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第217回 医師偏在対策で自由開業の見直しも? 規制強化を提言/財務省

<先週の動き>1.医師偏在対策で自由開業の見直しも? 規制強化を提言/財務省2.マイナ保険証一本化へ、資格確認方法見直しを中医協で了承/厚労省3.医療費高騰で現役世代の負担軽減へ 高額療養費制度の見直しを検討/政府4.出産費用高騰、妊婦の負担軽減へ対策急務 保険適用など議論続く/厚労省5.美容医療トラブル増加で規制強化へ、年次報告義務化などを検討/厚労省6.生後6ヵ月の女児、抗菌薬過剰投与で死亡/兵庫県1.医師偏在対策で自由開業の見直しも? 規制強化を提言/財務省11月13日に財政制度等審議会は、2025年度予算編成に向けた議論を行い、財務省は医師の偏在対策が不十分であるとして、規制強化などを求める提言を行った。審議会で増田 寛也分科会長代理は、「これまでの取り組みは実効性が乏しかった」と指摘し、「診療報酬の減算などの経済的ディスインセンティブ措置を含め、より強力な対策が必要だ」と強調した。財務省は、医師多数区域での開業規制や診療報酬の地域別単価設定、自由開業・自由標榜の見直しなどを提言、また、地域で過剰な医療サービスを提供する医療機関に対し、診療報酬を減算する仕組みの導入の提案を行った。さらに、診療科別の医師偏在指標が不足している点を批判し、厚生労働省に対し、診療科ごとの医師偏在指標を早急に作成するよう求めた。これらの提言に対し、日本医師会は反発する可能性がある。政府は、年末までに医師偏在対策の総合的な対策パッケージを策定する予定だが、規制強化と医師確保の両立が課題となる。参考1)社会保障(財務省)2)過剰な医療への診療報酬減算を提言、財務省 偏在是正策、外来機能は「転換・集約」(CB news)3)医師偏在対策「手ぬるかった」財政審分科会で 増田氏は「もう一段強く」と主張(同)2.マイナ保険証一本化へ、資格確認方法見直しを中医協で了承/厚労省12月2日から健康保険証の新規発行が終了し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」が基本となることを受け、中央社会保険医療協議会(中医協)は11月13日、患者の資格確認方法の変更に伴うルール見直しを了承した。このため厚生労働省は、医療機関や薬局がマイナ保険証や資格確認書で患者の資格を確認できるよう、療養担当規則を改正する。マイナンバーカードを持っていない人や、健康保険証としての利用を登録していない人でも、保険者から発行される「資格確認書」を医療機関に提示することで、これまで通り保険診療が受けられる。資格確認書は、カード型、はがき型、A4型の3種類があり、氏名や被保険者番号などが記載される。申請は不要で、対象者には現行の健康保険証の有効期限に応じて、加入している医療保険者から無償で交付される。デジタル庁では、資格確認書の交付や健康保険証の有効期限に関する情報を公開し、マイナンバーカードの未取得者や、マイナンバーカードを健康保険証としての利用を登録していない人が従来通り保険診療を受けられるよう国民へ周知を図っている。中医協の小塩 隆士会長は、「マイナ保険証への移行に伴う混乱を懸念し、保険診療を受けられない人が出ないよう、必要があれば制度を改めるべきだ」と危惧している。厚労省は、マイナ保険証の利用促進に取り組む一方、国民が安心して保険診療を受けられるよう、制度の周知徹底に努めるとしている。参考1)中央社会保険医療協議会 総会(厚労省)2)12月2日以降の資格確認、療担規則見直しへ 厚労相が諮問 即日答申(CB news)3)2024年12月2日以降のマイナ保険証「以外」(資格確認書等)で保険診療受けるための法令整備を決定-中医協総会(2)(Gem Med)4)12月2日で発行停止の健康保険証、代わりとなる「資格確認書」の交付対象や方法は?-デジ庁が公開(CNET Japan)3.医療費高騰で現役世代の負担軽減へ 高額療養費制度の見直しを検討/政府医療費が高額になった場合に患者の自己負担を軽減する「高額療養費制度」について、政府は自己負担の上限額を引き上げる方向で検討に入った。11月15日、政府の有識者会議「全世代型社会保障構築会議」で、高額療養費制度の見直しを求める意見が相次いだ。厚生労働省は、医療費の増加や患者の負担能力向上を踏まえ、上限額を引き上げることで医療費の抑制と現役世代の保険料負担軽減を図りたい考え。具体的な引き上げ幅は、年収区分に応じて7~16%を軸に調整されており、所得が低い人への配慮も検討されている。引き上げは2段階で行われ、2025年度に上限額を引き上げた後、2026年度には年収区分を細分化し、高所得者はより高い上限額とする見込みである。高額療養費制度は、医療費の自己負担に上限を設け、超過分を健康保険組合などの保険者が給付する仕組み。近年、高額な新薬の登場や高齢化により、医療費が高額化するケースが増加しており、制度の適用件数と支給総額は増加している。政府は、今回の見直しを通じて、支払い能力に応じた負担を求める「応能負担」を強化したい考え。その一方で、患者の自己負担が増えることから、与野党を問わず反発が出る可能性もあり、今後の議論の行方が注目されている。参考1)全世代型社会保障構築会議[第19回](内閣府)2)高額療養費、見直し求める 政府の有識者会議(日経新聞)3)「高額療養費制度」上限額引き上げる方向で検討 厚労省(NHK)4)高額療養費制度の上限額引き上げ検討 最大5万400円、来年夏めど(朝日新聞)4.出産費用高騰、妊婦の負担軽減へ対策急務 保険適用など議論続く/厚労省値上げが続く出産費用と支援策の課題について、厚生労働省は11月13日に「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」を開き、出産費用の上昇や支援策の有効性を巡り多角的な議論が展開された。全国の正常分娩による出産費用は2024年度上半期で平均51万8,000円に達し、昨年度からさらに1万1,000円増加した。出産育児一時金は、2023年4月に42万円から50万円に引き上げられたが、実際の負担額を賄いきれないケースが多く、都道府県別では東京や神奈川で高額化が顕著となっている。一時金が不足する割合は、全国平均で45%に上り、個室利用料などを含めるとその割合は80%に達している。また、出産費用の「見える化」を目的としたウェブサイト「出産なび」についても検討会で報告が行われた。2024年5月に開設されたこのサイトは、認知率は36%、利用率は18%と低調で、妊婦の情報収集への活用が進んでいない現状が明らかとなった。その一方で、利用者の満足度は高く、妊婦が望む情報の充実が求められている。出産費用の保険適用(現物給付化)については賛否が分かれている。推進派は、経済的負担軽減や標準化の重要性を訴える一方、地方の産科医療体制への悪影響や財源問題を懸念する声もある。とくに一時金引き上げと同時に医療機関が費用を引き上げた印象が拭えず、さらなる分析が必要との意見が多く挙げられた。少子化対策として「安心して出産できる環境整備」の必要性が叫ばれる中、今後は出産費用の地域差解消や制度の簡素化、支援内容の拡充が急務となる。2025年春を目途に検討会での意見が集約される予定。参考1)第5回「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」(厚労省)2)「出産なび」を知らない妊産婦が6割超 開設後3ヵ月時点で 厚労省検討会に報告(CB news)3)出産育児一時金の引き上げで軽減されたはずが…妊婦の負担額が再び増加、原因は産院の値上げ(読売新聞)4)出産費用 半数近くで一時金の50万円上回る 厚生労働省(NHK)5)出産費用の保険適用には賛否両論、「出産育児一時金の引き上げを待って、医療機関が出産費用引き上げる」との印象拭えず-出産関連検討会(Gem Med)5.美容医療トラブル増加で規制強化へ、年次報告義務化などを検討/厚労省美容医療をめぐるトラブル増加を受け、厚生労働省は規制強化に乗り出す。11月13日に開かれた厚労省の「美容医療の適切な実施に関する検討会」では、クリニックなどに安全管理措置の状況を年1回、自治体に報告することを義務付ける案を含む報告書案が議論された。この背景には、美容医療に関する健康被害や料金トラブルなどの相談が急増している現状がある。国民生活センターへの相談件数は、2023年度には5,507件と、5年間で3倍に増加した。報告書案では、自由診療が多い美容医療は、保険診療に比べて行政による指導・監査の範囲が限定的であることや、患者の要望や医師の技量によって合併症や後遺症のリスクも高まる可能性があることなどが課題と指摘している。対応策として、医療機関による定期報告の仕組み導入が提案された。報告内容には、安全管理措置の実施状況、医師の専門医資格の有無、トラブル発生時の相談窓口などが含まれ、患者にとって必要な情報は自治体が公表する。厚労省は、年内にも正式な対策をまとめる方針。また、この検討会で臨床研修修了直後に若手の医師が美容医療分野に流入していることが指摘されたが、この問題は医師の偏在是正の観点から、厚労省において別途必要な検討がなされる見込み。参考1)美容医療の適切な実施に関する報告書(案)(厚労省)2)美容医療の安全管理状況を自治体に年1回定期報告へ 健康被害や料金相談増加で厚労省方針(産経新聞)3)美容医療、安全管理状況を年1回報告へ 自治体に 厚労省方針(毎日新聞)4)美容医療「安全管理の報告」取りまとめ案 若手医師の“直美”「別途検討必要」(CB news)6.生後6ヵ月の女児、抗菌薬過剰投与で死亡/兵庫県兵庫県立こども病院(神戸市中央区)は11月14日、生後6ヵ月の女児に抗菌薬を過剰投与する医療ミスがあり、女児が死亡したと発表した。女児は先天性疾患で入院しており、9月に肺炎症状がみられたため、医師が抗菌薬の点滴を指示した。しかし、医師は通常濃度の5倍の抗菌薬を投与するよう誤って指示し、看護師もそれに気付かず投与。さらに、投与時間も本来の2時間ではなく1時間と指示し、2倍の速度で投与していた。女児は点滴開始から約1時間後に心拍数が低下し、その後死亡が確認された。医師は「なぜ初歩的なことを間違ったのかわからない」と話しているという。病院では、医療事故調査委員会を設置し、投与と死亡の因果関係を調査する。また、病理解剖では、新型コロナウイルス感染や敗血症などの疑いもみられたが、抗菌薬の副作用に多い不整脈などは確認されなかったという。病院側は、医療ミスと死亡の因果関係は現時点では明らかではないとしているが、再発防止に向け、正しい希釈方法を看護師らが確認できるようシステムを改修するなどの対策を講じるとしている。参考1)規定量5倍の抗菌薬投与、女児が1時間半後に死亡…医師「なぜ初歩的なこと間違ったかわからない(読売新聞)2)兵庫県立こども病院 生後6か月の乳児 薬の過剰投与後に死亡(NHK)3)乳児に抗菌薬を過剰に投与、直後に死亡 兵庫・こども病院で医療事故(朝日新聞)4)兵庫県立こども病院で医療ミス 生後6カ月の女児に高濃度の抗菌薬を投与、2時間半後に死亡(神戸新聞)

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パンデミック中は国内在留外国人の自殺率も高まった

 国内に暮らす外国人の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック中の自殺率に関するデータが報告された。外国人もパンデミックとともに自殺率が上昇したこと、男性においてはそのような変化が日本人よりも長く続いていたことなどが明らかにされている。筑波大学医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野と国立国際医療研究センターグローバルヘルス政策研究センターの共同研究で、谷口雄大氏、田宮菜奈子氏、磯博康氏らによる論文が「International Journal for Equity in Health」に7月31日掲載された。 日本は世界的に見て自殺率が高いことが知られている。またCOVID-19パンデミック中に自殺率の上昇が認められた、数少ない国の一つでもある。一方、外国人の自殺率がパンデミックの影響を受けたのか否かは明らかにされていない。外国人は社会経済的な不平等にさらされやすく、医療アクセスの問題も抱えていることが多いため、パンデミック発生によって日本人よりも強い負荷が生じていた可能性がある。これらを背景として谷口氏らは、パンデミック中の国内在留外国人の自殺率がどのように変化したのかを、日本人と対比しながら詳細に検討した。 2016~2021年の厚生労働省「人口動態調査」の個票データから、自殺による死亡に関するデータを取得。年齢、性別、国籍の情報が欠落している人を除外したところ、この間の自殺者数は、日本人が12万1,610人(うち女性31.2%)、外国人は1,431人(同37.5%)だった。年齢については日本人男性が中央値52歳(四分位範囲38~68)、日本人女性は同55歳(39~72)、外国人男性は48歳(31~63)、外国人女性は50歳(35~63)だった。本研究では四半期ごとの自殺率を、人口に占める自殺者数の割合で表し、パンデミック前の対照期間(2016~2018年)の自殺率の変動との差分(difference-in-differences;DD)を算出することで、パンデミックの影響を推定した。 四半期ごとの自殺率を日本人と外国人で比較すると、男性と女性の双方において、常に日本人の自殺率の方が高値で推移していた。この差は、自殺率が高かった高年齢層の割合が、日本人で高かったことが一因と考えられる。年齢で層別化(40歳未満、40~59歳、60歳以上)して解析した結果、59歳以下の層において日本人と外国人との自殺率の差が顕著だった。 国籍別に見ると、パンデミック前より自殺率が高いことが報告されていた韓国・朝鮮籍の人では、ほかの国籍の外国人や日本人よりも高い自殺率で推移し、特に60歳以上の男性で顕著に高値だった。なお、韓国・朝鮮籍の自殺者数は、外国人自殺者の過半数(男性50.4%、女性51.1%)を占めていた。 ところで、パンデミック発生とともに国内の自殺率はいったん低下し、その後、反転して高値となったことが知られている。日本人におけるパンデミック初期の自殺率低下は、危機的状況における社会的な連帯感の高まり、労働時間の減少、政府による給付金などが背景にあるのではないかと推測されているが、外国人は、それらの恩恵を受けにくかった可能性がある。実際に本研究でも、2020年第2四半期のDDは、日本人の方が外国人よりも有意に低かった。 例えば、対照期間と比較した場合の同四半期の男性の自殺率は、日本人ではDD-0.90(95%信頼区間-1.12~-0.68)と統計学的に有意に低下したのに対して、外国人は0.97(同0.096~1.85)と有意に上昇しており、日本人と在留外国人の自殺率の推移の差を示すDDの差(difference-in-difference-in-differences;DDD)が1.87(1.20~2.54)と有意だった。女性においても、同四半期の日本人では自殺率が有意に低下した一方、外国人では有意な変化が認められず、DDDは1.23(0.51~1.94)と有意だった。 また、日本人男性における自殺率は2021年第3四半期以降、対照期間と有意でないレベルに低下した一方、外国人男性の自殺率は有意な上昇が続き、同年第4四半期のDDDは1.48(0.81~2.15)と有意であり、パンデミックの影響が日本人よりも長期間続いていた可能性が考えられた。なお、女性のDDDについては2021年以降、日本人と在留外国人の間で有意な差を認めなかった。 著者らは、「COVID-19パンデミック中、全体として在留外国人と日本人の双方で自殺率の上昇が見られた。初期には日本人では自殺率の低下が観察されたが外国人では見られず、また外国人男性の自殺率は2021年末まで高止まりしていた。われわれの研究結果は、パンデミックのような状況においては、社会経済的に脆弱な集団に対して適切なメンタルヘルスサポートが必要なことを示唆している」と総括。また、パンデミック中に外国人男性、特に、失業率が高かったと報告されている韓国・朝鮮籍の男性において自殺率が特に上昇していたことを指摘し、「適切な雇用機会の確保も重要」と述べている。

