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COVID-19肺炎、最大の悪化因子は喫煙歴か

 喫煙歴が、新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19肺炎)の最大のリスク因子かもしれない。今回、中国湖北省・華中科技大学のWei Liu氏らは、78例の入院症例における予後別の背景因子を調査した。Chinese Medical Journal誌オンライン版2020年2月28日号に掲載。 本研究は、2019年12月30日~20年1月15日に、武漢の3つの3次病院に入院し、PCR検査で新型コロナウイルス陽性となった患者が登録された。個人データ、臨床検査値、画像所見、臨床データが収集され、統計解析された。患者は臨床タイプによって悪化群と改善・安定群に分類され、ロジスティック回帰分析により、疾患進行のリスク因子を調べた。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19肺炎患者78例が登録された。・入院2週間後の状態評価では、11例(14.1%)が悪化し、67例(85.9%)が改善・安定していた。・悪化群は、改善・安定群と比較して有意に年齢が高かった(中央値:66歳[四分位範囲(IQR):51~70] vs.37歳[同:32~41]、U=4.932、p=0.001)。・悪化群は、喫煙歴のある患者が有意に多かった(27.3% vs.3.0%、x2=9.291、p=0.018)。・最も一般的な初期症状は発熱で、入院時の最高体温は、改善・安定群と比較して悪化群のほうが有意に高かった(中央値:38.2℃[IQR:37.8~38.6] vs.37.5℃[同:37.0~38.4]、p=0.027)。・呼吸不全に陥った患者の割合(54.5% vs.20.9%、x2=5.611、p=0.028)と、呼吸数(中央値:34回[IQR:18~48] vs.24回[同:16~60]、U=4.030、p=0.004)も、改善・安定群より悪化群が有意に多かった。・CRPは、改善・安定群と比較して悪化群で有意に上昇した(中央値:3.89mg/dL[IQR:14.3~64.8] vs.1.06mg/dL[同:1.9~33.1]、U=1.315、p=0.024)。・血清アルブミンは、改善・安定群よりも悪化群で有意に低かった(36.62±6.60 vs.41.27±4.55g/L、U=2.843、p=0.006)。・悪化群の患者は、人工呼吸器などの呼吸補助を受ける可能性が高かった(x2=16.01、p=0.001)。・多変量ロジスティック分析によると、年齢(オッズ比[OR]:8.546、95%信頼区間[CI]:1.628~44.864、p=0.011)、喫煙歴(OR:14.285、95%CI:1.577~25.000、p=0.018)、入院時の最高体温(OR:8.999、95%CI:1.036~78.147、p=0.046)、呼吸不全(OR:8.722、95%CI:1.942~40.000、p=0.016)、アルブミン低値(OR:7.353、95%CI:1.098~50.000、p=0.003)、CRP高値(OR:10.530、95%CI:1.224~34.701、p=0.028)が、疾患進行のリスク因子だった。 本研究で特定されたCOVID-19肺炎の予後に対するリスク因子は、今後の疾患管理に役立つ可能性がある。

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COVID-19、抗体検出は発症2週間後からか/感染研

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への感染が拡大する中、検査時の二次感染リスクが低い抗体検査への期待が高まっている。しかし、その感度・特異度に関する報告は限られており、臨床現場での利用の仕方や結果の解釈について見解は定まっていない。国立感染症研究所では、市販のイムノクロマト法による抗体検出試薬による、発症後日数ごとの抗体陽性率を調査。その結果をホームページ上で公開した。<調査概要>検体:SARS-CoV-2遺伝子増幅法により確定された、COVID-19患者血清の残余検体(37症例・87検体)使用試薬:市販のイムノクロマト法による抗体検出試薬(A社製) 発症後日数※1ごとの抗SARS-CoV-2 IgM、IgG抗体陽性率は以下のとおり。Day1~6 IgM抗体:検体数14、陽性数0[陽性率0.0%] IgG抗体:検体数14、陽性数1※2[陽性率7.1%]Day7~8 IgM抗体:検体数20、陽性数2[陽性率10.0%] IgG抗体:検体数20、陽性数5[陽性率25.0%]Day9~12 IgM抗体:検体数21、陽性数1[陽性率4.8%] IgG抗体:検体数21、陽性数11[陽性率52.4%]Day13~ IgM抗体:検体数32、陽性数19[陽性率59.4%] IgG抗体:検体数32、陽性数31[陽性率96.9%]※1:発症日をDay1とする※2:Day1でIgG抗体陽性となる検体が1検体あり、結果の解釈には注意が必要 本調査で明らかになった点は、以下のようにまとめられている。・いずれの期間においてもIgM抗体陽性率はIgG抗体陽性率に比べて低く、本調査ではIgM抗体陽性となった血清はすべてIgG抗体陽性であった。・発症6日後までのCOVID-19患者血清ではウイルス特異的抗体の検出は困難であり、発症1週間後の血清でも検出率は2割程度にとどまる。・抗体陽性率は経時的に上昇していき、発症13日以降になると、ほとんどの患者で血清中のIgG抗体は陽性となった。・一方、IgM抗体の検出率が低く、IgG抗体のみ陽性となる症例が多いことから、当該キットを用いたCOVID-19の血清学的診断には発症6日後までの血清と発症13日以降の血清のペア血清による評価が必要と考えられた。・1症例ではあるが、非特異反応を否定できないIgG抗体の陽性がみられたことから、結果の解釈には、複数の検査結果、臨床症状を総合的に判断した慎重な検討が必要。 最後に、本報告では、少数例の検討であることや、他の感染症患者検体を用いた評価がなく特異度に関する情報は得られていないことなどから、本結果をもって当該試薬の臨床性能を評価するものではないとしている。また、使用している抗原タンパク質の性質の違いなどにより、市販試薬は感度・特異度が試薬ごとに変わる可能性があり、すべての抗体検出試薬において同様の結果が得られるかは不明とした上で、COVID-19の血清学的診断法の臨床的位置づけを考える参考情報となることを期待すると結んでいる。

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第2回 COVID-19流行で初診患者のオンライン診療が一時的に解禁へ

