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サイケデリックなうつ病治療(解説:岡村毅氏)

 少し前に、がんの「標準治療」を劣ったものと誤解し、怪しげな「民間療法」あるいは「自称最先端の治療」に騙されてしまう患者さんがいることが問題になった。標準治療とは、実は科学的根拠がある最適な治療なのだということは今では多くの人の知るところになった。同じことは精神医学でもいえる。多くのうつ病は、短期間の抗うつ薬投与と休養であっさり回復する。標準治療をお勧めする。 ただし、すべてのうつ病が医学的に治るというのは思い上がった意見だろう。治療抵抗性うつ病とは薬物治療等に反応が不良なうつ病、つまり何をやってもうまくいかないうつ病を指すが、うつ病治療学の大きな課題であった。認知行動療法やマインドフルネスといった治療技術もこれを射程に開発された。 この論文は、マジックマッシュルームなどに含まれる幻覚成分を用いた治療抵抗性うつ病の治療に関する研究の報告であるが、すでにフェーズ2まで進んでいる。抗うつ効果がはっきりある一方で、自殺念慮などの深刻な有害事象も生じている。抗うつ薬はすでに新しいものが出にくい状況であるので、臨床的には大変興味深い。 医学的にはただそれだけのことである。 しかし、マジックマッシュルームや幻覚剤というと、医学的なことに留まらず、さまざまな側副情報がくっついており、非常に危険な話題である。この記事を読んでいるのは知識がある人であろうから、ある程度ざっくばらんに書くが、あくまで私個人の意見として以下を読んでいただければと思う。 まず幻覚剤はヒッピームーブメントと結びついている。ご承知のように1960年代の米国のカウンターカルチャーであり、現代文明によって奴隷のようになった我々を解放しなければならないという心性である。気持ちとしてはなんとなくわかるが、幻覚剤を用いた宗教行事のようなことを行って、解放を目指したりしがちである。これは現代アメリカ文明がネイティブアメリカン等の先住民の虐殺の上に成り立っているという原罪意識とも結びついているかもしれない。 あの時代ならではであるが、リアリー元教授という人がハーバード大学で幻覚剤を用いて人を変えることができると主張して科学的にはめちゃくちゃな研究をし、追放された。ちなみにリアリー元教授は破天荒な人生を歩んだ人で、テレパシー、宇宙移住、ジョン・レノンとオノ・ヨーコとの活動、カルフォルニア州知事選への立候補などもしている。彼のせいで、幻覚剤を用いた治療というと、かなりイロモノになったことは事実であろう。 一方で体制側も幻覚剤を用いていた。あるいは用いていたと多くの人が信じている。悪名高きMKウルトラ計画はCIAによる洗脳研究とされる。とはいえ、自分はMKウルトラの被害者だと主張する人や、自分は宇宙人に誘拐されたなどと主張する人が米国には多数いるが、その真偽は明らかではない。 精神医学に関して言うと、精神科医ほど体制を嫌う集団はないと個人的には思っているが(なので社会から排除されるこころ病む人を支援しようという情熱が根本にあるのだが)、精神医学が体制のために使われているのだと主張する人は精神医学の「内部から」常に現れる。いわゆる反精神医学であり、上記のヒッピームーブメントの時代に大きなうねりとなった。確かに旧ソ連などでは精神医学が反体制派の弾圧に使われてしまっており、「自分たちが体制に使われてはいけない」というのは健全な批判精神であろう。とはいえ反精神医学は、精神疾患などというものはないのだとか、治療をしてはいけないとか、極端な主張に陥りがちであったことも事実だ。前述の「民間療法」や「自称最先端の治療」と大して変わらない。 以上、非常に荒っぽくまとめると幻覚剤は、現代文明からの解放や体制との戦い、体制側の洗脳、という両極端の過激な考えと結び付けられてしまい、それぞれの人にとってさまざまな感情を喚起するため、とても取扱注意なのである。 精神医学は、社会学や、文学とも強く結び付いており、社会の安定のための学問でもあるが、同時に社会を変革する(ひっくり返す)学問でもあるという独特の面白さがある。この点をわかっていただきたくていろいろと書いた。とはいえ先ほど「医学的にはただそれだけのことである」と書いたように、この研究は北米と欧州の多施設で科学的に計画されて粛々と行われている。上記のさまざまな先入観というか歴史的に帯びてしまった意味を脇に置いて、淡々と読んでいただきたいものである。

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11月24日 いい尿の日【今日は何の日?】

【11月24日 いい尿の日】〔由来〕寒さが本格化してくる時期である11月の「いい(11)にょう(24)」(いい尿)と読む語呂合わせからクラシエ製薬株式会社が制定。寒さが増すと頻尿・夜間尿などの排尿トラブルが増えることから、その啓発や症状に合った治療を広く呼び掛けることが目的。関連コンテンツ女性の頻尿、どう尋ねるべき?【Dr.山中の攻める!問診3step】知っておきたい女性の排尿障害の診療【診療よろず相談TV】頻尿、排尿痛があるときの症状チェック【患者説明用スライド】尿が少ない・出ないときの症状チェック【患者説明用スライド】新・夜間頻尿診療ガイドラインで何が変わるか/日本排尿機能学会

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果物の摂取量が多いほどうつ病リスク低下/国立精神・神経医療研究センター

