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NHKドラマ「フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話」(中編)【そもそもなんで私たちは噂好きなの?じゃあこれから情報にどうする?(メディアリテラシー)】Part 2

これから情報にどう向き合っていけばいいの?噂好きの心理の起源は、人類が原始の時代に集団の適応度を高めるために、フリーライダーをあぶり出すことであったことがわかりました。そして、噂(情報)の信憑性と出どころに鈍感なのは、原始の時代の社会は閉ざされていて嘘の噂を流すのが難しいことから、そもそもその信憑性や出どころを疑う必要がなかったからでした。これを踏まえて、私たちはフェイクニュースをはじめ、情報にどう向き合っていけば良いでしょうか? ここから、その注意点(メディアリテラシー)を主に2つ挙げてみましょう。(1)信憑性(証拠)樹は上司に「『青虫うどんの真相?』って、真相が記事の中身に書かれていないのに、完全な釣りタイトルです。語尾に?をつければ許されるってものじゃありません」と怒りをぶつけていました。自分の記事のタイトルが、上司の指示で書き換えられていたのでした。これは、タイトルの情報に根拠がない状態です。1つ目の注意点は、その情報は確かなのか、つまり信憑性(証拠)です。断定するわりに根拠が書かれていなかったり、専門家の経験則、歴史上の偉人の名言の引用、ことわざだけを根拠としている情報は、信頼性が低いと言わざるを得ないでしょう。(2)出どころ(情報源)樹は上司や同僚たちに「うち(イーストポスト)の記事が広がらない理由の1つに、こんな声があります。『イーカゲンポストの記事なんで信じない』」と言い、公式アカウントへの返信を見せます。そして、「これまでのツケです」と続けます。釣りタイトルばかり書いていたため、信頼されなくなっていたのでした。2つ目の注意点は、その情報は誰が伝えているのか、つまり出どころ(情報源)です。匿名であったり、まさに「イーカゲン」な(ファクトの乏しい)情報を伝えるような組織は、信頼性が低い情報源であると評価する必要があります。先ほどにも触れたように、「狼少年」を検知する心を発動させる必要があります。たとえば、そのような記事サイトには「この記事を表示しない」というブロック機能を利用することができます。もちろん、ファクトチェックがAIで自動化されることも望まれます。サブタイトル「あるいはどこか遠くの戦争の話」とは?インスタントうどん青虫混入事件は、難民問題の是非にまで発展してしまい、本質から「遠ざかって」いきます。そして、選挙戦で有権者同士の暴動を引き起こします。これが、「どこか遠くの戦争」の意味でしょう。SNSの進歩によって、私たちはよりつながって団結するのではなく、逆に分断されていくという皮肉が込められているようです。情報とは、原始の時代ではフリーライダーをあぶり出して部族をより団結させる装置であったはずなのに、現代では逆にフリーライダーに利用され社会を分断させる武器になってしまいました。情報伝達は単なる機能にすぎませんが、それが使われる社会構造が代わってしまったことを私たちは今よく理解する必要があります。原始の時代の私たちの心のデフォルトは、真偽不明なものであっても、それを集団で信じることでした。その最たるものが、「神がいる」という教えです。よくよく考えると、誰も神を見た人がおらず、まったく根拠がなく、その存在を証明できません。合理的に考えれば、これほどおかしな情報はありません。それでも、世界中で多くの人に広く受け入れられているのは、実は、宗教もまた社会(集団)をまとめるための文化的な装置(機能)だからでしょう。なお、この宗教の起源の詳細については、関連記事7をご覧ください。キャッチフレーズ「全てが真実になり、全てが真実でない時代だ」の意味とは?進化心理学的に考えれば、情報伝達の一番の機能とは、本来社会をうまくまとめることであり、真実を追究することそのものではないことがわかります。この点で、「破壊的な噂」(フェイクニュース)が世界を動かすようになった現代において、もはや「これからの真実」(ポスト真実)とは、事実がどうだったかという客観性ではなく、その事実をどう感じたかという主観性に重きが置かれるようになっていくという指摘には納得がいきます。これが、「全てが真実になり、全てが真実でない時代だ」というキャッチフレーズの意味でしょう。樹は編集長の上司を説得しようと、「おまえらネットメディアだって金儲けのためにやってるんだろって言われても、伝えることを伝えるのが私たちの義務です。どんな媒体だろうとそれが記者の務めです」「嘘がまかり通る社会を(編集長の)娘さんに残したいですか?」と訴えます。このセリフは、今この瞬間に自分が得するかという個人的な視点ではなく、これから先の未来に自分たちの子供が幸せになれるかという社会的な視点が込められています。このドラマを通して、世界が分断されるのではなく、再び団結できるような「建設的な噂」(メディアリテラシー)を私たち一人ひとりが分かち合う必要性に気付かされます。3)社会心理学P34:山岸俊男(監)、新星出版社、20114)人はなぜだまされるのかP114:石川幹人、講談社、2011<< 前のページへ■関連記事映画「アバター」【私たちの心はどうやって生まれたの?(進化心理学)】Part 1万引き家族(前編)【親が万引きするなら子供もするの?(犯罪心理)】Part 3ミスト(前編)【信じ込む心(宗教)】

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高齢者の片頭痛患者に対する抗CGRP抗体の安全性・有効性

 抗CGRPモノクローナル抗体は、片頭痛治療において顕著な有効性および忍容性が認められているが、高齢者に対する使用データについては、臨床試験では暗黙の年齢制限があり、リアルワールドのエビデンスも限られていることから、十分であるとは言えない。スペイン・バルセロナ大学のAlbert Munoz-Vendrell氏らは、65歳以上の片頭痛患者を対象に抗CGRPモノクローナル抗体であるエレヌマブ、ガルカネズマブ、フレマネズマブの安全性および有効を評価するため、検討を行った。その結果、リアルワールドにおける65歳以上の片頭痛患者に対する抗CGRPモノクローナル抗体による治療は、安全かつ効果的な治療法であることを報告した。The Journal of Headache and Pain誌2023年6月2日号の報告。 本研究は、スペインの頭痛治療施設18施設からプロスペクティブにデータを収集し、レトロスペクティブに分析を実施した観察研究である。対象は、抗CGRPモノクローナル抗体による治療を開始した65歳以上の片頭痛患者。主要エンドポイントは、治療6ヵ月後の1ヵ月当たりの片頭痛に数の減少および副作用の発生とした。副次的エンドポイントは、頭痛の軽減、治療3ヵ月および6ヵ月後の薬剤投与頻度、治療反応率、患者報告による転帰の変化、治療中止理由とした。サブ分析として、1ヵ月当たりの片頭痛日数の減少と副作用発現率を薬剤間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は162例(年齢中央値:68歳、範囲:65~87歳、女性の割合:74.1%)であり、脂質異常症(42%)、高血圧症(40.3%)、糖尿病(8%)、心血管虚血性疾患(6.2%)などの既往歴が認められた。・治療6ヵ月後の1ヵ月当たりの片頭痛の数の減少は、10.1±7.3日であった。・副作用が認められた患者の割合は25.3%、いずれも軽症で、血圧上昇は2例のみであった。・患者報告では、頭痛および薬剤の投与頻度の有意な減少が報告され、転帰の改善が認められた。・1ヵ月当たりの片頭痛日数の減少率別の患者割合は、以下のとおりであった。 ●1ヵ月当たりの片頭痛日数30%以上減少:68% ●1ヵ月当たりの片頭痛日数50%以上減少:57% ●1ヵ月当たりの片頭痛日数75%以上減少:33% ●1ヵ月当たりの片頭痛日数100%減少:9%・治療6ヵ月後の治療継続率は、72.8%であった。・片頭痛日数の減少は、各薬剤同様であったが、フレマネズマブの副作用発現率は低かった(7.7%)。

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lecanemab、アルツハイマー病治療薬として米国FDAよりフル承認を取得/エーザイ・バイオジェン

 エーザイとBiogen(米国)は2023年7月7日、米国商品名「LEQEMBI」注射100mg/mL溶液(一般名:lecanemab)について、アルツハイマー病治療薬としてフル承認に向けた生物製剤承認一部変更申請を米国食品医薬品局(FDA)が承認したことを発表した。今回の「LEQEMBI」のフル承認は、エーザイの大規模グローバル臨床第III相検証試験であるClarity AD試験のデータに基づいている。 「LEQEMBI」は、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体であり、継続的に蓄積される最も神経毒性の高いAβ(Aβプロトフィブリル)をターゲットとして除去し、既存のプラークを除去するとされる。2023年1月6日にFDAより迅速承認を取得しており、さらに6月には臨床第III相Clarity AD検証試験の結果が本剤の臨床上のベネフィットを示すエビデンスであることを、FDAの末梢・中枢神経系薬物諮問委員会(PCNS)が全会一致で支持していた。今回の承認により、「LEQEMBI」は、アルツハイマー病の進行を抑制し、認知機能と日常生活機能の低下を遅らせることを示し、フル承認を取得した世界初かつ唯一の治療薬となる。 また、「LEQEMBI」のFDAフル承認を受け、メディケア&メディケイド・サービスセンターは、本剤に対する幅広いメディケアでの保険適用が可能となったことに加え、簡便なデータ提出プロセスを含む、レジストリの詳細について発表した。

