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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第28回

第28回:子供の発疹の見分け方監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 小児科医、皮膚科医でなくとも、子供の風邪やワクチン接種の時などに、保護者から皮膚トラブルの相談をされることがあると思います。1回の診察で診断・治療まで至らないことがあっても、助言ぐらいはしてあげたいと思うのは私だけではないと思います。文章だけでははっきりしないことも多いため、一度、皮膚科のアトラスなどで写真を見ていただくことをお勧めします。 以下、American Family Physician 2015年8月1日号1) より子供の発疹は見た目だけでは鑑別することが難しいので、臨床経過を考慮することが大切である。発疹の外観と部位、臨床経過、症状を含め考慮する。発熱は、突発性発疹、伝染性紅斑、猩紅熱に起こりやすい。掻痒はアトピー性皮膚炎やばら色粃糠疹、伝染性紅斑、伝染性軟属腫、白癬菌により起こりやすい。突発性発疹のキーポイントは高熱が引いた後の発疹の出現である。体幹から末梢へと広がり1~2日で発疹は消える。ばら色粃糠疹における鑑別は、Herald Patch(2~10cmの環状に鱗屑を伴った境界明瞭な楕円形で長軸が皮膚割線に沿った紅斑)やクリスマスツリー様の両側対称的な発疹であり、比較的若い成人にも起こる。大抵は積極的な治療をしなくても2~12週間のうちに自然治癒するが、白癬菌との鑑別を要する場合もある。上気道症状が先行することが多く、HSV6.7が関与しているとも言われている。猩紅熱の発疹は大抵、上半身体幹から全身へ広がるが、手掌や足底には広がらない。膿痂疹は表皮の細菌感染であり、子供では顔や四肢に出やすい。自然治癒する疾患でもあるが、合併症や広がりを防ぐために抗菌薬使用が一般的である。伝染性紅斑は、微熱や倦怠感、咽頭痛、頭痛の数日後にSlapped Cheekという顔の発疹が特徴的である(筆者注:この皮疹の形状から、日本ではりんご病と呼ばれる)。中心臍窩のある肌色、もしくは真珠のようなつやのある白色の丘疹は伝染性軟属腫に起こる。接触による感染力が強いが、治療せずに大抵は治癒する。白癬菌は一般的な真菌皮膚感染症で、頭皮や体、足の付け根や足元、手、爪に出る。アトピー性皮膚炎は慢性で再燃しやすい炎症状態にある皮膚で、いろいろな状態を呈する。皮膚が乾燥することを防ぐエモリエント剤(白色ワセリンなど)が推奨される。もし一般的治療に反応がなく、感染が考えられるのであれば組織診や細菌培養もすべきであるが、感染の証拠なしに抗菌薬内服は勧められない。※本内容にはプライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Allmon A, et al. Am Fam Physician. 2015;92:211-216.

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サルマラリアに気を付けろッ!【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。第19回となる今回は、前回のジカウイルス感染症との蚊つながりで、マラリアについてご紹介いたします。マラリアは古典?「おいおい、マラリアなんて超古典的な感染症じゃねえかよ、どこが新興再興感染症なんだよ」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、今回取り上げるのはそのマラリア原虫の中でも、最近注目を集めているサルマラリアの1つPlasmodium knowlesiというものです(このP.knowlesi以外にもサルに感染するマラリアはたくさんあり、それらをひっくるめていわゆる「サルマラリア」と呼びます)。マラリアは、結核とHIVに並ぶ世界3大感染症の1つであり、今もアフリカを中心に2億人を越える感染者を出しています1)。その大半が熱帯熱マラリア(Plasmodium falciparum)または三日熱マラリア(Plasmodium vivax)によるものであり、残りの数%が四日熱マラリア(Plasmodium malariae)と卵形マラリア(Plasmodium ovale)によるものです。しかし、これまで4種類とされてきたヒトに感染するマラリア原虫に第5の刺客が登場したのですッ! それがP.knowlesiなのですッ! ちなみに“knowlesi”の発音ですが、「ノウレジ」と言う人もいますが、通は「ノウザイ」と発音するようです。“Dengue”を「デング」と呼ぶか、「デンギー」と呼ぶかと同じで、まあどっちでもいいかと思いますが。知っておきたいP.knowlesiの発生地域P.knowlesiは、アカゲザルやカニクイザルなどのサルを固有の宿主とするマラリア原虫の1種で、1965年にマレーシアでヒトへの自然感染例が初めて報告されましたが、ヒトに感染するのはきわめてまれな感染症であると考えられていました。しかし、マレーシアでこれまで四日熱マラリアと診断されていた症例の大部分が、実はどうやらP.knowlesi感染症であったことが近年明らかとなり、現在ではP.knowlesiはマレーシアの他、タイ、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、インドネシア、シンガポールなど東南アジアの森林地帯に分布していることがわかっています(図1)2)。すでに日本でも1例の輸入例が報告されています。これは国立国際医療研究センターで診断された症例で、私も診療に加わらせていただいた症例です3)。画像を拡大するP.knowlesiの症状と診断P.knowlesiの臨床症状は、他のマラリアと同じく非特異的な発熱であり、発熱以外には頭痛、関節痛、筋肉痛、下痢などの症状を呈することがあります。卵形マラリアや三日熱マラリアは48時間、四日熱マラリアは72時間周期の発熱を呈することがありますが、P.knowlesiは24時間周期といわれています。これはマラリア原虫の体内での分裂周期が、この時間だから周期的な発熱になるわけですが、発症してしばらくは原虫の周期がそろわず、かならずしも周期的な発熱にならないこともしばしばです。周期性が出てくるのはだいたい発症から5~7日くらいとされています4)。マラリア原虫種の鑑別には、ギムザ染色による顕微鏡検査がゴールドスタンダードです。たとえば図2がP.knowlesiのギムザ染色での所見です。画像を拡大する感染赤血球の大きさが変化していないので熱帯熱マラリアか四日熱マラリアかP.knowlesiかということがわかりますし、環状体が少し変形しているので後期栄養体かな? とかまではわかりますが、P.knowlesiは後期栄養体の帯状体が四日熱マラリア原虫と類似していたり、早期栄養体の環状体が熱帯熱マラリア原虫との鑑別を要することもあるため、なかなかギムザ染色だけでは原虫種まではわかりません。確定診断のためにはPCR検査を依頼することが、望ましいとされます(マラリア原虫のPCR検査は、国立国際医療研究センター研究所 マラリア研究部で行うことができます)。P.knowlesiの治療と発熱渡航者に気を付けろP.knowlesi感染症はほとんどが軽症~中等症ですが、まれに重症化する症例が報告されており、注意が必要です。P.knowlesi感染症の治療としては、海外ではクロロキンが第1選択薬として使用されていますが、わが国ではクロロキンは使用できないため、本症例ではメフロキン(商品名:メファキン)またはアトバコン・プログアニル(同:マラロン)を使用することになります。ただし、重症例では他のマラリア原虫種同様、アーテミシニン併用療法による治療が推奨されます。幸いなことにアーテメーター・ルメファントリン合剤(同:リアメット)が国内でも承認されましたので、もうすぐ使用できるようになります。また、P.knowlesiは休眠体をつくらないため、プリマキンによる根治療法を行う必要はありません。P.knowlesi常在地から帰国後の発熱患者に血液塗抹標本で、四日熱マラリア原虫に似た原虫を認めたら、P.knowlesi感染症を疑うようにしましょう!次回は最近あまり注目されていないけれど、地味に感染者を出している「H7N9インフルエンザ」についてご紹介いたしますッ!1)World Health Organization. World Malaria Report 2015.(参照 2016.3.23).2)Singh B, et al. Clin Microbiol Rev. 2013;26:165-184.3)Tanizaki R, et al. Malar J. 2013;12:128.4)Taylor T, et al. Hunter's Tropical Medicine and Emerging Infectious Diseases. 9th ed. Philadelphia:Saunders Elsevier;2012. p.696-717.

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経口フルオロキノロン処方後10日間、網膜剥離リスク増大

 経口フルオロキノロン系抗菌薬の服用と網膜剥離のリスクが注目され、その関連が議論されている。フランスNational Agency for Medicines and Health Products Safety(ANSM)のFanny Raguideau氏らは、医療データベースを用いた疫学研究により、経口フルオロキノロン服用開始後10日以内に網膜剥離を発症するリスクが有意に高いことを明らかにした。著者は、「経口フルオロキノロンの服用と網膜剥離発症リスクとの関連について、さらに検討しなければならない」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2016年3月10日号の掲載報告。 研究グループは、経口フルオロキノロンの服用と網膜剥離(裂孔原性および滲出性)発症との関連を評価する目的で、フランスの医療データベースを用い、2010年7月1日~13年12月31日にかけて、網膜剥離の成人患者を対象に症例クロスオーバー研究を行った。網膜剥離発症の6ヵ月以内に網膜剥離や網膜裂孔、眼内炎、硝子体内注射、脈絡膜網膜硝子体内生検およびヒト免疫不全ウイルス感染症の既往歴または入院歴のある患者は除外された。 主要評価項目は、リスク期間中(網膜剥離の手術直前1~10日)の経口フルオロキノロンの服用で、対照期間(61~180日前)と比較した。また、中間リスク期間(最近[11~30日前]および過去[31~60日前])における服用との関連や、経口フルオロキノロンや網膜剥離の種類別についても検討した。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした網膜剥離患者2万7,540例(男性57%、年齢[平均±SD]61.5 ±13.6歳)中、663例が経口フルオロキノロンを服用していた。リスク期間中の服用が80例、対照期間(61~180日前)中が583例であった。・経口フルオロキノロン処方後10日間に、網膜剥離発症リスクの有意な増大が認められた(調整オッズ比:1.46、95%信頼区間[CI]:1.15~1.87)。・裂孔原性(調整オッズ比:1.41、95%CI:1.04~1.92)および滲出性(同:2.57、95%CI:1.46~4.53)いずれの網膜剥離も、有意なリスクの増大が認められた。・経口フルオロキノロンの最近服用(調整オッズ比:0.94、95%CI:0.78~1.14)および過去服用(同:1.06、0.91~1.24)は、網膜剥離発症のリスクと関連していなかった。

