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第145回 三重大臨床麻酔部汚職事件、元教授に懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の有罪判決、賄賂は「オノアクト使用の見返りだった」

岸田首相G7広島サミットを意識?今春にもコロナは5類にこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この連載もまもなく3年を迎え150回近くとなりますが、その半分以上は新型コロウイルス感染症に対する国の対応について書いてきたのではないかと思います。そのコロナ対応も、いよいよ大きな転換期を迎えます。岸田 文雄首相が1月20日、新型コロナウイルス感染症感染症法上の分類を、今春から5類に変更する方針を示し、23日から専門家らによる感染症部会で本格的な議論が開始されたためです。昨年11月、感染症法等を改正し、都道府県は地域医療支援病院や特定機能病院などとあらかじめ協定を結び、病床確保や発熱外来といった医療の提供を義務付けることになったばかりですが、5類にすればそうした義務付けから外れることになります。これまでコロナを診てこなかった医療機関も、通常の風邪と同じように診療、入院させるようになると期待されていますが、本当にそうなるでしょうか。コロナ禍の中での多くの医療機関の消極的な対応を見てきた経験から言うと、はなはだ疑問です。あわせて気になったのは、1月19日に日本医師会の松本 吉郎会長が岸田総理と面会し、政府が新型コロナの感染症法上の見直しを行った場合でも、公費負担などを継続するよう要望したことです。報道等によれば松本会長は「患者さんに負担が掛からないように、それから医療機関の感染対応にもできる限り支援を継続していただきたいということをお話しした」と語ったそうです。5類に移行すれば医療費などの公費負担の法的根拠がなくなるのは当然です。なのに「公費負担は続けろ」とは、意味がわかりません。普通の風邪ならば、医療機関を受診したい人や重症化リスクが高い高齢者などは受診し、そうでない人は自力で治す(もともとほとんどの風邪は医療機関を受診しなくても治ります)というのが筋です。公費負担を続けるということは、受診不要と思われる軽症患者まで掘り起こすことになりそうです。医療機関の経営にはプラスでしょうが、結局、無駄な医療費の増加を招くだけではないでしょうか。松本会長の要請に岸田首相は「しっかりと検討したい」と応じたそうです。5月開催予定のG7広島サミットで海外首脳を迎える前に、5類にして屋内のマスク着用も不要にしておきたい、という少々自分勝手な考えもあるのではないでしょうか。未だ、マスク着用がルール化されている先進国は日本くらいだからです(エリザベス女王の国葬の時、日本の天皇陛下のマスク着用が話題となりました)。複数の関係者たちの公判のうち大トリとも言える元教授に判決さて今回は、この連載でも何度(今回で7回目)も取り上げてきた三重大病院臨床麻酔部の汚職事件を取り上げます(「第133回 三重大病院臨床麻酔部事件、元教授に懲役4年の求刑、大学は新教授で再スタート」ほか)。薬剤の積極的な使用や医療機器の納入に便宜を図る見返りに現金を受け取ったなどとして、第三者供賄と詐欺の罪に問われた、三重大学医学部附属病院の臨床麻酔部元教授(56歳)の判決公判が1月19日に津地方裁判所であり、柴田 誠裁判長は懲役2年6ヵ月・執行猶予4年と、元教授が代表理事を務める一般社団法人に追徴金200万円(求刑懲役4年、追徴金200万円)とする有罪判決を言い渡しました。ちょうど新型コロナウイルス感染症が猛威をふるい始めた2020年9月に発覚したこの事件、複数の関係者たちの公判のうち大トリとも言える元教授の判決が出たことで、被告全員の公判が一通り終了したことになります。一連の事件では7人の有罪が既に確定この事件で被告人である元教授は、小野薬品工業が製造・販売する薬剤「ランジオロール塩酸塩(商品名:オノアクト)」を積極的に使う見返りに大学の口座に寄付金200万円を振り込ませたほか、日本光電からも200万円を提供させたとして、第三者供賄罪に問われていました。また、小野薬品のオノアクトを投与したように装い診療報酬を詐取(約80万円)したとする詐欺罪でも起訴されていました。元教授の公判は、他の被告の公判がすべて終わった2022年4月から始まりました。ちなみに、一連の事件では、診療報酬詐取事件で共犯とされた同部の元准教授、医療機器納入を巡る汚職事件で共犯とされた元講師、そして小野薬品の社員2人、日本光電の元社員3人の計7人の有罪が既に確定しています。公電磁的記録不正作出、公電磁的記録供用と詐欺の罪に問われた元准教授には懲役2年6ヵ月・執行猶予4年、第三者供賄罪に問われた元講師には懲役1年・執行猶予3年の判決が下されています。一方、贈賄罪に問われた小野薬品の社員2人には懲役8ヵ月・執行猶予3年、同じく贈賄罪に問われた日本光電の元社員1人には懲役1年・執行猶予3年、元社員2人には懲役10ヵ月・執行猶予3年の判決が下されています。最大の争点はオノアクト採用への元教授の関わり2022年4月から始まり、計14回、6ヵ月にも及ぶ審理を経て、10月に結審した今回の公判、最大の争点はオノアクト採用への元教授の関わりでした。小野薬品を巡る第三者供賄罪について元教授は、「オノアクトの効能に着目して積極的に使用していく方針を採用した」などと主張していました。また、詐欺罪についても無罪を主張し、寄付金の対価性(いわゆる見返り)が認定されるかどうかが争点となっていました。一方で元教授は、日本光電に200万円を振り込ませたとする第三者供賄罪は認めていました。報道等によれば、元教授は公判で「職務権限を利用して対価をもらったことは恥ずかしい」と語るとともに、お金の使い道を「麻酔科医を集めるため。ほとんどを飲食代に充てた」と説明したとのことです。元教授が臨床麻酔部教授に就任して以降オノアクトの処方量急増各紙報道等によれば、同日の判決で津地裁はオノアクトの積極使用と寄付の関連を認め、対価性があったとしています。具体的には、元教授が臨床麻酔部教授に就任して以降オノアクトの処方量が急増したこと、小野薬品の当時のMRの証言から元教授が「寄付金が必要だ頼むよ」「最初に世話になったところは忘れないよ」などと供述したこと、MRが作成した週報に「講演会活動を通じ三重大で『OA(オノアクト)をもっと出すための相談』が行えた。そのもっとを今後具体化していく段階に今後していこう」と記載していたことなどを指摘、「200万円の寄附とオノアクトの処方が密接に関連付けられていた」として寄付金の対価性があったと判断しました。「職務の公正さや社会の信頼を害した程度は大きい」以上を踏まえ、柴田裁判長は判決理由で「寄附金を獲得するためになりふり構わず処方量の増大に突き進んだことは異常というほかなく、職務の公正さや社会の信頼を害した程度は大きいと言わざるを得ない」と指摘。さらに、「使用されずに廃棄される医薬品が大量に生じる歪みを発生させ、診療報酬の搾取につながった」と非難したとのことです。ただ、量刑については「職務の公正さや社会の信頼を害した程度は大きいと言わざるをえないが、前科のない被告人をただちに刑務所に収容するのは重きに過ぎる」などとして懲役2年6ヵ月・執行猶予4年の有罪判決としたとのことです。判決に対し、元教授の弁護士は「判決は不当で、控訴するかどうかは被告人と相談したい」と述べたとのことです。一方、三重大学病院の池田 智明病院長は「有罪判決が下されたことを真摯に受け止めます。今後も信頼回復に向け、全力を尽くします」とのコメントを出しています。新たなスタートを切った三重大麻酔科さて、元教授の逮捕によって、三重大病院の麻酔科は混乱に陥り、地域医療にも多大な影響を及ぼしました。さらに製薬会社が大学などに提供している奨学寄付金の是非についても議論が沸き起こり、奨学寄付金を廃止する動きも広まっているようです。その意味で、元教授は法律では罪に問われない部分でも、さまざまな“罪”を犯していたと言えるでしょう。三重大の麻酔科については、2022年4月には新教授が就任、手術での麻酔を行う「臨床麻酔部」を廃止し、痛みを取り除く治療などを行う「麻酔科」に統合するという組織改編も行われました。また、麻酔の専門医を育成する研修プログラムも2023年度からスタートするとのことです。元教授が控訴すれば、裁判は続くことになりますが、少なくとも三重大病院麻酔科の再スタートは喜ばしいことです。幾多の“黒歴史”から決別し、地域の麻酔科医療を牽引する存在になることを願います。

