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ICU入室COVID-19重篤例、抗血小板療法は有効か/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重篤例では、抗血小板薬による治療はこれを使用しない場合と比較して、集中治療室(ICU)で呼吸器系または心血管系の臓器補助を受けない生存日数が延長される可能性は低く、生存退院例の割合も改善されないことが、英国・ブリストル大学のCharlotte A. Bradbury氏らREMAP-CAP Writing Committee for the REMAP-CAP Investigatorsが実施した「REMAP-CAP試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2022年3月22日号で報告された。8ヵ国105施設の適応プラットフォーム試験 本研究は、重度の肺炎患者における最良の治療法を確立するために、複数の介入を反復的に検証する適応プラットフォーム試験で、COVID-19患者ではこれまでにコルチコステロイド、抗凝固薬、抗ウイルス薬、IL-6受容体拮抗薬、回復期患者血漿の研究結果が報告されており、今回は抗血小板療法の有用性について検討が行われた(欧州連合のPlatform for European Preparedness Against[Re-]Emerging Epidemics[PREPARE]などの助成を受けた)。 この試験では、2020年10月30日~2021年6月23日の期間に8ヵ国105施設で患者の登録が行われ、90日間追跡された(最終追跡終了日2021年7月26日)。 対象は、年齢18歳以上、臨床的にCOVID-19が疑われるか微生物学的に確定され、ICUに入室して呼吸器系または心血管系の臓器補助を受けている患者であった。呼吸器系臓器補助は侵襲的または非侵襲的な機械的人工換気の導入、心血管系臓器補助は昇圧薬または強心薬の投与と定義された。 被験者は、非盲検下にアスピリン、P2Y12阻害薬、抗血小板療法なし(対照群)の3つの群に無作為に割り付けられた。標準治療として抗凝固薬による血栓予防療法が施行され、これとの併用で最長14日間、院内での介入が行われた。 主要エンドポイントは、21日間における臓器補助不要期間(ICUで呼吸器系または心血管系の臓器補助を受けない生存日数)とされた。院内死亡を-1、臓器補助なしでの21日間の生存を22とし、この範囲内で評価が行われた。主解析では、累積ロジスティックモデルのベイズ解析が用いられ、オッズ比が1を超える場合に改善と判定された。無益性により患者登録は中止に アスピリン群とP2Y12阻害薬群は、適応解析で事前に規定された同等性の基準を満たし、次の段階の解析のために抗血小板薬群として統計学的に統合された。また、事前に規定された無益性による中止基準を満たしたため、2021年6月24日、本試験の患者登録は中止された。 全体で1,549例(年齢中央値57歳、女性521例[33.6%])が登録され、アスピリン群に565例、P2Y12阻害薬群に455例、対照群に529例が割り付けられた。 臓器補助不要期間中央値は、抗血小板薬群および対照群ともに7(IQR:-1~16)であった。抗血小板薬群の対照群に対する有効性の補正オッズ比中央値は1.02(95%信用区間[CrI]:0.86~1.23)で、無益性の事後確率は95.7%であり、無益性が確認された(オッズ比が1.2未満となる無益性の事後確率が、95%を超える場合に無益性ありと判定)。また、生存例における臓器補助不要期間中央値は、両群とも14だった。 生存退院患者の割合は、抗血小板薬群が71.5%(723/1,011例)、対照群は67.9%(354/521例)であった。補正後オッズ比中央値は1.27(95%CrI:0.99~1.62)、補正後絶対群間差は5%(95%CrI:-0.2~9.5)で、有効性の事後確率は97%であり、有効性は示されなかった(オッズ比が1を超える有効性の事後確率が、99%を超える場合に有効性ありと判定)。 大出血は、抗血小板薬群が2.1%、対照群は0.4%で発生した。補正後オッズ比は2.97(95%CrI:1.23~8.28)、補正後絶対リスク増加は0.8%(95%CrI:0.1~2.7)で、有害性の事後確率は99.4%であった。 著者は、「抗血小板薬は、臓器補助不要期間に関して無益性が確認されたが、生存退院を改善する確率は97%で、死亡を5%低減し、90日間の解析では生存を改善する確率は99.7%であった。本試験に参加した8ヵ国では、抗血小板薬は安価で広範に入手可能で、投与も容易であることから、世界規模での適用が可能かもしれない」と考察している。

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第105回 COVID-19後の長患いの予防や治療を見つける試験が進行中

ワクチン2回接種後14日以上経ってから新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染(COVID-19)した約3,000人(3,090人)を調べたところ、感染後の長引く症状(COVID-19後遺症)の発現率はワクチン非接種感染者に比べて41%低いことが示されました1)。COVID-19後遺症、すなわちCOVID-19以外では説明がつかない4週間を超えて続く症状があったと答えた人の割合はワクチン接種済み群では9.5%、非接種群では14.6%でした。そのようなCOVID-19後の長患いを減らすワクチン以外の手段の検討も始まっています2)。Merck & Coの飲み薬molnupiravir(モルヌピラビル)がCOVID-19患者の入院を阻止したり回復を早めたりできるかどうかの検討を含む英国オックスフォード大学主催のPANORAMIC試験3)では治療後3ヵ月と6ヵ月の経過が調べられます。試験の主眼ではありませんがそれらのデータが集まれば同剤で後遺症が生じ難くなるかどうかを知ることができそうです。Pfizerの飲み薬paxlovid(パクスロビド)の試験2つでも被験者の6ヵ月間の追跡が含まれています。比較的軽症のCOVID-19患者にもっぱら使われるそれらの抗ウイルス薬の検討のみならずCOVID-19入院患者の治療の長期の効果も調べられています。世界保健機関(WHO)主催の国際試験SOLIDARITYのヘルシンキ大学担当部分がその一つで、COVID-19治療の先駆けremdesivir(レムデシビル)で治療されたCOVID-19入院患者の1年間の追跡結果がまもなく揃うと研究者は見込んでいます。SOLIDARITY試験の他の2つの治療の追跡もなされています。1つは免疫抑制を担う抗TNF薬infliximab(インフリキシマブ)、もう1つは血管の炎症を鎮めうるチロシンキナーゼ阻害剤imatinib(イマチニブ)です。退院したCOVID-19患者の長期経過を改善しうる治療を見つけることを目指す英国での大規模試験HEAL-COVID4)では心血管標的薬2つが検討されています。1つは抗凝固薬apixaban(アピキサバン)で、もう1つは血管の炎症を鎮めると考えられているコレステロール低下薬アトルバスタチン(atorvastatin)です。退院間近の患者に試験に参加するかどうかを尋ね、退院後1年間の再入院や死亡がそれら薬剤の使用で減らせるかどうかが調べられています。退院したCOVID-19患者の再入院は少なくなく、退院後半年足らずのうちに3人に1人近い29%は再入院する羽目に陥っており、およそ8人に1人(12%)は命を落としています4,5)。COVID-19患者が入院を終えた後の死亡の最も確からしい原因は心肺系への影響であろうとHEAL-COVID試験を率いるケンブリッジ大学の集中治療医Charlotte Summers氏は述べています。シカゴ大学の呼吸器医師Ayodeji Adegunsoye氏はCOVID-19で入院して酸素投与を必要とした患者の肺に感染後だいぶ経ってから瘢痕病変・線維化組織が増えうることを観察しており、そのような患者への免疫抑制剤sirolimus(シロリムス)の試験を始めています2)。線維化を促す細胞が肺に集まるのをシロリムスが防いでくれることを同氏は期待しています。参考1)Risk of Long Covid in people infected with SARS-CoV-2 after two doses of a COVID-19 vaccine: community-based, matched cohort study. medRxiv. February 24, 20222)Can drugs reduce the risk of long COVID? What scientists know so far / Nature3)PANORAMIC / UNIVERSITY OF OXFORD4)HEAL-COVID / HEAL-COVID5)Epidemiology of post-COVID syndrome following hospitalisation with coronavirus: a retrospective cohort study. medRxiv. January 15, 2021

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第94回 研修医過労自殺に1億円超の賠償命令、安全配慮義務違反/新潟地裁

