サイト内検索|page:163

検索結果 合計:5557件 表示位置:3241 - 3260

3241.

N95マスク内の温度と湿度【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第173回

N95マスク内の温度と湿度pixabayより使用COVID-19の最前線に立っている医療従事者の多くは、N95マスクを装着していると思います。N95マスクの欠点は、とくにアヒル型のマスクの場合、化粧が取れてしまうことです。女性にとっても結構厄介なマスクなのです。外した時にファンデーションがたくさん付いていても、男性は指摘したらダメですよ!そういうのもセクハラになりますからね。そんなN95マスクを、サージカルマスクと比較した珍しい論文があります。Li Y, et al.Effects of wearing N95 and surgical facemasks on heart rate, thermal stress and subjective sensationsInt Arch Occup Environ Health . 2005 Jul;78(6):501-9.この研究は、5人の健康な男性と5人の健康な女性の参加者が、気温25度、相対湿度70%に制御された空調室でマスクを着けてトレッドミルを行うという実験です。マスクは、サージカルマスクとN95マスクの両方を試しました。さぁ、結果はどうだったでしょうか。ええ、予想通りの結果です。N95マスクは通気性が悪く、呼吸抵抗も強いため、サージカルマスクに比べて、心拍数が10%ほど上昇し、マスク内の温度は平均で1℃高く、マスク内湿度も平均10%ほど上昇することがわかりました。とても快適とは言えないマスクですね。街中でサージカルマスクを着けて歩いている人が多いと思いますが、まれに気温40℃の灼熱地獄の中、N95マスクをガチで装着している人がいて、あれはさすがに熱中症リスクが高いんじゃないかと不安になります。厚労省もすでに外で安易にマスクを装着しないよう推奨を出していますが、密でないところでは、マスクが気軽に外せる時代が来てほしいものです。

3242.

コロナ禍の医療者への不当な扱い、励ましの実態とは/医師500人の回答結果

 ケアネットと病院経営支援システムを開発・提供するメディカル・データ・ビジョン株式会社(以下、MDV)は、医師・病院関係者が新型コロナウイルス感染症に対応する中で、どのような体験をしたかを調べる共同調査を実施した。その結果、医師・病院関係者の子どもが登園・登校を控えるよう要請されるなど誤解や過剰反応からの体験があった半面、地域住民や企業からの応援メッセージが届き、励まされるなどの体験が倍以上あったことが明らかとなった。励ましが差別や不当な扱いを大幅に上回る この調査はWEBを通じて実施し、ケアネットは会員医師511人(アンケート期間:9月30日のみ)、MDVは110病院(同:9月30日~10月7日)から回答を得た。  「コロナ禍の下でどのような体験をされましたか」という質問について、ケアネット会員医師は、「差別や不当な扱いと感じる体験をした」が7.4%(38人)、「周囲から励まされるなどの体験をした」が27.6%(141人)、「とくになし」が66.3%(339人)だった。差別や不当な扱いと感じる体験をした方の内訳は、本人が6.7%(34人)、家族が2.2%(11人)で、本人・家族いずれもと回答したのは6人(1.1%)だった。また、自由記述で聞いた体験内容は以下のとおり。・実際には(PCR検査)陰性だったが、あたかもコロナに感染したかのような扱いを受けた・医療関係者かどうかを尋ねられた・アルバイト先から出勤を断られかけた・発熱外来をやるといったら、秘書が近寄らなくなった。1週間放置された・近所、子供の学校の先生に疎んじられた・国内での流行期前に海外渡航していたために職場で不当な差別をされた 「周囲から励まされるなどの体験をした」と回答した方は、本人が24%(123人)、家族が2.9%(15人)で、本人・家族いずれもと回答したのは2.3%(12人)だった。自由記述で聞いた体験内容は以下のとおり。・タクシー運転手に励まされた・医療に携わり、この時期大変ですねぇと励まされました・往診中にご苦労様と見知らぬ方より挨拶あり・外来の患者さんから声をかけられ、差し入れをもらうようになりました・患者から体調を気遣われた・患者さんからの感謝状・企業からの飲料水や消毒用具等の提供があった・地域の小学校、会社などから救急医療へのエールが届いた病院関係者向け調査では半数以上が励ましを受けていた MDVが行った病院関係者(本人、家族、同僚含む)向けアンケートでも同様の質問を行ったところ、「差別や不当な扱いと感じる体験をした」が24.5%(27施設)、「周囲から励まされるなどの体験をした」が51.8%(57施設)、「とくになし」が38.2%(42施設)、その他が9.1%(10施設)だった。また、差別や不当な扱いと感じる体験を自由記述で聞いたところ、「看護師の子どもさんが保育園から預かりを拒否された」「親が医療関係者なので飲食関係のアルバイトのシフトから外された」「配偶者が出勤停止となった」「病院の職員でなくてよかったなどの言葉が聞こえてきた」といった声があった。 また、「周囲から励まされるなどの体験をした」の自由記述の回答では、地域住民や企業からの激励のメッセージや寄付などが相次いでいることも明らかになった。

3243.

医療のイノベーション、ヘルスケアベンチャー大賞で体感しよう!

 昨年盛況に終わり、今年2回目を迎える『ヘルスケアベンチャー大賞』(主催:日本抗加齢協会、共催:日本抗加齢医学会)。この最終審査が10月26日(月)に開催される。 ヘルスケアベンチャー大賞は、アンチエイジング領域においてさまざまなシーズをもとに新しい可能性を拓き、社会課題の解決につなげていく試みとして、日本抗加齢医学会のイノベーション委員会発足後、坪田 一男氏(日本抗加齢医学会イノベーション委員会委員長)らが2019年に立ち上げた。ベンチャー企業や個人のアイデアによるビジネスプランを書類審査、1次審査、最終審査の3段階で評価し表彰する。 今年は新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、これまでの日常は非日常となりニューノーマルを余儀なくされている。そんな状況下、ヘルスケア分野でイノベーションを起こそうと多くの起業家や学生が応募した。今回はその中から選出されたファイナリスト8組のユニークなビジネスモデルのプレゼンテーションを聴講できるまたとない機会である。気になる方は参加登録をしてみてはいかがだろうか。第2回ヘルスケアベンチャー大賞 ファイナリスト決定 最終審査【日時】2020年10月26日(月)15~17時【参加方法】WEB開催 (最終審査会参加登録はこちら)【ファイナリスト】<企業5社>合同会社アントラクト:StA2BLEによる転倒リスク評価と機能回復訓練事業株式会社OUI:Smart Eye Cameraを使用した白内障診断AIの開発株式会社Surfs Med:変形性膝関節症に対する次世代インプラントの開発歯っぴー株式会社:テクノロジーで普及を拡張させる口腔ケア事業株式会社レストアビジョン:視覚再生遺伝子治療薬開発<個人3名>佐藤 拓己氏(東京工科大学):寿司を食べながらケトン体を高く保つ方法松本 成史氏(旭川医科大学):メンズヘルス指標に有効な新規「勃起力」計測装置の開発松本 佳津氏(愛知淑徳大学):長寿高齢社会を前提とした真に豊かな住空間をインテリアから考え、活用できる具体的な指標を作成する

3244.

ロピナビル・リトナビルはCOVID-19死亡リスクを下げない/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した患者において、ロピナビル・リトナビルによる治療は28日死亡率、在院日数、侵襲的人工呼吸器または死亡のリスクを低下しないことが、無作為化非盲検プラットフォーム試験「RECOVERY試験」の結果、明らかとなった。英国・オックスフォード大学のPeter W. Horby氏ら「RECOVERY試験」共同研究グループが報告した。ロピナビル・リトナビルは、in vitro活性、前臨床試験および観察研究に基づいてCOVID-19の治療として確立されていたが、今回の結果を受けて著者は、「COVID-19入院患者の治療として、ロピナビル・リトナビルの使用は支持されない」とまとめている。Lancet誌オンライン版2020年10月5日号掲載の報告。通常治療単独群とロピナビル・リトナビル併用群で28日死亡率などを比較 RECOVERY試験は、COVID-19入院患者を対象にさまざまな治療と通常治療を比較する試験で、英国の176施設にて進行中である。同意が得られた適格患者を、通常の標準治療群、通常治療+ロピナビル(400mg)・リトナビル(100mg)または他の治療(ヒドロキシクロロキン、デキサメタゾンまたはアジスロマイシン)群のいずれかに、ウェブシステムを用いて無作為に割り付け(非層別)、10日間または退院まで経口投与した。割り付けは、通常治療群対実薬群を2対1(実薬群が2群の場合は、2対1対1)の割合とした。 主要評価項目は28日全死亡率で、無作為に割り付けられた全患者を対象とするintention-to-treat解析を実施した。両群で28日死亡率、生存退院までの期間、28日以内の生存退院率に有意差なし 2020年3月19日~6月29日の期間で、ロピナビル・リトナビル群に1,616例、通常治療群に3,424例が割り付けられた。 28日以内にロピナビル・リトナビル群で374例(23%)、通常治療群で767例(22%)が死亡した(率比:1.03、95%信頼区間[CI]:0.91~1.17、p=0.60)。事前に規定されたサブグループ解析でも、すべてのグループで同様の結果であった。 生存退院までの期間(両群とも中央値は11日間、四分位範囲:5~>28)、および28日以内の生存退院率(率比:0.98、95%CI:0.91~1.05、p=0.53)も、両群で有意差はなかった。入院時に侵襲的人工呼吸器を使用していない患者における、侵襲的人工呼吸器装着または死亡した患者の割合も、両群間に有意差は認められなかった(リスク比:1.09、95%CI:0.99~1.02、p=0.092)。 なお、著者は、非重篤の有害事象や治療中止の理由に関する詳細な情報は収集されていないこと、経口投与が困難な挿管患者がわずかながら登録されていたことなどを研究の限界として挙げている。

3245.

