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第1回 人工呼吸器不足を視野に、重症COVID-19への血栓溶解薬の試験を準備中

血栓形成を伴いうる急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に陥ったが、人工呼吸器治療が受けられないまたは人工呼吸が用を成さない重篤な新型コロナウイルス感染(COVID-19)患者に、血栓溶解薬t-PA(アルテプラーゼ)が有効かどうかを調べる試験の準備を、米国の3病院が進めています1)。米国人のおよそ30%(9,600万人)が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染し、そのうち5%(480万人)が入院し、それら入院患者の40%(190万人)は集中治療室(ICU)に入り、ICU患者の約半数96万人が人工呼吸を必要とすると米国病院協会(AHA)は最近予想しています2-4)。しかし2009年の調査によると、用途一通りをこなす人工呼吸器は米国の急性期病院にわずか6万2,000台ほどしかなく、人工呼吸が必要なCOVID-19患者に人工呼吸器が十分に行き渡らないかもしれません。それに人工呼吸を受けることができたところで、死を免れることがかなり困難なケースがあるようです。たとえば先月末にLancet誌に掲載された、中国武漢でのICU入室の重度COVID-19(重度SARS-CoV-2肺炎)患者52例のデータ解析によると、その多く(35例、67%)がARDSに陥り、人工呼吸器使用患者の約70%(37例)が死亡しています5)。そのような人工呼吸が用を成さないARDS合併COVID-19患者にt-PAが有効な可能性があり、ARDSによる死亡をプラスミノーゲン活性化薬・ウロキナーゼやストレプトキナーゼが防ぎうることが、2001年の臨床試験(第I相試験)で示唆されています6)。この試験では呼吸療法が奏効しなかった、重症ARDS患者20例中30%にウロキナーゼやストレプトキナーゼの有効性が認められました。今回、ハーバード大学の病院(Beth Israel Deaconess)、コロラド大学の病院(Anschultz Medical Campus)、コロラド州デンバーの市民病院(Denver Health)の3病院が始める試験で、別のプラスミノーゲン活性化薬・t-PAが使われるのは、同薬が出血リスクはウロキナーゼやストレプトキナーゼと変わらず、血栓溶解作用はより強力だからです。t-PAは治療の手立てがなくなったCOVID-19患者にまず投与され、効果があれば対象患者が速やかに拡大されます。試験では2つの投与経路(静注と気道)への直接注入が検討され、マサチューセッツ工科大学(MIT)発のベンチャー企業Applied BioMath社は同薬の投与法の調節に役立ちうる計算法を開発しています。脳卒中や心臓発作に使われているt-PAのメーカーRoche傘下Genentech社はすでに同薬を寄付しており、有望な結果がひとまず得られて試験が拡大すれば、それに応じる予定です。参考1)A stopgap measure to treat respiratory distress / MIT2)Worst-Case Estimates for U.S. Coronavirus Deaths / NewYorkTimes3)United States Resource Availability for COVID-19 / Society of Critical Care Medicine4)Moore HB,et al. J Trauma Acute Care Surg. 2010 Mar 20.[Epub ahead of print]5)Yang X, et al. Lancet. 2020 Feb 24.[Epub ahead of print]6)Hardaway RM, et al. Am Surg. 2001 Apr;67:377-82.

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第1回 先週の注目ニュースをキャッチアップ!

<先週の動き>1.2022年以降の高齢者の社会保障の負担が議論に2.データヘルス改革で医療・介護情報の連携と利活用がさらに進む3.第2期健康・医療戦略が内閣府で取りまとめがなされる4.新型コロナウイルス感染症対策のため、全国の病床確保が進む1.2022年以降の高齢者の社会保障の負担が議論に2020年3月26日に社会保障審議会・医療保険部会が開催された。これは、2019年12月19日に内閣府の経済・財政一体改革推進委員会において定められた新経済・財政再生計画改革工程表に示されている内容に基づいたもの。今回は社会保障の給付の負担の見直しであるが、医療保険での負担割合を、マイナンバーによる金融資産の把握に基づいて行うという方向性を打ち出そうとしたが、金融資産のみではなく不動産の保有状況も慎重に議論すべきだとの意見が出され、結論は出なかった。2022年以降には団塊の世代が後期高齢者となり、現状の社会保障の負担方式では2025年以降の社会保障の持続は厳しく、患者負担引き上げの可能性があり、そのため医療機関や介護関連業界に影響が出る可能性が高い。団塊世代が後期高齢者入りするまでに、後期高齢者の窓口負担について検討される。全世代型社会保障検討会議の中間報告において示された方向性に基づき最終報告に向けて検討を進め、遅くとも2022年度初までに改革を実施できるよう、2020年夏までに成案を得て、速やかに必要な法制上の措置を講ずるという。今後も議論の方向性には注目したい。(参考)第19回社会保障審議会介護給付費分科会介護報酬改定検証・研究委員会(厚生労働省)新経済・財政再生計画 改革工程表2019ー概要ー(内閣府)2.データヘルス改革で医療・介護情報の連携と利活用がさらに進む厚生労働省が進めているデータヘルス改革に必須の医療・介護の情報利活用について、いよいよ具体的な議論が動き出した。3月26日に、「健康・医療・介護情報利活用検討会」の下部組織として「医療等情報利活用ワーキンググループ」の第一回が開催された。少子高齢化に伴う医療・介護分野で予想される労働者不足を乗り越えるために、健康・医療・介護分野のデータやICTの活用で、労働生産性を高め、サービスの質を維持することが目標であり、そのためにデータヘルス改革の一里塚とも言える。そのために、電子カルテの標準化や患者情報共有システムの基盤整備などが議論される。ワーキンググループでは、今後の工程表を今年の夏を目途に取りまとめる方向であり、すでに整備が進んでいる全国の医療・介護ネットワークを通して、患者情報や処方内容、検査値などの利活用がさらに進む方向になると考えられる。(参考)第1回 健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報利活用ワーキンググループ(厚労省)3.第2期健康・医療戦略が内閣府で取りまとめがなされる3月27日に、内閣府において健康・医療戦略推進本部が開催され、世界最高水準の医療の研究開発の推進や、予防・健康づくりを中心とした、質の高い民間サービスの創出、わが国の優れた医療サービスを積極的に国際展開していくアジア・アフリカ健康構想の推進を柱とする、新たな健康・医療戦略を取りまとめ、討論がなされた。今回打ち出された医療分野研究開発推進計画では、政府が講ずべき医療分野の研究開発並びにその環境の整備及び成果の普及に関する施策の集中的かつ計画的な推進を図るものについて、医薬品、医療機器・ヘルスケア、再生・細胞医療・遺伝子治療、ゲノム・データ基盤、疾患基礎研究、シーズ開発・研究基盤の6つの統合プロジェクトが推進されることが決められた。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの新興感染症に関する研究開発として、今年の2月13日に第1弾として、診断法開発、治療法開発、ワクチン開発等の研究開発を実施が打ち出されているが、さらに3月10日に第2弾として追加既存薬をCOVID-19に活用するための臨床研究や迅速検査機器開発などを加速させることが決定されている。第2期計画の期間は、2020~24年度の5年間となっている。(参考)健康・医療戦略推進本部(第二十八回)(首相官邸)4.新型コロナウイルス感染症対策のため、全国の病床確保が進む新型コロナウィルス感染者の報告が都市部を中心として伸び続けているのに対応して、厚労省は全国の病院の稼働状況などをインターネット上に公開する方針を決定した。すでに、3月18日に厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部より、各都道府県などに「新型コロナウイルス感染症患者等の入院病床の確保について」とする事務連絡がなされている。これによると、感染症指定医療機関に限らず一般の医療機関においても、感染症病床および一般病床を含め病床を確保してもなお、「地域での感染拡大により、入院を要する患者が増大し、重症者や重症化するおそれが高い者に対する入院医療の提供に支障をきたすと判断される場合」に行われる感染爆発に備える対応として、事前に病床確保に動いている。今後予想される、感染患者数が自治体の感染症指定医療機関のキャパシティを超えた場合に向けた対策としてさらに進めていっており、地域ごとに呼吸器やECMOなどの稼働状況を把握するのが目的であることが考えられる。(参考)新型コロナウイルス感染症患者等の入院病床の確保について(依頼)事務連絡 令和2年3月18日(厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部)全国の病院の稼働状況など ネット上で公開へ 厚労省(NHK)

