サイト内検索|page:11

検索結果 合計:352件 表示位置:201 - 220

201.

本邦におけるレムデシビルの投与基準は妥当か?(解説:山口佳寿博氏)-1285

 レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液)はエボラウイルス病(旧エボラ出血熱)の原因病原体(マイナス1本鎖RNAウイルス)に対する治療薬として開発が進められてきた。レムデシビルは核酸類似体でRNA依存RNA合成酵素を阻害する。この薬物が、プラス1本鎖RNAウイルスである新型コロナにも効果が期待できる可能性があり、世界レベルで治験が施行されてきた。とくに、米国における期待度は高く、米国の新型コロナ感染症の第1例目にレムデシビルが投与され劇的な改善が得られたと報告された。それ以降、米国では科学的根拠が曖昧なまま“人道的(compassionate)”投与が繰り返された(Grein J, et al. N Engl J Med. 2020;382:2327-2336.)。しかしながら、中国・武漢で施行されたdouble-blind, randomized, placebo-controlled trial(症状発現より12日以内の中等症以上の患者、237例)では、薬物投与群(レムデシビル10日投与)と対照群の間で有意差を認めた臨床指標は存在しなかった(Wang Y, et al. Lancet. 2020;395:1569-1578.)。本稿で述べる重症度分類は本邦厚労省の『新型コロナウイルス感染症診療の手引き』に準ずる。米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のスポンサーシップの下で施行されたdouble-blind, randomized, placebo-controlled trial(本邦を含む世界9ヵ国が参加、中等症以上の患者、1,059例)の中途解析(731例)では、臨床症状/所見の回復が薬物投与群(レムデシビル10日投与)で対照群より4日短縮されることが示された(Beigel JH, et al. N Engl J Med. 2020 May 22. [Epub ahead of print])。この結果を受け、米国FDAは5月1日にレムデシビルの重症例に対する緊急使用を承認した。本邦の厚労省も5月7日に呼吸不全を合併する中等症患者、機械呼吸/ECMOを必要とする重症患者(小児を含む)に対してレムデシビルの特例使用を許可した。投与期間に関しては、機械呼吸/ECMO導入例では最大10日間、それ以外の場合には5日間と規定された。 5月以降、レムデシビルの至適投与期間を決定するための治験が続行された。世界8ヵ国で施行されたレムデシビルの5日投与と10日投与のrandomized, open-label, phase 3 trial(中等症以上の患者、397例)で、臨床効果は両群で有意差がなく重篤な呼吸不全への進展を含む有害事象の発症は10日投与群で有意に高かった(Goldman JD, et al. N Engl J Med. 2020 May 27. [Epub ahead of print])。Spinnerら(Spinner CD , et al. JAMA. 2020 Aug 21. [Epub ahead of print])は、中等症入院患者(肺炎あり、しかし、室内気吸入時のSpO2>94%)を対象としたrandomized, open-label, phase 3 trial(596例)を施行し、試験開始11日目における臨床症状/所見の改善度は対照の標準治療群に較べ5日投与群で有意に勝ることを示した。一方、10日投与群と標準治療群の間では有意差を認めなかった。Goldman、Spinnerらの治験結果は、レムデシビルの10日投与の臨床的意義に疑問を投げかけるものであった。Spinnerらの治験結果ならびにNIAID治験の最終結果(1,062例、臨床症状/所見の回復はレムデシビル投与群で5日間短縮)を受け、米国FDAは、8月29日、レムデシビルの投与対象を修正した。新しいFDAの指針では、重症度と無関係に入院中の小児を含むすべての患者(感染確定例、疑い例)にレムデシビルを投与してよいと改定された。 本邦においては、9月4日、『新型コロナウイルス感染症診療の手引き(第3版)』が厚労省より刊行されたが、レムデシビルの投与対象、投与期間は5月7日の特例承認の時とほぼ同じであった。第3版では、機械呼吸/ECMO導入なしの呼吸不全を伴う中等症において5日投与で臨床症状が改善しない場合は10日まで投与を延長できると記載されている。しかしながら、この投与期間の延長は、Goldman、Spinnerらの治験結果と矛盾するものであり再考が必要である。さらに、第3版では、肺の浸潤陰影が急速に増悪する場合(重症化)にはステロイドの投与と共にレムデシビルの使用を考慮すべきだと記載されている。このような状況は、ウイルスそのものに起因する一次性肺炎の増悪に加え生体の免疫過剰反応に惹起された二次的病変がより強く関与する病態と考えなければならず、ステロイドは正しい選択であるがレムデシビルに関してはどうであろうか? レムデシビルはRNA合成酵素阻害薬で抗ウイルス薬の1つと位置付けられる。それ故、レムデシビルは原則としてウイルス量が多い感染初期に投与されるべき薬物である。重症化した症例ではウイルス量は低下せず維持される場合があることが示唆されている(Lucas C, et al. Nature. 2020;584:463-469.)。しかしながら、このような時期に抗ウイルス薬の投与が病態を改善するか否かについては解明されておらず、今後の検討が必要な課題である。 Beigelらのデータにおいて注意すべき点は、レムデシビルの効果(回復までの時間)が白人(試験参加人数:全体の53%)においては確実に認められるが、黒人(21%)、日本人を含むアジア人(13%)では標準治療群との間に有意差を認めていないという事実である(Beigelらの図3、subgroup解析参照)。すなわち、Beigelらのデータは、試験への参加人数が多かった白人に引っ張られた結果であり、レムデシビルが日本人に有効であることを示しているわけではない。それ故、厚労省のレムデシビルに関する指針には確固たる根拠がなく、日本人を対象とした独自の治験でレムデシビルの効果を直接検証する必要がある。

202.

新型コロナ感染後の抗体、4ヵ月は持続/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染から回復した人は、感染が診断されてから4ヵ月後までは血清中の抗ウイルス抗体が低下しないことが、アイスランド・deCODE GeneticsのDaniel F. Gudbjartsson氏らが行ったアイスランドの住民約3万人を対象とした調査の結果、明らかとなった。また、アイスランドでは、SARS-CoV-2感染による推定死亡リスクは0.3%で、SARS-CoV-2感染患者の44%は定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)による診断を受けていなかったことも示された。NEJM誌オンライン版2020年9月1日号掲載の報告。アイスランドの約3万例について抗体検査を実施 研究グループは、SARS-CoV-2感染に対する液性免疫応答の特性および持続性を明らかにする目的で、アイスランドにおける3万576例の血清中のSARS-CoV-2特異的抗体を、次の6種類の方法で検査した。 (1)ウイルス内部核蛋白(N)に対するpan-Ig(IgM、IgG、IgA)抗体(Roche)、(2)ウイルス表面スパイク蛋白S1サブユニット受容体結合領域(RBD)に対するpan-Ig抗体(Wantai)、(3)抗N IgM抗体および(4)抗N IgG抗体(Eagle BiosciencesのEDI)、(5)抗S1 IgG抗体および(6)抗S1 IgA抗体(Euroimmun)。 2つのpan-Ig抗体検査が両方とも陽性の場合に、血清陽性と定義。qPCR法で感染が確認された1,237例の診断後4ヵ月までに採取された2,102検体について検査した。 なお、SARS-CoV-2に曝露し隔離された人は4,222例、曝露不明は2万3,452例であった。アイスランドのSARS-CoV-2感染率は0.9%、致死率は0.3% qPCR陽性でSARS-CoV-2感染から回復したのは1,797例であった。そのうち血清陽性が確認されたのは、1,107/1,215例(91.1%)であった。 2種類のpan-Ig抗体検査による抗ウイルス抗体力価は、qPCRによる感染診断後2ヵ月の間に増加し、調査期間終了時まで維持されていた。血清陽性率は、隔離された患者では2.3%、曝露不明者では0.3%であった。 アイスランド人の0.9%がSARS-CoV-2に感染し、致死率は0.3%と推定された。アイスランドの全SARS-CoV-2感染者のうち、56%はqPCRで診断されていたが、14%はqPCR検査を受けていない(あるいは検査結果が陰性)隔離者で、30%は隔離もqPCR検査も行われていなかった。

203.

COVID-19治療薬レムデシビルの添付文書改訂

 8月31日、ギリアド・サイエンシズ社は同社が製造販売するレムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液/点滴静注用)の添付文書の一部記載を自主改訂した。改訂箇所は「重要な基本的注意」「相互作用」「副作用」の3つ。 改訂の詳細は以下のとおり。●重要な基本的注意 これまでの「Infusion Reaction」にかかる注意喚起を、「Infusion Reaction、アナフィラキシーを含む過敏症」へ変更し、後段にこれらの発現を回避できる可能性のある方法として、本剤の緩徐な投与を考慮することについて注意喚起を追加した。 ●相互作用 本剤とヒドロキシクロロキン硫酸塩(商品名:プラケニル、国内においてSARS-CoV-2 による感染症に対して未承認)及びクロロキン(国内未承認)との相互作用について「レムデシビルの抗ウイルス活性が低下する可能性がある」と注意喚起を追加した。●副作用 重大な副作用の事象名を、「Infusion Reaction」から「過敏症(Infusion Reaction、アナフィラキシーを含む)」へ変更し、これらの徴候及び症状について追加及び変更した(低血圧、嘔気、嘔吐、発汗、振戦等があらわれることがある。→ 低血圧、血圧上昇、頻脈、徐脈、低酸素症、発熱、呼吸困難、喘鳴、血管性浮腫、発疹、悪心、嘔吐、発汗、悪寒等があらわれることがある)。

204.

