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第71回 コロナ感染対策はデルタ株でも一緒、では一般市民への具体的な伝え方とは?

「過去最高の××××人…」「〇曜日としては過去最高の…」のいずれかのフレーズを最近のニュースで聞くことが多くなっている。言わずもがな、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の発生動向に関するニュースについてだ。多くの医療関係者が現在流行の主流をなすデルタ株の登場で、「局面が変わった」と口にする。確かに基礎研究ではデルタ株の持つ免疫回避は液性免疫だけでなく細胞性免疫にもおよび、さらにウイルスの細胞への接着や膜融合力も強化されているとも報告されている。中国の研究グループが公表した査読前論文では、デルタ株感染者が体内で保持するウイルス量は、従来株感染者たちと比べ1,260倍も多いと報告されている。他人事のような言い方に聞こえてしまうかもしれないが、まさに「恐ろしいまでの最強(最凶)なウイルス」である。そして最近、一般向けメディアでこの件について書いて欲しいと言われて資料を読み返した。すでに内外で報じられているが、米国疾病予防管理センター(CDC)は、内部向け資料で「デルタ株の基本再生産数は5~9.5人で、従来株の1.5~3.5人より大幅に感染力が増し、水ぼうそうの8.5人と同等」と試算していたことを明らかにしている。まあ、端的に言うならば、この数字だけみればデルタ株の感染力は従来株の3倍程度となる。報道的には、空気感染もする水ぼうそうと同等の感染力という触れ込みは極めてキャッチ―なのだが、こういう時こそ一呼吸置くべきと個人的には思っている。そんなこんなでほかに類似データがないかをもう一度眺め渡してみた。そうした中で改めて目にしたのが厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで、「8割おじさん」のあだ名でも知られる京都大学大学院医学研究科の環境衛生学分野教授の西浦 博氏が示していた試算だ。すでに流行株の約80%がデルタ株と見積もられている8月11日現在の東京都での新型コロナ感染の伝播力(感染力)を従来株の流行時と比較している。それによると現在の伝播力は従来株流行時の1.87倍。言い換えれば、デルタ株は従来のウイルスの1.87倍、ざっくり言えば約2倍の感染力となる。こうした2つのデータを同一記事内で引用する場合、当然のことながら3倍と2倍の差は何なんだと、読者の突っ込みが入る可能性がある。この違いは単純にCDCが基本再生産数、すなわち何も対策をせずに免疫を持たない集団で起こる二次感染の規模を示すのに対し、西浦氏の試算はある時点での感染力を示す実効再生産数を使っているからである。いわば西浦氏の数字は、市中でマスクをしている人が行き交い、店舗入口に消毒薬が設置され、多くの人が三密を避け、国民の4割以上がワクチンの1回接種を終えた今現在のデータを用いたものなので、CDCの試算よりも感染力が低く出るのは、このサイトの読者ならとくに不思議とは思わないはずだ。そこまで念頭に置いた瞬間ハッとした。そう、私たちの努力次第ではデルタ株の高い感染力も一定程度は相殺することが可能なのだと。そしてこの相殺の仕方は、すでに政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が6月時点で「変異株が出現した今、求められる行動様式に関する提言」を発表している。改めて以下に列挙する。(1)マスクを鼻にフィットさせたしっかりとした着用を徹底すること。その際には、適切な方法で着用できることを第一とした上で、感染リスクの比較的高い場面では、できればフィルター性能の高い不織布マスクを着用すること。三密のいずれも避けること。特に人と人との距離には気を付けること。(2)マスクをしっかりと着用していても、室内でおしゃべりする時間は可能な限り短くして、大声は避けること。(3)今まで以上に換気には留意すること。(4)出来る限り、テレワークを行うこと。職場においても、(1)~(3)を徹底すること。(5)体調不良時には出勤・登校をせず、必要な場合には近医を受診すること。(6)ワクチン接種後にも、国民の多くがワクチン接種を終えるまでは、マスクを着用すること。(7)ワクチン接種後にも、国民の多くがワクチン接種を終えるまでは、大人数の飲み会は控えること。(8)ワクチン接種後にも、国民の多くがワクチン接種を終えるまでは、帰省先での同窓会や大人数での会食は控えること。とくに目新しいものはない。そもそも感染力が増そうとも、感染経路は変化していないのだから当然である。むしろこれまでのことをより徹底すべしということなのだ。ところが「これまでとやることは変わらない」は多くの人が聞き飽きているフレーズなので、それを聞いただけでうんざりする人も少なくない。「今までと同じことなら、もう知っているからそれ以上わざわざ話を聞く必要はない」ということになる。ところが「もう知っている」という場合、大概自分に都合の良い覚え方をするものなので、これまで繰り返されてきた感染対策を完全に網羅して記憶しているケースは案外少なかったりするものだ。その意味では、デルタ株対策の呼びかけに関しては、やることは従来と同じでも伝え方に変化をつけなければならない時期に来ているようにも思える。デルタ株は従来株では感染が起きなかったシーンでも感染が起きていることは、もはや周知のこと。たとえば職場でちょっとマスク着用に疲れて顎マスクにした時に、隣の同僚と二言三言会話をする、喫煙所・休憩所にいてほっとしてマスクを外している時に他人と会話をするなどが、そうしたシーンに当たる。また、提言にもあるようなマスク着用時の鼻部分のワイヤー密着の甘さも死角だ。今は飲食店をなるべく利用しないほうが良いものの、利用時のオーダーでは大声で人を呼ばず軽く手を挙げるなどの対策も考えられるだろう。要は一般人の生活に根差して、うっかりしそうなシーン、今までやり続けてきたけど面倒になり手を抜き始めたシーンなどを、さりげなくだが具体的に提示して対策の徹底を求める。中身は同じでもこれまでの「三密回避」「マスク着用」「手洗い励行」のような紋切り型の教条的なものからやや目新しさを加えた情報提供で、感染収束の方向に若干でも活路が見いだせないかと考え始めている。

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コロナ感染経路不明者、リスク高い行動の知識が不足/国立国際医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の変異株による感染拡大の勢いが止まらない。 感染の主役は、COVID-19ワクチン接種を終えた高齢者にとって代わり、50代以下の若年・中年層へと拡大している。 こうした働き盛り、遊び盛りのこれらの年代の陽性者が、どこで、どのように感染しているのか。「感染経路不明」とされる事例の解明は、感染の封じ込め対策で重要な要素となる。 国立国際医療研究センターの匹田 さやか氏(国際感染症センター)らの研究グループは、入院時に感染経路が不明であった事例を対象に調査を行い、その結果をGlobal Health & Medicine誌に発表した。親しき仲にもマスクはあり!方法:2021年5月22日~6月29日に同センター病院に入院したCOVID-19患者のうち、入院時に感染経路が明確であった、意思疎通が困難であった患者を除いた者を対象として、インタビュー調査を実施。結果:有効回答の得られた22例のうち、男性が17例(77%)、女性が5例(23%)、年齢の中央値(四分位範囲)は52.5歳(44~66)、日本人が19名(86%)。22例のうち14例(64%)において既知の感染リスクの高い行動歴(室内飲食、室内ライブ参加、トレーニングジムなど)があった。また、行動歴/接触歴を解析し、既知の感染リスクが高い場面がのべ24あった。そのうちの21(88%)がラーメン店やそば屋など飲食関連であり、22(92%)ではマスクが着用されていなかった。また、感染に関与しうると考えられた患者の考えや信念に関して、「仕事の後であれば職員同士でマスクなしで話しても大丈夫だろう」、「外食が感染のリスクだとは知らなかった」などが挙げられた。 以上から匹田氏らは、「新たな感染経路が明らかになったわけではなく、むしろ感染には飲食がやはり多くの事例で関係していることがわかった。感染防止に対する意識付けや十分な知識が不足していることがわかり、これらが感染拡大を助長する可能性がある」と今後解決すべき課題を示唆した。

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免疫不全者へのブースター接種、推奨事由と対象者/CDC

 米国・疾病対策センター(CDC)は免疫不全者を対象としたCOVID-19ワクチンの追加接種(ブースター接種)の承認を受け、8月16日付でサイトの情報を更新した。主な内容は以下のとおり。・中等度から重度の免疫不全状態にある人はCOVID-19に感染しやすく、重症化、長期化するリスクも高いとされる。これらの人にはワクチンの追加接種が有効であり、接種を推奨する。・mRNAワクチン(ファイザー製およびモデルナ製)の2回目の接種から少なくとも28日経ってから追加接種を行うことを推奨する。・現時点では、他の集団に対する追加接種は推奨しない。 中等度から重度の免疫不全者は成人人口の約3%を占めており、ワクチン接種後の抗体価が十分でないケースが報告1)されている。小規模な研究2)では、ワクチン接種完了後に感染するブレークスルー感染における入院患者の大多数を免疫不全者が占め、免疫不全者が家庭内の接触者にウイルスを感染させる可能性が高いことが示唆されている。 免疫不全者の定義は以下のとおり。・腫瘍や血液のがんに対する積極的ながん治療を受けている。・臓器移植を受け、免疫抑制剤を服用している。・過去2年以内に造血幹細胞移植を受けた、または免疫抑制剤を服用している・中等度または重度の原発性免疫不全症(DiGeorge症候群、Wiskott-Aldrich症候群など)。・進行または未治療のHIV感染症患者・大量のコルチコステロイドまたは免疫抑制の可能性のある薬剤を服用1)Science Brief: COVID-19 Vaccines and Vaccination/CDC2)Data and clinical considerations for additional doses in immunocompromised people/CDC

