが最も有効なのではないかというのが今現在の私自身の考えである(もちろん今後出てくる新たな対策やその結果ではこの考えが変化する可能性はある)。その意味では、飲食店対策以外はほぼ掛け声で終わった第2回目の緊急事態宣言は失敗だったのだろうと改めて思う。そしてこの3回目あるいは想像したくないが将来の緊急事態宣言発出を成功に導くカギの一つは、テレワークの推進をどれだけ実現できるか。それに向けて政治がどれだけた環境整備をできるかだと考えている。また、職業柄、私権制限には敏感だと思っているが、さすがに今回の飲食店への要請内容の過酷さを考えれば正直者が馬鹿を見るようなことはあってはならないと思う。つまり時短要請などを破っている経営者には法令に沿って厳しい態度で臨んでもらいたいということだ。

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新型コロナワクチン接種日や副反応の記録に有用なアプリ/MDV

 メディカル・データ・ビジョン株式会社(以下、MDV)は、同社が開発し2015年からサービスを開始しているパーソナルヘルスレコード(PHR)サービス『カルテコ』に新型コロナワクチン接種の実施状況や副反応の有無を残せる新機能を搭載したことを、4月26日にプレスリリースした。 同システムはこれまで「カルテコ」を導入している医療機関の患者やその病院に付設する健診施設の受診者のみが利用できるサービスだったが、今回の新機能をアプリにしたことで、アプリをダウンロードした誰もが利用可能になったという。具体的な登録内容と手順 ワクチン接種記録の登録は「(1)新型コロナワクチンを選択(2)接種日を選択(3)初回か2回目かを選択(4)メーカーを選択(5)接種済証の写真を保存(6)接種後の副反応を記録」の手順で行う。「接種後にどのような副反応があったか」または「まったくなかったか」などを記録しておくと、次回の接種時に医師に対して前回の状況を伝えたり、自分で確認したりすることができる仕組みになっている。カルテコとは カルテコは、患者が医療機関を受診した際の診療記録(傷病名、検査結果、診療中に使われた薬、処方された薬、処置・手術など)や検査画像、健診結果をWeb上に保管し、インターネット環境があれば、いつでもどこでも閲覧できるサービス。現在、約3万人が利用している。

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COVID-19ワクチンにまだ過半数が不安/アイスタット

 いよいよ4月から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が高齢者へ始まった。COVID-19収束に向けてワクチンへの期待、接種の希望など、どのような意識の変化があるのだろうか。 「一般市民へのワクチン接種の意識について」をテーマに、株式会社アイスタットは2020年12月に引き続き2回目となるワクチンに関するアンケートの調査を4月18日に行った。アンケートは、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の全国の会員20~79歳の300人が対象。調査概要形式:WEBアンケート方式期日:2021年4月18日対象:セルフ型アンケートツール“Freeasy”の登録者300人(20~79歳/全国地域)を対象アンケート結果の概要・ワクチンをいつ接種したいかでは「すぐ受ける」(41.7%)が最多。前回調査(20年12月)より30.3%上昇・12月20日時点のワクチン接種の意向は、消極的(60.0%)が前向き(40.0%)を上回ったが、4月18日時点では前向き(58.3%)が消極的(41.7%)を上回った・どこの国(製薬会社)で開発されたワクチンを接種したいかでは、第1位「アメリカ」(53.3%)、第2位「日本」(48.0%)、第3位「ヨーロッパ」(20.0%)の順。前回第1位「日本」(67.7%)と第2位の「アメリカ」(27.3%)が逆転・4月18日時点で「安全性」「副作用」「有効性」「検証のデータ不足」について気になると回答した割合は、12月20日より減少。ワクチンに関する「マイナス」のイメージは払拭傾向・ワクチン接種について「不安である」の割合は、12月20日時点では72.3%、4月18日時点では55.3%を示し、この4ヵ月間で17%減少したものの、いまだ過半数超約4割の回答者がワクチンは「すぐ接種したい」と回答 「COVID-19のワクチンを『受ける/受けても良い』と思う時期はいつか」を聞いたところ、今回の調査では「すぐに受ける」(41.7%)が最も多く、「現時点では判断できない」(31.0%)、「1ヵ月過ぎてから~3ヵ月以内」(9.0%)と続いた。前回調査との比較では、「すぐ受ける」が30.3%伸長し、意識の変化がうかがわれた。同様に接種に「前向き」の回答も前回調査に比べ18.3%上昇し、年齢と前向きな回答傾向は正比例した。 「前問で『すでに受けた/すぐに受ける/6ヵ月以内に接種』と回答した人(n=175)にその理由」を聞いたところ複数回答で、「個人の感染症予防対策だけでは限界があるから」(66.9%)、「集団の感染症予防対策にはワクチン接種が有用だから」(52.6%)、「新型コロナウィルスの感染状況が深刻だから」(52.0%)と続いた。前回調査との比較で差が最も大きかったのは「集団の感染症予防対策にはワクチン接種が有用だから」で7.6%増加していた。 「最初の質問でワクチンを受ける時期について、『6ヵ月以内に受けない/期間に関わらず絶対に受けない/現時点では判断できない』と回答した人(n=125)にその理由」を聞いたところ複数回答で、「副作用が怖いから」(44.0%)、「ワクチンの安全性がまだ十分に検証されていないから」(36.8%)、「ワクチンの有効性がまだ十分に検証されていないから」(28.8%)と続き、ワクチンへの不安を感じる回答が上位を占めた。前回調査との比較で差が最も大きかったのは「ワクチンの安全性がまだ十分に検証されていないから」で20.4%減少となり、徐々に安全性の啓発が進んでいることがうかがわれた。 「どこの国(製薬会社)で開発されたワクチンを日本で接種できるのが良いと思うか」を聞いたところ複数回答で「アメリカ」(53.3%)、「日本」(48.0%)、「わからない/決められない」(22.7%)の順だった。前回調査に比べ、日本製を希望する人が19.7%減少し、アメリカ製が増えたが、わからない・決めらない人も微増していた。 「わが国のワクチンの接種開始・状況についてどう思うか」を5段階評価で聞いたところ、「非常に遅すぎると思う」(50.7%)、「やや遅すぎると思う」(23.0%)、「どちらでもない」(18.7%)と続いた。「非常に/やや遅すぎると思う」の割合は73.7%を示し、多くの回答者が接種の遅延を危惧する様子がうかがわれた。 「日本で開始されたCOVID-19ワクチンの気になること」を聞いたところ、複数回答で「安全性」(64.7%)、「副作用」(60.3%)、「有効性」(47.3%)の順番だった。前回の調査と比較すると上位3つの安全性・副作用・有効性がいずれも減少し、「接種できる時期」(30.0%)が4位に上り、一般の人々の関心が接種へ移っていることがうかがえた。 「接種が開始されたワクチンに不安があるか」を5段階評価で聞いたところ、「やや不安である」(37.7%)、「どちらでもない」(24.0%)、「非常に不安である」(17.7%)と続いた。「非常に/やや」を足し合わせた「不安である」の割合は55.3%と過半数を占めているが、前回の調査との比較でみると17%減少していた。 「COVID-19の患者数を抑えるためどうすればよいと思うか」を聞いたところ複数回答で、「集団での予防対策(3密対策など)の強化」(60.7%)、「個人の予防対策の強化」(59.7%)、「早急なワクチン接種の開始」(47.0%)と続いた。とくに「早急なワクチン接種の開始」は前回調査と比較すると25.0%増加し、接種への期待の広がりをうかがわせた。

