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Long COVID、軽症であれば1年以内にほぼ解消/BMJ

 軽症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者では、いくつかのlong COVID(COVID-19の罹患後症状、いわゆる後遺症)のリスクが高いが、その多くは診断から1年以内に解消されており、小児は成人に比べ症状が少なく、性別は後遺症のリスクにほとんど影響していないことが、イスラエル・KI Research InstituteのBarak Mizrahi氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年1月11日号で報告された。イスラエルの全国的な後ろ向きコホート研究 研究グループは、軽症SARS-CoV-2感染者における感染から1年間のlong COVIDによる臨床的な罹患後症状(後遺症)の発現状況を明らかにし、年齢や性別、変異株、ワクチン接種状況との関連を評価する目的で、後ろ向きコホート研究を行った(特定の研究助成は受けていない)。 解析には、イスラエルの全国規模の医療機関から得られた電子医療記録(EMR)が用いられた。対象は、2020年3月1日~2021年10月1日の期間に、ポリメラーゼ連鎖反応法によるSARS-CoV-2検査を受けたMaccabi Healthcare Servicesの会員191万3,234人であった。 エビデンスに基づく70のlong COVIDアウトカムのリスクについて、年齢と性別で調整し、SARS-CoV-2変異株で層別化したうえで、未入院のSARS-CoV-2感染者(29万9,870人、年齢中央値25歳、女性50.6%)と、マッチさせた非感染者(29万9,870人、25歳、50.6%)を比較した。 リスクの評価には、感染初期(30~180日)および後期(180~360日)におけるハザード比(HR)と、1万人当たりのリスク差が用いられた。ブレークスルー感染例で呼吸困難のリスクが低い 感染初期と後期の双方で、COVID-19感染との関連でリスク増加が認められたlong COVIDとして、次が挙げられた。・嗅覚/味覚障害初期 HR:4.59(95%信頼区間[CI]:3.63~5.80)、リスク差:19.6(95%CI:16.9~22.4)後期 2.96(2.29~3.82)、11.0(8.5~13.6)・認知障害初期 1.85(1.58~2.17)、12.8(9.6~16.1)後期 1.69(1.45~1.96)、13.3(9.4~17.3)・呼吸困難初期 1.79(1.68~1.90)、85.7(76.9~94.5)後期 1.30(1.22~1.38)、35.4(26.3~44.6)・衰弱初期 1.78(1.69~1.88)、108.5(98.4~118.6)後期 1.30(1.22~1.37)、50.2(39.4~61.1)・動悸初期 1.49(1.35~1.64)、22.1(16.8~27.4)後期 1.16(1.05~1.27)、8.3(2.4~14.1)・連鎖球菌扁桃炎初期 1.18(1.09~1.28)、13.4(6.8~19.9)後期 1.12(1.05~1.20)、16.6(7.4~25.9)・めまい初期 1.14(1.06~1.23)、11.4(4.7~18.1)後期 1.17(1.09~1.26)、16.7(8.6~24.8) 感染初期にのみリスクが上昇したlong COVIDは、呼吸器疾患(HR:2.4[95%CI:1.67~3.44]、リスク差:3.7[2.3~5.3])、抜け毛(1.75[1.59~1.93]、31.6[26.2~36.9])、胸痛(1.41[1.33~1.49]、56.3[47.0~65.7])、筋肉痛(1.24[1.15~1.35]、17.5[11.2~23.8])、咳嗽(1.09[1.04~1.14]、22.2[9.7~34.6])などであった。 ワクチン未接種者の感染初期に、女性で抜け毛のリスク(女性のHR:2.09[95%CI:1.86~2.35]、男性のHR:0.9[0.80~1.17])が高かったことを除き、他の症状のHRは男女でほぼ同等であった。小児は成人に比べ感染初期の症状が少なく、これらの症状も後期にはほとんどが解消された。SARS-CoV-2変異株全体で、long COVIDの発現状況に一貫性が認められた。また、ワクチン接種者のうちブレークスルー感染例では、未接種者と比較して、呼吸困難(HR:1.58、95%CI:1.18~2.12)のリスクが低く、他の症状のリスクは同程度であった。 著者は、「COVID-19感染症の世界的流行の当初からlong COVIDが危惧されてきたが、軽症の経過をたどった患者の罹患後症状は、その多くが数ヵ月間残存した後、1年以内に正常化することが確認された。これは、軽症例の大部分は重症化や長期的な慢性化には至らず、医療従事者に継続的に加わる負担は小さいことを示唆する」としている。

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かかりつけ医の機能が高いとコロナ入院リスクが低下/慈恵医大

 病気をしたときに何でも相談できる「かかりつけ医」が身近にいると心強い。ましてや、現在のように新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行下という環境では、かかりつけ医から的確な助言が受けられると患者は期待している。 COVID-19とかかりつけ医の関連について、青木 拓也氏(東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター臨床疫学研究部)らの研究グループは、COVID-19拡大後のプライマリ・ケアに関する全国的な縦断調査を実施し、かかりつけ医機能はコロナ禍での入院リスク低下と関連することを明らかにした。高いかかりつけ医機能を発揮する医師を持つ患者は、かかりつけ医なしの患者と比べ、コロナ禍での入院リスクが約6割低いという結果となった。Annals of Family Medicine誌1月号からの報告。かかりつけ医機能の高低が入院リスクを左右する【背景】 COVID-19パンデミック以前の海外研究において、質の高いプライマリ・ケアが入院リスクの低下と関連することが報告されている。そして、COVID-19パンデミックをきっかけに、「かかりつけ医」の役割に大きな注目が集まっているなかで、わが国のプライマリ・ケア機能(かかりつけ医機能)と入院リスクとの関連については、これまで国内外での検証が行われていなかった。そこで、COVID-19パンデミック下での、かかりつけ医機能と入院リスクとの関連を検証することを目的とした。【方法】 本研究は、COVID-19パンデミック下の2021年5月〜2022年4月に実施されたプライマリ・ケアに関する全国前向きコホート研究(NUCS)のデータを用いて実施。NUCSは、代表性の高い日本人一般住民を対象とした郵送法による調査研究で、民間調査会社が保有する約7万人の一般住民集団パネルから、年齢、性別、居住地域による層化無作為抽出法を用いて、40〜75歳の対象者を選定した。 追跡期間の12ヵ月間における入院の発生を主要評価項目に設定し、かかりつけ医機能は、JPCAT(Japanese version of Primary Care Assessment Tool)短縮版を用いて、ベースライン時点で評価を行った。 統計解析では、住民をかかりつけ医あり群・なし群、かかりつけ医あり群をさらに四分位群(低機能群、低中機能群、中高機能群、高機能群)に分けて、入院リスクを比較。比較の際は、多変量解析を用いて、年齢、性別、教育歴、慢性疾患数、健康関連QOLといった住民の属性の影響を統計学的に調整した。【結果】 追跡調査を完了した1,161例を解析対象者とした(追跡率92.0%)。解析対象者のうち、723例(62.3%)がかかりつけ医を有し、追跡期間中に87例(7.5%)で入院が発生した。入院した者のうち、5例(5.7%)はCOVID-19による入院だった。 住民の属性の影響を統計学的に調整した結果、かかりつけ医あり群の中でも、かかりつけ医機能が高い(JPCAT総合得点が高い)群ほど、コロナ禍での入院リスクが低下することが明らかになった(かかりつけ医なし群と比較したかかりつけ医あり・高機能群の調整オッズ比:0.37、95%信頼区間:0.16~0.83)。高機能群における入院リスク低下は、JPCATの総合得点だけでなく、下位尺度得点(近接性、継続性、協調性、包括性、地域志向性)を用いた解析でも、すべてにおいて認められた。〔「かかりつけ医なし」を1とした場合の入院リスク〕 かかりつけ医なし:1 かかりつけ医あり/低機能:0.64 かかりつけ医あり/低中機能:0.46* かかりつけ医あり/中高機能:0.45* かかりつけ医あり/高機能:0.37*(入院リスクは調整オッズ比の値/*は統計学的に有意な低下があったことを示す) 同研究グループでは、「研究成果をもとに、入院以外のさまざまなアウトカムについても検討することによって、COVID-19パンデミック後における、かかりつけ医機能やプライマリ・ケアの価値に関するエビデンスを今後もさらに構築していく」と展望を語っている。

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ワクチン未接種のコロナ感染、急性期の死亡リスク80倍超

 中国・香港大学のEric Yuk Fai Wan氏らの研究グループは、英国のデータベースを用いて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の心血管疾患(CVD)発症リスクや全死亡リスクに及ぼす短期的および長期的な影響を検討した。その結果、ワクチン未接種のCOVID-19感染は急性期(感染から21日後まで)のCVD発症リスク、全死亡リスクを大きく上昇させ、これらのリスクは最長18ヵ月間の追跡においても上昇していた。Cardiovascular Research誌2023年1月19日号に掲載の報告。 英国において2020年3月~11月にCOVID-19に感染した患者7,584例(感染群)を感染から最長18ヵ月後まで前向きに追跡した。年齢と性別をマッチングさせた同時期の非感染対照7万5,790人(同時期対照群)、2018年3月~11月の非感染対照7万5,774人(過去対照群)とCVD発症リスク、全死亡リスクなどを急性期と急性期後(感染から22日後以降)に分けて比較した。解析にあたり、傾向スコア分析の拡張版であるMarginal Mean Weighting through Stratification(MMWS)法を用いて、年齢、性別、喫煙習慣、糖尿病の既往、高血圧症の既往、民族などを調整した。なお、英国では2020年3月~11月において使用可能な新型コロナウイルスワクチンは存在しなかったため、本試験の対象者はワクチン未接種であった。 主な結果は以下のとおり。・急性期の主要なCVD(心不全、脳卒中、冠動脈心疾患)発症リスクは、感染群が同時期対照群の4.3倍(ハザード比[HR]:4.3、95%信頼区間[CI]:2.6~6.9)、過去対照群の5.0倍(HR:5.0、95%CI:3.0~8.1)であった。・急性期において、脳卒中、心房細動、深部静脈血栓症(DVT)のリスクも感染群が同時期対照群(それぞれ9.7倍、7.5倍、22.1倍)および過去対照群(それぞれ5.0倍、5.9倍、10.5倍)と比べて高かった。・急性期の全死亡リスクは、感染群が同時期対照群の81.1倍(HR:81.1、95%CI:58.5~112.4)、過去対照群の67.5倍(HR:67.5、95%CI:49.9~91.1)であった。・急性期後の主要なCVD発症リスクは、感染群が同時期対照群の1.4倍(HR:1.4、95%CI:1.2~1.8)、過去対照群の1.3倍(HR:1.3、95%CI:1.1~1.6)であった。・急性期後の全死亡リスクは、感染群が同時期対照群の5.0倍(HR:5.0、95%CI:4.3~5.8)、過去対照群の4.5倍(HR:4.5、95%CI:3.9~5.2)であった。・感染群において、急性期には有意な上昇がみられなかった心膜炎発症リスクが急性期後では上昇していた。急性期後の心膜炎発症リスクは、感染群が同時期対照群の4.6倍(HR:4.6、95%CI:2.7~7.7)、過去対照群の4.5倍(HR:4.5、95%CI:2.7~7.7)であった)。 本論文の著者らは、今回の結果についてワクチン接種を受けたコホートにおける結果との比較が必要としながらも、「COVID-19患者はCVD発症リスクや全死亡リスクが上昇し、これらのリスクは回復から1年後まで上昇したままであったことから、COVID-19感染後および回復後におけるCVDの徴候や症状の継続的なモニタリングが有益であろう」とまとめている。

