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ファストドクター、コロナ後遺症の専門オンライン診療を開始

 医療プラットフォーム「ファストドクター」は8月末からコロナ後遺症専門のオンライン診療サービスをスタートした。ファストドクターは2016年にスタートした在宅医療のデジタルプラットフォーム。主な事業として、夜間・休日医療の1)救急相談、2)救急往診・オンライン診療、3)かかりつけ医連携機能を担う。一般的な利用スタイルとしては、患者からの連絡で電話相談を受け、必要に応じて登録医師とマッチング、オンライン診療もしくは救急往診で対応、という流れとなる。 今回スタートしたコロナ後遺症専門サービスは、コロナ罹患後も倦怠感や不眠症などの体調不良が持続する人に対し、ファストドクターの登録医がオンラインで問診・診察を行う。コロナ後遺症は疲労感や味覚障害などの身体症状から不眠や記憶力低下などの精神障害にわたるものまで幅広く、患者側は適切な診療科を選択することが難しい。さらに対応する診療機関も限られる、という現状がある。 コロナ後遺症専門オンライン診療では、ファストドクターの救急往診サービスとの連携は行っておらず、オンライン診療後に対面受診が必要だと医師が判断した場合は、地域の専門医療機関への紹介状を発行し、そちらでの受診を促す。オンライン診療は精神科・内科を専門とする医師が中心となって対応するという。【コロナ後遺症専門オンライン診療の概要】・対応時間:月・木曜日(18~23時)・土曜日(9~12時)・対応地域:全国・薬の受け取り方法:自宅配送または指定の薬局での受け取り・利用方法:患者が専用サイトから予約してオンライン受診。保険証はオンライン確認、会計はクレジットカード払い。診療後は必要に応じて紹介状による専門機関との連携や必要書類を発行・料金:利用時間に応じて初診2,100円~(自己負担分の目安) また、サービスの提供を通じて収集される診療データは、患者の同意を得たうえで適した研究機関に提供され、コロナ罹患後の精神症状の評価や治療法の確立、治療薬の開発などに寄与することを目指すという。

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第178回 コロナワクチン廃棄の件、政府が国民に伝えていないこと

報道する側にとって、データとは時に取り扱いが難しいものである。とくに、ある種の公表データの事実関係だけを淡々と伝えるのが良いのか、それとも解釈まで含めて伝えるほうが良いのかはケースバイケースであるが、まさにそう思う報道を目にしたばかりだ。それは今月20日から新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)のオミクロン株XBB.1.5対応ワクチン接種の開始に伴い、廃棄される既存の新型コロナワクチンに関する読売新聞の報道である。数字だけを中心に事実関係だけを淡々と書くのは、それはそれで記事の手法としてはある種極めて真っ当なのだが、ことこの件に関してはもう少し解釈も伝えたほうが良いのではないかと考えている。とりわけ、この記事が引用掲載されたYahoo!ニュースのコメント欄やSNSで、かなりとんちんかんな指摘が散見されるのを目の当たりにし、よりその思いが強くなる。しかも、そうしたとんちんかんなコメントの中に、識者と言われる人たちも含まれているのを見ると、やや頭が痛い。少なくとも、見出しと記事本文で共に指摘を受けている「ワクチン1回当たりの購入単価の非公表」というのは、契約上の問題があるとはいえ、税金を投入し、大勢の国民に接種している以上、国としての説明責任を果たしているとは言えず、ただ廃棄見込み数量を示すのはやや誤解を招くのではないかと思う。まず、ファイザー製の武漢株対応1価ワクチンの廃棄数が約880万回という結果については、かなり上出来だったのではないかと思う。武漢株対応ワクチンについては、長らく打つ手がなかったパンデミックの抑え込みの目的がありながら、需要が読み切れず、全国民に2回接種しても余りある量を用意しなければならなかったという事情があるからだ。約880万回分は、大雑把に2回接種分ならば約440万人分、3回接種分ならば約293万人分であり、総人口の占める割合で言えばそれぞれ3.7%、2.4%である。もちろんこの数字には、これまでに有効期限を迎えて廃棄済みのものは含まれていないが、それを含めても10%前後ではないだろうか? 国単位で見れば、これ自体は過剰な廃棄とは言えないと個人的には考えている。一方、オミクロン株対応の2価ワクチンについて言えば、国が供給を受けたのはファイザー製が約1億2,510万回分、モデルナ製が約7,000万回分。こちらは1回接種であり、日本の総人口をやや超える回数となる。しかし、当時は重症化リスクのある人に対して武漢株対応1価ワクチンを応急的に3回目接種で使用したりなど、やや混乱状態にあり、これに加え1、2回目の接種率が思いのほか高かったこと、オミクロン株となってから急速に感染者が増加したことなどを考慮すれば、事前に接種率を読み切るのはやはり困難だったろう。その意味では日本の総人口を上回る供給量を確保しなければならなかったと考えるのが自然である。このうち廃棄見込みはファイザー製が約2,650万回分、モデルナ製が約5,150万回分と公表されている。前述の報道にもあるように供給量に対する廃棄量の割合は、ファイザー製が2割強、モデルナ製に至っては7割強となる。全般的に見れば、オミクロン株対応ワクチンの廃棄量が増えた原因は、度重なる追加接種やオミクロン株出現後のワクチンの感染・発症予防効果の低下で、新型コロナワクチンそのものへの飽きとも言うべき状況が生まれ、接種率が低下したことが大きな要因だろう。もっともファイザー製については、政府や厚生労働省にとっては想定内だったかもしれないが、モデルナ製については確かに廃棄割合が多過ぎる。この点はいくつかの理由が考えられる。モデルナ製ワクチンの廃棄割合が高い理由一つは副反応の問題である。1~2回目接種時からファイザー製よりモデルナ製のほうが副反応出現率は高いと報告され、とりわけ稀とは言え、若年者での心筋炎の副反応はモデルナ製のほうが明らかに頻度は高かった。このため一般人の間では1価ワクチンの段階からファイザー製に比べ、忌避されがちだった。加えて日本でのオミクロン株対応ワクチンの承認はやや“特殊”な経過を辿っている。日本では2022年9月12日に両社のオミクロン株BA.1対応ワクチンを承認したが、すでに当時は世界的に流行株の主流がBA.4/5に移行していた時期。米国食品医薬品局(FDA)は6月末時点で両社にBA.4/5対応ワクチンの製造を求める声明を発表しており、8月中には両社ともこの対応ワクチンの申請を行っていた。結局、アメリカに倣う形で両社とも2022年9月以降に、日本でもBA.4/5対応2価ワクチンの申請を行ったが、とりあえずBA.1対応2価ワクチンでの公費接種が9月20日に開始され、後に承認されたBA.4/5対応2価ワクチンに現場が切り替えていった。このためオミクロン株BA.1対応ワクチンについては廃棄予定ワクチンに一定程度含まれていたのではないかと思われる。また、アメリカではファイザーとモデルナは1日違いで承認申請を行ったが、日本ではモデルナがファイザーに半月遅れで申請を行っているため、これがさらにモデルナ製の廃棄割合の増加に拍車をかけたとみられる。その意味では、日本でのワクチン購入政策に批判的吟味を加えるならば、廃棄量そのものの多寡ではなく、なぜBA.4/5への切り替えが遅れたのか、アメリカでほぼ同時に申請していながら、日本ではなぜモデルナが半月遅れたか、そこに医薬品医療機器総合機構(PMDA)との齟齬がなかったかどうかを検証すべきだ。今回、オミクロン株XBB.1.5 対応1価ワクチンについて、厚労省はファイザー製2,000万回分、モデルナ製500万回分の追加購入で合意に至っており、すでに量的には慎重になっている。今後、この数字がどのくらいに収まっていくのか、これも注目点と言えるだろう。

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コロナブースター接種、インフルワクチン同時接種の影響は?