1952.

COVID-19ワクチン接種完了者、変異株に感染/NEJM

 新型コロナワクチンを2回接種後にも、新型コロナウイルスへのブレークスルー感染が認められ、変異株への感染があることが確認された。米国・ロックフェラー大学のEzgi Hacisuleyman氏らが、同大学職員で新型コロナワクチン「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)または「mRNA-1273」(Moderna製)を2回接種した417人について調べた結果で、うち女性2人にブレークスルー感染が認められたという。NEJM誌オンライン版2021年4月21日号掲載の報告。2021年1月21日~3月17日のPCR検査結果を分析 ロックフェラー大学の全職員および学生(約1,400人)は2020年秋から、少なくとも週1回PCR検査を受けている。研究グループは、2021年1月21日~3月17日に、ニューヨーク州の適格規制に従い「BNT162b2」または「mRNA-1273」ワクチンの2回接種を受けた職員417人のPCR検査結果を調べた。 対象者は、調査期間よりも2週間以上前にワクチン接種を受けていたが、2人の女性について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状が出現し、PCR検査の結果でSARS-CoV-2陽性が示された。COVID-19の症状あり、PCR陽性、変異株が検出 患者1は、51歳女性でCOVID-19の重症化リスク因子はなし。日常生活上の予防措置は順守していた。1月21日に「mRNA-1273」ワクチンの1回目接種を、2月19日に2回目接種を受けた。2回目接種の10時間後にインフルエンザ様の筋肉痛が発症したが翌日に解消している。2回目ワクチン接種から19日後の3月10日に喉の痛み等を呈し、大学でPCR検査を受けSARS-CoV-2陽性が確認された。翌11日に嗅覚を消失したが、1週間ほどで症状は解消していったという。 患者2は、65歳の健康な女性でCOVID-19の重症化リスク因子はなし。1月19日に「BNT162b2」ワクチンの1回目接種を、2月9日に2回目接種を受けており、接種した腕の痛みが2日間続いたことが示されている。3月3日、ワクチン未接種のパートナーがSARS-CoV-2陽性。3月16日に患者2に倦怠感、副鼻腔うっ血、頭痛の症状が現れ、ワクチン接種から36日後の3月17日に体調不良を訴え、検査の結果、SARS-CoV-2陽性が確認された。症状はそれ以上悪化せず、3月20日から回復に向かったという。 両患者のウイルスのシークエンシング解析の結果、臨床的重要性があると考えられる変異株、E484Kが1人から、3種の変異株(T95I、del142-144、D614G)が両者から検出された。 こうした観察結果から、研究グループは、ワクチン接種後にもCOVID-19発症リスクがあり、さらに変異株へ感染する可能性もあることが示唆されたとし、「ワクチン接種後にも、COVID-19の予防と、同感染の診断、さらに変異株の特定を続ける取り組みが重要であることが確認された」としている。

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第55回 コロナワクチン接種に駆り出される歯科医師、その心情は

