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妊婦の罹患・死亡リスク、オミクロン株優勢中に増大/Lancet

 新型コロナウイルスのオミクロン株が懸念される変異株となった半年間について調べたところ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断を受けた妊婦は、MMMI(maternal morbidity and mortality index、妊婦の罹患率・死亡率指数)リスクが増大していたことが明らかにされた。とくに、ワクチン未接種の重症COVID-19妊婦で、同リスク増大はより顕著だった。また、COVID-19の重症合併症に対するワクチンの有効性は、完全接種(2回またはAd26.COV2.Sワクチン1回)で48%と高かった。英国・オックスフォード大学のJose Villar氏らが、4,618人の妊婦を対象に行った大規模前向き観察試験「INTERCOVID-2022試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2023年1月17日号で発表された。18ヵ国41病院を通じて試験 INTERCOVID-2022試験は、18ヵ国41病院を通じて行われ、リアルタイムPCR検査でCOVID-19が確定した妊婦1人について、COVID-19と診断されていない2人の妊婦(マッチングなし)を、同時かつ連続的に対照として被験者に加えた。母親と新生児について、退院まで追跡した。 主要アウトカムは、MMMIとSNMI(severe neonatal morbidity index、重度新生児罹患率指数)、SPMMI(severe perinatal morbidity and mortality index、重度周産期罹患率・死亡率指数)だった。 ワクチン有効性は、母体リスクプロファイルで補正し推算した。COVID-19妊婦、MMMIリスクは1.16倍、ワクチン非接種では1.36倍 世界保健機関(WHO)がオミクロン株に対する懸念を表明した2021年11月27日から、2022年6月30日までに4,618人の妊婦を被験者として登録した。うち、1,545人(33%)がCOVID-19と診断され(中央値:妊娠36.7週)、3,073人(67%)はCOVID-19と診断されなかった。 COVID-19群は対照群に比べ、MMMIリスク(相対リスク[RR]:1.16(95%信頼区間[CI]:1.03~1.31)、SPMMIリスク(1.21、1.00~1.46)の増大が認められた。SNMIについては、COVID-19群の対照群に対する増大が認められたが(1.23、0.88~1.71)、95%CI下限値は1を下回っていた。 COVID-19群でワクチン非接種の妊婦は、MMMIリスクのさらなる増大が認められた(RR:1.36、95%CI:1.12~1.65)。 重症COVID-19の妊婦は、重度母体合併症リスク(RR:2.51、95%CI:1.84~3.43)、周産期合併症リスク(1.84、1.02~3.34)、他科への紹介・集中治療室(ICU)入室・死亡のいずれかの発生リスク(11.83、6.67~20.97)の総合的なリスク増大がみられた。ワクチン非接種で重症COVID-19の妊婦は、MMMIリスク(RR:2.88、95%CI:2.02~4.12)と、他科への紹介・ICU入室・死亡のいずれかの発生リスク(20.82、10.44~41.54)の増大がみられた。 被験者のうちCOVID-19ワクチンを1回以上接種していた女性は2,886例(63%)で、完全接種またはブースター接種(3回またはAd26.COV2.Sワクチン2回)は2,476例(54%)だった。 他科への紹介・ICU入室・死亡のいずれかの発生に関するワクチン有効性(全ワクチン統合)は、ワクチン完全接種妊婦が48%(95%CI:22~65)、ブースター接種妊婦が76%(47~89)だった。COVID-19診断妊婦の同有効性は、それぞれ74%(48~87)、91%(65~98)だった。

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新型コロナの罹患後症状(後遺症)ってどういう症状?

Q.新型コロナの罹患後症状(後遺症)ってどういう症状?頭痛、睡眠障害、認知障害、記憶力・集中力低下、脱毛、味覚・嗅覚障害、目・耳の異常胸痛、動悸、疲労・倦怠感腹痛、悪心、下痢、食欲低下咳、咽頭痛、喀痰、息切れ関節痛、筋肉痛、筋力低下勃起異常、生理不順、月経前症候群の悪化厚生労働省新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&AYadav S, et al. J Clin Oncol. 2023 Jan 9. [Epub ahead of print]Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Imoto W, et al. Sci Rep. 2022;12:22413.Q.新型コロナの罹患後症状(後遺症)って何ですか?新型コロナウイルス感染症にかかった後、ほとんどの患者さんは時間経過とともに症状が改善します。しかし、急性期の症状がずっと持続したり、回復した後に新たに/または再び出現したりする症状があることがわかっています。これら全般の症状を新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(後遺症)と言います。Q.罹患後症状(後遺症)はいつまで続くのですか?罹患後症状(後遺症)については、世界的に調査研究が進められている最中ですが、時間の経過とともに改善することが多いとされています。ただし、急性期の重症度に関係なく、新型コロナウイルスへの感染から約1年を経過しても、罹患後症状(後遺症)が約半数の方に残るという報告もあります。厚生労働省新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&AYadav S, et al. J Clin Oncol. 2023 Jan 9. [Epub ahead of print]Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.Imoto W, et al. Sci Rep. 2022;12:22413.

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第145回 三重大臨床麻酔部汚職事件、元教授に懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の有罪判決、賄賂は「オノアクト使用の見返りだった」

岸田首相G7広島サミットを意識?今春にもコロナは5類にこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この連載もまもなく3年を迎え150回近くとなりますが、その半分以上は新型コロウイルス感染症に対する国の対応について書いてきたのではないかと思います。そのコロナ対応も、いよいよ大きな転換期を迎えます。岸田 文雄首相が1月20日、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類を、今春から5類に変更する方針を示し、23日から専門家らによる感染症部会で本格的な議論が開始されたためです。昨年11月、感染症法等を改正し、都道府県は地域医療支援病院や特定機能病院などとあらかじめ協定を結び、病床確保や発熱外来といった医療の提供を義務付けることになったばかりですが、5類にすればそうした義務付けから外れることになります。これまでコロナを診てこなかった医療機関も、通常の風邪と同じように診療、入院させるようになると期待されていますが、本当にそうなるでしょうか。コロナ禍の中での多くの医療機関の消極的な対応を見てきた経験から言うと、はなはだ疑問です。あわせて気になったのは、1月19日に日本医師会の松本 吉郎会長が岸田総理と面会し、政府が新型コロナの感染症法上の見直しを行った場合でも、公費負担などを継続するよう要望したことです。報道等によれば松本会長は「患者さんに負担が掛からないように、それから医療機関の感染対応にもできる限り支援を継続していただきたいということをお話しした」と語ったそうです。5類に移行すれば医療費などの公費負担の法的根拠がなくなるのは当然です。なのに「公費負担は続けろ」とは、意味がわかりません。普通の風邪ならば、医療機関を受診したい人や重症化リスクが高い高齢者などは受診し、そうでない人は自力で治す(もともとほとんどの風邪は医療機関を受診しなくても治ります)というのが筋です。公費負担を続けるということは、受診不要と思われる軽症患者まで掘り起こすことになりそうです。医療機関の経営にはプラスでしょうが、結局、無駄な医療費の増加を招くだけではないでしょうか。松本会長の要請に岸田首相は「しっかりと検討したい」と応じたそうです。5月開催予定のG7広島サミットで海外首脳を迎える前に、5類にして屋内のマスク着用も不要にしておきたい、という少々自分勝手な考えもあるのではないでしょうか。未だ、マスク着用がルール化されている先進国は日本くらいだからです(エリザベス女王の国葬の時、日本の天皇陛下のマスク着用が話題となりました)。複数の関係者たちの公判のうち大トリとも言える元教授に判決さて今回は、この連載でも何度(今回で7回目)も取り上げてきた三重大病院臨床麻酔部の汚職事件を取り上げます(「第133回 三重大病院臨床麻酔部事件、元教授に懲役4年の求刑、大学は新教授で再スタート」ほか)。薬剤の積極的な使用や医療機器の納入に便宜を図る見返りに現金を受け取ったなどとして、第三者供賄と詐欺の罪に問われた、三重大学医学部附属病院の臨床麻酔部元教授(56歳)の判決公判が1月19日に津地方裁判所であり、柴田 誠裁判長は懲役2年6ヵ月・執行猶予4年と、元教授が代表理事を務める一般社団法人に追徴金200万円(求刑懲役4年、追徴金200万円)とする有罪判決を言い渡しました。ちょうど新型コロナウイルス感染症が猛威をふるい始めた2020年9月に発覚したこの事件、複数の関係者たちの公判のうち大トリとも言える元教授の判決が出たことで、被告全員の公判が一通り終了したことになります。一連の事件では7人の有罪が既に確定この事件で被告人である元教授は、小野薬品工業が製造・販売する薬剤「ランジオロール塩酸塩(商品名:オノアクト)」を積極的に使う見返りに大学の口座に寄付金200万円を振り込ませたほか、日本光電からも200万円を提供させたとして、第三者供賄罪に問われていました。また、小野薬品のオノアクトを投与したように装い診療報酬を詐取(約80万円)したとする詐欺罪でも起訴されていました。元教授の公判は、他の被告の公判がすべて終わった2022年4月から始まりました。ちなみに、一連の事件では、診療報酬詐取事件で共犯とされた同部の元准教授、医療機器納入を巡る汚職事件で共犯とされた元講師、そして小野薬品の社員2人、日本光電の元社員3人の計7人の有罪が既に確定しています。公電磁的記録不正作出、公電磁的記録供用と詐欺の罪に問われた元准教授には懲役2年6ヵ月・執行猶予4年、第三者供賄罪に問われた元講師には懲役1年・執行猶予3年の判決が下されています。一方、贈賄罪に問われた小野薬品の社員2人には懲役8ヵ月・執行猶予3年、同じく贈賄罪に問われた日本光電の元社員1人には懲役1年・執行猶予3年、元社員2人には懲役10ヵ月・執行猶予3年の判決が下されています。最大の争点はオノアクト採用への元教授の関わり2022年4月から始まり、計14回、6ヵ月にも及ぶ審理を経て、10月に結審した今回の公判、最大の争点はオノアクト採用への元教授の関わりでした。小野薬品を巡る第三者供賄罪について元教授は、「オノアクトの効能に着目して積極的に使用していく方針を採用した」などと主張していました。また、詐欺罪についても無罪を主張し、寄付金の対価性(いわゆる見返り)が認定されるかどうかが争点となっていました。一方で元教授は、日本光電に200万円を振り込ませたとする第三者供賄罪は認めていました。報道等によれば、元教授は公判で「職務権限を利用して対価をもらったことは恥ずかしい」と語るとともに、お金の使い道を「麻酔科医を集めるため。ほとんどを飲食代に充てた」と説明したとのことです。元教授が臨床麻酔部教授に就任して以降オノアクトの処方量急増各紙報道等によれば、同日の判決で津地裁はオノアクトの積極使用と寄付の関連を認め、対価性があったとしています。具体的には、元教授が臨床麻酔部教授に就任して以降オノアクトの処方量が急増したこと、小野薬品の当時のMRの証言から元教授が「寄付金が必要だ頼むよ」「最初に世話になったところは忘れないよ」などと供述したこと、MRが作成した週報に「講演会活動を通じ三重大で『OA(オノアクト)をもっと出すための相談』が行えた。そのもっとを今後具体化していく段階に今後していこう」と記載していたことなどを指摘、「200万円の寄附とオノアクトの処方が密接に関連付けられていた」として寄付金の対価性があったと判断しました。「職務の公正さや社会の信頼を害した程度は大きい」以上を踏まえ、柴田裁判長は判決理由で「寄附金を獲得するためになりふり構わず処方量の増大に突き進んだことは異常というほかなく、職務の公正さや社会の信頼を害した程度は大きいと言わざるを得ない」と指摘。さらに、「使用されずに廃棄される医薬品が大量に生じる歪みを発生させ、診療報酬の搾取につながった」と非難したとのことです。ただ、量刑については「職務の公正さや社会の信頼を害した程度は大きいと言わざるをえないが、前科のない被告人をただちに刑務所に収容するのは重きに過ぎる」などとして懲役2年6ヵ月・執行猶予4年の有罪判決としたとのことです。判決に対し、元教授の弁護士は「判決は不当で、控訴するかどうかは被告人と相談したい」と述べたとのことです。一方、三重大学病院の池田 智明病院長は「有罪判決が下されたことを真摯に受け止めます。今後も信頼回復に向け、全力を尽くします」とのコメントを出しています。新たなスタートを切った三重大麻酔科さて、元教授の逮捕によって、三重大病院の麻酔科は混乱に陥り、地域医療にも多大な影響を及ぼしました。さらに製薬会社が大学などに提供している奨学寄付金の是非についても議論が沸き起こり、奨学寄付金を廃止する動きも広まっているようです。その意味で、元教授は法律では罪に問われない部分でも、さまざまな“罪”を犯していたと言えるでしょう。三重大の麻酔科については、2022年4月には新教授が就任、手術での麻酔を行う「臨床麻酔部」を廃止し、痛みを取り除く治療などを行う「麻酔科」に統合するという組織改編も行われました。また、麻酔の専門医を育成する研修プログラムも2023年度からスタートするとのことです。元教授が控訴すれば、裁判は続くことになりますが、少なくとも三重大病院麻酔科の再スタートは喜ばしいことです。幾多の“黒歴史”から決別し、地域の麻酔科医療を牽引する存在になることを願います。

