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言えない! 女性の過活動膀胱をめぐる悩み、その現状と対策

 生命に直結する疾患とまではいかないものの、日常生活の中で著しくQOLを低下させる症状、それが過活動膀胱(Overactive Bladder:OAB)である。男女ともに中高年層から年齢に正比例して増えているが、解剖学的性差により、女性のほうが悩ましさを抱えているという。 先月、このOABをテーマにしたプレスセミナーをファイザー株式会社が開催し、専門医2氏が講演した。このうち、日本排尿機能学会理事長の横山 修氏(福井大学医学部 泌尿器科学 教授)は、「患者さんに恥ずかしがらずに相談してもらえるよう、医療者側からの働きかけが必要」と述べた。過活動膀胱の尿意切迫感、イメージは「いきなり赤信号」 OABは尿意切迫感を必須とした症状症候群であり、診断のポイントとしては、頻尿(睡眠時の夜間頻尿も含む)を伴う一方、切迫性尿失禁は多くのケースで併発しているものの、必須ではない。横山氏によると、主症状である尿意切迫感は、抑えられない尿意が急に起こることを意味し(病的膀胱知覚)、一般的に明確な尿意を感じる膀胱の蓄尿量が300mL程度に満たなくても、トイレまで我慢できないほどの差し迫った尿意を感じるという。 OABをめぐっては、2002年に全国の40歳以上の男女約1万人を対象に行った大規模疫学調査をベースに2012年時点の人口構成から推計すると、患者数は約1,040万人に上り、有症状率は全体の14.1%、つまり7人に1人の割合でOABの自覚症状があるとみられている。ところが、潜在的にこれほど多数の患者が見込まれるにもかかわらず、積極的な治療を行っていない人が多いのがこの疾患の特徴である。 OAB自体が生命に直結する疾患ではないものの、外出時や長時間かかる会議や移動などの際、常にトイレの心配が付きまとうため、日常生活への影響は大きい。ファイザーが今年3月、OABで医療機関を受診経験のある50歳以上の女性265人を対象に行ったインターネット調査によると、回答者の実に92.5%が切迫性尿失禁を経験していることがわかった。 また、「外出時で、常にトイレの場所を気にしないといけない」(78.1%)、「症状に対して、気分的に落ち込む・滅入ってしまう」(50.9%)といった日常生活への精神的な負担感の訴えや、「旅行や外出を控えてしまう」(60.0%)、「友人・知人との付き合いを控える」(40.0%)など、日常生活や社会活動を制限されている実情も浮き彫りになった。 横山氏によると、OABによるQOL低下の度合いは、糖尿病患者のそれに匹敵するとしたうえで、「症状の特異性により、うまく相談できない患者さんが多い可能性がある。視診や台上診なども不要なので、恥ずかしがらずに相談してもらえるよう医療者側からの働きかけが必要」と述べた。「トイレが近い」という何気ない訴えにもヒントが 続いて、「女性における過活動膀胱相談の実際」と題して、巴 ひかる氏(東京女子医科大学 東医療センター 骨盤底機能再建診療部泌尿器科 教授)が講演した。 それによると、OABをめぐる治療事情には性差があり、男性の受診率が30%超であるのに対し、女性はわずか7.7%に留まっているという。この理由として巴氏は、男性は高年齢層になるに従い前立腺肥大を理由に受診する人が多く、その際にOABの症状についても診断されるケースが多い一方、女性の場合は、症状への恥ずかしさや年齢的に仕方がないという思い込みから、かかりつけ医にも打ち明けるのをためらう人が多いためではないか、という見解を示した。  しかしOABは治療が見込める疾患であり、診断がつけば、抗コリン薬やβ3アドレナリン受容体作動薬などによる薬物療法をはじめ、膀胱訓練や骨盤底筋訓練などの行動療法、電気刺激療法などの神経変調療法により症状の改善が期待できる。巴氏は、「OABは自覚症状症候群なので、問診や調査票でも診断が可能である。患者さんの『最近トイレが近い』という何気ない訴えの中にもOAB診断のヒントがあるので、注意深く問診をして、患者さんのQOL向上につなげてほしい」と述べた。

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子宮頸部上皮内腫瘍の治療が産科アウトカムに及ぼす影響/BMJ

 子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)に対する治療は、早産などの産科アウトカムを悪化させる可能性があることが、英国・インペリアルカレッジのMaria Kyrgiou氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌オンライン版2016年7月28日号に掲載された。子宮頸部の局所治療は早産や周産期合併症、死亡のリスクを増加させるが、円錐切除術の深さとの関連の可能性が示唆されている。治療が早産のリスクに及ぼす影響の検討結果には乖離が存在し、交絡因子としてCINが関与している可能性があるという。産科アウトカムへのCIN治療の影響をメタ解析で評価 研究グループは、産科アウトカムに及ぼすCINの治療の影響を評価し、子宮頸部円錐切除術の深さとの関連を検証するために文献を系統的にレビューし、メタ解析を行った(英国国立健康研究所[NIHR]生物医学研究センターなどの助成による)。 CENTRAL、Medline、Embaseを検索し、1948年~2016年4月までに発表された子宮頸部の局所治療歴の有無別に産科アウトカムを評価した試験の論文を選出した。 独立のレビューワーがデータを抽出し、Newcastle-Ottawa基準で試験の質を判定した。試験はその方法や産科エンドポイントで分類した。ランダム効果モデルと逆分散法を用いて統合リスク比を算出し、試験間の異質性はI2統計量で評価した。 産科アウトカムには、早産(自然早産、切迫早産を含む)、前期破水、絨毛膜羊膜炎、分娩様式、陣痛時間、陣痛誘発、オキシトシンの使用、出血、無痛処置、頸管縫縮術、頸管狭窄が含まれた。 71試験に参加した633万8,982例(治療群:6万5,082例、非治療群:629万2,563例)のデータを解析した。切除部位が深いほど早産のリスク増大 CIN治療により妊娠期間37週未満の早産のリスクが有意に増加した(治療群:10.7% vs.非治療群:5.4%、相対リスク:1.78、95%信頼区間[CI]:1.60~1.98)。<32~34週の早産(3.5 vs.1.4%、2.40、1.92~2.99)および<28~30週の早産(1.0 vs.0.3%、2.54、1.77~3.63)のリスクも、治療によって増大した。 子宮頸部円錐切除術は、組織の除去やアブレーションの量が多い手技ほどアウトカムが悪化した。37週未満の早産の相対リスクは、コールドナイフによる円錐切除術が2.70(95%CI:2.14~3.40)、レーザー円錐切除術が2.11(1.26~3.54)、手技を特定しない切除術が2.02(1.60~2.55)、LLETZ(large loop excision of the transformation zone)が1.56(1.36~1.79)、手技を特定しないアブレーションは1.46(1.27~1.66)であった。 複数の治療を受けた女性の早産のリスクは、治療を受けなかった女性よりも高く(13.2 vs.4.1%、相対リスク:3.78、95%CI:2.65~5.39)、切除部位が深いほどリスクが増大した(≦10~12mm:7.1 vs.3.4%、1.54、1.09~2.18/≧10~12mm:9.8 vs.3.4%、1.93、1.62~2.31/≧15~17mm:10.1 vs.3.4%、2.77、1.95~3.93/≧20mm:10.2 vs.3.4%、4.91、2.06~11.68)。 また、CIN未治療の女性や治療前に妊娠していた女性は、一般集団に比べ早産のリスクが高かった(5.9 vs.5.6%、相対リスク:1.24、95%CI:1.14~1.35)。 自然早産、前期破水、絨毛膜羊膜炎、低出生時体重、新生児集中治療室への入室、周産期死亡率もCIN治療後に有意に増加した。 著者は、「CINを有する女性はベースラインの早産リスクが高く、切除術やアブレーションにより、リスクがさらに増加した。有害な続発症の頻度や重症度は、切除術のほうがアブレーションよりも高かった」としている。