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COVID-19罹患前の睡眠状態が長期的な罹患後症状に影響

 多くのCOVID-19生存者が長期にわたる罹患後症状を経験しており、公衆衛生上の深刻な問題となっている。これまでのところ、COVID-19罹患後症状の状態に影響を及ぼすリスク因子の特定はあまり進んでいない。イタリア・ラクイラ大学のFederico Salfi氏らは、COVID-19の長期的な罹患後症状の発生に対する感染前の睡眠の質や時間、不眠症の重症度の影響について評価を行った。その結果、感染前の睡眠の質/量および不眠症重症度には、罹患後症状の発生数と用量依存的な関連性があることが示唆された。著者らは、「睡眠の健康状態の予防的な改善がCOVID-19の罹患後症状を軽減できるかを判断するためには、さらなる研究が必要である」としている。Brain, Behavior, and Immunity誌8月号の報告。  本研究は、2020年4月と2022年4月の2つの評価を含めたプロスペクティブ研究である。ベースライン時(2020年4月)に、SARS-CoV-2感染が現在または過去にない参加者において、睡眠の質/時間、不眠症状を評価した。睡眠状態の評価には、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)、不眠症重症度質問票(ISI)を用いた。フォローアップ時(2022年4月)には、COVID-19生存者に対し、罹患後1ヵ月(713例、2020年4月~2022年2月に感染)および3ヵ月(333例、2020年4月~2021年12月に感染)の21症状の有無をレトロスペクティブに調査した。また、COVID-19から完全に回復するまでの期間も調査した。長期的な罹患後症状の数に対する感染前の睡眠状態の影響を推定するため、zero-inflated負の二項回帰モデルを用いた。睡眠変数、罹患後症状それぞれの発生率と、感染4週後/12週後の回復割合との関連性の評価には、二項ロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・感染前の睡眠状態が、COVID-19後1ヵ月/3ヵ月の罹患後症状の数に大きく影響していることが明らかとなった。・過去にPSQIスコア、ISIスコアが高く、睡眠時間が短い人では、COVID-19後1ヵ月/3ヵ月の時点におけるほぼすべての長期的な罹患後症状のリスクが有意に高かった。・ベースライン時の睡眠障害は、COVID-19後、感染前の日常的な機能レベルに戻るまでの期間が長期化することとも関連していた。

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COVID-19罹患後症状の追跡調査(解説:小金丸博氏)

 COVID-19に罹患した一部の患者にさまざまな罹患後症状(いわゆる後遺症)を認めることがわかってきたが、その原因やメカニズムはまだ解明されておらず、効果的な介入方法も確立していない。罹患後症状はpost COVID-19 condition、long COVID、post-acute sequelae of SARS-CoV-2 infection(PASC)などと呼ばれ、WHOは「新型コロナウイルスに感染した人にみられ、少なくとも2ヵ月以上持続し、他の疾患による症状として説明できないもの」と定義している。罹患後症状の種類や有病率、長期経過の把握は、治療方法や介入方法を検討するための臨床試験の設計につながる有益な情報となる。 今回、COVID-19罹患2年後までの健康状態の変化を追跡したスイスの人口ベース前向き縦断コホート研究の結果がBMJ誌2023年5月31日号に報告された。感染者と未感染者を比較していることが本研究の特徴の1つである。患者の訴える症状がCOVID-19に関連する症状かどうかを判断することは難しいが、未感染者と比較することで統計学的に評価することが可能となっている。時間の経過とともに症状の重症度や健康障害は軽減していたが、罹患24ヵ月後の時点で感染者の18.1%(95%信頼区間:14.8~21.9)にCOVID-19関連症状を認めた。罹患6ヵ月後の時点で頻度の高かった罹患後症状と思われる症状は、味覚・嗅覚の変化(9.8%)、労作後倦怠感(9.4%)、集中力低下(8.3%)、呼吸困難(7.8%)、記憶障害(5.7%)、疲労(5.4%)などであった。 COVID-19罹患後症状の長期的な転帰を評価した過去の研究の多くは入院患者などに限定した集団を対象としており、さまざまな重症度のCOVID-19の症状や回復経過のばらつきを完全には反映していない可能性があった。本研究では疾患の重症度では対象を限定せず、幅広く解析対象に組み込んでいることが特徴である。ただし、18歳以上の成人、ワクチン未接種者、初回感染である者などに対象を限定しており、小児やワクチン接種者での罹患後症状の経過については判断できない。とくに現在はワクチン接種者が数多く存在するようになっており、ワクチン接種が罹患後症状にどのような影響を与えるかは興味ある点である。 本研究では解析されていないが、抗ウイルス薬の投与が罹患後症状の予防に有効であることが報告されてきている。重症化防止のみならず、罹患後症状の予防という観点は、今後の抗ウイルス薬投与の方針を決めるうえで重要な要素になると考える。

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第169回 深刻なドラッグ・ラグ問題が起こるかも?アルツハイマー病治療薬・レカネマブ、米国正式承認のインパクト

