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手洗い、マスクは、呼吸器系ウイルス感染の拡大防止に有効

 鳥インフルエンザや重症急性呼吸器症候群(SARS)などのウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)に対する社会的な関心が高まっている。Cochrane Vaccines Field所属の研究者である Tom Jefferson氏(イタリア、アレッサンドリア)らは、呼吸器系ウイルスの拡大を防止する物理的介入法の効果に関するエビデンスを系統的にレビューし、パンデミックへの備えとしての手洗いやマスクの着用など簡便で低コストの方法の有用性を明らかにした。BMJ誌2008年1月12日号(オンライン版2007年11月27日号)掲載の報告。呼吸器系ウイルス伝搬の予防法に関する49論文をレビュー データベースの検索により、呼吸器系ウイルス伝搬の予防法[発病者の隔離(isolation)、曝露者の隔離(quarantine)、社会的接触の低減化(social distancing)、防御法、個人的防護、衛生管理]に関する無作為化試験、コホート試験、症例対照試験などの文献を抽出した。 51試験に関する49の論文についてレビューを行った。試験の質は、3つの無作為化試験およびほとんどのクラスター無作為化対照比較試験で低く、観察試験にはばらつきがみられた。低コストの物理的な防御法が有効、優先度を上げるべき もっとも質の高いクラスター無作為化試験では、低年齢の小児を対象とした衛生処置による介入が呼吸器系ウイルスの伝搬を予防することが示唆された。また、6つの症例対照試験のメタ解析により、SARSの拡大の予防には次の6つの物理的対策が高い効果を示した。 1日10回以上の手洗い[オッズ比(OR):0.45、1感染の予防に要する治療例数(NNT):4]、マスクの着用(0.32、6)、微粒子用N95マスクの着用(0.09、3)、手袋の着用(0.43、5)、防護用ガウンの着用(0.23、5)、手洗い・マスク・手袋・ガウンの併用(0.09、3)。 通常の手洗いに抗ウイルス薬、抗菌薬を併用した場合の相加的効果は不明であり、スクリーニングや社会的接触の低減化(学校閉鎖、公共の場への集合禁止)などの総合対策については適切な評価法がないため確固たる結論には至っていない。Jefferson氏は、「呼吸器系ウイルス感染の拡大を防止するには、とくに手洗い、マスク着用などの低コストの物理的な防御法が有効と考えられる」と結論し、「これらの方法はパンデミックへの備えとしてもっと高く評価すべきであり、優先度を上げる必要がある」と指摘している。

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敗血症に対するヒドロコルチゾン療法は無効

 敗血症性ショックに対するステロイド療法であるヒドロコルチゾン投与(コルチコステロイド治療)の有益性はこれまでも論議されてきたが、CORTICUS研究グループ(Corticosteroid Therapy of Septic Shock)が多施設共同無作為二重盲検プラセボ対照試験の結果、本剤投与は生存率や回復を改善しないと報告した。NEJM誌2008年1月10日号に掲載された。有益性少ないのに幅広く使用 ヒドロコルチゾンは、輸液と昇圧剤による蘇生術後によっても低血圧が続き、コルチコトロピン投与後も血清コルチゾール濃度が適切に上昇しない患者に対してのみ使用可能である。投与による生存への寄与は報告されていないが、敗血症性ショックを起こした患者に広く使われている。 CORTICUS試験は、患者251例をヒドロコルチゾン50mg静脈投与群(6時間ごと5日間投与、その後6日間で漸減)、248例をプラセボ投与群に割り付け行われた。 主要転帰は、28日目時点でのコルチコトロピン試験で無反応だった患者の死亡。死亡率に有意差なく新たな感染症も 全対象499例のうちコルチコトロピン試験に無反応だったのは233例(46.7%、ヒドロコルチゾン群125例、プラセボ群108例)だった。 28日目時点におけるコルチコトロピン無反応だった各群の死亡率は、ヒドロコルチゾン群39.2%、プラセボ群36.1%(P=0.69)であり、反応した各群の死亡率は同28.8%、28.7%(P=1.00)で、反応・無反応とも両群間に有意な差はみられなかった。 また28日目時点でのヒドロコルチゾン群の死亡は251例中86例(34.3%)、プラセボ群では248例中78例(31.5%)で、ヒドロコルチゾン投与による生存率・回復改善のベネフィットは得られなかった(P=0.51)と結論している。 ただし、ヒドロコルチゾン群のほうがショックの回復がプラセボ群に比べ「速やか」ではあった。しかし、新たな敗血症や敗血症性ショックを起こすなど、より多くの重複感染エピソードが発現したとも報告されている。

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小児の重症肺炎は高用量経口アモキシシリンにより家庭で治療可能