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混合性結合組織病〔MCTD : mixed connective tissue disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義混合性結合組織病(mixed connective tissue disease: MCTD)は、1972年にGC Sharpが提唱した疾患概念である。膠原病の中で2つ以上の疾患の特徴を併せ持ち(混合性)、しかも抗U1-RNP抗体と呼ばれる自己抗体が陽性となるものである。これは治療反応性がよく、予後も良好であったことから独立疾患として提唱された。その後、この疾患の独立性に疑問がもたれ、とくに欧米では全身性エリテマトーデスの亜型、あるいは強皮症の亜型と考えられ、英語文献でもあまりみられなくなった。しかし後述するように、高率に肺高血圧症を合併することや膠原病の単なる重複あるいは混合のみからは把握できないような特異症状の存在が明らかとなってきたことから、その疾患独立性が欧米でも再認識されている。■ 疫学本症は厚生労働省の指定難病に認定されており、その個人調査票を基にした調査では平成22年だけでおよそ9,000名の登録が確認されている。性別では女/男比で15/1と圧倒的に女性に多く、年齢分布では40代にもっとも多く、平均年齢は45歳である。また、推定発症年齢は30代が多く、平均年齢は36歳である。■ 病因本症の病因は他の膠原病と同様、不明である。全身性自己免疫疾患の1つであり、疾患に特徴的な免疫異常は抗U1-RNP抗体である。本抗体を産生するモデル動物も作成されており、関与する免疫細胞や環境因子について研究が進められている。■ 症状1)共通症状レイノー現象が必発である。また手指や手背部の浮腫傾向がみられ、「ソーセージ様手指」「指または手背の腫脹」が持続的にみられる。これらの症状は、多くの例で初発症状となっている。なお手指や手背部の浮腫傾向は強皮症でも初期にみられるが、強皮症ではすぐに硬化期に入り持続しない。2)混合所見全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎の3疾患にみられる臨床症状あるいは検査所見が混在してみられる。しかもそれぞれの膠原病の完全な重複ではなく、むしろ不完全な重複所見がみられることが多い。混合所見の中で頻度の高いものは、多発関節痛、白血球減少、手指に限局した皮膚硬化、筋力低下、筋電図における筋原性異常所見、肺機能障害などである。3)肺高血圧症肺高血圧症は一般人口では100万人中5~10人程度と非常にまれな疾患であり、しかも予後不良の疾患である。このまれな疾患がMCTDでは5~10%と一般人口の1万倍も高率にみられ、さらに本症の主要な死因となっていることから重要な特異症状として位置付けられている。大部分の症例では肺動脈そのものに病変がある肺動脈性の肺高血圧症である。心エコー検査などのスクリーニング検査やその他の画像・生理検査などが重要であるが、確定診断には右心カテーテル検査が必要である。4)その他の特徴的症状肺高血圧症以外にもMCTDに比較的特徴的な症状がある。三叉神経II枝、III枝の障害による顔面のしびれ感を主体とした症状は、MCTDの約10%にみられる。レイノー現象と同じく、神経の血流障害と推測されている。また、イブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬による無菌性髄膜炎が、本症の約10%にみられる。MCTDあるいは抗U1-RNP抗体陽性患者では、この薬剤性髄膜炎に留意が必要である。5)免疫学的所見抗U1-RNP抗体が陽性である。間接蛍光抗体法による抗核抗体では斑紋型を示す。抗Sm抗体や抗Jo-1抗体、抗トポイソメラーゼ1抗体など他の膠原病の疾患特異的自己抗体が出現しているときには、本症の診断は慎重にすべきである。6)合併症上記以外にシェーグレン症候群(25%)、橋本甲状腺炎(10%)などがある。■ 予後当初は、治療反応性や予後のよい疾患群として提唱されてきた。確かに発病からの5年生存率は96.9%、初診時からの5年生存率は94.2%と高い。しかし、死亡者の死因を検討すると、肺高血圧症、呼吸不全、心不全など心肺系の死因が全体の60%を占めている。とくに肺高血圧症は、一般人口にみられる特発性肺高血圧症よりもさらに予後不良であり、その治療の進歩が望まれる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)わが国では1982年に厚生省の特定疾患に指定され調査研究班が結成されて以来、研究が続けられ、1993年には特定疾患治療研究対象疾患に指定された。1988年に「疫学調査のための診断の手引き」が作成され、何度か改訂されてきた。わが国の診断基準は国際的にも評価されていて、最も普遍的なものである。2004年の改訂では、共通所見に肺高血圧症が加えられ、中核所見と名称が変更された。この3所見のうち1所見以上の陽性と抗U1-RNP抗体陽性が必須であり、さらに混合所見の中で3疾患のうち2疾患以上の項目を併せ持てばMCTDと診断する(表1)。たとえば混合所見で多発関節炎とCK高値があれば、前者が全身性エリテマトーデス様所見、後者が多発性筋炎様所見として満たすこととなる。表1 MCTD診断の手引き(2004年度改訂版)■MCTDの概念全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎などにみられる症状や所見が混在し、血清中に抗U1-RNP抗体がみられる疾患である。I.中核所見1.レイノー現象2.指ないし手背の腫脹3.肺高血圧症II.免疫学的所見抗U1-RNP抗体陽性III.混合所見A.全身性エリテマトーデス様所見1.多発関節炎2.リンパ節腫脹3.顔面紅斑4.心膜炎または胸膜炎5.白血球減少(4,000/μL以下)または血小板減少(10万/μL以下)B.強皮症様所見1.手指に限局した皮膚硬化2.肺線維症、肺拘束性換気障害(%VC:80%以下)または肺拡散能低下(%DLCO:70%以下)3.食道蠕動低下または拡張C.多発性筋炎様所見1.筋力低下2.筋原性酵素(CK)上昇3.筋電図における筋原性異常所見■診断1.Iの1所見以上が陽性2.IIの所見が陽性3.IIIのA、B、C項のうち、2項目以上につき、それぞれ1所見以上が陽性以上の3項目を満たす場合をMCTDと診断する。■付記抗U1-RNP抗体の検出は二重免疫拡散法あるいは酵素免疫測定法(ELISA)のいずれでもよい。ただし二重免疫拡散法が陽性でELISAの結果と一致しない場合には、二重免疫拡散法を優先する。(近藤 啓文. 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 混合性結合組織病に関する研究班 平成16年度研究報告書:2005.1-6.)また、肺高血圧症については、予後不良であり早期発見、早期治療が必要なこともあり、その診断にはとくに継続的な注意が必要である。確定診断には、右心カテーテル検査が必要であるが、侵襲的検査であり、専門医の存在が必要なため、スクリーニング検査として心臓超音波検査が重要である。これを基にした「MCTD肺高血圧症診断の手引き」(図1)が作成されており、肺高血圧症を疑う臨床所見や検査所見がある場合には、早急に心臓超音波検査をすべきである。画像を拡大する<脚注>1)MCTD患者では肺高血圧症を示唆する臨床所見、検査所見がなくても、心臓超音波検査を行うことが望ましい。2)右房圧は5mmHgと仮定。3)推定肺動脈収縮期圧以外の肺高血圧症を示唆するパラメーターである肺動脈弁逆流速度の上昇、肺動脈への右室駆出時間の短縮、右心系の径の増大、心室中隔の形状および機能の異常、右室肥厚の増加、主肺動脈の拡張を認める場合には、推定肺動脈収縮期圧が36mmHg以下であっても少なくとも1年以内に再評価することが望ましい。4)右心カテーテル検査が施行できない場合には慎重に経過観察し、治療を行わない場合でも3ヵ月後に心臓超音波検査を行い再評価する。3)肺高血圧症の臨床分類、重症度評価のため、治療開始前に右心カテーテル検査を施行することが望ましい。(吉田 俊治ほか. 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 混合性結合組織病に関する研究班 平成22年度研究報告書:2011.7-13.)3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 総論本症は自己免疫疾患であり、抗炎症薬と免疫抑制療法が治療の中心となる。非ステロイド性抗炎症薬もしばしば用いられるが、前述のごとく、時に無菌性髄膜炎が誘発されるので、その使用には慎重な配慮が必要である。急性期には、多くの場合で副腎皮質ステロイド薬が治療の中心となる。他の膠原病と同様、臓器障害の種類と程度により必要なステロイド量が決定される(表2)。表2 臓器障害別の重症度分類a)軽症レイノー現象、指ないし手の腫脹、紅斑、手指に限局する皮膚硬化、非破壊性関節炎b)中等症発熱、リンパ節腫脹、筋炎、食道運動機能障害、漿膜炎、腎障害、皮膚血管炎、皮膚潰瘍、手指末端部壊死、肺線維症、末梢神経障害、骨破壊性関節炎c)重症中枢神経症状、無菌性髄膜炎、肺高血圧症、急速進行性間質性肺炎、進行した肺線維症、重度の血小板減少、溶血性貧血、腸管機能不全(三森 経世 編. 混合性結合組織病の診療ガイドライン(改訂第3版). 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 混合性結合組織病の病態解明と治療法の確立に関する研究班:2011.)前表のように、中枢神経障害、急速に進行する肺症状・腎症状、血小板減少症を除いて大量のステロイドを必要とすることは比較的少ない。ただ、ステロイドを長期に使用することが多いため、骨粗鬆症や糖尿病、感染症の誘発などの副作用には留意が必要である。■ 肺高血圧症MCTDの生命予後を規定する肺高血圧症(PH)については、病態からみて肺動脈性のもの以外に間質性肺炎によるもの、慢性肺血栓塞栓症によるもの、心筋炎など心筋疾患によるものなどがあり、これらは治療方法も異なるため、右心カテーテル検査などで厳密に識別する必要がある。もっとも頻度の高い肺動脈性肺高血圧症については、しばしば大量ステロイド薬や免疫抑制薬が奏効するため、これらの薬剤の適応を検討すべきである。また、通常の特発性肺動脈性肺高血圧症に用いられる血管拡張薬も有用性が確認されているため、プロスタサイクリン系薬、エンドセリン受容体拮抗薬、ホスホジエステラーゼ5阻害薬を併用して用いる(図2)。画像を拡大する<脚注>*ETR拮抗薬エンドセリン受容体拮抗薬(アンブリセンタン、ボセンタン)**PDE5阻害薬ホスホジエステラーゼ5阻害薬(シルデナフィル、タダラフィル)(三森 経世 編. 混合性結合組織病の診療ガイドライン(改訂第3版). 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 混合性結合組織病の病態解明と治療法の確立に関する研究班:2011.)その後、マシテンタン(ETR拮抗薬)、リオシグアート(可溶性グアニルシクラーゼ刺激薬)なども使用できるようになっており、治療の幅が広がっている。これらは肺血管拡張作用に加えて肺動脈内皮細胞の増殖抑制作用も期待されている。ただ、肺血管のリモデリングが進行した場合や強皮症的要素の強い場合、これらの薬剤はしばしば無効であり、心不全のコントロールなども重要になるため、循環器内科などと共同して治療に当たることが必要になる。4 今後の展望遺伝子多型の検討やゲノムワイド関連解析によって、MCTDやMCTD合併肺高血圧症になりやすい危険因子が解明されつつある。これにより、さらに精度が高くこれらの診断を早期に行えることが期待される。また、予後に大きな影響を与える肺高血圧症に関する薬剤が少なからず開発されつつある。これらの出現により一段とMCTD合併肺高血圧症の治療成績が上昇する可能性がある。5 主たる診療科リウマチ膠原病内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 混合性結合組織病(一般利用者と医療従事者向けの情報)患者会情報全国膠原病友の会(膠原病全般について、その患者と家族向け)1)近藤 啓文. 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 混合性結合組織病に関する研究班 平成16年度研究報告書:2005.1-6.2)近藤 啓文. 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 混合性結合組織病に関する研究班 平成16年度研究報告書:2011.7-13.3)三森 経世編. 混合性結合組織病の診療ガイドライン(改訂第3版). 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 混合性結合組織病の病態解明と治療法の確立に関する研究班:2011.7-13.公開履歴初回2014年10月07日更新2016年07月05日

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単純性膀胱炎に対するイブプロフェンの効果(解説:小金丸 博 氏)-476

 女性の単純性膀胱炎は抗菌薬で治療されることが多い疾患だが、自然軽快する例も少なからずみられる。また、尿路感染症の主要な原因菌である大腸菌は、薬剤耐性菌の増加が問題となっており、耐性菌の増加を抑制するためにも、抗菌薬を使用せずに膀胱炎の症状緩和が図れないか研究が行われてきた。79例を対象としたPilot studyでは、症状改善効果に関してイブプロフェンは抗菌薬(シプロフロキサシン)に対して非劣性であり、イブプロフェン投与群の3分の2の患者では、抗菌薬を使用せずに改善したという結果が得られた。さらなる評価のため、規模を拡大した研究が実施された。 本研究は、女性の単純性膀胱炎に対するイブプロフェン投与が、症状増悪、再発、合併症を増やさずに抗菌薬の処方を減らすことができるかどうかを検討した二重盲検ランダム化比較試験である。下部尿路感染症の典型的な症状(排尿障害、頻尿/尿意切迫、下腹部痛)を呈した18~65歳の女性494例を対象とし、イブプロフェン投与群(400mg×3錠)とホスホマイシン投与群(3g×1錠)に分けて、28日以内の抗菌薬投与コース回数と、第7日までの症状負担度スコアの推移をプライマリエンドポイントとして評価した。両群ともに症状の経過に応じて抗菌薬を追加処方した。上部尿路感染症状(発熱、腰部叩打痛)、妊婦、2週間以内の尿路感染症、尿路カテーテル留置があるものは試験から除外された。症状負担度スコアは、排尿障害、頻尿/尿意切迫、下腹部痛をそれぞれ0~4点(計12点満点)で評価した。 28日以内の抗菌薬投与コース回数は、イブプロフェン投与群で94回、ホスホマイシン投与群で283回であり、イブプロフェン投与群で有意に減少した(減少率66.5%、95%信頼区間:58.8~74.4%、p<0.001)。イブプロフェン投与群で抗菌薬を投与された患者数は85例(35%)だった。 第7日までの症状負担度スコアの平均値は、イブプロフェン投与群が有意に大きく、症状改善効果に関してホスホマイシンに対する非劣性を証明できなかった。イブプロフェン投与群では、排尿障害、頻尿/尿意切迫、下腹部痛すべての症状の改善が有意に不良だった。 近年「抗菌薬の適正使用」が叫ばれており、不適切な抗菌薬投与を減らそうとする動きが世界的に広がっている。本研究では、女性の単純性膀胱炎を対象として、安全に抗菌薬投与を減らすことができるかどうかが検討されたが、症状改善に関してイブプロフェンは抗菌薬の代替薬としては不十分な結果となった。膀胱炎症状を呈した女性に対しては、従来通り、抗菌薬治療を第1選択とすべきであろう。 しかしながら、本研究でもPilot studyと同様に、イブプロフェン投与群の約3分の2の膀胱炎患者では抗菌薬を投与せずに症状が改善したのも事実である。サブグループ解析の結果では、尿培養が陰性だった患者に限ると、症状増悪に関して2群間で有意差はなかった。尿のグラム染色などで細菌性膀胱炎かどうかを見極めることができれば、抗菌薬を処方しない症例を増やすことができる可能性がある。著者らも述べているが、症状が比較的軽度で、症状が増悪した場合に遅れて抗菌薬を投与することを許容してくれる患者であれば、初回はイブプロフェン投与で経過をみるのも1つの選択肢になりうると考える。