<先週の動き>1.新型コロナ関連肺炎の流行で、初診患者のオンライン診療が一時的に解禁へ2.診療報酬改定の疑義解釈(その1)が発表3.看護師の離職率は10.7%と横ばい、中途採用者の離職率は高止まり4.70歳就業法の成立は、雇用の機会を増やすか?5.介護分野における文書の負担軽減策がいよいよ本格的に始まる1.新型コロナ関連肺炎の流行で、初診患者のオンライン診療が一時的に解禁へ新型コロナウイルス感染症が拡大している現状を受けて、無症状に近い感染者が病院を受診し、ほかの通院・入院患者に感染させることがないよう、感染防御目的にて、受診歴がない初診患者についても、インターネットを利用したオンライン診療を認める方針を固めた。オンライン診療の活用については、3月31日に開かれた政府の経済財政諮問会議で、安倍 晋三首相からの指示でもあり、医師・看護師などの医療従事者を感染リスクから守るためにも、これに従ったものと考えられる。4月2日に開かれた政府の規制改革推進会議では、新型コロナウイルス感染拡大が続く中での緊急措置として、初診対面原則の見直しを求めたのに対し、厚生労働省や医師会などが難色を示していたが、新型コロナウイルス感染症対策に関する特命タスクフォースの設置を通して、最終的には4月7日に閣議決定される緊急経済対策に、オンライン診療について盛り込まれる見込み。詳細については厚労省から詳細が発表され、4月内にも解禁されるが、今回の規制緩和は新型コロナウイルスの感染が収束するまでの特例的な措置となる可能性が高い。(参考)第9回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会(厚労省)第1回 新型コロナウイルス感染症対策に関する特命タスクフォース 議事次第(内閣府)第2回 新型コロナウイルス感染症対策に関する特命タスクフォース 議事次第(同)2.診療報酬改定の疑義解釈(その1)が発表3月31日に、2020年度の診療報酬改定の疑義解釈(その1)が厚労省から発表された。2020年度の診療報酬改定では、急性期病院にとって入院料を大きく左右する看護必要度の変更が今回も含まれており、さらに地域包括ケア病棟を持つ急性期病院では、入院期間IIIになる前に自院内の地域包括ケア病棟へ移ると日当点が上がる点が改善され収益性が下がるほか、回復期リハビリ病棟でも、FIMの利得実績指数の引き上げや入棟の期限の発症後2ヵ月以内の制限規定を廃止など細かい変更がある。対象となる病棟がある病院は、算定基準を含め、転院・転棟基準の見直しが必要となる。さらに、救急搬送を年間2,000件以上受けている病院が、労務管理の徹底などの要件を満たせば、地域医療体制確保加算(入院初日に限り520点)の算定が可能になる。また、救急搬送1,000件以上の病院を評価する救急搬送看護体制1でも、従来に比して実績を元に評価する方向性が打ち出されており、救急医療や手術に力を入れている病院を支援する改定となっている。激変を避けるための経過措置期間も設けられているが、その期限も9月30日までなので、現場の担当者は必ず目を通すべきだろう。(参考)2020年度診療報酬改定の疑義解釈(その1)(厚労省)3.看護師の離職率は10.7%と横ばい、中途採用者の離職率は高止まり3月30日に日本看護協会が発表した2019年病院看護実態調査によると、正規雇用の看護職員の離職率は10.7%とここ数年の11%前後のまま横ばいであるが、既卒採用者(新卒ではない看護職経験者)は17.7%と相変わらず高いままである。設置主体別で正規雇用看護職員の離職率が相対的に高い病院は、「その他公的医療機関」17.0%、「個人」14.1%、「医療法人」13.2%である。都道府県別では、東京が一番高く14.5%、次が神奈川(13.1%)、千葉(12.8%)など、首都圏では高い傾向が続いている。給与・夜勤手当は若干の増加はあるものの、おおむね横ばいである。今後、少子化の影響もあり、現場での看護師の不足は続くため、いわゆる雇用環境を大幅に改善するには離職防止のプログラムが必要と考えられる。(参考)「2019年病院看護実態調査」結果(公益社団法人 日本看護協会)4.70歳就業法の成立は、雇用の機会を増やすか?70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする高年齢者雇用安定法などの改正案が、3月31日の参院本会議で賛成多数で可決・成立した。少子高齢化が進み、働き手が不足する2040年問題(現役1.5人が高齢者1人を支える時代)を念頭に、企業側に定年の廃止や延長、雇用継続のほか、退職者の起業支援や社会貢献活動の支援を求めている。医療機関や介護施設も、今後も増え続ける需要に対して、医師のみならず看護・介護職員の定年延長なども検討が必要となると考えられる。すでに産業別就業者数において医療・福祉部門での就業者の割合は12.5%の831万人となっており、卸売業・小売業16.1%、製造業15.9%と続く。今後、若年者の人口は急減する(2020年の新成人は122万人・前年比で3万人減であり、2019年の出生数は86万人と減少している)見込みであり、2040年の就業者は現在の6,664万人から最大で1,285万人減少されるのが予想されている。急増する医療・介護ニーズに対応するための人手不足対策には、退職者の活躍が必然だろう。(参考)雇用保険法、高年齢者雇用安定法、労災保険法などの改正を束ねた改正法案の要綱を提示 「70歳までの就業機会の確保」も盛り込む(PSRnetwork)医療・介護の生産性、主要先進国で最低水準 厚労省研究会(介護のニュースサイト Joint)産業別就業者数(平成30年)(なるほど統計学園)5.介護分野における文書の負担軽減策がいよいよ本格的に始まる3月30日に、厚生労働省は社会保障審議会介護保険部会の介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会を開催した。社会保障審議会介護保険部会・介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会が昨年12月4日に出した中間取りまとめにおいて、今後、高齢者の増加に伴い、現場の介護の担い手が不足するのに合わせて、介護分野の文書に係る負担軽減の実現に向け、国、指定権者・保険者及び介護サービス事業者が協働して、必要な検討を行う目的でこれまで議論を進めてきた。この取りまとめを元に、実際にアクションを行っていくことが確認された形だ。負担軽減策は3つの視点から行うこととなっている。1)様式・添付書類や手続きの見直し簡素化2)自治体ごとのローカルルールの解消による標準化3)ICTなどの活用厚労省は、3月6日に老健局より各市町村長に対して「社会保障審議分野会介護保険部会『介護の文書に係る負担軽減に関する専門委員会』中間取りまとめを踏まえた対応について」(令和2年3月6日付第8号老健局長通知)と言う形で局長通知を出しており、各自治体において取りうる対応を求めている。今後、1年以内に行うアクションは、手続き時の文書の簡素化・統一化が中心であるが、さらに「1〜2年以内の取り組み」には変更・更新時の負担軽減、「3年以内の取組」については既存システムの活用、行政手続のオンライン化を踏まえ、ICT化が図られ、医療機関側との連携がさらに進む見込みである。今後の方向性は、医療・介護連携にも影響をもたらす可能性が高い。(参考)第6回社会保障審議会介護保険部会介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会(厚労省)「社会保障審議分野会介護保険部会『介護の文書に係る負担軽減に関する専門委員会』中間取りまとめを踏まえた対応について」(同)社会保障審議会介護保険部会介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会中間取りまとめ(同)

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COVID-19、厚労省による遺体の取り扱い・埋火葬に関するガイドライン

 COVID-19の感染急拡大を受け、厚労省による感染者の遺体取り扱いと埋火葬に関するガイドラインをまとめた。【従事者側の注意点】・医療機関等は、遺体が新型コロナウイルス感染症の病原体に汚染され又は汚染された疑いのある場合、感染拡大防止の観点から、遺体の搬送作業及び火葬作業に従事する者にその旨の伝達を徹底する。なお、その際は、伝える相手を必要最低限とするなどプライバシー保護にも十分配慮する。・遺体の処置にあたる従事者は、ゴーグル(またはフェイスシールド)、サージカルマスク、手袋、長袖ガウン、帽子の着用などの個人防護具を着用し、作業後は確実に手指衛生を行う。・遺体の体液等で汚染された場合は、0.05~0.5%(500~5,000ppm)次亜塩素酸ナトリウムで清拭*、または30分間浸漬、アルコール(消毒用エタノール,70v/v%イソプロパノール)で清拭、または30分間浸漬する。消毒剤の噴霧は不完全な消毒やウイルスの舞い上がりを招く可能性があるため推奨しない。可燃性のある消毒薬を使用する場合については火気のある場所で行わない。*血液などの汚染に対しては0.5%(5,000ppm)、また明らかな血液汚染がない場合には0.05%(500ppm)を用いる。なお、血液などの汚染に対しては、ジクロルイソシアヌール酸ナトリウム顆粒も有効。【遺体の扱いに関する注意点】・遺体全体を覆う非透過性納体袋に収容・密封することが望ましい。収容・密封後に、納体袋の表面を消毒する。遺族等の意向にも配意しつつ、極力そのままの状態で火葬するよう努める。・非透過性納体袋に収容、密封されている限りは特別の感染防止策は不要。遺体の搬送を遺族等が行うことも差し支えない。・火葬に先立ち、遺族等が遺体に直接触れることを希望する場合には、遺族等に手袋等の着用をお願いする。【その他】・新型コロナウイルス感染者の遺体は、24時間以内に火葬できるが、これは必須ではない。感染拡大防止対策上の支障等がない場合には、できる限り遺族の意向等を尊重する。・感染者の遺体は、原則として火葬する(感染症法第30条第2項)。

