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敗血症関連凝固障害への遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤、第III相試験結果/JAMA

 敗血症関連凝固障害がみられる重症患者の治療において、遺伝子組換えヒト可溶性トロンボモデュリン(rhsTM)製剤ART-123はプラセボと比較して、28日以内の全死因死亡率を改善しないことが、ベルギー・Universite Libre de BruxellesのJean-Louis Vincent氏らが実施した「SCARLET試験」で示された。研究の詳細はJAMA誌オンライン版2019年5月19日号に掲載された。rhsTMは、播種性血管内凝固症候群(DIC)が疑われる敗血症患者を対象とする無作為化第IIb相試験の事後解析において、死亡率を抑制する可能性が示唆されていた。26ヵ国159施設のプラセボ対照無作為化試験 本研究は、日本を含む26ヵ国159施設が参加する二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験であり、2012年10月~2018年3月の期間に患者登録が行われた(Asahi-Kasei Pharma America Corporationの助成による)。 対象は、心血管あるいは呼吸器の障害を伴う敗血症関連凝固障害で、集中治療室に入室した患者であった。被験者は、rhsTM(0.06mg/kg/日、最大6mg/日、静脈内ボーラス投与または15分注入)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられ、1日1回、6日間の治療が行われた。 主要エンドポイントは、28日時の全死因死亡であった。28日全死因死亡率:26.8% vs.29.4% 816例が登録され、このうち800例(平均年齢60.7歳、男性54.6%)が試験を完遂し、最大の解析対象集団(FAS)に含まれた。rhsTM群が395例、プラセボ群は405例であった。 28日全死因死亡率は、両群間に有意な差は認めなかった(rhsTM群26.8%[106/395例]vs.プラセボ群29.4%[119/405例]、p=0.32)。絶対リスク差は2.55%(95%信頼区間[CI]:-3.68~8.77)だった。 サブグループ解析では、ヘパリンの投与を受けた患者(416例)は、28日全死因死亡率がrhsTM群で低かった(差:-0.87%、95%CI:-9.52~7.77)のに対し、ヘパリンの投与を受けていない患者(384例)は、rhsTM群のほうが高かった(6.25%、-2.72~15.22)。 重篤な出血有害事象(頭蓋内出血、生命に関わる出血、担当医が重篤と判定した出血イベントで、赤血球濃厚液1,440mL[典型的には6単位]以上を2日で輸血した場合)の発生率は、rhsTM群が5.8%(23/396例)、プラセボ群は4.0%(16/404例)であった。 なお著者は、これらの知見に影響を及ぼした可能性のある原因として、次のような諸点を挙げている。(1)患者の約20%が、ベースライン時に凝固障害の基準を満たさなかった、(2)プラセボ群の死亡率が、試験開始前にサンプルサイズの算出に使用した予測値よりも高かった、(3)深部静脈血栓症の予防に用いたヘパリンが、rhsTMの効果を減弱させた可能性がある、(4)無作為化の際に施設で層別化したが、159施設中55施設は登録患者が1例のみであり、効果の結果に影響を及ぼした可能性がある。

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敗血症、新規の臨床病型4つを導出/JAMA

 敗血症は異質性の高い症候群だという。米国・ピッツバーグ大学のChristopher W. Seymour氏らは、患者データを後ろ向きに解析し、宿主反応パターンや臨床アウトカムと相関する敗血症の4つの新たな臨床病型を同定した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2019年5月19日号に掲載された。明確に分類された臨床病型が確立されれば、より精確な治療が可能となり、敗血症の治療法の改善に結び付く可能性があるため、検討が進められていた。敗血症の4つの臨床病型の頻度、臨床アウトカムとの相関、死亡率などを評価 研究グループは、臨床データから敗血症の臨床病型を導出し、その再現性と、宿主反応バイオマーカーや臨床アウトカムとの相関を検討し、無作為化臨床試験(RCT)の結果との潜在的な因果関係を評価する目的で、後ろ向きにデータ解析を行った(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。 敗血症の臨床病型は、ペンシルベニア州の12の病院(2010~12年)を受診し、6時間以内にSepsis-3の判定基準を満たした2万189例(1万6,552例のunique patientを含む)のデータから導出した。 再現性と、生物学的パラメータおよび臨床アウトカムとの相関性の解析には、2次データベース(2013~14年、全4万3,086例、3万1,160例のunique patientを含む)、肺炎に起因する敗血症の前向きコホート研究(583例)および3件の敗血症のRCT(4,737例)のデータを用いた。 評価項目は、導出された臨床病型(α、β、γ、δ)の頻度、宿主反応バイオマーカー、28日および365日時点の死亡率、RCTのシミュレーション出力とした。敗血症の臨床病型の実臨床における効用性確立には、新たな研究が必要 解析コホートには、敗血症患者2万189例(平均年齢64[SD 17]歳、男性1万22例[50%]、SOFAスコアの最長24時間平均値3.9[2.4]点)が含まれた。検証コホートは、4万3,086例(67[17]歳、男性2万1,993例[51%]、3.6[2.0]点)であった。 導出された敗血症の4つの臨床病型のうち、α型の頻度が最も高く(6,625例、33%)、この型は入院中の昇圧薬の投与日数が最も短かった。β型(5,512例、27%)は高齢で慢性疾患や腎不全の罹患者が多く、γ型(5,385例、27%)は炎症の測定値が上昇した患者や肺機能不全の患者が多く、δ型(2,667例、13%)は肝不全や敗血症性ショックの頻度が高かった。 検証コホートでも、敗血症の臨床病型の分布はほぼ同様であった。また、臨床病型によるバイオマーカーのパターンには、一貫した違いが認められた。 解析コホートの累積28日死亡率は、α型が5%(unique patient、287/5,691例)、β型が13%(561/4,420例)、γ型が24%(1,031/4,318例)、δ型は40%(897/2,223例)であった。すべてのコホートと試験における28日および365日死亡率は、δ型が他の3つの型に比べ有意に高かった(p<0.001)。 シミュレーションモデルでは、治療に関連するアウトカム(有益、有害、影響なし)は、これら敗血症の臨床病型の分布の変化と強く関連した(たとえば、早期目標指向型治療[EGDT]のRCTで臨床病型の頻度を変化させると、>33%の有益性から>60%の有害性まで、結果の可能性が変動した)。 著者は、「実臨床におけるこれら臨床病型の有用性を確定し、試験デザインやデータの解釈に有益な情報をもたらすには、さらなる研究を要する」としている。