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2価ワクチンの情報など追加、コロナワクチンに関する提言(第6版)公開/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医科学研究所附属病院長])は、1月25日に同学会のホームページで「COVID-19ワクチンに関する提言」の第6版を公開した。 今回の第6版では、主にオミクロン株対応ワクチンに関する追加情報、新しく適応追加となったウイルスベクターワクチン、組み換えタンパク質ワクチンに関する有効性と安全性の内容が改訂され、本年5月に予定されている5類への引き下げを前に、「接種を希望する人が接種の機会を失わないよう合わせて周知する必要がある」と一層の接種への取り組みを求めている。主な改訂点・「2.mRNAワクチン」の「2)有効性について」g)2価(起源株/オミクロン株BA.4-5)ワクチンの有効性h)5~11歳への接種の有効性i)6ヵ月~4歳への接種の有効性・「2.mRNAワクチン」の「3)安全性」a)初回免疫(2回接種)の安全性c)4回目接種の安全性e)2価(起源株/オミクロン株BA.5)ワクチンの安全性f)5~11歳への接種の安全性g)6ヵ月~4歳への接種の安全性・「3.ウイルスベクターワクチン」の「3)ヤンセンファーマのジェコビデン筋注」a)有効性b)安全性・「4.組換えタンパク質ワクチン」の「ノババックスのヌバキソビッド筋注」a)有効性b)安全性・「5.特定の状況での接種」1)妊婦への接種2)基礎疾患を有する者や免疫不全者への接種・「6.COVID-19ワクチンの開発状況と今後」主に改訂された表表10 6ヵ月~4歳における3回目接種1ヵ月後の起源株に対する中和抗体価と抗体応答率表11 6ヵ月~4歳における3 回目接種前後のオミクロン株BA.1に対する中和抗体価表12 オミクロン株流行期の6ヵ月~4歳の臨床試験における3回目接種1週後の発症予防効果表19 わが国におけるmRNAワクチン4回目接種の18歳以上のコホート調査における有害事象表41 COVID-19ワクチンの開発状況と最近の動き

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第132回 新型コロナウイルス5類へ移行は5月8日に/政府

<先週の動き>1.新型コロナウイルス5類へ移行は5月8日に/政府2.救急隊員の負担軽減のため、労務管理の適正化を通知/消防庁3.電子処方箋が全国で運用開始、医療機関の対応は?4.国内初の経口中絶薬、専門部会で承認を了承、妊娠9週までが対象/厚労省5.全国の医療機関で電子カルテ情報の共有システムの整備に向けて議論/厚労省6.無断外出の患者の自殺、遺族の逆転敗訴確定/最高裁1.新型コロナウイルス5類へ移行は5月8日に/政府政府は1月27日に、新型コロナウイルス感染症対策本部を開き、5月の連休明けの8日から新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類を現行の「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」とすることを決定した。なお、イベントの収容上限は1月27日から撤廃することにした。政府は、「5類」への移行時期について、医療現場や自治体の準備、国民への周知に一定の時間が必要のため、大型連休後が適切と判断した。また、ワクチン接種の無料接種については今年3月末までの期限だったが、政府は4月以降も無料接種を継続する方針だ。今後、3月までに病床確保補助金や発熱外来の診療報酬の上乗せなどの公費負担の見直しについて検討を行う。(参考)新型コロナウイルス感染症対策本部(内閣府)第70回厚生科学審議会感染症部会(厚労省)コロナ5類、5月8日移行を決定 イベント上限撤廃は先行(日経新聞)コロナ「5類」の医療費や医療体制 3月上旬めどに具体的方針(NHK)診療報酬の特例段階的見直しへ、5類移行で病床確保料も、3月上旬めどに方針(CB news)2.救急隊員の負担軽減のため、労務管理の適正化を通知/消防庁総務省消防庁は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による救急出動件数が過去最多を更新し、救急搬送困難事案の発生が高い水準であることなどによって、救急現場の労務負担が増大しているとして、救急隊員の適正な労務管理のさらなる徹底を求める通知を1月25日付で各都道府県に対して発出した。この通知は、昨年12月に東京都内で、救急隊員の居眠り運転で救急車の横転事故が発生したことを反映したものとみられる。また、消防庁はこれに先立つ1月23日に令和4年度の『消防白書』を公表しており、この中で、救急現場におけるマイナンバーカードの活用によって、救急隊員が傷病者の医療情報把握のスピードアップ化や搬送時の活用への検討も取り上げており、業務の負担改善などに取り組みたいとしている。(参考)「救急隊員の負担軽減を」総務省消防庁が全国の消防に要請 救急車の居眠り事故受け(産経新聞)救急隊員の適正な労務管理の徹底について(通知)(消防庁)『令和4年版消防白書』(同)マイナンバーカード活用で搬送先選定しやすくなる 2022年版消防白書、傷病者の負担軽減も(CB news)3.電子処方箋が全国で運用開始、医療機関の対応は?医療機関で発行される処方箋を電子化して、薬局へオンラインで届ける「電子処方箋」システムが1月26日から本格的に運用が開始された。政府は補助金を用いてマイナンバーのリーダーの設置を進めたが、対応する医療機関は6病院と10診療所と伸び悩んでいる。今後、政府はマイナンバーの普及を通して医療機関と薬局での対応を進め、患者の処方歴を一元管理することで薬の重複や併用禁忌薬の処方を未然に防ぎ、適切な服薬に繋げたいとしている。なお、電子処方箋の発行には医師資格証(HPKIカード)が必要であり、医師会を通して発行申請を受け付けている。厚生労働省は、1月26日の電子処方箋の運用開始について、処方・調剤データを電子処方箋管理サービスで送受していれば、紙の処方箋を発行しても電子処方箋の運用を開始したと認める通知を行い、普及を進めたいとしている。(参考)「電子処方箋」きょうから運用開始 “適切な服薬”に期待(NHK)電子処方箋、1月15日時点での対応は「全国で6病院・10クリニック・162薬局」にとどまる(Gem Med)【電子処方箋】「まずは紙の処方箋発行/受付」の運用周知(ドラビズ On-line)医師資格証(HPKIカード)新規お申込み(日本医師会)4.国内初の経口中絶薬、専門部会で承認を了承、妊娠9週までが対象/厚労省厚生労働省は薬事・食品衛生審議会(薬事・食品衛生審議会医薬品第1部会)を1月27日に開催し、経口投与の人工妊娠中絶薬・メフィーゴパック(一般名:ミフェプリストン/ミソプロストール)の承認について審議した。その結果、承認はされたものの「社会的関心が高く、慎重な審議が必要」として、パブリックコメントを実施した上で、薬事分科会で承認の可否を再審議することになった。承認されれば国内初の経口中絶薬となり、従来の中絶手術より、女性への負担が少なくなる。海外では70以上の国と地域で承認されており、世界保健機関(WHO)は安全な中絶方法として推奨している。なお、処方にあたっては母体保護法指定医のもと、妊娠9週以内に使用する。公的保険の対象外となる見通し。(参考)国内初「飲む中絶薬」の承認「差し支えない」…厚労省専門部会(読売新聞)国内初の経口中絶薬、専門部会が承認了承 妊娠9週までが対象(毎日新聞)5.全国の医療機関で電子カルテ情報の共有システムの整備に向けて議論/厚労省厚生労働省は、「健康・医療・介護情報利活用検討会」の医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループを1月27日に開催した。患者自身や全国の医療機関で、電子カルテ情報を閲覧可能にするシステム(電子カルテ情報交換サービス)の検討を行っているが、電子カルテ情報には個人情報が多く含まれるため、共有などにあたっては「患者の同意取得」が大前提となる。このほか本人同意の仕組み、電子的に文書情報を発行したときの患者への伝達方法、医療機関などにおける電子カルテ情報の閲覧についても検討を行っている。今後、患者自身で閲覧・利用される情報について管理できることを担保した上で、海外での同意取得の仕組みや電子処方箋の仕組みなどを踏まえ、国民の仕組みへの理解を得つつ、なるべく現場の負担を軽減する方向で整理を進めることになった。(参考)第6回健康・医療・介護情報利活用検討会 医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ(厚労省)全国の医療機関や患者自身で「電子カルテ情報を共有」する仕組み、患者同意をどの場面でどう取得すべきか―医療情報ネットワーク基盤WG(1)(Gem Med)厚生労働省、全国的な電子カルテ情報共有基盤について試案提示 年度末までに仕様まとめる方針(Med IT Tech )6.無断外出の精神科患者の自殺、患者遺族が逆転敗訴/最高裁香川県の県立病院に入院していた男性が病院を無断で外出し、自殺したことをめぐって、自殺の原因は病院の管理が不十分であったとして、遺族が香川県に対して損害賠償を求めていた裁判について、1月27日に最高裁は、県に賠償を命じた2審の判決を取り消し、遺族の訴えを退けた。判決によると2010年7月、丸亀市の香川県立丸亀病院に統合失調症で入院していた男性(当時38歳)が、病院を無断で外出して、近くのマンションから飛び降り自殺していた。2審の高松高裁では、病院側の事前説明がされていなかったほか、無断外出の防止にセンサーの装着がなかったことから香川県に対して5,700万円の損害賠償を求めていたが、27日の最高裁の判決では、センサー装着などは必要ではなく、医師の判断で外出許可を判断して自殺防止を図っていたと指摘した。(参考)入院中無断外出し自殺 遺族が県訴えた裁判 最高裁 訴え退ける(NHK)無断外出で自死…「病院の説明違反」否定 最高裁で遺族が逆転敗訴(朝日新聞)

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BA.4/5対応ワクチンの中和抗体価とT細胞応答/NEJM

