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J-CLEAR特別座談会(6)「新型コロナ治療薬の論文を読み解く」

J-CLEAR特別座談会(6)「新型コロナ治療薬の論文を読み解く」J-CLEARメンバーが、「新型コロナ治療薬の論文を読み解く」をテーマに徹底討論。疫学や薬理学の知見を基に、相次いで開発される治療薬が承認に至るまでのプロセスを検証しました。ウェブ座談会の模様を前・後編でお届けします。なお、この番組は2022年7月1日に収録したもので、当時の情報に基づく内容であることをご留意ください。出演    桑島 巖 氏臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)理事長/東京都健康長寿医療センター顧問坪野 吉孝 氏東北大学大学院客員教授/早稲田大学大学院客員教授/国立がん研究センター客員研究員植田 真一郎 氏琉球大学大学院医学研究科薬物作用制御分野教授山本 晴子 氏医薬品医療機器総合機構 医務管理監・理事長特任補佐オブザーバー後藤 信哉 氏東海大学医学部内科学系循環器内科学 教授小金丸 博 氏東京都健康長寿医療センター 感染症内科医長

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5製品の特徴を整理、コロナワクチンに関する提言(第5版)公開/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医科学研究所附属病院長])は、7月8日に同学会のホームページで「COVID-19ワクチンに関する提言(第5版)」を公開した。 今回の提言では、第4版(2021年12月16日公開)と比較して構成を大幅に変更し、COVID-19ワクチンの種類ごとに記載。現在判明している各ワクチンの作用機序、有効性、安全性を記すとともに特定状況での接種として「妊婦」「免疫不全者」「COVID-19罹患者」の3区分を記載した。また、最後に「COVID-19ワクチンの開発状況と今後の展望」として、わが国を含む主要国での開発状況を記すとともに、引用文献も125本に増えている。 提言を作成したワクチン委員会・COVID-19ワクチン・タスクフォースでは「COVID-19の終息に向けて欠かすことのできないCOVID-19ワクチンが正しく理解され、広く普及してゆくことを願う」と期待をにじませている。第5版の主な改訂点【mRNAワクチン】・作用機序を加筆・4回接種の有効性を追加(主にイスラエルの知見を追加)・5~11歳への接種の有効性を追加(主にアメリカの知見を追加)・4回接種の安全性を追加(主にイスラエルの知見を追加)・5~11歳への接種の安全性を追加(主にアメリカおよびわが国[22年5月15日時点]の知見を追加)【ウイルスベクターワクチン】・アストラゼネカのバキスゼブリアの有効性(主にイギリスの知見)、安全性(主デンマークおよびノルウェーでの知見)を追加・ヤンセンファーマのジェコビデンの有効性(主にわが国での知見)、安全性(主にアメリカでの知見)を追加【組換えタンパク質ワクチン】・ノババックスのヌバキソビッドの作用機序、有効性、安全性を追加(主にアメリカおよびメキシコでの知見を追加)【特定状況での接種】・「妊婦」につき、わが国のレジストリ解析からワクチンの有効性を追加。また、胎児への影響についても追加・「免疫不全者」につき、効果と追加接種に関する記載を追加。また、リツキシマブの投与の注意も追加・「COVID-19罹患者」につき、long COVID(いわゆる後遺症)の記載を追加【ワクチンの開発状況と今後の展望】・主要先進国ならびにわが国での開発状況を追加

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サル痘疑い患者にはN95マスク、手袋、ガウン、眼の防護/国立感染症研究所・国立国際医療研究センター

 国立感染症研究所と国立国際医療研究センター国際感染症センターは、連名で「サル痘患者とサル痘疑い例への感染予防策」を2022年6月15日に発表し、今回その内容を改正し、7月8日に同研究所のホームぺージに公開した。全世界でサル痘の感染拡大が懸念される中、診療にあたる医療者が注意すべきポイントについて本対策ではコンパクトに記している。サル痘の感染経路 サル痘は接触感染や飛沫感染を起こすが、日常生活の中で空気感染を起こすことは確認されていない。ただし、空気感染を起こすと考えられている麻しんや水痘との臨床的な鑑別が困難であるため、発熱と発疹がありそれらの感染症が否定できない間は、サル痘疑いの患者には空気予防策の実施が求められる。サル痘の診療時の態勢と装備 医療従事者がサル痘確定患者に接する場合(検体採取時含む)は、患者を換気良好な部屋に収容し、N95マスク、手袋、ガウン、眼の防護具を着用する(患者のリネン類を扱う者や清掃担当者も同様)。 患者が使用したリネン類は、診断が確定するまでなるべく触れずに管理し、診断が確定してから適切な処理を行う。サル痘が確定したら、リネン類は、前述の個人防護具を着用して自身の粘膜に触れないように運搬し、通常の洗剤を用い常温で洗濯を行う(WHOなどは温水を推奨)。手指衛生を頻回に行い、とくにリネン類を扱った後は必ず手指衛生(流水と石鹸による手洗い、または擦式アルコール性手指消毒薬での消毒)を行う。 患者が滞在する、または滞在した環境は通常に清掃を行い、その後消毒(エンベロープウイルスに対して強い消毒効果を発揮する薬剤[消毒用エタノールなど])を行う。廃棄物は感染性廃棄物として扱う。 サル痘疑い例やサル痘患者は、可能な限りサージカルマスクを着用し、水疱を含む皮膚病変はガーゼなどで被覆する。家庭内などでのサル痘の感染対策はどうする サル痘疑い例やサル痘患者は、自宅などの滞在場所では、以下に留意する。・患者は同居人と肌や顔を接しないようにし、リネン類の共有を避ける。・患者が使用したリネン類は、病変や体液からの感染性粒子が飛散する可能性があるため、不用意に振り回したりせず、静かにビニール袋などに入れて運搬し、洗濯機に入れる。洗濯した後は再利用可能である。・ベッド、トイレ、患者が接触した場所(家具や床など)は、使い捨て手袋を着用して清掃し、その後消毒薬で清拭する。清掃や消毒後は手指衛生を行う。・患者が使用した食器や調理器具は、石鹸や洗剤などで洗った後に再利用可能である。・常に十分な換気を行うよう配慮する。 すべての皮疹が痂皮となり、すべての痂皮が剥がれ落ちて無くなるまで(おおむね21日間程度)は上記の感染対策を継続する。

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第120回 断食でCOVID-19重症化予防? / 音の鎮痛効果の仕組み

定期的な断食の習慣は健康に良いという報告がいくつかあり、たとえば心疾患や2型糖尿病を生じ難くなることやより長生きになることとの関連が示されています。断食の習慣が担いうる効能はどうやらまだ出尽くしてはおらず、米国ユタ州での試験で新型コロナウイルス感染(COVID-19)重症化を防ぐ効果が示唆されました1,2)。毎月最初の日曜日に2食続けて抜く断食(Intermittent fasting)をすることがユタ州の住民の大半(6割超)を占める末日聖徒イエス・キリスト教会教徒の典型的な習慣として知られています。試験ではそのユタ州の医療法人Intermountain HealthcareのCOVID-19患者201人が調べられ、断食の習慣がある人はない人に比べてCOVID-19による入院や死亡をより免れていました。COVID-19入院/死亡率は断食をしていた71人では11%、そうでない人では約28%でした(ハザード比:0.61、95%信頼区間:0.42~0.90)。断食の習慣とCOVID-19の経過が良好なことを関連付ける仕組みは今後調べる必要がありますが、考えられる仕組みが幾つかあります。断食をするとリノール酸を含む脂肪酸が体内で増えることが知られています。リノール酸は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質にきつく結合し、細胞受容体ACE2への親和性を低下させます。断食で増えたリノール酸はそのようにしてSARS-CoV-2感染細胞や細胞内SARS-CoV-2粒子を減らしてCOVID-19重症化を予防するのかもしれません。断食で増える多機能なタンパク質・ガレクチン3がSARS-CoV-2感染抑制に一役買っている可能性もあります。ガレクチン3は数多くの病原体に結合することができ、自然免疫を活性化し、抗ウイルスタンパク質遺伝子の発現を増やし、ウイルス複製を阻害することなどが知られています。また、COVID-19経過不良と関連する糖尿病や冠動脈疾患などの持病が断食で生じ難くなることでCOVID-19重症化が間接的に抑制されている可能性もあります。時々の断食はCOVID-19ワクチンの代役とはなりえませんが、ワクチン接種を補完してCOVID-19重症化を減らす予防や治療の役割を担えるかもしれません。全世界の誰もが数ヵ月に1回のCOVID-19ワクチン接種をいつまでも続けることはおよそ現実的ではなく1)、接種が行き届いていない国は多く存在します。COVID-19流行の目下やこれからの世界での断食のワクチン補完の役割はCOVID-19後遺症への効果も含めて更なる検討の価値があると著者は結論しています。音の鎮痛効果の仕組み約60年前の1960年、歯科処置中に音楽を流すことで患者の痛みが和らぐことを示した報告がScienceに掲載されました3)。難儀な処置を亜酸化窒素や局所麻酔なしでやりおおせた患者もいたほどの効果がありました。以降、モーツァルトの古典音楽やら現代のミュージシャン・マイケル ボルトンの歌やらさまざまな音の鎮痛効果が検討され、実際に効果も認められました。たとえば8年ほど前の2014年の報告ではそのモーツァルトやマイケル ボルトン等の好きな音楽を聴いているときの線維筋痛症患者の痛みが減ることが示されています4)。米国NIHの神経生物学者Yuanyuan Liu氏等が率いるチームがScienceに発表した最新のマウス研究成果によると、そういった音の鎮痛効果はどうやら脳の特定の神経回路を抑制することでもたらされるようです5)。研究でマウスには少なくとも人には心地よいバッハの交響曲Rejouissance(歓喜)を毎日20分聴かせました6)。曲の音の強さは50~60デシベルで、曲なしでの背景音(ambient noise)は45デシベルが保たれました。マウスの足には炎症痛誘発液(complete Freund’s adjuvant;CFA)が注射され、続いて微針(von Frey filament)でその足を突いてどれだけ痛がるかが調べられました。驚いたことに、痛みを緩和する音の強さは決まっているようで、曲が背景音を5デシベル上回る50デシベルのときにマウスの痛みが緩和しました。50デシベルだとマウスは足を刺激されても平気で、それより強い音だと音楽なしのときと同様により痛がりました。人にとって不快なように変化させたRejouissanceやホワイトノイズでどうかを試したところ、それらが背景音を若干上回るデシベルであればやはり痛みを和らげました。つまり音の種類や快不快ではなく強度が鎮痛の鍵を握るようです7)。そういう低強度の音の鎮痛効果を担う脳の神経回路を同定すべく色素を使って脳領域の連結を調べたところ聴覚皮質から視床への経路が見つかり、低強度の音はその経路の神経活動を低下させました。音なしでその経路を光や低分子化合物で止めると低強度の音と同様に痛みを和らげる効果があり、その経路が通るようにすれば痛みが復活しました。すなわち低強度の音は聴覚皮質から視床への神経信号を阻害することで鎮痛効果をもたらしているようです。今後の課題として、鎮痛には背景音を若干上回る低強度の音でないとどうしてだめなのかを解き明かしたいと研究者は考えています。また、音を使った痛み治療の実現に向けて人ではどうなのかも調べる必要があります。たとえばマウスに試したような低強度の音を聞いているときの視床の活動をMRIスキャンで測定する試験は実施する価値がありそうです6)。参考1)Horne BD, et al. BMJ Nutrition Prevention & Health. 2022 Jul 1.2)Study finds people who practice intermittent fasting experience less severe complications from COVID-19 / Eurekalert3)GARDNER WJ,et al. Science 1960 Jul 1;132:32-3.4)Garza-Villarreal EA,et al. Front Psychol. 2014 Feb 11;5:90. 5)Sound induces analgesia through corticothalamic circuits. Science. 2022 Jul 7.6)Soft sounds numb pain. Researchers may now know why / Science7)Researchers discover how sound reduces pain in mice / NIH