 新型コロナウイルス感染症ワクチンのブースター接種と季節性インフルエンザワクチンの同時接種の有効性を調査した前向きコホート研究の結果、コロナワクチン単独接種群と比較して、コロナ+インフルワクチン同時接種群では抗スパイクIgG抗体価は低い傾向にあったものの統計学的な有意差はなく、副反応リスクも同程度であったことを、イスラエル・Sheba Medical CenterのTal Gonen氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2023年9月5日号掲載の報告。 コロナワクチンとインフルワクチンの同時接種は、単独で接種した場合と比較して有効性および安全性が劣らないという報告があることなどから現在は実施可能となっている。しかし、多くの報告はコロナワクチンの初回接種を評価したものであり、オミクロンBA.4/5変異株対応2価ワクチンのブースター接種でのデータは乏しい。そこで研究グループは、すでにコロナワクチンを接種している集団における反応原性および免疫原性を比較するために前向きコホート研究を行った。 対象は、Sheba Medical Center(イスラエルの大規模3次医療センター)に勤務する医療者で、2022-2023シーズン中のインフルエンザワクチン(アボット)とオミクロンBA.4/5変異株対応2価ワクチン(ファイザー/BioNTech)のどちらか、またはその両方を接種した。反応原性解析としてワクチン接種後の副反応の発現率(局所症状[疼痛、腫脹、発赤など]、全身症状[発熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感など])とその持続期間、免疫原性解析として新型コロナウイルス抗スパイクIgG抗体価を調べた。ワクチン接種は2022年9月に開始し、2023年1月までデータを収集した。 反応原性解析にはアンケートに回答した588人(コロナワクチン群85人[年齢中央値71歳、女性66%]、インフルワクチン群357人[55歳、79%]、同時接種群146人[61歳、55%])が含まれた。免疫原性解析には血清学的検査を受けた151人(コロナワクチン群74人[年齢中央値67歳、女性61%]、同時接種群77人[60歳、55%]が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・ワクチン接種後の局所症状の発現率は、コロナワクチン群で49.4%(95%信頼区間[CI]:38.4~60.5)、インフルワクチン群で34.5%(29.5~39.6)、同時接種群で52.1%(43.6~60.4)であった。・全身症状は、コロナワクチン群で27.4%(95%CI:18.2~38.2)、インフルワクチン群で12.7%(9.5~16.7)、同時接種群で27.6%(20.5~35.6)に発現した。・コロナワクチン群と比較した場合の局所症状および全身症状発現のオッズ比は、インフルワクチン群はそれぞれ0.27(95%CI:0.15~0.47)および0.17(0.09~0.33)、同時接種群は1.02(0.57~1.82)および0.82(0.43~1.56)であった。・同時投与群の抗スパイクIgG抗体価は、コロナワクチン単独投与群の0.84(95%CI:0.69~1.04)倍と推定された。 これらの結果より、研究グループは「本研究の限界として、コロナに対する免疫原性のみを評価し、インフルエンザに対する免疫原性は評価しなかったことが挙げられる」としたうえで、「コロナワクチンの単独接種と比較して、コロナ+インフルワクチン同時接種は免疫反応の大幅な低下や有害事象の頻発とは関連しておらず、これらのワクチンの同時接種を支持するものである」とまとめた。

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コロナ医療費、公費支援を10月から縮小/厚労省

 厚生労働省は9月15日付の事務連絡にて、新型コロナウイルス感染症の10月以降の医療提供体制の移行および公費支援の具体的内容を公表した。2023年5月8日に新型コロナは5類感染症に変更となり、9月末までを目途として特例措置の見直しが行われてきた。これまでの見直しを踏まえ、冬の感染拡大に対応しつつ、通常の医療提供体制への段階的な移行を進めるため、2023年10月~2024年3月を引き続き移行期間として定め、10月以降の取り扱いがまとめられた。 病床確保料や診療報酬上の特例が見直され、10月以降は補助単価の上限や特例加算を引き下げて継続となる。具体的な額面・点数の詳細は「新型コロナウイルス感染症に関する10月以降の見直し等について」の資料を参照されたい。 新型コロナ患者への治療薬や入院医療費など対する公費支援なども見直され、全額公費負担だったコロナ治療薬は、一部自己負担を求めつつ公費支援が継続されることなどが示された。2024年4月の完全移行後は、通常の自己負担となる予定。 患者等に対する公費支援の詳細は以下のとおり。【治療薬】・9月までは、コロナ治療薬の費用は全額公費支援(外来・入院)であった。・10月以降は、他の疾病との公平性の観点も踏まえ、自己負担なしの扱いから、一定の自己負担を求めつつ公費支援を継続。・自己負担の上限額は、医療費の自己負担割合に応じて段階的に、1割の人:3,000円、2割の人:6,000円、3割の人:9,000円とする。3割の人でも、重症化予防効果のあるラゲブリオ等の薬価(約90,000円)の1割程度(9,000円)にとどまるように見直す。【入院医療費】・9月までは、高額療養費制度の自己負担限度額から2万円を減額であった。・10月以降は、他の疾病との公平性の観点も踏まえ、入院医療費については、高額療養費制度の自己負担限度額から1万円の減額に見直して公費支援を継続。新型コロナ医療費の自己負担イメージ【外来医療費】2023年5月8日~9月末→10月1日~2024年3月末→完全移行後・1割負担の人:1,390円(うち薬剤費0円)→4,090円(同3,000円)→8,000~10,520円(同9,430円)・2割負担の人:2,780円(うち薬剤費0円)→8,180円(同6,000円)→18,000円(同18,860円)・3割負担の人:4,170円(うち薬剤費0円)→12,270円(同9,000円)→31,570円(同28,290円)【入院医療費】・75歳以上(1割負担)で年収約370万円以下の人が7日間入院した場合、治療薬を除く自己負担額は39,800~47,600円。※完全移行後は高額療養費を適用し、39,800~57,600円。

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第63回 「5類」化は失敗だったのか?学級閉鎖急増

学級閉鎖が急増PAKUTASOより使用私の住んでいる地域でも学級閉鎖が増えてきました。新型コロナだけでなくインフルエンザが再び急増して、完全にダブル流行の状態です。来院する発熱者も、一体どちらに感染しているのかわかりにくい状況です。新型コロナでは、嗅覚障害・味覚障害も以前ほど出現せず、特異度の高い所見がありません。前の波までは新型コロナとインフルエンザの両方を検査していた医療機関が多いと思いますが、今はどうでしょうか。インフルエンザの流行が落ち着いたということで、新型コロナだけ検査している医療機関もあるかもしれません。しばらくは両方検査しておくのが無難でしょうね。さて、秋口からインフルエンザの流行が始まることは、過去に類を見ない現象です。今年度の冬は一体どうなるのでしょうか。日本学校保健会における9月15日時点でのデータ1)では、新型コロナによる1,000クラス当たりの学級閉鎖数が多い都道府県は、埼玉県(11.17)、新潟県(4.96)、島根県(4.91)などが目立ちます。インフルエンザによる1,000クラス当たりの学級閉鎖は埼玉県 1.65、新潟県 0.37、島根県 2.28となっており、どちらのウイルスが原因で学級閉鎖しているのかわかりにくいことから、報告に地域差が大きい状況です。画像を拡大する図. 埼玉県の学級閉鎖クラス数(参考1より引用)学級閉鎖になると、親が大変です。とくに共働きの家では、このまさかの事態に親が休まざるを得ないこともあるでしょう。「5類」化で本当によかったのか?世論に押される形で、新型コロナは5月から「5類感染症」になりました。これまでの「新型インフルエンザ等感染症」という枠組みはとても便利で、感染が拡大したときに対策を締めることができ、ピークが過ぎれば緩和するという、非常に勝手のよいものでした。私個人としては、枠組みは「新型インフルエンザ等感染症」のままで、感染の増減に合わせてガードを上げ下げすればよいのではと思っていました。ただ、ずっとこのままやっていくには国全体の疲弊がひどかったですし、どこかで「5類」に変更する必要があったのでしょう。しかし、「5類」化以降、これまでサポートしてくれていた行政が、いきなり塩対応になりました。緩和ムードの裏で、地域では感染が増えました。入退院も個々の医療機関の地域連携室がマネジメントすることになりました。クリニックも医療機関との個別交渉になるので、なかなか大変です。教育現場ではマスクが緩和されました。それはそれでよいことだと思いますが、これほど学級閉鎖が増えても、行政からメッセージが出ないのは不安になりますね。参考文献・参考サイト1)学校保健ポータルサイト 感染症情報マップ(マップビュー)

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第179回 驚きの新閣僚人事、武見厚労相は日医には大きな誤算?“ケンカ太郎”の息子が日医とケンカをする日

