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プロバイオティクス、ICUでの人工呼吸器関連肺炎を抑制せず/JAMA

 人工呼吸器を要する重症患者において、プロバイオティクスであるLactobacillus rhamnosus GGの投与はプラセボと比較して、集中治療室(ICU)における人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発生に関して有意な改善効果はなく、有害事象の頻度は高いことが、カナダ・トロント大学のJennie Johnstone氏らの検討で示された。研究の詳細は、JAMA誌2021年9月21日号で報告された。3ヵ国の44のICUの無作為化プラセボ対照比較試験 本研究は、ICUにおけるVAPや新たな感染症、その他の臨床的に重要なアウトカムの予防におけるL. rhamnosus GG投与の有効性の評価を目的とする無作為化プラセボ対照比較試験であり、2013年10月~2019年3月の期間にカナダと米国、サウジアラビアの44のICUで患者登録が行われた(カナダ健康研究所[CIHR]などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、ICUの治療チームによって72時間以上の機械的換気を要すると予測された患者であった。被験者は、ICUで1日2回、L. rhamnosus GG(1×1010コロニー形成単位)を投与する群またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、二重盲検下の中央判定によるVAPの発生とされた。VAPは、2日以上の機械的換気の後に、胸部X線上で新たな進行性または持続性の浸潤所見がみられ、次の3項目のうち2つ以上を満たした場合とされた。(1)発熱(中核体温>38℃)または低体温(体温<36℃)、(2)白血球数<3.0×106/Lまたは>10×106/L、(3)膿性痰。感染症、死亡、ICU入室日数などにも差はない 2,650例(平均年齢[SD]59.8[16.5]歳、女性40.1%)が登録され、プロバイオティクス群に1,318例、プラセボ群に1,332例が割り付けられた。平均APACHE IIスコア(ICU入室の指標0~71点、点数が高いほど重症度および死亡リスクが高い)は22.0(SD 7.8)点で、61.2%が強心薬または昇圧薬を投与され、8.1%は腎代替療法を受けていた。82.5%が、無作為化の日に抗菌薬を処方または投与されていた。試験薬の投与期間中央値は9日(IQR:5~15)だった。 VAPの発生率は、プロバイオティクス群が21.9%(289/1,318例)、プラセボ群は21.3%(284/1,332例)であり、両群間に有意な差は認められなかった(ハザード比[HR]:1.03、95%信頼区間[CI]:0.87~1.22、p=0.73、絶対群間差:0.6%、95%CI:-2.5~3.7)。 約20項目の副次アウトカム(ICU関連感染症、下痢、死亡、ICU入室日数など)のうち、統計学的に有意な差がみられたものはなかった。 また、有害事象(無菌部位の培養でのL. rhamnosus単離、非無菌部位の培養での単独または優勢な微生物)は、プロバイオティクス群が15例(1.1%)、プラセボ群は1例(0.1%)で発現した(オッズ比:14.02、95%CI:1.79~109.58、p<0.001)。 著者は、「今回の結果は、機械的換気を要する重篤な病態の患者における、VAPの予防を目的とするL. rhamnosus GGの使用を支持しない。これらの知見は、日常診療や施策に影響を及ぼすもので、重篤な病態へのプロバイオティクスの処方には慎重さが求められることが示唆される」としている。

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グラム染色本の最高峰【Dr.倉原の“俺の本棚”】第46回

【第46回】グラム染色本の最高峰私がグラム染色を一番やっていたのは研修医時代でした。京都府の洛和会音羽病院というところで研修させていただいて、当時、私と一緒に救急部でグラム染色を教えてくれた先生や同僚たちは、皆さんいろいろな分野で活躍しています。『グラム染色診療ドリル〜解いてわかる! 菌推定のためのポイントと抗菌薬選択の根拠』林 俊誠/著. 羊土社. 2021年6月30日発行医学部のときからずっと着ている白衣がクリスタルバイオレットまみれになって、なんか太陽の光を数年間浴びていない地下研究者みたいな恰好をしていました。「さすがにクリスタルバイオレットこぼしすぎやろ」と怒られたのは、もう15年も前の話。そういえば、バイオセーフティキャビネットではなく、救急外来でPPEをつけずに染めていた気がします。また、上手に染色できた肺炎球菌や大腸菌のスライドグラスを永久標本にして、自分のコレクションにしていました。ここらへんが現在では許されるのかどうかはわかりませんが、いずれも時効ということで……。グラム染色の本はいくつか出版されていますが、この本の素晴らしいところは、「至言が至言過ぎる」点です。書かれている全てが医師に心に突き刺さるメッセージ。たとえば緑膿菌の見た目、『「E. coliよりも細い」と気づける感覚を養う』、こりゃあ至言です。緑膿菌ってヒョロっとしているので、太い大腸菌とは違いますよね。その他、『グラム染色鏡検で「見えない」からこそ見えてくるものがある』など、なんかボクの人生をグラム染色してくださいみたいな「至言」がてんこ盛りで、読んでいてテンションが上がってきます。グラム染色に限った本ではなく、臨床における判断についても丁寧に記載されています。例えば、ESBL感染症でカルバペネムを温存しなきゃだめだよ、というICTとしても重要なメッセージも書かれています。グラム染色に偏った本ではないので、感染症診療に従事するすべての医療従事者にとって満足度が高いと思います。何より、安いです。『グラム染色診療ドリル〜解いてわかる! 菌推定のためのポイントと抗菌薬選択の根拠』林 俊誠/著.出版社名羊土社定価本体3,600円+税サイズB5判刊行年2021年

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下痢症状から急性胃腸炎を診断、ゴミ箱診断を防ぐには?【Dr.山中の攻める!問診3step】第5回

第5回 下痢症状から急性胃腸炎を診断、ゴミ箱診断を防ぐには?―Key Point―下痢症状から急性胃腸炎の診断をするときは、本当に診断が正しいのかどうか後ろめたい気持ちにならなければならない。なぜなら、ゴミ箱診断の可能性があるからである。48歳男性が動悸を主訴に救急室を受診。1週間前から臥位で寝ると息苦しいという。3日前に下痢と発熱が出現。昨日は37.9℃、水様便10回と嘔吐20回あり。意識清明で38.2℃、血圧230/102mmHg、心拍数132回/分(絶対性不整脈)、呼吸回数22回/分だった。ベラパミル(商品名:ワソラン)5mgを2回静注しても頻脈は変化なし。甲状腺機能を調べるとTSH:0.01μIU/mL(基準値:0.3~4.0)、 FT4:8ng/dL(基準値:0.9~1.7)であった。このとき優秀な後期研修医が「発熱+下痢+嘔吐+頻脈+心不全、これって甲状腺クリーゼじゃないの」と気が付いてくれた。◆今回おさえておくべき疾患はコチラ!経口摂取や消化液の分泌により、毎日7.5Lの水分が消化管に流れ込む。小腸でほとんどの水分が吸収され、1.2Lの水分が大腸に到達する。大腸は1Lの水分を吸収するため、正常の便は200mLの水分を含む。したがって、大量の下痢は小腸に病変があることを示す1)急性下痢は感染症、慢性下痢は感染症以外で起こることが多い急性下痢では脱水になっていないかの評価が重要である就寝中に起こる下痢は器質的疾患の存在を示唆する大腸がんでは便秘のみならず下痢となることもある【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】疾患の緊急性を見極める下痢は腸管以外の原因から考える。下痢の原因は腸管にあると考えがちだが、緊急性が高い腸管以外の疾患から考えるようにするとよい。●緊急性が高い“腸管以外”の疾患甲状腺クリーゼ、アナフィラキシー、トキシックショック症候群(TSS)、敗血症、腹膜炎、膵炎、薬剤●うんちしたい症候群(しぶり腹)大動脈瘤の切迫破裂、直腸がん、異所性妊娠、虚血性腸炎、炎症性腸疾患、細菌性大腸炎、急性虫垂炎、憩室炎、直腸異物*しぶり腹とは激しい便意にもかかわらず、ほとんど便が出ない状態*S状結腸や直腸に刺激が加わるとしぶり腹になる●血便が出る感染性下痢症腸管出血性大腸菌、赤痢菌、サルモネラ、カンピロバクター、赤痢アメーバ【分類】■急性下痢(1)炎症性(大腸型)下痢腸管出血性大腸菌、赤痢菌、サルモネラ、カンピロバクター、赤痢アメーバ*発熱、少量頻回(8~10回/日)の血性下痢、しぶり腹(2)非炎症性(小腸型)下痢ノロウイルス、ロタウイルス、コレラ、ウェルシュ、ランブル鞭毛虫*軽度の発熱、多量の水様下痢(3~4回/日)、悪心嘔吐、脱水■慢性下痢2)(1)浸透圧性下痢乳糖不耐症、下剤*乳糖不耐症は大人になって起こることがある*絶食により下痢は軽快する(2)炎症性下痢炎症性腸疾患、顕微鏡的大腸炎、放射線照射性腸炎、好酸球性腸炎、悪性腫瘍(大腸がん、悪性リンパ腫)*NSAIDsやプロトンポンプ阻害薬は顕微鏡的大腸炎を起こす*炎症性腸疾患は30~40代で多く、顕微鏡的大腸炎は70~80代に多い。(3)吸収不良症候群慢性膵炎、small intestinal bacterial overgrowth(SIBO、小腸内細菌異常増殖症)、短腸症候群*脂肪便は悪臭を伴い、便器に付着したり水に浮いたりする(4)分泌性下痢神経内分泌腫瘍(カルチノイドやVIPoma)、胆汁酸による下痢(5)腸管運動の異常過敏性腸症候群、糖尿病、甲状腺機能亢進症、強皮症(6)慢性感染症ランブル鞭毛虫、アメーバ赤痢、Clostridium difficile【STEP3】検査で原因を突き止める●急性下痢のほとんどは自然治癒するので検査は不要●以下の症状があれば検査が必要発熱(38.5℃超)、血便、脱水、ひどい腹痛、免疫力が低下している、高齢者(70歳超)、衛生状態が悪い外国から帰国症状に応じて血算、生化学、ヘモグロビン、便中白血球、便培養、CD毒素/抗原、寄生虫、大腸カメラを考慮する。●薬が原因の下痢は多い(薬剤性下痢)化学療法薬、抗菌薬、NSAIDs、アンギオテンシンンII受容体拮抗薬(とくにオルメサルタン)、プロトンポンプ阻害薬、ジゴキシン、メトホルミン、コルヒチン、ジスチグミン*、人工甘味料、アルコール*ジスチグミン(商品名:ウブレチド)はコリン作動性クリーゼを起こす<参考文献>1)Mansoor AM. Frameworks for Internal Medicine. p.176-197.2)Alguire PC, et al. MKSAP18 Gastroenterology and Hepatology. 2018. p.26-35.