第11回日本製薬医学会年次大会開催のご案内(現地/web併催)

 一般財団法人日本製薬医学会は、2020年10月30日(金)、31日(土)に東京・日本橋ライフサイエンスビルでの開催を予定していた『第11回日本製薬医学会年次大会』を現地開催及びWeb開催の併催へと変更した。Webで参加する場合、参加登録者は会期中に全セッションを随時視聴可能である。また、後日、全参加者を対象としたWeb配信も予定されている[2020年11月14日(土)~11月23日(月)]。 開催概要は以下のとおり。【日時】2020年10月30日(金)~31日(土)【参加条件】登録方法:オンライン参加登録(10月31日まで。10月19日17時までは早期割引あり)参加費:ホームページ参照【テーマ】”産官患民学”連携による製薬医学の推進〜より良い医薬品を"1日も早く"患者さんとそのご家族にお届けするために〜【大会長】小居 秀紀氏(国立精神・神経医療研究センター)【大会概要】学会初日に開催される招待講演は、「医療イノベーションの推進に向けたPMDAの取組み」として、PMDA理事長の藤原 康弘氏に講演いただく。基調講演は、昨今ますます注目が高まっている疾患レジストリに関連し、「精神疾患領域における“産官患民学”連携~精神疾患レジストリ~」として、国立精神・神経医療研究センター病院長の中込 和幸氏にお願いしている。そのほか、シンポジウムでは、コロナ禍でのMA/MSL活動、医療現場と産学の協働に関するセッションや次世代医療基盤法とリアルワールドデータなどに着目した、最新の製薬医学に関連するセッションを皆さまへお届けする。【招待講演】10月30日(金) 13時10分~14時10分テーマ:医療イノベーションの推進に向けたPMDAの取組み座長:岩本 和也氏(日本製薬医学会 理事長)演者:藤原 康弘氏(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構[PMDA]理事長)【基調講演】10月31日(土) 11時30分~12時30分テーマ:精神疾患領域における“産官患民学”連携~精神疾患レジストリ~座長:小居 秀紀氏(第11回日本製薬医学会年次大会 大会長/国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター 情報管理・解析部長)演者:中込 和幸氏(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院長/理事)概略はこちら【お問い合わせ】一般財団法人日本製薬医学会 事務局〒108-0023 東京都港区芝浦4-15-33 芝浦清水ビル 株式会社 マディア 内E-mail:zymukyoku@japhmed.org

3246.

重症COVID-19の心停止、高齢なほど転帰不良/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症患者の院内心停止の発生は、とくに高齢者で頻度が高く、心肺蘇生(CPR)後の生存率は不良であることを、米国・ミシガン大学のSalim S. Hayek氏らが、米国68病院のICUに入室した5,000例超のCOVID-19重症患者を対象に行ったコホート試験で明らかにした。院内心停止を呈したCOVID-19重症患者は転帰不良であるとの事例報告により、同患者集団へのCPRは無益ではないかとの議論が持ち上がっている。このため研究グループは速やかにデータを集める必要があるとして本検討を行った。BMJ誌2020年9月30日号掲載の報告。18歳以上の重症患者5,019例についてコホート試験 研究グループは、地理的に多様な米国68病院のICUで、COVID-19が検査で確認された18歳以上の重症患者5,019例を対象に、多施設共同コホート試験を行った。 主要アウトカムは、ICUへの入室14日以内の院内心停止発生率と院内死亡率だった。CPR後の生存退院率、45歳未満21%、80歳以上2.9% COVID-19重症患者5,019例において、院内心停止の発生率は14.0%(701例)で、そのうちCPRが施行されたのは57.1%(400例)だった。 院内心停止発生患者は非発生患者と比べて、高齢(平均年齢63歳[標準偏差:14]vs.非発生患者60歳[15])で、併存疾患が多く、どちらかというとICU病床数が少ない病院に入院していた。 CPR施行患者は非施行患者と比べて、年齢が若かった(平均年齢は61歳[標準偏差:14] vs.67歳[14])。心肺蘇生時に最も多かった心リズムは、無脈性電気活動(PEA)が49.8%、心静止が23.8%だった。 CPR施行患者のうち、生存退院した患者は12.0%(48例)で、退院時の神経学的状態が正常または軽度障害だった割合は7.0%(28例)だった。 CPR施行患者の生存退院率は年齢により異なり、45歳未満では21.2%(11/52例)だったのに対し、80歳以上では2.9%(1/34例)だった。

3247.

「アドエア」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第21回

第21回 「アドエア」の名称の由来は?販売名アドエア100ディスカス28吸入用アドエア100ディスカス60吸入用アドエア250ディスカス28吸入用アドエア250ディスカス60吸入用アドエア500ディスカス28吸入用アドエア500ディスカス60吸入用アドエア50エアゾール120吸入用アドエア125エアゾール120吸入用アドエア250エアゾール120吸入用一般名(和名[命名法])サルメテロールキシナホ酸塩(JAN)フルチカゾンプロピオン酸エステル(JAN)効能又は効果○気管支喘息(吸入ステロイド剤及び長時間作動型吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)○慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎・肺気腫)の諸症状の緩解(吸入ステロイド剤及び長時間作動型吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)用法及び用量<気管支喘息>成人通常、成人には1回サルメテロールとして50µg及びフルチカゾンプロピオン酸エステルとして100µgを1日2回吸入投与する。アドエア100ディスカス 1回1吸入アドエア50エアゾール 1回2吸入なお、症状に応じて以下のいずれかの用法・用量に従い投与する。1回サルメテロールとして50µg及びフルチカゾンプロピオン酸エステルとして250µgを1日2回吸入投与アドエア250ディスカス 1回1吸入アドエア125エアゾール 1回2吸入1回サルメテロールとして50µg及びフルチカゾンプロピオン酸エステルとして500µgを1日2回吸入投与アドエア500ディスカス 1回1吸入アドエア250エアゾール 1回2吸入小児小児には、症状に応じて以下のいずれかの用法・用量に従い投与する。1回サルメテロールとして25µg及びフルチカゾンプロピオン酸エステルとして50µgを1日2回吸入投与アドエア50エアゾール 1回1吸入1回サルメテロールとして50µg及びフルチカゾンプロピオン酸エステルとして100µgを1日2回吸入投与アドエア100ディスカス 1回1吸入アドエア50エアゾール 1回2吸入<慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎・肺気腫)の諸症状の緩解>成人には、1回サルメテロールとして50µg及びフルチカゾンプロピオン酸エステルとして250µgを1日2回吸入投与する。アドエア250ディスカス 1回1吸入アドエア125エアゾール 1回2吸入警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.有効な抗菌剤の存在しない感染症、深在性真菌症の患者[ステロイドの作用により症状を増悪するおそれがある]2.本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者※本内容は2020年10月14日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年3月改訂(第18版)医薬品インタビューフォーム「アドエア250ディスカス28・60吸入用/125エアゾール120吸入用、アドエア100・500ディスカス28・60吸入用/50・250エアゾール120吸入用」2)gsk:製品情報

3248.