 2022年8月末に米国食品医薬品局(FDA)が緊急使用許可し、その後、日本の厚生労働省でも特例承認されたモデルナ製とファイザー製のオミクロン株BA.4/5対応2価ワクチンについて、米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのAi-ris Y. Collier氏らの研究グループが、これらのワクチンの追加接種における免疫原性について検証した。その結果、追加接種によって中和抗体価は著しく上昇するが、T細胞応答は実質的に増大しないことが示され、過去の抗原曝露による免疫の刷り込みの影響が示唆された。本結果は、NEJM誌オンライン版2023年1月11日号のCORRESPONDENCEに掲載された。 本研究では、中央値でワクチンを3回接種したことのある被験者33例に対して、追加接種として1価ワクチンを接種した15例(年齢中央値50歳、ファイザー5例、モデルナ10例)と、追加接種として2価ワクチンを接種した18例(年齢中央値42歳、ファイザー8例、モデルナ10例)について、免疫応答を評価した。1価ワクチン群と2価ワクチン群共に33%の被験者がオミクロン株流行期にSARS-CoV-2陽性記録があり、また、2022年の夏から秋にかけてBA.5が感染拡大していたことから、そのほかの被験者の大多数も追加接種前にハイブリッド免疫を獲得していたと考えられている。 主な結果は以下のとおり。・1価ワクチンもしくは2価ワクチンの追加接種によって、起源株、BA.1、BA.2、BA.5のいずれに対する中和抗体価も上昇した。・起源株に対する中和抗体価(中央値)は、1価ワクチンの追加接種によって5,197から21,507(4倍)に、2価ワクチンの追加接種によって3,633から40,515(11倍)に上昇した。・BA.5に対する中和抗体価(中央値)は、1価ワクチンの追加接種によって184から2,829(15倍)に、2価ワクチンの追加接種によって212から3,693(17倍)に上昇した。・BA.5に対するCD8+T細胞応答(中央値)は、1価ワクチンの追加接種によって0.027%から0.048%(1.8倍)に、2価ワクチンの追加接種によって0.024%から0.046%(1.9倍)に増加した。・BA.5に対するCD4+T細胞応答(中央値)は、1価ワクチンの追加接種によって0.060%から0.130%(2.1倍)に、2価ワクチンの追加接種によって0.051%から0.072%(1.4倍)に増加した。・BA.5に対するメモリーB細胞応答(中央値)は、1価ワクチンの追加接種で0.079%、2価ワクチンの追加接種で0.091%であった。 本結果により、1価ワクチンおよび2価ワクチンによる追加接種によって、中和抗体価は著しく上昇するが、T細胞応答は実質的に増大しないことが示された。BA.5に対する中和抗体価は、2価ワクチンのほうが1価ワクチンの1.3倍となり、やや優位な結果となった。本結果は、過去の抗原曝露による免疫の刷り込みが、ウイルスの変異に対する強固な免疫の誘導に大きな課題をもたらす可能性を示唆している。

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フルボキサミン、軽~中等症コロナの症状回復期間を短縮せず/JAMA

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者において、フルボキサミン50mgの1日2回10日間投与はプラセボと比較し回復までの期間を改善しないことが、無作為化二重盲検プラセボ対照プラットフォーム試験「ACTIV-6試験」の結果、示された。米国・Weill Cornell MedicineのMatthew W. McCarthy氏らが報告した。著者は、「軽症~中等症のCOVID-19患者に対して、50mg1日2回10日間のフルボキサミン投与は支持されない」とまとめている。JAMA誌2023年1月24日号掲載の報告。外来患者で、持続的回復までの期間をフルボキサミンvs.プラセボで評価 ACTIV(Accelerating COVID-19 Therapeutic Interventions and Vaccines)-6試験は、軽症~中等症のCOVID-19外来患者における既存治療転用を評価するようデザインされた完全遠隔法による分散型臨床試験で、参加者の募集は2021年6月11日に開始され、現在も継続中である。 研究グループは、米国の91施設において、SARS-CoV-2感染確認後10日以内で、COVID-19の症状(疲労、呼吸困難、発熱、咳、吐き気、嘔吐、下痢、体の痛み、悪寒、頭痛、喉の痛み、鼻の症状、味覚・嗅覚の異常のいずれか)のうち2つ以上が発現してから7日以内の、30歳以上の外来患者を、フルボキサミン(50mgを1日2回10日間投与)群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは持続的回復までの期間(少なくとも3日間連続して症状がないことと定義)、副次アウトカムは28日目までの入院・救急外来(urgent care)受診・救急診療部(emergency department)受診・死亡の複合、28日死亡率、28日目までの入院または死亡などを含む7項目とした。持続的回復までの期間は12日vs.13日、有意差なし 2021年8月6日~2022年5月27日の期間に、計1,331例(年齢中央値47歳[四分位範囲[IQR]:38~57]、女性57%、SARS-CoV-2ワクチン2回以上接種67%)が無作為化され、このうち1,288例(フルボキサミン群674例、プラセボ群614例)が試験を完遂した。 持続的回復までの期間の中央値は、フルボキサミン群12日(IQR:11~14)、プラセボ群13日(IQR:12~13)であり、持続的回復までの期間の改善に関するハザード比(HR、HR>1が有益であることを示す)は0.96(95%信用区間[CrI]:0.86~1.06、事後解析のp=0.21)であった。 28日目までの入院・救急外来受診・救急診療部受診・死亡の複合イベントは、フルボキサミン群で26例(3.9%)、プラセボ群で23例(3.8%)確認された(HR:1.1、95%CrI:0.5~1.8、事後解析のp=0.35)。28日目までの入院はフルボキサミン群1例、プラセボ群2例で、いずれの群も死亡例はなかった。 試験薬を少なくとも1回服用した患者において、有害事象の発現率はフルボキサミン群4.7%(29/615例)、プラセボ群5.3%(30/565例)であった。

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コロナ抗体薬エバシェルドの緊急使用許可を停止/FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は1月26日、新型コロナウイルス抗体薬のチキサゲビマブ/シルガビマブ(商品名:エバシェルド)について、緊急使用許可(EUA)を改訂し、本剤の使用を停止することを発表した1)。今回の改訂により、本剤に非感受性のSARS-CoV-2変異型が国内に占める割合が90%以下の場合に限り、使用が許可されることとなる。本改訂に基づき、エバシェルドはFDAから追って通知がない限り、米国での使用が許可されない。エバシェルドが有効なSARS-CoV-2変異型に備えて保持を推奨 エバシェルドは、オミクロン株XBBやBQ.1.1への有効性が期待できないことが研究で明らかにされている。米疾病対策センター(CDC)が発表したデータによると、現在米国では、これらの変異型に加え、その類似型のXBB.1.5やBQ.1が支配的となっている2)。エバシェルドの使用を制限することで、エバシェルドの使用によるアレルギー反応などの重篤な副作用を防ぐ目的もある。 FDAは、今後、米国でエバシェルドが有効なSARS-CoV-2変異型が広く流行した場合に備え、エバシェルドを使用している施設やプロバイダーが製品を保持しておくことを推奨している。

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第144回 これが患者のリアル、ワクチンマニアもコロナ感染!?村上氏のヒヤヒヤ実記(中編)

