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COVID-19陽性者のメンタルヘルスに対するヨガの効果

 COVID-19パンデミックは、社会全体にストレス、不安、うつ病の増加をもたらした。とくにCOVID-19の検査で陽性となった人々では、メンタルヘルスやウェルビーイングへの影響が大きい。インド工科大学デリー校のNitesh Sharma氏らは、COVID-19の影響を受けた患者のストレス、不安、うつ病の軽減に対するヨガ介入療法の有効性を評価するため、COVID-19病棟における準ランダム化比較試験を実施した。また、COVID-19の影響を受けた患者のSpO2と心拍数の測定も実施した。その結果、ヨガ介入療法は、COVID-19陽性者のストレス、不安、うつ病の軽減に対し、実践可能な介入である可能性が示唆された。International Journal of Yoga Therapy誌2022年1月1日号の報告。 対象のCOVID-19陽性者62例を、従来の治療のみを行う対照群(31例)と従来の治療に50分間のヨガ介入療法を追加するヨガ介入群(31例)にランダムに割り付けた。隔離期間の開始時および終了時に、標準化されたHospital Anxiety and Depression Scale(HADS)、7項目一般化不安障害質問票(GAD-7)、こころとからだの質問票(PHQ-9)、知覚されたストレス尺度(Perceived Stress Scale)による評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・ヨガ介入群では、ストレス、不安、うつ病の有意な軽減が観察された。・対照群では、不安の有意な軽減が認められたが、ヨガ介入群の減少率のほうがより大きかった。・ヨガ介入群では、酸素飽和度、心拍数レベルの有意な改善が認められたが、対照群では有意な改善は認められなかった。

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輸血してもヘモグロビンが低下!DHTRの可能性は?【知って得する!?医療略語】第17回

第17回 輸血してもヘモグロビンが低下!DHTRの可能性は?輸血後、数日してから副作用が起きることがあるんですか?遅発性の副作用があり、今回はその1つであるDHTRを見てみましょう≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】DHTR【日本語】遅発性溶血性輸血副作用【英字】Delayed Hemolytic Transfusion Reaction【分野】輸血関連【診療科】全診療科【関連】急性溶血性輸血副作用AHTR(Acute Hemolytic Transfusion Reaction)実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。貧血患者さんに赤血球輸血をしても、思うようにヘモグロビン濃度が上昇しないばかりか、むしろ低下する場合があります。こんな時、筆者は輸血の原因が出血疾患であれば、出血の持続、大量輸液による血液希釈、輸血量の相対的不足を考えがちです。しかし、輸血をしてもヘモグロビンが上昇しない、あるいは低下する時には、「遅発性溶血性輸血副作用(DHTR:delayed hemolytic transfusion reaction)」の可能性を想起する必要があります。DHTRは発熱や貧血、溶血所見を来すとされますが、輸血後24時間以降に発症するため、患者さんの症状や検査所見と輸血イベントの関連性に気が付き難い可能性があります。臨床現場では採血手技的に伴う「溶血」に遭遇することは多々あり、輸血を要する患者さんが感染症などを合併し、発熱することも日常茶飯事です。むしろ感染症や慢性炎症のために消耗性貧血を来し、赤血球輸血をすることも多々あります。このため、輸血して数日経ってから生じる「溶血」や「発熱」と聞いても、輸血副作用を連想することが難しいのではないかと想像します。そんな見逃されやすい要素を持つDHTRですが、2013年に前川氏が「輸血療法とその副作用―見逃されている臨床病態」として取り挙げていたので、共有したいと思います。遅発性溶血性輸血副作用DHTR : delayed hemolytic transfusion reaction【概略】輸血の遅発性副作用の1つ輸血後24時間以降に生じる輸血の溶血性副作用ほとんどは2度目以降の輸血で発症(初回輸血例は稀)【病態】過去に輸血や妊娠で赤血球に対する同種抗体を産生した既往(感作)がある場合、対応抗原陽性の赤血球が輸血されると、抗原刺激によりメモリーB細胞が数日で抗赤血球抗体を急速産生する(二次免疫反応)。この抗体と赤血球が反応し溶血反応が起きる。溶血は主に血管外溶血(まれに血管内溶血)。なお、一次免疫応答による溶血が起きるケースが稀にあり、この場合は輸血後10~20日に発症するとされる。【頻度】輸血5,000~1万回に1回【発症】輸血後24時間以降(典型例は輸血後3~14日)【症状】発熱・黄疸・悪寒・倦怠感・血尿(血色素尿)・掻痒感【検査】貧血(ヘモグロビン濃度低下)・球状赤血球・総ビリルビン上昇・LDH上昇【予後】軽度な溶血例~死亡例まであり【補足】過去の輸血や妊娠による同種抗体は、年月が経つと測定感度以下に低下することがあり、この場合は不規則抗体検査や交差適合試験では同種抗体は検出できないことがある。このためDHTRを完全防止するのは難しいとされる。1)前川 平. 日内会誌. 2013;102:2433-2439.2)前川 平ほか.臨床血液. 2008;22:1306-1314.3)澤部 孝昭ほか. 日本輸血学会雑誌. 1993;39:974-978.4)安全な輸血療法ガイド5)日本輸血・細胞治療学会 輸血療法委員会 輸血副作用対応ガイド6)日本赤十字社HP 医薬品情報-溶血性副作用7)小林航太ほか. 仙台市立病院誌2017;37.39-42.

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新規抗体薬litifilimab、皮膚エリテマトーデスの疾患活動性を改善/NEJM

 皮膚エリテマトーデス患者の治療において、血液樹状細胞抗原2(BDCA2)のヒト化モノクローナル抗体製剤litifilimabはプラセボと比較して、治療開始から16週間後の皮膚疾患活動性の改善効果が優れ、有害事象の発生状況は同程度であることが、米国・ペンシルベニア大学のVictoria P. Werth氏らが実施した「LILAC試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年7月28日号で報告された。世界54施設の無作為化第II相試験 LILAC試験は、皮膚エリテマトーデス患者の治療におけるlitifilimabの有効性と安全性の評価を目的とする16週の二重盲検無作為化プラセボ対照第II相試験であり、2016年10月~2019年11月の期間に、アジア、欧州、中南米、米国の54施設で参加者の登録が行われた(米国Biogenの助成による)。 対象は、年齢18~75歳、全身症状の有無にかかわらず、生検で組織学的に皮膚エリテマトーデスと確定され、活動性の皮膚エリテマトーデス(皮膚エリテマトーデス疾患面積・重症度指数-活動性[CLASI-A]尺度[0~70点、点数が高いほど活動性が高い]のスコアが8点以上)を有する患者であった。 被験者は、litifilimabの3つの用量(50mg、150mg、450mg)またはプラセボを、0週、2週、4週、8週、12週目に皮下投与する群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、ベースラインから16週までのCLASI-Aスコアの変化の割合(%)とされた。用量反応モデルを用いて、4群における反応の有無が評価された。また、安全性の評価も行われた。より大規模でより長期の試験が必要 132例が登録され、litifilimab 50mg群に26例(平均年齢43.3歳、女性77%)、同150mg群に25例(43.6歳、80%)、同450mg群に48例(44.0歳、75%)、プラセボ群に33例(43.4歳、91%)が割り付けられた。各群のベースラインの平均CLASI-Aスコアは、それぞれ15.2点、18.4点、16.5点、16.5点であった。全身性エリテマトーデス(SLE)を併存する患者が、それぞれ42%、48%、42%、42%含まれた。 CLASI-Aスコアのベースラインから16週までの変化率の最小二乗平均(LSM)は、litifilimab 50mg群が-38.8%、150mg群が-47.9%、450mg群が-42.5%、プラセボ群は-14.5%と、いずれも改善されたが、プラセボ群では改善の程度が小さかった。 したがって、16週時におけるCLASI-Aスコアのベースラインからの変化率の、プラセボ群との差のLSMは、litifilimab 50mg群が-24.3ポイント(95%信頼区間[CI]:-43.7~-4.9)、150mg群が-33.4ポイント(-52.7~-14.1)、450mg群は-28.0ポイント(-44.6~-11.4)であった。3つの用量とプラセボについて最適な用量反応モデルを用いて主解析を行ったところ、いずれの用量でも、プラセボとの比較で有意な効果が確認された。 一方、副次エンドポイントの多くは、主解析の結果を支持しなかった。 有害事象は、litifilimab群(3用量群99例)の72%、プラセボ群の67%で発現し、多くは軽度~中等度であった。頻度の高い有害事象として、鼻咽頭炎(litifilimab群10%、プラセボ群6%)、頭痛(9%、9%)、注射部位紅斑(9%、3%)、SLE(7%、12%)、関節痛(6%、6%)、上気道感染症(6%、3%)などが認められた。重篤な有害事象は、litifilimab群が7例(7%)、プラセボ群は3例(9%)で発現した。 litifilimab群では、過敏症が3例、口腔ヘルペス感染症が3例、帯状疱疹感染症が1例でみられ、litifilimabの最終投与から4ヵ月後に1例で帯状疱疹髄膜炎が発生した。 著者は、「皮膚エリテマトーデスの治療におけるlitifilimabの効果と安全性を明らかにするには、より大規模でより長期の試験を要する」としている。

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「BA.1対応型」で10月接種開始予定、小児へのワクチンは「努力義務」に変更/厚労省