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inclisiran、家族性高コレステロール血症でLDL-Cを50%低下/NEJM

 家族性高コレステロール血症(FH)ヘテロ接合体の成人患者の治療において、低分子干渉RNA製剤inclisiranの非頻回投与レジメンはプラセボに比べ、LDLコレステロール(LDL-C)値をほぼ半減させ、安全性プロファイルは許容範囲内であることが、南アフリカ共和国・ウィットウォーターズランド大学のFrederick J. Raal氏らによる「ORION-9試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年3月18日号に掲載された。FHは、LDL-C値の上昇と、早発性のアテローム動脈硬化性心血管疾患のリスク増大を特徴とする。前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を標的とするモノクローナル抗体は、LDL-C値を50%以上低下させるが、2~4週ごとの投与を要する。一方、inclisiranは年2回の投与により、FHヘテロ接合体成人患者においてPCSK9の肝臓での合成を阻害すると報告されている。非頻回投与の有用性を評価する無作為化試験 本研究は、FHヘテロ接合体患者の治療におけるinclisiranの非頻回投与レジメンの有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験であり、2017年12月~2019年9月の期間に実施された(Medicines Companyの助成による)。 対象は、遺伝学的確認またはSimon Broome基準でFHと診断され、エゼチミブ併用の有無にかかわらず、最大許容量のスタチンを投与してもLDL-C値が100mg/dL(2.6mmol/L)以上の患者であった。被験者は、inclisiran(300mg)またはプラセボを、第1、90、270、450日に皮下注射する群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、ベースラインから510日までのLDL-C値の変化率と、ベースラインから90日および540日までのLDL-C値の時間で補正した変化率の2つであった。LDL-C値が39.7%低下、プラセボとの差は-47.9ポイント 482例が登録され、inclisiran群に242例、プラセボ群には240例が割り付けられた。ベースラインの全体の平均年齢は56歳、47%が男性で、94%が白人であった。冠動脈疾患の既往は25%、糖尿病の既往は10%に認められた。 ベースラインで90%がスタチンの投与を受けており(全体の75%が高強度スタチン)、50%強がエゼチミブを併用していた。平均LDL-C値は153.1±54.0mg/dLだった。inclisiran群の91.7%、プラセボ群の96.3%が540日間の試験を完遂した。 ベースラインから510日までのLDL-C値の変化率は、inclisiran群が39.7%(95%信頼区間[CI]:-43.7~-35.7)低下したのに対し、プラセボ群は8.2%(4.3~12.2)増加し、群間差は-47.9ポイント(-53.5~-42.3、p<0.001)であった。また、90日と540日のLDL-C値の時間平均変化率は、inclisiran群が38.1%(95%CI:-41.1~-35.1)低下したのに対し、プラセボ群は6.2%(3.3~9.2)増加し、群間差は-44.3ポイント(-48.5~-40.1、p<0.001)だった。 ベースラインから510日までのLDL-C値の平均絶対変化量は、inclisiran群が59.0mg/dL(95%CI:-64.8~-53.2)低下したのに対し、プラセボ群は9.9mg/dL(4.1~15.8)増加し、群間差は-68.9mg/dL(-77.1~-60.7、p<0.001)だった。 一方、ベースラインから510日までのPCSK9値の変化率は、inclisiran群が60.7%(95%CI:-64.4~-57.0)低下、プラセボ群は17.7%(13.9~21.4)増加し、群間差は-78.4ポイント(-83.7~-73.0、p<0.001)であった。また、510日までのPCSK9値の平均絶対変化量は、inclisiran群が282.6μg/L(-297.9~-267.2)低下、プラセボ群は54.5μg/L(39.1~70.0)増加し、群間差は-337.1μg/L(-358.9~-315.3、p<0.001)だった。 有害事象は、inclisiran群が76.8%、プラセボ群は71.7%で報告され、そのうち94.6%および91.9%は軽症~中等症であった。重篤な有害事象の頻度は、inclisiran群で低かった(7.5% vs.13.8%)。両群で1例ずつが死亡したが、いずれも試験介入との関連はないと判定された。inclisiran群で頻度の高い有害事象は、鼻咽頭炎(11.6%)、注射部位反応(9.1%)、背部痛(7.1%)、上気道感染症(6.6%)、インフルエンザ感染症(5.4%)であった。 著者は、「inclisiranの大部分は、主なPCSK9産生臓器である肝臓で働くため、FH患者におけるLDL-C低下効果は抗PCSK9モノクローナル抗体製剤とほぼ同等である。最大許容量スタチン治療を受けた患者のLDL-C値を、年2回投与でほぼ半減することから、アドヒアランスを改善する可能性がある」としている。

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アルナイラムとVir社、siRNAによるCOVID-19治療薬を共同開発

 Vir Biotechnology社およびアルナイラム社は、2020年3月4日、両社の既存の提携関係を拡大し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスであるSARS-CoV-2を標的とする RNAi治療薬の開発と実用化も共同で行うと発表した。 この合意で、アルナイラム社のsiRNA(低分子干渉 RNA)新規コンジュゲートの最新の肺への薬剤送達技術、およびVir Biotechnology社の感染症の専門知識と能力を合わせ、SARS-CoV-2および他のコロナウイルスによる感染症の治療薬として、一つ以上のsiRNAの開発を前進させる。 今回の共同開発ではとくに、コロナウイルスが高度に保存されたRNA領域を標的とするものとして、アルナイラム社が最近特定したsiRNAの開発に注力する。 アルナイラム社はこれまで、現存するSARS-CoVおよびSARS-CoV-2のすべてのゲノムを標的とする350以上のsiRNAをデザイン・合成してきた。これらの中で有力なsiRNA候補薬についてVir社が抗ウイルス作用をin vitroおよびin vivoで評価し、開発候補薬を選定するという。

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COVID-19、家族内感染まで3~8日/Lancet

 シンガポールでは、2020年2月、新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019、COVID-19)の3つの小規模感染者集団(cluster)―中国からの団体旅行、社内会議、教会―が特定された。同国保健省のRachael Pung氏らの研究チームは、これらの集団の疫学的および臨床的な調査の結果を、Lancet誌オンライン版2020年3月16日号で報告した。COVID-19の36例中17例でSARS-CoV-2陽性 研究チームは、COVID-19と確定診断された患者との面談および入院診療記録を用いて疫学および臨床データを収集した。同時に、実地調査を行い、原因ウイルスである重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)への接触機会や、可能性のある伝播経路を追跡した。 2020年2月15日現在、36例のCOVID-19患者が確認され、検疫で425人の濃厚接触者が見つかっている。患者は、3つの小規模感染者集団(A群[中国からの団体旅行者と小売店店員]11例、B群[社内会議出席者]20例、C群[教会訪問者]5例)と関連していた。36例のうち17例がSARS-CoV-2陽性で、2例(いずれもC群)が症状発現の14日前に中国へ旅行していた。A群の2例とB群の17例は、居住または旅行先の国の保健当局によって報告された。潜伏期間中央値4日、家族内2次感染までの間隔3~8日 感染伝播データの解析では、個々の小規模感染者集団内の初発患者は確実には特定できなかったが、A群では2件の小売店の店員と観光案内人が、2例のCOVID-19患者が見つかった中国広西チワン族自治区からの団体旅行者と接触していた(2020年1月22または23日)。C群では、5例の行動が重複したのは2020年1月19日のみで、この日に全員が同じ教会を訪れており、ここで曝露した可能性が最も高い。 B群では、報告された行動の詳細から、国際的な企業の会議中に感染した可能性が最も高いと推測された。この会議は、2020年1月20~22日に開催され、19ヵ国の支社から少なくとも111人が参加した。中国本土からの参加者17人が含まれ、このうち少なくとも1人は武漢市から来訪していた。結果として、直近の中国への渡航歴のない6人がSARS-CoV-2陽性となった。また、会議のプログラムには、事業発表会や研修会のほか、小分科会形式の討論、食事付きの歓迎会、チーム育成のためのゲーム、市内バス見学などが含まれた。 家族内感染者集団を除くと、19例から推定感染時期と発症日の情報が得られた。潜伏期間中央値は4日(IQR:3~6)であった。家族内の3次感染の可能性(初発患者ではない患者からの感染)を考慮しなければ、家族内の初発患者から2次感染患者までの発症間隔は3~8日だった。また、未知の1例の初発患者が個々の感染者集団で感染爆発の種をまいたと仮定すると、感染の31%が1人の患者(B群の53歳、男性、英国人)と関連し、32例では前方感染はないことがわかった。発熱と咳が高頻度、症状は早期消退するも検査陽性で入院長期化 SARS-CoV-2陽性の17例(年齢中央値40歳[IQR:36~51]、女性59%)では、発熱(15例、88%)と咳(14例、82%)が最も頻度の高い症状であった。咽頭痛は8例(47%)に認めた。母親から感染した生後6ヵ月の男児(A群)は、入院後に最初のスパイク状の発熱が発現するまで無症状だった。胸部X線画像上の肺陰影は入院時に8例(53%)にみられ、入院中にさらに4例で発現した。入院中にリンパ球減少(<1.1×109/L)が6例、血小板減少(<150×109/L)が4例に認められた。症状発現から入院までの期間中央値は4日(IQR:3~9)だった。 ほとんどの患者は合併症がなく、症状は数日で消退した。鼻咽頭スワブを用いたPCR検査でSARS-CoV-2陽性が持続したため、入院が長期化した(入院期間中央値6日、範囲:3~9)。鼻プロングによる酸素供給を要する患者が1例、挿管と集中治療を要する急性呼吸窮迫症を呈する患者が2例みられ、4例がロピナビル・リトナビルによる実験的治療を受けた。2020年3月7日現在、3つの小規模感染者集団に死亡例はない。軽症例を含む患者との濃厚接触者で、積極的症例探索を これらの知見を踏まえ、著者は、「SARS-CoV-2は市中感染の可能性があり、武漢市の封鎖や旅行制限の前に、中国からの旅行者が多かった国では、COVID-19の国内小規模感染者集団が存在すると推測される」と考察し、「各国は、一般的な肺炎やインフルエンザ様疾患の患者、および体調が優れない中国からの旅行者との接触者を監視することで、COVID-19の国内小規模感染者集団の検出と封じ込めの強化に重点的に取り組む必要がある。感染者集団を封じ込め、感染拡大を防ぐには、軽症例との接触を含め、患者との濃厚接触者において積極的症例探索(active case-finding)を行うことが重要である」と述べている。

