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4年ぶりの一時帰国、変わるもの、変わらないもの【臨床留学通信 from NY】第51回

第51回:4年ぶりの一時帰国、変わるもの、変わらないもの8月上旬に、日本に一時帰国しました。実に4年ぶり、2019年7月以来です。2020年2~3月から新型コロナが猛威を振るい始め、2022年9月までは日本入国時に陰性証明書も必要であったことから、一時帰国は控えていました。また、帰らなくなるとだんだんと米国に適合し、日本の良さを忘れてきてしまい、帰らなくてもいいかな、と思ってきてしまいます。両親などとはビデオチャットで話しているとはいえ、さすがに4年も帰らないのは、ということもあり、一念発起して家族共々一時帰国しました。昨今の物価上昇と、夏休みの時期というのもあり、直行便で2,000ドル(8月18時点で1ドル145円なので29万円!)とかなり高額です。そこはやむを得ません。帰国時にはビザの更新も原則必要で、円安の影響もあり家族4人で10万円以上かかります。実際に帰ると久々の時差ボケもありますが、とにかく暑かったです。連日35度を超えて干からびそうな日々でした。車の免許も切れてしまったため、更新するまで移動は歩きも多く疲弊してしまいました。コロナの影響のため、期限が切れてしまっていても特別処置で更新程度の手続きで済んだのはよかったです。ほかには暴飲暴食ではありませんが、普段あまり食べられない新鮮な納豆、生卵はもちろん、お寿司、焼肉、うなぎ、日本酒といったものを食べ過ぎてしまいました。日本ではマスクが多いと聞いておりましたが、電車でも予想よりマスクをしている人が少なかった印象で、暑さの影響もあるのでしょうか。滞在は2週間の休暇で子供たちと両親や親戚、祖母、姉家族と過ごしておりましたが、やはり両親や祖母が4年分歳を取ってしまったな、というところは認識せざるを得ませんでした。それでも孫、ひ孫を見せることができたのはよかったと思います。また少ない時間ではありますが、大学や初期研修の同期たちとも久々に会うことができ、そこはやはり変わらないなと思いました。日本の物価の安さも変わらないという印象で(それでも昨年以降は上がっているようですが)、ビッグマックの価格が欧米の6割程度とよく言われるように、欧米諸国からは安くて良いものが手に入る国として見なされてしまっているようです。私としては米国で働き続けるのか、選択肢を迫られた時にいろいろ考えさせられます。といっても、現在ドル建てでお給料をもらっていても余るどころか減る一方なので、足りない分を円から補おうとすると、現状では円安がつらいところです。一般的な臨床研究の留学は2~3年、基礎研究で3~5年でしょうか。渡米して6年目に突入するといろいろ考えることが増えてきます。ColumnCirculation誌の姉妹誌であるCirculation Cardiovasc Imaging 誌(IF 8.5)に、Montefioreの研究チームで投稿した冠動脈石灰化スコアに関する論文が、先日発表されました。私は主に解析を担当し、共同筆頭著者として参加しました。米国では予防循環器学(preventive cardiology)が発達しており、このような冠動脈の石灰化と予後をみるような研究が盛んに行われています。発症してしまったものを治すだけでなく、ならないようにどう予防するかが重要な時代になってきています。私のいる病院はマンハッタン島から北東にあるブロンクスというエリアで、ヒスパニック系や黒人が患者の4分の3を占めており、米国大都市の現状を反映していると思います。Fattouh M, Kuno T, et al. Interplay Between Zero CAC, Quantitative Plaque Analysis, and Adverse Events in a Diverse Patient Cohort. Circ Cardiovasc Imaging. 2023;16:e015236.

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オミクロン感染した高齢者、再感染リスクが高い!?

 高齢者は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの接種率が高いにもかかわらず、SARS-CoV-2オミクロン株への感染および重症化のリスクが高く、とくに介護施設などで共同生活をしている高齢者はそのリスクが高いことが知られている。また、高齢者において、SARS-CoV-2オミクロン株感染後のハイブリッド免疫(ワクチン接種と感染をいずれも経験した人の免疫)の再感染に対する予防効果は明らかになっていない。そこで、カナダ・McMaster UniversityのJessica A. Breznik氏らの研究グループは、介護施設や老人ホームに入所しているワクチン接種済みの高齢者を対象に、SARS-CoV-2感染リスクに関連する因子を検討した。その結果、SARS-CoV-2オミクロン株への感染歴を有する高齢者は再感染リスクが低下せず、むしろ高かったことが明らかになった。本研究結果は、eClinicalMedicine誌オンライン版2023年8月21日号で報告された。 カナダ・オンタリオ州の介護施設または老人ホームに入所している高齢者で、ワクチン接種を4回受けている750例を対象に、2022年7月1日~9月13日の期間におけるSARS-CoV-2感染率を後ろ向きに調査し、感染リスクに関連する因子を検討した。また、観察期間前3ヵ月(2022年4月1日~6月30日)において、318例を対象に体液性免疫とT細胞免疫について検討した。 主な結果は以下のとおり。・対象者の年齢中央値は87.0歳、女性の割合は64.4%(483例)、介護施設入所者の割合は57.1%(428例)であった。・観察期間において、750例中133例(17.7%)にSARS-CoV-2感染が確認された。・観察期間においてSARS-CoV-2感染が認められなかった617例のうち、観察期間前にSARS-CoV-2オミクロン株への感染歴を有する割合は8.9%(55例)であった。一方、観察期間に感染が認められた133例のうち、観察期間前にSARS-CoV-2オミクロン株への感染歴を有する割合は57.1%(76例)であった。・Cox比例ハザードモデルを用いてSARS-CoV-2感染リスクに関連する因子を検討した結果、SARS-CoV-2オミクロン株への感染歴を有する人は、観察開始9~29日後におけるSARS-CoV-2感染リスクが有意に高かった(ハザード比[HR]:47.67、95%信頼区間:23.73~95.76、p<0.0001)。また、mRNA-1273とBNT162b2を組み合わせてワクチンを4回接種した人は、BNT162b2のみで4回接種した人よりも、観察期間中のSARS-CoV-2感染リスクが低かった(同:0.49、0.26~0.90、p=0.023)。・一方、年齢、性別、居住形態、過去の居住地でのアウトブレイクの有無、オミクロン株以前の株への感染歴、4回目のワクチン接種日は、観察期間中のSARS-CoV-2感染リスクとの関連が認められなかった。・SARS-CoV-2オミクロン株への感染歴を有する人のうち、再感染が認められた人は血清中の抗SARS-CoV-2受容体結合ドメインIgG抗体価、抗スパイクタンパク質IgA抗体価が有意に低く(それぞれp=0.0009、0.0072)、オミクロン株BA.1に対する中和抗体価も低かった(p=0.0072)。すなわち、再感染者は体液性免疫応答の誘導が弱かった。

