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発作性AFの第1選択、クライオバルーンアブレーションvs.抗不整脈薬/NEJM

 第1選択としてのクライオ(冷凍)バルーンによるアブレーションは、発作性心房細動患者の心房性不整脈再発予防において抗不整脈薬より優れており、重篤な手技関連有害事象は少ないことが示された。米国・クリーブランドクリニックのOussama M. Wazni氏らが、米国の24施設で実施した多施設共同無作為化試験「STOP AF First試験(Cryoballoon Catheter Ablation in Antiarrhythmic Drug Naive Paroxysmal Atrial Fibrillation)」の結果を報告した。薬物療法の効果が得られない症候性の発作性心房細動患者では、洞調律維持のため抗不整脈薬よりカテーテルアブレーションが有効である。しかし、第1選択としてのクライオバルーンアブレーションの安全性と有効性は確立されていなかった。NEJM誌オンライン版2020年11月16日号掲載の報告。クライオバルーンアブレーション群を抗不整脈薬群と比較検証 STOP AF First試験の対象は、症候性の発作性心房細動が再発した18~80歳の患者で、抗不整脈薬(クラスIまたはIII)による7日以上の治療歴などがある患者は除外した。 対象患者を、抗不整脈薬(クラスIまたはIII)群またはクライオバルーンアブレーション群に1対1の割合で無作為に割り付け、後者では無作為割付後30日以内にクライオバルーンを用いた肺静脈隔離術を施行した。ベースライン時、1、3、6ヵ月および12ヵ月時点で12誘導心電図を含む不整脈モニタリングを、また、毎週および3~12ヵ月は症状がある場合に電話モニタリングを、さらに6ヵ月および12ヵ月時点で24時間ホルターモニタリングを実施した。 有効性の主要評価項目は、12ヵ月時点の治療成功(手技不成功、心房細動手術または左房に対するアブレーション、90日以降の心房性不整脈再発・除細動・クラスI/III抗不整脈薬使用の各イベントの回避と定義)であった。安全性の主要評価項目は、クライオバルーンアブレーション群における手技関連およびクライオバルーンシステム関連の重篤な有害事象の複合エンドポイントとした。クライオバルーンアブレーション群の治療成功率74.6%、抗不整脈薬群45.0% 2017年6月~2019年5月までに225例が登録され、このうち治療を受けた203例(クライオバルーンアブレーション群104例、抗不整脈薬群99例)が解析対象となった。クライオバルーンアブレーション群における手術の成功率は97%であった。 12ヵ月時点の治療成功率(Kaplan-Meier推定値)は、クライオバルーンアブレーション群74.6%(95%信頼区間[CI]:65.0~82.0)、抗不整脈薬群45.0%(34.6~54.7)であった(log-rank検定のp<0.001)。 クライオバルーンアブレーション群で安全性の主要評価項目である複合エンドポイントのイベントが2件発生した(12ヵ月以内のイベント発生率のKaplan-Meier推定値は1.9%、95%CI:0.5~7.5)。

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未治療の症候性発作性AF、アブレーションvs.抗不整脈薬/NEJM

 未治療の症候性発作性心房細動患者に対し、クライオ(冷凍)バルーンによるカテーテルアブレーションによるカテーテルアブレーションは抗不整脈薬による治療に比べ、心房頻脈性不整脈の再発を有意に抑制することが、継続的な心調律モニタリングの評価によって示された。カナダ・バンクーバー総合病院のJason G. Andrade氏らが、303例を対象に行った無作為化比較試験の結果、明らかにした。心房細動患者に対するカテーテルアブレーションは、ガイドラインでは1回以上の抗不整脈薬治療後とすることが推奨されているが、アブレーションのほうが洞調律維持により有効である可能性が指摘されていた。NEJM誌オンライン版2020年11月16日号掲載の報告。治療後1年時点の心房頻脈性不整脈の再発率を比較 研究グループは、未治療の症候性発作性心房細動患者303例を無作為に2群に分け、一方には冷凍バルーン・カテーテルアブレーションを実施、もう一方には抗不整脈薬を投与した。全被験者に植込み型心臓モニタリング機器を留置し、心房頻脈性不整脈を検出した。 追跡期間は12ヵ月だった。主要エンドポイントは、アブレーションまたは抗不整脈薬投与後91~365日における、心房頻脈性不整脈(心房細動、心房粗動、心房頻拍)の初回再発だった。副次エンドポイントは、症候性不整脈の無発症、心房細動による負荷、生活の質(QOL)などだった。症候性の心房頻脈性不整脈、冷凍アブレーション群で半減 1年時点の心房頻脈性不整脈の再発は、アブレーション群66/154例(42.9%)、抗不整脈薬群101/149例(67.8%)だった(ハザード比[HR]:0.48、95%信頼区間[CI]:0.35~0.66、p<0.001)。 症候性の心房頻脈性不整脈の再発率は、アブレーション群11.0%、抗不整脈薬群26.2%だった(HR:0.39、95%CI:0.22~0.68)。心房細動の時間割合中央値は、アブレーション群0%(四分位範囲:0~0.08)、抗不整脈薬群0.13%(同:0~1.60)だった。 重篤な有害イベントの発生は、アブレーション群5例(3.2%)、抗不整脈薬群6例(4.0%)だった。

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持続性AFへのアブレーション+マーシャル静脈内エタノール注入併用が有効/JAMA

 持続性心房細動(AF)の患者の治療において、カテーテルアブレーションにマーシャル静脈内エタノール注入を併用すると、カテーテルアブレーション単独と比較して、6ヵ月および12ヵ月後の時点の双方でAFまたは心房頻拍が残存しない可能性が高まることが、米国・Houston Methodist DeBakey Heart and Vascular CenterのMiguel Valderrabano氏らが実施した「VENUS試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年10月27日号で報告された。持続性AFに対するカテーテルアブレーションの成功には限界がある。肺静脈隔離を拡大した手技による戦略は、一貫性のある改善効果を示せていない。マーシャル静脈には、逆行性エタノール注入によってアブレーションが可能となる神経支配やAFのトリガーが含まれるという。マーシャル静脈内エタノール注入の追加で結果を改善できるか評価 本研究は、カテーテルアブレーションにマーシャル静脈内エタノール注入を追加することで、持続性AFのアブレーションの結果を改善できるかを評価する無作為化臨床試験であり、米国の12施設が参加し、2013年10月~2018年6月の期間に患者登録が行われた(米国国立衛生研究所[NIH]/国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成による)。 対象は、年齢18~85歳、1剤以上の抗不整脈薬に抵抗性で、症候性の持続性AF(>7日の持続)の患者であった。被験者は、カテーテルアブレーション単独またはカテーテルアブレーション+マーシャル静脈内エタノール注入を受ける群に、1対1.15の割合(マーシャル静脈内エタノール注入の技術的な失敗が15%あると想定)で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、6ヵ月および12ヵ月後のいずれの時点でも、抗不整脈薬を使用せずに、1回の手技でAFまたは心房頻拍が発現しない時間が30秒を超えることとした。副次アウトカムは12項目で、AF負荷、複数回の手技を行った後にAFがみられないこと、僧帽弁輪部のブロックなどが含まれた。マーシャル静脈内エタノール注入併用群の主要アウトカムは良好 無作為化された343例(平均年齢66.5[SD 9.7]歳、男性261例)のうち、316例(92.1%)が試験を終了した。マーシャル静脈内エタノール注入併用群が185例、カテーテルアブレーション単独群は158例であった。併用群の185例のうち、155例(84%)でマーシャル静脈内エタノール注入が成功した。 6ヵ月後と12ヵ月後に、1回の手技でAF/心房頻拍が発現しなかった患者の割合は、マーシャル静脈内エタノール注入併用群が49.2%(91/185例)と、単独群の38%(60/158例)に比べ良好であった(群間差:11.2%、95%信頼区間[CI]:0.8~21.7、p=0.04)。 12項目の副次アウトカムのうち、9項目には有意差はなかったが、AF負荷(負荷なしの割合:78.3% vs.67.9%、群間差:10.4%、95%CI:2.9~17.9、p=0.01)、複数回の手技後にAFの発現なし(65.2% vs.53.8%、11.4%、0.6~22.2、p=0.04)、僧帽弁輪部ブロックの成功(80.6% vs.51.3%、29.3%、19.3~39.3、p<0.001)は、併用群で有意に改善した。 有害事象の頻度は両群で同程度であった。全体で最も頻度の高い手技中の有害事象は、血管アクセス合併症(血腫/仮性動脈瘤、11件)および心膜液貯留(3件)であった。手技後に心膜穿刺によるドレナージを要する亜急性心膜液貯留が4例に発生した。手技後の脳血管イベントが7例、肺炎が7例で認められた。ドレナージを要しない症候性の炎症性心膜炎が、併用群11例、単独群6例で発生した。 著者は、「長期的な有効性を評価するには、さらなる研究を要する」としている。

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初期AFへの早期リズムコントロール、心血管リスクを低減/NEJM

