サイト内検索|page:16

検索結果 合計:860件 表示位置:301 - 320

301.

介護施設での抗菌薬の使用状況、CDC調査/JAMA

 2017年、米国の介護施設入居者における抗菌薬の平均使用率は100人当たり8.2人に上り、とくに中心静脈カテーテル使用者(62.8/100人)や導尿カテーテル留置者(19.1/100人)で高率であったことが、米国疾病管理予防センター(CDC)のNicola D. Thompson氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌2021年4月6日号に掲載された。抗菌薬耐性感染症の制御と予防は、公衆衛生学上の優先事項とされる。介護施設は、入居者が抗菌薬耐性菌のコロニー形成や感染のリスクの合流点となるため、抗菌薬耐性の発生源となる可能性がある。一方、米国の介護施設における抗菌薬使用のデータは十分でないという。米国161施設の2017年の横断研究 本研究は、米国の介護施設における抗菌薬の使用状況の評価を目的とする横断研究(1日点有病率調査)で、同国のEmerging Infections Program(EIP)に参加する10州で選ばれた郡から無作為に選出された161の介護施設が調査に参加し、2017年4月~10月の期間に実施された(米国CDCの助成による)。 EIPの調査員が、入居者の背景因子や調査時に投与されていた抗菌薬の情報を収集した。施設の背景因子の情報は、当該施設の職員およびNursing Home Compareのウェブサイトから得た。 主要アウトカムは、入居者100人当たりの抗菌薬の使用率とし、調査時に少なくとも1種類の適格な抗菌薬を投与されていた入居者数を、調査対象の全入居者数で除して、100を乗じて算出した。フルオロキノロン系12.9%、広域スペクトル抗菌薬33.1% 161施設に入居中の1万5,276人(平均年齢[SD]77.6[13.7]歳、年齢範囲:18~108歳、女性9,475人[62%])が解析に含まれた。96.8%で完全な抗菌薬使用データが得られた。 調査の時点で、1万5,276人中1,258人が、1,454の全身性抗菌薬の投与を受けていた。このうち1剤が1,082人(86.0%、95%信頼区間[CI]:84~87.9)、2剤が158人(12.6%、10.8~14.5)、3~4剤が18人(1.5%、0.8~2.3)であった。 全体の抗菌薬使用率の平均値は8.2/100人(95%CI:7.8~8.7)、中央値は8.03/100人(IQR:4.9~11.2)であった。また、男性は9.6/100人(8.9~10.4)、女性は7.4/100人(6.9~7.9)であり、年齢層が高くなるほど使用率は低下した(<65歳:11.8/100人、65~74歳:9.0/100人、75~84歳:8.7/100人、≧85歳:5.8/100人)。 抗菌薬使用率が高かったのは、調査日前30日以内の入居者(18.8/100人、95%CI:17.4~20.3)、中心静脈カテーテルを使用している入居者(62.8/100人、56.9~68.3)、導尿カテーテルを留置している入居者(19.1/100人、16.4~22.0)であった。 抗菌薬は、活動性感染症(77%、95%CI:74.8~79.2)の治療としての使用が最も多く、主に尿路感染症(28.1%、15.5~30.7)に使用されていた。また、18.2%(16.1~20.1)が医学的予防に使用されていたが、その多くは尿路感染症(40.8%、34.8~47.1)だった。 最も使用頻度の高い薬剤クラスはフルオロキノロン系抗菌薬(12.9%、95%CI:11.3~14.8)であり、次いで第1世代セファロスポリン系抗菌薬(11.7%)、スルホンアミド系抗菌薬+トリメトプリム(8.2%)であった。また、使用された薬剤の33.1%(30.7~35.6)が広域スペクトル抗菌薬であった。 著者は、「この研究は、介護施設入居者の抗菌薬使用パターンに関して有益な情報を提供する」としている。

302.

総合内科専門医試験オールスターレクチャー 呼吸器

第1回 慢性閉塞性肺疾患(COPD) オーバーラップ症候群(ACO)第2回 特発性間質性肺炎(IIPs)第3回 咳嗽・喀痰第4回 喘息第5回 肺炎第6回 肺癌 総合内科専門医試験対策レクチャーの決定版登場!総合内科専門医試験の受験者が一番苦労するのは、自分の専門外の最新トピックス。そこでこのシリーズでは、CareNeTV等で評価の高い内科各領域のトップクラスの専門医を招聘。各科専門医の視点で“出そうなトピック”を抽出し、1講義約20分で丁寧に解説します。キャッチアップが大変な近年のガイドラインの改訂や新規薬剤をしっかりカバー。Up to date問題対策も万全です。呼吸器については、島根大学医学部附属病院の長尾大志先生がレクチャーします。ガイドラインの改訂がとくに顕著な呼吸器領域。疾患の概念や治療方針に関する大きな変更点、新たに採用された診断基準に注目します。※「アップデート2022追加収録」はCareNeTVにてご視聴ください。第1回 慢性閉塞性肺疾患(COPD) オーバーラップ症候群(ACO)タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じる慢性閉塞性肺疾患(COPD)。2018年のガイドライン改訂により、炎症だけでなく非炎症性機転も重視され、FEV1の数値と合わせて、各症状の程度を加味した総合的な重症度の判断が求められるようになりました。喘息とCOPDを合併したACOは、COPD全体の10~20%を占め、治療には吸入ステロイドを併用します。増悪した際の治療手順も試験で問われやすいポイントです。第2回 特発性間質性肺炎(IIPs)特発性間質性肺炎(IIPs)は、明らかな原因を特定できない間質性肺炎の総称。主要6疾患と、その他の希少疾患に分類されます。各疾患名だけでなく、対応する病理組織パターンもしっかり確認しておきましょう。中でも重要なのが特発性肺線維症(IPF)。IPFの診断は、病理診断は必須ではありませんが、アルゴリズムに沿って複数の項目をチェックします。他のIIPsと唯一異なるIPF治療のポイントは、ステロイドを使用しないこと。第3回 咳嗽・喀痰「咳嗽喀痰の診療ガイドライン2019」では、咳嗽と密接に関連している喀痰の項目を新たに追加。咳嗽と喀痰の原因疾患は、急性と慢性に大別されます。狭義の感染性咳嗽、いわゆる風邪には、抗菌薬は不要です。多彩な疾患が鑑別に上がる遷延性・慢性の咳嗽。鑑別診断では、結核や肺癌など危険な疾患を見逃すことなく、後鼻漏の原因となる好酸球性副鼻腔炎や、喘息、胃食道逆流症なども念頭に置きます。※この番組は2020年3月に収録したものです。新型コロナウイルス感染症については取り上げていません。第4回 喘息変動性を持った気道狭窄や咳などの症状を起こす喘息。これまで明確な診断基準は示されていませんでしたが、「喘息とCOPDのACO診断と治療の手引き2018」に、呼気一酸化窒素濃度(FeNO)値が診断に有効な指標として記載されました。近年の重要な治療方針の変更点は、以前は重症のみに使用されていた抗コリン薬が、比較的初期から吸入ステロイドと併用可能になったこと。重症例に効果的な抗体医薬も増えているので、しっかり押さえておきましょう。第5回 肺炎市中肺炎、院内肺炎、医療・介護関連肺炎の3つの肺炎が統合されたガイドラインが2017年に発表されました。終末期の症例が含まれる院内肺炎と医療・介護関連肺炎を1つの診療群とし、市中肺炎と区別した診療プロセスが示され、終末期における患者の意志やQOLを尊重した治療・ケアのあり方が重要なトピックとなっています。肺炎の種別の重症度スコアリング法や、段階別の治療戦略、適応できる薬剤を解説します。第6回 肺癌今回は非小細胞肺癌について詳しく解説します。肺癌については新規薬剤の開発が盛んで、それに伴ってガイドラインもオンラインで頻繁に更新されています。まずTMN分類で、手術、放射線治療、または薬剤治療のどれを採用するか適応判断。キナーゼ阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場によって、生存期間の延長が見込めるようになりました。副作用に耐えられるか、患者さんの体力も考慮しながら使用できる薬剤を選択します。

303.