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COVID-19、182ヵ国の対応・管理能力は/Lancet

 COVID-19のアウトブレークを踏まえ、公衆衛生上のリスクとイベントに対する既存の健康安全保障能力を評価する目的で182ヵ国の国際保健規則(IHR)年次報告を解析した結果を、スイス・世界保健機関(WHO)のNirmal Kandel氏らが報告した。世界各国のアウトブレークに対する予防、検知および対応の能力は大きく異なっているが、半数の国は高い運用即応性を備えており、COVID-19を含む衛生緊急事態に対して、効果的に対応できることが示唆されたという。IHRで強調されているように、感染症のアウトブレークなど公衆衛生上のリスクを管理するためには、事象を予防、検知し、対応する公衆衛生対策が不可欠である。解析を踏まえて著者は、「COVID-19に関する国家の即応能力を十分理解するには、地域リスク評価からの知見が必要である。また、アウトブレークの制御に対するグローバルな即応を強化するには、単一ではなく複数国家での能力構築(capacity building)と協力(collaboration)が必要である」とまとめている。Lancet誌オンライン版2020年3月18日号掲載の報告。182ヵ国の2018年国際保健規則年次報告などを解析 研究グループは、182ヵ国のIHR年次報告と各国の年次報告関連データを用い、(1)予防(prevent)、(2)検知(detect)、(3)対応(respond)、(4)管理(enabling function:資源と調整能力)、(5)運用準備(operational readiness)の5項目の能力について、2018年のデータを解析し、各国を5段階(レベル1:最低~レベル5:最高)で評価した。 WHOが定める6地域レベルでのデータも同様に解析した。約半数が公衆衛生上の緊急事態に対する運用準備能力あり 予防能力あるいは対応能力がレベル1または2は、それぞれ52ヵ国(28%)および60ヵ国(33%)で、その多くは低~低中所得国であった。一方、予防能力あるいは対応能力がレベル4または5は、それぞれ81ヵ国(45%)および78ヵ国(43%)で、これらの国々は運用準備が整っていることが示唆された。 138ヵ国(76%)では、他の項目と比較して検知のスコアが高かった。44ヵ国(24%)は、感染症アウトブレークなどを含む公衆衛生上のリスクと事象に対する有効な管理能力がなく(レベル1が7ヵ国[4%]、レベル2が37ヵ国[20%])、102ヵ国(56%)は管理能力がレベル4または5であった。 32ヵ国(18%)は、運用即応性が低く(レベル1が2ヵ国[1%]、レベル2が30ヵ国[17%])、104ヵ国(57%)は新興感染症のアウトブレークに対する予防、検知および管理の運用準備ができていた(レベル4が66ヵ国[36%]、レベル5が38ヵ国[21%])。

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プレゼンを鍛える総理大臣ごっこ【Dr. 中島の 新・徒然草】(316)

三百十六の段 プレゼンを鍛える総理大臣ごっこ中島「報告を聴く相手は忙しいのだから、要領よくやってくれ」若者「いつも中島先生にそう言われているので、心掛けてはいるのですけど」中島「そういえば先生は、ちょうど救急外来の発表することになっとったんやな」若者「そうなんですよ」中島「ちょうどいい機会なんで、僕を安倍総理と思ってプレゼンしてみよか」若者「なんですか、それ?」中島「相手を総理大臣と思ったら、要領よく適度な緊張感でしゃべれるやろ」若者「それはそうかもしれませんけど」中島「〇〇先生。総理大臣の安倍です。救急外来について教えてください」若者「い、いきなり総理大臣になっちゃうんですか!」やってみてわかりましたが、総理大臣ごっこというのは、意外に効果があります。中島「2次救急ではどのように患者さんを診ているのですか?」若者「患者さんがやってきたらですね、まずは最初に救急隊のほうからその方の倒れていた状況とか聴いて、もし御家族がついて来ていたら外で待ってもらって、できたらその間に、初診の人だったら受診手続きを」中島「相手は総理大臣や、そんな長い話は聴かんぞ。なんでも5秒以内や!」若者「救急隊から引き継いで、僕らは検査とか病歴とか問診とか」中島「順番が無茶苦茶や。それに病歴と問診は同じやないか」5秒以内というのは、長ったらしい内容を早口で言え、ということではありません。結論を先に言って、相手を飽きさせないことが大切です。中島「『まずは病歴と身体診察をした後に検査を行います』やろ!」若者「さすが中島先生、うまいですね」中島「中島先生やなくて安倍総理大臣や、今は」若者「わかりました、総理大臣。問診、診察、検査の順です」中島「検査とはどのようなものですか。総理大臣にもわかるように教えてください」若者「たとえば発熱の患者さんだったら、いろいろ感染症とか肺炎とか髄膜炎とかが疑われるので、血液培養とか、それと炎症の程度をみるために、白血球数とかCRPという血液中の……」中島「何っ! プーチン大統領から電話が? ちょっと席を外させてもらうよ」若者「総理、待ってください! プーチンさんは後でいいです!」中島「君が言いたいのは、血液・尿検査と心電図と画像検査ですか?」若者「そ、そうです」中島「なぜ私のほうが良く知っているんですかね」若者「総理、すみません」中島「それに『とか』をたくさん使うと、プレゼンのピントがぼけますよ」若者「気を付けます」ごっこ遊びをすると、いつの間にか役に没入してしまいます、不思議なことに。中島「では画像検査とは具体的にどのようなものですか」若者「頭部外傷の患者さんだったら、頭部CTとか、胸部レントゲンも肺炎を疑った場合には必要になってきて、時にはMRIもですね、どうしても撮らなくてはならない時は上の先生と相談した上で」中島「おや、トランプ大統領が来たみたいなんで、今日はこの辺で」若者「ちょ、ちょっと待ってください、総理。いきなりトランプ大統領ですか!」中島「端的に単純レントゲン、CT、MRIということですか?」若者「そうです。総理、ありがとうございます」中島「『画像検査は大きくわけて3つあります』と最初に言うと、相手の注意をひきつけることができますね」若者「仰る通りです、総理!」もう若者にとっての中島は、総理大臣以外の何者でもないようです。中島「それでは治療の事についてお聞きします」若者「ぜひお願いします」中島「胃がんがあったら、手術して胃をとってしまうのですか?」若者「いやいや、そんなことまでは救急室ではやりません。というか、できません」中島「そうすると主に簡単な創傷処置とか投薬とかですか?」若者「その通りです」中島「急ぐ投薬にはどのようなものがありますか?」若者「急ぐ投薬ですか。それは例えば、血圧の下がっている人は脱水とか敗血症とか考えてですね、輸液とか血圧を上げるお薬を使うために、まず静脈ルートというか、薬を入れるために腕の静脈から……」中島「習近平国家主席から至急の電話が来たみたいです」若者「ちょ、ちょっと待ってください。国家主席は待たせておきましょう」中島「あの人を待たせると後がややこしいからな。皆そうだけど」若者「5秒、5秒だけでいいです」中島「じゃあ疾患と治療をセットで言ってください。〇〇には△△とか」若者「あの肺炎だったらCTRXとかですね、感染症には抗菌薬をいって」中島「肺炎も感染症のうちではないのですか?」若者「そ、そうです」中島「じゃあ私が疾患を言うから、先生の治療を教えてください。低血糖には?」若者「グルコースです」中島「アナフィラキシーには?」若者「アドレナリンです」中島「痙攣発作には?」若者「ジアゼパムです」中島「やればできるじゃないですか」若者「ありがとうございます。総理!」アホらしい「ごっこ遊び」ですが、効果は抜群!読者の皆さんも、ぜひ試してみて下さい。最後に1句 5秒だけ 5秒ください 安倍総理!