 初期の心房細動(AF)で心血管症状を呈する患者において、早期リズムコントロール療法は、通常ケアよりも心血管アウトカムのリスクを低下させることが、ドイツ・University Heart and Vascular CenterのPaulus Kirchhof氏らによる検討で示された。AF治療は改善されてはいるが、心血管合併症のリスクは高いままである。一方で、早期リズムコントロール療法が同リスクを低減するかは不明であり、研究グループは、国際共同治験担当医主導の並行群間比較による非盲検割付のアウトカム盲検化評価試験で同療法の検討を行った。NEJM誌オンライン版2020年8月29日号掲載の報告。通常ケアと比較し、有効性と安全性を評価 研究グループは、初期のAF(診断が試験登録前1年以内)で心血管症状を有する患者を無作為に2群に割り付け、一方には早期リズムコントロール療法を、もう一方には通常ケアを行った。早期リズムコントロール療法群には、無作為化後に抗不整脈薬の投与またはAFアブレーション治療が行われた。通常ケア群には、AF関連症状の管理に対して限定的にリズムコントロール療法が行われた。 有効性の主要アウトカムは、心血管死・脳卒中・心不全または急性冠症候群(ACS)の増悪による入院の複合。副次アウトカムは、年当たりの病院宿泊日数(number of nights spent)とした。 また、安全性の主要アウトカムは、死亡・脳卒中・リズムコントロール療法に関連した重篤な有害事象の複合。副次アウトカムは症状および左室機能などを評価した。追跡期間中央値5.1年後に試験中止、有効性のハザード比0.79で有意差 135の医療センターで登録された初期のAF患者2,789例(診断後の期間中央値36日)が無作為化を受けた。試験は、患者1人当たりの追跡期間中央値5.1年後に行われた3回目の中間解析で、有効性が確認されたとして中止となった。 主要有効性アウトカムのイベント発生は、早期リズムコントロール療法群249例(3.9/100人年)、通常ケア群316例(5.0/100人年)であった(ハザード比[HR]:0.79、96%信頼区間[CI]:0.66~0.94、p=0.005)。また、平均(±SD)病院宿泊日数は群間で有意差はなかった(5.8±21.9 vs.5.1±15.5日/年、p=0.23)。 主要安全性アウトカムのイベントを有した患者の割合は、群間で有意差はなかった。リズムコントロール療法に関連した重篤な有害事象の発生は、早期リズムコントロール療法群4.9%、通常ケア群1.4%であった。また、2年時点の症状および左室機能についても群間で有意差はなかった。

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幸いな術後管理への道(解説:今中和人氏)-1272

 せん妄、いわゆるICU症候群は実に頭が痛い。心を込めて説得してもダメ、抑制してももちろんダメ、あれこれ鎮静薬を使っても硬い表情に異様にギラギラしたまなざしは去ることなく、「あんなに苦労して入れたA-ラインが、こんなにもアッサリと…」と激しく萎えた経験は、多くの先生にとって一度や二度ではあるまい。幻覚で大暴れしている患者さんも気の毒には違いないが、医師もナースも負けず劣らず気の毒。もちろん、臨床経過にも悪影響が及ぶ。せん妄の克服こそは、幸いな術後管理の鍵を握っている。 せん妄の原因は、従来は不安、孤立感、不眠といった心理面が重視されていたが、近年は多種多様な病態の複合的結果と捉えられている。脳血管障害などの既往、高齢、大手術といった工夫のしようもない要因、低酸素、電解質異常(とくに低ナトリウム、低カルシウム)、アシドーシス、低血糖、低心拍出、低血圧、不十分な鎮痛など、完璧に制御するのは容易でない要因が「これでもか」と並び、薬剤では利尿剤、抗不整脈薬、β遮断薬、H2ブロッカーに、ステロイド、抗生剤、麻薬、ベンゾジアゼピン、三環系抗うつ薬とくれば、一定以上の頻度でせん妄に遭遇することは避けられそうにない。 これでは、「幸いな術後管理」のほうが幻覚になってしまう。何とかせん妄を予防できないものか? 本論文はCleveland clinicを中心とする7病院における人工心肺症例約800例に対する、二重盲検無作為化試験である。すべて米国の施設だが、オフポンプCABGに積極的に取り組んでいるのか、単独CABGは1.5%のみ。55%が弁か大動脈の単独手術、45%がCABGとの複合手術であった。この800例を、麻酔後・執刀時からデクスメデトミジンか生食を持続投与する2群、各々約400例に分け、術後の新規心房細動とせん妄の発生を1次エンドポイント、急性腎障害と90日後の創部痛を2次エンドポイントと定義して比較している。デクスメデトミジンの投与量は開始時が0.1μg/kg/h、人工心肺離脱後は0.2μg/kg/h、ICUで0.4μg/kg/hに増量して24時間継続、患者さんの状態に応じて増減可、というプロトコルであった。現在、本邦では医療安全の観点からもpre-filledシリンジが多く使用されており、当院採用の製品の含有量が4μg/mLなので、体重60kgの患者さんの場合、0.1μg/kg/hは1.5mL/hに相当する。するとICUでの投与速度は6mL/hとなり、普通はまずまずしっかり鎮静されていて、過量と言うほどでもない投与速度である。 結果は期待に反し、新規心房細動は対照群34%に対して30%と有意に減少せず、せん妄は対照群12%に対して17%に発生し、有意差はないがむしろ増加、という結果であった。急性腎障害、創部痛もほぼ同数であった。ICU滞在はむしろ長くなり、臨床的に有意な低血圧が増加した。著者らはこの低血圧が、無効という結論になった一因かもしれない、と考察し、詳述してはいないが、コスト的にむしろマイナスだと示唆している。 過去には観察研究やプロトコル不統一のメタ解析では、デクスメデトミジンの有効性がちらほら報告されたが、本RCTでは全医療従事者の期待がアッサリ裏切られてしまった。そうは言っても患者さんが静穏であれば、術後管理は取り敢えずはうまくいっているわけだから、希望は捨てずに類似研究の報告を待ちたいところである。 ただ、鎮静薬持続静注の状態では食事もリハビリも始めにくいわけで、幸いな術後管理への道は、やっぱり遠い。

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持続性AF へのコンタクトフォース感知型カテーテルアブレーション【Dr.河田pick up】

 発作性AFに対するカテーテルアブレーション治療の安全性および有効性が確立されている一方で、持続性AFに関するデータは限られている。そのため、持続性AFに対しFDAが承認しているカテーテルはない。米国でも実際には、何年も前から持続性AFに対し、コンタクトフォースカテーテルアブレーションが使われているが、いわゆるオフレーベルの使用である。 この研究は、米国・Massachusetts General HospitalのMoussa Mansour氏ら研究グループが、持続性AFに対する多孔性先端コンタクトフォース感知型カテーテル安全性および有効性を評価するために実施した。なお本研究では、CARTO3およびサーモクールスマートタッチSFカテーテル(Biosense Webster、カリフォルニア州アーバイン)が使用された。JACC誌オンライン版2020年5月8日号に掲載。 米国・カナダの27施設、381例の持続性AF患者で実施されたPRECEPT研究 本研究は前向き多施設非無作為化研究(PRECEPT研究)で、米国とカナダの27施設で実施された。記録された症候性の持続性AFで、1種類以上の抗不整脈薬(Class IまたはIII)が無効もしくは忍容できない患者381例が試験に組み込まれた。それぞれの患者の治療には肺静脈隔離(PVI)および施設内で認められた肺静脈以外のターゲットへのアブレーションが含まれた。治療の成績を最適化するためにアブレーション後3ヵ月の投薬調節期間(0~3ヵ月)、そしてそれに続く3ヵ月の治療強化期間(3~6ヵ月)が含まれている。不整脈の再発は、月ごとに厳格にモニタリングされ、症状に応じて電話転送型のモニター、心電図、ホルター心電図によりアブレーション後15ヵ月間フォローされた。成功率はPVI群61.7%、PVI+肺静脈外のアブレーション群80.4% 81例中、348例がカテーテルを用いたアブレーションを受けた。主要有害事象の発生は全体の3.8%に認められ、13例で14のイベントが発生した(心タンポナーデ:5[1.5%]、脳卒中:1[0.3%]、TIA:1[0.3%]、横隔膜麻痺:1[0.3%]、肺水腫:1[0.3%]、心外膜炎:2[0.6%]、穿刺部位の合併症:3[0.9%])。カプランマイヤー生存曲線分析による15ヵ月時点での主要治療成功率は、PVIのみの群が61.7%、PVIと肺静脈外のアブレーションを加えた群が80.4%だった。 本研究の結果は、持続性AFに対するコンタクトフォース感知型の技術を用いたアブレーションが安全で有効であることを証明した。主な合併症は想定範囲内であり、これまでに報告された発作性AFのアブレーションと類似した結果であった。 また本研究により、前向き、多施設研究においてスマートタッチを用いたカテーテルの安全性が示された。ただし、本研究は異なるアブレーションの戦略(PVIのみおよびPVIに加えた基質アブレーション)を比較するための試験ではなく、患者の約半数で肺静脈以外のアブレーションも行われていた。また、15ヵ月後においてPVI群が61.7%、PVI+肺静脈外のアブレーション群が80.4%という成功率は、実臨床に近いものと考えられるが、15ヵ月という観察期間は短く、治療戦略に基づくアブレーションの成績を評価するには、さらなる観察が必要であると考えらえる。(Oregon Heart and Vascular Institute  河田 宏)■関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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高血圧合併のAF再発患者に腎除神経術は有効か/JAMA