第28回 コロナで変わる私大医学部の学費事情、2022年以降に激変の予感

抗体カクテルをトランプ大統領が激賞こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。前回書いたトランプ米大統領に投与された抗体カクテル、リジェネロン・ファーマシューティカルズ(Regeneron Pharmaceuticals)社の「REGN-COV2」ですが、退院後、7日にツイッターに投稿した動画において同大統領は「信じられないほど効果があった」と激賞。「私が投与されたものをあなた方にも用意したいと思う。無料にするつもりだ」と語りました。リジェネロン社はこの動画が投稿された直後にアメリカ食品医薬品局 (FDA)に緊急承認を要請しました。米国内では数日または数週間で当局の承認が得られるとの期待が高まっているようです。また、ロイターなどの報道によれば、米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長も8日、トランプ米大統領の経過について、抗体カクテルに効果があった可能性があるとの見解を示しています。大統領個人の主観が、薬の承認や供給、価格に影響するとしたら問題ではありますが、初期症状や入院するほど症状の重くない患者向けの治療薬として、抗体カクテル・フィーバーはしばらく続きそうです。2021度入試で女子医大1200万円値上げさて、話題変わって今週は9月28日に朝日新聞が報じた「私大医学部 学費値上げの動き」のニュースについて考えたいと思います。同紙は「私立大学の医学部で学費を値上げする動きが出ている」として、東京女子医科大(東京)が2021度の入学生について、6年間で前年度入学生よりも計1,200万円上げ、私立医大で2番目に高くなったと伝えています。この連載では7月に「凋落の東京女子医大、吸収合併も現実味?」と題して、コロナ禍などによる経営難などを背景に、東京女子医大学病院の看護師の退職希望が400人を超えていること、同大が「夏季一時金を支給しない」と労組に回答したことなどについて書きましたが(その後、財源が確保できたとして基本給1ヵ月分が支給されたそうです)、学費値上げを報じた朝日新聞も「コロナ禍による大学病院の経営悪化の影響などが指摘されている」と分析しています。最高額は川崎医大、最低額は国際医療福祉大東京女子医大のホームページに行くと、学費の詳細を見ることができます。それによれば、初年度納入金が1,144万9,000円、2年目以降が695万3,000円で、6年間の学費は計4,621万4,000円となっています。学費のうち「施設整備費」という費目が新たに加わり、これが年間200万円、6年間で計1,200万円増えています。値上げの詳しい理由はホームページ上には記載されておらず、朝日新聞の取材にも回答していません。私立大医学部の2021年度の募集要項をまとめたサイト(医学部受験情報発信サイトなど)によれば、一般選抜など主な選抜方式における6年間学費が最も高いのは川崎医科大(岡山県)の4,736万5,000円。2位が値上げ後の東京女子医大、3位は金沢医科大(石川県)の4,054万3,000円、4位は埼玉医科大の3,957万円、5位は帝京大の3,938万140円です。東京女子医大は昨年度時点では約3,900万円で上から16番目、私立大医学部全体のほぼ真ん中でした。一方、学費総額が最も安いのは国際医療福祉大の1,850万円です。次いで順天堂大の2,080万円、日本医科大の2,200万円、慶応義塾大の2,205万9,500円、東京慈恵会医科大の2250万円と、偏差値が高い、東京の私立大医学部が続きます。2008年度からは値下げトレンドだったが実は、私立大医学部の学費は2000年代後半から低下傾向が続いていました。その先駆けは順天堂大でした。2008年度に順天堂大は6年間の学費をなんと900万円も下げました。その結果、志願者が増え、偏差値も上昇しました。学費値下げによって、ブランド力の向上を図ったわけです。その後、「優秀な学生を確保したい」と考える多くの私立大医学部がこれに追従しました。順天堂ショックに次いで医学部受験界に衝撃を与えたのが、2014年の帝京大の学費値下げでした。帝京大はかつて「日本一学費が高い医学部」として有名でした。その学費を6年間で1,000万円以上も下げたのです。ちなみに10年前、2011年度時点の帝京大の6年間学費は約4,900万円で、2位の川崎医大よりも350万円近くも高額でした。2021年度時点の帝京大学の学費は3,938万円と高額上位5位ではありますが、それでもかつてより1,000万円近く安い水準を保っています。なお、帝京大は学費値下げによって受験者数が増加し、学費の収入減は受験料収入で十分カバーできたと言われています。注目は再来年、2022年度の学費一連の学費改革によって、開業医はじめとした高額所得者の子女しか志望できなかった私立大医学部が一般サラリーマンの子女でも狙えるようになっていたのが、コロナ禍以前のトレンドでした。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、大学病院の経営状況は悪化、東京女子医大のような6年間で1,000万円超の値上げを行う私立大医学部は今後も出てくる可能性は大きいと考えられます。入試要項が発表済みの今年度ではなく、来年度以降の学費に注目したいと思います。以前、「新型コロナウイルス感染症によって、医療現場を恐れる受験生や親が出てくるかもしれない」と書きましたが(第4回 新型コロナで変わるか、医学部受験事情)、学費面でも医学部は敬遠される存在になっていくかもしれません。コロナ禍で、一般サラリーマンや自営業者の年収だけでなく、開業医の収入も大きな打撃を被っています。そんな中、私立大医学部はごく限られた高収入の家庭の子女しか入れない、”狭き門”になっていくかもしれません。それが果たして日本の医療にとっていいことなのか悪いことなのか…。なかなか悩ましい問題です。

3249.

糖尿病併存のCOVID-19治療、入院時のシタグリプチン投与が有用

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を巡っては、高血圧症や糖尿病などの併存疾患を有する患者で転帰不良となることがこれまでの研究で明らかになっており、併存疾患に応じた治療を模索する必要がある。イタリア・パヴィア大学のSebastiano Bruno Solerte氏らは、COVID-19治療のために入院した2型糖尿病患者を対象に、標準治療(インスリンなど)にDPP-4阻害薬シタグリプチンを追加したケースと、標準治療のみのコントロールを比較する多施設後ろ向きケースコントロール研究を行った。その結果、シタグリプチン追加群で死亡率の低下と臨床転帰の改善がみられた。Diabetes Care誌オンライン版2020年9月2日号に掲載。 本研究では、2020年3月1日~4月30日、北イタリアの複数の医療機関においてCOVID-19治療のために入院した、連続した2型糖尿病患者338例について、標準治療にシタグリプチンを追加した169例(シタグリプチン追加群)を、年齢・性別をマッチさせた169例(標準治療群)と比較した。主要評価項目は退院、死亡、臨床転帰の改善(7段階の評価スケールで、2ポイント以上の増加と定義)とした。 その結果、シタグリプチン追加群では、標準治療群に比べ死亡率の低下(18% vs.37%、ハザード比:0.44、95%信頼区間:0.29~0.66、p=0.0001)、臨床転帰の改善(60% vs.38%、p=0.0001)および退院者数の増加(120例 vs.89例、p=0.0008)がみられた。 著者らは、本研究で入院時のシタグリプチン治療が死亡率低下および臨床転帰の改善に寄与することが示されたが、進行中のランダム化プラセボ対照試験においてさらなる検証が必要であるとしている。

3250.

ミズイボへの新規外用剤、有効性・安全性を確認

 子供に多いことで知られるウイルス性皮膚感染症、いわゆるミズイボへの新規外用剤VP-102の、第III相臨床試験の結果が報告された。VP-102は、1回使い切りタイプの独自の薬剤送達デバイスで、カンタリジン0.7%(w/v)を含有する局所フィルム形成溶液を病変部に塗布するというもの。病変塗布部が区別しやすいよう外科用染料ゲンチアナバイオレットが使われ、また苦味を加味して潜在的な経口摂取の防止が図られているという。今回、カリフォルニア大学サンディエゴ校のLawrence F. Eichenfield氏らが、2歳以上の伝染性軟属腫(MC)患者への有効性と安全性を検討した2件の第III相臨床試験の結果を報告した。いずれの試験でもVP-102はビヒクル(プラセボ)と比較して、試験終了時のMCの完全消失率が有意に優れており、有害事象は概して軽度~中等度で塗布部に限定されたものであることが明らかにされた。結果を踏まえて著者は、「VP-102は、米国食品医薬品局(FDA)による承認治療薬がない一般的な皮膚症状であるMCについて、潜在的に有効で安全な治療薬であることが示された」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2020年9月23日号掲載の報告。 2件の第III相臨床試験は、同一試験デザインの無作為化二重盲検ビヒクル対照にて、米国の31医療施設で行われた(Cantharidin Application in Molluscum Patients[CAMP-1とCAMP-2])。 2歳以上のMC患者計528例が参加。CAMP-1は2018年3月21日~11月26日に、CAMP-2は2018年2月14日~9月26日に実施された。 被験者は無作為に3対2の割合で、VP-102を局所塗布する群(VP-102治療群)またはビヒクルを局所塗布する群(ビヒクル群)に割り付けられた。病変の完全消失または最大4回塗布まで、21日ごとの受診時にすべての治療病変に塗布が行われた。 主要有効性アウトカムは、すべてのMC病変が完全消失したVP-102治療群の患者割合で、84日の時点での最終受診時にビヒクル群と比較評価した。有効性はintent-to-treat集団にて解析した。 副次有効性アウトカムは、21日、42日、63日の各時点でのMC完全消失率などであった。安全性アウトカムは、予測された局所の皮膚反応を含めた有害事象の評価が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・528例の登録患者のうち、527例が治療を受けた(CAMP-1:265例、CAMP-2:262例)。267/527例(50.7%)が男児で、VP-102治療群の平均年齢(SD)はCAMP-1が7.5(5.3)歳、CAMP-2が7.4(8.0)歳、ビヒクル群はそれぞれ6.3(4.7)歳、7.3(6.7)歳であった。・VP-102治療群は、ビヒクル群に対して、最終受診時のMC病変完全消失達成患者の割合でみた有効性が優れていることが示された(CAMP-1[VP-102群46.3% vs.ビヒクル群17.9%、p<0.001]、CAMP-2[54.0% vs.13.4%、p<0.001])。・有害事象は、VP-102群では99%(CAMP-1)および95%(CAMP-2)、ビヒクル群は73%(CAMP-1)および66%(CAMP-2)で観察された。・最も頻度の高い有害事象は、塗布部の小胞、疼痛、かゆみ、紅斑、痂皮であり、ほとんどの有害事象の重症度は軽度~中等度であった。

3251.

