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肺炎入院歴は心血管疾患のリスク因子/JAMA

 肺炎による入院歴がある集団では、これがない集団に比べ心血管疾患(CVD)の発症率が、短期的および長期的にも高いことが、カナダ・オタワ大学のVicente F. Corrales-Medina氏らの検討で示された。65歳以上では、30日発症率が約4倍に達し、その後10年まで有意なリスクの増大がみられ、65歳未満でも2年目まで有意なリスク上昇が確認された。CVDの至適な予防戦略を確立するには、リスク因子の特性化が重要であり、感染症はCVDの短期的、長期的なリスク因子である可能性が指摘されている。JAMA誌2015年1月20日号掲載の報告。2つのコホート研究から肺炎のCVDリスクを評価 研究グループは、肺炎による入院と、CVDの短期的、長期的リスクの関連を検討するマッチ化コホート試験(matched-cohort study)を実施した(国立心肺血液研究所[NHLBI]、国立神経疾患・脳卒中研究所[NINDS]、国立老化研究所[NIA]の助成による)。 Cardiovascular Health Study(CHS、5,888例、登録時年齢65歳以上、登録期間1989~1994年)と、Atherosclerosis Risk in Communities study(ARIC、1万5,792例、登録時年齢45~64歳、登録期間1987~1989年)の、2つの地域住民ベースの多施設共同観察的コホート研究のデータを使用した。フォローアップは2010年12月31日まで行われた。 個々の研究の参加者のうち肺炎で入院した患者を選出し、それぞれの研究の対照群と背景因子をマッチさせた。マッチング後10年間、肺炎群と対照群におけるCVDの発症状況を追跡した。人口統計学的因子、CVDのリスク因子、潜在性CVD、併存疾患、身体機能状態などで補正したハザード比(HR)を推算した。CVD(心筋梗塞、脳卒中、致死性の冠動脈心疾患)の発症を主要評価項目とした。30日発症率がCHSで約4倍、ARICでも2倍以上に CHSの1,773例[肺炎群:591例(平均年齢73.9歳、女性57.8%)、対照群:1,182例(72.6歳、65.8%)]、ARICの2,040例[680例(55.8歳、53.8%)、1,360例(55.4歳、56.8%)]が解析の対象となった。 CHSの肺炎群591例のうち、入院から10年の間に206例(34.85%)がCVDを発症した[心筋梗塞104例(50.5%)、脳卒中35例(17.0%)、致死性冠動脈心疾患67例(32.5%)]。対照群と比較した肺炎群のCVDリスクは、入院後1年までが最も高く(0~30日:HR 4.07、95%信頼区間[CI]:2.86~5.27/31~90日:2.94、2.18~3.70/91日~1年:2.10、1.59~2.60)、その後10年にわたり有意に高い状況が持続した(9~10年:1.86、1.18~2.55)。 ARICでは、肺炎群の680例のうち入院後10年間で112例(16.5%)がCVDを発症した(心筋梗塞:33例[29.5%]、脳卒中36例[32.1%]、致死性冠動脈心疾患:43例[38.4%])。2年目までは、対照群に比べ肺炎群でCVDリスクが有意に高い状態が続いた(0~30日:HR 2.38、95%CI:1.12~3.63/31~90日:2.40、1.23~3.47/91日~1年:2.19、1.20~3.19/1~2年:1.88、1.10~2.66)が、2年以降は有意な差はなくなった(9~10年:1.54、0.74~2.34)。 著者は、「肺炎による入院は短期的および長期的にCVDリスクを増大させており、肺炎はCVDのリスク因子である」と結論している。感染がCVDリスクを増大させる機序については、短期的なメカニズムに関する議論はいくつかあるが、長期的メカニズムはほとんどわかっていないという。

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市中肺炎入院患者、ステロイド追加で早期回復/Lancet

 入院を要する市中肺炎患者の治療において、プレドニゾンの7日間投与による補助療法を行うと、臨床的安定の達成までの期間が有意に短縮することが、スイス・バーゼル大学病院のClaudine Angela Blum氏らの検討で示された。市中肺炎では、血中への炎症性サイトカインの過剰放出により肺機能障害が引き起こされるが、ステロイドは全身性の炎症過程を抑制し、さらに肺炎球菌性肺炎に対する効果も確認されている。一方、ステロイド補助療法のベネフィットに関する議論は1950年代から続いているが、最近の臨床試験の結果は相反するものだという。Lancet誌オンライン版2015年1月18日号掲載の報告。ステロイド追加の有用性をプラセボと比較 研究グループは、市中肺炎に対する短期的ステロイド療法の有用性を評価する多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験を行った(Swiss National Science Foundationなどの助成による)。対象は、年齢18歳以上、入院後24時間以内の市中肺炎患者であった。 被験者は、プレドニゾン50mg/日を7日間経口投与する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は臨床的安定までの期間(バイタルサインが24時間以上安定するまでの日数)とし、intention-to-treat(ITT)解析を行った。 臨床的安定は、体温37.8℃以下、心拍数100回/分以下、自発呼吸数24回/分以下、昇圧薬の投与なしで収縮期血圧90mmHg以上(高血圧患者の場合は100mmHg以上)、精神状態が発症前レベルに回復、経口摂取が可能、適正な酸素供給(PaO2≧60mmHgまたはパルスオキシメトリ≧90%)のすべてを満たす場合と定義した。臨床的安定までの期間が1.4日短縮 2009年12月1日~2014年5月21日に、スイスの7つの3次病院に785例(ITT集団)が登録され、ステロイド群に392例(年齢中央値74歳、男性61%)、プラセボ群には393例(73歳、63%)が割り付けられた。 臨床的安定までの期間中央値は、ステロイド群が3.0日と、プラセボ群の4.4日に比べ有意に短かった(ハザード比[HR]:1.33、95%信頼区間[CI]:1.15~1.50、p<0.0001)。 30日以内の肺炎関連合併症(急性呼吸促迫症候群、膿胸、肺炎の持続)の発現率は、ステロイド群が3%であり、プラセボ群の6%よりも低かったが、有意な差は認めなかった(オッズ比[OR]:0.49、95%CI:0.23~1.02、p=0.056)。 退院までの期間(6.0 vs. 7.0日、p=0.012)および抗菌薬静注投与期間(4.0 vs. 5.0日、p=0.011)はステロイド群で有意に短かったが、肺炎の再発や再入院、ICU入室、全死因死亡、抗菌薬治療期間などは両群間に差はなかった。 有害事象は、ステロイド群の24%、プラセボ群の16%に発現し、有意差が認められた(OR:1.77、95%CI:1.24~2.52、p=0.0020)。ステロイド群では、インスリン治療を要する高血糖の院内発症率が19%と、プラセボ群の11%に比し有意に高かった(OR:1.96、95%CI:1.31~2.93、p=0.0010)。他のステロイド投与に特徴的な有害事象はまれであり、プラセボ群との間に差を認めなかった。 著者は、「プレドニゾン7日間投与は、合併症を増加させずに臨床的安定を早期にもたらした」とまとめ、「この知見は患者の立場からも実際的な価値があり、入院費や有効性の決定要因としても重要である」と指摘している。なお、今回の結果をこれまでのエビデンスに加えてメタ解析を行ったところ、入院期間の有意な短縮が確認されたという。また、著者は「高血糖の発現は予期すべきであり、ステロイド禁忌についても考慮する必要がある」としている。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第16回