日医の族議員が2人も入閣こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。日本のプロ野球は、セ・リーグで阪神タイガースの18年振りの優勝が決まりました。岡田 彰布監督が開幕前から「アレ」と言い続け半ば流行語になった「アレ」ですが、優勝後は「コレ」と言うのでしょうか。クライマックスシリーズ、そして、日本シリーズが楽しみです。それにしても、前任の矢野 燿大監督から岡田監督に代わっただけで翌年優勝とは。MLBで、オークランド・アスレチックスからボルチモア・オリオールズにチームが変わっただけで突然制球が良くなった元阪神の藤浪 晋太郎投手も謎ですが、阪神も相変わらず謎が多い球団ですね。さて今回は9月13日に発足した、第2次岸田第2次改造内閣について書いてみたいと思います。驚きだったのは、日本医師会の政治団体、日本医師連盟の支援を受けてきた武見 敬三参議院議員と、自見 英子参議院議員が、それぞれ厚生労働大臣と地方創生担当大臣(沖縄及び北方対策、他も担当)に起用されたことです。とくに1950年代から80年代まで長く日医会長を務め、政権や厚生省(当時)と渡り合った武見 太郎氏の三男である武見 敬三氏が厚生労働大臣に抜擢されたことは驚きを超え、一部からは呆れ声すら上がっています。武見 敬三氏は1995年の参議院議員選挙比例区で日本医師連盟推薦候補として初当選、その後東京選挙区に移りました。現在、武見氏の後援会会長は東京都医師会会長の尾崎 治夫氏です。武見氏が今でも日医系のいわゆる“族議員”であることは間違いありません。たとえば、ネットニュースを配信するアゴラは、9月13日、「医師会そのものが厚生労働大臣に?:武見敬三氏の起用で広がる波紋」と題するニュースを掲載、X(旧ツイッター)の投稿などで、「医師会そのものが大臣になったようなものだという痛烈な批判がみられます」「岸田政権は『利権に配慮し過ぎる』傾向があるという指摘も」「もはや現政権は一線を超えたとも言えます」などと書いています。岸田総理大臣のしたたかな日本医師会対策か?しかし、本当にそうなのでしょうか?単純に見れば、団体の族議員を関連の大臣として入閣させれば、その団体のやりたいように政策を進められると考えがちですが、私はむしろ逆ではないかと思います。むしろ、今回の武見氏入閣は、岸田 文雄総理大臣のしたたかな日本医師会対策に見えて思えてなりません。日医幹部たちは、表向き武見大臣誕生を喜びながら、内心「やられた!」と思っているかもしれません。閣僚経験なし、71歳の武見氏に任せる理由厚生労働大臣は今や要職です。一般会計歳出の実に3分の1が社会保障費で、最も国の予算を使うのが厚労省です。さらに、マイナ保険証に代表される医療DXの推進、2024年に予定される診療報酬・介護報酬同時改定、そして医師の働き方改革など、大きな課題が山積しています。そんな重要な役所である厚労省を、議員経験が長く医療や社会保障に詳しいと言われてきたものの、大臣経験がない、71歳という高齢の武見氏に任せる理由は何でしょう。もちろん、長年の厚労行政への関与に対する論功行賞的な意味合いもあるでしょう。また、これから推し進めようとする医療DXには日医をはじめとする医療関係団体の協力が不可欠、という理由も大きいでしょう。ただ、それよりも大きなポイントと考えられるのは、来年の診療報酬・介護報酬同時改定、すなわち医師に入る“カネ”の問題です。同時改定に向けて政府と日医の間で激しい攻防の予感次期改定を巡っては、物価高や賃上げの影響もあり、医療関係団体は報酬の引き上げを求めています。しかし、政府は少子化対策の財源に医療の歳出抑制を当て込んでおり、例年以上に難しい調整が予想されます。6月16日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太方針2023)は、少子化対策・こども政策のメニューが拡充された一方で、財源確保策をどうするかについて岸田首相は年末(診療報酬の改定率決定もこの頃)に先送りしました。今年の骨太には、「歳出改革等によって得られる公費の節減等の効果及び社会保険負担軽減の効果を活用することによって、国民に実質的な追加負担を求めることなく、『こども・子育て支援加速化プラン』を推進する」と書かれています。この文言を真に受けるなら、社会保険負担軽減、すなわち診療報酬・介護報酬の圧縮によって財源確保を行うことになります。もちろん、次期改定で物価高や人件費増は反映されるでしょうが、それ以外のプラスはほとんど考慮されないかもしれません。政府と日医の間で激しい攻防が予想されます。岸田首相の財務省寄りのスタンスは今でも変わっていないこの連載では、政府と日医の力関係について度々書いてきましたが、岸田首相の財務省寄りのスタンスは今でも変わっていないと考えられます(「第80回 『首相≒財務省』 vs.『厚労省≒日本医師会』の対立構造下で進む岸田政権の医療政策」参照)。その一つの表れが首相秘書官人事です。2023年7月、岸田首相の秘書官の一人に財務省主計局主計官の一松 旬氏が就任しました。一松氏は奈良県副知事や主計局調査課長などを歴任、前任の宇波 弘貴氏同様、社会保障分野に長く関わってきました。2018年、奈良県がぶち上げた地域別診療報酬構想(全国一律1点10円を都道府県ごとに設定できるようにする)を考えた人物とも言われています。仮に1点8円になれば、その県の診療報酬の総額は単純計算で20%減ります。当時、単純かつ効率的な医療費削減策ということで医療関係者の注目を集めました。この時は日医の猛反対もあり、地域別診療報酬の議論は広がりませんでした。しかし、そんな医療費削減に関して“急進派”の財務官僚を秘書官として登用する岸田氏が、日医の利益のために族議員を大臣にするとは考えられません。族議員として日医の意向を政府に伝える役回りだった武見氏を、厚労大臣という診療報酬の元締め役に就けることで、逆に日医の説得役、なだめすかし役として機能してもらうというのが岸田首相の本音のように見えますが、穿ち過ぎでしょうか。就任会見で「医療関係団体の代弁者ではない」と武見大臣日医の松本 吉郎会長は9月13日、改造内閣が発足したことを受けてコメントを発表、武見氏の入閣について「日本医師会と致しましては、誠に喜ばしい限りです。(中略)。エビデンスに基づく冷静沈着な分析と、その一方でラガーマンとして培われた熱血漢としての側面を持ち合わせる稀有の存在と尊敬しています。これまでの様々なご経験をもとに厚生労働行政においてその手腕を遺憾なく発揮されることと期待しております」とエールを送っています。一方、9月14日、厚労大臣として初の記者会見に臨んだ武見氏は、「新型コロナウイルス感染症への対応など、感染症対策の強化、更に安心安全なマイナ保険証を含む医療DX、医療介護福祉の向上に確実に取り組む。また、持続的な賃上げの実現に向けて、リスキリングによる能力向上支援、そして多様な人材が活躍できる環境整備に取り組みたい」と抱負を述べました。さらに、過去の選挙において日本医師連盟など医療関係団体の推薦を受けたことについて質問されると、「医療関係団体の代弁者ではない。国民の立場に立ってどのような政策を実現するべきかを考えるのが従来から私の一貫した立場だ」と語りました。ゴリゴリの政治家、というよりはどちらかというと学者肌の政治家武見氏は、政府と日医の間の調整役を担わされることになるでしょう。国や財務省の意向を大臣の立場で日医幹部に伝えるというのは、族議員としては相当タフな仕事と言えそうです。大臣就任後の記念撮影で武見氏の顔に笑顔がなかったのは、そのせいかもしれません。ところで武見氏は、元日医会長、太郎氏の三男ですが、医師ではありません。慶應義塾大学大学院で政治学を学んだ後、大学教員となり、テレビのニュースキャスターなどでも活躍、その後、参議院議員となっています。グローバルヘルスの分野では、国際的なネットワークを持っており、2011年に医学雑誌Lancetが日本特集号「国民皆保険達成から50年」を発刊した際は、日本国際交流センター・シニアフェローの立場で同号の国内実行委員会委員長を務めています。また、2019年には、世界保健機関(WHO)のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)親善大使に就任しています。そういった取り組みからも、武見氏はゴリゴリの政治家というよりは、どちらかというと学者肌の政治家と言えそうです。13期25年間も日本医師会長を務めた父親、太郎氏は、政府や厚生省の官僚に対する強い対決姿勢から“ケンカ太郎”とも呼ばれましたが、息子の敬三氏は父親の敵方とも言える厚労大臣になってしまいました。おそらく次の総選挙までの“つなぎ”の大臣だとは思われますが、はたして、武見大臣が日医と“ケンカ”をする日は来るのでしょうか。「医療関係団体の代弁者ではない」と言い切った武見氏の活躍に期待したいと思います。

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コロナの症状、ワクチン回数による違い

新型コロナウイルス感染症の症状ワクチン接種2回以下と3回以上で現れやすい症状は?接種2回以下で現れやすい症状食事摂取量の低下38℃以上の発熱関節痛・筋肉痛強い倦怠感頭痛嗅覚・味覚障害下痢息苦しさ全身症状接種3回以上で現れやすい症状鼻汁咳咽頭痛痰上気道症状対象:2022年4月25日~9月25日(オミクロン株BA.2およびBA.5の流行期)に、札幌市で新型コロナウイルス感染症と診断され療養判定システムに登録された15万7,861人(年齢中央値33歳)方法:ワクチン接種回数2回以下と3回以上の群に分け、12の症状発現(発症5日以内)のオッズ比を計算Nakakubo S, et al. Lancet Infect Dis. 2023 Jun 30. [Epub ahead of print]Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第181回 コロナ起源の結論を賄賂でねじ曲げたと米国CIA職員が密告