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オミクロン株の感染爆発のファクターを解明/日本大学ほか

 わが国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第8波の主な感染原因であるオミクロン株。この変異株について、今井 健一氏(日本大学歯学部感染症免疫学講座 教授)らの研究グループは、オミクロン株感染者の唾液中には、宿主細胞の内外に付随していない裸のウイルス(セルフリーウイルス)が、従来株やデルタ株よりも高比率に含まれていることを世界で初めて発見し、JAMA Network Open誌2023年1月9日号に報告した。 細胞に付随しているウイルスと比較すると、セルフリーウイルスはとても小さく軽いため、唾液に覆われた状態でも室内に長時間漂うことができる。オミクロン株では、このセルフリーウイルスの唾液への排出量がデルタ株の2.7倍、従来株の17.8倍と大幅に増加したことが、エアロゾル感染によるCOVID-19の爆発的拡大につながったものと考えられるという。セルフリーウイルスがオミクロン株では従来株の17.8倍 新型コロナウイルスは、口腔内の上皮や唾液腺の細胞に感染し増殖するため、唾液中には多くのウイルスが含まれている。そのため、会話、せき・くしゃみのたびに放出される飛沫や微細なエアロゾルによって伝播され感染が広がる。オミクロン株は、従来株やデルタ株などと異なり、飛沫感染に加えてエアロゾル・空気感染によって伝播するため、現在の爆発的な感染拡大につながったと考えられているが、その仕組みは良くわかっていなかった。今回の研究はこの仕組みを明らかにすることを目的とした。 研究グループでは、新型コロナウイルスは、従来株→デルタ株→オミクロン株とウイルスが変異するのに伴い、唾液中に排出されるウイルスの量自体が多くなっていると推測。また、エアロゾル感染が成立するためには、ウイルスが飛沫に含まれて拡散する状態よりも遠くに飛散し、かつ飛沫よりも長時間室内に漂うエアロゾルに含まれて拡散する状態が必要とも考慮した。 そこで、従来株、デルタ株、およびオミクロン株の感染者から採取した唾液を、全唾液と遠心分離で細胞成分を除いた上澄み液とに分け、それぞれに含まれるウイルス量を定量した。 主な結果は以下のとおり。・従来株では、全唾液1mL中に約123万個(中央値、以下同じ)のウイルスが存在していることがわかった。そのうち、セルフリーウイルスは1mL中に約18万個で、全唾液中のウイルスに占めるセルフリーウイルスの割合は約5.9%だった。・デルタ株では、全唾液1mL中に約1,860万個と従来株に比べて15倍ものウイルスが存在していた。そのうち、セルフリーウイルスは1mL中に約117万個で、全唾液中に占める割合は約4.8%で従来株と類似した値だった。・オミクロン株では、全唾液1mL中にデルタ株の半分強、約952万個のウイルスが存在していた。一方で、セルフリーウイルスは1mL中に約321万個が存在し、デルタ株の2.7倍、従来株の17.8倍と大幅に増加していた。全唾液中に占める割合は約21.3%で、従来株やデルタ株と比較して約4倍もセルフリーウイルスの割合が増加していた。 以上から、唾液中のセルフリーウイルスの量が多ければ、新たな宿主に到達した際に新型コロナウイルスの受容体であるACE2への結合がしやすく、感染効率も自然と高まる。さらに、セルフリーウイルスは細胞付随ウイルスよりも3倍近い速さで新たな未感染の細胞に感染するため、セルフリーウイルスが唾液中に多く含まれることは感染爆発の主要な原因となり得ると考えられた。 同研究グループは、「今回の研究から大規模クラスターが多発している現状を説明し得るものと考えられ、また、感染予防策として換気の必要性と密閉空間でのマスク着用励行の根拠ともなる」と考察している。さらに本研究は、「『エアロゾル・空気感染におけるセルフリーウイルスの重要性を初めて提唱した』という点で重要であり、今後、インフルエンザや麻疹、水痘などの他のウイルス感染症への適応や未知のウイルス感染症が発生した際、そして、ウイルス変異が生じるたびにそのウイルスの性状を知り、感染対策を立てる基本概念として適用される」と展望を述べている。

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厚労省の「解熱鎮痛薬等110番」は供給不足の解決にはならない!【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第104回

 昨年末、厚生労働省に「医療用解熱鎮痛薬等110番」という相談窓口が設置されました。解熱鎮痛薬などを入手できない医療機関や薬局のために設置された供給相談窓口ですが、開始1ヵ月ですでに混乱が生じているようです。厚生労働省が12月14日に開設した医療用薬の「供給相談窓口」(医療用解熱鎮痛薬等110番)に対し、約3週間で薬局や医療機関から500件もの相談が寄せられていることがわかった。(中略)一方、厚労省への相談件数が伸びるほど、卸側の負担は増大していくかたちとなり「お上からの重圧感が強いので対応せざるを得ないが、その後の対応や価格に関するトラブルも出てきている」(広域卸関係者)という。(2023年1月5日 RISFAX)この相談窓口の対象は、発熱外来や新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れている医療機関やこれらの医療機関の処方せんを受け付けている薬局で、かつ下記をすべて満たす必要があります。解熱鎮痛薬、鎮咳薬、トラネキサム酸の在庫が少ない平時に取引のある卸売業者に連絡しても入手が困難である業務に支障を来たすとともに患者に迷惑を掛けてしまう恐れがある全国的に医薬品の供給が不足しているのは言わずもがなの状態で、何も困っていません!と言える薬局は少ないのではないでしょうか。本来であればありがたい話のはずなのですが、この窓口は厚生労働省の中に設置されているため、相談を受け付けても医薬品を製造して出荷することも、納入を早めることもできません。厚生労働省が医薬品調達に窮している薬局などの訴えを聞き、卸売業者へ納入調整を依頼するというものです。調整依頼と言っていますが、厚生労働省から連絡があった卸売業者は、その相談元の薬局などに医薬品を納入せざるを得ない状態になるのではないかと思います。卸売業者も在庫が限られていて精一杯の調整をしている中、厚生労働省がそこにプレッシャーをかけて優先順位を繰り上げるというのは、本質的にはなんの解決にもなっていないのでは…と思うのは私だけではないはずです。医薬品の供給量が減っている一方で、解熱鎮痛薬や咳止め薬などの需要が高まっていることが原因なのに、なぜこのような窓口の設置が解決につながると思ったのかは不思議です。現場としては、どこか別のところにしわ寄せがいく納入調整ではなく、本質的な供給不足の解決や不適切処方に対する対応がとられることを期待したいと思います。

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コロナワクチンの免疫応答、年齢による違い/京大iPS細胞研究所