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再挿管リスク、ネーザルハイフロー vs.従来酸素療法/JAMA

 抜管後の酸素療法について、再挿管リスクが低い患者ではネーザルハイフロー療法が従来酸素療法よりも、72時間以内の再挿管リスクが有意に低下したことが、スペイン、ビルヘン・デ・ラ・サルード病院のGonzalo Hernandez氏らによる多施設共同無作為化試験の結果、示された。これまでに、再挿管リスクの高低を問わない機械的人工換気療法を受ける重篤疾患患者の試験で、抜管後のネーザルハイフロー療法が従来酸素療法よりも酸素化を改善することは示されていた。しかし、再挿管リスクに関するデータはなかった。JAMA誌オンライン版2016年3月15日号掲載の報告。再挿管低リスクの527例を対象に無作為化試験 研究グループは、再挿管リスクが低い機械的人工換気療法を受ける患者の再挿管の回避について、ネーザルハイフロー療法のほうが従来酸素療法よりも優れるか否かを調べる検討を行った。 試験は2012年9月~14年10月に、スペイン国内7つのICUで行われた。対象は、成人重篤患者で、計画的抜管に関する基準を完全に満たし再挿管リスクが低いと判定された527例であった。低リスク判定の定義は、「65歳未満」「抜管日のAPACHE(Acute Physiology and Chronic Health Evaluation)IIスコアが12未満」「BMI 30未満」「気道分泌物調節能あり」「離脱が容易に施行」「併存疾患0もしくは1」「心不全なし」「中等症~重症のCOPDなし」「気道開存性の問題なし」「機械的人工換気の施行期間が非長期(7日以内)」であった。 患者は、抜管後24時間、ネーザルハイフロー療法もしくは従来酸素療法を受ける群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、抜管後72時間以内の再挿管で、Cochran-Mantel-Haenszel χ2検定法を用いて比較した。副次アウトカムは、抜管後の呼吸不全、呼吸器感染症、敗血症、多臓器不全、ICU入室および入院期間、死亡、有害事象、再挿管までの時間などであった。再挿管の発生、ハイフロー群4.9%、従来群12.2% 被験者527例は、平均年齢51(範囲:18~64)歳、男性62%であった。264例がネーザルハイフロー療法を受け(ハイフロー群)、263例が従来酸素療法を受けた(従来群)。 結果、抜管後72時間以内の再挿管の発生頻度は、ハイフロー群で有意に低かった。ハイフロー群13例(4.9%) vs.従来群32例(12.2%)で、絶対差は7.2%(95%信頼区間[CI]:2.5~12.2%、p=0.004)であった。 抜管後呼吸不全の発生は、ハイフロー群で低かった。ハイフロー群22/264例(8.3%) vs.従来群38/263例(14.4%)で、絶対差は6.1%(95%CI:0.7~11.6%、p=0.03)であった。 再挿管までの時間は、両群で有意差はなかった。ハイフロー群19時間(四分位範囲:12~28) vs.従来群15時間(9~31)で、絶対差は-4(95%CI:-54~46、p=0.66)であった。 有害事象の報告はなかった。

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敗血症患者のICUでの2次感染、死亡への影響は?/JAMA

 ICUでの2次感染は、重症度が高い敗血症入室患者でより多く発生していたが、全死亡に対する寄与はごくわずかであることが、オランダ・アムステルダム大学のLonneke A. van Vught氏らが、Molecular Diagnosis and Risk Strati- fication of Sepsis(MARS)プロジェクトの一部として行った前向き観察研究の結果、示された。なお、敗血症患者のゲノム応答を調べたところ、免疫抑制は2次感染発症時に起きたことを示すものであったという。これまで、敗血症は免疫抑制を引き起こし、2次感染と死亡との関連感度を高めるのではないかと考えられていた。JAMA誌オンライン版2016年3月15日号掲載の報告。ICUへの敗血症入室約1,700件、非感染症入室約1,900件を解析 研究グループは、2011年1月~13年7月、オランダ2施設のICUに連続48時間以上入室した患者を対象に、前向き観察研究を行った。患者は、入室時の診断によって敗血症入室と非感染症入室に層別化され、解析対象は敗血症入室1,719件(1,504例、年齢中央値62歳、四分位範囲[IQR]:51~71歳、男性924例[61.4%])、非感染症入室1,921件(1,825例、年齢中央値62歳、IQR 49~71歳、男性1,128例[61.8%])であった。 主要評価項目は、ICU入室48時間以降に発症したICUでの2次感染(ICU内感染)で、time-to-eventモデルを用いて寄与死亡割合(リスク因子やICU内感染を排除することで予防されうる死亡の割合)を算出した。 また、一部の敗血症入室例(461件)について、血中遺伝子発現の分析(白血球の全ゲノムトランスクリプトーム)を、ベースラインとICU内感染発症時、および急性心筋梗塞などの非感染性イベント発症時に行った。ICUでの2次感染、重症敗血症患者で多いが全死亡への寄与はわずか ICU内感染を発症したのは、敗血症入室群13.5%(232件)、非感染症入室群15.1%(291件)であった。 敗血症入室群について、ICU内感染発症患者の疾患重症度スコアは、非発症患者と比べてICU入室期間を通して高かった(APACHE IV スコア中央値:90 [IQR:72~107] vs.79 [62~98]、p<0.001)。しかし、両者のベースラインでの遺伝子発現に違いはみられなかった。 60日目までの敗血症入室患者におけるICU内感染の人口寄与死亡割合は10.9%(95%CI:0.9~20.6%)であった。また、敗血症入室全患者の死亡とICU内非感染患者の死亡との差は2.0%と推定された(95%CI:0.2~3.8%)。 一方、非感染症(非敗血症)入室群について、60日目までのICU内感染の人口寄与死亡割合は21.1%であった(95%CI:0.6~41.7%)。 敗血症入室群について行った遺伝子発現の分析の結果、ベースラインと比較しICU内感染発症時において、糖新生や解糖に関連する遺伝子発現の低下が認められた。

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腹部手術後の低酸素血症呼吸不全、非侵襲的換気療法が有効/JAMA

 腹部手術後に低酸素血症呼吸不全を発症した患者に対し、顔面マスクを介して行う非侵襲的換気療法は、標準酸素療法と比較して7日以内の気管再挿管の発生率が12%低下したことが示された。フランス、サン・テロワ大学病院のSamir Jaber氏らが、患者293例を対象に行った無作為化並行群間比較試験の結果で、JAMA誌オンライン版2016年3月15日号で発表した。結果を踏まえて著者は、「こうした患者において非侵襲的換気療法の使用を支持する結果が示された」とまとめている。気管再挿管や医療ケア関連感染症の発生率を比較 研究グループは2013年5月~14年9月にかけて、フランス20ヵ所の集中治療室(ICU)で、腹部手術後7日以内に低酸素血症呼吸不全を発症した患者293例を対象に試験を行った。被験者は、酸素分圧が室内気呼吸で60mmHg未満または酸素飽和度(SpO2)が90%以下、または15L/分の酸素呼吸で80mmHg未満、それに加えて呼吸速度が30/分超、または臨床的に激しい呼吸筋運動や強制呼吸の徴候が認められた。 被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方には標準酸素療法(最大15L/分でSpO2を94%以上に維持)を、もう一方には顔面マスクを用いた非侵襲的換気療法(NIV、呼気圧支持レベル:5~15cmH2O、終末呼気陽圧:5~10cmH2O、吸入酸素濃度:SpO2 94%以上に滴定)を行った。 主要評価項目は、無作為化から7日以内の気管再挿管だった。副次評価項目は、ガス交換、30日時点における侵襲的換気療法非使用生存、医療ケア関連の感染症、90日死亡などだった。医療ケア関連の感染症も17.8%低下 被験者の平均年齢は63.4歳、男性は224例だった。 無作為化から7日以内の気管再挿管率は、標準酸素療法群が45.5%(145例中66例)に対し、NIV群が33.1%(148例中49例)と有意に低率だった(絶対差:-12.4%、95%信頼区間[CI]:-23.5~-1.3、p=0.03)。 侵襲的換気療法非使用生存期間も、標準酸素療法群が23.2日に対しNIV群が25.4日と有意に延長し(絶対差:-2.2日、95%CI:-0.1~4.6、p=0.04)、医療ケア関連の感染症発症率も標準酸素療法群49.2%に対しNIV群は31.4%と有意に低率だった(同:-17.8%、-30.2~-5.4、p=0.003)。90日死亡率は、標準酸素療法群21.5%に対し、NIV群では14.9%だった(p=0.15)。ガス交換について有意差はみられなかった。