―2023年1月2日(月)深夜に38℃超の熱を記録して以来、時折、体のほてりで目が覚める。そのたびに体温を測ろうと思うが、気力が湧いてこない。朝6時過ぎ、娘が求めるパンとスープを買いに出るが、かなりフラフラである。嫌な予感がしたので、この時、娘が昼に食べたがるだろうと予想したパスタも購入して戻り、パンとスープは置き配にし、パスタを自室の冷蔵庫にしまうと、そのままベッドに倒れこんだ。目が覚めたのは午前11時過ぎ。気力を振り絞って検温した結果に驚く。38.9℃。ここ最近見たこともない数字だ。私の発熱の最高記録は20代前半の頃の39.8℃。この時はバックパッカーとして旅行中にエジプトのカイロでかなり重い肺炎にかかり、日本大使館のご助力で、人生初しかも2週間の入院をカイロで経験している。ちなみに当時のことで、鮮明に記憶しているのは、ベッドサイドに置かれた紙袋入りの自分の胸部X線写真。右肺の下から3分の1程度、左肺の4分の1程度が真っ白。様子を見に来た日本大使館の医務官がそれを見て「ありゃりゃ」と言いながら病状を説明してくれた。退院後、成田空港からまっすぐ実家に向かい、父親のかかりつけ医にそれを見せたところ、「えっ、この状態なのに2週間で退院したの? 僕ならあと1週間は入院させるなあ。オリンピックだ。オリンピック」と言われた。私がきょとんとしていると「まあ4年に1回くらいしか見ない、結構重い肺炎だよ」と告げられた。あの時も辛かったが、当時はまだ20代前半。それから30年経った今、38.9℃があの時よりも辛く感じる。しかし、発汗やだるさは少ないと思いながら、食事も水分も十分に取っていなかったことに気付く。部屋の冷蔵庫を開けると、そこには大みそかに娘と一緒に食べようと買い込んだ2人分のミニおせち。消費期限は今晩まで。結局、自分1人で食べることにした。部屋に備え付けの電子レンジでレトルトのご飯を温め、冷蔵庫の中で冷え冷えとなったおせち料理をつまむ。途中で2個ずつある各料理を丁寧に1個ずつ食べていたことに気付いたが、そんな必要はなかった。固めのごぼうの煮物を噛みながら「何やっているんだろう」とふと思った。幸い味覚障害はないが、うまいともまずいとも思えない。最後に500mLのペットボトルのお茶を一気飲み。喉に引っ掛けたわけでもないのに、その直後から咳も出始めた。咳をするたびに咽頭が強烈に痛む。朝食後は廊下に置かれた娘の衣服をピックアップして1階のコインランドリーで洗濯する時間である。しんどすぎるが、行くしかない。再びマスクの上下に両面テープを張り、部屋を出て娘の部屋のドアノブに下げられた洗濯物と自分の洗濯物を持って1階に降りた。幸いほかの人は誰もいない。加えて部屋の外では運よく咳も出ない。洗濯機に洗剤と洗濯物を放り込んで部屋に戻り、洗濯が終わる約40分後にスマホのタイマーをかけ、靴だけを脱ぎ、再びベッドに横になる。うとうとしているとタイマーがなり始めた。また、階下に降り、今度は30分100円の乾燥機に洗濯物を入れ替え、また部屋へ。すると、娘から「お昼はパスタが食べたい」と。ビンゴだ。部屋の電子レンジで温め、すぐに袋に入れて娘の部屋のドアノブにかける。この時、猛烈に咳が出た。慌てて部屋に戻り、LINEで「いまパスタを置き配したけど、おとう(娘は私をこう呼ぶ)がいま廊下で咳をしてしまったので10分ほど待ってから取ること」とメッセージを送った。廊下は狭く、お世辞にも換気がよいとは言えないからだ。部屋に戻ってから再度検温をする。38.6℃。念のため4回目となる抗原検査をやってみる。左右の鼻腔の奥を綿棒でこすると、くしゃみが出た。検体を流し込んでもコントロールのほうしか線は浮き上がらない。本当に新型コロナではないのか? とするとインフルエンザ?それともただの風邪?悩みに悩んで正月早々ではあるが、SNSのメッセージ機能を使って知り合いのA医師にコンタクトを取った。すぐに既読がつき、「どうしたの?」と返信。こちらの状況をメッセージに打ち込むが、発熱で頭がぼーっとしているのでその作業自体が苦痛である。音声電話機能で話せないかと提案すると、即OKの返事が来た。私から連絡してこちらの状況を伝えた。すると、「うーん、抗原検査が4日間連続陰性とはいえ、症状や今の感染流行の状況を考えればやっぱり疑いはあるよね。自分の患者が同じような状況なら念のため検査するね」との反応。私は基本的に表面的には重症化リスク因子が少ないし、安易な受診で外来ひっ迫させるのは心苦しいと告げた。ちなみにこの時点で保有していた解熱鎮痛薬は服用していない。当たり前の生体反応である発熱を無理に薬で抑え込みたくはない。まだ、もう少しは頑張れる。そんなこともこの医師には伝えた。しかし、「村上さんは50代だし、娘さんの受験も考えると、大事をとって受診して白黒はっきりさせたほうが安心じゃないですか? 幸い村上さんが今いる辺りで開業している友人がいるから連絡してあげるよ」と言われる。三が日も明けてないのにそれは気が引けると言ったが、「いや、気軽に連絡取れる仲だから。ちょっと待ってて。とりあえずお大事にね」と言って電話が切れた。電話が切れた直後、洗濯物を乾燥機から取り込まなければならないことに気づく。急いで階下に降り、乾燥機の中に手を入れるとまだ生乾き。ため息が出る。市中のコインランドリーならば30分かからずに乾くのにと思う。初日にここの乾燥機で洗濯物を完全に乾燥できるまで2時間、合計400円もかかった。娘の衣服は2組しかないが、今日のはかなり乾きにくい厚手のもの。ホテルから徒歩10分弱のところにコインランドリーがあることは知っているが、そこまで歩いて行ける状態ではなさそうだし、乾燥中はコインランドリー内で待機せねばならず、そこで他人に感染させるなどはあってはならない。かといって400円も使いたくない。とりあえず生乾きの洗濯物を持って部屋に戻ると、SNSの電話機能で着信があったことに気づく。先ほどの医師が連絡を取ると言っていた友人のB医師だった。まず、メッセージ機能で受信できなかったことを詫び、折り返しても良いかと尋ねた。すぐに既読がつき、「ええ大丈夫です」との返信。さっそく電話をして自己紹介をすると、「A先生から話は聞いています。場所も近いようですし、明日からうちは診療する予定なので受診されます?」との申し出。こちらが遠慮気味に可能か尋ねると、「新年一発目なので朝に来ていただければ、たぶん即診察できると思いますよ」とのことで、翌朝9時半の受診が決定した。2人の医師の迅速な対応に感謝しかない。とりあえず自分の体のほうはどうにか方向性は見えてきた。そうすると、気になるのが生乾きの洗濯物だ。宿泊先の部屋の間取りはユニットバスを囲むようにL字型の構造。Lの長辺にベッドと部屋の出入り口があり、短辺側にユニットバスの入り口、机、さらに壁上部にエアコンがあった。そうだ!と思い付き、自分のバッグを開け、何かの時に役に立つと思って持ち歩いていた大型の半透明ビニール袋を2つを取り出した。これと両面テープを使って短辺部分を閉鎖空間とする。そこに娘の洗濯物をハンガーでつるし、エアコンの風量を最大にして即席乾燥室を作った。これは乾燥の効率もあるが、何よりベッド付近で私が横になっている際に頻繁に咳をしていることで浮遊しているであろうエアロゾルが娘の衣服に付着することを恐れたからだ。もっとも咳は止まっているわけではないので、換気のために部屋の窓を全開にして、ベッドにもぐりこんだ。外からの冷気は、布団にくるまることでなんとか我慢できる範囲に収まった。相変わらず体は火照った感じだ。原稿執筆は難しいが文字を読めるので、そのままスマートフォンでニュースをチェックする。1時間ほどして、咳をしないように我慢しながら閉鎖空間内に入り、ユニットバスでの手洗いと手拭き後、洗濯物に触った。乾いている。それを持参していた未使用のスーパーの買い物袋に入れて封をし、廊下に出て娘の部屋のドアノブにかけた。部屋に戻り、LINEで娘に洗濯物を戻した旨を伝えたメッセージが既読になったことを確認すると、そのまま眠りに落ちてしまった。再び目を覚ましたのは午後7時過ぎに娘からのLINEメッセージの着信があった時だ。夕飯のリクエストである。「海鮮丼」とある。え? コンビニにあったっけ? 寿司ならあった記憶があるが、すぐに思い浮かばない。とりあえずネットで検索してみる。どうやら近所にあるコンビニチェーンにはそれに近い物がありそうだ。ホテルから最短距離にあるコンビニチェーンなので行ってみたが、海鮮丼はなく、寿司のみ。店外に出て娘にLINEで「海鮮丼はないので、寿司でもいい?」とメッセージする。屋外の人気のないところに移動して返信を待つが反応はない。発熱による火照りのせいか徐々に視界がぐらぐらしてくる。10分過ぎても返信はない。LINEの音声通話で呼び出すが、反応なし。18分経過してようやく返信があり、寿司で落ち着いた。寿司を買って帰るも足元はフラフラ。部屋のあるフロアに付くと寿司の一部が容器内で横倒しになっていた。置き配をしてから部屋に戻り、検温すると38.6℃。食欲はなかったが、レトルトパックのカレーとご飯を用意して、作業のようにもくもくと口に放り込んでから、ベッドにもぐりこんだ。9時半過ぎにじんわりと汗ばんでいることに気づいて目を覚ますと、数分前に娘からLINEメッセージが着信していたことに気付く。曰く「明日、この近くの自習室に行きたい」。娘が在籍している予備校の校舎と今いるホテルは電車での移動が必要だが、最寄り駅近くにも別校舎があり、在籍校舎が異なっても自習室は使える。そしてこのメッセージは「送ってくれ」という意味も含んでいるのは父親としてはすぐわかった。しかし、10分強は歩かねばならず、最短距離を採用すると空間的に密な地下道を通過しなければならない。ただ、地下道の入り口までは開放的な屋外で、正月三が日ならば、通常よりも人通りは少ないだろう。娘は地下道入り口から先の道はわかる。自習室が開くのは午前9時だが、席を確保するには、9時ちょうどには到着しなければならない。私が予約した診察は9時半だが、クリニックはホテルからは徒歩5分ほど。ということで娘には地下道入り口までの条件で送っていくことを承諾した。そして原稿を書かねばと思い、椅子に座ってパソコン(PC)に向かったが、やはり30分が限界。結局、またベッドに横になるしかなかった。(次回に続く)

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腎移植後のコロナワクチン3回目接種、抗体陽性率は71%/名大

 大きな手術後の患者に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンを接種した場合、抗体価にどのような変化があるのだろうか。この疑問に藤枝 久美子氏(名古屋大学大学院医学系研究科腎臓内科学)らの研究グループは、腎移植後の患者における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチン2回接種後から3回接種後の抗体価の変化を調査した。その結果、3回目のワクチン接種により抗体獲得率が上昇し、腎移植後の患者におけるワクチン追加接種の重要性が示された。ワクチンに差異なく、3回接種での抗体陽性は71% 腎臓移植後、免疫抑制剤を内服している患者などは、SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種後の抗体獲得率が低くなることが海外から報告されている一方で、わが国ではドナー不足からの生体腎移植、ABO血液型不適合腎移植などが行われ諸外国と環境が異なっている。 研究グループの前回の報告では、わが国の腎移植後の患者のSARS-CoV-2 mRNAワクチン2回接種後3週間〜3ヵ月の抗体獲得率は、健康成人や海外の腎移植後の患者と比較して低い値だった。このような背景から、わが国と諸外国との抗体獲得率の違いや、抗体価の推移、ワクチンの追加接種の必要性について明らかにすることが目的。 主な結果は以下のとおり。1)患者背景と抗体獲得率の推移 SARS-CoV-2 mRNAワクチンを3回接種した62例の移植レシピエント(男性40例、女性22例)について調査。ワクチン3回目接種時の年齢中央値は54歳(四分位範囲[IQR]、49~67歳)、移植時の年齢中央値は50歳(IQR:38~58歳)。移植からワクチン接種までの期間の中央値は84ヵ月(IQR:34~154ヵ月)。BMIの中央値は22.9(IQR:21.4~26.2)、eGFRの中央値は42.8mL/分/1.73m2(IQR:34.1~51.4mL/分/1.73m2)。ワクチン2回接種後3週間〜3ヵ月で抗体陽性と判定されたのは45%で、ワクチン2回接種後5〜6ヵ月で抗体陽性と判定されたのは50%だった。ワクチン2回接種5~6ヵ月後に抗体が陰転化したものはは1例、陽転化したものは4例だった。また、ワクチン3回目接種後3週間〜3ヵ月で抗体陽性と判定されたのは71%と大幅に増加した。2)ワクチンの種類による抗体獲得率の比較 ファイザー製のワクチンのみを接種した患者、モデルナ製のワクチンのみを接種した患者、ファイザー製とモデルナ製の両方を接種した患者の比較を行った。その結果、接種した抗体の種類や組み合わせによる抗体獲得率の違いは認められなかった。3)抗体獲得に関連する要因の検討 統計学的な手法を用いて抗体獲得に関連する因子を検討した結果、さまざまな要因を統計学的に調整しても、BMIとeGFRが抗体獲得率と有意な相関があることが示唆された。 同研究グループは、今回の研究を受けて「わが国の腎移植後の患者において、SARS-CoV-2ワクチン3回接種により抗体獲得率が上昇することが示された。4回目以降の接種も進んでいるため、今後はワクチンの追加接種による抗体価の変化や時間が経つにつれて抗体の力価がどう変化していくのかを調べる必要がある」と展望を示している。

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第29回 新型コロナワクチンは年1回の接種へ?