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イブプロフェンは尿路感染症の代替治療となりうるか/BMJ

 単純性尿路感染症の女性患者の初回治療において、イブプロフェンによる対症療法はホスホマイシンによる抗菌薬治療に比べ抗菌薬の使用を抑制するが、症状の緩和効果は低く、腎盂腎炎の発症が増加する傾向がみられることが、ドイツ・ゲッティンゲン大学医療センターのIldiko Gagyor氏らの検討で示された。単純性尿路感染症の女性患者には通常、抗菌薬治療が行われるが、本症は無治療で回復する症例も多く、耐性菌増加の防止の観点からも、抗菌薬の処方の抑制対策が進められている。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)であるイブプロフェンは、パイロット試験において、症状消失に関して抗菌薬治療に対し非劣性で、3分の2の患者で抗菌薬の処方なしに回復したことが報告されていた。BMJ誌オンライン版2015年12月23日号掲載の報告より。対症療法の有用性を無作為化試験で評価 研究グループは、単純性尿路感染症に対するイブプロフェンによる対症療法が、症状、再発、合併症を増加させずに抗菌薬の処方を抑制できるかを検証する無作為化試験を実施した(ドイツ連邦教育研究省[BMBF]の助成による)。 対象は、年齢18~65歳、典型的な尿路感染症の症状がみられ、リスク因子や合併症がみられない女性であった。 被験者は、1日にイブプロフェン(400mg×3錠)+プラセボ(1錠)またはホスホマイシン・トロメタモール(3g×1錠)+プラセボ(3錠)を投与する群に無作為に割り付けられ、3日間の治療が行われた。症状の持続、増悪、再発に対し必要に応じて抗菌薬が追加処方された。 質問票を用いて、症状の重症度、仕事や日常的な活動性の障害度を点数化した。症状、服薬状況、抗菌薬の追加処方のデータは、看護師が被験者に電話して収集した。 主要評価項目は、0~28日の抗菌薬治療(尿路感染症、その他の病態)の全コース数と、0~7日の症状の負担(毎日の症状スコアの総計の曲線下面積)の複合エンドポイント。症状スコアは、排尿障害、頻尿/尿意切迫、下腹部痛をそれぞれ0~4点の5段階(点数が高いほど重度)で評価した。 ドイツの42ヵ所のプライマリケア施設に494例が登録された。イブプロフェン群に248例、ホスホマイシン群には246例が割り付けられ、それぞれ241例、243例がITT解析の対象となった。抗菌薬の回避や遅延処方の許容が可能な女性で考慮 平均年齢は両群とも37.3歳であった。罹病期間が2日以上(36 vs. 46%)および再発例(17 vs. 23%)の割合が、イブプロフェン群に比べホスホマイシン群で高い傾向がみられた。 イブプロフェン群はホスホマイシン群に比べ、28日までの抗菌薬コース数が有意に少なかった(94 vs.283コース、減少率:66.5%、p<0.001)。イブプロフェン群で抗菌薬投与を受けた患者数は85例(35%)であり、ホスホマイシン群よりも64.7%少なかった(p<0.001)。 第7日までの総症状負担の平均値は、イブプロフェン群がホスホマイシン群に比べ有意に大きかった(17.3 vs.12.1、平均差:5.3、p<0.001)。排尿障害(p<0.001)、頻尿/尿意切迫(p<0.001)、下腹部痛(p=0.001)のいずれもがイブプロフェン群で有意に不良であった。 有害事象の報告はイブプロフェン群が17%、ホスホマイシン群は24%であった(p=0.12)。重篤な有害事象は、イブプロフェン群で4例にみられ、このうち1例は治療関連の可能性が示唆された。ホスホマイシン群では重篤な有害事象は認めなかった。 腎盂腎炎の頻度はイブプロフェン群で高い傾向がみられた(2 vs.0.4%、p=0.12)が、第15~28日の尿路感染症の再発率はイブプロフェン群で低かった(6 vs.11%、p=0.049)。第7日までの尿路感染症による活動障害は、イブプロフェン群で有意に不良であった(p<0.001)。 著者は、「対症療法の抗菌薬治療に対する非劣性の仮説は棄却すべきであり、初回イブプロフェン治療を一般的に推奨することはできない」としたうえで、「イブプロフェン群の約3分の2の患者は、抗菌薬を使用せずに回復し、症状が軽度~中等度の患者で効果が高い傾向がみられた。抗菌薬の回避や遅延処方を許容する意思のある女性には、イブプロフェンによる対症療法を提示して検討するのがよいかもしれない」と述べている。

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尿もれ治療の経口抗コリン薬、ドライアイの原因に

 切迫性尿失禁や過活動膀胱の主たる治療薬である経口抗コリン薬は、排尿筋以外に眼や唾液腺などのムスカリン受容体も阻害する。トルコ・Zekai Tahir Burak Women's Health Education and Research HospitalのZuhal Ozen Tunay氏らは、過活動膀胱の女性患者において前向き研究を行い、経口抗コリン薬が涙液分泌に対し有意な悪影響を及ぼし、投与期間が長いほどその影響が大きくなる可能性があることを報告した。International Urogynecology Journal誌オンライン版12月7日号の掲載報告。 研究グループは、過活動膀胱と診断された女性108例(平均51.8±9.2歳、範囲30~69歳)を対象に抗コリン薬で治療を行うとともに、抗コリン薬投与開始時、投与30日後および90日後に眼科検査、涙液層破壊時間(BUT)の測定およびシルマー試験(1法)を実施し、自覚症状(口乾、眼の灼熱感・乾燥・異物感)を調査した。 主な結果は以下のとおり。・最も頻度の高かった自覚症状は、口渇と眼の乾燥で、いずれも投与30日後および90日後ともに有意であった。・BUTおよびシルマー試験値は、いずれも投与30日後および90日後ともに有意に低下した。・ドライアイ評価項目(BUTおよびシルマー試験値)は、抗コリン薬の投与期間に伴って悪化した(BUT:投与30日後p=0.037、90日後p=0.012、シルマー試験:それぞれp=0.046およびp=0.035)。

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前立腺選択的α遮断薬、転倒・骨折リスクと関連/BMJ

 前立腺選択的α遮断薬は、転倒および骨折のリスク増大とわずかだが有意に関連していることが、カナダ・ウェスタンオンタリオ大学のBlayne Welk氏らによる住民コホート試験の結果、明らかにされた。また、頭部外傷、低血圧症のリスク増大も認められた。前立腺選択的α遮断薬は高齢男性の前立腺肥大症の治療薬で、これまでに、重篤有害事象の1つとして低血圧症があり、それが重大な転倒・骨折、頭部外傷の誘因となっている可能性が指摘されていた。しかし先行観察研究では、前立腺選択的α遮断薬にフォーカスした検討はされておらず、また治療開始と転倒・骨折リスクに関して相反する結論が報告されていた。BMJ誌オンライン版2015年10月26日号掲載の報告。住民コホート試験で曝露群 vs.非曝露群について検討 前立腺選択的α遮断薬による治療を開始した男性で転倒・骨折リスクの増大がみられるかを検討した試験は、カナダ・オンタリオ州の医療管理データベースを基にコホートを作成して行われた。66歳以上男性で2003年6月~13年12月に前立腺選択的α遮断薬(タムスロシン、alfuzosin、シロドシン)を初回外来処方された(曝露コホート)群14万7,084例と、傾向スコアモデルを用いて適合した同薬を開始していなかった同数(非曝露コホート)を比較検討した。 主要アウトカムは、曝露後90日間での転倒または骨折による病院救急部門(ER)受診または入院とした。曝露群でわずかだが有意にリスクが増大 結果、曝露コホートは非曝露コホートに比べて、転倒リスクの有意な増大が認められた。各コホートの転倒発生は、2,129例(1.45%)、1,881例(1.28%)で、絶対リスク増大は0.17%(95%信頼区間[CI]:0.08~0.25%)、オッズ比(OR)は1.14(95%CI:1.07~1.21)であった。また、骨折リスクも有意に増大した。発生例は699例(0.48%)、605例(0.41%)で、絶対リスク増大は0.06%(0.02~0.11%)、ORは1.16(1.04~1.29)であった。これらの増大リスクは、前立腺選択的α遮断薬使用前の期間には観察されなかった。 また、副次アウトカムの低血圧症(OR:1.80、95%CI:1.59~2.03)および頭部外傷(同:1.15、1.04~1.27)も、曝露コホートで有意な増大がみられた。 著者は、「両コホートは、98の異なる変数(人口統計学的、併存疾患、使用薬物、医療サービス利用、既往歴)について類似していた。潜在的な未知の交絡因子(体調不良、運動機能障害、状況的リスク因子など)は除外することが可能である」と述べたうえで、「主要アウトカムに用いられたデータの感度は限定的であり、絶対リスクは過小評価の可能性がある」と指摘している。また、被験者が66歳以上であり、曝露群の84%がタムスロシンを処方されていたことから、「結果は、より若い男性には該当しない。また薬物間のアウトカムの差がわずかであることを示す統計的検出力にも乏しいものであった」と述べ、同薬物治療の導入について引き続き検討すべきだとしている。

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健康寿命の延伸は自立した排尿から!