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フルオロキノロンは重篤不整脈リスクを増大しない/BMJ

 経口フルオロキノロン系薬の服用は、重篤な不整脈リスクを増大しない。これまでとは異なる所見が得られたことを、スウェーデン・ルンド大学のMalin Inghammar氏らがコホート研究の結果、報告した。デンマークとスウェーデンの2国住民を対象に、経口フルオロキノロン治療の関与を、不整脈誘発作用のないペニシリンV使用との比較で調べた結果、明らかになったものだという。BMJ誌オンライン版2016年2月26日号掲載の報告。デンマーク、スウェーデン一般成人を対象に分析 試験は、デンマーク(1997~2011年)、スウェーデン(2006~13年)の2国の40~79歳の住民を対象に、レジスターデータから処方、重篤不整脈の発症、患者特性を集めて分析した。 1対1の適合傾向スコア分析法で、フルオロキノロン系薬投与90万9,656例、ペニシリンV投与90万9,656例を包含して分析した。フルオロキノロン系薬の内訳は、シプロフロキサシン82.6%、ノルフロキサシン12.1%、オフロキサシン3.2%、モキシフロキサシン1.2%とその他フルオロキノロン系薬0.9%であった。 主要アウトカムは、重篤不整脈(致死的および非致死的)リスクで、フルオロキノロン系薬群とペニシリンV群を比較し評価した。着目したリスク期間は、現在服用(治療0~7日)であった。 サブグループ解析では、国、性別、年齢、心血管疾患歴あり、トルサードドポアント(TdP)リスク増大作用のある薬物併用、フルオロキノロン系薬の種別、不整脈リスクスコアなどで評価を行った。ペニシリンV群との比較で発症率比0.85 追跡期間中、重篤不整脈の発症は429例報告され、そのうち現在服用例は144例であった。66例がフルオロキノロン系薬群(発症率:3.4/1,000人年)、78例がペニシリンV群(同4.0)であり、率比は0.85(95%信頼区間[CI]:0.61~1.18)であった。 ペニシリンV群と比較した、フルオロキノロン系薬群の絶対リスク差は、100万投与当たり-13(95%CI:-35~16)例であった。 フルオロキノロン系薬の種別解析などあらゆるサブグループで、フルオロキノロン系薬治療群における重篤不整脈リスクの、統計的に有意な増大は認められなかった。 著者は、「以前の報告に反して、経口フルオロキノロン系薬治療は、デンマークおよびスウェーデンの一般成人集団において、重篤不整脈リスクとの関連はみられなかった。試験の統計的検出力は、相対リスクおよび絶対リスクのわずかな上昇もルールアウト可能なものであった」と述べている。ただし、使用されているフルオロキノロン系薬の内訳をみたときに、シプロフロキサシンが8割強を占めていたことに触れ、重篤不整脈リスクに対する差がクラス内にないとは言い切れないとしている。

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尿素サイクル異常症〔UCD : urea cycle disorders〕

1 疾患概要■ 概念・定義尿素サイクル異常症(urea cycle disorders:UCD)とは、尿素サイクル(尿素合成経路)を構成する代謝酵素に先天的な異常があり高アンモニア血症を来す疾患を指す。N-アセチルグルタミン酸合成酵素欠損症、カルバミルリン酸合成酵素欠損症、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、シトルリン血症I型、アルギニノコハク酸尿症、高アルギニン血症(アルギナーゼ欠損症)、高アンモニア高オルニチン高ホモシトルリン尿(HHH)症候群、リジン尿性蛋白不耐症、シトリン異常症、オルニチンアミノ基転移酵素欠損症(脳回転状脈絡膜網膜萎縮症)が含まれる。■ 疫学UCDは、希少難病である先天代謝異常症のなかで最も頻度が高い疾患のひとつであり、尿素サイクル異常症に属する各疾患合わせて、約8,000人に1人の発生頻度と推定されている。家族解析やスクリーニング検査などで発見された「発症前型」、新生児早期に激しい高アンモニア血症を呈する「新生児期発症型」、乳児期以降に神経症状が現れ、徐々に、もしくは感染や飢餓などを契機に、高アンモニア血症と症状の悪化がみられる「遅発型」に分類される。■ 病因尿素サイクルは、5つの触媒酵素(CPSI、OTC、ASS、ASL、ARG)、補酵素(NAGS)、そして少なくとも2つの輸送タンパクから構成される(図1)。UCDはこの尿素サイクルを構成する各酵素の欠損もしくは活性低下により引き起こされる。CPSI:カルバミルリン酸合成酵素IOTC:オルニチントランスカルバミラーゼASS:アルギニノコハク酸合成酵素ASL:アルギニノコハク酸分解酵素ARG:アルギナーゼ補助因子NAGS:N-アセチルグルタミン酸合成酵素ORNT1:オルニチンアミノ基転移酵素CPSI欠損症・ASS欠損症・ASL欠損症・NAGS欠損症・ARG欠損症は、常染色体劣性遺伝の形式をとる。OTC欠損症はX連鎖遺伝の形式をとる。画像を拡大する■ 症状疾患の重症度は、サイクル内における欠損した酵素の種類、および残存酵素活性の程度に依存する。一般的には、酵素活性がゼロに近づくほど、かつ尿素サイクルの上流に位置する酵素ほど症状が強く、早期に発症すると考えられている。新生児期発症型では、出生直後は明らかな症状を示さず、典型的には異化が進む新生児早期に授乳量が増えて、タンパク負荷がかかることで高アンモニア血症が助長されることで発症する。典型的な症状は、活力低下、傾眠傾向、嘔気、嘔吐、体温低下を示し、適切に治療が開始されない場合は、痙攣、意識障害、昏睡を来す。神経症状は、高アンモニア血症による神経障害および脳浮腫の結果として発症し、神経学的後遺症をいかに予防するかが重要な課題となっている。遅発型は、酵素活性がある程度残存している症例である。生涯において、感染症や激しい運動などの異化ストレスによって高アンモニア血症を繰り返す。高アンモニア血症の程度が軽い場合は、繰り返す嘔吐や異常行動などを契機に発見されることもある。睡眠障害や妄想、幻覚症状や精神障害も起こりうる。障害性脳波(徐波)パターンも、高アンモニア血症においてみられることがあり、MRIによりこの疾患に共通の脳萎縮が確認されることもある。■ 予後新生児透析技術の進歩および小児肝臓移植技術の進歩により、UCDの救命率・生存率共に改善している(図2)。それに伴い長期的な合併症(神経学的合併症)の予防および改善が重要な課題となっている。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)UCDの診断は、臨床的、生化学的、分子遺伝学的検査に基づいて行われる(図3)。血中アンモニア濃度が新生児は120μmol/L(200μg/dL)、乳児期以降は60μmol/L(100 μg/dL)を超え、アニオンギャップおよび血清グルコース濃度が正常値である場合、UCDの存在を強く疑う。血漿アミノ酸定量分析が尿素サイクル異常の鑑別診断に用いられる。血漿アルギニン濃度はアルギナーゼ欠損症を除くすべてのUCDで減少し、一方、アルギナーゼ欠損症においては5~7倍の上昇を示す。血漿シトルリン濃度は、シトルリンが尿素サイクル上流部の酵素(OTC・CPSI)反応による生成物であり、また下流部の酵素(ASS・ASL・ARG)反応に対する基質であることから、上流の尿素サイクル異常と下流の尿素サイクル異常との鑑別に用いられる。尿中オロト酸測定は、CPSI欠損症・NAGS欠損症とOTC欠損症との判別に用いられる。肝生検が行われる場合もある。日本国内の尿素サイクル関連酵素の遺伝子解析は、研究レベルで実施可能である。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)確定診断後の治療は、それぞれのUCDの治療指針に従い治療を行う。各専門書もしくはガイドライン(EUおよび米国におけるガイドライン)が、インターネットで利用できる。日本国内では、先天代謝異常学会を中心として尿素サイクル異常症の診療ガイドラインが作られて閲覧可能である。専門医との連携は不可欠であるが、急性発作時には搬送困難な場合も多く、状態が安定しないうちには患児を移動せずに、専門医と連絡を取り合って、安定するまで拠点となる病院で治療に当たることが望ましい場合もある。■急性期の治療は、以下のものが主柱となる。1)血漿アンモニア濃度の迅速な降下を目的にした透析療法血漿アンモニア濃度を早急に下降させる最善策は透析であり、血流量を速くするほどクリアランスはより早くに改善される。透析方法は罹患者の病状と利用可能な機材による。具体的には、血液濾過(動脈‐静脈、静脈‐静脈のどちらも)、血液透析、腹膜透析、連続ドレナージ腹膜透析が挙げられる。新生児に対しては、持続的血液濾過透析(CHDF)が用いられることが多い。2)余剰窒素を迂回代謝経路により排出させる薬物治療法アンモニア生成の阻害は、L-アルギニン塩酸塩と窒素除去剤(フェニル酪酸ナトリウムと安息香酸ナトリウム)の静脈内投与により行われる。負荷投与後に維持投与を行い、初期は静脈内投与により行い、病状の安定に伴い経口投与へ移行する(投与量は各専門書を参照のこと)。フェニル酪酸ナトリウム(商品名:ブフェニール)は、2013年1月に処方可能となった。投与量は添付文書よりも少ない量から開始することが多い(上記、国内ガイドライン参照)。3)食物中に含まれる余剰窒素の除去特殊ミルクが、恩賜財団母子愛育会の特殊ミルク事務局から無償提供されている。申請が必要である。4)急性期の患者に対してカロリーは炭水化物と脂質を用いる。10%以上のグルコースと脂肪乳剤の静脈内投与、もしくはタンパク質を含まないタンパク質除去ミルク(S-23ミルク:特殊ミルク事務局より提供)の経鼻経管投与を行う。5)罹患者において、非経口投与から経腸的投与への移行はできるだけ早期に行うほうがよいと考えられている。6)24~48時間を超える完全タンパク質除去管理は、必須アミノ酸の不足により異化を誘導するため推奨されていない。7)神経学的障害のリスクの軽減循環血漿量の維持、血圧の維持は必須である。ただし、水分の過剰投与は脳浮腫を助長するため昇圧薬を適切に併用する。心昇圧薬は、投与期間と神経学的症状の軽減度には相関が認められている。※その他マンニトールは、尿素サイクル異常症に伴う高アンモニア血症に関連した脳浮腫の治療には効果がないと考えられている。■慢性期の管理1)初期症状の防止異化作用を防ぐことは、高アンモニア血症の再発を防ぐ重要な管理ポイントとなる。タンパク質を制限した特殊ミルク治療が行われる。必要ならば胃瘻造設術を行い経鼻胃チューブにより食物を与える。2)二次感染の防止家庭では呼吸器感染症と消化器感染症のリスクをできるだけ下げる努力を行う。よって通常の年齢でのワクチン接種は必須である。マルチビタミンとフッ化物の補給解熱薬の適正使用(アセトアミノフェンに比べ、イブプロフェンが望ましいとの報告もある)大きな骨折後や外傷による体内での過度の出血、出産、ステロイド投与を契機に高アンモニア血症が誘発された報告があり、注意が必要である。3)定期診察UCDの治療経験がある代謝専門医によるフォローが必須である。血液透析ならびに肝臓移植のバックアップが可能な施設での管理が望ましい。罹患者年齢と症状の程度によって、来院回数と調査の頻度を決定する。4)回避すべき物質と環境バルプロ酸(同:デパケンほか)長期にわたる空腹や飢餓ステロイドの静注タンパク質やアミノ酸の大量摂取5)研究中の治療法肝臓細胞移植治療が米国とヨーロッパで現在臨床試験中である。:国内では成育医療センターが、わが国第1例目の肝臓細胞移植を実施した。肝幹細胞移植治療がベルギーおよび米国で臨床試験中である。:国内導入が検討されている。6)肝臓移植肝臓移植の適応疾患が含まれており、生命予後を改善している(図4)。画像を拡大する4 今後の展望UCDに関しては、長い間アルギニン(商品名:アルギUほか)以外の治療薬は保険適用外であり自費購入により治療が行われてきた。2013年に入り、新たにフェニル酪酸ナトリウム(同:ブフェニール)が使用可能となり、治療の幅が広がった。また、海外では適用があり、国内での適用が得られていないそのほかの薬剤についても、日本先天代謝異常学会が中心となり、早期保険適用のための働きかけを行っている。このような薬物治療により、アンモニアの是正および高アンモニア血症の治療成績はある程度改善するものと考えられる。さらに、小児への肝臓移植技術は世界的にも高いレベルに達しており、長期合併症を軽減した手技・免疫抑制薬の開発、管理方法の改善が行われている。また、肝臓移植と内科治療の中間の治療として、細胞移植治療が海外で臨床試験中である。細胞移植治療を内科治療に併用することで、コントロールの改善が報告されている。5 主たる診療科小児科(代謝科)各地域に専門家がいる病院がある。日本先天代謝異常学会ホームページよりお問い合わせいただきたい。学会事務局のメールアドレスは、JSIMD@kumamoto-u.ac.jpとなる。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本先天代謝異常学会(医療従事者向けのまとまった情報)尿素サイクル異常症の診療ガイドライン(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報全国尿素サイクル異常症患者と家族の会日本先天代謝異常学会 先天代謝異常症患者登録制度『JaSMIn & MC-Bank』公開履歴初回2013年12月05日更新2016年03月15日