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慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー〔CIDP:chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy: CIDP)は、2ヵ月以上にわたる進行性、または再発性の経過を呈し、運動感覚障害を特徴とする免疫介在性の末梢神経疾患(ニューロパチー)である。診断は、主に臨床所見と電気生理所見に基づいて行われ、これまでにいくつかの診断基準が提唱されている。とくに有名なものとして、“American Academy of Neurology(AAN)”の診断基準と“European Federation of Neurological Societies/Peripheral Nerve Society(EFNS/PNS)”の診断基準の2つがあり、現在はEFNS/PNSの診断基準が頻用されている。■ 疫学わが国におけるCIDPの有病率と発症率は、EFNS/PNSの診断基準より以前に作成されたAANの診断基準を採用した調査によると、それぞれ10万人当たり1.61人と0.48人であった。AANの診断基準は、現在頻用されているEFNS/PNSの診断基準と比較すると、より厳格で感度が低いことから、実際の患者数はさらに多いと考えられる。■ 病因自己免疫性の機序が推測されているが、後述するように多様な病型が存在し、複数の病態が関与していると考えられており、詳細は明らかになっていない。病理学的にはマクロファージが、末梢神経系の髄鞘を貪食することによって生じる脱髄像が本疾患の特徴であり、髄鞘の障害が神経の伝導障害を引き起こすと考えられてきた(図1)1)。近年、CIDP患者の1割程度で、傍絞輪部の髄鞘終末ループと軸索を接着させる機能を持つneurofascin 155とcontactin 1に対する抗体が陽性となることが明らかになった。これらの抗体陽性例では、マクロファージによる髄鞘の貪食像がみられず、抗体の沈着によって傍絞輪部における髄鞘の終末ループと軸索の接着不全が生じることが明らかにされている(図2)2)。一方、古典的なマクロファージによる脱髄と関連した自己抗体はいまだ明らかになっていない。画像を拡大する髄鞘を囲む基底膜(矢頭)内に入り込んだマクロファージ(M印)の突起(矢印)が髄鞘を破壊している。有髄線維の軸索を★印で示す。腓腹神経生検電顕縦断像。酢酸ウラン・クエン酸鉛染色。Scale bar=1μm。画像を拡大する髄鞘の終末ループと軸索の間隙を矢印で、有髄線維の軸索を★印で示す。腓腹神経生検電顕横断像。酢酸ウラン・クエン酸鉛染色。Scale bar=0.3μm。■ 症状現在頻用されているEFNS/PNS診断基準では、2ヵ月以上にわたる慢性進行、階段状増悪、あるいは再発型の経過を呈し、四肢対称でびまん性の筋力低下と感覚異常を来すものを典型的CIDP(typical)と定義している。典型的CIDPでは感覚障害よりも運動障害が目立つ場合が多く、自律神経症候は通常みられない。感覚障害に関しては、四肢のしびれ感を自覚する場合が多いが、痛みを訴えることは少ない。CIDPに類似した症状を有する患者で痛みを訴える場合は、リンパ腫やPOEMS症候群や家族性アミロイドポリニューロパチーなどの他疾患の可能性を考慮して、精査を進める必要がある。また、次に述べるような左右非対称や遠位部優位の障害分布を呈するCIDP患者も存在する。■ 分類EFNS/PNS診断基準では、先に述べたようなtypical CIDPのほかに、非典型的CIDP(atypical CIDP)として、遠位優位型(distal acquired demyelinating symmetric:DADS)、非対称型(multifocal acquired demyelinating sensory and motor neuropathy:MADSAM)、局所型、純粋運動型、および純粋感覚型の5種類の亜型を挙げている。近年報告されるようになった抗neurofascin 155抗体と抗contactin 1抗体陽性の患者は、typical CIDPかDADSの病型を呈するが、経静脈的免疫グロブリン(intravenous immunoglobulin:IVIg)療法に対して抵抗性であり、感覚性運動失調や振戦が高率にみられるなどの特徴を有し、従来型のCIDPとは異なる一群と考えられるようになってきている。■ 予後多くの患者は免疫治療によって症状の改善がみられるが、再発性の経過をとることが多く、症状が持続することによって軸索障害も生じると考えられている。軸索障害が目立つ患者では、筋萎縮がみられるようになり、免疫治療への反応性が不良であることが知られている。また、治療抵抗性で重度の機能障害に陥ることもあり、なかには呼吸障害や感染症により死亡することもある。一方、短期間の治療で長期間の寛解が得られたり、自然寛解もみられることが知られており、CIDPの予後は多様である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)先に述べたtypical CIDP、DADS、MADSAM、局所型、純粋運動型、純粋感覚型といった臨床病型に照らし合わせながら、神経伝導検査、脳脊髄液検査、MRIなどの所見を併せて総合的に診断する。EFNS/PNS診断基準では、神経伝導検査所見に基づいた電気診断基準が定められており、伝導速度の遅延、終末潜時の延長、伝導ブロック、時間的分散、F波の異常など、末梢神経の脱髄を示唆する所見を見いだすことが重要である。脳脊髄液検査では、細胞数の増多を伴わない蛋白の上昇、いわゆる蛋白細胞解離がみられる。典型例の神経生検では節性脱髄、再髄鞘化、オニオンバルブなどの脱髄を示唆する所見と神経内鞘の浮腫がみられることがある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)CIDP患者に対する第1選択の治療としてはIVIg療法、副腎皮質ステロイド薬、血漿浄化療法があり、効果は同等といわれている。IVIg療法は効果の発現が早く、簡便に施行できることから、最初の治療として選択されることが多いが、一定の割合で無効例が存在することと、再発を繰り返す患者も多いことを念頭に置く必要がある。IVIg療法は、1回目に明らかな効果がみられない場合でも、2回目の投与で有効性を示す場合もあることから、無効と判断するには2回までの投与は試みる価値があるとされている。抗neurofascin 155抗体や抗contactin 1抗体陽性の患者は、IVIg療法に対する反応性が乏しい場合が多い反面、副腎皮質ステロイド薬や血漿浄化療法は有効とされている。これらの抗体の主な免疫グロブリンサブクラスはIgG4であり、免疫吸着療法はIgG4を吸着しにくいことを考慮に入れる必要がある。4 今後の展望先に述べたとおりIVIg療法は、効果発現が早く簡便に施行できることから臨床の現場で頻用されているが、再発を生じることが多く、再発の度に繰り返しのIVIg療法を必要とすることも多い。IVIg療法で再発を繰り返す場合には、副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬の併用や血漿浄化療法への切り替えやIVIgの追加という選択肢もあるが、再発前にIVIgを定期的に投与する方法、すなわち維持療法の有用性も報告されており、わが国でも承認された。IVIgによる維持療法は疾患の増悪を未然に防ぎ、軸索障害の進行も抑制すると考えられることから、今後広く用いられるようになることが予想される。また、2019年3月に効能が追加され使用できるようになったハイゼントラ皮下注のように高濃度の免疫グロブリン製剤の皮下投与も、CIDPに対して有効であることが示されており、近い将来、治療の選択肢の1つとなることが予想される。5 主たる診療科脳神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 慢性炎症性脱髄性多発神経炎/多巣性運動ニューロパチー(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報全国CIDPサポートグループ(患者とその家族および支援者の会)1)Koike H, et al. Neurology. 2018;91:1051-1060.2)Koike H, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2017;88:465-473.公開履歴初回2019年5月28日

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プロカルシトニン値による抗菌薬投与短縮と肺炎再発

 肺炎における抗菌薬投与について、プロカルシトニン(PCT)値に基づいた管理により、死亡率を増加させることなく投与期間を短縮したという研究がいくつか報告されている。今回、福岡大学筑紫病院の赤木 隆紀氏らの研究により、PCTガイドによる抗菌薬中止により、肺炎の再発を増加させることなく投与期間を短縮するのに役立つ可能性が示唆された。the American Journal of the Medical Sciences誌オンライン版2019年4月16日号に掲載。 本研究では、2014~17年、入院時PCT値が0.20ng/mLを超えていた市中肺炎または医療関連肺炎の入院患者を前向きに登録した。PCT値は5、8、11日目、その後必要があれば3日ごとに測定した。PCT値が0.20ng/mLを下回った場合に抗菌薬中止を勧奨され、0.10ng/mLを下回った場合は中止するよう強く勧奨された。なお、2010~14年の入院患者をヒストリカルコントロール(対照群)とした。主要評価項目は、抗菌薬投与期間と抗菌薬中止後30日以内の肺炎再発とした。 主な結果は以下のとおり。・PCTガイド群および対照群は、それぞれ116例であった。・肺炎の重症度およびPCT値を含む背景因子は、2つのグループ間で同様であった。・抗菌薬投与期間の中央値は、PCTガイド群で8.0日、対照群で11日であった(p<0.001)。・多変量回帰分析において、PCTガイドによる抗菌薬中止(偏回帰係数[PRC]:-1.9319、p<0.001)、PCT(PRC:0.1501、p=0.0059)およびアルブミン(PRC:-1.4398、p=0.0096)が、抗菌薬投与期間と有意に関連していた。・抗菌薬中止後30日以内の肺炎再発は、2群間で統計的に差がなかった(4.3% vs.6.0%、p=0.5541)。