第16回:犬猫咬傷~傷は縫っていいの? 抗菌薬は必要なの?監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 犬や猫などの咬傷はよくみかけるものです。医者になって以来、私はずっと指導医に「咬傷は縫うな!」と教えられ忠実に守ってきましたが、縫合してもしなくても感染率は変わらないとする報告があります1)。しかしながら動物咬傷は、感染が起きやすいのが事実。感染の有無についての丁寧な観察が必要ということはいうまでもありません。また、この元論文2)では、狂犬病ワクチンについても言及していますが、日本では1958年以降は人・動物での狂犬病の国内発生はありません3)。破傷風ワクチンの接種をしっかりとすることに力点を置くべきでしょう。 以下、American Family Physician 2014年8月15日号2) よりアメリカにおいて動物咬傷は全救急症例の1%を占め、それにより5,000万ドル(約60億円)の医療コストがかかっている。多くの症例が犬咬傷 (85~90%)であり、その犠牲者の多くは子供である(咬傷部位は子供の場合は顔や首が多い。ちなみに思春期以上になると四肢が多い)。70%のケースでは知っている犬に咬まれ、50%が挑発をしていないのに咬まれる。一方、猫咬傷は大人の女性に多く、興奮させた場合に咬まれるケースがしばしばである。猫咬傷の場合は傷が深くなることに注意すべきである。処置をする場合は大量の水道水・生理食塩水で洗浄し、腱や骨に達していないかを詳細に確認する必要がある。年老いた犬や猫は、歯周病に罹患していることも多く、感染のリスクが上昇する。猫咬傷、縫合した創、手の傷、免疫抑制された患者に関しては、抗菌薬を考慮すべきであり、その際は、アモキシシリン/クラブラン酸(オーグメンチンなど)が第1選択薬である。多くの研究では、投与期間は3~7日である。ただし、抗菌薬の効果に関しては議論を呼んでいるようで、あるメタアナリシス4)では抗菌薬の投与により2次感染が減少 (HR 0.56、NNT 14)とするものもあれば、コクランレビュー5)では手以外の外傷で、有意差を認めなかった。飼い犬でさえも狂犬病ワクチンを接種していない場合もあるので、あらゆる動物咬傷に対して、狂犬病の予防接種を考慮すべきである。(基礎免疫がある場合)破傷風のワクチンを5年以上打っていない人は、破傷風の予防接種を考慮すべきである。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Maimaris C and Quinton DN. Arch Emerg Med. 1988; 5: 156-161. 2) Ellis R and Ellis C. Am fam physician. 2014; 90: 239-243. 3) 平成 24 年度 厚生労働科学研究「動物由来感染症に対するリスク管理手法に関する研究」分担研究班. 狂犬病対応ガイドライン2013.厚生労働省.(参照 2015.1.21) 4) Cummings P. Ann Emerg Med. 1994; 23: 535–540. 5) Medeiros I and Saconato H. Cochrane Database Syst Rev. 2001; CD001738. ※本文中に誤解を招く表現が含まれていたため、1月29日15時30分ごろに内容を一部修正いたしました。

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HCV治療レジメン、3剤目は直接作用型が有用/Lancet

 未治療の肝硬変なしC型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型感染患者に対しソホスブビル+レディパスビルに直接作用型抗ウイルス薬を加えた3剤併用レジメンは、6週間で高率のウイルス学的著効(SVR)が示され忍容性も良好であることが、米国立衛生研究所(NIH)のAnita Kohli氏らによる概念実証(proof-of-concept)第IIA相コホート試験の結果、報告された。ソホスブビル+レディパスビル+リバビリンの3剤併用レジメンでは、高いSVRを得るには8週間が必要なことが先行研究で示されており、著者は「直接作用型抗ウイルス薬を加えた3剤併用は、肝硬変なしHCV遺伝子型1型感染患者の治療期間を短縮可能である」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年1月12日号掲載の報告より。 2種の直接作用型抗ウイルス薬で3剤併用6週治療のSVR12達成を評価 試験はNIHの臨床研究センターにて、非盲検にて行われた。3剤目として検討された直接作用型抗ウイルス薬はGS-9669、GS-9451でいずれも開発中である。直接作用型抗ウイルス薬は、HCV患者に対する高い治癒率と良好な忍容性が示されていた。 研究グループは、被験者を次の3群に割り付けて検討した。ソホスブビル+レディパスビルの2剤併用12週治療群、+GS-9669の3剤併用6週治療群、または+GS-9451の3剤併用6週治療群である。適格患者は、18歳以上、遺伝子型1型感染患者(血中HCV RNA値2,000 IU/mL以上)で、肝硬変を有する患者は評価から除外した。 主要エンドポイントは、治療後12週時点のSVRを認めた患者の割合(SVR12)とした。達成の目安は、HCV RNA値43 IU/mL未満とした。 2剤併用12週100%に対し、3剤併用は6週で95% 2013年1月11日~12月17日の間に、患者60例が登録され、3群に20例ずつ順次割り付けられた。 ソホスブビル+レディパスビルの2剤併用12週治療群20例は全例が、SVR12を達成した(100%、95%信頼区間[CI]:83~100%)。一方、+GS-9669の3剤併用6週治療群、+GS-9451の3剤併用6週治療群ともに19例(95%、同:75~100%)が、SVR12を達成した。なお、前者群の未達成1例は、治療完了後2週時点で再活性が認められたケースで、後者群の未達成1例は、4週間以降追跡不能となったケースであった。 有害事象の大半は軽度で、治療中断となった患者はいなかった。重大有害事象は2例に認められた(治療後の肝生検後の疼痛、めまい)が、いずれも試験薬とは無関係であった。

