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モデルナとファイザーのBA.4/5対応追加接種用2価ワクチンを承認/FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は8月31日付のプレスリリースで、モデルナとファイザーの新型コロナワクチンの緊急使用許可(EUA)を改訂し、野生株とオミクロン株BA.4/BA.5に対応した2価ワクチンで、既存の1価ワクチンの初回シリーズまたは追加接種から少なくとも2ヵ月後に、追加接種としての使用を承認したことを発表した。このたび緊急使用許可された2価ワクチンは「アップデートブースター(updated boosters)」とも呼ばれる。モデルナの2価ワクチンは18歳以上への単回追加接種、ファイザーの2価ワクチンは12歳以上への単回追加接種が承認されている。また、今回の承認に伴い、既存の1価ワクチンは、12歳以上への追加接種として使用できなくなる。 今回のFDAによる承認は、現在流通している1価ワクチンの安全性および有効性のデータ、オミクロン株BA.1に対応した2価ワクチンの臨床試験から得られた安全性および免疫原性データ、BA.4/BA.5に対応した2価ワクチンの非臨床データに基づいているという。BA.4/BA.5対応2価ワクチンは、既存の1価ワクチンおよびBA.1対応2価ワクチンと同じ製造プロセスのため、安全性のデータは相関するとしている。 モデルナのBA.1対応2価ワクチン追加接種における有効性の評価では、同社の1価ワクチン初回シリーズと追加接種1回を受けた18歳以上の約600例を対象とし、1価ワクチンもしくはBA.1対応2価ワクチンを2回目の追加接種として、1回目の追加接種から少なくとも3ヵ月後に投与した。2回目追加接種後28日時点で、2価ワクチンを接種した被験者では、BA.1に対する免疫反応が、1価ワクチン接種者よりも良好だったとしている。 モデルナのBA.1対応2価ワクチン追加接種における安全性の評価では、同社の1価ワクチン初回シリーズと追加接種1回を受けた18歳以上の約800例を対象とし、1価ワクチンもしくはBA.1対応2価ワクチンを2回目の追加接種として、1回目の追加接種から少なくとも3ヵ月後に投与した。2価ワクチンを接種した被験者において、最も多く報告された副反応として、注射部位の痛み、発赤、腫脹、疲労、頭痛、筋肉痛、関節痛、悪寒、注射した腕のリンパ節腫脹、悪心/嘔吐、発熱などがあった。 ファイザーのBA.1対応2価ワクチン追加接種における有効性と安全性の評価では、同社の1価ワクチン初回シリーズと追加接種1回を受けた55歳以上の約600例を対象とし、1価ワクチンもしくはBA.1対応2価ワクチンを2回目の追加接種として、1回目の追加接種から4.7~13.1ヵ月後に投与した。2回目追加接種後1ヵ月時点で、2価ワクチンを接種した被験者では、BA.1に対する免疫反応が、1価ワクチン接種者よりも良好だったとしている。また、2価ワクチンを接種した被験者において、最も多く報告された副反応として、注射部位の痛み、発赤、腫脹、疲労、頭痛、筋肉痛、悪寒、関節痛、発熱などがあった。 今回の2価ワクチン承認に伴い、モデルナおよびファイザーの既存の1価ワクチンは、モデルナの場合は18歳以上、ファイザーの場合は12歳以上に対する追加接種としての使用ができなくなる。既存の1価ワクチンは、引き続き、生後6ヵ月以上に対する初回シリーズの接種に使用することが許可されている。また、ファイザーの1価ワクチンは、5~11歳に対して、初回シリーズ接種の少なくとも5ヵ月後に追加接種として使用することができるとしている。

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医療者のコロナ感染リスク、着用マスクや累積曝露時間による

 COVID-19患者との接触機会の多い医療従事者の感染予防に、サージカルマスクよりレスピレーターマスク(FFP2、N95やDS2に相当)が有用であることが示唆されているが、科学的エビデンスは少ない。今回、スイス・Cantonal Hospital St. GallenのTamara Dorr氏らの医療従事者を対象としたコホート研究で、レスピレーターマスク使用がサージカルマスク使用より感染リスクが40%以上低くなること、COVID-19患者への累積曝露時間と感染リスクに用量反応関係があることが示唆された。JAMA Network Open誌2022年8月15日号に掲載。 本コホート研究の対象は、スイス北部および東部の7つの医療ネットワークに所属する医療従事者で、2020年9月から週1回12ヵ月間、症状に基づいた鼻咽頭スワブの検査結果、曝露、リスク行動について報告した。2021年9月に過去1年間にエアロゾル産生手技以外でCOVID-19患者との接触時に使用したマスクの種類(サージカルマスクのみ/レスピレーターマスクのみ/両方)を申告した。COVID-19患者への累積曝露時間は、自己申告による患者との接触回数と平均接触時間を掛けた。ベースライン時、2021年1月、同9月に抗ヌクレオカプシド抗体のスクリーニング検査を実施した。主要評価項目は、追跡調査中の新型コロナウイルス感染(自己申告による鼻咽頭スワブ陽性または抗ヌクレオカプシド抗体陽転、もしくはその両方)とし、累積曝露時間の倍加当たりの陽性率増加のオッズ比(OR)をレスピレーターマスクのみ使用した医療従事者とサージカルマスクのみまたは両方を使用した医療従事者に分けて算出した。 主な結果は以下のとおり。・対象の医療従事者2,919人(年齢中央値:43歳、範囲:18~73歳)のうち、749人(26%)が新型コロナウイルスに感染していた。・新型コロナウイルス陽性率は、患者との接触がない医療従事者で13%だった。接触がある医療従事者では、レスピレーターマスクのみ使用した人が21%、サージカルマスクのみ/両方使用した人が35%で(OR:0.49、95%CI:0.39~0.61)、両群とも累積曝露時間が増えるに従って陽性率が増加した。・多変量解析では、家庭内接触あり(OR:7.79、95%CI:5.98~10.15)、COVID-19患者への曝露(累積曝露時間のカテゴリーごとのOR:1.20、95%CI:1.14~1.26)、レスピレーターマスクの使用(OR:0.56、95%CI:0.43~0.74)、ワクチン接種(OR:0.55、95%CI:0.41~0.74)が関連していた。 本研究では、医療従事者の新型コロナウイルス陽性率はCOVID-19患者の累積曝露時間と関連していた。また、今回の結果から、COVID-19患者に接触する医療従事者の業務関連リスクが、レスピレーターマスクの使用とワクチン接種により大幅に減少する可能性が示唆された。

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ニルマトレルビル治療、65歳以上のコロナ重症化を予防/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で重症化リスクが高くニルマトレルビル治療の適応があると評価された患者において、ニルマトレルビル治療により65歳以上ではCOVID-19による入院および死亡が有意に減少したが、40~64歳では有益性は認められなかった。イスラエル・Clalit Research InstituteのRonen Arbel氏らが、同国半数超の国民が加入する健康保険データを基に解析し、報告した。ニルマトレルビル治療は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のデルタ変異株(B.1.617.2)に感染した高リスクでワクチン未接種の患者において有効性が示されているが、オミクロン変異株(B.1.1.529)によるCOVID-19の重症化予防に関するデータは限られていた。NEJM誌オンライン版2022年8月24日号掲載の報告。40歳以上の高リスクCOVID-19患者を対象に、ニルマトレルビル治療の有効性を検証 研究グループは、イスラエル国民の約52%、高齢者の約3分の2が加入している同国最大の医療保険組織「Clalit Health Services」のデータを用い、同国でニルマトレルビル治療が開始された2022年1月9日から3月31日のデータを解析した。研究期間中、イスラエルではオミクロン株が優勢であった。 解析対象は、SARS-CoV-2感染が確認されCOVID-19と診断された40歳以上の外来患者で、重症化リスクが高くニルマトレルビル治療の適応があると評価された患者である。 主要評価項目はCOVID-19による入院、副次評価項目はCOVID-19による死亡で、時間依存共変量を用いるCox比例ハザード回帰モデルにより社会人口統計学的要因、併存疾患およびSARS-CoV-2免疫状態を補正し、ニルマトレルビル治療との関連を推定した。65歳以上では、非投与と比較しCOVID-19入院/死亡が有意に低減 計10万9,254例が適格基準を満たし、このうち3,902例(4%)が研究期間中に1回以上ニルマトレルビル治療を受けた。65歳以上は10万9,254例中4万2,821例(39%)で、このうちニルマトレルビル治療例は2,484例(6%)であった。 65歳以上において、COVID-19による入院は、ニルマトレルビル治療群で11例(10万人日当たり14.7)、未治療群で766例(10万人日当たり58.9)に認められ、補正後ハザード比(HR)は0.27(95%信頼区間[CI]:0.15~0.49)であった。また、COVID-19による死亡は、ニルマトレルビル治療群で2例、未治療群で158例に認められ、補正後HRは0.21(95%CI:0.05~0.82)であった。 一方、40~64歳の患者では、COVID-19による入院は、ニルマトレルビル治療群で7例(10万人日当たり15.2)、未治療群で327例(10万人日当たり15.8)に認められ、補正後HRは0.74(95%CI:0.35~1.58)であった。また、COVID-19による死亡は、ニルマトレルビル治療群で1例、未治療群で16例に認められ、補正後HRは1.32(95%CI:0.16~10.75)であった。

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新型コロナ発症抑制と治療に「エバシェルド」が特例承認/AZ

