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第84回 次期診療報酬改定は「躊躇なくマイナス」、コロナ禍で疲弊した現場からは猛反発

財務省は11月8日の財政制度等審議会・財政制度分科会で、2022年度診療報酬改定について「医療提供体制改革なくして診療報酬改定なし」として、財務省が求める提供体制再編に沿わなければ診療報酬の引き上げに応じない姿勢を見せた。これに対し、全国保険医団体連合会(保団連)は11月11日、「低医療費政策とコロナ禍で疲弊した医療提供体制全体を立て直すためにも、診療報酬の抜本的引上げが必要だ」と反論した。10回中8回のマイナス改定とコロナ禍で経営悪化また、財務省が「診療報酬本体部分(技術料)はプラス改定が続いてきた」「躊躇なくマイナス改定すべき」と主張していることに対して、保団連は「薬価引き下げ分を技術料に振り替える慣行が崩れている下で、診療報酬全体は大幅なマイナスになっている」と反論。2000年の改定を基準にすると、2020年改定までに8回のマイナス改定が行われ、診療報酬が10%以上引き下げられている苦境を示した。こうした低医療費政策の下、医療機関はぎりぎりの経営を迫られていたところに、新型コロナウイルス感染症が拡大。患者は減る一方、感染防止対策費用などが増加。その結果、2020年度の国民医療費は対前年度比で1.4兆円減となり、多くの医療機関が診療報酬の減収で疲弊している。基本診療料の10%以上の引き上げなどを要望保団連は、2022年度の診療報酬改定では、国民に安全・安心で必要な医療を提供するため、これまでの低医療費政策とコロナで疲弊したすべての医療機関・医療従事者を立て直し、新興感染症に強い医療体制を確立する必要があるとした。同時に、国民や患者の負担も限界にきており、受診抑制を招かないよう患者負担を軽減すべきと主張。2022年度診療報酬改定に向けて、以下の要望を公表した。国民に必要な医療を安定して提供するため、基本診療料(初・再診料、入院基本料など)と算定頻度の高い診療行為を中心に、診療報酬を10%以上引き上げる。新型コロナ感染症への対応に係る診療報酬である医科・歯科・入院の感染症対策実施加算(2021年9月末で廃止)、乳幼児感染予防策加算(2021年10月より評価半減)についての評価を引き上げ、基本診療料に包括して恒久化することを含め、改定に盛り込む。患者窓口負担を軽減する。初診からのオンライン診療解禁は止めること。処方薬剤や処方日数制限などのルールが守られておらず、現時点では対面診療に変わり得るものとは到底言えない。「単一建物診療患者」の概念を廃止し、在医(施設)総管(在宅時医学総合管理料および施設入居時医学総合管理料)の評価を高い点数で一本化すること。在宅医療を担う医療機関が増えない原因の一端に、医療機関が「同じ建物に管理料を算定する患者が多い」という理由で低い診療報酬を算定せざるを得ないという不合理な報酬体系がある。改定周知期間わずか2ヵ月、関連書類3,000枚超の改善をまた、診療報酬の個別改定項目の発出(1月下旬)から新点数の運用(4月1日)まで2ヵ月間しか周知期間がないことも問題視した。この間、A4で3,000枚以上にもなる膨大かつ複雑な点数表や告示・通知、疑義解釈などを把握しなければならないため、医療機関の大きな負担となっている。そのため、6ヵ月以上の周知期間を設けることを求めた。財務省や厚生労働省は、医療費の数合わせや医療機関をコントロールするための“テコ”に診療報酬改定を使うのではなく、現場の実情を踏まえた改定を心掛けてほしい。新型コロナで疲弊しきった医療界に、これ以上鞭打つようなやり方はあまりに酷である。

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5~11歳へのファイザー製ワクチンの安全性と有効性~第II/III相試験/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)の5~11歳への投与(21日間隔で10μgを2回投与)は、安全で、免疫原性を有し、有効率も約91%と高いことが示された。米国・Duke Human Vaccine InstituteのEmmanuel B. Walter氏らによる、5~11歳を対象とした第I相および進行中の第II/III相の無作為化試験の結果で、NEJM誌オンライン版2021年11月9日号で発表された。第I相で投与量を10μgに、第II/III相で有効率を評価 第I相無作為化試験は2021年3月24日~4月14日に米国内4地点でスクリーニングをして包含した5~11歳の48例を対象に行われた。1対1対1の割合で3群に無作為に割り付け、BNT162b2ワクチン10μg、20μg、30μgをそれぞれ投与し、安全性と免疫原性の所見から適切な投与量を決定した。 そのうえで、2021年6月7日~19日に計2,316例の5~11歳児についてスクリーニングを行い第II/III相無作為化試験を開始。対象児を2対1の割合で2群に割り付け第I相試験で同定した投与量のBNT162b2ワクチンまたはプラセボを投与し、有効率などを検証した。 BNT162b2ワクチン2回投与後1ヵ月の免疫応答を、16~25歳を対象に30μgを投与した主研究とイミュノブリッジングし、免疫原性データから有効率を推測した。COVID-19に対するワクチン有効率は、BNT162b2ワクチン2回投与後7日以降について評価した。5~11歳児2,268例を中央値2.3ヵ月追跡 第I相試験の反応原性と免疫原性に基づき、5~11歳への投与量は10μgが選定された。 第II/III相試験では、5~11歳児2,268例が無作為化され、BNT162b2ワクチン(10μg、1,517例)、またはプラセボ(751例)を、21日間隔で投与された。2021年9月6日のカットオフ時点で、追跡期間中央値は2.3ヵ月だった。 他の年齢と同様5~11歳でも、安全性プロファイルは良好で、ワクチン関連の重篤な有害イベントは認められなかった。 ワクチン2回投与から1ヵ月後の、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)中和抗体価の、16~25歳群に対する5~11歳群の幾何平均比は1.04(95%信頼区間[CI]:0.93~1.18)で、事前に規定した免疫原性の成功基準(両側95%CIの下限値:0.67超、推定幾何平均比:0.8以上)を満たした。 2回投与後7日以降のCOVID-19の発症は、BNT162b2群3例、プラセボ群16例が報告された(ワクチン有効率:90.7%、95%CI:67.7~98.3)。

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第84回 診療報酬改定シリーズ本格化、「躊躇なくマイナス改定すべき」と財務省、 「躊躇なくプラス改定だ」と日医・中川会長(前編)