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ノババックスワクチンに心筋炎・心膜炎の注意喚起/使用上の注意改訂指示

 厚生労働省は7月8日、新型コロナウイルスに対するノババックス製新型コロナウイルスワクチン「組換えコロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン」(商品名:ヌバキソビッド筋注)について、使用上の注意に「重要な基本的注意」の項目を新設し、心筋炎・心膜炎に関して追記するよう改訂指示を発出した。 今回の改訂指示は、第81回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和4年度第6回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)(2022年7月8日開催)における審議結果などを踏まえたものとなる。 ワクチンの添付文書における改訂(新設)は以下のとおり。8. 重要な基本的注意心筋炎、心膜炎が報告されているため、被接種者又はその保護者に対しては、心筋炎、心膜炎が疑われる症状(胸痛、動悸、むくみ、呼吸困難、頻呼吸等)が認められた場合には、速やかに医師の診察を受けるよう事前に知らせること。

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第108回 大規模通信障害を受け、医療機関に代替手段確保を呼び掛け/厚労省

<先週の動き>1.大規模通信障害を受け、医療機関に代替手段確保を呼び掛け/厚労省2.コロナワクチン支援事業、期限を9月まで延長/厚労省3.テクノロジーの活用で、介護の生産性の向上あるか検証へ/厚労省4.診療報酬改定に加え、インフレが病院経営に直撃か/福祉医療機構5.電子処方箋発行にHPKIカードが必須、医薬関係者は早期取得を/厚労省1.大規模通信障害を受け、医療機関に代替手段確保を呼び掛け/厚労省2日に発生したKDDIの大規模な通信障害が長期化し、復旧まで3日ほどかかったことから、厚生労働省医政局は4日、全国の自治体ならびに医療機関に向けて、通信障害が発生した場合でも、診療などに影響が生じることがないよう平時から体制を整備していく必要性を呼び掛けた。医療施設における休日夜間の診療体制を維持するため、職員との連絡手段を確保すること患者からの電話を受信できるよう複数の通信手段を確保し、受信可能な電話番号をホームページに掲載するなどの体制を整備すること在宅医療や訪問看護などを実施している医療施設等において、当該医療施設等が利用している連絡手段が使用できない場合は、固定電話等の代替的な連絡先を患者等に伝えること特にリスクの高い在宅患者等について、患者等との連絡がとれない場合には、別の連絡手段を確保することや、頻回な訪問等による安否確認を行うこと以上を参考に、通信障害が発生した場合であっても診療を継続できるよう周知を求めている。(参考)通信障害時にも診療継続が可能となるよう、在宅患者への「代替的な連絡先」提示などの体制を確保せよ―厚労省(Gem Med)通信障害発生時における通信手段の確保について(厚労省)2.コロナワクチン支援事業、期限を9月まで延長/厚労省厚労省は6日、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業の期限を7月末までから9月末まで延長することを各都道府県に通知した。延長されたのは、「時間外・休日のワクチン接種会場への医療従事者派遣事業」「新型コロナウイルスワクチン接種体制支援事業」。病院への支援として、1日50回以上ワクチン接種を行った場合、1日当たり10万円が交付される。また、1日50回以上の接種を週1日以上達成する週が4週間以上ある場合、追加で医師1人1時間当たり7,550円などが交付される(集団接種会場への医療従事者派遣と同額)。診療所への支援としては、期間中に週100回以上の接種を4週間以上行った場合、達成した週における接種1回当たり2,000円を、同様に150回以上を4週間以上行った場合は1回当たり3,000円を交付する。この要件を満たさずとも、1日50回以上の接種を行った場合には、1日当たり定額で10万円が交付される。(参考)コロナワクチン接種推進に向けた補助(緊急包括支援事業)、期限を「9月」まで延長—厚労省(Gem Med)医療機関のワクチン接種、財政支援の期間延長 9月末まで、10月以降は今後判断(CB news)令和4年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)の実施に当たっての取扱いについて(厚労省)3.テクノロジーの活用で、介護の生産性の向上あるか検証へ/厚労省厚労省は、持ち回り開催の社会保障審議会介護給付費分科会において、テクノロジーの活用により介護サービスの質の向上および業務効率化を推進していく観点から、実証研究の結果なども踏まえ、見直しを行うことを明らかにした。具体的には、見守り機器等を活用した夜間見守り、介護ロボットの活用などを実際に実証事業から得られたデータの分析を行い、次期介護報酬改定の検討に向けた、エビデンスの収集を行う。これらのテクノロジーの導入によって、ケアの質が適切に確保されているかどうか、介護職員の働き方や職場環境がどう改善したかなどについて10月以降に事後検討を行う。(参考)テクノロジー活用等による生産性向上の取組に係る効果検証について(厚労省)見守り機器活用など4つのテーマで効果実証へ 次期介護報酬改定の検討材料に、厚労省(CB news)4.診療報酬改定に加え、インフレが病院経営に直撃か/福祉医療機構福祉医療機構が2022年6月に行った病院経営動向調査の結果によると、一般病院における医業収益のDI(増加病院と減少病院の割合の差:%ポイント)は、前回調査から15%ポイント低下した。一方、医業費用のDIは前回調査から15%ポイント上昇、人件費増減のDIは前回調査から10%ポイント上昇しているなど、医療機関が診療報酬改定の影響だけでなく、物価高の影響を受けていることが明らかとなった。医療機関にとっては、電気代、水道代に加え、病院食の材料費の値上げが続いており、経営に対する影響が強まっていると考えられる。(参考)病院経営動向調査の概要(福祉医療機構)一般病院の医業収益、診療報酬改定で減収病院が多数に 福祉医療機構調査、改定直前の見込み下回るも費用増(CB news)コスト圧縮限界、病院給食明らかに赤字 物価高騰が委託先も直撃(同)5.電子処方箋発行にHPKIカードが必須、医薬関係者は早期取得を/厚労省厚労省は、ホームページに電子処方箋の概要案内を掲載した。電子処方箋の導入は2023年1月からで、複数の医療機関や薬局で直近に処方・調剤された情報の参照、それらを活用した重複投薬チェックなどができるようになる。患者はマイナンバーカードがなくとも、従来の健康保険証を利用して電子処方箋の発行を受けられるが、医療機関が発行するためには、医療機関において顔認証付きカードリーダーの準備が必要(オンライン資格確認の仕組みを活用するため)であり、日本医師会 電子認証センターでHPKIカードの発行手続きが必要となる。このため厚労省は、HPKIカードの早期取得を医師や薬剤師に働きかけると共に、医療機関側にオンライン資格確認のために顔認証付きカードリーダーの補助金を活用して整備を求めていく。なお、HPKIカードの申請には、申請書と住民票、身分証のコピー(運転免許証、マイナンバーカード)、医師・薬剤師免許のコピー、顔写真が必要だ。(参考)電子処方箋 概要案内【病院・診療所】(厚労省)オンライン資格確認導入に向けた準備作業の手引き(同)医師資格証(HPKIカード)新規お申込み(日本医師会 電子認証センター)電子処方箋導入補助金、1施設当たり7.7万-162.2万円 厚労省、HPKIの早期取得・オンライン資格確認導入促す(CB news)

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モデルナ2価ワクチン候補、BA.4およびBA.5に強力な中和抗体反応示す

 2022年6月22日、Moderna(米国)はオミクロン株に対する2価追加接種ワクチン候補mRNA-1273.214が第II/III相臨床試験において、すべての被験者でオミクロン株亜種BA.4およびBA.5に対する強力な中和抗体反応を示したことを発表した。 今回公表されたのは、初回接種ならびに1回追加接種が行われた被験者にmRNA-1273.214を50μg追加接種したデータである。発表された主な結果は以下のとおり。・mRNA-1273.214はBA.4/BA.5に対して、感染歴に関係なく、すべての被験者で試験開始前の5.4倍(95%信頼区間[CI]:5.0~5.9)、血清反応陰性被験者の小集団で6.3倍(95%CI:5.7~6.9)の中和抗体価を誘導した。・BA.4/BA.5に対する中和抗体価は、過去に報告されたBA.1に対する中和抗体価の約3分の1であった。・mRNA-1273.214の追加接種の1ヵ月後でも、BA.4/BA.5に対する中和幾何平均抗体価(GMT)は、全被験者で941(95%CI:826~1,071)、血清反応陰性被験者で727(95%CI:633~836)であった。※mRNA-1273(商品名:スパイクバックス筋注)を追加接種ワクチンとして3回目接種に用いる場合について検討した試験結果では、対BA.1では629(95%CI:526~751)、対デルタ株では828(95%CI:738~928)のGMTが誘導されている1)。 Modernaは今回得られたデータとこれまでのデータに基づき、今後数週間のうちに規制当局へmRNA-1273.214の承認申請を予定している。

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新型コロナウイルス感染症は妊婦で重症化しやすく、早産と帝王切開のリスクを上げる(解説:前田裕斗氏)