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新型コロナ治療薬の有力候補、「siRNA」への期待

2019年末に中国湖北省武漢で最初の症例が確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界各地への感染が急速に拡大しており、世界保険機関(WHO)はパンデミック(世界的大流行)と認定した。国内でも医療機関や行政の関連機関により懸命な対策が進められている。コロナウイルスの種類コロナウイルスは、ヒトに日常的に感染するウイルスと動物から感染する重症肺炎ウイルスの2つのタイプに分類される。ヒトに日常的に感染するコロナウイルスはこれまで4種知られており、風邪の原因の10~15%を占めている。そして、ほとんどの子供はこれらのウイルスに6歳までに感染するとされている。一方で、重症肺炎ウイルスには、2002年末に中国広東省から広まった重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)および2012年にサウジアラビアで発見された中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、さらに2019年の新型コロナウイルス(SARS-CoV遺伝子と80%程度の類似性があることからSARS-CoV-2と命名された)が含まれる。COVID-19の臨床的特徴COVID-19は2020年3月22日現在、世界で30万人以上が感染し、さらに感染が拡大しているという驚異的な勢いで蔓延しており、致死率は2%程度とされている。感染者数はSARSやMERSに比べるとはるかに多いが、致死率はSARSで10%、MERSは34%であることからCOVID-19は最も低いといえる。SARSの感染源はキクガシラコウモリ、MERSはヒトコブラクダとされており、COVID-19の感染源はまだ不明であるが、SARSとよく似ていることからおそらくコウモリと考えられている。このように動物の種を超えて感染するコロナウイルスは重症化しやすい。COVID-19やSARSの感染経路は、患者と濃厚に接触することによる飛沫感染、ウイルスに汚染された環境にふれることによる接触感染が考えられているが、MERSは限定的であるとされている。新型コロナウイルスの実体コロナウイルスはプラス鎖一本鎖のRNAをゲノムとして持つウイルスで、感染すると上気道炎や肺炎などの呼吸器症状を引き起こす。コロナウイルスはそのRNAゲノムがエンベロープに包まれた構造を持ち、感染にはウイルス表面に存在する突起状のタンパク質(スパイクタンパク質)が必要である。スパイクタンパク質は感染細胞表面の受容体に結合することで、ウイルスが細胞内に取り込まれ感染するが、SARS-CoV-2の受容体はアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体であり、SARS-CoVの受容体と同じである。スパイクタンパク質は王冠(crown)に似ていることから、ギリシャ語にちなみコロナcoronaと名付けられた。COVID-19治療の現状通常1つの薬を開発するには10年以上の年月と300億円以上の費用が必要とされており、SARSやMERSなどのこれまでの重症肺炎コロナウイルス感染症に対する特異的な治療法はいまだになく、ワクチンや抗ウイルス薬も開発されていない。そのため、COVID-19に対しても現状では熱や咳などの症状を緩和するという対症療法が中心である。しかし、エイズウイルスであるHIV感染症やエボラ出血熱に対して有効性の認められた薬やインターフェロン療法がSARSやMERSに対しても有効であったことから、COVID-19での利用も検討されている。治療薬・ワクチンの開発動向現在、COVID-19に対する治療薬の開発は大手製薬会社を中心に世界的に精力的に進めれられている。ワクチンの開発も急速に進められているが、従来の組換えタンパク質や不活化ウイルスを抗原とするワクチンは製造用のウイルス株や組換え株を樹立するのに時間がかかるうえに、安定的に製造できる工程を確立するのにさらに時間がかかる。一方で、近年の次世代シークエンサー技術の進歩によりウイルスのゲノム情報が簡単に解読されるようになった。およそ3万塩基長のSARS-CoV-2の全ゲノム情報も、2020年1月中旬に中国の研究チームが公表した。そのため、ゲノム情報を利用した新たな治療法の開発も進められている。最も早く臨床試験が始まりそうなのが、米国アレルギー・感染症研究所とModerna社が開発しているメッセンジャーRNA(mRNA)をベースにしたワクチンである。遺伝子発現の流れにおいては、ゲノムDNAからmRNAが転写され、mRNAからタンパク質が翻訳される。タンパク質ではなく、ウイルス表面のスパイクタンパク質をつくるmRNAを細胞に接種するとスパイクタンパク質が産生され、それを抗原とする免疫が誘導される。mRNAは化学合成できるため、ゲノム情報が公開されてから治験薬を製造するまでにわずか40日程度であったとされている。さらに、国内ではDNAワクチンというスパイクタンパク質を発現するDNAを接種するという特徴ある開発研究も、大阪大学とバイオベンチャーのアンジェス、さらにタカラバイオが加わって行われている。しかし、このような抗体を利用する手法では、抗体依存性感染増強という、初感染よりも再感染のほうが重篤な影響を及ぼす危険性があることも指摘されており、大規模な臨床試験が必要とされる。そこで、抗体を利用せずにゲノム情報を利用した治療法として、近年、siRNA(small interfering RNA)によるRNA干渉(RNA interference, RNAi)法による核酸医薬品開発が進められている。siRNAとはsiRNAは21塩基程度の小さな二本鎖RNAであり、化学合成できる。siRNAはヒト細胞内でRISC(RNA-induced silencing complex)と呼ばれる複合体に取り込まれて一本鎖化し、その片方のRNA鎖と相補的な配列を持つRNAを切断する。コロナウイルスのようにRNAをゲノムとして持つウイルスに対しては、ゲノムから産生されたタンパク質を標的とするよりもゲノムRNAを標的にするほうがより直接的な効果が期待できる。実際、RNA干渉は植物・菌類・昆虫などではRNAウイルス感染から自身を守る生体防御機構として働く。siRNA核酸医薬品開発の最前線米国Alnylam Pharmaceuticals社が開発した世界で最初のsiRNA核酸医薬品はアミロイドニューロパチーの原因遺伝子を抑制するものであり、2018年に米国・欧州で承認され、2019年には日本でも承認された。Alnylam Pharmaceuticals社は、Vir Biotechnology社と共同で、すでにSARS-CoV-2に対する350種類以上のsiRNA候補を設計・合成しその有効性のスクリーニングを開始し、肺への送達システムも開発しているようである。また、筆者らのグループは、siRNAの配列選択法はきわめて重要であることを明らかにしており、内在の遺伝子発現にはほとんど影響を及ぼさず、感染したコロナウイルスのみを特異的に抑制するsiRNA配列を選択できる方法論を開発している。そのような方法を用いれば、たくさんのsiRNAをスクリーニングする最初のステップを回避でき、開発の時間をさらに短縮することができる。siRNA核酸医薬品への期待感染症は、過ぎてしまえば忘れられてしまう疾患である一方で、SARS-CoV-2のように、SARS-CoVの改変型ともいえるウイルスが再燃してパンデミックをひき起こす場合もある。そのため、どこまで開発に時間と費用を使えるか、すなわち、いかに効率よく感染症治療薬を開発できるかは全人類にとってきわめて重要な課題といえる。siRNA核酸医薬品は、ゲノム情報に基づいて比較的短時間で、かつ副作用を回避して特異性の高い医薬品を開発できる可能性があり、新しい時代の医薬品として大きな期待を寄せている。講師紹介