政府、新型コロナ第6波に向けた対策決定こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。日本のプロ野球も、今週末からいよいよ日本シリーズです。クライマックスシリーズは、東京ヤクルトスワローズ、オリックスバッファローズ共に大胆かつ手堅い戦い方で、どちらにもリーグ覇者の強さを感じました。気になったのは、ヤクルトと戦った読売ジャイアンツです。メディアの多くは打線の弱さを指摘していましたが、私は野手の守備の杜撰さが目に留まりました。練習をちゃんとしているのかな、と疑うようなプレーがいくつかあり、「これが今の巨人なのか?」と正直驚いた次第です。ベンチには原 辰徳監督以下、かつてのスター選手がコーチとして居並んでいたのですが、ヤクルトと比べるとなんとなく時代遅れの感も。金にあかせて強い選手を外から持ってくるだけでは、本当に強いチームをつくることは難しいのかもしれません。さて、政府は11月12日、新型コロナ感染症の第6波に向けた対策の全体像を決定しました。全体像は、1)医療提供体制の強化、2)ワクチン接種の促進、3)治療薬の確保、4)日常生活の回復の4本柱で構成。医療提供体制については、第5波で最大で2万8,000人の入院が必要になったことから、第6波ではさらに3割増えた場合を想定し、3万7,000人分の病床を用意することとしました。“器”は十分だが、スタッフは集められるか?医療提供体制としては、「第81回 国立病院機構とJCHOに法律に基づく病床確保要求、民間への『要求』法制化の“前哨戦”か?」で書いた、国立病院機構や地域医療機能推進機構(JCHO)は約2,700人の患者受け入れ増を確保したとのことです。また、重症化リスクのある患者向けの臨時の医療施設や入院待機施設は今夏と比べ4倍弱の3,400人を受け入れられる体制を築く、としています。軽症者の宿泊療養施設も今夏より3割増しの6万1,000室を準備。さらに、全国3万2,000ヵ所の医療機関などと連携してオンライン診療や訪問看護を実施する体制も整える、としています。確保しているにもかかわらず、コロナ病床に患者を受け入れない、いわゆる「幽霊病床」対策としては、病院ごとの病床稼働状況を12月から毎月公表し、ピーク時の使用率を8割以上に高める、としています。第5波の反省を踏まえ、今回の全体像では、重症病床から臨時の医療施設、宿泊療養施設、訪問看護まで、満遍なく医療提供体制を整えたと言えるでしょう。ただ、気になるのは、本当に第6波が到来した時に、病床をはじめとするそれぞれの“器”に、十分な医療スタッフを配置できるかどうかです。「幽霊病床」が生じた一因としては、重症者対応などで人手不足が生じたことも指摘されています。今回、国立病院機構やJCHOなど公立・公的病院に病床の確保要求が行われましたが、民間病院に対しても病床や医療スタッフの供出を、要請ではなく要求できる法的な仕組みの整備はまだです。この点についても、流行が沈静化している今のうちになんらかの手を打っておいたほうがいいと思いますが、いかがでしょうか。診療報酬改定率巡り、財務省が強烈なジャブさて、現場の医療機関が今後のコロナ対応を模索する中、来年の診療報改定に向けての議論も本格化しています。今回は、11月に入りこちらも恒例のバトルがスタートした、来年の診療報酬改定を巡る動きを追ってみました。財務省主計局は11月8日の財政制度等審議会・財政制度分科会で、来年度の診療報酬改定について、「まずは改定前の診療報酬(本体)の伸びがどのような水準かということを出発点として改定の議論を行うことが適当であり、そこが高止まりしているのであれば、躊躇なく『マイナス改定』をすべきである。そうしたプロセス抜きに、診療報酬(本体)の改定率を論う意義は乏しい」と断言、日本医師会をはじめとする医療関係団体に強烈なジャブをかましました1)。さらに、「診療報酬(本体)改定率について医療費の適正化とは程遠い対応を繰り返してきたと言わざるを得ず、診療報酬(本体)の『マイナス改定』を続けることなくして医療費の適正化は到底図れない」とも言い切りました。診療報酬改定を翌年に控えたこの時期、財務省がマイナス改定を主張するのは恒例行事とも言えますが、今年はその真剣度が違う気がします。今回の改定は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって医療提供体制の脆弱さや地域医療構想の進捗遅れが顕になった中で行われます。さらに国の財政もコロナの余波で大幅に悪化したことを考えると、改定率がどうなるか(本体プラスとなるか)は予断を許さない状況です。「医療提供体制の改革なくして診療報酬改定なし」を再度強調振り返れば、財務省主計局は今年4月15日にも、財政制度等審議会・財政制度分科会(分科会長=榊原 定征・前経団連会長)において2022年度診療報酬改定に向けての方針を説明しており、「医療提供体制の改革なくして診療報酬改定なし」との方向性を示しました(「第56回 コロナで“焼け太り”病院続出? 厚労省通知、財務省資料から見えてくるもの」参照)。そして今回、医療提供体制についても改めて言及、「新型コロナ禍では、病院数・病床数の多さに比して医療従事者が少なく、医療資源が散在し、手薄な人的配置により『低密度医療』となっている。医療機関相互の役割分担や連携が不足している」と指摘、「国民が必要な時に必要な医療にアクセスできる医療提供体制に改革していくためには、医療機関の再編・統合を含む地域医療構想の実現、医療従事者の働き方改革、医師偏在対策の三位一体での推進が重要」として、「こうした改革の進捗がないまま、あるいは改革の進行を視野に入れることなく、診療報酬改定を行う意義は乏しく、財政資源の散財となりかねない」と、再度「医療提供体制改革なくして診療報酬改定なし」のスローガンを強調しています。国民医療推進協議会はプラス改定を強く要望財政制度分科会が開かれた翌日、すぐさま医療関係団体が財務省の主張に反論しました。日本医師会など医療関連41団体で構成する国民医療推進協議会は11月9日、次期改定において財源の確保を求める決議文を採択しました。決議文の内容は、「新型コロナウイルス感染症禍において、今後も緊張感を持った徹底的な感染防止対策が必要である。国民の生命と健康を守るため、新型コロナウイルス感染症対策における有事の医療提供体制と、新型コロナウイルス感染症対策以外の平時の医療提供体制は、車の両輪として何としても維持しなくてはならない。よって、適切な財源を確保するよう、本協議会の総意として、強く要望する」とシンプルなもので、新型コロナ対策における有事とそれ以外の平時の医療提供体制を車の両輪として維持するために、次期診療報酬本体のプラス改定財源の確保を求める内容です。同協議会終了後の記者会見で、中川 俊男会長(日本医師会会長)は、「新型コロナウイルス感染症禍において、地域の医療提供体制は依然として厳しい状況にさらされている。マイナス改定は到底あり得えず、当然プラス改定にすべきであると考えている」と述べ、財務省の「躊躇なく」の言葉を自身も用い、「躊躇なくプラス改定だ」と強く語ったとのことです。診療報酬改定シリーズはまさに本格化の様相です。次回は、今後の動きを少し予想してみたいと思います(この項続く)。参考1)財政制度分科会(令和3年11月8日開催)資料一覧

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STEMI患者 、COVID-19合併で院内死亡率上昇/JAMA

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断を受けた患者は、過去1年間にCOVID-19の診断を受けていない患者に比べ院内死亡率が有意に高く、死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合アウトカムも不良であることが、米国・ブラウン大学Warren Alpert医学校のMarwan Saad氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2021年10月29日号に掲載された。米国の後ろ向きコホート研究 研究グループは、STEMI患者において、COVID-19の有無別の患者の特徴や治療、転帰の比較を目的とする後ろ向きコホート研究を行った。 解析には、米国のVizient Clinical Databaseに登録された509施設のデータが用いられた。対象は、2019年1月1日~2020年12月31日の期間に、これらの施設に入院した院外または院内のSTEMI患者(18歳以上)であった。院外例は入院時にSTEMIが認められた患者、院内例は入院中にSTEMIを発症した患者と定義された。 主要アウトカムは院内死亡とし、COVID-19の診断の有無で傾向マッチングを行った。院内死亡率は院外群15.2% vs.11.2%、院内群78.5% vs.46.1% 院外STEMI群は370施設の7万6,434例(マッチング後はCOVID-19群551例、非COVID-19群2,755例、51~74歳64.1%、男性70.3%)、院内STEMI群は353施設の4,015例(マッチング後はCOVID-19群252例、非COVID-19群756例、51~74歳58.3%、男性60.7%)が解析に含まれた。 院外STEMI群の院内死亡率は、COVID-19群が15.2%と、非COVID-19群の11.2%と比較して有意に高かった(群間の絶対差:4.1%[95%信頼区間[CI]:1.1~7.0]、オッズ比[OR]:1.43[95%CI:1.1~1.86]、p=0.007)。また、院内STEMI群の院内死亡率は、COVID-19群が78.5%、非COVID-19群は46.1%であり、COVID-19の合併は院内STEMI患者の死亡率を上昇させた(群間の絶対差:32.4%[29.1~35.9]、OR:4.11[2.97~5.69]、p<0.001)。 院外STEMI群では、死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合アウトカム(COVID-19群18.0% vs.非COVID-19群13.2%、群間の絶対差:4.8%[95%CI:1.6~7.9]、p=0.003)および死亡と脳卒中の複合アウトカム(18.0% vs.13.1%、4.8%[1.7~8.0]、p=0.002)の発生率が、いずれもCOVID-19群で高かった。同様に、院内STEMI群でも、死亡、脳卒中、心筋梗塞の複合アウトカム(80.9% vs.50.9%、29.9%[26.7~33.2]、p<0.001)および死亡と脳卒中の複合アウトカム(80.9% vs.50.4%、30.5%[27.2~33.7]、p<0.001)の発生率は、いずれもCOVID-19群で高率だった。 著者は、「STEMI患者では、COVID-19の合併が院内死亡率の上昇と有意に関連した」とまとめ、「これらの関連性の根底にある潜在的なメカニズムを理解するには、新たな研究を要する」としている。

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第86回 COVID-19後遺症、感染と関連したのは無嗅覚のみ?