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ジカウイルスとギラン・バレー症候群の関連、初のエビデンス/Lancet

 ジカウイルスがギラン・バレー症候群を引き起こすという、初となるエビデンス報告が、Lancet誌オンライン版2016年2月29日号で発表された。仏領ポリネシアのタヒチにあるInstitut Louis MalardeのVan-Mai Cao-Lormeau氏らの研究グループが、症例対照研究の結果、報告した。Cao-Lormeau氏は、「ジカウイルス感染症が南北・中央アメリカ中に広がりをみせている。リスクに曝されている国では、ギラン・バレー症候群患者を集中的に治療するための十分なベッドを確保しておく必要がある」と警告を発している。仏領ポリネシアでは2013年10月~14年4月の間に、ジカウイルス感染症の大規模なアウトブレイクを経験。同期間中に、ギラン・バレー症候群の患者が増大したことが報告され、ジカウイルスとの関連が指摘されていた。アウトブレイク中の患者を対象に症例対照研究で関与を検証 研究グループは、ギラン・バレー症候群発症において、ジカウイルス感染症およびデング熱ウイルス感染症が関与しているかを調べる症例対照研究を行った。 症例は、前述したアウトブレイク期間中に、タヒチ島の首都パペーテにあるCentre Hospitalier de Polynesie Francaiseで、ギラン・バレー症候群と診断された患者とした(症例群)。 対照は、年齢・性別・住所でマッチした非発熱性疾患患者(対照群1:98例)、年齢でマッチした急性ジカウイルス感染症患者で神経症状はみられない患者(対照群2:70例)とした。 症例群、対照群の感染ウイルス特定には、RT-PCR法、蛍光抗体マイクロスフェア(microsphere immunofluorescent)法、血清中和アッセイ法などが用いられた。ギラン・バレー症候群の診断では、ELISA法および複合マイクロアッセイを用いて、血清糖脂質抗体の測定が行われた。ギラン・バレー症候群患者98%がジカウイルスIgM/IgG陽性 試験期間中にギラン・バレー症候群と診断された患者は42例であった。そのうち41例(98%)がジカウイルスIgMまたはIgG陽性であった。 症例群の全患者(100%)が、ジカウイルス中和抗体を保有していた。一方、対照群1(98例)における保有者は54例(56%)であった(p<0.0001)。 症例群のうちジカウイルスIgM陽性は39例(93%)で、また、37例(88%)は、神経症状発症の中央値6日(IQR:4~10)前に、ジカウイルス感染症に罹患したことを示唆する一過性の疾患を有していた。 症例群では、電気生理学的検査で軸索型(AMAN)の所見、および急速進行(急速進行初期[installation phase]中央値6[IQR:4~9]日、静止期[plateau phase]中央値4[3~10]日)の所見が認められた。呼吸補助を必要としたのは12例(29%)、死亡例はなかった。 ELISA法による血清糖脂質抗体陽性は、13例(31%)で認められた。そのうちGA1抗体保有者が最も多く8例(19%)の患者で認められた。また、入院時の糖アッセイでは19/41例(46%)が陽性を示した。なお、典型的なAMANに関連する抗糖脂質抗体を有していた患者はまれであった。 デング熱ウイルス感染症歴については、症例群(95%)と、2つの対照群(89%、83%)で有意差はみられなかった。

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スーグラほかSGLT2阻害薬は高齢者に安全か

 3月3日、アステラス製薬株式会社は、「本邦の高齢者におけるSGLT2阻害薬の安全性と有効性」と題し、演者に横手 幸太郎氏(千葉大学大学院医学研究院 細胞治療内科学講座 教授)を招き、プレスセミナーを開催した。講演では、65歳以上の高齢者7,170人を対象としたSGLT2阻害薬イプラグリフロジン(商品名:スーグラ)錠の大規模調査「STELLA-ELDER」の中間報告も行われた。約10年でHbA1cは下がったが… はじめに、2型糖尿病をメインにその概要や機序が説明された。わが国の糖尿病患者は、疫学推計で2,050万人(2012年)と予想され、この5年間で予備群といわれている層が減少した半面、糖尿病と確定診断された層は増加しているという。血糖コントロールについては、さまざまな治療薬の発売もあり、2002年と2013年を比較すると、2型糖尿病患者のHbA1cは7.42%から6.96%へと低下している。しかしながら、患者の平均BMIは24.10から25.00と肥満化傾向がみられる。SGLT2阻害薬の課題 これまで糖尿病の治療薬は、SU薬をはじめメトホルミン、チアゾリジン、DPP-4阻害薬などさまざまな治療薬が上市されている。そして、これら治療薬では、患者へ食事療法などの生活介入なく治療を行うと、患者の体重増加を招き、このジレンマに医師、患者は悩まされてきた。 そうした中で発売されたSGLT2阻害薬は、糖を尿中排出することで血糖を下げる治療薬であり、体重減少ももたらす。また、期待される効果として、血糖降下、膵臓機能の改善、血清脂質の改善、血圧の低下、腎機能の改善などが挙げられる。その反面、危惧される副作用として、頻尿による尿路感染症、脱水による脳梗塞などがあり、昨年、日本糖尿病会から注意を促す「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」が発出されたのは記憶に新しい。 米国では、処方率においてDPP-4阻害薬をすでに抜く勢いであるが、わが国では、5%前後と低調である。今後、わが国でも適応の患者にきちんと使えるように、さらなる検証を行い、使用への道筋を作ることが大切だという。スーグラ処方の注意点 続いて、イプラグリフロジン(スーグラ)錠について、高齢者を対象に行われた全例調査「STELLA-ELDER」の中間報告の説明が行われた。 「STELLA-ELDER」は、スーグラの高齢者への安全性について確認することを目的に、2014年4月から2015年7月にかけて、本剤を服用した65歳以上(平均72.2歳)の2型糖尿病患者(n=7,170)について調査したものである。 スーグラの副作用の発現症例率は全体で10.06%(721例)であった。多かった副作用の上位5つをみてみると皮膚疾患(2.27%)が最も多く、次に体液量減少(1.90%)、性器感染症(1.45%)、多尿・頻尿(1.32%)、尿路感染症(0.77%)などであった。いずれも重篤ではなく、90%以上がすでに回復している。また、これら副作用の発現までの日数について、「脱水・熱中症」「脳血管障害」「皮膚関連疾患」「尿路/性器感染」は、投与開始後早期(30日以内)に発現する傾向が報告された。 スーグラの全例調査で注目すべきは、高齢者に懸念される「低血糖」の発現状況である。全例中23例(0.3%)に低血糖が発現し、とりわけBMIが18.5未満の患者では発現率が高い(6.8%)ことが示された。また、腎機能に中等度障害、軽度障害がある患者でも高いことが報告された。その他、体液減少に伴う副作用の発現については、75歳以上(68/2,223例)では75歳未満(68/4,947例)に比べ、発現率が約2倍高くなることも示された。 最後に、横手氏は、「これらの調査により、腎機能が低下している、痩せている高齢者(とくに75歳以上)には、処方でさらに注意が必要となることが示された。今後も適正な治療を実施してほしい」とレクチャーを終えた。アステラス製薬 「STELLA-ELDER」中間報告はこちら(pdfが開きます)「SGLT2阻害薬」関連記事SGLT2阻害薬、CV/腎アウトカムへのベースライン特性の影響は/Lancet

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処方率上位を伝えるレター、不要な抗菌薬処方削減に効果/Lancet