 新型コロナウイルス感染症と妊婦の関係性について、これまで(1)一般女性と比較して妊娠中にとくに罹患しやすいということはない(2)罹患した場合は一般女性よりも重症化しやすい(3)罹患した場合、妊娠合併症(帝王切開や早産など)が増える などの可能性が報告されている。なお、上記は母体についての影響の話であり新生児については記載していない。 このうち、(2)と(3)については複数の中小規模の研究があるものの、研究組み入れ基準が症状ではなく入院時PCR陽性が条件である、同時期のコホートを比較対象とした研究は少なかった。今回の研究では、同時期の妊娠していない新型コロナウイルス感染者と比べた感染妊婦の重症化リスク、および感染妊婦の中でも重症化しやすい要因、そして非感染妊婦と比較して妊娠合併症が増えるかどうかについて検討している。 結果としては、非妊娠女性の感染者と比較して妊婦では入院リスクが2.65倍、ICU/CCUへの入院リスクが5.46倍という結果となった。また、年齢・高血圧既往・妊娠後期の感染がこれらのリスクと相関していた。妊娠合併症について、新型コロナウイルス感染は早産・帝王切開リスクと有意に相関したが、妊娠高血圧腎症、死産のリスクとは相関を認めなかった。 本研究の強みは適切な比較対象集団を置いていること、ほとんどが症状のある妊婦を対象としているため臨床現場の感覚に即したものであること、2021年末までの出産を対象としておりデルタ株の影響を見たコホートであることである。一方、現在主流のオミクロン株についてのデータは今後の報告が待たれる。また、人種について、本研究ではアジア人妊婦の重症化リスク、ICU/CCU入院リスクが共に有意に高く出ているが、これはカナダにおける結果であり、人種によって受けられる医療サービスが違うこと、それに関する要因が考慮できていないことなどから、人種についての結果は慎重な解釈が必要だろう。 妊婦や、妊娠を希望する方への適切な情報提供は感染流行下においては非常に重要であり、その点で非常に価値の高い論文である。日本では同様の研究はほぼ報告されていないが、1件、全国的なアンケート調査で重症化に関わる要因を聞いたものがある1)。この研究でもやはり妊娠後期または産後の感染が重症化と相関したと報告され、日本においても本研究の結果は適応可能と考えてよいだろう。現在3回目のワクチン接種は妊婦においても当然勧められるが、高齢者などと同様4回目以降の接種や、今後妊娠時にワクチン接種を行ったほうがよいかどうかについてはオミクロン株の影響の結果報告が待たれる。

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第116回 読者の声に応えてタブーに迫る!諸派のコロナ対策、その言い分を比較

「日本第一党」「こどもの党」「平和党」「天命党」「幸福実現党」「スマイル党」「核融合党」「沖縄の米軍基地を東京に引き取る党」「共和党」「ファーストの会」「日本改革党」「維新政党・新風」「参政党」「メタバース党」「自由共和党」「新党くにもり」以上は現在最も候補者が多いとされる参議院議員選挙の東京選挙区で、国政議席を持たない政党の立候補者が所属する「政党」である。ちなみに上記以外に『議席減らします党』『動物愛護党』『バレエ大好き党』『炭を全国で作る党』の標榜もあるが、これらの候補者はすべてNHK党公認である。ちなみに数行前で政党にカギカッコ(「」)をつけたのは、前回、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)対策で取り上げた政党は国政に議席を持ち政治資金規正法に基づく政党の定義を満たしているものがほとんどだが、上記の政党はそうではないからである。前回までに取り上げなかった政党、その理由さて前回の本連載後、「ほかの政党は取り上げないの?」という読者のお声を何件か頂戴した。実は国政に議席のない政党の政策も取り上げようと思ったことは何度かあるが、それをしなかった理由はいくつかある。まず、報道で「諸派」と表記されるこうした政党は、時にシングルイシューの政策であることが多く、医療にスポットを当てても取り上げようがないのが第1の理由である。そして第2の理由が私としては一番大きいのだが、これらの政党をすべて取り上げると、原稿の文字数が1万字超になる。これはインターネット上の記事、とくに一般向けではかなり「禁じ手」だ。おおむね一般の読者が読むに堪える文字数が3,000字程度だからである。それでなくとも私の記事は長めである。とくに一般向けに医療情報を発信しようとすると、丁寧な説明が必要になり、必然的に文字数が多くなる。たとえば、この連載ならば「ワクチンの発症予防効果は…」とスラっと書いても読者が誤読することはまずない。しかし、一般向けでは「ワクチンには感染予防効果と発症予防効果と重症化予防効果があり、感染予防効果とは…」と書かないと、高確率で「誤読」される。というか、極論を言えば、そこまで書いてもほぼ誤読される。こうした長い原稿を書くためか、最近では私がよく執筆する一般向けの情報サイトの編集者からは「とにかく短めに」と本音のお叱りを押し殺した哀願が多い。ちなみに私が丁寧に書こうとした結果、どれだけ記事が長くなるかは講談社が運営する情報サイト「現代ビジネス」の私の記事の一覧を見ていただけるとわかると思う。実際には1本の記事として書いたものの、その多くが編集者の苦心により2本以上に分けられている。その点、当サイトの担当編集者は何も嫌味を言わないので私にとってはありがたい存在である。というか、すでにこの時点で1,100文字を超えている(笑)。第3の理由は当サイトでは政治ネタはあまり読まれない傾向があるからであり、第4の理由には、私はどうしても職業病で与野党問わず酷評してしまうため、懲りずに読んでいただいている読者の一部を不快にさせてしまう可能性があるのだ。こうした数々の「タブー」を敢えて無視して今回はチャレンジしてみようと思う。そう思うのは、私も年齢を重ね、候補者を見る目が変わってきたせいもある。その変化の具体例として私は「泡沫候補」という言葉は使わない。すべての被選挙権を持つ国民は、立候補の権利があり、それに基づき政治主張をする自由がある、そして石をぶつけられかねない立候補者としてわが身を晒せる勇気を持てる人はそう多くはない、という当たり前の事実を人生の折り返し地点を超えて再確認したからである。これには選挙取材歴では日本一といっても良い友人のフリーライター・畠山 理仁(みちよし)氏の影響がある。彼の著書、「黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い」(集英社刊、第15回 開高健ノンフィクション賞受賞作)、「コロナ時代の選挙漫遊記」(集英社刊)は必読の名著といってよい。コロナ対策を掲げる7党の言い分今回、東京選挙区を取り上げたのは、やはり多種多様な候補がいるからである。宮城県出身である私が東京に出てきた頃、一番驚いたのは選挙時の候補者の多さである。若かりし頃は東京での選挙を「大ビックリ人間コンテスト」とすら呼んでいた。今は候補者に敬意を払い、「日本最大の政策博覧会」と言うようにしている。さて、そろそろ本題に移ろう。念のため言っておくと、冒頭の順番は東京都の選挙公報の掲載順となっている。まず、この中で政党のホームページ、選挙公報、政党作成のチラシ、配信動画などで新型コロナ対策を掲げているのは16党のうち7党である。これらを紹介しながら、かいつまんで批評を加えたいと思う。まず、天命党(代表:小畑 治彦氏)である。元東大阪市議の小畑氏が立ち上げた政党でヴィーガン食の良さを訴えることが政策主眼のようである。宗教チックに思われる名称のためか、小畑氏は「天命党は宗教政党ではない」と断言している。同党はInstagramを選挙活動に多用しており、そこから浮かぶ新型コロナ政策とは以下のようなものだ。新型コロンワクチンの接種は必要なしPCR検査は信頼性に疑問があるマスク着用は不要もちろんワクチン、検査、マスクはいずれも限界があるが、一定のリスク低減効果があることも科学的に提示されている。これ以上は言うまでもないだろう。次は幸福実現党(党首:釈 量子氏)である。ご存じのように同党は宗教団体「幸福の科学」(総裁:大川 隆法氏)の政治部門である。掲げている新型コロナ関連政策を要約すると以下の通りだ。コロナ発生源、中国の責任を追及コロナ起源の調査を行わず、発生源をうやむやにするWHOの責任を追及中国を利する「ワクチン外交」を自由主義国と共に阻止宗教心でコロナ禍を乗り越える自由の制限を伴う緊急事態宣言やまん延防止措置の発出は行わない政府の権限肥大化を防ぐため、コロナ禍を契機とした憲法の「緊急事態条項」新設に反対ワクチンのメリット、デメリットを提示したうえで接種は自由意思を最大限尊重事実上の強制接種につながる無料ワクチン接種を原則有料化感染症法の分類を5類相当とし医療機関へのアクセスを改善国産の新型コロナ治療薬の開発推進生物兵器や化学兵器に対抗する自衛隊部隊の強化ややわかりにくい政策のように思うかもしれないが、同党は「新型コロナは中国が開発した生物兵器」というスタンスをとっている。これが冒頭の3件と最後の1件の政策の根拠でもある。ちなみに生物兵器論に関しては、中国が中東呼吸器症候群(MERS)ウイルスや重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスを利用した生物兵器開発中に流出したウイルスが原因との説が一部で流布されたが、遺伝子配列の解析やウイルスがMERSやSARSよりも弱毒化していること(生物兵器として利用するなら強毒化させるのが当然という考えに基づく)などから否定的な見解が多い。私個人もその立場である。もっとも今後の対策を考えた場合、自然宿主などの原因に迫らねばならない。これまで世界保健機関(WHO)が中国で行うことができた調査は非常に制限の多いものであったことは知られている。その意味で中国でのより厳密な調査が必要ということでは同党のスタンスにも一定の理解はできる。ワクチン政策に関しては、個人の自由意思尊重に異論はないが、ワクチンによる感染拡大リスク極小化のための最大のネックは費用も含めたアクセスの問題であり、有料化するのは非現実的と考える。新型コロナの5類相当扱いについては過去にも触れているが、医療機関や高齢者施設でのクラスターが発生しやすいこのウイルスの特性を考えれば、最低限の条件として感染者の重症化リスクにかかわらず使用できる経口薬が上市されることである。その観点からすると、現状ですべての医療機関に新型コロナの診療を行えというのはやや酷であると感じる。国産治療薬については本連載で再三見解を述べているが、どの政治家も安易に考え過ぎである。それを実現したければ、赤字国債を今後20年ほど毎年数兆円発行して製薬企業の開発支援として提供するくらいの覚悟が必要である。核融合党(代表:桑島 康文氏)は今回取り上げる中では唯一、代表の桑島氏が医師である。選挙公報に記載の政策を列挙する。新型コロナの感染症法での5類相当引き下げ逆転写でDNAに取り込まれるmRNAワクチンの承認取り消し、廃止自粛、鎖国の廃止国産の複数株混合不活性化ワクチンの導入2番目の「逆転写でDNAに取り込まれる」は科学的にほぼゼロと言って良い、つまりはほぼ間違いと言って良いことはここの読者ならご存じのはず。ちなみに私個人は一般人の知人から時々この不安について尋ねられることがある。これを正確に細かく説明すると時間がかかるので、いつもはやや不正確ながら「マグロの刺身を食べて10年後にヒトからマグロになってしまった人が周りにいる?それがないのと同じこと」と話すようにしている。最後の不活性化ワクチンについては、選択肢を広げる意味ではありと思っているが、既存のワクチンほどの効果が得られるかという点は中国のシノバック社ワクチンのデータなどから疑問視している。共和党(棟梁:鳩山 友紀夫氏)は、政界では「宇宙人」とも評された旧民主党党首で元首相でもある鳩山 友紀夫氏(2013年に「由紀夫」から「友紀夫」に改名)が政界復帰をして立ち上げた政党である。党の政策をホームページで見てみると新型コロナに関しては以下の記載がある。「新型コロナウイルスは日本社会にすさまじいインパクトを与えた。この影響は新型コロナウイルスが終息しても終わりではない。グローバリズムの進展、地球温暖化や気候変動、モンスター台風などの自然災害、インターネットや遺伝子組み換えなどの現代技術の暴走の可能性など、巨大リスクへの本格的な大規模対策をおこなう」うーん、少なくとも何をやるのかは具体性に欠ける。失礼ながら鳩山氏は相変わらず「宇宙人」のままのようである。次にファーストの会(代表:荒木 千春氏)は、これまた有名な東京都知事・小池 百合子氏が創設した地域政党・都民ファーストの国政版である。代表の荒木氏は小池都知事の元秘書で、今回の出馬直前まで中野区選出の東京都議会議員だった。さて、その政策である。公衆衛生上の危機に対する司令塔機能の強化ワクチン追加接種促進検査、医療、宿泊療養体制の強化、自宅療養への支援子どもの往診体制の強化後遺症分析、サポート体制強化公的医療機関の機動的対応力の強化医療人材の偏在是正、育成の強化民間医療機関の公的役割を踏まえた連携体制の検証、協力確保策の強化危機時の検査キット、ワクチン、抗体薬、治療薬等の医療物資の開発、確保、承認、流通の迅速化国産ワクチン、治療薬の開発支援診療報酬引き上げ等によるオンライン診療の拡大DXによる保健所等の効率化東京、地域の実情に合わない国のコロナ対策の是正ざっと見渡す限り、前回紹介した国政政党の政策を重複なく寄せ集めた感があり、ほとんど目新しさはない。最後の政策に関しては、より細かく▽ワクチンの不合理な配分、緊急事態宣言のタイミング、特措法等の改正の遅れ、危機時の水際対策強化など地域の実情に応じた対応を促す▽国から自治体への権限・財源・人材の分権推進、近隣道府県など広域連携の推進、保健所など二重三重行政の解消、と記述があり、この辺が地域政党を出自とする同党らしさと言えなくもない。もっとも自治体と国との関係での改善点はもっと平易で詳しく記述すれば、もしかしたら説得力を増すのではないかと老婆心ながら思う。最近、とみにメディアへの露出が目立つのが参政党(共同代表:松田 学氏、赤尾 由美氏、吉野 敏明氏)。共同代表のうち吉野氏は歯科医師である。同党のホームページ上にある新型コロナ政策は以下の2点だ。感染症対策を軸とした危機管理体制と高度医療資源の機能的な再配分正しい感染症の知識を普及して「コロナ脳」から脱却、国民の行動制限やワクチンに頼らず、日常生活を早く正常化し、免疫力の強化と機動的な医療システム構築でコロナ禍を克服、自由と健康の両立を実現感染症対策での危機管理体制強化の必要性は論を待たないが、それを「軸」として高度医療資源配分も行うとなると、やや偏り過ぎではないだろうか。国内の死因のトップはがんであり、これに心臓疾患などが続くことを考えれば、高度医療資源配分ではこうした疾患のほうがむしろ「軸」としてはふさわしい。また、2番目の免疫力強化も健康食品のキャッチコピー感がある。免疫力を上げるというのは市中では良く使われるが、免疫の働きは未解明な点も多く「科学的にこうだ!」と言える部分はわずかである。その意味で政党としてこの文言を政策文に入れることにはかなりの違和感がある。さらに「国民の行動制限やワクチンに頼らず」との記述は、ワクチンに一定の役割を認めているかのようにも読めるが、同党候補者にはワクチンそのものに科学的に疑問符がつくような根拠で否定的な発言をする人が散見される。自由共和党(代表:青山 雅幸氏)は元立憲民主党の衆議院議員だった青山氏が創設した新党である。掲げる政策は以下の通りだ。5~11歳へのワクチン接種阻止、20歳以下のワクチン接種中止濃厚接触者や無症状者の隔離、アクリル板設置、常時マスク、幼稚園児へのマスク着用、まん延防止等重点措置/緊急事態宣言のすべてを撤廃PCR検査のCt値の適正化新型コロナの感染症法5類相当への引き下げワクチン接種で副反応を訴える人の救済憲法の「緊急事態条項」新設に反対一覧すればわかるが、既存の新型コロナ対策の多くに否定的である。青山氏の場合、Twitter上などでも以前からワクチンに対する不信感をあらわにしており、それが同党の政策にも直結しているようである。若年者では新型コロナが重症化しにくく、その一方で既存のワクチンに比べて新型コロナワクチンでは接種に伴う自覚症状のある副反応が少なくないため、若年者でのワクチン接種に否定的な意見が少なくないことは私自身も承知している。若年者の場合、本人のためというよりは周囲のためという側面が強くなることも否定はしないし、また現在の感染の主流であるオミクロン株では現行ワクチンの効果が減弱し、ブレイクスルー感染も少なくないのもまた事実である。もっともそれを言ってしまえば、現行の予防接種法に基づき定期接種に組み入れられている一部のワクチン、具体的には患者報告数の少ない日本脳炎なども接種の必要性はなしとなってしまう。私個人は感染症では個人に加え、地域・社会全体でのリスク低減を目指すという視点は必要であると考えており、自由共和党の考えには必ずしも賛同できない。また、青山氏は新型コロナワクチン接種後の長期的副反応を訴える人に配慮すべきという主張もTwitter上でよくつぶやいている。この点について言えば、総論では理解できるが、こうした主張の多くは、接種者本人のみの主張に過度に依存しており、科学的にはより厳密に考える必要がある。その意味で接種者の長期フォローアップは必要であるとは考えるが、現時点で海外の事例を見ても、一部の年齢層であってもワクチン接種を中止する必要がある兆候は見当たらない。以上が各政党の提示する政策に対する私見である。なお、政党としての主張にはないが、報道各社が候補者本人にアンケートを行っているのはよく知られている。NHKの参院選特設サイトでその結果を見ると、ここで登場しなかった候補者の考えもうかがえる。以下では冒頭で名前を取り上げた政党に限定して候補者の回答を紹介する。同サイトのQ3「新型コロナウイルス対策で、今、政府がより重点をおくべきは『感染拡大の防止』と『経済活動の回復』のどちらだと考えますか」では、今回取り上げた政党の候補者のうち「どちらかと言えば感染拡大防止」あるいは「感染拡大の防止」と回答したのが維新政党・新風(代表:魚谷 哲央氏)の候補者のみ。Q4「新型コロナウイルスは、入院の勧告や外出自粛の要請など強い措置がとれる感染症に指定されています。この扱いを維持すべきだと考えますか。季節性のインフルエンザと同じ扱いに変えるべきだと考えますか」では、「維持すべき」が平和党(代表:内藤 久遠氏)、「回答しない」がメタバース党(代表:後藤 輝樹氏)のみ。さてどうだったろう? もちろん、内容によっては読者が嫌悪感を覚える政策もあったと思う。しかし、実はこうした諸派と言われる政党のホームページで政策をつぶさに眺めると、他領域などでは「へーーー」と感心するものもなくはない。お時間のある方は目を通してみて欲しい。

