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ガイダンスに基づくオピオイド処方で死亡率が低減/BMJ

 オピオイド使用障害の患者では、「リスク軽減ガイダンス(Risk Mitigation Guidance; RMG)」に基づくオピオイド処方により、過剰摂取による死亡および全死因死亡の発生率が有意に低下し、違法薬物に代わる医薬品の提供は有望な介入策となる可能性があることが、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のAmanda Slaunwhite氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年1月10日号で報告された。カナダ・ブリティッシュコロンビア州の後ろ向きコホート研究 研究グループは、RMGに基づくオピオイド(モルヒネ)および精神刺激薬(デキストロアンフェタミン、メチルフェニデート)の処方が、薬物の過剰摂取と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)という公衆衛生上の二重の緊急事態下に、死亡と急性期治療のための受診に及ぼした影響を明らかにする目的で、住民ベースの後ろ向きコホート研究を行った(カナダ健康研究所[CIHR]などの助成を受けた)。 2020年3月27日~2021年8月31日に、カナダ・ブリティッシュコロンビア州で、RMG処方としてオピオイド(5,356例、年齢中央値38歳、女性36.4%)または精神刺激薬(1,061例、39歳、38.5%)の処方を受けたオピオイド使用障害または精神刺激薬使用障害の患者5,882例(535例が両方の処方を受けた)を解析に含めた。RMG精神刺激薬処方では予防効果はない 高次元傾向スコアマッチング法による解析では、RMGに基づく1日分以上のオピオイド処方を受けた患者(5,356例)は、同処方を受けていない対照群の患者(5,356例)と比較して、処方日から1週間以内の全死因死亡率(補正後ハザード比[HR]:0.39、95%信頼区間[CI]:0.25~0.60)および過剰摂取関連死亡率(0.45、0.27~0.75)が有意に低かった。 一方、RMGに基づく1日分以上の精神刺激薬処方を受けた患者(1,061例)と、同処方を受けていない対照群の患者(1,061例)の比較では、1週間以内の全死因死亡率(補正後HR:0.50、95%CI:0.20~1.23)および過剰摂取関連死亡率(0.53、0.18~1.56)の低下について、いずれも有意差を認めなかった。 また、RMGオピオイド処方による1週間以内の死亡の予防効果は、特定の週に処方された薬剤の日数が多いほど高くなった。RMGオピオイド処方を4日分以上受けた患者は、対照群と比較して、全死因死亡(補正後HR:0.09、95%CI:0.04~0.21)および過剰摂取関連死亡率(0.11、0.04~0.32)が有意に低下し、いずれも1日分以上の処方よりも優れた。RMG精神刺激薬処方は全原因による急性期受診を抑制 RMGオピオイド処方は、あらゆる要因による急性期治療のための受診(オッズ比[OR]:1.02、95%CI:0.95~1.09)および過剰摂取による急性期治療のための受診(1.09、0.93~1.27)のいずれにも有意な変化をもたらさなかった。 また、RMG精神刺激薬処方は、あらゆる要因による急性期受診(OR:0.82、95%CI:0.72~0.95)を有意に低下させたが、過剰摂取による急性期受診(0.88、0.63~1.23)には影響しなかった。 著者は、「RMG処方を受けた人々の多くは、不安定な住宅事情と貧困の割合が不釣り合いに高いことから、劣悪な健康状態への寄与が示されている重層的で複雑な社会的・経済的な不平等を経験していることが示唆される」としている。

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バス運転手の危険運転に対する不眠症の影響

 近年、バス運転手の心身の健康問題に起因する交通事故が増加している。一般的な睡眠障害である不眠症は、交通事故リスクやメンタルヘルス問題、とくに運転行動に関連する不安や抑うつとの有意な正の相関を持つといわれている。しかし、バス運転手のみを対象に睡眠関連の問題とメンタルヘルスを調査した研究はほとんどなく、これらの問題が運転パフォーマンスにどのように影響するかはよくわかっていない。中国・同済大学のYujun Jiao氏らは、不眠症とメンタルヘルスがバス運転手の危険運転行動に及ぼす影響を調査し、不眠症、不安、抑うつ、危険運転行動の4つの変数の相互作用を評価した。Accident Analysis & Prevention誌2024年2月号の報告。 中国・蘇州市のバス会社に勤務するバス運転手1,295人を対象にアンケート調査を実施した。不眠症、不安、抑うつに関するデータは、専門的なメンタルヘルス尺度に基づき自己申告で収集し、危険運転行動は、ドライバー行動アンケート(Driver Behavior Questionnaire)を用いて測定した。バス運転手の不眠症、不安、抑うつ、危険運転行動との関連を評価するため、2つの媒介分析と1つの連鎖媒介分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・31歳未満、バスの運転経験が11年以上、3年以内に交通事故や交通違反に関与したバス運転手は、不眠症、不安、抑うつ、危険運転行動がより重度であった。・4つの変数には、有意な正の相関と相互作用が認められた。・とくに変数間の相互作用が認められた項目は、次の3つであった。 1. 不眠症と危険運転行動に媒介される不安 2. 不眠症と危険運転行動に媒介される抑うつ 3. 不安は主に抑うつを通じて危険運転行動に影響する 著者らは、「バス運転手に対する定期的な身体的および精神的な健康状態の検査は重要であり、不眠症やメンタルヘルスに焦点を当てた介入は、バス運転手の危険運転行動を直接的および間接的に減少させるうえで役立つ可能性がある」としている。

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初発統合失調症の臨床症状改善とBMIとの関連

 統合失調症患者は、一般集団と比較し、肥満の有病率が高いことが知られている。これまでの研究では、統合失調症患者における体重増加は、抗精神病薬に対する治療反応と関連していることが報告されている。しかし、統合失調症患者のBMIと治療効果との関連は依然としてよくわかっていない。中国・北京大学のXiaofang Chen氏らは、初回エピソードおよび抗精神病薬未治療の統合失調症患者におけるベースライン時のBMIと抗精神病薬治療による臨床症状改善効果との関連を調査するため、本研究を実施した。その結果、統合失調症患者のベースライン時のBMIは、その後の陰性症状改善と関連している可能性が示唆された。Frontiers in Pharmacology誌2023年11月9日号の報告。 対象は、初回エピソードおよび抗精神病薬未治療の統合失調症患者241例。12週間のリスペリドン治療を実施した。症状重症度の評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いた。BMIは、ベースライン時および12週間のフォローアップ時に測定した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬治療により、初回エピソードおよび抗精神病薬未治療の統合失調症患者の体重は増加した。・12週間の抗精神病薬治療後、ベースライン時のBMIと陰性症状改善との間に負の相関が確認された(r=-0.14、p=0.03)。・線形回帰分析では、ベースライン時のBMIは、統合失調症の初期段階において抗精神病薬リスペリドンに対する治療反応の独立した予測因子であることが示唆された。

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周産期うつ病、家族要因を問わず死亡リスク増大/BMJ

 スウェーデン・カロリンスカ研究所のNaela Hagatulah氏らは、同国の全国規模の住民ベース適合コホート試験の結果、周産期うつ病と診断された女性では、家族的要因を考慮してもとくに診断直後の1年間の自殺による死亡リスクが増加していたことを報告した。周産期うつ病は、妊娠に伴い最もよくみられる合併症の1つで、出産前後の女性の罹患率は最大で20%と報告されている。産後精神障害(精神病性障害、感情障害、不安障害など)を有する女性は、それらの影響を受けなかった女性や一般の女性集団と比べて死亡リスクが高いことが報告されているが、産前を含む周産期うつ病との関連についてエビデンスは限定的であった。また、家族内で共有する要因が周産期うつ病や自殺による死亡リスクの増加に寄与する可能性も指摘されているが、検討された試験データはなかった。著者は今回の結果を踏まえて、「周産期うつの影響を受けた女性、その家族、医療従事者は、これら周産期うつ病後の重大な健康リスクを認識する必要がある」と提言している。BMJ誌2024年1月10日号掲載の報告。スウェーデンで行われた追跡期間18年間のコホート試験 研究グループは、周産期うつ病を発症した女性は、発症していない女性、および実の姉妹と比較して、死亡リスクの上昇が認められるかを調べるため、スウェーデンの全国規模の健康レジスターを活用して、国民ベースの適合コホート試験を行った。姉妹の比較のために共有する家族の交絡因子の調節も行った。 レジスターの対象期間は2001年1月1日~2018年12月31日。対象被験者は、出産時の年齢と暦年で適合し特定した初めて周産期うつ病と診断され、専門的ケアと抗うつ薬の投与を受けた女性8万6,551人と、周産期うつ病に罹患しなかった女性86万5,510人であった。家族の交絡因子を調節するため、対象期間中に1人以上の単児出産をした実の姉妹27万586人(周産期うつ病罹患女性2万4,473人、非罹患の実姉妹24万6,113人)との比較も行われた。 主要アウトカムは、あらゆる要因による死亡。副次アウトカムは、死因別の死亡(すなわち、不自然および自然な死因)とした。 多変量Cox回帰法を用いて、交絡因子を考慮し、周産期うつ病の罹患女性と非罹患女性および姉妹を比較した死亡ハザード比を推算。周産期うつ病の経時的パターン、周産期うつ病発症の産前と産後の違いも検討した。死亡リスクは2.11倍、産後うつ発症者でリスクが高い 最長18年間の追跡調査において、周産期うつ病と診断された女性522人の死亡(1,000人年当たり0.82人)が報告された(年齢中央値31.0歳[四分位範囲[IQR]:27.0~35.0])。 周産期うつ病を罹患した女性は、非罹患女性と比較して死亡リスクの増大と関連していた(補正後ハザード比[HR]:2.11(95%信頼区間[CI]:1.86~2.40)。同様の関連は、精神障害の既往ありの女性となしの女性の間でも報告された。また、死亡リスクは、うつ病発症が産後の場合のほうが、産前の場合よりも高かった(HR:2.71[95%CI:2.26~3.26] vs.1.62[1.34~1.94])。姉妹間の比較においても、周産期うつ病について同様の関連性が認められた(2.12[1.16~3.88])。 関連性は、周産期うつ病発症後1年以内に最も顕著であり、追跡調査開始後18年間にわたり継続していた。 周産期うつ病の女性において、死亡リスクの増加は、死因を問わず関連が認められ(不自然な死因のHR:4.28[95%CI:3.44~5.32] vs.自然な死因のHR:1.38[95%CI:1.16~1.64])、その中で自殺の件数は少なかったが(1,000人年当たり0.23)、関連性は最も強かった(6.34[4.62~8.71])。

