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スコアに基づくコロナ罹患後症状の定義を提案した論文報告(解説:寺田教彦氏)

 新型コロナウイルス感染症罹患後、数週間から数ヵ月にわたってさまざまな症状が続くことがあり、海外では「long COVID」や「postacute sequelae of SARS-CoV-2 infection:PASC」、本邦では新型コロナウイルス感染症の罹患後症状と呼称されている。世界各国から報告されているが、この罹患後症状の明確な診断基準はなく、病態も判明しきってはいない。WHOは「post COVID-19 condition」について、新型コロナウイルス感染症に罹患した人で、罹患後3ヵ月以上経過しており、少なくとも2ヵ月以上症状が持続し、他の疾患による症状として説明がつかない状態を定義しており(詳細はWHO HP、Coronavirus disease (COVID-19): Post COVID-19 condition.[2023/06/18最終確認]を参照)、本邦の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント 第2.0版」でも引用されている。 このPASC(本研究同様、コロナ罹患後症状をこの文章ではPASCと記載する)は世界各地から報告されているが、有病率や認められる罹患後症状の頻度は地域差がある。筆者らはこの有病率の違いについて、過去の報告は個々の症状の頻度に焦点を当てている点、後ろ向き研究である点や、非感染者といった比較群が存在しない点が理由ではないかと提案し、本研究では前向きコホート研究の結果に基づいてPASCの疾患定義を作成し、PASCの調査を行っている。 さて、一般に疾患定義は、医師や研究者に疾患の理解や研究を進めるための基準を提供し、原因や病態の推定・把握、治療方法の開発に役立ち、疾患の発生率や流行の推移を追跡するなどの疫学調査を行う場合にも重要である。PASCの定義を作成するに当たって、病態について考えると、PASCは単一の病態で説明することができるのか、先行するCOVID-19により引き起こされる複数の異なる病態なのかはわかっていない。病態が複合的に関与する可能性を提案する論文では(1)持続感染、(2)Epstein-Barrウイルスやヒトヘルペスウイルス6などのような再活性化、(3)腸内細菌叢に対するSARS-CoV-2の影響、(4)自己免疫、(5)微小血管血栓症、(6)脳幹・迷走神経の機能障害といった病態を指摘している(Davis HE, et al. Nat Rev Microbiol. 2023;21:133-146.)。PASCの病態が単一ではない場合は、患者の表現型となる症状も複数のパターンがある可能性があり、治療法も個々の病態で異なるかもしれない。 本研究でも、PASCが複数の病態から構成される可能性は検討しており、PASCのサブグループについても記載があるが、今後の研究によっては、PASCの診断は単一のスコアリングで判断するのではなく、PASCのクラスターごとに診断基準を作成する必要が出てくる可能性がある。また、仮に、診断基準が1つでまとめられることとなったとしても、筆者も述べているように、今回提案された診断定義は、今後のさらなるデータを追加して改良を重ねてゆくことが求められるとともに、世界的な基準とする場合は外的妥当性を確認するための追加研究も必要となる。 最後に、本研究から得られたPASCの特徴についても確認してゆく。 PASC陽性者の特徴は過去の報告と同様の傾向で、オミクロン株以前が流行していた時期の罹患者がオミクロン株流行時期よりもPASCの割合は高く、COVID-19ワクチン接種非完了者のほうが完了者よりも高く、初回感染よりも再感染の患者で罹患率が高かった。また、急性期に入院している患者や、女性でPASC陽性の割合は高かった。 PASCは、オミクロン株ではデルタ株などよりも罹患後症状有病率は低下しているが、COVID-19患者が増えれば、PASCも増加することが懸念される。抗ウイルス薬がPASC予防に有効であることを示唆する後ろ向きコホート研究(Xie Y, et al. JAMA Intern Med. 2023;183:554-564., Xie Y, et al. BMJ. 2023;381:e074572.)も報告されつつあるが、抗ウイルス薬は高価であり、不確定な情報を参考に、COVID-19患者というだけでやみくもに処方するわけにもゆかないだろう。PASCのために困っている患者さんがいることも事実であり、病態解明が進み、より正確な罹患後有病率や罹患因子の把握、抗ウイルス薬のエビデンスが確立して、現在および未来の患者さんによりよいCOVID-19の治療が行われることを願っている。

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他の睡眠薬からレンボレキサントへの切り替え効果~SLIM研究

 ほりこし心身クリニックの堀越 翔氏らは、他の睡眠薬からデュアルオレキシン受容体拮抗薬レンボレキサント(LEB)への切り替えによる有効性および安全性を評価するため、本研究を行った。その結果、他の睡眠薬からLEBに切り替えることで、ベンゾジアゼピン(BZD)、Z薬に関連するリスクが低下する可能性が示唆された。Journal of Clinical Sleep Medicine誌オンライン版2023年5月30日号の報告。 対象は2020年12月~2022年2月に、ほりこし心身クリニックを受診した不眠症患者61例。アテネ不眠症尺度(AIS)、エプワース眠気尺度(ESS)、Perceived Deficits Questionnaire-5 item(PDQ-5)を含む診療記録から得られた臨床データを分析した。切り替え前の睡眠薬には、BZD、Z薬、スボレキサント、ラメルテオン、ミルタザピン、トラゾドン、抗精神病薬を含めた。主要アウトカムは、LEBへの切り替え3ヵ月後のAISスコアの平均変化とした。副次的アウトカムは、LEBへの切り替え3ヵ月後のESSスコアおよびPDQ-5スコアの平均変化とした。また、切り替え前後のジアゼパム換算量の比較も行った。 主な結果は以下のとおり。・LEBへの切り替え後3ヵ月間、平均AISスコアの減少が認められた。 【1ヵ月後】-2.98±5.19(p<0.001) 【2ヵ月後】-3.20±5.64(p<0.001) 【3ヵ月後】-3.38±5.61(p<0.001)・平均ESSスコアは、切り替え3ヵ月間で有意な変化が認められなかった。 【1ヵ月後】-0.49±3.41(p=0.27) 【2ヵ月後】0.082±4.62(p=0.89) 【3ヵ月後】-0.64±4.80(p=0.30)・平均PDQ-5スコアは、切り替え3ヵ月間で有意な改善が認められた。 【1ヵ月後】-1.17±2.47(p=0.004) 【2ヵ月後】-1.05±2.97(p=0.029) 【3ヵ月後】-1.24±3.06(p=0.013)・総ジアゼパム換算量の有意な減少が観察された(ベースライン時:14.0±20.2、切り替え3ヵ月後:11.3±20.6、p<0.001)。

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日本人反復性片頭痛に対するフレマネズマブの有用性

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)モノクローナル抗体であるフレマネズマブは、多くの第II相および第III相試験において片頭痛患者に対する有効性および忍容性が確認されている。近畿大学の西郷 和真氏らは、反復性片頭痛(EM)患者を対象とした国際共同第III相試験(HALO EM試験)および日本と韓国で実施された第IIb/III相試験のサブグループ解析を実施し、日本人EM患者におけるフレマネズマブの有効性および安全性を評価した。その結果、フレマネズマブは、日本人EM患者にとって効果的かつ忍容性の高い予防薬であることが確認された。Journal of Pain Research誌2023年5月18日号の報告。 両試験共に、適格基準を満たした患者をベースライン時にフレマネズマブ月1回投与群、フレマネズマブ四半期1回投与群、プラセボ群に1:1:1でランダムに割り付けた。主要エンドポイントは、初回投与12週間後における28日間当たりの平均片頭痛日数のベースラインからの平均変化とした。副次的エンドポイントは、障害や薬物使用などを含むその他の有効性の評価とした。 主な結果は以下のとおり。・日本人EM患者は、HALO EM試験で75例、日韓第IIb/III相試験で301例が含まれた。ベースライン時の治療特性は、両試験で類似していた。・主要エンドポイントのANCOVA分析では、フレマネズマブ月1回投与群および四半期1回投与群のいずれにおいても、プラセボ群と比較し、28日間当たりの平均片頭痛日数の有意な減少が認められた。・最初の4週間における主要エンドポイントのMMRM分析においても、同様の結果が認められ、フレマネズマブの効果発現の早さが示唆された。・副次的エンドポイント分析においても、主要エンドポイントの分析を裏付けていた。・フレマネズマブは、忍容性が高く、日本人EM患者での新たな安全性上の懸念は認められなかった。

