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コロナワクチン後の重篤疾患、接種3週までのリスクは?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNAワクチン安全性サーベイランスデータの中間解析において、重篤な疾患の発生リスクはワクチン接種後1~21日間(リスク期間)と22~42日間(対照期間)とで有意な差はないことが示された。米国・カイザーパーマネンテ北カリフォルニアのNicola P. Klein氏らが、Vaccine Safety Datalink(VSD)に登録された620万人、1,180万回の接種に関するデータの解析結果を報告した。COVID-19ワクチンの安全性サーベイランスは、安全性の確保、信頼性の維持、および政策への情報提供に重要である。JAMA誌オンライン版2021年9月3日号掲載の報告。米国のワクチン安全性監視システムのデータを用い23疾患の発生を解析 研究グループは、米国のワクチン安全性監視システムであるVSDに参加している8つのヘルスプラン組織(Kaiser Permanente Colorado・Northern California・Northwest・Southern California・Washington、Marshfield Clinic、HealthPartners、Denver Health)の包括的な医療記録を用い、2020年12月14日~2021年6月26日の、mRNAワクチン接種後の重篤なアウトカムについて解析した。解析対象は12歳以上のワクチン適格者1,016万2,227人で、対象ワクチンはBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)またはmRNA-1273(Moderna製)とした。 主要評価項目は、急性散在性脳脊髄炎、急性心筋梗塞、虫垂炎、ベル麻痺、脳静脈洞血栓症、痙攣・てんかん、播種性血管内凝固症候群、脳炎/脊髄炎/脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、免疫性血小板減少症、川崎病、心筋炎/心膜炎、肺塞栓症、出血性脳卒中、虚血性脳卒中、血小板減少を伴う血栓症、血栓性血小板減少性紫斑病、横断性脊髄炎、静脈血栓塞栓症、急性呼吸促迫症候群、アナフィラキシー、多系統炎症性症候群、ナルコレプシー/カタプレキシーの計23疾患の発生である。 ワクチン(1回目または2回目)接種後1~21日間をリスク期間、接種後22~42日間を対照期間として、同じ暦日に各期間に該当する接種者について、対象疾患の発症リスクを比較した。ポアソン回帰法を用い、年齢、性別、人種/民族、ヘルスプラン、暦日で調整した率比(RR)を算出した(有意水準は片側p値<0.0048)。なお、急性呼吸促迫症候群、アナフィラキシー、多系統炎症性症候群、ナルコレプシー/カタプレキシーの4疾患については記述的解析のみ実施した。重篤な疾患の発生リスクは、接種後1~21日間と22~42日間で有意差なし 2020年12月14日~2021年6月26日の期間に、620万人(平均年齢49歳、女性54%)に対して、mRNAワクチンが計1,184万5,128回接種された。BNT162b2が675万4,348例(57%)、mRNA-1273が509万780例、1回目接種が617万5,813例、2回目接種が566万9,315例であった。 リスク期間vs.対照期間での100万人年当たりのイベント発生率は、虚血性脳卒中が1,612 vs.1,781(RR:0.97、95%信頼区間[CI]:0.87~1.08)、虫垂炎が1,179 vs.1,345(0.82、0.73~0.93)、急性心筋梗塞が935 vs.1,030(1.02、0.89~1.18)であった。ワクチンとイベント発生との関連性については、すべての対象疾患において事前規定の有意水準を満たさなかった。 確認されたアナフィラキシーの発生率は、BNT162b2ワクチン100万回当たり4.8(95%CI:3.2~6.9)、mRNA-1273ワクチン100万回当たり5.1(3.3~7.6)であった。

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第75回【特集・第6波を防げ!】在宅療養者の急変・死亡回避のカギを握る“幽霊病床”

政府は緊急事態宣言を9月30日まで延長する一方、「ワクチン・検査パッケージ」により、11月頃をめどに、宣言が発令されている地域でも飲食やイベントなどの制限を緩和する方針を明らかにした。宣言解除後のリバウンドで感染者数が増え、医療の逼迫に拍車を掛けることにならないのか。11月は衆議院選挙の時期と重なる。行動制限の緩和を政府与党の“好材料”にしようとしているのかと勘繰りたくなる。医療従事者にとって気懸りなのは、インフルエンザの時期と重なることだろう。2020年秋から21年春のインフルエンザシーズンでは、感染者数は例年に比べて大幅に減った。コロナ禍で多くの人がマスクや手洗い、消毒液を使う習慣が、インフルエンザの流行を抑えたと見られている。今シーズンも同じ状況が続けば、コロナ禍での医療機関のさらなる負荷は避けられるだろう。ワクチンの入院予防効果は90%以上リバウンドによる感染者増の影響はどうか。ワクチン接種率が米国並みに進む中、希望するすべての人への接種が政府の目標通り10~11月までに完了すれば、感染者数が増えたとしても、重症数や死亡者数を抑えられることが想定される。デルタ株に対するファイザー社やアストラゼネカ社のワクチンの入院予防効果は90%以上と報告されている1)。接種後に時間の経過とともに抗体が減り、ウイルスの感染を防げなくなったとしても、細胞性免疫による重症化予防効果は保たれているからだ。また、ワクチン接種に加え、治療薬でも感染者数の増加を抑えられれば、医療の逼迫を防げる。米メルクなどが開発を進めている新型コロナ治療薬が承認されれば、重症化リスクのある人に処方することで、重症者数は一層減ることが予想される。メルクの日本法人MSDは、軽症者向けの経口薬「モルヌピラビル(一般名)」の最終段階の治験を進めている。メルクは、低所得国向けにはパテントを放棄し、インドのジェネリック医薬品メーカーが製造・販売することを表明している2)。米国では、早ければ年内に緊急使用許可(EUA)が申請される見通しだ。日本においても、遅れることなく審査を進める必要がある。使われていないコロナ病床で病床逼迫解消を感染者の受け入れ体制はどうか。臨時の医療施設は急ピッチで各地に開設されているが、それでも医療機関における新型コロナ感染者の病床逼迫は続いている。国と東京都は、都内のすべての医療機関などに対し、改正感染症法に基づき、新型コロナ感染者の受け入れや病床の確保などを要請。正当な理由がなく従わなければ、医療機関名を公表することができるとしたが、「医師会が病院名公表に反対し、受け入れは進んでいない」(厚労省職員)という。都は今月9日、6,651床が確保できる見通しになったと発表した。要請前の5,967床から684床増えたが、目標としていた7,000床には届かなかった。しかも、4割が実際は使われていない「幽霊病床」と指摘された。このような状況下、政府の新型コロナ対策分科会会長の尾身 茂氏が理事長を務める地域医療機能推進機構(JCHO)の傘下病院や、東京都医師会や病院協会幹部の病院で、補助金を受けながらも病床使用率が低いことが報じられた。JCHOの場合、傘下の都内5つの公的病院(総病床数約1,500床)で、コロナ患者用病床が30~50%も使われていないという。公衆衛生危機に対応することが設置根拠法で義務付けられている機構だけに、極端なことを言えば全病床をコロナ病床に転換してもおかしくないはず。病床不足問題を解決するカギは、こうした既存の「幽霊病床」を明け渡すことにあるのではないだろうか。コロナ療養者が自宅や宿泊施設などで急変・死亡するニュースが連日報じられている。この状況を解消せずして「行動制限緩和」など、少なくとも医療従事者にとっては甘言でしかないだろう。参考1)https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1016465/Vaccine_surveillance_report_-_week_36.pdf2)https://www.reuters.com/world/india/indias-hetero-seeks-emergency-use-nod-mercks-covid-19-drug-2021-07-09/

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小児のコロナ入院の多くが軽症例/国立成育医療研究センター・国立国際医療研究センター

 国立成育医療研究センター 感染症科の庄司 健介氏らのグループは、国立国際医療研究センターの研究チームと合同で、小児新型コロナウイルス感染症による入院例の疫学的・臨床的な特徴を分析した。 これは、国立国際医療研究センターが運営している国内最大のCOVID-19入院患者のレジストリ「COVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)」を利用したもので、本レジストリを使用した小児患者における分析は今回が初めてとなる。 分析の結果、分析対象期間に登録された小児のCOVID-19入院患者の多くは、無症状または軽症であり、酸素投与を必要とした患者は15例、症状のあった患者全体の2.1%だった。また、ほとんどが無症状、または軽症であるにもかかわらず、入院期間の中央値は8日で、2歳未満や13歳以上の患者、基礎疾患のある患者は、何らかの症状が出やすい傾向にあることがわかった。そのほか、38℃以上の熱が出た患者は、症状のあった患者(730例)のうち10.3%(75例)、13~17歳の患者(300例)の約20%に、味覚・嗅覚異常がみられたことが示唆された。 なお、本研究は、デルタ株がまだわが国に存在しない時期に実施されているため、小児に対するデルタ株の影響については評価外となっている。1,038例の小児患者の解析からわかったこと 本研究は、小児のCOVID-19で入院した患者にはどのような症状がみられ、どのくらい入院していたかを明らかにするとともに、「症状がない」患者と「症状がある」患者の、患者背景にどのような違いがあるかについて、小児患者におけるCOVID-19の疫学的・臨床的な特徴の解明を目的とした。【研究概要と結果】・研究対象2020年1月~2021年2月の間にCOVID-19 Registry Japanに登録された18歳未満のCOVID-19患者・研究方法登録患者の細かな症状、入院期間、患者背景などのデータを集計・分析・研究結果(1)期間中に3万6,460例の患者が登録され、そのうち研究対象となった18歳未満の患者は1,038例だった。(2)入院時にまったく症状がなかった患者は308例(29.7%)。これは、隔離目的や、保護者が入院してしまい、子どもの面倒を見る人がいないなどの社会的理由での入院例が多く存在することが示唆された。(3)何らかの症状があった患者(730例)のうち、酸素投与を必要とした患者は15例(2.1%)。また、死亡した患者は0例で、この期間の小児新型コロナウイルス感染症は極めて軽症であったといえる。(4)無症状者と比べると、症状のある患者では、「2歳未満」「13歳以上」「何らかの基礎疾患のある患者」の割合が高くなっていた(ただし、基礎疾患のある患者の割合については統計学的な有意差はなかった)。(5)38℃以上の発熱は、症状のある患者全体の10.3%にしか表れていなかった。一方で、特徴的な症状の1つである味覚・嗅覚異常は13歳以上の小児において20%以上に表れていた。(6)入院期間の中央値は8日で、無症状者、有症状者で変わらなかった。医療的ケアが必要ない無症状の患者に対しても、長期間の入院させていたことがわかった。 庄司氏は、「今回の研究によりわが国の小児新型コロナウイルス感染症の入院症例の実態が明らかになった。今後、小児の入院適応やワクチン接種の対象などを考えていく上で、本研究の結果がその基礎データとして利用されることが期待される。また、今後デルタ株が小児に与えている影響を検討する際の比較対象としても貴重なデータであると考える」と期待を寄せている。