フランスのおよそ3万人(26,823人)の試験の結果、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染したと自己申告した人は調べた20近いさまざまな症状のほぼすべてのいずれかを長く(8週間以上)経験していましたが、抗体検査や医師の診断等で裏が取れたSARS-CoV-2感染と関連した症状は嗅覚消失の1つのみでした1,2)。調べた症状は睡眠障害、関節痛、背痛、胃腸異常(胃痛、下痢、便秘)、筋肉痛、疲労、注意困難、皮膚の異常、感覚症状(ヒリヒリしたり焼けるような感じ等)、聴覚障害、頭痛、呼吸困難、動悸、めまい、胸痛、咳、無嗅覚、その他の18項目で、SARS-CoV-2感染の自認は聴覚障害と睡眠障害を除く他全部と関連しました。対照的に、感染したことを裏付ける抗体検査陽性はただ1つ無嗅覚(嗅覚消失)とのみ関連しました。抗体検査陽性の人数は1,091人で、そのうち4割ほどの453人が感染を自認していました。医師や臨床検査(laboratory test)による判断でSARS-CoV-2感染が確認されていることも抗体検査陽性と同様に無嗅覚とのみ唯一関連しました。それらの結果によると新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後に長く続く症状は感染そのものより感染したという念に駆られること(belief in having experienced COVID-19)とより関連するようです。SARS-CoV-2自体のせいではなさそうなCOVID-19後の長患いが生じる仕組みを今後の研究で調べる必要があります。大学の運動部学生のCOVID-19後遺症は稀感染したという思い込みに起因するものを含めて理由はどうあれCOVID-19後の患者の多くが後遺症を被ります。たとえばスイスのジュネーブの外来患者を調べた試験ではCOVID-19診断から30~45日時点の少なくとも約3人に1人(32%)に長引く症状が認められています3)。しかし、常に体を鍛えている若者にCOVID-19後遺症が付け入る余地はどうやらほとんどないらしく、米国の大学の運動部の学生3千人超を調べたところSARS-CoV-2感染後の後遺症はほとんど認められませんでした4)。発症から3週間を超えて症状が続いた学生の割合は1.2%(44/3,529人)、12週間を超えて症状が続いていた割合は僅か0.06%(2/3,529人)でした。部活に復帰してからの胸痛、息切れ、疲労、動悸等の労作性症状の割合も低く4%(137/3,393人)でした。ただし、部活に復帰してから胸痛があって心臓MRI検査を受けた学生のうち21%(5/24人)におそらくまたは確実な心臓の支障が見つかりました。運動部の大学生のCOVID-19後遺症は少ないと分かって一安心ですが、感染後に部活に復帰した選手の体調は気をつけて見守って把握し5)、もし労作性の胸痛があれば心臓MRI検査を検討するべきでしょう。参考1)Long COVID symptoms may have causes other than SARS-CoV-2 / University of Minnesota2)Matta J, et al. JAMA Intern Med.2021 Nov 8. [Epub ahead of print]3)Nehme M, et al.Ann Intern Med2021 May;174:723-725.4)Petek BJ, et al.Br J Sports Med. 2021 Nov 1:bjsports-2021-104644. 5)Lingering COVID symptoms in young, competitive athletes rare, large study finds / Eurekalert

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2020年の平均余命、コロナ影響で多くの国が低下/BMJ

 2020年に、世界31ヵ国で2,800万年を超える損失生存年数(YLL)の超過が発生し、発生率は女性よりも男性で高く、この年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行に関連した超過YLLは、2015年の季節性インフルエンザの5倍以上に達することが、英国・オックスフォード大学のNazrul Islam氏らの調査で示された。研究の詳細は、BMJ誌2021年11月3日号に掲載された。37の国と地域の時系列分析 研究グループは、COVID-19の世界的大流行に関連する2020年の平均余命およびYLLの変動を評価する目的で、37の国と地域の時系列分析を行った(特定の研究助成は受けていない)。 解析には、高中~高所得の国と地域の死亡データが用いられた。2005~20年のHuman Mortality Databaseから、年間総死亡のデータが収集された。 Lee-Carterモデルを用いて、2020年の平均余命の低下が、観察余命と期待余命の差として推算された。また、世界保健機関(WHO)の標準生命表を用いて、2020年の超過YLLが、観察YLLと期待YLLの差として推算された。平均余命が低下しなかったのは6つの国と地域のみ 2020年に、ニュージーランド、台湾、ノルウェーでは平均余命の上昇が認められたが、デンマーク、アイスランド、韓国では平均余命の変化の証拠がなく、これら6つの国と地域以外では、男女とも平均余命が低下した。 ルクセンブルクを除くすべての国で、出生時の平均余命の低下が女性よりも男性で大きかった。平均余命の減少が最も大きかったのは、ロシア(男性:-2.33年[95%信頼区間[CI]:-2.50~-2.17]、女性:-2.14年[-2.25~-2.03])、米国(-2.27年[-2.39~-2.15]、-1.61年[-1.70~-1.51])、ブルガリア(-1.96年[-2.11~-1.81]、-1.37年[-1.74~-1.01])、リトアニア(-1.83年[-2.07~-1.59]、-1.21年[-1.36~-1.05])、チリ(-1.64年[-1.97~-1.32]、-0.88年[-1.28~-0.50])、スペイン(-1.35年[-1.53~-1.18]、-1.13年[-1.37~-0.90])の順であった。 YLLについては、台湾、ニュージーランド、ノルウェー、アイスランド、デンマーク、韓国の6ヵ国/地域では、2020年の観察YLLが期待YLLを下回った。残りの31ヵ国では、2020年に2億2,200万年の生命の損失が認められ、期待YLL(男性:1,730万年[95%CI:1,680~1,780]、女性:1,080万年[1,040~1,130])よりも、観察YLLが2,810万年上回った。 10万人当たりの超過YLLが最も大きかったのは、ブルガリア(男性:7,260年[95%CI:6,820~7,710]、女性:3,730年[2,740~4,730])、ロシア(7,020年[6,550~7,480]、4,760年[4,530~4,990])、リトアニア(5,430年[4,750~6,070]、2,640年[2,310~2,980])、米国(4,350年[4,170~4,530]、2,430年[2,320~2,550])、ポーランド(3,830年[3,540~4,120]、1,830年[1,630~2,040])、ハンガリー(2,770年[2,490~3,040]、1,920年[1,590~2,240])の順であった。 超過YLLは、全般に65歳未満の集団で相対的に低かったが、65歳未満の超過YLLが10万人当たり2,000年を超えた国として、ロシア(3,290年、95%CI:2,780~3,810)、ブルガリア(2,650年、2,220~3,070)、リトアニア(2,580年、1,790~3,410)、米国(2,390年、2,280~2,510)が挙げられた。 これら2020年のCOVID-19の世界的大流行に関連した超過YLLは、2015年の季節性インフルエンザの5倍を超えていた。 著者は、「これらの知見は、標的を絞った人口ベースの公衆衛生施策に基づく介入などによるウイルス抑制・排除の重要性を強調するものであり、今後の世界的大流行の衝撃に対処するには、より回復力の高い医療システムを目指した包括的な対策が鍵となるだろう」とし、「世界的大流行の影響は、生命に測定可能な作用を及ぼすまで長い時間を要する可能性があるため、超過YLLの持続的で時宜にかなったモニタリングは、超過死亡や超過YLLの原因を特定するのに役立つであろう」と指摘している。

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第78回 HPVワクチン積極的勧奨がついに再開、キャッチアップ接種も検討

