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睡眠が認知症発症に及ぼす影響

 睡眠障害と認知症との関係は、依然としてよくわかっていない。スウェーデン・カロリンスカ研究所のYing Xiong氏らは、高齢者(65歳以上)における睡眠対策と認知症との関係を調査し、これらの因果関係を明らかにするため、本研究を実施した。その結果、若年高齢者の短時間睡眠者、高齢者および頻繁にアルコールを摂取する長時間睡眠者において、認知症リスクとの関連が示唆された。Psychiatry Research誌2024年3月号の報告。 高齢者における睡眠対策と認知症との関係を調査するため、English Longitudinal Study of Ageing(ELSA)のデータを用いた。さらに、Cox回帰モデルおよびメンデルランダム化(MR)分析を用いて、因果関係を調査した。 主な結果は以下のとおり。・対象高齢者7,223人のうち、5.7%が平均8±2.9年以内に認知症を発症した(アルツハイマー病は1.7%)。・8時間超の長時間睡眠は、理想的な睡眠時間(7~8時間)の場合と比較し、認知症発症リスクが64%増加し、アルツハイマー病のリスクが2倍高かった。・この関連は、とくに70歳以上およびアルコールを摂取する高齢者において、顕著であった。・7時間未満の短時間睡眠は、高齢になるほど認知症リスクが低く、比較的若年の高齢者では認知症発症リスクが高かった。・睡眠障害および自覚している睡眠の質は、認知症またはアルツハイマー病と関連していなかった。・MR分析では、睡眠時間と認知症との因果関係が確認されなかった。 著者らは「これらの睡眠パターンを早期に検出することは、認知症リスクの高い人の特定に役立つであろう」としている。

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卵がうつ病リスクと関連~日本人労働者568人を調査

 山形県立米沢栄養大学の北林 蒔子氏らは、日本人労働者における食品群別の摂取量とうつ病との関連を調査するため、アンケート調査を実施した。その結果、男性では卵、女性では卵と野菜(緑黄色野菜以外)の摂取がうつ病と関連している可能性が示唆された。BMC Nutrition誌2024年1月30日号の報告。卵の摂取量が少ない男性はうつ病のORが有意に高い 2020年、日本人労働者568人を対象にアンケート調査を実施した。回答した503人中423人を研究対象に含めた。性別、年齢、BMI、残業時間、睡眠時間、婚姻状況、職位、運動習慣、喫煙状況、うつ病の発症および、エネルギー、タンパク質、脂質、炭水化物、アルコール、食品群別の摂取に関する情報を収集した。うつ病の有無および重症度の評価には、うつ病自己評価尺度(CES-D)を用いた。食品群別の摂取量は、残差法を用いてエネルギー摂取量を調整し、性別ごとに、低、中、高に分類した。うつ病の有無を従属変数、食品群別の摂取量を独立変数とし、ロジスティック回帰分析により性別に応じたオッズ比(OR)と傾向を分析した。 卵や野菜など食品群別の摂取量とうつ病との関連を調査した主な結果は以下のとおり。・うつ病の調整ORが有意に高かったのは、以下のとおりであった。●卵の摂取量が少ない男性●他の野菜(緑黄色野菜以外)の摂取量が低~中程度の女性●卵の摂取量が中程度の女性・用量反応関係が確認され、男性では卵の摂取量が少ない場合(p for trend=0.024)にうつ病のORが有意に高く、女性では他の野菜(緑黄色野菜以外)の摂取量が少ない場合(p for trend=0.011)、卵の摂取量が少ない場合(p for trend=0.032)にうつ病のORが有意に高かった。

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維持期双極性障害に対する抗精神病薬の剤形による治療中止後の再発率の比較

 統合失調症患者において長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬は、患者が治療を中止した場合、同等の経口抗精神病薬と比較し再発までの期間を延長させる可能性があることが、これまでに報告されている。これと同様のパターンが、維持期治療中の双極性障害患者で観察できるかはよくわかっていない。藤田医科大学の岸 太郎氏らは、双極性障害の維持期治療におけるLAI抗精神病薬と経口抗精神病薬の中止後の再発率を比較するため、システマティックレビューを実施した。Psychiatry Research誌2024年3月号の報告。 双極性障害の維持期治療におけるLAI抗精神病薬のプラセボ対照ランダム化治療中止試験、LAI抗精神病薬に対応する経口抗精神病薬を用いた同等性の研究をシステマティックに検索した。 主な結果は以下のとおり。・5件の研究を特定した。内訳は、アリピプラゾール月1回LAIの研究1件、経口アリピプラゾールの研究1件、リスペリドン2週間LAIの研究2件、経口パリペリドンの研究1件であった。・アリピプラゾール月1回LAIを中止した場合、経口アリピプラゾールを中止した場合と比較し、2週、4週、6週、8週、12週、16週、20週、26週時点での再発率が低かった。・リスペリドン2週間LAIを中止した場合、経口パリペリドンを中止した場合と比較し、2週、4週、6週、8週、16週時点での再発率が低かった。 著者らは、「LAI抗精神病薬または同等の経口抗精神病薬で安定していた躁病患者において治療中止が行われた場合、LAIの剤形のほうが同等の経口剤よりも、再発までの期間を大幅に延長すると解釈できるだろう」としている。

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アルツハイマー病に対する新規疾患修飾薬とリチウムの有用性比較~ネットワークメタ解析

 米国食品医薬品局(FDA)により承認、または審査中の軽度認知障害およびアルツハイマー病に対する疾患修飾薬(donanemab、レカネマブ、aducanumabなど)と潜在的な疾患修飾薬であるリチウムの臨床的有用性の比較は、これまで十分に行われてなかった。iこころクリニック日本橋の寺尾 樹氏らは、アルツハイマー病に対する疾患修飾薬とリチウムの認知機能低下に対する有効性、忍容性、受容性を比較するため、ランダム効果ネットワークメタ解析を実施した。Ageing Research Reviews誌2024年2月号の報告。 2023年11月7日までに公表されたランダム化比較試験(RCT)をMEDLINE、CENTRAL、CINHAL、ClinicalTrials,govよりシステマティックに検索し、ランダム効果ネットワークメタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・8件(6,547例)のRCTをネットワークメタ解析に含めた。・ミニメンタルステート検査(MMSE)では、リチウムは、donanemab、aducanumab、プラセボよりも有意に優れていた。・アルツハイマー病評価尺度の認知サブスケール(ADAS-Cog)では、新規疾患修飾薬およびリチウムのいずれも、プラセボと比較し、有意な有効性が認められた。・臨床認知症評価尺度(CDR)総合得点では、donanemab、レカネマブは、プラセボよりも有意に高かった。・プラセボと比較し、donanemab、レカネマブは、受容性および忍容性が有意に低かった。・aducanumabはプラセボよりも忍容性が劣っていた。・他の比較では、有意な差が認められなかった。 著者らは「リチウムとdonanemabまたはレカネマブは、どちらがより有効であるかは不明であるものの、リチウムはaducanumabよりも有用である可能性が示唆され、3つの新規疾患修飾薬には、認知機能に対する有効性に差がない」ことを報告し、「低用量リチウムは、新規疾患修飾薬よりも安全である可能性がある」としている。