第21回 大統領選のダシにされたCOVID-19血漿療法、日本でも似たようなことが!?

まだ、治療薬もワクチンも決定打がない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。そんな最中、米国食品医薬品局(FDA)は8月23日、COVID-19から回復した患者の新型コロナウイルスの中和抗体を含む血漿を用いた回復期血漿療法に対し、緊急使用許可を発行した。FDAによる緊急使用許可は抗ウイルス薬レムデシビルに次いで2例目だ。この緊急時使用許可の直後の会見でドナルド・トランプ米大統領は「信じられないほどの成功率」「死亡率を35%低下させることが証明されている」「この恐ろしい病気と戦う非常に効果的な方法であるとわかった」などと絶賛。同席したFDAのステファン・ハーン長官もこの死亡率35%低下を強調。しかし、この死亡率低下の根拠データが不明確との批判を受け、ハーン長官自身が謝罪に追い込まれる事態となった。さてこの1件、そもそも発端となっているのはメイヨークリニック、ミシガン州立大学、ワシントン大学セントルイス医学大学院が主導する「National COVID-19 Convalescent Plasma Expanded Access Program」により行われた臨床研究である。この結果は今のところプレプリントで入手可能である。そもそもこの試験は単群のオープンラベルという設定である。ここで明らかになっている主な結果を箇条書きすると以下のようになる。診断7日後の死亡率は、診断3日以内の治療開始群で8.7%、診断4日目以降の治療開始群で11.9% (p<0.001)。診断30日後の死亡率は、診断3日以内の治療開始群で21.6%、診断4日目以降の治療開始群で26.7% (p<0.0001)。診断7日後の死亡率は、IgG高力価 (>18.45 S/Co)血漿投与群で8.9%、IgG中力価(4.62~18.45 S/Co)血漿投与群で11.6%、IgG低力価 (<4.62 S/Co) 血漿投与群で13.7%と、高力価投与群と低力価投与群で有意差を認めた(p=0.048)。低力価血漿投与群に対する高力価血漿投与群の相対リスク比は診断7日後の死亡率で0.65 、診断30日後の死亡率で0.77 だった。これらを総合すると、トランプ大統領が言うところの死亡率35%低下は、最後の診断7日後の高力価血漿投与群での相対リスク比を指していると思われる。もっとも最初に触れたようにこの臨床研究は単群のオープンラベルであって、対照群すらない中では確たることは言えない。その点ではトランプ大統領もハーン長官も明らかなミスリードをしている。そして各社の報道では、11月に予定されている米大統領選での再選を意識しているトランプ大統領による実績稼ぎの勇み足発言との観測が少なくない。とはいえ、COVID-19により全世界的に社会活動が停滞している現在、治療薬・ワクチンの登場に対する期待は高まる中で、今回の一件は軽率の一言で片づけて良いレベルとは言えないだろう。そして少なくともトランプ大統領周辺では大統領への適切なブレーキ機能が存在していないことを意味している。大統領選のダシにされた血漿療法、日本は他人ごと?もっとも日本国内もこの件を対岸の酔っぱらいの躓きとして指をさして笑えるほどの状況にはない。5月には安倍 晋三首相自身が、COVID-19に対する臨床研究が進行中だった新型インフルエンザ治療薬ファビピラビル(商品名:アビガン)について、その結果も明らかになっていない段階で、「既に3,000例近い投与が行われ、臨床試験が着実に進んでいます。こうしたデータも踏まえながら、有効性が確認されれば、医師の処方の下、使えるよう薬事承認をしていきたい。今月(5月)中の承認を目指したいと考えています」と前のめりな発言をし、後のこの試験でアビガンの有効性を示せない結果になったことは記憶に新しい。もっと最近の事例で言えば、大阪府の吉村 洋文知事が8月4日、新型コロナウイルス陽性の軽症患者41例に対し、ポビドンヨードを含むうがい薬で1日4回のうがいを実施したところ、唾液中のウイルスの陽性頻度が低下したとする大阪府立病院機構・大阪はびきの医療センターによる研究結果を発表。これがきっかけで各地のドラッグストアの店頭からポビドンヨードを含むうがい薬が一斉に底をついた。これについては過去にこの結果とは相反する臨床研究などがあったことに加え、医療現場にも混乱が及んだことから批判が殺到。吉村知事自身が「予防効果があるということは一切ないし、そういうことも言ってない」と釈明するに至っている。もっとも吉村知事はその後も「感染拡大の一つの武器になる、という強い思いを持っています」とやや負け惜しみ的な発言を続けている。ちなみに今年2月から始動し、7月3日付で廃止された政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の関係者は以前、私にこんなことを言っていたことがある。「吉村大阪府知事や鈴木北海道知事など新型コロナ対策で目立っている若手地方首長に対する総理の嫉妬は相当なもの。会議内で少しでもこうした地方首長を評価するかのような発言が出ると、途端に機嫌が悪くなる」今回の血漿療法やこれまでの経緯を鑑みると、新型コロナウイルス対策をめぐる政治家の「リーダーシップ」もどきの行動とは、所詮は自己顕示欲の一端、いわゆるスタンドプレーに過ぎないのかと改めて落胆する。新型コロナウイルス対策でがっかりな対応を見せた政治家は日米以外にもいる。もはや新型コロナウイルスが炙り出した「世界びっくり人間コンテスト」と割り切ってこの状況を楽しむ以外方法はないのかもしれない。

205.

コクラン共同計画のロゴマークからメタ解析を学ぶ【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第27回

第27回 コクラン共同計画のロゴマークからメタ解析を学ぶこの原稿を執筆している2020年7月末には、新型コロナウイルスへの感染者数が再び増加しています。パンデミック収束の気配はありません。数多くの、抗ウイルス薬やワクチンの開発の報道はありますが、決定的な方策はない状況です。どの薬剤にも、有効という臨床試験の結果もあれば、無効という結果もあるからです。同じ臨床上の課題について、それぞれの試験によって結果が異なることは、医学の世界では珍しいことではありません。このような場合に有効な方法がメタ解析です。メタ解析は、複数のランダム化比較試験の結果を統合し分析することです。メタ解析の「メタ」を辞書的にいえば、他の語の上に付いて「超」・「高次」の意味を表す接頭語で、『より高いレベルの~』という意味を示すそうです。メタ解析の結果は、EBMにおいて最も質の高い根拠とされます。ランダム化比較試験を中心として、臨床試験をくまなく収集・評価し、メタ解析を用いて分析することを、システマティック・レビューといいます。このシステマティック・レビューを組織的に遂行し、データを提供してくれるのが、コクラン共同計画です。英語のまま「コクラン・コラボレーション」(Cochrane Collaboration)と呼ばれることも多いです。本部は、英国のオックスフォード大学にあり、日本を含む世界中100ヵ国以上にコクランセンターが設立されています。システマティック・レビューを行い、その結果を、医療関係者や医療政策決定者、さらには消費者である患者に届け、合理的な意思決定に役立てることを目的としている組織です。フォレスト・プロット図をデザイン化した、コクラン共同計画のロゴマークをご存じでしょうか。早産になりそうな妊婦にステロイド薬を投与することによって、新生児の呼吸不全死亡への予防効果を検討した、メタ解析の結果が示されています。数千人の未熟児の救命につながったと推定される、システマティック・レビューの成功例なのです。この図を、Cochrane Collaborationの2つの「C」で囲んだデザインが、コクラン共同計画のロゴです。フォレスト・プロットの図から、メタ解析の結果を視覚的に理解することができます。横線がいくつか並んでいますが、これは、過去の複数のランダム化比較試験の結果を上から順に記載したものです。1本の縦線で左右に区切られており、この線の左側は介入群が優れていることを意味します。すべての研究を統合した結果が一番下の「ひし形」に示されます。ロゴの図をみると、7つの臨床研究の結果を統合し、ひし形が縦線の左にあることから、ステロイド薬使用という介入が有効であるという結果が読み取れます。縦線が樹木の幹で、各々の研究をプロットした横線が枝葉で、全体として1本の樹木のようにみえることからフォレスト・プロットと呼ばれるのです。個々の試験では、サンプルサイズが小さく結論付けられない場合に、複数の試験の結果を統合することにより、検出力を高めエビデンスとしての信頼度を高めるのがメタ解析です。症例数が多いほど、結論に説得力があるのです。数は力なのです。多ければ良いというものではない場合もあります。それは、猫の数です。面倒みることができないほど多くの猫の数になる、いわゆる多頭飼育崩壊です。メタ解析ではなく、「メチャ飼い過ぎ」でしょうか、苦しいダジャレです。仲良く猫たちが、じゃれ合う姿は可愛らしいものですが、何事にも程合いがあります。小生は、ただ1匹の猫さまに愛情を集中しています。ここでわが家の愛猫が、原稿を執筆しているパソコンのキーボードの上に横たわりました。自分が猫のことを考えているのが伝わったのか、邪魔をしようという魂胆のようです。ウーン可愛い過ぎる! 原稿執筆終了です。

206.