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モデルナ製ワクチン、12~17歳に対する安全性と有効性を確認/NEJM

 mRNA-1273ワクチン(Moderna製)は、12~17歳の若年者において良好な安全性プロファイルと、若年成人(18~25歳)と同等の免疫反応を示し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防に有効であることが認められた。米国・DM Clinical ResearchのKashif Ali氏らが、mRNA-1273ワクチンの第II/III相プラセボ対照比較試験「Teen COVE試験(Teen Coronavirus Efficacy trial)」の中間解析結果を報告した。2021年4月1日~6月11日における米国12~17歳のCOVID-19発生率は、約900/10万人とされるが、若年者におけるmRNA-1273ワクチンの安全性、免疫原性および有効性は不明であった。NEJM誌オンライン版2021年8月11日号掲載の報告。12~17歳3,732例を対象に、プラセボと比較 研究グループは、健康な12~17歳の若年者3,732例を、mRNA-1273ワクチン群(2,489例)またはプラセボ(生理食塩水)群(1,243例)に2対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ1回100μgを28日間隔で2回接種した。 主要評価項目は、mRNA-1273の安全性ならびに、免疫反応の非劣性(18~25歳の若年成人を対象とした第III相試験との比較)。副次評価項目は、COVID-19発症予防または、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の無症候性感染に対する有効性などとした。安全性は良好、免疫原性は若年成人に対して非劣性 1回目および2回目接種後に高頻度にみられた非自発的な報告による副反応は、mRNA-1273群が注射部位痛(それぞれ93.1%、92.4%)、頭痛(44.6%、70.2%)、疲労(47.9%、67.8%)、プラセボ群が同様に注射部位痛(それぞれ34.8%、30.3%)、頭痛(38.5%、30.2%)、疲労(36.6%、28.9%)であった。mRNA-1273またはプラセボに関連した重篤な有害事象の報告はなかった。 若年成人に対する若年者のSARS-CoV-2疑似ウイルス中和抗体価の幾何平均抗体価比は、1.08(95%信頼区間[CI]:0.94~1.24)、血清反応の絶対差は0.2ポイント(95%CI:-1.8~2.4)であり、非劣性基準を満たした。 2回目接種の14日後におけるCOVID-19発症例は、mRNA-1273群では報告されなかったが、プラセボ群では4例確認された。

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AZ製ワクチンによるVITTの臨床的特徴とは?/NEJM

 ワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症(VITT)による死亡率は高く、とくに血小板数が低く頭蓋内出血を起こした患者で最も高いことが、英国のVITT 220例の検証の結果、明らかとなった。英国・Oxford University Hospitals NHS Foundation TrustのSue Pavord氏らが、報告した。VITTは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスSARS-CoV-2に対するChAdOx1 nCoV-19ワクチン(アストラゼネカ製)に関連した新たな症候群で、この疾患に対する臨床特性や予後に関するデータは不足していた。結果を踏まえて著者は、「治療法は不明なままであるが、予後マーカーの特定が今後の有効な管理に役立つ可能性がある」とまとめている。NEJM誌オンライン版2021年8月11日号掲載の報告。VITT(definite/probable)220例について解析 研究グループは2021年3月22日~6月6日に、英国の病院を受診したVITTの疑いのある患者を対象に、前向きコホート研究を実施した。 匿名化された電子フォームを用いてデータを収集し、事前に定義した基準に従ってdefinite/probable VITT症例を特定し、ベースラインの患者特性と臨床病理学的特徴、リスク因子、治療、および予後不良マーカーについて解析した。 評価対象となった患者は294例で、このうち研究グループによってdefinite VITTと判定された患者は170例、probable VITT患者は50例であった。ベースラインの血小板数と頭蓋内出血の存在が死亡リスク増加の独立因子 definite/probable VITTと判定された220例全例が、ChAdOx1 nCoV-19ワクチンの初回接種後に発症していた。ワクチン接種後発症までの日数は、5~48日(中央値14日)であった。年齢は18~79歳(中央値48歳)で、男女差はなく、特定可能な医学的リスク因子もなかった。 全体の死亡率は22%であった。死亡オッズは、脳静脈洞血栓症の患者で2.7倍(95%信頼区間[CI]:1.4~5.2)、ベースラインの血小板数が50%減少するごとに1.7倍(95%CI:1.3~2.3)、ベースラインのDダイマー値が1万FEU(フィブリノゲン換算量)増加するごとに1.2倍(95%CI:1.0~1.3)、ベースラインのフィブリノゲン値が50%低下するごとに1.7倍(95%CI:1.1~2.5)にそれぞれ増大することが示された。 多変量解析の結果、ベースラインの血小板数と頭蓋内出血の存在が死亡と独立して関連していることが認められた。観察された死亡率は、血小板数3万/mm3かつ頭蓋内出血を認めた患者では73%であった。 なお、著者は本研究の限界について、「症例確認バイアスが潜在的な弱点として挙げられる。VITTは新しい症候群であり、病態生理が十分に理解されていないため、真のVITTではない症例が含まれている可能性や、入院時の血小板数が基準を満たしておらず見逃されてしまった症例がほかにもある可能性も考えられる」と述べている。

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AZワクチンとRNAワクチンによるハイブリッド・ワクチンの効果と意義 (解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

対象論文【NEJM】Heterologous ChAdOx1 nCoV-19 and mRNA-1273 Vaccinationハイブリッド・ワクチンの原型-Gam-COVID-Vac(Sputnik V) priming(1回目接種)とbooster(2回目接種)に異なるワクチンを使用する方法は“異種ワクチン混在接種(heterologous prime-boost vaccine)”と呼称されるが、本論評では理解を容易にするため“ハイブリッド・ワクチン接種”と命名する。この特殊な接種に使用されるワクチンの原型は、adenovirus(Ad)-vectored vaccineとして開発されたロシアのGam-COVID-Vac(Sputnik V)である(山口. CareNet 論評-1366)。Gam-COVID-Vacでは、priming時にヒトAd5型を、booster時にはヒトAd26型をベクターとして用いS蛋白に関する遺伝子情報を生体に導入する特殊な方法が採用された。ChAdOx1(AstraZeneca)など同種のAdを用いたワクチンでは1回目のワクチン接種後にベクターであるAdに対する中和抗体が生体内で形成され、2回目ワクチン接種後にはAdに対する中和抗体価がさらに上昇する(Ramasamy MN, et al. Lancet. 2021;396:1979-1993.、Stephenson KE, et al. JAMA. 2021;325:1535-1544.)。そのため、同種Adワクチンでは2回目のワクチン接種時にS蛋白に対する遺伝子情報の生体導入効率が低下、液性/細胞性免疫に対するbooster効果の発現が抑制される。一方、1回目と2回目のワクチン接種時に異なるAdをベクターとして用いるハイブリッドAdワクチンでは2回目のワクチン接種時のS蛋白遺伝子情報の生体への導入効率は同種Adワクチンの場合ほど抑制されず、ハイブリッドAdワクチンの予防効果は同種Adワクチンよりも高いものと考えられる。実際、従来株に対する発症予防効果は、ハイブリッドAdワクチンであるGam-COVID-Vacで91.1%(Logunov DY, et al. Lancet. 2021;397:671-681.)、同種AdワクチンであるChAdOx1で51.1%(ワクチンの接種間隔:6週以内)、あるいは、81.3%(ワクチン接種間隔:12週以上)であり(Voysey M, et al. Lancet. 2021;397:881-891.)、同種Adワクチン接種に比べハイブリッドAdワクチン接種のほうがウイルスに対する予防効果が高いことが示されている。Ad-vectored ChAdOx1とRNAワクチンによるハイブリッド・ワクチン 以上のような結果を踏まえ、ChAdOx1の使用量が多い欧州諸国(ドイツ、フランス、スウェーデン、ノルウェー、デンマークなど)ではprimingのための1回目接種時にChAdOx1を用い2回目接種時にはより高いbooster効果を得るためにRNAワクチンを用いる方法が模索されている(European Centre for Disease Prevention and Control. 2021年5月18日)。本論評では、Normark氏らの論文ならびにBorobia氏らの論文を基に、ChAdOx1にmRNA-1273(Moderna)、あるいは、ChAdOx1にBNT162b2(Pfizer)を追加するハイブリッド・ワクチン接種時の液性免疫、細胞性免疫の動態について検証する。 Normark氏らは、スウェーデンで分離されたコロナ原株とbeta株(南アフリカ株、B.1.351)における中和抗体価を、ChAdOx1を2回接種する同種ワクチン接種の場合と1回目ChAdOx1(priming)、2回目mRNA-1273(booster)を接種するハイブリッド・ワクチン接種の場合について検討した。ChAdOx1の同種ワクチン接種における原株に対する中和抗体価は2回目接種後に2倍増強、しかしながら、beta株に対する中和抗体価には有意な上昇を認めなかった。一方、ハイブリッド・ワクチン接種では、原株に対する中和抗体価が20倍増強、beta株に対する中和抗体価も原株に対するほどではないものの有意に上昇した。以上の結果は、ChAdOx1の同種ワクチン接種に比べChAdOx1にmRNA-1273を追加するハイブリッド・ワクチン接種のほうが液性免疫の面からはより優れた方法であることを示唆する。delta株(インド株、B.1.617.2)に対する検討はなされていないが、beta株とdelta株の液性免疫回避作用には著明な差が存在しないので(Wall EC, et al. Lancet. 2021;397:2331-2333.)、Normark氏らの結果はdelta株にも当てはまるものと考えてよいだろう。残念なことに、Normark氏らは、ハイブリッド・ワクチン接種におけるT細胞由来の細胞性免疫の動態については解析していない。 Borobia氏らは、primingのための1回目にChAdOx1、boosterのための2回目にBNT162b2を接種するハイブリッド・ワクチンを使用し、液性免疫(RBDに対する特異的IgG抗体、S蛋白に対する特異的IgG抗体、中和抗体)、IFN-γを指標とした細胞性免疫の推移を観察した(CombiVacS Study)。対照群としてChAdOx1を1回接種した症例を設定しているためChAdOx1同種ワクチン接種とChAdOx1とBNT162b2によるハイブリッド・ワクチン接種の差を検出できない、中和抗体もいかなるウイルス株に対するものなのかが判然としない、などの問題点を有する論文であるが、ハイブリッド・ワクチン接種群ではRBD特異的IgG抗体、中和抗体、細胞性免疫の上昇が確認された。文献的にChAdOx1同種ワクチン接種の場合、1回目接種後にT細胞性反応は上昇するが2回目接種後にはさらなる上昇を認めないことが報告されている(Folegatti PM, et al. Lancet. 2020;396:467-478.)。それ故、Normark氏らの論文とBorobia氏らの論文を併せ考えると、ChAdOx1とRNAワクチンを組み合わせたハイブリッド・ワクチン接種は、ChAdOx1のみを使用した同種ワクチン接種よりも液性免疫、細胞性免疫の両面で優れているものと考えられる。 現時点では、Ad-vectored ChAdOx1とRNAワクチンを組み合わせたハイブリッド・ワクチン接種とRNAワクチンの同種2回接種による予防効果を直接比較・検討した臨床試験は存在しない。それ故、変異株を含めたコロナ感染症に対する臨床的予防効果が両者において差が存在するかどうかに関しては今後の検討課題である。ハイブリッド・ワクチンの医療経済的効果 ワクチンの2回接種に必要な費用は、RNAワクチンに比べChAdOx1では5~10倍安い。PfizerのRNAワクチンは37~39ドル、ModernaのRNAワクチンは30~74ドル、AstraZenecaのChAdOx1は6~8ドルである(So AD, et al. BMJ. 2020;371:m4750.)。すなわち、ChAdOx1を基礎としたハイブリッド・ワクチン接種は、RNAワクチン2回接種に比べワクチン確保に必要な費用を下げるという医療経済的効果を有する。コロナ感染症がいつまで続くかが見通せない現在、また、変異株抑制のために3回目のワクチン接種が必要になる可能性が指摘されている現在(Wu K, et al. medRxiv. 2021 May 6.)、ワクチン確保のために費やされる世界各国の出費はさらに膨大なものになることが予想される。それ故、医学的側面に加え医療経済的側面からも今後のワクチン行政を考えていく必要があるものと論評者らは考えている。