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ワクチンによる入院回避効果、mRNA vs.アデノウイルスベクター/NEJM

 米国で使用されている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン3種、BNT162b2(Pfizer-BioNTech製)、mRNA-1273(Moderna製)、Ad26.COV2.S(Johnson & Johnson-Janssen製)は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による入院やICU入室、あるいは救急部門や救急クリニック(urgent care clinic)の受診に対し、高い有効性が認められたことを、米国疾病予防管理センター(CDC)のMark G. Thompson氏らが報告した。COVID-19による入院患者約4万2,000例と救急・緊急外来クリニックを受診した約2万2,000例を調べた結果で、これらワクチンの有効性は、SARS-CoV-2感染で受ける影響が不均衡な集団にも認められたという。NEJM誌オンライン版2021年9月8日号掲載の報告。187病院、221ヵ所の救急部門・クリニックを対象に調査 研究グループは2021年1月1日~6月22日に、COVID-19が疑われる症状でSARS-CoV-2分子検査を受けた50歳以上を対象に試験を行い、COVID-19ワクチンの有効性を検証した。被験者は、米国内187の病院に入院した4万1,552例と、221ヵ所の救急部門や救急クリニックを受診した2万1,522例だった。 対象者の予防接種状況を電子健康記録と免疫レジストリの記録を基に確認し、検査陰性デザインを用いて、ワクチン接種者と非接種者のSARS-CoV-2陽性に関するオッズ比を比較し、ワクチン有効性を推定した。ワクチン有効性は、ワクチン接種傾向スコアに基づき重み付けし、また、年齢、住所、暦日(2021年1月1日から各医療機関受診日までの日数)、地域のウイルス流行性で補正を行った。mRNAワクチンの有効性、85歳以上84%、慢性疾患有病者90% COVID-19・mRNAワクチン完全接種(2回目接種から14日以上経過)の、SARS-CoV-2感染検査確定者の入院に対する有効性は89%(95%信頼区間[CI]:87~91)、ICU入室の有効性は90%(85~93)、救急部門・クリニック受診に対する有効性は91%(89~93)だった。 COVID-19関連の入院や救急部門・クリニック受診に関するワクチンの有効性は、BNT162b2とmRNA-1273は同等であり、mRNAワクチン完全接種者の有効率は、85歳以上では84%(95%CI:73~91)、慢性疾患有病者は90%(87~92)、アフリカ系/ヒスパニック系成人は95%(84~98)/81%(70~88)であった。 Ad26.COV2.Sワクチンの有効性は、検査確定SARS-CoV-2感染者の入院に対しては68%(95%CI:50~79)、救急部門・クリニック受診に対しては73%(59~82)だった。

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がん薬物療法時の制吐目的のデキサメタゾン使用に関する合同声明/日本癌治療学会・日本臨床腫瘍学会

 新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、デキサメタゾン製剤の供給が不足している。2021年8月27日に厚生労働省から発出された「デキサメタゾン製剤の安定供給について」の通知を受け、新型コロナウイルス感染症患者およびがん患者の薬物療法に関して、9月9日、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本感染症学会、日本呼吸器学会が合同声明文を発出した。 そのうち、がん患者の薬物療法に関する合同声明文では、がん患者の薬物療法に携わる医療関係者に対して、薬物療法によって発現する悪心・嘔吐(CINV)を制御するために使用されるデキサメタゾン製剤の適正使用およびデキサメタゾン内服薬の代替使用について、以下のように協力を呼びかけている。1. 制吐薬適正使用ガイドライン等、関連ガイドラインに従い、個々の症例の催吐リスクに応じて適切な制吐療法の提供を継続ください。2. 以下の例のように、経口デキサメタゾン等のステロイド製剤を減量できる、あるいは代替療法がある場合は、経口ステロイド製剤の使用量を可能な範囲で低減ください。例1)高度催吐性リスクの抗がん薬を使用する場合に、第 2 日目、第 3 日目の経口デキサメタゾンを省略する。例2)中等度催吐性リスクの抗がん薬を使用する場合に、5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬、多元受容体作用抗精神病薬を積極的に使用し、経口デキサメタゾンの使用を省略する。例3)中等度催吐性リスクの抗がん薬を使用する場合の、遅発性の悪心・嘔吐の予防には、5-HT3受容体拮抗薬を優先する。例4)軽度催吐性リスクの抗がん薬を投与する場合で制吐療法を行う場合は、経口デキサメタゾンの使用を避け、メトクロプラミドあるいはプロクロルペラジンを使用する。例5)多元受容体作用抗精神病薬であるオランザピンは、糖尿病性昏睡/糖尿病性ケトアシドーシスによる害よりもCINV対策が優先されると考えられる場合は、コントロール可能な糖尿病患者に限り、患者より同意を得た上で主治医が注意深く使用する場合には考慮してよい。3. 前サイクルのがん薬物療法で、CINVが認められなかった場合、経口デキサメタゾンの減量や省略を検討ください。4. 患者が経口デキサメタゾンを保有している場合、新たな処方を行わず、持参の経口デキサメタゾンの有効活用にご協力ください。

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ポリオワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第9回