 日本のコホート研究において、野菜、果物、フラボノイドの豊富な果物(リンゴ、梨、柑橘類、ブドウ、イチゴなど)の摂取が、うつ病のリスク低下と関連するかどうかを調べた結果、果物およびフラボノイドの豊富な果物の摂取量が多いほど、うつ病の発症率が低かったことを、国立精神・神経医療研究センターの成田 瑞氏らの共同研究グループが発表した。Translational Psychiatry誌2022年9月26日掲載の報告。果物全体とフラボノイドが豊富な果物の両方でうつ病のオッズ比が低かった 先行研究では、野菜や果物の摂取がうつ病の予防に有意である可能性が示されており、とくにフラボノイドは脳由来神経栄養因子や酸化ストレス、神経炎症の抑制作用により抗うつ効果を持つことが示唆されていた。そこで本研究では、野菜、果物、フラボノイドの豊富な果物の摂取がうつ病のリスク低下と関連するかどうかを調べた。 調査は、1990年時点で長野県南佐久郡8町村に在住の40~59歳の1万2,219人のうち、1995年と2000年に行った2回の食事調査アンケートに回答があり、かつ2014~15年にかけて実施した「こころの検診」に参加した1,204例(男性500例、女性704例)を対象とした。野菜、果物、フラボノイドの豊富な果物の摂取量によって5グループに分け、摂取量が最も少ないグループを基準とした場合の、他のグループのうつ病の発症リスクとの関連を調べた。また、野菜や果物に関連する栄養素として、α-カロテン、β-カロテン、ビタミンC、ビタミンE、葉酸の平均摂取量とうつ病との関連も検討した。解析では、年齢、性別、雇用状況、飲酒量、現在の喫煙、運動習慣の影響は調整された。 野菜、果物、フラボノイドの豊富な果物の摂取がうつ病のリスク低下と関連するかどうかを調べた主な結果は以下のとおり。・野菜、果物、フラボノイドの豊富な果物の摂取量が最も多いグループでは、摂取量が最も少ないグループと比較して、高齢者、女性、未就労者、非飲酒者、非喫煙者が多かった。運動習慣に差はみられなかった。・1,204例中93例が精神科医によってうつ病と診断された。・果物全体の摂取量が最も少ないグループと比較して、摂取量が最も多いグループにおけるうつ病のオッズ比は0.34(95%信頼区間[CI]:0.15~0.77、p=0.04)であった。・フラボノイドの豊富な果物の摂取量が最も少ないグループと比較して、摂取量が最も多いグループのうつ病のオッズ比は0.44(95%CI:0.20~0.97、p=0.05)であった。・フラボノイドの豊富な果物の摂取量が最も多いグループの中で、とくにイチゴの摂取によるうつ病のオッズ比は0.37(95%CI:0.18~0.79)と顕著であった。・野菜や関連栄養素の摂取量とうつ病との間には関連はみられなかった。 これらの結果より、同氏らは「果物全体とフラボノイドが豊富な果物の両方について、最も多く摂取したグループでうつ病のオッズ比が低かったことから、フラボノイド固有のメカニズムというよりも、果物が持つ抗酸化作用などの生物学的作用がうつ病の発症に対して予防的に働いた可能性が考えられる」と述べるとともに、「今後の研究では、より大きなサンプルを採用し、他の潜在的な交絡因子を調整する必要がある」とまとめた。

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日本における妊娠中の社会的孤独と不眠症との関係

 東北大学(東北メディカル・メガバンク機構)の村上 慶子氏らは、妊娠中の女性の不眠症有病率を推定し、妊娠中の社会的孤独と不眠症との関連を調査した。その結果、妊娠中の女性における家族や友人からの社会的孤独は、不眠症リスク増加と関連していることが示唆された。Sleep Health誌オンライン版2022年10月10日号の報告。 本横断的研究は、2013~17年に東北メディカル・メガバンク機構の三世代コホート調査の一部として実施された。妊娠中の女性を宮城県の産婦人科クリニックおよび病院で募集し、調査票への回答および医療記録の提供を許可した女性1万7,586人を対象に分析を行った。不眠症の定義は、アテネ不眠尺度スコア6以上とした。社会的孤独の評価にはLubben Social Network Scale短縮版(LSNS-6)を用い、スコア12未満を社会的孤独と定義した。また、LSNS-6のサブスケールを、家族または友人関係の質の評価に用いた。妊娠中の社会的孤独と不眠症との関連の評価には、年齢、出産回数、妊娠前のBMI、妊娠に対する感情、教育、収入、就労状態、つわり、精神的苦痛で調整した後、多重ロジスティック回帰分析を用いた。家族または友人関係の影響についての分析にも、多重ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・妊娠後期の不眠症有病率は、37.3%であった。・社会的孤独が認められた女性は、そうでない女性と比較し、不眠症リスクが高かった(多変量オッズ比[OR]:1.26、95%信頼区間[CI]:1.16~1.36)。・家族関係(OR:1.40、95%CI:1.25~1.56)や友人関係(OR:1.15、95%CI:1.07~1.24)の希薄さは、不眠症リスク増加と関連していた。

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頭痛患者におけるドライアイのリスク~メタ解析

 中国・大連医科大学のShuyi Liu氏らは、頭痛がドライアイのリスクに影響を及ぼすかどうか明らかにするためメタ解析を実施した。その結果、頭痛はドライアイの独立したリスク因子であることが示唆され、とくに片頭痛患者においては頭痛とドライアイのリスクに強い関連が認められた。Annals of Medicine誌2022年12月号の報告。 PubMed、Web of Science、Cochrane Library、EMBASEのデータベースより、関連文献の検索を行った。すべての原因による頭痛に対するドライアイのオッズ比(OR)を算出するため、ソフトウェアStataを用いた。異質性の因子の調査には、サブグループ解析と感度分析を実施した。出版バイアスの評価には、Funnel plotとEgger's testを用いた。 主な結果は以下のとおり。・11件の研究(コホート研究:1件、ケースコントロール研究:4件、横断的研究:6件)より357万5,957例をメタ解析に含めた。・プール分析では、すべての原因による頭痛は、ドライアイのリスクの高さと関連していることが認められた(OR:1.586、95%信頼区間[CI]:1.409~1.785、I2=89.3%、p<0.001)。・頭痛のサブタイプ別においても、各頭痛タイプはドライアイのリスクの高さと関連していた。 ●片頭痛(OR:1.503、95%CI:1.369~1.650、I2=81.8%、p<0.001) ●緊張型頭痛(OR:1.610、95%CI:1.585~1.635、p<0.001) ●群発頭痛(OR:2.120、95%CI:1.104~4.073、p=0.024)・ケースコントロール研究におけるドライアイのリスクは、横断的研究およびコホート研究における同リスクよりもわずかに高かった。 ●ケースコントロール研究(OR:1.707、95%CI:1.291~2.258、I2=85.0%、p<0.001) ●横断的研究(OR:1.600、95%CI:1.590~1.610、I2=0.0%、p<0.001) ●コホート研究(OR:1.440、95%CI:1.096~1.893、p=0.009)・地域別のサブグループ解析では、米国、欧州、アジア、オセアニアにおけるすべての原因による頭痛は、ドライアイのリスクの高さと関連が認められた。