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第12回 呼吸困難 意外に多い呼吸困難の原因とは?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)呼吸数に注目し、帰してはいけない患者を見逃さないようにしよう!2)バイタルサインは必ず普段のADLで評価しよう!3)検査は事前確率に応じて、適切な検査を提出・実施しよう!【症例】70歳男性。来院当日、奥さんと買い物中に呼吸困難を自覚した。途中、近くのベンチで休み症状は改善傾向にあったが、心配となり帰宅途中にかかりつけのクリニックを受診した。原因は何が考えられるか? どのようにアプローチするべきだろうか?●受診時のバイタルサイン意識清明血圧152/98mmHg脈拍100回/分(整)呼吸24回/分SpO295%(RA)体温36.2℃瞳孔3/3mm+/+既往歴高血圧(51歳~)、2型糖尿病(54歳~)内服薬アムロジピン(Ca拮抗薬)、メトホルミン(メトホルミン塩酸塩)「意識障害」の後は、救急外来や一般の外来で出会う頻度の多い主訴のうち、時に重篤な場合がある症候を、順に取り上げていこうと思います。今回は「呼吸困難」です。X線やCT検査をすれば大抵の診断はつきますが、画像で異常が認められない場合やそもそも重症度を見誤り、適切な画像検査を行わず見逃してしまうことがあるため注意が必要です。高齢者の呼吸困難の原因呼吸困難の患者を診たら、(1)心不全などの心疾患、(2)肺炎などの肺疾患、(3)上部消化管出血などの貧血、(4)過換気症候群などの心因性の4つに分類し、考えて対応しています。若年者が急性の呼吸困難を訴えた場合には、気胸や喘息が鑑別の上位にあがりますが、高齢者ではどうでしょうか? 原因は多岐にわたりますが、頻度を考慮し、[1]心不全、[2]肺炎、[3]COPD(慢性閉塞性肺疾患)の急性増悪、[4]肺血栓塞栓症の4つをまずは念頭に鑑別を進めるとよいでしょう1)。初療時の鑑別のポイント:やはり“Hi-Phy-Vi”が大切!細かいことは抜きにして、[1]~[4]の鑑別ポイントを改めて理解しておきましょう。●病歴(History):発症様式に注目!一般的に肺炎やCOPDの急性増悪が突然発症することはありません。数日前、最低でも数時間前から咳嗽や発熱などの症状を認めるはずです。それに対して、後負荷がドカッと上がるびまん性肺水腫を主病態とする心不全や、肺血栓塞栓症は急激な発症様式を呈することが多く、救急外来でもしばしば出会います。真のonsetをきちんと聴取し、いつから症状を認めているのかを正確に把握しましょう。心不全の既往、発作性夜間呼吸困難は、心不全らしい所見であり、既往歴やいつ(就寝中、労作時など)症状を認めるかなども忘れずに聴取しましょう。就寝前までおおむね問題なかった患者が、夜間に突然呼吸が苦しくなった場合には、素直に考えれば肺炎よりも心不全らしいですよね。●身体所見(Physical):左右差に注目!呼吸音、心音、頸部所見(頸静脈怒張の有無)、下肢の浮腫や左右差などの身体所見は、ごく当然にとる必要があることは言うまでもありませんが、発症初期では聴取が難しい、III音は聴く努力をしながらもやっぱり難しいし、足の浮腫もいつからなんだか…など実際の現場では悩ましいことが多いのも事実です。最も簡単な方法は、左右差に注目することです。呼吸音に左右差があれば、肺炎らしく(初期では全吸気時間で聴取:holo crackles)、両側に喘鳴を聴取すれば心不全らしいでしょう。当たり前ですが、何となく聴診していると明らかな喘鳴の聴取は容易でも、わずかな場合や肺炎の初期の副雑音をキャッチできないことは珍しくありません。下腿の浮腫は、両側性の場合には心不全を示唆しますが、左右差を認める場合には、肺血栓塞栓症の原因の大半を占める深部静脈血栓症の存在を示唆します(エコーを当てれば瞬時に判断できます)。Thinker's sign(Dahl's sign)は、呼吸困難を軽減させるための姿勢によって生じた所見であり、慢性の呼吸不全の存在を示唆します2)。気管短縮や呼吸音の減弱、心窩部心尖拍動とともに患者の肘や膝上の皮膚所見も確認する癖を持ちましょう。●バイタルサイン(Vital signs):脈圧に注目!「呼吸困難を訴えるもののSpO2の低下がない」これは逆に危険なサインです。頻呼吸で何とか代償しようとしている、もしくは気道狭窄を示唆し、異物や喉頭蓋炎、アナフィラキシーの可能性を考え対応するようにしましょう。SpO2の低下を認め、[1]~[4]を鑑別する場合には、脈圧がヒントになります。肺炎など感染症が関与している場合には、通常脈圧は開大します。それに対して心機能が低下しているなどアウトプットが低下している場合には、脈圧が低下します。両者が混在する場合や、普段の患者背景にもよりますが、脈圧が低下している場合には、虚血に伴う心不全、submassive以上の肺血栓塞栓症など重篤な病態を早期に見抜く手掛かりになります。呼吸困難患者の脈圧が低下している場合には、早期に心電図を確認することをお勧めします(ST変化などの虚血性変化、洞性頻脈・SIQIIITIIIなどの肺血栓塞栓症らしい所見をチェック)。普段のADLと比較!初療時には酸素を必要としていた患者さんの中には、精査中にoffにすることができる場合があります。そのような場合には安心しがちですが、もう一歩踏み込んでバイタルサインを確認しましょう。ストレッチャー上のバイタルサインではなく、普段と同様のADLの状態でのバイタルサインを評価してほしいのです。本症例の原因は肺血栓塞栓症でしたが、安静時には酸素を要さず、呼吸回数は落ち着いてしまいました。しかし、帰宅前に歩行をしてもらうとSpO2が低下し、呼吸困難症状の再燃を認めたのです。肺血栓塞栓症は、過換気症候群や原因不明として見逃されることがあり、私は普段と同様のADLで(1)他に説明がつかない頻呼吸、(2)他に説明がつかない低酸素、(3)他に説明がつかない頻脈の場合には、疑って精査するように努めています3)。さいごに呼吸困難を訴える患者では、胸部X線、CT検査ですぐに確認したくなりますが、それのみではなかなか確定診断は難しく、また、肺炎と心不全は両者合併することも珍しくありません。D-dimerも役には立ちますが、それのみで肺血栓塞栓症や大動脈解離を診断・除外するものではありません。“Hi-Phy-Vi”を徹底し、鑑別疾患を意識して検査結果をオーダー、解釈することを常に意識しておきましょう。1)Ray P, et al. Crit Care. 2006;10:R82.2)Patel SM, et al. Intern Med. 2011;50:2867-2868.3)坂本壮. 救急外来ただいま診断中!. 中外医学社;2015.p.216-230.

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CVD高リスクCOPD、LAMAの長期安全性確認/JAMA

 心血管疾患リスクの高いCOPD患者に対して、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)アクリジニウムの長期投与はプラセボと比較して、3年時点の主要心血管イベント(MACE)リスクについて非劣性であることが示された。中等症~重症COPDの1年時増悪率も有意に減少した。米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のRobert A. Wise氏らが、約3,600例を対象に行った多施設共同無作為化二重盲検試験の結果で、JAMA誌2019年5月7日号で発表した。LAMAについては、COPD患者の心血管罹患率および死亡率を増大するとの懸念が示されていた。最長3年間追跡し、MACEリスクを比較 研究グループは2013年10月16日~2016年8月22日にかけて、北米522ヵ所の医療機関を通じて、中等症~重症COPD患者で、心血管疾患既往またはアテローム動脈硬化症のリスク因子が2つ以上ある3,630例を対象に試験を開始した。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはアクリジニウム(1,812例)を、もう一方にはプラセボ(1,818例)を、それぞれドライパウダー吸入器で1日2回投与した。追跡は最長3年間で、MACEが122件以上発生となるまで継続した。最後の被験者の追跡が完了したのは2017年9月だった。 安全性に関する主要アウトカムは、3年の間に発生した初回MACEの発生までの期間で、非劣性マージンはハザード比の片側97.5%信頼区間1.8とした。 有効性に関する主要アウトカムは、治療1年目のCOPD増悪率だった。副次アウトカムは、MACEまたは急性心不全などの重篤な心血管イベントを含めた“拡大定義MACE”の初回発生までの期間や、入院を要する増悪の年発生率などだった。MACE、MACE+重度心血管イベント発生率、対プラセボで非劣性 分析には3,589例が包含された(アクリジニウム群1,791例、プラセボ群1,798例)。平均年齢は67.2歳、男性の割合は58.7%で、2,537例(70.7%)が試験を完遂した。 MACE発生率は、アクリジニウム群3.9%(69例)、プラセボ群4.2%(76例)で、アクリジニウム群のプラセボ群に対する非劣性が示された。(ハザード比[HR]:0.89、片側97.5%信頼区間[CI]:0~1.23)。 拡大定義MACEの発生も、アクリジニウム群9.4%(168例)、プラセボ群8.9%(160例)で、アクリジニウム群の非劣性が示された(HR:1.03、片側97.5%CI:0~1.28)。 一方で、COPD増悪率はアクリジニウム群0.44/年で、プラセボ群0.57/年より有意に低率だった(率比:0.78、両側95%CI:0.68~0.89、p<0.001)。入院を要する増悪率も、それぞれ0.07、0.10で、アクリジニウム群が有意に低率だった(率比:0.65、両側95%CI:0.48~0.89、p=0.006)。 最も頻度の高い有害事象は、肺炎(アクリジニウム群109例[6.1%]vs.プラセボ群105例[5.8%])、尿路感染症(93例[5.2%]vs.89例[5.0%])、そして上気道感染症(86例[4.8%]vs.101例[5.6%])だった。

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新インフルワクチンで毎年の接種不要に? P1試験開始/NIH

