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血小板輸血後に女児死亡、厚労省から注意喚起

 2017年11月29日、血小板製剤輸血による細菌感染が疑われていた症例について、患者の死亡が確認されていたことが、厚生労働省の有識者会議にて報告された。患者は、急性骨髄性白血病の再発に対する同種骨髄移植を受けた10歳未満の女児。移植の約1ヵ月後に、血小板製剤の投与が行われ、投与20分後より振戦、呼吸促拍の出現により投与が一時中止された。その後、投与が再開されたものの、嘔吐、下痢により再び中止に至った。女児は投与後4日目に一時心肺停止状態となり、投与後1ヵ月6日目、敗血症性ショックによる多臓器不全で死亡した。 今回、女児が投与されたのは、「照射濃厚血小板-LR」(採血後4日目)20mlで、その後の検査により、残りの製剤および女児の血液から同一の大腸菌が同定された。担当医は「細菌感染と輸血血液との因果関係はあると考えられる」との見解を出している。 この問題に関して、厚生労働省は12月4日付で、血小板製剤使用時の安全確保について都道府県などに向けた通知を出した。 主な内容は以下のとおり。・少なくとも輸血開始後約5分間は患者の観察を十分に行い、約15分経過した時点で再度観察を行う。・輸血には同種免疫などによる副作用やウイルスなどに感染する危険性がありえるので、他に代替する治療法などがなく、その有効性が危険性を上回ると判断される場合にのみ実施する。・輸血を行う場合は、その必要性とともに感染症・副作用のリスクについて、患者またはその家族などに文書にてわかりやすく説明し、同意を得る。

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新型インフルエンザ対策の最前線

 2017年11月5日、厚生労働省は都内において、「新型インフルエンザ対策に関する研修」を開催した。当日は、新型インフルエンザの疫学、治療ガイドライン、感染対策、行政の動向について4名の演者による講演が行われた。急がれるH7N9ワクチン はじめに「鳥インフルエンザの疫学について」をテーマに小田切 孝人氏(国立感染研インフルエンザウイルス研究センター WHOインフルエンザ協力センター センター長)が、鳥インフルエンザの動向、最新の知見を解説した。 インフルエンザAタイプは人獣共通感染症であり、野生のツルやカモなどの水禽類が宿主となっている。このタイプは、ヒト、トリ、ブタ間でも感染し、現在トリではH5N1、H5N6、H7N9、H9N2が、ブタではH1N2v、H3N2vがヒトに感染することがわかっている。とくに患者数が多かったH5N1は、その数が減少する傾向にあるものの、高病原性ゆえに致命率は53%と高いという。 問題は、突然変異によるパンデミックポテンシャルをウイルスが持っていることであり、トリがこうしたウイルスを獲得していないかどうか、常に監視する必要があると警告する。 ワクチンについては、世界保健機関(WHO)がインフルエンザウイルスのリスト化とワクチン株の保存を行い、日本、米国、英国の施設で新型インフルエンザワクチン製造株を作製・提供を実施しており、中国でも開発中であるという。 その中国では、2013年より鳥インフルエンザ H7N9が流行。2017年8月31日時点で、1,531例の感染例(うち死亡604例)と高い致命率(39.5%)が報告された。また、旅行など人の移動が感染拡大を助長したこと、高齢者の感染例が多いことも報告された(H5N1は青年に多かった)。 H7N9は、飛沫感染する例も動物実験で報告され、ワクチンの開発が急がれているが、予防接種の免疫獲得が低いことや免疫細胞に認識されないなどの問題があり、現在も研究が続けられている。 最後に、日本で中国のようなアウトブレイクが起きるかどうかについて、「わが国の検疫対応をみると発生しないだろう」と現状からの予測を語り、レクチャーを終えた。新型インフルエンザには抗ウイルス薬の使用をためらわない 次に川名 明彦氏(防衛医科大学校 感染症・呼吸器内科 教授)が、「成人の新型インフルエンザ治療ガイドライン改訂の方向性について」をテーマに解説を行った。 2014年3月に現在の治療ガイドラインが発行され、現在は改訂(第2版)の最終段階であり、12月中には最新のガイドラインが発行されるとの見通しを述べた。 ガイドラインで示される治療の範囲は、入院診療の治療がメインとなり、とくに意識障害、肺炎の有無別による治療にページが割かれるという。また、予想される新型インフルエンザの臨床像は、過去のインフルエンザの事例、鳥インフルエンザの重症例、季節性インフルエンザの重症例などから検討され、インフルエンザ肺炎の中でも原発性、混合性、二次性の大きく3つに分けた治療が記されるという。 現在、日本で使用できる抗ウイルス薬には、オセルタミビル(商品名:タミフル)、ザナミビル(同:リレンザ)、ラニナミビル(同:イナビル)、ペラミビル(同:ラピアクタ)の4種がある。治療では、米国疾病管理予防センター(CDC)の原則に沿い、早期投与が勧められているほか、入院患者、2歳以下の小児、65歳以上の高齢者、循環器や代謝異常などの既往症、免疫抑制状態、妊婦(出産後2週間以内も含む)、病的肥満(BMI 40以上)、長期療養施設に入所など、ハイリスク患者には可能な限り早期に投与するとしている。 症状が、軽症、中等症、肺炎合併がない場合の新型インフルエンザの治療では、季節性インフルエンザと同じ治療としつつ、肺炎を合併した場合は、できるだけ早く抗ウイルス薬の投与を示している。とくに重症例ではペラミビルの選択、増量や投与期間の延長、ファビピラビル(同:アビガン)との併用も考慮するとしている(ただしファビピラビルは妊婦または妊娠している可能性のある婦人へは投与しない)。 新型インフルエンザ肺炎への細菌感染の合併例については、頻度の高いものとして肺炎球菌、黄色ブドウ球菌などのウイルス細菌混合性肺炎と、緑膿菌、アシネトバクターなどの二次性細菌性肺炎を挙げ、入院を要する症例ではただちに抗菌薬療法を開始する。そして抗菌薬の選択はガイドラインを参考に行い、病原体確定後に、より適切な抗菌薬へde-escalationすることとしている。その他の薬物療法として副腎皮質ステロイド薬は、ウイルス性肺炎では喘息合併に限り重症化を抑制するほか、細菌性肺炎では敗血症性ショック時の相対的副腎不全に低容量で有効とされている。また、マクロライド系薬は、細菌性肺炎の重症化例で予後を改善するとの報告がある。 肺炎時の呼吸管理では、人工呼吸を躊躇しないで使用するほか、悪化または改善がみられない場合は、特殊な人工呼吸法(ECMO)の導入やより専門的な施設への転送をするとしている。 インフルエンザ肺炎の重症度評価では、PSI、A-DROP、CURB-65などの市中肺炎の重症度評価法よりも、重症度が過小評価されることに注意が必要と指摘する。 最後に、川名氏は「“新型インフルエンザ”の病態は未知であるが、病原性の高いインフルエンザの出現を想定し、準備する必要がある。ガイドラインも、出現時にはウイルスの特徴に応じてただちに再検討する必要がある」とまとめ、レクチャーを終えた。感染対策は手指衛生と予防接種が大事 次に加藤 康幸氏(国立国際医療研究センター 国際感染症センター国際感染症対策室 医長)が、「感染対策について」をテーマに解説を行った。 インフルエンザの院内感染の特性は、新型も季節性も、新生児、骨髄移植患者、長期療養型病棟で致死率の高い流行を起こすことがあり、医療従事者においては患者からの感染と患者の感染源になるという2つのリスクがあると説明する。そして、新型インフルエンザ流行時には、感染被害の軽減と封じ込めの同時進行が必要であり、過去の拡大例を検証すると、医療従事者から患者への飛沫感染対策は重要であるという。 そして、医療機関における具体的な感染対策としては、「感染源対策」「患者・職員の健康管理」「感染経路の遮断」の3つが必要とされ、CDCの推奨でも予防接種、患者との接触を減らす、標準予防策の順守、飛沫予防策の順守、訪問者の制限なども掲げられ、実践されることが期待される。 とくに飛沫感染対策・咳エチケットとして、医療機関の入口での注意の掲示、1m以上の距離を隔てた待合用の座席、待合室の手近な場所への手指衛生設備の設置などが必要となる。同様に、医療スタッフへの指導では、個人防護具(手袋、ガウン、シールド付きサージカルマスクなど)の装着・脱着の研修は有効であるという。 最後に加藤氏は「院内感染対策では、手指衛生と(患者、医療従事者の)予防接種の2つが有効とされている。新型インフルエンザの対策も、季節性インフルエンザの延長にあると考え、流行に備えてもらいたい」と語り、解説を終えた。新型インフルエンザではWeb情報も活用を! 最後に、厚生労働省の海老名 英治氏(健康局結核感染症課 新型インフルエンザ対策推進室 室長)が「行政動向について」をテーマに、新型インフルエンザ対策の法令、ワクチンの備えに関して説明を行った。 新型インフルエンザへの対策は、水際での侵入阻止と早期封じ込めによる感染拡大の抑制と流行規模の平坦化、それと同時にワクチンの開発、生産、接種によって流行のピークを下げること、医療への負荷を減らすことであるという。 2012年5月に「新型インフルエンザ等対策特別措置法」が公布され(施行は2013年6月)、流行時の各種対策の法的根拠が明確化された。具体的には、体制整備として国・地方公共団体の行動計画や訓練、国民への啓発のほか、流行発生時の対策本部の設置、特定接種の指定などが決められ、「新型インフルエンザ等緊急事態」発生の際の措置では、外出自粛要請、興行場等の制限などの要請・指示、住民への予防接種の実施、医療提供体制の確保、緊急物資の運送の要請・指示などの規定が挙げられる。 また、国のインフルエンザ対策として、時間軸で海外発生期、国内発生早期、国内感染期、小康期の4つに区切り、各段階で(1)実施体制、(2)サーベイランス・情報収集、(3)情報提供・共有が行われると説明を行った。 現行の被害想定はいずれも最大数で、罹患者を人口の25%、医療機関受診者を約2,500万人、入院者を約200万人、死亡者を約64万人、欠勤者を従業員の約40%とし、抗インフルエンザウイルス薬の備蓄は人口の45%を目標としている(2017年7月時点の有識者会議で、全人口の25%が罹患するとして再検討されている)。また、「これら抗ウイルス薬の備蓄方針、季節性インフルエンザとの同時流行時の規模や重症患者への倍量・倍期間治療、予防投与についても、省内の厚生科学審議会で継続的に審議されている」と説明する。 最後に海老名氏は、「審議会などの新しい情報も厚生労働省のウェブサイトなどを通じて日々発信しているので、新型インフルエンザの対策ではこれらも参考に準備をしていただきたい」と述べ、説明を終えた。■参考厚生労働省 インフルエンザ(総合ページ)内閣官房 新型インフルエンザ等対策厚生労働省 セミナー当日の配布資料

