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第107回 自宅療養COVID-19患者へのまめな自動通知でパルスオキシメーターいらず?

ペンシルベニア大学が実施した無作為化試験の結果によると、自宅療養する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者にまめに通知して病状を把握して必要に応じて看護師等が事に当たる遠隔医療体制が整っていればパルスオキシメーターのような新手の装置の導入なしで入院や死亡を十分に防ぐことができるようです1,2)。2020年3月に同大学医学部(Penn Medicine)は自宅療養COVID-19患者を遠隔通信で見守る仕組みを開始しました。COVID Watchという名称のその取り組みでは呼吸困難の有無と体調はどうかを尋ねる文章通知が2週間のあいだ1日に2回自動配信されます。もし患者の呼吸がより困難になっているようであれば24時間対応チームの担当者から連絡があり3)、救急科(ED)に患者をすぐさま届けるか、遠隔での急診を手配するか、自宅での引き続きの様子見が指示されます。そのようにして入院が必要な悪化患者を容易に見つけ出し、あとは家で安全に過ごしてもらうCOVID Watchには開始以来のべ2万8,500人超の患者が参加しており、その効果は死亡率の低下となって現れています。COVID Watchで世話した患者3,448人とそうでない4,337人を比較したところ、30日間の死亡者数は前者ではわずか3人、後者では12人であり、COVID Watchは死亡率の実に68%低下と関連しました4,5)。COVID Watchでは悪化の兆しを患者の呼吸困難の自覚を頼りに読み取りますが、COVID-19患者が知らぬ間に被る低酸素状態をパルスオキシメーターで測定した酸素飽和度を頼りに把握して悪化を察知するのはさらに良さそうと考える向きもあります1)。COVID-19患者は呼吸困難などの発症に先立って血中酸素レベル低下を呈するとの報告があり、パルスオキシメーターでその低酸素を感知すれば入院が必要な患者をより早期に発見して急を要する治療をより素早く施して患者転帰を更に改善できるかもしれません。一見理にかなうパルスオキシメーターの使用はどうも抗いがたい説得力があるらしく、自宅療養COVID-19患者の遠隔体調把握の取り組みの多くでその使用が取り入れられています。しかしパルスオキシメーターの効果のほどの裏付けは乏しく、無作為化試験での検討はこれまでありませんでした。そこでペンシルバニア大学の研究者は2020年11月29日から去年2021年2月5日に募ったCOVID-19患者2,000人超をいつも通りのCOVID Watch手順のみの群かそれに加えてパルスオキシメーターも使ってもらう群に割り振って入院や死亡の予防効果を比較する無作為化試験を実施しました。その結果、余分な支出をしてパルスオキシメーターを使うひと手間の価値は残念ながら認められませんでした。試験参加から30日間を入院なしで生きながらえた日数平均の比較が試験の主な目的で、パルスオキシメーター使用群でのその日数はいつも通りのCOVID Watch手順群の29.5日とほぼ同じ29.4日であり、有意差はありませんでした。不安の程度も有意差はなく、パルスオキシメーターのおかげで患者はより安心して過ごせたというわけでもありませんでした。試験は体調の遠隔把握の取り組みに上乗せしてパルスオキシメーターを使った場合を検討したものであるという点を踏まえてその結果を解釈する必要があります。COVID Watchのような遠隔での世話を患者が受けられないのであれば自宅でのパルスオキシメーター使用は妥当な手段の一つとなり得るかもしれません。試験主導医師の一人Krisda Chaiyachati氏は次のように言っています2)。「自動配信の通知を利用する原始的な手段で遠隔対応すれば値が張る装置をあえて使わずとも十分に事足りるようです。自動通知を利用すればより少ない看護師の手配で多数のCOVID-19患者の世話が可能であり、そのような仕組みはCOVID-19に限らず他の病気の患者にも役立てられそうです」。他の病気にはたとえば高血圧、糖尿病、心不全などの慢性疾患が含まれます3)。参考1)Lee KC,et al. N Engl J Med. 2022 Apr 6. [Epub ahead of print]2)Pulse oximeters did not change outcomes for patients in COVID-19 monitoring program / Eurekalert3)Remote Monitoring of Patients with Covid-19: Design, implementation, and outcomes of the first 3,000 patients in COVID Watch. NEJM Catalyst. July 21, 20204)Delgado MK, et al.. Ann Intern Med. 2022 Feb;175:179-190. 5)Automated texting system saved lives weekly during first COVID surge / Eurekalert

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第96回 COVID-19レジストリ研究“ダッシュボード”公開/国立国際医療研究センター

<先週の動き>1.COVID-19レジストリ研究“ダッシュボード”公開/国立国際医療研究センター2.感染拡大を懸念し、新型コロナウイルス感染症対策分科会が緊急メッセージ3.医師大量退職の大津市民病院、理事長に次いで院長も辞任4.2021年の救命救急センター評価、S評価は96ヵ所/厚労省5.ヤングケアラー実態調査で小学6年生の15人に1人が家族の世話6.精神病院での身体拘束後の死亡事件、遺族と病院が和解1.COVID-19レジストリ研究“ダッシュボード”公開/国立国際医療研究センター国立研究開発法人 国立国際医療研究センターは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症例データベース研究「COVID-19 REGISTRY JAPAN(COVIREGI-JP)」に登録されたデータ等を活用したダッシュボードを公開した。COVID-19と診断され、日本国内の医療機関に入院した患者を対象として、以下の情報が登録されている。(1)基本情報(年齢、性別、出生国、人種、感染に関する疫学的情報、基礎疾患、内服歴・治療歴など)(2)入院や治療に関する情報(症状、入院期間、治療方法、血液・画像検査の結果など)(3)感染症に関する情報(COVID-19の検査結果、その他病原体検査結果など)(4)その他(妊婦:妊娠期間、妊娠中の異常、妊娠転帰/小児:出生歴、ワクチン接種の有無など)本研究は、国際感染症センターと全国700余りの医療機関が共同で6万3,000例以上の症例を登録し、わが国で最大級のCOVID-19入院患者データを蓄積するレジストリとなっている。今後も研究を推進させるため、引き続きデータ登録や研究への参画を呼びかけている。ダッシュボードでは、重症患者の推移、年齢男女構成、症状、併存疾患、薬物治療、呼吸補助治療、喫煙状況などを一覧することができる。2022年4月11日時点のダッシュボード画面画像を拡大する(参考)コロナ入院患者の症状推移や治療状況などまとめたサイト公開(NHK)COVIREGI-JPダッシュボード公開について~COVID-19・レジストリ登録データを見える化しました~(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター)2.感染拡大を懸念し、新型コロナウイルス感染症対策分科会が緊急メッセージ政府は8日、新型コロナウイルス感染症対策分科会を開催した。今後の急激な感染拡大を防止して、社会経済活動を継続するための緊急メッセージを発信し、国民へ可能な限り早めの3回目接種などを呼び掛けた。まん延防止等重点措置の解除後、わが国でも海外と同様に、陽性者でオミクロン株BA.2が占める割合が増加し、感染再拡大の兆候が見られているため、適切なマスク着用など基本的感染対策の徹底が求められる。また、医療機関や自治体に対しては、高齢者施設で感染が疑われる人が出た場合、早期の医療介入や施設での感染対策のために手厚い支援をするよう求めている。(参考)高齢者対策重点に 感染急拡大で医療逼迫も 分科会(産経新聞)急拡大防止“追加接種やマスク着用を”分科会が緊急メッセージ(NHK)第7波対策、分科会で議論 社会経済活動の制限に賛否(日経新聞)3.医師大量退職の大津市民病院、理事長に次いで院長も辞任京都大学から派遣されている外科・消化器外科・乳腺外科などの医師19人の相次ぐ退職見込みが報道されている滋賀・大津市民病院は、若林 直樹院長が一連の責任をとる形で辞任することを明らかにした。後任の院長には、京都府立医大出身の日野 明彦氏(現・済生会滋賀県病院 院長補佐)が4月18日に就任する。なお、院長を辞任した若林氏は副理事長として、引き続き病院運営や診療に携わり新院長をサポートしていくとされる。一方、後任の理事長はまだ決まっておらず、大津市長が人選を急いでいる。(参考)大津市民病院 院長辞任発表“多くの医師退職問題で責任とる”(NHK)院長辞任→院長代行に 大津市民病院(読売新聞)大津市民病院の院長が辞任「責任を痛感」 医師大量退職問題、副理事長は継続(京都新聞)4.2021年の救命救急センター評価、S評価は96ヵ所/厚労省厚生労働省が、2021年「救命救急センターの充実段階評価の評価結果」を公表した。全国298ヵ所の救命救急センターが対象に行われた本調査は、1999年度から救命救急センター全体のレベルアップを図ることを目的として実施されており、最もランクの高い「S」評価を得たのは、東北大学病院、福島県立医科大学附属病院、筑波大学附属病院、自治医科大学附属病院、埼玉医科大学総合医療センター、手稲渓仁会病院、東京都立墨東病院、亀田総合病院、慈泉会相澤病院など96ヵ所。評価としては「A」が196ヵ所で最も多く、「B」は5ヵ所、「C」は1ヵ所となっている。評価の結果は、救命救急センター運営事業費の補助額と診療報酬に反映される。たとえば診療報酬では、「S」評価であれば救命救急入院料に救急体制充実加算1(1,500点)、「A」なら同加算2(1,000点)、「B」なら同加算3(500点)がそれぞれ上乗せされる。(参考)2021年の救命救急センターの評価、S:96か所、A:196か所、B:5か所、C:1か所に―厚労省(Gem Med)21年の充実段階評価「S」、救命センター96カ所「C」は1カ所、厚労省(CB news)5.ヤングケアラー実態調査で小学6年生の15人に1人が家族の世話厚労省は今年1月、介護など家族の世話をしている子供や若者(ヤングケアラー)の実態調査を行った。その結果、小学6年生の15人に1人、大学3年生では16人に1人が実際に家族の介護などをしていることが明らかとなった。平日1日あたり7時間以上を費やすと回答したヤングケアラーは7.1%であり、割合は家事や幼い兄弟姉妹の世話が多く、学業や健康面への影響が心配だ。(参考)“ヤングケアラー”国が初調査 小学生15人に1人「家族を世話」(NHK)ヤングケアラー、小6の15人に1人 1日7時間費やす例も 厚労省調査(日経新聞)小学生の15人に1人はヤングケアラー 長時間ケアが学校生活に影響(朝日新聞)6.精神病院での身体拘束後の死亡事件、遺族と病院が和解東京都足立区の精神科病院で、患者(当時54歳)が死亡したのは違法な身体拘束によるものとして、遺族が病院側に約6,200万円の損害賠償を求めた訴訟があり、東京高裁(足立 哲裁判長)で4月7日に和解が成立した。被告となった病院は、再発防止に努めるとともに、解決のため和解金を支払うこととなったが、金額は明らかにされていない。東京地裁の判決によると、双極性障害と診断されていた患者が2016年1月、足立区内の精神科病院を受診し、夫の同意下で入院したが、医療者側の指示に従わないため、医師の指示によって両腕・胴の拘束を開始した。7日後に解除されたが、直後に容体が急変し、肺塞栓症にて亡くなった。(参考)身体拘束後死亡、遺族と病院和解 東京高裁(日経新聞)身体拘束後に死亡、精神科病院側と遺族が和解 「一層の配慮」を約束(朝日新聞)