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オミクロン株の感染爆発のファクターを解明/日本大学ほか

 わが国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第8波の主な感染原因であるオミクロン株。この変異株について、今井 健一氏(日本大学歯学部感染症免疫学講座 教授)らの研究グループは、オミクロン株感染者の唾液中には、宿主細胞の内外に付随していない裸のウイルス(セルフリーウイルス)が、従来株やデルタ株よりも高比率に含まれていることを世界で初めて発見し、JAMA Network Open誌2023年1月9日号に報告した。 細胞に付随しているウイルスと比較すると、セルフリーウイルスはとても小さく軽いため、唾液に覆われた状態でも室内に長時間漂うことができる。オミクロン株では、このセルフリーウイルスの唾液への排出量がデルタ株の2.7倍、従来株の17.8倍と大幅に増加したことが、エアロゾル感染によるCOVID-19の爆発的拡大につながったものと考えられるという。セルフリーウイルスがオミクロン株では従来株の17.8倍 新型コロナウイルスは、口腔内の上皮や唾液腺の細胞に感染し増殖するため、唾液中には多くのウイルスが含まれている。そのため、会話、せき・くしゃみのたびに放出される飛沫や微細なエアロゾルによって伝播され感染が広がる。オミクロン株は、従来株やデルタ株などと異なり、飛沫感染に加えてエアロゾル・空気感染によって伝播するため、現在の爆発的な感染拡大につながったと考えられているが、その仕組みは良くわかっていなかった。今回の研究はこの仕組みを明らかにすることを目的とした。 研究グループでは、新型コロナウイルスは、従来株→デルタ株→オミクロン株とウイルスが変異するのに伴い、唾液中に排出されるウイルスの量自体が多くなっていると推測。また、エアロゾル感染が成立するためには、ウイルスが飛沫に含まれて拡散する状態よりも遠くに飛散し、かつ飛沫よりも長時間室内に漂うエアロゾルに含まれて拡散する状態が必要とも考慮した。 そこで、従来株、デルタ株、およびオミクロン株の感染者から採取した唾液を、全唾液と遠心分離で細胞成分を除いた上澄み液とに分け、それぞれに含まれるウイルス量を定量した。 主な結果は以下のとおり。・従来株では、全唾液1mL中に約123万個(中央値、以下同じ)のウイルスが存在していることがわかった。そのうち、セルフリーウイルスは1mL中に約18万個で、全唾液中のウイルスに占めるセルフリーウイルスの割合は約5.9%だった。・デルタ株では、全唾液1mL中に約1,860万個と従来株に比べて15倍ものウイルスが存在していた。そのうち、セルフリーウイルスは1mL中に約117万個で、全唾液中に占める割合は約4.8%で従来株と類似した値だった。・オミクロン株では、全唾液1mL中にデルタ株の半分強、約952万個のウイルスが存在していた。一方で、セルフリーウイルスは1mL中に約321万個が存在し、デルタ株の2.7倍、従来株の17.8倍と大幅に増加していた。全唾液中に占める割合は約21.3%で、従来株やデルタ株と比較して約4倍もセルフリーウイルスの割合が増加していた。 以上から、唾液中のセルフリーウイルスの量が多ければ、新たな宿主に到達した際に新型コロナウイルスの受容体であるACE2への結合がしやすく、感染効率も自然と高まる。さらに、セルフリーウイルスは細胞付随ウイルスよりも3倍近い速さで新たな未感染の細胞に感染するため、セルフリーウイルスが唾液中に多く含まれることは感染爆発の主要な原因となり得ると考えられた。 同研究グループは、「今回の研究から大規模クラスターが多発している現状を説明し得るものと考えられ、また、感染予防策として換気の必要性と密閉空間でのマスク着用励行の根拠ともなる」と考察している。さらに本研究は、「『エアロゾル・空気感染におけるセルフリーウイルスの重要性を初めて提唱した』という点で重要であり、今後、インフルエンザや麻疹、水痘などの他のウイルス感染症への適応や未知のウイルス感染症が発生した際、そして、ウイルス変異が生じるたびにそのウイルスの性状を知り、感染対策を立てる基本概念として適用される」と展望を述べている。

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厚労省の「解熱鎮痛薬等110番」は供給不足の解決にはならない!【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第104回

 昨年末、厚生労働省に「医療用解熱鎮痛薬等110番」という相談窓口が設置されました。解熱鎮痛薬などを入手できない医療機関や薬局のために設置された供給相談窓口ですが、開始1ヵ月ですでに混乱が生じているようです。厚生労働省が12月14日に開設した医療用薬の「供給相談窓口」(医療用解熱鎮痛薬等110番)に対し、約3週間で薬局や医療機関から500件もの相談が寄せられていることがわかった。(中略)一方、厚労省への相談件数が伸びるほど、卸側の負担は増大していくかたちとなり「お上からの重圧感が強いので対応せざるを得ないが、その後の対応や価格に関するトラブルも出てきている」(広域卸関係者)という。(2023年1月5日 RISFAX)この相談窓口の対象は、発熱外来や新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れている医療機関やこれらの医療機関の処方せんを受け付けている薬局で、かつ下記をすべて満たす必要があります。解熱鎮痛薬、鎮咳薬、トラネキサム酸の在庫が少ない平時に取引のある卸売業者に連絡しても入手が困難である業務に支障を来たすとともに患者に迷惑を掛けてしまう恐れがある全国的に医薬品の供給が不足しているのは言わずもがなの状態で、何も困っていません!と言える薬局は少ないのではないでしょうか。本来であればありがたい話のはずなのですが、この窓口は厚生労働省の中に設置されているため、相談を受け付けても医薬品を製造して出荷することも、納入を早めることもできません。厚生労働省が医薬品調達に窮している薬局などの訴えを聞き、卸売業者へ納入調整を依頼するというものです。調整依頼と言っていますが、厚生労働省から連絡があった卸売業者は、その相談元の薬局などに医薬品を納入せざるを得ない状態になるのではないかと思います。卸売業者も在庫が限られていて精一杯の調整をしている中、厚生労働省がそこにプレッシャーをかけて優先順位を繰り上げるというのは、本質的にはなんの解決にもなっていないのでは…と思うのは私だけではないはずです。医薬品の供給量が減っている一方で、解熱鎮痛薬や咳止め薬などの需要が高まっていることが原因なのに、なぜこのような窓口の設置が解決につながると思ったのかは不思議です。現場としては、どこか別のところにしわ寄せがいく納入調整ではなく、本質的な供給不足の解決や不適切処方に対する対応がとられることを期待したいと思います。

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コロナワクチンの免疫応答、年齢による違い/京大iPS細胞研究所

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチンの個人差・年齢差を検討したところ、65歳以上の高齢者ではワクチン接種後のT細胞応答の立ち上がりが遅い一方、収束は早いという特徴があることを、京都大学iPS細胞研究所の城 憲秀氏らによる共同研究グループが明らかにした。Nature Aging誌 2023年1月12日掲載の報告。 一般に加齢とともに免疫機能が低下することはよく知られているが、T細胞が生体内で刺激を受けた際の応答が加齢によってどのように、またどの程度変化するかは不明であった。そこで研究グループは、ワクチン接種後のT細胞応答や抗体産生、副反応との関連を調査した。 対象は、ファイザー製のSARS-CoV-2mRNAワクチン(BNT162b2)を2回接種した65歳以上の高齢者109人(年齢中央値71歳[範囲:65~81歳]、男性56人)と、65歳未満の成人107人(年齢中央値43歳[同:23~63歳]、男性43人)の計216人であった。血液の採取は、ワクチン接種前、1回目接種から約2週間後、2回目接種から約2週間後、1回目接種の約3ヵ月後の計4回行った。 主な結果は以下のとおり。・SARS-CoV-2のスパイクタンパク質受容体結合ドメインに対するIgG抗体価は、両群ともにワクチン2回接種後に大幅な上昇が見られた。しかし、抗体価のピークの中央値は、成人群で27,200AU mL-1、高齢者群で18,200AU mL-1であり、高齢者群では約40%低かった。・ワクチン特異的ヘルパーT細胞は、両群ともに1回目の接種で大きく増加し、2回目の接種後も同程度を保ち、3ヵ月後に減少した。高齢者群では1回目接種後の増加が成人群よりも少なかったが、2回目接種後に同程度となり、3ヵ月後には再び成人群よりも少なくなった。・2回目接種後の局所的な副反応(接種部位の疼痛)は、高齢者群と成人群で同程度であったが、全身性の副反応(発熱、倦怠感、頭痛)は成人群で有意に多かった。ただし、高齢者群では、解熱鎮痛薬を服用している割合が高かった。・年齢にかかわらず、2回目接種後に38℃以上の発熱があった人では、1回目接種後のT細胞応答と2回目接種後のIgG抗体価が高かった。・ワクチン特異的Th1細胞における、T細胞活性化を抑制するPD-1の発現量は、両群ともに2回目接種後にピークを迎えたが、高齢者群では成人群と比べて有意に多かった。また、PD-1の発現量が多い高齢者では、キラーT細胞の誘導が低い傾向にあり、免疫反応にブレーキがかかりやすくなっている可能性が示唆された。 研究グループは、これらの結果から「高齢者群では、T細胞応答の立ち上がりが遅く、収束が早いことが明らかになった。本研究は、高い有効性を持つワクチンの開発と、高齢者に適したワクチン接種スケジュールの立案に役立つ可能性がある」とまとめた。

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第131回 新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府