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「尿路感染症はとりあえずキノロン」の医師へST合剤を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第41回

 今回は、尿路感染症にはフルオロキノロン薬を第1選択と考える医師に対し、代替薬としてST合剤をどのように提案したのか紹介します。フルオロキノロン薬は使いやすい抗菌薬ですが、経口第3世代セフェム系抗菌薬と同様に薬剤耐性に注意が必要です。医師は使用経験が少ない代替薬には抵抗があるものですが、薬剤師が共同でモニタリングする姿勢を示すことで、医師の治療選択肢を増やすことができました。患者情報70歳、女性(施設入居)基礎疾患高血圧症、骨粗鬆症介護度要介護1服薬管理施設職員が管理処方内容1.アムロジピンOD錠5mg 1錠 分1 朝食後2.カンデサルタンシレキセチル錠4mg 1錠 分1 朝食後3.ラロキシフェン塩酸塩錠60mg 1錠 分1 朝食後4.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 毎食後本症例のポイント訪問診療に同行した際、施設看護師より、昨日から患者さんに倦怠感・頻尿・濃尿・尿臭があると相談を受けました。医師より、尿路感染症の可能性が高く、抗菌薬治療が必要なので、レボフロキサシン500mgを5日間処方しようと思うがどうかと聞かれました。医師としては、尿路感染症に対しては長年フルオロキノロン薬をほぼ一択で処方しており、治療効果も満足していることから、今回もレボフロキサシンでよいだろうという認識でした。フルオロキノロン薬は組織移行性に優れた広域抗菌薬であり、また1日1回服用と服薬負担も少ない薬剤ですが、薬剤耐性が問題となっています。そこで下記のポイント(1)、(2)を整理して代替薬の提案をすることにしました。なお、βラクタム系の抗菌薬に関しては、医師より菌種のカバーや治療成績から積極的には使用したくないと回答を得ています。(1)フルオロキノロン薬の薬剤耐性と相互作用の懸念近年の報告において、尿路感染症の主要な起炎菌である大腸菌のフルオロキノロン耐性率は40%となっています。薬剤耐性(AMR)対策アクションプランの目標である「25%以下」を大きく超えており、今後も薬剤耐性対策として適正使用を進め、使用量を減らす必要があります。また、この患者さんは便秘治療で酸化マグネシウムを服用していますが、フルオロキノロン薬との相互作用が問題となります。同時服用ではキレート形成による吸収低下から抗菌効果が減弱する可能性があるため、時間をずらして服用することになりますが、服薬時刻を指定すると施設側の介護負担が増大するため、他剤へ変更するほうがよいと考えました。(2)代替薬としてST合剤を検討ST合剤(スルファメトキサゾール・トリメトプリム配合錠)は、腸内細菌科細菌を広くカバーしており、消化管吸収や前立腺などの組織移行性も良好な薬剤です。そのため、尿路感染症においては腎機能低下や妊娠などの問題がなければ第1選択薬となります。ただし、ワルファリンカリウムやフェニトイン、レパグリニド、メトトレキサートなどとの相互作用があり、併用が困難な場合もあるため注意が必要です。幸いこの患者さんは相互作用がある薬剤の服用はなく、腎機能も年齢相応(Scr:0.75mg/dL、推算CCr:47.38mL/min、K値:3.5mEq/L)であることから、治療薬候補として妥当と考えました。処方提案と経過上記のポイント(1)、(2)を医師に伝えてST合剤を提案したところ、使用経験が少ないので不安もあるとのことでしたが、薬剤師と施設スタッフの共同モニタリングを行うことで安心してもらい、スルファメトキサゾール・トリメトプリム配合錠 4錠 分2、7日間の処方となりました。医師としては、フルオロキノロン薬の大腸菌の耐性化が全国的に進んでいることに驚かれ、今後の治療選択肢としてST合剤やセファレキシン、セファクロルも考慮するとのことでした。治療開始2日目の夜より患者さんの頻尿や尿臭の訴えが改善し、その後も有害事象はなく経過も順調だったため、7日間でST合剤による治療は終了となりました。薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2020. 厚生労働省健康局結核感染症課;2021.高山義弘 著. 高齢者の暮らしを守る 在宅感染症診療. 日本医事新報社;2020.

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発熱ない尿路感染疑い男性への抗菌薬、7日間vs.14日間/JAMA

 発熱がなく、細菌性尿路感染症(UTI)が疑われる男性の抗菌薬治療では、投与終了から14日以内のUTI症状の消失に関して、シプロフロキサシンまたはトリメトプリム/スルファメトキサゾールの7日間投与は14日間投与に対し非劣性であり、UTI症状の再発割合には有意な差がないことが、米国・ミネアポリス退役軍人局保健医療システムのDimitri M. Drekonja氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2021年7月27日号で報告された。非劣性を検証する米国の無作為化プラセボ対照試験 本研究は、発熱がみられないUTI男性における抗菌薬の7日間投与の14日間投与に対する非劣性の検証を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2014年4月~2019年12月の期間に米国退役軍人局の2つの医療センターで参加者の登録が行われた(米国退役軍人局Merit Review Programの助成による)。 対象は、年齢18歳以上の男性で、発熱がなく、症候性UTIへの進展が予測され、シプロフロキサシンまたはトリメトプリム/スルファメトキサゾールの7~14日間投与が予定されている患者であった。これらの薬剤が選択された理由は、米国退役軍人局医療センターにおける男性外来患者のUTI治療の90%を、これらの抗菌薬が占めるとの報告に基づく。 参加者は、担当医によって処方された抗菌薬を7日間投与後に、当該抗菌薬をさらに7日間投与する群、またはプラセボを7日間投与する群に無作為に割り付けられた。抗菌薬およびプラセボは1日2回投与された。 主要アウトカムは、抗菌薬投与終了から14日の時点でのUTI症状の消失とされた。非劣性マージンは10%であった。主解析は、as-treated集団(28回[14日間×1日2回]の投与のうち26回以上を受け、連続2回以上の非投与がない)で行われ、2次解析にはアドヒアランスを問わず無作為化された全患者が含まれた。UTI症状の再発割合:9.9% vs.12.9% 272例(年齢中央値69歳[IQR:62~73])が無作為化の対象となり、全例が試験を完了した。14日間投与群に136例、7日間投与群(プラセボ群)に136例が割り付けられた。主要アウトカムのas-treated解析には254例(93.4%)が含まれた。処方された抗菌薬は、シプロフロキサシンが57%(156/272例)、トリメトプリム/スルファメトキサゾールが43%(116/272例)だった。 症状消失の割合は、7日間投与群が93.1%(122/131例)、14日間投与群は90.2%(111/123例)であり、7日間投与群の14日間投与群に対する非劣性が確認された(群間差:2.9%、片側97.5%信頼区間[CI]:-5.2~∞)。また、2次解析における症状消失の割合は、7日間投与群が91.9%(125/136例)、14日間投与群は90.4%(123/136例)であり、非劣性の基準を満たした(群間差:1.5%、片側97.5%CI:-5.8~∞)。 UTI症状の再発の割合は、7日間投与群が9.9%(13/131例)、14日間投与群は12.9%(15/123例)であり、両群間に有意な差は認められなかった(群間差:-3.0%、95%CI:-10.8~6.2、p=0.70)。 有害事象は、7日間投与群が20.6%(28/136例)、14日間投与群は24.3%(33/136例)で発現した。糖尿病を有する患者(64例)で血糖値の異常が、ワルファリン投与を受けている患者(10例)でワルファリン用量への影響がみられた。最も頻度の高い有害事象は下痢だった(7日間投与群9%、14日間投与群9%)。 著者は、「これらの知見は、発熱を伴わないUTIの男性患者における、シプロフロキサシンまたはトリメトプリム/スルファメトキサゾールの7日間投与を支持するものである」としている。

