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「ゾコーバ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第82回

第82回 「ゾコーバ」の名称の由来は?販売名ゾコーバ®錠125mg一般名(和名[命名法])エンシトレルビル フマル酸(JAN)効能又は効果SARS-CoV-2による感染症用法及び用量通常、12歳以上の小児及び成人にはエンシトレルビルとして1日目は375mgを、2日目から5日目は125mgを1日1回経口投与する。警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.次の薬剤を投与中の患者ピモジド、キニジン硫酸塩水和物、ベプリジル塩酸塩水和物、チカグレロル、エプレレノン、エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン、エルゴメトリンマレイン酸塩、メチルエルゴメトリンマレイン酸塩、ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、シンバスタチン、トリアゾラム、アナモレリン塩酸塩、イバブラジン塩酸塩、ベネトクラクス〔再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の用量漸増期〕、イブルチニブ、ブロナンセリン、ルラシドン塩酸塩、アゼルニジピン、アゼルニジピン・オルメサルタン メドキソミル、スボレキサント、タダラフィル(アドシルカ)、バルデナフィル塩酸塩水和物、ロミタピドメシル酸塩、リファブチン、フィネレノン、リバーロキサバン、リオシグアト、アパルタミド、カルバマゼピン、エンザルタミド、ミトタン、フェニトイン、ホスフェニトインナトリウム水和物、リファンピシン、セイヨウオトギリソウ(St.John's Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品3.腎機能又は肝機能障害のある患者で、コルヒチンを投与中の患者4.妊婦又は妊娠している可能性のある女性※本内容は2022年12月9日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2022年11月作成(第1版)医薬品インタビューフォーム「ゾコーバ®錠125mg」2)SHIONOGI:製品情報一覧

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新型コロナ、コミュニティ迅速抗原検査は入院を減少/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の無症状者を対象とした全市的なコミュニティ迅速抗原検査の導入は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連入院の大幅な減少と関連していることが、英国・リバプール大学のXingna Zhang氏らによる合成コントロール研究の結果、示された。多くの国が、COVID-19の拡大を制御するために住民ベースの無症状者対象検査プログラムを展開したが、地域での大規模な自主検査が感染拡大を阻止しCOVID-19の重症化を抑制するかどうかのエビデンスは不足していた。著者は、「SARS-CoV-2の大規模なコミュニティ迅速抗原検査は、感染減少および入院予防に役立つ可能性がある」とまとめている。BMJ誌2022年11月23日号掲載の報告。無症状者への迅速抗原検査プログラムの有効性を検証 Covid-SMARTは、英国政府が実施した無症状者対象の任意の自由参加によるSARS-CoV-2迅速抗原検査プログラム(検査センターにて監視下で自己検体採取)で、2020年11月6日からリバプール市に居住または勤務するすべての人に対し試験的に導入された。 研究グループは、英国国民保健サービス(NHS)Digitalが提供するHospital Episode Statistics(HES)の2020年10月5日~2021年1月17日のデータを用い、リバプール市(一般人口49万8,042人)と、過去のCOVID-19関連入院率や社会人口学的要因が類似するよう重み付けした英国の他の地域(対照地域)を、COVID-19関連入院について合成コントロール法により比較した。 主要評価項目は、2020年11月19日~2021年1月15日におけるCOVID-19関連入院患者数(週間)で、中地域調査区(MSOA)で集計した。MSOAは、地方自治体内の標準的な地理的単位(平均人口7,200人)で、リバプール市は61のMSOAで構成されている。対照地域と比較してコミュニティ検査の導入でCOVID-19関連入院率が低下 リバプール市におけるCovid-SMARTは、英国全土のロックダウンのため2020年11月6日~12月3日の期間は軍の支援により検査が強化された。この期間のCOVID-19関連入院率は、対照地域と比較してコミュニティ検査が導入されたリバプール市で43%(95%信頼区間[CI]:29~57)低かった(p<0.001)。この低下率は絶対数で146例(95%CI:96~192)減少に相当する。 全介入期間(2020年11月6日~2021年1月2日)では、COVID-19関連入院率は対照地域と比較してリバプール市で16%(95%CI:0~27)低かった(p=0.07)。 2020年12月3日~2021年1月2日のCOVID-19段階的制限の地域差を補正した後では、リバプール市のCOVID-19関連入院率は対照地域と比較して25%(95%CI:11~35)低く(p<0.001)、絶対数の減少は239例(95%CI:104~333)と推定された。

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オミクロン株BQ.1.1とXBBに対するコロナ治療薬の効果を比較/NEJM

 新型コロナウイルス感染症の第8波では、オミクロン株BA.5がまだ主流ではあるものの、主に欧米で見られるBQ.1.1系統(BA.5系統から派生)や、インドやシンガポールなどのアジア諸国で急激に増加しているXBB系統(BA.2系統から派生)の感染例が、国内でも徐々に増加している。河岡 義裕氏らによる東京大学、国立国際医療研究センター、国立感染症研究所、米国ウィスコンシン大学が共同で行った研究において、患者から分離したBQ.1.1とXBBに対して、4種類の抗体薬と3種類の抗ウイルス薬についてin vitroでの有効性を検証したところ、抗体薬はいずれも感染を阻害しなかったが、抗ウイルス薬は高い増殖抑制効果を示した。本結果は、NEJM誌オンライン版2022年12月7日号のCORRESPONDENCEに掲載された。 試験薬剤は、抗体薬のソトロビマブ、カシリビマブ/イムデビマブ、チキサゲビマブ/シルガビマブ、bebtelovimab、抗ウイルス薬のレムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビル/リトナビルである。 今回の試験では、患者から分離したBQ.1.1とXBBに対する治療薬の効果について、新型コロナウイルスの従来株(中国武漢由来の株)、オミクロン株BA.2、BA.5のそれぞれに対する効果と比較した。抗体薬について、FRNT50(ライブウイルス焦点減少中和アッセイで50%のウイルスを中和する血清希釈)を用いて評価した。また、抗ウイルス薬について、ウイルスの増殖を阻害するかどうかを、IC50(50%阻害濃度)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。【抗体薬】・BQ.1.1とXBBに対するソトロビマブ、カシリビマブ/イムデビマブ、チキサゲビマブ/シルガビマブの中和活性は、いずれも著しく低かった。・bebtelovimabは、BA.2とBA.5に対して高い中和活性を維持していたが、BQ.1.1とXBBに対する中和活性は著しく低かった。【抗ウイルス薬】・BQ.1.1に対するレムデシビルは、従来株に対する本剤の0.6倍のIC50の値となり、高い効果を示した。モルヌピラビルでは1.1倍、ニルマトレルビルでは1.2倍となり、従来株とほぼ同等のIC50の値を示した。・XBBに対しては、レムデシビルでは0.8倍、モルヌピラビルでは0.5倍のIC50の値となり、従来株より高い効果を示した。ニルマトレルビルでは1.3倍のIC50の値を示した。・これら3種類の抗ウイルス薬のBQ.1.1とXBBに対する効果は、BA.2とBA.5に対する効果を上回るものだった。 抗ウイルス薬のレムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビルは、オミクロン株から新たに派生したBQ.1.1とXBBに対して、いずれも高い増殖抑制効果が認められた。また、著者は本結果について、BQ.1.1とXBBが、BA.2とBA.5を含む以前の系統よりも優れた免疫回避力を持っていることが示唆され、オミクロン株の継続的な変異に対して、新たな治療用モノクローナル抗体の必要性が高まっていると指摘している。

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第23回 病院の黙食はいつまで?

