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TNF阻害薬治療中のIBD患者、新型コロナワクチン単回接種では抗体応答が不良

 新型コロナワクチンを巡っては、世界的に需要が高まり、限られた供給量をどう配分するかが各国における喫緊の課題になっており、単回接種の有効性についての研究も進んでいる。一方で、炎症性腸疾患(IBD)など全身免疫を抑制する治療を行っている患者では、免疫応答が十分に得られず、ワクチンの有効性が落ちるのではないかという懸念がある。英国・Royal Devon and Exeter NHS Foundation TrustのNicholas A Kennedy氏らは、インフリキシマブもしくはベドリズマブ治療中のIBD患者に対し、2種類の新型コロナワクチン(ファイザー製BNT162b2、アストラゼネカ製ChAdOx1 nCoV-19)接種後の抗体価を比較。その結果、インフリキシマブ治療患者では、ベドリズマブと比べワクチン単回接種後の抗体価が有意に低かった。ただし、SARS-CoV-2感染後のワクチン接種、もしくは規定通り2回接種後は、ほとんどの患者でセロコンバージョンが認められた。著者らは、「インフリキシマブ治療患者においては、ワクチンの単回投与に対する抗体応答が悪く、SARS-CoV-2感染のリスクが高まる可能性があり、2回目接種の遅延は避けるべき」と述べている。Gut誌オンライン版2021年4月26日号の報告。 研究グループは、2020年9月22日~12月23日の間に、英国の92医療機関に来院したIBD患者(5歳以上、インフリキシマブまたはベドリズマブ治療を6週間以上実施、過去16週間に少なくとも1回の薬物治療を受けている)7,226例を連続して登録。インフリキシマブ治療中の865例とベドリズマブ治療中の428例を対象とした。 主な結果は以下のとおり。・1回目のワクチン接種後3~10週間で測定した抗SARS-CoV-2スパイクタンパク抗体濃度は、ベドリズマブ治療群と比べ、インフリキシマブ治療群でBNT162b2およびChAdOx1 nCoV-19ワクチンのいずれにおいても低かった。・ワクチンの種類に関係なく、ベドリズマブ単剤の治療患者におけるセロコンバージョン率が最も高く、インフリキシマブと免疫抑制剤を併用した患者において最も低いセロコンバージョン率が観察された。・SARS-CoV-2感染歴がある患者において、いずれかのワクチンの1回目接種前およびBNT162b2ワクチンの2回投与後でより高い抗体濃度およびセロコンバージョン率が認められた。・インフリキシマブ治療群においても、2回接種後の患者では抗体価の上昇が認められた。

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新型コロナワクチン戦略、65歳未満は1回目接種優先が有益/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンは、PfizerのBNT162b2およびModernaのmRNA-1273共に2回接種が標準となっているが、米国・メイヨー・クリニックのSantiago Romero-Brufau氏らは、エージェント・ベース・モデリングによるシミュレーションの結果、65歳未満の人々には1回目の接種を優先して行い2回目の接種を遅らせるワクチン接種戦略が、有益であることを明らかにした。同戦略で1日当たりのワクチン接種率が人口の0.1~0.3%で死亡率は最大20%低下し、1回接種のワクチン有効率が80%以上になる可能性があるという。BMJ誌2021年5月12日号掲載の報告。エージェント・ベース・モデリングによるシミュレーションを実施 研究グループは、米国の実際の人口統計および職業分布を代表する10万人をエージェント(模擬集団)とし、3種類の接触ネットワーク(仕事、家庭およびランダムな遭遇)を介したエージェントの相互作用による感染をモデル化した。標準的なスケジュールでワクチン接種を行った場合と、1回目の接種を優先し2回目の接種を遅らせる場合とで、1回目のワクチン接種後180日間におけるCOVID-19による累積死亡率、SARS-CoV-2累積感染率およびCOVID-19による累積入院率をシミュレーションにより比較した。 シミュレーションは10回繰り返し、平均として結果を示した。また、1回目のワクチンの有効率を接種後12日目で50%、60%、70%、80%、90%、1日当たりの接種率を人口の0.1%、0.3%、1%、ワクチンは無症候性感染ではなく症候性感染のみを予防すると仮定し、65歳以上のすべての人々がワクチン接種を終えた後に65歳未満の人には2回目の接種を遅らせるというワクチン接種戦略を採用することとして、感度分析を行った。2回目接種を遅らせ1回目接種を優先することで、全体の死亡率は最大2割低下 すべてのシミュレーションにおいて、標準接種vs.2回目遅延接種の10万人当たりの累積死亡率中央値は、1回目接種の有効性が90%の場合226 vs.179、同80%の場合233 vs.207、同70%の場合235 vs.236であった。 2回目遅延接種戦略は、ワクチンの有効率が80%以上、1日当たりのワクチン接種率が人口の0.3%以下の場合に最適となり、絶対累積死亡率が10万人当たり26~47減少することが示された。65歳未満の人々に対する2回目遅延接種戦略は、検討したすべてのワクチン接種率において一貫して良好な結果であった。

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モデルナ製ワクチンの副反応、ファイザー製との違いは?/JAMA

 モデルナ社の新型コロナウイルスワクチン(mRNA-1273)が日本でも特例承認され、大規模接種会場を中心に接種が始まる。商品名はCOVID-19ワクチンモデルナ筋注。既存株に対するワクチン有効率は約94%*でファイザー社ワクチン(BNT162b2mRNA、有効率:95%)とほぼ同等だが、副反応疑い症状の発症率についてはどうだろうかー。 今回、米国疾病予防管理センター(CDC)のCOVID-19レスポンスチームに所属するJohanna Chapin-Bardales氏らは、「BNT162b2mRNA」と「mRNA-1273」の接種者からの局所的・全身性の症状に関する報告の詳細を明らかにした。 その結果、両ワクチンともに接種部位の痛み、倦怠感、頭痛が多かった。また、いずれも副反応報告は2回目接種後のほうが多く、とくにmRNA-1273ワクチン接種者はBNT162b2mRNAと比べ、悪寒(40.0% vs.22.7%)、発熱(37.6% vs.21.5%)、筋肉痛(51.4% vs.36.8%)、頭痛(53.2% vs.40.4%)、倦怠感(60.0% vs.47.8%)、接種部位の疼痛(78.3% vs.66.5%)、関節痛(31.5% vs.19.9%)を多く報告していた。JAMA誌2021年4月5日号オンライン版に掲載の報告。 この報告は、2020年12月14日~2021年2月28日の期間、v-safe**登録者が各ワクチン接種後0~7日目にv-safeへ自己申告した局所的および全身性の症状を収集したもの。2021年2月21日までに4,600万人以上が新型コロナウイルス感染症に対するmRNAワクチンを1回以上接種し、計364万3,918例がv-safeに登録されていた。登録者は1回目のワクチン接種後7日以内に1回以上の毎日の健康調査を完了し、そのうち192万872例は2回目のワクチン接種も受け、接種後7日以内に1回以上の健康調査を完了した。 主な結果は以下のとおり。・BNT162b2mRNAワクチンは1回目に165万9,724例、2回目に97万1,375例が接種し、mRNA-1273ワクチンは1回目に198万4,194例、2回目に94万9,497例が接種した。・v-safe登録者のほとんどは、ワクチン接種後0〜7日目に局所的な症状(接種1回目:70.0%、接種2回目:75.2%)または全身性の症状(同:50.0%、同:69.4%)を報告した。・両ワクチンの報告を合算した場合、1回目の接種後に最も報告されたのは、接種部位の疼痛(67.8%)、倦怠感(30.9%)、頭痛(25.9%)、および筋肉痛(19.4%)だった。・両ワクチンともに、2回目接種後に増えた報告は、倦怠感、頭痛、筋肉痛、悪寒、発熱、関節痛だった。・mRNA-1273ワクチン接種者はBNT162b2mRNAワクチンと比較して、反応原性の割合が高いと報告され、2回目接種でその差は顕著に現れた[悪寒(40.0% vs.22.7%)、発熱(37.6% vs.21.5%)、筋肉痛(51.4% vs.36.8%)、頭痛(53.2% vs.40.4%)、倦怠感(60.0% vs.47.8%)接種部位の疼痛(78.3% vs.66.5%)、関節痛(31.5% vs.19.9%)]。・65歳以上の登録者は局所反応、全身性の反応いずれにおいてもあまり報告していなかった。・v-safe登録者による症状発現の報告割合は、ワクチン接種後1日目で最も高く、7日目までに著しく減少した。 研究者らは「いずれのワクチンにも局所反応および全身性の反応が予想され、大半は一過性のものだが、それらの経験が被接種者の認識に最も直接的な影響を与える可能性がある。そのため、臨床医はワクチン被接種者に具体的な副反応症状を伝えるとともに、副反応症状がとくに2回目接種当日~翌日に出現しやすいこと、また、症状は短期間で解消することを助言する必要がある」とも結論づけている。* 感染歴がない被験者では94.1%、感染歴を問わない被験者では93.6%1)** v-safeとは、 CDCが新型コロナワクチン接種プログラムのために特別に確立した安全監視システム。ワクチン接種後の個々の健康状態を把握するため、テキストメッセージとWebで調査するためのスマートフォンベースのツール。ワクチン接種後の最初の週に、登録者は局所注射部位と全身反応に関する調査を毎日行う。登録者は、欠勤の有無、日常生活の可否、症状が出現した場合に医療者からケアを受けたかなどを尋ねられる。患者説明用スライドはこちら『ファイザー社とモデルナ社のワクチン副反応比較』

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第58回 防衛省の逆ギレは誰のため?ワクチン接種センターの予約システム不備の件