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日本人双極性障害外来患者における離婚の予測因子

 双極性障害は、躁状態とうつ状態を繰り返すことを特徴とする精神疾患であり、社会的障害を引き起こすことが知られている。さらに、双極性障害は、離婚や家族のサポートを失うリスクを高め、予後を悪化させる可能性が明らかとなっている。しかし、リアルワールドにおける双極性障害患者の離婚の予測因子に関するエビデンスは限られている。獨協医科大学の徳満 敬大氏らは、日本人双極性障害患者における離婚の予測因子を特定するため、調査を行った。その結果から、日本人双極性障害患者における離婚の予測因子として、ベースライン時の年齢が若い、BMIが低いことが特定された。Annals of General Psychiatry誌2023年12月12日号の報告。 日本精神神経科診療所協会の会員クリニック176施設の精神科医を対象に、観察アプローチ研究を実施した。医療記録のレトロスペクティブレビューを実施し、双極性障害と診断された患者に焦点を当てたアンケート調査を行った。2017年9月~10月に、ベースライン時の患者の特徴に関するデータを収集した。さらに、ベースラインから2019年9月~10月までの2年間の離婚率を調査した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象は、双極性障害外来患者1,071例。・2年間の離婚率は、2.8%(1,071例中30例)であった。・双極性障害患者の離婚率は、一般的な日本人の離婚率よりも非常に高かった。・二項ロジスティック回帰分析では、すべての対象患者における離婚の予測因子は、ベースライン時の年齢が若い、BMIが低いことが統計学的に有意であると確認された。・離婚の予測因子について性別ごとに評価したところ、男性患者における統計学的に有意な離婚の予測因子は、ベースライン時の年齢が若い、双極II型障害よりも双極I型障害である点であった。・女性患者における有意な離婚の予測因子は、BMIが低い、抗不安薬の使用であった。 著者らは「双極性障害患者における離婚の予測因子は、男女間で大きく異なることが明らかとなった。本発見は、実臨床現場における双極性障害患者に対する社会的サポートを検討する際、家族の観点から重要なポイントを提供するものである」とまとめている。

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LGBTQ患者の診療、困った経験は?/医師1,000人アンケート

 わが国にはLGBTQの人は3~10%程度いるとされている。「患者のほとんどが高齢者のためLGBTQは関係ない」と思われるかもしれないが、高齢者にもLGBTQの人は存在し、日常接している患者さんの中にも少なからずLGBTQ患者がいると考えられる。CareNet.comでは、会員医師1,029人を対象に、LGBTQ患者の診療経験に関するアンケートを実施した。その結果、多くの医師が今後の対応の必要性を認識しているものの、現状では診療体制が不十分であることが多く、今後の診療に影響が生じかねないケースもあったことが明らかになった(2023年12月25日実施)。過去にLGBTQ患者を診療した経験がある医師は43.9% Q1では、過去にLGBTQ患者を診療した経験があるかどうかを聞いた(単一回答)。その結果、「ない」と回答した医師は44.2%で最も多く、「ある」が43.9%、「わからない」が11.9%であった。 通常の診療では目の前の患者さんがLGBTQ患者かどうか意識しないことが多いと考えられるため、「わからない」が最も多いのではないかと予想していたが、はっきりと「ない」と回答した医師が多いのは意外であった。LGBTQ患者とわかった理由は「自己申告」が最多 Q2では、上記Q1で「ある」と回答した場合、LGBTQ患者だとどうやってわかったかを聞いた(複数回答)。多いものから自己申告、雰囲気や外見からの推測、問診表、保険証に記載されている名前や性別、治療・投薬内容、他の人からの伝聞などであった。 フリーコメントでは、「やはり自己申告をしていただかないといかんともしがたい」「本当にLGBTQかどうか確かめる方法がないのが困る」「本人がカミングアウトしていないが、保険証の性別や外見などからLGBTQとわかった場合の対応が難しい」などの声が寄せられた。LGBTQ患者の診療で困った医師は少数 Q3では、LGBTQ患者の診療で困ったことはあるかどうかを聞いた(単一回答)。その結果「ある」が16.3%、「ない」が83.7%と大差が付いた。 フリーコメントでは、困ったこととして「男性と申告した患者の腹部CTの際、放射線科の読影で子宮を腫瘍と読影され精査を追加した」「使用しているホルモン剤の影響を判断できる情報がない」「紹介先がわからない」など、今後の診療に影響しうる内容も多かった。LGBTQ患者を診察する際の不安は「プライバシーの保護」 Q4ではLGBTQ患者を診察する際の不安や懸念について聞いた(複数回答)。最も多かったのは「プライバシーの保護」であった。次いで、使用するトイレや入院時の病棟の決め方、LGBTQ患者に特有の治療(ホルモン剤や性別適合手術後のケアなど)、患者とのコミュニケーション、パートナーによる手術の同意/看取りの立ち合い/病状説明/面会の可否、患者がカミングアウトした場合の受け止め方、などが続いた。 フリーコメントではトイレや更衣室、入院病棟に関するコメントが圧倒的に多く、「共通トイレがなく困った」「トイレ使用に関してクレームがきた。やはり化粧はしていても髭の生えた人が女性トイレに入れば問題になる」「外来はプライバシーが守られたらよいと思うが、入院となると大部屋は悩ましいなと思う」など、ほかの患者さんとの関係を危惧するコメントが多く寄せられた。 Q5ではフリーコメントとして、LGBTQ患者の診療で困った経験、行っている取り組み、あるとよいと思う制度や仕組み、聞きたいことなどを聞いた。診察や治療に関するご意見・あまり最初から身構えずに、カルテの性別を基本にとして対応しています。・もちろん時に特別なことも必要かもしれませんが、通常はほかの患者さんとまったく同様の手順と気持ちで普通に診察できるようになるべきだと思います。・直接関わりがない部分はあまりむやみに聴取しないほうがよいと思ってはいるが、逆に遠慮して正しい診断に至らない可能性もあり、そもそもLGBTQなのか、どこまで聞いてよいのかなどほかの診療でどうやっているのか聞きたい。・妊娠の有無は教えてほしい。・医療に関しては遺伝子での性別に限定してほしい。施設に関するご意見・トイレが最大の問題だと思います。・施設利用(とくにトイレの使用)における法的な解釈や社会共通のコンセンサスがほしい。・トイレなどの施設的な問題はすぐには改善できないことが不安。・大部屋に入院させるときの対応について、ほかの施設の経験を知りたい。・当院での診療対応はできないのが実際。院内ルール、法整備に関するご意見・公文書の性別が男女の2択になっている現状を変えてほしい。・病院としての指針を作っておいてほしいです。・どこまで配慮すべきなのか基準が知りたい。・パートナーの同意で医療行為を行ってよい法的補償。・法規制の隙間に入ることが多いので、社会的な保護と義務について対応できる窓口がほしい。その他のご意見・今のところ診察したことないですが、これからのことを考えると対策を早急に考えるべきですね。・専門性があるので、ある程度、専門医療機関での診療に統合したほうがよいと思います。・患者側への啓発をする医療団体があればよいと思う。・もっと病気を周知してほしいです。・周囲のスタッフ間で情報の共有が難しい。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。https://www.carenet.com/enquete/drsvoice/cg004543_index.html

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睡眠で認知症予防、良質な睡眠を誘う音楽とは?【外来で役立つ!認知症Topics】第13回