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国内初の「飲酒ガイドライン」を公表/厚労省

 2月19日、厚生労働省は飲酒に伴うリスクに関する知識の普及推進を図るために「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表した。本ガイドラインは、アルコール健康障害の発生を防止するため、国民一人ひとりがアルコールに関連する問題への関心と理解を深め、自らの予防に必要な注意を払って不適切な飲酒を減らすために、個人の適切な飲酒量・飲酒行動の判断の一助となるよう作成された。純アルコールに換算して飲酒量を把握することが重要 本ガイドラインの特徴として、「基礎疾患等がない20歳以上の成人を中心に、飲酒による身体等への影響について、年齢・性別・体質などによる違いや、飲酒による疾病・行動に関するリスクなどをわかりやすく伝えるとともに、考慮すべき飲酒量(純アルコール量)や配慮のある飲酒の仕方や避けるべき飲酒方法などについて示している。お酒に含まれる純アルコール量は、「純アルコール量(g)=摂取量(mL)×アルコール濃度(度数/100)×0.8(アルコールの比重)」で表すことができ、食品のエネルギー(kcal)のようにその量を数値化できることから、純アルコール量に着目しながら、自身に合った飲酒量を決めて、健康に配慮した飲酒を心掛けることが必要とも記されている。実際に飲料メーカー各社では2021年頃よりアルコール飲料に含まれる純アルコール量の表示を開始している。 例:ビール500mL(5%)の場合の純アルコール量…500(mL)×0.05×0.8=20(g)純アルコール量で疾病発症リスク示す また、わが国における疾病別の発症リスクと飲酒量(純アルコール量)について、各疾病の発症リスクが上がると考えられる男女別の研究結果と参考(カッコ内)が示されている。・脳卒中(出血性)[男性:150g/週(20g/日)、女性:0g

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日本人統合失調症患者の死亡、入院、退職、病欠と関連する因子

 統合失調症の治療において、早期死亡リスク、入院リスクに影響を及ぼす再発、離職は、重要な課題である。北里大学の稲田 健氏らは、日本人統合失調症患者における重要なアウトカムである死亡、入院、退職、病欠のリスク因子を評価した。BMC Psychiatry誌2024年1月3日号の報告。 日本のレセプトデータベースより特定した統合失調症患者を対象に、ネステッドケースコントロール研究を実施した。各アウトカムは、年齢、性別、インデックス日、雇用状況(従業員または扶養家族)が一致した最大4つのコントロールと比較した。潜在的なリスク因子は、イベント発生前または発生月から3ヵ月以内の処方箋または診断により定義した。潜在的なリスク因子と各アウトカムとの関連性は、ステップワイズ変数選択を伴う多変数条件付きロジスティック回帰分析を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・各アウトカムにおけるケースと対象患者は以下のとおりであった。【死亡】144例、3万8,451例【入院】1,520例、3万5,225例【退職】811例、1万8,770例【病欠】4,590例、1万8,770例・抑うつ症状は、死亡(オッズ比[OR]:1.92、95%信頼区間[CI]:1.12~3.29)、入院(OR:1.22、95%CI:1.05~1.42)、病欠(OR:1.46、95%CI:1.36~1.57)のリスク因子であることが示唆された。・死亡に対するその他のリスク因子は、入院歴、チャールソン併存疾患指数(CCI)スコア、下剤の処方であった。・睡眠薬、下剤の処方、抗コリン薬の処方は、入院のリスク因子であった。・催眠薬と抗コリン薬の処方は退職のリスク因子であった。・CCIスコア、睡眠薬の処方、下剤の処方、糖尿病治療薬の処方は、病欠のリスク因子であった。 著者らは「われわれの知見は、統合失調症患者の重要な臨床アウトカムのリスク因子として、抑うつ症状および便秘、錐体外路症状など、いくつかの身体症状が特定されていることを示唆している。統合失調症の治療では、抑うつ症状と身体症状の両方に注意を払う必要がある」としている。

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紛失、徘徊、幻視…認知症あるあるトラブルの上手な解決策は?【外来で役立つ!認知症Topics】第14回