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第1回 争奪戦、医療者はトイレットペーパーより人工呼吸器

3月25日現在、世界199ヵ国で感染者41万4,179人、死者1万8,440人にまで達している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。日本でも政府による全世界への渡航自粛要請、東京オリンピックの延期などその影響は甚大だ。中国湖北省・武漢市を出発点に、当初は中国を中心としたローカルな感染症と思われていたが、世界で深刻な状況にあるイタリアは、3月25日時点での感染者数が6万9,176人、死者は6,820人で致死率はなんと9.9%(WHO:Situation Report)。今回の震源地だった中国で同時点の死者数が3,287人、致死率が4.0%であることと比較して、異常なまでの高さである。この原因の一つとみられているのが、65歳以上の高齢者人口比率の高さ。2018年時点での先進7ヵ国の高齢化率トップ3は日本が28.1%、イタリアが23.3%、ドイツが21.7%である。3月25日時点の致死率を見ると、日本が3.6%、ドイツが0.5%であり、イタリアの状況を高齢化率のみで説明するのはやや無理がある。各種報道では、欧州連合内で最も高い親世代との同居率、医療費削減策に伴う病院の統廃合や医師の給与カットによる医療リソース不足、はたまたあいさつ代わりにハグやキスをする文化などさまざまな原因が指摘されているものの、イタリアの未曽有の状況の背景説明として決定打にはなっていない。もっとも高齢化進展と医療資源の適正化策推進という点で共通する日本にとって、イタリアの事態は将来的に対岸の火事ではなくなる可能性もある。そして今、イタリアで問題になっているのが重症患者向けの人工呼吸器の不足。その結果、人工呼吸器を装着すべき患者を選択するトリアージも始まっているとされる(REUTERS:イタリア最悪の医療危機、現場に「患者選別」の重圧)。この陰で起きているのが人工呼吸器確保を巡る争奪戦だ。このさや当てをロイターが報じている(REUTER: Germany, Italy rush to buy life-saving ventilators as manufacturers warn of shortages)。記事によれば、ドイツが1万台、イタリアが5,000台の人工呼吸器を公的に調達しようとしているという。全世界での人工呼吸器の年間生産台数は分からないが、記事中で登場するスイス大手のHamilton Medicalが年間1万5,000台、また、先ごろ従来の約25倍の月間1万台の増産体制を敷いた旭化成の米子会社ZOLL Medical Corp.がおおよそ年間5,000台弱ということを考えれば、ドイツ・イタリア併せて1万5,000台を公的に調達しようとしていることが、いかに異常な事態かは分かる。増産体制の障害となりつつあるのが、多様化した製造部品のサプライチェーンである。現に別の報道ではこのHamilton Medicalの人工呼吸器用のホースを製造するルーマニアで、一時、このホースが重要な医療機器として出荷ストップをかけられたという。感染拡大阻止を意図した各国の国境封鎖なども、今後この状況を悪化させる可能性もある。ボーダーレス時代が招いたと言われるCOVID-19のパンデミックだが、その対策で各国のエゴがむき出しになるという何とも皮肉な状況である。

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HIV治療のゲームチェンジャー現る(解説:岡慎一氏)-1208

 HIV治療は、多くの治療薬の開発のおかげで急速な進歩を遂げてきた。1996年当初3剤併用療法が可能となった当時、治療効果はそれまでと比べものにならないくらい改善したが、1日5回、トータル20錠もの薬剤を、副作用軽減のため水分1.5Lと共に服用しなければいけなかった。もちろん、このような治療が長続きするはずもなく、飲み忘れが増えるなどして薬剤耐性ウイルスの出現を招いていた。その後、治療薬の改良は進み、10年後には1日1回の治療が可能になり、その10年後には1日1回1錠での治療が可能になった。1日1回1錠で治療が済むのであれば、もうこれ以上の改良はないであろうと思っていたら、今回の新しい治療法の登場である。今回の新しい治療法は、今までの治療でウイルスを抑えた後、維持療法として2種類の薬剤を月に1回注射するというものである。毎日忘れずに薬を飲むという今までの治療の常識からすると、まさにゲームチェンジャーである。有効性に関しては、現在最も強力といわれるDTG/ABC/3TCによる1日1回1錠の経口薬3剤治療と比較し、月1回の2剤治療で非劣性が証明されている。副作用としては、筋注のため、局所の痛みは少しあるようである。興味深いのは、患者満足度で、ほぼすべての人が月1回治療を希望しており、その理由が、「月に1回だけ注射すれば残りの日はHIVのことを忘れることができる」、というものであった。1日1回の服用であっても、毎日薬を飲むことに対するプレッシャーは大きいのであろう。もうひとつ、非常に興味深い結果がほんの数行書かれている。283例中3例に治療失敗がみられ、薬剤耐性ウイルスが出ているのである。経口であれば、服薬が完全でなかったという言い訳ができるが、この治験では確実に注射しているので、adherence不良のためというのは失敗の原因にはならない。全員がsubtype A1であったというが、この点に関しては、より詳しい検討が待たれる。

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COVID-19重症例、COPDや糖尿病併存が転帰不良

 中国・広州医科大学のWei-Jie Guan氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の併存疾患を層別化し、重篤な有害転帰リスクを評価した。その結果、併存疾患のない患者よりも併存疾患を有する患者で転帰が不良になることを示唆した。また、併存疾患数の多さが転帰不良と相関していたことも明らかにした。The European respiratory journal誌オンライン版3月26日号掲載の報告。 研究者らは2019年12月11日~2020年1月31日の期間、中国本土の31省・市・区の病院、575施設に入院した患者1,590例のデータを分析。複合エンドポイントはICUへの入室、侵襲的換気、死亡で、その到達リスクとして併存疾患の有無と数を比較した。 主な結果は以下のとおり。・患者の平均年齢は48.9歳、686例は女性だった。・全症例の中で重症例は16.0%だった。・全症例の中で8.2%(131例)が複合エンドポイントに到達した。・25.1%(399例)には少なくとも1つの疾患があった。・併存疾患の内訳は高血圧症が最も多く(16.9%)、次いで糖尿病(8.2%)だった。・8.2%(130例)は疾患を2つ以上有していた。・年齢と喫煙歴の調整後では、COPD (ハザード比[HR]:2.681、95%信頼区間[95%CI]:1.424~5.048)、糖尿病(HR:1.59 、95%CI:1.03~2.45)、高血圧症(HR:1.58、95%CI:1.07~2.32)、悪性腫瘍(HR:3.50、95%CI:1.60~7.64)が、複合エンドポイント到達のリスク因子だった。併存疾患数でみると、疾患1つの場合はHR:1.79(95%CI:1.16~2.77)、2つ以上では2.59(95%CI 1.61~4.17)だった。