あの市立大津市民病院院長がテレビにこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。7月7日金曜日の夜、テレビ東京系列の報道番組「ガイアの夜明け」のテーマは、「病院経営」でした。「病院を再生せよ!〜医療崩壊の危機との闘い〜」のタイトルで取り上げられていたのは、この連載でも何度も書いた、昨年医師の大量退職があった大津市民病院でした。「第121回 大量退職の市立大津市民病院その後、今まことしやかに噂されるもう一つの“真相”」で書いた、昨年赴任した日野 明彦院長の奮闘ぶり(院長なのに脳外科手術や外来診療も行っていました)を伝えており、それはそれで見ごたえはあったのですが、肝心の京都府立医大と京大との間の軋轢や、市立大津市民病院の医療圏での立ち位置については、あまり掘り下げていませんでした。最後、ヒューマンな感じで前向きに終わらせるのはテレビ番組の定石ですが、「第148回 相変わらず自己犠牲と滅私奉公で医療を行うコトー、日本の医療提供体制の“汚点”を描く映画『Dr.コトー診療所』」でも書いた、“赤ひげ”を未だに美化してそこに解決策があるかのように報じる、日本の医療報道(とくにテレビ)の限界も感じました。さて、今回は7月6日(現地時間)に米国食品医薬品局(FDA)が正式承認した、エーザイと米国バイオジェン社が共同開発したアルツハイマー病治療薬・レカネマブ(LEQEMBI)について書いてみたいと思います。レカネマブをFDAが正式承認レカネマブは、アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβプラークに対するヒト化IgG1モノクローナル抗体で、アミロイドβの脳内への蓄積を抑制する効果があるとされる薬剤です。2023年1月6日、856例を対象とした第II相臨床試験で、レカネマブの投与によりアミロイドβ(Aβ)プラークの減少が確認されたことに基づいて、迅速承認されていました(「第143回 アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」FDA迅速承認を聞いて頭をもたげたある疑問、「結局高くつくのでは?」参照)。この時FDAは臨床効果を検証する確認試験のデータを要求。これに対してエーザイは、2022年11月に結果を発表していた第III相臨床試験(Clarity AD試験)のデータに基づく一部変更承認申請を行いました。FDAは確認試験により臨床上の利点が証明されたと判断、迅速承認から正式承認に切り替えたわけです。この正式承認によって、レカネマブはアルツハイマー病の進行スピードを緩やかにする効果を証明した世界初の医薬品となりました。症状の進行を7ヵ月半遅らせる効果先週、7月7日に急遽開かれたメディア・投資家説明会でエーザイの内藤 晴夫最高責任者(CEO)は「アリセプトの研究開始から約40年を経て、アルツハイマー病の根本病理に関わる治療薬を開発し、まず米国の患者に届けられるのは、製薬産業に身を置くものとして大きな喜びだ」と語りました。さらに、Clarity AD試験の主要評価項目、重要な副次評価項目、QOL関連評価項目を示し、「このすべての評価項目において、高度に統計的な有意差を持って有効性が示された。P値で0が4つ並んでるというのは、私も長くこの業界に身を置いているが、見たことも聞いたこともないような圧倒的な統計的有意性である」と、レカネマブの有効性を強調しました。主要評価項目となった認知機能と日常生活動作をみるCDR-SB(Clinical Dementia Rating Sum of boxes)で、レカネマブの効果は対プラセボで27%の悪化抑制、P値=0.00005(小数点以下にゼロが4つ)でした。ちなみに、27%の悪化抑制とは、推計では症状の進行を7ヵ月半、遅らせる効果だそうです。適応はアルツハイマー病の治療で軽度認知障害(MCI)または軽度認知症の患者正式承認での適応は、迅速承認の時と同様、アルツハイマー病の治療で、軽度認知障害(MCI)または軽度認知症の患者とされました。また用法用量は、Aβ病理が確認された患者に対して、10mg/kgを2週間に1回点滴静注です。なお、投与開始前に、ベースライン時の脳MRI、および投与後のMRIによる定期的なモニタリング(5回目、7回目、14回目投与前)が必要とされます。最も一般的な副作用は、静注に関連する副作用、浮腫やヘモジデリン沈着を伴うアミロイド関連画像異常(ARIA)、頭痛とのことです。米国での薬価は年2万6,500ドル今回の承認で米国の高齢者の多くが加入するメディケアで保険適用が始まりました。なお、米国での薬価は年2万6,500ドル(約380万円)です。この価格は、同社が2021年に開発するも効果が限られ、正式承認されなかったアデュカヌマブ(「第62回 アデュカヌマブFDA承認、効こうが効くまいが医師はますます認知症を真剣に診なくなる(前編)」、「第63回 同(後編)」参照)の当初価格(5万6,000ドル)の約半額ですが、高額なことに変わりはありません。この高い薬価に対し、米国では医療費増につながる危険性がすでに指摘されています。7月8日付の日本経済新聞は、「米国の認知症患者は600万人以上いるとされる。非営利団体の米KFFは、高齢者の5%が今回の薬価で使用した場合、メディケアの支出が年89億ドルと予測。メディケア全体の保険料が増額される懸念がある」と書いています。日本承認後に待ち受ける2つの高いハードルさて、レカネマブの日本での承認はどうなるでしょう。エーザイは日本でも2023年1月に薬事承認を申請、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が優先審査の品目に指定しています。7月7日の説明会でエーザイの担当者は、「審査状況は非常に順調。レカネマブだけではなく、AβのPETの検査薬のMCIへの適応についても、順調に審査が進んでいる。9月までには承認を取得できると考えている」と話していました。日本でも9月までに承認され、年内には薬価が決まる可能性が高いとなると、アルツハイマー病の早期患者やMCIの患者が普通に使えるようになると考えてしまいますが、なかなかハードルは高そうです。一つは検査体制です。使用にはAβ病理所見の確認が必要で、そのためのPET検査または脳脊髄液検査を行わなければなりません。ARIAなどの副作用のチェックにも定期的なMRI検査が必要なため、処方できる医療機関は当面は相当限られそうです。もう一つは薬価です。米国で年間約370万円の薬価が付いたということは、日本の薬価も年間300万円前後になると予想されます。国内の認知症患者数は2025年には約730万人になると推定されており、アルツハイマー病の早期患者とMCI患者に限っても、レカネマブの対象になる患者は相当な数になると考えられます。根本治療薬ではなく、単に進行を遅らせるだけの薬剤に年間300万円も使う必要があるのか……。医療財政の面からも使用に関して何らかの制約が出てくる可能性もあります。そう考えると、レカネマブが日本で発売されても、使いたくても使えない認知症患者が多数出るという、深刻なドラッグ・ラグ問題が起こるかもしれません。アルツハイマー病患者の社会的価値を上げることと割増となる医療・介護費をどう考えるかもう1点気になるのは、以前にも書いた次の問題です。それは、「アルツハイマー病の進行を遅らせるということは、結果その人のアルツハイマー病の罹患期間を長くしてしまい、最終的にその人にかかる医療・介護費が高くついてしまうのではないか」ということです。エーザイCEOの内藤氏がいつも強調するように、アルツハイマー病やMCIの人のレカネマブ投与中の社会的価値(内藤氏はかつて「レカネマブの米国における治療を受ける患者1人当たりの社会的価値は年間3万7,600ドル」と話していました)は確かに上がり、介護者の負担も減るかもしれませんが、いずれは中等度・重度に移行していきます。罹患期間が長くなることで、1人当たりのトータルの医療費・介護費はこれまでよりも相当かさむ結果になると考えられます。アルツハイマー病患者の社会的価値を上げることと、一生で考えると割増となってしまうだろう医療・介護費をどう考えればいいのか……。医療経済学者にとっては、研究に値するかなり興味深いテーマだと思います。

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認知症リスクが排便回数と便の硬さに関連~日本人4万人の研究

 中年期以降の排便習慣と認知症との関連について国立がん研究センター中央病院の清水 容子氏らが解析した結果、男女とも少ない排便回数および硬い便が高い認知症リスクと関連することが示された。Public Health氏オンライン版2023年6月29日号に掲載。認知症発症リスク、排便回数1回/日と比較して3回/週未満でハザード比1.79 本研究は、介護保険の認定記録を用いたコホート研究で、JPHC研究における8地区で排便習慣を報告した50~79歳の参加者を対象に、2006~16年の認知症の発症について調査した。生活習慣因子や病歴を考慮したCox比例ハザードモデルを用いて、男女別にハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 中年期以降の排便習慣と認知症との関連について解析した主な結果は以下のとおり。・男性1万9,396人中1,889人、女性2万2,859人中2,685人が認知症と診断された。・排便回数について、1回/日と比較した多変量調整HR(95%CI)は男性、女性の順で以下のとおり(傾向のp値:男性<0.001、女性0.043)。 2回/日以上:1.00(0.87~1.14)、1.14(0.998~1.31) 5~6回/週:1.38(0.16~1.65)、1.03(0.91~1.17) 3~4回/週:1.46(1.18~1.80)、1.16(1.01~1.33) 3回/週未満:1.79(1.34~2.39)、1.29(1.08~1.55)・便の硬さについて、正常な便と比較した調整HR(95%CI)は男性、女性の順で以下のとおり(傾向のp値:男性0.0030、女性0.024)。 硬い便:1.30(1.08~1.57)、1.15(1.002~1.32) 非常に硬い便:1.84(1.29~2.63)、2.18(1.23~3.85)

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COPD患者への抗うつ薬、増悪や肺炎のリスクに

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に多い併存疾患として、うつ病や不安症などの精神疾患が挙げられる。抑うつの併存率は、欧米では80%、日本人では38%という報告もある1,2)。しかし、COPD患者における抗うつ薬のリスク・ベネフィットに関するエビデンスは乏しい。そこで英国・ノッティンガム大学の研究グループは、英国のプライマリケアにおける診療記録のデータベースを用いて、COPD患者における抗うつ薬とCOPD増悪、肺炎のリスクの関係を検討した。その結果、抗うつ薬の使用はCOPD増悪や肺炎のリスクを上昇させ、抗うつ薬の使用を中止するとそのリスクは低下したことが示された。本研究結果は、Rayan A. Siraj氏らによって、Thorax誌2023年6月19日号で報告された。 英国のプライマリケアにおける診療記録のデータベース(The Health Improvement Network)を用いて、自己対照ケースシリーズ研究(Self-Controlled Case Series)を実施した。少なくとも1回以上の抗うつ薬処方を受けたCOPD患者3万1,253例が対象となった。対象患者におけるCOPD増悪と肺炎の発生率を調べた。 主な結果は以下のとおり。・COPD患者3万1,253例のうち、COPD増悪が認められたのは1万8,483例、肺炎が発生したのは1,969例であった。・抗うつ薬処方から90日間において、COPD増悪の発生率は16%増加した(年齢調整発生率比[aIRR]:1.16、95%信頼区間[CI]:1.13~1.20)。抗うつ薬処方91日後~抗うつ薬中止までの期間において、COPD増悪の発生率はやや増加したが(aIRR:1.38、95%CI:1.34~1.41)、抗うつ薬の中止後に減少した。・抗うつ薬処方から90日間において、肺炎の発生率は79%増加したが(aIRR:1.79、95%CI:1.54~2.07)、抗うつ薬の中止後にこの関連は消失した。 著者らは、「抗うつ薬はCOPD患者におけるCOPD増悪、肺炎のリスク上昇と関連があり、そのリスクは抗うつ薬の中止により低下した。本結果は、抗うつ薬の副作用を注意深くモニタリングすること、精神疾患に対する非薬物療法を考慮することを支持するものであった」とまとめた。