 インフルエンザワクチンは次シーズンの流行予測に基づき、ワクチン株を選定して毎年製造される。そのため、新たな変異株の出現と拡大によるパンデミックの可能性に、世界中がたえず直面している。米国国立衛生研究所(NIH)は4月3日、インフルエンザウイルスの複数サブタイプに長期的に対応する“万能(universal)”ワクチン候補の、ヒトを対象とした初の臨床試験を開始したことを発表した。 この新たなワクチン候補は、菌株ごとにほとんど変化しない領域に免疫系を集中させることで、さまざまなサブタイプに対する防御反応を行うよう設計された。本試験は、米国国立アレルギー感染症研究所のワクチンリサーチセンター(VRC)が主導している。複数サブタイプに長期的に有効となりうる理由は? インフルエンザウイルス表面には、ウイルスがヒト細胞に侵入することを可能にする赤血球凝集素(HA)と呼ばれる糖タンパク質があり、感染防御免疫の標的抗原となっている。新たなプロトタイプワクチンH1ssF_3928では、HAの一部を非ヒトフェリチンからなる微細なナノ粒子の表面に表示する。インフルエンザウイルスにおけるHAの組織を模倣するので、ワクチンプラットフォームとして有用だという。 HAは、頭部領域および茎領域からなる。ヒトの体は両領域に免疫反応を起こすが、反応の多くは頭部領域に向けられている。しかし、頭部領域は抗原連続変異と呼ばれる現象が次々と起こるため、ワクチンは毎年の更新が必要となる。H1ssF_3928は、茎領域のみで構成された。茎領域は頭部領域よりも安定的であるため、季節ごとに更新する必要はなくなるのではないかと期待されている。 VRCの研究者らは、H1N1インフルエンザウイルスの茎領域を使ってこのワクチン候補を作成した。H1はウイルスのHAサブタイプを表し、N1はノイラミニダーゼ(NA、もう1つのインフルエンザウイルス表面糖タンパク質)サブタイプを表す。18のHAサブタイプと、11のNAサブタイプが知られているが、現在は主にH1N1とH3N2が季節的に流行している。しかし、H5N1やH7N9、および他のいくつかの株も、少数ながら致命的な発生を引き起こし、それらがより容易に伝染するようになればパンデミックを引き起こす可能性がある。 H1ssF_3928は、動物実験において異なるサブタイプであるH5N1からも保護効果を示した。これは、このワクチンにより誘導された抗体がH1とH5を含む「グループ1」内の他のインフルエンザサブタイプからも保護可能なことを示す。VRCでは将来的な臨床試験として、H3とH7を含む「グループ2」サブタイプから保護するように設計されたワクチンも評価することを計画している。健康な成人における抗原性、安全性と忍容性を調べる第I相試験 第I相臨床試験には、18~70歳までの健康な成人少なくとも53人が、段階的に組み入れられる。最初の5人の参加者は18~40歳で、H1ssF_3928(20µg)の筋肉内注射を1回受ける。残りの48人は、H1ssF_3928(60 µg)を16週間間隔で2回受ける予定となっている。 参加者は年齢によってそれぞれ12人ずつ4つのグループに層別される予定である(8~ 40歳、41~49歳、50~59歳、60~70歳)。研究者らは、H1ssF_3928に対する免疫反応が、年齢およびさまざまなインフルエンザ変異型への曝露歴に基づいてどのように変化するかを明らかにしたいと考えている。参加者は、接種後1週間、体温およびあらゆる症状を記録するよう求められる。また、12~15ヵ月の間に9~11回フォローアップ受診し、血液サンプルを提供する。研究者らはそのサンプルにより、インフルエンザに対する免疫を示す抗インフルエンザ抗体のレベルを特徴付けて測定する。なお、参加者が試験中にインフルエンザウイルスに曝露されることはない。 VRCでは、この臨床試験を長年の関連研究開発の集大成と位置付けている。2019年末までの登録完了、2020年はじめの結果報告開始を予定している。■参考NIHニュースリリースNCT 03814720(Clinical Trials.gov)

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Dr.たけしの本当にスゴい高齢者身体診察

第1回 発熱第2回 急性腹症第3回 心臓の診察第4回 肺の診察第5回 意識障害第6回 神経診察 高齢者は認知機能低下などから、病歴聴取が不正確になりがちです。かといってやみくもに検査を行えば異常値に振り回されます。そこで役立つのが身体診察です。身体診察はいつでも、どこでもでき、侵襲がなく、コストもかかりません。さまざまな併存症を持ち、多くの鑑別疾患を考える必要がある高齢者に対してこそ、身体診察を役立てるべきなのです。Dr.たけしがエビデンスを綿密に分析し、より効果的な身体診察方法を実技を交えてお教えします!第1回 発熱高齢者の発熱は診察の場を問わず、よく見かける症候です。すぐに発熱のワークアップを行うべきか、経過を見るべきかを悩むことも多いのではないでしょうか?緊急性の評価や、高齢者ならではの発熱原因を身体診察でどう行うか、実技を交えて解説します。第2回 急性腹症今回のテーマは急性腹症です。高齢者の急性腹症は重篤な疾患が隠れていることが多くいので、しっかりとルールイン、ルールアウトすることが大切です。そのために役立つ効果的な身体診察の方法をDr.たけしが実技を交えて解説します。第3回 心臓の診察今回のテーマは苦手な人も多い「心臓の診察」。心臓の診察は、心音の聴取や、頸動脈圧の測定などが重要となってきます。今回は、実技だけでなく、実際の患者さん映像や音声(心音)を使用してわかりやすく解説します。また、エビデンスから引き出されたそのほかの必要な身体診察法についても考察します。第4回 肺の診察今回は、COPDを中心に肺の診察方法について解説します。肺の診察と言えば聴診のイメージが強いですが、それだけではありません。さまざまな身体診察法を実技を交えて、しっかりとお教えします。患者が呼吸困難で救急で運ばれてきた場合、COPDと心不全との鑑別が重要です。この鑑別が瞬時に行うことができるよう、各々の身体所見の取り方を理解しておきましょう。第5回 意識障害今回は意識障害について解説します。高齢者の意識障害と言えば脳血管障害と思われがちですが、そのほかにも感染症、代謝性疾患、外傷などさまざまな原因が考えられます。そのため、系統的な鑑別が必要となります。その中でも身体診察は、5つの項目に分けて確認していくことが重要です。5つの項目とは、バイタルサイン、神経所見、脱水所見、皮膚所見、感染症検索。それぞれの項目の診方について詳しくお教えします。第6回 神経診察神経所見には、かなりの種類があります。今回はその中でも重要な部分に絞って解説します。神経所見を見抜くことができれば、頭蓋内病変など、緊急を要する疾患に即座に対応ができます。神経所見が乏しいとき、どこを診て疑う、あるいは除外すべきか、そのポイントをしっかりと解説します。また、効率的な神経所見診察方法や少し変わった診察テクニックなどを実技を交えてご紹介します。

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爪白癬が完治しない最大の原因とは?

 日本人の10人に1人が罹患し、国民病とも言われる爪白癬。近年、外用薬が発売され、本来、経口薬が必要なケースにも外用薬が安易に処方されることで、治癒率の低下が問題視されている。2019年4月19日、「感染拡大・再発を防ぐカギは完全治癒~爪白癬の完全治癒に向けて~」と題し、常深 祐一郎氏(埼玉医科大学皮膚科学教授)が登壇、経口薬による治療メリットについて解説した(佐藤製薬株式会社・エーザイ株式会社共催)。爪白癬の現状 日本人の足白癬、爪白癬の患者数はそれぞれ2,100万人、1,100万人(そのうち両者を併発している症例は860万人)と推測されている1)。これらの感染経路は多岐にわたり、罹患率を年齢別にみると、足白癬は40~50歳代でピークとなり減少するが、爪白癬は年齢とともに増え続けている2)。これに対し、常深氏は「働き盛り世代は革靴を履いている時間が長く足白癬に罹患しやすい。足白癬は市販の塗り薬でも治るので、靴を履く時間が短くなる年代で減少すると推測できる。しかし、爪白癬は内服薬を使ってしっかり治療しないと治癒せず、一度罹患するとそのままとなるため、高齢者ほど多くなってしまっている」と爪白癬治療の問題点を挙げた。爪白癬の原因・白癬菌の生息実態 爪白癬の原因となる白癬菌は、角質に含まれるケラチンというタンパク質が大好物である。生きた皮膚の細胞は防御反応を起こすため、菌も近寄りがたい。一方で、その表面にある角質は死んだ細胞のためそのような反応が起こらず、角質が厚く豊富な足や爪などは白癬菌の生息地として適しているのだという。また、床やバスマット、じゅうたん、畳などは白癬菌が角質とともに落下することで感染源となる。同氏は「角質に付着した白癬菌は長期間生存しているため、他人が落とした白癬菌を踏みつけて白癬菌に感染する。なかには、治療前に自分の落とした白癬菌が治療後に自分に戻るケースすらある。温泉やプールなどの床には多数の白癬菌を含んだ角質が落ちていることがわかっているので、自宅では定期的に洗濯・掃除することで落下した角質を除去し、温泉やプールから帰宅した際には、足を洗い、付着した白癬を除去して感染を予防しなければならない」とコメントした。爪白癬はなぜ治さなければならないのか? 爪白癬は白癬菌の巣のようなもので、これを放置すると何度も足白癬を繰り返す。また、爪白癬や足白癬から白癬菌が広がり顔や身体に白癬菌が増殖し、いわゆる「タムシ」の原因にもなる。そして、厚くなった爪は歩行の際の痛みの原因になるだけではなく、指に食い込んで傷を作り細菌感染症のもとにもなる。そうならないうちに爪白癬は治療しなければならないのである。爪白癬と確定するには? 爪が白いと“爪白癬”と思われがちだが、乾癬や掌蹠膿疱症、扁平苔癬、爪甲異栄養症など爪が白くなる疾患は多数存在する。その違いを外観で判断することは非常に難しいため顕微鏡検査が必須となる。ところが、同氏によると「検査を行わずに臨床所見で白癬と判断する医師は多く、その診断はよく外れる」とコメント。同氏は自身の研究データ3)を踏まえ、「そこそこ経験を積んだ皮膚科医ですら、見た目で爪白癬を診断すると7割弱しか正答できない。ほかの科の先生ではもっと低くなるだろう」と見た目だけの診断に警鐘を鳴らし、顕微鏡による検査が必須であることを強調した。爪白癬の適正な治療とゴール 最近では爪白癬用の外用液の普及により経口薬が用いられない傾向にあり、これが完全治癒に至らない最大の問題だという。外用薬は一部の特殊な病型や軽症例には有効であるが、多くの爪白癬の症例には経口薬が必要であるという。同氏は「外用液の場合、1年間塗り続けても20%の患者しか治らず、途中でやめてしまう人も多いため完治に至るのは数%ほどと推測される。新しい外用薬が登場したことで経口薬が用いられず、きちんとした治療がなされないという本末転倒の状況になっている」と述べ、爪白癬治療の現状を憂慮した。 経口薬は肝・腎機能への影響、薬物相互作用が懸念され、そのリスク因子が高い患者や高齢者には使いにくい印象があるが、「実際は、相互作用の少ない薬剤もあり、肝臓や腎臓についても定期的に検査すれば過剰に心配する必要はない。完治を目指し治癒率の高い経口薬を用いるべきである。最近は、相互作用が少なく、12週間という短期間の服用で治癒率の高い経口薬も登場した」と述べた。同氏は、爪白癬の治療に際し、『足の水虫を何度も繰り返す原因になります』、『家族の方にもうつしてしまうかもしれません』、『足以外の体にまでカビが生えてしまう前に治しましょう』、『しっかりと治療すれば完治も目指せますよ』、『短期間で終わる薬もあります』などのように説明し、治療の動機づけや継続率を高める工夫をしている。薬剤の選択と並んで、患者のやる気を引き出すことが爪白癬治療の重要なポイントだそうだ。 最後に「『完全治癒』とは、“菌を完全に排除”し“臨床的に爪白癬症状なし”とすることであり、これを達成できないと菌の残存により再発する」と述べ、治癒に至る可能性の高い経口薬の使用を強く訴えた。 なお、「皮膚真菌症診断・治療ガイドライン」は、来年までに改訂が行われる予定である。■関連記事患者向けスライド:爪白癬足白癬患者の靴下、洗濯水は何℃が望ましいか第10回 相互作用が少なく高齢者にも使いやすい経口爪白癬治療薬「ネイリンカプセル100mg」【下平博士のDIノート】