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第26回 アナフィラキシー? 迅速に判断、アドレナリンの適切な投与を!【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)アナフィラキシーか否かを迅速に判断!2)アドレナリンの投与は適切に!アナフィラキシーに関しては以前(第15回 薬剤投与後の意識消失、原因は?)も取り上げましたが、大切なことですので、今一度整理しておきましょう。今回の症例は、新型コロナワクチン接種後のアナフィラキシーとして報告された事例*からです。この経過をみて突っ込みどころ、ありますよね?!*第53回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会令和2年度第13回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会【症例】30歳女性。ワクチン接種後待機中、呼吸困難を自覚。咳嗽が徐々に増悪し、体中の掻痒感を自覚した。接種5分後、SpO2が85~88%まで低下。酸素負荷、その後ネオフィリン注125mg、リンデロン注2mg点滴を開始。接種後20分緊急入院。眼瞼浮腫、喘鳴、SpO2100%(酸素4L)、血圧収縮期150mmHg程度、脈拍70~80/分、体幹に丘疹。接種55分後、アドレナリン0.3mL皮下注。その後、喘鳴は徐々に改善。接種4時間後酸素負荷終了。翌日午前中に一般病棟に転出。午後になり呼吸困難を自覚、サルブタモール吸入も効果なし。喘鳴は徐々に増強。その後も、リンデロン1.0mg投与効果なし、SpO2は98~100%、心拍70~80/分であった。オキシマスク2L投与併用。意識障害はなかったが、発語は困難であった。数時間後にリンデロン3mgを投与したところ、徐々に呼吸状態は改善。その後会話が可能な程度にまで回復した。翌朝、意識清明、会話可能、喘鳴なし、SpO2低下なし、リンデロン投与を継続し、経過観察したところ再燃なし、数日後自宅退院とした。はじめにアナフィラキシーは、どんな薬剤でも起こりえるものであり、初期対応が不適切であると致死的となるため、早期に認識し、適切な介入を行うことが極めて大切です。救急外来で診療をしているとしばしば出会います。また、院内でも抗菌薬や造影剤投与後にアナフィラキシーは一定数発生するため、研修医含め誰もが初期対応を理解しておく必要があります。新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種も全国で進んでおり、勤務先の病院やクリニック、大規模接種センターなどでアナフィラキシーに対して不安がある医療者の方も多いと思います。今回はアナフィラキシーの初期対応をシンプルにまとめましたので整理してみてください。アナフィラキシーを疑うサインとはアナフィラキシーか否かを判断できるでしょうか。そんなの簡単だろうと思われるかもしれませんが、意外と迷うことがあるのではないでしょうか。薬剤投与後に皮疹と喘鳴、血圧低下を認めれば誰もが気付くかもしれませんが、皮疹を認め喉の違和感や嘔気を認めるもののバイタルサインは安定している、皮疹は認めないが投与後に明らかにバイタルサインが変化しているなど、実際の現場では悩むのが現状であると思います。アナフィラキシーの診断基準は表の通りですが、抗菌薬や造影剤、さらにワクチン接種後の場合には、「アレルゲンと思われる物質に曝露後」に該当するため、皮膚や呼吸、循環、消化器症状のうち2つを認める場合にはアナフィラキシーとして動き出す必要があります。「血圧が保たれているからアドレナリンまでは…」「SpO2が保たれているからアドレナリンはやりすぎ…」ではないのです。皮膚症状もきちんと体幹部や四肢を直視しなければ見落とすこともあるため、薬剤使用後に呼吸・循環・消化器症状を認める場合、さらには頭痛や胸痛、痙攣などを認めた場合には必ず確認しましょう。表 アナフィラキシーの診断基準画像を拡大する(Sampson HA, et al. J Allergy Clin Immunol. 2006;117:391-397.より引用)ワクチン接種後のアナフィラキシーは、普段通りの全身症状で打つことに問題がない方が打っているわけですから、より判断がしやすいはずです。抗菌薬や造影剤の場合には、細菌感染や急性腹症など、全身状態が良好とはいえない状況で使用しますが、ワクチンは違いますよね。筋注後に何らかの症状を認めた場合にはアナフィラキシーを念頭にチェックすればいいわけですから、それほど判断は難しくありません。痛みや不安に伴う反射性失神によるもろもろの症状のこともありますが、皮疹や喘鳴は通常認めませんし、安静臥位の状態で様子をみれば時間経過とともによくなる点から大抵は判断が可能です。ここで重要な点は、「迷ったらアナフィラキシーとして対応する」ということです。アナフィラキシーは1分1秒を争い、対応の遅れが病状の悪化に直結します。アナフィラキシー? と思ったらアナフィラキシーと判断したらやるべきことはシンプルです。患者を臥位にしてバイタルサインの確認、そしてアドレナリンの投与です。アナフィラキシーと判断したらアドレナリンは必須なわけですが、投与量や投与方法を間違えてしまっては十分な効果が得られません。正確に覚えているでしょうか?アドレナリンは[1]大腿外側に、[2]0.3~0.5mg、[3]筋注です。肩ではありません、1mgではありません、そして皮下注ではありません。OKですね? アドレナリンの投与量に関しては、成人では0.5mgを推奨しているものもありますが、エピペンは0.3mgですから、その場にエピペンしかなければ0.3mgでOKです。何が言いたいか、「とにかく早期にアナフィラキシーを認識し、早期にアドレナリンを適切に投与する」、これが大事なのです。救急医学会が公開した、アナフィラキシー対応・簡易チャート(図)を見ながらアプローチをきっちり頭に入れておいて下さい。アナフィラキシー対応・簡易チャート画像を拡大する間違い探しさぁそれでは今回の症例をもう1度みてみましょう。この患者は基礎疾患に喘息などがあり、現場での対応が難しかったことが予想されますが、ちょっと突っ込みどころがあります。まず、ワクチン接種後、掻痒感に加え呼吸困難、SpO2も低下しています。この時点でアナフィラキシー症状の所見ですから、なる早でアドレナリンを投与する準備を進めなければなりません。よくアナフィラキシーに対して抗ヒスタミン薬やステロイドを投与しているのをみかけますが、これらの薬剤は使用を急ぐ必要は一切ありません。そして、アドレナリンは皮下注ではありません、筋注です! 重症喘息の際のアドレナリン投与は、なぜか皮下注も選択肢となっていますが筋注でよいでしょう。本症例では特にアナフィラキシーが考えられるため0.3~0.5mg筋注です。位置は大腿外側ですよ!さいごにアナフィラキシーはどこでも起こりえます。アナフィラキシーショックや死亡症例の多くは、アドレナリンの投与の遅れが大きく影響しています。迅速に判断し、適切なマネジメントができるように、今一度整理しておきましょう。1)Sampson HA, et al. J Allergy Clin Immunol. 2006;117:391-397.2)救急医学会. ワクチン接種会場におけるアナフィラキシー対応簡易チャート

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在宅吸入可能な肺非結核性抗酸菌症治療薬「アリケイス吸入液590mg」【下平博士のDIノート】第78回

在宅吸入可能な肺非結核性抗酸菌症治療薬「アリケイス吸入液590mg」今回は、「アミカシン硫酸塩(商品名:アリケイス吸入液590mg、製造販売元:インスメッド合同会社)」を紹介します。本剤は、内服薬による多剤併用療法の抗菌効果が不十分な肺非結核性抗酸菌(NTM)症に上乗せすることができるアミノグリコシド系抗菌吸入薬です。<効能・効果>本剤は、アミカシンに感性のマイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)による肺NTM症の適応で、2021年3月23日に承認されました。なお、本剤の適用は、肺MAC症に対する多剤併用療法による前治療において効果不十分な患者に限定されています。<用法・用量>通常、成人にはアミカシンとして590mg(力価)を1日1回、専用ネブライザ(ラミラネブライザシステム)を用いて吸入投与します。なお、使用に当たっては、ガイドラインなどを参照し、多剤併用療法と併用します。喀痰培養陰性化が認められた以降も、一定期間は本剤の投与を継続します。臨床試験においては、喀痰培養陰性化が認められた以降に最大12ヵ月間、本剤の投与を継続しました。投与開始後12ヵ月以内に喀痰培養陰性化が得られない場合は、本剤の継続投与の必要性を再考する必要があります。<安全性>肺NTM症患者を対象とした第II、第III相試験の併合結果404例中330例(81.7%)で副作用が確認されました。主な副作用として、発声障害172例(42.6%)、咳嗽125例(30.9%)、呼吸困難57例(14.1%)、喀血42例(10.4%)、口腔咽頭痛37例(9.2%)、疲労29例(7.2%)、耳鳴り21例(5.2%)などが報告されています。重大な副作用として、過敏性肺臓炎(2.7%)、気管支痙攣(21.5%)、第8脳神経障害(15.1%)、急性腎障害(3.2%)、ショックおよびアナフィラキシー(頻度不明)が現れる可能性があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、在宅で吸入する抗菌薬です。肺の奥まで浸透することで感染細胞に取り込まれ、抗菌作用を発揮します。2.冷蔵庫(2~8℃)で保管し、凍らせないでください。25℃の室温で最大4週間保管が可能ですが、一旦室温に戻した場合は、未使用であっても4週間で廃棄してください。3.使用するときは、冷蔵庫から取り出して室温(20~25℃)に戻し、内容物が均一になるように10~15秒間激しく振り混ぜます。電池を入れるかACアダプターを接続した専用の吸入器を用いて、1日1回、約14~20分間吸入します。4.吸入後は、毎回洗浄・消毒をして、乾燥させてください。エアロゾルヘッドは週1回の超音波洗浄を行い、ハンドセット(吸入部)は1ヵ月ごとに新しいものに取り替えます。5.本剤を使用中に、咳、息切れ、発熱、呼吸困難、疲労感、発疹、めまい、耳鳴り、難聴、むくみ、尿量減少、食欲不振、悪心・嘔吐などの症状が現れたら、ただちに医師に連絡してください。<Shimo's eyes>近年、わが国の肺NTM症の罹患率および死亡率が増加しており、MACが原因菌種の80~90%超を占めています。治療は通常、リファンピシン、エタンブトール、クラリスロマイシンの3種類による多剤併用療法が選択され、必要に応じてストレプトマイシンまたはカナマイシンの併用を行います。しかし、選択肢が限られ、副作用や耐性化により治療が難しくなっているという課題があります。なお、本剤と同成分であるアミカシンの注射製剤もありますが、肺への浸透性が低く、重大な全身的副作用のリスクもあることから在宅での投与は困難です。本剤は、専用ネブライザを用いることで、吸入により、全身曝露を抑えて副作用を軽減しつつ、肺末梢の肺胞まで薬剤が効率的に分布して、感染細胞であるマクロファージへの取り込みを促進します。単剤では用いずに、上記の多剤併用内服療法に加えて使用します。国際共同第III相試験(CONVERT試験)では、投与6ヵ月目までの培養陰性化率は、GBT(ガイドラインに基づく多剤併用療法)単独群よりも本剤+GBT群のほうが高いことが認められました。海外のATS/ERS/ESCMID/IDSAガイドライン2020では、すでに難治性肺MAC症の推奨治療に組み込まれています。副作用としては、気管支痙攣のほか、第8脳神経障害が現れることがあるので、血中濃度が高くなりやすい腎機能障害がある患者、高齢者ではとくに注意が必要です。また、急性腎障害の報告もあります。治療早期には症状が見られないこともあるので、定期的なフォローを欠かさないようにしましょう。本剤による治療は、MAC菌が検出されなくなった最初の月から、12ヵ月後まで治療を継続することが推奨されています。長期間・連日の吸入となりますので、アドヒアランスや器具の取り扱い、副作用の確認のほか、治療モチベーションの維持についてもサポートしましょう。参考1)PMDA 添付文書 アリケイス吸入液590mg

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温水洗浄便座が院内感染を媒介する可能性?