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ヘパリン増量では対応できない重症新型コロナウイルス感染症(解説:後藤信哉氏)

 新型コロナウイルス感染に対して1~2年前よりは医療サイドの対策は進んでいる。肺を守るステロイド、ECMOなどは状況に応じて広く使用されるようになった。しかし、血栓性合併症についての十分な治療が確立されていない。われわれの経験した過去の多くの血栓症ではヘパリンが有効であった。ヘパリンは内因性のアンチトロンビンIIIの構造を変換して効果を発揮するので、人体に凝固系が確立されたころから調節系として作用していたと想定される。心筋梗塞、不安定狭心症、静脈血栓症など多くの血栓症にヘパリンは有効であった。ヘパリンの有効性、安全性については重層的な臨床エビデンスがある。ヘパリンを使えない血栓症は免疫性ヘパリン惹起血小板減少・血栓症くらいであった。 重症の新型コロナウイルス感染症では、わらにもすがる思いで治療量のヘパリンを使用した。しかし、治療量と予防量のヘパリンを比較する本研究は1,098例を登録したところで中止された。最初から治療量のヘパリンを使用しても生存退院は増えず、ECMOなどの必要期間も変化しなかった。 新型コロナウイルス肺炎が注目された当初、ECMO症例の予後改善の一因にヘパリン投与の寄与が示唆された。本試験は治療量のヘパリンへの期待を打ち砕いた。 本研究は比較的軽症の新型コロナウイルス感染症に対する予防量、治療量のヘパリンのランダム化比較試験と同時に発表された。筆者の友人のHugo ten Cate博士が両論文を包括して「Surviving Covid-19 with Heparin?」というeditorialを書いている。Hugo ten Cate博士が指摘するように、重症化した新型コロナウイルス感染では免疫、細胞、など凝固系以外の因子が複雑に関与した血栓になっているのであろう。早期の血栓にはそれなりに有効なヘパリンも複雑系による血栓には無力であるとの彼の考えは、揺らぎの時期とpoint of no returnを超えた時期を有する生命現象の本質を突いていると思う。

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第71回 日本初確認のラムダ株、“後出し”情報公開で募る不信感

新型コロナの新規感染者数が各地で過去最多を更新する中、南米由来のラムダ株が国内で初めて確認されたことがわかったが、公表の経緯が問題視されている。7月20日、ペルーに滞在歴のある30代女性が羽田空港の検疫でコロナ陽性と判明。ちょうど東京五輪が開幕した23日にラムダ株と確認されたが、この時点では公表されなかった。米メディアの報道をきっかけに厚生労働省は8月6日、ようやく感染確認を公表。さらに五輪閉幕後の13日になって、女性が五輪関係者であると報じられた。公表が遅れた理由について、自民党幹部は「政府の中でも情報共有されていなかった。厚労省はラムダ株に対する意識の高さがなかった」と話しているが、五輪中止論が出ないように情報を隠蔽したのではと勘ぐりたくなるタイミングの遅れである。11月中旬には主流の変異株に?デルタ株の場合、4月16日に空港検疫で確認されてから4ヵ月後の8月上旬、首都圏では95%がデルタ株に置き換わった。ラムダ株の場合、7月20日に確認されてから4ヵ月後は11月中旬だ。政府は、東京五輪の閉幕で検疫態勢に余裕ができたとして、1日約2,000人に抑えていた入国者の上限を8月16日から約3,500人に緩和したが、人流増加と感染拡大を助長しないか。菅首相は、10月上旬までに国民の8割がワクチンの2回接種を完了することを目指す考えを示しているが、これまでのコロナ政策の迷走ぶりを考えると、ラムダ株の感染拡大を防げるか心許ない。ところで、2020年8月に初めてラムダ株が報告されたペルーでは、この1年で約20万人が新型コロナによって亡くなっている。死亡率は9%を超え、人口10万人当たりの死亡者数は世界最多という。ラムダ株は、感染力や重症度などわかっていないことが多い。WHO(世界保健機関)は警戒変異ウイルスの分類で、デルタ株やアルファ株などを5月11日にVOC(懸念される変異株)に位置付けているのに対し、ラムダ株は6月14日に1ランク低いVOI(注目すべき変異株)に位置付けている。ちなみに国立感染症研究所は、現段階でラムダ株をVOCにもVOIにも位置付けていない。Sタンパク質452番目のアミノ酸変異の意味海外の科学者らがラムダ株の変異の中で特徴的な点として挙げるのは、スパイクタンパク質(Sタンパク質)の452番目のアミノ酸の変異だ。452番目のロイシンがグルタミンに置き換わったもので、ほかの変異株では見られず、これが細胞に感染する能力を高めると予測している。新型コロナのSタンパク質は、ヒトの肺などの細胞にあるACE2受容体タンパク質に結合して体内に侵入する。452番目のアミノ酸は、双方のタンパク質が直接相互作用する部位にあり、この部位に変異があると中和抗体が結合しにくくなり、ワクチンの有効性が下がる可能性があるという。わかっていない点が多い変異株だけに、世界規模のネットワークで情報を共有し、連携して対策を進めていくことが必要だ。たとえ水際対策で防げなかったとしても、情報の隠蔽は許されない。

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非入院COVID-19患者へのブデソニド、回復期間を3日短縮/Lancet

 合併症リスクの高い居宅療養の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、ブデソニド吸入薬は回復までの期間を短縮し、優越性は示されなかったが入院または死亡も減少することが示された。英国・オックスフォード大学のLy-Mee Yu氏らが、2,530例を対象に行った無作為化対照非盲検アダプティブプラットフォーム解析「PRINCIPLE試験」の結果で、ブデソニド吸入薬の14日間投与で、回復までの期間は2.94日短縮したという。これまでの有効性試験で、ブデソニド吸入薬のCOVID-19居宅療養者への効果は示されていたが、高リスク患者への効果については明らかになっていなかった。Lancet誌オンライン版2021年8月10日号掲載の報告。COVID-19疑いの4,700例を対象に試験、うちSARS-CoV-2感染者について解析 試験は中央試験地からは遠隔の英国のプライマリケア施設で行われた。被験者は、65歳以上または併存疾患のある50歳以上で、COVID-19が疑われ具合の悪い状態が最長14日間続いたが入院はしなかった患者。 被験者4,700例は無作為に3群に割り付けられ、通常の治療(1,988例)、通常の治療とブデソニド吸入(800μgを1日2回14日間、1,073例)、通常の治療とその他の治療(1,639例)をそれぞれ受けた。 主要エンドポイントは複数で、28日以内の自己申告による初回の回復報告と、COVID-19による入院または死亡で、ベイズモデルで解析した。 主要解析集団には、SARS-CoV-2陽性で、試験開始からブデソニド治療群が終了するまで3群に割り付けられた全適格患者を包含し評価が行われた。入院・死亡リスクも低減の可能性示す 試験は2020年4月2日に開始。ブデソニド治療群への割り付けは同年11月27日から、事前規定の回復までの期間の優越性基準が満たされた2021年3月31日まで行われた。主要解析には、2,530例が包含された(ブデソニド治療群787例、通常治療群1,069例、その他治療群974例)。 自己申告による初回回復までの期間推定値は、通常治療群14.7日(95%ベイズ信頼区間[BCI]:12.3~18.0)に対し、ブデソニド治療群11.8日(10.0~14.1)で、推定2.94日(1.19~5.12)短縮した(ハザード比[HR]:1.21[95%BCI:1.08~1.36])。優越性確率は0.999超で、事前に規定した優越性閾値0.99を満たし優越性が示された。 入院・死亡アウトカムについては、推定発生率は通常治療群8.8%(95%BCI:5.5~12.7)に対しブデソニド治療群6.8%(4.1~10.2)だった(推定絶対差:2.0%[95%BCI:-0.2~4.5]、オッズ比[OR]:0.75[95%BCI:0.55~1.03])。優越性確率は0.963で、優越性閾値0.975を満たさなかった。 ブデソニド治療群2例と通常治療群4例で、重篤な有害事象が発生したが、COVID-19とは無関係の入院だった。