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ABATE Infection trial:非ICUにおけるクロルヘキシジン清拭は耐性菌発生を抑制できるか?(解説:小金丸博氏)-1043

 医療関連感染(Health-care-associated infections)は頻度が高く、重大な合併症を引き起こすことがあるため、世界中で予防策が検討されている。予防策の1つが患者の皮膚や鼻腔に定着した病原体の除菌であり、医療関連感染の発生や伝播を減らすことが期待されている。これまでに発表された、いくつかのクラスター無作為化比較試験において、ICU入室患者に対するクロルヘキシジン清拭やMRSAの鼻腔除菌が血流感染症やMRSA感染症を抑制することを示してきたが、非ICU入院患者に対する効果ははっきりしていなかった。 今回発表された研究(ABATE Infection trial)は、非ICU入院患者に対するICU同様の感染対策(全例に対するクロルヘキシジン清拭とMRSA保菌者に対するムピロシン鼻腔内塗布の併用)の感染予防効果を検討したクラスター無作為化比較試験である。米国の53病院(ICUを除いた194病棟)を対象とし、介入群と通常ケア群(非消毒薬による清拭、石鹸を用いたシャワー浴)との間でMRSAやバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の培養検出率や、全病原体による血流感染症発生率などを比較検討した。その結果、ベースライン期と比べた介入期のMRSA培養陽性またはVRE培養陽性のハザード比は、クロルヘキシジン清拭+ムピロシン鼻腔除菌群0.79(95%信頼区間:0.73~0.87)、通常ケア群0.87(同:0.79~0.95)であり、有意差は認めなかった(p=0.17)。全病原体による血流感染症の発生率にも有意差はなかった。有害事象の発生率は、クロルヘキシジン清拭群で1%未満と低率だった。 本研究では、非ICU入院患者に対するクロルヘキシジン清拭とMRSA保菌者に対するムピロシン鼻腔内塗布の併用は、通常ケア群と比較して、MRSAやVREの発生率や全病原体による血流感染症発生率を有意に低下させなかった。本研究の結果は、大きなサンプルサイズの無作為化試験の中で、かつ高いプロトコル遵守率の中で得られた結果であり、非重症患者全例に対する介入はそれほど有用ではない可能性が高い。その一方で事後のサブグループ解析では、中心静脈カテーテルなどのデバイスが留置されていた患者において、介入群で全病原体による菌血症が32%、MRSAまたはVRE発生率が37%減少していた。デバイスが留置されている患者に対しては有用な介入である可能性があるが、あくまで事後解析の結果であり、追加の確認試験が必要であろう。 クロルヘキシジンは日常的によく用いられる消毒薬であり、忍容性は良好だが、局所の皮膚毒性やアナフィラキシーと関連する。クロルヘキシジンに繰り返し曝露されると細菌の感受性低下を誘導するため、クロルヘキシジンの使用は患者の利益が明確な状況に限定されるべきと考える。

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ABO血液型不適合腎移植は、生存・生着を改善するか/Lancet

 ABO血液型不適合腎移植(ABOi-rTx)は、脱感作プロトコルや最適化に進展がみられるものの、3年以内の死亡率や移植腎の非生着率がABO血液型適合腎移植(ABOc-rTx)を上回ることが、ドイツ・オットー・フォン・ゲーリケ大学マクデブルクのFlorian G. Scurt氏らによるメタ解析で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2019年4月18日号に掲載された。ABOi-rTxは、提供臓器不足の打開策としてその使用が増加しているが、早期および長期のABOc-rTxに対する非劣性のエビデンスが求められている。ABOc-rTxを対照とし追跡期間1年以上の観察研究のメタ解析 研究グループは、ABOi-rTxとABOc-rTxのアウトカムを比較した観察研究を系統的にレビューし、メタ解析を行った。2017年12月31日までに発表され、ABOc-rTxを対照として移植術後1年以上のフォローアップが行われ、移植腎および移植を受けた患者の生存に関するデータを含む論文を選出した。死体腎ABOc-rTxは除外した。 主要エンドポイントは、術後1、3、5年および8年以降の全死因死亡、および移植腎の生着率とした。メタ解析では、I2が0の場合は固定効果モデルを、I2が0以上の場合は固定効果と変量効果モデルの双方を用いた。 1998年1月~2017年9月に発表された40件(日本の12件を含む)の試験に参加した6万5,063例を解析の対象とした。ABOi-rTx群が7,098例(平均年齢:44.9歳[範囲:34~56])、ABOc-rTx群は5万7,965例(43.1歳[31~55])であった。長期的な生存、生着には差がない、組み直し腎臓提供の強化を ABOi-rTx群はABOc-rTx群に比べ、移植後の1年死亡率(オッズ比[OR]:2.17、95%信頼区間[CI]:1.63~2.90、p<0.0001、I2=37%)、3年死亡率(1.89、1.46~2.45、p<0.0001、I2=29%)および5年死亡率(1.47、1.08~2.00、p=0.010、I2=68%)が有意に高かったが、8年以降の死亡率に有意差は認めなかった(1.18、0.92~4.51、p=0.19、I2=0%)。 移植腎生着率(death-censored graft survival)については、ABOi-rTx群はABOc-rTx群に比べ、1年時(OR:2.52、95%CI:1.80~3.54、p<0.0001、I2=61%)および3年時(1.59、1.15~2.18、p=0.0040、I2=58%)は有意に低く、5年時(1.31、0.96~179、p=0.09、I2=75%)および8年以降(1.07、0.64~1.80、p=0.79、I2=66%)は有意な差がなかった。 移植腎喪失の割合は、5年時および8年以降は両群で同等であった。一方、ABOi-rTx群で敗血症の割合が高かったが、尿路感染症やサイトメガロウイルス感染症には有意な差はなかった。また、ABOi-rTx群は出血や血腫、リンパ嚢腫の頻度が高かった。拒絶反応の割合は、全体、境界領域、T細胞関連型には両群で差はなかったが、急性抗体関連型の拒絶反応はABOi-rTx群で高かった。 リツキシマブベースの脱感作プロトコルは、これを用いた場合および用いなかった場合の死亡率が、初回脱感作プロトコルの有無にかかわらず、1年時(リツキシマブ不使用[OR:2.70、95%CI:1.74~4.18、I2=27%、pheterogeneity=0.23]、リツキシマブ使用[1.97、1.14~3.42、I2=45%、pheterogeneity=0.02])および3年時(リツキシマブ不使用[2.37、1.04~5.42、I2=47%、pheterogeneity=0.11]、リツキシマブ使用[1.77、1.20~2.60、I2=11%、pheterogeneity=0.33])ともに、ABOi-rTx群がABOc-rTx群よりも高かった。 出版バイアスは検出されなかった。また、移植後5年までの結果は頑健であったが、それ以降のデータは無効または非結論的だった。 著者は、「これらの知見は、ABO血液型不適合腎移植を進めるのではなく、組み直し腎臓提供(kidney paired donation)を支持するものであり、腎臓交換プログラムのネットワークを拡大し、その活用を強化する行動を求めるものである」としている。