<先週の動き>1.研修医過労自殺に1億円超の賠償命令、安全配慮義務違反/新潟地裁2.大津市民病院の医師大量退職問題、渦中の理事長が辞職3.塩野義コロナ内服薬、承認を前に100万人分調達で合意/厚労省4.働き方改革に向け、全病院で意見交換会の実施を/厚労省5.がん患者5万例の終末期、「苦痛少なく」は半数以下/国がん6.元日本医学会会長の高久 史麿氏が死去、91歳1.研修医過労自殺に1億円超の賠償命令、安全配慮義務違反/新潟地裁新潟市民病院の女性医師が2016年1月に過労自殺したことをめぐり、遺族が病院を運営する新潟市に損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、新潟地裁であった。裁判長は病院を運営する新潟市側に安全配慮義務違反があったとして、約1億626万円を遺族に支払う命令を下した。この裁判は、原告の遺族側が裁判所からの求めに応じて和解案を提示したが、被告の新潟市側が応じず、今回の判決となった。裁判長は「研修医の時間外労働は160時間を超えていた月もあった」として、長時間労働と研修医の自殺との間に因果関係があると認めた。(参考)研修医過労自殺、病院側に賠償命令 「労働時間の適切な把握怠る」(朝日新聞)市民病院の研修医自殺 新潟市に賠償命じる判決(NHK)新潟市に1億626万円賠償命令 市民病院の医師過労自殺訴訟(新潟日報)2.大津市民病院の医師大量退職問題、渦中の理事長が辞職今年3月以降、医師の大量退職が報道されている滋賀・大津市民病院の理事長が、大津市長に対して辞意を表明したことが明らかとなった。当病院では京都大から派遣されていた外科、消化器外科、乳腺外科の医師9人のほか、泌尿器科医・脳神経外科医もそれぞれ5人が4月以降に順次退職する意向を示しており、通院患者や市民からは不安の声が上がっている。辞意を表明した理事長による外科医への退職勧告はパワハラと申告され、内部検証では「パワハラは認められない」とされたが、外科医側は納得せず、2月に弁護士による第三者委員会が設置された。今月末までに結論が出される予定で、病院側は京都大学との信頼回復に努めたいとしている。外科・消化器外科・乳腺外科については、医師の退職に伴う影響を最小限にとどめるため、4月1日から新たに派遣される消化器外科医師4名と在籍中の医師による診療体制になることを公表した。(参考)医師の大量退職問題、市民病院理事長が市長に辞意 大津市民病院(読売新聞)パワハラ申告された理事長退任へ 医師大量退職意向の大津市民病院(産経新聞)4月以降の外科等の診療体制について(大津市民病院)3.塩野義コロナ内服薬、承認を前に100万人分調達で合意/厚労省後藤 茂之厚生労働大臣は25日、閣議後の記者会見において、塩野義製薬が開発した新型コロナに対する経口抗ウイルス薬について、承認後に100万人分を購入することについて、同社と基本合意したことを明らかにした。国内の製薬企業が開発した内服治療薬は初めて。同社は2月25日に条件付き承認制度の適用を希望する製造販売承認申請を行っている。また同日、厚労省は新型コロナワクチン4回目接種の準備について、5月から開始できるように自治体に向けて通知を発出した。4回目接種でも、従来と同様にファイザー製とモデルナ製を用いる見通し。接種対象者については、「重症化リスクが高い人などに対象を絞るべきではないか」という意見も出たが、現在のところ対象者は「3回目接種を受けたすべての住民」を想定して準備を進めるよう求めている。(参考)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬S-217622の 国内供給に向けた厚生労働省との基本合意書の締結について(塩野義)厚労相“塩野義製薬のコロナ飲み薬 承認前提に100万人分購入”(NHK)ワクチン4回目 5月下旬めどに準備完了を 厚労省 自治体に通知(同)4.働き方改革に向け、全病院で意見交換会の実施を/厚労省厚労省は、23日に「第17回 医師の働き方改革の推進に関する検討会」を開催した。働き方改革では、すべての勤務医を対象とした時間外労働の上限規制が2024年4月以降に適用されるため、すべての病院に対して医師だけでなく経営者やメディカルスタッフも交えた「働き方改革に向けた意見交換」の会合開催を求めた。また、医師の時間外労働を削減するため、ガイドラインを用いて医師の労働時間短縮計画を立てるなど、各病院に対して本格的に取り組むよう求めている。一方、日本病院会や全日本病院協会などを含む四病院団体協議会(四病協)は、2024年からの規制強化で産婦人科や救急医療に影響が出るとして、当直時間を時間外労働時間(残業時間)から外せる宿日直許可の基準緩和を求めている。今後、医療現場で働き方改革を見据えたさらなるタスクシフトなどが進んでいくだろう。(参考)「働き方改革に向けた病院内の意見交換会」、すべての病院で実施してほしい―医師働き方改革推進検討会(Gem Med)宿日直許可基準、医師について緩和してほしい―四病協(同)医師労働時間短縮計画作成ガイドライン(案)(厚労省)5.がん患者5万例の終末期、「苦痛少なく」は半数以下/国がんがん患者が死亡前に「体の苦痛が少なく過ごせた」と感じていた割合は42%に過ぎないことが、国立がん研究センターによる国内最大規模の実態調査で明らかとなった。調査では、2017~18年に亡くなったがん患者の遺族を地域別に無作為に選び、19~20年にアンケートを実施。5万4,167人の遺族から回答を得た。また、29%が亡くなる前1週間に強い痛みを感じていたとする結果も公表された。遺族視点での評価ではあるが、この結果から、がん終末期の患者の苦痛を十分に和らげることができていない状況について「改善の余地がある」と専門家は意見している。(参考)がん終末期「苦痛少なく」は4割にとどまる 国がんが遺族5万人調査(朝日新聞)がん終末期3割に強い痛み 遺族調査、緩和ケアに課題(共同通信)がん患者の人生の最終段階の療養生活の実態調査結果 5万人の遺族から見た全体像を公表(国がん)6.元日本医学会会長の高久 史麿氏が死去、91歳高久 史麿元日本医学会会長が24日に死去した。25日、高久氏が会長を務める地域医療振興協会が発表。同氏は東京大学の第三内科教授、医学部長を経て、1996〜2012年まで自治医科大学の学長を務め、名誉学長となったほか、国立国際医療研究センター名誉総長、東京大名誉教授でもあった。04年には日本医学会の第6代会長に就任し、血液学の専門を生かして骨髄バンクの設立に貢献したほか、医師研修制度の見直しのための検討会など多くの公務についた。1971年に論文「血色素合成の調節、その病態生理学的意義」でベルツ賞第1位を受賞。94年に紫綬褒章、2012年には瑞宝大綬章を受章した。(参考)日本医学会 元会長 高久史麿さん死去 91歳(NHK)元日本医学会会長の高久史麿氏が死去 MRの資格制度化に尽力 直前まで認定制度改革の議論に携わる(ミクスonline)

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オミクロン株BA.2、コロナ治療薬の有効性は?/NEJM

 現在、オミクロン株亜種BA.2は、デンマーク、インド、フィリピンなどの地域において、オミクロン株BA.1系統から置き換わり、主流になっている。近いうちに日本国内でもBA.1からBA.2に置き換わることが予想されている。国立感染症研究所の高下 恵美氏らの研究グループは、オミクロン株BA.2に対し、7種類の抗体薬と3種類の抗ウイルス薬について、in vitroでの有効性を検証した。本研究の結果は、NEJM誌オンライン版2022年3月9日号のCORRESPONDENCEに掲載。 研究対象となった薬剤は、FDA(米国食品医薬品局)で承認済み、日本で承認済みのものが含まれる。日本で承認済みの抗体薬は、イムデビマブとカシリビマブの併用(商品名:ロナプリーブ)、ソトロビマブ(商品名:ゼビュディ)、抗ウイルス薬は、レムデシビル(商品名:ベクルリー)、モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)、ニルマトレルビル(商品名:パキロビッドパック[リトナビルと併用])となる。 今回の試験では、7種類の抗体薬(etesevimab、bamlanivimab、イムデビマブ、カシリビマブ、tixagevimab、cilgavimab、ソトロビマブ)の単剤および併用について、オミクロン株BA.2の培養細胞における感染を阻害(中和活性)するかどうかを、FRNT50(ライブウイルス焦点減少中和アッセイで50%のウイルスを中和する血清希釈)を用いて評価した。また、3種類の抗ウイルス薬(レムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビル)について、IC50(50%阻害濃度)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・etesevimab、bamlanivimabの単剤使用では、最も高いFRNT50値(>5万ng/mL)でも、オミクロン株BA.2に対する中和活性は見られなかった。併用では、最も高いFRNT50値(>1万ng/mL)でも、中和活性は見られなかった。この結果は、オミクロン株BA.1とその亜種のBA.1.1に対しても同様だった。・イムデビマブの単剤使用では、BA.1とBA.1.1に対する中和活性は見られなかったが、BA.2に対して中和活性があることが確認された。・カシリビマブの単剤使用では、BA.2に対して中和活性があることが確認された。・イムデビマブとカシリビマブの併用では、BA.1とBA.1.1に対する中和活性は見られなかったが、BA.2に対して中和活性があることが確認された。ただし、初期のSARS-CoV-2や、アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株より、FRNT50値が43.0~143.6倍高かった。・tixagevimab、cilgavimabの単剤使用では、BA.2に対して中和活性があることが確認された。・tixagevimabとcilgavimabの併用では、BA.2に対して中和活性があることが確認された。ただし、初期のSARS-CoV-2や、アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株より、FRNT50値が1.4~8.1倍高かった。・ソトロビマブの前駆体では、BA.1とBA.1.1に対する中和活性は低く、BA.2に対する中和活性はそれ以下で、FRNT50値が12.2〜49.7倍高かった。・レムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビルの各抗ウイルス薬では、BA.2に対し、初期のSARS-CoV-2やこれまでの変異株と同等の効果を示した。 研究チームは、本試験の結果から、抗体薬のうちイムデビマブとカシリビマブの併用、tixagevimabとcilgavimabの併用、ソトロビマブは、中和活性は認められるものの、初期の変異株よりも、オミクロン株BA.2に対する効果が劣っていると述べている。また、本試験で使用した抗ウイルス薬がBA.2に対して実際に有効かどうかは、臨床研究が必要であるとしている。

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ロタウイルスワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第12回