4価HPVワクチン、浸潤性子宮頸がんリスクを大幅に低減/NEJM

 スウェーデンの10~30歳の女児および女性は、4価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種により、浸潤性子宮頸がんのリスクが大幅に低く、同リスクは接種開始年齢が若いほど低いことが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のJiayao Lei氏らの調査で明らかとなった。研究の詳細は、NEJM誌2020年10月1日号に掲載された。これまでに、子宮頸部高度異形成(Grade2または3の子宮頸部上皮内腫瘍[CIN2+、CIN3+])の予防における4価HPVワクチンの効能と効果が確認されている。一方、4価HPVワクチン接種と接種後の浸潤性子宮頸がんリスクとの関連を示すデータはなかったという。全国的な登録データを用いたコホート研究 研究グループは、スウェーデンの全国的な登録データを用い、HPVワクチンと浸潤性子宮頸がんリスクの関連を評価するコホート研究を行った(スウェーデン戦略研究財団などの助成による)。 解析には、2006~17年に経時的に登録された10~30歳の女児および女性の集団(167万2,983人:4価HPVワクチンを少なくとも1回接種した群52万7,871人、非接種群114万5,112人)のデータが含まれた。 子宮頸がんの発生は、31歳の誕生日を迎えるまで評価が行われた。フォローアップ時の年齢、暦年、居住県、親の因子(学歴、世帯所得、母親の出生国、母親の病歴など)で調整したうえで、HPVワクチン接種と浸潤性子宮頸がんのリスクとの関連を評価した。83.2%が17歳以前に接種開始 ワクチン接種群のうち、43万8,939人(83.2%)が17歳になる前に初回の接種を受けていた。研究の期間中に、ワクチン接種群で19人、非接種群では538人が子宮頸がんの診断を受けた。 30歳までの子宮頸がんの累積発生率は、ワクチン接種群の女性では10万人当たり47件であり、非接種群では10万人当たり94件であった。17~30歳の間にワクチン接種を開始した女性では、30歳までの子宮頸がんの累積発生率は10万人当たり54件、17歳になる前に接種を開始した女性では、28歳までの子宮頸がんの累積発生率は10万人当たり4件であった。 フォローアップ時の年齢で補正すると、ワクチン接種群の非接種群に対する発生率比は0.51(95%信頼区間[CI]:0.32~0.82)であった。さらに暦年と居住県、親の因子を加えて補正すると、発生率比は0.37(0.21~0.57)となった。 すべての共変量で補正した場合の発生率比は、ワクチン接種を17歳になる前に受けた女性で0.12(95%CI:0.00~0.34)、17~30歳で受けた女性では0.47(0.27~0.75)であった。また、20歳になる前にワクチン接種を受けた女性は0.36(0.18~0.61)、20~30歳で受けた女性は0.38(0.12~0.72)だった。 著者は、「4価HPVワクチン接種は、HPVワクチン接種プログラムの最終的な目的である浸潤性子宮頸がんのリスク低減を達成した」とし、「これらの結果は、ワクチン接種は既存のHPV感染症に対する治療効果はないため、最大の効果を得るには、HPV感染症への曝露前における4価HPVワクチンの接種を推奨する見解を支持するものである」と指摘している。

3252.