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COVID-19のCT所見、919例の系統的レビュー

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のCT画像の特徴についてさまざまな論文が公表されているが、まとまった文献レビューはまだない。今回、南カリフォルニア大学ケック医科大学のSana Salehi氏らが、PubMed、Embase(Elsevier)、Google Scholar、世界保健機関のデータベースから系統的に文献を検索、レビューし、その結果を報告した。American Journal of Roentgenology誌オンライン版2020年3月14日号に掲載。 主なレビュー結果は以下のとおり。・COVID-19の初期のCT画像では、すりガラス陰影(GGO)が両側肺野、多葉性に末梢または後部に分布し、主に下葉に見られた。・初期のCT画像で、GGOに浸潤影が重なった非定型の所見が少数の患者(主に高齢者)に見られた。・まれに中隔肥厚、気管支拡張症、胸膜肥厚、胸膜下病変が見られた(主に後期)。・胸水、心膜液、リンパ節腫脹、cavitation、CT Halo sign、気胸が疾患の進行とともにまれに見られることがある。・中期のCT画像では、GGOの数・大きさの増加、GGOの多巣性浸潤影への進行、中隔肥厚、crazy-paving pattern(すりガラス陰影内部に網状影を伴う所見)が見られ、症状発現後10日前後でCT所見が最も重症となった。・COVID-19患者がICUに移る最も多い原因は急性呼吸窮迫症候群であり、この患者集団の主な死因である。・臨床的改善に相当する画像所見は通常、発症後14日目以降に見られ、浸潤影が徐々に解消され、病変や関わる葉の数が減少する。

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薬剤耐性結核、ベダキリン+pretomanid+リネゾリドが有効/NEJM

 高度薬剤耐性結核症患者の治療において、ベダキリン+pretomanid+リネゾリド併用療法による26週間の治療は、治療終了から6ヵ月時のアウトカムが良好な患者の割合が90%と高く、有害事象は全般に管理可能であることが、南アフリカ共和国・ウィットウォータースランド大学のFrancesca Conradie氏らの検討(Nix-TB試験)で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年3月5日号に掲載された。高度薬剤耐性結核患者の治療選択肢は限られており、アウトカムは不良である。pretomanidは、最近、超多剤耐性(XDR)肺結核症(イソニアジド、リファンピシン、フルオロキノロン系抗菌薬、および1剤以上の注射薬[アミカシン、カプレオマイシン、カナマイシン]に抵抗性)または複雑型多剤耐性(MDR)肺結核症(イソニアジド、リファンピシンに抵抗性で、治療に反応しない、または副作用で治療が継続できない)の成人患者の治療において、ベダキリンおよびリネゾリドとの併用レジメンが、「限定的集団における抗菌薬および抗真菌薬の開発経路(Limited Population Pathway for Antibacterial and Antifungal Drugs)」の下で、米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ている。経口3剤の有用性を評価する非盲検単群試験 本研究は、結核菌に対する殺菌活性を有し、既知の耐性がほとんどない3つの経口薬の併用の有用性を評価する非盲検単群試験であり、現在も南アフリカの3施設で追跡調査が継続されている(TB Allianceなどの助成による)。 対象は、XDR結核症、および治療が奏効しなかったか、副作用のために2次治療レジメンが中止されたMDR結核症の患者であった。 ベダキリンは、400mgを1日1回、2週間投与された後、200mgを週に3回、24週間投与された。pretomanidは200mgを1日1回、26週間投与され、リネゾリドは1,200mgを1日1回、最長26週間投与された(有害事象によって用量を調節した)。 主要エンドポイントは、不良なアウトカムの発生とし、細菌学的または臨床的な治療失敗、あるいは治療終了から6ヵ月までの追跡期間中の再発と定義した。6ヵ月時に、臨床症状が消失し、培養陰性で、不良なアウトカムに分類されなかった患者を良好なアウトカムとした。XDR例とMDR例で、有効性に差はない 2015年4月16日~2017年11月15日の期間に109例(XDR例71例、MDR例38例)が登録された。ベースラインの年齢中央値は35歳(範囲:17~60)、男性が52%、黒人が76%であった。HIV陽性例が51%で、胸部X線画像で空洞形成が84%にみられ、BMI中央値は19.7(12.4~41.1)であった。 intention-to-treat(ITT)解析では、治療終了から6ヵ月時に11例(10%)が不良なアウトカムを呈し、98例(90%、95%信頼区間[CI]:83~95)が良好なアウトカムであった。修正ITT解析およびper-protocol解析でも結果はほぼ同様であった。XDR例の良好なアウトカムの患者は63例(89%、79~95)、MDR例では35例(92%、79~98)だった。 不良なアウトカムの11例のうち、死亡が7例(6例は治療期間中に死亡、1例は追跡期間中に不明な原因により死亡)で、治療期間中の同意撤回が1例、追跡期間中の再発が2例、追跡不能が1例であった。 治療期間中に、全例で1つ以上の有害事象の発現または増悪が認められた。重篤な有害事象は19例(17%)にみられ、HIV陽性例と陰性例で頻度は類似していた。リネゾリドの毒性作用として予測された末梢神経障害が81%に、骨髄抑制は48%に発現し、頻度は高かったものの管理可能であったが、リネゾリドの減量または中断が多かった。 著者は、「XDRおよびMDRという治療困難な結核症で90%という高い治療成功率が達成された。これは薬剤感受性結核症における標準治療(イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エタンブトール)の成績とほぼ同等である」としている。

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COVID-19標準治療薬を決めるべく国際共同治験を実施/国立国際医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の国内発生の初期から本感染症患者の診療にあたってきた国立国際医療研究センター(NCGM)は、3月23日にメディア勉強会を開催し、アメリカ国立衛生研究所(NIH)と共同で抗ウイルス薬remdesivir(ギリアド・サイエンシズ)の医師主導治験を行うと発表した。勉強会ではNCGMの国際感染症センター長の大曲 貴夫氏が、治験の概要と今後の展開について説明した。どれがCOVID-19の標準治療薬として有望か 大曲氏は冒頭で高齢男性のCOVID-19症例を呈示し、「発症から重症化への進行が速いのが特徴」と述べ、人工呼吸器をつけて容体が好転し装置を外すまで1ヵ月を要したという。また、COVID-19では、致死率が高齢になるほど上がるとの中国の報告を示した。 現在、わが国で検討中の候補薬は、抗HIV薬ロピナビル・リトナビル(商品名:カレトラ)、インフルエンザ治療薬ファビピラビル(同:アビガン)、吸入ステロイド薬シクレソニド(同:オルベスコ)、セリンプロテアーゼ阻害薬ナファモスタット(同:フサンほか)/カモスタット(同:フオイパンほか)、抗ウイルス薬remdesivir(日本未承認)の5剤であり、ウイルスの増殖を抑える機能を持つ治療薬が期待されている。今後、「薬剤の不用意な使用を控えるために、まず標準治療薬を決めることが重要」と同氏は治験の意義を説明した。 今回、治験で使用されるremdesivirは、ウイルスRNA産生の減少を引き起こし、RSウイルス、コロナウイルスなどの1本鎖RNAウイルスに対し抗ウイルス活性を示すことが見いだされている。実際、2019年のエボラ出血熱流行時に使用され、安全性プロファイルも確立されている。また、SARS-CoV-2を含む複数のコロナウイルスでの抗ウイルス活性も示されているという。アダプティブCOVID-19治療試験の概要 remdesivirの治験は、本剤の安全性および有効性を検証する他施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較臨床試験で実施され、「アダプティブCOVID-19治療試験」(ACTT)と呼称されている。また、試験の特徴としては、アダプティブであるので、別の治療法が有効であると判明した場合、その治療法が新たな試験的治療法と比較するための対照群となる点である。 ACTTは、日本だけでなくアメリカ、韓国、シンガポールなど約75の医療機関で実施される国際多施設共同試験であり、当初の被験者数は440例とされている(ただし新治療群の追加により再計算もあり得る)。主要評価項目は15日における被験者の臨床状態で判断され、その評価項目は死亡、入院(5態様)、入院なし(2態様)など8項目で評価される。 試験の選択基準では、COVID-19感染を示唆する症状で入院している患者で試験手順などを順守・同意する患者などが対象となる(ALT/AST高値、eGFR50未満または透析者、妊娠または授乳中などの患者は除外される)。 治験介入は2群で実施、被験者は無作為化され実薬またはプラセボの投与を受ける。実薬は1日目に200mg負荷用量を静脈内投与され、入院期間中に100mg維持用量が1日1回静注投与される。治験の結果は、ギリアド・サイエンシズ社から公表される予定。 今回の治験以外にもNCGMでは、COVID-19の包括的治療・研究開発戦略として症状により段階的にシクレソニド、remdesivir、ファビピラビル、ナファモスタット、 救命治療(免疫調整薬など)などによる治療の研究を行う。 大曲氏は、最後に本症の患者登録による観察研究に触れ「1人1人の患者登録が大事になる。患者からの細かい情報が今後の研究を進展させるので、登録をお願いしたい」と期待をこめた。