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第166回 「有給休暇を取得、理由は必要か?」健康問題を抱える人に立ちはだかる壁

国が少子化対策の一環として打ち出した不妊治療の保険適用が2022年4月にスタートして1年以上が経過した。これまで全額自己負担だった人工授精、体外受精、顕微授精は一部条件付きで保険適用となり、従来は1回あたり人工授精で平均約3万円、体外受精では平均約50万円だった医療費が原則3割負担となった。少なくとも、これまで経済的負担の重さゆえに不妊治療をためらっていた人にとってはかなりの福音のはずだろう。実際、不妊治療を行う医療機関ではかなり通院者が増えたとの話も聞く。不妊・不育で悩む人をサポートするセルフサポートグループ「NPO法人 Fine」が2022年7~10月に不妊治療・不育治療を受けている人、あるいはこれから受ける人を対象に実施した「保険適用後の不妊治療に関するアンケート2022」(回答者1,988人)を読むと、その傾向の一端が見えてくる。アンケートでは保険適用になって『良くなった』と感じた回答者は65%、逆に『悪くなった』と感じた回答者が73%で、前者では経済的な負担軽減、後者では医療機関の混雑を回答の主な理由として挙げている。実際、回答者全体に尋ねた診療の待ち時間に関しては、「少し増えた」が36%、「すごく増えた」が27%、「変化はない」が35%とやはり全体としては受診者が増えていることをうかがわせる。また、同アンケートの結果では今受けたい治療を受けられているかとの設問に対しては、半数以上の56%が「はい」と回答しているのに対し、「わからない」が23%、「いいえ」が21%。ちなみに「はい」との回答は年齢が上昇するにつれて低下する。この理由は今回の保険適用で、体外受精と顕微授精での43歳という年齢制限がおそらく起因すると考えられる。賛否という二項対立では語り切れない結果だが、まだ揺らん期ともいえる時期なのでやむを得ない現状とも理解できる。しかし、少なくとも保険適用により経済的負担が軽減され、一部の人にとってはかなりハードルが下がったことや、これに関する報道で不妊治療に関する認知が広まったことなども考え併せれば、社会全体としては一歩前進したのではないかと個人的には考えている。私はこの問題に接すると常に思い出すエピソードがある。それは過去に一般誌で不妊治療特集の一部を担当した際に取材した男性の話だ。この男性は夫婦で不妊治療に取り組んで無事に子供を授かった人だったが、その際の通院の件について次のようなことを言っていた。今も残るメモにある彼の発言を一部不適切な表現を含むかもしれないが、そのまま以下に記す。「何が大変って、通院の理由を職場に説明する時ですよ。上司に『病院に行くので休みます』と言うと、『お前どうした? 何か具合でも悪いのか』と聞かれるんですよ。上司には悪気がなく、むしろ心配して聞いてくれているのはわかりますよ。でも『不妊治療のためです』とはなかなか言いにくいじゃないですか。ざっくり言えば下(シモ)の話ですしね。でもうちの妻のほうがもっと大変だったろうとは思います。妻にも『会社にどう説明した?』と聞きましたが、『うまい事何とかごまかした』と言ってましたよ」不妊治療の場合、排卵日というやや不確定な要素があるため、慢性疾患のような規則的な通院とはいかない。体外受精や顕微授精となると、女性の場合は数日間連続の通院となることもある。職場への説明に対する心理的ハードルは決して低くないはずであり、上司への説明はことさら厄介だろうと想像する。私自身、7年間という短い期間ながら会社員経験で仕えた直接の上司は3人いるが、それぞれの個性は異なり、今考えても話してもよいと思える話題の範囲はこの3人ではかなり異なる。前述のFineのアンケート結果を見ても、保険適用になって「良くなった」と感じている人のうち「仕事と両立しやすくなった」との回答はわずか4%にとどまることを考えれば、やはり対職場では気苦労はあるのだろう。そんな最中、ウィメンズヘルスを中核とする製薬企業オルガノン(本社:米国・ニュージャージー州)の日本法人が主催したワークショップを見学する機会を得た。これは6月が世界不妊啓発月間であることを受けて、2回に分けて行われたもので、1回目は20~30代の社会人が健康課題と向き合える会社制度・環境などについて、2回目は企業人事、組織運営の担当者が健康課題を持つ社員が働きやすい職場環境を実現するための企業対応を話し合ったものだ。私はこのうち2回目を聴講した。会場で話していたのはオルガノン、日本オラクル、東日本電信電話、ライフネット生命保険のいずれも人事・キャリア担当者だ。この4人の議論の中でも私が注目したのはライフネット生命保険の担当者から紹介された同社の特別休暇制度だった。同社には2016年に創設された特別休暇制度として、家族やパートナーの看病などに使える「ナイチンゲール休暇」(3日間)、不妊治療などの通院を目的とした「エフ休暇」(8日間)、さらに2019年度に創設された特定の疾患に罹患した際のナイチンゲールファンド休暇」(10日間)、がんなどの療養と業務の両立支援を目的とした「ダブルエール休暇」(12日間)など、労働基準法に定められた年次有給休暇以外にも多様な休暇制度があるとのこと。私も今回初めてこのことを知って驚いたが、それ以上に頷いたのがこれらの制度を使う際にはまず上司に相談するのではなく、人事担当者に相談するという点だった。このことはごく当たり前のことと思う人もいるだろう。しかし、働く者の多くはどうしても「休暇申請はまず上司に」との固定観念がある。そして過去の私に限らず多くの企業勤務者にとっては、「上司との相性」という壁も常に存在する。この点から考えれば、ライフネット生命保険のようにこれら特別休暇制度の利用時にまず人事が窓口になるならば、ワンクッションが置けてありがたいと思う人は少なくないはずだ。とりわけ法的に定められた年次有給休暇とは異なるこうした休暇制度はあっても取りにくいことはしばしばある。今回私が参加する前に開かれた第1回のワークショップのまとめを事前に目にしたが、その中には「上司が男性の場合、生理休暇が取りにくく、普通の有休として申請」との発言があり、さもありなんと思ったほどである。ただ、そうした状況もちょっとした人事制度の運用の仕方で様変わりすることもある。ただ、前近代的な慣習はまだまだ健在なのも事実だ。実際、このワークショップで日本オラクルの担当者が「私より上の世代にはまだまだ『理由がなければ有休を取得しちゃいけない』という考えがあって…」と発言した際には会場が爆笑の渦に包まれた。私もこれには内心で「休みたいと思ったから有休を取るんであって、『休みたい』こそが理由だろう」と突っ込んでしまった。余談だが、私は会社員1年目に年次有給休暇の10日間を一気に取得した。この時、上司は許可したものの、人事担当の責任者が上司のところに飛んできて「新人社員が有給休暇をすべて消化して、しかも一気に取るなんて前例がない」と言っていたのを耳にし、「は?」と思ったことがある。さて話を戻すが、この不妊治療に関連して厚生労働省が「仕事と不妊治療の両立支援のために」というパンフレットを発刊している。この中に「『仕事と不妊治療の両立支援について』企業アンケート調査結果」として、「貴社では、不妊治療を行っている従業員がいますか」で「はい」が13%、「貴社では、不妊治療を行っている従業員が受けられる支援制度や取組を行っていますか」で「はい」が9%との数字が紹介されている。後者については現状がそうなのだろうと思うが、前者に関して、理由を告げずに治療に取り組んでいる人がいることは容易に想像でき、私は氷山の一角と解釈している。そしてこのことは今回の不妊治療に限らず、すべての健康問題にも言えることだろう。私自身の周囲ですら勤務先に告げずに慢性疾患、それもいわゆる難病の治療に取り組んでいる人を複数知っている。ワークショップでは一瞬、「休む理由が言いやすい会社が良いのか? それとも理由を言わずに休める会社が良いのか?」という言葉も出てきたが、これは健康問題を抱える人にとっては実は深刻な話だ。しかし、これは2項対立ではなく本来は2項両立のはずである。この点は純利益の追求が最大の目的である企業の経営者からすると悩ましい問題かもしれない。それでもなお私はやや厳しい言い方にはなるが、健康問題を抱える人が休暇を取得することに難色を示す経営者には「危機感に欠けている」と言わざるを得ない。よく言われる「少子高齢化」は、ともすると高齢化のほうばかりに目が行きがちだが、実は少子化もかなり深刻である。国立社会保障・人口問題研究所が公表した最新の日本の将来人口推計では、15~64歳のいわゆる現役人口は、2020年時点からの比較で、2025年には約200万人、2040年には約1,300万人も減少する。これまでなんとなく確保できていた社員を頭数上ですら確保できなくなる日がもう目の前に迫っているのだ。そもそも一見健康そうに見える若年世代にも健康上の問題を抱える人は少なくない。やや古いデータになるが、厚生労働省の2007年労働者健康状況調査によれば、男女とも20~30代では2割前後が何らかの持病を抱えている。その意味では企業が従業員の健康問題への支援策を整備することは、もはや喫緊の課題と言ってよいだろう。今回の不妊治療のワークショップでは、かなり先進的な企業事例を耳にしたが、その分だけ私個人は逆に日本全体に漂うライフワークバランスの欠如ぶりのほうに今改めて意識がいってしまっている。この構造のまま日本社会が突き進めば、その先に待っているのはどのような姿だろうか? どの道を行ってもあまり良い姿は想像できない。強いて浮かぶとするならば、水圧に負けて爆縮した潜水艇タイタン、あるいはタイタンが目指した先にあった深海に錆びついて鎮座する豪華客船タイタニック号のいずれかぐらいだ。