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多剤耐性HIV-1感染、fostemsavirの追加が有効/NEJM

 治療の選択肢が限られた多剤耐性ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)感染患者において、fostemsavirはプラセボと比較して投与開始後8日間のHIV-1 RNA量を有意に減少し、その有効性は48週まで持続することが認められた。米国・イェール大学医学大学院のMichael Kozal氏らが、23ヵ国で実施中の第III相試験の結果を報告した。fostemsavirは、画期的医薬品(ファーストインクラス)として開発中のHIV-1接着阻害薬temsavirのプロドラッグである。複数の抗ウイルス療法を受け治療の選択肢が限られているHIV-1感染患者に対する、新しい作用機序を持つ新クラスの抗レトロウイルス薬が必要とされていた。NEJM誌2020年3月26日号掲載の報告。多剤耐性HIV-1感染患者約370例を対象に、2つのコホートで評価 研究グループは、多剤耐性HIV-1感染患者を、残された治療選択肢に従って2つのコホートに登録した。第1コホートでは、治療選択肢として少なくとも1剤以上の承認された抗レトロウイルス薬(1クラス以上2クラス以下)を有する患者を、失敗したレジメンにfostemsavir(600mgを1日2回)またはプラセボを8日間追加する群に3対1の割合で割り付け、その後は非盲検下でfostemsavir+最適基礎療法を行った(無作為化コホート)。 第2コホートは、対象を抗レトロウイルス薬の選択肢が残されていない患者とし、非盲検下でfostemsavir+最適基礎療法を1日目から開始した(非無作為化コホート)。 主要評価項目は、無作為化コホートにおけるHIV-1 RNA量の1日目から8日目までの平均変化量とした。fostemsavir追加で8日間のHIV-1 RNA量が有意に減少 解析対象は、治療を受けた無作為化コホート272例、非無作為化コホート99例の計371例であった。 8日時点で、HIV-1 RNA量の平均減少量は、fostemsavir群で0.79 log10コピー/mL、プラセボ群で0.17 log10コピー/mLであった(p<0.001)。48週時点でのウイルス陰性化率(HIV-1 RNA量<40コピー/mL)は、無作為化コホートで54%、非無作為化コホートで38%であり、CD4陽性T細胞数の平均増加量はそれぞれ139/mm3および64/mm3であった。 fostemsavir投与中止に至った有害事象は、7%の患者で確認された。 無作為化コホートでは、47例でウイルス学的失敗が確認され、そのうち20例(43%)で糖蛋白120(gp120)の置換が認められた。

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MRSA菌血症におけるβラクタム薬の併用効果(解説:吉田敦氏)-1207

 MRSA菌血症では、限られた抗菌薬の選択肢を適切に使用しても、血液培養陰性化が達成できなかったり、いったん陰性化しても再発したり、あるいは播種性病変を来してしまう割合は高い。in vitroや動物実験の結果を背景とし、抗MRSA薬にβラクタム薬を追加すれば臨床的な効果が上乗せできるのではないかと長らく期待されてきたが、実際は培養結果判明までなど短期間併用されている例は相当数存在するものの、併用のメリット・デメリットが大規模試験で前向きに評価されたことはほとんどなかった。 本試験はオーストラリアで行われ、MRSA菌血症判明例を、βラクタム薬と抗MRSA薬の併用群と抗MRSA単独投与群にランダムに割り付けた。プライマリーエンドポイントは90日後の総死亡、5日目の持続菌血症、菌血症再発、14日目以降の無菌検体からのMRSA検出とし、さらにセカンダリーエンドポイントとして14、42、90日の総死亡、2日目と5日目の持続菌血症、急性腎障害(AKI)、微生物学的な再発・治療失敗、静注抗菌薬の投与期間を解析している。なおβラクタム薬の併用期間は7日間と定めた。 最終的に、用いられた抗MRSA薬のほとんど(99%)はバンコマイシンで、3日目の血中濃度のトラフは20μg/mL程度と十分上昇しており、残りはダプトマイシンの4%であった(重複があると思われる)。βラクタム薬はflucloxacillinないしクロキサシリンが主体で、セファゾリンは少数であった。MRSA菌血症の治療効果に関する指標では、2群間で有意な差はなく、βラクタム薬による上乗せ効果は証明できなかったが、併用群でAKI発症割合が高いことが判明し、この臨床試験は途中で打ち切りとなることが決定した。なお薬剤別のAKI発症割合は、flucloxacillinは28%、クロキサシリンは24%、セファゾリンは4%であった。 途中での打ち切りのために長期的な予後や、症例数を増やした2群間差のさらなる解析は難しくなったが、仮に上乗せ効果が多少ある結果となっても、併用によってAKI発生が増加したことを鑑みると、全体としてβラクタム薬の併用を支持することにはならないと思われる。なお本研究には、抗ブドウ球菌用ペニシリンのnafcillinは含まれていない。さらに本邦は状況が異なり、クロキサシリンはアンピシリンとの合剤として発売されているのみであり、flucloxacillinとnafcillinは利用できない。現実的にはセファゾリンのデータを参考にすることになるが、セファゾリンにはそもそも中枢神経への移行が乏しいという欠点があり、黄色ブドウ球菌菌血症で中枢神経病変が合併しやすい点から好ましいとは言い難い。一方でこれまでの前向きのランダム化試験では、症例数が少ないながらバンコマイシン・flucloxacillinの併用と、バンコマイシン単剤が比較され、併用群で菌血症持続期間が短かったという1)。しかしこの菌血症持続期間は本試験ではアウトカムとされず、再現性があるかは明確にされなかった。 このように本試験自体の限界もあるが、本試験のような大規模比較試験を組み、実行することは容易ではない。過去を含めても、少なくとも併用のメリットを支持する報告(臨床的な比較試験による)が少ないのは一致するところといえ、併用療法に相当のメリットがあることが示されなければ、今後も併用に関する積極的な支持は出にくいと考える。

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総理大臣ごっこで思考を整理【Dr. 中島の 新・徒然草】(317)