 オミクロン株対応ワクチンについて、本邦では10月半ば以降、初回接種を完了したすべての住民を対象に接種を開始することを想定して「BA.1対応型」2価ワクチンの導入を進めることが、8月8日に開催された第34回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会で了承された。また同会では、小児(5~11歳)の新型コロナワクチン接種について現行の取り扱いを変更し、努力義務の適用とすることも了承された。「BA.1対応型」ワクチンの導入が了承された背景 ファイザー社およびモデルナ社では、「オミクロン株対応ワクチン」(オミクロン株のスパイクタンパクを成分として含んだワクチン、従来型ワクチンとの2価ワクチンを含む)を開発中であり、6月28日のFDA諮問委員会に臨床試験等の結果を報告している。ただし、これらの結果はBA.1の成分を含むワクチンについてであり、FDAはBA.4/5の成分を含む2価の追加接種用ワクチンの開発を検討するよう、両社に勧告している。 これらの状況を受け7月22日、「新型コロナワクチンの製造株に関する検討会」が立ち上げられ、本邦での導入にむけた同ワクチンの構成について議論がなされた結果、まずはいち早く利用可能となる「BA.1対応型」を選択すべきではないかとの見解が示された。その理由として、現在の主な流行株はオミクロン株となっていることから、利用可能なオミクロン株対応ワクチンによる接種になるべく早く切り替えることが妥当であると考えられること、現在までに示されたデータの範囲内では、従来型ワクチンと比較して、ワクチンに含まれる成分と異なる亜系統のオミクロン株に対しても中和抗体価の高い上昇が見られ、オミクロン株に対するより高い有効性が期待されることなどが挙げられた。 「BA.1対応型」ワクチンについて、現時点で報告されている臨床試験結果は以下のとおり。ファイザー社・18~55歳対象、BA.1対応単価ワクチン(30μg) BA.1に対する中和抗体価(従来型と比較して)1.75倍※1・56歳以上対象、従来株+BA.1対応2価ワクチン(15μgずつ) BA.1に対する中和抗体価(従来型と比較して)1.56倍※1 BA.4/5に対する中和抗体価はBA.1に対する上昇よりは低い・56歳以上対象、従来株+BA.1対応2価ワクチン(30μgずつ) BA.1に対する中和抗体価(従来型と比較して)1.97倍※1 BA.4/5に対する中和抗体価はBA.1に対する上昇よりは低いモデルナ社・18歳以上対象、従来株+BA.1対応2価ワクチン(25μgずつ) BA.1に対する中和抗体価(従来型と比較して)1.75倍※1 BA.4/5に対する中和抗体価(接種前と比較して)5.44倍※2※1:幾何平均比、※2:幾何平均上昇倍率 なお、ファイザー社は8月8日のプレスリリースにおいて、従来株+BA.1対応2価ワクチンの承認申請を行ったことを発表した。同ワクチンは生理食塩水での希釈が不要なRTU 製剤とされている。小児に対する有効性・安全性のエビデンスが蓄積、「努力義務」へ 小児(5~11歳)に対する新型コロナワクチンの本邦での取り扱いについて、前回議論された2月10日時点では、小児におけるオミクロン株の感染状況(感染者、重症化の動向)が確定的でないことや、オミクロン株についてはエビデンスが必ずしも十分ではないことから、努力義務の規定は小児について適用しないこととされていた。しかし、この半年の間に海外および国内でのエビデンスが蓄積されている。 有効性について新たに報告されたデータとしては、オミクロン株流行下における、小児に対するワクチンの発症予防効果としては、2~4週間後 60.1%、5~8週間後には28.9%との報告があり、入院予防効果については、2回接種後約60日までで約80%の有効性を認めたとの報告がある。 安全性については、米国での約1,600万回の接種についての大規模解析において、安全性に関する懸念は認められておらず、2回目接種後7日間の追跡で認めた副反応は12~15歳よりも頻度が少なく、接種後の心筋炎の報告率は、12~15歳および16~17歳の男性における報告率より低いと報告されている。国内においても、約270万回の接種について、重大な懸念は認められていない。 複数の委員から「努力義務」という言葉の意味(義務とは異なり接種は強制ではなく、最終的には、あくまでも本人が納得した上での判断を促すもの)を丁寧にわかりやすく示す必要があるという指摘があったが、そのうえで、「努力義務」に変更することが了承された。

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オミクロン株対応2価ワクチンを国内承認申請/ファイザー

 ファイザー社は8月8日付のプレスリリースで、オミクロン株対応の新型コロナウイルスワクチンを厚生労働省に承認事項一部変更申請を行ったことを発表した。今回申請したワクチンは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の起源株と、オミクロン株BA.1系統のスパイクタンパク質をそれぞれコードする2種類のmRNAを含む2価ワクチンで、生理食塩水での希釈が不要なRTU製剤となっている。 同社の2価ワクチンの効果については、6月25日付の米国でのプレスリリースによると、56歳以上を対象とした第II/III相試験において、現行のワクチンと比較してオミクロン株BA.1に対して大幅に高い中和抗体反応を示し、中和抗体価の幾何平均比(GMR)は、2価ワクチン30μgで1.56(95%信頼区間[CI]:1.17~2.08)、60μgで1.97(95%CI:1.45~2.68)であった。追加接種から1ヵ月後では、オミクロン株BA.1に対する中和幾何平均抗体価(GMT)が、30μgで9.1倍、60μgで10.9倍に追加接種以前より増加した。 なお、オミクロン株BA.4/BA.5に対しての効果は、56歳以上の被験者の血清で試験したSARS-CoV-2ライブウイルス中和アッセイによると、BA.1の約3分の1の力価でBA.4/BA.5を中和したという。 オミクロン株対応ワクチンについては、ファイザー社とモデルナ社が現在複数の種類の開発を進めている。厚生労働省は8月8日の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会において、まずはいち早く利用可能となるBA.1対応型の2価ワクチンを導入するのが妥当であるという方針を示した。薬事上の承認が成された場合、9月中に輸入を開始し、10月半ば以降には接種を開始できる見込みという。

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コロナ感染後の心筋梗塞・脳卒中発生率、ワクチン接種者vs.未接種者/JAMA

 韓国・国民健康保険公団(National Health Insurance Service)のKim Young-Eun氏らが、新型コロナウイルス感染後のワクチン接種状況と急性心筋梗塞(AMI)および虚血性脳卒中との関連を調査した。その結果、新型コロナ感染後の急性心筋梗塞および虚血性脳卒中の発生率の増加は、血栓症のリスク増加に関連しており、ワクチンを完全接種することでワクチン接種が感染後の二次合併症のうちAMIおよび虚血性脳卒中のリスク低下に関連していることが明らかになった。JAMA誌オンライン版2022年7月22日号リサーチレターに掲載。ワクチン接種状況によるコロナ感染後の急性心筋梗塞および虚血性脳卒中の発生率 研究者らはワクチン未接種者とワクチン完全接種者(mRNAワクチンまたはウイルスベクターワクチンを2回接種)の新型コロナ感染後の急性心筋梗塞および虚血性脳卒中の発生率を比較した。研究には韓国の全国新型コロナレジストリ(感染と予防接種に関する)と国民健康保険公団のデータベースが使用された。対象者は2020年7月~2021年12月に無症候性感染を含む新型コロナと診断された18歳以上の成人。主要評価項目は新型コロナの診断から31~120日後に発生した急性心筋梗塞と虚血性脳卒中による入院の複合アウトカムとした。 新型コロナウイルス感染後のワクチン接種状況と急性心筋梗塞および虚血性脳卒中との関連を調査した主な結果は以下のとおり。・研究期間中の新型コロナ患者59万2,719例のうち、23万1,037例が該当した。そのうち6万2,727例はワクチン接種を受けておらず、16万8,310例はワクチン完全接種をしていた。・ワクチン完全接種者は年齢が高く、併存疾患を有する者が多かった。その一方で、新型コロナの重症例はみられなかった。・複合アウトカムの発生は、ワクチン未接種群で31例、ワクチン完全接種群で74例であり、100万人日あたりの発生率はそれぞれ6.18と 5.49だった。また、調整ハザード比[aHR]は0.42(95%信頼区間[CI]:0.29~0.62)とワクチン完全接種群で有意に低かった。・急性心筋梗塞と虚血性脳卒中それぞれのaHRもワクチン完全接種群で有意に低かった(0.48[同:0.25~0.94]vs. 0.40[同:0.26~0.63]。・年齢区分で見た場合、40~64歳のaHRは0.38(同:0.20~0.74)、65歳以上では0.41(同:0.26~0.66)だった。・ただし、ワクチン接種者の転帰イベントリスクは全サブグループで観察されたものの、重症または重篤患者の一部では統計学的有意差が得られなかった。 本調査結果は「心血管疾患の危険因子を持つ人々へのコロナワクチン接種を支持する。しかし、患者の特徴にばらつきがあり、予防接種を受けるかどうかの決定には心血管リスクに関連する可能性のある複数の因子の影響を受ける」としている。コロナワクチン接種と心疾患 7月25日に開催された疾病・障害認定審査会 感染症・予防接種審査分科会でコロナワクチン接種と「死亡」との因果関係が初めて認められた1)。これまでもアナフィラキシーなどが理由で請求が認定されたのは850件にのぼるが、死亡一時金が支払われるのは今回が初めて。認定事例は90代女性で、死因は急性アレルギー反応と急性心筋梗塞。基礎疾患として脳虚血発作、高血圧症、心肥大を有していた。このようなニュースが報道されると心疾患のある方がコロナワクチン接種をためらってしまいそうだが、第7波の爆発的に感染が広がりいつ自分が感染してもおかしくない状況下では、上記の論文を踏まえ、ワクチンの推奨はやはり大切なのかもしれない。

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第111回 限りある医療資源を有効活用するため、発熱外来のガイダンス発表/4学会