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境界性パーソナリティ障害の自殺リスクに対する薬物療法の比較

 境界性パーソナリティ障害(BPD)患者では、自殺行動が臨床上の重大な懸念事項となるが、自殺リスクの低下に有効な薬物療法は依然として明らかになっていない。東フィンランド大学のJohannes Lieslehto氏らは、スウェーデンのBPD患者における自殺企図または自殺既遂の予防に対する、さまざまな薬物療法の有効性について比較検討を行った。その結果、BPD患者の自殺行動のリスク低下と関連が認められた唯一の薬物療法は、注意欠如・多動症(ADHD)治療薬であることが示され、逆に、ベンゾジアゼピンの使用は自殺リスク上昇との関連が示唆された。著者らは、BPD患者において、ベンゾジアゼピンは注意して使用する必要があると報告している。JAMA Network Open誌2023年6月1日号の報告。 対象は、2006~21年にスウェーデンの全国レジストリデータベースに登録された16~65歳のBPD患者。データの分析は2022年9月~12月に行った。選択バイアスを排除するため、個別(within-individual)デザインを用いた。初発症状バイアスを調整するため、薬物治療開始から最初の1ヵ月間または2ヵ月間を分析から除外し、感度分析を行った。主要アウトカムは自殺企図または自殺既遂で、ハザード比(HR)を算出し評価した。 主な結果は以下のとおり。・分析には、BPD患者2万2,601例(男性:3,540例[15.7%]、平均年齢:29.2±9.9歳)が含まれた。・16年のフォローアップ期間(平均:6.9±5.1年)に、自殺企図で入院した患者は8,513例、自殺既遂が確認された患者は316例であった。・ADHD治療薬による薬物療法は、同薬物療法を行わなかった場合と比較し、自殺企図または自殺既遂のリスク低下と有意な関連が認められた(HR:0.83、95%信頼区間[CI]:0.73~0.95、FDR補正p=0.001)。・気分安定薬による薬物療法は、主要アウトカムと有意な関連が認められなかった(HR:0.97、95%CI:0.87~1.08、FDR補正p=0.99)。・自殺企図または自殺既遂のリスク上昇と関連していた薬物療法は、抗うつ薬(HR:1.38、95%CI:1.25~1.53、FDR補正p<0.001)、抗精神病薬(HR:1.18、95%CI:1.07~1.30、FDR補正p<0.001)による治療であった。・調査された薬剤のうち、ベンゾジアゼピンによる治療は、自殺企図または自殺既遂のリスクが最も高かった(HR:1.61、95%CI:1.45~1.78、FDR補正p<0.001)。・これらの結果は、潜在的な初発症状バイアスで調整した場合でも同様であった。

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認知症リスクが高まるHbA1c値は?

 高血糖状態が続くと、アルツハイマー型認知症の原因となる「アミロイドβ」が溜まりやすくなり、認知症発症リスクが高まるとされる。糖尿病患者が認知症リスクを減らすために目標とすべき血糖コントロールはどの程度か。オーストラリア・National Centre for Healthy AgeingのChris Moran氏らの研究がJAMA neurology誌2023年6月1日号に掲載された。 1996年1月1日~2015年9月30日の期間中、50歳以上の2型糖尿病を有するKaiser Permanente Northern California統合医療システムの会員を対象とした。期間中のHbA1c測定が2回未満、ベースライン時の認知症有病者、追跡期間3年未満の者は除外した。データは2020年2月~2023年1月に解析された。 参加者はHbA1c値が6%未満、6~7%未満、7~8%未満、8~9%未満、9~10%未満、10%以上に該当する割合に基づいて分類された。検査回数が増え、新たな測定値が追加されるごとに、血糖値の累積状態を再計算した。主要アウトカムは認知症の発症で、診断は国際疾病分類第9改訂版のコードを用いた。Cox比例ハザード回帰モデルにより、年齢、人種および民族、ベースラインの健康状態、HbA1c測定回数を調整した上で、累積血糖曝露と認知症との関連を推定した。 主な結果は以下のとおり。・計25万3,211例が登録され、参加者の平均年齢は61.5(SD 9.4)歳、53.1%が男性であった。追跡期間の平均は5.9(SD 4.5)年であった。・測定されたHbA1c値の50%超が9~10%未満または10%以上であった参加者は、50%以下であった参加者と比較して認知症リスクが高かった(9~10%未満の調整後ハザード比[aHR]:1.31[95%信頼区間[CI]:1.15~1.51]、10%以上のaHR:1.74[95%CI:1.62~1.86])。・対照的に、6%未満、6~7%未満、7~8%未満が50%超の参加者は認知症リスクが低かった(6%未満のaHR:0.92[95%CI:0.88~0.97]、6~7%未満のaHR:0.79[95%CI:0.77~0.81]、7~8%未満のaHR:0.93[95%CI:0.89~0.97])。 研究者は「HbA1c値が9%以上の期間が長い成人で認知症リスクが最も高かった。これらの結果は、高齢の2型糖尿病患者に対して現在推奨されている緩やかな血糖目標値を支持するものである」としている。

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認知症患者に処方される抗精神病薬と併用薬の分析

 さまざまな問題が指摘されているにもかかわらず、抗精神病薬が認知症患者に対し、依然として一般的に処方されている。北里大学の斉藤 善貴氏らは、認知症患者に対する抗精神病薬の処方状況および併用薬の種類を明らかにするため、本検討を行った。その結果、認知症患者への抗精神病薬の処方と関連していた因子は、精神科病院からの紹介、レビー小体型認知症、NMDA受容体拮抗薬の使用、多剤併用、ベンゾジアゼピンの使用であった。著者らは、抗精神病薬の処方の最適化には、正確な診断のための地域の医療機関と専門医療機関の連携強化、併用薬の効果の評価、処方カスケードの解決が必要であるとしている。Dementia and Geriatric Cognitive Disorders誌オンライン版2023年5月26日号の報告。 対象は、2013年4月~2021年3月に受診した認知症外来患者1,512例。初回外来受診時に、人口統計学的データ、認知症のサブタイプ、定期処方薬の調査を行った。抗精神病薬の処方と、紹介元、認知症のサブタイプ、抗認知症薬の使用、多剤併用、潜在的に不適切な薬物(PIM)の使用との関連性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬が処方されていた認知症患者は11.5%であった。・認知症のサブタイプで比較すると、レビー小体型認知症患者は、他のすべての認知症サブタイプの患者よりも、抗精神病薬の処方率が有意に高かった。・併用薬については、抗認知症薬使用、多剤併用、PIM使用の患者において、これらの薬物を使用していない患者と比較し、抗精神病薬処方の可能性が高かった。・多変量ロジスティック回帰分析では、精神科病院からの紹介、レビー小体型認知症、NMDA受容体拮抗薬の使用、多剤併用、ベンゾジアゼピンの使用が、抗精神病薬の処方と関連していることが示された。