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妊娠中のコロナワクチン接種、周産期アウトカムへの影響は?/JAMA

 妊娠中の女性に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンを接種しても、妊娠終了後の接種や非接種と比較して、母子における有害な周産期アウトカムのリスクの増加はほとんどみられないことが、カナダ・オタワ大学のDeshayne B. Fell氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2022年3月24日号に掲載された。オンタリオ州の後ろ向きコホート研究 研究グループは、妊娠中のCOVID-19ワクチン接種の、周産期のアウトカムに及ぼす影響の評価を目的に、人口ベースの後ろ向きコホート研究を行った(カナダ公衆衛生庁の助成を受けた)。 解析には、カナダ・オンタリオ州のCOVID-19予防接種データベース(COVaxON)と連携させた出生レジストリ(Better Outcomes Registry & Network[BORN] Ontario)の2020年12月14日~2021年9月30日のデータが用いられた。 被験者は、妊娠中に少なくとも1回のCOVID-19ワクチン接種を受けた群、妊娠終了後に接種を開始した群、接種の記録がない群の3群に分けられた。 主要アウトカムは、母親では分娩後出血、絨毛膜羊膜炎、帝王切開による分娩(全体および緊急時)、新生児では新生児集中治療室(NICU)入室、分娩5分後の新生児Apgarスコア低値(7点未満)の発生とされた。リスク増大なし、ほとんどがmRNAワクチンである点に留意 9万7,590人(平均年齢 31.9[SD 4.9]歳)の妊婦が解析に含まれた。2万2,660人(23%)が妊娠中に少なくとも1回のワクチン接種を受け、このうち63.6%は妊娠第3期(妊娠期間中央値213日[在胎週数30週])に1回目の接種を受けており、99.8%(BNT162b2[Pfizer-BioNTech製]79.9%、mRNA-1273[Moderna製]19.9%)がmRNAワクチンであった。 これら妊娠中接種群は、妊娠終了後接種群(4万4,815人)と比較して、5つの有害な周産期アウトカムについて、統計学的に有意なリスクの増加は認められなかった。 すなわち、分娩後出血の発生率は、妊娠中接種群が3.0%、妊娠終了後接種群も3.0%(補正後群間リスク差:-0.28/100人[95%信頼区間[CI]:-0.59~0.03]、補正後リスク比:0.91[95%CI:0.82~1.02])で、絨毛膜羊膜炎はいずれも0.5%(-0.04/100人[-0.17~0.09]、0.92[0.70~1.21])と両群に差はなく、帝王切開による分娩は30.8%および32.2%(-2.73/100人[-3.59~-1.88]、0.92[0.89~0.95])と、妊娠中接種群のほうが低かった。また、新生児の2つのアウトカムはいずれも妊娠中接種群でリスクが低く、NICU入室は11.0%および13.3%(-1.89/100人[-2.49~-1.30]、0.85[0.80~0.90])、分娩5分後Apgarスコア低値は1.8%および2.0%(-0.31/100人[-0.56~-0.06]、0.84[0.73~0.97])だった。 また、非接種群(3万115人)と比較した場合の、妊娠中接種群における有害な周産期アウトカムの発生のリスクは以下のとおりであり、妊娠終了後接種群との比較とほぼ同程度であった。 分娩後出血(3.0% vs.3.4%、補正後リスク差:-0.32/100人[95%CI:-0.64~-0.01]、補正後リスク比:0.90[0.81~1.00])、絨毛膜羊膜炎(0.5% vs.0.3%、0.07/100人[-0.04~0.19]、1.20[0.90~1.59])、帝王切開による分娩(30.8% vs.28.5%、-0.97/100人[-1.81~-0.14]、0.97[0.94~1.00])、NICU入室(11.0% vs.12.8%、-0.93/100人[-1.52~-0.35]、0.92[0.87~0.97])、分娩5分後Apgarスコア低値(1.8% vs.2.0%、-0.23/100人[-0.47~0.02]、0.88[0.77~1.01])。 著者は、「これらの結果を解釈する際は、妊娠中のワクチン接種の多くは妊娠第2~3期に接種されたmRNAワクチンである点に留意する必要がある」としている。

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回復期患者血漿、ワクチン未接種のコロナ外来患者に有効か?/NEJM

 多くがワクチン未接種の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の外来患者において、症状発現から9日以内の回復期患者血漿の輸血は対照血漿と比較して、入院に至る病態悪化のリスクを有意に低減し、安全性は劣らないことが、米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のDavid J. Sullivan氏らが実施した「CSSC-004試験」で確認された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年3月30日号に掲載された。米国23施設の無作為化対照比較試験 本研究は、COVID-19外来患者の重篤な合併症の予防における回復期患者血漿の有効性の評価を目的とする二重盲検無作為化対照比較試験であり、2020年6月3日~2021年10月1日の期間に、米国の23施設で参加者の登録が行われた(米国国防総省などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)陽性で、COVID-19の症状発現から8日以内の外来患者であり、病態悪化のリスクやワクチン接種の有無は問われなかった。 被験者は、回復期患者血漿または対照血漿の輸血を受ける群(両群とも約250mLを単回投与)に、1対1の割合で無作為に割り付けられ、登録後24時間以内に約1時間をかけて輸血された後、30分間の経過観察が行われた。 対照血漿には、2019年に献血で得られたか、2019年12月以降にSARS-CoV-2陰性と判定された集団から得られた血漿が用いられた。 主要アウトカムは、輸血から28日以内のCOVID-19関連入院とされた。相対リスクが54%低下 1,225例(SARS-CoV-2陽性の判定はRNA検出が87%、抗原検出が13%)が無作為化の対象となり、このうち実際に輸血を受けた1,181例(年齢中央値43歳、65歳以上7%、50歳以上35%、女性57%[3例の妊婦を含む]、症状発現から輸血までの期間中央値6日)が修正intention-to-treat解析に含まれた(回復期患者血漿群592例、対照血漿群589例)。 ワクチンは、未接種が回復期患者血漿群83.3%、対照血漿群81.7%、部分接種がそれぞれ4.6%および5.3%、完全接種は12.2%および13.1%であった。 28日以内のCOVID-19関連入院は、回復期患者血漿群が592例中17例(2.9%)で認められ、対照血漿群の589例中37例(6.3%)と比較して有意に良好で(絶対リスク低下率:3.4ポイント、95%信頼区間[CI]:1.0~5.8、p=0.005)、相対リスクが54%低下した。1回の入院を回避するのに要する治療必要数は29.4例だった。 回復期患者血漿群の12例と対照血漿群の26例で、病態の悪化により酸素補給が行われた。対照血漿群の3例が、入院後に死亡した。 両群を合わせた入院患者54例のうち53例はワクチン未接種で、残りの1例は部分接種であり、完全接種はなかったため、ワクチン接種者における有効性の評価はできなかった。 Grade3/4の有害事象は89件発現し、回復期患者血漿群が34件、対照血漿群は55件であった。非入院患者では、16件のGrade3/4の有害事象が認められ、それぞれ7件および9件だった。 著者は、「これらの結果は、とくにワクチン配布に不均衡がみられる医療資源が乏しい地域において、公衆衛生上の重要な意味を持つ」とし、「将来のCOVID-19の世界的流行を想定すると、回復期患者血漿を迅速に投与できる輸血センターの設立が考慮すべき課題となるだろう。また、現在の世界的流行においても、モノクローナル抗体に対する耐性を持つSARS-CoV-2変異株が伝播し続けていることから、とくに地域で得られた最近の血漿には、循環する株に対する抗体が含まれるため、COVID-19回復期患者血漿の入手と配布の能力の開発が、有益性をもたらす可能性がある」と指摘している。

