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映画「ラン」(後編)【子どもを病気にさせたがるのが人ごとではないわけは?(育児中毒)】Part 2

育児中毒が気付かれにくいわけは?育児中毒の特徴とは、乳幼児期に発達に問題がある子にさせたがる、児童思春期に能力に問題がある子にさせたがる、成人期以降に生き方に問題がある子にさせたがることであることがわかりました。育児中毒は、必要とされることを必要とする、依存されることに依存する点で、親子関係における共依存とも言い換えられます。共依存の異常性は、夫婦関係においては比較的気付かれやすいです。一方で、親子関係においてはよくあることとされて見逃されています。なお、男女関係の共依存の詳細については、関連記事8をご覧ください。また、育児中毒の親を、子供の視点から言い換えたものがいわゆる毒親です。毒親の詳細については、関連記事9をご覧ください。ちなみに、育児中毒が「ちゃんとやってあげたい(そばにいたい)」という「母性」の暴走だとすれば、「ちゃんとやりなさい」という「父性」の暴走が正義中毒と言えるでしょう。実際に、正義中毒は逆に男性に多いようです。見守り(育児)を発揮するか、見張り(正義)を発揮するかという点で対照的です。しかし、お世話や正しさにとらわれ、見守りや見張りという手段が目的化してしまい、相手(社会)に悪影響を与えている点では共通しています。なお、正義中毒の詳細については、関連記事10をご覧ください。育児中毒にどうすればいいの?それでは、育児中毒にどうすればいいでしょうか? 再びダイアンを通して、その社会的な対策を大きく3つ挙げてみましょう。(1)ケアする人を1人にしないダイアンはひとり親であったため、育児のやり方をすべて自分1人で決めることができました。もしもダイアンに夫がいて一緒に育児をしていたら、彼女はここまでおかしくならなかったかもしれません。1つ目の社会的な対策は、ケアする人を1人にしないよう啓発することです。1人になってしまうと、やり方がどんどん独りよがりになっていきます。これは、虐待のリスクでもあります。この点で、たとえ夫(または妻)がいたとしても、その人が育児を一緒にやろうとしなかったり、その人に「私の子育てに口出ししないで」と言って育児を一緒にさせないようにすることも危ういと言えるでしょう。(2)ケアすることを1つにしないダイアンは、働きに出ることもなく、家でほとんどクロエにつきっきりでした。もしもダイアンが働きに出ていたりボランティア活動をしたりペットを飼っていたら、彼女はここまでおかしくならなかったかもしれません。2つ目の社会的な対策は、ケアすることを1つにしないよう啓発することです。1つにしてしまうと、その1つにエネルギーを注げますが、その1つがなくなった時(またはなくなりそうな時)、そのエネルギーの行き場がなくなります。この点で、親の介護が親の死によって終わりを迎えた時や仕事人間が定年退職した場合も危ういと言えるでしょう。(3)自分のためにケアしないダイアンは、クロエのためではなく、自分のために育児をしていました。もしもダイアンがクロエのためにどうしたらいいかという視点に最初から立てていたら、彼女はここまでおかしくならなかったかもしれません。3つ目の社会的な対策は、自分のためにケアしないよう啓発することです。自分が満足するためにケアしてあげていると、それが必ずしも相手のためにならなくなります。この点で、先ほどにも触れたひきこもりや子連れ出戻りの場合も危ういと言えるでしょう。育児中毒の「解毒」とは?ダイアンは、瀕死のクロエを病院から無理やり連れ出そうとするなか、クロエはもともと歩けなかったのに、車椅子から踏ん張って立ち上がろうとします。親がいなくても生きていこうとすることを示す象徴的なシーンであり、まさにタイトルの「RUN/ラン」する(逃げ出す)瞬間です。ラストシーンでは、ダイアンは「あること」(ネタバレ防止のため伏せます)によって放心状態になっています。これは、その「あること」以外に、クロエが自分から離れていってしまい、空の巣症候群になってしまっているのを象徴しているようにも見えます。つまり、アルコール依存症の人が身近にアルコールがないようにすることで回復するのと同じように、この育児中毒は子供が親から自立して身近にいなくなることで「解毒」されていくと言えるのではないでしょうか?1)特集「うそと脳」P1576:臨床精神医学、アークメディア、2009年11月号2)うその心理学P77:こころの科学、日本評論社、20113)親の手で病気にされる子供たちP156:南部さおり、学芸みらい社、20214)シックンド 病気にされ続けたジュリー:ジュリー・グレゴリー、竹書房文庫、2004<< 前のページへ■関連記事映画「二つの真実、三つの嘘」(前編)【なんで病気になりたがるの? 実はよくある訳は?(同情中毒)】Part 1美女と野獣【実はモラハラしていた!? なぜされるの?どうすれば?(従う心理)】サイレント・プア【ひきこもり】ペコロスの母に会いに行く【認知症】カレには言えない私のケイカク【結婚をすっ飛ばして子どもが欲しい!?そのメリットとリスクは?(生殖戦略)】Part 1だめんず・うぉ~か~【共依存】八日目の蝉【なぜ人を好きになれないの?毒親だったから!?どうすれば良いの?(好きの心理)】苦情殺到!桃太郎(前編)【なんでバッシングするの?どうすれば?(正義中毒)】Part 1

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睡眠薬使用と認知症リスクに関する人種差

 高齢者の認知機能に対する睡眠薬の影響は論争の的となっている。これは、睡眠の質や人種差に依拠している可能性がある。米国・カリフォルニア大学のYue Leng氏らは、睡眠薬使用と認知症発症について15年間の縦断的関連を評価し、夜間の睡眠障害との関連や人種差について調査を行った。その結果、睡眠薬の高頻度の使用が、白人高齢者の認知症リスクと関連していることを報告した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2022年12月20日号の報告。 対象は、認知症でない地域住民の高齢者3,068人(年齢:74.1±2.9歳、黒人の割合:41.7%、女性の割合:51.5%)。睡眠薬使用は、「睡眠薬や睡眠補助薬を服用していますか?」との質問を3回行って記録し、5段階(まったくない[0回]、ほとんどない[1回/月]、ときどき[2~4回/月]、よくある[5~15回/月]、非常によくある[16~30回/月])で評価した。認知症の発症は、入院記録、認知症薬の使用または全体的な認知機能の臨床的に有意な低下で定義した。 主な結果は以下のとおり。・睡眠薬の使用頻度が「よくある」または「非常によくある」と回答した高齢者は、白人で7.71%(138人)、黒人で2.66%(34人)であった。・白人では、すべての処方される睡眠薬の使用率がほぼ2倍であった。・フォローアップ期間中に認知症を発症した高齢者は、617人であった。・すべての共変量で調整した後、睡眠薬を5回/月以上使用していた高齢者は、1回/月以下の高齢者と比較し、認知症を発症する可能性が有意に高かったが、この関連性は白人のみで認められた([白人]HR:1.79、1.21~2.66、[黒人]HR:0.84、0.38~1.83、p for interaction=0.048)。・夜間の睡眠でさらに調整した後でも、結果に大きな変化は認められなかった。・この関連性は、睡眠薬の累積使用頻度と類似しており、3年間の睡眠薬未使用期間後でも維持されていた。

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Long COVID、軽症であれば1年以内にほぼ解消/BMJ