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統合失調症の発症時期と抗精神病薬に対する治療反応との関係

 統合失調症は、発症年齢が遺伝的要因の影響を受けており、予後を予測することが可能であると考えられる。中国・北京大学のYi Yin氏らは、遅発性、早期発症型、定型発症型の統合失調症患者における症状の特徴および抗精神病薬に対する治療反応を比較するため、本検討を行った。その結果、40歳以上で発症した統合失調症に対する抗精神病薬治療は、発症年齢が40歳未満の場合と比較し、陽性症状の早期改善が期待できることが示唆されたことから、統合失調症治療では、発症年齢を考慮した個別治療が求められることを報告した。Schizophrenia Research誌2023年7月号の報告。 中国5都市の精神保健病院の入院部門5ヵ所を対象に、8週間のコホート研究を実施した。対象患者は、発症から3年以内かつ最低限の治療を実施した遅発性統合失調症(LOS、発症年齢:40~59歳)106例、早期発症型統合失調症(EOS、発症年齢:18歳未満)80例、定型発症型統合失調症(TOS、発症年齢:18~39歳)214例。ベースライン時および抗精神病薬治療8週間後の臨床症状の評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を使用した。抗精神病薬治療の8週間における症状改善効果を比較するため、混合効果モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬治療開始後、3群ともにすべてのPANSSスコアの減少が認められた。・性別、罹病期間、ベースライン時の抗精神病薬投与量で調整した後、LOSは、EOSと比較し、8週間後のPANSS陽性スコアの有意な改善が認められた。・LOSは、EOSまたはTOSと比較し、オランザピン等価換算量で体重1kg当たり1mg投与されていた場合において8週間の陽性症状改善との関連が認められた。

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第171回 米国でフル承認のアルツハイマー病薬lecanemabの患者負担のほどは?

病状進行を抑制し、認知機能や日常生活機能の低下を遅らせることが第III相試験(Clarity AD)で裏付けられたことを受けて、エーザイとバイオジェンのアルツハイマー病薬lecanemab(商品名:LEQEMBI)が米国で晴れて承認されました1,2,3)。これまでは取り急ぎの承認でしたが、今回フル承認(traditional approval)に至ったことで同国政府の公的保険メディケアの支払対象になる道が開けます4)。メディケアの受給者は65歳以上の高齢者です。ゆえに、高齢者に多いアルツハイマー病の治療のほとんどはメディケアの支払い対象となります。lecanemabの取り急ぎの承認が不動になったら、医師が治療の経過を記録して提出することを条件に同剤の費用を負担するとメディケアは先月発表しています。ただし全額負担ではありません。同剤の薬価は1年当たり2万6,500ドル(約378万円)です。メディケアは同剤の費用の約80%を支払います。残りの20%ほどを患者は自腹か何らかの手段で捻出する必要があります。米国のもう1つの公的保険メディケイドの受給対象でもある一部の低所得の患者は自己負担が一切なく同剤を使えますが、保険がメディケアだけという患者の同剤使用の1年あたりの自腹出費は6,600ドル(約94万円)にも達します5,6,7)。その額はメディケア受給者の所得中央値の5分の1ほどに相当します。日本でlecanemabは今年1月16日に承認申請されて承認審査段階にあります。今回の米国フル承認までのFDAの扱いと同様に国内でも優先審査されており、間もなく9月までには承認される見込みです。いわゆる“太り過ぎ”レベルのBMIのほうがむしろ死亡率が低い話は変わって肥満未満の太り過ぎの人の死亡率は高くなく、どちらかというとむしろ低いことを示した試験結果を紹介します。試験では米国の成人約50万人を体重指標BMIで9つに区切って中央値9年(0~20年)の経過を比較しました。その結果、BMIが30以上で肥満の域の人では適正とされるBMI範囲(22.5~24.9)の人に比べてさすがに死亡率が高かったものの、肥満域未満の太り過ぎの範囲のBMIの人の死亡率は高くありませんでした8)。BMIが肥満の域に達していない範囲で高い人の死亡率はむしろ低く、BMIが25~27.4の人の死亡率はBMIが22.5~24.9の人より5%低いことが示されました9)。BMIが肥満域により近い27.5~29.9の人はなんともっと死亡率が低く、22.5~24.9の人の死亡率を7%下回りました。病気が原因の体重減少の影響を排除することを目的として追跡開始2年以内の死亡例を除外して解析しても同様の結果となりました。目下の分類で太り過ぎの域にあるBMIの人がそれ以下のBMIの人に比べてより健やかと今回の結果をもって結論するのは時期尚早であり、さらなる検討が必要です。今回の結果から言えることは、BMIは死亡率のうってつけの指標というわけではなさそうということであり、脂肪の体内分布などの他の指標の考慮も必要なようです9,10,11)。カロリー制限時の代謝低下を防ぐホルモンを同定太っていることを一概に不健康と決めつけることはできませんが、体重を減らすことは病気治療の有効な手段の1つでもあります。たとえば、食事のカロリーを抑えて体重を減らすことは非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)治療の有効な手立ての1つですし、2型糖尿病患者のインスリンの効きを良くする効果もあります。しかし多くの人の体重減少はたいてい長続きしません。エネルギー消費を抑えるように体が順応してしまうことがその一因ですが、その順応の仕組みはこれまでよくわかっていませんでした。GDF15というホルモンを高脂肪食のネズミに与えると肥満が減り、GDF15の受容体であるGFRALを介した摂食(あるいは食欲)抑制のおかげで血糖値推移が改善することが先立つ研究で知られています。エネルギー消費を抑えてしまう順応をそのGDF15が食い止め、カロリー制限中でもエネルギー消費が維持されるようにする働きを担うことがカナダ・マクマスター大学のチームによる研究で示されました12)。GDF15を与えたマウスの体重は摂取カロリーが同じのGDF15非投与マウスに比べて減り続け、その作用は脂肪ではなく筋肉でのエネルギー消費亢進によることが判明しました。人ではどうかを今後の研究で検証する必要があります。人でのGDF15の働きを調べることで食事に気を付けても体重がなかなか減らない人に有益な手立てをやがて生み出せるかもしれません13)。また、肥満治療として注目を集めるGLP-1標的薬との相乗効果も期待できそうです。今回の研究には肥満治療のGLP-1標的薬を他に先駆けて世に送り出したNovo Nordiskが協力しています。参考1)「LEQEMBI®」(レカネマブ)、アルツハイマー病治療薬として、米国FDAよりフル承認を取得 / エーザイ2)FDA Converts Novel Alzheimer's Disease Treatment to Traditional Approval / PRNewswire3)FDA Grants Traditional Approval for LEQEMBI? (lecanemab-irmb) for the Treatment of Alzheimer's Disease / PRNewswire4)US FDA grants standard approval of Eisai/Biogen Alzheimer's drug / Reuters5)Annual Medicare spending could increase by $2 to $5 billion if Medicare expands coverage for dementia drug lecanemab / UCLA Health6)Explainer: Who is eligible for the new FDA-approved Alzheimer's drug? / Reuters7)Arbanas JC, et al. JAMA Intern Med. 2023 2023 May 11. [Epub ahead of print]8)Visaria A, et al. PLoS One. 2023;18:e0287218. 9)Having an 'overweight' BMI may not lead to an earlier death / New Scientist10)‘Overweight’ BMI might be set too low / Nature11)No increase in mortality for most overweight people, study finds / Eurekalert12)Dongdong Wang D, et al. Nature. 2023;619:143-150.13)Having an 'overweight' BMI may not lead to an earlier death / New Scientist

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思春期うつ病と脂質異常症との関連

 小児期および思春期のうつ病患者は、若年性心血管疾患(CVD)リスクが上昇するといわれている。思春期うつ病患者において、CVDの重要なリスクファクターである脂質異常症の兆候が認められているかは、よくわかっていない。カナダ・Sick Kids Research InstituteのAnisa F. Khalfan氏らは、思春期うつ病患者における脂質異常症の有病率を調査した。その結果、思春期うつ病患者の脂質異常症レベルは、健康対照群と同レベルであった。うつ病の経過とともに出現する脂質異常症のタイミングや思春期うつ病患者のCVDリスク増加に関連するメカニズムを明らかにするためには、今後の研究において、うつ症状と脂質関連検査値の軌跡を調査することが求められる。Journal of Affective Disorders誌2023年10月号の報告。うつ病重症度とHDLコレステロールの高さに関連が認められた 精神科クリニック外来および地域社会より募集した若者を、診断後にうつ病群または健康対照群に分類した。HDLコレステロール(HDL-C)、LDLコレステロール(LDL-C)、トリグリセライド(TG)濃度などのCVDリスクファクターに関する情報を収集した。うつ病の重症度評価には、小児のうつ病スケールを用いた。うつ病群およびうつ病重症度と脂質濃度との関連を評価するため、重回帰分析を用いた。年齢、性別、標準化されたBMIでモデルの調整を行った。 思春期うつ病患者における脂質異常症の有病率を調査した主な結果は以下のとおり。・対象は243例(女性の割合:68%、平均年齢:15.04±1.81歳)。・うつ病群および健康対照群における脂質異常症(48% vs.46%、p>0.7)、高TG血症(34% vs.30%、p>0.7)のレベルは同程度であった。・未調整モデルでは、思春期うつ病患者におけるうつ病重症度と総コレステロール濃度の高さとの関連が認められた。・共変量で調整した後、うつ病重症度と高HDL-C、低TG/HDL-C比との関連が認められた。