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第161回 新型コロナワクチンの秋接種、9月から全世代対象で/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナワクチンの秋接種、9月から全世代対象で/厚労省2.医師の過労死問題に加藤厚労相「適切な労働時間管理」を求める/兵庫県3.新型コロナ診療手引き改訂、医療従事者の就業制限と治療薬の使用を明確化/厚労省4.感染症対策の体制を大幅刷新、尾身 茂氏が一線を退く/政府5.看護師不足とハラスメント対策に、看護師確保の基本指針を初改定へ/厚労省6.人材不足が深刻化する日本の医療・福祉業界、対策を模索/厚労省1.新型コロナワクチンの秋接種、9月から全世代対象で/厚労省厚生労働省は、全世代を対象にした追加接種を9月から開始すると発表した。対象となるのは、生後6ヵ月以上のすべての人で、新たに承認申請されたオミクロン株の亜系統「XBB」に対応するワクチンを使用する。これまで高齢者や基礎疾患のある人には「努力義務」が適用されていたが、9月からの接種では、この「努力義務」は適用されない見通し。なお、接種は今年度内は無料で行われるが、来年度以降の接種費用については、「定期接種」に変更される可能性があり、場合によっては接種費用の一部自己負担が必要となる可能性がある。東京都では9月20日から接種を開始すると発表しており、接種会場は都庁の北展望室をはじめとした複数の場所で行われる見込み。予約はインターネットで8月28日から開始され、使用するワクチンは米ファイザー製、米モデルナ製、および米ノババックス製の3種類とされている。政府は、早めの予約と各自治体からの最新情報に注意を払うよう呼びかけている。参考1)新型コロナワクチンの接種について(厚労省)2)コロナワクチン追加接種は9月20日から 全世代で「XBB」対応へ(朝日新聞)3)東京都、9月20日から新型コロナワクチンの秋接種開始(日経新聞)4)9月からのコロナワクチン接種 子ども含め幅広く対象に【Q&A】(NHK)2.医師の過労死問題に加藤厚労相「適切な労働時間管理」を求める/兵庫県2022年、神戸市の甲南医療センターで勤務していた26歳の医師が自殺した事件が労災と認定された件について、加藤 勝信厚生労働大臣は8月25日の閣議後の記者会見で「医師の健康確保のために適切な労働時間管理が必要」とコメントした。遺族は当時、学会発表の準備に追われていたと指摘しているが、病院側は業務時間外の自己研鑽であると主張。これに対し、加藤大臣は「医師の研究時間が労働時間に含まれるかどうかの指針を明確化している」と説明した。厚生労働省の調査によると、病院勤務の医師の約2割が「過労死ライン」とされる年960時間以上の残業をしていることが明らかになった。とくに脳神経外科、救急科、外科、産婦人科などでこの傾向が顕著である一方で、働き方改革により長時間労働は減少傾向にあり、一部の施設では患者や家族への病状説明を診療時間内に限定するなどの取り組みが進んでいる。調査代表の自治医科大学の小池 創一教授は「勤務時間は短くなったが、新しい医療の研究や若手教育の時間も減っている。どうやって働き方改革を進めていくのかが課題」と指摘している。また、2019年に施行された働き方改革関連法の医師への適用が24年度に迫っており、この問題はさらに注目されている。以上の状況を受けて、厚労相は「過労死は許されない。医師が健康であることが国民に対して適切な医療が確実に提供される基盤になる」と強調。労働時間管理の支援を含め、引き続き必要な対応を図ると明言している。参考1)医師の専門性を考慮した勤務実態を踏まえた需給等に関する研究(厚労省)2)医師自殺で労災認定 “労働時間管理 支援含め対応” 厚労相(NHK)3)勤務医2割、なお過労死ライン 残業推計「年960時間超」 長時間労働、是正傾向も・厚労省研究班(時事通信)3.新型コロナ診療手引き改訂、医療従事者の就業制限と治療薬の使用を明確化/厚労省厚生労働省は、8月21日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する診療の手引き第10.0版を公表した。今回は、新型コロナが5類(一般感染症)に移行した後の初の改訂で、医療従事者の就業制限や治療薬の使用指針について新たな規定が盛り込まれている。今回の手引きでは、医療従事者に対する就業制限は感染症法に基づく制限がないものの、厚労省は医療機関や高齢者福祉施設に対して、「発症日を0日目として5日間、かつ症状が軽快してから24時間以上経過するまで」の就業制限を考慮するよう呼びかけている。また、家庭内に感染者がいる場合や10日目までの期間には、マスク着用や黙食などの感染防止策を徹底するよう推奨している。治療薬に関しては、ファビピラビル(商品名:アビガン錠)やイベルメクチン(同:ストロメクトール)などのコロナ治療効果が認められず、使用は推奨されていないと明示している。そのほか、新たな重症化リスク因子、小児例や妊婦例の特徴、各種薬物療法についての情報が更新されている。また、診療の手引きには「G-MIS(病床管理システム)を活用した入院調整」が新たに盛り込まれ、このシステムの導入により、地域の病床状況が可視化され、保健所との照会が不要になるなどのメリットが挙げられている。今回の改訂は、とくに九州地方や沖縄県でのコロナ再燃や日本全体での感染再拡大が懸念される中で行われたもので、感染拡大を防ぐための配慮が依然として求められている。厚労省では今後も状況に応じた指針の更新を行うとしている。参考1)新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き 第10.0版(厚労省)2)新型コロナウイルス感染症 診療の手引き・第10.0版 改定のポイント(同)3)5類移行後初改訂、医療従事者の就業制限など追加 厚労省がコロナ診療の手引きを事務連絡(CB news)4)コロナ5類移行後、初の「診療の手引き」改訂!法定就業制限はないが、医療機関等では感染拡大への配慮を―厚労省(Gem Med)4.感染症対策の体制を大幅刷新、尾身 茂氏が一線を退く/政府2023年8月25日、政府は新型コロナウイルスを含む感染症対策の一層の強化を目的として、いくつかの新たな組織と体制の変更を発表した。9月1日に発足する「内閣感染症危機管理統括庁」は、政府の感染症対策の司令塔となる。この統括庁には約5億2,000万円の2024年度予算が割り当てられる予定で、約60人の職員が配置される。厚生労働省も同日、新たに「感染症対策部」を設置すると発表した。この新組織は、統括庁と連携し、新たな感染症危機に備える。さらに、医薬・生活衛生局と健康局が改組され、食品衛生基準業務と水道業務はそれぞれ消費者庁、国土交通省と環境省に移管される。内閣感染症危機管理統括庁のトップには栗生 俊一官房副長官が就任することが決まっており、担当大臣としては後藤 茂之コロナ担当相が務める。そのほかの主要な役職には厚労省の迫井 正深医務技監や中村 博治新型コロナウイルス等感染症対策推進室長も名を連ねる。この一連の発表と同時に、新型コロナ対策の専門家として活躍してきた尾身 茂氏が一線から退くことが明らかになった。尾身氏は、新体制のもとで「新型インフルエンザ等対策推進会議」の委員数が35人から15人に減り、議長から外れる形となった。尾身氏は、今後「葛藤の記録を残したい」と語り、この間の活動を書籍にまとめる予定だ。政府は、新たな体制のもとで感染症対策の連携と効率を高めることを目指しており、この体制変更は、新型コロナウイルスによる緊急事態が一段落ついた今、次の感染症危機に備える重要なステップとなる。尾身氏の引退は、新たな体制のスタートとともに、これまでの感染症対策の一区切りとも言えるタイミングでの出来事となる。参考1)尾身氏、コロナ対策一線退く「葛藤の記録残したい」 政府が体制刷新(朝日新聞)2)厚労省に新組織「感染症対策部」 司令塔「統括庁」発足にあわせ(同)3)感染症統括庁トップに栗生俊一氏…コロナ分科会は廃止(読売新聞)5.看護師不足とハラスメント対策に、看護師確保の基本指針を初改定へ/厚労省厚生労働省は、看護師を確保するための基本指針を31年ぶりに全面改定すると発表した。今回の改定は、看護師不足の解消、新たな感染症に備えた専門知識のある看護師の養成、ハラスメント対策、処遇改善、業務負担軽減など多岐にわたる要素が盛り込まれる方針。看護系の人材不足はとくに都市部と訪問看護ステーションで深刻で、労働時間短縮や業務負担の軽減が必要とされている。具体的には、国の基金を活用し、夜勤業務の負担軽減、仮眠や休憩ができる場所の設置など、看護職員の処遇改善を進めるとともに、業務のデジタル化なども計画されている。さらに、訪問看護の現場でのハラスメントの危険性が高いことから、暴力やハラスメント対策の支援も進められる予定のほか、タスク・シフトやタスク・シェアの推進、特定行為研修の推進なども改定に含まれており、年次有給休暇の取得を可能とするような勤務割の長期計画も盛り込まれ、雇用管理の責任体制も明確化される方向となっている。看護師確保の基本指針は、1992年に作成されており、高齢化社会の本格化とともに、2040年にはさらに多くの看護職員が必要とされる看護職の環境の変化を反映して、今回初めて見直しを受け、今年の秋にも正式に告示される予定。参考1)第3回医道審議会保健師助産師看護師分科会看護師等確保基本指針検討部会 [資料]看護師等確保基本指針の改定について(厚労省)2)看護師確保の指針、30年ぶり改定へ 感染症、ハラスメントに対応(朝日新聞)3)看護師確保の基本指針改定を諮問、秋ごろ告示 厚労相・文科科相(CB news)6.人材不足が深刻化する日本の医療・福祉業界、対策を模索/厚労省厚生労働省が発表した令和4年の雇用動向調査の結果によると、2022年に「医療、福祉」分野で入職超過率が初めてマイナスとなるなど、国内で医療介護業界での人材不足が深刻化していることが明らかとなった。厚労省によれば、医療、福祉業界への入職者数は昨年度の約113万8,100人、一方で離職者数は約121万人、入職超過率は0.9ポイントのマイナスとなった。全産業を合わせた場合の入職超過率は0.2ポイントのプラスであり、医療・福祉業界は全産業平均を下回っていた。とくに介護職員の離職率は14.4%と過去最低水準を維持しているが、事業所間での格差も大きい状況であり、小規模や新設の事業所では離職率が高く、「職場の人間関係」や「事業所の理念や運営に不満」などが離職の主な理由とされている。訪問介護の現場でも人手不足が顕著で、担当者の38%が60歳以上、7人に1人は70歳以上とスタッフの高齢化が進行していた。厚労省は2024年に施設職員を訪問介護にも活用できるようにする計画を進めている。この複合型サービスは、訪問と通所の両方を利用する場合に効率の良い介護を提供する可能性がある。しかし、介護業界全体で人材確保が難しく、とくに訪問介護員の有効求人倍率は過去最高の15.53倍に達している。今後、団塊の世代が後期高齢者に移行することで、介護保険の給付は一段と増えると見込まれ、人材不足問題の解決が急募となっている。参考1)令和4年 雇用動向調査結果の概要(厚労省)2)介護職員の離職率、14.4% 過去最低並みを維持 事業所間で2極化の傾向=介護労働実態調査(JOINT)3)訪問介護でも「老々」拡大 利用者10年で2割増/担い手70歳以上13% 厚労省、施設職員活用へ(日経新聞)4)「医療、福祉」入職超過率、初のマイナスに 厚労省概況、現行統計の2009年以降で(CB news)

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血尿診断ガイドライン2023

2013年版から10年ぶりの大幅改訂!血尿の原因疾患を診断する「血尿診断アルゴリズム」を提示わが国では母子保健法、学校保健法、労働安全衛生法、老人保健法などにより、生涯にわたり検尿を受けることが可能。こうした検尿での異常所見(潜血)が契機となって重篤な腎疾患や泌尿器疾患が発見されることも少なくない。本書は潜血が認められた患者における、血尿のタイプの判定と原因疾患の診断のためのガイドラインで、血尿の原因疾患を診断するための手順を初めて詳細な「血尿診断アルゴリズム」として提示。また、ワクチン接種後の血尿例の報告を受けて、最終章で「新型コロナワクチンと血尿」について解説している。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    血尿診断ガイドライン2023定価3,080円(税込)判型A4判頁数80頁発行2023年6月編集血尿診断ガイドライン改訂委員会Amazonでご購入の場合はこちら

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第59回 新型コロナ「エリス」がすでに来ている

「エリス」襲来Pixabayより使用米国疾病予防管理センター(CDC)の報告によると、8月5日までの1週間のコロナ入院患者数が14%増となり、4月下旬以来の多さとなっており1)、再び流行が始まるのではと懸念されています。現在懸念されているのが、EG.5です。BA.1が従来のオミクロン株で、その後BA.2株が2022年5月に流行しました。BJ.1株とBM1.1.1株が組み合わさったのがXBB株で、いろいろなXBB株が存在します。XBB.1.9.1株から派生したEG.5株、EG.5.1株が、われわれの次の敵になります。「もういいよー、覚えられないし」と思っている医療従事者も多いでしょう。大丈夫です、私も覚えられません。EG.5は通称「エリス」と呼ばれています。これは例のごとくギリシャ神話の女神にちなんだ名前で、SNS上で命名されたものです。これまでもケンタウルス、ケルベロスなどさまざまなあだ名が付けられてきた変異ウイルスですが、中二病っぽい感じもあって、小恥ずかしくてなかなか堂々と言えませんでした。「エリス」については中二病感が薄いためか、比較的世界的にも受け入れられている印象です。日本では「エリス」で報道されるのかどうか、気になるところです。第9波の流行の主流であったXBB系統から、いずれ「エリス」へ置き換わりが進むと予想されていましたが、想定よりも早いようです。東京都ではすでに「エリス」が主流株になっており、これまでの主流株であったXBB.1.16株を逆転しています2)。「エリス」は、現在のXBB系統よりも伝播性が高いです。そうじゃないと、主流株にならないので。世界保健機関(WHO)は8月9日、「エリス」を「注目すべき変異株(VOI)」に指定しています。医療従事者はワクチンアップデートを医療従事者の間でもワクチンに対する信頼性が低下しているような印象です。ケアネットをご覧になっている皆さんは、エビデンスを咀嚼できていると思いますので、mRNAワクチンの重要性については理解されているでしょう。もしオミクロン株対応2価ワクチンを接種されていない方は、アップデートを推奨します。2価ワクチンあるいはXBB対応ワクチン(9月接種開始予定)のいずれも、「エリス」以前のXBB系統を含めたオミクロン株全体の重症化を予防する効果があると思われます。秋開始接種で使用するモデルナ社のXBB対応ワクチンは、予備的な臨床試験において、「エリス」に対しても良い免疫反応が得られたとプレスリリースを出しています。参考文献・参考サイト1)CDC:COVID-NET A Weekly Summary of U.S. COVID-19 Hospitalization Data2)東京都健康安全研究センター:定点医療機関当たりの報告数 東京都感染症週報 第30週(7月30日~8月6日)より