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第103回 24年度まで無料延長!今がチャンスの風疹抗体検査とワクチン接種

前回、新型コロナウイルス感染症の3回目接種の進捗が低調なのではないかと本連載で触れたが、以下の記事によると、実際にそうらしい。「ワクチン3回目、遅れる現役世代 対象の2割が未接種」(日本経済新聞)記事では3月末までに3回目の接種時期を迎えた現役世代の4人に1人は未接種とのデータを紹介。その背景について厚生労働省は副反応への懸念があると見ているとのこと。前回はそうした可能性があることを踏まえ、メッセンジャーRNAワクチンに比べて接種者が自覚する副反応頻度がやや低い「組み換えタンパクワクチン」の承認を急ぐべきだと私は主張したが、どうやらその点は実現しそうな見込みである。一方、岸田 文雄首相はワクチンの3回接種完了者向けにコンサートやスポーツ観戦などのイベントに割引を適用する「ワクワクイベント事業」の展開を検討していると報じられている。すでにこの種の振興事業に関しては、「Go To トラベル事業」の代替措置として観光庁が支援している「県民割」がある。これは新型コロナの感染状況がステージII以下の自治体で、新型コロナワクチンの2回接種完了あるいはPCR検査などの陰性を条件に居住県内あるいは隣接県への旅行代金を最大7割引にするというもので、4月6日現在、全国39道府県で実施中だ。4月1日からはこれが自県や隣接県のみならず、全国を6つに分けた地域ブロック内の旅行でも適用する「ブロック割」となり、条件も新型コロナワクチンの3回接種完了あるいはPCR検査などの陰性に切り替えられている(ただし、県内旅行の場合は知事の判断で従来のワクチン2回接種かPCR検査などの陰性結果の条件でも可)。この種の経済インセンティブによる「ニンジンをぶら下げ」手法には反発もあるようだが、行動変容などを促す場合にはある程度は必要だと個人的には思っている。さらに言えば、私はこのインセンティブ策を現在中断している「Go To Eat」へも拡大するとより効果的ではないかと考えている。ご存じのように、コロナ禍では飲食業界は新型インフルエンザ等特措法に基づく都道府県の営業自粛要請で最も大きな打撃を受けている。その意味では自粛要請期間すべてにきちんと応じた飲食店のみを対象に、前述のコロナワクチン接種の完了あるいは検査陰性を条件に飲食で割引が受けられるなどお得に使えるクーポン発行などをするという具合だ。ちなみにこうしたインセンティブ政策は、群馬県などのように地方自治体独自で行っているものもある。そうしたなかでさらに私見ではあるが、今回の新型コロナワクチンのインセンティブ策に乗っかる形で、時限措置としてインセンティブを与えたほうが良いのではないかと考えていることがある。それは中年男性への風疹ワクチン接種事業である。国内では2012~13年と2018~19年に風疹の大流行があり、その中核が過去に定期接種の機会がなく抗体保有率が低い中年男性だったことから、該当する1962年4月2日~79年4月1日生まれの男性約1,500万人を対象に無料抗体検査とその検査で風疹ウイルスに対する抗体価が低いと判断された場合のワクチン接種のクーポンが配布されてきた。この事業は本来ならば2021年度末で終了予定だったが、これまで検査を受けた人が約350万人と対象人口に比してかなり低い水準にとどまっていることから、2024年度末まで延長されることが決まった。コロナ禍による受診控えやワクチン接種がコロナにばかり注目が集まるなど、風疹ワクチン接種をめぐってはやや不運な状況が続いている。もっとも新型コロナをきっかけに良くも悪くもワクチンという存在に社会的注目が集まっていることや、4月からのヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種勧奨再開などを踏まえれば、ワクチンを巡る状況にはフォローウインドの側面もある。中年男性への風疹ワクチン接種事業は対象も限定的なため、経済的インセンティブ措置を講じる場合も予算規模はより小さくて済む。さらにやや余計な物言いかもしれないが、風疹ワクチンが細胞性免疫の賦活効果が高い生ワクチンであることを考えれば、接種者では風疹以外の感染症への副次的効果も期待できる。その意味では今こそ風疹ワクチンの接種キャンペーンを行う絶好の機会だと思うのだ。

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新型コロナへのイベルメクチン、RCTの結果が明らかに/NEJM

 早期に診断された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者において、イベルメクチンで治療してもCOVID-19進行による入院の発生率や救急外来での観察期間延長は低下しないことが、ブラジル・Pontifical Catholic University of Minas GeraisのGilmar Reis氏らが実施した無作為化二重盲検プラセボ対照アダプティブプラットフォーム試験「TOGETHER試験」の結果、示された。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の急性症状を呈するCOVID-19外来患者に対するイベルメクチンの有効性は不明であった。NEJM誌オンライン版2022年3月30日号掲載の報告。入院/救急外来受診患者でイベルメクチンvs.プラセボ 研究グループは、ブラジルの公衆衛生クリニック12施設において、COVID-19の症状発現後7日以内の18歳以上の外来患者のうち、糖尿病、降圧療法を要する高血圧、心血管疾患、肺疾患、50歳以上などのリスク因子のうち少なくとも1つを有する患者を、イベルメクチン(400μg/kgを1日1回3日間投与)群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、無作為化後28日以内のCOVID-19による入院またはCOVID-19悪化による救急外来受診(救急外来での>6時間の経過観察と定義)の複合アウトカムとした。主要評価項目のイベント発現率は14.7% vs.16.3%、有意差なし 2021年3月23日~8月6日の間に、イベルメクチン群(679例)またはプラセボ群(679例)に割り付けられた1,358例が解析に含まれた。 主要評価項目のイベントは、イベルメクチン群で100例(14.7%)、プラセボ群で111例(16.3%)確認され、相対リスクは0.90(95%ベイズ信用区間[CrI]:0.70~1.16)であった。主要評価のイベント計211例のうち、171例(81.0%)が入院であった。 少なくとも1回のイベルメクチンまたはプラセボの投与を受けた患者のみを解析対象とした修正intention-to-treat解析(相対リスク:0.89、95%ベイズCrI:0.69~1.15)、ならびに割り付けられた治療のアドヒアランスが100%の患者のみを解析対象としたper-protocol解析(0.94、0.67~1.35)でも、主解析と同様の結果が得られた。 イベルメクチン投与による副次評価項目または有害事象への有意な影響は観察されなかった。

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3回目接種情報サイトを開設/モデルナ・ジャパン

 2022年4月4日、モデルナ・ジャパン株式会社(以下モデルナ社)はCOVID-19ワクチンの3回目接種を啓発・支援するため、新型コロナウイルスワクチン3回目接種情報サイト「どうする3回目接種?」を開設したことを公表した。 同サイトでは、ワクチン3回目の追加接種についての疑問や悩みに答えるべく、3つの知っておきたいこと(「3回目接種の必要性」、「交互接種について」、「3回目接種の副反応」)に関して、わかりやすい情報と動画を掲載。柔道家のウルフ・アロン氏、パラトライアスリートの谷真海氏がインタビュアーとしてそれぞれの目線で質問し、医師が解説する動画を視聴することができる。解説役はさくら・はるねクリニック銀座/順天堂大学 富坂美織氏、桜新町アーバンクリニック 遠矢純一郎氏の2名が務める。 モデルナ社はよりわかりやすい情報提供を通じて、3回目のワクチン接種の啓発と理解促進につながることを期待しているという。新型コロナウイルスワクチン3回目接種情報サイト「どうする3回目接種?」

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第103回 医師の働き方改革まであと2年、求められる「医師独自の宿日直許可基準」