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敗血症の早期蘇生プロトコル戦略、開発途上国では?/JAMA

 医療資源が限られる開発途上国において、大半がHIV陽性で敗血症と低血圧症を有する成人患者への、輸液および昇圧薬投与による早期蘇生プロトコル戦略では、標準治療と比較して院内死亡が増大したことが示された。米国・ヴァンダービルト大学のBen Andrews氏らがザンビア共和国で行った無作為化試験の結果で、著者は「さらなる試験を行い、異なる低中所得国の臨床設定および患者集団における、敗血症の患者への静脈内輸液と昇圧薬投与の影響を明らかにする必要がある」とまとめている。開発途上国における敗血症への早期蘇生プロトコルの効果は、これまで明らかにされていなかった。JAMA誌オンライン版2017年10月3日号掲載の報告。ザンビアの212例を対象に、無作為化試験で標準治療と比較 研究グループは、輸液、昇圧薬、輸血による早期蘇生プロトコルが、敗血症と低血圧症を有するザンビアの成人患者において、標準治療と比べて死亡率を低下させるかを調べた。2012年10月22日~2013年11月11日に、ザンビア国立病院(1,500床)の救急部門を受診した敗血症および低血圧症を有する成人患者212例を対象に無作為化試験が行われ、2013年12月9日までデータが収集された。 被験者は、1対1の割合で(1)敗血症のための早期蘇生プロトコルの介入を受ける群(107例)、または(2)標準治療を受ける群(105例)に無作為に割り付けられた。(1)は静脈内輸液ボーラス投与と、頸静脈圧、呼吸数、動脈血酸素飽和度のモニタリング、および平均動脈圧65mmHg以上を目標値とした昇圧薬投与の治療、輸血(ヘモグロビン値7g/dL未満)を、(2)は担当医の裁量の下で血行動態管理を行った。 主要アウトカムは院内死亡率で、副次アウトカムは、投与を受けた輸液量、昇圧薬投与の状況などであった。早期蘇生プロトコル群の院内死亡発生が1.46倍に 無作為化を受けた212例のうち3例が適格条件を満たしておらず、残る209例が試験を完了し解析に包含された。209例は、平均年齢36.7歳(SD 12.4)、男性117例(56.0%)、HIV陽性187例(89.5%)であった。 主要アウトカムの院内死亡の発生は、敗血症プロトコル群51/106例(48.1%)、標準治療群34/103例(33.0%)であった(群間差:15.1%[95%信頼区間[CI]:2.0~28.3]、相対リスク:1.46[95%CI:1.04~2.05]、p=0.03)。 救急部門受診後6時間で投与を受けた輸液量は、敗血症プロトコル群は中央値3.5L(四分位範囲:2.7~4.0)、標準治療群は同2.0L(1.0~2.5)であった(群間差中央値:1.2L、95%CI:1.0~1.5、p<0.001)。 昇圧薬の投与を受けたのは、敗血症プロトコル群15例(14.2%)、標準治療群2例(1.9%)であった(群間差:12.3%、95%CI:5.1~19.4、p<0.001)。

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化学療法抵抗性膀胱がんへのラムシルマブは有用か?/Lancet

 プラチナ製剤化学療法で病勢進行が認められた、進行性・転移性尿路上皮がん患者に対し、抗VEGF-R2抗体ラムシルマブ(商品名:サイラムザ)+ドセタキセルの併用療法は、ドセタキセル単独に比べて無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが示された。米国・イェール大学のDaniel P. Petrylak氏らが、530例を対象に行った第III相無作為化二重盲検試験「RANGE」の結果で、Lancet誌オンライン版2017年9月12日号で発表された。結果を踏まえて著者は「ラムシルマブ+ドセタキセルレジメンは、われわれが知る限り、プラチナ療法抵抗性の進行性尿路上皮がん患者において化学療法よりも優れたPFSを示した、第III相試験では初となるレジメンである」と述べ、「今回のデータにより、抗VEGF-R2抗体は、尿路上皮がん患者の新たな治療選択肢となりうることが確認された」と、まとめている。 ラムシルマブ(10mg/kg)をドセタキセルと併用投与 研究グループは2015年7月~2017年4月にかけて、23ヵ国124ヵ所の医療機関を通じて、プラチナ製剤化学療法で治療中または治療後に病勢進行が認められた、進行性・転移性尿路上皮がん患者530例を対象に試験を行った。以前の治療で、1種類の免疫チェックポイント阻害薬を投与していた患者も対象に含まれた。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはドセタキセル(75mg/m2)とラムシルマブ(10mg/kg)を(併用群:263例)、もう一方にはドセタキセルとプラセボを(対照群:267例)、いずれも1日1回静脈投与した。1サイクル21日間とし、病勢進行やその他の治療中止の基準が認められるまで継続した。 主要エンドポイントは、437例が無作為化された時点で評価したPFSだった。PFS中央値、併用群4.07ヵ月 vs.対照群2.76ヵ月 PFSの中央値は、対照群2.76ヵ月(95%信頼区間[CI]:2.60~2.96)に対し、併用群は4.07ヵ月(同:2.96~4.47)と有意に延長した(ハザード比:0.757、95%CI:0.607~0.943、p=0.0118)。盲検化独立中央解析においても同様の結果が示された。 奏効率も、対照群14.0%(95%CI:9.4~18.6、221例中31例)に対し、併用群は24.5%(同:18.8~30.3、216例中53例)と高率だった。 なお、Grade 3以上の有害事象の発現率は、併用群60%(156/258例)、対照群62%(163/265例)と同程度であり、予期していない毒性は認められなかった。治療に関連すると研究者が判断した重篤有害事象は、併用群24%(63/258例)、対照群20%(54/265例)で認められた。 治療中または治療中止後30日以内に死亡した患者の割合は、併用群15%(38/258例)、対照群16%(43/265例)で、そのうち治療が原因と研究者が判断したのはそれぞれ3%(8例)と2%(5例)だった。敗血症は、治療中の死亡で最も共通してみられた有害事象であった(2%[4例] vs.0%[発生なし])。また、併用群で致死的な好中球減少性敗血症1例が報告された。

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動脈硬化へのカナキヌマブ、がん発症への影響は/Lancet