1730.

新型コロナ、2m超でも感染した事例のリスク因子/BMJ

 英国・UK Health Security AgencyのDaphne Duval氏らは、システマティック・レビューの結果、レストラン、公共交通機関、職場、合唱会場といった屋内環境において2m以上離れていても新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染(airborne transmission)が生じる可能性があり、感染に寄与する可能性がある要因として不十分な換気が特定されたことを報告した。SARS-CoV-2感染リスクは、感染者に近接したとき(2m未満)に最も高くなる傾向があり、スーパースプレッダーでは2m超でも感染する可能性が示唆されていたが、詳しいことは不明であった。著者は、「今回の結果は、屋内環境での感染予防対策、とくに十分な換気の必要性を強調するものである」とまとめている。BMJ誌2022年6月29日号掲載の報告。2020年1月1日~2022年1月19日の18研究についてシステマティック・レビュー 研究グループは、まずComberらによるシステマティック・レビューに含まれる研究のうち2020年1月1日~7月27日に発表された研究をスクリーニングし、次にMedline、Embase、medRxiv、Arxiv、WHO COVID-19 Research Databaseを用いて2020年7月27日~2022年1月19日に発表された研究を検索し、適格基準を満たした研究についてWeb of ScienceおよびCocitesで引用分析を行った。 適格基準は、屋内環境(非医療環境)下で2mを超えた距離でもSARS-CoV-2に感染した事例について報告した観察研究とし、濃厚接触または媒介物が主な感染経路と考えられる観察研究(家庭内感染など)は除外した。 Rayyan Systemsを用いて2人の評価者が独立してスクリーニングし、ほぼ完全に一致した研究について1人の評価者がデータ抽出を行い、もう1人がチェックした。 主要評価項目は、2mを超えるSARS-CoV-2感染、およびその感染に影響を及ぼした要因とした。組み込まれた研究の方法論的な質は10問で構成される品質チェックリストを用いて厳格に評価し、エビデンスの確実性はGRADE(Grading of Recommendations、Assessment、Development、Evaluation)を用いて評価した。また、設定ごとにNarrative synthesisを行った。 18件の研究(関連する報告は22報)が解析に組み込まれた(方法論的質が「高」3件、「中」5件、「低」10件)。「換気不十分」「一方向気流」「大声で歌う・話す」のうち1つ以上でリスク大 18件のうち、16件の研究では感染イベントの一部あるいはすべてで、2mを超えてSARS-CoV-2感染が発生した可能性があり、2件は不明であった(GRADE:確実性が非常に低い)。 16件の研究において、換気不十分(確実性が非常に低い)、一方向の空気の流れ(確実性が非常に低い)、大声で歌う・話すなどエアロゾルの放出が増加する活動(確実性が非常に低い)のうち、1つ以上の要因により2mを超える距離でも感染する可能性が高まるようであった。 13件の研究において主要症例は、無症状、症状発現前または感染時の発症前後であるものが報告された。 なお、組み込まれた研究の中には、感染調査が十分実施されていたものもあるが、研究デザインに起因するバイアスリスクが残っており、感染経路を十分評価するために必要なレベルの詳細な情報が必ずしも提供されていなかった。

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オミクロン株時代の未成年者に対するRNAワクチン接種法とは?(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