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新型コロナ感染中の運転は交通事故のリスク【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第269回

新型コロナ感染中の運転は交通事故のリスク疾患によっては、罹病中に運転することが交通事故のリスクとされるものがあります。たとえば、糖尿病でインスリン治療を受けている人は、無自覚低血糖によって運転の支障を来すことがあります。そのため、運転免許証の取得や更新時に虚偽申告をした場合の罰則規定が設けられています。運転前に血糖測定を行うように指導することが重要です。発熱していて、医療機関を受診する場合、公共交通機関を使うと他人に感染を広げてしまうので、自家用車を自分で運転して受診する人が多いでしょう。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)については、どうも交通事故のリスクが高くなるようで…。Erdik B, et al. Driving Under the Cognitive Influence of COVID-19: Exploring the Impact of Acute SARS-CoV-2 Infection on Road Safety. Neurology, 2024;103 (7_Supplement_1):S46-S47.この論文は、COVID-19の急性発症と交通事故数の関連性を調査したものです。2020~22年のデータを用いて、米国7州での交通事故記録とCOVID-19の統計を比較分析しました。結果、急性のCOVID-19と交通事故増加の関連性が観察されました(オッズ比:1.5)。つまり、急性期のCOVID-19で運転すると、交通事故のリスクが高くなるということです。ちなみに、この交通事故リスクは、飲酒運転やてんかんを持っている場合のリスクと同程度であったと考察されています。これを受けて筆者らは、COVID-19は、その後の後遺症(Long COVID)だけでなく、急性期の交通事故リスクを高める可能性があると指摘しています。熱があればそりゃしんどいだろうと思いますが、機序としてはウイルスの神経系への影響とも述べられています。医療従事者は、COVID-19の患者を診療する際、認知・運転の低下の可能性を考慮する必要があります。できるなら、家族が運転する車で来院いただきたいところですね。

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将来は1時間程度で結果が出る血液検査が可能に?

 いつの日か、手のひらサイズの血液検査デバイスで、わずか1時間程度で結果を得られるようになる可能性を示唆する研究結果が報告された。この携帯型デバイスは手のひらに収まる大きさで、音波を使って少量の全血サンプルからバイオマーカーを分離・測定するもので、検査の全プロセスに必要な時間は70分足らずだという。米コロラド大学ボルダー校化学・生物工学分野のWyatt Shields氏らによるこの研究の詳細は、「Science Advances」10月16日号に掲載された。Shields氏は、「われわれは使いやすく、さまざまな環境で導入でき、短時間で診断に関する有用な情報を提供する技術を開発した」と話している。 このような少量の血液を用いた血液検査に関する報告は、今回が初めてではない。血液検査会社のTheranos社は「1滴の血液で数百種類のバイオマーカーを測定できる」との触れ込みで事業を展開していたが、2015年に虚偽であることが発覚。同社は2018年に解散し、創業者のElizabeth Holmes氏は禁固11年超の有罪判決を受け、現在も服役中である。 Shields氏らによると、今回報告された新たなデバイスは、システマティックな実験と査読を受けた研究をベースとしたものであり、Theranos社が主張した検査とは仕組みが異なるという。研究論文の筆頭著者でコロラド大学ボルダー校化学・生物工学分野のCooper Thome氏は、「彼らが主張したことを今すぐに実現するのは不可能だが、多くの研究者が似たようなことが可能になるのを望んでいる。今回の研究は、その目標に向けた1歩となるかもしれない。ただし、誰でもアクセスできる科学的根拠に裏付けられている」と話している。 現在使われている血液検査は、針や注射器で1本またはそれ以上のバイアルに血液を採取する必要があり、検査機関から結果が出るまで数時間から数日かかる。新型コロナウイルスへの感染や妊娠の有無を調べる迅速検査では、血中あるいは尿中のバイオマーカーの有無に基づき、迅速に「イエス」か「ノー」の情報が提供される。しかし、これらの検査ではバイオマーカーの量を測定することはできない。 今回報告された新たな検査技術は、血液サンプルの中のさまざまなバイオマーカーを捉えるように設計することができる「機能的負の音響コントラスト粒子(functional negative acoustic contrast particles;fNACPs)」を用いたもの。fNACPsは、特定のバイオマーカーを全血から直接捕まえるための「目印」を持っている。採取された血液サンプルをデバイス内でfNACPsと混ぜ合わせると、音波の作用によってターゲットとなるバイオマーカーを捕縛したfNACPsが採取チャンバーにとどまり、他の血液成分は洗い流される。fNACPsが捕縛した各バイオマーカーは蛍光タグで標識され、ポータブル蛍光計とフローサイトメーターでその量が測定されるという仕組みだ。Thome氏は、「われわれの検査は、基本的には極めて少量の液体から音波を使って迅速にバイオマーカーを分離している。これは血中のバイオマーカーを測定する全く新しい方法だ」と大学のニュースリリースで述べている。 このデバイスが実用化されるまでにはさらなる研究が必要であるが、ベッドサイドや移動診療所で指先穿刺によって採取された血液から重要な医療情報がただちに提供される日が来ることをShields氏らは思い描いている。Shields氏は、「急速に広がるウイルス感染症が出現した場合や、急性呼吸器疾患や炎症性疾患の場合、実際に何が起こっているのかを素早く正確に測定できるようにしておくことは重要だ」と言う。研究グループはまた、「この検査は、ブースター接種の必要性や、特定のアレルギーやがんに関連するタンパク質保有の有無を判定するのにも役立つ可能性がある」と述べている。

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第238回 広がる救急車利用の選定療養費化、茨城県では筑波大病院1万3,200円、土浦協同病院1万1,000円、その他病院7,700円と料金に違い

救急車利用の選定療養費化のスキーム、じわりじわりと広がる気配こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。野球シーズンはストーブリーグに突入、今年も日本からMLBに誰が行くのかで盛り上がっています。そんな中、千葉ロッテマリーンズは11月9日、佐々木 朗希投手(23)の今オフのポスティングによるメジャー挑戦を容認することを発表しました。あと2年待てばMLBの「25歳ルール」による契約金制限が解けるので、佐々木投手自身も、譲渡金の入る球団も金銭的にWin-Winとなったでしょうが、ロッテとしては、佐々木投手の“わがまま”に折れた形での容認となりました。2022年の完全試合の印象は強烈ですが、大事に育てられ過ぎたのか、故障も多く5年間で登板はわずか64試合で、29勝15敗、防御率2.10という「中の下」の成績です。中4日、中5日で162試合を戦うMLBで果たして通用するのでしょうか。日本で怪我がちだった選手の多くは、MLBでも早々と故障してしまう傾向にあります。同じくMLB挑戦予定の、“旬”を過ぎた読売ジャイアンツの菅野 智之投手(ストレートで150キロ出ない)とともに、今後の“活躍”を見守りたいと思います。さて今回は、全国で広がりを見せ始めた軽症患者の救急車利用の“有料化”について書いてみたいと思います。“有料化”とは言っても、厳密には保険外併用療養費制度の一つ、選定療養費の仕組みを活用したものですが、三重県松阪市に続いて、茨城県が全県での導入を決め、12月からスタートさせます。救急車利用の選定療養費化のスキームは今後じわりじわりと広がっていきそうな気配です。軽度の切り傷・擦過傷、風邪などを「緊急性が低い症状」としてガイドラインで例示茨城県は10月18日、「緊急性のない救急搬送患者から選定療養費を徴収する際のガイドライン」(救急搬送における選定療養費の取扱いに係る統一的なガイドライン)1)を策定、公表しました。県内22病院で12月2日から救急車による救急搬送の際、緊急性が認められなかった場合に、患者から選定療養費を徴収する予定です。対象となる患者については、軽度の切り傷・擦過傷、風邪などを「緊急性が低い症状」として例示しました。なお、県単位で救急搬送に選定療養費の仕組みを導入するのは全国で初めてです。茨城県によれば2023年度の救急搬送は14万3,046件で増加傾向が続いているとのことです。うち6万8,549件、47.9%を軽症等が占めており、この状況が続けば救急医療の体制が維持できなくなるとして、4月以降検討を重ね、厚生労働省や県医師会、各病院などと協議を経て、選定療養費化に至ったとのことです。「軽症」と診断された場合も救急車を呼んだ時点での緊急性が認められるケースは徴収の対象外同ガイドラインは、患者が救急車で搬送された場合、選定療養費の対象となる「緊急性が認められない」ケースかどうかを医療機関が判断する目安として作られました。具体的には、救急車要請時の緊急性が認められない可能性がある主な事例として、以下が提示されています。ア. 明らかに緊急性が認められない症状:1)軽度の切り傷のみ、2)軽度の擦過傷のみイ. 緊急性が低い症状(※ただし、別の疾患の兆候である可能性あり):1)微熱(37.4℃以下)のみ、2)虫刺創部の発赤、痛みのみで、全身のショック症状は無い、3)風邪の症状のみ、4)打撲のみ、5)慢性的又は数日前からの歯痛、6)慢性的又は数日前からの腰痛、7)便秘のみ、8)何日も前から症状が続いていて特に悪化したわけではない、9)不定愁訴のみ、10)眠れないのみイについては「緊急性が低いことから、基本的に緊急性が認められないものとするが、診断の結果、別の疾患の兆候である可能性を否定できず、評価が難しいケースや判断に迷うケースである場合は、緊急性が認められるものとして差し支えない」として、現場で選定療養費の徴収対象外と判断して構わないとしています。なお、熱中症、小児の熱性けいれん、てんかん発作などの症状は、病院到着時には改善して結果として「軽症」と診断された場合でも、救急車を呼んだ時点での緊急性が認められるケースに該当するため、徴収の対象とはならないとしています。徴収額は初診患者の選定療養費に準じる茨城県は7月に全県での導入を公表、12月から多くの救急患者を受け入れている県内22病院で一斉に運用を開始することにしました。紹介状なしの初診患者から選定療養費の徴収を義務付けられている県内22病院のうち、友愛記念病院と古河赤十字病院(いずれも古河市)は12月時点の参加を見送り、既に選定療養費を徴収していた病院が20病院、徴収していない病院が2病院となりました。徴収額は紹介状なしの初診患者の選定療養費と同額となるため、病院ごとに異なります。筑波大学附属病院が1万3,200円、総合病院土浦協同病院と筑波メディカルセンター病院が1万1,000円、白十字総合病院が1,100円で、ほかの病院は7,700円(いずれも税込)。なお、白十字総合病院と筑波学園病院は地域医療支援病院等ではなく、紹介状なしの初診の選定療養費徴収が義務付けられていませんが、今回、軽症救急患者に限って選定療養費を設定したとのことです。「救急車の有料化ではありません」と県は強調茨城県は今回の救急車利用の選定療養費化について、一般向けにQ&A集も用意しています。それによれば、「Q.救急車を有料化するということですか?」という質問に対しては、「救急車の有料化ではありません。既存の選定療養費制度の運用を見直し、救急車で搬送された方のうち、救急車要請時の緊急性が認められない場合には、対象病院において選定療養費をお支払いいただくものです」と、「有料化ではない」旨を強調しています。有料化と選定療養費化は制度が違うと言われても、県民にとっては“負担増”になるのは同じです。これまで無料だった筑波大学附属病院への搬送が1万3,200円というのは、かなりの出費と言えるでしょう。軽症者のタクシー代わりの救急車利用の抑止力としては、それなりに機能しそうです。三重県松阪市は3ヵ月間のモニタリング結果を公表ところで、救急車利用の選定療養費化の先駆けだった三重県松阪市は10月25日、三重県松阪地区で2次救急医療を担う3病院(松阪市民病院、松阪中央総合病院、済生会松阪総合病院)における、救急車利用時に入院に至らなかった軽症患者などから選定療養費を徴収する取り組みのモニタリング結果を報告しました2)。三重県松阪地区では3病院において、6月から救急車利用時に入院に至らなかった軽症患者などから選定療養費7,700円を徴収する取り組みを始めていました。報告されたモニタリング期間は、運用開始の2024年6月1日~8月31日の3ヵ月間で、救急車で3病院に搬送(病院収容)された人を対象に、搬送された時間帯や年齢、特別の料金の徴収有無に加え、主たる搬送要因・傷病名などを調査しました。選定療養費の徴収対象となったのは278人、7.4%3病院の救急搬送における費用徴収の状況について、救急車で3病院に搬送された3,749人のうち、帰宅となり、さらに費用徴収の対象となったのは278人、7.4%でした。徴収対象者の傷病内訳としては、最多は疼痛24人(8.6%)、次いで打撲傷21人(7.6%)、熱中症・脱水症21人(7.6%)、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)16人(5.8%)、めまい15人(5.4%)、胃腸炎・食道炎等15人(5.4%)でした。徴収対象外となった1,778人の内訳は、「緊急の患者等、医師の判断による」が最多で1,014人(57.0%)。そのほか、再診が408人(22.9%)、交通事故等が178人(10.0%)、生活保護受給者が88人(4.9%)、紹介状ありが57人(3.2%)でした。費用を徴収した278人のうち高齢者が114人(41.0%)でした。「持続可能な松阪地区の救急医療体制の整備に一定の寄与が確認」と松阪市傷病程度別の救急搬送人員数は、軽症者率が52.9%と前年同期の59.4%から6.5%減少した一方で、中等症者率が42.8%と前年同期の37.0%から5.8%増加しました。一方、「松阪地区救急相談ダイヤル24の相談件数」は7,969件で、前年同期と比較して2,390件(42.8%)増加しました。以上の結果を踏まえ、松阪市は「医療機関の適正受診に繋がる状況が確認でき、今回の取り組みは、『一次二次救急医療の機能分担』、ひいては、『救急車の出動件数の減少』等、持続可能な松阪地区の救急医療体制の整備に一定の寄与が確認できたのではないか」と評価しています。松阪市、茨城県に続く自治体が今後続出することは必至モニタリング期間のため、ゴリゴリと選定療養費を徴収してはいない状況にあって、徴収対象が7.4%というのは結構高い数字と言えるのではないでしょうか。紹介状なしの200床以上の病院(特定機能病院、地域医療支援病院、紹介受診重点医療機関)の初診・再診時などに、病院が独自に設定した選定療養費を徴収する仕組みを軽症救急患者に適用するというスキーム、誰が考えたのか、なかなか名案だと思います。ただ、松阪市のように管轄の3病院だけでやるのではなく、茨城県のように全県で対応したほうが、国民に“正しい”救急車利用の仕方を周知できるでしょう。さらに言えば、茨城県のケースでも、病院によって選定療養費にバラツキがあるのは今後の制度定着に向けては具合が悪そうです。今後、軽症救急の選定療養費は紹介状なしの額とは別に「県内均一」にする、2次救急、3次救急で額を変える、といった工夫が必要でしょう。いずれにせよ、松阪市、茨城県に続く自治体が続出することは必至と考えられます。参考1)救急搬送における選定療養費の取扱いに係る統一的なガイドライン/茨城県2)三基幹病院における選定療養費について/松阪市