ESMO2020レポート 肝胆膵腫瘍

レポーター紹介はじめにESMO VIRTUAL CONGRESS 2020はASCO 2020 Virtualに引き続き、オンラインでの開催となった。開催会場を模したトップページ上から各会場へとアクセスでき、これまでの開催のように人々が集う様子には新型コロナウイルス感染症の収束への願いが現れていた。本稿では肝胆膵領域からいくつかの演題を紹介したい。巨大肝細胞がんに対するFOLFOXを用いたHAICの有効性が示されるHepatic arterial infusion chemotherapy (HAIC) with oxaliplatin, fluorouracil, and leucovorin (FOLFOX) versus transarterial chemoembolization (TACE) for unresectable hepatocellular carcinoma (HCC): A randomised phase III trial 【Presentation ID:981O】Intermediate stageの手術不能でかつ穿刺局所療法の対象とならない多血性肝細胞がんに対して行われるTACEの有効性は、巨大な肝細胞がんに対しては病勢制御割合は50%未満、全生存期間は9~13ヵ月といまだ十分とは言えない。FOLFOXを用いたHAICの第II相試験での良好な抗腫瘍効果を受けて、巨大な切除不能肝細胞がん患者におけるFOLFOXを用いたHAICおよびTACEを比較する無作為化第III相試験の結果が報告された。最大径7cm以上で大血管への浸潤もしくは肝外転移のない切除不能肝細胞がんを有する、Child-Pugh分類A、ECOG PS0または1の患者が適格とされた。登録された患者はHAIC(オキサリプラチン130mg/m2、ロイコボリン400mg/m2、1日目にフルオロウラシルボーラス400mg/m2、およびフルオロウラシル注入2,400mg/m2を24時間、3週間ごとに繰り返し6サイクルまで投与)またはTACE(エピルビシン50mg、ロバプラチン50mg、リピオドールおよびポリビニルアルコール粒子)に1対1で割り付けられた。主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効割合(ORR)および安全性が評価された。データカットオフは2020年4月でフォローアップは継続されている。HAIC群に159例、TACE群に156例が登録された。患者背景に大きな差はなく、HAIC群/TACE群のHBV陽性例が88.1/90.4%、AFP 400ng/mL以上は52.2/48.1%であった。最大腫瘍径の中央値はHAIC群9.9cm(範囲:7~21.3)、TACE群9.7cm(7~19.8)であり、腫瘍数が3個以下であった症例はHAIC群51.6%、TACE群47.7%であった。治療回数の中央値はHAIC群で4回(2~5)、TACE群で2回(1~3)であった。治療のクロスオーバーはTACE群で多く、HAIC群では後治療として切除が行われた症例が多かった(p=0.004)。RECIST ver.1.1によるHAIC群のORRは45.9%とTACE群の17.9%に比べ有意に高かった(p< 0.001)。Modified RECISTによる評価でも同様にHAIC群が有意に高い結果であった(48.4% vs.32.7%、p=0.004)。主要評価項目であるOS中央値はHAIC群23.1ヵ月(95%信頼区間:18.23~27.97)、TACE群16.07ヵ月(95%信頼区間:14.26~17.88)であり、HAIC群で有意な延長を認めた(HR=0.58、95%信頼区間:18.23~27.97、p<0.001)。PFS中央値は、HAIC群9.63ヵ月(95%信頼区間:7.4~11.86)、TACE群5.4ヵ月(95%信頼区間:3.82~6.98)であり、HAIC群で有意に延長した(HR=0.55、95%信頼区間:0.43~0.71、p<0.001)。Grade3以上の治療関連有害事象はHAIC群で19%、TACE群で30%とHAIC群で少なかった(p=0.03)。巨大な切除不能肝細胞がんを有する患者に対するFOLFOXを用いたHAICはTACEに比べて有効性および安全性ともに良好であった。これまで本邦では5-FUおよびシスプラチンを併用したHAICは外科的切除およびその他の局所治療の適応とならない肝細胞がんを対象としてソラフェニブへの上乗せ効果を第III相試験で示すことができなかったことなどを含めて、標準治療とされてこなかった。しかし、今回のような巨大肝細胞がんに対するHAICの有効性の報告、および門脈腫瘍栓を有する肝細胞がんに対するHAICの有効性の報告などが続いており、今後の開発に注目していきたい。転移を有する膵管腺がんおよび神経内分泌腫瘍(NEN)に対する免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が検討されるThe Canadian Cancer Trials Group PA.7 trial: Results of a randomized phase II study of gemcitabine (GEM) and nab-paclitaxel (Nab-P) vs. GEM, Nab-P, durvalumab (D) and tremelimumab (T) as first line therapy in metastatic pancreatic ductal adenocarcinoma (mPDAC)【Presentation ID:LBA65】ゲムシタビンおよびnab-パクリタキセル併用療法(GnP)は転移を有する膵がんに対する標準的な1次治療として確立されている。一方で、DNAミスマッチ修復機構の欠損(mismatch repair deficient:dMMR)を呈する場合を除き膵がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性は限られたものとされるが、線維芽細胞を含めた腫瘍環境因子による免疫チェックポイント阻害薬の耐性はゲムシタビンおよびnab-パクリタキセル併用により克服されるとの報告がある。これらを受け、抗PD-L1抗体であるデュルバルマブ(D)および抗CTLA-4抗体であるtremelimumab(T)をGnP療法に上乗せする4剤併用療法は、11例のsafety run-inコホートでの安全性が確認されたうえで、その有効性がランダム化第II相試験で検討された。試験はカナダ全域より28施設が参加し行われた。全身状態の保たれた未治療の転移のある膵管腺がんを有する患者が適格とされ、GnP群(ゲムシタビン、nab-パクリタキセルそれぞれ1,000mg/m2、125mg/m2を1日目、8日目、15日目に投与、28日を1サイクル)または4剤併用群(GnP療法に加えてD 1,500mgおよびT 75mgを1日目に投与)の2群に2対1の割合でランダム割り付けされた。ECOG PS、術後補助化学療法歴の有無により層別化が行われた。主要評価項目はOS、副次評価項目はPFS、安全性、ORRが設定された。OSの中央値をGnP群8.5ヵ月に対して4剤併用群13.1ヵ月(HR=0.65)、両側αエラー0.1、統計学的検出力0.8として150イベントが必要であると算出された。データカットオフは2020年3月15日とされた。4剤併用群に119例、GnP群に61例が割り付けられ、患者背景は両群に差はなかった。ECOG PS0/1は4剤併用群で22.7/77.3%、GnP群で23/77%、術後補助化学療法歴は4剤併用群で10.1%、GnP群で11.5%が有しており、アジア人が4剤併用群に8.4%、GnP群に9.8%含まれる集団であった。主要評価項目であるOSの中央値は4剤併用群9.8ヵ月(90%信頼区間:7.2~11.2)、GnP群8.8ヵ月(90%信頼区間:8.3~12.2)であり4剤併用群の優越性は示されなかった(層別HR=0.94、90%信頼区間:0.71~1.25、p=0.72)。PFSの中央値は4剤併用群5.5ヵ月(90%信頼区間:3.8~5.7)、GnP群5.4ヵ月(90%信頼区間:3.6~6.6)であった(層別HR=0.98、90%信頼区間:0.75~1.29、p=0.91)。ORRは4剤併用群30.3%、GnP群23.0%(オッズ比1.49、90%信頼区間:0.81~2.72、p=0.28)であり、PFS、ORRいずれも両群に有意な差はなかった。治療期間中のGrade3以上の有害事象は両群に差はなく4剤併用群で84%、GnP群で76%に認められ、倦怠感、血栓塞栓イベント、敗血症などが多かった。治療期間中のGrade3以上の検査値異常はおおむね同等であったが、リンパ球減少が4剤併用群で38%、GnP群で20%と4剤併用群で有意に高かった(p=0.02)。GnP療法へのデュルバルマブおよびtremelimumabの上乗せはOS、PFS、ORRいずれにおいても有意に改善することができなかった。現在cfDNAの網羅的遺伝子解析を用いて免疫学的観点からの有効性の探索が行われている。A multi-cohort phase II study of durvalumab plus tremelimumab for the treatment of patients (pts) with advanced neuroendocrine neoplasms (NENs) of gastroenteropancreatic or lung origin: The DUNE trial (GETNE 1601)【Presentation ID:1157O】TMB(tumor mutational burden)、PD-L1蛋白発現、およびリンパ球浸潤がいずれも低い、いわゆる「cold」な腫瘍である神経内分泌腫瘍(NEN)に対する免疫チェックポイント阻害の意義は限られたものである。しかしながら昨今、免疫チェックポイント阻害薬の併用がNENに対して良好な抗腫瘍効果を報告しており、今回抗PD-L1抗体であるデュルバルマブと抗CTLA-4抗体であるtremelimumabの併用療法がマルチコホート第II相試験で検討された。標準治療後に増悪した消化管、膵または肺を原発とする進行NENを有する患者が適格とされ、C1:ソマトスタチンアナログ(SSA)および分子標的薬または化学療法の治療歴を有する定型/非定型肺カルチノイド、C2:SSAおよび分子標的薬もしくは放射性核種療法の治療歴を有するGrade1/2消化管NEN、C3:化学療法、SSA、分子標的薬のうち2~4の治療歴を有するGrade1/2膵NENおよびC4:白金製剤を含む化学療法の治療歴を有するGrade3消化管および膵NENの4つのコホートに登録された。登録された患者はデュルバルマブ1,500mgおよびtremelimumab 75mgを4週ごとに4サイクルまで投与を受けた後、デュルバルマブ単剤療法を9サイクルまで継続して投与された。主要評価項目はC1からC3ではRECIST ver.1.1による9ヵ月時点の臨床的有効割合とされ、C4では9ヵ月時点の生存割合とされた。副次評価項目として安全性、PFS、OS、ORRおよび奏効期間(duration of response:DOR)が評価された。C1からC3では臨床的有効割合の閾値を30%、期待値を50%、C4では生存割合の閾値を13%、期待値を23%とし、片側αエラーを0.05、統計学的検出力を0.8として仮説検定に必要な症例数をそれぞれ28例および30例に設定された。C1/C2/C3/C4にそれぞれ27/31/32/33例が登録され、患者背景は以下のようであった。画像を拡大するC1からC3では主要評価項目である9ヵ月時点の臨床的有効割合はC1/C2/C3で7.4/32.3/25%であった。ORRはC1/C2/C3で0/0/6.9%(RECIST ver.1.1)および7.4/0/6.3%(irRECIST)であった。PFSはC1/C2/C3で5.3ヵ月(95%信頼区間:4.52~6.06)/8.0ヵ月(95%信頼区間:4.92~11.15)/8.1ヵ月(95%信頼区間:3.80~12.46)であった。C4では主要評価項目である9ヵ月時点の生存割合は36.1%(95%信頼区間:22.9~57)であった。ORRは7.2%(RECIST ver.1.1)および9.1%(irRECIST)であった。PFSは2.5ヵ月(95%信頼区間:21.5~2.75)であった。すべてのコホートにおける有害事象は倦怠感(43.1%)、下痢(31.7%)、掻痒(23.6%)などであった。進行消化管、膵および肺原発NETに対するデュルバルマブおよびtremelimumabの併用療法の抗腫瘍効果は十分なものではなかった。WHO grade3のNENに対する併用療法は事前に設定した統計学的設定を満たす結果であり、さらなる検討に資するものであった。これまで膵管腺がんおよび神経内分泌腫瘍はいずれもcold tumorとされ、免疫チェックポイント阻害薬の有効性は十分に示されていない。耐性克服のひとつの方向性として併用療法に大きな期待が寄せられていたが、今回の結果もまた厳しいものであった。免疫チェックポイント阻害薬の進行中のバイオマーカーの検討の結果が待たれるとともに、その他の薬剤との併用療法の開発などにも期待し、この領域における免疫療法の開発が継続していくことに期待したい。1次治療中にも転移を有する膵がん患者のQOLは損なわれているThe QOLIXANE trial - Real life QoL and efficacy data in 1st line pancreatic cancer from the prospective platform for outcome, quality of life, and translational research on pancreatic cancer (PARAGON) registry【Presentation ID:1525O】転移を有する膵がんは病勢が早く予後は不良である。GnP療法(ゲムシタビン+nab-パクリタキセル)はMPACT試験などの結果により転移を有する膵がんに対する1次治療として確立されているが、これを受ける患者のQOLに関する報告はいまだなかった。本研究は独95施設が参加する多施設共同前向き観察研究として行われ、GnP療法を受ける転移を有する膵がんが対象とされた。主要評価項目はITT集団における3ヵ月時点でのEORTC QLQ-C30のQoL/Global Health Status(GHS、全般的健康)が維持された患者の割合とされた。ベースラインと比較してスコアの変化が10ポイント未満であった場合に「QoL/GHS Scoreは維持された」と定義された。600人が登録され、患者背景は年齢の平均は68.7歳、男性/女性が58.2/41.8%、ECOG PS 0/1/2/3が32.0/48.7/12.3/1.5%、進行/再発は85.1/13.7%、膵頭部/体部/尾部は48.7/18.2/19.2%であった。GnP療法の投与サイクル数中央値(範囲)は4.0サイクル(0~12)で、45.7%で用量調整が行われており、後治療移行割合は48.5%であった。無増悪生存期間中央値は5.85ヵ月(95%信頼区間:5.23~6.25ヵ月)、全生存期間中央値は8.91ヵ月(95%信頼区間:7.89~10.19ヵ月)であった。Grade3以上の治療関連有害事象は貧血3.9%、好中球減少症5.1%、白血球減少4.3%などで、22例(3.8%)の治療関連死亡が報告された。EORTC QLQ-C30はベースラインでは588例(98%)、3ヵ月時点、293例(48.8%)で評価が可能であった。主要評価項目である3ヵ月時点でQoL/GHS Scoreが維持された患者の割合は61%であった。QoL/GHS Scoreが維持された期間の中央値は4.68ヵ月(95%信頼区間:4.04~5.59ヵ月)であった。単変量解析ではその他のサブスケールと同様にベースラインのQoL/GHS Scoreは生存に有意に寄与した(HR=0.86、p<0.0001)。多変量解析ではEORTC QLQ-C30の各サブスケールのうち、機能スケールでは身体機能(HR=0.86、0.82~0.96、p=0.004)、症状スケールでは悪心・嘔吐(HR=1.06、1.01~1.13、p=0.33)がそれぞれ生存に有意に寄与するものであった。これまでゲムシタビン単剤療法、mFOLFIRINOX療法およびオラパリブなどの第III相試験におけるQOLに関する報告はされていたものの、GnP療法を受ける転移を有する膵がん患者のQOLの情報は不足していた。今回はリアルワールドデータとしてGnP療法を受ける患者のQOLに関する検討が報告された。実臨床でも実感することであるかもしれないが、GnP療法を継続できている患者においても病勢増悪より先にQOLが低下している。転移を有する膵がんに対して、本邦でも今年ナノリポソーム型イリノテカンが承認されるなど治療の選択肢は着実に広がっている。治療をつなぐためにも、このような検討がさらに進んでいくことに期待したい。おわりに今回紹介しきれなかったが、胆道がんにおけるmFOLFIRINOX療法の有効性の報告や、欧州らしく免疫チェックポイント阻害薬以外にも多くの神経内分泌腫瘍に関する演題が多く報告されていた。ASCOに引き続くオンライン開催であったが、世界の最新のエビデンスに日本にいながらにして触れることができるなどオンラインだからこそのメリットもある。新型コロナウイルス感染症の早い収束を願うとともに、がん克服に向けた努力がさらに加速することに期待したい。

3253.