 インターロイキン‐1β(IL-1β)抗体カナキヌマブを、心筋梗塞歴があり、高感度CRP(hsCRP)値が2mg/L以上のアテローム性動脈硬化症患者に投与することで、肺がん発症リスクと同死亡リスクが有意に低下する可能性が示された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のPaul M. Ridker氏らが、カナキヌマブの血管イベント再発抑制に関する無作為化二重盲検プラセボ対照試験「CANTOS試験」の、事前に規定していた2次(探索的)解析を行い明らかにした。Lancet誌オンライン版2017年8月25日号掲載の報告。1万例超を中央値3.7年で追跡 研究グループは、心筋梗塞歴があり、hsCRP値が2mg/L以上のアテローム性動脈硬化症患者で、がんの診断を受けたことがない1万61例を対象に試験を行った。 用量依存的な有効性を評価するため、被験者を4群に分け、カナキヌマブ50mg、150mg、300mg、プラセボをそれぞれ3ヵ月ごとに皮下投与した。追跡期間の中央値は3.7年だった。 2次解析のエンドポイントは、がん発症・死亡で、カナキヌマブ投与の割り付けをマスクされたがんエンドポイント委員会が判定を行った。解析はintention to treatにて行った。カナキヌマブ300mg群でがん死亡0.49倍、肺がん死亡0.23倍 ベースラインのhsCRP値とインターロイキン-6値の中央値は、追跡期間中に肺がんを発症した患者でいずれも高かった。どのがんも発症しなかった患者との比較で、それぞれ6.0 vs.4.2mg/L、3.2 vs.2.6ng/Lだった(いずれもp<0.0001)。 カナキヌマブ投与により、追跡期間中のhsCRP値とインターロイキン-6値には用量依存的抑制効果が認められ、それぞれ26~41%、25~43%の低下がみられた(すべての比較についてp<0.0001)。 がんによる死亡は全体で196例であり、カナキヌマブ投与プール群がプラセボ群に比べ有意に少なかった(傾向のp=0.0007)。カナキヌマブ投与量別にみると、300mg群でのみプラセボ群に比べがん死亡率が有意に低率だった(ハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.31~0.75、p=0.0009)。 肺がんを発症したのは129例だった。同発症率は、150mg群と300mg群でプラセボ群に比べ有意に低かった(HRは150mg群:0.61[95%CI:0.39~0.97、p=0.034]、300mg群:0.33[95%CI:0.18~0.59、p<0.0001]、また傾向のp<0.0001)。 肺がん死亡率は、300mg群ではプラセボ群に比べ大幅に低く、HRは0.23(95%CI:0.10~0.54、p=0.0002)で、カナキヌマブ投与群全体でも有意に低かった(傾向のp=0.0002)。 致死的感染症や敗血症は、カナキヌマブ群でプラセボ群に比べ高率だった。全死因死亡率は、両群で同等だった(HR:0.94、95%CI:0.83~1.06、p=0.31)。 これらの結果を踏まえて著者は、「肺がんは事前に規定した正式なエンドポイントではなかったが、発症および死亡が有意に低下する可能性が示された。これらのデータが、正式ながんスクリーニングや治療設定の下でも示されるかを調べる必要がある」とまとめている。

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成人スティル病〔ASD: Adult Still's disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義「難病の患者に対する医療等に関する法律」(いわゆる難病法)の制定によってわが国の難病制度は大きく変化し、指定難病数は法制化前の56疾患から平成29年4月1日には330疾患へと大幅に増加した。多くの疾患とともに成人スティル病(ASD)も新たに難病として指定された。診療レベルの向上を目指して、厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業における自己免疫疾患に関する調査研究班(代表;住田孝之 筑波大学教授)で、住田氏と筆者が責任者としてエビデンスに基づいた本症の診療ガイドラインを作成した。関連学会にも承認され、現在書籍化を急ピッチで進めている。主症状として「繰り返す高熱(1日中に39℃まで達するが、その後平熱に戻る;弛張熱)」、「関節炎」、「皮疹」を示す原因不明の疾患で、小児慢性炎症性疾患のスティル病(Still's disease;現在の全身型若年性特発性関節炎〔sJIA〕)に、その臨床所見が類似している成人症例を成人発症スティル病(Adult Onset Still's Disease;AOSD)と称する1)。リウマトイド因子陰性で、通常は副腎皮質ステロイドに反応するが、再発・再燃を来すことが多い。広義の自己炎症性疾患に属する。不明熱の代表的疾患で鑑別診断が重要である。上記のとおりに成人発症例をAOSDと呼び、sJIA(16歳以上)になったものも合わせて、「成人スティル病」(Adult Still's Disease;ASD)と定義する。■ 疫学2011年の厚生労働省研究班(研究代表者;住田 孝之)による全国疫学調査では、罹病者は4,760人と推定され、人口10万人当たり3.9人である2)。発症は若年に多いが、高齢発症者もあり、発症平均年齢は 46歳±19、男女比ではやや女性に多い。家族内発症はない。■ 病因病因・原因は不明であるが、ウイルス感染などを契機とした単球・マクロファージの活性化により炎症性サイトカイン(インターロイキン[IL]-1、IL-2、IL-6、IL-18、腫瘍壊死因子[TNF]-α、インターフェロン-γなど)が、持続的かつ過剰に産生・放出されることが本態であると考えられている。自己抗体や自己反応性T細胞は認めず、自己免疫疾患というより、自然免疫系の制御異常による自己炎症性疾患に属すると理解される。■ 症状1)自覚症状発熱は94%にみられ、午前中は平熱で夕方から夜にかけて上昇し、39℃以上まで達する弛張熱となることが多い。関節痛は80%以上の頻度で主に手指、手、膝関節の多発関節炎で骨びらんや骨性強直を認める場合もある。皮疹は60%以上に典型的皮疹(サーモンピンク疹;四肢や体幹の淡いピンク色の平坦な皮疹で、掻痒感はほとんどなく平熱時には消褪する)を認める。ほかに咽頭痛(60%程度)などがある2)。2)他覚症状リンパ節腫脹、肝脾腫などが認められる。20%程度に薬剤アレルギーがあることに注意する。■ 分類臨床経過から病型は、(1)単周期性全身型(30~40%)(2)多周期性全身型(30~40%)(3)慢性関節型(20~30%)の3つに分類される。全身型は高熱など全身症状が強いのが特徴で、そのうち単周期型は自然軽快する場合もある。一方、慢性関節型は末梢関節炎が持続し、関節リウマチのように関節破壊(主に骨性強直)を来す場合がある。■ 予後一般的に重篤な合併症がなければ、予後は比較的良好と考えられるが、合併症によっては予後不良の可能性がある。重篤な合併症には、マクロファージ活性化症候群/反応性血球貪食症候群があり、その頻度は12~14%で通常の膠原病に比して多い。その他、播種性血管内凝固(DIC)や肺障害(急性肺障害、間質性肺炎)、漿膜炎(胸膜炎、心膜炎)、心筋炎などがある。長期間の炎症反応高値持続症例では、アミロイドーシスも合併し得る。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断は、国際的にも頻用されている山口らの成人スティル病分類基準3)による(表1)。表1 ASD診断基準●大項目1.39℃以上の発熱が1週間以上持続2.関節痛が2週間以上持続3.定型的皮疹4.80%以上の好中球増加を伴う白血球増加(10,000/mL以上)●小項目1.咽頭痛2.リンパ節腫脹または脾腫3.肝機能異常4.リウマトイド因子陰性および抗核抗体陰性●除外項目I.  感染(とくに敗血症、伝染性単核球症)II. 悪性腫瘍(とくに悪性リンパ腫)III.膠原病(とくに結節性多発動脈炎、悪性関節リウマチ)除外診断に当たらないことを確認したうえで、大項目2つを含む5項目以上でAOSDと診断する。近年は、これに血清フェリチン高値(正常値の5倍以上)を参考値として加える場合がある。検査所見では、白血球増多、血小板増多、CRP高値、赤沈亢進、肝酵素上昇、フェリチン著増が認められる。保険適用外であるが血清IL-18も著増となる。鑑別診断では、除外診断にも挙げられている、感染症、悪性腫瘍および他の膠原病が重要である4)。1)感染症細菌感染症(とくに敗血症や感染性心内膜炎)やウイルス感染(Epstein-Barr[EB]ウイルス、パルボB19ウイルス、サイトメガロウイルスなど)の鑑別が必要。鑑別のポイントは、ウイルスの血清学的検査、ASDにおけるフェリチン異常高値である。2)悪性腫瘍悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫およびホジキンリンパ腫)、白血病が鑑別疾患として挙げられる。悪性疾患の可能性を否定できなければ、ガリウムシンチグラフィー、リンパ節生検、骨髄穿刺などのより高度・専門的な検査も必要となる。3)膠原病全身性エリテマトーデス(CRP陰性、抗核抗体陽性、低補体血症)、関節リウマチ(リウマトイド因子/抗CCP抗体陽性)、血管炎症候群、サルコイドーシス、キャッスルマン病やリウマチ性多発筋痛症などとの鑑別を要する。弛張熱、血清フェリチン著増、白血球高値、皮疹などが鑑別のポイントとなる。その他、自己炎症性疾患では家族歴が参考になる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)発症早期に寛解導入を目的として、主に副腎皮質ステロイド(CS)中等量(プレドニン換算で0.5mg/kg)以上を用いる。初期治療にて、解熱、炎症反応(CRP)陰性化、血清フェリチン値正常化がなければ、CSの増量(プレドニン換算で1mg/kgまで)、CSパルス療法、免疫抑制薬(メトトレキサート、シクロスポリン、タクロリムスなど)または生物学的抗リウマチ薬(トシリズマブ、TNF阻害薬など)の併用が一般的である。なお、海外も含めたエビデンスを基に作成した前記診療ガイドラインでは、表2のようにASD治療薬の推奨度を示している。CSは初期量にて反応があれば、通常の膠原病治療に準じて減量する。CSの減量困難時にも免疫抑制薬の併用が選択される。ただし、免疫抑制薬はASDには保険適用外である。CS不応、免疫抑制薬効果不十分例に関しては、生物学的抗リウマチ薬の使用を考慮する。IL-6刺激阻害薬(トシリズマブ;抗IL-6受容体抗体)の有効性が近年多数報告されている。とくに、sJIA(当初のスティル病)に対して保険適用もあり、セカンドライン治療薬として有効であるトシリズマブは、類似の病態があると想像されるAOSDに対しても有効な可能性がある。しかし、バイアスを排除したエビデンスレベルに基づく診療ガイドラインではIL-6刺激阻害薬はTNF阻害薬とともに弱い推奨度である。トシリズマブをはじめとした生物学的抗リウマチ薬は、ASDには保険適用外であることを理解し、安易な使用は避け、使用に際しては十分な対策が必要である。慢性関節型に対しては、経口抗リウマチ薬が有効である。画像を拡大する4 今後の展望生物学的抗リウマチ薬として、IL-6受容体抗体(TCZ)、およびIL-1受容体阻害薬(アナキンラ、カナキヌマブ)が有望視されていることから、今後保険適用を取得する可能性がある。また、海外では新規IL-1阻害薬やIL-18阻害薬が臨床研究段階にある。その他、自己炎症性疾患という見方をすれば、インフラマソームの制御異常が病態の中心に位置する可能性もあり、将来的にはインフラマソーム制御薬の応用も予想される。5 主たる診療科鑑別診断の複雑さや合併症発症時の重症度および治療難度から考えて、大学病院や総合病院の内科系リウマチ膠原病科に紹介されるべきである。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 成人スチル病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Bywaters EGL. Ann Rheu Dis.1971;30:121-133.2)Asanuma YF, et al. Mod Rheumatol. 2015;25:393-400.3)Yamaguchi M, et al. J Rheumatol.1992;19:424-430.4)Mahroum N, et al. J Autoimmunity.2014;2-3:48-49/34-37.公開履歴初回2015年6月23日更新2017年8月29日