今回は、患者さん・ご家族からの「認知症あるある質問に、どう答える?」というテーマだ。1つは「なくしもの」、次に冷静さを失う状態いわゆる「パニック」、そしてレビー小体型認知症にみられる「幻視」とその対応の3つだ。こうしたものに共通する心理学的な特徴は、認知症者に特有の不安や自信のなさだと考えられる。しまいなくしよく質問される対応法の1つが、紛失だ。私が、「しまいなくし」と呼ぶものがある。認知症の人は、これは大切だと思うと、「いつもの置き場所に置いては、盗まれてしまう」という過剰な心配を抱きやすいものだ。そのために、普段とは違う場所に隠してしまう。この隠し場所がなかなか難しいところ、たとえば、押し入れの布団の一番下。また、積まれた古新聞紙の間など、記憶力が良くても探し出すのはまず無理と思われるところが多い。まして認知症になると、自分がどこに隠したのか、思い出すことはとてもできないだろう。探して出てこないとなると、「私がなくすわけはない」と焦りと不安がこみ上げて、誰かに盗まれたという被害妄想にすぐに変わってしまう。「自分がしまった場所を忘れて、他人のせいにする」が起こるようになったら、ご家族には、「大事なものは1ヵ所に集めて、そこ以外には置かないことをご本人に指導するようにしましょう」とお伝えする。もっとも、そううまくはいかないが…。次にこれまで見つけた思いがけない隠し場所をリストアップしてもらう。なぜなら、ここにまた隠される可能性があるからだ。もう1つ、最近患者さん家族に教えてもらった手がある。たとえば、1万円札を患者さんご本人に渡して、「これを人にわからないように隠すとしたらとしたら、どこにしまうの?」と言い、ご本人がどこを隠し場所にするかを観察する。その時の行動ぶりに、今後の探し方のヒントがあるかもしれない。なくしものは、財布、通帳、通院セット、キーホルダーなど、わりと限られている。そこで「探しもの発見器」と呼ばれる機器が有効だろう。これを、こうしたなくしもの候補に結び付けておけば、それらが見当たらない時にバイブレーションやアラームで居場所を知らせてくれる。これは便利で、しかも比較的廉価だ。パニックそう有名ではないが、認知症の人にみられやすい症状としてパニックに陥りやすいことがある。パニックといっても、 DSM-5でいうような正式なパニック障害ではない。しかし、突然不安がこみ上げてきて、頭の中が真っ白、いてもたっていられず右往左往になるのは同じことだ。周りには「どうしてこの程度のことで?」と感じられる些事で、てんやわんやの混乱状態に陥ってしまう。その具体的な表れが徘徊・行方不明と、家族の携帯への連続呼び出しだろう。前者は、「迷った、大変だ」と焦る気持ちが、ご本人をどんどんあらぬ方向へと歩ませてしまう。なぜか、家族に電話したり、人に尋ねたりして助けてもらおうとする行動をとる人はまずいない。思いもつかない、そこがパニックなのだろう。道に迷うことや徘徊が心配な状態になった人には、GPSの位置確認装置がお勧めだ。なおGPSの問題は身体のどこに付けるか、どうやって身に付けて外出してもらうかということだ。後者の電話攻勢の原因はさまざまながら、上記のなくしものが主たる原因だろう。解決法は、まずは既述の「探しもの発見器」がある。また、電話に出て説明しても、すぐに忘れて繰り返されるのが常。そこで、ショートメールに「今は忙しい。5時になったら連絡します。」などと書いて送る。ただし、電話攻勢の都度、これをやってはいられない。3回の電話呼び出しに1回、同じメールをまた送ればいいだろう。「幻視が怖い!」レビー小体型認知症(DLB)を最初に提案された小阪 憲司先生は、病理学者であっただけでなく、優れた臨床家であったことを端的に示す患者・家族指導の一言指導がある。これは幻視に影響され、恐怖を募らせたり行動化したりするDLB患者さんへのアドバイスだ。多くは人物の幻視なので、「見えたら、その人のところへ行って触ってごらん」というものだ。「そんなあ、怖いから」などと、必ずしも患者さんには実行してもらえないのだが、実際にやってみた人の多くは「行ったら消えるんです」と次の診察でおっしゃる。こうした体験を繰り返すと、「ああそうか、いないのか」と納得されていくことが少なくない。幻視という症状は患者さん本人以外には確認しようがないものだから、ご家族をはじめ第三者には幻視体験がピンとこない。しかし幻視の体験時には、患者さんの大脳視覚野が、いわば不随意に活性化しているようだ。つまり現存する対象を見ている時と同じように、視覚野は活性化しているので、本人には実像と虚像の区別はつかないのである。このあたりのポイントを凝集した見事な指導が、「その人に触ってごらん」だと思う。

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日本における小児に対する抗精神病薬処方の動向

 統合失調症は、幻覚・妄想やその他の症状を特徴とする精神疾患である。日本においても統合失調症の治療ガイドラインが確立されているが、小児患者に対する薬物療法は推奨されていない。さらに、小児統合失調症患者に対する抗精神病薬の処方傾向は、あまりよくわかっていない。東北医科薬科大学病院の菊池 大輔氏らは、2015~22年の日本における小児外来患者に対する抗精神病薬の処方動向を明らかにするため、本研究を実施した。その結果、日本では小児統合失調症に対して、主にアリピプラゾールとリスペリドンが処方されており、アリピプラゾールの処方割合が時間の経過とともに有意に増加していることを報告した。Journal of Pharmaceutical Health Care and Sciences誌2024年1月2日号の報告。 対象は2015年1月1日~2022年12月31日に、急性期地域医療連携病院を受診した0~18歳の統合失調症患者。2023年11月時点での日本人小児外来患者の管理データを分析した。対象薬剤は、2022年12月時点に日本で発売されている統合失調症の適応を有する薬剤とした。期間中の抗精神病薬の年間処方傾向は、その割合に応じて算出した。各抗精神病薬の処方割合の評価には、Cochran-Armitageの傾向検定を用いた。 主な結果は以下のとおり。・小児統合失調症患者に対して主に処方されていた抗精神病薬は、アリピプラゾールとリスペリドンであった。・男性患者では、アリピプラゾールの処方割合が21.5%(2015年)から35.9%(2022年)へ有意な増加が認められた(p<0.001)。一方、リスペリドンの処方割合は、47.9%(2015年)から36.7%(2022年)へ有意な減少が認められた(p<0.001)。・女性患者においても、男性と同様に、アリピプラゾールの処方割合が21.6%(2015年)から35.6%(2022年)へ有意に増加し(p<0.001)、リスペリドンの処方割合は、38.6%(2015年)から24.8%(2022年)へ有意に減少していた(p<0.001)。

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休暇中に働く医師、燃え尽き症候群のリスク高い

 超過勤務が多くなりがちな医師は、燃え尽き症候群(バーンアウト)のリスクが高いという報告は数多い。また、労働者全般を対象とした研究では、休暇中に仕事を完全に切り離すことも重要であり、生産性を向上させ、精神的疲労を軽減させることが報告されている。医師における休暇の取得と休暇中の労働は、燃え尽き症候群や職業的充実感とどのように関連しているのか。米国医師会のChristine A. Sinsky氏らによる研究の結果がJAMA Network Open誌2024年1月2日号に掲載された。 研究者らは米国の医師を対象に、2020年11月20日~2021年3月23日に調査票による横断調査を実施した。データ解析は2023年3~7月に実施した。過去1年間に取得した休暇日数、休暇中に患者ケアおよびその他の専門的業務に費やした時間(1日当たり)、休暇中の電子カルテ(EHR)に来た業務のカバー率、休暇取得の障壁についての情報が収集された。バーンアウトはMaslach Burnout Index、職業的充実感はStanford Professional Fulfillment Indexを用いて測定した。 主な結果は以下のとおり。・休暇に関する調査に回答した米国人医師3,024人(年齢中央値50歳、男性62%)が対象となった。過去1年間に15日以下の休暇を取得した医師は59.6%で、うち6~15日が39.7%、5日以下が19.9%だった。年間15日以上の休暇を取得した医師の割合が高い診療科は麻酔科、放射線科で、最も低いのは救急科だった。・その一方で、70.4%の医師が休暇中に患者ケアに関連した業務を行った、と回答しており、うち休暇日1日当たり30分以下の勤務が37.3%、30~60分が18.3%、60~90 分が7.3%、90分以上が7.4%だった。・休暇中、「電子カルテの業務が完全にカバーされている」と報告した人は半数以下(49.1%)だった。・休暇取得にまつわる懸念として、「臨床をカバーしてくれる人を見付けること」「経済的な懸念」に対して「かなりある」「非常にある」(5段階の選択肢)との回答は、年間15日以上の休暇を取得する可能性の低下と関連していた。・「年間15日以上の休暇取得」「休暇中の電子カルテ業務の完全カバー」との回答は、バーンアウト率の低下と関連していた。・一方、休暇日1日当たり30分以上を患者ケアに関連した業務に費やすことは、バーンアウト率の上昇と関連していた。 著者らは「休暇の取得日数と、休暇中に患者関連の業務を行うことは、医師の燃え尽き症候群と関連していた。医師が適切に休暇を取得し、臨床責任をカバーできるシステムレベルの取り組みを行うことが、医師の業務負担を軽減させる可能性がある」としている。