COVID-19へのヒドロキシクロロキン、AZM併用でも臨床状態改善せず/NEJM

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者の治療において、標準治療にヒドロキシクロロキン(HCQ)単剤またはHCQ+アジスロマイシン(AZM)を併用しても、標準治療単独と比較して15日後の臨床状態を改善しないことが、ブラジル・HCor Research InstituteのAlexandre B. Cavalcanti氏らが行った「Coalition COVID-19 Brazil I試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2020年7月23日号に掲載された。HCQは、in vitroで抗ウイルス作用が確認され、小規模な非無作為化試験において、AZMとの併用で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(SARS-CoV-2)のウイルス量を減少させると報告されている。これらの知見に基づき、HCQはCOVID-19患者の治療に用いられているが、安全性や有効性のエビデンスは十分ではないという。3群を比較する無作為化対照比較試験 本研究は、ブラジルの55の病院が参加した非盲検無作為化対照比較試験であり、2020年3月29日~5月17日の期間に患者登録が行われ、2020年6月2日にフォローアップを終了した(Coalition COVID-19 BrazilとEMS Pharmaの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、酸素補充療法を受けていないか、最大4L/分の酸素補充を受けており、発症から14日以内の入院中のCOVID-19疑い例または確定例であった。 被験者は、標準治療を受ける群(対照群)、標準治療+HCQ(400mg、1日2回)を受ける群(HCQ群)、標準治療+HCQ(400mg、1日2回)+AZM(500mg、1日1回)を受ける群(HCQ+AZM群)に、1対1対1の割合で無作為に割り付けられ、7日間の治療が行われた。 主要アウトカムは、修正intention-to-treat(mITT)集団(COVID-19確定例)における、7段階の順序尺度(1[入院しておらず、活動に制限がない]~7[死亡])で評価した15日後の臨床状態とした。すべての副次アウトカムにも差はない 667例が無作為割り付けの対象となり、504例がmITT解析に含まれた。221例がHCQ群、217例がHCQ+AZM群、229例が対照群に割り付けられた。全体の平均年齢は50歳、58%が男性で、42%が酸素補充療法を受けていた。 COVID-19確定例における、15日後の7段階順序尺度スコア中央値は3群とも1(IQR:1~2)であった。高スコア(臨床状態不良)の比例オッズ(OR)は、対照群と比較して、HCQ群(OR:1.21、95%信頼区間[CI]:0.69~2.11、p=1.00)およびHCQ+AZM群(0.99、0.57~1.73、p=1.00)のいずれにおいても有意な差は認められなかった。また、HCQ群とHCQ+AZM群の間にも、差はみられなかった(0.82、0.47~1.43、p=1.00)。 副次アウトカム(7日後の6段階[非入院~死亡]順序尺度、15日以内の呼吸補助なしの日数、15日以内の高流量鼻カニューレ/非侵襲的換気の使用日数、15日以内の機械的換気の使用日数、入院日数、院内死亡、15日以内の血栓塞栓症の発生割合、15日以内の急性腎障害の発生割合)のすべてで、有意差は確認されなかった。 補正後QT間隔の延長は、対照群に比べHCQ群およびHCQ+AZM群で頻度が高く、フォローアップ期間中に連続心電図検査を受けた患者は対照群で少なかった。また、肝酵素値(ALT、AST)の上昇は、対照群に比しHCQ+AZM群で高頻度であった。 著者は、「この研究の効果の点推定は、主要アウトカムに関して群間に大きな差はないことを示唆するが、試験薬の実質的な有益性および有害性のいずれかを確実に排除することはできない」としている。

207.

HIV曝露前予防、F/TAF vs. F/TDF/Lancet

 HIV曝露前予防(PrEP)を目的としたエムトリシタビン/テノホビル・アラフェナミド(F/TAF)1日1回投与は、エムトリシタビン/テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩(F/TDF)1日1回投与に対して有効性は非劣性であり、忍容性はいずれも良好であった。また、F/TAFは、骨および腎に対する安全性のバイオマーカーに関して、F/TDFに対する優越性が認められた。米国・Fenway HealthのKenneth H. Mayer氏らが、多施設共同無作為化二重盲検実薬対照第III相非劣性試験「DISCOVER試験」の結果を報告した。先行研究でテノホビル・アラフェナミド(TAF)はテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩(TDF)と比較して、HIV治療に用いた場合に高い抗ウイルス効果と腎および骨の安全性を改善することが示されていた。Lancet誌2020年7月25日号掲載の報告。曝露前予防投薬を行い、HIV発症率を比較 DISCOVER試験は、欧州と北米にある地域、公的、病院に関連した94のクリニックで実施された。対象は、高リスクの性的行動が記録(過去12週間について自己申告)されている、HIV感染リスクが高い成人男性同性愛者または男性から女性への性転換者(直近[登録後24週間以内]の記録あり)で、現在または既往PrEPでエムトリシタビンおよびテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を受けていた参加者は除外した。 被験者を、エムトリシタビン200mg/テノホビル・アラフェナミド25mg 1日1回投与(F/TAF)群、またはエムトリシタビン200mg/テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩300mg 1日1回投与(F/TDF)群に1対1の割合で無作為に割り付け追跡した。全被験者とも2錠が投与された。 試験のスポンサー、研究者、被験者および試験スタッフ(試験薬の投与、アウトカムの評価、データ収集を実施)は、割り付けについて知らされなかった。 主要評価項目はHIV感染(HIV発症率)とし、全例が48週間の追跡調査を完遂した時、かつ半数が96週間の追跡調査を完遂した時に評価された。解析対象は、割り付けられた治験薬を1回以上投与され、試験開始後に1回以上HIV検査を受けた、すべての無作為割り付け患者とした。 F/TAFのF/TDFに対する非劣性マージンは、HIV発症率比(IRR)の95.003%信頼区間(CI)上限値が1.62とした。また、安全性に関し、骨と腎の安全性を示す6つのバイオマーカーを副次評価項目として事前に定義した。F/TAFのF/TDFに対する非劣性を確認 2016年9月13日~2017年6月30日に、適格性を評価した5,857例のうち5,387例(92%)が無作為化された(F/TAF群2,694例、F/TDF群2,693例)。 主要有効性解析において、IRRは事前規定の非劣性マージンを満たし、F/TAFのF/TDFに対する非劣性が確認された(IRR:0.47、95%CI:0.19~1.15)。 追跡期間8,756人年においてHIV感染は計22例認められ、そのうちF/TAF群は7例(0.16/100人年、95%CI:0.06~0.33)、F/TDF群は15例(0.34/100人年、95%CI:0.19~0.56)であった。 両群とも忍容性は良好で、治験薬の中止に至った有害事象の報告は少数例であった(F/TAF群2,694例中36例[1%]vs.F/TDF群2,693例中49例[2%])。F/TAF群では、事前に定義した骨密度および腎機能検査の6つのバイオマーカーのすべてで、F/TDFに比べ有意に良好であることが示された。

208.