<先週の動き>1.新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府2.処方の見返りに奨学寄付金を求めた元教授に有罪判決/三重3.全国の都道府県がん拠点病院、地域がん拠点病院を新たに指定/厚労省4.オンライン資格確認の導入のさらなる促進を/厚労省5.東工大と医科歯科大、統合後の新名称は「東京科学大学」に6.サイバー攻撃の共有・公表ガイダンスをパブリックコメント募集/内閣府1.新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府岸田総理は、感染症法で現在「2類相当」として取り扱っている新型コロナウイルスについて重症化率が2022年夏時点で60歳未満が0.01%、80歳以上でも1.86%と季節性インフルエンザ並みになったとして、麻疹や風疹と同じ「5類」扱いとする方針を固めた。今後は、一般の医療機関でも新型コロナウイルスの患者の受け入れは可能としている。厚生労働省では、ワクチンの公費負担での接種対象を高齢者とするほか屋内でのマスク着用のあり方など、今後の方針について検討を開始している。来週には、専門家からなる厚生科学審議会で今後の方針について議論を行う。(参考)新型コロナ 今春「5類」移行検討 公費負担など本格議論へ(NHK)コロナ「5類」移行、5月の連休前後案も…ワクチン公費負担は高齢者ら限定検討 (読売新聞)コロナ、今春にも「5類」に 首相指示、公費負担縮小へ マスク着用「見直す」(日経新聞)2.処方の見返りに奨学寄付金を求めた元教授に有罪判決/三重三重大学附属病院の臨床麻酔部において、薬の処方の見返りに、奨学寄付金を受け取ったことで、第三者供賄罪と詐欺罪に問われた元教授の被告に対して、1月19日津地方裁判所は、懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の判決を言い渡した。判決によれば、2018年3月に、被告に対して小野薬品工業の薬剤「オノアクト」を大量に発注するように依頼された見返りに、被告が代表を務める一般社団法人に現金200万円を振り込ませた疑い。さらに、2019年から2020年には、手術患者60人あまりに対して、この薬剤を使用したように装って、未投薬にもかかわらず、約82万円の診療報酬を詐取した。被告は、この他に元講師と共謀して日本光電工業(東京都)の医療機器納入で便宜供与の見返りに、一般社団法人の口座に寄付金名目で200万円を振り込ませていた。(参考)三重大病院元教授に有罪判決 薬剤納入で供賄と詐欺罪 地裁判決(毎日新聞)病院汚職200万円は「賄賂」 地裁判決 三重大元教授有罪(読売新聞)三重大病院汚職事件 元教授に執行猶予付き有罪判決(NHK)3.全国の都道府県がん拠点病院、地域がん拠点病院を新たに指定/厚労省厚生労働省は1月19日に「がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」を開催し、昨年「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」からの提言を踏まえて定められた、がん診療連携拠点病院等の整備指針に基づき、2023年4月から「がん診療連携病院」を新たに指定することとした。全国の都道府県がん診療連携拠点病院は一般型49施設、特例型2施設、地域がん診療連携拠点病院は一般型325施設などが指定される見込み。検討会の意見を踏ませて、加藤厚労大臣が指定の手続きを行い、本年4月1日から新たながん診療拠点として指定される。なお、一部の病院では指定要件を充足していないため指定を見送ることも検討されたが、充足の見込みがたっておらず「空白医療圏」となってしまうため指定となった病院もみられた。(参考)都道府県がん拠点病院51施設、地域がん拠点病院350施設など、本年(2023年)4月1日から新指定-がん拠点病院指定検討会(Gem Med)第22回がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会(厚労省)がん診療連携拠点病院の指定要件(同)4.オンライン資格確認の導入のさらなる促進を/厚労省厚生労働省は、1月16日に社会保障審議会医療保険部会を開催し、オンライン資格確認などシステムについて討議を行った。今年4月に施行される保険医療機関・薬局のオンライン資格確認導入の義務化について、令和4年度末時点で「現在紙レセプトでの請求が認められている医療機関・薬局」については、やむを得ない事情があるとして、期限付きの経過措置を設けられたが、猶予期間の延長について、保険者らからは延長を懸念する声が上がった。医療機関・薬局でのオンライン資格確認システムの導入は、顔認証付きカードリーダー申込数は、義務化対象施設では97.7%と高いものの、準備完了は義務化対象施設でも52.6%と伸び悩みがみられていることが明らかになった。国としては、来年秋には、現行の健康保険証がマイナンバーカードに1本化されることもあり、令和5年3月末までのさらなる導入の加速化を図りたいとしている。(参考)第162回社会保障審議会医療保険部会(厚労省)マイナカード、進まぬ活用 医療、免許どうなるか(産経新聞)オンライン資格確認、電子処方箋など医療DXの推進には国民の理解が不可欠、十分かつ丁寧な広報に力を入れよ-社保審・医療保険部会(Gem Med)オンライン資格確認の導入猶予、延長をけん制 社保審・部会で複数委員(CB news)5.東工大と医科歯科大、統合後の新名称は「東京科学大学」に東京工業大学と東京医科歯科大学が2024年に統合されるのを受けて、大学側は新たな大学の名称を「東京科学大学(英語表記:Institute of Science Tokyo)」とすることを1月19日に発表した。両大学は新大学の目指す姿として、「両大学の尖った研究をさらに推進」、「部局などを超えて連携協働し『コンバージェンス・サイエンス』を展開」、「総合知に基づき未来を切り拓く高度専門人材の輩出」、「イノベーションを生み出す多様性、包摂性、公平性を持つ文化」を謳っており、できる限り早期の統合を目指して、今月中に大学設置・学校法人審議会へ提出することを決定している。(参考)新大学名称を「東京科学大学(仮称)」として 大学設置・学校法人審議会への提出を決定(東京医科歯科大学)東工大・医科歯科大、統合後の新名称「東京科学大学」に(日経新聞)東京科学大「皆が覚えられる名に」「親しみが大事」…「工業」「医科」使用も見送り(読売新聞)「東京科学大学」正式発表、略称は「科学大」…英語「Institute of Science Tokyo」(同)6.サイバー攻撃の共有・公表ガイダンスをパブリックコメント募集/内閣府内閣官房内閣サイバーセキュリティセンターは、近年、サイバー攻撃の脅威の高まりを受けて、被害を受けた組織が攻撃の内容や被害情報について外部に共有するためのガイダンス案を作成し、現在パブリックコメントを募集している。日本病院会の相澤会長は、1月17日の定例記者会見で、サイバーセキュリティに関する責任の範囲について統一基準を明確化するとともに費用負担について国側に求める方針を明らかにした。今後、日本病院会はサイバー攻撃に対する対応について、厚生労働省に対して提言をまとめたいとしている。なお、パブリックコメントは1月30日が締切となっている。(参考)「サイバー攻撃被害に係る情報の共有・公表ガイダンス(案)」に関する意見募集について(内閣府)サイバー攻撃被害「枠組み超えた情報連携が必要」内閣官房がガイダンス案公表、フローやFAQも(CB news)サイバーセキュリティ対策における医療機関・ベンダー等の間の責任分解、現場に委ねず、国が「統一方針」示すべき?日病・相澤会長(Gem Med)

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COPDガイドライン改訂―未診断者の早期発見と適切な管理を目指して

 COPDは、日本全体で約500万人を超える患者がいると見積もられており、多くの非専門医が診療している疾患である。そこで、疾患概念や病態、診断、治療について非専門医にもわかりやすく解説する「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版」が2022年6月24日に刊行された。本ガイドラインは、2018年版からの4年ぶりの改訂で、大きな変更点としてMindsに準拠した形で安定期COPD治療に関する15のクリニカルクエスチョン(CQ)を設定したことが挙げられる。本ガイドライン作成委員会の委員長を務めた柴田 陽光氏(福島県立医科大学呼吸器内科学講座 教授)に改訂点や日常診療におけるCOPD診断・治療のポイントについて、話を聞いた。未診断のCOPD患者を発見するために COPD患者は、なかなか症状を訴えないことが多いという。柴田氏は、「高齢の方は『歳だから、あるいはタバコを吸っているから仕方がない』と考えていたり、無意識のうちに身体活動レベルを落としていて、息切れを感じなくなっていたりすることもある」と話す。そのような背景から、未診断のままの患者が存在し、診断がつく時点ではかなり進行していることも多い。そこで第6版では、「風邪が治りにくい」「風邪の症状が強い」などの増悪期の症状や、気道感染時の症状で医療機関を受診したときが診断の契機となることなどを強調した。 COPDの確定診断には呼吸機能検査が必要であるが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響や設備の問題で実施が難しい場合も多い。その場合は「長期の喫煙歴と息切れがあり、咳や痰などの慢性的な症状が併存し、他疾患を否定できればCOPDの可能性がかなり高い。病診連携などを活用して画像診断を実施し、肺気腫を発見してほしい」と述べた。また、呼吸機能検査が難しい場合の診断について、日本呼吸器学会では「COVID-19流行期日常診療における慢性閉塞性肺疾患(COPD)の作業診断と管理手順」を公表しており、本ガイドラインにも掲載されているので参照されたい。管理目標と安定期の治療 第6版では、COPDの管理目標に「疾患進行の抑制および健康寿命の延長」が追加された。その背景として、「疾患進行抑制の最大の要素である禁煙の重要性を強調したい」、「何らかの症状を抱えていたり、生活に不自由を感じていたりする患者の多いCOPDでは、健康寿命に影響を及ぼすフレイルに陥らないようにして、健康寿命を延ばすことの重要性を強調したい」という意図があると、柴田氏は述べた。 安定期の治療について、第6版では「安定期COPD管理のアルゴリズム」が喘息病態の合併例と非合併例に分けて記載された。柴田氏は「COPD患者の約4分の1が喘息を合併し、喘息合併例では吸入ステロイド薬(ICS)が治療の基本となるため、治療の入り口を分けた」と解説する。具体的には、日頃からの息切れと慢性的な咳・痰がある場合、喘息非合併例では「長時間作用性抗コリン薬(LAMA)あるいは長時間作用性β2刺激薬(LABA)」、喘息合併例では「ICS+LABAあるいはICS+LAMA」から治療を開始し、症状の悪化あるいは増悪がみられる場合、喘息非合併例では「LAMA+LABA(テオフィリン・喀痰調整薬の追加)」、喘息合併例では「ICS+LABA+LAMA(テオフィリン・喀痰調整薬の追加)」にステップアップする。 喘息非合併例では、頻回の増悪かつ末梢好酸球数増多がみられる患者には「LAMA+LABA+ICS」の使用を考慮する。なお、喘息非合併の安定期COPD治療は、LAMAまたはLABAの単剤で始めなければならないというわけではなく、「CAT(COPDアセスメントテスト)が20点以上やmMRC(modified British Medical Research Council)グレード2以上といった症状の強い患者は、LAMA+LABAで治療を開始しても問題ない。詳細はCQ5を参照してほしい」と述べた。 安定期の治療について、第6版では15個のCQが設定された。その中で「強く推奨する」となったのは、「LAMAによる治療(CQ2)」「禁煙(CQ10)」「肺炎球菌ワクチン(CQ11)」「呼吸リハビリテーション(CQ12)」の4つである。とくに「呼吸リハビリテーション」について、柴田氏は「エビデンスレベルが高く、強く推奨するという結果になったことは、まだまだ普及が進んでいない呼吸リハビリテーションを普及させるという観点から、非常に意義のあることだと考えている」と話した。 COVID-19流行期における注意点として、「COPD患者は新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいため、感染対策が重要となるが、身体活動性を落とさないよう定期的な運動は続けてほしい。薬物療法については、ICSを使用していてもCOVID-19の重症化リスクは上昇しないため、現在の治療を継続することが重要」とした。診断・治療共に積極的な病診連携の活用を 第6版では、病診連携の項でプライマリケア医と呼吸器専門医の役割を詳細に解説している。柴田氏は、非専門医に期待する役割について「COPD治療の基本である禁煙の徹底、併存症の管理、インフルエンザや新型コロナのワクチンに加えて肺炎球菌ワクチン接種を行ってほしい」と述べた。加えて、「COPD患者の肺がんの年間発生率は2%ともいわれるため、願わくは年1回など定期的な低線量CTを実施してほしい」とも述べた。一方、呼吸器専門医については、「呼吸機能検査を実施して診断の入口となることや、治療をしていても増悪を繰り返すような管理の難しい患者の治療、呼吸リハビリテーションの実施といった役割を期待する」と話し、病診連携を活用して呼吸器専門医に紹介してほしいと強調した。 また、COPDの薬物治療は吸入療法が中心となるため、適切な吸入指導が欠かせない。しかし、吸入薬の取り扱いや指導に不慣れな医師もいるだろう。そこで活用してほしいのが、病薬連携だという。柴田氏は「薬剤服用歴管理指導料吸入薬指導加算が算定できるため、吸入薬の取り扱いに慣れている薬局の薬剤師に、吸入指導を依頼することも可能だ。デバイスについては、患者によって向き・不向きがあり、処方変更が必要になることもあるため、病薬連携が重要となる」と述べた。COPD患者の発見と積極的な介入を 柴田氏は、非専門医の先生方へ「皆さんの思っている以上にCOPD患者は多い。70歳以上の高齢男性では4人に1人が何らかの気流閉塞があることが知られており、高血圧や循環器疾患の3人に1人はCOPDというデータもある。高齢で糖尿病を有し喫煙歴のある患者にもCOPDが多い。このような患者をどんどん発見して、治療介入してほしい。その際、本ガイドラインを活用してほしい」とメッセージを送った。COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版定価:4,950円(税込)判型:A4変型判頁数:312頁発行:2022年6月編集:日本呼吸器学会COPDガイドライン第6版作成委員会発行:メディカルレビュー社