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HIV予防薬服用で性感染症が増加するのは悪いことなのか?(解説:岡慎一氏)-1040

 いったんHIVに感染すると、現在の治療では治癒は不可能である。つまり、一生涯におよぶ治療が必要となる。日本では、年間の医療費は約250万円/人である。30歳前後でHIVに感染し、40年間治療を受ければ1人約1億円の医療費がかかる。HIV治療の公費負担は感染者が増えれば増えるほどかさむことになる。この10年間、毎年1,500人前後の新規感染者が発見されている。残念ながら、コンドーム推進キャンペーンが有効だとはいえない状況である。 世界で唯一、新規感染者を減らす方法として有効性が確立されているのは、今回の論文に出てくるHIV Pre-Exposure Prophylaxis(PrEP)である。PrEPとは、HIV感染リスクの高い人が前もって予防薬を服用することである。この予防法は非常に有効で、しっかりと予防薬さえ飲んでいれば、コンドームなどを使わなくてもHIVに感染することはほぼゼロになる。使わなくてもよければ使わない人が増えるのは当然で、その結果として、その他の性感染症(STI)が増加することは容易に予測される。この研究でも実際にSTIが増加したことが示されている。当然PrEPを始めると定期的にSTIの検査を受けるので、より多くのSTIが見つかるはずである。したがって、この論文では、検査件数で補正している。PrEP前に比べ検査件数で補正するとSTI全体で1.12倍増えている。しかしである。たった1.1年のフォローアップ期間である。PrEPにより定期的なSTI検査と早期診断・早期治療を徹底していけば、STI自体も減ってくるはずである(そのような地域もある)。さらに、HIV感染症と他のSTI、たとえば注射一本で治る淋病との重要度は比べようもない。HIVに対するrisk compensationとして1.12倍STIが増えたとしても取るに足らないことであろう。 現在、新規HIV感染者が激減しているのは、PrEPが実施されている国や地域のみである。2016年にWHOがHIVガイドラインでPrEPを強く推奨してから、2019年4月現在、世界ではすでに44ヵ国でPrEPが承認されている。そろそろ日本もcost effectivenessの確立されたPrEPの薬事承認をすべきときに来ている。

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蠕虫感染症治療のベース、学校集団vs.地域集団/Lancet

 英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のRachel L. Pullan氏らは、土壌伝播蠕虫感染症に対する、学校集団を対象とした駆虫プログラムの代わりとなる集団治療の有効性を評価したクラスター無作為化比較試験を実施した。その結果、地域社会全体を対象に行った年1回の治療が、学校集団を対象とした同じく年1回の治療と比較して、鉤虫症の罹患率および感染強度の低下に有効であることが明らかにされた。検討では、年2回の介入も検討され、付加的利点はほとんど認められなかったことも判明した。学校集団を対象とした駆虫プログラムは、小児の土壌伝播蠕虫感染症の罹患率を低下させうるが、より広い地域社会への伝播は阻止できていなかった。今回の結果について著者は、「介入の範囲および効果の点で、地域社会全体への治療が非常に公正であることが示された」と述べている。Lancet誌オンライン版2019年4月18日号掲載の報告。学校集団(2~14歳)vs.地域集団(全年齢)、アルベンダゾール投与を比較 研究グループは、2015年3月18日~2017年5月17日の期間で、ケニア・クワレ地区(15万世帯)の120地域単位を対象に、アルベンダゾールによる治療を、2~14歳の学校集団で年1回実施する群、地域単位で全年齢を対象に年1回実施する群または年2回実施する群に1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、反復横断調査で評価した12ヵ月および24ヵ月時点の鉤虫症の罹患率であり、副次評価項目は、回虫および鞭虫の罹患率、各土壌伝播蠕虫感染症の感染強度ならびに治療の範囲と費用とし、intention-to-treat解析で評価した。地域集団の治療で鉤虫症罹患率が41~54%の低下 24ヵ月後、鉤虫症の罹患率は年1回学校集団治療群で18.6%(95%信頼区間[CI]:13.9~23.2)から13.8%(95%CI:10.5~17.0)に、年1回地域単位治療群で17.9%(95%CI:13.7~22.1)から8.0%(95%CI:6.0~10.1)に、年2回地域単位治療群で20.6%(95%CI:15.8~25.5)から6.2%(95%CI:4.9~7.5)に変化した。 年1回学校集団治療群と比較した、年1回地域単位治療群のリスク比は0.59(95%CI:0.42~0.83、p<0.001)、年2回地域単位治療群は同0.46(95%CI:0.33~0.63、p<0.001)であった。 リスクの低下は、12ヵ月の時点でも確認されたが24ヵ月の時点よりも少なかった。24ヵ月後のリスク比は、人口統計学的および社会経済的なサブグループ間で差異はなかった。アルベンダゾールに関連した有害事象の報告はなかった。

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リファンピシン耐性結核の治療期間短縮トライアル(解説:吉田敦氏)-1038

 多剤耐性結核(キードラッグであるイソニアジド[INH]とリファンピシン[RIF]の両者に耐性)の治療は非常に難しい。薬剤数が多く、期間も長くなり、副作用も多く経験する。WHOは2011年のガイドラインにおいて、遺伝子検査を含む早期の耐性検査の実施、フルオロキノロン薬の使い分け、初期に行われるintensive phaseの治療期間の延長と合計18ヵ月以上の治療を推奨しているが、一方でそれよりも短期間の治療レジメンで良好な成績を収めた報告(例:バングラデシュ研究1))も存在する。今回は、RIF耐性結核例(ただし、フルオロキノロンとアミノグリコシドは感性)を対象とし、バングラデシュ研究で多剤耐性結核に対して用いられたレジメンと同様の9~11ヵ月の短期療法と、WHOのガイドラインに従った20ヵ月の長期療法の2法について、第III相ランダム化比較試験が実施された(実施国はエチオピア、モンゴル、南アフリカ共和国、ベトナム)。 有効性の判定で「良好」という基準は、132週の時点で経過が良く、培養陰性である(または陰性のままである)ことと定めた。患者の33%はHIV陽性であり、77%は肺に空洞を有していたが、治療レジメンについて十分なアドヒアランスが確保できたのは、短期療法群で75%、長期療法群で43%であった。そして上記の基準を満足した割合は、両群で差はなかった。Grade3以上の副作用出現率にも差はなかったが、「良好」の基準を満たさない患者での結核菌再検出率、心電図上のQT延長、ALT上昇、120週までの死亡、フルオロキノロン・アミノグリコシドの耐性出現は短期療法群でやや多かった。 使用された抗結核薬の内訳をみると、短期療法では最初の16週はintensive phaseとしてカナマイシン、イソニアジド、プロチオナミド、モキシフロキサシン(高用量)、クロファジミン、エサンブトール、ピラジナミドを投与、その後のcontinuation phaseではカナマイシン、イソニアジド、プロチオナミドを除いた4剤を、開始から40週以上投与していた。一方で長期療法は国によって用いる薬剤が異なっており、intensive phaseは5剤以上で6ヵ月以上、continuation phaseも4剤となっていた。つまり短期療法は、モキシフロキサシンを重視し、薬剤数を多くした(しかし短めの)intensive phaseを採用することで、長期療法との違いを打ち出していることになる。 総じて、短期療法は治療期間の短縮と、アドヒアランスの維持には貢献するが、不整脈を含む心臓への副作用の増加と突然死・死因不明死、肝障害に関連しているようで、実際に主に短期療法群でQT延長を確認後、モキシフロキサシンを減量したり、レボフロキサシンに変更した例が存在した。短期療法でみられたこのような副作用・デメリットが、モキシフロキサシンによるのか、その用量によるのか、あるいは他剤との相互作用によるのか、具体的な情報はない。HIV重複感染率が高かったため、その影響が事象を複雑にもしている。なおバングラデシュ研究ではモキシフロキサシンでなくガチフロキサシンが用いられていたが、ガチフロキサシンは低血糖などの理由で、本邦・米国等では発売が中止となっている。また本邦ではシタフロキサシンが抗酸菌感染症に用いられることがあるが、本検討にはシタフロキサシンは含まれていない。 WHOは2018年末に多剤耐性結核およびRIF耐性結核のガイドラインを改訂した2)。この中で短期療法の章が新たに設けられ、本試験を含む臨床試験の結果を考慮した短期療法と適応についてのスタンスが述べられている。2011年に比べ大きな進歩があったが、必須な薬剤の絞り込み、耐性に関する遺伝子検査のさらなる導入、副作用の早期発見と対処・代替薬剤の変更など、課題はまだまだ多い。条件を設定した短期治療は、標準化、個別化それぞれへの一歩といえるだろうが、最終的に個々の治療をさらに向上させるには、今後も多大な努力が求められるであろう。■参考1)Van Deun A, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2010;182:684-692.2)WHO updates its treatment guidelines for multidrug- and rifampicin-resistant tuberculosis.