開発途上国では、毎年、下部気道の急性感染症により5歳以下の小児が200万人以上の死亡している。WHOのガイドラインでは、重症肺炎は非経口抗生物質による病院での治療が推奨されている。パキスタン医科学研究所小児病院のTabish Hazir氏は、重症肺炎小児の治療において、高用量アモキシシリンを用いた家庭での治療の有用性を確認、Lancet誌2008年1月5日号で報告した。肺炎小児2,037例を入院治療と家庭治療に無作為に割り付け本試験はパキスタンの5都市7施設で実施された無作為化試験である。対象は、2005年2月~2006年8月の間に咳、呼吸困難あるいはその両方のために小児科を受診した生後3~59か月の小児2,037例。入院にてアモキシシリン(100mg/kg/日)を48時間静注投与したのち経口薬(シロップ80~90mg/kg/日)を3日間投与する群(入院治療群:1,012例)あるいは家庭で経口アモキシシリン(シロップ80~90mg/kg/日)を5日間投与する群(家庭治療群:1,025例)に無作為に割り付けた。フォローアップは登録後第1、3、6、14日に行い、主要評価項目は第6日までに確認された治療無効(臨床的増悪)とした。両群で効果は同等、WHO勧告は改訂すべきper-protocol解析では、入院治療群の36例および家庭治療群の37例がおもにプロトコール違反あるいはフォローアップ不可を理由に除外された。第6日までの臨床的増悪は、入院治療群の87例(8.6%)に、家庭治療群では77例(7.5%)に認められた(リスク差:1.1%、95%信頼区間:-1.3~3.5)。登録後14日までに5例(0.2%)が死亡した(入院治療群:4例、家庭治療群:1例)。いずれの症例も死亡の前に臨床的増悪が確認されており、抗生物質が変更されていた。治療関連死はみられず、重篤な有害事象も報告されなかった。以上の結果により、Hazir氏は「合併症のない重症肺炎小児の治療において、高用量アモキシシリンを用いた家庭治療は現在の標準治療として推奨されている入院によるアモキシシリン治療と同等の効果を示すことが明らかとなった」と結論し、「重症肺炎の治療に関するWHO勧告は改訂する必要がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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イタリア北東部におけるチクングニアウイルス集団感染報告

チクングニアウイルスはヤブ蚊類(Aedes spp)の媒介によってヒトに感染する。1953年、タンザニアで単離されたのち、散発的な感染例や集団感染がアフリカ諸国、インド亜大陸、東南アジアから報告されている。数年前に西インド洋域のアフリカの島々など広範な地域で流行して以来、温帯地域の先進諸国からの旅行者が感染して帰国する例が多発している。日本では、昨年12月、一時帰国中のスリランカ在住の30歳代の日本人女性の感染が判明、国内で確認された初めての感染例とされる。 イタリア高等厚生研究所のG. Rezza氏らは、イタリア北東部地域で発生したヒトスジシマカ(Aedes Albopictus)の媒介によると思われる集団感染について報告した。Lancet誌12月1日号から。原因不明の発熱性疾患が集団発生イタリア北東部の隣接する2つの村で原因不明の発熱性疾患が集団発生したため、感染源および伝搬様式を確定するための調査が行われ、積極的疫学調査(active surveillance system)が実施された。症状の定義は発熱および関節痛の発現とした。血液サンプルはPCR法で解析し、病原体を同定するための血清学的検査を実施した。現地で捕獲された蚊もPCRで検査し、チクングニアウイルスの系統発生解析を行った。病態はほぼ全例がごく軽度ヒトおよび蚊のサンプルの解析から、チクングニアウイルスの集団感染が判明した。2007年7月4日~9月27日までに205例を確認した。感染源は村のひとつに在住する親戚を訪問中に症状の発現をみたインド人男性と推定された。系統発生解析では、イタリアでみつかったウイルス株とインド洋の島々での集団発生時に同定された株が類似することが示された。病態はほぼ全例がごく軽度で、死亡例は1例のみであった。研究グループは、「今回の非熱帯地域におけるチクングニアウイルスの集団感染は予測不能な面がある」としたうえで、「グローバリゼーションの時代においては、未経験の感染症の脅威に対する備えと対応策が重要」と警告している。(菅野 守:医学ライター)

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インフルエンザ、流行シーズンに入る

インフルエンザが流行シーズンに入った。例年よりも1~2ヵ月ほど早く、過去10年ではもっとも早いシーズン入りとなる。11月19~25日の感染症発生動向調査が1.53(全国約4700ヵ所、報告数7162人)となり、流行開始の目安となる定点あたりの報告数が1.00を上回った。既に北海道では警報が出ていたが、神奈川県、兵庫県、東京都など都市部を中心に流行している。

5526.

