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第6回 意識障害 その5 敗血症ってなんだ?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)バイタルサインを総合的に判断し、敗血症を見逃すな!2)“No Culture,No Therapy!”、治療の根拠を必ず残そう!3)敗血症の初療は1時間以内に確実に! やるべきことを整理し遂行しよう!【症例】82歳女性の意識障害:これまたよく出会う原因82歳女性。来院前日から活気がなく、就寝前に熱っぽさを自覚し、普段と比較し早めに寝た。来院当日起床時から38℃台の発熱を認め、体動困難となり、同居している娘さんが救急要請。救急隊接触時のバイタルサインは以下のとおり。どのようにアプローチするべきだろうか?●搬送時のバイタルサイン意識:10/JCS、E3V4M6/GCS血圧:102/48mmHg 脈拍:118回/分(整) 呼吸:24回/分 SpO2:97%(RA)体温:37.9℃ 瞳孔:3/3mm +/+前回までの症例が一段落ついたため、今回は新たな症例です。高齢女性の意識障害です。誰もが経験したことのあるような症例ではないでしょうか。救急外来で多くの患者さんを診ている先生ならば、原因はわかりますよね?!前回までの復習をしながらアプローチしていきましょう。Dr.Sakamotoの10’s Ruleの1~6)を確認(表1)病歴やバイタルサインに重きを置き、患者背景から「○○らしい」ということを意識しながら救急車到着を待ちます。来院時も大きく変わらぬバイタルサインであれば、意識消失ではなく意識障害であり、まず鑑別すべきは低血糖です。低血糖が否定されれば、頭部CTを考慮しますが…。画像を拡大する原因は感染症か否か?病歴やバイタルサインから、なんらかの感染症が原因の意識障害を疑うことは難しくありません。それでは、今回の症例において体温が36.0℃であったらどうでしょうか? 発熱を認めた場合には細菌やウイルスの感染を考えやすいですが、ない場合に疑えるか否か、ここが初療におけるポイントです。この症例は、疫学的にも、そしてバイタルサイン的にも敗血症による意識障害が最も考えやすいですが、その理由は説明できるでしょうか。●Rule7 菌血症・敗血症が疑われたらfever work up!高齢者の感染症は意識障害を伴うことが多い救急外来や一般の外来で出会う感染症のフォーカスの多くは、肺炎や尿路感染症、その他、皮膚軟部組織感染症や腹腔内感染症です。とくに肺炎、尿路感染症の頻度が高く、さらに高齢女性となれば尿路感染症は非常に多く、常に考慮する必要があります。また、肺炎や腎盂腎炎は、意識障害を認めることが珍しくないことを忘れてはいけません。「発熱のため」、「認知症の影響で普段から」などと、目の前の患者の意識状態を勝手に根拠なく評価してはいけません。意識障害のアプローチの最初で述べたように、まずは「意識障害であることを認識!」しなければ、正しい評価はできません。感染症らしいバイタルサイン:qSOFAとSIRS*感染症らしいバイタルサインとは、どのようなものでしょうか。急性に発熱を認める場合にはもちろん、なんらかの感染症の関与を考えますが、臨床の現場で悩むのは、その感染症がウイルス感染症なのか細菌感染症なのか、さらには細菌感染症の中でも抗菌薬を使用すべき病態なのか否かです。救急外来など初療時にはフォーカスがわからないことも少なくなく、病歴や臓器特異的所見(肺炎であれば、酸素化や聴診所見、腎盂腎炎であれば叩打痛や頻尿、残尿感など)をきちんと評価してもわからないこともあります。そのような場合にはバイタルサインに注目して対応しましょう。そのためにまず、現在の敗血症の定義について歴史的な流れを知っておきましょう。現在の敗血症の定義は、「感染による制御不能な宿主反応によって引き起こされる生命を脅かす臓器障害1)」です(図1、2)。一昔前までは「感染症によるSIRS」でしたが、2016年に敗血症性ショックの定義とともに変わりました。そして、敗血症と診断するために、ベッドサイドで用いる術として、SIRS(表2)に代わりqSOFA (quickSOFA)(表3)が導入されました。その理由として、以下の2点が挙げられます。1)なんでもかんでも敗血症になってしまうSIRSの4項目を見ればわかるとおり、2項目以上は簡単に満たしてしまいます。皆さんが階段を駆け上がっただけでも満たしますよね(笑)。実際に感染症以外に、膵炎、外傷、熱傷などSIRSを満たす症候や疾患は多々存在し、さらに、インフルエンザなどウイルスに伴う発熱であっても、それに見合う体温の上昇を認めればSIRSは簡単に満たすため、SIRS+感染症を敗血症と定義した場合には、多くの発熱患者が敗血症と判断される実情がありました。2)SIRSを満たさない重篤な感染症を見逃してしまうSIRSを満たさないからといって敗血症でないといえるのでしょうか。実際にSIRSは満たさないものの、臓器障害を呈した状態が以前の定義(SIRS+感染症=敗血症)では12%程度認められました。つまり、SIRSでは拾いあげられない重篤な病態が存在したということです。これは問題であり、敗血症患者の初療が遅れ予後の悪化に直結します。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大するそこで登場したのがqSOFAです。qSOFAは、(1)呼吸数≧22/分、(2)意識障害、(3)収縮期血圧≦100mmHgの3項目で構成され、2項目以上満たす場合に陽性と判断します。項目数がSIRSと比較し少なくなり、どれもバイタルサインで構成されていることが特徴ですが、その中でも呼吸数と意識障害の2項目が取り上げられているのが超・超・重要です。敗血症に限らず重症患者を見逃さないために評価すべきバイタルサインとして、この2項目は非常に重要であり、逆にこれら2項目に問題なければ、たとえ血圧が低めであっても焦る必要は通常ありません。心停止のアルゴリズムでもまず評価すべきは意識、そして、その次に評価するのは呼吸ですよね。また、これら2項目は医療者自身で測定しなければ正確な判断はできません。普段と比較した意識の変化、代謝性アシドーシスの代償を示唆する頻呼吸を見逃さないように、患者さんに接触後速やかに評価しましょう。*qSOFA:quick Sequential[Sepsis- Related] Organ Failure Assessment ScoreSIRS:Systemic Inflammatory Response Syndrome“No Culture,No Therapy!”:適切な治療のために根拠を残そう!“Fever work up”という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 感染症かなと思ったら、必ずフォーカス検索を行う必要があります。熱があるから抗菌薬、酸素化が悪いから肺炎、尿が濁っているから尿路感染症というのは、上手くいくこともありますが、しばしば裏切られて後々痛い目に遭います。高齢者や好中球減少などの免疫不全患者では、とくに症状が乏しいことがあり悩まされます。フォーカスがわからないならば、抗菌薬を投与せずに経過を診るというのも1つの選択肢ですが、重症度が高い場合にはそうも言っていられません。また、前医から抗菌薬がすでに投与されている場合には、さらにその判断を難しくさせます。そのため、われわれが行うべきことは「(1)グラム染色を行いその場で関与している菌の有無を判断する、(2)培養を採取し根拠を残す」の2つです。(1)は施設によっては困難かもしれませんが、施行可能な施設では行わない理由がありません。喀痰、尿、髄液、胸水、腹水など、フォーカスと考えられる場所はきちんと評価し、その目でちゃんと評価しましょう。自信がない人はまずは細菌検査室の技師さんと仲良くなりましょう。いろいろ教えてくださいます。(2)は誰でもできますね。しかし、意外とやってしまうのが、痰が出ないから喀痰のグラム染色、培養を提出しない、髄膜炎を考慮しながらも腰椎穿刺を施行しないなんてことはないでしょうか。肺炎の起因菌を同定する機会があるのならば、痰を出さなければできません。血液培養は10%程度しか陽性になりません、肺炎球菌尿中抗原は混合感染の評価は困難、一度陽性となると数ヵ月陽性になるなど、目の前の患者の肺炎の起因菌を同定できるとは限りません。とにかく痰を頑張って採取するのです。喀出困難であれば、誘発喀痰、吸引なども考慮しましょう。肺炎患者の多くは数日前から食事摂取量が低下しており、脱水を伴うことが多く、外液投与後に喀痰がでやすくなることもしばしば経験します。とにかく採取し検査室へ走り、起因菌を同定しましょう。髄液も同様です。フォーカスがわからず、本症例のように意識障害を認め、その原因に悩むようであれば、腰椎穿刺を行う判断をした方がよいでしょう。不用意に行う必要はありませんが、限られた時間で対応する必要がある場合には、踏ん切りをつけるのも重要です。敗血症の1時間バンドルを遂行しよう!敗血症かなと思ったら表4にある5項目を遂行しましょう。ここではポイントのみ追記しておきます。敗血症性ショックの診断基準にも入りましたが、乳酸値は敗血症を疑ったら測定し、上昇している場合には、治療効果判定目的に低下を入れ、確認するようにしましょう。血圧は収縮期血圧だけでなく、平均動脈圧を評価し管理しましょう。十分な輸液でも目標血圧に至らない場合には、昇圧剤を使用しますが、まず使用するのはノルアドレナリンです。施設毎にシリンジの組成は異なるかもしれませんが、きちんと処方できるようになりましょう。ノルアドレナリンを使用することは頭に入っていても、実際にオーダーできなければ救命できません。バンドルに含まれていませんが重要な治療が1つ存在します。それがドレナージや手術などの抗菌薬以外の外科的介入(5D:drug、drainage、debridement、device removal、definitive controlの選択を適切に行う)です。急性閉塞性腎盂腎炎に対する尿管ステントや腎瘻、総胆管結石に伴う胆管炎に対するERCPなどが代表的です。バンドルの5項目に優先されるものではありませんが、同時並行でマネジメントしなければ一気に敗血症性ショックへと陥ります。どのタイミングでコンサルトするか、明確な基準はありませんが、院内で事前に話し合って決めておくとよいでしょう。画像を拡大する今回の症例を振り返る今回の症例は、高齢女性がqSOFAならびにSIRSを満たしている状態です。疫学的に腎盂腎炎に伴う敗血症の可能性を考えながら、バンドルにのっとり対応しました。もちろん低血糖の否定や頭部CTなども行いますが、以前の症例のように積極的に頭蓋内疾患を疑って撮影しているわけではありません。この場合には、脳卒中以上に明らかな外傷歴はなくても、慢性硬膜下血腫など外傷性変化も考慮する必要があるため施行するものです。尿のグラム染色では大腸菌様のグラム陰性桿菌を認め、腎叩打痛ははっきりしませんでしたが、エコーで左水腎症を認めました。抗菌薬を投与しつつ、バイタルサインが安定したところで腹部CTを施行すると左尿管結石を認め、意識状態は外液投与とともに普段と同様の状態へ改善したため、急性閉塞性腎盂腎炎による敗血症が原因と考え、泌尿器科医と連携をとりつつ対応することになりました。翌日、血液培養からグラム陰性桿菌が2セット4本から検出され、尿培養所見とも合致していたため確定診断に至りました。いかがだったでしょうか。よくある疾患ですが、系統だったアプローチを行わなければ忙しい、そして時間の限られた状況での対応は意外と難しいものです。多くの患者さんの対応をしていれば、原因疾患の検査前確率を正しく見積もることができるようになり、ショートカットで原因の同定に至ることもできると思いますが、それまではコツコツと一つひとつ考えながら対応していきましょう。次回はアルコールや薬剤による意識障害の対応に関して考えていきましょう。1)Singer M, et al. JAMA. 2016;315:801-810.2)Levy MM, et al. Crit Care Med. 2018;46:997-1000