 アストラゼネカは8月30日付のプレスリリースで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生抑制および治療の両方を適応として、同社の長時間作用型モノクローナル抗体の併用療法である「チキサゲビマブ(遺伝子組換え)/シルガビマブ(遺伝子組換え)」(販売名:エバシェルド筋注セット、以下エバシェルド)が、厚生労働省より製造販売の特例承認を取得したことを発表した。 新型コロナの発生抑制を適応としたエバシェルドの投与対象となるのは、成人および12歳以上かつ40kg以上の小児で、新型コロナワクチンの接種が推奨されない人、または、血液悪性腫瘍患者など、免疫機能の低下等によりワクチン接種で十分な免疫応答が得られない可能性がある人となる。また、新型コロナ患者との濃厚接触者でない人のみ投与を受けられる。用法および用量は、筋肉内注射により、チキサゲビマブ150mgとシルガビマブ150mgの計300mgを投与する。なお、新型コロナの変異株の流行状況等に応じて、チキサゲビマブ300mgとシルガビマブ300mgの計600mgを投与することもできるとしている。 治療薬としてのエバシェルドの投与対象となるのは、成人および12歳以上かつ40kg以上の小児で、新型コロナ重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者となっている。用法および用量は、筋肉内注射により、チキサゲビマブ300mgとシルガビマブ300mgの計600mgを投与する。 効能または効果に関連する注意として、本剤の中和活性が低い変異株に対しては有効性が期待できない可能性があるため、最新の流行株の情報を踏まえ、本剤投与の適切性を検討することとしている。処方にあたり詳細については、添付文書を参照されたい。 今回の承認は、症候性COVID-19の曝露前予防の有効性を評価した、第III相PROVENT予防試験、外来患者を対象とした第III相TACKLE治療試験、および日本で実施された第I相臨床試験などのデータに基づいている。これらの臨床試験において、良好な忍容性が確認されている。 PROVENT試験では、エバシェルド300mg単回筋肉内投与により、プラセボ群と比較して症候性COVID-19の発症リスクを77%(95%信頼区間[CI]:46~90、p<0.001)減少した。中央値約6ヵ月の追跡期間での追加解析では、エバシェルドはプラセボ群と比較して発症リスクを83%(95%CI:66~91)減少し、1回の投与後6ヵ月間はウイルスからの保護が持続することが示された。 TACKLE試験では、病状発現から7日以内のCOVID-19外来患者において、エバシェルド600mg単回筋肉内投与により、29日目までのCOVID-19の重症化または全死亡(原因を問わない)の相対リスクが、プラセボ群と比較して50%(95%CI:15~71、p=0.010)有意に低減した。症状発現から3日以内にエバシェルドによる治療を受けた被験者の分析では、プラセボ群と比較してCOVID-19の重症化または全死亡のリスクが88%(95%CI:9~98)低減した。症状発現から5日以内にエバシェルドの投与を受けた被験者では、重症化または全死亡のリスクが67%(95%CI:31~84)低減したという。 なお本剤については、COVID-19の曝露前予防を適応として、米国(緊急使用許可)やEUなどで現在使用が許可されている。

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第7波のコロナ重症化リスク因子/COVID-19対策アドバイザリーボード

 8月13日に開催された厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで「第7波における新型コロナウイルス感染症 重症化リスク因子について(速報)」が報告された。 本報告は、蒲川 由郷氏(新潟大学大学院医学総合研究科 十日町いきいきエイジング講座 特任教授)らのグループが、2022年7月1日~31日までに新潟県内で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断・届け出された3万6,937件を対象に調査したもの。 その結果、重症化のリスク因子として70代以上の高齢者、ワクチンの未接種、慢性呼吸器疾患、(非透析の)慢性腎臓病、男性、やせ体形につき、統計学的な有意差があった。第7波3万6,937件の新潟のCOVID-19患者を解析【調査概要】対象など: 2022年7月1日〜31日までに新潟県内でCOVID-19と診断届出された3万6,937件(重症度などの最終確認日は8月10日)。調査方法:陽性判明時点で収集可能な患者背景から、年齢・性別・ワクチン接種の有無などの患者基礎情報と高血圧・糖尿病・慢性腎臓病などの基礎疾患情報の項目を同時に投入し、多重ロジスティック回帰分析を実施。重症化リスク因子のオッズ比を算出。【結果】(1)年代別・3万6,937例中、103例が中等症II以上だった(中等症・重症化率 0.3%)。・中等症II以上103例のうち、施設入所者は41例(約40%)で、80代以上は41例中35例。・年代が高くなるほど、重症化のオッズ比は高い傾向にあり、30代と比較して、70代以上のオッズ比が63〜283と高い値。(2)性別・ワクチン接種・女性よりも男性が重症化リスクが高い(オッズ比2.67)。・ワクチン接種(2回以上)をしていると、重症化リスクが低くなる(オッズ比:2回で0.27、3回で0.2、4回で0.25)。(3)肥満・肥満(BMI 25以上)は有意差があるとはいえなかった(オッズ比:BMI 25~30未満で1.6、30以上で1.55)。・やせ型(BMI 18.5未満)のオッズ比は2.05と高い値だった。これは、やせの高齢者(いわゆるフレイル)が中等症IIとなる割合が大きいためと考えられる。(4)基礎疾患(オッズ比2以上のみ記載)・慢性呼吸器疾患(COPD、間質性肺炎、治療中の喘息などを含む)のオッズ比は2.84・慢性腎臓病の非透析のオッズ比は3.42、透析のオッズ比は2.67・持続陽圧呼吸療法(CPAP)使用のオッズ比は2.47・悪性腫瘍のオッズ比は2.24高齢者では肥満よりもやせ型の感染者に注意【追加解析】 2022年1~6月(第6波:6万4,000件)と2022年7月(第7波:3万6,937件)を追加解析(合計:10万937件)。・第6波と第7波での中等症II以上の割合の比較では、第6波の中等症I以下は99.5%、中等症II以上は0.5%だったのに対し、第7波での中等症I以下は99.7%、中等症II以上は0.3%と減少した。・第7波では少数だが10歳未満でも中等症II以上の患者が発生している(第6波ではみられていない)。【解析のまとめ】・中等症II以上のリスクは第6波と比べて第7波で低下。・80代以上でも、中等症II以上は2.3〜5.8%程度。・第7波の中等症II以上は、年齢中央値は83歳、4割が施設入所者。・ワクチン未接種は重症化リスクを上昇させる。中等症II以上の患者のうち、ワクチン未接種は約20%(ワクチン未接種者割合は5〜11歳67.9%、65歳以上4.4%)。・中等症IIのリスク上昇には、基礎疾患のほとんどは明確な寄与がなく、有意な差があったのは、(1)高齢(70、80代以上で高い)(2)ワクチン未接種(3)慢性呼吸器疾患*(COPD、間質性肺炎、治療中の喘息を含む)(4)非透析の慢性腎臓病(5)男性(6)やせ(BMI<18.5:高齢者のフレイルなど)であった。 また、第7波では小児の中等症II以上もみられており、注視が必要(小児へのワクチン接種が重要)。と同時にワクチン未接種者へのワクチン接種が重要である。*慢性呼吸器疾患ではもともと酸素飽和度が低い状態の方もおり、解釈に留意を要する。

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5~11歳への3回目ファイザー製ワクチンを承認/厚生労働省

 厚生労働省は8月30日、5~11歳を対象とするファイザー製新型コロナウイルスワクチン「コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)」(販売名:コミナティ筋注5~11歳用)について、追加接種(追加免疫)の用法・用量追加について承認したことを発表し、添付文書を改訂した。 今回の追加接種の年齢層の拡大は、海外第I/II/II/相試験(C4591007試験)第II/III相パートのデータに基づいている。本試験では、本剤10μgを2回接種済みの5~11歳の小児参加者401例に、2回目接種から5~9ヵ月後に本剤10μgを1回接種したときの免疫原性および安全性が検討された。 SARS-CoV-2感染歴がない小児参加者における本剤接種後のSARSCoV-2血清中和抗体価を評価した結果、幾何平均抗体価(GMT)は、2回目接種1ヵ月後時点では1,253.9(両側95%信頼区間[CI]:1,116.0~1,408.9]、3回目接種前では271.0(両側95%CI:229.1~320.6)、3回目接種1ヵ月後時点では2,720.9(両側95%CI:2,280.1~3,247.0)となり、3回目接種1ヵ月後時点で上昇が認められた。2回目接種1ヵ月後時点の抗体価に対する3回目接種1ヵ月後時点の抗体価の幾何平均比(GMR)は2.17(両側95%CI:1.76~2.68)であった。 3回目接種後の安全性については、治験薬接種後7日間、電子日誌により報告された371例の副反応の発現状況を評価した。主な副反応の発現状況(事象全体およびGrade3以上)として、注射部位疼痛、疲労、頭痛、筋肉痛、悪寒、関節痛、発熱(38.0度以上)が報告された。注射部位疼痛は、接種当日に発現し、持続期間は2日であった(中央値)。その他の全身性の事象は接種翌日に発現し、持続期間は1日であった(中央値)。 添付文書における主な改訂は以下のとおり。6. 用法及び用量本剤を日局生理食塩液1.3mLにて希釈する。初回免疫の場合、1回0.2mLを合計2回、通常、3週間の間隔で筋肉内に接種する。追加免疫の場合、1回0.2mLを筋肉内に接種する。7. 用法及び用量に関連する注意7.2 追加免疫7.2.1 接種対象者5歳以上11歳以下の者。SARS-CoV-2の流行状況や個々の背景因子等を踏まえ、ベネフィットとリスクを考慮し、追加免疫の要否を判断すること。7.2.2 接種時期通常、本剤2回目の接種から少なくとも5ヵ月経過した後に3回目の接種を行うことができる。7.2.3他のSARS-CoV-2ワクチンを接種した者に追加免疫として本剤を接種した際の有効性、安全性は確立していない。 なお、同ワクチンの5~11歳への追加接種について、米国では、2022年5月17日に米国食品医薬品局(FDA)が緊急使用許可(EUA)している。