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英語で「湿布」は?【1分★医療英語】第55回

第55回 英語で「湿布」は?I twisted my ankle.(足をくじいてしまいました)Place this patch on the painful area.(痛むところに、この湿布を貼ってください)《例文1》Apply the patch to a clean, dry, and hairless skin area.(清潔で乾いた毛の少ない部分に湿布を貼ってください)《例文2》Remove the patch after 24 hours and choose a difference place to apply the new patch.(24時間したらパッチを取り外し、別の場所に新しいパッチを貼ってください)《解説》「湿布(貼付剤)」は“patch”(または“transdermal patch”:経皮貼付剤)といいます。日本語でも「パッチ剤」と呼ぶこともありますよね。冷湿布や温湿布を指す場合には“cold compress / hot compress”と表現します。冷または温のジェル状のものを“compress”(当てる=圧縮する、押し付ける)する、というわけで、こちらは薬剤が入っていない場合がほとんどです。アルツハイマー型認知症の経皮吸収型製薬である“rivastigmine”(リバスチグミン)パッチなどの場合には、前のものを剥がし忘れたまま複数のパッチを貼ってしまうことのないよう、《例文2》のようにパッチを取り外すことの説明を加えるとよいでしょう。また、合成オピオイドである“fentanyl transdermal patch”(フェンタニルパッチ)を誤ってペットや子供が触ってしまう事故を避けるために、“Promptly dispose of used patches by folding them in half with the sticky sides together.”(使用後のパッチは、粘着面を内側にして半分に折り、即座に処分してください)と伝えることも大切です。講師紹介

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統合失調症患者の入院および機能に対するLAI抗精神病薬の影響

 抗精神病薬のアドヒアランス不良は、統合失調症患者の再発および再入院に最も影響を及ぼす因子であり、医療費の増大や心理社会学的障害につながる可能性がある。長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の使用は、治療の継続性やアドヒアランス改善に有効であると考えられる。イタリア・トリノ大学のCristiana Montemagni氏らは、経口抗精神病薬(OA)からLAI抗精神病薬への切り替えによる有効性を評価するため1年間のミラーイメージ研究を実施した。その結果、再発リスクが高くアドヒアランス不良の統合失調症患者にとって、LAI使用は最適な治療選択肢である可能性が示唆されたとし、とくに社会的機能低下が認められる患者では、第2世代抗精神病薬(SGA)のLAIによる治療が理想的であることを報告した。Therapeutic Advances in Psychopharmacology誌2022年10月8日号の報告。 統合失調症患者の精神科入院減少および全体の機能改善に対する、OAからLAI抗精神病薬への切り替えによる影響を評価した。SGAと第1世代抗精神病薬(FGA)のLAIのアウトカムの違いについても分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は全体で166例であり、FGA-LAI治療患者が32.5%、SGA-LAI治療患者が67.5%であった。・全体で、LAI切り替えの12ヵ月前と比較し切り替え12ヵ月後には、平均入院数が71%減少し、機能の全体的評定(GAF)スコアは29.3%改善した。・SGA-LAIに切り替えた患者は、FGA-LAIに切り替えた患者と比較し、GAFスコアの有意な改善が認められた。しかし、入院に対する有意な影響は認められなかった。

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アルツハイマー病治療薬の今【コロナ時代の認知症診療】第21回

アリセプトの市販後臨床試験結果からみえてくること認知症の原因疾患は、70以上もあるといわれる。治療法はそれぞれの原因ごとに違うが、今のところ治療薬の適応は、数が一番多いアルツハイマー病が基本となっている。実際、現在流通している治療薬の4つはすべてアルツハイマー病が対象である。例外的にドネペジル(商品名:アリセプト)のみは、レビー小体型認知症も適応疾患だった。ところが、この10月の厚生労働省の発表により(令和4年10月28日薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会)、本症の承認条件だった市販後臨床試験で「主要評価項目が未達」と報告された。その結果、認知症専門医らが必要と判断した患者に使用すること等を添付文書に追記を求めることになった。「投与開始12週間後までを目安」に認知機能検査や聞き取りによって有効性評価を行い、効果が判断できなければ「投与を中止」すること、投与継続を決めても定期的な継続可否の判断を求め、さらに「認知症治療に精通」した医師が使うよう注意喚起をしたのである。なお経験的に幻視や錐体外路徴候もある本症にはこの薬が効くといわれてきたが、この発表でもそれが統計学的に示されている。要は、いったんは適応となった薬剤でもなかなか甘くはないといえる。aducanumabとlecanemab、結果の違いをどうみるかさて今日アルツハイマー病の根本治療薬として、開発にしのぎが削られる新薬の主流標的は病気の原因と目されているアミロイドβ(Aβ)、タウ、炎症や免疫に関わる薬などに分類できる。その中でも主流はアミロイドβに関連する抗アミロイドβモノクローナル抗体と呼ばれるものである。これまでこの種の新薬として10種類以上により治験がなされてきた。結果概要は、「原因物質と目されるアミロイドβを脳から除去できる。しかし記憶など認知機能への効果は微妙。副作用として脳血管の出血や浮腫みが30%程度出現する」とまとめられる。確かにこの成績では期待の根本治療薬というわけにはいかない。つい最近まで最も優秀とされたaducanumabが、2011年12月に日本で承認されなかったことには3つの理由がある。まず2つの大きな治験をやっているのだが、その治験の結果が両者で一致しないことがある。次にアミロイドβの脳からの除去と認知機能改善の関係性が説明できないこと。さらに少なからぬ例で脳血管の出血や浮腫が見られたことである。これに対して、lecanemabでは2022年9月に主要評価項目とすべての重要な副次評価項目で統計学的に有意な結果が得られたと報告された。主要評価項目スコアの平均変化量は、本剤投与群がプラセボ投与群と比較して-0.45、27%という統計学的に有意な悪化抑制を示したのである。また副次評価項目としての脳内アミロイド蓄積は減少した。他の認知機能テストや日常生活動作などについても統計学的に有意な結果を得たのである。また副作用としての脳血管の出血や浮腫みはaducanumabより低い発現率であった。以上の結果を踏まえてlecanemabは、2022年度中に米国ならびに日本、欧州において承認申請を目指すとされる。なお本剤のメカニズムのポイントは、Aβの少数集合体であるオリゴマー(あるいは凝集体:プロトフィブリル)をターゲットにしていることだ。神経細胞に害を与えるのは出来上がったAβの塊である老人斑ではない。Aβの集合状態には単一のモノマーから少数のオリゴマー、さらには線維化Aβまで段階があるが、神経毒性の強さから最も注目されるのはオリゴマーあるいはプロトフィブリルなのである。lecanemabは承認されるか?承認されるかどうかは、3つの問題点に対してこの薬がどこまで答えられるか、またそれが納得できるかという評価にかかっていると筆者は考える。いずれにせよ今度こそ合格するのではないかと熱い視線が世界中から向けられている。けれども難しい問題がある。まず費用の問題。前回aducanumabの時に、年間600万円の薬価だと言われた。日本人は身体が小さいので、400万程度ではないかという試算もあるようだが、いずれにしても高価である。今回どれくらいの薬価になるのかまだ発表はないようだが、そう安くなるとは思えない。もっと大切なのは保険収載だろう。これがあるからこそ、日本国民は、比較的安価に医療サービスが受けられる。逆にこうした高価な薬で収載がなされないとその恩恵に預かることはそう簡単ではない。よく知られているように新規医薬品や医療技術の保険収載等に際しては、費用対効果や財政影響などの経済性評価や保険外併用療養の活用などが検討される1)。冒頭に述べたアリセプトとレビー小体型認知症の関係ではないが、これはかなり厳しいものといえる。ましてこの新薬について、アルツハイマー病の患者さんの総数、費用対効果などを考えた時に簡単に収載になると考えにくいところがある。参考1)厚生労働省保険局.新規医薬品等の保険収載の考え方について(平成30年10月10日)