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進行性多巣性白質脳症、ペムブロリズマブで臨床的改善/NEJM

 進行性多巣性白質脳症(PML)の患者に対し、PD-1阻害薬ペムブロリズマブ投与により8例中5例で脳脊髄液(CSF)中のJCウイルス量が減少し、臨床的改善や安定化につながったことが示された。米国・国立神経疾患・脳卒中研究所のIrene Cortese氏らによる試験の結果で、著者は「PML治療における免疫チェックポイント阻害薬のさらなる研究の根拠が得られた」とまとめている。NEJM誌2019年4月25日号掲載の報告。ペムブロリズマブ2mg/kgを4~6週間ごと、1~3回投与 PMLは、JCウイルスが原因の脳の日和見感染症で、免疫機能が回復できなければ通常は致死的である。PD-1は、ウイルスクリアランスの障害に寄与する可能性がある免疫応答の制御因子であることが知られている。しかし、PD-1阻害薬ペムブロリズマブがPML患者において、抗JCウイルス免疫活性を再活性化しうるかは明らかになっていなかった。 研究グループは、「ペムブロリズマブはJCウイルス量を低下し、CD4陽性細胞およびCD8陽性細胞の抗JCウイルス活性を上昇させる」との仮説を立て試験を行った。 PMLの成人患者8例に対し、ペムブロリズマブ2mg/kgを4~6週間ごとに、1~3回投与した。被験者には、それぞれ異なる基礎疾患が認められた。in vitroでCD4陽性、CD8陽性の抗JCウイルス活性の上昇も確認 被験者はいずれも、少なくとも1回の投与を受け、3回超の投与は受けなかった。 全8例で、ペムブロリズマブによる末梢血中とCSF中のリンパ球におけるPD-1発現の下方制御が認められた。 5例については、PMLの臨床的改善や安定化が認められ、CSF中のJCウイルス量の減少と、in vitroのCD4陽性細胞およびCD8陽性細胞の抗JCウイルス活性の上昇も認められた。 一方で残りの3例については、ウイルス量や、抗ウイルス細胞性免疫応答の程度について、意味のある変化はみられず、臨床的改善も認められなかった。

4016.

うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法の長期非盲検試験

 うつ病に対する長期治療は、再発予防および機能回復のために推奨されている。デンマーク・H. Lundbeck A/SのMary Hobart氏らは、成人うつ病患者に対するブレクスピプラゾール補助療法の長期非盲検試験において、安全性、忍容性、有効性を評価した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2019年5/6月号の報告。 対象は、3つのランダム化二重盲検プラセボ対照試験から52週間(26週間へ修正)の試験へロールオーバーしたうつ病患者。対象患者には、最新の抗うつ薬治療にブレクスピプラゾール0.5~3mg/日(フレキシブルドーズ)を追加した。主要アウトカムは、治療による有害事象(TEAE)の頻度および重症度とした。副次的アウトカムとして、臨床評価尺度を用いて有効性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・登録患者数2,944例(52週間:1,547例、26週間:1,397例)のうち、1,895例(64.4%)が試験を完了した。・発現率5%以上のTEAEは以下のとおりであった。 ●体重増加(17.7%) ●眠気(8.0%) ●頭痛(7.2%) ●アカシジア(6.7%) ●食欲増進(6.3%) ●不眠(6.3%) ●疲労(6.1%) ●ウイルス性上気道感染症(5.4%) ●不安(5.2%)・ほとんどのTEAEの重症度は、軽度または中等度であった。・体重増加の平均値は、26週時で2.7kg、52週時で3.2kgであった。ベースライン時より7%以上の体重増加が認められた患者は、25.8%であった。・錐体外路症状、プロラクチン、脂質、グルコースに関連する臨床所見は認められなかった。・患者の症状および機能は、継続的な改善が認められた。 著者らは「うつ病患者に対するブレクスピプラゾール(0.5~3mg/日)補助療法は、最大52週にわたり良好な忍容性を示し、有効性および機能的アウトカムの継続的な改善が認められた」としている。■関連記事ブレクスピプラゾールとアリピプラゾールの体重変化への影響日本人うつ病患者に対するアリピプラゾール補助療法:名古屋大学うつ病に対するアリピプラゾールとセルトラリン併用療法の二重盲検ランダム化比較試験

4017.

植込み型心臓用医療機器感染予防のための抗菌包装の有効性の検討(解説:許俊鋭 氏)-1037

背景 植込み型心臓用電子医療機器(Cardiac Implantable Electronic Devices:CIED)留置後のポケット感染は、術後の合併症率および死亡率と関連している。しかし、術前抗菌薬の使用以外のポケット感染を予防するための治療方法に関しては、限られたエビデンスしかない。方法 CIED植込み手術に関連するポケット感染の発生率を減らすための吸収性の抗菌薬溶出性包装(Antibacterial Envelope)の安全性と有効性を評価するために、無作為化比較臨床試験(WRAP-IT)を実施した。Antibacterial Envelopeは吸収性マルチフィラメントメッシュエンベロープ(Absorbable Antibacterial Envelope、Medtronic)を使用していて、皮下ポケット内のCIED安定性を改善するとともに、抗菌薬のミノサイクリンとリファンピンを溶出することができる。 両心室ペーシング機能付植込み型除細動器 (CRTD)の初回植込み手術症例、挿入ポケットの修復、ジェネレータの交換、およびシステムのアップグレード等の手術を受けた患者を、抗菌包装を行う群(エンベロープ群)と行わない群(対照群)に1:1の割合で無作為に割り付けた。感染防止のための標準治療は全症例に実施した。主要評価項目は、CIED植込み手術後12ヵ月以内の感染に起因したCRTDの摘出またはポケットの修復、感染の再発を伴う長期の抗菌薬療法、または死亡とした。安全性に関する副次的評価項目は、12ヵ月以内の植込み手術やデバイス関連の合併症とした。結果 6,983例の患者を無作為に割り付けた。エンベロープ群3,495例、対照群に3,488例であった。主要評価項目は、エンベロープ群の25例、対照群の42例の患者で発生した(12ヵ月のカプランマイヤー推定事象率、それぞれ0.7%および1.2%;p=0.04)。安全性の評価項目は、エンベロープ群の201例、対照群の236例の患者で発生した(12ヵ月カプランマイヤー推定事象率、それぞれ6.0%および6.9%;非劣性検定、p<0.001)。平均追跡調査期間は20.7±8.5ヵ月であった。追跡調査期間全体を通しての主要なCIED関連感染症は、エンベロープ群32例、対照群51例の患者で発生した。結論 抗菌包装の併用により合併症発生率が上昇することなく、単独の標準的感染予防戦略よりもCIED感染症の発生率が大幅に(約40%)低下した。

4018.