新型コロナウイルスのワクチン接種の打ち手確保が難しくなる状況下、厚生労働省の検討会は4月23日、接種に必要な医師や看護師らを確保できない地域に限り、歯科医師が接種を行うことを特例で認める方針を決めた。厚労省は4月中にも各自治体に周知する。これに対し、各歯科医師会は4月24日現在、正式な声明を公表していない。これに対し、歯科医師からは前向きな声から反発までさまざまな声が上がっている。菅 義偉首相は19日、9月までにすべての対象者にワクチンが供給されるめどが立ったと胸を張った。しかし、ワクチンが確保できても、打ち手がいなければ、接種できないも同然だ。現行法上、ワクチン接種は原則として医師や看護師に限られており、実際すでに打ち手不足が表面化している。厚労省の3月25日時点の調査では、全国1,741市町村のうち、集団接種の予定会場で18.1%は医師が、22.8%は看護師が不足していると回答している。5月中旬以降、高齢者接種が本格化すれば、打ち手不足は一層深刻化するはずだ。そのような中、歯科医師のワクチン接種が認められたのだった。歯科医師は約10万5,000人おり、歯科医師によるワクチン接種が実施されたら、打ち手不足の緩和の助けにはなるだろう。「歯科医師を馬鹿にするな」の声もただ、歯科医師によるワクチン接種には、2時間程度の研修を受ける、接種を受ける人の同意を得る、医師らがいる集団接種会場に限定、などのいくつかの条件が設けられる。そもそも4月12日頃までの情報では、歯科医師の役割はワクチン接種を行う医師や看護師の補助を行うということになっていた。歯科医師会には、こうした状況に対しさまざまな声が寄せられているという。例えば、「医療従事者として可能な補助は行うべきだ」という前向きな声のほか、「手伝ってもいいが、報酬はどのくらいなのか」という現実的な疑問などだ。一方で、「歯科医師を馬鹿にするのもいい加減にしろ。医師のしもべ要請は、世界の笑いものだ」といった強い反発も見られるという。歯科医師のワクチン接種の話は、千葉県が千葉県歯科医師会に対しワクチン接種を依頼したことに端を発しているという。同会の役員はテレビ局の取材に対して、「大学で修業している時に採血とか、入院患者への点滴などは日常的に行っている。(注射そのものは)何も問題なくできると思う」と述べている。海外では薬剤師、医学生、ボランティアも担い手に感染者数が多い海外では、ワクチン接種に当たる職種は幅広い。米国の一部の州や英国では歯科医師や薬剤師も接種を行っている。米国の一部の州では、医学生や救急隊員も接種できる。英国では、医療資格を持たない一般のボランティアでも、条件を満たせば研修を受けて接種の資格が得られる。日本の場合、歯科医師の中から、どれだけの人数がワクチン接種の打ち手に名乗りを上げるか。ワクチン接種の安全性は重要だが、ここへ来て明らかに海外に遅れをとっている日本の現状もまた憂慮すべきである。接種のスピードを上げるには、さらなる医療職種の対象拡大を検討しなくて大丈夫なのだろうかと一市民ながら心配になる。

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ワクチン副反応疑い、リンパ節腫脹や消化器症状など多様/厚労省

 新型コロナワクチン接種後、倦怠感や頭痛、発熱などのほかに、稀ではあるもののリンパ節腫脹や消化器症状など多様な症状がみられていることが報告された。4月23日に開催された厚生労働省第56回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会で1)、ファイザー社製ワクチン接種者の安全性を調査する前向き観察研究の更新データを、伊藤 澄信氏(順天堂大学医学部臨床研究・治験センター)が報告した2)。 この観察研究は、先行接種が行われた医療従事者を対象に、ワクチン接種者の最終接種4週後までの安全性を調査するコホート研究。体温のほか疼痛や発赤などの接種部位反応、倦怠感や頭痛などの全身反応の有無が報告され、それらの集計結果概要は既報の通り。 本稿では、健康観察日誌の自由記載欄の中間集計結果を以下に抜粋する(1回目/2回目)。なお、同集計データのデータカットオフは4月14日、1回目は1万9,162例、2回目は1万6,907例が集計対象となっている。筋肉痛:412例(2.15%)/559例(3.31%)悪寒:361例(1.88%)/1,758例(10.40%)関節痛:272例(1.42%)/1,709例(10.11%)ワクチン接種部位運動障害:245例(1.28%)/93例(0.55%)悪心:231例(1.21%)/629例(3.72%)下痢:200例(1.04%)/277例(1.64%)四肢不快感:193例(1.01%)/84例(0.50%)口腔咽頭痛:166例(0.87%)/211例(1.25%)傾眠:160例(0.83%)/95例(0.56%)疼痛:134例(0.70%)/161例(0.95%)浮動性めまい:133例(0.69%)/189例(1.12%)ワクチン接種部位疼痛:121例(0.63%)/-感覚鈍麻:119例(0.62%)/97例(0.57%)頭痛:97例(0.51%)/143例(0.85%)咳嗽:95例(0.50%)/154例(0.91%)背部痛:84例(0.44%)/364例(2.15%)発疹:76例(0.40%)/-筋骨格硬直:74例(0.39%)/100例(0.59%)腹痛:73例(0.38%)/117例(0.69%)異常感:72例(0.38%)/64例(0.38%)ワクチン接種部位内出血:72例(0.38%)/-四肢痛:68例(0.35%)/81例(0.48%)熱感:59例(0.31%)/-口腔咽頭不快感:59例(0.31%)/-そう痒症:57例(0.30%)/-筋力低下:53例(0.28%)/-発熱:46例(0.24%)/313例(1.85%)腹部不快感:45例(0.23%)/85例(0.50%)蕁麻疹:44例(0.23%)/56例(0.33%)腋窩痛:-/207例(1.22%)食欲減退:-/143例(0.85%)リンパ節症:-/120例(0.71%)嘔吐:-/101例(0.60%)リンパ節痛:-/68例(0.40%)倦怠感:-/68例(0.40%)頚部痛:-/66例(0.39%)  なお、1回目接種後49例(0.26%)、2回目接種後1,093例(6.46%)が翌日病休していることも報告された。伊藤氏は、とくに2回目接種後に腋窩リンパ節腫大を含む反応性リンパ節腫脹が2%強みられている点について、通常のワクチン接種ではあまりみられないと指摘。消化器症状なども含め、このように多様な症状がみられる可能性があるということを、あらかじめ知っておくことが重要ではないかと話した。

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南アフリカ株(B.1.351)の遺伝子変異とワクチンの効果(解説:山口佳寿博氏)-1381