認知症予防の睡眠で注目される「グリンパティック系」多くの病気の予防因子として共通するのが、運動、栄養、休養である。認知症の場合は、これに知的刺激や社会交流が加わる。具体的な予防法に注目すると、運動なら有酸素運動やデュアルタスク、栄養なら地中海食など具体的な目玉項目がある。しかし休養ではそれがなかった印象がある。「そもそも休養とは何か?」も難しいのだが、これは睡眠のことと考えていいだろう。とはいえ、「認知症予防の睡眠とは?」となるとこれというものはなく、いまひとつであった。そこに現れたのが、「グリンパティック系」である。筆者が学生の頃には、代謝過程の老廃物の処分を担うリンパ系器官が脳にはないと教わった。確かに脳には解剖学的にリンパ系はないが、実は同じ役割を担うものがあると判明した。それがグリンパティック系である1)。これは血管周囲の星状膠細胞により形成されたトンネル様構造で、中枢神経系の廃棄物を脳脊髄液と共に除去する系である。アルツハイマー病等の変性疾患に関連する異常蓄積蛋白もこの系で除去される。そして除去は睡眠中に行われることがわかったことが重要だ。だから睡眠不足は悪者蛋白の除去効率を下げることになる。さて疫学的に睡眠時間と認知症発症の関係は注目され、7時間睡眠が最も発症に防御的だとした大規模メタアナリシスも報告されている。ところが、日本人は世界的にみて最も睡眠時間が短く、平均6時間程度とされる。このこともあってか、近年アルツハイマー病予防に関連して、グリンパティック系を軸にした睡眠に注目が集まりつつある。睡眠関連障害と認知症の関係ところで睡眠障害は不眠ばかりでない。たとえばレム睡眠行動障害、睡眠時無呼吸症候群、レストレスレッグス症候群(RLS)などいくつもの病気がある。こうしたさまざまな睡眠関連障害と認知症発症の関係もまた研究され、すでにメタアナリシスもある2)。そしてこれらの睡眠関連障害の多くが認知症発症に関係することが示されている。認知機能低下に関連する要因として代表的なものが、レム睡眠行動障害(リスク比[RR]=1.90、95%信頼区間[CI]=1.23~2.91、I2=0%)、睡眠時無呼吸症候群(RR=1.29、95%CI=1.12~1.48、I2=40%)、ベッドで長時間過ごすこと(RR=1.15、95%CI=1.02~1.30、I2=22%)である。なおレストレスレッグス症候群とは無関係であった。逆に認知症に防御的と思われるものもある。習慣的昼寝(high trend:RR=0.46、95%CI=0.21~1.01、I2=45%)については、有意に効果的な傾向が報告されている。良質な睡眠を誘う音楽さて認知症者における睡眠障害はありふれたものである。たとえば、睡眠の不連続性(中途覚醒)、日中の眠気、睡眠効率の悪さ(寝ている時間/ベッドにいる時間)がアルツハイマー病でみられやすい睡眠障害だとされる。そして症状の進行とともに睡眠・覚醒リズムが乱れ、昼夜逆転パターンに至る例が多い。それだけに睡眠の質を良くするという課題は、認知症当事者と家族、また医療者、ケアスタッフにとっても大切である。普通いわれるのは、就床に先立つ運動や入浴、寝室温度をいくらか低めに設定、適切な明るさの設定などである。これまであまり知られていないが、音楽によるスムーズな入眠への効果も検討されており、効果的だとしたメタアナリシスもある。ところが、「どのような音楽をどのように聴いたら、スムーズな入眠効果が生まれるのか?」はほとんど検討されておらず、エビデンスが乏しい3)。しかし経験論的には以下がポイントだとされる。耳に心地よい音楽歌詞のない音楽自然の音のヒーリングミュージック長調の音楽である。音楽の内容は、クラシックや歌謡曲などではない。チルアウト系、アンビエント・ミュージックなどが代表だが、波の音、雨音など自然で単調なものがいい人もいる。筆者の場合、炭がぱちぱちと燃える音を聴いていると自然に眠りに落ちやすい。さて就床してから睡眠への移行における自律神経の活動ぶりは、スムーズな入眠にとっておそらく生理学的な鍵だろう。ところが確立された所見は、意外なほど少ない。ただ副交感神経の働きが優位になることが重要なのは確かなようだ。睡眠と自律神経という観点から考えたとき、音楽的な規則性と不規則性の調和を意味する「1/fのゆらぎ」の音楽が注目され、これが心地よさを生み出すといわれる。そしてこの種の音楽が副交感神経活動を優位にするとの報告もある。マインドフルネス瞑想も認知症者の睡眠の質を向上させる一方で、現代社会で、ストレスを軽減する方法として、マインドフルネスなど自律神経に注目したものが有名である。つまり副交感神経の働きを高め、交感神経の働きを低下させることで、心身の安定を得ることが基本になる。マインドフルネスのみならず、ヨガ、瞑想、また座禅にも同様の効果があるとされる。これらに共通するのは、ペースド・ブリージング(paced breathing)と呼ばれる「1分間あたり10回以下」のゆったりとした呼吸方法である。この呼吸法によって、横隔膜に至る迷走神経が刺激を受けて、副交感神経の働きが高まるとされる。知的に正常の人はもとより、軽度認知障害や認知症の人でも、この方法は有効だとの報告がある。睡眠に関しては、マインドフルネス瞑想で睡眠の質が向上すると報告したメタアナリシスもある。こうした知見から、呼吸法、副交感神経という観点から、認知症者の不眠改善につながる音楽を追求するのも、これからの治療法になるかと思われる。参考1)Lohela TJ, et al. The glymphatic system: implications for drugs for central nervous system diseases. Nat Rev Drug Discov. 2022;21:763-779.2)Xu W, et al. Sleep problems and risk of all-cause cognitive decline or dementia: an updated systematic review and meta-analysis. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2020;91:236-244.3)Jespersen KV, et al. Music for insomnia in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2015;2015:CD010459.

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朝食摂取とうつ病との関係

 うつ病は、食生活、社会的因子、生活習慣といった多くの要因と関連しており、重大かつ患者数が多い、世界的な公衆衛生上の問題である。中国・吉林大学のFengdan Wang氏らは、朝食の摂取、食事性炎症指数(DII)とうつ病との関連を評価し、朝食の摂取がうつ病に及ぼす影響に対しDIIがどのように関与しているかを調査した。Journal of Affective Disorders誌2024年3月号の報告。 対象は、2007~18年の米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した2万1,865人。朝食の摂取、DII、うつ病との関連の分析には、二項ロジスティック回帰分析と媒介効果分析を用いた。食事による炎症は、DIIに従い炎症誘発性食と抗炎症性食に分類した。 主な結果は以下のとおり。・参加者の平均年齢は47.24±0.28歳であった。・2回の回想法で、2回とも朝食摂取を報告した参加者(A群)は77.6%、1回でのみ朝食摂取を報告した参加者(B群)は16.3%、朝食摂取を報告しなかった参加者(C群)は6.1%であった。・炎症誘発性食、朝食抜きは、うつ病のリスク因子であった。・共変量で調整した後、B群はA群と比較し、うつ病のオッズ比が高かった(オッズ比:1.54、95%信頼区間:1.20~1.98)。・心血管疾患(CVD)および糖尿病でない参加者を対象とした層別化および感度分析においても、これらの関連は強固であった。・DIIは朝食摂取とうつ病との関連を仲介しており、B群の26.15%、C群の26.67%において認められた。 著者らは、研究の限界として、因果関係を明らかにしているわけではなく、データが限られているため薬物使用に関する交絡因子を考慮していない点を挙げたうえで、「朝食を抜くとDIIが上昇し、うつ病リスクが高まる可能性がある」とし、「本結果は、うつ病リスクの軽減には定期的な朝食、抗炎症性食の摂取が重要であることを裏付けるものである」とまとめている。

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日本人高齢者における抗コリン薬使用と認知症リスク~LIFE研究

 抗コリン薬が認知機能障害を引き起こすことを調査した研究は、いくつか報告されている。しかし、日本の超高齢社会において、認知症リスクと抗コリン薬の関連は十分に研究されていない。大阪大学のYuki Okita氏らは、日本の高齢者における抗コリン薬と認知症リスクとの関連を評価するため本研究を実施した。International Journal of Geriatric Psychiatry誌2023年12月号の報告。 2014~20年の日本のレセプトデータを含むLIFE研究(Longevity Improvement & Fair Evidence Study)のデータを用いて、ネステッドケースコントロール研究を実施した。対象は、認知症患者6万6,478例および、年齢、性別、市区町村、コホート登録年がマッチした65歳以上の対照群32万8,919例。1次曝露は、コホート登録日からイベント発生日またはそれに一致したインデックス日までに処方された抗コリン薬の累計用量(患者ごとの標準化された1日当たりの抗コリン薬総投与量)であり、各処方の抗コリン薬各種の総用量を加算し、WHOが定義した1日の用量値で除算して割り出した。抗コリン薬の累計曝露に関連する認知症のオッズ比(OR)の算出には、交絡変数で調整した条件付きロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・インデックス日の平均年齢は84.3±6.9歳であり、女性の割合は62.1%であった。・コホート登録日からイベント発生日またはインデックス日までに1種類以上の抗コリン薬が処方された割合は、認知症患者で18.8%、対照群で13.7%であった。・多変量調整モデルでは、抗コリン薬を処方されていた人は、認知症と診断されるORが有意に高かった(調整OR:1.50、95%信頼区間:1.47~1.54)。・完全多変量調整モデルでは、抗コリン作用を有する薬剤の中でも、抗うつ薬、抗パーキンソン病薬、抗精神病薬、膀胱に対する抗ムスカリン薬の使用で、認知症リスクの有意な増加が確認された。 著者らは「日本の高齢者が使用するいくつかの抗コリン薬は、認知症リスクの増加と関連している」とし、「これらの集団に対して抗コリン薬を使用する際には、ベネフィットと並び、潜在的なリスクを考慮する必要がある」としている。