セルメ税制の延長・拡大でスイッチOTC化は増える?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第55回

セルフメディケーション税制は、スイッチOTC医薬品を購入した際に、その購入費用が所得控除できる制度で、5年間の特例として2017年に始まりました。あまり盛り上がることもなく若干忘れられつつある気がしますが、このセルフメディケーション税制が延長・拡大しそうです。厚生労働省は21年度税制改正要望をまとめた。(中略)セルフメディケーション税制は、2017年~2021年の5年間に限って適用が認められている。厚労省は「インセンティブ効果の維持・強化が重要で、政策効果の検証を引き続き実施することが必要」とし、「2022年から5年間の延長」(2026年まで)を求める。対象品目については既存制度の対象である「スイッチOTC薬」に加えて、「非スイッチOTC薬のうち、治療・療養に使用されるものも対象とする」ことを要望する。(RISFAX 2020年9月25日)期間の延長だけではなく、対象となる医薬品の拡大や所得税控除額上限の引き上げなども要望しています。昨年の調査では、セルフメディケーション税制の認知度は71.3%と高いものの、利用意向は11.0%と低調でしたが、これが実現するとずいぶん使いやすくなりそうです。また、5月には、内閣府の規制改革推進会議において、「一般用医薬品(スイッチOTC)選択肢の拡大に向けた意見」が示され、スイッチOTC医薬品の開発や普及のための取り組みを求めるなど、セルフメディケーションに関する議論が活発化しています。スイッチOTCについてはもはや説明するまでもありませんが、医療用医薬品として用いられている成分を一般用医薬品へ転用することです。スイッチOTC化する成分については、以前は日本薬学会が候補成分を選定し、日本医学会などの関係医学会に意見を聞いたうえで了承していましたが、2015年6月の閣議決定を受けて、関連学会や団体、消費者などから候補成分の要望を受け付けて、医学・薬学の専門家などで構成される評価検討会議が議論、承認するという新しいスキームができました。この新しいスキームでは消費者の意見も反映されるため脚光を浴びました。しかし、実際に新しいスキームによって発売されたスイッチOTC医薬品は「フルコナゾール点鼻薬」の1成分のみです。この新しいスキームなるものは、スイッチOTC化を推進するどころか、結果的にスイッチOTC化をせき止めてしまったと言っても過言ではないかもしれません。この問題に着目した規制改革推進会議は、スイッチOTC化を推進するだけでなく、評価検討会議の役割の見直しなどセルフメディケーション全体を促進する仕組みを再構築する旨の意見を提出しています。セルフメディケーションの推進はもはや国策ですので、おそらく今後はスイッチOTC化が進むと想像できます。コロナもセルフメディケーションを推進国の政策とは別に、セルフメディケーションが進む要因として新型コロナウイルス感染症の流行も考えられます。医療機関への受診が抑制されたこともあり、軽い症状の場合は自宅での療養を選択する患者さんが多くなってきました。思ってもみなかったセルフメディケーションへの追い風で、受診しなくても購入可能なOTC医薬品の利用がさらに進むのではないかと思っています。これらの変化が実際にセルフメディケーションにどう影響するのか、そして販売する薬剤師の役割がどう変わるのか、引き続きウオッチしていきたいと思います。

3254.

第29回 新型コロナウイルスはタンパク質生成3工程をどれも妨げてインターフェロンを抑え込む

ヒト細胞がウイルスの侵入を察知するとタンパク質生成の3工程―切り貼り(スプライシング)で成熟したmRNAの核外移行、リボソームでの成熟mRNA翻訳によるタンパク質製造、シグナル認識粒子(SRP)の働きによる細胞膜へのタンパク質誘導が稼働し、感染抑制と加勢要請の伝令役を担うタンパク質・インターフェロンが細胞外へと放たれます1)。とにかくインターフェロンが嫌いらしい新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はそれら3工程のどれも妨害する手立てを備えていることが先週8日にCell誌に掲載されたカリフォルニア工科大学(Caltech)Mitchell Guttman教授率いるチームの研究で明らかになりました1,2)。SARS-CoV-2が作るタンパク質はおよそ30種あり、Guttman教授のチームはそれらとヒト培養細胞の分子との相互作用を調べました。その結果、ウイルスタンパク質NSP16は3工程の最初の段階・mRNAスプライシングを妨害し、別のウイルスタンパク質NSP1はリボソームを目詰まりさせて第2工程のmRNA翻訳を妨害すると分かりました。それらの妨害をかいくぐってヒトタンパク質が作られたとしてもさらに2つのウイルスタンパク質NSP8とNSP9が行く手を阻みます。NSP8とNSP9はSRPの一部・7SL RNAに結合して細胞膜へのヒトタンパク質輸送を妨げます。そして、それら3工程の妨害はどれもウイルス感染へのインターフェロン反応を抑制すると分かりました。重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者のインターフェロン応答は鈍いことが知られています1)。それに、1型インターフェロン伝達の不具合はCOVID-19の重症化に寄与するらしく、その感染予防にわれわれの体はどうやら他のウイルス感染予防に比べて1型インターフェロンをより頼りとしているようです3)。今回の研究でインターフェロン妨害の担い手が判明したことを受け、インターフェロン反応を底上げする治療薬が開発できそうです。たとえばリボソームRNAを標的とする低分子薬は多く存在し、ウイルスタンパク質NSP1とリボソームの18S rRNAの相互作用を阻害してCOVID-19防御を手助けする薬の開発が期待できます。また、SARS-CoV-2はなんと小賢しいことにNSP1による翻訳阻害がヒトmRNAにだけ及んで自前のウイルスmRNAには及ばないようにする通行手形のような仕組みを備えることも今回の研究で判明していますが、その仕組みを担うウイルスmRNA領域・SL1に結合してウイルスタンパク質生成を遮断する低分子薬の開発も可能でしょう。参考1)How SARS-CoV-2 Disables the Human Cellular Alarm System / Caltech (California Institute of Technology) 2)Abhik K, et al. Cell. 2020 October 08. [Epub ahead of print] 3)Hidden immune weakness found in 14% of gravely ill COVID-19 patients / Science

3255.

内科医も知っておきたい小児感染症の特殊性/日本感染症学会

 2020年8月に現地とオンラインのハイブリッド方式で開催された日本感染症学会学術講演会において、名古屋大学医学部附属病院の手塚 宜行氏(中央感染制御部)が「内科医も知っておきたい小児感染症の特殊性」とのテーマで発表を行った。 手塚氏によると、小児感染症が成人と異なる事項は、以下の4点に集約される。1)年齢(月齢)によってかかる病気が変わる2)ウイルス感染症が多い 3)検体採取が困難なケースが多い4)病勢の進行が速い さらに小児感染症を診るときのチェックリストとして使う「R(A)IMS」という概念を紹介。これは以下の4つの視点から診療するという考え方だ。・R(Risk):基礎疾患の有無・I(Infected organ):感染臓器・M(Microbiology):原因微生物・S(Severity):重症度年齢月齢による違いは非常に大きい 小児感染症のリスク判断基準において、基礎疾患の有無が重要となるのは成人と同様だが、小児特有なのが月齢年齢差による違いだ。例として1998~2007年の米国コホート研究による細菌性髄膜炎の起炎菌についての研究では、新生児ではGBS(B群溶血性連鎖球菌)が多いが、1~3カ月児では腸内細菌科細菌が増え、3カ月~3歳児では肺炎球菌の割合が高くなり、3歳~10歳児以上では大半が肺炎球菌になるなど、年齢に応じて起炎菌の発生頻度が劇的に変化することを紹介した。また、「1年に2回以上肺炎にかかる」「気管支拡張症を発症する」など10のワーニングサインにあてはまるときは、原発性免疫不全症が隠れている可能性があるため、注意して診察する必要がある。本人からの病歴聴取が困難なケースも 感染臓器については、病歴聴取と身体診察から推定する流れは成人と変わらないものの、本人から病歴聴取できないことが多い点、家族や保育園からの感染が多くSick contactの把握が非常に重要となる点が成人と異なり、母子手帳から予防接種歴や育児環境情報を把握することが肝要とした。身体診察においても本人が症状を訴えられないことが多いため、保護者の協力を得ることが大切となり、小児に特徴的な部位である大泉門・小泉門などから重要な所見が得られることも多いという。 さらに、小児で見つけにくい感染臓器としては、尿路感染症、固形臓器の膿瘍(急性巣状性細菌性腎炎など)、関節炎・骨髄炎(とくに乳児)、髄膜炎・脳膿瘍(とくに新生児・乳児)、副鼻腔炎、潜在性菌血症などがあり、こうした疾患は兆候から見つけることは難しく、「見つけに行く」姿勢で診察することが重要とした。中でも潜在性菌血症は成人ではほぼ見られないが、結合型ワクチン導入前は、生後3~36カ月の小児における局所的異常のない原因不明の39度以上の発熱がある症例の約3~5%に認められており、無治療の場合は髄膜炎に至る可能性もある。ワクチン導入後の症例数は減っているものの、可能性は頭に入れておくべきという。ウイルス由来が大半だが、注意すべき細菌も 小児疾患はウイルス由来が多いが、日本がほかの先進国に比べてワクチン導入が遅れるという、いわゆる「ワクチンギャップ」は解消されつつあり、多くの小児感染症がワクチンによって感染・重症化予防できることが実証されつつある。小児感染症で注意すべき細菌は多くはないが、肺炎球菌とインフルエンザ菌は成人と比べて想定頻度が極めて高く、百日咳菌は新生児・乳児において重症化し、致死的な場合もあるので注意が必要だという。一方、クロストリディオイデス・ディフィシル菌は、小児の場合には保菌しても発症しないことが多く、多くの場合検査も不要だ。重症化はバイタルサインよりも「見た目」重視で 重症度に関しては、小児のバイタルサインは月齢年齢での変化が大きく、正常値の幅も大きいため、外観や皮膚の色、呼吸といった「見た目」を重視すべきという。 手塚氏は「感染症診療の原則である『感染臓器・原因微生物・抗菌薬をセットで考える』ことは小児でも成人でも同じ。あとはここで紹介した小児特有の事項さえ抑えておけば、内科の先生でも問題なく診察できるはず」とまとめた。

3256.