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進行子宮頸がんのベバシズマブ併用、第III相試験の最終解析/Lancet

 米国・カリフォルニア大学のKrishnansu S. Tewari氏らが、進行子宮頸がん患者を対象に血管新生阻害薬ベバシズマブ併用の有効性と安全性を評価した「米国婦人科腫瘍グループ(GOG)240試験」の、全生存期間(OS)と有害事象に関する最終解析結果を報告した。2012年の第2回中間解析でOSの改善が認められ、その結果に基づき2014年8月14日、米国で進行子宮頸がんに対するベバシズマブの使用が承認されたが、今回の最終解析においても、ベバシズマブ併用の有用性が全生存曲線により示され、追跡期間が延長しても持続していることが確認された。また、ベバシズマブ投与中に増悪しベバシズマブの投与を中止しても、その後の生存期間が化学療法単独療法中止後より短縮するという負のリバウンド作用は認められなかった。Lancet誌オンライン版2017年7月27日号掲載の報告。化学療法へのベバシズマブ追加の有効性を2×2要因デザインで評価 GOG240試験は、米国・カナダ・スペインの81施設にて実施された第III相無作為化非盲検比較試験。対象は、転移あり(Stage IVB)または治療抵抗性または再発の子宮頸がん患者で、シスプラチン(1日目または2日目に50mg/m2)+パクリタキセル(1日目に135mg/m2または175mg/m2)投与群、トポテカン(1~3日目に0.75mg/m2)+パクリタキセル(1日目に175mg/m2)投与群、および各化学療法にベバシズマブ(1日目に15mg/kg)を併用する群に1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、疾患の増悪や許容できない毒性の発現、患者の同意撤回または完全奏効に達するまで21日を1サイクルとして治療を継続した。なお、割り付けは、GOG PS(0 vs.1)、放射線増感剤としてのプラチナ製剤治療歴(有 vs.無)、病勢(再発/治療抵抗性 vs.転移あり)で層別化した。主要評価項目は、OS(intention-to-treat解析)および有害事象(解析対象は治療を受けた全患者)とした。 2009年4月6日~2012年1月3日に452例が登録され(化学療法単独群225例[50%]、ベバシズマブ併用群227例[50%])、2014年3月7日までに348例が死亡、最終解析のデータカットオフ基準(被験者450例、死亡346例)は満たしていた。最終解析でも化学療法+ベバシズマブ併用群のOS延長が持続 ベバシズマブ併用群では、化学療法単独群と比較しOSの有意な改善が持続していることが認められた(ベバシズマブ併用群16.8ヵ月 vs.化学療法単独群13.3ヵ月、ハザード比[HR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.62~0.95、p=0.007)。骨盤内放射線療法歴がない患者の最終OSはそれぞれ24.5ヵ月および16.8ヵ月であった(HR:0.64、95%CI:0.37~1.10、p=0.11)。増悪後のOSは、ベバシズマブ併用群と化学療法単独群で有意差は確認されなかった(8.4ヵ月 vs. 7.1ヵ月、HR:0.83、95%CI:0.66~1.05、p=0.06)。 瘻孔(全Grade)は、ベバシズマブ併用群220例中32例(15%)、化学療法単独群220例中3例(1%)にみられた。全例が放射線療法歴を有する患者であった。Grade 3の瘻孔は13例(6%)vs.1例(<1%)であった。緊急手術、敗血症または死亡に至った瘻孔はなかった。

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敗血症に対する初期治療戦略完了までの時間と院内死亡率の関係(解説:小金丸 博 氏)-700

 敗血症は迅速な診断、治療が求められる緊急度の高い感染症である。2013年に米国のニューヨーク州保健局は、敗血症の初期治療戦略として“3時間バンドル”プロトコールの実施を病院に義務付けた。“3時間バンドル”には、(1)1時間以内に広域抗菌薬を投与すること、(2)抗菌薬投与前に血液培養を採取すること、(3)3時間以内に血清乳酸値を測定すること、が含まれる。さらに収縮期血圧が90mmHg未満に低下していたり血清乳酸値が高値の場合は、“6時間バンドル”として急速輸液(30mL/kg)や昇圧剤の投与、血清乳酸値の再測定を求めている。これらの初期治療戦略が敗血症の予後を改善するかは、まだ議論のあるところだった。 本研究は、ニューヨーク州保健局に報告された敗血症および敗血症性ショックを呈した患者のデータベースを検討したレトロスペクティブ研究である。“3時間バンドル”完遂までの時間とリスク補正後の院内死亡率との関係を評価した。その結果、“3時間バンドル”完遂までの時間が長いほど院内死亡率は上昇していた(1時間ごとのオッズ比:1.04、95%信頼区間:1.02~1.05、p<0.001)。同様に、広域抗菌薬投与までの時間が長いほど院内死亡率は上昇していた(同:1.04、1.03~1.06、p<0.001)。しかしながら、急速輸液完遂までの時間の長さは院内死亡率上昇と関連がなかった(同:1.01、0.99~1.02、p=0.21)。 広域抗菌薬をプロトコール開始後3~12時間で投与した群では、3時間以内に投与した群と比べて院内死亡率が上昇していた。とくにうっ血性心不全や慢性肺疾患などの基礎疾患を有する群や昇圧剤投与が必要だった群で強く相関しており、重症例ほど早期に抗菌薬を投与することの重要性が示された。 本研究では、初期の急速輸液完了までの時間は、敗血症の予後に関連しないという結果であった。理由として、死に至るような超重症例ほど初期急速輸液が行われていることや、急速大量輸液によって起こる肺浮腫などの有害事象が予後に関与した可能性が考えられる。 2016年に新しい敗血症の定義(Sepsis-3)が提唱された。敗血症性ショックの診断には、本研究の“3時間バンドル”にも含まれる血清乳酸値の測定が必須であるが、本邦では大規模病院以外では困難と思われる。現在の本邦においてはバンドルの遵守にこだわらず、病歴や理学所見からいかに敗血症を疑い、初期対応につなげるかが重要と考える。