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチンの個人差・年齢差を検討したところ、65歳以上の高齢者ではワクチン接種後のT細胞応答の立ち上がりが遅い一方、収束は早いという特徴があることを、京都大学iPS細胞研究所の城 憲秀氏らによる共同研究グループが明らかにした。Nature Aging誌 2023年1月12日掲載の報告。 一般に加齢とともに免疫機能が低下することはよく知られているが、T細胞が生体内で刺激を受けた際の応答が加齢によってどのように、またどの程度変化するかは不明であった。そこで研究グループは、ワクチン接種後のT細胞応答や抗体産生、副反応との関連を調査した。 対象は、ファイザー製のSARS-CoV-2mRNAワクチン(BNT162b2)を2回接種した65歳以上の高齢者109人(年齢中央値71歳[範囲:65~81歳]、男性56人)と、65歳未満の成人107人(年齢中央値43歳[同:23~63歳]、男性43人)の計216人であった。血液の採取は、ワクチン接種前、1回目接種から約2週間後、2回目接種から約2週間後、1回目接種の約3ヵ月後の計4回行った。 主な結果は以下のとおり。・SARS-CoV-2のスパイクタンパク質受容体結合ドメインに対するIgG抗体価は、両群ともにワクチン2回接種後に大幅な上昇が見られた。しかし、抗体価のピークの中央値は、成人群で27,200AU mL-1、高齢者群で18,200AU mL-1であり、高齢者群では約40%低かった。・ワクチン特異的ヘルパーT細胞は、両群ともに1回目の接種で大きく増加し、2回目の接種後も同程度を保ち、3ヵ月後に減少した。高齢者群では1回目接種後の増加が成人群よりも少なかったが、2回目接種後に同程度となり、3ヵ月後には再び成人群よりも少なくなった。・2回目接種後の局所的な副反応(接種部位の疼痛)は、高齢者群と成人群で同程度であったが、全身性の副反応(発熱、倦怠感、頭痛)は成人群で有意に多かった。ただし、高齢者群では、解熱鎮痛薬を服用している割合が高かった。・年齢にかかわらず、2回目接種後に38℃以上の発熱があった人では、1回目接種後のT細胞応答と2回目接種後のIgG抗体価が高かった。・ワクチン特異的Th1細胞における、T細胞活性化を抑制するPD-1の発現量は、両群ともに2回目接種後にピークを迎えたが、高齢者群では成人群と比べて有意に多かった。また、PD-1の発現量が多い高齢者では、キラーT細胞の誘導が低い傾向にあり、免疫反応にブレーキがかかりやすくなっている可能性が示唆された。 研究グループは、これらの結果から「高齢者群では、T細胞応答の立ち上がりが遅く、収束が早いことが明らかになった。本研究は、高い有効性を持つワクチンの開発と、高齢者に適したワクチン接種スケジュールの立案に役立つ可能性がある」とまとめた。

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第131回 新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府

<先週の動き>1.新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府2.処方の見返りに奨学寄付金を求めた元教授に有罪判決/三重3.全国の都道府県がん拠点病院、地域がん拠点病院を新たに指定/厚労省4.オンライン資格確認の導入のさらなる促進を/厚労省5.東工大と医科歯科大、統合後の新名称は「東京科学大学」に6.サイバー攻撃の共有・公表ガイダンスをパブリックコメント募集/内閣府1.新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府岸田総理は、感染症法で現在「2類相当」として取り扱っている新型コロナウイルスについて重症化率が2022年夏時点で60歳未満が0.01%、80歳以上でも1.86%と季節性インフルエンザ並みになったとして、麻疹や風疹と同じ「5類」扱いとする方針を固めた。今後は、一般の医療機関でも新型コロナウイルスの患者の受け入れは可能としている。厚生労働省では、ワクチンの公費負担での接種対象を高齢者とするほか屋内でのマスク着用のあり方など、今後の方針について検討を開始している。来週には、専門家からなる厚生科学審議会で今後の方針について議論を行う。(参考)新型コロナ 今春「5類」移行検討 公費負担など本格議論へ(NHK)コロナ「5類」移行、5月の連休前後案も…ワクチン公費負担は高齢者ら限定検討 (読売新聞)コロナ、今春にも「5類」に 首相指示、公費負担縮小へ マスク着用「見直す」(日経新聞)2.処方の見返りに奨学寄付金を求めた元教授に有罪判決/三重三重大学附属病院の臨床麻酔部において、薬の処方の見返りに、奨学寄付金を受け取ったことで、第三者供賄罪と詐欺罪に問われた元教授の被告に対して、1月19日津地方裁判所は、懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の判決を言い渡した。判決によれば、2018年3月に、被告に対して小野薬品工業の薬剤「オノアクト」を大量に発注するように依頼された見返りに、被告が代表を務める一般社団法人に現金200万円を振り込ませた疑い。さらに、2019年から2020年には、手術患者60人あまりに対して、この薬剤を使用したように装って、未投薬にもかかわらず、約82万円の診療報酬を詐取した。被告は、この他に元講師と共謀して日本光電工業(東京都)の医療機器納入で便宜供与の見返りに、一般社団法人の口座に寄付金名目で200万円を振り込ませていた。(参考)三重大病院元教授に有罪判決 薬剤納入で供賄と詐欺罪 地裁判決(毎日新聞)病院汚職200万円は「賄賂」 地裁判決 三重大元教授有罪(読売新聞)三重大病院汚職事件 元教授に執行猶予付き有罪判決(NHK)3.全国の都道府県がん拠点病院、地域がん拠点病院を新たに指定/厚労省厚生労働省は1月19日に「がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」を開催し、昨年「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」からの提言を踏まえて定められた、がん診療連携拠点病院等の整備指針に基づき、2023年4月から「がん診療連携病院」を新たに指定することとした。全国の都道府県がん診療連携拠点病院は一般型49施設、特例型2施設、地域がん診療連携拠点病院は一般型325施設などが指定される見込み。検討会の意見を踏ませて、加藤厚労大臣が指定の手続きを行い、本年4月1日から新たながん診療拠点として指定される。なお、一部の病院では指定要件を充足していないため指定を見送ることも検討されたが、充足の見込みがたっておらず「空白医療圏」となってしまうため指定となった病院もみられた。(参考)都道府県がん拠点病院51施設、地域がん拠点病院350施設など、本年(2023年)4月1日から新指定-がん拠点病院指定検討会(Gem Med)第22回がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会(厚労省)がん診療連携拠点病院の指定要件(同)4.オンライン資格確認の導入のさらなる促進を/厚労省厚生労働省は、1月16日に社会保障審議会医療保険部会を開催し、オンライン資格確認などシステムについて討議を行った。今年4月に施行される保険医療機関・薬局のオンライン資格確認導入の義務化について、令和4年度末時点で「現在紙レセプトでの請求が認められている医療機関・薬局」については、やむを得ない事情があるとして、期限付きの経過措置を設けられたが、猶予期間の延長について、保険者らからは延長を懸念する声が上がった。医療機関・薬局でのオンライン資格確認システムの導入は、顔認証付きカードリーダー申込数は、義務化対象施設では97.7%と高いものの、準備完了は義務化対象施設でも52.6%と伸び悩みがみられていることが明らかになった。国としては、来年秋には、現行の健康保険証がマイナンバーカードに1本化されることもあり、令和5年3月末までのさらなる導入の加速化を図りたいとしている。(参考)第162回社会保障審議会医療保険部会(厚労省)マイナカード、進まぬ活用 医療、免許どうなるか(産経新聞)オンライン資格確認、電子処方箋など医療DXの推進には国民の理解が不可欠、十分かつ丁寧な広報に力を入れよ-社保審・医療保険部会(Gem Med)オンライン資格確認の導入猶予、延長をけん制 社保審・部会で複数委員(CB news)5.東工大と医科歯科大、統合後の新名称は「東京科学大学」に東京工業大学と東京医科歯科大学が2024年に統合されるのを受けて、大学側は新たな大学の名称を「東京科学大学(英語表記:Institute of Science Tokyo)」とすることを1月19日に発表した。両大学は新大学の目指す姿として、「両大学の尖った研究をさらに推進」、「部局などを超えて連携協働し『コンバージェンス・サイエンス』を展開」、「総合知に基づき未来を切り拓く高度専門人材の輩出」、「イノベーションを生み出す多様性、包摂性、公平性を持つ文化」を謳っており、できる限り早期の統合を目指して、今月中に大学設置・学校法人審議会へ提出することを決定している。(参考)新大学名称を「東京科学大学(仮称)」として 大学設置・学校法人審議会への提出を決定(東京医科歯科大学)東工大・医科歯科大、統合後の新名称「東京科学大学」に(日経新聞)東京科学大「皆が覚えられる名に」「親しみが大事」…「工業」「医科」使用も見送り(読売新聞)「東京科学大学」正式発表、略称は「科学大」…英語「Institute of Science Tokyo」(同)6.サイバー攻撃の共有・公表ガイダンスをパブリックコメント募集/内閣府内閣官房内閣サイバーセキュリティセンターは、近年、サイバー攻撃の脅威の高まりを受けて、被害を受けた組織が攻撃の内容や被害情報について外部に共有するためのガイダンス案を作成し、現在パブリックコメントを募集している。日本病院会の相澤会長は、1月17日の定例記者会見で、サイバーセキュリティに関する責任の範囲について統一基準を明確化するとともに費用負担について国側に求める方針を明らかにした。今後、日本病院会はサイバー攻撃に対する対応について、厚生労働省に対して提言をまとめたいとしている。なお、パブリックコメントは1月30日が締切となっている。(参考)「サイバー攻撃被害に係る情報の共有・公表ガイダンス(案)」に関する意見募集について(内閣府)サイバー攻撃被害「枠組み超えた情報連携が必要」内閣官房がガイダンス案公表、フローやFAQも(CB news)サイバーセキュリティ対策における医療機関・ベンダー等の間の責任分解、現場に委ねず、国が「統一方針」示すべき?日病・相澤会長(Gem Med)

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COPDガイドライン改訂―未診断者の早期発見と適切な管理を目指して