緩和された学校の「黙食」コロナ禍の「黙食」って誰が考えたのかな?と思ってGoogleで調べてみました。Wikipediaによると「会食が感染拡大の要因であると槍玉に上げられた飲食店が、苦肉の策として『黙食(もくしょく)』を提唱したことが始まりとされる」と書かれてあり、福岡県の飲食店の店主が考案したらしい、とのことでした。文部科学省は11月29日、学校の給食時に適切な感染対策を講じている場合は「黙食」を求めない方針へ推奨を変更しました。「新型コロナはただの風邪だから、マスク撤廃してウェイウェイ食事しようぜー!」というわけではなく、ゆっくりと日常に戻していきましょうというメッセージと理解しています。しかし、一部の学校では当面「黙食」を継続する方向とのことで、世論はまたもや二分される状態となっています。教育現場にいる知り合いからも「教室内で子供と子供の間隔を2メートル取るというのは不可能なので、結局は黙食継続ということではないか、というのが現場の感覚」というコメントもいただきました。このあたりの現場とのすり合わせ、文科省も頑張ってほしいと思います。濃厚接触者の扱いの是非も含めて、総合的に間引いていかないと現場が混乱しますよね。ゴリゴリにマニュアルを遵守しなければならないような堅苦しさなんて、いっそのこと撤廃するほうが、たぶんやりやすいのでしょうが。日本はもともと「黙食」だった恵方巻きは黙って食べるのはともかくとして、現代の食事というのは会話をしながら…というのが当たり前になっていたように思います。しかし、昔から食事のときは無駄口を叩かないというのがマナーだったという側面もあります。食事中に会話するのは、ちゃぶ台が登場した大正時代が始まりだそうです。伝統的な食卓ではまだ「家」の原理が働いていたので、士族家庭では家父長的色彩が強く、言葉遣いや礼儀作法の教育を食事中に受けたとされています1)。家長中心の食事は非常に厳しいもので、会話などもってのほかだったそうです。なぜ食事中の会話が下品だとしつけられたのかはよくわかりません。昭和時代にテレビが登場し、このあたりから食事中の会話が増えていったようです。しつけや「家」の大切さを教える場ではなくなっていったということですね。一部の私立校などでは、コロナ禍以前から給食中は基本的に黙食で、音楽を流しているところもあります。これは食事中に大声で会話することが、行儀が悪いと考えているからかもしれません。医療現場の食事はどうなる?同じテーブルにいたり、マスクなしで会話したりすると感染しやすくなるというエビデンスはあるのですが、食事中にお話をしながら食べることと、黙食をすることで、感染リスクに差があったかどうかを調べた研究はありません。医学論文大好きマンの私が検索したかぎりの話なので、もしそういう比較試験があったら申し訳ないですが。われわれの医療現場では、黙食が当たり前になっています。もう新型コロナに慣れてしまって、本当にみんな黙食をしているのかどうかグレーな部分はありますが、少なくとも医療従事者は黙食を続けることには、ある程度コンセンサスがあるようです。新型コロナの法的な位置付けがもしダウングレードされても、われわれの「黙食」の文化はしばらく続くかもしれませんね。デリケートな問題なので言及しにくいと思いますが、このあたりは学会なども提言を出してもらえるとありがたいですね。にしても、医療機関ではしばらく「黙食」が続くとなると、忘年会などの飲み会はもう許されないのかもしれない…、とちょっと悲観的な未来を見据えています。参考文献・参考サイト1)岡田みゆき. 食事中の会話の教育的意義一父子の会話の歴史的変遷一. 日本家庭科教育学会誌. 1998;41(3):9-16.

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心不全患者の緩和ケアの特徴は?【非専門医のための緩和ケアTips】第41回

第41回 心不全患者の緩和ケアの特徴は?非がん疾患の緩和ケアが注目されるようになり、いち早く保険収載された心不全患者の緩和ケア。がん患者に対する緩和ケアの経験をもとに、心不全の緩和ケアにもぜひ取り組んでいただきたいのですが、そこには疾患特性を意識した工夫も必要になります。今回は心不全の緩和ケアに関する特徴について考えていきます。今日の質問訪問診療をしていると、がんよりもむしろ、非がん疾患の患者さんの終末期に対応する機会が多くあります。中でも終末期心不全患者が今後増えていくと聞きました。心不全患者の緩和ケアについて、注意すべき点は何でしょうか?今回の質問にあるように、在宅医療の緩和ケアでは非がん疾患への対応が非常に多くなります。繰り返す誤嚥性肺炎や進行した認知症、神経難病などさまざまな疾患がある中でも、近年は心不全の緩和ケアが注目されています。「心不全パンデミック」って聞いたことがあるでしょうか? これは高齢化に伴い、心不全患者が非常に多くなることを意味しています(かつては私も講演などでよく使っていた用語ですが、新型コロナウイルスのパンデミックと誤解されそうなため最近はあまり使っていません)。高齢化に直面する地域の多くで心不全患者の増加が予想されます。都市部や地方などそれぞれの状況によっても変わりますが、ご自身の地域の医療計画などを参考に、心構えをしましょう。さて、心不全の緩和ケアにおいて意識するべきことは何でしょうか? 私が最も特徴的だと感じるのは、「増悪寛解を繰り返し、可逆性の判断が難しい」という点です。つまり、「治療の効果がどの程度見込まれるか、事前に判断しにくい」のです。心不全患者はしばしば急性増悪が生じますが、そうしたタイミングでは呼吸困難を中心とした症状も強く、静脈薬の投与も要するために入院が必要になります。軽症であれば在宅での治療もある程度まで可能ですが、血行動態に作用する薬剤を使ったり経過が時間単位で推移したりするため、入院を勧めることが多いでしょう。ここがポイントです。心不全患者の終末期は、在宅医療といった特定の療養の場で完結せず、地域の入院医療機関との連携が重要になるのです。皆さん、急性期病院で急性心不全患者の入院を担当する部門と連携体制をつくっているでしょうか?こうした連携では「顔の見える関係」の重要性が言われます。在宅医療だけでは完結しない特性を持つ慢性疾患、とくに増悪時には急性期医療機関でないと対応しにくいのが心不全の終末期であり、心不全の緩和ケアは地域レベルでの連携構築が大切な分野です。そこを意識した行動をぜひ考えてみてください。具体的にお勧めしたいのが、患者さんを紹介する際などに電話で直接やり取りすることです。新型コロナウイルスの流行前であれば、地域連携を意識した勉強会などもよく開催されていましたが、今は少し自発的な行動が必要でしょう。皆さんの工夫もぜひ教えてください。今回のTips今回のTips心不全の緩和ケアでは、増悪寛解を繰り返す疾患特性があり、急性期病院との連携が必要となることを知りましょう。

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葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏でコロナ増悪抑制の可能性/東北大学ほか