<先週の動き>1.HPVワクチン積極的勧奨がついに再開、キャッチアップ接種も検討2.コロナワクチン3回目接種を特例承認、12月から実施へ/厚労省3.大手医薬品卸6社の談合疑惑で立ち入り検査/公取委4.介護・保育職で3%の賃上げ、看護師なども給与水準UPを5.急性期医療の集約化をめぐって議論白熱/中医協6.財務省、診療報酬のマイナス改定を求める/財政制度等審議会1.HPVワクチン積極的勧奨がついに再開、キャッチアップ接種も検討厚生労働省は、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会を開催し、子宮頸がんを予防するヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種の呼びかけ再開について検討された。海外の大規模調査で子宮頸がんに対する予防効果が示されたことや、接種後の副反応について診療・相談体制など強化を行っていること、ワクチンの安全性と有効性について十分な情報提供が行われるようになっていることから、再開を妨げる要素はないとし、HPVワクチン接種の積極的勧奨の再開を了承した。2013年6月以降、定期接種の機会を逃した人へのキャッチアップ接種などの対応についても、予防接種・ワクチン分科会において引き続き議論を行っていくことになった。(参考)HPVワクチン、積極的勧奨の再開を了承 厚労省の審議会(buzzfeed)HPVワクチン接種の積極勧奨再開へ 専門部会が了承、厚労省近く決定(CBnewsマネジメント)子宮頸がんワクチン、8年ぶりに積極勧奨再開 自民の一部「性の乱れ」と抵抗、コロナ追い風に(東京新聞)資料 HPVワクチンについて(厚労省)2.コロナワクチン3回目接種を特例承認、12月から実施へ/厚労省厚労省は11日、ファイザー製の新型コロナウイルスワクチン「コミナティ筋注」について、3回目接種の用法・用量追加を特例承認した。2回目のワクチン接種後8ヵ月以上経った18歳以上の希望者に来月から3回目の接種を行うため、本日より全国の自治体や医療機関に配送が開始される。(参考)3回目接種用のワクチン 約400万回分 あすから全国に配送(NHK)厚労省 新型コロナワクチン「コミナティ」の3回目接種を特例承認(ミクスonline)ファイザー製ワクチン、18歳以上のブースター接種を厚労省が承認(ケアネット)3.大手医薬品卸6社の談合疑惑で立ち入り検査/公取委独立行政法人「国立病院機構」が発注する医薬品の入札をめぐり談合を繰り返した疑いがあるとして、公正取引委員会が大手医薬品卸会社の福岡支店などに立ち入り検査したことが明らかになった。検査を受けたのは、九州シェア首位のアステム(本社・大分市)、アトル、翔薬、九州東邦(いずれも同・福岡市)、富田薬品(同・熊本市)、アルフレッサ(同・東京)の九州拠点。関係者によると、6社は2016年度以降、国立病院機構本部が発注する医薬品の一般競争入札で、事前に話し合って受注者を決めていた疑いがある。公取委は昨年12月、別の独占禁止法発注の入札を巡る談合容疑で大手卸系の3社を刑事告発しており、これを調べる過程で今回の容疑が新たに浮上したとみられる。(参考)医薬品の入札めぐり談合容疑 卸会社の支店などに立ち入り検査(NHK)国立病院機構など発注の医薬品、6社で談合か…公取委が立ち入り検査(読売新聞)地方の卸にもメス、公取委の狙いは 医薬品卸に再び談合容疑(朝日新聞)4.介護・保育職で3%の賃上げ、看護師なども給与水準UPを政府は介護職員や保育士の処遇改善策として、賃金の引き上げ幅を現行月収の3%程度とする方針を決めた。看護師も同程度の引き上げを検討し、幼稚園教諭などの賃金も上げる。19日に決定する経済対策に盛り込むこととなった。現在の介護職や看護職の給与水準については、全職種平均と比べて低い状況であり、岸田首相も、介護職員や保育士らの収入増を最優先課題に掲げており、早急な手当てが必要としてきた。(参考)保育士や介護職、3%賃上げへ…事業者支援は最大250万円(読売新聞)介護・保育・看護の賃金3%アップへ 政府調整、一部対象絞る案も(朝日新聞)介護・保育3%賃上げ、看護師も検討 経済対策政府検討 困窮世帯に30万円の再支給も(日経新聞)5.急性期医療の集約化をめぐって議論白熱/中医協厚労省は、来年度に実施される診療報酬改定に向けて中医協の総会を13日に開催し、急性期医療や地域包括ケア病棟について議論を行った。支払い側からは、医療・看護必要度や重症度患者割合を厳格化し、高度急性期について集約化を求める意見が出されたが、診療側からはコロナ禍の影響を受けている中でのデータを元にした見直しに慎重な姿勢を示した。また、地域包括ケア病棟では、「自院の急性期病棟から転棟」の患者が中心となっているなど、受け入れ患者が大きく偏っている病棟があり、次の診療報酬改定にどのように行っていくか議論が佳境に入っている。(参考)中医協総会で支払側 コロナ禍での脆弱性是正へ急性期入院医療で「医療資源の集約化」求める(ミクスonline)地ケア病棟、機能の差で「評価のめりはり付けを」中医協・支払側が要望、診療側は反対姿勢(CBnewsマネジメント)ICU看護必要度のB項目廃止案、支払側は理解示すが、診療側は反対し入院医療分科会の批判も―中医協総会(Gem Med)看護必要度、一般病棟用「心電図モニター」等の除外を巡り意見が対立 支払い側は賛成、診療側は「2022年度改定での削除はあり得ない」と猛反発(日経ヘルスケア)6.財務省、診療報酬のマイナス改定を求める/財政制度等審議会財務省は財政制度等審議会財政制度分科会を8日に開催し、2022年度の予算編成に当たって、これまでの診療報酬改定は医療費の適正化とは程遠い対応を繰り返してきたとし、引き続き医療費の適正化を図るため、躊躇なく「マイナス改定」をすべきと主張した。症状が安定している患者については、医療機関に行かずとも、一定期間内に処方箋を反復利用できるリフィル処方についても時機を逸することなく導入すべきだとした。なお、リフィル処方の導入に当たっては向精神薬等については避けるべきであり、生活習慣病等に対象を限るべきだと方向性が示された。(参考)財務省ふくらむ医療費に注文 診療報酬の「マイナス改定」も想定(朝日新聞)診療報酬本体、財務省「ためらわず下げを」高止まりを指摘、DRG導入も主張(CBnewsマネジメント)資料 財政制度分科会(令和3年11月8日開催)

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コロナワクチン、高齢ほど感染・入院リスク低下/Lancet

 米国では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種プログラムの導入の初期段階に、高齢者におけるCOVID-19患者数やCOVID-19による救急診療部受診数、入院者数が減少し、ワクチン接種の寄与は不明なものの死者数も減少したことが、米国疾病予防管理センターのLucy A. McNamara氏らの調査で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年11月3日号で報告された。米国50歳以上を対象に生態学的研究 米国では、2020年12月中旬に、緊急使用許可(EUA)下に最初のCOVID-19ワクチンの使用が可能となった。2021年6月8日の時点で、全人口の52%が少なくとも1回のワクチン接種を受け、42%は2回の接種を完了しており、このうち65歳以上の接種率はそれぞれ86%および76%に達している。 本研究は、2020年11月1日~2021年4月10日の期間に、米国の初期段階のCOVID-19ワクチン接種プログラムが、全米の50歳以上の集団におけるCOVID-19患者、救急診療部受診、入院、死亡に及ぼした影響の評価を目的とする生態学的研究である(米国疾病予防管理センターの通常の運営資金で行われ、外部からの研究助成は受けていない)。 特定の年齢集団のワクチン接種率が初めて基準年齢集団(50~64歳または50~59歳)の接種率を1%以上上回った週を基点として、ワクチン接種前と接種後の高齢集団と若年の基準集団における各評価項目の発生率の相対的な変化を算出した。引き続き、ワクチン接種前と接種後の期間を比較して、これらの相対的な変化の比が両期間で異なるかを評価した。接種率向上の重要性を強調する結果 ワクチン接種後と接種前のCOVID-19患者の発生率比の変化を比較した相対的な変化の比は、50~64歳と比較して、65~74歳で53%(95%信頼区間[CI]:50~55)、75歳以上では62%(59~64)それぞれ減少した。 同様にCOVID-19による救急診療部受診者数は、50~64歳と比較して、65~74歳で61%(95%CI:52~68)、75歳以上では77%(71~78)減少した。また、COVID-19による入院者数は、50~59歳と比較して、60~69歳で39%(29~48)、70~79歳で60%(54~66)、80歳以上では68%(62~73)低下した。 COVID-19による死亡も、50~64歳と比較して、65~74歳で41%(95%CI:−14~69)、75歳以上では30%(-47~66)減少したが、ワクチン接種の普及が死亡にどの程度の影響を及ぼしたかは不明であった。 著者は、「本研究の結果は、既存のワクチンのすでに確立されている有効性のデータと一致しており、対象者全員の接種率を高めることの重要性を強調するものである」としている。

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第83回 街中の会話にヒントが!?若者や副反応経験者に3回目ワクチンを促す策とは