 高血圧症を有する発作性心房細動患者に対して、肺静脈隔離術に加えて腎除神経術の施行で、肺静脈隔離術単独と比べて12ヵ月後の心房細動無発症の確率が有意に増大したことが示された。米国・ロチェスター大学のJonathan S. Steinberg氏らが、302例を対象に行った研究者主導型の国際多施設共同単盲検無作為化試験「ERADICATE-AF」の結果、明らかにした。腎除神経術は、心臓交感神経活性を抑制し、心房細動に抗不整脈性効果をもたらす可能性が示されていた。JAMA誌2020年1月21日号掲載の報告。肺静脈隔離術単独vs.肺静脈隔離術+腎除神経術 試験は、ロシア、ポーランド、ドイツの5ヵ所のカテーテルアブレーション専門センターで被験者を集めて行われた。 2013年4月~2018年3月に、降圧薬を1種以上服用しているものの高血圧症が認められ、発作性心房細動があり、アブレーションが予定されている患者302例が登録された。 研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方には肺静脈隔離術のみを(148例)、もう一方の群には肺静脈隔離術と腎除神経術を行い(154例)、2019年3月まで追跡した。 肺静脈隔離術では、全肺静脈電位の消失を確認した。腎除神経術は、イリゲーションカテーテルを用いて高周波エネルギーにより両腎動脈を遠位から近位にらせん状に分離した。 主要エンドポイントは、12ヵ月時点における心房細動・心房粗動・心房頻拍の無発症とした。副次エンドポイントは、30日以内の施術に関連した合併症、6ヵ月および12ヵ月時点の血圧値などだった。12ヵ月後の再発リスク、肺静脈隔離術+腎除神経術群のハザード比0.57 被験者302例は、年齢中央値60歳(四分位範囲:55~65)、男性が182例(60.3%)で、283例(93.7%)が試験を完了した。なお、全例の割り付け処置が成功裏に行われた。 12ヵ月時点の心房細動・心房粗動・心房頻拍の無発症の割合は、肺静脈隔離術単独群148例中84例(56.5%)に対し、肺静脈隔離術+腎除神経術群は154例中111例(72.1%)だった(ハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.38~0.85、p=0.006)。 事前に規定した5つの副次エンドポイントの中で報告がされた4つのうち、3つで群間差が認められた。ベースラインからの平均収縮期血圧値の変化は、肺静脈隔離術単独群では151mmHgから147mmHgへの低下に対し、肺静脈隔離術+腎除神経術群では150mmHgから135mmHgへとより大幅に低下した(群間差:-13mmHg、95%CI:-15~-11、p<0.001)。 施術に関連する合併症の発生は、肺静脈隔離術単独群7例(4.7%)、肺静脈隔離術+腎除神経術群7例(4.5%)だった。 なお結果について著者は、「シャム対照の腎除神経術を行っていないことを考慮して解釈する必要がある」としている。