 軽症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者では、いくつかのlong COVID(COVID-19の罹患後症状、いわゆる後遺症)のリスクが高いが、その多くは診断から1年以内に解消されており、小児は成人に比べ症状が少なく、性別は後遺症のリスクにほとんど影響していないことが、イスラエル・KI Research InstituteのBarak Mizrahi氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年1月11日号で報告された。イスラエルの全国的な後ろ向きコホート研究 研究グループは、軽症SARS-CoV-2感染者における感染から1年間のlong COVIDによる臨床的な罹患後症状(後遺症)の発現状況を明らかにし、年齢や性別、変異株、ワクチン接種状況との関連を評価する目的で、後ろ向きコホート研究を行った(特定の研究助成は受けていない)。 解析には、イスラエルの全国規模の医療機関から得られた電子医療記録(EMR)が用いられた。対象は、2020年3月1日~2021年10月1日の期間に、ポリメラーゼ連鎖反応法によるSARS-CoV-2検査を受けたMaccabi Healthcare Servicesの会員191万3,234人であった。 エビデンスに基づく70のlong COVIDアウトカムのリスクについて、年齢と性別で調整し、SARS-CoV-2変異株で層別化したうえで、未入院のSARS-CoV-2感染者(29万9,870人、年齢中央値25歳、女性50.6%)と、マッチさせた非感染者(29万9,870人、25歳、50.6%)を比較した。 リスクの評価には、感染初期(30~180日)および後期(180~360日)におけるハザード比(HR)と、1万人当たりのリスク差が用いられた。ブレークスルー感染例で呼吸困難のリスクが低い 感染初期と後期の双方で、COVID-19感染との関連でリスク増加が認められたlong COVIDとして、次が挙げられた。・嗅覚/味覚障害初期 HR:4.59(95%信頼区間[CI]:3.63~5.80)、リスク差:19.6(95%CI:16.9~22.4)後期 2.96(2.29~3.82)、11.0(8.5~13.6)・認知障害初期 1.85(1.58~2.17)、12.8(9.6~16.1)後期 1.69(1.45~1.96)、13.3(9.4~17.3)・呼吸困難初期 1.79(1.68~1.90)、85.7(76.9~94.5)後期 1.30(1.22~1.38)、35.4(26.3~44.6)・衰弱初期 1.78(1.69~1.88)、108.5(98.4~118.6)後期 1.30(1.22~1.37)、50.2(39.4~61.1)・動悸初期 1.49(1.35~1.64)、22.1(16.8~27.4)後期 1.16(1.05~1.27)、8.3(2.4~14.1)・連鎖球菌扁桃炎初期 1.18(1.09~1.28)、13.4(6.8~19.9)後期 1.12(1.05~1.20)、16.6(7.4~25.9)・めまい初期 1.14(1.06~1.23)、11.4(4.7~18.1)後期 1.17(1.09~1.26)、16.7(8.6~24.8) 感染初期にのみリスクが上昇したlong COVIDは、呼吸器疾患(HR:2.4[95%CI:1.67~3.44]、リスク差:3.7[2.3~5.3])、抜け毛(1.75[1.59~1.93]、31.6[26.2~36.9])、胸痛(1.41[1.33~1.49]、56.3[47.0~65.7])、筋肉痛(1.24[1.15~1.35]、17.5[11.2~23.8])、咳嗽(1.09[1.04~1.14]、22.2[9.7~34.6])などであった。 ワクチン未接種者の感染初期に、女性で抜け毛のリスク(女性のHR:2.09[95%CI:1.86~2.35]、男性のHR:0.9[0.80~1.17])が高かったことを除き、他の症状のHRは男女でほぼ同等であった。小児は成人に比べ感染初期の症状が少なく、これらの症状も後期にはほとんどが解消された。SARS-CoV-2変異株全体で、long COVIDの発現状況に一貫性が認められた。また、ワクチン接種者のうちブレークスルー感染例では、未接種者と比較して、呼吸困難(HR:1.58、95%CI:1.18~2.12)のリスクが低く、他の症状のリスクは同程度であった。 著者は、「COVID-19感染症の世界的流行の当初からlong COVIDが危惧されてきたが、軽症の経過をたどった患者の罹患後症状は、その多くが数ヵ月間残存した後、1年以内に正常化することが確認された。これは、軽症例の大部分は重症化や長期的な慢性化には至らず、医療従事者に継続的に加わる負担は小さいことを示唆する」としている。

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「当事者にも目を向けて」―レビー小体型認知症の多様な症状

 2023年1月17日、住友ファーマ主催のレビー小体型認知症(DLB)に関するプレスセミナーが開催され、大阪大学大学院医学系研究科 精神医学教室 教授の池田 学氏から「第2の認知症、レビー小体型認知症(DLB)の多彩な症状と治療法の進歩」について、近畿大学医学部 精神神経科学教室 主任教授 橋本 衛氏からは「当事者に目を向けた診療のすすめと当事者、介護者、主治医に伝えたいこと」について語られた。 多様な症状を示し、アルツハイマー型認知症と比べてケアが難しいDLBでは、当事者、介護者、主治医の3者の理解が深まることで、当事者のQOL向上と介護者の負担軽減が期待される。DLBの臨床症状 DLBは、進行性の認知機能障害や幻視、妄想、パーキンソニズム、便秘や低血圧などの自律神経障害など、きわめて多様な臨床症状を示す。これらの症状は同時に起こることも多い。これらを踏まえて池田氏は、「DLBにはさまざまな症状があるということを知り、認知機能障害以外の症状にも目を向けないと、患者さんが早期に受診しても見落とす可能性がある」と、主治医がDLBの臨床症状を把握する重要性について訴えた。DLBの薬物治療、ケアのポイント さらに池田氏は、「DLBの薬物治療では、症状に合わせて、抗認知症薬、抗パーキンソン病薬、抗精神病薬などが用いられているが、いずれも副作用の発現や症状の悪化を引き起こす可能性があり、慎重に使用すべきである。ただ、副作用を避けながらの薬物治療は難しく、家庭では安全を保てない場合もあるため、必要に応じて入院や入所も積極的に考慮してほしい」と述べた。当事者の意向を尊重した認知症医療 従来のDLB治療では、当事者は認知症に対して自覚はなく、自分から症状を適切に判断して訴えることはできないという思い込みから、当事者不在の医療が行われることがあった。このことから橋本氏は、「当事者の半数以上は自分の治療ニーズを伝えることができる。また、当事者主体の医療・介護等の徹底について、厚生労働省の新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)でも掲げられている。介護者だけではなく、当事者にもっと目を向けた診療を心掛ける必要がある」と強調した。当事者と介護者の治療ニーズと主治医の理解度 当事者と介護者が困っている症状は多岐にわたるため、専門医であってもその症状を完璧に把握することは難しい。とくに、自律神経障害、睡眠障害は見逃されやすい。橋本氏は、「DLBの症状を理解したうえで、当事者や介護者は治療ニーズをしっかりと主治医に伝え、主治医は両者の治療ニーズにしっかりと目を向けることで、当事者の意向を尊重する診療が広まっていくことを期待している」と講演を締めくくった。

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統合失調症・うつ病の頓服を含む退院時処方~EGUIDEプロジェクト