 軽症および中等症Iの新型コロナウイルス感染症患者に対し、葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏を追加投与することで、発熱症状が早期に緩和し、呼吸不全への増悪リスクが低かったことが、東北大学大学院医学系研究科漢方・統合医療学共同研究講座の高山 真氏らの研究グループによる多施設共同ランダム化比較試験で明らかになった。Frontiers in pharmacology誌2022年11月9日掲載の報告。葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏を併用したコロナ患者は増悪リスクが低かった 調査は、2021年2月22日~2022年2月16日にかけて国内7施設で行われた。20歳以上の軽症および中等症Iの新型コロナウイルス感染症患者161例を、解熱薬や鎮咳薬による通常治療を行うグループ(対照群、80例)と、通常治療に加えて葛根湯エキス顆粒2.5gと小柴胡湯加桔梗石膏エキス顆粒2.5gを1日3回14日間併用するグループ(漢方薬群、81例)にランダムに割り付け、その効果を比較検討した。主要評価項目は1つ以上の風邪様症状の緩和までの日数で、副次的評価項目は各症状が緩和するまでの日数および呼吸不全への増悪であった。 コロナ治療に葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏を併用する効果を比較検討した主な結果は以下のとおり。・解析対象となったコロナ患者は、葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏を併用する漢方薬群70例(男性45例[64.3%]、年齢中央値35歳)、対照群73例(男性47例[64.4%]、年齢中央値37歳)であった。・1つ以上の風邪様症状緩和までの日数は、漢方薬群と対照群で有意差はみられなかった(p=0.43)。・共変量調整後の累積発熱率では、漢方薬群のほうが対照群より有意に回復が早かった(ハザード比[HR]:1.76、95%信頼区間[CI]:1.03~3.01、p=0.0385)。・中等症Iのコロナ患者における呼吸不全への増悪リスクは、漢方薬群のほうが対照群よりも低かった(リスク差:−0.13、95%CI:−0.27~0.01、p=0.0752)。・両群で薬物投与に関連する有害事象に有意な差はみられなかった。

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第141回 退院COVID-19患者に抗凝固薬アピキサバン無効

抗凝固薬は重度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の回復を助けると広く考えられてきましたが、英国での無作為化試験結果によるとどうやらそうとはいえず、むしろ有害かもしれません。英国全域で実施されている無作為化試験HEAL-COVIDの結果、退院COVID-19患者に経口の抗凝固薬・アピキサバン(apixaban)を投与しても死亡や再入院のリスクは残念ながら低下しませんでした1)。COVID-19患者のその病気との戦いは退院して一件落着というわけにはいかず、心臓、肺、循環器がしばしば絡む症状の新たな発生や悪化、俗に言うlong COVIDをおよそ5人に1人が退院後に被ります。命を落とす人も少なくなく、退院したCOVID-19患者の10人に1人を超える12%は半年以内に死亡しています2)。HEAL-COVID試験はCOVID-19患者のそういった長引く症状や死亡を予防するか減らしうる治療に目星をつけ、それらの治療がCOVID-19患者の長期の経過を改善しうるかどうかを調べることを目当てに実施されています。被験者はCOVID-19で入院した患者から募り、自宅へと退院する少し前にアピキサバン投与群か病院それぞれのいつもの退院後治療群(標準治療群)にそれら患者を割り振りました。アピキサバン投与群の患者は同剤を1日2回2週間経口服用しました3)。1年間の追跡の結果、アピキサバン投与群と標準治療群の死亡か再入院の発生率はほとんど同じでそれぞれ29.1%と30.8%であり、アピキサバンの死亡や再入院の予防効果は残念ながら認められませんでした。アピキサバンは抗凝固薬なだけにHEAL-COVID試験でも出血と無縁ではなく、同剤投与群402人のうち数名は大出血により同剤服用を中止しています。COVID-19患者の退院後の手当として有用と広くみなされていた抗凝固薬は実際のところ死亡や再入院を減らす効果はなく、むしろ危険らしいことを示した今回の試験結果をうけてCOVID-19患者への本来不要な同剤投与がなくなることを望むと試験主導医師Mark Toshner氏は言っています。今回の結果は無益な治療で患者に害が及ぶのを断ち切る重要な役割を担うことに加え、COVID-19患者の長い目でみた回復、すなわちlong COVIDの解消を助ける治療を引き続き探していかねばならないことも意味します1)。HEAL-COVID試験でもその取り組みは続いており、コレステロール低下薬アトルバスタチン(atorvastatin)1年間投与の検討が進行中です。同剤は抗炎症作用があり、COVID-19患者にみられる炎症反応を緩和しうると目されています4)。long COVIDは本連載第140回で紹介したとおり英国では230万人、米国ではその10倍の2,300万人に達すると推定されており、その影響は医療に限らず雇用、障害年金、生命保険、家のローン、老後の備え、家計に波及します5)。それらをひっくるめてlong COVID が米国に強いる負担は4兆ドル近い(3.7兆ドル)とハーバード大学の経済学者David Cutler氏は予想しており6)、その額は実にサブプライムローン絡みの2000年代後半の大不況(Great Recession)の負担に匹敵します。目下のところCOVID-19といえば感染してすぐの時期に目が行きがちですが、感染がひとまずおさまった後の長患いの最適な治療をいまや急いで確立する必要があります1)。参考1)Blood thinning drug does not help patients recover from Covid / Cambridge University Hospitals NHS Foundation Trust2)About HEAL-COVID3)HEAL-COVID試験(Clinical Trials.gov)4)Blood Thinner Ineffective for COVID-19 Patients: Study / TheScientist5)Long Covid may be ‘the next public health disaster’ - with a $3.7 trillion economic impact rivaling the Great Recession / CNBC6)Cutler DM.The Economic Cost of Long COVID: An Update

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新型コロナ抗体保有率が高い/低い都道府県は?/COVID-19対策アドバイザリーボード

 第108回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、11月30日に開催された。その中で鈴木 基氏(国立感染症研究所感染症疫学センター長)らのチームが、「献血時の検査用検体の残余血液を用いた新型コロナウイルスの抗体保有率実態調査」について結果を報告した。 本調査は、わが国における今夏の感染拡大を踏まえた市中での感染状況の把握を目的に、2022年11月6日~13日にかけて行われた。対象は、全国の日本赤十字社の献血ルームなどを訪れた献血者8,260人で、献血時の検査用検体の残余血液を用いて抗N抗体の有無が調べられた。日本全体および都道府県・男女・年齢群別の抗体保有率が解析されている。 なお、本調査の対象は全血献血または成分献血の基準を満たし、以下のいずれにも該当しない者とされた。・新型コロナウイルス感染症と診断または新型コロナウイルス検査で陽性になったことがあり、症状消失後(無症状の場合は陽性となった検査の検体採取日から)4週間以内・発熱および咳・呼吸困難などの急性の呼吸器症状を含む新型コロナウイルス感染症が疑われる症状や、味覚・嗅覚の違和感を自覚し、症状出現日から2週間以内および症状消失から3日以内・新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者に該当し、最終接触日から2週間以内全国で26.5%が新型コロナ抗体保有、沖縄県が最高、長野県が最低 過去の新型コロナウイルス感染で獲得したとみられる抗N抗体を保有する人の割合は、全国平均で26.5%(95%信頼区間[CI]:25.6~27.5)であった。都道府県別にみると、最高は沖縄県の46.6%(95%CI:41.2~52.1)、最低は長野県の9.0%(95%CI:4.6~15.6)であった。<抗体保有率(95%CI)の高かった都道府県(上位10都道府県)>沖縄県:46.6%(41.2~52.1)大阪府:40.7%(34.7~46.9)鹿児島県:35.2%(28.8~42.0)京都府:34.9%(28.5~41.7)熊本県:32.9%(26.7~39.5)長崎県:31.9%(25.4~39.1)東京都:31.8%(26.1~37.9)神奈川県:31.6%(25.1~38.7)宮崎県:31.3%(25.0~38.0)香川県:30.9%(24.1~38.3)<抗体保有率(95%CI)の低かった都道府県(下位10都道府県)>長野県:9.0%(4.6~15.6)徳島県:13.1%(8.2~19.5%)愛媛県:14.4%(9.1~21.1%)新潟県:15.0%(9.3~22.4)岐阜県:15.5%(10.5~21.8)岩手県:16.5%(10.1~24.8)広島県:17.1%(11.9~23.6)島根県:18.5%(12.6~25.8)秋田県:18.7%(12.2~26.7)山形県:19.5%(12.6~28.0)男女による差はなく、年齢が高いほど抗体保有率が低い傾向 男女別の抗体保有率は、女性26.5%(95%CI:24.7~28.4)、男性26.5%(95%CI:25.4~27.7)で、年齢群別の抗体保有率は以下のとおりであった。<年齢群別の抗体保有率(95%CI)>16~19歳:38.0%(33.5~42.7)20~29歳:35.7%(23.8~38.8)30~39歳:33.6%(31.0~36.3)40~49歳:26.8%(24.9~28.8)50~59歳:21.3%(19.6~23.0)60~69歳:16.5%(14.4~18.8) なお、今回の測定結果には献血ができない15歳以下や70歳以上の高齢者は含まれず、単純集計に基づく速報値であることなどから、結果の解釈には留意が必要としている。