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第30回 異常Q波の厳しいオキテ~存在=異常なんてある?~【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第30回:異常Q波の厳しいオキテ~存在=異常なんてある?~胸痛あってのST変化や動悸ありきの不整脈…典型的な症状とともに心電図所見が出るだけだったら、世の中の“見逃し”は今よりもずっと少ないでしょう。患者さんは無症状であっても、時に心電図が強烈なメッセージを放っている場合があります。それをいかに“受信”できるか、それは系統的判読以外では難しいと思います。今回は「Q波」に関するそんな一例をDr.ヒロがレクチャーします!症例提示83歳、女性。両側膝関節置換術の既往あり(70歳時)。現在は骨粗鬆症と胃炎にて内服加療中。最近、物忘れや言動のつじつまが時折合わないことを心配した家族とともに認知症の専門外来を受診した。諸検査よりアルツハイマー型認知症が疑われ、投薬開始に伴って以下のようなコンサルトがあった。『今後、コリンエステラーゼ阻害剤を用いた治療を検討していますが、初診時検査の一環として施行した心電図にて異常を認めました。循環器科への受診指示がありました。心機能評価ほか貴科的御高診下さい』実際の心電図を示す(図1)。(図1)外来受診時の心電図画像を拡大する【問題1】心電図所見として正しいものを選べ。1)異所性心房調律2)左軸偏位3)軽度ST-T変化4)左室高電位5)PR(Q)延長解答はこちら3)解説はこちら今回は抗認知症薬による治療が検討されている高齢女性です。こんな状況で心電図、心疾患が関係してくるって意外ですが、実に興味深いです。1問目では、“お決まり”の心電図所見を問うています。「系統的判読」ですよ、もちろんね(第1回)。1)×:型通り“レーサー(R3)・チェック”をして下さい。R-R間隔は整、心拍数は新・検脈法で60/分(従来法でも同値)(第29回)、そして調律は“イチニエフの法則”ですね。バッチリこれを満たすので、「異所性心房調律」ではなく、サイナス(洞調律)です。2)×:電気軸はI、aVF(またはII)誘導のQRS波の向きがポイント。今回はI、II、aVFすべて上向きですから、自信を持って「正常軸」と言いましょう。具体的な角度は“ちょいムズ”ですが、うまく工夫すると「+40°」までは迫れます*1。3)○:「ST-T部分」は“スタート”のチェックですね。V4~V6では、1mmに満たずとも、わずかに基線(T-P/T-QRS/Q-Qライン)よりST部分が低下しているように見えます。また、T波に関してもI、aVLは陰性、V3~V6でも陰性部分がありそう(二相性かな)です。両者“合わせ技”で「軽度*2ST-T変化」として指摘できます。4)×:V4ではR波が上に向かって“つんざく”勢いですが、V5、V6はおとなしめで「左室高電位」には該当しません。5)×:「PR(Q)部分」は“バランスよし!”の(波形同士の)“バランス”でチェックします。P波とQRS波との距離は、“くっつき過ぎず離れ過ぎない”の適度な距離感が大事で「120~200ms(0.12~0.20秒)」が正常と考えて下さい。1mm四方の目盛りで言ったら“3~5目盛り”以内-今回はその範囲ですから「PR(Q)間隔」はセーフです。*1:III誘導のQRS波が“わずかに上向き”と“わずかに下向き”とが混在して少し難しい。III誘導が“トントン”と考えて「+30°」でも悪くないが、その先の「-aVL」との間で“III寄り”が“トントン・ポイント”なら「+40°」で自動計測値(43度)にも近くなる。*2:「軽微な」という表現が用いられることも。【問題2】[A]自動診断は「軽度ST-T異常」となっているが、心電図診断はそれのみで良いか? 約9年前の心電図(図2)も参照して述べよ。[B]心エコーでは大きな異常はなかった。コンサルト返答のため、必要な追加検査はどうか。血清Creは1.17mg/dLであった。(図2)約9年前の心電図画像を拡大する解答はこちら[A]V2(V3)誘導の「異常Q波」[B]核医学(RI)検査、心臓MRI検査など解説はこちら心電図(図1)の右上部分のコメント欄は、『ST変化あり。循環器対診をご検討ください』となっています。前問で取り上げたように、ST変化は確かにあります。「軽度」と書いてありますね。しかし、注目すべきはそこでしょうか? 実はST-T変化以外に大事な所見が隠れており、それを問題[A]で問うています。過去の心電図を横において“間違い探し”の要領で異常を探しましょう。また問題[B]では、心精査についてです。“どこまでやるか”は医師個人や病院設備にも依存しますが、心エコーで左心機能に異常がない、との評価でも心電図から深い洞察ができる好例として取り上げてみました。“抗認知症薬と心疾患”いろいろな疾患に精通した先生方に笑われてしまいそうですが、正直、いきなり「コリンエステラーゼ阻害薬」とか言われると、浅学なボクは一瞬「んっ?」ってなります(笑)。えーっと、代表的な薬剤を一般名で言いますと、ドネペジル(商品名:アリセプト)、ガランタミン(同:レミニール)、リバスチグミン(同:リバスタッチ、イクセロン)の3種類になりましょうか。しかし、認知症でなぜ心臓病?…って思う方はいませんか?循環器医をしていると、実は今回のような相談は一度や二度ではありません。普段、あまり意識されずに使われているケースも目にしますが、代表的な抗認知症薬であるコリンエステラーゼ阻害薬は、時に心臓に悪さをする可能性があります。キーワードは「コリン作動性」。これは、心臓に関しては迷走神経機能を亢進させ、QT延長効果も相まって、心室不整脈(心室頻拍・細動)や徐脈性不整脈を惹起すると添付文書にも記載されています。ですから、こうした状況で大事なポイントは、おおむね次の3つです。■コリンエステラーゼ阻害薬の投与前に注意せよ!■(1)器質的心疾患(2)電解質異常(3)抗不整脈薬の使用(2)と(3)は催不整脈性に関連しますが、今回の患者さんにはなく(1)が問題となるわけです。“安静時ST低下は虚血じゃない”コンサルティ*3の先生は、『ST-T変化→何か背景に心疾患があるのかも?』と考えたのではないでしょうか(心電図判読医による勧めもあるでしょうが)。心電図(図1)に軽微ながら「ST-T変化」が見られるのは事実です。ただ…さかのぼること1年前、Dr.ヒロは言いました。「安静時に見られるST低下はほとんど(心筋)虚血じゃない!」と。「左室肥大」や「脚ブロック」に伴うニ次性変化を除けば、安静時に認められるST変化は非特異的所見なことが圧倒的に多いのです。今回もそうですが、無症状*4の場合はなおさらです。もっとも大きな原因は、ズバリ「非特異的変化」。とくに心疾患とリンクするわけでもなく、“あっても別に病的意義はない”っていうニュアンスでしょうか。とりわけ中高年女性に多い所見です。ですから、心疾患の既往も思わせぶりな自覚症状もないのであれば、このST-T変化を掘り下げても通常は何も出てきません。注目すべき点は別にあります。*3:コンサルト「した」側。*4:術前心電図の回(第13回)に述べた「心疾患の“5大症状”」のうち、動悸、息切れ、胸痛の3つがとくに大事。“どうなら「異常Q波」?”たまたま、この方には約9年前にとられた心電図(図2)が残っていました。「正常範囲」とされた図2と今回の図1の両者を比べてみてください。注目すべきは胸部誘導。確かにST部分やT波の様相もだいぶ変化しています。ただ、ボクが今回述べたいのはV1~V3誘導についてです。過去に比べてV1、V2誘導のR波がゴソッと削げています。よく見ないとわかりませんが、V2誘導は陰性波から始まっているのです(図3赤矢印)。しかも、通常はV1→V2→V3となるに従ってR(r)波は“徐々に伸びる”ものですが(R波増高:R-wave progression)、なんだかV2で凹んでいるのもオカシイです。この2点に気づけたヒトは鋭い! ボクは普段“スパイク・チェック”のR波の高さをチェックする際、“高すぎ・低すぎ”をチェックする以外に、このV1~V3誘導のR波の増高過程が正常かも確認することを推奨しています*5*5:異常な場合、「R波の増高不良」という所見になること多し。(図3)図1よりV1~V3誘導のみ抜粋画像を拡大するQRS波が陰性波からはじまる場合、それを「Q(q)波」というのでしたね(第17回)。この「Q(q)波」ですが、“異常”なものに関しては心筋梗塞をはじめ、壊死した心筋巣を反映する意味で重要でした。今回はV1~V3誘導に限って扱いますが、この3つの誘導については、「Q(q)波」は“ある”、つまり「存在」だけでアウトです。どんなに幅が狭くても、深さが浅くても、“any Q(q)”、つまりあったら常に異常だということ。これが今回、ボクが最も言いたかったことです。今回はラッキーなことに過去の心電図がありましたが、仮になくても同じく異常を指摘できないといけません。“正常QRS波の成り立ちを考えよ”「なぜ?」と思われる方も多いかもしれません。それには心室内を電気が流れる順番の理解が必要です。房室結節を越えた電気は、直下のヒス束から左右の「脚」へと続き、心室中隔を下行していきますが、両者は同時ではなく、左脚の興奮がわずかに先行します*6。正常だと電気は0.1秒(100ms)以内に心室の隅々にまで行き渡りますが、ごく初期(20ms)の時間帯には左脚から右脚に向かう、矢印で描くと「左→右」のような流れとなります(図4)。心電図の世界では、観察点に電気・興奮が向かってくるときに陽性(上向き)の波として描かれるルールを思い出しましょう。心臓の真ん中より右側にあるV1~V3誘導は“右”前胸部誘導と呼ばれ、心室中隔の初期興奮を迎え入れることになるため、QRS波は陽性波(R[r]波)からスタートするはずです。(図4)心室中隔の電気の流れ[等時相マップ]と胸部誘導波形画像を拡大するちなみに、反対に心臓を左側から眺めるI、aVL、V5、V6誘導(イチ・エル・ゴロク)などでは、逆にQRS波が小さな陰性波から始まり、その部分は「中隔性q波」と呼ばれます。今回は、だいぶはしょりましたが、この辺を詳しく知りたい方は拙著*7をどうぞ(笑)。*6:下手過ぎてダジャレにもなりませんが、ボクは「左脚が先」と覚えています(“「さ」つながり”)。*7:心電図のみかた、考え方[基礎編](中外医学社)のp.246~251を参照。“どこの心筋梗塞でしょう?”どうやら異常はV1~V3誘導あたりにありそうです。仮に心筋梗塞が昔起きていた場合、病変はどこにあるのでしょうか? それを探るには、胸部誘導の各電極の位置と対応する左室壁について説明した回(第17回)、を見返してみましょう(図5)。(図5)胸部誘導と両心室の位置関係(再掲)画像を拡大するR波が削げてもQ波にはなっていないので、V1誘導の担当する「(心室)中隔」はセーフです。しかし、V2、V3は小さいながら“異常”なQ波ということになります。こうした隣接2誘導で異常Q波があることは、梗塞(壊死)を示唆する有意な条件の一つであり、左室「前壁」にその可能性があるわけです。よく見るとV3誘導に関しては、以前から「q波」があるようですが、V2誘導は新しく生じた異常Q波。やはり、一部であっても左室「前壁」に心筋梗塞が起きたと考えるべきだと思います。以上から中隔よりの狭い範囲かもしれませんが、「陳旧性前壁心筋梗塞」を疑わせる心電図になるわけです。大丈夫そうに見えて、一気に心疾患の“黄信号”が点滅し出したのです。“事の顛末とコンサルト返答”最後に問題2に関する必要な追加検査を述べて終わります。心筋梗塞などの虚血性心疾患を疑ったとして、80歳以上で膝に人工関節の入った人に運動負荷心電図は難しいですよね? トレッドミル検査はいわんや、マスター階段試験もはばかられます。しかも、今回のように軽度でも既存のST-T変化がある場合、偽陽性が出やすいことも知っておくべきです。さらに腎機能も悪いときたら…残りは核医学(RI:radio-isotope)検査かMRIですよね。共にある程度以上の病院でないとできない検査ですから、代わりに十分な補液などを行って腎機能に配慮し、冠動脈造影CT検査などがなされるかもしれません。この辺のアレンジは担当医の裁量でしょう。実際には、アデノシン三リン酸(ATP)を静注して行う薬剤負荷シンチグラフィ検査が行われました。結果は、可逆性のある誘発性虚血はなく、一部ながら「陳旧性前壁梗塞」の所見がありました。駆出率(LVEF)は60%強と保持されていましたが、上記検査による評価では左室前壁の壁運動は低下していました。そうです、恐れていた器質的心疾患がこの女性にはあるのです! あくまでも「過去」の話で、患者さんは今現在に何の症状も訴えないのですが。で、でも見つけたぞ、“幽霊の正体”を(笑)。梗塞範囲が比較的小さかったためか、あるいは単純な見落としかは不明ですが、エコーでは異常が検出されていませんでした(検者や読影者にもよるでしょう)。しかし、RI結果の“真実”を心電図は実に見事に教えてくれています(実はエコーの検者にも心電図の読みが問われています)。その“ささやき”を受信できるか、かつて“星の王子さま”に例えましたが、今回も同じです(第10回)。最終的な返答として、以下のようでどうでしょうか?『20XX年の心電図と比較すると、前・側胸部誘導のST-T変化に加えてV1、V2誘導のR波減高(V2誘導は新出の異常Q波)を認めます。過去に胸痛イベントはなかったようですが、RI検査でも陳旧性前壁梗塞に合致する所見でした。したがって、不整脈(徐脈・頻脈性ともに)などに注意しながらコリンエステラーゼ阻害剤を使用してゆくべきだと思います』今回は“クルッと”の“ク”で、いの一番にチェックすべきV1~V3誘導の異常Q波について扱いました。“ある時点で即アウト”の厳しいオキテ、非常に大事なのでよく復習しておきましょうね。では、また!Take-home Message安静時ST-T変化は非特異的所見なことが多し~症状や臨床背景を加味しようV1~V3誘導はQ(q)波があれば「必ず」異常!前壁誘導(V1~V4)のうち隣り合う2つで異常Q波があったら陳旧性心筋梗塞を疑うべし!【古都のこと~百代通いの悲恋伝説~】随心院は小野小町と縁が深いことでも知られます。仁明天皇の崩御に伴い、宮仕えの職を辞した後、小町は山科小野と呼ばれるこの地に隠棲し、境内の一角に残る「化粧井戸(けわいのいど)の水で毎日“メイク”をしたそうです。小野小町のイメージといえば、六歌仙*1よりも“美女”という皆さんも多いのでは? 小町は800年代の前半に容貌秀絶の名を欲しいままにしたとされ、実際に貴公子たちから彼女宛に送られた数多くの“ラブレター”が埋められた文塚も残っています。ところで、この今風で言う“恋多き美人歌手”に心ときめいてしまった深草少将(ふかくさのしょうしょう)の「百夜通い(ももよがよい)」の伝説*2を知っていますか? ご存じの方はかなりのツウと見ました! 実際、この悲しい純愛ラブストーリーは後年「通小町(かよいこまち)」として能でも演じられているそうです(一度は見に行かなきゃ!)。また、現在でも3月末に行われる“はねず*3踊り”は、この伝説をモチーフにしており、カワイイ娘さんのいる方なら、一度は見に行って「小町絵馬」と「美心御守」も一緒にゲットしたいものですね。個人的には、いつぞや人気となった『電車男』よりも、“happy ending”でない深草少将の話のほうがジーンときます。現代風にアレンジしたら、どんなキャストになるのかなぁと、勝手に“監督面”してニヤケるDr.ヒロなのでした(笑)*1:「花の色はうつりにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに」など小町は哀愁に富み情熱的な夢の歌を多く残したのはご存じの通り。*2:募る思いを胸に深草から求愛にやって来た少将を鬱陶しく思った小町は、「私のもとへ百夜通い続けたら、晴れて契りを結びましょう」と告げる。この大人の“塩対応”に気づかぬピュア少将は、「あなたの心が解けるまで幾夜でも参ります」と発言する。小町は門前の榧(かや)の実を取って日を数えたそう。ただ、通いつめて九十九夜目の雪の夜、病と寒さで少将は息絶える。小町はこれを悔い、晩年一つ足りない“榧の実リング”を地に播いたとされ、かつては99本の榧の木があったとされる。書院内で榧の切り株や実際のものとされる木の実も見ることができる。*3:随心院には有名な小野梅園がある。“はねず”とは梅の白みがかった薄紅色のこと。

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添付文書改訂:ベージニオ錠に安全性速報発出/抗コリン薬の禁忌が閉塞隅角緑内障に限定/トリプタンに薬物乱用頭痛に関する注意追加 ほか【下平博士のDIノート】第32回