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第216回 マイコプラズマ肺炎5週連続で過去最多更新、厚労省が注意喚起/厚労省

<先週の動き>1.マイコプラズマ肺炎5週連続で過去最多更新、厚労省が注意喚起/厚労省2.新たな地域医療構想で、2次救急病院はどう分類? 定義が課題に/厚労省3.外科医不足解消へ集約化・重点化を検討 厚労省が提案/厚労省4.信頼できるがん情報はどこに? 半数近くの患者はがん情報が入手困難/国立がん研5.出生数減少、過去最少を更新 社会保障制度への影響も懸念/厚労省6.コロナ禍の補助金、不正受給21億円 会計検査院が厳正な対応を要求/会計検査院1.マイコプラズマ肺炎5週連続で過去最多更新、厚労省が注意喚起/厚労省マイコプラズマ肺炎の感染拡大が続いている。国立感染症研究所の発表によると、10月21~27日の1週間における定点医療機関当たりの患者報告数は2.49人で、5週連続で過去最多を更新した。都道府県別では、愛知県の5.4人が最も多く、次いで福井県(5.33人)、青森県(5.0人)、東京都(4.84人)、埼玉県(4.67人)と続いている。マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマ細菌による呼吸器感染症で、咳や発熱が主な症状。子供や若者に多くみられるが、大人も感染する可能性がある。厚生労働省は、咳が長引くなどの症状がある場合は医療機関を受診するよう呼びかけている。また、感染拡大防止のため、手洗い、マスク着用などの基本的な感染対策を徹底するよう促している。一方、手足口病も依然として高止まりが続いている。10月21~27日の1週間における定点医療機関当たりの患者報告数は8.06人で、警報レベル(5.0人)を超えている。手足口病は、主に乳幼児がかかるウイルス性の感染症で、発熱や口内炎、手足の発疹などが主な症状。感染経路は、咳やくしゃみなどの飛沫感染や、接触感染。厚労省は、手足口病の流行状況を注視し、引き続き予防対策の徹底を呼びかけている。参考1)全数把握疾患、報告数、累積報告数、都道府県別(国立感染症研究所)2)マイコプラズマ肺炎が5週連続で過去最多 手足口病も高止まり 感染研(CB news)3)マイコプラズマ肺炎が猛威=感染者、4週連続で過去最多更新-厚労省「手洗い、マスク着用を」(時事通信)2.新たな地域医療構想で、2次救急病院はどう分類? 定義が課題に/厚労省2026年度から始まる新たな地域医療構想に向け、厚生労働省は病院機能報告制度の具体化を進めている。11月8日に開かれた「新たな地域医療構想等に関する検討会」では、地域ごとに整備する4つの機能と広域的な機能を担う大学病院本院の機能が提示された。地域ごとの機能は、(1)高齢者救急等機能、(2)在宅医療連携機能、(3)急性期拠点機能、(4)専門等機能(リハビリや専門性の高い医療など)となっており、1つの医療機関が複数の機能を併せ持つこともあり得るとされた。広域的な機能を担う大学病院本院は、「医育および広域診療機能」として、医師派遣、医師の卒前・卒後教育、移植や3次救急などの広域医療を担っていくこととされた。急性期拠点機能については、全国の2次救急医療機関(3,194施設)の半数以上が、救急車の受け入れが23年度に500件未満だったことから、手術や救急など医療資源を多く要する症例を集約化し、医療の質を確保するため、報告できる病院数を地域ごとに設定する方針となった。検討会では、機能の名称や定義が分かりにくいという意見や、高齢者救急等機能と急性期拠点機能の役割分担、2次救急病院の分類などについて議論があった。厚労省は、これらの意見を踏まえ、名称や定義を明確化し、2025年度中に新たな地域医療構想の策定ガイドラインを示す予定。参考1)第11回新たな地域医療構想等に関する検討会[資料](厚労省)2)医療機関機能4プラス1案示す、検討継続 厚労省「複数報告」も想定(CB news)3)新地域医療構想で報告する病院機能、高齢者救急等/在宅医療連携/急性期拠点/専門等/医育・広域診療等としてはどうか-新地域医療構想検討会(Gem Med)3.外科医不足解消へ集約化・重点化を検討 厚労省が提案/厚労省厚生労働省は10月30日に「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」を開き、外科医不足の解消に向け、外科医療の集約化・重点化を検討課題として提案した。背景には、外科医の増加がほかの診療科に比べて緩慢であること、時間外・休日労働の割合が高いことなど、外科医の労働環境の厳しさが挙げられている。検討会では、外科医の減少に対する学会の取り組みとして、日本消化器外科学会と日本脳神経外科学会からヒアリングが行われ、両学会からは、症例数の多い施設ほど治療成績が向上する傾向があること、救急対応など地域医療の均てん化が必要な領域もあることなどが報告された。構成員からは、集約化の必要性や、地域や領域に応じた対応の必要性などが指摘された。一方、集約化によって医師の都市部集中が加速する可能性や、地域での専門医育成の難しさなどが課題として挙げられた。厚労省では、これらの意見を踏まえ、新たな地域医療構想等に関する検討会に報告し、医師偏在対策の総合的な対策パッケージ策定に向けて検討を進める方針。参考1)第7回医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会(厚労省)2)外科の集約化・重点化は医師偏在対策で「喫緊の課題」、厚労省が提案(日経メディカル)3)急性期病院の集約化・重点化、「病院経営の維持、医療の質の確保」等に加え「医師の診療科偏在の是正」も期待できる-医師偏在対策等検討会(Gem Med)4.信頼できるがん情報はどこに? 半数近くの患者はがん情報が入手困難/国立がん研国立がん研究センターなどが、2023年12月に実施したアンケート調査によるとオンラインでがん情報を入手する際に困難を感じているがん患者が45%に上ることが明らかになった。この調査は、インターネット上で約1,000人のがん患者を対象に行われ、オンラインでの情報収集における課題や情報源、情報活用について尋ねたもの。回答者の45%が「オンラインでがん関連情報を得る際に困難を感じたことがある」と回答し、そのうち5%は「常に困難を感じている/感じていた」と回答した。困難を感じた理由としては、「自分に合った情報をみつけることができない」「さまざまな情報が分散して掲載されている」「専門用語が多い」といった点が挙げられた。情報の入手元としては、検索エンジンが94%と最も多く、次いで動画共有サービスが30%、SNSが17%となった。この調査結果を受け、国立がん研究センターや全国がん患者団体連合会などは、「がん情報の均てん化を目指す会」を立ち上げた。同会は、アンケート調査の結果を踏まえて、患者が理解しやすい情報発信の必要性や、科学的根拠に基づかない情報への対応など、3つの課題と提言をまとめた。情報源に関する課題では、専門用語を避け、患者が理解しやすい情報発信が求められるとともに、信頼できる情報源の活用を促進するべきだと提言している。情報へのリーチに関する課題では、患者が適切な情報にアクセスできるよう、信頼できる情報を集めたポータルサイトの作成や、優良なWebサイト同士の相互リンクによる誘導強化を提言している。情報の活用に関する課題では、医師やがん相談支援センターによるサポート体制を強化し、患者が情報の意味を理解し、自分の状況に合わせて解釈できるよう支援するとともに、患者向けオンラインユーザーガイドを作成し、情報活用力を高めるための普及啓発を行うべきだと提言している。同会は今後、これらの提言を基に、具体的な対策を検討していく。参考1)がん情報のネットでの収集 半数近くが「困難」経験 患者調査で判明(朝日新聞)2)がん情報の均てん化に向けて~がん患者がオンライン上でがん情報を入手・活用する際の課題と提言~(がん情報の均てん化を目指す会)5.出生数減少、過去最少を更新 社会保障制度への影響も懸念/厚労省厚生労働省が11月5日に発表した人口動態統計によると、2024年上半期(1~6月)の出生数は、前年同期比6.3%減の32万9,998人だった。このペースで推移すると、2024年の年間出生数は70万人を割り込み、過去最少を更新する可能性が高まっている。出生数の減少は8年連続で、少子化に歯止めがかからない深刻な状況。背景には、未婚化・晩婚化の進行に加え、コロナ禍で結婚や出産を控える人が増えたことが挙げられる。出生数の減少は、労働力人口の減少や消費の冷え込みなど、経済への影響も懸念され、また、医療や年金などの社会保障制度の維持も困難になる可能性がある。政府は、少子化対策として児童手当や育児休業給付の拡充などを進めているが、今後、抜本的な対策が求められている。参考1)人口動態統計(厚労省)2)24年上半期の出生数は33万人 初の70万人割れか 人口動態統計(毎日新聞)3)ことし上半期の出生数 約33万人 年間70万人下回るペースで減少(NHK)4)今年上半期の出生数は33万人届かず 過去最低だった去年を下回る見込み 厚労省発表(テレビ朝日)6.コロナ禍の補助金、不正受給21億円 会計検査院が厳正な対応を要求/会計検査院会計検査院は11月6日、2023年度の決算検査報告を公表し、新型コロナウイルス対策の交付金や補助金を巡り、医療機関による不正受給など、計648億円の国費の不適切な取り扱いを指摘した。報告書によると、コロナ禍で医療体制を整備するために支払われた国の補助金において、約21億円が過大に交付されていた。中には虚偽の申請や制度の理解不足によるものなど、悪質なケースも含まれていた。具体的な事例として、空き病床とコロナ診療で休止した病床を重複申請するなどした病床確保料の過大請求、トイレや洗濯機置き場を診察室としてカウントするなどした発熱外来の補助金の不正受給、オペレーターの勤務時間を水増しするなどしたワクチン接種コールセンター業務の不正請求、納入されていない設備を納入したと虚偽報告などした救急・小児科医療機関の補助金不正受給などが挙げられている。会計検査院は、事業者側の制度理解不足や行政側の審査の甘さを指摘し、再発防止を求めている。また、コロナ交付金については、総額18兆3,000億円のうち約2割の約3兆2,000億円が不要になっていたことも判明した。使途に制限がないことから、「イカのモニュメント」や「ゆるキャラの着ぐるみ代」など、コロナ対策などとの関連性が不明瞭な事業に交付金が使われたケースもあり、批判が出ている。会計検査院は、自由度の高い交付金事業は、効果検証を行い国民に情報提供する必要があると指摘している。参考1)公金648億円余りが不適切取り扱いと指摘 会計検査院(NHK)2)コロナ医療支援21億円過大 トイレも「診察室」扱いで申請(日経新聞)3)今村洋史・元衆院議員の病院、新型コロナ診療体制の補助金1.6億円を不当申請…「考え甘かった」(読売新聞)

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第121回 高額過ぎて新型コロナワクチン接種が進まない

各学会から見解2024年10月に、日本感染症学会・日本呼吸器学会・日本ワクチン学会の3学会から合同で、「2024年度の新型コロナワクチン定期接種に関する見解」が発出され1)、「高齢者における重症化・死亡リスクはインフルエンザ以上であり、今冬の流行に備えて、10月から始まった新型コロナワクチンの定期接種を強く推奨」と記載されました。そして、日本小児科学会から「2024/25シーズンの小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」も発出され2)、「生後6ヵ月~17歳のすべての小児への新型コロナワクチン接種(初回シリーズおよび適切な時期の追加接種)が望ましい。特に、重症化リスクが高い基礎疾患のある児への接種を推奨」という文面になりました。こうした学会の見解は、これまでのエビデンスに裏付けられたものであり、一定の合理性を感じます。「変異ウイルスに効かない説」いまだによく聞く言説として、今年のワクチンはもう新しいKP.3系統に効果がないというものがあります。これは誤解です。確かに、従来のワクチン(起源株の1価ワクチン、BA.4・BA.5を含む2価ワクチン、XBB.1.5の1価ワクチン)やXBB以前の獲得免疫については、現在の主流株であるKP.3にはやや劣る側面があるかもしれません。しかし、現在定期接種で用いられているJN.1の1価ワクチンは、ここよりも下位系統に対して中和抗体の誘導が可能で、現在主流のKP.3系統も含めて発症予防効果があると考えられています3)。この冬に流行するのは、おそらくXEC株というものですが、これはKS.1.1(JN.13.1.1.1)とKP.3.3(JN.1.11.1.3.3)の組み換え体であるため4)、これもJN.1対応の現行ワクチンで効果があると思われます。ちなみに、JN.1対応ワクチンを接種した場合、KP.3株およびXEC株に対する中和抗体価は、JN.1株ほどではないものの有意に向上したという査読前論文があります5)。この冬に流行しそうな株は、現行ワクチンで十分と考えられます。現状、過去のワクチン接種の後、効果がなくなってしまった人がほとんどなので、とくに定期接種対象者についてはどこかで接種を検討する形でよいかと理解しています。高額過ぎて打てない自治体によって対応に差はありますが、ほとんどの子供は定期接種対象者ではありません。そのため、新型コロナワクチンの接種費用はガチでかかります。約1万5,000円です。家族4人で打つと6万円ということになるので、それなら感染予防を心掛けて今年の冬を乗り切ろうというご家庭が多いかもしれません。この費用負担が、新型コロナワクチンの接種を妨げる一因ともいえます。インフルエンザワクチンは接種するものの、コロナワクチンは見送る──そんなご家庭が増えているのが現状です。さらに、レプリコンワクチンに関する誤情報も影響している可能性があります。実際、Meiji Seika ファルマは、こうしたデマに対して訴訟を起こすなど、厳しい対応を行っています。諸外国では無料で接種できる国も多く、日本の現状は「予防医学の理想」からは遠い位置にあります。将来的にインフルエンザとの混合ワクチンが実現する際には、この費用の問題も解決されることが期待されます。参考文献・参考サイト1)日本感染症学会, 日本呼吸器学会, 日本ワクチン学会. 2024年度の新型コロナワクチン定期接種に関する見解(2024年10月17日)2)日本小児科学会. 2024/25シーズンの小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方(2024年10月27日)3)厚生労働省. 第2回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの製造株について検討する小委員会資料. 資料1「2024/25シーズン向け新型コロナワクチンの抗原組成について」(2024年5月29日)4)Kaku Y, et al. Virological characteristics of the SARS-CoV-2 XEC variant. bioRxiv. 2024 Oct 17. [Preprint]5)Arona P, et al. Impact of JN.1 booster vaccination on neutralisation of SARS-CoV-2 variants KP.3.1.1 and XEC. bioRxiv. 2024 Oct 04. [Preprint]