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ソトロビマブ、高リスクCOVID-19で優れた重症化予防効果/BMJ

 オミクロンBA.1およびBA.2変異株が優勢な時期のイングランドでは、重症化のリスクが高い新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の日常診療において、中和モノクローナル抗体ソトロビマブは抗ウイルス薬モルヌピラビルと比較して、28日以内の重症化の予防効果が優れ、60日の時点でも結果はほぼ同様であったことが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のBang Zheng氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年11月16日号で報告された。イングランドのEHRデータを用いたコホート研究 研究グループは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染し、COVID-19による重症転帰のリスクが高い患者において、重症化の予防効果をソトロビマブとモルヌピラビルで比較する目的でコホート研究を行った(UK Research and Innovation[UKRI]などの助成を受けた)。 本研究は、OpenSAFELY-TPPプラットフォーム(国民保健サービス[NHS]の電子健康記録[EHR]の解析のための、安全で透明性の高いオープンソースのソフトウエアプラットフォーム)を用いた実臨床コホート研究であり、イングランドの総合診療(GP)施設に登録している2,400万人から、患者レベルのEHRデータが取得された。 2021年12月16日以降に、ソトロビマブまたはモルヌピラビルによる治療を受けた、COVID-19による重症化リスクが高い成人COVID-19患者が対象となった。主要アウトカムは、治療開始から28日以内のCOVID-19による入院およびCOVID-19による死亡であった。さまざまな解析法で、矛盾のないほぼ同様の結果 2021年12月16日~2022年2月10日の期間に、3,331例がソトロビマブ、2,689例がモルヌピラビルによる治療を受けた。全体(6,020例)の平均年齢は52.3(SD 16.0)歳、58.8%が女性、88.7%が白人で、87.6%はCOVID-19ワクチンを3回以上接種していた。 治療開始から28日以内に、87例(1.4%)がSARS-CoV-2感染により入院または死亡した(ソトロビマブ群32例、モルヌピラビル群55例)。 居住地域で層別化したCox比例ハザードモデルでは、人口統計学的因子、高リスクコホート分類、ワクチン接種状況、暦年、BMI、その他の併存疾患で補正すると、ソトロビマブ群はモルヌピラビル群に比べ、COVID-19による入院または死亡のリスクが大幅に低かった(ハザード比[HR]:0.54、95%信頼区間[CI]:0.33~0.88、p=0.01)。 傾向スコアで重み付けしたCoxモデル(HR:0.50、95%CI:0.31~0.81、p=0.005)および完全ワクチン接種者に限定した解析(HR:0.53、95%CI:0.31~0.90、p=0.02)でも、これと矛盾のない結果が得られた。また、他の因子の有無による層別解析でも、実質的な効果の修正は検出されなかった(交互作用検定のp値はすべて>0.10)。さらに、この結果は、イングランドでオミクロンBA.2が優勢だった2022年2月16日~5月1日の期間に治療を受けた患者の探索的解析でもほぼ同様であった。 治療開始から60日以内(95例[1.58%]がCOVID-19で入院または死亡、ソトロビマブ群34例、モルヌピラビル群61例)の層別Cox回帰分析でも、ソトロビマブ群はモルヌピラビル群よりもCOVID-19による入院・死亡の予防効果が優れた(4つのモデルのHRの範囲は0.46~0.51、すべてp<0.05)。 著者は、「これらの結果は、入院を要さないCOVID-19患者の治療において、モルヌピラビルよりもソトロビマブを優先する現行ガイドラインを支持するものである」としている。

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第137回 新型コロナ「5類」引き下げ、今やる3つのデメリット

「またこの議論が出てきたか」と感じている。新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の『感染症法上の5類扱い問題』である。加藤 勝信厚生労働大臣は11月30日、新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードに対して、感染症法上の分類の見直し検討を念頭に現在のウイルスの病原性・感染性などに関するリスク評価を示すよう求めたという。釈迦に説法になってしまうが、改めて新型コロナの感染症法上の分類について触れておくと、現在は「新型インフルエンザ等感染症」に分類され、外出自粛要請や入院勧告が可能で、医療費が全額公費負担なため、法的には感染症法上の2類とほぼ同等となっている。また、これとは別に新型コロナワクチンに関しては予防接種法の臨時接種扱いで、現時点でのワクチン接種は全額公費負担だ。もっとも陽性者報告などは簡略化されたことや、軽症の陽性者が大半を占めるようになり、自主的な自宅隔離や増加した発熱外来での対応止まりも増えたことなども相まって、現状は限りなく5類に近い扱いとも言える。さて個人的にはこの件についてどんな見解かと言うと、「見直し議論は大いにやって良いと思うが、実際の分類変更は多角的かつ慎重に検討すべき」という立場だ。なぜこのように敢えて言及するかと言えば、最近の新型コロナ5類化議論は世論や一部の政治家の主張に押され気味なことに加え、現在の岸田 文雄政権の支持率がかなり低くなっているため、ポピュリズムとも言える安易な判断をしかねない懸念があるからだ。この議論で最も慎重に検討すべきなのは今後の変異株登場の恐れと現在の重症化率についてである。2020年初以来、丸3年のコロナ禍の中で新型コロナでは武漢株→アルファ株→デルタ株→オミクロン株と流行株が入れ替わった。現在のオミクロン株の流行はほぼ丸1年が経過し、国内では最長流行期間を維持している変異株であるのは確かだ。もっともこの間もオミクロン株内の亜系統で流行株が入れ替わっている。これほど流行株が不安定な中で、単純にオミクロン株の特性を基準に法的位置づけを考えるべきかは検討の余地がある。そもそも今回の新型コロナでは、ウイルスの生存原理としての「感染力が強くなれば、重症化率は低下するだろう」というロジックが、武漢株からデルタ株変遷時には“幻想”にすぎなかったことが明らかになった。今の時点でオミクロン株感染者の重症化率が低下しているからと言って、今後もこの状況が続くと考えるのはやや拙速の感がある。感染力の強さゆえに新規感染者が増加し、その過程で強毒の変異株が出現する可能性も十分に考慮に入れなければならない。また、そもそもこの議論では、5類化を支持する一般人を中心に「感染者の数で考えるべきではなく、重症化率で考えるべき」との主張が多い。この手の主張をする人たちの中での最近の流行りは、財務省が各種データからまとめた各感染拡大期の重症化率データの引用である。確かにこのデータを見れば、第6波以降の重症化率や致死率は大幅に低下し、第7波では季節性インフルエンザと同等以下になっているように見える。しかし、この数字は極めて数多くの交絡因子を含んでいる。そもそも第5波と第6波以降での最大の違いはワクチン接種の有無である。第5波時もすでにワクチン接種は進行していたが、重症化率が最も深刻だったと言われる2021年8月は月末時点で全国民の1回目接種率がようやく50%超という状況に留まっていた。現在のオミクロン株の重症化率は2回目までが80%超、3回目までが70%弱の接種率を達成している中でのもの。真の重症化率はワクチン効果でマスクされている可能性がある。5類化議論、もっと言えば季節性インフルエンザとの比較をするならば、ワクチン接種回数や最終接種完了からの経過時間などの層別解析でワクチン接種状況に応じたデータを基に検討しなければ判断を誤る可能性もある。同時に財務省とりまとめの重症化率を基に5類化議論をするならば、それより一足先に始まった新型コロナワクチン接種の無償化終了の是非議論との兼ね合いをどうするかも欠かせない。少なくとも高齢者や基礎疾患保有者では、いまだ油断のならない感染症であることは明白である。5類化するならば、こうした人に対して季節性インフルエンザワクチンのような公費接種(費用の一部に公費負担がある場合)を提供するか否かは明確にしなければならない。というか、それなくして5類化はあまりにも暴論と言える。また一方で、5類化を主張する一般人の多くは、判で押したように「5類にすればどこの医療機関でも診てもらえるようになり、医療逼迫は防げる」というフレーズを口にする。しかし、これは“幻想”に過ぎない。すでに全国で新型コロナ対応を行う発熱外来を有する医療機関は4万軒超に達しているが、これだけ感染力の強い新型コロナでは、院内の導線確保がままならないなどの理由でどうあがいても対応できない医療機関はある。結局、5類化したところで今より発熱外来の対応施設が激増するとはとても考えにくい。そんな中、全国でどのような診療体制を構築するかという議論を棚上げにはできない。同時に整備しなければならないのが、この感染症の特徴ともいえる後遺症対応である。現在はごく一部の後遺症外来対応の医療機関を崖っぷちに立たせたかのような診療体制が続いている。地域ごとの後遺症診療体制の確立は急務だ。さらに検討しなければならないのが治療費の公費負担の在り方である。現在の新型コロナ治療薬は新規の抗体医薬や抗ウイルス薬など製薬企業にとって高額な開発費を要するものばかりで、すべての治療薬が5類という“ありふれた”感染症にしては高薬価である。そのアンバランスさはまるで田んぼのあぜ道をポルシェが疾走するかのごとき状況である。すでに薬価収載されたものでも、自己負担となれば患者は万単位の支払いを迫られることになり、「だったら要らない」という患者も出現するだろう。これら多くの変数を考慮した議論が必要で、およそ1~2ヵ月で結論を出せるものだとは思えない。というか、そもそも感染症法上の1~5類という硬直化した分類の枠内で考えるのもなかなか困難と言ってもいいかもしれない。にもかかわらず、政治の側から5類化議論が比較的安易に飛び出しているように私の目には映る。しかも、日本版CDC創設を根回しなしに突然進めた岸田政権である。正直、この先の行方は気が抜けないと個人的には思っている。