ポリオについて急性灰白髄炎(ポリオ)は、ポリオウイルスの感染によって引き起こされる感染症で、ヒトのみに生じる。ポリオウイルスには1型、2型、3型の3つの型があり、どの型でも同じ症状を起こす。軽症では、軽い感冒様症状や胃腸炎症状のみだが、麻痺型ポリオでは麻痺などの中枢神経症状を起こし、数日間の高熱の後に非対称性の四肢の弛緩性麻痺となるため、小児麻痺(しょうにまひ)とも言われる。わが国では1940年代頃から全国で流行し、麻痺の後遺症を残した患児が多かったが、1961年より経口生ポリオワクチンを使用するようになってから次第に減少し、1980年の1例を最後に国内での患者の発生はなく、2000年にポリオが排除状態にあることが宣言された。海外では、2020年8月、WHO(世界保健機関)がアフリカでの野生株ポリオの根絶を宣言し、流行国はアフガニスタンとパキスタンの2ヵ国を残すのみとなっている。ポリオウイルスの感染経路は経口(糞口)感染である。ポリオウイルスで汚染された水などが人の口に入り、腸の中で増殖して全身に感染が広がる。特に上下水道が整備されていない衛生状態が悪い環境では、下水に流入したウイルスが他の人の口に入り、感染が拡大する。現在、ポリオは野生株に加えて、ワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV、後述)が課題となっている。そのため排除宣言後の今でも海外渡航時や感染者が本邦へ入国した際に、ポリオが国内に持ち込まれて感染する可能性は続いている。学校保健安全法では第1種感染症感染症法では2類感染症に分類されている。主な症状ポリオの感染者の多く(90~95%)は症状がない不顕性感染で自然に治癒する。発症者が1人いれば、その周囲に100人の不顕性感染者がいると推定される。感染者の約5%前後では、発熱、頭痛、咽頭痛、悪心、嘔吐、倦怠感、便秘などの症状を認め、感染者のうち1〜2%は上記の症状に引き続き無菌性髄膜炎を起こす。腸管から体内に入ったウイルスはウイルス血症を経て、血液脳関門か神経軸索を介して中枢神経組織に侵入する。ウイルスの感染から麻痺発症までは3日~1ヵ月間である。麻痺は0.1~2%に生じ、ひとたび麻痺が発症するとその進行を止めたり、麻痺を回復させるのは困難である。また、呼吸筋の麻痺などで死亡することもあり、致死率は小児で2~5%、成人で15~30%に達する。診断主な診断方法は、糞便からのウイルス分離である。麻痺が出現して早期に糞便や咽頭分泌液などを採取して検査する。血液検査でも診断可能だが、ワクチン接種によって免疫を持っている人が多いため補助的手段となる。治療法ポリオウイルスに対する薬はなく、症状に応じた対症療法のみである。予防法有効なワクチンがある。ワクチンポリオワクチンは、毒性を弱くしたウイルスを口から飲むタイプの経口生ワクチンと、ウイルスの成分の一部が含まれた注射の不活化ワクチンがある。わが国では1963年から経口ポリオワクチン(OPV)が乳児期に接種された。しかし、ポリオ生ワクチンの接種後にワクチン株によるポリオ様の麻痺(vaccine-associated paralytic poliomyelitis:VAPP)が生じることが報告されるようになった。そのため、2012年9月以降は生ワクチンでの定期接種は中止され、不活化ポリオワクチン(IPV)の定期接種が導入された。さらに2012年11月以降は四種混合(DPT-IPV)ワクチンが定期接種として乳児期に接種されるようになっている。接種のスケジュール(小児/成人)経口ポリオワクチンは2回接種だったが、不活化ワクチンは4回接種を行う。不活化ワクチンのスケジュールは、初回接種として生後3ヵ月で1回目、4ヵ月で2回目、5~11ヵ月で3回目の接種を行い、追加接種として生後12~23ヵ月で4回目の接種である。不活化ワクチンは効果が弱いためにより多くの接種回数を必要とする。いずれも接種回数が不足している場合はポリオに感染する可能性があるため、母子手帳で確認し、不足している場合は医療機関に相談してワクチン接種を終わらせることが肝要である。さらに、ポリオワクチンによる免疫効果は、ポリオ含有ワクチンの4回目の追加接種後、4年で抗体価が防御レベルを下回る可能性が示唆されており、厚生労働省で5回目の追加接種の導入とその実施時期などに関して検討が行われている。4~6歳の時期にポリオ含有ワクチンの追加接種を行うと十分に抗体価が上昇し維持することが知られており、世界の多くの国ではこの就学前の時期に2期としてポリオワクチンの追加接種が行われている。今後、わが国でも就学前などにポリオ含有ワクチンの追加接種が制度として整備されることを期待する。伝播型ワクチン由来ポリオウイルス経口生ワクチンに含まれるポリオウイルス(ワクチン株ウイルス)は、接種された人の腸管で増殖し、一部は便に排出され下水などに流入する。通常、このワクチン株ウイルス自体では病気を起こすことはない。しかし、このワクチン株ウイルスが下水などの環境の中で長期間循環し続けると、ごくまれに遺伝子変異を起こし、従来のポリオウイルス(野生株ウイルス)のように、ポリオと同様の麻痺性の病気を起こすようになる。これを「伝播型ワクチン由来ポリオウイルス(circulating vaccine-derived poliovirus:cVDPV)」と呼ぶ。野生株のみならずこの伝搬型ワクチン由来ポリオウイルスの感染例は世界の国々で確認されており、2020年には、23ヵ国で441例が報告されている。ウイルスが国内に持ち込まれて感染する可能性があるため、ワクチン接種を継続して免疫を維持しておく必要がある。今後の課題・展望不活化ポリオワクチンは、定期接種としての1回の追加接種のみでは抗体価が減衰し、2回目の追加接種を4~6歳で行うことで抗体価が大きく上昇することが確認されている。欧米の多くの国が4歳以降に就学前の追加接種を行っており、長期にわたりポリオ抗体価を維持するためには、5~7歳頃(就学前)の2回目の追加接種が必要である。日本では、任意接種として、不活化ポリオ単独ワクチン(IPV)を2回目の追加接種(計5回目)として接種できる。しかし、任意接種であるため知らない人も多く、接種率は高くない。青森県藤崎町などのいくつかの自治体は不活化ポリオワクチンの就学前追加接種に対して全額公費助成を行っている。また、日本プライマリ・ケア連合学会、日本小児科学会もワクチンスケジュールの中で就学前の2回目の追加接種を推奨している。世界のポリオは、紛争やテロ活動によりワクチン接種が妨げられると根絶が難しくなり、世界からの根絶まではまだ時間がかかると思われる。また、野生株は減っているものの、伝播型ワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV)は多くの国で報告されている。そのため、ポリオ発生地に渡航する際には、成人も不活化ワクチンによる追加接種を受けることが望ましい。今後、わが国でも就学前のポリオ含有ワクチンの追加接種が制度として整備されること、そして、成人も世界のポリオの流行状況や日本への輸入のリスクを考慮して、不活化ポリオワクチンの追加接種の検討が必要である。参考となるサイト厚生労働省 ポリオとポリオワクチンの基礎知識日本プライマリ・ケア連合学会 こどもとおとなのワクチンサイト日本小児科学会 ワクチンスケジュール講師紹介

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「デベルザ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第69回

第69回 「デベルザ」の名称の由来は?販売名デベルザ®錠20mg一般名(和名[命名法])トホグリフロジン水和物(JAN)効能又は効果2型糖尿病用法及び用量通常、成人にはトホグリフロジンとして20mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する。警告内容とその理由設定されていない。禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡の患者[輸液、インスリンによる速やかな高血糖の是正が必須となるので本剤の投与は適さない。]3.重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者[インスリン注射による血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない。]※本内容は2021年9月15日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2019年10月改訂(第12版)医薬品インタビューフォーム「デベルザ®錠20mg」2)興和株式会社:製品情報検索

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第75回【特集・第6波を防げ!】行動制限緩和の前に、あのナンセンスな制限だけは先行して撤廃を

こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。さて、この週末は、オリンピック、パラリンピックでしばらく放送されていなかったNHK BSのMLB中継で、ロサンゼルス・エンジェルスの試合を観戦して過ごしました。大谷 翔平選手は残念ながら10勝目はなりませんでしたが、44号ホームランを見ることができました。残り20試合余り、アメリカン・リーグの本塁打王争いが楽しみです。それにしても、久しぶりに観たMLBの試合、球場(アストロズの本拠地で南部テキサス州ヒューストン)でマスクをしている人は皆無でした。MLBのニュースを見ても、マスクをしている観客がいるのは西海岸、たとえばドジャー・スタジアム(ロサンゼルス)やT-モバイル・パーク(シアトル)だけのようです(しかもちらほら)。連邦制の米国では、ワクチン接種やマスク着用など、公衆衛生に関する規制権限のほとんどを州や地方自治体が有しています。西海岸の州以外は、マスク着用に関して相当寛容になっているのかもしれません。ということで今週は「特集・第6波を防げ!」として、一般人の視点から行動制限緩和の可否判断について図のようなマトリクスを提案したいと思います。図・行動制限緩和の可否判断のためのマトリクス(by萬田 桃)政府が緩和に向けた基本方針提示9月13日から、東京や大阪など19都道府県で緊急事態宣言が再び延長されました。期限は9月末です。この宣言延長の決定とあわせ、9月9日、政府は新型コロナウイルス感染症の流行地域で実施中の個人の行動や経済活動の制限を段階的に緩和する基本方針、「ワクチン接種が進む中における日常生活回復に向けた考え方(案)」を公表しました。「延長(ムチ)」だけではあんまりだから、「緩和(アメ)」も見せておこうということなのでしょう。この「考え方」では、ほとんどの希望者にワクチンが行き渡る頃から、(1)飲食、(2)イベント、(3)人の移動、(4)学校、において、ワクチン・検査パッケージ(ワクチン接種歴及びPCR等の検査結果を基に、個人が他者に2次感染させるリスクが低いことを示す仕組み)や飲食店の認証制度を活用した行動制限の緩和が提言されました。緊急事態宣言下でも、認証を受けた飲食店に対しては酒類提供や営業時間短縮の要請を見送り、ワクチン・検査パッケージを利用すれば大人数での会食も認めるとしました。また、イベントの人数制限の緩和や撤廃を検討し、ワクチン・検査パッケージによって県境をまたぐ移動や学校での部活動も可能とする、としています。一方、「新たな変異株の出現などにより、感染が急速に拡大し、医療提供体制のひっ迫が見込まれ、例えば、緊急事態措置による更なる行動制限が必要となる場合」には、これらの緩和を見直し、強い行動制限を求めることも明記されています。今後行う実証実験の結果や感染状況を踏まえて本格実施の可否を判断する、とのことです。緩和より先に「一人飲み」解禁を行動制限緩和は喜ばしいことですが、もっと先に確実に緩和できることがあるのではないか、と私は思います。今の行動制限、エビデンスが非常に薄弱にもかかわらず、不当に国民に強いている部分が多々あるからです。その最たるものが「一人飲み」です。居酒屋で一人ちびちび飲む「一人飲み」は、感染リスクが極めて低いといえます。また、サラリーマンが1人で夕食をファミレスで食べる時などに、ビールを1本頼んで喉を潤す場合も感染リスクはほとんどありません。コロナ禍となって、テレビ東京系のドラマ『孤独のグルメ』の先見性が評価されているようですが、少なくとも「一人飯」でのアルコール飲酒は、即日解禁できることだと思います(原作者の久住 昌之氏が、最近の同番組のお店紹介コーナーでいつもの“麦ジュース”を頼まなかったのは残念でした)。町中のカフェやファミレスなどでは、昼間、主に女性たちが、長時間おしゃべりをしている場面によく出くわします。「一人飲み」「一人飯」と比べてどちらのほうがマイクロ飛沫が多く、感染リスクが高いかは、実証実験をするまでもないでしょう。「大勢で騒ぐ」ことが最大のリスク緊急事態宣言の中、私自身、ヤクルトスワローズの試合、ナンバーガールのライブ、小劇場の芝居、大劇場のロック・オペラ、映画、奥多摩の登山とあちこち出かけてきましたが、幸いなことに感染はしていません。これらの場所で共通するのは、登山は除いて、どこもマスク着用で飲酒は禁止、私語(おしゃべりや応援)も極力制限されていたことです。大勢の集団であっても、それなりの空調施設(もしくは屋外)において、大声で騒いだりおしゃべりを延々と続けたりしなければ、感染リスクは相当低いだろうと考えられます。愛知県の中部空港島(愛知県常滑市)で8月28日と29日に開かれた、野外音楽フェスティバル「NAMIMONOGATARI(波物語)2021」は、飲酒しながらマスクなしで声を張り上げる観客の動画が世間のひんしゅくを買いました。観客同士の距離確保ができておらず、酒類も提供していたことが明らかとなり、経済産業省の補助金の支給も中止されました。このフェス、9月13日の朝日新聞の報道では、クラスターでの感染者は26人。他の都府県で確認された感染者は18人で、フェス関連の感染者は合計44人とのことです。また、県と名古屋市による無料PCR検査では、最終的に計1,154件の申し込みがあり、8人の陽性者が確認されているとのことです。8,000人規模で酒を飲んで騒いで関連の感染者が44人、というのは思ったよりも少ない数字だと思うのですが、どうでしょう?空調が“完璧”な野外フェスや、神宮や甲子園のような屋外球場での野球観戦はかなり安全性が高いといえるのではないでしょうか(もちろん、飛沫が飛びまくるジェット風船はNGです)。MLBの観戦でマスク着用が強制されていないのは、そうしたデータがあるからかもしれません。ちなみに8月20日〜22日にかけて新潟県越後湯沢市で開かれた国内最大のフェス「フジロックフェスティバル’21」に参加した友人に話を聞くと、「会場で飲酒している人はまったく見かけなかった。そもそもビン・カンが持ち込み禁止で、手荷物検査もあった。モッシュは一切なく、観客は歓声を抑え、拍手だけでアーティストを讃えていた。会場に潜入した記者が飲酒の写真とともに記事を書いていたが、少なくとも私はあのような人は見なかった」と話していました。今年のフジロックの観客は3万5,000人(例年の約3分の1)だったと報道されていますが、今のところクラスターが発生した、というニュースは出ていません。私の友人ももちろん感染しておらず、今も毎週のようにあちこちのライブに出かけています。「大勢で騒ぐかどうか」が問題こう見てくると、ことは非常にシンプルです。問題は「酒を飲むかどうか」ではなく、「大勢で騒ぐかどうか」なのです。旅行についても、「(県をまたいでの)移動」ではなく、「移動先で大勢で騒ぐ」ことが問題なのです。若者や仕事の憂さ晴らしをしたいサラリーマンや公務員は、ついつい大勢で騒いでしまい、それがクラスターの原因となっています。ですから、「大勢で騒ぐかどうか」どうかだけを、飲食店やイベント会場、旅館・ホテルでチェックすればいいのです。例えば、冒頭で示した図のような単純なマトリクスが考えられます。要素は人数、騒ぐかどうか、空調の3つ。飲酒の有無や時間は関係ありません。これを当てはめれば、大抵の活動は「大勢で騒がない」限り、OKになります。「騒ぎ方がそれぞれ違うだろう!」と言われる方もいるでしょう。でも、それは各関連団体や店舗が自主基準をつくればいいだけです。旅行で言えば、恋人同士の温泉旅行はOK、会社の部署の忘年会旅行はNG。山登りで言えば、テント山行はOK、大勢のパーティでの小屋泊まり山行はNGといったことです。ちなみに、パチンコ店もコロナが流行し始めた昨年、その営業可否を巡って話題となりましたが、これまでクラスターが発生したという例は聞きません。台はアクリル板で仕切られ、客のタバコの煙を吸い込むために空調も強力ですし、台に集中するあまり話している客は誰もいない(店内は台の音でうるさいですが)ことが奏功していると考えられます。ワクチン・検査パッケージの導入も意味があることだと思いますが、もっと単純に「大勢で騒ぐかどうか」に着目した行動制限緩和も必要だと思います。飛沫感染、接触感染、空気感染…、何が一番危ないのか?この「マトリクス」にせよ、ワクチン・検査パッケージにせよ、行動制限緩和に向けて一点、明確にしてもらいたいことがあります。それは、「感染経路ごとのリスクの大きさ」です。これまで飛沫感染と接触感染が中心と言われてきましたが、最近では、会話のときに出てくるマイクロ飛沫による空気感染が近くの人の感染を引き起こすとも言われています。8月末には、感染症や科学技術社会論などの研究者らが、「空気感染が主な感染経路」という前提でさらなる対策を求める声明を出し、話題となりました。ただ、飛沫感染、接触感染、空気感染(マイクロ飛沫感染)がそれぞれどの程度で起こっているのか、その詳細なデータは示されていません。仮にマイクロ飛沫による空気感染が主体だとしたら、飲食店の店舗に設けられたアクリル板の壁は無意味となり、マスク着用と会話制限、空調にこそ力を入れるべきだ、ということになります。新型コロナウイルスの感染拡大が始まって1年半近くが経ちますが、そういった感染経路の基本的なことも明確に示さないまま、今でも闇雲に行動制限や営業自粛を課すのはどうかと思います。横浜スタジアムの近くで焼肉屋を経営している私の友人が先日電話をかけてきて、「うちはアルコール消毒もしている。アクリル板も設置した。もちろん酒は出していない。今度はマイクロ飛沫だと言うのだが、一体何をやればいいんだ。もう対策がないよ」とぼやいていました。「煙を強力に吸う無煙ロースターなら飛沫も吸うので、焼肉屋はパチンコ店並に安全では」と慰めたところ、「なるほど」と納得していました。近々、横浜スタジアムと焼肉屋の安全性を確認しに、現地に出向こうかと考えています。

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コロナワクチンの異物混入・併用接種・3回接種に見解/日本ワクチン学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の切り札として、全国でワクチン接種が行われているが、コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(モデルナ社製)に異物混入が報告され、その健康への被害などにつき不安の声が上がっている。 日本ワクチン学会(理事長:岡田 賢司氏)は、こうした声を受け9月7日に同学会のホームページ上で「新型コロナウイルスに対するワクチンに関連した日本ワクチン学会の見解」を公開し、異物混入の影響、異なる種類のワクチンによる併用接種、3回目の接種の3つの課題に対して学会の見解を発表した。現時点の異物混入ワクチンの評価と今後の対応 ワクチンへの異物混入について、モデルナ社製のワクチン接種後に2件の死亡事例が把握され、製造企業による調査結果を基に、「混入した異物が全身的な症状を起こす可能性は低いこと」「アナフィラキシーの原因となる可能性が低いこと」を示した。 そして、「こうした事態はあってはならない残念な事案」とし、事案発生後の即時使用中止と情報公開が速やかに行われたことを評価すると共に、「今後の再発防止に向けて、製造から接種まですべての過程における安全性確保の徹底のために、本学会として学会員ならびに関係各方面への協力を要請する」と学会の姿勢を示した。 また、「ワクチン接種後の死亡事例に関しては、剖検の結果なども含めて、厚生労働省から因果関係の検討に関する詳細の早期公開を要望する」と記すと共に、「今後類似の事象が起こった場合には、製造・販売企業、厚生労働省などの公的機関による調査結果、およびこれまで積み重ねられてきた知見を基に、科学的・医学的に議論することが重要」と提案している。ワクチンの併用接種については慎重に 英国における臨床研究で、「異なる種類のワクチンを接種することにより、同一のワクチンを接種する場合よりも高い抗体価が獲得される可能性が示された」ことを踏まえ、わが国で異なる種類のワクチンの併用接種の導入が今後検討されていると示した。 その上で、現在、ワクチンの需要が供給を上回ること、異物混入による予定変更で希望者全員に接種されていない場合があることを考慮し、「今後、ワクチンの供給不足により接種の遅滞が生じた場合には、現状の新型コロナウイルス感染症流行が災害級の非常事態であるとの見地から、異なる種類のワクチンの併用接種も選択肢に入れることを提案する」と提言している。 また、「『接種できるワクチンを、種類を選ばず2回接種していく』ことのベネフィット、すなわち接種が停滞することによって生じる個人における感染のリスクと社会全体としての感染拡大のリスクを低減することが、何らかの副反応の生じるリスクを大きく上回る」と示唆している。 そして、異なる種類のワクチンの併用接種につき、日本脳炎ワクチンやポリオワクチンなどを例に、これらは科学的な根拠に基づいてその有効性や安全性が確認された後に、それらの併用接種が認められてきたという経緯を踏まえ、現在わが国で認められている3種のmRNAワクチンは、「ワクチンでは定められた用法・用量にしたがって、同一のワクチンを用いて接種するもので、前述の併用接種に相当する接種方法は、わが国では検証されていない」と注意を喚起している。 今後の課題として「仮にわが国においてこの併用接種を行うのであれば、希望者に接種が行き届くまでの一時的な措置と位置付けると共に、並行してわが国における臨床研究として、たとえ少数例であってもその有効性と安全性の検証を行うことが不可欠」と提言している。※一部で用いられている「交差接種」という用語は、正式な医学用語ではないので注意されたい3回目の接種の前に希望者全員への2回接種を 一般論として、「ワクチン接種後に獲得された抗体価は時間経過と共に減衰していくものであり、低下したそのレベルで効果がもたらされるかどうか、すなわち感染防御や重症化防止の評価・検証が重要となる」と評価・検証の重要性を示した上で、わが国では3回目の検証が行われていないと指摘する。 また、「免疫力をより強く長く維持することを目的とする優れた接種方法の検討は、今後進められていくべき」とことわったうえで、「国民に広く接種が行き渡っていない現状においては、まずは同一のワクチンを用いて2回の接種を対象となる希望者全員に対して可及的速やかに実施することが第一義と考える」と希望者全員への接種を優先すべきと示した。 そして、3回接種を行っている諸外国と異なり、ワクチンの供給を輸入に頼るわが国の独自性について触れ、「国内向けだけではなく世界においてわが国が果たす公衆衛生の観点に立ち、接種可能なワクチンを世界のすべての人々に2回接種する努力を継続することこそ、今回のパンデミックを収束/終息させるために最も有効で、かつ最優先させるべきこと」と考えを示した。 最後に学会では、「ワクチンの基礎臨床研究の推進、および適正な情報の公開・共有と、メディアとの連携を進めていく」と展望を語っている。