 前回の論評で考察したように、コロナウイルスは間断なく進化/変異を遂げ、世界に流布するウイルスは武漢原株からD614G株(S蛋白614位のアミノ酸がアスパラギン酸[D]からグリシン[G]に置換)へ、さらには、N501Y株(S蛋白501位のアミノ酸がアスパラギン[N]からチロシン[Y]に置換)に変化しつつある。2021年度には、N501Y変異株が世界に流布するウイルスの主流を占めるようになるものと予測される。本論評ではD614G株を“従来株”と定義し論を進める。 N501Y株に分類される変異株の主たるものとして、英国株(B.1.1.7)、南アフリカ株(B.1.351)、ブラジル株(P.1)の3種類が存在するが、これらの変異株の実効再生産数(R)は、英国株、南アフリカ株、ブラジル株の順であり、英国株が最も高い値を示す(WHO 2021年3月21日)。それ故、現時点では、英国株が流布する地域が最も多く、4月13日現在、世界132ヵ国/地域に及ぶ。次いで、南アフリカ株の流布する地域が多く世界82ヵ国、R値が最も小さいブラジル株の播種領域は少なく、世界52ヵ国で検出されている。これら3種類のN501Y変異株は1つの国/地域で1種類の変異株が流布しているわけではなく、3種類の変異株が共存していることが多い。本邦においては、2020年12月末より、検疫での検出を含めN501Y株の国内播種が始まっており、2021年4月13日現在、1,341名(検疫:200名、国内事例:1,141名)のN501Y変異株感染者が同定されている。国内事例のうち、英国株が94%、南アフリカ株が1.3%、ブラジル株が4.4%を占める(厚労省 2021年4月13日)。本邦での南アフリカ株の発生頻度は低いが世界的には英国株に次いで重要であり、本論評では南アフリカ株の特徴、とくに、武漢原株のS蛋白遺伝子配列を基に作成された種々のワクチンの効果について考察する。 南アフリカ株の遺伝子配列上の特徴に関する詳細は他紙(山口. 日本医事新報. 2021;5053:32-38.)に譲るが、S蛋白の構造を規定する遺伝子配列としてD614G変異を除いて9個の非同義変異が確認されている。これらの変異にあって重要なものは、ACE2との親和性を増強しウイルスの生体への侵入を助長、播種性を増加させるS1蛋白の受容体結合ドメイン(RBD)におけるN501Y変異と“免疫回避反応”を惹起するE484K変異(S蛋白484位においてグルタミン酸[E]がリシン[K]に置換)である(Tegally H, et al. medRxiv. December 22, 2020. [Epub ahead of print])。この2つの遺伝子変異はブラジル株でも認められる(Sabino EC, et al. Lancet. 2021;397:452-455.)。英国株ではE484K変異を認めないが、代わりに69~70位と144位におけるアミノ酸欠損が“免疫回避反応”を惹起する。 以上のような遺伝子変異の結果として、従来株感染後の回復期血漿に含まれるS蛋白特異的IgG抗体による液性中和作用は、南アフリカ株に対して11~33倍低下していた(Wang P, et al. bioRxiv. January 26, 2021. [Epub ahead of print])。同時に、南アフリカ株に対する液性中和作用は、Pfizer社のBNT162b2で8.8~14倍(Liu Y, et al. N Engl J Med. 2021 Mar 8. [Epub ahead of print])、Moderna社のmRNA-1273で6.4倍(Wu K, et al. N Engl J Med. 2021 Mar 17. [Epub ahead of print])、AstraZeneca社のChAdOx1で8.9倍(Emary KRW, et al. Lancet. 2021;397:1351-1362.)低下していることが報告された。その他、南アフリカ株に対する液性中和作用は、Novavax社のNVX-CoV2373で14.5倍、ロシアのGam-Covid-Vac(Sputnik V)で6.8倍、中国Sinovac社のCoronaVacならびにSinopharm社のBBIBP-CorVで2.4~3.3倍低下していた(WHO 2021年4月13日; Wang GL, et al. N Engl J Med. 2021 Apr 6. [Epub ahead of print])。従来株感染後あるいはワクチン接種後に得られた血漿の南アフリカ株に対する液性中和作用の減弱は主としてE484K変異によってもたらされるが、その他、K417N変異(S蛋白417位でリシン[K]がアスパラギン[N]に置換)、242~244位のアミノ酸欠損も関与するとされている。一方、BNT162b2の英国株、ブラジル株に対する液性中和作用は維持されていた(Liu Y, et al. N Engl J Med. 2021 Mar 8. [Epub ahead of print])。すなわち、南アフリカ株に対するワクチンの液性中和作用は、mRNAワクチン(BNT162b2、mRNA-1273)、Adenovirus (Ad)-vectoredワクチン(ChAdOx1、Gam-Covid-Vac)、蛋白ワクチン(NVX-CoV2373)、不活化ワクチン(CoronaVac、BBIBP-CorV)とワクチンの種類によらず減弱しているものと考えなければならない。 南アフリカ株感染に対するワクチンの実際の予防効果を検討した報告は多くないが、Madhiらは、AstraZeneca社のAd-vectoredワクチンであるChAdOx1は南アフリカ株感染に対して有効な発症予防効果を示さないことを明らかにした(Madhi SA, et al. N Engl J Med. 2021 Mar 16. [Epub ahead of print])。彼らの報告によると、南アフリカ株に対するChAdOx1の発症予防効果は、1回の接種後で33.5%(95%信頼限界[CI]:-13.4~+61.7%で非有意)、2回接種後で10.4%(95%CI:-76.8~+54.8%で非有意)でともに有意な予防効果ではなかった。一方、1回接種のAd-vectoredワクチンとして開発されたJohnson & Johnson社のAd26.COV2.Sの発症予防効果は、従来株に対して72%、南アフリカ株に対して57%であった(ENSEMBLE Study, PRNewswire. 2021年1月29日)。興味深い事実として、Ad26.COV2.Sのブラジルを中心とした南米での発症予防効果は66%で、従来株と南アフリカ株に対する予防効果の中間に位置した。Novavax社の蛋白ワクチンNVX-CoV2373の2回接種後の発症予防効果は、英国株(従来株を含む)に対して85.6%、南アフリカ株(対象はHIV陰性者)に対して55%であった(Brown. Evaluate Vantage. 2021年1月29日)。以上の結果を総括すると、武漢原株のS蛋白遺伝子情報を基に作成された種々のワクチンの変異株に対する液性中和作用は著明に減弱しているにもかかわらず、発症予防効果は英国株に対してはほぼ維持、南アフリカ株に対しては低下(しかし、有効)、ブラジル株に対しては両者の中間(有効)に位置するものと考えられる。以上の事実は、ワクチン接種後の液性中和作用の減弱がT細胞由来の細胞性免疫の賦活によって補完されていることを示唆する。 現状のワクチン接種が世界的に推進されていくと、従来株に加え変異株の中心的存在である英国株に対しても、今年中に集団免疫が確立されるものと予測される。その結果、コロナウイルスは集団免疫を回避するため、現状のワクチンに対して英国株より強い免疫回避作用を有する南アフリカ株、ブラジル株を近未来のウイルスとして選択する可能性がある。あるいは、現在の変異株と質的に異なる免疫回避作用を有する強力な新規変異株が形成される可能性も否定できない。ワクチン接種による従来株、英国株に対する集団免疫の確立は人類にとって必要不可欠な事項であるが、それでコロナ感染症が終焉を迎えるわけではなく、その先には、新たな未知の闘いが待っている可能性を念頭に置く必要がある。