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コロナに感染した医師はどれくらい?ワクチン接種回数別では?

 2020年初頭から新型コロナウイルス感染症の国内での流行が始まり、3年が経過した。CareNet.comでは、これまでにどれくらいの医師が新型コロナに感染したのかを把握するため、会員医師1,000人を対象に『医師の新型コロナ感染状況に関するアンケート』を実施した。その結果、コロナ診療の有無や、年齢、診療科、病床数別、ワクチン接種回数別の感染状況が明らかとなった。また、回答者自身や周囲が感染した際に感じたさまざまな課題も寄せられた(2022年12月10~17日実施)。若い医師ほどコロナ診療・感染の割合が高い Q1では、コロナの診療に携わっているかについて聞いた。「診療している」が63%、「以前は診療していたが、今はしていない」が7%、「診療していない」が30%となり、全体の70%の医師がコロナの診療に携わっていた。年代別では、「診療している」もしくは「以前は診療していたが、今はしていない」と答えた回答者の割合は、年齢が若い医師ほど高く、20代は87%、30代は78%、40代は70%だった。診療科別では、割合が高い順に、救急科(100%)、呼吸器内科(90%)、腎臓内科、臨床研修医(87%)であった。 Q2では、これまでの新型コロナの感染歴を医師に聞いた。感染したことがない医師は全体の74%で、1回感染が24%となり、2回が1.7%、3回以上が0.4%で、再感染の割合はごくわずかであり、全体の26%の医師が1回以上感染していた。 コロナ診療経験の有無と感染歴との相関では、「以前は診療していたが、今はしていない」と回答した医師において、1回以上の感染の割合が最も高く36%だった。「診療している」と回答した医師では29%、「診療していない」人では18%が、コロナに1回以上感染していた。 年代別では、Q1の結果と同様に、年齢が若い医師ほど感染の割合が高かった。1回以上の感染の割合は、20代と30代で同率の36%、40代では30%、50代で22%だった。病床数別では、200床以上の医師の感染の割合が最も高く30%で、次いで0床(診療所)が23%だった。診療科別では、感染の割合が最も高いのはQ1と同様に救急科(39%)、次いで糖尿病・代謝・内分泌内科(38%)、臨床研修医(37%)、循環器内科(35%)であった。 ちなみに、厚生労働省が1月16日に発表した「(2023年1月版)新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識」によると、これまでにコロナと診断されたのは、日本の全人口の約23.2%であった(2023年1月1日0時時点のデータ)1)。 Q3では、第1~8波の流行期別に感染した時期を医師に聞いた。本アンケート実施時点(2022年12月10~17日)で最も多かったのは、2022年7~10月の第7波(125人)、次いで2022年1~6月の第6波(55人)、2022年11以降の第8波(50人)だった。ワクチン接種回数が多い医師ほど感染率が低い Q4では、新型コロナのワクチンの接種回数を医師に聞いた。接種回数の割合が最も高かったのは4回(42%)、次いで5回(33%)、3回(19%)、1・2回(3%)だった。ワクチンの接種回数と感染の相関を調べたところ、感染していない割合は接種回数が多い医師ほど高く、5回接種者は85%、4回では71%、3回では66%が「感染していない」と答えた。ワクチン接種1・2回で感染していない医師の比率は44%で半数を下回っており、2回感染した人が18%と最も多かった。 Q5では、自らが感染したと思う場所について聞いた。多かったのは職場と家庭で、ともに約100人であった。医療者の人手不足がコロナ診療での最大の課題 Q6の自由回答のコメントでは、回答者自身や周囲が感染した際に感じた課題を聞いた。挙げられた課題は、主に以下の内容に分類された。・医療者の感染が相次ぎ、病院が人手不足になった(160件)・病院でクラスターが発生した(80件)・コロナに感染し、判断に迷った(61件)・家族内で感染者が出た(55件)・コロナ以外の診療について(21件)・感染対策について(14件)・収入に影響した(7件)・コロナの診療について(6件)アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。どれくらいの医師がコロナに感染した?/医師1,000人アンケート

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コロナワクチン後の心筋炎、高濃度の遊離スパイクタンパク検出

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のmRNAワクチン(以下、新型コロナワクチン)接種後、まれに心筋炎を発症することが報告されているが、そのメカニズムは解明されていない。そこで、マサチューセッツ総合病院のLael M. Yonker氏らの研究グループは、青年および若年成人の新型コロナワクチン接種後の血液を分析し、心筋炎発症例の血中では、切断を受けていない全長のスパイクタンパク質が、ワクチン接種により産生された抗スパイク抗体に結合していない“遊離”の状態で、高濃度に存在していたことを発見した。Circulation誌オンライン版2023年1月4日掲載の報告。遊離スパイクタンパク質が平均33.9pg/mLと有意に高濃度で検出された 2021年1月~2022年2月にかけて、ファイザー製(BNT162b2)またはモデルナ製(mRNA-1273)の新型コロナワクチン接種後に心筋トロポニンTの上昇を伴う胸痛を呈し、心筋炎により入院した患者16例、および年齢をマッチングさせた健康人45人を対象とし、血液をプロスペクティブに採取した。SARS-CoV-2特異的な細胞性免疫応答、自己抗体産生、血中のスパイクタンパク質濃度などを評価した。 SARS-CoV-2に対する適応免疫応答やT細胞応答は、心筋炎発症例と非発症例で差がなかった。また、自己抗体の産生や他のウイルス感染、新型コロナワクチン接種後の過剰な抗体反応も認められなかった。しかし、血中の遊離のスパイクタンパク質濃度には、大きな差がみられた。心筋炎非発症例では、抗スパイク抗体に結合していない遊離のスパイクタンパク質が全例で検出不可であったのに対し、心筋炎発症例では、平均33.9pg/mLと有意に高濃度で検出された(p<0.0001)。また、心筋炎発症例の血漿について、抗体を変性させるdithiothreitolで処理しても、スパイクタンパク質濃度に変化がみられなかったことから、心筋炎発症例で検出されたスパイクタンパク質は、抗スパイク抗体に捕捉されなかったことが示唆された。 本論文の著者らは、「心筋炎発症の有無によって、新型コロナワクチン接種後の免疫応答に差がみられなかったのは、安心感を与える結果であった。心筋炎発症例の血中では、遊離のスパイクタンパク質がみられ、この知見についてより深く理解する必要はあるが、新型コロナウイルス感染症の重症化予防における新型コロナワクチン接種のベネフィットが、リスクを上回ることに変わりはない」とまとめた。