 COPDは、日本全体で約500万人を超える患者がいると見積もられており、多くの非専門医が診療している疾患である。そこで、疾患概念や病態、診断、治療について非専門医にもわかりやすく解説する「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版」が2022年6月24日に刊行された。本ガイドラインは、2018年版からの4年ぶりの改訂で、大きな変更点としてMindsに準拠した形で安定期COPD治療に関する15のクリニカルクエスチョン(CQ)を設定したことが挙げられる。本ガイドライン作成委員会の委員長を務めた柴田 陽光氏(福島県立医科大学呼吸器内科学講座 教授)に改訂点や日常診療におけるCOPD診断・治療のポイントについて、話を聞いた。未診断のCOPD患者を発見するために COPD患者は、なかなか症状を訴えないことが多いという。柴田氏は、「高齢の方は『歳だから、あるいはタバコを吸っているから仕方がない』と考えていたり、無意識のうちに身体活動レベルを落としていて、息切れを感じなくなっていたりすることもある」と話す。そのような背景から、未診断のままの患者が存在し、診断がつく時点ではかなり進行していることも多い。そこで第6版では、「風邪が治りにくい」「風邪の症状が強い」などの増悪期の症状や、気道感染時の症状で医療機関を受診したときが診断の契機となることなどを強調した。 COPDの確定診断には呼吸機能検査が必要であるが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響や設備の問題で実施が難しい場合も多い。その場合は「長期の喫煙歴と息切れがあり、咳や痰などの慢性的な症状が併存し、他疾患を否定できればCOPDの可能性がかなり高い。病診連携などを活用して画像診断を実施し、肺気腫を発見してほしい」と述べた。また、呼吸機能検査が難しい場合の診断について、日本呼吸器学会では「COVID-19流行期日常診療における慢性閉塞性肺疾患(COPD)の作業診断と管理手順」を公表しており、本ガイドラインにも掲載されているので参照されたい。管理目標と安定期の治療 第6版では、COPDの管理目標に「疾患進行の抑制および健康寿命の延長」が追加された。その背景として、「疾患進行抑制の最大の要素である禁煙の重要性を強調したい」、「何らかの症状を抱えていたり、生活に不自由を感じていたりする患者の多いCOPDでは、健康寿命に影響を及ぼすフレイルに陥らないようにして、健康寿命を延ばすことの重要性を強調したい」という意図があると、柴田氏は述べた。 安定期の治療について、第6版では「安定期COPD管理のアルゴリズム」が喘息病態の合併例と非合併例に分けて記載された。柴田氏は「COPD患者の約4分の1が喘息を合併し、喘息合併例では吸入ステロイド薬(ICS)が治療の基本となるため、治療の入り口を分けた」と解説する。具体的には、日頃からの息切れと慢性的な咳・痰がある場合、喘息非合併例では「長時間作用性抗コリン薬(LAMA)あるいは長時間作用性β2刺激薬(LABA)」、喘息合併例では「ICS+LABAあるいはICS+LAMA」から治療を開始し、症状の悪化あるいは増悪がみられる場合、喘息非合併例では「LAMA+LABA(テオフィリン・喀痰調整薬の追加)」、喘息合併例では「ICS+LABA+LAMA(テオフィリン・喀痰調整薬の追加)」にステップアップする。 喘息非合併例では、頻回の増悪かつ末梢好酸球数増多がみられる患者には「LAMA+LABA+ICS」の使用を考慮する。なお、喘息非合併の安定期COPD治療は、LAMAまたはLABAの単剤で始めなければならないというわけではなく、「CAT(COPDアセスメントテスト)が20点以上やmMRC(modified British Medical Research Council)グレード2以上といった症状の強い患者は、LAMA+LABAで治療を開始しても問題ない。詳細はCQ5を参照してほしい」と述べた。 安定期の治療について、第6版では15個のCQが設定された。その中で「強く推奨する」となったのは、「LAMAによる治療(CQ2)」「禁煙(CQ10)」「肺炎球菌ワクチン(CQ11)」「呼吸リハビリテーション(CQ12)」の4つである。とくに「呼吸リハビリテーション」について、柴田氏は「エビデンスレベルが高く、強く推奨するという結果になったことは、まだまだ普及が進んでいない呼吸リハビリテーションを普及させるという観点から、非常に意義のあることだと考えている」と話した。 COVID-19流行期における注意点として、「COPD患者は新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいため、感染対策が重要となるが、身体活動性を落とさないよう定期的な運動は続けてほしい。薬物療法については、ICSを使用していてもCOVID-19の重症化リスクは上昇しないため、現在の治療を継続することが重要」とした。診断・治療共に積極的な病診連携の活用を 第6版では、病診連携の項でプライマリケア医と呼吸器専門医の役割を詳細に解説している。柴田氏は、非専門医に期待する役割について「COPD治療の基本である禁煙の徹底、併存症の管理、インフルエンザや新型コロナのワクチンに加えて肺炎球菌ワクチン接種を行ってほしい」と述べた。加えて、「COPD患者の肺がんの年間発生率は2%ともいわれるため、願わくは年1回など定期的な低線量CTを実施してほしい」とも述べた。一方、呼吸器専門医については、「呼吸機能検査を実施して診断の入口となることや、治療をしていても増悪を繰り返すような管理の難しい患者の治療、呼吸リハビリテーションの実施といった役割を期待する」と話し、病診連携を活用して呼吸器専門医に紹介してほしいと強調した。 また、COPDの薬物治療は吸入療法が中心となるため、適切な吸入指導が欠かせない。しかし、吸入薬の取り扱いや指導に不慣れな医師もいるだろう。そこで活用してほしいのが、病薬連携だという。柴田氏は「薬剤服用歴管理指導料吸入薬指導加算が算定できるため、吸入薬の取り扱いに慣れている薬局の薬剤師に、吸入指導を依頼することも可能だ。デバイスについては、患者によって向き・不向きがあり、処方変更が必要になることもあるため、病薬連携が重要となる」と述べた。COPD患者の発見と積極的な介入を 柴田氏は、非専門医の先生方へ「皆さんの思っている以上にCOPD患者は多い。70歳以上の高齢男性では4人に1人が何らかの気流閉塞があることが知られており、高血圧や循環器疾患の3人に1人はCOPDというデータもある。高齢で糖尿病を有し喫煙歴のある患者にもCOPDが多い。このような患者をどんどん発見して、治療介入してほしい。その際、本ガイドラインを活用してほしい」とメッセージを送った。COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版定価:4,950円(税込)判型:A4変型判頁数:312頁発行:2022年6月編集:日本呼吸器学会COPDガイドライン第6版作成委員会発行:メディカルレビュー社

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コロナに感染した医師はどれくらい?ワクチン接種回数別では?

 2020年初頭から新型コロナウイルス感染症の国内での流行が始まり、3年が経過した。CareNet.comでは、これまでにどれくらいの医師が新型コロナに感染したのかを把握するため、会員医師1,000人を対象に『医師の新型コロナ感染状況に関するアンケート』を実施した。その結果、コロナ診療の有無や、年齢、診療科、病床数別、ワクチン接種回数別の感染状況が明らかとなった。また、回答者自身や周囲が感染した際に感じたさまざまな課題も寄せられた(2022年12月10~17日実施)。若い医師ほどコロナ診療・感染の割合が高い Q1では、コロナの診療に携わっているかについて聞いた。「診療している」が63%、「以前は診療していたが、今はしていない」が7%、「診療していない」が30%となり、全体の70%の医師がコロナの診療に携わっていた。年代別では、「診療している」もしくは「以前は診療していたが、今はしていない」と答えた回答者の割合は、年齢が若い医師ほど高く、20代は87%、30代は78%、40代は70%だった。診療科別では、割合が高い順に、救急科(100%)、呼吸器内科(90%)、腎臓内科、臨床研修医(87%)であった。 Q2では、これまでの新型コロナの感染歴を医師に聞いた。感染したことがない医師は全体の74%で、1回感染が24%となり、2回が1.7%、3回以上が0.4%で、再感染の割合はごくわずかであり、全体の26%の医師が1回以上感染していた。 コロナ診療経験の有無と感染歴との相関では、「以前は診療していたが、今はしていない」と回答した医師において、1回以上の感染の割合が最も高く36%だった。「診療している」と回答した医師では29%、「診療していない」人では18%が、コロナに1回以上感染していた。 年代別では、Q1の結果と同様に、年齢が若い医師ほど感染の割合が高かった。1回以上の感染の割合は、20代と30代で同率の36%、40代では30%、50代で22%だった。病床数別では、200床以上の医師の感染の割合が最も高く30%で、次いで0床(診療所)が23%だった。診療科別では、感染の割合が最も高いのはQ1と同様に救急科(39%)、次いで糖尿病・代謝・内分泌内科(38%)、臨床研修医(37%)、循環器内科(35%)であった。 ちなみに、厚生労働省が1月16日に発表した「(2023年1月版)新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識」によると、これまでにコロナと診断されたのは、日本の全人口の約23.2%であった(2023年1月1日0時時点のデータ)1)。 Q3では、第1~8波の流行期別に感染した時期を医師に聞いた。本アンケート実施時点(2022年12月10~17日)で最も多かったのは、2022年7~10月の第7波(125人)、次いで2022年1~6月の第6波(55人)、2022年11以降の第8波(50人)だった。ワクチン接種回数が多い医師ほど感染率が低い Q4では、新型コロナのワクチンの接種回数を医師に聞いた。接種回数の割合が最も高かったのは4回(42%)、次いで5回(33%)、3回(19%)、1・2回(3%)だった。ワクチンの接種回数と感染の相関を調べたところ、感染していない割合は接種回数が多い医師ほど高く、5回接種者は85%、4回では71%、3回では66%が「感染していない」と答えた。ワクチン接種1・2回で感染していない医師の比率は44%で半数を下回っており、2回感染した人が18%と最も多かった。 Q5では、自らが感染したと思う場所について聞いた。多かったのは職場と家庭で、ともに約100人であった。医療者の人手不足がコロナ診療での最大の課題 Q6の自由回答のコメントでは、回答者自身や周囲が感染した際に感じた課題を聞いた。挙げられた課題は、主に以下の内容に分類された。・医療者の感染が相次ぎ、病院が人手不足になった(160件)・病院でクラスターが発生した(80件)・コロナに感染し、判断に迷った(61件)・家族内で感染者が出た(55件)・コロナ以外の診療について(21件)・感染対策について(14件)・収入に影響した(7件)・コロナの診療について(6件)アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。どれくらいの医師がコロナに感染した?/医師1,000人アンケート