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HPVワクチン、複数回接種の費用対効果/JAMA

 2価と4価のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの、接種回数と費用対効果について、英国・イングランド公衆衛生局(Public Health England:PHE)のMark Jit氏らが伝播モデルをベースに検討した。その結果、仮に2回接種による防御効果が10年しか持続せず、3回接種の効果が生涯持続するのなら、そのほうが費用対効果は高いこと、一方で2回接種の効果が20年超持続するのなら、2回接種が最適な選択肢であることを明らかにした。2価/4価HPVワクチンは、長期にわたりHPV16/18への防御効果をもたらす可能性が示されているが、その正確な期間・規模について、3回接種の場合と比較した検討はこれまで行われていなかった。BMJ誌オンライン版2015年1月7日号掲載の報告より。4価ワクチンのコスト136米ドル/回と仮定して検討 研究グループは、英国の12~74歳男女集団をベースとし、12歳女児の80%に対してHPVワクチンの初回接種が実施され、14歳までに2回接種が、3回接種はそれ以後で行われると仮定した伝播モデルを作成し、ワクチンの2回接種、3回接種について、効果持続期間による費用対効果を検討した。 ワクチン効果については、2価/4価HPVワクチンの2回接種は、10年、20年もしくは30年間、防御効果、交叉防御効果、または交叉防御効果はないが生涯持続性のあるワクチンであると仮定し、3回接種は生涯持続および交叉防御効果を有すると仮定し検討した。 検討では、4価HPVワクチン1用量の定価は86.5ポンド(136米ドル)として試算した。2回接種以上が費用対効果高く、2~3回は効果持続期間とコストにより異なる 結果、HPVワクチン2回以上の接種については、HPV関連のがん罹患率が有意に低下し、費用対効果が高いことが判明した。 また4価HPVワクチンの2回接種について、防御効果が10年しか持続せず、3回接種の効果が仮定どおりに生涯持続するのなら、3回接種(追加用量の定価を86.5ポンドとした場合)の費用対効果が高いことが示された(増分費用対効果の中央値:1万7,000ポンド、四分位範囲:1万1,700~2万5,800ポンド)。 一方で、ワクチン2回接種の防御効果が20年超持続するのなら、3回目の接種費用が閾値中央値31ポンド(範囲:28~35ポンド)程度まで大幅に下がらない限り、3回接種の費用対効果は低くなることが示された。 また、2価HPVワクチン(1用量の定価80.5ポンド)でも、同様な結果が得られたという。 結果を踏まえて著者は、「HPVワクチン接種は、防御効果が20年以上あるのならば2回接種が最も費用対効果のある選択肢となりそうだ」と述べるとともに、「2回接種の防御効果の正確な期間が不明であるのなら、同接種コホートに対するモニタリングを密にしなければならない」と指摘している。

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米J&Jがエボラワクチンの第I相臨床試験開始を発表

 米国のジョンソン・エンド・ジョンソン社(以下、J&J社)は1月20日、同社の医薬品部門である米国ヤンセンファーマシューティカル社(以下、ヤンセン社)で開発中のエボラ出血熱予防ワクチンの第I相ヒト初回投与試験の開始を発表した。 エボラワクチン製剤の第I相ヒト初回試験では、被験者が4つのグループに登録され、実薬またはプラセボ投与群に無作為に割り付けられる。実薬投与群は、登録された4つのグループごとの投与計画に従い、1日目に初回接種(プライム)後、1ヵ月または2ヵ月の間隔をあけて追加接種(ブースト)を受ける。この試験の分析結果は、最適なワクチンの予防効果や効果持続期間を確認するために今後実施する試験における、2つのワクチンの投与順序や間隔などの判断に有益な情報となるという。試験の詳細はClinicalTrials.gov(https://clinicaltrials.gov/)に掲載されている。 試験はオックスフォード大学小児科のオックスフォードワクチングループが進めている。現在被験者の登録が進行中で、最初の被験者に対する初回のワクチンが投与されたという。登録は1月末までに完了予定とのこと。 またJ&J社は、ヤンセン社がBavarian Nordic社との提携により、2015年4月までに大規模臨床試験で使用する40万回分以上のプライムブーストワクチンを生産したことも発表した。今後2015年中に合計200万回分のワクチンが提供可能となり、また必要に応じて12~18ヵ月間で最大500万回分までの迅速な増産が可能となるという。今回、同社らが発表した増産の見通しは、2015年末までに100万回分以上を生産し、そのうち25万回分を2015年5月までに臨床試験で幅広く活用する予定としていた以前の発表に代わる最新情報となる。詳細はヤンセンファーマ株式会社のプレスリリースへ

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エボラ、マールブルグウイルスワクチンの安全性と免疫原性(解説:吉田 敦 氏)-302