第18回 待望のプラセボ対照無作為化試験でCOVID-19にインターフェロンが有効

中国武漢での非無作為化試験1)や香港での無作為化試験2)等で示唆されていたインターフェロン1型(1型IFN)の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療効果が小規模ながら待望のプラセボ対照無作為化試験で裏付けられました3,4)。先週月曜日(20日)の速報によると、英国のバイオテクノロジー企業Synairgen社の1型IFN(インターフェロンβ)吸入薬SNG001を使用したCOVID-19入院患者が重体になる割合はプラセボに比べて79%低く、回復した患者の割合はプラセボを2倍以上上回りました。わずか100人ほどの試験は小規模過ぎて決定的な結果とはいい難いと用心する向きもありますが、SNG001は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)食い止めに大いに貢献する吸入薬となりうると試験を率いた英国・サウサンプトン大学の呼吸器科医Tom Wilkinson教授は言っています5)。Synairgen社を率いるCEO・Richard Marsden氏にとっても試験結果は朗報であり、COVID-19入院患者が酸素投与から人工呼吸へと悪化するのをSNG001が大幅に減らしたことを喜びました。投資家も試験結果を歓迎し、Synairgen社の株価は試験発表前には36ポンドだったのが一時は236ポンドへと実に6倍以上上昇しました。この記事を書いている時点でも200ポンド近くを保っています。Synairgen社は入院以外でのSNG001使用も視野に入れており、COVID-19発症から3日までの患者に自宅でSNG001を吸入してもらう初期治療の試験をサウサンプトン大学と協力してすでに英国で始めています6)。米国では1型IFNではなく3型IFN(Peginterferon Lambda-1a)を感染初期の患者に皮下注射する試験がスタンフォード大学によって実施されています7)。インターフェロンは感染の初期治療のみならず予防効果もあるかもしれません。中国・湖北省の病院での試験の結果、インターフェロンを毎日4回点鼻投与した医療従事者2,415人全員がその投与の間(28日間)COVID-19を発症せずに済みました8)。インターフェロンはウイルスの細胞侵入に対してすぐさま強烈な攻撃を仕掛ける引き金の役割を担います。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はどうやらインターフェロンを抑制して複製し、組織を傷める炎症をはびこらせます4,9)。ただしSARS-CoV-2がインターフェロン活性を促すという報告10)や1型IFN反応が重度COVID-19の炎症悪化の首謀因子らしいとする報告11)もあり、インターフェロンは場合によっては逆にCOVID-19に加担する恐れがあります。米国立衛生研究所(NIH)のガイドライン12)では、重度や瀕死のCOVID-19患者へのインターフェロンは臨床試験以外では使うべきでないとされています。2003年に流行したSARS-CoV-2近縁種SARS-CoVや中東で依然として蔓延するMERS-CoVに感染したマウスへのインターフェロン早期投与の効果も確認されており13,14)、どの抗ウイルス薬も感染初期か場合によっては感染前に投与すべきと考えるのが普通だとNIHの研究者Ludmila Prokunina-Olsson氏は言っています15)。参考1)Zhou Q, et al. Front Immunol. 2020 May 15;11:1061.2)Hung IF, et al. Lancet. 2020 May 30;395:1695-1704.3)Synairgen announces positive results from trial of SNG001 in hospitalised COVID-19 patients / GlobeNewswire 4)Can boosting interferons, the body’s frontline virus fighters, beat COVID-19? / Science 5)Inhaled drug prevents COVID-19 patients getting worse in Southampton trial 6)People with early COVID-19 symptoms sought for at home treatment trial 7)OVID-Lambda試験(Clinical Trials.gov)8)An experimental trial of recombinant human interferon alpha nasal drops to prevent coronavirus disease 2019 in medical staff in an epidemic area. medRxiv. May 07, 2020 9)Hadjadj J, et al. Science. 2020 Jul 13:eabc6027.10)Zhuo Zhou, et al. Version 2. Cell Host Microbe. 2020 Jun 10;27(6):883-890.11)Lee JS, et al. Sci Immunol. 2020 Jul 10;5:eabd1554.12)Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Treatment Guidelines,NIH 13)Channappanavar R, et al. Version 2. Cell Host Microbe. 2016 Feb 10;19:181-93. 14)Channappanavar R, et al. J Clin Invest. 2019 Jul 29;129:3625-3639.15)Seeking an Early COVID-19 Drug, Researchers Look to Interferons / TheScientist

209.

新型コロナで低カリウム血症、その原因は?

 中国・温州医科大学のDong Chen氏らは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者における治療転帰との関連性を見いだすため、低カリウム血症の有病率、原因、および臨床的影響を調査する目的で研究を行った。その結果、COVID-19患者において低カリウム血症の有病率が高いこと、さらにその原因として、新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)がアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合することにより、ACE2(レニン-アンジオテンシン系を抑制)が分解され、レニン-アンジオテンシン系が活性化して持続的に腎からカリウムが排泄されることが示唆された。JAMA Network open誌2020年6月1日号掲載の報告。COVID-19重症および重篤患者40例のうち34例が低カリウム血症 本研究は、2020年1月11日~2月15日までの期間に中国・Wenzhou Central Hospital とWenzhou No.6 People's Hospitalで実施。対象者は入院中Chinese Health Bureauの基準に従いCOVID-19の診断を受けた患者とした。患者を重症低カリウム血症(血漿カリウム濃度:<3mmol/L)、低カリウム血症(同:3~3.5mmol/L)、カリウム正常値(同:>3.5mmol/L)に分類し、臨床的特徴、治療、および臨床転帰について3群間で比較した。主要評価項目は低カリウム血症群の有病率とカリウム補充による治療への反応で、血漿と尿中カリウムの濃度を分析した。また、患者は抗ウイルス療法などを受け、研究者らはそれらの疫学的および臨床的特徴を収集した。 新型コロナウイルス感染症と低カリウム血症の関連を調査した主な結果は以下のとおり。・175例(女性:87例[50%]、平均年齢±SD:45±14歳)の内訳は、重症低カリウム血症:31例(18%)、低カリウム血症:64例(37%)、およびカリウム正常値:80例(46%)だった。・重症低カリウム血症群の患者は、低カリウム血症群の患者と比べ有意に高体温だった(平均体温±SD:37.6±0.9℃ vs. 37.2±0.7℃、差:0.4℃、95%信頼区間[CI]:0.2~0.6、p=0.02)。また、カリウム正常値群の患者体温は、平均体温±SD:37.1±0.8℃(差:0.5℃、95%CI:0.3~0.7、p= 0.005)だった。・重症低カリウム血症群の患者はクレアチンキナーゼ(CK)も高く、平均±SD:200±257U/L(中央値:113 U/L、四分位範囲[IQR]:61~242U/L)、 低カリウム血症群は同:97±85U/L、カリウム正常値群は同:82±57U/Lだった。・クレアチニンキナーゼMB分画タンパク量(CK-MB)は、重症低カリウム血症群で平均±SD:32±39U/L(中央値:14 U/L、IQR:11~36U/L)、低カリウム血症群で同:18±15U/L、カリウム正常値群で同:15±8U/Lだった。・乳酸脱水素酵素(LDH)は、重症低カリウム血症群で平均±SD:256±88U/L、低カリウム血症群では同:212±59U/L、およびカリウム正常値群は同:199±61U/Lだった。・C反応性タンパク(CRP)は、重症低カリウム血症群で平均±SD:29±23mg/L、低カリウム血症群では平均±SD:18±20mg/L(中央値:12mg/L、IQR:4~25mg/L)およびカリウム正常値群では平均±SD:15±18mg/L(中央値:6U/L、IQR:3~17U/L)だった。・COVID-19重症および重篤患者40例のうち34例(85%)は低カリウム血症だった。重症低カリウム血症の患者には、入院中に1日当たり40mEqのカリウムが投与され、平均総投与量±SDは塩化カリウムで453±53mEqだった。・回復において、カリウム補充への反応は良好だった。

210.

COVID-19重症患者、レムデシビル投与5日vs.10日/NEJM

 人工呼吸器を必要としていない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症患者において、レムデシビル投与期間は5日間と10日間とで有意差は認められなかった。米国・ワシントン大学のJason D. Goldman氏らが、COVID-19重症患者を対象とした国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験の結果を報告した。レムデシビルは、in vitroで強力な抗ウイルス活性を示し、COVID-19の動物モデルで有効性が示されたRNAポリメラーゼ阻害薬であるが、レムデシビルを用いた治療の効果のある最短投与期間を明らかにすることが、喫緊の医療ニーズであった。NEJM誌オンライン版2020年5月27日号掲載の報告。レムデシビルの投与期間5日と10日で有効性を比較 研究グループは、米国、イタリア、スペイン、ドイツ、香港、シンガポール、韓国および台湾の55施設にて本臨床試験を実施した。2020年3月6日~26日の期間に、PCR検査でSARS-CoV-2感染が確認され、酸素非投与/投与下で酸素飽和度94%以下、画像で肺炎所見を認めた入院患者を登録。レムデシビル5日間静脈内投与(5日)群または10日間静脈内投与(10日)群に1対1の割合で無作為に割り付け、1日目にレムデシビル200mg、その後は1日1回100mgを投与した。 主要評価項目は、投与開始14日時点における臨床状態(7段階評価 1:死亡、2:侵襲的機械換気またはECMO、3:非侵襲的機械換気または高流量酸素療法、4:低流量酸素療法、5:酸素投与は不要だが治療を継続、6:入院しているが酸素投与や治療は不要、7:退院)、副次評価項目は、レムデシビル最終投与後最長30日までの有害事象であった。レムデシビル投与期間の違いによる有効性に有意差なし 計402例が無作為化され、このうち397例でレムデシビル投与による治療が開始された(5日群200例、10日群197例)。治療期間中央値は、5日群が5日(四分位範囲:5~5)、10日群が9日(四分位範囲:5~10)であった。ベースラインの患者背景は、5日群に比べ10日群で段階評価が2(2% vs.5%)および3(24% vs.30%)の患者が多く、結果的に臨床状態が有意に悪かった(p=0.02)。 14日時点における臨床状態がベースラインから2段階以上改善していた患者の割合は、5日群64%、10日群54%であった。ベースラインの臨床状態を補正後、14日時点における各臨床状態の分布は5日群と10日群で類似していた(p=0.14、層別ウィルコクソン順位和検定)。 レムデシビル投与期間の違いによる有害事象の発現率は、全Gradeが5日群で70%(141/200例)、10日群で74%(145/197例)、Grade3以上がそれぞれ30%および43%で、重篤な有害事象はそれぞれ21%および35%、投与中止に至った有害事象は4%および10%に認められた。 主な有害事象は、悪心(10% vs.9%)、急性呼吸不全(6% vs.11%)、ALT増加(6% vs.8%)、便秘(6% vs.7%)などであった。

211.