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血流感染、ピペラシリン・タゾバクタムvs.メロペネム/JAMA

 大腸菌(E.coli)または肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)に感染し、抗菌薬セフトリアキソンが無効な患者において、definitive治療としてのピペラシリン・タゾバクタムはメロペネムと比較して、30日死亡率に関する非劣性を示さなかった。オーストラリア・クイーンズランド大学のPatrick N. A. Harris氏らによる無作為化試験の結果で、JAMA誌2018年9月11日号で発表された。大腸菌や肺炎桿菌では拡張型β-ラクタマーゼが、第3世代のセファロスポリン系薬(セフトリアキソンなど)に対する耐性を媒介する。これらの菌株に起因する重大な感染症では、通常、カルバペネムによる治療が行われるが、カルバペネム耐性を選択する可能性があることから、研究グループは、ピペラシリン・タゾバクタムが、拡張型β-ラクタマーゼの産生を抑制する、有効な“カルバペネム温存”オプションとなりうる可能性があるとして検討を行った。ピペラシリン・タゾバクタムのメロペネムに対する非劣性を無作為化後30日時点の全死因死亡で評価 セフトリアキソン非感受性で大腸菌または肺炎桿菌に起因する血流感染症の患者において、definitive治療としてピペラシリン・タゾバクタムのメロペネム(カルバペネム)に対する非劣性を調べる検討は、2014年2月~2017年7月に、9ヵ国26施設で入院患者を登録して行われた(非劣性並行群間比較無作為化試験)。 被験者は、大腸菌または肺炎桿菌の血液培養検査で最低限いずれかの陽性が認められ、セフトリアキソンに非感受性だが、ピペラシリン・タゾバクタムに感受性が認められる成人患者を適格とした。 スクリーニングを受けたのは1,646例。試験には391例が包含され、1対1の割合で2群に無作為化された。1群(188例)はピペラシリン・タゾバクタム4.5gを6時間ごとに、もう1群(191例)はメロペネム1gを8時間ごとに投与された。治療期間は最短4日間、最長14日間として、治療担当医が総治療期間を決定した。 主要評価項目は、無作為化後30日時点の全死因死亡であった。非劣性マージンは5%とした。ピペラシリン・タゾバクタムのメロペネムに対する非劣性は示されず 主要解析集団には、無作為化が適切で、試験薬を少なくとも1回投与された被験者379例(平均年齢66.5歳、女性47.8%)が包含された。このうち378例(99.7%)が試験を完了し、主要評価項目について評価を受けた。 30日時点の全死因死亡率は、ピペラシリン・タゾバクタム群12.3%(23/187例)であったのに対し、メロペネム群3.7%(7/191例)であった。両群間のリスク差は8.6%(片側97.5%信頼区間[CI]:-∞~14.5)で、ピペラシリン・タゾバクタムのメロペネムに対する非劣性は示されなかった(p=0.90)。有効性は、per-protocol集団で一貫して認められた。 非致死的な重大有害事象の発生の報告は、ピペラシリン・タゾバクタム群2.7%(5/188例)、メロペネム群1.6%(3/191例)であった。 結果を踏まえて著者は「所見は、今回の設定集団においてはピペラシリン・タゾバクタムの使用を支持しないものであった」とまとめている。

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第6回 内科からのオーグメンチン・クラリスロマイシンの処方 (後編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

前編 Q1処方箋を見て、思いつく症状・疾患名は?Q2患者さんに確認することは?Q3 患者さんに何を伝える?副作用と再受診 キャンプ人ペニシリン系の副作用である下痢、発疹、クラリスロマイシンの副作用である下痢について説明します。また、原因菌が不明なので、出張中もきちんと薬を飲んで再度病院へ受診して点滴するように説明します。抗菌薬を決まった時間に服用 奥村雪男オーグメンチン®配合錠に含まれるアモキシシリンがペニシリン系で時間依存であることから、飲み忘れなく定時に服用することが大事であることを説明します。他院受診時に服薬状況を伝えることとアセトアミノフェンの服用方法 ふな3出張先などで体調が急変した場合に備えて、必ずおくすり手帳(もしくは薬情)を携帯して、これらの薬剤を服用していることを受診先でも伝えるように説明します。また、アセトアミノフェンの量が多めなので、高熱や寒気がひどくなければ、1回300mg 1錠でも効果は得られることと、1回2錠で服用する場合にはできれば6時間、最低4時間をあけて、1日2回までの服用にとどめるよう伝えます。飲酒や喫煙を控える JITHURYOU薬剤と同時に飲酒することはもちろん、飲酒も控える(特にアセトアミノフェンと飲酒は代謝が促進され、肝毒性のリスクが上昇する)ことを伝えます。仕事が多忙のようですが、安静にして外出は控えたほうが良いです。咳嗽が誘発されるので当然喫煙は控えるよう伝えます。他者にうつさないように わらび餅仕事を続けるとのことなので、他者にうつさぬよう感染対策(マスクや手洗い、消毒など)をお願いします。原因菌がはっきりしていないので、良くなっても途中で服薬を中断せず、3日以内に再受診するよう説明します。治癒傾向 中西剛明治療の経過で、食欲不振、横になるより起きていたほうが楽、という状況が改善されない場合は「無効」「悪化」を疑わなくてはいけません。眠ることができるようになった、食欲が回復してきたら治癒傾向ですよ、とお話しします。Q4 疑義照会をする?しない?疑義照会するオーグメンチン®配合錠の規格 奥村雪男添付文書上のオーグメンチン®配合錠の用法用量は「1回375mg 分3~4 6~8時間」なので、念のためオーグメンチン®配合錠の規格が125RSでなく250RSで良いか確認します。ただし、原因菌としてペニシリン耐性肺炎球菌を想定して、アモキシシリンを高用量で処方した可能性を踏まえておきます。CYP3A4を基質とする併用禁忌の薬剤を服用していて中止できない場合は、マクロライド系でCYP3A4阻害作用の弱いアジスロマイシンへの変更を提案します。消化器系の副作用予防を考慮 清水直明オーグメンチン®配合錠250RS 6錠/日は添付文書の年齢、症状により適宜増減の範囲内、アモキシシリンは1,500mgと高用量で、S. pneumoniaeを念頭においた細菌性肺炎の治療としては妥当と考えます。ただし、オーグメンチン®配合錠250RSでアモキシシリンを1,500mg投与しようとすると、必然的にクラブラン酸の量も多くなり、消化器系の副作用が出やすくなると思います。小児用ではクラブラン酸の比率を下げた製剤がありますが、成人用ではありません。そのため、オーグメンチン®配合錠250RS 3錠/日+アモキシシリン錠250mg 3錠/日を組み合わせて投与する方が、消化器系副作用の可能性は低くできると思うので疑義照会します(大部分のM. catarrhalisや一部のH. influenzae、あるいは一部の口腔内常在菌は、β-ラクタマーゼを産生しアモキシシリンを不活化する可能性があり、β-ラクタマーゼ阻害薬の配合剤が治療には適しているとされているので、あえてオーグメンチン®配合錠とアモキシシリンの組み合わせを提案します)。クラリスロマイシンについては、非定型肺炎も視野に入れて併用されていますが、M. pneumoniaeについてはマクロライド耐性株が非常に増加しています。しかし、そのような中でもM. pneumoniaeに対しての第1選択はクラリスロマイシンなどのマクロライド系薬であり4)、初期治療としては妥当と考えます。細菌性肺炎であったとしても、マクロライド系薬の新作用※3を期待して併用することで、症状改善を早めることができる可能性があるため併用する意義があると思います。※3 クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬は、抗菌作用の他に、免疫炎症細胞を介する抗炎症作用、気道上皮細胞における粘液分泌調整作用、バイオフィルム破壊作用などをもつことが明らかになっている。保険で査定されないように 中西剛明抗菌薬の2種併用のため、疑義照会をします。医師から見ると「不勉強な薬剤師だ」と勘違いされてしまうかもしれませんが、抗菌薬の併用療法は根拠がない場合、査定の対象になることがあり、過去査定された経験があります。そのため「併用の必要性を理解している」上での問い合わせをします。耐性乳酸菌製剤の追加 中堅薬剤師過去に抗菌薬でおなかが緩くなって飲めなかったことがある場合は、耐性乳酸菌製剤の追加を依頼します。併用禁忌に注意 児玉暁人クラリスロマイシンとの併用禁忌薬を服用していれば、疑義照会をします。クラリスロマイシンの処方日数 ふな3セフトリアキソンを点滴していることから,処方医は細菌性肺炎を想定しつつも「成人市中肺炎診療ガイドライン」から非定型肺炎の疑いも排除できないため、クラリスロマイシンを追加したと考えました。セフトリアキソン単剤では、万一、混合感染であった場合に非定型肺炎の原因菌が増殖しやすい環境になってしまうことが懸念されるため、治療初期からクラリスロマイシンとの併用が望ましいと考えられるので、クラリスロマイシンの処方を4日に増やして、今日からの服用にしなくて良いのか確認します。基礎疾患の有無を確認してから 柏木紀久細菌性肺炎で原因菌が不明の場合を考え、まず「成人市中肺炎診療ガイドライン」に沿って基礎疾患の有無を確認します<表3> 。軽症基礎疾患がある場合のβ-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリンは常用量と考えられるので、軽度基礎疾患が確認できた場合にはオーグメンチン®配合錠が高用量で良いのか確認します。膿や痰などの培養検査の有無の確認。検査をしていなければ検査依頼をします。基礎疾患がない場合では、細菌性肺炎を考えつつも出張などで他者へ感染させる可能性を考慮して、非定型肺炎や混合感染を完全には排除せずクラリスロマイシンも処方したのでは、などと考えますが、念のためクラリスロマイシンの処方意図を確認します。疑義照会をしないガイドラインに記載有り キャンプ人特にしません。非定型肺炎との鑑別がつかない場合は、「JAID/JSC感染症治療ガイド2014」2)にも同用量の記載があります。協力メンバーの意見をまとめました疑義照会については・・・ 疑義照会をする オーグメンチン®配合錠の消化器系の副作用予防・・・3名抗菌薬の2種併用について・・・2名オーグメンチン®配合錠の規格の確認・・・1名耐性乳酸菌製剤の追加依頼・・・1名併用禁忌薬について・・・1名クラリスロマイシンの処方日数・・・1名基礎疾患に基づいて疑義照会・・・1名 疑義照会をしない 2名1)日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会. 成人市中肺炎診療ガイドライン. 東京、 日本呼吸器学会、 2007.2)JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会. JAID/JSC感染症治療ガイド2014. 東京, 一般社団法人日本感染症学会, 2015.3)日本結核病学会. 結核診療ガイドライン 改訂第3版. 東京, 南江堂, 2015.4)「 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療方針」策定委員会. 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針. 東京, 日本マイコプラズマ学会, 2014.