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コロナワクチン後の心筋炎、高濃度の遊離スパイクタンパク検出

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のmRNAワクチン(以下、新型コロナワクチン)接種後、まれに心筋炎を発症することが報告されているが、そのメカニズムは解明されていない。そこで、マサチューセッツ総合病院のLael M. Yonker氏らの研究グループは、青年および若年成人の新型コロナワクチン接種後の血液を分析し、心筋炎発症例の血中では、切断を受けていない全長のスパイクタンパク質が、ワクチン接種により産生された抗スパイク抗体に結合していない“遊離”の状態で、高濃度に存在していたことを発見した。Circulation誌オンライン版2023年1月4日掲載の報告。遊離スパイクタンパク質が平均33.9pg/mLと有意に高濃度で検出された 2021年1月~2022年2月にかけて、ファイザー製(BNT162b2)またはモデルナ製(mRNA-1273)の新型コロナワクチン接種後に心筋トロポニンTの上昇を伴う胸痛を呈し、心筋炎により入院した患者16例、および年齢をマッチングさせた健康人45人を対象とし、血液をプロスペクティブに採取した。SARS-CoV-2特異的な細胞性免疫応答、自己抗体産生、血中のスパイクタンパク質濃度などを評価した。 SARS-CoV-2に対する適応免疫応答やT細胞応答は、心筋炎発症例と非発症例で差がなかった。また、自己抗体の産生や他のウイルス感染、新型コロナワクチン接種後の過剰な抗体反応も認められなかった。しかし、血中の遊離のスパイクタンパク質濃度には、大きな差がみられた。心筋炎非発症例では、抗スパイク抗体に結合していない遊離のスパイクタンパク質が全例で検出不可であったのに対し、心筋炎発症例では、平均33.9pg/mLと有意に高濃度で検出された(p<0.0001)。また、心筋炎発症例の血漿について、抗体を変性させるdithiothreitolで処理しても、スパイクタンパク質濃度に変化がみられなかったことから、心筋炎発症例で検出されたスパイクタンパク質は、抗スパイク抗体に捕捉されなかったことが示唆された。 本論文の著者らは、「心筋炎発症の有無によって、新型コロナワクチン接種後の免疫応答に差がみられなかったのは、安心感を与える結果であった。心筋炎発症例の血中では、遊離のスパイクタンパク質がみられ、この知見についてより深く理解する必要はあるが、新型コロナウイルス感染症の重症化予防における新型コロナワクチン接種のベネフィットが、リスクを上回ることに変わりはない」とまとめた。

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第143回 これが患者のリアル、ワクチンマニアもコロナ感染!?村上氏のヒヤヒヤ実記(前編)

先日、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)ワクチンの4回目接種の体験について書いたが、その直後、ヒヤッとする出来事が起きた。接種を受けたのは年の瀬も迫った12月27日。周囲では新型コロナ感染者が急増し、Facebookなどでつながっている友人・知人の投稿では、「感染しました」報告が相次いでいた。それから3日後、私は軽い咽頭痛を自覚した。もっともこうした経験は、コロナ禍3年目になってから2度ほどあった。私の場合、年齢は壮年期だが、幸いにして今のところ新型コロナにかかった場合に重症化リスク因子となる基礎疾患はない。このため感染した場合でも原則自宅療養を選択しようと考えている。それに備えて自分の仕事場のアパートには複数回分の抗原検査キット、解熱鎮痛薬、パルスオキシメータや非常時用のインスタント系、レトルト系の食品の備蓄はある。余談だが、私はまるか食品の「ペヤングソース焼きそば」の大ファンで、消費税増税の時などに買い込んだペヤングが常に事務所では数十個ストックがあるので、とりあえずペヤングとお湯だけでも10日ほどは飢えをしのげる。ところが咽頭痛を感じたときは、山手線のとあるターミナル駅近くのビジネスホテルに娘とともに宿泊中だった。さらに個人的な事情を話すと、私には現在医学部受験生以外では希少価値ともいわれる大学受験浪人生の娘がいる。誰に似たのか昨年現役で合格した大学があったにもかかわらず、第一志望があきらめきれず、合格した大学の入学を辞退して浪人生の道を選んだ(実は私も現役時に同じことをしている)。義父が要介護のため、妻が実家に帰省して年末年始は私と娘しかいなくなること、娘が自宅では勉強に身が入らず、さすがの予備校も大みそかと元日は自習室も閉鎖されてしまうなどの事情があり、私と娘は30日から三が日明けまでホテルに泊まりこみ合宿と相成った。隣同士の部屋で私は仕事、娘は勉強にそれぞれ勤しむという計画だった。もっとも私は娘のパシリとして食事の購入や洗濯などを引き受けるつもりでもあった。ちなみに宿泊したホテルはチェーン展開しており、チェックインはほぼ自動化され、日中は受付すら無人、部屋の清掃は1週間を超える連泊者以外なしといういかにも今風なホテルである。さて咽頭痛を自覚したときは、すぐに危機感を感じたわけではない。それでも念のために実は5回分がセットになった抗原検査キット、解熱鎮痛薬、体温計、パルスオキシメータは持参していた。さらに娘より一足先にチェックインしてパックのご飯、それにかけるレトルト、カップ麺を買い込んでいた。これはいざという時の備えというよりは、娘には望む食事を多少高くても購入して、私のほうは節約に努めるという単なる貧乏根性である。―2022年12月30日(金)30日は喉のイガイガは軽く痰が絡んだような感じ。それほどは気にしなかった。大みそかの朝は調理パンと洋風のスープが食べたいとの娘の要望に応じ、朝6時過ぎにホテルを出て周囲のコンビニを回り、ようやく洋風スープと調理パンを見つけて渡し、昼はこれまた娘の希望に応じて近くのカフェでパスタを食べさせた。もっとも大学入試共通テストを約2週間後に控えていることもあり、娘と食事中でもなるべくマスクを着用していた。―2022年12月31日(土)その日の夕方近く、今年最後のオンライン取材を終え、少しでも正月らしい気分を娘に味あわせてあげたいと考え、デパ地下に赴き、2人で食べられそうな比較的小さめのおせち料理を購入し、ホテルに戻った。ところが夜7時過ぎくらいから咽頭痛はひどくなるばかり。まさかとの思いがよぎった。実はすでに前日に抗原検査キットで陰性は確認していた。もっともある程度ウイルス量が上がらないと抗原検査が偽陰性になってしまうのは周知のこと。そのために私は連日自宅や事務所などで検査ができるよう5回分のパックを備蓄し、気になったときは3日連続で検査し、すべて陰性だった場合は注意をしながらその後1週間程度を過ごしていた。再度、検査キットを使う。検体を流し込み、浸透していく様子を見ながらコントロール手前で色がうっすらでも変わるか凝視する。再び陰性である。体温は36.8℃。とはいえ、くどいようだが隣室には2週間後に共通テストを控えた娘がいる。すぐにLINEで隣室にいる娘に私に風邪様症状があり、現在のところ抗原検査は陰性だが油断はできず、とりあえず飲食物は置き配にする旨を伝えた。とはいえ困った。自分の食事は備蓄のおかげでどうにかなるが、娘の分はそうはいかない。だが、新型コロナ感染の疑いがある自分の外出は控えねばならない。そうすると娘の食事を手配する人間がいなくなる。「本人に買わせればいいじゃないか」と言われてしまいそうだが、宿泊先のホテルは娘が嫌うピンクのネオンが時おり目に入る歓楽街の一角にあり、そのため引っ込み思案な娘は一人で出歩こうとしない。ただ、ホテルから一番近い徒歩1分ほどのところにあるコンビニは店内が広く、セルフレジがあり、そのセルフレジも有人レジからかなり離れた位置にある。また、娘が食べたがるものの多くはコンビニで調達できる。ということで、できるだけ人の少ない時間帯に最大限の感染対策をしながら、このコンビニを利用することに決める。だが、その直後、ネットサーフィンをしていて、はたとあることに気づく。このコロナ禍でモバイルオーダーかつモバイル決済で飲食デリバリーのサービス提供が進んでいる。ネット上を調べると、大手ハンバーガーチェーンを含め、ホテルの近隣でこうしたサービスを提供している店舗は少なくない。これならばどうにか対応できそうだ。そうこうしているうちに、この日はいつの間にか寝入ってしまった。―2023年1月1日(日) 元旦翌朝、娘からのLINE着信の音で目が覚めた。体がほてっているのが自分でもわかる。熱を測ると37.1℃。元日のおめでたさもなく、朝方、おにぎりとインスタントではないみそ汁をコンビニで購入して娘に届けた。届ける際はドアノブにかける。これまた幸いなことに、このホテルでは各フロアに足踏み式の消毒薬が設置されているので、ドアノブに食事などの袋をかける際は念のため手指消毒をしてから。もちろんこれまでの研究で、新型コロナの接触感染はごくまれというのも知ってはいるが、やはり娘のことを考えると気にしてしまうため、そのようになってしまう。元日の熱は37℃台の前半と後半を行ったり来たり。一応、仕事のために椅子に座ってパソコンをさわるものの、症状のせいか30分程度が限界で、その後はベッドに横になる。そして毎日、娘の衣服の洗濯がある。実はそれを見越して館内にコインランドリーもあるホテルを選んでいた。1回にあるコインランドリーは常に人気がないので助かった。もっともこのコインランドリーの乾燥機は簡易なものなのでちょっとした洗濯物の乾燥でも1時間以上はかかった。その間は部屋でおとなしく待ち、時間を計って廊下に出て、目の前で開いたエレベーターに人が乗っていないことを確認してから乗降していた。この日は一日、体がだるめ。夕方、娘が某ハンバーガーチェーンのハンバーガーが食べたいと言い出す。これはモバイルオーダーやデリバリーサービスがあったので利用することにした。決済もモバイル決済が可能だったが、ホテル1階で私が受け取らなければならない。幸い1階エレベーター脇に消毒薬を設置した比較的広めのテーブルがあったので、そこに置いてもらうことにする。配達完了の電話連絡があり、私はマスクをつけ、1階に降りてピックアップして、隣室のドアノブにかけ、娘にLINEをする。ちなみにたまたま私のカバンには両面テープがあったため、部屋からの外出時はマスクの上下両端に両面テープを張り、顔にピッタリ密着させていた。気にし過ぎと思われるかもしれないが、自分の飛沫で他人に感染をさせたくないからである。もっともこれをするとマスク内が異様に暑くなる。この日は夜9時には就寝したが、深夜2時過ぎ、体のほてりがひどく目が覚める。体温計の数字は38.1℃。来たかという感じだった。(次回に続く)