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2017年度認定内科医試験、直前対策ダイジェスト(後編)

【第1回】~【第6回】は こちら【第7回 消化器(消化管)】 全9問消化器は、最近ガイドライン改訂が続いているため、新たなガイドラインはチェックしておきたい。また潰瘍性大腸炎とクローン病については毎年出題されているので、両疾患の相違点を確認しておくことも重要である。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)胃食道逆流症(GERD)について正しいものはどれか?1つ選べ(a)コレシストキニンは下部食道括約筋(LES)収縮作用を持つ(b)シェーグレン症候群の合併症に胃食道逆流症(GERD)がある(c)食道粘膜障害の内視鏡的重症度は、自覚症状の程度と相関する(d)非びらん性胃食道逆流症はびらん性胃食道逆流症と違い、肥満者に多いという特徴を持つ(e)除菌治療によるピロリ菌感染率低下により、今後、患者数は減少すると予想されている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第8回 消化器(肝胆膵)】 全8問肝臓については、各々の肝炎ウイルスの特徴と肝細胞がんの新たな治療アルゴリズムを確認しておきたい。膵臓については、膵炎の新たなガイドラインについて出題される可能性があるので、一読の必要がある。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)肝炎について正しいものはどれか?1つ選べ(a)急性肝炎でAST(GOT)>ALT(GPT)は、極期を過ぎて回復期に入ったことを示している(b)de novo B型肝炎は、HBV既往感染者(HBs抗原陰性・HBc抗体陽性・HBs抗体陽性)にステロイドや免疫抑制薬を使用した際にHBV再活性化により肝炎を発症した状態であり、通常のB型肝炎に比べて劇症化や死亡率は低い(c)HBVゲノタイプC感染に伴うB型急性肝炎では、肝炎が遷延もしくは慢性化する可能性がほかのゲノタイプよりも高い(d)B型急性肝炎とキャリアからの急性発症との鑑別にIgM-HBc抗体価が使用される(e)HBs抗原陽性血液に曝露した場合の対応として、 被曝露者がHBs抗原陰性かつHBs抗体陰性であれば十分な水洗いと曝露時のワクチン接種ならびに72時間以内のB型肝炎免疫グロブリン(HBIG)が推奨されている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第9回 血液】 全7問血液領域については、何といっても白血病が設問の中心である。認定内科医試験では、治療よりも染色の特徴、検査データ、予防因子についてよく出題される傾向がある。このほか、貧血に関する出題も多いので、しっかりと押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)急性白血病について正しいものはどれか?1つ選べ(a)急性骨髄性白血病(AML)MO・M5b・M7では、MPO染色陰性であるため、注意する必要がある(b)急性前骨髄球性白血病(APL)では、白血病細胞中のアズール顆粒内の組織因子やアネキシンIIにより、播種性血管内凝固症候群(DIC)を高率に合併する(c)AMLのFAB分類M5では、特異的エステラーゼ染色・非特異的エステラーゼ染色とも陽性を示す(d)AMLの予後不良因子は、染色体核型がt(15:17)・t(8:21)・inv(16)である(e)ATRAを用いた治療中にレチノイン酸症候群または分化症候群を発症した場合、治療中断による白血病増悪を考え、ステロイド併用などを行いつつ治療を継続すべきである例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第10回 循環器】 全9問循環器領域については、弁膜症や心筋梗塞など主要疾患の診断確定に必要な身体所見と検査所見をしっかり押さえることが重要である。高血圧や感染性心内膜炎の問題は毎年出題されているので、フォローしておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)弁膜症について正しいものはどれか?1つ選べ(a)僧帽弁狭窄症(MS)は、本邦では高齢化に伴い近年増加傾向である(b)僧帽弁狭窄症(MS)では、拡張期ランブルを聴診器ベル型で聴取する(c)僧帽弁狭窄症(MS)では、心音図でQ-I時間が短いほど、II-OS時間が長いほど重症と判定する(d)僧帽弁狭窄症(MS)の心臓超音波検査では、僧帽弁前尖の拡張期後退速度(DDR)の上昇を認める(e)僧帽弁逸脱症(MVP)は肥満体型の男性に多く認める例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第11回 神経】 全8問神経領域については、今年度も「脳卒中治療ガイドライン2015」と血栓溶解療法の適応に関する出題が予想される。各神経疾患における画像所見、とりわけスペクトとMIBGシンチグラフィは毎年出題されている。アトラス等でしっかりと確認しておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)脳梗塞について正しいものはどれか?1つ選べ(a)心原性脳塞栓症は、階段状増悪の経過をとることが多い(b)一過性脳虚血発作(TIA)で一過性黒内障の症状を認めた場合、椎骨脳底動脈系の閉塞を疑う(c)TIAを疑う場合のABCD2スコアは、A:Age(年齢)、B:BP(血圧)、C:Consciousness level(意識障害の程度)、D:duration(持続時間)とdiabetes(糖尿病の病歴)の5項目をスコアリングし、合計したものである(d)CHADS2スコア1点の非弁膜症性心房細動(NVAF)患者の脳卒中発症予防には、ワルファリンによる抗凝固療法が勧められている(e)血栓溶解療法(アルテプラーゼ静注療法)は、血小板8万/mm3では適応外である例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第12回 総合内科/救急】 全5問総合内科/救急では、「心肺蘇生ガイドライン2015」や、JCS・GCSスコアリング、確率計算の出題が予想される。2016年12月に「日本版敗血症診療ガイドライン2016」が発表されたので、内容を押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)事前確率25%で感度60%・特異度80%の検査が陽性であった場合の正しい事後確率はどれか?1つ選べ(a)15%(b)20%(c)50%(d)60%(e)80%例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【例題の解答】第7回:(b)、第8回:(d)、第9回:(b)、第10回:(b)、第11回:(e)、第12回:(c)【第1回】~【第6回】は こちら

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敗血症の治療は早めるほどよい?/NEJM

 敗血症の治療において、3時間ケアバンドルの完了と抗菌薬投与をより早めることは、院内死亡率の低下と関連することが示された。なお、静脈内輸液の初回ボーラス投与完了を早めることは、関連していなかったという。2013年、米国ニューヨーク州は医療機関に対して、敗血症の迅速な同定と治療のためにプロトコルに従うことを義務づけたが、敗血症の治療を早めることが患者の転帰を改善するかについては議論されていた。米国・ピッツバーグ大学のChristopher W. Seymour氏らは、義務化後の状況を調査、検討した。NEJM誌2017年6月8日号(オンライン版2017年5月21日号)掲載の報告。敗血症に対する3時間ケアバンドル義務化後のニューヨーク州の状況を分析 検討は、2014年4月1日~2016年6月30日にニューヨーク州保健局に報告された、敗血症および敗血症性ショックを呈した患者のデータを分析して行われた。 ニューヨーク州が義務づけたプロトコルには、患者が救急部門に搬送されて6時間以内に敗血症プロトコルを開始すること、敗血症患者に対する3時間ケアバンドル(抗菌薬投与前の血液培養、血清乳酸値の測定、広域抗菌薬投与)の全項目を12時間以内に完了することが含まれていた。 多変量モデルを用いて、敗血症患者の3時間ケアバンドル完了までの時間とリスク補正後の死亡との関連を評価した。また、抗菌薬投与までの時間、静脈内輸液の初回ボーラス投与完了までの時間についても調べた。敗血症患者の3時間バンドル完了の時間が長くなるほど院内死亡率の上昇と関連 評価には、149病院の4万9,331例が含まれた。 そのうち4万696例(82.5%)が、敗血症に対する3時間ケアバンドルを3時間以内に完了していた。敗血症患者の3時間ケアバンドル完了までの時間中央値は1.30時間(四分位範囲:0.65~2.35)、抗菌薬投与までの時間中央値は0.95時間(四分位範囲:0.35~1.95)であり、静脈内輸液の初回ボーラス投与完了までの時間中央値は2.56時間(四分位範囲:1.33~4.20)であった。 12時間以内に3時間ケアバンドルを完了した敗血症患者において、バンドル完了の時間が長くなるほど、リスク補正後の院内死亡率の上昇と関連していた(オッズ比:1.04/時間、95%信頼区間[CI]:1.02~1.05、p<0.001)。同様の関連は、抗菌薬投与までの時間が長い場合にもみられた(同:1.04/時間、1.03~1.06、p<0.001)。しかしながら、静脈内輸液の初回ボーラス投与完了までの時間が長い場合にはみられなかった(同:1.01/時間、0.99~1.02、p=0.21)。