 いまや、日本の世帯の8割超が使用していると見られる温水洗浄便座。患者の清潔にも有用であるため、医療機関でも多く導入されているが、便座のウォータージェットノズルを介して多剤耐性菌が院内感染を広がるリスクを示唆する新たな研究結果が明らかになった。東京医科大学病院感染制御部・感染症科准教授の中村 造氏らの研究チームが、今月、オンライン開催された第31回欧州臨床微生物学・感染症学会(ECCMID)で報告した。著者らは、「温水洗浄便座に関連した院内感染の報告は初めてで、感染制御に大きな影響を与える可能性がある」と述べている。 研究グループは、2020年9月~2021年1月、東京医科大学病院の血液病棟のトイレに設置された温水洗浄便座のウォータージェットノズルから検体を採取し、多剤耐性菌の有無を調べた。このトイレは、重症敗血症患者を含む多剤耐性緑膿菌(multidrug-resistant P. aeruginosa:MDRP)感染患者3例が使用していた。研究では、DNAフィンガープリント法により、3例が保有するMDRP株とノズルから採取されたMDRP株が一致するかどうかを調べた。MDRP株は、イミペネム、メロペネム、アミカシン、シプロフロキサシンなど、少なくとも2種類の抗菌薬に耐性を示すものと定義した。 その結果、患者の検体とノズルから採取した検体の株が一致し、いずれの検体も緑膿菌ST235クローンが優勢であった。 著者らは、単一の病院病棟における小規模研究であり、遺伝子解析では、患者からノズルへ移行した菌なのか、あるいはその逆なのかは判別できないなど、いくつかの研究の限界があるとしながらも、「本研究は、MDRPが患者集団内で伝染しており、汚染された温水洗浄便座のノズルを介して院内感染が広がる可能性があることを強く示唆するものである」と指摘。その一方、「徹底した手洗いや環境浄化で院内の衛生状態を良好にすることで、患者の免疫が低下していても感染制御は可能だ」と述べている。

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総合内科専門医試験オールスターレクチャー 感染症

第1回 コロナウイルス第2回 新型コロナワクチン第3回 マダニ媒介感染症第4回 血液培養第5回 発熱と発疹を伴う感染症第6回 性感染症 総合内科専門医試験対策レクチャーの決定版登場!総合内科専門医試験の受験者が一番苦労するのは、自分の専門外の最新トピックス。そこでこのシリーズでは、CareNeTV等で評価の高い内科各領域のトップクラスの専門医11名を招聘。各科専門医の視点で“出そうなトピック”を抽出し、1講義約20分で丁寧に解説します。キャッチアップが大変な近年のガイドラインの改訂や新規薬剤をしっかりカバー。Up to date問題対策も万全です。感染症については、国立国際医療研究センター国際感染症センター(※収録当時)の忽那賢志先生がレクチャー。猛威を振るう新型コロナウイルスの最新情報から、試験で問われやすいマイナーな感染症まで、狙いを定めて解説します。※「アップデート2022追加収録」はCareNeTVにてご視聴ください。第1回 コロナウイルス猛威を振るう新型コロナウイルスについて、最新の知見をまとめます。新型コロナと、SARSコロナウイルスやMARSコロナウイルスとの特徴を比較。新型コロナの発生起源、動物を介した感染経路など、これまでに判明している事実を整理し、コロナウイルスについての理解を深めます。世界各地で拡大し国内でも増加傾向にある変異株まで、気になる最近の動向も解説。※このレクチャーは、2021年3月21日時点の情報に基づいています。第2回 新型コロナワクチン国内で2021年2月下旬より医療者への先行接種が開始されたワクチン。新型コロナワクチンに採用された新しいプラットフォームであるmRNA2ワクチンについて、その原理を解説。非常に高い確率の発症予防効果ならびに重症化予防効果が証明されています。報告されている副反応や、アレルギーのある人に接種した場合のアナフィラキシーの頻度について、データを確認します。※このレクチャーは、2021年3月21日時点の情報に基づいています。第3回 マダニ媒介感染症マダニ媒介感染症は、まず媒介者となるダニの生息分布域を確認。ライム病、ツツガムシ病、日本紅斑熱、SFTSなどの各種マダニ媒介感染症は、国内の流行地域が異なり、同じ県内でも微妙な地域差があります。輸入感染症の側面もあり、海外渡航歴も診断の手がかりに。症状には共通する特徴が多く見られますが、流行時期、潜伏期や刺し口の違いなどに注目して鑑別します。マニアックな感染症は、知っていると試験で差がつくポイントです。第4回 血液培養菌血症を疑ったときに行う血液培養。ガタガタと震える悪寒戦慄があると菌血症を疑うポイント。細菌性髄膜炎、腎盂腎炎、感染性心内膜炎といった、菌血症の頻度が高い感染症を知っておきましょう。血培は基本的に2セット採取します。コンタミネーションしやすい菌なのか、しにくい菌なのか、検出された菌の種類も判断の指標となります。血培で検出された真の起炎菌に対して、投与する抗菌薬の種類も忘れずに。第5回 発熱と発疹を伴う感染症麻疹と風疹はどう鑑別するのか、症例から診断のポイントを解説。発疹の性状だけで鑑別するのは非常に難しく、ワクチン接種歴、罹患歴が極めて重要。髄膜炎菌感染症、リケッチア症、毒素性ショック症候群、アナフィラキシー、感染性心内膜炎といったショックを伴う皮疹では、診断の決め手となるキーワードを確認します。発熱・皮疹は輸入感染症の可能性もあります。輸入感染症診療の3つのポイントは、渡航地、潜伏期、曝露歴。第6回 性感染症性感染症を疑った場合、性交渉歴を聞く上で大事な“5P”を確認。感染リスクの高い行為を聞き逃さないようにします。近年増加傾向にある梅毒は、発疹の性状がさまざまで、神経梅毒による認知症など多彩な症状が特徴。病期によって治療内容が異なります。性感染症を診断した場合、他の性感染症の合併リスクも高く、スクリーニング検査やパートナーの診断治療も必要です。無症状が多いHIV、梅毒、淋菌感染症、クラミジアなどに要注意。

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総合内科専門医試験オールスターレクチャー 消化器(肝胆膵)

第1回 ウイルス性肝炎第2回 アルコール性肝疾患とNAFLD第3回 自己免疫性肝炎の原発性胆汁性胆管炎第4回 肝硬変第5回 急性胆嚢炎・胆管炎第6回 急性膵炎第7回 慢性膵炎 IPMN 総合内科専門医試験対策レクチャーの決定版登場!総合内科専門医試験の受験者が一番苦労するのは、自分の専門外の最新トピックス。そこでこのシリーズでは、CareNeTV等で評価の高い内科各領域のトップクラスの専門医11名を招聘。各科専門医の視点で“出そうなトピック”を抽出し、1講義約20分で丁寧に解説します。キャッチアップが大変な近年のガイドラインの改訂や新規薬剤をしっかりカバー。Up to date問題対策も万全です。消化器の肝胆膵については、東京医科歯科大学の山田徹先生がレクチャー。最新のガイドラインに合わせて、変更された標準治療など要点を押さえます。肝胆膵のいずれ疾患も、アルコール性か否かによって異なる治療法を整理します。※「アップデート2022追加収録」はCareNeTVにてご視聴ください。第1回 ウイルス性肝炎ウイルス性肝炎では、まず最も多いB型とC型を解説。B型肝炎は各種抗原抗体と一般的な感染パターンを相関図で整理。C型肝炎は、新しい直接型抗ウイルス薬(DAA)の開発が進み、慢性肝炎・代償期肝硬変だけでなく、非代償期肝硬変を含むすべてが治療対象となっています。最新のガイドラインに記載されている重症度別の第1選択薬を押さえます。日常臨床ではあまり見られない、A型・D型・E型肝炎についてもポイントを確認。第2回 アルコール性肝疾患とNAFLDウイルス性や自己免疫性が除外された肝疾患は、アルコール性と非アルコール性に分けられます。非アルコール性脂肪性肝疾患NAFLDの日本での有病率はおよそ30%で、現在増加傾向。肥満でない人にも多いのがポイント。NAFLD のうち、NASHは肝硬変への進展や肝がんの発生母地になるため、臨床的に重要な疾患概念です。バイオマーカーは未確定で、鑑別には原則肝生検が必要です。肝生検を行う目安を確認します。第3回 自己免疫性肝炎の原発性胆汁性胆管炎自己免疫性肝炎AIHは中年以降の女性に好発する肝疾患で、約30%に慢性甲状腺炎やシェーグレン症候群といった他の自己免疫性疾患を合併。AIHの10~20%に原発性胆汁性胆管炎PBCを合併したオーバーラップ症候群がみられます。PBCも中年以降の女性に好発し、他の自己免疫性疾患と合併する場合があります。ともに無症状から非特異的な症状が多く、診断のポイントとなる血液検査と病理検査が問題を解くカギです。第4回 肝硬変肝硬変の主な原因は、これまではC型肝炎でしたが、直接型抗ウイルス薬(DAA)の進歩により減少が予想されており、対してNASHの割合が増加傾向です。特徴的な身体所見を確認します。診断と予後予測には肝線維化を評価。肝硬変は低栄養や低血糖に陥りやすく、死亡率増加や各種合併症につながります。合併症となる食道静脈瘤、肝性脳症、腹水、特発性細菌性腹膜炎、肝腎症候群、肝細胞がんの各治療法も試験で問われるポイント。第5回 急性胆嚢炎・胆管炎急性胆嚢炎と急性胆管炎を比較しながら解説します。まず原因に胆石性の有無を確認することが重要。無石胆嚢炎は、症状は胆石性胆嚢炎と同じですが、外傷、心臓手術後、敗血症など高ストレス下で発症し、重症化しやすく死亡率が高いため、早期発見・早期治療が必須。急性胆嚢炎の画像診断は、腹部エコーが第1選択。診断基準となる数値を押さえます。急性胆嚢炎・胆管炎の治療は、抗菌薬・ドレナージ・手術の使い分けがポイント。第6回 急性膵炎急性膵炎の2大原因はアルコールと胆石。強い腹痛を伴う疾患で、約7割が心窩部痛です。重症度診断のスコアとともに、重症垂炎を除外するためのHAPSというスコアも有用です。発症早期の多量輸液が死亡率を下げるため重要。治療については、抗菌薬や蛋白分解酵素阻害薬の有効性について、最新の見解を整理します。膵周囲の液体貯留の定義である「改訂Atlanta分類」を踏まえて、感染性膵壊死の治療法を押さえます。第7回 慢性膵炎 IPMN慢性膵炎の原因はアルコールが68%を占めています。飲酒と喫煙がリスク因子で、原因が不明瞭な場合は遺伝子検査の対象になります。試験で出題されやすい画像診断では、膵石・石灰化、主膵管不整拡張といった所見が重要。無症状で偶発的に見つかることが多い膵管内乳頭粘液性腫瘍IPMN。画像診断はMRCPが第1選択。浸潤がんや悪性所見を見落とさないように、MCNやSCNとの鑑別ポイントを確認します。