COVID-19へのレムデシビル、国際共同治験の中間報告:国立国際医療研究センター

 国立国際医療研究センター(NCGM)は5月29日(金)、メディア勉強会を行い、これまでのCOVID-19に関する取り組みや現在行う治療、研究開発について発表した。このうち、NCGMセンター病院 国際感染症センター長の大曲 貴夫氏がレムデシビル(商品名:ベクルリー)のアダプティブCOVID-19治療治験(ACTT、国際多施設共同無作為化二重盲検比較試験)について中間解析結果を発表した。 対象患者の主な選択基準は以下のとおり。・PCRまたはその他の検査法でSARS-CoV-2 感染が確定された入院患者・成人男性または妊娠していない成人女性・以下のいずれかが認められる患者(胸部X線撮影/CTスキャンなどによるX線撮影浸潤/臨床評価(検査時のラ音・断続性ラ音の所見)および室内空気でSpO2が94%以下/酸素補給が必要/機械換気が必要) 1,063例が登録され、無作為化後のデータが入手可能な1,059例が解析対象となった。対象患者は、レムデシビル群(538例)とプラセボ群(521例)に無作為に割り付けられた。アジア人は12.6%(134例)と少なく、白人が53.2%(565例)と最多だった。主要評価項目は、「酸素補給・治療の継続とも不要」な状態以上に回復するまでの時間だった。 主な結果は以下のとおり。・回復時間中央値はレムデシビル群11日(95%信頼区間[CI]:9~12)、プラセボ群15日(95%CI:13~19)と有意な差が見られた。・一方で、14日までの死亡率はレムデシビル群7.1%、プラセボ群で11.9%と有意差は見られなかった(死亡のハザード比0.70、95%CI:0.47~1.04)。・有害事象の発現率は、レムデシビル群114例(21.1%)、プラセボ群141例(27.0%)であった。・Lancetに掲載された中国における試験結果1)と同様の傾向が認められた。 ACTTは、レムデシビルによる回復時間短縮が確認されたことから盲検化を早期解除した。現在、データのチェックを行っており、最終報告、論文化の目処は未定としている。 さらに、JAK1/JAK2阻害薬バリシチニブをレムデシビルに併用する効果を見るACTT-2(多施設共同無作為化二重盲検比較試験)の登録を開始したことを発表。これは抗ウイルス薬のCOVID-19治療効果の可能性を認めつつも依然死亡率が高いことを受け、サイトカインおよびケモカイン作用の炎症性免疫応答を標的としたバリシチニブの併用によって、抗ウイルス薬だけでは得られない相乗効果を期待したものだ。必要患者数は1,032例、現在国内では患者数が減少傾向にあることから、試験終了までにはある程度時間がかかる見込みだという。(ケアネット 杉崎 真名)※本文中に誤りがあったため、一部訂正いたしました(2020年6月4日11時)。

212.

038)休日診療の帯状疱疹にはご注意を【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第38回 休日診療の帯状疱疹にはご注意をしがない皮膚科勤務医デルぽんです☆先日、ゴールデンウイーク明けのこと。帯状疱疹の患者さんが、私の皮膚科外来に来ました。連休中どこも休診だったため、休日診療を受診し、そこで処方箋をもらったとのこと。お薬手帳を確認すると、ファムシクロビル1回250mgを1日3回(単純疱疹の用量)で処方されていました。しかし、帯状疱疹の治療では、ファムシクロビル1回500mgを1日3回内服する必要があります。その旨を説明したところ、薬局でもそのように指導され、帯状疱疹の用量で正しく内服していたことが判明。後日、薬局から疑義照会がいき、修正されたといったところでしょうか。「よしよし、薬局グッジョブ!」と思ったのもつかの間、患者さんからは「痛み止めも倍の量を飲んでいました」との追加申告が…。痛みがひどかったため、自己判断で倍量服用していたようです。抗ウイルス薬が倍なのだから、痛み止めもいいだろう、という考えだったのでしょうか。「たくさん飲めば効くと思って…」と話す患者さん。「薬は量が増えると副作用のリスクも増えるので、指示された量で服用しましょうね」とお話ししました。普段、処方した側は“患者さんが処方のとおりに内服してくれている”と思い込みがちですが、患者さんによっては、自己判断などで正しく服用できていない例もあります。処方後のフォローの重要性をあらためて実感した出来事でした。何はともあれ、このたびは何事もなくてよかったです。それでは、また~!

213.

ヒドロキシクロロキンで新型コロナ陰性化せず、有害事象は3割/BMJ

 主に軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者の治療において、標準治療にヒドロキシクロロキン(HCQ)を併用しても、標準治療単独に比べ重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の陰性化の割合に差はなく、ウイルス除去効果は改善されないことが、中国・上海交通大学医学院のWei Tang氏らの検討で示された。また、HCQ併用で有害事象の発生率も増加した。研究の成果は、BMJ誌2020年5月14日号に掲載された。HCQは、COVID-19の治療薬としてin vitro研究や臨床試験で有望なデータが得られているが、その効果は十分に明確化されていないにもかかわらず、中国のガイドラインでは適応外使用が推奨されているという。また、HCQは、世界的に注目を集めたこともあり、その負の側面が目立たなくなっているが、マラリアやリウマチ性疾患の治療では、網膜症や消化器・心臓への副作用が報告されている。 本研究は、中国の16ヵ所の指定COVID-19治療センターが参加した非盲検無作為化対照比較試験であり、2020年2月11日~29日の期間に実施された(中国Emergent Projects of National Science and Technologyなどの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、上気道または下気道の検体を用いたリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)で確定されたCOVID-19入院患者であった。登録時の胸部CTによる肺炎所見は必須ではなかった。 被験者は、HCQ+標準治療または標準治療単独を受ける群に、無作為に割り付けられた。HCQは、負荷投与量1,200mg/日を3日間投与後、維持投与量800mg/日を連日投与した。治療期間は、軽症~中等症患者は2週間で、重症患者は3週間とされた。 主要アウトカムは、28日以内のSARS-CoV-2の陰性化とし、intention to treat解析を行った。陰性化の定義は、24時間以上間隔を置いた2回の検査でSARS-CoV-2が連続して陰性で、試験終了までに陽性の報告がない場合とした。150例を登録、99%が軽症~中等症 150例が登録され、HCQ併用群に75例、標準治療単独群にも75例が割り付けられた。全体の平均年齢は46.1(SD 14.7)歳で、82例(55%)が男性であった。148例(99%)は軽症~中等症で、重症例が2例含まれた。 症状発現から無作為割り付けまでの平均期間は16.6(SD 10.5、範囲:3~41)日であった。無作為割り付け前に90例(60%)が併用薬物療法を受けており、52例(35%)には抗ウイルス薬が投与され、32例(21%)は抗HIV薬ロピナビル・リトナビルの投与を受けていた。割り付け後の抗ウイルス薬や抗菌薬の投与状況は、両群でほぼ同様であった。 2020年3月14日(データカットオフ日)の時点で、追跡期間中央値は、HCQ併用群が20日(IQR:3~31)、標準治療単独群は21日(2~33)であった。HCQ併用群のうち6例がHCQの投与を受けなかった。HCQ併用群の中等症の1例が、重症COVID-19に進行した。死亡例はなかった。28日陰性化割合:85.4% vs.81.3% 28日以内に、109例(73%、HCQ併用群53例、標準治療単独群56例)でSARS-CoV-2が陰性化した。残りの41例(27%、22例、19例)は、ウイルスの陰性化が達成されなったため打ち切りとした。カットオフ日の時点で、最長SARS-CoV-2陽性期間は23日だった。 28日陰性化割合は、HCQ併用群が85.4%(95%信頼区間[CI]:73.8~93.8)、標準治療単独群は81.3%(71.2~89.6)とほぼ同様であり、群間差は4.1%(95%CI:-10.3~18.5)であった。陰性化までの期間中央値も、HCQ併用群が8日(5~10)、標準治療単独群は7日(5~8)と、ほぼ同様だった(ハザード比[HR]:0.85、95%CI:0.58~1.23、p=0.34[log rank検定])。 4、7、10、14、21日時の陰性化割合にも両群間に差はなかった。また、28日時の症状軽減例の割合(HCQ併用群59.9% vs.標準治療単独群66.6%、群間差:-6.6%、95%CI:-41.3~28.0)および臨床症状軽減までの期間中央値(19日vs.21日、HR:1.01、95%CI:0.59~1.74、p=0.97[log rank検定])も、両群間に差を認めなかった。有害事象は30%、重篤2例、下痢10% 安全性の評価は、HCQ投与群(70例)と非投与群(80例)で行った(HCQ併用群のうちHCQの投与を受けなかった6例を非投与群、標準治療単独群のうちHCQの投与を受けた1例を投与群に含めた)。HCQ投与群のHCQ投与期間中央値は14日(範囲:1~22)だった。 有害事象は、HCQ投与群が21例(30%)、非投与群は7例(9%)で認められた。HCQ投与群は重篤な有害事象が2例(病勢進行、上気道感染症)で発現したが、非投与群では発現しなかった。 非重篤有害事象のうち、HCQ投与群で最も頻度が高かったのは下痢(7例、10%)であり、非投与群では下痢の報告はなかった。HCQ投与群で、霧視のため1例が投与を中止し、口渇を訴えた1例では減量が行われたが、いずれも一過性の有害事象であり、症状は1~2日で消散した。 著者は、「今回の研究は、COVID-19の治療におけるヒドロキシクロロキンのベネフィット・リスク評価に関する初期のエビデンスをもたらし、今後の研究を支援するリソースとして役立つ可能性がある」としている。

214.