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AIファースト・ヘルスケア―医療現場におけるAIアプリケーションの利用

AIがもたらす医療現場の改善の可能性を知るために新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックは、医療システムの課題を浮き彫りにしました。本書は医療におけるAIの活用について「AIが現状できることとできないこと、今後の課題」「現状の医療が抱えている問題をAIが解決することができるのか」「医療のデジタルトランスフォーメーション(ヘルスケアDX)をどう実現させるか」「AIを中心とした医療の実現は、患者や医師、経営、テクノロジー企業など多角的な視点から見てどうあるべきか」などをテーマに、AIがもたらす医療現場の将来について論じています。 医師と技術者がともに歩み、AIの可能性を議論しながら医師、IT技術者、利用者、経営者、ビジネスのステークホルダーのためにAIを解説した1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    AIファースト・ヘルスケア ―医療現場におけるAIアプリケーションの利用定価2,640円(税込)判型A5判頁数268頁発行2022年9月著者Kerrie L. Holley、Siupo Becker,M.D.監訳者木村 映善訳者岡 響

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12月1日 世界エイズ・デー【今日は何の日?】

【12月1日 世界エイズ・デー】〔由来〕世界レベルのエイズのまん延防止と患者・感染者に対する差別・偏見の解消を目的に、WHO(世界保健機関)が1988年に制定。毎年12月1日を中心に、世界各国でエイズに関する啓発活動を実施。関連コンテンツHIV感染症患者は新型コロナウイルスに罹りにくいのか?【新興再興感染症に気を付けろッ!】HIV感染と心血管疾患に関連はあるか/JAMA診療に役立つLGBTQsの基礎知識サル痘+コロナ+HIVのトリプル感染が初報告、臨床経過は?早く治療すれば怖くないHIV感染症

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第22回 電話・FAX・郵送が必要なコロナ治療薬「アナログ処方」の不可解

エンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)を使うタイミングは?世間では「ゾコーバすげぇぜ!」みたいな報道が多いですが、有効性については少し落ち着いてみてほしいと思います。新型コロナの診断がついた途端「よっしゃ、ゾコーバや!」というのは適切とは言えません。「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第15版」(2022年11月22日)では、以下のように記載されています1)。一般に、重症化リスク因子のない軽症例の多くは自然に改善することを念頭に、対症療法で経過を見ることができることから、エンシトレルビル等、重症化リスク因子のない軽症~中等症の患者に投与可能な症状を軽減する効果のある抗ウイルス薬については、症状を考慮した上で投与を判断すべきである。また、重症化リスク因子のある軽症~中等症の患者に投与する抗ウイルス薬は、重症化予防に効果が確認されているレムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビル/リトナビルによる治療を検討すべきである。重症化リスクがある軽症者には、その他の抗ウイルス薬がよいとされており、重症化リスクがない軽症者にはそもそも治療が必要なのかどうかという議論になります。とはいえ、いろいろなエビデンスが今後出てくるかもしれませんので、全然ダメじゃんとバッサリ切ってしまうのではなく、もう少し長い目線で見ていくほうがよさそうに思います。抗ウイルス薬処方の手間が多すぎるそれにしても、モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)、ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック)を使い始めた頃から、新型コロナの抗ウイルス薬の処方手続きが煩雑過ぎる問題が解決していません。本当に煩雑で、「処方させたくないのかな」と思うくらいです。ゾコーバも、これまでと同じように登録センターに医療機関と調剤薬局が登録する必要があります。また、処方に際して同意書を書いてもらって、調剤薬局に電話で一報を入れて、その後適格性情報チェックリストと処方箋をFAXして、原本を郵送するという「例の手順」になっています(図1)。画像を拡大する図1. ゾコーバの処方手順(参考資料2より筆者作成)変異ウイルス東京都の変異ウイルスモニタリングを見ていると、BA.5がまだ主流ではあるものの、BQ.1.1、BN.1、BF.7などの変異ウイルスが増えています(図2)。チキサゲビマブ/シルガビマブ(商品名:エバシェルド)はまだ効果を残していますが、変異ウイルスが出回るとこれも推奨されなくなるかもしれません。図2. 東京都の変異ウイルス(参考資料3より引用)抗体薬の位置付けが下がって、抗ウイルス薬への期待が相対的に高まっているからこそ、エビデンスに基づいてベストな選択肢を選ぶようにしたいものです。参考文献・参考サイト1)日本感染症学会 COVID-19に対する薬物治療の考え方 第15版2)厚生労働省 新型コロナウイルス感染症における経口抗ウイルス薬(ゾコーバ錠125mg)の医療機関及び薬局への配分について3)東京都 モニタリング項目の分析(令和4年11月24日公表)