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第5回 内科からのオーグメンチン・クラリスロマイシンの処方 (前編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?(協力メンバー12名、複数回答)Haemophilus influenzae(インフルエンザ菌)・・・11名Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌)・・・10名Mycoplasma pneumoniae(肺炎マイコプラズマ)・・・9名Moraxella catarrhalis(モラクセラ・カタラーリス)・・・6名Chlamydia pneumoniae(肺炎クラミジア)・・・5名Legionella 属(レジオネラ属)・・・2名Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)・・・2名細菌性肺炎・非定型肺炎の両方の可能性 奥村雪男オーグメンチン®配合錠が選択されていることから、S. pneumoniae、 H.influenzae(BLPAR※1を含む)、M. catarrhalis。クラリスロマイシンが選択されていることから、M.pneumoniae、 Legionella 属、 C. pneumoniae。市中肺炎であり原因菌が同定されていないため、細菌性肺炎・非定型肺炎の両方の可能性を考え、原因菌として主要な6つの病原体を全てカバーしていると考えます。点滴を行った時点では細菌性肺炎が強く疑われていたようですが、出張となるので非定型肺炎であった場合でも対応できるようにマクロライドが追加され、このような処方になったと考えます。肺炎の重症度は、「成人市中肺炎診療ガイドライン」1)では、A-DROPシステム<表1>のスコアが0→外来治療、1~2→外来または入院、3→入院治療、4~5→ICU入院としているので、入院が望ましいが外来でも可とのことから、1~2に該当する中等度肺炎と予想されます。※1 BLPAR:β-lactamase-positive ampicillin-resistant H. influenzae(β-ラクタマーゼ産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌)非定型肺炎の鑑別診断も参考に 荒川隆之一般成人の市中肺炎なので、細菌性肺炎としてはS. pneumoniaeやH. influenzae、 M. catarrhalis、非定型肺炎としてはM. pneumoniaeやC. pneumoniae、Legionella 属などを想定します。「成人市中肺炎診療ガイドライン」の細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別<表2>を参照すると、この患者さんの場合、1~5の5項目中1、2、5を満たすと考えれば、非定型肺炎を疑う必要もあります。結核菌の可能性も 中西剛明外来なので市中肺炎の3 大原因菌( S. pneumoniae、 H. influenzae、 M.pneumoniae)の中から絞り込みます。尿検査をしているので、S. pneumoniaeの可能性は低い(尿中肺炎球菌抗原で原因菌の絞り込みが可能)、血液検査でマイコプラズマ抗体の検査が可能なこと、1週間点滴に通うようにと提案されている(M. pneumoniaeに感受性のある点滴はミノサイクリンくらいしか外来治療では使えない)ことから、H. influenzaeを疑います。それも、耐性菌の可能性を念頭に、BLPAR/BLNAR※2の線が濃厚です。処方日数が3日なのは、原因菌の特定が完全ではないこと、感受性試験の結果を見て薬剤を変更する余地を残していることが考えられます。加えて、結核の除外診断はついていないと予想できます。もし医師が結核の可能性がないと判断していれば、BLPAR/BLNARに対してレボフロキサシン単剤で処方2)していたでしょう。なお、結核疑いのままレボフロキサシンなどのキノロン系薬単剤で治療を開始することは、「結核診療ガイドライン」3)では禁忌事項に記載されています。※2 BLNAR:β-lactamase-negative ampicillin-resistant H. influenzae(β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌)複数の原因菌が混合している可能性も 柏木紀久喀痰検査が行われず、血液検査、尿検査を行った上での処方なので、細菌性肺炎か非定型肺炎か明らかでなかったか、または混合感染の可能性も考えますが、セフトリアキソンの点滴を行っているので原因菌不明の細菌性肺炎を主に想定していると考えます。Q2 抗菌薬について、患者さんに確認することは?併用薬と抗菌薬での副作用歴 中堅薬剤師併用薬と、今まで抗菌薬で副作用がなかったか。アレルギーと抗菌薬服用による下痢の経験 柏木紀久ペニシリンアレルギーと、抗菌薬の服用で下痢になったことがあるか。再受診と毎食後に服用可能か ふな33日後の再受診についてどのように指示されているか。食欲・嘔気の有無、食事は規則的か=毎食後で飲めるか。検査結果、既往歴、抗菌薬使用歴 佐々木康弘検査結果について確認したいです。Legionella属、M. pneumoniae、S. pneumoniaeの検査結果は抗菌薬選択に大きく影響します。既往歴や抗菌薬使用歴も確認したいです。気管支拡張症や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの既往歴があれば、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)も想定した抗菌薬治療が必要ですし、抗菌薬治療していて増悪している場合はニューキノロン系薬剤の使用も考慮します。インフルエンザウイルスへの先行感染 奥村雪男受診時期が冬季であれば、インフルエンザウイルスへの先行感染が無かったか確認したいです。その場合は原因菌としてS. aureusを想定する必要があります。ただ、メチシリン感受性S. aureusであれば、オーグメンチン®配合錠で治療可能と考えます。職業や活動範囲などの情報収集 JITHURYOU患者インタビューの質を上げて、できるだけ多くの情報を得られるよう努めます。喫煙習慣、職業温泉や湖や沼などに最近行ってないか?(Legionella属鑑別)家族など周囲に咳が強く出ている人がいないか?(患者の年齢だと10~20代の子供がいる可能性があり、その年代は比較的M. pneumoniaeが多いとされている)鳥との接触はあるか?(オウム病鑑別)併用している抗菌薬の確認のため、ヘリコバクター・ピロリ除菌療法を受けているか、COPDなどの呼吸器系基礎疾患があるか(マクロライド長期療法を受けている可能性を考慮)後編では、本症例の患者さんに何を伝える、疑義照会をする/しない 理由を聞きます。1)日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会. 成人市中肺炎診療ガイドライン. 東京、 日本呼吸器学会、 2007.2)JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会. JAID/JSC感染症治療ガイド2014. 東京, 一般社団法人日本感染症学会, 2015.3)日本結核病学会. 結核診療ガイドライン 改訂第3版. 東京, 南江堂, 2015.4)「 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療方針」策定委員会. 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針. 東京, 日本マイコプラズマ学会, 2014.[PharmaTribune 2015年12月号掲載]

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第4回 耳鼻科からのアモキシシリン・アセトアミノフェン 5日間の処方 (後編)【 適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析 】