三百十七の段 総理大臣ごっこで思考を整理前回はプレゼンの練習目的に「総理大臣ごっこ」をしたというお話をしました。今回は思考整理のために総理大臣ごっこをしたので、そのやりとりを紹介します。実際に声に出してやると効果抜群でした。総理大臣に扮した同僚医師に尋ねられて新型コロナ対策を答えるという想定ですが、もちろん私は感染症の専門家でもなんでもないので、回答に疑問があっても御容赦ください。総理「新型コロナにはどのように対処すればいいのでしょうか?」中島「いきなりオープン・クエスチョンですか、総理!」総理「ちょっと疲れていまして」中島「国レベル、医療機関レベル、個人レベルのどれでお答えすればいいですか?」総理「じゃあ、病院レベルではどうでしょうか?」中島「まずはコロナ陽性患者を重症、中等症、軽症に分けることから始めます」総理「分けてどうするのですか」中島「重症度によって対応を変えます。重症はレスピレーターの必要な人で当然ながら集中治療を要します。中等症は酸素吸入・点滴くらいですが、これも入院加療が必要です。いつ急変するかわかりませんからね。でもそこまでいかない人は入院させず、自宅隔離か施設隔離です」総理「施設隔離といってもそんなに沢山の施設は確保できませんよ」中島「お客さんが来なくて困っているホテルを使いましょう」総理「経営者やホテルの従業員が協力してくれるでしょうか?」中島「協力してくれる人は必ずいます。国民を信じましょう、総理。そして、隔離される人には通常のホテルのサービスを諦めてもらいます。食事はコンビニ弁当、シーツは自分で交換、バスルームは自分で清掃してもらい、ホテル従業員との接触は極力さけるべきです」実際の総理大臣ごっこはもっとグダグダなやりとりでしたが、整理するとこんな感じでしょうか。総理「これからのコロナ拡大はどうなると思いますか?」中島「私の試算では、東京が医療飽和状態に達するのが4月17日、大阪がもう少し後ですね」総理「そんなに早いのですか?」中島「そうなんですよ。現在の東京都の累積患者数は約4日ごとに2倍になっているので、このまま行くと4月17日に1万8,000人を越えることになります」総理「医療飽和状態とは、具体的にどのような状況ですか?」中島「これは失礼しました。『医療飽和状態』というのは私の造語でして、予定手術がすべてキャンセルされ、病院全体でコロナ対応する状態です」総理「コロナ以外には対応しないのですか?」中島「さすがに心筋梗塞や脳卒中には対応しますが、残り9割のリソースはコロナ対応です」現在のニューヨークがこのような状態だそうです。向こうで働いている日本人医師情報を、また聞きで知りました。総理「国として行うべきことは何かありますか?」中島「レスピレーターの増産、感染防護服の増産をお願いします」総理「トランプさんがGMにレスピレーター生産を要請していましたね」中島「あの判断は凄いです。見直しました」総理「でも、日本で同じことをやろうと思うと、法律的な縛りが色々あるのですよ」中島「助けられる国民の数はレスピレーターの台数にかかっています。法律をどうやってクリアするかは、優秀な官僚たちに考えてもらいましょう。何しろスピードが命です」総理「わかりました。ほかに国ができることが何かありますか」中島「医療機関への経済的支援です。安心してコロナと戦えるようにお願いします」総理「産業界全体への支援を考えているところですが、とくに医療機関を最優先にしましょう」中島「おそらく介護業界にも支援が必要になってくると思います」総理「なるほど、医療の次は介護ですね」大規模なクラスターが発生した医療機関や、介護施設が報道されていますが、彼らこそ最も支えるべき対象だと私は思います。総理「それにしても私は疲れました。四方八方から罵詈雑言を浴びせられるし」中島「何言ってるんですか、総理はよくやっていますよ!」総理「本当にそう思いますか?」中島「日本が何とか踏みとどまっているのは総理のお蔭です」総理「中島先生にそう言ってもらえると、少し気力が出てきました」中島「我が国の運命がかかっているのです。よろしくお願いします!」なんだか「皇国ノ興廃コノ一戦ニ在リ」という名言を思い出しました。是非、皆でこの国難を乗り越えたいですね。ということで最後に1句 各員の 奮励努力で コロナ撃て!

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中国のCOVID-19情報充実のサイトを開設/神戸医療産業都市推進機構医療イノベーション推進センター

 神戸医療産業都市推進機構 医療イノベーション推進センター(センター長:福島雅典氏)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する特設ページを3月18日に公開した。 COVID-19による重症肺炎が最初に蔓延した中国では、すでに膨大な研究が行われ、多くの論文が発表されている。そして、それらの知見を取り入れたガイドラインが改訂・出版されている中で、このウェブサイトでは中国における診療ガイドラインや臨床試験情報などへのリンクを紹介している。センターでは随時更新を行う予定。主な掲載内容(日本語の翻訳あり)・中華人民共和国国家衛生健康委員会発行「新型コロナウイルス関連肺炎診療ガイドライン(試行第7版)」「新型コロナウイルス関連肺炎から回復した患者の回復期血漿を用いた臨床治療のガイドライン」・中華伝染病雑誌発行 上海市における新型コロナウイルス感染症の包括的治療に関するエキスパートコンセンサス・臨床試験情報へのリンク 中国臨床試験登録センター など・論文情報へのリンク LitCovid など*医療イノベーション推進センター(TRI)とは、日本で初めてのデータセンター・解析センターとして、文部科学省と神戸市によって2003年に創設。臨床研究を主導するすべての研究者と医師に対して、研究相談を受け付け、計画の策定から解析までを一貫して支援する組織。現在までに支援してきた臨床試験・臨床研究は401件にのぼり、掲載論文数は265編(2020年3月末時点)。

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SGLT2阻害薬の手術前の休薬は3~4日、FDAが承認

 2020年3月17日、米国食品医薬品局(FDA)は、2型糖尿病治療として使用されるすべてのSGLT2阻害薬において、術前休薬に関する添付文書の変更を承認した。手術前のSGLT2阻害薬休薬後は血糖値を注意深く監視 当局は、「カナグリフロジン(商品名:カナグル)、ダパグリフロジン(同:フォシーガ)、エンパグリフロジン(同:ジャディアンス)は少なくとも予定手術の3日前、エルツグリフロジン(国内未承認)は少なくとも4日前に休薬する必要がある」とプレスリリースを配信した。また、手術前のSGLT2阻害薬休薬後は血糖値を注意深く監視し、適切に管理すべき、と記している。 「患者の経口摂取が通常に戻り、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)・その他の危険因子が解決したら、SGLT2阻害薬を再開できるだろう」と当局は付け加えている。 今回の変更の承認理由は、手術により患者がDKAを発症するリスクが高まるためである。DKAの症状は、吐き気、嘔吐、腹痛、疲労感、呼吸困難など。 このほか、SGLT2阻害薬の副作用は各薬剤によって異なるが、尿路・性器感染症、低血糖、急性腎障害、会陰の壊死性筋膜炎、下肢切断リスクの上昇などが報告されている。当局は、重度の腎機能障害もしくは末期腎不全の患者、透析治療中の患者、薬物過敏症患者には、SGLT2阻害薬を使用しないよう求めた。

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新型コロナ、2021年初頭にもワクチンを世界規模供給へ―米国J&J