<先週の動き>1.限りある医療資源を有効活用するため、発熱外来のガイダンス発表/4学会2.紙レセ医療機関等以外はオンライン資格確認システムを義務化、早めの申し込みを/厚労省3.医療機関の宿日直許可申請についてFAQを都道府県に通知/厚労省4.コロナ感染の発生届け一部項目を簡略化、抜本的改正は秋の国会後に/厚労省5.子宮頸がん9価ワクチンの定期接種は問題なし/厚労省6.インフレで電気代3割増、ガス代6割増/四病協1.限りある医療資源を有効活用するため、発熱外来のガイダンス発表/4学会新型コロナウイルス感染症(第7波)が全国へ急速に拡大しているため、多くの医療機関において救急外来・発熱外来の逼迫、救急車の受け入れ困難事例の多発している状況を改善させるために、関連4学会(日本プライマリ・ケア連合学会、日本救急医学会、日本臨床救急医学会、日本感染症学会)では厚生労働省とも意見交換を行った上、医学的な立場から救急外来/救急車の利用および発熱外来受診にあたっての指針を発表した。この中で、症状が軽い場合は、65歳未満で基礎疾患や妊娠がなければ、あわてて検査や受診をする必要はなく、自宅療養とし、医療機関を受診することは避ける。また救急車の利用の目安については「救急車利用リーフレット(高齢者版、成人版、子供版)」を活用することも求めている。厚生労働省は8月4日、各自治体に対し、日本感染症学会など4学会が軽症なら受診を控えるよう呼びかけた緊急声明を参考にするよう通知した。(参考)「限りある医療資源を有効活用するための医療機関受診及び救急車利用に関する4学会声明」公表にあたって(日本感染症学会)発熱外来「パンク状態」 受診の目安は? 医療逼迫改善へ例示(東京新聞)コロナ感染、厚労省も「軽症なら受診控えて」 学会声明を追認、自治体に通知 「37.5度4日以上」の目安は除外(同)「65歳未満で軽症・基礎疾患なし」は受診控えて 厚労相(日経新聞)2.紙レセ医療機関等以外はオンライン資格確認システムを義務化、早めの申し込みを/厚労省厚生労働省は、顔認証付きカードリーダーの2023年4月からの原則義務化を決めた。現在、医療機関・薬局に無償配布しており、全医療機関・薬局の61%が申し込み済み(7月24日時点)となっている。まだ対応していない約4割の医療機関・薬局について、2023年4月からの原則義務化に対応するためには、カードリーダーのメーカーは受注生産であり、申し込みから配送までに4ヵ月程度が必要なため、「遅くとも9月ごろまでに、顔認証付きカードリーダーを申し込む必要がある」とした。(参考)オンライン資格確認カードリーダー、9月までに申し込みを 厚労省、23年4月からの義務化に向け(CB news)オンライン資格確認等システム、2023年4月から紙レセ医療機関等以外は「原則、導入義務」へ-中医協総会(2)(Gem Med)3.医療機関の宿日直許可申請についてFAQを都道府県に通知/厚労省厚生労働省は、医療機関の宿日直許可申請について8月1日に全国の都道府県や病院団体に向けて「医療機関の医師の宿日直許可に関する取扱いについて」とする事務連絡を行った。これは令和6年度から医師に対する時間外労働の上限の適用について、各医療機関が医師の宿日直許可の申請をするにあたって必要な情報として提供をした。内容には宿日直許可された事例や申請前のチェックリストなど含んでおり、医師の時間外労働規制について対応が必要な医療機関は参考にされたい。(参考)医療機関の宿日直許可申請、「FAQ」を都道府県に周知 厚労省(Medifax)医療機関の医師の宿日直許可に関する取扱いについて(厚労省)4.コロナ感染の発生届け一部項目を簡略化、抜本的改正は秋の国会後に/厚労省新型コロナウイルスの感染拡大により、医療機関や保健所で業務が逼迫しているとして、全数把握を見直す意見が上がっているが、後藤茂之厚生労働相は5日の閣議後会見で、秋の国会以降になるとの見通しを示した。また、厚労省は、現場の負担軽減のため、重症化リスクが低い患者の発生届では、患者の診断日、ワクチン接種回数などの入力項目を削除すると発表したが、「健康フォローアップセンター」などを都道府県の設置が条件であり、根本的な改正にはまだ時間がかかる見込み。(参考)コロナ発生届け出簡略化、診断日など不要に 現場の負担軽減へ、厚労省(CB news)コロナ患者の全数把握見直し、厚労相「法改正して」 秋の国会以降か(朝日新聞)患者の全数把握、医療現場を圧迫 政府、簡素化で急場しのぎ(毎日新聞)5.子宮頸がん9価ワクチンの定期接種は問題なし/厚労省子宮頸がんなどを起こすヒトパピローマウイルス(HPV)の9種類の遺伝子型に対応した「9価ワクチン(商品名:シルガード9)」の定期接種化について、厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会において、科学的に問題はないとする結論を出した。今後、専門部会でワクチンの開始時期や対象などを議論し、実施していく見通し。(参考)第82回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和4年度第8回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会子宮頸がん9価ワクチン、科学的に「問題なし」 厚労省(日経新聞)9価ワクチン定期接種「問題なし」 厚労省小委、HPVめぐり結論(中日新聞)6.インフレで電気代3割増、ガス代6割増/四病協四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)は8月3日、会員病院を対象に調査を実施し、その中間報告を発表した。ウクライナ情勢などにより、電気代やガス代が高騰し、前年同期に比べて電気料金の1キロワットアワー当たりの単価が約3割上昇し、都市ガス料金の単価も57.5%も上がり、病院経営に影響を与えているとした。これより先だつ6月23日に四病院団体協議会、可及的速やかな財政措置の充実を求める要望書を萩生田光一経済産業相に「医療機関における光熱費(電気・ガス・燃料)に関する要望」を提出した。(参考)3-5月の電気料約3割増、四病協調べ 都市ガス料金は約6割増(CB news)病院の光熱費、使用量の減少・微増にもかかわらず、前年に比べ「2-6割のコスト増」に-四病協(Gem Med)「医療機関における光熱費(電気・ガス・燃料)に関する要望」

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未接種者とブレークスルー感染者、臨床転帰と免疫の違いは?

 国内における新型コロナ感染流行の第7波においては、ワクチン接種後の感染、いわゆるブレークスルー感染も多数報告されている。ワクチン接種を受けた感染者の大半は軽症か無症状だが、入院を要する者もいる。ワクチン接種者またはワクチン未接種者で新型コロナ感染により重症化した患者について免疫および臨床的特徴を調べたイタリア・フローレンス大学のGiulia Lamacchia氏らの研究がJournal of Clinical Immunology誌2022年7月9日号オンライン版に掲載された。ワクチン未接種の新型コロナ感染者は有意に高い重症度指数を示した 本試験では、2021年11月~12月中旬のデルタ株の流行時に、イタリア・フィレンツェのカレッジ大学病院に入院した新型コロナウイルス感染症患者を、発症からの期間や重症度に関係なく対象とし、臨床データおよび検査データを収集した。ウイルスベクターまたはmRNAワクチンを完全接種した患者36例(うち4例はブースター接種まで完了)、ワクチン未接種者29例だった。最後のワクチン接種から感染までの平均時間は139±63日であった。 ワクチン接種者またはワクチン未接種者で新型コロナ感染により重症化した患者の症状を調べた主な結果は以下のとおり。・ワクチン接種群の平均年齢は73歳、ワクチン非接種群は67歳だった。入院時、ワクチン接種群は併存疾患がワクチン未接種群と比較して有意に多かった(平均4.3 vs. 2.9)。一方で、ワクチン未接種群はワクチン接種群と比較して血清フェリチン値、乳酸脱水素酵素(LDH)が有意に上昇していた。肺機能障害、他の炎症マーカー(反応性タンパク質、IL-6、Dダイマー)レベルについては両群間に有意差はなかった。・ワクチン未接種者群はワクチン接種群に比べ、有意に高い重症度指数を示した。肺炎の発症率はワクチン未接種群93%(27/29)に対し、ワクチン接種群69%(24/36)、死亡率はワクチン未接種群31%(9/29)、ワクチン接種群11%(4/36)であった。・ワクチン接種の有無にかかわらず、生存例(52例)と死亡例(13例)の入院時の抗SARS-CoV-2免疫を比較したところ、抗N IgGおよび抗S IgMは両群間に差がなかったが、抗S IgGおよび中和Igは生存例で有意に高かった(生存例は死亡例よりも高いレベルの抗S IgGとスパイク特異的CD4+T細胞を示した)。・新型コロナ感染入院時、65例中6例(9.2%)が高い抗IFN-α抗体価を示した。6例中の5例が男性で、女性は最年長者(90歳)のみであった。平均年齢は79歳で、他のコホートの平均年齢70歳よりも高かった。高抗IFN-α抗体保有者6例のうち、ワクチン未接種群の3例は死亡し、ワクチン接種群の3例は生存して退院した。 著者らは「ワクチン接種者はワクチン未接種者より入院前の身体状態が不良であったにもかかわらず、転帰は良好であった。抗SARS-CoV-2特異的免疫の迅速な活性化は、感染症の治癒のために不可欠であり、ワクチン接種による事前の免疫獲得は疾患の悪化防止に大きく貢献し、高リスク因子(高齢、合併症、抗IFN-α自己抗体)の存在さえも克服することが可能である」としている。

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第120回 コロナ第7波も行動制限したがらない岸田首相の意外な行動記録