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英語で「清潔を保つ」は?【1分★医療英語】第43回

第43回 英語で「清潔を保つ」は?Is there anything else I should be aware of?(ほかに何か知っておくべきことはありますか?)Please maintain good personal hygiene to prevent infections.(感染予防のために清潔を保ってください)《例文1》Good oral hygiene is vital for your overall health.(口内衛生を保つことは全般的な健康において大切なことです)《例文2》Proper hand hygiene is essential to reduce COVID-19 transmission.(適切に手指衛生を保つことは、新型コロナ感染症伝播を減らすために不可欠です)《解説》“hygiene”は「衛生」を意味し、広義の“clean”よりも、「生活習慣として清潔にする」というニュアンスを含みます。“personal hygiene”は直訳すると「個人の衛生習慣」ですが、意味としては「シャワーに入る」「歯や爪を清潔に保つ」「清潔な衣類を身に付ける」など多岐にわたります。《例文》にもあるように、“oral hygiene”(口内衛生)、“hand hygiene”(手指衛生)、“environmental hygiene”(環境衛生)など、清潔にすべき内容を具体的に示すことも多くあります。傷口や術後の管理、感染症対策、薬の副作用の説明など、“personal hygiene”を促す場面は多いと思いますので、ぜひ使ってみてください。講師紹介

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コロナ感染6日目、抗原検査陰性なら隔離解除は可能か?

 家庭用迅速抗原検査は、感染初期にはウイルス培養検査と相関するが、陽性から5、6日目以降のデータは少ない。そこで、新型コロナ陽性もしくは症状発現から6日目以降の抗原検査陽性率、症状、ウイルス培養陽性率について検証したところ、症状が残存している人でも自己抗原検査で陰性であれば隔離解除できるということが示唆された。一方で、抗原検査陰性を隔離解除の条件として常に求めることは、感染性のウイルスを排出しない人の隔離を過度に延長することになるかもしれないという。本結果は、米国・Brigham and Women's HospitalのLisa A. Cosimi氏らが、JAMA Network Open誌2022年8月3日号のリサーチレターで報告した。コロナ感染6日後の抗原検査陰性で培養検査陽性だった人はいなかった 2022年1月5日~2月11日のボストンでのオミクロン株BA.1流行期で、新型コロナ陽性と診断または症状発現の40例が登録された。被験者は平均年齢34(SD 9.5)歳、女性23例(57.5%)、男性17例(42.5%)であった。40例すべてがワクチンの初回シリーズを完了、うち36例がブースター接種1回を完了していた。入院を必要とした患者はいなかった。 被験者には、新型コロナ陽性と診断または症状発現のいずれかを0日目としてカウントし、6日目以降に、毎日の症状記録(咳、発熱、喉の痛み、呼吸困難、胸部圧迫感、疲労、筋肉痛、味覚・嗅覚の喪失、悪心、嘔吐、下痢、鼻水、鼻づまり、頭痛、その他)と家庭用迅速抗原検査の自己テスト結果を報告してもらった。また、被験者のうち17例(42.5%)から、6日目に鼻咽頭スワブと口腔スワブを採取し、ウイルス培養検査を行った。 新型コロナ感染6日目以降の抗原検査陽性率などについて検証した主な結果は以下のとおり。・全40例のうち、新型コロナ感染6日目の抗原検査で陽性30例(75%)、陰性10例(25%)だった。14日目には全員が陰性だった。・抗原検査が初めて陰性化した日数と年齢、最後のワクチン接種からの経過期間、診断時のサイクル閾値(Ct値)との間には相関はなかった。・無症状者(7例)と有症状者(33例)において、抗原検査の平均初回陰性日は、8.1(SD 3.0)日目vs.9.3(SD 2.4)日目(p=0.14)であった。・新型コロナ感染から6~14日目では、その日に無症状だった人のうち、抗原検査が陰性よりも陽性になる人のほうが多かった。・新型コロナ感染6日目にウイルス培養検査を受けた17例中12例が抗原検査陽性で、12例中6例は培養検査陽性だった。症状ありの人も含め、抗原検査陰性で培養検査陽性だった人はいなかった。・培養検査陽性6例のうち、新型コロナ感染6日目で2例は症状改善、2例は症状に変化なしと報告、2例は0日目から症状の報告がなかった。・培養検査を受けた被験者17例において、6日目に症状なしと報告した8例のうち、培養検査では陰性6例、陽性2例、抗原検査では陰性3例、陽性5例だった。 著者は本結果について、研究対象が若年者でワクチン接種済みの非入院患者の小規模コホートであることと自己採取技術や実験室ベースの培養法のばらつきの可能性を認めつつも、新型コロナの症状が残存している人の自己抗原検査で陰性であれば隔離解除できることを示唆するものだとしている。一方で、抗原検査陰性を新型コロナの隔離解除の条件として常に求めることは、感染性のウイルスを排出しない人の隔離を過度に延長することになるかもしれないと述べている。また、症状の改善のみに基づいて隔離を終了することは、ウイルス培養陽性の潜在的な新型コロナ感染者を早期に解放する危険性があり、陽性から10日目までの適切なマスク着用と、感染拡大のリスクが高い場所を回避することが重要だとしている。

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第114回 感染者の全数把握見直し、全国一律で/首相官邸

<先週の動き>1.感染者の全数把握見直し、全国一律で/首相官邸2.高齢化で膨らみ続ける社会保障費、概算要求1.9%増/厚労省3.次の医療計画に病院薬剤師、看護師の確保と育成を求める/厚労省4.地域医療を担う医師を、文部科学省と厚生労働省に知事らが提言5.資格ない臨床工学技士が10針縫合、医師や技士に処分/千葉県6.治験促進センター廃止へ/日本医師会1.感染者の全数把握見直し、全国一律で/首相官邸8月27日、岸田文雄総理はオンライン記者会見で、新型コロナウイルス感染者の全数把握の見直しについて、今後は、全国一律の措置に移行し、報告対象外となる自宅療養者への支援体制などを整えた上で、移行時期を決定すると示した。現時点で、各自治体の判断で、報告対象を限定することについては、柔軟に対応することは可能とした。また、新型コロナ対策で実施している水際対策についても緩和を8月24日の記者会見で、ワクチンを3回の接種を条件に、日本に入国・帰国時に求めてきた海外での帰国前の検査については9月7日から免除すると発表した。(参考)岸田首相 新型コロナ 感染者の全数把握見直し 今後全国一律で(NHK)岸田首相、コロナ全数把握の見直しは「全国一律導入が基本」…ウィズコロナに向けた「新たな段階」(読売新聞)入国前の現地検査免除、9月7日から 全数把握は見直し 岸田首相が表明(日経新聞)2.高齢化で膨らみ続ける社会保障費、概算要求1.9%増/厚労省厚生労働省は、来年度の予算案の概算要求で、今年度予算に比べ6,300億円増の33兆2,644億円を財務省に要求した。高齢化の進展により社会保障費が31兆2,694億円と増加したため。今後も団塊の世代が後期高齢者となっていくため、医療費を含め社会保障費の抑制策について国としては取り組みを強化するとみられる。(参考)社会保障費増続く 厚労省の概算要求33.2兆円、実質過去最大(朝日新聞)厚労省概算要求1.9%増の33.2兆円 高齢化で増加続く(日経新聞)2023年度概算要求、社会保障費に約31.3兆円 自然増5,376億円、厚労省(CB news)3.次の医療計画に病院薬剤師、看護師の確保を求める/厚労省厚生労働省は8月25日に「第8次医療計画等に関する検討会」を開催し、不足しているとされる病院薬剤師や訪問看護師の確保に関する記載を都道府県に求めることとした。これまでの医療計画では薬剤師については資質向上を求めていたが、今後は調剤だけでなく、病棟薬剤業務やチーム医療、在宅医療への参加など、役割の充実が求められている。また、看護職員については、都心部では2025年に看護職員不足が見込まれる一方で、一部の都道府県においては、供給数より2025年の看護職員需要数が少ないなど、地域の実情を踏まえつつ、都道府県ナースセンターによる復職支援や、医療機関の勤務環境改善による離職防止などの取組を推進していくことを求めている。(参考)医師以外の医療従事者の確保について病院薬剤師や訪問看護師、特定行為研修修了看護師、医療計画に「ニーズ踏まえた確保策」規定へ-第8次医療計画検討会(Gem Med)薬剤師の確保策を医療計画に記載へ、厚労省方針 計画の作成指針に反映(CB news)4.地域医療を担う医師を、文部科学省と厚生労働省に知事らが提言「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」は、2022年8月21日、厚生労働省や文部科学省に対して、諸問題を解消するための提言書を提出した。提言は、大学医学部の定員上限の緩和や、すべての病院の管理者の要件に医師少数区域での勤務経験の義務付けを求める内容となっている。同会は2020年、医師の都市部偏在により地域で医師不足が課題となっている、人口当たりの医師数が少ない、青森、岩手、福島、新潟、長野、静岡の県知事らが発起し、現在12県が参加し、定期的にシンポジウムなどを開催している。(参考)地方病院の医師不足解消へ 12県の知事 厚労省と文科省に提言(NHK)令和4年度「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」提言決議地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会5.資格ない臨床工学技士が10針縫合、医師と技士が処分に/千葉県千葉市立海浜病院で、ペースメーカの交換術で、医師資格のない臨床工学技士に縫合をさせていた問題で、病院側による再調査の結果、技師の縫合は10針以上であり、技師が虚偽証言をしていたことが明らかとなった。病院側は臨床工学技士と執刀医にそれぞれ10分の1(1ヵ月)の減給、院長を訓告の懲戒処分とした。(参考)無資格縫合は、1針ではなく10針も 千葉市立病院の不正手術問題(朝日新聞)千葉 無資格の技士が胸の縫合手術 調査にも虚偽説明で減給処分(NHK)6.治験促進センター廃止へ/日本医師会日本医師会は、治験や臨床研究の基盤整備の推進を目的に、平成15年に設立した治験促進センターを、日本医師会理事会において廃止することを決定した。これまでは、活動の基盤整備などに厚生労働科学研究費を用いていたが、平成27年度から日本医療研究開発機構(AMED)委託研究費に変わり、厚生労働省・AMEDと連携してきた。今後については、臨床試験のための eTrainingCenterや臨床試験登録システム(CTR)は2023年1月31日に廃止など行い、令和5年度以降、治験に関する業務は、医療技術課の所管となる見込み。(参考)治験センター廃止に伴う業務整理について(日本医師会)治験促進センター廃止に伴う業務整理について(治験促進センター)