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外来・入院・集中治療別マネジメントを記載、COVID-19診療の手引き第10.0版/厚労省

 厚生労働省は8月21日、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第10.0版」を公開し、全国の自治体や関係機関に通知した。2023年2月に公開された「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第9.0版」以来、5類移行後初めての改訂となる本版は、オミクロン株に置き換わって以降の国内外の知見が反映され、よりコンパクトな内容になっている。とくに外来診療にも役立てられるよう、COVID-19診療の手引きの第4章では、前版までは重症度別に記載されていたマネジメントが、「外来診療」「入院診療」「集中治療」別にまとめなおされ、「外来診療」の項目には、成人の外来診療における抗ウイルス薬の選択フロー図が示された。また、COVID-19診療の手引きを基に「COVID-19 外来診療の基礎知識」の表も公開された。COVID-19診療の手引きに抗ウイルス薬の選択フロー図を追加 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第10.0版」の主な改訂点は以下のとおり。太字は5類移行に関連する改訂点。【1 病原体・発生状況】・病原体/発生状況を更新【2 臨床像】・臨床像に第9.0版の胸部画像所見、合併症の内容を追加し、更新・重症化リスク因子/小児例の特徴/妊婦例の特徴を更新・COVID-19ワクチンに関する説明を追加【3 診断・サーベイランス】・症例定義に関する記載を削除・検体と採取法を説明する表を追加・届出に関する記載を参考として更新 [参考]定点医療機関における届出基準 2023年5月8日より、COVID-19は、流行の状況や症状等を鑑み、感染症法上の位置づけを見直し、5類感染症に位置づけ、インフルエンザと同様、診療科名に内科・小児科を含む指定届出機関による届出対象疾病に追加された。したがってCOVID-19指定届出機関の管理者が届出基準を満たした患者を診断した場合に届出を行うこととなった。【4 重症度分類とマネジメント】・序文、重症度分類/高齢者の管理/小児の管理/妊産婦の管理を更新・重症度別に記載していたマネジメントを「外来診療」「入院診療」「集中治療」にまとめなおし、内容を更新・G-MISを活用した入院調整に関する説明を参考として追加【5 薬物療法】・抗ウイルス薬/中和抗体薬/免疫抑制・調節薬/妊婦に対する薬物療法を更新・オミクロン流行期以降に実施された臨床研究の表、抗ウイルス薬の選択フロー図を追加・日本国内で開発中の主な薬剤を削除し、国内外で開発が中止された主な薬剤を更新 【6 院内感染対策】・序文/職員の健康管理、個人防護具/妊婦および新生児への対応/死後のケアを更新・病理解剖業務における感染対策/医療従事者の就業制限を追加 [参考]医療従事者の就業制限 5類移行後は感染症法に基づく就業規制は行われないが、国は医療機関や高齢者福祉施設等に対して、COVID-19に罹患した従事者の就業制限を考慮するよう呼びかけている。位置づけ変更後の新型コロナ患者の療養の考え方(発症日を0日目として5日間、かつ解熱および症状軽快から24時間経過するまでは外出を控えることが推奨される)等を参考に、罹患した者の体調や業務内容、地域の流行状況、事業継続性等を総合的に判断して、施設ごとに対応することが求められている。・退院基準、解除基準(第9.0版)の内容を感染予防策を実施する期間として更新 [参考]感染予防策を実施する期間 医療施設内で感染予防策を実施する期間(隔離期間)の基準は示されていないが、新型インフルエンザ等感染症に指定されていた際の退院基準を参考にするなど、医療機関ごとに対応が求められる。

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モデルナXBB対応コロナワクチン、新変異株EG.5やFL.1.5.1にも有効

 米国・Moderna社は8月17日付のプレスリリースにて、2023年秋の新型コロナワクチン接種に向けて承認申請中のXBB系統対応ワクチン(mRNA-1273.815)について、予備的臨床試験で、全世界で感染が拡大している新たな変異株EG.5およびFL.1.5.1に対して、中和抗体の有意な増加が確認されたことを発表した。本結果により、同社の新たなワクチンが、今季流行が懸念される変異株にも効果的であることが示唆された。 新たな変異株であるEG.5は「エリス」とも呼ばれ、世界保健機関(WHO)は8月9日にこの変異株を含むEG.5系統を「注目すべき変異株(VOI)」に指定した1)。EG.5はXBB.1.9.2の子孫系統であり、XBB.1.5と同じスパイクアミノ酸プロファイルを持つ。WHOによると、EG.5系統はXBB系統と同様に、感染拡大力や免疫回避能は中等度であるが、重症化リスクは低いとされている。日本を含む東アジア、北米、欧州など全世界で勢力を拡大しており、8月15日時点の発表では、日本では主系統のXBB.1.16に次いで、EG.5.1とEG.5.1.1が流行株となっている2)。米国疾病予防管理センター(CDC)のデータでは、8月19日時点で、EG.5は米国のコロナ新規感染者の20.6%を占めており、XBB系統に代わって主流となった。FL.1.5.1(フォルナックス)は13.3%で、7月22日時点よりも3倍以上増加し、2番目に優勢の株となっている3)。 同社は本ワクチンについて、米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)、および各国・地域の規制当局に申請しており、承認が得られれば今秋のワクチン接種への十分な供給が可能だという。

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第160回 医療機関の倒産が急増、とくに診療所に深刻な影響

<先週の動き>1.医療機関の倒産が急増、とくに診療所に深刻な影響2.来年の診療報酬改定に向け、高齢者の救急搬送問題などの議論開始/厚労省3.厳しい経営環境の中、大学病院で求められる働き方改革/文科省4.神戸の医師自殺、労災認定。遺族と病院、労働時間を巡り対立/兵庫5.電子カルテ情報の全国共有化へ、令和7年に法案提出を計画/政府6.YouTube、新型コロナワクチンについて誤った医療情報のコンテンツを削除へ1.医療機関の倒産が急増、とくに診療所に深刻な影響新型コロナウイルス感染症禍以降、医療機関の倒産が増加の一途を辿っていることが今回明らかになった。とくに診療所は競争が激化しており、今年前半は過去10年間で最速のペースでの倒産があり、今年は10年間で最多の倒産件数となる見込みである。帝国データバンクの調査によれば、診療所の経営者の平均年齢は68歳前後で、1代限りで廃業を考える経営者も増えており、地域によっては社会問題へと発展する可能性もある。コロナ禍で、政府の各種の支援策や返済のリスケジュールなどにより、倒産は一時的に減少したものの、2022年には早くも増加の傾向に転じている。とくに2023年は、医療法人社団心和会の倒産が注目され、その負債総額は132億円と過去3番目の大きさとなった。一方、医療用医薬品の販売会社の支店長は、「医療の多角化についていけない診療所が増えている」と指摘。また、「ゼロゼロ融資の返済が始まる中、患者が来ない医療機関には注意が必要」との声も上がっており、債権管理が今後の重要な焦点となる。これらの動向を受け、医療機関、とくに診療所の経営環境は今後も厳しさを増していくことが予想されている。参考1)2022年度の「診療所」倒産、過去最多の22件「コロナ関連」は減少、後継者難や不正発覚が増加(東京商工リサーチ)2)医療機関の倒産が再び増加 診療所、高齢化で厳しさ増す(日経産業新聞)2.来年の診療報酬改定に向け、高齢者の救急搬送問題などの議論開始/厚労省厚生労働省は、8月10日に中央社会保険審議会の「入院・外来医療等の調査・評価分科会」を開催、急性期入院医療について具体的な検討を開始した。この中で、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度について、2022年度の診療報酬改定で「心電図モニタ管理」が削除されたため、多くの病院での看護必要度の低下に対して、「注射薬剤3種類」を増加させることで影響は相殺していた。厚労省はこのような病院側の対応について、看護必要度の適正化を求めている。また、高齢者の誤嚥性肺炎や尿路感染症の患者は、医療資源投入量が高くないにも関わらず、救急搬送後の入院後5日間は、看護必要度のA項目2点が追加されるため、入院単価の高い急性期一般1の病床へ高齢者の救急搬送を促進している可能性を指摘されるなど、今後、さらに議論を重ね、看護必要度について改善案についての検討が進むとみられる。参考1)令和5年度 第5回 入院・外来医療等の調査・評価分科会(厚労省)2)看護必要度が「高齢の誤嚥性肺炎等患者の急性期一般1への救急搬送」を促している可能性-入院・外来医療分科会(Gem Med)3)看護必要度また見直しへ、24年度に入院の機能分化促進(CB news)3.厳しい経営環境の中、大学病院で求められる働き方改革/文科省文部科学省は、8月16日に「今後の医学教育の在り方に関する検討会」を開催し、大学病院に対して、大学病院の運営や教育・研究・診療、財務などの面での改革プランの策定を促進するための「議論の整理」を提案した。背景には、大学病院が増収減益という厳しい経営状況に加え、医師の働き方改革を進めつつ、教育・研究機能の維持が必要とされており厳しい環境にあるため。この「議論の整理」には、大学病院の役割や機能、基本的な考え方、運営の方針などが含まれており、大学病院の指導教官らの教育・研究の時間が減少し、臨床に割かれる時間が増大している現状を反映している。これに対して、国は大学病院の改革を支援する方針を示しており、とくに経営状況の改善や教育・研究機能の強化を求めている。座長の永井 良三氏は、現行の大学設置基準が現代のニーズに合わせて更新されるべきであり、大学病院の臨床機能の強化と、そのための国の支援が必要だと指摘した。参考1)大学病院の9割「研究成果が減少」と危惧…「医師の働き方改革」で残業規制へ(読売新聞)2)研究時間確保へ、文科省が「大学病院改革」 働き方改革に向け(Medifax)3)大学病院改革、「診療規模」「運営」の再検討を 文科省検討(同)4.神戸の医師自殺、労災認定。遺族と病院、労働時間を巡り対立/兵庫神戸市東灘区の甲南医療センターに勤務していた26歳の男性医師が2022年6月に自殺した事件について、西宮労働基準監督署は、長時間労働によるうつ病が自殺の主な原因であると判断し、「労災」と認定した。医師の遺族は8月18日に記者会見を開き、この認定を明らかにした。遺族によると、この医師は亡くなる直前まで100日間連続で勤務しており、月の残業時間は200時間を超えていた。遺族は「病院側は具体的な再発防止策を取っておらず、人の命を軽視している」と病院の対応を批判しており、遺族は昨年12月に病院の運営法人を労働基準法違反の疑いで西宮労基署に刑事告訴している。今後は、損害賠償を求める訴訟を起こすことも検討している。病院側は、労働時間に関する主張を否定し、過重労働の認識はないとの立場を示している。遺族と病院側では、実際の労働時間に関して見解が異なっており、病院側が記者会見で述べた「知識や技能を習得する自己研鑽の時間が含まれており、すべてが労働時間ではない」とする主張に対して、批判が集まっている。参考1)神戸 勤務医自殺で労災認定 遺族会見“病院は労務管理せず”(NHK)2)神戸の26歳専攻医自殺、労災認定 残業月207時間(毎日新聞)3)甲南医療センター過労自殺 遺族が会見「医師を守れない病院に患者を守れるのか」(神戸新聞)5.電子カルテ情報の全国共有化へ、令和7年に法案提出を計画/政府政府は、全国の医療機関や薬局で電子カルテの情報を共有する仕組みを進める方針を強化しているが、今後の計画が明らかになってきた。6月に開催された「医療DX推進本部」において示された医療DXの推進に関する工程表に基づいて、岸田総理大臣は医療分野のデジタル化の取り組みを進行するよう関係閣僚に指示しており、マイナンバーカードと健康保険証の一体化を加速し、来年秋には現行の保険証を廃止、これを基盤として、電子カルテ情報の全国共有化を目指す方針が決定されている。政府は、令和7年の通常国会に関連する法案を提出する方針を固めており、「マイナ保険証」を通じて、患者の過去の診療記録を全国の病院や診療所で閲覧可能にし、データに基づく適切な医療提供を促進する狙いがある。電子カルテ共有のためのネットワークの構築は、厚生労働省所管の「社会保険診療報酬支払基金」が主導して進める方針となっており、今後もさらに国民に対してマイナンバーカードの普及を働きかけ、より効率的・効果的な医療サービスの提供を行っていくことを目指していく。参考1)医療DXの推進に関する工程表(内閣官房)2)電子カルテ活用へ、政府が令和7年に法案提出方針 マイナ保険証通じ全国共有(産経新聞)3)医療分野デジタル化 “電子カルテの共有 来年度中に”首相指示(NHK)6.YouTube、新型コロナワクチンについて誤った医療情報のコンテンツを削除へ/GoogleGoogleの動画配信サービスYouTubeが、誤った医療情報を含むコンテンツに対する新しい方針を発表した。これにより、「予防」、「治療」、「事実の否定」の3カテゴリーに分けてガイドラインが整理される。とくに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の存在を否定したり、確実な予防・治療法があるとの不正確な情報を含むコンテンツは許可されず、即時に削除される。また、がん治療に関する非科学的な主張、たとえば「ニンニクやビタミンCががんを治療する」といったコンテンツも削除対象となる。さらにYouTubeは、信頼性のある医療情報提供のため、メイヨー・クリニックとの協力を発表。高品質な医療情報を提供する映像コンテンツの共有が進められる。YouTubeは、医療誤報ポリシーの透明性を高め、コンテンツ制作者と視聴者の理解を深めることを目指しているとコメントしている。参考1)YouTube、「新型コロナは存在しない」など誤った医療情報を含むコンテンツを削除へ(ケータイ Watch)2)YouTubeが「有害あるいは効果がないと証明されたがん治療法」を宣伝するコンテンツを削除すると発表(GIGAZINE)