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総合内科専門医試験オールスターレクチャー 消化器(消化管)

第1回 ピロリ菌感染症関連第2回 消化管悪性腫瘍第3回 消化管出血 腹部緊急疾患第4回 消化管機能性疾患第5回 感染症 炎症性腸疾患第6回 遺伝性疾患 好酸球性胃腸症 内分泌 総合内科専門医試験対策レクチャーの決定版登場!総合内科専門医試験の受験者が一番苦労するのは、自分の専門外の最新トピックス。そこでこのシリーズでは、CareNeTV等で評価の高い内科各領域のトップクラスの専門医11名を招聘。各科専門医の視点で“出そうなトピック”を抽出し、1講義約20分で丁寧に解説します。キャッチアップが大変な近年のガイドラインの改訂や新規薬剤をしっかりカバー。Up to date問題対策も万全です。消化器の消化管については、公立豊岡病院の宮垣亜紀先生がレクチャー。消化管は内視鏡画像の診断がポイント。豊富な症例画像を使って、頻出の内視鏡検査問題を徹底的にトレーニングします。※「アップデート2022追加収録」はCareNeTVにてご視聴ください。第1回 ピロリ菌感染症関連消化管は、内視鏡画像診断がポイント。非専門医にとっては普段見慣れない内視鏡画像ですが、試験に出題される疾患はある程度絞られているので、それを押さえれば攻略できます。第1回は、胃十二指腸潰瘍や胃がんのリスクとなるヘリコバクター・ピロリ菌。ピロリ菌に起因する疾患は、胃がんや潰瘍だけではありません。ピロリ菌感染関連疾患は、内視鏡で胃炎を証明し、ピロリ菌を証明するための各種検査も覚えておくことが重要です。第2回 消化管悪性腫瘍消化管悪性腫瘍には、胃がん、大腸がん、食道がん、消化管間質腫瘍GISTがありますが、共通して問われやすいのは、リスクファクター、内視鏡所見の診断、疾患に関する知識です。胃がんは内視鏡所見から深達度と組織型を診断し、内視鏡的粘膜下層剥離術の適応を判断。近年のトピックスとして、バレット食道がんの報告が増えています。粘膜下腫瘍の形態をとるGISTは、どの消化管でも起こりえます。超音波内視鏡やCTで診断します。第3回 消化管出血 腹部緊急疾患消化管出血と、試験に出題されやすい腹部緊急疾患について、身体所見、検査、治療を整理します。上部消化管出血の中でも緊急性が高いのは静脈瘤出血。静脈瘤結紮術で治療します。下部消化管出血で最もコモンな疾患は虚血性腸炎と大腸憩室出血。X線・CTで特徴的な画像所見を示すS状結腸軸捻転。腸閉塞とイレウスは概念を混同しないように注意。生の海産物を摂取した後の激烈な腹痛はアニサキス症を疑います。第4回 消化管機能性疾患機能性疾患の中でもよく出題される食道アカラシア。見た目ではっきりわかる腫瘍があるわけではないので、内視鏡検査では見つかりにくく、食道造影やマノメトリーという検査が有用です。新たな治療法として、経口内視鏡的括約筋切開術POEMが注目されています。機能性ディスペプシアと過敏性腸症候群は器質的疾患の除外が重要。胃食道逆流症にはびらん性と非びらん性があり、同じ薬剤でも効果に差があります。第5回 感染症 炎症性腸疾患多岐にわたる腸管感染症から、感染性腸炎、アメーバ性大腸炎、抗菌薬起因性腸炎について解説します。感染性腸炎は、抗菌薬が必要な状況の見極めがポイント。内視鏡的所見が特徴的なアメーバ性大腸炎。潰瘍の周囲にタコいぼ様びらんが見られます。日常臨床でもよくある潰瘍性大腸炎は、重症度に応じて薬剤か手術を選択。非連続性の全層性の肉芽腫性炎症が起きるクローン病は、狭窄を考慮しながら適した画像検査を選択します。第6回 遺伝性疾患 好酸球性胃腸症 内分泌好酸球性消化管疾患は、原因がまだ明らかになっていないアレルギー疾患です。遺伝性疾患では、大腸にポリープが多発する家族性腺腫性ポリポーシスは、放置するとがん化するため、大腸全摘が必要です。Peutz-Jeghers症候群は過誤腫性ポリープで、こちらはほとんどがん化しません。毛細血管拡張の画像所見が特徴的なオスラー病も覚えておきましょう。消化管内分泌のトピックスとして、神経内分泌腫瘍のガストリノーマについて確認します。

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アトピー性皮膚炎、黄色ブドウ球菌自家株を用いた細菌療法で重症度改善

 近年、アトピー性皮膚炎(AD)患者の皮膚マイクロバイオーム(微生物叢)に注目した研究が進んでおり、その中でも検出頻度の高い黄色ブドウ球菌(S. aureus)について、繰り返す皮膚炎症状との関連が指摘されるようになっている。 米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のTeruaki Nakatsuji氏らは、成人11例を対象とした無作為化二重盲検試験において、AD患者の皮膚から培養したS. aureus自家株を用いた細菌療法が、S. aureusのコロニー形成を安全に減少し、疾患重症度を改善する可能性が示されたと報告した。著者は、「より大規模な研究が必要だが、S. aureusを減らすというこの個別化アプローチは、抗菌薬、免疫抑制剤、免疫モジュレーションに代わるAD患者の治療法となりうるだろう」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2021年6月16日号掲載の報告。 研究グループは、AD患者各人のS. aureusに特異的な抗菌活性を有するコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS)を用いて製剤化した個別化外用クリーム(自家抗菌性CoNS[自家CoNS-AM+]クリーム)が、S. aureusのコロニー形成を減じ、疾患重症度を改善するか否かを評価するため、無作為化二重盲検プラセボ対照試験を単施設にて行った。 被験者は、成人の中等度~重症AD患者11例で、無作為に自家CoNS-AM+クリームを塗布する群(5例)またはプラセボクリームを塗布する群(6例)に割り付けられた。自家CoNS-AM+は、AD患者各人の非病変皮膚から採取したスワブ検体からの分離株で、培養増殖した後、107コロニー形成単位/gの濃度で採取した患者の前腕部に局所的に塗布された。 主要評価項目は、自家CoNS-AM+治療1週間後のS. aureus量で、株ベース法およびDNAベース法で評価した。副次評価項目として、安全性と臨床的アウトカムを評価した。試験は2016年4月~2018年5月に実施、データ解析は2018年5月~2019年7月に行われた。 主な結果は以下のとおり。・被験者11例のうち男性が4例(36.4%)、女性は7例(63.6%)であった。・自家CoNS-AM+群およびプラセボ群に重篤な有害事象はなかった。・治療終了時点で、病変部のS. aureus株は、自家CoNS-AM+群(log10でみた対ベースライン比中央値:-1.702[95%信頼区間[CI]:-2.882~-0.523])が、プラセボ群(0.671[-0.289~1.613])と比べて99.2%減少した(p=0.01)。・減少は、治療後4日時点でも持続していた(p=0.03)。自家CoNS-AM+群-1.752(95%CI:-3.051~-0.453)、プラセボ群-0.003(-1.083~1.076)。・重要な点は、11日時点で評価した病変部のEczema Area And Severity Indexスコアで、自家CoNS-AM+群(平均変化割合:-48.45[95%CI:-84.34~-12.55])の、プラセボ群(-4.52[-36.25~27.22])に対する有意な改善が認められたことであった(p=0.04)。

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新型コロナワクチン後、乳房インプラント施行例でみられた免疫反応