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米国・HIV感染者へのART、人種・民族差は?/JAMA

 米国のHIV感染者が抗レトロウイルス療法(ART)を受ける可能性について、人種・民族間で差異があるかを調べる検討が、同国・ノースカロライナ大学のLauren C. Zalla氏らにより行われた。HIVケア開始1ヵ月以内にARTが開始される確率について有意差はなかったが、インテグレーゼ阻害薬(INSTI)を含むARTを受ける可能性は、調査対象期間(2007~19年)の早期においては、白人と比べて黒人とヒスパニック系の患者で有意に低く、ガイドラインの見直しに伴いINSTIが大半のHIV感染者の初回治療として推奨されるようになって以降、有意差が見られなくなったという。著者は、「さらなる研究で、根底にある人種・民族間の差異を明らかにすること、また処方の差異が臨床アウトカムと関連するかどうかを調べる必要がある」とまとめている。JAMA誌2023年1月3日号掲載の報告。2007~19年の初期治療での処方確率を白人、黒人、ヒスパニック系で比較 研究グループは後ろ向き観察研究にて、米国でHIVケアを導入した新規成人感染者における、INSTIを含むARTの処方の人種および民族間の差異を推定し、それらの差異の変化を治療ガイドラインの変遷と関連付けて調べた。 米国内200超のクリニックが参加する最大規模のHIVケアコンソーシアムであるNorth American AIDS Cohort Collaboration on Research and Designの登録患者データから、INSTIが米国食品医薬品局(FDA)によって最初に承認された2007年10月12日以降、2019年4月30日までにHIVケアを受けた成人4万2,841例のデータを調査した。 人種および民族の情報は、患者の医療記録から集め、「ヒスパニック系」「非ヒスパニック系黒人」「非ヒスパニック系白人」に集約して検討した。 主要アウトカムは、HIVケア開始1ヵ月以内にARTが最初に開始される確率と、INSTIを含むARTが処方される確率。ヒスパニック系・非ヒスパニック系黒人患者と非ヒスパニック系白人患者との差異を、治療開始時期と推奨初回治療レジメンに関する国のガイドラインが変更された暦年および期間ごとに推定し評価した。ARTの開始確率に差はないが、INSTI処方率に当初は有意差あり 4万1,263例が人種および民族の情報を有していた。1万9,378例(47%)が非ヒスパニック系黒人、6,798例(16%)がヒスパニック系で、1万3,539例(33%)が非ヒスパニック系白人。男性3万6,394例(85%)、年齢中央値42歳(IQR:30~51)であった。 2007~15年(CD4+細胞数ベースでの治療開始がガイドラインで推奨)では、ケア開始1ヵ月以内のART開始の確率は、白人患者45%、黒人患者45%(白人患者との差:0%、95%信頼区間[CI]:-1~1)、ヒスパニック系患者51%(5%、4~7)であった。 2016~19年(CD4+細胞数に関係なくすべての患者への治療を強くガイドラインで推奨)では、白人患者66%、黒人患者68%(白人患者との差:2%、95%CI:-1~5)、ヒスパニック系患者71%(5%、1~9)であった。 INSTIの処方率は、2009~14年(初回治療として承認されたが、ガイドラインでの推奨はなし)に、白人患者で22%であったのに対し、黒人患者で17%(白人患者との差:-5%、95%CI:-7~-4)、ヒスパニック系患者で17%(-5%、-7~-3)にとどまっていた。2014~17年(INSTIを含むARTを初回治療の選択肢としてガイドラインで推奨)では、白人患者と比較して黒人患者では有意な差があったが(-6%、-8~-4)、ヒスパニック系患者では有意な差はなかった(-1%、-4~2)。 2017~19年(INSTIを含むARTがほとんどのHIV感染者の唯一の初回治療として推奨)では、人種および民族による差異は統計学的に有意ではなくなっていた。

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Artemis欠損症に対するレンチウイルス形質導入細胞移植の効果/NEJM

 新たにArtemis欠損重症複合免疫不全症(ART-SCID)と診断された乳児において、薬理学的に標的化した低曝露のブスルファンによる前処置後、レンチウイルス遺伝子で修正した自己CD34+細胞注入移植により、遺伝子が修正された機能的T細胞およびB細胞数の上昇に結び付いたことが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校Benioff小児病院のMorton J. Cowan氏らにより報告された。NEJM誌2022年12月22日号掲載の報告。レンチウイルスベクターを導入した自己CD34+細胞を10例に注入 ArtemisはDNA修復酵素で、T細胞およびB細胞レセプターの再構成に不可欠である。ART-SCIDは、ArtemisをコードするDCLRE1Cにおける変異に起因し、標準治療は同種造血幹細胞移植だが効果は限定的である。 研究グループは、ART-SCIDと診断された乳児10例において、DCLRE1Cを含むレンチウイルスベクターを導入した自己CD34+細胞の注入移植に関する第I-II相臨床試験を行った。追跡期間中央値31.2ヵ月、全10例の患者は健康 レンチウイルス形質導入細胞移植時の年齢中央値は、生後2.7ヵ月(範囲:2.3~13.3)。移植後の追跡期間中央値は31.2ヵ月(範囲:10.0~48.9)であった。 骨髄採取、ブスルファンの前処置、およびレンチウイルス形質導入CD34+細胞の注入後に、Grade3または4の有害事象が発生したが、これらは想定されたものであった。注入後42日時点で、全処置が事前規定の実行可能性の基準を満たしていた。 遺伝子標識したT細胞は、全患者において注入後6~16週で検出された。6例のうち5例は、少なくとも24ヵ月間追跡され、中央値12ヵ月時点でT細胞の免疫再構築が認められた。T細胞レセプターβ鎖の多様性は6~12ヵ月までに正常化した。 少なくとも24ヵ月間追跡された4例では、IgG注入の中止が可能となる十分なB細胞数、IgM濃度、IgM同種血球凝集反応抗体価が認められた。これら4例のうち3例は、正常な免疫反応を示し、残る1例には予防接種が開始された。 ベクター挿入部位には、クローン増殖の証拠は認められなかった。1例の患者がサイトメガロウイルス感染症を呈し、ウイルス排除に十分なT細胞免疫を獲得するため、遺伝子修正細胞の注入は2回行われた。 注入4~11ヵ月後に4例で自己免疫性溶血性貧血が発現したが、T細胞免疫の再構成後に回復した。 本報告時点で、全10例の患者は健康である。

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第143回 これが患者のリアル、ワクチンマニアもコロナ感染!?村上氏のヒヤヒヤ実記(前編)