決着が付かずにくすぶり続ける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の起源問題。米国で新たな事態が勃発しています。米国議会の委員会の発表によると、COVID-19流行は中国・武漢の研究所にどうやら端を発するとの米国中央情報局(CIA)解析担当官6人の結論がほかでもないCIAからの袖の下によって変えさせられたとの密告がありました1)。密告した人物はかなり信用できる(highly credible)CIA上級職員であると委員会は言っています。CIAは豊富な科学的見識を有する7人をCOVID Discovery Teamに任命してCOVID-19の起源の検討に当たらせました。その検討の結果、最上級職の1人は野生動物をCOVID-19の起源と判断しましたが、ほかの6人全員は信頼性こそ低いものの武漢の研究所がおそらくCOVID-19の出どころであると結論しました。密告者によるとその後CIAから横槍が入り、野生動物起源説を支持するようにそれら6人の結論が変えさせられました。6人には相当の額の袖の下が支払われたと密告者は言っています。密告者から話を聞いた委員会をまとめる2人の議員、Brad Wenstrup氏とMike Turner氏はCOVID-19起源の検討に関する資料ややり取りのすべてを今月26日までに提供することをCIA長官William Burns氏に要求しています。また、COVID-19が盛んだったときにCIA最高執行責任者(COO)だったAndrew Makridis氏に事情聴取への出頭を求めています。事情聴取は情報提供の締切日26日に予定されています。CIAの広報担当者は密告者の主張に反論しており、特定の結論になるように解析担当者に金を払うことはないと述べています。とはいえCIAは密告を非常に深刻に受け止めており、調査を進め、議会には適切に情報を提供すると約束しています。ScienceのニュースにはCIA職員への研究者の印象が紹介されています2)。COVID-19の野生動物起源説を支持する検討結果をいくつか報告している米国有数の研究所Scripps Researchの進化生物学者Kristian Andersen氏はその1人です。その起源の研究で同氏はCIAの職員と何度か話をしており、密告のようなことはまったくあり得ない(obviously is bullshit)と言っています。それら報告の共著者のRobert Garry氏もAndersen氏と似た意見です。話を聞きに来たCIA職員の分子生物学の知識は確かなもので、偏りは一切感じなかったとGarry氏は言っています。米国の情報機関のほとんどは新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が感染動物からヒトに移ってCOVID-19流行が始まったらしいとみています。しかしエネルギー省とFBI(連邦捜査局)はそうではなく研究所起源説を支持しています。CIAはというと結論に至っておらず、起源が動物か研究所かどうかという判断はできないとの見解を繰り返し表明しています。 参考1)Testimony From CIA Whistleblower Alleges New Information on COVID-19 Origins / Committee On Oversight and Accountability2)CIA bribed its own COVID-19 origin team to reject lab-leak theory, anonymous whistleblower claims / Science

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血尿診断で内科医も知っておきたい4つのこと―血尿診断ガイドライン改訂

 『血尿診断ガイドライン』が10年ぶりに改訂された。改訂第3版となる本ガイドラインは、各専門医はもちろんのこと、一般内科医や研修医にもわかりやすいように原因疾患診断のための手順を詳細な「血尿診断アルゴリズム」として提示した。また、コロナ禍での作成ということもあり、最終章では「新型コロナワクチンと血尿」について触れている。今回、本ガイドライン改訂委員会の事務局を務めた小路 直氏(東海大学医学部外科学系腎泌尿器科学)に、内科医が血尿時の問診や専門医への紹介を行ううえで注意すべきポイントなどを聞いた。成人の血尿診断アルゴリズム、尿沈渣検査がカギ 小路氏はまず、非糸球体性血尿の鑑別が進行速度の早い尿路上皮がんの早期発見につながることから、「一般内科医でも血尿を相談された場合などには尿沈渣検査をぜひ実施してほしい」と強調した。また、「非糸球体性血尿が検出されればその後は泌尿器科が対応し、糸球体性血尿が検出された場合には腎臓内科医が対応することになる。かかりつけ医受診の段階で、非糸球体性か糸球体性かを判断することで、患者が次の受診施設の選択で迷わずに済む」とも説明した。尿沈渣検査には遠心分離機が必要だが、それを所有するクリニックは多くはないため、外注に頼らざるを得ないのが現状だろう。もちろん、診療報酬点数(尿沈渣[鏡検法]27点)が算定できるため、尿路上皮がんの早期発見ならびに、紹介先の目星をつけるためにも「尿試験紙で血尿と判断された場合には、尿沈渣検査までは実施し、可能であれば尿細胞診や腹部超音波の実施もお願いしたい。ただし、尿細胞診は悪性度が強いがんでないと検出できないことには留意いただきたい」と話した。<内科医がおさえておきたい検査>・血液検査(血清クレアチニン異常高値)・尿沈渣検査   均一赤血球(非糸球体性血尿)   血尿に加え尿蛋白や細胞円柱/変形赤血球(糸球体性血尿)・尿細胞診 (悪性度の高い尿路上皮がんでないと検出ができないことに留意)・腹部超音波検査   尿路上皮がんや腎がんの検出感度は十分でないことに留意したうえで、適応を検討 なお、肉眼的血尿を呈する(または既往のある)患者で以下の場合には、腎臓内科への早期紹介が勧められるため、特筆すべき点としてフローチャートには赤字で示されている。・cola-like urine(コーラ色の褐色尿)・高度尿蛋白および/または進行性の腎機能低下・尿路感染症を疑う所見を欠く発熱・呼吸器症状や皮膚症状など他の全身症状・腎後性因子が否定される腎機能障害抗血小板薬や抗凝固薬服用が血尿を引き起こす可能性は低い 次に同氏は、よくある患者紹介の事例として“抗血小板薬や抗凝固薬服用患者が紹介されるケース”について言及した。本ガイドラインの「BQ12:抗血小板薬、抗凝固薬を服用している顕微鏡的血尿患者に対して通常の精査は必要か?」では、これらの薬剤を服用している患者において顕微鏡的血尿が認められた場合には、服用が原因であると判断することは困難であるため、これらの薬物を服用していない患者と同様に評価を行う必要があり、リスク分類に基づく精査を考慮する、と要約されている。これについて同氏は「抗血小板薬や抗凝固薬の“出血”という副作用が血尿を連想させやすいものの、種々の研究から鑑みても抗血栓薬に起因する血尿だと判断することは難しい。なお、この件は米国・泌尿器学会のガイドラインやリスク分類も参照している。ただし、専門医にとっては、膀胱鏡検査を実施する際のリスク因子になることはポイントで、念頭に置いておく必要がある」とコメントした。ご存じですか?ビタミンCによる偽陰性 「BQ3:血尿を診断するための採尿方法はどのようにすべきか?」において、採尿前の注意事項として(1)健診など尿試験紙でのスクリーニングではアスコルビン酸(ビタミンC)が存在すると偽陰性となることがあるため、アスコルビン酸を多く含む物の摂取を控える、と記載されている。これは健診時の常識のようだが、医療者によって注意事項として触れているか否かのバラつきがあるようだ。これについて、「結果が出た後に服用状況を確認する必要はないが、医療者としては尿試験紙に影響を及ぼす点は理解しておき、検査前の患者に対し、事前にビタミンCの服用で偽陰性になる点をインフォメーションしておく必要はあるだろう」とコメントした。コロナワクチン接種後の肉眼的血尿はIgA腎症のサインか このほか、専門医がおさえておくべきCQは以下のとおり。―――CQ1:蛋白尿を合併しない成人の顕微鏡的血尿患者において腎生検で同定される病態は何か?CQ2:顕微鏡的血尿の初回精査で異常を指摘されなかった患者に対して定期的経過観察は必要か?CQ3:成人の尿路上皮がん高リスク患者の診断においてCT urographyは推奨されるか?――― 最後に新型コロナワクチンと血尿との関係について、ワクチン接種後に腎炎が再発・再燃する症例が世界的に明らかになり、とくにIgA腎症の既往者では接種後の尿でコーラ色や紅茶色を認めるとの報告がある。これらの症例には1)全例がmRNAワクチン接種後、2)女性に多い、3)遷延する腎機能障害を認める症例はごく一部で大部分は一過性の尿所見増悪に留まる、という特徴があることが国内の調査1)や前向き観察研究からも明らかになってきている。しかし、ワクチン接種が腎症の発症を助長しているわけではなく、むしろ未診断の症例が顕在化した可能性が高いことから、同氏は泌尿器科医や一般内科医に向けて「ワクチン接種後に血尿を訴えた患者が来院した場合には、既往の確認のみならず、IgA腎症の存在を疑い、腎臓内科医への相談も視野に入れて診察に当たってほしい」と述べた。