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の第7波が始まってからのSNS空間はもはや阿鼻叫喚と言って良い。外来がパンクし、疲弊していることを訴える医療従事者に対して「そんなの(感染症法上)の5類にすれば解決する」「感染者が増えても重症者が増えていないのだから騒ぎ過ぎ」「医療やメディアが煽ってきた結果」と無責任に言い放つ一般人との応酬だ。しかも、後者の論理に一部の文化人や医師免許を持つ人たちが組しているため、ぱっとSNS上を見るとそちら側が優勢に見える瞬間もある。正直、見ているこちら側は溜息しか出てこない。そもそも感染症法上の分類を5類に変更したところで現状のような医療逼迫が解決するわけではない。確かに全数把握がなくなることで保健所のひっ迫は解消するかもしれないが、「5類なんだからどこの医療機関でも見てくれる」と勘違いした一般人が近隣の医療機関に押し寄せ、混乱するだけだろう。そして読者の皆さんには釈迦に説法だが、5類になったところでクラスターを起こしやすく、重症化リスクのある人以外に特化した治療薬がない新型コロナを診察する医療機関は増えないだろう。もし一般のクリニックなどに無理やり診察させれば、動線確保などのクラスター防止対策の結果、新型コロナもそれ以外の患者も恐る恐る最低限しか受け入れなくなる。結局、「医療逼迫の構図になる」という想像もしたくない事態に陥る可能性は十分にあり得る。しかし、この現在のSNSのような状況がなぜ起こるのか。私見では現在の政治、有り体に言えば岸田政権があまりにも無策過ぎるとしか思えないのである。今回、第7波到来を最初に明言したのは内閣の下に設置された新型コロナウイルス感染症対策本部の諮問機関「新型コロナウイルス感染症対策分科会」会長の尾身 茂氏である。尾身氏は7月11日に首相官邸を訪問して岸田 文雄首相と面会後、記者のぶら下がりに応じて「1回落ち着いてきたものが、新たな波として来ていることは間違いない」と語った。当初、行動制限は必要ないと語っていた尾身氏だが、あまりの感染急拡大を受けて7月14日に開催された分科会がまとめた「第7波に向けた緊急提言」には「次頁に示すような取組をしっかりと行い、医療のひっ迫等の回避を目指すが、それでもひっ迫が生じる場合には、人々の行動や接触を抑えるような施策も選択肢の一つとなりうる」という一文がひっそり盛り込まれていた。この2年間、新型インフルエンザ等特別措置法に基づく「緊急事態宣言」と「まん延防止等重点措置」があまりにも乱発されたことに国民がややうんざりしていること、さらに経済への打撃が大きいことに相当配慮したのだろう。ちなみにこの文言で触れた「次頁に示すような取組」とは、(1)ワクチン接種の加速化(2)検査のさらなる活用(3)効率的な換気の提言(4)国・自治体による効率的な医療機能の確保(5)基本的な感染対策の再点検と徹底である。個々の詳細は原典に譲ることにする。では、これを受けて政府は今何をしているのか? 提言がまとめられた14日夜の岸田首相の記者会見では、まず第6波までを乗り越えた対応力を全面的に展開することで「新たな行動制限は現時点では考えていない」と断言。新たに医療従事者と高齢者施設の従事者約800万人を対象とした4回目接種の開始を発表するとともに、現在の感染の中心となり、3回目のワクチン接種率の低い30代までの若年層へワクチン接種を呼びかけた。さらに全国約1万3,000ヵ所の無料検査拠点で帰省前などに検査を受けられることや、主要な駅や空港などで100ヵ所以上の臨時の無料検査拠点を整備する方針も示した。しかし、提言に盛り込まれた(3)~(5)はいずれも軽く触れたのみだ。原典に当たればわかるように、換気に関して分科会はかなり具体的な対策を提示している。しかし、会見で岸田首相が言及したのは、「重ねてお願いになりますが、とくにこの夏は冷房で籠もりがちになる室内、飲食店内での十分な換気をお願いいたします」の一言のみ。もっとも大所高所からモノを語らなければならない岸田首相の口から会見でそこまで細かく語ることは必ずしも必要ないとの意見もあるだろう。それには一定程度同意する。ならば各閣僚を通じて省庁など関係各方面に情報発信の強化を指示すればよい。しかし、内閣官房が運営する「新型コロナウイルス感染症対策」、厚生労働省(以下、厚労省)の「新型コロナウイルス感染症情報」そして「政府広報」のいずれのページにもこの点に関して新たな記載はない。また、岸田首相が会見で新型コロナ関連の中で多くの時間を割いたワクチン接種についても、明らかに発信量が足りていない。会見では若年層の3回目接種率の低さを挙げて、若年でも重症化や後遺症のリスクはあることから、自分だけでなく家族や高齢者を守るためにも接種するように呼び掛けている。しかし、そもそも3回目接種に消極的な若年層は、接種する意味を理解できていないことに着目しなければならない。「あなた方は接種率が低いから…」という理由のみで進んで接種してくれるほど甘くはない。ならばこそ、3回目接種の効果などをグラフを使って説明するなど、もう一工夫が必要なのである。もちろんそれだけで若年層の接種率がぐんと伸びるとは言えないが、説明が足りていないことは明らかである。実際、政府広報にある岸田首相自らの呼びかけ動画も会見での語り以上のものはない。そしてSNSを見ればわかることだが、そもそも現時点はワクチンに関してかなり疑念が渦巻いている。端を発したのは、厚労省がワクチン接種歴ごとの陽性率集計で、接種歴不明者を未接種者に含めて集計をしていた事件だ。これを集計し直した結果、人口当たりの陽性率はわずかながら未接種よりも2回接種済みで留まっている人のほうが高くなった。読者の皆さんはよくおわかりのことだが、これで示された差は2回目接種のほうが高いと言っても有意差があるレベルではないし、半年も経てばワクチンの感染・発症予防効果がほぼなくなるのはすでに明らかになっている。ただ、一般人は後者をうっすらと理解していても、前者についての理解はないと言って良い。見た目の数字が高いことだけに着目してしまっている。そもそも論に立てば、この接種区分ごとの陽性率のデータは、あまりにも交絡因子や接種歴不明者が多過ぎてワクチンの効果そのものを議論するデータとしては使えない。ところが厚労省は一時期、このデータをワクチンの効果を示唆するものとして使った“前科”もあってか、この件について十分な説明をしていないという現実もある。いずれにせよワクチン接種については単に呼びかけるだけでなく、効果や疑念に応える積極的な情報発信が改めて必要な段階にあるということを、政府をはじめとする公的機関が再認識すべきなのだ。さらに言えば、こうした情報発信を強化しながら、最も政府がしたくないであろう「行動制限」をオプションとして準備していることぐらいは示しても良いのではないだろうか? 「伝家の宝刀」を使う英断とそのタイミングも重要だが、チラ見せにも一定の効果がある。感染拡大時にはそういう選択肢もありうると言及することで、これを嫌うであろう一般人の感染対策見直しには一定の効果も期待できるだろう。もっとも新聞の首相動静を見ていると、岸田首相が「行動制限」に踏み込みたくないのはご自身の行動を制限されたくないからなのではないかとも勘繰ってしまう。尾身氏の第7波発言以降も、日本料理の「千羽鶴」「新ばし金田中」「赤坂浅田」「山里」、フランス料理店「日比谷パレス」に「レ セゾン」、イタリア料理「IL RISTORANTE LUCA FANTIN」やステーキ店「ウルフギャング・ステーキハウス」「ピーター・ルーガー・ステーキハウス 東京」と、庶民もうらやむような飲食店で自民党や政権の幹部、各界有力者と会食を繰り返している。最近の感染動向の主流が、福祉施設、高齢者福祉施設、学校・教育施設などでのクラスターやそれに伴う家庭内感染であることは確かである。しかし、感染主流株がオミクロン株のBA.5に変化しようとも、いまだ会食の席での感染リスクが高いことに変わりはない。そのことを岸田首相も知らぬはずはないだろう。必要な情報の発信も不十分なまま、感染リスクの高い行動を続ける首相を目にして国民は感染対策を抜かりなくやってくれるだろうか。山火事がどんどん延焼を続けているにもかかわらず、部下の消防士に適当な消火作業を指示し、自らは消防署から外出して路傍で火遊びをする消防署長。言っては悪いが今の岸田首相はそんな感じである。

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4回目接種、感染予防は限定的だが重症化・死亡に高い効果

 国内ではワクチン4回目接種の対象が医療者等に拡大されたが、接種が先行する海外では4回目接種の有効性の検証が行われている。世界に先駆けてワクチン接種を開始したイスラエルにおいて、施設に入居する高齢者を対象とした4回目接種の有効性を見たコホート試験の結果が、JAMA Internal Medicine誌オンライン版6月23日号に掲載された。ワクチン4回目接種の感染に対する重症化の予防率は67% 本試験はオミクロン株による感染が主流となった2022年1月10日~3月31日にイスラエルで実施され、当時の接種対象となった60歳以上で、高齢者施設に入居または通所している人を対象とした。BNT162b2(ファイザー製)のワクチン3回接種者と4回接種から7日以上経過した者を対象とし、COVID-19の感染、入院、死亡の累積発生数を比較した。 ワクチン4回目接種の有効性を検証した主な結果は以下のとおり。・781施設の4万3,775例(平均[SD]年齢80.1[9.4]歳、女性2万9,679例[67.8%])のデータを解析した。ワクチン4回接種群が2万4,088例(55.0%)、3回接種群(4ヵ月以上前に接種)が1万9,687例(45.0%)だった。ワクチン4回接種群は3回接種群と比較して、高齢(平均[SD]年齢82.3[8.7]歳 vs. 77.3[9.5]歳)で、日常生活動作に最大限のまたは全面的な介助を必要とする入居者の割合は両群間でほぼ同じであった(16.3% vs.15.3%)。・ワクチン4回接種群の追跡期間中央値は73日(IQR:6日)、3回接種群73日(IQR:56日)であった。ワクチン4回接種群4,058例、3回接種群4,370例でSARS-CoV-2感染が検出された(累積発生率、17.6% vs. 24.9%)。・軽症から中等症の入院発生率はワクチン4回接種群0.9% vs. 3回接種群2.8%、重症化0.5% vs.1.5%、死亡0.2% vs. 0.5%であった。・ワクチン4回目接種の調整後の予防率は、感染全体34%(95%CI:30%~37%)、軽症~中等症の入院64%(95%CI:56%~71%)、重症化67%(95%CI:57%~75%)、関連死亡72%(95%CI:57%~83%)であった。 著者らは、「ワクチン4回目接種は、オミクロン株に対して高齢者のCOVID-19入院および死亡に対する高い抑制効果をもたらしたが、感染に対する予防効果は限定的であった。本研究で得られたオミクロン株に対するワクチン4回接種の推定効果は、デルタ株に対する3回接種の効果[感染全体89%、入院および死亡に対して92%~96%]より低く、これはオミクロン株の高い免疫逃避に起因していると考えられる。これらの知見は今後の感染対策に役立つものだ」としている。

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コロナワクチン、医師はいくらまで払う?/1,000人アンケート