ベージニオ錠に間質性肺疾患に関する安全性速報が発出画像を拡大する<Shimo's eyes>本剤は、これまでも重大な副作用として間質性肺疾患が報告されていましたが、市販直後調査中の2018年11月~2019年5月に本剤を使用した患者において、間質性肺疾患の重篤な症例が14例報告され、このうち3例が死亡に至ったことから、安全性速報(ブルーレター)1)が発出されました。今回、「警告」に下記の注意喚起が追加され、それに伴い「慎重投与」、「重要な基本的注意」、「重大な副作用」が改訂されました。【警告】間質性肺疾患があらわれ、死亡に至った症例も報告されているので、初期症状(呼吸困難、咳嗽、発熱等)の確認及び胸部X線検査の実施等、患者の状態を十分に観察すること。異常が認められた場合には、本剤の投与を中止し、必要に応じて、胸部CT、血清マーカー等の検査を実施するとともに、適切な処置を行うこと。本剤を服用する患者さんやご家族に対して、もし間質性肺疾患の初期症状(呼吸困難、咳嗽、発熱など)が発現した場合には、速やかに医師・薬剤師に連絡するようしっかりと伝える必要があります。抗コリン薬の禁忌が閉塞隅角緑内障に限定画像を拡大する<Shimo's eyes>これまで、多くの抗コリン作用を有する薬剤(抗コリン薬)は「緑内障」が禁忌であったため、本来安全性に懸念のある閉塞隅角緑内障患者のみならず、緑内障の95%を占める開放隅角緑内障患者にも使用できませんでした。そのため、開放隅角緑内障患者では、大きな影響がなくても使用できないという不利益や、疑義照会によって医療者の時間がとられることなどが問題となっていました。今回、薬事・食品衛生審議会で、抗コリン薬の添付文書の「禁忌」に記載されている緑内障にかかわる記載の変更が了承され、閉塞隅角緑内障のみが禁忌となりました2)。しかし、実際には患者自身が自身の緑内障のタイプを正確に把握していない場合も多く、今後の疑義照会の是非については、薬剤師側が難しい判断を迫られることになるかもしれません。今回の改訂の対象薬剤は、感冒薬、鎮痙薬、抗アレルギー薬、向精神薬、抗不整脈薬、パーキンソン病治療薬、AD/HD治療薬など多岐にわたりますが、眼科用製剤は含まれないことに留意しましょう。トリプタン系薬剤に薬物乱用頭痛に関する注意追加画像を拡大する<重要な基本的注意>トリプタン系薬剤により、頭痛が悪化することがあるので、頭痛の改善を認めない場合には、「薬剤の使用過多による頭痛」の可能性を考慮し、投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。<Shimo's eyes>薬剤を過剰に使用することで起こる薬物乱用頭痛(MOH)は、緊張型頭痛、片頭痛に次いで3番目に多い頭痛といわれています。MOHの原因となる薬物には、トリプタン系薬剤以外にも、NSAIDsやエルゴタミン製剤などがありますが、トリプタン系薬剤は少ない服薬回数でMOHを発症する傾向があるとの報告があるため、今回の改訂3)に至ったと考えられます。片頭痛治療中の患者さんがMOHに陥らないために、頭痛治療薬の正しい服用タイミングや生活指導を含めた適切な服薬指導を心掛けましょう。メトホルミン含有製剤、重度の腎機能障害患者のみを禁忌へ画像を拡大する<Shimo's eyes>これまで、メトホルミン含有製剤について、乳酸アシドーシスに対するリスク回避の観点などから、1日最高投与量が2,250mgの製剤では「中等度以上」、1日最高投与量が750mgの製剤では「軽度~重度」の腎機能障害の患者に対して禁忌となっていました。今回の改訂4)では、海外の最新の科学的知見に基づいて使用制限が見直され、禁忌がeGFR30mL/min/1.73m2未満の重度腎機能障害の患者に限定されることとなりました。軽度~中等度の腎機能障害患者は「慎重投与」となり、eGFR値に応じた1日最高投与量の目安が添付文書に記載されています。製剤ごとに内容が異なるため、それぞれの薬剤の添付文書をしっかり確認しましょう。参考1)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 ベージニオ錠50mg/100mg/150mgによる重篤な間質性肺疾患について(安全性速報)2)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 抗コリン作用を有する薬剤における禁忌「緑内障」等に係る添付文書の「使用上の注意」改訂について(薬生安発0618)3)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 トリプタン系薬剤の「使用上の注意」の改訂について4)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 使用上の注意改訂情報(令和元年6月18日指示分)

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続・アブレーションはお嫌いですか?(解説:香坂俊氏)-1089

 心房細動に対するカテーテルアブレーション(CA)が患者予後そのものを改善するか?ということについては、以前CASTLE-AF研究が発表された際にも当シリーズでコメントさせていただいた。CASTLE-AFは「重症心不全のAF患者」を対象とした無作為ランダム化試験(RCT)であり、コントロール群と比較しCA群で死亡・心不全入院が約4割減少するという衝撃的なまでの予後改善効果を提示した(第847回)。では、より一般的な「心不全でないAF」に対するCAの効果はどうなのか? 同稿の最後にも記したが、そこは長らくCABANAという名前の他施設共同国際臨床試験の結果が待たれていた(南国的でゴキゲンな名称であるが、試験が行われたのは北米)。 今回、そのCABANA試験の結果が満を持して発表された(JAMA誌に2報同時に掲載され、第1報は患者予後に関する主解析であり[予後改善効果はなし]、第2報はQOLを扱ったものであった[CAにQOL改善効果あり])。 自分が今回担当させていただくのは後者のQOLに関する論文の講評である(前者に関しては小田倉先生が説明されている)。先ほどさっくりと述べたとおり、コントロール群(抗不整脈薬のみを使用)と比較しCA群でQOL改善の方向で確かに統計的な有意差はついた。だが、今回自分がポイントとして取り上げたいのは、そのQOL改善の程度である。 CABANA研究では AFEQT(※)という質問表を使って患者QOLの評価が行われている。このAFEQTを用いてCA群でのQOL改善の態度は12ヵ月で 5.3ポイントというものであった(95%信頼区間は3.7~6.9)。専門的な話となるが、だいたいAFEQTの5ポイントの増減は、心房細動生活スケール(EHRA:※※)のクラス1つ分の変動と同様と考えられており、確かにこれは臨床的にも有意な変化といえる。※AFEQT(Atrial Fibrillation Effect on QualiTy-of-life)とは心房細動患者に特化したQOLを評価するために開発された質問紙表であり、心房細動による症状(4問)、日常生活の制限(8問)、治療の不安(6問)の3つの項目から全体のQOLスコアを算出する仕組みをとっている(0〜100点:0点が最もQOLが悪く、100点が最もQOLが良い)。実際の質問紙表では上記の3項目に治療の満足度(2問)に関する質問を加えた20問から構成され、すべての質問の回答に要する時間は約5~10分程度である(http://www.afeqt.org)。※※ EHRAスケール1.無症状2.心房細動の症状に困っているが、通常の日常生活に影響はない3.高度の心房細動の症状により、通常の日常生活に影響を与えている4.通常の日常生活を送るのが困難であるしかし、この論文をさらに読み進めてみると、実に興味深いグラフが後半に提示されている。長期的に見ると12ヵ月時点の5.3ポイントという差は、2群間(抗不整脈薬のみのコントロール群とCA群の間)で次第に縮まり、60ヵ月後の時点では2.6 ポイント差にまで縮小している。この変化はCA群でQOLが低下したわけではなく、薬物治療群で持続的にQOLが改善してもたらされたものであるが、2.6ポイントという差に臨床的な意味があるかどうかというところはかなり議論が分かれるところであろう。 CABANA試験を語るうえで、抗不整脈にアサインされた群のCAへのクロスオーバー率(27.5%)がしばしば問題点として指摘されるが、このことについては抗不整脈薬をまず使ってみて、そしてその後にCAが必要になったほうが27.5%だった、と解釈するのが妥当ではないだろうか(そのように診療を行ってもハードエンドポイントに差はつかない)。これは安定狭心症に対するPCIの予後改善効果を検証したCOURAGE試験でも同様の議論が行われ、こちらでもハードエンドポイントに差がないことから、今では最初にOptimized Medical Therapy(至適薬物療法)を行ってから必要に応じてPCIを考えるという診療パターンでよいとされている。 このほかに、CABANA試験は非盲検の臨床試験であることもLimitation(限界)として指摘されており、ランダム化された後に両群ともに治療への期待からより自身のQOLを高く評価してしまった可能性がある(この傾向は侵襲の度合いが強いCA群でより顕著であったと考えられる)。なお、この点を克服するにはシャム手技(sham procedure)を取り入れた試験のデザインが必要である。 「歴史は繰り返す」というが、CAがたどってきた道は安定狭心症に対するPCIがたどった道によく似ている。安定狭心症に対するPCIの純粋な予後改善効果はCOURAGE試験によって否定され(2007年)、その後同試験のサブ解析によりQOLの改善効果も限定的(2~3年の短期的なもの)であることが示された(2008年)。また、昨年報告されたORBITA試験では、sham procedureを取り入れてPCIの効果をコントロール群と比較した場合、その短期的なQOLの改善効果すらプラセボ効果によってもたらされた可能性が高いことが指摘されている。 PCIがその力をフルに発揮するのは、急性心筋梗塞をはじめとするACSの症例に対してであり、こちらははっきりと予後改善効果がRCTによって示されている。CAも心不全例に関しては同様であるが、心不全のないAFに対するCAの選択は(安定狭心症に対するPCIと同様)慎重であるべきだろう。「CAでAFを根治できる」などという説明は行うべきではなく、少なくとも予後改善でなくQOL改善を目的とするという説明の仕方がフェアであるように思われる。QOLが維持できているAF患者さんに対するCAの用途は、今回の結果を見てみてもきわめて限定的であるといえるのではないか。謝辞 本稿の作成に当たっては当科の池村 修寛医師の協力を得た。池村医師はAFEQTを用いた研究で成果を挙げており(Ikemura N, et al. JAMA Netw Open. 2019;2:e191145.、Ikemura N, et al. Circ Cardiovasc Qual Outcomes. 2019;12:e005573.)、氏の協力なくしてCABANA試験のQOL解析に関する本質的な洞察は不可能であった。この場を借りて感謝を申し上げたい。