高齢者に対する新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下、新型コロナ)のワクチン優先接種が本格化している。1日100万回接種で7月末までに高齢者への接種を完了させると菅 義偉首相が宣言したこともあり、防衛省が運営する大規模接種センターも東京、大阪に設置されることになった。ところが、その大規模接種センターの予約システムが穴だらけということが朝日新聞出版の雑誌「AERA」のwebニュースサイト「AERA.dot」で報じられ、その取材手法を巡って岸 信夫防衛大臣と報じたメディア側とのつばぜり合いがまた報じられるという泥仕合になっている。同じような検証は毎日新聞、日経XTECHも報じている。まず、予約システムでは、ホームページにアクセスした後、対象の高齢者に送付されている接種券に記載の市町村コード(6桁)と接種券番号(10桁)、接種希望者の生年月日を入力後、接種希望日時を選ぶ画面で空きがある日時を予約する。報道によると、この市町村コード、接種券番号、生年月日を架空の数字を入力しても予約が成立するという。この問題が報じられると岸大臣はTwitter上で次のようにつぶやいた。「自衛隊大規模接種センター予約の報道について。今回、朝日新聞出版AERAドット及び毎日新聞の記者が不正な手段により予約を実施した行為は、本来のワクチン接種を希望する65歳以上の方の接種機会を奪い、貴重なワクチンそのものが無駄になりかねない極めて悪質な行為です」さてこの件、医療従事者の方々の中では「メディアはけしからん!」という声も少なくないと聞く。私の見解を言うと、ポジショントークと言われてしまいかねないが、ほぼ問題ないと思っている。もし私自身が同じような情報を得たら同じように入力して検証し、その通りならば報道したと思う。AERA.dotの記事を読めば分かるが、今回の記事の発端は防衛省関係者からの内部告発、つまり内部で今回の問題に懸念を持った人がいたということだ。私も報道の世界に27年いて思うことだが、内部告発が行われる場合、大概は内部での意見具申が無視される、あるいは告発者がしがらみなどで意見具申がしにくい立場にあるなどの事情からやむにやまれず外部を頼ってくる場合がほとんどである。「そもそも内部告発者が愉快犯や怨恨で情報提供している可能性もあるだろう」と言う指摘もある。その可能性は常にある。ただ、さすがにわれわれも馬鹿ではない。例え短時間であっても情報提供者のバックグラウンドは可能な限りチェックする。さらに怨恨のケースは提供してくる情報につじつまが合わないことも多く、裏取りの過程でもおのずとその辺の状況は明らかになる。また、多少怨恨が背後にあったとしても、提供された情報で明らかになった問題点が多くの人に不利益をもたらす可能性が高いならば、それは慎重に裏取りをしたうえで報じることになる。さて話を今回の一件に戻そう。まず架空の予約を入れたことは問題なのか? 少なくともほかの手段で事実検証が代替できなければ、この手法は選択肢の1つである。ただ、それを実行するか否かのカギを握るのは、予約キャンセルの可否である。キャンセルが可能であるならば、システムや現場に与える負荷はほぼ無視できるので、入力による検証作業が岸大臣の言うところの「不正な手段によって予約することは、貴重なワクチンを無駄にしかねない悪質な行為」には当たらないと考える。また、この件で「わざわざ予約をしてなくとも、防衛省やシステム開発会社に情報提供者の言うことの真偽を問い合わせすれば代替できるではないか」という意見もあるかもしれない。この意見は一見すると論理的に聞こえるものの、実は物事の本質を見失う可能性がある。そもそも内部にシステムの脆弱性を認識した人がいながら、このシステムがリリースされてしまう組織体制が本質的に問題なのである。その組織に対してこちらが検証結果も持たずに取材をかければ相手側は不適切な隠ぺいに走る恐れがある。ちなみに、この報道について防衛省に抗議された朝日新聞出版の見解が公開されている。これを読むと、検証の上で防衛省に見解を問い合わせたものの回答はなかった旨が記載されている。防衛省はこの段階で事実を公表し、システムを一時停止するなどの措置が取れたはずである。経験上、こうした反応の場合は決定的な証拠を提示しない限り、隠ぺいが行われる可能性がある。にもかかわらず上述の岸大臣のツイートである。このツイートは直訳すれば、「お前らは気にくわない」の逆ギレに過ぎない。ちなみにこのシステムの穴に関して岸大臣はこのようなツイートもしている。「本センターの予約システムで、不正な手段による虚偽予約を完全に防止する為には、全市長区町村が管理する接種券番号を含む個人情報を予め防衛省が把握し、予約番号と照合する必要があり、実施まで短期間等の観点から困難かつ、全国民の個人情報を防衛省が把握する事は適切でないと判断いたしました」さてこれは個人情報に関してはそうかもしれない。しかし、6桁の市町村コードすら適当な数字の入力でよかったことの言い訳としては苦しい。そして事の真相についてはこんな記事も出ている。結局のところ非常に大雑把で掛け声だけの「1日100万回接種」の無理がたたったということである。そして今回の報道、まさに大規模接種のスタート前で本当に良かったと思う。一部にはワクチン接種前の関係者の努力に水を差したという指摘もあるが、もしこれが本格的にスタートしてから実際に悪意を持った入力が大量に行われていたらどうなるのか? そちらのほうが想像するだけでぞっとする。幸いにして大規模接種会場で使うモデルナのワクチンは、ファイザーのコミナティと違って解凍から有効期間が30日あるので、ニセの予約を大量に入れられても大量廃棄に至る可能性は低いだろう。しかし、虚偽予約があれば現場のマンパワーはかなり疲弊する。いずれにせよ今回は不幸中の幸いだったというべきだ。それでも中には防衛省とのやり取りも含め全部修正が済んでから報道すればという御仁もいるかもしれない。しかし、それは「万引きした人はモノを基に戻すか、お金を払えば無罪」という論理と同じだ。さて、そうはいってもちょっとだけAERA.dotには物申したいところがある。上述の記事を読めばわかるが、この記事ではこの穴だらけのシステムの運営会社の経営顧問が菅首相の盟友で、自民党の小泉 純一郎政権時の特命大臣を務めた竹中 平蔵氏であることに言及している。まあ、私もメディアの側にいるのでこの手の補足情報の記述に理解を示さないわけではないが、なくても良い情報かとも思う。この辺で「色」がついて、逆に変に嫌味っぽく受け取られかねないのだ。まあ、もっとも今回の報道で指摘されたことは事実無根のことではないことや、岸大臣があくまで権力者という前提に立てば大臣のツイートのほうがはるかに大人げない。そしてそのツイートをわざわざ引用して次のようにツイートしたのが、岸大臣の実兄・安倍 晋三元首相である。「朝日、毎日は極めて悪質な妨害愉快犯と言える。防衛省の抗議に両社がどう答えるか注目」日本歴代最長政権を司った元首相のツイートとしてはかなり粗雑で品性に欠けると私には映ってしまうのだが。まあ、遡って考えればご両人のツイートも、安倍元首相の政治姿勢に厳しい目を向け続けた、朝日新聞、毎日新聞への恨み節がにじんで見えるといううがった見方も成り立つかもしれない。もちろんこうした見方はある種、私個人のバイアスともいえる。ただ、同時にこの一件に関して「メディアはけしからん」と思った方は、実はメディアの好き嫌いというバイアスが混入している可能性はある。というのも両社ともメディアとしては一般人から好き嫌いが分かれやすいからである。もちろんそのスタンスは自由だが、この件で「メディアはけしからん」と公言するならば、「朝日、毎日はけしからん」のバイアスが混じってないか否かはご自身で検証してみる必要はあるだろう。

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ファイザー製ワクチン、感染報告率の低下は接種後何日から?/感染研

 ファイザー製の新型コロナワクチンBNT162b2は、国内では2021年2月14日に薬事承認され、2月17日から医療従事者を対象とした先行接種が開始となった。国立感染症研究所は、先のワクチンの臨床的効果を迅速に評価するため、既存のサーベイランスデータを用いた仮想コホートを構成し、1回目接種後のCOVID-19報告率の変化を検討した(追跡期間は2021年4月30日まで)。その結果、報告率は1回目接種日から12日前後を境に低下する傾向がみられ、接種後0~13日の報告率と比較すると、14~20日で0.42倍、21~27日で0.39倍、28日以降で0.14倍であった。イスラエルで行われた先行研究では、1回目接種後から2回目接種までの期間のCOVID-19報告の抑制効果(VE)は46~60%と報告されており、本結果はそれと同等である可能性があるという。 本研究では、ワクチン接種円滑化システム(V-SYS)と新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)のデータを用いて分析を行った。V-SYSのワクチン接種実績記録からワクチン被接種者の仮想コホートを構成し、HER-SYSのワクチン接種歴が記録されたCOVID-19患者のデータを、1回目のワクチン接種日と都道府県に基づいて突合した。 解析対象は、医療従事者への先行接種が開始された2021年2月17日から高齢者への接種開始前の4月11日までの期間に、新型コロナワクチンを少なくとも1回接種した医療従事者とした。主要評価項目は、報告されたCOVID-19症例の診断日で、副次評価項目は報告時有症状例の診断日と報告時無症状例の診断日。 主な結果は以下の通り。・観察期間中、医療従事者110万1,698人に対し1回目の新型コロナワクチン接種が実施され、このうち4月30日時点で2回目の接種終了者は104万2,998人(94.7%)だった。・4月30日までにHER-SYSに登録され、少なくとも1回のワクチン接種歴が記録されているCOVID-19症例は282例だった。・発症日がワクチン接種前だった1例を除く281例中、ワクチン接種後28日以内に診断された症例は256例(91.1%)だった。症例は、女性および20~40歳代が約7割を占めていた。・2回目の接種後に診断された症例は全体の16.7%で、このうち報告時無症状例が占める割合は40.7%、1回目接種後に診断された症例に占める報告時無症状例の割合(20.0%)より高い傾向にあった。・COVID-19報告率は、接種後0~13日が1.26/10万人日、14~20日が0.53/10万人日、21~27日が0.49 /10万人日、28日以降が0.18/10万人日だった。・接種後0~13日の報告率と比較した報告率比は、14~20日が0.42倍(95%CI:0.30~0.59)、21~27日が0.39倍(95%CI:0.27~0.56)、28日以降が0.14倍(95%CI:0.09~0.21)だった。報告時有症状例に比べ、報告時無症状例の報告率は全期間において低かった。