 第7波の到来により、医療者へもコロナワクチン4回目接種が始まった。6月にCareNet.comが会員医師に行った『ワクチン4回目接種、あなたは受けたい?/会員医師1,000人アンケート』の結果によると、回答者の7割が接種したいと回答していた(対象となったらすぐに接種したい:33%、対象となったら時期をみて接種したい:36%)。コロナワクチンがいくらなら妥当かを調査 ところで、コロナワクチン接種は現時点では全額公費負担(厚生労働大臣の指示に基づき国の負担により実施することを踏まえ、全国統一の単価で接種1回あたり2,070円[消費税については、定期接種の予防接種と同様の取り扱い。ワクチン代はワクチンを国が確保し供給するため含まれていない1)])であり、自分の懐が痛むことはない。だが、将来的に新型コロナワクチン接種が定着した場合は自己負担になる可能性が高く、もしも費用負担が発生したら、医師も接種を控えたいと考えるのだろうか。さらには、ほかのワクチンとの兼ね合いを考慮した適正価格や、患者負担の許容範囲はいくらが妥当と捉えているのだろうかー。 そこで、今回『コロナワクチンが自己負担になったら、いくらなら妥当?』と題し、会員医師1,000人を対象に、以下の項目について調査を実施した。・コロナワクチンが自己負担/保険診療になった場合、受けたいか否か・コロナワクチン1回あたりの自己負担額とその理由・自身の患者がコロナワクチン接種を受ける場合、1回あたりいくらまでなら受けるか・コロナワクチンは、将来的に年に何回接種することになるか(予想回数)コロナワクチン自己負担…接種したい医師が減少 Q1「コロナワクチンが自己負担もしくは保険診療になった場合、受けたいと思いますか?」では、受けたいと回答したのは60%と、4回目接種希望者アンケートと回答者が異なるものの、自己負担に抵抗を感じている医師が一定数いることが明らかになった。なかでも、“受けたくない”との回答が最多だったのは30代で、わからないとの回答者も合算すると48%と約半数にのぼった。コロナワクチンを受けるなら中央値は2,500円 続いて、Q2「ご自身がコロナワクチン接種を受ける場合、自己負担がいくらまでなら受けたいと思いますか?(1回あたりの金額)」では、Q1の受けたくない・わからないの回答者も含むため、0円(33%)の回答者が最も多かった。次に3,000~4,000円未満(26%)、5,000円以上(15%)と続いた。0円(無料)を希望したのは20~40代が多く、その理由として以下のようなコメントがあった。・効果が限定的だから(20代、糖尿病・内分泌内科)・副反応がきついため(30代、消化器科)・基礎疾患のある者が受ければよい(30代、外科)・4回目以降のデータがまだ不完全(40代、呼吸器科)・コロナワクチンの効果と副反応のバランスに疑問があるため(40代、放射線科)なかには「お金をもらっても受けたくないです(30代、精神科)」と言う声も。年齢層が低いほど副反応が出やすいため、20~40代では上記のような意見が多くみられた。コロナワクチン、いくらまでなら患者は受けるか Q4「ご自身の患者さんがコロナワクチン接種を受ける場合、いくらまでなら受けると思いますか?(1回あたりの金額)」では、3,000~4,000円未満(30%)との回答者が最も多く、中央値は3,000円だった。インフルエンザワクチンの場合、全国平均は3,500円との試算があり、それに準ずる金額にすることで、多くの患者さんに打ってもらいたいと考える傾向にあった。コロナワクチン接種回数、医師の観測的希望は1~2回 ウイルス変異によるコロナワクチンの効果などにはまだまだ未知なる点が多いため、観測的希望に過ぎないが、将来の接種回数を現時点の印象から伺ったところ、「2回」が41%と最も多かった。 オミクロン株亜種であるBA.4および BA.5が猛威を振るい、これまで接種したコロナワクチンの有効性を疑問視する声もあるため、本結果ではワクチンの継続接種に難色を示す方もいた。だが、ファイザー社やモデルナ社(オミクロン株に対する2価追加接種ワクチン候補mRNA-1273.214)のオミクロン株対応ワクチンが今秋にも導入されると言われており、コロナワクチンの将来性に期待したい。アンケートの詳細は以下のページで公開中。『コロナワクチンが自己負担になったら、いくらなら妥当?』<アンケート概要>目的:新型コロナワクチンに自己負担が発生した場合、これまで通りに接種を希望するかどうかなどを調査するため。対象:ケアネット会員医師1,000人調査日:2022年7月15日方法:インターネット

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コロナ禍で医療資源確保のために国民へのお願い/4学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波の流行拡大が深刻な様相を呈している。発熱外来には連日長蛇の受診者がならび診療予約の電話が鳴りやまない。また、救急搬送は大都市圏で稼働率9割を超え、受け入れ先医療機関の不足や長い待機時間などが大きな問題となっている。 こうした事態を鑑み、日本感染症学会(理事長:四柳 宏)、日本救急医学会(代表理事:坂本 哲也)、日本プライマリ・ケア連合学会(理事長:草場 鉄周)、日本臨床救急医学会(代表理事:溝端 康光)の4学会は連名で「限りある医療資源を有効活用するための医療機関受診及び救急車利用に関する4学会声明」を8月2日に急遽発表した。 声明では、COVID-19に罹患したと思われる際の個々人の行動について、軽症で重篤化リスクのない人については、自宅療養を勧めるとともに、救急車を利用する際の指針について示している。COVID-19かなと思ったら?【声明の4つのポイント】1)症状が軽い*場合は、65歳未満で基礎疾患や妊娠がなければ、あわてて検査や受診をする必要はありません。自宅療養を続けられます。この場合、新型コロナウイルス専用の特別な治療は行いません。医療機関での治療は、つらい発熱や痛みを和らげる薬が中心になり、こうした薬は薬局などで購入できます。限りある医療資源を有効活用するためにも、検査や薬のためにあわてて医療機関を受診することは避けてください。 *症状が軽いとは「飲んだり食べたりできる、呼吸が苦しくない、乳幼児で顔色が良い」2)症状が重い**場合や、37.5℃以上の発熱が4日以上続く場合、65歳以上の方や65歳未満でも基礎疾患がある方、妊娠中、ワクチン未接種の方などは、重症になる可能性があります。早めにかかりつけ医に相談してください。高熱が続くなど症状が長引いたり、重くなるようでしたら、かかりつけ医や近隣の医療機関へ必ず相談、受診(オンライン診療を含む)してください。 **症状が重いとは「水分が飲めない、ぐったりして動けない、呼吸が苦しい、呼吸が速い、乳幼児で顔色が悪い、乳幼児で機嫌が悪くあやしてもおさまらない」3)救急車を呼ぶ必要がある症状は、顔色が明らかに悪い、唇が紫色になっている、(表情や外見などが)いつもと違う、様子がおかしい、息が荒くなった、急に息苦しくなった、日常生活で少し動いただけで息苦しい、胸の痛みがある、横になれない、座らないと息ができない、肩で息をしている、意識がおかしい(意識がない)などがあります。このようなときには救急車を呼ぶことをためらわないでください。4)救急車の利用の目安については「救急車利用リーフレット(高齢者版、成人版、子供版)」をご活用ください。 判断に迷う場合には、普段からの体調を把握しているかかりつけ医への相談、各種相談窓口(行政などが設置している発熱相談窓口や♯7119などの救急安心センター・救急相談センター、♯8000)などの活用をしてください。7項目で診療集中の弊害を説明 上記の診療を受ける、救急車を利用する前のポイントを踏まえ、解説として7項目のCOVID-19のとくにオミクロン株に関する疾患情報やリスクの高い場合の対応を記している。以下に抜粋して示す。【オミクロン株にかかったときの自然経過】・オミクロン株への曝露があってから平均3日で急性期症状(発熱・喉の痛み・鼻水・咳・全身のだるさ)が出現するが、そのほとんどが2~4日で軽くなること。・COVID-19の検査を受けることは大切だが、検査を受けることができなくてもあわてないで療養(自宅での静養)することが大切。・重症化する人の割合は数千人に1人程度と推定(厚生労働省資料より)。【COVID-19を疑う症状が出た場合】・COVID-19の症状(発熱・のどの痛み・鼻水・咳・全身のだるさなど)が出た場合は、まず仕事や学校を休んで外出を避け、自宅療養を始める。【症状が軽く65歳未満で基礎疾患がない場合、妊娠中でない場合】・症状が軽く(飲んだり食べたりできて、呼吸が苦しくない、乳幼児で顔色が良い)、基礎疾患がない場合や妊娠がない場合は、検査や薬のためにあわてて医療機関を受診をする必要はない。・COVID-19専用の特別な治療は行わない。つらい発熱や痛みを和らげる薬(アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬)が治療の中心で、このような薬は薬局など(ドラッグストアやインターネット販売も含む)で購入できる。・限りある医療資源を有効活用するためにも、検査を目的とした医療機関の受診は避ける。・市販の医療用抗原検査キットを使い、症状が出た翌日以降に自分で検査することもできるが、症状が出た当日に検査をすると新型コロナウイルスに感染しているのに陰性になる可能性が高いため、翌日以降の検査をお勧めする。【症状が重い、発熱が4日以上、65歳以上、基礎疾患がある場合、妊娠中の場合】・症状が重い(水分が飲めない、ぐったりして動けない、呼吸が苦しい、呼吸が速い、乳幼児で顔色が悪い、乳幼児で機嫌が悪くあやしても治まらない)場合や、37.5℃以上の発熱が4日以上続いている場合は、医療機関への受診(オンライン診療を含む)が必要。・たとえ症状が軽くても、65歳以上の方、基礎疾患がある方や妊娠中の方、ワクチン未接種の方などは、重症になる可能性があるので、早めにかかりつけ医に相談。・熱が続くなど症状が長引いたり、重くなるようだったら、かかりつけ医や近隣の医療機関に必ず相談、受診(オンライン診療を含む)。・次の主な重症化のリスク因子がある方は受診が必要。〔主な重症化のリスク因子〕65歳以上の高齢者/悪性腫瘍(がん)/慢性呼吸器疾患(COPDなど)/慢性腎臓病/糖尿病/高血圧/脂質異常症/心臓や血管の病気/脳梗塞や脳出血など脳血管の病気/高度肥満(BMIが30以上)/喫煙(ヘビースモーカーの場合)/固形臓器移植後の免疫不全/妊娠後期/免疫抑制・調整薬の使用/HIV感染症(参考:厚生労働省 新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き 第8.0版を改変)【医療機関への受診について】・医療機関に受診が必要な場合は、通常診療中の時間帯(平日の日中など)に、かかりつけ医や近所の医療機関に電話相談してから受診。【救急車の利用の目安について】・COVID-19により救急車を呼ぶ必要がある症状としては、顔色が明らかに悪い、唇が紫色になっている、(表情や外見などが)いつもと違う、様子がおかしい、息が荒くなった、急に息苦しくなった、日常生活で少し動いただけで息苦しい、胸の痛みがある、横になれない、座らないと息ができない、肩で息をしている、意識がおかしい(意識がない)などがある。このようなときには救急車を呼ぶことをためらわない。 以上、国民向けの内容であるが、外来診療などの際に患者さんにお伝えすることで、現在の診療への集中化の緩和につながればと期待する。