前編 Q1処方箋を見て、思いつく症状・疾患名は?Q2患者さんに確認することは?Q3患者さんに何を伝える?Q4 疑義照会をする?しない?疑義照会するアモキシシリンの処方日数 児玉暁人中耳炎の抗菌薬効果判定は3日目なので、アモキシシリンの処方日数を確認したいです。エンテロノン®-Rの投与量 わらび餅アセトアミノフェンの用量からは、患者の体重は14kg。2歳児としては大きい方で、かつアモキシシリンも高用量なので、エンテロノン®-Rは1g/日以上飲んでもいいのではと考えます。整腸剤自体は毒性の高いものではないので、少なめにする必要はないかと考えます。抗菌薬変更、検査の有無、アセトアミノフェンの頻度 JITHURYOU直近1カ月の抗菌薬の使用状況を聞き、抗菌薬を連用している場合は耐性菌の可能性があるのでセフジトレンピボキシルなどへの変更を提案します。膿や痰などの培養検査の有無の確認。検査をしていなければ検査依頼をします。アセトアミノフェンの使用頻度を確認したいです。医師によっては、炎症が強いと考えられる場合は特別に指示をしている可能性(夜間の発熱や疼痛)があります。場合によっては坐薬への変更提案をします。カルボシステインの服用回数 柏木紀久カルボシステインは1日量としてはいいのですが、分2投与に疑問があります。夜間睡眠中は副腎皮質ホルモンの分泌低下や繊毛運動の低下による排膿機能の低下、仰臥位による後鼻漏も起こりうるので、これらを考慮してあえて分2にしたとも考えられますが、確認を含めて疑義照会します。投与3日後の症状によっては抗菌薬の変更を提案 荒川隆之「JAID/JSC感染症治療ガイド2014」では、中等症以上の中耳炎の場合、アモキシシリンは25~30mg/kgを1日3回投与とありますので、1回420mg投与は妥当と考えます。ただ、このガイドでは投与期間が3日となっているので、3日治療をしても効果が見られない場合は、抗菌薬の変更を医師に提案します。疑義照会をしないガイドラインに則った投与量 清水直明小児急性中耳炎の起因菌としては肺炎球菌やインフルエンザ菌が多く、それらはPISP、PRSP、BLNAR※などといったペニシリンに対する耐性株の分離が多いことが報告されており、アモキシシリンは高用量投与が推奨されています。本処方のアモキシシリン投与量は添付文書上の最大用量ですが、「JAID/JSC感染症治療ガイド2014」に則った投与量であり、このままの処方でOKとします。※PISP;Penicillin-intermediate Streptococcus pneumoniae(ペニシリン中等度耐性肺炎球菌) PRSP;Penicillin-resistant Streptococcus pneumoniae(ペニシリン耐性肺炎球菌) BLNAR;β-lactamase-negative ampicillin-resistant Haemophilus influenzae(β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌)気になるところはあるが… 中堅薬剤師エンテロノン®-Rの投与量が少ない気はします。症例の子供の体重は14kgと思われ、60kgの成人は3g/日が標準とすれば、14kgでは0.7g/日と比例計算したのでしょう。しかし、これまでの経験から多くの小児科処方では体重1kgあたり0.1~0.15g/日くらいでしたので、14kgの子供であれば1.4~2.1gくらいと考えます。ただ、乳酸菌製剤には小児の用量設定がなく、医師に疑義照会できるだけの根拠がありません。問題があるわけではないので、実際にはこのまま調剤します。協力メンバーの意見をまとめました今回の抗菌薬処方で患者さんに確認することは・・・(通常の確認事項は除く)ペニシリンや牛乳のアレルギー・・・3名最近中耳炎になったかどうか・・・2名再受診を指示されているか・・・2名昼の服用について・・・1名鼓膜切開しているかどうか・・・1名集団保育・兄弟の有無・・・1名患者さんに伝えることは・・・抗菌薬は飲み忘れなく最後まで飲みきること・・・6名副作用の下痢がひどい場合は連絡すること・・・4名アモキシシリンとエンテロノン®-Rは指示通りの服薬時間でなくても、1日3回飲むこと・・・3名再受診を促すこと・・・1名服用後3日経っても症状が改善しない場合は連絡すること・・・1名アセトアミノフェンの使用方法(頻度)・・・1名鼻汁をとること、耳漏の処置・・・1名疑義照会については・・・ 疑義照会する カルボシステインの分2処方・・・5名アモキシシリンの処方日数・・・2名アセトアミノフェンの使用について。場合によっては坐薬への変更提案・・・2名エンテロノン®-Rの投与量・・・1名セフジトレンピボキシルなどへの変更提案・・・1名培養検査の依頼・・・1名 疑義照会をしない 6名

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外来での高齢者に対する抗菌薬処方(解説:吉田敦氏)-907

 高齢者において、抗菌薬の処方が過剰となり、それが薬剤耐性(AMR)に結びついているという指摘は以前から存在した。米国においても、抗菌薬適正使用およびAMRへの取り組みから抗菌薬の総使用量は減少し始めていたが、高齢者における使用量の変化については不明な部分が多かった。今回、高齢者の98%が加入可能な公的保険である米国メディケアにおいて、高齢者の外来での抗菌薬処方と、各診断名に対して適切な抗菌薬が使用されていたかどうかを観察研究として調査した。 本研究では、2011~15年の65歳以上のメディケア加入者のうち、20%をランダムに選び、保険請求書を基に患者背景、外来での抗菌薬の処方数(経口・静注、ジェネリックを含む)、および感染症診断名の情報を得た。抗菌薬については、処方数上位10薬剤とそのトレンドを把握した。感染症診断名はICD-9に基づくものとし、20個のカテゴリーに分類した(たとえば、「肺炎」)。診断名と抗菌薬使用の妥当性から、使用を「適正使用」「不適切使用」「判定不能」の3群に分けた。 5年間のメディケア加入者450万人分の、1950万の請求書を解析した。抗菌薬に関する請求数は、加入者1,000人当たりでみると、2011年と14年の間では減少していたが、15年にはやや増加しており、2011年と15年では0.2%の減少にとどまった。この傾向は患者集団によってばらつきがあったが、75~84歳の年齢層、女性、白人、米国南部・北東部では増加が目立った。「不適切使用」は全体の約40%で、3.9%減少したが、「適正使用」はほぼ横ばい(約40%、0.2%減少)であった。 処方数上位10薬剤は、抗菌薬処方全体の87%を占めていたが、2011年と15年を比較すると、アジスロマイシン(処方数1位)、シプロフロキサシン(2位)、トリメトプリム・スルファメトキサゾール(5位)の3薬剤では減少したものの、他の7薬剤(アモキシシリン、セファレキシン、レボフロキサシン、アモキシシリン・クラブラン酸、ドキシサイクリン、nitrofurantoin、クリンダマイシン)は増加していた。最も変化の著しかったのは、アジスロマイシンの18.5%減少、レボフロキサシンの27.7%増加であった。 適応との相関をみると、呼吸器感染症におけるアジスロマイシンの使用は、「適正使用」例、「不適切使用」例ともに減少していた。一方、レボフロキサシンは「適正使用」、「不適切使用」ともに増加していた(つまり肺炎でも副鼻腔炎でも、ウイルス性上気道炎、気管支炎でも増加していた)。また腸管感染症では「適正使用」、「不適切使用」の両者でシプロフロキサシンが減少し、レボフロキサシンが増加していた。 全体を総括すると、各診断における抗菌薬使用の適応を考慮して処方が減ったというよりも、抗菌薬の種類を変えつつ処方が行われているという傾向が顕著であったという結論にたどり着く。本研究の手法や結果を解釈できる範囲にはいくつもの限界があり、かつ対象もメディケア加入者の一部に限定されているが、導き出された結論自体は、われわれが抗菌薬使用に関して日々実感している状況に驚くほど一致している。 本邦ではAMR対策アクションプランが策定・実行され(2016~20年)、後半に差し掛かるとともに、現状に関するデータが蓄積されつつある。米国は本研究の結果をどのように政策に反映させるであろうか。本邦での今後の抗菌薬適正使用、AMR対策に、本研究および関連研究の結果が寄与することに期待したい。

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第3回 耳鼻科からのアモキシシリン・アセトアミノフェン 5日間の処方 (前編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 処方箋を見て、思いつく症状・疾患名は?細菌性中耳炎・・・12名全員 佐々木康弘耳鼻科医の処方であり、小児へのペニシリン系抗菌薬投与に加え、アセトアミノフェンの発熱および痛いときの指示から、細菌性中耳炎であると判断しました。急性副鼻腔炎,急性咽頭炎・扁桃炎 ふな3耳鼻科の処方であり、高用量アモキシシリンの処方やカルボシステインの併用があることから中耳炎を第1候補として考えます。ただし、併用薬がある場合や症状の聞き取り、医師の処方の傾向によっては、推測した疾患と異なる場合があるため、急性副鼻腔炎、急性咽頭炎・扁桃炎などの可能性も含めて柔軟に対応できるようにします。副鼻腔炎、中耳炎 中西剛明処方元が小児科であれば肺炎も念頭に入れるなど判断に迷うところですが、耳鼻科なので、副鼻腔炎か中耳炎を疑います。Q2 患者さんに確認することは? (通常の確認事項は除く)副鼻腔炎、中耳炎の症状 柏木紀久急性副鼻腔炎の場合: 鼻汁の色と、口呼吸やいびきがあるかどうか(鼻閉は2歳児ではわからないので)。急性中耳炎の場合: 痛みで眠れていないかどうか、最近、慢性副鼻腔炎や滲出性中耳炎になっていないか。医師からの指示内容 ふな3アモキシシリンの分割処方の可能性も考慮して、5日後の再受診を指示されているかどうか。カルボシステインだけが1日2回になっているため、そのような指示があったか、症状が合致しているか。アレルギーの有無 児玉暁人ペニシリンアレルギーと牛乳アレルギーの有無。痛みのある部位と昼の服用 中西剛明副鼻腔炎の可能性を考慮して眉間の痛みや頭痛、中耳炎であれば耳の痛みについて。昼の薬を保育園で飲ませるのか、家で飲ませるのか。症状や抗菌薬の服薬状況、通園 JITHURYOU中耳炎と推測して対応します。症状がいつ頃からあるのか鼓膜を切開しているかどうか。切開を何回も繰り返している場合、ペネム系内服やセフトリアキソンなどの点滴を検討した方がいいかもしれません。中耳炎を反復していないかどうか。抗菌薬を直近1カ月で使用していないか。集団保育、兄弟の有無。園児間や兄弟間では水平感染が起こりやすく、さらに集団保育ではアモキシシリンの耐性菌の分離頻度が高いため、薬剤変更を提案するのが良いと考えます。なお、保育所への通園は医師の確認が取れないうちは避けるようにしなければならないと思います。Q3 患者さんに何を伝える?抗菌薬を飲みきること 柏木紀久アモキシシリンとカルボシステインは飲みきるように伝えます。再受診を勧める 奥村雪男抗菌薬の治療期間についてDynamedTMで検索すると、2~5歳で中等度の症状がある場合、7日間の継続が推奨されているようなので、再受診して鼓膜所見を診断後、抗生物質の継続必要の有無を判断していただくことを勧めます。副作用と服薬の工夫 清水直明「お薬(アモキシシリン)の影響でお腹がゆるくなるかもしれません。そのために整腸剤も一緒に飲んでいただきますが、お腹が痛くなったり下痢がひどいようであればいつでも遠慮なく連絡してくださいね」「 1回に飲む量が多くなるので、そのまま飲むのが難しかったら、アイスやジャム、プリンなど好きなものに混ぜて飲ませてあげてくださいね」3日後の改善具合 荒川隆之3日間お薬を飲んでも良くならない場合は電話してもらうよう伝えます。「JAID/JSC感染症治療ガイド2014」(日本感染症学会・日本化学療法学会発行)などでも1次治療の効果判定は3日後が望ましいとされています。服薬時間 ふな3「アモキシシリンとエンテロノン®-Rは毎食後で処方されていますが、通園などでどうしても毎食後に服用できない場合は、朝・帰宅後・就寝前で構いませんので、必ず1日3回の服用を心がけてください」処方医はアモキシシリンの時間依存性やコンプライアンス向上を考慮して、アモキシシリンとエンテロノン®-Rを毎食後で処方したと思われます。ただし、添付文書上の用法は両薬剤とも食後に限定されていません。通園などで「お昼は飲めないから朝と夕だけ飲めばいい」と保護者が判断しないように、「食事にかかわらず、1日3回飲み続けることが重要」だと伝えたいです。日常生活での注意点 JITHURYOUアセトアミノフェンの使用方法(使用頻度)。できるだけ鼻汁をとること。菌量が多いと抗菌薬の活性が低下することが知られているので、ドレナージはするべきです。また、鼓室に鼻汁が流れ込むため鼻をすすることは避けるべきで、鼻のかみかたの指導も一緒に行いたいです。耳漏がある場合、ガーゼなどの交換すること。分泌液をそのままにしておくと、かぶれて炎症を起こす可能性があります。下痢をする可能性があるので、できるだけ消化の良いものを摂らせること。後編では、本症例の疑義照会をする/しない 理由を聞きます。