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第77回【特集・第6波を防げ!】相マスクが濃厚接触者の感染を予防/有観客試合で感染は広まらず

大学でのマスク着用が濃厚接触者の感染を予防デルタ変異株をまだ見ず、ワクチン接種がこれからという今年1~5月の米国の大学で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者との濃厚接触者を一律に隔離するのではなくマスク着用の状況に応じてそうするかしないかを決める取り組みが検証され、マスクをお互いに着用することでどうやら感染の連鎖がほぼ完全に断ち切れていました1,2)。米国のセントルイス大学では感染者と濃厚接触(24時間に2人が約2m以内で15分以上接触)しても感染者と濃厚接触者のどちらもマスクを着用していればそれら濃厚接触者の隔離は不要という対応が今年1月から実行され、その対応の成果を判定すべく同大学の学生およそ1万2,000人のその後5ヵ月間の感染状況が調べられました。その5ヵ月間に265人が感染し、それら感染者の申告で濃厚接触者378人が同定されました。感染者と濃厚接触者がどちらもマスクをしていた場合(相マスク)の濃厚接触者は毎日健診を受けて症状があればすぐに申告するよう指示され、ワクチン非接種で非相マスクの濃厚接触者のみ隔離されました。相マスクでの濃厚接触者は26人で、そのうち感染に陥ったのは僅か2人(7.7%)のみでした。一方、残りの多数(352人)の非相マスク濃厚接触者は3人に1人(32.4%)が感染に至っており、相マスク濃厚接触者の感染率はそうでない場合の5分の1ほどで済んでいました。相マスクにもかかわらず感染した濃厚接触者2人は感染判明後すぐに隔離され、それら2人から別の人への感染は9人との濃厚接触があってそれら濃厚接触者を隔離しなかったにもかかわらず一切認められませんでした。ワクチンはごく少数にしか接種されていませんでしたがその効果も伺え、接種済みの濃厚接触者18人は全員感染を免れました。一方、ワクチン接種一部完了(Partially vaccinated)の濃厚接触者24人は5人(20.8%)、ワクチン非接種の濃厚接触者336人は111人(33%)が感染に至っています。ワクチン接種が普及した現在において、直接会う授業がある大学はワクチン接種がまだ済んでいない濃厚接触者を隔離と検査観察のどちらに振り分けるかの判断材料にマスク着用状況を含めうると著者は言っています1)。アメフト有観客試合の開催地でCOVID-19増加はみられずマスク着用を含む感染対策が一箇所に大勢が集うイベントからの感染の広がりを防ぎうることが米国のアメリカンフットボール(アメフト)の有観客試合のデータ解析試験で示されました3,4)。試験では去年2020年8月末(29日)からその年末(12月28日)までに観客有りのアメフトの試合が実施された郡とそれらと同様の日程で観客なしの試合が開催された郡が検討されました。その結果、有観客試合が実施された郡での住民10万人当たりの1日のSARS-CoV-2感染数の一貫した増加は認められず、少なめな観客数でのアメフトの試合の開催はその開催地のCOVID-19増加を生じやすくはしないと示唆されました。マスク着用、少なめな観客数、野外開催がどうやらCOVID-19の広がりを防いだようであり、観客同士の距離を十分に保てば有観客試合は安全に実行できそうです。今はワクチンが出回っていますが、それだけに頼ることはできません。そもそも全員がワクチン接種済みとは限りませんし、ワクチンで感染を100%防げるわけではありません。より伝播しやすいデルタ株のような変異株の心配もあり、アメフトの試合のような大規模な集いでのCOVID-19伝播はマスクを着用しなければ依然として発生する恐れがあります。ワクチン接種が可能になったとはいえ今後もしばらくは行動の制限が続きそうですが、アメフトの試合ではマスク着用の観客を十分に離した席に招じ入れてよさそうだと試験の著者は結論しています4)。参考1)Rebmann T,et al.MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2021 Sep 10;70:1245-1248.2)CDC Report Finds Masks Curb Spread of COVID-19 on Campus / Inside Higher Ed3)No indication of COVID-19 spread from pro football events with limited attendance / Eurekalert4)Toumi A, et al. JAMA Netw Open. 2021 Aug 2;4:e2119621.

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統合失調症患者におけるCOVID-19罹患率と死亡リスクへの影響

 精神疾患患者は、身体的健康アウトカムが不良であることが知られており、とくに統合失調症スペクトラム障害患者では、大きな問題となっている。最近の研究において、統合失調症患者では、とくにCOVID-19による影響が大きいともいわれている。ギリシャ・テッサリー大学のSokratis E. Karaoulanis氏らは、統合失調症スペクトラム障害患者におけるCOVID-19のアウトカム不良リスクに関して、システマティックレビューを行った。Psychiatriki誌オンライン版2021年8月5日号の報告。 統合失調症スペクトラム障害患者におけるCOVID-19の罹患および/または死亡率を調査したすべての研究を特定するため、PRISMAガイドラインに従ってPubMed、PsycINFO、Scopusのデータベースを用いて、システマティックレビューを実施した。スクリーニングプロセス実施後、選択基準を満たした研究は7件であった。これらの研究結果は、オッズ比または調整済みオッズ比を用いて報告されていた。 主な結果は以下のとおり。・全体的な結果として、統合失調症患者では中程度ではあるが、より高い感染率に対する統計学的に有意な影響およびより高い死亡率に対する強力な統計学的に有意な影響が認められた。・統合失調症患者は、一般集団と比較し、COVID-19への罹患リスクが高く、死亡率が有意に高いことが示唆された。・しかし、集中治療室の利用頻度など他のアウトカムについては、矛盾した結果が認められた。 著者らは「統合失調症患者は、COVID-19への罹患リスクが高く、死亡率が上昇する可能性があるものの、集中治療室の利用頻度はそれほど高くないことが示唆された。統合失調症患者に対するCOVID-19ワクチン接種プログラムの優先順位の見直しや迅速な集中治療室の利用などヘルスケアへのアクセスを改善する必要がある」としている。

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コロナワクチンは高齢者の死亡をどの程度防いだか/厚労省アドバイザリーボード

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策として定期的に厚生労働省で開催されている「新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」の第51回(9月8日開催)において、「新型コロナウイルス感染症に対するワクチン等の効果の推定」が報告された。 資料では、65歳以上の高齢者についてワクチンをしなかった場合の推定から実数を比べ、ワクチンの効果を示したもの。COVID-19ワクチンで8,000人以上の高齢者の死亡を抑制した可能性 65歳以上の高齢者の9割近くが2回のワクチン接種を終えた環境下で、ワクチンの効果として、高齢者を中心に感染者数、死亡者数の増加抑制が期待されている。今回、HER-SYSデータを用いてワクチン接種などがなかった場合の推定モデルを作成し、COVID-19陽性者数、死亡者数が、同推定モデルと比較してどの程度抑制されたかを試算した。[試算方法] 2021年1月1日~8月31日までのHER-SYSデータを使用して試算した。(1)4月~8月までの感染陽性者数と年齢区分別の月毎の増加率を算出(2)1月~7月までの高齢者の新型コロナウイルス感染陽性者、死亡者数、致死率を検討(3)(1)で算出した増加率、(2)で算出した致死率を利用し、感染陽性者数と死亡者数の抑制を試算(なおHER-SYSにおける死亡数の入力率は66%程度と試算される点にも留意が必要)【COVID-19感染抑制の推定】 7月と8月で、推定10万人以上の高齢者の感染を抑制した可能性がある。7月:推定モデル感染者数2万7,052、実数5,953、推定との差2万1,0998月:推定モデル感染者数11万778、実数2万4,110、推定との差8万6,668【COVID-19感染死亡数抑制の推定】 7月と8月で、推定8,000人以上の高齢者の死亡を抑制した可能性がある。7月:推定死者数1,768、死亡者実数145、推定との差1,6238月:推定死者数7,544、死亡者実数725、推定との差6,819 なお、参考資料として「2021年1月~7月の新型コロナウイルス感染陽性者の致死率」も示され、2021年1月と7月を比較すると、1月の致死率が90歳以上で15.56%だったものが、7月では同数値が5.64%まで低下していることが示されている。

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肺動脈圧遠隔モニタリングによる心不全管理、COVID-19影響分析の結果/Lancet