上気道感染症、咽頭炎、中耳炎に対する抗生物質投与は正当か

プライマリケア医は、一般的な気道感染症に対して、それに続発する重篤な合併症への配慮から予防的に抗生物質を処方しがちだ。イギリスのガイドラインでは、耐性菌の発現を考慮して上気道感染症、咽頭炎、中耳炎には抗生物質をルーチンに使用すべきでないとされる。また、肺感染症は急性気管支炎に分類され抗生物質は推奨されないが、肺炎には推奨されている。 I. Petersen氏(ロンドン大学ユニバーシティーカレッジ感染症疫学センター)らは、抗生物質の使用により一般的な気道感染症に続発する重篤な合併症のリスクをどの程度低下させられるかについて検討した。BMJ誌10月18日付オンライン版、11月11日付本誌掲載の報告。重篤な合併症発症リスクを抗生物質投与群と非投与群で比較本試験は、1991年7月~2001年6月までにUK General Practice Research Databaseに登録されたデータをレトロスペクティブに解析したコホート研究である。336万件の気道感染症のデータを用い、診断後に重篤な合併症を発症するリスクを抗生物質投与群と非投与群において比較した。主要評価項目は、中耳炎に続発する乳様突起炎、咽頭炎後の化膿性扁桃腺炎、上気道感染症後の肺炎のリスク、および個々の合併症の予防に要する抗生物質による治療コース数とした。重篤な合併症の続発はまれ、高齢者の肺炎リスクは高い中耳炎、咽頭炎、上気道感染症に重篤な合併症が続発することはまれであり、個々の合併症を予防するには4,064~4,407コースもの抗生物質治療が必要であった。肺感染症後の肺炎のリスクは特に高齢患者で高く、肺炎の予防に要する抗生物質治療コース数は、65歳未満の96~119コースに対し65歳以上では39コースと高齢者で実質的な予防効果が認められた。肺炎の予防を除き、気道感染症への抗生物質の使用は正当化されないPetersen氏は、「中耳炎、咽頭炎、上気道感染症後の重篤な合併症のリスク軽減を目的に抗生物質を使用することは正当化されない」と結論している。また、「市中肺炎は重篤な病態で死亡率も高い。イギリスのプライマリケア医はすでに肺感染症患者に抗生物質の投与を行っており、今回のわれわれの検討は特に高齢患者におけるその正当性を明らかにした」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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ザンビアでのエイズ罹患小児への抗レトロウイルス療法

ザンビア保健省はヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した小児への抗レトロウイルス療法(ART)を首都ルサカにある初期医療施設で提供しているが、同国では周産期予防の規模拡充にもかかわらず小児の多くが感染している状況にある。治療を受けた小児の臨床および免疫学的予後に関する調査報告がJAMA誌2007年10月24日号に掲載された。3剤併用ART療法を受けた小児の転帰データを分析ザンビア感染症研究センターのCarolyn Bolton-Mooreらによる本調査は、ルサカにある18の国立の初期医療施設でARTを受けた小児の転帰データを使ったオープンコホート研究。対象は2004年5月1日から2007年6月29日の間にHIV治療を受けた15歳以下の小児で、治療は主に看護師と、米国の医師助手に類似した医師補によって行われていた。3剤併用ART療法(zidovudineあるいはstavudine+ラミブジン+nevirapineあるいはefavirenz)を受けたのは、国内の治療判定基準を満たした小児。主要評価項目は生存、体重増加、CD4細胞数とヘモグロビン値とされた。登録された4,975例中、2,938例(59.1%)でARTが開始された。ART開始の対象年齢中央値は81ヵ月(四分位範囲36-125)、1,531例(52.1%)が女子であり、WHO定義に基づく病期は2,087例(72.4%)がIII期またはIV期だった。予後、CD4値とも有意に改善2,398例中198例(8.3%)が死亡、これはフォローアップした3,018人年死亡率で換算すると6.6/100人年(95%信頼区間5.7-7.5)に当たることが明らかとなった。また死亡例のうち112例(56.6%)は治療開始から90日以内で転帰に至っており、早期死亡率は17.4/100人年、90日死亡率は2.9/100人年となる。死亡率は、CD4細胞減少、低体重、低年齢、貧血と関連していた。一方で、1回以上の測定を行った1,561例の、ART開始時の平均CD4細胞パーセンテージは12.9%(95%信頼区間12.5%-13.3%)だったが、6ヵ月後には23.7%(同23.1%-24.3%)まで増え、12ヵ月後は27.0%(同26.3%-27.6%)、18ヵ月後は28.0%(同27.2%-28.8%)、そして24ヵ月後には28.4%(同27.4%-29.4%)に増加していた。これを受け、「看護師や医師補のような臨床家が提供するケアでも、HIV感染児のためのプライマリ・ケアは、南部アフリカという環境下で良好な治療成績を上げることができた」と報告。治療導入初期90日の死亡率が高いことについては、早期介入の必要性を示しているものだと結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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MRSA感染は院内ではなく公衆衛生問題

米国疾病管理予防センター(CDC)のメチシリン耐性黄色ぶどう球菌(MRSA)研究者チームによって行われた本研究は、MRSA感染症の疫学的状況を正確に把握することで、必要に応じ新たな予防対策を講じることを目的としたものである。 従来は病院発症、院内感染ばかりが注目されていたが、ER(救急救命室)受け入れ患者の感染症の原因として最も多いのがMRSAであるなど疫学的変化が起きており、コミュニティを対象とする調査の必要性が提起されていた。JAMA誌10月17日号報告より。コミュニティを対象に調査調査はCDCのActive Bacterial Core Surveillance(ABCs)/Emerging Infections Program Networkに関与している全米9つのコミュニティを対象に行われた。2004年7月から2005年12月までの同ネットワークデータからMRSA感染の発現率と分布状況を調べ、2005年の米国におけるMRSA感染症の負担の度合いが推定するというもの。MRSA感染報告は、疫学的定義として、「医療機関関連:コミュニティで感染(Community-onset)あるいは病院で感染(Hospital-onset)」と「コミュニティ関連(community-associated):医療機関関連のリスク因子を有さない患者」を定め分類された。推定MRSA発現率は10万人当たり31.8対象調査期間中に観察されたMRSA発症例は8,987例。大部分が「医療機関関連」に分類されるもので、内訳は58.4%(5,250例)がコミュニティで感染、26.6%(2,389例)が病院で感染となっている。一方、医療機関関連のリスク因子を有さない「コミュニティ関連」の感染は13.7%(1,234例)だった。その他に「分類不可」に類するものが1.3%(114例)あった。2005年におけるMRSA発現率は、10万人当たり31.8と推定された。出現率は65歳以上で最も高く(10万人当たり127.7)、黒人(同66.5)、男性(同37.5)も高い。調査期間中の病院での死亡は1,598例。2005年における死亡率は10万人当たり6.3と推定された。また、すべての調査対象地域で「医療機関関連」後に「コミュニティ関連」が発生するという傾向があった。CDCは、「MRSA感染は主に医療機関に関連しているが、集中治療室、急性期病院など施設に限ったことではなく、公衆衛生問題として取り組む必要がある」と結論づけた。(武藤まき:医療ライター)