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軽症のコロナ入院患者、ARB上乗せは無益/BMJ

 軽症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者において、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)(主にテルミサルタン40mg/日)による治療は疾患重症度に対する有益性がないことが、オーストラリア・シドニー大学のMeg J. Jardine氏らがインドとオーストラリアの17施設で実施したプラグマティックなアダプティブデザインの無作為化比較試験「CLARITY試験(Controlled evaLuation of Angiotensin Receptor blockers for covid-19 respIraTorY disease)」の結果、示された。これまで、ARB未治療の患者を対象とした5件の無作為化臨床試験において、レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬の主要評価項目に対する中立的効果が報告され、1件では副次評価項目である死亡に対し高用量テルミサルタン(80mgを1日2回14日間投与)の有益性が報告されていた。著者は本試験の結果について、「対象のほとんどがベースラインで酸素吸入を必要としない患者であったため」と述べたうえで、「現在進行中の試験では、より重症患者におけるARBの効果を評価できる可能性があり、ベイジアン・アダプティブ・デザインを用いることで、臨床診療に役立つ確定的かつ効率的な回答が得られる」と述べている。BMJ誌2022年11月16日号掲載の報告。標準治療+ARB(主にテルミサルタン)vs.標準治療のみ(±プラセボ) 研究グループは、ARBによる治療歴がなく、検査による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の確定診断を受け、COVID-19の管理のために入院した18歳以上の患者を、標準治療に加えてARBまたは対照薬を投与する群に1対1の割合で無作為に割り付け、1日1回28日間経口投与した。なお、ARBは、インドではテルミサルタン(開始用量40mg/日)、オーストラリアでは担当医の選択とし、対照薬はインドではプラセボ(二重盲検試験)、オーストラリアでは標準治療のみ(非盲検試験)であった。 主要評価項目は、14日目における修正WHO臨床進行スケール(WHO-CPS)(1:退院・活動制限なし~7:死亡)によるCOVID-19の疾患重症度、副次評価項目は28日目のWHO-CPS、死亡率、集中治療室入室、呼吸不全であった。14日目の疾患重症度は両群で同じ 2020年5月3日~2021年11月13日の期間に、2,930例がスクリーニングを受け、787例がARB群(393例、うち388例[98.7%]はテルミサルタン40mg/日)または対照群(394例)に無作為に割り付けられた。787例中、778例(98.9%)がインドから、9例(1.1%)がオーストラリアからの参加であった。 主要評価項目である14日目のWHO-CPS中央値は、ARB群(384例)で1(四分位範囲[IQR]:1~1)、プラセボ群(382例)で1(1~1)であった(補正後オッズ比[OR]:1.51、95%信用区間[CrI]:1.02~2.23、オッズ比>1の確率〔Pr[OR>1]〕:0.98)。 28日目のWHO-CPSは、両群間でほとんど差は認められなかった(補正後OR:1.02、95%CrI:0.55~1.87、Pr[OR>1]:0.53)。 本試験は、事前に設定された無益性の基準を満たし中止となった。

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コロナワクチン追加接種後も重篤なCOVID-19となる患者の特徴(解説:寺田教彦氏)

 2022年11月末、新型コロナウイルス患者は増加傾向となり、「第8波」への対応が問題となっている。「第1波や第2波」の頃と比較すると、新型コロナワクチンの普及や、重症化リスクの高いCOVID-19患者への抗ウイルス薬処方が可能になるなど治療の選択肢が増えており、これらの適切な活用が求められている。 本論文の執筆者であるUtkarsh Agrawal氏は、過去に新型コロナワクチン初回接種完了後も重症化する患者(COVID-19関連入院またはCOVID-19関連死)についてスコットランドで検討しており、高齢(80歳以上)、5つ以上の併存疾患、過去4週間以内の入院歴、新型コロナウイルスに接触するリスクの高い職業、行動(10回以上の検査歴)、介護施設入居者、社会的弱者、男性、前喫煙者でリスクが高いことを報告していた(Agrawal U, et al. Lancet Respir Med. 2021;9:1439-1449.)。 当時と今回の論文で異なる点は、流行株がアルファ株からオミクロン株に変化した点と、新型コロナワクチンの接種回数が以前の研究では2回接種者を対象としていたが、本研究ではワクチン2回接種後に追加接種をした患者を対象としている点である。 「第8波」を迎える本邦の環境としても、流行株はオミクロン株と考えられ、ワクチンの接種も3回目以降の追加接種済みの患者が増えていることから、この論文を参考にしやすい状況と考えられる。 本論文の概要は「ブースター接種後もコロナ重症化リスクが高い人は?/Lancet」にまとめられており、ブースター接種後も高リスク患者の特徴は、高齢者(aRR:3.60[95%信頼区間[CI]:3.45~3.75])、5つ以上の併存疾患(aRR:9.51[95%CI:9.07~9.97])、免疫抑制状態(aRR:5.80[95%CI:5.53~6.09])、慢性腎臓病(aRR:3.71[95%CI:2.90~4.74])等である。※aRR:人口統計学的、臨床的因子と重症COVID-19との関連についてワクチン接種後の時間で調整した率比 本研究の結果を参考にできる臨床場面の1つは、執筆者の指摘どおり、抗コロナ薬の処方の判断がある。以前オミクロン株流行中のニルマトレルビルによるCOVID-19の重症化予防に関する報告がされていた(オミクロン株流行中のニルマトレルビルによるCOVID-19の重症化転帰(解説:寺田 教彦 氏)-1570)。本研究で特定された、ブースター接種後もCOVID-19重症化リスクの高い患者層に対して、ニルマトレルビル等の抗ウイルス薬の処方をすることでCOVID-19重症化リスクが低下するか否かのエビデンスは今後の報告を待つ必要はあるが、現時点でのエビデンスとしては、これらの患者に対して抗ウイルス薬の処方を検討することは妥当だろう。 また、筆者は、重症化リスクの高い人々には、2回目接種以降のブースター接種を優先的に行うことも提案している。新型コロナウイルスワクチンのブースター接種により重症化率等の低下は認められており、本邦においてもブースター接種が未実施の場合は適切なタイミングでの接種が望ましいだろう。 ただし、ワクチンのブースター接種の実施に関しては、メリット(感染予防効果、重症化予防効果、集団免疫効果など)とデメリット(費用、副反応など)は継続して考えていく必要がある。本論文のように、新型コロナウイルスワクチン接種後もCOVID-19が重症化するリスクの高い患者層を特定するとともに、健康成人や重症化リスクの高い患者層それぞれに対して、ワクチンを追加接種する適切なタイミングを考察するための研究も望まれる。

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難治性心室細動、新たな除細動法が生存退院率を改善/NEJM