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第20回 意識消失発作の症例から学ぶ脈拍の異常2【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回は脈拍の異常を来した患者さん2例を紹介します。脈の乱れは「不整脈」といわれ、その不整脈が徐脈であっても頻脈であっても、患者さんの状態が「不安定」であるときに急を要します。徐脈や頻脈が認められた時、どのような点に気を付けて患者さんと接することがポイントになるでしょうか?症例を通してシミュレーションしていきましよう。患者さんGの場合◎経過──156歳、女性。施設の介護職員です。勉強会が終了し後片付けをしていたときに急に動悸が始まって、倒れそうになりました。椅子に座り苦しそうにしています。「どうしたの?大丈夫?」と職員が心配して集まってきました。◎経過──2Gさんは、以前から動悸を自覚することがあり、病院では「WPW症候群※1、発作性頻拍症」と診断されていると話してくれました。今までは動悸が長く続くことがなかったため経過を見ていました。「今日は少しひどいみたい...」その日は休みだったのですが、勉強会のために施設に来ました。今は夕方ですが、その日に限って昼食はまだ食べておらず水分もあまり摂っていなかったそうです。顔色は蒼白で冷汗をかいています。脈は非常に速くて弱く不規則でした。なんとなく少しボーッとしています。(ショックの徴候かも...)そう思いました。バイタルサインは表の通りで、顕著な頻脈の他に血圧低下が認められました。総合的にみて「循環(C:circulation)」の異常があります。※1 Wolf-Parkinson-White syndrome:ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群正常な刺激伝導(電気信号の流れるルート)では、洞結節から発した電気信号は心房から房室結節を経て心室へ至る。しかし同症候群では、通常のルート以外にKent(ケント)束と呼ばれるバイパス(副伝導路)を有するため、心室への信号は房室結節とKent束を経由することになり、心電図上デルタ波と呼ばれる波形が生じる。副伝導路が存在するため、発作性上室性頻拍を来すことがある。◎経過──3勉強会後に一時席を外していた医師と看護師が戻ってきました。WPW症候群と診断されていることを聞き、Gさんの状態とバイタルサインを見て、救急車を呼ぶことにしました。医師の指示を受けた看護師は静脈路を確保しました。まもなく救急車が到着し心電図モニターを開始しました。「偽性心室頻拍※2ですね...」医師はそう言って、近隣の病院へと向かいました。※2 WPW症候群で心房細動発作が起こると、心房からの頻回の電気信号が、信号を通しやすい副伝導路を通り心室へと伝わる。デルタ波があるために、発作時のQRS幅が広く、心室頻拍のような心電図波形を示すことから「偽性心室頻拍」と呼ばれる。心室細動に移行する危険があるため緊急を要する場合が多い。頻脈に対する診療アルゴリズム図4は頻脈の診療アルゴリズムです。頻脈が確認されたら患者さんの状態が不安定か否かを確認します。図4にあるような症状や徴候があれば「不安定」な状態と考えられ、直ちに治療を開始します。ご覧の通り、不安定か否かを判断する基準は徐脈の場合と同じですね。エピローグ頻脈のGさんは、病院に搬送された後、救急外来で抗不整脈薬による治療を受けました。その日、大事をとって入院し、後日カテーテルアブレーション※3の治療を受けました。退院後、施設に薬を届けに行くとGさんは「あなたがいる所にはいろいろ事件が起こるわね」と冗談交じりに笑顔で話しかけてくれました。※3 経皮的にカテーテルを心臓内部の標的部位に挿入し、高周波通電を行い、頻脈の原因となる異常興奮部位(Kent束)を電気的に焼灼する方法。頻脈性不整脈を根治する治療法。徐脈と頻脈、安定と不安定「徐脈と頻脈」といっても多くの種類の不整脈があります。どんな徐脈性不整脈や頻脈性不整脈であっても、それにより血圧などの循環動態が悪くなったり、図3や図4に示すような「不安定な状態」を示唆したりするような、バイタルサインに大きく影響するような不整脈は緊急度が高いということは、知っておくとよいと思います。

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左手(とリズムコントロール)は添えるだけ(解説:香坂俊氏)-1036

心房細動(AF)治療はカテーテルによる肺静脈焼灼術(いわゆるアブレーション)の登場により、多くのブレークスルーが起きているかのように見えるが、実をいうと「リズムコントロールで無理をしない」という軸はブレていない。このことはつい最近結果が発表され巷で話題となっているCABANA試験からも裏打ちされている(10ヵ国126施設が参加した非盲検無作為化試験:「症候性AFへのアブレーションの効果、CABANA試験で明らかに/JAMA」)。今回発表されたRACE-7試験の結果もこの「リズムコントロールで無理をしない」というコンセプトを急性期に拡張したものである(新規発症AFに対して除細動によるリズムコントロールを行うべきかランダム化によって検討:4週間後の洞調律維持率や心血管イベント発症率に有意な差を認めなかった)。(※)ちなみに、RACE-1試験[NEJM 2002]はAFに対してrate v. rhythm controlを比較し、RACE-2試験[NEJM 2010]はrate controlの中で 心拍数80/min以下(strict)v. 110/min以下(lenient)を比較した試験である(今回なぜ一気に「7」に飛んだかは不明)。このRACE試験の系譜でもそうなのであるが、今までAFでリズムコントロールがレートコントロールに予後改善という側面で勝ったことはない。現段階でリズムコントロール戦略は症状に応じて「添えるだけ」という捉え方でよいのではないかと自分は考えている。 現状のおおまかなAF治療方針: 1.血行動態が不安定なときは電気的除細動を考慮 2.それ以外はレートコントロール(lenientでよい) 3.長期的にはCHADS2-VAScに従って抗凝固薬を導入 4.AFの症状が日常生活に影響を及ぼすようであればリズムコントロール 5.その際は抗不整脈薬がダメなときに初めてアブレーション考慮

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カテーテルアブレーションで心房細動は根治するか?(解説:高月誠司氏)-1035

 CAPTAFトライアルは、QOLを評価した心房細動アブレーション対抗不整脈薬治療のランダム化比較試験である。QOLはSF-36を用いて評価したが、本試験で興味深いのは全例で植込み型ループレコーダーを植え込み、心房細動再発を評価した点で、これにより基本的には心房細動の再発の見逃しはなくなる。 心房細動バーデンはアブレーション群で5.5%、抗不整脈薬群で11.5%であり、アブレーション群で有意に改善し、結果的にQOLもアブレーション群で有意に改善した。 ループレコーダーによる心房細動の非再発率はアブレーション群で25.3%、抗不整脈薬群で29.7%であり、両群ともに70%以上に3ヵ月のブランキング以降に再発を認めたが、ホルターではそれぞれ84.9%、78.4%の非再発率であり、ループレコーダーによる再発率とは極端な乖離がある。このデータが正しければ、アブレーションにより心房細動再発を認めないのは4分の1の症例であり、根治は非常に難しいと考えざるをえない。 心房細動アブレーション後の真の再発の評価にはループレコーダー植え込みが推奨されるし、安易にアブレーション後の抗凝固薬を中止すべきでない、ということの根拠になろう。

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VT/VFに対するランジオロールの試験結果が発表/日本循環器学会

 短時間作用型β1選択的遮断薬ランジオロール(商品名:オノアクト)に対し、2019年3月に「生命に危険のある下記の不整脈で難治性かつ緊急を要する場合:心室細動、血行動態不安定な心室頻拍」の効能が追加承認された。 その根拠となった後期第II相/第III相試験[J-LandII study]の結果が、第83回日本循環器学会学術集会(2019年3月29~31日)で発表された。発表者は、東京女子医科大学循環器内科、志賀剛氏。ランジオロールの投与量は10μg/kg/分以下が90% J-LandII studyは、III群抗不整脈薬を使用しているにも関わらず血行動態が不安定な心室頻拍(VT)/心室細動(VF)を呈する患者を対象に、ランジオロールの有効性と安全性を検討した多施設共同非盲検非対称試験である。主要評価項目には、有効性評価期間(1-49時間)における血行動態不安定なVTあるいはVFの非再発率が設定された。 対象患者を電気ショックなどにより洞調律復帰した後、ランジオロール 1μg/kg/分にて静脈内持続投与を開始し、用量設定期間(0~1時間)は10μg/kg/分まで、有効性評価期間(1~49時間)は40μg/kg/分まで増量可能とした。ランジオロールの平均投与量は、用量設定期間4.3±1.7μg/kg/分、必須投与期間(0-49時間) 8.5±5.2μg/kg/分であった。また、必須投与期間終了時(49時間)におけるランジオロールの投与量は、10μg/kg/分未満が18例(62%)、10μg/kg/分が8例(28%)、10μg/kg/分以上が3例(10%)だった。 39の登録症例のうち、安全性解析対象には29例、有効性解析対象には27例が用いられた。ランジオロール投与によるVT/VFの非再発率は約80% ランジオロールの主要評価項目である「有効性評価期間(1-49時間)における血行動態不安定なVTあるいはVFの非再発率」は、78%であった。演者の志賀氏は、VT/VFの非再発率は「当初45~65%と予測していたが、約80%という数字は予想をはるかに上回る素晴らしい成績だ」と強調した。なお、試験開始前の閾値有効率は20%に設定されていた。 本試験において有害事象は、29例中21例(72.4%)、副作用は10例(34%)に認められた。主な副作用は低血圧6例(21%)であったが、いずれもランジオロールの減量または中止により回復したという。

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症候性AFの第一選択にアブレーション加わる/不整脈非薬物治療ガイドライン(2018 年改訂版)