 10月19日、株式会社リリアム大塚(大塚グループ)は、膀胱内の尿量を連続的に測定するセンサー「リリアムα-200」の製品発表会と排尿ケアに関するプレスセミナーを都内にて開催した。使いやすい機能で排尿支援 「リリアムα-200」は、4つのAモード超音波で得た情報から膀胱内の尿量を推定する測定器である。尿意を失った患者さんに対し、適切に導尿のタイミングを通知する機能を有し、尿道留置カテーテルの抜去やオムツからの離脱など、患者さんの排尿自立につながることが予想されている。 基本機能として、次の機能が搭載されている。 1)残尿測定:位置決めモードにより簡便に膀胱内の尿量測定を行う 2)排尿タイミングモード:任意に設定した膀胱内尿量で患者に通知 3)定時測定モード:連続的尿量測定により蓄尿・排尿状態を把握 4)排尿日誌機能:排尿時にボタンを押すことで排尿日誌の作成が可能 同社では、本製品の普及により、排尿で問題を抱えている多くの方々のQOLの向上や患者ADLの向上、看護・介護に携わる方々の労力の軽減と効率化、さらには患者さんの尊厳に関わる医療ケアに大きく貢献できるものと、期待を膨らませている。 希望小売価格は税抜35万円(初回に同包する各種アクセサリを含むセット価格)。11月2日より発売。非専門医ももっと泌尿器診療へ プレスセミナーでは、高橋 悟氏(日本大学医学部泌尿器科学系 主任教授)が、「超高齢社会に於ける排尿ケアの課題と対策」と題しレクチャーを行った。 尿意切迫感、切迫性尿失禁などの排尿トラブルは、健康な人でも40歳を超えると年齢とともにその数は増加する。まして、脳血管障害、運動器障害、認知症などの基礎疾患がある要介護状態では、半数以上で何らかの排尿障害があると報告されている。わが国では、要介護認定者は600万人を超えており、排泄介護は今後も大きな問題になる。そして、排泄介護は、負担が非常に大きく、自宅復帰を阻害する要因となっている。 これら排尿障害の臨床では、「過活動膀胱診療ガイドライン」をはじめ、多数のガイドラインが使用されている。それらで取り上げられている残尿測定と排尿日誌は、基礎的評価として重要な項目であり、一般の外来でも行われることが期待されている(現在、残尿測定検査は超音波検査で55点、導尿で45点の保険適用)。 しかし、残尿測定検査は、特別に機器が必要とされ、外来でも煩雑であり、排尿日誌は、自立排尿できない患者さんや介護者の負担などの理由でなかなか記録されないという課題がある。 診断後は、頻尿、尿失禁、排出障害などに対して、排尿障害治療薬も発売されている。しかし、十分な治療効果がない場合は、成人用オムツが多用されており、また、在宅介護では、留置カテーテルも少なくないという。排尿予測が患者、介護者の負担を軽減する このように課題の多いわが国の排尿管理において、高齢者80名に反復的尿量測定と排尿誘導を行った結果、オムツ使用の軽症化、身体機能の改善、認知機能の改善、介護ストレスの軽減に有用であったとする研究がある(Iwatsubo E, et al. Int J Urol. 2014;21:1253-1257.)。 今後の排尿ケアにおいては、膀胱機能アセスメントとして、残尿(尿量)測定と排尿日誌、行動療法統合プログラムの実施が望まれる。また、回復期リハビリテーションや地域包括ケアでの積極的な介入が重要となる。 その際に、「リリアムα-200」のような携帯型の残尿測定器があれば、排尿ケア・プランの立案ができ、適切な排尿誘導が可能となる。これにより、必要のないオムツの取り外しや留置カテーテルの抜去ができ、患者さんの尊厳回復やQOLの向上、介護者の負担軽減につながり、ひいては高齢者の健康寿命の延伸に期待が持たれる、とレクチャーを終えた。「リリアムα-200」の製品紹介はこちら関連リンクケアネット・ドットコム 特集「排尿障害

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多発性硬化症〔MS : Multiple sclerosis〕、視神経脊髄炎〔NMO : Neuromyelitis optica〕