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過剰な対策の見直しや具体例追記「医療機関のコロナ対応ガイド 第5版」/日本環境感染学会

 日本環境感染学会(理事長:吉田 正樹氏[東京慈恵会医科大学 感染制御科 教授])は、1月17日に『医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第5版)』を同学会のホームページで公開するとともに、同日開催の厚生労働省の第114回 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードでも発表した。 学会では、「COVID-19の第8波に突入し、医療機関でも多くのクラスターが発生するなど厳しい状況に置かれている中、この感染症に対する感染対策については、新たなエビデンスも蓄積しているため、今回、第5版として改訂版を公開した」とその目的を述べるとともに、「医療の現場では感染対策を緩める時期はまだ先だと思われる。ただし過剰な対策は見直していく必要があり、新しいエビデンスも含めて理にかなった適切な感染対策を実施し、この状況を乗り越えて欲しい」と希望を寄せている。画像で説明するマスクやPPEの着衣・脱衣 主な改訂点は次のとおり。・「3.感染対策の基本的考え方」で「3)社会的距離(ソーシャル・ディスタンス)の確保」を追加し、患者や家族と一定の距離(2m以上が理想)の確保を記載。・同「9)の陰圧室の利用の対象」を独立項目とするとともに、「図1 病室単位での新型コロナウイルス感染対策の1例」を追加し、病室内を患者・中間・共通ゾーンに分ける例を追加。・「4.COVID-19確定例へのPPEの選択」では、PPE選択の表の改訂のほか、「個人防護具着脱手順の例」を画像で追加。・「5.COVID-19確定例へのその他の対応」では、「5)面会」について医療機関の面会ルールなどを具体例として追加。・「6.院内における医療従事者の感染リスクと予防」では「4)労務災害」を追加。 その他、全体の各項目の記載ボリュームと細かい内容の変更や参考文献の変更なども行われている。

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第28回 救急車の居眠り運転とPPEの緩和

救急車の事故東京消防庁によると、2022年の119番通報の件数は、過去最多の103万6,645件だったそうです。とんでもない通報数です。通報件数が過去最多なので、当然ながら出動件数も比例して過去最多となっています。昨年末、救急車を運転していた救急隊員が、居眠り運転をして交通事故を起こしていたことが報道されました。約17時間にわたりほぼ休みなく出動し、疲労が蓄積したためとされています。救急車の要請があったときに、「救急隊による5つの医療機関への受入要請または選定開始から20分以上経過しても搬送先が決定しない事案」、すなわち東京ルールの適用となる事案は、2023年1月17日執筆時点のデータでは、過去最多水準に到達しています(図)。しかし、グラフの立ち上がりが第6波・第7波と比べると緩やかであることがわかります。図. 東京ルールの適用件数(筆者作成)このグラフは感染症の流行曲線とキレイに連動しています。となると、セオリー通り、緩やかに立ち上がった新規感染者数が高止まり傾向になってしまうと、救急搬送困難例も高止まりすることが懸念されます。再びこのような救急車の事故が起きないようにしたいものですが、どの現場もマンパワーが限られており、現状としては体制自体を改善することは難しいでしょう。コロナ禍で忙しくなり、われわれ医師も当直明けで通常勤務している人が多いため、注意しないといけません。院内ゼロコロナ戦略の継続は?病院内では現在基本的にはゼロコロナ戦略を継続しています。私も感染制御チームの一員ですが、院内クラスターはできるだけ回避したいところです。しかし、今後社会全体の医療提供の総和を維持するのであれば、もう少し院内の対応を引き算しなければ…という印象を持っています。場面ごとに個人防護具(PPE)の着用を使い分けたり、弾力的に病床を運用したりする機動力が必要になりますが、「とにかくフルPPE」は現実的ではありませんので、医療機関としても逼迫を減らす方向に舵を切らないといけない時期にきています。日本環境感染学会から「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第5版)」1)が刊行されました。全体として、緩やかに緩和される方向になっています(表)。寝たきりの陽性者の場合、サージカルマスクでよいというのは確かに同感ですが、場面ごとにN95マスクの使用を分けて職員に通知することが難しい側面もあり、陽性者に対して「当院のPPEはこのままでいこう」という施設はまだまだ多いと思います。画像を拡大する表. COVID-19確定患者に対する様々な状況における PPE の選択1)となると、病床運用の逼迫構造は簡単には解決しないので、新規感染者数が次の波で増えれば、入院医療機関の逼迫が再来するかもしれません。たとえ「5類感染症」にしても、ここをどうにかしなければ、国民が期待するほど医療資源のキャパシティは増えないかもしれません。参考文献・参考サイト1)日本環境感染学会:医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第5版)の公開について

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コロナ呼吸不全で気管挿管率が低い治療は?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による低酸素血症性呼吸不全を発症した成人患者に対し、覚醒下腹臥位療法は通常ケアと比べて、気管挿管の発生リスクを低減するが、死亡率や人工呼吸器離脱期間(VFD)などのアウトカムには、ほとんど影響が認められないことが明らかにされた。カナダ・アルバータ大学のJason Weatherald氏らによる、システマティック・レビューとメタ解析で示された。BMJ誌2022年12月7日号掲載の報告。2022年3月時点でMedline、Embase、CENTRALをレビュー 研究グループは、創刊から2022年3月4日までのMedline、Embase、CENTRAL(Cochrane Central Register of Controlled Trials)をデータソースとして、COVID-19関連の低酸素血症性呼吸不全の成人患者を対象に、覚醒下腹臥位療法と通常ケアを比較した無作為化試験について、システマティック・レビューと頻度論的・ベイズメタ解析を行った。 2人のレビュアーがそれぞれデータを抽出し、バイアス・リスクを評価。ランダム効果モデルを用いて主要アウトカム(気管挿管)と副次アウトカム(死亡率、VFD、ICU・病院入院期間など)を評価した。気管挿管と死亡率はベイズメタ解析で評価。アウトカムのエビデンスの信頼性はGRADEで評価した。死亡率、VFD、ICU入室日数などは両群で同等 17試験、被験者総数2,931例が適格基準を満たした。12試験はバイアス・リスクが低く、3試験には懸念があり、2試験はバイアス・リスクが高かった。 補正前気管挿管発生率は、覚醒下腹臥位療法群24.2%と、通常ケア群29.8%に比べてリスクが低かった(相対リスク[RR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.73~0.94、信頼性:高)。同リスクの低下は、患者1,000人当たりで気管挿管の実施が55回減少(95%CI:19~87)することに相当した。 一方で副次アウトカムについては、死亡率(RR:0.90、95%CI:0.76~1.07、信頼性:高)、VFD(平均群間差:0.97日、95%CI:-0.5~3.4、信頼性:低)、ICU入室期間(-2.1日、-4.5~0.4、低)、入院期間(-0.09日、-0.69~0.51、中)とも有意な影響が認められなかった。 覚醒下腹臥位療法に関連した有害事象はまれであった。 ベイズメタ解析の結果、気管挿管については、覚醒下腹臥位療法は有効である確率が高いことが示された(無情報事前分布での平均RR:0.83、95%信用区間[CrI]:0.70~0.97、RR<0.95の事後確率96%)。一方で死亡に関する同確率は低かった(0.90、0.73~1.13、68%)。

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コロナ5類変更に賛成は何割?現在診ていない医師は診られるか