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Novavax製ワクチン、南ア変異株に効果/NEJM

 米国・Novavax製の遺伝子組み換えSARS-CoV-2ナノ粒子ワクチン「NVX-CoV2373」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防に有効であり、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)陰性者において、より高い効果が認められた。NVX-CoV2373接種後の感染例の多くは、南アフリカ(B.1.351)変異株が原因であった。NovavaxのVivek Shinde氏らが、南アフリカで実施したNVX-CoV2373ワクチンの無作為化プラセボ対照第IIa/b相試験の結果を報告した。SARS-CoV-2変異株の出現が、COVID-19感染制御の進展を脅かしている。NVX-CoV2373ワクチンは、健康成人を対象とした第I/II相試験において安全性が確認されるとともに、強力な中和抗体産生と抗原特異的多機能CD4陽性T細胞反応との関連が示されていた。NEJM誌2021年5月5日号掲載の報告。南アフリカでHIV陽性/陰性の6,324例を対象にNVX-CoV2373ワクチンを評価 研究グループは、18~84歳のHIV陰性成人、および18~64歳の医学的に安定しているHIV陽性者を、NVX-CoV2373ワクチン(組み換えスパイクタンパク質5μg+Matrix-M1アジュバント50μg)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ2回接種した。接種するスタッフのみ割り付けを知っており、他の研究スタッフおよび参加者は盲検化されていた。 主要評価項目は、安全性、ならびにベースラインSARS-CoV-2血清陰性者における2回目接種後7日以上経過時点の検査で確認された症候性COVID-19発症に関する有効性とした。 6,324例がスクリーニングを受け、このうち4,387例が少なくとも1回の接種を受けた(ワクチン群2,199例、プラセボ群2,188例)。平均年齢は32.0歳で、65歳以上の高齢者は4.2%、男性が57%であった。また、抗スパイクIgG抗体の評価により、ベースラインで30.2%がSARS-CoV-2血清陽性であった。ワクチンの有効率は全体で約50%、HIV陰性者で60% 2回の接種を受けベースラインで血清陰性であった有効性解析対象集団(per-protocol集団)は2,684例(HIV陰性94%、HIV陽性6%)で、ワクチン群1,357例中15例、プラセボ群1,327例中29例において軽症~中等症のCOVID-19が発症した。 全体でのワクチン有効率は49.4%(95%信頼区間[CI]:6.1~72.8)、HIV陰性者におけるワクチン有効率は60.1%(95%CI:19.9~80.1)であった。 COVID-19を発症した44例のうち全ゲノムシークエンス解析が可能であった41例において、38例(92.7%)でB.1.351変異が確認された。B.1.351に対するワクチンの有効性(事後解析)は、HIV陰性者(ワクチン群11例、プラセボ群22例)において51.0%(95%CI:-0.6~76.2)であった。 初期の局所/全身の反応原性イベントは、ワクチン群で高頻度であったが、重篤な有害事象は両群においてまれであった。

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緩和ケアの基盤となるのはナラティブなやりとり、日常診療の範囲内で取り組めます!【非専門医のための緩和ケアTips】第3回

第3回 緩和ケアの基盤となるのはナラティブなやりとり、日常診療の範囲内で取り組めます!前回までに、緩和ケアを実践する際に、患者さんと医学情報だけでなく、物語的(ナラティブ)なやりとりをすることも大切、ということをお話ししました。一方で、実際に取り組もうとすると、なかなか難しく感じる方も多いと思います。では、どうやって毎日の診療に緩和ケアを“実装する”とよいのでしょうか? 頂いた質問から見てみましょう。今日の質問緩和ケアが大切なのはわかるんですが、とにかく時間がありません…。患者さんの話を30分近く聞いたりする時間をとるのは無理です。うちは診療所なので、緩和ケアだけに取り組むスタッフを配置するわけにもいきません…。「時間がないから、緩和ケアができない」問題ですね。この方がおっしゃるように、緩和ケアを実践する中では、ベッドサイドで30分以上お話を伺ったり、ご家族を交えて今後の療養について話し合ったりすることがあります。これぞ「The 緩和ケア」って感じですよね。皆さんが目にする、ドラマなどでの緩和ケアのシーンの多くも、こういった“ガッツリとした”緩和ケアではないでしょうか?確かに、こうした「ガチ緩和ケア」もありますが、私たち専門家も、患者さん全員にいつでもこうしたケアを行っているわけではありません。重要なのは「必要な人」に「必要なタイミング」で「必要なスタイル」の緩和ケアを提供することです。だって、外来で「いつもの薬、もらいに来ました〜」みたいなテンションの患者さんに「今から1時間、あなたの話を聞かせてください!」なんて言ったところで、びっくりされちゃいますよね。では、どうすればいいのでしょうか?それは、「患者さんがナラティブ(物語的)な話をしたいときに、短時間でよいので遮らずに聞き、医療者側もその話に関心があることを伝える」というものです。先日、私の内科の外来で、患者さんに新型コロナの生活への影響について聞いたところ、「以前はよく旅行に行っていたけど、すっかり行けなくなってしまって…」という話になりました。その方は脳血管障害後の片麻痺があり、旅行に出るのはそれなりに大変なはずです。そこに話を向けると「家族がサポートしてくれるので」「これまで行ったところでよかったのは阿蘇ですね。あの景色は今でも思い出します」など、旅行の思い出や家族への感謝の言葉が出てきました。その方にとって旅行というイベントがいかに大切なものか、障害を抱えながらもご家族に支えられてきたことを振り返り、共有してもらった時間でした。このやりとりによってすぐに医学的な介入が変化するわけではありません。ただ、「どういったことを大切にしてきた方か」「何に価値を感じる方か」といった情報を知り、そのやりとりを積み重ねていくことが、その後、人生における大切で難しい決断を本人・家族と医療者が一緒にしていく基盤となるのです。今回の旅行のお話、聞いていたのは3分程度でしょうか。そんなに長い時間ではありません。他の医学的な治療説明のほうが、時間がかかりませんか? たとえば、インスリン導入の注意点を説明する場合、私は3分では到底終わりません。もしかしたら、患者さんにとっては詳し過ぎる医学的な説明を少し少なめにして、その分で話を聞く、というやり方もよいかもしれません。もちろん、私も外来の患者さん全員とこうした話をしているのではなく、治療以外のことに話題が及ぶのは1日の外来で1、2人程度です。患者さんも毎回、雑談を期待しているわけではないでしょう。あくまでも両者にとって無理のない範囲で、「時々は医学的なこと以外の話をしてみよう」と思って取り組むくらいで十分だと思います。「急がないけれど大切なこと」を「タイミングが合ったときに聞く」というスタンスが、外来など継続性のある医療の中での緩和ケアの実践になるのです。というわけで、物語的(ナラティブ)なやりとりは、時間がかかるものもあれば、もっと手軽に日常診療の範囲内で取り組めるものもある、ということをご理解いただければと思います。今回のTips今回のTips緩和ケアの基盤となるナラティブなやりとり、日常診療の範囲内で取り組める!

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第58回 世界との比較で見えてきた日本のコロナ対策の課題と対応

新型コロナウイルス感染症を巡っては、検査やワクチン接種が遅々として進まず、治療においても病床数が不足している日本。NPO法人医療ガバナンス研究所理事長の上 昌広氏が4月24日、「これまでのコロナ対策を問う」と題した講演会において問題点の指摘と提言を行った。以下、講演の概要を紹介する。季節性の“風邪コロナ”の動向にも注視を緊急事態宣言後の新規感染者数の増加に対し、「リバウンド」という言い方がされるが、世界で感染者数が増加しているということは、日本固有以外の理由がある。それは変異株の拡大と季節性の変動の影響だ。前者については改めて説明の必要はないが、後者については新型コロナ流行を予測する上で重要だ。コロナは元々、風邪のウイルスで、新型コロナが流行する以前から4種のウイルスが世界で流行を繰り返してきた。このような“風邪コロナ”は夏と冬の年2回流行することから、新型コロナも夏に流行する可能性がある。しかし日本の場合、現在の状況では今夏はおろか、今冬であっても国民の大半がワクチン接種を完遂するのは無理だろう。G7の中では、英国と米国において感染者数が激減している。英国については、昨夏の日本の第2波までは、感染者数の急増により「世界の負け組」と呼ばれたが、年末年始頃から減少に転じた。また、米国は死亡者数の急増から第2次世界大戦末の様相とまで言われた。両国はなぜ感染者数の減少に成功したのか、そしてその他の欧州諸国がなぜうまくいっていないのかを分析すべきだ。ワクチン接種数5割超で集団免疫を獲得日本に関しては、やり方次第で緊急事態宣言は必要なかったと考える。各国の人口10万人当たりのワクチン接種率(4月13日現在、1回目接種)のデータによると、英米両国の接種率は約6割。対する日本は1.3%。英米の感染者数の減少傾向を見ると、集団免疫を獲得していることがうかがえる。このことが示すのは、接種率が5割を超えれば感染者数を抑えられるということだ。ただし、速やかな接種でなければいけない。ちなみに、接種率1位はチリで約65%。しかし、同国の感染者数は急増した。ワクチンの主な購入先は中国のメーカーだ。中国製は不活化ワクチンで、有効性は5〜7割。これに対し、米国のファイザー製やモデルナ製はmRNAワクチンで、有効性は約9割だ。後者は世界初のワクチンで、接種後何が起きるかわからないからと、当初は中国製ワクチンが求められていたが、チリの状況が明らかになってから潮目が変わった。菅 義偉首相が4月、5,000万回分のワクチンの追加供給をファイザーと合意した頃、中国は1億回分を輸入した。習 近平・国家主席は自国のワクチンを危ないと思ったのか。一方、ファイザー製は短期的な有効性や安全性が明らかになりつつある。「特例承認」制度を早期に生かせなかった日本日本の接種率が低い理由に、接種開始の遅れがある。主要先進国では昨年12月に始まったが、日本は今年2月からだ。田村 憲久・厚生労働大臣は、安全性チェックのため治験が必要だと言ったが、ファイザー製ワクチンの治験にヨーロッパで参加した国はドイツのみで、多くが自国での治験にこだわらなかった。形だけのブリッジ試験を実行した日本とは危機意識が違うと言えよう。日本は緊急事態と言っても平時の対応だ。医薬品医療機器等法に基づく特例承認という制度があって、治験せずとも承認できるのに、政治判断をしなかった。問題を指摘された菅首相の答弁は、「法改正が必要」との苦しい説明だった。ワクチンを確保したら、あとは打つだけ。欧米では医学生や看護学生、軍人でも接種できる。日本も規制を緩和して打ち手を増やさなければいけない。日本は経済的に大きなダメージを受けている。2020年のGDPは、前年比で-5.1ポイント、アジア圏域では中ぐらいだが、東アジアの中では最下位だ。一方、ヨーロッパで感染対策を緩めたスウェーデンでは、ロックダウン措置をしなかった結果、死亡者数が増えた。2020年のGDPは前年比‐4.2ポイント。高齢者層の経済活動自粛などが要因として考えられる。国際標準とは真逆の日本の対応策日本のコロナ施策における最大の問題点は、PCR検査を抑制したことだ。G20における10万人当たりのPCR検査数(2020年12月9日前後の数字)を見ると、トップは米国で約6万5,000件。翻って、日本は14位で5,000件以下だ。世界のコロナ対策が大きく動いたのは、昨年8月。リードした米国では、新学期が始まるタイミングだった。学校では対面でないと教育効率が下がったり、教員の雇用に影響したりする。週2回の検査により陽性者が早期に発見できるという研究結果を根拠に、実行することにした。日本も東京五輪・パラリンピックの選手や関係者は週2回検査(その後、毎日に変更)するというが、子ども達に週2回検査しようとはしない。ダブルスタンダードになっている。OECD加盟国と中国の10万人当たりのCOVID-19関係論文数(2020年12月28日現在)を見ると、トップはスイスで、日本は34位。「イソジンでうがいをすれば感染を防げる」「PCR検査を増やせば医療が崩壊する」「マスク会食をしましょう」などという言説が行政トップから発せられるのが日本なのだ。実際は逆で、検査をして陰性の人はマスクを外して外食しましょう、これが国際標準であるということは明白だ。大学病院での受け入れ増に必要な感染症改正欧米と比べて患者数が少ない日本で医療が逼迫するのは、コロナ感染者の受け入れ病床数が少ないからだが、とくに問題なのは、大学病院が少数の感染者しか受け入れられない点だ。それはコロナが感染症法に規定されている法定感染症で、受け入れ病院として大学病院は認定されていないからだ。言うまでもなく、コロナは「総力戦」。科学的かつ合理的でなければならない。