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第5回 発熱外来に飛び交う怒号

「何かあったら責任取ってくれるんですか」発熱患者さんが増えているということもあるのですが、「医療」よりも「診断」を求めて発熱外来を受診している人が多く、医学的に本来受診すべき人が満足に受診できない状況があるようです。雇用者が発熱外来の受診を指示したり、職場を休む場合に証明書が必要だったりすることもあり、非医学的な受診を求めるケースが相次いでいます。そのため、無症状や軽症者の受診を控えるよう呼び掛けている自治体もあります。濃厚接触者が自宅待機期間の解除のために発熱外来を利用するというのは、モラルハザードにもほどがあります。もちろん、待機解除を容認した政府や、記事で広めたわれわれのリスクコミュニケーションにも責任はあるかもしれません。しかし、鶴の一声で一気にそういう流れが進むわけではなく、発熱外来を受診できない人や、その待ち時間が長い人から、医療従事者に厳しい言葉が浴びせられています。国民皆保険制度の弊害なのか、自分や自分の家族が優先的に診てもらえないことに対して怒りが収まらず、「何かあったら責任取ってくれるんですか」などの言葉が、多忙な発熱外来ではお決まりのフレーズになってきました。パンデミック初期の頃は、PCR検査が全然普及しておらず、4日以上発熱が続く場合に病院を受診するという施策でした。若年者層ではそこまで肺炎のリスクは変わっていないので、あの時を思い出していただきたいと思います。陽性登録から療養までの仕組みづくりが急務まずは陽性であったときの報告を、感染者自身が行う仕組みを作る必要があります。厚労省は、自らが検査した陽性結果を自治体の健康フォローアップセンター等に登録し、外来受診を経ることなく迅速に療養につなげる仕組みを導入することを勧めるよう通達を出しています1)。実際にこれを導入している千葉県がモデルケースとして紹介されています(図)。画像を拡大する図. 千葉県の健康フォローアップセンター活用例千葉県新型コロナウイルス感染症検査キット配付・陽性者登録センターについて(2022年8月3日最終更新)より引用東京都も、これと似た運用を8月3日から開始しています2)。とはいえ、オンラインに慣れていない年齢層もあるため限界がありますが、My HER-SYS(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム)から療養証明が取得できることを周知し3,4)、これを企業等が活用することが重要です。解決策はピークアウトを待つことか医療従事者の感染が増えています。発熱外来の医療従事者が感染すると、病棟のスタッフを応援に出す必要があるなど、真綿で首を絞められるような弊害が出てきます。とくに国公立病院は、すでに自治体から発熱外来の拡充を要請されていると思います。なおさら医療従事者としては感染しにくい状況にあり、危機感を持って診療に当たっているところも多いでしょう。8月中に訪れると予想される、いや、むしろそう祈っている流行曲線のピークアウトを待つしかないのかもしれません。早く来てください。参考文献・参考サイト1)千葉県新型コロナウイルス感染症検査キット配付・陽性者登録センターについて2)東京都福祉保健局 東京都陽性者登録センター3)厚生労働省 新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)4)My HER-SYSで療養証明書を表示する場合の方法

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CPB心臓手術、4%アルブミン溶液投与の効果は?/JAMA

 心肺バイパス術(CPB)による心臓手術を受ける患者において、心肺バイパス用プライミング液と術中・術後の静脈内充填液として、4%アルブミン溶液の投与は酢酸リンゲル液投与と比べ、術後90日の主要有害イベントリスクを有意に低下しなかった。フィンランド・ヘルシンキ大学のEero Pesonen氏らが、1,407例を対象に行った二重盲検無作為化試験の結果を報告した。心臓手術において、アルブミン溶液はクリスタロイドよりも血行動態を維持し、血小板数と体液過剰を抑制する可能性が示唆されていたが、手術に伴う合併症軽減に有効なのか、これまで無作為化試験は行われていなかった。著者は結果を踏まえて「CPB心臓手術を受ける患者における4%アルブミン溶液の使用を支持する所見は得られなかった」とまとめている。JAMA誌2022年7月19日号掲載の報告。死亡、心筋傷害、急性心不全などの主要有害イベント発生率を比較 研究グループは2017~20年にかけて、ヘルシンキ大学病院単施設で試験を行った。on-pump冠状動脈バイパス術(CABG)、大動脈弁・僧帽弁・三尖弁術、低体温循環停止を伴わない上行大動脈術、および/またはメイズ手術のいずれかを実施した患者を対象とし、術後90日追跡した(最終フォローアップは2020年4月13日)。 被験者を1対1の割合で無作為に2群に分け、心肺バイパス用プライミング液と術中・術後24時間までの静脈内充填液として、一方の群には4%アルブミン溶液を、もう一方の群には酢酸リンゲル液を投与した(各群ともに693例)。 主要アウトカムは、主要有害イベント(死亡、心筋傷害、急性心不全、再開胸、脳卒中、不整脈、出血、感染症、急性腎障害)の1つ以上の発生とした。有害イベント発生率、アルブミン群37%、リンゲル群34% 無作為化された1,407例のうち、1,386例が試験を完了した(男性1,091例[79%]、女性295例[21%])。アルブミン群の同溶液投与量中央値は2,150mL(四分位範囲[IQR]:1,598~2,700)で、リンゲル群の同投与量中央値は3,298mL(2,669~3,500)だった。 1つ以上の主要有害イベントの発生は、アルブミン群257/693例(37.1%)、リンゲル群234/693例(33.8%)だった。リンゲル群に対するアルブミン群の相対リスクは、1.10(95%信頼区間[CI]:0.95~1.27、p=0.20)、絶対群間差は3.3ポイント(95%CI:-1.7~8.4)だった。 最も多く発生した重篤な有害イベントは、肺塞栓症(アルブミン群11例[1.6%]、リンゲル群8例[1.2%])、心膜切開術後症候群(両群ともに9例[1.3%])、ICU入室または再入院を伴う胸膜滲出液(7例[1.0%]、9例[1.3%])だった。

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コロナによる嗅覚・味覚障害が長期持続する人の割合~メタ解析/BMJ

 成人の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による嗅覚・味覚障害の長期持続者は、それぞれ5.6%と4.4%に認められ、女性は男性に比べ、両障害ともに回復しにくい傾向がみられるという。180日回復率は、嗅覚障害が95.7%、味覚障害は98.0%だった。シンガポール国立大学のBenjamin Kye Jyn Tan氏らによるシステマティック・レビューとメタ解析の結果で、「COVID-19患者のかなりの割合で、長期にわたり嗅覚や味覚に変化を生じる可能性があり、このことがlong COVID(罹患後症状、いわゆる後遺症)の負荷を増す可能性も示唆された」と述べている。BMJ誌2022年7月27日号掲載の報告。嗅覚と味覚障害を有するCOVID-19患者の観察研究を抽出 検討では、PubMed、Embase、Scopus、Cochrane Library、medRxivを創刊から2021年10月3日まで検索し、18歳以上で嗅覚または味覚障害を有するCOVID-19患者を対象にした観察研究を抽出した。time-to-event曲線を含む記述的予後研究と、予後因子に関する試験を分析対象とした。 データの抽出は2人のレビュアーがそれぞれ行い、試験のバイアスについてはQUIPS(Quality In Prognosis Studies)を、エビデンスの質(確実性)についてはGRADEを用いて評価し、さらにPRISMAとMOOSEの報告ガイドラインに従って解析した。 反復数値アルゴリズムを用いて、個別被験者データ(IPD)のtime-to-eventを再構築・統合し、distribution-free要約生存曲線(生存を維持した被験者の30日間隔で報告された回復率)を取得した。嗅覚・味覚障害持続者の割合を推算するために、プラトー生存曲線のWeibull non-mixture cureモデルからの治癒数をロジット変換し、2段階メタ解析でプールした。また従来の集計データのメタ解析により、予後因子と回復の補正前の関連性を調べた。 主要アウトカムは嗅覚または味覚障害が残る患者の割合、副次アウトカムは嗅覚・味覚の回復に関連する予後変数のオッズ比(OR)だった。嗅覚・味覚障害持続者の割合は5.6%と4.4% 4,180のレコードから18試験(被験者総数3,699例)を抽出し、IPDメタ解析を行った。バイアスリスクは、低~中等度で、エビデンスの質は中等~高度だった。 パラメトリック治癒モデルでは、全患者のうち自己申告による障害持続者の割合は、嗅覚が5.6%(95%信頼区間[CI]:2.7~11.0、I2=70%、τ2=0.756、95%予測区間[PI]:0.7~33.5)、味覚が4.4%(95%CI:1.2~14.6、I2=67%、τ2=0.684、95%PI:0.0~49.0)と推定された。感度分析では、この結果は過小評価である可能性が示唆された。 30日、60日、90日、180日時点の嗅覚回復率は、それぞれ74.1%(95%CI:64.0~81.3)、85.8%(77.6~90.9)、90.0%(83.3~94.0)、95.7%(89.5~98.3)だった(I2=0.0~77.2%、τ2=0.006~0.050)。同様に味覚回復率は、それぞれ78.8%(70.5~84.7)、87.7%(82.0~91.6)、90.3%(83.5~94.3)、98.0%(92.2~95.5)だった(I2=0.0~72.1%、τ2=0.000~0.015)。 女性は男性に比べ、嗅覚・味覚障害が回復しにくい傾向がみられた。嗅覚回復に関するORは0.52(95%CI:0.37~0.72、7試験、I2=20%、τ2=0.0224)、味覚回復に関するORは0.31(95%CI:0.13~0.72、7試験、I2=78%、τ2=0.5121)だった。嗅覚回復を困難にした要因としては、初期障害が重度であったこと(OR:0.48、95%CI:0.31~0.73、5試験、I2=10%、τ2<0.001)、鼻詰まり(0.42、0.18~0.97、3試験、I2=0%、τ2<0.001)が認められた。

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サル痘予防にKMバイオの天然痘ワクチンを承認/厚生労働省