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染症法上の位置付けについて、季節性インフルエンザと同様の「5類」に引き下げることを政府が検討を始め、議論が活性化している。ウイルスの性質や医療機関の負担、医療費の公費負担など、さまざまな意見がある中で、医師はどのように考えているのだろうか? CareNet.comの会員医師のうち、内科系を中心として、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の診療に携わることが想定される診療科の医師1,000人を対象に、アンケートを実施した(2023年1月11日実施)。新型コロナ・発熱患者を診療していない医師の3分の2が診療不可 COVID-19患者あるいは発熱患者の診療状況について、「COVID-19患者の診療を行っている」が63.8%と最も多く、「COVID-19疑いの発熱患者の診療を行っている」が18.8%、「いずれも診療していない」が17.4%と続いた。また、「5類となり、COVID-19患者の受診・入院が一般医療機関でも可能となった場合、実際に診療が可能か」質問したところ、「現在診療している」が63.7%、「診療できる」が18.7%、「診療できない」が17.6%であった。 現時点で「いずれも診療していない」と回答した医師について集計した結果、「診療できる」が33.3%であったのに対し、「診療できない」は66.7%と、現在COVID-19患者やCOVID-19疑いの発熱患者を診療していない医師の3分の2が、5類に引き下げられても「診療できない」と回答した。新型コロナ5類への変更、64%が賛成 COVID-19の感染症法上の分類はどのようにすべきか? という質問に対して、「いまの状況であれば5類へ引き下げたほうが良い」が40.0%と最も多く、「いまの状況では難しいが、5類へ引き下げたほうが良い」が24.0%と続いた。両者を合わせると64.0%が「5類へ引き下げたほうが良い」と考えていた。「新たな類型を作成したほうが良い」は17.7%で、「2類相当のままが良い」は6.1%にとどまった。12.2%が「いずれともいえない・わからない」と回答した。 COVID-19患者あるいは発熱患者の診療の有無別にみると、「いずれも診療していない」と回答した医師で「5類へ引き下げたほうが良い(いまの状況であれば5類へ引き下げたほうが良い:28.8%、いまの状況では難しいが、5類へ引き下げたほうが良い:23.2%)」との回答がやや少なかったが、「いずれともいえない・わからない」との回答が23.7%を占めた。「新たな類型を作成したほうが良い」「2類相当のままが良い」との回答の傾向には、大きな違いはみられなかった。意見が分かれるワクチン接種費・治療費の負担 COVID-19が5類へ引き下げられた場合に「ワクチン接種費や治療費の負担はどのようにすべきと考えるか」質問したところ、「ワクチン接種費、治療費共に公費負担」が24.2%、「ワクチン接種費は公費負担、治療費は自己負担」が38.6%、「ワクチン接種費は自己負担、治療費は公費負担」が5.1%、「ワクチン接種費、治療費共に自己負担」が32.1%という結果であった。ワクチン接種については「公費負担にすべき」と考える医師が62.8%と多く、治療費については「自己負担にすべき」と考える医師が70.7%と多かった。分類に対する考え・意見 「いまの状況であれば5類へ引き下げたほうが良い」と回答した医師の意見として、「ワクチン接種費や治療費は公費負担にすべきでない(46.9%)」という意見が多かったが、「5類に変更してもワクチン接種費や治療費は公費負担のままにしたほうが良い」という意見も散見された。また、「重症化率・死亡率の低下」や「ワクチンや治療薬の充実」「医療従事者の負担の大きさ」を指摘する意見がみられた。 「いまの状況では難しいが、5類へ引き下げたほうが良い」と回答した医師の意見として、「ワクチン接種費は公費負担を維持し、治療費は自己負担にすべき(50.8%)」という意見が目立った。一方、「5類に変更してもワクチン接種費や治療費は公費負担のままにしたほうが良い」という意見も散見された。そのほか、「第8波の状況をみてから」「死者数の増加が気になる」といった慎重な意見や「社会的影響を考慮するといつか5類にせざるを得ない」などの意見が得られた。 「新たな類型を作成したほうが良い」と回答した医師の意見として、「現行の仕組みは、現在のCOVID-19の診療に適していない」といった現在の枠組みへの不満を示唆する意見や、「5類にするのは時期尚早だが、2類に据え置くのは考えもの」「5類に引き下げても5類以上の感染対策が必要」「5類ではなくて、“5類相当”が妥当」といった意見があがった。 「2類相当のままが良い」と回答した医師の意見として、「ワクチン接種費や治療費は公費負担にすべきである(50.0%)」という意見が多かった。また、「入院調整などは医療機関のみでは困難」「感染力が強く一般病棟での診療は困難」といった医療体制の懸念を指摘する意見や、「死者数が多い」「インフルエンザとは異なることが多い」といったウイルスの性質を指摘する意見も得られた。 「いずれともいえない・わからない」と回答した医師の意見として、「名目上の制度の変更は意味がない」「2類でも5類でもとくに変わらない」といった意見や「流行の行方がわからない」「感染状況により柔軟な運用ができるようにすべき」などの意見があがった。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。新型コロナウイルス感染症、5類への引き下げは可能?…医師1,000人アンケート

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重症度に関係なく残る罹患後症状は倦怠感、味覚・嗅覚異常/大阪公立大学

 2022~23年の年末年始、全国で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の陽性者数の激増や1日の死者数の最高数を記録するなどCOVID-19は衰えをみせていない。また、COVID-19に感染後、その罹患後症状(いわゆる後遺症)に苦しむ人も多いという。わが国のCOVID-19罹患後症状の様態はどのようなものがあるのであろう。井本 和紀氏(大阪公立大学大学院医学研究科 臨床感染制御学 病院講師)らの研究グループは、COVID-19の罹患後症状に関し、285例にアンケート調査を実施。その結果、感染した際の重症度と関係なく、倦怠感や味覚・嗅覚の異常などが、COVID-19感染後約1年を経過していても、半数以上の人に罹患後症状が残っていることが明らかとなった。本研究から重症化リスクが低い人であっても、COVID-19には注意する必要がある。Scientific Reports誌2022年12月27日号に掲載。研究目的と方法【研究目的】COVID-19では、さまざまな罹患後症状が残ることが、主に海外から報告されている。一方、わが国ではCOVID-19の罹患後症状に関する調査があまり進んでおらず、罹患後症状を診察するとともに、本症について研究を行っている施設・医師が少数であるため、わが国の実情を明らかにする。【方法】対象:大阪府内5病院で、2020年1月1日~12月31日の間にCOVID-19と診断された人および入院した285例方法:COVID-19感染後約1年後の後遺症に関するアンケートを実施無症候や軽症でも1年後に52.9%に罹患後症状あり〔COVID-19感染後1年後に罹患後症状を有していた人の割合〕・対象者のうち1つ以上の罹患後症状を有していた人の割合:56.1%(160/285例)・COVID-19感染時は無症候や軽症であった人のうち1つ以上の罹患後症状を有していた人の割合:52.9%(37/70例)・COVID-19感染時は中等症~重症であった人のうち1つ以上の罹患後症状を有していた人の割合:57.5%(123/214例) 罹患後症状については、比較的軽症の人(無症状者・軽症者)では、倦怠感や抜け毛、集中力・記憶力の異常、睡眠障害が多く残っており(10%以上)、比較的重症の人(中等症~重症)では、倦怠感、呼吸困難感(息がしづらくなる感じ)、味覚障害、抜け毛、集中力の異常、記憶力の異常、睡眠障害、関節の痛み、頭痛が多く残っていた(10%以上)。また、生活に大きな影響を与えている罹患後症状としては、倦怠感、喀痰が多く出ること、呼吸困難感、嗅覚の異常、抜け毛、集中力や記憶力の異常、睡眠障害、関節の痛み、眼の充血、下痢があり、これらの症状が常に気になるほど残っていることでQOLが低下している人が多くいた。 どのような人で罹患後症状が残りやすいかを症状と危険因子(患者の背景・持病・血液検査値)についてロジスティック回帰分析を実施したところ、新型コロナウイルスに感染した際の重症度と、喀痰、胸痛、呼吸困難感、咽頭痛、下痢などが非常に強く関連していることがわかった。一方で、新型コロナウイルスに感染した際の重症度と関係なく残ってしまう罹患後症状として倦怠感や味覚・嗅覚の異常、抜け毛、睡眠障害があった。 井本氏らの研究グループは、「本研究により、重症度と関係なく残りやすい罹患後症状があることが明らかとなり、今後もCOVID-19の罹患後症状については引き続き注意が必要だと言える。現状では罹患後症状の治療法が確立されているわけではないため、これからも研究を継続していく必要がある」としている。

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第130回 コロナ病床確保の補助金で医療機関の黒字が拡大/会計検査院

<先週の動き>1.コロナ病床確保の補助金で医療機関の黒字が拡大/会計検査院2.新型コロナウイルス「5類」移行について段階的移行を検討/厚労省3.搬送困難事例が急増、過去最高の7,558件に/総務省4.医療広告のネットパトロールで監視指導体制の強化を/厚労省5.患者の同意なく電話診察の音声をツイキャスで生配信/埼玉県6.処方箋を捏造して向精神薬を不正入手の開業医を逮捕/千葉県警1.コロナ病床確保の補助金で医療機関の黒字が拡大/会計検査院会計検査院は、新型コロナウイルス対策に国が実施した新型コロナウイルス感染症対策の補助金事業について、検査を行ったところ、病床確保基金によって、医療機関の黒字幅が大幅に拡大していることを明らかにした。検査対象となった独立行政法人が運営する病院などで、感染拡大前の平均収支は2019年度は約4億円の赤字が、感染拡大後の2021年度に約7億円の黒字と経営状態が改善していた。一方、検査によって、医療機関が病床確保基金を受け取っていながら、患者受け入れの要請を断っていた事例もあり、検査員は事業の見直しや検証を求めた。(参考)新型コロナウイルス感染症患者受入れのための病床確保事業等の実施状況等について(会計検査院)コロナ補助金で赤字4億→黒字7億 病院平均、患者拒否で受給も(毎日新聞)コロナ病床確保、制度不備で補助金膨張3兆円 検査院(日経新聞)2.新型コロナウイルス「5類」移行について段階的移行を検討/厚労省厚生労働省は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策アドバイザリーボードを1月11日に開き、感染症法で2類相当とされている新型コロナウイルスについて、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」への移行について検討を開始した。国内で新型コロナウイルスが確認されてから3年、現在も第8波の感染拡大が続いているが、感染対策費の財政負担も大きくなっており、経済活性化の視点から、今後、類型変更について慎重に検討を重ねていく模様。なお5類への見直しに伴って、予防接種体制や病床確保の維持や患者の費用負担などについても合わせて検討を行うため、慎重な対応を求めている医師会などとの調整が必要となるとみられる。(参考)第113回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(厚労省)屋内もマスク不要案浮上 コロナ「5類」移行で政府 屋内でのマスク着用の判断基準(共同通信)専門家組織、5類引き下げで見解公表 「段階的移行」指摘(産経新聞)“コロナの位置づけ変更は必要な準備を進めながら”専門家会合(NHK)尾身会長インタビュー 新型コロナ第8波 状況は? 今後は?(同)3.搬送困難事例が急増、過去最高の7,558件に/総務省総務省消防庁は1月11日、救急車が到着しても、「医療機関への受入れ照会回数4回以上」かつ「現場滞在時間30分以上」のため、搬送先がみつからず搬送困難とされた事例について発表した。これによると、1月2日~8日の1週間に、全国の主要な消防本部からの報告が7,558件寄せられていた。3週連続で過去最高となっており、消防庁は救急車の適時適切な利用を呼びかけたいとしている。(参考)各消防本部からの救急搬送困難事案に係る状況調査(抽出)の結果(消防庁)救急搬送困難7,558件、3週連続で最多更新 コロナ疑い増加(産経新聞)救急患者「搬送が困難な事例」1週間に7,558件 過去最多を更新(NHK)急患受け入れ3回以上断られる「搬送困難事案」、1週間で7,558件…3週連続で最多(読売新聞)4.医療広告のネットパトロールで監視指導体制の強化を/厚労省厚生労働省は、医療広告の規制について検討する「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」を1月12日に開催した。この中で、2021年度のネットパトロール事業について報告を行った。ここ数年、美容医療を提供する医療機関のウェブサイトを中心として消費者トラブルが発生しており、2017年より厚生労働省はウェブサイトの医療広告について実施している。2021年度は1,123サイト(1,521施設)が医療広告規制の審査対象となり、うち847サイトで違反が認められた。このため、広告ガイドラインに違反するウェブサイトを運営する医療機関に厚生労働省が通知したところ、742サイトは改善か掲載中止が認められたが、2021年3月末時点では、71サイトは改善が十分でなかったりした。今後も、厚生労働省は医療機関のウェブサイトの監視指導体制の強化するため、引き続きネットパトロール事業を進めるとともに、医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書を作成し、医療機関の情報提供について指導を行なっていくこととした。(参考)ネットパトロール事業について(厚労省)医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書(案)(同)医療広告違反サイト「改善に半年以上」が1割「行政の怠慢」との指摘も、厚労省検討会(CB news)5.患者の同意なく電話診察の音声をツイキャスで生配信/埼玉県2023年1月7日、埼玉県の「こうのす共生病院」の発熱外来の診察の音声が、常勤医の携帯電話を介して、動画のライブ配信サイト「ツイキャス」から配信されていることが明らかになった。原因について同院の発表によると、医師がプライベートで使用しているスマートフォンにインストールされたアプリを介して、外来診療の音声が配信されたことが判明した。病院側は詳細な事実関係が確認され次第、改めてホームページ上にて報告することを明らかにした。(参考)病院内の音声が生配信されていた件に関するご報告(こうのす共生病院)電話診察の音声を生配信、埼玉 患者の情報流れる(共同通信)発熱外来の電話診療、ツイキャスで無断ネット配信…常勤医の動機は「調査中」(読売新聞)6.処方箋を捏造して向精神薬を不正入手の開業医を逮捕/千葉県警千葉県警は、向精神薬を入手するために処方箋を捏造して2万錠以上を不正に入手したとして千葉県の開業医を有印私文書偽造などの疑いで逮捕した。警察によると、逮捕されたのは大網白里市の53歳の開業医。2020年までの2年間に渡り、市内の医療機関で同僚の名前などを使って、偽の処方箋を発行し、薬局から不正に向精神薬を2万錠手に入れたとして、有印私文書偽造などの疑いがもたれている。他にも、自身と他の医師の名義で、架空の処方箋を作成して、4万5千錠余りも不正に入手しているとみられている。調べに対して、医師は「処方箋の偽造はしていません」と容疑を否認している。(参考)向精神薬2万錠余不正入手か 処方箋偽造疑い 千葉の医師逮捕(NHK)処方箋を偽造、不正に薬を入手 容疑で開業医を逮捕 千葉県警(産経新聞)