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第2回 小児へのアモキシシリン 分2 10日間の処方 (後編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

前編 Q1処方箋を見て、思いつく症状・疾患名は?Q2患者さんに確認することは?Q3患者さんに何を伝える?Q4 疑義照会をする?しない?(状況によっては)疑義照会するアモキシシリンを分3にできないか疑義照会 荒川隆之アモキシシリンの1日3回投与をお勧めします。カルボシステインは通常体重1kgあたり0.02g製剤量を3回投与なので、処方から計算上は16.5kgとなります。2歳女児の平均体重10~13kgより少し大きいでしょうか?「JAID/JSC感染症治療ガイド2014」(日本感染症学会・日本化学療法学会発行)では、小児の咽頭・扁桃炎に対してアモキシシリンは10~20mg/kgを1日3回投与とありますので、16.5kgならば1回165~330mgを1日3回投与となります。本症例の場合、1回量は280mgとなり適正と考えられるのですが1日2回投与です。Wessels MR. Streptococcal pharyngitis. N Engl J Med. 2011; 364: 648-655. などにおいてもアモキシシリンは1日1~2回投与とありますが、アモキシシリンは時間依存性であり半減期が1.2時間と短いこと、また飲み忘れなども考え合わせると、JAID/JSCのガイドラインどおり1日3回10日間の投与が良いのではないかと考えます。母親の観点からの意見 わらび餅患児は保育園に通っているのでしょうか。保育園に与薬を依頼することができないのかもしれないですが、あのカサ高いアモキシシリン10%散を2歳児に飲ませることは大変で、分2だと1回飲ませるのに失敗したときのロスは大きいです。もう少し年齢が高ければ分2でも良いですが、1~2歳は必要性が理解できないので与薬が大変です。子供の普段の薬に対する忍容性がどうか、または保育園へ与薬依頼できるか母親へ確認し、分3にできるか医師に相談します。昼服用が可能なら疑義照会 柏木紀久保護者への確認で服薬支援が得られるならばRp.1~2を分3にするように疑義照会します。今回は昼服用を意図的に避けているようなので、お昼に服用できないとのことであれば「小児呼吸器感染症診療ガイドライン2011」(日本小児感染症学会)の「A群溶血性レンサ球菌による咽頭・扁桃炎の抗菌薬療法」の項、「推奨される抗菌薬療法」にある「アモキシシリン 30~50mg/kg/日 分2~3 10日間」から疑義照会しません。下痢対策 キャンプ人下痢を起こしやすいので、牛乳アレルギーなどがない場合は整腸剤の処方の検討も依頼します。アモキシシリン以外の処方について疑義照会 中西剛明アモキシシリン服用後にすぐに解熱する場合が多いので、他の薬は使わなくても済む可能性を患者さんに説明して、アモキシシリン以外の薬が不要という申し出があれば、処方取り消しのための疑義照会を行います。薬剤特有の臭いに配慮 中堅薬剤師1日3回、または4回投与を提案し、1日3回にするならばRp.2と合わせて朝・夕・寝る前で処方してもらいます。なお、アモキシシリンは開封後、時間経過すると次第に独特の臭いが強まりますので、開封後時間が経過していない商品で調剤します。あまり動きのない店舗であれば、分包品を採用します。小児の場合、矯味の問題でアドヒアランスが低下することはよくあるので、アモキシシリンの服薬アドヒアランスが低い子供にはセフェム系のセフジトレンピボキシルやセフジニルなどの提案も良いと思います。低カルニチン血症※を考慮して、ピボキシル基を含まないセフジニルを推奨することもあります。※ピボキシル基を有する抗菌薬によりカルニチン排泄が亢進し、低カルニチン血症に至ることがあり、小児(特に乳幼児)では血中カルニチンが少ないため、血中カルニチンの低下に伴う低血糖症状(意識レベル低下、痙攣など)に注意する3)。処方日数について 清水直明初回で10日分の処方は、抗菌薬の効果判定をせずに漫然と投与していると捉えられ、保険で査定される可能性があります。実際、私の勤務先では、初回投与で7日を超える抗菌薬の処方は査定されました。日数を短縮し(3~4日程度)、再度来院して1次効果を確認してから、継続投与の処方を行うほうが良いと考えます。疑義照会をしない分2投与は迷うが... 児玉暁人アモキシシリンの分2投与を疑義照会するかどうか迷うところです。「小児呼吸器感染症診療ガイドライン2011」の「A群溶血性レンサ球菌による咽頭・扁桃炎の抗菌薬療法」では分2~3となっているのと、Wessels MR. Streptococcal pharyngitis. N Engl J Med. 2011; 364: 648-655. にStreptococcal Pharyngitisの総説があり、アモキシシリン分2あるいは分1の記載もあることから、A群溶血性レンサ球菌であれば服用完遂を優先して分2のままでも良いかもしれません。協力メンバーの意見をまとめました今回の抗菌薬処方で患者さんに確認することは・・・(通常の確認事項は除く)ペニシリンアレルギーがあるか・・・5名溶連菌の検査を受けたかどうか・・・3名咽頭痛、苺舌など症状の有無・・・2名患者さんに伝えることは・・・アモキシシリンは症状が改善しても10日間しっかり飲みきること・・・12名全員小分けにして飲んだりアイスや乳製品などに混ぜてもよいこと・・・4名腹痛や下痢などの副作用について説明する・・・3名発熱時の水分補給の重要性を説明する・・・2名アモキシシリン以外は、症状によっては無理に服用する必要はないことを伝える・・・2名疑義照会については・・・(状況によっては)疑義照会する アモキシシリン分2処方について、患者背景を確認し、できれば分3~4になるよう疑義照会する・・・6名アモキシシリン以外の薬が不要との申し出があれば、処方取り消しの提案をする・・・1名下痢対策として、整腸剤の処方依頼をする・・・1名 疑義照会をしない アモキシシリンは分2でも分3と同様の効果が得られることが報告されているので、疑義照会しない・・・2名1)国立感染症研究所感染症情報センター. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは. NIID国立感染症研究所.2)西本幸弘ら. 感染症により誘発される免疫疾患. 新領域別症候群25 感染症症候群(第2版)下. 2013: 742-748.3)(独)医薬品医療機器総合機構". ピボキシル基を有する抗菌薬投与による小児等の重篤な低カルニチン血症と低血糖について. "独立行政法人 医薬品医療機器総合機構.

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第1回 小児へのアモキシシリン 分2 10日間の処方 (前編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 処方箋を見て、思いつく症状・疾患名は?A群溶血性レンサ球菌咽頭炎・・・12名全員 柏木紀久アモキシシリン10日分の処方と、咽頭・扁桃炎をうかがわせるトラネキサム酸から、A群溶血性レンサ球菌(溶連菌)感染症と思われます。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎潜伏期は2~5日。突然の発熱と全身倦怠感、咽頭痛によって発症し、しばしば嘔吐を伴う。咽頭壁は浮腫状で扁桃は浸出を伴い、軟口蓋の小点状出血あるいは苺舌がみられることがある1)。合併症として、肺炎、髄膜炎、敗血症などの化膿性疾患、あるいはリウマチ熱※、急性糸球体腎炎などの非化膿性疾患を生ずることもある1)。※リウマチ熱A群溶血性レンサ球菌感染症後の合併症として発症する非化膿性後遺症である。主要症状として、心炎、多関節炎、輪状紅斑、皮下結節、舞踏病を認める。予後を判断するうえで最も重要なのは心炎で、リウマチ熱患者の30~45%に合併する。心炎が進行することで死亡、または心臓弁置換を要するリウマチ性心疾患となる2)。Q2 患者さんに確認することは? (通常の確認事項は除く)溶連菌検査の有無 中西剛明溶連菌の検査をしたか確認します。ペニシリンアレルギーの有無 ふな3ペニシリン系抗菌薬へのアレルギーの有無について確認します。Q3 患者さんに何を伝える?アモキシシリンを飲みきること 佐々木康弘アモキシシリンは10日間しっかり飲みきることを指導します。これにより、リウマチ熱の発症を抑えることができます。溶連菌感染後急性糸球体腎炎に注意 奥村雪男溶連菌感染から1~3週(平均10日)で溶連菌感染後急性糸球体腎炎を生じる場合があります。これは抗菌薬服用による予防効果がありません。患者さんには「おしっこに赤い色がついたり、おしっこの量や回数が減ったり、まぶたや腕が腫れたりすることがあれば医師に相談してください」と伝えます。下痢や発疹の可能性 中西剛明アモキシシリンにより下痢をする可能性を伝え、血液が混じっていなければ心配しなくて良いことを伝えます。溶連菌ならば治療中に発疹が出るかもしれません。薬剤性か溶連菌が原因かはっきりさせるため、面倒でも念のため受診するように伝えます。何事もなければ溶連菌感染後急性糸球体腎炎の予防のためにもアモキシシリンを10日間きちんと飲みきるように指導します。服薬以外の解熱処置方法 中堅薬剤師アセトアミノフェンは本人が辛そうなら使えばいいですが、安易な使用は控えるよう伝えます。解熱する目的は、あくまで本人の負担軽減のため。水分摂取や腋下や首元、鼡径部などのクーリングを優先するよう説明します。再診の助言 柏木紀久「アモキシシリンは溶連菌に効くお薬です。2~3日で症状が治まっても飲みきるようにしてください。飲みにくければ小分けにしたり、アイスなどに混ぜてもいいです。トラネキサム酸とカルボシステインは喉の症状がある間は服用してください。アセトアミノフェンは熱が高く、ぐったりしているような場合に服用、咽頭痛が辛いなら熱が高くなくても服用できます」と説明します。また、2週間後位に再診するよう言われていると思うので「きちんと溶連菌がいなくなっているか、他の病気(リウマチ熱や溶連菌感染後急性糸球体腎炎など)になっていないかも調べるので、すぐ良くなっても再診するようにしてください」と助言します。こまめな水分補給と服薬に関する助言 ふな3特に発熱中はこまめにしっかり水分補給をすること食欲がない、咽頭痛がひどくて食事が摂れない場合は、空腹で服用しても構わないこと粉薬が飲みにくかったり、飲むのを嫌がる場合には、アイスクリームなどに混ぜると飲みやすくなること(保育園児であれば)保育園の登園は、医師の指示に従うこと。指示がなければ、服薬後2~3日経過し、症状が改善すれば登園可能と考えられるが、通園先で治癒証明などが必要か確認すること後編では、本症例の疑義照会をする/しない 理由を聞きます。1)国立感染症研究所感染症情報センター. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは. NIID国立感染症研究所.2)西本幸弘ら. 感染症により誘発される免疫疾患. 新領域別症候群25 感染症症候群(第2版)下. 2013: 742-748.3)(独)医薬品医療機器総合機構". ピボキシル基を有する抗菌薬投与による小児等の重篤な低カルニチン血症と低血糖について. "独立行政法人 医薬品医療機器総合機構.