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双極性障害のラピッドサイクラーと寛解状態の患者における臨床的特徴~MUSUBI研究

 双極性障害は、ラピッドサイクラーの場合より重篤な疾患リスクとなり、寛解状態で進行することで予後が良好となる。関西医科大学の高野 謹嗣氏らは、日本の精神科クリニックにおける双極性障害の多施設治療調査「MUSUBI研究」の大規模サンプルを用いて、双極性障害患者におけるラピッドサイクラーと寛解状態の進行に対する患者背景および処方パターンの影響を検討した。その結果、ラピッドサイクラーと寛解状態の双極性障害患者は、相反する特徴を有し、予後に影響を及ぼす社会的背景および因子には、それぞれ特徴が認められた。著者らは、これらの臨床的な特徴を理解することは、実臨床での双極性障害患者のマネジメントに役立つであろうとしている。Frontiers in Psychiatry誌2023年5月17日号の報告。 MUSUBI研究では、日本の臨床医に対し、レトロスペクティブな医療記録調査に基づくアンケートを実施し、連続した双極性障害患者2,650例のデータを収集した。初回調査は2016年、2回目の調査は2017年に実施した。調査項目は、患者背景、現在の気分エピソード、臨床および処方の特徴に関する情報とした。 主な結果は以下のとおり。・初回調査において、対象患者の10.6%がラピッドサイクラーであり、2年連続でラピッドサイクラーであった患者は3.6%であった。・ラピッドサイクラーと関連していた因子は、双極I型障害、自殺念慮、罹病期間、炭酸リチウムおよび抗精神病薬の使用であった。・ラピッドサイクラーへの進展のリスク因子として、発達障害の併発、抗不安薬および睡眠薬の使用が挙げられた。・初回調査において、寛解状態であった患者は16.4%であり、2年連続で寛解状態であった患者は11.0%であった。・寛解状態を達成するための因子として、高齢、雇用状態、精神症状やパーソナリティ障害併発の少なさ、抗うつ薬・抗精神病薬・抗不安薬の少なさ、さらなるリチウム使用が挙げられた。

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認知症リスク、チーズとヨーグルトで関連が逆の可能性~大崎コホート

 日本人高齢者における乳製品摂取と認知症発症リスクとの関連について東北大学のYukai Lu氏らが調査したところ、総乳製品摂取量が多いほど認知症発症リスクが低いという用量反応関係は確認できなかったが、相対的に少ない摂取量(第2五分位)で認知症発症リスクが低い可能性が示された。また、乳製品別の摂取頻度と認知症発症リスクの関連については、牛乳では低い摂取頻度(月1~2回)で認知症発症リスクが低い可能性が示された。さらに、ヨーグルトでは毎日摂取すると認知症発症リスクが低い一方、チーズでは毎日摂取するとリスクが高い可能性が示唆された。European Journal of Nutrition誌オンライン版2023年6月19日号に掲載。牛乳摂取頻度が低いと認知症リスク低、チーズの毎日摂取はリスク高 著者らは、65歳以上の障害のない日本人高齢者1万1,637人を最長5.7年間(平均5.0年間)追跡した大崎コホート2006研究を用いて、認知症発症と乳製品摂取の縦断的解析を行った。牛乳、ヨーグルト、チーズの摂取量に関するデータは、有効な食品摂取頻度調査票を用いて収集した。総乳製品摂取量は、牛乳、ヨーグルト、チーズの1日摂取量の合計として算出し、男女別に5分位(低いほうからQ1~Q5)に分類した。各乳製品の摂取頻度は「摂取しない」「月1~2回」「週1~2回」「週3~4回」「ほぼ毎日」の5群に分類した。認知症発症の多変量ハザード比(HR)と95%信頼区間(95%CI)をCox比例ハザードモデルにより推定した。 牛乳、ヨーグルト、チーズの摂取量と認知症発症リスクについて調査した主な結果は以下のとおり。・5万8,013人年の追跡期間中に946人が認知症を発症した。・1次解析において、総乳製品摂取量と認知症発症リスクの関連については、Q1を基準とすると、Q2では認知症発症リスクのわずかな減少が認められた(完全調整HR:0.90、95%CI:0.73~1.10)が、Q3~Q5はQ1と同じレベルで、傾向性もみられなかった(p for trend=0.937)。このことから、低い総乳製品摂取量(Q1)で認知症発症リスクが低いことと関連している可能性が示された。・牛乳の摂取頻度と認知症発症リスクの関連については、月1~2回摂取する人は、摂取しない人と比べて認知症発症リスクが低かった(完全調整HR:0.76、95%CI:0.57~1.02)が、傾向性はみられなかった(p for trend=0.989)。このことから、低い牛乳摂取頻度(月1~2回)は認知症発症リスクが低いことと関連している可能性が示された。・ヨーグルトの摂取頻度と認知症発症リスクの関連については、毎日摂取する人で認知症発症リスクが低かった(完全調整HR:0.89、95%CI:0.74~1.09)。・一方、チーズを毎日摂取する人は認知症発症リスクが高かった(完全調整HR:1.28、95%CI:0.91~1.79)。・最初の2年間の認知症発症例を除外した感度分析での結果は1次解析結果と一致し、さらにヨーグルト摂取は認知症発症リスクと逆相関する可能性が示された(p for trend=0.025)。 本研究で示唆されたヨーグルト摂取頻度が高いと認知症発症リスクが低い可能性について、著者らは「このベネフィットがヨーグルト摂取そのものによるのか、あるいは健康的な食事パターンの一部としてなのかを確認するためには、さらなる研究が必要」としている。

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日本における抗認知症薬に関連する有害事象プロファイル

 抗認知症薬であるアセチルコリンエステラーゼ阻害薬に関連する有害事象(ADE)の発生率は、5~20%と推定されており、さまざまな症状が認められる。しかし、各抗認知症薬のADEプロファイルの違いを検討した報告は、これまでなかった。帝京大学の小瀬 英司氏らは、抗認知症薬とADEプロファイルに違いがあるかを検討した。Die Pharmazie誌2023年5月1日号の報告。 医薬品副作用データベース(JADER)に基づき、データを収集した。2004年4月~2021年10月のADEデータを分析するため、レポートオッズ比(ROR)を用いた。対象薬剤は、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンとした。最も発生頻度の高い有害事象の上位10件(徐脈、食欲不振、意識喪失、発作、変性意識状態、転倒、せん妄、嘔吐、失神、横紋筋融解症)を選択した。主要アウトカムはRORとし、副次的アウトカムは抗認知症薬に関連するADEの発現年齢および発生までの期間とした。 主な結果は以下のとおり。・70万5,294件のレポートを分析した。・ドネペジルでRORが最も高かったのは、横紋筋融解症(ROR:2.40、95%信頼区間[CI]:2.031~2.825)であり、次いで食欲不振(ROR:2.01、95%CI:1.770~2.285)、発作(ROR:1.54、95%CI:1.345~1.765)、徐脈(ROR:1.53、95%CI:1.367~1.716)、失神(ROR:1.33、95%CI:1.137~1.562)であった。・ガランタミンでRORが最も高かったのは、意識喪失(ROR:1.89、95%CI:1.643~2.183)であり、次いで徐脈(ROR:1.50、95%CI:1.321~1.713)であった。・リバスチグミンでRORが最も高かったのは、嘔吐(ROR:2.01、95%CI:1.733~2.323)であり、次いでせん妄(ROR:1.63、95%CI:1.407~1.900)、転倒(ROR:1.42、95%CI:1.219~1.647)であった。・メマンチンでRORが最も高かったのは、意識喪失(ROR:3.03、95%CI:2.634~3.480)であり、次いで転倒(ROR:3.01、95%CI:2.593~3.495)、変性意識状態(ROR:2.13、95%CI:1.823~2.480)、失神(ROR:2.05、95%CI:1.710~2.452)、発作(ROR:1.81、95%CI:1.542~2.113)、横紋筋融解症(ROR:1.68、95%CI:1.385~2.033)であった。・薬剤ごとに有害事象は発生率に違いが認められた。・徐脈、意識喪失、転倒、失神の発生率に有意な違いが認められた。・カプランマイヤーによる累積ADE発生率では、ドネペジルは発生までの時間が最も遅く、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンは、ほぼ同様であることが確認された。