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ヘパリン介入のチャンスのある重症化前の新型コロナウイルス感染(解説:後藤信哉氏)

 一般に、疾病は早期介入が重要である。新型コロナウイルスの場合、ウイルス感染という比較的単純な原因が炎症、肺炎などを惹起する。血管内皮細胞へのウイルス浸潤から始まる血栓症も初期の原因は比較的単純である。ウイルス感染に対して生体が反応し、免疫系が寄与する病態は複雑になる。複雑な病態は単純な治療では脱却できない。重症例を確実に入院させるとともに、早期の症例に対する医療介入の意味を示したのが本論文である。重症化していない新型コロナウイルス感染の症例を予防量と治療量のヘパリン群にランダムに分けて予後を検証した。重症化する前に治療量のヘパリンを投与すると、生存退院の可能性が増えることが示された。この論文は重症化前から新型コロナウイルス感染症患者を入院させ、各種の補助治療とともに治療量のヘパリンを投与する価値を示している。2,219例のランダム化比較試験の結果である。重症例と重症化前の症例の差異のメカニズムは不明である。臨床家としてはこのランダム化比較試験の結果は即座に実臨床に取り込むと思う。

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Delta株に対する現状ワクチンの予防効果―液性免疫、細胞性免疫からの考察(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

対象論文【Lancet】Neutralising antibody activity against SARS-CoV-2 VOCs B.1.617.2 and B.1.351 by BNT162b2 vaccination【NEJM】Infection and Vaccine-Induced Neutralizing-Antibody Responses to the SARS-CoV-2 B.1.617 Variantsワクチン接種後のDelta株などVOCに対する中和抗体価の動態 新型コロナ感染症にあって、感染性、病原性が高いVariants of Concern(VOC:Alpha株、Beta株、Gamma株、Delta株)が世界を席巻している。その中で、5月以降、Delta株(インド株、B.1.617.2)の勢力が増し、世界に播種するウイルスの中心的存在になりつつある。現状で使用可能なワクチンは武漢原株のS蛋白遺伝子配列をplatformとして作成されたものであり、S蛋白に複数の遺伝子変異を有するVOCに対して、どの程度の予防効果を発揮するかについては注意深い検証が必要である。本論評では、WallらとEdaraらの2つの論文を基に、Delta株を中心にVOCに対する現状のワクチンの効果を液性免疫(中和抗体)、細胞性免疫(T細胞反応)の面から考察する。 VOCに対する液性免疫(主としてS蛋白に対する特異的IgG抗体によって形成されるウイルス中和抗体)に関して、WallらはBNT162b2(Pfizer社)の2回接種後28日目における変異株に対する中和抗体価は、武漢原株/野生株に対するものに比較して、D614G株(従来株)で2.3倍、Alpha株(英国株)で2.6倍、Beta株(南アフリカ株)で4.9倍、Delta株(インド株)で5.8倍低下していると報告した(論文の補遺参照)。さらに、各中和抗体価の時間推移(2回目ワクチン接種後100日目まで)は、D614G株、Alpha株で時間経過にかかわらずほぼ一定に維持されていたのに対し、Beta株、Delta株では時間経過と共に低下し、少数ではあるが100日後の中和抗体価が検出限界以下になる症例が認められた。さらに、Beta株、Delta株に対する中和抗体価の時間推移は年齢と負の相関を示し、中和抗体価の低下速度は高齢者ほど大きいことが示された。同様の中和抗体価の年齢依存性は、BNT162b2接種後のGamma株に対しても報告されている(Bates TA, et al. JAMA. 2021 Jul 21. [Epub ahead of print])。 これらの結果は、Alpha株には強力な液性免疫回避作用を惹起する遺伝子変異が存在しないが、Beta株、Gamma株ではE484K変異、Delta株ではL452Rを中心とする強力な液性免疫回避変異が存在することから説明可能である。同様の結果はEdaraらによっても、RNAワクチン(Pfizer社のBNT162b2あるいはModerna社のmRNA-1273)2回接種後のDelta株に対する中和抗体価は野生株に対する中和抗体価に比べ、BNT162b2接種後で3.3倍、mRNA-1273接種後で3.0倍低下していると報告された。AstraZeneca社のChAdOx1の2回接種後における中和抗体価は、BNT162b2ワクチン2回接種後の値に比べ、いかなるウイルス種に対しても2倍以上低いことが示された(Wall EC, et al. Lancet. 2021;398:207-209.)。Delta株に対する3回目ワクチン接種の必要性 今後、世界各地で感染拡大が予想されるDelta株に対する中和抗体価の維持は、本変異株に対する予防を確実にするうえで最重要課題の1つである。Pfizer社は、BNT162b2の2回接種後8ヵ月間はDelta株に対する中和抗体価がほぼピーク値を維持するが、それ以降は低下するのでワクチン2回目接種6~12ヵ月後に、さらなるBooster効果を目指した3回目のワクチン接種が必要になると発表した(Pfizer社. 2021年7月28日報道)。Pfizer社は、Delta株に対する中和抗体価が3回目ワクチン接種により2回目接種後に比べ、18~55歳の対象で5倍以上、高齢者で11倍以上増強されると報告した。以上の結果を基に、Pfizer社は8月中にも米国FDAに3回目ワクチン接種の緊急使用許可を申請するとのことである。 ワクチン3回接種はModerna社のRNAワクチンにおいても試みられており、mRNA-1273の2回接種終了5.6~7.5ヵ月後に3回目のワクチンを接種した場合に(3回目のワクチン:mRNA-1273、Beta株のS蛋白遺伝子配列をplatformとして作成されたmRNA-1273.351、あるいは両者のカクテル)、Beta株、Gamma株に対する中和抗体価が、各々、32~35倍、27~44倍上昇することが示された(Wu K, et al. medRxiv. 2021.May 6.)。AstraZeneca社のChAdOx1においても、2回目接種から6~12ヵ月後に3回目の接種を行うことによってAlpha株、Beta株、Delta株に対する中和抗体価が再上昇することが示された(Flaxman A, et al. SSRN. 2021 Jun 28.)。今後のDelta株制御を考えた場合、現状ワクチンの3回接種、あるいは、Delta株のS蛋白遺伝子配列をplatformにした新たなワクチン開発が切望される。ワクチン惹起性液性免疫の発現機序 中和抗体の中核を成すS蛋白に対する特異的IgG抗体を産生する形質細胞数は、2回目のワクチン接種後約1週間でピークに達し、3週間以内にその90%が消失する。それ故、このような短命の形質細胞は“Short-lived plasma cell”と呼称される。しかしながら、S蛋白特異的IgG抗体産生はワクチン接種後少なくとも8ヵ月にわたり持続することが判明しており、この現象は、免疫組織(脾臓、リンパ節)の胚細胞中心において形成されたS蛋白を特異的に認識する記憶B細胞に由来する長期生存形質細胞(Long-lived plasma cell)の作用だと考えられている(Turner JS, et al. Nature. 2021;596:109-113.)。上述したように、現状ワクチンは、Delta株など免疫回避作用を有する変異株に対してS蛋白特異的IgG抗体産生能力が低く、かつ、低下の速度が速いため3回目接種による抗体産生の底上げを考慮する必要がある。ワクチン惹起性細胞性免疫の発現機序 ワクチンの予防効果を規定するもうひとつの重要な因子は、T細胞由来の細胞性免疫の賦活である。ワクチン接種はS蛋白のみを産生するので自然感染の場合と異なりウイルス全長ではなく、S蛋白を構成する種々のアミノ酸配列を抗原決定基(epitope)として細胞性免疫が惹起される。S蛋白は1,273個のアミノ酸で形成されており、たとえば、Delta株ではこのアミノ酸配列の8ヵ所に遺伝子変異が存在するが、Delta株のS蛋白アミノ酸配列は武漢原株/野生株と99%以上の相同性を維持している。CD4-T細胞反応、CD8-T細胞反応を規定する抗原決定基はS蛋白に数多く存在し、それらは、種々のコロナウイルス間で、各々、84.5%、95.3%の相同性が維持されている。その結果、変異株を含む種々のコロナウイルスに対するCD4-T細胞反応、CD8-T細胞反応は、ウイルスの種類によらずほぼ同一レベルに保持される(Tarke A, et al. bioRxiv. 2021.02.27.433180.)。ワクチン接種後の細胞性免疫の持続期間に関しては不明な点が多いが、Barouchらは、野生株を用いた解析ではあるが、細胞性免疫が液性免疫と同様に少なくとも8ヵ月は維持されることを示した(Barouch DH, et al. N Engl J Med. 2021 Jul 14. [Epub ahead of print])。液性免疫と細胞性免疫によって決定されるワクチンの予防効果 以上を総括すると、Delta株を中心とするVOCでは、液性免疫回避変異が少ないAlpha株を除き、液性免疫は著明に低下、しかし細胞性免疫はほぼ維持されるものと考えることができる。この事実を基にreal-world settingでの各ワクチンのDelta株に対する発症予防効果を見てみると、BNT162b2の発症予防効果はAlpha株に対して93.7%、Delta株に対して88%、ChAdOx1の発症予防効果はAlpha株に対して74.5%、Delta株に対して67.0%と報告された(Lopez Bernal J, et al. N Engl J Med. 2021;385:585-594.)。他の報告でも傾向は同じで、Delta株に対するワクチンの発症予防効果はAlpha株に対する発症予防効果の94%(BNT162b2)あるいは90%(ChAdOx1)前後であり、液性免疫(中和抗体価)の低下からは説明できない。液性免疫のみによってワクチンの効果が規定されるのであれば、Delta株に対する発症予防効果はAlpha株に対する値の45%前後にならなければならない。 本論評で考察した内容は、変異株に対するワクチンの予防効果は、低下した液性免疫を細胞性免疫が補完していることを意味している。一方で、変異株に対するワクチン惹起性細胞性免疫がほぼ一定に維持されるという事実は、変異株に対するワクチンの予防効果を少しでも上昇させるためには、ワクチン作成、あるいは接種回数に工夫を凝らし、液性免疫を上昇させる以外に有効な手段がないことを物語っている。