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049)コロナワクチン、インフルワクチンとの違いは?【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第49回 コロナワクチン、インフルワクチンとの違いは?ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆いよいよ、医療従事者に加えて高齢者への新型コロナワクチン接種が始まりましたね。私の勤める病院でも職員への集団接種が始まり、先日1回目の接種を受けました。医局でも、やはりワクチン接種の話題で持ち切りで、筋注のこと、副反応のことなど情報が飛び交っています。周囲の人たちは、だいたい3割くらいが1回目の接種を受け終わっているような印象で、まだの人も予定はちらほらと決まってきました。なかには2回目の接種が終わっている医師も。よく耳にする副反応は、接種翌日の刺入部の筋肉痛。腕を動かさなければ気にならない程度という医師が多く、私自身も確かにそのような感じでした。(しかし、刺入部をうっかり壁にぶつけてしまうと、なかなかの痛みが……)私の周囲では、今のところ1回目の接種が終わったばかりの医師が多いため、2回目接種の副反応についてはまだあまり耳にしません。発熱、頭痛、全身倦怠感など、つらいのは2回目という話も聞くので、3週間後の2回目の接種も、心して挑みたいです。なお、肩の筋肉注射を受けたのは今回が初めてでしたが、想像以上に痛みが少なかったです。刺すときにわずかな痛みがあるのと、注入時に奥のほうが少し痛い気がする程度。インフルエンザワクチンの皮下注射のときのような、指の爪の先で思いっきり皮膚をつねるかのような注入時の痛みと比べれば、本当にごくわずか。皮下注射後によくある刺入部の腫脹発赤、痛痒さもなく、筋肉注射のほうが快適かもしれないという事実に気が付きました。施術者が筋注に慣れている人だったら、今後のインフルエンザワクチンもぜひ筋肉注射でお願いしたいくらいです。以上、コロナワクチン接種にまつわるあれこれでした。それでは、また~!

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添付文書改訂:オルミエント錠に新型コロナ肺炎追加/イグザレルトがDOACで初の小児適応追加/オキシコンチンTR錠に慢性疼痛追加【下平博士のDIノート】第73回