 英国一般医(GP)の不要な抗菌薬処方を減らす方法として、処方率の高い上位20%のGPに対し、英国主席医務官(England's Chief Medical Officer)名で、上位に位置していることを知らせるレター送付が有効であることが示された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのMichael Hallsworth氏らが、プラグマティックな試験を行い報告した。著者は、「低コストで全国規模の抗菌薬処方の削減が可能であり、抗菌薬管理プログラムに追加する価値があるものだ」と結論している。Lancet誌オンライン版2016年2月18日号掲載の報告。抗菌薬処方率が高い上位20%のGP診療所を対象に介入 vs.非介入試験 試験は、2×2要因デザインを用いた無作為化比較試験で、一般公開されているデータベースを用いて、抗菌薬処方率が、所属するNHS Local Area Teamで上位20%に位置するGP診療所を同定して行われた。適格診療を、フィードバック介入群と非介入(対照)群にコンピュータで無作為に割り付け、NHS Local Area Teamによる層別化も行った。割り付けについて参加者は知らされなかったが、研究者には知らされた。 2014年9月29日に、フィードバック介入群の全GPに対し、英国主席医務官からレターと、患者への抗菌薬使用に関するリーフレットが送付された。レターには、「所属するNHS Local Area Teamで、抗菌薬処方率が上位20%に属する診療である」旨が書かれていた。一方、対照群のGPには一切の連絡がされなかった。 その後、試験対象者は再無作為化を受け、14年12月に、一方の群には抗菌薬使用の減少を推奨する患者中心の情報が送られ、もう一方には一切の連絡がされなかった。 主要評価項目は、1,000加重人口当たりの処方抗菌薬で、過去の処方について調整し評価。解析はintention-to-treatにて行われた。レター送付群で抗菌薬処方が有意に減少 2014年9月8日~26日の間に、1,581のGP診療所が、フィードバック介入群(791ヵ所)または対照群(790ヵ所)に割り付けられた。 レターは、介入群791ヵ所の3,227人のGPに送られた。レター送付費用は4,335ポンドであった。 2014年10月~15年3月の、1,000加重人口当たりの処方抗菌薬は、フィードバック介入群126.98(95%信頼区間[CI]:125.68~128.27)、対照群131.25(130.33~132.16)で、差は4.27(相対差:3.3%;群間差の発生率比[IRR]:0.967、95%CI:0.957~0.977、p<0.0001)であった。これは推定で、処方抗菌薬が7万3,406個減少したことを示す。 GP診療所は再び14年12月に、患者中心介入群(777ヵ所)、対照群(804ヵ所)に割り付けられた。結果、14年12月~15年3月の間の主要評価項目に有意な影響はみられなかった。1,000加重人口当たり処方抗菌薬は、患者中心介入群135.00(95%CI:133.77~136.22)、対照群133.98(133.06~134.90)で、群間差のIRRは1.01(95%CI:1.00~1.02、p=0.105)であった。

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高校スポーツ界の皮膚感染症、初の全国疫学調査

 米国では高校のスポーツ選手、とくにレスリング選手において以前から、皮膚感染症が大きな問題であったが、これまで全国的に高校のスポーツ選手における皮膚感染症についての疫学を調査した報告はない。米国・ミシガン州立大学のKurt A. Ashack氏らは、便宜的標本を用いて解析し、皮膚感染症は高校のスポーツ関連有害事象の1つとして重要であることを明示した。著者は、「スポーツ関連皮膚感染症の疫学を理解することが、皮膚感染症の認識とエビデンスに基づく予防を促進するだろう」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2016年1月29日号の掲載報告。 研究グループは、High School Reporting Information Onlineにおける2009/2010から2013/2014までの便宜的標本を用い、報告されたスポーツ関連皮膚感染症について調査した。 主な結果は以下のとおり。・調査期間において、athlete-exposures(1人の選手が1回の練習または試合へ参加する単位。以下、AE)は2,085万8,781例で、474件の皮膚感染症が報告された。発生頻度は、2.27件/10万AEであった。・皮膚感染症の発現率が最も大きかったスポーツはレスリング(73.6%)で、次いでフットボール(17.9%)であった。・最も頻度の高い皮膚感染症は、細菌感染症(60.6%)と白癬感染症(28.4%)であった。・発現部位は頭部/顔面(25.3%)が最も多く、次いで前腕(12.7%)であった。・本研究の限界として、全米アスレチックトレーナー協会(NATA)に加入しているスポーツトレーナーがいる高校のみを対象としていることが挙げられる。ただし、データの報告者はスポーツトレーナーであり、データの質改善に寄与していた。

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らい性結節性紅斑〔ENL : erythema nodosum leprosum〕

1 疾患概要■ 概念・定義ハンセン病はらい菌(Mycobacterium leprae)による慢性抗酸菌感染症である。しかし、病気の経過中にらい菌の成分に対する免疫反応が亢進し、急性の炎症症状を呈することがあり、これをらい反応(lepra reaction)という1、2)。この反応によって組織障害、とくに末梢神経障害が起こり、後遺症となることがある。らい反応には2つの型、すなわち1型らい反応(type 1 reaction、同義語として境界反応〈borderline reaction〉、あるいはリバーサル反応〈reversal reaction:RR〉)と、2型らい反応(type 2 reaction、同義語としてらい性結節性紅斑〈erythema nodosum leprosum:ENL〉)がある。本項ではENLについて記載するが、理解を深めるためハンセン病についても適宜記載する2、3、4)。なお、ハンセン病、ENLは一般病院で保険診療として取り扱っている。■ 疫学ENLはハンセン病患者のうち、菌の多いタイプ(多菌型〈multibacillary:MB〉)に発症する(表1)。らい菌に対する生体の免疫応答を基にした分類であるRidley-Jopling分類では、LL型とBL型に発症する。ENLはMB患者の10~50%にみられる。発症はハンセン病治療前に1/3、1/3は治療6ヵ月以内(とくに治療数ヵ月後)に、残り1/3は6ヵ月後に起こるとされている。画像を拡大する■ 病因多菌型(MB)のLL型、BL型の患者では、らい菌に対する細胞性免疫能は低下しているが、十分なB細胞と形質細胞が存在するので、それらの細胞が活性化を受け、大量の菌抗原が大量の抗体を作る。この場合、過剰に作られた抗体と菌抗原と補体との間で免疫複合体(immune complex)が作られ、皮膚、神経、血管壁やほかの臓器に沈着し、多数の好中球浸潤を伴った炎症性反応を生む。TNF-αは、ENL発症で重要な役割を演じると考えられている。■ 症状ENLは、らい菌抗原があれば、すなわちLL型やBL型の病巣のある所では、皮膚、リンパ節、神経、関節、眼、睾丸など、どこでも急性炎症を起こしうる(表2)。画像を拡大する典型的なENLは、いわゆる発熱を伴って発症する。39~41℃ほどの高熱を発し、全身倦怠・関節痛が起きる。皮膚では一見正常の皮膚に、小豆大から拇指頭大までの圧痛を伴う硬結や隆起性紅斑を生ずる(図1)。画像を拡大する四肢によくみられるが半数の症例で顔面にも生じる。個疹は数日で消退するが、次々と皮疹が新生する。重症例では圧痛を伴う膿疱ができたり、膿瘍形成や、平坦な紅斑に囲まれた紫斑様皮疹、中心臍窩を有する結節性紅斑、水疱をもつもの、自壊して潰瘍を形成し瘢痕化するものもある。白斑や瘢痕を残すことがある。鼻腔粘膜のENLは、結節形成よりも浸潤性変化として、鼻閉、鼻汁、痂皮、鼻中隔の萎縮が起こる。病理組織学的には真皮から皮下脂肪織に多数の好中球の集積を認める。血管壁に多核球が浸潤し壊死性血管炎を認めたり、免疫組織化学染色で免疫複合体が沈着したりすることもある。末梢神経炎を起こし、耐え難い疼痛に苦しめられる。とくに尺骨神経の上方の部分に腫脹疼痛がよく起こり、ENLの経過中に手指などに変形を起こしてくる例も少なくない。神経炎だけで不眠・食欲減退・うつ状態が起こる。ENLの末梢神経炎が引き起こす機能障害は、急激に高度に現れるものではないが、目立たない形で徐々に障害が起こる。眼に急性の虹彩毛様体炎や上強膜炎を起こし、充血・眼痛・羞明・視力低下を来す。ENLを繰り返すと慢性の虹彩毛様体炎を起こし、虹彩癒着・小瞳孔の原因ともなり、続発性緑内障につながって失明の遠因になる。感覚神経障害性の難聴が起こる。精巣炎や陰嚢水腫を起こすが、その後の睾丸の萎縮の程度は、罹病期間とENLの既往歴に深く関係する。■ 予後通常良好である。しかし、軽度の炎症が数ヵ月から数年にわたって持続し、神経障害が少しずつ進行することもある。ENLは再発しやすいので、ENLを発症したときには長く経過観察を続けるようにする。ENLが起こっても、この反応自体が菌を殺したり、排除するためには役に立たないので、菌陰性化が進むわけではない。したがってハンセン病そのものの予後とは関係がない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)現在、反応状態であるという診断は、主に臨床像で決められている。らい反応を診断するには、らい反応を疑うことから始まる。ハンセン病の診断がなされていなくてENLを主訴として初めて外来受診することもある。診断は臨床症状(表2)と検査所見(白血球数増加、好中球数増多、血沈亢進、CRP高値、血清TNF-α上昇など)、皮膚病理組織所見などを総合して行う。ENLとその他の主な皮膚疾患との鑑別を表3に示した。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)基本的な注意として安静を守らせる。仕事、学校などは無理のない程度に行う。飲酒を控え睡眠を十分にとる。多臓器症状を呈する場合には、入院安静も考慮する。ENLを軽症と重症に分類し、それに従って治療方針を立てる(表4)。なお、ハンセン病の治療については、ENLを起こしていても継続する。画像を拡大する軽症では、疼痛に対して非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)や鎮静薬などを適宜投与する。重症と診断すれば、積極的に反応を抑制する治療を行う。ENLにはサリドマイド(thalidomide)が著効する。投与したその日から、ENLの自覚症状や発熱などの全身症状が劇的に消退する。サリドマイドは、ENLの90%の患者で効果的であり、第1選択薬である。サリドマイドが効果的であることが、ENLの診断を確定する方法としても有用である。サリドマイドの使用法を図2に示した。「らい性結節性紅斑(ENL)に対するサリドマイド診療ガイドライン」が作成されているので、使用にあたっては熟読する5)。画像を拡大するサリドマイドは、ヒトにおいて催奇形性が確認されているので、安全管理手順を順守する。現在日本で保険適用になっているサリドマイドは、サレド(商品名)カプセルであり、「サリドマイド製剤安全管理手順(Thalidomide Education and Risk Management System:TERMS®)」を厳守する。何らかの事情でサリドマイド治療が困難な場合、ステロイド内服薬の全身投与も有効である。投与量は0.5~1mg/kg/日で開始する。減量方法は通常の漸減方法と同様であるが、とくに少量になってからは漸減の間隔を延ばすほうがよい。ステロイド内服薬の長期投与が必要なときは、クロファジミン(clofazimine:CLF、B663〈商品名:ランプレン〉)を併用するとよい。CLFはENLを抑制する効果がある。虹彩毛様体炎を抑制するともいわれている。したがって、ENLが生じた場合に、あるいは神経痛などの症状があり、らい反応も疑われるような時期にCLFの投与を行うことがある。しかし、サリドマイドやステロイド内服薬に認められるような明らかな抗ENL作用はないと考えられる。通常50mg/日を100mg/日(外国では最大200mg/日処方する例もある)にすることで、サリドマイドやステロイド内服薬の投与量の減少を試みる。ただし100mg/日の投与で色素沈着が顕著になり、まれに下痢・腹痛も起こる。ENLについては、何か自覚症状に気付いたら、すぐに受診させる。皮疹の発赤と腫脹、新しい皮疹、神経の急な腫脹、神経痛、羞明、発熱などのほかに、かすかな筋力の低下や感覚異常、時にはかゆみ、神経過敏にも注意深い観察をするように指導する。ハンセン病治療終了後に初めてのENLが起きることがあること、3年以内は皮膚症状も生じうること、それ以降も数年にわたって神経症状だけが出ることがあることも事前に説明しておく。ENLは、年余にわたり服薬指導の厳しいサリドマイド、副反応の起こりやすいステロイド内服薬を長期間内服し、さらに全身の痛みや発熱、失明の不安などもあるため、精神的なケア(カウンセリング、抗うつ薬投与など)も重要である。4 今後の展望ENLの治療薬であるサリドマイドは、ブラジル、日本、米国などでは使用されているが、患者の多い途上国では催奇形性の関係から使用されていない。安全で有効性の高い抗ENL薬の早期の開発が望まれる。5 主たる診療科皮膚科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報国立感染症研究所 ハンセン病研究センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)WHOのハンセン病ページ(医療従事者向けのまとまった英文情報サイト)国立感染症研究所 感染症疫学センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)熊野公子. 日ハンセン病会誌.2002;71:3-29.2)石井則久著 中嶋 弘監修. 皮膚抗酸菌症テキスト.金原出版;2008.p.1-130.3)石井則久ほか責任編集. ハンセン病アトラス.金原出版;2006.p.1-70.4)後藤正道ほか. 日ハンセン病会誌.2013;82:143-184.5)石井則久ほか. 日ハンセン病会誌.2011;80:275-285.公開履歴初回2013年11月28日更新2016年03月01日