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ブースター接種率、職業や年収によって明確な差

 COVID-19ワクチンのプライマリ接種完了者(以下、ワクチン接種完了者)であっても、ブースター接種を受けるかどうかに関しては、地理的・職業的・社会人口学的な差異があることを、米・NYC Test and Trace CorpsのIsrael T. Agaku氏らが報告した。ブースター接種の必要性と接種意欲に関する調査は実施されているが、同氏らの認識ではブースター接種率とその背景因子を評価した大規模な調査は行われていないため、本調査を実施して社会人口学的要因を明らかにすることにした。JAMA Network Open誌2022年8月19日号掲載の報告。 この横断的研究は、米国国勢調査局の2021年12月1日~2022年1月10日の家計実態調査を基に行われた。メールやSMSで参加者を募り、オンラインで回答を得た。参加者には、新型コロナワクチンの接種の有無、接種回数と初回に接種したワクチンのメーカー名、自己申告によるCOVID-19感染の有無を尋ねた。また、社会人口学的要因として、COVID-19の感染の有無が不明な人との接触機会を探るため、過去7日間で最もよくいた場所、婚姻状況、子供の人数、居住地域、人種・民族、性別、年齢、最終学歴などを調査した。 解析対象者は、ワクチン接種を完了している成人13万5,821人(18~44歳は41.5%[平均年齢48.07±17.18歳]、女性51.0%)であった。ブースター接種の定義は、初回に接種したワクチンがジョンソン・エンド・ジョンソン製のワクチンの場合は2回以上の接種、ファイザー製ワクチンまたはモデルナ製ワクチンの場合は3回以上の接種とした。調整接種率(APRs)はポアソン回帰法を用いて測定し、ワクチン接種完了者のうちブースター接種を受けた人の背景を調査した。 主な結果は以下のとおり。・米国全体のワクチン接種完了者は83.0%で、そのうちブースター接種を受けたのは48.5%であった。ブースター接種の割合が低かった州はミシシッピ州(39.1%)、高かった州はバーモント州(66.5%)であった。・ブースター接種率が高かったのは、65歳以上の人(71.4%)、メディケア登録者(70.9%)、世帯年収20万ドル以上(参考:2,700万円超)の人(69.3%)、博士号・修士号・専門職の人(68.1%)、既婚で家に子供がいない人(61.2%)、病院勤務者(60.5%)、非ヒスパニック系アジア人(54.1%)であった。・一方、ブースター接種率が低かったのは、18~24歳の人(24.0%)、独身で家に子供のいる人(24.7%)、経済的困窮者(32.0%)、COVID-19の既感染者(32.5%)、学歴が高等教育以下の人(34.0%)、メディケイド加入者(35.2%)、飲食店・郵便局・更生施設・薬局勤務者であった。・家の外で働いていない人と比べてブースター接種率が高かったのは、病院勤務者(APR:1.23、95%信頼区間[CI]:1.17~1.30)、医師・歯科医師などの外来医療機関勤務者(同:1.16、同:1.09~1.24)、社会福祉事業従事者(同:1.08、同:1.01~1.15)であった。・一方、家の外で働いていない人と比べてブースター接種率が低かったのは、農業・林業・漁業・狩猟産業従事者(同:0.83、同:0.72~0.97)、郵便局勤務者、(同:0.84、同:0.60~1.16)、食品以外の製造業従事者(同:0.84、同:0.75~0.94)、飲食店勤務者(同:0.85、同:0.74~0.96)であった。・ブースター接種を受ける割合は年齢が高くなるとともに高くなり、最終学歴が低いほど低くなった。・COVID-19と診断されたことがない人に比べて、診断されたことがある人ではブースター接種率が30%低下した(同:0.70、同:0.68~0.73)。・男性と比べて、女性ではブースター接種率が低かった (同:0.96、同:0.94~0.98)。 著者は、「本調査から、米国の成人におけるブースター接種率には格差がある。ブースター接種率を改善するには、接種率の低い集団を対象とした取り組みが必要となる可能性がある」とまとめた。

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妊娠中のコロナワクチン接種、早産等のリスク増大なし/BMJ

 妊娠中に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンを接種しても、非接種と比較して早産、在胎不当過小(SGA)児の出生、死産のリスクは増加しないことが、カナダ・オタワ大学のDeshayne B. Fell氏らの後ろ向きコホート研究で示された。妊娠中のCOVID-19ワクチン接種による妊娠アウトカムについては、大規模比較研究のエビデンスが限られていた。著者らは「今回の結果は、妊娠中のCOVID-19ワクチン接種のリスクとベネフィットに関してエビデンスに基づく意思決定に役立つものである」とまとめている。BMJ誌2022年8月17日号掲載の報告。カナダ8万5,162例の出産について解析、約半数が妊娠中にワクチン接種 研究グループは、カナダ・オンタリオ州の出生登録(Better Outcomes Registry and Network[BORN Ontario])とCOVID-19ワクチン接種データベース(COVaxON)を連携させ、2021年5月1日~12月31日のデータを用い、研究期間終了(2021年12月31日)の42週以上前の妊娠による出産で、在胎週数20週以上または出生時体重500g以上のすべての生児および死産児、ならびに受精したと思われる日から出生前日までの間に受けたワクチン接種について特定し解析した。 主要評価項目は、早産(妊娠37週未満)、超早産(妊娠32週未満)、SGA児(在胎期間に対して出生時体重が10パーセンタイル未満)の出生、および死産の発生で、COVID-19ワクチン接種の影響についてCox回帰法を用いてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。COVID-19ワクチン接種はリスク期間において曝露状況が経時的に変化する因子として扱い、HRは傾向スコアによる重み付けを用いて潜在的交絡因子に関するHRを補正した。 調査期間中の出産児(生児および死産児)は8万5,162例で、このうち母親が妊娠中に1回以上COVID-19ワクチンを接種していた児は4万3,099例(50.6%)で、うち4万2,979例(99.7%)はmRNAワクチンであった。早産、超早産、死産、SGA児出生のリスク増加は認められず 妊娠中にワクチン接種を受けた4万3,099例のうち、1回接種は1万3,416例(31.1%)、2回接種は2万9,650例(68.8%)、3回接種は33例(0.1%)であった。また、1回目接種が妊娠初期(第1期)であったのは5,213例(12.1%)、妊娠中期(第2期)が2万715例(48.1%)、妊娠後期(第3期)が1万7,171例(39.8%)であった。 妊娠中のワクチン接種は、すべての早産(ワクチン接種群6.5% vs.非接種群6.9%、補正後HR:1.02[95%CI:0.96~1.08])、自然早産(3.7% vs.4.4%、0.96[0.90~1.03])、および超早産(0.59% vs.0.89%、0.80[0.67~0.95])のリスク増加とは関連がなかった。また、SGA児の出生(9.1% vs.9.2%、0.98[0.93~1.03])、および死産(0.25% vs.0.44%、0.65[0.51~0.84])のリスク増加も認められなかった。 これらの結果は、ワクチンを接種した妊娠の時期、mRNAワクチンの種類、妊娠中のワクチン接種回数にかかわらず、同様であった。