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036)患者さんとの攻防戦、コロナが切り札に…【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第36回 患者さんとの攻防戦、コロナが切り札に…しがない皮膚科勤務医デルぽんです☆コロナ騒動で慌ただしい毎日ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。不要不急の外出自粛により、一時患者数が落ち込んだ皮膚科外来でしたが、先週あたりから徐々に持ち直してきました。以前記事にした、“たまに来る人に限って多めに薬を出してもらいたがる”法則。2~3ヵ月に一度ふらっと来て、たくさんの外用薬を要求する患者さんがいらっしゃいます。帰り際、より多めに薬を出してもらおうとする患者さんと、適切に管理したい主治医(私)との間で、ちょっとした攻防戦になることも。適正量と比較して、もう十分に多めの本数を処方しているのに、まだまだ上を目指そうと(?)頑張る患者さん。負けじと粘っていたら「コロナでこの先どうなるかわからないから」と…!そもそも数ヵ月に1回しか来ないのに、その切り札を出されると強くは言えず。内心で(その受診ペースなら、次来るころにはきっと終息しているでしょう!)と思いながらも、ほんの気持ちだけ量を増やして処方しました。この騒動により、定期的に受診されていた患者さんのペースも乱れがち。予定日を過ぎても見かけない患者さんたちが、限られた薬でどう過ごしているのか少し気掛かりです。早く落ち着くことを祈っています。それでは、また~!

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新型コロナウイルスの侵入過程を阻止する薬剤を同定/東大医科研

 東京大学医科学研究所分子発癌分野の井上 純一郎教授らのグループは、3月18日に「新型コロナウイルス感染初期のウイルス侵入過程を阻止、効率的感染阻害の可能性がある薬剤を同定」したとする会見を開き、同時にプレスリリースを同研究所のホームぺージに公開した。 現在世界各国で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬、ワクチンの開発が行われている中で同グループは、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2が細胞に侵入する最初の過程であるウイルス外膜と細胞膜との融合を、セリンプロテアーゼ阻害剤ナファモスタット(商品名:フサンほか)が、従来発表されている融合阻害剤カモスタット(同:フオイパンほか)に比べて10 分の1以下の低濃度で膜融合を阻害することを見出した。 現在の研究でSARS-CoV-2が人体に感染するには、細胞の表面に存在する受容体タンパク質(ACE2受容体)に結合したのち、ウイルス外膜と細胞膜の融合を起こすことが重要であり、この融合を阻害すると感染を阻害することができる。 同グループでは、MERSコロナウイルスでの研究結果1)をもとに、ナファモスタットやカモスタットの作用を調べたところ、「ナファモスタットは1-10nMという低濃度で顕著にウイルス侵入過程を阻止した。このことから、ナファモスタットはSARS-CoV-2感染を極めて効果的に阻害する可能性を持つと考えられる」と示唆している。 また、ナファモスタット、カモスタットはともに急性膵炎などの治療薬として、「すでに国内で長年処方されてきた薬剤であり、安全性については十分な臨床データが蓄積され、速やかに臨床治験を行うことが可能」としている。 両剤の特徴として「ナファモスタットは点滴静注のため、投与後の血中濃度は今回の実験で得られたSARS-CoV-2 Sタンパク質の膜融合を阻害する濃度を超えることが推測され、臨床的にウイルスのヒト細胞内への侵入を抑えることが期待される。一方、カモスタットは経口剤であり、内服後の血中濃度はナファモスタットに劣ると思われるが、他の新型コロナウイルス薬剤と併用することで効果が期待できるかもしれない」と説明している。 なお、本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)による感染症研究国際展開戦略プログラム(J-GRID)の支援を受けている。■参考新型コロナウイルス感染初期のウイルス侵入過程を阻止、効率的感染阻害の可能性がある薬剤を同定

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COVID-19への抗HIV薬ロピナビル・リトナビル、RCTで有意差認めず/NEJM

 重症COVID-19入院成人患者において、抗HIV薬のロピナビル・リトナビルは標準治療よりも有効とはいえないとの見解を、中国・National Clinical Research Center for Respiratory DiseasesのBin Cao氏らが、199例を対象に行った非盲検無作為化比較試験の結果、示した。SARS-CoV-2による重症疾患の効果的な治療としての薬物療法はまだ判明していない。結果を踏まえて著者は、「重症患者においてさらなる試験を行い、効果的と思われる治療の確認・除外を行う必要がある」と述べている。NEJM誌オンライン版2020年3月18日号掲載の報告。標準治療に加えてロピナビル・リトナビルを1日2回14日間投与 研究グループは、検査でSARS-CoV-2感染が確認され、COVID-19による肺炎が胸部画像検査で認められ、循環空気呼吸時に動脈血酸素飽和度(SaO2)94%以下、または酸素分圧(PaO2)/吸入酸素濃度(FiO2)が300mmHg未満の18歳以上の患者を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方には標準治療に加えロピナビル・リトナビル(それぞれ400mgと100mg)を1日2回14日間投与し、もう一方の群には標準治療のみを行った。 主要エンドポイントは、臨床的改善までの期間で、7分位尺度で2ポイント以上の改善または退院のいずれか早いほうとした。臨床的改善までの期間、28日死亡率も、標準治療のみ群と比べて有意差なし 適格被験者199例が無作為化を受けた(ロピナビル・リトナビル群99例、標準治療群100例)。 臨床的改善までの期間について、ロピナビル・リトナビル群と標準治療群に有意差はなかった(臨床的改善に関するハザード比[HR]:1.24、95%信頼区間[CI]:0.90~1.72)。 28日死亡率も、ロピナビル・リトナビル群19.2%、標準治療群25.0%で有意差はなかった(群間差:-5.8ポイント、95%CI:-17.3~5.7)。また、さまざま時点でウイルスRNAが検出可能だった患者の割合も両群で同程度だった。 修正ITT解析では、ロピナビル・リトナビル群は標準治療群に比べ、臨床的改善までの期間中央値が1日短いことが観察された(HR:1.39、95%CI:1.00~1.91)。 ロピナビル・リトナビル群では消化管関連の有害事象発現頻度が高かったが、重篤な有害事象の発現頻度は標準治療群で高かった。ロピナビル・リトナビル群の13例(13.8%)が、有害事象のために早期に服用中止となった。

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重症COVID-19肺炎にアクテムラの第III相試験開始/ロシュ

 ロシュ社(スイス)は3月19日、米国食品医薬品局(FDA)と連携し、米国生物医学先端研究開発局(BARDA、米国保健福祉省の事前準備・対応担当次官補局の一部門)と共同で無作為化二重盲検プラセボ対照第III相臨床試験を開始すると発表した。同試験では、重症 COVID-19肺炎による成人入院患者におけるアクテムラ(一般名:トシリズマブ)と標準的な医療措置の併用の安全性および有効性をプラセボと標準的な医療措置の併用と比較する。 同試験は、上記の条件でアクテムラを投与する初の国際臨床試験で、米国を含む世界の患者約330例を対象として4月上旬から登録開始予定で、主要評価項目および副次評価項目は、臨床状態、死亡率、人工呼吸器および集中治療室(ICU)に関わる変数としている。 現在までに、COVID-19肺炎患者治療のためのアクテムラの有効性および安全性を検討する複数の独立した臨床試験が実施されているが、COVID-19の治療におけるアクテムラの安全性・有効性に関して十分に管理された研究はなく、公表されたエビデンスも限られている。 なお現在、アクテムラは、FDAを含む保健当局から、COVID-19治療薬としては承認されていない。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第1版/厚生労働省