オルミエント錠に新型コロナ肺炎の適応追加<対象薬剤>バリシチニブ錠(商品名:オルミエント錠2mg/4mg、製造販売元:日本イーライリリー)<承認年月>2021年4月<改訂項目>[追加]効能または効果SARS-CoV-2による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)<Shimo's eyes>ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬バリシチニブ(商品名:オルミエント錠)の効能または効果に、新型コロナウイルスによる肺炎が追加されました。わが国では、レムデシビル、デキサメタゾンに続いて3剤目の新型コロナウイルス感染症治療薬となります。現在、新型コロナウイルス感染症に係る入院加療は全額公費負担となっており、本剤もその対象となります。投与対象は、入院下で酸素吸入、人工呼吸管理、体外式膜型人工肺(ECMO)の導入が必要な中等症から重症の患者で、レムデシビルとの併用で最長14日間投与することができます。経口投与ができない患者には、同剤を粉砕・懸濁して、胃ろうや経鼻移管などの方法で投与します。使用にあたっては、RMP資材である、「適正使用ガイド SARS-CoV-2による肺炎」を参照してください。バリシチニブの主な排泄経路は腎臓のため、透析患者または末期腎不全の患者は禁忌です。また、リンパ球数が200/mm3未満の患者にも禁忌となっています。治療成績としては、1,033人の患者が登録された国際共同第III相試験で回復までの期間を比較した結果、バリシチニブ+レムデシビルの併用群(バリシチニブ群)は7日、レムデシビル単独群(対照群)は8日と有意差がありました。また、重症患者216人に絞って評価したところ、回復までの期間は、バリシチニブ群で10日、対照群は18日とより大きな差が見られました。なお、本剤は2020年12月にアトピー性皮膚炎の追加適応も得ています。参考日本イーライリリー プレスリリースイグザレルトがDOACで初の小児適応追加<対象薬剤>リバーロキサバン(商品名:イグザレルト錠・OD錠・細粒分包10mg/15mg、製造販売元:バイエル薬品)<改訂年月>2021年1月<改訂項目>[追加]効能または効果小児:静脈血栓塞栓症の治療および再発抑制<Shimo's eyes>抗凝固薬のリバーロキサバン(商品名:イグザレルト錠・OD錠・細粒分包)の効能または効果に、小児に対する「静脈血栓塞栓症の治療および再発抑制」が追加され、小児適応を持つ唯一の直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)となりました。また、新生児や乳幼児の服用にも適した剤型であるドライシロップ(同:イグザレルトドライシロップ小児用51.7mg/103.4mg)も承認されました。本剤は、エドキサバン(同:リクシアナ錠・OD錠)、アピキサバン(同:エリキュース錠)とともに経口活性化凝固第Xa因子阻害薬に分類されます。血液凝固系におけるXa因子の活性化部位を直接的に阻害することで、トロンビンの生成を阻害して抗凝固作用を発揮します。近年の疾患に関する認知や診断技術の向上により、静脈血栓塞栓症(VTE)と診断される小児患者数は増加しています。小児における従来のVTE治療では、ワルファリンのみが適応を持っていたため、採血による定期的な凝固系のモニタリングだけでなく、薬物相互作用や食事など多方面で配慮が必要でしたが、本剤の適応追加により、患児および介助者の負担を軽減できることが期待されています。参考バイエル薬品 プレスリリース同 イグザレルト.jp 小児:静脈血栓塞栓症の治療および再発抑制(小児VTE)オキシコンチンTR錠の適応に慢性疼痛<対象薬剤>オキシコドン塩酸塩水和物徐放錠(商品名:オキシコンチンTR錠5mg/10mg/20mg/40mg、製造販売元:シオノギファーマ)<改訂年月>2020年10月<改訂項目>[追加]警告慢性疼痛に対しては、本剤は、慢性疼痛の診断、治療に精通した医師のみが処方・使用するとともに、本剤のリスクなどについても十分に管理・説明できる医師・医療機関・管理薬剤師のいる薬局のもとでのみ用いること。また、それら薬局においては、調剤前に当該医師・医療機関を確認したうえで調剤を行うこと。[追加]効能・効果非オピオイド鎮痛薬またはほかのオピオイド鎮痛薬で治療困難な中等度から高度の慢性疼痛における鎮痛[追加]用法・用量慢性疼痛に用いる場合:通常、成人にはオキシコドン塩酸塩(無水物)として1日10~60mgを2回に分割経口投与する。なお、症状に応じて適宜増減する。<Shimo's eyes>オピオイド鎮痛薬のオキシコドン塩酸塩水和物徐放錠(商品名:オキシコンチンTR錠)の効能・効果に、慢性疼痛が追加されました。本剤は容易に砕けない硬さと、水分を含むとゲル化するという乱用防止特性を有する徐放性製剤です。本剤は、依存や不適正使用につながる潜在的なリスクがあるため、今回の適応追加に際しては、医薬品リスク管理計画を策定して適切に実施するなどの承認条件が付され、医療機関・医師・薬剤師による厳重な管理が求められています。【オキシコンチンTR錠を慢性疼痛で使用する際の確認事項】<処方する医師>1.製造販売業者が提供するeラーニングを受講し、確認テストに合格し、確認書をダウンロードする。2.処方時に確認書の内容を患者に説明し、医師・患者ともに署名をして確認書を患者に交付する。3.確認書の控えを医療機関で保管する。<調剤する薬剤師>1.患者が持参した麻薬処方箋と確認書について、処方医名、施設名、交付日が一致していることを確認する。なお、患者が確認書を持参しておらず、がん疼痛か慢性疼痛か判断できない場合は、処方医に患者の適応を問い合わせる。2.確認書の患者確認事項を説明し、患者の理解を確認し、確認書にチェックを入れ、調剤する。近年、がん患者だけでなく、非がん患者の痛みに関する身体的症状と精神症状のケアが課題となっています。このような背景から、非がん性疼痛に適応を持つオピオイド鎮痛薬が増えてきました。すでに、トラマドール、コデインリン酸塩、ブプレノルフィン貼付薬、モルヒネ塩酸塩、フェンタニル貼付薬がありますが、今回、オキシコドン製剤として初めて本剤が慢性疼痛への適応を取得しました。参考PMDA「オキシコドン塩酸塩水和物徐放製剤の使用に当たっての留意事項について」同「確認書を用いた管理体制の全体図」シオノギ製薬「オキシコンチンTR錠で慢性疼痛の治療を受けられる患者さまへ」

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第55回 コロナで“焼け太り”病院続出? 厚労省通知、財務省資料から見えてくるもの(前編)