 さまざまなガイドラインにおいて、統合失調症やうつ病の薬物治療では、単剤療法が推奨されている。定期処方による治療はいくつかの研究で報告されているが、頓服使用を含む薬物療法に関する報告は十分ではない。北里大学の姜 善貴氏らは、頓服使用を含む薬物療法の内容を評価し、定期処方との関連を明らかにするため、本研究を実施した。その結果、向精神薬の頓服使用を考慮すると、統合失調症およびうつ病に対する退院時の薬物治療において単剤療法率および他の向精神薬未使用率は減少することが報告された。著者らは、高い単剤療法率および定期処方での他の向精神薬の未使用は、向精神薬の頓服使用の減少につながる可能性があるとしている。Annals of General Psychiatry誌2022年12月26日号の報告。 「精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)」のデータを用いて、退院時における薬物カテゴリごとの向精神薬の頓服使用の有無を調査し、その割合を診断疾患別に評価した。統合失調症患者における退院時の抗精神病薬単剤療法率および他の向精神薬未使用率、うつ病患者における退院時の抗うつ薬単剤療法率および他の向精神薬未使用率を、向精神薬の頓服使用を含む定期処方ごとに医療の質指標(QI)として算出した。各診断疾患における定期処方のQI値、定期処方と頓服使用を含む処方のQI比を算出するため、スピアマン順位相関係数を用いた。 主な結果は以下のとおり。・退院時の向精神薬の頓服使用率は、統合失調症で28.7%、うつ病で30.4%であり、診断疾患による有意な差は認められなかった。・薬物カテゴリごとの頓服使用率は、統合失調症では抗精神病薬と抗パーキンソン薬が有意に高く、うつ病では抗不安薬と催眠鎮静薬が有意に高かった。・QIは、両疾患ともに、定期処方よりも頓服使用を含む退院時処方で低かった。・定期処方のQI値と、定期処方と頓服使用を含む処方のQI比との間に、正の相関が認められた。

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第132回 新型コロナウイルス5類へ移行は5月8日に/政府

<先週の動き>1.新型コロナウイルス5類へ移行は5月8日に/政府2.救急隊員の負担軽減のため、労務管理の適正化を通知/消防庁3.電子処方箋が全国で運用開始、医療機関の対応は?4.国内初の経口中絶薬、専門部会で承認を了承、妊娠9週までが対象/厚労省5.全国の医療機関で電子カルテ情報の共有システムの整備に向けて議論/厚労省6.無断外出の患者の自殺、遺族の逆転敗訴確定/最高裁1.新型コロナウイルス5類へ移行は5月8日に/政府政府は1月27日に、新型コロナウイルス感染症対策本部を開き、5月の連休明けの8日から新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類を現行の「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」とすることを決定した。なお、イベントの収容上限は1月27日から撤廃することにした。政府は、「5類」への移行時期について、医療現場や自治体の準備、国民への周知に一定の時間が必要のため、大型連休後が適切と判断した。また、ワクチン接種の無料接種については今年3月末までの期限だったが、政府は4月以降も無料接種を継続する方針だ。今後、3月までに病床確保補助金や発熱外来の診療報酬の上乗せなどの公費負担の見直しについて検討を行う。(参考)新型コロナウイルス感染症対策本部(内閣府)第70回厚生科学審議会感染症部会(厚労省)コロナ5類、5月8日移行を決定 イベント上限撤廃は先行(日経新聞)コロナ「5類」の医療費や医療体制 3月上旬めどに具体的方針(NHK)診療報酬の特例段階的見直しへ、5類移行で病床確保料も、3月上旬めどに方針(CB news)2.救急隊員の負担軽減のため、労務管理の適正化を通知/消防庁総務省消防庁は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による救急出動件数が過去最多を更新し、救急搬送困難事案の発生が高い水準であることなどによって、救急現場の労務負担が増大しているとして、救急隊員の適正な労務管理のさらなる徹底を求める通知を1月25日付で各都道府県に対して発出した。この通知は、昨年12月に東京都内で、救急隊員の居眠り運転で救急車の横転事故が発生したことを反映したものとみられる。また、消防庁はこれに先立つ1月23日に令和4年度の『消防白書』を公表しており、この中で、救急現場におけるマイナンバーカードの活用によって、救急隊員が傷病者の医療情報把握のスピードアップ化や搬送時の活用への検討も取り上げており、業務の負担改善などに取り組みたいとしている。(参考)「救急隊員の負担軽減を」総務省消防庁が全国の消防に要請 救急車の居眠り事故受け(産経新聞)救急隊員の適正な労務管理の徹底について(通知)(消防庁)『令和4年版消防白書』(同)マイナンバーカード活用で搬送先選定しやすくなる 2022年版消防白書、傷病者の負担軽減も(CB news)3.電子処方箋が全国で運用開始、医療機関の対応は?医療機関で発行される処方箋を電子化して、薬局へオンラインで届ける「電子処方箋」システムが1月26日から本格的に運用が開始された。政府は補助金を用いてマイナンバーのリーダーの設置を進めたが、対応する医療機関は6病院と10診療所と伸び悩んでいる。今後、政府はマイナンバーの普及を通して医療機関と薬局での対応を進め、患者の処方歴を一元管理することで薬の重複や併用禁忌薬の処方を未然に防ぎ、適切な服薬に繋げたいとしている。なお、電子処方箋の発行には医師資格証(HPKIカード)が必要であり、医師会を通して発行申請を受け付けている。厚生労働省は、1月26日の電子処方箋の運用開始について、処方・調剤データを電子処方箋管理サービスで送受していれば、紙の処方箋を発行しても電子処方箋の運用を開始したと認める通知を行い、普及を進めたいとしている。(参考)「電子処方箋」きょうから運用開始 “適切な服薬”に期待(NHK)電子処方箋、1月15日時点での対応は「全国で6病院・10クリニック・162薬局」にとどまる(Gem Med)【電子処方箋】「まずは紙の処方箋発行/受付」の運用周知(ドラビズ On-line)医師資格証(HPKIカード)新規お申込み(日本医師会)4.国内初の経口中絶薬、専門部会で承認を了承、妊娠9週までが対象/厚労省厚生労働省は薬事・食品衛生審議会(薬事・食品衛生審議会医薬品第1部会)を1月27日に開催し、経口投与の人工妊娠中絶薬・メフィーゴパック(一般名:ミフェプリストン/ミソプロストール)の承認について審議した。その結果、承認はされたものの「社会的関心が高く、慎重な審議が必要」として、パブリックコメントを実施した上で、薬事分科会で承認の可否を再審議することになった。承認されれば国内初の経口中絶薬となり、従来の中絶手術より、女性への負担が少なくなる。海外では70以上の国と地域で承認されており、世界保健機関(WHO)は安全な中絶方法として推奨している。なお、処方にあたっては母体保護法指定医のもと、妊娠9週以内に使用する。公的保険の対象外となる見通し。(参考)国内初「飲む中絶薬」の承認「差し支えない」…厚労省専門部会(読売新聞)国内初の経口中絶薬、専門部会が承認了承 妊娠9週までが対象(毎日新聞)5.全国の医療機関で電子カルテ情報の共有システムの整備に向けて議論/厚労省厚生労働省は、「健康・医療・介護情報利活用検討会」の医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループを1月27日に開催した。患者自身や全国の医療機関で、電子カルテ情報を閲覧可能にするシステム(電子カルテ情報交換サービス)の検討を行っているが、電子カルテ情報には個人情報が多く含まれるため、共有などにあたっては「患者の同意取得」が大前提となる。このほか本人同意の仕組み、電子的に文書情報を発行したときの患者への伝達方法、医療機関などにおける電子カルテ情報の閲覧についても検討を行っている。今後、患者自身で閲覧・利用される情報について管理できることを担保した上で、海外での同意取得の仕組みや電子処方箋の仕組みなどを踏まえ、国民の仕組みへの理解を得つつ、なるべく現場の負担を軽減する方向で整理を進めることになった。(参考)第6回健康・医療・介護情報利活用検討会 医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ(厚労省)全国の医療機関や患者自身で「電子カルテ情報を共有」する仕組み、患者同意をどの場面でどう取得すべきか―医療情報ネットワーク基盤WG(1)(Gem Med)厚生労働省、全国的な電子カルテ情報共有基盤について試案提示 年度末までに仕様まとめる方針(Med IT Tech )6.無断外出の精神科患者の自殺、患者遺族が逆転敗訴/最高裁香川県の県立病院に入院していた男性が病院を無断で外出し、自殺したことをめぐって、自殺の原因は病院の管理が不十分であったとして、遺族が香川県に対して損害賠償を求めていた裁判について、1月27日に最高裁は、県に賠償を命じた2審の判決を取り消し、遺族の訴えを退けた。判決によると2010年7月、丸亀市の香川県立丸亀病院に統合失調症で入院していた男性(当時38歳)が、病院を無断で外出して、近くのマンションから飛び降り自殺していた。2審の高松高裁では、病院側の事前説明がされていなかったほか、無断外出の防止にセンサーの装着がなかったことから香川県に対して5,700万円の損害賠償を求めていたが、27日の最高裁の判決では、センサー装着などは必要ではなく、医師の判断で外出許可を判断して自殺防止を図っていたと指摘した。(参考)入院中無断外出し自殺 遺族が県訴えた裁判 最高裁 訴え退ける(NHK)無断外出で自死…「病院の説明違反」否定 最高裁で遺族が逆転敗訴(朝日新聞)