2024年4月からスタートする「医師の働き方改革」。その課題の一つとして医療機関側が挙げているのが医師(勤務医)の宿日直許可基準だ。日本医師会や、日本病院会などの四病院団体協議会、全国有床診療所連絡協議会の計6団体は3月18日、現状の許可基準のままでは地域の医療提供体制を縮小せざるを得なくなるなどと、許可基準の緩和などを求める要望書を後藤 茂之・厚生労働大臣に提出した。しかし、要望内容は経営者寄りで、勤務医の健康を考慮していないなどの指摘もされている。病院医療・地域医療を維持しながら、勤務医の健康を守るには、機械的な許可基準の適用ではなく、現場の実態を把握したうえでの対応が求められる。時間外労働の上限規制施行まで2年しかない同改革について振り返ってみる。2019年に働き方改革関連法が施行されたが、医師の勤務環境改善には5年の猶予が与えられ、2024年の施行と先延ばしされた。同年4月には、すべての勤務医に対して新たな時間外労働の上限規制が適用される。原則は年間960時間以下(A水準)だが、救急医療など緊急性の高い医療を提供する医療機関(B水準:地域医療暫定特例水準)や、研修医など集中的に多くの症例を経験する必要がある医師(C水準:集中的技能向上水準)は年間1,860時間以下の上限が適用される。また、医療機関の管理者には追加的健康確保措置を講じる義務が課される。それは28時間までの連続勤務時間制限、9時間以上の勤務間インターバル、代償休息、面接指導と必要に応じた就業上の措置(勤務停止)などだ。これらを実行するために、すべての病院が勤務医の労働内容の整理や労働時間の正確な把握、タスク・シフティング(業務移管)、36協定の締結、宿日直許可の取得などを進めていかなければいけない。現状の宿日直許可基準では病院存続も難しい宿日直は医療機関側が労働基準監督署に申請し、許可を得なければならない。対象業務は以下の条件を満たしていることが必要だ。(1)通常の勤務時間から完全に解放された後のものである。(2)一般の宿日直業務以外には、特殊な措置を必要としない軽度または短時間の業務に限る。(3)一般の宿日直許可条件(原則として宿直が週1回、日直が月1回以内など)を満たしている。(4)宿直の場合は十分な睡眠がとり得る。宿日直許可が認められないと、夜勤などは労働時間(時間外労働)と扱われ、960時間や1,860時間の上限規制をクリアすることは難しくなる。上限規制時間を超えれば、違法となり、割増賃金の負担も大きくなる。賃金負担から当直医の確保が困難になれば、病院としての存続も難しくなるだろう。これに対して前述の6団体は、医療機関からは「現状の許可基準では宿日直許可を取得できない」との声が上がっていると指摘。医師の宿日直は一般業種とは異なり、(1)救急外来、入院患者対応など気を張り詰めた業務が一定程度発生する。(2)宿日直中であっても、応召義務があるため対応しなければならない。(3)多くの医療機関が、大学病院からの応援に依存している。という特殊性を挙げた。そのうえで、現状の許可基準のままで、罰則付きの時間外労働の上限規制や、勤務間インターバル規制、連続勤務時間制限が導入されると、次のような懸念が生じるとした。▽上限規制を遵守するために医療提供体制を縮小せざるを得なくなる。▽上限規制により大学から他の医療機関への応援が制限されると、副業・兼業先からの収入が得られなくなった大学病院の医師が離職して、処遇の良い一般病院に移る動きが起こる。これにより、大学病院の診療・研究・教育の質の確保が困難になる。▽上限規制により大学から他の医療機関への応援が制限されると、副業・兼業先からの収入が得られなくなった大学病院の医師が離職して、処遇の良い一般病院に移る動きが起こる。これにより、大学病院の診療・研究・教育の質の確保が困難になる。医療団体は許可の判断基準・回数の緩和、罰則規定の猶予を要望「まだ続く新型コロナウイルスへの対応と、働き方改革への準備という極めて大きな2つの課題に同時に取り組むことを現場に求めるのは、現実的には非常に厳しい」としたうえで、「医師独自の宿日直許可基準」の策定を求め、以下の要望を行った。詳しく見てみる。1.宿日直許可の判断基準の緩和(1)各医師について「宿直時の睡眠時間が十分でない日」(例えば6時間未満など)が「月5日以内」であれば、宿日直を許可する。(2)宿日直中に救急などの業務が発生する場合でも、当該業務時間が「平日の業務時間と比べて一定程度の割合に収まっている」場合であれば、宿日直を許可する。(3)「とくにローリスクな分娩」が主となる産科医療機関では、分娩数にかかわらず、宿日直を許可する。ハイリスクな分娩を行う産科医療機関では、「宿日直中の分娩などの対応が月8~12件程度」であれば、宿日直を許可する。2.宿日直許可の回数の緩和(1)医師の健康に配慮しつつ、「地域医療提供体制を維持する」ために、各医師の宿直を月8回、日直を月4回まで許可する。(2)上記の宿日直回数は「他の医療機関に宿日直の応援に行く場合」と分けて取り扱う。(3)各医師の連日の「宿日直」を認める。3.行政の対応医師独自の宿日直許可基準を設定・明確化し、対応の統一を図る。実態に沿わない判断が出された場合、「相談窓口」を厚労省に設けてほしい。4.罰則規定の取り扱い許可基準を見直したとしても、全国の医療機関は新型コロナ対応にあたっており、働き方改革に取り組める状況にないことから、時間外労働の上限規制の罰則適用を数年猶予してほしい。地域医療も勤務医の健康も共に守る方途は少子高齢化が進む中、日本は先進国の中でも勤務医が慢性的に不足。医師の偏在と相まって過重労働の原因になっている。長時間労働や睡眠不足、ストレスは医療の質を落とすだけでなく、医療ミスの可能性を高める。昨今はコロナ禍で、医療の最前線で働く医師は感染リスクと隣り合わせにあり、精神的な緊張感が一層高まっている。医師の働き方を改善し、勤務環境を整備することは不可欠だ。医療機関の経営者からは「宿日直許可基準が厳格に運用されれば、地域医療提供体制、とりわけ救急医療や産科医療の提供体制が崩壊する」という声が聞こえる。だが、6団体の要望は「経営者寄りの要望で、現場の医師にとっては厳しい内容だ」との指摘もある。地域医療も、勤務医の健康も共に守るには、現場の実態に即して双方が納得できる「医師独自の宿日直基準」の策定が必要だろう。

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無症状の濃厚接触者、「抗原検査が陰性なら出勤」は正しい?

 家庭内感染により自身が濃厚接触者になっても、医療者は抗原検査で陰性が確認されているなどの一定の要件を満たせば出勤することができる1)。ところが抗原検査キットには、有症状の患者データを基に承認されている物2)3)もある。また、海外では無症状者のみを対象にスクリーニングすると感度や特異性が低いとの評判も抗原検査キットにはある。そこで、米国・Weill Cornell MedicineのBradley A. Connor氏らはニューヨークのある企業の従業員をスクリーニングし、無症状者のPCR検査と抗原検査の結果の有効性と推定精度を比較・分析した。その結果、従業員スクリーニングのプログラム参加者に抗原検査を繰り返した場合、新型コロナウイルスのPCR検査で真陽性と判定される推定精度が38%から92%に増加したことが示唆された。JAMA Network Open誌3月18日号のリサーチレターでの報告。無症状者の抗原検査キット、1回目陽性で2回目陰性だった人の95%はPCR陰性 この後ろ向き研究では2020年11月27日~2021年10月21日の期間、訓練を受けた担当者が参加者の中鼻甲介検体をスワブで採取し、抗原検査キットとしてQuidel社のSofia2 SARS Antigen Fluorescent Immunoassay(陽性一致率[PPA]:96.7%、陰性一致率[NPA]:100%)とAbbott 社のLumiraDx(PPA:97.6%、NPA:96.6%)、およびAbbott 社のBinaxNOW(PPA:84.6%、NPA:98.5%)を使用して検査を行った。ただし、新型コロナウイルス感染症の主要な症状をいずれかでも有する者はスクリーニングから除外された。 また、抗原検査結果が陽性だった場合には、最初の検査結果から1時間以内に2回目の抗原検査用に鼻咽頭スワブ検体を提供した。さらに鼻咽頭スワブ検体は、確認用RT-qPCR検査のために、CLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendments)認定された検査機関にも送られた。推定精度として、PCR検査も陽性だった2回目の抗原検査陽性の割合を算出した。 無症状者の抗原検査の有効性と推定精度を比較・分析した主な結果は以下のとおり。・抗原検査を受け、分析に含まれたのは17万9,127例で、年齢中央値は36歳(範囲:18~65歳)、男性が58%、女性が36%、6%が性別不明だった。・2020年11月~2021年10月に実施された抗原検査の陽性率は0.35%(623例)で、彼らをPCR検査したところ、38%(238例)が真陽性、62%(385例)が偽陽性だった。・抗原検査の陽性者623例のうち569例(91%)では2回目の抗原検査が行われた。一致した結果が得られた224セット(異なる2つの抗原検査で連続して陽性結果を得た)のうち、PCR検査で陽性だったのは207セット(92%)だった。・最初の抗原検査が陽性で、2回目の抗原検査が陰性だった345例のうち328例(95%)はPCR検査で陰性だった。・2回目の抗原検査の全体的な推定精度は94%だった。

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妊婦への新型コロナワクチン、胎児への悪影響なし/JAMA

 妊娠中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチンの接種は、非接種者と比べて有害妊娠アウトカムのリスク増大と有意に関連しないことが示された。ノルウェー・Norwegian Institute of Public HealthのMaria C. Magnus氏らが、スウェーデンとノルウェーの妊婦約16万人を対象に行った、後ろ向きコホート試験の結果を報告した。結果について著者は「ワクチン接種の大多数は、妊娠第2~3期にmRNAワクチンを使用して行われており、今回の調査結果で考慮すべき点である」と述べている。妊娠中の新型コロナワクチンの安全性に関するデータは限定的であった。JAMA誌オンライン版2022年3月24日号掲載の報告。スウェーデン10万人超、ノルウェー5万人超を対象に試験 研究グループはスウェーデンとノルウェーでレジストリベースの後ろ向きコホート試験を行い、妊娠中の新型コロナワクチン接種後の有害妊娠アウトカムのリスクを調べた。被験者は、スウェーデンで2021年1月1日~2022年1月12日に、またノルウェーで2021年1月1日~2022年1月15日に、妊娠22週以降で単胎児を出産した妊婦15万7,521人(スウェーデン:10万3,409人、ノルウェー:5万4,112人)。 Pregnancy Register in SwedenとMedical Birth Registry of Norwayを、ワクチン接種およびその他のレジストリと結びつけ、ワクチン接種情報や被験者背景に関する情報を入手し解析した。mRNAワクチン(BNT162b2[Pfizer-BioNTech製]、mRNA-1273[Moderna製])および1バイアルベクターワクチン(AZD1222[AstraZeneca製])に関するデータは、全国ワクチンレジストリから得た。 主要評価項目は、早産と死産リスクで、妊娠日齢やワクチン接種(時間依存性曝露)を変数に用いたCox回帰モデルを用いて評価し、低出生体重児、アプガー指数低スコア、新生児入院のリスクは、ロジスティック回帰分析で評価。ランダム効果モデルメタ解析で、2国間の結果を統合した。妊娠中COVID-19ワクチン接種率は18% 被験者の分娩時平均年齢は31歳だった。妊娠中に新型コロナワクチンを接種したのは2万8,506人(18%)で、うちBNT162b2が12.9%、mRNA-1273が4.8%、AZD1222が0.3%だった。接種時期の内訳は、妊娠第1期が0.7%、第2期が8.3%、第3期が9.1%だった。 妊娠中の新型コロナワクチン接種は、早産(非接種群6.2/1万妊娠日vs.接種群4.9/1万妊娠日、補正後ハザード比[aHR]:0.98[95%信頼区間[CI]:0.91~1.05]、I2=0%、異質性のp=0.60)、死産(2.1 vs.2.4/10万妊娠日、aHR:0.86[95%CI:0.63~1.17])、低出生体重児(7.8% vs.8.5%、群間差:-0.6%[95%CI:-1.3~0.2]、補正後オッズ比[aOR]:0.97[95%CI:0.90~1.04])、アプガー指数低スコア(1.5% vs.1.6%、群間差:-0.05%[95%CI:-0.3~0.1]、aOR:0.97[95%CI:0.87~1.08])、新生児入院(8.5% vs.8.5%、群間差:0.003%[95%CI:-0.9~0.9]、aOR:0.97[95%CI:0.86~1.10])の有害妊娠アウトカムについて、いずれもリスク増大との有意な関連は認められなかった。