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コロナで日本の未成年者の自殺率とその理由が変化

 新型コロナウイルス感染症のパンデミック中に、日本の若年者(10~19歳)の自殺率はパンデミック前と比較して増加し、家族問題や人間関係の問題に起因する自殺が増加していたことを、東京大学医学部附属病院の後藤 隆之介氏らが明らかにした。パンデミックにより学校閉鎖などの前例のない感染防止対策が講じられ、若年者に多くのメンタルヘルスの課題をもたらしたが、これまでパンデミック中の若年者の自殺の傾向やその理由を調査した研究はほとんどなかった。The Lancet regional health. Western Pacific誌2022年8月10日掲載の報告。 調査は、厚生労働省発表の2016~20年の月別自殺率と、警察庁発表の2018~20年の自殺原因を用いて行われた。ポアソン回帰モデルを使用して変動を推計したイベントスタディデザインと分割時系列解析により、パンデミック前(2016年5月~2020年3月)とパンデミック中(2020年5月~2021年4月)の月別自殺率の変化を比較するとともに、自殺の原因(家族問題、精神疾患、人間関係の問題、学校問題)の変化を調査した。 主な結果は以下のとおり。・10~19歳の若年者の自殺率は、パンデミック前と比較してとくに2020年8月から11月にかけて増加した。2020年11月の自殺率は前年比1.86倍(95%信頼区間[CI]:1.30~2.66)であった。・自殺率は、2020年12月にはパンデミック前と同水準に近づいたが、2021年に入ってもわずかに上昇したままであった。・分割時系列解析によると、自殺率は2020年5月から8月にかけて上昇(+0.099件/10万人の若年者/月、95%CI:0.022~0.176)し、2020年9月から12月にかけて減少(-0.086件/10万人の若年者/月、95%CI:-0.164~-0.009)した。・すべての主な原因による自殺が2020年夏から秋にかけて増加しており、とくに家族問題や人間関係の問題に起因する自殺が増加していた。・精神疾患に起因する自殺率は、パンデミック前の水準よりも2020年12月まで高いままであった。 これらの結果より、同氏らは「パンデミック中は若年者にメンタルサポートを提供するだけでなく、定期的な社会的交流の機会の提供が有益である可能性がある」とまとめた。

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日本人アルツハイマー病に対する抗認知症薬の継続性

 アルツハイマー病(AD)の症状に対する治療には、ドネペジルが用いられることが多いが、早期の治療中断も少なくない。ドネペジル治療開始後の抗認知症薬使用の継続率を明らかにすることは、今後の治療戦略の開発および改善に役立つ可能性があるものの、これらに関する日本からのエビデンスはほとんどなかった。九州大学の福田 治久氏らは、日本人AD患者におけるドネペジル開始後の抗認知症薬の継続率を明らかにするため、保険請求データベースを用いて検討を行った。その結果、日本人AD患者における抗認知症薬の継続率は、他国と同様に低いことが明らかとなった。著者らは、長期介護が必要な患者で治療中断リスクが高く、AD患者の薬物治療継続率を改善するためには、さらなる対策が求められると報告している。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2022年10月1日号の報告。 17の自治体より2014年4月~2021年10月にドネペジルを新規で処方されたAD患者に関する保険請求データを収集した。抗認知症薬の継続性は、ドネペジル最終処方後60日以内にドネペジル、他のコリンエステラーゼ阻害薬、メマンチンを処方された場合と定義した。要介護レベルと治療中断との関連を分析するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象は、AD患者2万474例(平均年齢:82.2±6.3歳、女性の割合:65.7%)。・抗認知症薬の継続率は、開始後30日で89.1%、90日で79.4%、180日で72.6%、360日で64.5%、540日で58.3%であった。・要介護度別における治療中断のハザード比は、介助が必要な患者で1.01(95%信頼区間[CI]:0.94~1.07)、長期介護の必要性が低度の患者で1.12(95%CI:1.06~1.18)、長期介護の必要性が中程度~高度の患者で1.31(95%CI:1.21~1.40)であった。

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急性期治療における抗精神病薬の使用状況~スコーピングレビュー