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無症候性新型コロナ感染、ワクチン完了で発生率86%減/JAMA

 イスラエル・テルアビブの3次医療センター(1ヵ所)に勤務する医療従事者について、新型コロナワクチン「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)の接種完了者は非接種者と比べて、2回目接種後7日超の症候性および無症候性のSARS-CoV-2感染の発生率が有意に減少したことを、同国Tel Aviv Sourasky Medical CenterのYoel Angel氏らが報告した。なお、結果は観察デザインに基づく調査のため限定的だとしている。症候性SARS-CoV-2感染へのBNT162b2ワクチンの有効性については、無作為化試験で推定値が示されているが、無症候性SARS-CoV-2感染への効果については不明であった。JAMA誌オンライン版2021年5月6日号掲載の報告。接種完了を、2回目接種後7日超と定義 研究グループは、2020年12月20日~2021年2月25日に、テルアビブの3次医療センターに勤務する医療従事者について行われた鼻咽頭スワブによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査の結果から、症候性および無症候性SARS-CoV-2感染者に関するデータを集めて分析した。ロジスティック回帰法にて、ワクチン接種完了群と非接種群の感染を、発生率比(IRR)を求めて比較した。被験者の居住地やPCR検査回数によって補正を行った。 ワクチン接種歴は、職場の健康データベースから入手し、接種完了は2回目接種後7日超が経過していることと定義した。 主要アウトカムは、ワクチン接種完了群vs.非接種群の症候性および無症候性SARS-CoV-2に関する補正後IRRであった。副次評価項目は、ワクチン1回接種群(1回目接種後7~28日)に関するIRR、ワクチン接種完了21日超群に関するIRRなどだった。無症候性SARS-CoV-2、ワクチン接種完了群で86%減 被験者の医療従事者は6,710例で、平均年齢は44.3(SD 12.5)歳、女性は4,465例(66.5%)だった。追跡期間の中央値は63日で、BNT162b2ワクチンの1回以上接種者は5,953例(88.7%)、2回接種者は5,517例(82.2%)、非接種者は757例(11.3%)だった。ワクチン接種者はより高年齢(平均年齢:接種者44.8歳、非接種者40.7歳)で、男性の割合が高かった(それぞれ、31.4%、17.7%)。 症候性SARS-CoV-2感染は、ワクチン接種完了群8例、非接種群38例で発生した。感染の発生率はそれぞれ、4.7件/10万人日、149.8件/10万人日で、補正後IRRは0.03(95%信頼区間[CI]:0.01~0.06)だった。また、無症候性SARS-CoV-2感染は、ワクチン接種完了群19例、非接種群17例で、それぞれ発生率は11.3件/10万人日、67.0件/10万人日、補正後IRRは0.14(95%CI:0.07~0.31)だった。 傾向スコア感度分析を行っても、結果に質的変化はなかった。

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ワクチン接種にまつわるさまざまな疑問【コロナ時代の認知症診療】第3回

副作用と副反応、改めて知るそのちがい医療関係者として私は4月の中旬に、2回目のコロナワクチン予防接種を終えた。注射の痛みはこれまでの注射経験の中で最も痛くないものであった。けれども2回とも翌日、注射の刺入点付近を中心に腫れぼったさを自覚した。また2回目は発熱こそなかったものの、翌日はけだるさが続き頭の回転も冴えなかった。「若い人なら3分の2の人に37.5度以上の発熱があるが、高齢になるほどさほどでもない」と言われる典型例だったのだろう。ところでこのような症状は普通なら副作用と言われるはずなのに、どうしてワクチン接種では副反応と呼ばれるのかを注射の後で知った。ワクチンによる健康被害の多くは、免疫反応そのものによって起きるから、こう呼ばれるのだそうだ。インフルワクチンも未経験の高齢者が意外に多い世界の先進国におけるワクチン接種率が日本はとても低いという声がある。一般国民はもとより5月1日時点の新聞記事によると医療関係者における2回目の接種終了率はまだ2割ほどに過ぎないとの報告もある。こうした中で、私の外来でも接種に関する質問がかなり出てきた。ポイントは、まず接種せねばならないものかという質問。次にどんな人はやってはいけないかという質問である。さらにイギリス型など新型コロナウイルスの変異株にもこのワクチンは効くのかという質問もある。とくに最初の問いは多いので、「インフルエンザ予防注射は打っていますか?」と尋ねると、したことはないと答える人が結構多い。そこで高齢者におけるインフルエンザ予防接種の摂取率を調べてみた。その結果、4~7割とする厚労省による報告1)を知り、その少なさに驚いた。ワクチンによる「集団免疫」への希望の声がある。もちろん多くの人は自分がかかりたくないから接種するのである。一方で人口の3分の2が免疫を獲得すれば、パンデミックを食い止め地域社会や国全体を守れるという「集団免疫」の考えがある。その信憑性を疑う声もあるが、これを実現するにはインフルエンザの予防接種でいうところの、これまでの最高くらいの接種率が必要である。けれどもこれは容易ではないだろう。私の知る範囲では、恐らく接種しないだろうと思われる人が少なくない。科学的判断というよりもむしろ本人の信念による気がする。次に接種の絶対禁忌は、各医師会がガイドラインを市民向けに示している:(1)1回目の新型コロナワクチン接種でアナフィラキシーなど重度のアレルギー反応がでた方(2)本ワクチンの成分であるポリエチレングリコール(PEG)にアレルギーのある方である。なおよくありそうな、接種当日37.5℃以上の発熱がある方については、「今は接種できないが、タイミングをずらせば接種可能」とされている。投げかけられるさまざまな疑問にどう答える?次に変異株に対する効果も含めてどれくらい有効だろうか? まず「そもそも変異とは何か?」。これは今の時代、いまさら聞けない質問かもしれない。「ウイルスの遺伝子コピーの写し間違えで、元とは違ったタンパク質からなる生物ができること」と答えても難しいだろう。そこでウイルスのもとになる遺伝子における「伝達ゲーム」のようなものだと言っている。つまりどんどん間違いが広がっていって最初の話とは全く別の話が出来上がるようなものという説明である。さてどこまで効くかだが、これまでの生ワクチンなどと違って、今度のRNAワクチンには、効果が期待されるようだ。インフルエンザのように毎年変異し、全く生物学的に異なるものであれば確かに効果は期待しにくいだろう。そうではなくコロナの場合、新型コロナウイルスの中での変異なので、期待できるのではないかと考えられている。筆者自身は変異株が今では大多数のイギリスにおける疫学的結果が最も大切かと思う。ヨーロッパでワクチン接種率が最も高いイギリスでは、4月30日の段階で、1度でもワクチンを接種した人の割合は約50%だ。1日あたりの感染者は、1月には約6万8,000人だったものが、3ヵ月後には2,000人程度まで急激に減少した2)。まさに集団免疫による効果が出つつあるのだろう。なお、予防接種の持続効果については、少なくとも半年間はあると言われる。つまり半年間くらいは、抗体が血液中に存在するとされるが、それ以上にもつか否かについてまだエビデンスはないようだ。このような多くの質問が臨床の場ではしばしば投げかけられる。筆者自身はNew England Journal of MedicineのFrequently Asked Questionsにあるコロナワクチンに関する特集3)が信頼できると感じている。参考文献・参考情報1)厚生労働省「2020/21シーズンのインフルエンザワクチンの供給について」2)ワクチン接種50%のイギリス 感染が激減3)NEJM — Covid-19 Vaccine Frequently Asked Questions (FAQ)