 「不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)」が、2019年3月29日に発表された。本ガイドラインは2011年改訂の「不整脈非薬物治療ガイドライン」、および2012年発表の「カテーテルアブレーションの適応と手技に関するガイドライン」の統合・改訂版。第83回日本循環器学会学術集会(3月29~31日、横浜)で、ガイドライン作成の合同研究班班長である栗田 隆志氏(近畿大学病院 心臓血管センター)、野上 昭彦氏(筑波大学医学医療系 循環器不整脈学)が、植込み型心臓電気デバイス(CIED)とカテーテルアブレーションの主な改訂点についてそれぞれ講演した。ICD適応を日本のエビデンスで裏付け CIEDでは、虚血性の冠動脈疾患および非虚血性心筋症に対する植込み型除細動器(ICD)の適応を、フローチャートの形で整理。ともに考え方や推奨度そのものは、2011年版から大きな変化はない。しかし非虚血性心筋症に対する一次予防では、DANISH試験を含むメタ解析や日本発のエビデンスなど、最新試験結果による推奨度の裏付けがなされた。 栗田氏は、「とくに2つの日本のデータから、非虚血性心筋症の一次予防におけるICD適応の根拠を得ることができたことは大きい。2015年発表のCHART-2試験によって示された、1次予防適応のクラスIならびにクラスIIa相当の患者における致死的不整脈の発生率はこの推奨度を支持する。また、2018年発表のNippon Stormからは、非虚血性の一次予防における適切作動率が、虚血性の二次予防と同程度という結果が得られており、有用性が示されている」と述べた。ESCではQRS幅130ms未満はCRT禁忌、しかし日本では? 心臓再同期療法(CRT)の適応は非常に複雑なため、NYHA心機能分類、薬物治療の施行、LVEF、QRS波形、QRS幅、調律に応じた推奨度を一覧化した表を不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)で初めて掲載している。この中で議論となったのが、CRT 適応とするQRS幅の下限値だ。2013年のEchoCRT試験の結果を受けて、ESC(欧州心臓病学会)の2016年のガイドラインでは、130ms未満はクラスIII(禁忌)となっている。 しかし、日本では120~130msの心筋症患者でもCRTレスポンダーの報告があること、またEchoCRT試験のサブ解析では、左室拡張末期容量(LVEDV)の小さな症例ではCRTの有用性が示されていることなどから、本改訂版では変更なく、下限値を120msとしている。 その他、旧版以降に登場した、リードレスペースメーカ、ヒス束ペーシング、経皮的リード抜去術などの新たな治療法についてもガイドラインでは項目立てされ、エビデンスが整理されている。症候性AFでは、薬物治療とカテーテルアブレーションが第一選択に 野上氏は、まず大前提として甲状腺機能亢進症、肥満、高血圧、糖尿病といった心房細動(AF)のリスク因子の適切な治療なくして、カテーテルアブレーションの施行はないことを強調。そのうえで、症候性AFにおいては、近年発表された3つのRCTやメタ解析でその有用性が示されたことから、抗不整脈薬の投与を経ないカテーテルアブレーションの施行を、抗不整脈薬投与とともに第一選択としてガイドラインでは推奨したと説明した。発作性/持続性AFでは、第一選択としてクラスIIaの推奨度が示されている。長期持続性AFについてはエビデンスが十分ではないが、抗不整脈薬による治療効果が乏しいため、同じくIIbの推奨度がガイドラインでは示されている。 一方、無症候性AFでは、長期予後を改善するというエビデンスは十分ではない。そのため不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)では2012年版と変更なく、推奨度はIIbのままとなっている。周術期の抗凝固療法についての改訂点は まず、ワルファリンとダビガトランを投薬中の患者については、休薬なしでAFアブレーションを施行することにクラスI、その他のDOACについてはクラスIIaの推奨度が不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)では示された。一方、多くの病院で行われている、DOACの術前1回ないし2回の休薬についても、ABRIDGE-J試験の結果などからIIaの推奨度となっている。 その他、単形性持続性心室頻拍(VT)におけるアミオダロン投与有の患者、右室流出路あるいは末梢プルキンエ線維起源の心室期外収縮(PVC)契機の多形性VT・心室細動(VF)に対するアブレーションに、クラスIの推奨度が示されている。■関連記事「心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)」発表/日本循環器学会急性冠症候群ガイドラインの改定点は?/日本循環器学会

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薬剤抵抗性AF、薬剤変更とアブレーションでQOL比較/JAMA

 1種以上の抗不整脈薬またはβ遮断薬に対し治療抵抗性を示す症候性心房細動(AF)患者に対して、カテーテルアブレーションの施行は、異なる抗不整脈薬を投与し薬物療法を続けた場合と比べ、12ヵ月後の生活の質(QOL)が大幅に改善したことが示された。スウェーデン・ウプサラ大学のCarina Blomstrom-Lundqvist氏らが、155例を対象に行った無作為化比較試験の結果で、JAMA誌2019年3月19日号で発表した。結果について著者は、「本試験は盲検化がなされていない点で限定的だが、カテーテルアブレーションはQOLに関しては優位な可能性がある」とまとめている。MOS SF-36で1年後のQOLを評価 研究グループは2008年7月~2013年5月に、スウェーデン4ヵ所、フィンランド1ヵ所の計5病院を通じて、6ヵ月以上のAFを認め、1種以上の抗不整脈薬またはβ遮断薬に対し治療抵抗性を示す30~70歳の患者155例を対象に試験を行い、4年間追跡した(試験終了は2017年9月28日)。主な除外基準は、駆出分画率35%未満、左心房径60mm超、心室ペーシング依存、アブレーション歴ありだった。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはカテーテルアブレーションを行い(79例)、もう一方には服用歴のない抗不整脈薬を投与した(76例)。 主要評価項目は、ベースラインと12ヵ月後の総合的健康状態(GH)サブスケールスコアで、MOS SF-36(Medical Outcomes Study 36-Item Short-Form Health Survey)を用いて非盲検下で評価した(範囲:0[最悪]~100[最良])。副次評価項目は、植込み型心臓モニターで測定したベースラインから12ヵ月後のAF負荷(時間の割合[%])の変化など26項目とした。なお当初3ヵ月間は、リズム分析から除外した。1年後GHスコア、アブレーション群で有意に増加 被験者155例は、平均年齢56.1歳、女性が22.6%を占め、97%が試験を完遂した。 アブレーション群79例のうち、実際にアブレーションを受けたのは75例だった。2例が抗不整脈薬群に移行した。アブレーション群75例のうちアブレーション再施行を受けたのは14例だった。抗不整脈薬群76例のうち、実際に薬を服用したのは74例だった(平均1.71剤を服用)。8例がアブレーション群に移行した。74例のうち、43例が服用1剤目で抵抗性を示した。 ベースラインから12ヵ月後のGHスコアは、抗不整脈薬群は62.7から65.4ポイントへの増加に対し、アブレーション群は61.8から73.9ポイントへ増加し、有意差が認められた(群間差:8.9ポイント、95%信頼区間[CI]:3.1~14.7、p=0.003)。 26の副次評価項目のうち5項目について解析した結果、2項目については意義のある結果は示されなかったが、2項目について統計的に有意な結果が認められた。そのうち、ベースラインから12ヵ月後のAF負荷の変化は、抗不整脈薬群は23.3%から11.5%への減少に対し、アブレーション群は24.9%から5.5%へと減少した(群間差:-6.8ポイント、95%CI:-12.9~-0.7、p=0.03)。また、MOS SF-36サブスケール7つのうち5つで有意な改善を認めた。 最も多くみられた有害イベントは、アブレーション群は尿路性敗血症(5.1%)、抗不整脈薬群は心房性頻脈(3.9%)だった。

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発作性心房細動に対する第2世代クライオバルーンの長期成績【Dr.河田pick up】

 STOP AF PAS (Sustained Treatment of Paroxysmal Atrial Fibrillation Post-Approval Study)は、薬剤抵抗性の発作性心房細動に対するクライオバルーンの長期的な安全性と有効性を評価した、北米における最初の前向き、多施設共同の試験である。米国・ノースウェスタン大学のBradley P. Knight氏らのグループが、JACC.Clinical Electrophysiology誌2018年12月号オンライン版で発表した。 本試験は、第1世代クライオバルーンが発作性心房細動の治療に承認された際に、米国食品医薬品局(FDA)から求められた試験である。この試験が開始された直後に第2世代のクライオバルーンの販売が開始された。344例の患者、前向き、多施設、フォローアップ期間は3年間 この研究は無作為化を行っていない。344例の患者が、第2世代クライオバルーンを用いた肺静脈隔離の施行へ登録された。手技に関連した安全性と、心房細動、症候性心房粗動および心房頻拍の3年間における再発を評価した。30秒以上持続する心房性不整脈が確認された場合、治療の失敗と判断された。36ヵ月での心房細動の非再発率68.1%、心房性頻脈の非再発率は64.1% 急性期の肺静脈隔離は99.3%(1,341/1,350)で達成された。平均フォローアップ期間は34±7ヵ月。重大な合併症の発生率は5.8%で、そのうち横隔神経障害は3.2%の頻度で生じたが、1例を除き36ヵ月までに回復した。術後36ヵ月において、11.7%の患者が“Pill in the pocket (頓服)”での服用を含む、抗不整脈薬を使用していた。心房細動の発生がなかったのは12ヵ月で81.6%、24ヵ月で73.8%、36ヵ月で68.1%であった。心房細動、症候性心房粗動および心房頻拍のいずれの発生もなかったのは、12ヵ月で79.0%、24ヵ月で70.8%、36ヵ月で64.1%であった。36ヵ月の時点で、80.9%の患者が2度目のアブレーションを受けていなかった。 これまで、36ヵ月時点での第2世代クライオバルーンを用いた発作性心房細動に対する肺静脈隔離の成績は報告が少ない。ベルギー・Pedro Brugada氏らのグループが、70例の患者について第2世代クライオバルーンの38ヵ月でのフォローアップ結果を報告しているが、その報告では71.5%の患者が抗不整脈薬なしで心房細動の再発がなかった1)。今回の発表は、この結果と同等の結果であり、3年後における心房細動の非再発率は65~70%と推測される。ただし、これらの結果は術後のモニターの仕方で大きく変わり、見逃しを考えると、実際の非再発率はこれより低いと考えられる。横隔神経障害は36ヵ月までほぼ改善、合併症発生率は許容できる水準 第2世代クライオバルーンを用いたアブレーションは、発作性心房細動に有効で、36ヵ月時点で64%の患者で心房性不整脈(心房細動、心房粗動、心房頻拍)の再発が認められなかった。この結果をみると、高周波アブレーションや第1世代クライオバルーンを用いたアブレーションに比べて、再発率が著明に改善したというわけではない。 クライオバルーンを用いたアブレーションで、懸念となる横隔神経障害については、第1世代クライオバルーンを用いたFIRE and ICE studyでは退院時の発生率が2.7%であった。今回の第2世代クライオバルーンを用いたSTOP AF PASでは、その発生率が3.2%であったが、36ヵ月の時点で症状が続いていた患者は1例(0.3%)のみであった。脳梗塞は0.3%、心嚢液貯留は0.9%、肺静脈狭窄は0.6%、左房食道瘻、死亡は0%であり、第2世代クライオバルーンを用いたアブレーションの合併症発生率は、許容できる範囲にあると考えられる。■参考1) Takarada K et al, J Interv Card Electrophysiol. 2017 Jun;49:93-100.