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ポリオワクチンの追加接種を4歳時に

 2016年2月18日、サノフィ株式会社は「『ポリオ』未だ残る日本のワクチンギャップ解消へ~グローバル化の進展に伴い、高まる子どもの感染症リスク」と題し、都内でプレスセミナーを開催した。 ポリオ(急性灰白髄炎)は、小児期にかかることが多い感染症で、重い後遺症を残すことから「小児麻痺」とも呼ばれている。セミナーでは、諸外国と異なる日本のワクチン接種の現状について、小児感染症のエキスパートがレクチャーを行った。ポリオが輸入感染症になる日 「海外における最新の予防接種動向と日本に残る“ワクチンギャップ”」と題し、中野 貴司氏(川崎医科大学小児科学 教授)が解説を行った。 「わが国では、『暗黒の20年』と呼ばれるように、小児へのワクチン接種が、海外から遅れをとった時期があった」と過去を振り返りつつ、日本と米国の予防接種の状況を比較した。日米では、接種できるワクチンがほぼ同じである。しかしながら、日本ではまだ任意接種のレベルであるロタウイルス、インフルエンザ、おたふく風邪などが、米国では定期接種となっていること、また、接種スケジュールについても、わが国が就学前に集中しているのに対し、米国では就学後でも定期接種が行われている点が異なると説明した。 続いて、ポリオに関して、WHO(世界保健機関)が2018年を目標に「ポリオ最終根絶計画」を打ち出し、全世界で封じ込め対策がとられている現状を紹介した。その一環として、多くの国で安価・簡単という理由で使用されている生(経口)ワクチンから、安全性が高く、ワクチンからの感染を起こさない不活化ワクチンへの切り替えが、全世界で進められている(わが国では2012年に不活化ワクチンに変更)。 現在確認されているポリオ発生地域として、野生株ウイルスではアフガニスタン、パキスタンが、ワクチン由来ウイルスではギニア、ラオス、ミャンマー、ウクライナなどが報告されており、こうした国々からの輸入感染が懸念されている。 ポリオは、症状が現れにくい感染症であり、不顕性の場合も多い。そのため、根絶宣言がなされた地域へ、非根絶地域から感染者が流入する可能性が危惧されている。実際に、過去、日本に飛来した航空機からポリオウイルスが検出された例もある。「今後、日本でさまざまなイベントが開催される中で、多くの外国からの入国者が見込まれる。今、こうした感染症への対策が求められている」と問題を提起した。4歳で再度ポリオワクチンの接種を 続いて、「不活化ポリオワクチン就学前接種を追加する意義」と題し、松山 剛氏(千葉県立佐原病院小児科部長)が解説を行った。 わが国のポリオ患者は、1960年代の生(経口)ポリオワクチンの導入以来、急激に減少し、1980年代以降はワクチン関連麻痺性ポリオの報告を除き、患者はみられなくなった。 また、現在わが国においてポリオワクチン接種は、3回の初回接種に加え、1歳以降に1回の追加接種が行われている。これは海外の追加2回接種と比べ、その回数が少ないことが以前より指摘されている。通常、乳幼児期の追加免疫接種後、上昇した抗体価は継時的に減衰する。そのため現在の接種回数は、抗体価の維持に不安を残すものであるという。 そこで、不活化ポリオワクチン(商品名:イモバックスポリオ皮下注)の追加接種(2回目)による免疫原性および安全性の検討が行われた(製造販売後臨床試験)1)。試験は、就学前の小児60例(男児35例、女児25例)を対象に不活化ポリオワクチンを皮下注射し、接種前と接種後1ヵ月後の変化をみたものである。 試験結果によれば、追加免疫反応率(接種前と比べ各抗体価が4倍以上上昇した被験者の割合)は、ポリオ1型~3型でいずれも78.0%以上に達し、発症防御レベル以上の中和抗体保有率も各型で100%だった。また、安全面では、注射部位反応として紅斑、腫脹が、全身性反応として倦怠感、発熱などが報告されたが、いずれも軽微なものだった。 先述のように、わが国では2回目の追加免疫接種が定期接種として実施されていない。しかし、欧米各国では、4歳以降に追加免疫接種が実施されている。米国予防接種諮問委員会(ACIP)の勧告や米国疾病管理予防センター(CDC)の推奨でも、4歳以上での追加免疫接種の必要性がうたわれている。日本全体のワクチン接種率をみると、就学前のほうが就学後と比較した場合、ワクチンの接種率が高く、4歳での接種は期待できる2)。 現在のように、海外からわが国へポリオウイルスが持ち込まれるリスクがある以上、「諸外国と同じように追加免疫接種を4歳以後に行うことで、ポリオ禍から子供たちを守ることが大切である」とレクチャーを終えた。詳しくはサノフィ株式会社プレスリリースまで(PDFがダウンロードされます)(ケアネット 稲川 進)参考文献1)佐々木津ほか.小児科臨床.2015;68:1557-1567.2)厚生労働省 定期の予防接種実施者数

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電子カルテ時代に抗菌薬不適切使用を減らす手法はあるか?(解説:倉原 優 氏)-484