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第29回 患者を帰す前の一工夫:病状や処方の説明を十分しよう【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)病状説明は、患者さんが陥りがちな点を踏まえた上で、具体的に、わかりやすく行おう!【症例】71歳男性。高血圧以外の特記既往なく、ADLは自立している。来院前日から喉の痛みを自覚した。来院当日起床時から倦怠感、発熱を認めた。別棟に住む孫が2日前に近医小児科で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の陽性診断を受けており、濃厚接触はしていないものの心配になり受診。●受診時のバイタルサイン意識清明血圧148/91mmHg脈拍90回/分(整)呼吸20回/分SpO297%(RA)体温38.1℃所見全身状態は良好で、流行状況も考慮しCOVID-19迅速抗原検査を施行したところ陽性。飲食も可能であり、解熱薬のみの処方で帰宅の判断となった。〔初診外来での会話〕医師「コロナ陽性だったので、薬を出しておきますので、それで対応してください。保健所から連絡があると思うので、あとはその指示に従ってくださいね。お大事に」患者「あ、はい…」翌日、喉の痛みは改善傾向にあるものの、発熱が持続しているため再度受診したが…。COVID-19禍での外来診療みなさん、体調を崩してはいないでしょうか? 私が勤務する救急外来にも連日多くの患者さんが来院し、「コロナ疑いの患者さんもたぁくさん」という、そんな毎日です。なるべくなら自宅で経過をみることが可能な方への受診は控えてもらいたいと思いながらも、その判断って私たちが思っているほど簡単ではありません。まして子を持つ親であれば、子どもの体調には自分以上に心配になりますし、家族内感染の場合には自宅内隔離を実践しようとするも現実は難しく、日毎に症状を認める家族の対応に悩むことが多いでしょう。日本感染症学会、日本救急医学会、日本プライマリ・ケア連合学会、日本臨床救急医学会の4学会から「限りある医療資源を有効活用するための医療機関受診及び救急車利用に関する4学会声明」が8月2日に提出され、国民一人一人がこの内容を理解することも大切ですが、受診した患者さんに対しても意識させる必要があります1)。再受診患者を防ぐことはできないか救急外来で帰宅可能と判断した患者さんが数日内に再度受診することは、避けたいところですが珍しくありません。現在、ベッド事情が厳しい病院も多いことから、本来入院で経過をみることが望ましい患者さんを外来でフォローすることも増えているかもしれません。このようなケースは致し方ない部分もあるとは思いますが、なかには再度受診したものの、帰宅可能の判断となる患者さんもいます。その多くがちょっとしたことで防ぐことができるものであり、今回の事例ではその辺りを取り上げたいと思います。ちなみに、状態の悪化によって数日内に救急外来を再受診する患者さんは、そうでない患者さんと比較し、初診時に呼吸数が上昇していることが多く、呼吸数は臨床的悪化の独立した危険因子です2)。帰宅可能と最終判断する前に、呼吸数に着目することをお勧めします。バイタルサインは普段の状況で評価を最近は、呼吸困難を主訴に来院する患者さんが多いように感じます。その際、安静時のバイタルサインのみで帰宅の判断をしていないでしょうか。以前にもこの点は取り上げましたが(第12回 呼吸困難)、バイタルサインは「普段の状況」でも確認することを忘れないようにしましょう。普段歩行可能な方であれば、歩行してもらい、それでも症状の再燃が認められないかを確認しましょう。安静時、SpO2が問題ないから帰宅可能、それではダメですよ。歩いてもらったら、呼吸困難の訴えあり、呼吸数上昇、SpO2低下、そんな場合には再度精査が必要かもしれませんし、入院が必要かもしれませんから。帰宅の判断、その前に高齢者が多い救急外来では、特に表の内容を意識しましょう3)。肺炎や圧迫骨折、診断が正しく安静時に状態は落ち着いていたとしても、自宅では管理が難しいことはいくらでもあります。病気の重症度のみで帰宅or入院の判断ができないことを忘れてはいけません。表 帰宅の判断、その前に-高齢者がERから帰る前に必ず確認すべき8つのこと-画像を拡大するまた、救急外来で診断、治療介入し、その後の治療、経過観察をかかりつけの病院や診療所でフォローしていただくことも少なくありません。その場合も、このように対応する理由を患者さん、家族に理解してもらい、治療方針(ケアプラン)をかかりつけ医と共有する必要があります。紹介状は必須とは思いませんが、患者さんや家族が伝えることが難しい状態であれば、一筆でも簡潔に記載し、その助けとしてもらうのが望ましいでしょう。これを面倒くさいなどと思ってはいけません。薬の説明、ちゃんとしていますか?肺炎に対する抗菌薬や解熱薬、なんらかの痛みに対する鎮痛薬など、救急外来や一般の外来で処方することは日常茶飯事です。その際、薬の説明をどの程度行っているでしょうか?医療者に対して処方する場合には、薬の名前のみ伝えればよいかもしれませんが、一般の患者さんへ処方する際には、当然ながら十分な説明が必要です。みなさんが処方している薬を、患者さんは十分理解しないまま内服していることは少なくないのです。救急外来では、抗血栓薬や利尿薬を内服している患者さんに多く出会いますが、内服理由を確認すると「わからない」と返答されることもしばしばです(みなさんもそんな経験ありますよね?)。表にも「(5)新しい処方箋があれば、薬の相互作用について再確認して理解できているか?」という項目がありますが、救急外来では特に処方に関しては注意が必要です。初診の患者さんも多く、定期内服薬の詳細が把握できないこともあるかもしれません。また、アレルギーの確認を怠ってしまうかもしれません。しかし、それでは困ります。当たり前のことではありますが、きちんと把握する努力を怠らないようにしましょう。解熱鎮痛薬処方の際のポイントは?COVID-19の診断を受けた患者さんや家族から頻繁に相談されるのが、「熱が下がらない」、「喉の痛みが辛い」、「薬が効かない」といった内容です。外来診療中にも電話がかかってくることも多いです。そのような場合に、よくよく話を聞いてみると、病状の悪化というよりも薬の内服方法が不適切なことが少なくありません。薬が効かない? 本当は効いているんじゃない?患者さんが訴える「薬が効かない」、これはまったく効果がないというわけでは必ずしもなく、飲めば熱は下がるけれどもまた上がってきてしまう、その意味合いで使用していることもあるのです。これは薬が効いていないのではなく、薬効が切れただけですよね。つまり、薬の具体的な効果を説明していない、もしくは患者さんが理解していないが故に生じた訴えといえます。薬が効かない? 飲むタイミングの問題では?また、こんなこともあります。頭痛や喉の痛みを訴える患者さんが「薬が効かない」と訴えるものの、よくよく聞いてみると、「薬はあまり飲まない方がよいと思って、なるべく使用しないようにしていた。どうしても痛みが辛いから使用したがあまり効かない」と訴えるものです。なんでもかんでも薬を飲むのはお勧めできませんが、痛みに関してはピークに達してから内服するよりも、痛くなりかけている際に内服した方がピークを抑えることができ、症状はコントロールしやすいでしょう。片頭痛に対する鎮痛薬の内服のタイミングなど有名ですよね。さいごに今回の症例のように、COVID-19で予期される症状に関しては、具体的にいつどのように解熱鎮痛薬を使用するのかをわかりやすく説明する必要があります。「頓服」、この言葉も意外と伝わっていないので要注意です。薬剤師さんが丁寧に教えてくれる場合には問題ないかもしれませんが、市販薬や院内処方の場合には十分な説明がなされないこともありますよね。私は、解熱鎮痛薬を処方する際は、まずは毎食後に定期内服してもらい、症状が改善したら頓服へ切り替えていただくようにお話することが多いです。「今日、明日あたりは食後にこの薬を飲みましょう。朝起きて痛みがない、熱が下がって楽、そのような場合には、朝食後には飲まず、症状が出てきたら飲むようにしましょう」とこんな感じで説明しています。COVID-19の診断は、急性腹症や骨折診療に比べればすぐにつきます。診断に時間がかからないぶん、説明には十分時間をかけ、可能な限り患者さんの不安を取り除きつつ、不要な再受診を防ぐ努力をしていきましょう。1)「国民の皆さまへ 限りある医療資源を有効活用するための医療機関受診及び救急車利用に関する4学会声明」2)Mochizuki K, et al. Acute Med Surg. 2016;4:172-178.3)Southerland LT, et al. Emerg Med Australas. 2019;31:266-270.

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第123回 マジか…コーヒー店で遭遇したコロナ様症状有する“抗原検査で陰性”の人