つい先日、昼食のために入ったラーメン屋で私の右側のカウンターに座っていた男性3人組の会話が耳に入ってきた。この3人を私から近い順にA君、B君、C君としよう。ちょうど私のすぐ隣にいたA君が「どうだった?」とB君とC君に尋ねていた。B君うん、めっちゃ熱出て、体もだるくてきつかったA君3回目の接種もあるって話じゃんB君いや、もう3回目はいいやC君俺も3回目はなしだな職業病のせいか、ついつい周囲の会話に聞き耳を立ててしまう癖はなかなか抜けない。この時もそうだったのだが、会話の内容も内容だったから余計のこと真剣に聞き耳を立ててしまった。多くの人にとって察しはついただろうが、新型コロナワクチン接種に関してである。このラーメン屋の近傍には複数の大学がある。その後も彼らの会話に聞き耳を立てていたが、どうやら彼らは付近のある私大の学生で、大学でモデルナ製ワクチンによる職域接種が行われ、B君とC君は接種、A君は様子見で今も接種するかどうかを迷っているらしい。私はファイザー製ワクチンの接種者だが、周知のようにモデルナ製ワクチンは投与量が多いため、効果もやや高い分、副反応も強めと言われ、モデルナ接種者での副反応に関する愚痴はよく耳にする。新型コロナに限らず、ワクチンでは接種者が効果を実感できることは稀で、むしろ自覚できる副反応があれば、そちらのほうの印象が強くなるのは必然のこと。いわゆる反ワクチン派の存在も多分にそうした現実に由来している。その意味で副反応の最小化はワクチン接種の浸透では必須事項となるが、そもそも個々のワクチンの特性により一定の頻度の副反応は避けがたい。たとえば今回の新型コロナのmRNAワクチンでは、極めて高頻度な発熱や倦怠感は減らそうと思って減らせるものではない。あとは症状が発現した際の適切な軽減策の周知であり、今回はすでに解熱鎮痛薬の使用推奨はかなり行われている。だが、それでも前述の学生の反応は非常に気になった。ワクチン接種完了者が国民のほぼ4分の3に達し、新規感染者数報告も小康状態とは言え、今後の新型コロナの動向はまだ完全に読み切れていない。そのうえで3回目接種も現実となった今、「3回目はもういいや」という人が一定数出ることは感染拡大の火種になる。そんなこんなを抱えながらネットサーフィンをしたら思いもかけないレポートに遭遇した。モデルナ製ワクチンの職域接種を行った岡山大学のアンケート調査結果である。ざっくりまとめると、学生を中心とした接種後のアンケート調査で副反応は局所性、全身性とも98%以上が1週間以内に消失し、90%弱が接種に満足、80%強が身近な人への接種を勧め、かつ3回目の接種を希望するというもの。非常に喜ばしい結果だ。また、副反応の発熱で解熱薬を服薬した人は66.0%で、これと別に予防内服を行った人が4.8%。私が一番驚いたのは、予防内服をした人が思ったよりも少なかったことだ。報道やSNSを通じて新型コロナワクチンでの発熱の副反応が周知され、それゆえに逆に接種前にやや怖くなっていた人も少なくなかったはず。一方で副反応回避策としての予防的解熱薬服用は推奨されていない。その中で予防内服が少なかった現実は若年層もかなりしっかりとした情報入手をしていた傍証でもある。では不安材料はないかと言えば、そうとは言えない。たとえば「インフルエンザワクチンと比べて副反応が重かった」との回答者が84.9%だった一方で、「打つ前の想像と比べて(副反応が)重かった」との回答者が43.3%だったことから、「副反応の重さがある程度周知されていたと思われる」との分析を示しているが、本当にそうだと言えるだろうか?前述の身近な人に勧めるか、あるいは3回目接種を希望するかとの問いに、否定的な回答は5%に満たないが、「どちらとも言えない」という動揺層が10数%いる現実は副反応の結果と推定される。また、3回目接種を希望するかについて「ワクチンの種類は検討するが希望する」が 22.0%もいたことも見逃せない。これはご存じのようにモデルナ製ワクチンで報告されている若年層での心筋炎の副反応を恐れてのことだろう。また、本レポートではワクチン接種との因果関係は不明ながらも、極めてごくわずかな人たちが接種1ヵ月後にも不調を訴えており、そのケアの必要性を強調している。こうした不安に単純に「みんな経験する副反応だから」あるいは「それは科学的に見て副反応ではない」と対処することは科学的には正しくとも、後々のワクチン不信を増幅させる可能性がある。こう訴える人たちに医療従事者だけでなく、行政、メディアもどのように対処すべきかはまだ課題は少なくないだろう。俗な言い方になるが、恐怖心を抱く人への寄り添いは最低限必要と感じる。また、そんなこんなを考えていた矢先、以下のような新たな情報も飛び出してきた。【独自】大規模会場2930人の急性期副反応、9割が不安に伴うストレス原因…若者が3割強(読売新聞)要は防衛省が運営していた大規模接種会場で、接種への不安などが原因の迷走神経反射などの急性副反応がインフルエンザワクチンなどより高頻度で発生しており、その中心は若年者だったという現実である。こうした急性反応は一定程度医学的にも対処可能なものである。すでに年代別の接種率を見ると50代以降は接種完了率が85%以上に達する中、1回以上接種が70%台の10~30代はまだまだ接種率向上の余地は高い。こうした層の底上げと全国民の確実な3回目接種の実現のため、医学的にも社会的にもまだまだやれることは残されていると言えそうだ。

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避けたいワクチン接種時のケアレスミス/厚労省

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が全国で順調に行われ、満12歳以上への接種も始まり、3回目の接種についても細部が決まりつつある。また、インフルエンザの流行を控え、COVID-19ワクチンとインフルエンザワクチンの接種というケースも散見されるようになってきた。こうした環境の中ではワクチン接種時の事故は避けたいものである。 厚生労働省は、令和3年9月30日までに報告された予防接種の間違いの概要をまとめた「新型コロナ予防接種の間違いの防止について(その3)」を10月29日に全国の自治体に発出し、注意を喚起した。 同省では、インフルエンザワクチンが多く接種される時期でもあり、これらの留意点を参考に、あらためて予防接種の手順を再確認することにより、間違いの発生防止とCOVID-19ワクチン接種の適切な実施に向けた取り組みを進めてほしいと記している。一番多い接種上の間違いは「接種間隔」1)間違いとして報告のあった回数(10万回当たり数)延べ接種回数163,738,220回のうち・間違い報告件数:1,805回(1.102)・重大な報告件数:739回(0.451)・上記以外の報告件数:1,066回(0.651)2)間違いの態様別の上位5つ(10万回当たり数)(1)接種間隔の間違い:526件(0.321)(2)接種器具の扱いが不適切:350件(0.214)(3)不必要な接種:246件(0.15)(4)血液感染を起こし得る間違い:170件(0.104)(5)接種量の間違い:99件(0.06)トレイを分ける、声を出すなどでミスを防ぐ COVID-19ワクチン接種の具体的な3つの事例と対策、これら問題の背景を下記に紹介する。〔事例1〕1日の同じ時間帯の中で、COVID-19ワクチンの接種と他のワクチンの接種の両方が行われていた。〔対策〕可能な限り、COVID-19ワクチンと他のワクチンを接種する曜日や時間帯を分ける。〔事例2〕次のようなさまざまな理由により、同一の診察室内に、COVID-19ワクチンと他のワクチンが持ち込まれ、接種者の手が届く範囲に複数種類のワクチンが置かれた。・同一の診察室で、新型コロナワクチンと他のワクチンの両方を接種している。・本来は、COVID-19と他のワクチンと接種用の診察室を分けていたが、院内の都合でCOVID-19ワクチン仕様になり他のワクチンが持ち込まれた。・本来は、ワクチンにより接種用の診察室を分けていたが、たまたま誘導員が間違えて誤った診察室に案内してしまった。〔対策〕1トレイに1種類(可能な限り、1トレイに1人分)のワクチンを準備することとし、診察室内において、接種者の手が届く範囲に異なる種類のワクチンを置かない。〔事例3〕接種者は、予診票の確認を行い他のワクチンの接種を受ける者であることを認識しながらも、無意識にCOVID-19ワクチンを手にとり接種してしまった。〔対策〕接種直前は一呼吸おき、接種者と被接種者とで接種するワクチン名を声に出して確認する。【間違いの背景】・同じ時間帯に新型コロナワクチンと他のワクチンの予約を受け付けており、物理的に患者が混在していた。・接種者の手が届く範囲に、複数の異なる種類のワクチンが置かれていた。・新型コロナワクチンの接種数が多く、接種に慣れてしまっていた(無意識、惰性で打ってしまった)。・接種者が、接種直前に接種するワクチン名を確認していなかった。※インフルエンザワクチンなどのバイアル製剤だけでなく、シリンジ製剤でも接種間違いは起こっている。