ワクチンで予防できる疾患ロタウイルスは、乳幼児の急性胃腸炎を引き起こす代表的な病原体である。発熱と嘔吐から症状が始まり、水様性下痢を伴うようになる。ほとんどの場合は1週間程度で自然軽快するが、激しい嘔吐や下痢のために脱水症を起こし、点滴治療や入院が必要になる場合もある。5歳未満の急性胃腸炎の入院患者のうち、40〜50%はロタウイルスが原因である。また、脱水症の他にも、けいれん、腎不全、脳症などを起こすことがあり、5歳未満児の急性脳症の起因病原体としては、インフルエンザウイルス、ヒトヘルペスウイルス-6に次いで3番目に多い1)。ロタウイルスは糞口(経口)感染により拡大するが、非常に感染力が強く、衛生状態に関係なく5歳までにほとんどすべての乳幼児が感染すると言われている。重症例は初感染時に起こりやすく、繰り返し感染することで徐々に軽症化するため、年長児以降では不顕性感染になることも多い。わが国でのロタウイルス胃腸炎は冬から春に多く報告されているが、新型コロナウイルス感染症の流行が始まった2020年以降はロタウイルスによる感染性胃腸炎の患者報告数は激減している(図)。図 定点あたり報告数画像を拡大する国立感染症研究所. 感染症発生動向調査2022年第3週より抜粋ロタウイルス感染症には抗ウイルス薬などの特異的な治療方法はなく、対症療法が中心となる。また、感染力が非常に強いため、適切な感染対策を行っても完全に予防することが困難である。そのため、乳児へのワクチン接種によるロタウイルス感染予防および重症化予防が重要となる。ロタウイルスワクチンの概要わが国では、1価ロタウイルスワクチン(商品名:ロタリックス)および5価ロタウイルスワクチン(同:ロタテック)の2種類の経口生ワクチンが認可されている(表)。表 ロタウイルスワクチン接種スケジュール画像を拡大するカバーする血清型は異なるが、1価ワクチンは交差免疫により他の血清型にも効果を発揮するため、同等の有効性が認められている2)。ロタウイルスワクチンは、前述のようにロタウイルス胃腸炎が2回目以降は軽症化するという性質を応用したものであり、その効果は、胃腸炎感染予防74~87%、重症化予防85~98%と非常に高い3)。効果の持続期間も生後2~3年まで確認されている。また、国内においてもワクチン接種による5歳未満児の入院率減少の効果が報告されている4)。ワクチン接種後に易刺激性、下痢、嘔吐などの副反応が国内で報告されているが、いずれも数日以内に回復し、重篤なものはまれである。頻度は非常に低いが(2~10万人に1人3))、初回接種後に腸重積を起こすことがある。第一世代のロタウイルスワクチン(同:RotaShield)が導入された際に、腸重積発症頻度の増加が確認されたため販売中止となった。現在使用されているワクチンは、腸重積発症リスクがRotaShieldの1/5~1/10と低くワクチン接種のメリットがリスクをはるかに上回る4)が、注意深く観察する必要がある。接種のスケジュールロタウイルスワクチンの接種スケジュールを表に示す。1価ロタウイルスワクチンと5価ロタウイルスワクチンでは接種回数が異なるため注意が必要である。原則として同じ種類のワクチンでスケジュールを完遂することが望ましい。しかし、転居後にいずれか一方のワクチンしか実施されていないなどの理由により、原則によることができないやむを得ない事情があると当該市町村長が認めた場合には、他方のワクチンにて接種することが可能である(具体的な接種方法については定期接種実施要領を参照5))。また、月齢3ヵ月以降に腸重積の発症率が増加するため、ワクチンの初回接種はできるだけ早い時期に実施することが必要である。出生15週0日以降の初回接種については安全性が確立されていないため、出生14週6日までに初回接種を完了させることが望ましい。日常診療で役立つ接種ポイントロタウイルスワクチンは経口生ワクチンであり、接種後1週間程度は便中にウイルスが排出されるため、おむつ交換時の手洗いなどの感染対策について説明しておくと良い。また、接種後の吐き出しを避けるために、接種前後は授乳を控えるように説明する。少量でも飲み込んでいれば一定の効果があり、ロタウイルスワクチンは複数回接種することから、万が一吐き出した場合でも1回投与と考え、追加の投与は必要ない5)。ロタリックスについては添付文書上、任意接種としての再投与が可能となっているが推奨はされていない。重篤な副反応として腸重積の可能性についても事前に保護者などに説明しておく必要がある。接種後1週間以内に、激しく泣く、機嫌が良かったり悪かったりを繰り返す、嘔吐を繰り返す、血便が出るなどの症状があった場合には、必ず医療機関を受診するように伝えておく。今後の課題・展望ロタウイルスワクチンは非常に効果の高いワクチンであるが、わが国では長年任意接種のために接種率が上がらなかった。ようやく2020年10月より定期接種化され、今後のロタウイルス胃腸炎および合併症の減少が期待されるところである。参考となるサイトこどもとおとなのワクチンサイト予防接種Q&A1)国立感染症研究所. IASR. 2019;40:209-210.2)Jonesteller CL, et al. Clin Infect Dis. 2017;65:840-850.3)CDC. The Pink Book. Chapter19:Rotavirus. 4)国立感染症研究所. 日本におけるロタウイルスワクチンの効果. 2019;40:212-213.5)厚生労働省. 定期接種実施要領.講師紹介

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オミクロン株臨床像の更新ほか、診療の手引き7.0版/厚労省

 2月28日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第7.0版」を公開し、全国の自治体に通知を行った。 今版の主な改訂点は以下の通り。診療の手引き7.0版の主な改訂点【1 病原体・疫学】・変異株について更新・国内と海外の発生状況を更新【2 臨床像】・(特にオミクロン株の知見に関して)臨床像を更新・重症化リスク因子を更新・ワクチンによる重症化予防効果を追加・国内小児例の臨床的特徴・重症度、小児における家庭内感染率を更新・小児多系統炎症性症候群(MISC)について更新 経過、小児重症COVID19 registryの報告を追加・更新・妊婦例の特徴について更新 日本産婦人科学会の調査を更新、新たな知見およびCOVIREGI JPの結果を追加【3 症例定義・診断・届出】・症例定義を更新、疑似症に関してを追記【4 重症度分類とマネジメント】・重症度別マネジメントのまとめにニルマトレビル/リトナビルを追加・重症につき 国内における体外式膜型人工肺(ECMO)データを更新 透析患者のデータを更新・新たなレベル分類と医療逼迫時の対応を追加【5 薬物療法】・抗ウイルス薬と中和抗体薬の併用について十分な知見がなく現時点で推奨されないことを記載・モルヌピラビルの脱カプセル・(簡易)懸濁投与に関して記載・ニルマトレビル/リトナビルについて追加 研究結果を追加:重症化リスクのある非入院患者において、28日目までの入院または死亡が低下(0.7% vs.6.5%) 投与方法・投与時の注意点・入手方法について記載・軽症・中等症患者を対象とした治療薬の主な臨床試験を更新・妊婦に対する薬物療法を更新(ニルマトレビル/リトナビルを追加)・国内で開発中の薬剤を整理 PF07321332は削除(ニルマトレビル/リトナビルが認可されたため)【6 院内感染対策】・医療従事者が濃厚接触者となった場合の考え方を更新・妊婦および新生児への対応を更新【7 退院基準・解除基準】・オミクロン株の無症状患者の療養解除基準を追加・早期退院の目安を追加

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第98回 まだまだ終わらない乳腺外科医わいせつ裁判、最高裁が高裁判決を破棄し差し戻し