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第58回 コロナ禍、日医会長政治資金パーティ出席で再び開かれる?“家庭医構想”というパンドラの匣(前編)

2日連続の社説で“大胆”な提言を行った日経新聞こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。今週の個人的なビッグニュースは大谷 翔平投手の13号ホームラン、ではなく、MLBのタンパベイ・レイズをクビになった筒香 嘉智選手を、ロサンゼルス・ドジャースが5月15日(現地時間)に獲得したことです(同じくロサンゼルス・エンジェルスをクビになったアルバート・プホルズ選手も獲得)。レイズは5月11日、筒香選手がメジャー出場の前提となるロースター40人枠から外し、戦力外としていました。2年契約最終年の今季は26試合出場し、打率.167、0本塁打、5打点と打撃が振るわなかったことが原因とされています。最近はほぼ代打要員で、ベンチの隅っこにおとなしく座っている姿が印象に残っています。米紙などは「(レイズが筒香と契約したのは)前例のないほどの大失敗」「今後、日本の球団に所属する日本人野手のポスティング移籍に悪影響を及ぼす」と酷評。日本のネット上でも、「投手の球速がパ・リーグより遅いセ・リーグにいて、かつ狭い横浜球場でしかホームランを量産できなかった筒香が活躍できるわけがなかった」などと、厳しい意見が飛んでいました。3Aで鍛え直すか、日本に戻って来るか、その動向が注目されていましたが、なんとドジャースがトレードで獲得するとは…。故障者が復帰するまでのつなぎとの話もありますが、他球団でクビになった2選手を、昨年世界一のドジャースがどう使っていくのか注目されます。さて、北海道、岡山、広島の3道県にも、16日から今月31日までの期間、緊急事態宣言が発出されました。「まん延防止等重点措置」については群馬、石川、熊本の3県が追加されました。北海道、岡山、広島については、政府の諮問案になかったものを、専門家でつくる分科会でより強い措置が必要だという意見が相次ぎ変更された、とのことです。ワクチン接種も各地でドタバタが続き、医療提供体制の逼迫も深刻さを増しています。今回は、少し古い話になりますが、そんな日本の医療提供体制に対し、5月の連休中、社説を2日も連続して使って“大胆”な提言を行った日本経済新聞の報道と、その中で取り上げられた「家庭医」について書いてみたいと思います。「非常時には医療機関の『経営の自由』を制限せよ」日本経済新聞は、5月4日、5日と連続で、「医療提供体制を問い直す」という社説を掲載しました。通常、社説は1日2テーマないし1テーマで、連続して同じテーマが掲載されることはありません。ゴールデンウィークで話題がなかったという事情もあるとは思いますが、極めて異例なことです。同紙は5月1日、2日の朝刊でも、「コロナ医療の病巣 機能不全の実相」という連載記事を掲載、コロナを診療拒否する医療機関の現状や、非常時における民間病院の「経営の自由」の問題点を指摘しています。社説はその総まとめ、という位置づけのように感じました。社説の内容は、ある筋の人が読めば相当カチンと来るだろう“刺激的”なものでした。5月4日の社説「医療体制を問い直す(上) 非常時の病床確保に強力な措置を」では、「新型コロナウイルスの感染拡大は、日本の医療提供体制のもろさを浮き彫りにした」として、「今後の人口減少社会で医療の質を維持するためにも、日本の医療体制に早急にメスを入れる必要がある」と提言、「小規模に分散した医療資源でコロナ病床を増やすには、医療機関の役割分担を徹底するしかない」と、日経がこれまで主張してきた論を改めて強く主張しています。その上で、大規模病院、中規模以下病院、療養型病院や高齢者施設の役割を明示、「非常時には医療機関の『経営の自由』を制限し、強制力を持って医療機関に病床を確保させることができる仕組みを早急に整えるべき」として、経営を医療機関の自由に任せている現状は「非常事態に対応できない致命的な欠陥」と断じています。「患者はまず家庭医にかかるのを原則」とせよ続く5月5日の社説「医療体制を問い直す(下) 初期診療をこなす家庭医を増やせ」では、その矛先は診療所の開業医(つまり日本医師会)にも向けられました。「世界に冠たる」と言われて来た国民皆保険が「幻想にすぎなかった現実をあぶり出したのがコロナ禍である」、「人口あたりの病床数は格段に多いにもかかわらず、治療体制のゆき詰まりが露見した」と厳しく批判。その上で、「医療の主役である患者第一を貫きつつ、効果が高くコストが低い医療体制に向けた再構築のカギを握るのは、欧州などで一般化している家庭医制度の普及である」と主張、どの病院・診療所にもかかれる「フリーアクセス」制度が大病院志向を生む要因にもなっているとして、「患者はまず家庭医にかかるのを原則」とせよ、と論じています。さらに「患者はGPと呼ばれる資格を持つ家庭医に登録し、病院ではなく登録GPにかかるのを基本とする」 という英国のNHS(National Hearth Service)の家庭医制度を紹介。「日本は一般に、開業医に比べ勤務医の労働環境が過酷」として、「働き方改革を推し進めるためにも大学医学部は家庭医養成を急いでほしい」としています。日本医師会ではタブーだった「家庭医」私自身は日経のこの社説、全体として正論だと思いました。実際、コロナ対応に積極的でない民間病院の存在や、コロナ診療における診療開業医の存在感のなさは、これまで医療提供体制に疎かった一般の人ですら認識、批判するまでになっています。それにしても、「医療機関の経営の自由制限」「フリーアクセスの問題点指摘」「家庭医制度の普及」と、日本医師会がカチン(一昔前なら激怒)と来そうなキーワードをわざわざ用いて、日本の医療提供体制に大胆に“物申し”た姿勢はあっぱれと言えるでしょう。私がとくに驚いたのは「家庭医」という言葉を使っていたことです。「家庭医」は、日本医師会にとって40年近くもタブーとされてきた言葉です。総合医、総合診療医、あるいはかかりつけ医という差し障りのない言葉ではなく、「家庭医」という言葉を敢えて使っていたとしたら、それは相当挑戦的、かつ挑発的なことです。患者登録制と人頭払いを嫌った日本医師会「家庭医」は、日本医師会の中では使ってはいけないタブーの言葉となった原因は、今から36年も前に繰り広げられた「家庭医論争」にあります。1985年から87年にかけて、地域の診療所開業医の新しい機能・役割として家庭医の制度化が議論され、「家庭医論争」が巻き起こりました。厚生省(当時)は「家庭医懇談会小委員会」を設け、地域における家庭医の必要性、家庭医療学確立の重要性などが議論されました。しかし、日本医師会は「家庭医の制度化は開業医療に対する国家統制だ」という論陣を張り猛反対、最終的に制度化は見送られ、家庭医構想そのものも葬り去られました。この時も、NHSの家庭医(GP)制度が一つのモデルとして紹介されました。しかし、GPは患者登録制で報酬体系も人頭払い主体であったため、「フリーアクセス」「自由開業」「出来高払い」を金科玉条のごとく堅持することで存在意義を保ってきた日本医師会の逆鱗に触れたわけです。以降、「家庭医」という言葉を、日本医師会の幹部が建設的な意味合いで使うことはなくなりました。2018年から新しい専門医制度において総合診療専門医が位置づけられましたが、その議論の過程でも「家庭医」という言葉はほとんど使われていません。「出席した人は全取っ替えしないとダメです」と長嶋氏が、しかし、新型コロナ感染症の感染拡大によって、「フリーアクセス」や「自由開業」、そして日経新聞の言う「自由な経営」が、非常時における効率的な医療提供体制の構築に大きな足かせになっていることが明白になってきました。さらに、日本医師会が推し進めてきた「かかりつけ医」(第29回 オンライン診療恒久化の流れに「かかりつけ医」しか打ち出せない日医の限界を参照)も、このコロナ禍でたいした機能を発揮していないことは誰の眼にも明らかです。病院の機能再編に加え、「家庭医」や「かかりつけ医」の再定義や制度化は、正真正銘待ったなしの状況になってきたと言えるでしょう。そんな中、ここに来て、家庭医、かかりつけ医の制度化を改めて進めようという動きが出てきました。財政制度等審議会・財政制度分科会や経済財政諮問会議などでの提言・議論がそれです。折しも、政治資金パーティ出席で日本医師会の中川 俊男会長は国民の信頼を大きく損ない、「出席した人は全取っ替えしないとダメです。今後この人の言うことを聞きますか?」(5月16日に放映されたフジテレビ系の情報番組「ワイドナショー」でのタレントの長嶋 一茂氏の発言)という声すら出ています。パーティがあった翌日(4月21日)、中川氏は日本医師会の定例記者会見で「3度目の緊急事態宣言は不可避の状況」との見解を示し、早急に厳しい制限を伴った緊急事態宣言の発令を政府に要望していました。医療体制逼迫を訴えるのとは裏腹に、自分だけ政治家パーティに出席(つまり医師会の利益のための活動を最優先)していたという事実は、日本医師会にとって(自分たちが考える以上の)相当大きなダメージとなるでしょう。ひょっとしたら、封印されていた“家庭医構想”というパンドラの匣(日本医師会にとっての)が再び開くことになるかもしれません(この項続く)。

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AIが探索したCOVID-19の治療薬/日本イーライリリー