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日本における片頭痛オンライン診療の現状

 2020年3月以降、COVID-19パンデミックによりオンライン診療の必要性が高まっている。日本では2022年4月に、ほとんどの疾患に対するオンライン診療が正式に開始された。長野・こむぎの森 頭痛クリニックの勝木 将人氏は、オンライン診療のみで治療を行った日本人頭痛患者の初の症例集積研究となる、初診から3ヵ月間の治療成績を報告した。その結果、オンライン診療のみで治療を行った3ヵ月の時点で、Headache Impact Test-6(HIT-6)スコア、1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)の有意な改善が認められた。著者は、オンライン診療は頭痛治療におけるアンメットニーズを解決するために普及することが期待されると、本報告をまとめている。Cureus誌2022年11月3日号の報告。 2022年7月~10月にオンライン頭痛クリニックに相談し、オンライン診療のみで治療を行った初発の一次性頭痛患者8例を対象とし、レトロスペクティブに調査を行った。観察期間にわたり、HIT-6スコア、MHD、1ヵ月当たりの急性頭痛薬の使用日数(AMD)を調査した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者はすべて女性で、年齢中央値は30歳(四分位範囲:24~51歳)であった。・治療前、治療1ヵ月後および3ヵ月後のHIT-6スコア、MHD、AMDの中央値は、以下のとおりであった。【HIT-6スコア】●治療前:63(四分位範囲:58~64)●治療1ヵ月後:54(同:53~62)●治療3ヵ月後:52(同:49~54)【MHD】●治療前:15(同:9~28)●治療1ヵ月後:12(同:3~17)●治療3ヵ月後:2(同:2~8)【AMD】●治療前:10(同:3~13)●治療1ヵ月後:3(同:1~8)●治療3ヵ月後:2(同:0~3)・初診から治療3ヵ月後に、HIT-6スコア(p=0.007)とMHD(p=0.042)で有意な減少が認められたが、AMD(p=0.447)では認められなかった。

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痛みの評価が難しい患者さん【非専門医のための緩和ケアTips】第44回

第44回 痛みの評価が難しい患者さんがん疼痛の症状緩和を実践していると、必ず「痛みの評価が難しい患者さん」の存在に当たります。「認知症のあるがん患者さん」の訴える痛みにどう対処すべきかなど、皆さんも経験があるのではないでしょうか? 今回はそのような状況への対応法を考えてみましょう。今日の質問訪問診療で担当する患者さんのがん疼痛対応で困っています。胆管がんで在宅でのお看取りも視野に入れながら症状緩和に努めているのですが、高齢で認知症もあるため痛みを上手く訴えることができません。苦しそうに見えるときはレスキューを使用して対応しているのですが、家族はもちろん訪問看護師も「苦しんでいるのではないか」と不安を感じているようです。こういった痛みの評価が難しい患者さんの場合、どのように対応すればよいのでしょうか?これは症状緩和で非常によくある難しいテーマですよね。学会のセッションなどでも、しばしば取り上げられる話題でもあり、苦労されている方も多いと思います。がん疼痛に対するアプローチは、「評価と介入を繰り返しながら、目標となる鎮痛を実現すること」が原則です。薬を変更したら、痛みが和らいだかどうかを患者さんに評価してもらって量を調整します。そうした意味で、本人からのフィードバックがはっきり得られない、認知症の高齢者や頭頸部がんで発声自体が負担の大きい患者さんの場合は、難しさを感じて当然です。こういった場合の評価はいくつかの方法があり、現場ではそれらを組み合わせて実践するのが一般的です。表情や仕草を注意深く観察する。難聴、発声困難な患者さんにはジェスチャー、筆談を活用する。心拍数の増加などに着目する。痛みの強くなる状況(体位変換など)の際は、予防的に鎮痛薬を活用する。家族、ケア提供者で印象を擦り合わせる。このあたりがよく実践されていることです。皆さんも自然としていたことがあるのではないでしょうか?とくに、最後の「印象を擦り合わせる」という点が重要です。複数の関係者で「顔色が悪く、少し元気がないようだ」「先週に比べ、食欲が戻って元気そうだ」といった印象を共有するわけですが、その際に医師は、ご家族や介護職の方に向け「難しいケアに取り組んでいる」ことに対する承認の言葉を掛けてみてください。私がよく使う言葉は、「○○さんが少しでもラクに過ごせるよう、考えてくれてるんですね」「○○さんはお話しするのが難しいので状態把握が大変なのですが、皆さんが教えてくれて助かってます」といったものです。いかがでしょう? 皆さんの工夫もぜひ教えてください。今回のTips今回のTips痛みの評価が難しい患者さんの場合、表情や仕草などを観察しながら、関係者の印象を擦り合わせることが大切です。

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不眠症におけるレンボレキサント長期治療中止後の影響

 不眠症に対する長期的な薬物療法を中止すると、リバウンドや禁断症状が出現し、最適でない治療につながる可能性がある。琉球大学の高江洲 義和氏らは、レンボレキサントの第III相臨床試験の事後分析を行い、不眠症治療におけるレンボレキサント長期治療中止後の影響を評価した。その結果、レンボレキサントは反跳性不眠リスクが低く、6~12ヵ月後の長期治療後に突然中止した場合でも、その有効性が維持されることを報告した。Clinical and Translational Science誌オンライン版2022年12月23日号の報告。 12ヵ月間グローバル多施設共同ランダム化第III相臨床試験E2006-G000-303研究(Study 303)において12ヵ月間または6ヵ月間のレンボレキサントによる積極的な治療とフォローアップ期間を完了した患者を対象に、二重盲検並行群間研究の事後分析を実施した。対象は、登録前4週間の間に週3回以上の主観的な入眠潜時30分以上および/または主観的な中途覚醒60分以上が認められた成人不眠症患者655例。レンボレキサント5mg(LEM5)群または10mg(LEM10)群、プラセボ群に1:1:1の割合でランダムに割り付け、6ヵ月間の治療を行った。その後、LEM5群とLEM10群ではさらに6ヵ月間治療を継続し、プラセボ群はLEM5またはLEM10の治療に1:1の割合でランダムに割り付けた。12ヵ月後に治療を中止し、2週間のフォローアップを行った。患者の主観的な睡眠関連エンドポイント(入眠潜時、中途覚醒、睡眠効率、総睡眠時間)のデータは、毎日の電子睡眠日誌より収集した。禁断症状の評価には、Tyrer Benzodiazepine Withdrawal Symptoms Questionnaire(T-BWSQ)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・12ヵ月時点でのレンボレキサントによる睡眠アウトカムの改善は、治療中止後2週間もおおむね維持されており、スクリーニングと比較し不眠症状の有意な悪化が認められた患者は20%未満であった。・レンボレキサント中止後、T-BWSQにより禁断症状の出現は認められなかった。