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第237回 「新たな地域医療構想」の議論本格化、どんどん増える“協議”する項目、元々機能していなかった地域医療構想調整会議のさらなる形骸化が心配

四病協が新たな地域医療構想における「医療機関機能」のイメージ案に再考求めるこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。野球シーズンも終わってしまいました。米国のMLBは、大谷 翔平選手が所属するロサンゼルス・ドジャースが4年ぶりのワールドシリーズ優勝を決めました。前の優勝は4年前、2020年です。このときはコロナ禍の真っ只中、レギュラーシーズンの試合数はわずか60試合で、ワールドシリーズも両チーム(相手はタンパベイ・レイズ)の本拠地でもないテキサス州のグローブライフ・フィールドで行われました。しかも、試合のとき以外は選手全員がホテルに缶詰めとなって全試合を戦うバブル方式(まとまった泡の中で開催する、という意味)でした。さらに、ジャスティン・ターナー選手が新型コロナウイルス陽性なのに出場して物議を醸すなど、優勝にちょっとしたケチも付きました。たった4年前ですが、コロナ禍というのはいろんなことが異常だったなと改めて思います。そのドジャース、今年は年間162試合をフルに戦い、ポストシーズンでさらに16試合、最後は宿敵ニューヨーク・ヤンキースを破っての優勝(しかもパレード付き)ということで、文句のつけようがない正真正銘の世界一です。選手にとってもファンにとっても喜びはひとしおでしょう。それにしても、ワールドシリーズ第5戦の5回表、ヤンキースのアーロン・ジャッジ選手、アンソニー・ボルピー選手、ゲリット・コール投手が連続して守備のミスを連発、5点差を逆転され自滅していったのには驚きました。それも高校生でもしないような単純ミスばかりです。王者ヤンキースの選手も普通の人間で、大舞台では緊張したり、うっかりしたりするということですね。いやはや、野球は面白いです。さて、今回は厚生労働省の「新たな地域医療構想等に関する検討会」で議論されている「医療機関機能」のイメージ案に対して、四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会で構成)が再考を求めたことについて書いてみたいと思います。四病協はいったい何が不満だったのでしょうか。入院医療だけでなく、外来・在宅医療、介護との連携等を含む医療提供体制全体の課題解決を図る「新たな地域医療構想」厚生労働省の「新たな地域医療構想等に関する検討会」は、2025年を目標年とする現在の地域医療構想の「次」について検討を進める会です。2040年を目処に、それまでにどのような医療提供の姿を作っていくのかが、多面的に議論されています。2024年3月29日に第1回が開かれて以降、10月17日までに10回を数えました。8月26日に開かれた第7回では、厚労省が“中間取りまとめ”として「新たな地域医療構想を通じて目指すべき医療について」と題する資料を提示、次のような基本的な考え方が示され、委員の了承も得て本格的な議論に入りました。85歳以上の高齢者の増加や人口減少がさらに進む2040年以降においても、全ての地域・全ての世代の患者が、適切な医療・介護を受け、必要に応じて入院し、日常生活に戻ることができ、同時に、医療従事者も持続可能な働き方を確保できる医療提供体制を実現する必要がある。このため、入院医療だけでなく、外来医療・在宅医療、介護との連携等を含め、地域における長期的に共有すべき医療提供体制のあるべき姿・目標として、地域医療構想を位置づける。人口や医療需要の変化に柔軟に対応できるよう、二次医療圏を基本とする構想区域や調整会議のあり方等を見直した上で、医療・介護関係者、都道府県、市区町村等が連携し、限りある医療資源を最適化・効率化しながら、「治す医療」を担う医療機関と「治し、支える医療」を担う医療機関の役割分担を明確化し、「地域完結型」の医療・介護提供体制を構築する。端的に言えば、今の地域医療構想が、病床の機能分化・連携のみに重点を置いていたのに対し、次の地域医療構想は、入院医療だけでなく、外来・在宅医療、介護との連携等を含む、医療提供体制全体の課題解決を図るため大幅にバージョンアップを図る、ということです。四病協での指摘はちょっと神経質過ぎる気もさて、四病院団体協議会は、厚労省が示した構想区域で求められる「医療機関機能のイメージ案」が誤解を生みかねないなどとして、11月にも書き換えを求める意見を出す方針を決めました。これは、四病協が10月23日に開いた記者会見で、日本病院会の相澤 孝夫会長が明らかにしたものです。「医療機関機能のイメージ案」とは、9月30日と10月17日に開かれた「新たな地域医療構想等に関する検討会」で厚労省が示したものです。下図のように、医療機関に報告を求める機能の類型について、(1)高齢者救急の受け皿となり地域への復帰を目指す機能、(2)在宅医療を提供し、地域の生活を支える機能、(3)救急医療等の急性期の医療を広く提供する機能、の3項目と「その他地域を支える機能」を提示しています。新たな地域医療構想等に関する検討会(令和6年10月17日)提出資料より10月23日付のキャリアブレインマネジメントなどの報道によれば、四病協では、(1)の病院は高齢者の救急医療のみに対応すればよいのか、という指摘があったほか、(3)の病院は3次救急医療だけを提供すればよいのか、といった意見が出て、「誤解を生む」との声が上がったとのことです。相澤氏は記者会見で、「イメージ案を書き直してもらうようにしたらどうかということで、四病協としての意見をまとめて厚労省に提出していく」と述べたとのことです。確かに、この図をぼーっと眺めると、「高齢者救急の受け皿」と「救急医療等の急性期の医療」は別の医療機関が担うように見えるかもしれません。ただ、「医療機関」と書かれているのではなく「医療機関機能」と、「機能」という言葉が付いています。四病協の指摘はちょっと神経質過ぎる気もします。とは言え、適当に書かれたポンチ絵が一人歩きしてしまうこともよくあります。まだ何も決まっていないので、誤解を生まない表現に変えておくことは大切かもしれません。地域医療構想調整会議も見直さないと次の地域医療構想も“絵に描いた餅”で終わりかねない私自身がこの「新たな地域医療構想」で気になるのは、検討すべき(あるいは協議すべき)項目が多岐に渡り、多過ぎる点です。病床の機能分化・連携推進だけが目的だった今の地域医療構想ですら、地域医療構想調整会議(いわゆる協議の場)の多くはほとんど機能しなかったと言われています。結果、多くの構想区域で病床の機能分化は進まず、急性期病床は思うようには減らず、回復期病床が足りない状況を招いたわけです。地域医療構想調整会議という組織には、現状、大きな強制力はありません。ダラダラ協議をして、何も決めなくても罰則もありません。唯一、地域医療構想調整会議での協議が整わないときに、都道府県知事は公的医療機関には「不足する医療機能を提供することを指示」でき、民間医療機関には「不足する医療機能を提供することを要請」できるくらいです。都道府県知事の医療機関に対する「要請」はほとんど意味がなく、実質機能しないことはコロナ禍で実証済みです。「新たな地域医療構想」に向けて、地域医療構想調整会議の位置付けや強制力、権限、さらには都道府県知事の権限も見直さないと、「地域医療構想」はまた“絵に描いた餅”で終わりかねません。これからの「検討会」の議論の行方に注目したいと思います。

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新型コロナによる死者数とその年齢構成

新型コロナウイルス感染症による年間死亡者数と年齢構成(5類感染症移行後)2023年5月~2024年4月の死亡者数(インフルエンザとの比較)死亡者の年齢構成30~40代 0.5%3万2,576人29歳以下 0.2%50代 1.2%60代 3.8%70代約15倍90歳以上15.9%38.6%80代2,244人新型コロナウイルス感染症インフルエンザ39.8%n=3万2,573人(年齢不明の3人除く)厚生労働省「人口動態統計」より2023年5~12月(確定数)、2024年1~4月(概数、2024年10月30日閲覧)のデータを集計Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第235回 コロナワクチン否定のための引用論文、実は意外な結論だった

つくづく新型コロナウイルス感染症のワクチン問題は説明が難しいと感じている。つい先日、知人と久しぶりに会った時に「新型コロナウイルスのスパイクタンパク質って毒性あるの?」と尋ねられ、「なんかそう言っている話もあるけどね」と確たる答えを返せなかった。確かにSNS上では、mRNAワクチンで産生されるスパイクタンパク自体に毒性があり、ワクチン接種そのものに問題があるという指摘は、ワクチン批判派の人たちからはよく流されている。私がこうした指摘にこれまで気にも留めなかったのは、脂質ナノ粒子にくるまれて細胞内に入り込んだmRNAワクチン成分がそこでスパイクタンパク質を作り出しても、スパイクタンパク質自体やmRNAが入り込んでスパイクタンパク質を産生している細胞は、ワクチン接種で誘導された免疫反応で排除されるのが、このワクチンの理論的な作用機序だと考えているからだ。とはいえ、知人の指摘する話の原典には当たったことはなく、後日実際に検索しているうちに、ワクチン批判派があちこちで引用する2021年3月のCirculation Research誌に掲載されたLetter1)に行き着いた。ワクチン否定派の引用論文×自身が気になった論文これはスパイクタンパク質をつけた疑似ウイルスをハムスターに接種した実験で、スパイクタンパク単体でも細胞表面のACE2受容体のダウンレギュレーションを通じて血管内皮細胞に障害を与える可能性があるとの研究。これ自体は当然ながら一定の信憑性はあるのだろう。もっともこの論文の最後を読んで、申し訳ないが笑ってしまった。というのも、結論は「ワクチン接種により産生される抗体や外因性の抗Sタンパク質抗体は、新型コロナウイルスの感染だけでなく、内皮障害も保護する可能性が示唆される」というものだったからだ。ワクチン批判派の人たちは、論文を読まずに拡散していたということにほかならない。もっとも私自身の中でことはこれで終わりにはならなかった。前出の論文検索中にCirculation誌の2023年1月に掲載されていた論文2)を見つけたからだ。この論文が記述していたのはmRNAワクチン接種約100万回当たり1回程度生じるといわれる心筋炎の副反応に関する研究である。その中身は「新型コロナワクチン接種後に心筋炎の副反応を経験した若年者と年齢をマッチングさせたワクチン接種経験のある健常ボランティアの血液を分析した結果、心筋炎発症集団の血中でのみワクチン接種により産生された抗体が結合しきれていないスパイクタンパク質が高濃度で検出された」という内容である。ちなみにこの研究では「抗体産生や新型コロナウイルス特異的T細胞などの免疫応答についても解析し、両集団に差がなかった」ことも記述している。この論文では、「こうしたワクチンによる抗体が掴まえきれない、血中を遊離するワクチン由来のスパイクタンパク質が心筋炎発症に関与する可能性が示唆される」と結論付けている。もっとも前述のように両者の免疫応答に差がなく、心筋炎発症集団で高濃度に検出された遊離スパイクタンパク質も33.9±22.4pg/mLと量そのものの絶対値で見れば微量にすぎない。となると、新型コロナワクチン接種者で発症する心筋炎に関しては、遊離スパイクタンパク質はリスクファクターではあるものの、何らかの内因性のファクターが関与していると見るのが妥当だと個人的には考えている。友人の意外な反応さて、そんなこんなを前述の知人に伝えたところ、「だとするならやっぱり危ないんじゃないのかな?」との反応。「いやいや、そうではなくて…」と私は語り掛け、合計1時間半にもおよぶ長電話になってしまった。私が話した内容の大半は、リスクとベネフィットのバランスである。もっともここで“約100万回に1回”という心筋炎の発症頻度が非常にわかりにくいことも改めて思い知らされた。確率に直せば0.000001ということになるので、そう説明すると知人もようやく「まあ、そんなに低いのね。何度もコロナで苦しむリスクを減らすなら、ワクチンもコスパが良いのか?」と言い出した。ちなみに本人は今年61歳。過去に2度の感染で苦しんでもいる。しかし、本当にリスクの伝え方は難しいと改めて感じている。とくに今回、私が経験したケースは入口となるファクトそのものは間違いではない。ただ、ワクチンに批判的な人たちがそこをフックに針小棒大に語っていると、こちらも医療に詳しくない一般人に説明する際はのっけから苦労する。つまり、ワクチン批判派は入口のファクトは一定の信頼性があるものを使っているため、彼らが伝える“ある種の妄想”と言っても差し支えないその先の解釈までもが、何も知らない人は“信憑性を帯びている”と無意識に受け止めているということだ。ここへさらにヒトの中に無意志に備わっているゼロリスク願望が加わると、より確かな情報を理解してもらうハードルが一気に高まってしまう。そしてSNS上で次世代mRNAワクチン、通称・レプリコンワクチンに関する異常とも言えるデマのまん延を見るにつけ、医療従事者の皆さんは私以上に苦労しているのだろうと思わずにはいられない。参考1)Lei Y, et al. Circ Res. 2021;128:1323-1326.2)Yonker LM, et al. Circulation. 2023;147:867-876.