 COVID-19ワクチン接種後、ヒアルロン酸注入歴などを有する症例で、まれに痛みや腫脹などの反応が報告されている。皮膚充填剤のような異物は、免疫系が刺激されることで何らかの反応を引き起こす可能性があるという。ドイツ・Marienhospital StuttgartのLaurenzWeitgasser氏らは、COVID-19ワクチン接種後1~3日の間に乳房インプラント施行歴のある4例で注目すべき反応がみられたとし、その臨床的特徴や経過をThe Breast誌オンライン版2021年6月18日号に報告した。ワクチン接種後、ヒアルロン酸注入部位に腫脹 これまでに、モデルナ製ワクチンの1回目および/または2回目の投与直後に、美容目的でのヒアルロン酸注入の経験がある症例で、軟部組織の腫脹や顔面浮腫が報告されている1)。これらはモデルナ製ワクチンの第III相試験中に観察された。ワクチン接種後1~2日の間に報告され、ヒアルロン酸注入の時期はワクチン接種の2週間前から2年前までの範囲であった。また、過去にはインフルエンザワクチン接種後にも、同様の反応が報告されている2)。乳房インプラントや人工関節などについても、さまざまな種類のワクチン接種後に炎症反応を起こす可能性があるという。 ワクチン接種後にヒアルロン酸注入歴などを有する症例で、注目すべき反応がみられた4例についての詳細は以下のとおり。[症例1(76歳)]手術歴:美容的豊胸手術(64ヵ月前)症状:痛み、腫脹(両側)ワクチンの種類と症状発現時期:Pfizer/Biontec製ワクチン、初回接種2日後診断:被膜線維化治療経過:保存的治療(NSAIDs経口投与、凍結療法)→発症後2日で解消[症例2(52歳)]手術歴:美容的豊胸手術(17ヵ月前)症状:痛み、発赤(両側)ワクチンの種類と症状発現時期:Pfizer/Biontec製、初回接種2日後診断:被膜線維化治療経過:保存的治療(抗菌薬・NSAIDs経口投与、凍結療法)→発症後まもなく解消[症例3(52歳)]手術歴:インプラントベースの再建のためのエキスパンダー挿入(9ヵ月前~、最後の挿入は4週間前)症状:痛み(片側)ワクチンの種類と症状発現時期:Johnson & Johnson製、接種3日後治療経過:保存的治療(オピオイド・メタミゾール経口投与)→数日中に解消[症例4(53歳)]手術歴:インプラントベースの再建(2ヵ月前)症状:痛み、炎症、血清腫(片側)ワクチンの種類と症状発現時期:AstraZeneca製、初回接種1日後治療経過:外科的治療(インプラント除去と自家乳房再建、抗生物質静脈投与)→術後の経過は順調、数日後に退院 著者らは、世界中で数百万回の新型コロナワクチン接種が行われた後、インプラント施行歴のあるごく少数で観察されたものであり、大きな懸念はないだろうとしたうえで、ワクチン接種後のインプラントに関連する免疫反応を注意深く観察するよう患者に助言する必要があるのではないかと指摘。同時に、インプラントに対するワクチン接種後の反応は治療により管理可能で、COVID-19感染に伴うリスクがこれらの非常にまれにしか観察されない反応によってもたらされるリスクをはるかに上回っていると伝えるべきだと結んでいる。

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慢性掻痒でピンッとくるべき疾患は?【Dr.山中の攻める!問診3step】第3回

第3回 慢性掻痒でピンッとくるべき疾患は?―Key Point―皮膚に炎症がある場合は皮膚疾患である可能性が高い82歳男性。2ヵ月前から出現した痒みを訴えて来院されました。薬の副作用を疑い内服薬をすべて中止しましたが、改善がありません。抗ヒスタミン薬を中止すると痒みがひどくなります。一部の皮膚に紅斑を認めますが、皮疹のない部位もひどく痒いようです。手が届かない背中以外の場所には皮膚をかきむしった跡がありました。皮膚生検により菌状息肉腫(皮膚リンパ腫)と診断されました。この連載では、患者の訴える症状が危険性のある疾患を示唆するかどうかを一緒に考えていきます。シャーロックホームズのような鋭い推理ができればカッコいいですよね。◆今回おさえておくべき疾患はコチラ!【慢性掻痒を起こす疾患】(皮膚に炎症あり)アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、乾皮症、虫刺され、乾癬、疥癬、表在性真菌感染(皮膚に炎症なし)胆汁うっ滞、尿毒症、菌状息肉腫、ホジキン病、甲状腺機能亢進症、真性多血症、HIV感染症、薬剤心因性かゆみ(強迫神経症)、神経原性掻痒(背部錯感覚症、brachioradial pruritus)【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】慢性掻痒の原因を見極める、診断へのアプローチ■鑑別診断その1皮膚に目立った炎症があるアトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、乾皮症、虫刺され、乾癬、疥癬、表在性真菌感染家族や施設内に同様の掻痒患者がいる場合には疥癬を疑う。皮疹の部位が非常に重要である。陰部、指の間、腋窩、大腿、前腕は疥癬の好発部位である。皮膚に問題がない場合でも、慢性的にかきむしると苔癬化、結節性そう痒、表皮剥脱、色素沈着が起きることがある。■鑑別診断その2正常に近い皮膚なら全身性疾患によるそう痒を考え、以下を考慮する胆汁うっ滞、尿毒症、菌状息肉腫、ホジキン病、甲状腺機能亢進症、真性多血症、HIV感染症、薬剤薬剤が慢性掻痒の原因となることがあるかゆみを起こす薬剤:降圧薬(カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、サイアザイド)、NSAIDs、抗菌薬、抗凝固薬、SSRI、麻薬上記の鑑別疾患時に必要な検査と問診検査:CBC+白血球分画、クレアチニン、肝機能、甲状腺機能、血沈、HIV抗体、胸部レントゲン写真問診:薬剤歴■鑑別診断その3慢性的なひっかき傷がある時は、以下の疾患を想起すること心因性かゆみ(強迫神経症)、神経原性掻痒(背部錯感覚症、brachioradial pruritus)背部錯感覚症は背中(Th2~Th6領域)に、brachioradial pruritusは前腕部に激烈なかゆみを起こす。原因は不明。【STEP3】治療や対策を検討する薬が原因の可能性であれば中止する。以下3点を日常生活の注意事項として指導する。1)軽くてゆったりした服を身に着ける2)高齢者の乾皮症(皮脂欠乏症)は非常に多い。皮膚を傷つけるので、ナイロンタオルを使ってゴシゴシと体を洗うことを止める3)熱い風呂やシャワーは痒みを引き起こすので避ける入浴後は3分以内に皮膚軟化剤(ワセリン、ヒルドイド、ケラチナミン、亜鉛華軟膏)や保湿剤を塗る。皮膚の防御機能を高め、乾皮症やアトピー性皮膚炎に有効である。アトピー性皮膚炎にはステロイド薬と皮膚軟化剤の併用が有効である。副作用(皮膚萎縮、毛細血管拡張、ステロイドざ瘡、ステロイド紫斑)に注意する。Wet pajama療法はひどい皮膚のかゆみに有効である。皮膚軟化剤または弱ステロイド軟膏を体に塗布した後に、水に浸して絞った濡れたパジャマを着て、その上に乾いたパジャマを着用して寝る。ステロイドが皮膚から過剰に吸収される可能性があるので1週間以上は行わない。夜間のかゆみには、抗ヒスタミン作用があるミルタザピン(商品名:リフレックス、レメロン)が有効ガバペンチン(同:ガバペン)、プレガバリン(同:リリカ)は神経因性のそう痒に有効である。少量のガバペンチンは透析後の痒みに効果がある。<参考文献・資料>1)Yosipovitch G, et al. N Engl J Med. 2013;368:1625-1634.2)Moses S, et al. Am Fam Physician. 2003;68:1135-1142.

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特発性肺線維症に抗菌薬は無効/JAMA

 特発性肺線維症(IPF)成人患者において、通常治療にコトリモキサゾール(ST合剤)またはドキシサイクリンを追加しても、通常治療単独と比較して呼吸器関連入院または全死因死亡までの期間に有意な改善は認められないことが、米国・New York Presbyterian Hospital/Weill Cornell MedicineのFernando J. Martinez氏らによる実用的な無作為化非盲検臨床試験「CleanUP-IPF試験」で示された。IPFは、肺微生物叢の変化が病勢進行と関連しており、線維化を伴う間質性肺疾患患者においてST合剤がアウトカムを改善することや、ドキシサイクリンはIPF患者の予後を改善し、メタロプロテアーゼを阻害することが予備的研究で示唆されていた。今回の結果を受けて著者は、「IPFの基礎にある病態に対する抗菌薬治療は支持されない」とまとめている。JAMA誌2021年5月11日号掲載の報告。ST合剤またはドキシサイクリン追加の有効性を通常治療単独と比較 研究グループは、2017年8月~2019年6月の期間に米国35施設において、40歳以上のIPF患者513例を通常治療に加えて抗菌薬を投与する群(254例)または通常治療単独群(259例)に1対1の割合で無作為に割り付け、2020年1月まで追跡調査を行った。 抗菌薬群では、ST合剤(スルファメトキサゾール800mg/トリメトプリム160mg)の1日2回投与+葉酸5mgの1日1回投与(128例)、またはドキシサイクリン投与(体重50kg未満は100mgを1日1回、50kg以上は100mgを1日2回)(126例)を行い、通常治療単独群ではプラセボは投与しなかった。 主要評価項目は、予定外の初回呼吸器関連入院または全死因死亡までの期間であった。無作為化された513例(平均年齢71歳、女性21.6%)の全例が解析に組み込まれた。予定外の呼吸器関連入院または死亡までの期間は、通常治療+抗菌薬で延長せず 本試験は、2019年12月18日、事前に計画された初回有効性解析の結果に基づきデータ安全性モニタリング委員会により早期中止が決定した。 平均追跡期間13.1ヵ月(中央値12.7ヵ月)において、主要評価項目のイベントは合計108例で発生した。通常治療+抗菌薬群で52例(100人年当たり20.4件、95%信頼区間[CI]:14.8~25.9)、通常治療単独群で56例(18.4件、13.2~23.6)であり、両群で有意差は認められなかった(補正後ハザード比[HR]:1.04、95%CI:0.71~1.53、p=0.83)。 主要評価項目に対する事前に規定した抗菌薬の影響(ST合剤vs.ドキシサイクリン)については、統計学的な相互作用は確認されなかった(補正後HRの比較:コトリモキサゾール群1.15[95%CI:0.68~1.95]vs.ドキシサイクリン群0.82[0.46~1.47]、p=0.66)。 主な重篤な有害事象(発現率5%以上)は、通常治療+抗菌薬群vs.通常治療単独群で呼吸器系有害事象が16.5% vs.10.0%、感染症が2.8% vs.6.6%などであった。とくに注目すべき有害事象は、下痢(10.2% vs.3.1%)および発疹(6.7% vs.0%)であった。