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小児へのファイザー製ワクチン、オミクロン株でも重症化に有効/NEJM

 BNT162b2(Pfizer-BioNTech製)ワクチンは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン変異株に関連した入院リスクを、5~11歳の小児で約3分の2に低減することが示された。12~18歳の青少年では、2回接種の入院に対する保護効果は、デルタ変異株よりもオミクロン変異株で低下したが、いずれの変異株についてもワクチン接種による重症化を予防する効果が認められたという。米国疾病予防管理センター(CDC)のAshley M. Price氏らによる診断陰性症例対照試験の結果で、NEJM誌オンライン版2022年3月30日号で発表された。5~11歳、12~18歳のCOVID-19入院・重症化に対するワクチン有効性を推定 研究グループは、診断陰性デザインによる症例対照試験で、検査で確定した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院および重症化(生命維持装置使用や死亡に結び付くなど)へのワクチンの有効性を評価した。 2021年7月1日~2022年2月17日にかけて、米国23州・31ヵ所の病院で、COVID-19患者とその対照(非COVID-19患者)を登録。COVID-19患者と対照における、ワクチン完全接種群(mRNAワクチンBNT162b2を2回接種から2週間以上経過)と非接種群のオッズ比を比較し、ワクチン有効性を推定した。オッズ比比較は、12~18歳の患者でワクチン接種からの経過期間別に、また5~11歳と12~18歳の患者ではデルタ変異株流行期間(2021年7月1日~12月18日)とオミクロン変異株流行期間(2021年12月19日~2022年2月17日)それぞれについて行った。デルタ変異株流行期、12~18歳の入院に対するワクチン有効性は92~93% COVID-19患者群1,185例(1.043例[83%]がワクチン未接種、生命維持装置使用291例[25%]、死亡14例)、対照群1,627例が試験に登録された。 デルタ変異株流行期間中、12~18歳のCOVID-19入院に対するBNT162b2ワクチン有効性は、ワクチン接種後2~22週間で93%(95%信頼区間[CI]:89~95)、23~44週間で92%(80~97)だった。 オミクロン変異株流行期間中、12~18歳(ワクチン接種からの経過日数中央値:162日)のCOVID-19入院に対するワクチン有効性は40%(95%CI:9~60)、重症化に対しては79%(51~91)であり、非重症化に対しては20%(-25~45)だった。 オミクロン変異株流行期間中の5~11歳のCOVID-19入院に対するワクチン有効性は、68%(95%CI:42~82、ワクチン接種からの経過日数中央値:34日)だった。

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3回目接種後の心筋炎、若年者での発生状況とその転帰/JAMA

 とくに若い男性で、ごく稀ではあるもののmRNAワクチン接種後の心筋炎の発生が報告されている。1回目よりも2回目接種後に多い傾向が報告されているが、3回目接種後の発生率についてのデータは十分でない。イスラエル国防軍医療部隊のLimor Friedensohn氏らは、同軍の新兵における3 回目のワクチン接種と心筋炎リスクとの関連について、解析結果を報告。JAMA誌オンライン版2022年3月17日号にリサーチレターとして掲載された。 2021年8月15日、イスラエル国防軍(IDF)は、ファイザー社のBNT162b2ワクチンによる3回目接種を開始した。本研究では、2021年9月30日までにBNT162b2の3回目接種を受け、2021年10月14日までに心筋炎と診断されたすべての軍人を対象としている。心筋炎が疑われる症例はすべて病院に紹介され、診断は、臨床検査、心電図、心エコー、心臓MRI所見に基づき行われた。すべての診断は、独立した心臓専門医によって再確認されている。集計データをもとに、ワクチン接種後1週間と2週間における心筋炎発症率を算出した。 主な結果は以下の通り。・12万6,029人のIDF隊員がBNT162b2ワクチンによる3回目接種を受けた。・男性の79%、女性の90%が18~24歳だった。・追跡期間中、9例(すべて若い男性)が心筋炎と診断された。1例はCOVID-19後に発生したため除外され、残りの8例は診断時のRT-PCR検査で陰性だった。・4例は接種後1週間以内に、3例は接種後8~10日目、1例は接種後2週間以上経ってから症状が出た(解析からは除外)。・全例で不整脈やうっ血性心不全の兆候はなく、軽症だった。また退院時に心臓に損傷が残っていないことも確認された。・3回目のワクチン接種後1週間および2週間における心筋炎の発生率は、それぞれ10万回接種当たり3.17(95%CI:0.64~6.28)および5.55(95%CI:1.44~9.67)だった。・心筋炎の症例はすべて若い男性(18~24歳)であったため、この特定の集団に対する発生率をみると、3回目のワクチン接種後1週間および2週間における心筋炎の発生率は、それぞれ10万回接種当たり6.43(95%CI:0.13~12.73)、11.25(95%CI:2.92~19.59) と推定された。 本研究における心筋炎発生率は、同様のイスラエル軍集団における2回目のワクチン接種後1週間に観察された発生率(10万回接種当たり5.07)よりも低かった。一方で18~24歳の男性における心筋炎発生率は、フォローアップ期間や心筋炎の定義が異なるため単純な比較には注意が必要なものの、米国の男性集団で観察された値(10万回接種当たり5.243)よりも高かった。 著者らは、本研究の限界として心筋炎と診断された症例数が少ないこと、主に若い男性が多い集団を対象としていることを挙げたうえで、3回目接種後の心筋炎リスクは2回目接種後と比較して低い可能性が示唆されたとし、この理由については今後の研究が必要としている。

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非重症コロナ入院患者、腹臥位介入で予後は改善するか/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した低酸素血症を伴う非重症患者において、腹臥位の姿勢を増やす多面的介入はこの介入を行わない標準治療と比較して、院内死亡や機械的人工換気の導入、呼吸不全の悪化のリスクを改善せず、72時間の酸素飽和度/吸入酸素濃度比の変化も両群に差はないことが、カナダ・Sinai HealthのMichael Fralick氏らが実施した「COVID-PRONE試験」で示された。研究の詳細は、BMJ誌2022年3月23日号で報告された。北米15施設の実践的無作為化臨床試験 本研究は、腹臥位の姿勢は非重症COVID-19入院患者において死亡や呼吸不全のリスク低下に有効かの検証を目的とする実践的な無作為化臨床試験であり、2020年5月~2021年5月の期間に、カナダと米国の15施設で患者の登録が行われた(Sinai Health研究基金などの助成を受けた)。 対象は、検査でCOVID-19と確定されたか臨床的にCOVID-19が強く疑われ、酸素補給を要し(吸入酸素濃度50%以下)、口頭による指示で自立的に腹臥位の姿勢をとることが可能な患者であった。 被験者は、腹臥位療法(ベッドでは腹部を下にした姿勢で横になるよう指示)または標準治療(腹臥位の指示はない)を受ける群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 腹臥位療法群の患者は、腹臥位の姿勢を1日に4回(1回につき最長2時間)とるよう推奨され、夜間は腹臥位で就寝するよう勧められた。これを入院中に最長で7日間、退院または酸素補給が不要となるまでのどちらか早いほうの期間行うよう推奨された。また、研究チームのメンバーは、患者に対し登録時に腹臥位の仕方やそれを維持する方法を指導し、3日目と7日目には電話で腹臥位をとるよう励ました。 主要アウトカムは、院内死亡、機械的人工換気(挿管または二相式気道内陽圧)の導入、呼吸不全の悪化(60%以上の吸入酸素濃度を少なくとも24時間必要とする状態)の複合とされた。 本試験は、事前に規定された主要アウトカムの無益性に基づき、2021年5月10日、早期中止となった。腹臥位の順守を向上させる方法の開発が必要 248例が登録され、腹臥位療法群に126例、対照群に122例が割り付けられた。入院から無作為化までの期間中央値は1日で、全体の年齢中央値は56歳(IQR:45~65)、女性は89例(36%)であり、無作為化の時点で222例(90%)が鼻プロングを介して酸素補給を受けていた。 試験開始から72時間までの腹臥位の時間中央値は、腹臥位療法群が6時間(IQR:1.5~12.8)、対照群は0時間(0~2)であった。72時間以内の退院やアウトカムの発生を考慮すると、1日あたりの腹臥位の時間は腹臥位療法群が約2.5時間、対照群は0時間だった。 主要アウトカムの発生割合は、腹臥位療法群が14%(18/126例)、対照群も14%(17/122例)であり、両群間に差は認められなかった(オッズ比[OR]:0.92、95%信頼区間[CI]:0.44~1.92)。 72時間までの酸素飽和度/吸入酸素濃度比の変化量の中央値は、腹臥位療法群が14(IQR:-52~94)、対照群は49(-32~102)であり、両群間に差はなかった(平均群間差:20、IQR:-17~36)。 退院までの期間中央値は、腹臥位療法群が5日(IQR:3~9)、対照群は4日(3~8)であった。また、重篤な有害事象はまれで、それぞれ5例(4%)および3例(2%)で発現した(OR:1.37、95%CI:0.32~6.96)。 著者は、「主要アウトカムの95%CIの幅は広く、有益性や有害性を断定的に除外することはできない。腹臥位を増やすためにさまざまな取り組みを行ったにもかかわらず、腹臥位の順守は不十分であったことから、今後の試験では、覚醒時の腹臥位の順守を向上させる方法の開発を目標とすべきと考えられる」としている。