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高齢コロナ感染者の退院後死亡率、インフルより高い/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院後に生存退院した米国の65歳以上の高齢者(メディケア受給者)88万3,394人を含む後ろ向きコホート研究で、インフルエンザで入院後に生存退院した高齢者と比較した結果、COVID-19で入院した高齢者の生存退院後の死亡リスクが高率であったことが、米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのAndrew S. Oseran氏らにより明らかにされた。ただし、両者の差は退院後の早期においてみられるものであり、同死亡リスクはパンデミックの経過と共に漸減していたという。BMJ誌2023年8月9日号掲載の報告。インフルエンザ生存退院の対照と比較、退院180日以内の全死因死亡などを評価 研究グループは後ろ向きコホート研究にて、高齢者におけるCOVID-19入院後の長期にわたる死亡および再入院のリスクを調査した。 2020年3月1日~2022年8月31日にCOVID-19で入院後に生存退院した65歳以上のメディケア出来高払い制プランの加入者88万3,394人(COVID-19コホート)を、2018年3月1日~2019年8月31日にインフルエンザで入院後に生存退院した対照5万6,409人(インフルエンザコホート)と比較した。観察された特性の違いは、重み付け法(weighting methods)を用いて解釈した。 主要アウトカムは、退院180日以内の全死因死亡とし、副次アウトカムは、180日以内のあらゆる原因による初回再入院、死亡または再入院の複合などとした。180日間にわたり死亡リスクはCOVID-19コホートが高率 COVID-19コホートはインフルエンザコホートと比較して、平均年齢が若く(77.9 vs.78.9歳、標準化平均差:-0.12)、女性の割合が低かった(51.7% vs.57.3%、-0.11)。両群の黒人加入者(10.3% vs.8.1%、0.07)、メディケイドとメディケア両方の適格者(20.1% vs.19.2%、0.02)の割合は類似していた。なお、COVID-19コホートのほうが次の併存疾患による負荷が低かった。心房細動(24.3% vs.29.5%、-0.12)、心不全(43.4% vs.49.9%、-0.13)、慢性閉塞性肺疾患(39.2% vs.52.9%、-0.27)。 重み付けで調整後、COVID-19コホートはインフルエンザコホートと比較して、退院後の全死因死亡リスク(累積発生率)が、30日時点(10.9% vs.3.9%、標準化リスク差:7.0%[95%信頼区間[CI]:6.8~7.2])、90日時点(15.5% vs.7.1%、8.4%[8.2~8.7])、180日時点(19.1% vs.10.5%、8.6%[8.3~8.9])のいずれの評価時点でも高率であった。 再入院リスクもCOVID-19コホートが、30日時点(16.0% vs.11.2%、標準化リスク差:4.9%[95%CI:4.6~5.1])と90日時点(24.1% vs.21.3%、2.8%[2.5~3.2])では高率であったが、180日時点では同等であった(30.6% vs.30.6%、-0.1%[-0.5~0.3])。 なお試験期間中に、COVID-19コホートの30日死亡リスクは17.9%から7.2%に低下していた。

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学校でのコロナ感染対策、マスクとワクチン完全接種が有用

 学校の生徒と職員を対象に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の学校内での感染リスクについて、2年間の接触追跡データに基づいた調査が、米国・マサチューセッツ総合病院のSandra B. Nelson氏らの研究チームによって行われた。その結果、学校生活において、マスクの使用状況やワクチン接種状況、校内の活動や地域の社会的状況など、感染リスクが高くなる要因が明らかになった。JAMA Health Forum誌2023年8月4日号に掲載の報告。 本調査は、マサチューセッツ州の幼稚園から中等教育までの学校を対象に、2020年秋~21年春学期(F20/S21、従来株の優勢期)および2021年秋学期(F21、デルタ株の優勢期)の2つの期間にわたって行われた。F20/S21は70校3万3,000人以上、F21は34校1万8,000人以上が参加した。学校内でSARS-CoV-2に2次感染した割合をSAR(Secondary Attack Rate)と定義した。SARは検査によって確認された値で算出した。感染と関連する可能性のある要因(学年、マスクの着用、曝露した場所、ワクチン接種歴、社会的脆弱性指数[SVI]など)について、ロジスティック回帰モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・F20/S21期での学校関連SARは2.2%、F21期での学校関連SARは2.8%となり、両期間ともに低かった。・F20/S21期では、昼食時(未調整SAR:11.1%)、初発症例者と接触者の両方がマスクを着用していない(11.7%)、学校内での至近距離での接触(18.2%)の場合に、SARが有意に高かった。・F21期では、高学年や職員よりも低学年(未調整SAR:4.6%)、教室内での曝露(3.4%)、接触者がTTSプログラム(毎日の迅速抗原検査)に参加していない場合や、接触者がワクチン接種未完了(5.3%)もしくは未接種(3.6%)、および指標症例が未接種(3.5%)である場合に、SARが有意に高かった。社会的脆弱性指数(SVI)スコアが高いほどSARも高かった(8.0%)。・多変量解析では、F20/S21期において、マスクの着用は、マスクを着用しない場合と比較して、伝播のオッズが低かった(オッズ比[OR]:0.12、95%信頼区間[CI]:0.04~0.40、p<0.001)。・F21期では、教室内の曝露は、教室外の曝露と比較して、伝播のオッズが高かった(OR:2.47、95%CI:1.07~5.66、p=0.02)。ワクチンを完全に接種した接触者は、未接種と比較して、オッズが低かった(OR:0.04、95%CI:0.00~0.62、p<0.001)。・F20/S21期とF21期の両期間とも、SVIスコアが高い地区ほど、伝播のオッズが高かった。 著者らは本結果について、「SVIスコアの高い低所得地域では、教室の密度が高くなる可能性があり、感染リスクが高くなることが示された。感染リスクの高い地域には、感染対策のためのリソースをより多く配分することで、健康と教育の格差を減少させることができるかもしれない」としている。