FDA(米国食品医薬品局)が先陣を切るかFDA(米国食品医薬品局)の本決定はまだですが(この記事が出る日に話し合われる予定)、新型コロナワクチンは、インフルエンザと同じく、健康な人は年1回の接種にする方針のようです。ただし、高齢者、子供の一部、免疫が低下している人については年2回の接種となる見込みです。基本的に2価ワクチンが勧奨される見込みです。年1回接種にするとしても、いつの変異ウイルスに合わせてワクチンを改変していくのか難しいところですが、mRNAワクチンはそういった改変を速やかに行えるメリットがあり、たとえば春~夏に流行した変異ウイルスに合わせて秋に接種などのような形が想定されています。エビデンスがあるというよりも、そういう落としどころでウィズコロナしましょうという側面が強く、年1回がベストとは限りません。今後の研究によっては、全員年2回のほうがよいというデータが出てくるかもしれません。FDAが勧奨するであろう2価ワクチンを提供しているのは、現在ファイザー社とモデルナ社の2社だけになると思われます。もう他の企業は追随できませんね、差が付いてしまった。XBB.1.5は日本ではまれご存じのとおりワクチンの感染予防効果は経時的に減衰していきますが、現在接種されているオミクロン株対応の2価ワクチンは、とりわけ高齢者では高い入院予防効果を有しています。イスラエルにおける65歳以上の高齢者に対するオミクロン株対応ワクチンは、入院予防効果81%、死亡予防効果86%と報告されています1)。オミクロン株対応ワクチンを追加接種しても、XBB.1株は免疫逃避が従来株やBA.5株よりかなり高いことが報告されています2)。また、中和活性についても従来株、BA.2系統、BA.5系統よりも顕著に低いことがわかっています3)。中和抗体の上昇が期待できるとされつつも3,4)、基本的にmRNAワクチンの改変が必要とされている状況です。XBB.1.5株は現在アメリカで猛威を振るっていますが、日本でもXBB.1.5株がいつか優勢になってくるかもしれません(図)。画像を拡大する図. ゲノム解析結果の推移(週別)(東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議・分析資料より5))mRNAワクチンは、新型コロナとインフルエンザの両方に適用可能な技術であるため、将来的には1本のワクチンで両方を予防できるなんて時代が来るかもしれませんね。参考文献・参考サイト1)Arbel R, et al. Effectiveness of the Bivalent mRNA Vaccine in Preventing Severe COVID-19 Outcomes: An Observational Cohort Study. Preprints with The Lancet. 2023 Jan 3.2)Miller J, et al. Substantial Neutralization Escape by SARS-CoV-2 Omicron Variants BQ.1.1 and XBB.1. N Engl J Med. 2023 Jan 18. [Epub ahead of print]3)Uraki R, et al. Humoral immune evasion of the omicron subvariants BQ.1.1 and XBB. Lancet Infect Dis. 2023 Jan;23(1):30-32.4)Davis-Gardner ME, et al. Neutralization against BA.2.75.2, BQ.1.1, and XBB from mRNA Bivalent Booster. N Engl J Med. 2023 Jan 12;388(2):183-185.5)東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議・分析資料 変異株調査(令和5年1月19日12時時点)

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オミクロン株対応2価ワクチン、4回目接種の有用性は?/NEJM

 1価・2価のオミクロン株(B.1.1.529)BA.1系統対応BNT162b2(ファイザー製)ワクチンは、BNT162b2ワクチン(30μg)と同様の安全性プロファイルを有し、祖先株とオミクロン株BA.1系統に対して顕著な中和反応を示した。また、程度は低いものの、オミクロン株亜系統のBA.4、BA.5、BA.2.75も中和した。米国・アイオワ大学のPatricia Winokur氏らが、BNT162b2ワクチン30μgを3回接種した55歳超1,846例を対象にした無作為化比較試験で明らかにし、NEJM誌2023年1月19日号で発表した。BA.1対応1価・2価ワクチンとBNT162b2を30μgまたは60μgで比較 研究グループは、進行中の第III相試験で、BNT162b2ワクチン30μgを3回接種した55歳超を無作為化し、BNT162b2(30μgまたは60μg)、B.1.1.529変異株(オミクロン株)BA.1系統対応BNT162b2(BA.1対応1価ワクチン、30μgまたは60μg)、BA.1対応2価ワクチンを30μg(BNT162b2 15μg+BA.1対応1価ワクチン15μg)または60μg(BNT162b2 30μg+BA.1対応1価ワクチン30μg)をブースター投与した。 本試験の主要目的は、BA.1対応ワクチンの、BNT162b2(30μg)に対する優越性(対BA.1の50%中和抗体価[NT50]について)と非劣性(血清反応について)の評価。副次目的は、祖先株に対する中和活性について、BA.1対応2価ワクチンのBNT162b2(30μg)に対する非劣性の評価だった。 探索的データ解析を行い、オミクロン株の亜系統BA.4、BA.5、BA.2.75に対する免疫応答も評価した。BA.1対応2価ワクチン、祖先株に対しBNT162b2(30μg)と比べ非劣性 1,846例が無作為化を受けた(年齢中央値67歳、男性49.5%、白人86.6%)。 ワクチン接種後1ヵ月時点で、BA.1対応2価ワクチン(30μg/60μg)とBA.1対応1価ワクチン(60μg)は、BA.1に対し、BNT162b2(30μg)より優れた中和活性を示した。NT50幾何平均比(GMR)は、それぞれ1.56(95%信頼区間[CI]:1.17~2.08)、1.97(1.45~2.68)、3.15(2.38~4.16)だった。 また、BA.1対応2価ワクチン(両用量とも)とBA.1対応1価ワクチン(60μg)は、対BA.1血清反応についても、BNT162b2(30μg)に対し非劣性を示した。群間差(%)は10.9~29.1ポイントに及んだ。 BA.1対応2価ワクチン(両用量とも)は、祖先株に対する中和活性について、BNT162b2(30μg)に対し非劣性だった。NT50GMRは30μgが0.99(95%CI:0.82~1.20)、60μgが1.30(1.07~1.58)だった。 BA.4-BA.5、BA.2.75に対する中和抗体価は、BA.1対応2価ワクチン30μgが、BNT162b2(30μg)より数値が高かった。 安全性プロファイルについては、BA.1対応1価ワクチン、2価ワクチンのいずれの用量も、BNT162b2(30μg)と同様だった。有害事象の発生頻度は、BA.1対応1価ワクチン30μg群(8.5%)とBA.1対応2価ワクチン60μg群(10.4%)が、その他の群(3.6~6.6%)より高率だった。

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妊婦の罹患・死亡リスク、オミクロン株優勢中に増大/Lancet

 新型コロナウイルスのオミクロン株が懸念される変異株となった半年間について調べたところ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断を受けた妊婦は、MMMI(maternal morbidity and mortality index、妊婦の罹患率・死亡率指数)リスクが増大していたことが明らかにされた。とくに、ワクチン未接種の重症COVID-19妊婦で、同リスク増大はより顕著だった。また、COVID-19の重症合併症に対するワクチンの有効性は、完全接種(2回またはAd26.COV2.Sワクチン1回)で48%と高かった。英国・オックスフォード大学のJose Villar氏らが、4,618人の妊婦を対象に行った大規模前向き観察試験「INTERCOVID-2022試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2023年1月17日号で発表された。18ヵ国41病院を通じて試験 INTERCOVID-2022試験は、18ヵ国41病院を通じて行われ、リアルタイムPCR検査でCOVID-19が確定した妊婦1人について、COVID-19と診断されていない2人の妊婦(マッチングなし)を、同時かつ連続的に対照として被験者に加えた。母親と新生児について、退院まで追跡した。 主要アウトカムは、MMMIとSNMI(severe neonatal morbidity index、重度新生児罹患率指数)、SPMMI(severe perinatal morbidity and mortality index、重度周産期罹患率・死亡率指数)だった。 ワクチン有効性は、母体リスクプロファイルで補正し推算した。COVID-19妊婦、MMMIリスクは1.16倍、ワクチン非接種では1.36倍 世界保健機関(WHO)がオミクロン株に対する懸念を表明した2021年11月27日から、2022年6月30日までに4,618人の妊婦を被験者として登録した。うち、1,545人(33%)がCOVID-19と診断され(中央値:妊娠36.7週)、3,073人(67%)はCOVID-19と診断されなかった。 COVID-19群は対照群に比べ、MMMIリスク(相対リスク[RR]:1.16(95%信頼区間[CI]:1.03~1.31)、SPMMIリスク(1.21、1.00~1.46)の増大が認められた。SNMIについては、COVID-19群の対照群に対する増大が認められたが(1.23、0.88~1.71)、95%CI下限値は1を下回っていた。 COVID-19群でワクチン非接種の妊婦は、MMMIリスクのさらなる増大が認められた(RR:1.36、95%CI:1.12~1.65)。 重症COVID-19の妊婦は、重度母体合併症リスク(RR:2.51、95%CI:1.84~3.43)、周産期合併症リスク(1.84、1.02~3.34)、他科への紹介・集中治療室(ICU)入室・死亡のいずれかの発生リスク(11.83、6.67~20.97)の総合的なリスク増大がみられた。ワクチン非接種で重症COVID-19の妊婦は、MMMIリスク(RR:2.88、95%CI:2.02~4.12)と、他科への紹介・ICU入室・死亡のいずれかの発生リスク(20.82、10.44~41.54)の増大がみられた。 被験者のうちCOVID-19ワクチンを1回以上接種していた女性は2,886例(63%)で、完全接種またはブースター接種(3回またはAd26.COV2.Sワクチン2回)は2,476例(54%)だった。 他科への紹介・ICU入室・死亡のいずれかの発生に関するワクチン有効性(全ワクチン統合)は、ワクチン完全接種妊婦が48%(95%CI:22~65)、ブースター接種妊婦が76%(47~89)だった。COVID-19診断妊婦の同有効性は、それぞれ74%(48~87)、91%(65~98)だった。

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新型コロナの罹患後症状(後遺症)ってどういう症状?

Q.新型コロナの罹患後症状(後遺症)ってどういう症状?頭痛、睡眠障害、認知障害、記憶力・集中力低下、脱毛、味覚・嗅覚障害、目・耳の異常胸痛、動悸、疲労・倦怠感腹痛、悪心、下痢、食欲低下咳、咽頭痛、喀痰、息切れ関節痛、筋肉痛、筋力低下勃起異常、生理不順、月経前症候群の悪化厚生労働省新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&AYadav S, et al. J Clin Oncol. 2023 Jan 9. [Epub ahead of print]Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Imoto W, et al. Sci Rep. 2022;12:22413.Q.新型コロナの罹患後症状(後遺症)って何ですか?新型コロナウイルス感染症にかかった後、ほとんどの患者さんは時間経過とともに症状が改善します。しかし、急性期の症状がずっと持続したり、回復した後に新たに/または再び出現したりする症状があることがわかっています。これら全般の症状を新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(後遺症)と言います。Q.罹患後症状(後遺症)はいつまで続くのですか?罹患後症状(後遺症)については、世界的に調査研究が進められている最中ですが、時間の経過とともに改善することが多いとされています。ただし、急性期の重症度に関係なく、新型コロナウイルスへの感染から約1年を経過しても、罹患後症状(後遺症)が約半数の方に残るという報告もあります。厚生労働省新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&AYadav S, et al. J Clin Oncol. 2023 Jan 9. [Epub ahead of print]Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Imoto W, et al. Sci Rep. 2022;12:22413.