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抗生物質の処方が地域に耐性菌を蔓延

一般医の抗生物質の処方が地域に耐性菌を蔓延させている、との興味深い論文が、BMJ誌オンライン版7月26日号、本誌9月1日号に掲載された。 英国一般診療で抗生物質の処方が最も多いのは、小児の急性呼吸器感染症に対してだが、コミュニティ・スタディなどがほとんど行われてこなかった。英国オックスフォード大学のAngela Chung氏らがあらためて観察研究を行った結果の報告。急性呼吸器感染症と診断の小児119例を追跡調査英国一般診療において抗生物質の処方と耐性菌出現との相関は低いと言われてきたが、最近の報告で、欧州19ヵ国のペニシリンのコミュニティにおける使用とペニシリン耐性菌出現との相関は0.84であると報じられた。ただし、スウェーデンやデンマークは英国よりも処方率は高いが耐性菌レベルは低く、一方フランスは処方率は高いが耐性菌レベルが高い。アイスランドのコミュニティ・スタディでは相関関係は特に見られないなど国によって異なる事実もある。Chung 氏らの観察研究は、オックスフォードシャー州の一般医開業医を受診し急性呼吸器感染症と診断された生後6ヵ月~12歳までの小児119例が対象。そのうち 71例はβラクタム系抗生剤(アモキシシリン70例、cephradine 1例)を処方されており、2週時点と12週時点に咽頭ぬぐい液検査を行い、アンピシリンの最小発育阻止濃度とICEHin1056耐性因子を4つのHaemophilus分離株で評価した。抗生物質投与群の耐性菌出現リスクは2倍2週時点の評価で、アンピシリンの最小発育阻止濃度は、アモキシシリン処方の有無で3倍以上の開きがあることが明らかとなった(処方あり9.2 μg/mL vs 処方なし2.7 μg/mL、P=0.005)。またICEHin1056耐性因子のリスクは約2倍になることも示された(処方あり67% vs処方なし36%、相対危険度1.9、95%信頼区間1.2-2.9)。耐性因子の増加は一過性だったが(12週時にアンピシリン耐性はベースライン近くに低下)、約35%の小児に耐性因子の存在が示され、本研究の一部ポイントでは83%(76%~89%)だった。Chung 氏らは、「プライマリ・ケアで処方されるアモキシシリンの短期的影響は、個々の小児にとって一過性かもしれないが、集団観点ではハイレベルの抗生物質耐性を蔓延させるのに十分足りうるものだ」と結論付け、一般診療での抗生物質の処方を大きく変化させる必要があると述べている。

5530.

HPV感染女性へのワクチン投与の有効性は皆無

ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、HPV感染症と子宮頸部前癌および癌の発現を予防するために開発され、発癌性のHPVにすでに感染している女性に対してもワクチン接種を検討すべきとの説もある。米国立癌研究所のAllan Hildesheim氏らのグループは、子宮頸癌との関連が指摘されているHPV16と18の2タイプについて、既感染女性への予防接種がウイルス・クリアランス率を向上させるかどうか無作為化試験を実施した。報告はJAMA誌8月15日号に掲載された。16/18L1ワクチンとA型肝炎ワクチンでクリアランス率を比較試験は、2004年6月から2005年12月にかけて、コスタリカの2つの州で18~25歳の2,189人の女性を対象とした第III相無作為化盲検試験。参加者は登録時HPV DNA陽性で、HPV-16/18候補ワクチンの3回投与群(n=1,088)と、対照群としてA型肝炎予防ワクチンの6ヵ月投与群(n=1,101)とにランダムに割り付けられ、6ヵ月後のフォローアップ時にHPV DNA鑑定を受けた。主要評価項目はHPV DNAの存在。2回投与後の6ヵ月時点と3回投与後の12ヵ月時点でウイルス・クリアランス率を比較。判定は、子宮頸部標本を分子ハイブリッド形成検定、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)、さらに予防接種後のPCR法で行われた。一般的な感染症の治療にも使うべきではない6ヵ月後のウイルス・クリアランス率は、研究群33.4%(82/248)に対し対照群31.6%(95/298)(ウイルス・クリアランス率2.5%、 95%信頼区間-9.8%~13.5%)、12ヵ月後のクリアランス率は研究群48.8%(86/177)で対照群49.8%(110/220)だった(同-2.0%、-24.3%~16.3%)。また、ワクチンの全量投与を受けた女性、単感染の女性、入力変数(HPV-16/18血清・細胞学的検査結果、HPVDNAウイルス量、性経験、トラコーマクラミジアまたは淋菌感染、経口避妊薬、喫煙等)で階層化した場合でも治療効果は確認できなかった。研究グループは、HPV DNA陽性の女性へのHPV-16/18ワクチン投与はウイルス・クリアランスを改善せず、一般的な感染症の治療にも使うべきではないと結論づけた。(朝田哲明:医療ライター)

5531.