 日本イーライリリーは、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)による肺炎に対する治療薬として、適応追加承認を取得した経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤バリシチニブ(商品名:オルミエント)に関するプレスセミナーを開催した。バリシチニブは関節リウマチ、アトピー性皮膚炎の治療薬として承認されている薬剤。 今回のセミナーでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への適応拡大で行われた臨床試験の経過、使用上の詳細について説明が行われた。COVID-19のサイトカインストームを抑えるバリシチニブ はじめに齋藤 翔氏(国立国際医療研究センター 国際感染症センター 総合感染症科)が、「新型コロナウイルス感染症の病態、治療の現状と課題 JAK阻害剤の臨床的位置づけ」をテーマに、バリシチニブの臨床的な位置付けや使用上の注意点などを説明した。 COVID-19の病態はすでに広く知られているようにウイルス応答期と宿主炎症反応期に分けられる。そして、治療では、軽症から中等症では抗ウイルス薬のレムデシビルが使用され、病態の進行によっては抗炎症治療薬のデキサメタゾンが併用されているが、今回追加適応されたバリシチニブは中等症以上で顕著にみられるサイトカインストームへの治療として期待されている。 バシリニブの適応追加では、米国国立衛生研究所(NIH)傘下の国立アレルギー感染症研究所(NIAID)主導によるACTT試験が行われた。特にACTT-2試験は、他施設共同・アダプティブ・無作為化・二重盲検・プラセボ対照・並行群間比較検証試験で実施され、COVID-19と診断された成人入院患者を対象にバリシチニブとレムデシビル群(n=515)とプラセボとレムデシビル群(n=518)を比較し、有効性および安全性を評価した。その結果、有効性として回復までの期間はバリシチニブ群で7日に対し、プラセボ群で8日だった(ハザード比[95%CI]:1.15[1.00-1.31] p=0.047)。また、無作為化後14日時点の死亡率では、バリシチニブ群で8例に対し、プラセボ群で15例だった(ハザード比[95%CI]:0.55[0.23-1.29])。 安全性では、グレード3(高度)または4(生命を脅かす可能性のある事象)の有害事象はバリシチニブ群で41%、プラセボ群で47%であり、重篤な有害事象ではバリシチニブ群で15%、プラセボ群で20%だった。また、死亡に至った有害事象はバリシチニブ群で4%、プラセボ群で6%だった。 次に使用上の注意点として禁忌事項に触れ、「結核患者」、「妊婦または妊娠の可能性のある女性」、「敗血症患者」、「透析患者」などへは事前の問診、検査をしっかり実施して治療に臨んでもらいたいと説明した。AIが探索したバリシチニブの可能性 次に「オルミエント錠、SARS-CoV-2による肺炎への適応追加承認と適正使用について」をテーマに吉川 彰一氏(日本イーライリリー株式会社 バイスプレジデント・執行役員/研究開発・メディカルアフェアーズ統括本部)が適応承認までの道程と適正使用について説明した。 もともと本剤は関節リウマチ、アトピー性皮膚炎の治療薬として使用されていたが、COVID-19の流行とともに治療薬の探索が急がれていた。その中で「Benevolent AI社が、バリシチニブがCOVID-19の治療薬になる可能性があるとLancetに発表1)、この報告後、in vitroでの薬理作用が確認され、2020年5月にACTT試験が開始された」と語った。 作用機序は、COVID-19による急性呼吸窮迫症候群について、JAK-STATサイトカインシグナル伝達を阻害することで、増加したサイトカイン濃度を低下させ、抗炎症作用を示すという。 追加された効能は、SARS-CoV-2による肺炎(ただし酸素吸入を要する患者に限る)。用法および用量は、成人にはレムデシビルとの併用においてバリシチニブ4mgを1日1回経口投与し、総投与期間は14日間。本剤は、酸素吸入、人工呼吸管理または体外式膜型人工肺(ECMO)導入を要する患者を対象に入院下で投与を行うものとされている。また、経口投与が困難な場合、懸濁させた上で経口、胃瘻、経鼻または経口胃管での投与も考慮できるとしている。 最後に吉川氏は同社の使命である「『世界中の人々のより豊かな人生のため、革新的医薬品に思いやりを込めて』を実現し、患者の豊かな人生へ貢献していきたい」と語り講演を終えた。●参考文献1)Richardson P, et al. Lancet. 2020;395:e30-e31.

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新型コロナウイルスワクチンと血栓症には関係があるのか? (2):ChAdOx1-S(AstraZeneca)の場合(解説:後藤信哉氏)-1391

 筆者はワクチン接種による新型コロナウイルス感染拡大速度低減、医療崩壊予防効果に期待している。人類を集団として見た場合には現在のワクチンには効果を期待できる。ワクチンも含めて、現在の医療の科学は個体差を考慮できる水準まで進歩していない。集団に対してワクチンを接種した結果何がどれだけ起こったかを記述するのみである。未来を予知する能力はない。ワクチン接種の結果を過去形で、しかし、速やかに公表することが大切である。 本論文ではデンマークとノルウェーにてChAdOx1-Sワクチン接種を受けた28万1,264例を対象とした。北欧諸国は医療データベースの確立された国である。2021年2月9日~3月11日に接種を受けた18~65歳の症例の動脈・静脈血栓イベントの発現率を、デンマークの2016~18年、ノルウェーの2018~19年のワクチン接種を受けていない18~65歳と比較した。ワクチン接種後28日以内のイベントに着目した。心筋梗塞などの動脈血栓イベントについてはChAdOx1-S接種後でも増加を認めなかった。静脈血栓イベントはコントロールの人口10万人当たり30人に比較して、ChAdOx1-S接種後は59人と多かった。標準化罹患率比は1.97(95%CI:1.50~2.54)であった。ワクチン接種の全体に比較すれば静脈血栓イベントを発症した絶対数は多くはない。しかし、18~65歳の健常人では少数の副作用でも許せないというヒトもいるだろう。新型コロナウイルス感染の血栓症の特徴を示しているのか、一般にはほとんど発症しない脳静脈洞血栓が7例に発症している。 本研究では血栓イベントのみでなく凝固異常、出血イベントにも注目している。血小板減少が起こる症例は17例とコントロールの6人よりも多い。原因が解明されない場合が多い。気道出血もワクチン後は35例、コントロールは16例とワクチン後に多かった。新型コロナウイルス感染による血栓形成、凝固異常の原因には不明の部分がある。本研究はChAdOx1-Sワクチン接種後、静脈血栓、脳静脈洞血栓が少数ながら北欧の2つの国の歴史的対照群よりは多いことを示唆した。ワクチン接種により地域の感染拡大速度低減、医療崩壊リスクを低減できると期待できる。圧倒的少数例ではあるが、静脈血栓、静脈洞血栓などが増えることを示唆した本論文を読んで、各国の規制当局、個人はどう考えるだろうか? 個人にとっての正解は常に不明である。科学は客観的数値を与えてくれるが、常に限界が伴う。結果を公表し、公表された結果からみんなが考え、今の時点での最適解を個人なり、国なりに考えざるを得ない。 読者の皆さん、この結果を読んで自分はChAdOx1-Sを受けたいと思うかどうか? 自分が厚生労働省の専門官として政府として、このワクチンを日本国にて承認して使用するかどうか? 自分がワクチンを選択できる自治体の長であったら、自らの自治体にて本ワクチンを接種するか否か? 各々どのような論理にて周囲を説得するか? この機会に自分なりの考えをまとめてみるとよい。

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第60回 昔なじみの抗うつ薬が抗がん免疫を助ける/持参のCOVID-19抗原検査で楽々帰国

昔なじみの抗うつ薬と抗PD-1薬の併用でいっそうの抗腫瘍効果抗うつ薬として昔なじみのモノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害薬)が免疫細胞によるがん駆除を助ける働きを担い、PD-1阻害薬と併用すればそれら単独投与以上の腫瘍抑制効果を発揮することがマウス実験で示されました1,2)。ペムブロリズマブやニボルマブ等のPD-1阻害薬は腫瘍細胞が免疫攻撃から逃れるために利用するT細胞表面分子を阻止します。PD-1阻害薬はうまくいけば何年も腫瘍を食い止めますが誰にでも効くというわけではなく、その効果を補う薬の標的探しが続けられています。カリフォルニア大学ロサンゼルス校のがん免疫学者Lili Yang氏のチームもその一つで、抗腫瘍免疫との関わりがこれまで知られていなかったモノアミン酸化酵素(MAO)の一つ・MAO-A遺伝子が腫瘍のT細胞で意外にも発現していることを突き止め、どうやらPD-1阻害薬の併用薬の標的として有望なことを見出しました。MAO-Aはドパミンやセロトニンなどの気分向上神経伝達物質を分解します。MAO-A活性が低い男性と攻撃的な振る舞いの関連が示されていることからMAO-A遺伝子は戦士の遺伝子として知られます3)。Yang氏等の新たな研究によるとMAO-AはT細胞の戦士化にもどうやら寄与しているらしく、マウスのMAO-A遺伝子を封じたところT細胞の抗腫瘍免疫が強力となり、腫瘍増殖が抑制されました。MAO-A阻害薬フェネルジン(phenelzine)も同様の効果があり、マウスの腫瘍を増殖し難くしました。また、MAO阻害薬とPD-1阻害薬の併用はいっそうの抗腫瘍効果をもたらしました。T細胞はセロトニンを作って抗腫瘍免疫を底上げし、MAO-Aはそのセロトニンを分解することで腫瘍のT細胞回避を助けてしまうようです。その回避路を断つMOA阻害薬とPD-1阻害薬の併用が試験で検討されることをYang氏は望んでいます。安上がりでどこでも手に入るMAO阻害薬はあわよくばがん患者の抑うつもついでに取り去ってくれるかもしれません。そのような併用試験をするなら前立腺がんは候補の一つになりそうです。というのもMAO-A は前立腺がんで過剰発現し、がん細胞や腫瘍開始細胞(がん幹細胞)の増殖を促して前立腺がんの発生を促すことが示唆されているからです4)。ただしMAO-A は必ずがんに味方するというわけではなさそうで、肝細胞がん、胆管がん、褐色細胞腫、神経芽腫、腎細胞がん、肺腺がんなどでは逆にがんと敵対する腫瘍抑制因子として働くと示唆されています5)。MAO阻害薬の試験ではMAO-Aに備わるせっかくの腫瘍抑制効果を意図せず妨げることがないように注意する必要があるでしょう。ユナイテッド航空がアボット社のCOVID-19抗原検査で楽々帰国できるようにするユナイテッド航空がAbbott(アボット)社と手を組み、海外旅行者の米国帰還の際に必要な新型コロナウイルス感染(COVID-19)陰性証明をよりすんなり取得できる仕組みを提供します6)。ユナイテッド航空の乗客はアボット社の抗原検査BinaxNOW Home Testを携えて出国し、海外滞在中にわざわざ検査センターに赴かずともそれを使って検査することで米国に帰還可能かどうかを判断できるようになります。遠隔医療が使える環境で旅行者がBinaxNOW Home Testのような抗原検査を自ら実施し、海外から米国への飛行機に搭乗するのに必要な陰性証明にその検査結果を使うことを同国は最近許可しています。BinaxNOW Home Testは手帳ほどの大きさで軽量であり、バッグに場所を取らず収めることができます。どっちつかずの検査結果となってしまった場合に備えて1つきりではなく幾つか持っていった方が良いようです。参考1)Wang X, et al. Sci Immunol. 2021 May 14; 6:eabh2383.[Epub ahead of print]2)An old antidepressant helps the immune system fight tumors in mice / Science3)Mentis AA, et al.Transl Psychiatry. 2021 Feb 18;11:130.4)Liao CP, et al. Oncogene.2018 Sep;37:5175-5190.5)Huang Y, et al. Front Oncol. 2021 Mar 8;11:645821.6)United and Abbott Partner to Make Return to U.S. Worry Free for International Travelers with Home-Testing Kits / PRNewswire