先日、私はあるコーヒーチェーンの店舗にノートパソコンを持ち込んで仕事をしていた。電源のある席は窓際に位置する横一列のカウンター席。隣の席との間がアクリル板ならぬ、卵パック程度の薄さのプラスチックシートで区切られていた。私の隣には女性が座っていたが、その彼女がマスクを外した状態で時折軽い咳をする。私は気にしないふりをして実は気にしていた。「気にしないふり」を敢えてしていたのは、人によっては呼吸器感染症ではなくとも咳が出てしまう人もいるからだ。昨年、私がお世話になっている編集者が咳喘息と診断され、外出先でマスク越しに咳をしても周囲から白眼視されるのがつらいという話を聞いていた。そして私もごくまれにどうしても咳が出てしまうこともある。咳一つであまり神経質にはなりたくない。やせ我慢と言われようとも人にはそれぞれ事情があるのだからと、こうしたシーンでは努めて平静を装っている。仕事を始めて1時間半ぐらい経った時も隣にはその女性がいた。しかも数分おきに咳をしている。その彼女が突然スマートフォンを片手に話し始めた。「ああ、○○(人の名前)!うん、夕べさ38℃を超える熱が出てさ、すぐあの抗原検査キットっていうの? で検査したけど陰性だった。今朝はまだ37℃台だったけどお昼には37℃切ったんで、たぶん何でもない。もう平気。今日の夜は行けるよ」これを聞いた瞬間、私は凍り付いた。この状況下を考えれば、抗原検査とはまさに新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)で使う抗原定性検査(以下、抗原検査)に他ならない。もやはここで書くのは釈迦に説法だが、抗原検査の感度は発売当初よりも改善されたとはいえ、PCR検査よりは劣る。しかも、現時点でインターネット上では国による性能確認が行われていない研究用のものが購入できる。念のため記述しておくと、発売当初は陽性判定をそのまま確定診断として用いることができたが、陰性の場合はPCR検査による確定診断が必要だった。その後、発症2~9日以内の有症状者では、抗原検査キットとPCR検査の結果の一致率が高いことが確認されたため、該当する人で鼻咽頭拭い液による抗原検査の陰性でも確定診断が行えるようになっている。私が遭遇したこの女性がもし新型コロナだったと仮定したら検査をしたのは発症当日。この段階の陰性という結果は信頼性が担保されているとは言えない。この女性には悪いが私はすぐさま荷物を持って席を立ち、そこからかなり離れた電源のない席に慌てて移動した。この後、3日間、私は仕事場とするアパートにほぼこもりきりになり、自宅に戻った際もマスクを着用したまま過ごすことになった。この日から既に2週間弱が過ぎているが、私も家族もとくに異常はない。現在の第7波の感染拡大と発熱外来のひっ迫を受け、国はインターネットで医療用の認可を受けた抗原検査の販売を解禁する方針を明らかにしている。販売に当たっては薬剤師がメールなどで正しい使用法や陽性時の対応を説明することにはなっている。しかし、こうしたものはかなり薬剤師が徹底して説明したとしても、消費者は自分に都合の良い情報しか記憶に残さないものだ。そしてこの抗原検査も唾液ではなく鼻咽頭ぬぐい液の場合、消費者が自分で正確に検体を採取することができるかはかなり疑問である。少なくとも自分はできる自信があまりない。また、有症状者ならばまだしも、そうした人と濃厚接触者あるいはその疑いのある無症状者が抗原検査で陰性と判定された場合、人との接触を一時的に控え目にするなどの対策を取るだろうか? むしろ前述の女性のように安易に「セーフ」判定と思い込むのではないだろうか?「発熱外来の逼迫を避けるため」という目的で解禁される医療用抗原検査キットが逆に感染拡大傾向に拍車をかけてしまうのではないかと老婆心ながら危惧している。また、私はこのほかにも危惧していることがある。この第7波の影響で医療用の解熱鎮痛薬アセトアミノフェンが供給不安定な状態にあることは医療従事者ならご存じのはず。そして約2週間前にはこの余波でアセトアミノフェンの代替にもなる医療用のロキソニン、呼吸器症状の緩和に使うカルボシステインやトラネキサム酸も出荷調整中となった。さて、万が一の時に備えて、あるいは何らかの症状を感じてインターネットで抗原検査キットを購入する人は併せて解熱鎮痛薬も購入するだろうか? 私には彼らの多くは抗原検査キットのみを購入し、万が一陽性となった時に慌てふためくだけの姿が思い浮かぶ。販売時に説明を行った薬剤師が適切に相談に応じ、OTC医薬品のアセトアミノフェンやそのほかの解熱鎮痛薬の購入を勧める、あるいは直接配達するなどの対応が取れれば良いかもしれないが、平時から多忙な薬局に単価の安いOTC医薬品の配達などをお願いするというのは酷である。結局のところ、有症状者・無症状者を含め陽性となった人は医療機関に向かうだけではないだろうか? その結果、発熱外来などは逼迫し、アセトアミノフェンなどもさらに供給不安に陥ってしまうかもしれない。アセトアミノフェンと言えば、一般人も昨今の感染拡大や新型コロナワクチン接種後の発熱の緩和のために使用するようになり医療用の製品名「カロナール」として知っている人も増えてきた。しかし、こうした一般人はアセトアミノフェンを発熱患者だけでなく、がん性疼痛や高齢者では珍しくない変形性膝関節症や腰痛などの整形外科領域の症状でも使うメジャーな薬であるとはほとんど知らないだろう。先日、都内のある保険薬局の薬剤師と話していて、「すでに供給不安は現実になっていて、オピオイドと併用している患者では医師と相談しながら恐る恐るアセトアミノフェンを減量している」と聞かされ、私もその深刻度を改めて思い知った。この薬剤師によると、もし錠剤の供給が今以上に不足すれば、最悪は原末で提供しなければならなくなるという。がん性疼痛で使われるアセトアミノフェンの1日量は最大4,000mg。原末でこれだけの量を服用することになったら患者はどんなにつらいことだろうと思う。正直なところ、今回の国が決めた医療用抗原検査のインターネット販売解禁は、単に目先の患者の流れを変えるためだけに場当たりで行っているようにしか思われない。その司令塔、過去の本連載(第120回)で私が「延焼を続ける山火事の消火を部下の消防士に適当に指示して、自らは外出先で火遊びをする消防署長」と評した岸田 文雄首相は8月21日に新型コロナを発症し、現在はリモートで業務に当たっている。ちなみに首相とその周辺は1週間に2回ほど抗原検査を行い、頻繁に行っていた夜の会食時には出席者に事前に抗原検査の陰性確認を求めていたという。やらないよりはましだが、今風に言えば「もにょる」*対応である。*「もにょもにょする」というほかに形容しがたい感覚、感情、感触などを表現する言い回し。こそばゆい感じ、違和感やわだかまりを覚える感じ、すっきりしない印象、などを形容する場合に用いられることが多く、その意味では「むずむず」「もやもや」のニュアンスに近い。口ごもる様子をもにょると表現する例もある(実用日本語表現辞典より)その岸田首相を筆頭とする国へより緻密な対応を求めるのは「木に縁りて魚を求む」なのか?

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コロナvs.インフル、入院患者の血栓塞栓症リスク/JAMA

 米国・ペンシルベニア大学のVincent Lo Re III氏らによる、米国の公衆衛生サーベイランスシステムのデータを用いた後ろ向きコホート研究の結果、COVID-19入院患者はワクチンの導入前か実施期間中にかかわらず、2018/2019シーズンのインフルエンザ入院患者と比較し、入院後90日以内の動脈血栓塞栓症リスクに有意差はないものの静脈血栓塞栓症リスクが有意に高いことが示された。これまで、COVID-19患者における動脈血栓塞栓症および静脈血栓塞栓症の発生率は不明であった。JAMA誌2022年8月16日号掲載の報告。入院後90日以内の動脈/静脈血栓塞栓症の発症を比較 研究グループは、米国食品医薬品局センチネルシステムから4つの地域統合医療システムと2つの医療保険会社のデータを利用し、ワクチン導入前(2020年4月~11月)のCOVID-19入院患者4万1,443例、ワクチン実施期間中(2020年12月~2021年5月)のCOVID-19入院患者4万4,194例、ならびにCOVID-19の重複感染がない2018年10月~2019年4月のインフルエンザ入院患者8,269例(いずれも診断時に18歳以上)を抽出し、後ろ向きに解析した。 主要評価項目は、入院日から90日以内の動脈血栓塞栓症(急性心筋梗塞、虚血性脳卒中)または静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症、肺塞栓症)の診断であった。追跡期間は、インフルエンザ患者は2019年7月まで、COVID-19患者は2021年8月までとした。 インフルエンザコホートとCOVID-19コホート間の差異に対応するため層別化した傾向スコアを作成し、重み付けCox回帰を用いて各COVID-19入院患者群のインフルエンザ入院患者群に対する血栓性イベントの補正後ハザード比(aHR)を算出し評価した。COVID-19入院患者で、静脈血栓塞栓症リスクが有意に高い 患者背景は、COVID-19患者群(計8万5,637例)が平均(±SD)年齢72±13.0歳、男性50.5%、インフルエンザ患者群がそれぞれ72±13.3歳、45.0%であった。 動脈血栓塞栓症の90日絶対リスクは、インフルエンザ患者群14.4%(95%信頼区間[CI]:13.6~15.2)に対し、ワクチン導入前COVID-19患者群15.8%(15.5~16.2)(群間リスク差:1.4%、95%CI:1.0~2.3)、ワクチン実施期間中COVID-19患者群16.3%(16.0~16.6)(群間リスク差:1.9%、95%CI:1.1~2.7)であった。インフルエンザ患者群と比較し、動脈血栓塞栓症リスクは、ワクチン導入前COVID-19患者群(aHR:1.04、95%CI:0.97~1.11)およびワクチン実施期間中COVID-19患者群(1.07、1.00~1.14)のいずれも、有意な上昇は認められなかった。 一方、静脈血栓塞栓症の90日絶対リスクは、インフルエンザ患者群5.3%(95%CI:4.9~5.8)に対し、ワクチン導入前COVID-19患者群9.5%(9.2~9.7)(群間リスク差:4.1%、95%CI:3.6~4.7)、ワクチン実施期間中COVID-19患者10.9%(10.6~11.1)(群間リスク差:5.5%、95%CI:5.0~6.1)であり、静脈血栓塞栓症リスクはインフルエンザ患者群と比較して、ワクチン導入前COVID-19患者群(aHR:1.60、95%CI:1.43~1.79)およびワクチン実施期間中COVID-19患者群(aHR:1.89、95%CI:1.68~2.12)のいずれも有意に高かった。

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第8回 コロナ療養期間がさらに短縮か

現在の新型コロナの療養期間現在、新型コロナが陽性になった場合、無症状であれば検体採取日を0日目として8日目に療養解除、有症状であれば発症日を0日目として11日目に療養解除となります(図1)。コロナ病棟に入院いただく患者さんも退院基準を満たしたら基本的に自宅に帰ることから、おおむね10日間は入院が必要になります。図1. 2022年8月24日時点の無症状陽性者と有症状陽性者の療養期間(筆者作成)しかし、中には10日間が長過ぎるということで、自己退院される患者さんもいます。同居の家族が陽性で、自宅療養に問題がなければ退院してもよいのですが、そういった条件がなかったとしても、こちらとしても何ら強制できるものでもありません。個人的には医学的に落ち着いている人であれば、自宅に戻っていただいて構わないと思っているのですが、交通手段が問題になることが多いです。「病院の前のタクシーを使ってもらってOKですよ」なんて口が裂けても言えないわけで。かといって、介護タクシーやコロナタクシーのような特別な搬送をお願いすると、コストが高くつきます。2日間の短縮案現在、さらに2日間前倒しして、無症状を5日間、有症状を7日間に短縮してはどうかという案が出ています(図2)。濃厚接触者の待機期間が以前緩和されたときにも議論になりましたが、要は「社会がどこまで感染リスクを背負えるか」という点に尽きます。図2. 無症状陽性者と有症状陽性者の療養期間(案)(筆者作成)PCRで新型コロナ陽性と判明した後、感染性のウイルスが検出されなくなるまでの期間は、デルタ株が平均4日、オミクロン株が5日とされています(統計学的な有意差はなし)1)。PCRが陰性になるまでの期間は、それぞれ10日と11日でした。これは症状よりも長引くことが知られていますよね。ただ、このBoucau氏らの報告でも指摘されていますが、感染性のウイルスの排出期間というのは個々のばらつきが非常に大きいのです。そのため、療養期間を短くするほど、感染者が外に出てくるリスクが高いわけで、この施策が感染者数の増加に影響しないかどうかが懸念となるわけです。ただ、米疾病対策センター(CDC)では、感染者の療養期間をすでにマスク着用の条件で5日間まで短縮しており、日本のようにマスクのアドヒアランスが極めて高い国では、短縮はさほど問題にならないと考えています。参考文献・参考サイト1)Boucau J, et al. Duration of Shedding of Culturable Virus in SARS-CoV-2 Omicron (BA.1) Infection. N Engl J Med. 2022 Jul 21;387(3):275-277.