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第153回 ふたたび医療崩壊の危機 新型コロナ感染拡大による病床不足深刻化/沖縄県

<先週の動き>1.ふたたび医療崩壊の危機 新型コロナ感染拡大による病床不足深刻化/沖縄県2.2024年度の診療報酬改定に向けて「かかりつけ医機能」を議論/厚労省3.認知症基本法に基づく対策の強化と推進を本格化へ/厚労省4.コロナ禍で高齢者の医療情報収集が急増、ネット利用率50%に/内閣府5.来年度の専攻医シーリングを了承-地域医療の偏在是正へ検討を進める/厚労省6.眼科医、白内障手術で賄賂受け取りの疑い 医療機器会社が関与/奈良県1.ふたたび医療崩壊の危機 新型コロナ感染拡大による病床不足深刻化/沖縄県沖縄県では新型コロナウイルスの感染拡大により入院患者が増加し、病床不足が深刻化している。すでに救急を一部制限している医療機関が7ヵ所の他、一般医療の制限もかけている医療機関が3ヵ所になっており、医療従事者は、「今後、必要な医療を受けられなくなる可能性がある」と警告している。沖縄県立中部病院では、人手不足と病床の不足から救急外来を制限しており、他の病院と連携して対応しているが、すでに限界に近い状況であり、さらなる感染拡大で他の病気に対応できなくなる恐れがある。石垣島の沖縄県立八重山病院では、コロナ専用病床が満床となり、感染者が急増していることから医療破綻の危機に直面している。住民に対しては感染防止対策の徹底を呼びかけている。沖縄県全体でも新型コロナの患者数が前週比で1.5倍に増え、患者の搬送先を探すのに時間がかかるケースも出ている。医療提供体制のひっ迫が進んでおり、救急診療や一般診療の制限も行われている。県内の医療機関では医療従事者の感染や勤務困難者も増加しており、深刻な状況が続いている。県は軽症の場合は救急受診を控えるよう呼びかけている。参考1)沖縄がコロナ拡大で救急制限 入院500人超え、搬送が困難な事例も増加「ぎりぎりの総力戦」(琉球新報)2.2024年度の診療報酬改定に向けて「かかりつけ医機能」を議論/厚労省厚生労働省は、6月21日に中央社会保険医療協議会の総会を開催した。この中で2024年度の診療報酬改定に向けて、外来医療の評価について議論を始めた。地域医療の提供体制を整備するために、診療所などの「かかりつけ医機能」を強化し、医療機関の役割分担と連携を後押しすることが目標。議論の中では「かかりつけ医機能」に加えて、生活習慣病対策やオンライン診療についても検討される。また、2025年4月からは診療所や病院が「かかりつけ医機能」の整備状況を報告する新制度が開始される。今後、同省内で制度の具体的な評価内容が検討され、診療報酬における評価も議論、来年春の診療報酬改定で具体化される見通し。参考1)中央社会保険医療協議会 総会(厚労省)2)「かかりつけ医機能」推進の議論始まる 介護との連携強化などがテーマに(CB news)3)かかりつけ医機能は「地域の医療機関が連携して果たす」べきもの、診療報酬による評価でもこの点を踏まえよ-中医協総会(1)(Gem Med)3.認知症基本法に基づく対策の強化と推進を本格化へ/厚労省6月14日に参議院本会議で厚生労働省提出の「認知症基本法」が全会一致で可決・成立した。同省では、この法律に基づいて、認知症患者への対策の強化と推進を目指し、基本計画の策定に向けた検討を本格化させることが明らかになった。同法は、認知症の人が暮らしやすい環境を整えるため、国や自治体の取り組みを定めており、法律では、認知症の人が尊厳を保持し、希望を持って暮らせるよう、認知症施策推進本部の設置や交通手段の確保、地域での見守り体制整備などを求め、課題の整理と政策について検討を年末までに行う予定。今後、増えていく認知症について、国民の理解促進や若年性アルツハイマー患者の就労機会の確保、脳科学の研究などが論点となる見通し。同省の研究班による推計では、認知症は増加傾向であり、2025年には高齢者の5人に1人が認知症になる見込み。参考1)認知症基本法案(衆議院)2)政府 認知症対策の検討本格化へ 若い患者が働ける機会確保など(NHK)3)参院本会議 認知症基本法が成立 国や自治体の取り組み定める(同)4.コロナ禍で高齢者の医療情報収集が急増、ネット利用率50%に/内閣府内閣府は6月20日に、令和5年版「高齢社会白書」閣議決定を行い、高齢者のインターネット利用に関するデータを発表した。この中で、新型コロナウイルスの感染拡大により、高齢者の間でネット利用が急速に広まったことが明らかになった。政府が実施した調査によれば、65歳以上の高齢者のうち、医療や健康に関する情報をインターネットで調べる人の割合が2022年には50.2%に達し、5年前の調査結果の20.0%から大幅に増加していた。高齢者がネットで調べる内容は、病気に関する情報が最も多く、39.0%を占めていた。具体的には、病名や症状、処置方法についての情報収集が主な目的。その他、医療機関や薬の効果や副作用、自分でできる運動やマッサージの方法などについてもネットで調べる割合が増えていることが明らかとなった。政府は、新型コロナウイルスの感染拡大により人との直接的な接触が制約されたため、高齢者にとってインターネットが重要な情報収集手段となったと分析している。政府は、この結果を踏まえて高齢者の情報アクセスの向上策やインターネット利用の支援策を検討していく方針。参考1)令和5年版高齢社会白書[全体版/PDF版](内閣府)2)ネット使う高齢者、コロナ前の20%から50%に急増…医療機関や病気の症状調べる(読売新聞)3)ネットで医療情報調べる高齢者、コロナ禍前の2.5倍に 23年版の高齢社会白書(CB news)5.来年度の専攻医シーリングを了承-地域医療の偏在是正へ検討を進める/厚労省厚生労働省は、6月22日に医道審議会医師分科会の医師専門研修部会を開催し、24年度の専攻医採用のシーリング(最大採用数)について、日本専門医機構の提案を了承した。既存のプログラムについては、23年度と同じシーリング数とすることが決まり、厚労省や都道府県知事の意見も検討する。今後、審査を経て、12月から専攻医の募集が開始される予定。専攻医の採用については、地域の医師や診療科の偏在を是正するために、都道府県や診療科ごとにシーリングが設けられており、2023年度の専攻医採用では、東京や京都、大阪、福岡などが対象となっていた。部会では、地域医療を守るためにシーリングを維持する必要があるとの指摘があり、医師の偏在が解消されるよう、さまざまな角度から検証するよう求める意見も出された。また、シーリング開始後全国で人口当たりの専攻医数は増加傾向にあり、診療科別では「総合診療科」「救急科」の医師は増加しているが、「外科」「内科」では苦戦していることが明らかになった。参考1)2024年度からの新専門医制度研修を受ける専攻医、募集遅らせるわけにいかず「現行シーリングを維持」したい-専門医機構(Gem Med)2)令和5年度第1回医道審議会医師分科会 医師専門研修部会(厚労省)4)日本専門医機構 2024年度プログラム募集シーリング数[案](同)6.眼科医、白内障手術で賄賂受け取りの疑い 医療機器会社が関与/奈良県奈良県の公立病院の眼科医が、白内障の手術で使用する眼内レンズを優先的に使う見返りに現金80万円を受け取った疑いで書類送検された。大阪府警によると、この医師が2019年から2021年にかけて3回にわたり、医師名義の口座に現金を振り込ませたため、収賄疑いで書類送検した。さらに大阪府警はこの医師の他に、医療機器会社「スター・ジャパン」の役員ら5人も書類送検した。府警は、医師と会社との間での契約期間中に使用されるレンズの割合が異常に高かったため、現金はレンズの売り上げ確保のための賄賂だったと判断した。 この問題は、全国の総合病院などの眼科医が同社に対し手術動画を提供し、現金を受け取っていた問題から発展している。医療機器業公正取引協議会は、同社に厳重警告を行っており、大和高田市立病院は事実関係を確認し、市との対応を協議する意向。スター・ジャパンは捜査に全面的に協力し、再発防止のためのコンプライアンス強化策を実施するとコメントしている。参考1)報道の件に関して (スター・ジャパン合同会社)2)手術動画の提供医を書類送検 医療機器会社役員ら5人も(東京新聞)3)大和高田市立病院の眼科医 医療機器使用で収賄疑い 書類送検(NHK)