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重症の新型コロナ感染者の心臓リスクは心疾患既往者のリスクと同程度

 重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、心筋梗塞や脳卒中、全死亡などの主要心血管イベント(MACE)リスクを高め、その程度はCOVID-19に罹患していないが心疾患の既往歴がある人のリスクとほぼ同程度であることが、米クリーブランドクリニック・ラーナー研究所心血管代謝学部長のStanley Hazen氏らによる新たな研究から明らかになった。この研究ではまた、重症度にかかわらず、COVID-19罹患は、その後3年間のMACEリスクを2倍に高めることも示されたという。この研究結果は、「Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology」に10月9日掲載された。 Hazen氏は、「この研究結果から、COVID-19は上気道感染症である一方で、さまざまな健康リスクを伴う疾患であり、心血管疾患の予防に関する計画や目標を策定する際には、COVID-19の既往歴を考慮すべきことを強く示したものだ」と述べている。 COVID-19パンデミックの初期には、新型コロナウイルスへの感染が血栓や心臓の問題のリスクを高めることが示されていた。しかし、このような高リスク状態がいつまで続くのか、どのような要因が影響するのかについては十分に解明されていないとHazen氏らは言う。 そこでHazen氏らは、2020年の2月1日から12月31日までの間に英国でCOVID-19の診断を受けた患者1万5人のデータを分析し、心血管の健康状態をCOVID-19に罹患していない21万7,730人と比較した。 その結果、COVID-19への罹患者では、重症度とは無関係に、1,003日の追跡期間にわたってMACEリスクが2倍以上に上昇することが明らかになった(ハザード比2.09、95%信頼区間1.94〜2.25、P<0.0005)。このようなリスク上昇は、COVID-19罹患により入院を要した人で顕著だった(同3.85、3.51〜4.24、P<0.0005)。また、心血管疾患の既往歴がないCOVID-19罹患者でのMACEリスクは、心血管疾患の既往はあるがCOVID-19罹患歴がない人よりも20%以上高かったことから(同1.21、1.08〜1.37、P<0.005)、COVID-19による入院が冠動脈疾患(CAD)と同等のリスク(CAD risk equivalent)をもたらすことが確認された。 さらにHazen氏らは、そのリスクの程度が血液型によって異なることも突き止めた。血液型がA型、B型、AB型の人では、O型の人と比べてCOVID-19による入院を経験した後の血栓イベント(心筋梗塞と脳卒中)のリスクが有意に高いことが示されたのだ。このことは、新型コロナウイルスへの感染後の心疾患リスクには、その人の遺伝的特徴が影響している可能性を示唆していると、Hazen氏らは指摘している。 論文の上席著者で、米南カリフォルニア大学ケック医学校ポピュレーションヘルス・公衆衛生科学および生化学・分子医学教授のHooman Allayee氏は、「われわれは、この結果を説明できる要因が他にあるかどうかを確認しようとしているところだが、実際に、特定の血液型では、生物学的な何らかのメカニズムが作用しているようだ」と話している。また同氏は、「われわれの観察の結果と、世界の人口の60%はO型以外の血液型である事実を踏まえると、われわれの研究は、個々の患者の遺伝的特徴を考慮した、より積極的な心血管リスク低減策を検討すべきかどうかという重要な問題を提起するものだ」と同大学のニュースリリースの中で付け加えている。 Allayee氏は、医師は新型コロナウイルスへの感染を全般的な心臓のリスクの一部としてとらえる必要があると主張する。同氏は、「現時点で疑問として残るのは、本研究結果と今後の研究結果により、心疾患の既往がない人に対する心臓の予防医療に関するガイドラインが、COVID-19の心臓への影響を考慮したものに変更されるのかということだ」と話している。

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亜鉛欠乏でコロナ重症化リスクが上昇か/順天堂大

 亜鉛は免疫機能に重要な役割を果たす微量元素であり、亜鉛欠乏が免疫系を弱体化させる可能性があることが知られている。順天堂大学の松元 直美氏らの研究チームは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者における血清亜鉛濃度とCOVID-19の重症度との関連を調査したところ、患者の40%近くが血清亜鉛欠乏状態であり、血清亜鉛濃度が低いほど、COVID-19の重症度が高いことが判明した。本研究は、International Journal of General Medicine誌2024年10月16日号に掲載された。 本研究では、2020年4月~2021年8月にCOVID-19で入院した467例(18歳以上)を対象に、入院時の血清亜鉛濃度を測定した。血清亜鉛濃度が60μg/dL未満を欠乏、≧60~<80μg/dLを境界欠乏、80μg/dL以上を正常とした。COVID-19の重症度は、WHOの基準に基づき、軽症、中等症、重症の3段階に分類した。多変量ロジスティック回帰分析を使用し、血清亜鉛欠乏とCOVID-19の重症度の関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象者の平均年齢(SD)は、重症例(n=40)が68.1(13.0)歳、軽症/中等症例(n=427)が58.8(18.3)歳であった。性別は、重症例では男性72.5%、軽症/中等症例では男性64.6%であった。・血清亜鉛濃度の平均値(SD)は、重症例では51.9(13.9)μg/dL、軽症/中等症例では63.2(12.3)μg/dLであった。・血清亜鉛欠乏(<60μg/dL)の割合は、女性で39.5%、男性で36.4%であった。さらに、境界欠乏(≧60~<80μg/dL)は、女性で54.3%、男性で57.0%だった。・血清亜鉛欠乏は、境界欠乏および正常(≧60μg/dL)と比較して、COVID-19の重症化と有意に関連していた(調整オッズ比:3.60、95%信頼区間:1.60~8.13、p<0.01)。・COVID-19の重症度の上昇は血清亜鉛濃度の上昇と逆相関しており、血清亜鉛濃度が低いほどCOVID-19の重症度が高かった(傾向のp<0.01)。 本研究により、血清亜鉛濃度がCOVID-19の重症度と有意に関連することが示された。血清亜鉛濃度が低い患者はとくに重症化リスクが高いため、COVID-19の治療において血清亜鉛濃度を考慮することの重要性が示唆されている。

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第215回 新型コロナ5類移行後も死者3万人超、インフルエンザの15倍、高齢者に脅威/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナ5類移行後も死者3万人超、インフルエンザの15倍、高齢者に脅威/厚労省2.医師臨床研修マッチング、大学病院離れが加速、地方志向強まる/厚労省3.心臓移植、余命1カ月の患者を最優先へ 待機期間中の死亡減目指す/厚労省4.第50回総選挙、医師資格保持者17人が議席獲得5.がん予防の細胞療法で重症感染症 都内クリニックに停止命令/厚労省6.根拠不明の薬でがん患者死亡 遺族が自由診療のクリニックを提訴/大阪1.新型コロナ5類移行後も死者3万人超、インフルエンザの15倍、高齢者に脅威/厚労省新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が5類感染症に移行して以降も、死者数は依然として高い水準にあることが判明した。厚生労働省の人口動態統計によると、2023年5月~2024年4月までの1年間で、COVID-19による死者は計3万2,576人に上り、季節性インフルエンザの約15倍に達した。死亡者の大部分は65歳以上の高齢者で、全体の約97%を占めていた。男女別では男性が1万8,168人、女性が1万4,408人と、男性の方が多い傾向がみられた。専門家は、COVID-19が次々と変異を繰り返して高い感染力を持つ一方で、病原性はあまり低下していないことが、高齢者を中心に多くの死亡者が出ている原因だと指摘している。COVID-19の5類移行に伴い、行動制限などは解除されたが、感染拡大防止に向けた個々人の意識が重要となる。東北大学の押谷 仁教授(感染症疫学)は、「大勢が亡くなっている事実を認識し、高齢化社会の日本で被害を減らすために何ができるのかを一人一人が考えないといけない」と訴えている。押谷教授は、社会経済活動を維持しながら死亡者数を減らすためには、「高齢者へのワクチン接種や高齢者施設における検査などの費用を国が負担すべきだ」と指摘している。参考1)コロナ死者年間3万2千人 5類移行後、インフル15倍 高齢者ら今も脅威 冬の流行、専門家懸念(東京新聞)2)新型コロナ死者、年間3万2,576人 5類移行後、インフルの15倍(毎日新聞)3)コロナ死者年間3万2,000人超 5類移行後、インフルの15倍 高齢者らには今も脅威(産経新聞)2.医師臨床研修マッチング、大学病院離れが加速、地方志向強まる/厚労省2024年度の医師臨床研修マッチングの結果が10月24日に発表され、地方での研修を希望する医師が増加傾向にある一方、第1希望の研修プログラムへのマッチ率が前年度より低下したことが明らかになった。厚生労働省によると、マッチングに参加した医学生は1万136人で、うち9,868人が希望順位表を登録した。研修先がマッチングしたのは9,062人で、マッチ率は91.8%。研修先は、市中病院が64.7%、大学病院が35.3%と、市中病院での研修を希望する医師が大多数だった。また、地方病院での研修希望も増加傾向にあり、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、福岡県の6都府県を除く41道県でのマッチ率は60.1%で、前年度より1.1ポイント増加した。その一方で、第1希望の研修プログラムにマッチした人の割合は62.5%で、前年度より1.8ポイント減少した。第3希望までにマッチした人は88.7%で、こちらも前年度より1.0ポイント減少した。マッチングの結果、大学病院本院で定員充足率が100%となったのは19大学であり、とくに関西医科大学は10年連続、昭和大学は9年連続でフルマッチを達成していた。そのほか、自大学出身者のマッチ割合が高い大学も多く、金沢医科大学、旭川医科大学など9校では、マッチ者の全員が自大学出身者だった。参考1)令和6年度の医師臨床研修マッチング結果をお知らせします(厚労省)2)2025年4月からの医師臨床研修、都市部6都府県「以外」での研修が60.1%、大学病院「以外」での研修が64.7%に増加-厚労省(Gem Med)3)医師臨床研修マッチング、63%が第1希望に内定 前年度比1.8ポイント減 厚労省(CB news)4)市中病院にマッチした医学生は64.7% マッチング最終結果、フルマッチは19校(日経メディカル)3.心臓移植、余命1カ月の患者を最優先へ 待機期間中の死亡減目指す/厚労省心臓移植を希望する患者の待機期間が長期化する中、厚生労働省は10月23日、余命1ヵ月以内と予測される60歳未満の患者を最優先に対象とする新たな方針を決定した。従来の心臓移植の優先順位は、血液型や体重、人工心臓の装着の有無などを基準とし、条件が同じ場合は待機期間が長い患者が優先されていた。しかし、医療技術の進展により、約7割の患者が同じ優先枠で待機できるようになり、より切迫した緊急性が考慮されない状況だった。このため、病状が悪化しても待機順位が上がらず、移植を受けられないまま死亡するケースも少なくなかった。新たな方針では、余命1ヵ月以内と予測される60歳未満の患者を最優先枠に設定し、待機期間中の死亡を減らすことを目指す。対象となる患者は、日本循環器学会に設置される専門部会が審査を行う予定。また、厚労省では、心臓移植以外の臓器移植についても、優先順位の見直しを進める方針。一方、臓器提供者側の対応については、あっせん機関である日本臓器移植ネットワークの業務を分割し、ドナー家族への対応などを新組織や医療機関の院内コーディネーターに委嘱する体制見直し案も提示された。参考1)心臓移植「余命1ヵ月最優先」 厚労省、待機中の死亡減目指す(毎日新聞)2)緊急性の高い患者に心臓移植を 厚労省、優先順位の基準見直しへ(朝日新聞)3)心臓移植 緊急度の高い患者に優先枠 厚労省の専門委が承認(NHK)4)心臓移植断念、5年で34人 待機長期化、緩和医療を選択 切迫患者を最優先の動き(産経新聞)4.第50回総選挙、医師資格保持者17人が議席獲得第50回衆議院議員総選挙で、医師資格を持つ候補者36人が立候補し、そのうち17人が当選を果たした。自民からは6人が当選し、維新は5人、立民から4人、公明と国民民主からは各1人ずつが議席を獲得した。残る19人は惜しくも落選となり、選挙戦を制することはできなかった。注目の当選者には、立憲民主党の阿部 知子氏(神奈川12区)がおり、医師資格保持者の中で最多の9回目の当選となった。また、日本維新の会から立候補した梅村 聡氏(大阪5区)は、参議院議員から鞍替え出馬での立候補で、衆議院への転身が実現した。無所属で立候補した三ツ林 裕巳氏(埼玉13区)は、自民党からの公認が得られず落選という結果になった。今回の選挙では、前回の第49回衆院総選挙の当選者は12人に比べて、医師資格保持者が17名と増加したことが特徴的で、医療や福祉政策への関心の高まりが反映されているとみられる。【医師資格を持つ今回の当選者】国光 文乃:自民 比例当選/新谷 正義:自民 比例当選/今枝 宗一郎:自民 愛知14区/松本 尚:自民 千葉13区/安藤 高夫:自民 比例当選/仁木 博文:自民 徳島1区/岡本 充功:立民 愛知9区/中島 克仁:立民 山梨1区/阿部 知子:立民 神奈川12区/米山 隆一:立民 新潟4区/沼崎 満子:公明 比例当選/梅村 聡:維新 大阪5区/伊東 信久:維新 大阪19区/猪口 幸子:維新 比例当選/阿部 圭史:維新 比例当選/阿部 弘樹:維新 比例当選/福田 徹:国民 愛知16区(敬称略)5.がん予防の細胞療法で重症感染症、都内クリニックに停止命令/厚労省東京都内のクリニックで再生医療を受けた患者2人が重大な感染症を発症し、厚生労働省が当該医療機関に医療提供一時停止の緊急命令を出した事態を受け、一般社団法人再生医療安全推進機構は10月27日、厚労省に再生医療政策の見直しを求める陳情書を提出した。10月25日、厚労省は、医療法人輝鳳会が運営する「THE KCLINIC」(東京都中央区)で、がん予防を目的とした自由診療の細胞療法を受けた患者2人が、重大な感染症で入院したと発表した。2人は「NK細胞」と呼ばれる細胞の加工物の投与を受けており、その細胞加工物から感染症の原因とみられる微生物が確認された。厚労省は、再生医療安全性確保法に基づき、同クリニックと、NK細胞の培養を行った「池袋クリニック培養センター」(東京都豊島区)に対し、同様の再生医療の提供などを一時的に停止させる緊急命令を出した。同機構は、この事件を受け、自由診療下における再生医療ビジネスの増加と、医療機関内での細胞培養加工の安全性に対する懸念を表明。厚労省に対し、再生医療政策の抜本的な見直しを求める陳情書を提出した。陳情書では、臨床現場のニーズを反映した政策立案、審査ガイドラインの策定、法規制の更新、監視体制の強化などを求めている。とくに、医療機関内で行う細胞培養加工施設の運用基準の明確化、細胞外小胞を用いた治療など、法規制の枠外にある再生医療に対する規制強化を訴えている。同機構は、今回の陳情を機に、再生医療の安全性確保と健全な発展に向けた議論が深まることに期待を寄せている。参考1)再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく緊急命令について(厚労省)2)再生医療政策の抜本的見直しを求める陳情書を厚生労働省に提出(PR TIMES)3)再生医療後に重大な感染症で2人が入院 厚労省、医院に医療提供一時停止の緊急命令(産経新聞)4)再生医療で重大な感染症 医療提供一時停止の緊急命令 厚労省(NHK)6.根拠不明の薬でがん患者死亡 遺族が自由診療のクリニックを提訴/大阪大阪市内のクリニックで「がん細胞が死ぬ」と勧められた自由診療の薬を投与された後、容体が悪化し死亡した男性の遺族が、クリニックの院長を相手取り、損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。訴状によると、男性は2021年4月、前立腺または精嚢がんと診断され、一般病院で抗がん剤治療を受けながら、並行してクリニックで自由診療を受けていた。クリニックの院長は、公的医療保険が適用されない自由診療の薬を「アメリカ製の治療薬で、日本製よりパワーがある」と勧め、男性は「ガスダーミンE」という薬の点滴を受けることにした。しかし、点滴投与後、男性の容体は悪化。その後、院長から「『ガスダーミンE』ではなく『ガスダーミンRNA』を投与していた」と告げられたが、明確な説明はなく、男性は2022年4月、がん性腹膜炎で死亡した。遺族は、院長が十分な説明をせず正体不明の薬を投与し、病状を悪化させたとして、935万円の損害賠償を求めている。治療の同意書はみつかっておらず、遺族は「ずさんな対応」と訴えている。一方、院長は「納得の上で同意を得ていたが、同意書は作成していなかった。使った薬はガスダーミンEで間違いなかった」と反論している。専門家は、自由診療は科学的根拠が不十分な場合が多く、高額な費用がかかるにもかかわらず、効果が保証されない点に注意が必要だと指摘している。参考1)がん自由診療2日後に容体悪化、半年後に死亡…「副作用説明なかった」遺族が医師を提訴へ(読売新聞)2)「『がん細胞が死ぬ』と勧められた自由診療の薬で容体悪化」死亡した男性の遺族がクリニック院長を提訴(読売テレビ)3)提訴:「がん細胞死ぬ」点滴後死亡 自由診療クリニック 遺族が提訴へ(毎日新聞)