 世界規模で感染拡大に歯止めがかからない新型コロナウイルス。その予防に向けた最初の突破口になり得るのか。米国のジョンソン・エンド・ジョンソン社(以下、J&J社)は3月31日、最初の製造ステップに進むための新型コロナウイルスのリードワクチン候補を同定。2021年初頭にも10億回分超のワクチンを世界規模で供給することを目指し、生産態勢の強化を急ピッチで進めることを発表した。 新型コロナウイルスを巡っては、現段階では他疾患に使用されている既存薬の転用で治療が進められており、予防ワクチンも存在しないため、各国で研究・開発が急がれている。WHOは今年2月の段階で、ワクチン開発には18ヵ月要するとの見解を示している。 J&Jは、新型コロナウイルスの配列を入手した今年1月から、有望なワクチン候補の調査を開始。J&Jの医薬品部門であるヤンセンファーマシューティカルカンパニーズ(以下、ヤンセン)の研究チームとハーバード大学医学部附属病院ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカルセンター(BIDMC)と共同で、複数のワクチン候補の試作とテストを重ねてきた。その結果、最初の製造ステップに進む、新型コロナウイルスのリードワクチン候補(2つの予備候補あり)を同定した。 今後の見通しとしては、今年9月に第I相臨床試験を開始することを目指しており、安全性と有効性に関する臨床データは年末までに入手可能となる。J&Jによると、緊急用ワクチンは2021年初頭にも利用できるようになる見込みとのこと。生産態勢の整備においては、ヤンセンと米国生物医学先端研究開発局(BARDA)との提携を強化し、10億回分を超えるワクチンを世界規模で供給することを目指す。

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B群髄膜炎菌ワクチンの用途と限界(解説:吉田敦氏)-1206

 髄膜炎菌感染症は、保菌者の咽頭から感染し、進行の速い重篤な菌血症・髄膜炎・臓器不全を来す疾患であり、公衆衛生上も重大な脅威である。12種類の血清群が知られているが、血清群A、B、C、W、Yが原因となることが多く、本邦における統計ではY、B、C、Wの順であった1)。ただし血清群の内訳は地域によって異なることが特徴で、海外で導入されていたACWYの4価ワクチン(莢膜多糖体と蛋白の結合型ワクチン)が本邦で使用可能になったのは2015年である*。しかしながらB群の莢膜多糖体はヒトのneural cell adhesion moleculeなどと類似しているため免疫原性が低く、自己免疫の発症も懸念され、結合型ワクチンでなくリコンビナントワクチン(4CMenB)が開発された。商品名Bexseroは4CMenBの一つで、B群髄膜炎菌の生存と病原性に関わる4種類の抗原を含んでいる。 B群が流行の主体を占めるオーストラリアで、今回Bexsero接種による高校生を対象としたランダム化比較試験が行われた。高校1年、2年相当の生徒について、接種から1年後の髄膜炎菌(血清群A、B、C、W、X、Yのいずれか)の保菌率をプライマリーアウトカム、各血清群の保菌率と陰性からの陽転化をセカンダリーアウトカムとした。さらに高校3年生では髄膜炎菌保菌に関わるリスクファクターの評価が行われた。 結果として、ワクチン接種群、対照群にはそれぞれ1万1千人以上の生徒が割り付けられた。研究期間中および研究終了後1年余りまで髄膜炎菌感染症を発症した生徒はいなかったものの、プライマリーアウトカム、セカンダリーアウトカムはどちらも2群間で差はなく、ワクチン接種による保菌率の低下を示すことはできなかった。なお高校3年生は1年生と比較して保菌のオッズ比は2.75であり、喫煙や、パブへの出入りといった他者との密接な接触の機会の増加が関与していると推測された。 髄膜炎菌は小児~若年成人でとくに感受性が高いことが知られ、ACWYのワクチンを小児のワクチンプログラムに含めている国も多い。英国では2015年より4CMenBワクチンを小児の接種プログラムに含め、一方で米国では16~23歳(最も望まれるのは16~18歳)の青少年に接種を推奨している。本検討の意図は、接触機会が増え、保菌率が上昇する前の青少年にBexsero接種を行い、この集団での以後の髄膜炎菌保菌を低下させるのみならず、他集団の感染を減らす集団免疫herd immunityを期待することにあった。 研究が行われた規模、および咽頭保菌を検出するための遺伝子的手法については、満足できる内容と方法と思われる。NEJM誌の同号には、英国において乳児にBexseroを接種した場合、接種後数年間のB群髄膜炎菌感染症発生は予想よりも75%減少したという報告が掲載されており2)、本研究で報告された結果とは対照をなしている。しかしながらB群髄膜炎菌の表面抗原は多様であり、4種類の抗原のいずれかでカバーするという期待は理論上のもので、実際の株の抗原性とは距離があることや、保菌の消失までは至らない可能性はこれまでにも指摘されていた。一方で、蛋白のエピトープの交差性から、ほかの血清群への効果も期待されていた。 現在16~23歳の青少年に推奨されている4CMenBには、菌の消失までではなく、集団発生を防ぐという意図もあった。つまり4CMenBは、どの集団に、どこまでの予防を期待して用いるかが問われるワクチンといえるであろう。加えて本邦においては、2015年に山口県で開催された大規模な世界スカウトジャンボリーで6例の髄膜炎菌感染症例の発生があったように(血清群はW群)3)、今後もマスギャザリングによる髄膜炎菌感染症の集団発生が危惧されている。ACWY結合型ワクチンの導入によって相対的にB群髄膜炎菌の占める割合が高くなっている国・地域がある中、世界的なB群髄膜炎菌感染症の制圧戦略に並行して、わが国においても本菌の十分な監視と対策が欠かせないと考える。*商品名メナクトラ。2歳以上の小児、成人に対し任意接種となっており、髄膜炎菌の流行地域へ渡航する場合と侵襲性髄膜炎菌感染症のハイリスク者(無脾症・脾臓摘出後、補体欠損症、免疫抑制患者、HIV感染者)での接種が推奨されている。