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第71回 「もはや災害時」なら、「現実解」は“野戦病院”、医師総動員、医療職の業務範囲拡大か

福井県は既に“野戦病院”整備こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末も大雨でどこにも行かず家に籠もっていました。甲子園の高校野球も延期に次ぐ延期だったので、NHK BSの「ワースポ× MLB」でMLBの現況をチェックしようと思い、何の気なしに観ていたら、興味深いニュースをやっていました。MLBが12日(日本時間13日)、名作映画「フィールド・オブ・ドリームス」(1989年公開)の舞台となったアイオワ州ダイアーズビルで初の公式戦を開催し、ホワイトソックスとヤンキースが1919年頃の雰囲気たっぷりの中、当時の復刻ユニホームで戦った、というニュースです。「ワースポ× MLB」では、トウモロコシ畑から出てくるホワイトソックスとヤンキースの選手らの姿を映し出していましたが、まさにあの映画そのものでした。ケビン・コスナーが主演したこの映画のロケ地、私も約30年前に訪れたことがあります。米国出張の時、留学でアイオワ・シティに住んでいた友人宅に寄り、そこから車で約2時間かけてダイアーズビルまで見学に出かけたのです。映画公開から数年後で、観光客はまばらでした。映画で使われたセットの前の球場(今回の試合のためにMLBが500万ドルかけて新設した球場とは別)で、訪れた人がソフトボールに興じていたのが印象的でした。それにしても、今回の試合で8本も出たホームラン。ボールがフェンスを超え、トウモロシ畑に吸い込まれて行く画像はMLBの試合には見えず、笑えました。さて、今週は先週(第70回 真夏のホラー、コロナ患者「重症者以外自宅療養」方針めぐるドタバタで考えた“野戦病院”の必要性)書いた“野戦病院”について補足し、その必要性について改めて考えてみたいと思います。知人から、「“野戦病院”をもうつくった県があるよ」という連絡があったからです。それは、福井県です。福井市内の体育館に100床開設福井県は8月2日、新型コロナウイルス患者を受け入れる新たな病床として最大100床を確保、患者の増加状況に応じて福井市内の体育館1ヵ所に開設し、主に軽症者を受け入れると発表しました。体育館にはベッド、空調、仕切りなどの設備を整えるとのことです。福井県内の病床数はこれで404床となり、宿泊療養施設の146床と合わせると県内に計550床が確保されたことになります。中日新聞等の報道によれば、福井県では今後さらに感染が拡大することに備え、6月補正予算に関連費用を盛り込んでいた、とのことです。常時設置するわけではなく、必要に応じて必要な病床数を開設、近隣の医療機関の医師らが治療に当たるとしています。なお、稼働病床数が増えた場合は、県医師会や看護協会に協力を要請する予定だそうです。「自宅療養では容体が急変しても直ちに対応できない」と福井県担当者東京都や大阪府と人口や医療機関数では比べものになりませんが、少なくとも福井県が軽症者向けとはいえ、“野戦病院”的施設を準備したことは、先進的で評価できることでしょう。福井県ではこれまで、無症状者も含めて全陽性者を病院や宿泊施設で受け入れてきました。8月7日付の日刊ゲンダイDIGITALによれば、同県が「自宅療養させず」を貫いている理由について、県地域医療課の担当者は「自宅療養では容体が急変しても直ちに対応できない。感染判明後、すぐに医師の診療を受ける体制も必要なため、臨時施設を稼働させた。陽性者を速やかに隔離すれば、感染拡大の防止にもつながる」と語ったとのことです。前回も書いたように、中等症、軽症と診断され、自宅で療養するのはとても不安なものです。自宅療養者が増え過ぎ、保健所や自治体のフォローアップ機関が対応できないなら、症状や重症度を的確に判断できる医療スタッフの下で集団療養してもらうべきです。仮に宿泊療養施設の確保や、そこでの医療提供が難しいとするなら、ここは割り切って各地の体育館などに即席の“野戦病院”的施設をつくり、必要な医療機器も配置し、そこに地域の開業医をはじめとする医療スタッフたちを持ち回りで常駐させ、中等症、軽症患者を効率よく診察し、必要に応じて重症病床のある病院に送る仕組みをつくるのです。日本医師会を激しく批判していた長島 一茂氏(「第58回 コロナ禍、日医会長政治資金パーティ出席で再び開かれる?“家庭医構想”というパンドラの匣(前編)」参照)も、8月13日のテレビ朝日の「モーニングショー」で、「(東京都は)入院待機患者と自宅療養者合わせて3万人。東京ドームなど、大規模に患者を集めるところをつくらなくてはいけないのではないか」とコメントしていました。また、東京都医師会の尾崎 治夫会長も8月16日の同番組に出演、東京都の自宅療養患者の状況を説明したうえで、「早急に野戦病院をつくるべきだ」と強調していました。「酸素ステーション」も抗体カクテルもリップサービス止まりか?翻って、1日の新規感染者数2万人超えの状況でも、国の対応は相変わらずの後手後手、その場しのぎの感が拭えません。菅 義偉首相は8月13日の記者会見で、自宅療養者らが酸素吸入を必要とした場合に備える「酸素ステーション」を設置する方針を示し、加えて軽症・中等症向けの抗体カクテル療法を集中的に使用できる拠点の整備についても言及しました。抗体カクテル療法については、対象拡大(入院患者限定から宿泊療養施設入所者などにも)の通知が13日、各都道府県に出されています。ですが、国が打ち出すこうした新機軸は、当面の自分たちの無策をごまかすためのリップサービスにしか聞こえません。そもそも「酸素ステーション」をどれだけ配置しても、中等症、重症患者の根本治療にはなりません。さらに、そのステーションに誰が患者を連れていくのでしょうか。抗体カクテル療法(「第27回 トランプ大統領に抗体カクテル投与 その意味と懸念」参照)については、医師の24時間配置に加え、日本での供給量にも不安があります。一部の報道で年内20万回分調達(当面は7万回分)と言われていますので、今の新規患者数では単純計算で約10日分しかないことになります。また、 1回(2種類の抗体医薬)で約20万円(米国での医療費)とも言われるこの薬剤を、軽症者(あるいは未発症者)のどの範囲まで投与を認めるのか、という点も問題です。期待を抱かせて、結局は必要な患者すべてには行き渡らない可能性が大です。ちなみに、米国では先週、抗体カクテルが濃厚接触者等、コロナウイルスに曝露した一部の未発症の人にも使用できるようになりました。米国食品医薬品局(FDA)が8月10日、抗体カクテル(REGEN-COV)の緊急使用許可を改訂し、成人および小児におけるCOVID-19の曝露後予防(予防)としての緊急使用を承認したからです。入院や死亡など、重度に進行するリスクが高い人(12歳以上で体重40 kg以上)が対象とのことです。“野戦病院”的施設の開設、医師総動員、医療職の業務範囲拡大をセットで実行すれば新型コロナウイルス対策を助言する厚生労働省の専門家組織「アドバイザリーボード」は8月11日、首都圏などの医療提供体制について「もはや災害時に近い」との見解をまとめました。東京都の小池 百合子知事も8月13日の記者会見で、自宅療養者2万人超の状況など踏まえ、「今、最大級、災害級の危機を迎えている」と強い危機感を表明しています。テレビでは、首都圏の中等症以上の患者が在宅療養を余儀なくされ、入院先探しに難渋している姿が、連日のように報道されています。それらの報道では、在宅医療で対応することの非効率性も指摘されています。菅首相が先週強調した「パルスオキシメーター配布」もまったく進んでいないようです。そう考えると、“野戦病院”的施設の開設は一つの「現実解」でしょう。同時にこれまでコロナ対応に十分に関わってこなかった医師たちを半ば強制的に総動員、“野戦病院”で働いてもらえば、今以上の「安全・安心」を自宅療養者に提供できるでしょう。医学部教育、医師の養成には多額の税金も投入されているわけですから、この際、動員には我慢して応じてもらいましょう。「強制的に動員」する仕組みの構築がすぐには難しいとしたら、医師以外の医療職(看護師、薬剤師、救急救命士…)に医師の業務の一定部分を任せる、という手も考えられます。今回の医療法改正で、医師の働き方改革の観点から、多くの医療職で業務範囲拡大が行われましたが(「第66回 医療法等改正、10月からの業務範囲拡大で救急救命士の争奪戦勃発か」参照)、その拡大範囲以上に、緊急措置として医師の業務を他職種に任せてしまうのです。例えば、宿泊療養施設の医療責任者は看護師にするとか、“野戦病院”での一定部分の医療行為は医師の指示なしでも看護師が行えるようにするなどが考えられます。動員についても、老健施設の管理者は看護師で代行させ、そこの医師を“野戦病院”に振り向ける、といった方法も考えられるでしょう。例によって、日本医師会は自分たちの領分を侵害されることを嫌がるでしょう。しかし、そこは政府がきちんと説得しないと。なにせ今は「災害時」であり有事なのですから。映画「フィールド・オブ・ドリームス」では、ケビン・コスナー演じる主人公が、だだっ広いトウモロコシ畑を整地し、野球場を一からつくるのですが、“野戦病院”は何も空き地に一からつくる必要はありません。ただ、体育館や室内アリーナなどを活用し、医療人材を集めればいいだけのことです。要はこの国の政治家、行政、医療人に、想像力と胆力があるかどうかの問題だと思います。