1 疾患概要■ 概念・定義中枢神経系(脳・脊髄・視神経)に多巣性の限局性脱髄病巣が時間的・空間的に多発する疾患。脱髄病巣はグリオーシスにより固くなるため、硬化症と呼ばれる。白質にも皮質にも脱髄が生じるほか、進行とともに神経細胞も減少する。個々の症例での経過、画像所見、治療反応性などの臨床的特徴や、病理組織学的にも多様性があり、単一疾患とは考えにくい状況である。実際に2005年の抗AQP4抗体の発見以来、Neuromyelitis optica(NMO)がMultiple sclerosis(MS)から分離される方向にある。■ 疫学MSに関しては地域差があり、高緯度地域ほど有病率が高い。北欧では人口10万人に50~100人程度の有病率であるが、日本では人口10万人あたり7~9人程度と推定され、次第に増加している。平均発病年齢は30歳前後である。MSは女性に多く、男女比は1:2~3程度である。NMOは、日本ではおおむねMSの1/4程度の有病率で、圧倒的に女性に多く(1:10程度)、平均発病年齢はMSより約5歳高い。人種差や地域差に関しては、大きな違いはないと考えられている。■ 病因MS、NMOともに、病巣にはリンパ球やマクロファージの浸潤があり、副腎皮質ステロイドにより炎症の早期鎮静化が可能なことなどから、自己免疫機序を介した炎症により脱髄が起こると考えられる。しかし、MSでは副腎皮質ステロイドにより再発が抑制できず、一般的には自己免疫疾患を悪化させるインターフェロンベータ(IFN-ß)がMSの再発抑制に有効である。また、いくつかの自己免疫疾患に著効する抗TNFα療法がMSには悪化因子であり、自己免疫機序としてもかなり特殊な病態である。一方、NMOでは、多くの例で抗AQP4抗体が存在し、IFN-ßに抵抗性で、時には悪化することもある。また、副腎皮質ステロイドにより再発が抑制できるなど、他の多くの自己免疫性疾患と類似の病態と思われる。MSは白人に最も多く、アジア人種では比較的少ない。アフリカの原住民ではさらにまれである。さらに一卵性双生児での研究からも、遺伝子の関与は明らかである。これまでにHLA-DRB1*1501が最も強い感受性因子であり、ゲノムワイド関連解析(GWAS)ではIL-7R、 IL-2RAをはじめ、100以上の疾患感受性遺伝子が報告されている。また、NMOはMSとは異なったHLAが強い疾患感受性遺伝子 (日本人ではHLA-DPB1*0501) となっている。一方、日本人やアフリカ原住民でも、有病率の高い地域に移住した場合、その発病頻度が高くなることが知られており、環境因子の関与も大きいと推定される。その他、ビタミンD不足、喫煙、EBV感染が危険因子とされている。■ 症状中枢神経系に起因するあらゆる症状が生じる。多いものとしては視力障害、複視、感覚障害、排尿障害、運動失調などがある。進行すれば健忘、記銘力障害、理解力低下などの皮質下認知症も生じる。また多幸症、抑うつ状態も生じるほか、一般的に疲労感も強い。MSに特徴的な症状・症候としては両側MLF症候群があり、これがみられたときには強くMSを疑う。その他、Lhermitte徴候(頸髄の脱髄病変による。頸部前屈時に電撃痛が背部から下肢にかけて走る)、painful tonic seizure(有痛性強直性痙攣)、Uhthoff現象(入浴や発熱で軸索伝導の障害が強まり、症状が一過性に悪化する)、視神経乳頭耳側蒼白(視神経萎縮の他覚所見)がある。再発時には症状は数日で完成し、その際に発熱などの全身症状はない。また、無治療でも寛解することが大きな特徴である。慢性進行型になると症状は緩徐進行となる。NMOでは、高度の視力障害と脊髄障害が特徴的であるが、時に大脳障害も生じる。また、脊髄障害の後遺症として、明瞭なレベルを示す感覚障害と、その部位の帯状の締め付け感や疼痛がしばしばみられる。1)発症、進行様式による分類(1)再発寛解型MS(relapsing- remitting MS: RRMS):再発と寛解を繰り返す(2)二次性進行型MS(secondary progressive MS: SPMS):最初は再発があったが、次第に再発がなくても障害が進行する経過を取るようになったもの(3)一次性進行型MS(primary progressive MS: PPMS):最初から進行性の経過をたどるもの。MRIがなければ脊髄小脳変性症や痙性対麻痺との鑑別が難しい。2)症状による分類(1)視神経脊髄型MS(OSMS):臨床的に視神経と脊髄の障害による症状のみを呈し、大脳、小脳の症状のないもの。ただし眼振などの軽微な脳幹症状はあってもよい。MRI所見はこの分類には用いられていないことに注意。この病型には大部分のNMOと、視神経病変と脊髄病変しか臨床症状を呈していないMSの両方が含まれることになる。(2)通常型MS(CMS):大脳や小脳を含む中枢神経系のさまざまな部位の障害に基づく症候を呈するものをいう。3)その他、未分類のMS(1)tumefactive MS脱髄巣が大きく、周辺に強い浮腫性変化を伴うことが特徴。しばしば脳腫瘍との鑑別が困難であり、進行が速い場合には生検が必要となることも少なくない。(2)バロー病(同心円硬化症)大脳白質に脱髄層と髄鞘保存層とが交互に層状になって同心円状の病変を形成する。以前はフィリピンに多くみられていた。4)前MS状態と考えられるもの(1)clinically isolated syndrome(CIS)中枢神経の1ヵ所以上の炎症性脱髄性病変によって生じた初発の神経症候。CISの時点で1個以上のMS様脳病変があれば、80%以上の症例で再発し、MSに移行するが、まったく脳病変がない場合は20%程度がMSに移行するにとどまる。この時期に疾患修飾薬を開始した場合、臨床的にMSへの進行が確実に遅くなることが、欧米での研究で明らかにされている。(2)radiologically isolated syndrome(RIS)MRIにより偶然発見された。MSに矛盾しない病変はあるが、症状が生じたことがない症例。2010年のMcDonald基準では、時間的、空間的多発性が証明されても、症状がなければMSと診断するには至らないとしている。■ 予後欧米白人では80~90%はRRMSで、10~20%はPPMSとされる。日本ではPPMSが約5%程度である。RRMSの約半数は15~20年の経過でSPMSとなる。平均寿命は一般人と変わらないか、10年程度の短縮で、生命予後はあまり悪くない。機能予後としては、約10年ほどで歩行に障害が生じ、20年ほどで杖歩行、その後車椅子になるとされるが、個人差が非常に大きい。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)MSでは「McDonald 2010年改訂MS診断基準」があり、臨床的な時間的、空間的多発性の証明を基本とし、MRIが補完する基準となっている。NMOでは、「Wingerchuk 2006年改訂NMO診断基準」が用いられる。また、MRIでの基準があり、BarkhofのMRI基準はMSらしい病変の基準、PatyのMRI基準はNMO診断基準で利用されている(図参照)。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大するNMOと同様の病態と考えられるが、臨床的には、NMO-IgG(抗AQP4抗体)陽性で、視神経炎のみ、あるいは脊髄炎のみの例や、抗AQP4抗体陽性で脳病変や脳幹、小脳のみで再発を繰り返す例などがあり、それらをNMO spectrum disorderと呼ぶこともある。■ 検査MSにおいては一般血液検査では炎症所見はなく、各種自己抗体も合併症がない限り異常はない。したがって、そのような検査は、各種疾患の除外、および自己免疫疾患を含めた再発抑制療法で悪化の可能性のある合併症のチェックと、再発抑制療法での副作用チェックの目的が大きい。髄液も多くは正常で、異常があっても軽微であることが特徴である。オリゴクローナルIgGバンド(OCB)の陽性率は欧米では90%を超えるが、日本人では約70%位である。MS特異的ではないが、IgG index高値は中枢神経系でのIgG産生、すなわち免疫反応が生じていることの指標となる。電気生理学的検査としては視覚誘発電位、体性感覚誘発電位、聴性脳幹反応、運動誘発電位があり、それぞれの検査対象神経伝導路の脱髄の程度に応じて異常を示す。MRIは最も鋭敏に病巣を検出できる方法である。MSの脱髄巣はMRIのT1強調で低または等信号、T2強調画像またはFLAIR画像で高信号域となる。急性期の病巣はガドリニウム(Gd)で増強される。脳室に接し、通常円形または楕円形で、楕円形の病巣の長軸は脳室に対し垂直である病変がMSの特徴であり、ovoid lesionと呼ばれる。このovoid lesionの検出には、矢状断FLAIRが最適であり、MSを疑った場合には必ず撮影するべきである。NMO病態では、CRP上昇や補体高値などの軽度の末梢血の全身性炎症反応を示すことがあるほか、大部分の症例で血清中に抗AQP-4抗体が検出される。抗体は治療により測定感度以下になることも多く、治療前の血清にて測定することが重要である。画像では、脊髄の中心灰白質を侵す3椎体以上の長大な連続性病変が特徴的とされる。また、他の自己免疫疾患の合併が多く、オリゴクローナルIgGバンドは陰性のことが多い。■ 鑑別疾患1)初発時あるいは再発の場合感染性疾患:ライム病、梅毒、硬膜外膿瘍、進行性多巣性白質脳症、単純ヘルペスウイルス性脊髄炎、HTLV-1関連脊髄炎炎症性疾患:神経サルコイドーシス、シェーグレン症候群、ベーチェット病、スイート病、全身性エリテマトーデス(SLE)、結節性動脈周囲炎、急性散在性脳脊髄炎、アトピー性脊髄炎血管障害:脳梗塞、脊髄硬膜外血腫、脊髄硬膜動静脈瘻(AVF)代謝性:ミトコンドリア病(MELAS)、ウェルニッケ脳症、リー脳症脊椎疾患:変形性頸椎症、椎間板ヘルニア眼科疾患:中心動脈閉塞症などの血管障害2)慢性進行型の場合変性疾患:脊髄小脳変性症、 痙性対麻痺感染性疾患:HTLV-I関連脊髄症/熱帯性痙性麻痺(HAM/TSP)代謝性疾患:副腎白質ジストロフィーなど脳外科疾患:脊髄空洞症、頭蓋底陥入症3 治療 (治験中・研究中のものも含む)急性増悪期、寛解期、進行期、それぞれに応じて治療法を選択する。■ 急性増悪期の治療迅速な炎症の鎮静化を行う。具体的には、MS、NMO両疾患とも、初発あるいは再発時の急性期には、できるだけ早くステロイド療法を行う。一般的にはメチルプレドニゾロン(商品名:ソル・メドロール/静注用)500mg~1,000mgを2~3時間かけ、点滴静注を3~5日間連続して行う。パルス療法後の経口ステロイドによる後療法を行う場合は、投与が長期にわたらないようにする。1回のパルス療法で症状の改善が乏しいときは、数日おいてパルス療法をさらに1~2クール追加したり、血液浄化療法を行うことを考慮する。■ 寛解期の治療再発の抑制を行う。再発の誘因としては、感染症、過労、ストレス、出産後などに比較的多くみられるため、できるだけ誘引を避けるように努める。ワクチン接種は再発の誘引とはならず、感染症の危険を減らすことができるため、とくに禁忌でない限り推奨される。その他、薬物療法による再発抑制が普及している。1)再発抑制法日本で使用できるものとしては、MSに関してはIFN-ß1a (同:アボネックス)、IFNß-1b (同:ベタフェロン)、フィンゴリモド(同:イムセラ、ジレニア)、ナタリズマブ(同:タイサブリ)がある。肝障害、自己免疫疾患の悪化、間質性肺炎、血球減少などに注意して使用する。また、NMOに使用した場合、悪化させる危険があり、慎重な病態の把握が重要である。(1)IFN-ß1a (アボネックス®) :1週間毎に筋注(2)IFN-ß1b (ベタフェロン®) :2日毎に皮下注どちらも再発率を約30%減少させ、MRIでの活動性病変を約60%抑制できる。(3)フィンゴリモド (イムセラ®、ジレニア®) :連日内服初期に徐脈性不整脈、突然死の危険があり、その他、感染症、黄斑浮腫、リンパ球の過度の減少などに注意して使用する。(4)ナタリズマブ(タイサブリ®) :4週毎に点滴静注約1,000例に1例で進行性多巣性白質脳症が生じるが、約7割の再発が抑制でき、有効性は高い。NMO病態ではIFN-ßやフィンゴリモドの効果については疑問があり、重篤な再発の誘引となる可能性も報告されている。したがって、ステロイド薬内服や免疫抑制薬(アザチオプリン 50~150mg/日 など)、もしくはその併用が勧められることが多い。この場合、できるだけ少量で維持したいが、抗AQP4抗体高値が必ずしも再発と結びつくわけでなく、治療効果と維持量決定の指標の開発が課題である。最近では、関節リウマチやキャッスルマン病に認可されているトシリズマブ(ヒト化抗IL-6受容体抗体/同:アクテムラ)が強い再発抑制効果を持つことが示され、期待されている。(5)その他の薬剤として以下のものがある。ミトキサントロン:用量依存性の不可逆的な心筋障害が必発であるため、投与可能期間が限定されるグラチラマー(同:コパキソン) :毎日皮下注射(欧米で認可され、わが国でも9月に製造販売承認取得)ONO-4641:フィンゴリモドに類似の薬剤(わが国で治験が進行中)ジメチルフマレート(BG12)(治験準備中)クラドリビン(治験準備中)アレムツズマブ(抗CD52抗体/同:マブキャンパス) (欧米で治験が進行中)リツキシマブ(抗CD20抗体/同:リツキサン) (欧米で治験が進行中)デシリズマブ(抗CD25抗体)(欧米で治験が進行中)テリフルノミド(同:オーバジオ)(欧米で治験が進行中)2)進行抑制一次進行型、二次進行型ともに、慢性進行性の経過を有意に抑制できる方法はない。骨髄移植でも再発は抑制できるが、進行は抑制できない。■ 慢性期の残存障害に対する対症療法疼痛はカルバマゼピン、ガバペンチン、プレガバリンその他抗うつ薬や抗てんかん薬が試されるが、しばしば難治性になる。そのような場合、ペインクリニックでの各種疼痛コントロール法の適用も考慮されるべきである。その他、痙性、不随意運動、排尿障害、疲労感、それぞれに対する薬物療法が挙げられる。4 今後の展望再発抑制に関しては、各種の疾患修飾療法の開発により、かなりの程度可能になっている。しかし、20~30%の患者では再発抑制効果が乏しいこともあり、さらに効果的な薬剤が求められる。慢性に進行するPPMS、SPMSでは、その病態に不明な点が多く、進行抑制方法がまったくないことが課題である。診断と分類に関して、抗AQP4抗体の発見以来、治療反応性や画像的特徴から、NMOがMSから分離される方向にあるが、今後も病態に特徴的なバイオマーカーによるMSの細分類が重要課題である。5 主たる診療科神経内科:診断確定、鑑別診断、急性期管理、寛解期の再発抑制療法、肢体不自由になった場合の障害者認定眼科:視力・視野などの病状評価、鑑別診断、治療の副作用のショック、視覚障害になった場合の障害者認定ペインクリニック:疼痛の対症療法泌尿器科:排尿障害の対症療法整形外科:肢体不自由になった場合の補助具などリハビリテーション科:リハビリテーション全般※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)公的助成情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)診療、研究に関する情報多発性硬化症治療ガイドライン2010(日本神経学会による医療従事者向けの治療ガイドライン)多発性硬化症治療ガイドライン2010追補版(上記の治療ガイドラインの追補版)患者会情報多発性硬化症友の会(MS患者ならびに患者家族の会)1)Polman CH, et al.Ann Neurol.2011;69:292-302.2)Wingerchuk DM, et al. Neurology.2006;66:1485-1489.3)日本神経学会/日本神経免疫学会/日本神経治療学会監修.「多発性硬化症治療ガイドライン」作成委員会編.多発性硬化症治療ガイドライン2010. 医学書院; 2010.公開履歴初回2013年03月07日更新2015年10月06日

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Vol. 4 No. 1 HFpEF駆出率の保たれた心不全に対する診断と治療を考える