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コロナ2価ワクチンの有効性持続期間

オミクロン株対応2価ワクチン、有効性の持続期間は感染に対する予防効果:接種2週間後で28.9%、15週間後で3.8%入院または死亡に対する予防効果:接種2週間後で67.4%、20週間後で38.4%100%90%感染に対する予防効果80%70%67.4%58.6%60%50%入院または死亡に対する予防効果47.5% 46.5%42.9%45.4%44.3%43.1%42.0%40.8%39.6%38.4%40%30%20%10%0%28.9% 28.8%26.8%22.7%18.3%13.7%15.7%0.0%0128.9%3.8%34567891011121314151617181920接種後の週数対象:米国の12歳以上の約630万人方法:2022年9月1日~2023年2月10日、オミクロン株対応2価ワクチンの接種者と非接種者※で、感染、入院または死亡に対する予防効果を評価※接種回数が1回少ない接種者(例:追加接種1回vs.初回シリーズのみ接種、追加接種2回vs.追加接種1回)出典:Lin DY, N Engl J Med. 2023;388:1818-1820.Copyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

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新型コロナEG.5.1、伝播力と免疫回避能が増強/東大医科研

 現在、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株は、アジアや欧州、北米を中心に、オミクロン株EG.5系統(エリス)の感染が急増し、主流となっている。XBB系統(XBB.1.9.2)の子孫株であるEG.5系統は、世界保健機関(WHO)により、XBB.1.5、XBB.1.16と共に注目すべき変異株(VOI)に分類されている。東京大学医科学研究所の佐藤 佳氏らの研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan(G2P-Japan)」は、EG.5系統のEG.5.1のウイルス学的特徴を解析したところ、XBB.1.5に比べて1.2倍高い伝播力を示し、XBBの中和抗体に対して1.4倍高い抵抗性を示したことを明らかにした。本結果はThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年9月11日号に掲載された。 本研究では、オミクロン株EG.5.1のウイルス学的特性を、流行動態、感染性、免疫抵抗性などの観点から検証した。変異株間の流行拡大能力の比較の指標として、実効再生産数を用いた。実効再生産数とは、特定の状況下において1人の感染者が生み出す2次感染者数の平均。また、ウイルスの感染性を評価するために、レンチウイルスベースの疑似ウイルスを製作して用いた。ウイルスの中和抗体回避能を調べるために、新型コロナワクチンを2回接種し2週間以上経過してXBBに感染した人の血清(XBB BTI血清)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・中国、韓国、米国、日本、シンガポール、カナダのウイルスゲノム疫学調査情報を基に、ヒト集団内におけるオミクロン株の実効再生産数を推定した。その結果、各国のデータで共通して、EG.5.1の実効再生産数は、XBB.1.5に比べて1.2倍程度高かった。・一方で、ウイルスの培養細胞における感染性を評価したところ、EG.5.1はXBB.1.5/1.9.2より有意に低い感染価を示した。※XBB.1.5とXBB.1.9.2のスパイクタンパク質は同一。・EG.5.1がXBB系統のブレークスルー感染によって誘導される中和抗体の抗ウイルス効果を回避するかどうかを調べるために、XBB BTI血清を用いて中和アッセイを行った。EG.5.1に対するXBB BTI血清の50%中和力価(NT50)は、親株のXBB.1.5/1.9.2に対するものより有意に(1.4倍)低く、免疫回避しやすいことが示された。・XBB.1.5/1.9.2、XBB.1.16、XBB.1.5/1.9.2+Q52Hに対するXBB BTI血清のNT50値は同等であった。しかし、XBB.1.5/1.9.2+F456Lに対するNT50値は、親株のXBB.1.5/1.9.2よりも有意に(1.9倍)低かった。このことから、EG.5.1のスパイクタンパク質に存在するF456L変異は免疫回避につながる重要な変異であることが示唆された。 研究チームは本結果に関するリリースにて、EG.5.1の流行拡大を回避するために有効な感染対策を講じることが肝要だと述べている。

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第177回 コロナ前に逆戻りする人ほど、医療崩壊を見くびる傾向?

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染者報告が増加し続けている。ご存じのように新型コロナの感染拡大状況に関しては、感染症法上の分類が5類に移行してからは、定点報告に切り替わっている。その最初が2023年第19週(5月8〜14日)だが、この時の全国での定点当たりの感染者数は2.63人。その後、この数字はほぼ一貫して右肩上がりの増加を続け、最新の第35週(8月28日~9月3日)には20.50と約10倍にまで達している。しかし、東京都心の様子を見ている限りは、「どこ吹く風?」くらいの雰囲気だ。そうした中で、第35週の定点当たりの報告数が32.54人となり、都道府県別では全国第2位(1位は岩手県の35.24人)の宮城県医師会の会見を報じたテレビニュース映像がインターネット上で流れている。会見した宮城県医師会会長の佐藤 和宏氏の「医療現場は非常にひっ迫。助けられる命も助けられない」「これが医療崩壊。私はこの言葉が好きではないが、実際起こってみるとこれが医療崩壊なんだと思います。今はすでに『第9波』の中にいる」「やはりコロナはまだ終わっていないと思う。今更そんなこと言うなと、楽しくやりたい気持ちも私も十分わかるけど、身を守って、高齢者などの命を守るためには、まずマスクをしてほしい」という発言は、かなりの切迫感がこもっている。この発言、たまたま私は同じ宮城県出身であるため痛いほどわかる側面がある。宮城県と言えば、県庁所在地は杜の都で有名な仙台市で、事実上の東北地方の首都のような扱いでもある。その意味では医療的にも恵まれている部分もある。しかしながら、それは仙台市レベルで見ればであって、宮城県全体で俯瞰すると、やや状況が変わってくる。とくに病床数の多い総合病院の偏在はここでも大きな課題である。実際、私の実家のある町は、市区町村でいう町だが、人口は3万人を超える。にもかかわらず、町内には有床診療所しかない。確かに電車に乗って30分程度で仙台市内に辿り着けるし、車で10分程度も走れば隣接する自治体の総合病院にも行ける。「何も問題はないじゃないか?」と言われるかもしれないが、それは電車や自動車での移動に問題がないことが前提だ。このような医療提供体制で、新型コロナの定点報告数が30人を超えたらどのようになるかは容易に想像がつく。これは実際のデータからも窺い知ることができる。令和3(2021)年医療施設(動態)調査・病院報告によると、宮城県全体での人口10万人当たりの病床数は病院で1075.9床、一般診療所で61.6床。実は東北6県の中では最低値だ(もちろん多ければいいものではないことは百も承知である)。ちなみに人口約227万人の宮城県にいる日本感染症学会専門医は36人。これを、新型コロナの定点報告数が一時期30人を超えた沖縄県で見てみると、人口10万人当たりの病床数は病院で1267.4床、一般診療所で55.9床。人口約147万人に対する前述の感染症専門医数は26人。これに加え、宮城県の面積が沖縄県の3倍という事情を加味すれば、実のところ宮城県のほうが医療提供体制、感染症診療体制ともに脆弱と言っても過言ではない。さてこの報道に関する反応はざっくり言えば真っ二つである。医療従事者やある程度医療に知見のある人の多くは、この報道を淡々と引用し、注意喚起を促す方向が多いが、医療とはほぼ無縁の一般人では「また補助金目当てか?」「過去のインフルエンザ(以下、インフル)の流行時でこんなに騒いだか?」的な反応が散見される。「インフルで医療崩壊しなかったのにコロナで医療崩壊するのはおかしい」理論は時に医療従事者の一部も使う。確かにインフルの場合、厚生労働省・感染症サーベランス事業により発出される流行発生警報の基準は定点報告数30人が基準で、過去の警報発出時期に各地の医師会から医療崩壊を訴えることはほとんど聞かなかった。しかし、過去から繰り返しこの連載でも触れているように、新型コロナとインフルは大きく異なる。そもそも感染力が異なり、市中より明らかに警戒度・感染防止対策が進んでいるはずの医療機関内でも院内感染が容易に起こるという現実がある。当然ながら、受け入れる医療機関は相当警戒度を高めなければならず、スペック上の病床数や人員数は十分に機能しなくなる。しかも一般人側は、新型コロナに対し未だインフルほどの馴染みはないため、新型コロナ以前はインフルの疑いがあっても受診しなかった人の一部が、今は風邪様症状で受診する傾向がある。こうなれば当然、前述の医療崩壊が現実となる。よく「医療崩壊は日本の医療制度の欠陥が原因」という言説も耳にする。これは一理ありかもしれない。だが、その制度上の欠陥とは、大雨時に常にダムが無調整で放流を続けているかのような医療のフリーアクセスに行きつく。こうした主張をする人は、このフリーアクセスを制限したら、本当に日常の医療提供体制に満足するのだろうか? 私個人は甚だ疑問である。医療知識のない一般人の主張ならば、時と場合によって戯言と流しても良いが、医療従事者の一部がそういう主張をすると、いい加減にしてほしいと思うのは私だけではないだろう。新型コロナの5類移行以後を「ポストコロナ」時代と定義するなら、その時代に入り、いつまでこうした不毛な論争を続けなければならないのだろう。

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第62回 皆さんはXBB対応ワクチンを接種しますか?