先日、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)ワクチンの4回目接種の体験について書いたが、その直後、ヒヤッとする出来事が起きた。接種を受けたのは年の瀬も迫った12月27日。周囲では新型コロナ感染者が急増し、Facebookなどでつながっている友人・知人の投稿では、「感染しました」報告が相次いでいた。それから3日後、私は軽い咽頭痛を自覚した。もっともこうした経験は、コロナ禍3年目になってから2度ほどあった。私の場合、年齢は壮年期だが、幸いにして今のところ新型コロナにかかった場合に重症化リスク因子となる基礎疾患はない。このため感染した場合でも原則自宅療養を選択しようと考えている。それに備えて自分の仕事場のアパートには複数回分の抗原検査キット、解熱鎮痛薬、パルスオキシメータや非常時用のインスタント系、レトルト系の食品の備蓄はある。余談だが、私はまるか食品の「ペヤングソース焼きそば」の大ファンで、消費税増税の時などに買い込んだペヤングが常に事務所では数十個ストックがあるので、とりあえずペヤングとお湯だけでも10日ほどは飢えをしのげる。ところが咽頭痛を感じたときは、山手線のとあるターミナル駅近くのビジネスホテルに娘とともに宿泊中だった。さらに個人的な事情を話すと、私には現在医学部受験生以外では希少価値ともいわれる大学受験浪人生の娘がいる。誰に似たのか昨年現役で合格した大学があったにもかかわらず、第一志望があきらめきれず、合格した大学の入学を辞退して浪人生の道を選んだ(実は私も現役時に同じことをしている)。義父が要介護のため、妻が実家に帰省して年末年始は私と娘しかいなくなること、娘が自宅では勉強に身が入らず、さすがの予備校も大みそかと元日は自習室も閉鎖されてしまうなどの事情があり、私と娘は30日から三が日明けまでホテルに泊まりこみ合宿と相成った。隣同士の部屋で私は仕事、娘は勉強にそれぞれ勤しむという計画だった。もっとも私は娘のパシリとして食事の購入や洗濯などを引き受けるつもりでもあった。ちなみに宿泊したホテルはチェーン展開しており、チェックインはほぼ自動化され、日中は受付すら無人、部屋の清掃は1週間を超える連泊者以外なしといういかにも今風なホテルである。さて咽頭痛を自覚したときは、すぐに危機感を感じたわけではない。それでも念のために実は5回分がセットになった抗原検査キット、解熱鎮痛薬、体温計、パルスオキシメータは持参していた。さらに娘より一足先にチェックインしてパックのご飯、それにかけるレトルト、カップ麺を買い込んでいた。これはいざという時の備えというよりは、娘には望む食事を多少高くても購入して、私のほうは節約に努めるという単なる貧乏根性である。―2022年12月30日(金)30日は喉のイガイガは軽く痰が絡んだような感じ。それほどは気にしなかった。大みそかの朝は調理パンと洋風のスープが食べたいとの娘の要望に応じ、朝6時過ぎにホテルを出て周囲のコンビニを回り、ようやく洋風スープと調理パンを見つけて渡し、昼はこれまた娘の希望に応じて近くのカフェでパスタを食べさせた。もっとも大学入試共通テストを約2週間後に控えていることもあり、娘と食事中でもなるべくマスクを着用していた。―2022年12月31日(土)その日の夕方近く、今年最後のオンライン取材を終え、少しでも正月らしい気分を娘に味あわせてあげたいと考え、デパ地下に赴き、2人で食べられそうな比較的小さめのおせち料理を購入し、ホテルに戻った。ところが夜7時過ぎくらいから咽頭痛はひどくなるばかり。まさかとの思いがよぎった。実はすでに前日に抗原検査キットで陰性は確認していた。もっともある程度ウイルス量が上がらないと抗原検査が偽陰性になってしまうのは周知のこと。そのために私は連日自宅や事務所などで検査ができるよう5回分のパックを備蓄し、気になったときは3日連続で検査し、すべて陰性だった場合は注意をしながらその後1週間程度を過ごしていた。再度、検査キットを使う。検体を流し込み、浸透していく様子を見ながらコントロール手前で色がうっすらでも変わるか凝視する。再び陰性である。体温は36.8℃。とはいえ、くどいようだが隣室には2週間後に共通テストを控えた娘がいる。すぐにLINEで隣室にいる娘に私に風邪様症状があり、現在のところ抗原検査は陰性だが油断はできず、とりあえず飲食物は置き配にする旨を伝えた。とはいえ困った。自分の食事は備蓄のおかげでどうにかなるが、娘の分はそうはいかない。だが、新型コロナ感染の疑いがある自分の外出は控えねばならない。そうすると娘の食事を手配する人間がいなくなる。「本人に買わせればいいじゃないか」と言われてしまいそうだが、宿泊先のホテルは娘が嫌うピンクのネオンが時おり目に入る歓楽街の一角にあり、そのため引っ込み思案な娘は一人で出歩こうとしない。ただ、ホテルから一番近い徒歩1分ほどのところにあるコンビニは店内が広く、セルフレジがあり、そのセルフレジも有人レジからかなり離れた位置にある。また、娘が食べたがるものの多くはコンビニで調達できる。ということで、できるだけ人の少ない時間帯に最大限の感染対策をしながら、このコンビニを利用することに決める。だが、その直後、ネットサーフィンをしていて、はたとあることに気づく。このコロナ禍でモバイルオーダーかつモバイル決済で飲食デリバリーのサービス提供が進んでいる。ネット上を調べると、大手ハンバーガーチェーンを含め、ホテルの近隣でこうしたサービスを提供している店舗は少なくない。これならばどうにか対応できそうだ。そうこうしているうちに、この日はいつの間にか寝入ってしまった。―2023年1月1日(日) 元旦翌朝、娘からのLINE着信の音で目が覚めた。体がほてっているのが自分でもわかる。熱を測ると37.1℃。元日のおめでたさもなく、朝方、おにぎりとインスタントではないみそ汁をコンビニで購入して娘に届けた。届ける際はドアノブにかける。これまた幸いなことに、このホテルでは各フロアに足踏み式の消毒薬が設置されているので、ドアノブに食事などの袋をかける際は念のため手指消毒をしてから。もちろんこれまでの研究で、新型コロナの接触感染はごくまれというのも知ってはいるが、やはり娘のことを考えると気にしてしまうため、そのようになってしまう。元日の熱は37℃台の前半と後半を行ったり来たり。一応、仕事のために椅子に座ってパソコンをさわるものの、症状のせいか30分程度が限界で、その後はベッドに横になる。そして毎日、娘の衣服の洗濯がある。実はそれを見越して館内にコインランドリーもあるホテルを選んでいた。1回にあるコインランドリーは常に人気がないので助かった。もっともこのコインランドリーの乾燥機は簡易なものなのでちょっとした洗濯物の乾燥でも1時間以上はかかった。その間は部屋でおとなしく待ち、時間を計って廊下に出て、目の前で開いたエレベーターに人が乗っていないことを確認してから乗降していた。この日は一日、体がだるめ。夕方、娘が某ハンバーガーチェーンのハンバーガーが食べたいと言い出す。これはモバイルオーダーやデリバリーサービスがあったので利用することにした。決済もモバイル決済が可能だったが、ホテル1階で私が受け取らなければならない。幸い1階エレベーター脇に消毒薬を設置した比較的広めのテーブルがあったので、そこに置いてもらうことにする。配達完了の電話連絡があり、私はマスクをつけ、1階に降りてピックアップして、隣室のドアノブにかけ、娘にLINEをする。ちなみにたまたま私のカバンには両面テープがあったため、部屋からの外出時はマスクの上下両端に両面テープを張り、顔にピッタリ密着させていた。気にし過ぎと思われるかもしれないが、自分の飛沫で他人に感染をさせたくないからである。もっともこれをするとマスク内が異様に暑くなる。この日は夜9時には就寝したが、深夜2時過ぎ、体のほてりがひどく目が覚める。体温計の数字は38.1℃。来たかという感じだった。(次回に続く)

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過剰な対策の見直しや具体例追記「医療機関のコロナ対応ガイド 第5版」/日本環境感染学会

 日本環境感染学会(理事長:吉田 正樹氏[東京慈恵会医科大学 感染制御科 教授])は、1月17日に『医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第5版)』を同学会のホームページで公開するとともに、同日開催の厚生労働省の第114回 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードでも発表した。 学会では、「COVID-19の第8波に突入し、医療機関でも多くのクラスターが発生するなど厳しい状況に置かれている中、この感染症に対する感染対策については、新たなエビデンスも蓄積しているため、今回、第5版として改訂版を公開した」とその目的を述べるとともに、「医療の現場では感染対策を緩める時期はまだ先だと思われる。ただし過剰な対策は見直していく必要があり、新しいエビデンスも含めて理にかなった適切な感染対策を実施し、この状況を乗り越えて欲しい」と希望を寄せている。画像で説明するマスクやPPEの着衣・脱衣 主な改訂点は次のとおり。・「3.感染対策の基本的考え方」で「3)社会的距離(ソーシャル・ディスタンス)の確保」を追加し、患者や家族と一定の距離(2m以上が理想)の確保を記載。・同「9)の陰圧室の利用の対象」を独立項目とするとともに、「図1 病室単位での新型コロナウイルス感染対策の1例」を追加し、病室内を患者・中間・共通ゾーンに分ける例を追加。・「4.COVID-19確定例へのPPEの選択」では、PPE選択の表の改訂のほか、「個人防護具着脱手順の例」を画像で追加。・「5.COVID-19確定例へのその他の対応」では、「5)面会」について医療機関の面会ルールなどを具体例として追加。・「6.院内における医療従事者の感染リスクと予防」では「4)労務災害」を追加。 その他、全体の各項目の記載ボリュームと細かい内容の変更や参考文献の変更なども行われている。

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骨盤臓器脱の改善効果、ペッサリーvs.外科的治療/JAMA

 症候性骨盤臓器脱患者において、保存的治療であるペッサリー療法は手術治療と比較して、24ヵ月時点での患者報告による改善に関して非劣性が認められなかった。オランダ・アムステルダム大学のLisa R. van der Vaart氏らが、オランダの21施設で実施した無作為化非劣性試験「PEOPLEプロジェクト」の結果を報告した。骨盤臓器脱は女性のQOL(生活の質)に悪影響を及ぼす疾患で、平均寿命の延長に伴い骨盤臓器脱に対する費用対効果の高い治療が世界的に求められている。JAMA誌2022年12月20日号掲載の報告。24ヵ月時の症状の主観的改善を手術と比較 研究グループは、手術歴またはペッサリー療法歴のないステージ2以上の骨盤臓器脱症状を有する女性を、ペッサリー群または手術群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、24ヵ月時の主観的改善とし、「とても良くなった」から「とても悪くなった」まで7ポイントのリッカート尺度を用いたPatient Global Impression of Improvement(PGI-I)で評価した。副次エンドポイントは、重症度(Patient Global Impression of Severity:PGI-S)、疾患特異的QOLなどで、そのほか治療群のクロスオーバーや有害事象についても評価した。 主要エンドポイントの統計解析では、PGI-I評価に基づき改善(「とても良くなった」、「良くなった」)と非改善に分け、非劣性マージンは群間リスク差の信頼区間(CI)下限が-10%であることとした。 2015年3月~2019年11月に、適格基準を評価された1,605例のうち同意が得られた440例(平均[±SD]年齢 64.7±9.29歳)が無作為化された(ペッサリー群218例、手術群222例)。最終追跡調査日は、2022年6月30日であった。ペッサリー療法は手術に対して非劣性を認めず 無作為化された440例(平均[±SD]年齢 64.7±9.29歳)のうち、ペッサリー群173例(79.3%)および手術群162例(73.3%)が24ヵ月の追跡調査を完了した。 主観的改善は、ペッサリー群で173例中132例(76.3%)、手術群で162例中132例(81.5%)に認められた(群間リスク差:-6.1%、片側95%CI:-12.7~∞、非劣性のp=0.16)。per-protocol解析では、ペッサリー群で74例中52例(70.3%)、手術群で150例中125例(83.3%)が主観的改善を報告した(-13.1%、-23.0~∞、非劣性のp=0.69)。 24ヵ月時にペッサリー群の218例中123例(60.0%)がペッサリーの使用を中止しており、118例(54.1%)は手術へ治療を切り替えた。 主な有害事象は、ペッサリー群が不快感(42.7%)、手術群が尿路感染症(9%)であった。