 当然ながら、上気道感染症のほとんどに抗菌薬の処方は不要とされている。しかしながら、多くの病院やクリニックでは、安易に抗菌薬が処方されている。これは、患者からの希望、クリニックの評判、何か処方しないと満足度が得られない、抗菌薬が不要であることのインフォームドコンセントの時間が十分取れない、など医学的な側面以外の問題が影響しているかもしれない。当院でも、上気道症状を有する患者の多くは、すでに近医でフルオロキノロンを処方された状態で来院してくる。 この研究は、抗菌薬の不適切使用を減らすにはどうしたらよいかという疑問に基づいて、アメリカの47のプライマリケア施設で実施された臨床試験である。試験デザインは、クラスターランダム化比較試験で、同施設に勤務する248人の臨床医が登録され、合計18ヵ月間で介入を受けた。 具体的な介入方法としては、代替治療の提案(電子カルテで上気道炎に対して抗菌薬を処方しようとすると不適切使用のアラートが表示)、抗菌薬使用の理由をフリーコメント欄に記載(コメントは電子カルテ上に表示される)、同僚との比較(全参加者の中で自分の抗菌薬不適切使用の頻度を表示し、順位も定期的に配信)の3経路である。これら介入を単独あるいは組み合わせて実施された。また、全群で抗菌薬処方の教育が介入前に実施された。プライマリアウトカムは、介入前後の抗菌薬不適切処方の変化率である。どうだろう、どの手法が1番効果的と思われるだろうか。 その結果、抗菌薬の不適切使用の割合は、とくに処方理由を電子カルテにコメントさせること、同僚との順位付け比較を行うことで有意に減少した。そりゃそうだろう、という結果だ。抗菌薬が不適切だと電子カルテでも非難されて、それでもなお処方できる医師などそう多くはないはずである。 これら介入による弊害はどうだろうか。抗菌薬を処方しなかった患者のうち、細菌感染のため再受診した割合は、代替治療提案+理由記載の群でのみ1.41%と有意な増加があったが、それ以外では有意差はなかった。 ふむふむ、不適切使用は確かに減るだろう。とくに理由を記載するというアイデアは良いと思う。しかし、順位付けというのが、どうしても過剰な介入に思えてならないのは私だけだろうか。おそらく、そうしたレベルを分けた介入を行うことも本研究の意図だったのだろう。 日本の場合、上気道炎や感冒という病名をつけて抗菌薬を処方する医師はいない。おそらく、細菌性肺炎、細菌性気管支炎など抗菌薬の処方が明らかに妥当と認識されるよう病名をつけることが多いだろう。保険診療の根幹に根付く こうした“しきたり”に介入できる試験は、いつの日か日本で実施可能だろうか。

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ポケット呼吸器診療2016

臨床で使える小さなマニュアル-これをポケットに入れておけば大丈夫!「Dr. 倉原の”おどろき”医学論文」でおなじみの倉原 優氏の著書の登場です。内容としては、肺炎などの感染症、閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、じん肺、慢性咳嗽、呼吸不全など日常診療で診る機会の多い疾患を中心に掲載。巻末には薬品名一覧や略語一覧も付いています。また、本書のポイントして、次の3つが挙げられます。呼吸器疾患の診療手順/処方例/診療指針・ガイドラインを掲載 患者さんへの病状説明のポイント、よくある質問の解答例も掲載 最新情報にアップデート。内容量は前年版の1.5倍! 2015年版より少し大きくなって、内容がさらに充実した本書を手に、外来で、ベッドサイドでお役立てください!画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。   ポケット呼吸器診療2016臨床で使える小さなマニュアル ―これをポケットに入れておけば大丈夫!定価 1,600円 + 税判型 新書サイズ(172×105×7mm)頁数 153頁発行 2016年2月著者 倉原 優監修 林 清二Amazonでご購入の場合はこちら

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ジカウイルス感染症に気を付けろッ! その3【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。第18回となる今回は、前回、前々回に引き続きジカウイルス感染症を取り上げたいと思います。「おいおい、どんだけジカウイルス感染症で引っ張るんだよ」と思われる読者の方もいらっしゃるでしょう。私もちょっと引っ張り過ぎかな~なんて思っています。でも…担当I氏が「ジカウイルス感染症、閲覧数伸びてます…伸びすぎてますよ~!!」と殊のほか喜んでおり、「まさかこの連載がこんなに注目されるとは…この勢いでもう1回、ジカウイルス感染症いっちゃいましょう! まだ絞れば何か出てくるでしょう!」と無茶を言うので、今までどんだけ人気なかったんだこの連載とちょっと心配になりつつも、せっかくですのでもう一度ジカウイルス感染症について語りたいと思います。われわれ医療従事者にとって大事なことは、海外でジカウイルス感染症に感染して日本で発症した患者さんを早期に診断して、その患者さんがそれ以上蚊に咬まれないようにすることです。ジカウイルス感染症を正しく診断することが、国内流行の防止につながるのです!というわけで、今回は輸入感染症の診断の原則も振り返りつつ、実際の症例アプローチについて考えてみましょう。南太平洋の楽園には危険もいっぱい【症例 とくに既往のない20代男性】●現病歴受診4日前昼過ぎから発熱と頭痛が出現。熱は微熱程度であった。夜からは全身の関節痛も出現した。受診3日前朝起きた際に、顔・体幹に皮疹が出ていることに気付いた。受診当日皮疹の原因が気になり、当院を受診した。ジカウイルス感染症患者さんは、このような経過で病院を受診されます。私が診た3名の方は、皆さん「皮疹が出てビックリしたので」というのが受診理由でした(図1)。デング熱の患者さんは「熱がつらくて」「頭が痛くて」といった主訴で受診するので、この「重症感のなさ」はジカウイルス感染症の特徴かと思います。●身体所見体温 37.2℃、脈拍数 75/分、血圧 119/69mmHg、呼吸数 12/分、SpO2 97%(RA)両後頸部リンパ節の腫脹・圧痛あり顔面・体幹に一部癒合し浸潤を触れない紅斑を認めるその他、特記すべき異常所見なし画像を拡大する皮疹の性状だけでジカウイルス感染症と診断するのは困難でしょう。デング熱、麻疹・風疹、梅毒、急性レトロウイルス症候群などさまざまな疾患との鑑別になります。試しに『ヒフミル君』(医師のための簡単・無料の診断支援サービス)に皮疹の写真を送ってみましたが、ジカウイルス感染症という診断は返ってきませんでしたッ!(麻疹・風疹というご回答でした)注目すべきはバイタルサインです。体温37.2℃。微熱です。以前の名称「ジカ熱」と言いつつ、発熱と呼べるほどの高熱ではありません。ジカウイルス感染症患者では発熱がみられないことすらあります。そういう意味では「ジカ熱」という名称よりも、「ジカウイルス感染症」のほうが正しいと言えるでしょう。輸入感染症診療のロジック名著『症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z』(中外医学社)に書かれているように、輸入感染症の診断の第一歩は「海外渡航歴の有無を確認すること」から始まります。発熱、下痢、皮疹のいずれかの症状のある患者さんを診たら、海外渡航歴を聴取する習慣を付けましょう!●海外渡航歴:受診の12日前から5日前までタヒチのボラボラ島などで観光していたなんと! これは驚きですッ! 海外渡航歴がありましたッ!まあこの患者さんはジカウイルス感染症なので、海外渡航歴があるのは当たり前ですね。さて、しつこいようですが、名著『症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z』(中外医学社)には「輸入感染症診療のロジック」として「『(1)渡航地 (2)潜伏期 (3)曝露歴』の3つから鑑別を絞り込むべし」と書かれています。最初の渡航地とは渡航していた国、地域ですね。アフリカでかかる病気と東南アジアでかかる病気とでは大きく違います。各地域の疫学を知っておくことが重要です。本症例の渡航地であるタヒチ島があるオセアニア地域ではデング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症の新興蚊媒介性感染症の三兄弟(私が勝手に呼んでるだけです)が、三つ巴状態で流行しています。本症例でもこれら3疾患は鑑別に加える必要があるでしょう。また、オセアニアではマラリア、A型肝炎、腸チフスなども鑑別に挙げる必要があります。次に潜伏期です。輸入感染症の診断において潜伏期の考え方は非常に重要です。この患者さんは受診の12日前から5日前までタヒチ島にいて、4日前から発熱が出現しています(図2)。そうしますと、この患者さんがタヒチ島で感染したと仮定すれば、この感染症の潜伏期は1~8日ということになります。この潜伏期がわかることによって、大幅に鑑別診断を絞ることができます。表は主な輸入感染症の潜伏期を3つに区切ってまとめたものです。本症例はこの表中の「短い潜伏期」グループに属します。つまり、この時点でマラリア、腸チフス、A型肝炎などは除外することができます。画像を拡大する画像を拡大する3つ目は曝露歴です。ジカウイルス感染症を考えた場合は、蚊に刺されたかどうかが重要になるわけですが、実際に自分が旅行中に蚊に咬まれたかなんて覚えてない人のほうが多いので、「具体的にどのような防蚊対策をしていたのか」を聞くことによって、蚊の曝露量を推定します。これまでわが国の輸入ジカウイルス感染症患者さんは、皆さん防蚊対策がされていませんでした。渡航者への防蚊対策の指導も、われわれ医療従事者の大事な仕事です。いよいよ確定診断へ渡航地、潜伏期、曝露歴などからデング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症が鑑別に挙がりました。もちろん発熱と皮疹を呈する疾患として、これら輸入感染症とは別に、国内で感染した梅毒や急性レトロウイルス症候群なども鑑別に挙がるかと思います。さて、血液検査を見てみましょう。●血液検査WBC 4310/μL、RBC 488×104/μL、Hb 14.0 g/dL、Hct 41.5%、Plt 16.9×104/μL、CRP 0.48mg/dL、TP 7.6g/dL、Alb 4.2g/dL、AST 21IU/L、ALT 15IU/L、LDH 207IU/L、γ-GTP 20IU/L、ALP 189IU/L、T-bil 0.6mg/dLこの血液検査から何が言えるでしょうか? ここから言えることは「何も言えねえ by 北島康介」ってことです。ジカウイルス感染症の血液検査所見は、これといった特徴がなく、血液検査所見で診断を詰めるのは困難です。ここまでの病歴・身体所見・渡航歴から、デング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症、梅毒、急性レトロウイルス症候群などが鑑別疾患として挙がりました。さあ…ここからジカウイルス感染症までどう絞り込むのかが、今回の最大のポイント…ではなく、もうここまで絞り込めたら十分なのです。デング熱を鑑別に挙げたときには、ジカウイルス感染症も一緒に鑑別疾患として挙げる。これがボトムラインです。これさえ忘れなければ、ジカウイルス感染症を見逃すことはかなり少ないと言えるでしょう。というわけで、ここからはジカウイルス感染症の検査を保健所に依頼しましょう。血清のRT-PCRを行ってジカウイルスを検出することで診断となりますが、ジカウイルスは発症から数日で血中から消失すると考えられています。一方で、尿中からはもう少し長く検出されることがわかっています。ですので、発症から時間が経っている場合には、血液だけでなく尿も検体として採取しましょう。抗体検査による診断も可能です。デング熱と同様に、急性期と回復期のペア血清による診断を行います。この症例では、尿からジカウイルスが検出され、ジカウイルス感染症と診断されました。2016年2月15日よりジカウイルス感染症は「4類感染症」に指定されましたので、ジカウイルス感染症と診断した医師は、ただちに保健所に届け出なければなりません。そして、しつこいようですが、大事なことは患者さんが日本国内で蚊に咬まれないことです(とくに蚊が多い夏場は要注意)。さて、いかがでしたでしょうか。輸入感染症としてのジカウイルス感染症のイメージが湧きましたでしょうか? 次に輸入ジカウイルス感染症を診断するのは、あなたかもしれません。輸入ジカウイルス感染症症例に備え、日ごろからイメトレをしておきましょう!1)忽那賢志. 症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z.中外医学社;2015.2)Centers for Disease Control and Prevention. Emergency Preparedness and Response: Recognizing, Managing, and Reporting Zika Virus Infections in Travelers Returning from Central America, South America, the Caribbean, and Mexico.