クラミジアの組織的スクリーニングは本当に費用効果に優れるか

イギリスでは2003年4月に、国の主導によるクラミジア(Chlamydia trachomatis)のスクリーニングプログラムが開始されたが、それ以前は組織的スクリーニングは行われていなかった。クラミジアの組織的スクリーニングは費用効果が優れるとする報告のほとんどが、感染症の評価には不適切な静的モデルを用いている。 イギリス・バーミンガム大学健康サービス管理センター健康経済学のTracy Roberts氏らは、家庭をベースとした地域住民におけるクラミジアの積極的な組織的スクリーニングの費用効果を、非組織的スクリーニング(組織的な勧奨は行わず受診は対象者の意志に委ねられる)との比較において評価する試験(ClaSSプロジェクト、http://www.chlamydia.ac.uk/index.htm)を実施、BMJ誌7月26日付オンライン版、8月11日付本誌で報告した。動的モデルを用いた費用効果の解析イギリス中部~南西部に居住する16~24歳の男女、約5万人に対し、毎年、スクリーニングへの受診勧奨を実施した。受診者は家庭で採取したサンプルを検査に送り、陽性者への通告はGPの診察室で行われ、陰性者には書面が郵送された。費用効果の評価には動的な数学モデルを用い、回避すべき主要測定項目としての骨盤内炎症性疾患(PID)、子宮外妊娠、不妊症、新生児合併症について解析を行った。両スクリーニングのコストは同等、条件によっては組織的スクリーニングが高価女性のみを対象としたスクリーニングプログラムは、非組織的スクリーニングよりも主要評価項目ごとの費用が高く、増分コストは2万2,300ポンド(=3万 3,000ユーロ、4万5,000ドル)であった。男性と女性を対象とした場合のコストも組織的スクリーニングが約2万8,900ポンド高かった。回避すべき主要評価項目のうち最も頻度が高かったのは、入院を要するPIDであった。主要評価項目の発症率およびスクリーニングの受診率に対する sensitivityが高く、これら2つの要素が上昇すると女性のみのスクリーニングにおける主要評価項目ごとの費用効果は6,200ポンド低下した。これらの知見を踏まえ、Roberts氏は「クラミジアの積極的な組織的スクリーニングは、主要評価項目の発症率およびスクリーニングの受診率が一般的な推定値よりも低い場合には費用効果に優れるとは言えず、むしろ高価である」と総括している。また、「ClaSSプロジェクトから得られるエビデンスは、至適なスクリーニングの検出率および受診率の達成には組織的および非組織的スクリーニングの要素を合わせた混合モデルが有用な可能性がある、というものだ」と考察を加えている。(菅野 守:医学ライター)

5532.

サプロプテリンのフェニルケトン尿症に対する有用性を確認

現在、フェニルケトン尿症における精神遅滞の予防法としては、早期の厳格な食事療法があるのみである。最近、新たな治療アプローチとして、テトラヒドロビオプテリン(BH4)あるいはその生物学的活性合成体であるサプロプテリン(6R-BH4)によるフェニルアラニン水酸化酵素(PAH)の活性化の増強が注目されている。 アメリカ・ボストン小児病院のHarvey L. Levy氏らは、フェニルケトン尿症におけるサプロプテリンの血中フェニルアラニン濃度低下作用について検討するために、プラセボ対照無作為化第III相試験を実施した。8月11日付Lancet誌掲載の報告から。1年間に欧米の30施設に89例を登録2005 年3月~2006年2月の間に欧米の30施設に89例のフェニルケトン尿症患者が登録され、サプロプテリン群(10mg/kg/日、6週間)に42例が、プラセボ群には47例が無作為に割り付けられた。主要評価項目は6週後の血中フェニルアラニン濃度のベースラインからの平均変化量。対象の平均年齢は20歳であった。88例が少なくとも1回の投与を受け、87例が6週間の治療を完遂した。ベースラインにおける血中フェニルアラニン濃度は、サプロプテリン群が843μmol/L、プラセボ群が888μmol/Lであった。サプロプテリンにより、血中フェニルアラニン濃度が有意に低下治療6週後、サプロプテリン群の平均血中フェニルアラニン濃度は236μmol/L低下したのに対し、プラセボ群では3μmol/L上昇していた(p <0.0001)。サプロプテリン群では、治療1週後には血中フェニルアラニン濃度が約200μmol/L低下し、この低下効果は治療終了時まで持続した(p<0.0001)。治療との関連が示唆される有害事象がサプロプテリン群の23%、プラセボ群の20%に認められ(p=0.80)、最も頻度の高い有害事象は上気道感染症であった。Levy 氏は、「フェニルケトン尿症に対する6週間のサプロプテリン治療は有効かつ安全」と結論、「BH4に反応するフェニルケトン尿症患者においては、サプロプテリンによるフェニルアラニン低下療法を低フェニルアラニン食の補助療法として使用可能であり、症例によっては食事療法からの完全な切り替えが可能と考えられる」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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重症血友病A男児への第VIII因子の有効な投与法