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コロナ患者に接する医療者の感染予防効果、N95 vs.サージカルマスク

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に接する医療者のマスクの種類によるCOVID-19予防効果を調査したところ、サージカルマスクはN95マスクと比較して非劣性であったことが、カナダ・マックマスター大学のMark Loeb氏らによる多施設共同無作為化非劣性試験の結果、明らかになった。Annals of Internal Medicine誌オンライン版2022年11月29日号掲載の報告。N95マスクとサージカルマスクのコロナ予防効果を国別に検証した N95マスクと比較して、サージカルマスクが新型コロナウイルス感染症に対して同様の感染予防効果があるかどうかは不明であった。そこで研究グループは、サージカルマスクはN95マスクに劣らないという仮説を立てて検証を行った。 試験はカナダ17施設、イスラエル2施設、パキスタン4施設、エジプト6施設の計29施設において、2020年5月4日~2022年3月29日に行われた。対象は、COVID-19疑いまたは確定の患者に日常的に医療を提供する1,009名の医療者で、業務中にサージカルマスクとN95マスクを着用する群にランダムに1:1に割り当て、10週間着用した。N95マスクのフィットテストに適合していない、COVID-19のハイリスク因子を有している、COVID-19の既往歴がある、流行株に対応しているワクチンを接種している医療者は除外された。主要評価項目は、RT-PCR検査によるCOVID-19確定であった。 N95マスクにサージカルマスクはコロナ予防効果で劣らないことを検証した主な結果は以下のとおり。・intention-to-treat解析の結果、新型コロナウイルス感染症を発症したのは、サージカルマスク群では10.46%(52/497例)、N95マスク群では9.27%(47/507例)であった(ハザード比[HR]:1.14、95%信頼区間[CI]:0.77~1.69)。・国別のサブグループ解析による新型コロナウイルス感染症の発症率は、下記のとおりであった。 -カナダ(計266例):サージカルマスク群6.11%、N95マスク群2.22%(HR:2.83、95%CI:0.75~10.72 -イスラエル(計34例):サージカルマスク群35.29%、N95マスク群23.53%(HR:1.54、95%CI:0.43~5.49) -パキスタン(計186例):サージカルマスク群3.26%、N95マスク群2.13%(HR:1.50、95%CI:0.25~8.98 -エジプト(計518例):サージカルマスク群13.62%、N95マスク群14.56%(HR:0.95、95%CI:0.60~1.50・マスク着用による不快感、皮膚刺激、頭痛を訴えたのは、サージカルマスク群で10.8%、N95マスク群で13.6%であった。

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第142回 これらのデータを並べて「コロナとインフルが同レベル」と言える?

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の重症化率や死亡率は、インフルエンザと同等以下」最近、そんな言説をよく耳にする。まあ、一般人からの言説ならば、「またテキトーなことを言っている」で済むのだが、最近SNS上などを見ていると、そうした言説を発信する人の一部には医療従事者もそこそこ交じっている。彼らが根拠としているのが、昨年12月21日に開催された第111回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードに厚生労働省が提出した資料や11月に財務省が公表した資料である。この件について、厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードはすでにインフルエンザと新型コロナの比較は困難との結論を出している。それはそうだろう。少なくとも両者の比較に使うにしてはデータの「野良」度合いが過ぎる。本サイトの読者に対しては釈迦に説法ではあるが、今回敢えてこの件について触れてみようと思う。まず、そもそも両資料に提示された重症化率、致死率を算定する分母が両者では違い過ぎると言わざるを得ない。インフルエンザの場合は、「NDB(National DateBase、レセプト情報・特定健診等情報データベース)における2017年9月から2020年8月までに診断または抗インフル薬を処方された患者のうち、28日以内に死亡または重症化(死亡)した割合」とある。ここで注意しなければならないのは、インフルエンザでは約3人に1人との報告がある無症候(不顕性)感染者はほぼ含まれていない可能性が高いことである。一方の新型コロナも無症候感染は存在する。厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き」では20~40%と記載されている。どちらの無症候感染者がどの程度、感染者として拾い上げられているかのデータはもちろんない(というか、この点で信頼性の高いデータが存在し得るとは考えにくい)。ただ、コロナ禍前に一般市民のインフルエンザに対する警戒度が現在の新型コロナ並みに高かったと考える人は一般人でも稀だろう。これに対して現在の新型コロナは市中の検査所があふれ、ドラッグストアで抗原検査キットが容易に入手できる状況である。これらを念頭に論理的に考えるなら、新型コロナに関する感染者報告のほうが無症候感染者をより多く拾い上げているだろうと考えられる。つまりより厳格な調査をするならば、インフルエンザのほうが重症化率、致死率を算定する感染者の分母が拡大し、結果としてこれら重症化率、致死率はより小さな値になる可能性が濃厚である。一方、ワクチン接種をめぐる状況は次のようになる。インフルエンザの場合は、▽65歳以上▽60~64歳で心臓、腎臓もしくは呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活を極度に制限される▽60~64歳でヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な場合、のいずれかに該当すれば予防接種法に基づく定期接種の対象となる。この定期接種対象者でのワクチン接種率は近年50%前後と報告されている。ちなみにワクチンの有効率に関しては、流行の程度や流行株とワクチン株のマッチングによってさまざまな報告があるが、重症化(入院)予防の有効率で見れば、ざっくりいうと50%強である。これに対して新型コロナワクチンは、予防接種法の臨時接種の特例として現在は生後6ヵ月以上が対象となっている。現時点での接種率は総人口あたりで基礎免疫の2回接種完了で80.4%、追加接種の3回接種完了で67.8%、オミクロン株対応2価ワクチンで37.5%である。現時点で2価ワクチンの有効性に関する報告は、まだ十分な数があるとは言えないが、国立感染症研究所の報告では、BA.4-5発症予防の有効率は69%である。このワクチンの有効率とそれが重症化率、致死率に及ぼす影響を考えると、謎解きはかなり複雑になる。季節性インフルエンザの場合、その名の通り主な流行は秋から初春にかけての半年間であり、おおむねこの期間中はワクチンの有効性は保持できると考えられている。これに対して新型コロナは流行が通年。ワクチンの効果はインフルエンザと同じように半年程度であり、前述の国立感染症研究所の研究結果(これとてまだプリミティブなものだが)を見てもわかる通り、接種回数と最終接種からの経過期間によって効果は異なる。重症化予防効果は時間を経ても比較的維持されていると言われてはいるものの、これまでのデータなどを見れば、やはり最終接種から時間が経過するとともに減衰しているのは事実である。このように「第〇波での重症化率、致死率」というデータには、未接種から4~5回接種まで、かつ最終接種日からの経過時間においてさまざまなバリエーションが混在しているため、とてもではないが今のオミクロン株の重症化率、致死率とシンプルに解釈することは無理がある。しかも、米ジョンズ・ホプキンズ大学の研究報告では、ワクチン未接種あるいは未感染者のオミクロン株による重症化・死亡リスクはデルタ株の0.72倍、武漢株の0.94倍との報告もある。この報告に依拠すれば現在のオミクロン株の重症化率自体が比較的高い日本のワクチン接種率でマスクされたものと考えねばならない。加えてこれら数字には、最近医療現場からとみに聞こえてくる新型コロナ経過観察期間終了後の高齢者での基礎疾患の急速な悪化による死亡、罹患後症状、オミクロン株BA.5の感染力の強さによる医療現場や高齢者施設でのクラスター頻発は一切考慮されていない。にもかかわらず、インフルエンザと新型コロナはもはや同レベルなどと一部の医療従事者が口にするのは、もはや妄言が過ぎるのではと思うのだが。

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