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ファイザー製ワクチン有効性、3回接種vs.2回接種/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンBNT162b2(Pfizer/BioNTech製)の3回接種は、2回接種(5ヵ月以上前に接種完了)と比較して、COVID-19の重症化予防に有効であることが認められた。イスラエル・Clalit Research InstituteのNoam Barda氏らが、同国半数超の国民が加入する健康保険データを基に解析を行い報告した。多くの国でSARS-CoV-2のデルタ(B.1.617.2)変異株によるCOVID-19の再流行が発生しており、これらの国では、経時的に免疫が減弱しデルタ変異株に対する有効性が低下する可能性があるため、ワクチン3回目接種を検討している。Lancet誌オンライン版2021年10月29日号掲載の報告。イスラエルのデータを基に、COVID-19関連入院、重症化、関連死のリスクを解析 研究グループは、イスラエル国民の半数以上が加入している同国最大の医療保険組織「Clalit Health Services」のデータを用い、2020年7月30日~2021年9月23日にBNT162b2ワクチンの3回目接種を受けた人(3回接種群)、ならびに人口統計学的および臨床的特徴をマッチングさせた3回目ワクチン未接種者(対照群)について解析した。 適格基準は、5ヵ月以上前に2回接種を完了しており、SARS-CoV-2感染歴がなく、直近3日以内に医療施設を受診していないこととし、医療従事者、長期療養施設の居住者および自宅療養者は除外された。 主要評価項目は、COVID-19関連の入院、重症化およびCOVID-19関連死であった。Kaplan-Meier法を用いて各アウトカムのリスクを推定し、リスク比とリスク差を算出、3回接種の有効性は1-リスク比(相対リスク減少率)として推定した。3回接種群、入院93%、重症化92%、COVID-19関連死81%減少 調査期間中の3回接種者は115万8,269例であった。マッチングの結果、解析には3回接種群および対照群それぞれ72万8,321例が含まれた。年齢中央値は52歳(IQR:37~68)、51%が女性で、3回目または2回目接種後の観察期間(接種後7日以降)は、両群とも中央値13日(IQR:6~21)であった。 3回接種群の有効性(3回目接種後7日以降に評価)は、対照群(5ヵ月以上前に2回目接種を受けたのみ)と比較し、入院を93%(95%信頼区間[CI]:88~97、イベント件数:3回接種群29 vs.対照群231)、重症化を92%(95%CI:82~97、イベント件数:17 vs.157)、COVID-19関連死を81%(95%CI:59~97、イベント件数:7 vs.44)減少すると推定された。

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ファイザー製ワクチン、18歳以上のブースター接種を厚労省が承認

 ファイザーは11月11日、同社の新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチン「コミナティ」について、国内の18歳以上に対する追加接種(追加免疫)の承認を取得したと発表した。米国本社が先月発表したプレスリリースによると、3回目のブースター接種の効果を検証した第III相臨床試験の結果、95.6%の有効性を示したという。 コロナワクチンのブースター接種を巡っては、米国においてはコミナティが9月より、65歳以上および重症化リスクが高い18〜64歳、SARS-CoV-2への頻繁な曝露を伴う18〜64歳へのブースター接種が実施されており、11月9日には接種対象を全成人に拡大するようFDAに申請した。このほか、モデルナ社および米・ジョンソンエンドジョンソン社のワクチンについても10月に米国で追加接種が認められたところだ。<添付文書情報> ※下線部分が今回の主な追加・変更箇所6. 用法及び用量 本剤を日局生理食塩液1.8mLにて希釈する。 初回免疫の場合、1回0.3mLを合計2回、通常、3週間の間隔で筋肉内に接種する。 追加免疫の場合、1回0.3mLを筋肉内に接種する。7.2 追加免疫7.2.1 接種対象者 18歳以上の者。SARS-CoV-2の流行状況や個々の背景因子等を踏まえ、ベネフィットとリスクを考慮し、追加免疫の要否を判断すること。7.2.2 接種時期 通常、本剤2回目の接種から少なくとも6ヵ月経過した後に3回目の接種を行うことができる。7.2.3 初回免疫として他のSARS-CoV-2ワクチンを接種した者に追加免疫として本剤を接種した臨床試験は実施していない。

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がん患者、直近の化学免疫療法で新型コロナの転帰が悪化

 がん患者は、新型コロナ感染時の重症化リスクが高いとされるが、その要因は化学療法や免疫療法によるもので、こうした治療を受けていない患者では、死亡・重症化リスクは非がん患者と同等だったという。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのMariana Chavez-MacGregor氏らによる研究結果が、JAMA Oncology誌オンライン版2021年10月28日号に掲載された。 研究者らは、非識別化された電子カルテデータを使い、2020年1月1日~12月31日までにCOVID-19と診断された50万人以上の成人を分析した。最終的に507例のCOVID-19患者を(1)非がん患者群、(2)最近治療を受けていないがん患者(非治療群)、(3)COVID-19診断前3ヵ月以内に放射線療法または全身療法のがん治療を受けたがん患者(治療群)に割り付けた。 主要評価項目はCOVID-19診断後の死亡、人工呼吸装着、ICU入室、診断後30日以内の入院とした。有害事象の未調整の発生率と調整後のオッズ比(OR)を群別に示した。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19患者50万7,307例(平均[SD]年齢48.4[18.4]歳、女性28万1,165例[55.4%])が確認され、うち49万3,020例(97.2%)は非がん患者だった。・がん患者1万4,287例(2.8%)のうち、9,991例(69.9%)は非治療群、4,296例(30.1%)は治療群だった。・調整前の解析では、治療の有無にかかわらず、がん患者は非がん患者に比べ有害な転帰をとる可能性が高かった(死亡率:非がん患者群:1.6%、非治療群:5.0%、治療群:7.8%)が、調整後、非治療群は非がん患者群と同等以上の転帰となった(死亡率OR:0.93[95%CI:0.84~1.02]、人工呼吸器装着:0.61[95%CI:0.54~0.68])。・一方、治療群は、死亡(1.74、95%CI:1.54~1.96)、ICU入室(1.69、95%CI:1.54~1.87)、入院(1.19、95%CI:1.11~1.27)のリスクが有意に高かった。・転移のない固形がん患者と比較して、転移のある固形がんと造血器腫瘍患者は転帰が悪かった(死亡率:2.36[95%CI:1.96~2.84]、人工呼吸器装着:0.87[95%CI:0.70~1.08])。・直近の化学療法および免疫療法も転帰の悪化と関連していた(化学療法を受けた患者の死亡率:1.84[95%CI:1.51~2.26])。 著者らは、直近のがん治療が有害な転帰のリスクと関連していることが明らかになり、この知見はリスクの層別化と効率的な医療資源の利用に役立つとしてる。

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中和抗体薬の発症抑制での投与時の注意など、コロナ薬物治療の考え方10版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医学部教授])は、11月4日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第10版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、前回9版以降の新しい知見などの追加のほか、中和抗体薬カシリビマブ/イムデビマブに関しての追記が行われた。確認しておきたいカシリビマブ/イムデビマブの適用要件 主な改訂点は下記の通りである。抗ウイルス薬 レムデシビル 入手方法につき2021年10月18日より一般流通が開始されたこと。中和抗体薬 カシリビマブ/イムデビマブ【海外での臨床報告の追加】96時間以内に感染者と家庭内接触のあった被験者1,505例を対象としたランダム化比較試験で、カシリビマブ/イムデビマブの単回皮下投与により、発症に至った被験者の割合は、本剤群11/753例、プラセボ群59/752例であり、プラセボと比較し、発症のリスクが81.4%有意に減少。【発症抑制での投与時の注意点を追加】1)SARS-CoV-2による感染症の予防の基本はワクチンによる予防であり、本剤はワクチンに置き換わるものではない。2)本剤の発症抑制における投与対象は、添付文書においては下記のすべてに該当する者とされている。(1)SARS-CoV-2による感染症患者の同居家族または共同生活者などの濃厚接触者、または無症状のSARS-CoV-2病原体保有者(2)原則として、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有する者(3)SARS-CoV-2による感染症に対するワクチン接種歴を有しない者、またはワクチン接種歴を有する場合でその効果が不十分と考えられる者 このうち、(1)の「濃厚接触者」(例:同居家族、共同生活者に加え、高齢者施設や医療機関勤務者など)および(3)の「SARS-CoV-2による感染症に対するワクチン接種歴を有しない者、またはワクチン接種歴を有する場合でその効果が不十分と考えられる者」(例:ハイリスク患者のうち、免疫抑制状態[悪性腫瘍治療中、骨髄または臓器移植後、原発性免疫不全症候群など]にある患者など)は、中和抗体薬を投与する意義が大きいと考えられる。 なお、SARS-CoV-2の既感染やワクチン接種等により自己の抗体を有すると考えられる患者では中和抗体薬の必要性、有効性が低くなる可能性があると考えられるが、現時点ではその臨床的意義は必ずしも明らかではなく、国内で使用可能な抗体検査薬は承認されていないため、今後の知見が待たれる。 本稿の詳細は、同学会のサイトで確認していただきたい。■関連記事ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会