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コロナ治療薬「ロナプリーブ」、短期入院や宿泊療養でも使用可/厚労省

 厚生労働省は8月13日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として先月、国内における製造販売を承認した「ロナプリーブ点滴静注セット300」「同1332」について、医療機関への配分を指示する事務連絡(2021年7月20日付で発出)の一部を改訂。主に軽症者~中等症を受け入れる医療機関における短期入院や、宿泊療養施設での使用も想定されるとの認識を示し、新たに記載を追加した。 今回の追記は、事務連絡の別添にある質疑応答集に加えられたもの。「ロナプリーブ」は、現状として安定的な供給が難しいことから、当面の間、重症化リスクのある入院患者が投与対象となり、本剤の配分を受けられる医療機関は、投与対象者を受け入れている病院または有床診療所とされていた。 改訂により、新たに使用できるケースとして「短期入院」と「宿泊療養施設・入院待機ステーション(臨時の医療施設等)」が示された。「短期入院」の場合は、主に軽症者~中等症を受け入れる医療機関において入院、投与後一定時間の健康観察を行った上、ごく短期間で宿泊療養・自宅療養に移行するというケースが想定される。一方「宿泊療養施設・入院待機ステーション(臨時の医療施設等)」の場合は、投与後の容態悪化に対応できるよう、療養先を有床診療所や有床の臨時医療施設化するというケースが想定される。なお、高齢者施設や自宅については、現時点では対象とならない。 ロナプリーブの配分を希望する場合は、従来通り、厚労省が「ロナプリーブ登録センター」に登録し、同センターを通じて配分依頼を行うことになる。具体的な登録方法・依頼方法については、製造販売業者からの案内または中外製薬ホームページ「PLUS CHUGAI」を参照、もしくはロナプリーブ専用ダイヤル(0120-002621)への問い合わせとなる。

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新型コロナウイルスにより急性心筋梗塞と脳梗塞のリスクが上昇(解説:佐田政隆氏)

 2021年8月8日に東京オリンピック2020が終了したところであるが、ニュースでは新型コロナウイルスの感染拡大の話題が連日取り上げられている。デルタ株が猛威を振るい各都道府県で新規感染者数の記録が更新され、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の施行地域も拡大している。また、医療現場のひっ迫状態に関する報道も続く。このような中、軽症者のみならず中等症の患者も一部は自宅待機することと、政府の方針が転換された。しかし、軽症者でも急変して死に至ることがあることが報告され、在宅療養者の不安の声がテレビに映し出されている。 では、新型コロナウイルス患者が急変する原因は何か、予測因子は何かを明らかにすることが重要である。以前から、急変は肺炎の増悪ばかりでなく血栓症でないかと多くの指摘があった。 本論文では、スウェーデンの個人識別番号(personal identification numbers)を用いた国家登録データベースが解析された。2020年2月1日~9月14日のCOVID-19感染患者8万6,742例が対象になった。34万8,481例のマッチした対照群と比較検討された。第0病日を除外して2週間のオッズ比は急性心筋梗塞が3.41、脳梗塞は3.63であった。第0病日を含めると2週間のオッズ比は急性心筋梗塞が6.61、脳梗塞は6.74であった。 今回は、静脈血栓塞栓症は解析の対象となっていないが、オッズ比はもっと高くなると思われる。突然の急性心筋梗塞、脳梗塞の発症を予知する診断技術や、抗血栓薬の予防的投与がCOVID-19患者の予後を改善するといったはっきりとしたエビデンスが確立していない現状では、本論文の締めくくりに記載されているようにCOVID-19ワクチン接種を加速するしか解決策はないようである。

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原則40歳以上が対象のコロナワクチン「バキスゼブリア筋注」【下平博士のDIノート】第80回

原則40歳以上が対象のコロナワクチン「バキスゼブリア筋注」今回は、「コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン(遺伝子組み換えサルアデノウイルスベクター)(商品名:バキスゼブリア筋注、製造販売元:アストラゼネカ)」を紹介します。本剤は5月の特例承認後、国内使用について検討されていましたが、7月末に原則40歳以上の人への接種が承認されました。<効能・効果>本剤は、SARS-CoV-2による感染症の予防の適応で、2021年5月21日に特例承認され、7月30日に開催された厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会において、予防接種法に基づく臨時接種として、原則40歳以上の人に使用することが承認されました。なお、(1)他の新型コロナウイルスワクチンに含まれる成分にアレルギーを有するなど医学的見地からとくに本剤を希望する場合、(2)他国で本剤の1回目を接種してから入国した場合、(3)他ワクチンの流通停止など緊急の必要がある場合、などであれば18~39歳でも接種が認められています。<用法・用量>1回0.5mLを4~12週間の間隔を置いて、2回筋肉内に接種します。本剤は2回接種により効果が確認されていることから、同一の効能・効果を持つ他ワクチンと混同することなく2回接種します。最大の効果を得るためには8週以上の間隔を置いて接種することが望ましいとされています。<安全性>臨床試験で報告された主な副反応は、注射部位圧痛(62.9%)、注射部位疼痛(54.7%)、疲労(51.6%)、頭痛(51.1%)、倦怠感(43.8%)、筋肉痛(43.5%)、発熱感(33.5%)、悪寒(31.0%)、関節痛(26.6%)、悪心(20.5%)、注射部位熱感(17.9%)、注射部位挫傷(17.9%)、注射部位そう痒感(13.1%)でした。重大な副反応として、ショック、アナフィラキシー、血栓症・血栓塞栓症(脳静脈血栓症・脳静脈洞血栓症、内臓静脈血栓症など)(いずれも頻度不明)が現れる可能性があります。<患者さんへの指導例>1.ワクチンを接種することで新型コロナウイルスに対する免疫ができ、新型コロナウイルス感染症の発症を予防します。2.医師による問診や検温、診察の結果から、接種できるかどうかが判断されます。発熱している人などは本剤の接種を受けることができません。1回目に副反応が現れた場合は、2回目の接種前に医師などに伝えてください。3.本剤の接種当日は激しい運動を避け、接種部位を清潔に保ってください。接種後は健康状態に留意し、接種部位の異常や体調の変化、高熱、痙攣など普段と違う症状がある場合には、速やかに医師の診察を受けてください。4.副反応として、注射した場所の痛み・腫れ・発赤などの局所症状、発熱、頭痛、疲労、筋肉痛などが現れることがあります。接種後の注射部位の痛みや筋肉痛、発熱などの副反応に対して、解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン、ロキソプロフェンなど)の使用が可能です。5.1回目接種時の副反応の多くは接種翌日に見られ、発症から1~3日以内に治まります。症状が回復せず、痛みや高熱などが持続する場合は、医師の診察を受けてください。6.心因性反応を含む血管迷走神経反射として、失神が現れることがあります。接種後一定時間は接種施設で待機し、帰宅後もすぐに医師と連絡を取れるようにしておいてください。7.ごくまれに血小板減少症を伴う血栓症が起こることがあります。接種後4~28日は激しい頭痛や持続する頭痛、あざ、注射部位以外の小さな点状の内出血などの症状にとくに注意してください。これらの症状が認められた場合には、ただちに医師の診察を受けてください。<Shimo's eyes>本剤は、わが国で初めて承認されたウイルスベクターワクチンで、サル(チンパンジー)由来の非増殖性で弱毒化されたアデノウイルスに、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質の遺伝子を組み込んだ新しい製造方法のワクチンです。これまでに承認されているファイザー製ワクチン、モデルナ製ワクチンは、保管温度がそれぞれ-75℃、-20℃という超低温でしたが、本剤は2~8℃の冷蔵温度で6ヵ月間保管できるため流通・管理が容易で、当然ながら解凍の必要もありません。また、希釈の必要もありません。接種間隔は、8週以上の間隔を置くことが推奨されており、他ワクチンよりも長く設定されています。これは、初回接種から2回目接種までの接種間隔が、8週未満の場合よりも8週以上の場合のほうが有効性が高いためです。さらに、12週以上のほうが、6週未満の場合よりも有効率が高いということが報告されています。副反応は国内第I/II相試験と海外臨床試験の結果で大きな違いはありませんが、すでに承認されている2種のmRNAワクチンと異なり、2回目よりも初回接種後の副反応の頻度が高いことが特徴です。重大な副反応としては、血小板減少症を伴う血栓症に注意が必要です。本剤接種後に非常にまれ(10万人当たり1人未満)ですが、重篤な血小板減少症を伴う血栓症が認められ、致死的転帰の症例も報告されています。この血栓症が海外で問題視されたことから、わが国では使用が見合わせられていましたが、7月30日に公的接種の対象として厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会で承認されました。なお、本剤は7月27日に添付文書の改訂指示が発出され、「毛細血管漏出症候群」が追記され、本症の既往歴のある人は接種不適当者とされました。本剤との関連性は確立されていないものの、海外において非常にまれながら手足の浮腫、低血圧、血液濃縮、低アルブミン血症などが報告されているため、そのような症状が認められた場合はただちに医師などに相談するようにあらかじめ伝えましょう。参考1)PMDA 添付文書 バキスゼブリア筋注