 本論評の主たる対象論文として取り上げたのはFleming-Dutraらの報告で、未成年者(5~17歳)を対象としてBNT162b2(Pfizer社)のオミクロン株に対する感染/発症予防効果を調査したものである。未成年者の分類は国際的に統一されたものはなく、本論評では各製薬会社の分類に準拠し、生後6ヵ月以上~4歳(Pfizer社)あるいは6ヵ月以上~5歳(Moderna社)を幼児、5~11歳(Pfizer社)あるいは6~11歳(Moderna社)を小児、12~17歳(Pfizer社、Moderna社)を青少年と定義する。本論評では、ワクチン接種の最先端国である米国と本邦の現状を比較し、本邦において未成年者のワクチン接種として今後いかなる方法を導入すべきかについて考察する。小児、青少年におけるBNT162b2の2回目接種のオミクロン株に対する感染/発症予防効果 Fleming-Dutraらは2021年12月26日~2022年2月21日までのオミクロン株優勢期において、米国ほぼ全域から集積されたコロナ感染疑い症状を有し核酸増幅検査(NAAT)によって感染の有無が判定された5~11歳の小児と12~15歳の青少年を対象としてBNT162b2ワクチン2回接種のオミクロン株感染/発症予防効果(VE)を調査した。1回のワクチン接種量は小児で10μg、青少年で30μgであった。 ワクチン2回接種2~4週後におけるVEは小児で60.1%、青少年で59.5%とほぼ同等の値を示した。しかしながら、ワクチン2回接種2ヵ月後におけるVEは小児で28.9%、青少年で16.6%であり、とくに、青少年における時間経過に伴うVEの低下が著明であった。青少年のワクチン接種3ヵ月後のVEは9.6%で統計学的にゼロと判定された。以上の結果はオミクロン株優勢期に成人を対象として報告された傾向と概略一致している(Andrews N, et al. N Engl J Med. 2022;386:1532-1546.)。 Dorabawilaらは小児、青少年におけるBNT162b2の2回接種後のオミクロン株に対する入院予防効果を検討した(Dorabawila V, et al. medRxiv. 2022 Feb 28.)。その結果、小児の入院予防効果はワクチン2回接種1.5ヵ月後で100%から48%に低下、青少年では94%から73%まで低下することが示された。オミクロン株に対する入院予防効果が時間推移と共に低下する傾向は成人においても観察されている(UKHSA. Technical Briefing. 2021 Dec 31.)。青少年におけるBNT162b2の3回目追加接種のオミクロン株に対する感染/発症予防効果 Fleming-Dutraらは905例の青少年を対象として3回目追加接種のオミクロン株に対する感染/発症予防効果(VE)に関しても報告している。3回目接種後の観察期間が短く確実な検討とは言い難いが、2回目接種後時間経過と共に急速に低下したVEは3回目の追加接種2~6.5週後に71.1%まで回復した。この値は青少年における3回目追加接種によるVEの最大値と考えることができ、Andrewsらが報告した成人のオミクロン株に対する3回目追加接種によるVEの最大値(67.2%)と同等の値であった(Andrews N, et al. N Engl J Med. 2022;386:1532-1546.)。しかしながら、青少年において3回目追加接種によって回復したVEが時間経過と共にどの程度の速度で低下するかは解析されていない。小児に対する3回目追加接種の効果を検証した論文は発表されていない。米国、本邦における未成年者に対するRNAワクチン接種基準 インフルエンザウイルスを標的としたワクチン接種は生後6ヵ月以上の年齢層に適用されている。一方、新型コロナウイルスは発症後2.5年しか経過していないがために未成年者に対するワクチン接種法は流動的である。米国における未成年者に対するRNAワクチン接種に関する最新の指針が2022年6月17日にFDAから発表された(FDA. News Release. 2022 Jun 17.)。FDAの指針によると;(1)Pfizer社のBNT162b2に関しては、幼児(生後6ヵ月~4歳)に対し1回3μgを2回ではなく3回連続して接種する新たな方法が提唱された。2回目は1回目から21日後、3回目は2回目から8週後に接種し、3回連続接種をもってワクチン接種が完結する。すなわち、3回連続接種を“Primary series”とする斬新で価値ある考え方である(3回目接種を追加接種とは考えない)。この考え方の基礎になっているのは、成人においてオミクロン株に対するワクチン誘導性液性免疫(中和抗体形成)は2回接種では賦活化が弱く、3回目接種後に初めて有意な賦活化が観察されたという事実である(山口. 日本医事新報 2022;5111:28.)。幼児に対する追加接種(4回目接種)は推奨されていない。(2)小児(5~11歳)と青少年(12~17歳)に対するBNT162b2の接種法は以前に決定された内容が継承され、小児においては1回10μgを21日間隔で2回接種、青少年においては成人と同様に1回30μgを21日間隔で2回接種する。すなわち、小児、青少年においては2回接種をもって“Primary series”と定義された。3回目の追加接種は2回目接種より5ヵ月後に施行することが推奨された(接種量:2回目までと同量)。4回目の追加接種は推奨されていない。(3)Moderna社のmRNA-1273に関しては、生後6ヵ月~5歳までの幼児(Pfizer社の幼児の定義と異なる)に対して1回25μg、6~11歳までの小児(Pfizer社の小児の定義と異なる)に対して1回50μg、12~17歳の青少年に対して1回100μgを1ヵ月間隔で2回接種する。(4)mRNA-1273を用いた3回目の追加接種(接種量は初回量と同じで2回目より1ヵ月以上あけて接種)は免疫不全を有する未成年者(生後6ヵ月~17歳)において認められたが、BNT162b2の場合と異なり免疫不全を有さない未成年者には認められなかった。4回目の追加接種は推奨されていない。 BNT162b2とmRNA-1273の未成年者に対する3回目追加接種の適用の差は、各ワクチンの治験結果を基礎とした科学的根拠に基づくものであるが、本質的に同じ作用を有する両ワクチンの適用を異なった形のまま放置することは施策上混乱を招く恐れがある。 本邦における未成年者に対するワクチン接種に関する厚生労働省の指針は、2022年5月25日に更新された(厚生労働省. 新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き[第8版]. 2022年5月25日)。この指針では、BNT162b2(商品名:コミナティ筋注)のみが5~11歳の小児に対する2回接種(1回10μg、21日間隔)が認められているが、生後6ヵ月~4歳の幼児には認められていない。また、BNT162b2を用いた3回目追加接種は12歳以上の年齢層(青少年と成人)に対して認められているが(2回目接種後5ヵ月以降に30μg接種)、mRNA-1273(商品名:スパイクバックス筋注)においては18歳以上の成人にしか認められていない(2回目接種後5ヵ月以降に通常量の半量である50μgを接種)。未成年者に対する4回目の追加接種は推奨されていない。以上のように本邦における未成年者に対するRNAワクチン接種指針は不完全であり、とくに、5歳未満の幼児に対する有効なワクチン施策を早急に確立する必要がある。 Pfizer社、Moderna社は武漢原株のS蛋白に加え、オミクロン姉妹株(BA.4、BA.5)のS蛋白を標的とした2価ワクチンの開発を急ピッチで進めている。米国FDAはこの新規2価ワクチンを今秋以降に追加接種用のBoosterワクチンとして期待していると表明した(The Washington Post. updated. 2022 Jun 30.)。この場合にも、従来ワクチンは医療経済的側面から2回目接種までの“Primary series”として使用されるはずであり、成人、未成年者に対する従来ワクチンの接種法を現時点において確立しておくことは重要課題の1つである。

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第1回 新型コロナのイベルメクチン「もう使わないで」

いったん下火になっていた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ですが、国内の新規感染者数は6月下旬から増え始め、昨日7月6日は4万5千人を超え、現場は警戒心を持っています。―――とはいえ、BA.2以降、滅多に肺炎を起こすCOVID-19例に遭遇しません。おそらく次の波がやってきたとしても、大きな医療逼迫を招くことはないのでは、と期待しています。「イベルメクチンを処方しない医師は地獄へ落ちろ」さて、私はCOVID-19の診療でいくつかメディア記事を書いたことがあるのですが、当初からイベルメクチンに関してはやや批判的です。疥癬に対してはよい薬だと思っていますが、COVID-19に対しては少なくとも現在上市されている抗ウイルス薬には到底及びません。しかしSNSなどではいまだにイベルメクチン信奉が強く、そういった「派閥」から手紙が届くこともあります。中には、「COVID-19にイベルメクチンを処方しない倉原医師よ、地獄へ落ちろ」といった過激な文面を送ってくる開業医の先生もいました。確かに当初、in vitroでイベルメクチンの有効性が確認されたのは確かです。しかし、かなり初期の段階で、寄生虫で使用するイベルメクチン量の約100倍内服しないと抗ウイルス作用は発揮されないことがわかっており1,2)、副作用のデメリットの方が上回りそうだな…という印象を持っていました。その後の臨床試験の結果が重要だろうと思っていたので、出てくるデータを冷静に見る必要がありました。トップジャーナルでことごとく否定50歳以上で重症化リスクを有するCOVID-19患者への発症7日以内のイベルメクチンの投与を、プラセボと比較したランダム化比較試験があります(I-TECH試験)3)。これによると、重症化リスクのある発症1週間以内のCOVID-19患者に対するイベルメクチンの重症化予防への有効性は示されませんでした。また、1つ以上の重症化リスクを持つCOVID-19患者に対して、イベルメクチンとプラセボの入院率の低下をみたランダム化比較試験があります(TOGETHER試験)4)。この試験でも、入院・臨床的悪化のリスクを減少させませんでした(相対リスク0.90、95%ベイズ確信区間:0.70~1.16)。ITT集団、per protocolのいずれを見ても結果は同じでした。EBMの基本に立ち返って、使用を控えるべき万が一、イベルメクチンの投与量や投与するタイミングを工夫して、何かしら有効性が示せたとして、ではその効果は現在のほかの抗ウイルス薬(表)よりも有効と言えるのでしょうか。塩野義製薬が承認申請中のエンシトレルビルですら、現時点ではウイルス量を減少させる程度の効果しか観察されないということで、緊急承認は見送りとなっています。イベルメクチンについて、まず今後奇跡的なアウトカム達成など、起こらないでしょう。表. 軽症者向け抗ウイルス薬(筆者作成)何より、目の前にしっかりと効果が証明された抗ウイルス薬が複数あるのです。有効な薬剤を敢えて使わずにイベルメクチンを処方するというのは、EBMに背を向けているにすぎません。この行為、場合によっては法的に問われる可能性もあります。現時点では使用を差し控えるべき、と私は考えます。参考文献・参考サイト1)Chaccour C, et al. Ivermectin and COVID-19: Keeping Rigor in Times of Urgency. Am J Trop Med Hyg. 2020;102(6):1156-1157.2)Guzzo CA, et al. Safety, tolerability, and pharmacokinetics of escalating high doses of ivermectin in healthy adult subjects. J Clin Pharmacol. 2002;42(10):1122-1133.3)Lim SCL, et al. Efficacy of Ivermectin Treatment on Disease Progression Among Adults With Mild to Moderate COVID-19 and Comorbidities: The I-TECH Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2022 Apr 1;182(4):426-435.4)Reis G, et al. Effect of Early Treatment with Ivermectin among Patients with Covid-19. N Engl J Med. 2022 May 5;386(18):1721-1731.