 院外心停止で難治性心室細動が認められる患者において、二重連続体外式除細動(DSED)およびベクトル変化(VC)除細動は標準的な除細動と比較して、いずれも生存退院率が高く、修正Rankin尺度スコアで評価した良好な神経学的転帰の達成はDSEDで優れたものの、VC除細動には差がなかったことが、カナダ・トロント大学のSheldon Cheskes氏らが実施した「DOSE VF試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年11月24日号で報告された。カナダのクラスター無作為化クロスオーバー試験 DOSE VF試験は、カナダの6つの救急医療サービス(合計約4,000人の救急隊員)が参加した3群クラスター無作為化対照比較クロスオーバー試験であり、2018年3月~2022年5月の期間に行われた(カナダ心臓・脳卒中財団の助成を受けた)。 6施設は、救急隊員がDSED(2つの除細動器により、急速に連続してショックを与える)、VC除細動(1つの除細動器で、身体前面と背面に装着した電極パッドを切り換えてショックを与える)、標準的除細動のいずれかを行う群(クラスター)に無作為に割り付けられ、6ヵ月ごとにクラスターのクロスオーバーが行われた。 対象は、年齢18歳以上、院外心停止中に心因性と推定される難治性心室細動を呈した患者であった。 主要アウトカムは、生存退院とされた。副次アウトカムは、心室細動の停止、心拍再開、退院時の良好な神経学的転帰(修正Rankin尺度スコア2以下)であった。 本試験は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行による救急隊員の不足に関連して、救命処置に要する時間が延長する可能性への懸念から、データ安全性監視委員会により早期中止が勧告された。DSEDは心室細動停止率、心拍再開率も良好 早期中止の前に登録された405例(平均年齢63.6歳、男性84.4%)が解析に含まれた。355例(87.7%)が割り付けられた除細動を受けた。DSED群に125例(30.9%)、VC除細動群に144例(35.6%)、標準的除細動群に136例(33.6%)が割り付けられた。 生存退院率は、標準的除細動群の13.3%に比べ、DSED群が30.4%(補正後相対リスク[aRR]:2.21、95%信頼区間[CI]:1.33~3.67)、VC除細動群は21.7%(1.71、1.01~2.88)であり、いずれも高率であった(3群の比較でp=0.009)。 心室細動停止率は、標準的除細動群の67.6%に対し、DSED群は84.0%(aRR:1.25、95%CI:1.09~1.44)、VC除細動群は79.9%(1.18、1.03~1.36)であり、心拍再開率は、標準的除細動群が26.5%に対し、DSED群は46.4%(1.72、1.22~2.42)、VC除細動群は35.4%(1.39、0.97~1.99)であった。 また、良好な神経学的転帰の達成率は、標準的除細動群の11.2%に比べ、DSED群が27.4%(aRR:2.21、95%CI:1.26~3.88)と優れたのに対し、VC除細動群は16.2%(1.48、0.81~2.71)であり、差はみられなかった。 著者は、「薬剤投与のタイミングや、エピネフリンおよび抗不整脈薬の平均投与量は、3群ともほぼ同様であり、これらの薬物療法による試験結果への治療上の影響に差があったとは考えにくい」と指摘し、「結果はDSEDが良好であったが、救急医療サービスのなかには2台目の除細動器の補給が困難な施設もある可能性がある。標準的除細動よりもVC除細動のほうが生存率が高いことから、院外心停止時に2台目の除細動器が用意できない場合に、1台の除細動器でVC除細動を行うことは、難治性心室細動の代替治療の方法として有効と考えられる」としている。

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4回目接種後、医療者での抗体価推移と有効性の持続期間/NEJM

 4回目の新型コロナウイルスワクチン接種後の抗体価は2・3回目接種後と比較して違いはあるのか。そしてコロナワクチンによって上がった抗体価はどのくらいの期間、持続するのか。イスラエル・Sheba Medical CenterのMichal Canetti氏らは、同国の医療従事者における4回目接種後6ヵ月間の液性免疫応答とワクチン有効性を評価。2回目および3回目接種後と比較した。NEJM誌オンライン版2022年11月9日号のCORRESPONDENCEに掲載の報告より。コロナワクチン4回目接種後の抗体価の推移を2回目および3回目と比較 SARS-CoV-2検査および血清学的フォローアップ検査によって感染歴がないことが確認され、4ヵ月以上前に3回目接種を受けていたコロナワクチン4回目接種者が対象。4回目接種後の液性免疫応答(IgGおよび中和抗体の測定によって評価)を、2回目および3回目の投与後と比較した。 コロナワクチンの有効性は、以下の期間(4回目の接種後7~35日、36~102日、または103~181日)ごとに4回目接種を受けた参加者の感染率を、3回接種者の感染率と比較することによって評価された。Cox比例ハザード回帰モデルを使用し、年齢、性別、および職業により調整し、経時的な感染率の違いを説明するための時間スケールとして暦時間が使用された。死亡や追跡不可となった参加者はいなかった。 コロナワクチン4回目接種後の抗体価の推移を調べた主な結果は以下のとおり。・SARS-CoV-2感染歴のない参加者のうち、6,113人(年齢中央値48[37~59]歳)が液性免疫応答の分析に含まれ、1万1,176人(年齢中央値49[36~65]歳)がコロナワクチン有効性の分析に含まれた。・抗体反応はコロナワクチン接種後約4週間でピークに達し、13週間までに4回目接種前に見られたレベルまで低下し、その後安定していた。・コロナワクチン4回目接種後6ヵ月の追跡期間を通じて、週ごとに調整されたIgGおよび中和抗体レベルは、3回目接種後と同等であり、2回目接種後に観察されたレベルと比較すると著しく高かった。・コロナワクチン3回接種者と比較して、4回接種者ではSARS-CoV-2感染に対する保護効果が強化された。全体のワクチン有効性は41%(95%信頼区間[CI]:35~47)だった。・ワクチンの有効性は接種後の時間とともに低下し、接種後最初の5週間では52%(95%CI:45~58)だったのに対し、15~26週間では-2%(95%CI:-27~17)に低下した。 著者らは今回の結果について、「コロナワクチン3回目接種が2回目接種と比較して、免疫応答の改善と持続をもたらしたのに比較すると4回目接種の追加の免疫学的利点ははるかに小さく、ワクチン接種後13週までに完全に弱まった。この結果は、4回目接種を受けた患者のコロナワクチン有効性の低下と相関しており、接種後15~26週においては3回目接種後と比較した実質的な追加効果は見られなかった」とした。そのうえで、「これらの結果は、インフルエンザワクチンと同様に、4回目の接種および将来の追加接種を、流行の波に合わせて、または季節的に利用できるように賢明なタイミングで行う必要があることを示唆している」とまとめている。

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COVID-19に罹患したエッセンシャルワーカーの臨床的特徴-ワクチン接種の有無で比較-(解説:小金丸博氏)

 COVID-19に罹患したエッセンシャルワーカーやフロントラインワーカーの臨床的・ウイルス学的特徴をワクチン接種の有無で比較した前向きコホート研究の結果がJAMA誌2022年10月18日号に報告された。エッセンシャルワーカーとフロントラインワーカーは、他者と3フィート(約91cm)以内の距離で接触する仕事を週に20時間以上行うものと定義され、具体的には医療従事者のほか、教育、農業、食品加工、輸送、固形廃棄物収集、公共事業、行政サービス、保育などの分野が含まれた。この研究は、米国において、症状の有無に関係なく毎週行うサーベイランス検査でSARS-CoV-2感染症と特定された労働者を対象とし、変異株の種類やワクチン接種状況別に臨床症状やウイルスRNA量の評価を行った。 本試験ではCOVID-19感染者1,199例が解析に組み込まれた。デルタ変異株に感染した288例の解析によると、感染前に2回または3回のmRNAワクチンを接種したことが、症状の軽減や有症状期間の短縮と関連していた。オミクロン変異株に感染した743例の解析でも、感染前に3回のmRNAワクチンを接種したことが、同様の関連性を示した。また、どちらの変異株に感染した患者でも、感染前に2回のmRNAワクチンを接種したことが平均ウイルスRNA 量の減少と有意に関連していた。 本試験で評価された被験者の年齢中央値は41歳と若く、1つ以上の慢性疾患を有する割合は27.4%であった。肥満の割合などはわからないものの、被験者の多くは重症化リスク因子を有しておらず、本試験のみでは重症化リスク因子を有する集団でのワクチン効果を評価することは難しい。 COVID-19患者に濃厚に接触する可能性の高い職種であっても、ワクチンを接種することによって症状の緩和や有症状期間の短縮を期待できることが示された。本研究では感染予防効果は検証されていないものの、エッセンシャルワーカーの休職期間の短縮は社会的なメリットが大きいと考えられるため、引き続きワクチン接種の対象とするのが望ましいと考える。 無症候者の割合はデルタ変異株で3.9%だったの対し、オミクロン変異株では20.2%と高率だった。症状の程度、罹病期間、潜伏期間、感染性、治療薬やワクチンの有効性などが変異株によって変化することがCOVID-19の特徴のひとつであり、今後も変異株の動向を注視する必要がある。