 厚生労働省は8月2日のプレスリリースで、KMバイオロジクスの天然痘ワクチン(一般名:乾燥細胞培養痘そうワクチン、販売名:乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16「KMB」)に対し、サル痘予防の効能追加を承認したことを発表した。二叉針を用いた多刺法により皮膚にワクチン接種 本ワクチンのサル痘予防の効能追加承認にあたり、添付文書が改訂された。主な追記部分は以下のとおり。<添付文書情報>【効能・効果】痘そう及びサル痘の予防【用法・用量】本剤を添付の溶剤(20vol%グリセリン加注射用水)0.5mLで溶解し、通常、二叉針を用いた多刺法により皮膚に接種する。【接種上の注意】4.副反応(1)重大な副反応1)ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明):ショック、アナフィラキシー(蕁麻疹、呼吸困難、口唇浮腫、喉頭浮腫等)があらわれることがあるので、接種後は観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。(2)その他の副反応(頻度不明)接種局所のほか、接種10日前後に全身反応として発熱、発疹、腋下リンパ節の腫脹をきたすことがある。また、アレルギー性皮膚炎、多形紅斑が報告されている。5.妊婦、産婦、授乳婦等への接種妊娠していることが明らかな者には接種しないこと。妊娠可能な女性においては、あらかじめ約1ヵ月間避妊した後接種すること、及びワクチン接種後約2ヵ月間は妊娠しないように注意させること。授乳婦においては、予防接種上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。6.接種時の注意(2)接種時本剤の溶解に当たっては、容器の栓及びその周囲をアルコールで消毒した後、添付の溶剤0.5mLで均一に溶解する。溶解後に金属の口金を切断してゴム栓を取り外す。二叉針の先端部を液につけワクチン1人分を吸い取る。溶解後のワクチン液は、専用の二叉針で50人分以上を採取することができる。(4)接種方法多刺法:二叉針を用いる方法で、針を皮膚に直角に保ち、針を持った手首を皮膚の上において、手首の動きで皮膚を圧刺する。圧刺回数は、通常、専用の二叉針を用いて15回を目安とし、血がにじむ程度に圧刺する。他の二叉針を用いる場合は、それらの二叉針の使用上の注意にも留意して圧刺すること。接種箇所は、上腕外側で上腕三頭筋起始部に直径約5mmの範囲とする。7.その他の注意(1)本剤接種後に被接種者が接種部位を手などで触り、自身の他の部位を触ることで、ワクチンウイルスが他の部位へ広がる自家接種(異所性接種)が報告されている。また、海外において、本剤とは異なるワクチニアウイルス株を用いた生ワクチン(注射剤)接種後に、ワクチン被接種者から非接種者へのワクチンウイルスの水平伝播が報告されている。接種部位の直接の接触を避け、また触れた場合はよく手指を水洗いすること。(2)WHOより発出されたサル痘に係るワクチン及び予防接種のガイダンスにおいて、サル痘ウイルス曝露後4日以内(症状がない場合は14日以内)に、第二世代又は第三世代の適切な痘そうワクチンを接種することが推奨されている。

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第120回 滋賀医大生3人を強制性交で逮捕・起訴、“エリート”たちがいつまでたってもパーティーを止めない理由とは?

全国知事会、新型コロナを「2類相当」から引き下げるよう訴えこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。日本のオールスターゲームもコロナ感染による出場辞退が続出しものの、なんとか無事終わりました。個人的に楽しめたのは、7月27日に松山で行われた第2戦に登場した日本ハムファイターズの伊藤 大海投手です。伊藤投手は全パの8番手として8回から登板、スピードガンでも計測不能の超スローボールを投げ球場を沸かせました。とくに3人目に対戦した中日ドラゴンズの主砲ダヤン・ビシエド選手には、3球連続でスローボールを投げ、最後は見事レフトフライに打ち取りました。伊藤投手はオールスター選出時、千葉ロッテマリーンズの佐々木 朗希投手の超豪速球を意識してか、「オールスター“最遅”を狙う」と予告していたそうです。マウンドが白煙で見えないくらいになる、マシマシのロジンバックでも有名な伊藤投手の後半戦での好投に期待したいと思います。ちなみに、かつて超スローボールでMLBと日本球界を沸かせた多田野 数人投手は現在、伊藤投手の所属する日ハムで2軍投手コーチを務めています。そんなオールスターが終わったら案の定、「第118回 ランサムウェア被害の徳島・半田病院報告書に見る、病院のセキュリティ対策のずさんさ」でも書いたように、新型コロナウイルス感染症感染症法上の扱いを「2類相当」から「5類」に引き下げようという議論が本格化してきました。7月28日から奈良市で始まった全国知事会では、複数の知事が新型コロナウイルスについて感染症法上の分類を「2類相当」から引き下げるよう訴えました。神奈川県の黒岩 祐治知事は「いつまでも2類相当なら保健所は入院調整や健康観察などをやらねばならない。社会経済活動が止まろうとしている」と述べ、北海道の鈴木 直道知事も「オミクロン型は大半が軽症か無症状。感染者の全数把握について(見直しの)議論を進めることが重要だ」と訴えたとのことです。全国知事会は29日、新型コロナウイルスの感染防止策の緊急提言をまとめ、感染症法上の扱いを見直す方向を示す「ロードマップを早期に示すこと」を政府に求めました。こうした動きを受け、岸田 文雄首相は7月31日、感染症法上の分類を季節性インフルエンザの「5類」に近い扱いへ変える案について、時期や変異の可能性を見極めたうえで「2類(相当)として規定される項目について丁寧に検討していく」と述べました。第7波収束後の2類相当への見直しは、規定路線になりそうです。全国ニュースになりやすい医師のわいせつ事件さて今回は、医師や医学生によるわいせつ事件について書いてみたいと思います。厚生労働省は7月21日、刑事事件で有罪判決を受けるなどした医師と歯科医師計25人の処分を決め、公表しました。医道審議会の答申を受け決定したもので、1人を免許取り消し、計13人を業務停止3年~3ヵ月としました。最も重い免許取り消しの岡山市の医師(70)は非現住建造物等放火罪で既に有罪判決を受けています。医道審議会の処分には例年わいせつ関連の事件を起こした医師が入っていますが、今回は業務停止3年の処分を受けた4人のうち1人が準強制わいせつなどで有罪となった福岡市の医師(46)でした。最近もいくつかのわいせつ関連事件で医師が逮捕されています。警視庁新宿署は7月7日までに、強制性交の疑いで東京・歌舞伎町のクリニック院長で精神科医(52)を再逮捕しています。報道等によれば、20代の女性患者にわいせつな行為をしたとのことです。この精神科医は別の女性患者への傷害罪などで既に起訴されており、逮捕は6回目とのことです。また、7月25日には岡山市で内科・小児科を標榜するクリニックの院長(47)が、小学校でも盗撮をしていた疑いで再逮捕されています。この院長は中学校での健康診断中に女子生徒を盗撮したとして逮捕・起訴されていました。報道等によりますと、押収されたカメラなどからは児童・生徒約280人分の盗撮とみられる動画が見つかったとのことです。ちなみに再逮捕の罪状は、岡山県迷惑行為防止条例違反と、児童ポルノ禁止法違反の疑いです。こうしたニュースを読んで思うのは、医師がこうしたわいせつ事件を起こす比率は非医師に比べ決して高いわけではないのに、いったん事件を起こしてしまえば大きなニュースになるということです。聖職とまでは言いませんが、相当な税金を使って養成される医師ゆえに、世間が求める倫理観や高潔さも高いということなのでしょう。滋賀医大生3人が集団レイプ、一部始終を動画撮影医師になり時間が経つにつれ、その倫理観や高潔さが徐々に損なわれていくのはなんとなく理解できますが、医師の卵(医学生)の段階から高潔さが微塵もないのは大きな問題と言えます。2022年5月には国立大学法人・滋賀医科大学でこんな事件が起きました。滋賀県警大津署は2022年5月19日、滋賀医科大学・医学部6年生のA容疑者(24)と同6年生のB容疑者(24)が、知人の女子大生(21)に強制性交をした疑いで逮捕しました。同月26日には同大学6年生C容疑者(26)も強制性交をした疑いで逮捕しました。その後、大津地方検察庁は6月9日、容疑者3人を女子大生に集団で性的暴行を加えたとして起訴しました。起訴状によると、3人は共謀して女子大生に性的暴行を加え、さらにその一部始終をスマートフォンで動画撮影していたとのことです。役割分担などから事前の計画性が疑われる産経新聞などの報道によれば、事件のあらましは以下のようなものでした。3人は2022年3月15日夜、ほかの大学に通う女子大学生2人と飲食。その後、飲み直すためA被告の自宅マンションに向かいました。途中、B被告と女子大学生1人が飲み物などを買い出しに行きました。2人が買い出しに店に向かったあとの同日午後11時44分ごろ、A被告の自宅マンションのエレベーター内で、被害に遭った女子大学生にA被告が性交に応じるように脅迫。その様子をC被告が携帯電話で動画撮影していたとのことです。さらに、A被告は拒否する女子大学生に対し「身体および自由にいかなる危害をも加えかねない気勢を示して脅迫し」(起訴状記述)、室内に連れ込んで性的暴行を加え、その様子もC被告が動画撮影していたとのことです。買い出しに行っていた2人が戻り、その後、もう一人の女子大学生がA被告のマンションを離れた後も、翌16日午前2時半ごろまで3人の卑劣な犯行は続いたとのことです。報道では、被害者が警察に届け出て、犯行が明らかになったとのことです。また、3人の被告の役割分担などが行われていることから、事前の計画性が疑われるとしています。ちなみに、滋賀医大の3人の学生の容疑である強制性交罪は、かつて強姦罪と呼ばれていたものです(2017年6月に性犯罪に関する刑法の大幅改正で名称変更)。この時の改正で被害者の告訴がなくても起訴することができるようになり(非親告罪化)、法定刑の下限は懲役3年から5年に引き上げられています。滋賀医大はホームページで3度のお詫び滋賀医大は、学生2人の逮捕後、もう1人の逮捕後、そして3人の起訴後の計3回、ホームページに上本 伸二学長のコメントを掲載しています。起訴後の6月9日のホームページのコメントは以下のようなものです。被害に遭われた方とそのご家族、関係の皆様には、あらためて深くお詫び申し上げます。また、学生及び保護者、卒業生、本学関係者の皆さまにおかれましても、ご迷惑とご心配をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます。本学は、引き続き、司法手続に全面的に協力する所存です。また、本日起訴された本学学生3名につきましては、規程に則り、すでに謹慎処分に付し、調査委員会による調査を進めているところであり、今後、裁判の動向を注視しながら、確認できた事実に基づき厳正に対処いたします。本学は、今回の事件を極めて重く受け止めており、二度とこのような事件が起きないよう、再発防止の徹底に全力を挙げて取り組んで参ります。しかし、その後、2ヵ月近く経ちますが、調査委員会による調査結果や再発防止策は公表されていません。常識的に考えれば、謹慎どころか退学処分が妥当と考えられますが、果たして滋賀医大が今後どんな正式処分を下すのか、注目されます。繰り返される医学生による集団レイプ事件それにしてもひどい事件です。この事件については、週刊女性が2022年6月14日号で『起訴状で発覚した“動画撮影” 滋賀・医大生3人が21歳女子大生に性的暴行!エリートたちの「裏の顔」』のタイトルで詳細をレポートしています。同記事よれば、A被告の父親は医師、B被告の両親も医師とのことです。エリート層の子弟の医学生が犯した同様の犯罪ということで思い出したのが2016年に起こった千葉大医学部レイプ事件です。2016年9月に起こったこの事件では、千葉大学医学部5年生(当時)の3人が飲み会で酩酊した女性に集団で性的暴行を加えたとして、集団強姦致傷容疑で逮捕されました。後日、彼らを指導すべき立場だった千葉大学附属病院の研修医も準強制わいせつ容疑で逮捕されています。この事件は、彼らが超有名進学校出身であったことや、犯人の1人が4代続く弁護士家系の出身者だったこともあり、世間の注目を集めました。翌2017年1月に千葉地方裁判所で大学生3人の初公判が開かれ、5月には集団強姦罪で起訴された2人の大学生に懲役4年の有罪判決、準強姦罪で起訴された1人の大学生に懲役3年の有罪判決、準強姦罪で起訴された研修医に懲役2年執行猶予3年の有罪判決が言い渡されています。その後、千葉大学は3人の大学生を放学処分としています。『彼女は頭が悪いから』を学生のテキストに医学部生による類似の事件は慶應義塾大学医学部(1995年)、三重大学医学部(1999年)、東邦大学医学部(2016年)などでも起こっています。刑事事件として表沙汰になったのがこれだけあるということは、被害者が泣き寝入りしたり、お金で解決したりした事件はもっとあるに違いありません。医学部のエリートたちはなぜ、このような事件を繰り返すのでしょう。あるいは医学部だから事件が大きく報じられているのでしょうか。仮にそうだとしても、医学部生による強制性交(強姦)事件は、相当数起こっているのは事実です。「俺たちは女の子にモテて当然の医学部生」というエリート意識が、繰り返されるおぞましいパーティーの根底に流れているのかもしれません。医学部入試の小論文などで、医の倫理に関する問題をいくら出題しても、面接で人柄を見極めようとしても、邪悪で驕り高ぶったこうした若者を完全に排除することは不可能でしょう。滋賀医大が今回の事件を機に、同大で学ぶ医学生に向けて今後どのような教育や指導を行うかわかりませんが、一案として、姫野 カオルコ氏の小説『彼女は頭が悪いから』(文藝春秋)をテキストにするというのはどうでしょう。2016年に起きた東大生5人による強制わいせつ事件をモチーフにしたこの小説は、差別意識の強い東大生の若者たちが、自分より「下位」とみなす女性になぜ性暴力をふるうに至ったかを克明に描いています。若者たち一人ひとりの問題というより、そうした若者を生み出している社会の構造や背景を細かく描いているのが印象的です。滋賀医大の上本学長だけでなく、全国の医学部の学長の皆さんも、ぜひご一読されることをおすすめします。ちなみに姫野氏は滋賀県の出身です。