局所進行胃がん周術期療法、FLOT vs.ECF/ECX/Lancet

 切除可能な局所進行胃・胃食道接合部腺がんの治療において、ドセタキセルベースの3剤併用レジメンによる術前後の化学療法は標準レジメンと比較して、全生存期間(OS)を1年以上延長することが、ドイツ・UCT-University Cancer Center FrankfurtのSalah-Eddin Al-Batran氏らが行ったFLOT4-AIO試験で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年4月11日号に掲載された。術前後のエピルビシン+シスプラチン+フルオロウラシル(ECF)の有用性を示した大規模臨床試験(MAGIC試験)以降、いくつかのレジメンが検討されたが、いずれも不成功に終わっている。ドセタキセルベースの化学療法では、転移を有する胃・胃食道接合部腺がんにおける有効性が報告されている。FLOT4-AIOはFLOT群とECF/ECX群のレジメンに無作為割り付け FLOT4-AIOは、ドイツの38施設で実施された第II/III相非盲検無作為化試験であり、今回は第III相の結果が報告された(German Cancer Aid[Deutsche Krebshilfe]などの助成による)。 対象は、組織学的に確定された臨床病期cT2以上またはリンパ節転移陽性(cN+)、あるいはこれら双方で、遠隔転移がなく、切除可能な腫瘍を有する患者であった。 被験者は、次の2つのレジメンに無作為に割り付けられた。FLOT群:術前と術後に、2週を1サイクルとして4サイクルずつ、ドセタキセル(50mg/m2)+オキサリプラチン(85mg/m2)+ロイコボリン(200mg/m2)/フルオロウラシル(2,600mg/m2、24時間静注)を1日目に投与。ECF/ECX群(対照群):術前と術後に、3週を1サイクルとして3サイクルずつ、エピルビシン(50mg/m2、1日目)+シスプラチン(60mg/m2、1日目)+フルオロウラシル(200mg/m2、持続静注、1~21日)またはカペシタビン(1,250mg/m2、経口投与、1~21日)を投与。ECF/ECX群のフルオロウラシルかカペシタビンかの選択は担当医が行った。 主要アウトカムはOS(優越性)とし、intention-to-treat解析を実施した。FLOT群はECF/ECX群よりOSが15ヵ月延長 2010年8月~2015年2月の期間に716例が登録され、FLOT群に356例(年齢中央値62歳、男性75%)、ECF/ECX群には360例(62歳、74%)が割り付けられた。フォローアップは2017年3月に終了した。 実際に術前化学療法を開始したのは、FLOT群352例(99%)、ECF/ECX群353例(98%)で、全サイクルを完了したのはそれぞれ320例(90%)、326例(91%)であった。また、術後化学療法を開始したのはFLOT群213例(60%)、ECF/ECX群186例(52%)で、全サイクル完了はそれぞれ162例(46%)、132例(37%)だった。 投与中止の理由は、病勢進行/無効/早期死亡がFLOT群46例(13%)、ECF/ECX群74例(21%)、患者の要望がそれぞれ59例(17%)、62例(17%)、毒性が35例(10%)、47例(13%)であった。 手術開始は、FLOT群345例(97%)、ECF/ECX群341例(95%)、腫瘍手術が行えたのは、それぞれ336例(94%)、314例(87%)であった。断端陰性(R0)切除の達成は、FLOT群が301例(85%)と、ECF/ECX群の279例(78%)に比べ有意に高かった(p=0.0162)。 OS中央値は、FLOT群がECF/ECX群よりも有意に延長した(50ヵ月[95%信頼区間[CI]:38.33~未到達]vs.35ヵ月[27.35~46.26]、ハザード比[HR]:0.77、95%CI:0.63~0.94、p=0.012)。2、3、5年全生存率は、FLOT群がそれぞれ68%、57%、45%、ECF/ECX群は59%、48%、36%であった。このFLOTの治療効果は、すべてのサブグループで一致して認められた。また、無病生存期間中央値もFLOT群で有意に優れた(30ヵ月 vs.18ヵ月、0.75、0.62~0.91、p=0.0036)。 治療に関連する可能性のあるGrade3/4の有害事象のうち、FLOT群で多かったのは、感染症(18 vs.9%)、好中球減少(51 vs.39%)、下痢(10 vs.4%)、末梢神経障害(7 vs.2%)であり、ECF/ECX群で多かったのは、悪心(7 vs.16%)、嘔吐(2 vs.8%)、血栓塞栓イベント(3 vs.6%)、貧血(3 vs.6%)であった。また、治療関連の重篤な有害事象(手術のための入院期間中のものも含む)の発現状況は、両群で同等であった(FLOT群97例[27%]vs.ECF/ECX群96例[27%])。毒性による入院は、それぞれ89例(25%)、94例(26%)に認められた。 著者は、「本試験の結果は、有効な治療選択肢の幅を広げるものである」としている。

4019.

結核のDOTにもスマートフォン導入か(解説:吉田敦氏)-1032

 抗結核療法は長期にわたる。不完全な内服は、治療効果を下げるばかりか、耐性出現と周囲への感染リスクを少なくするためにもできる限り避けるべきであり、アドヒアランスの保持を目的としたDOT(Direct observed therapy)は世界的にも主流となっている。しかし直接会って内服を確認するのは、患者、医療従事者双方にとって負担である。スマートフォンの普及がDOTにプラスに働くかどうか―スマートフォンとアプリを使って内服状況を本人がビデオ撮影し、医療従事者に送信してアドヒアランスを確認するVOT法が英国で試みられ、従来の対面によるDOTとVOT法のランダム化比較試験の結果が発表された。 本検討では、過去にホームレス、懲役刑、薬物乱用、アルコールやメンタルヘルスの問題の既往のある患者が約6割を占め、また多くが英国外出生であった。DOTは週3~5日の確認(約半数は家において)、VOTは毎日の確認であり、VOTでは何らかの症状がある場合それについても報告可能とした。プライマリーエンドポイントは、ランダム化後の2ヵ月でスケジュールどおりの内服率が80%以上に達することとしたが、DOT群ではアドヒアランスはランダム化後すみやかに低下してしまい、プライマリーエンドポイント達成割合はVOT群で70%、DOT群で31%であった。なお有症状報告患者数は両群ともほぼ同数であったが、報告数でみるとVOTのほうが多かった。またVOTに関わる時間は、医療従事者・患者ともにDOTよりも少なかったわけであるが、コストは週5回のDOTに比較して、VOTは3分の1以下となった。 アドヒアランスに支障が生じやすい患者を相当数含んだ今回の検討において、得られた達成率を鑑みるとVOTは評価できるとみてよいであろう。とくに(英国外生まれの)34歳以下の男性で差が大きく、いわばスマートフォンになじみやすい世代に有効であったことがうかがえる。アドヒアランスを高める“動機”はさまざまであることがわかっているが、より個人に合い、簡便で、かつ自発性を促すものが望まれるかもしれない。一方で提供されたVOTにはリマインドや内服確認、症状報告メッセージなど細かなサービスが要求されていた。VOTのサービスの質的改良はこれからも続き、それによるアドヒアランス向上も期待できると考えられるが、VOTが果たしうる役割は、文化的・社会的背景が異なるそれぞれの国によっても差があるであろう。ロンドンではすでに多剤耐性結核患者にもこのVOTが導入されたと聞く。世界各国での今後の展開と応用に期待したい。

4020.

PCV10ワクチン導入、ケニアでIPDが激減/Lancet

 ケニアにおいて、キャッチアップキャンペーン(追加的なワクチン接種活動)を伴う10価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV10)接種の導入により、小児/成人におけるPCV10型の侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)が有意な血清型置換を伴わず大幅に減少したという。米国・ジョンズホプキンス大学公衆衛生学大学院のLaura L. Hammitt氏らが、ケニア海岸農村部キリフィ県の「健康と人口動態追跡調査システム(Health and Demographic Surveillance System:HDSS)」に登録されている住民を対象とした、ケニア中央医学研究所とイギリス・ウェルカムトラスト財団の共同研究プログラム(KEMRI-Wellcome Trust Research Programme)によるサーベイランス研究の結果で、著者は「幼児のPCV10型定期予防接種プログラムが熱帯アフリカの低所得地域において直接的および間接的に大きな予防効果を上げる可能性が示唆された」と述べている。Lancet誌オンライン版2019年4月15日号掲載の報告。PCV10による予防接種の有効性をサーベイランスで評価 ケニアでは、2011年1月に生後6週、10週および14週に接種するPCV10が導入された(キリフィ県では5歳未満の小児を対象としたキャッチアップを伴っている)。 研究グループは、キリフィ県の小児および成人における鼻咽頭保菌とIPDに対するPCV10の有効性を評価する目的で、1999~2016年にHDSSが運用されたキリフィ県立病院に入院した患者(全年齢)におけるIPDの臨床的および細菌学的調査を解析した。ワクチン導入前(1999年1月1日~2010年12月31日)とワクチン導入後(2012年1月1日~2016年12月31日)で、交絡因子を調整したIPDの罹患率比(IRR)を算出し、1-IRRの計算式でIPDの減少率を報告した。鼻咽頭保菌については、2009~16年に年次調査を行った。 月齢2~11ヵ月の小児で2回以上PCV10の接種を受けた割合は、2011年で80%、2016年で84%、月齢12~59ヵ月の小児で1回以上PCV10接種を受けた割合はそれぞれ66%および87%であった。ワクチンに含まれる血清型のIPDは92%減少、あらゆる血清型のIPDは68%減少 HDSSの観察期間中、321万1,403人年でIPDは667例が確認された。5歳未満の小児の年間IPD発生率は、2011年のワクチン導入後に急激に低下し、低い状態が継続した(PCV10型IPD:ワクチン導入前60.8例/10万人vs.ワクチン導入後3.2例/10万人、補正後IRR:0.08[95%信頼区間[CI]:0.03~0.22]、あらゆる血清型のIPD:81.6例/10万人vs.15.3例/10万人、補正後IRR:0.32[95%CI:0.17~0.60])。 ワクチン未接種の年齢集団においても、ワクチン導入後の時期でPCV10型IPDの発生率が同様に低下した(月齢2ヵ月未満:ワクチン導入後の症例は0、5~14歳:補正後IRR:0.26[95%CI:0.11~059]、15歳以上:補正後IRR:0.19[95%CI:0.07~0.51])。非PCV10型IPDの発生率は、ワクチン導入前後で違いは確認されなかった。 5歳未満の小児において、PCV10型の保菌率はワクチン導入前後で低下し(年齢標準化補正後有病率:0.26、95%CI:0.16~0.35)、非PCV10型の保菌率は増加した(1.71、1.47~1.99)。

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