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新型コロナのブレークスルー感染リスク、既感染者 vs.非感染者/JAMA

 カタールにおいて、2020年12月21日~2021年9月19日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)または「mRNA-1273」(Moderna製)接種者におけるブレークスルー感染リスクは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)既感染者が非感染者と比べて統計的に有意に低かった。同国・Weill Cornell Medicine-QatarのLaith J.Abu-Raddad氏らが、接種者約153万例について行った適合コホート試験の結果を、JAMA誌オンライン版2021年11月1日号で発表した。「BNT162b2」または「mRNA-1273」接種者を今年9月まで追跡 研究グループは、カタールで2020年12月21日~2021年9月19日にCOVID-19ワクチン「BNT162b2」または「mRNA-1273」の接種を受けた153万1,736例を対象に試験を行い、SARS-CoV-2感染歴の有無によるブレークスルー感染リスクを比較した。 被験者について、ワクチン2回目接種後14日以降、2021年9月19日まで追跡した。 SARS-CoV-2感染の定義は、鼻腔拭い液によるPCR検査で陽性であることとした。累積発生率は、Kaplan-Meier推定法で算出し比較評価した。既感染者の非感染者に対するブレークスルー感染リスクは0.18~0.35倍 BNT162b2接種群のうち、既感染者(PCR検査で確認されたことがある)は9万9,226例、適合非感染者は29万432例だった(年齢中央値37歳、男性68%)。mRNA-1273接種群は、既感染者5万8,096例、適合非感染者16万9,514例だった(年齢中央値36歳、男性73%)。 BNT162b2接種群で、ワクチン2回目接種後14日以降の感染例は、既感染者では159例(再感染)、非感染者では2,509例だった。mRNA-1273接種群では、それぞれ43例、368例だった。 BNT162b2接種群の感染累積発生率(追跡期間120日)は、既感染者で0.15%(95%信頼区間[CI]:0.12~0.18)、非感染者は0.83%(0.79~0.87)と推定された(既感染者の非感染者に対するブレークスルー感染に関する補正後ハザード比[HR]:0.18[95%CI:0.15~0.21]、p<0.001)。 同様にmRNA-1273接種群では、既感染者で0.11%(95%CI:0.08~0.15)、非感染者は0.35%(0.32~0.40)だった(同HR:0.35[0.25~0.48]、p<0.001)。 また、既感染者のうち、初回ワクチン接種が感染後6ヵ月以上経過後だった人のほうが6ヵ月未満だった人よりも、ブレークスルー感染リスクが低かった(BNT162b2接種群[補正後HR:0.62、95%CI:0.42~0.92、p=0.02]、mRNA-1273接種群[0.40、0.18~0.91、p=0.03])。 なお著者は、本試験は観察試験デザインのため、2つのワクチン間の感染リスクの直接比較はできなかったとしている。

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子供へのマスクはどうするの?疑問に回答/成育医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は社会生活を混乱させただけでなく、子供たちの日常も奪った。12歳未満の子供にはCOVID-19ワクチンの接種も、現在わが国ではできないことから、今後の感染の増加について子供の保護者や学校関係者などは危惧をしている。また、この時期に妊娠した妊婦は情報が少ない中での生活に不安を抱えている。 こうした不安や心配の声に応えるべく国立成育医療研究センター(理事長:五十嵐 隆氏)は、11月5日に同センターのホームページに「コロナ禍の今、あらためて伝えたいお子さんと妊婦さんのためのQ&A」を公開し、COVID-19やそれ以外の感染症対策や症状、こころの問題について、情報発信を開始した。感染症、精神、耳鼻咽喉、産科のエキスパートが回答するQ&A このQ&Aでは、大きく4つの分野について、同センターの専門医が解説し、回答を行っている。 主な質問項目は次のとおり。【感染対策について】(感染症科)・コロナ禍になって2年。これまでのデータから分かるコロナウイルスについて教えてください(症状や感染対策、変異株、コロナ初期と変わったことなど)・マスクができない子どもへの感染症対策はどうすればいいですか?・医療的ケア児の感染対策で、特に気を付けた方がいいことはありますか?・子どものワクチン接種について教えてください(安全性や副反応、リスクについて、インフルエンザワクチンと一緒に打っていい?)・デルタ株で子どもの感染者も増えていましたが、子どもでも重症化するのでしょうか?【こころについて ~子どもとご家族~】(こころの診療部)・友達と話せなかったり、自由に外で遊べなかったり、コロナ禍のストレスは子どもの心に将来的にどんな影響を及ぼしますか?・フィジカルディスタンスやマスクを常につける生活で、子どもとのコミュニケーションがうまく取れないこともあります。どうしたらいいですか?・子どもが新型コロナウイルスをとても怖がっています。どうしたらいいですか?・子どもがコロナ太りを気にしてあまりご飯を食べてくれません。どうしたらいいですか?・保護者の不安やストレス解消法について教えてください【身体について】(眼科、耳鼻咽喉科)・オンライン授業になったり、また、ゲームをするためにスマホやタブレットばかり見ています。子どもの視力などに影響はありませんか?・子どもが部屋でゲームをするときなど、イヤホンを長時間使っています。聴力への影響はありますか?【妊婦さんについて】(妊娠と薬情報センター)・妊婦、また授乳中のワクチン接種について教えてください。・今、妊娠しても大丈夫でしょうか? なお、Q&Aの情報は2021年11月現在の情報で公開している。

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入院COVID-19の生存日数は?デキサメタゾン6mg vs.12mg/JAMA

 重度の低酸素血症を呈する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の成人入院患者において、デキサメタゾンの12mg投与は6mgと比較して、28日後の生命維持装置を使用しない生存日数を改善せず、28日と90日後の死亡率にも差はないことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のMarie W. Munch氏らCOVID STEROID 2 Trial Groupが実施した「COVID STEROID 2試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2021年10月21日号で報告された。欧州とインドの医師主導無作為化試験 本研究は、重度の低酸素血症を有するCOVID-19患者におけるデキサメタゾン12mgと6mgの有効性の比較を目的とする医師主導の二重盲検無作為化試験であり、2020年8月27日~2021年5月20日の期間に、4ヵ国(デンマーク、インド、スウェーデン、スイス)の26病院で行われた(Novo Nordisk財団などの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染が確定されて入院し、(1)酸素補充療法(流量≧10L/分)、(2)低酸素血症に対する非侵襲的換気または持続陽圧呼吸療法、(3)侵襲的機械換気のいずれかを受けている患者であった。 被験者は、最長10日間、デキサメタゾン12mgを静脈内投与する群または同6mgを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、28日時点の生命維持装置(侵襲的機械換気、循環補助、腎代替療法)なしでの生存日数とし、層別変数で補正された。副次アウトカムは事前に8つが設定され、今回の解析では、そのうち5つ(90日時点の生命維持装置なしの生存日数、90日時点の生存退院日数、28日時点と90日時点の死亡、28日時点の1つ以上の重篤な有害反応)が評価された。重篤な有害反応にも差はない 982例(年齢中央値65歳[IQR:55~73]、女性31%)が解析に含まれ、デキサメタゾン12mg群に497例、同6mg群に485例が割り付けられた。このうち971例(12mg群491例、6mg群480例)で主要アウトカムのデータが得られた。介入期間中央値は両群とも7日で、12mg群の9例(1.8%)、6mg群の11例(2.3%)が医師の指示に反して28日以内に退院した。 28日時点の生命維持装置なしの生存日数中央値は、12mg群が22.0日(IQR:6.0~28.0)、6mg群は20.5日(4.0~28.0)であり、両群間に有意な差は認められなかった(補正後平均群間差:1.3日、95%信頼区間[CI]:0~2.6、p=0.07)。 副次アウトカムである90日時点の生命維持装置なしの生存日数中央値は、12mg群が84.0日(IQR:9.3~90.0)、6mg群は80.0日(6.0~90.0)であった(補正後平均群間差:4.4日、99%CI:-1.6~10.4)。また、90日時点の生存退院日数は、それぞれ61.5日(0~78.0)および48.0日(0~76.0)だった(4.1日、-1.3~9.5)。 さらに、28日時点の死亡率は、12mg群が27.1%、6mg群は32.3%(補正後相対リスク[RR]:0.86、99%CI:0.68~1.08)、90日時点の死亡率は、それぞれ32.0%および37.7%(0.87、0.70~1.07)であり、いずれも有意差はみられなかった。 28日までに1つ以上の重篤な有害反応(敗血症性ショック、侵襲性真菌症、臨床的に重要な消化管出血、デキサメタゾンに対するアナフィラキシー反応)が発現した患者の割合は、12mg群が11.3%、6mg群は13.4%であり、両群間に差はなかった(補正後RR:0.83、99%CI:0.54~1.29)。体外式膜型人工肺(ECMO)は、12mg群が3例(0.6%)、6mg群は14例(2.9%)で使用された。 なお著者は結果について、「本試験は、有意差を同定するには、検出力が十分でなかった可能性がある」としている。