第8回 新型コロナ予防・治療・メンタルヘルスへの活用が期待される漢方薬の可能性

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する既存薬の活用が期待される一方、新型コロナの感染予防・軽傷者の重症化予防やメンタルヘルスに対する漢方薬の活用が注目されている。日本東洋医学会では、漢方薬などによる対症療法とその後の重症化の有無との関連を調べるため、医療機関に症例の報告を呼び掛けている1)。また、薬局・薬店からなる日本中医薬研究会は新型コロナ治療の予防・治療に対し、中国漢方である中医薬(中国伝統医薬)の有効性を探るため、日中の医師や薬剤師らによるウェブ交流会を4月に行った。振り返ると、2009年の新型インフルエンザ流行時には、麻黄湯や銀翹散、小柴胡湯などの漢方薬に抗ウイルス作用が確認されている。タミフルやリレンザといった抗インフルエンザ治療薬に麻黄湯などの漢方薬を合わせて使うと一定の効果が見られたという。COVID-19に関連し、中国は3月、顕著な治療効果が見られたという「三薬三方(三つの処方と薬)」を選出し、清肺排毒湯、化湿敗毒方、宣肺敗毒方という3つの中医薬を推奨している。このうち、COVID-19用に創薬され、軽症から重症までカバーするという清肺排毒湯には麻黄湯と小柴胡湯が構成生薬の一部として使われている。新型コロナの感染確認者の91.5%が中医薬を使い、臨床治療の効果観察では、中医薬の総有効率は90%超に上っているという。日本国内においても、清肺排毒湯を日本で処方可能なエキス剤で作り、軽症者の重症者化予防に処方している医療機関がある。無症状者を含めた予防には、免疫力を高める効果が報告されている補中益気湯や十全大補湯などがある。メンタルヘルスに関しては、新型コロナによる自粛生活で、高齢者を中心に運動不足による持病悪化や、ストレスや経済的不安によるうつ病症状を訴える人が増えている。また、経済の悪化に伴う失業者の増加により、累計自殺者数が27万人増との試算もある。「コロナうつ」への対応も重要な課題だが、精神科や心療内科の受診をためらう人は少なからずいる。それに比べると、漢方薬はハードルがいくぶん低くなるようだ。ストレス緩和効果が得られる漢方薬には、加味逍遙散や柴胡加竜骨牡蛎湯、酸棗仁湯などがある。ただ、漢方薬は西洋薬の処方のようにはいかないのはご存じの通り。漢方薬は病名ではなく、患者個々人の体質と症状に対する処方が原則だ。漢方薬においても、現段階でCOVID-19への特効薬がない以上、予防段階では体力を付けて免疫力を上げる、感染したら発熱しないようにする、発熱したら早く治るようにするというように、段階によって使う漢方薬が異なり、患者ごとに症状を見ながら処方を判断しなければならない。ただ、新型コロナウイルスは変異の速いRNAウイルスの一種で、現在効いている新薬がいつ効かなくなるかわからない懸念がある。漢方薬を扱っている医療従事者は「免疫力の強化を本来重視する漢方薬は、変異に対してもある程度有効なのでは」と期待している。1)COVID-19一般治療に関する観察研究ご協力のお願い(日本東洋医学会)

215.

COVID-19へのヒドロキシクロロキン、気管挿管・死亡リスク抑制せず/NEJM

 米国では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として、ヒドロキシクロロキンが広く投与されているが、その使用を支持する頑健なエビデンスはなかったという。同国コロンビア大学のJoshua Geleris氏らは、ニューヨーク市の大規模医療センターでCOVID-19入院患者の調査を行い、本薬はこれらの患者において気管挿管や死亡のリスクを抑制しないと報告した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年5月7日号に掲載された。ヒドロキシクロロキンは、マラリアやリウマチ性疾患の治療に広く使用されており、抗炎症作用と抗ウイルス作用を持つことから、COVID-19に有効な可能性が示唆されている。米国では、2020年3月30日、食品医薬品局(FDA)が緊急時使用許可(Emergency Use Authorization)を発出し、臨床試験に登録されていないCOVID-19患者への使用が認可された。ガイドラインでは、肺炎のエビデンスがある入院患者に本薬の投与が推奨されており、世界中の数千例の急性期COVID-19患者に使用されているという。米国の単施設のコホート研究 研究グループは、COVID-19患者におけるヒドロキシクロロキンの使用は、気管挿管および死亡のリスクを抑制するとの仮説を立て、これを検証する目的でコホート研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]の助成による)。 対象は、2020年3月7日~4月8日の期間に、ニューヨーク市のマンハッタン区北部に位置する急性期病院であるニューヨーク・プレスビテリアン病院(NYP)-コロンビア大学アービング医療センター(CUIMC)に入院し、鼻咽頭または口咽頭拭い液を検体として用いた検査でSARS-CoV-2陽性の成人患者であった。 救急診療部受診から24時間以内に、気管挿管、死亡、他の施設へ転送となった患者は除外された。フォローアップは4月25日まで継続した。ヒドロキシクロロキンは、1日目に負荷投与量600mgを2回投与後、400mgを1日1回、4日間投与するレジメンが推奨された。 主要エンドポイントは気管挿管および死亡の複合としtime-to-event解析を行った。傾向スコアによる逆確率重み付けを用いた多変量Coxモデルを使用して、ヒドロキシクロロキンの投与を受けた患者と非投与患者を比較した。有益性、有害性とも排除されない、推奨はすでに削除 1,376例が解析の対象となった。フォローアップ期間中央値22.5日の時点で、346例(25.1%)に主要エンドポイントのイベントが発生した(挿管されずに死亡166例、挿管180例)。データのカットオフ時(4月25日)には、232例が死亡(66例は挿管後)し、1,025例が生存退院しており、119例は入院中(挿管なしは24例のみ)だった。 1,376例中811例(58.9%)にヒドロキシクロロキンが投与され(投与期間中央値5日)、565例(45.7%)には投与されなかった。投与群の45.8%は救急診療部受診後24時間以内に、85.9%は48時間以内に投与が開始された。 傾向スコアでマッチさせていない患者では、ヒドロキシクロロキン投与量は、年齢層や性別、人種/民族、BMI、保険の有無、喫煙状況、他の薬剤の使用状況の違いで異なっていた。また、ベースラインの重症度は、投与群が非投与群に比べて高く、動脈血酸素分圧(PaO2)/吸入気酸素濃度(FIO2)比中央値は投与群が223、非投与群は360であった。 傾向スコアでマッチさせた患者は、投与群が811例、非投与群は274例だった。 未補正の粗解析では、ヒドロキシクロロキン投与群は非投与群に比べ、主要エンドポイントのイベント発生率が高かった(32.3%[262/811例]vs.14.9%[84/565例]、ハザード比[HR]:2.37、95%信頼区間[CI]:1.84~3.02)。 一方、傾向スコアによる逆確率重み付けを用いた多変量解析では、ヒドロキシクロロキンとイベント発生率に有意な関連は認められなかった(HR:1.04、95%CI:0.82~1.32)。 著者は、「この観察研究の結果は、デザインと95%CI値を考慮すると、ヒドロキシクロロキン治療の有益性と有害性のいずれをも排除しないが、現時点では、有効性を検証する無作為化臨床試験以外では、その使用を支持しない」としている。なお、NYP-CUIMCでは、すでにガイダンスを改訂し、COVID-19患者におけるヒドロキシクロロキン治療の推奨は削除されたという。

216.