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オミクロン株流行中の5~11歳へのワクチン接種、実際の有効性は?/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン変異株流行中における、5~11歳へのmRNAワクチンBNT162b2(ファイザー製)の2回接種は、SARS-CoV-2感染および症候性新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対し中程度の保護効果を示したことが、イスラエル・Clalit Research InstituteのChandra J. Cohen-Stavi氏らによる検討で示された。これまでオミクロン変異株流行中の5~11歳への、BNT162b2ワクチンのリアルワールドでの有効性に関するエビデンスは限定的だった。NEJM誌オンライン版2022年6月29日号掲載の報告。13万6,127例を対象に、SARS-CoV-2感染・症候性COVID-19への有効性を検証 研究グループは、イスラエル最大の医療ケア組織のデータを基に、2021年11月23日以降にBNT162b2ワクチン接種を受けた5~11歳の小児を特定。ワクチン非接種の小児とマッチングし、オミクロン変異株流行中にBNT162b2ワクチン接種を受けた小児における、1回目および2回目接種後のSARS-CoV-2感染と症候性COVID-19に対する有効性を推定した。 両群の2022年1月7日までの累積アウトカム発生について、Kaplan-Meier推定法で推定し、ワクチン有効性を1-リスク比で算出した。また、年齢サブグループ別のワクチン有効性も推定した。 試験期間中にワクチンを受けた試験適格児は13万6,127例、マッチドワクチン非接種児は9万4,728例だった。有効性は5~6歳が10~11歳より高い傾向 記録されたSARS-CoV-2感染に対するBNT162b2ワクチンの推定有効率は、1回目接種後14~27日で17%(95%信頼区間[CI]:7~25)、2回目接種後7~21日で51%(39~61)だった。 2回目接種後7~21日に記録されたSARS-CoV-2感染に関する両群の絶対リスク差は、1,905件(95%CI:1,294~2,440)/10万人、症候性COVID-19については同599件(296~897)/10万人だった。 症候性COVID-19に対するBNT162b2のワクチン有効率は、1回目接種後14~27日で18%(95%CI:-2~34)、2回目接種後7~21日で48%(29~63)だった。 年齢サブグループ別にみた傾向として、10~11歳と高年齢グループに比べ、5~6歳と低年齢グループのほうが、ワクチン有効性が高かった。2回目接種後7~21日に記録されたSARS-CoV-2感染への有効率は38%(95%CI:18~53)vs.68%(43~84)、同じく症候性COVID-19への有効率は36%(0~61)vs.69%(30~91)だった。

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酸素療法を伴う/伴わない中等度のCOVID-19肺炎患者におけるファビピラビル、カモスタット、およびシクレソニドの併用療法 第III相ランダム化比較試験(解説:寺田教彦氏)

オリジナルニュース中等症コロナ肺炎、ファビピラビル+カモスタット+シクレソニドで入院期間短縮/国内第III相試験(2022/06/15掲載) 本研究は中等症のCOVID-19肺炎患者におけるファビピラビル、カモスタット、およびシクレソニドの併用療法を評価した論文であり、2020年11月11日から2021年5月31日までに登録された本邦でのCOVID-19罹患患者を対象としている。登録患者は121人で、56人が単独療法、61人が併用療法だった。 本研究では、経口ファビピラビルにカモスタットとシクレソニドを併用することで安全性の懸念なしに入院期間の短縮ができたことが示されたが、本論文の結果が本邦のCOVID-19治療に与える影響は小さいと考えられる。理由を以下に示す。 まず、執筆時点での中等症のCOVID-19肺炎患者に対する治療とそのエビデンスを確認する。本邦ではCOVID-19に対する薬物治療の考え方 第13.1版等にも記載があるように、抗ウイルス薬としてレムデシビルを投与し、臨床病態によっては(酸素投与がある場合に)抗炎症薬としてデキサメタゾンやバリシチニブの投与が行われている。このうち、デキサメタゾンはRECOVERY 試験(Horby P, et al. N Engl J Med. 2021;384:693-704.)で、世界で初めてCOVID-19患者治療で有意な改善を、バリシチニブもレムデシビルとの併用下で臨床的な改善が報告されている(Kalil A, et al. N Engl J Med. 2021;384:795-807.)。レムデシビルに関しては、中等症のCOVID-19に対する単剤治療での有意な臨床的アウトカムは見いだしがたいが、発症早期の患者に投与することで臨床的なアウトカムや死亡率を低下させた報告があり、抗ウイルス効果は期待されるだろう(Gottlieb RL, et al. N Engl J Med. 2022;386:305-315.)。そして、ステロイドを投与する患者に関しては、先行して抗ウイルス薬を投与したほうが臨床症状の改善が早くなり、重症化率を低下させるという報告がある(Shionoya Y, et al. PLoS One. 2021;16:e0256977.)ことを加味すると、COVID-19の酸素需要がある患者には、ステロイドなどの抗炎症薬の投与が望ましく、レムデシビルも抗炎症薬とともに投与することがよいだろう。 さて、本研究に戻る。本研究が開始された時期は、COVID-19に対する確立された治療薬はなく、各国で有効性が期待される薬剤を探っている状況だった。本研究で対象となった薬剤の、ファビピラビル、カモスタットとシクレソニドについて整理する。 ファビピラビルは本邦で開発され、新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症に対する承認があり備蓄されていた抗ウイルス薬である。COVID-19が流行した初期に期待された治療法の1つであったが、本邦で実施された多施設無作為化オープンラベル試験でも早期のCRP陰性化や解熱傾向は見られたものの、有意差には達しておらず(Doi Y, et al. Antimicrob Agents Chemother. 2020;64:e01897-20.)、現時点でCOVID-19の標準治療に位置づけられてはいない。 シクレソニドもCOVID-19の治療で有効性が期待されていた薬剤である。本研究と患者対象が一致したデータではないが、国内のランダム化比較試験ではシクレソニド投与群で肺炎増悪が多く(https://www.ncgm.go.jp/pressrelease/2020/20201223_1.html)、臨床的な改善を示すことができなかった。カモスタットも臨床的改善までの日数やICU滞在期間の短縮、死亡率などの改善を示すことができず、現時点で臨床的に常用されている薬剤ではない(Gunst JD, et al. EClinicalMedicine. 2021;35:100849)。 本研究は、作用機序の異なる薬剤を組み合わせることで臨床的な効果が向上することを期待していたが、シクレソニドやカモスタットは個々の薬剤としては、明らかなデータの改善を示す研究はなく、併用による相加あるいは相乗効果の薬理学的な背景も記載はない。本文に記載があるように、サンプルサイズも小さく安全性のプロファイルに懸念が残る点、hard clinical primary outcome(臨床的に客観性の高い主要評価項目)が採用されていないという点といった問題があり、これらの併用薬の有効性を示すためには、より大規模の人数で、標準治療群とhard clinical primary outcomeについて比較をすることが望ましいだろう。 本研究結果は、現在のCOVID-19診療に与える影響は小さいと考えるが、本邦における感染症研究という観点からは、同研究が発表された意義は大きいと考える。 パンデミックを起こした感染症の臨床研究は、早期に有効な治療法を見いだすことが望ましく、速やかな臨床研究の実施が望ましいが、臨床研究を実施するには医師だけではなく、多くの職種の協力や適切なモニタリング、参加者の協力などの資金とともに環境整備が必要となる。本研究のようにパンデミック下での前向き研究実施には、労力と研究が遂行できる環境、それらの下準備が求められる。 新規感染症に対する創薬を行う場合は、適切な臨床試験のもとで適正な薬剤の評価が行われることが重要であり、本邦でも新規感染症に対する創薬を行うためには、このような臨床研究ができる環境をさらに整備してゆくべきであろう。 COVID-19診療について振り返ってみると、ワクチン接種や重症化リスクの高い患者に対する治療薬の整備により、重症化率、致死率はこの2年間で大きく減少しているが、未だに終息はしていない。重症化リスクの高くはない患者さんでも、症状の早期緩和、Long COVID罹患率の低下、他者への感染リスクを低下させるなどの社会生活を円滑に進めるための薬剤が期待されており、これらの問題を解決する薬剤が開発されることを期待したい。ただ、本邦ではワクチン接種も進んでおり、オミクロン株流行下でも、重症化率や死亡率は低下し、急性期症状持続期間も短縮していたことを考えると、オミクロン株で抗ウイルス薬の有効性を評価する場合には工夫が必要かもしれない。COVID-19の比較対象にしばしば出されるインフルエンザも抗ウイルス薬があるが、インフルエンザに対する抗ウイルス薬は発症後48時間以内に内服しなければ症状などの有意な改善が望めないように、急性期症状持続期間が短縮しているオミクロン株で治療効果を評価する場合は、速やかな抗ウイルス薬投与ができる環境で評価を行わないと臨床症状の改善で有意差を確認することは難しいかもしれない。 今後は、新型コロナウイルス・オミクロン株に対する抗ウイルス薬の評価が行われることになると考えるが、ウイルスの特徴も踏まえた上で、臨床現場でどのような患者さんに、どのように用いることで、どのような効果を期待するのかを適切に捉えた臨床試験を組み立て、評価を行うことがとくに望まれると考える。

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マスタープロトコルという研究プログラムの事前登録のあり方(解説:折笠秀樹氏)

 マスタープロトコルという研究プログラムが、ここ5年くらいで多くみられるようになりました。最初はがん治療においてでした。がん種ごとに治療薬の比較試験を行うのではなく、分子標的マーカーが陽性か陰性かによって、がん種にこだわらず比較試験が行われました。疾患に対して比較試験を行うという従来方式ではなく、バイオマーカー陽性に対して比較試験を行う方式です。そこでは疾患は何でもよいわけです。これがバスケットデザインと呼ばれるマスタープロトコルです。NCI-MATCHの例が挙がっています。 一方、がん種は1つに固定し、その中で数種類のバイオマーカーを取り上げ、バイオマーカーごとに比較試験を組む形の臨床試験です。これをアンブレラデザインと呼んでいます。どのマーカーに反応する治療薬が効果を発揮するかわからないので、どちらかというと探索的目的が強いと思われます。ALCHEMISTの例が挙がっています。 最後のマスタープロトコルの例は、COVID-19で登場したプラットフォームデザインです。COVID-19の治療法開発というプラットフォームを考え、その中でいろんな治療法を評価するプロトコルを次々と増やしていくものです。RECOVERYの例が挙がっています。ホームページもありますが、現時点では5つほどプロジェクトが走っているようです。英国主導で立ち上がったプロジェクトで、国際共同試験が行われています。あのビルゲイツ財団も資金提供しています。COVID-19は残念ながらまだ収束しておりません。いつ強力なウイルスが誕生するとも限りません。抗ウイルス薬のほかにもステロイド薬やモノクローナル抗体薬など、いろんな可能性がこのプラットフォームの中で評価されていくことでしょう。 マスタープロトコルとは、いろんなサブスタディからなる壮大なプログラムです。複数の臨床試験の集合体ともいえます。現在は、マスタープロトコルとして事前登録されていますが、サブスタディごとに事前登録をすべきだというのが結論のようです。私も同感です。RECOVERY試験というのが始まり、日本も加わるべきだと武見参議院議員がテレビ番組で紹介しているのを聞きました。2021年の中ごろだったかと思います。どんな臨床試験かと思い、すぐに調べましたが、まったく理解できませんでした。それも無理はありません。いくつかの臨床試験をまとめたプログラムだったからです。個々の臨床試験、すなわちサブスタディごとに論文も発表されることでしょうから、サブスタディを事前登録すべきというのは当然のことではないでしょうか。