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鼻をほじる医療者は、コロナ感染リスク増

 医療従事者はCOVID-19の感染リスクが高く、マスク、ガウン、ゴーグル/フェイスシールド、手袋などの個人防護具(PPE)装着をはじめとした感染対策を取るケースが多い。にもかかわらず医療従事者の感染者が多い理由を探るため、PPE装着や飛沫を受けることに関連する可能性のある、鼻をほじるなどの特定の行動・身体的特徴を調査する研究が行われた。オランダ・アムステルダム大学のA H Ayesha Lavell氏らによる本研究の結果は、PLOS ONE誌オンライン版2023年8月2日号に掲載された。鼻をほじることが病院内のコロナ感染拡大につながる可能性 研究者らは、オランダの2つの大学医療センターに勤務する医療従事者404例を対象としたコホート研究において、特定の行動・身体的特徴が感染リスクと関連しているかどうかを調査した。感染との関連を調査した具体的な行動は以下のものだった。・鼻をほじる・爪をかむ・眼鏡を掛ける・ひげを生やす 医療従事者のコロナ感染者が多い理由を探るため、鼻をほじるなどの特定の行動・身体的特徴を調査する研究の主な結果は以下のとおり。・404例にコロナ感染率に影響を及ぼす可能性のある習慣に関するオンライン調査を行い、計219例(回答率52%)が回答した。・以前の研究から「COVID-19患者のケアに従事している」「COVID-19に感染した同僚または地域住民と接触した」ことが感染リスク増と関連があると示されていたため、これらの因子で分類し、結果を調整した。期間中2つの病院は院内のPPE着用ルールをはじめ、同一の感染制御対策を実施した。・参加者の大多数(185例、85%)が偶発的に鼻をほじると回答し、その頻度は月1回、週1回、毎日とさまざまであった。鼻をほじる群はほじらない群よりも若く(年齢中央値44歳vs.53歳)、男性のほうがより頻繁に鼻をほじる(90% vs.83%)と報告した。鼻をほじる頻度が最も高かったのは医師(研修医:100%、専門家:91%)、次いでサポートスタッフ(86%)、看護師(80%)であった。 ・2020年3~10月の追跡期間中に34例(15.5%)がCOVID-19の陽性判定を受けた。COVID-19発症率は、鼻をほじる群がほじらない群と比較して高かった(32/185例:17.3% vs.2/34例:5.9%、オッズ比:3.80、95%信頼区間:1.05~24.52)。・爪をかむ、眼鏡を掛ける、ひげを生やすこととCOVID-19感染率との有意な関連は認められなかった。 研究者らは「鼻をほじることが病院内の感染拡大につながる可能性があり、そのリスクは過小評価されている。今後の研究結果次第では、教育セッションや感染予防ガイドラインの推奨に加えるなど、より意識を高める必要があるだろう」としている。

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コロナ2価ワクチンのブースター接種、安全性が示される/BMJ

 50歳以上の成人において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する4回目ブースター接種ワクチンとしてのオミクロン株対応2価mRNAワクチンは、事前規定の27種の有害事象に関するリスク増大との関連は認められなかったことが、デンマーク・Statens Serum InstitutのNiklas Worm Andersson氏らによる同国の50歳以上の接種者を対象に行った試験で示された。BMJ誌2023年7月25日号掲載の報告。接種後28日間の27種の有害事象による病院受診率を評価 研究グループは2021年1月1日~2022年12月10日に、COVID-19ワクチンを3回接種した50歳以上の成人222万5,567人を対象とするコホート試験を行った。 主要アウトカムは、オミクロン株対応2価mRNAワクチンの4回目ブースター接種後28日間(主要リスク期間)の27種の有害事象による病院受診率で、同ワクチン3回目あるいは4回目接種後29日以降(参照期間)の同受診率と比較した。27種の有害アウトカムいずれも増大せず 2価mRNAワクチンの4回目接種者は、174万417人(平均年齢67.8[SD 10.7]歳)だった。 2価mRNAワクチンの4回目接種は、参照期間と比較して、主要リスク期間の全27種の有害アウトカムの統計学的に有意な増大と関連していなかった。たとえば、虚血性心イベントの発生件数は、主要リスク期間で672件、参照期間では9,992件で、発生率比は0.95(95%信頼区間[CI]:0.87~1.04)だった。 年齢や性別、ワクチンタイプに基づく解析や、別の解析手法を用いた場合でも、同様の結果が得られた。 ただし事後分析で、心筋炎のリスクが検出されたが(女性被験者では統計学的に有意に関連)、発現はまれで少数の症例に基づく所見だった。また、脳梗塞リスクの増大はみられなかった(主要リスク期間644件vs.参照期間9,687件、発生率比:0.95、95%CI:0.87~1.05)。

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コロナ急性期、葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏の症状消失までの期間は?/東北大

 コロナウイルス感染症(COVID-19)の急性期症状を有する患者に、対症療法に加えて葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏を投与した結果、有意差はなかったもののすべての症状の消失までの期間は対照群よりも早い傾向にあり、息切れの消失は補足的評価において有意に早かったことを、東北大学の高山 真氏らが明らかにした。Journal of Infection and Chemotherapy誌オンライン版2023年7月26日号の報告。コロナ患者に葛根湯2.5g+小柴胡湯加桔梗石膏2.5gを1日3回投与 高山氏らが2021年2月22日~2022年2月16日にかけて実施した多施設共同ランダム化比較試験1)において、葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏の併用により、軽症~中等症I患者の発熱が早期に緩和され、とくに中等症I患者では呼吸不全への悪化が抑制傾向にあったことが報告されている。コロナウイルス感染症の症状や病状悪化のリスクはワクチン接種の有無によって異なる可能性があるため、今回はこのランダム化比較試験のデータを用いて、ワクチン接種の有無も加味した症状の消失に焦点を当てた事後分析を行った。 研究グループは、20歳以上で軽症~中等症Iのコロナウイルス感染症患者を対象に、通常の対症療法(解熱薬、鎮咳薬、去痰薬投与)を行うグループ(対照群)と、対症療法に加えて葛根湯2.5g+小柴胡湯加桔梗石膏2.5gを1日3回14日間経口投与するグループ(漢方群)の風邪様症状(発熱、咳、痰、倦怠感、息切れ)が消失するまでの日数を解析した。 コロナウイルス感染症患者に対症療法に加えて葛根湯2.5g+小柴胡湯加桔梗石膏2.5gを1日3回14日間経口投与した主な結果は以下のとおり。・解析には、漢方群73例(男性64.4%、年齢中央値35.0歳)、対照群75例(65.3%、36.0歳)が含まれた。そのうち、コロナワクチン接種者は、漢方群7例(9.6%)、対照群8例(10.7%)であった。初回診察時のリスク因子や重症度は両群で同等であった。・少なくとも1つ以上の症状が消失した割合は、漢方群84.9%、対照群84.0%であった。消失までに要した日数の中央値は漢方群2日(90%信頼区間[CI]:2.0~3.0)、対照群3日(90%CI:3.0~4.0)で、有意差は認められなかったものの漢方群のほうが短い傾向にあった(ハザード比[HR]:1.28、90%CI:0.95~1.72、p=0.0603)。コロナワクチン接種の有無別では、ワクチン未接種の漢方群のHRは1.31(90%CI:0.96~1.79、p=0.0538)でほぼ同等であった。・すべての症状が消失した割合は、漢方群47.1%、対照群9.1%であった。消失までに要した日数の中央値は、漢方群9日(6.0~NA)、対照群NAで、同様に漢方群のほうが短い傾向にあった(HR:3.73、95%CI:0.46~29.98、p=0.1763)。コロナワクチン未接種の漢方群のHRは4.17(95%CI:0.52~33.64、p=0.1368)であった。・競合リスクを考慮した共変量調整後の補足的評価において、息切れの消失は漢方群のほうが対照群よりも有意に早かった(HR:1.92、95%CI:1.07~3.42、p=0.0278)。コロナワクチン未接種の漢方群では、発熱(HR:1.68、95%CI:1.00~2.83、p=0.0498)および息切れ(HR:2.15、95%CI:1.17~3.96、p=0.0141)の消失が有意に早かった。 これらの結果より、研究グループは「軽症~中等症Iのコロナウイルス感染症患者に対する漢方治療の分析において、すべての症状の評価においても各症状の評価においても、対照群よりも漢方群のほうが早く症状が消失していた。これらの結果は、急性期のコロナウイルス感染症患者に対する漢方治療の利点を示すものである」とまとめた。