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医師の働き方改革後、小児・救急などで実際に縮小・撤退/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、定例会見を開催。はじめに松本氏が「財政制度等審議会財政制度分科会の議論を受けて」をテーマに医師会の考え方などを説明した。その中で、「財務省などの試案では、さらなるコストカットが示されているが、すでにその施策も現場では限界に来ていること、この12年間で医療従事者は賃金が抑えられていること、また、新型コロナ以後も患者は戻っておらず、関連の補助金もカットされたことで全国の診療所などは厳しい経営状況にあること」を説明した。松本氏は「今後も政府や関係省庁へ地域の安全を担保するインフラである医療や医療産業の充実のために財政上の手当てを要望する」と語った。改革後は小児医療、救急医療、手術、宿日直などで大きな影響 「『医師の働き方改革と地域医療への影響に関する日本医師会調査』(制度開始後調査)の結果について」をテーマに、担当常任理事の城守 国斗氏(医療法人三幸会 理事長)がアンケート調査の結果について説明した。 この調査は、4月に施行された改正医療法(いわゆる「医師の働き方改革」)の前後で、医師会所属の医療機関に行ったもので、調査は2024年8月20日~9月2日に全国の1万4,216施設で実施された。回答施設数は4,082施設(回答率28.7%)だった(前回調査の回答施設数は3,574施設)。 「自院の医療提供体制における影響」では、「管理者(病院長)の業務負担が増加している」(27.3%)、「手術件数が減少している」(10.8%)、「外来診療体制の縮小を行っている」(5.3%)の順で多かった。【制度開始直前調査より影響が小さくなっている項目】(1)管理者の業務負担の増加について 制度開始前は「増加する可能性がある」(36.5%)だったものが、制度開始後に「増加した」は27.3%だった。(2)教育指導体制 制度開始前に「維持できなくなる可能性がある」(8.9%)だったものが、制度開始後に「維持できなくなっている」は4.1%だった。(3)周産期医療体制 制度開始前に「縮小・撤退を検討している」(1.9%)だったものが、制度開始後に「縮小・撤退を行っている」は1.8%だった。【制度開始直前調査より影響が大きくなっている項目】(4)小児医療体制 制度開始前に「縮小・撤退を検討している」(1.8%)だったものが、制度開始後に「縮小・撤退を行っている」は2.3%だった。(5)救急医療体制 制度開始前に「縮小・撤退を検討している」(4.3%)だったものが、制度開始後に「縮小・撤退を行っている」は5.3%だった。(6)手術件数 制度開始前に「減少する可能性がある」(9.8%)だったものが、制度開始後に「減少している」は10.8%だった。(7)宿日直体制 制度開始前に「縮小・撤退を検討している」(6.2%)だったものが、制度開始後に「縮小・撤退を行っている」は8.2%だった。(8)外来診療体制 制度開始前に「縮小・撤退を検討している」(7.1%)だったものが、制度開始後に「縮小・撤退を行っている」は9.3%だった。【医師の派遣・受け入れの状況:派遣している医療機関(672施設)】(1)医師の引き揚げによる影響 制度開始前に「引き揚げる医師数が昨年より増加している」(8.8%)だったものが、制度開始後に「引き揚げる医師数が増加する見込み」は8.5%と減少した。(2)宿日直の応援医師の派遣 制度開始前に「応援医師派遣を制限する事例が昨年より増加している」(7.0%)だったものが、制度開始後に「応援医師派遣を制限する事例の増加が見込まれる」は9.5%と減少した。【医師の派遣・受け入れの状況:受け入れている医療機関(2,927施設)】(1)医師の引き揚げによる影響 制度開始前に「引き揚げにより昨年より医師数が減少している」(11.2%)だったものが、制度開始後に「引き揚げにより昨年より医師数が減少してする見込み」は15.6%と増加した。(2)宿日直の応援医師の派遣 制度開始前に「宿日直の応援医師の確保が昨年より困難」(21.6%)だったものが、制度開始後に「宿日直の応援医師の確保が昨年より困難になることが見込まれる」は23.9%と微増した。【宿日直許可の取得状況】 有床診療所(1,122施設)では「宿日直許可の取得は検討していない」が63.5%、病院(2,960施設)では「宿日直許可の取得あり(部分的な宿日直許可も含む)」が93.9%で1番回答が多かった。【地域の医療提供体制における影響について】(1)地域の医療提供体制で実際に生じていると考えている問題点について 有床診療所(1,122施設)、病院(2,960施設)ともに「救急搬送の受入困難(断り)事例の増加」(11.2%/17.3%)の回答が1番多かった。(2)地域の医療提供体制で懸念される問題について 同様に有床診療所(1,122施設)、病院(2,960施設)ともに「救急医療体制の縮小・撤退」(33.8%/29.8%)の回答が1番多かった。

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第234回 医療政策のレベル高し?立憲、公明党、国民民主党、社民党の公約

さて前回に引き続き、衆院選の各党の政策紹介と独断と偏見に基づくその評価の第二段である。ちなみに現在の各種報道を参照すると、与党である自民党・公明党による過半数獲得が微妙とのこと。正直、個人的には予想外である。久々に目が離せない選挙となった。さて今回は前回予告したように、公示前議席数で偶数順位の政党を順に取り上げる。立憲民主党(2位:98議席)もはや説明も要らぬ野党第1党である。以前紹介した代表選の結果、党内でも保守色が強い元首相の野田 佳彦氏が代表に就任。報道各社の情勢分析によると、かなり議席を増やす可能性があるらしい。その意味ではあくまで同党はチャンスであるためか、「7つの約束 政権交代こそ、最大の政治改革。」を掲げる。さて同党の200ページ超の分厚い政策集から主なものを拾ってみた。『デジタル・IT』の項目ではマイナ保険証に関して以下のような記述となっている。医療DXの推進は喫緊の課題であるものの、「不安払拭なくしてデジタル化なし」です。国民の不安を払拭し、国民皆保険の下、誰もが必要なときに、必要な医療が受けられる体制を堅持するために、2024年12月の健康保険証の廃止を延期し、一定の条件が整うまで現在の健康保険証を存続させます。現行法においてマイナンバーカードの取得が申請主義であることを踏まえ、マイナ保険証の利用は、リスクと便益を自分で判断して決めるべきであり、本人の選択制とします。ちなみに『厚生労働』の医療保険制度関連で「レセプト審査の効率化、医療ビッグデータのさらなる活用によって、保険者機能の強化、医療費適正化、健康課題への活用を推進します」とあることも考慮すれば、マイナ保険証にむしろ内心では肯定的な見解もうかがえる。マイナ保険証全否定の日本共産党、れいわ新撰組、社民党と比べれば、かなり穏健かつ現実的な方向性に舵を切っていると言える。この辺からもこれら3党との共闘は、野田氏の代表就任から衆院選まで時間があったとしても難しかっただろうと推察できる。一方で社会保険料負担に関しては「上限額を見直し、富裕層に応分の負担を求めます」とある。これだけでは具体性に欠くのだが、後段では「世代間公平に配慮しつつ、重点化と効率化によって、子どもから高齢者にわたる、持続可能で安心できる社会保障制度を構築します」「被用者保険からの大幅な拠出金が課題となっている高齢者医療制度については、医療保険制度の持続可能性の強化と現役世代のさらなる負担軽減を含めて、抜本的な改革を目指します」などの記述があるため、日本維新の会や後述の国民民主党とかなり似た制度設計が念頭にあるのだろう。また、『経済政策』『厚生労働』では創薬・バイオ、ゲノム医療を成長分野に位置付けており、以下のような関連項目の記述がある。ワクチン開発を支援し、日本企業の国際競争力を高めます。iPS細胞を利用した再生医療研究等の促進、創薬への支援や創薬の環境整備を進め、日本の先進医療、画期的な新薬などの医療技術を海外に輸出するための産業育成、発信力強化を図ります開発途上国が必要とする医薬品の開発を支援し、日本の医薬品が海外で使用される基盤づくりを進めます後発医薬品の質の確保、先発品の特許切れ後の値下げを進めます。漢方薬など伝統的医薬品は、現行の薬価改定方式では薬価が下がり続けるばかりであることから、生産を維持するための歯止めを設けます。医薬品の安定供給、イノベーション創出の基盤を強固にし、国民に品質の高い医薬品を安定して供給できるようにするため、中間年薬価改定を廃止し、2年に1度の改定とします。まあ、この中では漢方薬に言及したのは、各政党の中で唯一なのだが、そもそもこの点については、OTC類似薬の保険給付の是非も含めて議論すべきことかと私見ながら思う。しかし、「ワクチン国産化」「iPS細胞研究の推進」は、率直に言ってやや時代遅れではないだろうか? 創薬の世界的潮流や実態を知らないのだろう。ちなみにワクチンに関連して、「新型コロナウイルス感染症のワクチン対策」と称して、ワクチン接種体制の円滑な確保と同時に▽リスクコミュニケーション強化▽新型コロナワクチンの副反応に特化した検討会議体の設置▽健康被害救済制度の周知▽死亡事例に関する認定審査体制の充実、などを掲げている。これを読むと、「うわっ、反ワクチンか!」と思う人もいるだろうが、こうした副反応対策やリスクコミュニケーション強化は、少なくとも今後のワクチン接種を進めていくためには必須のことと個人的には考えている。現状は少なくともSNSでワクチンに批判的言説が多く出回っている以上、放置するのは最悪である。もっともここまで是々非々で考えられるなら、ワクチンに関する陰謀論をSNSで拡散する同党の一部議員を何とかしてほしいと思うのだが…。公明党(4位:32議席)ご存じ、日蓮正宗系宗教法人・創価学会を支持母体とする政党である。過去からの政策を見ると、とにかく「現物・現金支給」に著しく偏り、自民党よりもバラマキ色が強い政党という印象がある。今回の「2024公明党 衆院選重点政策」は全部で10の大項目を掲げる。まず、『1 物価高克服へ、暮らしを守る!所得向上!』では、「医療・介護等の持続的な賃上げ・処遇改善」で、“医療・介護・障がい福祉・保育など公的に価格が決まる部門で働く方々の賃金については、引き続き、物価上昇を上回る引き上げ分を確保するとともに、さらなる処遇改善に向けて取り組みます“と謳っている。この辺は他党もおおむね同じである。社会保障、医療・介護については「3 健康・命を守る、高齢者支援」の項目で掲げられている中項目を一部抜粋する。健康な暮らしの確保と健康寿命延伸による高齢者のウェルビーイング(満足度)の向上医療提供体制の充実医療DX の推進がんとの共生社会を創るがん医療提供体制の充実メンタルヘルスケアが社会の当たり前に医薬品の安定供給・品質の確保帯状疱疹ワクチンの円滑な接種地域包括ケアシステムの推進難聴に悩む高齢者等に対する支援介護人材の確保各項目とも詳細な説明があるものの、中身は定性的なものがほとんどで、ですます調の官僚文書を読んでいるかのような印象がある。この中で私自身が注目したのは「難聴に悩む高齢者等に対する支援」。これも昨今、盛んに言及されるようになったことだが、認知症のリスクファクターの1つに難聴が指摘され、早期の補聴器使用が軽度認知障害への進行速度を低下させるなどの報告もある。公明党はこの政策の中で、「加齢による聴力低下を早期に発見し、適切な支援につなげるため、身近なところで聴力チェックが受けられる体制」「難聴に悩む高齢者が医師や言語聴覚士などの助言のもとで、自分にあった聴覚補助機器等を使用する体制」の整備と必要な財政的な支援も検討することを掲げた。認知症に関連した難聴対策の必要性は専門医も訴え始めており、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は「加齢性難聴・聴こえ8030運動」を展開している。実は同学会には補聴器相談医という制度も設けて啓蒙に努めているが、まだ広がりは見せていない。その意味で公明党のこの政策はかなり着眼点が良いとは言える。しかし、2021年の衆院選の政策比較で掲げた新型コロナウイルス感染症後遺症対策の時も触れたが、現金・現物給付以外は本気度が低いという同党の傾向が玉にきずである。国民民主党(6位:7議席)東京都知事の小池 百合子氏が国政進出を狙って2017年に希望の党を設立した際、旧民主党の後継政党・旧民進党がこれに合流を宣言したことは、まだ記憶にある人は多いだろう。結局、希望の党は国政でまともに議席を確保できず、合流組の一部が後に希望の党から分党して国民党を創設した。これが旧民進党残留組と合併して設立したのが第一次の国民民主党である。ただ、現在の国民民主党は、第一次国民民主党が2020年に立憲民主党との合併を決めた際に、不参加だった者たちで構成される第二次の国民民主党である。公示前議席数では第6位だが、報道に基づく終盤の情勢調査では3倍以上に議席を積み増す可能性が指摘されている。エネルギーや安全保障に関する政策がより保守色、言い換えれば現実路線に近いことが有権者から受けがよい理由なのだろう。さて今回の同党の政策パンフレット2024では『手取りを増やす』と何ともシンプルなメッセージの下に政策柱4つを掲げる。この4つのうち筆頭に来るのが「給与・年金が上がる経済を実現」で、ここでは“社会保険料の軽減”を主張し、負担能力に応じた窓口負担、公費投入増による後期高齢者医療制度に関する現役世代の負担軽減を明示している。前者は現在、財政制度審議会や社会保障制度審議会で議論が続けられている高齢者での負担増、後者は同制度での現役世代が加入する健保組合からの拠出金を指しているのは明らかだ。日本維新の会なども主張しているのと同様の、いわば現役世代向け政策の典型である。もっとも高齢者での負担増と後期高齢者制度への公費投入はおそらく連動しているのだろう。マニフェストの細部では「年齢ではなく能力に応じた負担」として後期高齢者の自己負担を原則2割、現役並みの所得者は3割とし、その際には金融所得・金融資産も反映させるとしている。また、富裕層の保有資産への課税も検討すると記述している。つまり真の公費投入額は、「拠出金―自己負担増分―富裕層資産課税」以内で収まるという制度設計のようだ。失礼ながら、この辺は日本共産党が同制度への1兆円の公費投入を唱えつつ、高齢者負担増阻止も主張する“冷暖房同時稼働”のような経済・財政オンチぶりとは異なる。柱の3番手「人づくりこそ、国づくり」では「ひとり一人に寄り添うダブルケアラー対策、ビジネスケアラー対策」「尊厳死の法制化を含めた終末期医療の見直し」が記述されている。ここで出てくる「ダブルケアラー」とは育児、介護の両方に取り組む人、「ビジネスケアラー」は主に働きながら高齢の親の介護に取り組む人のことである。少子高齢化が進展する社会では、極めて重要な視点で、ほかの政党にはない着眼点である。同党はまずは実態調査、そのうえで「ダブルケアラー支援法」の制定を訴えている。もっとも「尊厳死の法制化」については、わからないわけではないが、極めて多様な死生観なども関わる問題だけにサラッと書いてしまうのはやや軽すぎるとも感じてしまう。そしてより細部の政策では以下のようなものも掲げている。保険給付範囲の見直しヘルスリテラシー教育の推進セルフメディケーションの推進中間年薬価改定の廃止予防医療・リハビリテーションの充実医療提供体制の充実地域医療のあり方の見直し・日本版GP制度の創設地域における患者アクセスの確保と医療経営の安定強化医療DXの推進による保険医療勤務医の働き方改革介護サービス・認知症対策の充実介護研修費用補助介護福祉士国家試験に母国語併記ケアマネジャー更新研修の廃止、負担軽減これらを概観すると、とくに薬剤関係ではかなり玄人はだしである。たとえば、保険給付範囲の見直しやセルフメディケーション推進ではOTC類似薬の保険外し、医療提供体制の充実では日本版CPCF(Community Pharmacy Contractual Framework、薬剤師の権限が大きいイギリスの薬局制度)、地域における患者アクセスでは地域フォーミュラリの導入推進、そして中間年薬価改定の廃止を唱える。また、4大柱の2番目『自分の国は自分で守る』では経済安全保障の観点からジェネリック医薬品安定供給や今春に一部緩和された薬価の再算定時の共連れルール(再算定対象の医薬品の類似薬も同時に薬価を引き下げるルール)の廃止まで言及している。ざっと同党所属国会議員を見回してみても、これらの政策理論を唱えそうな人物は見当たらない。誰がこの政策立案の頭脳を担っているのかは、個人的に興味津々である。さらに日本版GP(General Practitioner)制度の創設では「診療報酬の包括支払制度や人頭払制度等について検討」と、日本医師会が最も毛嫌いしそうな政策まで言及している。社民党(8位:1議席)社民党の源流組織である1945年創設の旧日本社会党は、1947年に衆院の第1党となり政権を奪取するも1年余りで下野したが、1993年の第40回衆院選までは野党第1党であり続けた。しかし、その後継組織である社民党は現有1議席にまで凋落した。個人的には時代はここまで変わったのかと改めて思ってしまう。さて同党のマニフェスト(余談ながらリンク先のページは異常に重い)『日本を立て直す 社民党6つのプラン』というキャッチフレーズを掲げているが、その中の「02 税金はくらしに!軍事費増税NO!」で以下のような記述がある。高齢者が安心して暮らせる年金を受給できるようにしていきます。また、75歳以上の後期高齢者医療費負担を1割に戻し、高齢者の健康を守ります。訪問介護の報酬減額をやめさせます。介護制度の立て直しは急務です。医療・介護・保育などケア労働者を支援します。病床削減、公立・公的病院の統廃合に反対し、地域医療を守ります。マイナ保険証強要に反対し、現行の健康保険証を残します。保険証や運転免許証などとのマイナンバーカード一体化・国による管理強化に反対します。さて、もうこれらについては他党の政策に対する吟味の際に言ってきたことだが、一番目の負担増に関して改めて言及しておく。現在日本での租税負担率と社会保障負担率を合計した国民負担率は2023年度実績値で46.1%。欧米先進国と比べて低いほうなのだが、欧米はおおむね日本よりも所得が高く、結果として日本の世帯当たりの可処分所得は低めである。この状況で増加し続ける高齢者への医療・介護給付を少子化で減る現役世代からの税収で現状通り継続することが“無理ゲー”である。いずれにせよこの先は(1)現役層の負担率引き上げ(2)給付水準の引き下げ(3)現役層以外の負担率引き上げを適度に組み合わせながら行っていくしかない。社民党の今回の主張は後期高齢者医療制度での負担率引き下げを謳っている以上、(3)の選択肢は端からないことは明らかだ。また、後段で訪問介護の基本報酬減額に反対姿勢を示していることやこれまでの同党の主張からは(2)も選択肢にはないだろう。ということは残るは(1)となるが、たぶんこれも彼らの念頭にはない。となると、どこに財源を見いだそうとしているかだが、前述の政策一覧を見ればわかることだが、増加する国防費の削減や年々増加する企業の内部留保への課税を主張しており、社民党はこの辺を財源として考えているのだろう。毎度お馴染みという感じだが、これで中長期的に解決がつくとは到底思えない。公立・公的病院の統廃合とマイナ保険証への反対については、前回、日本共産党、れいわ新撰組の政策で述べたとおりだ。さて長々となってしまったが、週明けにはもしかしたら世の中が一変してしまうのだろうか?