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医療者の燃え尽き、カギはトレーニングよりも看護師人数

 新型コロナウイルス感染症流行下では、世界中で多くの医療者が燃え尽き症候群に直面し、多くの離職者が出た。そして、日本では2024年4月から医師の働き方改革がスタートし、時間外労働への規制が厳しくなる。この状況において、パンデミックの経験から学ぶべきことは何か。 米国ペンシルベニア大学のLinda H. Aiken氏らは、医師と看護師の健康状態と離職率を測定し、有害な転帰、患者の安全性、介入に対する好みと関連する実行可能な要因を特定することを目的とした調査を行った。具体的には、臨床医のメンタルヘルスを改善する介入を優先すべきか、ストレスや燃え尽き症候群の修正可能な原因に対処して病院の労働環境を変えるべきかについて比較検討した。JAMA Health Forum誌2023年7月7日号に掲載。 2021年に米国看護師資格認定センターの指定を受けた60施設の医師と正看護師、計2万1,050人から電子調査でデータを得た。回答者はメンタルヘルスと幸福感、職場環境因子と燃え尽き症候群(バーンアウト)、病院スタッフの離職率、患者の安全性についての質問に回答した。バーンアウトはMaslach Burnout Inventory(MBI)、不安は全般性不安障害スケール、うつ病はPatient Health Questionnaireスケールを用いて測定した。データは2022年2月21日~2023年3月28日に解析された。 主な結果は以下のとおり。・53病院の医師5,312人(平均[SD]年齢44.7[12.0]歳、男性2,362人[45%]、白人2,768人[52%])と、60病院の看護師1万5,738人(平均[SD]年齢38.4[11.7]歳、女性1万887人[69%]、白人8,404人[53%])が回答した。1病院当たりの医師数平均は100人、看護師数平均は262人、回答率は26%(医師22%、看護師27%)だった。・医師の約3人に1人、看護師の約半数が高いバーンアウト状態だったが、その割合は病院によって大きく異なり、医師では9~51%、看護師では28~66%だった。・医師の5人に1人以上(23%)が、「可能であれば1年以内に現在の病院を辞めたい」と回答した。病院間の差を考慮すると、いくつかの病院では3~4割の医師が可能であれば現在の病院を辞めたいと考えていることが示唆された。・「患者の安全性に関して、自院は好ましくない状況だ」と評価したのは医師12%、看護師26%だった。「看護師の数が少な過ぎる」は医師28%、看護師54%、「劣悪な職場環境である」は医師20%、看護師34%、「経営陣に対する信頼がない」は医師42%、看護師46%だった。「職場が楽しい」と回答者した医師は10%未満であった。・医師も看護師も、医師のメンタルヘルスを改善する介入よりも、病院の労働環境改善のほうがより重要である、と回答した。・介入策の中で、看護師の人員配置の改善が最も高く評価された(医師45%、看護師87%)。 研究者らは、「看護師の数が少な過ぎる、職場環境が好ましくないと医療者が考える施設は、医師の燃え尽き症候群と離職が多く、患者の安全性に関する評価が好ましくないと評価する割合が高かった。医療者は看護師の人員不足、医師の仕事量に対するコントロール不足、劣悪な職場環境への経営陣の対応を望んでおり、心身の健康に関するプログラムやトレーニングへの関心は低かった」とした。

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境界性パーソナリティ障害の診断~治療に関する包括的レビュー

 インド・Jawaharlal Nehru Medical CollegeのSanskar Mishra氏らは、境界性パーソナリティ障害(BPD)の診断から治療までの複雑さを明らかにするため、包括的な文献レビューを実施した。Cureus誌2023年11月23日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・BPDは、予測不能な感情、行動、人間関係を特徴とする重度の精神疾患である。・BPDの診断基準では、情緒不安定、相動性、社会的つながりの希薄などの症状が基本となる。・注目すべき点は、BPDといくつかの精神症状との間に臨床的共通点がみられ、BPDと精神症状により精神病理学的リスクを増加させると考えられる。・神経画像に関するエビデンスでは、BPD患者は、とくに脳の感情や衝動性を制御する領域において、構造的および機能的変化が認められる。・精神分析家Adolf Stern氏は、1938年、治療中に症状が増悪し、自虐的な傾向を示した患者を表現するため「境界性(borderline」」という言葉を用いた。・現在のBPDに関する研究では、退屈(空虚感に関連する以前の診断基準)などの症状の複雑さが示唆されている。・BPDの実用的な構成要素に関しては、不明な点があるものの、有望な治療法としてBPDに対する統合的な認知行動療法であるスキーマ療法が注目されている。・BPDが他の疾患と複雑に関係していることは非常に興味深く、たとえば、一部の神経化学的経路は神経性過食症と一致しており、より密接な相互関係が示唆されている。・診断に関しては、BPDの特徴的な症状として、見捨てられることへの恐怖、アイデンティティの崩壊、反復的な自殺行為などが挙げられる。・治療選択肢は、薬理学的介入、弁証法的行動療法(DBT)などの心理学的療法が含まれる。・選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの抗うつ薬による治療が行われることも少なくないが、その有効性に関する研究は現在進行中であり、綿密な治療計画の重要性が指摘されている。・BPDは、とくに思春期に発症することが多いことを考慮すると、これまでどおり早期発見が必要とされる疾患である。・多くの患者において、症状の軽減が報告されているが、依然として課題は残っており、包括的かつ個別化された治療戦略が求められる。

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映画「かがみの孤城」(その2)【実は好きなことをさせるだけじゃだめだったの!?(不登校へのペアレントトレーニング)】Part 1

今回のキーワード社会的な自我(アイデンティティ)味方になる(自尊心)寄り添いワード大人扱いする(自信)お小遣い歩合制家庭のルールづくり夢を語り合う(自我)ユートピア型前回は、不登校の根っこの心理を掘り下げました。それは、自我の弱さでした。そして、不登校が増えている一番の原因を解き明かしました。それは、社会構造の変化でした。それでは、これらを踏まえて、自分の子供が学校に行けなくなったらどうすればいいのでしょうか?今回も、不登校をテーマに、アニメ映画「かがみの孤城」を取り上げます。この映画を通して、再び発達心理学の視点から、不登校への効果的な親の対応(ペアレントトレーニング)をご紹介します。好きなことをさせるだけじゃだめなの?主人公のこころは、不登校になってから、家でテレビを見るか横になっているだけでした。近くに住む萌ちゃんが毎回学校からの届け物を郵便ポストに入れていましたが、その時もこころは窓からこっそり見ているだけで、かかわりを持とうとしません。自分の子供が不登校になった時、親として無理やり学校に行かせることは本人を追い詰めるだけなので、確かに望ましくないです。かと言って、こころのようにただ家にいて、本人の好きにさせるだけでいいのでしょうか? 教育関係者の中には、そうするよう提唱する人もいます。はたして、どうなんでしょうか?このやり方は、前回説明した自我を育むという点においては、明らかに望ましくないです。確かに、家で好きなことをしているだけでは、単に今ここでどうしたいかという「個人的な自我」(自己愛)は育まれます。しかし、ただ家にいるだけでは、勉強(認知能力の学習)はなかなかする気になれず、クラスメートや先生とのかかわり(社会的コミュニケーション)の刺激もありません。すると、これから社会でどうなりたいか、つまり大人になってどう生きていきたいかという「社会的な自我」(アイデンティティ)はやはり育まれなくなります。これが理由です。もっと言えば、先進国で日本ほど不登校に寛容な国はありません。たとえば、米国で子供が不登校になると、ネグレクトとして親に罰金が課され、子供には心理カウンセリングが義務づけられます。そして、米国や欧州の多くの国々では、代わりに少なくともホームスクーリング(家庭学習)が義務づけられています。なお、ドイツにいたってはホームスクーリングさえ認められず、転校するなどして通学することが義務づけられています。世界的に見れば、それくらい子供に教育を受けさせることは親や国家の義務とされています。日本は、家族主義が根強いため、不登校への対応は主に家庭に任せ、国は法的な介入をしないというスタンスを取り続けています。しかし、さすがにこれだけ不登校が増え続けるなか、不登校の黙認は、日本国憲法に定められた三大義務の1つである「教育を受けさせる義務」を親も国家も果たしていないことになります。もはや、好きなことをさせるだけでは「教育ネグレクト」と言わざるを得ません。じゃあ親はどうしたらいいの?好きなことをさせるだけでは望ましくない理由は、「社会的な自我」(アイデンティティ)が育まれなくなるからであることがわかりました。これを踏まえて、それでは、親はどうしたらいいのでしょうか? こころと母親のやり取りから不登校を解決するために必要な親の対応を、ペアレントトレーニングとして、順番に大きく3つ挙げてみましょう。なお、ペアレントトレーニングとは、もともとADHD(注意欠如多動症)などの発達障害の子供への親の対応スキルを練習することですが、不登校にも広げることができます。(1)味方になる―自尊心こころの母親は、フリースクールの先生の助言もあって、こころにあまり口出しをせず、根気強く見守るようになります。普段から他愛のない雑談を心がけるようになります。こころがいじめを打ち明けた時は、「本当に気付いてあげられなくてごめん」と言い、やさしく抱きしめます。1つ目は、味方になることです。ここで、その方法を具体的に3つ挙げてみましょう。a.雑談1つ目は、雑談です。これは、ただ親が「宿題やった?」「どこ行ってたの?」などと見張るようセリフはNGです。雑談の内容は、親がただ知りたいことではなく、あくまで子供が話したいことに寄せるのがコツです。たとえば、一緒にテレビを見ながら「このお笑い芸人おもしろいね」「この俳優、私の最近の推しメンだわ」などと楽しく話すことです。雑談の目的は、情報ではなく情動、つまりまず信頼関係を築くことです。b.良いところ探し2つ目は、良いところ探しです。これは、まさに子供の良さや強みをどんどん指摘していくことです。ここで、良いところが見つからないと困っている人はいますでしょうか? そんなことはありません。たとえどんなネガティブなことでもポジティブに返すことができます。心理学では、リフレーミング(認知再構築)と呼ばれています。具体例は表1をご覧ください。良いところ探しの目的は、良さが本当にあるかどうかではなく、良さがあると思ってくれる味方がいることを子供に伝えることです。なお、これは、褒めるスキルにも通じます。詳細については関連記事1をご覧ください。c.寄り添いワード最後にして一番大事なのは、3つ目の寄り添いワードです。これは、欧米圏のようにことあるごとに「アイラブユー」と言い添えることです。ただし、日本人はストレートな表現に馴れていないです。いきなり言ってしまうと気持ち悪がられるおそれがありますので、言い換える必要があります。たとえば、普段から会話の中で「きみは大事だよ」「一緒にいて幸せだよ」と言うことです。また、いじめを打ち明けた時などは、子供の気持ちを受け止めることです。説教したり審判するのは逆効果です。助言については、「アドバイスほしい?」と確認するくらい慎重になる必要があります。具体例は、表2をご覧ください。なお、これは、うつ病など弱っている人へのかかわり方にも共通しています。この詳細については関連記事2をご覧ください。このようにして味方になることで、「自分は大丈夫」(OK)という安心感を育み、自尊心(自己肯定感)を高めることができます。これが、土台としてまず必要になります。次のページへ >>