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第159回 新型コロナ感染拡大時の注意喚起に、4つの指標を作成/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナ感染拡大時の注意喚起に、4つの指標を作成/厚労省2.コロナワクチン接種、定期接種移行の議論に着手/厚労省3.ポストコロナで動き出す病院再編、地域住民が抗議相次ぐ/厚労省4.子宮頸がん検診の指針見直し、5年毎のHPV検査の導入も検討/厚労省5.医療資源を活用する「紹介受診重点医療機関」を初公表/厚労省6.地域に根ざした医師会活動プロジェクトを始動/日医1.新型コロナ感染拡大時の注意喚起に、4つの指標を作成/厚労省厚生労働省は、新型コロナウイルス感染拡大時の都道府県の注意喚起のための指標を示し、全国の自治体などに通知した。これによると、医療機関の外来が逼迫している割合が25%を超えたり、病床使用率が50%を超えたりした場合に注意喚起が行われることとなる。また、感染者数については、最近のオミクロン型感染拡大で外来の逼迫状況がピークとなる2週間前の感染者数を基準としている。さらに、感染拡大の際、医療機関の受診者数などを報告するシステムが外来逼迫割合が25%を超えるなどの指標に達した場合、各都道府県は住民に対して注意喚起や医療提供体制の強化を行うよう求めている。すでに都道府県で独自の基準を設けているところもあり、国の目安を使用するかどうかは、自治体が地域の医療提供体制や特性を踏まえて判断することになる。これらの指標は、新型コロナウイルス感染拡大の進行による医療逼迫に備えるための措置であり、今後、変更される可能性がある。各都道府県はこうした指標を参考にし、適切な注意喚起や対策を実施していくことが求められている。参考1)新型コロナウイルス感染症に関する住民への注意喚起等の目安について(厚労省)2)コロナ感染拡大時の注意喚起に目安 厚労省、医療逼迫で判断(日経新聞)3)コロナ感染拡大時“注意喚起の目安”4指標作成 厚生労働省(NHK)2.コロナワクチン接種、定期接種移行の議論に着手/厚労省厚生労働省は、8月9日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会を開催し、新型コロナウイルスワクチン接種に関する議論を行った。新型コロナウイルスのワクチン接種は、オミクロン株の流行と重症化率の低下から、定期接種化を検討しているが、現在の公費負担による臨時接種であり、今後は自己負担が発生する定期接種への移行を視野に入れ、年内に結論を出す予定。9月20日から行われるオミクロン株の派生型に対応したワクチン接種は、生後6ヵ月以上のすべての人を対象に無料で来年3月まで行うことが承認されたが、積極的な勧奨は高齢者や重症化リスクの高い人に限定して行う。来年度以降の接種について厚労省は、WHOの新指針に基づき、定期的な追加接種を推奨せず、努力義務や接種勧奨は重症化リスクの高い人にのみ適用する。なお、定期接種化は2024年度からの実施を検討しており、今年中に部会で対象者や費用負担について結論を出す予定。参考1)第49回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(厚労省)2)今後の新型コロナワクチン接種について(その7)(同)3)コロナワクチン、来年度以降のあり方議論始まる 定期接種化も視野に(朝日新聞)4)新型コロナワクチン 秋接種、高齢者や重症化リスクのみ勧奨(毎日新聞)3.ポストコロナで動き出す病院再編、地域住民が抗議相次ぐ/厚労省厚生労働省が、新型コロナウイルス感染拡大前から取り組んでいる、「地域医療構想に基づいた病院再編・統合の方針」に対して、地域住民から地域医療の充実を求める意見が相次いでいる。岩手県の県立病院の再編、新潟県では上越市の新潟労災病院の閉院に伴う再編など、人口減少に伴う地域の医療機関の再編はコロナ対策でも必要とする行政側の方針に対して、地域住民からは医療態勢の確保と充実が求める声があげられている。今後、行政では地域のニーズに即した対応が求められている。参考1)県立病院の縮小・統合に反対 署名1万8千筆を県に提出 いわて労連など(デーリー東北)2)上越の病院再編 安心できる将来像確実に(新潟日報)3)三田市民病院の存続求める 市民団体が神戸市長に申し入れ(サンテレビ)4)病院の再編って必要なの? 感染症・高齢化対応で重要に(日経新聞)4.子宮頸がん検診の指針見直し、5年毎のHPV検査の導入も検討/厚労省厚生労働省はがん検診のあり方に関する検討会を開き、子宮頸がんの早期発見を促すため、HPV(ヒトパピローマウイルス)感染を調べる検査を公的検診に導入するため、指針を改正する方針を決定した。厚労省は、30歳以上の女性に対しては2年毎の細胞診と5年おきのHPV検査のどちらかを選ぶことができるように提案。これにより、検診間隔が長くなり、受診者の負担が軽減される一方で、精度管理体制の整備が必要となる。新たな指針は2023年度中に見直され、24年度から導入される見通し。ただし、細胞診とHPV検査は異なるアプローチで、受診者の特定と負担軽減を図るための選択肢として提供される。新たな検診方法では、がんの発症前に高リスクな人を特定し、受診者の負担を軽減する上でのメリットがある。ただし、導入には自治体ごとの準備期間や陽性者のフォローが必要であり、実際の導入は限定的となる可能性がある。HPV検査導入については、自治体が従来の細胞診とHPV検査のどちらかを選択できる形で実施する予定。また、従来通りHPV感染を防ぐワクチンの定期接種も行われる。参考1)HPV検査導入へ指針改正、子宮頸がん早期発見に期待 厚労省検討会(産経新聞)2)指針での子宮頸がん検診、30歳以上にHPV検査も可 各自治体が判断、年度内に指針見直し(CB news)3)子宮頸がん検診、「2年毎の細胞診単独法」のほか、体制整った市町村では「5年毎のHPV検査単独法」も可能に-がん検診あり方検討会(Gem Med)4)第39回がん検診のあり方に関する検討会[資料](厚労省)5.医療資源を活用する「紹介受診重点医療機関」を初公表/厚労省東京都は、医療資源を重点的に活用するための外来施設である「紹介受診重点医療機関」83ヵ所を初めて公表した。この制度は、外来機能報告をもとに地域ごとの「協議の場」で承認されており、病院や診療所の医療実績データを使って医療関係者の協議を通じて決定される。紹介受診重点医療機関は、外来での特定の領域に特化した医療を提供する施設で、病院の外来診療の役割分担と連携を進め、患者の受診をスムーズにし、医療従事者の負担を軽減することを目指している。区中央部では大規模病院が多く、一方、医療資源の少ない地域では施設数は限られている。紹介受診重点医療機関の明示によって、東京都は医療資源の集中と均衡を促進し、地域医療の充実を図りたい考え、また、紹介受診重点医療機関では、病院の外来患者の待ち時間の短縮や勤務医の外来負担の軽減等の効果を見込んでいる。東京都以外の各道府県でも公表を進めており、厚生労働省はこれらをまとめた一覧を掲載している。参考1)紹介受診重点医療機関を都が初公表、計83カ所 1日時点(CB news)2)紹介受診重点医療機関について(厚労省)3)都道府県紹介受診重点医療機関リスト(同)4)紹介受診重点医療機関になると何が変わるのか?(PRRISM)6.地域に根ざした医師会活動プロジェクトを始動/日本医師会日本医師会は「地域に根ざした医師会活動プロジェクト」を発表し、市民への理解を深めることを目指すことを明らかにした。プロジェクトはシンポジウム形式で、実地とWebのハイブリッド開催を予定している。第1回のテーマは「有事の医師会活動」で、大規模災害時の対応や新型コロナウイルス感染症の対策などを取り上げる。シンポジウムはアーカイブ動画や電子パンフレットで提供され、多くの市民が参加できるようにする。プロジェクトを通して、医師会の活動の周知と理解を促進し、地域医療の充実に寄与する目的を持つ。渡辺 弘司常任理事は、地域の時間外や災害時の医療対応など、医師会の多様な活動を通じて地域を支える重要性を語った。また、地域医師会と専門基幹病院の連携事例も紹介され、全国の医師会の活動を通じて地域の医療を支える取り組みを広く知らしめる狙いがある。参考1)日医、市民への新規プロジェクトを開始(時事通信)2)地域に根ざした医師会活動プロジェクトについて(日本医師会)

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第172回 “治験後進国ニッポン”、医療のお宝情報にたどり着けない仕組みが原因か

先日、国産の新型コロナワクチン登場を取り上げたが、そもそも国産ワクチンが海外産ワクチンに比べて登場しにくいのは、臨床試験(以下、治験)実施の難しさがあるように思う。たとえばファイザー製のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンのコミナティの治験は、わずか4ヵ月弱で4万人を超える被験者がエントリーしている。日本でこの期間と規模の被験者を集めることができるかを問われれば、多くの人が“否”と答えるだろう。その理由として挙げられるのが、まず医療制度の違いである。国民皆保険による安価な医療費と医療機関へのフリーアクセスという制度に慣れ切った日本人にとって、敢えて治験に参加するほどのメリットを感じない人がむしろ多数派ではないだろうか。にもかかわらず、場合によっては二重盲検試験で比較対照にプラセボ(偽薬)を使うという前提ならば、「なんで治療されるかどうかわからないものに参加しなければならないの?」となってしまう。さらにいえば治験そのものに対する情報が少なく、イメージも決して良いとは言えない。今でも嫌悪感を含んだ「人体実験」「ヒトをモルモットにしている」との表現は、医療にそれほど知識のない人の間では普通に使われている。この背景にあるのは、かつては製薬企業が治験の実施そのものを広い意味で企業秘密と取り扱っていた時代があり、被験者募集情報が広く公開されないまま水面下で実施されていた。こういった現実もある種、一般市民に対して“怪しいこと”というイメージを醸成してしまった可能性がある。実際、私が医療専門紙記者となった1990年代前半はやはり治験の被験者募集情報が具体的に公表されていることはなく、あくまで治験参加医師とそこに受診する患者との間のみでやり取りされていた。しかも、中には治験であることを患者に説明せずに行われていたケースもあったと聞く。実際、私自身そうした医師の告白を直接聞いたこともある。また、それとは別の医師から「やはり保険診療の中で『治療してもらって当たり前』という前提が患者にはあるため、治験参加を打診するにしてもどうしても口幅ったい物言いになってしまう。今振り返って、厳密な意味でのインフォームド・コンセントになっていたかと言われれば、そう言い切れない」と吐露されたことがある。もっとも当時と比べれば、この状況は大きく改善された。2000年前後からは製薬企業が新聞への全面広告で被験者募集を行うようになった。当時、新聞でとある治験の広告を初めて目にした私は、思わず「うわ!」と声が出たほどだった。そして今ではインターネット上で検索すれば、すべてではないものの治験情報へのアクセスが可能になり、診療ガイドライン上に定められたレジメンが尽きてしまった固形がんの薬物療法中の患者が治験に参加し、公のシンポジウムなどで「患者にとっては治験も治療手段の1つ」と語る時代になった。とはいえ、まだ十分とは言えない。そもそも治験情報自体が一部の患者団体や製薬企業、あるいは医療機関、各種団体などのホームページに分散して存在しているのが現状である。これらの中で一元的にまとまった情報源としては、臨床研究法と再生医療等安全性確保法に基づき試験実施者が厚生労働大臣に対して実施計画の提出などの届出手続を行うシステムで国立保健医療科学院が運営する「臨床研究等提出・公開システム(jRCT)」がある。もっとも前述のようなあくまで試験者の届け出システムで、一般人が検索することは“おまけ”程度の位置付けという側面もあるのか、やたらと使い勝手が悪い。検索ページを見ればそのことは一目瞭然である。たとえば検索時の選択項目の1つである「企業治験」「医師主導治験」「製造販売後試験」「使用成績調査」などについて、一般人で違いを簡潔に説明できる人は稀だろう。今回のコロナ禍の最中は各種治験情報の確認のため、高頻度でこのサイトを利用したが、一般人と比べて医療情報を多く持つ自分でも、検索画面ではしばしば迷う。私自身、「何とかならないものか」と思っていた一人である。そのようなこともあってか現在、jRCTはサイトの改修作業に入り始めている。そうした中でこの6月にややトピック的な動きがあった。厚生労働省で記者会見が開かれた「臨床試験にみんながアクセスしやすい社会を創る会」の設立である。同会は全国がん患者団体連合会(全がん連)や日本難病・疾病団体協議会、やはり希少疾患対策に取り組むNPOのASrid(アスリッド)といった患者組織と順天堂大学、国立がん研究センターなどから共同発起人が参加し、厚生労働省医政局研究開発政策課治験推進室、jRCTを運営する国立保健医療科学院、日本製薬工業協会(製薬協)もオブザーバーに参加。jRCTをユーザー(患者)フレンドリーなサイトに改修し、治験情報がワンストップで得られるようにすることを目標に政策提言などを進めるために設置されたという。会見で共同発起人の桜井 なおみ氏(全がん連理事)は「患者だけでなく、研究者でも隣の医療機関や時には自分の所属医療機関でどのような研究が現在実施されているか探せない問題もある。患者としては適切なタイミングで適切な臨床試験に参加するチャンスを失っている。ここを解決するためには患者会の力だけでは困難で、医療従事者、研究者、創薬関係機関の皆さんとともに多様な目線を取り入れて情報発信することが必要ではないかということで、今回の会設立に至った」と説明した。会としては2025年をデッドラインとして、現状の治験情報発信の課題とその解消法の議論に始まり、患者にわかりやすい具体的な情報公開の方法の提言などを行う。また、共同発起人の1人でASrid理事長の西村 由希子氏は希少疾患の特有の悩みとして「患者会がある疾患では、(製薬)企業も患者が治験情報へアクセスしやすくすることも可能だが、希少疾患は患者数が少ないために患者会そのものを作るのが難しい場合もある。一方で医師も大規模な治験実施が困難で、どうしても各医師の周囲の患者を対象とした治験になりがちで、結果として地域格差、機会格差にも繋がると考えている」と語った。がん、希少疾患の場合は治療選択肢が限られる分、治験情報入手は命綱でもある。その意味で今回の動きは自然なことと言えるし、行政や企業、医療機関なども含めてより大きな枠組みが動き出した意義は大きい。もっともこれまでのjRCTも含め、とかく公的機関の情報発信は良いものを出しても、読まれる、アクセスされるという点でリーチが足りないという側面があるのも現実だ。この点を質疑で尋ねた。桜井氏は「宝物のような情報があるのにたどり着けないということを私達も多く経験している。実はjRCT自体も子供向け啓発の資材などを作っていたが、私達もそれを知らなかった。それが現状なので、まだ病気になっていない人たちも含めた啓発のためのシンポジウム、教育のようなものにもしっかり取り組んでいきたい。一見無駄なように見えても発信し続けることが、とにかく必要だと思う」と回答した。最後の一言はまさに報道でも同じである。何かを報じたから明日から世の中がドラスティックに変わることは、ほとんどあり得ない。この医療専門紙記者の世界に生きてきて約四半世紀、何回も何回も似たようなことを書いて、ようやく1割程度の人に腹落ちしてもらえれば“もうけ”くらいが現実と私は思っている。いや、1割程度だったら大成功かもしれない。“治験後進国ニッポン”で、小さいかもしれないが起きた新たな動きが10年後、20年後に芽を吹いてもらえば、それこそが実は将来起こり得るかもしれない新たなパンデミックの際に他国に遅れを取らない国産ワクチン登場のためのシーズと言えるのではないだろうか。