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オミクロン流行期、小児コロナ入院患者の症状に変化/国立成育医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波が全国的に猛威をふるっている。一般報道では第7波の特徴として小児の陽性感染が多いことが指摘され、全国の小児科はいつにも増して診療を待つ患者であふれているという。小児がCOVID-19に感染した場合、症状が軽微とあると従来言われてきたが、実際入院した患者ではどのような特徴があるだろう。 国立成育医療研究センター感染症科の庄司 健介氏らのグループは、国立国際医療研究センターの研究チームと合同で、オミクロン株流行期における小児新型コロナウイルス感染症による入院例の疫学的・臨床的な特徴を、デルタ株流行期と比較検討し、その結果を公表した。 この研究は、国立国際医療研究センター運営の国内最大のCOVID-19レジストリ「COVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)」利用し、今回初めてわが国の小児COVID-19患者の特徴を、オミクロン株流行期とそれ以前とで比較した大規模な研究となる。 本研究は、デルタ株流行期(2021年8月~2021年12月)、オミクロン株流行期(2022年1月~3月)に、それぞれの期間に登録された18歳未満の小児COVID-19入院例847人(デルタ株流行期:458人、オミクロン株流行期:389人)を対象に実施したもの。その結果、オミクロン株流行期は、デルタ株流行期に比べて2~12歳の患者で発熱やけいれんが、13歳以上の患者では咽頭痛が有意に多かったことが判明した。一方で、6歳以上の患者の嗅覚・味覚障害はオミクロン株流行期には少なかったこともわかった。 また、新型コロナウイルスワクチンの接種歴の有無が入力されていた790名に着目してみると、酸素投与・集中治療室入院・人工呼吸管理などのいずれかを要した「より重症と考えられる患者」43名は、いずれも新型コロナウイルスワクチン2回接種を受けていなかったことからワクチン接種が子ども達を重症化から守る方向に働いている可能性があることも示唆された。オミクロン株流行期では発熱やけいれんが多い【背景・目的】わが国におけるオミクロン株流行期の小児COVID-19の臨床的特徴についての情報の解明【研究概要・結果】研究対象:2021年8月~2021年12月(デルタ株流行期)と2022年1月~3月(オミクロン株流行期)の間にCOVIREGI-JPに登録された18歳未満のCOVID-19患者研究方法:COVIREGI-JPに登録されている、患者の背景や臨床経過、ワクチン接種歴、予後などのデータを集計・分析【研究結果概要】・研究対象となった18歳未満の患者はデルタ株流行期458人、オミクロン株流行期389人。・入院患者の年齢の中央値はデルタ株流行期が8歳、オミクロン株流行期が6歳。オミクロン株流行期の方が若年化している傾向にあった。・オミクロン株流行期は、デルタ株流行期に比べて2~12歳の患者で発熱やけいれんが、13歳以上の患者では咽頭痛が有意に多くあった。一方で、6歳以上の患者の嗅覚・味覚障害はオミクロン株流行期に少なかった。・酸素投与を要した患者はオミクロン株流行期に多かったが、人工呼吸管理や集中治療室入院を要した患者の数、割合には大きな変化はなかった。・新型コロナワクチン2回接種を終えていた患者は、研究対象847人のうち50人(5.9%)だった(接種の有無不明は57人)。この50人は、いずれも軽症だった。・ワクチン接種歴の有無が判明していた790人の中で、酸素投与、集中治療室入院、人工呼吸管理のいずれかを要したより重症と考えられる患者43人のうち、新型コロナワクチン2回接種を受けていた患者はいなかった。ワクチンが重症化から子ども達を守る これらの研究結果を踏まえ庄司氏らは、「発熱やけいれんが増えていたことは、小児COVID-19の診断を考える上で重要な情報と考えられる。また、小児新型コロナワクチン接種者自体が少ない時期の研究なので限界はあるが、ワクチン接種が子ども達をCOVID-19の重症化から守る方向に働いている可能性を示唆している結果であったことは重要な結果と考える。小児COVID-19の特徴はそのときに流行している変異株により変化しうるので、引き続き情報の収集、解析を続けていくことが重要」と今後の展望を述べている。※なお、本研究は、オミクロン株(BA.5)流行前に実施されているためその影響は検討できていないこと、また、それぞれの株が国内の主流であった時期の患者を比較した研究であることなど注意を喚起している。

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イベルメクチン、メトホルミン、フルボキサミンはコロナ重症化を予防せず/NEJM

 メトホルミン、イベルメクチン、フルボキサミンはいずれも、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連した低酸素血症や救急外来受診、入院または死亡の発生に対する予防効果はないことが、米国・ミネソタ大学のCarolyn T. Bramante氏らが行った第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、示された。3剤は、SARS-CoV-2感染早期の外来患者への投与でCOVID-19重症化を予防できるのではと期待されていた。NEJM誌2022年8月18日号掲載の報告。SARS-CoV-2感染3日以内、発症7日以内の過体重/肥満の外来成人患者に投与 研究グループは2×3要因デザイン法を用いて、SARS-CoV-2感染確認から3日以内、発症から7日以内の外来成人患者に対し、メトホルミン、イベルメクチン、フルボキサミン3種の薬剤のドラッグ・リパーパシングとして、COVID-19の重症化予防効果を検証した。被験者は30~85歳で、過体重または肥満だった。 主要エンドポイントは、低酸素血症(自宅測定での酸素飽和度≦93%)、救急外来受診、入院、死亡の複合とした。 全解析は、同時に無作為化した対照群を用い、SARS-CoV-2ワクチン接種状況や、他の試験薬の使用で補正を行った。主要複合イベント補正後オッズ比、0.84~1.05でいずれも有意差なし 合計1,431例が無作為化を受け、主要解析は1,323例を対象に行われた。被験者は年齢中央値46歳、56%が女性(うち6%が妊婦)で、52%がワクチン接種歴ありだった。 主要複合イベント発生に関する補正後オッズ比は、メトホルミン群0.84(95%信頼区間[CI]:0.66~1.09、p=0.19)、イベルメクチン群1.05(0.76~1.45、p=0.78)、フルボキサミン群0.94(0.66~1.36、p=0.75)だった。 事前に規定した副次解析において、救急外来受診、入院、死亡に関する補正後オッズ比は、メトホルミン群0.58(95%CI:0.35~0.94)、イベルメクチン群1.39(0.72~2.69)、フルボキサミン群1.17(0.57~2.40)だった。また、入院または死亡に関するオッズ比は、それぞれ0.47(0.20~1.11)、0.73(0.19~2.77)、1.11(0.33~3.76)だった。 結果を踏まえて著者は、「過体重/肥満の成人患者を対象に行った今回の無作為化試験では、検討した3剤は、主要複合イベントをいずれも予防できなかった。事前規定の副次解析において、メトホルミンは救急外来受診、入院、死亡を減らす可能性があることが示唆されたが、3剤ともそれぞれマッチさせたプラセボ投与よりも、重症度が低かった薬剤はなかった」とまとめている。

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オミクロン株感染者の半数以上が自覚していない

 米国・カリフォルニア州ロサンゼルス郡の人口の多い都市部で、オミクロン株流行時に抗体陽転が確認された人を対象としたコホート研究において、感染者の半数以上が感染を認識していないこと、また、医療従事者は非医療従事者より認識者の割合が高いが全体としては低いことが示唆された。米国・Cedars-Sinai Medical CenterのSandy Y. Joung氏らが、JAMA Network Open誌2022年8月17日号に報告。 本研究は、ロサンゼルス郡のCOVID-19血清学的縦断研究に登録された大学病院の医療従事者と患者の記録を分析したもので、参加者は2回以上の抗ヌクレオカプシドIgG(IgG-N)抗体の測定を1ヵ月以上の間隔で行った。1回目はデルタ株流行終了(2021年9月15日)以降、2回目はオミクロン株流行開始(2021年12月15日)以降で、2022年5月4日までにオミクロン株流行時に感染が確認された成人を対象とした。新型コロナウイルス感染の認識は、自己申告の健康情報、医療記録、COVID-19検査データのレビューで確認した。 主な結果は以下のとおり。・血清学的にオミクロン株感染が確認された210人(年齢中央値[範囲]:51[23~84]歳、女性:65%)のうち、44%(92人)が感染を認識しており、56%(118人)が認識していなかった。・認識していない人のうち10%(12人/118人)が何らかの症状があったが、その原因は風邪や新型コロナウイルス以外の感染症であると回答した。・人口統計学的および臨床的特徴を考慮した多変量解析では、医療従事者は非医療従事者よりもオミクロン株感染を認識している可能性が高かった(調整オッズ比:2.46、95%信頼区間:1.30~4.65)。 これらの結果から、著者らは「オミクロン株感染の認識率の低さが地域社会における急速な伝播の要因である可能性が示唆される」と考察している。

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5~11歳へのBNT162b2ワクチンのオミクロン株に対する有効性(解説:寺田教彦氏)