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第145回 三重大臨床麻酔部汚職事件、元教授に懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の有罪判決、賄賂は「オノアクト使用の見返りだった」

岸田首相G7広島サミットを意識?今春にもコロナは5類にこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この連載もまもなく3年を迎え150回近くとなりますが、その半分以上は新型コロウイルス感染症に対する国の対応について書いてきたのではないかと思います。そのコロナ対応も、いよいよ大きな転換期を迎えます。岸田 文雄首相が1月20日、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類を、今春から5類に変更する方針を示し、23日から専門家らによる感染症部会で本格的な議論が開始されたためです。昨年11月、感染症法等を改正し、都道府県は地域医療支援病院や特定機能病院などとあらかじめ協定を結び、病床確保や発熱外来といった医療の提供を義務付けることになったばかりですが、5類にすればそうした義務付けから外れることになります。これまでコロナを診てこなかった医療機関も、通常の風邪と同じように診療、入院させるようになると期待されていますが、本当にそうなるでしょうか。コロナ禍の中での多くの医療機関の消極的な対応を見てきた経験から言うと、はなはだ疑問です。あわせて気になったのは、1月19日に日本医師会の松本 吉郎会長が岸田総理と面会し、政府が新型コロナの感染症法上の見直しを行った場合でも、公費負担などを継続するよう要望したことです。報道等によれば松本会長は「患者さんに負担が掛からないように、それから医療機関の感染対応にもできる限り支援を継続していただきたいということをお話しした」と語ったそうです。5類に移行すれば医療費などの公費負担の法的根拠がなくなるのは当然です。なのに「公費負担は続けろ」とは、意味がわかりません。普通の風邪ならば、医療機関を受診したい人や重症化リスクが高い高齢者などは受診し、そうでない人は自力で治す(もともとほとんどの風邪は医療機関を受診しなくても治ります)というのが筋です。公費負担を続けるということは、受診不要と思われる軽症患者まで掘り起こすことになりそうです。医療機関の経営にはプラスでしょうが、結局、無駄な医療費の増加を招くだけではないでしょうか。松本会長の要請に岸田首相は「しっかりと検討したい」と応じたそうです。5月開催予定のG7広島サミットで海外首脳を迎える前に、5類にして屋内のマスク着用も不要にしておきたい、という少々自分勝手な考えもあるのではないでしょうか。未だ、マスク着用がルール化されている先進国は日本くらいだからです(エリザベス女王の国葬の時、日本の天皇陛下のマスク着用が話題となりました)。複数の関係者たちの公判のうち大トリとも言える元教授に判決さて今回は、この連載でも何度(今回で7回目)も取り上げてきた三重大病院臨床麻酔部の汚職事件を取り上げます(「第133回 三重大病院臨床麻酔部事件、元教授に懲役4年の求刑、大学は新教授で再スタート」ほか)。薬剤の積極的な使用や医療機器の納入に便宜を図る見返りに現金を受け取ったなどとして、第三者供賄と詐欺の罪に問われた、三重大学医学部附属病院の臨床麻酔部元教授(56歳)の判決公判が1月19日に津地方裁判所であり、柴田 誠裁判長は懲役2年6ヵ月・執行猶予4年と、元教授が代表理事を務める一般社団法人に追徴金200万円(求刑懲役4年、追徴金200万円)とする有罪判決を言い渡しました。ちょうど新型コロナウイルス感染症が猛威をふるい始めた2020年9月に発覚したこの事件、複数の関係者たちの公判のうち大トリとも言える元教授の判決が出たことで、被告全員の公判が一通り終了したことになります。一連の事件では7人の有罪が既に確定この事件で被告人である元教授は、小野薬品工業が製造・販売する薬剤「ランジオロール塩酸塩(商品名:オノアクト)」を積極的に使う見返りに大学の口座に寄付金200万円を振り込ませたほか、日本光電からも200万円を提供させたとして、第三者供賄罪に問われていました。また、小野薬品のオノアクトを投与したように装い診療報酬を詐取(約80万円)したとする詐欺罪でも起訴されていました。元教授の公判は、他の被告の公判がすべて終わった2022年4月から始まりました。ちなみに、一連の事件では、診療報酬詐取事件で共犯とされた同部の元准教授、医療機器納入を巡る汚職事件で共犯とされた元講師、そして小野薬品の社員2人、日本光電の元社員3人の計7人の有罪が既に確定しています。公電磁的記録不正作出、公電磁的記録供用と詐欺の罪に問われた元准教授には懲役2年6ヵ月・執行猶予4年、第三者供賄罪に問われた元講師には懲役1年・執行猶予3年の判決が下されています。一方、贈賄罪に問われた小野薬品の社員2人には懲役8ヵ月・執行猶予3年、同じく贈賄罪に問われた日本光電の元社員1人には懲役1年・執行猶予3年、元社員2人には懲役10ヵ月・執行猶予3年の判決が下されています。最大の争点はオノアクト採用への元教授の関わり2022年4月から始まり、計14回、6ヵ月にも及ぶ審理を経て、10月に結審した今回の公判、最大の争点はオノアクト採用への元教授の関わりでした。小野薬品を巡る第三者供賄罪について元教授は、「オノアクトの効能に着目して積極的に使用していく方針を採用した」などと主張していました。また、詐欺罪についても無罪を主張し、寄付金の対価性(いわゆる見返り)が認定されるかどうかが争点となっていました。一方で元教授は、日本光電に200万円を振り込ませたとする第三者供賄罪は認めていました。報道等によれば、元教授は公判で「職務権限を利用して対価をもらったことは恥ずかしい」と語るとともに、お金の使い道を「麻酔科医を集めるため。ほとんどを飲食代に充てた」と説明したとのことです。元教授が臨床麻酔部教授に就任して以降オノアクトの処方量急増各紙報道等によれば、同日の判決で津地裁はオノアクトの積極使用と寄付の関連を認め、対価性があったとしています。具体的には、元教授が臨床麻酔部教授に就任して以降オノアクトの処方量が急増したこと、小野薬品の当時のMRの証言から元教授が「寄付金が必要だ頼むよ」「最初に世話になったところは忘れないよ」などと供述したこと、MRが作成した週報に「講演会活動を通じ三重大で『OA(オノアクト)をもっと出すための相談』が行えた。そのもっとを今後具体化していく段階に今後していこう」と記載していたことなどを指摘、「200万円の寄附とオノアクトの処方が密接に関連付けられていた」として寄付金の対価性があったと判断しました。「職務の公正さや社会の信頼を害した程度は大きい」以上を踏まえ、柴田裁判長は判決理由で「寄附金を獲得するためになりふり構わず処方量の増大に突き進んだことは異常というほかなく、職務の公正さや社会の信頼を害した程度は大きいと言わざるを得ない」と指摘。さらに、「使用されずに廃棄される医薬品が大量に生じる歪みを発生させ、診療報酬の搾取につながった」と非難したとのことです。ただ、量刑については「職務の公正さや社会の信頼を害した程度は大きいと言わざるをえないが、前科のない被告人をただちに刑務所に収容するのは重きに過ぎる」などとして懲役2年6ヵ月・執行猶予4年の有罪判決としたとのことです。判決に対し、元教授の弁護士は「判決は不当で、控訴するかどうかは被告人と相談したい」と述べたとのことです。一方、三重大学病院の池田 智明病院長は「有罪判決が下されたことを真摯に受け止めます。今後も信頼回復に向け、全力を尽くします」とのコメントを出しています。新たなスタートを切った三重大麻酔科さて、元教授の逮捕によって、三重大病院の麻酔科は混乱に陥り、地域医療にも多大な影響を及ぼしました。さらに製薬会社が大学などに提供している奨学寄付金の是非についても議論が沸き起こり、奨学寄付金を廃止する動きも広まっているようです。その意味で、元教授は法律では罪に問われない部分でも、さまざまな“罪”を犯していたと言えるでしょう。三重大の麻酔科については、2022年4月には新教授が就任、手術での麻酔を行う「臨床麻酔部」を廃止し、痛みを取り除く治療などを行う「麻酔科」に統合するという組織改編も行われました。また、麻酔の専門医を育成する研修プログラムも2023年度からスタートするとのことです。元教授が控訴すれば、裁判は続くことになりますが、少なくとも三重大病院麻酔科の再スタートは喜ばしいことです。幾多の“黒歴史”から決別し、地域の麻酔科医療を牽引する存在になることを願います。