第26回 新型コロナ入院、対象を高齢、基礎疾患のある患者らに限定

<先週の動き>1.新型コロナ入院、対象を高齢、基礎疾患のある患者らに限定2.財政制度等審議会、高齢者の患者負担など見直しを急ぐ3.新公立病院改革ガイドライン発表延期、ただし進捗の点検・評価は必要4.安倍政権の未来投資会議を廃止、新たに成長戦略会議が発足5.健康食品会社が嘘の体験談で薬機法違反、広告会社・広告主ともに摘発1.新型コロナ入院、対象を高齢、基礎疾患のある患者らに限定菅内閣は10月9日に、新型コロナウイルス感染者のうち、入院対象者を原則65歳以上の高齢者や基礎疾患のある人らに絞る法令改正について閣議決定を行った。今回の改正では、感染症法が定める「指定感染症」の位置付けに変更はなかった。これまでは新型コロナの感染者全員が入院対象だったが、インフルエンザ流行を前に医療機関の負担を減らし、重症者治療に重点を置くための施策。24日に施行となる。(参考)新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令の一部を改正する政令(案)等について(概要)(厚生労働省健康局結核感染症課)2.財政制度等審議会、高齢者の患者負担など見直しを急ぐ8日に開催された財務省の財政制度等審議会・財政制度分科会において、今後の医療や子育てに関して議論を行った。この中でわが国の社会保障の現状について、OECD加盟国と比較して、受益(給付)と負担のバランスが不均衡の「中福祉、低負担」の状況が指摘された。2022年度以降、団塊世代が75歳を超えると、社会保障関係費が急増することが予想できる。これを念頭に、社会保障制度の持続可能性を確保するための改革が急務とされ、現在の年齢が上がるほど患者負担割合が低く、保険給付範囲が広がる構造を含め、患者負担のあり方を見直していく必要があるとした。今後、11月のまとめる建議に向けてさらに議論を行うが、患者負担の増加については国民の関心も高く、医療機関や医師会などとの調整が必要になる見込み。(参考)財政制度等審議会財政制度分科会(令和2年10月8日開催)資料:社会保障について(1)(総論、医療、子ども・子育て、雇用)(財務省)3.新公立病院改革ガイドライン発表延期、ただし進捗の点検・評価は必要総務省は、5日に通知「新公立病院改革ガイドラインの取扱いについて」を各都道府県や指定都市などに向けて発出した。本年の7月までに示すとされていた新ガイドラインは発表を延期するが、今年度は「公立病院改革ガイドライン」の最終年度であることから、新改革プランの進捗状況について点検・評価を求める内容となっている。また、不採算地区の公立病院への財政措置については、地域医療構想の推進に向け、過疎地など経営条件の厳しい地域において、二次救急や災害時などの拠点となる中核的な公立病院の機能を維持する目的で、新たに特別交付税措置を講ずるなどの見直しを行うこととなった。今後の新型コロナ拡大に伴う景気・財政悪化を考えると、リスト外の病院に対してもより一層の健全な病院経営を求められることとなり、地方自治体や医療従事者への影響は避けられない。(参考)新公立病院改革ガイドラインの取扱いについて(通知)(総務省自治財政局準公営企業室長)4.安倍政権の未来投資会議を廃止、新たに成長戦略会議が発足安倍政権が2016年に内閣府に設置し、医療・介護を含むさまざまな分野について検討を重ねてきた未来投資会議が廃止され、菅政権では新たに成長戦略会議として立ち上げることを、9日の閣議後に西村 康稔経済再生担当相が明らかにした。未来投資会議が担っていた機能は縮小される。議長に加藤官房長官、副議長に西村経済再生相と梶山経済産業相がそれぞれ就任し、今後は、経済財政諮問会議が国の経済財政政策をリードし、それに沿った形で成長戦略会議が具体化を検討することとなる。(参考)未来投資会議を廃止 「成長戦略会議」に衣替え―政府(時事ドットコム)5.健康食品会社が嘘の体験談で薬機法違反、広告会社・広告主ともに摘発大阪府警は、嘘の体験談を用いて健康食品の効果をうたった広告・販売を行ったとして、広告会社と広告主の健康食品販売会社「ステラ漢方」を7月に摘発した。今年の3月上旬まで開設されていた商品サイトには「医者が絶句するほどの脂肪肝だった私が1ヵ月で正常値まで下げた『最強健康法』とは?」といった目を引く内容のほか、肝機能の数値改善など効能効果の表記がされていた。商品は健康食品会社ホームページのリンクから購入できる仕組み。なお、同社は2014年にも根拠のない宣伝をしたとして、消費者庁から景品表示法の規定に基づく措置命令を受けている。今後、悪質な広告についてはさらに規制強化が進むだろう。(参考)記事広告が薬機法違反…大阪府警、広告代理店ら6人を逮捕(通販通信)脂肪肝が1ヵ月で……。嘘の体験談で宣伝、広告主を摘発(日本経済新聞)

3257.

薬機法の定めるオンライン服薬指導と「0410対応」は似て非なるもの【赤羽根弁護士の「薬剤師的に気になった法律問題」】第21回

本年9月1日から、改正薬機法の一部が施行されました。今回施行されたものの中で、薬剤師業務に影響が大きいと考えられるのは、患者の継続的な薬学管理が義務付けられたことと、オンライン服薬指導が解禁になったことかと思います。このうちオンライン服薬指導については、新型コロナウイルスのために示された「0410対応1)」によって、すでに電話などによる服薬指導が行われているため、施行となっても大きなインパクトはなかったかもしれません。しかし、この「0410対応」は、あくまで「時限的・特例的」な取り扱いであり、原則として3ヵ月ごとに見直されることとなっており、恒久的なものではありません。麻薬・向精神薬は初診時の処方不可、要件を満たさない場合の処方上限など再周知2020年8月6日に開催された厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」では、当面の間「0410対応」を継続する方針となったようですが、不適切な事例も指摘されました。このような事例を踏まえ、「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いに関する留意事項等について(薬局での対応)」(事務連絡 令和2年9月4日 厚生労働省医薬・生活衛生局総務課)が発出されています。1.初診からの電話や情報通信機器を用いた診療に伴う処方箋により調剤を行う薬局における留意事項初診から電話や情報通信機器を用いた診療を実施する医療機関に関して、4月10日付け事務連絡1.(1)に記載している以下の要件を遵守しない処方が見られたことから、薬局においても、これまでの来局の記録等から判断して疑義がある場合には、処方した医師に以下の要件を遵守しているかどうか確認すること。(1)麻薬及び向精神薬を処方してはならないこと(2)診療録等により当該患者の基礎疾患の情報が把握できない場合は、処方日数は7日間を上限とすること(3)診療録等により当該患者の基礎疾患の情報が把握できない場合は、診療報酬における薬剤管理指導料の「1」の対象となる薬剤(いわゆる「ハイリスク薬」)の処方をしてはならないこと※「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いに関する留意事項等について(薬局での対応)」より一部抜粋これを受けて、日本薬剤師会からも「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いに関する留意事項等について(薬局での対応)2)」(日薬業発 第274号 令和2年9月7日)が発出されています。「0410対応」では、医療機関に対し初診から電話などを用いた診断や処方が認められていますが、この場合、麻薬・向精神薬は処方してはならないことや、状況によって日数の制限が設けられています。薬局では、これらの要件を必ずしも把握できるものではありませんが、疑義がある場合には医師への確認など、適切な運用に資する対応が求められています。日薬も「混同せずに運用する」よう求めている「0410対応」もオンライン服薬指導も、必要性だけでなく安全性も考慮してルールが定められています。単に電話やオンラインでの服薬指導が可能となったということではなく、正しいルールを確認しておく必要があります。今回紹介したこれらの通知も踏まえて、いま一度「0410対応」についての運用を確認するとよいでしょう。また、厚労省の事務連絡においても、薬機法改正による9月1日施行のオンライン服薬指導について言及があるとともに、日本薬剤師会の通知では、時限的・特例的な「0410対応」と薬機法に基づくオンライン服薬指導は異なることを指摘したうえで、混同せずに運用することも求めています。「0410対応」が進んでいるため、オンライン服薬指導も簡易にできるような印象を持ちますが、薬機法上のオンライン服薬指導にはさまざまな要件が設けられており、適法に運用するためにはより注意が必要です。これらの違いも意識し、内容を確認すべきでしょう。参考資料1)「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の 時限的・特例的な取扱いについて」(事務連絡 令和2年4月10日厚生労働省医政局医事課 厚生労働省医薬・生活衛生局総務課)2)「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の 時限的・特例的な取扱いに関する留意事項等について(薬局での対応)」(日薬業発 第274号 令和2年9月7日)

3258.