欧米諸国で感染防止対策を緩める動き続々こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。気温も上がり、急に春めいて来ました。ヨーロッパでは大変なことが起こっていますが、新型コロナウイルス自体は欧米諸国を中心に収束に向かい始めたようです。2月22日付の日本経済新聞によれば、英国のジョンソン首相は21日、人口の大半を占めるイングランドで感染者の隔離を不要とし、法的な規制を全廃するという新型コロナウイルスとの共生策を発表したとのことです。具体的には、2月24日に感染者の隔離の法的な義務がなくなりました。定期的な接触者の追跡を終了するほか、感染者と接触した場合でも7日連続の検査や隔離をする必要もなくなりました。ヨーロッパ各国では規制撤廃の動きが相次いでおり、例えばスウェーデンでは2月9日から国内での規制がほぼ全廃されているとのことです。同じく2月24日付の日本経済新聞は米国の状況も伝えています。2月22日の新規感染者数は1月中旬のピーク時の10分の1になっており、ワクチンの追加接種やマスク着用の義務づけを取り下げるなど、地方政府で感染防止対策を緩める動きが加速していると報じています。さらに2月27日付の朝日新聞は「米疾病対策センター(CDC)は25日、新型コロナ対策のマスク着用の指針を大幅に緩和した」と報じています。CDCは各地域での感染状況を3段階で評価しており、そのうち低レベル、中間レベルにおいて屋内でのマスク着用が求められなくなったとのことです。対象は米国人口の約7割に上るそうです。翻って日本では、病床使用率の高止まりを背景に、一部都府県でまん延防止等重点措置のさらなる延長が検討されています。思い切った緩和、解除に向かえない理由は多々あると思いますが、3回目ワクチン接種の遅れが一つの大きな原因であることは確かでしょう。塩野義製薬に国産の経口抗ウイルス薬の製造販売承認申請を急がせ、条件付き早期承認制度で承認しようというのも、ワクチン接種の遅れのミスを少しでも挽回したい岸田政権のポーズにしか見えません。ポスト・コロナを見据えてのスピード感や決断力の鈍さは、菅政権から岸田政権に代わってもそうは変わっていないな、と感じる今日このごろです。さて、今回は「第82回 わいせつ裁判で逆転有罪の医師、来年上告審弁論へ。性犯罪厳罰化の中、対応模索の医師・医療機関」でも取り上げた、準強制わいせつ罪で逮捕・起訴され、一審無罪、二審有罪となった男性医師に対する上告審判決公判を取り上げます。2月18日、同公判が最高裁第二小法廷で開かれ、懲役2年を命じた二審・東京高裁判決を破棄し、同高裁に差し戻す判決が出ました。有罪判決の二審では「術後せん妄」と「DNA鑑定」が主な争点この事件の経緯は第82回で詳しく書きましたが、簡単におさらいしておきます。事件は2016年5月に起きました。乳腺外科が専門の男性医師(46)は、働いていた東京都足立区の医療法人財団健和会・柳原病院で、女性の右胸から乳腺腫瘍を摘出する手術を実施。術後に、病室で女性にわいせつな行為をしたとして起訴されました。男性は同年8月に逮捕、105日間勾留されました。起訴事実は、手術後で抗拒不能状態にあり、ベッドに横たわる女性患者に対して、診察の一環と誤信させ、着衣をめくり左乳房を露出させた上で、その左乳首を舐めるなどのわいせつ行為をした、というものです。公判では全身麻酔手術を終えた女性の被害証言の信用性、女性の術後せん妄の有無および程度、女性の体の付着物から被告のDNA型が検出されたとする鑑定結果の信用性が争われました。2019年2月20日の一審・東京地裁判決は、被害を受けたと証言する女性が「(麻酔の影響で)性的幻想を体験していた可能性がある」と指摘。付着物の鑑定結果については「会話時の唾液の飛沫や触診で付着した可能性が排斥できない」として無罪(求刑懲役3年)と結論づけました。これに対し、2020年7月13日の二審・東京高裁判決は真逆の判決となりました。二審では「術後せん妄」が主な争点となり、弁護側、検察側双方が推薦する精神科医2人が証言。結果、高裁判決は女性の証言について、「具体的かつ詳細であり、特に、わいせつ被害を受けて不快感、屈辱感を感じる一方で、医師が患者に対してそのようなことをするはずがないとも思って、気持ちが揺れ動く様子を極めて生々しく述べている。上司に送ったLINEのメッセージの内容とも符合する。A(被害者)の証言は、本件犯行の直接証拠として強い証明力を有する」と判断。付着物を巡る一審の判断についても、手術室での位置関係などの実験結果などから不合理だったとして、一審判決を破棄し、「被害者の精神的、肉体的苦痛は大きい」として逆転有罪、懲役2年を言い渡しました。この2審判決の逆転判決は、医療関係者に大きな衝撃を与え、日本医師会、日本医学会は「控訴審判決は学術的にも問題が多い」と強く非難しました。男性医師は上告、最高裁は2022年1月21日に上告審弁論を開き、2月18日の判決に至りました。最高裁、二審の「せん妄および幻覚があった」ことを否定した判断に疑義今回の判決では、問題となった「被害女性のせん妄および幻覚の有無」について、「検察側専門家の見解は医学的に一般的なものでないことが相当程度うかがわれるにもかかわらず、その見解に基づいて、せん妄に伴う幻覚を体験した可能性を否定した原判決の判断は、そのような可能性があり得るものとした第一審判決の判断の不合理性を適切に指摘しているものとは言えない」とし、二審の「せん妄に伴う幻覚を体験した可能性を否定」した判断に疑義を呈しました。さらに「DNA鑑定の妥当性」については、「高裁において検察官、弁護人から取り調べ請求があったにもかかわらず、高裁は全て却下し、取り調べを行わなかったため、疑問点が解消し尽くされておらず、検査結果の信頼性にはなお不明確な部分が残っていると言わざるを得ない」としました。その上で、「A(患者)の証言の信用性判断において重要となる本件定量検査の結果の信頼性については、これを肯定する方向に働く事情も存在するものの、なお未だ明確でない部分があり、それにもかかわらず、この点について審理を尽くすことなく、Aの証言に本件アミラーゼ鑑定及び本件定量検査の結果等の証拠を総合すれば被告人が公訴事実のとおりのわいせつ行為をしたと認められるとした原判決には、審理不尽の違法があり、この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであって、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するというべきである」とし、東京高裁判決の破棄と差し戻しを裁判官4人全員一致で決定したのです(判決全文は裁判所ウェブサイトで公開されています1))。「一審無罪判決を是認し、検察官の控訴を棄却すべきであった」と弁護団最高裁判決を受け、男性医師の弁護団は2月18日に会見を開きました。弁護士ドットコムニュース等の報道によれば、主任弁護人の高野 隆氏は「最低限、冤罪が確定することを防げた。このことは素直に弁護団一同喜びたい」としつつ、破棄・差し戻しについて「ありえないと考えていた。あまりに微視的で抽象的な議論しかできないようなところを審理させようとしている。なぜこうなったのか理解できない」と疑問を呈したとのことです。この日、弁護団は声明も発表しました。その中で弁護団は「今日の判決は、東京高裁判決の逆転有罪の最大の根拠となった医師(注:検察側証人)の証言が信頼できないことを明確に指摘した。さらに高裁判決が有罪の根拠にしたDNA定量検査の検査結果の信頼性が不十分であることも指摘している。そうであるならば、検察官が有罪の立証に失敗したことはすでに明白であるから、最高裁は一審無罪判決を是認し、検察官の控訴を棄却すべきであった」と主張しています。なお、診療のため出廷できなかった男性医師について高野氏は、「電話で話したところでは、意気消沈している様子ではなく、無罪に向けてさらに裁判を戦うという意欲は十分にある。ご自身は前向きにとらえ、冤罪を晴らすための前進であるという理解をしている」と話したとのことです。DNA抽出液等を警視庁科学捜査研究所はすでに廃棄裁判の舞台は再び東京高裁に戻ることになります。二審における「せん妄に伴う幻覚を体験した可能性を否定」した判断は最高裁でほぼ覆ったわけで、男性医師の無罪がさらに近づいた、とは言えるでしょう。とはいえ、最高裁が「審理が尽くされていない」と指摘したDNA鑑定については、先行き不透明です。DNA抽出液自体や鑑定に用いた基礎データなどを警視庁科学捜査研究所はすでに廃棄してしまっているからです。最高裁が「無罪」判決ではなく「破棄・差し戻し」にせざるを得なかったのは、「DNA鑑定の妥当性」を判断する材料がなかったためと考えられますが、そもそも鑑定に使った試料等がないのでは、再審に向けて証拠を揃えようにもできません。事件が起きてまもなく6年、長期化の様相も呈してきました。差し戻し審が今後どのような展開をたどるのか、注視していきたいと思います。参考1)裁判例結果詳細

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抗ウイルス薬+ブースターで重症化を防ぐ経口COVID-19治療薬「パキロビッドパック」【下平博士のDIノート】第93回

抗ウイルス薬+ブースターで重症化を防ぐ経口COVID-19治療薬「パキロビッドパック」今回は、抗ウイルス薬「ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック、製造販売元:ファイザー)」を紹介します。本剤は、SARS-CoV-2陽性で重症化リスクを有する軽症~中等症Iの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、臨床的回復までの期間を短縮し、重症化や入院・死亡を予防することが期待されています。<効能・効果>本剤は、SARS-CoV-2による感染症の適応で、2022年2月10日に特例承認されました。なお、重症度の高いSARS-CoV-2による感染症患者に対する有効性は確立していません。<用法・用量>通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、ニルマトレルビルとして1回300mgおよびリトナビルとして1回100mgを同時に1日2回、5日間経口投与します。中等度の腎機能障害患者(30mL/min≦eGFR<60mL/min)の場合には、ニルマトレルビルとして1回150mgおよびリトナビルとして1回100mgを同時に1日2回、5日間経口投与します。重度の腎機能障害患者(eGFR<30mL/min)への投与は推奨されていません。なお、SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに本剤の投与を開始することが望ましく、臨床試験において症状発現から6日目以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていません。<安全性>国際共同第II/III相試験の中間解析時点で認められた副作用は672例中49例(7.3%)で、主なものは味覚不全25例(3.7%)、下痢13例(1.9%)、高血圧(頻度不明)などでした。なお、重大な副作用として中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、肝機能障害(いずれも頻度不明)が設定されています。 <患者さんへの指導例>1.この薬は、新型コロナウイルスの増殖に必要な酵素を阻害する抗ウイルス薬と、この抗ウイルス薬の分解を抑えて血中濃度を維持する薬の2種類がセットになっています。2.食事の有無にかかわらず、朝と夕の1日2回、12時間ごとに服用してください。症状が改善しても指示どおりに5日分を飲み切ってください。3.飲み合わせに注意が必要な薬剤が多数ありますので、服用している薬剤や健康食品、サプリメント、嗜好品をすべて報告してください。4.服薬開始後、疲れやすい、体がだるい、力が入らない、吐き気、食欲不振などの症状のほか、異常が現れた場合はすぐに相談してください。<Shimo's eyes>本剤は、COVID-19に対する抗ウイルス薬として特例承認されました。経口薬としては、2021年12月に特例承認されたモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオカプセル)に続く2剤目の薬剤となります。セットとなっている2剤のうち、ニルマトレルビルは新型コロナウイルスの増殖に関わるメインプロテアーゼの作用を阻害して抗ウイルス効果を発揮し、リトナビルは抗HIV薬としても用いられている強力なCYP3A阻害薬であり、ニルマトレルビルの濃度を上げるブースター薬として働きます。主な治療対象は、モルヌピラビルと同様に、重症化リスクの高い軽症~中等症Iの患者ですが、本剤は12歳以上(体重40kg以上の場合)から服用できます。ほかに軽症患者を対象とした薬剤としては、中和抗体製剤カシリビマブ/イムデビマブ(同:ロナプリーブ注射液セット)と、ソトロビマブ(同:ゼビュディ点滴静注液)の2剤が承認されています。また、適応外ではありますが、2022年1月よりレムデシビル(同:ベクルリー点滴静注用)も限定された条件下で使用可能です。わが国も参加している国際共同第II/III相EPIC-HR試験の結果において、症状発現から3日以内に本剤の投与を受けた患者では入院・死亡リスクが89%減少し、5日以内に投与を受けた患者では88%減少しました。なお、各変異株に対する臨床試験の有効性データは現時点では得られていませんが、in vitroにおいてはオミクロン株ほか懸念すべき変異株に対する抗ウイルス効果が認められています。用法は、1日2回5日間の経口投与です。シート1枚が1日分となっており、1回にニルマトレルビル錠を2錠およびリトナビル錠を1錠服用します。なお、重度の腎機能障害患者には禁忌となっており、中等度の腎機能障害患者はニルマトレルビル錠を1回1錠に減量して服用します。この場合は薬剤の交付前に朝および夕の服用分それぞれからニルマトレルビル錠1錠を取り除き、取り除いた箇所に専用のシールを貼り付けてから交付します。不要な錠剤を取り除いたことを必ず患者さんに伝えてください。リトナビルはCYP3Aを強く阻害し、またニルマトレルビルおよびリトナビルはCYP3Aの基質となっています。そのため、併用に注意すべき薬剤が多数あり、併用禁忌薬としてはフレカイニド、アミオダロン、ピモジド、ピロキシカム、アゼルニジピン、リバーロキサバン、ジアゼパム、エスタゾラム、フルラゼパム、トリアゾラム、ボリコナゾールなど38成分とセイヨウオトギリソウが挙げられています。ほかにも注意すべき薬剤はあると考えられていて、国立国際医療研究センター病院が国内外の資料を基に作成した「パキロビッドパックとの併用に慎重になるべき薬剤リスト」を公開しています。本剤を使用する医療機関は、ファイザーが開設する「パキロビッドパック登録センター」に登録して配分依頼を行います。処方に際しては患者の同意書が必要であり、院外処方に際しては、対応薬局に処方箋とともに記入済みの「投与前チェックシート」を提出する必要があります。処方箋を応需した薬局薬剤師は、とくに併用薬に注意すべきであり、服薬中のすべての薬剤を確認しなければなりません。また、腎機能に応じて適切な投与量になっているかどうかのチェックも行いましょう。参考1)PMDA 添付文書 パキロビッドパック2)ファイザー 新型コロナウイルス『治療薬』医療従事者専用サイト パキロビッドパック