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その胸やけ症状、本当に胸焼け?【Dr.山中の攻める!問診3step】第2回

第2回 その胸やけ症状、本当に胸焼け?―Key Point―悪性腫瘍を疑う症状や所見(red flag sign)がないか確認機能性ディスペプシアの診断基準を満たすか検討ピロリ検査が陽性なら除菌。陰性ならプロトンポンプ阻害薬を処方する同僚医師から30代前半の女性の診察を頼まれました。食後の胃もたれと軽い嘔気が1年以上続いているようです。胃カメラでは異常がなく、ヘリコバクター・ピロリ菌感染症もありません。プロトンポンプ阻害薬(PPI)を処方しましたが、あまり効果がありません。「機能性ディスペプシア」と思われました。原因がわからないまま症状が続くことが、とても辛かったようです。2週間に一度、外来に来ていただき訴えに共感しながら傾聴するよう心がけました。この連載では、患者の訴える症状が危険性のある疾患を示唆するかどうかを一緒に考えていきます。◆今回おさえておくべき症状はコチラ!【悪性腫瘍を疑うred flag sign】予期せぬ体重減少、嚥下障害、吐気/嘔吐、黒色便、貧血、血小板増多、胃がんの家族歴、治療に反応しないディスペプシア。日本では胃がんの発生が多いので、症状がなくても1~2年に1度の胃カメラが薦められている。【STEP1】患者の症状に関する勘違いを修正しよう!患者が症状を勘違いしていること、よくありますよね。【STEP2】ディスペプシアを起こす原因を探る1)逆流性食道炎消化性潰瘍ヘリコバクター・ピロリ菌感染症胃がん胃不全麻痺セリアック病クローン病膵炎膵がん胆石心筋梗塞糖尿病副腎不全など原因がわからないものを機能性ディスペプシア(FD:functional dyspepsia)と呼ぶ薬剤内服歴を確認することが重要。とくにNSAIDs、アスピリン、鉄剤、抗菌薬、レボドパ、ピル、ビスフォスフォネート製剤はよくディスペプシアを起こす胃カメラで見つかる疾患の頻度1)>70%は異常なし → 機能性ディスペプシア<10%は消化性潰瘍<1%が上部消化管悪性腫瘍【機能性ディスペプシア の診断基準 RomeIV】下記のいずれかの症状が6ヵ月以上前からあり、最近3ヵ月持続しているつらいと感じる食後のもたれ感つらいと感じる摂食早期の飽満感つらいと感じる心窩部痛つらいと感じる心窩部灼熱感かつ、症状を説明しうる器質的疾患はない。食後愁訴症候群(PDS:postprandial distress syndrome)と心窩部痛症候群 (EPS:epigastric pain syndrome)に分類される機能性ディスペプシアと過敏性腸症候群はよく合併する2)【STEP3】治療とその注意点をおさえる2)red flag signがなければ、胃カメラは行わずピロリ菌検査を行う。陽性だったら除菌する。陰性だったらPPI(プロトンポンプ阻害薬)を4~8週間投与する。無効なら少量の三環系抗うつ薬を考慮する日本人の60歳以上では、50%以上はヘリコバクター・ピロリに感染しているピロリ菌感染症は消化性潰瘍、胃がん、胃リンパ腫と関係がある。PPIの機能性ディスペプシアに対するNNT(number needed to treat、治療必要数)は133)であるPPIの副作用4)で最も多いのは下痢と頭痛。 PPIの種類を変えると下痢は良くなることがある。このほか、市中肺炎、急性の腸管感染症、Clostridium difficile感染症、急性間質性腎炎、顕微鏡的大腸炎、骨粗鬆症、ビタミンB12欠乏症を増加させるので注意。ビスフォスフォネート製剤はよくディスペプシアを起こすばかりか、食道潰瘍や胃潰瘍も起こすので要注意。もし、ビスフォスフォネート製剤を飲んでいるならば中止する禁煙やアルコールの減量を薦める消化管運動機能改善薬であるアコチアミドも臨床試験で有効性が示されている漢方では六君子湯や半夏厚朴湯が効果ありと言われている<参考文献・資料>1)Talley NL, et al. N Engl J Med.2015;373:1853-1863.2)Goldman L, et al. Goldman-Cecil Medicine. 2020;856-8573)Pinto-Sanchez MI, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017 Nov 21;11:CD011194.4)上田剛士著. 日常診療に潜む クスリのリスク.医学書院.p93-99. 2017.日本消化器学会編.機能性消化管疾患診療ガイドライン.2014―機能性ディスペプシア(FD)

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Dr.林の笑劇的救急問答16 皮膚科救急編

第5回 壊死性筋膜炎1 見た目はいいのに痛がりなのだ第6回 壊死性筋膜炎2 刺身を食べすぎて…?第7回 ダニ1 取れるものなら取ってみて!第8回 ダニ2 不明熱と発疹でつつがある? Dr.林の笑劇的救急問答も16年目に突入!下巻は「皮膚科救急編」。壊死性筋膜炎、ダニについて取り上げます。見逃し厳禁の「壊死性筋膜炎」。手遅れにならないための診断のポイントと詳しい病態をお教えします。また、「ダニ」のセッションでは、皮膚に張り付いたマダニの簡単な取り方やダニが介する感染症の診断・治療について解説します。思わず笑ってしまう症例ドラマと楽しくわかりやすいDr.林の講義でしっかりと学んでください。第5回 壊死性筋膜炎1 見た目はいいのに痛がりなのだDr.林の笑劇的救急問答16の後半は皮膚科救急です。そのなかでも見逃し厳禁の壊死性筋膜炎について取り上げます。壊死性筋膜炎の典型といえば、血性水泡やまっ黒い皮膚。教科書でよく見る所見です。でも、そこまでいってしまうともう手遅れ。早期では、そんな典型所見をみることはありません。また、血液検査の数値で予測できるとされるLRINECスコア。感度は90%以上といわれていますが、実は、臨床では役に立ちません。ではどうすれば早期に発見できるのでしょうか。第6回 壊死性筋膜炎2 刺身を食べすぎて…?前回に引き続き壊死性筋膜炎についてです。原因菌とその病態、タイプ分類などをDr.林が整理してわかりやすくお教えします。それらをきちんと理解し、病歴を詳しく聴取することが早期発見につながります。とくにリスクの高い患者さんには注意が必要です。どのような疾患がリスクとなるのか、しっかりと確認しましょう!第7回 ダニ1 取れるものなら取ってみて!皮膚科救急のもう1つのテーマはダニ。一晩でホクロができたと言って患者さんが受診することはありませんか?実はマダニがついているのです。あなたなら、どうやってそのダニを取り除きますか?無理に引っこ抜くと口器が残り、肉芽になったり、感染したりすることも。それならばワセリンやアルコールを使って滑りを良くして引っこ抜く?根性焼で焼き切る?それとも、皮膚ごと切り取ってしまう?いえいえ、実は簡単な方法があるんです!必見です!第8回 ダニ2 不明熱と発疹でつつがある?Dr.林の笑劇的救急問答16もいよいよ最終回!今回のテーマもダニ。不明熱+発疹で受診したときは、リケッチア病、ライム病など、ダニが介する感染症を疑う必要があります。その場合、探さなくてはならないものは「刺し口」。疑わないと見つけることができないので、疑うことから始めましょう。そして、治療については、選択する抗菌薬についてもしっかりとお教えします。

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介護施設での抗菌薬の使用状況、CDC調査/JAMA

 2017年、米国の介護施設入居者における抗菌薬の平均使用率は100人当たり8.2人に上り、とくに中心静脈カテーテル使用者(62.8/100人)や導尿カテーテル留置者(19.1/100人)で高率であったことが、米国疾病管理予防センター(CDC)のNicola D. Thompson氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌2021年4月6日号に掲載された。抗菌薬耐性感染症の制御と予防は、公衆衛生学上の優先事項とされる。介護施設は、入居者が抗菌薬耐性菌のコロニー形成や感染のリスクの合流点となるため、抗菌薬耐性の発生源となる可能性がある。一方、米国の介護施設における抗菌薬使用のデータは十分でないという。米国161施設の2017年の横断研究 本研究は、米国の介護施設における抗菌薬の使用状況の評価を目的とする横断研究(1日点有病率調査)で、同国のEmerging Infections Program(EIP)に参加する10州で選ばれた郡から無作為に選出された161の介護施設が調査に参加し、2017年4月~10月の期間に実施された(米国CDCの助成による)。 EIPの調査員が、入居者の背景因子や調査時に投与されていた抗菌薬の情報を収集した。施設の背景因子の情報は、当該施設の職員およびNursing Home Compareのウェブサイトから得た。 主要アウトカムは、入居者100人当たりの抗菌薬の使用率とし、調査時に少なくとも1種類の適格な抗菌薬を投与されていた入居者数を、調査対象の全入居者数で除して、100を乗じて算出した。フルオロキノロン系12.9%、広域スペクトル抗菌薬33.1% 161施設に入居中の1万5,276人(平均年齢[SD]77.6[13.7]歳、年齢範囲:18~108歳、女性9,475人[62%])が解析に含まれた。96.8%で完全な抗菌薬使用データが得られた。 調査の時点で、1万5,276人中1,258人が、1,454の全身性抗菌薬の投与を受けていた。このうち1剤が1,082人(86.0%、95%信頼区間[CI]:84~87.9)、2剤が158人(12.6%、10.8~14.5)、3~4剤が18人(1.5%、0.8~2.3)であった。 全体の抗菌薬使用率の平均値は8.2/100人(95%CI:7.8~8.7)、中央値は8.03/100人(IQR:4.9~11.2)であった。また、男性は9.6/100人(8.9~10.4)、女性は7.4/100人(6.9~7.9)であり、年齢層が高くなるほど使用率は低下した(<65歳:11.8/100人、65~74歳:9.0/100人、75~84歳:8.7/100人、≧85歳:5.8/100人)。 抗菌薬使用率が高かったのは、調査日前30日以内の入居者(18.8/100人、95%CI:17.4~20.3)、中心静脈カテーテルを使用している入居者(62.8/100人、56.9~68.3)、導尿カテーテルを留置している入居者(19.1/100人、16.4~22.0)であった。 抗菌薬は、活動性感染症(77%、95%CI:74.8~79.2)の治療としての使用が最も多く、主に尿路感染症(28.1%、15.5~30.7)に使用されていた。また、18.2%(16.1~20.1)が医学的予防に使用されていたが、その多くは尿路感染症(40.8%、34.8~47.1)だった。 最も使用頻度の高い薬剤クラスはフルオロキノロン系抗菌薬(12.9%、95%CI:11.3~14.8)であり、次いで第1世代セファロスポリン系抗菌薬(11.7%)、スルホンアミド系抗菌薬+トリメトプリム(8.2%)であった。また、使用された薬剤の33.1%(30.7~35.6)が広域スペクトル抗菌薬であった。 著者は、「この研究は、介護施設入居者の抗菌薬使用パターンに関して有益な情報を提供する」としている。