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新型コロナ、住民への注意喚起のタイミングの目安を発表/厚労省

 厚生労働省は8月9日の事務連絡にて、感染拡大する新型コロナウイルス感染症の早期対応のため、各都道府県に向けて住民等に注意喚起を行う際の検討の参考となるタイミングの目安を発表した1)。 なお、本目安は、新型コロナ流行時において医療への負荷が主たる課題となることから、感染拡大が継続したとしても医療提供体制を確保するために設定されたものであり、感染症サーベイランスにおける感染症の流行の程度に関する注意報・警報レベルとは考え方が異なる。また、本目安は暫定的に設定されたもので、今後の流行状況等を踏まえ、変更される可能性もあるという。 今回設定された住民への注意喚起等の目安は以下のとおり。1 住民への注意喚起等として考えられる内容(1)住民への注意喚起 都道府県において、住民に対し、医療に負荷がかかっている状況とあわせて、以下の注意喚起を行うことが考えられる。1. 発熱等の体調不良時、発症後5日間、症状軽快後24時間経過するまで外出を控えること2. 手洗いや換気などの基本的な感染対策の強化3. マスク着用推奨場面(医療機関や高齢者施設等の訪問時)でのマスク着用の徹底4. 軽症時や検査、診断書発行等のための救急受診を控えること5. 軽症の場合の自宅療養(食料、医薬品、検査キット等の準備)(2)医療提供体制等の強化 「今夏の新型コロナウイルス感染症等の感染拡大に備えた保健・医療提供体制の確認等について」(令和5年7月14日付事務連絡)で示されたとおり2)、感染拡大が継続したとしても医療提供体制を確保するため、以下の事項が徹底されるよう、各都道府県において、改めて病院長会議等を通じた医療関係者等との協議、入院先決定における助言等の必要な支援を行うことが考えられる。 1. 医療機関間の入院先の決定にあたり、重症者等を優先すること2. 地域における医療機関の役割に応じた受け入れを行うこと(重症者を受け入れる急性期病院、状態改善後の転院先として軽症者を受け入れる回復期病院等)3. 新型コロナ以外の疾患により入院している患者が新型コロナに感染した場合に、転院させず、継続的に診療を行うこと4. 円滑な入院調整を行うためのG-MIS等の活用5. 自宅等における療養体制を確保すること(薬局、訪問看護事業所、ケアマネジャー等との連携、酸素濃縮装置の確保等)6. 高齢者施設等における療養体制を確保すること2 都道府県による住民への注意喚起等の目安について 各都道府県において、1に示した住民への注意喚起や医療提供体制の強化(医療機関等への呼びかけ)を行う場合に、その参考となりうる目安を以下のとおり示すこととする。下記の目安も参考にして、過去の流行及びこれに伴う医療への負荷も含めて総合的に勘案し、必要に応じて基準を設定する(※)など、地域の実情に応じた対応をお願いしたい。(※)既に独自の基準等を設定して対応している都道府県に対して、変更を求めるものではない。また本目安は暫定的であり、今後変更される可能性がある。(1)目安の設定の考え方 これまでの考え方3,4)や直近の沖縄県における感染拡大の状況等を踏まえ、感染者数のピークの2週間前、在院者数及び確保病床使用率のピークの3週間前の数値を参考に目安を設定。(2)考えられる目安・外来の状況:「外来逼迫あり」割合(※)が25%を超えるとき・定点あたり報告数:直近のオミクロン株による感染拡大時の「外来逼迫あり」割合(※)のピーク時から2週間前の「定点当たり報告数」を超えるとき注 なお、足下の医療提供体制の状況も踏まえ、直近のピーク時を参照するのではなく、別途、個別に設定することも考えられる。(※)「外来逼迫あり」割合とは、医療機関等情報支援システム(G-MIS)の週次調査において、診療枠の関係で、当日中の来院を断っているかどうかを目安に、逼迫が生じていたかについて、該当ありと回答した医療機関の割合を指す。・在院者数:これまでのオミクロン株による感染拡大ピーク時の当該数の1/2を超えるとき(過去の感染拡大ピーク時と比較して軽症者の割合が高い場合は除くなど、入院患者の重症度等に応じて判断)。※欠勤している医療従事者数5)、救急搬送困難事案件数の増加傾向も参考とする。・確保病床使用率:50%を超えるとき(確保病床外の在院者数も留意すること。また、過去の感染拡大ピーク時と比較して軽症者の割合が高い場合は除くなど、入院患者の重症度等に応じて判断)。※(2)で記載した目安については、すべての目安を活用して各都道府県において基準の設定を求めるものではなく、これらを参考にして、総合的に勘案した上で必要に応じて基準を設定し、注意喚起などに活用することを想定している。※厚生労働省においても、各都道府県と密接に連携するとともに、感染拡大や医療提供体制の状況を踏まえて、必要に応じてリエゾン派遣等の支援を行うこととしている。■参考文献・参考サイト1)厚生労働省:新型コロナウイルス感染症に関する住民への注意喚起等の目安について(令和5年8月9日)2)厚生労働省:今夏の新型コロナウイルス感染症等の感染拡大に備えた保健・医療提供体制の確認等について(令和5年7月14日)3)BA.5強化宣言(令和4年7月新型コロナウイルス感染症対策本部決定)4)今秋以降の感染拡大で保健医療への負荷が高まった場合に想定される対応(令和4年11月新型コロナウイルス感染症対策分科会)5)重点医療機関における新型コロナウイルス感染症に関連して休んでいる看護職員数

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第57回 9月以降の「秋開始接種」の概要は?

XBB.1.5対応1価ワクチンが登場ソコストより使用医療従事者では最多で新型コロナワクチンを6回接種している方がいると思います。私も2023年6月に6回目接種を終えています。現在「令和5年春開始接種」が終盤になっていますが、新型コロナワクチンの接種率がかなり下がってきた印象です。1年以上経過すると、さすがに重症化リスクも上がってくるようなので、前回からの接種期間が空いている人は接種してもよいのではないかと思いますが。65歳以上の高齢者および5歳以上の基礎疾患を有する人やその他重症化リスクが高いと医師が認める方の場合は、基本的に接種が推奨されます。これ以外の健康な人は、予防接種法による接種勧奨・努力義務のいずれの適用もありません。「看護学生がワクチン接種していないと実習に参加できない」問題がわりとSNSで炎上していますが、デリケートな問題ですよね…(遠い目)。さて、9月20日以降使用されるXBB.1.5対応1価ワクチンは、マウスを用いた非臨床試験において、XBB.1.5に対して現行2価ワクチンよりも高い中和抗体価を誘導することが報告されています。XBB.1.5対応1価ワクチンの契約は、モデルナ社とファイザー社を合わせて2,500万回分がすでに済んでいます。数が少し少な目な気がしますが、第一三共の「ダイチロナ」がXBB.1.5対応1価ワクチンとして早期に参入してくるのかどうかは不明です。従来株でのダイチロナ承認となっていますが、変異ウイルス用のものを次々に出してくるのではないかと期待しています。「秋開始接種」の概要9月20日から始まる「秋開始接種」の概要は図のとおりになります。春開始接種では基礎疾患のない12~64歳は接種対象外だったのですが、今回再び対象になっています。とはいえ、「もう接種はいいや」と思っている人がかなり多いので、ヘタするとインフルエンザワクチンよりも打たれないという未来が待っているかもしれません。画像を拡大する図.新型コロナワクチン接種スケジュール(筆者作成)8月7日からオミクロン株対応2価ワクチンが初回接種可能にところで、あまり報道すらされていませんが、8月7日からオミクロン株対応2価ワクチンを初回接種できるようになりました。現状流通するのは5歳以上になります。生後6ヵ月~4歳に対するオミクロン株対応2価ワクチンも書面上は接種可能ですが、いずれXBB.1.5対応1価ワクチンを接種することになるため、こちらについては流通させない方針のようです。現在流行しているのはXBB系統ですが、従来型ワクチンと比べるとオミクロン株対応2価ワクチンでは、約7割の死亡予防効果が確認されています1)。そのため、「系統が違うから効かないのでは」と懸念しなくてもよいと思います。参考文献・参考サイト1)Lin DY, et al. Durability of Bivalent Boosters against Omicron Subvariants. N Engl J Med. 2023;388:1818-1820.