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オミクロン株への感染で他の変異株への感染を防げるか/NEJM

 新型コロナウイルスにおけるオミクロン株感染後の中和抗体プロファイルについては、ほとんどわかってない。オーストリア・Medical University of InnsbruckのAnnika Rossler氏らは、オミクロンBA.1株に感染した人の回復後の血清サンプルについて6つの変異株に対する中和抗体価を分析し、他の株への感染歴やワクチン接種歴別に検討した。その結果、オミクロンBA.1株にのみ感染したワクチン未接種者は、オミクロンBA.1株以外の株による感染を予防できない可能性があることが示唆された。NEJM誌オンライン版2022年3月23日号のCORRESPONDENCEに掲載。オミクロン株のみの感染後は他の株に対する中和抗体がほとんど含まれていなかった 本研究は後ろ向き研究で、BA.1株に感染しPCR検査陽性となった日の5〜42日後に血清サンプルを採取。BA.1株に感染する前に、他の新型コロナ感染歴なしのワクチン接種者(15例)、他の新型コロナ感染歴なしのワクチン未接種者(18例)、野生株またはアルファ株またはデルタ株への感染歴ありのワクチン接種者(11例)、野生株またはアルファ株またはデルタ株への感染歴ありのワクチン未接種者(15例)の4群で検討した。野生株、アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、オミクロンBA.1株に対する中和抗体価を分析した。 オミクロン株感染後の中和抗体価を分析した主な結果は以下のとおり。・オミクロンBA.1株に感染したワクチン接種者と、オミクロンBA.1株感染前に野生株またはアルファ株またはデルタ株に感染歴のあるワクチン接種者またはワクチン未接種者において、すべての株に対する中和抗体価が高かった。・ワクチン接種者でのオミクロンBA.1株に対する中和抗体価の平均は、他の株に対する中和抗体価の平均より低かったが、オミクロンBA.1株感染前に野生株またはアルファ株またはデルタ株への感染歴のあるワクチン未接種者での他の株に対する中和抗体価の平均と同等だった。・オミクロンBA.1株感染前に新型コロナ感染歴のないワクチン未接種者から得られた血清サンプルでは、大部分がオミクロンBA.1株に対する中和抗体で、他の株に対する中和抗体はほとんど含まれていなかった。 著者らは、「本研究にはサンプル数の少なさ、後ろ向き研究といった限界はあるが、オミクロンBA.1株が強力に免疫を回避し、他の株との交差反応性がほとんどないという仮説を支持している。したがって、ワクチン未接種で、以前の株の感染歴がなくオミクロンBA.1株にのみ感染した人は、オミクロンBA.1株以外の株による感染を十分に予防できない可能性があり、完全に予防するにはワクチン接種が必要」と考察している。

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ICU入室COVID-19重篤例、抗血小板療法は有効か/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重篤例では、抗血小板薬による治療はこれを使用しない場合と比較して、集中治療室(ICU)で呼吸器系または心血管系の臓器補助を受けない生存日数が延長される可能性は低く、生存退院例の割合も改善されないことが、英国・ブリストル大学のCharlotte A. Bradbury氏らREMAP-CAP Writing Committee for the REMAP-CAP Investigatorsが実施した「REMAP-CAP試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2022年3月22日号で報告された。8ヵ国105施設の適応プラットフォーム試験 本研究は、重度の肺炎患者における最良の治療法を確立するために、複数の介入を反復的に検証する適応プラットフォーム試験で、COVID-19患者ではこれまでにコルチコステロイド、抗凝固薬、抗ウイルス薬、IL-6受容体拮抗薬、回復期患者血漿の研究結果が報告されており、今回は抗血小板療法の有用性について検討が行われた(欧州連合のPlatform for European Preparedness Against[Re-]Emerging Epidemics[PREPARE]などの助成を受けた)。 この試験では、2020年10月30日~2021年6月23日の期間に8ヵ国105施設で患者の登録が行われ、90日間追跡された(最終追跡終了日2021年7月26日)。 対象は、年齢18歳以上、臨床的にCOVID-19が疑われるか微生物学的に確定され、ICUに入室して呼吸器系または心血管系の臓器補助を受けている患者であった。呼吸器系臓器補助は侵襲的または非侵襲的な機械的人工換気の導入、心血管系臓器補助は昇圧薬または強心薬の投与と定義された。 被験者は、非盲検下にアスピリン、P2Y12阻害薬、抗血小板療法なし(対照群)の3つの群に無作為に割り付けられた。標準治療として抗凝固薬による血栓予防療法が施行され、これとの併用で最長14日間、院内での介入が行われた。 主要エンドポイントは、21日間における臓器補助不要期間(ICUで呼吸器系または心血管系の臓器補助を受けない生存日数)とされた。院内死亡を-1、臓器補助なしでの21日間の生存を22とし、この範囲内で評価が行われた。主解析では、累積ロジスティックモデルのベイズ解析が用いられ、オッズ比が1を超える場合に改善と判定された。無益性により患者登録は中止に アスピリン群とP2Y12阻害薬群は、適応解析で事前に規定された同等性の基準を満たし、次の段階の解析のために抗血小板薬群として統計学的に統合された。また、事前に規定された無益性による中止基準を満たしたため、2021年6月24日、本試験の患者登録は中止された。 全体で1,549例(年齢中央値57歳、女性521例[33.6%])が登録され、アスピリン群に565例、P2Y12阻害薬群に455例、対照群に529例が割り付けられた。 臓器補助不要期間中央値は、抗血小板薬群および対照群ともに7(IQR:-1~16)であった。抗血小板薬群の対照群に対する有効性の補正オッズ比中央値は1.02(95%信用区間[CrI]:0.86~1.23)で、無益性の事後確率は95.7%であり、無益性が確認された(オッズ比が1.2未満となる無益性の事後確率が、95%を超える場合に無益性ありと判定)。また、生存例における臓器補助不要期間中央値は、両群とも14だった。 生存退院患者の割合は、抗血小板薬群が71.5%(723/1,011例)、対照群は67.9%(354/521例)であった。補正後オッズ比中央値は1.27(95%CrI:0.99~1.62)、補正後絶対群間差は5%(95%CrI:-0.2~9.5)で、有効性の事後確率は97%であり、有効性は示されなかった(オッズ比が1を超える有効性の事後確率が、99%を超える場合に有効性ありと判定)。 大出血は、抗血小板薬群が2.1%、対照群は0.4%で発生した。補正後オッズ比は2.97(95%CrI:1.23~8.28)、補正後絶対リスク増加は0.8%(95%CrI:0.1~2.7)で、有害性の事後確率は99.4%であった。 著者は、「抗血小板薬は、臓器補助不要期間に関して無益性が確認されたが、生存退院を改善する確率は97%で、死亡を5%低減し、90日間の解析では生存を改善する確率は99.7%であった。本試験に参加した8ヵ国では、抗血小板薬は安価で広範に入手可能で、投与も容易であることから、世界規模での適用が可能かもしれない」と考察している。

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新型コロナ感染による脳への影響、わかってきたこと【コロナ時代の認知症診療】第13回