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第119回 英国のサル痘の症状は先立つ流行と異なる/ウイルス感染者の匂いが蚊を呼ぶ

英国のサル痘といえば西アフリカ帰りの人発端に限られていましたが今やそうではないサル痘が同国や他の幾つかの国の性保健(sexual health)診察で確認されることが急に増えています。今年2022年5月14日から25日の12日間に英国ロンドンで性保健診察されてサル痘が判明した患者54人の症状はこれまでの典型的なサル痘感染とは異なっており1-3)、適切な治療や感染拡大予防のせっかくの機会を診断ミスで逃さないようにするためにもこれまでとは異なりうるという心構えが必要なようです。調べられた54人は全員が男性とセックスする男性(men who have sex with men;MSM)であり、先立つ流行に比べて性器や肛門領域の皮膚に病変が認められることがより多く、発熱や疲労感は逆に少なくて済んでいました。54人の全員に近い94%(51人)が性器や肛門領域に少なくとも1つの皮膚病変を有し、疲労/倦怠感と発熱の発生率はそれぞれ67%(36/54人)と57%(31/54人)でした3)。38℃以上の発熱や疲労を含む英国の目下のサル痘同定の目安4)は見直しが必要だろうと著者は言っています。他の特徴として性感染症(STI)・淋病やクラミジアの併発も多く、4人に1人がそうでした。サル痘は進行過程でヘルペスや梅毒などのよくあるSTIに似通うこともありうるのでそれらと見間違わないように用心する必要があります1)。ペニスや肛門領域の皮膚病変やSTIの併発が多いことから察するに性行為などでの皮膚や粘膜の密着の際にサル痘は伝播するようです。54人の約10人に1人(9%;5/54人)は主に痛みや細菌性蜂窩織炎の治療のために入院を要しました。死亡した患者はいません。サル痘患者が性的にかなり活発なことは本連載の前号で紹介したのと同様に今回の報告でもうかがわれ、性行為に関する質問に答えた52人の9割47人(90%)は発症前の3週間に新たな人との性交渉があり、半数を超える29人はサル痘診断に先立つ12週間に5人を超える性交渉の相手がいました。ジカ/デングウイルス感染は蚊を引き付ける匂いをより作らせるジカ熱やデング熱を引き起こすウイルスは蚊に運ばれてヒトからヒトに移ります。そのためにそれらフラビウイルスは感染者の皮膚の細菌を手入れして蚊がより好む匂いをどうやら放たせるようです5-7)。フラビウイルス感染マウスは甘い香りの揮発性成分アセトフェノン(acetophenone)を非感染マウスに比べておよそ10倍多く放ち、蚊はアセトフェノンで嗅覚が強力に刺激されて引き寄せられると分かりました。デング熱患者がアセトフェノンをより多く放つことも確認されています。アセトフェノンの主な出どころは皮膚の共生細菌であり、フラビウイルスは皮膚の抗菌タンパク質RELMα発現を抑制することでアセトフェノン生成共生細菌を増やし、その結果アセトフェノンが多くなります。RELMαの合成はビタミンA誘導体で増えます。そこでビタミンA誘導体イソトレチノイン(isotretinoin)をマウスに与えたところアセトフェノンが減って蚊に見つかり難くなって感染の伝播を減らすことができました。イソトレチノインでヒトのアセトフェノン生成も減るかどうかを調べることが今後の課題の一つとなっています5)。London School of Hygiene & Tropical Medicineの研究者James Logan氏によると今回の結果は診断を刷新しうる可能性を秘めています6)。デング熱やジカ熱の診断には結果判明までしばらくかかる血液検査が今のところ必要ですが、それら患者が放つアセトフェノンを嗅ぐ装置を使えば血液検査なしですぐに診断が可能になるかもしれません。Logan氏はマラリアを匂いで同定しうるセンサーを開発する会社を興しており、似た技術がジカ熱やデング熱にも通用しうると言っています6)。参考1)Monkeypox symptoms in patients attending London sexual health clinics differ from previous outbreaks, study of May 2022 UK outbreak suggests / Eurekalert2)Monkeypox symptoms differ from previous outbreaks - UK study / Reuters3)Girometti N, et al. Lancet Infect Dis. 2022 July 01. [Epub ahead of print]4)Monkeypox: case definitions /UK Health Security Agency5)Some viruses make you smell tastier to mosquitoes / Eurekalert6)Zika, dengue viruses make victims smell better to mosquitoes / Science7)Zhang H, et al.Cell. 2022 Jun 28;S0092-8674.00641-9. [Epub ahead of print]

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今冬にインフル流行の懸念、ワクチンを強く推奨/日本ワクチン学会

 近年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、季節性インフルエンザは影を潜めることになった。しかし、2022-23シーズンはインフルエンザの流行が懸念されている。その理由として、北半球の流行予測をする指標となる南半球のオーストラリアにおいて、2022年4月中旬以降からインフルエンザの流行が報告されているからである。そこで、日本ワクチン学会(理事長:岡田 賢司)は、6月23日に同学会のホームページで、「2022-23 シーズンの季節性インフルエンザワクチンの接種に関する日本ワクチン学会の見解」を公開した。 本見解では、2022-23シーズンのインフルエンザワクチン接種を強く推奨し、とくに接種が推奨される方に、確実にインフルエンザワクチンが接種可能な体制を早期に準備しておくことが重要と示している。2022-23シーズンのインフルエンザ流行の懸念 2021-22シーズンのわが国のインフルエンザ流行状況と感染者は、報告総数は753人(2020-21シーズンは1,107人)でCOVID-19の流行以前と比べると明らかに流行の規模は小さいものの、2022-23シーズンではインフルエンザに対する感受性者のさらなる増加が危惧されるとともに、海外から日本への渡航制限解除の影響による感染者数の増加が懸念される。 今後、インフルエンザが3シーズンぶりに流行した場合、死亡者や重症者の増大、またCOVID-19と時期を同じくして流行することなどによって、医療負荷の増大が心配されるとしている。 また、オーストラリアにおけるインフルエンザ流行状況(2022年6月5日現在)として、インフルエンザ様疾患の報告例が2022年3月以降、増加が報告され、4月中旬から確認されたインフルエンザの週ごとの報告数は、過去5年間の平均を超えている。また、5〜19歳の年齢層と5歳未満の子どもが最も高い報告率であることも示されている。2022-23シーズンのインフルエンザワクチン接種について 学会は「インフルエンザの罹患率や死亡率を低下させるため、生後6ヵ月以上のすべての人に対するインフルエンザワクチンの接種を推奨する」としている。1)日本における2022-23シーズンのインフルエンザHAワクチン インフルエンザHAワクチンは、4価ワクチンであり、2021-22シーズンからA/H3N2株とB/ビクトリア系統株の2株が変更となった。・A型株 A/ビクトリア/1/2020(IVR−217)(H1N1) A/ダーウィン/9/2021(SAN−010)(H3N2)・B型株 B/プーケット/3073/2013(山形系統) B/オーストリア/1359417/2021(BVR−26)(ビクトリア系統)2)特に接種が推奨される方・定期接種対象者:65歳以上の方、60~64歳で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に障害があり身の回りの生活を極度に制限される方、60~64歳で、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方・医療従事者、エッセンシャルワーカー:急性期後や長期療養施設のスタッフを含む医療従事者、薬局スタッフ、その他重要インフラの業務従事者の方・インフルエンザの合併症のリスクが高い方:生後6ヵ月以上5歳未満の乳幼児、神経疾患のある子ども、妊娠中の方、その他特定の基礎疾患を持つ方3)接種回数と接種間隔・13歳以上の方は、原則1回接種。ただし、医師が特に必要と認める場合は、1〜4週の間隔で2回接種。・生後6ヵ月以上13歳未満の小児は2〜4週の間隔で2回接種。ただし、世界保健機関(WHO)は、ワクチン(不活化ワクチンに限る)の用法において、9歳以上の小児および健康成人に対しては「1回注射」が適切である旨、見解を示し、米国予防接種諮問委員会(US-ACIP)も、9歳以上の者は「1回注射」とする旨を示している。何らかの事情で2回の接種機会が得られない場合でも少なくとも1回は接種し、未接種のまま、インフルエンザシーズンを迎えないことを推奨する。ワクチンの有効性と安全性1)有効性 現行のインフルエンザワクチン製造において、インフルエンザウイルスの流行株とワクチン株の一致率は毎年異なるために、インフルエンザワクチン推定有効率において年次差がみられる。そのため、インフルエンザワクチンを接種すればインフルエンザに絶対にかからない、というものではなく、インフルエンザの発病予防、発病後の重症化や死亡を予防することに関しては、一定の効果があるとされる。(国内における研究報告)・65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者については34〜55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があった・6歳未満の小児を対象とした2013/14〜2017/18シーズンの研究では、発病防止に対するインフルエンザワクチンの有効率は41〜63%と報告・3歳未満の小児を対象とした2018/19〜2019/20シーズンの研究では、発病防止に対するインフルエンザワクチンの有効率は42〜62%と報告2)安全性 インフルエンザワクチン接種後には、注射部位の発赤、痛み、腫れなどの局所反応や、発熱、悪寒、頭痛、倦怠感、関節痛、筋肉痛などの全身反応を含む副反応が出現する可能性がある。これらの副反応は、通常、2〜3日以内に消失。また、重い副反応の報告がまれにあるが、報告された副反応の原因がワクチン接種によるものかどうかは、必ずしも明確ではない。インフルエンザワクチンの接種後に報告された副反応が疑われる症状などについては、順次評価が行われ公表される。 日本ワクチン学会では、「今冬の国民の感染症対策と医療体制の維持のため、2022-23シーズンのインフルエンザワクチン接種について、強く推奨いたします」と提言し、「確実にインフルエンザワクチンが接種可能な体制を、早期に準備しておくことが重要」と記している。

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COVID-19治療の薬物相互作用による有害事象、半数はチェッカーで特定可能

 COVID-19感染流行初期にはドラッグ・リポジショニングと呼ばれる、別の疾患に対して開発・承認された薬剤が投与されてきた。2022年6月末現在、国内ではCOVID-19治療薬として8つの薬剤が承認されているが、世界のCOVID-19患者における薬物相互作用(DDI)に起因する有害事象を特定することを目的としたシステマティック・レビューがJAMA Network Open誌2022年5月号に掲載された。 イタリア・サレルノ大学のValeria Conti氏らによる本研究は、以下の手順で行われた。1)欧州医薬品庁(EMA)とイタリア医薬品庁のウェブサイト、ClinicalTrials.govデータベース、および文献データを参照し、パンデミック時に使用されたすべての医薬品を特定。2)Drugs.com、COVID-19 Drug Interactions、LexiComp、Medscape、およびWebMDの薬物相互作用チェッカーを使用して、1)で特定された各薬剤に関連するDDIの可能性を検索。3)PubMed、Scopus、Cochraneで2020年3月1日~2022年2月28日に発表された論文から、CODID-19患者のDDIに関連する有害事象を検索。4)3)で特定されたDDIが2)のツールを使用することで特定され得たかどうかを評価。 主な結果は以下のとおり。・全体で1297例の患者が登録された、計20の研究が解析に含まれた。46種類の薬剤による56種類のDDIの可能性が特定された。・58種類の薬物の組み合わせによる、575件のDDIが報告された。58種類の薬物組み合わせのうち15(26%)は分析したすべてのツールで特定可能であり、29(50%)は少なくとも1つのツールで特定可能、14(24%)は特定不可能だった。・最も深刻なDDIはアミオダロンとロピナビル・リトナビル、シンバスタチンとロピナビル・リトナビルとの併用によるもので、Medscapeでは禁忌(2[3%])、WebMDでは併用禁止(2[4%])と分類された。・最も一般的な有害事象はQT間隔の延長で、他の有害事象と併発した場合は8例の死亡につながった。

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第107回 医師が臨床工学技士に縫合を指示、医師法違反に当たるか?