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双極性障害患者の入院期間に影響を及ぼす要因

 双極性障害患者の入院期間やそれに影響を及ぼす因子を特定するため、 中国・首都医科大学のXiaoning Shi氏らは、本検討を行った。その結果、入院期間の長い双極性障害患者は、自殺リスクが高く、複雑な多剤併用が行われていた。入院期間を短縮するためには、うつ病エピソードの適切な管理と機能的リハビリテーションが有用な可能性がある。Frontiers in Psychiatry誌2023年5月19日号の報告。 双極I型障害またはII型障害患者を対象に多施設共同観察コホート研究を実施した。2013年2月~2014年6月に中国6都市、7施設より募集した外来患者520例を、継続的なサンプリングパターンを用いてフォローアップ調査を行った。本研究は、12ヵ月のレトロスペクティブ期間と9ヵ月のプロスペクティブ期間で構成された。対象患者の人口統計学的特徴および臨床的特徴を収集した。入院期間(プロスペクティブ期間の入院日数)の影響を及ぼす因子の分析には、ポアソン回帰を用い、入院期間(レトロスペクティブおよびプロスペクティブ期間)の分析には、線形回帰分析を用いた。性別、年齢、教育年数、職業的地位、在留資格、精神疾患の家族歴、薬物乱用の併存、不安障害の併存、自殺企図の回数(レトロスペクティブおよびプロスペクティブ期間での発生回数)、初回エピソード特性、双極性障害のタイプ(I型またはII型)を変数として用いた。 主な結果は以下のとおり。・ポアソン回帰分析では、入院期間と相関が認められた因子は、自殺企図の回数(発生率[IRR]:1.20、p<0.001)、抗精神病薬の使用(IRR:0.62、p=0.011)、抗うつ薬の使用(IRR:0.56、p<0.001)であった。・線形回帰分析では、うつ病エピソード期間の長期化や機能低下と関連する可能性のある双極II型障害(β:0.28、p=0.005)および失業(β:0.16、p=0.039)は、長期入院との関連が認められた。・自殺企図の回数と短期入院との間に関連傾向が認められた(β:-0.21、p=0.007)。・自殺リスクの高い患者では、治療が不十分、コンプラインアンス不良の傾向があるため、入院中に適切に評価し、治療を行う必要がある。

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抗うつ薬治療抵抗性うつ病患者における双極性障害への進展

 これまでの研究で、抗うつ薬耐性と双極性障害への進展には正の相関があるといわれている。しかし、この関連性に対する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などの抗うつ薬クラスの影響は、まだ調査されていない。台湾・国立陽明交通大学のJu-Wei Hsu氏らは、これらの関連性を評価するため本検討を行った。その結果、青少年から若年成人の抗うつ薬治療抵抗性うつ病患者、とくにSSRIとSNRIの両方に対して治療反応が不十分な患者では、その後の双極性障害リスクが有意に高いことが確認された。European Neuropsychopharmacology誌2023年9月号の報告。 対象は、青少年から若年成人の抗うつ薬治療抵抗性うつ病患者5,285例(治療抵抗性うつ病群)、抗うつ薬で治療反応が認められたうつ病患者2万1,140例(反応群)。治療抵抗性うつ病群は、SSRIのみに抵抗性を示した群(2,242例、42.4%)と非SSRIにも抵抗性を示した群(3,043例、57.6%)に分けられ、サブグループ解析を実施した。双極性障害への進展は、うつ病と診断された日から2011年末までフォローアップを行った。 主な結果は以下のとおり。・治療抵抗性うつ病群は、反応群と比較し、フォローアップ期間中に双極性障害を発症する可能性が高かった(ハザード比[HR]:2.88、95%信頼区間[CI]:2.67~3.09)。・非SSRIにも抵抗性を示した群では双極性障害リスクが最も高く(HR:3.02、95%CI:2.76~3.29)、次いで同リスクが高かったのはSSRIのみに抵抗性を示した群(HR:2.70、95%CI:2.44~2.98)であった。・SSRIおよびSNRIに対する耐性およびその後の双極性障害への進展についての分子病態メカニズムを解明するためには、さらなる研究が求められる。

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日本の統合失調症治療における向精神薬の併用~EGUIDEプロジェクト

 統合失調症のガイドラインでは、抗精神病薬の単剤療法が推奨されているが、長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬で治療中の患者では、経口抗精神病薬が併用されることが少なくない。九州大学の鬼塚 俊明氏らは、LAIまたは経口の抗精神病薬で治療を行った日本の統合失調症患者を対象に、向精神薬の使用状況を詳細に調査した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2023年5月23日号の報告。 全国94施設が参加する「精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)」のデータを用いて、分析を行った。対象は、2016~20年に入院治療を行った後、退院した統合失調症患者2,518例。LAI群(263例)には、いずれかのLAI抗精神病薬で治療を行った患者を含み、非LAI群(2,255例)には、退院時に経口抗精神病薬を使用していた患者を含めた。 主な結果は以下のとおり。・LAI群は、非LAI群と比較し、抗精神病薬の多剤併用率、抗精神病薬の数、クロルプロマジン等価換算量が有意に高かった。・対照的に、LAI群は、非LAI群よりも睡眠薬および/または抗不安薬の併用率が低かった。 著者らは、「これらのリアルワールドの臨床結果を提示することで、とくにLAI群では抗精神病薬の併用を減らし、非LAI群では睡眠薬や抗不安薬の併用を減らすことにより、統合失調症治療において単剤療法を念頭に置くことを臨床医に対して奨励したい」としている。

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辛い食物とアルツハイマー病関連の認知機能低下との関係

 アルツハイマー病または認知機能低下と辛い食物摂取や身体活動とは、関連があるといわれているが、その調査は十分に行われていない。韓国・順天郷大学校のJaeuk Hwang氏らは、身体活動の緩和効果の条件下における辛い食物とアルツハイマー病関連の記憶力低下または全体的な認知機能低下との関連を調査した。その結果、辛い食物摂取は、アルツハイマー病関連の認知機能低下(エピソード記憶)の予測因子であり、とくに身体活動量の低い高齢者では悪化する可能性があることを報告した。Scientific Reports誌2023年5月16日号の報告。 対象は、認知症でない高齢者196人。対象者の辛い食物摂取、アルツハイマー病関連の記憶および全体的な認知機能、身体活動などを含む包括的な食事と臨床評価に関するデータを収集した。辛さは、「辛くない(対照)」「少し辛い」「非常に辛い」の3段階に層別化し、独立変数として分析に用いた。辛さのレベルと認知機能との関連を評価するため、重回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・辛さレベル別の割合は、「辛くない」93人、「少し辛い」58人、「非常に辛い」45人であった。・高レベルの辛さは、対照群と比較し、記憶力低下(β=-0.167、p<0.001)または全体的な認知機能低下(β=-0.122、p=0.027)と有意な関連が認められたが、記憶力以外では認められなかった。・6つの変数(年齢、性別、アポリポ蛋白Eε4対立遺伝子陽性率、血管リスクスコア、BMI、身体活動)を追加し、辛さレベルと記憶または全体的な認知機能との関連を緩和する効果を調査するため、重回帰分析を繰り返した。・身体活動には、高レベルの辛さと記憶(β=0.209、p=0.029)または全体的な認知機能(β=0.336、p=0.001)の影響に対する緩和効果が検出された。・サブグループ解析では、高レベルの辛さと記憶(β=-0.254、p<0.001)および全体的な認知機能(β=-0.222、p=0.002)の低下との関連は、身体活動量の低い高齢者でみられるものの、身体活動量の多い高齢者では認められなかった。

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円形脱毛症の母親の出生児が抱えるリスクとは?