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ホルモン補充療法は認知症の発症と関連するか/BMJ

 更年期のホルモン補充療法の使用経験は、それが55歳以下の時点であっても、あらゆる原因による認知症およびアルツハイマー病の発症と有意な関連があり、投与期間が長くなるほど関連性が増強することが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のNelsan Pourhadi氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年6月28日号で報告された。デンマークのコホート内症例対照研究 研究グループは、デンマークにおける更年期ホルモン療法と認知症との関連を、ホルモン療法の種類、投与期間、年齢別に評価する目的で、全国規模のコホート内症例対照研究を行った(特定の研究助成は受けていない)。 2000年の時点で50~60歳のデンマーク人女性で、認知症の既往歴がなく、更年期ホルモン療法の禁忌もない集団から、2000~18年の期間に認知症を発症した5,589例(年齢中央値70歳[四分位範囲[IQR]:66~73])と、年齢をマッチさせた対照5万5,890例(70歳[66~73])を同定した。 主要アウトカムは、あらゆる原因による認知症の発症(初回診断または認知症治療薬の初回使用で定義)であり、補正後ハザード比(HR)とその95%信頼区間(CI)を算出した。連続投与、周期的投与でも正の相関 ホルモン療法を受けたことがない女性と比較して、エストロゲン-プロゲスチン療法(エストロゲン全身投与、エストロゲン膣内投与、プロゲスチン単独、エストロゲン-プロゲスチン併用療法)を受けた女性は、あらゆる原因による認知症の発症率が高かった(HR:1.24、95%CI:1.17~1.33)。 また、ホルモン療法の期間が長くなるに従ってHRは大きくなり、投与期間が1年以内の場合は1.21(95%CI:1.09~1.35)、12年以上になると1.74(95%CI:1.45~2.10)であった。 連続投与レジメン(HR:1.31、95%CI:1.18~1.46)および周期的投与レジメン(1.24、1.13~1.35)の双方で、エストロゲン-プロゲスチン療法は認知症の発症と正の相関が認められた。 さらに、55歳以下でホルモン療法を受けた女性(HR:1.24、95%CI:1.11~1.40)でも、エストロゲン-プロゲスチン療法と認知症の発症には関連がみられ、65歳以降に発症した遅発型認知症(1.21、1.12~1.30)やアルツハイマー病(1.22、1.07~1.39)に限定しても、同様の知見が得られた。 著者は、「更年期のホルモン療法への曝露は、閉経年齢前後の短期的な使用であっても、すべての原因による認知症およびアルツハイマー病の発症と関連した」とし、「これらの知見が更年期ホルモン療法の認知症リスクへの実際の影響によるものなのか、あるいはホルモン療法を必要とする女性の根本的な素因を反映しているのかを明らかにするには、さらなる研究を要する」と指摘している。

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第155回 史上初の7月に継続するインフルエンザ流行、コロナ禍で免疫低下か/厚労省

<先週の動き>1.史上初の7月に継続するインフルエンザ流行、コロナ禍で免疫低下か/厚労省2.急性期充実体制加算について議論、地域格差や医療体制の影響を懸念/中医協3.2022年度の労災補償状況:精神障害に関する労災、医療・福祉が最多/厚労省4.製薬業界と診療側が対立-薬価と安定供給問題で/中医協5.人件費の高騰やコロナの影響で2022年度の決算は減少、先進医療にも影響/国立大学病院6.返上相次ぐマイナンバー、個人情報保護委員会が立ち入り検査へ/デジタル庁1.史上初の7月に継続するインフルエンザ流行、コロナ禍で免疫低下か/厚労省厚生労働省の発表によると、インフルエンザの流行が史上初めて7月にも続いていることや、コロナ禍による免疫低下が影響している可能性があることが判明した。7月7日に発表された都道府県別のインフルエンザ患者数では、1医療機関当たりの患者数では、鹿児島県が20.07人と最も多く、宮崎県が7.34人、長崎県5.26人、熊本県3.99人と九州で感染が広がっていた。一方、新型コロナウイルスの感染状況では、沖縄県に次いで鹿児島県が全国で2番目に感染者数が多く、数の増加が報告されている。専門家らは、手洗いやうがいなど基本的な対策の徹底を呼びかけている。参考1)2023年7月7日 インフルエンザの発生状況について(厚労省)2)2023年7月7日 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について(同)3)新型コロナ 定点把握で全国2番目 インフルエンザは全国最多(NHK)4)インフルエンザ、史上初めて7月もなお流行…コロナ禍で免疫低下が影響か(読売新聞)2.急性期充実体制加算について議論、地域格差や医療体制の影響を懸念/中医協厚生労働省は、7月6日に中央社会保険医療協議会の入院・外来医療等の調査・評価分科会を開催した。この中で2022年度の診療報酬改定で新設された「急性期充実体制加算」の届け出が42都道府県の病院からあったことを明らかにした。急性期充実体制加算は、急性期一般入院料1の病院が整備する高度で専門的な急性期医療の評価として導入されたもので、急性期一般入院料1の病院の占める割合では、島根県が最も高い割合で取得していた。しかし、5つの県では届け出がなく、地域ごとにばらつきがあると指摘されている。また、総合入院体制加算から急性期充実体制加算への移行に伴って、小児・周産期・精神科入院医療の体制が縮小する可能性が懸念されており、地域医療の影響について、引き続き注視する必要があるとしている。参考1)令和5年度第3回 入院・外来医療等の調査・評価分科会(中医協)2)急性期充実体制加算、42都道府県で届け出 22年9月時点、厚労省集計(CB news)3)総合入院体制加算から急性期充実体制へのシフトで地域医療への影響は?加算取得病院の地域差をどう考えるか-入院・外来医療分科会(Gem Med)3.2022年度の労災補償状況:精神障害に関する労災、医療・福祉が最多/厚労省厚生労働省が公表した2022年度の労災補償状況によると、精神障害に関する労災の請求件数と支給決定件数では「医療、福祉」が最も多かったことが明らかになった。精神障害に関する労災の請求件数は2,683件で、そのうち「医療、福祉」が624件と最も多く、支給決定件数も「医療、福祉」の164件が最多だった。一方で、過労死ライン未満の事案での労災認定が増加していることも報告された。労働時間以外の要因も考慮する改正基準の影響で、過労死ラインを下回る事案でも認定されるケースが増えたと考えられる。脳・心臓疾患や精神障害に関する労災の認定件数は増えており、労働時間以外の要素も総合的に評価されるようになったことも要因。精神障害の労災認定件数は最も多く、2022年度に2,683件の申請があり、そのうち710件が認定されている。参考1)令和4年度「過労死等の労災補償状況」を公表します(厚労省)2)精神障害の労災請求・支給「医療、福祉」が最多 厚労省が22年度の補償状況を公表(CB news)3)過労死ライン未満、労災認定が増加 基準見直し影響か 精神障害での認定は最多(朝日新聞)4.製薬業界と診療側が対立-薬価と安定供給問題で/中医協厚生労働省は、7月5日に薬価について協議する中央社会保険医療協議会(中医協)の薬価専門部会を開催し、来年度の薬価改定に向けて、本格的な議論に着手した。この中で、製薬業界からは医薬品の安定供給に向けた薬価下支えの充実を求めた。一方、診療側の長島委員からは、後発医薬品の安定供給は企業の品質管理やガバナンスの問題であり、薬価維持だけでは解決しないと指摘。また、森委員も安定供給は当たり前のことで評価すべきではないと述べた。支払側の松本委員も、薬価下落の原因は卸の納品価格の低さであり、薬価差は国民に還元すべきであると主張した。業界側は不採算品再算定や基礎的医薬品の対象範囲拡充などを求め、安定供給を重視した制度改革を訴えた。ただし、診療側と支払側はエビデンスに基づく議論を求め、具体的なデータや長期トレンドの分析を要望した。業界や診療側の意見の食い違いや課題の解決に向けた具体的な方策については、さらなる議論が見込まれる。参考1)中央社会保険医療協議会 薬価専門部会 議事次第(中医協)2)薬価下支えする仕組み「充実を」日薬連 中医協・部会(CB news)3)中医協 薬価下支え求める業界に診療側「安売りが原因」「安定供給は評価するものでない」厳しい声飛ぶ(ミクスオンライン)5.人件費の高騰やコロナの影響で2022年度の決算は減少、先進医療にも影響/国立大学病院国立大学病院が昨年度、全国の医療機関に医師を派遣し、兼業や副業の形態で医療活動を行っていたことを国立大学病院長会議が明らかにした。しかし、医師の時間外労働に関する規制を受けて、国立大学病院は兼業先を含めた時間外労働が上限を超える医師がいると予想し、規制に対応するための申請を行う予定。一方、国立大学病院全体の2022年度の決算は、経常利益は前期比で336億円減の386億円と減少し、経常利益率も低下していることが明らかになった。収益は215億円増加したものの、人件費や診療経費の増加により費用は552億円増え、経常利益率は2.5%に減少していた。コロナ補助金の影響で赤字にはならなかったものの、光熱費の増加や物価上昇の影響で利益の確保が困難となったためと考えられている。2023年度の見通しでは、コロナ補助金や診療報酬の特例の廃止や働き方改革による費用負担の増加が予想され、事業の継続が困難となってきており、医療機器の更新にも影響が出ており、耐用年数を超えて使用されている資産が多く、先進医療の提供にも影を落とす可能性が指摘された。参考1)国立大、計9,628医療機関に医師派遣 22年度、国立大学病院長会議(CB news)2)国立大学病院、2022年度の経常利益は2.2ポイント減(日経ヘルスケア)6.返上相次ぐマイナンバー、個人情報保護委員会が立ち入り検査へ/デジタル庁デジタル庁によれば、マイナンバーカードの本人希望による返納件数は先月1ヵ月間で約2万件だった。これは平成28年1月以降の7年間での累計返納件数のうちの一部とされ、返納の理由には引っ越しに伴う再発行や在留期間の短縮などが含まれている。河野デジタル大臣は、カードの自主返納がリスク軽減につながるわけではないとし、マイナンバー制度の理解を求めている。また、河野氏は、マイナンバーの誤登録問題に関して、デジタル庁が個人情報保護委員会の立ち入り検査を受ける方針であることを認めた。問題は、公的給付金の受取口座に他人のマイナンバーが登録されたことであり、河野氏は「適切に対応する」と述べた。デジタル庁は問題について報告書を提出し、個人情報保護委員会は詳細な把握を目指して検査を行う予定。また、マイナンバーに関するトラブルに対しても行政指導を検討しているという。参考1)マイナカード 先月の本人希望の返納件数 約2万件 デジタル庁(NHK)2)河野デジタル相「適切に対応」 マイナ巡り立ち入り検査(日経新聞)3)河野太郎デジタル相、マイナカード「自主返納せず確認を」(神奈川新聞)