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双極性障害患者の概日活動リズムと日常的な光曝露との関係~APPLEコホート横断分析

 概日活動リズムの乱れは、双極性障害の主な特徴の1つである。藤田医科大学の江崎 悠一氏らは、日常生活における光曝露が双極性障害患者の概日活動リズムの乱れと関連しているかを調査した。その結果、双極性障害の概日活動リズムに対し、日中の光曝露は良い影響をもたらし、夜間の光曝露は悪影響を及ぼすことが確認された。Journal of Affective Disorders誌2023年2月15日号の報告。 日常生活における光曝露と双極性障害の病状との関連を調査したコホート研究「APPLEコホートスタディ」に参加した双極性障害外来患者194例を対象に、横断研究を行った。対象患者の身体活動および日中の照度は、連続7日間にわたりアクチグラフを用いて測定した。夜間の寝室照度の測定には、ポータブル照度計を用いた。概日活動リズムのパラメータは、コサイナー法およびノンパラメトリックな概日リズム解析を用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・日中の照度中央値は224.5ルクス(四分位範囲:154.5~307.5)、夜間の照度中央値は2.3ルクス(同:0.3~9.4)であった。・潜在的交絡因子で調整した多変量線形回帰分析では、日中の照度が高いほど、以下との有意な関連が認められた。 ●amplitude(振幅)が大きく、最も活動的な連続10時間  ●acrophase(頂点位相)の進行 ●日内安定性が高い ●日内変動性が低い・夜間の照度が高いほど、以下との有意な関連が認められた。 ●相対的なamplitude(振幅)が小さい ●最も活動的でない連続5時間の発生の遅延 ●日内変動性が高い・本研究の限界として、横断研究であることから、本結果は光曝露が概日活動リズムを変化させることを必ずしも意味するものではないことが挙げられる。

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マインドフルネスも運動も認知機能に影響を与えないというネガティブデータをどう読み解くか(解説:岡村毅氏)

 自覚的な物忘れがある地域在住高齢者で、Short Blessed Testというスクリーニング検査で認知症相当ではない人、つまり軽度認知障害なども含まれる地域の人々を、[1]マインドフルネス、[2]運動、[3]マインドフルネスと運動、[4]健康学習(対照群)の4群に分けて介入したが、[1]~[4]まですべてエピソード記憶や遂行機能に差が出ないという結果であった。脳画像においても差が出ていない。惨憺たる結果である。 この領域で研究をしている者としては二重に残念な結果であった。まずはFINGER研究(フィンランドからやってきた食事・運動・認知・生活習慣の複合介入で認知機能を改善するというもの)がいつも再現されるわけではなさそうだということ。FINGER研究はなぜかわが国ではファンが多く、多くの似たような研究が行われていると聞くので、悲しい気持ちでこの結果を読む人がいるであろうことを考えると、なかなかつらい。 次に豊饒な新領域に思われたマインドフルネスも、常に成果を出すわけではないということ。 さすがに対照群まで含めて、まったく差がないというのでは、本当に差がないのだろう。なお、運動した人々の身体機能は向上しており、さぼっていたわけではなさそうである。 あくまで感想であるが、第1に、この研究の対象は地域の善男善女であり、マインドフルネスとして行われたのはマインドフルネス・ストレス低減法であった。研究者たちは、ストレスが低下すれば、睡眠が改善し、コルチゾール等のストレスホルモンも低下するし、またマインドフルネス自体もワーキングメモリー向上に寄与する、という仮説を立てていたようだが…ちょっと無理がないか。たぶん対象者に起きたことは、ストレスが低下し、またストレス対処の方法を知り、人生が豊かになった(人が多少いた)ということではないか。むしろ私がこの研究結果をみて思ったのは「マインドフルネスのような高次の介入の効果を知るには、量的に測れるものや尺度ではなく、もっと質的な次元で測定しなければわからないな」であった。おそらく主観的なストレスや、怒りなどを測定すれば、あるいはたとえば「時間を有効利用できるようになったか」をインデプスインタビューの形で聞けば、効果はみられるはずだ(とはいえ、そんなことはわかっており、研究者たちはそこを知りたいわけではないので余計なお世話なのだが)。 第2に、今回は結果が出ていないが、マインドフルネスは確固たる地位を築いたなということである。マインドフルネスのルーツには禅があり、つまりは日本仏教の只管打坐も始祖として入っている(もちろん日本仏教だけではなくさまざまな国の仏教が関与している)。日本では医学者は顧みることはなかったのだが、欧米でエビデンスが付与され、医療に取り入れられた。そしていま日本に逆輸入されている。本当は日本で研究が行われるべきであった、と考えるのは私だけだろうか。そこでわれわれは只管打坐に匹敵する仏教プラクティスということで専修念仏に注目し、脱宗教化したプログラムを作成し、現在介入研究を行っているところである。良い結果が出るとよいのだが。

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難聴と認知症【外来で役立つ!認知症Topics】第1回

「高音性難聴」で片付けられない高齢者の難聴高齢になるほど難聴の人が増え、コミュニケーション上の支障になるのは、診療科を問わずに見られる現象かと思われる。当事者の中には自分が難聴だと医者に悟られるのは格好悪いと見えて、ちょっと過剰なうなずきや合いの手を入れる人もいる。だからわれわれ医療者が、この人はわかっているだろうと誤解することもある。難聴といえば、カクテルパーティー効果と呼ばれる心理学現象もある。これはカクテルパーティーのように騒々しい場所でも自分に関することが話されていると、なぜかそれが聞こえてしまうという音の聴き取り上の注意選択に関わる神経心理的な現象である。こうした要因もあるだけに、高齢者の難聴とは、単に高音性難聴だと片付けられるものではない。実際、高齢者難聴を専門とする耳鼻科医の友人は、「ご都合性難聴」という言葉を教えてくれた。これを難聴者の付き添いの方に伝えると、まさに「言い得て妙」という反応をされる。難聴にはどのデバイスが有効か?筆者の場合、診察室における難聴者とのコミュニケーションは長年にわたる課題であった。補聴器の使用を勧めるのはもちろん、集音器の提案、そして最近では今風の小型拡声器を使った話し掛けも行ってきた。いずれも「帯に短し、たすきに長し」である。まず補聴器、集音器に共通するのは、これらを着けているのを見られるのはカッコ悪いという思いのようだ。補聴器は高性能な超小型コンピューターであるだけに、数十万円と高価であり、充電しても長時間持たない。また小型・軽量で紛失しやすいのだが、コロナ禍ではマスクのひもが引っ掛かり、それがさらに助長される。集音器は数万円とぐっと廉価ながら、補聴器とは異なり、苦手な音域対応に特化した機器ではない。どんな音でも拾うので、使用者は「音が大きく響いて頭が割れそうだ」と苦情を述べる。拡声器は、雑駁な機器ではあるが、最近では懐中電灯サイズもあり、値段も1万円以下のものもあって、とりあえず医療者は使いやすい。ところで難聴の患者に付き添う家族介護者が、ほぼ共通して訴えることがある。「聞こえないから耳元で、大声で話すのに、本人はなんで怒っているんだと逆ギレする」というものである。実際、リクルートメント現象と呼ばれる現象で、高齢者では小さい音は聞こえにくく、大きい音はうるさく感じることが知られている。さらに脳科学的には、大声は感情の座である扁桃体を刺激して、怒りの感情を誘発することが報告されている1)。難聴が認知症の最大の危険因子さて、わが国の認知症対策の基本は、「認知症施策推進大綱」に示される予防と共生である。予防の実効性については疑問もあるが、長年にわたって運動の習慣が予防の一押しとされてきた。反対に、認知症の促進因子について、2017年Lancet誌が、危険因子全体で認知症発症の37%を説明できるとした2) 。その中でも、中年期からの難聴が最大のリスクファクターであると報告している。これが認知症の発症に関わる難聴がデビューする報告になった。ところで、なぜ難聴は危険因子なのか?という素朴な疑問を生じる。耳鼻科の専門誌などによれば、いくつかの可能性が示されている。筆者はその中でも次の2つが重要ではないかと考えている。まず難聴によって音刺激が欠乏して1次聴覚野と海馬の形態変化をもたらす。それにより認知予備能が減って認知症の準備状態を作るという「廃用説」である。次に難聴者においては、本来記憶などの認知機能に費やすべき知的エネルギーを、聴覚理解に回す必要がある。したがって、認知機能への注力が手薄になるので認知症の素地を作るという。筆者流に言えば、「エネルギー保存の法則」的な説明である。また臨床の場では、難聴は認知症の危険因子である以上に、認知症の悪化促進因子でないかと思うことがよくある。調べてみた限りでは、難聴はMCIを悪化させるという報告はあったが3)、悪化を促進するとした報告は見つけられなかった。こうした治療法として誰しもが考えるのは、補聴器をしっかり使うことだろう。実際、これを使った介入研究で有効性も報告されている。しかし筆者は、上記のような理由から、とくに認知症の人ではそう容易ではないと思う。当院の患者さん家族によれば、そこそこ成功していると思うのは、小型拡声器の使用である。最低限のメッセージは伝えられると聞く。また2階にいる家族を呼ぶのにも重宝していると笑わせる娘さん介護者もある。終わりに、マスク時代で実践が難しくなったが、東大病院耳鼻咽喉科の加我 君孝名誉教授に教わった診察室での会話法がある。まず相手に「私の口元を見ながら私の話を聞きなさい」と述べる。そして自分はできるだけ明瞭に発音する。これにより読唇術の心得などない人でも、何割か聞き取り能力がアップすることを経験してきた。参考1)Simon D, et al. Soc Cogn Affect Neurosci. 2017;12:409–416.2)Livingston G, et al. Lancet. 2017;390:2673-2734.3)Bucholc M, et al. Alzheimers Dement (N Y). 2022;8:e12248.