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COVID-19予防効果のある薬剤は?RCT11件のメタ解析/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染およびCOVID-19に対する薬剤の予防効果について、カナダ・マックマスター大学のJessica J Bartoszko氏ら研究グループが、WHOのCOVID-19関連データベースを基に、新たなエビデンスを継続的に組み込むリビングシステマティックレビュー(LSR)とネットワークメタ解析により検討したところ、ヒドロキシクロロキンについては、入院および死亡率にほとんど影響がない上、有害事象のリスクを増大する可能性が示された。イベルメクチン単独およびイベルメクチン・イオタカラギナン併用は、バイアスリスクが大きい上、不正確性も極めて高く、確かな根拠が得られなかった。本研究は、BMJ誌2021年4月26日号に掲載された。 本研究には、2021年3月25日までのWHOのCOVID-19データベースと、2021年2月20日までの中国のデータベース6件が用いられた。このうち解析対象としたのは、9件のランダム化試験。6件がヒドロキシクロロキン(6,059例)、2試験がイベルメクチン単独(540例)、1試験がイベルメクチン・イオタカラギナン併用(234例)を検討したもので、いずれもCOVID-19予防効果について標準治療またはプラセボと比較する試験デザインだった。 主な結果は以下のとおり。・ヒドロキシクロロキンは、COVID-19による入院(リスク差:1,000例当たり-1例、95%信用区間[CI]:-3~4、高度の確実性)や死亡(1,000例当たり-1例、95%CI:-2~3、高度の確実性)にほとんど効果がないか、あってもごくわずかだった。・ヒドロキシクロロキンは、検査で確定したSARS-CoV-2感染リスクの低下に対する効果がなく(1,000例当たり+2例、95%CI:-18~28、中等度の確実性)、有害事象による投与中止が増える可能性があり(1,000例当たり+19例、95%CI:-1~70、中等度の確実性)、SARS-CoV-2感染(疑い、可能性、検査確定)に対しても効果がないか、あってもごくわずかだった(1,000例当たり-15例、95%CI:-64~41、低度の確実性)。・イベルメクチン・イオタカラギナン併用による検査確定COVID-19への影響(1,000例当たり-52例、95%CI:-58~-37)、イベルメクチン単独による検査確定感染(1,000例当たり-50例、95%CI:-59~-16)、疑い、可能性、検査確定(1,000例当たり-159例、95%CI:-165~-144)への影響は、バイアスリスクが大きく不正確性も極めて高いため、根拠の確実性が非常に低かった。

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東京五輪での医師ボランティア募集、8割が否定的/会員アンケート結果

 コロナ禍で医療崩壊が叫ばれ東京オリンピック・パラリンピックの開催自体が危ぶまれる中、同競技大会組織委員会が日本スポーツ協会公認のスポーツドクターからボランティア約200人を募集していたことが明らかとなった(募集は5月14日で締切、応募総数は393人)。この募集に対して、当事者となる医師たちはどのような心境だろうかー。スポーツドクターの資格有無を問わず、8割超が「応募しない」と回答 本アンケートは、スポーツドクターの有資格者が多い診療科(整形外科、救急科、リハビリテーション科)かつ競技会場となる9都道県(北海道、宮城県、福島県、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、静岡県)在住のケアネット会員医師を対象に実施[5月7日(金)~12日(水)]。ボランティアへの応募意向をはじめ、参加時に心配な点や募集に対して感じたことなどを伺った。 本ボランティアの活動期間は3日間程度でも可能、1回当たりの活動時間は約9時間(休憩含む)であるが、応募希望について、Q2で『東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が、日本スポーツ協会公認のスポーツドクターを対象に医師200人程度をボランティアとして募集していますが、応募を考えていますか?』と質問したところ、スポーツドクターの資格有無を問わず、全回答者の86%(215人)が「応募しない」と回答。主な理由を以下に抜粋した。 「現在の社会情勢を考慮していないと考える(30代、200床以上)」 「明らかにコロナ対応を意味しているのに、スポーツドクター募集に違和感。開催の是非で未だに揉めている大会に参加したくない(40代、100~199床)」 「ワクチン接種の医師が足りないと言っていながら、医師募集とは矛盾している気がする(50代、200床以上)」 「付け焼き刃的。非現実的(60代、100~199床)」 また、今回のように専門職をボランティア募集しておきながら大会組織委員には日当が出ることに疑問を感じている医師も一定数いた。 このほか、スポーツドクターの資格を持ち、実際に応募したという医師からも、今回のオリンピック開催については、「コロナにリソースを傾けるべき時に、逆のことをしていると思う(30代、200床以上)」などの否定的な声もみられた。一番の不安要素は「自身の出勤制限」だが、日当があれば参加する? Q3『もしボランティアに参加した場合、心配な点はありますか?』では、「自身の出勤制限」「施設内の医師不足」「給与/売上」の順で回答が多かった。また、Q4『Q2で「応募しない」と回答した方に伺います。どのような条件なら応募しますか?』では、多数が「日当があれば」と回答、多くが「10万円以上」を希望していた。国内のスポーツドクター数は約6,400名 日本スポーツ協会の定めるスポーツドクターの受講条件は、「受講開始年度の4月1日時点で日本国の医師免許取得後4年を経過(受講開始年度の4年前の4月1日以前に取得)し、当協会または当協会加盟(準加盟)団体から推薦され、当協会が認めた者」で、現在のスポーツドクター登録数は6,420名(令和2年10月1日現在)である。登録者の専門診療科は整形外科をはじめ、救急科、リハビリテーション科、形成外科、リウマチ科などで、今回応募した約390名はこの登録者の6.1%にあたる。また、スポーツ医に該当する資格はこのほかにも、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本医師会認定の健康スポーツ医などがある。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。『東京五輪の医師ボランティア募集、どう考える?』

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第54回 予防効果94%のモデルナワクチン、大規模接種会場で活用