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映画「かがみの孤城」(その2)【実は好きなことをさせるだけじゃだめだったの!?(不登校へのペアレントトレーニング)】Part 2

(2)大人扱いする―自信こころの母親は、こころが城に通っている間に家にいないことに気付き心配して指摘します。しかし、こころから「監視されるの好きじゃない」と言い返されると、その後は、それ以上言わず、本人に任せるようになります。2つ目は、大人扱いすることです。ここで、その方法を具体的に4つ挙げてみましょう。a.プライバシー尊重1つ目は、プライバシーの尊重です。たとえば、部屋の掃除という口実で、勝手に持ち物を確認したり、日記を見たりしないことです。携帯電話を持たせている場合、勝手に見ないことです。ここで、「心配だから確認したい」と思う人はいますでしょうか? これは、子供扱いです。本人が「大人になりたい」という自我を削ぐことになります。そして、信頼関係も損ねてしまいます。もしも、皆さんが大人扱いする感覚がよくわからない場合は、ホームステイ中の外国人の若者だったらどう接するかと想像したらいいでしょう。もはや文化が違うわけです。相手の文化を尊重して、こっちの文化を押し付けることはできないです。親切に接して、決して勝手に携帯電話をのぞき見しないでしょう。それくらいの距離感が必要であるということです。b.大人トーク2つ目は、大人のトークです。たとえば、親が話しかけても子供が無愛想な時、「その態度は何なの?」と叱る(攻撃)のではなく、それ以上何も言わないという黙認(非主張)でもなく、フラットな大人の関係を意識して、ほどほどに伝えることです。具体例は表3をご覧ください。なお、これは、心理学ではアサーションと呼ばれています。この詳細については、関連記事3をご覧ください。c.お小遣い歩合制こころは、他のメンバーへのお誕生日プレゼントを自分の財布から支払っていました。こころはお小遣いをもらっているようです。実は、お小遣いは、子供を心理的に自立させるためにも効果的なツールであると言われています1)。一方で、不登校の相談を受ける時、お小遣いについて確認すると、多くの親がお小遣いをあげていない、つまり必要に応じて親の判断でお金を渡していることが判明しています。そうではなくて、このお小遣いに仕組みをつくる必要があります。3つ目は、お小遣い歩合制です。具体例は図1をご覧ください。ポイントは、親の判断や気分でお小遣いをあげないこと、つまりお小遣いのルール化です。まず、あらかじめベースのお小遣いを設定します。そして、たとえばフリースクールに行けたら1日プラス〇円と設定するのです。これは、大人の給料(報酬制)と同じです。心理学的には、トークンエコノミー(行動療法)と呼ばれています。これを本人がある程度納得する形で提案し、一緒に署名します(契約制)。定期的に見直して、項目や金額設定を変更する話し合いも行います(交渉制)。こうすることで、「何もしなくてもお金がもらえる」「なくなったらねだればいいや」という子供っぽい発想がなくなります。そして、「がんばったら自由に使えるお金が増える」「計画的にお金を使おう」という発想が生まれます。そうなるためにも、安易にお金を渡さないことも必要です。d.家庭のルールづくりこころの家には、ゲーム機がありませんでした。原作では、こころが不登校になってから父親が一方的にゲーム機を取り上げてしまったと説明されていました。確かに、ゲーム機やスマホを最初から家に置かないようにするのも1つのやり方です。ただし、ただ一方的に取り上げるだけでは子供扱いです。それでは、ゲームやスマホの時間制限をお小遣い歩合制の項目に入れるのはどうでしょうか? 残念ながら、機能しないでしょう。なぜなら、子供はその分を損してもやり続けるからです。それくらい、ゲームやスマホは依存性が強いのです。夜遅くまでゲームに熱中していれば、朝起きられないのは当たり前です。こんな時、親が本人を無理やり叩き起こして学校まで送迎するのはどうでしょうか? これも明らかに子供扱いです。「親が起こして連れてってくれるからいいや」とますます子供っぽい発想になります。そこで、最後にして最重要なのが、家庭のルールづくりです。具体例は図2をご覧ください。このポイントは、 まずペナルティの設定です。そして、ある程度納得してもらうために、ゲーム依存症のリスクがどれほどのものか根拠(データ)を示すとともに、家族の目標、つまりビジョンを示すことです。また、「家族で助け合う」というビジョンを入れておくと、先ほどのお小遣い歩合制によって「お金がもらえないなら家事は手伝わない」という発想を予防することもできます。さらに、なるべく家族全員に署名してもらいます。つまり、立会人の存在です。ルールが機能するためには、ペナルティの設定と同時に、それをチェックする周りの目が必要になります。これは、ルールを課される子供だけでなく、ルールを課す親にも向けられているという点で、とてもフェアで妥当なものになるでしょう。家庭のルールづくりの一番の目的は、ゲームやスマホなどの家庭内の娯楽の制限です。娯楽という点では、テレビも含まれます。こころは、城に招かれる前、1日中テレビを見ていました。家庭は、確かに安心できる場所であることが必要ですが、楽しい場所である必要はありません。むしろ、「家にいてとても楽しい」と思っている子供がそれよりも娯楽が少ない学校やフリースクールに行くわけがないことは容易に想像できます。「家にいると退屈だ」と子供に思わせることが必要になります。その方が、そんな家を早く出て自立したいと思うでしょう。「それじゃかわいそうだ」と思う人はいますでしょうか? この発想も子供扱いです。私たち親は、自立できる人を育てる責任があります。それが最優先されます。その責任がある以上、不登校の子供に家庭内の娯楽の制限をすることはやはり必須になります。ちょうど、糖尿病の子供にお菓子やジュースなどの嗜好品を制限するのとまったく同じです。そうしないのは、やはり「教育ネグレクト」と言わざるをえません。つまり、大人扱いをするとは、本人がどんな行動を選択するかの自由を与えると同時に、その行動への責任を教え、責任を取る練習をさせることであることがわかります。よく言われるように、自由と責任はセットです。この責任とは、最終的には自分の人生を自分で生きる責任です。逆に言えば、成人したら、経済的な援助は基本的にできない、病気になるなど困ったときに一時的に限ることをあらかじめ伝える必要があります。また、「ゲームをやらせろ」と暴れる場合は、もはや対応の限界です。暴行や器物破損として警察に通報を必要があることを本人に冷静に伝える必要もあります。つまり、家庭のルールは社会のルールにつながっています。なお、このような限界設定は、やはりその前に味方になるという信頼関係を十分に築いていることが大前提です。この信頼関係がなければ、そもそも家庭のルールを守ろうとする気が子供に起こらないでしょう。このようにして、もともとの自尊心を土台として、さらに大人扱いすることで、「自分はできる」(can)という有能感を育み、自信(自己効力感)を高めることができます。これが、中核として必要になります。(3)夢を語り合う―自我こころの両親は、二人とも仕事をしていました。しかし、夕食などで、とくに仕事については話題にしていませんでした。実は、話してほしい話題があります。3つ目は、夢を語り合うことです。ここで、その方法を具体的に3つ挙げてみましょう。a.背中語り1つ目は、背中を見せる、つまり背中語りをすることです。まず、親が、仕事をはじめボランティアなども含めた社会参加をどうしていて、どうなりたいのかという「夢」(ビジョン)をさりげなく語っていることです。これは「味方になる」の方法の1つである雑談の延長です。たまに愚痴は言いつつも、やはりがんばっていることを夫婦で語り合っていることです。いつか行ってみたい場所、いつか会ってみたい人たちなども語るのも良いでしょう。逆に言えば、親が仕事の愚痴を吐いてばっかりでつまらなさそうにしているだけでは、子供は大人になって仕事をがんばりたいとは思わなくなるでしょう。これは、心理学的にはモデリングと呼ばれています。思春期の子供は親の言うことは聞かなくなりますが、親のまねは知らず知らずにしてしまうということです。b.タイムマシン2つ目は、タイムマシンに乗せるです。これは、タイムマシンに乗って未来の自分を見にいったら、どんな自分が見れるか想像しもらうことです。何歳でどんな場所にいて、どんな格好や表情をしているか、誰とどんな話をしているか、細かく聞き出すことです。さらに、それを子供に書き出してもらって、その紙を張り出すことを提案します。絵が得意なら、絵にして飾るのも良いでしょう。夢(未来)を語るとは、自分の人生に責任を感じていくプロセスでもあります。すると、じゃあ今どうすればいいのかがおのずと沸き起こってきます。それは、夢(目的)を叶えるために少なくとも学校に行くことは必要だと気付くことです。こうして、自分で決めて行動することで、自分の行動に責任を持つようになります。それが自分の生き方に納得するという自我同一性(アイデンティティ)につながっていきます。この働きかけは、心理学的にはタイムマシンクエスチョン(ブリーフセラピー)と呼ばれています。ポイントは、未来の自分の視点に立たせ、考えさせることです。ちなみに、視点は、未来の自分だけでなく、理想の自分、尊敬する人(ロールモデル)に置き換えることもできます。具体例は、表4をご覧ください。この考えさせるかかわりの詳細については、関連記事4をご覧ください。c.意味づけ3つ目は、意味づけることです。これは、うまく行かないことや嫌なことがあっても、それを「これは夢(目的)を叶えるために必要なんだ」と意味づけることです。夢を具体的に描けていれば、これが可能になります。「試練」「次にうまくやるためのリハーサル」などと伝えることもできます。これは、「味方になる」でご紹介したポジティブ返しでもあります。実際の研究では、人はストレスがあることによって、自ら成長していくこともわかっています。心理学的には、ストレス関連成長(SRG)と呼ばれています。つまり、うまく行かないことや嫌なことは、成長するためにはむしろある程度必要であるという考え方です。これは、悔しさという心理の機能です。この点で、親が失敗させないように先回りして指示したり、嫌な思いをさせないように人間関係を制限するのは、逆効果であるということです。この詳細については、学校環境の影響度として、関連記事5をご覧ください。なお、夢を語ったり意味づけしてもらうためには、「味方になる」の方法の1つである良いところ探しから、本人が自分の強み(リソース)を自覚していることが大前提です。そして、「大人扱いする」の方法の1つである家庭のルールづくりから、本人が自分の人生を自分で生きる責任を自覚していることも大前提です。この強みや責任の自覚がなければ、いくら夢を聞いても、「わからない」「思いつかない」としか答えなかったり、「つまんない大人になってる」としか言わないでしょう。このように、先ほどの有能感を中核として、夢を語り合うことで、「やりたい」(want)、「なりたい」(want to be)という自分の人生への責任感を育み、個人的そして社会的な自我(アイデンティティ)を確立することができます。これが、仕上げとして必要になります。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「かがみの孤城」(その2)【実は好きなことをさせるだけじゃだめだったの!?(不登校へのペアレントトレーニング)】Part 3