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日本におけるレビー小体型認知症患者・介護者の治療ニーズ

 レビー小体型認知症(DLB)に対する治療戦略を考えるうえで、患者の治療ニーズを把握することは不可欠である。近畿大学の橋本 衛氏らは、DLB患者とその介護者における治療ニーズおよびこれらの治療ニーズを主治医がどの程度理解しているかを調査するため、横断的観察研究を実施した。その結果、DLB患者およびその介護者の治療ニーズのばらつきは大きく、主治医は専門知識を有しているにもかかわらず、DLBのさまざまな臨床症状のために、患者やその介護者にとって最優先の治療ニーズを理解することが困難であることが明らかとなった。著者らは、主治医には自律神経症状や睡眠関連障害により注意を払った治療が求められるとしている。Alzheimer's Research & Therapy誌2022年12月15日号の報告。 DLB患者、その介護者および主治医を対象にアンケート調査を実施した。DLBで頻度が高く臨床的に重要な52の症状を、7つの症状ドメイン(認知機能障害、パーキンソニズム、睡眠関連障害、摂食行動関連問題、睡眠障害および摂食障害以外の精神症状、自律神経症状、感覚障害)に分類した。患者および介護者の治療ニーズは、「最も苦慮している症状」と定義し、各回答を集計した。患者および介護者の治療ニーズに対する主治医の理解度を評価するため、各回答に対する「患者と主治医」および「介護者と主治医」の一致率を症状ドメインごとに算出した。 主な結果は以下のとおり。・調査対象は、患者および介護者263組、主治医38人。・患者の平均年齢は79.3歳、ミニメンタルステート検査(MMSE)の平均総スコアは20.9であった。・最も苦慮している症状として、患者は35症状、介護者は38症状を選択した。・患者の治療ニーズとして最も選択されていた症状は記憶障害であり、次いで便秘、運動緩慢が選択された。・介護者においても、最も苦慮している症状として選択された症状は記憶障害であり、次いで幻覚が選択された。・患者または介護者が最も苦慮する症状ドメインにおける主治医との一致率は、「患者と主治医」で46.9%、「介護者と主治医」で50.8%であり、約半分程度しか一致していなかった。・ロジスティック回帰分析では、自律神経症状や睡眠関連障害が最も苦慮する症状ドメインとして選択された場合、「患者と主治医」と「介護者と主治医」の治療ニーズの一致率はより低かった。

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統合失調症の脳の老化~ENIGMAコンソーシアム

 統合失調症は、生涯にわたる認知機能低下、加齢に伴う慢性疾患や早期死亡のリスク増加と関連している。英国・バース大学のConstantinos Constantinides氏らは、成人統合失調症患者における重度の脳の老化に関するエビデンスを調査し、ENIGMA Schizophrenia Working Groupによるプロスペクティブメタ解析研究にてそれらと臨床的特徴との関連を評価した。その結果、統合失調症患者における重度の構造的な脳の老化が示唆された。著者らは、統合失調症における脳の老化や介入による影響の臨床的意義に関するさらなる評価には、統合失調症とさまざまな精神的および身体的アウトカムの縦断的研究が役立つであろうと述べている。Molecular Psychiatry誌オンライン版2022年12月9日号の報告。 脳の予測年齢は、皮質厚および皮質面積の68の測定値、7つの皮質下体積、側脳室体積、総頭蓋内容積に基づく独立データにより導出されたモデルを用いて推定した。すべてのデータはT1強調MRI脳画像を用いて収集した。健康な脳の老化との違いは、脳の予測年齢と実年齢の差(脳予測年齢差、brain-predicted age difference:brain-PAD)により評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、26件のコホート研究のデータより抽出された統合失調症患者2,803例(平均年齢:34.2歳、年齢範囲:18~72歳、男性の割合:67%)および健康対照者2,598例(平均年齢:33.8歳、年齢範囲:18~73歳、男性の割合:55%)。・年齢、性別、部位で調整した後、統合失調症患者は健康対照者と比較し、brain-PADが平均3.55年(95%信頼区間:2.91~4.19、I2=57.53%)高かった(Cohen's d=0.48)。・統合失調症患者において、brain-PADと特定の臨床的特徴(発症年齢、罹病期間、症状重症度、抗精神病薬の使用状況と用量)との関連は認められなかった。

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日本人高齢者の日常的な温泉入浴とうつ病との関係~別府レトロスペクティブ研究

 温熱療法は、うつ病など、さまざまな精神疾患のマネジメントに用いられる。九州大学病院別府病院の山崎 聡氏らは、日本人高齢者の温泉入浴とうつ病との関係を検討するため、アンケート調査を実施した。その結果、習慣的な毎日の温泉入浴とうつ病歴の低さとの間に関連があることが確認された。著者らは、温泉の使用が精神疾患や精神障害の症状緩和に有用であるかを明らかにするためにも、うつ病治療としての習慣的な毎日の温泉入浴に関するプロスペクティブ無作為化比較試験が求められるとしている。Complementary Therapies in Medicine誌オンライン版2022年12月13日号の報告。 大分県別府市在住の65歳以上の高齢者1万429人に対して、うつ病の有病率に関するアンケート調査を実施し、回答した219人を対象に長期的な温泉入浴のうつ病予防効果を総合的に評価した。うつ病歴のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、多変量ロジスティック回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。 セパレート多変量ロジスティック回帰モデルにおいて、うつ病歴と有意な関連が認められた独立因子は以下のとおりであった。 ●女性(OR:1.56、95%CI:1.17~2.08、p=0.002) ●不整脈(OR:1.73、95%CI:1.18~2.52、p=0.004) ●脂質異常症(OR:1.63、95%CI:1.14~2.32、p=0.006) ●腎疾患(OR:2.26、95%CI:1.36~3.75、p=0.001) ●膠原病(OR:2.72、95%CI:1.48~5.02、p=0.001) ●アレルギー(OR:1.97、95%CI:1.27~3.04、p=0.002) ●習慣的な毎日の温泉入浴(OR:0.63、95%CI:0.41~0.94、p=0.027)