XBB.1.5対応1価ワクチンの接種が開始Unsplashより使用9月20日からXBB.1.5対応1価ワクチンの接種が始まります。これまで年代別に接種条件が非常にわかりにくかったのですが、「初回接種」(5歳以上は1・2回目、4歳以下は1~3回目接種)を終えた人であれば、ほぼすべての年齢層がこのワクチン接種の対象です1)。マックスで接種している医療従事者は、おそらく次の接種は7回目になるかと思います(写真)。写真. 私の接種歴メディア関係の記事を書いていることもあって、周囲からよく「打ち過ぎじゃない?」と言われます。規定の回数で打ったほうが有効ということがわかっておりますし、そもそも「回数が多い=打ち過ぎ」というのは全然科学的でない気がします。新型コロナワクチンはよく「いたちごっこだ」と批判されますが、インフルエンザワクチンでさえも、流行株を年ごとに狙っているので、これもいたちごっこです。パンデミックは「いたちごっこ上等」で向き合わないといけません。医療従事者に対するワクチン私個人としては、病院職員がワクチン接種を受けることは、要は医療に対するモラルとかマナーの範疇だと捉えています。副反応で苦しい思いをしたので接種したくないというのであればやむを得ないと思いますが、自分自身が感染しても軽症で済むからという無責任な理由を宛てがうのは、ちょっとモヤモヤが残ります。ワクチン未接種で院内の患者さんにスプレッドするのは、避けたいところですね。私は国立病院機構に勤務しているのですが、機構全体のインフルエンザワクチンの接種率を調べた報告があります。2008年度で、87.3%という結果でした2)。インフルエンザワクチンに関するマインドはそこまで変わっていないので、このあたりに収れんするのかなと思っています。ただ、新型コロナワクチンについては、マックスで接種している医療従事者の割合はここまで高くないような印象です(調査したわけではありませんが…)。ケアネットのアンケート調査では、3回以上接種している医師は9割以上いるのですが、その後だんだんと接種しなくなっている人が増えている気がします。今後はおそらくインフルエンザワクチンと同じようなタイミングで年1回接種していくことになるでしょうが、XBB.1.5対応1価ワクチンは、同一ワクチンによるブースターというよりも変異ウイルス用に改変したアップデートワクチンなので、接種しておいたほうがよいと思います。私見です。参考文献・参考サイト1)厚生労働省:新型コロナワクチン 令和5年秋開始接種についてのお知らせ(第2報)(2023年9月12日)※初回接種がまだの人も、9月20日以降はXBB.1.5対応ワクチンでの初回接種となります。2)国立病院機構臨床評価指標2009. 独立行政法人国立病院機構本部

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モデルナのXBB.1.5対応コロナワクチン、追加免疫として承認/厚労省

 厚生労働省は9月12日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のオミクロン株対応ワクチンの一部変更について承認したことを発表した。今回の承認で、モデルナの「スパイクバックス筋注」にオミクロン株XBB.1.5系統のスパイクタンパク質をコードするmRNAを含む1価ワクチンが追加された。2023年7月7日に製造販売承認事項一部変更申請されていたもので、9月20日以降の秋開始接種に使用される。 本ワクチンは、世界で急速に拡大し新たな懸念となっているEG.5(エリス)やFL.1.5.1、BA.2.86(ピロラ)といった変異に対しても強固なヒト免疫応答を示している。また、米国食品医薬品局(FDA)も9月11日付のリリースにて、モデルナおよびファイザーのXBB.1.5対応1価ワクチンの12歳以上への生物製剤承認一部変更申請の承認、生後6ヵ月~11歳への緊急使用許可を行ったことを発表した。 日本における秋開始接種でのモデルナのXBB.1.5対応ワクチンは、初回免疫への適応はなく追加免疫としてのみ使用できる。接種対象は6歳以上で、用量は年齢別に異なる。なお、先に承認となったファイザーのXBB.1.5対応ワクチンは、初回免疫としても使用可能。 一変承認されたワクチンの概要は以下のとおり。販売名:スパイクバックス筋注一般名:コロナウイルス(SARS-CoV-2)RNAワクチン(有効成分名:エラソメラン、エラソメラン及びイムエラソメラン、エラソメラン及びダベソメラン又はアンデュソメラン)(下線部追加)効能・効果:SARS-CoV-2による感染症の予防用法・用量:SARS-CoV-2(起源株及びオミクロン株)のスパイクタンパク質をコードするmRNAを含む製剤又はSARS-CoV-2(オミクロン株)のスパイクタンパク質をコードするmRNAを含む製剤(下線部追加)<12歳以上の者>追加免疫として、1回0.5mLを筋肉内に接種する。<6歳以上12歳未満の者>追加免疫として、1回0.25mLを筋肉内に接種する。接種間隔:通常、前回のSARS-CoV-2ワクチンの接種から少なくとも3ヵ月経過した後に接種することができる。(注)エラソメラン、イムエラソメラン、ダベソメラン及びアンデュソメランは、それぞれSARS-CoV-2の起源株、オミクロン株BA.1系統、オミクロン株BA.4-5系統及びオミクロン株XBB.1.5系統のスパイクタンパク質をコードするmRNA。

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高齢COVID-19患者の退院後の死亡および再入院のリスク(解説:小金丸博氏)

 今回、65歳以上の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の退院後の長期にわたる転帰を調査した米国の後ろ向きコホート研究の結果が、BMJ誌2023年8月9日号に報告された。高齢者におけるCOVID-19の急性期症状や短期的な転帰についてはよく研究されているが、長期的な転帰については十分判明していなかった。本研究ではインフルエンザの退院患者を対照群として選択し比較した。その結果、COVID-19患者の退院後の全死因死亡リスクは30日時点で10.9%、90日時点で15.5%、180日時点で19.1%であり、インフルエンザ患者と比較して高率だった。再入院のリスクは30日時点で16.0%、90日時点で24.1%でありインフルエンザ患者より高率だったが、180日時点では30.6%で同等だった。再入院は心肺機能の問題で入院することが多く、再入院時の初期診断としては敗血症(セプシス)、心不全、肺炎の順に多く認めた。 本研究では、COVID-19関連の入院後に退院した65歳以上の高齢者では、退院後180日以内の死亡リスクが過去のインフルエンザ対照群と比較して高いことが示された。インフルエンザの重症度は流行株による違いが大きいことが知られており、比較対象とするシーズンによって結果が異なることが予想されるものの、入院を要したCOVID-19が高齢患者に与えるダメージが大きいことは現場で感じる感覚と合致する。両群の死亡リスクの増加の違いは主に退院後30日以内の違いによって引き起こされているようであり、COVID-19のほうがより急性感染症として重篤であることや血栓塞栓症などの合併症を多く引き起こすことが理由として考えられる。 COVID-19関連の退院後の死亡リスクはパンデミックの過程で大幅に減少していた。抗ウイルス薬、ステロイドの投与といった有効な治療法の確立、重症化予防が期待できるワクチン接種など、治療や予防の進歩が寄与した可能性が高いと思われる。そのほか、コロナウイルスの変異に伴う毒性の変化も死亡リスク減少の理由として考えられる。 高齢者は高血圧や糖尿病など基礎疾患を有することが多く、COVID-19に罹患した場合、入院が必要となることも多い。入院中の急性期の治療はもちろん大切だが、高齢者では退院後の死亡率、再入院率が高いことを認識し、退院後も継続的に経過観察することが重要と考える。