新型コロナ感染後、認知機能に変化2022年1月に始まったCOVID-19のオミクロン株によるコロナ第6波はピークは越えたものの、感染者数は3月時点でも高止まり状態が続く。これまでの波のうち、最大、最長のものになっている。さて2020年初頭の流行初期から嗅覚低下・脱失の症状は報道されてきた。これを除くと従来は、COVID-19と脳あるいは認知機能との関係はそう注目されてこなかった。しかしこれは重要な観点である。スペイン風邪(Spanish Influenza)は第1次世界大戦中にパンデミックとなった最初の人畜共通感染症である。実はこの疾患においても、認知症症状(Brain fog:脳の霧)の発生が気づかれていたのである。さて流行開始からでも2年余りが過ぎて、このCOVID-19による認知機能障害に関して本格的な臨床研究が報告されるようになった。まず武漢における縦断研究は、感染による認知機能の変化に注目している。平均年齢69歳で感染者1,438名を対象、平均年齢67歳の438名をコントロールにして、1年間の認知機能の推移を比較している1)。対象をCOVID-19の身体症状から重篤と非重篤に分けて比較している。また認知機能は重篤度に応じて4段階に分けられている。その結果、軽度の認知機能低下を生じる危険性はCOVID-19の身体症状重篤群でオッズ比が4.87、非重篤群で1.71であった。さらに驚くべきは、身体症状重篤群では進行性認知機能低下を生じるオッズ比が19.0と極めて高かったことである。嗅覚異常の背景に、脳の構造学的な異常かさて次に、感染による脳構造変化についての画像研究が英国から報告されている2)。401名の感染者(51~81歳)が対象で、平均141日間隔で頭部MRI画像が撮像されている。なおコントロールは384名である。その結果、次の3つの所見が得られている。1)前頭葉の眼窩皮質との萎縮がみられたこと。前頭眼窩面には嗅覚や味覚情報が収斂している。またここは、有名な報酬系、動機付けや学習行動と関連する部位であり、偏桃体を中心とする辺縁系と深い結びつきがある。とくに臨床的に有名なのは、ここに病巣をもつピック病では、抑制欠如や脱抑制の表れとして反社会的行為が生じることである。また海馬傍回は海馬の周囲に位置し、記憶の符号化と検索の役割を担っている。なおこの前部は嗅内皮質を含んでいる。このような機能を持つ大脳領域に萎縮を認めたのである。2)一次嗅覚路と機能的に結ばれている脳部位の組織破壊が認められたこと。さてヒト嗅覚系には2種類あるが、一次および二次嗅覚皮質は下図において、それぞれ青と緑で表される。一次嗅覚系は、匂い物質を受容する嗅神経が存在する嗅上皮、嗅神経の投射先である主嗅球、さらに嗅球からの投射を受ける梨状皮質などの嗅皮質から構成されている。こうして一次嗅覚系は主に一般的な匂い物質の受容に関わっている。このように、流行当初から指摘されてきた「臭わなくなった」症状の基盤として、こうした形態学的な異常がわかったのである。3)脳全体の萎縮が認められた。このことは、COVID-19の大脳への影響は、嗅覚路を中心に前頭葉と辺縁系で大きいが、脳全体にも及ぶことを意味している。さてなぜこのような病理学的変化がもたらされるのだろうか? まずCOVID-19感染によって脳低酸素症が誘発される。これは、脳のエネルギー産生工場といわれるミトコンドリア機能不全が関わると考えられてきた。この低酸素脳症が基盤にあることは納得できる。一方でこの脳画像研究の筆者たちは、今回の研究結果から2つの可能性を考えている。まず感染が、嗅覚路を侵略経路として大脳辺縁系を中心とする系統的変性が生じさせる可能性である。次に嗅覚脱失によって臭いの感覚の入力がなくなることが大脳辺縁系変性につながっている可能性である。そして最後にこの嗅覚の障害が治るか否かについては、まだわからないとされている。第7波にも注意が喚起されるようになった今日、COVID-19による中枢神経系障害に対する注意がさらに求められるだろう。参考1)Liu YH,et al. JAMA Neurol. 2022 Mar 8. [Epub ahead of print]2)Douaud G, et al. Nature. 2022 Mar 7. [Epub ahead of print]

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第102回 オミクロン再増加を救う手立ては…某ワクチン承認をFDAより先行すること!?

年初から始まったオミクロン株による新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染者急増、通称・第6波。全国各地に発出されていた新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「まん延防止等重点措置」は、3月21日をもって最後まで残っていた18都道府県でも解除された。しかし、何とも嫌なことに翌日の22日から新規陽性者数はジリジリと増加傾向となって約10日が経過している。また、日ごとに報告されている死者数は二桁後半で、感染時に重症化しやすいと言われたデルタ株による第5波時よりも多いという現実も重なっている。オミクロン株に対するメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの効果は、重症化予防効果も含め対デルタ株に比べて低下傾向にあるとはいえ、今でも主要な対抗手段の一つであることには変わりはない。最新の3回目接種完了率は3月29日現在、全人口の39.8%、65歳以上の高齢者では80.7%となっている。高齢者ではかなり進展してきたものの、全人口で見るとやや心もとない。ほかのワクチンに比べ、発熱など患者が自覚できる副反応の頻度が高いことが3回目接種完了率の伸びに影響している可能性は少なくなさそうだ。また、この副反応問題とmRNAワクチンがまったくの新規技術ワクチンであることが相まって、小児対象の接種開始とともにワクチンに否定的な運動も活発化している。各地の医療機関には無差別に小児への接種を止めるよう求める文書が届いているという。そしてSNS上などを眺めていると、3回目接種もまだ進展中の環境で、4回目接種の議論が出てきたことで、これまでそれほど新型コロナワクチンに否定的ではなかった層からも懐疑的な意見が目立つようになった。この件はとくにイスラエルから発表された4回目接種の結果から、こと感染予防効果に関して言えば、ほとんど期待できないことが明らかになったことが拍車をかけているようにも見える。その意味では今のmRNAワクチンを軸とした対策もターニングポイントに差し掛かっているともいえそうだ。そうした中で私個人が気になっているのは、国内では昨年12月に製造承認申請が行われた米・ノババックス社の組み換えタンパクワクチンの導入だ。米を中心に約3万人を対象に行った臨床試験では、発症予防効果が90.4%、重症化予防効果が100%と良好な成績が示されている。また、最近では英国で約1万5,000人を対象に実施した第III相試験の長期データから、2回接種完了から6ヵ月後の無症候も含む感染予防効果が82.5%であることも示されている。ちなみにこの半年後の長期効果は評価期間が2020年11月~2021年5月で、現在主流のオミクロン株での効果は不明であるため、同社はすでにオミクロン株用ワクチンの開発にも着手している。そして何よりもこのワクチンの注目点は現在判明している有害事象が、mRNAワクチンよりは軽度と言えそうなことだ。主な副反応は頭痛、接種部位(筋肉)疼痛、倦怠感など。2回目接種の同ワクチンは、やはり2回目のほうが副反応頻度は高くなるが、その場合でも前述の主要な有害事象の発現率は40%前後。発熱に至っては数%である。また、このワクチンは冷蔵保存が可能である。超低温冷凍庫による保管が必要で、温度変化に弱いmRNAワクチンと比べれば扱いやすさは比較にならないだろう。また、ノババックス社は日本国内で武田薬品と提携し、同社の山口県光市の工場で生産されるため、安定供給に対する不安もかなり解消される。さらにmRNAワクチンを嫌う人たちが組み換えタンパクワクチンだから受け入れるという単純なことにはならないだろうが、それでもmRNAワクチンの接種を迷っている動揺層や自分自身は接種しながら子供に関しては様子見という大人には、ある程度考慮しうる選択肢になるだろうと個人的には想像している。少なくともすでに使われている技術を応用したワクチンという点でも安心感を提供できる側面もある。これまでの経緯からすると、ノババックス社ワクチンに関して厚生労働省はアメリカでの緊急使用許可の承認を待ってからの承認を狙っているのかもしれない。もっともすでに日本と医薬品承認のレギュレーションレベルにほとんど差がないEUや韓国で承認されていることを考えれば、日本はこの点ではそろそろ一歩前進しても良いのではないか。前回言及した塩野義製薬の3CLプロテアーゼ阻害薬に対して条件付き早期承認を与えることと比べれば、ノババックス社ワクチンを承認することは科学的合理性も含め、ほとんど問題ないだろうと、個人的には考えている。

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医療従事者への4回目接種、その効果は?/NEJM

 イスラエルの医療従事者を対象に、3回目接種から4ヵ月後にファイザー製およびモデルナ製の新型コロナワクチンを投与した結果、4回目接種後の中和抗体価は投与前の9~10倍に増加した。一方で3回目接種後のピーク反応との比較から、著者らはmRNAワクチンの免疫原性は3回の接種で最大となる可能性が示唆されたとしている。イスラエル・Sheba Medical CenterのGili Regev-Yochay氏らによる非盲検非無作為化臨床試験の結果が、NEJM誌オンライン版2022年3月16日号のCORRESPONDENCEに掲載された。医療従事者への4回目接種による効果、感染予防より発症予防のほうがより高い Sheba HCW COVID-19コホートに登録された適格な医療従事者1,250人のうち、154人が3回目接種から4ヵ月後にBNT162b2(ファイザー製)の4回目の投与を受け、その1週間後に120人がmRNA-1273(モデルナ製)を投与された。それぞれの参加者について、残りの参加者の中から年齢をマッチさせた2人の対照者が選定された。 研究期間はBNT162b2投与群が2021年12月27日~2022年1月30日、mRNA-1273投与群が2022年1月5日~2022年1月30日。同期間は感染率が極めて高く、毎週PCR検査による綿密なアクティブサーベイランスが行われていたため、ポアソン回帰モデルによりワクチンの有効性も評価された。期間中分離された株の100%がオミクロン株であった。 医療従事者への4回目接種の効果を研究した主な結果は以下のとおり。・BNT162b2投与群の平均年齢は59.0(30~85)歳、mRNA-1273投与群の平均年齢は55.1(29~87)歳だった。・医療従事者への4回目接種後、どちらのmRNAワクチンもSARS-CoV-2受容体結合ドメインに対するIgG抗体を誘導し、中和抗体価が上昇した。・4回目接種後の各測定値は9~10倍に増加し、3回目の投与後に達成された抗体価よりもわずかに高くなり、2つのワクチン間に有意差はなかった。・両ワクチンとも、オミクロン株およびその他のウイルス株(デルタ株、野生株)に対する中和能が約10倍に増加し、3回目の投与後の反応と同様であった。・4回目接種後、多くの接種者で軽度の全身および局所症状が報告されたものの、実質的な有害事象の報告はなかった。・試験期間中、対照群では25.0%がオミクロン株に感染していたのに対し、4回目接種のBNT162b2群では18.3%、mRNA-1273群では20.7%だった。・SARS-CoV-2感染に対する4回目接種によるワクチン有効性は、BNT162b2では30%(95%信頼区間[CI]:-9~55)、mRNA-1273では11%(95%CI:-43~44)だった。・感染した医療従事者の多くは、対照群、介入群ともに、ごく軽度の症状を訴えた。しかし多くは、比較的高いウイルス量(Ct値≤25)を有していた。・また、4回目接種によるワクチンの効果は発症予防効果のほうがより高いと推定された(BNT162b2群で43%、mRNA-1273群で31%)。 著者らは、本データは4回目のmRNAワクチン接種が、免疫原性、安全性、およびある程度の有効性(主に症候性疾患に対して)を有することを示すとした一方、4回目接種による初期反応と3回目接種によるピーク反応を比較したところ、体液性反応やオミクロン特異的中和抗体のレベルには大きな違いは見られなかった。 これらの結果から、mRNAワクチンの免疫原性は3回の接種で最大になり、4回目の接種で抗体レベルが回復する可能性が示唆されたとし、医療従事者の感染に対するワクチン有効性は低く、ウイルス量が比較的多いことから、感染者が感染能を有することがわかった。高齢者や脆弱な集団に対する評価は行われていないが、健康な若い医療従事者への4回目のワクチン接種は、わずかな利益しか得られない可能性があるとしている。