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たこつぼ症候群の季節変動~日本のコホート研究

 たこつぼ症候群(TTS)の発症における季節的な変動が報告されているが、季節と患者特性の関係や季節による転帰への影響は不明である。東京大学の磯貝 俊明氏らがわが国のDiagnosis Procedure Combination(DPC)データベースを用いて検討したところ、TTSの院内死亡率に季節の影響がないようにみえるものの、月間変動がある可能性が示唆された。また、TTS患者における男性の割合、精神疾患・敗血症患者の割合、心室性不整脈発症率に有意な季節変動がみられた。Heart and vessels誌オンライン版2017年6月7日号に掲載。 著者らは、DPCデータベースにより、2011年1月~2013年12月にTTSで入院した4,306例(平均年齢73.6歳)を後ろ向きに同定した。入院した季節によって患者を4群に分けた(春:3~5月:914例、夏:6~8月:1,243例、秋:9~11月:1,245例、冬:12~2月:904例)。アウトカムは院内死亡および心血管合併症発症とした。複数の傾向スコアで調整したロジスティック回帰分析で、患者の背景とアウトカムを季節間で比較し、アウトカムの調整オッズ比(aOR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・季節を通じて年齢には有意な差はなかったが、男性の割合は季節により有意に異なっていた(秋:18.5%、冬:23.9%、p=0.016)。精神疾患の発症率(春:4.9%、夏:7.9%、p=0.025)および敗血症の発症率(冬:0.8%、夏:2.6%、p=0.019)も季節による差が有意であった。・院内死亡率は、季節による有意な差はなかった(p=0.377、春:5.1%、夏:6.0%、秋:4.6%、冬:6.0%)が、月別にみると9月の3.0%から4月の7.5%まで広範囲にわたっていた。・心室頻拍/心室細動の発症率は、季節により有意に異なっていた(p = 0.038)。春:2.2%(基準)、夏:3.3%(aOR:1.46、95%CI:0.84~2.51)、秋:2.7%(aOR:1.27、95%CI:0.72~2.22)、 冬:4.4%(aOR:1.92、95%CI:1.11~3.33)。

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長門流 認定内科医試験BINGO! 総合内科専門医試験エッセンシャル Vol.3

第9回 血液第10回 循環器第11回 神経第12回 総合内科/救急 認定内科医試験に向けた全3巻の実践講座の第3巻です。重要ワードは「頻出」。長年試験問題を分析し続けている長門先生が、実際の試験問題に近い予想問題を作成し、頻出ポイントをテンポよく解説します。もちろん最新のガイドラインのアップデートにも対応。各科目で試験に問われやすいポイントを押さえていますので、認定内科医試験はもちろん、総合内科専門医試験を受ける先生方も確実に得点アップにつながります。年々難しくなっているといわれる内科系試験。このDVDでぜひ合格を勝ち取ってください。第9回 血液血液領域の中心はなんといっても白血病です。染色の特徴や検査データ、予後因子をしっかり確認しておきましょう。また、貧血に関する問題も例年多く出題されています。この番組で頻出ポイントをチェックして、効率よく勉強を進めてください。第10回 循環器循環器の領域では、弁膜症や心筋梗塞などの主要疾患はもちろん、高血圧や感染性心内膜炎の問題も毎年出題されています。長年試験問題を分析し続けている長門先生だからこそわかる頻出ポイントを確認して、得点アップにつなげましょう。第11回 神経神経の領域では、「脳卒中治療ガイドライン2015」からの出題が予想されます。後期高齢者の降圧目標や脳卒中のリスク因子は必ず押さえておきましょう。また、認知症スクリーニング検査の点数で認知症の有無を判定させる問題も毎年出題されています。長門流の予想問題を通して、試験の「出るところ」を確認してください。第12回 総合内科/救急総合内科/救急は出題数は少ないですが、確率統計に関する計算のように毎年出題される問題があるので、確実に点を取れるようにしておきましょう。また「心肺蘇生ガイドライン2015」と「日本版敗血症診療ガイドライン2016」からの出題も予想されます。全13科目の「頻出」「ポイント」「アップデート」のすべてがわかるこの番組で効率的に勉強し、ぜひ合格を勝ち取ってください。

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潰瘍性大腸炎の寛解導入と寛解維持におけるトファシチニブの有用性と安全性(解説:上村 直実 氏)-683

 潰瘍性大腸炎(UC)に関しては寛解導入および寛解維持を目的として、5-アミノサリチル酸(5-ASA)、ステロイド、免疫調節薬、抗TNFα薬、血球成分除去療法などによる治療が行われているが、今回、非受容体型チロシンキナーゼでサイトカイン受容体と関連するJanus kinase(JAK)の選択的阻害薬であるトファシチニブに関する検討結果が報告された。 抗TNFなどの抗体製剤の開発が進むなか、経口低分子JAK阻害薬が潰瘍性大腸炎の寛解導入にも寛解維持にもプラセボに比べて有意に有効であったが、安全性には今後の検討が必要との成績であった。1年前のNEJM誌に報告された、スフィンゴシン-1-リン酸受容体のサブタイプ1と5の経口作動薬であるozanimodの8週時点での臨床的寛解率と単純に比較すると、活動性UCの寛解導入における有用性が期待されるが、長期使用を要する寛解維持に用いることはまだ躊躇される研究結果である。 わが国におけるトファシチニブは2013年に慢性関節リウマチ(RA)に対して保険承認されている薬剤で、低分子医薬品であるため生物学的製剤とは異なり経口投与が可能である点が特徴的である。一方、副作用として結核、肺炎、敗血症、ウイルス感染などの重篤な感染症が報告されており、日本リウマチ学会のガイドラインにも「MTXを投与できない患者は原則として対象としないことが望ましい」と明記されている。今回の研究でもプラセボに比べて感染症や帯状疱疹が明らかに多く出現していることから、UCの寛解維持療法に使用するには長期の安全性確認が必須と思われる。 トファシチニブはUCに対する有用性の高い治療薬として期待されるものの、本研究期間の短さおよび有効率の低さなどから、トファシチニブの臨床的有用性を確認するためには長期間のリスク・ベネフィットを明らかにする臨床試験が必要であると考えられた。

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新ALK阻害薬brigatinib、ALK陽性肺がんに承認:FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は2017年4月28日、クリゾチニブ無効あるいは不耐のALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、brigatinibを迅速承認した。 承認はオープンラベル多施設共同比較試験ALTAの結果に基づいており、クリゾチニブで進行した局所進行または転移性ALK陽性NSCLC患者において、臨床的意義のある持続性の奏効率(ORR)を示した。 222例の患者が、brigatinib 90mg/日の7日間の導入後、90mg/日(n=112)または180mg/日(n=110)に無作為に割り付けられた。 独立審査委員会によるORRは、90mg群では48%(95%CI:39%~58%)、180mg群では53%(95%CI:43%~62%)であった。奏効期間中央値(DOR)は両群ともに13.8ヵ月であった。ベースラインで測定可能な脳転移を有する患者の頭蓋内ORRは、90mg群(n=26)では42%(95%CI:23%~63%)、180mg群(n=18)では67%(95%CI:41%~87%)であった。頭蓋内DOR中央値は、90mg群では推定できず、180mg群では5.6ヵ月であった。頭蓋内奏効患者においては、90mg群の78%、180mg群の68%の患者が、少なくとも4ヵ月間頭蓋内奏効を持続した。 安全性は219例の患者で評価され、brigatinib服用患者の一般的有害事象は、吐き気、下痢、疲労、咳、頭痛。頻度の高い重篤な有害事象は、肺炎および間質性肺炎であった。致死的な有害事象は3.7%で発生し、肺炎(2例)、突然死、呼吸困難、呼吸不全、肺塞栓症、細菌性髄膜炎および尿路性敗血症(各1例)であった。brigatinibの投与中止につながる有害事象は90mgの2.8%、180mgの8.2%で発現した。(ケアネット 細田 雅之)参考FDAリリースALTA試験(Clinical Trials.gov)

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durvalumab、既治療の進行膀胱がんに迅速承認:FDA