 肺動脈圧遠隔モニタリングによる血行動態ガイド下の心不全管理は、通常治療のみと比較して、試験全体では全死因死亡と心不全イベントの複合エンドポイントを改善しないものの、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を考慮した感度分析の結果に基づくpre-COVID-19影響分析では統計学的に有意に良好との研究結果が、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのJoAnn Lindenfeld氏らが実施したGUIDE-HF試験で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2021年8月27日号に掲載された。北米118施設の単盲検無作為化対照比較試験 本研究は、症状の重症度が広範囲にわたる心不全患者において、肺動脈圧遠隔モニタリングによる血行動態ガイド下の心不全管理は、心不全イベントや死亡を低減するかの評価を目的とする単盲検無作為化対照比較試験であり、2018年3月~2019年12月の期間に、米国の114施設とカナダの4施設で患者登録が行われた(米国・Abbottの助成による)。 対象は、NYHA心機能分類クラスII~IVの心不全患者で、左室駆出率の値は問われなかった。また、試験前にナトリウム利尿ペプチドの上昇がみられるが、心不全による入院歴のない患者なども含まれた。 被験者は、ガイドラインで推奨された薬物療法による通常治療を受ける群(対照群)、または通常治療に加え肺動脈圧遠隔モニタリングによる血行動態ガイド下の心不全管理を受ける群(治療群)に1対1の割合で無作為に割り付けられた。治療群に割り付けられた患者は割り付け情報がマスクされた。担当医はマスクされなかったが、対照群の肺動脈圧データは知らされなかった。 主要エンドポイントは、12ヵ月時の全死因死亡と心不全イベント(心不全による入院、心不全専門病院への緊急受診)の複合とした。アウトカムに関するpre-COVID-19影響分析が、事前に規定された。デバイス/システム関連合併症は99%で発現せず 本研究には1,022例が登録され、このうち1,000例が肺動脈圧遠隔モニタリングデバイス(CardioMEMS、米国・Abbott製)の装着に成功した。治療群に497例(年齢中央値71歳、女性38%)、対照群には503例(70歳、37%)が割り付けられた。 主要エンドポイントのイベントは、治療群497例で253件(0.563/人年)、対照群503例で289件(0.640/人年)発生し、両群間に差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.74~1.05、p=0.16)。心不全による入院にも差はみられなかった(0.83、0.68~1.01、p=0.064)。 一方、COVID-19の感度分析で、試験期間中のCOVID-19の世界的大流行期に主要エンドポイントのイベント発生に変化がみられたことから、pre-COVID-19影響分析を行ったところ、主要エンドポイントのイベント発生は治療群が177件(0.553/人年)、対照群は224件(0.682/人年)であり、治療群で有意に良好であった(HR:0.81、95%CI:0.66~1.00、p=0.049)。この治療群の有効性は、主に心不全による入院(0.72、0.57~0.92、p=0.007)が優れたことによるものだった。 この主要エンドポイントのイベント発生の差は、COVID-19の大流行期間中にほぼ消失し、対照群(0.536/人年)でCOVID-19前に比べ21%の低下がみられたのに対し、治療群(0.597/人年)では実質的にほぼ変化がなく、両群間に差はみられなかった(HR:1.11、95%CI:0.80~1.55、p=0.53)。 試験全体の解析では、治療群は心不全イベントの累積発生率が低下しなかった(HR:0.85、95%CI:0.70~1.03、p=0.096)が、pre-COVID-19影響分析では発生率が有意に減少した(0.76、0.61~0.95、p=0.014)。 安全性のエンドポイントであるデバイスまたはシステム関連の合併症は、99%(1,014/1,022例)には認められなかった。重篤な有害事象は、治療群57%(282/497例)、対照群53%(268/503例)で発現した。 著者は、「これらのデータは、慢性心不全患者における血行動態ガイド下の管理の有益性に関するエビデンスベースの支持を肯定し拡張するものであり、軽度~中等度の心不全や、ナトリウム利尿ペプチドの上昇がみられるが心不全による入院歴のない患者など、より幅広い患者への適用の可能性を示唆する」とまとめ、「COVID-19の世界的大流行中の臨床試験では、COVID-19の影響に関する感度分析を加える必要がある」と指摘している。

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第70回【特集・第6波を防げ!】制限緩和に医療者は?/GSK製コロナ薬が月内にも特別承認へ

オリンピック開催前より、大都市圏を中心とした21都道府県で緊急事態宣言が発令されているが、19都道府県において今月30日まで延長となった。政府はこれと並行して、宣言解除に向けて、合理的かつ効果的で国民が納得できる感染対策を目指す議論を重ねている。3日、尾身 茂分科会長が示した「ワクチン接種が進む中で日常生活はどのように変わり得るのか?」では、ウィズコロナ時代の行動制限解除は、コロナ関連医療と一般医療の2つの側面から負荷を考え、各地域の自治体や専門家の意向も考慮が必要と指摘されている。アメリカやイギリスのように、大幅な行動制限緩和を行った国では、「デルタ株」の感染拡大やワクチン未接種者の存在により、再びコロナ患者の急増で病床が逼迫したという報道もあり、わが国においては、第6波を見据え、救急医療の逼迫を防ぐセーフティーネットをしっかり備えた上で、制限緩和へと踏み出すことになる。今後希望者のほとんどにワクチンが行き渡る11月頃までに、ワクチン接種歴およびPCR等の検査結果を軸に、他者に二次感染させるリスクが低いことを示す「ワクチン・検査パッケージ」の運用が開始される見込みだ。これを実現するために、今月発足したデジタル庁が主導して、10月からマイナンバーカードを健康保険証として利用するだけでなく、ワクチン接種証明のスマートフォン搭載なども目指す。今、従来では考えられなかったようなスピードでさまざまな物事が進んでいる。しかし、われわれ医療従事者はこれからも、コロナ対応に多くのリソースを割くことになるだろう。十分な体制が整うまでもうしばらくは、目の前でできることを確実にやり遂げていくしかない。(参考)ワクチン接種が進む中で日常生活はどのように変わり得るのか?(新型コロナウイルス感染症対策分科会)緊急事態措置解除の考え方(同)今後のデジタル改革の進め方について(内閣府デジタル庁)<先週の動き>1.GSK製の軽~中等症コロナ治療薬が月内にも特別承認へ2.制限緩和にワクチン・検査パッケージ導入へ、全国知事会が懸念3.総裁選に向け各候補者がアピール、厚労省分割案は河野氏4.看護必要度やリハビリ目的での急性期入院の見直しを/中医協1.GSK製の軽~中等症コロナ治療薬が月内にも特別承認へグラクソ・スミスクラインは、6日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬として、単回投与のモノクローナル抗体ソトロビマブ(sotrovimab)の製造販売承認申請をしたと発表。ソトロビマブは点滴静注薬であり、投与対象は「酸素療法を必要としない軽症・中等症かつ重症化リスクが高いと考えられる患者」とされる。今回の承認申請については、先行する中外製薬の抗体カクテル療法(商品名:ロナプリーブ)と同様の医薬品医療機器等法第14条の3に基づく適用を希望している。(参考)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬としてモノクローナル抗体ソトロビマブの製造販売承認を申請(GSK)GSK 新型コロナ治療薬・ソトロビマブを承認申請(ミクスonline)コロナ新治療薬、月内にも承認へ 厚労省 英グラクソ製 軽・中等症向けの点滴薬「ソトロビマブ」(日経新聞)2.制限緩和にワクチン・検査パッケージ導入へ、全国知事会が懸念西村 康稔経済財政・再生相は、12日にNHKの番組に出演し、新型コロナウイルス感染拡大による行動制限を、ワクチン接種などを条件に緩和する方針について議論の結果を示した。ワクチン接種が一定レベルを超えた時点で、他者に二次感染させるリスクが低いことを示す「ワクチン・検査パッケージ」の導入を進める方針を明らかにした。一方、全国知事会は緊急事態宣言の延長を受け、11日にオンライン会議を開催し、政府への緊急提言をまとめた。行動制限緩和については国民を楽観させる恐れがあると懸念を表し、宣言解除の指標等の見直しや、行動制限を緩和する地域・時期については、地域の感染状況や実情に応じた対応を求めている。また、出口戦略として、「ワクチン・検査パッケージ」を適切に運用するには、まず行動制限を緩和するために必要なワクチン接種率の目安を示す必要があると指摘した。(参考)西村担当相、制限緩和へ「国民的議論」 新型コロナ(時事ドットコム)制限緩和、「楽観」懸念 適用地域・時期の精査を―全国知事会(同)新型コロナ 行動制限緩和へ、接種率提示要請 全国知事会(毎日新聞)3.総裁選に向け各候補者がアピール、厚労省分割案は河野氏今月17日に告示、29日に投開票となる自民党総裁選に向け、出馬を表明した河野 太郎規制改革相、岸田 文雄前政調会長、高市 早苗前総務相ら各候補は、先週から報道番組などに出演して、具体的な政策について国民にアピールを行っている。岸田氏は12日、YouTubeのライブ配信で、自身に対する質問や意見に回答し、ウイグル問題を通して中国に対する強硬姿勢をアピールしている。また、河野氏は総裁選への出馬後、業務が広範にわたる厚労大臣の国会対応を通して、厚労省の分割案を提案している。高市氏は、海上保安庁法改正の必要性を強調。首相就任後の靖国神社参拝についても意欲を示している。(参考)河野氏、厚労省分割「一つの考え方」 高市氏は海保法改正に意欲(時事通)河野氏「厚労省、厚生省と労働省を分けることも」 大臣の負担軽減で(朝日新聞)岸田氏、ウイグル問題で中国非難決議「成立させるべき」(同)4.看護必要度やリハビリ目的での急性期入院の見直しを/中医協8日に開催された「入院医療等の調査・評価分科会」は、来年度の診療報酬改定に向けた検討結果として中間取りまとめを公表した。これは次の中医協の診療報酬基本問題小委員会に報告され、さらに検討される見込み。急性期入院医療の評価指標について、従来から用いられている「重症度、医療・看護必要度」の見直しと、別に新しい指標の検討を行うことになった。また、救急医療管理加算の審査基準が都道府県ごとで違うことを問題視する意見が出され、全国で統一する方向で検討することとなった。さらに、DPC対象病院に係る検討の進め方についても検討され、医療資源投入量や在院日数が平均から外れた病院も、ヒアリングの結果から「リハビリ目的」での入院など、必ずしも急性期の病態とは言えない患者がDPC対象病棟に入院している事例が明らかとなった。(参考)入院医療等の調査・評価分科会におけるこれまでの検討状況について検討結果(中間とりまとめ)(案)(厚労省)看護必要度見直し、急性期入院の新評価指標、救急医療管理加算の基準定量化など2022改定で検討せよ―入院医療分科会(Gem Med)救急管理加算、審査基準の統一化求める意見 中医協・入院医療分科会(CBnewsマネジメント)