市中肺炎入院の抗菌薬投与、3日間は8日間に非劣性/Lancet

 臨床的安定性の基準を満たす市中肺炎入院患者の抗菌薬治療では、15日後の治癒に関して、βラクタム系抗菌薬の3日間投与は8日間投与に対し非劣性であり、30日時の治癒、死亡、治療関連有害事象などには両群間に差はないことが、フランス・パリ・サクレー大学のAurelien Dinh氏らが行った「Pneumonia Short Treatment(PTC)試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年3月27日号に掲載された。成人の市中肺炎に関する米国のガイドラインでは、5日間以上の抗菌薬治療と臨床的安定性基準に準拠した治療中止が推奨されているのに対し、欧州では8日間投与が推奨されており、至適な治療期間は十分に確立されていない。市中肺炎入院患者の抗菌薬治療期間が短縮されれば、抗菌薬消費量の削減に役立ち、結果として薬剤耐性菌、有害事象、関連費用の削減がもたらされると考えられている。フランス16施設のプラセボ対照無作為化非劣性試験 本研究は、市中肺炎で入院し、3日間のβラクタム系抗菌薬の投与後に臨床的に安定した患者において、さらに5日間の追加投与の必要性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化非劣性試験であり、フランスの16施設が参加し、2013年12月~2018年2月の期間に参加者の適格基準の評価が行われた(フランス保健省の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、中等度の市中肺炎で入院(集中治療室[critical care unit]以外の病棟へ入院)し、3日間のβラクタム系抗菌薬による治療を受けた後、事前に規定された臨床的安定性基準を満たした患者であった。 被験者は、さらに5日間、βラクタム系抗菌薬(経口アモキシシリン1g+クラブラン酸125mg、1日3回)の投与を受ける群、またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、抗菌薬の初回投与から15日後の治癒とした。治癒は、無熱(≦37.8°C)、呼吸器症状の消失または改善、原因を問わず抗菌薬の追加投与がないことと定義された。非劣性マージンは10%ポイント(群間差の95%信頼区間[CI]の下限値が-10%より大きい場合に非劣性と判定)とされた。15日治癒割合、ITT解析で77% vs.68%、PP解析で78% vs.68% βラクタム系抗菌薬を3日間投与後、適格基準を満たした310例のうち、157例がプラセボ群に、153例が追加投与群に割り付けられた。試験薬の投与を受ける前に、7例(プラセボ群5例、追加投与群2例)が同意を撤回した。intention-to-treat(ITT)集団の年齢中央値は73.0歳(IQR:57.0~84.0)で、41%(123/303例)が女性であり、24%(73例)が2つ以上の併存疾患を有していた。 ITT解析では、15日時の治癒の割合は、プラセボ群が77%(117/152例)、追加投与群は68%(102/151例)であり、群間差は9.42%(95%CI:-0.38~20.04)と、プラセボ群の追加投与群に対する非劣性が示された。また、per-protocol解析による15日治癒割合は、プラセボ群が78%(113/145例)、追加投与群は68%(100/146例)で、群間差は9.44%(95%CI:-0.15~20.34)であり、プラセボ群は追加投与群に対し非劣性であった。 副次評価項目である30日時の治癒、死亡、1つ以上の治療関連有害事象、1つ以上の重篤な治療関連有害事象、入院期間、回復(仕事または日常生活活動への復帰)までの期間には、両群間に差は認められなかった。 最も一般的な有害事象は消化器症状で、プラセボ群の11%(17/152例)、追加投与群の19%(28/151例)で報告された。30日までの死亡は、プラセボ群が3例(2%)(黄色ブドウ球菌による菌血症、急性肺水腫後の心原性ショック、急性腎不全に関連する心不全)、追加投与群は2例(1%)(再発肺炎、急性肺水腫疑い)であった。 著者は、「これらの知見により、抗菌薬消費量が実質的に削減される可能性が示唆される」としている。

304.

先天性腎性尿崩症〔Congenital nephrogenic diabetes insipidus〕

1 疾患概要■ 概念・定義腎性尿崩症(Nephrogenic Diabetes Insipidus:NDI)は、腎尿細管におけるAVP(Arginine Vasopressin)の作用不足のために尿濃縮障害を呈し、そのために多尿(尿の過剰産生)と多飲(過度の口渇)を呈する疾患群である。NDIは、成因により先天性と二次性に分けられる。先天性NDIは、AVPのV2受容体やAVP依存性水チャンネルのアクアポリン-2の遺伝子異常などにより発症する。二次性NDIは、低カリウム血症、高カルシウム血症、腎泌尿器疾患、薬剤(炭酸リチウムほか)、アミロイドーシスなどに伴って発症する。先天性NDIは難病指定を受けている。本稿では主に先天性NDIについて述べる。■ 疫学わが国の関連学会会員を対象とした全国規模の腎性尿崩症の頻度調査(2009~2010年)では、173例のNDIが確認され、そのうち15例はリチウム製剤に起因する二次性NDIであった1)。■ 病因と分類NDIの原因は、先天性と二次性に大別されるが、二次性はさらに、薬剤性、腎泌尿器疾患によるもの、その他、などに区分される(表12))。表1 腎性尿崩症の原因2)1.先天性1)X連鎖潜性遺伝(劣性遺伝)性 AVPR22)常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)性 AQP23)常染色体顕性遺伝(優性遺伝)性 AQP24)その他2.電解質異常1)高カルシウム血症2)低カリウム血症3.薬剤性リチウム、デメクロサイクリン、アンホテリシン B、アミノグリコシド系薬剤、メトキシフルレンなど4.腎泌尿器疾患1)慢性腎不全2)逆流性腎症、間質性腎炎3)異形成腎、髄質嚢胞性腎疾患、ネフロン癆4)ファンコニー症候群(シスチン蓄積症、他)、バーター症候群5)尿路閉塞5.その他1)サルコイドーシス2)アミロイドーシス3)シェーグレン症候群4)鎌状赤血球症5)浸透圧利尿(糖、マンニトール、ナトリウム)6)ACEI/ARB fetopathy**は著者改変1)AVPによる集合管における尿濃縮の機序V2受容体は7回膜貫通型Gタンパク質共役受容体で、腎集合管主細胞の血管膜側細胞膜に発現している。AVPがV2受容体に結合するとGタンパクとアデニル酸シクラーゼの活性化を生じ、cAMPが産生される。cAMPはプロテインキナーゼA(PKA)を介して、輸送小胞膜上にホモ4量体で水チャンネルを形成しているアクアポリン-2をリン酸化する。リン酸化されたアクアポリン-2を載せた小胞は管腔側細胞膜へ移動し、エクソサイトーシスにより細胞膜と融合することで管腔と主細胞間に水チャンネルが開通する。主細胞の血管側細胞膜上でアクアポリン-3、4により恒常的に開通している水チャンネルの作用と併せて、管腔側から血管側へ水が再吸収されて尿が濃縮される(図)。図 腎尿細管主細胞におけるV2受容体とアクアポリンによる水の再吸収(著者作成)画像を拡大する2)先天性NDI(a)遺伝形式と発症機序先天性NDIの90%以上はX連鎖潜性遺伝(劣性遺伝)である。約9%の患者は常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)であり、1%は常染色体顕性遺伝(優性遺伝)である。X連鎖潜性遺伝(劣性遺伝)NDIの95%にはAVPのV2受容体遺伝子AVPR2に病的バリアントを認め、常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)NDIの約95%にはアクアポリン-2遺伝子AQP2に病的バリアントを認める。軽症または部分型の先天性NDIは、AVPR2遺伝子異常に報告されることが多いが、顕性遺伝(優性遺伝)形式をとるAQP2遺伝子異常によるものも報告されている。(b)AVPR2の遺伝子異常AVPのV2受容体遺伝子AVPR2はヒトではX染色体上に位置していて、3つのエクソンからなる。この遺伝子の病的バリアントによるNDIの発症は、男性100万人に4人程度の発症率で認められている。報告されている200種以上のバリアントには特定の集積部位は認められない。機能解析がなされているミスセンス例の多くは、misfoldingによるtrafficking障害によりバリアントタンパクが膜に到達できないことによる。バリアントの種類によっては、部分的にAVP作用が保たれる例も存在する。2012年の厚生労働省研究班の全国調査では、遺伝子解析が実施された62例のうち、AVPR2異常が43例を占めた1)。(c)AQP2の遺伝子異常アクアポリン-2の遺伝子AQP2はヒトでは12q13に位置し、4つのエクソンよりなる。常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)形式と常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式の双方が報告されている。2012年の厚生労働省研究班の全国調査では、遺伝子解析が実施された62例のうち、AQP2異常が5例を占めた1)。(d)ACEI/ARB fetopathy遺伝性ではないが先天性NDIが、妊娠中に降圧薬ACEI/ARBを内服した母体から出生した児に発生することが報告されている3)。薬剤による影響がその原因であるので二次性でもある。3)二次性 NDI以下の原疾患・原因により引き起こされるNDIであり、主に、年長児や成人に発症する。(a)腎泌尿器疾患慢性腎不全、間質性腎炎、慢性尿路閉塞などの腎尿細管機能低下を招来する腎泌尿器疾患は尿濃縮力を低下させ、NDIを呈する。(b)電解質異常高カルシウム血症,低カリウム血症に伴う尿濃縮障害によるNDIが知られている。(c)薬剤性 NDI躁状態治療薬(炭酸リチウム)、抗リウマチ薬(ロベンザリット二ナトリウム)、抗 HIV 薬(フマル酸テノホビルジソプロキシル)、抗菌薬(イミペネム・シラスタチンナトリウム、アムホテリシン、塩酸デメクロサイクリン)、抗ウイルス薬(ホスカルネットナトリウム水和物)などによるNDIが知られている。リチウムについては、glycogen synthase kinase 3(GSK3)を抑制することにより、AVP感受性アデニル酸シクラーゼ活性が低下して細胞内cAMP産生が低下し、AVP作用が減弱するとされている。(d)その他頻度は低いがアミロイドーシス,サルコイドーシスなどの全身疾患もNDIの原因となる。■ 症状多尿が共通した症状であるが、患者の年齢により徴候が異なる。先天性NDIの徴候を述べる。(1)胎児期:母体の羊水過多。(2)新生児期:生後数日頃から、原因不明の発熱およびけいれんを来す。高浸透圧血症、高ナトリウム血症を呈す。(3)幼児期~成人:多尿(3~20L/日、乳幼児では体表面積あたりの尿量が2,500mL/m2以上)とそれに伴う多飲を呈す。軽症例では、心因性多飲として経過観察されていたり、多尿に気付かれず夜尿のみを訴えることもある。体重増加不良、便秘を呈すこともある。■ 予後1)中枢神経系口渇に対して自らの意思で飲水できない新生児、乳幼児や意識障害を伴う例では、特に診断前には高張性脱水(高ナトリウム血症)を来し、中枢神経系の不可逆的な障害を残すことが多い。新生児では初発症状が高ナトリウム血症による痙攣のこともある。2012年の厚生労働省研究班による全国調査では、先天性NDIの約1割に精神発達遅滞を認めた。乳幼児期を過ぎれば自律的に水分摂取が可能となるので、意識障害時を除いて高張性脱水による中枢神経合併症を生じることはないとされる。2)腎泌尿器系現在のところ、NDIの多尿を適切に改善させる治療法がないので、長期間の多尿による腎泌尿器系の合併症が約半数の患者にみられる。水尿管を含む水腎症、膀胱尿管逆流症の併発により腎機能低下を招来する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)先天性腎性尿崩症の診断基準は、主要症状である多尿、検査所見として尿浸透圧の低値とAVPへの無反応/反応低下、鑑別診断と遺伝学的検査よりなっている(表24))。これには軽症または部分型NDIを診断するための重症度分類も含まれている1)。先天性NDIの診断年齢は、1歳未満が半数以上を占めているが、1~4歳で診断される例も1~2割を占める。表2 先天性腎性尿崩症の診断基準4)と重症度分類1)画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)多尿に見合う適切な量の水分摂取、腎への溶質負荷を軽減するための塩分・蛋白質の摂取制限、サイアザイド系利尿薬や非ステロイド系抗炎症薬の投与が行われる。小児期には、まず塩分制限を行い、効果が不十分な場合に蛋白制限を追加するが、成長障害に十分な注意を払わなければならない。サイアザイド系利尿薬(ヒドロクロロサイアザイドで2~4 mg/kg/日)は、利尿により生じる軽度の体液量減少がレニン・アルドステロン・アンギオテンシン系や交感神経系を賦活して近位尿細管におけるNaと水の再吸収を促進することで、結果的にAVPの作用部位である集合管への水・電解質の負荷を軽減し、逆説的に尿量減少効果を呈すると考えられている。サイアザイド系利尿薬の投与により、尿量は、1/2~1/3程度に減少する。効果が不十分な場合、AVPR2遺伝子異常によるNDIではインドメタシンや選択的COX-2 阻害薬が有効とされるが、近年、長期の選択的COX-2阻害剤投与が心臓の副作用を招くことが明らかにされた。部分的NDIではAVPへの反応性が残存しているので、高容量のDDAVPとサイアザイドの併用による治療が可能な場合がある。4 今後の展望AVPR2バリアントやAQP2バリアントでは、タンパクの細胞質移送が障害されていることが明らかになっているので、種々の薬剤のシャペロン作用により、バリアント蛋白の細胞質内での滞留を解除する試みがなされているが、実用には至っていない5)。5 主たる診療科新生児科、小児科、内科、泌尿器科、腎臓内科、神経内科、神経小児科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 先天性腎性尿崩症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報腎性尿崩症 友の会(患者とその家族および支援者の会)1)腎性尿崩症の実態把握と診断・治療指針作成に関する研究(研究代表者 神崎 晋). 平成21~23年度総合研究報告書. 2012.2)根東義明. 日腎会誌. 2011;53:177-180.3)Miura K,et al. Pediatric Nephrology.2009;24:1235–1238.4)先天性腎性尿崩症.難病医学研究財団 難病情報センター.(2021年3月1日閲覧)5)Bernier V, et al. J Am Soc Nephrol.2006;17:232-243.公開履歴初回2021年04月13日