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高齢統合失調症患者の死亡リスクに対する薬物療法の影響

 人口の高齢化に伴い、統合失調症の罹患においても高齢者の有病率が増加しており、これまで以上に薬剤選択の重要性が増している。現在、高齢統合失調症患者に関するエビデンスが不足していることから、台湾・Far Eastern Memorial HospitalのJia-Ru Li氏らは、向精神薬の使用量および累積投与量が高齢統合失調症患者のすべての原因および原因別の死亡リスクに及ぼす影響を調査するため、コホート研究を実施した。Pharmaceuticals (Basel, Switzerland)誌2024年1月8日号の報告。 対象は、統合失調症と診断された高齢者6,433例。5年間のフォローアップ調査を実施した。抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬、鎮痛薬/睡眠薬の用量(低用量群、中用量群、高用量群)に関連する死亡リスクを、各用量群と投与なし群とで比較を行った。各用量群におけるすべての原因による死亡率および特定の原因による死亡率を比較するため、Cox回帰を生存分析に用いた。特定の向精神薬の投与量を変数とし、それに応じて共変量を調整した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬の低用量群および中用量群は、抗精神病薬を投与されていない群と比較し、生存率が高かった。・抗精神病薬の中用量群は、心血管疾患による死亡リスクの低下が認められた。・同様に、抗うつ薬の低用量群および中用量群は、生存率が高かった。・鎮痛薬/睡眠薬では、低用量群で死亡リスクが低下していた。 著者らは「高齢統合失調症患者における抗精神病薬の低/中用量での使用は、すべての原因による死亡リスク低下と関連しており、適切な薬剤選択と抗精神病薬投与の重要性が示唆された。高齢統合失調症患者における治療の複雑さに対処するため、多剤併用の慎重な管理や患者ごとの薬物治療戦略が求められる」としている。

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日本のプライマリケアにおけるベンゾジアゼピン適切処方化への取り組み

 日本において、プライマリケアにおける質の向上(QI)に対する取り組みは、まだまだ十分とはいえない。QIにおいて重要な領域の1つとして、ベンゾジアゼピンの適切な処方が挙げられており、高齢化人口の増加が顕著なわが国においてとくに重要である。地域医療振興協会の西村 正大氏らは、日本のプライマリケアクリニックにおけるベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZRAs)の処方中止に対する医療提供者へのQIイニシアチブの実現可能性について検討を行った。BMC Primary Care誌2024年1月24日号の報告。 調査対象は、2020~21年にBZRAs処方中止イニシアチブに参加した日本の準公立クリニック11施設および医療提供者13人。クリニック規模に応じて層別化し、参加施設を診療監査のみまたは診療監査とコーチングの実施の2群にランダムに割り付けた。診療監査のため、2つのBZRAs関連指標を参加施設に提示した。QIの活動をサポートするため、毎月コーチングミーティングをWebベースで実施した。9ヵ月間の実施後、半構造化インタビューにより、内容分析を用いてテーマを特定した。特定されたテーマを整理し、実装研究のための統合フレームワーク-CFIR-を用いて、主要な要素を評価した。 主な結果は以下のとおり。・診療監査とコーチングの組み合わせは、診療監査のみの場合よりも価値があると認識されていた。・参加者は、施設外のリソースとしてQIイニシアチブについての知的好奇心を示した。・しかし、小規模クリニックにおいてチームによるQIアプローチを採用することは困難であると認識されており、効果的なQIを達成するためには、指標の選択が重要であることが示唆された。 著者らは「クリニックの規模が潜在的な障壁のなる可能性があるものの、学術的な好奇心を高めることにより、日本のプライマリケアにおけるQIへの取り組みを促進できる可能性が示唆された」とし「長期的なQIの可能性を評価するためには、より多様な指標を用いたさらなる実証試験が必要である」としている。

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アルコール依存症の治療期間に応じた薬物療法の有用性~ネットワークメタ解析

 アルコール依存症やアルコール使用障害では、再発が多くみられることから、減酒治療をできるだけ長期間にわたり実施する必要がある。しかし、これまでのレビューでは治療期間が考慮されておらず、減酒治療が適切に評価されていない可能性がある。岡山済生会総合病院の小武 和正氏らは、アルコール依存症またはアルコール使用障害の患者における減酒薬物療法の有効性と安全性を治療期間に応じて評価するため、本研究を実施した。Addiction (Abingdon, England)誌オンライン版2024年1月3日号の報告。 15種類の薬剤を評価したランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。2021年5月までに公表された研究をMEDLINE、Embase、PsycINFO、Cochrane Central Register of Controlled Trials、ClinicalTrials.gov、ICTRPより検索した。アウトカムは、多量飲酒日(HDD)、総アルコール摂取量(TAC)、有害事象、禁酒日数とした。 主な結果は以下のとおり。・分析には、55件(8,891例)のRCTを含めた。・ナルメフェンは、長期にわたるHDD(標準化平均差[SMD]:-0.28、95%信頼区間[CI]:-0.37~-0.18)およびTAC(SMD:-0.25、95%CI:-0.35~-0.16)の減少において、プラセボよりも優れていたが、短期間では効果が十分ではなかった。・トピラマートは、短期的にHDD(SMD:-0.35、95%CI:-0.59~-0.12)および禁酒日数(SMD:0.46、95%CI:0.11~0.82)の減少において、プラセボよりも優れていた。・バクロフェンは、短期的にTAC(SMD:-0.70、95%CI:-0.29~-0.11)の減少においてプラセボよりも優れていた。・有害事象の頻度は、プラセボよりもナルメフェン、トピラマートのほうが有意に高かった。 著者らは、「ナルメフェン、トピラマート、バクロフェンは減酒の薬物療法として有効である可能性が示唆されたが、長期的な有効性が実証されている薬剤はナルメフェンのみである」とまとめている。

1295.