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米国の高齢者、抗菌薬使用の最新動向は/BMJ

 米国の高齢外来患者では、近年、抗菌薬の全体的な使用およびその不適正使用にはほぼ変化がないか、わずかに減少しており、個々の薬剤使用の変化にはばらつきがみられるものの、これはガイドラインの変更とは一致しないことが、米国・ハーバード大学T.H. Chan公衆衛生大学院のScott W. Olesen氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2018年7月27日号に掲載された。米国では抗菌薬の不適正使用が拡大しており、抗菌薬使用は高齢になるほど多くなる。高所得国では、抗菌薬はほぼ安定的に使用されているが、米国では近年、下降している可能性が示唆されている。メディケア受給者の診療報酬請求データを解析 研究グループは、高所得国の高齢の外来患者における抗菌薬の使用および実臨床の抗菌薬処方の傾向を知る目的で観察研究を行った(米国国立一般医科学研究所[NIGMS]などの助成による)。 2011~15年の米国のメディケア(高齢者の98%が有資格者)の診療報酬請求データを用いた。65歳以上のメディケア受給者450万人、1,950万件の抗菌薬請求データを解析した。 全体的な抗菌薬処方の割合、適正および不適正な処方の割合、最も高い頻度で処方される抗菌薬、特定の診断に関連した抗菌薬処方の割合を評価した。また、受給者の人口統計学的および臨床的な共変量で補正した多変量回帰モデルにより、抗菌薬の使用傾向を推定した。全体で2.1%減少、不適正使用は3.9%減少、上位10種で全体の87% 2011~14年の期間に、受給者1,000人当たりの抗菌薬の使用は、1,364.7件から1,309.3件に減少した(補正後減少率:2.1%、95%信頼区間[CI]:2.0~2.2)が、2015年には1,364.3件に増加した(2011~15年の補正後減少率:0.20%、95%CI:0.09~0.30)。 不適正な可能性のある抗菌薬処方は、1,000人当たり、2011年の552.7件から2014年には522.1件へと減少し、補正後減少率は3.9%(95%CI:3.7~4.1)であったのに対し、適正な可能性のある抗菌薬処方は、571件から551件と、ほぼ安定していた(補正後減少率:0.2%)。 処方頻度の高い上位10種の抗菌薬が全体の87%を占め、個々の抗菌薬使用の変化にはばらつきがみられた。2011~15年の期間に、10種のうち、アジスロマイシン、シプロフロキサシン、スルファメトキサゾール・トリメトプリムの使用は減少したが、ほかの7種(セファレキシン、レボフロキサシン、アモキシシリン、アモキシシリン・クラブラン酸、ドキシサイクリン、nitrofurantoin、クリンダマイシン)は増加していた。 受給者1人当たりの変化が最も大きかったのは、アジスロマイシン(補正後減少率:18.5%、95%CI:18.2~18.8)と、レボフロキサシン(補正後増加率:27.7%、27.2~28.3)だった。 2011~14年の期間に、呼吸器系の診断群(肺炎、副鼻腔炎、ウイルス性上気道感染、気管支炎、喘息/アレルギー、その他の呼吸器疾患)への適正/不適正を含む抗菌薬の使用は、レボフロキサシンは増加し、アモキシシリン・クラブラン酸も、肺炎を除き増加したのに対し、アジスロマイシンはすべての診断で減少していた。 著者は、「個々の抗菌薬使用の変化の主な要因は、ガイドラインや薬剤耐性への関心ではなく、むしろ市場要因や安全性への関心である可能性が考えられる」としている。

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小児の敗血症バンドルの1時間完遂で、院内死亡リスクが低減/JAMA

 3項目から成る小児の1時間敗血症バンドル(1-hour sepsis bundle)を1時間以内に完遂すると、これを1時間で完遂しなかった場合に比べ院内死亡率が改善し、入院期間が短縮することが、米国・ピッツバーグ大学のIdris V. R. Evans氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、JAMA誌2018年7月24日号に掲載された。2013年、ニューヨーク州は、小児の敗血症治療を一括したバンドルとして、血液培養、広域抗菌薬、20mL/kg輸液静脈内ボーラス投与を1時間以内に行うよう規定したが、1時間以内の完遂がアウトカムを改善するかは不明であった。ニューヨーク州の小児敗血症治療規則の有用性を検証 本コホート研究は、ニューヨーク州の救急診療部、入院治療部、集中治療室が参加し、2014年4月1日~2016年12月31日の期間に行われた(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。 対象は、年齢18歳以下で、敗血症または敗血症性ショックで敗血症プロトコールが開始され、ニューヨーク州保健局(NYSDOH)に報告された患者であった。1時間敗血症バンドルには、抗菌薬投与前の血液培養、広域抗菌薬の投与、20mL/kg輸液の静脈内ボーラス投与が含まれた。 1時間敗血症バンドルが1時間以内に完遂された場合と、これが1時間以内に完遂されなかった場合のリスク補正後院内死亡率を評価した。個々の項目の1時間完遂に死亡率抑制効果はない 54施設から報告された1,179例が解析の対象となった。平均年齢は7.2(SD 6.2)歳、男児が54.2%、試験参加前に罹病歴のない健康な小児が44.5%で、敗血症性ショックが68.8%にみられた。139例(11.8%)が院内で死亡した。 294例(24.9%)が、1時間敗血症バンドルを1時間以内に完遂した。血液培養は740例(62.8%)が、抗菌薬投与は798例(67.7%)が、輸液ボーラス投与は548例(46.5%)が、それぞれ1時間以内に完遂した。 敗血症バンドルの1時間完遂例のリスク補正後院内死亡率は8.7%であり、非完遂例の12.7%に比べ有意に低かった(補正オッズ比[OR]:0.59、95%信頼区間[CI]:0.38~0.93、p=0.02、予測リスク差[RD]:4.0、95%CI:0.9~7.0)。 一方、敗血症バンドル個々の項目の1時間完遂例のリスク補正後院内死亡率は、いずれも非完遂例との比較において有意差を認めなかった。血液培養はOR:0.73(95%CI:0.51~1.06、p=0.10)、RD:2.6%(95%CI:-0.5~5.7%)であり、抗菌薬投与は0.78(0.55~1.12、p=0.18)、2.1%(-1.1~5.2%)、輸液ボーラス投与は0.88(0.56~1.37、p=0.56)、1.1%(-2.6~4.8%)であった。 敗血症バンドルの完遂に2、3、4時間を要した場合の平均予測院内死亡率は、1時間が経過するごとに約2%ずつ上昇した。また、ニューヨーク州の典型的な小児敗血症の症例で、1時間敗血症バンドルの院内死亡リスクを推算したところ、1時間以内で完遂した場合は8%、完遂に4時間を要した場合は13%だった。 入院期間は、敗血症バンドルの1時間完遂により、全例で有意に短縮し(補正後発生率比[IRR]:0.76、95%CI:0.64~0.89、p=0.001)、生存例でも有意に短縮したが(0.71、0.60~0.84、p<0.001)、死亡例では短縮しなかった(1.09、0.71~1.69、p=0.68)。 著者は、「これらの知見は、小児敗血症治療を一括化したバンドルはアウトカムの改善効果を示したとする単一施設の結果と一致する」としている。

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HIV関連結核の予後改善に、尿スクリーニング検査は有効か/Lancet