305.

レボフロキサシン単剤3日分、どの疾患を想起する?【処方まる見えゼミナール(大和田ゼミ)】

処方まる見えゼミナール(大和田ゼミ)レボフロキサシン単剤3日分、どの疾患を想起する?講師:大和田 潔氏 / 秋葉原駅クリニック院長動画解説抗菌薬の適応症は広いため、どういった疾患に処方されているのか悩むことは多いでしょう。限られた情報を頼りに、若手薬剤師が推測します。そして、3日間というやや短い期間で処方された理由や薬剤師に求める患者指導について、大和田潔先生が熱く語ります。

306.

疑義照会?アモキシシリン単剤・合剤併処方【処方まる見えゼミナール(三澤ゼミ)】

処方まる見えゼミナール(三澤ゼミ)疑義照会?アモキシシリン単剤・合剤併処方講師:三澤 美和氏 / 大阪医科大学附属病院 総合診療科動画解説アモキシシリンの単剤、合剤が同時に処方されている患者さん。つい疑義照会をしたくなる処方ですが、実は、そこには聞けば納得の処方意図が隠されています。抗菌薬の選択方法や高齢者での注意点なども交えて、三澤先生が解き明かします。

307.

抗菌薬による低カルニチン血症の注意点【ママに聞いてみよう(1)】

ママに聞いてみよう(1)抗菌薬による低カルニチン血症の注意点講師:堀 美智子氏 / 医薬情報研究所 (株)エス・アイ・シー取締役、日本女性薬局経営者の会 会長動画解説ピボキシル基を有する薬剤が低カルニチン血症を起こす可能性があることを知った正隆さん。その副作用を防ぐために薬剤師は何ができるのかを考えます。そこで過去の安全性情報を見直しながら美智子先生が確認すべきポイントを解説します。

308.

かぜに抗菌薬?薬の適正使用をどう進めるか【ママに聞いてみよう(5)】

ママに聞いてみよう(5)かぜに抗菌薬?薬の適正使用をどう進めるか講師:堀 美智子氏 / 医薬情報研究所 (株)エス・アイ・シー取締役、日本女性薬局経営者の会 会長動画解説かぜの患者に抗菌薬が処方されたとき、薬剤師はどのようなことを確認すべきなのでしょうか。適正使用を進めるために知っておくべきポイントを美智子先生が解説します。

309.

『敗血症診療ガイドライン2020年』の完成版が発刊

 昨年、ダイジェスト版が先行発表されていた日本集中治療医学会・日本救急医学会の合同作成による「日本版敗血症診療ガイドライン2020」の正式版が、3月に発刊された。本ガイドラインは、小児から成人まで敗血症・敗血症性ショック患者およびその疑いのある患者の診療において、医療従事者が患者の予後改善のために適切な判断を下す支援を行うことを目的に作成されている。また、敗血症診療に従事または関与する専門医、一般臨床医、看護師、薬剤師、理学療法士、臨床工学技士、管理栄養士などのすべての医療従事者への利用を促している。 今回の改定版は、敗血症疾患の予後改善のために適切な判断を下すことを目的に、一般臨床医にもわかりやすく作成されている。.新たな項目として4領域(神経集中治療、Patient-and Family-Centered Care、Sepsis Treatment System、ストレス潰瘍)を追加し、敗血症診療を計22領域で構成、CQ:118題について解説されている。<Clinical Question―全22領域>CQ1:敗血症の定義と診断CQ2:感染の診断CQ3:画像診断と感染源のコントロールCQ4:抗菌薬治療CQ5:免疫グロブリン(IVIG)療法CQ6:初期蘇生・循環作動薬CQ7:ステロイド療法CQ8:輸血療法CQ9:呼吸管理 CQ10:痛み・不穏・せん妄の管理CQ11:急性腎障害・血液浄化療法CQ12:栄養療法CQ13:血糖管理CQ14:体温管理CQ15:DIC診断と治療CQ16:静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)対策CQ17:Post-intensive care syndrome(PICS)と ICU-acquired weakness(ICU-AW)CQ18:小児CQ19:神経集中治療CQ20:Patient- and Family-Centered Care CQ21:Sepsis treatment systemCQ22:ストレス潰瘍 制作委員長を務めた江木 盛時氏(神戸大学大学院医学研究科外科系講座麻酔科学分野)と小倉 裕二氏(大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター)らは、「集中治療室に限らず、一般病棟や救急外来で、診断・治療を受ける患者を包括するが、敗血症患者は高度な全身管理を必要とすることから、敗血症およびその疑いの強い患者では、状況が許す限り、速やかに集中治療室へ移送しての管理が望ましい」と強調している。

310.