奈良県、感染症法で50床確保へこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。ゴールデンウイークがやって来ます。私は、去年に断念した南会津の登山を計画していたのですが、再びの4都府県に対する緊急事態宣言で都道府県をまたぐ不要不急の移動の抑制が求められたことで、今年もどうやら行けそうにありません。「緊急事態宣言 3度目発令」を報じた4月24日付の日本経済新聞は朝刊一面で、論説委員が「1年間何をしていたのか」と国の医療提供体制の施策を厳しく批判していましたが、本当に1年間何をしていたのでしょう。今回の宣言発令でも、国の真剣さが感じられないのが気になります。「オリンピック止めます。だから…」くらいは言ってほしかった、と思う今日このごろです。前回(第54回 なぜ奈良県で?「県内全75病院に病床確保要請」をうがった見方をしてみれば…)で書いた奈良県の改正感染症法に基づく病床確保要請ですが、4月23日付の毎日新聞によれば、約15病院で計50数床確保できる見通しになった、とのことです。感染症法にも相応の効果があったということで、こうした要請は他の都道府県にも広がるかもしれません。さて、今回は厚労省が都道府県知事宛に発出していた通知について書いてみたいと思います。最近、複数の医療関係者と話していると、補助金がらみのややきな臭い話を聞くことがあります。曰く、「某大学病院はコロナの補助金で過去最高益になったらしい」「コロナ患者を受け入れていないのに、コロナで焼け太りしている病院がある」…。世の中、コロナ対応で医療現場は崩壊寸前という趣旨の報道が大半です。1年ほど前は、医療機関の患者が激減し、経営が大変だという報道もありました。しかし、ここに来て、あまり「経営が大変だ」という声が聞こえなくなってきたところに、この手の話です。現場は大変ですが、経営は良好なのでしょうか…。と首を傾げていたら、こんな厚労省通知に関する報道がありました。コロナ患者受け入れへ聴取、医療機関の状況確認へ4月20日付の産経新聞は、「コロナ患者受け入れへ聴取 医療機関の状況確認へ 厚労省が通知」という記事を掲載しました。それによれば、「厚生労働省が、正当な理由なく新型コロナウイルス感染症患者の入院を断っている医療機関に対し聴取を行い、受け入れを要請するよう求める通知を各都道府県に出したことが20日、分かった」とのことです。通知が発出されているのに「分かった」というのも変な話ですが、「感染拡大地域で病床が逼迫する中、すぐに受け入れが可能な『即応病床』を確保するのが狙い」と記事は書いています。なお、後追いする形で朝日新聞も4月23日付の朝刊で同内容の記事を掲載しています。今回取り上げられたのは、いったいどの通知だろうと調べてみました。コロナ関係の通知はそれこそ膨大にあるのと、通知したい内容とタイトルが微妙にズレているので、なかなか見つけ出すのが大変です。受け入れ困難と判断した場合は即応病床数見直しそんな中、多分、これだろうという通知が見つかりました。それは、2021年4月1日付けで、厚生労働省の医政局長 、健康局長、医薬・生活衛生局長連名で発せられた「令和3年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)の実施について」です。内容的にはコロナ対策の支援事業の実施の概要を通知するものです。その中の病床確保料の補助対象について記述した部分がニュースになっていたのです。1日に発出され、20日に「分かった」と報道されたのは、記者たちは最初その意味が把握できなかったのかもしれません。「コロナ患者受け入れへ聴取、医療機関の状況確認対象」となる医療機関は、病床確保料の補助対象となる新型コロナウイルス感染症患者等入院医療機関です。具体的には、病棟単位で新型コロナ感染症患者、または、その疑いのある患者用の病床を確保している「重点医療機関」と、新型コロナ感染症の疑いのある患者専用の個室を持っている「協力医療機関」とのことです。通知では、各都道府県に対し、医療機関の稼働状況、病床や医療スタッフの状況、人工呼吸器などの医療機器の確保状況を一元的に把握する情報システム「G-MIS(ジーミス)」などを使って、患者の受け入れ状況を確認するよう求めています。その上でさらに、「適切に受入れを行っていない」「受入要請を正当な理由なく断っている」などの場合は、受け入れ体制について聴取し、受け入れるよう要請する。聴取の結果、受け入れるのが困難と判断した場合は、その医療機関の即応病床数(つまり、病床確保料の補助)を見直すと明記しています。厚労省によると、4月7日時点で全国に重点医療機関は1,058機関、協力医療機関は986機関あるとのことです。「手を挙げても受け入れない」病院の存在この通知の意味するところは明らかです。「コロナ病床確保します」と手を挙げて確保料をもらいながら、コロナ患者を受け入れていない病院が存在する、ということです。病床確保料の補助を見直す通知をわざわざ出すということは、そうした病院が相当数あるからでしょう。この連載でも、これまでに進まないコロナ患者受け入れ体制の原因として、コロナ受け入れに手を挙げない民間病院の消極性について書いてきましたが、「手を挙げても受け入れない」病院があるとは…。まさにコロナで“焼け太り”病院です。1床当たり最高1日43万6,000円現在、コロナ病床に対する診療報酬上の対応や国の補助は相当な金額となっています。病床に対する補助に限って言えば、病床が逼迫する都道府県において新型コロナの受入病床を割り当てられている医療機関に、重症者病床1床当たり1,500万円、その他の病床、および協力医療機関の疑い患者病床は1床当たり450万円を上限に補助が行われています。さらに、2020年12月25日~2021年2月28日に新たに割り当てられた確保病床については、緊急事態宣言が発令された都道府県では1床当たり450万円、それ以外の都道府県でも300万円が補助上限額に加算されています。つまり、最大で1床当たり1,950万円の補助を受けることができるのです。病床確保料はこれとは別に、新型コロナウイルス感染症患者の受け入れ態勢を確保するための確保病床および休止病床について補助されるものです。補助額の上限は、「重点医療機関」は1床当たり1日7万1,000円~43万6,000円、「協力医療機関」の疑い患者病床は5万2,000円~30万1,000円、「その他の医療機関」は1万6,000円~9万7,000円などとなっています。たとえば重点医療機関である一般病院でICU内の病床を1床確保すると、患者が入っているかどうかにかかわらず、1日30万1,000円が補助されます。「入院率」導入の意味そう考えてくると、感染状況を示す指標として4月16日から「入院率」が新たに加わったことにも納得が行きます。「入院率」とは、療養中の全感染者に対する入院者の割合です。これまで重視してきた「病床使用率」は各都道府県が確保した病床に占める入院患者の割合を示すものです。ただ、病床を(病院の都合等で)コロナに使用していないケースや、本来は入院の必要がない軽症者が入院しているケースなどを除外できず、病床の逼迫度を計るには不十分との指摘がありました。入院率という指標によって、国は病床数ではなく、無症状者も含む療養中の全感染者数に対する入院者数に着目することにしたわけです。数値が低くなるほど、入院できない人が増えている(病床が逼迫している)ことになります。入院率が25%以下だと最も深刻な「ステージ4」(感染爆発)、40%以下だと2番目に深刻な「ステージ3」(感染急増)に相当するとしています。ちなみに、4月23日更新のデータでは大阪府の入院率は12.0%、東京都は30.9%でした。「即応病床」として病床確保料をもらいながら、コロナ患者を避けてきた病院の存在は、税金の無駄遣いであるばかりでなく、病床逼迫度を推し量る上でも邪魔で困った存在だったわけです。今回の通知によって、そこにメスが入ることになったわけです。それにしても、ジャブジャブとも言われる医療機関に対するコロナ補助金を、国の財政を司る財務省はどう見ているのでしょう。次回は、それについて少し考えてみます(この項続く)。