 西アフリカ3国でのエボラウイルス感染症の急激な増加により、エボラウイルスによるアウトブレイクはかつてない規模に達している。高い致死率と確実に治療できる薬剤がない中で、ワクチンの開発が模索されてきたが、今回エボラウイルス、マールブルグウイルスそれぞれのDNAワクチンが開発され、ウガンダ人で安全性と免疫原性が評価された。Lancet誌オンライン版2014年12月23日号の発表より。DNAワクチンの開発と試験 供試されたリコンビナントワクチンは、スーダンエボラウイルスとザイールエボラウイルスの糖蛋白をコードするDNAを用いたエボラウイルスワクチンと、マールブルグウイルスの糖蛋白をコードするDNAを含有するマールブルグウイルスワクチンである。すでに霊長類を対象とした先行研究で忍容性と免疫原性が確認されたものであり、今回の検討では2つ両方、あるいは単独で接種が行われた。 なお、エボラウイルスの同一の遺伝子領域を用いた、より強力なワクチンがすでに開発されており(リコンビナント・チンパンジー・アデノウイルス3型・エボラワクチン:cAd3-EBO、cAd3-EBOZ)、一部は2014年9月から臨床試験に入っていることから、本試験結果は今後のワクチン開発にとって非常に重要な意味を持つ。第I相試験としての免疫原性・安全性の比較 ウガンダ人108人を対象に、無作為化二重盲検プラセボ対照試験が行われた。試験施行期間は2009年から2010年であり、エボラウイルスワクチン単独接種、マールブルグウイルスワクチン単独接種、両者の同時接種、プラセボの4群に分けられ、ほとんどの例で3回接種が行われた。 結果として、同時接種と単独接種で抗体上昇やT細胞の反応には差がなく、ザイールエボラウイルス糖蛋白に対しては47~57%の例で、スーダンエボラウイルス糖蛋白には50%の例で抗体上昇が認められた。マールブルグウイルス糖蛋白に対する抗体上昇は23~30%であった。スーダンエボラウイルス糖蛋白、マールブルグウイルス糖蛋白へのT細胞の反応はそれぞれ33~43%、43~52%で証明できた。注射局所の反応はいずれも軽度であることが多く、頭痛や筋痛、関節痛、吐き気といった症状も4群で差はなかった。今後のワクチン開発への展望 本試験は、アフリカで初めて行われたエボラ・マールブルグウイルスワクチンの治験であり、ヒトで同時接種を行っても忍容性・免疫原性が確認できたことから、今後の多価ワクチンの開発がさらに加速することが予想される。同じ糖蛋白遺伝子を用いるcAd3-EBO、cAd3-EBOZの安全性、免疫原性にも期待が持てるかもしれない。最近、cAd3-EBOの第1相試験の結果が公表されたが、それでは1回接種を行ったのみで4週間後には良好な免疫反応が得られていたという。一方、DNAワクチンで得られる免疫は非常に強いものとはいえず、アウトブレイクでの使用や、曝露リスクの高い人にあらかじめ接種する場合の効果については懸念がある。 エボラウイルスワクチンとしてはほかに、VSV(Vesicular stomatitis virus)にザイールエボラウイルス糖蛋白遺伝子を挿入したVSVΔG-EBOV-GPが開発され、cAd3-EBOVと共に有望視されている。cAd3-EBOVについては間もなくアフリカでの臨床試験が開始される予定で、医療従事者も対象に加えられるとされているが、今後の治験にあたり、無作為化比較試験が難しい場合には、ワクチン接種群の間で接種時期をずらして評価していく手法(stepped-wedge)も検討されている1)。これらの基礎には、国際間協力を前提とした効率的かつ実際的な研究遂行への努力が欠かせないことは言うまでもない。

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4価HPVワクチン接種、多発性硬化症と関連なし/JAMA

 4価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種は、多発性硬化症などの中枢神経系の脱髄疾患の発症とは関連がないことが、デンマーク・Statens Serum研究所のNikolai Madrid Scheller氏らの調査で示された。2006年に4価、その後2価ワクチンが登場して以降、HPVワクチンは世界で1億7,500万回以上接種されているが、多発性硬化症のほか視神経炎、横断性脊髄炎、急性散在性脳脊髄炎、視神経脊髄炎などの脱髄疾患との関連を示唆する症例が報告されている。ワクチンが免疫疾患を誘発する可能性のある機序として、分子相同性や自己反応性T細胞活性化が指摘されているが、HPVワクチンが多発性硬化症のリスクを真に増大させるか否かは不明であった。JAMA誌2015年1月6日号掲載の報告。2国の10~44歳の全女性のデータを解析 研究グループは、2006~2013年のデンマークおよびスウェーデンの10~44歳の全女性における4価HPVワクチンの接種状況および多発性硬化症などの中枢神経系の脱髄疾患の発症に関するデータを用い、これらの関連を検証した(Swedish Foundation for Strategic Research、Novo Nordisk Foundation、Danish Medical Research Council funded the studyの助成による)。 ポアソン回帰モデルを用いて、ワクチン接種者・非接種者に関するコホート解析および自己対照ケースシリーズ(self-controlled case-series)解析を行った。接種後2年(730日)のリスク期間におけるイベント発生率を比較し、発症の率比を推算した。 398万3,824人(デンマーク:156万5,964人、スウェーデン:241万7,860人)の女性が解析の対象となった。そのうち78万9,082人が合計192万7,581回の4価HPVワクチン接種を受けた。接種回数は、1回が78万9,082人、2回が67万687人、3回が46万7,812人であった。2つの解析はともに有意差なし 全体のフォローアップ期間は2,133万2,622人年であった。接種時の平均年齢は17.3歳であり、デンマークの18.5歳に比べスウェーデンは15.3歳と約3歳年少だった。フォローアップ期間中に多発性硬化症が4,322例、その他の脱髄疾患は3,300例に認められ、そのうち2年のリスク期間内の発症はそれぞれ73例、90例であった。 コホート解析では、多発性硬化症、その他の脱髄疾患の双方で、4価HPVワクチン接種に関連するリスクの増加は認めなかった。すなわち、多発性硬化症の粗発症率は、ワクチン接種群が10万人年当たり6.12件(95%信頼区間[CI]:4.86~7.69)、非接種群は21.54件(95%CI:20.90~22.20)であり、補正後の率比は0.90(95%CI:0.70~1.15)と有意な差はなかった。また、その他の脱髄疾患の粗発症率は、それぞれ7.54件(95%CI:6.13~9.27)、16.14件(95%CI:15.58~16.71件)、補正率比は1.00(95%CI:0.80~1.26)であり、やはり有意差は認めなかった。 同様に、自己対照ケースシリーズ解析による多発性硬化症の発症率は1.05(95%CI:0.79~1.38)、その他の脱髄疾患の発症率は1.14(95%CI:0.88~1.47)であり、いずれも有意な差はみられなかった。また、年齢別(10~29歳、30~44歳)、国別、リスク期間別(0~179日、180~364日、365~729日、730日以降)の解析でも、有意な差は認めなかった。 著者は、「4価HPVワクチンは多発性硬化症や他の脱髄疾患の発症とは関連がない。本試験の知見はこれらの因果関係への懸念を支持しない」と結論している。