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第19回 侮ってはいけない尿路結石【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)鑑別すべき疾患を知ろう!2)まず、エコーをしよう!3)感染症の合併には要注意!【症例】28歳女性。来院当日の昼食時に左下腹部痛を自覚した。生理痛に対して使用していた市販の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を内服し様子をみていたが、症状が改善しないため救急外来を受診した。特記既往はなく、定期的な内服薬はない。●搬送時のバイタルサイン意識清明血圧128/75mmHg脈拍100回/分(整)呼吸20回/分 SpO299%(RA)体温36.3℃瞳孔2.5/2.5mm +/+既往歴、内服薬:定期内服薬なし尿路結石の診断尿路結石は頻度が高く、誰もが診たことがあるでしょう。自身で罹ったことがある人もいるかもしれません。痛みが強く救急外来を受診するケースも多く、楽な姿勢がないのでのたうち回っているのが典型的です。指圧が有効なこともあり、痛い部分をぐっと親指で圧迫していることもよくありますね。尿路結石の診断は、CTで検査すればつきますが、疑い症例全例に検査するのはお勧めできません。被曝の影響は常に考えておく必要があり、また、鑑別疾患が想起されていなければ、単純もしくは造影CTを検査するべきかは判断できません。CTを検査しないと診断できないのでは、クリニックなどそもそも検査ができない場所では診断ができなくなってしまいます。STONE score(表)表 STONE score -目の前の患者は尿路結石か-画像を拡大する尿路結石症例は複数回経験すれば、“らしさ”を見積もることができるようになるでしょう。実際に診たことがない、または経験が少ない場合には“STONE score”は頭に入れておきましょう(表)。絶対的なものではありませんが、急性発症の痛みを訴える男性が嘔気・嘔吐や血尿を伴う場合にはらしいことがわかります。腹痛に加えて嘔気・嘔吐を認めると、どうしても消化器疾患を考えがちですが、尿路結石も評価することを忘れないようにしましょう。尿路結石の鑑別疾患は?尿路結石の鑑別疾患は多岐に渡りますが、50歳以上では腹部大動脈瘤切迫破裂を、女性では卵巣茎捻転、異所性妊娠を、右側の痛みであれば虫垂炎や胆石、胆管・胆嚢炎は、必ず意識するようにしましょう。腎梗塞など他の疾患も鑑別に挙がりますが、重症度や緊急度の問題から、前述したものを考え初療にあたることをお勧めします。必要な検査は?:尿検査も大切だが、エコーは超大事尿潜血陽性は、尿路結石を確定させるものではありません。切迫破裂や虫垂炎でも陽性になることはあります。STONE scoreにも含まれており、“らしさ”を見積もる根拠とはなりますが、いかなる検査も検査前確率が重要であって、検査の陽性・陰性のみを理由に疾患を確定・除外できるものではありません。尿路結石らしさを裏付ける検査と共に、鑑別すべき疾患を除外することが必要です。腹部大動脈瘤は破裂してしまうと判断は難しいですが、大動脈瘤を検出するにはエコーが有用です。また、手術が必要な異所性妊娠や卵巣茎捻転ではモリソン窩の液体貯留などをFAST※を施行し確認することが大切です。エコーは非侵襲的かつ迅速に施行可能な検査であり、腹痛患者では必須の検査といえるでしょう。尿路結石の場合には、石自体をエコーで確認することは難しいですが、水腎症を認めることは少なくありません。疼痛部位に一致した側の水腎症を認める場合には、尿路結石らしさが非常に増します。尿路結石? と思ったら鑑別疾患を意識してエコーをあてましょう。※FAST:focused assessment with sonography for trauma尿検査でわかることも多い尿検査は潜血の有無だけでなく、確認すべきことがあります。鑑別疾患を意識すればわかると思いますが、女性では妊娠の可能性を考えておく必要があります。妊娠反応が陽性か否かで、鑑別疾患は異なり、対応も変わるため常に意識しておきましょう。全例に妊娠反応を検査する必要はありませんが、否定できない場合には行うべきでしょう。もう1点、意識しておくべきこととして、感染の関与があげられます。腎盂腎炎は抗菌薬のみで治療可能なことが多いですが、尿路結石など閉塞機転が存在する場合には、いくら広域な抗菌薬を選択しても状態は悪化します。感染の関与を示唆する発熱や呼吸数の増加、悪寒戦慄などを伴う場合には泌尿器科医などと連携し、外科的介入も考慮することを忘れないようにしましょう。CTは尿路結石の既往がある非高齢者では、上記のような合併症がなければ撮影する必要はありません。しかし、エコーでその他の疾患が疑わしく、エコーで確定できない場合には撮影します。また、初発で結石の位置や大きさの把握が必要な場合には撮影も考慮します。常に検査をオーダーするときには、なんのために施行するのかを意識することが重要です。さいごに尿路結石は救急外来など外来診療において非常に頻度の高い疾患です。多くはNSAIDsで症状は改善し、事なきを得ることが多いですが、尿路結石のようでそうではない重篤な疾患であることや、敗血症を伴うことも少なくありません。根拠をもって対応できるように今一度整理しておきましょう。尿路結石の既往がある非高齢者では、発熱などの合併症がなければCTは検査するべきではありません。1)Moore CL, et al. BMJ.2014;348:g2191.

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新型コロナ危機に直面した米国ニューヨークの今【臨床留学通信 from NY】番外編

番外編:新型コロナ危機に直面した米国ニューヨークの今米国は3月30日現在、世界1位の感染者数であり、その中心はニューヨークです。私はいま、最前線でCOVID-19の患者を数多く診療しており、今回はニューヨークの現状と私が勤務するMount Sinai Beth Israelの最新の状況をお伝えします。まず、基本的に一般生活は外出禁止令が出ており、厳しく制限されています。原則、仕事は在宅勤務です。例外的に、ライフラインに関わる医療従事者や薬局、スーパーなどは勤務が許されています。外出禁止といっても、1人でのランニングはできます。レストランは、持ち帰りのみの営業が許可されています。なお、小学校でもリモートラーニングのシステム整備が急ピッチで進められ、子供の教育が停滞しないよう対策が取られ始めています。日常生活では、握手をしない(日本では日常的ではありませんが)、顔を触らない、手指消毒が推奨されています。マスクは個人的に効くと思いますが、CDCは推奨していません。おそらく、少しでも医療従事者が使う数を確保するためだと思われます。私は元々、主に私服で仕事をしていましたが、現在は病院ですべてスクラブに着替え、使用済みスクラブは持ち帰りません。幸い、院内にスクラブの自動販売機のようなものがあり、使用済を持っていくと新しいものに取り替えられるため、持ち帰って洗濯する必要がありません。そして、帰宅したら風呂に直行です。米国の病院では、基本的に自分の携帯電話を診療に使います(日本のように配備品がないのです)。 ご存じのように、携帯電話はかなり汚いので扱いが難しいのですが、アルコール消毒すると壊れてしまうかもしれないので、帰宅後はビニール袋に入れておくといいのかもしれません。当院はすべての医療資源をCOVID-19対策に注ぐため、待機的手術は全て中止し、人工呼吸器およびICUの人員を確保しています。また基本的には救急医、内科医、集中治療医が主担当となりますが、他科の医師も診療に加わっている病院もあるようです。人工呼吸器については、トランプ大統領が戦時中の法案を発動させ、ゼネラルモーターズ(GM)に製造を命じました。日本においても対岸の火事と思わず、人工呼吸器を製造して来たるパンデミックに備えるべきと考えます。また、現段階の日本においても医療従事者は診る患者さんは、基本的にCOVID-19と考えて対応すべきだと思います。感冒症状や発熱、呼吸困難があれば疑うのはもちろんですが、腹痛、下痢、頭痛などの症状で来院することもあります。COVID-19によるストレスで例えば心筋梗塞が誘発されることもあるでしょう。タコツボ型心筋症が発症することもあるようです。したがって、急性心筋梗塞だと思って急いで対応をする前に、ひと呼吸おいて、感染防御をしてから対応することも必要であり、医療従事者の暴露を考えると、さまざまな侵襲的処置もひとまず保存的処置にならざるを得ないケースもあると思います。当初、病院ではN95を推奨していませんでしたが、今はN95の上にサージカルマスクを被せ、N95を週1で交換するというルールになっています。ガウンは手術用ではなく、薄いガウンを使用しています。ゴーグルも使用していますが、挿管など暴露が多い場合は、顔全体を覆うフェイスシールドを使用しており、長時間の処置が必要な場合は、スペーススーツなども使います。病院としては、ICUベッドを2~3倍に増やして対応を強化しようとしています。救急医、内科医、集中治療医だけではこの人類の脅威に対応しきれず、他科の協力も必須です。当院のCOVID-19治療は3月30日現在、陽性でも症状が自宅レベルであればできるだけ自宅に帰し、Physician Assistantが電話で症状をフォローするという方針を取っています。入院レベルの患者で胸部X線で肺炎像もしくはSpO2≦94%の低下があれば、ヒドロキシクロロキン(抗マラリア薬)を400mg 1日2回、2回目の後QT(QTc)延長がないかを確認後、400mgを1日1回で4日続けています。アジスロマイシンも効果があるかもしれないと言われており、こちらもQT(QTc)に注意しながら投与しています。現在は500mgを1回投与、その後、250mgで4日投与しています。重症例にはアクテムラを使っており、当院でも今後おそらくRCTが行われると思われます。採血はCRP以外にFerritin、D-Dimer、LDHを取っており、2日後に再度採血しています(米国では基本的にCRPを取りません)。これらの治療内容は日々刻々と変わっており、この内容が正しいとは限りませんので、その点をご留意ください。工野先生へのご質問がありましたら、ぜひこちらへお寄せください。Twitter:@ToshikiKuno