COVID-19疑いへのアジスロマイシン追加の臨床的意義/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の市中感染疑い例の治療において、アジスロマイシンを通常治療に追加するアプローチは通常治療単独と比較して、回復までの期間を短縮せず、入院リスクを軽減しないことが、英国・オックスフォード大学のChristopher C. Butler氏らPRINCIPLE Trial Collaborative Groupが行った「PRINCIPLE試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2021年3月4日号に掲載された。アジスロマイシンは、抗菌作用と共に抗ウイルス作用や抗炎症作用が期待できるためCOVID-19の治療に使用されているが、市中の無作為化試験のエビデンスは不足しているという。英国のプライマリケアの適応的プラットフォーム試験 本研究は、英国のプライマリケアをベースとし、合併症のリスクの高い市中COVID-19疑い例の治療における複数の薬剤の有用性を同時に評価する、非盲検無作為化適応的プラットフォーム試験である(英国研究技術革新機構[UKRI]と同国保健省の助成による)。本研究ではこれまでに、ヒドロキシクロロキン、アジスロマイシン、ドキシサイクリン、吸入ブデソニドの検討が行われており、今回はアジスロマイシンのアウトカムが報告された。 対象は、年齢65歳以上または1つ以上の併存症を有する50歳以上で、直近の14日以内にCOVID-19(確定例、疑い例)による症状(発熱、新規の持続的な咳嗽、臭覚または味覚の変化)がみられる患者であった。被験者は、通常治療+アジスロマイシン(500mg/日、3日間)、通常治療+他の介入、通常治療のみを受ける群のいずれかに無作為に割り付けられた。 無作為化から28日以内に2つの主要エンドポイントの評価が行われた。1つは患者の自己申告による初回の回復(ベイズ区分指数モデルで評価)、もう1つはCOVID-19関連の入院または死亡(ベイズロジスティック回帰モデルで評価)であった。 2020年4月2日にPRINCIPLE試験の最初の参加者が登録され、アジスロマイシンの試験には、2020年5月22日~11月30日の期間に英国の1,460の総合診療施設から2,265例が登録された。このうち2,120例(94%)で追跡データが得られ、500例がアジスロマイシン群、823例が通常治療単独群、797例は他の介入群だった。 11月30日、予定されていたデータ監視・安全性審査委員会による中間解析において、事前に規定された無益性基準を満たしたため、PRINCIPLE試験運営委員会によりアジスロマイシン試験への患者の割り付けの中止が勧告された。28日回復割合:80% vs.77%、入院/死亡割合:3% vs.3% アジスロマイシン試験(1,388例、アジスロマイシン群526例、通常治療単独群862例)の全体の平均年齢は60.7(SD 7.8)歳、女性が57%で、88%が併存症を有し、無作為化前の罹病期間中央値は6日(IQR:4~10)、83%がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法による重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の検査を受け、全体の31%が陽性だった。アジスロマイシン群の87%がアジスロマイシンの1回以上の投与を受け、71%は全3回の投与を受けた。 28日以内に回復したと報告した患者の割合は、アジスロマイシン群が80%(402/500例)、通常治療単独群は77%(631/823例)であった。初回回復の報告までの期間に関して、アジスロマイシン群は通常治療単独群と比較して意義のある有益性は認められず(ハザード比[HR]:1.08、95%ベイズ信用区間[BCI]:0.95~1.23)、初回回復までの期間中央値の有益性の推定値は0.94日(95%BCI:-0.56~2.43)であった。回復までの期間が臨床的に意義のある有益性を示すとされる1.5日以上の短縮を達成する確率は0.23だった。 入院は、アジスロマイシン群が3%(16/500例)、通常治療単独群も3%(28/823例)で認められた(絶対有益性割合:0.3%、95%BCI:-1.7~2.2)。死亡例は両群ともみられなかった。入院/死亡が臨床的に意義のある有益性を示すとされる2%以上の低下を達成する確率は0.042であった。 また、安全性アウトカムは両群で同程度だった。試験期間中に、COVID-19と関連しない入院が、アジスロマイシン群で1%(2/455例)、通常治療単独群で1%(4/668例)に認められた。 著者は、「抗菌薬の不適切な使用は抗菌薬耐性の増加につながるため、今回のCOVID-19の世界的大流行中は抗菌薬の適正使用の支援が重要な意義を持つことを、これらの知見は示している。他の研究により、今回の世界的大流行中の英国におけるアジスロマイシン使用の増加のエビデンスが報告されている」とまとめ、「これまでのエビデンスと今回の知見を統合すると、市中でも病院でも、アジスロマイシンはルーチンの使用を正当化する十分な有効性を持つ治療ではないことが示唆される」と指摘している。

311.

セントラルドグマが崩れたのか(解説:岡村毅氏)-1363

 現代のアルツハイマー型認知症の病理のいわばセントラルドグマであるアミロイド仮説がかなり危なくなってきた。背景から説明したい。 アルツハイマー型認知症で亡くなった方の脳では、アミロイドが蓄積している。もっと詳しく書くと、後頭葉や側頭葉内側面から出現したアミロイドプラークが病気の進行とともに広がっていく(Braakらの研究)。このようにしてできたのが「アミロイド・カスケード仮説」である。この仮説は2005年から2010年にかけて行われたADNI(Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative)によって生きているヒトの脳でも確認された。 なお、アミロイドの後にタウが広がってゆくが、ここでは深入りはしない。 近年の創薬は、アミロイド仮説を基盤にして、アミロイドを抑制するべく試されてきた。しかしながら、認知症になっている人にいくらアミロイドを抑制する薬を投与しても結果は芳しくない。 理由は、もの忘れの症状が出たときには、もうアミロイドは溜まった後だからである。ある著名な神経学者は、何ともワイルドな例えだが、「病気になってからアミロイドを除去するのでは、牛が逃げて行ってしまってから、牛小屋のドアを閉めるようなものだ」と述べている。そこで、アミロイドが溜まり始めているが、まだ症状がない人を対象に研究が進められてきた。プレクリニカル期にアミロイドを止めてしまえば、病気を止めることができるというわけだ。 しかしながら、失敗続きなのはご存じのとおりである。実は専門家たちは、だいぶ前から「アミロイドは原因ではないのではないか」という深刻な疑念を持っていた。確かに病状の進行とともにアミロイドは溜まる。だが、これは本質的な現象ではないのではないかということである。 つまりこういうことだ。肺炎になれば熱が上がる。もし熱が肺炎の原因であれば、熱を下げれば肺炎は治まるだろう。でも現代ではそう考える人はいないだろう。われわれは、細菌などの病原体が原因であると知っているからだ(つまり抗菌薬が必要だ)。アミロイドも、肺炎における熱のようなものだとしたら…(この例えが正鵠を得ているかやや自信がないが、文意を読んでください)。 さて、本論文は非常に賢い戦略をとる。さまざまな薬剤の治験のデータを集約し、アミロイドが除去されていることと、認知機能低下が抑えられたことの関連を見ている。個々の治験を集めて、巨大なデータベースを作ったということだ。各々の治験は、当然その薬剤が効いているかどうかに着目している。しかし治験を集めることで、アミロイドの除去が本当に認知機能低下を抑制しているかどうかを調べる巨大な研究をしたことと同じ解析ができる。 結果は…アミロイドの除去は認知機能に関係がないという結果であった。 本研究の結果から、認知症根本治療薬の開発は無理だ、という陳腐な結論を導くようでは、時代の流れを見失うであろう。良い結果が得られている治験があることも事実であり、またこの研究には組み込まれていない治験もある。冷静に事態を眺めたい。 謎は深まった。神経学者たちの探索は新たな領域に突入した。20世紀末、われわれはアルツハイマー型認知症の根本治療薬が開発されるいわば「夜明け前」にいると皆が信じた。しかし、実際にはまだまだ真夜中にいるようである。おそらく未来のある時点でそれなりの根本治療薬が開発されるだろう。老化や死はともかく、疾病性の強い比較的若年発症のアルツハイマー型認知症は抑制可能になる可能性は大きいと思われる。それが10年後か100年後か、それは誰にもわからないが…。神経学者たちの探求は続き、われわれはそれを大いに支援したい。

312.

ドンペリドン、胎児の奇形リスクなし/国内大規模データベース

 制吐薬ドンペリドンは動物実験で催奇形性が示されたことから、従来、妊婦禁忌とされてきた。しかし、つわりと知らずに服用し妊娠が判明した後に気付いて妊娠継続に悩む女性が少なくない。一方で、本剤は米国で発売されていないことから疫学研究も少なく、安全性の根拠に乏しい面もあった。今回、国立成育医療研究センターの「妊娠と薬情報センター」と虎の門病院は、両施設が保有する1万3,599例もの妊娠中の薬剤曝露症例のデータベースを用いて、ドンペリドンの催奇形性を解析。その結果、妊娠初期に本剤を服用した例と、リスクがないことが明らかな薬のみを服用した例では、奇形発生率に有意な差は見られなかった。The Journal of Obstetrics and Gynaecology Research誌オンライン版2021年2月25日号に掲載。ドンペリドン曝露は乳児の主要な奇形のリスク増加と関連なし 本研究は、1988年4月~2017年12月までに、虎の門病院「妊娠と薬相談外来」または国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」に、妊娠中の薬物の安全性について相談した女性が含まれ、妊娠初期(4~13週)にドンペリドンを服用した妊婦519例(ドンペリドン群)と、対照薬を服用した妊婦1,673例(対照群)から生まれた乳児の奇形発生率を比較した。なお、ドンペリドンとメトクロプラミドの両方を使用した妊婦は研究から除外された。 対照薬としては、アセトアミノフェン、催奇形性リスクが増加しない抗ヒスタミン薬、H2ブロッカー、消化酵素製剤、ペニシリンやセファロスポリンなどの抗菌薬、および外用薬(点眼、軟膏・クリームなど)が含まれた。また、妊婦の制吐薬として一般的に使用されるメトクロプラミドを服用した妊婦241例(メトクロプラミド群)を参照群として定義した。 ドンペリドンによる乳児の奇形発生率について検討した主な結果は以下のとおり。・カウンセリング時の年齢中央値はすべての群で30歳であり、年齢分布も同等だった。飲酒または喫煙習慣のいずれにおいても、3群に大きな違いはなかった。・出産の結果はすべての登録者について集計され、生産の割合は、ドンペリドン群で94.0%(488例)、対照群で93.8%(1,570例)、メトクロプラミド群で94.2%(227例)だった。3群間で死産、流産または中絶の発生率に顕著な違いはなかった。・生産の単胎児における奇形発生率は、ドンペリドン群で2.9%(14/485例、95%信頼区間[CI]:1.6~4.8)、対照群で1.7%(27/1,554例、95%CI:1.1~2.5)、メトクロプラミド群では3.6%(8/224例、95%CI:1.6~6.9)で、有意な差は見られなかった。・飲酒量、喫煙、母体年齢、妊娠初期、施設、対照薬以外の併用薬使用を調整した多変量ロジスティック回帰分析の結果、対照群とドンペリドン群の調整後オッズ比(OR)は1.86(95%CI:0.73~4.70、p=0.191)であり、奇形発生率に有意差は見られなかった。また、対照群とメトクロプラミド群の調整後ORは2.20(95%CI:0.69~6.98、p=0.183)と同様の結果だった。 研究者らは、「この観察コホート研究は、妊娠初期のドンペリドン曝露が乳児の主要な奇形のリスク増加と関連していないことを示した。これらの結果は、妊娠中にドンペリドンを服用した妊婦の不安を和らげるのに役立つ可能性がある」と結論している。

313.