1960年代に行われた小規模試験の結果を受け、血友病性関節症の予防に第VIII因子の投与が有効であることが推奨され臨床家の間に広がった。その後 1980年代に、血漿由来の第VIII因子がヒト免疫不全や肝炎ウイルスに汚染されていることが判明し予防的治療は激減。1992年にアメリカで血友病患者への安全投与を見据えた組み換え型第VIII因子が承認されたが、投与の開始時期、投与量、期間については明らかになっていない。 コロラド大学保健科学センターのMarilyn J. Manco-Johnson氏らは、重症の血友病Aの男児を対象に無作為化試験を行い、有効な方法について検証した。NEJM誌8月9日号の報告から。生後30ヵ月未満65例を予防治療群と発症時治療群に割り付け無作為化試験は、生後30ヵ月未満の重症の血友病Aの男児(65例)を、予防的治療群(32例)と関節内出血発症時に強化注入を行う対照群(33例)とに割り付け行われた。前者は、組み換え型第VIII因子を1日おきに25 IU/kg投与。関節内出血が起きた場合は40 IUを投与し、その後また予防的投与が続けられた。後者は発症時に、第VIII因子を3回以上、最低80 IU/kg投与した(最初に40 IU、24時間後と72時間後に20 IU)。主要評価項目は、X線またはMRIによってindex joint(足関節、膝、肘)で検出された骨・軟骨傷害の発生率とした。予防治療群のほうが正常の割合高く出血回数少ない男児6歳時に、MRI上で正常なindex joint構成が認められたのは、予防群93%、発症時治療群55%だった。MRIで発見された発症時治療群の関節障害の相対リスクは、予防治療群に比べて6.1だった(95%信頼区間1.5-24.4)。研究終了時点での関節内出血およびその他部位を含めた総出血の平均年間回数は、発症時治療群で予防治療群より多かった(両群間比較に関してP<0.001)。また、予防治療群の2例で第VIII因子の高い抗体価が認められ、発症時治療群の3例で致命的な出血を呈する症例があった。中心静脈カテーテル留置に関連した入院と感染症については両群間で有意差は見られなかった。Manco-Johnson氏らは、「組み換え型第VIII因子の予防的投与は、関節障害を予防し、重篤な血友病A男児の関節およびその他の出血頻度を減少させる」と結論付けている。(朝田哲明:医療ライター)

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性的禁欲だけで、高所得層のHIV感染を予防できるか

2005年にはAIDS関連の原因により毎日7,600人以上が死亡し、世界のHIV感染者数は約3,860万人に達している。新規感染率は1990年代末にピークを迎えたとの見方がある一方で、新たな感染拡大が懸念されるなか、これまでの治療偏重への反省から、最近では予防に関する研究が活発化している。 「性的禁欲のみによる予防プログラム」とは、HIV感染予防の手段として性的禁欲教育のみを実施し、コンドームの使用など、より安全な性交の奨励は行わない予防戦略。Kristen Underhill氏ら、オックスフォード大学Evidence-based Interventionセンターの研究グループは、高所得層は貧困などHIV感染の構造的なリスク因子に接する機会が少ないため、性的禁欲のみによる予防プログラムの効果を示すには最適の対象との仮説に基づいて体系的なレビューを行った。BMJ誌7月26日付オンライン版、8月4日付本誌掲載の報告から。HIV感染予防プログラムの無作為化/準無作為化試験をレビュー30のデータベースから、2007月2月までの文献を言語および地理的な制限なしに検索した。選択基準は、高所得国における性的禁欲のみによる予防プログラムに関する無作為化あるいは準無作為化対照比較試験とした。また、プログラムの目的はHIV感染予防あるいは妊娠とHIV感染の予防であり、生物学的アウトカム(HIV、性感染症、妊娠)あるいは行動学的アウトカム(避妊手段をとらない性交の頻度など)の評価を行う試験を対象とした。対照としての通常ケアには、「介入なし」「コンドームを使用したより安全な性交の奨励」「より安全な性交と初回性交時期の先送りの奨励」などが含まれた。禁欲の奨励だけではHIV感染予防には無効だが、アメリカの若者に限定的年齢制限を設けずに世界中の既報、未報の文献を渉猟したにもかかわらず、選択基準を満たした13試験はいずれもアメリカの青少年および若年成人を対象としたものであった。1万5,940人が登録され、すべての評価項目は自己申告によった。予防プログラムは、避妊手段をとらない性交、パートナー数、コンドームの使用、初回性交年齢には影響を及ぼさなかった。予防プログラムにより短期的および長期的な有害作用(性感染症の増加など)が見られた試験、および短期的に性交頻度が低下した試験が1つずつ認められたが、いずれの影響も全体としては相殺された。Underhill氏は、「高所得層においては、性的禁欲のみによる予防プログラムはHIV感染リスクを低下も上昇もさせない」と結論し、「本研究から得られるエビデンスは、『HIV感染の予防を目的とした性的禁欲のみによる予防プログラムは無効だが、この知見を一般化できるのはアメリカの若者に限定される』というものだ」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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クローン病治療に対するcertolizumab pegolの有効性