 HIV関連結核の診断は不十分であり、見逃しは院内死亡率を高めるという。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のAnkur Gupta-Wright氏らは、アフリカのHIV陽性入院患者において結核の迅速尿スクリーニング検査の有効性を検討し、全体の死亡率は抑制されないが、高リスク例ではベネフィットが得られる可能性があることを示した(STAMP試験)。研究の成果は、Lancet誌2018年7月28日号に掲載された。結核は、世界的にHIV患者の主要な死因であり、2016年には37万4,000例が死亡したと推定されている。HIV陽性入院患者では、結核の尿検査は診断率が良好であることが示唆されている。マラウイと南アフリカ共和国の入院患者で、標準治療と比較 本研究は、HIV陽性入院患者における、結核の尿スクリーニング検査によるアウトカムの改善効果を評価する、プラグマティックな多施設共同二重盲検無作為化対照比較試験である(英国医学研究会議[MRC]などの助成による)。 マラウイと南アフリカ共和国の2つの病院が参加した。対象は、年齢18歳以上で、結核治療を受けていないHIV陽性の入院患者であった。 被験者は、症状や臨床所見にかかわらず、標準治療を受ける群または尿スクリーニング検査を受ける群(介入群)に、1対1の割合でランダムに割り付けられた。患者、医師、研究チームには、割り付け情報がマスクされた。喀痰検査は両群で、尿検査は介入群のみで行われた。 主要アウトカムは56日時の全死因死亡とし、ベースラインのCD4細胞数、ヘモグロビン量、臨床的な結核の疑いの有無などでサブグループ解析を行った。 2015年10月26日~2017年9月19日の期間に、4,788例のHIV陽性患者が登録され、このうち2,600例(54%)が無作為割り付けの対象となった(各群1,300例)。割り付け後に13例が除外され、残りの2,574例(各群1,287例)が最終的なintention-to-treat解析に含まれた。「低CD4細胞数」「重症貧血」「臨床的な結核疑い」の患者で死亡率低下 試験登録時の全体の平均年齢は39.6(SD 11.7)歳で、57%が女性であった。84%(2,168例)が入院前にHIVと診断され、そのうち86%(1,861例)が抗レトロウイルス療法(ART)を受けていた。CD4細胞数中央値は227/μL(IQR:79~436)で、29%(748例)がCD4細胞数<100/μLであり、23%(587例)に重症貧血(ヘモグロビン量<8g/dL)がみられた。90%(2,316例)がWHOの結核症状(咳嗽、発熱、体重減少、寝汗)の1つ以上を呈し、39%(996例)が入院時、臨床的に結核が疑われた。 56日までに507例(20%)が死亡した。56日死亡率は、標準治療群が21%(272/1,287例)、介入群は18%(235/1,287例)であり、両群間に有意な差を認めなかった(補正リスク低下率[aRD]:-2.8%、95%信頼区間[CI]:-5.8~0.3、p=0.074)。 事前に規定された12のサブグループのうち、高リスクの3つのサブグループで、介入群の死亡率が標準治療群に比べ有意に低下した(CD4細胞数<100/μL[aRD:-7.1%、95%CI:-13.7~-0.4、p=0.036]、重症貧血[-9.0%、-16.6~-1.3、p=0.021]、臨床的な結核疑い例[-5.7%、-10.9~-0.5、p=0.033])。施設(マラウイ、南アフリカ共和国)および試験期間中の治療時期(6ヵ月ごとに4期間に分類)の違いによる差は認められなかった。 結核の診断から治療までの期間は短く(中央値:1日、IQR:0~1)、両群で同様であった。結核治療関連の有害事象も両群で類似していた。抗菌薬治療や、ART非投与例へのART開始についても両群間に差はなかったが、ART開始までの期間は介入群のほうが短かった。 著者は、「低CD4細胞数、重症貧血、臨床的な結核疑いの高リスクHIV陽性入院患者では、結核の尿スクリーニング検査によって死亡率が低下する可能性がある」とまとめ、「すべてのHIV陽性入院患者にこの検査を行うことで、結核が未診断のままの退院や死亡のリスクが低減される可能性がある」と指摘している。

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ペニシリンアレルギー、MRSAやC. difficileリスク増大と関連/BMJ

 「ペニシリンアレルギー」の記録はMRSAおよびC. difficileのリスク増大と関連しており、その背景にβラクタム系代替抗菌薬の使用増加が関与していることを、米国・マサチューセッツ総合病院のKimberly G. Blumenthal氏らが明らかにした。ペニシリンアレルギーは、薬物アレルギーでは最もよくみられ、患者の約10%を占めると報告されている。アレルギーに関する記録は処方行動に影響を及ぼすが、「ペニシリンアレルギー」と記録にあっても、必ずしもアレルギーすなわち、即時型過敏反応とは限らない。先行研究では、特定の抗菌薬の使用がMRSAおよびC. difficileのリスクを増大していることが判明しており、研究グループは、ペニシリンアレルギーとMRSAおよびC. difficile発生の関連を調べた。BMJ誌2018年6月27日号掲載の報告。ペニシリンアレルギーの記録に注目し、MRSAやC. difficile発生との関連を調査 検討は集団ベースマッチドコホート研究にて、英国の一般医が関与するHealth Improvement Networkに、1995~2015年に登録された、MRSAおよびC. difficileの既往がない成人30万1,399例を対象に行われた。対象のうち6万4,141例がペニシリンアレルギーを有しており、年齢、性別、登録時期で適合した23万7,258例が比較対照群として設定された。 主要アウトカムは、MRSAおよびC. difficileの発生リスク。副次アウトカムは、βラクタム系抗菌薬およびβラクタム系代替抗菌薬の使用であった。背景に、βラクタム系代替抗菌薬の使用増加 平均追跡期間6.0年において、MRSA発生は1,365例(ペニシリンアレルギー群442例、対照群923例)、C. difficile発生は1,688例(それぞれ442例、1,246例)。ペニシリンアレルギー患者のMRSA発生に関する補正後ハザード比(HR)は1.69(95%信頼区間[CI]:1.51~1.90)、C. difficile発生については1.26(1.12~1.40)であった。 ペニシリンアレルギー患者の各抗菌薬使用に関する補正後発生率比は、マクロライド系使用では4.15(4.12~4.17)、クリンダマイシン使用3.89(3.66~4.12)、フルオロキノロン系使用2.10(2.08~2.13)であった。βラクタム系代替抗菌薬の使用増加によって、MRSAは約55%、C. difficileは約35%、それぞれリスクが増大したことが示唆された。 著者は今回の結果を受けて、「ペニシリンアレルギーへの系統的な対処が、ペニシリンアレルギー患者におけるMRSAおよびC. difficile発生を抑制するための、重大なパブリックヘルス戦略になる」と述べている。

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第2回 「抜歯したら抗菌薬」は本当に必須か【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 先日、歯科医師の友人から、抜歯後に抗菌薬を処方しなかったことで薬剤師からクレームを受けた、という話を聞きました。次のような経緯だったようです。・某日午前、ある女性患者さんの上顎第3大臼歯(親知らず)の残根を抜歯し、術後疼痛対策としてアセトアミノフェンを処方したが、抗菌薬は処方しなかった。・同日夕方、救急外来にこの女性患者さんの旦那さんである薬剤師からクレームの電話が入り、「抜歯したのになぜ抗菌薬を処方しないのか」と言われた。はたして抜歯をする際は感染症を予防するための抗菌薬は必須なのでしょうか。今回は、抜歯時の抗菌薬の有用性について検討したコクランのシステマティックレビューを紹介します。Antibiotics to prevent complications following tooth extractions.Lodi G, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012;11:CD003811.論文では、「抜歯処置を受ける患者さんが、術前あるいは術後に抗菌薬を服用すると、抗菌薬なしまたはプラセボ服用に比べて、感染症の発生リスクが下がるか」という疑問が検討されています。本論文で組み入れられた研究では、主にアモキシシリン(±クラブラン酸)、エリスロマイシン、クリンダマイシンなどが投与されています。なお、日本感染症学会、日本化学療法学会による「JAID/JSC感染症治療ガイドライン2016―歯性感染症―」でも、歯性感染症ではペニシリン系、リンコマイシン系、マクロライド系などが推奨されています。日本ではルーティンで第3世代セフェム系薬を処方する歯科医師が多いと感じていますが、これらは必ずしも歯性感染症に適するわけではないですし、概して吸収率も高くはありません。抗菌薬を服用すると12例中1例で感染予防さて、システマティックレビューの評価ポイントはいくつかあります。過去の研究を網羅的に集めているか、集めた研究の評価が適切になされているか、それらの研究の異質性は検討されたか、出版バイアスはないか、情報は適切に統合されたか、などの点を確認することが大切です。本論文では1948年~2012年1月25日までにMEDLINE、EMBASE、CENTRAL、CHSSSといったデータベースに登録されている関連論文を網羅的に集めています。集められた試験のデザインはランダム化比較試験で、うち1件はインターバルが6週間以上のクロスオーバーランダム化比較試験です。クロスオーバーは同じ被験者がウォッシュアウト期間を十分に設けた後に、異なる介入を受けることを意味します。そう何回も抜歯をやるの? という疑問もあるかもしれませんが、スプリットマウスデザインという、同一被験者の口内の左右では条件差がさほどないことを利用して、左右の歯でウォッシュアウト期間をおいて抜歯を行ったものと考えられます。出版バイアスの有無はファンネルプロットを用いて検討されていますが、術後および術前・術後におけるプロットが少ないため判定がやや難しいところです。なお、コクランのハンドブックによれば、一般的にプロットの数が10個以下だとファンネルプロットの左右対称性から出版バイアスを見極めることは難しいとされています。集められた各研究の評価は、2人のレビュアーにより独立して行われ、解釈に食い違いが生じた場合には議論のうえで合意を形成しているため、一定の客観性があると考えてよさそうです。なお、レビュアー名を検索したところ、両名とも歯科医師のようです。最終的に、集められた研究のうち、18件(患者合計2,456例)の研究が採用され、15件がメタ解析されています。システマティックレビューの結果は、通常Summary of Findings(SoF)テーブルとフォレストプロットにまとめられているので、ここを真っ先に見るとよいでしょう。エンドポイントに関する結果を紹介します。抗菌薬を投与した場合、プラセボと比較して抜歯後の局所感染症を約70%減らす(相対リスク:0.29、95%信頼区間:0.16〜0.50)とあり、エビデンスの質としては中程度の確信となっています(p<0.0001)。これは、約12例で抗菌薬を服用すれば、1例は感染症を予防できるという割合です。痛み、発熱、腫れには有意差はありませんでした。有害事象に関しては、抗菌薬投与でほぼ倍増(相対リスク:1.98、95%信頼区間:1.10~3.59)しますが、軽度かつ一時的ということ以外の具体的な内容は本文献ではわかりません。抗菌薬の必要性は侵襲性の程度や患者要因で変わりうるシステマティックレビューは既存の知見を網羅的に集めて質的評価を行い、統計学的に統合することから、しばしばエビデンスの最高峰に位置付けられますが、統合することで対象患者などの細かいニュアンスが省略されるため、その結果を応用する際は外的妥当性を十分に考えねばなりません。本結果を素直に解釈すれば、感染予防のベネフィットがややあるものの、抜歯処置の侵襲性の程度や感染症リスクによっては抗菌薬が処方されないことも十分考えられます。もし服用を検討するのであれば、アレルギーや副作用歴がない限りはペニシリン系やクリンダマイシンなどが比較的妥当な選択となりそうです。現実には下痢の頻度や抗菌薬アレルギーのリスク、冒頭の例であれば歯科医師と患者の関係なども抗菌薬が必要かどうかの考慮事項となりうるでしょう。いずれにせよ、短絡的に抜歯=抗菌薬と断定するのではなく、患者の状態や歯科医師の意図をくみ取ったうえで適切なアクションをとりたいものです。画像を拡大するAntibiotics to prevent complications following tooth extractions.Lodi G, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012;11:CD003811.