キノコと認知症リスク~日本での研究

 キノコは、食物繊維やいくつかの抗酸化物質が豊富な食材である。このようなキノコの食事摂取が認知症リスクの低下と関連しているかは、不明である。筑波大学の青木 鐘子氏らは、キノコ摂取と認知機能障害リスクとの関連を調査した。その結果、日本人女性において、キノコの食事摂取が認知機能障害リスクの低下と関連していることが示唆された。The British Journal of Nutrition誌オンライン版2024年1月19日号の報告。 1985~99年に毎年実施されていた心血管リスク調査に参加した3つの地域に在住する40~64歳の地域住民3,750人を対象に、プロスペクティブ研究を実施した。認知症による障害が認められた事例を、1999~2020年に調査した。脳卒中の既往歴の有無にかかわらず、キノコの摂取量に応じた認知症発症数のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・3,739人を平均16.0年フォローアップ調査したところ、障害を伴う認知症を発症した人は670人であった。・女性では、キノコの摂取と認知症リスクの逆相関が認められた。この関連は、脳卒中の既往歴のない認知症に限定されていた。・女性における認知症発症の多変量HRは、キノコを摂取していなかった人と比較し、キノコの摂取量が0.1~14.9g/日で0.81(95%CI:0.62~1.06)、15.0g/日以上で0.56(0.42~0.75)であった(p for trend=0.003)。・脳卒中の既往歴のない認知症におけるハザード比は、キノコの摂取量が0.1~14.9g/日で0.66(95%CI:0.47~0.93)、15.0g/日以上で0.55(0.38~0.79)であった(p for trend=0.01)。・男性では、キノコの摂取と認知症リスクとの関連が認められなかった。

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双極性障害患者における摂食障害の有病率

 摂食障害と双極性障害は症状が類似しており、摂食行動や感情制御に根付いた特定の類似点が認められる。摂食障害と双極性障害の併存に関する研究は増えているものの、両疾患の同時進行に関する科学的データは十分に体系化されていない。ロシア・V.M. Bekhterev National Medical Research Center for Psychiatry and NeurologyのYana V. Yakovleva氏らは、双極I型およびII型障害患者におけるさまざまなタイプの摂食障害の有病率について、性別および両疾患の同時進行の臨床的特徴を考慮したうえで、スコーピングレビューを実施した。Consortium Psychiatricum誌2023年7月10日号の報告。 スコーピングレビューのためのPRISMAガイドラインに従い分析を行った。研究の検索にはMEDLINEデータベースを用いた。双極性障害および摂食障害と診断された患者に焦点を当てた研究を分析に含めた。摂食障害および双極性障害の診断の検証には、DSM-IV、DSM-5またはICD-10を用いた。レビュー結果の要約には、記述的分析法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・レビューには、41件の研究を含めた。・双極性障害患者における摂食障害の生涯有病率は2.2~31.1%、摂食障害患者における双極性障害の有病率は11.3~68.1%であった。・双極II型障害および女性において、摂食障害の有病率が高かった。・双極性障害患者における摂食障害の併存は、気分障害の早期発症、抑うつエピソードの増加、自殺企図、強迫症および不安症、依存症、各種代謝障害の併存率の増加と関連が認められた。 著者らは、「研究結果により違いがあるものの、摂食障害と双極性障害の併存率は非常に高いことが示唆された。双極性障害患者における摂食障害のスクリーニングまたはその逆のスクリーニングは、正確な診断や最も効果的な治療法を選択するうえで重要である」とし、「性別に応じた、さまざまな摂食障害と双極性障害との併存パターンについては、今後さらなる研究が必要である」とまとめている。

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ADHD治療薬、長期使用のデメリットに心血管疾患リスク増大

 注意欠如・多動症(ADHD)の罹患者数は過去数十年で大幅に増加しており、治療薬の処方もそれに伴い増加している。ADHD治療薬には心拍数・血圧の上昇との関連が報告されているが、これに関し、重大な心血管疾患(CVD)との関連を調査した研究結果が発表された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のLe Zhang氏らによる本研究の結果は、JAMA Psychiatry誌2024年2月1日号に掲載された。ADHD治療薬の長期服用が高血圧と動脈疾患のリスク増加と関連 2007~20年にスウェーデン国内でADHD診断を受けた、または同国で承認されたADHD治療薬である精神刺激薬(メチルフェニデート・アンフェタミン・デキストロアンフェタミン・リスデキサンフェタミン)および非精神刺激薬(アトモキセチン・グアンファシン)のいずれかの処方を受けた6~64歳の患者を対象に、ADHD治療薬の長期使用とCVD(虚血性心疾患・脳血管疾患・高血圧・心不全・不整脈・血栓塞栓症・動脈疾患・その他の心疾患)の関連を調査した。CVDの既往歴がある患者は除外され、ADHD治療薬の累積使用期間は14年以内であった。 ADHD治療薬と重大な心血管疾患との関連を調査した主な結果は以下のとおり。・CVDを発症した1万388例(年齢中央値34.6歳、男性59.2%)を同定し、CVDを有さない対照者5万1,672例とマッチさせた。両群の追跡期中央値は4.1年だった。・ADHD治療薬の使用期間が長いほど、非使用者と比較したCVDリスクが増加していた。(使用期間1~2年の調整オッズ比[aOR]:1.09、3~5年:1.27、5年超:1.23)。・ADHD治療薬の長期使用は高血圧(5年超のaOR:1.80)、動脈疾患(5年超のaOR:1.49)のリスク増加と関連していた。・14年の追跡期間全体では、ADHD治療薬の使用期間が1年延長するごとにCVDリスクが4%増加し、最初の3年は8%とより大きなリスク増加が見られた。小児および青年(25歳未満)、成人(25歳以上)において同様のパターンが観察された。 研究者らは「この症例対照研究では、ADHD治療薬の長期服用がCVD、とくに高血圧と動脈疾患のリスク増加と関連していることが明らかになった。これらの所見は、ADHD治療薬の長期使用について治療方針を決定する際に、潜在的な利益とリスクを慎重に比較検討することの重要性を強調するものである。臨床医は治療期間中、定期的かつ一貫して心血管系の徴候や症状をモニタリングすべきである」と結論付けている。