治験薬剤である抗腫瘍壊死因子(抗TNF)治療薬certolizumab pegol(CZP)については現在、クローン病と関節リウマチ(RA)についてそれぞれ臨床試験が継続されている。クローン病に対する同剤の臨床試験プログラムはPRECISEと呼ばれているが、本報告は、アメリカ・メイヨークリニックのWilliam J. Sandborn氏らによるPRECISE 1 Study:クローン病治療におけるCZPの有効性を検証する無作為二重盲検プラセボ対照試験の結果。NEJM誌7月19日号に掲載された。中等度~重度のクローン病患者662例を対象試験対象は、成人で中等度~重度のクローン病患者662例。患者をC反応性蛋白(CRP)の濃度レベルで階層化し、0週目、2週目、4週目と、その後は4週間ごとに、CZP 400mgとプラセボが皮下投与されるようランダムに割り付けられた。主要エンドポイントは、6週時点での奏功率と、6週目、26週目それぞれの時点での奏功率とした。わずかな有効性は認められるが緩解率の有意差は認められず母集団のうちCRPレベルが10mg/L以上の患者について、6週時点で「response」[CDAI(Crohn’s Disease Activity Index)スコアが100以下を達成した場合と定義]が認められた患者はCZP群37%、プラセボ群26%だった(P= 0.04)。また、6週、26週それぞれの時点で「response」が認められたのはCZP群22%、プラセボ群12%だった(P = 0.05)。母集団全体で見ると、6週時点はCZP群35%、プラセボ群27%(P = 0.02)、また、6週、26週各時点で認められたのはCZP群23%、プラセボ群16%(P = 0.02)だった。一方、緩解率(緩解:CDAIスコアが150以下を達成した場合と定義)については、6週時点と26週時点において両群に有意差は認められなかった(P = 0.17)。重篤な有害事象の発生はCZP群で10%、プラセボ群で7%の患者で報告され、重篤な感染症はそれぞれ2%、1%未満と報告された。また、CZP群のうち8%の患者で本剤への抗体が出現し、2%で抗核抗体が出現した。これらから研究グループは、「中等度~重度のクローン病患者へのCZP投与はプラセボと比較して、導入療法および維持療法いずれにおいてもわずかではあるが奏功率の向上が認められた。ただし緩解率について有意差は認められなかった」と結論付けた。(朝田哲明:医療ライター)

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小児の反復性UTIに抗菌薬予防投与は効果なし

小児の反復性尿路感染(UTI)の危険因子と、抗菌薬の予防投与の有益性に関する十分な証拠は得られていない。そのためアメリカ・ペンシルベニア大学のPatrick H. Conway氏らのグループは、小児科プライマリ・ケア・コホートで反復性UTIの危険因子を同定すること、また抗菌薬の予防投与と反復性UTIとの関連性を評価すること、さらに反復性UTIに見られる耐性の危険因子を同定することを目的にtime-to-event解析を行った。本研究報告はJAMA誌7月11日号に掲載された。約7万5,000例を対象にtime-to-event解析を実施研究対象は、フィラデルフィア子供病院で管理されるelectronic health record(EHR)を共有する3つの州(デラウェア、ニュージャージー、ペンシルベニア)に分布する27の小児科プライマリ・ケア診療所のネットワークから集められた。診療所は都市部、郊外、準田園地帯と異なるエリアに点在している。反復性UTIの危険因子、抗菌薬の予防投与と反復性UTIの関連性を評価するためtime-to-event解析法が、また反復性UTI患児における耐性菌感染症の危険因子同定には、ネステッド・ケースコントロール研究が実施された。主要評価項目は、反復性UTIに至る時間と病原体の抗菌薬耐性。抗菌薬予防投与は反復性UTIに効果なく、耐性菌リスクを増大小児74,974例のうち、611例(0.007/人年)で初回UTIを、83例(初回UTI後、0.12%/人年)で反復性UTIが見られた。反復性UTIのリスク増加と関連する因子は、「白人」0.17/人年(ハザード比1.97、95%信頼区間1.22-3.16)、「3~4歳」0.22/人年(2.75、1.37-5.51)、「4~5歳」0.19/人年(2.47、1.19-5.12)、「膀胱尿管逆流(grade IV~V)」0.60/人年(4.38、1.26-15.29)で、「性別」および「膀胱尿管逆流(grade I~III)」は再発リスクとの関連は認められなかった。また抗菌薬の予防投与を行っても反復性UTIリスクは有意に低下せず(1.01、0.50-2.02)、むしろ抗菌薬耐性菌をもたらす危険因子の一つとなっていた(7.50、1.60-35.17)。このことからConway氏らは、「小児へのUTIに対する抗菌薬予防投与は、反復性UTIのリスクを減らすどころか、耐性菌感染症のリスクを増加させる」と結論づけた。(朝田哲明:医療ライター)