<先週の動き>1.医師が臨床工学技士に縫合を指示、医師法違反に当たるか?2.新型コロナウイルスの新規感染者数、再び増加傾向に/厚労省3.コロナの影響で国保と後期高齢者医療広域連合は大幅黒字/厚労省4.100倍のモルヒネ処方、業務上過失致死の疑いで医師と薬剤師を書類送検5.在宅医銃殺事件のふじみ野市、「殺意や危険を感じた」スタッフが複数6.部下を眠らせ自宅に連れ込んだ美容CL院長、強制わいせつ容疑で逮捕1.医師が臨床工学技士に縫合を指示、医師法違反に当たるか?千葉市立海浜病院で昨年7月、医師の指示により医師免許を持たない臨床工学技士に皮膚縫合の一部を行わせたことが明らかとなった。同院によれば、問題が起きたのは心臓ペースメーカーの部品交換手術で、当技士はペースメーカーの動作確認のため手術に参加。執刀医は「自分の指導下であれば問題ないと思った」と話している。2022年1月、市に匿名の情報提供があったことから発覚。同院は速やかに事実確認を行い、外部の有識者を交えて医療事故検討委員会での検討を行い、当事者である技士と縫合を指示した執刀医の2人に訓告処分を行った。病院全体で改善と再発防止に向けた取り組みを進めている。医師法は医師資格を持たない者の医療行為を禁じているが、市は「違法行為には当たらない」との認識を示している。なお、患者への身体的な影響はなく、同院は3月に患者本人への説明・謝罪を行っている。(参考)医師免許ない臨床工学技士、手術で皮膚縫合(読売新聞)医師資格ないのに手術の縫合 千葉市立病院で、健康面被害なし(中日新聞)医師以外の医療従事者による業務範囲を超えた医療行為について(市立海浜病院)2.新型コロナウイルスの新規感染者数、再び増加傾向に/厚労省厚生労働省は、6月30日に第89回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードを開催した。新規感染者数の今週先週比は1.17と「全国的に上昇傾向に転じた」とされ、今後の短期的な予測では、大都市を中心に感染者数のさらなる増加が見込まれる。年代別で見ても、おおむねすべての年代で微増となっており、療養者数および重症者数は緩やかな増加に転じている。なお、病床使用率は総じて低水準にあり、死亡者数は減少傾向にある。今後、これまでのワクチン接種などによる免疫効果が徐々に下がっていくことや、7月以降は夏休みなどで人との接触機会が増えること、オミクロン株の「BA.5」が国内でも主流になる可能性があることなどから、医療体制への影響も含め注視する必要がある。60歳以上に対する4回目ワクチン接種の加速のほか、基本的な感染対策を徹底することなどが呼びかけられた。(参考)新規感染者数「全国的に上昇傾向に転じた」コロナアドバイザリーボード分析・評価(CB news)新型コロナ“全国で増加 BA.5で感染拡大の懸念も”専門家会合(NHK)第89回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード3.コロナの影響で国保と後期高齢者医療広域連合は大幅黒字/厚労省厚労省は2020年度の国民健康保険の財政状況を発表した。新型コロナウイルスの感染拡大以降、医療機関に支払われる保険給付費が減少したため、支出は前年度比3.5%減少して保険料収入を下回った。これにより単年度の実質収支は+2,054億円と過去最大の黒字となった。同時に2020年度の後期高齢者医療制度の財政状況についても公表し、収支は前年度より4,600億円あまり増加し、8,219億円の黒字となっている。(参考)市町村国保でも2020年度はコロナ感染症の影響で大幅黒字、積立金は1兆3257億円に増加―厚労省(Gem Med)後期高齢者医療広域連合、8,200億円超の黒字 20年度 受診控えで保険給付費大幅減、厚労省(CB news)4.100倍のモルヒネ処方、業務上過失致死の疑いで医師と薬剤師を書類送検必要とされる量の100倍のモルヒネを誤って処方し、高齢患者をモルヒネ中毒死させたとして、警視庁は、武蔵国分寺公園クリニックの女性医師と調剤にあたった薬剤師を業務上過失致死容疑にて書類送検した。患者は93歳の男性で、昨年2月に呼吸困難のためクリニックの在宅診療を受け、この医師からモルヒネの内服薬を処方された。薬剤師から渡された薬を服用したところ、約1週間後にモルヒネ中毒により死亡した。クリニックによれば、遺族とはすでに示談が成立しており、また事故の詳細については 一般社団法人 日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)に詳細な報告書を提出している。(参考)93歳に必要量100倍のモルヒネ処方 容疑の医師と薬剤師書類送検(朝日新聞)モルヒネ中毒で男性死亡 業務上過失致死の疑い 医師ら書類送検(NHK)報道の件について(武蔵国分寺公園クリニック)5.在宅医銃殺事件のふじみ野市、「殺意や危険を感じた」スタッフが複数埼玉県ふじみ野市で、今年1月に患者家族が在宅医療を担当していた医師を射殺した事件で、さいたま地検は1日、容疑者を殺人や殺人未遂などの罪で起訴した。この事件を受け、地元の東入間医師会が在宅医療や訪問介護を行っている事業所を対象に調査した結果、介護従事者への殺意をほのめかす家族に遭遇したり、包丁を向けられるなど危険を感じたことがあるという回答が複数寄せられていたことが判明した。在宅医療や介護の安全を確実に守るため、行政命令の規定や罰則が必要とする意見も上がっている。(参考)在宅医療や介護で「危険感じた」医師ら殺傷事件受け調査 埼玉(NHK)医師殺害の罪、男起訴 埼玉の立てこもりで地検(日経新聞)6.部下を眠らせ自宅に連れ込んだ美容CL院長、強制わいせつ容疑で逮捕美容整形クリニックの女性職員が、上司に当たる医師に睡眠薬を飲まされて自宅でわいせつ行為を受けたとして、警視庁捜査1課は準強制性交等とわいせつ目的略取の疑いで「ミッドクリニック」の院長を逮捕した。女性職員が院長と会食した後、院長の自宅に連れこまれ、わいせつ行為を受けたと警視庁に相談して被害が発覚した。被害者の体内からは睡眠薬の成分が検出されている。竹沢容疑者の周辺からは警察に同様の被害相談があり、同課が調べている。(参考)部下に睡眠薬飲ませわいせつ 容疑で美容外科医逮捕(産経新聞)部下に睡眠薬でわいせつ行為か 美容整形クリニック院長を逮捕(NHK)

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抗菌縫合糸の使用でSSI発生率低減~日本人大腸がん患者での大規模研究

 外科手術後の閉鎖創におけるトリクロサンコーティングによる抗菌縫合糸と非コーティング糸とを比較した手術部位感染症(SSI)予防効果について、ランダム化比較試験やメタ解析などでその有用性について検討されてはいるが、各種ガイドラインでも条件付き推奨でとどまるものが多い。大阪大学の三吉 範克氏ら大阪大学消化器外科共同研究会大腸疾患分科会は、開腹/腹腔鏡下大腸がん手術における予防効果を評価するため、多施設共同前向き研究を実施。Journal of the American College of Surgeons誌2022年6月号に報告した。抗菌縫合糸の使用はSSIの発生を2.53%減少し有意な効果・対象:大腸がん(CRC)に対する待機的手術を受けた20 歳以上の患者・治療:切開後の腹部筋膜閉鎖にトリクロサンコーティングによる抗菌縫合糸もしくは非コーティング縫合糸を使用・主要評価項目:SSI発生率・副次評価項目:入院期間、外科的合併症の発生率 トリクロサンコーティングによる抗菌縫合糸の手術部位感染症予防効果を評価した主な結果は以下のとおり。・2016年7月22日~2019年7月16日に国内24施設から2,207例の患者が組み入れられ、適格基準を満たした患者に対し、傾向スコアマッチングの手法を用いて2:1の割合で抗菌縫合糸群に926例、非抗菌縫合糸群に653例が割り付けられた。・ベースライン時点での年齢中央値は両群で68歳、術式は抗菌糸縫合群で腹腔鏡93%/ロボット支援4%/開腹3%、非抗菌縫合糸群で腹腔鏡96%/ロボット支援2%/開腹2%だった。・主要評価項目のSSI発生率は、抗菌縫合糸群で4.21%、非抗菌縫合糸群6.74%だった(p=0.028)。・重篤な有害事象の発生は報告されなかった。・ロジスティック回帰分析により、いくつかの因子がSSI発生に影響することが示された:抗菌縫合糸(オッズ比[OR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.40~0.99、p=0.046)、糖尿病(OR:1.81、95%CI:1.07~3.07、p=0.026)、白血球数(OR:1.14、95%CI:1.01~1.28、p=0.046)、手術時間(OR:1.64、95%CI:1.01~2.67、p=0.046)、術中合併症(OR:6.06、95%CI:1.03~35.75、p=0.047)。・副次評価項目である入院期間と外科的合併症の発生率は、両群間で統計学的な差はみられなかった。・6つの第III相試験を含む4,797例に今回の研究を含めたメタ解析の結果、非抗菌縫合糸と比較したトリクロサンコーティングによる抗菌縫合糸はSSI予防において有意な優越性を示した(OR:0.71、95%CI:0.53~0.95、p=0.0195)。 著者らは、全体のSSI発生率は5.55%であり、SSIが依然として一般的で未解決な課題であることが示唆されたとしたうえで、トリクロサンコーティングによる抗菌縫合糸の使用はSSIの発生を2.53%減少し、有意な効果を示したと結論付けている。

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