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コロナ後遺症2年追跡、入院例は依然死亡リスク高い

 コロナ罹患後症状(コロナ後遺症、long COVID)に関するエビデンスは、これまでそのほとんどが感染後1年内のものだった。感染流行から時間が経過し、2年間の追跡データが発表された。米国・VAセントルイス・ヘルスケアシステムのBenjamin Bowe氏らによる本研究は、Nature Medicine誌オンライン版2023年8月21日号に掲載された。 研究者らは米国退役軍人データベースから13万8,818例の感染群と598万5,227例の非感染の対照群からなるコホートを2年間追跡し、死亡と事前に規定した80の急性期後遺症のリスクを推定した。感染群は、急性期における入院の有無でさらに分析した。 主な結果は以下のとおり。・感染群は平均年齢60.91歳(SD:15.96)、13万8,818例のうち非入院が11万8,238例、入院が2万580例であった。対照群は平均年齢62.82歳(SD:16.84)であった。・感染群の死亡リスクは、非入院例では感染後6ヵ月を超えると有意な増加はなかったが、入院例では2年間を通じて有意に増加したままであった。・80の後遺症のうち、非入院例は2年後に69%が対照群との有意差がなくなったのに対し、入院例は35%にとどまった。・2年間の累積で、急性期後遺症による障害調整生存年(DALY:疾患により失われる健康寿命)は、非入院例は1,000人当たり80.4(95%信頼区間[CI]:71.6~89.6)、入院例は642.8(95%CI:596.9~689.3)であった。損失の多くは感染後1年目に発生したが、2年目の発生も一定数あった(非入院例25.3%、入院例21.3%)。 著者らは、「後遺症リスクの多くは感染後2年で減少したが、入院例ではその減少が顕著ではなかった。急性期後遺症による健康喪失の累積負担は大きく、感染者の長期的ケアに注意を払う必要がある」としている。

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コロナワクチン、同じ腕に接種vs.違う腕に接種

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症ワクチン「BNT162b2」の2回接種レジメンでは上腕の三角筋に順次投与されるが、2回目の投与を同側の腕に行うか反対側の腕に行うかによる免疫学的影響については、これまでほとんど注意が払われてこなかった。ドイツ・ザールラント大学のLaura Ziegler氏らは、どちらの腕に投与するかがワクチンによって誘導される液性免疫および細胞性免疫に異なる影響を及ぼすかどうかを検討した観察研究の結果を、eBioMedicine誌2023年8月11日号に報告した。 SARS-CoV-2感染歴のない303人が集められ、同側(147人)または対側(156人)のいずれかにBNT162b2の2回目接種を受けた。スパイク特異的IgG抗体価、IgG-avidityおよび中和抗体価は、投与2週間後にELISA法およびサロゲートアッセイを用いて定量した。143人のサブグループ(同側64人、対側79人)について、フローサイトメトリー法を用いてスパイク特異的CD4およびCD8 T細胞を分析した。 主な結果は以下のとおり。・スパイク特異的IgG抗体価の中央値は、同側と対側で差はなかった(4,590BAU/mL[IQR:3,438] vs.4,002BAU/mL[IQR:3,524]、p=0.106)。・IgG-avidityも同様に差はなかった(39.5%[IQR:11.5%] vs.41.9%[IQR:10.5%]、p=0.056)。・一方、中和活性は対側で有意に低かった(69.0%[IQR:33.0%] vs.65.0%[IQR:33.8%]、p=0.024)。・同様に、スパイク特異的CD8 T細胞レベルは対側で有意に低く(p=0.004)、CD8 T細胞が検出可能な人の割合は、同側ワクチン接種後よりも対側ワクチン接種後で有意に低かった(67.2% vs.43.0%、p=0.004)。・スパイク特異的CD4 T細胞レベルは両群で同程度であったが、対側ワクチン接種後に有意に高いCTLA-4発現を示した(p=0.011)。・ポリクローナルに刺激されたT細胞レベルに差がなかったことから、これらの影響はワクチン特異的なものと考えられた。 著者らは、同側でも対側でも強力な免疫応答が誘導されるが、2回目接種で初回と同じリンパ節による排出を可能にするワクチン投与経路を選択した場合により顕著になるとし、より高い中和活性とより高いスパイク特異的CD8 T細胞レベルは、感染や重症化からの防御に関係すると考えられ、多くの場合選択されていると考えられる同側接種を支持する結果とまとめている。

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モデルナXBB対応コロナワクチン、BA.2.86「ピロラ」にも有効

 米国・Moderna社は9月6日付のプレスリリースにて、同社のXBB対応の新型コロナワクチンが、高度な変異のある新たな変異株のBA.2.86(通称:ピロラ)に対して、中和抗体をヒトで8.7倍増加させることを、同社の臨床試験データで確認したことを発表した。米国疾病予防管理センター(CDC)によると、BA.2.86は、新型コロナワクチンを以前接種した人でも感染する可能性があり、新たなXBB対応ワクチンは重症化や入院を減らすのに有効な可能性があるという。 同社のXBB対応ワクチンは、日本を含む全世界で現在主流となっているEG.5系統1)や、FL.1.5.1に対する有効性も確認されている。BA.2.86は、以前のオミクロン株と比較して30以上の変異を持つ高度な変異株であることから、公衆衛生当局により厳重に監視されている2)。9月7日に、日本でも初めてBA.2.86が検出されたことがGISAIDに報告された3,4)。一部の国では、BA.2.86が過去の新型コロナワクチン接種または感染による保護免疫を逃避する可能性があることから、ワクチンの接種開始時期を早めようとする動きもあるという。日本では、本ワクチンは9月20日以降の秋開始接種で使用される予定。今回のBA.2.86に対するワクチンの臨床試験データは、規制当局と共有され、査読付き論文として提出されている。

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第163回 コロナワクチン接種、来年度も高齢者向けは無料、一般は自己負担に/厚労省