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高齢者の認知機能に対するハーブ抽出物の効果~ランダム化対照試験

 アルツハイマー病モデルに関するin vitroおよびin vivoの研究において、ロスマリン酸がアミロイドβの形成やアミロイドβタンパク質のオリゴマー化や沈着を阻害できると報告されている。ロスマリン酸500mgを含有する食用ハーブであるメリッサオフィシナリス(M. officinalis)抽出成分は、健康成人や軽度のアルツハイマー型認知症患者に対し忍容性、安全性が良好であると考えられる。金沢大学の篠原 もえ子氏らは、高齢者におけるM. officinalis抽出成分の認知機能に対する影響を評価するため、ランダム化プラセボ対照二重盲検試験を実施した。その結果、M. officinalis抽出成分は、高血圧でない高齢者の認知機能低下の予防に有用である可能性が示唆された。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2022年12月7日号の報告。 対象は、主観的または軽度認知障害(MCI)と診断された高齢者323例。本試験は、96週間のM. officinalis抽出成分補充療法(1日当たり500mgのロスマリン酸)とその後24週間のウォッシュアウト期間で構成した。主要エンドポイントは、アルツハイマー病の認知機能障害を評価する認知機能下位尺度(ADAS-cog)とし、副次的エンドポイントは、その他の認知機能測定結果および安全性、忍容性とした。 主な結果は以下のとおり。・ベースラインから96週時における認知機能測定値の変化は、M. officinalis群と対照群に有意な差は認められなかった。・しかし、臨床的認知症重症度判定尺度(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes:CDR-SB)による分析では、非高血圧患者において、M. officinalis群ではCDR-SBが0.006増加し、対照群ではCDR-SBが0.085減少しており、両群間で統計学的に有意な差が認められた(p=0.036)。・また、両群間でバイタルサイン、身体的および神経学的な測定値、海馬容積の違いは認められなかった。

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統合失調症における抗精神病薬の減量と継続

 統合失調症の主な治療では抗精神病薬が用いられるが、QOLを低下させうるさまざまな投与量関連の副作用が問題となる。そのため、抗精神病薬は可能な限り低用量での使用が推奨されているが、実際の臨床現場では高用量で使用されることも少なくない。再発リスクを抑え有害な副作用を最小限にとどめるために、抗精神病薬を安全に減量できるのかどうか、またはその方法について明らかにする必要がある。 イタリア・カターニア大学のAlessandro Rodolico氏らは、統合失調症患者に対する抗精神病薬について、現在の用量を継続した場合と比較した減量の有効性および安全性の評価を行った。その結果、抗精神病薬の用量を減量した場合と継続した場合において、QOL、機能、1つ以上の有害事象が発現した患者の割合に差は認められなかったが、減量により再発および治療中止のリスクが上昇し、再入院の可能性は高まった。注目すべき点として、研究の大部分がQOL、機能、有害事象などの潜在的なアウトカムではなく再発予防に焦点を当てており、そのうちのいくつかの研究では、抗精神病薬の急激な減量が行われていた。著者らは、より明確な答えを得るためには、適切に設計されたRCTが求められるとしている。Cochrane Database of Systematic Reviews誌2022年11月24日号の報告。 Cochrane Schizophrenia GroupのStudy-Based Register of Trialsとして2021年2月10日までに公表された文献を、各種データベース(CENTRAL、MEDLINE、Embase、CINAHL、PsycINFO、PubMed、ClinicalTrials.gov、ISRCTN、WHO ICTRP)よりシステマティックに検索した。現行の抗精神病薬治療で安定している統合失調症または関連疾患の患者を対象に、抗精神病薬の減量および継続を比較したランダム化比較試験(RCT)を含めた。さらに、含まれた研究と以前のレビューにおけるリファレンスリストについても調査した。2人以上のレビュアーが独立して、適格研究より関連する記録のスクリーニング、データ抽出を行い、RoB 2を用いてバイアスリスクを評価した。欠落データおよび追加情報については、各研究の著者に連絡し収集した。 主要アウトカムは、QOLの臨床的に重要な変化、再入院、副作用による治療中止とした。副次アウトカムは、機能の臨床的に重要な変化、再発、すべての理由による治療中止、1つ以上の有害事象とした。また、症状、QOL、機能の測定に用いた評価尺度、特定の有害事象の包括的なリストも併せて調査した。できる限り1年に最も近いエンドポイントでのアウトカムをプールした。エビデンスの確実性の評価には、GRADEアプローチを用いた。 主な結果は以下のとおり。・含まれた25件のRCTのうち22件(2,635例、平均年齢:38.4歳)からデータを抽出した。・研究のサンプルサイズの中央値は60例(範囲:18~466例)であり、期間の中央値は37週(範囲:12週~2年)であった。・用量減量のスピード(研究の約半数で2~16週以内の漸減、残りの半数は急激な減量)および程度(3研究で中央値66%までの計画的減量)には、ばらつきがあった。・全体のバイアスリスクは、いずれかの懸念または高リスクとして評価した。・QOLまたは機能の臨床的に重要な変化が認められた患者に関するデータを報告した研究はなく、QOLまたは機能の測定に用いた評価尺度について継続的なデータを報告した研究は8件のみであった。・QOL(標準化平均差[SMD]:-0.01、95%信頼区間[CI]:-0.17~0.15、RCT:6件、719例、I2=0%、エビデンスの確実性:中)および機能(SMD:0.03、95%CI:-0.10~0.17、RCT:6件、966例、I2=0%、エビデンスの確実性:高)の測定に用いた評価尺度では、抗精神病薬の減量と継続に差は認められなかった。・推定可能なエフェクトサイズに関する8つの研究のデータによると、抗精神病薬の用量を減量した場合は、継続した場合と比較し、再入院のリスクを上昇させる可能性が示唆された。しかし、95%CIに差がない可能性があった(リスク比[RR]:1.53、95%CI:0.84~2.81、RCT:8件、1,413例、I2=59%[異質性:moderate]、エビデンスの確実性:非常に低い)。・同様に、20件の研究のデータによると、抗精神病薬の用量を減量した場合、再発リスクの上昇が認められた(RR:2.16、95%CI:1.52~3.06、RCT:20件、2,481例、I2=70%[異質性:substantial]、エビデンスの確実性:低)。・抗精神病薬を減量した患者は、継続した患者と比較し、有害事象(RR:2.20、95%CI:1.39~3.49、推定可能なエフェクトサイズを含むRCT:6件、1,079例、I2=0%、エビデンスの確実性:中)およびすべての理由(RR:1.38、95%CI:1.05~1.81、RCT:12件、1,551例、I2=48%[異質性:moderate]、エビデンスの確実性:中)による早期の治療中止が多かった。・推定可能なエフェクトサイズを有する4つの研究のデータによると、抗精神病薬を減量した患者と継続した患者では、1つ以上の有害事象が発現した患者の割合に差は認められなかった(RR:1.03、95%CI:0.94~1.12、RCT:5件、998例[推定可能なエフェクトサイズを含むRCT:4件、980例]、I2=0%、エビデンスの確実性:中)。