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オミクロン株の感染爆発のファクターを解明/日本大学ほか

 わが国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第8波の主な感染原因であるオミクロン株。この変異株について、今井 健一氏(日本大学歯学部感染症免疫学講座 教授)らの研究グループは、オミクロン株感染者の唾液中には、宿主細胞の内外に付随していない裸のウイルス(セルフリーウイルス)が、従来株やデルタ株よりも高比率に含まれていることを世界で初めて発見し、JAMA Network Open誌2023年1月9日号に報告した。 細胞に付随しているウイルスと比較すると、セルフリーウイルスはとても小さく軽いため、唾液に覆われた状態でも室内に長時間漂うことができる。オミクロン株では、このセルフリーウイルスの唾液への排出量がデルタ株の2.7倍、従来株の17.8倍と大幅に増加したことが、エアロゾル感染によるCOVID-19の爆発的拡大につながったものと考えられるという。セルフリーウイルスがオミクロン株では従来株の17.8倍 新型コロナウイルスは、口腔内の上皮や唾液腺の細胞に感染し増殖するため、唾液中には多くのウイルスが含まれている。そのため、会話、せき・くしゃみのたびに放出される飛沫や微細なエアロゾルによって伝播され感染が広がる。オミクロン株は、従来株やデルタ株などと異なり、飛沫感染に加えてエアロゾル・空気感染によって伝播するため、現在の爆発的な感染拡大につながったと考えられているが、その仕組みは良くわかっていなかった。今回の研究はこの仕組みを明らかにすることを目的とした。 研究グループでは、新型コロナウイルスは、従来株→デルタ株→オミクロン株とウイルスが変異するのに伴い、唾液中に排出されるウイルスの量自体が多くなっていると推測。また、エアロゾル感染が成立するためには、ウイルスが飛沫に含まれて拡散する状態よりも遠くに飛散し、かつ飛沫よりも長時間室内に漂うエアロゾルに含まれて拡散する状態が必要とも考慮した。 そこで、従来株、デルタ株、およびオミクロン株の感染者から採取した唾液を、全唾液と遠心分離で細胞成分を除いた上澄み液とに分け、それぞれに含まれるウイルス量を定量した。 主な結果は以下のとおり。・従来株では、全唾液1mL中に約123万個(中央値、以下同じ)のウイルスが存在していることがわかった。そのうち、セルフリーウイルスは1mL中に約18万個で、全唾液中のウイルスに占めるセルフリーウイルスの割合は約5.9%だった。・デルタ株では、全唾液1mL中に約1,860万個と従来株に比べて15倍ものウイルスが存在していた。そのうち、セルフリーウイルスは1mL中に約117万個で、全唾液中に占める割合は約4.8%で従来株と類似した値だった。・オミクロン株では、全唾液1mL中にデルタ株の半分強、約952万個のウイルスが存在していた。一方で、セルフリーウイルスは1mL中に約321万個が存在し、デルタ株の2.7倍、従来株の17.8倍と大幅に増加していた。全唾液中に占める割合は約21.3%で、従来株やデルタ株と比較して約4倍もセルフリーウイルスの割合が増加していた。 以上から、唾液中のセルフリーウイルスの量が多ければ、新たな宿主に到達した際に新型コロナウイルスの受容体であるACE2への結合がしやすく、感染効率も自然と高まる。さらに、セルフリーウイルスは細胞付随ウイルスよりも3倍近い速さで新たな未感染の細胞に感染するため、セルフリーウイルスが唾液中に多く含まれることは感染爆発の主要な原因となり得ると考えられた。 同研究グループは、「今回の研究から大規模クラスターが多発している現状を説明し得るものと考えられ、また、感染予防策として換気の必要性と密閉空間でのマスク着用励行の根拠ともなる」と考察している。さらに本研究は、「『エアロゾル・空気感染におけるセルフリーウイルスの重要性を初めて提唱した』という点で重要であり、今後、インフルエンザや麻疹、水痘などの他のウイルス感染症への適応や未知のウイルス感染症が発生した際、そして、ウイルス変異が生じるたびにそのウイルスの性状を知り、感染対策を立てる基本概念として適用される」と展望を述べている。

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厚労省の「解熱鎮痛薬等110番」は供給不足の解決にはならない!【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第104回

 昨年末、厚生労働省に「医療用解熱鎮痛薬等110番」という相談窓口が設置されました。解熱鎮痛薬などを入手できない医療機関や薬局のために設置された供給相談窓口ですが、開始1ヵ月ですでに混乱が生じているようです。厚生労働省が12月14日に開設した医療用薬の「供給相談窓口」(医療用解熱鎮痛薬等110番)に対し、約3週間で薬局や医療機関から500件もの相談が寄せられていることがわかった。(中略)一方、厚労省への相談件数が伸びるほど、卸側の負担は増大していくかたちとなり「お上からの重圧感が強いので対応せざるを得ないが、その後の対応や価格に関するトラブルも出てきている」(広域卸関係者)という。(2023年1月5日 RISFAX)この相談窓口の対象は、発熱外来や新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れている医療機関やこれらの医療機関の処方せんを受け付けている薬局で、かつ下記をすべて満たす必要があります。解熱鎮痛薬、鎮咳薬、トラネキサム酸の在庫が少ない平時に取引のある卸売業者に連絡しても入手が困難である業務に支障を来たすとともに患者に迷惑を掛けてしまう恐れがある全国的に医薬品の供給が不足しているのは言わずもがなの状態で、何も困っていません!と言える薬局は少ないのではないでしょうか。本来であればありがたい話のはずなのですが、この窓口は厚生労働省の中に設置されているため、相談を受け付けても医薬品を製造して出荷することも、納入を早めることもできません。厚生労働省が医薬品調達に窮している薬局などの訴えを聞き、卸売業者へ納入調整を依頼するというものです。調整依頼と言っていますが、厚生労働省から連絡があった卸売業者は、その相談元の薬局などに医薬品を納入せざるを得ない状態になるのではないかと思います。卸売業者も在庫が限られていて精一杯の調整をしている中、厚生労働省がそこにプレッシャーをかけて優先順位を繰り上げるというのは、本質的にはなんの解決にもなっていないのでは…と思うのは私だけではないはずです。医薬品の供給量が減っている一方で、解熱鎮痛薬や咳止め薬などの需要が高まっていることが原因なのに、なぜこのような窓口の設置が解決につながると思ったのかは不思議です。現場としては、どこか別のところにしわ寄せがいく納入調整ではなく、本質的な供給不足の解決や不適切処方に対する対応がとられることを期待したいと思います。

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コロナワクチンの免疫応答、年齢による違い/京大iPS細胞研究所

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチンの個人差・年齢差を検討したところ、65歳以上の高齢者ではワクチン接種後のT細胞応答の立ち上がりが遅い一方、収束は早いという特徴があることを、京都大学iPS細胞研究所の城 憲秀氏らによる共同研究グループが明らかにした。Nature Aging誌 2023年1月12日掲載の報告。 一般に加齢とともに免疫機能が低下することはよく知られているが、T細胞が生体内で刺激を受けた際の応答が加齢によってどのように、またどの程度変化するかは不明であった。そこで研究グループは、ワクチン接種後のT細胞応答や抗体産生、副反応との関連を調査した。 対象は、ファイザー製のSARS-CoV-2mRNAワクチン(BNT162b2)を2回接種した65歳以上の高齢者109人(年齢中央値71歳[範囲:65~81歳]、男性56人)と、65歳未満の成人107人(年齢中央値43歳[同:23~63歳]、男性43人)の計216人であった。血液の採取は、ワクチン接種前、1回目接種から約2週間後、2回目接種から約2週間後、1回目接種の約3ヵ月後の計4回行った。 主な結果は以下のとおり。・SARS-CoV-2のスパイクタンパク質受容体結合ドメインに対するIgG抗体価は、両群ともにワクチン2回接種後に大幅な上昇が見られた。しかし、抗体価のピークの中央値は、成人群で27,200AU mL-1、高齢者群で18,200AU mL-1であり、高齢者群では約40%低かった。・ワクチン特異的ヘルパーT細胞は、両群ともに1回目の接種で大きく増加し、2回目の接種後も同程度を保ち、3ヵ月後に減少した。高齢者群では1回目接種後の増加が成人群よりも少なかったが、2回目接種後に同程度となり、3ヵ月後には再び成人群よりも少なくなった。・2回目接種後の局所的な副反応(接種部位の疼痛)は、高齢者群と成人群で同程度であったが、全身性の副反応(発熱、倦怠感、頭痛)は成人群で有意に多かった。ただし、高齢者群では、解熱鎮痛薬を服用している割合が高かった。・年齢にかかわらず、2回目接種後に38℃以上の発熱があった人では、1回目接種後のT細胞応答と2回目接種後のIgG抗体価が高かった。・ワクチン特異的Th1細胞における、T細胞活性化を抑制するPD-1の発現量は、両群ともに2回目接種後にピークを迎えたが、高齢者群では成人群と比べて有意に多かった。また、PD-1の発現量が多い高齢者では、キラーT細胞の誘導が低い傾向にあり、免疫反応にブレーキがかかりやすくなっている可能性が示唆された。 研究グループは、これらの結果から「高齢者群では、T細胞応答の立ち上がりが遅く、収束が早いことが明らかになった。本研究は、高い有効性を持つワクチンの開発と、高齢者に適したワクチン接種スケジュールの立案に役立つ可能性がある」とまとめた。

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第131回 新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府