<先週の動き>1.予防効果94%のモデルナワクチン、大規模接種会場で活用2.高齢者ワクチンの7月終了見込みは全国で85.6%、首都圏に遅れ3.検査キットを病院・介護施設に800万回分無償配布/厚労省4.介護保険料が20年で倍加、全国平均が月額6,000円台に5.ドラッグラグ再燃に懸念、薬価引き下げ制度の見直しを/中医協6.オリンピックの開催中止を求める声明/全国医師ユニオン1.予防効果94%のモデルナワクチン、大規模接種会場で活用河野 太郎規制改革担当相は、13日の参議院内閣委員会において、厚労省で現在審査中の米・モデルナ並びに英・アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチンについて、5月下旬には承認される見通しを明らかにした。さらに、東京都と大阪府に開設された大規模接種会場では、モデルナのワクチンを使用すると説明。モデルナワクチンも2回接種が必要で、接種間隔は4週間。予防効果はファイザー製95%に対して、ほぼ同等の94%とされる。なお、イギリスのオックスフォード大学の研究者らによって、ファイザー製ワクチンとアストラゼネカ製のワクチンを併用すると有害な副反応が増えることが発表されており、今後、接種に際しては注意が必要だ。(参考)モデルナ製ワクチンの有効性、ファイザーと遜色なく 大規模接種で使用(日本経済新聞)ワクチン併用で副反応増加、重症化はせず 英国治験の暫定結果(産経新聞)2.高齢者ワクチンの7月終了見込みは全国で85.6%、首都圏に遅れ総務省と厚労省は、12日に各市区町村における高齢者ワクチン接種の終了見込みを発表した。政府が目標とする7月末までに終了する見込みだと回答した自治体は85.6%で、全国の高齢者人口に占める割合は84.5%。この中で、岩手・新潟・富山・石川・福井・岐阜・京都・兵庫・奈良・和歌山・鳥取・島根・山口・徳島・愛媛・長崎・大分の17府県では、7月末までにすべての市町村で接種が終了する見込み。一方、東京都67.7%、埼玉県73%、千葉県66.7%、神奈川県84.8%と首都圏で遅れが目立ち、最も低かったのは秋田県で56%に留まった。これに対して、菅総理は「1日も早く接種できるように取り組みたい」として、7月末までの接種完了に向けた自治体への支援を強化することを明らかにした。ワクチン接種をめぐっては、当初は供給量が問題とされたが、現時点では人員不足が課題となっており、厚労省は医療人材向けの求人情報サイト「医療のお仕事 Key-Net」で人材募集を支援するなど取り組みを強化している。(参考)高齢者コロナワクチン接種、7月末終了見込みは85.6% 総務省・厚労省が取りまとめ公表(CBnewsマネジメント)資料 高齢者に対する新型コロナワクチン接種について(厚労省)医師・看護師・医療人材の求人情報サイト「医療のお仕事 Key-Net」(同)3.検査キットを病院・介護施設に800万回分無償配布/厚労省政府は、14日に開催された新型コロナウイルス感染症対策本部において、感染が急速に拡大している地域で、医療提供体制のひっ迫も見られることなどから、N501Y変異株スクリーニング検査の実施や、変異株などの全国的な監視体制を継続することを明らかにした。また、厚労省は同日に「新型コロナウイルス感染症の検査体制整備に関する計画」を発表した。PCR・抗原検査を1日最大77.2万件程度まで充実させるため、コロナウイルス抗原キットを病院や介護老人保健施設、特別養護老人ホームなどに800万回分を配布し、検査体制の拡充を図る。(参考)PCR・抗原検査、緊急時は1日77万件の分析可能に(読売新聞)厚労省、抗原検査キット配布を「可能な限り早く進める」 介護施設など対象(JOINT)資料 新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針 5月14日変更(新型コロナウイルス感染症対策本部)4.介護保険料が20年で倍加、全国平均が月額6,000円台に厚労省は14日、介護保険料が今年度より改定され、全国平均が月額6,000円を超えたことを公表した。高齢化とともに介護保険料は年々上昇しており、介護保険制度が発足した2000年度の平均支払額2,911円と比べると2倍以上になっている。現在、65歳以上で介護や支援が必要と認定された人は667万人で、65歳以上の保険者に対する割合は18.7%だが、今後2025年には20.5%、2040年には22.8%と介護費用の増大が推測される。政府は、全世代型社会保障改革について討議を進めており、介護については、保険者の努力支援制度の強化と介護インセンティブ交付金の強化を行うなど、持続可能性の高い介護提供体制の構築を目指している。(参考)介護保険料2.5%上昇 65歳以上で初の6000円超え(日経新聞)資料 第8期計画期間における介護保険の第1号保険料について(厚労省)5.ドラッグラグ再燃に懸念、薬価引き下げ制度の見直しを/中医協厚労省は、12日に中央社会保険医療協議会薬価専門部会と総会を開催し、2022年度の薬価制度改革に向け製薬団体から意見を聴取した。日本製薬団体連合会からは、新薬の特許期間に市場実勢価格に応じた薬価引き下げが行われており、研究開発投資の削減と競争力低下、日本市場の魅力低下によりドラッグラグが再燃する懸念を挙げ、特許期間中の新薬について薬価を維持する新薬創出等加算の見直しや、薬価引き下げに用いられる市場拡大再算定ルールの見直しを求めた。総会では、年間販売額が350億円を超え、承認時に予測していた基準年間販売額2倍超の要件を満たしたテセントリク、ビンダケルなど医薬品10品目に対し市場拡大再算定を行い、8月1日からの薬価引き下げを了承した。(参考)特許期間中の薬価維持を‐製薬協など新薬加算見直し要望(薬事日報)中医協総会 テセントリク、ビンダケルなど5成分 市場拡大再算定適用で薬価引下げへ(ミクスonline)6.オリンピックの開催中止を求める声明/全国医師ユニオン13日、勤務医らで作る労働組合が東京オリンピック・パラリンピックの中止を訴え、国に要請書を提出した。新型コロナウイルス感染拡大が十分にコントロールされていない中開催することで、新たな変異株の脅威に晒されるなどの懸念を表明した。全国医師ユニオン代表の植山 直人医師は会見で「選手にはつらい話だが、大会中止は誰かが言い出さなければならない。医療従事者は声を上げることが求められていると思うので、あえて要請を行った」と語った。(参考)「東京五輪・パラ中止を」勤務医の組合が国に要請書(NHK)医師ユニオンが五輪中止を要請「新たな変異株生む恐れ」(朝日新聞)要請書 危険な変異株ウイルスを拡散し新たな変異株を生みだす危険性が高い東京オリンピックの開催中止を強く求める(全国医師ユニオン)

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新型コロナウイルスワクチンと血栓症には関係があるのか?:Ad26.COV2.S(Janssen)の場合(解説:後藤信哉氏)-1390

 新型コロナウイルス禍の克服の鍵の1つがワクチンである。人類は科学技術の英知を結集して驚くべき速さにて新型コロナウイルスに対するワクチンを複数開発した。予後の悪い疾病に対する治療と異なり、健常人に接種するワクチンには高い安全性が要求される。有効かつ安全なワクチンの開発には一般に長い年月がかかる。複雑精妙な人体の調節系は完全に理解されていない。薬剤であれ、ワクチンであれ、投与後の反応を個別予測する演繹的方法は確立されていない。拡大する新型コロナウイルス感染、感染すれば致死率は2%に至るとされる。人類全体として見ればワクチンによる免疫の獲得は感染の拡大速度を減少させ、医療崩壊を防ぐ効果を期待できる。現在も感染の第4波が拡大し、地域によっては医療崩壊にひんしている日本では感染拡大速度を減少させるワクチンを急速に拡大させたい。集団としての視点から日本国内のワクチン接種に反対するヒトは少ないと思う。しかし、予防介入、治療介入には副作用がある。安全性の高いワクチンであっても、ワクチン接種直後に心筋梗塞、脳梗塞などを偶然発症する場合もある。副作用なのか、偶発症なのか、個別のイベントにおける判断は難しい。 今回JAMA誌に掲載されたのはAd26.COV2.Sワクチン接種後、6~15日にて60歳以下の症例に発症した12例の脳静脈洞血栓症の報告である。脳静脈洞血栓とは聞き慣れない名前である。もともと中年女性に多いとされるが、ワクチン接種の6~15日に起こればワクチン接種と関係がありそうである。ワクチン接種と無関係の偶発症と、ワクチンによる副作用の弁別は困難である。本論文に報告された症例は12例と多くはないが、ワクチン接種との関係性が示唆される。まず、一般社会における静脈洞血栓が少ない。さらに、この12例のうち11例に免疫的血栓症であるヘパリン惹起血小板減少・血栓症の抗体が陽性と報告されている。ヘパリン惹起血小板減少・血栓症も治療困難な疾患である。実際、60歳以下の症例であっても3例が死亡、3例にICU入院が必要となった。 本論文では個別の症例の情報を多く記載している。ワクチンがよいとか悪いとかの結論でもない。ワクチン接種と関連しそうな特殊な血栓症があるので、本質を追求しようと結論している。 繰り返すが人体は複雑精妙な調節系である。筆者はワクチン接種により新型コロナウイルス感染拡大速度の低減に期待している。しかし、人体への介入に対する結果の予測は困難である。個別にはワクチン接種により不可逆的疾病が惹起される個人がいるかもしれない。ワクチン接種による人類全体の長期的反応も未知である。一見不都合に見える結果も公表し、少数ではなく、多数の意見にてベストを見いだそうとする米国の姿勢は筆者には好ましく思える。皆さんはどう思うだろうか?

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ファイザー社ワクチン、無症候性感染も予防か/Lancet

 2020年12月から英国において、ファイザー(BNT162b2mRNA)およびアストラゼネカ(ChAdOx1nCOV-19)の新型コロナウイルスワクチン接種が急速に進められている。今回、SIREN Study Groupに所属するオックスフォード大学のVictoria Jane Hall氏らは、両ワクチンの適用範囲に関する因子を特定することを目的に、無症状で定期的な検査を受けている医療従事者を対象者としてBNT162b2mRNAのワクチン効果を記録した。その結果、BNT162b2mRNAワクチンが症状の有無にかかわらず生産年齢人口の感染を予防できることを明らかにした。また、今回の対象者は変異株B1.1.7流行時にワクチン接種されており、この変異株に対しても有効性を示していた。Lancet誌2021年4月23日号掲載の報告。 SIREN Studyは、英国の公立病院で働くスタッフ(18歳以上)を対象とした前向きコホート研究。参加者は陽性群(抗体陽性または感染歴あり[過去の抗体検査またはPCR検査で陽性])と陰性群(過去の抗体検査またはPCR検査で陰性)のいずれかに割り当てられた。ベースライン時点の危険因子は登録時に収集、臨床経過は2週間ごとに収集された。ワクチン接種の有無は全国予防接種管理システムとアンケートを紐付けて収集した。参加者は隔週で PCR検査と毎月の抗体検査を受け、SIREN以外のすべての検査(症状を有する人の検査を含む)も受けた。フォローアップ期間は2020年12月7日~2021年2月5日だった。 主要評価項目は、ワクチン接種を受けた参加者のワクチン接種範囲の分析結果とPCR検査によるワクチンの有効性の確認だった。 主な結果は以下のとおり。・2万3,324例がこの分析の選択基準を満たし、英国の104サイトに登録された。・参加者の年齢中央値は46.1歳(IQR:36.0~54.1)で、1万9,692例(84%)が女性だった。・分析開始時に8,203例(35%)が陽性群に、1万5,121例(65%)が陰性群に割り当てられた。・総追跡期間は丸2ヵ月で110万6,905人日(ワクチン接種:39万6,318、ワクチン未接種:71万587)だった。・2021年2月5日時点のワクチン接種率は89%、そのうちの94%がBNT162b2ワクチンを接種していた。・ワクチン接種率の低さは、既感染、性別、年齢、民族性、職業、 Index of Multiple Deprivation(IMD:イギリスの各地域の相対的豊かさをデータに基づき数値化した指数)のスコアに関連していた。・フォローアップ中、ワクチン未接種の参加者で977例の新規感染があった(感染発生密度:14例/1万人日あたり)。・ワクチン接種済みの参加者は、最初の投与から21日以上経過の後に新規感染が71例(発生率:8例/1万人日あたり)発生、2回目の投与から7日後に9例が感染(感染発生密度:4例/1万人日あたり)した。・ワクチン未接種の参加者では、543例(56%)が典型的な新型コロナ症状を示し、140例(14%)は無症状もしくはPCR検査14日前の時点で無症状だった。一方で、ワクチン接種済みの参加者では29例(36%)は典型的なCOVID-19症状を示し、15例(19%)が無症状だった。・本研究対象集団において、BNT162b2ワクチンの初回投与から21日後では70%(95%信頼区間[CI]:55~85)、2回の投与では7日後に85%(95%CI:74~96)のワクチン有効性を示した。

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