 せん妄などの原発性精神疾患以外の症状に対して、急性期治療で抗精神病薬が使用されることは少なくない。このようなケースで使用された抗精神病薬は、退院時およびフォローアップ時においても継続使用されていることが多いといわれている。カナダ・カルガリー大学のNatalia Jaworska氏らは、抗精神病薬処方の慣行の特徴、抗精神病薬処方と中止に対する専門家の認識、急性期治療における抗精神病薬処方中止戦略などを明らかにするため、スコーピングレビューを実施した。その結果、急性期治療で専門家が認識していた抗精神病薬処方と実際に測定された処方の慣行は異なっており、また院内での処方中止戦略についての報告はほとんどないことが明らかとなった。結果を踏まえ著者らは、抗精神病薬の有効性およびリスクを評価するためには、処方中止戦略を継続的に評価する必要があるとしている。BMC Health Services Research誌2022年10月21日号の報告。 2021年7月3日までに公表された、抗精神病薬の処方と中止の慣行、および急性期治療における抗精神病薬処方と中止に対する認識について報告した1次調査研究を、MEDLINE、EMBASE、PsycINFO、CINAHL、Web of Scienceのデータベースより検索した。プロトコール、エディトリアル、オピニオンピース、システマティックレビュー、スコーピングレビューを除くすべての研究デザインを分析に含めた。2人のレビュアーにより、データを個別または重複してスクリーニングし、要約した。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングした研究4,528件のうち80件を分析に含めた。・すべての急性期治療環境(集中治療室、入院、救急部門)において専門家が認識していた抗精神病薬処方は、ハロペリドールが最も高頻度であったが(100%[36件中36件])、測定された抗精神病薬処方の慣行では、クエチアピンが最も一般的であった(76%[36件中26件])。・抗精神病薬の使用理由は、せん妄(70%[69件中48件])および興奮症状(29%[69件中20件])であった。・退院時では、クエチアピンの処方が最も多かった(100%[18件中18件])。・3件の研究で、薬剤師主導の処方中止権限、ハンドオフツール、教育セッションに焦点を当てた院内抗精神病薬処方中止戦略が報告されていた。

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精神病性うつ病の死亡率~18年フォローアップ調査

 精神病性うつ病に関連する死亡率や併発する精神症状の影響に関するエビデンスは、非常に限られている。英国・オックスフォード大学のTapio Paljarvi氏らは、併発する精神症状を制御した精神病性うつ病の原因別死亡率を推定するため、本研究を実施した。その結果、精神医学的併存疾患を制御した後、重度のうつ病に関連する死亡リスクに対し、精神症状の著しい影響が認められた。著者らは、自殺やその他の外的原因による死亡を減少させるためにも、すべての重度うつ病患者に対し、迅速な治療および精神症状のモニタリング強化が求められると報告している。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2022年10月17日号の報告。精神病性うつ病患者の死亡リスクが最も高かったのは初回診断1年以内 本コホート研究では、フィンランドの全国健康レジスタより得られたデータを分析した。対象は、2000~18年に精神病性うつ病または重度の非精神病性うつ病と診断された18~65歳(診断時)のうち、統合失調症スペクトラム障害または双極性障害ではない患者。精神病性うつ病患者の原因別死亡率を、重度の非精神病性うつ病患者と比較した。死亡原因は、ICD-10で定義した。 精神病性うつ病患者の原因別死亡率を重度の非精神病性うつ病患者と比較した主な結果は以下のとおり。・対象患者数は、精神病性うつ病患者1万9,064例、非精神病性うつ病患者9万877例。・フォローアップ期間は、最大18年であった。・精神病性うつ病患者の死亡の約半数(1,199/2,188例)は、初回診断から5年以内に認められ、相対リスクが最も高かったのは、初回診断1年以内であった。・精神病性うつ病患者は、非精神病性うつ病患者と比較し、初回診断5年以内のすべての原因による死亡(調整HR:1.59、95%信頼区間[CI]:1.48~1.70)、自殺(調整HR:2.36、95%CI:2.11~2.64)、死亡事故(調整HR:1.63、95%CI:1.26~2.10)のリスクが高かった。

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抗うつ薬と骨量減少との関連~メタ解析

 うつ病や抗うつ薬の使用は、骨粗鬆症のリスク因子の1つであるといわれている。しかし、抗うつ薬の骨への影響やうつ病患者の年齢と骨の健康状態の自然な低下に関する研究では、一貫した結果が得られていない。イタリア・Magna Graecia UniversityのMichele Mercurio氏らは、抗うつ薬と骨密度(BMD)の関連を調査した。その結果、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の使用がBMD減少と関連している可能性が示唆された。著者らは結果を踏まえ、抗うつ薬の使用と骨の脆弱性との潜在的な関連性に対する医師の意識を高め、骨の健康状態のモニタリング強化を目指すと述べている。Orthopedic Reviews誌2022年10月13日号の報告。 抗うつ薬およびBMDをキーワード(英語のみ)として、2021年6月までに公表された文献をPubMed/Medline、Cochraneデータベース、Scopusライブラリより検索し、PRISMAガイドラインに従ってシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。方法論的質の評価には、ニューカッスル・オタワスケールを用いた。 主な結果は以下のとおり。・定性分析には18件、定量分析には5件の文献を含めた。・さまざまなサブタイプのうつ病患者4万2,656例を対象に分析を行った。・研究の内訳は、SSRIのみを使用した研究が10件、SSRIと三環系抗うつ薬を使用した研究が6件、2種類以上の抗うつ薬を併用した研究が2件であった。・最新カテゴリの抗うつ薬(ボルチオキセチン、esketamineなど)を使用した研究は含まれなかった。・全体として、SSRIによるBMD減少(平均:0.28、95%CI:0.08~0.39)の有意な影響が観察された。

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映画「心のカルテ」(前編)【なんでやせ過ぎるの? なんで食べ吐きは止められないの?(摂食障害)】Part 1