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日本における統合失調症患者の死亡率

 統合失調症患者は、一般集団と比較して、死亡率が高いといわれている。しかし、日本における統合失調症患者の死亡率を調査した最近の研究はなかった。ドイツ・ミュンヘン工科大学の野村 信行氏らは、日本における統合失調症患者の超過死亡率と死亡率に対するリスク因子を評価するため、レトロスペクティブ研究を実施した。Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology誌オンライン版2024年1月20日号の報告。 対象は、2013年1月~2017年12月に山梨県立北病院で統合失調症または統合失調感情障害と診断された患者。統合失調症患者と一般集団の死亡率の比較には、標準化死亡率(SMR)を用いた。死亡率に対するリスク因子を推定するため、ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者1,699例(男性:893例、女性:806例)のうち、研究期間中に死亡が認められた患者は104例(男性:55例、女性:49例)であった。・すべての原因によるSMRは2.18(95%信頼区間[CI]:1.76~2.60)、自然死のSMRは2.06(1.62~2.50)、不自然死のSMRは5.07(2.85~7.30)であった。・死亡リスクと関連が認められた因子は、男性(調整オッズ比[aOR]:2.24、95%CI:1.10~4.56)、年齢(aOR:1.12、1.09~1.16)、バルビツール酸の使用(aOR:8.17、2.07~32.32)であった。 著者らは、「日本における統合失調症患者の死亡率は、依然として高いままであり、統合失調症患者の死亡率の傾向を評価するためには、さらなる研究が求められる」としている。

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映画「かがみの孤城」(その3)【この城が答えだったんだ!(不登校への学校改革「かがみの孤城プロジェクト」)】Part 1

今回のキーワード目的評価距離感工場型一斉授業飛び級・「留級」グループワークブレンディッド・ラーニング不登校特例校前々回(その1)では、不登校の心理を掘り下げ、学校にしてもフリースクールにしてもただ居場所であるだけでは不十分である理由を説明しました。前回(その2)では、不登校へのペアレントトレーニングを紹介し、家で子供に好きなことをさせるだけでは不十分である理由も説明しました。それでは、これらを踏まえて、なぜこころたちは城には通えているのでしょうか? つまり、学校とこの城との違いは何でしょうか?今回(その3)も、不登校をテーマに、アニメ映画「かがみの孤城」を取り上げます。この映画を通して、これからの学校に必要な機能を明らかにします。そして、「かがみの孤城プロジェクト」と勝手に名づけ、不登校を解決するための抜本的な学校改革をご提案します!さらに、いきなりの改革に戸惑いや抵抗を感じる関係者の方々に考慮して、このプロジェクトをスムーズに進めるための第一歩を最後にご提案します。なんで城には通えているの?こころは、フリースクールにさえ行けなかったのに、他の6人と同じように、城にはほぼ毎日、自分から通うようになります。なぜでしょうか? ここから、学校やフリースクールになくて城にあった、ある「仕組み」を主に3つ挙げて、その理由を考えてみましょう。(1)願いを叶えるという目的がある―自我を育むこころたちが城に運ばれた時、狼の仮面をかぶった謎の案内人の女の子が、城に隠された鍵を探し出せば、願いが叶うことを伝えます。さらにその子は、「夢がないなあ、おまえたち。物語の主人公に選ばれたって思わないのか」「おまえたち、願いごとってないの?」「まあ、ないならないで構わないが」と言って煽ります。1つ目の仕組みは、願いを叶えるという目的があることです。これが、こころたちが城に通うようになった一番の理由です。こころの当初の願いごとは、「真田さん(いじめグループのリーダー)がいなくなってほしい」という短絡的で自己中心的なものでした。現実的には、その「真田さん」がいなくなったとしても、思春期の集団心理のなかですぐに第2の「真田さん」が現れるので、本当に願いが叶うわけではありません。それでも最初はそれで良いのです。結果的に、城に通うようになったからです。そして、城という「学校」に通うなかで、彼女の願いごとが「自分のため」から「大切な誰かのため」、つまりより社会的な自我(アイデンティティ)を育むものに変わっていったからです。この願いごとを叶えるとは、大人になって社会で自分が望むように生きていくこと、つまり自我同一性(アイデンティティ)の確立と言い換えられます。これは、案内人の女の子の言うところの「夢」であり、人生という「物語の主人公」になることです。一方で、現実の学校はどうでしょうか? 学校に行くのは、大人になって社会でどう生きていくかを学ぶという本質的な目的よりも、より偏差値の高い高校、より有名な大学に合格するという目先の目的になっています。もちろん、学校としても、それを親(社会)が望むことを忖度しているからです。結局、親だけでなく、学校も、自分の人生に責任を持つ必要があるという思春期に達成するべき一番の目的を軽視していることがわかります。(2)先に鍵を見つけられるかという評価がある―自信を育む謎の案内人の女の子は、「今日から来年の3月30日までにその鍵を探し出してもらわねばならない」「要は早い者勝ちだ。