高齢者肺炎寿司本【Dr.倉原の“俺の本棚”】第40回

【第40回】高齢者肺炎寿司本おいしそうな寿司が表紙になっているこの本を電車で読んでいて、誰が医学書だと思うでしょうか。よいですね、この装丁。編者のブログ(「南砺の病院家庭医が勉強記録を始めました」)にも書かれていましたが、雑誌『dancyu(ダンチュウ)』みたいです。『終末期の肺炎』大浦 誠/編. 南山堂. 2020年私が医師になった頃は、終末期の肺炎が起こっても、言語聴覚士、栄養士、MSWなどがどんどん現場に入ってくることはなくて、とにかく絶飲食にして抗菌薬を投与するというのが当たり前でした。そもそも口から食べられないのだから、仕方がないと思い込んでいた節もあります。治してもまた肺炎を繰り返す。現場の徒労感。それゆえ、高齢者の肺炎はどうしても医師が主導権を握りがちで、看護師と言語聴覚士が指示を受けてケアしていることが多いです。理想はpatient-orientedな輪っかができることですが、そうなっていないシーンはいまだによく見ます。2017年に成人市中肺炎ガイドラインが刊行され、ようやく終末期の肺炎について記述されました。近年、アドバンスケアプランニング(ACP)が叫ばれるようになり、終末期の肺炎について議論されることが増えてきました。高齢者の肺炎マネジメントの変革期を代表するような本で、個人的には医師以外の職種にも読んでほしいと思っています。編者は決して終末期の肺炎に特化したものではない、あくまで病院で遭遇する肺炎について書いたものだとおっしゃっていますが、誤嚥を繰り返す高齢者に対して打つ手がないと思っている医療従事者は騙されたと思って読んでみてください。この本は、成年後見人が医療行為への同意権がないというところから、じゃあ意思決定はどうすればよいのかというデリケートなところまで踏み込んで書かれています。BATNAやZOPAなど、医学書には出てこないような交渉術の用語も登場してきて、あざます、勉強になります!『終末期の肺炎』大浦 誠 /編出版社名南山堂定価本体3,600円+税サイズB5判刊行年2020年

314.

第50回 COVID-19ワクチン接種後数日してからの皮膚反応

接種後の遅れ馳せ(Delayed)の皮膚反応への心づもりが必要新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質を作るmRNAが成分のModerna(モデルナ)社のワクチンmRNA-1273を接種した12人に接種後すぐではなく何日か(4~11日;中央値8日)してから生じた遅れ馳せの皮膚反応を米国ボストン市の著名病院・Massachusetts General HospitalのチームがNEJM誌に報告し1)、皮膚感染症と混同して抗生物質で無闇に治療してはいけないと注意を促しています2)。提供:Massachusetts General Hospital腫れ、痒み、痛みなどを伴う上の写真のようなそれら皮膚反応は接種後すぐの局所や全身の症状が解消した後に注射部位近くに広く生じ、5人の病変の直径は10cm以上ありました。主に冷やすか抗ヒスタミン薬で治療され、何人かにはステロイド(グルココルチコイド)が使われました。また1人は蜂巣炎と推定されて抗生物質が投与されました。症状は発生から2~11日(中央値6日)で解消しました。そのような皮膚反応が遅延型かT細胞を介した過敏反応らしいとの著者等の見立ては報告された12人と同様に遅れ馳せの広域皮膚反応を呈した別の1人の皮膚検体の解析で支持されています。検体の表層血管周囲や毛胞周囲には好酸球や肥満細胞(マスト細胞)を含むリンパ球浸潤が認められました。遅延型過敏反応や注射部位反応を呈した人への2回目接種は禁忌ではないことから12人には2回目の接種を案内し、全員が2回目の接種を済ませました。2回目の接種後に半数の6人は1回目と同様か1回目より軽度の反応を再び被りました。2回目の接種後の皮膚症状はより早く、接種から1~3日(中央値2日)後に発生しています。mRNA-1273ワクチンへの遅れ馳せの局所反応に心づもりができていない医師がいるかもしれませんが、今回の報告はそれらの反応がおよそ恐れるに足るものではないことを改めて示しています2)。著者によると遅れ馳せの皮膚反応は免疫が良好に働いていることをどうやら意味しており、ワクチン接種の妨げにはなりません。今回の報告が不必要な抗生物質使用を減らしてワクチン接種の全うを助けることを著者は望んでいます。皮膚病変はSARS-CoV-2感染でも生じうるワクチンのみならずCOVID-19と種々の皮膚異変の関連も示唆されており、たとえば足のつま先によく生じる3)ことから”COVID toes”として知られる凍瘡(しもやけ)様病変がCOVID-19流行に伴って小児や若い成人患者にとくに多く認められています4)。COVID toes患者の鼻や喉の拭い液のPCR検査でSARS-CoV-2が検出されることは少なく4)、まったく検出できなかった報告5,6)ではSARS-CoV-2感染との関連はなさそうと結論されています。しかし組織を生検した幾つかの試験ではSARS-CoV-2スパイクタンパク質が検出されており、それらの断片が皮膚の内皮細胞のACE2に結合して取り込まれて血管内皮炎を誘発するのかもしれません7)。スパイクタンパク質はPfizerやModerna 社のワクチンが体内で作り出す成分でもあり、スパイクタンパクと内皮細胞のACE2の相互作用がどういう顛末をもたらすのかをさらに調査する必要があります。参考1)Blumenthal KG,et al. N Engl J Med. 2021 Mar 3. [Epub ahead of print]2)MGH researchers call for greater awareness of delayed skin reactions after Moderna COVID-19 vaccine / MGH3)Magro CM, et al.Br J Dermatol . 2021 Jan;184:141-150. 4)Colmenero I, et al.Br J Dermatol. 2020 Oct;183:729-737. 5)Herman A, et al. JAMA Dermatol. 2020 Sep 1;156:998-1003.6)Roca-Gines J, et al. JAMA Dermatol.2020 Sep 1;156:992-997.7)Ko CJ, et al. J Cutan Pathol. 2021 Jan;48:47-52.

315.