これからの家族のあり方とは?不登校へのペアレントトレーニングとして、味方になる、大人扱いをする、夢を語り合うことで、自尊心、自信、自我を順に育んで、学校に行くことは必要であると自覚させることであることがわかりました。つまり、学校は、行きたいか行きたくないかという好き嫌いの問題ではなく、行く必要があるという必要性の問題であると自分で思えるかどうかであるということです。言われてみれば、当たり前のことのように思えますが、この発想を促す自我がもともと弱かったり、育まれていなかったために、あっさり不登校になっていたのです。以上を踏まえて、これからの家族のあり方とはどういうものが望ましいでしょうか? ここから、家族を国家のタイプに例え、大きく4つに分けて、その答えを導いてみましょう。(1)独裁国家型1つ目は、独裁国家型です。これは、北朝鮮、ロシア、中国のように、逆らうとひどい目に遭う国です。これは、封建社会の価値観に通じます。家族に置き換えれば、前回すでに紹介した1980年代以前の日本の家族が当てはまります。親(国家)は、子供(国民)の味方になっているわけではなく、無理やり大人扱いして、一方的に責任を押し付ける特徴があります。結局、自尊心は育まれず、自信はありますが、自我は弱いです。そのため、「とにかくやらなきゃ」(should)という発想になりがちです。このタイプは、現代の価値観では時代遅れとなっており、家族のあり方としてはもちろん危ういです。(2)ユートピア型2つ目は、ユートピア型です。これは、中東のオイルマネーで豊かな国です。そこには、その名の通り、王子と呼ばれる働かない人が多くいます。家族に置き換えれば、ちょうどこころのように、1980年代以降の不登校を招きやすい日本の家族が当てはまります。親(国家)は、子供(国民)の味方にはなっていますが、大人扱いが不十分で、無責任にさせてしまう特徴があります。自尊心はある程度育まれるものの、自信がなく、結局自我は弱いままです。そのため、「誰かやって」(please)という発想になりがちです。このタイプは、不登校だけでなく、アルコール、ギャンブル、ひきこもりなど嗜癖の問題を招くリスクが最もある点で、やはり家族のあり方として危ういでしょう。(3)民主国家型3つ目は、民主国家型です。これは、欧米圏のように、積極的な話し合いと多数決によって成り立っている国です。家族に置き換えれば、おそらく萌ちゃんの家族が当てはまります。親(国家)は、子供(国民)の味方になり、大人扱いして、夢(より良い未来)を語り合う特徴です。自尊心も自信も育まれて、必然的に自我は強くなります。そのため、「やりたい」(want)、「なりたい」(want to be)という発想になります。このタイプこそが、不登校を防ぐ点でも、これからの家族のあり方として、望ましいわけです。(4)無法地帯型4つ目は、無法地帯型です。これは、ロシアとウクライナ、パレスチナとイスラエルのような戦争状態の国です。親(国家)は、子供(国民)の味方にはなれず、大人扱いどころではなく、いつ「殺される」(虐待される)かわからないという特徴があります。もちろん、自尊心も自信も育まれず、自我も芽生えないです。先のことは何もわからないため、「やらない」(no way)という発想に陥ります。このタイプは、もはや家族のていをなしていない点でも、家族のあり方として、決して望ましくないでしょう。ちなみに、日本は国としては民主国家の形になってはいるのですが、家族としてはまだ家族主義が根強いことから、ユートピア型になってしまっている家族が多いのが現状です。だから、不登校が多いのです。逆に言えば、家族も個人主義化して家族主義から抜け出して民主国家型になれば、不登校は海外と同じように目立たなくなることが予測できます。なお、この家族の国家タイプの詳細については、関連記事6をご覧ください。いじめにとらわれると不登校が解決しづらくなるこころが母親にいじめの件を打ち明けたことから、母親が担任の先生に迫るシーンがありました。親心として、いじめ加害者を断罪したいと思う気持ちはよくわかります。「その子のせいで不登校になった」「その子がいなければ不登校にはならなかった」というロジックです。しかし、前回説明したとおり、いじめは不登校のきっかけ(誘因)にすぎず、たとえいじめがなかったとしても、不登校の根本的な原因である自我の弱さは変わりません。城に来た他の6人と同じように、別のきっかけでこころは遅かれ早かれ不登校になる可能性が考えられます。不登校にならなかったとしたら、ただそれは誘発されずに運が良かっただけです。つまり、いじめを掘り下げても、不登校は解決しないです。むしろ、いじめられることは、子供の心理からしてみれば、恥です。学年が変わるタイミングで加害者たちを別のクラスにするなどの対策は必要ですが、親がいじめにとらわれて騒ぎ続けると、子供が前に進めなくなります。そもそもいじめの認定は、いじめられたと主張する本人の主観による要素が大きいです。これは、ちょっとでも何かされたり(いじりや陰口だけでも)、逆にちょっとでも相手にされない(無視)だけでも「いじめ」であると本人が認識する場合も含まれることを意味します。そのため、犯罪レベルを除くと、もはや不登校に「いじめ」があるかどうかを明確に区別することには限界があります。また、進化心理学的に考えれば、いじめは人類が心の進化の過程で社会を維持するために獲得した負の機能(社会脳)です。私たちが集団をつくる限り、いじめの心理をなくすことは難しいのが現実です。いじめを減らす取り組みはもちろん必要ですが、仮にいじめを完全になくすことができたからといって、自我の弱さは変わらないため、不登校が劇的に改善することはないでしょう。逆に、先ほどのストレス関連成長(SRG)の観点から、大人の社会でもいじめはあるのに、学校で小さな「いじめ」(対人ストレス)までも厳しく取り締まって「無菌状態」(ストレスフリー)をつくってしまったら、大人になった時に「免疫力」(ストレス耐性)が高まらず、結局小さな「いじめ」ですぐに参ってしまうでしょう(ストレス脆弱性)。たとえば、こころが自我の弱いまま大人になったら、今度は「新型うつ」(職場不適応)になる可能性が考えられます。なお、「新型うつ」の詳細については、関連記事7をご覧ください。つまり、不登校といじめ(犯罪レベルを除く)を積極的に結びつけることには大きな意味はなく、むしろいじめにとらわれてしまうと、不登校が解決しづらくなってしまうおそれがあります。なお、いじめの心理と対策の詳細については、関連記事8をご覧ください。ちなみに、こころの母親から「学校に行けないのはこころちゃんのせいじゃないって」というセリフがありました。あとからいじめ被害が判明したため、結果的には、自分を責めてしまいそうなこころに味方になるメッセージを伝えるという効果がありました。一方で、子供にはこれからどうするかについて責任を感じなくて良いという裏メッセージとして伝わる可能性もあり、実は危ういセリフであることもわかります。まさに、これはユートピア型ならではの声かけです。よって、安易に使わない方が良いでしょう。厳密に言うと、学校に行けなくなったことへの責任は確かにないですが、これからどうするかにはやはり責任があります。これは、アルコール依存症と同じで、なってしまったことへの責任は本人にないですが、治す責任は本人にあるということです。ちなみに、ひきこもりの人の多くが口を揃えて言うセリフがあります。それは「こうなったのは親のせいだ」です。このような責任逃れの心理(モラルハザード)に陥らないようにするためにも、やはり、「誰のせい」「誰のせいじゃない」などと学校に行けなくなった原因を掘り下げることは避けて、その他の寄り添いワード(1ページ目)を使いつつ、これからどうしたらいいかという解決にフォーカスすることが有効です。1)「子供におこづかいをあげよう!」P66:西村隆男、主婦の友社、2020<< 前のページへ■関連記事ダンボ【なぜ飛ぶの? 私たちが「飛ぶ」には?(褒めるスキル)】ツレがうつになりまして。【うつ病】逃げるは恥だが役に立つ【アサーション】ドラえもん【子供のメンタルヘルスに使えるひみつ道具は?】ちびまる子ちゃん(続編)【その教室は社会の縮図? エリート教育の危うさとは?(社会適応能力)】Part 1クレヨンしんちゃん【ユーモアのセンス】Part 1こうして私は追いつめられた【新型うつ病】告白【いじめ(同調)】Part 1