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ファイザーの経口コロナ治療薬、入院・死亡リスク89%減

 米国・ファイザーは11月5日付けのプレスリリースで、同社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)新規経口治療薬であるPF-07321332・リトナビル配合剤(商品名:Paxlovid)について、入院していない成人のCOVID-19高リスク患者を対象にした第II/III相試験(EPIC-HR試験)の中間解析で、発症3日以内に治療を開始した場合、プラセボと比較して入院または死亡のリスクが89%減少したことを発表した。28日目までの全試験集団において、プラセボ投与群の死亡が10例に対して、本剤投与群で死亡例はなかったという。EPIC-HR試験の中間解析結果を受け、同社はこの研究への追加登録を中止し、今後米国での緊急使用許可を目指してFDAへ速やかにデータを提出する予定。 EPIC-HR試験は、重症化リスクが高く、入院していないCOVID-19成人患者を対象としたランダム化二重盲検試験。今回のEPIC-HR試験の中間解析では、2021年9月29日までに登録された1,219例のデータを評価した。軽度~中等度の症状発現後5日以内でCOVID-19重症化リスクのある患者を、本剤またはプラセボ投与群に1:1で無作為に割り付け、12時間ごとに5日間経口投与した。EPIC-HR試験は発症後3日以内の内服で入院・死亡リスクを大幅減 EPIC-HR試験の中間解析の結果、発症から3日以内に治療を受けた患者において、プラセボと比較して、本剤が投与された群ではCOVID-19関連の入院または何らかの原因による死亡のリスクが89%減少したことが示された(主要評価項目)。無作為化後28日目までで、本剤群の0.8%(3/389例)が入院し、死亡例はなかったのに対し、プラセボ群の7.0%(27/385例)が入院し、その後7例が死亡した(p<0.0001)。 EPIC-HR試験では、発症5日以内に投与された集団においても同様の傾向が見られ、本剤群では0.01%(6/607例)が入院・死亡例なしに対し、プラセボ群では6.7%(41/612例)が入院し、その後10例が死亡した(p<0.0001)。 1,881例を対象とした安全性コホートにおいて、治療に起因する有害事象は本剤群19%、プラセボ群21%と同等であり、そのほとんどは軽症だった。評価可能症例の中で、本剤はプラセボと比較して重篤な有害事象が少なく(1.7% vs.6.6%)、有害事象による試験中断も少なかった(2.1% vs.4.1%)。 なお、今回のEPIC-HR試験以外に第II/III相EPIC-SR試験(標準リスクを有する患者における評価)およびEPIC-PEP試験(曝露後の予防における評価)が進行中という。

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第85回 経口レムデシビルがフェレットのCOVID-19に有効~感染伝播も阻止

近い将来には、手軽に投与しうる経口薬が発症後間もない外来の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の治療のおそらく主流となっていくことを予感させるニュースが先週末に相次ぎました。木曜日には米国・メルク社の経口COVID-19薬molnupiravir(モルヌピラビル)の世界初の承認を英国医薬品庁(MHRA)や同社が発表し1,2)、その翌日金曜日にはそれに負けじとファイザー社が同じく経口のCOVID-19薬Paxlovid(PF-07321332+ritonavir)が第II/III相試験でCOVID-19患者の入院または死亡リスクを89%低下させたことを報告しました3)。ギリアド社が世に送り出したCOVID-19治療薬の先駆けレムデシビル(日本での販売名:ベクルリー)はより重症の患者向けで、点滴静注を要し、メルク社やファイザー社の経口薬とは違って外来患者には不向きです4)。そこでギリアド社は米国・ジョージア州立大学と協力し、メルク社やファイザー社の経口薬と同様に外来の初期段階のCOVID-19患者に使えるようにレムデシビルに一工夫施した化合物GS-621763を開発しています。GS-621763は経口投与でより吸収されやすく、レムデシビル静注後と同一の活性代謝物(GS-443902)を体内で生み出します。その効果のほどをイタチ科の哺乳類・フェレットで検討した研究成果が先週金曜日にネイチャー姉妹誌Nature Communicationsに掲載されました5)。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はフェレットに感染可能で、SARS-CoV-2感染フェレットはヒトのSARS-CoV-2感染特徴の多くを呈します。フェレットにGS-621763を1日2回経口投与したところSARS-CoV-2量が検出不可能な水準近くまで減りました。GS-621763はSARS-CoV-2の複製を効率よく阻止し、より広まりやすい(high transmissibility)ことで知られるSARS-CoV-2変異株VOC γ感染フェレットにGS-621763を投与したところ感染フェレットと同居するフェレットへの伝播を完全に防ぐことができました。GS-621763のような経口の抗ウイルス薬は世間で幅を利かす感染しやすいSARS-CoV-2変異株への強力な対抗手段となりうると著者は言っています4)。一番乗りの見返りは大きいどこの世界でも同じだと思いますが、一番乗りというのはやはり大事なことのようで、COVID-19薬市場を切り開いたレムデシビルは依然として世界でよく使われています。ギリアド社の直近の業績発表によると、今年9月末までの3ヵ月間(第3四半期)の同剤の売り上げは74億ドルであり、需要の増加を受けて昨年同期より13%多い額となりました6)。一番乗りが得をするのはワクチンでも同様なようです。米国FDA認可に最初に漕ぎ着けたファイザー社のCOVID-19ワクチンの第3四半期売り上げは100億ドルの大台を軽々と超える130億ドルであり7)、僅か1週間ほど遅れて二番目にFDA認可に達したモデルナ社のワクチンの同期売り上げ48億ドル8)を3倍近く引き離しています。今後もその差は開いていくようです。ファイザー社が今年1年間のCOVID-19ワクチンの売り上げを360億ドルへと上方修正したのとは対照的にモデルナ社は今年1年間のCOVID-19ワクチン出荷量予想を8~10億回投与分から7~8億回投与分に下方修正しています。モデルナ社のワクチンは心筋炎リスクの懸念にも大いに巻き込まれており、12~17歳小児への同社COVID-19ワクチンのFDA認可審査がその安全性懸念を背景にして長引いていることが先月10月末に発表されました9)。ファイザー社のCOVID-19ワクチンの同年齢層の小児への使用はすでに取り急ぎ認可または承認されています10)。COVID-19ワクチンの開発は失敗したもののCOVID-19経口薬の一番手となったメルク社とそれに肉薄するファイザー社の域にギリアド社の経口レムデシビルが辿り着くのにあとどれだけの時間を要するのかはわかりませんが、実現したとすれば、よく知った薬と根本は同じという馴染みの力を頼りに活躍の場を得ることができそうです。参考1)First oral antiviral for COVID-19, Lagevrio (molnupiravir), approved by MHRA / MHRA 2)Merck and Ridgeback’s Molnupiravir, an Oral COVID-19 Antiviral Medicine, Receives First Authorization in the World / BUSINESS WIRE 3)Pfizer’s Novel COVID-19 Oral Antiviral Treatment Candidate Reduced Risk of Hospitalization or Death by 89% in Interim Analysis of Phase 2/3 EPIC-HR Study / BUSINESS WIRE4)Gilead Sciences Inc. partners with Center for Translational Antiviral Research to test oral Remdesivir variant / Eurekalert5)Cox RM,et al Nat Commun. 2021 Nov 5;12:6415.6)Gilead Sciences Announces Third Quarter 2021 Financial Results / BUSINESS WIRE7)PFIZER REPORTS THIRD-QUARTER 2021 RESULTS / BUSINESS WIRE8)Moderna Reports Third Quarter Fiscal Year 2021 Financial Results and Provides Business Updates / BUSINESS WIRE9)Moderna Provides Update on Timing of U.S. Emergency Use Authorization of its COVID-19 Vaccine for Adolescents / BUSINESS WIRE10)Comirnaty and Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine / FDA

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