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グラム染色本の最高峰【Dr.倉原の“俺の本棚”】第46回

【第46回】グラム染色本の最高峰私がグラム染色を一番やっていたのは研修医時代でした。京都府の洛和会音羽病院というところで研修させていただいて、当時、私と一緒に救急部でグラム染色を教えてくれた先生や同僚たちは、皆さんいろいろな分野で活躍しています。『グラム染色診療ドリル〜解いてわかる! 菌推定のためのポイントと抗菌薬選択の根拠』林 俊誠/著. 羊土社. 2021年6月30日発行医学部のときからずっと着ている白衣がクリスタルバイオレットまみれになって、なんか太陽の光を数年間浴びていない地下研究者みたいな恰好をしていました。「さすがにクリスタルバイオレットこぼしすぎやろ」と怒られたのは、もう15年も前の話。そういえば、バイオセーフティキャビネットではなく、救急外来でPPEをつけずに染めていた気がします。また、上手に染色できた肺炎球菌や大腸菌のスライドグラスを永久標本にして、自分のコレクションにしていました。ここらへんが現在では許されるのかどうかはわかりませんが、いずれも時効ということで……。グラム染色の本はいくつか出版されていますが、この本の素晴らしいところは、「至言が至言過ぎる」点です。書かれている全てが医師に心に突き刺さるメッセージ。たとえば緑膿菌の見た目、『「E. coliよりも細い」と気づける感覚を養う』、こりゃあ至言です。緑膿菌ってヒョロっとしているので、太い大腸菌とは違いますよね。その他、『グラム染色鏡検で「見えない」からこそ見えてくるものがある』など、なんかボクの人生をグラム染色してくださいみたいな「至言」がてんこ盛りで、読んでいてテンションが上がってきます。グラム染色に限った本ではなく、臨床における判断についても丁寧に記載されています。例えば、ESBL感染症でカルバペネムを温存しなきゃだめだよ、というICTとしても重要なメッセージも書かれています。グラム染色に偏った本ではないので、感染症診療に従事するすべての医療従事者にとって満足度が高いと思います。何より、安いです。『グラム染色診療ドリル〜解いてわかる! 菌推定のためのポイントと抗菌薬選択の根拠』林 俊誠/著.出版社名羊土社定価本体3,600円+税サイズB5判刊行年2021年

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ブレークスルー感染におけるリスク因子は?

 COVID-19ワクチンの2回接種を終了していても、その後感染するいわゆる「ブレークスルー感染」におけるリスク因子を調査した研究結果がThe Lancet Infectious diseases誌オンライン版9月1日号に掲載された。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMichela Antonelli氏らは、ワクチン接種後の感染におけるリスク因子を調査するために、英国のCOVID追跡アプリの利用者である成人から得られた自己申告データを用いた大規模なケースコントロール研究を行った。 2020年12月8日~2021年7月4日の間にCOVID-19ワクチンの1回目または2回目の接種を受け、接種前の検査で陰性だった者を対象として、以下の群に分けた。・1回目接種後14日以上経過し、COVID-19検査が陽性(症例群1)・2回目の接種後7日以上経過し、検査が陽性(症例群2)・1回目接種後14日以上経過し、2回目の接種前の検査が陰性(対照群1)・2回目の接種後7日以上経過し、検査が陰性(対照群2) 対照群1・2をワクチン接種後の検査日、医療従事者か、性別で症例群1・2に1対1でマッチさせた。疾患プロファイル分析では、症例群1・2の中から、陽性判定後、少なくとも14日間連続してアプリを使用した参加者(症例群3・4)をサブセレクトした。陽性を報告したワクチン未接種者で、検査後連続14日以上アプリを使用した参加者を対照群3・4とし、それぞれ症例群3・4と陽性検査日、医療従事者かどうか、BMI、年齢によって1:1でマッチさせた。単変量ロジスティック回帰モデルを用いて、危険因子とワクチン接種後の感染との関連、および個々の症状、全体の罹患期間、疾患の重症度とワクチン接種の有無との関連を分析した。 主な結果は以下のとおり。・期間内に124万9例が1回目のワクチン接種を報告し、そのうち6,030例(0.5%)がその後に陽性反応を示した(症例群1)。また、97万1,504例が2回目のワクチン接種を報告し、そのうち2,370例(0.2%)が陽性反応を示した(症例群2)。・1回目接種のワクチンの種類の内訳はファイザー製:44万2,752例、アストラゼネカ製:75万137例、モデルナ製:1万7,958例だった。・危険因子分析では、フレイルは高齢者(60歳以上)における1回目接種後の感染と関連し(オッズ比[OR]1.93、95%CI:1.50~2.48、p

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血小板減少症/血栓症リスク、コロナワクチン接種後vs. 感染後/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のChAdOx1 nCoV-19ワクチン(Oxford-AstraZeneca製)の初回接種後には血小板減少症や静脈血栓塞栓症、まれな動脈血栓症のリスクが上昇し、BNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer-BioNTech製)初回接種後には動脈血栓塞栓症や虚血性脳卒中のリスクの増加が認められるが、これらのイベントのリスクは、ワクチン接種後と比較して同一集団における重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染後のほうがはるかに高く、長期に及ぶことが、英国・オックスフォード大学のJulia Hippisley-Cox氏らの調査で明らかとなった。研究の成果はBMJ誌2021年8月26日号で報告された。イングランドの自己対照ケースシリーズ研究 本研究は、イングランドにおけるCOVID-19ワクチンと血液学的/血管系イベントとの関連の評価を目的とする自己対照ケースシリーズ研究であり、2020年12月1日~2021年4月24日の期間に実施された(英国研究技術革新機構[UKRI]の助成による)。 研究グループは、期間中にイングランドでワクチン接種を受けた個々の接種者レベルのデータを入手した。接種者の電子健康記録が、国家統計局(ONS)の死亡データ、SARS-CoV-2検査データ、英国の国民保健サービス(NHS)の入院データと関連付けられた。 2,912万1,633人がワクチンの初回接種を受け(ChAdOx1 nCoV-19ワクチン:1,960万8,008人[平均年齢55.5歳、女性50.1%]、BNT162b2 mRNAワクチン:951万3,625人[61.5歳、57.2%])、175万8,095人(51.7歳、56.7%)がSARS-CoV-2検査陽性であった。初回ワクチン接種を受け、アウトカムのデータが得られた16歳以上の集団が解析に含まれた。mRNA-1273ワクチン(Moderna製)は接種者数がきわめて少なかったため除外された。 主要アウトカムは、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種、BNT162b2 mRNAワクチン接種、SARS-CoV-2検査陽性という3つの曝露から28日以内における、血小板減少症、静脈血栓塞栓症、動脈血栓塞栓症に伴う入院または死亡とされた。主要アウトカムの構成要素である脳静脈洞血栓症(CVST)、虚血性脳卒中、心筋梗塞、その他のまれな動脈塞栓症の評価も行われた。CVSTのみ2つのワクチンともリスク増加 血小板減少症のリスク上昇は、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後(8~14日の罹患率比[IRR]:1.33[95%信頼区間[CI]:1.19~1.47])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日14.04[12.08~16.31]、8~14日5.27[4.34~6.40]、15~21日1.91[1.44~2.54]、22~28日1.50[1.10~2.05])に認められた。 また、静脈血栓塞栓症のリスク増加は、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後(8~14日のIRR:1.10[95%CI:1.02~1.18])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日13.78[12.66~14.99]、8~14日13.86[12.76~15.05]、15~21日7.88[7.18~8.64]、22~28日3.38[3.00~3.81])に、動脈血栓塞栓症のリスク増加は、BNT162b2 mRNAワクチン接種後(15~21日1.06[1.01~1.10])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日6.55[6.12~7.02]、8~14日4.52[4.19~4.88]、15~21日2.02[1.82~2.24]、22~28日1.26[1.11~1.43])にみられた。 さらに、CVSTのリスクは、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後(8~14日のIRR:4.01[95%CI:2.08~7.71])と、BNT162b2 mRNAワクチン接種後(15~21日3.58[1.39~9.27])、およびSARS-CoV-2検査陽性後(1~7日12.90[1.86~89.64]、8~14日13.43[1.99~90.59])に上昇し、虚血性脳卒中のリスクは、BNT162b2 mRNAワクチン接種後(15~21日1.12[1.04~1.20])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日3.94[3.46~4.47]、8~14日3.25[2.83~3.72]、15~21日2.00[1.70~2.35]、22~28日1.26[1.04~1.53])に増加した。 一方、心筋梗塞のリスクは、2つのワクチンとの関連はなかったが、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日のIRR:7.95[95%CI:7.32~8.63]、8~14日4.94[4.50~5.43]、15~21日1.95[1.71~2.22])に上昇し、まれな動脈塞栓症のリスクは、ChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種後(8~14日1.21[1.02~1.43])と、SARS-CoV-2検査陽性後(1~7日5.35[3.90~7.32]、8~14日5.61[4.13~7.61]、15~21日2.97[2.03~4.36]、22~28日2.66[1.79~3.94])に増加した。 著者は、「2つのワクチンの初回接種後にCVSTのリスクが上昇しており、これは潜在的な前兆の可能性があるが、数が少ないためさらなる確認が必要である。重要な点は、ワクチン接種後のこれらのアウトカムのリスクは、同一集団のSARS-CoV-2感染後に比べはるかに低いことである」と指摘している。

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第74回 ワクチン1回目でアナフィラキシー、日本で「交差接種」はなぜ考慮されない?