 韓国・延世大学校のJu Yeong Lee氏らが実施した後ろ向き出生コホート研究において、円形脱毛症(AA)を有する母親から出生した児は、AAに関連する併存疾患リスクが高いことが示された。母親のAAと児の自己免疫疾患や炎症性疾患、アトピー性疾患、甲状腺機能低下症、精神疾患の発症に関連がみられ、著者は「臨床医や保護者は、これらの疾患が発生する可能性を認識しておく必要がある」と述べている。AAは自己免疫疾患や精神疾患と関連することが知られているが、AAを有する母親の児に関する長期アウトカムの調査は不足していた。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年5月24日号掲載の報告。 研究グループは、韓国の全国健康保険サービス(Nationwide Health Insurance Service)のデータベースと、出生登録データベースを用いて後ろ向き出生コホート研究を実施した。 対象は、2003~15年にAA(ICD-10コードL63に基づく)を診断名として3回以上受診した母親から出生したすべての児6万7,364例(AA群)と、AAと診断されていない母親から出生した児(対照群)67万3,640例であった(1対10の割合で、出生年、性別、保険の種類、所得レベル、居住地をマッチング)。 対象児について出生から2020年12月31日まで追跡し、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患、甲状腺疾患、精神疾患の発症※と母親のAAとの関連について、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて評価した(共変量:出生年、年齢、保険の種類、所得レベル、居住地、母親の年齢、分娩形態、母親のアトピー性皮膚炎の既往歴、自己免疫疾患の既往歴)。解析は、2022年7月~2023年1月に行った。※:AA、全頭型脱毛症/汎発型脱毛症(AT/AU)、白斑、乾癬、炎症性腸疾患(IBD)、関節リウマチ(RA)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、バセドウ病、橋本病、注意欠如・多動症(ADHD)、気分障害、不安症の発症。 主な結果は以下のとおり。・AA群は対照群と比較して、以下の発症リスクが有意に高かった。 -AA(調整ハザード比[aHR]:2.08、95%信頼区間[CI]:1.88~2.30) -AT/AU(同:1.57、1.18~2.08) -白斑(同:1.47、1.32~1.63) -アトピー性疾患(同:1.07、1.06~1.09) -甲状腺機能低下症(同:1.14、1.03~1.25) -精神疾患(同:1.15、1.11~1.20)・AA群のうち、AT/AUを有する母親から生まれた児5,088例は、AT/AU(aHR:2.98、95%CI:1.48~6.00)および精神疾患(同:1.27、1.12~1.44)の発症リスクが高かった。

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不眠症の第一選択薬~日本の専門家コンセンサス

 睡眠障害の治療に関する臨床的疑問(クリニカル・クエスチョン)に対し、明確なエビデンスは不足している。琉球大学の高江洲 義和氏らは、1)臨床状況に応じた薬物療法と非薬物療法の使い分け、2)ベンゾジアゼピン系睡眠薬の減量または中止に対する代替の薬物療法および非薬物療法、これら2つの臨床的疑問に対する専門家の意見を評価した。その結果、専門家コンセンサスとして、不眠症治療の多くの臨床状況において、オレキシン受容体拮抗薬と睡眠衛生教育を第一選択とする治療が推奨された。Frontiers in Psychiatry誌2023年5月9日号の報告。不眠症の第一選択薬、入眠障害に対するレンボレキサントなどを推奨 睡眠障害の専門家196人を対象に、不眠症に関する10項目の臨床的疑問に基づいた、治療法を選択するアンケート調査を実施した(9段階リッカート尺度:1[反対]~9[同意])。回答は、推奨事項に応じて第一選択、第二選択、第三選択に分類した。 主な結果は以下のとおり。・主な不眠症薬物療法の第一選択薬では、入眠障害に対するレンボレキサント(7.3±2.0)、中途覚醒に対するレンボレキサント(7.3±1.8)およびスボレキサント(6.8±1.8)が推奨された。・主な非薬物療法では、睡眠衛生教育が入眠障害(8.4±1.1)および中途覚醒(8.1±1.5)の第一選択、多要素認知行動療法が入眠障害(5.6±2.3)および中途覚醒(5.7±2.4)の第二選択として推奨された。・他剤切り替えによるベンゾジアゼピン系睡眠薬の減量または中止では、レンボレキサント(7.5±1.8)およびスボレキサント(6.9±1.9)が第一選択薬として推奨された。

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アルツハイマー病治療薬lecanemabの安全性・有効性~メタ解析

 アルツハイマー病に対するlecanemabの有効性および安全性を評価するため、中国・Shengjing Hospital of China Medical UniversityのYue Qiao氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。その結果、実臨床における意義は確立していないものの、lecanemabは、早期アルツハイマー病患者の認知機能、行動に対し有効性を示すことが報告された。Frontiers in Aging Neuroscience誌2023年5月5日号の報告。 2023年2月までに公表された軽度認知障害またはアルツハイマー病患者における認知機能低下に対するlecanemab治療を評価したランダム化対照比較試験を、PubMed、Embase、Web of Science、Cochraneより検索した。臨床的認知症重症度判定尺度(CDR-SB)、Alzheimer's Disease Composite Score(ADCOMS)、AD Assessment Scale-Cognitive Subscale(ADAS-Cog)、臨床的認知症尺度(CDR)、アミロイドPET SUVr、PETにおけるアミロイド負荷、有害事象リスクに関するアウトカムを収集した。 主な結果は以下のとおり。・アルツハイマー病患者3,108例(lecanemab群:1,695例、プラセボ群:1,413例)を含む4件のランダム化比較試験のデータを用いて、メタ解析を実施した。・ベースライン特性は、lecanemab群においてApoE 4ステータスおよびMMSEスコアの高さが認められた。その他の項目は、両群間で類似していた。・早期アルツハイマー病患者に対するlecanemab群の各アウトカムは、プラセボ群と比較し、以下のとおりであった。 ●CDR-SB(加重平均差[WMD]:-0.45、95%信頼区間[CI]:-0.64~-0.25、p<0.00001) ●ADCOMS(WMD:-0.05、95%CI:-0.07~-0.03、p<0.00001) ●ADAS-Cog(WMD:-1.11、95%CI:-1.64~-0.57、p<0.0001) ●アミロイドPET SUVr(WMD:-0.15、95%CI:-0.48~0.19、p=0.38) ●PETにおけるアミロイド負荷(WMD:-35.44、95%CI:-65.22~-5.67、p=0.02) ●有害事象(1つ以上のTEAEが認められた患者)(オッズ比[OR]:0.73、95%CI:0.25~2.15、p=0.57) ●ARIA-E(アミロイド関連画像異常-浮腫/浸出)(OR:8.95、95%CI:5.36~14.95、p<0.00001) ●ARIA-H(アミロイド関連画像異常-脳微小出血、脳出血、脳表ヘモジデリン沈着)(OR:2.00、95%CI:1.53~2.62、p<0.00001)

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第164回 ワクチン否定派がコロナワクチン接種に踏み切った、ある薬の功罪