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中年のコーヒーや紅茶の摂取と将来の認知症リスク~HUNT研究

 認知症予防に対するコーヒーおよび紅茶の摂取の可能性について調査した研究結果は、現状では一貫性が得られていない。ノルウェー科学技術大学のDenise Abbel氏らは、中年成人を対象に紅茶または各種コーヒーの摂取とその後の認知症リスクとの関連およびこの関連に性別、ApoE4が及ぼす影響を調査するため、本研究を実施した。その結果、コーヒー摂取の習慣とその後の認知症リスクとの関連に対し、摂取するコーヒーの種類が影響を及ぼしている可能性が示唆された。Nutrients誌2023年5月25日号の報告。 対象は、ノルウェーHUNT研究の参加者7,381人。ベースライン時の毎日のコーヒーおよび紅茶の摂取量は、自己報告アンケートにより収集した。22年後、70歳以上の対象者に対し、認知機能検査を実施した。 主な結果は以下のとおり。・コーヒーおよび紅茶の摂取量が一般的な場合、認知症リスクとの関連は認められなかった。・コーヒーの摂取量が0~1cup/日の場合と比較し、煮出しコーヒーを8cup/日以上摂取した女性では認知症リスクの上昇が認められ(オッズ比[OR]、95%信頼区間[CI]:1.10~3.04、p for trend=0.03)、他の種類のコーヒーを4~5cup/日摂取した男性では認知症リスクの低下が認められた(OR:0.48、95%CI:0.32~0.72、p for trend=0.05)。・煮出しコーヒーと認知症リスク上昇との関連性は、ApoE4非キャリアのみで認められた。・性別またはApoE4キャリアの違いは、相互作用に関する強い統計学的エビデンスとはいえなかった。・紅茶の摂取と認知症リスクとの関連は認められなかった。

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トランスジェンダーは自殺死が多いか/JAMA

 トランスジェンダーの人々は自殺企図や死亡のリスクが高い可能性が示唆されている。デンマーク・Mental Health Centre CopenhagenのAnnette Erlangsen氏らは、今回、トランスジェンダーは非トランスジェンダーと比較して、最近42年間における自殺企図、自殺による死亡、自殺と関連のない死亡、あらゆる原因による死亡のいずれもが、有意に高頻度であることを示した。研究の成果は、JAMA誌2023年6月27日号で報告された。デンマークの後ろ向きコホート研究 研究グループは、デンマークにおけるトランスジェンダーの自殺企図、死亡の頻度を評価する目的で、全国規模の登録ベースの後ろ向きコホート研究を行った(Danish Health Foundationの助成を受けた)。 対象は、デンマークで生まれで、1980年1月1日~2021年12月31日に同国に居住していた15歳以上。トランスジェンダーを自認する人々の確認は、全国の病院記録と法的な性別変更の行政記録で行った。 全国入院・死因登録のデータを用いて、1980~2021年の自殺企図、自殺死(自殺既遂)、自殺以外による死亡、全死因死亡を同定した。暦年、出生時に割り当てられた性別、年齢で調整し、トランスジェンダーと非トランスジェンダーにおけるこれらのアウトカムの補正後発生率比(aIRR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 665万7,456人(出生時に割り当てられた性別は男女とも50.0%ずつ)が解析に含まれ、フォローアップ期間は1億7,102万3,873人年であった。このうち3,759人(0.06%)がトランスジェンダーと判定され、判定時の年齢中央値は22歳(四分位範囲[IQR]:18~31)だった。1,975人(52.5%)は出生時に男性、1,784人(47.5%)は女性に割り当てられていた。42年で企図、死亡は低下したが、aIRRは有意に高い 自殺企図は、トランスジェンダー群では92件(初回自殺企図年齢中央値27歳[IQR:19~40])、非トランスジェンダー群では11万9,093件(36歳[23~50])発生した。10万人年当たりの標準化自殺企図率は、トランスジェンダー群が498件、非トランスジェンダー群は71件で、10万人年当たりの標準化発生率の差は428件(95%CI:393~463)であり、aIRRは7.7(95%CI:5.9~10.2)とトランスジェンダー群で自殺企図率が有意に高かった。 また、10万人当たりの標準化自殺死亡率は、トランスジェンダー群が75件、非トランスジェンダー群は21件であり、aIRRは3.5(95%CI:2.0~6.3)とトランスジェンダー群で自殺死亡率が有意に高かった。 10万人年当たりの標準化非自殺性死亡率は、トランスジェンダー群が2,380件、非トランスジェンダー群は1,310件(aIRR:1.9、95%CI:1.6~2.2)、10万人年当たりの標準化全死因死亡率はそれぞれ2,559件、1,331件(2.0、1.7~2.4)であり、いずれもトランスジェンダー群で有意に高率だった。 42年の対象期間中に、自殺企図と死亡の割合は低下したにもかかわらず、いずれのアウトカムも最近のaIRRが有意に高く、2021年のaIRRは自殺企図が6.6(95%CI:4.5~9.5)、自殺死亡が2.8(1.3~5.9)、非自殺性死亡が1.7(1.5~2.1)、全死因死亡が1.7(1.4~2.1)と、いずれもトランスジェンダー群で高かった。これは、トランスジェンダーでは自殺企図と死亡のリスクが継続的に高いことを反映している。 著者は、「トランスジェンダーは、いじめ、差別、排除、偏見といった形で、トランスであることに関する組織的な否定にさらされる可能性があり、少なくとも部分的には、このようなマイノリティストレスの結果として、疎外感や内面化されたスティグマ、精神衛生上の問題、ひいては自殺行動につながる可能性がある」と指摘し、「トランスジェンダーの自殺を減らすための取り組みが求められ、これには個人的な苦悩がある場合に助けを求めるよう促すといった直接的な対策が含まれるほか、医療専門家による研修や最善の診療ガイドラインの実施、性別にとらわれない公衆浴場や更衣室の普及といった、構造的な差別を減らすための一般的な対策も提言されている」としている。