先進国内では遅れを取ったと言われる日本の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)のワクチン接種。9月8日時点の対象人口での接種率は1回目接種完了が60.9%、2回目接種完了が49.0%となり、現在、2回目接種完了者が人口の約53%であるアメリカの背を捉えつつある。そうした中で5月に承認されながら副反応に対する警戒感から公的接種での使用が控えられていたアストラゼネカ社のウイルスベクターワクチン「バキスゼブリア筋注」が8月から40歳以上に限定して公的接種に組み入れられたことは、ここ最近の接種率向上に一役買っているとみられる。ご存じのようにバキスゼブリアについては約10~25万回に1回の頻度で血小板減少症を伴う血栓症が確認され、発症者の5~6人に1人が死亡している。また、50歳未満の若年者の発生頻度は、50歳以上の2倍ほど高い。もっともこの頻度はワクチンの副反応としてはかなり低いもので、私個人は当初公的接種から外したことはナイーブすぎた判断と考えている。さてこのワクチンに関して東京都でちょっとした騒動が勃発している。「都の大規模ワクチン会場、独断で「交差接種」 健康状態に問題なし」(朝日新聞)もう既にほとんどの方がご存じかとは思うが、3月にファイザー製ワクチンの優先接種を受け、アナフィラキシーを起こした医療従事者がかかりつけ医に相談し、2回目接種にバキスゼブリアを選択するようアドバイスを受け、都の接種会場でこのことを申し出た後、そのまま交差接種を受けたという案件である。予診担当の医師も接種担当の看護師も交差接種であることをわかったうえで接種を実施。これに対し都側で不適切だったと申し開きをしたという内容だ。正直、なんともすっきりしない話である。確かに制度上は適切とは言えない。ただ、アナフィラキシーという本人の不可抗力によりワクチン接種完了が叶わなかったこの方は、今のデルタ株流行という環境下で医療従事者として働くことに相当不安を抱いていたはずだ。だからこそ、かかりつけ医に相談してまで、この接種会場に赴いたのだろうと推察する。そう考えるとこの方はもちろんかかりつけ医も現場で判断した予診担当の医師も接種を行った看護師も私は責めることができない。いったいこうした人はどれくらいいるのだろうか?mRNAワクチンの接種によりアナフィラキシーを起こしたと厚生科学審議会の予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会で判定を受けているケースは、8月8日までにファイザー製が405件、モデルナ製が9件ある。もちろん接種のすそ野が広がってくる今後、こうした人は増えてくるだろう。その人たちをこのまま放置して良いのだろうか?ちなみにいわゆる1回目と2回目の接種を違うワクチンで行う交差接種に関しては、最近Lancet誌にオックスフォード大学のグループによる単盲検試験の結果が報告されている。この試験は28日間隔でファイザーワクチン2回接種、アストラゼネカワクチン2回接種、アストラゼネカ1回目/ファイザー2回目、ファイザー1回目/アストラゼネカ2回目の接種を行った4群で新型コロナウイルスの抗スパイクタンパクIgGの幾何平均濃度を比較したもの。結論から言えば幾何平均濃度は高い順からファイザー2回接種、アストラゼネカ1回目/ファイザー2回目、ファイザー1回目/アストラゼネカ2回目、アストラゼネカ2回接種となった。まだプリミティブな結果ではあるものの、この結果からは今回の接種そのものが医学的に問題あるものではないこともほぼ明らかだ。そもそも体内に入ったmRNAの分解されやすさや2回接種完了者での抗体価減少の研究報告なども併せてみれば、この方のようなケースは初回のmRNAワクチンの影響もほぼウォッシュアウトされているかもしれない。その意味ではやや乱暴な言い方かもしれないがバキスゼブリアを2回接種しても良いのではないかとすら思えてくる。いずれにせよ本人に接種の意思がありながら、mRNAワクチンでのアナフィラキシーゆえに接種完了が叶わなかった人たちに、本人の同意取得を前提に補償的措置として臨床研究を兼ねてウイルスベクターワクチンの再接種を検討すべきではないかと考えている。

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アレルギー高リスク者、コロナワクチンによるアレルギー発症率は?

 新型コロナワクチンを接種したいもののアレルギー持ちだと、どうしても躊躇してしまう。とくに副反応が強く出やすい2回目となればなおさらである。今回、イスラエル・Sheba Medical CenterのRonen Shavit氏らは、アレルギーに対し高いリスクを有する患者について、ファイザー製の新型コロナワクチン(BNT162b2)のアレルギー反応/アナフィラキシーの影響について調査を行った。その結果、アレルギー性疾患の病歴を持つほとんどの患者は、医療施設で実装できるさまざまなアルゴリズムを使用すれば安全に接種できることが示唆された。JAMA Network Open誌2021年8月31日号のOriginal Investigationとして掲載。 研究者らは2020年12月27日~2021年2月22日の期間、シェバ医療センターのCOVID-19ワクチンセンターに申請されたアレルギー患者8,102例を対象に前向きコホート研究として、詳細なアンケートを含むアルゴリズムを使用したリスク評価を実施。アレルギーに対し高いリスクを有する患者を「アレルギー性が高い」とし、医学的管理下で接種が行われた。 主な結果は以下のとおり。・アレルギー性が高い患者と定義付けされたのは429例で、そのうち304例(70.9%)は女性、平均年齢±SDは52±16歳だった。・BNT162b2ワクチンの初回投与後、420例(97.9%)に即時型アレルギー反応はなく、6例(1.4%)には軽度のアレルギー反応が、3例(0.7%)にはアナフィラキシーが出現した。・調査期間中、アレルギー性が高い患者218例(50.8%)が2回目のBNT162b2ワクチン接種を受けたところ、214例(98.2%)にはアレルギー反応がなく、4例(1.8%)で軽度のアレルギー反応がみられた。・ほかの即時型および遅延型アレルギーの発現状況について、アレルギー性が高い患者群を一般集団と比較しても同等だった(遅延性のかゆみや発疹の発症は除外)。

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エンパグリフロジン、糖尿病の有無を問わずHFpEFに有効/NEJM

 SGLT2阻害薬エンパグリフロジンは、糖尿病の有無を問わず左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)患者の心血管死または心不全による入院の複合リスクを有意に低下させることが、ドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のStefan D. Anker氏らが行った、世界23ヵ国622施設で実施された国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III試験「EMPEROR-Preserved試験」の結果、示された。SGLT2阻害薬は、左室駆出率が低下した心不全患者の心不全による入院リスクを低下させるが、HFpEF患者における有効性については不明であった。NEJM誌オンライン版2021年8月27日号掲載の報告。HFpEF患者約6,000例で、エンパグリフロジン上乗せの有効性をプラセボと比較 研究グループは、NYHA心機能分類クラスII~IVの慢性心不全で、左室駆出率が>40%、NT-proBNPが300pg/mL以上(ベースラインで心房細動を有する患者の場合は900pg/mL以上)の18歳以上の患者を、標準治療に加えて、エンパグリフロジン(1日1回10mg)またはプラセボの投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。割り付けは、地域、糖尿病の有無、推定糸球体濾過量(eGFR)(<60mL/分/1.73m2 vs.≧60mL/分/1.73m2)、左心室駆出率(<50% vs.≧50%)で層別化した。 主要評価項目は、心血管死または心不全による入院の複合、副次評価項目は、初回および再発を含むすべての心不全による入院、eGFRのベースラインからの低下率であった。 2017年3月27日~2020年4月13日の期間に1万1,583例がスクリーニングされ、5,988例が無作為に割り付けられた(エンパグリフロジン群2,997例、プラセボ群2,991例)。入院の複合リスク21%低下 追跡期間中央値26.2ヵ月において、主要評価項目のイベントはエンパグリフロジン群13.8%(415/2,997例)、プラセボ群17.1%(511/2,991例)に発生した。ハザード比(HR)は0.79(95%信頼区間[CI]:0.69~0.90、p<0.001)であり、エンパグリフロジン群で有意に発生リスクが低下した。 主要評価項目の有効性は、主に心不全による入院リスクの低下と関連していた(心不全による入院[HR:0.79、95%CI:0.60~0.83]、心血管死[0.91、0.76~1.09])。また、エンパグリフロジンの有効性は、糖尿病の有無にかかわらず一貫していた(ベースラインで糖尿病あり[HR:0.79、95%CI:0.67~0.94]、糖尿病なし[0.78、0.64~0.95])。 主要副次評価項目である心不全による入院の総数は、プラセボ群と比較してエンパグリフロジン群で有意に低下した(エンパグリフロジン群407例、プラセボ群541例、[HR:0.73、95%CI:0.61~0.88]、p<0.001)。 安全性解析対象集団において、重篤な有害事象の発現率はエンパグリフロジン群で47.9%(1,436/2,996例)、プラセボ群で51.6%(1,543/2,989例)であった。エンパグリフロジン群では単純性尿路・性器感染症および低血圧がより多く見られた。

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