 本論文は、新型コロナウイルスのオミクロン変異株流行中における5~11歳へのBNT162b2(ファイザー製)ワクチンの2回接種の有効性を報告しており、過去の報告との差異は、2回接種後のCOVID-19関連入院予防効果がより高い可能性が示唆されたことである。 本研究では、シンガポールで5~11歳の25万5,936例を解析対象としており、完全接種(2回接種後7日以上)の小児ではワクチンによるSARS-CoV-2感染の有効率は36.8%(95%CI:35.3~38.2)、COVID-19関連入院の予防が82.7%(95%CI:74.8~88.2)だった。また、ワクチン接種後の重篤な有害事象は0.005%が保健科学庁に報告されたと発表している。 5~11歳へのBNT162b2ワクチンの有効性に関するこれまでの報告を振り返ってみると、米国での1,185例の症例患者と1,627例を対照患者として組み入れたtest-negativeデザインのstudyで、5~11歳の小児の入院予防効果は68%(95%CI:42~82)(Price AM, et al. N Engl J Med. 2022;386:1899-1909.)、イスラエルからの報告では、2回接種後7~21日目で感染予防効果が51%、症候性COVID-19の予防効果は48%(Cohen-Stavi CJ, et al. N Engl J Med. 2022;387:227-236.)、イタリアの296万5,918人の5~11歳を対象にしたレトロスペクティブ分析では、2回接種群でワクチンの有効性は、SARS-CoV-2感染に対して29.4%(95%CI:28.5~30.2)、重症COVID-19に対して41.1%(95%CI:22.2~55.4)(Sacco C, et al. Lancet. 2022;400:97-103.)などがある。成人同様に、オミクロン株が流行株に変化して以降、感染予防効果は低下している。しかし、今回の論文を合わせて考えると、重症化予防効果やCOVID-19関連の入院予防効果はオミクロン株でも期待ができそうである。 さて、5~11歳の小児への新型コロナワクチン接種について2022年8月中旬時点で再考してみる。今回も接種によるメリットとデメリットについて論じる。 メリットとしては、(1)感染予防効果、(2)重症化やCOVID-19関連入院の予防効果、(3)小児多系統炎症性症候群などの重症合併症の予防効果、(4)集団免疫効果などがある。デメリットとしては、副反応などが考えられる。 過去に論じた内容(CLEAR!ジャーナル四天王「オミクロン株流行時期における5~11歳児に対するBNT162b2ワクチンの有効性」)から変化することは、メリットは、本論文を参考にすると、(2)のCOVID-19関連入院を防ぐ効果がより期待できるだろう。しかし、今回の論文の内容以上に臨床現場で変わった重要なポイントとして、オミクロン株流行以降は、小児の感染者が増加しただけではなく、クループ症候群や熱性けいれん患者も増加し、脳症や心筋炎などの重症例も報告されるようになっていることがある。また、入院を要しない患者でも、発熱の頻度は高く、咽頭痛、嘔吐の報告が多く(日本小児科学会.「データべースを用いた国内発症小児 Coronavirus Disease 2019[COVID-19]症例の臨床経過に関する検討」の中間報告:第3報 オミクロン株流行に伴う小児 COVID-19症例の臨床症状・重症度の変化)、当地域でもご家族から病院や保健所への相談が増加していることがある。 オミクロン株が流行している本邦としては、小児でも重症例や入院を要する症例、場合によっては死亡例が報告されるようになった。そして、新型コロナワクチンは、これらのリスクを低下させることが示されており、5~11歳では副反応の報告も低いことからワクチン接種のメリットのほうが大きいだろう。 また、小児の感染経路もデルタ株以前とは変化してきている。感染対策のために、感染経路を調査することがあるが、第7波では、学童や小学校でクラスターとなり、小児が家庭に持ち込む事案が増えているような感覚がある。データベースを参考にすると、小児が感染した経路は、兄弟や両親や祖父母を含めた家族が最多ではあるが、学校関係者や幼稚園・保育園関係者からの症例も多いように感じられる(日本小児科学会.「データベースを用いた国内発症小児 Coronavirus Disease 2019[COVID-19]症例の臨床経過に関する検討」に基づく早期公開情報)。 (4)の集団免疫効果について、小児に対する新型コロナワクチンでは、高齢者や成人を守るための集団免疫効果は期待するべきではない、という議論もあったが、集団免疫効果は成人を含めた社会集団にのみ当てはまることではなく、小児のコミュニティにおいても成立する。新型コロナワクチンの予防接種を受けている子供が増えることで、集団内でCOVID-19が流行するリスクは減らすことができるだろう。メリットとして挙げた(1)の感染予防効果は低くなっているとはいえ、小児の所属する集団で皆がある程度感染予防効果を身に付けることで、(4)の集団免疫効果もある程度は期待できるのではないかと考える。 日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会から2022年8月10日付で「5~17歳の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」が示されており、本文では「日本小児科学会は、5~17歳のすべての小児に新型コロナワクチン接種を推奨します」としている。 本論文を含めた知見や、昨今の本邦の状況を鑑みても、5~11歳の新型コロナワクチンは私も接種は推奨されると考える。そして、「5~17歳の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」は、ワクチンに関するメリットとデメリットについて現時点で判明している知見を丁寧にまとめており、これらの資料も参考に、ご両親は子供やかかりつけ医師と新型コロナワクチン接種の是非について相談していただければと考える。

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第126回 リバウンド患者へのPaxlovid2回目投与の試験をFDAがPfizerに命じた

ニルマトレルビル・リトナビル(商品名:パキロビッドパック)服用後の新型コロナウイルス感染(COVID-19)再発(リバウンド)への同剤2回目投与の試験実施を米国FDAがPfizer(ファイザー)に命じました1-3)。そのリバウンドは先月末に米国のバイデン大統領に生じたことで注目を集めました。バイデン大統領は先月21日にCOVID-19検査で陽性となり、パキロビッドパック服用の甲斐あってその翌週26日に陰性となりました。しかしその4日後の7月30日土曜日の朝に抗原検査で再び陽性4)となって2回目の隔離に身を置き、今月6日に晴れて陰性となってリバウンドを脱しています5)。米国の感染症対策の医学顧問Anthony Fauci(アンソニー・ファウチ)氏もバイデン大統領と同様にパキロビッドパック治療後のCOVID-19リバウンドを被っています。入院や死亡を減らすことが分かってからパキロビッドパックは高リスクCOVID-19患者への引く手あまたな薬となってMerck & Co(メルク)のモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)を大きく引き離しました。しかし頼みの綱の薬であるパキロビッドパック治療後の感染や症状の再発がこの春ぐらいから結構な数の患者に認められるようになります。そのようなCOVID-19リバウンドが広く報じられたことや医師がすでに裁量でパキロビッドパックの2回目を処方し始めていることを受けて米国FDAは5月からファイザーと同剤の再投与を検討する臨床試験について協議を始め6)、今回ファイザーにその試験の実施を命じました。ファイザーはパキロビッドパック治療後のCOVID-19リバウンド患者への同剤5日間再投与のプラセボ対照試験を実施し、その結果を来年2023年9月末までに米国FDAに提出する必要があります。試験の仕様は今月中に固まる予定であり、詳細が決まったら公表するとファイザーの広報担当者は言っています2)。ファイザーによるとパキロビッドパックの臨床試験でのリバウンド発生率はおよそ2%ですが、米国・オハイオ州ケースウエスタンリザーブ大学の研究者Rong Xu氏等が最近発表した解析ではもっと多くに生じています。Xu氏等のその調査結果によると、米国全域の9千万人超の電子カルテから同定したパキロビッドパック服用患者11,270人の1ヵ月以内のCOVID-19リバウンド発生率は約5%(5.40%)でした7)。メルクのラゲブリオ服用患者にもリバウンドは生じており、1ヵ月以内のその発生率は約9%(8.59%)です。ラゲブリオでのリバウンド発生率は一見パキロビッドパックより高めですが、ラゲブリオ投与患者はより高齢で持病がより多く、補正解析ではパキロビッドパックと有意差はありませんでした。ラゲブリオとパキロビッドパックのどちらでも発生率に有意差なく認められていることからリバウンドは新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が体内に居続けていること(persistent viral infection)と関連するのかもしれないと著者は推定しています。もちろんリバウンドは未治療の患者にも生じます。ACTIV-2/A5401試験のプラセボ投与患者568人を調べた今月初めの報告では外来の未治療COVID-19患者のおよそ8人に1人(12%)にウイルスリバウンド(SARS-CoV-2 RNAが0.5 log10以上上昇)が認められています8)。また4人に1人以上(27%)は最初の症状改善後の症状のリバウンドを被っていました。SARS-CoV-2 RNA上昇と症状のリバウンドの併発は稀でした。COVID-19リバウンドの仕組みの研究やその予防のための投与手段が必要であり7)、FDAから要請を受けてファイザーが新たに実施する試験はそれらの検討に役立つでしょう。参考1)EUA 105 Pfizer Paxlovid LOA 08052022 / FDA 2)Pfizer to Test Second Paxlovid Course in Patients With Covid Rebound / Bloomberg3)FDA asks Pfizer to test second Paxlovid course in patients with COVID rebound / Reuters4)physician to the president / The White House5)Press Briefing by Press Secretary Karine Jean-Pierre / The White House6)Emergency Use Authorization (EUA) for PAXLOVID Center for Drug Evaluation and Research Review Memorandum / FDA7)COVID-19 rebound after Paxlovid and Molnupiravir during January-June 2022. medRxiv. June 22, 2022.8)Viral and Symptom Rebound in Untreated COVID-19 Infection. medRxiv. August 02, 2022

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