COVID-19は素早く見つけて包囲し対処/日本感染症学会

 第94回日本感染症学会総会・学術講演会(会長:館田 一博氏[東邦大学医学部 教授])が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行下、8月19日~21日の期日でインターネット配信との併用で東京にて開催された。 今回のテーマは、「感染症学の新時代を切り拓く-“探求する心”を誇りとして-」。学術集会では、特別講演に大隅 良典氏(東京工業大学)、満屋 裕明氏(国立国際医療研究センター)などの講演のほか、招請講演として学会の国際化がさらに前進することを期待し欧米の著名な感染症、ワクチンの専門家が講演者に迎えられた。基調・教育講演でも学際的な交流の活性化を目的にさまざまな臨床領域の講師が登壇した。 本稿では、尾身 茂氏(独立行政法人地域医療機能推進機構 理事長)の基調講演の概要をお届けする。 尾身氏は、現在政府の「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」のメンバーとして、わが国のCOVID-19対策の政策立案の一翼を担っており、講演では「withコロナの時代に私達がどう考え、どう行動すればよいか」をテーマに、第一波後の社会、生活の変遷と今後の展望について語った。感染拡大の要因は「3密、大声の会話、不十分な対策」 はじめに、「3月末~4月の爆発的感染拡大および医療崩壊を辛くも回避できたのは、緊急事態宣言前後の市民の協力、医療関係者および保健所関係者の多大な努力の成果」と述べ、これまでの総括を語った。 緊急事態宣言解除後の感染拡大の主な原因は、「東京の接待を伴う飲食店の利用者などから家庭、病院、職場などで広がったと考えられ、その共通する要因として『3密』、『大声の会話』、『不十分な感染対策』が指摘され、これらは3月の流行時にわかっていたことであり、あらためて確認された」と説明した。感染対策は「後の先(ごのせん)」で抑える 次にこれまでの経過でわかったことを振り返り、「クラスターが発生しても早急に対応できた場合は早く収束できること」、「マスクの着用など対策をすれば街歩きなどでの感染リスクは極めて低いと考えられること(ただしゼロではない)」、「高齢者やとくに基礎疾患のある人は感染すると重症化しやすいこと」、「治療の手順が確立されつつあること」の4点を挙げた。 そして、尾身氏は「COVID-19に対する不安にどう対処するか」という課題に対し、私案としつつ「COVID-19の感染リスクをゼロにすることが難しい以上、先述の感染リスクを避ける行動をした上で、もしクラスターがみつかっても、それを怖がるのではなく、『クラスターが制御できること=安心』と考える意識改革が必要」と提言した。また、感染者への「差別」についても触れ、「社会的に排除すれば、かえって感染症の実態を見え難くさせ、対策を後手に回らせてしまう可能性がある」と警鐘を鳴らした。そこで、COVID-19の拡大に先手を打つには、感染者を排除するのではなく、「感染が起こった事例を教訓として、その教訓を広く社会で共有し、次の感染に備えるということが求められる」と述べた。また、尾身氏は、剣道用語の「後の先」という言葉を使い、感染対策としては「相手をコントロールして、動かせて、抑えることが重要」と強調した。すなわち、常時緊張を強いられる100%の予防やリスクゼロの社会を目指すのではなく、「起こった事例から学び、次の発生やクラスターを抑えるような気構えや仕組みを社会で共有することで、安心感を醸成することができる」と説明した。国は医療機関、保健機関へ支援の充実を 緊急事態宣言発出前後、宣言解除から現在まで医療機関および保健所の負荷が、感染対策上の重要課題と尾身氏は指摘するとともに、今後も全国的に収束と新たなクラスター発生を繰り返すと予想を示した。 また、最後に私案として国へのお願いとして、(1)迅速な医療機関、保健所への効率的かつ効果的な人的、財政的支援(2)接待をともなう業種・地域に対して、都道府県などと協力し、検査体制を含めサポートする仕組みの早急な確立の2点を示し、講演を終えた。

3259.

COVID-19パンデミックによる米国うつ病有病率

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックと感染症防止のための政策は、抑うつ症状に対する未知の影響を伴い、全米に拡大した。米国・ボストン大学のCatherine K. Ettman氏らは、米国成人におけるCOVID-19パンデミックによるの抑うつ症状の有症率とリスク因子を推定するため、検討を行った。JAMA Network Open誌2020年9月1日号の報告。 本研究は、18歳以上の米国成人を対象とした2つの人口ベースの調査を用いた、米国国民生活調査として実施した。COVID-19と生活ストレスによるメンタルヘルスやウェルビーイングへの影響に関する研究より、COVID-19パンデミック期間の推定値を算出した。調査期間は、2020年3月31日~4月13日とした。COVID-19パンデミック前の推定値は、2017~18年に実施した国民健康栄養調査のデータより抽出した。データの分析は、2020年4月15日~20日に実施した。COVID-19パンデミックおよびそれを軽減するための政策に関連するアウトカムへの影響を調査した。主要アウトカムは、抑うつ症状(こころとからだの質問票[PHQ-9]カットオフ値10以上)とした。抑うつ症状の重症度分類は、なし(スコア:0~4)、軽度(スコア:5~9)、中等度(スコア:10~14)、中等度から重度(スコア:15~19)、重度(スコア:20以上)とした。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19パンデミック中に調査を完了した参加者は1,470人(完了率:64.3%)であった。データが不十分な参加者のデータは削除し、最終的に1,441人のデータを分析した(18~39歳:619人[43.0%]、男性:723人[50.2%]、非ヒスパニック系白人:933人[64.7%])。・パンデミック前のデータとして、5,065人分のデータが使用された(18~39歳:1,704人[37.8%]、女性:2,588人[51.4%]、非ヒスパニック系白人:1,790人[62.9%])。・抑うつ症状の有病率は、いずれの重症度においてもCOVID-19パンデミック中のほうがパンデミック前よりも高かった。 ●軽度:24.6%(95%CI:21.8~27.7) vs.16.2%(95%CI:15.1~17.4) ●中等度:14.8%(95%CI:12.6~17.4) vs.5.7%(95%CI:4.8~6.9) ●中等度から重度:7.9%(95%CI:6.3~9.8) vs.2.1%(95%CI:1.6~2.8) ●重度:5.1%(95%CI:3.8~6.9) vs.0.7%(95%CI:0.5~0.9)・COVID-19パンデミック中に、抑うつ症状リスクの高さと関連していた因子は以下のとおりであった。 ●収入の少なさ(オッズ比:2.37、95%CI:1.26~4.43) ●収入と支出の差額が5,000ドル未満(オッズ比:1.52、95%CI:1.02~2.26) ●ストレス要因の多さ(オッズ比:3.05、95%CI:1.95~4.77) 著者らは「米国におけるCOVID-19パンデミック中の抑うつ症状有病率は、パンデミック前と比較し、3倍以上高いことが示唆された。社会的資源や経済的資源が少なく、失業などのストレス要因が、抑うつ症状の発症に影響を及ぼしている。COVID-19パンデミック後においては、今後精神疾患の発症が増加する可能性があり、とくに高リスク集団では、注意が必要である」としている。

3260.

COVID-19、ECMO導入患者の院内死亡率は?/Lancet

 体外式膜型人工肺(ECMO)を導入された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者では、装着から90日後の推定死亡率、および入院中の患者を除く最終的に死亡または退院となった患者の死亡率はいずれも40%未満であり、これは世界の多施設のデータであることから、COVID-19患者で一般化が可能な推定値と考えられることが、米国・ミシガン大学のRyan P. Barbaro氏らExtracorporeal Life Support Organization(ELSO)の検討で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年9月25日号に掲載された。いくつかの大規模な医療組織では、COVID-19関連の急性低酸素性呼吸不全患者に対してECMOによる補助が推奨されている。一方、COVID-19患者でのECMO使用に関する初期の報告では、きわめて高い死亡率が示されているが、COVID-19患者におけるECMO使用に関する大規模な国際的コホート研究は行われていなかった。36ヵ国213施設のECMO導入患者を解析 研究グループは、ELSOレジストリのデータを用いて、2020年1月16日~5月1日の期間に36ヵ国213施設でECMOが導入された年齢16歳以上のCOVID-19確定例の疫学、入院経過、アウトカムの特徴を解析した(特定の研究助成は受けていない)。 COVID-19の診断は、臨床検査で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の存在が確認された場合と定義された。フォローアップのデータは、2020年8月3日まで更新された。 主要アウトカムは、ECMO開始から90日の時点でのtime-to-event解析による院内死亡とした。多変量Coxモデルを用いて、患者因子と病院因子が院内死亡率と関連するかを評価した。ECMO導入から90日の院内死亡率は37.4% ECMOを導入されたCOVID-19患者1,035例のデータが解析に含まれた。年齢中央値は49歳(IQR:41~57)、BMI中央値は31(IQR:27~37)で、74%が男性であった。 724例(70%)がECMO導入前に1つ以上の併存疾患を有し、819例(79%)が急性呼吸促迫症候群(ARDS)、301例(29%)が急性腎障害、50例(5%)が急性心不全、22例(2%)が心筋炎を有していた。 1,035例のうち、67例(6%)が入院を継続しており、311例(30%)が退院して自宅または急性期リハビリテーション施設へ、101例(10%)が長期急性期治療(long-term acute care)施設または詳細不明の場所へ、176例(17%)が他院へ移り、380例(37%)が院内で死亡した。 ECMO導入から90日の院内死亡の推定累積発生率は37.4%(95%信頼区間[CI]:34.4~40.4)であった。また、入院中の67例を除く、最終的に院内死亡または退院した968例の死亡率は39%(380例)だった。 一時的な循環補助(静脈-動脈ECMO)の使用は、院内死亡率の上昇と独立の関連が認められた(ハザード比[HR]:1.89、95%CI:1.20~2.97)。また、呼吸補助(静脈-静脈ECMO)を受け、ARDSと診断された患者の90日院内死亡率は38.0%であった。 著者は、「世界の200ヵ所以上の施設でECMOを導入されたCOVID-19患者の検討により、ECMO導入患者における一般化可能な推定死亡率がもたらされた。これらの知見は、難治性のCOVID-19関連呼吸不全患者では、経験豊かな施設においてはECMOの使用を考慮すべきとの、これまでの推奨を支持するものである」としている。

検索結果 合計:5557件 表示位置:3241 - 3260