<先週の動き>1.新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府2.処方の見返りに奨学寄付金を求めた元教授に有罪判決/三重3.全国の都道府県がん拠点病院、地域がん拠点病院を新たに指定/厚労省4.オンライン資格確認の導入のさらなる促進を/厚労省5.東工大と医科歯科大、統合後の新名称は「東京科学大学」に6.サイバー攻撃の共有・公表ガイダンスをパブリックコメント募集/内閣府1.新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府岸田総理は、感染症法で現在「2類相当」として取り扱っている新型コロナウイルスについて重症化率が2022年夏時点で60歳未満が0.01%、80歳以上でも1.86%と季節性インフルエンザ並みになったとして、麻疹や風疹と同じ「5類」扱いとする方針を固めた。今後は、一般の医療機関でも新型コロナウイルスの患者の受け入れは可能としている。厚生労働省では、ワクチンの公費負担での接種対象を高齢者とするほか屋内でのマスク着用のあり方など、今後の方針について検討を開始している。来週には、専門家からなる厚生科学審議会で今後の方針について議論を行う。(参考)新型コロナ 今春「5類」移行検討 公費負担など本格議論へ(NHK)コロナ「5類」移行、5月の連休前後案も…ワクチン公費負担は高齢者ら限定検討 (読売新聞)コロナ、今春にも「5類」に 首相指示、公費負担縮小へ マスク着用「見直す」(日経新聞)2.処方の見返りに奨学寄付金を求めた元教授に有罪判決/三重三重大学附属病院の臨床麻酔部において、薬の処方の見返りに、奨学寄付金を受け取ったことで、第三者供賄罪と詐欺罪に問われた元教授の被告に対して、1月19日津地方裁判所は、懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の判決を言い渡した。判決によれば、2018年3月に、被告に対して小野薬品工業の薬剤「オノアクト」を大量に発注するように依頼された見返りに、被告が代表を務める一般社団法人に現金200万円を振り込ませた疑い。さらに、2019年から2020年には、手術患者60人あまりに対して、この薬剤を使用したように装って、未投薬にもかかわらず、約82万円の診療報酬を詐取した。被告は、この他に元講師と共謀して日本光電工業(東京都)の医療機器納入で便宜供与の見返りに、一般社団法人の口座に寄付金名目で200万円を振り込ませていた。(参考)三重大病院元教授に有罪判決 薬剤納入で供賄と詐欺罪 地裁判決(毎日新聞)病院汚職200万円は「賄賂」 地裁判決 三重大元教授有罪(読売新聞)三重大病院汚職事件 元教授に執行猶予付き有罪判決(NHK)3.全国の都道府県がん拠点病院、地域がん拠点病院を新たに指定/厚労省厚生労働省は1月19日に「がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」を開催し、昨年「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」からの提言を踏まえて定められた、がん診療連携拠点病院等の整備指針に基づき、2023年4月から「がん診療連携病院」を新たに指定することとした。全国の都道府県がん診療連携拠点病院は一般型49施設、特例型2施設、地域がん診療連携拠点病院は一般型325施設などが指定される見込み。検討会の意見を踏ませて、加藤厚労大臣が指定の手続きを行い、本年4月1日から新たながん診療拠点として指定される。なお、一部の病院では指定要件を充足していないため指定を見送ることも検討されたが、充足の見込みがたっておらず「空白医療圏」となってしまうため指定となった病院もみられた。(参考)都道府県がん拠点病院51施設、地域がん拠点病院350施設など、本年(2023年)4月1日から新指定-がん拠点病院指定検討会(Gem Med)第22回がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会(厚労省)がん診療連携拠点病院の指定要件(同)4.オンライン資格確認の導入のさらなる促進を/厚労省厚生労働省は、1月16日に社会保障審議会医療保険部会を開催し、オンライン資格確認などシステムについて討議を行った。今年4月に施行される保険医療機関・薬局のオンライン資格確認導入の義務化について、令和4年度末時点で「現在紙レセプトでの請求が認められている医療機関・薬局」については、やむを得ない事情があるとして、期限付きの経過措置を設けられたが、猶予期間の延長について、保険者らからは延長を懸念する声が上がった。医療機関・薬局でのオンライン資格確認システムの導入は、顔認証付きカードリーダー申込数は、義務化対象施設では97.7%と高いものの、準備完了は義務化対象施設でも52.6%と伸び悩みがみられていることが明らかになった。国としては、来年秋には、現行の健康保険証がマイナンバーカードに1本化されることもあり、令和5年3月末までのさらなる導入の加速化を図りたいとしている。(参考)第162回社会保障審議会医療保険部会(厚労省)マイナカード、進まぬ活用 医療、免許どうなるか(産経新聞)オンライン資格確認、電子処方箋など医療DXの推進には国民の理解が不可欠、十分かつ丁寧な広報に力を入れよ-社保審・医療保険部会(Gem Med)オンライン資格確認の導入猶予、延長をけん制 社保審・部会で複数委員(CB news)5.東工大と医科歯科大、統合後の新名称は「東京科学大学」に東京工業大学と東京医科歯科大学が2024年に統合されるのを受けて、大学側は新たな大学の名称を「東京科学大学(英語表記:Institute of Science Tokyo)」とすることを1月19日に発表した。両大学は新大学の目指す姿として、「両大学の尖った研究をさらに推進」、「部局などを超えて連携協働し『コンバージェンス・サイエンス』を展開」、「総合知に基づき未来を切り拓く高度専門人材の輩出」、「イノベーションを生み出す多様性、包摂性、公平性を持つ文化」を謳っており、できる限り早期の統合を目指して、今月中に大学設置・学校法人審議会へ提出することを決定している。(参考)新大学名称を「東京科学大学(仮称)」として 大学設置・学校法人審議会への提出を決定(東京医科歯科大学)東工大・医科歯科大、統合後の新名称「東京科学大学」に(日経新聞)東京科学大「皆が覚えられる名に」「親しみが大事」…「工業」「医科」使用も見送り(読売新聞)「東京科学大学」正式発表、略称は「科学大」…英語「Institute of Science Tokyo」(同)6.サイバー攻撃の共有・公表ガイダンスをパブリックコメント募集/内閣府内閣官房内閣サイバーセキュリティセンターは、近年、サイバー攻撃の脅威の高まりを受けて、被害を受けた組織が攻撃の内容や被害情報について外部に共有するためのガイダンス案を作成し、現在パブリックコメントを募集している。日本病院会の相澤会長は、1月17日の定例記者会見で、サイバーセキュリティに関する責任の範囲について統一基準を明確化するとともに費用負担について国側に求める方針を明らかにした。今後、日本病院会はサイバー攻撃に対する対応について、厚生労働省に対して提言をまとめたいとしている。なお、パブリックコメントは1月30日が締切となっている。(参考)「サイバー攻撃被害に係る情報の共有・公表ガイダンス(案)」に関する意見募集について(内閣府)サイバー攻撃被害「枠組み超えた情報連携が必要」内閣官房がガイダンス案公表、フローやFAQも(CB news)サイバーセキュリティ対策における医療機関・ベンダー等の間の責任分解、現場に委ねず、国が「統一方針」示すべき?日病・相澤会長(Gem Med)

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COPDガイドライン改訂―未診断者の早期発見と適切な管理を目指して

 COPDは、日本全体で約500万人を超える患者がいると見積もられており、多くの非専門医が診療している疾患である。そこで、疾患概念や病態、診断、治療について非専門医にもわかりやすく解説する「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版」が2022年6月24日に刊行された。本ガイドラインは、2018年版からの4年ぶりの改訂で、大きな変更点としてMindsに準拠した形で安定期COPD治療に関する15のクリニカルクエスチョン(CQ)を設定したことが挙げられる。本ガイドライン作成委員会の委員長を務めた柴田 陽光氏(福島県立医科大学呼吸器内科学講座 教授)に改訂点や日常診療におけるCOPD診断・治療のポイントについて、話を聞いた。未診断のCOPD患者を発見するために COPD患者は、なかなか症状を訴えないことが多いという。柴田氏は、「高齢の方は『歳だから、あるいはタバコを吸っているから仕方がない』と考えていたり、無意識のうちに身体活動レベルを落としていて、息切れを感じなくなっていたりすることもある」と話す。そのような背景から、未診断のままの患者が存在し、診断がつく時点ではかなり進行していることも多い。そこで第6版では、「風邪が治りにくい」「風邪の症状が強い」などの増悪期の症状や、気道感染時の症状で医療機関を受診したときが診断の契機となることなどを強調した。 COPDの確定診断には呼吸機能検査が必要であるが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響や設備の問題で実施が難しい場合も多い。その場合は「長期の喫煙歴と息切れがあり、咳や痰などの慢性的な症状が併存し、他疾患を否定できればCOPDの可能性がかなり高い。病診連携などを活用して画像診断を実施し、肺気腫を発見してほしい」と述べた。また、呼吸機能検査が難しい場合の診断について、日本呼吸器学会では「COVID-19流行期日常診療における慢性閉塞性肺疾患(COPD)の作業診断と管理手順」を公表しており、本ガイドラインにも掲載されているので参照されたい。管理目標と安定期の治療 第6版では、COPDの管理目標に「疾患進行の抑制および健康寿命の延長」が追加された。その背景として、「疾患進行抑制の最大の要素である禁煙の重要性を強調したい」、「何らかの症状を抱えていたり、生活に不自由を感じていたりする患者の多いCOPDでは、健康寿命に影響を及ぼすフレイルに陥らないようにして、健康寿命を延ばすことの重要性を強調したい」という意図があると、柴田氏は述べた。 安定期の治療について、第6版では「安定期COPD管理のアルゴリズム」が喘息病態の合併例と非合併例に分けて記載された。柴田氏は「COPD患者の約4分の1が喘息を合併し、喘息合併例では吸入ステロイド薬(ICS)が治療の基本となるため、治療の入り口を分けた」と解説する。具体的には、日頃からの息切れと慢性的な咳・痰がある場合、喘息非合併例では「長時間作用性抗コリン薬(LAMA)あるいは長時間作用性β2刺激薬(LABA)」、喘息合併例では「ICS+LABAあるいはICS+LAMA」から治療を開始し、症状の悪化あるいは増悪がみられる場合、喘息非合併例では「LAMA+LABA(テオフィリン・喀痰調整薬の追加)」、喘息合併例では「ICS+LABA+LAMA(テオフィリン・喀痰調整薬の追加)」にステップアップする。 喘息非合併例では、頻回の増悪かつ末梢好酸球数増多がみられる患者には「LAMA+LABA+ICS」の使用を考慮する。なお、喘息非合併の安定期COPD治療は、LAMAまたはLABAの単剤で始めなければならないというわけではなく、「CAT(COPDアセスメントテスト)が20点以上やmMRC(modified British Medical Research Council)グレード2以上といった症状の強い患者は、LAMA+LABAで治療を開始しても問題ない。詳細はCQ5を参照してほしい」と述べた。 安定期の治療について、第6版では15個のCQが設定された。その中で「強く推奨する」となったのは、「LAMAによる治療(CQ2)」「禁煙(CQ10)」「肺炎球菌ワクチン(CQ11)」「呼吸リハビリテーション(CQ12)」の4つである。とくに「呼吸リハビリテーション」について、柴田氏は「エビデンスレベルが高く、強く推奨するという結果になったことは、まだまだ普及が進んでいない呼吸リハビリテーションを普及させるという観点から、非常に意義のあることだと考えている」と話した。 COVID-19流行期における注意点として、「COPD患者は新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいため、感染対策が重要となるが、身体活動性を落とさないよう定期的な運動は続けてほしい。薬物療法については、ICSを使用していてもCOVID-19の重症化リスクは上昇しないため、現在の治療を継続することが重要」とした。診断・治療共に積極的な病診連携の活用を 第6版では、病診連携の項でプライマリケア医と呼吸器専門医の役割を詳細に解説している。柴田氏は、非専門医に期待する役割について「COPD治療の基本である禁煙の徹底、併存症の管理、インフルエンザや新型コロナのワクチンに加えて肺炎球菌ワクチン接種を行ってほしい」と述べた。加えて、「COPD患者の肺がんの年間発生率は2%ともいわれるため、願わくは年1回など定期的な低線量CTを実施してほしい」とも述べた。一方、呼吸器専門医については、「呼吸機能検査を実施して診断の入口となることや、治療をしていても増悪を繰り返すような管理の難しい患者の治療、呼吸リハビリテーションの実施といった役割を期待する」と話し、病診連携を活用して呼吸器専門医に紹介してほしいと強調した。 また、COPDの薬物治療は吸入療法が中心となるため、適切な吸入指導が欠かせない。しかし、吸入薬の取り扱いや指導に不慣れな医師もいるだろう。そこで活用してほしいのが、病薬連携だという。柴田氏は「薬剤服用歴管理指導料吸入薬指導加算が算定できるため、吸入薬の取り扱いに慣れている薬局の薬剤師に、吸入指導を依頼することも可能だ。デバイスについては、患者によって向き・不向きがあり、処方変更が必要になることもあるため、病薬連携が重要となる」と述べた。COPD患者の発見と積極的な介入を 柴田氏は、非専門医の先生方へ「皆さんの思っている以上にCOPD患者は多い。70歳以上の高齢男性では4人に1人が何らかの気流閉塞があることが知られており、高血圧や循環器疾患の3人に1人はCOPDというデータもある。高齢で糖尿病を有し喫煙歴のある患者にもCOPDが多い。このような患者をどんどん発見して、治療介入してほしい。その際、本ガイドラインを活用してほしい」とメッセージを送った。COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版定価:4,950円(税込)判型:A4変型判頁数:312頁発行:2022年6月編集:日本呼吸器学会COPDガイドライン第6版作成委員会発行:メディカルレビュー社

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