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統合失調症の神経認知プロファイルに対するアリピプラゾールとオランザピンの有効性比較

 統合失調症は、重篤な神経認知障害を引き起こす疾患である。統合失調症に対する抗精神病薬治療は、精神病理および神経認知機能の改善をもたらすことが期待される。インド・Government Medical College and HospitalのSanya Sharma氏らは、統合失調症患者の神経認知プロファイルに対するアリピプラゾールとオランザピンの有効性を比較するため、プロスペクティブ介入比較研究を行った。その結果、アリピプラゾールとオランザピンは、神経認知プロファイルの改善に有効であり、それぞれ特定の領域に対してより有効であることが示唆された。Indian Journal of Psychiatry誌オンライン版2023年10月号の報告。 精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-V)に従い、統合失調症患者をベースライン時の簡易精神症状評価尺度(BPRS)、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)および神経心理学的検査で評価した。対象患者は、コンピューターで生成したランダムナンバーに基づき、アリピプラゾール群(1日当たり10~30mgを経口投与)とオランザピン群(1日当たり5~20mgを経口投与)にランダムに割り付けられ、10週目に再評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者40例が、10週間の研究期間を終了した。・ベースライン時、大多数の患者において、1つ以上の神経認知領域の重大な欠損が認められた。・アリピプラゾール群、オランザピン群のいずれにおいても、精神症状および神経認知プロファイルの改善が認められた。・アリピプラゾール群では、オランザピン群と比較し、処理速度の有意な改善が認められた。・アリピプラゾールによるストループ効果(p=0.000)および視空間認識能力(p<0.001)の非常に有意な改善が認められた。・オランザピン群では、意味流暢性(p<0.01)、言語流暢性(p<0.01)において非常に有意な改善が認められた。

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妊娠中の大麻使用、有害な妊娠アウトカムが増加/JAMA

 妊娠期間中の継続的な大麻使用により、胎盤機能不全に関連する有害な妊娠アウトカムが増加し、とくに在胎不当過小児が多くなることが、米国・University of Utah HealthのTorri D. Metz氏らが実施した「NuMoM2b試験」の補助的解析で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年12月12日号に掲載された。米国8施設9,257例のコホート研究の補助的解析 NuMoM2b試験は、米国の8つの医療センターで実施したコホート研究であり、2010~13年に参加者を募集し、今回の補助的解析は2020年6月~2023年4月に行った(米国国立薬物乱用研究所[NIDA]の助成を受けた)。 母親(未経産婦)の大麻曝露の判定は、妊娠期間中(妊娠6週0日~13週6日[初回受診]、同16週0日~21週6日[2回目受診]、同22週0日~29週6日[3回目受診])に採取した凍結保存尿検体を用いて、尿イムノアッセイ法により11-ノル-9-カルボキシ-Δ9-テトラヒドロカンナビノール(THC-COOH)を確認することで行った。陽性の場合は、液体クロマトグラフィータンデム質量分析で確定した。 9,257例を解析に含めた。大麻曝露妊婦は610例(6.6%)で、このうち197例(32.4%)は妊娠第1期にのみ大麻を使用しており、413例(67.6%)は妊娠第1期以降も継続的に使用していた。有害な主要複合アウトカム:曝露妊婦25.9% vs.非曝露妊婦17.4% 主要アウトカム(在胎不当過小児、人工早産、死産、妊娠高血圧症候群の複合)は、1,660例(17.9%)で発生した。傾向スコアを用いた逆確率重み付け解析では、主要複合アウトカムの発生率は非大麻曝露妊婦が17.4%であったのに対し、大麻曝露妊婦は25.9%と高率であった(補正後相対リスク:1.27、95%信頼区間[CI]:1.07~1.49)。 また、3つの大麻曝露モデル(非曝露、妊娠第1期のみの曝露、妊娠中の継続的曝露)では、非大麻曝露妊婦と比較して、妊娠第1期のみの大麻曝露は主要アウトカムとの関連がなかったが、継続的な大麻曝露は主要アウトカムとの関連を認めた(最小限の補正後相対リスク:1.32[95%CI:1.09~1.60]、完全補正後相対リスク:1.33[1.09~1.61])。人工早産、妊娠高血圧症候群とは関連がない 在胎不当過小児(曝露妊婦8.6% vs.非曝露妊婦4.2%、補正後相対リスク:1.52、95%CI:1.08~2.14)は大麻曝露妊婦で多く、死産は補正前相対リスクが大麻曝露妊婦で高かった(1.5% vs.0.5%、補正前相対リスク:2.89[1.37~6.09]、補正後相対リスク:1.63[0.69~3.88])。 人工早産(3.9% vs.3.2%、補正後相対リスク:0.78[95%CI:0.49~1.24])および妊娠高血圧症候群(16.0% vs.12.9%、補正後相対リスク:1.13[0.91~1.40])は大麻曝露との関連がなかった。 大麻曝露妊婦の妊娠期間中の総THC-COOH値は、16~3万5,707ng/mL(中央値265ng/mL)の範囲であった。妊娠第1期の定量化されたTHC-COOH値が高いことと、妊娠期間を通じた大麻の累積推定曝露量が多いことは、いずれも主要複合アウトカムの発生割合が高いことと関連した。 著者は、「これまでの研究でも、ヒトの大麻使用と胎児の発育不良との間には一貫した関連を認めており、本研究では死産が多かった点が注目に値する」と指摘し、「母体および新生児のアウトカムを最適化するために、妊娠中の大麻使用は避けるべきである」としている。

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第193回 両親の老老介護で思い知る「地域包括ケアシステムって何?」