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重症化前のCOVID-19入院患者、ヘパリン介入で転帰改善/NEJM

 非重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の治療において、治療量のヘパリンを用いた抗凝固療法は通常の血栓予防治療と比較して、集中治療室(ICU)における心血管系および呼吸器系の臓器補助なしでの生存退院の割合を改善し、この優越性はDダイマー値の高低を問わないことが、カナダ・トロント大学のPatrick R. Lawler氏らが実施した、3つのプラットフォーム(ATTACC試験、ACTIV-4a試験、REMAP-CAP試験)の統合解析で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年8月4日号で報告された。中等症入院患者の適応的マルチプラットフォーム試験 研究グループは、治療量の抗凝固療法はCOVID-19による非重症入院患者の転帰を改善するとの仮説を立て、これを検証する目的で、非盲検適応的マルチプラットフォーム無作為化対照比較試験を行った(ATTACC試験はカナダ保健研究機構[CIHR]など、ACTIV-4a試験は米国国立心臓・肺・血液研究所[NHLBI]など、REMAP-CAP試験は欧州連合[EU]などによる助成を受けた)。本研究では、2020年4月21日~2021年1月22日の期間に、9ヵ国121施設で患者登録が行われた。 対象は、中等症のCOVID-19で、登録時に入院を要するが、臓器補助は必要とせずICUへの入室が不要な患者であった。被験者は、治療量のヘパリンを用いた抗凝固療法を受ける群、または通常の血栓予防薬の投与を受ける群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは臓器補助離脱日数とし、院内死亡(最も不良なアウトカム、-1点)と、最長で21日までの生存退院時における心血管系または呼吸器系の臓器補助なしの日数(0~21点)を合わせた順序尺度(ICUでの介入と生存を反映し、点数が高いほどアウトカムが良好)で評価された(21日までに臓器補助なしで生存退院した場合は22点[最良のアウトカム]と判定された)。このアウトカムの評価は、全例およびベースラインのDダイマー値別に、ベイズ流統計モデルを用いて行われた。 本研究は、1,398例の適応的解析においてDダイマー値の高値集団と低値集団の双方で、治療量抗凝固療法群が事前に規定された優越性の中止基準に到達したため、2021年1月22日、データ安全性監視委員会の勧告により患者登録が中止された。1,000例当たり大出血7件増、臓器補助なし生存退院40例増 ベースラインの平均年齢(±SD)は、治療量抗凝固療法群が59.0±14.1歳、通常血栓予防薬群は58.8±13.9歳、男性がそれぞれ60.4%および56.9%であった。最終解析には2,219例(治療量抗凝固療法群1,171例、通常血栓予防薬群1,048例)が含まれた。治療量抗凝固療法群のうちデータが得られた1,093例では、94.7%(1,035例)が低分子量ヘパリン(ほとんどがエノキサパリン)の投与を受けていた。通常血栓予防薬群は、71.7%が低用量の、26.5%が中用量の血栓予防薬の投与を受けた。 治療量抗凝固療法群で、通常血栓予防薬群に比べ臓器補助離脱日数が増加する事後確率は、98.6%(補正後オッズ比中央値:1.27、95%信用区間[CrI]:1.03~1.58)であった。21日までに臓器補助なしで生存退院した患者は、治療量抗凝固療法群が1,171例中939例(80.2%)、通常血栓予防薬群は1,048例中801例(76.4%)、補正後絶対差中央値は4.0ポイント(95%CrI:0.5~7.2)であり、抗凝固療法群で良好だった。 治療量抗凝固療法群で臓器補助離脱日数が優越する事後確率は、Dダイマー高値(各施設の基準値上限の≧2倍)の集団で97.3%、同低値(同<2倍)の集団で92.9%、同不明の集団では97.3%であった。 大血栓イベント/死亡(心筋梗塞、肺塞栓症、虚血性脳卒中、全身性動脈塞栓症、院内死亡の複合)は、治療量抗凝固療法群で8.0%(94/1,180例)、通常血栓予防薬群で9.9%(104/1,046例)に発現した。大出血はそれぞれ1.9%(22/1,180例)および0.9%(9/1,047例)、致死的出血は3例および1例にみられた。頭蓋内出血やヘパリン起因性血小板減少症は認められなかった。 著者は、「これらの知見に基づくと、治療量抗凝固療法は通常血栓予防薬と比較して、中等症COVID-19入院患者1,000例当たり、大出血イベントを7件増やす一方で、40例に臓器補助なしでの生存退院を追加的にもたらす可能性が示唆される」としている。

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重症COVID-19患者へのヘパリン介入、転帰を改善せず/NEJM

 重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の治療において、治療量のヘパリンを用いた抗凝固療法は通常の血栓予防治療と比較して、生存退院の確率を向上させず、心血管系および呼吸器系の臓器補助なしの日数も増加させないことが、カナダ・トロント大学のEwan C. Goligher氏らが行った、3つのプラットフォーム(REMAP-CAP試験、ACTIV-4a試験、ATTACC試験)の統合解析で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2021年8月4日号に掲載された。重症ICU入室患者の適応的マルチプラットフォーム試験 本研究は、治療量の抗凝固療法は重症COVID-19患者の転帰を改善するとの仮説の検証を目的とする非盲検適応的マルチプラットフォーム無作為化対照比較試験であり、2020年4月21日~12月19日の期間に10ヵ国393施設で参加者が募集された(REMAP-CAP試験は欧州連合[EU]など、ACTIV-4a試験は米国国立心臓・肺・血液研究所[NHLBI]など、ATTACC試験はカナダ保健研究機構[CIHR]などの助成を受けた)。 対象は、重症のCOVID-19患者(疑い例、確定例)で、重症の定義は集中治療室(ICU)で呼吸器系または心血管系の臓器補助(高流量鼻カニュラによる酸素補給、非侵襲的/侵襲的機械換気、体外式生命維持装置、昇圧薬、強心薬)を要する場合とされた。被験者は、治療量のヘパリンを用いた抗凝固療法を受ける群、または各施設の通常治療に準拠した血栓予防薬の投与を受ける群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは臓器補助離脱日数とされ、院内死亡(−1点)と最長で21日までの生存退院における心血管系または呼吸器系の臓器補助なしの日数(0~21点)を合わせた順序尺度で評価された。 本研究は、適応的中間解析で治療量抗凝固療法群が事前に規定された無益性の判定基準を満たしたため、2020年12月19日に患者登録が中止された。離脱日数は95.0%、生存退院は89.2%の確率で、通常治療より劣る 1,103例が登録され、治療量抗凝固療法群に536例(平均年齢[±SD]60.4±13.1歳、男性72.2%)、通常血栓予防薬群に567例(61.7±12.5歳、67.9%)が割り付けられた。主要アウトカムのデータは1,098例(534例、564例)で得られた。 臓器補助離脱日数中央値は、治療量抗凝固療法群が1点(IQR:-1~16)、通常血栓予防薬群は4点(-1~16)で、補正後オッズ比(OR)は0.83(95%信用区間[CrI]:0.67~1.03)であり、無益性(OR<1.2と定義)の事後確率は99.9%、劣性(OR<1と定義)の事後確率は95.0%、優越性(OR>1と定義)の事後確率は5.0%であった。 また、生存退院の割合は両群で同程度だった(治療量抗凝固療法群:62.7%、通常血栓予防薬群:64.5%、補正後OR:0.84[95%CrI:0.64~1.11]、無益性の事後確率:99.6%、劣性の事後確率:89.2%)。 大血栓イベント(肺塞栓症、心筋梗塞、虚血性脳血管イベント、全身性動脈血栓塞栓症)の割合は、治療量抗凝固療法群で少なかった(6.4% vs.10.4%)が、大血栓イベント/死亡(大血栓イベント+院内死亡の複合)の割合は両群で同程度であった(40.1% vs.41.1%)。また、大出血は、治療量抗凝固療法群で3.8%、通常血栓予防薬群で2.3%に発現した。 著者は、「今回の共同研究は、個々の独立プラットフォームではありえないほど迅速に、有害な可能性のある無益性の結論に到達することを可能にした」とし、「重症COVID-19患者では、複数の臓器系で凝固活性の亢進が示されているが、重症COVID-19の発症後に治療量の抗凝固療法を開始しても、確立された疾患過程の結果を改善するには遅過ぎる可能性がある。また、肺に著明な炎症がある場合、治療量の抗凝固療法は肺胞出血の増悪をもたらし、転帰の悪化につながる可能性がある」と指摘している。

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第66回 宿泊療養も抗体カクテル療法適用/救急搬送困難例が1ヵ月で2倍超