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高齢者は酷暑が2日続くと入院リスク増大/JAMA

 夏に非常に気温の高い日が2日続くと、高齢者の水分・電解質異常や腎不全などによる入院リスクは増大することが明らかにされた。米国・ハーバード公衆衛生大学院のJennifer F. Bobb氏らが、約2,400万人の米国公的高齢者向け医療保険メディケア受給者について調査を行い報告した。JAMA誌2014年12月24・31日号掲載の報告より。米国1,943郡を対象に調査 研究グループは1999~2010年にかけて、夏の連日の気温データが95%超記録されている米国1,943郡で、2,370万人の65歳以上、出来高払いメディケア受給者を対象に調査を行った。 調査対象郡の日中気温の99パーセンタイル超の暑さが2日以上続いた期間を、「熱波期間(heat wave periods)」と定義し、そうでない期間と比較して高齢者の入院リスクとの関連を分析した。熱波期間の熱中症による入院リスクは2.5倍、水分・電解質異常は1.2倍に その結果、水分・電解質異常や腎不全、尿路感染症、敗血症、熱中症による入院リスクは、熱波期間における発生が、そうでない期間に比べ有意に高かった。具体的には、熱波期間の水分・電解質異常による入院に関する相対リスクは、1.18(95%信頼区間:1.12~1.25)、腎不全は1.14(同:1.06~1.23)、尿路感染症は1.10(同:1.04~1.16)、敗血症は1.06(同:1.00~1.11)、熱中症は2.54(同:2.14~3.01)それぞれ高かった。 入院の絶対リスクの増大差は、水分・電解質異常が10万人中0.34件、腎不全は同0.25件、尿路感染症は0.24件、敗血症は0.21件、熱中症は0.16件だった。 一方で、熱波期間のうっ血性心不全による入院リスクは、そうでない期間に比べ有意に低かった(p<0.05)。 リスクは概して熱波期間中に最も高く、その後5日間も高いままだった。 以上を踏まえて著者は、「高齢者では酷暑は入院リスク増大と関連していた。しかし絶対リスクの増大はわずかで、臨床的重大性については不明のままである」とまとめている。

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エボラワクチン、第Ib相で免疫原性確認/Lancet

 アフリカで行われたエボラウイルスまたはマールブルグウイルスワクチンの第Ib相の臨床試験の結果、免疫原性、安全性が確認された。ウガンダ・マケレレ大学のHannah Kibuuka氏らが、同国内健康成人を対象に両ワクチンを単独または同時接種で検討した無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行い報告した。今回の所見について著者は、2014年に西アフリカでアウトブレイクしたエボラウイルス性疾患に対する、より効果的なワクチンの開発に寄与するものであると述べている。Lancet誌オンライン版2014年12月23日号掲載の報告より。3回スケジュール接種群とプラセボ群で評価 RV 247試験と命名された本検討は、ザイール/スーダン・エボラウイルス糖蛋白をエンコードしたワクチン(EBOワクチン)と、マールブルグウイルス糖蛋白をエンコードしたワクチン(MARワクチン)の2つのDNAワクチンについて、安全性、免疫原性を評価することが目的であった。試験は、ウガンダのカンパラにある1施設で行われ、18~50歳の健常成人を5対1の割合で、ワクチン接種(0、4、8週の3回)群とプラセボ群に無作為に割り付けて評価した。なおワクチン接種群はさらに、EBOワクチン単独、MARワクチン単独、両ワクチン接種群に均等に割り付けられた。 主要試験目的は、ワクチンの安全性と忍容性の評価で、局所および全身性の反応原性(reactogenicity)と有害事象で評価した。また、免疫原性について、3回接種完了後4週時点でELISA、T細胞反応(ELISpot、細胞内サイトカイン染色分析)を基に評価した。ザイール/スーダン・エボラウイルス糖蛋白への抗体反応、単独接種で50~57% 2009年11月2日~2010年4月15日に、108例が試験に登録され、全員が1回以上、試験ワクチンの接種を受けた。3回接種スケジュールを完了したのは100例であった。 解析には全108例を組み込んだ(EBO単独、MAR単独、両接種は各30例、プラセボ18例)。免疫原性についてはデータが入手できた107例(MAR単独接種群1例で未入手)を対象に評価された。 結果、試験ワクチンの忍容性は良好であり、局所または全身性の反応について、両接種群で有意な差はみられなかった。ワクチンは、接種された糖蛋白に特異的な抗体反応およびT細胞反応を誘発したことが認められた。ワクチンの単独または両接種による差は認められなかった。 ザイール糖蛋白に抗体反応を示したのは、EBOワクチン単独接種群のうち17/30例(57%、95%信頼区間[CI]:37~75%)、両ワクチン接種群では14/30例(47%、同:28~66%)だった。スーダン糖蛋白への抗体反応は、EBOワクチン単独接種群15/30例(50%、31~69%)、両ワクチン接種群15/30例(50%、31~69%)で認められた。 マールブルグ糖蛋白への抗体反応を示したのは、MARワクチン単独接種群は9/29例(31%、15~51%)、両ワクチン接種群7/30例(23%、10~42%)であった。 また、ザイール糖蛋白へのT細胞反応を示したのは、EBOワクチン単独接種群19/30例(63%、44~80%)、両ワクチン接種群は10/30例(33%、17~53%)だった。スーダン糖蛋白へのT細胞反応を示したのは、EBOワクチン単独接種群13/30例(43%、25~63%)、両ワクチン接種群は10/30例(33%、17~53%)だった。 マールブルグ糖蛋白へのT細胞反応を示したのは、MARワクチン単独接種群15/29例(52%、33~71%)、両ワクチン接種群は13/30例(43%、25~63%)だった。