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J&J製ワクチン、第III相試験で重症化・死亡に対する有効性確認/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のAd26.COV2.Sワクチン(Johnson & Johnson製)単回接種は、ベータ変異株およびデルタ変異株のいずれにおいても重症COVID-19およびワクチン接種後のCOVID-19関連死に対して有効であることが認められた。南アフリカ共和国・Desmond Tutu HIV CentreのLinda-Gail Bekker氏らが、医療従事者を対象とした単群非盲検第IIIB相試験「Sisonke試験」の結果を報告した。Lancet誌2022年3月19日号掲載の報告。南アフリカ共和国の医療従事者約48万人で検証 研究グループは、南アフリカ共和国の18歳以上の医療従事者を全国のワクチン接種会場122施設のいずれかに招待し、Ad26.COV2.Sワクチン(ウイルス粒子量5×1010)単回接種を実施した。ワクチンの有効性を評価するため、2つの大規模な医療保険組織またはマネジドケア組織(Discovery Healthが管理する医療制度[A]と、Government Employees Medical SchemeおよびMedSchemeが管理する医療制度[B])の個人データを用い、ワクチン接種済みの医療従事者を一般集団のワクチン未接種者とマッチングさせた。 主要評価項目は、一般集団と比較した重症COVID-19(COVID-19関連の入院、救命救急または集中治療を必要とする入院、死亡と定義)に対するワクチンの有効性で、ワクチン接種またはマッチングから28日以降のデータカットオフ日まで評価した。 2021年2月17日~5月17日の期間に、医療従事者47万7,102例が登録されワクチン接種を受けた。女性が35万7,401例(74.9%)、男性が11万9,701例(25.1%)、年齢中央値42歳(IQR:33.0~51.0)であった。このうちワクチン接種者21万5,813例を、ワクチン未接種者21万5,813例とマッチングし分析した。COVID-19関連死の予防効果は83%、COVID-19関連入院の予防効果は67% データカットオフ日(2021年7月17日)時点で、マッチングされた全コホートにおけるワクチンの有効性は、COVID-19関連死の予防が83%(95%信頼区間[CI]:75~89)、救命救急または集中治療を必要とするCOVID-19関連入院の予防が75%(69~82)、COVID-19関連入院の予防が67%(62~71)であった。 3つの評価項目に対するワクチンの有効性は、A制度とB制度で一貫していた。また、ワクチンの有効性は、高齢の医療従事者やHIV感染症を含む併存疾患を有する医療従事者においても維持されていた。 本試験の期間中にベータ変異株(B.1.351)、その後、デルタ変異株(B.1.617.2)が流行したが、ワクチンの有効性は一貫しており、全コホートのCOVID-19関連入院に対する有効性はベータ変異株流行中で62%(95%CI:42~76)、デルタ変異株流行中で67%(62~71)、COVID-19関連死に対する有効性は、ベータ変異株流行中で86%(57~100)、デルタ変異株流行中で82%(74~89)であった。

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米国でのオミクロン、デルタ、アルファ株におけるCOVID-19の臨床的重症度とmRNAワクチンの有効性の違い(解説:寺田教彦氏)

 2019年末より新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症は世界的に拡大し、2022年3月現在でも、流行は続いている。この間に、新型コロナウイルスの特徴も判明し、ワクチン開発、治療方法の整備も進んだが、新型コロナウイルスも変異を繰り返し、流行の終息はまだ見えていない。 本研究は、2021年3月11日から2022年1月14日までに米国21病院が参加した前向き研究で、mRNA COVID-19ワクチンのアルファ変異株、デルタ変異株、オミクロン変異株に対するCOVID-19関連入院の予防効果、COVID-19関連入院患者における変異株ごとの重症化率、死亡率について検討され、BMJ誌2022年3月9日号で報告された。 本研究以前より知られている事実として、mRNAワクチンの2回接種はアルファ株やデルタ株による入院予防に非常に効果的だったこと、ワクチンの有効性を長期的に維持するために2021年8月以降mRNA COVID-19ワクチンの3回目接種が認可されていたことがある。ちなみに2021年8月は、世界的にはデルタ株が臨床的な問題となっていた期間であり、本研究でも同時期はデルタ株の流行時期として取り扱われている。 本研究における新規知見は3点挙げられている。1点目は、mRNAワクチン2回接種に伴うCOVID-19関連入院の予防効果は、アルファ株やデルタ株よりもオミクロン株のほうが低い(それぞれアルファ株:85%、デルタ株:85%、オミクロン株:65%)が、オミクロン株に対しても3回目のワクチン接種を行うことで、アルファ株やデルタ株に対する2回接種と同様の有効性(86%)を達成すること。2点目は、COVID-19関連入院患者の重症度はオミクロン株のほうがデルタ株よりも低いこと。3点目は、オミクロン株でも15%の患者に侵襲的人工呼吸器管理が必要となり、7%の患者が死亡したことである。それぞれについて本邦の新型コロナウイルス感染症診療と照らし合わせて考察する。 現在、日本でもオミクロン株の流行が続いており、3回目のワクチン接種が行われている。今回の研究結果は、3回目のワクチン接種により、2021年12月26日から2022年1月14日の間におけるオミクロン株感染による入院予防効果が高かったことが示されている。本邦でも、オミクロン株の流行が続いており、米国よりもワクチン接種が遅れて開始したことを考えると、本邦での3回目のワクチン未接種者に対してワクチン接種を支持する根拠となるだろう。さて、本論文では、オミクロン株でも3回ワクチンを接種することで、他の株と同様の予防効果が期待されるとしているが、単純に株の問題のみに結び付けてよいかは疑問が残る。米国で、3回目のワクチン接種(ブースター接種)が開始された時期は、米国ではまだデルタ株が流行しており、当時の時点でもデルタ株に対してワクチン効果が落ちはじめていることが指摘されていた。実際に本論文でも、Fig.2において、2回目ワクチン接種後150日以内の患者のほうが、150日以降の患者よりも入院予防効果は高かった。オミクロン株の流行時期は2回のみのワクチン接種者の場合には、ワクチン接種後すでに時間が経過していたために効果が下がっていた可能性も考えられる。そのため、単純に株の種類とワクチン接種の回数問題のみでワクチンの予防効果は結論付けられないかもしれない。ブースター接種に関しては、本邦でも4回目のワクチン接種の是非について検討されている。2022年3月末までに報告されているデータでは、オミクロン株に対して4回目のワクチン接種では抗体獲得効果が不十分である可能性を示唆するイスラエルからの報告がある。ただし、ワクチンの4回目接種の是非を判断する十分なデータではないため、今後のデータを待つ必要があるだろう。 2点目の、オミクロン株がデルタ株よりは重症度が低いことに関しては、本邦での診療経験やこれまでの過去の論文報告とも合致するだろう。 最後に、オミクロン株でも重症化率や死亡率がいまだに高いことが本研究で指摘された。筆者も本邦の医療機関で新型コロナウイルス感染症治療に従事しているが、オミクロン株による入院患者の死亡率が7%という本研究の死亡率はやや高い印象がある。本研究は、米国21施設の入院患者を対象としており、米国で新型コロナウイルス感染症に罹患した患者全体を対象としたわけではない。本邦の新型コロナウイルス感染症患者の入院閾値が米国よりも低いために、本研究の重症化率や死亡率を高く感じるのかもしれない。とはいえ、米国の医療機関でオミクロン株による重症化率や死亡率が比較的高いことは事実であり、新型コロナウイルス感染症はいまだ軽視するわけにはいかないことを再認識させられる。 本研究を通して、米国で流行した新型コロナウイルスの各株の特徴やそれぞれの株に対するワクチンの効果を確認することができた。本邦を含め世界的にはオミクロン株の流行が続いており、今後は4回目のワクチン接種の効果や副反応の知見を基にブースター接種の是非を判断していくとともに、新型コロナウイルス流行の抑制に役立つ薬剤等を含めた技術開発を期待したい。

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