山本 一博 氏鳥取大学医学部病態情報内科HFpEFとは左室駆出率が保持された心不全(HFpEF:heart failure with preserved ejection fraction)という概念が定着してきたのはこの10年程度と日が浅く、いまだ全容は明らかとなっていない。疫学調査の結果から明らかにされている特徴は、左室駆出率が低下した心不全(HFrEF:heart failure with reduced ejection fraction)と比較して高齢者と女性の占める割合が高いことである。地域住民を対象とした調査のなかで心不全患者のEFの分布をみると二峰性を示し、2つの峰の間にある“谷”に当たる位置のEFの値は、HFrEFとHFpEFを臨床的に分けているEFのカットオフポイントにあたる1)。このような結果をみるとHFrEFとHFpEFは異なる病態として扱うべきと考えられる。HFpEFの診断HFpEF診断の基本は心不全であることの臨床診断左室駆出率が保持されているが、左室拡張機能障害が認められるである。1. 心不全の臨床診断心不全に伴う自覚症状や他覚所見には、心不全に特異的なものがない。現在のところ血中Bタイプナトリウム利尿ペプチド(BNPないしNT-proBNP)の濃度が上昇している場合は、心不全に基づく症状や所見の可能性が高いと判断することになる。この基準値であるが、BNPでは100pg/mL、NT-proBNPであれば400pg/mLが目安になると思われる。2. 左室流入血流速波形を用いた拡張機能評価に関する誤解以前より左室流入血流速波形が拡張機能の指標として用いられてきたが、ここに大きな認識の誤りがある。左室駆出率が低下している症例においてE/Aは左室充満圧と正比例しE波の減衰時間(DT)は左室充満圧と負の相関を示すことから2)、拡張機能障害のために二次的に生じている左室充満圧上昇の検出を通じて間接的に左室拡張機能障害の評価に左室流入血流速波形は用いうる。一方、HFpEFのように左室駆出率が保持されている症例では、E/AやDTは左室充満圧と相関しない2)。つまり、左室流入血流速波形をワンポイントで計測しても、拡張機能障害のために二次的に起きてくる左室充満圧上昇の有無を判断することは不可能である。では、左室流入血流速波形のみを用いて直接的に拡張機能を評価できるか? 答えは「NO」である。E/Aの低下は拡張機能障害を表すかのようにいわれているが、これを裏づけるデータはほとんどない。1980年代にKitabatakeらが心疾患患者においてE/Aの低下やDTの延長が認められることを報告し3)、その後、左室拡張機能障害、特に弛緩障害が起きるとE/Aが低下しDTが短縮するという研究結果が報告されたこともあり、E/Aの低下とDTの延長を認めれば左室弛緩障害を有していると判断できると信じ込まれてきた。確かに左室弛緩障害が起きるとE/Aは低下しDTは延長するとはいえるが、E/Aが低下しDTが延長していれば弛緩障害が存在するとはいえない。これまでに行われてきた多くの臨床研究の結果をみると、E/Aと左室弛緩評価のゴールドスタンダードである時定数Tauとの間には相関を認めないとする報告がほとんどである。最近わが国で集められた臨床データをみても、E/Aが低下している症例であってもTauは異常値ではない症例が少なくないことが示されている4)。3. 左室駆出率が保持された患者における拡張機能評価これについては、確立した指標がない。現段階で受け入れられている、左室充満圧上昇の検出に用いうる指標としてパルスドプラ法で記録する左室流入血流速波形のE波と、組織ドプラ法で記録する急速流入期の僧帽弁輪部運動のピーク速度e’の比(E/e’)の上昇肺静脈血流速波形および左室流入血流速波形の心房収縮期波の幅の差の増加左房径/容積の増加E波とe’波の開始時間の差であるTE-e’、連続波ドプラにおいて左室流入血流速波形と左室流出路波形を同時記録して求める等容性弛緩時間IVRTの比(IVRT/TE-e’)の低下Valsalva法により急速前負荷軽減を行った際のE/Aの過大な低下などが挙げられるが、いずれの指標も単独で用いうるほどの信頼性はない。また、心エコー図検査は安静時にデータ収集を行っているので、これらを用いて診断できるのは病期がある程度進行し安静時から左房圧が上昇している患者のみである。安静時に左房圧は上昇しておらず、労作時に拡張機能障害により急激な左房圧上昇を来すために運動耐容能が低下している患者も少なくなく(図1)、このような患者を診断するには左室拡張機能(主に左室弛緩とスティフネス)を直接的に評価する必要がある。図1 労作時の左室拡張末期容積および拡張末期圧の変化のシェーマ画像を拡大する左室弛緩を直接的に評価しうる指標としてe’が挙げられる。e’は左室弛緩障害により減高し、簡便に記録できるので臨床的にも有用性が高い。また、弛緩障害はe’波の開始を遅らせるため、E波の開始とe’波の開始の時間差であるTE-e’もTauと相関すると報告されている。左房容積は左房圧と相関をするので、純粋に拡張機能だけを反映しているとはいえないが、左室拡張機能障害による慢性的な左房負荷を反映して左房が拡大することから、拡張機能評価における左房容積は糖尿病評価におけるHbA1cのような位置づけにあるとも考えられている5)。American Society of Echocardiographyから出されているガイドラインにおいて、拡張機能障害の有無を検出するfirst lineの指標として用いられているのはe’と左房容積である6)。一方、HFpEF発症には左室弛緩障害以上に左室スティフネス亢進が寄与しており、その評価が重要であると考えているが、確立した非侵襲的評価法がない。われわれは拡張期の左室壁心外膜面の動きに着目した7)。線形弾性理論に基づくと、“やわらかい”物質と“硬い”物質に圧を加えた場合、圧を加えた面の反対面の動きが前者に比べ後者では大となる。この法則を左室自由壁の拡張期の動きに当てはめ(図2)、かつ簡便化した定量的指標がであり、心筋スティフネス係数と有意な負の相関関係にある。DWS低値は糖尿病患者においてHFpEF発症の独立した危険因子であること8)、HFpEF患者においてDWSは、年齢、性、E/e’、左室駆出率、左室重量係数、肺動脈圧、血中BNP濃度とは独立した予後規定因子であることも明らかにした9)。ただし、まだ広く受け入れられている指標ではないので、今後の検討が必要である。間接的に左室拡張機能障害の存在を示唆する形態的な異常所見が左室肥大である。ただし、HFpEF症例の60%では左室肥大は存在しないので、左室肥大が存在しないからといって拡張機能障害を否定することはできない。図2 「やわらかい」左室自由壁と「硬い」左室自由壁のM-モード画像を拡大するHFpEFの治療基礎疾患として高血圧を有する患者では血圧コントロールが必須である。虚血性心疾患患者では、虚血が自覚症状の原因と判断されれば血行再建を行う。心房細動で心室レートが過剰に亢進している場合には、これを抑える薬剤を用いる。このような基礎疾患に対する治療ないし対症療法を除き、HFpEFに特異的な治療として有効性が確立しているものは現段階ではない。1. 利尿薬HFpEFの自覚症状に体液貯留が関与している場合は、自覚症状軽減を目的として、つまり代表的な対症療法として利尿薬を用いる。利尿薬の選択については、わが国で実施したJ-MELODIC試験の結果を考慮すると、短時間作用型のフロセミドよりも長時間作用型のアゾセミドを選択するほうが好ましい10)。利尿薬は、現在認識されているように単に自覚症状を軽減することだけを目的として使用する薬剤なのか否かを検討する余地がある。心不全入院歴がなく、かつ心不全症状を認めない患者において利尿薬を中断すると、1年以内に再開せざるをえなくなる患者が少なくない11)。われわれの検討において、HFpEF患者を多く含むクリニカルシナリオ1の病態を呈する急性心不全は冬季発症が多く(本誌p.17図を参照)、冬季に発症が増える危険因子はループ利尿薬を服用していないことであるという結果が導かれた12)。心不全増悪のほとんどは心拍出量の低下ではなくうっ血によるものであり、その原因となる左室充満圧上昇はある程度進行しなければ臨床所見として捉えることができない13)。したがって、現在のように症状を基準として利尿薬の投与を中止した場合、まだ左室充満圧が上昇している状況、つまり心不全発症リスクが十分に低下していない状況での利尿薬中止に至る。心不全の増悪を繰り返すことが、結果的に病態の悪化を招くことは広く知られているところであり、このような病態の“揺れ”を招かない心不全コントロールを行うには、安易な利尿薬の中止は避けるべきかもしれない。2. レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の阻害これまでの介入試験の結果に基づき、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の阻害はHFpEFには有効性が期待できないと結論づけられているが、果たしてその結論を安易に受け入れてよいものであろうか?アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)はHFpEFに対して無効であるという結果を提示したI-PRESERVE試験のサブ解析は、投与開始前のNT-proBNP値が低い患者ではARBは有用であることを示唆している14)。I-PRESERVE試験より軽症の患者を多く含むCHARM-Preserved試験では、ARBは心不全悪化による入院リスクを有意に低下させている15)。PEP-CHF試験では追跡1年経過後に多くの症例が割付治療から逸脱していたため90%の症例が割付治療を行っていた割付後1年目の時点での解析を行うと、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)投与群で1次エンドポイント発生率は低下傾向を認め、心不全入院は有意に減少し、NYHA心不全機能分類および6分間歩行も有意に改善した16)。さらに最近発表された大規模観察研究では、ACEIないしARBの服用はHFpEFの予後改善に結びつくとの結果が示されている17)。アルドステロンの作用を抑制するミネラロコルチコイド受容体拮抗薬のHFpEFにおける有用性を検討したTOPCAT試験は2014年に結果が発表された18)。スピロノラクトンは設定された1次エンドポイント(心血管死、突然死、心不全入院)の低下をもたらさなかったが、心不全入院は有意に減少させている。TOPCAT試験の対象患者もNYHAⅡ度の比較的軽症の患者が多い。以上の介入試験の主論文の結論からは、ARB、ACEI、ミネラロコルチコイド受容体拮抗薬はHFpEFに無効という意見が導かれるが、日常診療においてHFpEF患者の抱える大きな問題の1つが高い再入院率であることなども念頭においたうえでこのようなサブ解析の結果を眺めると、これらの薬剤に効果を期待できる患者群が存在すると推察すべきではないかと考える。3. β遮断薬HFrEF治療で有用性が確立しているβ遮断薬のHFpEFにおける効果を検討した介入試験はほとんど行われていなかったが、わが国で実施したJ-DHF試験の結果を2013年に発表した。カルベジロール投与群と非投与群の比較ではイベント発生率に差異を認めなかったが、カルベジロール群をカルベジロール投与量中間値の7.5mg/日で分けて検討したところ、7.5mg/日より大の投与群では心血管死ないし心血管系の原因による入院という複合エンドポイント発生率を有意に低下させていた(本誌p.18図を参照)19)。この結論はDobreらの観察研究から導かれた結論とも一致しており20)、現在進行中のβ-PRESERVE試験の結果が待たれる。4. 非心臓因子に着目した薬物治療HFpEFの重症化には非心臓因子も関与しており、その点に焦点をあてる治療法の有用性にも期待がかかる。しかしこれまでのところ、肺血管抵抗低下作用のあるphosphodiesterase-5阻害薬のシルデナフィル、貧血改善目的で使用されるエリスロポエチンには有用性が確認されなかった。おわりに以上、HFpEFの診断と治療について概説した。治療法については、ARBとneprilysin阻害薬の作用を有するLCZ696、イバブラジンなどの効果を検討する臨床試験が進行中であり、それらの結果に期待したい。文献1)Dunlay SM et al. Longitudinal changes in ejection fraction in heart failure patients with preserved and reduced ejection fraction. Circ Heart Fail 2012; 5: 720-726.2)Yamamoto K et al. Determination of left ventricular filling pressure by Doppler echocardiography in patients with coronary artery disease: critical role of left ventricular systolic function. J Am Coll Cardiol 1997; 30: 1819-1826.3)Kitabatake A et al. Transmitral blood flow reflecting diastolic behavior of the left ventricle in health and disease--a study by pulsed Doppler technique. Jpn Circ J 1982; 46: 92-102.4)Yamada S et al. Limitation of echocardiographic indexes for the accurate estimation of left ventricular relaxation and filling pressure: interim results of SMAP, a multicenter study in Japan (in Japanese). Jpn J Med Ultrasonics 2012; 39: 449-456.5)Douglas PS. The left atrium: a biomarker of chronic diastolic dysfunction and cardiovascular disease risk. J Am Coll Cardiol 2003; 42: 1206-1207.6)Nagueh SF et al. Recommendations for the evaluation of left ventricular diastolic function by echocardiography. J Am Soc Echocardiogr 2009; 22: 107-133.7)Takeda Y et al. Noninvasive assessment of wall distensibility with the evaluation of diastolic epicardial movement. J Card Fail 2009; 15: 68-77.8)Takeda Y et al. Competing risks of heart failure with preserved ejection fraction in diabetic patients. Eur J Heart Fail 2011; 13: 664-669.9)Ohtani T et al. Diastolic stiffness as assessed by diastolic wall strain is associated with adverse remodelling and poor outcomes in heart failure with preserved ejection fraction. Eur Heart J 2012; 33: 1742-1749.10)Masuyama T et al. Superiority of long-acting to short-acting loop diuretics in the treatment of congestive heart failure. Circ J 2012; 76: 833-842.11)Walma EP et al. Withdrawal of long-term diuretic medication in elderly patients: a double blind randomised trial. BMJ 1997; 315: 464-468.12)Hirai M et al. Clinical scenario 1 is associated with winter onset of acute heart failure. Circ J 2015; 79: 129-135.13)Gheorghiade M et al. Assessing and grading congestion in acute heart failure: a scientific statement from the acute heart failure committee of the heart failure association of the European Society of Cardiology and endorsed by the European Society of Intensive Care Medicine. Eur J Heart Fail 2010; 12: 423-433.14)Anand IS et al. Prognostic value of baseline plasma amino-terminal pro-brain natriuretic peptide and its interactions with irbesartan treatment effects in patients with heart failure and preserved ejection fraction: findings from the I-PRESERVE trial. Circ Heart Fail 2011; 4:569-577.15)Yusuf S et al. Effects of candesartan in patients with chronic heart failure and preserved left-ventricular ejection fraction: the CHARMPreserved Trial. Lancet 2003; 362: 777-781.16)Cleland JGF et al. The perindopril in elderly people with chronic heart failure (PEP-CHF) study. Eur Heart J 2006; 27: 2338-2345.17)Lund LH et al. Association between use of renin-angiotensin system antagonists and mortality in patients with heart failure and preserved ejection fraction. JAMA 2012; 308: 2108-2117.18)Pitt B et al. Spironolactone for heart failure with preserved ejection fraction. N Engl J Med 2014; 370: 1383-1392.19)Yamamoto K et al. Effects of carvedilol on heart failure with preserved ejection fraction: the Japanese Diastolic Heart Failure Study (J-DHF). Eur J Heart Fail 2013; 15: 110-118.20)Dobre D et al. Prescription of beta-blockers in patients with advanced heart failure and preserved left-ventricular ejection fraction. Clinical implications and survival. Eur J Heart Fail 2007; 9: 280-286.