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在宅で診る肺炎診療の実際

■在宅高齢者の肺炎の多くが誤嚥性肺炎在宅高齢者の発熱の原因として最も多いのは肺炎である1)。在宅医療を受けている患者の多くは嚥下障害を起こしやすい、脳血管性障害、中枢性変性疾患、認知症を患っており、寝たきり状態の患者や経管栄養を行っている患者も含まれていて、肺炎のほとんどは誤嚥性肺炎である。日本呼吸器学会は2005年に「成人市中肺炎診療ガイドライン(改訂版)」を、2008年には「成人院内肺炎診療ガイドライン」を作成したが、在宅高齢者の肺炎診療に適するものではなかった。その後、2011年に「医療介護関連肺炎(NHCAP)診療ガイドライン」が作成された。NHCAPの定義と発症機序は表1 2)および表2 2)に示されるように、在宅療養患者が該当しており、その特徴は市中肺炎と院内肺炎の中間に位置し、その本質は高齢者における誤嚥性肺炎を中心とした予後不良肺炎と、高度医療の結果生じた耐性菌性肺炎の混在したもの、としている。本稿では、NHCAPガイドライン(以下「ガイドライン」と略す)に沿って、実際に在宅医療の現場で行っている肺炎診療を紹介していく。表1 NHCAP の定義1.長期療養型病床群もしくは介護施設に入所している(精神病床も含む)2.90日以内に病院を退院した3.介護を必要とする高齢者、身障者4.通院にて継続的に血管内治療(透析、抗菌薬、化学療法、免疫抑制薬などによる治療)を受けている・介護の基準PS3: 限られた自分の身の回りのことしかできない、日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす、以上を目安とする表2 NHCAP の主な発症機序1.誤嚥性肺炎2.インフルエンザ後の2次性細菌性肺炎3.透析などの血管内治療による耐性菌性肺炎(MRSA肺炎など)4.免疫抑制薬や抗がん剤による治療中に発症した日和見感染症としての肺炎を受けている■在宅での肺炎診断在宅患者の診察では、平素より経皮的酸素飽和度(SpO2)を測定しておき、発熱時には変化がないかを必ず確認する。高齢者は、咳や痰などの一般的症状に乏しいが、多くの場合で発熱を伴う。しかし、発熱を伴わない場合もあるので注意する。聴診所見では、必ずしも特異的な所見がなく、脱水を伴っている場合はcoarse crackleは聴取しにくくなる。血液検査では、発症直後でも上昇しやすい白血球数を参考にするが、数が正常でも左方移動がみられれば有意と考える。CRPは、発症直後には上昇しにくいので、発症当日のCRP 値で重症度を評価することはできない。必要に応じてX線ポータブル検査を依頼する。■NHCAPにおける原因菌ガイドラインによると原因菌として表3 2)が考えられている。表3 NHCAP における原因菌●耐性菌のリスクがない場合肺炎球菌MSSAグラム陰性腸内細菌(クレブシエラ属、大腸菌など)インフルエンザ菌口腔内レンサ球菌非定型病原体(とくにクラミドフィラ属)●耐性菌のリスクがある場合(上記の菌種に加え、下記の菌を考慮する)緑膿菌MRSAアシネトバクター属ESBL産生腸内細菌ガイドラインでは、在宅療養している高齢者や寝たきりの患者では、喀出痰の採取は困難であり、また口腔内常在菌や気道内定着菌が混入するため、起因菌同定の意義は低く、診断や治療の相対的な判断材料として用い、抗菌薬の選択にはエンピリック治療を優先すべきである、とされている。実際の現場では、喀出痰が採取できる患者は肺炎が疑われた場合、抗菌薬を開始する前にグラム染色と好気性培養検査を依頼し、初期のエンピリック治療に反応が不十分な場合、その結果を参考に抗菌薬の変更を考慮している。■ガイドラインで示された治療区分とはガイドラインでは、市中肺炎診療ガイドラインで示しているような重症度基準(A-DROP分類)では、予後との関連がはっきりしなかったため、治療区分という考え方が導入された。この治療区分(図1)2)に沿って抗菌薬が推奨されている(図2)2)。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大するここでのポイントは、耐性菌のリスクの有無(90日以内の抗菌薬の投与、経管栄養があり、MRSAが分離された既往歴)が、問われていることである。■在宅患者における肺炎の重症度判断PSI(pneumonia severity index)は、患者を年齢、既往歴、身体所見・検査所見の異常など20因子による総得点により、最も正確に肺炎の重症度判定ができる尺度として有名である。そこで筆者の診療所では在宅診療対象患者のみを対象に、血液検査・画像所見の結果がなくても肺炎の重症度を推定できる方法はないかを検討した。身体所見や患者背景から得られた総得点をPSI for home-care based patients(PSI-HC)と名付け、この得点を基に患者を分類したところ、血液検査や画像所見がなくても予後を反映するものであった3)。当院ではそれを基に「発熱フェイスシート」を作成し、重症度の把握と家族への説明に利用している(図3)。なお、図中の死亡率は1年間における97人の肺炎患者をレトロスペクティブにみた値であり、今後さらなる検討が必要な参考値である。画像を拡大する■在宅における肺炎治療の実際実際の現場では、治療区分で入院が必要とされるB群でも、連日の抗菌薬投与ができるようであれば在宅での治療も可能である。先述したように、喀出痰が採取できない症例が多いため、在宅高齢者の肺炎の起因菌についての大規模なデータはないが、グラム陰性菌、嫌気性菌が主な起因菌であるといわれている。グラム陰性菌に抗菌力が強く、ブドウ球菌や肺炎球菌などのグラム陽性菌や一部の嫌気性菌を広くカバーする、ニューセフェムやレスピラトリーキノロンを第1選択としている。●経口投与の場合:レボフロキサシン(商品名:クラビット[LVFX])、モキシフロキサシン(同:アベロックス[MFLX])LVFXは1日1回500mgを標準投与量・法とする。腎排泄型の抗菌薬であり、糸球体濾過量(GFR)に応じて減量する。MFLXは主に肝代謝排泄型の抗菌薬であり、腎機能にかかわらず、1日1回400mgを標準投与量とする。●静脈投与の場合:セフトリアキソン(同:ロセフィン[CTRX])血中半減期が7~8時間と最も長いので1日1回投与でも十分な効果を発揮し、胆汁排泄型であることからGFRの低下を認める高齢者にも安心して使用できる。CTRXは緑膿菌に対して抗菌力がほとんどなく、ブドウ球菌、嫌気性菌などにも強い抗菌力はないといわれており、ガイドライン上でも誤嚥性肺炎には不適と記載されているが、筆者らは誤嚥性肺炎を含む、肺炎初期治療としてほとんどの患者に使用し、十分な効果を認めている。また、過去90日以内に抗菌薬の使用がある場合にも、同様に効果を認めている。3日間投与して解熱傾向を認めないときには、耐性菌や緑膿菌を考慮した抗菌薬に変更する。嫌気性菌をカバーする目的で、クリンダマイシン内服の併用やブドウ球菌や嫌気性菌に、より効果の強いニューキノロン内服を併用することもある。■入院適用はどのような場合か在宅では、病院と比較すると正確な診断は困難である。しかし、全身状態が保たれ、介護する家族など条件に恵まれれば、在宅で治療可能な場合が多い。筆者らは、先述した在宅患者の肺炎の重症度(PSI-HC)を利用して重症度の把握、家族への説明を行ったうえで、患者や家族の意思を尊重し、入院治療にするか在宅治療にするかを決定している。在宅高齢者が入院という環境変化により、肺炎は治癒したけれども、認知機能の悪化やADL低下などを経験している場合も少なくない。過去にそのような体験がある場合には、在宅でできる最大限の治療を行ってほしいと所望されることが多い。ただ、医療的には、高度の低酸素血症、意識低下や血圧低下を伴う重症肺炎や、エンピリック治療で正しく選択された抗菌薬を使い、3日~1週間近く治療を行っても改善傾向が明らかでない場合に入院を検討している。また、介護面では重症度にかかわらず、介護量が増えて家族や介護者が対応できない場合にも入院を考慮している。■肺炎予防と再発対策誤嚥性肺炎の治療および予防として表42)が挙げられる。表4 NHCAP における誤嚥性肺炎の治療方針1)抗菌薬治療(口腔内常在菌、嫌気菌に有効な薬剤を優先する)2)PPV 接種は可能であれば実施(重症化を防ぐためにインフルエンザワクチンの接種が望ましい)3)口腔ケアを行う4)摂食・嚥下リハビリテーションを行う5)嚥下機能を改善させる薬物療法を考慮(ACE阻害薬、シロスタゾール、など)6)意識レベルを高める努力(鎮静薬、睡眠薬の減量、中止、など)7)嚥下困難を生ずる薬剤の減量、中止8)栄養状態の改善を図る(ただし、PEG〔胃ろう〕自体に肺炎予防のエビデンスはない)9)就寝時の体位は頭位(上半身)の軽度挙上が望ましいガイドラインではNHCAPの主な発症機序として誤嚥性肺炎のほか、インフルエンザと関連する2次性細菌性肺炎の重要性が提案されており、わが国でも高齢者施設におけるインフルエンザワクチン、そして肺炎球菌ワクチンの効果がはっきり示されたこともあり、両ワクチンの接種が勧められる4)。日々の生活の中では、口腔ケアや摂食嚥下リハビリテーションは重要であり、歯科医師・歯科衛生士や言語聴覚士との連携で、より質の高いケアを提供することができる。●文献1)Yokobayashi K,et al. BMJ Open. 2014 Jul 9;4(7):e004998.2)日本呼吸器学会 医療・介護関連肺炎(NHCAP)診療ガイドライン作成委員会. 医療・介護関連肺炎診療ガイドライン. 2011.3)Ishibashi F, et al. Geriatr Gerontol Int. 2014 Mar 12 . [Epub ahead of print].4)Maruyama T,et al. BMJ. 2010 Mar 8;340:c1004.●関連リンク日本呼吸器学会 医療・介護関連肺炎(NHCAP)診療ガイドライン