今回のキーワード少食タイプ過食タイプ食べ吐き(自己誘発性嘔吐)空腹中枢と満腹中枢行動依存ダイエット文化皆さんは、体型を気にしますか? やせるために食事制限をしてジムに通っていますか? 今の世の中では、やせていることに価値がとても置かれていますよね。一方で、明らかにやせ過ぎている「拒食症」の人たちがいます。また、食べ吐きが止められない「過食症」の人たちもいます。なぜなんでしょうか?これらの答えを探るために、今回は、Netflixのオリジナル映画「心のカルテ」を取り上げます。このドラマを通して、精神医学の視点だけでなく、生物学の視点からも、摂食障害の原因に迫ります。症状は?主人公は、20歳のエレン。極端な食事制限をして、異常にやせています。それを見かねた家族の強い勧めで、彼女はグループホームに入ります。そして、同じ摂食障害のメンバー6人との共同生活をするなかで、自分を見つめ直すようになるのです。まず、エレンをはじめとするグループホームのメンバーたちを通して、摂食障害を「少食タイプ」と「過食タイプ」の大きく2つに分けて、それぞれの特徴を詳しくご紹介しましょう。(1)少食タイプ1つは、少食タイプです。エレンやグループホームのメンバーのパールのように、単純に食べる量を制限する、あまり食べないことでやせ過ぎることです。この正式な病名は、神経性やせ症の制限型です。その症状として、まず当然ながら著しい低体重が挙げられます。エレンがグループホームで体重測定をするシーン。具体的な数値は描かれていませんが、彼女が「さすがにやばい」と漏らし、スタッフがかなり心配していることから、危険な数値であることがうかがえます。実際の診断基準(ICD-11)では、BMIが18.5未満で異常とされ、BMIが14未満で危険とされています。ちなみに、エレンは長らく生理がなく(無月経)、毛深くなっていました(産毛密生)。これらは、電解質、ホルモン、代謝の異常も含め、低体重からの栄養不足に伴う体の変化です。パールは、あまりにもやせてしまったため、鼻からチューブで栄養剤を流し入れる対応(経鼻栄養)が行われていました。そして、その後にエレンから摂取カロリーを明かされたために、動揺していました。これは、太る(体重が増える)ことに強い恐怖を感じる肥満恐怖であり、裏を返せばやせ願望です。エレンは、義母から撮られた自分の全身写真を見せつけられて「きれいだと思う?」と聞かれて、「いいえ」と素っ気なく答えます。そして、「じゃあどうする?」と聞かれても、何も答えません。診察するベッカム先生には「私は不健康だとは思わない」「だってやせてるほうが健康だって言うでしょ」と言います。頭では異常であるとうすうすわかっていても、深刻には受け止めていないのです。これは、ボディイメージの障害であり、病識欠如(否認)です。エレンは、ただでさえ栄養不足で体力がないのに、ベッドの上で隠れて腹筋運動を繰り返します。いわゆる「ダイエットハイ」「拒食ハイ」と呼ばれる過活動です。また、すべての食べ物のカロリーを瞬時に言い当てて、妹(異母妹)から「カロリーの鬼だね」と驚かれます。やせることへのとらわれ(強迫)もみられます。グループホームの唯一の男性メンバーであるルークと中華レストランに行った時、エレンは、食事を噛むだけで飲み込まずに吐き出していました。これは、チューイングと呼ばれます。(2)過食タイプもう1つは過食タイプです。これは、さらに3つのタイプに分けることができます。a. 食べ吐きしてやせ過ぎるタイプこの正式な病名は、神経性やせ症の排出型です。グループホームのメンバーのミーガンは、妊娠が判明したのにもかかわらず、つい食べ吐きを再開してしまい、流産するのでした。ルークについては、食べ吐きの様子が描かれておらず、はっきりとは言えないのですが、もともとバレエダンサーであり、食事をおいしそうに食べている様子から、このタイプであると思われます。食べ吐きによって、胃液中の電解質であるカリウムが不足していきます。すると、低カリウム血症による不整脈のリスクが高まります。驚くべきことに、このタイプの死亡率が20%前後であり、実は精神障害の中で最も高い数値です1)。厳密には、排出型は、食べ吐き(自己誘発性嘔吐)に加えて、下剤・浣腸や利尿薬などの医薬品の使用も含んだ排出行動がある場合を指します。なお、いわゆる「拒食症」とは、先ほどの少食タイプ(神経性やせ症の制限型)とこの過食タイプ(神経性やせ症の排出型)を合わせた俗称です。b. 食べ吐きしてやせ過ぎないタイプこの正式な病名は、神経性過食症です。グループホームのメンバーのトレイシーは「アイスクリームはすぐに吐けるわ。胃液だけになるまでね」「あなたも下剤使ってる?」と話しています。グループホームのメンバーのアナは、ベッドの下に自分の食べ残しを隠し持っていました。これは、ため込みと呼ばれます。そのほかに、どうせ吐いてお金がもったいないからとの理由で、食べ物の万引きをしたり(盗食)、周りに大量に食べているところを見られたくないとの理由で隠れて食べる隠れ食いなどがあります。c. 食べ吐きせずに太るタイプこの正式な病名は、むちゃ食い症です。グループホームのメンバーのケンドラは「私も吐けたらいいんだけど、とにかく食べるだけ」と話しています。彼女はとても大柄です。そして、ピーナツバターを大瓶の容器からそのまま食べていました。なお、食べ吐きしてやせ過ぎないタイプ(神経性過食症)は、食べるのと同じくらい吐くようになると、食べ吐きしてやせ過ぎるタイプ(神経性やせ症の排出型)に移行します。また、食べ吐きせずに太るタイプ(むちゃ食い症)は、食べ吐きができるようになると、食べ吐きしてやせ過ぎないタイプ(神経性過食症)、さらには食べ吐きしてやせ過ぎるタイプ(神経性やせ症の排出型)に移行します。このように、過食タイプは、オーバーラップすることがわかります。また、少食タイプのエレンとパールは病気の自覚(病識)があまりないのに対して、過食タイプであるそのほかのメンバーは病識があるため、治療に前向きです。次のページへ >>

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映画「心のカルテ」(前編)【なんでやせ過ぎるの? なんで食べ吐きは止められないの?(摂食障害)】Part 2