COVID-19軽~中等症、早期の3剤併用療法が有効/Lancet

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者に対し、早期に開始したインターフェロン(INF)-β-1b+ロピナビル・リトナビル配合剤+リバビリンの3剤併用療法は、ロピナビル・リトナビル配合剤単独療法に比べ、SARS-CoV-2ウイルス陰性化までの期間および入院期間を有意に短縮し、安全性にも問題がないことが確認された。香港・Queen Mary HospitalのIvan Fan-Ngai Hung氏らが、127例の入院患者を対象に行った第II相の多施設共同前向き非盲検無作為化試験の結果を報告した。COVID-19パンデミックを制圧するため、効果的な抗ウイルス薬治療を見いだすことに1つの重点が置かれている。今回の結果について著者は、「さらなる臨床研究で、INF-β-1bをバックボーンとする2剤併用抗ウイルス薬療法の検討も行う必要がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2020年5月8日号掲載の報告。鼻咽頭スワブによるRT-PCR検査で陰性化までの期間を比較 研究グループは2020年2月10日~3月20日に、香港の6病院を通じて、ウイルス検査でCOVID-19が確認され入院した18歳以上の患者127例を対象に試験を行った。INF-β-1b+ロピナビル・リトナビル配合剤+リバビリンの3剤併用抗ウイルス薬療法と、ロピナビル・リトナビル配合剤単独療法を比較し、その有効性と安全性を評価した。被験者の症状の程度は、軽症~中等症だった。 被験者を無作為に2対1の割合で2群に分け、一方にはロピナビル400mg・リトナビル100mg、リバビリン400mgをいずれも12時間ごと14日間投与し、併せてINF-β-1b 800万IUを隔日3回投与した(3剤併用群、86例)。もう一方の群には、ロピナビル400mg・リトナビル100mgを12時間ごとに14日間投与した(対照群、41例)。 主要エンドポイントは、鼻咽頭スワブによる逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査の結果でSARS-CoV-2ウイルスが陰性化するまでの期間とし、ITT解析で評価した。陰性化に関する3剤併用群のハザード比は4.37 発症から治療開始までの期間中央値は、5日(IQR:3~7)だった。 鼻咽頭スワブ検査でSARS-CoV-2ウイルスが陰性化するまでの期間中央値は、対照群12日(IQR:8~15)に対し、3剤併用群は7日(同:5~11)と有意に短かった(ハザード比:4.37、95%信頼区間:1.86~10.24、p=0.0010)。 有害事象は吐き気や下痢などが認められたが、両群間で有意差はなかった。対照群の1例が、肝炎のため治療を中止した。試験期間中の死亡は報告されなかった。

217.

COVID-19、抗HIV薬と脱毛症薬併用に可能性/東京理科大など

 抗HIV治療薬ネルフィナビルと白血球減少症や脱毛症、まむし咬傷などの治療薬セファランチンという2つの既存薬の併用が、新型コロナウイルス増殖を効果的に排除する可能性が示唆された。東京理科大学/国立感染症研究所の渡士 幸一氏らの研究グループによるもので、4月22日に発表された。 研究者らは、国立感染症研究所で分離された新型コロナウイルスと、これを実験室で感染増殖できる培養系技術を利用し、すでに何らかの疾患に対して臨床で使用認可されている約300のFDA/EMA/PMDA承認薬のウイルス増殖への効果を検証。調べた承認薬の中で5剤がウイルス増殖による細胞傷害を抑えることを見出し、この中からとくにネルフィナビル、セファランチンに着目した。 両剤はそれぞれ感染細胞から放出されるウイルスRNAを1日で最大0.01%以下にまで強く減少させ、現在治療薬候補となっているロピナビルやクロロキン、ファビピラビルよりも強い活性を持っていた。またネルフィナビルとセファランチンの併用により、1日で感染細胞からのウイルスを検出限界以下に排除することができた。作用機序としては、薬剤ドッキングシミュレーションによって、ネルフィナビルは新型コロナウイルス複製に必須のメインプロテアーゼ、セファランチンはウイルスと細胞の吸着に必要なウイルススパイクタンパク質にそれぞれ結合する可能性が示されている。 併用によって強い抗ウイルス活性が示されたことを受け、実際に臨床で使用される投与量でどの程度ウイルス排除に有効かを数理解析で予測。その結果、ネルフィナビル(経口投与)単独治療で累積ウイルス量が約9%に減少し、ウイルス排除までの期間が約4日短縮された。またネルフィナビル(経口投与)とセファランチン(点滴投与)の併用治療ではさらに効果が増強し、累積ウイルス量が約7%に、ウイルス排除までの短縮期間が約5.5日となった。 本研究結果をまとめた論文は、現在preprintとしてBioRxivサーバへ登録、公開されている。

218.

特例承認された新型コロナ治療薬「ベクルリー点滴静注用100mg」【下平博士のDIノート】第49回

特例承認された新型コロナ治療薬「ベクルリー点滴静注用100mg」今回は、抗ウイルス薬「レムデシビル注射用凍結乾燥製剤(商品名:ベクルリー点滴静注用100mg、製造販売元:ギリアド・サイエンシズ)」を紹介します。本剤は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として、時限的かつ特例的に承認されました。<効能・効果>本剤は、SARS-CoV-2による感染症の適応で、2020年5月7日に特例承認されました。なお、臨床試験などにおける主な投与経験を踏まえ、SARS-CoV-2による肺炎を有する患者を対象に投与を行うこと。<用法・用量>本剤は、生理食塩液に添加し、30~120分かけて点滴静注します。通常、レムデシビルとして、成人および体重40kg以上の小児には投与初日に200mg、2日目以降は100mgを、体重3.5kg以上40kg未満の小児には投与初日に5mg/kg、投与2日目以降は2.5mg/kgを1日1回点滴静注します。なお、総投与期間の目安は5日までとし、症状の改善が認められない場合は10日目まで投与します。<安全性>SARS-CoV-2による感染症患者1,313例を対象とした国際共同第III相試験において、因果関係ありと判断された有害事象は175例(13.3%)報告されました。主な副作用としては、悪心34例(26%)、ALT増加33例(2.5%)、AST増加32例(2.4%)、トランスアミナーゼ上昇15例(1.1%)など。重大な副作用として、肝機能障害、過敏症(Infusion Reaction、アナフィラキシーを含む)が現れることがあります。<重要な基本的注意>1.肝機能障害が現れることがあるので、投与前および投与中は定期的に腎機能検査、肝機能検査を行い、患者の状態を十分に観察する必要があります。2.低血圧や嘔吐、発汗、振戦などのインフュージョン・リアクション(急性輸注反応)が現れることがあるので、異常が認められた場合はただちに投与を中止し、適切な処置が必要です。これらの発現を回避できる可能性があるため、本剤の緩徐な投与を考慮してください。3.添加剤スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンナトリウムにより腎機能障害が現れる恐れがあるので、投与前および投与中は定期的に腎機能検査を行い、患者の状態を十分に観察する必要があります。<Shimo's eyes>今回、COVID-19に対する初めての治療薬が承認されました。SARS-CoV-2は「一本鎖プラス鎖RNAウイルス」で、同類としてはエンテロウイルス、C型肝炎ウイルス、ノロウイルスなどが知られています。本剤は、RNA依存性RNAポリメラーゼを選択的に阻害することでウイルスの増殖を抑制する作用を持ち、新型インフルエンザ治療薬ファビピラビル(商品名:アビガン)と同じ機序となります。本剤は、もともとエボラ出血熱などの新興感染症の治療薬として開発されていた抗ウイルス薬で、米国では5月1日から緊急的に重症患者への使用が認められました。これを受け、わが国でも特例承認制度が適用され、申請からわずか3日という異例の速さで承認されました。なお、承認薬となったのはわが国が世界初です。本剤は、重症患者の症状改善や回復までの期間短縮が期待されています。米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が主導するプラセボ対照第III相試験(ACTT試験:COVID-19による中等度から重度の症状を呈する患者[きわめて重症の患者を含む]を対象としたレムデシビルのランダム化比較試験)において、レムデシビル群の回復までの日数中央値は11日で、プラセボ群の15日より4日短いことが示されました。一方で、死亡率については、統計学的に有意な差は得られませんでした(8.0% vs.11.6%、p=0.059)。重大な副作用として、肝機能障害、インフュージョン・リアクションなどが報告されています。なお、SARS-CoV-2による感染症患者を対象とした臨床試験(NIAID ACTT-1)では、プロトロンビン時間延長または国際標準化比(INR)増加の発現割合はプラセボ群と比較して本剤投与群で高かったことが報告されています。両投与群間で出血イベントの発現に差は認められていません。なお、本剤は2021年8月から保険適用となりました。※2021年8月、一部内容の修正を行いました。参考1)PMDA 添付文書 ベクルリー点滴静注用100mg

219.