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レプリコンワクチンvs.従来のmRNAワクチン、接種1年後の免疫原性を比較

 追加接種としての新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する次世代mRNAワクチン(レプリコンワクチン)ARCT-154は、従来のmRNAワクチンであるBNT162b2と比較して優れた初期免疫応答を示し、接種後12ヵ月まで持続することが、50歳以上を含む日本人成人において確認された。The Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2024年10月7日号CORRESPONDENCEに掲載の報告より。 日本の11臨床施設において、少なくとも3回のmRNAワクチン接種歴のある成人(最後の接種は3ヵ月以上前)825人が登録され、ARCT-154群(417人)またはBNT16b2群(408人)に無作為に割り付けられた。接種前のベースライン、および接種後1、3、6、12ヵ月時点で、すべての適格参加者から血清サンプルを採取し、武漢株(Wuhan-Hu-1)およびオミクロン株BA.4/5に対する中和抗体価を測定した。また、ベースラインからその後すべての時点でSARS-CoV-2陰性であった各群30人によるサブセットにおいて、デルタ株、オミクロン株BA.2、BA.2.86、およびXBB.1.5.6に対する中和抗体価が測定された。参加者は18~49歳(<50歳)と50歳以上(≧50歳)の2つの年齢グループに層別化された。 結果は、中和抗体価の幾何平均(GMT)と両群間のGMT比、ベースラインの中和抗体価(定量下限未満の場合は定量下限の1/2)から4倍以上の上昇を示した割合で定義される中和抗体応答率で表された。 主な結果は以下のとおり。・既報のとおり、接種1ヵ月後までに、どちらのワクチンも両株に対して年齢によらず中和抗体価を上昇させた。・接種後1ヵ月時点におけるARCT-154群の武漢株およびオミクロン株BA.4/5に対する反応はBNT162b2群よりも高く、<50歳ではGMT比が1.45(95%信頼区間[CI]:1.22~1.71、武漢株)および1.31(1.01~1.71、オミクロン株BA.4/5)、≧50歳では1.42(1.18~1.72)および1.29(0.96~1.73)であった。・GMTは時間の経過とともに両群で低下したが、12ヵ月の追跡期間中に両群間の差は拡大し、<50歳ではGMT比がそれぞれ1.79(95%CI:1.41~2.29、武漢株)、1.68(1.15~2.45、オミクロン株BA.4/5)、≧50歳では2.06(1.55~2.75)、2.14(1.40~3.27)であった。・ARCT-154のBNT162b2に対する優越性は、両年齢層における中和抗体応答率の一貫した正の差によって裏付けられた。・4つの変異株に対しても、BNT162b2群と比較してARCT-154群で優れた反応と持続性が確認され、GMT、GMT比、血清中和抗体応答率について同様の傾向がみられた。・BNT162b2接種後12ヵ月時点で、デルタ株、オミクロン株BA.2、およびXBB.1.5.6に対するGMTはベースラインと同等であったが、ARCT-154群ではデルタ株およびオミクロン株BA.2に対するGMTはベースラインよりも高いままで、オミクロン株XBB.1.5.6に対するGMTもベースラインよりわずかに高かった(152[95%CI:83〜281]vs.106[52〜215])。

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感染症学会ほか、コロナワクチン「高齢者の定期接種を強く推奨」

 日本感染症学会、日本呼吸器学会、日本ワクチン学会の3学会は、10月21日に「2024年新型コロナワクチン定期接種に関する見解」を共同で発表した。3学会は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の高齢者における重症化・死亡リスクはインフルエンザより高く、今冬の流行に備えて、10月から始まった新型コロナワクチンの定期接種を強く推奨している。本見解は、接種を検討する際の参考となる科学的根拠を提供している。 学会の見解によると、新型コロナワクチンは、世界では2020年12月からの1年間にCOVID-19による死亡を1,440万例防ぎ1)、日本では、もし新型コロナワクチンが導入されていなかったら、2021年2~11月の期間の感染者数は報告数の13.5倍、死亡者数は36.4倍に及んでいたと推定されている2)。また、2023年秋のXBB.1.5対応ワクチンは、日本の高齢者のCOVID-19による入院を44.7%減少させた3)ことが、過去の研究より判明している。 オミクロン株はXBB.1.5、JN.1、KP.3と数ヵ月ごとに変異し、変異のたびに免疫回避力が強まっている。そのため流行を繰り返しており、今冬には再び大きな流行が予想される。このような中、日本の高齢者は若年層に比べてCOVID-19に罹ったことのない人が多く、引き続きワクチンによる免疫の獲得が重要となる。高齢者のCOVID-19の重症化・死亡リスクはインフルエンザ以上 2024年の流行では、高齢者のCOVID-19による入院が増え、高齢者施設の集団感染も続いている。国の死亡統計では、5類感染症移行後1年間のCOVID-19による死亡者数は2万9,336例で、新型コロナ出現前の60歳以上のインフルエンザ年間死亡者数1万908例より多く4)、COVID-19の疾病負荷は依然として大きい状況だ。 新型コロナワクチンの発症予防効果は、ウイルスの変異の影響もあり、数ヵ月で減衰するため、流行株に対応した新たなワクチンの接種が必要となる。日本では、2024年10月からJN.1対応ワクチンが新たに使用されている。なお、現在流行しているKP.3はJN.1の派生株で、JN.1対応ワクチンはKP.3に対しても一定の効果が期待される。 毎シーズン変異を繰り返すインフルエンザウイルスに対して、毎年新しいインフルエンザワクチンが高齢者に定期接種として使用されているように、新型コロナウイルスに対しても新たな流行株に対応した新型コロナワクチンを少なくとも年に1回は接種することが必要であるという。3学会は、高齢者には新型コロナワクチンの定期接種を強く推奨している。ワクチンの利益とリスクの大きさを科学に基づいて正しく比較し、接種対象者自身が信頼できる医療従事者とよく相談して、接種するかどうかを判断することが望まれるという見解を示している。5種類のJN.1対応ワクチン、有効性・安全性のエビデンスを明記 定期接種として用いられるJN.1対応ワクチンは、ファイザーの「コミナティ筋注シリンジ12歳以上用」、モデルナの「スパイクバックス筋注」、武田薬品工業の「ヌバキソビッド筋注」、第一三共の「ダイチロナ筋注」、Meiji Seika ファルマの「コスタイベ筋注用」の5種類だ。いずれも有効な免疫誘導と安全性が臨床試験で確認されている。これらのワクチンはすべて一過性の副反応があるが、臨床試験ではワクチンと関連した重篤な健康被害は認められなかった。本見解には、各ワクチンの詳細なデータが記載されている。 なお、Meiji Seika ファルマのレプリコンタイプ(自己増幅型)の次世代mRNAワクチンである「コスタイベ筋注用」については、SNSなどで科学的根拠に基づかない情報が流布し、一部の人から強い懸念の声が挙がっている。この状況に対して本見解では、「自己増幅されるのはスパイクタンパク質のmRNAだけであり、感染力のあるウイルスや複製可能なベクターはコスタイベに含まれていません。また、被接種者が周囲の人に感染させるリスク(シェディング)はありません」と、安全性を裏付けるデータとともに提示している。■参考日本感染症学会、日本呼吸器学会、日本ワクチン学会:2024年度の新型コロナワクチン定期接種に関する見解日本感染症学会、日本呼吸器学会、日本ワクチン学会:2024年度の新型コロナワクチン定期接種に関する見解(概要版)1)Watson OJ, et al. Lancet Infect Dis. 2022;22:1293-1302.2)Kayano T, et al. Sci Rep. 2023;13:17762.3)長崎大学熱帯医学研究所. 新型コロナワクチンの有効性に関する研究(VERSUS study)〜国内多施設共同症例対照研究〜. 第11報.4)Noda T, et al. Ann Clin Epidemiol. 2022;4:129-132.