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オゼノキサシン1%クリーム、膿痂疹に有効

 オゼノキサシンは、グラム陽性菌への強い殺菌的な抗菌作用を示す新規局所抗菌薬で、接触感染で広まる皮膚の細菌感染症である膿痂疹に対する治療薬として、1%クリーム剤が開発された。米国・ベイラー医科大学のTheodore Rosen氏らは、無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験において、オゼノキサシン1%クリームが生後2ヵ月以上の膿痂疹患者に有効で、安全性と忍容性も良好であることを報告した。著者は、「オゼノキサシンクリームによる治療は、膿痂疹の新しい治療の選択肢となる」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2018年6月13日号掲載の報告。 研究グループは、膿痂疹におけるオゼノキサシン1%クリームの有効性、安全性および忍容性を評価する目的で、2014年6月2日~2015年5月30日に6ヵ国で登録された患者に対し無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験を行った。この結果は、2015年7月9日~22日に解析された。 対象は、膿痂疹に感染した生後2ヵ月以上の乳幼児を含む小児および成人患者411例(男性210例[51.1%]、平均年齢18.6[SD 18.3]歳)で、オゼノキサシン群とプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けられ、1日2回5日間塗布した。有効性、安全性および忍容性は、Skin Infection Rating Scaleと微生物培養を用いて評価した。  主な結果は以下のとおり。・5日後の臨床的な治療成功率は、オゼノキサシン群がプラセボ群より有意に高かった(206例中112例[54.4%]vs.206例中78例[37.9%]、p=0.001)。・2日後の微生物学的な治療成功率もまた、オゼノキサシン群がプラセボ群より有意に高かった(125例中109例[87.2%]vs.119例中76例[63.9%]、p=0.002)。・オゼノキサシン群は忍容性が高く、206例中8例で有害事象が報告されたが、オゼノキサシンによる治療と関連があったのは1例のみで、重篤な有害事象はみられなかった。

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ProACT試験-プロカルシトニン値を指標とした抗菌薬使用(解説:小金丸博氏)-877

 抗菌薬の過剰な使用は、医療費の増加や薬剤耐性菌の出現に関連する公衆衛生上の問題である。プロカルシトニンは、ウイルス感染よりも細菌感染で上昇しやすいペプチドであり、上昇の程度は感染の重症度と相関し、感染の改善とともに経時的に低下する。いくつかの欧州の試験において、抗菌薬を投与するかどうかをプロカルシトニンの結果に基づいて決定することで抗菌薬の使用を抑制できることが示されており、2017年、米国食品医薬品局(FDA)は下気道感染症が疑われる場合に抗菌薬の開始または中止の指標としてプロカルシトニンを測定することを承認した。しかしながら、プロカルシトニン値を日常臨床へ適用できるかは明らかでなかった。 本研究は、プロカルシトニン値に基づく抗菌薬処方ガイドラインを用いて抗菌薬の投与を決定することで、抗菌薬の使用を減らすことができるかどうかを検討したランダム化比較試験である。下気道感染症疑いで受診し、抗菌薬を投与すべきかどうかはっきりしない患者を対象とし、プロカルシトニン使用群と通常治療群に無作為に割り付けた。プロカルシトニン使用群の診療医には、プロカルシトニンの測定値に応じた推奨治療が記載された抗菌薬使用ガイドラインが提供された。その結果、intention-to-treat(ITT)解析では、30日までの平均抗菌薬投与日数はプロカルシトニン使用群が4.2日、通常治療群が4.3日であり、両群間に有意差を認めなかった(差:-0.05日、95%信頼区間[CI]:-0.6~0.5、p=0.87)。また、ITT解析による有害なアウトカムを発症した患者の割合は11.7%と13.1%であり、両群間に有意差を認めなかった(差:-1.5ポイント、95%CI:-4.6~1.7、非劣性:p<0.001)。 本試験の結果は過去の研究と異なり、下気道感染症疑いの患者に対してプロカルシトニン値を指標として抗菌薬投与の適応を決定しても、指標としない群と比較して抗菌薬の使用を抑制できなかった。その理由として、通常治療群の臨床医はプロカルシトニン値の結果を知らないにもかかわらず、プロカルシトニン高値例に比べ、低値例での抗菌薬処方が少なかった点が挙げられている。プロカルシトニン値が低い患者では感染症の臨床症状を呈することが少なく、通常の臨床判断で十分抗菌薬の適応を決定できたと考えられる。 プロカルシトニンは抗菌薬を投与すべきかどうか判断するのに有用な指標となりうるが、プロカルシトニンの値だけで治療方針を決定できるわけではない。まずは注意深い問診と診察から正しく臨床情報を整理することが重要であり、そのうえでプロカルシトニン値を用いることが適切な抗菌薬使用につながると考える。

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軽症COPD患者への電話コーチングの効果は?/BMJ

 かかりつけ医を受診した軽症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、行動変容を促すための電話でのコーチングによる介入は、自己管理行動の変化にはつながったものの健康関連QOLの改善には至らなかった。英国・バーミンガム大学のKate Jolly氏らが、軽症COPD患者の自己管理の支援を目的とした社会的認知理論(Social Cognitive Theory)に基づく電話によるコーチングの有効性を評価した多施設共同無作為化比較試験の結果を報告した。システマティックレビューでは、COPD患者の自己管理支援が健康関連QOLを改善し入院の減少に有用であることが示されていたが、このエビデンスは主に2次医療における中等症または重症患者を対象としたものであった。BMJ誌2018年6月13日号掲載の報告。約600例を対象に、電話によるコーチング群と通常ケア群を比較 研究グループは、英国4地域のプライマリケア71施設において、スパイロメトリー(呼吸機能検査)で確定診断されたCOPD患者のうち、MRC(Medical Research Council)息切れスケールが1~2の577例を、電話によるコーチングを行う介入群(289例)と通常ケア群(288例)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 介入群では、禁煙、身体活動の増加、正しい吸入器の使用法および薬物療法のアドヒアランスに関する自己管理の支援を目的に、2日間訓練を受けた看護師が文書、歩数計および日誌を用いる電話指導を行った(1週時に35~60分、3、7、11週時に各15~20分の計4セッション、16、24週時には標準的な文書を郵送)。通常ケア群には、COPDに関するリーフレットを渡した。 主要評価項目は、COPD疾患特異的QOL評価尺度であるSGRQ-Cを用いて評価した12ヵ月時の健康関連QOLとし、intention-to-treat集団で線形回帰モデルを用いて解析した。12ヵ月時の健康関連QOLに有意差なし 介入群において、電話によるコーチングは予定の86%が実施され、75%の患者は4回の全セッションを受けた。追跡調査を完遂したのは、6ヵ月時92%、12ヵ月時89%であった。 12ヵ月時のSGRQ-Cスコアは、介入群と通常ケア群で有意差は確認されなかった(平均群間差:-1.3、95%信頼区間[CI]:-3.6~0.9、p=0.23)。6ヵ月時では、介入群において通常ケア群と比較し、身体活動の増加が報告され、ケアプラン(44 vs.30%)、抗菌薬のレスキュー使用(37 vs.29%)、吸入法のチェック(68 vs.55%)をより多く受けていたことが示された。

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第4回 施設内でオペ!流血あり(>_

在宅訪問専任薬剤師のはらこし なみです。褥瘡の外科処置が目の前で・・・!高齢者専用住宅で外科的処置を経験しました...。訪問医のA先生は麻酔科出身。外科的処置も慣れていらっしゃいます。褥瘡の処置+デブリードマン(感染、壊死組織を除去し創を清浄化する)を、その場で行います。「はい、デブリするよ!」麻酔なしで痛くないのだろうか・・・。患者さんは普通の顔しています。新聞紙敷いて、ガーゼ敷いて、「はい、消毒」「はい、メス」。ザクザク皮膚を切っていきます。出血する人もいれば、そうでない人も・・・。(は~終わった。)最近、外科的な褥瘡の処置には慣れてきました。最初の頃はオロオロして見ていられませんでした。次のお部屋・・・足の親指の腫れに外用抗菌薬で様子を見ていた患者さんにオペ!足の親指が腫れて、フロモックス®錠+ゲンタマイシン®軟膏で様子を見ていた患者さんが、一向に良くなりません。点滴は嫌だとおっしゃるので、内服+外用で対応していたのですが、爪の下に膿が溜まっている様子。A先生:こりゃ~切ったほうが早いかな。私:き、切るって?どこを?(私は患者さんと同じ反応・・・汗)A先生:ん?指だよ。爪とっちゃったほうがいいよ私:爪を剥ぐってことですか?(無理です!無理です!)と思いきや、患者さんは意外に、「それでよくなるん?痛くないん?(いやいやいや、痛いだろ~!)A先生:麻酔するし大丈夫。とりあえず爪は残して下から膿み出そう!看護師さんがちゃちゃっと準備し、キシロカイン®注登場。アンプルにシリンジ。「麻酔の注射がちょっと痛いけど・・」。チューとシリンジに吸引して、足の指に何箇所も刺す。爪の周りに6箇所くらい。(ああ、だめ~!あれ?でも、最近注射針が見られるようになったかも)患者さんは口を押さえて我慢。そして、注射が終わってすぐに「消毒・メス!」爪の周りをザクザク切っていく。ひえ~血だらけ・・・どんどん下のガーゼは真っ赤になり「ガーゼだして!」。看護師さんは足を持って補助しているし、ガーゼを出すのは...私ですか!(はい、はい、はい、はい・・・ドキドキドキドキ)処置を見ながら、患者さんに痛くないですか?と聞くと、全然大丈夫と。すごいな~麻酔って。あんなにすぐ効果が出るのかあ。「はい、おしまい。あとは圧迫止血して!」看護師さんに代わり、先生はグローブを取る。お~、ドラマみたいだ。いや~現場ってすごい!先生、看護師さんてすごい!そして、やっぱり血は怖い。この頻脈・・・ケアマネさんに伝達しているときも続いていました。

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