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総合内科専門医試験オールスターレクチャー 呼吸器

第1回 慢性閉塞性肺疾患(COPD) オーバーラップ症候群(ACO)第2回 特発性間質性肺炎(IIPs)第3回 咳嗽・喀痰第4回 喘息第5回 肺炎第6回 肺癌 総合内科専門医試験対策レクチャーの決定版登場!総合内科専門医試験の受験者が一番苦労するのは、自分の専門外の最新トピックス。そこでこのシリーズでは、CareNeTV等で評価の高い内科各領域のトップクラスの専門医を招聘。各科専門医の視点で“出そうなトピック”を抽出し、1講義約20分で丁寧に解説します。キャッチアップが大変な近年のガイドラインの改訂や新規薬剤をしっかりカバー。Up to date問題対策も万全です。呼吸器については、島根大学医学部附属病院の長尾大志先生がレクチャーします。ガイドラインの改訂がとくに顕著な呼吸器領域。疾患の概念や治療方針に関する大きな変更点、新たに採用された診断基準に注目します。※「アップデート2022追加収録」はCareNeTVにてご視聴ください。第1回 慢性閉塞性肺疾患(COPD) オーバーラップ症候群(ACO)タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じる慢性閉塞性肺疾患(COPD)。2018年のガイドライン改訂により、炎症だけでなく非炎症性機転も重視され、FEV1の数値と合わせて、各症状の程度を加味した総合的な重症度の判断が求められるようになりました。喘息とCOPDを合併したACOは、COPD全体の10~20%を占め、治療には吸入ステロイドを併用します。増悪した際の治療手順も試験で問われやすいポイントです。第2回 特発性間質性肺炎(IIPs)特発性間質性肺炎(IIPs)は、明らかな原因を特定できない間質性肺炎の総称。主要6疾患と、その他の希少疾患に分類されます。各疾患名だけでなく、対応する病理組織パターンもしっかり確認しておきましょう。中でも重要なのが特発性肺線維症(IPF)。IPFの診断は、病理診断は必須ではありませんが、アルゴリズムに沿って複数の項目をチェックします。他のIIPsと唯一異なるIPF治療のポイントは、ステロイドを使用しないこと。第3回 咳嗽・喀痰「咳嗽喀痰の診療ガイドライン2019」では、咳嗽と密接に関連している喀痰の項目を新たに追加。咳嗽と喀痰の原因疾患は、急性と慢性に大別されます。狭義の感染性咳嗽、いわゆる風邪には、抗菌薬は不要です。多彩な疾患が鑑別に上がる遷延性・慢性の咳嗽。鑑別診断では、結核や肺癌など危険な疾患を見逃すことなく、後鼻漏の原因となる好酸球性副鼻腔炎や、喘息、胃食道逆流症なども念頭に置きます。※この番組は2020年3月に収録したものです。新型コロナウイルス感染症については取り上げていません。第4回 喘息変動性を持った気道狭窄や咳などの症状を起こす喘息。これまで明確な診断基準は示されていませんでしたが、「喘息とCOPDのACO診断と治療の手引き2018」に、呼気一酸化窒素濃度(FeNO)値が診断に有効な指標として記載されました。近年の重要な治療方針の変更点は、以前は重症のみに使用されていた抗コリン薬が、比較的初期から吸入ステロイドと併用可能になったこと。重症例に効果的な抗体医薬も増えているので、しっかり押さえておきましょう。第5回 肺炎市中肺炎、院内肺炎、医療・介護関連肺炎の3つの肺炎が統合されたガイドラインが2017年に発表されました。終末期の症例が含まれる院内肺炎と医療・介護関連肺炎を1つの診療群とし、市中肺炎と区別した診療プロセスが示され、終末期における患者の意志やQOLを尊重した治療・ケアのあり方が重要なトピックとなっています。肺炎の種別の重症度スコアリング法や、段階別の治療戦略、適応できる薬剤を解説します。第6回 肺癌今回は非小細胞肺癌について詳しく解説します。肺癌については新規薬剤の開発が盛んで、それに伴ってガイドラインもオンラインで頻繁に更新されています。まずTMN分類で、手術、放射線治療、または薬剤治療のどれを採用するか適応判断。キナーゼ阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場によって、生存期間の延長が見込めるようになりました。副作用に耐えられるか、患者さんの体力も考慮しながら使用できる薬剤を選択します。

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市中肺炎入院の抗菌薬投与、3日間は8日間に非劣性/Lancet

 臨床的安定性の基準を満たす市中肺炎入院患者の抗菌薬治療では、15日後の治癒に関して、βラクタム系抗菌薬の3日間投与は8日間投与に対し非劣性であり、30日時の治癒、死亡、治療関連有害事象などには両群間に差はないことが、フランス・パリ・サクレー大学のAurelien Dinh氏らが行った「Pneumonia Short Treatment(PTC)試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年3月27日号に掲載された。成人の市中肺炎に関する米国のガイドラインでは、5日間以上の抗菌薬治療と臨床的安定性基準に準拠した治療中止が推奨されているのに対し、欧州では8日間投与が推奨されており、至適な治療期間は十分に確立されていない。市中肺炎入院患者の抗菌薬治療期間が短縮されれば、抗菌薬消費量の削減に役立ち、結果として薬剤耐性菌、有害事象、関連費用の削減がもたらされると考えられている。フランス16施設のプラセボ対照無作為化非劣性試験 本研究は、市中肺炎で入院し、3日間のβラクタム系抗菌薬の投与後に臨床的に安定した患者において、さらに5日間の追加投与の必要性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化非劣性試験であり、フランスの16施設が参加し、2013年12月~2018年2月の期間に参加者の適格基準の評価が行われた(フランス保健省の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、中等度の市中肺炎で入院(集中治療室[critical care unit]以外の病棟へ入院)し、3日間のβラクタム系抗菌薬による治療を受けた後、事前に規定された臨床的安定性基準を満たした患者であった。 被験者は、さらに5日間、βラクタム系抗菌薬(経口アモキシシリン1g+クラブラン酸125mg、1日3回)の投与を受ける群、またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、抗菌薬の初回投与から15日後の治癒とした。治癒は、無熱(≦37.8°C)、呼吸器症状の消失または改善、原因を問わず抗菌薬の追加投与がないことと定義された。非劣性マージンは10%ポイント(群間差の95%信頼区間[CI]の下限値が-10%より大きい場合に非劣性と判定)とされた。15日治癒割合、ITT解析で77% vs.68%、PP解析で78% vs.68% βラクタム系抗菌薬を3日間投与後、適格基準を満たした310例のうち、157例がプラセボ群に、153例が追加投与群に割り付けられた。試験薬の投与を受ける前に、7例(プラセボ群5例、追加投与群2例)が同意を撤回した。intention-to-treat(ITT)集団の年齢中央値は73.0歳(IQR:57.0~84.0)で、41%(123/303例)が女性であり、24%(73例)が2つ以上の併存疾患を有していた。 ITT解析では、15日時の治癒の割合は、プラセボ群が77%(117/152例)、追加投与群は68%(102/151例)であり、群間差は9.42%(95%CI:-0.38~20.04)と、プラセボ群の追加投与群に対する非劣性が示された。また、per-protocol解析による15日治癒割合は、プラセボ群が78%(113/145例)、追加投与群は68%(100/146例)で、群間差は9.44%(95%CI:-0.15~20.34)であり、プラセボ群は追加投与群に対し非劣性であった。 副次評価項目である30日時の治癒、死亡、1つ以上の治療関連有害事象、1つ以上の重篤な治療関連有害事象、入院期間、回復(仕事または日常生活活動への復帰)までの期間には、両群間に差は認められなかった。 最も一般的な有害事象は消化器症状で、プラセボ群の11%(17/152例)、追加投与群の19%(28/151例)で報告された。30日までの死亡は、プラセボ群が3例(2%)(黄色ブドウ球菌による菌血症、急性肺水腫後の心原性ショック、急性腎不全に関連する心不全)、追加投与群は2例(1%)(再発肺炎、急性肺水腫疑い)であった。 著者は、「これらの知見により、抗菌薬消費量が実質的に削減される可能性が示唆される」としている。

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