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子供がコロナで入院すると子供も親も精神衛生に影響/国立成育医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連するスティグマは、抑うつ、不安、孤独感などの心身の苦痛を引き起こすことが世界的な問題となっている。しかし、COVID-19のスティグマと、それに関連する子供や親のメンタルヘルスへの影響を調査した研究はほとんどないのが現状である。 国立成育医療研究センター総合診療部の飯島 弘之氏らの研究グループは、COVID-19に感染した子供とその親に対して、COVID-19に関わるスティグマ(患者に対する「差別」や「偏見」)と、メンタルヘルスへの影響について調査を実施した。その結果、主観的スティグマがある子供と推定スティグマがある親は、1ヵ月後もメンタルヘルスにネガティブな影響がみられた。本研究結果は、Pediatrics International誌2024年1~12月号に掲載された。COVID-19に感染した親子は1ヵ月後も精神衛生に影響 対象は2021年11月~2022年10月までにCOVID-19に感染し、国立成育医療研究センターに入院した4~17歳の子供および0~17歳の子供の親。COVID-19に関わるスティグマとメンタルヘルス(抑うつ、不安、孤独感)に関する質問票調査を実施した。 対象者は47例の子供と111例の親で、そのうち入院中の調査では子供43例(91%)と親109例(98%)が質問票に回答し、1ヵ月後の追跡調査では、それぞれ38例(81%)と105例(95%)が回答した。 スティグマについては、隠ぺいスティグマ(ここでは覆い隠すことによって偏見や差別を回避しようとするスティグマのことを指す)と回避スティグマ(ここでは個人や集団が感染を回避しようとするスティグマのことを指す)についてそれぞれに、主観的スティグマと推定スティグマを確認するアプローチを採用した。メンタルヘルスを評価する質問として、抑うつ、不安、孤独について調査した。 主な結果は以下のとおり。【スティグマの保有】・入院中の調査では、COVID-19に感染した子供の79%、親の68%が高スティグマに該当し、1ヵ月後の調査でも、子供の66%、親の64%が高スティグマに該当していた。・推定スティグマの方が、主観的スティグマよりも、高スティグマグループの割合が高くなっていた。【メンタルヘルスへの影響】・子供の抑うつと孤独感、親の抑うつと不安は、いずれも、入院中と比べ、1ヵ月後の追跡調査で有意に低下していた。しかし、次のとおり、主観的スティグマがある子供と推定スティグマがある親においては、1ヵ月後においても、メンタルヘルスにネガティブな影響がみられた。(1)子供のスティグマと孤独感・抑うつとの関係・子供の主観的スティグマは、入院中の孤独感(平均差[MD]:2.32、95%信頼区間[CI]:0.11~4.52)と1ヵ月後の追跡調査での抑うつ(MD:2.44、95%CI:0.40~4.48)と関連していた。・推定スティグマは、メンタルヘルスとの間に有意な関係はみられなかった。(2)親のスティグマと抑うつ・不安・孤独感との関係・親の推定スティグマは、1ヵ月後の追跡調査で抑うつ、不安、孤独感と関連していた(MD:2.24[95%CI:0.58~3.89]、1.68[0.11~3.25]、1.15[0.08~2.21])。・主観的スティグマとメンタルヘルスとの間に有意な関係はみられなかった。 研究グループは、これらの調査結果から、「COVID-19に関連するスティグマは、退院後1ヵ月以上にわたって精神衛生に影響を及ぼし続けること、スティグマが精神衛生に与える影響は子供と親で異なることが示された」と結論付けている。

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第214回 美容医療のトラブル増加、専門医資格の有無など報告義務化へ/厚労省

<先週の動き>1.美容医療のトラブル増加、専門医資格の有無など報告義務化へ/厚労省2.かかりつけ医機能報告制度、2026年夏から公表開始へ/厚労省3.新たな地域医療構想、急性期病院の集約化と外来医療の確保が課題に/厚労省4.2022年度、国民医療費46兆円超と過去最大、高齢化とコロナで増加/厚労省5.救急搬送で選定療養費徴収へ 軽症者増加で救急医療ひっ迫/茨城県6.新学長に山中 寿氏 不透明資金問題で理事ら総辞職/東京女子医大1.美容医療のトラブル増加、専門医資格の有無など報告義務化へ/厚労省美容医療に関するトラブルが増加していることを受け、厚生労働省は10月18日に「美容医療の適切な実施に関する検討会」を開き、医療機関に対し、安全管理状況の定期報告を義務付ける案を提示した。厚労省案では、美容医療などを行っている病院やクリニックに対し、安全管理状況を年1回、自治体に報告することを義務付ける事項などを検討した。国民生活センターなどへの美容医療に関する相談件数は、2023年度に5,507件と5年間で3倍以上に増加している。おもな相談内容は、皮膚障害などの健康被害や料金に関するものが多く、中には、カウンセラーや受付スタッフが施術を行っていたというケースも報告されている。このほか、医療機関に対して行った実態調査の結果、施術技術に関する研修や、施術後の管理についてのルールがないと回答した医療機関が多く、とくに麻酔下施術を行う医師に対する麻酔・全身管理に関する研修がないと回答した医療機関は60%を超えていた。こうした現状を受け、厚労省は報告の義務化を打ち出した。具体的には、専門医資格の有無や、副作用などの問題が起きた場合の相談窓口などを報告し、自治体がその内容を公表するとしている。また、検討会では、医療機関が遵守すべき法令や、医療事故発生時の対応などをまとめたガイドライン策定の必要性も議論された。さらに、保健所による立ち入り検査の法的根拠を明確化し、指導を強化する方針も示された。厚労省は、年内にも新たな対策をまとめる方針。参考1)第3回美容医療の適切な実施に関する検討会(厚労省)2)美容医療、安全管理体制報告・公表を検討 都道府県に年1回、厚労省案(CB news)3)美容医療 “受付スタッフが施術”のケースも 厚労省の被害調査(NHK)4)美容医療、安全管理状況の報告義務を議論 厚労省検討会、健康被害やトラブル増加(産経新聞)2.かかりつけ医機能報告制度、2026年夏から公表開始へ/厚労省厚生労働省は10月18日、自治体向け説明会を開催し、2025年4月から始まる「かかりつけ医機能報告制度」の詳細を明らかにした。この制度は、慢性疾患を持つ高齢者など地域住民が、身近な医療機関で継続的な医療を受けられる体制を強化することを目的としている。対象となるのは、特定機能病院と歯科医療機関を除くすべての医療機関。医療機関は「日常的な診療を総合的・継続的に行う機能」の有無や、時間外診療、入院・退院支援、在宅医療、介護との連携といった機能の提供状況を、毎年都道府県に報告する必要がある。初回の報告は2026年1~3月に行われ、都道府県は報告内容を確認した上で、2026年夏頃から順次公表する予定としている。報告された情報は、地域の関係者による協議の場で活用され、地域のかかりつけ医機能確保に向けた具体的な方策が検討される。そのため協議には、地域の実情に精通したキーパーソンを参加させることが重要となる。厚労省は、この制度を通じて、地域医療の充実と住民の健康増進に繋がることに期待を寄せている。参考1)かかりつけ医機能報告制度に係る第1回自治体向け説明会 資料(厚労省)2)「かかりつけ医機能」報告結果、26年夏ごろから公表 都道府県が順次(CB news)3.新たな地域医療構想、急性期病院の集約化と外来医療の確保が課題に/厚労省厚生労働省は、2040年頃を見据えた新たな地域医療構想の策定に向けて検討会で議論を進めている。10月17日に「新たな地域医療構想等に関する検討会」を開き、医療機関の機能分化と外来医療の確保について討論した。2040年までに高齢化の進展によって、医療需要は増加する一方、医療従事者の確保は困難になることが予想されている。とくに、救急医療や手術など高度な医療を提供する急性期病院においては、質の高い医療を提供し続けるために、一定の症例数を確保することが重要となる。検討会では、急性期病院の機能を明確化し、医療の質やマンパワー確保の観点から、都道府県への報告に当たり、一定の基準を設けることが提案された。具体的には、救急搬送の受け入れ件数や高度手術の実施件数などを基準とする案が示された。しかし、急性期病院の集約化は、一部病院の急性期からの撤退を意味し、病院経営や地域住民の医療アクセスへの影響も懸念されている。この課題を解決しつつ、地域の実情に応じた集約化を進めることが求められる。さらに2040年には、診療所医師の高齢化や医師不足により、診療所のない市区町村が342ヵ所に増加する可能性が指摘されている。地域住民が身近な場所で医療を受けられるよう、外来医療の確保も重要な課題となっている。また、検討会では、かかりつけ医機能を持つ医療機関と、紹介受診重点医療機関との連携強化、地域医療の確保、医療資源の有効活用などが議論された。具体的には、オンライン診療を含む遠隔医療の活用、医師派遣、巡回診療、診療所と病院の連携などが提案された。厚労省は、これらの議論を踏まえ、年内に新たな地域医療構想の大枠をまとめる予定。参考1)第10回 新たな地域医療構想等に関する検討会(厚労省)2)新たな地域医療構想、病院機能を【急性期病院】と報告できる病院を医療内容や病院数等で絞り込み、集約化促す-新地域医療構想検討会(Gem Med)3)265市区町村で診療所なくなる可能性、40年までに 医師が75歳で引退なら、厚労省集計(CB news)4.2022年度、国民医療費46兆円超と過去最大に/厚労省2022年度の国民医療費は、過去最大の46兆6,967億円に達したことが明らかになった。高齢化の進展に加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、前年度比3.7%増と大幅な伸びとなった。厚生労働省が10月11日に発表した「国民医療費の概況」によると、1人当たり医療費は37万3,700円。65歳以上は1人当たり77万5千円と、医療費全体の6割以上を占めていた。医療費の財源は、国民や企業が負担する保険料が約半分、公費が約4割、患者の自己負担が約1割。高齢化による医療費増加や団塊の世代の後期高齢者入りにより、75歳以上の医療費が増加傾向にあった。また、1人当たり医療費は、最高額の高知県と最低額の埼玉県で1.44倍の格差があり、依然として地域間での偏りがみられている。高齢者の医療費の伸びは、65歳未満と比べて低い水準に抑えられており、後発医薬品の使用促進などの効果と考えられる。一方、がん医療費は、65歳未満、65歳以上ともに、シェアは減少していたが、コロナの影響で検診などが控えられた可能性があるため、今後の高齢化の進行とともに新しい技術導入などで増加も予想されている。今後の課題としては、高齢化の進展に伴う医療費増加への対応、地域格差の解消、医療費の適正化などが挙げられている。参考1)「令和4(2022)年度 国民医療費」を公表します-46兆6,967億円、人口一人当たり37万3,700円-(厚労省)2)22年度の医療費、46兆円超 過去最大、コロナも影響(共同通信)5.救急搬送で選定療養費徴収へ 軽症者増加で救急医療ひっ迫/茨城県茨城県は、救急搬送件数の増加と軽症者の利用による救急医療現場のひっ迫を受け、2024年12月2日から救急搬送における選定療養費の徴収を開始すると発表した。救急車で搬送された患者のうち、救急要請時の緊急性が低いと判断された場合の搬送が対象となる。具体的には、軽度の切り傷や擦り傷、微熱のみ、風邪の症状のみなどが該当する可能性があるが、意識障害や痙攣、大量出血を伴う怪我などは、これまで通り緊急性が高いと判断される。選定療養費は、紹介状を持たずに大病院を受診する際に患者側が負担する。今回の制度見直しにより、救急搬送であっても、緊急性が低いと判断された場合には、この選定療養費が徴収されることになる。対象となる病院は、県内22病院で、金額は病院によって異なる。県は、この制度導入により、軽症者の安易な救急車利用を抑制し、重症患者の搬送を優先することで、救急医療体制の確保を目指す。なお、緊急性の判断に迷う場合は、「茨城県救急電話相談」(#7119または#8000)に相談するよう呼びかけている。参考1)救急搬送における選定療養費の徴収について(茨城県)2)茨城県、12月に救急搬送時の選定療養費徴収を開始、独自の工夫でデメリット解消を目指す(日経メディカル)3)救急搬送時の「選定療養費」県が大規模病院ごとの徴収額公表(NHK)6.新学長に山中 寿氏 不透明資金問題で理事ら総辞職/東京女子医大東京女子医科大学は、同窓会組織を巡る不透明な資金の動きがあった問題で、ガバナンス機能不全の責任を取り、理事会の全理事と監事が辞任したと発表した。新たに選任された学長は、国際医療福祉大学の山中 寿教授(70)で、就任日は10月23日。山中氏は、1983~2018年まで女子医大に在籍しており、臨床と研究両面で高い実績を上げていた。選考委員会は、山中氏を「学長にふさわしい」と判断し、全会一致で選出した。女子医大では、同窓会組織の一般社団法人「至誠会」を巡る不透明な資金の動きが発覚し、当時の理事長だった岩本 絹子氏が今年8月に解任されており、今回の理事・監事の総辞職と新学長の選任は、この問題を受けた組織改革の一環とみられている。参考1)新生東京女子医科大学のための学長候補者の選考報告について(東京女子医大)2)東京女子医大の全理事・幹事11人が寄付金問題で引責辞任、新学長に国際医療福祉大の山中寿教授(読売新聞)3)東京女子医大、理事ら辞任 新学長選任、不透明資金で(東京新聞)

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メトホルミンがlong COVIDのリスクを軽減する可能性

 2型糖尿病の治療に広く使用されている経口血糖降下薬のメトホルミンが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後の症状の遷延、いわゆるlong COVIDのリスクを軽減することを裏付ける、新たなデータが報告された。米ミネソタ大学のCarolyn Bramante氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes Care」に9月17日掲載された。 Long COVIDは、慢性疲労、息切れ、ブレインフォグ(頭がぼんやりして記憶力などが低下した状態)などの症状を呈し、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染後、数週から数カ月続くこともある。現在、米国内で数百万人がこの状態に苦しめられていると考えられている。 一方、昨年発表された研究から、SARS-CoV-2感染後すぐにメトホルミンが処方された過体重または肥満のCOVID-19患者は、long COVIDのリスクが41%低いことが示されていた。今回報告された論文の上席著者であるBramante氏は、「メトホルミンは世界中で入手可能であり、低コストで安全性が確立しているため、long COVIDの予防に有効だとしたら、COVID-19の外来治療に臨床的メリットをもたらす」と述べている。 今回の研究は、2型糖尿病治療のためにメトホルミンが処方されている人でも、昨年報告された研究結果と同様の効果が得られるのかを調べることを目的として、米国立衛生研究所(NIH)の資金提供により実施された。同大学のSteven G. Johnson氏らにより、血糖管理目的でメトホルミンが処方されている約7万6,000人の米国人糖尿病患者のデータが収集され、同薬が処方されていない1万3,000人以上の糖尿病患者のデータと、long COVIDのリスクが比較された。 Johnson氏らは解析の結果、メトホルミンが処方されていた糖尿病患者は、COVID-19罹患後6カ月以内のlong COVID発症または死亡のリスクが最大21%低いことを見いだした(ハザード比0.79〔95%信頼区間0.71〜0.88〕)。研究グループは、「これらのデータは、メトホルミンの処方がSARS-CoV-2感染後の良好な転帰と関連していることを示す、他の観察研究の結果と一致している」と述べている。 では、メトホルミンは、どのようにしてCOVID-19症状の遷延を防ぐのだろうか? NIHによると、「研究者らは現時点で、メトホルミンがCOVID-19の長期化をどのように防ぐのかを明らかにしていない。しかし、炎症を軽減したり、ウイルスレベルを下げたり、疾患関連タンパク質の形成を抑制するといった、いくつかのメカニズムが存在する可能性を推測している」という。

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