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オミクロン株に対するコロナ治療薬の効果を比較検証/NEJM

 オミクロン株が世界中で猛威を振るう中、新型コロナウイルスの新たな治療薬の開発が進んでいる。国立感染症研究所の高下 恵美氏ら研究グループが、7種類の抗体薬と3種類の抗ウイルス薬について、in vitroでのオミクロン株に対する効果について検証した。本研究の結果は、NEJM誌オンライン版2022年1月26日号のCORRESPONDENCEに掲載。ソトロビマブ、tixagevimab・cilgavimab併用はオミクロン株に対して中和活性を維持 今回、研究対象となった薬剤は、臨床試験中、FDA(米国食品医薬品局)で承認済み、日本で承認済みのものが含まれる。検証の結果、抗体薬のetesevimab・bamlanivimab併用とカシリビマブ・イムデビマブ併用(商品名:ロナプリーブ)のオミクロン株に対する中和活性は、著しく低いことがわかった。それに対し、tixagevimab・cilgavimab併用とソトロビマブ(商品名:ゼビュディ)は、オミクロン株に対して中和活性を維持していることが判明したという。抗ウイルス薬のレムデシビル(商品名:ベクルリー)、モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)は、オミクロン株の増殖を抑制することが示された。 オミクロン株は、初期のSARS-CoV-2と比較して、スパイク蛋白に少なくとも33の変異を有していることが判明しているため、FDAで承認されているモノクローナル抗体は、オミクロン株に対して効果が低い可能性があることが示唆されていた。 今回の検証では、7種類の抗体薬(etesevimab、bamlanivimab、イムデビマブ、カシリビマブ、tixagevimab、cilgavimab、ソトロビマブ)の単剤および併用について、オミクロン株の培養細胞への感染を阻害(中和活性)するかどうかを、ライブウイルス焦点減少中和アッセイ(FRNT)を用いて、モノクローナル抗体の中和活性を評価した。 etesevimab、bamlanivimab、イムデビマブ、カシリビマブ、tixagevimab、cilgavimab、ソトロビマブの単剤および併用について、オミクロン株に対する効果を検証した主な結果は以下のとおり。・etesevimab、bamlanivimab、イムデビマブの単剤使用では、最も高いFRNT50値(>5万ng/mL)でも、オミクロン株に対する中和活性は見られなかった。・カシリビマブは、ベータ株、ガンマ株、オミクロン株に対して高いFRNT50値(187.69~1万4,110.70ng/mL)で中和活性を示したが、オミクロン株に対するFRNT50値はベータ株に対して18.6倍、ガンマ株に対して75.2倍高かった。・tixagevimab、cilgavimab、ソトロビマブの単剤使用は、ベータ株、ガンマ株、オミクロン株に対して中和活性を保持していたが、これらのFRNT50値は、ベータ株またはガンマ株に対して、オミクロン株は3.7〜198.2倍高かった。・etesevimab・bamlanivimab併用では、ガンマ株に対する中和活性が著しく低下し、最も高いFRNT50値(>1万ng/mL)でも、ベータ株とオミクロン株に対する中和活性は見られなかった。・カシリビマブ・イムデビマブ併用では、ベータ株、ガンマ株、デルタ株に対する中和活性は維持されたが、最も高いFRNT50値(>1万ng/mL)でも、オミクロン株に対する中和活性は見られなかった。・tixagevimab・cilgavimab併用では、ベータ株、ガンマ株、オミクロン株に対する中和活性は維持されたが、ベータ株またはガンマ株に対して、オミクロン株のFRNT50値は24.8倍~142.9倍高くなった。 また、3種類の抗ウイルス薬(レムデシビル、モルヌピラビル、PF-07304814)について、50%阻害濃度(IC50)を測定したところ、レムデシビルとモルヌピラビルは、オミクロン株に対する有効性が高く、PF-07304814は、オミクロン株に対する有効性が低いことが判明した。 本研究グループは、COVID-19治療薬がオミクロン株の増殖を効果的に抑制するのかどうかを動物モデルで引き続き検証する予定だ。

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パキロビッドパック投与時の注意点、薬物治療の考え方13版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医学部教授])は、2月10日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第13版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、2月10日に製造販売に関し特例承認を取得した経口抗ウイルス薬ニルマトレルビル錠/リトナビル錠(商品名:パキロビッドパック)などの追加記載が行われたほか、最新の知見への内容更新が行われた。 以下に主な改訂点について内容を抜粋して示す。【3. 抗ウイルス薬等の対象と開始のタイミング】・「図 COVID-19の重症度と治療の考え方」を変更【4. 抗ウイルス薬等の選択】・総論にニルマトレルビル/リトナビルを追加・各薬剤につき、わが国で適用承認されている薬剤は商品名を追加(抗ウイルス薬)ニルマトレルビル/リトナビルの追加・機序ニルマトレルビルは、SARS-CoV-2のメインプロテアーゼに作用し、その働きを阻害することによりウイルスの増殖を阻害する。リトナビルは、ニルマトレルビルの代謝を遅らせ、体内濃度をウイルスに作用する濃度に維持する目的で併用。・国内外での臨床報告国内外で実施された多施設共同、プラセボ対照、ランダム化二重盲検試験において、重症化リスクのある非入院COVID-19患者の外来治療を対象にニルマトレルビル300mg/リトナビル100mgまたはプラセボを1日2回、5日間経口投与する群に1対1で無作為割付。主要有効性解析集団とされたmITT集団のうちプラセボ群(385名)の28日目までの入院または死亡が27名(7.0%)に対し、治療群(389名)では3名(0.8%)と相対的リスクが89%減少した(p

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ファイザーの経口コロナ治療薬「パキロビッドパック」を特例承認/厚労省

 厚生労働省は2月10日、ファイザーが開発した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する抗ウイルス剤「ニルマトレルビル錠/リトナビル錠」(商品名:パキロビッドパック、以下パキロビッド)について、国内における製造販売を特例承認した。2021年12月24日に承認されたモルヌピラビル(ラゲブリオ)に続き、本剤は国内における2剤目の経口コロナ治療薬となる。2月27日までは、全国約2,000の医療機関における院内処方およびこれらの医療機関と連携可能な地域の薬局でパイロット的な取り組みを実施し、それ以降は全国の医療機関の入院・外来でも処方可能となる。 パキロビッドは、重症化リスク因子を有する軽症~中等症患者が投与対象。通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児に対し、ニルマトレルビル1回300mgおよびリトナビル1回100mgを同時に1日2回、5日間経口投与する。 本剤を巡っては、高血圧や高脂血症、不眠症などの治療薬において併用禁忌薬が多数あることから、審議会でも専門家から慎重な投与が必要との意見が出たという。本剤の添付文書には、下記39種の薬剤および含有食品について併用禁忌が明示されている。【併用禁忌】▼アンピロキシカム▼ピロキシカム▼エレトリプタン臭化水素酸塩▼アゼルニジピン▼オルメサルタン、メドキソミル・アゼルニジピン▼アミオダロン塩酸塩▼ベプリジル塩酸塩水和物▼フレカイニド酢酸塩▼プロパフェノン塩酸塩▼キニジン硫酸塩水和物▼リバーロキサバン▼リファブチン▼ブロナンセリン▼ルラシドン塩酸塩▼ピモジド▼エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン▼エルゴメトリンマレイン酸塩▼ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩▼メチルエルゴメトリンマレイン酸塩▼シルデナフィルクエン酸塩▼タダラフィル▼バルデナフィル塩酸塩水和物▼ロミタピドメシル酸塩▼ベネトクラクス▼ジアゼパム▼クロラゼプ酸二カリウム▼エスタゾラム▼フルラゼパム塩酸塩▼トリアゾラム▼ミダゾラム▼リオシグアト▼ボリコナゾール▼アパルタミド▼カルバマゼピン▼フェノバルビタール▼フェニトイン▼ホスフェニトインナトリウム水和物▼リファンピシン▼セイヨウオトギリソウ含有食品 また、併用に注意すべき薬剤なども多数記載されているので、処方の際には配慮が必要だ。詳細については、添付文書を参照されたい。

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第89回 経口コロナ薬パキロビッドパックが特例承認、その注意点は?