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リファンピシン耐性結核、24週レジメンが標準治療に非劣性/NEJM

 リファンピシン耐性肺結核患者に対する24週間の経口治療レジメンは、従来の標準治療に対して有効性に関する非劣性が示され、安全性プロファイルも良好であった。オランダ・Operational Center AmsterdamのBern-Thomas Nyang'wa氏らが、国境なき医師団主導による多施設共同無作為化非盲検非劣性第II/III相試験「TB-PRACTECAL試験」の結果を報告した。リファンピシン耐性結核患者においては、現在のレジメンより治療期間が短くかつ有効で、副作用プロファイルも許容できる、経口治療レジメンが必要とされている。NEJM誌2022年12月22日号掲載の報告。ベダキリン+pretomanid+リネゾリド(BPaL)±モキシフロキサシン(M)またはクロファジミン(C)を標準治療と比較 研究グループは、ベラルーシ、南アフリカ共和国、ウズベキスタンの7施設において、新たに診断された15歳以上のリファンピシン耐性肺結核患者を登録した。 本試験の第1段階では、現地の標準治療と3種類の治療レジメン(BPaL、BPaLM、BPaLC)の4群に1対1対1対1の割合で、第2段階では標準治療とBPaLM群に1対1の割合で患者を無作為に割り付けた。 各治療レジメンは次のとおりである。・BPaL:ベダキリン1日400mgを2週間、その後200mgを週3回22週間、pretomanid 1日200mgを24週間、リネゾリド1日600mgを16週間、その後300mgを8週間、いずれも経口投与・BPaLM:BPaL+モキシフロキサシン1日400mgを24週間経口投与・BPaLC:BPaL+クロファジミン1日100mg(体重30kg未満の場合は50mg)を24週間経口投与 主要評価項目は、無作為化後72週時点での不良転帰(死亡、治療失敗、治療中止、追跡不能、結核再発の複合)で、非劣性マージンを12ポイントとした。BPaLMは、72週後の不良転帰に関して標準治療に対し非劣性 本試験は、2017年1月に最初の患者を無作為化し、2021年3月18日に登録を早期終了した。 登録終了時点で、第2段階として145例(標準治療群73例、BPaLM群72例)がintention-to-treat(ITT)集団(無作為化された全患者)、128例(それぞれ66例、62例)が修正ITT集団(ITT集団のうち少なくとも1回の試験薬の投与を受け、微生物学的にリファンピシン耐性結核であることが証明された患者)、90例(それぞれ33例、57例)がper- protocol集団の解析対象となった。 主要評価項目のイベントは、修正ITT解析ではBPaLM群で11%、標準治療群で48%発生し(群間リスク差:-37ポイント、96.6%信頼区間[CI]:-53~-22)、per-protocol解析ではBPaLM群で4%、標準治療群で12%発生した(-9ポイント、-22~4)。 無作為化され少なくとも1回の試験薬の投与を受けた患者(as-treated集団)において、72週以内のGrade3以上または重篤な有害事象の発現率は、BPaLM群が標準治療群より低値であった(19% vs.59%)。

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敗血症-感染症と臓器障害への対応

敗血症のさまざまな病態に対応できる実践力をつける1冊!敗血症の原因となるさまざまな細菌やウイルスなどによる感染症の管理と、敗血症性ショックや急性腎障害などの臓器障害の管理について解説。抗菌薬のTDM、血液浄化法などの敗血症を管理するための工夫を取り上げ、「日本版敗血症診療ガイドライン」やCOVID-19についても盛り込んだ。本書の特長として(1)集中治療の現場で対応が求められる急性期の病態を中心に取り上げ、実際の診療をサポート。(2)写真・イラスト・フローチャート・表を多用し、視覚的にも理解しやすく構成。(3)ポイントを簡潔かつ具体的に提示。(4)関連する診療ガイドラインの動向を踏まえた内容。(5)最近の傾向、最新のエビデンスに関する情報もわかりやすく解説。(6)専門医からのアドバイスや注意点などを適宜コラムで紹介。(7)サイドノートや補足情報も充実。が挙げられる。敗血症をより深く理解して、敗血症による臓器障害を早期発見し重症化させない、これからの敗血症診療を見据える1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する敗血症-感染症と臓器障害への対応シリーズ名 救急・集中治療アドバンス定価13,200円(税込)判型B5判頁数512頁発行2023年1月専門編集松田 直之(名古屋大学)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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第28回 救急車の居眠り運転とPPEの緩和

救急車の事故東京消防庁によると、2022年の119番通報の件数は、過去最多の103万6,645件だったそうです。とんでもない通報数です。通報件数が過去最多なので、当然ながら出動件数も比例して過去最多となっています。昨年末、救急車を運転していた救急隊員が、居眠り運転をして交通事故を起こしていたことが報道されました。約17時間にわたりほぼ休みなく出動し、疲労が蓄積したためとされています。救急車の要請があったときに、「救急隊による5つの医療機関への受入要請または選定開始から20分以上経過しても搬送先が決定しない事案」、すなわち東京ルールの適用となる事案は、2023年1月17日執筆時点のデータでは、過去最多水準に到達しています(図)。しかし、グラフの立ち上がりが第6波・第7波と比べると緩やかであることがわかります。図. 東京ルールの適用件数(筆者作成)このグラフは感染症の流行曲線とキレイに連動しています。となると、セオリー通り、緩やかに立ち上がった新規感染者数が高止まり傾向になってしまうと、救急搬送困難例も高止まりすることが懸念されます。再びこのような救急車の事故が起きないようにしたいものですが、どの現場もマンパワーが限られており、現状としては体制自体を改善することは難しいでしょう。コロナ禍で忙しくなり、われわれ医師も当直明けで通常勤務している人が多いため、注意しないといけません。院内ゼロコロナ戦略の継続は?病院内では現在基本的にはゼロコロナ戦略を継続しています。私も感染制御チームの一員ですが、院内クラスターはできるだけ回避したいところです。しかし、今後社会全体の医療提供の総和を維持するのであれば、もう少し院内の対応を引き算しなければ…という印象を持っています。場面ごとに個人防護具(PPE)の着用を使い分けたり、弾力的に病床を運用したりする機動力が必要になりますが、「とにかくフルPPE」は現実的ではありませんので、医療機関としても逼迫を減らす方向に舵を切らないといけない時期にきています。日本環境感染学会から「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第5版)」1)が刊行されました。全体として、緩やかに緩和される方向になっています(表)。寝たきりの陽性者の場合、サージカルマスクでよいというのは確かに同感ですが、場面ごとにN95マスクの使用を分けて職員に通知することが難しい側面もあり、陽性者に対して「当院のPPEはこのままでいこう」という施設はまだまだ多いと思います。画像を拡大する表. COVID-19確定患者に対する様々な状況における PPE の選択1)となると、病床運用の逼迫構造は簡単には解決しないので、新規感染者数が次の波で増えれば、入院医療機関の逼迫が再来するかもしれません。たとえ「5類感染症」にしても、ここをどうにかしなければ、国民が期待するほど医療資源のキャパシティは増えないかもしれません。参考文献・参考サイト1)日本環境感染学会:医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第5版)の公開について

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コロナ呼吸不全で気管挿管率が低い治療は?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による低酸素血症性呼吸不全を発症した成人患者に対し、覚醒下腹臥位療法は通常ケアと比べて、気管挿管の発生リスクを低減するが、死亡率や人工呼吸器離脱期間(VFD)などのアウトカムには、ほとんど影響が認められないことが明らかにされた。カナダ・アルバータ大学のJason Weatherald氏らによる、システマティック・レビューとメタ解析で示された。BMJ誌2022年12月7日号掲載の報告。2022年3月時点でMedline、Embase、CENTRALをレビュー 研究グループは、創刊から2022年3月4日までのMedline、Embase、CENTRAL(Cochrane Central Register of Controlled Trials)をデータソースとして、COVID-19関連の低酸素血症性呼吸不全の成人患者を対象に、覚醒下腹臥位療法と通常ケアを比較した無作為化試験について、システマティック・レビューと頻度論的・ベイズメタ解析を行った。 2人のレビュアーがそれぞれデータを抽出し、バイアス・リスクを評価。ランダム効果モデルを用いて主要アウトカム(気管挿管)と副次アウトカム(死亡率、VFD、ICU・病院入院期間など)を評価した。気管挿管と死亡率はベイズメタ解析で評価。アウトカムのエビデンスの信頼性はGRADEで評価した。死亡率、VFD、ICU入室日数などは両群で同等 17試験、被験者総数2,931例が適格基準を満たした。12試験はバイアス・リスクが低く、3試験には懸念があり、2試験はバイアス・リスクが高かった。 補正前気管挿管発生率は、覚醒下腹臥位療法群24.2%と、通常ケア群29.8%に比べてリスクが低かった(相対リスク[RR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.73~0.94、信頼性:高)。同リスクの低下は、患者1,000人当たりで気管挿管の実施が55回減少(95%CI:19~87)することに相当した。 一方で副次アウトカムについては、死亡率(RR:0.90、95%CI:0.76~1.07、信頼性:高)、VFD(平均群間差:0.97日、95%CI:-0.5~3.4、信頼性:低)、ICU入室期間(-2.1日、-4.5~0.4、低)、入院期間(-0.09日、-0.69~0.51、中)とも有意な影響が認められなかった。 覚醒下腹臥位療法に関連した有害事象はまれであった。 ベイズメタ解析の結果、気管挿管については、覚醒下腹臥位療法は有効である確率が高いことが示された(無情報事前分布での平均RR:0.83、95%信用区間[CrI]:0.70~0.97、RR<0.95の事後確率96%)。一方で死亡に関する同確率は低かった(0.90、0.73~1.13、68%)。