誰かが鍵を見つけて願いを叶えたら、その時点でゲームオーバー」と言います。するとその後に、彼らはお互いに隠れてその鍵を必死に探すようになっていたのでした。2つ目の仕組みは、先に鍵を見つけられるかという評価があることです。これは、競争原理であり、城になるべく通う動機づけになっています。そして、自分こそが探し出すという自信を引き出します。もはや、そうしなくてもいいのにそうさせてもらえる点で、義務ではなく権利になります。なお、ちょうど3月という年度替わりが期限になっており、進級を象徴しているようでもあります。一方で、学校はどうでしょうか? 学校でも成績表という評価は存在しますが、ただ存在するだけです。その成績をもとに、達成度別のクラス分けをすることはありません。授業に出席していなくても、小学校や中学校は自動的に進級します。高校進学は基本的に一発勝負であるため、学校の成績表は軽視されます。保健室やフリースクールへの登校で出席扱いにできる措置もあり、高校への進学の内申点にあまり影響がないように配慮されている場合もあります。つまり、何を学んだかという中身よりも、とりあえず学校(またはフリースクール)に来る、そして教室に座っているという形式に重きが置かれています。もちろん、学校としても、それを親(社会)が望むことを忖度しているからです。結局、学校は、配慮を優先して、達成しなかったら認めないという評価を避けてしまっていることがわかります。(3)ほどほどに仲良くなれるという距離感がある―自尊心を育む城に通える選ばれし7人は、男子4人と女子3人で、中1が3人、中2が2人、中3が2人でした。さらに、それぞれの個性が際立っていました。そして、城には、全員が集まることができる大広間、中庭、屋上とは別に、それぞれの個室が用意され、9時から17時の間なら、だれがいつ来てもいつ帰っても良いルールになっていました。ちなみに、そのルールを破った場合は、「狼に食われる」というとんでもないペナルティもありました。こころは、「どんな願いを叶えたいのって聞きたかったけど。聞けない。私も聞かれたくなかったし」「学校行ってないのって誰も聞かない。それが心地いい」「なんか和む」と心の中でつぶやいています。だんだん顔を合わせていくうちに仲良くなり、お互いの境遇を気にかけるようにもなります。やがて、あるメンバーが「お互いライバルだけど、もし見つかったら、誰がどんな願いを叶えたいかって話し合って、くじ引きかジャンケンで決めてもいいかなって」と言い出し、鍵探しの場所を分担し、協力するようになります。また、願いごとが叶うとその時点で城がなくなってしまうことを案内人の女の子から聞かされていたため、別のメンバーが「たとえ鍵を見つけたとしても、それは3月の末まで使わない」と提案して、全員の合意のもとで取り決めをするなど、自分たちでルールをつくっていました。3つ目の仕組みは、ほどほどに仲良くなれるという距離感があることです。この距離感とは、少人数に絞られた集団で、男女の違い、学年の違い、個性の違いという心理的な距離(多様性)、個室にもいられるという空間的な距離(開放性)、いつでも出入りが自由という時間的な距離(流動性)です。不登校で鍵探しをするという共通点がある一方、これらの距離により、ほどほどの関係を保つことができます。そして、協力関係から信頼が生まれ、自尊心を育みます。一方で、学校の教室はどうでしょうか? 基本的に同じ学年で同じ制服(見た目)という心理的な近さ(均一性)、保健室しか逃げ場がなく教室に閉じ込められているという空間的な近さ(閉鎖性)、一日中ずっと一緒にいなければならないという時間的な近さ(固定性)があります。この条件は、その近さから、「ほどほど」ではなく「べたべた」の仲良しになろうとする心理(同調)を煽ります。そして、同時に、そうならない人を仲間外れにしようとする心理(排他性)も煽られ、結果的にいじめのリスクを高めます。次に誰がいじめのターゲット(スケープゴート)になるかを探り合ってばかりで、煮詰まって息苦しいです。これは、一緒にいて協力する目的がはっきりしていないのに、一緒にいなければならない状況をつくってしまうと、協力するための目的を無意識につくり上げてしまう心のメカニズム(社会脳)によるものです。たとえば、もしもあの城に願いを叶えるという目的の仕組みがなくて、毎日強制的に運ばれる仕組みになっていたら、どうでしょうか? 「天然キャラ」(非定型発達)の男子あたりがまずいじめのターゲットになっていたことは容易に想像できるでしょう。つまり、一緒にいるから協力するのではなく、協力するから一緒にいることができるのです。重要なことは、結果的に居場所になることであり、最初から居場所を目指すことは危ういということです。この点で、学校にしてもフリースクールにしても、ただ居場所であることを強調することは、逆説的にも居場所にならなくなってしまうおそれがあることもわかります。ちなみに、もしも城に通える生徒が7人に限定されずに、学校のクラスのように大人数だったら、どうでしょうか? 結局少人数グループがいくつかできて、その中であぶれた人が「ぼっち」のレッテルを貼られ、やはり通えなくなっていたでしょう。だからこそ、最初から少人数に限定されていたのです。この点でも、「かがみの孤城」の設定はよくできています。結局、学校は、生徒たちの近すぎる距離により、居場所であるどころか、サバイバルの戦場になっていることがわかります。なお、排他性の心理の詳細については、関連記事1をご覧ください。次のページへ >>