<先週の動き>1.経口コロナ薬パキロビッドパックが特例承認、その注意点は?2.診療報酬改定、湿布制限や紹介状なし受診の徴収額など詳細が明らかに3.4月からのオンライン診療は初診料251点、再診料・外来診療料73点4.視覚障害者の就労保護のため指圧師養成施設の設置制限は合憲/最高裁5.コロナワクチン接種、小児への義務は課さず、妊婦は努力義務へ1.経口コロナ薬パキロビッドパックが特例承認、その注意点は?厚生労働省は10日、米・ファイザーが開発した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経口治療薬ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック)を特例承認した。日本国内では軽症者向けの経口薬としてモルヌピラビルに次ぐ2剤目となるが、作用機序は異なり、本剤は12歳以上で使用可能。臨床試験において、重症化リスクのある患者に投与した場合、非投与群に比べて入院・死亡リスクが88%減少したと報告されている。発症後5日以内の使用が推奨され、オミクロン株への効果も期待される。パキロビッドパックには5シートのPTP包装が含まれ、1シートに朝・夕服用分としてニルマトレルビル錠150mgが4錠(1回2錠)およびリトナビル錠100mgが2錠(1回1錠)で構成されている。2剤のうち、ニルマトレルビルはSARS-CoV-2のメインプロテアーゼ阻害薬であり、HIV治療薬としても使用されるリトナビルはSARS-CoV-2に対して抗ウイルス活性を示さないが、ニルマトレルビルのCYP3Aによる代謝を阻害し、血漿中濃度を維持させる。リトナビルは各薬物代謝酵素やトランスポーターの強力な阻害作用を有するため、パキロビッドパックでは降圧薬、高脂血症治療薬、抗凝固薬など38成分と食品1つ(セイヨウオトギリソウ)が併用禁忌とされる。しかし、注意すべき薬剤はこれにとどまらず、国立国際医療研究センター病院が国内外の資料を基に作成した「パキロビッドパックとの併用に慎重になるべき薬剤リスト」を公開しており、当面の参考になるだろう。なお、今月27日までは全国約2,000医療機関での院内処方を原則として提供され、その間で適正使用の推進に向けた情報収集が行われる見込み。配分を希望する対象の医療機関は、ファイザーが開設する「パキロビッドパック登録センター」に登録し、同センターを通じて配分依頼を行う必要がある。(参考)新型コロナウイルス治療薬の特例承認について(厚労省)厚労省 ファイザーの経口新型コロナ治療薬パキロビッドを特例承認 段階的に医療現場に提供(ミクスonline)ファイザー新型コロナウイルス『治療薬』医療従事者専用サイト パキロビッドパック2.診療報酬改定、湿布制限や紹介状なし受診の徴収額など詳細が明らかに今年度の診療報酬改定について、処方箋を3回まで繰り返し利用できる「リフィル処方箋」の導入が決定した。高血圧や糖尿病などの慢性疾患において、症状が安定した患者が継続服用している場合に対応して、医師の診療なしで薬の受け取りが可能となる。一方で、投与量に限度がある湿布薬や向精神薬などは対象外となる。なお、今回の改定では湿布の処方上限が70枚から63枚に引き下げられた。また、紹介状を持たずに大学病院などを受診した患者に対する特別負担徴収の拡大についても、初診の場合は現在の5,000円から7,000円に、再診の場合は2,500円から3,000円にそれぞれ引き上げる方針となった。実施は10月1日から。対象となる医療機関は、これまでと同様に大学病院などの特定機能病院に加えて、地域医療支援病院のうち200床以上の病院も徴収の対象となる。わが国は国際的に見ても外来受診回数が多いとされるが、高度医療を担う外来にかかりつけ医を持たない患者が受診するのを抑制するとともに、来年度から開始される外来機能報告制度を用いて基幹病院を明確化し、機能分化を促進するのが狙いと考えられる。(参考)リフィルは1回29日以内で処方箋料の減算なし(日経ドラッグインフォメーション)大病院、紹介状なしなら初診7000円 診療報酬改定(日経新聞)外来機能報告制度 高度な外来を担う基幹病院を明確化し機能分化を促進(Beyond Health)3.4月からのオンライン診療は初診料251点、再診料・外来診療料73点9日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会で2022年度診療報酬改定の答申が行われ、焦点の1つだったオンライン診療の初診料は251点と、特例的対応の214点から対面診療の水準との中間程度まで引き上げられた。同様に、電話など情報通信機器を用いた再診料・外来診療料はいずれも73点とされた。これに伴い、現行のオンライン診療料(月1回71点)は廃止となる。通常診療の初再診料は据え置きとなった。これに対して、日本医師会の中川会長は「対面診療を提供できる体制を有すること」「患者の状況によってオンライン診療では対応が困難な場合には、他医療機関と連携して対応できる体制を有すること」が堅持されたことに言及。オンライン診療が対面診療と適切に組み合わせた上で実施されるよう注視していくとするとともに、患者の安心・安全が損なわれたり、地域医療の秩序を混乱させるような事象が生じた場合には、期中であっても、すみやかに診療報酬要件の見直しを要請する考えを示した。(参考)オンライン初診料、4月から値上げへ 厚労省「診療報酬」見直し案(朝日新聞)オンライン診療に係る診療報酬について(日本医師会)中医協・22年度診療報酬改定を答申 オンライン診療で患者の受診機会増に期待 営利追及への懸念も(ミクスonline)4.視覚障害者の就労保護のため指圧師養成施設の設置制限は合憲/最高裁視覚障害者の就労先を保護するために、健常者向けの「あん摩マッサージ指圧師」の養成施設の新設を認めないとする厚労省の規制について、違憲性を争った訴訟の上告審の判決で、最高裁第2小法廷は7日に、視覚障害者の「自立と社会経済活動への参加を促す積極的な意義がある」として合憲であるとした。視覚障害者の団体は判決後、記者会見において「あん摩マッサージ指圧師の職は自立した社会参加の命綱。それを残すような判断が示されたことに大きな意味がある」と話した。厚労省の統計では、2020年末のあん摩マッサージ指圧師は約11万8,000人、うち視覚障害者は約2万6,000人となっている。(参考)指圧師養成、新設規制は「合憲」 最高裁初判断(日経新聞)指圧師 養成施設の設置規制 最高裁「憲法違反とはいえない」(NHK)5.コロナワクチン接種、小児への義務は課さず、妊婦は努力義務へ厚労省は10日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会を開催し、5~11歳の小児に対する新型コロナワクチン接種について議論を行い、ファイザー製ワクチンは一定の有効性が期待できるとしながらも、最終的に「努力義務」を課さない方針を正式に決めた。小児に対するファイザー製ワクチンの接種について、米国、カナダ、フランス、イスラエル、EUではすべての小児に対して接種を推奨している。わが国では予防接種法上の「臨時接種」に位置付けられ、小児用ワクチンは21日から各自治体に配布される。一方で、以前から努力義務の適応外とされていた妊婦への接種については、有効性や安全性のデータが確認され、妊娠後期に感染すると早産率が高くなったり、重症化リスクが高いとする報告もあることから、新たに努力義務の適用となった。(参考)新型コロナワクチンの接種について(厚労省)小児は努力義務適用外 コロナワクチン、妊婦は対象に―厚労省(時事通信)5~11歳の接種「努力義務の対象外」了承 厚労省分科会(毎日新聞)

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塩野義の経口コロナ治療薬、第IIa相試験で良好な結果確認

 2022年2月7日、塩野義製薬は開発中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬S-217622の第II/III相試験 Phase 2a partの結果速報に関する説明会を開催し、抗ウイルス効果に関してプラセボ群と比較して良好な結果が確認されたことを報告した。 第II/III相試験Phase 2a partでは、12歳以上70歳未満の軽症/中等症および無症候/軽度症状のみのSARS-CoV-2感染者を対象にS-217622の1日1回、5日間の経口投与による有効性および安全性が評価された。intention-to-treat(ITT)集団はS-217622低用量群16例、高用量群14例、プラセボ群17例の計47例であり、各群におけるワクチン接種者は14例(87.5%)、12例(85.7%)、12例(70.6%)であった。 主要評価項目である各時点におけるSARS-CoV-2のウイルス力価のベースラインからの変化量、ならびにウイルスRNA量のベースラインからの変化量について、S-217622低用量群・高用量群ともプラセボ群に対する速やかな減少が確認された。ウイルス力価についてはDay4(3回投与後)にはウイルス力価陽性(≧0.8 Log10[TCID50/mL])患者の割合をプラセボ群に比較して約60~80%減少させたほか、ウイルス力価陰性(<0.8 Log10[TCID50/mL])が最初に確認されるまでの時間(中央値)をプラセボ群の111.1時間(95%信頼区間[CI]:23.2~158.5)に対してS-217622低用量群61.3時間(95%CI:38.0~68.4)、高用量群62.7時間(95%CI:39.2~72.3)と約2日短縮した。 重症化抑制効果については、治験開始後に病態が悪化し、担当医師により入院、あるいは入院に準ずる治療が必要と判断された症例(Ordinal Scale 3以上への増悪)はプラセボ群2/14例(14.3%)に対し、S-217622投与群では認められなかった。 また、安全性についてはS-217622投与群において高比重リポ蛋白(HDL)減少例の発現が多い傾向が認められたが、ほぼ全ての有害事象は軽度なものであった。 今後、軽症/中等症については2月9日よりPhase 3 partに移行予定、無症候/軽度症状のみについてはPhase 2b/3 partを継続する。S-217622については今回得られた試験結果をもとに、引き続き国内における最速の承認を目指すという。