肺血栓塞栓症はCOPD増悪の原因と考えてよいか?(解説:山口佳寿博氏)-1355

 まず言葉の定義から考えていく。COPDの分野にあって、“急性増悪”という言葉が使用されなくなって久しい。現在では、単に“増悪(Exacerbation)”という言葉を使用する。さらに、増悪は“気道病変(炎症)の悪化を原因とする呼吸器症状の急性変化”と定義される(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease (GOLD) 2006以降)。GOLD 2003では、増悪は狭義のもの(一次性原因)と広義のもの(二次性原因)の2種類に分類されたが、GOLD 2006以降では、気道病変(炎症)の悪化を原因とする“狭義の増悪”を“増悪”と定義し、それ以外の原因に起因する“広義の増悪”は増悪ではなく“増悪の鑑別診断/修飾因子”として考慮することになった(肺炎、肺血栓塞栓症、気胸、胸部外傷、胸水、心不全/不整脈、麻薬/鎮静剤、β blocker。GOLD 2011以降では、麻薬/鎮静剤、β blockerが鑑別から除外)。増悪の定義が厳密化されたのは、増悪様症状を示した症例のうち80%以上が感染性(気道感染)、非感染性(環境汚染など)による気道炎症の悪化に起因し、それに対してSteroid、抗菌薬を中心とした基本的治療法が確立されたためである。その意味で、肺血栓塞栓症(PTE:Pulmonary thromboembolism)は増悪を惹起する原因ではなく、増悪の鑑別診断となる病態であることをまず理解していただきたい。 COPDとPTEの合併に関しては古くから多くの検討がなされ、COPD患者におけるPTEの合併率は、19%(Lesser BA, et al. Chest. 1992;102:17-22.)から23%(Shetty R, et al. J Thromb Thrombolysis. 2008;26:35-40.)と報告されている。これらのPTE合併頻度は本邦の一般人口におけるPTEの発症頻度(剖検例での検討:無症候性の軽症を含め18~24%)とほぼ同等であり、COPD自体がPTE発症を助長しているわけではない。しかしながら、原因不明のCOPD増悪(一次性原因と二次性原因を含む)症例を解析した論文では、その3.3%(Rutschmann OT, et al. Thorax. 2007;62:121-125.)から25%(Tillie-Leblond I, et al. Ann Intern Med. 2006;144:390-396.)にPTEの合併を認めたと報告された。本論評で取り上げたCouturaudらの論文では、COPD増悪様症状を呈した症例の5.9%にPTEの合併を認めたと報告されている(Couturaud, et al. JAMA. 2021;325:59-68.)。これら3論文を合わせて考えると、増悪様症状を呈したCOPD患者のうち少なくとも10%前後に、二次性原因としてのPTEが合併しているものと考えなければならない。以上の解析結果は、安定期COPDはPTEの発生要因にはならないが、COPDの増悪様症状を呈した患者にあってはPTEに起因するものが少なからず含まれ、COPDの真の増悪(一次性増悪)の鑑別診断としてPTEは重要であることを示唆する。PTEの合併はCOPD患者のその後の生命予後を悪化させ、1年後の死亡率はPTE合併がなかったCOPD患者の1.94倍に達する(Carson JL, et al. Chest. 1996;110:1212-1219.)。 Couturaudらのものを含め現在までに報告された論文からは、COPDの真の増悪とPTEとの関連を明確には把握できない。COPDの増悪がPTEの危険因子となる、あるいは、逆にPTEの合併がCOPDの真の増悪をさらに悪化させるかどうかを判定するためには、増悪様症状を呈したCOPD患者を真の増悪(一次性原因)とそうでないもの(二次性原因)に分類し、各群でPTEの発症頻度を評価する必要がある。COPDの真の増悪は、一秒量(FEV1)関連の閉塞性換気指標の悪化、喀痰での好中球、好酸球の増加、喀痰中の微生物の変化などから簡単に判定できる。これらの変化は、PTEなどの二次性原因では認められないはずである。以上のような解析がなされれば、COPDの真の増悪とPTE発症の関係が正確に把握でき、COPDの真の増悪がPTE発症の危険因子として作用するか否かの問題に決着をつけることができる。今後、このような解析が世界的になされることを念願するものである。本邦のPTEガイドライン(cf. 10学会合同の『肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症[静脈血栓塞栓症]予防ガイドライン』[2004])では、COPDの増悪がPTEの危険因子の1つとして記載されているが、この場合の増悪がいかなる意味で使用されているのか、再度議論される必要がある。

316.

新型コロナワクチンで再注目、必須抗菌薬の国内生産体制をどう維持するか

 2019年、抗菌薬のセファゾリンが原薬の異物混入等の理由から一時製造中止となり、供給不足が医療現場に大きな混乱をもたらした。これにより、原薬供給が海外の特定国とメーカーに集中している現状では、いったん不測の事態が生じれば医療現場に必須の薬剤が供給不能になる、という問題点が明らかになった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)においても、流行初期のマスク不足やワクチン確保の局面において、医薬品の国内生産の重要性が改めて注目されている。 厚生労働省はセファゾリン供給不足の事態を受け、「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」を立ち上げ、1)供給不安の予防、2)供給不安への早期対応、3)実際に供給不安に陥ったときの対応という側面から、対応策を検討してきた。 2021年1月、AMRアライアンス・ジャパン「抗菌薬の安定供給に向けたフォーラム」 が行われ、関係者会議の座長を務める清田 浩氏が「抗菌薬の安定供給について」と題した発表を行った。冒頭に清田氏は「公衆衛生は国防である」と訴え、国として一定のコストを割いたうえで取り組んでいくべき問題だと強調した。そして、2020年のあいだに関係者会議が議論し、まとめた活動として、安定確保にとくに配慮を要する「キードラッグ」の選定と国内生産への援助・備蓄についての提言、キードラッグの薬価維持、不採算抗菌薬の薬価引き上げ要望を紹介した。 続いて、厚生労働省の林 俊宏氏が関係者会議の提言を受けた政府側の具体的な取り組み予定を紹介。1)供給不安の予防として、製造工程の把握、製造の複数ソース化、薬価上の処理(不採算品目の薬価引き上げと基礎的医薬品の薬価維持)、2)供給不安への早期対応として、薬品安定供給に関するチェックリスト作成とメーカー各社による自己評価、供給不安事案の報告態勢の整備、3)供給不安に陥ったときの対応として、増産・出荷調整、迅速な承認審査、安定確保スキームの整備を行っていくことを紹介した。

317.

アジスロマイシン、COVID-19入院患者への効果は?/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者において、アジスロマイシンによる治療は生存期間および臨床転帰(侵襲的人工呼吸器装着または死亡)を改善しなかったことが、無作為化非盲検対照プラットフォーム試験「RECOVERY試験」の結果、明らかとなった。英国・オックスフォード大学のPeter W. Horby氏ら「RECOVERY試験」共同研究グループが報告した。アジスロマイシンは免疫調節作用を有していることから、COVID-19に対する治療として提案されてきたが、これまでの無作為化試験では、COVID-19の治療におけるマクロライド系抗菌薬の臨床的有益性は示されていなかった。結果を踏まえて著者は、「COVID-19入院患者に対するアジスロマイシンの使用は、明らかに抗菌薬の適応である患者に制限されるべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2021年2月2日号掲載の報告。通常治療単独群とアジスロマイシン併用群で28日死亡率などを比較 RECOVERY(Randomised Evaluation of COVID-19 Therapy)試験は、英国の病院176施設で進行中の無作為化非盲検対照アダプティブプラットフォーム比較試験である。研究グループは、適格基準を満たし同意が得られたCOVID-19入院患者を、通常治療群または通常治療+アジスロマイシン(500mg 1日1回経口/静脈投与)群(以下、アジスロマイシン群)のいずれかに、ウェブシステムを用いて2対1の割合で無作為に割り付けた。投与は、10日間または退院まで(あるいはRECOVERY試験の他の治療群に割り付けられるまで)行われた。 主要評価項目は、intention-to-treat集団における無作為化から28日間の全死因死亡率であった。なお、患者と各病院の医療スタッフは治療の割り付けに関して盲検化されていないが、本試験に関わる他のすべての関係者は、臨床転帰に関するデータについて盲検化された。28日死亡率、生存退院までの期間、28日以内の生存退院率に有意差なし 2020年4月7日~11月27日に、RECOVERY試験の登録患者1万6,442例中、9,433例(57%)が適格基準を満たし、7,763例がアジスロマイシン群および通常治療群に無作為に割り付けられた(それぞれ2,582例および5,181例)。患者の平均(±SD)年齢は65.3±15.7歳で、約3分の1(2,944例、38%)が女性であった。 全体で無作為化から28日以内に、アジスロマイシン群で561例(22%)、通常治療群で1,162例(22%)が死亡した(率比:0.97、95%信頼区間[CI]:0.87~1.07、p=0.50)。生存退院までの期間中央値は、アジスロマイシン群10日(IQR:5~>28)、通常治療群11日(IQR:5~>28)で、28日以内の生存退院率はアジスロマイシン群69%(1,788/2,582例)、通常治療群68%(3,525/5,181例)で(率比:1.04、95%CI:0.98~1.10、p=0.19)、いずれも両群間で有意差は確認されなかった。 ベースラインで侵襲的人工呼吸管理を受けていない患者で、侵襲的人工呼吸管理または死亡に至った割合も有意差はなかった(リスク比:0.95、95%CI:0.87~1.03、p=0.24)。 なお、著者は、本無作為化試験は非盲検試験であり、ウイルス量や炎症の程度、非マクロライド系抗菌薬の使用などに関する情報、ならびに放射線学的または生理学的な転帰に関する情報が不明であることを研究の限界として挙げている。

318.