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ひと・身体をみる認知症医療

第1回 「これまで」「いま」「これから」の認知症医療 第2回 誰のため・何のための認知症医療か 第3回 地域の医師と認知症医療 (1)診療とモニタリング 第4回 地域の医師と認知症医療 (2)認知症医療と地域力 第5回 認知症の身体への影響(1) 自律神経機能の低下 第6回 認知症の身体への影響(2) 錐体外路症状 第7回 認知症の人にみられる一般症状 第8回 つくられるBPSD 第9回 認知症の薬物治療 真の認知症医療とは何か。明日から診療が楽しくなる実践の秘密。☞教科書に載っていないことを知りたい☞認知症の人の頼りになる診療がしたい☞認知症が身体に影響するってホント?☞身体をどのように診たらいいのかそうした声に全力で応えます。脳神経の変化を読み解く。ひと・暮らしを支える実感。――そんな、認知症医療の第一線で活躍する6人の医師が、地域で認知症医療を実践するうえで備えておきたい考え方と手法を解説します。監修:木之下 徹(こだまクリニック)第1回 「これまで」「いま」「これから」の認知症医療 これからの認知症医療。その羅針盤はどこに向いているのか――。3人の医師が語る歴史と未来。【高橋幸男先生】「あんた、なんちゅう医療しとるのか」目を開かされた、認知症の人のつぶやきとは。【山崎英樹先生】「デスメーキング」「専門家支配」といった切り口で語られる認知症医療。今後備えるべき専門性と意識とは。【本間昭先生】過去と今。認知症の人と家族の姿。QOLは果たして変化したのか?真に変わるべきものとは。第2回 誰のため・何のための認知症医療か 本編より――当初、僕は、認知症の方を前にして「困ってることはありませんか」と聞くようにしてたんです。大体認知症の方から返ってくる言葉は、「困ってることはありません」。なんで困ってることを喋ってくれないんだろうと、その時僕は思ってたわけです。それは、今思うと――“認知症医療を認知症の人に届ける”それを阻むものに神戸医師が鋭く切り込む。一方、認知症医療の秘めたる可能性を提示する。第3回 地域の医師と認知症医療 (1)診療とモニタリング 認知症の症状と思い込みがちな所見。実は、一歩踏み込んで診ることによって、治療すべき疾患が隠れていることも多い。ふだんからその人に関わっている地域の医師だからこそ可能な医療とは?着目のポイントと、具体的な手段を八森淳先生が解説する。【事例】アルツハイマー型認知症 一週間前から幻視・37.2℃の微熱 食事の量が減っていた→幻視と微熱にどんな関係が? 他2つの事例を紹介。第4回 地域の医師と認知症医療 (2)認知症医療と地域力 一人暮らしをしながら、公共交通機関を使って通院する朗らかな72歳の女性。しかし、その暮らしには生命の危機が迫っていた。――診察室からは見えにくい暮らしのありようを知り、「認知症と生きる人」を支えるために必要なものとは?問題解決だけではなく、これからも続く暮らしに伴走する認知症医療を八森淳先生が提示する。第5回 認知症の身体への影響(1) 自律神経機能の低下 日常診療の中でよく見かける、認知症による「身体への影響」。暮らしに大きく関わり、時に重大な事故に繋がるもののひとつに、自律神経機能の低下があります。今回は、最低限押さえておきたい5項目、「血圧の変動」「排尿障害」「便秘」「発汗減少と発汗過多」そして「高炭酸喚起応答障害」に的を絞り、織茂智之先生がずばり診療のポイントをお伝えします。第6回 認知症の身体への影響(2) 錐体外路症状 認知症による「身体への影響」のひとつである錐体外路症状は、ひとの暮らしを大きく左右する「動くこと」「食べること」に深く関係しています。暮らしを支える視点を軸に、日常診療でよく見かける錐体外路症状の基本的知識と治療のポイント、さらに認知症の人や家族へのアドバイスを神戸泰紀先生がお伝えします。第7回 認知症の人にみられる一般症状 知っているようで、まだまだ知られていない認知症の症状。医学が積み上げてきた認知症症候学と、認知症と生きる人の体験を併せて山崎医師が解説します。「誰でも体験すること」「認知症の人の体験」が多く紹介される本編は、診察室での対話を深めるのに役立つだけでなく、家族やケアに関わる人たちに「認知症を伝える」ヒントとなるでしょう。第8回 つくられるBPSD 「BPSD」は、認知症医療の一大テーマです。しかし、高橋医師は言います。「BPSDは、我々がつくるべくして、つくっている、というのが大きい」と。BPSDをどう捉え、どうアプローチすればよいのか。臨床でよく出会うケースを豊富に紹介しながら、解説する。第9回 認知症の薬物治療「抗認知症薬が効いた」「効かない」としばしば話題になりますが、その本当の意味をご存知でしょうか?本間医師がズバリ答えます。さらに、本間医師は問います。――認知症医療の目標はなんだと思いますか?「ひと・身体をみる認知症医療」ここに完結!

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もう我慢しない 俺の“おしっこ”トラブル

 2月5日、東京都内にて「男性の“おしっこ”トラブル最前線 見過ごせない!前立腺肥大症」と題して、日本大学医学部 泌尿器科学系泌尿器科学分野 主任教授 高橋 悟氏による講演が行われた。 「排尿障害」「残尿感」「尿漏れ」「蓄尿障害」といった“おしっこ”トラブルは加齢に伴い増加傾向にあるが、生命に関わる疾患ではなく、また周囲には言いにくい症状ということもあり、治療せずに諦めているケースが少なくない。 その結果、外出を控えるなど行動が制限されたり、QOLが低下するなど日常生活に大きな影響を及ぼしている。 “おしっこ”トラブルが生じる背景には、多くの場合原因となる疾患が存在するが、中高年男性で最も多い原因は前立腺肥大症である。 前立腺肥大症は55歳以上の男性の5人に1人、すなわち約400万人が罹患していると推測されており、高齢化社会の進展に伴い、その患者数は増加傾向にある。しかし実際に通院しているのは約10分の1にすぎず、多くの患者が治療を受けていない、または治療を中断してしまった現状がある。 前立腺肥大症の自覚症状を評価する代表的な方法として前立腺肥大症ガイドラインで推奨されている「国際前立腺症状スコア(IPSS)」と「QOLスコア」が挙げられる。 「前立腺肥大症は治療により症状の改善が期待できる疾患であり、重症化前に受診することが重要である。図のようなチェックシートを用いて前立腺肥大症の徴候を見逃さず、泌尿器科の受診を促していただきたい」と高橋氏は強調した。図画像を拡大する

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レビー小体型認知症は日中の眠気がアルツハイマー型より多い傾向

 アルツハイマー型認知症(AD)と比べてレビー小体型認知症(DLB)のほうが、日中の過剰な眠気がみられる患者が、より多いとみられることが、米国・メイヨークリニックのTanis J Ferman氏らによる検討の結果、明らかになった。これまで、レビー小体型認知症の日中の過剰な眠気は、既知の一般的な問題として報告されていたが、アルツハイマー型認知症患者と比較した検討は行われていなかった。Alzheimer's Research & Therapy誌2014年12月10日号の掲載報告。レビー小体型認知症は日中の異常な眠気が特徴 研究グループは、AD患者とDLB患者を比較して、夜間連続睡眠と日中眠りに落ちている傾向との関連を調べた。DLB患者61例、AD患者26例に、夜間睡眠ポリグラフ検査を実施した。また、そのうちDLB患者32例、AD患者18例に日中、反復睡眠潜時検査(Multiple Sleep Latency Test:MSLT)を行った。DLB患者の20例について、神経病理学的検査を行った。 レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症を比較して日中眠りに落ちている傾向との関連を調べた主な結果は以下のとおり。・夜間睡眠効率は、両群で差はみられなかったが、日中初期睡眠潜時の平均MSLT値は、AD群11±5分、DLB群6.4±5分で、DLB群のほうが有意に短かった(p<0.01)。・10分以内に眠りに落ちたのは、DLB群81%に対し、AD群は39%であった(p<0.01)。5分以内に眠りに落ちたのは、DLB群56%、AD群17%であった(p<0.01)。・AD群の日中の睡眠は、認知障害の重症度と関連していた。・一方、DLB群では、認知症重症度のほか、前の晩の睡眠効率、また幻視や変動、パーキンソニズム、レム睡眠行動障害とも関連がみられなかった。・これらのデータから、日中の異常な眠気はDLBの特徴であり、夜間睡眠の乱れや、DLBの基本的な4つの特性とは無関係であることが示唆された。・DLB患者20例の剖検所見からは、脳幹や辺縁部にレビー小体型認知症が認められた移行型DLB患者と、びまん性DLB患者について、認知症重症度、DLBコアの特色、睡眠変数に違いはみられなかったことが示されている。・以上を踏まえて著者は、「日中の眠気は、AD患者よりDLB患者でより多く認められようだ」と述べ、「DLB患者の日中の眠気は、脳幹や辺縁部の睡眠-覚醒の生理が破壊されていることによるものと思われた。さらなる研究により、基礎的メカニズムを解明する必要がある」とまとめている。関連医療ニュース 認知症、アルツハイマー型とレビー小体型の見分け方:金沢大学 レビー小体型認知症の排尿障害、その頻度は:東邦大学 認知症の不眠にはメラトニンが有用

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レビー小体型認知症の排尿障害、その頻度は:東邦大学

 レビー小体型認知症(DLB)は、認知症の中でも2番目に多い疾患であるが、DLB患者の下部尿路(LUT)機能については、これまで十分に検討されてこなかった。東邦大学医療センター佐倉病院の舘野 冬樹氏らは、尿流動態検査により、DLBのLUT機能を調べた。Movement disorders誌オンライン版2014年10月30日号の報告。 対象はDLB患者32例(男性:23例、女性:9例、年齢:59~86歳[平均:75.9歳]、罹病期間:0.2~17年[平均:3.3年])。すべての患者において筋電図-膀胱内圧測定を実施し、21例で括約筋の運動単位電位分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・DLB患者の91%はLUT症状を有していた(夜間頻尿[>8回]84%、尿失禁[>1回/週]50%)。・排尿筋過活動は87.1%でみられ、排尿後の残尿量は最小であった。・神経原性変化は50%で認められた。 LUT機能不全はDLBに共通の特徴であり、認知症や不動状態だけでなく、中枢および末梢の体性-自律神経障害に起因すると考えられる。関連医療ニュース レビー小体型認知症、パーキンソン診断に有用な方法は 認知症、アルツハイマー型とレビー小体型の見分け方:金沢大学 レビー小体型認知症、アルツハイマー型との違いは?