一番の原因は?それでは、摂食障害の原因は何でしょうか? 摂食障害に限らず、多くの精神障害はさまざまな原因が複雑に絡み合っています。それを踏まえて、再び「少食タイプ」と「過食タイプ」の大きく2つに分けて、それぞれの一番の原因を突き止めてみましょう。なお、医学的な診断では、食べ吐きしてやせ過ぎるタイプは、少食タイプと同じ神経性やせ症として括られていますが、その一番の原因の違いを強調するために、この記事ではあえて「過食タイプ」として括っています。(1)少食タイプエレンは、食べ物を口に入れても噛むだけで飲み込まずに吐き出すチューイングをしていました。 それほど食べたくないようです。少食タイプの一番の原因は、少ししか食べられない状態が長く続くと少ししか食べられなくなるからです。これは、あまり動けない状態が長く続くとあまり動けなくなるのと同じです。栄養不足の状態が長く続くと、空腹中枢(視床下部外側部)の機能が低下して「空腹を感じない」ようになり、一方で満腹中枢(視床下部腹内側)の機能が亢進して「少し食べて満腹」するようになる、つまり食欲についての脳の機能の異常です。エレンの根っこの無意識の心理を代弁すれば、一番の理由は「食べられない」です。「やせたい」(ダイエット文化)や「やせなければならない」(強迫)という気持ちではないです。これらは、やせるきっかけにはなりますが、やせ過ぎている一番の原因ではないことが分かります。歴史的には、18世紀の江戸時代に書かれた書物ですでに「不食病」(神経性やせ症の制限型)という記録が残されています。ヨーロッパでも19世紀から症例が報告されるようになりました。当時は、まだやせていることに価値がなかった時代です。つまり、ダイエット文化は根本的な原因ではないことが分かります。行動遺伝学の研究によると、神経性やせ症の制限型への影響度は遺伝60%、家庭環境0%、家庭外環境40%です2,3)。遺伝の影響が大きく、家庭環境の違いの影響がないことが分かります。もちろん、ダイエット文化という家庭外環境の影響はあります。この点からも、生物学的な要因が一番であると言えます。なお、行動遺伝学の詳細については、関連記事1をご覧ください。(2)過食タイプメーガンは、妊娠してみんなから祝福されることで、食べ吐きを止めることを決意していましたが、結局はまたついやってしまい、流産してしまいました。食べ吐きをする過食タイプの一番の原因は、食べ吐きをすることが快感(報酬)になって止められなくなるからです。実際の臨床では、食べ吐きをする人のほとんどが「お腹いっぱいに食べて全部吐くとすっきりする」と言います。そのわけは、食べ吐きを繰り返すことで、食べ過ぎて苦しい状態を解消する快感を脳が覚えてしまうからです。つまり、食べ吐きは、アルコールやドラッグと同じように「癖になる(依存的になる)」という依存症(嗜癖)の1つ、行動依存であることが分かります。さらに、食べているのに実際は吐いているため、栄養がまだ足りないと体(脳)が反応します。すると、代償的に空腹中枢の機能が亢進して「いつも空腹」になり、一方で満腹中枢の機能が低下して「いくら食べても満腹にならない」と感じるようになります。こうして、ますます食べ吐きがエスカレートしていくのです。これが、このタイプの死亡率が極めて高い原因です。ちなみに、ケンドラのような食べ吐きをしない過食タイプは、空腹中枢の機能亢進と満腹中枢の機能低下がもともと遺伝的に起きやすいことが考えられます。もちろん、この状態で、食べ吐きをすることができるようになれば、より症状は深刻になるでしょう。行動遺伝学の研究によると、神経性過食症への影響度は遺伝40%、家庭環境0%、家庭外環境60%です。遺伝の割合が減って家庭外環境の影響が増えていることから、ダイエット文化に加えて、食べ吐きの仕方をネットや友達から教わるなどの依存症ならではの特徴が出ていることが分かります。過食タイプは、その一番の原因が食べ吐きや食べ過ぎという不自然な行動による行動依存であることから理解しやすいです。一方で、少食タイプは、その一番の原因が脳の機能異常ということは理解できるのですが、それにしても、なぜ病識があまりないのでしょうか? そもそもなぜ思春期の女性が圧倒的に多いのでしょうか? そして、生理が来なくて不妊になりやすい(遺伝しにくい)のに、なんで遺伝しているのでしょうか?次回は少食タイプ(神経性やせ症の制限型)にフォーカスして、その謎に迫ります。1)摂食障害治療ガイドラインP257:日本摂食障害学会、医学書院、20122)「摂食障害の生きづらさ」P38:こころの科学、日本評論社、20203)標準精神医学(第8版)P402:医学書院、2021<< 前のページへ■関連記事ドラマ「ドラゴン桜」(中編)【実は幻だったの!? じゃあ何が問題?(教育格差)】Part 3

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認知症における抗精神病薬処方を合理化するための介入

 認知症介護施設の入居者に対する不適切な抗精神病薬投与は問題となっている。この問題に対処するため、施設スタッフの教育やトレーニング、アカデミック・ディテーリング、新たな入居者評価ツールで構成された「認知症に対する抗精神病薬処方の合理化(RAPID:Rationalising Antipsychotic Prescribing in Dementia)」による複合介入が開発された。アイルランド・ユニバーシティ・カレッジ・コークのKieran A. Walsh氏らは、認知症介護施設の環境下におけるRAPID複合介入の利用可能性および受容性を評価するため、本研究を実施した。また、向精神薬の処方、転倒、行動症状に関連する傾向についても併せて評価した。その結果、RAPID複合介入は広く利用可能であり、関係者の受容性も良好である可能性が示唆された。著者らは、今後の大規模研究で評価する前に、実装改善のためのプロトコール変更やさらなる調査が必要であるとしている。Exploratory Research in Clinical and Social Pharmacy誌2022年10月10日号の報告。 2017年7月~2018年1月にアイルランドの大規模介護施設において、混合法による利用可能性介入研究を実施した。介護施設のスタッフおよび一般開業医によるフォーカスグループと半構造化インタビューを3ヵ月のフォローアップ期間終了後に実施し、参加者を評価した。定量測定には、介入前後の評価および向精神薬の処方率を含めた。 主な結果は以下のとおり。・2日間のトレーニング研修に介護施設スタッフ16人が参加し(参加率:21%)、一般開業医4人がアカデミック・ディテーリングセッションに参加した(参加率:100%)。・フォーカスグループとインタビューに参加した18人は、教育およびトレーニングが自身の業務に有益であると認識し、本調査完了後も新規スタッフの教育を継続したいと回答した。・しかし、施設入居者評価ツールの使用は限定的であった。・参加者からは、介入を強化するための推奨事項も挙げられた。・定期的な抗精神病薬の処方が行われていた認知症入居者の割合は、介入前3ヵ月間45%(18例)、ベースライン時44%(19例)であったが、介入3ヵ月後では36%(14例)とわずかな減少が認められた。・認知症入居者に投与される1ヵ月当たりの向精神薬頓服処方の絶対数は、ベースライン時の90から介入3ヵ月後の69へと大幅に減少した。