 AstraZenecaとその生物製剤研究開発拠点MedImmuneは2017年5月1日、米国食品医薬品局(FDA)が、durvalumabに進行膀胱がんに対する迅速承認を与えたと発表した。適応は、プラチナ含有化学療法中・後、またはネオアジュバント・アジュバントのプラチナ含有化学療法から12ヵ月以内に進行した局所進行または転移性尿路上皮がん患者で、PD-L1発現の有無は問わない。確認試験における臨床的有益性の検証結果により承認の継続が決められる。 今回の承認は、局所進行または転移性尿路上皮がんの患者におけるdurvalumabの安全性および有効性を評価した、第I/II相試験(1108試験)の結果によるもの。被験者は、durvalumab 10mg/kgを2週間ごとに、PDまたは容認できない毒性が現れるまで継続投与された。 評価可能な全患者(182例)における奏効率(ORR)は17.0%(95%CI:11.9~23.3)。PD-L1高発現患者のORRは26.3%(95%CI:17.8~36.4)であった(PD-L1高値:腫瘍浸潤免疫細胞が腫瘍領域の1%を超えて含まれる場合は、腫瘍細胞または腫瘍浸潤免疫細胞の25%以上がPD-L1を発現。腫瘍浸潤免疫細胞が腫瘍領域に含まれる割合が1%以下の場合は、腫瘍細胞の25%以上または腫瘍浸潤免疫細胞の100%がPD-L1を発現)。 評価可能な患者の14.3%(26例)がPR、2.7%(5例)がCRであった。ネオアジュバント・アジュバントの化学療法を受けた患者では、24%(9例)が奏効した。初回奏効までの時間の中央値は6週間であった。奏効した31例のうち14例(45%)では、効果が6ヵ月以上持続し、5例(16%)では12ヵ月以上持続していた。 durvalumab投与における重篤な有害事象は患者の46%で発現した。頻度の高い(>2%)ものは、急性腎不全(4.9%)、尿路感染(4.4%)、筋骨格痛(4.4%)、肝障害(3.3%)、全般的な健康悪化(3.3%)、敗血症、腹痛、発熱/腫瘍関連熱(各2.7%)。Grade5の有害事象は8例(4.4%)。3.3%の患者が有害事象のため投与中止に至った。(ケアネット 細田 雅之)参考AstraZeneca(米国)のメディアリリース1108試験(Clinical Trials.gov)

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循環器内科 米国臨床留学記 第20回

第20回 米国の電子カルテ事情日本でも電子カルテが一般的になっていますが、米国では電子カルテのことをElectrical Medical Record (EMR)と言います。今回は、米国におけるEMR事情について書いてみたいと思います。米国のEMRの特徴の1つとして、どこからでもアクセスできるというのが挙げられます。「今日は疲れたから、残りのカルテは家で書きます」といった感じで、インターネットで世界中のどこからでも電子カルテにアクセスできます。実際、私も帰国時に日本から米国の患者に処方したり、カルテをフォローしたりすることがあります。日本でも電子カルテが登場して久しいですが、インターネットを介して患者のカルテにアクセスするのはまだ一般的でないかもしれません。Medscapeのリポートによると、2016年の段階で91%の医師が電子カルテを使用しており、これは2012年の74%から比べても大幅な増加です。その中でも、41%と圧倒的なシェアを誇るのがEPICというシステムです。ほかのEMRと比べても、EPICはuser friendlyで使いやすく、日常臨床を強力にサポートしてくれます。私のいるカリフォルニア大学アーバイン校では、現在はEPICと異なるシステムを使っていますが、評判が悪いため、来年EPICに移行します。乱立していたEMRの会社も徐々に淘汰され、数社に絞られてきているようです。また、同じEMRシステムを使うと、異なる病院間でも情報が共有できるといったサービスもあります。以前いたオハイオ州のシンシナティーという町にはEPIC everywhereというシステムがあり、EPICを使っているシンシナティー市内すべての病院の情報が共有されていました。ほかの病院の情報に簡単にアクセスできると、無駄な検査を減らすことができます。EMRは、入院時に必要なオーダーを入れないとオーダーを完了できないシステムになっています。例えば、深部静脈血栓症(DVT)予防は、入院時に必須のオーダーセットに入っているため、オーダーせずに患者を入院させようとすると、ブロックサインが現れ、入院させることが難しくなっています。このようなシステムは日本の電子カルテにもあると思います。また、代表的なEMRのシステムには、ガイドラインに準じたクリニカルパスが組み込まれています。 主なものとしては、敗血症ショックセット、糖尿病ケトアシドーシス(DKA)セット、急性冠動脈症候群(ACS)セットなどが挙げられます。例えばACSで入院すると、ヘパリン、アスピリン、クロピドグレル、スタチン、β遮断薬をクリック1つで選択するだけですから、確かに処方し忘れなどは減ります。オーダーセットは非常に楽ですし、DKAなどは勝手に治療が進んでいき、うまくいけば入院時のワンオーダーで、ほぼ退院まで辿り着けるかもしれません。しかしながら、一方で医者が状況に応じて考えなければいけないことが減り、時には危険なことも起こります。患者の状態は、1人ずつ異なりますから、tailor madeな治療が必要になります。実際、DKAで入院した患者がDKAオーダーセットによる多量の生理食塩水で心不全を起こすというようなことは、何度も見てきました。このほか、EMRで問題となっているのは、いわゆる“copy and paste”です。デフォルトのカルテでは、正常の身体所見が自動的に表示されます。注意を怠ると、重度の弁膜症患者にもかかわらず「雑音がない」とか、心房細動なのに脈拍が“regular”などといった不適切な記載となります。実際に、このようなことはしょっちゅう見受けられます。他人のカルテをコピーすることも日常茶飯事なので、4日前に投与が終わったはずの抗生剤が、カルテの記載でいつまでも続いているということもあります。Medscapeの調査でも66%の医者が“copy and paste”を日常的に(時々から常に)使用しているとのことでした。外来でのEMRは、Review of System、服薬の情報、予防接種(インフルエンザ、肺炎球菌)、スクリーニング(大腸ファイバーなど)などをすべて入力しなければ、カルテを終了(診察を終了)できなくなっています。こうした項目を入力しないと医療点数(診療費)に関わってくるからです。その結果、EMRに追われてしまい、患者を見ないでひたすらコンピューターの画面を見て診療しているような状況に陥りがちです。こうなると、自分がEMRを操作しているのか、EMRに操作されているのかわからなくなります。いろいろな問題がありますが、EMRは日々進歩している印象があります。使い勝手は良いのですが、最終的には医者自身が頭を使わければ患者に不利益が被ることもあるため、注意が必要です。

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新肺炎診療ガイドラインは高齢者に重点

 2017年4月21~23日に都内で開催された第57回日本呼吸器学会学術講演会(会長:中西洋一、九州大学大学院附属胸部疾患研究施設 教授)において、新しい「成人肺炎診療ガイドライン」が発表された。 特別講演として「新しい肺炎診療ガイドラインとは」をテーマに、迎 寛氏(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 呼吸器内科学分野 教授)が今回の改訂の背景、ガイドラインの概要について講演を行った。患者の意思を尊重した終末期の治療を 今までのガイドラインは、市中肺炎(CAP)、院内肺炎(HAP)、医療・介護関連肺炎(NHCAP)と3冊に分かれ、各疾患への細かい対応ができた反面、非専門医や医療従事者にはわかりにくかった。これに鑑み、新しいガイドラインは1冊に統合・改訂されたものである。 今回の改訂は、『Minds 診療ガイドライン作成の手引き』に準拠して行われ、第1部では“SCOPE”として肺炎の基本的特徴を解説、第2部では“Clinical Question”として25項目のCQが掲載されている。 CQ推奨の強さは、アウトカムへのエビデンスの強さ、リスクとプロフィットのバランス、患者の価値観や好み、コストパフォーマンスの視点から総合的に評価できることにある。とくに今回の改訂では、肺炎死亡の96.8%が65歳以上の高齢者が占めることから、高齢者の肺炎への対応も述べられている。 予後不良や誤嚥性肺炎といった肺炎における高齢者特有の問題は、終末期とも密接に関わっており、このような場合は治療を本人や家族とよく検討して対処することを推奨している。肺炎治療に抗菌薬を使うと死亡率は減少するが、QOLは低下することも多い。そのため、患者が不幸な終末期を迎えないためにも、厚生労働省や老年医学会のガイドラインなどが参照され、患者や患者家族の意思の尊重が考慮されている。大きく2つのグループに分けて肺炎診療を考える 新しいガイドラインは、わが国の現状を見据え、CAPとHAP+NHCAPの大きく2つのグループに分けた概念で構成されている。 CAP診断の際には従来のA-DROPによる重症度分類に加えて、新たに敗血症の有無を判定することも推奨され、敗血症の有無や重症度に応じて治療の場や治療薬を決定する。 また、HAPとNHCAPは高齢者に多いことから、最初に重要なのは患者のアセスメントだという。疾患終末期や老衰、誤嚥性肺炎を繰り返す患者では、患者の意思を尊重しQOLに配慮した緩和ケアを中心とした治療を行う。上記に該当しない場合は、敗血症の有無、重症度、耐性菌リスクを考慮して、治療を行うこととしている。このほかに、予防の項目ではインフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンの接種や、口腔ケアの実施を推奨している。 今回の新肺炎診療ガイドラインの特徴としては、 ・CAP、HAP、NHCAPの診療の流れを1つのフローチャートにまとめたこと ・終末期や老衰状態の患者には個人の意思を尊重した治療を推奨すること ・重要度の高い医療行為は、CQを設定し、システマティックレビューを行い、  リスクとベネフィット、患者の意思、コストを考慮しながら委員投票で推奨を  決定したことが挙げられる。 最後に迎氏は「今後、新ガイドラインの検証が必要である。ガイドラインを精読していただき、診療される先生方のさまざまな提案や意見を取り入れてより良くしていきたい。次版の改訂に向け、動き出す予定である」と語り、講演を終えた。 なお、本ガイドラインの入手は日本呼吸器学会直販のみで、書店などでの販売はない。詳しくは日本呼吸器学会 事務局まで。(ケアネット 稲川 進)関連リンク 日本呼吸器学会 事務局 第57回日本呼吸器学会学術講演会