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「第29回日本医学会総会 2015 関西」事前参加登録 締切迫る!(1月31日)

 「第29回日本医学会総会 2015 関西」の開催が近づいてまいりました。メインテーマ「医学と医療の革新を目指して―健康社会を共に生きるきずなの構築―」のもと、少子超高齢社会に突入した現在が抱える医学・医療の問題について話し合います。 在宅医療や介護、終末期医療、持続可能な医療制度のほか、iPS細胞やロボット手術などの最先端医療、予防医学につながる先制医療、感染症のグローバル化など。多岐にわたるこれらの課題を「20の柱」に整理し分野横断的に議論します。 医学・医療を取り巻く課題の先送りは許されません。「第29回日本医学会総会 2015 関西」ではこれらの課題に正面から向き合います。一人でも多くの方のご参加をお待ちしています。1月31日(土)まで、事前登録受付中! 参加費割引と特典が付いており、お得です。参加登録はこちらから⇒ http://isoukai2015.jp/registration/【事前登録の特典】(1)「産業医セッション」事前申込(席数限定)   最新の残席情報⇒ https://reg-isoukai2015.jp/public/application/add/42(2)プレミアムツアー(先着順)  『普段見られない/入ることができない/体験できない』をテーマに、  総会参加者向けにプレミアムツアーをご用意いたしました。(3)託児室無料サービス(お申込みは1月30日まで)  詳しい情報はこちらから ⇒ http://isoukai2015.jp/registration/nursery.html■開催概要 学術講演    4月11日(土)~13日(月) 国立京都国際会館ほか 学術展示    4月10日(金)~13日(月) 京都市勧業館「みやこめっせ」ほか 一般公開展示  3月28日(土)~4月5日(日)神戸国際展示場ほか 医学史展    2月11日(水・祝)~4月12日(日) 京都大学総合博物館 医総会WEEK  4月4日(土)~12日(日) 京都劇場、メルパルク京都ほか■特別プログラム(敬称略) 開会講演 山中 伸弥(京都大学iPS細胞研究所) 記念講演 日野原 重明(一般財団法人 聖路加国際メディカルセンター) 閉会講演 稲盛 和夫(京セラ株式会社)■学術講演「20の柱」 公式ホームページでは、学術講演「20の柱」の要点をQ&A形式で掲載しています。 詳細はhttp://isoukai2015.jp/program/をご覧ください。■産業医セッション産業医セッションも残席が少なくなっておりますので、お早目にご登録ください! 詳しくは⇒http://isoukai2015.jp/registration/credits.html 残席情報⇒https://reg-isoukai2015.jp/public/application/add/42「第29回日本医学会総会 2015 関西」ホームページhttp://isoukai2015.jp/index.html