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上気道炎での不適切な抗菌薬処方を減らすには?/JAMA

 プライマリケアにおける急性上気道炎の抗菌薬不適切処方を減らすには、処方理由を書かせること、不適切処方割合の順位付けを行いメールで知らせる(ピア比較)介入が効果的である可能性が、米国・南カリフォルニア大学のDaniella Meeker氏らが248人のプライマリケア医を対象に行ったクラスター無作為化試験の結果、示された。JAMA誌2016年2月9日号掲載の報告。電子カルテシステム上で3つの介入を行い効果を比較 研究グループは、急性上気道炎の外来患者に対する抗菌薬の不適切処方(ガイドラインと一致しない)の割合を調べ、行動科学に基づく介入の効果を調べる検討を行った。 ボストンとロサンゼルスの47のプライマリケア施設で248人の医師を登録し、全員に登録時に抗菌薬ガイドラインの教育を受けさせ、次の3つの介入のいずれかもしくは複数または未介入(すなわち介入数0~3)を18ヵ月間受ける群に割り付けた。3つの介入は電子カルテを活用したもので、(1)選択肢の提示:処方オーダーセットをサポートするシステムとして急性上気道炎を選択すると、抗菌薬不要の治療であることが表示され、代替治療が表示される、(2)根拠の書き込みを促す:患者の電子カルテに自由記載で抗菌薬を処方する理由を書き込むよう促す、(3)ピア比較:不適切処方割合について最も少ない医師をトップに順位付けを行い、高位の医師には毎月「トップパフォーマー」であることを知らせる一方、低位の医師には「トップパフォーマーではない」こと、および順位、不適切処方割合を知らせ、急性上気道炎に抗菌薬は不要であること、トップパフォーマーとの不適切処方割合の差を知らせる。 介入は2011年11月1日~12年10月1日に開始、最終フォローアップは14年4月1日に終了した。なお対象患者のうち、併存疾患および感染症がある成人患者は除外された。 主要評価項目は、抗菌薬が不要な患者(非特異的上気道炎、急性気管支炎、インフルエンザ)に対して行われた抗菌薬不適切処方割合で、介入前18ヵ月間(ベースライン)と介入後18ヵ月間について評価した。各介入効果について、同時介入、介入前の傾向を補正し、診療および医師に関するランダム効果も考慮した。処方理由の書き込み、不適切処方割合の順位付けを知らせた群で有意に低下 抗菌薬不要の急性上気道炎の外来患者は、ベースライン期間中1万4,753例(平均年齢47歳、女性69%)、介入期間中は1万6,959例(同48歳、67%)であった。 抗菌薬が処方された割合は、対照(ガイドライン教育のみ)群では、介入スタート時点では24.1%、介入18ヵ月時点で13.1%に低下していた(絶対差:-11.0%)。一方、選択肢の提示群では22.1%から6.1%に低下(絶対差:-16.0%、対照群の差と比較した差:-5.0%、95%信頼区間[CI]:-7.8~0.1%、経過曲線差のp=0.66)。根拠の提示を促す介入群では、23.2%から5.2%(絶対差:-18.1%)へと低下し、対照群との有意差が示された(差:-7.0%、95%CI:-9.1~-2.9%、p<0.001)。ピア比較の介入でも19.9%から3.7%へと有意な低下が認められた(絶対差:-16.3%、差:-5.2%、95%CI:-6.9~-1.6%、p<0.001)。 なお、介入間で統計的に有意な相互作用(相乗効果、相互干渉)はみられなかった。

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中絶胎児で小頭症を確認、脳内からジカウイルス検出/NEJM

 ブラジルで妊娠初期にジカウイルスに感染したと考えられる25歳の欧州女性が、妊娠32週で人工中絶。その胎児解剖の結果、小頭症が認められ、脳内からはジカウイルスが検出された。スロベニア共和国・リュブリャナ大学のJernej Mlakar氏らによる症例報告で、NEJM誌オンライン版2016年2月10日号で発表した。中南米とカリブ地域では2015年、ジカウイルス感染症の流行が報告され、同ウイルスに感染した母親から生まれた新生児の小頭症が増加していることが重大な懸念として持ち上がっている。妊娠13週でジカウイルス感染疑い 報告によると欧州出身のこの女性は、2013年12月からブラジル北東部のナタールに住んでおり、15年2月に妊娠した。その後妊娠13週で高熱を出し、重度筋骨格・球後痛とかゆみを伴う全身性斑点状丘疹を呈した。同地域ではジカウイルス感染症が流行していたため、妊婦についても感染が疑われたものの、ウイルス診断テストは実施しなかったという。 その後、妊娠14週と20週の超音波検査では、胎児に解剖学的な異常や成長の遅れはみられなかった。妊娠29週で胎児奇形、32週で小頭症 この女性は妊娠28週で欧州に帰国。妊娠29週で超音波検査を受けたところ、胎児奇形が認められ、同大学病院に紹介された。その時点でこの女性は、胎児の動きが少なくなったことを感じていたという。 妊娠32週の超音波検査では、子宮内胎児発育遅延が確認された。胎盤の厚さは3.5cmと正常値だったものの、複数箇所に石灰化が認められた。また胎児の頭囲が、妊娠周期に対して2パーセンタイル未満であり、小頭症が確認された。 妊娠32週時点で人工中絶が行われ、その3日後に胎児と胎盤の解剖を実施した。 その結果、胎児の脳の小頭症が観察され、ほぼ完全な無脳回症と水頭症、および大脳皮質と皮質下白質に多病巣性異栄養性石灰化が認められ、また皮質の偏位と軽度病巣性炎がみられた。さらに胎児の脳の組織片からは、RT-PCR法によりジカウイルスを検出した。電子顕微鏡下でも確認し、ジカウイルスの完全ゲノムも得られた。

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妊娠後期のビタミンD補給で子供の喘鳴を予防できるか/JAMA

 母親が妊娠後半(妊娠7ヵ月以降)にビタミンD3を補給しても、生まれた子の持続性喘鳴のリスクは低下しないことが、デンマーク・コペンハーゲン大学のBo L. Chawes氏らが行った単一施設での二重盲検無作為化比較試験で明らかとなった。この試験は、コペンハーゲン小児喘息前向きコホート研究2010(Copenhagen Prospective Studies on Asthma in Childhood 2010 :COPSAC2010)の一環として行われたもの。これまで、観察研究において妊娠中のビタミンD摂取量増加により子の喘鳴を予防できる可能性が示唆されていたが、妊婦へのビタミンD投与による予防効果について検証はされていなかった。JAMA誌オンライン版2016年1月26日号掲載の報告。妊娠24週以降のビタミンD3補給、2,800IU/日と400IU/日を比較 研究グループは2009年3月4日~10年11月17日の間に、妊娠24週の妊婦623例を、ビタミンD3投与群(以下、ビタミンD群)(315例)と対照群(308例)に無作為に割り付けた。妊娠24週から出産後1週まで、全員にデンマークの保健機関が推奨している通常の妊婦管理としてビタミンD3 400IU/日を投与するとともに、ビタミンD群にはさらに2,400IU/日を投与、一方対照群にはプラセボを投与した(すなわち、本研究はビタミンD3の2,800IU/日投与と400IU/日投与を比較している)。 その後、出生児581例(ビタミンD群295例、対照群286例)を、少なくとも3歳まで追跡し、持続性喘鳴や呼吸器症状などについて調査した。持続性喘鳴は、既存の次のアルゴリズムに従って診断した。(1)生後6ヵ月以内に発作性の呼吸器症状(咳嗽、喘鳴、呼吸困難)が5回/日以上3日以上継続、(2)喘息特有の症状、(3)気管支拡張薬の間欠的使用、(4)ステロイド吸入の3ヵ月間の試験的導入による奏効と吸入中断による再発。持続性喘鳴の発症リスクに両用量で差はなし 3歳までに持続性喘鳴と診断されたのは、ビタミンD群47例(16%)、対照群57例(20%)の計104例(18%)であった。 ビタミンD3投与は持続性喘鳴の発症リスクと関連していなかったが(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.52~1.12、p=0.16)、繰り返す発作性の呼吸器症状の発現リスクについては有意な低下が認められた(平均発現件数ビタミンD群5.9 vs.対照群7.2、発現リスク比[IRR]:0.83、95%CI:0.71~0.97、p=0.02)。3歳時の喘息者数、上気道感染症または下気道感染症の発症などにビタミンD3投与の影響はみられなかった。 また、子宮内胎児死亡はビタミンD群1例(<1%) vs.対照群3例(1%)、先天性奇形はそれぞれ17例(5%) vs.23例(8%)であった。 なお、本研究は主要評価項目に関する統計的検出力が低く、著者は「ビタミンD3補給の有用性を立証するには、さらに大規模な、高用量および早期介入による臨床試験が必要」とまとめている。

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