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片頭痛治療薬抗CGRP抗体の比較~メタ解析

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)抗体は、新しい片頭痛予防薬である。また、米国においてCGRP受容体拮抗薬であるatogepantが片頭痛予防薬として承認された。中国・首都医科大学のWenfang Sun氏らは、将来の臨床試験の参考となるよう、さまざまな用量の抗CGRPモノクローナル抗体およびatogepantを含む片頭痛治療に対する有効性および安全性を評価するため、ネットワークメタ解析を実施した。その結果、すべての抗CGRP薬は片頭痛予防に効果的であり、とくにフレマネズマブ225mg/月、エレヌマブ140mg/月、atogepant 60mg/日は、副作用リスクが低く、効果的な介入であることが示唆された。The Clinical Journal of Pain誌オンライン版2023年6月2日号の報告。 2022年5月までに公表された文献をPubMed、Embase、およびコクランライブラリーより検索した。対象には、反復性または慢性片頭痛患者を対象にエレヌマブ、フレマネズマブ、eptinezumab、ガルカネズマブ、atogepantまたはプラセボによる治療を評価したランダム化比較試験(RCT)を含めた。主要アウトカムは、1ヵ月当たりの片頭痛日数の減少、50%治療反応率、有害事象数とした。バイアスリスクの評価には、Cochrane Collaboration toolを用いた。 主な結果は以下のとおり。・24件の文献を分析対象に含めた。・有効性に関しては、すべての介入がプラセボよりも優れており、統計学的に有意な差が認められた。・もっとも効果的な介入は、以下のとおりであった。【1ヵ月当たりの片頭痛日数の減少】 フレマネズマブ225mg/月(標準化平均差[SMD]:-0.49、95%信頼区間[CI]:-0.62~-0.37)【50%治療反応率】 フレマネズマブ225mg/月(相対リスク:2.98、95%CI:2.16~4.10)【急性投薬日数の減少】 エレヌマブ140mg/月(SMD:-0.68、95%CI:-0.79~-0.58)・有害事象に関しては、ガルカネズマブ240mg/月およびフレマネズマブ675mg/四半期を除き、すべての治療においてプラセボとの統計学的な優位性は認められなかった。・有害事象による治療中止に関しては、介入群とプラセボ群との間に有意な差は認められなかった。

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NHKドラマ「フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話」(前編)【なんで嘘くさくても知りたがるの?(噂好きの心理)】Part 1

今回のキーワード承認プロパガンダ新奇性(サリエンス)確証バイアス同類性(集団極性化)フィルターバブルエコーチェンバーバッシング「フェイクニュース」という言葉は、2016年以降の米国やフランスの大統領選挙、英国のEU離脱の国民投票などにおいて、よく聞かれるようになりました。なぜフェイクニュースはつくられるのでしょうか? そもそも、私たちはなぜ不確かな情報でも知りたがるのでしょうか?今回は、NHKドラマ「フェイクニュース」1)を通して、噂好きの心理を解き明かし、私たちの心の本質に迫ります。なんでフェイクニュースをつくるの?ネットメディアの女性記者、樹(いつき)は、インスタントうどんに青虫が混入していた事件を担当します。取材を進めるうちに、この事件は企業間の紛争を招きます。と同時に、精巧なフェイクニュースも紛れ込んでおり、実は選挙戦に利用されていることに気付くのです。フェイクニュースとは、読んで字のごとく、偽のお知らせ、事実とは違う情報です。それでは、なぜフェイクニュースをつくるのでしょうか? まずは、その目的を大きく3つ挙げてみましょう。(1)金儲け樹は、インスタントうどんへの異物混入を訴えている3つのブログの主が同一人物であることを突き止めます。そして、その「潜伏場所」のアパートの一室に取材に行くと、なんと赤ちゃんを抱いた主婦が出てきて、拍子抜けします。その主婦は「これ全部、アフィリエイト(成功報酬型広告)用のブログなのね」「鶴亀うどんにゴミとか羽虫とか入れて…そしたらどーんと拡散されたよね」「ブログのアクセス数、過去最高だったの! 今月の広告料、全部合わせて4,821円!」と無邪気に話すのです。1つ目の目的は、単純な金儲けです。新聞社やテレビ局などの企業と違い、個人が情報を発信する場合、匿名にすることができます。すると、偽の情報を出す罪悪感も希薄になり、アクセス数を稼ぐために、嘘もつくという発想になるわけです。(2)承認樹は、青虫混入について最初にSNSに投稿した中年男性の猿滑(さるすべり)への取材を続けます。彼は、自分の主張を世間にわかってもらうため、先ほどの主婦によるブログをはじめ、ネットから真偽不明の情報をかき集めて、さらに投稿していたのでした。その後、取材に来た樹を目の敵にして、「女記者が圧力をかけてきた。消される」と発信します。騒動の末、彼はラストシーンで樹に「たぶん私は、誰かに味方になってほしかっただけなんだ」と打ち明けます。2つ目の目的は、承認です。当初は、「わかってほしい」という軽いガス抜きのつもりだったわけですが、曖昧なために発信者が意図していなかった誤った情報も拡散させてしまうことになります。それがやがてウケ狙いやいたずらになっていくのです。もちろん、それが常習的になる場合は愉快犯になります。これらはすべて、「自分を見てほしい」という承認の心理が根っこにあります。この詳細については、関連記事1をご覧ください。(3)プロパガンダ樹の上司は、主婦が見つけて猿滑が拡散させた「CSS」(※実在する米国のCNNをドラマ内でパロディ化)のネット記事が、フェイクニュースであることを見抜きます。それは、サイトアドレスが巧妙に違っていたのでした。このように、大手のネットメディアを騙(かた)り、ネットニュースを精巧に仕立て上げるのが、狭い意味でのフェイクニュースです。そのタイトルは「日本の奴隷労働の現状」で、本文は「日本で全国展開しているテイショー・フーズは、自社工場で多くの外国人労働者を雇っている。だが、その現状は奴隷労働に等しく、不当な搾取が行われている。待遇に不満を抱き、わざと異物を混入する者もいると、彼は語ってくれた」と書かれています。実は、ある県知事選の立候補者が、外国人労働者への不当搾取をでっち上げて対抗馬の評判を落とすために仕組んだものだったのでした。3つ目は、プロパガンダです。プロパガンダとは、政治的な宣伝です。これによって、選挙で特定の立候補者への投票を誘導することができます。最初にも触れましたが、実際に、2016年には米国やフランスの大統領選、英国のEU離脱の国民投票において、多くのフェイクニュースが出回っていたことが指摘されています2)。次のページへ >>

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NHKドラマ「フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話」(前編)【なんで嘘くさくても知りたがるの?(噂好きの心理)】Part 2