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世界188ヵ国の平均寿命、13年で65歳から72歳へ/Lancet

 世界の平均寿命は、1990年の65.3歳から2013年は71.5歳に延びたことが判明した。一方で死亡数は、1990年の4,750万人から2013年は5,490万人に増加した。高所得地域では、心血管疾患とがんの死亡率が、低所得地域では下痢や下気道感染による小児の死亡率がいずれも減少したという。世界の研究者による共同研究「疾病による国際的負担に関する調査(Global Burden of Disease Study:GBD)2013」の結果、明らかになったもので、Lancet誌オンライン版2014年12月18日号で報告された。1990~2013年の世界の年齢別・性別全死亡率や疾病別死亡率を集計 GBD2013では188ヵ国を対象に、1990~2013年の毎年の年齢別・性別総死亡率や疾病別死亡率などのデータを集計した。 GBD研究は2010年版も公表されているが、2013年版ではさらに72ヵ国の最新登録データを追加し、中国やメキシコ、英国、トルコ、ロシアについては詳細データを採用しアップデートを行った。 それらの集計データを基に、240の死因について、6つの異なるモデルを用いて分析を行った。外傷死は10.7%増加、年齢調整死亡率は21%減少 その結果、世界の平均寿命(life expectancy)は1990年の65.3歳(95%UI:65.0~65.6)から、2013年には71.5歳(同:71.0~71.9)に延長した。一方で死亡数は、1990年の4,750万人(同:4,680~4,820万人)から、2013年は5,490万人(同:5,360~5,630万人)への増加だった。 高所得地域では、心血管疾患とがんによる年齢調整死亡率が減少し、低所得地域では下痢や下気道感染による小児の死亡、新生児死亡の減少が認められた。なおサハラ砂漠以南のアフリカの地域では、HIV感染症/AIDSが原因で平均寿命が短縮。多くの感染性疾患について、死亡数や年齢調整死亡率はともに減少していた一方で、非感染性疾患については、死亡数は増加、年齢調整死亡率は減少という傾向がみられた。 外傷による死亡についてみると、1990年の430万人から2013年には480万人へと10.7%増加した。一方で、年齢調整死亡率は21%減少していた。 2013年に死亡10万人以上の原因となった疾患のうち、年齢調整死亡率が1990年から増加したのはHIV感染症・エイズ、膵臓がん、心房細動・心房粗動、薬物依存症、糖尿病、慢性腎臓病、鎌状赤血球症だった。 5歳未満児の死因上位は、下痢性疾患、下気道感染、新生児死亡、マラリアだった。

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非制限的な輸血でも長期死亡を抑制せず/Lancet

 心血管疾患あるいはリスク因子を有する高齢の高リスク群において、非制限的輸血戦略は制限的輸血戦略と比べて死亡率に影響を及ぼさないことが、米国ロバート・ウッド・ジョンソン大学病院のJeffrey L Carson氏らによる無作為化試験FOCUSの3年生存と死因分析の結果、報告された。死因について群間で差はみられず、著者は、「今回の所見は、輸血は長期的な免疫抑制に結び付き、長期的な死亡率に重篤な影響を与えるという仮説を支持しないものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年12月9日号掲載の報告より。長期死亡率を比較分析 輸血は免疫機能を変化させ、そのため感染症やがん再発リスクを増し、長期死亡率に影響を与える可能性がある。限定的な輸血戦略と比較して、よりリベラルに行う非制限な輸血戦略は、心筋に与えるダメージを減らし心合併症を低下し、将来的な心血管疾患による死亡を抑制する可能性が示唆されていた。 研究グループは、非制限的な輸血戦略の有効性を検討するため、限定的な輸血戦略と比較し長期生存への影響を調べた。 FOCUS試験には、50歳以上で心血管疾患の病歴またはリスク因子を有しており、股関節骨折手術後3日以内で100g/L未満のヘモグロビン濃度を呈した患者が適格として、米国とカナダの47病院から登録された。 被験者は無作為に1対1の割合で、一括電話システムによって、非制限的輸血群と限定的輸血群に割り付けられた。非制限的輸血群は、ヘモグロビン濃度が100g/Lを維持するよう輸血が行われ、限定的輸血群は、80g/L未満もしくは貧血症状を呈した場合に輸血が行われた。 なお本検討は、FOCUS試験の副次アウトカムである長期死亡率を分析したものである。長期死亡率は、米国とカナダの死亡レジストリと結び付けて確認した。追跡期間中央値3.1年の死亡率は両群で有意差みられず 2004年7月19日~2009年2月28日の間に、非制限的輸血群に1,007例が、限定的輸血群に1,009例が登録され無作為に割り付けられた。 追跡期間中央値3.1年(IQR:2.4~4.1年)において、841例(42%)が死亡した。 非制限的輸血群の死亡は432例、限定的輸血群の死亡は409例であり、両群間で有意差はみられなかった(ハザード比:1.09、95%信頼区間:0.95~1.25、p=0.21)。 著者は、「輸血が、長期間の免疫抑制につながり、長期死亡を20~25%以上増大したり、死因の要因となるという仮説を支持しない所見が示された」と述べている。

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