先日、久しぶりに会った友人から次のように言われた。「半年ほど肩こりがひどかったんだけど、近くのクリニックに行って薬をもらって飲んだら、驚くほど良くなってさ。本当にびっくり。いつもお前(筆者)に『薬を不当に悪者にするな』と言われていたけど、その意味がよくわかった」ちなみにこの友人は大の医療機関嫌い、薬嫌いである。もちろんワクチンはもってのほかという人物である。ただし、余計なワクチン陰謀論にはまっていないことだけは唯一の救いでもある。約1年前に会った時は新型コロナウイルス感染症のワクチンも接種していなかったが、この肩こりが治ったのを機に新型コロナワクチンを接種したと聞いて驚いた。これほど人は変わるものかと思いながら話を聞いていると、彼が微妙に引っかかることを口にした。「その肩こりの薬がすごいのよ。気分もすっきりしてさ」嫌な予感がした。さりげなく、どのような薬を飲んでいるのかを尋ねてみると、ごそごそとカバンから取り出して見せてくれた。ああ、やっぱりか。2錠ほどすでに服用済みのシートには、はっきりと「デパス0.5mg」と印刷されていた。精神安定薬のデパスこと、エチゾラムという薬そのものに罪はないし、個人的にもまったく恨みつらみもない。しかし、本連載の読者にはもはや言うまでもなく、依存をはじめとする問題が少なくない薬である。「うん? どうした? なんかまずい薬?」友人は私の表情の変化に気付いてしまったらしい。私がとっさに「まあ、効果が強めの薬だからね。肩こりが治ったのなら、次の受診の時に先生と話して、薬を終わりにするのも選択肢の1つかな」と言ったのに対し、「うん、そのつもり。治ったのに薬を飲み続ける必要もないしね」とにっこり笑ったのを見て、少し安堵した。しかし、非医療従事者と医療の話をするのは本当に難しい。とりわけこの友人のように医療不信を根底に抱えた人だと余計に気を遣う。しかも、この薬がきっかけで、今まで拒否していた新型コロナワクチンの接種まで至ったならば、なおさらである。そんなこんなで久しぶりにNDBオープンデータを開いてみた。最新の令和2年度のレセプト情報によると、デパスの汎用規格である0.5mg錠の外来(院外)処方量は約2億5,334万錠。同データの精神神経用剤の分類では堂々の第1位である。この数字は年々減少してはいるが、ジェネリック品(以下、GE)で最も処方が多いエチゾラム錠0.5mg「トーワ」の外来(院外)処方量が約9,830万錠であり、先発品であるデパスはダブルスコアで上回っている。昨今のGE使用促進策、とくに後発医薬品調剤体制加算の影響で処方量の多い薬ほどGEに切り替えが進んでいる。GE登場から約半年で、数量ベースで先発品の約7割がGEに置き換わるというアメリカ市場に限りなく近い状況が日本でも珍しくなくなった。にもかかわらず、デパスについてはこの“有様”である。念のためNDBオープンデータをざっと眺めまわしてみたが、GE登場から10年以上経過してもなお、先発品の処方量が、同一規格で適応症も同じGEの最多処方量の銘柄を上回っているのはデパスと認知症治療薬のアリセプトD錠5mg(一般名・ドネペジル)くらいだ。実際、過去に私がデパスの依存性問題を取材した際、「この薬の場合、GEに切り替えようとしても服用者が拒否をしがち。『デパスという名前が入っていないと嫌』とまで言われる」という趣旨の話を複数の薬剤師から聞かされている。まさにこれこそ依存の極みと言っても過言ではないだろう。そしてNDBオープンデータの性別・年齢別の処方量を見ると、相変わらず70~80代前半にボリュームゾーンがある。ざっくり言えば、現役世代の頃に服用し始めた人が依存性のために止められず、キャリーオーバーしていると捉えるのが最も妥当な解釈だろう。しかし、肩こりを訴えた現役世代にポンとこの種の薬が処方されてしまう現象がいまだあることにはやや首をかしげざるを得ない。そんなこんなをつらつら思ってしまったのは、厚生労働省で6月12日に開催された「医薬品の販売制度等に関する検討会」での議論に関する報道を目にしたからである。報道によると、同検討会では若年者で増加しているOTC薬の鎮咳薬や総合感冒薬の濫用問題に関して、防止策としてこれらOTC薬の“小包装化”を厚生労働省が提案。これに賛同する医師側委員などと、家庭内常備薬として大包装販売を訴える販売者側が意見対立したというもの。厚生労働省の提案には一理あるが、改めてこのデパスの問題に遭遇し、データで現実を俯瞰すると、それと同時というか、むしろその前にやらなければならないことがあるのでは? と思うのだが。

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急速に進行する認知症(後編)【外来で役立つ!認知症Topics】第6回

急速に進行する認知症(後編)「うちの家族の認知症は進行が速いのでは?」と問われる付き添い家族の対応には、とくに注意して臨む。筆者が働く認知症専門のクリニックでよくある急速進行性認知症(RPD:Rapid Progressive Dementia)は、やはり基本的にアルツハイマー病(AD)やレビー小体型認知症(DLB)が多いようだ。こうした質問に対する説明では、次のようにお答えする。まず変わった治療や指導法をしているわけではないこと。また一言でADやDLBと言っても、進行速度などの臨床経過は多彩であること。そのうえで、処方薬の変更などの提案をする。しかし、時に難渋する例がある。それは、aducanumabやlecanemabなど新規薬の治験を行っている症例が、たまたまRPDだったと考えざるを得ないケースである。こちらが何を言おうと、ご家族としては治験薬に非があるという確固とした思いがある。筆者は経験的に、ADでは個人ごとにほぼ一定の進行速度があり、肺炎や大腿骨頸部骨折などの合併症がない限りは、速度はそうそう変わらないと思ってきた。つまり、固有の速さでほぼ直線的に落ちると考えていた。今回、RPDを論じるうえで、改めてADの臨床経過を確認してみた。まずあるレビュー論文によれば、認知機能の低下具合は、病初期はゆっくりと立ち上がり、その後ほぼ直線的に経過し終末期には水平に近づくことが示されていた1)。次に神経心理学所見のみならず、バイオマーカーの観点からも、ADの経過の多彩性を扱った論文があった。ここでは、「代償的なメカニズムも働くが、進行具合は遺伝子が強く規定している」と述べられていた2)。とすると、筆者の経験則は「当たらずとも遠からず」であろう。単純にADもしくはDLBで急速悪化する例では、その速度はプリオン病ほど速くはないが、半年ごとの神経心理学テストで、「えーっ、こんなに低下した?」と感じる。こういうケースは一定数あるし、そんな例にはこれという臨床的な特徴がないことが多いと思ってきた。それだけに低下速度は遺伝子により強く規定されているという報告には、なるほどと思う。そうはいっても、RPDのADには中等度から強度のアミロイドアンギオパチーが多いと述べられていた。このことは、血管障害が発生する危険性が高いと解釈される。なお有名なAPOE4遺伝子の保有との関りも述べられていたが、非RPDのものと変わらないとする報告が多く、なかには有意に少ないとする研究もあるとのことであった。ADに別の疾患を併発することで急速悪化することもADなどの変性疾患に別の疾患が加わることもある。上に述べた脳血管障害や硬膜下血腫の場合には、かなり急性(秒から週単位)に悪化する。麻痺や言語障害など目立った神経学的徴候があればわかりやすいが、必ずしもそうではない。また、せん妄など意識障害が前景に立つ場合も少なくない。こうした例では、せん妄の特徴である急性増悪と意識障害の変動への注目が重要である。次に、正常圧水頭症は、潜行性に失禁、歩行障害が現れてくる。その「いつの間にか」の進行ゆえに、ある程度長期に診ていると、逆に合併の出現には気付きにくくなることに要注意である。一方であまり有名でないが、よく経験するのが夏場の熱中症、あるいは脱水である。7月の梅雨明け頃から9月下旬にかけて、「このごろ急に認知症が悪化した」とご家族が申告される例は多い。主因は、当事者が暑いと感じにくくなっていて窓開けやエアコン使用など環境調整ができないこと、また高齢化とともに進行しがちな喉の渇きを感知しにくくなることによる水分摂取の低下である。典型的な熱中症ではない、比較的軽度な例が多いので、家族からは「認知症が最近になって悪化した」と訴えられやすい。なお初歩的かもしれないが、若い時からうつ病があった人では、老年期に至って新たなうつ病相が加わることがある。これが半年から1年も続くとRPDと思われるかもしれない。ごくまれながら、認知症に躁病が加重されることもあって、周囲はびっくりする。なお誤嚥性肺炎、複雑部分発作のようなてんかんもRPDに関与しうる。どのように悪化したかを聞き出すことが第一歩さて、これまでADやDLBとして加療してきた人が、RPDではないかと感じたり、家族から訴えられたりした時の対応が問題である。多くの家族は「悪化した、進んだ」という言い方をされるので、何がどのように悪いのかを聞き出すことが第一歩だろう。普通は記憶や理解力などの低下だろうが、たとえば正常圧水頭症が加わった場合なら、失禁や歩行障害という外から見て取れる変化なのかもしれない。次に治療法の変更は、本人や家族が安心されるという意味からもやってみる価値があるだろう。まずは薬物の変更、あるいは未使用ならデイサービス、デイケアも有効かもしれない。さらに大学病院の医師等への紹介という選択肢もある。それには、まずプリオン病など希少疾患の検索依頼の意味がある。またADのRPDかと思われるケースでは、認知症臨床に経験豊かな先生に診てもらうことは、患者・家族のみならず、非専門医の先生にとっても良いアドバイスが得られるだろう。参考1)Hermann P, et al. Rapidly progressive dementias - aetiologies, diagnosis and management. Nat Rev Neurol. 2022;18:363-376.2)Koval I, et al. AD Course Map charts Alzheimer’s disease progression. Sci Rep. 2021 13;11:8020.

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