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塩野義の経口コロナ治療薬、速やかなウイルス減少効果を確認~第II/III相試験

 塩野義製薬は1月31日付のプレスリリースで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として開発中の経口薬(S-217622)について、軽症・中等症および無症候のSARS-CoV-2感染者へ投与した際の、ウイルス力価の変化量を検討した第II/III相試験のデータを発表した。それによると、実薬投与群におけるSARS-CoV-2陽性患者の割合が、3回投与後の時点で、プラセボ群と比べ最大80%減少したことを示したという。 S-217622は、塩野義製薬が北海道大学との共同研究により創製した3CLプロテアーゼ阻害薬。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はウイルスの増殖に必須の3CLプロテアーゼを有し、本治療薬は3CLプロテアーゼを選択的に阻害することで、SARS-CoV-2の増殖を抑制する。 第II/III相試験では、軽症・中等症および無症候のSARS-CoV-2感染が確認された日本成人を対象に、本治療薬を1日1回、5日間経口投与した際の抗ウイルス効果ならびに安全性を評価した。その結果、実薬投与群におけるウイルス力価陽性患者(≧0.8Log10 [TCID50/mL])の割合は、3回投与後(投与開始4日目)の時点で、プラセボ群と比べ63~80%の減少を示した。本試験における高度な有害事象および重篤な有害事象は確認されず、忍容性が確認された。 プレスリリースと同日に開示された同社の2021年度第3四半期決算説明会資料1)には、第II/III相臨床試験のうちPhase 2a partの6日目までのデータが記載されており、本治療薬がオミクロン株を含め、幅広い株に対して活性を示したことも明らかにされている。 塩野義製薬では、2021年12月に商用に向けた本治療薬の初回ロットの製造を完了しており、本年3月までに100万人分の提供体制を構築し、4月以降は年間1,000万人分以上を生産予定。

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COVID-19経口治療薬「モルヌピラビル」の有効性(解説:小金丸博氏)

 モルヌピラビルはSARS-CoV-2や他のRNAウイルスに対して活性を有するリボヌクレオシドアナログである。RNA依存性RNAポリメラーゼに作用することによりウイルスRNAの配列に変異を導入し、ウイルスの増殖を阻害する。今回、重症化リスクを有する非重症COVID-19患者に対するモルヌピラビルの有効性と安全性を検討した第III相プラセボ対象ランダム化二重盲検試験の結果がNEJM誌オンライン版に報告された。被験者1,433例を対象とした解析では、プラセボ投与群(699例)の重症化が68例(9.7%)だったのに対し、モルヌピラビル投与群(709例)では48例(6.8%)であった(相対リスク減少率:30%)。死亡者数はプラセボ投与群9例(1.3%)に対してモルヌピラビル投与群では1例(0.1%)であり、モルヌピラビル投与群で少数であった。劇的な効果とはいえないものの、非重症COVID-19に対して一定の重症化予防効果を示した。 サブグループ解析の結果をみてみると、発症4~5日目の患者、肥満患者(BMI 30以上)、ベースラインのSARS-CoV-2抗体陰性の患者(未感染者)でモルヌピラビルの有効性を認めた。既感染者より未感染者に対してモルヌピラビルが有効性を示す理由が明確でないが、発症時のウイルス量が多い方が有効性を期待できる結果となっており、関連が推察される。 高濃度酸素投与が必要な重症患者、発症6日目以降の患者、新型コロナウイルスワクチン接種者、人工透析患者等は、本試験から除外された。これらの患者に対する有効性は確立していないことに注意が必要である。 本試験の結果を参考に、本邦においても2021年12月24日に特例承認された。発症早期の重症化リスク因子を有するCOVID-19患者に対して適応があり、妊婦、または妊娠している可能性のある女性には投与できない。本薬剤は非重症COVID-19患者に対する国内初の経口抗ウイルス薬である。治療の選択肢が増えたこと、外来患者に対して投与できることは、医療者側にとっても大きなメリットとなる。副反応についての情報はまだ不十分であり、さらなる知見の集積が必要である。

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インフルエンザだから抗ウイルス薬とは限らない【処方まる見えゼミナール(三澤ゼミ)】

処方まる見えゼミナール(三澤ゼミ)インフルエンザだから抗ウイルス薬とは限らない講師:三澤 美和氏 / 大阪医科大学附属病院 総合診療科動画解説麻黄湯とアセトアミノフェンが処方されたインフルエンザの患者さん。なぜ抗インフルエンザ薬ではなかったのでしょうか。三澤先生の考える麻黄湯や抗インフルエンザ薬の有用性や、患者に合わせた使い分けを紹介します。

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第97回 COVID-19後遺症様の症状が稀にワクチン接種後にも生じうる

イスラエルでもワクチンのCOVID-19後遺症予防効果あり去年9月に発表された英国での試験1)と同様に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種済みの人のSARS-CoV-2感染後の長引く症状(COVID-19後遺症)の主なものはどれも非接種の人に比べて少ないことがイスラエルでの試験でも示されました2,3)。もっと言うと、ワクチン接種済みの人のそれらの症状はSARS-CoV-2に感染したことのない人より多くもありませんでした。COVID-19後遺症全般についてはワクチンによる予防効果が認められなかった試験報告4)もありますが、エール大学の岩崎明子(Akiko Iwasaki)氏によれば今回のイスラエルでの試験や英国での試験結果はともあれ吉報です。「COVID-19後遺症は悲惨で、消耗を強いる。そうならないようにする手立ては何であれCOVID-19後遺症がこれ以上増えるのを防ぐのに必要であり、(その手立てを担いうるという)ワクチン接種理由がまた1つ増えた」と同氏は言っています2)。ワクチン接種後にも稀ながら生じうる後遺症ワクチンがCOVID-19後遺症を予防しうるとの期待がある一方で、その後遺症に似た症状がワクチン接種後に生じることが稀ながらあるようです5)。かつて幼稚園の先生をしていたBrianne Dressen氏は2020年11月にSARS-CoV-2ワクチンを接種し、その日の晩までに目がぼやけはじめました。また、貝殻を耳に当てているように音が変になりました。症状は急激に悪化し、やがては心拍異常や筋肉の脱力に見舞われ、電気ショックのような感覚を被るようになりました。Dressen氏はいまやそのほとんどの時間を暗い部屋で過ごし、歯を磨くことや幼い我が子に触れられるのさえ耐えることができません。医師がDressen氏を不安症と診断してからときが過ぎ、今から1年前の2021年1月になると米国国立衛生研究所(NIH)の研究者はDressen氏に降り掛かったような事態を把握し始め、Dressen氏や他の患者をNIH施設に招いて検査し、時には治療も施しました。しかし手がかりは少なく、Dressen氏が被ったような長く続く体調不良をワクチンが引き起こしたのかどうかは分からずじまいでした。NIHと患者のやり取りは昨年2021年の遅くまでに途絶えてしまいました。内々で研究は続いているとDressen氏等の調査を率いたNIHの研究者Avindra Nath氏は言うものの、唯一の頼みの綱であったNIHが手を引いたことに患者は困惑し、がっかりしています。NIHの研究は尻すぼみとなりましたが、ワクチン接種後の後遺症を理解することはそれらで悩む人の助けになるでしょうし、もしワクチンとの関連の仕組みが明らかになれば次世代のワクチン開発の参考になるに違いありません。また、そういう後遺症の恐れがある人を事前に同定可能になるかもしれません。カリフォルニア大学の免疫学者William Murphy氏はSARS-CoV-2スパイクタンパク質が誘発する自己免疫で感染後とワクチン接種後のどちらの長患いも説明できるかもしれないとの論説をNEJM誌に去年11月に発表しました6)。感染後やワクチン接種後の好ましい抗ウイルス効果と生じて欲しくない副作用の両方に免疫反応がどう寄与しているかをもっと基礎から調べる必要があります。Murphy氏はワクチン接種の支持者ですが、ワクチンを皆に安心して接種してもらうにはワクチン接種に安全性の心配はないと言って済ますのではなくワクチンについて隈なく調べ尽くすことが必要だと述べています5)。しかしMurphy氏の期待とは裏腹にNIHのNath氏が率いた患者研究は長続きしませんでした。NIHの研究には患者34人が参加し、そのうち14人がNIHで診られ、残り20人は血液検体、それに何人かは脳脊髄液(CSF)検体を提供しました。しばし治療も受けた患者もおり、たとえばステロイド高用量投与や免疫グロブリン静注(IVIG)が施されました。そのようにNIHは初めこそ患者を助けようとしていたにもかかわらずやがて患者との接触を断つようになりました。去年の9月のDressen氏の神経検査の予定は遠隔面談となり、12月になるとNath氏は患者を来させないようにしました。多くの患者を長期間治療するようにNIHは設えられておらず、患者の地元の担当医が手当てにあたるのが最良だとNath氏は言っています。しかしNath氏の言い分とは裏腹に医師には何もしてもらえないという患者もいますし、気のせいだと決めつけられることもあります。そうして表向きは梯子を外したNIHですが、エール大学の岩崎 明子氏はNIHのNath氏の協力を仰いでワクチン接種後の反応とCOVID-19後遺症がどう関連するかを調べることを計画しています。すでに患者との話が始まっており、血液や唾液などの検体を患者から集めるつもりです。また自己抗体を疑うドイツの研究者Harald Pruss氏はマウスへのSARS-CoV-2ワクチン接種後の自己抗体の特定に取り掛かっています。Pruss氏は感染後やワクチン接種後の患者の治療にもあたっており、患者の血液から抗体のほとんどを取り除く治療を調べる臨床試験を近々開始したいと考えています。自己抗体などの免疫系の関与は患者の体験でも示唆されており、ワクチン接種後に不調に陥った患者の何人かはScienceの取材に応じて免疫抑制剤でいくらか良くなったと言っています。NIHのNath氏も同様の効果を把握しており、免疫抑制/調節作用があるIVIGやステロイドによるCOVID-19後遺症治療を調べているNIH主催臨床試験結果がワクチン関連の合併症にも役立つことを期待しています。岩崎氏がワクチン開発にも着手COVID-19研究で何かと目に耳にすることが多いエール大学の岩崎氏の取り組みは今やワクチン開発にも及んでいます。先週26日にbioRxiv誌に発表された同氏率いるチームのマウス実験の結果、mRNAワクチン筋肉注射に続くSARS-CoV-2スパイクタンパク質やそのmRNAの点鼻投与で呼吸器粘膜の免疫を安全に底上げして感染や発病を防ぎうることが示されました7)。次の段階として、より大きな動物や臨床試験での安全性や有効性の検討が必要です8)。将来的には他の粘膜ウイルス病原体にも今回と似た手段が通用しそうであり、岩崎氏の活躍を見聞きすることは今後ますます多くなりそうです。参考1)Antonelli M,et al.Lancet Infect Dis. 2022 Jan;22:43-55. 2)Long-COVID symptoms less likely in vaccinated people, Israeli data say / Nature3)Association between vaccination status and reported incidence of post-acute COVID-19 symptoms in Israel: a cross-sectional study of patients tested between March 2020 and November 2021. medRxiv. January 17, 20224)Six-month sequelae of post-vaccination SARS-CoV-2 infection: a retrospective cohort study of 10,024 breakthrough infections. medRxiv. November 08, 20215)In rare cases, coronavirus vaccines may cause Long Covid-like symptoms. Science.6)Murphy WJ, et al. N Engl J Med. 2022 Jan 27;386:394-396. 7)Unadjuvanted intranasal spike vaccine booster elicits robust protective mucosal immunity against sarbecoviruses. bioRxiv. January 26, 20228)岩崎 明子氏のTwitter投稿(2022年1月27日)