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映画「かがみの孤城」(その3)【この城が答えだったんだ!(不登校への学校改革「かがみの孤城プロジェクト」)】Part 2

これからの中学校に必要な機能とは?こころたちが城に通うようになったのは、願いを叶えるという目的がある、先に鍵を見つけられるかという評価がある、ほどほどに仲良くなれるという距離感があるからであることがわかりました。そして、これらの仕組みは、学校にはないことがわかりました。これを踏まえて、とくにこれからの中学校はどう変わればいいでしょうか? 私たちの現実の世界で、「かがみの孤城」のような中学校をどうつくることができるでしょうか? ここから、「かがみの孤城プロジェクト」と称して、これからの中学校に必要な機能を主に3つご提案します。(1)学校に行く目的を意識させる―自我を育む1つ目の機能は、学校に行く目的を意識させることです。その1でも説明したとおり、小学校までは「親に言われるから」「友達に会えるから」という理由で、学校に行っていました。しかし、中学校からは、これだけではなく、学校に行く目的を自分で納得する必要があります。これは、自分は何を学んでどうなりたいかという自我を育みます。そのための具体的な取り組みを主に3つ挙げてみましょう。a.ビジョンを共有する学校では、従来から「将来の夢」を書かせることはよくあります。ただ、これだけで終わらせないことです。その夢の実現のためのプロセスを具体的に示し、話し合って共有する必要があります。1つ目は、ビジョンを共有することです。これは、大人になったらどうしたいか、どうなりたいか、つまりどうやって生きていきたいかを本人、家族、そして学校が定期的に話し合っており、それを共有していることです。また、学校に行く一番の目的は、なるべく偏差値の高い高校や有名な大学に進学するためではないことも共通認識とする必要があります。その一番の目的は、先ほども触れましたが、大人になって社会で自分が望むように生きていくためです。その結果として、偏差値の高い高校や有名な大学に進学する必要が出てくることはあります。これは、その2でご紹介した家庭でのタイムマシンクエスチョンに通じます。ちなみに、プロスポーツ選手、アイドル、ユーチューバー、ゲームクリエイターなどなかなかなれない職業を言ってきたら、どうしましょうか? その夢は夢で支持しつつも、実際になれる人の数や知名度による収入差を示し、なれなかった時のバックアップのための現実的な職業も考えてもらうことです。思いつかないと言ったら、どうしましょうか? その2でも説明したとおり、いったん本人の強み(リソース)の再確認をして、自尊心や自信を高めます。そして、「やってもいい職業」「嫌いじゃない職業」と言い換え、ハードルを下げて、とりあえず何かの職業を言いやすくすることです。そして、その職業を「仮ビジョン」とすることです。大事なことは、何でもいいからまずビジョンを描くことです。そうすれば、こころの願いごとが最後に変わったように、学校で出会う友達や先生との相互作用によって、仮ビジョンが最終ビジョンに変わっていく可能性を見出せます。逆に、仮ビジョンすらなければ、学校に行く目的を見失ってしまい、最終ビジョンを育むチャンスを逃してしまいます。b.どれだけ学ぶかの自由を与える小学校の教育は、社会で生きていくために必要なものばかりです。一方、高校の教育は、義務教育ではなく、何をどれだけ学ぶかの選択の自由があります。その間の中学校の教育は、現代の情報化社会では必ずしも生きていくために必要なものばかりではないのに、義務教育であるという建前のため、高校のような選択の自由がないです。自由があるとしたら、それは不登校という一択だけです。2つ目は、どれだけ学ぶかの自由を与えることです。これは、本人のビジョンに合わせて、何をどれだけ学ぶかの多様性(自由)を認めることです。学びのトータルの時間を変えずに、そのバランスを選ばせるということです。もちろん、従来の標準的な各科目の授業時間数は基準として示しておけば、従来通りの教育を受けることもできます。たとえば、英語、国語、数学、理科、社会科の各科目の時間数の60%は必修としつつ、残りの40%は選択とすることです。すると、英語をもっと学びたいけど数学は必要最低限で良いという生徒は、数学の40%の時間を英語に回して、英語の授業時間数を増やすことができます。逆に、言語能力がもともと低い場合は、英語が負担になってしまうため、英語の40%の時間を国語に回して、日本語に専念することができます。このプロセスで大事なことは、あえて生徒に選ばせることです。選べばそこに責任が生まれます。これは、学ぶことで責任感を持たせ、学校に行く動機づけを高めます。もともと決められたこととしてやらなければならないという心理(外発的動機づけ)から、自分で決めてやりたいという心理(内発的動機づけ)に変えていくことができます。これは、本人の意思を尊重している点で、大人扱いです。そして、学校に行かないと得るものがないという点で、学校に行くことは義務ではなく権利であるという感覚になります。そして、学校で自分がどうしたいかという自我を育みます。c.学ぶ責任を自覚させる高校では、何をどれだけ学ぶかの自由があると同時に、その学びが期限内に達成されなければ、留年や中途退学という責任が負わされます。先ほどのように、中学校でもどれだけ学ぶかの自由(選択権)をある程度与えるなら、その選んだ責任が生まれると考えることができます。3つ目は、学ぶ責任を自覚させることです。これは、学校に行かないことによる将来のリスクを説明するだけでは限界があります。義務教育であるだけに、やはり社会的な介入が必要になります。たとえば、欠席日数が1ヵ月を超えた時点で、教育委員会や専門医療機関での評価と定期的な心理カウンセリングを義務づけることです。その義務も果たさない場合は、親(養育者)に罰金を課すことです。親としても、罰金を取られたくないという大義名分から、本人に義務を守ることを促すことができます。これも大人扱いです。学校に行かないと面倒が起きて損をするという点でも、本人にその責任を自覚させることができます。ちょうど、車がスピードを自由に出してはいけないという交通ルールがあるのと同じです。子供が教育を受けないで自由にしていてはいけないという「ワークルール」を教える必要があります。教育を受けるとは、何かに取り組むこと(ワーク)であり、働く(ワーク)リハーサルをしているとも言えます。これは、日本国憲法に定められた三大義務のもう1つである「勤労の義務」につながります。交通ルールと同じように、この「ワークルール」も、罰金などのペナルティがあることで、ルールを守る責任を自覚させることができます。(2)評価によって今後を左右させる―自信を育む2つ目の機能は、評価によって今後を左右させることです。その1でも説明したとおり、小学校まではまず居場所であることが重要なため、評価は二の次でした。しかし、中学校からは、積極的に評価して、本人の強み(リソース)を自覚させる必要があります。これは、自信を育みます。具体的な取り組みを主に3つ挙げてみましょう。a.科目別・達成度別にクラスを分ける1つ目の取り組みは、科目別・達成度別にクラスを分けることです。たとえば、1学年で4クラスあるなら、それぞれの科目で4つの達成度別のクラスをつくります。ちょうど、英検や漢検などの資格が細かく級分けされているイメージです。すると、より自分のレベルに合った授業を受けられるため、わからなくて嫌になることも物足りなくて嫌になることもなくなります。そして、学べば学ぶほど、達成した結果が目に見えるため、自信がつきます。これは、その2でご紹介した家庭でのお小遣いルールに通じます。また、この取り組みによって、よく一緒の授業を受ける人が数人いることはあっても、すべての授業を同じ数十人が同じ教室でずっと一緒に受け続けることはなくなります。もはや「〇組」という概念は曖昧になります。すると、クラスの人間関係は流動的となり、先ほど説明した同調性が低くなるので、結果的にいじめのリスクが低くなるという副次的な効果が得られるでしょう。b.クラス替えを年複数回にする2つ目の取り組みは、クラス替えを年複数回にすることです。すると、もしも自分のレベルに合っていないクラスだったり、人間関係でうまく行かなかったとしても、1年我慢して待たなくてよくなります。これは、不登校のリスクを下げるでしょう。たとえば、年度替わりの4月、夏休み明けの9月、冬休み明けの1月でそれまでのクラスの評価をもとにクラス替えを3回行います。冬休み明けの1月を外して、2回にすることもできます。評価には、休み中の課題を加味すれば、その課題の達成率が飛躍的に高まります。人間はやってもやらなくても状況が変わらないのだったらたいていやる気が起きませんが、やっただけ評価され、状況が変わるのであれば、やる気は高まります。この取り組みも、クラスの人間関係をさらに流動的にさせるため、いじめのリスクをさらに低くさせることができるでしょう。c.飛び級・「留級」を可能にする3つ目の取り組みは、飛び級・「留級」を可能にすることです。たとえば、3学年で12クラスあるなら、科目別と達成度別に12のクラスをつくります。達成度によってその生徒に合う授業を受けることを優先することです。もはや、年齢と学年を厳密に一致させる合理性はまったくなくなります。これは、ある生徒がある科目のクラスに出席していなかったりただ教室に座っているだけの場合、その生徒はそのクラスに次の学期(約3ヵ月)に留まること(名づけて「留級」)になります。この状況は、見方によっては「かわいそう」と思われるかもしれません。しかし、よくよく考えると、学んでいないのに自動的に進級させるのは、本人にとってさらに難しい授業を受けさせることになります。むしろこちらの方が「かわいそう」です。また、すべての科目の1年間の留年と違い、1つずつの科目の3ヵ月の「留級」は、そのロスが最低限です。逆に、ある科目のクラスで生徒の学ぶスピードが速いのであれば、次の学期で飛び級にすることは、その生徒により合った授業を提供することになるため、もちろん合理的であり、その生徒のためになります。中学校を半年早く卒業すれば、海外の高校にも進学できます。ただし、これらは本人希望であることが大前提です。本人が望まなければ、大人扱いして本人の意思を尊重します。また、本人があえて「留級」を望む場合も同じです。この取り組みは、科目によっては学年が上がっていたり下がっていたりすることもあることから、もはや「〇学年」という概念も曖昧になるでしょう。ちなみに、欧米では、小学校、中学校での留年率が一定数ある国が多いです。たとえば、留年率が高い国としてはドイツの中学校(15%)、フランスの中学校(30%)です1)。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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