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事例011 小児へのメラトベル顆粒処方で査定【斬らレセプト シーズン3】

解説事例では、発達障害に伴う入眠障害を家族が訴えたために患者に対してメラトニン(商品名:メラトベル顆粒)を処方したところ、B事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)にて査定となりました。メラトベル顆粒は、発達障害の病名が無い場合には適応外として査定対象となるため、その査定と考えましたが、病名は記載されていました。査定事由が“B”であったために原因を探りました。添付文書を確認すると、「症状により適宜増減とするが、1日1回4mgを超えないこと」とありました。レセプト請求では処方量の上限を超えているために医師に確認したところ、「2.5mgで処方したはず。標準量を超えたのでコメントを記載した」と回答がありました。さらに調べるとカルテには「2.5g」と「g」処方で入力されていました。医師は、力価「2.5mg」を誤って「g」で入力されていたことに気付かれていませんでした。調剤時に「医師の処方が過量ではないか」と疑義紹介した結果が調剤記録に「2.5でOK」と記載されていました。調剤時の疑義紹介においても力価なのか、総量なのか不明瞭な問い合わせが行われたと言わざるを得ません。その結果として本来「1.25g」の処方に「2.5g」を投与、そのままレセプト請求されたために処方量の上限を超えた「0.5g」が過剰として査定になったものでした。医療安全上の観点から、医師の処方システムにおいて同薬剤の限度を超えた処方が入力できないように改修、調剤時の疑義紹介において単位の記載を忘れないよう求めて査定対策としています。

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日本人統合失調症患者における認知機能と社会機能との関係

 統合失調症患者の活動性低下、就労困難、予後不良には、社会機能障害が関連していると考えられる。統合失調症患者の社会機能には、注意力や処理速度などの認知機能が関連しているが、認知機能と社会機能との関連はあまりよくわかっていない。そのため、社会機能に影響を及ぼす因子を明らかにすることは、統合失調症の治療戦略を考えるうえで重要である。金沢医科大学の嶋田 貴充氏らは、統合失調症患者の社会機能に影響を及ぼす因子をレトロスペクティブに分析し、統合失調症患者の認知機能と社会機能との間に有意な相関が認められたことを報告した。Journal of Clinical Medicine Research誌2022年9月号の報告。 患者の背景、知能指数(IQ)スコア、統合失調症認知機能簡易評価尺度の日本語版(BACS-J)スコア、抗精神病薬の投与量、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)スコア、社会機能評価尺度の日本語版(SFS-J)の各サブスケールに影響を及ぼす因子を評価するため、単変量解析および多変量解析を用いた。ボンフェローニ補正を用いて、単変量解析の各因子との相関を評価した。多変量解析では、ステップワイズ法を用いて、独立変数を選択した。各モデルのサンプルサイズを考慮し、ステップワイズ法で抽出される変数を最大3つに設定した。また、SFS-Jサブスケールスコアと各因子の標準偏回帰係数(standard β)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者36例(平均年齢:57.8歳、平均罹病期間:34.8年、総入院期間:196.7ヵ月)のデータを分析した。・単変量解析では、7つのSFS-Jサブスケールとの有意な関連が認められた。多変量解析では、そのうち3つのみに有意な関連が認められた。・多変数モデルでは、BACS-Jの言語流暢性とSFS-Jのひきこもり、対人関係、就労との間に正の相関が認められた。・PANSSスコア、IQスコア、抗精神病薬の投与量には、SFS-Jサブスケールスコアとの明らかな関連は認められなかった。

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統合失調症に対するアリピプラゾールの適切な投与量~メタ解析

 薬理学の基本は、薬物の血中濃度と効果との関係であると考えられるが、多くの臨床医において、血中濃度測定の価値は疑問視されているのが現状である。そのため、治療基準用量の検討が、十分に行われていないことも少なくない。ドイツ・ハイデルベルク大学のXenia M. Hart氏らは、統合失調症および関連障害患者における脳内の受容体をターゲットとする抗精神病薬アリピプラゾールの血中濃度と臨床効果および副作用との関連を評価するため、プロトタイプメタ解析を実施した。その結果、ほとんどの患者において、アリピプラゾール10mgでの開始により血中および脳内の有効濃度に達することが示唆された。Psychopharmacology誌2022年11月号の報告。 アリピプラゾールの経口剤および注射剤についての関連文献をシステマティックに検索し、レビューを行った。3,373件の血中濃度データを収集し、薬物動態の影響を調査した。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たしたコホート研究は、53件であった。・経口剤の血中濃度に関する研究が29件、注射剤の血中濃度に関する研究が15件、PETによる研究が9件であった。・血中濃度、有効性、副作用との関連について、相反するエビデンスが報告されていた。・集団ベースのリファンレンス範囲は、神経画像データおよび個別の有効性に関する研究から知見とほぼ一致していた。・統合失調症および関連障害の治療に対するアリピプラゾールおよび活性代謝物の治療基準用量は、それぞれ120~270ng/mL、180~380ng/mLであることが示唆された。・アリピプラゾールの経口剤および長時間作用型注射剤の治療モニタリングには、個人差の大きさやCYP2D6遺伝子型が影響すると考えられる。・ほとんどの患者において、アリピプラゾール10mgでの開始により、血中および脳内の有効濃度に達し、代謝不全患者の場合には、5mg程度で十分である可能性が示唆された。

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