 厚生労働省より、『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第1版』の周知について、事務連絡が発出されている。本手引きは2020年3月6日時点の情報を基に作成され、17日に第1版が発行された。 概要は以下のとおり。はじめに1. 病原体・臨床像 1)感染経路・潜伏期・感染可能期間・季節性 2)臨床像 3)血液検査所見 4)画像所見2. 症例定義・診断・届出 1)症例定義 2)病原体診断 3)届出3. 治療 1)人工呼吸実施時の注意点 (1)気管挿管手技 (2)人工呼吸管理 (3)ECMO (4)中国・武漢からの報告および今後の集中治療の方向性4. 抗ウイルス薬5. 院内感染防止 1)個人防護具 2)換気 3)環境整備 4)廃棄物 5)患者寝具類の洗濯 6)食器の取り扱い 7)死後のケア 8)職員の健康管理6. 退院・生活指導 1)退院等基準 2)生活指導

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抗体検査【今、知っておきたいワクチンの話】総論 第4回

はじめに2019年4月から、風疹対策として、特定年齢の男性を対象とした抗体検査とワクチンの提供サービスが始まった。しかし、実際にワクチン接種の効果を判定するために測定された抗体価の解釈は難しい。ここでは抗体価検査全般とその解釈について述べる。抗体検査について理解を深める前に以下の3点に注意しておきたい。(1)現在入手可能なワクチンは、抗体を産生することで疾患を予防するという機序が主ではあるが、実際に病原体に曝露した際には細胞性免疫をはじめとした他のさまざまな免疫学的機序も同時に作用することがわかっている。したがって、抗体価と発症/感染予防には必ずしも相関性がないことがある。(2)免疫の有無は、年齢、性別、主要組織適合抗原(major histocompatibility complex::MHC)などによっても左右される。(3)“免疫能”の定義をどこにおくか(侵襲性感染症/粘膜面における感染の予防、感染/発症の予防)によっても判定基準が変わってくる。以上を踏まえた上で読み進めていただきたい。抗体検査法一般的に用いられる方法としては次の5つがある。EIA法(Enzyme-Immuno-Assay:酵素免疫法)/ ELISA法(Enzyme-Linked Immuno Sorbent  Assay:酵素免疫定量法)HI法(Hemagglutination Inhibition test:血球凝集抑制反応)NT法(Neutralization Test:中和反応)CF法(Complement Fixation test:補体結合反応)PA法(Particle Agglutination test:ゼラチン粒子凝集法)このうちCF法は感度が低いため、疾患に対する免疫の有無を判断する検査法としては適さない。ワクチンの効果判定や病原体に対する防御能の測定にあたって最も有効とされているのはPRN法(plaque reduction neutralization)による中和抗体の測定である。しかし、中和抗体の測定は手技が煩雑で判定にも時間がかかるため、実際には様々な抗体の中から発症予防との相関があるとされるもので、検査室での測定に適したものが使用されることが多い。各疾患のカットオフ値について麻疹および風疹については、発症予防および感染予防に必要とされる抗体価が検査別にある程度示されている(表1)1)が、ムンプス、水痘については未確定である。表1 麻疹・風疹における抗体価基準1)画像を拡大する1)麻疹(Measles)麻疹に対する免疫の有無を判断するうえで最も信頼性が高い検査法はPRN法による中和抗体の測定であるが、前述のように多数の検体のスクリーニングには向いていない。WHOは中和抗体(PRN法)で120mIU/mL以上をカットオフとしている2)。これは中和抗体(PRN法)≧120mIU/mLであればアウトブレイク時にも発症例が見られなかったことによる。一方、わが国で用いられている環境感染学会の医療従事者に対するワクチンガイドライン3)ではIgG抗体(EIA法)で16以上を陽性基準としており、国際単位へ変換すると720mIU/mL(EIA価×45=国際単位(mIU/mL))となる。麻疹抗体120mIU/mLは発症予防レベルであるが、報告によっては120~500mIU/mLでも発症がみられたとするものもある4)。したがって曝露の機会やウイルス量が多い危険性のある医療従事者ではより高い抗体価を求めるものとなっている。2)風疹(Rubella)古くから用いられているのはHI法であり、8倍以上が陽性基準とされている。HI法と他の検査を用いた場合の読み替えに関しては、国立感染症研究所の公開している情報が有用である5)。1985年にNCCLS(National Committee on Clinical Laboratory Standards)は風疹IgG抗体>15IU/mLを、発症予防レベルに相当する値として免疫を有している指標とした。1992年に数値は10IU/mLに引き下げられたが、それ以降のカットオフの変更はなされていない。その後の疫学データなどから独自にカットオフを引き下げて対応している国もある6)。環境感染学会のガイドラインではIgG(EIA法:デンカ生研)≧8.0を十分な抗体価としているが、国際単位へ変換すると18.4IU/mL(EIA価×2.3=国際単位(IU/mL))となり、高めの設定となっていることがわかる。これは麻疹と同様に曝露の機会や多量のウイルス曝露が起こる危険性があるためである。ただし、HI法で8倍以上、EIA法で15IU/mL以上の抗体価を有している場合でも風疹に罹患したり、先天性風疹症候群を発症したりといった報告もある7)。風疹における感染予防に必要な抗体価として、国際的なコンセンサスを得た値は示されていない。3)ムンプス(Mumps)ムンプスに対する免疫の有無を正確に測定する方法は、現在のところはっきりとはわかっていない8)。中和法で2倍もしくは4倍の抗体価が発症予防に有効であったとする報告がみられる一方、2006年に米国の大学で起こったアウトブレイクの際にワクチン株および流行株に対する中和抗体(PRN法)、およびIgG抗体(EIA法)を測定したところ、発症者は非発症者に比べて抗体価が低い傾向にはあったが、その値はオーバーラップしており、明確なカットオフを見出すことはできなかった9)。環境感染学会ではEIA価で4.0以上を陽性としているが3)、その臨床的な意義は不明である。4)水痘(Varicella)WHOが規定する発症予防に十分な抗体価はFAMA(fluorescent antibody to membrane antigen)法で4倍以上もしくはgrycoprotein(gp)ELISA法で5U/mL以上である10)。FAMA法で4倍以上の抗体価を保有していた者のうち家庭内曝露で水痘を発症したのは 3%以下であった。gp ELISA法は一般的な検査方法ではなく、偽陽性が多いのが欠点である。わが国において両検査は一般的ではなく、代替案として、中和法で4倍以上を発症予防レベルと設定し、IAHA(immune adherence hemagglutination:免疫付着赤血球凝集)法で4倍以上、EIA法で4.0以上をそれぞれ十分な抗体価としているが3)、その臨床的な意義は不明である。その他の代表的なワクチン予防可能疾患を含めた発症予防レベルの抗体価示す(表2)11,12)。一般的に抗体価測定が可能な疾患としてA型肝炎、B型肝炎について述べる。表2 代表的なワクチン予防可能疾患の発症予防レベル抗体価11,12)画像を拡大するND:未確定* :侵襲性肺炎球菌感染症の発症予防5)A型肝炎(Hepatitis A)13,14)A型肝炎ウイルスに対して、有効な免疫力を有するとされる抗体価の基準値は明確には示されていない。測定法にもよるが、有効な抗体価は10~33mIU/mLとされており、VAQTA(商標名)やHAVARIX(商標名)といったワクチンの臨床試験における効果判定は抗体価10mIU/mL以上を陽性としている。実臨床の場ではワクチン接種前に要否を確認するための測定は行うが、ワクチン接種後の効果判定として通常は測定しない。6)B型肝炎(Hepatitis B)3回のワクチン接種完了後1~3ヵ月の時点でHBs抗体価測定を行う。HBs抗体≧10mIU/mLが1回でも確認できれば、その後抗体価が低下しても曝露時に十分な免疫応答が期待できることから、WHOは免疫正常者に対してワクチンの追加接種は不要としている15)。おわりにここまで述べてきたように、各ウイルスに対する抗体価の基準についてはわかっていないことが多い。これは感染防御に働くのが単一の機構のみではないことに起因する。国際基準とわが国の基準の違いも前述の通りである。麻疹、風疹、ムンプス、水痘に関しても、代替案としての抗体検査が独り歩きしてしまっているが、個人の感染防御という点において重要なのは、抗体価ではなく1歳以上における2回のワクチン接種歴である。接種記録がなければ抗体陽性であってもワクチン接種を検討するべきである。まれな事象として2回の接種歴があっても各疾患が発症したとする報告はあるが、追加のワクチン接種で抗体価を上昇させることで、そのような事象を減らすことができるかは現時点では明確な答えは出ていない。現在、環境感染学会ではガイドラインの改訂がすすめられており、2020年1月まで第3版のパブリックコメントが募集された。近日中に改訂版が公表される予定であり、基本的には1歳以上で2回の確実な接種歴を重視した形になると考えられる16)。抗体価の測定に頼るのではなく、小児期から確実に2回の接種率を上昇させることでコミュニティーからウイルスを根絶すること、そして個人および医療機関でその記録の保管を徹底することの方が重要である。1)庵原 俊. 小児感染免疫. 2011;24:89-95.2)The immunological basis for immunization series. Module 7: Measles Update 2009. World Health Organization, 2009. (Accessed 03/25, 2019)3)日本環境感染症学会ワクチンに関するガイドライン改訂委員会. 医療関係者のためのワクチンガイドライン 第2版. 日本環境感染学会誌. 2014;29:S1-S14.4)Lee MS, et al. J Med Virol. 2000;62:511-517.5)風疹抗体価の換算(読み替え)に関する検討. 改訂版(2019年2月改定). (Accessed 03/20, 2019)6)Charlton CL, et al. Hum Vaccin Immunother. 2016;12:903-906.7)The immunological basis for immunization series. Module 11: Rubella. World Health Organization, 2008.(Accessed 03/25, 2019)8)The immunological basis for immunization series. Module 16: Mumps. World Health Organization, 2010.(Accessed 03/25, 2019)9)Barskey AE, et al. J Infect Dis. 2011;204:1413-1422.10)The immunological basis for immunization series. Module 10: Varicella-zoster virus. World Health Organization, 2008.(Accessed 03/25, 2019)11)Plotkin SA,et al(eds). Plotkin's Vaccines(7th Edition). Elsevier. 2018:35-40.e4.12)Plotkin SA. Clin Vaccine Immunol. 2010;17:1055-1065.13)The immunological basis for immunization series. Module 18: Hepatitis A. World Health Organization, 2011. (Accessed 03/25, 2019)14)Plotkin SA, et al(eds). Plotkin's Vaccines (Seventh Edition).Elsevier.2018:319-341.e15.15)The immunological basis for immunization series. Module 22: Hepatitis B. World Health Organization, 2012.(Accessed 03/25,2019)16)医療関係者のためのワクチンガイドライン 第3版. 2020.講師紹介