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アブレーションはお嫌いですか?(解説:香坂俊氏)-847

 あまり知られていないことなのだが、心房細動(AF)のリズムコントロール(※)が「長期的な予後を改善した」という研究結果は「存在しない」。以前であればこうしたことは問題でなく、まぁ理に叶っていて、かつ安全性が担保されていれば(つまり、makes senseでsafety guaranteedなら)そんな治療をやってみてもいいんじゃないかという、かなりおおらかな雰囲気の中医療は行われていた。※調律を細動から洞調律に戻す治療。カテーテルによる肺静脈焼灼隔離(アブレーション)や抗不整脈薬を用いた治療などはすべてここに含まれる ただ、EBMの時代になり、徐々に医療行為に予後改善の証明が要求されるようになった。そして、このEBM的な視点から捉えると、AFのカテーテルアブレーションというのはかなり微妙な治療であり、症状が強い患者さんに対しては抜群の力を発揮するのだが、そこを拡大解釈し、あまりQOLが阻害されていない患者さんにアブレーションを行っていくのは(若干)問題なのではないかと指摘されていた。 日本の現場で、こういったことを持ち出すと、「香坂先生はアブレーションが嫌いなんでしょう」などと揶揄されるのだが、日本は世界でも珍しい「供給が需要を生む」(日経新聞 4月26日朝刊第5面)というスタイルを取っているために鷹揚に構えることができるのだが、こうしたところに規制が厳しい医療システムではそうそう平穏にいかないことが多い。たとえば米国でAFアブレーションを行おうとすれば、かなり患者の症状に関して具体的な記載が求められる。CASTLE-AF試験の衝撃 ここに一石を投じる臨床試験の結果が発表された。それが、CASTLE-AF試験であり、以下その概略を記す:・AFを合併した治療抵抗性の心不全患者(NYHA II-IVでEF35%以下、ICD植込み症例)をランダム化:AFアブレーションを行うか、そのまま薬物療法を続けるか。・合計363例が登録され、179例がアブレーションを施行され、184例が薬物療法を続行した。・その結果、アブレーション群で全死亡・心不全入院の複合リスクが約4割減少した(追跡期間3年間で主要複合エンドポイントの発生は28.5%対44.6%)。 日本の循環器医療からすると、何を今さら、という風に思われる向きもあるかもしれないが、このCASTLE-AF試験の結果は驚くべきものである。2006年に発表されたAF-CHFという抗不整脈時代の臨床試験の名残もあり、有意な差がでるかどうかはいいところ半信半疑というところだったのだが、死亡や心不全入院というハードエンドポイントが4割減少というのは桁外れの効果である。 まだ小規模RCTの結果ではあるものの、今後重症心不全(NYHA II-IVでEF35%以下)を合併したAFに対しては「予後改善」をターゲットとしてアブレーションを行っていくことができるようになった。重要なポイントとして、アブレーションで完全にAFが消失しなくとも、AFの期間(AF burden)が短くなるだけで予後が改善する傾向がみられているということが挙げられる(必ず手技が成功しなくてはいけないわけではない)。 心不全でないAFに対する予後はいつ評価されるのか? 実はこちらも現在北米でRCTが進められており、その名もCABANAという。こちらの試験ははるかに大きな規模で行われ、通常の心機能が保たれているAF患者群に対してファーストラインにアブレーションを行ったらどうなるかというところを検証している。こちらは今年の5月に米国のHeart Rhythm Societyで発表される予定であり、はたしてCASTLE-AFの結果を再現できるかどうかというところが注目される。

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心房細動合併心不全の予後、アブレーションで大幅改善/NEJM

 心房細動を合併した心不全患者で、種々の理由で抗不整脈薬治療を受けられない場合においても、心房細動に対するカテーテルアブレーションを行うことで、薬物治療のみでのレートコントロールやリズムコントロールに比べ、全死因死亡および心不全悪化による入院の複合リスクは、約4割減少することが示された。米国・ユタ大学のNassir F.Marrouche氏らが、患者363例を対象に行った無作為化比較試験で明らかにし、NEJM誌2018年2月1日号で発表した。心房細動を合併した心不全患者は、心不全単独患者よりも脳卒中や心不全悪化による入院、死亡のリスクが高い。心房細動に対するカテーテルアブレーションは、そのほかの心機能は正常で薬物療法が無効の症候性心房細動に推奨されており、これまでの試験で、心房細動合併の心不全患者においてアウトカムを改善することが示唆されていた。NYHA心機能分類II~IV、左室駆出率35%以下、除細動器植込み患者を無作為化 研究グループは、発作性/持続性の症候性心房細動で、抗不整脈薬が無効、または忍容できない副作用や本人の意思で抗不整脈薬非服用の患者を対象に、試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、臨床ガイドラインに基づく心不全治療に加えて、一方の群には心房細動に対するカテーテルアブレーションを(179例)、もう一方の群には薬物治療によりレートコントロールまたはリズムコントロールを行った(184例)。 被験者は、NYHA心機能分類II~IV度の心不全で、左室駆出率が35%以下、植込み型除細動器を装着していた。 主要評価項目は、全死因死亡および心不全の悪化による入院の複合エンドポイントだった。主要複合エンドポイント、アブレーション群のHRは0.62 中央値37.8ヵ月の追跡期間中、主要複合エンドポイントの発生は、薬物治療群82例(44.6%)のに対し、アブレーション群は51例(28.5%)と、有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.43~0.87、p=0.007)。 また、全死因死亡についても、薬物治療群46例(25.0%)に対しアブレーション群は24例(13.4%)と、リスクはほぼ半減した(HR:0.53、95%CI:0.32~0.86、p=0.01)。心不全の悪化による入院も、それぞれ66例(35.9%)、37例(20.7%)(HR:0.56、同:0.37~0.83、p=0.004)、心血管系の原因による死亡は41例(22.3%)、20例(11.2%)(HR:0.49、同:0.29~0.84、p=0.009)と、いずれもアブレーション群が有意に少なかった。

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持続性AFと心機能低下を有する患者に有益なのは?カテーテルアブレーションvs.薬物レートコントロール

 心房細動(AF)と左室収縮不全は、十分なレートコントロールが行われていても頻繁に併存する。しかしながら、AFおよびさまざまな要因に伴う左室収縮不全に関するこれまでのランダム化研究では、リズムコントロールの有益性を裏付ける十分なエビデンスがない。そこでオーストラリア・メルボルン大学のSandeep Prabhu氏ら研究グループが、AFを有する原因不明の左室収縮不全において、AFに対するカテーテルアブレーションが、薬物によるレートコントロールと比べて左室収縮不全を改善するかについて検討を行った。Journal of American College of Cardiology誌2017年8月22号に掲載。多施設ランダム化試験でカテーテルアブレーションと薬物レートコントロールを比較 本研究は多施設のランダム化試験であり、持続性AFと原因の特定できない心筋症(LVEF≦45%)を有する症例を対象とした。レートコントロール後、患者は心臓MRIで左室の機能および心筋の線維化を示唆する後期ガドリニウム増強の評価を受け、カテーテルアブレーション群とレートコントロール群に振り分けられた。カテーテルアブレーションでは肺静脈隔離と後壁の隔離を行った。カテーテルアブレーション後のAFの頻度は、植込み型のループレコーダーを用いて評価し、薬物レートコントロールが適切になされているかは、ホルター心電図を繰り返し行うことでモニタリングした。プライマリエンドポイントは、6ヵ月後の心臓MRI によるEFの変化とした。薬物レートコントロール群に比べカテーテルアブレーション群でEFが著明に改善 2013年11月~16年10月の期間、301例がスクリーニングを受け、68例が試験に組み込まれた。このうち2例が脱落し、それぞれのアームには33例ずつ振り分けられた。カテーテルアブレーション後の全心拍に対するAFの割合は、平均6ヵ月後において、1.6±5.0%であった。ITT解析(治療意図の原理による解析)では、LVEFの絶対値はカテーテルアブレーション群で18±13%の増加で、薬物レートコントロール群では4.4±13%で(p<0.0001)、左室の収縮が正常化した患者(LVEF≧50%)は58%と9%であった(p=0.0002)。 また、カテーテルアブレーションを受けた患者では、後期ガドリニウム増強が認められないことが、EFの大きな改善(+10.7%、p=0.0069)と6ヵ月後の左室の収縮の正常化(73% vs.29%、p=0.0093)の予測因子となっていた。なお、カテーテルアブレーション群の33%で抗不整脈薬が続けられ、14%で電気的除細動が行われた。薬物レートコントロール群では全症例でAFが持続していた。カテーテルアブレーションによる洞調律維持が心機能の改善をもたらす 十分なレートコントロールがなされている症例においても、AFは左室収縮不全の可逆的な原因であることがしっかりと認識されていない。一方、とくに心臓MRIで心室の線維化がない状態においては、カテーテルアブレーションで洞調律を取り戻すことが心室の著明な改善をもたらす。このことは、AFと左室収縮不全に対してはレートコントロールが適切であるという現在の治療法に対し疑問を突き付けるものである。関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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