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従来療法に劣らぬ効果が報告された新・抗HIV療法

HIV感染症の治療は、抗HIV薬の多剤併用療法(HAART)の導入により劇的な進歩を遂げた。しかし、初回の抗HIV療法に失敗した感染者に対して、いかにウイルスを抑制し、その効果を長期間持続させていくかはいまだに大きな課題となっている。そのような中で開発された新規プロテアーゼ阻害薬(PI)のdarunavir(DRV:日本では申請中)について、 7月7日付のLancet誌に興味深い報告が発表された。ブラジル・サンパウロのCentro de Referência e Treinamento DST/AIDSのMadruga氏らが行った第III相無作為臨床試験「TITAN」の結果、darunavirとリトナビルの配合剤(DRV/r)が、現在繁用されているPI配合剤のロピナビル・リトナビル配合剤(LPV/r)に劣らぬ抗ウイルス効果を示すことが明らかにされたのだ。48週投与で抗HIV療法経験者の77%に抗ウイルス効果Madruga氏らは、これまでLPV/rが安全性と抗ウイルス効果の両面から、抗HIV療法経験者に対する治療法として最も有望視されてきたことから、 DRV/rをLPV/rと比較することとした。対象は、すでに抗HIV療法を経験しているが、ロピナビルの使用経験はない18歳以上のHIV感染者(血中HIV RNA量>1,000コピー/mL)とし、これらをDRV/r群(298例)とLPV/r群(297例)に無作為化して、48週間のウイルス抑制効果を検討した。その結果、 治療48週後にウイルス抑制効果(血中HIV RNA量<400コピー/mLの達成)が認められたのは、DRV/r群が77%、LPV /r群が68%で、9%の差が見られた(per-protocol 解析)。DRV/r群でいずれも小さかった変異発現率またPI耐性につながる変異の発現率は、DRV/r群が21%、LPV/r群が36%。核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)耐性関連の変異発現率は、DRV/r群14%、LPV/r群27%と、いずれもDRV/r群のほうが小さかった。安全性に関する結果は、両群同等だった。以上よりMadruga氏らは、ロピナビル未使用の抗HIV療法経験者に対し、DRV/rはLPV/rに劣らぬ抗ウイルス効果を示したとして、DRV/rをこれらのHIV感染者にする治療選択肢として考慮すべきだと結論づけている。

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メタ解析で明らかになったHIV/AIDSにおける発癌リスク

HIV治療の進歩により、HIV感染後の生命予後は以前に比べだいぶ長くなった。そこで近年、関心の高まりを見せているのが、「発癌リスク」などHIVの長期感染に伴う合併症の問題だ。元来、免疫低下が直接関係する癌としてHIV感染者やAIDS患者で指摘されてきたのは、カポジ肉腫、非ホジキン性リンパ腫、子宮癌の3種のみだが、臓器移植後の免疫低下患者では、広範囲の癌種の発症増加が報告されている。 このような中、7月7日付Lancet誌で報告されたオーストラリアにあるニュー・サウス・ウェールズ大学のGrulich氏らの研究では、HIV/AIDSを対象にしたコホート試験と、臓器移植のレシピアントを対象にしたコホート試験とをメタ解析した結果、臓器移植レシピアント群だけでなくHIV/AIDS群においても、免疫低下が主因と考えられる多種の感染症由来の癌発症リスクが増大していることが明らかにされた。HIV/AIDS群でも20種類の癌が増加、多くの主因は免疫低下同研究では、これまでに報告されている文献の中から、HIV/AIDSを対象にしたコホート研究7件(合計444,172例)と、臓器移植のレシピアントを対象にしたコホート研究5件(合計31,977例)を抽出し、ともに免疫低下を有する双方の集団において、癌種や発癌状況に関するメタ解析を行った。その結果、HIV/AIDS群においても臓器移植レシピアント群においても、検討した28種類の癌種のうち20種類の発症率が、対照群より有意に高いことが明らかになった。HIV感染症の長期合併症として危惧される感染症関連の各種癌これら発症増加の見られた癌のほとんどは、epstein-Barrウイルス(EBV)が関連するホジキン性リンパ腫や非ホジキン性リンパ腫、ヒト・ヘルペスウイルスが関連するカポジ肉腫、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスが関連する肝癌、ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)が関係する胃癌など、何らかの感染症が関与すると考えられる癌だったという。以上のように、HIV/AIDS群と臓器移植レシピアント群という異なる免疫低下集団において同様の発癌パターンが見られたことから、Grulich氏らは「これらの癌増加の主要リスクファクターは、『免疫低下』だと考えられる」と考察しており、HIV感染症の長期的合併症として今後、感染症関連の癌の重要性が増大していくだろうと喚起している。

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低出生体重児へのフルコナゾール予防投与で真菌定着を抑制

早産児の疾病および死亡の主原因である侵襲性カンジダ感染症を回避する手法について、イタリア・トリノの聖アンナ病院のPaolo Manzoni氏らのグループは、フルコナゾールの予防投与による効果を検証した。超低出生体重児における真菌定着と感染症予防について、多施設共同での無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施。その結果、フルコナゾールの予防投与が、出生時体重1500g未満の新生児で、真菌の定着と侵襲性感染症の発病率を低下させることが明らかになったという。NEJM誌6月14日号で報告された。6mg投与群、3mg投与群とプラセボに割り付け試験方法は、イタリアにある8つの第三次新生児集中治療施設を対象に、15ヵ月の間に出生した体重1500g未満の新生児322例を、ランダムに30日間(出生時体重1000g以下の新生児は45日間)、フルコナゾール投与群(体重kg当たり6mg投与群と3mg投与群)とプラセボ群に割り付け、菌の監視培養と系統的な感受性試験を毎週実施した。真菌定着、感染症発生ともに有意に低く予防投与は有効その結果、フルコナゾール投与群における真菌の定着率は、6mg投与群が9.8%、3mg投与群は7.7%で、いずれもプラセボ投与群の29.2%と比較して有意に低いことがわかった(いずれもP

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