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コロナ5類変更に賛成は何割?現在診ていない医師は診られるか

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染症法上の位置付けについて、季節性インフルエンザと同様の「5類」に引き下げることを政府が検討を始め、議論が活性化している。ウイルスの性質や医療機関の負担、医療費の公費負担など、さまざまな意見がある中で、医師はどのように考えているのだろうか? CareNet.comの会員医師のうち、内科系を中心として、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の診療に携わることが想定される診療科の医師1,000人を対象に、アンケートを実施した(2023年1月11日実施)。新型コロナ・発熱患者を診療していない医師の3分の2が診療不可 COVID-19患者あるいは発熱患者の診療状況について、「COVID-19患者の診療を行っている」が63.8%と最も多く、「COVID-19疑いの発熱患者の診療を行っている」が18.8%、「いずれも診療していない」が17.4%と続いた。また、「5類となり、COVID-19患者の受診・入院が一般医療機関でも可能となった場合、実際に診療が可能か」質問したところ、「現在診療している」が63.7%、「診療できる」が18.7%、「診療できない」が17.6%であった。 現時点で「いずれも診療していない」と回答した医師について集計した結果、「診療できる」が33.3%であったのに対し、「診療できない」は66.7%と、現在COVID-19患者やCOVID-19疑いの発熱患者を診療していない医師の3分の2が、5類に引き下げられても「診療できない」と回答した。新型コロナ5類への変更、64%が賛成 COVID-19の感染症法上の分類はどのようにすべきか? という質問に対して、「いまの状況であれば5類へ引き下げたほうが良い」が40.0%と最も多く、「いまの状況では難しいが、5類へ引き下げたほうが良い」が24.0%と続いた。両者を合わせると64.0%が「5類へ引き下げたほうが良い」と考えていた。「新たな類型を作成したほうが良い」は17.7%で、「2類相当のままが良い」は6.1%にとどまった。12.2%が「いずれともいえない・わからない」と回答した。 COVID-19患者あるいは発熱患者の診療の有無別にみると、「いずれも診療していない」と回答した医師で「5類へ引き下げたほうが良い(いまの状況であれば5類へ引き下げたほうが良い:28.8%、いまの状況では難しいが、5類へ引き下げたほうが良い:23.2%)」との回答がやや少なかったが、「いずれともいえない・わからない」との回答が23.7%を占めた。「新たな類型を作成したほうが良い」「2類相当のままが良い」との回答の傾向には、大きな違いはみられなかった。意見が分かれるワクチン接種費・治療費の負担 COVID-19が5類へ引き下げられた場合に「ワクチン接種費や治療費の負担はどのようにすべきと考えるか」質問したところ、「ワクチン接種費、治療費共に公費負担」が24.2%、「ワクチン接種費は公費負担、治療費は自己負担」が38.6%、「ワクチン接種費は自己負担、治療費は公費負担」が5.1%、「ワクチン接種費、治療費共に自己負担」が32.1%という結果であった。ワクチン接種については「公費負担にすべき」と考える医師が62.8%と多く、治療費については「自己負担にすべき」と考える医師が70.7%と多かった。分類に対する考え・意見 「いまの状況であれば5類へ引き下げたほうが良い」と回答した医師の意見として、「ワクチン接種費や治療費は公費負担にすべきでない(46.9%)」という意見が多かったが、「5類に変更してもワクチン接種費や治療費は公費負担のままにしたほうが良い」という意見も散見された。また、「重症化率・死亡率の低下」や「ワクチンや治療薬の充実」「医療従事者の負担の大きさ」を指摘する意見がみられた。 「いまの状況では難しいが、5類へ引き下げたほうが良い」と回答した医師の意見として、「ワクチン接種費は公費負担を維持し、治療費は自己負担にすべき(50.8%)」という意見が目立った。一方、「5類に変更してもワクチン接種費や治療費は公費負担のままにしたほうが良い」という意見も散見された。そのほか、「第8波の状況をみてから」「死者数の増加が気になる」といった慎重な意見や「社会的影響を考慮するといつか5類にせざるを得ない」などの意見が得られた。 「新たな類型を作成したほうが良い」と回答した医師の意見として、「現行の仕組みは、現在のCOVID-19の診療に適していない」といった現在の枠組みへの不満を示唆する意見や、「5類にするのは時期尚早だが、2類に据え置くのは考えもの」「5類に引き下げても5類以上の感染対策が必要」「5類ではなくて、“5類相当”が妥当」といった意見があがった。 「2類相当のままが良い」と回答した医師の意見として、「ワクチン接種費や治療費は公費負担にすべきである(50.0%)」という意見が多かった。また、「入院調整などは医療機関のみでは困難」「感染力が強く一般病棟での診療は困難」といった医療体制の懸念を指摘する意見や、「死者数が多い」「インフルエンザとは異なることが多い」といったウイルスの性質を指摘する意見も得られた。 「いずれともいえない・わからない」と回答した医師の意見として、「名目上の制度の変更は意味がない」「2類でも5類でもとくに変わらない」といった意見や「流行の行方がわからない」「感染状況により柔軟な運用ができるようにすべき」などの意見があがった。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。新型コロナウイルス感染症、5類への引き下げは可能?…医師1,000人アンケート

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TYK2を選択的に阻害する乾癬治療薬「ソーティクツ錠6mg」【下平博士のDIノート】第113回

TYK2を選択的に阻害する乾癬治療薬「ソーティクツ錠6mg」今回は、チロシンキナーゼ2(TYK2)阻害薬「デュークラバシチニブ錠(商品名:ソーティクツ錠6mg、製造販売元:ブリストル・マイヤーズ スクイブ)」を紹介します。本剤は、TYK2を選択的に阻害する世界初の経口薬で、既存治療で効果が不十分であった患者や、副作用などにより治療継続が困難であった患者の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の適応で、2022年9月26日に製造販売承認を取得し、同年11月16日に発売されました。光線療法を含む既存の全身療法(生物学的製剤を除く)などで十分な効果が得られず皮疹が体表面積の10%以上に及ぶ場合や、難治性の皮疹や膿疱を有する場合に使用します。<用法・用量>通常、成人にはデュークラバシチニブとして1回6mgを1日1回経口投与します。なお、本剤使用前には結核・B型肝炎のスクリーニングを行い、24週以内に本剤による治療反応が得られない場合は、治療計画の継続を慎重に判断します。<安全性>国際共同第III相臨床試験(IM011-046試験)において、本剤投与群の22.0%(117/531例)に臨床検査値異常を含む副作用が発現しました。主なものは、下痢2.6%(14例)、上咽頭炎2.4%(13例)、上気道感染2.3%(12例)、頭痛1.9%(10例)などでした。なお、重大な副作用として、重篤な感染症(0.2%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、乾癬の原因となる酵素の働きを抑えることで、皮膚の炎症などの症状を改善します。2.免疫を抑える作用があるため、発熱、寒気、体がだるい、咳が続くなどの一般的な感染症症状のほか、帯状疱疹や単純ヘルペスなどの症状に注意し、気になる症状が現れた場合は速やかにご相談ください。3.本剤を使用している間は、生ワクチン(BCG、麻疹・風疹混合/単独、水痘、おたふく風邪など)の接種ができないので、接種の必要がある場合は医師にご相談ください。4.感染症を防ぐため、日頃からうがいや手洗いを行い、規則正しい生活を心掛けてください。また、衣服は肌がこすれにくくゆったりとしたものを選び、高温や長時間の入浴はできるだけ避けましょう。<Shimo's eyes>本剤は、TYK2阻害作用を有する世界初の経口乾癬治療薬です。TYK2はヤヌスキナーゼ(JAK)ファミリーの分子ですが、本剤のようなTYK2だけを選択的に阻害する薬剤は比較的安全に使用できるのではでないかと期待されています。乾癬の治療としては、副腎皮質ステロイドやビタミンD3誘導体による外用療法、光線療法、シクロスポリンやエトレチナート(商品名:チガソン)などによる内服療法が行われています。近年では、多くの生物学的製剤が開発され、既存治療で効果不十分な場合や難治性の場合、痛みが激しくQOLが低下している場合などで広く使用されるようになりました。現在、乾癬に適応を持つ生物学的製剤は下表のとおりです。また、同じ経口薬としてPDE4阻害薬のアプレミラスト(同:オテズラ)が「局所療法で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬」の適応で承認されています。臨床試験において、本剤投与群ではアプレミラストを上回る有効性を示しており、この点が評価されて薬価算定では40%の加算(有用性加算I)が付きました。安全性では、結核の既往歴を有する患者では結核を活動化させる可能性があるため注意が必要です。また、感染症の発症、帯状疱疹やB型肝炎ウイルスの再活性化の懸念もあるため、症状の発現が認められた場合にはすぐに受診するよう患者さんに説明しましょう。TYK2阻害薬は自己免疫疾患に対する新規作用機序の薬剤であり、今後の期待として潰瘍性大腸炎や全身性エリテマトーデスなどの幅広い疾患に適応が広がる可能性があり、注目されています。

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