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COVID-19治療薬の特徴一覧を追加、薬物治療の考え方12版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医学部教授])は、1月24日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第12版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、適用・効果の追加承認がなされたトシリズマブ(商品名:アクテムラ)に関する記載が追加されたほか、他の治療薬の知見を更新し、現在使用できる治療薬4剤の特徴を記した一覧表が附表として追加された。 主な改訂点について、以下に抜粋する。総論【3. 抗ウイルス薬等の対象と開始のタイミング】 「重症化リスクが高い患者を対象とした治療薬の特徴で、巻末の附表参考」や「軽症例での薬物治療の適応の場合、感染病態および薬理作用の観点などからも、感染または発症から早期の治療開始が望ましい。また、中等症以上で全般的な薬物治療を検討」の文言変更。「予防接種歴のみで治療薬の適応を判断するしない」、「患者の病態など総合的に勘案して適応を決定する」ように追加。【4. 抗ウイルス薬等の選択】 オミクロン株には、カシリビマブ/イムデビマブは使用が推奨されないこと、妊娠および妊娠の可能性がある場合は、モヌルピラビルは使用できないことなどを追加。抗ウイルス薬について【レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注用100mg)】・臨床報告について国内と海外記載を変更・投与時の注意点について投与期限(10日目まで)、小児への投与の注意点と推奨されない小児を追加記載【モルヌピラビル】・臨床報告について国内と海外記載を変更【ファビピラビル】・臨床報告について国内と海外記載を変更・薬剤提供は2021年12月27日で取り扱い終了の記載追加中和抗体薬について【カシリビマブ/イムデビマブ】・「発症抑制での投与時の注意点」を追加・In vitroでの変異株への効果を追加【ソトロビマブ】・備考でオミクロン株への評価を追加・「発症後での投与時の注意点」で重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者を対象に投与などの項目を追加免疫調整薬・免疫抑制薬【トシリズマブ】・海外での臨床報告を変更・国内での使用実績を変更・2022年1月の適応追加を追記・投与方法、投与時の注意点を変更(投与方法)通常、成人には、副腎皮質ステロイド薬との併用において、トシリズマブ(遺伝子組換え)として1回8mg/kgを点滴静注する。症状が改善しない場合には、初回投与終了から8時間以上の間隔をあけて、トシリズマブして8mg/kgをさらに1回追加投与できる。(投与時の注意点)・酸素投与、人工呼吸器管理または体外式膜型人工肺(ECMO)導入を要する患者を対象に入院下で投与を行うこと。・海外医師主導治験は室内気SpO2が92%未満または酸素投与中でCRP値7.5mg/dL以上のSARS-CoV-2による肺炎患者を対象として実施され、副腎皮質ステロイド薬併用下で本剤の有効性が確認されている。当該試験の内容を熟知し、本剤の有効性および安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。・海外医師主導治験では副腎皮質ステロイド薬を併用していない患者において本剤投与により全死亡割合が高くなる傾向が認められた。・バリシチニブとの併用について、有効性および安全性は確立していない。その他 附表として「重症リスクを有する軽症COVID-19患者への治療薬の特徴(2022年1月時点)」を追加 本手引きの詳細は、同学会のサイトで確認していただきたい。■関連記事ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会

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COVID-19のための初の経口抗ウイルス薬「ラゲブリオカプセル200mg」【下平博士のDIノート】第90回

COVID-19のための初の経口抗ウイルス薬「ラゲブリオカプセル200mg」今回は、抗ウイルス薬「モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオカプセル200mg、製造販売元:MSD)」を紹介します。本剤は外来でも使用可能な経口剤であり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化を防ぐことで、医療逼迫回避の一助となることが期待されています。<効能・効果>本剤は、SARS-CoV-2による感染症の適応で、2021年12月24日に特例承認されました。なお、重症度の高い患者に対する有効性は確立していません。<用法・用量>通常、18歳以上の患者には、モルヌピラビルとして1回800mg(4カプセル)を1日2回、5日間経口投与します。COVID-19の症状が発現してから速やかに投与を開始する必要があります。<特記事項>1.対象患者についてSARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有するなど、本剤の投与が必要と考えられる患者さんが投与の対象です。投与対象は重症化リスク因子を有する患者が中心ではあるものの、審査報告書では、高熱や呼吸器症状など相当の症状を呈し重症化の恐れがある場合なども、投与対象になり得るとしています。2.包装について包装は40カプセルのバラ包装のみで、1瓶を1回分として使い切れるようになっています。3.投与に際しては同意が必要RMP資材として同意説明文書が用意されており、処方の際には患者本人に内容を確認してもらったうえで、患者・医師双方がサインして保管することになっています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、新型コロナウイルスのRNAに取り込まれることによって、ウイルスの増殖を阻害して抗ウイルス作用を示します。2.症状が改善しても指示どおりに5日分を飲み切ってください。3.下痢、悪心・嘔吐、めまい、頭痛などの症状が現れることがあります。これらの症状が生じた場合であっても自己判断で中止せず、医師または薬剤師に相談してください。4.(女性に対して)妊婦または妊娠している可能性がある人はこの薬を使用できません。授乳中の人は注意が必要ですので、服用開始前に相談してください。妊娠する可能性のある女性は、服用中および服用後4日間は適切な避妊を行ってください。<Shimo's eyes>本剤は、軽症~中等症COVID-19患者に使用できる国内初の経口抗ウイルス薬です。これまで、軽症患者を対象とした治療薬としては、中和抗体製剤のカシリビマブ/イムデビマブ注射液セット(商品名:ロナプリーブ)とソトロビマブ点滴静注液(同:ゼビュディ)の2剤が承認されていて、中等症患者を対象とした治療薬としては、抗ウイルス薬のレムデシビル点滴静注用(同:ベクルリー)が承認されています。経口剤では、中等症IIと重症患者を対象としたJAK阻害薬のバリシチニブ錠(同:オルミエント)とステロイド薬のデキタメタゾンが使用されていますが、抗ウイルス薬としては本剤が初めての薬剤となります。本剤の作用機序はウイルス複製阻害であり、オミクロン株に対してもこれまでの変異株と同様の効果が期待できると考えられています。投与の対象となるのは、以下のような重症化リスク因子を1つ以上有する軽症~中等症Iの患者です。《国際共同第II/III相試験(MOVe-OUT試験)の組み入れ基準》61歳以上の高齢者活動性のがん(免疫抑制または高い死亡率を伴わないがんは除く)慢性腎臓病慢性閉塞性肺疾患肥満(BMI 30kg/m2以上)重篤な心疾患(心不全、冠動脈疾患または心筋症)糖尿病重症化リスクのある非重症COVID-19患者を対象に本剤またはプラセボを投与した多施設共同第III相試験の中間解析において、プラセボ群の重症化(29日目までの入院・死亡)が377例中53例(14.1%)であったのに対し、本剤群では385例中28例(7.3%)と、相対的リスクが48%減少しました(p=0.0012)。なお、臨床試験において有効性が確認されたのは発症から5日以内に投与を開始した感染者であり、6日目以降における有効性のデータは得られていません。副作用としては、下痢、悪心・嘔吐、浮動性めまい、頭痛が発現率1%以上5%未満で報告され、重要な潜在的リスクには、骨髄抑制および催奇形性が示されています。動物実験で催奇形性が認められており、妊娠しているまたは妊娠している可能性のある女性には投与できません。なお、本剤は2022年9月より一般流通され、保険適用となりました。※2022年9月、一部内容の修正を行いました。参考1)PMDA 添付文書 ラゲブリオカプセル200mg

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