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ミズイボに、一酸化窒素放出ゲル剤の有効性・安全性を確認

 伝染性軟属腫(MC)の治療として、新規塗布薬の一酸化窒素(NO)放出薬である10.3%berdazimerゲル剤が、良好な有効性と安全性を示し有害事象の発現頻度は低率だったことを、米国・Texas Dermatology and Laser SpecialistsのJohn C. Browning氏らが第III相無作為化試験の結果、報告した。MCは伝染性軟属腫ウイルス(molluscipoxvirus)によって引き起こされる、日常診療でよくみかける持続性で伝染性の高い皮膚感染症で、自然治癒することが多いとされる一方、数ヵ月から数年続く可能性も否定できない。米国では年間約600万人が症状に悩まされ、1~14歳の子供の発生が最も多いと報告されているが、米国FDA承認薬はいまのところないという。わが国でも同様に子供に多く、治療方針は自然治癒を待つものから冷凍凝固療法など外科的処置まで柔軟に選択されている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年7月13日号掲載の報告。 研究グループは、MC治療としての10.3%berdazimerゲル剤の有効性と安全性を評価する第III相多施設共同溶剤対照二重盲検無作為化試験「B-SIMPLE4試験」を、2020年9月1日~2021年7月21日に米国内55クリニック(大半が皮膚科と小児科)で行った。適格被験者は、月齢6ヵ月以上で、3~70個の病変を有するMC患者。性感染によるMCやMCが眼周囲のみに認められる患者は除外した。 患者は、10.3%berdazimerゲル剤または溶剤の塗布治療を受ける群に無作為に割り付けられ、すべての病変表面薄層に1日1回、12週間塗布を受けた。 主要有効性エンドポイントは、12週時点の全MC病変の完全消失であった。安全性と忍容性の評価には、有害事象の頻度と重症度、および局所皮膚反応と瘢痕の評価が含まれた。データ解析は2021年8月31日~9月14日に行われた。 主な結果は以下のとおり。・被験者は計891例で、berdazimer群に444例(平均年齢6.6歳[範囲:0.9~47.5]、男性228例[51.4%]、白人種387例[87.2%])、溶剤群に447例(平均年齢6.5歳[範囲:1.3~49.0]、女性234例[52.3%]、白人種382例[85.5%])が無作為に割り付けられた。・12週時に、intention-to-treat(ITT)集団において病変カウントを行ったのは、berdazimer群88.5%(393例)、溶剤群88.8%(397例)であった。・12週時にMCの完全消失が認められたのは、berdazimer群は32.4%(144例)、溶剤群19.7%(88例)であった(絶対群間差:12.7%、オッズ比[OR]:2.0、95%信頼区間[CI]:1.5~2.8、p<0.001)。・12週時点で、MC消失により治療を中断していた被験者割合は、berdazimer群14.4%(64例)、溶剤群8.9%(40例)であった。・有害事象の発現頻度は低率であった。最も頻度の高い有害事象は、塗布部の痛みと紅斑であったが、大半が軽症であった。・治療中断につながった有害事象の発現頻度は、berdazimer群4.1%(18例)、溶剤群0.7%(3例)であった。・最も多かった局所皮膚反応は、軽症~中等症の紅斑であった。

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2022-23年シーズンのインフル対策に4つの提言/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医科学研究所附属病院長])は、7月26日に同学会のホームページで学会提言として「2022-2023年シーズンのインフルエンザ対策について」(医療機関の方々へ)を公開した。 現在、わが国は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)第7波の真っただ中であるが、インフルエンザについては、国内でCOVID-19の流行が始まった2020年2月以降、患者報告数は急速に減少していた。しかしながら、2021年後半から2022年前半にかけて、北半球の多くの国ではインフルエンザの小ないし中規模の流行がみられていたことから、感染症学会では今回の提言を行うこととなった。インフルエンザ対策に感染症学会の4つの提言1)2022-2023年シーズンは、インフルエンザの流行の可能性が大きい 北半球冬季のインフルエンザ流行の予測をするうえで、南半球の状況は参考になるが2022年は4月後半から報告数が増加し、例年を超えるレベルの患者数となっており、医療の逼迫が問題となっている。今後、海外からの入国が緩和され人的交流が増加すれば、国内へウイルスも持ち込まれると考えられ、わが国においても、今秋から冬には、同様の流行が起こる可能性がある。 一方、過去2年間、国内での流行がなかったために、社会全体のインフルエンザに対する集団免疫が低下していると考えられる。そのため、一旦感染が起ると、とくに小児を中心に大きな流行となる恐れがある。2)A(H3N2)香港型に注意 オーストラリアで本年度に検出されたインフルエンザウイルスのうち、サブタイプが判明したものでは、約80%はA(H3N2)、約20%がA(H1N1)だった。そのため、今シーズンは、わが国でもA(H3N2)香港型の流行が主体となる可能性がある。 そのため今季のA(H3N2)のワクチン株は、オーストラリアのDarwinで分離された、A/Darwin/9/2021 (H3N2)-like virus, clade 3C.2a1b.2a.2(2a.2)が採用された。3)今季もインフルエンザワクチン接種を推奨 今季に流行が予想されるA(H3N2)香港型に対するワクチンの発病防止効果は未知だが、発症してもワクチンによる一定の重症化防止効果は期待でき、欧州では65歳以上の高齢者においてA(H3N2)感染による入院防止率は37%であったと報告されている。 わが国においても、ワクチンで予防できる疾患については可及的に接種を行い、医療機関への受診を抑制して、医療現場の負担を軽減することも重要となる。よって、今季も例年通りに、小児、妊婦も含めて接種できない特別な理由のある人を除き、できるだけ多くの人にインフルエンザワクチンの積極的な接種を推奨する。4)例年通りのインフルエンザ診療が必要 今季、発熱患者では、ワクチン接種歴に関わらずCOVID-19とインフルエンザの鑑別が重要となり、また、両者の合併例も考えられる。したがって、外来診療では両方のウイルスを念頭にいれて、PCR、抗原検査、迅速診断などによる確定診断が必要となる。 検査の進め方については、感染症学会からの提言「今冬のインフルエンザと COVID-19 に備えて」や厚生労働省「新型コロナウイルス感染症診療の手引き(最新 第8.0版)」を参照されたい。 インフルエンザと診断されたときは、抗ウイルス薬による治療を検討することとなる。抗ウイルス薬は、インフルエンザの重症化、死亡率を抑制する。重症化のリスクのある人は当然治療の対象だが、リスクを持たない人でも重症化することがあり、その予測は困難である。 治療の実際については、2021年に感染症学会が発表した提言「今冬のインフルエンザに備えて.治療編〜前回の提言以降の新しいエビデンス」を参照されたい。抗ウイルス薬の耐性の状況については、過去2年間に流行がなかったために、今後の動向を見守る必要がある。

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