重症急性膵炎〔Severe acute pancreatitis〕

1 疾患概要■ 概念急性膵炎は、膵内で病的に活性化された膵酵素が膵を自己消化する膵の急性炎症である。炎症が膵内にとどまって数日で軽快する軽症例が多いが、一部は炎症が全身に波及して、多臓器障害や血液凝固障害を引き起こす重症急性膵炎となる。急性膵炎から慢性膵炎への移行は10%前後であり、多くの急性膵炎は可逆性で膵に後遺障害は残さない。■ 疫学急性膵炎の2016年における発症頻度は10万人当たり61.8人で、増加傾向にある。男女比は2:1で、発症時の平均年齢は男性で59.9歳、女性で66.5歳である。重症度は、軽症が76.4%、重症が23.6%となる。重症急性膵炎発症時の平均年齢は63.1歳で、男性で60.2歳、女性で69.4歳である。■ 発症機序・成因食べ物を消化する膵酵素は、膵腺房細胞で生成され、食間では消化機能のない不活性型として蓄えられている。摂食により膵酵素の中のトリプシノーゲンが膵管を介して十二指腸内に放出され、エンテロキナーゼの作用により活性型であるトリプシンに転換され、食物を消化する。この膵酵素の活性化が種々の病的要因により膵内で起こり、膵が自己消化されるのが急性膵炎である。膵内外での炎症反応はサイトカインカスケードを活性化し、高サイトカイン血症によるSIRS(systemic inflammatory response syndrome)を来す。重症例では高度のSIRS反応の結果、炎症メディエーターによる血管内皮細胞の障害から全身末梢血管の透過性が亢進し、組織浮腫と血管内脱水を来す。そして、臓器還流障害から肺や腎臓などの臓器障害が起こり、さらに免疫系や凝固系の障害や播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)を合併する。また、高度の血管内脱水にともなって全身の末梢血管に血管攣縮を来たし虚血状態を生じ、膵では膵壊死が起こる。発症後期には、膵および膵周囲の壊死部に感染を生じ死亡に至る例がみられる。感染を起こすのは大腸菌などの腸管由来の細菌がほとんどである。健常人では、腸内細菌に対するバリアを備えているが、急性膵炎では腸管壁の透過性が亢進し細菌毒素が腸管粘膜を通過して腸管外へ移行するbacterial transformationが引き起こされる。さらに、全身免疫機能低下が加わり感染を惹起させる。アルコール性と胆石性が2大成因であり、成因が特定できない特発性がそれに次ぐ。男性ではアルコール性(43%)が多く、発症年齢は40~50歳代が多い。女性では胆石性(38%)が多く、発症は60歳以上の高齢者が多くなっている。その他の成因としては、膵腫瘍、手術、内視鏡的膵胆管造影(ERCP)、高脂血症、膵管形成異常、薬剤性などがある。重症急性膵炎の成因は、アルコール性(35%)、胆石性(30%)、特発性(19%)の順である。■ 症状急性膵炎では、ほとんどの例で上腹部を中心とした強い腹痛と圧痛を認める。その他には、嘔気・嘔吐、背部への放散痛、食思不振、発熱などもしばしば認められる。重症急性膵炎では、ショック、呼吸不全、乏尿、脳神経症状、腹部膨隆(イレウス、腹水)、SIRS(高・低体温、頻脈、頻呼吸)などの重要臓器機能不全兆候がみられる。■ 予後2016年の全国調査における急性膵炎患者の死亡率は1.8%であり、軽症例で0.5%、重症例で6.1%であった。重症急性膵炎の死亡率は2011年の調査時の10.1%より約4割減少した。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)急性膵炎の診断は、上腹部痛と圧痛、膵酵素の上昇、および膵の画像所見のうち2項目を満たし、他の膵疾患や急性腹症を除外する診断基準によって行われる(表1)。急性膵炎診療ガイドライン2015に記載されている臨床指標のPancreatitis Bundles 2015(表2)と診療のフローシート(図1)にそって、診断と治療を行う。重症急性膵炎は死亡率が高いので重症例を早期に検出する目的で、急性膵炎診断後、直ちに重症度判定を行い、経時的に重症度判定を繰り返す必要がある。急性膵炎の重症度判定基準(表3)は、9つの予後因子と造影CTによる造影CT Gradeからなり、各1点の予後因子の合計が3点以上か、造影CT Gradeが2以上の場合重症と診断される(図2~4)。それぞれ単独で重症と診断される例より、両者の組み合わせで重症となる例では死亡率が高い。急性膵炎は病理学的には、浮腫性膵炎、出血性膵炎と壊死性膵炎に分類されるが、臨床的には膵および膵周囲の病変は改訂アトランタ分類によって分類される(表4、図5)。発症4週間を経過すると炎症により障害された組織を取り囲む組織の器質化が進み、4週以降は壊死を伴わない液体貯留は仮性嚢胞となるが、壊死を伴う場合には内部に壊死を含む被包化壊死となりWON (wall-off necrosis)と呼ばれる。表1 急性膵炎の診断基準(厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班)1.上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある2.血中または尿中に膵酵素の上昇がある3.超音波、CTまたはMRIで膵に急性膵炎に伴う異常所見がある上記3項目中2項目以上を満たし、他の膵疾患および急性腹症を除外したものを急性膵炎と診断する。 ただし、慢性膵炎の急性増悪は急性膵炎に含める。注:膵酵素は膵特異性の高いもの(膵アミラーゼ、リパーゼなど)を測定することが望ましい表2 Pancreatitis Bundles 20151.急性膵炎診断時、診断から24時間以内、および、24~48時間の各々の時間帯で、厚生労働省重症度判定基準の予後因子スコアを用いて重症度を繰り返し評価する。2.重症急性膵炎では、診断後3時間以内に、適切な施設への転送を検討する。3.急性膵炎では、診断後3時間以内に、病歴、血液検査、画像検査などにより、膵炎の成因を鑑別する。4.胆石性膵炎のうち、胆管炎合併例、黄疸の出現または増悪などの胆道通過障害の遷延を疑う症例には、早期のERCP+ESの施行を検討する。5.重症急性膵炎の治療を行う施設では、造影可能な重症急性膵炎症例では、初療後3時間以内に、造影CTを行い、膵造影不良域や病変の拡がりなどを検討し、CT Gradeによる重症度判定を行う。6.急性膵炎では、発症後48時間以内は十分な輸液とモニタリングを行い、平均血圧*65mmHg以上、尿量0.5mL/kg/h以上を維持する。7.急性膵炎では、疼痛のコントロールを行う。8.重症急性膵炎では、発症後72時間以内に広域スペクトラムの抗菌薬の予防的投与の可否を検討する。9.腸蠕動がなくても診断後48時間以内に経腸栄養(経空腸が望ましい)を少量から開始する。10.胆石性膵炎で胆嚢結石を有する場合には、膵炎沈静化後、胆嚢摘出術を行う。*:平均血圧=拡張期血圧+(収縮期血圧-拡張期血圧)/3図1 急性膵炎の基本的診療方針画像を拡大する表3 急性膵炎の重症判定基準(厚生労働省難治性疾患に関する調査研究班 2008年)画像を拡大する図2 浮腫性膵炎(矢印)のCT所見画像を拡大する図3 造影CT所見における膵造影不良域(矢印)画像を拡大する図4 重症急性膵炎の造影CT所見。腎下極以遠まで炎症の進展を認める画像を拡大する表4 急性膵炎に伴う膵および膵周囲病変の分類(改訂アトランタ分類)画像を拡大する図5 重症急性膵炎の造影CT所見。薄壁被膜で被包化された左側腹部広範に広がる液貯留腔画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 輸液急性膵炎と診断したら入院治療を行い、意識状態・体温・脈拍数・血圧・尿量・呼吸数・酸素飽和度などをモニタリングする。膵外分泌刺激を回避するために絶食とし、初期輸液と十分な除痛を行う。急性膵炎では発症初期より血管内脱水を起こすので、乳酸リンゲル液などの細胞外液による十分な輸液を行う。ショックまたは脱水状態の患者には、短時間の急速輸液(150~600mL/時間)を行うが、過剰輸液にならないように十分に注意する。脱水状態でない患者には、130~150mL/時間の輸液をしながらモニタリングを行う。平均動脈圧(拡張期血圧+(収縮期血圧―拡張期血圧)/3)が65mmHg以上と尿量0.5 mL/kg/時間以上が確保されたら、急速輸液を終了し輸液速度を下げる。■ 薬物療法急性膵炎の疼痛は激しく持続的であり、非麻薬性鎮痛薬であるブプレノルフィン(商品名:レペタン)などにより十分にコントロールする。軽症例では予防的抗菌薬は必要ないが、重症例や壊死性膵炎では発症後72時間以内に予防的に抗菌剤を投与することが推奨されている。ガベキサートメシル酸塩などの蛋白分解酵素阻害薬の経静脈的投与による生命予後や合併症発生に対する明らかな改善効果は証明されていない。■ 栄養療法経腸栄養を行うことは腸管からのbacterial transformationを減少させるので、感染予防策として腸管合併症のない重症例では入院後48時間以内に開始することが望ましい。原則としてTreitz靭帯を超えて空腸まで挿入した経腸栄養チューブを用いることが推奨されるが、空腸に経腸栄養チューブが挿入できない場合は十二指腸内や胃内に栄養剤を投与しても良い。腹痛の消失、血中膵酵素値などを指標として経口摂取の開始時期を決める。■ Abdominal compartment syndrome(ACS)の診断と対処腹腔内圧(intra-abdominal pressure:IAP)が12mmHg以上をIAH(intra-abdominal hypertension)、腹腔内圧が20mmHg以上かつ新たな臓器障害/臓器不全が発生した場合をACS(abdominal compartment syndrome)と診断する。重症急性膵炎の4~6%にACSが発症する。通常膀胱内圧で測定するIAP 12mmHg以上が持続または反復する場合は、内科的治療(消化管内減圧、腹腔内減圧、腹壁コンプライアンス改善、適正輸液と循環管理)を開始して、IAP 15mmHg以下を管理目標とする。IAP>20mmHgかつ新規臓器障害を合併した患者に対して、内科的治療が無効である場合のみ外科的減圧術を考慮する。■ 特殊治療十分な食輸液にもかかわらず、循環動態が安定せず、利尿が得られない重症例やACS合併例に対しては持続的血液濾過(continuous hemofiltration:CHF)/持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration:CHDF)を導入すべきである。しかし、上記以外の重症急性膵炎にルチーンに使用することは推奨されない。膵の支配動脈から動注することにより、膵の炎症の鎮静化や進展防止および感染予防を目的とする蛋白分解酵素阻害薬・抗菌薬膵局所動注療法は、重症急性膵炎または急性壊死性膵炎の膵感染低下、死亡率低下において有効性を示す報告があるが有用性は確立していない。動注療法は保険適応がないため臨床研究として実施することが望ましい。動注療法の真の有効性と安全性を検証するより質の高いランダム化比較試験(RCT)が必要である。■ 胆石性性膵炎における胆道結石に対する治療急性胆石性膵炎のうち、胆管炎合併例や胆道通貨障害の遷延を疑う症例では、早期にERCP/内視鏡的乳頭切開術(endoscopic sphincterotomy:ES)を施行すべきである(図6)。しかし、上記に該当しない症例に対する早期のERCP/ES施行の有用性は否定的である。急性胆石性膵炎の再発予防のため、手術可能な症例では膵炎鎮静化後速やかに、胆嚢摘出術の施行が推奨される。図6 胆石性膵炎の診療方針画像を拡大する■ 膵局所合併症に対するインターベンション治療壊死性膵炎では保全的治療が原則であるが、感染性膵壊死ではドレナージかネクロセクトミーのインターベンション治療を行う。できれば発症4週以降の壊死巣が十分に被包化されたWONの時期に、経皮的(後腹膜経路)もしくは内視鏡的経消化管的ドレナージをまず行い(図7)、改善が得られない場合は内視鏡的または後腹膜的アプローチによるネクロセクトミーを行う。図7 単純X線所見。被包化壊死(WON)と胃内にダブルピッグテイルプラスチックステントを留置画像を拡大する4 今後の展望遅滞ない初期輸液や経腸栄養などの重症化阻止や感染予防のための方策を講じた急性膵炎診療ガイドラインの普及により、急性膵炎特に重症急性膵炎の死亡率は大きく低下した。今後、急性膵炎発症や重症化の機序のさらなる解明、ガイドラインのさらなる普及、後期合併症対策の改良などが期待される。5 主たる診療科消化器内科、消化器外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。1)Masamune A, et al. Pancreatology. 2020;20:629-636.2)武田和憲、他. 厚生労働科学研究補助金難治性疾患国副事業難治性膵疾患に関する調査研究、平成17年度総括・分担研究報告書. 2006;27-34.3)急性膵炎診療ガイドライン2015(第4版)、金原出版.2015.4)Banks PA, et al. Gut. 2013;62:102-111.公開履歴初回2021年02月11日