COVID-19にレムデシビルが有意な効果示せず、早期なら有効か/Lancet

 中国で行われた無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者へのレムデシビル投与は、臨床的改善までの期間を統計学的に有意に短縮しなかったことが報告された。しかし、発症後10日以内の患者に限定した解析で、有意差は示されなかったものの、臨床的改善までの期間はレムデシビル群で短縮する傾向が認められた。中国・中日友好医院のYeming Wang氏らによる試験の結果で、著者は「早期投与については大規模な研究で確認する必要がある」とまとめている。Lancet誌オンライン版2020年4月29日号掲載の報告。症状発症12日以内の肺炎確認例にレムデシビルを10日間静脈投与 研究グループは、中国・湖北省の10病院を通じて、検査でSARS-CoV-2ウイルスへの感染が確認された入院患者を対象に試験を行った。被験者は18歳以上で、症状発症から試験登録までの経過日数が12日以内であり、室内空気中の酸素飽和度(SpO2)が94%以下または動脈血酸素分圧(PaO2)が300mmHg以下で、放射線学的画像診断により肺炎が確認された患者だった。 被験者は無作為に2対1の割合で2群に分けられ、一方の群にはレムデシビル(1日目200mg、2~10日目は100mgを1日1回静脈投与)を、もう一方の群にはプラセボを10日間投与した。試験期間中も、ロピナビル・リトナビル配合剤、インターフェロン、副腎皮質ステロイドの併用は可能とした。 主要エンドポイントは、無作為化後28日目までの、臨床的改善までの時間とした。臨床的改善の定義は、生存退院を1、死亡を6とした6段階スケールで評価し、2段階以上の改善か生存退院の、いずれか早期に達成した場合とした。 主要解析(有効性)についてはITT解析で、また安全性解析は割り付け治療を開始した全患者を対象とした。発症10日以内の患者、症状改善までレムデシビル群は18日、プラセボ群は23日 2020年2月6日~3月12日に237例が登録され、レムデシビル群に158例、プラセボ群に79例が無作為に割り付けられた。無作為化後に試験参加を取り下げたプラセボ群の患者1例は、ITT集団に含まれなかった。 臨床的改善までの期間中央値は、プラセボ群23.0日に対しレムデシビル群は21.0日で、レムデシビルと臨床的改善までの期間に関連性は認められなかった(ハザード比[HR]:1.23、95%信頼区間[CI]:0.87~1.75)。 一方で統計学的に有意ではなかったが、レムデシビル投与患者は、症状の持続期間が10日以下の患者に限定すると、プラセボ投与患者と比べて臨床的改善までの期間中央値が短く、プラセボ群23.0日に対し、レムデシビル群は18.0日だった(HR:1.52、95%CI:0.95~2.43)。 有害事象の報告は、レムデシビル群155例中102例(66%)、プラセボ群78例中50例(64%)だった。 研究グループは今回の試験について、「中国ではCOVID-19の流行が収束したため、当初目標としていた被験者数を達成できず、統計的検出力が不十分だった」としている。また、「今後、レムデシビルの有効性を検証するための試験としては、COVID-19重症患者への早期投与やより高用量の投与、また他の抗ウイルス薬やSARS-CoV-2中和抗体との併用投与なども必要だ」と述べている。

220.

第6回 新型コロナ感染者、全国で一元管理へ 厚労省の新システム

<先週の動き>1.新型コロナ感染者、全国で一元管理へ 厚労省の新システム2.COVID-19治療薬「レムデシビル」が7日に特例承認3.新型コロナ相談・受診の目安改訂 「37.5度」が削除4.「アビガン」に注がれる期待と安全性 民間機関が意見書を提出5.やまない医療従事者への誹謗中傷・風評被害に苦悩6.医療従事者の新型コロナ感染、世界で9万人超も1.新型コロナ感染者、全国で一元管理へ 厚労省の新システム先月、厚生労働省より「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム」についての事務連絡が出されており、今週にも一部保健所などで先行利用開始、5月中旬以降には全国で利用されるようになる見通し。新型コロナ感染者の情報を全国で一元管理し、国・都道府県だけでなく、医療機関や医師会なども即時に情報共有できる仕組み。新型コロナの動向を迅速に把握・対応できる体制を築く。稼働後は、感染症法に基づく保健所への発生届などが、本システムに入力する形式に変更される見込み(具体的な運用方法に関しては、別途通知が発出される予定)。また、各医療機関からの報告に基づいて、行政が医療物資の優先配布や重症患者の受け入れ先の調整などに活用する。(参考)新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(仮称)の導入について(厚労省 事務連絡 令和2年4月30日)厚労省が新型コロナ感染者情報を一元管理する新システム、開発費用は10億円(日経クロステック)2.COVID-19治療薬「レムデシビル」が7日に特例承認ギリアド・サイエンシズの抗ウイルス薬「レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液・同点滴静注用)」が、申請からわずか3日後の7日に特例承認された。翌8日には中央社会保険医療協議会が開催され、レムデシビルの医療保険上の取り扱いについて議論が行われた。現時点では供給量がきわめて限定的であるため、公的な管理の下で無償提供され、時限的・特例的な対応として、公的医療保険との併用が可能とされる。この間、薬価収載はされない予定。レムデシビルは、エボラ出血熱などの治療薬として開発されていた薬剤であり、ウイルスのRNAポリメラーゼを阻害する作用を有する。適応患者の選定においては、7日に発出された留意事項に、適格基準と除外基準が示されている。(参考)COVID-19に特例承認のレムデシビル、添付文書と留意事項が公開レムデシビル製剤の使用に当たっての留意事項について(厚労省)新型コロナウイルス感染症に係る医薬品(レムデシビル)の医療保険上の取扱いについて(同)3.新型コロナ相談・受診の目安改訂 「37.5度」が削除以前から、相談・受診の目安を参考にPCR検査を希望しても、帰国者・接触者相談センターには受け入れてもらえないなどの意見が聞かれたが、8日、専門家会議の議論を踏まえ、相談・受診の目安についての改訂が行われた。従来との違いは、「37.5度以上の発熱が4日以上続く」としていた記載が、個人差があるなどの理由で削除された。改訂版では、「息苦しさ(呼吸困難)・強いだるさ(倦怠感)・高熱などの強い症状のいずれかがある」、「重症化しやすい方で、発熱や咳などの比較的軽い風邪症状がある」、「これら以外で、発熱や咳など比較的軽い風邪の症状が4日以上続く」場合には、すぐに相談するよう促している。各自治体は、地域の医師会と連携するなどしてPCR検査の実施施設を増やしており、今後の検査件数は増えていくと考えられる。(参考)【改訂版】新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安(厚労省)新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安について(事務連絡 令和2年5月8日)4.「アビガン」に注がれる期待と安全性 民間機関が意見書を提出中国でいち早く臨床試験が行われた新型インフルエンザ治療薬「ファビピラビル(商品名:アビガン)」は、新型コロナ患者への有効性について大きく期待されている。本剤は富山化学工業が開発したRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害薬であり、厚労省は、治療薬候補として5月中の承認を目指している。その一方で、動物実験で観察された催奇形性などの副作用が懸念されている。民間の医薬品監視機関である「薬害オンブズパースン会議」が、厚労省に「アビガンに関する意見書(新型コロナウイルス感染症に関して)」を5月1日付けで提出している。COVID-19治療薬として、科学的根拠の乏しい過剰な期待に対する厳しい警告を含んでおり、メディアの過熱報道とは裏腹に十分なエビデンスと安全性の確立が求められる。(参考)「アビガンに関する意見書(新型コロナウイルス感染症に関して)」を提出(薬害オンブズパースン会議)5.やまない医療従事者への誹謗中傷・風評被害に苦悩現場で奮闘する多くの医療従事者に感謝の気持ちを示すため、ライトアップや拍手などの報道がされる一方で、近隣の住民などから医療従事者やその家族に対して嫌がらせや誹謗中傷を受けたという話が報道されている。感染者の受け入れによって、医療機関が院内外の感染対策に追われ、一般人に十分に説明する機会がないまま、メディアを通して恐怖心が増幅された結果かもしれない。医療従事者は患者さんの治療と安全を最優先に働いているが、最前線で尽力している医療機関や医療者に対してそのような事例があるのは残念でならない。メディアには医療・介護従事者を支援する輪を積極的に広げていただきたい。(参考)医療従事者への風評被害に対する国民へのメッセージ動画を制作(日本医師会)「会社辞めるか、奥さんが辞めるか」看護師と家族に誹謗中傷(神戸新聞)6.医療従事者の新型コロナ感染、世界で9万人超も世界的に広がる新型コロナウイルスにより、医療従事者の感染が問題となっている。先日、国際看護師協会(International Council of Nurses)が30ヵ国の看護協会のデータを元に推計した結果によると、世界全体で新型コロナウイルスに感染した医療従事者は9万人以上、その内死亡した看護師は260人を超えると推測されている。全感染者のうちの平均6%が医療従事者であるとされる。同協会は、医療従事者の感染について正確なデータがないため、「より大きなリスクにさらされている」と指摘している。各国の政府が医療従事者の感染と死亡に関するデータを体系的に収集し、それを世界保健機関(WHO)が保管することを求めている。(参考)ICN calls for data on healthcare worker infection rates and deaths(ICN)

検索結果 合計:352件 表示位置:201 - 220