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第1回 医療関係者が医療関係者を「バイ菌」扱いしちゃダメだろ

病院が風評被害に遭うケース増えるこんにちは。医療ジャーナリストの萬田桃(まんだ・もも)です。今週から、医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件について、あれやこれや書いていきたいと思います。東京は桜の満開が過ぎました。春分の日からの連休には、お花見スポットは結構な人出となりました。「宴会中止!」のお達しがあったことで、多くの人が歩き飲みしながらお花見をしていました。私も目黒川沿いを少し歩いたのですが、タコス屋の前ではコロナを忘れてコロナビールを飲んでいる人もいました。パンデミックを一瞬忘れたかのような花見客の浮かれ具合に、「これは1〜2週間後、東京が危ないかも」と心配になりました。案の定、東京都は今、大変なことになっています。今週気になったのは、新型コロナウイルスによる病院の風評被害のニュースです。病院内で感染拡大が生じた兵庫県姫路市の仁恵病院が通院患者らへの風評被害が広がっているとして、3月16日に県医師会と市医師会にその具体例を報告しました。同院は3月8日に看護師の感染を発表。その後、看護師の親族、別の看護師、入院患者についてもPCR検査の陽性が判明、3月24日までに14人の新型コロナウイルスへの感染が確認されています。感染発表後、同病院に通院していた患者が、ほかの医療機関を受診しようとすると診察を拒否されたり、病院職員が他の医療機関を受診したりしようとすると、「役所を通してほしい」などと言われたとのことです。通院患者が薬局で処方を渋られた、といったケースも報告されています。県医師会などへの報告後も、こうした診療拒否は収まらず、姫路市は、不確かな情報に基づいて不当な対応をしないようホームページで呼びかける事態に至っています。同様の問題は医師や看護師の感染が確認された兵庫県小野市の北播磨総合医療センターでも起きているとの報道もありました。「悲鳴に近い悲しい報告」風評被害というと通常は「根拠のない噂によって害を受けること」を指します。「あの病院はウイルスを町中に撒き散らしている!」となると風評ですが、「あの病院からの患者は感染リスクがあるので怖い」となると、風評と呼ぶにはちょっと厳しいかもしれません。実際のところ、全患者にPCR検査をして「陰性ですから安心して診察してください」とするわけにはいかないので、このあたり、感染者が出た医療機関での紹介・逆紹介の判断は難しいところです。問題は一般人による誹謗中傷ではなく、医療機関が、あるいは薬局が診療拒否、調剤拒否をしようとした点でしょう。医療機関は薬局を含めて、社会的なインフラです。近隣の医療機関が危機に陥れば、それなりの体制を整えてカバーしようと動くのが、あるべき姿のはずです。「自分の病院、薬局が逆の立場だったら」という発想が湧かなかったのか、と不思議に感じます。そう言えば、少し前のニュースになりますが、日本災害医学会が、新型コロナウイルス感染症の対策に携わった医療者が不当な批判にさらされているとし、これに強く抗議する声明を発表しました。声明では、「悲鳴に近い悲しい報告」が同学会に寄せられているとして、活動を終えて戻った職場で「バイ菌」扱いされるなどのいじめ行為を受けたり、子供が保育園・幼稚園から登園自粛を求められたりしたケースを紹介しています。さらには職場の管理者から、今回の救助活動に参加したことに対して謝罪を求められた医療者もいた、ということです。本来クールで、科学的であるはずの医学会が、「悲鳴に近い悲しい報告」と感情的な文言を使っていたのが印象的でした。おそらく、新型コロナウイルスと医療者、医療機関の戦いはこれから本番を迎えるでしょう。パンデミックを目前にしての、現場の医療関係者たちの足並みの揃わなさ(他人への思いやりのなさ)に、いささか心がざわついている今日この頃です。

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抗真菌薬の妊婦への処方は安全か?

 皮膚科医にとって難問の1つとなっている妊婦への抗真菌薬投与について、デンマークの全国規模の妊娠登録ベースコホートにおける研究結果が発表された。デンマーク・Bispebjerg and Frederiksberg HospitalのNiklas Worm Andersson氏らによる検討で、経口または局所テルビナフィンの投与と、主要な形成異常または自然流産のリスク増大の関連は特定できなかったという。テルビナフィンは一般的に使用される抗真菌薬だが、妊娠中の使用に関する安全性データは限定的である。JAMA Dermatology誌オンライン版2020年3月4日号掲載の報告。抗真菌薬の妊婦への投与について165万649例を対象にデータ解析 抗真菌薬の妊婦への投与についての検討は、1997年1月1日~2016年12月31日に妊娠が登録された165万649例を対象とし、2019年7月11日~10月20日にデータの解析が行われた。 傾向スコアマッチング法を用いて、経口テルビナフィン曝露vs.非曝露(1対10の割合)、局所テルビナフィン曝露vs.非曝露(1対10)、経口vs.局所のテルビナフィン曝露(1対1)の比較を行った。曝露の定義は、経口または局所のテルビナフィンを処方された場合とした。 主要評価項目は、ロジスティック回帰法を用いて算出した主要な形成異常に関する有病率オッズ比(主要アウトカム)、Cox比例ハザード回帰法を用いて算出した自然流産のハザード比(副次アウトカム)であった。 妊婦への抗真菌薬投与についての研究の主な結果は以下のとおり。・ベースコホートの妊娠165万649例において、経口テルビナフィン曝露例は891例(平均年齢30.4[SD 6]歳)、局所テルビナフィン曝露例は3,174例(29.5[SD 5.4]歳)であった。解析に包含された非曝露妊娠例の合計は最大4万650例であった。・主要形成異常リスクの傾向マッチング比較において、有病率オッズ比は、経口テルビナフィン曝露vs.非曝露では、1.01(95%信頼区間[CI]:0.63~1.62)であった(絶対リスク差[ARD]:0.04%、95%CI:-1.69~1.76)。・同様に、局所テルビナフィン曝露vs.非曝露では、1.08(95%CI:0.81~1.44)であった(ARD:0.26%、95%CI:-0.73~1.26)。・同様に、経口vs.局所のテルビナフィン曝露では、1.18(95%CI:0.61~2.29)であった(ARD:0.59%、95%CI:-1.71~2.88)。・自然流産のリスクに関するハザード比は、経口テルビナフィン曝露vs.非曝露では、1.06(95%CI:0.86~1.32)であった(ARD:0.13%、95%CI:-1.97~2.24)。・同様に、局所テルビナフィン曝露vs.非曝露では、1.04(95%CI:0.88~1.21)であった(ARD:0.17%、95%CI:-0.64~0.98)。・同様に、経口vs.局所のテルビナフィン曝露では、1.19(95%CI:0.84~1.70)であった(ARD:1.13%、95%CI:-2.23~4.50)。

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