今回はやや私事で恐縮だが、医療・介護を考える上で見逃せないと思う事態を現在進行形で経験しているので、それについて触れてみたい。80代後半の私の両親は今も健在で、実家で暮らしている。周囲の同世代では両親ともにすでに他界しているケースも少なくない中では、無事生きていること自体がありがたい。しかし、年齢からもわかるように当然ながら完全な健康体ではない。とくに父親は軽度認知障害(MCI)持ちである。現状は物が覚えにくくなり、私や母親が言ったこともすぐ忘れるが、本人も十分自覚があり、「最近の仕事? 物忘れ。ガハハハ」と口にするほどだ。むしろ物忘れには周囲も本人もある程度慣れてきている。そして、かれこれ7~8年前くらいから歩行がかなり遅くなり、リハビリに通っている。一時は周囲が「もう歩けなくなるのでは?」と危惧するほどだったが、リハビリのおかげで持ち直した。とはいえ、やはり周囲と比べれば歩みがかなりゆっくりで、時にシルバーカーを使う。現在の歩行状況はシルバーカーなしでは約5分おき、シルバーカー利用でも約8~9分おきに休憩を取らねばならない。現在1人で出歩くのは、シルバーカーを使いながら自宅近所を散歩する時ぐらいである。ところが父親は元来賑やかな繁華街が好きな人だ。性格的に陰キャ(陰気なキャラクター)で自分から何かのアクションを起こすタイプではないのだが、何となく賑やかなところ、具体的にはガラス越しに繁華街の賑わいが見える飲食店などで食事をしたり、お茶をしたりするのが好きなのである。父親が私や姉を訪ねて東京にふらりと出てくることができた時代は、人通りの多い市中のオープンエアのカフェを利用したがるのが常だった。しかし、前述のような状況なので、現在は繁華街に出かける際には母親の付き添いが必要だ。母親も市街地でのイベントなどを検索し、土日になると父親を繁華街周辺に連れ出し、喜ぶ父親の写真をLINEで送ってくる。そんな母親が先日、珍しく「本心ではイライラして仕方がないが、我慢している」という趣旨の愚痴をこぼしてきた。何かというと、繁華街から戻る最中、父親が5分おきにベンチなどに腰を掛けて休憩を取ることに付き合うのが疲れて仕方がないということなのだ。まだ普通に歩くことができる母親にとっては、一般成人ならば徒歩15分くらいの距離の移動に1時間以上かかることはかなりのストレスだろう。ここは無視してはならぬと思い、仕事の手を止め、必死にLINEでやり取りを続けた。そうした中で母親から出てきたのが、「適当な軽量の車椅子はないものだろうかね?」という話だった。要は折り畳みで軽量の車椅子を父親と外出するときに持ち歩き、父親が休みたいと言い出した時にそれをさっと展開して父親を乗せて母親が介助し、また父親が歩きたいと言えば、その時はまた折りたたむというような使い方ができるものである。そうすれば父親の休みたいという願望と母親のストレス解消の一石二鳥になる。正直、母親が介護疲れで倒れるのは私も望まない。ということで、いつもは物ぐさで知られている自分も動き出した。偶然、身近に使わない車椅子を保有する人がいたので、まずはそれを譲ってもらったが、自走もできるかなりの重量のものだったので、今母親が求めているものとは異なった。なんせ80代半ば過ぎの老老介護で、細腕の母親が申し訳程度の折り畳みができるだけの10kg超の車椅子を扱えるわけがない。そこで年末年始に実家に戻ったついでに、地元の介護ショップを覗いてみることにした。ところがここでまず大きな壁にぶち当たった。東北地方の首都と呼ばれる街だが、インターネット検索で見つかるめぼしい介護用品ショップは10店舗程度。そのうちアクセスが良い百貨店内の店舗2ヵ所に行ってみたが、あるのはシルバーカーか自走式車椅子という左右両翼のような典型的商品のみ。うち1店舗にはかろうじて重量10kgちょうどの軽量折り畳み車椅子が展示してあった。私の感覚では十分軽いと思ったが、後日母親が1人で訪ねて触ってみたところ、本人にとってはまだ重いとのことだった。これよりも約2kg軽いタイプは、カタログ上では見せられたが、あくまで「購入前提の取り寄せになる」という。車椅子の場合、使用する人、介助者双方にとっての使いやすさのバランスが重要であり、実機に触れることなしに購入は考えられない。そこでやむなく私がその車椅子の発売元に連絡を取ったところ、私の地元の県にある2ヵ所の大手介護ショップを挙げ、そこからの依頼があればデモ機を貸し出せるとのこと。一瞬、光明が見えた感じだったが、教えられたショップはともに郊外型ショッピングセンターのように、鉄道駅から徒歩15分以上とアクセスが悪い。父親はもともと車の運転が好きな人だったが、今のような徴候が見え始めた5年ほど前に運転免許証を返納。母親と私は元来ペーパードライバーである。「ショップ最寄り駅からタクシーを使えば?」という声も聞こえてきそうだが、それは首都圏などの感覚。この2件のショップの最寄り駅は、駅前に客待ちタクシーがいない駅なのだ。かといって父親の歩みに合わせて、真冬に老夫婦が1時間以上かけてショップまで歩くのは明らかに無理がある。繁華街と違って休憩できるベンチも途中にはないだろう。結局、母親は車が出せそうな知人に連絡を取った。今回、改めて痛感させられたのが、首都圏とその他の地方都市の差。そして介護サービス・商品のグラデーションの少なさである。父親のような、健康と病気の合間のような状態の人に使いやすいサービス、老老介護を前提にしたサービスはまだまだ少ない。もちろん今は社会全体が超高齢化社会というマインドに移行していく過渡期なのだから、そうなのだろう。しかし、長らく「重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステム」というフレーズを耳にタコができるほど聞かされてきた身からすると、今回の経験で改めて「地域包括ケアシステムって何?」と思ってしまうのだ。

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フェニルケトン尿症、約30年ぶりの新薬

フェニルケトン尿症、約30年ぶりの新薬フェニルアラニン(Phe)は必須アミノ酸の1種であり、食事などから摂取したPheは主にPhe水酸化酵素(PAH)によりチロシンに変換される。しかし、フェニルケトン尿症(PKU)ではPheを分解するPAHの活性が先天的に低下することで、Pheの蓄積や血中Phe値の上昇が起こり、尿中にPheや代謝産物のフェニルピルビン酸が大量に排泄される。過剰なPheや代謝産物が正常の代謝を阻害することで、新生児や乳児期では脳構築障害による精神発達遅滞、成人においてもさまざまな精神症状や酸化ストレスの成因となるとされており、生涯を通じて治療が必要とされている。フェニルケトン尿症の治療における課題PKUの治療は基本的に生涯にわたる食事療法である。たんぱく質を制限することでPheの摂取を抑えるため、肉、魚、卵、豆類、乳製品などの高蛋白食品を食べることはほとんどできないとされている。野菜などの低蛋白食品に加えて、治療用ミルク(フェニルアラニン除去ミルク)で不足するその他のアミノ酸やカロリーを補うのだ。一生涯続く食事制限は食べる楽しみの低下や外食機会の喪失など、患者さんのQOL低下につながる可能性があるが、これまで解決策はなかった。パリンジックの登場で変わる患者さんの生き方このような状況の中、約30年ぶりにPKU治療薬としてペグバリアーゼ(製品名:パリンジック)が登場した。パリンジックはフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)を免疫原性の低減と消失半減期の延長を目的としてポリエチレングリコール化した製剤であり、PAHの酵素活性を代替し、Pheをアンモニアとケイ皮酸に代謝することで、血中Phe濃度を低下させる。使用する際は2.5mgから開始し、導入期に4週間、漸増期に5週間以上かけて20mgまで増量する。20mgで効果不十分な場合は最大60mgまで増量が可能。日本人を対象とした臨床試験では、投与開始後経時的に血中Phe濃度が低下していた。さらに、この血中Phe濃度の推移を各症例で検討したところ、観察期間中のある日を境に、大幅に血中Phe濃度が低下する例が数例観察されており、このタイミングでパリンジックが効果を発揮したと推測される。ただし、効果発揮にかかる時間は個人差があるため、まずは治療を中断しないことが重要である。効果発現後はたんぱく質制限の必要はなくなるため、食事制限のない生活を送ることが可能だ。生涯を通じた食事制限は食事の楽しみだけではなく、食事の伴うイベントなどの機会もPKU患者から奪うものとなっていた。パリンジックの登場により、単なる食事だけではない、さまざまな制約が解決されることに期待がかかる。

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双極性障害患者の原因別死亡率と併存する神経発達障害

 双極性障害患者の早期死亡に関するこれまで研究は、サンプルサイズが小さいため、限界があった。台湾・長庚記念病院のWei-Min Cho氏らは、台湾の人口の約99%を対象に、双極性障害患者の早期死亡および併存する神経発達障害、重度の双極性障害との関係を調査した。その結果、精神科入院頻度の高い双極性障害患者は、自殺死亡リスクが最も高く、自閉スペクトラム症の併存は自然死や偶発的な死亡のリスク増加と関連していることが示唆された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2023年12月6日号の報告。 対象は、双極性障害患者16万7,515例および性別、年齢により1:4でマッチさせた対照群。データは、台湾の国民死亡台帳データベースとリンクされている国民健康保険データベースより抽出した。原因別死亡率(すべての原因による死亡、自然死、事故または自殺による不自然死)の調査には、時間依存性Cox回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・性別、年齢、収入、居住地、身体的条件で調整した後、双極性障害患者における死亡リスクと最も関連していたのは自殺(ハザード比[HR]:9.15、95%信頼区間[CI]:8.53~9.81)であり、次いで不自然死(HR:4.94、95%CI:4.72~5.17)、偶発的な死亡(HR:2.15、95%CI:1.99~2.32)、自然死(HR:1.02、95%CI:1.00~1.05)であった。・原因別死亡リスクの増加に、注意欠如多動症の併存は影響していなかったが、自閉スペクトラム症を併発すると、とくに自然死(HR:3.00、95%CI:1.85~4.88)、偶発的な死亡(HR:7.47、95%CI:1.80~31.1)のリスクが増加することが示唆された。・原因別死亡率は、精神科入院頻度に応じて線形傾向を示し(各々、p for trend<0.001)、1年間に2回以上入院した双極性障害患者では、自殺死亡リスクが34.63倍(95%CI:26.03~46.07)に増加した。

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