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わが国の平均寿命、コロナの影響などで男女とも低下/厚生労働省

 厚生労働省は、7月28日に令和4年の簡易生命表の概況を発表した。これによると男性の平均寿命は81.05歳、女性の平均寿命は87.09歳となり、前年と比較し男性は0.42年、女は0.4年下回ったほか、平均寿命の男女差は6.03年で前年より0.07年縮小した。 平均寿命の前年との差を死因別に分解すると、男性は悪性新生物(腫瘍)などの死亡率の変化が平均寿命を延ばす方向に働いていたが、男女とも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、心疾患(高血圧性を除く)、老衰などの死亡率の変化が平均寿命を縮める方向に働いていた。 死因別死亡確率(主要死因)について、65歳では男女とも悪性新生物(腫瘍)の死亡確率が低く、心疾患、老衰の死亡確率が高くなっており、75歳および90歳ではさらにこの傾向が強くなっていた。前年と比較すると、悪性新生物(腫瘍)、心疾患、脳血管疾患および肺炎の死亡確率は、65歳、75歳および90歳のすべての年齢で男女とも低下していた。老衰の死亡確率は、男性はすべての年齢で上昇、女性は65歳および75歳で低下、90歳で上昇していた。平均寿命の男女差は年々縮小【平均寿命の年次推移】( )内は男女差令和2年 男性81.56歳 女性87.71歳(6.15年)令和3年 男性81.47歳 女性87.57歳(6.10年)令和4年 男性81.05歳 女性87.09歳(6.03年)【平均寿命の前年との差に対する死因別寄与年数】・平均寿命の延長に寄与した死因 男性:悪性新生物[腫瘍](0.06年)、肺炎(0.01年) 女性:肺炎(0.01年)・平均寿命の短縮に寄与した死因 男性:COVID-19(0.12年)、心疾患(0.07年)、老衰(0.05年) 女性:COVID-19(0.13年)、老衰(0.10年)、心疾患(0.06年)【死因別死亡確率(主要死因)上位3つ】・65歳 男性:悪性新生物[腫瘍](26.16%)、心疾患(14.31%)、老衰(8.31%) 女性:老衰(19.79%)、悪性新生物[腫瘍](17.72%)、心疾患(16.32%)・75歳 男性:悪性新生物[腫瘍](24.49%)、心疾患(14.50%)、老衰(9.73%) 女性:老衰(21.18%)、心疾患(16.76%)、悪性新生物[腫瘍](15.50%)・90歳 男性:老衰(17.91%)、心疾患(15.94%)、悪性新生物[腫瘍](14.43%) 女性:老衰(29.51%)、心疾患(17.61%)、悪性新生物[腫瘍](9.02%)【平均寿命の国際比較】※入手可能な資料より算出 日本 男性81.05歳 女性87.09歳 男性の最高:スイス(81.6歳)/男性の最低:コンゴ民主共和国(56.5歳)  女性の最高:日本(87.09歳)/女性の最低:コンゴ民主共和国(59.7歳)

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第175回 コロナ後遺症への抗ウイルス薬パキロビッド長期投与の試験開始

コロナ後遺症への抗ウイルス薬パキロビッド長期投与の試験開始新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状(long COVID)を治療しうる手段をいくつかに分類して次々に検討する第II相試験の2つが米国で始まりました1)。それら試験はCOVID-19の長期経過の把握、治療、予防を目指す米国国立衛生研究所(NIH)の取り組みであるResearching COVID to Enhance Recovery(RECOVER)の一環として実施されています。早速始まった2試験の1つはRECOVER-VITAL2)と呼ばれます。ウイルス感染の持続、ウイルスの再活性化、過剰あるいは慢性的な免疫反応や炎症がlong COVIDに寄与し、ウイルスの除去や炎症の抑制をもたらす治療でlong COVIDが改善しうるという仮説の検証を目的としています。RECOVER-VITAL試験でプラセボと対決する治療の先鋒として白羽の矢が立てられたのはファイザーの抗ウイルス薬であるニルマトレルビル・リトナビル(日本での商品名:パキロビッドパック)です。より長期(25日間)の同剤投与によるlong COVID症状改善効果の検討への被験者組み入れはすでに始まっています。RECOVER-VITALとともに始まったRECOVER-NEURO3)という名称のもう1つの試験は遂行機能や注意などのlong COVID絡みの認知機能の低下を改善しうる治療手段の検討を目当てとしています。RECOVER-NEUROで検討される手段はすでに3つが決まっています。1つはインターネットを介した脳トレで、BrainHQと呼ばれます。BrainHQは認知障害の改善手段としてすでに普及しています。もう1つはPASC-Cognitive Recovery(PASC CoRE)と呼ばれ、BrainHQと同様にインターネットを介した脳トレであり、注意や遂行機能を改善する効果があります。3つ目は脳の活動や血流増加を助けることが知られるSoterix Medical社の製品を利用した脳の電気刺激です。同社の経頭蓋直流刺激(tDCS)製品は自宅で簡単にできるように作られています。睡眠や自律神経に注目した2つの試験RECOVER-SLEEPとRECOVER-AUTONOMICも準備段階にあり、間もなく始まります。RECOVER-SLEEPはコロナ感染後に変化した睡眠習慣や寝付きに対処しうる手段を検討します。同試験の一環として過眠や日中の過度の眠気への覚醒促進薬2種の効果がプラセボと比較されます。また、入眠や睡眠の維持の困難などの睡眠障害に睡眠の質を改善する手段が有効かどうかも検討されます。準備段階のもう1つの試験はRECOVER-AUTONOMICと呼ばれ、心拍、呼吸、消化などの生理機能ひとそろいを制御する自律神経系の失調と関連する症状への対処法を調べます。心拍異常、めまい、疲労などの症状を特徴とする体位性頻脈症候群の治療手段いくつかが手始めに検討されます。免疫疾患治療薬とプラセボの比較がその1つで、心拍亢進を伴う慢性心不全の治療薬とプラセボの比較も予定されています。運動できなくなることや疲労への手段を検討する試験も患者や専門家からの意見を取り入れて開発されています。今後次々に始まっていくRECOVER試験はlong COVIDの影響が最も大きい地域を含めて被験者を募っていきます。試験参加施設は自治体と協力してlong COVIDについての理解を促し、RECOVER試験への参加の普及に努めます。効果的な治療や手当てを検討する臨床試験はlong COVIDへの政府の取り組みの肝であり、苦労が絶えない患者やその家族が楽になるように努力していくと米国政府の役員は言っています1)。参考1)NIH launches long COVID clinical trials through RECOVER Initiative, opening enrollment / NIH 2)RECOVER-VITAL試験(ClinivalTrials.gov) 3)RECOVER-NEURO試験(ClinivalTrials.gov)

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不要な抗菌薬処方、60歳以上の医師に多く特定の医師に集中か

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を含むウイルス感染症には、抗菌薬が無効であるにもかかわらず、抗菌薬が処方されている実態が報告されている1,2)。ただし、抗菌薬処方に関連する医師や患者の特徴については明らかになっていない。そこで、東京大学大学院医学系研究科の宮脇 敦士氏らは、本邦の一般開業医を対象としたデータベース(Japan Medical Data Survey:JAMDAS)を用いて、COVID-19の外来受診データを分析した。その結果、本邦の新型コロナのプライマリケアにおいて、抗菌薬の処方は少数の診療所に集中していた。また、60歳以上の医師は抗菌薬の処方が多かった。本研究結果は、JAMA Network Open誌2023年7月25日号のリサーチレターで報告された。新型コロナの抗菌薬処方の傾向についてJAMDASを用いて解析 2020年4月1日~2023年2月28日の期間において、継続観察された843診療所の新型コロナの外来受診データ(JAMDAS)を分析し、抗菌薬処方の傾向について検討した。ロジスティック回帰モデル(月と都道府県で調整)を用いて、患者特性(性、年齢、合併症の有無)や医師特性(性、年齢)と抗菌薬処方の関連を調べた。なお、抗菌薬の処方が適切である可能性のある疾患の診断を有する患者の受診データは除外した。 JAMDASを用いて新型コロナの抗菌薬処方の傾向について検討した主な結果は以下のとおり。・COVID-19患者52万8,676例(年齢中央値33歳[四分位範囲:15~49]、女性51.6%)のうち、4万7,329例(9.0%)に抗菌薬が処方された。・新型コロナで最も多く処方された抗菌薬は、クラリスロマイシン(25.1%)であった。次いで、セフカペン(19.9%)、セフジトレン(10.2%)、レボフロキサシン(9.9%)、アモキシシリン(9.4%)の順に多かった。・新型コロナの抗菌薬処方絶対数の上位10%の診療所で、全体の処方数の85.2%を占めていた。・新型コロナの抗菌薬処方絶対数の上位10%の診療所における抗菌薬の平均処方率が29.0%であったのに対し、残りの90%の診療所における抗菌薬の平均処方率は1.9%であった。・医師が新型コロナに抗菌薬を処方する割合は、44歳以下の医師と比較して、60歳以上の医師で高かった(調整オッズ比[aOR]:2.38、95%信頼区間[CI]:1.19~4.47、p=0.03)。医師の性別によって、抗菌薬の処方に違いはなかった。・新型コロナ患者が抗菌薬を処方される割合は、18歳未満の患者と比較して、18~39歳(aOR:1.69、95%CI:1.37~2.09、p<0.001)および40~64歳(aOR:1.36、95%CI:1.11~1.66、p=0.01)の患者で高かった。・併存疾患のない新型コロナ患者と比較して、併存疾患を有する患者は抗菌薬を処方される割合が高かった(aOR:1.48、95%CI:1.09~2.00、p=0.03)。 本研究結果について、著者らは「本研究の限界として、患者の重症度など、未測定の交絡因子の影響を十分に考慮できないこと、JAMDASに含まれない診療所などへの一般化可能性には限界があることなどが挙げられる」としたうえで、「本研究結果は、抗菌薬の適正使用促進の取り組みに役立つ可能性がある」とまとめた。

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