なんで嘘くさくても知りたがるの?フェイクニュースをつくる目的は、金儲け、承認、プロパガンダなどであることがわかりました。それでは、なぜ私たちはフェイクニュースに引っかかってしまうのでしょうか? もっと言えば、フェイクニュースに限らず、なぜ私たちは噂話など不確かな情報でも、つい知りたくなってしまうのでしょうか? ここから、この噂好きの心理の要素を大きく3つ挙げてみましょう。(1)びっくりしたいから樹は上司に「『青虫うどんの真相?』って、真相が記事の中身に書かれていないのに、完全な釣りタイトルです。語尾に?をつければ許されるってものじゃありません」と怒りをぶつけます。自分の記事のタイトルが、上司の指示で書き換えられていたのでした。彼女は「難しい記事はウケない。アホな記事ほど評価される」とボヤいてもいました。1つ目の心理は、びっくりしたいからです。これは、新奇性(サリエンス)と呼ばれています。たとえば、「最新」「天才」などの目新しくてまれなもの(好奇心)、「陰謀」「真相」などの奇妙で不可解なもの(恐怖心)、「不正」「不倫」「差別」などの嫌悪するもの(道徳的感情)に私たちは敏感であることがわかっています2)。だからこそ、悪い噂は早く広まり、根拠がない陰謀論がいつも何かしらあるのです。さらに、ニュースが溢れている情報化社会では、これらのよりわかりやすい「煽りワード」が優先的に選ばれてしまうというわけです。この心理を見越して、つくる側は、ますます過激なタイトルのわりに中身(根拠)のないニュースを量産します。この悪循環は、ニュース記事だけでなく、動画においてもです。最近では、インパクトのあるサムネイルの画像の内容が再生中に出てこない動画も増えています。また、「ディープフェイク」と呼ばれる精巧な偽の動画をつくることが技術的に可能になり、もはや本物と区別がつかなくなるという別の問題も出てきています。なお、サリエンスの心理の詳細については、関連記事2の後半部分をご覧ください。(2)信じたいものだけを信じるから樹は上司に「フェイクニュースを転載したまとめサイトは30万PV」「一方、うちが出した『CSSの偽サイトに注意!「日本の奴隷労働の現状」はフェイクニュース』。こちらの記事は5万PV。拡散したフェイクニュースの6分の1しか閲覧されていない」と嘆きます。その後、上司は「自分にとって都合の悪い話は信じない。信じたいものだけを信じる。だったら、こっちもバカが喜ぶニュースを流すまでだ」と吐き捨てています。2つ目の心理は、信じたいものだけを信じるからです。これは、確証バイアスと呼ばれています。あることについて、それを肯定する情報(確証)に注意が向きやすくなる一方、否定する情報(反証)には注意が向きにくくなることです(認知の偏り)。つまり、私たちは、一度そう思ったら、その考えをなかなか変えたくなくなるのです。これは、「良し悪しは第一印象で決まる」(初頭効果)という印象形成のバイアスにもつながります。たとえば、ある有名な教育法の本のサブタイトルには、「才能をぐんぐん伸ばす」ともっともらしく書かれています。これは、この教育法によって「才能が伸びる」ことを説明しているわけですが、私たちは「この教育法でなければ才能は伸びない」と思ってしまいます。つまり、このサブタイトルは確証バイアスを巧みに利用していることになります。実は、この教育法でなくても、一般的な子育てによって「才能は、あるなら勝手に伸びる」という根拠が別にあり、反証することができます。この詳細については、関連記事3をご覧ください実際に、ツイッターの大規模な研究では、事実と比べて誤情報は70%多いことがわかっています2)。つまり、私たちは、情報を偏って選びがちであるということです。さらに、広告と同じようにニュースも自動的に「より自分にマッチするもの」だけに選別されて流れてくるネットサービス(パーソナライズ検索機能)では、ますます信じたいものだけを信じてしまうようになってしまいます。なお、このような個人情報を学習したアルゴリズムによって、その人に都合の良い情報だけに選別されて流れてくる状況は、まるで特定の情報の「膜」の中に閉じ込められ、孤立していく危うさもあります。これは、フィルターバブル(膜の泡)と呼ばれています2)。(3)同じ考えでつながりたいから樹が取材したまとめサイト管理人は「こっちが右寄り、こっちが左寄りのサイトです。例の青虫うどん騒ぎの場合、右派サイトでは『鶴亀(うどん)とテイショーは反日のブラック企業!』ってまとめをつくって、左のサイトでは『差別反対!鶴亀うどんを守れ!』ってね」と得意げに説明します。そんな彼に、樹は「つまり、お金儲けのために、対立を煽ってる」と即ツッコミます。3つ目の心理は、同じ考えでつながりたいからです。これは、同類性と呼ばれています。「類は友を呼ぶ」ということわざがあるように、見た目や考え方が近い人ほど親近感を抱きやすく集まりやすいということです。これは、「人は周りに染まりやすい」という社会的影響(同調)の心理との相乗効果があります。実際の研究では、健康に関する交流の実験用のSNSをつくり、つながりがランダムなネットワークと同類性が高いネットワークに分けて、情報共有を行ったところ、同類性が高い方がダイエット日記の取り組みや広がりが強まったという結果が出ました2)。つまり、情報の拡散には、同類性が高いネットワークの方が効率的であることがわかります。さらに、同類性の高い「友人」を自動的に勧められるSNSでは、ますます同じ考えの人とつながってしまうというわけです(集団極性化)。 これは、樹が「対立を煽っている」と言ったように、社会のつながりの分断を引き起こします。もはや、SNSの空間は、自分が意見を発信しても自分とそっくりな意見ばかりがこだまのように返ってくる状況になってしまいます。これは、エコーチェンバー(こだま部屋)と呼ばれています2)。その結果、過激なバッシングも生まれています。この心理の詳細については、関連記事4をご覧ください。1)フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話 シナリオブック:野木亜紀子、20232)フェイクニュースを科学する P14、P45、P48、P71、P73、P80、P96:笹原和俊、化学同人、2021<< 前のページへ■関連記事ザ・サークル【「いいね!」を欲しがりすぎると?(承認中毒)】Part 1ビューティフルマインド【統合失調症】伝記「ヘレン・ケラー」(後編)【ということは特別なことをしたからといって変わらない!?(幼児教育ビジネス)】Part 1苦情殺到!桃太郎(前編)【なんでバッシングするの?どうすれば?(正義中毒)】Part 1

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アリピプラゾール含有グミ製剤でアドヒアランスは向上するか

 精神疾患の治療を成功させるためには、服薬アドヒアランスを良好に保つことが重要である。医薬品のオーダーメイドは、アドヒアランスが不十分な患者に対し、個々の患者ニーズを満たす剤形を提供可能とする。静岡県立大学の河本 小百合氏らは、市販されているアリピプラゾール(ARP)製剤を用いて、ARP含有グミ製剤の調製を試みた。Chemical & Pharmaceutical Bulletin誌2023年号の報告。 健康対照者10人(平均年齢:23.7±1.2歳)を対象に、味覚検査を実施し、ARP含有グミ製剤の味を調査した。ココア味とフルーツ味の2種類のグミ(ARP:6.0mg、グミ:3.5g)を用いて、味覚テストを実施した。全体的なおいしさの評価には、100mmビジュアルアナログスケール(VAS)を用いた。ARP含有グミ製剤の嗜好性と5段階評価スケールを用いて評価した受容性のVASスコアの分析には、ROC曲線分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・総合的な味に関して最も高いVASスコアが示したのは、ココア風味のARP含有グミ製剤の中で、アスパルテーム、ココアパウダー、バナナ風味を組み合わせたもの(ABC-ARP含有グミ製剤)であった。・すべてのフルーツ風味の中で最も高いVASスコアを示したのは、グレープフルーツ風味のもの(GF-ARP含有グミ製剤)であった。・ABC-ARP含有グミ製剤およびGF-ARP含有グミ製剤のVASスコアは、ROC曲線より算出した許容性のカットオフ値を大きく上回っていた。・アドヒアランス向上、個々の患者ニーズを満たすために、ARP含有グミ製剤は、代替可能な手法である可能性が示唆された。

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双極性障害ラピッドサイクラーの特徴

 双極性障害(BD)におけるラピッドサイクリング(RC、1年当たりのエピソード回数:4回以上)の存在は、1970年代から認識されており、治療反応の低下と関連する。しかし、1年間のRCと全体的なRC率、長期罹患率、診断サブタイプとの関連は明らかになっていない。イタリア・パドヴァ大学のAlessandro Miola氏らは、RC-BD患者の臨床的特徴を明らかにするため、プロスペクティブに検討を行った。その結果、BD患者におけるRC生涯リスクは9.36%であり、女性、高齢、BD2患者でリスクが高かった。RC患者は再発率が高かったが、とくにうつ病では罹患率の影響が少なく、エピソードが短期である可能性が示唆された。RC歴を有する患者では転帰不良の一方、その後の再発率の減少などがみられており、RCが持続的な特徴ではなく、抗うつ薬の使用と関連している可能性があることが示唆された。International Journal of Bipolar Disorders誌2023年6月4日号の報告。 RCの有無にかかわらずBD患者1,261例を対象に、記述的および臨床的特徴を比較するため、病例および複数年のフォローアップによるプロスペクティブ調査を実施した。 主な結果は以下のとおり。・1年前にRCであったBD患者の割合は9.36%(BD1:3.74%、BD2:15.2%)であり、男性よりも女性のほうが若干多かった。・RC-BD患者の特徴は以下のとおりであった。 ●年間平均再発率が3.21倍高い(入院なし) ●罹患率の差異は小さい ●気分安定に対する治療がより多い ●自殺リスクが高い ●精神疾患の家族歴なし ●循環性気質 ●既婚率が高い ●兄弟や子供がより多い ●幼少期の性的虐待歴 ●薬物乱用(アルコール以外)、喫煙率が低い・多変量回帰モニタリングでは、RCと独立して関連した因子は、高齢、抗うつ薬による気分変調、BD2>BD1の診断、年間エピソード回数の増加であった。・過去にRC-BDであった患者の79.5%は、その後の平均再発率が1年当たり4回未満であり、48.1%は1年当たり2回未満であった。

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