<先週の動き>1.コロナワクチン接種、来年度も高齢者向けは無料、一般は自己負担に/厚労省2.コロナ病床確保料504億円過大支給、医療機関に返還要求/厚労省3.新型コロナ治療薬の自己負担、10月より最大9,000円へ/厚労省4.2022年度、医療費の高騰続く、高額薬の影響で「高額レセプト」過去最多更新/健保連5.出産費用、全国平均で2万円増加、456施設が値上げ/厚労省6.医師の過労自殺問題、日医会長と遺族が働き方改革を訴える1.コロナワクチン接種、来年度も高齢者向けは無料、一般は自己負担に/厚労省来年度の新型コロナウイルスワクチンの接種に関する方針が明らかになった。厚生労働省は、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会を9月8日に開き、来年度のコロナウイルスワクチン接種について、65歳以上の高齢者や重症化リスクの高い人を対象に、年1回とする案を議論した。これまで「臨時接種」の位置付けで行われていた無料接種は、今年度をもって終了し、2024年度からは原則自己負担となる見込み。なお、高齢者らは公費助成の「定期接種」として、無料または低額での接種が検討されている。一方、65歳未満の人々は「任意接種」としての扱いとなり、自己負担が必要となる可能性が高い。今回の方針変更の背景には、新型コロナの変異株オミクロンの重症化率の低下や感染症法上の「5類」への移行、さらに抗ウイルス薬の普及などが影響しており、厚労省は接種の目的を「重症化予防」と位置付け、接種時期を「秋・冬」とする案も示している。参考1)第55回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会(厚労省)2)高齢者接種、年1回で調整 来年度コロナワクチン 厚労省(時事通信)3)コロナワクチン、国費での無料接種終了へ 65歳未満は原則自己負担(毎日新聞)4)新型コロナワクチン、無料接種は今年度限りで終了…高齢者らには助成も検討(読売新聞)2.コロナ病床確保料504億円過大支給、医療機関に返還要求/厚労省厚生労働省は2020年度と2021年度の2年間で、新型コロナウイルスの感染拡大に対応し、病床を確保した医療機関に支払われる「病床確保料」に関して、計約504億円を過大に支給していたと発表した。この過大交付は、岩手と徳島を除く45都道府県の延べ1,536の医療機関で発生。原因として、退院日を空き病床と誤判断して病床確保料を申請した医療機関が多数確認され、その95%以上が制度の誤認識によるものとされている。また、医師や看護師の不足により患者を受け入れられないにもかかわらず、誤って申請していたケースも見受けられた。会計検査院は昨年、病床確保料の過大支給が約55億円発生していたとの報告を公表。これを受け、厚労省は全国の医療機関に対する調査を進めていた。厚労省は、これらの医療機関に対して全額返還を求めている。参考1)病床確保料 国が504億円過大支給…医療機関に全額返還求める(読売新聞)2)コロナ病床確保料、500億円過大交付 医療機関からの返還求める(朝日新聞)3)コロナ患者の病床確保料、過大交付500億円超 制度の認識誤りか(毎日新聞)3.新型コロナ治療薬の自己負担、10月より最大9,000円へ/厚労省新型コロナウイルス治療薬に関する政府の支援策の変更により、10月以降、高額治療薬の費用に自己負担が導入されることが明らかになった。これまで治療薬の費用は全額公費で賄われていたが、今後、窓口負担が3割の患者には最大9,000円、2割の患者では6,000円、1割の患者では3,000円の自己負担が求められる方向で調整が進められている。今回の方針変更では、治療1回当たりの患者負担に上限額を設け、それを超えた分は公費でカバーされる予定。高額な治療薬には、米メルクのモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)や米ファイザーのニルマトレルビル/リトナビル(同:パキロビッドパック)があり、これらの薬価は9万円以上となっている。さらに入院費用の補助も公費支援自体は継続されるものの、10月以降については減額される方針で、これは他の5類感染症との公平性を踏まえて重症患者に重点化される見通し。新型コロナの法的な位置付けが5月に「5類」に移行して以降、医療対応は平時に近付いており、8月時点での新型コロナウイルスに対応する外来は4.9万ヵ所、入院対応可能な病院も7,300病院となっていることが明らかにされた。参考1)コロナ薬、患者負担9,000円 10月以降、低所得者は軽減(東京新聞)2)コロナ治療薬自己負担 “最大”9,000円 来月から(FNN)3)コロナ治療薬、3割負担なら上限9,000円に 厚労省調整(日経新聞)4.2022年度、医療費の高騰続く、高額薬の影響で「高額レセプト」過去最多更新/健保連健康保険組合連合会(健保連)が9月7日に発表した2022年度のデータによれば、1ヵ月の医療費が1,000万円以上となる「高額レセプト」が前年度比275件増の1,792件となり、過去最多を記録したことが明らかになった。この増加の背景には、高額な医薬品の保険適用が大きく影響している。とくに、脊髄性筋萎縮症の治療薬オナセムノゲン アベパルボベク(商品名:ゾルゲンスマ)や白血病など治療薬チサゲンレクルユーセル(同:キムリア)の利用が目立つ。ゾルゲンスマは1億6,708万円で、国内で保険適用されている薬の中で最も高額。上位9位までの患者は主に脊髄性筋萎縮症の治療薬利用者であり、1億円超の医療費を記録している。健保連では、このような高額薬の増加による医療費の膨張を受け、医療の効率化や合理化の推進が必要であると指摘している。参考1)令和4年度 高額医療交付金交付事業における高額レセプト上位の概要 (健保連)2)医療費月1,000万円以上過去最多 22年度、高額薬利用が増加 健保連調査(時事通信)3)高額レセプト件数8年連続で過去最多 22年度1,792件、健保連集計(CB news)4)2022年度の1か月医療費上位1-9位は脊髄性筋萎縮症患者で各々1億7,000万円程度、1,000万円超レセは1,792件で過去最高-健保連(Gem Med)5.出産費用、全国平均で2万円増加、456施設が値上げ/厚労省厚生労働省は、9月7日に社会保障審議会医療保険部会を開き、出産費用の見える化について議論した。この中で、令和5年7月時点で分娩を取り扱っている分娩取扱施設を対象に行ったアンケート調査の結果、出産育児一時金が2022年12月に原則42万円から50万円に増額された後、出産費用を値上げした医療機関が全国で456施設に上ることが明らかになった。2023年5月時点の出産費用の平均は50万3,000円となり、昨年と比べて約2万円増加していた。値上げの主な理由として、「光熱費などの高騰」が約9割、「一時金の増額で妊産婦の自己負担への影響が少ないと考えた」という回答が半数以上であった。厚労省は、出産費用の「見える化」を目的として、施設ごとの費用内訳を公式ホームページで公開する予定。参考1)出産費用の見える化等について(厚労省)2)出産費用、半数近くが値上げ 「出産育児一時金の増額」も理由に(朝日新聞)3)出産費値上げ、医療機関の26.5% 一時金の増額後に(日経新聞)4)出産費用4月までに増額4割超、厚労省調べ 医療保険部会で、「一時金引き上げに伴い上昇」(CB news)5)出産育児一時金引き上げ後に出産費用値上げは456施設 厚労省(NHK)6.医師の過労自殺問題、日医会長と遺族が働き方改革を訴える神戸市東灘区の甲南医療センターで2022年に26歳の専攻医・高島 晨伍さんが自殺し、この問題では西宮労働基準監督署が、長時間労働が原因として労災認定を行った。そして、高島さんの過去1ヵ月の時間外労働が、国の基準を超える207時間50分だったことが明らかになった。8月31日、高島さんの母・淳子さんは、厚生労働省にて嘆願書を提出し、医師の働き方改革を求め、「医療、行政、社会が協力してほしい」と訴えた。日本医師会の松本 吉郎会長は9月6日の記者会見でこの件を重く受け止め、医師の労働環境改善と再発防止の取り組みを強化するとの考えを示した。参考1)医師の自殺 労災認定 “再発防止に力尽くす” 日本医師会会長(NHK)2)松本日医会長、兵庫県の勤務医過労自殺「大変重く受け止めている」-会見で弔意を表明(日本医事新報)3)「息子の死を教訓に」医師の働き方改革を 甲南医療センター過労自殺の遺族、厚労省に嘆願書(神戸新聞)

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中国のゼロコロナ政策終了直後、超過死亡が急増か

 中国では、コロナパンデミックの開始から厳格なゼロコロナ政策によって罹患率と死亡率は低く抑えられていた。しかし、2022年12月のゼロコロナ政策の解除により、以降2ヵ月間、中国全土の30歳以上において推定187万人の超過死亡が発生したことが、米国・シアトルのFred Hutchinson Cancer Research CenterのHong Xiao氏らの研究チームによる調査で確認された。JAMA Network Open誌2023年8月25日号掲載の報告。 本調査では、北京市の北京大学と精華大学、黒竜江省のハルビン工業大学の2016年1月1日~2023年1月31日までの職員の公開された訃報記事データが用いられた。訃報記事は、年齢、性別、役職、雇用形態(現職、退職)に関係なく、死亡したすべての職員が含まれ、掲載のプロセスはCOVID-19の流行前も流行中も一貫して行われていた。本データから30歳以上の死亡率の相対的変化を推定した。前COVID-19期(2016年1月~2019年12月)、ゼロコロナ政策期(2020年1月~2022年11月)、ポスト・ゼロコロナ政策期(2022年12月~2023年1月)の3つの期間に分け、負の二項回帰モデルを使用した。また、中国のインターネット検索エンジンBaiduにて、総検索量に対する死に関連するワード(葬儀社、火葬、埋葬など)の検索の頻度(Baidu指数:BI)の相対的変化も推計し、大学における30歳以上の死亡率との相関関係も分析した。さらに、これらの数値を基に、中国のその他の地域における超過死亡率を算出した。 主な結果は以下のとおり。・北京市と黒竜江省ともに、死亡数は2022年12月第4週にピークに達した。それと同時期の12月25日に、中国のほとんどの省で、死に関連するワードのネット検索のBIが最も高くなった。・ゼロコロナ政策の終了後、北京の2つの大学における死亡数は、予想死亡数に比べて大幅な増加を示し、2022年12月と2023年1月にそれぞれ403%(95%CI:351~461)と56%(95%CI:41~73)の増加を示した。ハルビン工業大学における死亡数は、2022年12月(12 vs.3、p<0.001)と2023年1月(19 vs.3、p<0.001)の両方で、予想された死亡数よりも統計的に有意に高かった。・ポスト・ゼロコロナ政策期の北京の大学での死亡のうち、男性は75.6%(95%信頼区間[CI]:65~84)、85歳以上は80.0%(95%CI:70~87)だった。85歳以上の死亡の割合は、前COVID-19期(51.9%)およびゼロコロナ政策期(62.3%)よりも高かった(p<0.001)。ハルビン工業大学でも同様のパターンがみられ、ポスト・ゼロコロナ政策期の死亡は、男性82.1%、85歳以上69.0%だった。・ポスト・ゼロコロナ政策期(2022年12月~2023年1月)では、中国全土で30歳以上の推定187万人(95%CI:71万~443万、1,000人当たり1.33人)の超過死亡が発生した。・チベットを除くすべての省で統計学的に有意な死亡率の増加が推計され、増加範囲は広西チワン族自治区の77%増(95%CI:24~197)から寧夏回族自治区の279%増(95%CI:109~658)であった。・超過死亡数は中国政府の公式推計値である6万人をはるかに上回ったが、超過死亡のパターンは、COVID-19に関連した病院での入院と死亡が2022年12月末にピークに達したという中国政府の報告と一致していた。 中国には包括的で一般に入手可能なデータが存在しないために、超過死亡数を推定するために行われた本研究において、中国のゼロコロナ政策の突然の解除が、全死因死亡率の有意な上昇と関連していることが明らかになった。著者は本結果について、COVID-19の集団への突然の伝播が集団死亡率に与える影響を理解するうえで重要だとまとめている。

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