319.

GERDを増悪させる薬剤を徹底見直しして負のスパイラルから脱出【うまくいく!処方提案プラクティス】第32回

 今回は、胃食道逆流症(GERD)を悪化させる薬剤を中止することで症状を改善し、ポリファーマシーを解消した事例を紹介します。GERDは胸焼けや嚥下障害などの原因となるほか、嚥下性肺炎、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、慢性咳嗽などの呼吸器疾患を発症・増悪させることもあるため、症状や発症時期を聴取して薬剤を整理することが重要です。患者情報70歳、女性(外来患者)基礎疾患発作性心房細動、慢性心不全、高血圧症、逆流性食道炎診察間隔循環器内科クリニックで月1回処方内容<循環器内科クリニック(かかりつけ医)>1.エドキサバン錠30mg 1錠 分1 朝食後2.ビソプロロール錠2.5mg 1錠 分1 朝食後3.スピロノラクトン錠25mg 1錠 分1 朝食後4.ニフェジピン徐放錠40mg 1錠 分1 朝食後(1ヵ月前から増量)5.エソメプラゾールマグネシウム水和物カプセル20mg 1カプセル 分1 朝食後<内科クリニック>1.モンテルカスト錠10mg 1錠 分1 就寝前(2週間前に処方)2.テオフィリン徐放錠100mg 2錠 分2 朝食後・就寝前(2週間前に処方)本症例のポイントこの患者さんは、なかなか胸焼けが治らないことを訴えて、半年前にGERDの診断を受けました。プロトンポンプ阻害薬による治療によって症状は改善したものの、最近はまた症状がぶり返しているとお悩みでした。患者さんの生活状況を聴取したところ、喫煙や飲酒はしておらず、高脂肪食なども5年前の心房細動の診断を機に気を付けて生活していました。心不全を併発していますが、体重は47.5kg程度の非肥満で増減もなく落ち着いていて、とくにGERD増悪の原因となる生活習慣や体型の問題は見当たりませんでした。さらに確認を進めると、最近の変化として、血圧が高めで推移したため1ヵ月前にニフェジピン徐放錠が20mgから40mgに増量になっていました。また、2週間前に咳症状のため、かかりつけの循環器内科クリニックとは別の内科クリニックを受診し、喘息様発作でモンテルカストとテオフィリンを処方されていました。GERDにおける食道内への胃酸の逆流は、嚥下運動と無関係に起こる一過性の下部食道括約筋(lower esophageal sphincter:LES)弛緩や腹腔内圧上昇、低LES圧による食道防御機構の破綻などにより発生します1)。また、GERDを増悪させる要因として、Ca拮抗薬やテオフィリン、ニトロ化合物、抗コリン薬などのLES弛緩作用を有する薬剤、NSAIDsやビスホスホネート製剤、テトラサイクリン系抗菌薬、塩化カリウムなどの直接的に食道粘膜を障害する薬剤があります1,2)。Ca拮抗薬は平滑筋に直接作用してCaイオンの流れを抑制することで、LES圧を低下させるとも考えられています3)。上記のことより、1ヵ月前に増量したCa拮抗薬のニフェジピン徐放錠がGERD症状の再燃に影響しているのではないかと考えました。その食道への刺激によって乾性咳嗽が生じて他院を受診することになり、そこで処方されたテオフィリンによってさらにLESが弛緩してGERD症状が増悪するという負のスパイラルに陥っている可能性も考えました。かかりつけ医では他院で処方された薬剤の内容を把握している様子がなかったため、状況を整理して処方提案することにしました。処方提案と経過循環器内科クリニックの医師と面談し、別の内科クリニックから乾性咳嗽を主体とした症状のためモンテルカストとテオフィリンが処方されていることと、患者さんの胸焼けや咳嗽がニフェジピン増量に伴うLES弛緩により出現している可能性を伝えしました。医師より、ニフェジピン増量がきっかけとなってGERD症状から乾性咳嗽に進展した可能性が高いので、ニフェジピンを別の降圧薬に変更しようと回答をいただきました。そこで、ACE阻害薬は空咳の副作用の懸念があったため、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を提案し、医師よりニフェジピンをオルメサルタン40mgに変更する指示が出ました。また、現在は乾性咳嗽がないため、心房細動への悪影響を考慮してテオフィリンを一旦中止し、モンテルカストのみ残すことになりました。変更した内容で服用を続けて2週間後、フォローアップの電話で胸焼け症状は改善していることを聴取しました。その後の診察でモンテルカストも中止となり、患者さんは乾性咳嗽や胸焼け症状はなく生活しています。1)藤原 靖弘ほか. Medicina. 2005;42:104-106.2)日本消化器病学会編. 患者さんとご家族のための胃食道逆流症(GERD)ガイド. 2018.3)江頭かの子ほか. 週刊日本医事新報. 2014;4706:67.

320.

急性虫垂炎、経口抗菌薬単独での効果は?/JAMA

 合併症のない急性虫垂炎の成人患者において、7日間の経口モキシフロキサシンによる治療(経口抗菌薬単独治療)と、2日間のertapenem静脈内投与を行い、続いて5日間のレボフロキサシンおよびメトロニダゾールを投与する治療(抗菌薬静脈内投与-経口治療)を比較した結果、両群の治療成功率はともに65%を超え、治療成功に関する経口抗菌薬単独治療の抗菌薬静脈内投与-経口治療に対する非劣性は示されなかった。フィンランド・トゥルク大学のSuvi Sippola氏らが、同国内9病院を対象に行った多施設共同非盲検無作為化非劣性試験「APPAC II試験」の結果を報告した。抗菌薬は、合併症のない急性虫垂炎の治療において手術に代わる効果的で安全な治療となっている。しかし、至適な抗菌薬レジメンは不明であった。JAMA誌オンライン版2021年1月11日号掲載の報告。経口抗菌薬単独治療vs.抗菌薬静脈内投与-経口治療の無作為化試験 APPAC II試験は、2017年4月~2018年11月に行われ、CTで合併症のない急性虫垂炎が確認された18~60歳の患者599例が試験に登録された。 被験者は、経口抗菌薬単独治療群(7日間の経口モキシフロキサシン400mg/日、295例)または抗菌薬静脈内投与-経口治療群(2日間のertapenem静脈内投与[1g/日]、続いて5日間の経口レボフロキサシン[500mg/日]および経口メトロニダゾール[500mgを3回/日]、288例)に無作為に割り付けられ、追跡評価を受けた。 主要エンドポイントは、両群の治療成功(65%以上)で、手術を行うことなく病院から退院し1年間のフォローアップ中に虫垂炎の再発がないことと定義した。また、経口抗菌薬単独治療群の、抗菌薬静脈内投与-経口治療群に対する非劣性(両群差マージン6%)も確認した。1年時点の治療成功率70.2% vs.73.8%で有意差なし 無作為化を受けた599例(平均年齢36[SD 12]歳、女性263例[44%])のうち、581例(99.7%)について1年間のフォローアップデータが入手できた。最終フォローアップ日は、2019年11月29日。 1年時点の治療成功率は、経口抗菌薬単独治療群70.2%(片側95%信頼区間[CI]:65.8~∞)、抗菌薬静脈内投与-経口治療群73.8%(69.5~∞)であった。 群間差は、-3.6%(片側95%CI:-9.7~∞)で、信頼区間値がマージンを超えており、非劣性は確認できなかった(非劣性のp=0.26)。

検索結果 合計:860件 表示位置:301 - 320