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コロナの現状を鑑み、識者らが東京五輪の再考求め提言/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はここへ来て急拡大の様相を呈している。これに対し政府は、東京など4都府県に対し緊急事態宣言を発出。まん延防止等重点措置よりも強い規制力をもって感染拡大を抑え込みたい考えだ。それは今夏に延期・開催が予定されている東京オリンピックまで3ヵ月を切り、待ったなしの状況への強い憂慮にほかならない。そんな状況の中、4月14日付のBMJ誌に、「大会の安全管理には重大な疑問があり、再考すべき」と断じる論文(エディトリアル)が掲載された。 本稿は、英国・ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの清水 和希氏、同・エディンバラ大学メディカルスクールのDevi Sridhar氏、同・キングズカレッジロンドン人口衛生研究所の渋谷 健司氏、国立病院機構三重病院の谷口 清州氏の4人が連名で発表した。 著者らは、COVID-19の現状について「世界的に依然としてパンデミックの真っただ中にある。SARS-CoV-2変異種は国際的な関心事であり、公衆衛生および社会対策の維持、行動変化の促進、ワクチン普及、保健システムの強化により、パンデミックの封じ込めと終息に向けた取り組みを加速しなければならない」との認識を示した。さらに、「アジア太平洋地域諸国と異なり、日本はいまだCOVID-19の感染制御ができていない。日本における限られた試験能力とワクチン接種開始の遅れは、政治的リーダーシップの欠如に起因している」とし、「一般市民はいうまでもなく、医療従事者や高リスク人口に対してもオリンピック開始までにワクチンを接種できない」と指摘した。 その上で著者らは、「今夏のオリンピック・パラリンピック開催計画は、喫緊の課題として再考されるべきだ。国際社会全体が、コロナ・パンデミックを封じ込め、命を救う必要性を認識している。科学的・道徳的ルールを無視し、日本が自国の政治・経済目的で東京2020(オリンピック・パラリンピック)を開催することは、国際的な健康および安全保障に対する向き合い方と矛盾するものだ」と断じている。

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COVID-19を経験した男性は勃起不全になりやすい?

 勃起不全(ED)は、COVID-19の短期的または長期的な合併症の可能性がある。今回、イタリア・ローマ大学のAndrea Sansone氏らが、COVID-19と診断された被験者におけるEDの有病率を調査し、COVID-19とEDの関連を検討した。Andrology誌オンライン版2021年3月20日号に掲載。 本研究では、2020年4月7日~5月4日、イタリアで実施されたSex@COVIDオンライン調査(心理的、社会的、性的健康を調査する匿名のWebアンケート)に参加した18歳以上6,821例(女性4,177例、男性2,644例、平均年齢32.83±11.24歳)のデータから、性的に活発なイタリア人男性985例が抽出され、そのうち25例(2.54%)がSARS-CoV-2陽性だった。 被験者は、GAD-7(Generalized Anxiety Disorder-7)とPHQ-9(Patient Health Questionnaire-9)によって、心理的健康スコアが測定された。各テストでスコアが10以上の場合、全般性不安障害とうつ病性障害をそれぞれ示唆していると見なされた。勃起機能は、IIEF-5(国際勃起機能スコア)またはその簡易版SHIMによって測定された。スコア21以下はED、スコア22〜25は正常と見なされた。 主な結果は以下のとおり。・1:3の傾向スコアマッチングに従って、985例の性的に活発なイタリア人男性から、SARS-CoV-2陽性者25例(COVID+)とSARS-CoV-2感染歴のない75例(COVID-)がマッチングされた。・2つの群間の年齢、GAD-7およびPHQ-9スコア、BMIについて、統計的に有意な差は見られなかった。・EDの有病率は、COVID+群(7/25例、28%)のほうが、COVID-群(7/75例、9.33%)よりも高かった(p=0.0274)。・年齢、BMI、および心理的健康スコアを調整したロジスティック回帰モデルにより、SARS-CoV-2感染とED発症との関連を確認したところ、COVID-19既往歴を持つ男性におけるED発症のオッズ比は5.66(95%信頼区間[CI]:1.50~24.01)だった。・同じサンプルで、年齢とBMIを調整したロジスティック回帰モデルにより、ED診断後に SARS-CoV-2感染が発覚した場合を調査したところ、ED有病者におけるSARS-CoV-2感染のオッズ比は5.27(95%CI:1.49~20.09)で、有意な関連を示した。 研究者らは、「COVID-19発症リスクは、ED発症の危険因子と似ており、われわれの研究結果は、ED、血管内皮機能障害、およびCOVID-19に関連する病態生理学的メカニズムと一致している。ワクチンやマスクの着用は、おそらく性機能障害を防ぐという追加の利益をもたらす可能性がある」とコメントしている。

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