<先週の動き>1.宿泊療養も抗体カクテル療法が可能に、自治体に酸素ステーション配備2.救急搬送困難事案が1ヵ月で2倍増、ICU受け入れ制限も/消防庁3.コロナ患者の不適切な受け入れ拒否は病床確保料の対象外に/厚労省4.AZ製ワクチン、16日から緊急事態宣言区域にて接種開始5.コロナ対応の医療従事者、濃厚接触でも要件を満たせば出勤可能/厚労省1.宿泊療養も抗体カクテル療法が可能に、自治体に酸素ステーション配備軽症~中等症COVID-19に対して7月に特例承認された抗体カクテル療法(商品名:ロナプリーブ点滴静注セット)について、当初は原則として入院治療を要する患者への使用に限られていたが、13日に事務連絡が改正され、宿泊療養中の患者についても適用可能となった。宿泊療養施設を「有床の臨時医療施設」と見なし、東京都では同日から投与を開始している。なお、供給量の観点から本剤の一般流通は行われず、厚生労働省が所有した上で、対象となる患者が発生した医療機関からの依頼に基づき、無償で譲渡する体制が取られている。本剤の使用を希望する医療機関は、予め「ロナプリーブ登録センター(中外製薬)」への医療機関登録が必須となる。問い合わせ先中外製薬 ロナプリーブ専用ダイヤル:0120-002-621(平日9:00~17:30)第5波の新規感染者数増加に歯止めがかからず、病院において患者受け入れ困難が発生しているため、菅首相は13日に、自治体と連携して酸素ステーションを設置して対処する方針を明らかにしている。(参考)菅首相 「酸素ステーション」「抗体カクテル療法」拠点整備へ(NHK)厚労省 抗体カクテル療法・ロナプリーブ点滴静注の宿泊療養での投与可能に 事務連絡を改正(ミクスonline)新型コロナウイルス感染症における中和抗体薬「カシリビマブ及びイムデビマブ」の医療機関への配分について(質疑応答集の修正・追加)(事務連絡 令和3年7月20日、8月13日一部改正)2.救急搬送困難事案が1ヵ月で2倍増、ICU受け入れ制限も/消防庁総務省消防庁は11日、救急車が到着しても搬送先の病院がすぐに決まらない「救急搬送困難事案」について、8月第1週(2~8日)で全国2,897件と、7月第2週(5~11日)の1,390件と比較して2倍以上になっていることを公表した。救急搬送困難事案は、第3波の今年1月3週目に過去最多の3,317件を記録しているが、7月から8月にかけて、それを超す増加率で推移している。全国医学部長病院長会議は10日、27つの大学病院において集中治療室(ICU)での患者受け入れ制限を発表しており、他疾患での救急搬送にも影響が出ていることが明らかになっている。(参考)救急搬送困難2897件、1ヵ月で2.5倍 コロナで医療逼迫 8月2~8日、全国で(日経新聞)新型コロナウイルス感染症第5波が大学病院診療に与える影響(声明)(全国医学部長病院長会議)各消防本部からの救急搬送困難事案に係る状況調査の結果(総務省消防庁)3.コロナ患者の不適切な受け入れ拒否は病床確保料の対象外に/厚労省厚労省は、病床が逼迫している状況を受け、COVID-19患者の入院医療機関(重点医療機関および疑い患者受け入れ協力医療機関を含む)に対し、都道府県からCOVID-19の入院受け入れ要請があった場合は、正当な理由なく断らないよう6日の事務連絡で通知した。コロナ患者の入院医療機関において、適切な受け入れが困難な場合は、その医療機関の即応病床数の見直しを求めており、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業の補助金を受け取りながら、入院要請のあったコロナ患者を受け入れない医療機関は、病床確保料の支給対象外となることが明記されている。(参考)新型コロナウイルス感染症患者等入院医療機関について(事務連絡 令和3年8月6日)コロナ入院対応拒否、病床確保料の対象外の可能性も 正当な理由なく、厚労省(CBnewsマネジメント)4.AZ製ワクチン、16日から緊急事態宣言区域にて接種開始河野規制改革相は10日の記者会見で、アストラゼネカ(AZ)製の新型コロナウイルスワクチン(商品名:バキスゼブリア筋注)を、自治体での接種開始に向けて緊急事態宣言が発令中の6都府県に16日から供給すると発表した。政府は200万回分を確保しており、それ以外の地域でも8月下旬から接種可能となる見込み。AZ製ワクチンは、原則として40歳以上が接種対象であり、2~8℃で冷所保存が可能、また2回の筋肉内注射で、標準的には27~83日の間隔を空けることとされている。副反応として、ごく稀に「血小板減少症を伴う血栓症」が起こるとされ、『アストラゼネカ社 COVID-19 ワクチン接種後の血小板減少症を伴う血栓症の診断と治療の手引き・第2版』を日本脳卒中学会と日本血栓止血学会が公開している。(参考)アストラ製ワクチン、宣言発令中の6都府県に16日から供給(読売新聞)明治系、アストラ製ワクチン配送開始 自治体接種に備え(日経新聞)アストラゼネカ社ワクチンの接種・流通体制の構築について(厚労省)5.コロナ対応の医療従事者、濃厚接触でも要件を満たせば出勤可能/厚労省厚労省は、新型コロナウイルスワクチンの接種が完了している医療従事者について、濃厚接触者になっても、新型コロナ診療に当たることを認める通知を13日、各都道府県などに通知した。該当する医療従事者は、コロナ診療に従事する者に限られ、濃厚接触の認定より前に2回のワクチンを接種後14日間が経過している必要がある。また、無症状であり、毎日業務前にPCR検査や抗原検査などで陰性を確認することなどが要件とされる。なお、当該医療従事者が感染源にならないよう細心の注意を払う必要がある。これにより、全国的な感染急拡大で逼迫する医療現場の人手不足を回避する狙いだろう。(参考)新型コロナウイルス感染症対策に従事する医療関係者である濃厚接触者に対する外出自粛要請への対応について(事務連絡 令和3年8月13日)コロナ治療の医療従事者、濃厚接触者の制限を緩和(朝日新聞)濃厚接触の医療従事者、条件つきで出勤可能に(日経新聞)

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米CDCが妊婦のコロナワクチン接種推奨「リスクよりベネフィット上回る」

 妊娠中および授乳中の女性にとって、新型コロナワクチン接種による副反応を含めた身体への影響は、もっとも懸念するところである。しかし、感染力が強く急激に悪化するデルタ株の世界的まん延は、接種をためらう猶予すら与えない脅威になっているようだ。米国・疾病対策センター(CDC)は8月11日付でウェブサイトを更新し、ワクチン接種によって流産などのリスクが高まる懸念は見られなかったとする新たなデータを公表した。CDCは「ワクチンによって得られるベネフィットがリスクを上回ることを示唆している」として、妊婦の接種を強く推奨している。 CDCのデータによると、妊娠20週までに、ファイザー製およびモデルナ製のmRNAワクチンを少なくとも1回接種した妊婦2,456例について自然流産(SAB)の累積リスクを評価したところ、12.8%(95%信頼区間:10.8~14.8)であった。経済水準が同等の国における一般的なSABの割合は11~16%と見られ、CDCは「妊娠中にmRNAワクチンを接種した女性において流産のリスクが高まることはなかった」とし、安全上の懸念は見られないという認識を示した。 新型コロナワクチンの接種が急ピッチで進められる中、妊娠中のCOVID-19ワクチン接種の安全性と有効性に関するエビデンスも徐々に増えている。CDCは、「COVID-19ワクチンを受けるベネフィットが、妊娠中のワクチン接種の既知または潜在的なリスクを上回ることを示唆している」とし、妊娠している人を含め12歳以上のすべての人にワクチンを推奨し、1回目接種後に妊娠が判明した場合でも、2回目の接種を受ける必要があるとしている。

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新型コロナ治療薬「レムデシビル」が薬価収載、10月にも流通へ

 ギリアド・サイエンシズ株式会社は8月12日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬「ベクルリー点滴静注用100mg」(一般名:レムデシビル)が、同日付で薬価収載されたと発表した。薬価は1瓶(100mg)当たり63,342円。 ベクルリーは、2020年5月1日に米国食品医薬品局(FDA)よりCOVID-19治療薬としての緊急時使用許可を受け、日本では同年5月7日に特例承認された。投与の対象となるのは、ECMO装着患者、人工呼吸器装着患者、ICU入室中の患者であって除外基準や基礎疾患の有無を踏まえ、医師の判断により投与することが適当と考えられる患者、および「ECMO装着、人工呼吸器装着、ICU入室」以外の入院患者うち、酸素飽和度94%(室内気)以下または酸素吸入が必要で、除外基準や基礎疾患の有無を踏まえ、医師の判断により投与することが適当と考えられる患者、となっている。本剤は、COVID-19のパンデミック下で迅速かつ公平に配分されることを目的に、厚生労働省との供給および販売契約を締結しているが、本年10月にも一般流通を開始する予定。 なお一般流通が始まるまでの期間は、引き続き国が購入した同製品を、現状のG-MIS(新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム)への入力を通じた方法により配分する。<製品概要>販売名:ベクルリー点滴静注用100mg一般名: レムデシビル効能・効果:SARS-CoV-2による感染症効能又は効果に関連する注意:臨床試験等における主な投与経験を踏まえ、SARS-CoV-2による肺炎を有する患者を対象に投与を行うこと。用法・用量:通常、成人及び体重40kg以上の小児にはレムデシビルとして、投与初日に200mgを、投与2日目以降は100mgを1日1回点滴静注する。通常、体重3.5kg以上40kg未満の小児にはレムデシビルとして、投与初日に5mg/kgを、投与2日目以降は2.5mg/kgを1日1回点滴静注する。なお、総投与期間は10日までとする。製造販売承認日:2020年5月7日薬価基準収載日:2021年8月12日薬価:63,342円/瓶

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