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映画「ラン」(前編)【なんで子どもを病気にさせたがるの?(代理ミュンヒハウゼン症候群)】Part 1

今回のキーワードミュンヒハウゼン症候群同情中毒承認中毒育児中毒罪悪感(社会脳)心の距離感(バウンダリー)皆さんは、自分の子供を病気にさせたいですか? 「そんなことありえない」と思いますよね。しかし、世の中には、症状をねつ造してまで自分の子供を病気にさせたがる人がいます。それは、代理ミュンヒハウゼン症候群と呼ばれる子供虐待です。関連記事1で紹介した「病気になりたがる人」、ミュンヒハウゼン症候群の代理バージョンです。今回は、代理ミュンヒハウゼン症候群をテーマに、サイコスリラー映画「RUN/ラン」を取り上げ、子供を病気にさせたがる心理やその要因を掘り下げます。なお、ミュンヒハウゼン症候群の詳細については、関連記事1をご覧ください。何が最初からおかしい?主人公は、高校生のクロエとその母親のダイアン。クロエは、早産で生まれたことで、もともと下半身の麻痺があり、車いす生活をしています。また、不整脈、喘息、糖尿病があり、さらに鉄過剰症に伴う発疹や嘔吐が見られ、たくさんの薬を飲んでいます。母親のダイアンは、働きに出ることもなく、そんな一人娘のクロエのお世話を家で熱心にしています。父親はおらず、家計をどうやって成り立たせているかは不明ですが、経済的には不自由はないようです。しかし、ストーリーが進むにつれて、実は最初からおかしな点があることに、私たちはだんだんと気付かされます。主に3つ挙げてみましょう。(1)クロエの部屋が1階ではない1つ目のおかしな点は、クロエの部屋が1階ではないことです。確かに、子供部屋は一軒家の2階にあることが多いです。しかし、車いす生活をしているのなら、必然的に1階になるのが合理的です。クロエの部屋が2階にあるため、階段にわざわざ電動の昇降機まで設置しています。つまり、クロエは、部屋が2階にあることによって、物理的に行動範囲が制限されていることがわかります。(2)クロエは学校に行っていない2つ目のおかしな点は、クロエは学校に行っていないことです。確かに、彼女は科学好きであることから、ホームスクーリングによって、自宅で十分な教育を受けてきたことはわかります。スクールバスは、車いすに対応していないという事情があることもわかります。しかし、母親が学校までの送り迎えをしても良いはずです。または、アメリカの高校生は車での通学も可能であることから、クロエが障害者として車の免許を取ることもできるはずです。なぜなら、学校は、単に勉強するところではなく、友達との人間関係を通して社会性を育むところでもあるからです。この映画の前半は、この2人のやり取りが家でずっと続く展開で、見ている私たちはだんだんと息苦しくなります。つまり、クロエは、学校に行っていないことによって、人間関係が制限されていることがわかります。(3)手紙を直接受け取れない3つ目のおかしな点は、手紙を直接受け取れないことです。確かに、車いすに乗っているため、手紙を受け取るために車いすで玄関先に出ることは手間がかかります。しかし、クロエは大学の合否通知を待っているタイミングであり、本来は配達員が来たら本人に受け取らせてあげても良いはずです。それなのに、必ず母親が先に受け取ります。そして、「手紙が来ても開けないわよ」とわざわざ言うのです。また、自宅の電話機は、母親の部屋にあり、クロエが使うにはわざわざ母親の部屋に入る必要があります。母親は携帯電話を持っていますが、もちろんクロエは持っていません。パソコンは1階にありますが、調べ物をする時は、母親の目があります。つまり、クロエは、手紙が直接受け取れないなどによって、外部との情報のアクセスが制限されていることがわかります。次のページへ >>

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映画「ラン」(前編)【なんで子どもを病気にさせたがるの?(代理ミュンヒハウゼン症候群)】Part 2

子供を病気にさせたがる心理とは?クロエはある時、些細なことをきっかけに、いつも自分が飲まされている薬が何なのか疑問を抱くようになります。自分で調べようとしますが、母親のダイアンが先回りして、なかなかその薬の正体にたどり着けません。そして、ようやく薬剤師から「犬に飲ませる筋弛緩薬」「人間が飲んだら脚が麻痺するわ」と聞かされるのです。つまり、クロエの病気は、ダイアンによるねつ造であることが判明します。つまり、ダイアンは、代理ミュンヒハウゼン症候群であったということです。なお、この正式な診断名は、作為症(虚偽性障害)です。この診断基準は、以下をご覧ください。ここから、子供を病気にさせたがる心理を大きく3つ挙げてみましょう。(1)同情されたいこの映画の冒頭で、ダイアンが超早産で赤ん坊を産んだことで打ちひしがれ、医療スタッフから見守られるシーンがあります。もちろん、この時、ダイアンは本当に辛い思いをしたのでしょう。同時に、周りからの慰めを心地良く感じてしまい、それに彼女は味をしめてしまったことが考えられます。1つ目の心理は、同情されたいという同情欲求です。もはや同情されることが快感になっている状態です。これが過剰になった状態を、同情中毒として関連記事1で説明しました。ただ、その後にダイアンが同情されるシーンは描かれておらず、彼女に関しては、この欲求はこれから紹介する2つの欲求よりも小さいことがうかがえます。(2)認められたいホームスクーリングを利用する生徒の保護者会で、子供が卒業して家を出ると寂しくなると他の保護者たちが涙ながらに語っていました。そんななか、ダイアンは、退屈そうに携帯をいじりながら「子供が家を出るのは、嬉しいに決まってます」と発言するのです。彼女は、最初からクロエを家から出さない計画があったわけですが、それにしても、見栄っ張りのように見えます。また、ダイアンは、クロエに「何回病院に担ぎ込んだか知らないでしょ」と言っていました。このセリフから、ダイアンは自分が看病していることを誇らしく思っていることがうかがえます。そして、たびたび病院スタッフからねぎらいの言葉をもらっていたことも想像できます。2つ目の心理は、認められたいという承認欲求です。これは、病院関係者からも学校関係者からも、重度の病を抱える子供を献身的に看病し子育てをしている良い母親として承認されたいと思う気持ちです。なお、これが過剰になった状態は、承認中毒として関連記事2で紹介しました。(3)やってあげたいダイアンは、クロエに「今までやってきたことは全部あなたのため」「ママほどあなたを愛してる人はいないのよ」と説きます。クロエから「私は病気じゃなかったの?」「本当は歩けたの?」と聞かれても、「私は傷つけることは何もしていない」「愛してるんだから」と抽象的な言葉だけで、具体的には答えません。挙句の果てに、クロエが「ママが毒薬を入れてたから…」と言いかけると、ダイアンはすぐにクロエの口を塞ぎ、「守るため。守ってあげたのよ」と言い張ります。もはや、自分で自分に言い聞かせているようにも見えます。3つ目の心理は、やってあげたいという育児欲求です。もちろん、私たちも子供にいろいろやってあげたいという気持ちがあります。ただし、それは本当にやってあげる必要がある時に限られます。子供が自立してやってあげる必要がなくなれば、それはそれで育児のゴールです。さすがにダイアンのように、やってあげることがなければやってあげる状況をわざわざつくり出すのは異常です。さらに、そのために嘘をつき通して、やめられなくなっているのも異常です。これは、育児欲求が過剰になっている状態で、同情中毒、承認中毒に合わせて育児中毒と言えます。「中毒」とは、アルコール、ドラッグ、ギャンブルと同じように、やめたくてもやめられない嗜癖(アディクション)の古い言い回しですが、生々しくてインパクトがあるので、この記事ではあえてそう名付けています。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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