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レビー小体型認知症(DLB)、アルツハイマー型(AD)との違いは?

 2014年9月19日、アルツハイマー型認知症(AD)治療薬アリセプト(一般名:ドネペジル)について、レビー小体型認知症(DLB)の効能・効果が承認された。都内で10月8日に開催されたエーザイ株式会社によるプレスセミナーでは、横浜市立大学名誉教授の小阪 憲司氏と、関東中央病院 神経内科部長の織茂 智之氏が講演した。世界で初めてDLB例を報告し、DLB家族を支える会の顧問でもある小阪氏は、「DLBは最もBPSD(行動・心理症状)を起こしやすい認知症であり、患者さんの苦しみも強く介護者の苦労も多い」と述べ、患者さんや介護者のQOLを高めるため、早期診断・早期治療の重要性を強調した。DLBは誤診されやすく、診断にはDLBの特徴を知ることが必要である。本稿では、織茂氏の講演からDLBの特徴を中心に紹介する。レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症の違い 剖検例の検討では、認知症例のうちDLBが12~40%を占める。わが国の久山町研究の剖検例ではDLBが41.4%と報告されており、従来認識されているより患者数は多いと考えられる。 織茂氏はまず、ADとは異なるDLBの特徴として、記憶障害の発症前に多くの身体症状が発現することを挙げた。90例のprobable DLB患者での検討では、記憶障害発症の9.3年前から便秘が、4.8年前からうつが、4.5年前からレム睡眠行動異常症が発現していたと報告されている。 DLBの症状の特徴として、以下の5つが挙げられる。1)幻視を主体とする幻覚2)パーキンソン症状(手足が震える・四肢が硬くなる・動作が遅くなる・歩行障害) ADでは発現しないため、これらの症状が発現すればDLBを疑う。3)認知機能の変動が大きい4)自律神経症状(血圧の変動・排尿障害・消化管運動障害・発汗障害など) ADでは発現しない。起立性低血圧による転倒骨折・頭部外傷、食事性低血圧による誤嚥、臥位高血圧による心臓・腎臓への負担や脳出血の危険がある。消化管運動障害としては、便秘のほか、時にイレウスを起こす危険がある。発汗障害としては、発汗減少や発汗過多が起こり、うつ熱、体温が外気温に左右されやすいなどがある。5)レム睡眠行動異常症 DLBでは病早期からみられるのに対し、ADではまれである。DLBを早期診断する努力の必要性を指摘 織茂氏は、DLBの臨床診断基準(CDLBガイドライン)における重要な点として、まず、必須症状である進行性認知機能障害について、病初期には記憶障害が必ずしも起こらないことを強調した。 DLBの診断基準では、3つの中核症状(認知機能障害の変動・繰り返す幻視・特発性パーキンソン症状)のうち2つあればprobable DLBと診断される。また、中核症状が1つでも、レム睡眠行動異常症、抗精神病薬への重篤な過敏性などの示唆的所見が1つ以上あればprobable DLBと診断される。 画像診断における特徴としては、脳MRI画像においてDLBでの海馬の萎縮はADほどではないという。また、MIBG心筋シンチグラフィにおいては、DLBは心臓が黒く写らないことからADとの鑑別が可能である。脳血流シンチグラフィやドパミントランスポーターシンチグラフィにおいても、ADとの違いが観察される。 小阪氏は、DLBの診断のポイントとして、認知症の存在にとらわれすぎないこと、早期には認知症が目立たないことが多いこと、特有な幻視・レム睡眠行動異常症・パーキンソン症状に注目することを挙げた。そのうえで、軽度認知障害のレベルでDLBを発見する努力の必要性を指摘している。DLBではさまざまな症状に対して適切な治療が必要 DLBでは、認知機能障害のほか、BPSD、パーキンソン症状、血圧変動や排尿障害などの自律神経症状など、さまざまな症状がみられることから、それぞれに対して治療を行う。 そのうち、認知機能障害に対しては、ADと同様、アセチルコリンの減少を防ぐコリンエステラーゼ阻害薬が有効である。DLBでは、中隔核のアセチルコリン系の神経細胞数がADより減少しているという。 織茂氏は、DLBではさまざまな症状に対して適切な治療が必要であるとし、また、薬剤治療を開始するときは、過敏性を考慮して少量から始めるよう注意を促した。

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手強い診断書【Dr. 中島の 新・徒然草】(015)

十五の段 手強い診断書立場上、異動した医師の担当していた患者さんの診断書作成依頼が毎日のように回されてきます。いつのまにか、前任者のカルテだけを見て短時間で診断書を作成する要領が身についてしまいました。もちろん診断書作成ソフトはフル活用。そんなある日のこと。ヤケに分厚い紙の束がメールボックスに入っていたのです。名前だけは聞いたことのあるようなないような患者さんからの診断書作成依頼。中島「まっかせなさ~い。こんなものはチョコチョコポンだぜ」そう思って早速とりかかったのですが、これが難物。すでにメディカルクラークが下書きを試みていたのですが、ほとんどの欄が白紙のまま。まず困ったのが診断書作成ソフトの無力さです。患者さんは多発外傷で救急から脳外科に転科し、あわせて3回の入院、4回の手術、そして無数の外来受診をしているにもかかわらず、記入欄はそれぞれ2回、2回、7ヶ月分しかありません。それでも何とか書き終えて2通目は恐怖の手書き診断書。「事故当日の頭部CTを図示してください」「脳梗塞を起こしたときの頭部CTを図示してください」から始まり、「頭部外傷と脳梗塞の因果関係はどのようにお考えでしょうか?」ってアァタ、主治医でもないのに考えたこと、おまへんがな!これも何とか書き終えて3通目は後遺症の調査です。中島「たとえ会ったことがなくても、日常生活状況なんかは自宅に電話をかけて尋ねれば、チョイチョイチョイのチョ~イ」と思っていたらこれが甘かった。「外貌醜状を図示してください」「高次脳機能障害について心理テストの結果をお示しください。また原本のコピーを添付してください」前の主治医は心理テストなんかやってませんよ。「眼瞼下垂と外傷との因果関係をお教えください。また、眼瞼下垂の程度は上眼瞼が瞳孔にかかる、瞳孔に一部かかる、瞳孔を完全に覆うのいずれでしょうか?」「頻尿と外傷との因果関係の有無、1日の排尿回数をお教えください」眼瞼下垂? 排尿障害? そんなモンあったんか。これは電話で済む話では無さそう。そして…「肩関節の可動域制限について、その原因と可動域(自動・他動)をそれぞれ屈曲、伸展、外転、内転、外旋、内旋についての計測値を御記載ください」ここまでくると前任者のカルテ記載とか電話とかいう小手先は通用しません。「何でこんな厄介な診断書が…」と思いつつ、御自宅に電話しました。電話に出たのは患者さんの御主人です。中島「大阪医療センターの中島です」御主人「あっ、これはお世話になっています」中島「今診断書を作成しているところなんですけど」御主人「お手数をおかけします」中島「御本人を診ないことには記入の難しいところがあるので、ちょっと病院の方に御足労いただけないでしょうか」御主人「もちろん、いつでも参りますよ」中島「それでは早速ですが、明後日の午後はいかがですか? 1時間ほど時間をとれると思いますので」御主人「それでは明後日の午後にお伺いします。わざわざお電話いただいて恐縮です」中島「念のためですけど、御本人も連れて来てくださいね。長さや角度を測るんで、御主人だけ来ていただいても困りますんで」御主人「ええ、もちろんです。いやホントに先生、御親切にどうもありがとうございます!」すごく丁寧な御主人でした。質量ともに大変な診断書ではありましたが、このように感謝されると疲れも吹っ飛ぶ気がします。いささか単純ではありますが、人と人との関係なんてこんなモンですね。

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バイアグラ使用者でメラノーマ発症リスクが約2倍に

 シルデナフィル(商品名:バイアグラ)使用と、メラノーマ発症リスクが関連している可能性が、米国・ブラウン大学のWen-Qing Li氏らが行った、米国男性2万5,848例を対象とした前向きコホート研究によって報告された。過去10年間のメラノーマや基底細胞がん(BCC)、有棘細胞がん(SCC)を調べた結果、ベースライン時にシルデナフィル使用者のメラノーマリスクは1.84倍高いことが判明したという。結果について著者は、臨床勧告を変更するには不十分だが、本関連調査を継続していく必要性を支持するものであったとまとめている。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2014年4月7日号の掲載報告。 シルデナフィルは、PDE 5A阻害薬の性機能障害治療薬である。一方、最近の研究において、BRAF活性がPDE 5A値を低下させ、BRAF活性によるPDE 5A低値あるいはシルデナフィル使用がメラノーマ細胞の侵襲を増大することが示唆され、シルデナフィルがメラノーマリスクに有害な影響をもたらす可能性が持ち上がっていた。 そこで研究グループは、米国男性において、シルデナフィル使用とメラノーマリスクとの関連を調べる前向きコホート研究を行った。対象は、2000年に「医療従事者追跡研究」に参加した人で、性機能障害とシルデナフィル使用について質問を受けていた人とした。ベースライン時にがんであることを申告した人は除外された。 2年ごとに行われたアンケート調査で、皮膚がん(メラノーマ、SCC、BCC)を申告した人を特定し、メラノーマとSCCについては病理学的診断を確認し評価した。 主な結果は以下のとおり。・分析には、2万5,848例が含まれた。・2000~2010年の追跡期間中に、メラノーマ142例、SCC 580例、BCC 3,030例を発生していた。・ベースライン時にシルデナフィルを使用していた人は、その後のメラノーマリスクが有意に増大していた。多変量補正ハザード比(HR)は1.84(95%信頼区間[CI]:1.04~3.22)であった。・対照的に、SCCのHRは0.84(同:0.59~1.20)、BCCは1.08(同:0.93~1.25)でリスクの増大は観察されなかった。さらに、性機能障害は、メラノーマリスクの変化と関連していなかった。・また、これまでにシルデナフィルを使用したことがある人でも、メラノーマリスクの上昇がみられた(HR:1.92、95%CI:1.14~3.22)。・ベースライン時に重大慢性疾患を報告した人を除外した2次解析においても、同様の所見がみられた。すなわち、ベースライン時シルデナフィル使用者のメラノーマリスクは2.24(95%CI:1.05~4.78)、使用歴ありの人は同2.77(同:1.32~5.85)であった。

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