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第140回 long COVIDの偏見がまん延

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後に数週間や数ヵ月も続く不調・COVID-19罹患後症状(俗称:long COVID)の人のほとんどが社会からの偏見にも苛まれていることが英国での調査で浮き彫りになりました1,2)。英国の実に230万人がlong Covidを患っています。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染率は依然として高いことからその数は減っていません。long COVIDは治療がままならないこともその数の高止まりに加担しています。long COVID治療探しは一筋縄ではいかないようで、たとえば最近発表された試験結果ではプレドニゾロンのCOVID-19後嗅覚障害の改善効果は残念ながら認められませんでした3,4)。long COVIDの人はかなりの偏見に苛まれていると言われていますが、それがどれほどの負担になっているかはこれまで定かではありませんでした。そこで英国サウサンプトン大学等の研究者等は長引く不調でただでさえ生きづらくなっているlong COVIDの人がいわば泣きっ面に蜂の偏見でどれだけ難儀しているかを新たに開発された評価尺度を使って調べました。その試験はlong COVID患者団体(Long Covid Support)のからの意見も取り入れて設計されました。2年前の2020年のオンライン調査に参加した人にその1年後の2021年11月に案内を出し、以下の3種類の偏見に関する13の問いへの5択の回答をお願いしました。実際の偏見(enacted stigma):体調不良のせいで不当に扱われること内なる偏見(internalised stigma):自身の体調不良を恥じたり気にすること偏見の予感(anticipated stigma):体調不良で不利になると予想すること最終的に千人を超える1,166人から回答があり、そのほとんどを占める英国からの966人の情報が解析されました。解析の結果、ほぼ全員の95%が3種類の偏見のいずれか1つかそれ以上を少なくとも時々被っていました。また、8割近い76%の状況は深刻で、しばしばまたは常に偏見に直面していました。5人に3人(63%)は蔑ろにされたり付き合いを絶たれるなどの実際の偏見が少なくとも時々あり、91%はそういう実際の偏見の予感が少なくとも時々ありました。また、9割近い86%は体調不良を恥じたり、役立たずと感じたり、変わり者だと思い込むなどのlong COVID絡みの内なる偏見に少なくとも時々苛まれていました。そのような驚くばかりの偏見まん延2)はlong COVIDの人に肩身の狭い思いを強いているらしく、5人に3人(61%)はlong COVIDを打ち明けることに少なくとも時々は細心の注意を払っていました。また、3人に1人(34%)はlong COVIDを打ち明けたことを後悔したことが少なくとも時々ありました。今回の研究で使われた13の問い(“自身のlong COVIDのせいで相手が気まずそうだったことがある”等)への5択(ない、稀にある、時々ある、しばしばある、いつもそう)の回答結果に基づいてlong COVID患者が被る偏見のほどを表す検査が開発されています。long COVIDの人が被る偏見のほどの推移や、偏見を減らす取り組みの効果のほどを10分とかからず完了するその検査Long Covid Stigma Scale(LCSS)を使ってこれからは把握することができます。LCSSの開発を指揮した今回の試験の著者の1人Marija Pantelic 氏によると、long COVIDにつきまとう偏見はそれらの患者を害するのみならず社会や医療も損なわせもするようです。先立つ研究で喘息、うつ、HIVなどの他の長患いの偏見が社会をひどく不健全にすることがすでに示されています。偏見の恐れは人々を医療やその他の支援からおそらくより遠のかせ、その積み重ねが心身を蝕んでいきます。今回の試験では意外にもlong COVIDの診断を受けている人の方がそうではないlong COVIDの人に比べて偏見をより被っていました。その理由はわかりませんが、診断を受けた人ほど自身の体調を他の人により知らせているからなのかもしれません。その理由も含め、偏見がどこでどうやって発生するのか、どういう人が偏見を持ちやすいのか、どういうlong COVID患者が偏見を被りやすいのかを今後の試験で調べる必要があります2)。参考1)Pantelic M, et al. PLoS ONE . 2022;17:e0277317.2)Most people with long Covid face stigma and discrimination / Eurekalert3)Schepens EJA, et al.BMC Med. 2022;20:445.4)Prednisolone does not improve sense of smell after COVID-19 / Eurekalert

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コロナ感染、繰り返すほど重症化・後遺症リスク増

 新型コロナウイルスへの複数回の感染により、死亡と後遺症リスクは2倍超、入院リスクは3倍超になることが、米国・VAセントルイス・ヘルスケアシステムのBenjamin Bowe氏らによるコホート研究で明らかになった。新型コロナウイルスの感染による死亡や後遺症のリスクは知られているが、1回感染後の再感染によってそれらのリスクが高くなるかどうかは不明であった。Nature Medicine誌2022年11月10日掲載の報告。コロナ2回目以上の複数回感染群では後遺症発現のHRが2.10 調査は、2020年3月1日~2022年4月6日の米国退役軍人省の医療データベースを利用し、コロナ1回目感染者44万3,588例、コロナ2回目以上の複数回感染者4万947例(コロナ2回目感染者3万7,997例[92.8%]、コロナ3回目感染者2,572例[6.3%]、コロナ4回以上感染者378例[0.9%])、対照群として1回も感染していない未感染者533万4,729例を抽出し、死亡率、入院率、後遺症発現率を解析した。 コロナ複数回感染による死亡や後遺症のリスクを解析した主な結果は以下のとおり。・コロナ1回目感染群と比較して、コロナ2回目以上の複数回感染群では、全死因死亡のハザード比(HR)は2.17(95%信頼区間[CI]:1.93~2.45)、入院のHRは3.32(95%CI:3.13~3.51)であった。・同じく1つ以上の後遺症発現のHRは2.10(95%CI:2.04~2.16)で、腎障害(HR:3.55、95%CI:3.18~3.97)、肺障害(3.54、3.29~3.82)、血液凝固異常(3.10、2.77~3.47)、心血管障害(3.02、2.80~3.26)、消化器障害(2.48、2.35~2.62)、倦怠感(2.33、2.14~2.53)、精神的な不調(2.14、2.04~2.24)糖尿病(1.70、1.41~2.05)、筋骨格系障害(1.64、1.49~1.80)、神経学的障害(1.60、1.51~1.69)であった。これらは主に急性期に認められたが、コロナ再感染から6ヵ月後でも認められた。・これらのリスクは、新型コロナウイルスワクチンの接種状況に関係なく認められた。・コロナ感染回数が増えるほど後遺症リスクは上昇した。未感染群と比較して、コロナ1回目感染群のHRは1.37(95%CI:1.36~1.38)、コロナ2回目感染群のHRは2.07(95%CI:2.03~2.11)、コロナ3回目以上感染群のHRは2.35(95%CI:2.12~2.62)であった。 これらの結果より、同氏らは「新型コロナウイルスへの複数回感染は、初回の感染よりも死亡、入院、後遺症リスクが高まることが明らかになった。すでに1回感染した人は、コロナ2回目の感染を予防することでさらなる健康問題を防ぐことができる」とまとめた。

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