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COVID-19とインフルの重感染例/CDC

 呼吸器疾患に影響するウイルスが共検出される可能性は周知の事実である。今回、中国・中日友好医院のXiaojing Wu氏らは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)とA型インフルエンザウイルスに重感染した症例について報告。上気道の検体検査が偽陰性になる、または、ほかの呼吸器ウイルスとの重感染によって新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が過少診断される可能性を示唆した。研究者らは「明らかな病因が特定された場合、とくに臨床マネジメントの決定に影響を及ぼす場合は、より広範なウイルス検査が必要になるかもしれない」としている。CDCのEMERGING INFECTIOUS DISEASES誌オンライン版2020年3月11日号のリサーチレターに報告された。 今回報告された症例は2019年12月18日~2020年1月22日まで武漢に滞在していた69歳男性で、この症例の臨床経過は以下のとおり。<帰宅後1月23日>発熱と空咳が出現、同日に中日友好医院の診療所を受診。血液検査:白血球数5.70×109/L(参照範囲3.5~9.5×109/L)およびリンパ球数2.18×109/L(参照範囲1.1~3.2×109/L)。胸部CT:肺の右下葉にすりガラス状結節を認めた。鼻咽頭スワブによる採取検体をrRT-PCR検査した結果、SARS-CoV-2陰性、A型インフルエンザウイルス陽性だったため、オセルタミビルによる治療を行った。その後退院し、自宅待機した。<退院後1月30日>発熱が持続し呼吸困難の悪化を訴え、病院を再受診。急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を呈していたことから、A型インフルエンザウイルスによる重度の肺炎として治療が行われた。血液検査:白血球数8.23×109/L、リンパ球数0.77×109/L。胸部レントゲン:両側肺に滲出期のびまん性陰影を認めた。<再入院から4日後>酸素化と胸部症状は改善。潜在的な病原体を特定するため、気管支鏡検査を実施しメタゲノム解析(mNGS)用の 気管支肺胞洗浄液(BALF)を得た。<2月5日>同時に採取された鼻咽頭スワブは陰性だったが、mNGSはSARS-CoV-2ゲノムの98.69%をカバーし、99.8%の同一性を示したため、翌日、患者はクリティカルケアを行うために指定病院に移送された。この症例から研究者らはCOVID-19診断における2つの課題を強調した。1)上気道検体からのSARS-CoV-2検出感度は不十分な可能性がある。今回、鼻咽頭スワブ検体によるrRT-PCR法では、患者が集中治療室入室前はSARS-CoV-2が陰性だったが、mNGSを併用したことで特定された。したがって、臨床的に疑いが強い場合には、BALFのような適切な検体が必要かもしれない。2)COVID-19の一般的な臨床症状(発熱、咳、呼吸困難など)がインフルエンザの症状に類似するため、他の呼吸器疾患とCOVID-19の区別は困難である。COVID-19患者の血液検査では白血球とリンパ球の減少、胸部CTではすりガラス状の混濁と両側肺病変が見られる。しかし残念ながら、A型インフルエンザウイルスおよび他ウイルスによる呼吸器感染症もこれらの特性を有している。この場合のSARS-CoV-2とA型インフルエンザウイルスの同時検出は、とくにSARS-CoV-2が陰性であるが別のウイルスが陽性である患者の場合、検出に対する追加の課題が残っていると考えられる。

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新型コロナ、エアロゾルで3時間生存可能/NEJM

 アメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のNeeltje van Doremalen氏らは、エアロゾル(粒子径5μm未満)での新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)とコロナウイルス(SARS-CoV-1)の表面安定性について比較した結果、SARS-CoV-2はエアロゾル内で3時間、物質の表面上では2~3日生存できることを示唆した。NEJM誌オンライン版2020年3月17日号のCORRESPONDENCEに報告した。 研究者らはSARS-CoV-2とSARS-CoV-1のエアロゾル中の安定性を評価するためにSARS-CoV-2(MN985325.1)およびSARS-CoV-1Tor2(AY274119.3)株を用い、各ウイルスのエアロゾルや物質表面上(プラスチック、ステンレス鋼、銅、段ボール)での減衰率を調査した。 主な結果は以下のとおり。・SARS-CoV-2はエアロゾルの状態で3時間生存可能だった。感染力価として空気1Lあたりの50%組織培養感染値量(TCID50)は103.5から102.7に低下、SARS-CoV-1の観察結果(TCID50:104.3から103.5へ低下)と類似していた。・物質表面での生存について、SARS-CoV-2とSARS-CoV-1で類似し、それぞれ銅や段ボールよりもプラスチックやステンレス鋼の表面で安定した。また、これらへの表面の付着72時間後までを観察した結果、ウイルス力価は大幅に低下した(プラスチックのTCID50/mLは、SARS-CoV-2で103.7から100.6、SARS-CoV-1で103.4から100.7へ低下。48時間後のステンレス鋼のTCID50/mLは、SARS-CoV-2で103.7から100.6、SARS-CoV-1で103.6から100.6へ低下)。・銅では、4時間後にSARS-CoV-2が、8時間後にSARS-CoV-1が測定されなくなった。 ・段ボールでは、8時間後にSARSCoV-1が、24時間後にSARS-CoV-2が測定されなくなった。・両ウイルスは、すべての実験条件でウイルス力価が指数関数的に減少した。・エアロゾル状態でのSARS-CoV-2とSARS-CoV-1の半減期は類似しており、推定中央値は約1.1〜1.2時間だった(95%信頼区間[CI]:0.64〜2.64、0.78~2.43)。・両ウイルスの半減期は銅でも同じ傾向を示し、段ボールではSARSCoV-1よりSARS-CoV-2のほうが長かった。・両ウイルスの最長生存率をステンレスとプラスチックで調べたところ、SARS-CoV-2の半減期の推定中央値は、それぞれ5.6時間と6.8時間だった。・両ウイルスの半減期の推定差について、段ボール以外は小さかった。

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