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経口ステロイド短期投与で有害事象が2~5倍に/BMJ

 米国の民間保険加入の成人患者では、約5例に1例が経口副腎皮質ステロイド薬の短期投与を処方されており、主要有害事象である敗血症、静脈血栓塞栓症、骨折のリスクが、非投与例の自然発生率の約2~5倍に高まることが、米国・退役軍人省臨床管理研究センターのAkbar K Waljee氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2017年4月12日号に掲載された。経口副腎皮質ステロイド薬の慢性的な使用は、心血管、筋骨格、消化器、内分泌、眼疾患、皮膚、神経系への広範な作用などの合併症をもたらす。一方、その短期的な使用と関連するリスクの特徴は、十分には知られていないという。3年間に約150万例の約20%に処方、有害事象をSCCSで評価 本研究は、米国における経口副腎皮質ステロイド薬の短期投与の処方状況を調査し、主要有害事象(敗血症、静脈血栓塞栓症、骨折)との関連をレトロスペクティブに評価するコホート試験および自己対照ケースシリーズ(SCCS)である(米国退役軍人省などの助成による)。 民間の保険金請求の全国的なデータセットを用いて、2012~14年に登録された成人(18~64歳)のデータを収集した。30日未満を短期投与と定義し、経口副腎皮質ステロイド薬の投与例と非投与例の有害事象の罹患率を調べた。さらに、薬剤導入後30日以内および31~90日の有害事象の罹患率比の解析を行った。 154万8,945例が調査の対象となり、このうち32万7,452例(21.1%)が、3年間に1回以上の短期投与の外来処方を受けていた。ベースラインの平均年齢は、投与群が非投与群に比べ高齢で(45.5[SD 11.6] vs.44.1[SD 12.2]歳)、女性(51.3 vs.44.0%)、白人(73.1 vs.69.1%)、合併症数が多かった(すべてp<0.001)。また、使用率は太平洋側地域(12.4%)が最も低く、東南中部(29.4%)や西南中部(27.6%)が高かった。20mg、6日投与で、30日時の敗血症リスクが5倍以上に 投与群の投与日数中央値は6日(IQR:6~12日)で、7日以上の投与を受けたのは47.4%(15万5,171例)だった。プレドニゾン換算1日用量中央値は20mg/日(IQR:17.5~36.8mg/日)で、40mg/日以上の投与を受けたのは23.4%(7万6,701例)だった。70.5%が1コース、20.7%が2コース、8.8%が3コース以上の投与を受けた。 投与群の最も頻度の高い症状は、上気道感染症、椎間板障害、アレルギー、気管支炎、(気管支炎を除く)下気道疾患で、これら5症状が全体の約半分を占めた。また、処方を行った医師は、家庭医と一般内科医が最も多く、救急救命医、耳鼻咽喉科医、整形外科医による処方も多かった。投与群で1,000人年当たりの発生頻度が最も高かったのは骨折(21.4件)で、次いで静脈血栓塞栓症(4.6件)、敗血症による入院(1.8件)の順であった。 SCCSの結果、非投与群と比較して、すべての用量の投与開始から5~30日に、敗血症による入院が5.3倍に増加し(プレドニゾン換算用量中央値:20mg/日、投与日数中央値:6日、罹患率比:5.30、95%信頼区間[CI]:3.80~7.41)、静脈血栓塞栓症は3.33倍(17.5mg、6日、3.33、2.78~3.99)、骨折は1.87倍(19mg、6日、1.87、1.69~2.07)に増加し、いずれも統計学的に有意な差が認められた(すべてp<0.001)。また、3つの有害事象はいずれも31~90日に罹患率比が低下したが、有意差は保持されていた(敗血症による入院:2.91、2.05~4.14、静脈血栓塞栓症:1.44、1.19~1.74、骨折:1.40、1.29~1.53)(すべてp<0.001)。 プレドニゾン換算用量が<20mg/日、20~39mg/日、40mg/日以上の場合(投与日数中央値:5~7日)も、投与開始5~30日には、3つの有害事象はいずれも有意に頻度が高く(罹患率比:1.77~7.10、40mg/日以上の敗血症[p=0.004]を除きp<0.001)、31~90日の罹患率比は40mg/日以上の敗血症(5~30日の4.98[p=0.004]から31~90日に5.20[p=0.003]へ上昇)を除き低下した(罹患率比:1.40~5.20)が、<20mg/日の静脈血栓塞栓症(p=0.10)を除き有意差は保たれていた。 著者は、「低用量(<20mg/日)でもほぼ同等のリスクがみられ、至適な使用法を同定するためにさらなる検討を要する」とし、「これらの薬剤の処方および有害事象のモニタリングにいっそう注意を払うことで、患者の安全性が改善される可能性がある」と指摘している。

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大腿骨頚部骨折の再手術率は固定法で異なるか? /Lancet

 大腿骨頚部骨折の手術後に再手術となることが多いが、これは骨折部の固定法に関連しているのか。カナダ・マックマスター大学のMohit Bhandari氏らFAITH研究チームが、国際多施設共同無作為化試験にて、再手術のリスクとしてsliding hip screw法 vs.cancellous screws法の比較検討と、その他キーとなるアウトカムについて調べた。その結果、固定法の違いに有意差はなかったが、喫煙・転位または基部骨折の患者群ではsliding hip screw法を用いるほうがよい可能性が示されたという。Lancet誌オンライン版2017年3月2日号掲載の報告。初回手術後24ヵ月以内の再手術を評価 試験は8ヵ国81の医療センターから、50歳以上の加齢性の大腿骨頚部骨折で骨折固定法の施術を必要とした患者を集めて行われた。 被験者は、コンピュータによる最小化無作為法にて、sliding hip screw法(サイドプレート付きの1本の長尺スクリューを用いて固定)を受ける群と、現行標準法とされるcancellous screws法(複数の短尺の海綿骨ねじを用いて固定)を受ける群に割り付けられた。手術担当医と患者は盲検化を受けなかったが、データ解析者は、治療割り付けを知らされなかった。 主要アウトカムは、初回手術後24ヵ月以内の再手術(骨折治癒促進のため)、疼痛減、感染症の治療、機能改善とし、intention-to-treat法にて解析した。主要解析では有意差なし 2008年3月3日~2014年3月31日の間に、1,108例が無作為化を受けた(sliding hip screw群557例、cancellous screws群551例)。被験者は70~80歳代の女性が多く、骨折は転倒によるもの、孤立性、非転位性の患者が大半を占めた。 24ヵ月以内の再手術は、主要解析においては両群に差は認められなかった。sliding hip screw群は107/542例(20%)、cancellous screws群は117/537例(22%)であった(ハザード比[HR]:0.83、95%CI:0.63~1.09、p=0.18)。 大腿骨頭壊死症(AVN)は、sliding hip screw群がcancellous screws群よりも発生頻度が高かった(50例[9%] vs.28例[5%]、HR:1.91、1.06~3.44、p=0.0319)。しかしながら、医学的な有害事象の発生件数は、両群で有意差はみられなかった(p=0.82)。たとえば、肺塞栓症(2例[<1%] vs.4例[1%]、p=0.41)、敗血症(7例[1%] vs.6例[1%]、p=0.79)などで有意差がなかったことが報告されている。 また、サブグループ解析で、現在喫煙者(HR:0.39、p=0.02)、転位骨折群(0.57、p=0.04)、基部骨折群(0.24、p=0.04)でsliding hip screw群の優位性が示された。

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